運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-06 第55回国会 参議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月六日(火曜日)    午前十時四十四分開会     —————————————    委員異動  六月五日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     鬼木 勝利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         豊田 雅孝君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 稲葉 誠一君                 北村  暢君     委 員                 船田  譲君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 伊藤 顕道君                 中村 英男君                 前川  旦君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        国 務 大 臣  二階堂 進君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁計画        局長       梅澤 邦臣君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        科学技術庁振興        局長       谷敷  寛君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        科学技術庁資源        局長       佐々木 即君        法務省人権擁護        局長       堀内 恒雄君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生大臣官房会        計課長      高木  玄君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。昨五日、中尾辰義君が辞任され、その補欠として鬼木勝利君が選任されました。     —————————————
  3. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引き続き、本案の質疑を行ないます。なお、関係当局からの御出席は、二階堂科学技術庁長官外政府委員方々でございます。  それでは、御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三お伺いしたいと思います。まずお伺いしたいのは、原子力船関係にまず問題の焦点をしぼって伺います。いろいろと問題のあった原子力第一船の建造については、四十六年度末完成を目途として、いよいよ本年度から建造に着手する、こういうことでありますが、四十二年度予算においても、日本原子力船開発事業団に対して七億五千二百万円が計上されておるわけでございます。当初の計画では海洋観測船とする予定であったようでありまするが、今度の計画では特殊貨物運搬船になっておるようです。これは従来の計画をいわゆる設計変更したのは何か理由があろうかと思います。最初計画を変えてしまったその理由は一体どこにあるか、こういうことをまずお伺いしたいと思います。
  5. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 多少こまかく説明が必要かと思いますので、局長から答弁いたさせます。
  6. 村田浩

    政府委員村田浩君) わが国原子力第一船につきましては、これをどういう船種船型にするかということにつきまして、昭和三十二、三年ごろから原子力委員会でいろいろ検討されたわけでございますが、昭和三十七年に至りまして、専門家方々で構成する専門部会検討した結果、第一船は比較的小型の非商業船、つまり商業活動を行なわない船がよかろう、こういう御結論でございましたので、この線から、国の観測業務に従事します海洋観測船がよかろうということで、日本原子力船開発事業団を設立しました昭和三十八年におきましては、第一船は総トン数約六千トン級の海洋観測船にする、こういうことでまいったわけでございます。しかるところ、その後御案内のとおり、原子力船船価問題等でいろいろ検討を要する事項がありまして、両三年この検討を行なってきたわけでございますが、その際、前回経緯もございますので、あらためて原子力委員会におはかりしまして、この原子力計画につきまして、いろいろの観点からレビューをいただいたわけでございますが、その際、その後における世界原子力開発趨勢等も反映いたしまして、原子力船商業目的実用化されるという見通しは、いまから四、五年前に比べますと漸次はっきりしてきました。と申しますのは、一般の海運造船界状況からしまして、船の高速化大型化ということが急速に進んできております。そういう関係から、遠からず原子力船による高速外航船あるいは巨大タンカーというものが実用化されるという見通しがかなりはっきりしてまいりましたので、この際、第一船をわが国建造いたしますれば、できるだけ実用化商業化ということへ一歩近づけてまいりたい、こういうことからいろいろ検討を行ないました結果、この第一船に塔載します原子炉、これは海洋観測船計画しましたときと変えませんが、船型のほうにおきまして、できる範囲での改訂を加えまして、小型ではございますが、将来の原子力商船実用化へ向かっての一歩を踏み出すために必要なことを考えまして、完成の暁は貨物を一部、不定期船ではございますが、運搬できるようなものにしたい、こういう考え方船型を改めたわけでございます。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、最初は六千トン級の海洋観測船という計画であったけれども、しかし、世界趨勢大型化あるいは実用化、こういう方向に進んでおるということをも十分勘案して、いわゆる貨物運搬船、しかも特殊貨物運搬船というふうに用途を変えてきたというふうに了解できるわけですが、そこで、その最終的な計画によるいわゆる特殊貨物運搬船、これの性能とかあるいはトン数には変化がないのか、そういうことについても具体的に承っておきたいと思います。
  8. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいま申し上げましたように、搭載いたします原子炉につきましては、かねがね第一船のために計画してまいりました熱出力三万六千キロワット、加圧水型の原子炉を使う、こういうことでございますから、その出力範囲での性能しか考えられないわけでありますが、ただいま計画を変更しまして、特殊貨物運搬目的に供し得るものといたしましたおもな点を申し上げてみますと、従来の海洋観測船に比べまして、長さにおいて約四メートル長くいたしました。この長さの大きさはあまり大きくないわけでありますけれども、従来の海洋観測船は、搭載貨物量にしますと、大体三百トン程度しか積めない、これは海洋観測目的でございますから、荷物はあまり積むようになっていないのでございますが、設計を変更して、これを約五倍の千六百トン積めるようにしました。また、容積の点におきましても、従来は二千三百立米でございましたものを約倍の五千立米に広、げました。このようにいたしまして、総トン数において従来の設計が六千九百トンでございましたものを八千三百トンまでふやしまして、そうして貨物がある程度運搬できるようにいたしたわけでございます。これに伴いまして主機出力は変わりません、約一万馬力でご、ざいますので、速力が若干落ちることになるわけでございますが、海洋観測船の場合に航海速力として一七・二ノット予定しておりましたが、今回の設計変更によりまして、やや大型になりまして、一六・五ノットということになる予定でございます。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、四十六年度末、完成予定のようでありますが、それまでのいわゆる建造スケジュール、そういうものの大綱をひとつこの際御説明願いたいと思います。
  10. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいまの計画では、四十二年度中に建設に着手いたしまして、そうして船体につきましては四十三年度の半ばに起工、四十四年度初めに進水、それから原子炉のほうが時間がかかりますので、原子炉のほうは四十五年度『二心つくりまして、四十五甲斐むこ船体とそれから原子炉の引き渡しを受けましてこれを中に積み込んで艤装するというコースを行ないまして、四十六年度中に完成して海上試運転に持っていく、大体こういう予定でございます。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、お伺いいたしますが、科学技術庁としては、この原子力船母港いわゆるサービスサイト、これを検討の結果、横浜市とその方針を発表されているようですが、そこでお伺いしたいわけですが、横浜市と特に決定された理由は一体どういうことか。それとこの方針の具体的な内容についてもこの際御説明願いたいと思います。
  12. 村田浩

    政府委員村田浩君) 最初に申し上げておきますが、科学技術庁がこの原子力船母港といいますか、サービスサイトと呼んでおりますが、これをまだ決定する段階に至っておりませんが、原子力船事業団のほうで全国約二十カ所ばかりいろいろと候補地をさがされまして、それらについて母港としての適切性等について検討しました結果、最近に至りましてこのサービスサイトとしては横浜地区の新たに埋め立てされる場所、これがその諸種の観点から適切であろう、こういう御判断を持たれまして、現在地元である横浜市と折衝しておられる、こういう段階でございます。もちろん監督官庁といたしまして、その間の経緯につきましては、事業団から逐一報告を受けておりますが、まだ科学技術庁としてこれを決定するというところまでまいっておりません。  そこで母港横浜のほうへしぼりましたそれについて、どういうことを考えたかということでございますが、その選定しました理由としましては、原子力船母港として必要な諸条件がこの横浜において最も有効に満たされるのではないか、こういう判断事業団として持っておるからでございます。その際の考慮にあがりました項目としましては、まず第一に、その母港に船をつなぐわけでございますので、そこにつなぐに至ります航程において、何といいますか、航海上の、種々運航上り支障がないこと。といいますのは、たとえば航行援助施設等も整備されておるというようなこと。それからこの船は、先ほどちょっと申し上げませんでしたけれども、大きさの割合に水深の深い船でございます。これは原子炉が重いせいもあるわけでございますが、約七メートルぐらいの水深を持っておりますので、そこの母港の深さが約八メートル程度はないと困るということ。もちろんその付近暗礁等支障がないこと。それから市街地との距離が安全上必要な程度以上離れておること。それからこの母港におきましては将来燃料の取りかえ、あるいはある程度補修等を行なうことを考えるわけでございますので、そういった技術的な仕事をするにふさわしい造船技術原子炉技術等能力を結集しやすい場所である。と申しますのは、この船を母港に常時つないでおるわけでございませんで、運航しまして、ある時期にここに入ってくるということでございますので、常時たくさんの施設能力をそこに設けておくということは非常に不経済なわけでございますので、その近辺からそのような能力を動員できるような場所が望ましい、こういったような関係。さらには将来、先ほど申しましたように、原子力商船時代がだんだんまいるといたしますと、こういう原子力商船というのはやはり大きな港に常時入ってくるようにならなければ商船活動が行なえないわけでございますので、そういうことも考え合わせまして、二十余りの候補地の中から横浜富岡付近が最も適切ではないか、こういうふうに判断した、こういうふうに私ども報告を受けております。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、横浜市を一応選定したことの理由は大体わかりましたが、まだ最終決定ではなく、交渉を進めておるということでありますが、いままでの経緯について、受け入れ側である横浜市との交渉は非常に理解のもとに進められておるのか、それとも何か問題点でもあるのか、その辺の経緯について率直にひとつお答えいただきたい。
  14. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいま申し上げましたように、予定しておりますところは横浜港の富岡地区と申しまして、現在横浜市において埋め立て予定しておる場所でございまして、その埋め立て地の一番とっさきのところ約一万坪をサービスサイトとしてもらいたい、こういう事業団希望でございます。しかるところ、この富岡地区埋め立てにつきましては、実はまだ運輸省のほうから公式の埋め立て許可が出ておりません。その事情は、計画はすでに早くからあるわけでございますが、この埋め立ていたしますのは、ちょうど米軍米駐留軍のほうに貸与している土地がございまして、そこから海岸に至ります道路をどうするかというような問題が間にはさまれましたために、この点の米側了解日米合同会議の場を通じまして取りつけるという必要等がございまして、かなり時間がかかっております。最近ようやく私ども承知いたしますところでは、運輸省埋め立て許可が公式に出る、近々出るというところにきておるわけであります。しかし、この事業横浜市の事業としてすでに早くから計画にございましたので、民間の会社その他から非公式ながら埋め立て地譲渡許可申請が相当出ておるそうでございます。事業団のほうでこの地区を選定しましてぜひここを譲り受けたいということで、非公式に現在横浜市に話をしておられますが、まだ埋め立て許可が正式におりておりませんので、公式の話にまだならないのでございます。そういうことで時間をとっておりますが、非公式に折衝したところでは横浜市から伺っておりますのは、たくさんの会社等からもすでに申し込みがありますので、はたして一万坪という土地が譲渡分譲可能かどうかという点はなお調整を要する問題であるので、その点十分検討したい、こういう話であると承知しております。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、アメリカ原子力船、例のサバンナ号入港問題ですが、この際、確かめておきたいと思うのですが、政府としては、先にアメリカからこのサバンナ号入港許可の、入港了解の要請があったと思います。ところが、日本政府としては、外国原子力船によるいわゆる損害賠償についての日本法律上の規定がない、こういう理由で一応寄港を断わる旨アメリカに回答したと思うのです。このことについてお伺いするわけですが、外国原子力船によるいわゆる損害賠償についての規定は現在ないわけですね。そこで、だがしかし、四十年の第四十八国会であったと思いますが、外国原子力船寄港に関する手続とか、あるいは許可基準等を明示するため原子炉規制法改正を行なっておるのです。なぜその時点において、今日の状態を予想して、こういうことについての規定がなされなかったのか、一応疑問を持たざるを得ないわけです。この間の事情について明らかにしていただきたいと思います。
  16. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいまの御疑念はごもっともだと思うわけでございますが、昭和四十年に原子炉等規制法の一部改正をお願いしましたのは、もちろん当時からすでにできておりましたアメリカサバンナ号がいずれは日本の港にも来るだろう、そういう希望を表明してくるだろうということを予想いたしておりましたが、しかし、直接この規制法改正に手をつけました理由は、四十年の五月の二十六日でしたか、かねて各国の間で相談いたしておりました一九六〇年海上人命安全条約、これが国際的に発効することになりまして、わが国もこれへの加盟国として当然発効に伴い海上人命安全条約を受け入れなければならない、こういう事情があったわけでございます。この新しい海上人命安全条約では初めて原子力船安全性関連します国際的な規定というものが設けられておりまして、この規定に対して国内法を整備しておく、こういう必要が感じられたからでございます。そこで原子炉等規制法は御案内のとおり、原子炉等の安全を確保するための種々規制政府において行なうための法律でございますが、従来これには外国原子力商船というものが含まれておりませんでしたので、安全規制の上に必要な条項を整えたわけでございます。そこで、安全性につきましての規制はこれでできることになったわけでありますが、原子力施設の特色としまして、国内におきましても安全性についての厳重なる審査を行なって、周辺に何らの損害を及ぼすことはないということを確認の上許可する方式をとっておりますが、さらに万が一のことを考えて、にもかかわらず人間のすることでございますから、不測の事由から事故を生じ、周辺に何らかの損害を及ぼすことがあった場合に備えて、国内にも原子力損害賠償法というものを設けてあるわけでございます。国際的にも大体こういう制度をとっていくことが先進諸国においては一般的に行なわれておるわけでございますが、それぞれの規制のしかたあるいは損害賠償やり方等は当然のことながら国によって違っておるわけでございます。そこで安全性規制につきましては、ただいま申し上げました一九六〇年の海上人命安全条約によって国際的に一つの基準ができたわけでございますので、それにわが国安全規制基準も合わせる。ところが、賠償措置のほうにつきましては、これまた同じく国際的な話し合いが進められております。ただいまの海上人命安全条約ロンドン交渉が結ばれましたのでロンドン条約と呼ばれているのに対しまして、賠償条約についてはブラッセル交渉が持たれておりますのでブラッセル条約とわれわれ呼んでおりますが、原子力船運航に伴って生ずべき万が一損害からその周辺人たちを守るための国際的な約束としてのブラッセル条約につきましては、残念ながらまだ発効するに至っておりません。そこでわが国としましては、各国国内的な規制なり何なりというものは違うのが当然でございますので、船のように国際的な運航を行なうことによって初めてその商業活動が行なわれるものにつきましては、やはり安全の問題と同様、賠償につきましても国際的な約束でもってこれを取り仕切っていくということが最も常識的に望ましいことだ、こういう考えで従来からきているわけでございます。しかるに、このブラッセル条約発効が当面種々事情で望まれないという状況でございましたので、それにかわる措置として、この船を持っている国は現在非常に限られておりますので、原子力船を持っている国との間の二国間約束という双務的な国際約束によりまして、この賠償措置についての必要な措置を講じておく、こういう考え方が妥当である、こういうことであえて当時この損害賠償法につきましては国内賠償法適用除外といたしたわけでございます。しかし、今回サバンナ号わが国への寄港につきまして米側から申し入れがありまして、さっそくこの二国間の国際約束というものについて米側と外務省を通じて交渉いたしたわけでございますが、わが国の立場といたしましては、この国際約束に盛り込まれるべき項目として、わが国賠償法規定しておりますような無過失集中責任制度というものをやはり外国商船運航者に対しても適用すると、こういう原則をぜひ確立したい、この線で米側とその内容国際約束に盛るように交渉していただいたわけでございますが、残念ながら、米側としましては、米国議会からいま直ちにそのようなことの行政協定を結ぶ権限を米政府は委任されていない、つまり、そのような無過失集中責任制度を盛り込むような協定をつくろうとすれば、米議会承認を必要とする事項になる、こういう回答でございまして、その米議会承認はすぐにはとても得られないし、一方でサバンナはいろいろな運航予定から六月には入れたいという向こうの希望がございまして、そういうことを考え合わせますと、とても時間的にわがほうの希望するような二国間協定を結ぶことが不可能であるということが判明いたしました。で、残念ながら今回の申し入れにつきましてはお断わりするはかなかった、こういう経緯でございます。  ただ一つつけ加えておきたいことは、その際新聞等にも国内法との関連でいろいろ述べてございますが、この点は米国側議会承認心要とするということで、なかなかこちらの希望するような二国間約束ができないとしました場合に、それにかわる措置として、たとえばわが国国内法である損害賠償法の現在適用除外になっておりますものを適用させたらどうか、適用させることによって日本国内法におけると同じような賠償責任等をとらせたらどうか、こういう考え方が一つあり得るわけでございます。もちろんそのような考えで処理することも一法と思いますが、るる申し上げましたように、一九六〇年の海上人命安全条約について国内法を整備したときからの考え方というものが、多国間国際約束か、あるいはできなければ二国間約束で処理していきたい、こういう政策でまいりましたので、今回のサバンナ号の問題につきましては、その線から処理いたしたいこういう次第でございます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、現行の関連国内法関係のために、先ほどの説明ではサバンナ号の一応入港を断わったということですが、今後科学技術庁としては、いまの原子力損害賠償法とかあるいは原子炉等規制法、こういうものをどんどん整備していって、最終的には外国原子力船入港を認めよう、そういう方針のもとに善処しておるのかどうか、こういう点についても明確にしていただきたい。
  18. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 御承知のとおり、最近原子力商船が諸外国においても実用段階に入っていると思いますが、わが国といたしましてもそういう海運におくれをとらないように原子力商船というものの建造にすでに着手いたしておるわけでございます。将来を考えますと、この原子力商船時代が到来すると考えられますので、やはり原則としては、私は商船わが国の港に入ることを認めざるを得ない、認める方針であります。しかし、現段階において、先ほど局長からお答えいたしましたとおり、万が一損害事故が起こった場合の補償の措置等について二国間のとりきめができないし、あるいはまた、アメリカあるいはその他の国、原子力船を持っておる国が原子力商船日本に持ってきた場合に、わが国原子力賠償法というものの適用を完全に認めるかどうかというと必ずしもそういう段階になっていないわけでございますので、将来に対して、わが国におけるこの原子力賠償法検討するかどうかということになると思いますけれども、直ちに私はいまわが国の持っておりまする原子力賠償法等に手をつけるという考え方は持っておりません。しかし、将来原子力商船時代になると考えられますので、わが国の港に入るということは、これは認めていかざるを得ないだろう、かように考えております。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお答えのように、たとえば原子力損害賠償法とか、あるいは原子炉等規制法、こういう関係法律を整備する、これももちろん必要でありましょうけれども、一番大事な点は、その安全性について科学技術庁がいわゆる確信の持てる高度の調査研究を積み重ねていく、これが絶対というところまで確信の持てる時点でそういう段階に入るべきであって、その点については私から申し上げるまでもなく、きわめて重要な問題であると思うのです。一たび間違いが起きればはかり知れない大きな損害があるわけですから、物心両面にわたって大きな損害が当然予想されるわけですね。したがって、この点については万全を期して法の整備と同時にその安全性のいわゆる確保、調査研究、これには科学技術庁の生命をかけてひとつ徹底的な研究の積み重ねを願いたい、これを強く要望申し上げておきたいと思います。  なお、お伺いいたしますが、この原子力委員会のいわゆる原子炉安全審査会がございますが、これは例のサバンナ号寄港について審査の結果、条件つきでその安全性を認めたというふうに承知しておるわけですが、その内容についてひとつ具体的に説明を願いたいと思います。
  20. 村田浩

