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1967-05-30 第55回国会 参議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月三十日(火曜日)    午前十時四十五分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     稲葉 誠一君      矢山 有作君     北村  暢君  五月三十日     辞任         補欠選任      森 八三一君     木村 睦男君      田中 茂穂君     迫水 久常君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         豊田 雅孝君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 稲葉 誠一君                 北村  暢君     委 員                 木村 睦男君                 源田  実君                 迫水 久常君                 柴田  栄君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 伊藤 顕道君                 中村 英男君                 前川  旦君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        通商産業大臣   菅野和太郎君    政府委員        外務政務次官   田中 榮一君        外務大臣官房長  齋藤 鎮男君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省中南米・        移住局長     安藤 龍一君        外務省中近東ア        フリカ局長    力石健次郎君        外務省経済局長  加藤 匡夫君        外務省経済協力        局長       廣田  慎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        文部大臣官房長  岩間英太郎君        文部省初等中等        教育局長     斎藤  正君        文部省大学学術        局長       天城  勲君        文部省社会教育        局長       木田  宏君        文部省体育局長  赤石 清悦君        文部省文化局長  蒲生 芳郎君        文部省管理局長  宮地  茂君        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君        通商産業大臣官        房長       大慈彌嘉久君        通商産業省貿易        振興局長     今村  曻君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        通商産業省重工        業局長      高島 節男君        通商産業省化学        工業局長     吉光  久君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        通商産業省石炭        局長       井上  亮君        通商産業省鉱山        保安局長     中川理一郎君        通商産業省公益        事業局長     安達 次郎君        工業技術院長   馬場 有政君        特許庁長官    川出 千速君        中小企業庁長官  影山 衛司君        中小企業庁次長  金井多喜男君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        通商産業省企業        局産業立地部長  馬場 一也君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、加瀬完君及び矢山有作君が委員辞任され、その補欠として稲葉誠一君及び北村暢君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) この際、おはかりいたします。伊藤顕道君から、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認めます。よって、辞任許可することに決定いたしました。  つきましては、委員異動及びただいまの辞任許可に伴う理事補欠互選を行ないたいと存じます。  互選方法は、先例によりまして、便宜、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認めます。それでは、理事稲葉誠一君及び北村暢君を指名いたします。     ―――――――――――――
  6. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、去る二十五日、衆議院から送付され、付託されました。なお、提案理由説明は、すでに聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。関係当局からの出席は、菅野通商産業大臣、その他政府委員の方々でございます。御質疑のある方は、順次御発言願います。
  7. 北村暢

    北村暢君 最初に、昨日の広島県の大竹市における三井ポリケミカル工場爆発の問題について若干御質問いたしますが、この石油コンビナート爆発事故のこれまでの調査はされているんだろうと思うのですが、知り得た程度でようございますが、原因一体何であったか、この点について知り得た範囲で御説明を願いたいと思います。
  8. 吉光久

    政府委員吉光久君) 昨日の午後四時四十五分ごろに、ただいま御質問ございました三井ポリケミカル株式会社大竹工場におきして爆発事故が起こりました。事故状況でございますけれども、現在現地担当者を派遣いたしまして調査中でございますが、いままででわかっておる範囲でございますけれども圧縮機、いわゆるコンプレッサーでございますけれども、そのコンプレッサー正常運転中に突然に爆発したということでございまして、正常運転中の爆発ということは普通ちょっと考えられないケースでございますけれども、どういう原因でそれが正常運転中に爆発したかという点につきましては、実はまだ手元に報告がまいっていないわけでございまして、いずれ詳細判明次第御報告申し上げたいと思います。
  9. 北村暢

    北村暢君 この種の石油コンビナートですが、全国で相当多数あるんじゃないかと思うのですが、前の昭和電工川崎工場爆発事件等工場爆発災害というものがちょいちょい起きているわけなんでありますが、こういうものに対する工場立地の問題についてどんなような指導なり何なりがなされているかということですね。私は今度の設置法の中でも産業立地部いうのが立地公害部というようなことになるようでございますが、いずれこういうコンビナート建設等については通産省指導なり、安全に対するものについてはそれぞれの許可を得なければならないということになっているだろうと思っておるのですが、こういう正常運転中に爆発をして、しかも相当被害を出すというふうな点について、私はこれは取り締まり上の問題についてもこれは何か欠陥があるのじゃないかと感ずるのでありますが、そういう点でひとつそういう根本的な方針と、それから今回の爆発による付近に及ぼした影響、こういう点で、知り得ておる状況報告願いたいと思います。
  10. 吉光久

    政府委員吉光久君) 今回の工場災害付近に及ぼした影響でございますけれども、ただいま知り得ておりますところの情報によりますと、主として会社内部の問題でございまして、爆発の振動によりまして付近住家ガラスが一部こわれておるというふうな報告をもらっております。主たる被害現場工場内部というような報告になっております。
  11. 北村暢

