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山本茂一郎君 それでは第三点についてお伺いいたしたいと思います。
それは現在の
恩給年額と
恩給支給条件といいますか、この
恩給の内容というものについて、現時点においてこれが適正妥当なものかどうか、この点についてお伺いいたしたい、こう思います。それは私はいろいろな点、すなわち
国民生活の水準でありますとか
公務員その他の
給与との比較、値上がりを続けておる
物価等の現状からかんがみまして、
恩給金額というものは不十分であり、
恩給支給の本旨にもとるものであると考えるのであります。
それについて、私の御質問の趣旨を御理解いただくために、少し小さなことを申し上げたいと思うのでありますが、今後の
改正が実施されましたときにおいて、
物価指数というものを考えてみると、次のとおりになると思うのであります。
昭和九年から十一年の
物価指数を一と、こう仮定いたしましたときに、日本銀行の調査によりますというと、
昭和四十一年の一月から十二月の総合統計の全国
物価指数は三七三・三倍ということになっておるわけであります。そこで同じ
昭和九年ないし十一年の
恩給というものを一といたしまして、今度
改正される仮定俸給の一〇%増のものの倍率を比べて見てみますというと、これは兵の階級において二百三十八倍になりまして、前に比べますと百三十五倍というもののこれは不足ということになるわけであります。将官の例をとりますというと、現実において百二十四倍になっておりまして、ここに二百四十九倍というものが実施をされず残されておると、こういう形になるわけであります。またたとえ貨幣の価値という一点から見ましても、
恩給は実質的に下がっているということは、私は事実だと思うのであります。
また、
恩給法の中において旧軍人としからざる者との間において、適用条件に不
均衡のあることは、これは当然のようにいままで見過ごされておるというように感ずる。これが事実だと思うのであります。その例として大きな四つの点を申し上げたいと思うのでありますが、いわゆる加算年に
恩給金額をつけないという一点、仮定俸給年額のいわゆる号俸の格づけというものにおいて、同じ階級であった旧文官と旧軍人間において、現在では旧軍人は文官に比しまして十二号俸ないし二号俸の低位に置いてあるという事柄。第三点といたしまして、一時
恩給支給の年限に文武間において非常な差別待遇がある。言いかえますと、文官は加算を入れまして三年になれば一時
恩給を渡しておりますが、旧軍人においては連続七年という条件がありまして、現実に召集されておる軍人において連続七年の勤務というのはりょうりょうたるものでありまして、ほとんど与えないということと同じ意味になっておるのであります。そのほか戦地外戦務でありますとか、
各種の職務加算というものについては未
処遇であるという事実であります。
これを私はさらに実例をもって御説明を申し上げたいと思うのであります。実例としましては、
恩給局でよく御承知と思いますが、ここに実在の人間として、昔関東局において警察監獄職員として勤務して、現在
普通恩給の受給者でございまして、その基礎となった在勤年数は四年四ヵ月であります。それに加算を加えまして十二年一ヵ月ということになります。この方の現在受けておる
恩給は四万九千二百三十四円ということであります。その同じ人が伍長として召集をされまして、ここに二年一ヵ月の勤務をいたしました。そこに先ほど言いました警察官としての勤務四年四ヵ月を加えまして、実際の勤務が六年五ヵ月になったわけであります。言いかえますと巡査としての勤務よりも二年一ヵ月多いのであります。ところが、これを二年多い勤務を入れて軍人の現在の規則による
恩給金額を計算いたしますと、二万八千五百五十六円になるのでありまして、これが四年四ヵ月の巡査としての短い期間の人が、先ほど言いました四万九千二百幾らというものに比して非常に差があるということであります。いろいろと加算年に金額を入れてほしいといいますが、この現実の例をごらんいただいて、ひとつ、理解を深めていただきたい、こういうように考えるのであります。
もう一つ、第二点の号俸の問題について御説明いたしたい思うのであります。これは現在兵庫県に住んでおる人でございますが、これは六年間現役兵として海軍につとめた人であります。その後に十二年六カ月間京都府の巡査として在勤をしたのであります。ところが、この方が警察官と軍人の通算をやりまして、十八年という形において文官
恩給を受けておりますが、八万二千八百八十円の
恩給を受けておるわけでありますが、この方はたぶん軍人では軍曹くらいの方だと思います。といいますのは、この方のいま受けておる号俸は三十四号俸なんです。ところが、この人はここまでになるまでには、いわゆる
昭和三十一年の法四十九号によって三号俸、三十六年の百三十九号によってさらに号俸が上がっておりまして、さらに四十一年の百二十一号によって三十四号俸になっておるのであります。ここにその人がもし軍曹という形でおりましたならば、この人の計算しますというと、
恩給は五万七千三百八十二円でありまして、いわゆる旧軍人においてはちょうど十二号俸下がっているというわけであります。一方においては軍曹と同じ階級の旧文官として受けておるこの
恩給が、もし旧軍人として受ける場合においては少佐でなければ同じ金額にはならない。これが現実の姿でありまして、これではいろいろの、私のような号俸の計算に、必ずしも御同意をされないことは私も存じておりますけれども、現実の姿はかくのごとく、旧軍人というものが特別な制限を受けておるというところにひとつ御了解をいただきたい。われわれは単なる空論をしておるのではないということを御了承をいただきたいのであります。
そこで、この金額と条件が現時点において適正妥当なものと考えるか、また文武間に不
均衡の存在を認められるかどうか、もし認められるならば、これを是正される必要があるとお考えになるかどうか、総務長官の御所見を承りたい。