    政府委員村田浩君) 御指摘のとおり、このサバンナ号寄港の問題に関しまして、先方の提出しております膨大な安全説明書を主たる材料として、原子力委員会原子炉安全専門審査会に審査をお願いいたしたわけでありますが、安全専門審査会では前後十七回にわたる憤重な審議の結果、四月の十二日に原子力委員会に答申を出しておられます。その答申によりますと、ただいまお話しございました係留場所等につきまして若干の要件が満たされるならばこのサバンナ号日本の港において十分受け入れられるだろう、こういう答申の内容になっております。  そこでその若干の条件でございますが、これはサバンナ号日本の港に入りました場合に、横浜とか、神戸とか、そういう港に入りました場合に、いわゆる管理区域といいますか、常時港長において管理できます区域、その境界までの距離が三百六十メートル以上ある。それからさきに居住地帯、その市の居住地帯の区域までの距離が四百二十メートル以上ある。それからその港に入りました場合に、万々一の際にこれを引き船で引き出して、そうして港の外に持っていくというようなことがあるかもしれないわけでございますので、そういった引き船の用意が十分できるようになっておるか。審査会のほうの要件としましては、二時間以内にこの船を万一の事故を生じたときには引き出すことができるような引き船の用意ができる状態であるか、それから引き出しました場合に、どこか陸地から離れたところに投錨させるわけでございますが、その場所をあらかじめの設定いたすわけでありまして、その設定された場所とこの居住区域までの距離というものが少なくとも五千メートル以上離れておる、こういうような条件を付しております。これらの条件は私どもが調べましたところでは、横浜、神戸等におきましては、適当な桟橋の適当な場所に停泊させますならば十分満たし得る条件である、こう了解しております。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、宇宙開発の一元化、この問題について一、二お伺いしたいと思うのですが、この問題については、本年三月佐藤総理から一元化の方向への指示があったと思うのです。科学技術庁長官としてもこれを受けて立って、大体四十三年度をめどに一元化のために努力したいと、そういう趣旨の記者会見等があったと思うのです。そこで宇宙開発一元化のための試案として幾つかあったと思うのです。あるいは宇宙開発庁の構想とか、あるいはまた、特殊法人の案とか、あるいは国立宇宙センター、そういう案が幾つかあったようでありますが、そこでお伺いするわけですが、科学技術庁としては、一元化実現のためどのような構想を考えておられるのかということと、いままでどのような検討を行なってこられたのか、今日までの経緯についても具体的に御説明いただきたいと思います。
  22. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 御承知のとおり、最近宇宙開発は大きなプロジェクトとして各国とも先進諸国取り上げていることは御承知のとおりでありますし、かつまた、打ち上げた衛星が通信なり放送なり漸次実用化されてきている。こういう状況下におけるわが国の宇宙開発の現状はどうかと考えてみますと、今日まで宇宙の開発に取り組んできたのは御承知のとおり東京大学の宇宙開発研究所であります。これが宇宙の科学的、物理的な案件を目的として過去十カ年余りにわたって相当な研究を重ね、また、これに施設あるいは機械、ロケット等、研究費等を入れますと約百億近い金が投入されていると思います。この研究の成果は、私は相当見るべきものがあったと考えるのでございます。したがって、世界アメリカ、フランス、ドイツ等からもこの宇宙の開発の成果研究等についていろいろ協力を求めてきているということもあるのであります。それほど大きな成果をわが国の宇宙開発が過去十カ年に積み重ねてきたということは御承知のとおりでありますが、先ほど申し上げましたとおり、今度はそれを越えて科学衛星を打ち上げてきている。そこで、科学技術庁におきましても、少なくとも昭和四十五年度を目途として科学実験衛星を打ち上げる、こういう方針を明らかにいたしておるわけであります。こういうときに、郵政省におきましても放送通信衛星を実用化しようという研究開発の段階に入ってきております。あるいはまた、運輸省におきましては、航海に必要な衛星、あるいは潮流とか魚族とか、そういうものを衛星から観測し研究する衛星を打ち上げようという計画を立てておる、あるいは建設省は、国土地理院あたりが測地衛星を考えている、あるいはまた、気象庁が気象に関するロケット打ち上げを考えておる、まあこういうことが現実の状態でありまして、そこで考えなければならないことは、何といってもロケット人口の点から考えてみましても、非常にわが国においては少ない。また、研究投資等も考えてみますときに、アメリカとかソ連とかその他の国はいろいろな目的もあって巨大な投資をして研究開発を進めているが、一方わが国におきましては財政上の制約もありまして、なかなか思うような資金の投入もできない。しかも平和目的という限られた方向にのみこの研究開発が進められなければならないということでありますので、何といたしましてもわずかなロケット頭脳で、しかも限られた金で、限られた目標に向かって、期限の間に効果的な研究開発を進めるためには、各省がばらばらでいろいろなことをやっていく、特にまた打ち上げる仕事までやっていくということは、どう考えてみてもやはり効率的な運営のあり方ではないと私も考えましたので、研究開発はもとより、先ほど申し上げましたごとく大学のほうでそれぞれやっておるところもあります、また、関係各省におきましてもいろいろ衛星についての研究開発等はやります、研究等はやりますけれども、基礎的研究その他は、しかし、打ち上げる作業、事業というものはやはり一元的な機構を持ってそこで打ち上げる、そうしてそこで管理していくというような態勢を一日も早くつくるべきではないかと私も考えまして、文部大臣あるいは郵政大臣あるいは運輸大臣、建設大臣等とも個人的にもいろいろ話をしてまいりましたが、一元化的な機構をつくるということは賛成である、ぜひそうしたいという御意思でもありましたので、閣議におきまして、私は二回ほどこの問題について発言をいたしましたが、総理もその際、積極的に宇宙開発は国の政策として目標を持って進めていかなければならないビッグサイエンスの一つである。したかって、頭脳も金も効果的にむだにならないように態勢を整えてやるべきであるという御指示がありましたので、私もその方向で検討を鋭意進めてまいっておるわけでございます。いま、しからばどういう構想で考えておるか、こういうことでございますが、もとより一つの国家機関を使ってやるということも考え方の一つにあるようであります。また、特殊法人というものをつくって、そして官民、官学、まあ一体となって頭脳を集めて、そうしてそこでこういう作業をやるということも一つの考え方である。また、宇宙衛星に関する特別な部署をつくって、そこで国がやるのだという考え方もあるようでございますけれども、先年、宇宙開発審議会の建議にもありますとおり、やはり一つの考え方としては、特殊法人をつくってやったほうがいいのではないか、と申しますのは、やはり国の政府機関になりますというと、民間とか、あるいは大学のこういう技術者、研究者の参加を求めることが非常にむずかしい。そこでやはり民間とか大学の研究者等を利用すると申しますか、活用するということから考えますと、やはり特殊法人という組織を持ってきたというほうが一番手っとり早いのじゃないか、こういう考え方がかなり有力になっておるようでございます。近く私はこの構想をまとめて、そうして研究に関する部門は一体どこでやるのか、そうしてまたこれを打ち上げる作業あるいは打ち上、げたあとの管理、あるいは国際協力、あるいは予算の一括計上、あるいは計画、これは総合的な計画を立てるというようなもろもろの仕事がございますので、そういうものを明確に区分をいたしまして、そうして打ち上げる作業をどこでやるかとか、研究開発はどこでやるかということをひとつ検討して、そうして明らかにして、閣議にはかってきめてまいりたい、こういう構想でございますが、これにはもとより宇宙開発審議会の意見も聞かなければならぬと思っておりますし、また、関係各省ともそれぞれの指示に基づいて、これは私の庁が、科学技術庁が独断でやっているわけではございませんが、いろいろと打ち合わせもさせておるようなわけでございますので、こういうことにつきましては、いましばらく関係各省との打ち合わせ等もございますので、時間もかかると思いますが、できれば私は来年度予算の編成時には、こういう構想をまとめて、そうしてでき得るだけこの一元化を進められるように持っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただいまの御答弁で大体方向はわかりましたが、たとえば昨年八月の宇宙開発審議会が建議しておりますが、その建議の内容を見ても、あまり一元化など積極的に取り組んでいないような面が察せられるわけです。どこまでも一元化に積極的な態度を取っていないわけですね。たとえば人工衛星の打ち上げ場についても東大の内之浦、それと科学技術庁の種子島、両方が、この前の質問の際もこの点については一部御答弁ございましたが、こうやって内之浦と種子島は一元化されないで両立しているわけですね。ほんとうに一元化ということであるならば、どちらかいいほうで、より適切な個所を選んでしかるべきだ、こういうものは一元化が不徹底だということの一つのあらわれだと思うのです。それで一元化のほうに反するような意見があちこちに見られるわけです。こういうことは政策面を担当しておるいわゆる審議会がもっと一元化の方向に強い方向を打ち出すべきではなかろうか、この点非常に理解に苦しむわけです。本年三月、先ほど申し上げましたように、佐藤総理はまさしく一元化の方向というものを打ち出しておるわけです。科学技術庁長官としてもこれを受けて立って来年度までには実現さしたい、そのためには最高の努力をしたいということでただいまいろいろと御意見があったわけでありますが、ただこの審議会があまり一元化の方向に積極性を示していないわけです。これは一体どういうわけなのかと疑問を持たざるを得ないわけです。こういう点はどういうふうに受けとめたらいいのか、どういうふうに理解したらいいのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  24. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) おっしゃるとおり、宇宙開発審議会の建議は、私が先ほどお話し申し上げたような考え方からすると、やや消極的ではないかという御批判ももっともではないかと思っております。その当時の審議会方々のお考えあるいはいきさつ等は十分私は承知いたしておりません。おりませんが、先ほど種子島と内之浦の問題が出ましたが、これに関連して考えられますことは、内之浦は御承知のとおり、東京大学が先ほど申し上げました宇宙空間のいろんな現象を研究開発するためにつくった過去十カ年あまりに及ぶ施設であります。これは一つの目的を持った施設であるし、研究をもとにする施設でございます。大学の研究は私は自由であるべきであり、また大学の自治を侵すべきではないと考えております。したがって、今後もこの施設はそういう宇宙開発と申しますか、宇宙空間の科学的探検、研究に利用されるべきである。すでに国際物理学会におきましても新しいエックス線等が発見されまして非常に貢献をしておる事実もあります。私はこういうことについてはまだまだ深く問題を研究する必要があろうと思っております。そしてまた、宇宙開発推進本部ができまして以来、大学の研究開発の限界というものは明らかに示されておるわけであります。これはロケットも一・四メートルのロケットに限る、それ以上は科学技術庁がやるのだ、こういう方針が明確に出されておるわけでございます。したがって、それ以上の開発をする施設というものはまた相当な面積も必要でございますし、内之浦ではとうていこういうものを施設する敷地がない、これは私の地元でありますので十分承知をいたしております。そこで種子島に相当大きなロケットを打ち上、げる基地を建設しなければならないということで、別な目的を持って種子島を建設することになったわけでございます。そういういきさつもありますので、そのときの審議会方々の御意見も、一元化ということは強く打ち出されなかったのではないかという私は目測をいたしておるわけでございますが、先ほどから申し上げますように、もうすでに実用衛星の時代になっておる今日、どうしても早く態勢を整えて、そして実際利用できる衛星を打ち上げなければならないというときでございますので、各省がばらばらでいろんなものを研究開発するのでは困るということで、この一元化態勢というものを閣議においても、正式には決定しておりませんが、了解を得て、総理からも指示のあったとおりでございます。私は近く審議会方々にもこの意見をただしてみて、そして私どもの考えておる方向で審議会の結論というものを出していただきたい。おそらく、いろんな学者の方々、その他の方々もおられますので意見はあるでありましょう。あるでありましょうが、現状に照らして、しかもまた、ここ二、三年内のうちに何とかこの態勢を整えてやらなければならぬという現状から考えますならば、私は政府がいま考えておりますような構想に御賛同いただけるものと考えております。まだそういうことについて正式に私は現在の審議会方々についてもおはかりをいたしておりませんが、何といたしましても、たいへんな問題と取り組むわけでございますので、役所といわず業界といわずあるいは大学といわずすべて一体となってこの態勢を強化する。そうしてこういうロケット開発にいどんでいくんだということを私は痛切に考えますので、これについては最善の努力をいたしたい、これは先ど申し上げたとおりでございます。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この面でさらにお伺いしたいんですが、日本の宇宙開発は原子力開発に比べてその態勢面で相当おくれているんだというふうにいわれておるわけです。  そこで一つの方法として、そのおくれている態勢を整備するために、たとえば、原子力基本法に比すべきところのいわゆる宇宙開発基本法、こういうようなものを制定するのも一つの大きな有意義な方法になろうと思うわけであります。そこでお伺いするわけですが、科学技術庁にはこの原子力基本法に比すべき宇宙開発基本法、こういうようなものを創設して態勢を整備しようとするお考えを持っておられるのかどうか、こういうことについてお伺いしておきたい。
  26. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 先ほどから申し上げておりますとおり、たいへんな仕事に取り組むわけでありますので、責任態勢を明確にする。そうして計画を立てて、少なくとも四十五年度に宇宙実験衛星を打ち上げるということを目標にいたしておる限りは、これをやはり実現しなくてはならない。かように考えております。したがいまして、現在のところは、宇宙開発審議会の答申に沿って実行しておりますが、先ほど先生からもお話がありましたとおり、消極的ではないかという点もあります。私もそう考えないわけではございませんから、やはり将来は私はそういうような、これはいまの私見でありますが、審議会をもっと強化する、いまのメンバーが悪いとは申しませんが、しかし、もう少し強化する必要があるのではないか。これの強化というのは、いまの現状がいけないというわけではございませんが、態勢を推進する上においてもう少し強化される必要があるのではないかというようなこと、あるいは宇宙開発基本法というようなものをつくるような態勢というものはやはり検討する段階に来ておるのじゃないか、かように考えております。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますからあと一点だけこの際お伺いをしておきたいと思う。と申しますのは、きわめて基本的な問題ですが、日本の科学技術は率直に申し上げて先進国のそれに比べてちょっと立ちおくれて出発したという感があるわけですね。そこで科学技術庁中心に日進月歩で現在非常に前向きで進展している。この傾向は、またこの現状はわれわれもよく理解しておるわけです。しかし、まだまだ基本的な面に欠けている点があるのではなかろうかという問題は、何といっても科学技術教育の抜本的な振興にあるかと思うんですね。特にその基礎教育を一そう強化していかなければいかぬ、こういうことを痛感するわけです。もちろんこれは事教育となりますと文部省の所管ですから、文部省の責任分野とはなりますけれども、やはり科学技術という立場から科学技術庁としても関心を持たざるを得ないわけですね。そこで問題は文部省と科学技術庁で科学技術教育の振興のために緊密な連携のもとにその教育の普及徹底を強化すべきであろうかと思うのですけれども、その面についてまずお伺いをしたい。今日の情勢においてどのように努力をしておるのか、今日までの経緯の大要について承っておきたいと思うのです。
  28. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) これは全く先生のおっしゃるとおりでございまして、たとえば現在のこの科学技術者と呼ばれるような人口と申しますか、約九十五万人いると言われております。その中で大学を卒業した者が三十四、五万、研究者と呼ばれる者が十三万人ぐらいしかいない。ところが、日進月歩に進んでいきまするこの科学技術の現状、将来を考えてみますと、一応推定でありまするが、昭和四十五年度までに約十七万人ぐらいの技術者が不足するという結論が出ておるわけであります。これを受けまして、国立大学の新規採用の割合を文科系と理科系とに大体七対三、いわゆる技術者のほうが、理科系統が七と文科系を三にするという考え方でいま大学等におきましてそれぞれ教師等をふやし、採用人員をふやして研究者の養成に当たっておるわけでございます。現在、ロケット関係でもおそらくロケット人口、頭脳といわれるような人が千六百名ぐらいだと言われておりますが、これはなかなか心細い次第でございまして、私は、こういう技術者の養成につきましては、大学はもとより、これは東大とかあるいはその他の大学でも研究者を養成をしておられますけれども、もっと私はこういう頭脳の開発に力を入れてまいりたい。また、民間におかれましても、この宇宙開発に関する技術者というものは私はそう多くないと思っております。と申しますのは、こういうものをつくるメーカーというものは限られております。そこでこの研究開発しながら進めていくということでございますが、なかなか端的に言って商売にならない。商売にならないものはなかなかそういう頭脳をよけい雇わないというような私は欠陥もあろうかと思っておりますが、しかし、最近、国際的にも国内的にも宇宙開発とか原子力とかというものに対する関心、これは官民あげての関心が高まってきております。しかも、また業界におきましても、非常な研究熱が出てきておりますので、こういうところに対しましてもいろいろと国の指導なりあるいは援助なりを行なって、研究の技術者の開発を行なってまいりたい、こういう考えでございます。何といたしましても大学だけにおまかせしておってもなかなか間に合わない。また、このことは政府も業界も大学も一体となってこの人材の養成に努力することが最も大事ではないかと私は考えておるのでございます。この宇宙頭脳のことなどを考えてみますると、やはりこの技術者は燃料にも匹敵する大事なものでございます。この技術者の燃料というものと、あるいはその他の機械というものが完全に歩調を合わしていかなければ、こういった緻密な開発の態勢というものは整っていかない、こういうことを考えておりますので、こういうことにつきましては、一そうのひとつ関係各省とも連絡をとりまして最善の努力を進めてまいりたい、かように考えております。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま申し上げましたのは、科学技術振興の一つの面であって、それと並んで大事なことは、言うまでもなく、科学技術者のいわゆる抜本的な優遇策を打ち立てること、そういうことに尽きると思うのです。せっかく優秀な科学技術者が出ても、これはそういうすぐれた方々が、日本におっては研究も十分できない。これは最終的には予算が少ないからということに帰結できると思うのです。待遇も悪いのだ。したがって研究に専念できない。あっちこっち兼務をしなければ、たとえば大学教授などでなかなか大学の給与だけでは食っていけない。研究はできない。そこで幾つかかけ持って研究をやる。研究に専念できる環境にはないわけですね。もちろん例外もありましょう。それから予算が少ないために十分な施設設備もなかなか整わない。そういうことで非常に研究に専念するためにはいわゆる条件が悪いわけですね、現在、遺憾ながら。そこでアメリカをはじめとして、そういう恵まれた環境の国へそういう頭脳が流出してしまう。流れ出してしまう。これはもう一つの大きな問題点であろうかと思うのですね。日本におって十分な研究ができるものなら何も外国へ行く必要はないわけです。どうも日本では研究に専念できない。そこヘアメリカあたりから盛んに誘いがある。その誘いに応じて優秀な頭脳が外国へ流れ出す、これは遺憾ながら率直に認めざるを得ないと思うのです、現状は。そこでやはり最終的にはこの科学者が専念して研究を深めることができるような環境を整備する必要があろうかと思いますね。そのためには何といっても予算によって左右されると思うのです。年々科学技術庁の面の予算もふえておりますけれども、これは国全体の予算がふえているわけですから、たとえ絶対値がふえても国全体の予算の中に占める科学技術関係の予算がどのくらいの割合を占めているか、絶対値よりも割合のほうが大事です。昨年よりことしは絶対値がふえておるからいいということは言えないと思います。国全体の予算がふえているのです。国全体の中で占める科学技術関係の予算はどのくらいか、その割合が年々ふえていくということであって初めて予算がふえたということが言えると思います。そういう面で科学技術庁長官としても、その予算についてはずいぶん苦慮されたと思うわけですけれども、こういうことがいまの科学者の優遇とか施設設備の充実、そうしてそういうことは先ほどの教育の徹底と相並んで日本の科学技術をどんどん躍進させることができる、こういうことにもなると思うのです。したがって、これは科学技術庁にとっても基本的なきわめて重要な問題の基礎的なものであろうとそう確信するわけです。そういう面で日々進展はしておりますけれども、優秀な科学者が日本にとどまって十分に実力が発揮できるようなそういう環境を一日も早く整備されるよう、科学技術庁当面の大きな課題としてひとつ取り組んでいただきたい。もちろん努力しておられることはわかりますけれども、さらに一段と努力を願いたいと、こういう面についてお聞かせいただきたいと思います。
  30. 二階堂進