    北村暢君 それで、負傷者等も出ているようでございますがね。人命には幸い影響なかったようでございますが、そういうような災害が出ているのですが、先ほど申しました産業立地上の立地というのは、経済的な効果を主体に皆さん考えるでしょうけれども、そうでなしに、最近公害問題がに非常やかましく論議せられる段階で、こういう爆発事故というのがやはり起こるということになれば、民家等に対する影響ですね、こういうようなものについても、特にこの高圧ポリエチレン工場等についての爆発しやすいもの、そういうようなものについて付近の環境なり何なりというものを、どんな配慮がなされているか、そういう点をお伺いしたいと思うのです。  それからまた、先ほども申しましたように、この種の工場企業が全国的に相当あると思うのです。そういうものが一体この心配のないような状態になっているのかどうか、これをひとつお伺いしておきたい。
  12. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 技術的のことは政府委員からお答えいたしますが、最初お尋ねの問題について、たとえば新産業都市とかあるいは工業整備特別地域等中心として工場を建てる。ことに爆発性工場を建てるというような場合には、最新の科学的な手法によりまして、公害防止総合事前調査をいたしまして、そうしてその成果に基づいて適切な公害防止措置を講ずるように企業所及び地方公共団体指導するということで、公害未然防止をやっておるのでございます。  なお、こういうような爆発性のものにつきましては、高圧ガス取締法並びに一般高圧ガス保安規則というものがありまして、それによって工場設備をする場合には一々やはりこの取締法に基づいてそれを調査して、そうして工場を建てさせるというような方法をとっておるのでございます。  なお、もう少し技術的なことは、政府委員からお答えいたさせます。
  13. 吉光久

    政府委員吉光久君) ただいま大臣からお話がございました高圧ガス取締法で全部許可制にかけているわけでございますけれども技術上の基準といたしまして、ある一定の家屋あるいは公共施設等に対する保安距離の問題、あるいはまた、耐圧気密に対する技術上の基準あるいは自動調整装置等に対する技術上の基準等それぞれの製造工程に対応いたしました技術上の基準先ほど高圧ガス取締法に基づきます高圧ガス保安規則によって定めているわけでございます。
  14. 北村暢

    北村暢君 それは、そういうことになっていることはわかっているわけですけれども、わかっていてなおかつ何ですね、昭和電工爆発のときでも相当付近に損害を起こしているわけでしょう。ですからこういう今度の場合にも相当遠いところの三百メートルの離れたところのガラスが割れる、こっぱみじんに割れて、けがをする者が出ているわけですね。ですから、そういう高圧取り締まり規則に基づいて十分許可制にしてやっていてこういう問題が起こるわけでございますから、先ほど来質問しているのは、この種のものが企業的に、工場にして、全国的に相当あるだろうと思うのです。そういうものについて、この経験からして万全であるのかないのかということをお伺いしているのです。したがって、高圧取締法でやっているのですから安全だと、こういうのか、これは必ずしもその地域地域によってだいぶん違うわけでしょう。だから三重県の四日市のように、工場の中に住宅地がまぎれてこれを疎開するというような措置をやっているわけですね。だからほかの他のところにそういう危険性のところがないのかどうかということですね。この事故を契機として私は二度とそういうようなものを繰り返さないための通産省監督なり何なりというものが行政的にうまくいっているのかどうかということを心配するわけです。それを聞いているわけです。どうなんですか。
  15. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまのお話の、お尋ねの件ですが、いや私なども、その点は実は非常に心配しております。そこで、ですから私も公害防止のためのいろいろな監督指導をやっておりますけれども、今度のような事件でも安全であると思っておったところのものが、そういう爆発をしているわけでございますから、したがいまして、やはり住居の問題、あるいはもう少し設備の不十分であるかどうかというような点、そういう点について通産省といたしましては、もっと厳格にひとつ検討してみたい、こう存じております。
  16. 北村暢

    北村暢君 この点については、高圧ガス爆発危険性というものは、確かにこの事態を見ましても、従来三百メートル、四百メートルのところまで及ぼすというのですから、これはたいへんだと思うのですね、したがって、従来取り締まりを厳にされているようですけれども、今後の対策においても私はこれはもう一度再点検するなり何なりして、万全の安全対策を検討されるべきだと思うのです、この機会に。私はそういうふうに思いまするので、この点はひとつ、まだ原因等もわかっていないようですから、十分究明されて対策を立てられるように要望をいたしておきます。  それから次にお伺いいたしますが、これは通産大臣所管ではないのですが、今度の設置法の改正の一つの問題として、産業立地部立地公害部にする、こういうことで出ているのでありますが、私はこの行政内容の変化に応じて実態を反映する名称に変更するのだと、こういうのですけれども実態に合わせるために名前を変更するのでは、まあそれも必要でしょうけれども、その実態が大切だと思うのです。そういう意味で公害に対する基本的な考え方大臣にまずお伺いをしておきたいと思うのですが、それに先立って公害基本法の提出の見通し、これは一体どうなっているのか、所管大臣でないのですが、しかし、いまたいへん問題になっている法案でありますから、これは一体どのような状況にあるか、まずお伺いをいたしたい。
  17. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 公害対策基本法はすでにもう閣議を経まして衆議院のほうに法案を出しております。しかし、衆議院のほうでいつそれが提案されて、それで審議に入るのか、私どもにはいまちょっと見当がつきかねているわけです。
  18. 北村暢

    北村暢君 そこで大臣に基本的な公害考え方、特に公害基本法の中でこれは審議されますから、私はあまりこの点にこだわりませんけれども、とにもかくにも今度出てまいります公害基本法についても私ども審議に入れないぐらいいろいろな問題点があると思うのです。したがって、この点についての産業公害というものについて、特に通産大臣所管であります産業公害について、その基本的な考え方、どのような所見を持っておられるのか、まずお伺いをしたい。
  19. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 皆さん方にかつて申し上げたことがあるかもしれませんが、とにかく公害ということでは、実は産業加害者でありまして、国民一般被害者ということなのであります。われわれのほうとしては加害者に対していかに取り締るかというところが通産省の役目であります。したがいまして、現在出ておる公害はこれをなくするようにいろいろ対策を考える。また、今後は公害未然に防止するということ、そういうとについての企業に対する指導もしなければならないということで、まあ公害というものがなくなることをわれわれは目標にして公害対策、政策を今後考えて進めていきたい、こう考えている次第であります。
  20. 北村暢