    国務大臣二階堂進君) 先生おっしゃるとおり、この人材養成の問題は重大であると思っております。私は科学技術庁長官の就任のときにも最初に申し上げたのは、テレビ対談があったときも、研究者の環境をよくしてやるということが大事だということは特に私は力説して申し上げたのではございますが、いまおっしゃるとおり、非常に一つは研究施設等が不備である。これは国の科学技術開発に対する取り組み方も私は万全ではなかったと思っております、また、民間におきましてもそういう態勢ができていなかった。そういうことが一つと、もう一つは、何といってもやはり待遇が悪いということが強く指摘されております。したがって、技術者に対する待遇改善等につきましては、最近は特別の手当をやるとか、あるいは所長の格上げをやるとか、その他の条件の整備につきましては、人事院等の勧告もありまして漸次改善をされつつあります。また、部分的にはこの一般の公務員よりも待遇がよくなってきておる、こういう事実はあります。しかしながら、何といってもあまりにもアメリカとか外国の待遇がいいものですから相当な人が海外へ出て行っております。ここ数年間においては五千名近くの人が外国に行った、その三分の二がアメリカである。しかし、長く向こうで就職をして、向こうに永住するという人は、まあ二割程度じゃなかろうかと思っております。大体二年ないし四年で帰ってきておる、こういう状況でございますが、そういうことなども考えあわせますと、何としてもやはりこれは環境の整備ないし施設等の整備をはかる、そのためには国も研究費をもっとふやさなければならぬ。同時に、技術者の待遇改善ということにつきましては、これは私はあげて来年は強く要望してみたいと思っております。なかなか給与の改善につきましては、一般公務員、人事院等の関係もありまして、思うようにはいきません。いきませんが、従来ともすれば技術者というものが国民全体から見て軽んぜられてきた、しかもアメリカとかヨーロッパ等においては技術者が非常に尊重されてきた、日本において技術士法という試験の制度もございますけれども、一部などでこの試験をパスした者は社会的にも非常に高く認識されておると思いますが、一般の技術者というものは非常に軽く見られがちである、私はそういう考え方自体が科学技術の振興開発におくれを来たした点も私はあると思っております。したがって、この技術革新を迎えた今日、特にまた技術の自由化を迎えておる、資本の自由化を迎えておる今日ですから、これはヨーロッパ先進諸国等の現状を考えて、まことにここ十年間というのは、まことにおそるべき事態が来るのではないかと思っております。これに対処する万全の基盤というものをつくっていかなければならない、国も民間も総力をあげて対処していかなければならない。資本が入ってくる、優秀な技術が入ってくる、日本の産業全体がそういう優秀なものによって牛耳られていってしまったのではたいへんなことになる。そういうことを自由化を迎える今日、非常に私は痛切に考えておりますので、こういう点につきましては、基盤を整備するということについて、人の待遇も含め、施設等も考えあわせて申し上げておるのでございますが、そういうことについて私は非常な努力をこれからも払っていかなければならぬと、かように考えて、その決意のもとにいろいろな施策を進めてまいりつつあるような次第でございます。そういうことについて一そうの御協力をお願い申し上げる次第でございます。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま大臣の御答弁でも、約五千名ほどの人がおるということなのですが、そういうことについて、これは大臣でなくてけっこうです、いま少し具体的に、詳細に、大体流出先はアメリカだと思いますが、その他おもな国はどういうところか、どういう方面あるいは、いわゆる科別に、どういうのが一番多く出ておるのか。たとえば、そういうようなさらに具体的にした現在の情勢ですね、これをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先ほど大臣が申し上げました五千名というのは、大学を含めましてわれわれ国立研究機関全部の数でございます。そのうちの約八割くらいが大学でございます。私たちのほうの所管しておりますのがあとの二割でございます。  行き先は、大体どちらでも同じように、先ほど申し上げましたように、アメリカがほとんどでございます。あとヨーロッパ。それから、農業関係におきましては、後進国にいわゆる指導という形をとられまして行っておるのが多うございます。けれども、専門分野からいきますと、機械、電気、化学、その分野が比較的たくさん出ております。その中で、先ほど二年間で帰ると申し上げましたが、これは大学におきましても約二年は休職、以後においてはいろいろな処置がございますので、大体半分以上は一応二年間で帰られます。それから特に向こうの要請その他で三年ないし四年延びる方がございますが、その方々も大体四年たちますとほとんどお帰りになっております。あるいは二年たって帰られるあるいは三年たって帰られてから、向こうの要請でまた出ていかれる方もございます。こういう場合に、比較的向こうに永住される方がそのときに出てくるというのが傾向でございます。去年一番数多く行っておりましたというのは、数学関係という形が去年だいぶ世論を起こしましたけども、確かに数学の研究者の中の、日本におります割合からいきますと相当な数が向こうに行っておる。これにつきましてわれわれ科学技術庁として調査したところでは、非常に先ほどの研究環境といいましても、グループの中で気安くその中に入っていろいろな研究ができるというようなところから、向こうに行っておられる方が多いのじゃないかというような傾向にとっております。しかし、こちらもこれから、いわばグループで研究をうまく進める方法等を確立いたしまして、何とかこちらでグループ研究ができて、みんなが入れるように持っていきたいというのが現在の腹がまえでございます。
  33. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  34. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。
  35. 北村暢

    ○北村暢君 ただいままで熱心な質疑を聞いておったのですが、私は、まずお伺いしたいのは、原子力関係の新長期計画ができたようでございますが、この点についてお伺いいたしたいのですが、まず、原子力の基礎的研究の段階から、応用、利用の段階へだんだん入ってきたということで、新しい長期計画が立てられたようでございますけれども、これの、どうも聞くところによるというと、長期計画にしては抽象的であるという批判が少し出ていますね。最も科学的である長期計画が抽象的で、たとえば、この数字の面においてもどうも明確性を欠いておるという点があるようでございますが、この大体基本的な考え方については、一応読ましていただきましたからわかりますですが、今後における、まず原子力発電の問題からお伺いしますけれども、原子力発電関係についての経済的な効果についてですね。応用、利用の段階に入ってきたけれども、将来の見通しについてですね、一応触れられておりますけれども、まだまだその原子力発電の今後の情勢を見ましても、とかく、若干不安な問題があるんじゃないかと思うのです。そういうような点について、これから逐次質問していきたいと思いますが、まず原子力発電に対しての見通しですね、長期計画見通しについて御説明をひとついただきたいと思います。
  36. 村田浩

    政府委員村田浩君) 長期計画は、ただいまお話しいたしましたように、去る四月十三日に原子力委員会が決定しまして、直ちに総理大臣に御報告申し上げたわけでございますが、その中で、大きな柱でございます原子力発電につきましては、見通しとしまして、昭和五十年度におきまして運転されておる原子力発電所の規模が約六百万キロワット、昭和六十年度におきましては三千万キロワットないし四千万キロワットという見通しを掲げております。
  37. 北村暢

    ○北村暢君 まあそれは計画に出ておるわけでありますが、これは総合エネルギーとの関係において、五十年、六十年のこの見通しというのは、大体現在の発電設備出力というものが、五十年、六十年に電力需要というものが、一体どのくらいの見通しで、そして、それに対応する原子力発電というのはどの程度の比重というものを想定しているのか、この点ひとつお伺いいたします。
  38. 村田浩

    政府委員村田浩君) さきに答申の出ました総合エネルギー調査会の見通しの数字に準拠しまして申し上げますと、昭和五十年におきます総発電設備容量は七千九百万キロワット余りになっております。したがいまして、約六百万キロワットという原子力発電所の規模は、その約八%に当たります。それから昭和六十年度につきましては、同じくエネルギー調査会の見通しでは、総発電設備容量が一億六千万キロワットと見ておりますので、三千万ないし四千万キロワットの原子力発電規模は、その一八・七%ないし二五%に当たるということになります。大、ざつばに申しまして、昭和六十年度における原子力発電設備の容量としましては、全体の約二五%という見通しでございます。ただ原子力発電は、御案内のとおり、主としてベースロードに使われますので、発電設備の容量としてはただいまのとおりでございますが、発電量としますと、全体の中に占める割合がやや高くなりまして、昭和五十年度におきましては、先ほどの八%と申しましたのは八・三%、昭和六十年度におきましては、ただいまの約二五%と申しましたのが三四・四%程度を占める、全体の約三分の一の発電量を占める、こういう見通しでございます。
  39. 北村暢

    ○北村暢君 その原子力発電の現状と、そういう計画でありますけれども、これを今後一体どういうような計画でそういう方向にもっていくのか、この点ひとつ納得のいくように説明していただきたい。というのは、原子力発電、東海村の東海原子力発電も操業が若干おくれているようですし、今後における民間のこの原子力発電に対する企業としての意欲でこういう計画がどんどん進んでいくのかどうか。この資金的な面についてそういう自信があるのかどうなのか。経済性との問題ですね。これをひとつ、私どもしろうとですから、現在までの火力発電との比較において、原子力発電のほうが経済的に有利であるというような段階になるのは、一体目標としていつごろからなるのか、どのくらいの時期に。そういうまあ五十年、六十年ということでこういう計画をつくっているというのですから、いまの技術水準で相当時間をかけてきて今日の状況のようです。現状と、将来における企業がこれに取り組む態勢なり何なり、実際こういう計画が実現するのかしないのかということが私ども疑問に思います。その点をひとつ御説明願いたい。
  40. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいま原子力発電所として運転開始いたしておりますのは、原子力発電株式会社の東海発電所だけでございますが、これは計画を立てました昭和三十二、三年当時においては、世界において最も実用化してきておった原子炉であったわけであります。これはしかし、そのころ考えられる規模として一基十六万六千キロワットという規模でつくられたわけでございますが、まあ何せ初めての経験でございますし、耐震構造等についていろいろ新しい試みを加えたというようなこともあります。それから建設期間が長引いたというようなこともありまして、相当高い発電コストにならざるを得なかったわけであります。しかしながら、その間におきましても、世界原子力発電技術は着々と進展いたしまして、ただいま同じ原子力発電株式会社が敦賀に建設に着手しております敦賀原子力発電所では、アメリカ型の軽水炉を使っておりますが、出力規模がちょうど東海発電所の倍の三十二万二千キロワットという設計でございまして、これに要します建設資金は三百二十億余りを予定いたしております。申し落としましたが、東海原子力発電所の場合には、十六万六千キロワットで総工事費が四百六十億程度になっておりますから、これを一キロワット当たりの建設費に換算いたしますと、東海の場合が一キロワット当たりが二十八万円、これに対しまして、同じ原電の二号炉でございます敦賀発電所の場合は、一キロワット当たり九万三千円と低下しておるわけであります。さらに関西電力は同じ福井県の美浜に出力三十四万キロワットのものを建設中でございますし、また、東京電力は福島に出力四十万キロワットのものを現在建設中でございます。これらの原子炉はいずれも建設費が三百数十億から四百億程度でありますが、キロワット当たりの建設費としますと、先ほど申しましたように、九万円ないし十万円というのが現状でございます。この建設費でまいりますと、発電コストは初期において大体三円程度がキロワット時で見込まれますが、原子力発電所は、いわゆる資本費が高いという性格から、償却が進むにつれまして発電コストが下ってまいりまして、炉の寿命二十数年を平均して見ますと、三十万ないし四十万キロワットという原子炉でも、キロワット時当たりの発電コストは二円六、七十銭から三円の間におさまる、こういうふうに推定されております。現在石油によります新鋭火力発電所の、これも規模によりますが、現在つくられております六十万キロワット程度のものでございますと、二円四、五十銭という発電コストでございますから、これにはやや及びませんけれども、石炭火力よりは明らかに経済性がよろしくなっております。今後原子力発電の場合には、趨勢といたしまして、ますます規模が大きくなる——これは石油火力も同様でございますが——見通しでございまして、東電、関電等が美浜及び福島に建設中のものに続いて、今後二号炉として建設しますものは規模が大体六十万ないし七十万のものを予定しております。この程度になりますと、発電コストは二円四、五十銭程度におさまることに相なります。先々はこの十年の間には一基百万キロワットのものを予定しております。ここまでまいりますと、キロワット時二円程度の発電コストが可能と推定しております。さらに原子力技術と申しますのは、石油火力等と違いまして、技術的に改良のまだ発展段階でありますために、今後十年の間の技術改良等見込みますと、二円以下一円五十銭までの原子力発電コストが見通されるわけでございます。こういうような経済性の見通しから、現在東電、関電はじめ、各電力会社におきましても、それぞれ電源開発計画の中に原子力発電計画を組み込んでおりまして、先般経済企画庁を中心に政府関係機関で構成します電源開発審議会におきましても、電源開発の十年計画を内部的に検討しました際にも、この十年間における原子力発電規模は六百万キロワットをややこえる可能性があるという見通しを得ております。こういうような状況からいたしまして、長期計画で掲げました一応の見通しである五十年におきまして、六百万キロワットという規模は現段階においてほぼ達成可能と見通しまして、これを上回る可能性のほうが大きいと考えております。
  41. 北村暢

    ○北村暢君 次に、この原子力発電所のいわゆる建設についての原子炉その他、輸入、国内技術でこれが建設されていくのかどうか、どの程度のものになっているのか、この点御説明いただきたい。
  42. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいま申し上げました三つの電力会社によります原子力発電所の現在建設中のものにつきましては、それぞれの契約内容が若干違っておりますので一がいに申せませんが、大ざっぱなところで申し上げますと、輸入と国産の比率が四十数%対五十数%ということで、国産部分がやや多くなっておりますが、これは建設費の点から見たわけでございまして、国内で施工する大きな土木工事等が国内に入っておりますから、機械設備だけで申しますと、まだ現段階においては若干輸入部分が多いという形になっております。ただそのことは、たとえばアメリカのGEとかウエスチングから買うということであるためにそういう計算になりますが、現実には同じGEあるいはウエスチングがつくるにいたしましても、日本国内の下請として日本のメーカーを使う形が漸次出てまいっておりまして、敦賀の発電所におきましても、あるいは福島の発電所におきましても、原子炉の中の非常に重要な部分である原子炉圧力容器、一個で三百トンないし四百トンもあるような大きなベッセルでありますが、こういうものは日本国内のメーカーでつくらせるというふうに、契約の内容がなってきております。今後二号炉三号炉と続くにつきまして、国産の部分が漸次増大いたしていきまして、私どもの見通しとしましては、規模の大小にもよりましょうが、現在つくっておる程度の三、四十万キロワットのものでございましたならば、三号炉あたりになりますと完全に国産でつくれる、こういう見通しでございます。
  43. 北村暢

    ○北村暢君 そこで、いわゆる核燃料のウラン資源の問題でございますが、そういうふうに急速に原子力発電等が実用化してまいりますと、ウラン資源の開発ということが非常に問題になってくると思うのですが、これの開発といいますか、国内開発というのはほとんど望めないようでございますから、いずれこれは輸入しなければならないという問題であるんですが、その天然ウラン、濃縮ウランの確保の対策というのはどういうふうに立てられておりますか。
  44. 村田浩

    政府委員村田浩君) ただいま申し上げました各電力会社の発電計画によりますと、主としてこの十年間における原子力発電設備の六百万キロワットは、軽水型原子炉になる見通しが大きいわけでございますが、軽水型原子炉は御案内のとおり、濃縮ウランが燃料として必要でございます。そこで濃縮ウランの供給につきましては、現在のところほとんど米国一国に依存せざるを得ない状況でございますので、政府としましては、明年の末に一応期限の参ります日米原子力協力協定を改定するに際しまして今後約五、六年の間に建設に着手します、したがって、十年後には稼働しております、こういった原子力発電所に対する——その発電所の寿命のある限り必要な燃料、約三十年間でございますが——ものに対して所要の濃縮ウランの量を計算いたしまして、その量を協定によって米国から入れることが可能なようにワクを設定いたしたいということで、現在せっかく米国側交渉中でございます。私どもの得ておる情報によりますと、大体この程度の濃縮ウランの供給については米国としては異存がないという非公式の見解を得ております。量的に申しますと、約五百数十万から六百万キロワットの原子力発電設備に対して必要な三十年間のウラン二三五の量は百三十トン余りになるわけでございますが、この程度の供給は可能であるということを聞いております。これによりまして、協定が成立いたしますと、濃縮ウランとしましては、米国から購入が可能な道が開かれるわけでございます。しかしながら、米国も最近の政策としまして、従来のように濃縮ウランになったものをただ供給するということではなくて、米国にございます大きな、大規模な濃縮工場設備を購入者に貸して、賃貸して濃縮のサービスをいたす、こういう政策をとっておりまして、購入者が安い天然ウランを持ってまいりましたならば、それだけ安い濃縮燃料が得られる、こういう仕組みでございますので、できるだけ安い天然ウランを確保して、発電コストを下げるということは非常に大事なことでございますから、そういった面からも、さらにはまた、十年以降の膨大な原子力発電計画をささえるための天然ウランの資源確保ということが重要であります。この点につきましては、現在わかっておりますウランの埋蔵資源としましては、カナダ、アメリカ、南アフリカにほとんど集中しております。これらの埋蔵量は非常に安いもので、いまわかっておりますので約七十万トンばかりあるということになっておりますが、こういった国々からの長期にわたる購入の契約を行なう、あるいはまた、わが方からの技術あるいは資本を進出させまして開発輸入方式をはかる、こういったような種々の獲得方法を現在民間と政府の間でいろいろ相談いたしまして、所要の措置を講じてまいりまして、将来の原子力発電計画支障のない天然ウランの資源確保につとめてまいりたいということで進めておるわけでございます。
  45. 北村暢