    北村暢君 この公害がなくなるということですね、対策を講ぜられるのはこれは当然のことでけっこうなのですが、起きた公害に対する責任の問題、これがまことにあいまいとしているのですがね。したがって、公害というものが、公害だけでなしに私害、私の害ですね、工場なら工場廃液なら廃液、あるいは水銀なら水銀というものが、明らかに人命影響したというような水俣病のような問題、こういう問題について、企業責任というものが私は非常にあいまいであると思うのです。そういう点について、公害がなくなることの努力をせられる通産省指導もけっこうですけれども公害が起きた場合における責任の問題、これについて企業責任というものが私は非常に不明確だと思うのですか、そういう問題についての通産省の基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  21. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 公害を生じた場合の責任につきましては、基本法にも明記しておりまして、責任者としてはまず第一に事業者、国あるいは地方公共団体住民というように何して、第一に企業責任があるということをはっきりいたしております。ところが、公害にはどれが原因であるかということが不明確なものがたくさんあるのでありますが、したがいまして、その点においての企業者が負担すべき責任あるいは国が負担すべき責任というようなことはこれを明確にして、やはりそれぞれ責任者責任を負わなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  22. 北村暢

    北村暢君 それで具体的にお伺いしたいのですが、水俣病態本県の日窒の工場排水からだということがほぼわかった。この問題が新潟県の阿賀野川に出た。こういう問題について相当それなりに検討が加えられているようでございますが、この阿賀野川の問題について一体どれだけ通産省は把握されておるのか、この点についてひとつ御報告を願いたいと思います。
  23. 吉光久

    政府委員吉光久君) 阿賀野川水銀中毒事件につきまして、通産省独自の調査はいたしておらないわけでございまして、厚生省のほうで設けました調査班等報告を通じまして、通産省としては現地の事情を承知しておるという状況でございます。したがいまして、先般調査団のほうの三班の調査報告書が公表されたわけでございますけれども、現在その調査報告書もと、要するに要約したものが一応公表されておりますので、もと原本を、科学技術庁の担当部局中心にいたしまして、各省担当局のほうに、原本についての説明が終わり、それぞれ各省原本について研究を始めておる、こういう状況でございます。
  24. 北村暢

    北村暢君 二班の報告ですか、二班の報告はもうすでに阿賀野川水銀中毒発生昭和電工鹿瀬工場から流出せられた工場排水によるのだという報告がなされているようですね。そうして第三班の報告というのは、概要は一体どんな報告なんでありますか。
  25. 吉光久

    政府委員吉光久君) 実は先ほど三班と申し上げましたのは、試験研究班とそれから臨床研究班疫学班、その三班に分かれて行ったわけでございます。臨床班と申しますのは、主として患者自身を診察いたしまして、その患者のそういう病気の原因が何に起因しているかということについて分析をいたしたわけでございます。それから試験研究班のほうは、実際に川の汚泥あるいはまた工場の中の設備、あるいは排水、そういうようなものにつきまして、その現物についてそれぞれの分析を行なったわけでございます。それから疫学班は、そこらの問題をさらにふえんいたしまして総合的に付近住民との関係等を含めまして全体的な分析を行なったのが疫学班でございます。  そこで、いまの二班が一致し一班が一致してないという問題でございますけれども、実はこれは一応疫学班自身結論によりますと、原因有機水銀中毒であり、しかもその有機水銀中毒を発生したのは、それは鹿瀬工場である、こういうふうにいっておるわけでございます。ところが、現実の問題といたしまして、試験研究班等分析によりますと、要するに、汚泥の中から微量摘出されました水銀そのものについて有機水銀らしいけれども、ある分析方法によると、必ずしも有機水銀という結論が出ておりませんというふうな、そういうふうな御報告が中に入っておるわけでございます。  ただ、以上三班を通じましていっておりますことは、原因昭和電工鹿瀬工場にあるということは三班を通じて一応結論を出しておるわけでございます。
  26. 北村暢

    北村暢君 そこで問題は、昭和電工鹿瀬工場工場排水であるという結論、これに対して昭和電工はこれを否定しているようでございますが、実情はどうでございますか。
  27. 吉光久

    政府委員吉光久君) 昭和電工のほうにおきましては、これは私のほうというよりか、むしろ厚生省のほうに対しまして反論書を出しておるわけでございます。私どももその写しをいただいております。主としてこの災害自身新潟地震直後に起こったというその時期的な問題を中心にいたしまして、むしろこれは新潟地震によって倉庫等に保管されておった農薬地震直後の津波等に洗われて川の中に出ていったというふうな、水銀農薬説と申しますか、一言にいいますと、水銀農薬説を主張いたしておるわけでございます。
  28. 北村暢