    ○北村暢君 天然ウランの確保についていま御説明ありましたが、これはいままでと違って、民間で核燃料を保有するということを認めている、そういう方針のようですがね。そうする場合に、いまの確保の場合、民間の自由契約によってそういう長期の契約をするのか。それからまた、開発をするということになるというと、現地で探鉱その他の仕事というものも出てくるだろうと思いますが、そういう点についての濃縮ウランのほうは協定によって確実にこれは入ってくる見通しのようですが、天然ウランについてはいまの説明ではそういうふうにしたいということであって、実際に政府と民間とが協議をしつつどういう手段で確保されていくのか、また、何かそのための事業団をつくるのかどうかということですね。前に、燃料公社のようなものがあったようですが、こういうものが海外に進出をして、探鉱その他をやるというのか、そこら辺の見通しというのをどういうふうに持っておられるか。
  46. 村田浩

    政府委員村田浩君) 従来私どものほうでは、燃料公社の専門家に命じまして、昨年から、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの主要なウラン産出国における状況をつぶさに調査してまいったわけですが、その調査によりますと、それぞれのただいま申し上げましたような国につきましては、国内におけるウラン探鉱事業日本の民間の法人なりが参りまして、単独に探鉱を行なう、あるいは現地の法人と合弁で探鉱活動を行なうというようなことは可能でございます。問題は、探鉱が成功しましてウランを採掘するようになりまして、その採掘いたしましたウラン、これは大体現地で粗製錬することになると思いますが、そういった粗精錬されましたウランをそれらの国から外へ持ち出す場合には、当然それらの国の輸出管理令等によりまして規制を受けるわけでありますが、この点につきましては、カナダ及びアメリカにつきましては、すでに日本との間に協力協定がございまして、その協力協定のかさの中で、政府の保証措置で、適用についての約束をいたしておりますから、そのもとで輸出手続がとれるということでございます。  オーストラリアにつきましては、現在まだそのような協定ができておりませんが、同時にオーストラリアにおきましては、まだカナダ、アメリカほど探鉱、採鉱活動が進んでおりませんで、いわば国内の資源をさがしているという状況でございますから、これにつきましては、今後さらに事態の進展を見まして、必要な場合には、そのような措置をとるということが必要になろうかと思います。  なお、これまでのところで申し上げますと、アメリカにつきましては、すでに三菱金属鉱業がアメリカのリオアルゴアという鉱山会社と合弁でアメリカ国内におけるウランの探鉱事業を一緒にやるということの契約ができております。これは実際にウランが採掘されるようになりました場合には、その採掘量の半分は日本に輸出できる、こういう約束でやっているわけでございます。  カナダにつきましては、先般原子燃料公社のほうから調査に参りました結果、カナダの中のウラン埋蔵地としても非常に優秀な鉱区であるといわれておりますエリオットレーク地区におきまして、先方から日本と一緒に探鉱、採掘活動をやりたいという話がございまして、この点につきましては、現在民間の原子力産業会議が中心になりまして、電気事業者、それから鉱山事業者、それからさらに原子燃料公社といった関係者が現在この点の実現化について協議いたしております。
  47. 北村暢

    ○北村暢君 世界の天然ウランの埋蔵量は大体見通しがなされているようですが、各国とも、こういうふうな天然ウランをやはり必要としていると思うのですね、というようなことで、五十年なり六十年の長期計画の中に天然ウランの必要量というものをどの程度見込まれて、その確保のために、いま言われたようなことが全然心配ないのかどうか、この点だけひとつ。
  48. 村田浩

    政府委員村田浩君) わが国の場合、先ほど申し上げました原子力発電規模を実際に達成するために必要な——実際には濃縮ウランを使うわけでございますが、そのまた原料となる天然ウランの量に換算して申し上げますと、大体昭和五十年度までに必要な天然ウランの量は一万三千トン程度、それから昭和六十年度までに必要な天然ウランの量は、これは原子炉の型をどうするかということでかなり違いますけれども、概算で申し上げますと、約九万トン、推計でございますが、と見ております。  そこで世界における消費量との関係はどうなるかということでございますが、これにつきましては、種々の国際的な調査がございますが、たとえばアメリカ原子力委員会で立てました将来の世界のウラン需給、原子力発電に対するウランの需給の推定によりますと、一九八〇年、昭和五十五年でございますが、昭和五十五年における世界原子力発電規模を非常に大きめに見まして、すなわち全世界で二億二千万キロワットにも達する、こういうふうに見ましたときのこれまでのウランの所要量は、全世界で約四十万トンと見ております。そのうちわが国がどのくらいかということでございますが、わが国の場合は、五十年と六十年の推定が出ているわけでございますが、五十五年で計算してみますと、およそ約四万トンでございます。したがいまして、全世界の所要量の約一割を確保する必要がある。こういうのが今後のウラン資源に対する日本の確保のための必要な見通し、目安であります。そこで、全体の四十万トンというのはかなり大きなものでございますけれども、先ほど申しましたように、現在の時点において安くて——ということはウラン精鉱ポンド当たり建て値で十ドル以下ということでありますが、そういう範囲で採掘可能と見られるのが約七十万トンということでありますから、四十万トンはその内訳でありますので、大体現在の価格で採掘可能な範囲におさまっておる、こういうふうに考えておるわけであります。
  49. 北村暢

    ○北村暢君 いま採掘可能のが七十万トンでしょう、それで昭和五十五年目標で四十万トンですから、昭和六十年それ以降というものも考えられるわけですが、大体五十五年のアメリカの計算では確保は可能だと、その後についても六十年で九万トン必要になると、こういうふうなことのようですが、そうすれば、これは倍になるわけですね。そうするとこの限界の七十万トンというのが何か不安のような感じがする、五十五年で四十万トンですから、その後また世界全体の消費量というものが相当伸びていくでしょうから、それでもなおかつ七十万トンという経済べースの採掘可能の量というものに不安がないのかどうか。
  50. 村田浩

    政府委員村田浩君) この点につきましては、先ほどちょっと説明を落としましたが、約七十万トンというのはかなり詰めて採掘可能と、経済性を考慮して見た推定量でございますが、同時に、この発表はOECDのほうでいたしました国際的な調査をもとにしておりますが、その際にも一応この七十万トンに同じ値段の範囲で追加可能な鉱量というのが出してございます。これがさらに約六十数万トン出ております。今後まだ未開発の国々等における調査というのは全然進んでおりませんので、そういったものの探鉱調査というものが進んでまいりますれば、少なくともこれを上回ってまいるということは十分考えられるわけでございますし、さらにまた十ドルを若干こえるような価格でもよろしいということになりますと、現在同じOECDの調査でわかっておりますところでも、全世界で九十万トン程度は埋蔵量が推定されておるわけでございますので、そういった点から見まして価格が著しく上昇しない範囲で、全世界の消費量から見ましても、日本で必要とするウランの資源というものは、手当てさえ適切に行なえば確保できるものと考えるわけでございます。さらに将来にわたりまして、どんどん加速度的に所要量がふえていくのではないか、そうしますと、幾らありましても限りがあるということでございますが、そこで現在事業団をつくりまして開発しようとしております高速増殖炉というものが実用化される時期が来るわけでございまして、その高速増殖炉が開発されますと、新たにウランの需要というものはほとんど要らないということになってまいります。そういった点で一応上限が考えられますから、大体現在の見通しでは、ただいまの計画が実現可能であるというふうに考えていいと思っております。
  51. 北村暢

    ○北村暢君 大体ウラン資源のことはお伺いしましたが、ただこの入手の方法については、あくまでも事業団とかなんとかつくるのでなくて、個々の民間のベースの契約でもってやる、こういう考えで、特別な輸入方法というものは政府で特に考える、こういうことは必要ないわけですね、探鉱その他についても。この点どうですか。
  52. 村田浩

    政府委員村田浩君) 先ほど申し上げましたように、その点の具体的な措置についてただいま関係者と協議中でございますので、まだ結論を申し上げられない段階でございますが、ただいまの考え方としましては、民間の個々の会社がやるという場合もございましょうけれども、ただいまの開発輸入方式のようなものになりますと、それでは窓口がはっきりしませんので、むしろ方向としては、関係者の集まった一つの組織を民間でつくりまして、そうしてそこが窓口として、こういった開発輸入方式による確保の場に当たるという見通しでございまして、政府としては、そのような点において政府としてなすべき助成策がございましたならば、その点で便宜をはかっていく、こういうことになろうかと思います。
  53. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 午後は一時半再開いたします。  それでは暫時休憩いたします。    午後零時三十七分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  54. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 委員会を再会いたします。  午前に続き科学技術庁設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  55. 北村暢

    ○北村暢君 午前のウラン資源の問題に続いて、その経済的な効果をあげる意味において動力炉の開発の問題が重要視されて、長期計画を立てられているようでありますが、まずそれに入る前にちょっとお伺いしておきたいのは、燃料公社ですが、この燃料公社というのは、臨時行政調査会の答申においても整理その他の問題で検討される一つに入っているようでありますが、大体この燃料公社というのは、いままでどんなような事業を、どんな資金の運用でやってきたのか、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  56. 村田浩

    政府委員村田浩君) 原子燃料公社は、昭和三十一年に設立されまして、今日まで約十年になるわけでありますが、そのおもな事業は、国内におけるウラン鉱区の探鉱、それからそういう鉱区におきますウラン鉱石の採掘並びに製錬、それに関連する試験研究、それから製錬されましたウランを燃料に製造することについての製造研究、その中にはプルトニウム燃料の研究開発も含まれるわけでございます。そういった一連の燃料関係の研究関発のほかに、将来原子力発電所等から出てまいります使用済み燃料を再処理する、この必要がございますので、再処理する工場を建設し、運転すること、その他燃料に関連しましての検査、技術の開発、安全管理の技術開発、そういったことを行なってきております。その事業規模でございますが、四十一年度における事業規模は、総額において十九億八千万円になっております。
  57. 北村暢

    ○北村暢君 従来の、約十年間の仕事をやってきておるわけですが、いろいろな批判が出ておるわけなんですけれども、そのうちで、いま四十年度の十九億八千万円ですか、ということですが、十年間にどのくらいの資金がどのような形で投下されているのか、資金の内容等をちょっとこまかいですが、説明していただきたい。
  58. 村田浩

    政府委員村田浩君) 原子燃料公社は、総額政府出資によって運営されるたてまえになっておりまして、毎年度の事業資金は政府出資を主体にして、若干の事業収入をもって充てられております。四十一年度末までに十年間に政府が出資しました資金の総額は百三十九億八千三百万円になっております。
  59. 北村暢

    ○北村暢君 この政府出資というのは、出資金ですから、もちろん無利子の政府出資だろうと思うのですがね。そういう出資金に対して、ウラン鉱の採掘、それの精製、そしてこれが販売すれば若干の事業収入というものが入ってくるのでしょうけれども、若干の事業収入というのは、どの程度なんですか。この十年間に百三十九億も政府で出資して、それが試験研究ということであればこれはまあそれなりにわかるのだが、原子燃料公社ということで、いわゆる国内の天然ウラン鉱のその開発なり何なりやってきておるわけですから、それが一体どのくらいの、どのような効果をあげているのか。この臨時行政調査会あたりから指摘を受けるくらいですから、私はあまりに能率があがっていないのじゃないかというふうに思うのですけれどもね。そこら辺のところはどうなっているのですか。
  60. 村田浩

    政府委員村田浩君) 原子燃料公社が設立当初いわゆる政府全額出資の公社の形態をとりましたのは、やはり当時の状況として、ウランというような核燃料が国家管理的色彩が非常に強いものと見られておった。そういうことで、この公社に一元的にこれを取り扱わせる必要があるのではないか、こういう趣旨もございまして、核燃料に関する事業を一元的に原子燃料公社に行なわせるようにというふうなことも含めてっくったわけでございますが、その後、原子力の開発、利用、経済的な進展に伴いまして、先ほど午前の御質疑にもございましたように、核燃料も民有の形でやっていく方針が確立しております。そういう状況になってきておりますために、原子燃料公社としましてもみずから事業を行なって、その事業から得られる収入を主体に事業体としてその事業を進めていくという形が必ずしも実現できませんでしたが、しかし、やはり国内にございますウラン資源というものをどの場所にどのように依存するかということを確認しておくことは、国としても非常に重要な仕事でございますし、また、そのような鉱石を将来万一必要となります際に実用化しますためには、国内の鉱石に適した製錬技術というものをもって処理する、そういうことも必要でございますので、探鉱活動並びに採掘、試験研究、さらにこういった鉱石の製錬試験研究というものをあわせて実施してまいったわけであります。先ほど申しました百三十九億余りのうちに、探鉱関係に投入されましたのが約三十億円にのぼっております。これによりまして主として人形峠地域等を中心に東濃地区と合わせまして現在ウラン鉱石で約七百万トンの埋蔵を確認しております。ただ、残念ながら、わが国の鉱石は品位が若干低い、国際的な品位から見ますとこれが約半分くらいでありますために、経済性の点ではこれを事業化して国際価格でやっていくという見通しが立てられない、現段階においては立てられない。しかし、国内にさらに含有率の高い鉱石があり得ないといえませんので、さらにそういったその状況の調査というものは何らかの形で国がやっていく必要があろうかと、こう思っているわけであります。  それから製錬技術のほうにつきましては、わが国に産出しますウラン鉱石は、カナダ等主要産出国におけるウラン鉱と性質が若干違っておりまして、いわゆる堆積型と呼んでおりますが、そういう鉱石でありますために、外国で開発されました製錬技術そのままでは必ずしも能率のよい製錬ができませんので、そういうことで燃料公社がみずから研究開発を行ないまして、現在わが国の鉱石を処理するに最も適した製錬技術を中間規模試験工場といってほぼ完成の域に到達してきております。こういうことで、事業といたしましては、品位が低い鉱石しかございませんでしたために、当初の予定のように大規模に伸ばすことができなかったわけでございますが、核燃料につきましての必要な実験研究というものは、相当程度成果をあげてまいっております。そこで臨時行政調査会のほうの御指摘は、燃料公社というものが元来核燃料に関連しての事業を行なうというたてまえでできておるはずだが、やっておる中身を見るとなかなか事業ができない状態である。そこで毎年国費を投じて、探査ということは一つあります。製錬試験研究という、いわば実験研究に分類される分野に資金を投入しておる、そういった点から見まして、原子力国内的研究開発機関である原子力研究所、ここでも原子力の一般的な研究をやっておるわけでありますから、そういう研究とあわせて一緒の機関でやるようにしたらどうか、こういう御指摘であったと思うわけであります。その当時申し上げておりましたのは、確かにその段階で試験研究関係の占める分野が大きいことは事実でございますけれども、先ほど申しました再処理の事業というようなことは、これは現在の原子炉規制法でも原子燃料公社の独占事業とされております。この再処理事業原子力発電計画の進展に伴って、国内で主要燃料を採集するという見地からぜひともやっていかなくちゃならない、こう考えております。そういうことで国内鉱石の生産という点での事業化ということは現在の国際情勢から見まして、当面すぐは期待できないと思いますが、再処理の分野などにおきましては近々に事業化していかなければならないということでございますので、今日まで原研と並んで存立してまいったわけであります。
  61. 北村暢