    北村暢君 したがって、その水銀農薬影響で、工場排水ではないという主張をしておるわけですね。ところが、新潟地震の前後を通じて、この地震以前からですね、こういう症状があらわれてきておるということがこの調査班の――研究班ですか研究班でもそういう結論を出しておるようですね。出しておるようです。十分そういう点も調査されておるわけですね、農薬説も含めて調査した結果がこの昭和電工鹿瀬工場排水だということが結論的に出ておる。それに対してなおかつこの農薬説をとっておるわけです。したがって、私はここでこの問題について、まあ主として被害をこうむる調査をしておるのは厚生省でありますけれども一体工場管理の面においてはですね、これは通産省といえども監督立場にあるんじゃないか、このように思うんですが、一体通産省としては、従来何かこの工場について実際に調査をされたことがあるのかどうなのか。いまのお話によると、厚生省調査の結果を報告を受けておる程度だと、こうおっしゃるのですけれども、そういう程度でいいものかどうなのか、通産省としてその監督立場でこの工場調査するということができないものかどうか。なかなかこの調査に行っても鹿瀬工場では入ることすら拒否をして入れてくれないということが、なかなかそういうようないきさつもあるようですから、通産省の、監督立場にある通産省としてそういうものでいいのかどうなのか、私非常に疑問に思うわけです。したがって、今度の設置法の中でも立地公害部ということでわざわざ公害部-公害というものを重視するということでやるんでしょうけれども、どういう考え方でこれだけ大きな問題になっておるのに、通産省としては、厚生省まかせでみずからがその工場に対する監督なり何なりという立場調査ができないものかどうか、ここら辺が私はわからないわけなんですよ。
  29. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 具体的なことは政府委員からお答えしますが、まず厚生省のほうで公害があるということと、その公害がいかなる程度であるかということは、これは厚生省調査する。それに基づいてこれが企業から発した公害であればそれは通産省のほうにこれは企業からその公害が出ておるということを受けてそれで初めてわれわれのほうが乗り出すということでありまして、初めから通産省も出るということはそれは企業自体も御迷惑ですし、また、厚生省職務が大体そういう職務でありますから、一応そういうふうに順序を分けていきたい。公害対策は私どもでやって、公害の存在という、あるいはそれの公害程度というものはこれは厚生省でひとつ調査してもらうということで、まあ厚生省と両々相待ってひとつ公害対策を進めていきたいという方針でおるわけです。そこで阿賀野川の問題もいま厚生省のほうで調べておる最中でありまして、行った委員のあれでは、そういうような昭和電工工場原因だということになっておりますが、しかし、最後の結論は、科学技術庁がその阿賀野川の問題については最後の結論を出すことになっておるのでありますからして、また、厚生省も別の委員にこの阿賀野川の問題については調査をいまさしておりますからして、それらの結果によってそれで工場原因だということがわかればまたそれに対してわれわれとしては対策を講ずることになると思います。なおしかし、平素一般的に工場に対してそういうような問題についての取り締まりはしておりますから、そのことは政府委員からお答えいたさせます。
  30. 吉光久

    政府委員吉光久君) ただいまの阿賀野川水銀事件に対する調査の件で私ちょっと舌足らずの御説明を申し上げまして非常に申しわけないと思っておりますけれども通産省独自の調査はいたしておりませんけれども、政府調査団の一員として、これは厚生省、農林省、経済企画庁等含めました政府調査団の一員として調査に協力はいたしております。全然調査いたしていないような話、ちょっと舌足らずでございましたけれども、そういう形で調査に協力する形で調査団の一員として加わって調査はいたしております。
  31. 北村暢

    北村暢君 それで大体様子はわかりましたが、ただ水俣病というのは、非常にかかれば一家全部かかってしまうというような形で、その日の生活にも非常に困っておるのであります。ところが一結論がなかなか出ないので、裁判問題だの何だのやっているうちに、なればなるほどこれは結論が出ないんだからということで、問題が長引く。非常にむずかしい問題だと思うのです。しかし、実際には被害をこうむった人は出てきているわけですから、これは事件を長引かせるということになれば、いろいろな裁判の方法なり何なりという、その結論が出るまでということになると、たいへんな時日を要する結果になる。しかし、いまの最終的な結論は企画庁で出すと、こういうことのようですが、私は工場の装置そのものについて、私は外部に発表すればそれはあれだかもしれませんわね。通産省監督立場で、調査に行ったとかなんとかいうこと自体がその後における結論を出す上において非常に影響してくる。こういうことはあり得るだろうと思うのです。思うのですが、しかし、それは秘密なら秘密にしても、装置そのものについてのやはり監督とかということは、これは水銀が出るということがはっきりしておるわけなんですから、そういう装置自体の監督通産省に第一義的にあるんじゃないか、このように思うのですよ。そういう点については私は出た害についてはあれでしょう、どこの原因であったかということは調査団結論を見なければわかりませんけれども、しかし、そういう危険性のある工場ということだけははっきりしているわけですから、したがって、そういうものについての監督権限というのは発表する発表しないにかかわらず、通産省としては実態を把握しておくということがあり得ていいんじゃないか、私はそう思うのです、が、どうなんでしょうか。
  32. 吉光久

    政府委員吉光久君) 先ほどお話がございましたように、三十一年に水俣病らしきものが発生し、その原因分析等をやった結果、結局厚生省の食品衛生調査会の中間答申が出てまいりましたのが三十四年の十月でございます。三十四年十月に水俣病に関します厚生省のほうの食品衛生調査会の関係の調査中間報告というものが出てまいりまして、原因有機水銀であるというふうな中間報告がなされたわけでございます。ただ当時有機水銀であるということがはっきりいたしましたけれども工場製造工程中で無機水銀有機水銀に転化する、要するに、工場で使っておりますものは水銀触媒でございまして無機水銀でございます。この無機水銀がどういう形で有機水銀に転化するかということ、あるいは当時魚の中で無機が有機に転化するという説もあったわけでありますけれども、要するに、そこらの原因が実ははっきりしないままで、有機水銀であるということだけははっきりいたしました。そういう結論が出ているわけでございます。  そこで通産省といたしましては、当時これが十月でございますが、十一月に同種のカーバイドからアセトアルデヒドをつくっております同種の工場全部に対しまして、当時これは水俣工場を含めまして全国に五工場あったわけでございます。現在は三工場でございますけれども、当時は五工場でございました。その五工場全部につきまして排出口におきますところの水銀の量の調査というものをいたしたわけでございます。先生御存じのとおり、水銀分析技術というものは当時まだ非常に幼稚でございました。いまだんだんと分析技術も進んでまいっておりますが、当時はまだ非常に幼稚でございまして、有機無機含めまして、現在この鹿瀬工場の場合の報告書によりますと、先ほど調査の場合にトータル水銀量、有機無機含めましてトータル水銀量で〇・一PPM、〇・一PPMというものの水銀量は検出できなかったわけでございます。当時その測定値を使いましたのは、当時の上水道等で使っておりました測定器で測定いたしたわけでございますけれども、検出限界点がそこになっております。要するに、検出限界点以下であったというふうな報告になっているわけでございます。その後そういうふうな実態調査を前提にいたしまして、ともあれそれぞれの立地条件に対応した形での公害防止施設そのものをそれぞれの工場に設けるようにということで逐次関係の施設がなされたわけでございますけれども昭和電工におきましては、この鹿瀬工場におきましては、そういうふうな貯水池、除濁池等の施設を設けないで、むしろ水銀捕集器と申しますか、飛沫の粒の中に入っております水銀を捕集するところの施設、こういうふうなものを設けましたりあるいは水路にたまりをつくりましたりというふうなことで、水銀排水への流出を防ぐというふうな措置をとっておったわけでございます。
  33. 北村暢

    北村暢君 そういうことを施設をし、いろいろな監督立場で施設をさせ、そうしてやってきて、なおかっこういうことが起こった。しかも鹿瀬工場排水であるということに大体結論的に一致しているようですね。したがって、そういう問題について企業の問題もありましょうが、これ技術的にいってそういう排水の処理の問題について不可能なのかどうなのかという問題ですね。それは企業採算からいって金をかければできるのか、それともどこに原因があるのか、究明がまだできないのか、そこら辺のところが。やはりこれは人命に関する問題ですからね、たいへん重要だと思うんです。すでにもう死亡者が出ているわけですから。ですから、それが原因だということになれば、これはまたたいへんなことで、やはり技術の問題として監督して施設をさしたのだが、なおかつ起こったということについては、何か欠陥がなければそういうことは起こらぬわけですから、私はそこら辺の問題のまた原因究明ということがなされなければならないと思うんです。そういう点で監督一体技術的に可能なのかどうなのか、欠点があるのかないのか。そこら辺のところがどうも説明を聞いても納得がいかないんです。これだけのことをしたというのだけれども、実際起こっているということになれば、そこら辺のところはどうなんですか。技術的に困難で、どうしてもやむを得ずそういった施設をやっても排水の中に微量のものが蓄積して水俣病というのが発生するような状況のようですからね。ですから、排水するとき自体は微量であって非常につかみにくいかもしれませんけれどもね。そういうものであってもなおかつ害を起こすということになればこれは大きな問題です。ですから、技術的な点からいって監督していって施設をしたけれどもなおかつ出たという段階において私疑問を持たざるを得ないので、そこら辺の説明を若干していただきたいと思います。
  34. 吉光久

    政府委員吉光久君) 基本的にはいまのカーバイドからアセトアルデヒドをつくります方式を石油化学方式に、要するに、水銀触媒方式から石油化学方式に原料転換してまいるということが一番根本的な解決になろうかと思うわけでございます。要するに、水銀触媒を使わない方式に方式自身を変えていくということが一番いい方式ではないかと考えるわけでございますが、逐次現在そういう方式に生産工程自身が変わりつつございまして、先ほど水俣病が起こりましたときにこういう方式でやっておる工場が水俣工場を含めて五工場と申し上げたわけでございますが、その後二工場が実は閉鎖いたしておるわけでございます。いま現に問題になっております鹿瀬工場も、四十年一月から原料転換のためこのアセトアルデヒドの部門の製造をストップいたしておるわけでございます。と同時に、製造施設もすべて撤去いたしております。あと現在三工場だけ残っておりますが、その三工場自身がアセトアルデヒドの生産のウエートの中で大体現状で二五%程度、七五%のものは石油化学方式に転換したというのが現状でございます。と同時に、現在残っております三工場につきましては、昨年もさらに排水の中からの水銀調査排水中に水銀があるかどうか、これは有機、無機を含めましたトータル水銀として調査いたしておりますけれども、ほとんど検出されないというのが昨年の調査の結果でございまして、これは実は残っております三工場のうちの一工場水銀排水が外に出ないようなそういうたてまえの生産工程に切りかえております。それから他の二工場におきましては、それぞれ除濁池あるいは貯水地等それぞれ相当の金をかけてりっぱな施設を現在つくっておりますので、少なくとも現在残っております三工場についてはもはや問題は起こってこないのではないかというふうに考えております。
  35. 北村暢

    北村暢君 それでは具体的な問題はこれくらいにいたしまして、今後設けられました立地公害部の陣容、定員の関係ですが、この名称だけをふさわしいものに改めた、こういうのですが、名称だけじゃいけないので、やはりこれだけ公害の問題がうるさくなっているのですから、通産省として公害関係の陣容をどのように整備されているのか、これは本省とそれから地方でもこういう機構を持っておるかどうか、この関係をひとつ説明をしていただきたいと思います。
  36. 馬場一也