    ○北村暢君 核燃料物質の再処理の問題は、独占事業だと言うからそれでいいんですが、この探鉱と精製について、探鉱では相当のものを事業の結果として確認はしたけれども、なかなか経済べースに乗りそうにないということで、午前中に質問いたしましたように、天然ウランは今後大部分輸入による、こういうことですね。したがって、この燃料公社のやってまいりました十年間の業績の中で、採鉱の問題については、もう質の面から言ってちょっと望みなしと、で製錬の問題については、先ほどの説明では若干カナダのものと違うと、こういうことで、その製錬の技術は今後輸入するウラン鉱の精製その他に役立つんですか、どうなんですか。ここら辺のところが輸入のしかたの問題——鉱石で輸入するのか、国内に今後の精錬にこの燃料公社のやってきた試験結果というものが生かされて将来いくのかどうか、この点はどうなんでしょう。
  62. 村田浩

    政府委員村田浩君) 海外におきまして探鉱を、開発いたしました鉱石、これをわが国原子力発電計画等に使用いたします場合に、これを鉱石の形で輸入して国内で精錬しますか、あるいはどうかと、こういう御質問でございますが、この点はまだ計画が具体化しておりませんけれども、しかし、ウラン鉱石の品位が外国のものがよろしいと申しましても、たかだか〇・一%とか、〇・一何%という程度でございますので、通常はこの鉱石のままで輸入するということはあり得ないと思います。ほとんど現地においてウラン製鉱——イェローケーキと言っておりますが、ウランの含有量が八〇数%から九〇%程度のものまで製錬いたしまして、その上で輸入の必要があれば輸入する、それをウラン濃縮工場に持ち込んで処理する、こういう形になるかと思います。したがって、国内で開発しました製錬技術は、先ほども申しましたように、国内の鉱石を対象として国内の鉱石を経済的に製錬する場合に非常に有効な技術でございますが、これを直ちに外国の鉱石に適用するということを考えているわけではございません。ただそれにいたしましても、燃料公社におきましては現在六百数十名の職員を持っておりますが、国内の探鉱並びにこういった製錬ということにつきましての技術開発を過去十年やってまいりましたことによって相当の技術者が養成されております。こういった技術者というものが、これは民間ではウランの探鉱とかウランの製錬ということをそうやっておりませんので、今後民間が主体になって、海外にたとえば合弁会社の形で出ていくというようなことがありましても、ここで開発されました技術というものが生かされていく、そういうふうに考えているわけです。
  63. 北村暢

    ○北村暢君 それでお伺いしたいのは、この燃料公社が解体をして今度動力炉開発事業団ですか、というものに切りかわる、その場合に、原研との調整の問題が出てくるわけなんですが、そのやり方は一体どう考えておられるのか。私は、この燃料公社というものは政府出資でありますから、そ一の解体するときには一体どういう形をとるのか、この財産全部を引き継ぐのか、どうも民間の企業と違いまして、負債がどのくらいあるとかなんとかいうことになっておるのかなっていないのか。この辺のところがはっきりしませんけれども、どうもこの業績からいっても企業的な採算とかなんとかいうものは全然度外視されておるようですが、それで一体原研との今後の——原研に残る者と新しい事業団に吸収される者と、ここら辺のところ、それからいまのおっしゃられておる六百名からの技術者ですね、一体どうなるのか。それから岡山の製練所ですね。これは今後も続けていくのかどうか。どうも可能性がないように思われますけれども、そういうものの処理を一体どうされるのか。これもいま直ちに処理しなければならない問題だと思うのですけれどもね、これらの構想はどんなようになっておるのですか。
  64. 村田浩

    政府委員村田浩君) 事業団法案を現在衆議院のほうで御審議いただいておるところでございますが、そこでも明らかにいたしてございますように、原子燃料公社は、事業団が設立するにあたりまして解消いたしまして、その事業の一切を、燃料公社の事業の一切を事業団が承継することになっております。したがいまして、六百名余りの職員につきましても、そのまま事業団の職員ということに承継されるわけであります。ただいまお話の製錬試験所その他の現在原研が行なっております事業事業団にそのまま引き継がれる。そこで事業団のほうは御案内のとおり、動力炉開発という新しい大きな仕事をやるわけでございます。それとこの燃料の開発ということとどのような関連を持って、どのように調整をしていくかというのが御質問の趣旨かと思いますけれども、まず第一に、動力炉の開発という観点からいたしましても、わが国に適する新しい型の動力炉を日本の自主的な開発でやっていきたい、こういうのが根本精神でございますが、その際には当然この原子炉の中に、新しい型の原子炉の中に入れます燃料というものも日本の技術で開発していきたいということであります。燃料の研究開発につきましては、これまで原研でも基礎的な研究は行なっておりますけれども、先ほどお話し申し上げましたように、原子燃料公社においても非常に熱心にやってまいっておりますし、特に将来の燃料であるプルトニウム燃料というものにつきましては、特別の研究設備を持ちまして、そうして相当の実績をあげてまいっております。そういったような研究開発は、動力炉開発と一体になって、動力炉開発の一部門として、むしろ密着した形で進めてまいりたい。それから先ほど申しました再処理、これはまあ事業団に承継されますけれども、事業団になりましても当然ここがやらなければならない仕事でございますから、これは事業としてやっていくわけでございますので、これは一つの事業団の中におけるまあ半独立の部門という形でやってまいりたい。その他のただいまの人形峠等の山の問題につきましては、これをまた従来の考え方をさらに整理調整いたしまして、そうして全体の燃料開発の計画の中でこの事業団が行なうにふさわしい形に持っていきたい。そこで経理上もこの事業団は原子燃料公社に投入されましたものをそのまま承継いたしますが、事業団として今後やってまいります場合には、区分経理を行ないます。動力炉燃料開発の部門、再処理の部門、その他の山等の部門、これを三つに区分して区分経理を行ない、それぞれの部門における経理内容を明確にし、運営を明確にしてまいろう、こういう考え方で進めることにいたしております。
  65. 北村暢

    ○北村暢君 時間ですから、あと一問だけで終わりますが、いまの私は原子燃料公社の事業そのものをそのまま引き継ぐ、事業団が。そうすると、これはどうも臨調で言っている従来の公社の欠陥というものをそのまま引き継いでしまうようなかっこうになって、うまくない結果になるのじゃないかと思うのですよ。確かにこれからの事業団の大きな役割りは、動力炉の開発でしょうから、そういう面で燃料公社の事業そのまま引き継ぐのじゃなくして、やはり新しい仕事ができるわけですから、したがって、試験研究的なものは、原研のほうにするとか、何か整理されていいんじゃないかと思うのですよ。しかも、人員の関係からいって、探鉱なり、採鉱なりそれから選鉱という使命これはまだ続けていかれるのですか。輸入ウランというものに全面的にたよるという方向でいくなり、なおかつ国内の資源の開発のために今後もやっていくというのかどうなのか。したがって、先ほどからお伺いしているウラン鉱の輸入の製錬、その他については役に立たない。こうおつしゃられておるのですから、そういう面で岡山の製錬所というものが閉鎖するのか、しないのか。どうも置いても意味がないように私は思うのです。そうすると、六百名の人員の問題が問題になってくるわけです。そこら辺のところが改善されて引き継ぐということになると、どうも臨時行政調査会の指摘していることが改善されないんじゃないか。何かこういう不合理なものをそのまま抱きかかえて、不合理のままでやっていくというふうに受け取れるのです。それを一体どういうふうに考えておられるのか。
  66. 村田浩