    説明員馬場一也君) お答えいたします。  今度立地公害部に名称を変更いたしますと同時に、他の機構を、産業立地部の中に公害課というのが一課あるのでございますが、この公害課を第一課、第二課ということに課を一課ふやしたいということを組織令の改正で並行して行ないたいと思います。大体公害第二課におきましては、公害一般の企画、立案、調査というような問題、あるいは公害防止事業団の関係、あるいは個々の事業に対する助成というような一般的な事項を取り扱います。公害第二課におきましては、従前からやっておりますばい煙規制法によるばい煙の規制事務あるいは工場排水法に基づきます工場排水の規制事務というようないわば公害実務でございます。これを大体公害二課で担当する、こういう仕組みにいたしたいと思います。  人員につきましては、公害課から公害一課、二課と分かれますので、人員的には大体四名増強いたしたいと思っております。
  37. 北村暢

    北村暢君 地方では公害に関する通産局の機構というのは持っているのですか。
  38. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 各通産局には現在産業立地課というのは八通産局ございますが、全部漏れなく置いております。それから特に東京通産局と大阪通産局には用水公害課という課が立地課のほかに別途用意をされております。それで特に問題の多い局におきましては、立地課のほかに用水公害課というのを設けておりましてそれぞれ所要の人員がおります。今回の立地公害部の名称変更あるいは公害部自体の機構改正ということでございますが、今回は地方の通産局におきましては特に増員はいたしておりません。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法案の中身、できるだけこれに関連して質問していきますが、多少離れることは御了解願いたいと思います。  特許の問題でありますが、特許のたまっていること、そういうことは前川委員から質問がありますので、私は特許の制度、たとえば、ことに日本と韓国との経済協力といいますか、そういう形の中で韓国が工業所有権に関する条約ですか、これに加盟していないわけですね。そのことから現実に韓国で日本の特許権の侵害といいますか、商標が多いようですが、それがどのように行なわれておるのかということですね。これに対してどういう手を打つのか、こういうことからお聞きしていきたいと思います。
  40. 川出千速

    政府委員(川出千速君) ただいま先生の御指摘のように、韓国は工業所有権の国際条約でございますパリ条約に加盟していないわけでございます。そして韓国政府の方針は二国間の条約を個々に結んでいくという方針をとっておりまして、現在十七カ国と相互の工業所有権の保護条約を結んでおるわけでございます。ただ、日本との間には遺憾ながらまだ何らの条約が結ばれていないわけでございまして、したがって、相互に法的には工業所有権を保護されない状態でございます。韓国の工業所有権も日本で法的には保護されない、そのかわりに日本の工業所有権も韓国の中で保護されない、こういうような状態になっておりまして、隣国で近いわけでございます、経済交流も多いわけでございますから、その点ははなはだ遺憾に思っておる次第でございます。  それからただいま御指摘ございました商標関係で韓国内でいろいろの権利侵害が行なわれておるのではないかという御指摘のようでございますが、これは確かに類似の商標、日本の非常に名前の通っておりますトレードマークに類似をしたようなものが登録をされておる事例はあるように聞いておる次第でございます。しかしながら、これは法的にはただいま申し上げましたような関係でございますので、それが違法であるとかあるいは条約違反であるとかいうようなことにはならないわけでございますけれども、韓国政府のほうにそういうような弊害を防止するように申し入れをいたしております。最近はそのような事例が激減をしあるいはなくなりつつあるように聞いております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的にはどういう例があったんですか。
  42. 川出千速

    政府委員(川出千速君) たとえば森永の商標、エンゼルの商標でございますが、エンゼルの形はしておりますが、それに違うマークがついておるというようなことでちょっと見ると非常に似ておりますけれども、よく見ると違うというような事例がございました。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは日韓会談のときにこういう点についてはどうして問題にならなかったんですか。問題になったのですか。
  44. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 日韓会談のときに、日本政府といたしましては、同時にそういう相互間の工業所有権の協定を結びたいという要望を強くしたわけでございますが、韓国内のいろいろな政治的な情勢もございまして、遺憾ながらそのときにはできなかったわけでございますが、以後も引き続きまして機会あるたびに韓国政府のほうには条約を結ぼうではないかということを申し入れをしておりますが、現在のところはまだその機運になっていないのははなはだ残念だと思います。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外資というか、資本の自由化に伴って、これは、大臣、特許の問題をどういうふうに取り扱っていくのかということですね。外国資本がどんどん入ってくると、その場合に特許を公開させるような方向に進んでいくかどうかということですね。これはぼくもよくわからないのですけれども、もちろん対価を払わなければならないでしょうけれども、たとえばいま外資の中で、これは何と言うのですか、TIというのですか、TI社のハガティという人が来ている。一〇〇%出資の子会社を設立する方針だということが伝えられておりますが、これに対して通産省は三つの条件を出しておるということなんですが、特許の問題はあとで触れますけれども、そうすると、この外国資本が入ってきて一般的に、一〇〇%出資して子会社をつくっていくといういき方ですね、これに対して通産省はどういう態度で臨むのであるか。
  46. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 一〇〇%で自由化を認めるという場合には、もう向こうが全部資本金出して向こうの金融で全部動かすということになるわけです。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうのをどんどん認めていく方針なんですか。
  48. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 一〇〇%で融資するという場合はもうごく少ないのです。それはいま審議中であります。数からいえばごくわずかだと思っております。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、このハガティという人が来た。TI社というのですか、これは何をつくっているのですか。集積回路というのですか。これのメーカ1ですね。これに対して日本側が、通産省が示した条件というのはどういうことなんですか。
  50. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 一〇〇%でやることについて絶対許さぬという方針です。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一〇〇%でこの集積回路のメーカーであるTI社ですね、これのあれは絶対許さぬということにお聞きしていいのですね。
  52. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) はい。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただ、そのときに、そういうことを言うのは、アメリカ側では日米通商航海条約に違反をするのだ、こういうことを言っているようですね。これはぼくもよくわからないのですよ。この条約読んでみたのだけれども、どこにどういう違反があるのか、ぼくもわからないのですが、どういうことなんですか。向こうの言い分はどこに根拠を置いて出してきているのですか。
  54. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 御承知のように、日米通商航海条約におきましては内国民待遇だと思います。そういう観点から見まして、この外資の規制をしているのはそれに反するのではなかろうかという議論があるわけでございますが、私どもといたしましては、この日米条約の議定書六項に、外貨準備の保護のため必要な場合は外資を規制できる、こういうたてまえに議定書でなっております。この国際収支といいますのは、あるいは通貨準備といいますのは、日本も八条国に移行しておりますので、一つの問題があるわけでございますが、この日米条約にいいます通貨準備というのは、非常にその通貨準備がまだ低いというような場合は規制できる、あるいは将来さらに通貨準備が少なくなるという場合は規制できる、こういう解釈をとっておるわけです。そういう意味合いにおきまして、その外資の規制を一〇〇%であろうと規制することは、これはもちろん資本取引の自由化が世界の大勢でございますから、だんだんそういう方向に企業の力をつけながら向かわざるを得ないとは思いますけれども、日米条約上規制することは違反だというようには考えておらないわけでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、伝えられるところは誤りかもわからないのですね。何か三条件を示したということに伝えられているわけですね、世上では。そういうことはないわけですか。
  56. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 当方から先方に三条件、入ってきていただく場合はこういう条件を守ってもらいたいという三条件は出します。しかし、それをそういう三条件を出すとか、あるいは外資の規制をしているということが日米条約の違反ではない、これが違反でないからこそそういう三条件を出しておる、こういう考え方でございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その三条件というのは何と何と何ですか。
  58. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 先ほど大臣が申し上げましたように、第一点は五〇対五〇、一〇〇%でなくて五〇対五〇ということでございます。  それからもう一つは、現在集積回路というのは日本ではちょうど発展途上にあります。そのときに外資が無制限に入ってまいりまして、無制限に生産数量を上げるということになりますと、現在せっかく努力しておる国内産業に打撃を与えますので、生産数量を自粛してもらいたい。そういう問題については通産省と先方と十分相談してもらいたい。こういうのが第二点でございます。  第三の点は、御指摘の特許の問題でございまして、向こうが集積回路については特許を持っております。したがって、日本に来まして一緒に仕事をする以上は適当な対価を払う場合は特許を公開していただきたい。こういう三条件でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その生産量の制限というのは単に自粛してくれということの程度であって法的な規制はできないのですか。これはアメリカのアンチトラスト法との関係で何か規制ができないという説が強いのじゃないか。
  60. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 日本国内での規制でございますので、アメリカのアンチトラスト法との関係は出てまいらない。ただ、外資法で認可をいたします場合に、生産数量まではっきりした条件にするか、あるいは向こうの自主性を重んじまして、ある程度念書的なものでこういうようにしますということでいくか、これは今後いろいろ交渉の過程においてきめなくてはならない、こう考えておりますが、御指摘の向こうの法律に違反するという問題は私はないと、かように考えております。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはそのとおりで、向こうの法律に違反するわけない、日本の国内の問題ですから。向こうの法律に違反するというわけはないわけですけれども、向こうではアンチトラスト法の精神に違反するとかなんとか言っているものですからそこに問題があると思うのです。そこで生産量というものを制限することを条件として許可するわけですが、そういう場合に、生産量を超過したということになってくると、どうするのですか。
  62. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) これは法律問題でございますが、はっきり条件をつけ、それに違反したという場合はやはり許可自体を取り消せる、こういうことになろうかと思います。もちろん許可自体を取り消した場合に、これは法律論でございますが、遡及するわけにはなかなかまいらない、そういたしますと、問題としては、送金等か――配当金とかあるいは元本、そういういろいろな面の送金ができなくなるという形が外資法では出てまいろうかと、かように考えております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの特許はあれですか、外資が入ってくる場合に、通産省としては特許の公開というか、そういうようなものを一応原則的なものにしていこうとこういう考え方なんですか。そこはどうなんですか。
  64. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 特許にはいろいろな御承知のようなものがございます。応用的なものもございますし、あるいは非常に基本的なものもございます。日本の企業家がいろいろ努力していろいろなものを発明した場合、非常に広範囲な基本特許がございまして、あらゆるものができないということになりますと、これはたいへんな問題だろうと思います。したがいまして、われわれがそういう特許の公開をできるだけしていただきたいという問題は、非常に基本的な問題でございます。そういうものについて考えてみたい。それで応用的な部分的な問題につきまして全部の特許公開ということになりますと、これはやはり技術の進歩を私は阻害するその弊害のほうが大きい、かように考えております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは企業局の関係ではないと思うのですが、たとえばベトナムなどへ、いろいろな、大臣、よく答弁している特需というかあるいは武器の輸出とかいろいろな形のものがありますね。そういうようなものは、通産省としては、どういうものまでは認める、どういうものは認めない、こういう基本方針なわけですか。ちょっと基本方針だから、こまかい点はいいですよ、基本方針大臣から答えていただきたい。
  66. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 武器は貿易管理令によりまして、通産大臣の承諾を得なければ輸出ができないというのでありますが、そこでその運営方針として、三つの場合は承認しないということにしています。その第一は、共産圏諸国向けの場合、第二は、国連決議によって武器等の輸出が禁止されている国向けの場合、第三は、国際紛争の当事国、またはそのおそれのある国向けの場合ということで、もちろんベトナムなどは武器の輸出は認めておりません。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは大臣がどこかで語ったということでいわれているのは、タイはあれですか、日本から武器は行っているけれども、これはもうかまわないということなんですか。その三つの条件に当てはまらないということなのか、こまかな点はいいですよ、大まかな点は大臣から答えていただきたい。
  68. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) タイが国際紛争国に入るかどうかということが問題だと思います。まあその点はいわゆる外務省と何か相談してやらなければならないが、現在のところ、タイは武器は行っておりません。ただ行っておるのは警察用のピストルが行っているだけであります。でありますからして、警察用の小銃が行っておりますが、いわゆる戦争に使う武器というものは、まあ現在特に行っておりません。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国際紛争国であるかどうかは別として、いまの段階では、そのおそれのある国という中には現在でもタイは入るのじゃないですか。これはこの辺は南ベトナムの基地が一ぱいあって、アメリカの基地が一ぱいあって、アメリカ軍が一ぱい駐留しているでしょう。そこは一種の、紛争の当事国じゃもちろんありませんけれども、そのおそれがある国になっているのじゃないの。
  70. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 武器の輸出の紛争国及びこれを出します際の判断は、非常に国際情勢が流動的でございますので、そのつど外務省と相談して結論を出しているわけでございますが、タイに対しましての現在の姿勢から申しますと、タイに対しては警察用である。それで紛争当事国に対してこういう配慮を特にいたしますのは、武力抗争の原因になってはいかぬというところに一番判断の基準がございます。それを強めていくということに輸出がなっていってはいかぬという点で、タイに対する武器の輸出は遠慮をしていかなければならぬ状況になっておると思いますが、小銃が警察用であるというところに一つの判断の基準がございまして、用途のほうから直接軍隊が使用するものでないという判断から、現在のところ直ちにいかぬとは考えておりません。  ただ、しかし、一つ補足いたしますと、現に警察向けに輸出をいたしました段階では、まだタイは出兵その他の問題等、ベトナム周辺国ではありますが、そうしてシリアスな姿勢は示していなかったという国際情勢もございまして、警察向けであればいいのではないか、その二つの判断基準から結論を出しております。それはたしか昭和三十九年度であったかと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、国際紛争国というだけじゃないでしょう、紛争国になる何らかおそれのある国といことも入っておるのでしょう。タイはアメリカとのいまどういう条約になっているのか、とにかくアメリカの基地があるわけですね。南ベトナムに加担して大きな紛争に巻き込まれるというか、その危険性が非常に多いと思うのですね。そういう危険性がふえてくれば警察用の小銃であっても輸出は許可しない、そういうことですか。――ちょっと大臣から答えてください。簡単な問題ですから答えなさいよ。
  72. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 専門的なことですから。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 専門的でない、むずかしくないので、じゃ、あなたが答えたことは大臣の答えたことと認めていいのですか、それならいいですけれども。いや、あれは違うのだということになってくるとあとで困るから。
  74. 高島節男