    政府委員村田浩君) 原子力研究所と新しくつくられる事業団——動力炉燃料開発事業団との関係でございますが、この関係につきましては、原子力研究所のほうは、言うなれば原子力の研究一般につきまして、それかどういう分野でありましても、将来の日本の産業経済の発展に大きな影響を持ってくると思われますので、あらゆる部面にわたって適切な研究を進めていく、こういう目的があります。他方、事業団のほうは、そういった原子力の幅の広い、分野の広い中から国として当面目標を掲げまして、その目標の年次まできめまして、そこへ一歩一歩階段的に到達していく、いわゆる開発プロジェクトというようなもの、あるいはただいま申し上げましたような再処理の事業、こういったような具体的な計画、これに取り組んでまいる、こういった組織として考えて整理しておるわけであります。つまり簡単に申しますと、一方が研究一般機関、片方が開発事業の機関、この両方を一つの機関でやるということも、もちろん考えられますけれども、その性格内容というのは非常に違っておりまして、はたして一緒にやるほうが能率的か、それぞれの専門分野ごとの守備範囲をきめまして、そうして相互に協力し合うことが能率的か、それぞれいろいろお考えがあろうと思いますが、政府考え方はその二つの分野において二つの機関がその中枢となって、そうして相互の間で必要な協力を行なっていくということを考えておるわけであります。御指摘の山の問題は、これは確かにただいまのような私の申し上げました整理のしかたによりましても、若干なじまないところがあると思います。しかし、そうかと申しまして、将来の原子力の開発利用の見通し考えますと、国内における探鉱活動というものも、ここで全然打ち切っていいかと申しますと、やはり将来どういうふうになってくるかという国際情勢のこともございますから、できる限りの国内の調査というものはやっぱりやっておくべきだろう、こう思うわけでありまして、それはどこかがやらなくてはならない。その場合に、研究一般を担当する原子力研究機関にそれを持たせるのがいいのかどうかということでございますと、やはり問題がある。この点はやはり、燃料公社を継承します事業団の下に置いて、そうしてただいま申しましたような区分経理を行ないまして、そこで計画的に国内の探鉱を続けていく、また、国内の探鉱の結果出てくる鉱石を将来国内で製錬してやっていくという場合に備えた実験研究も一応見通しが確立するまではやっていくべきだ、こういうふうに考えておるわけでございまして、岡山にございます製錬試験所も、いま直ちにこれを放棄するとか、やめてしまうということは毛頭考えておりません。
  67. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  68. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。  それでは、本案につきましては、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  69. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 次に、厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、去る二十六日、衆議院から送付され付託されました。なお、提案理由説明はすでに聴取いたしております。  それでは、これより本案の質疑に入ります。関係当局からの出席は、坊厚生大臣その他政府委員方々であります。質疑のある方は、順次御発言願います。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 今度の厚生省設置法の中では、一つは、環境衛生局に公害部を設置するというのが法律案の非常に大きな内容になっておるわけですが、そこでお尋ねをしたいのは、公害防止事業団をつくるときに、一応公害というもののまあ定義といいまするか、概念というか、こういうふうなものについて相当論議があったはずだと思うんですし、あるいはその法案をつくるときでなくても、一般的に公害ということばが非常に見なれないというか、新しいことばでもありますので、厚生省当局が考えておる公害というのは一体何をさして公害と言っているのかということですね。質問の中心は公害と私害、私の害ですね、この関係といいますか、そこら辺のところをお聞きしたいわすなんです。
  71. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公害と申しますと、これは全く複雑多岐でございまして、いろんなものが私はあろうと思います。ところで、それらの中で、今度の公害基本法でどういうものが公害であるか、公害基本法で取り上げました公害は、この法律の第二条に定義がございまして、そしてこの定義によりますと、「公害ことは事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害」、こういうものを一応公害基本法の対象としての公害として取り上げておる次第でございます。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 公害と私の害ということの関係なんですがね、そこら辺のところがきわめて明瞭を欠いているように考えられるものですからお聞きするわけなんですが、英米法でいうところのパブリック・ニューサンスというものと、いわゆる日本でいう公害というものとはこれは同じ概念なんですか。それとは違ってきているわけですか。これは元来英米法から発達した考え方ですね、それが日本の場合どういうふうに取り入れられてきているかということ。
  73. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害のパブリック・ニューサンスということばがそのまま日本の公害ということばに該当するかどうかは別個の問題といたしまして、通常日本で公害として把握しておることばの概念は、ある程度私害ということばに対立的な用語で用いられた起源を有するとは思うわけであります。しからば、ただいまお尋ねのありますような、政府が現在取り上げております公害対策あるいは私どもが所管をいたしております公害の対象の中にいわゆる私法的救済の対象となるような私害が全く入らないかといいますと、必ずしもそうではない、ある程度の重なり合いがあるということであります。しかし、私害の中に非常に極端な私害がありまして、隣の家のふろ場の煙突の煙から出てくるすすのために二、三軒のうちの洗たく物がよごれるというような種類の全く私書の狭い範囲のもの、これらは現在り私法の範囲で、民法の範囲措置ができる種類のものでございまして、必ずしも公的規制の対象とする必要はない種類でございますので、こういうものを除きました範囲の、かなりの広範にわたる私害的のもの、たとえばそれが発生源が明確であり、一個でありましても、それが相当範囲の広さに広がる、地域的に害を及ぼしておるようなもの、これは見方によれば私害ではございましょうが、これも規制の対象として考える、そのような発生源が必ずしも明確でない私法的救済対象としてはとらえにくいようないわゆる公害、公的規制を必要とするような公害はもちろんでございますが、ただいま例にあげましたようなものも包括いたしまして、公害施策の対象として私どもは考えてまいりたい、さように考えております。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、公害という概念の中には入るけれども、公害といういま厚生省が中心となって取り上げるものには入らないものも相当範囲あるわけですか。
  75. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いま私が申しましたような広い意味合いでの公害として、対象としていくべきものと申し上げました範囲は、やはり行政としては対象としていくべきものと思っております。ただ、今回これを公害基本法という法律の中で包括的にその中の特異なもの、特殊なものといいますか、あるいは公害の本来的のものあるいは公的規制の対象となるへの、そういうものを基本法の中でとらえまして、国の一つの行政施策を確立していく、そういう対象の中には、やや私害的な色彩のある日照問題とかあるいは光のために稲の発育が悪くなるというような種類、あるいは電波障害というようなやや私害的色彩の強い必ずしも公的規制の対象として一括した措置がむずかしいものはこの公害基本法としてはとらえていかなかったわけでございますが、さりとて私どもの行政対象としてはならない、かように思っているわけではございません。十分それらに対しても配慮をする必要があるけれども、当面公害基本法の対象となるような公害は、行政施策としては重点的にきめていくことが必要であるということで、そこに重点を指向してやっている、こういうことでございます。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 国は、重点を公害基本法にきめられたものに対してやる、そうすると、府県や何かで条例ができているところがありますね。そこら辺のものも今度国の基本法にきめられたものに準じてそうして府県や何かの条例をつくるというような指導になるわけですか。府県の場合なり何なりは、もっと範囲が広くても、公的規制ということから考えると、国の基本法と同じものになっていく、こういうふうな統一したものをつくっていくんですか。
  77. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害基本法の国の施策に沿うための地方の細則的な条例というものは、それはそれであり得ると思いますが、公害基本法の対象とならないものを地方独自の施策を行なうために条例をつくるというものもやはりあり得る、その地方だけの特段の措置を講ずる、今日の段階におきましては、たとえば騒音防止条例というようなものは約二十ほどの地方自治体がつくっておりますが、国のそういう規定はございませんけれども、地方の独自の立場でそういうものをつくっていくということは差しつかえないし、またそれは望ましいことであると、かように私どもは考えております。
  78. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、国の基本法の中に書いてあるというか、対象のも一のについては、同じものを県や何かの条例できめても意味がないから、結局いまきまっているものは各県や何かの条例からその部分だけははずれるんですか、そういう指導になるんですか。
  79. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いまかりに地方に条例があるもので、今回その内容としてはそれが公害基本法の中に包含された種類のものというものがあった場合には、国の公害基本法並びにそれに基づく国の法律ができました場合には、それに応じた条例にせざるを得ませんから、その法律できめられた範囲内しか条例で規定ができない、その国の法律規定を逸脱してそれ以上の条例を定めることができないというふうに今後は縛られることになるわけでございます。
  80. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私害、私の害ですね。私の害の発生原因なんかがはっきりしているものがありますね。そうして損害を受ける範囲も特定しているものがあるわけでしょう。そういうふうなものに対しては、公害ではどういうふうな規制を現実にすることになるんでしょうか。
  81. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私害といいましても、防止に関しましては、国の公的規制の対象となるやはり防止措置を講ずるということが必要になってまいりますし、また、その私害というようなものは、普通必ずしも対象となることは、多くはありませんけれども、そういうものを対象として国、地方公共団体が公共的な施策を設けた場合にはそれに協力する。具体的にいえば相当な費用を負担するという責任も負いますし、また、そのほか各種の公的規制は当然にこれらの私害的なものでも、防止的には負うことになるわけでございます。また、その防止措置に違反しておって、行政当局から指導を受ければ、すなわち行政措置として排除命令を受けるあるいは工場の停止を受けるというような形で法的に規制を受けることになるわけでございます。で、被害者との相隣関係は、これは私法的に損害賠償というような形で惹起されるし、また、それが刑法的な意味合いを持っておれば当然処罰を受ける、こういう関係になるわけでございます。
  82. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、法務省に人権擁護局があるわけですね。人権擁護局来ておられますけれども、そこで公害の問題についていろいろ救済を求めていくということは現実に起きてくると思いますね。一般の国民のほうではそれは十分な、どういう救済手段がどこにあるかということがわからない関係もありますから、法務省の人権擁護局のほうへ公害問題について救済をしてくれというふうな、救済方法いろいろありますね、申し立てが出てくると、こう思うのですがね。そういう場合は具体的に厚生省はどうするとか、法務省はどうするというようなことになるのですか。
  83. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 実はその問題が今日かなりルールがきまっていない部類の一つに属しておりまして、公害の訴えをどこに出すかということでございます。公害の訴えを受け付ける場所といたしましては、お話の法務省の人権擁護局もあれば、保健所もあれば、警察署もあれば、区役所もあれば、手当たり次第に役所と名のつくところには訴え出てくる。東京都のごときは清掃局へ訴えて出てくるという事例が非常に多いそうでございます。したがいまして、今後の公害施策を整理をし、着実に進めるためには、いわゆる住民の苦情承り所的な受け付ける場所をもう少し明確にし、警察行政における一一〇番のような民衆の訴えを聞く行政組織を明らかにする必要があろうかと思いますが、今日のところは、その訴えを受けた場所が当面その苦情を受け付け、その実情を必要に応じて調査をし、仲介の労をとるというような措置をそれぞれやっておるわけであります。ただ法律に基づきます仲介の労をとりますのは、ばい煙規制法と公共用水域の水質保全法、この両法におきましては知事が仲介の労をとるという規定はございますけれども、そうでない場合は、保健所が仲介の労をとってみたり、人権擁護局が仲介をしたりという状況でございます。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは厚生省が、これはあとでも問題が出てくるけれども、庶務を扱う、こういうわけですね。その経過はあとでお聞きしたいと思うわけですけれども、そうすると、厚生省が庶務を扱うのはいいけれども、現実に出てくるのは各府県とか都市で出てくるわけですね。そのときに厚生省のほうで庶務を扱っていても、現実にはそいつを総合調整するというようなことは、府県のような場合には、いまの二つの場合はある程度形が整っているかもわからないけれども、そうでない問題のときにははっきりしなくなってしまうのではないか。保健所へ訴えれば、保健所は保健所たけて解決しようとそういうふうにしてきて、そういう何か連絡協議会か何か知りませんけれども、そういったようなものは各府県の中で防止条例に基づいてできているところもあるし、できてないところもある。そこがよくわからないのですがね。
  85. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) めんどうな問題は最終的にはやはり知事部局のところに上がってまいりますので、大きな問題になりますと知事部局が連絡調整をして総合的な判断を下し得るわけでございますが、局地的な問題であります範囲の場合には、お尋ねのように、保健所が当面すれば保健所がその範囲内で解決しようとするし、警察に訴えれば警察がその範囲内で解決しようとする。ところが、その程度で解決がつけばそれで終わってしまいますし、なかなか解決がつかなければ、問題によりましては警察に持ち込んだものが保健所に回されてくるとか、あるいは訴えた人のほうがもうしびれを切らして保健所のほうへ持ち込んでくるというようなことで、必ずしも明快な扱いになっていない場合もございますが、しかし、ただいま申しましたように、大きな問題はこれは県の総合的な判断、連絡会議のようなもので処理されておる実例がだいぶ多くなってきておるということでございます。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 従来、法務省の人権擁護局、これは法務局の中にあるわけですけれども、各地で。そこでは公害の問題だとか私害の問題がごちゃごちゃになっていろいろ申し立てがあるとこう思うのですが、そういうふうなことについては従来はどういうふうな扱いをしていたわけですか、法務省のほうでは。
  87. 堀内恒雄

    政府委員(堀内恒雄君) 法務省の人権擁護局といたしましては、公害というものを大体次のように考えております。不特定または多数人の福祉に影響する騒音、ばい煙、汚水、悪臭、粉じんなどの放出あるいは振動などによって人及び家畜、農作物、水産物等に被害を及ぼすもの、大体こういう定義で扱ってまいりまして、今回提案されております公害基本法などができますずっと前でありますので、ただいまおっしゃったように概念的にはやや私害を含んだような感じがあります。そこで今度公害基本法ができますれば、私のほうでもただいまの概念をもっと明確にしまして、公害基本法に合わせたものにするか、そうして相隣関係などもいわゆる私害は別の類型にするかということで目下検討中でございます。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ただ誤解されると困るのは、公害基本法ができて公害の概念が明確になってきた、そうすると、概念が明確というか、国が取り扱うものの範囲がきまってきた。そうすると、そうでないところのもの、規模が小さいものであるとかあるいは私害というか、そういうふうなものに該当するようなものの住民のいろいろな要求というか、こういうようなものはどこへ行っていいのかわからないような形になってしまっては意味がないわけですね。ですから人権擁護局での扱いが、概念が明確化されるということに伴ってそこに出る道がふさがれるような印象を一般に与えてはまずいわけですね。そういう点は十分配慮願いたいとこう私は思うのです、いろいろなことがありますけれども。そうするとあれですか、厚生省としては、いわゆる公害というのは相当規模の大きいものだというような考えをとっているのですか、そこらはどうなんですか。
  89. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 行政対象としてこれをつかみ、政府の行なうことというのは、多くは公的規制を中心としたものでございます。あるいはそれらに対する財政援助をするとか、そういう範囲としてはやはり規模の大きなものが対象となるわけでございますが、ところが、現地の具体的の保健所が受け付けるものはもう私害も公害もごちゃまぜで訴えとしてこれを受け付けてくるわけでございますので、これは公害という問題を被害を受ける民衆の立場から考えれば、公害基本法というような高邁な施策の問題よりはもっと身近な問題として提起されるであろう、かように思っております。したがいまして、今後はそのようなものが民衆とどう結びつくかということを考え、施策の対象としておく必要があるので、先ほど申しましたように、訴えを受けるところあるいはそれをさばくところというようなものを軌道に乗せていかなければ庶民の肌に感ずる公害対策というのは必ずしも進まない、かような考えで進んでいくつもりでございます。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは一つの例として取り上げるのですが、たとえば宇都宮の鶴田というところでオガライトの燃料製造でいわゆる公害だとして、これがいわゆる公害に当たるかどうか議論があるのですけれども、宇都宮の法務局の人権擁護委員会に申し出があった、こういうわけですね。こういうようなものは一体どこでどういうふうに取り扱うのが一番筋道なのか、これは一つの例としてお聞きをするわけなんですがね。これは人権擁護委員会に申し立てがあったわけですね。あったのだけれども、調査はやったんでしょうけれども、いろいろな関係があっておくれているわけだと思うのですが、これは小さなことといえば小さなことですね。しかし、そういう大きなことばかりやってきて、実際住民の苦痛という点からいえば小さな——小さなことという言い方が客観的にあまり行き過ぎちゃってて問題だと思いますけれども、具体的などういうところへ行ってどういうふうにしたらいいわけですか。こういうふうな例はこれは、人権擁護委員会に最初申し出があったのでしょう。申し出があってどういうふうに取り扱ったのか、そこら辺からひとつ説明願いたいのですがね。
  91. 堀内恒雄

    政府委員(堀内恒雄君) ただいまお尋ねの宇都宮の地方法務局に申告がありました事件は、昨年の二月九日、宇都宮市鶴田町在住の加納茂さんという方から申告があったものでございます。それは同じ町の大和屋薪炭店というのが経営するおがくずを原料とした燃料の製造工場から粉が出る、粉じんが出る、それからにおいの悪い悪臭が出る。そして付近の約五十戸くらいの住民が洗たく物がよごれるとか、健康上の障害があるとか、農作物が減収するとか、そういうふうな被害を受けている、そういう申告でございます。そこで、宇都宮地方法務局におきまして調査をいたしましたところ、大体申告者の申し出ましたような被害が認められましたので、相手方に対しまして再三交渉いたしまして、調査にもおもむいたのでありますが、なかなか相手方がその調査に応じてくれませんので、引き続き調査に応ずるように説得中でありましたところ、今年の五月の二十四日になりまして相手方が法務局に出てまいりまして、そして調査に応じたような次第であります。そして、大体自分の工場から出ます粉と悪臭とそういう被害の事実を認めまして、何とか対策を講じようということで、六月中にこの工場の煙突を少し高くするということを考えるということを申し出てまいりましたので、目下その後の推移を見守っておる、こういう段階でございます。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 一つの例として取り上げたんですけれども、いま言った例のような場合は、県にも公害防止条例があるんですね、それに当てはまらないんですね。そういうのは各地にどんどんどんどん出てくるんじゃないですかね。県に公害防止条例、あるいは市にあるけれども、新しい事態がどんどん出てくれば——新しいものが出てくるわけでしょう、現象がですね、そういうとき一体どこでどうやっていいのか。いまの人権擁護委員会の話は確かにそうなんですけれども、これは強制力何にもないんですよね。だから、何回呼び出しても来なければそのままということになってしまうわけですよ。ですから、新しい現象で、しかもそれは小さな現象だと考えられるかもわからぬけれども、そういうふうなものを救済していくということは、政治としては非常に重要だと思うのですね。こういう場合は県の防止条例も入らないわけでしょう、こういう例がどんどん出てくるんじゃないですか。どういうふうにしたらいいんですかね、これ。
  93. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 昭和四十一年四月一日付の栃木県の公害防止条例によりますと、このときからはばい煙、粉じん等は対象になっております。したがいまして、この事犯につきましては、当然にこの防止条例の対象になるべき筋合いのものでございますが、しかし、対象にはしておりましても基準が定めてないということで、したがって、取り締まりようがないという問題に逢着するわけでございます。今後はやはりそういうことのないように基準をしっかりきめていく、そうするためにはやはり国もそういう指導体制をとっていくことが必要であろうかと思います。  それから、こういう問題の処理は、一つのルートとしては人権擁護局お願いするルートもございますし、いま一つは、まず相当な程度以上の市でございますと、まず市役所へ持ち込みまして、市役所が現場の調査をする。その調査の段階で、ある程度の技術的な指導、協力を必要とするために保健所とか県の協力を求めて、この調査の結果、これが公害であるとわかった場合、しかも、局地的に解決できればよし、できなければ県に持ち上げる。県の関係の各部局が協力してその解決に当たる。そういうルートが今後は考えられるわけでございます。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、厚生省としては公害基本法ができて、それから設置法が通れば公害部ができるわけですね。そうすると、各県の公害防止条例いろいろありますね。非常に内容的には不備なものもあるでしょうし、いま言ったように、規制基準がないものもあるし、ほくは何でもかんでもそういうような基準をつくって取り締まれという意味では決してないわけですけれども、非常にそういう不備なものがあると思うんですね。そういう点の行政指導というものは、これは厚生省が直接やるのかどうかは別として、そこはどういうふうにされるのですか。
  95. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 少なくとも当面は公害基本法に基盤を置きます国の法律、それを受けた地方の条例に関しましては、十分私どもとしても指導監督をする必要があると思います。そのほかの、公害基本法以外のものにつきましては、これは直ちに私どもが指導するという段取りになるかどうかわかりませんけれども、少なくともわれわれとしては、間違いがあれば正し、あるいは不足の点については注意をするというような指導方向は努力をしてまいるべきであると、かように思います。
  96. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、厚生省にできる公害部というのは、公害基本法ですか、これに非常に制肘されるわけですか。まあそれはそうかもわからぬけれども、公害基本法できめてないものについては、公害部といっても、厚生省としてはノータッチではないにしてもノータッチに近くなっちゃうのですか。あんまりやるとあれなのかな、そこはどうなっていますか。
  97. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 決して所管の範囲外とは思っているわけではございませんけれども、御承知のように、公害対策は今日でもややおくれぎみでございます。当面、ことに大気汚染は国民の健康に非常に脅威を与えるというものでございまして、早急な対策が必要である。そのほか水質汚濁、騒音等、かなり重要な、国民的レベルで取り上げるべき大きな公害か不十分な対策のままで残されておりますので、それに集中するということで、他の分野がやや手が回りかねるところがあるかもしれませんが、私どもとしては、決してそういうものを除外して考えているようなつもりはございません。
  98. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、ことしの予算に公害調査費というのがありますね、三千二百七十七万ですか、この程度のことで具体的に何をやろうというのですか。大気汚染測定網整備運営費として、そのうちに三千百万ですか、ありますね。具体的に何をやるんですか、その大気汚染というのは。
  99. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 厚生省の当面の任務は、まず公害の事実をはっきりつかむ。公害の危険が迫っておるかどうか、今日の状況はどうか、あるいは将来の動向はどういう方向をさしておって、どのくらいの危険度が近づいてきておるかという、現状把握が当面非常に必要なことだと思って、私どもとしては、公害の調査費は非常に重要な費目に入れておるわけであります。  そこで、まず調査費の中のばい煙規制法施行費というのが九百万円、ほぼ一千万円近いのでございますが、これはばい煙規制法を制定するその地域指定のための予備調査の金でございます。それから大気汚染測定網のための四千八十九万円というのを設けておりますが、これは全国的に自動ステーションで枢要な場所の大気汚染の状況を自動的に把握するための測定網を張りめぐらす。全国、当面二十カ所つくろうということで、それの本年度分、二カ所分が三千四百万円でございます。そのほかの地方の公害防止対策強化としまして、一億一千二百七十四万円、このうち大きなものは七千五百六十六万円の監視網の整備を助成してやる、各都道府県あるいは大きな市などが自動的な、枢要な場所にステーションをつくりまして、それのデーターが二十四時間、自動的に中央へ集まってくるそういう装置を、テレメーターと申しますか、そういう装置をつくらせますために、それの三分の一を助成しよう。それから県の衛生研究所のような中央研究所において非常にむずかしい分析をする必要があるというようなものの分析機械に対して三分の一の補助をするための三千六百万円の補助金を出すというようなことをする。さらに公害の研究的調査、特段の専門家を派遣をいたし、あるいは専門家に委託をし、大学に委託をし、研究機関に委託をして特別調査をするために、これは一億円の委託費を組んでおります。したがいまして、以上の費用によりまして本年度は前年度に比べて格段の調査ができるものと、かように期待をいたしております。
  100. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは大臣に、いま言った大気汚染ということを調査するわけですね、それはまあわかるのですが、しなければいかぬことなんですが、調査をしてみて、具体的にどの程度までの大気の汚染はまあまあ都市生活をしている以上認容しなければならないのか、それ以上のものであったら大気汚染として国民の健康生活や何かに影響があると、こういう結論が出てくるわけでしょう。その辺の限界のところがよくわかりませんから御説明願いたい。これは政府委員でけっこうですが、その結果として具体的に大気汚染をなくするためにどうするのですか、そこのところがどうもよくわからないのですがね。
  101. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) たとえば大気汚染の問題でございますが、この研究調査の結果、大気が汚染しておる、この汚染が人体の健康に害があるというようなことが判断されるならば、健康に害のないところまでこれを排除していく。そのためにはたとえば排出基準だとかあるいはグリンベルトだとかいろいろ設備施設等があろうと思いますが、そういうことをやりまして、人体の健康には害がないという程度までこれを排除していく。それからさらにもう少し環境をよくしようじゃないかという場合には、すなわち例の環境基準と申しますか、基準をきめまして、とにかく人体に害がないというところまでは絶対にこれを排除していこう。もう少し程度を高めてそうして生活をもう少し快適なものに、たとえば川崎や東京を観光地の空気までは持っていけないにしても、もう少し積極的に快適なものにしていこうという場合には、たとえば東京における環境基準がどうだとか、川崎における環境基準がどうだとか、そういったふうにこの環境基準という基準をきめていこう、こういうわけでございます。
  102. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それで私疑問に思いますのは、都市生活をやっておるわけですね。そうすると、健康に害があるとかないとかいう基準をどこに引くかということですよ。これはある程度都市生活だから健康に害が、害というと語弊があるけれども、影響があることは間違いないと思いますが、そこのところをどういうふうに線を引っぱるのですか。この程度まではしようがない、がまんしなければならないとかいういわゆる認容といいますか、受忍義務といいますか、そこのところはどういうふうに考えているわけですか。それからいま言った環境基準をどうとか、つくるとかつくらないとかいう話がありましたね。そういう環境基準、それはまだできていないのですか。これからつくるのですか。
  103. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 例を東京にとって申しますと、東京は実はいまから二年前にすでにばい煙防止法の地域指定をいたしました。東京都内にある煙突から出てくる煙は一定度以上の悪い煙を出してはならないという規制をしておるわけであります。その規制をしたら東京の空はもうこれ以上きたなくならないかというと、規制をしてもどんどん悪くなっていく。そのどんどん悪くなっていく原因は、工場の数はふえる、あるいは個々の工場が増設して能力がふえるということで発生源はふえる一方である。すなわち一つ一つは慎しんでおっても数がふえれば悪くなる。したがいまして、これ以上悪くしないということの基準は、個々の煙突ではなくて、東京の空をこれ以上悪くしないという目標をつくる必要がある。その目標を私どもは環境基準としてきめておるわけであります。その東京の空をこれ以上悪くしないという目標は、まず第一には、健康に絶対に害がない程度には少なくともする。これ以上空が悪くなり、病人が出るというようなことにはさせない。それだけでは東京の空はきれいにならないからもっときれいにしたい。もっときれいにする、すなわち、暮らしやすい、住みいい、草花の相当咲く、木が枯れないというような生活環境として、これをこさえてやや気持ちのいい生活環境にしたいけれども、その場合に理想的なことを言ったら切りがないから、産業とのある程度の調和をはかっていきたい、こういうことでその基準をきめていきたい。その場合に、それじゃ一たん基準をそういうふうにしてきめたといたします。東京の空をこれ以上きたなくしないという基準をどうやって守るというか、守る手段は公害対策のあらゆる手段を講じて守っていく。すなわち、それはすべて工場をこれ以上ふやさぬとか、工場の機械を増設しないという手段だけでやるわけではない。あるいは煙突をこれ以上高くするとか、あるいは油をもっと硫黄の少ない油に切りかえるとか、手段はいろいろあるわけであります。したがって、その都市その都市の事情によりましていろいろな施策を組み合わせまして総合対策によってそれを守っていく。東京の施策が直ちに四日市の施策になるわけではなくて、四日市は四日市の手段でやっていく。東京ではそういうことを考えませんけれども、四日市ではグリーンベルトをつくっていくという方法を講じておるわけでございます。
  104. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 お話を聞いておりますと、失礼だけれども、それは作文としてはぼくはそのとおりだと思うんですよ。確かにあなたのお話し聞いておれば、東京の空なんか非常にきれいになっていなければならぬですね。きょうはだいぶいいようですけれども、問題はそれじゃいま言った工場ば一つ一つ見れば規制内だとしても、数がどんどんふえてくれば全体としては非常に悪くなってくるということはありますね。そういう場合にいまの日本の法体系のもとで、それじゃ東京なら東京へ工場が出てくることを押える、禁止するということはできるんですか。それが一つです。  もう一つは、いまあなたが四日市にグリーンベルトつくるとかなんとか言っていましたね。グリーンベルトづくりはだれがどうやって計画して、地主が反対した場合に土地収用法でやれるんですか。そういう場合に、やれる場合もやれない場合もあるでしょうし、そこら辺はどういうふうに考えているのかということですね。結局ことばは非常に美しいけれども、何となくこういうのをつくらないと世間ていも悪い。こういうのでいま何かつくったとしても結局は何のことはない、やろうと思っても結局やれない。産業界のいろいろ反対にあって結局はできなくなるというふうなことになるんじゃないかとぼくはちょっと考えるんです、思いつきかもわかりませんよ。ということは、公害基本法の問題にしても、公害の問題にしてもどこも引き受けないというんでしょう、各官庁で。どこも引き受けないというのが結局厚生省が押しつけられたというか、人がいいから押しつけられたのかそれはよく知りませんよ。そういう話もよく出ておりますね。だからそこら辺のところどうなんですか、疑問に思うんですがね。
  105. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お尋ねのように、実は従来の法律のままでは押え切れなかったわけであります。実は排出規制ということによって相当押えられると思ったところが、排出規制だけではとまらない。そこで今回公害基本法によってそういう施策をするという国の決心を固めるわけでありまして、したがって、公害基本法にありますように、環境基準をまずつくって目標を明らかにするということと、今後その目標を守るためには立地規制でも何でもやっていくという一応決意が公害基本法の中にあるわけであります。ところが、決意ないし方針だけでございまして、具体的にはその特別法が要るわけであります。その点は今後は法制措置を講じて、工場はこれ以上入れないというような法律規制をしようとして、いま通産省並びに建設省がその法案の準備をいたしております。したがって、そういう強制的な法案ができれば、東京の基準を守るために総合計画をまず立てます。それは各省連絡会議、大臣を会議委員とする総理大臣の主宰する会議におきまして方針をまずきめまして、その方針を守るためには強制措置を講じてでも守っていく、そのために法律準備をする、こういうことになっておるわけでございます。
  106. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 この厚生省設置法が通って環境衛生局に公害部ができる。公害基本法が通る——公害基本法が通るのか通らないのか、ここの委員会のことじゃないからあまり知りませんけれどもね。そういう形になっての今後の行政の中で、どういう法律なら法律、あるいは法律要らないけれども、行政というか、そういうふうなものができたときに、公害基本法というものが実効といいますかね、そういうふうなものをあげるのかと、こういう点についていまお話がありましたけれども、もう少し統一的に——これは本来なら大臣の答弁ですよね。でも大臣そこまで、たいへん失礼だけれども まあ——と思うから、あれですけれどもね、それが一つと、いまあなたのおっしゃったようなこと、一体日本の法体系のもとでそういうこと、できますか。ここに工場つくっちゃいけないなんて、これ以上ああしてつくっちゃいけないなんて、そんな法律、自由主義経済のもとでつくれるのですかね。どうですかな、その辺のところは。もしそういうことなら——つくれるかっくれないか、ぼくは議論があると思うのですよ、いまの法体系のもとでもですね。そんなら、当然公害基本法と一緒にそういう法体系というものが立案されて出てこなければならぬと思うのですがね。そういうものが出てこないところにこれは適当な、結局、基本法というのはまあ基本法なんだという程度に終わっちゃうのじゃないかとぼくは考えるのですがね。いま言った問題点を整理して、この設置法なり公害基本法が通った場合における今後の法体系なり行政の問題ですね、そうした法体系が自由主義経済というか、そういうふうなもとで一体どこまでできるのかということですね、ここら辺がちょっと問題になるような気がするのですよ、私はね。
  107. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 現在でも電源開発法によりまして発電所の建設は許可が要るわけであります。それで現に公害を排除いたしまして、東京近郊で押えておる事実があります。それと同じように、今後特別の法律をつくりまして、工場の立地規制をいたしたいということで、すでにかなり具体的な法案の準備に入っております。もはやすでにこのことは公害基本法の審議あるいはそれをめぐる各種の論議におきまして、企業界全般も別に強い反対なしに、すでに既定の路線のごとくその方向の法制化に進んでおる状況でございまして、また、そのことができない限りは公害防止はできないという、むしろ公害対策の一番の本命であるほど重要な施策と私どもは考えております。
  108. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 きょうは最初のところですから、きわめて一般的なことをお聞きしておいた程度なんですが、あとはいろいろこまかいことについてもお聞きをしたいし、それからこの定員増の問題ですが、公害部だけでなくて、ほかの定員の改正が一ぱい出ていますね。これは凍結の排除の問題もありますし、新規増もあるわけですね。これについては厚生省内部の部局の増と附属機関の増の問題、いろいろありますね。それから国立病院なり国立療養所の問題等、この人員増に伴っていろいろ問題があるわけですが、この次はその人員増をめぐりましての、ことに附属機関ですね、これの人員増を中心としていろいろ現在の厚生行政の中の問題ということをお聞きをしたいというふうに考えております。
  109. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  110. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。  それでは本案につきましては、本日はこの程度にいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後二時五十八分散会      —————・—————