    政府委員(高島節男君) いま御質問の点は二つの要素がございます。一つは、警察用であるか軍隊用であるかというところのけじめの問題、それから紛争のおそれがあるかどうかという国の性格の問題、その二つから詰めてきておるわけです。  四十年の三月でございましたか、三十九年度の末ごろ許可をしましたときは、まださして紛争国として当時タイの性格自身も強く考える段階ではない、こういう判断が一つあったわけです。そして今日のような状態になりまして、かりにこれから先警察用で出てきたときにどういう判断をするかということでございます。これは一応われわれの形式的な頭の中にあるのは、警察用だからいいじゃないか、こういう判断がございますが、しかし、全体の情勢はさらに慎重に考える必要が私はあると思います。もしそういうケースが出てまいりましたら、これは大臣に御相談申し上げるのはもちろん、さらに外務省等ともよく周囲の情勢を見まして、この原則というものは絶対のものじゃございません、情勢によって慎重に考えるべき段階になることもあるかと思います。よく相談してそこはきめなければならぬと思いますが、慎重に処理すべきケースになると思いますが、いまのところそういう動きが出ておりませんので、あえて相談するということをやっていない段階でございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、三十九年の末に行った以外は、その後は行っていないわけですか。
  76. 高島節男

    政府委員(高島節男君) タイ向けの輸出はございません。武器の輸出はございません。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警察用小銃というのは何なの。わからぬけれども、日本の警察というのは小銃というのは持っているのか。どんなものです。警察用小銃というのはどんなものです。
  78. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 私も現品についての知識がございませんが、タイ自身の警察がいろいろな事態に対応して、内乱等ございます場合に対応して、それも比較的何と言いますか、小型のものであるとは聞いておりますが、規格の内容については詳細には存じておりません。  それから、先ほどお答えいたしました四十年の三月の輸出契約のやはり継続がございまして、その分が若干出ておるようでございます。しかし、その契約の一つのセットのところで、次の段階は慎重に考えるべきではないかと、次の段階は、だいぶタイ自身の国と、それから警察であってもちょっと慎重にこれは考えるべきではないかという情勢にあるように私自身としては考えております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 小銃だから小型にきまっているので、大型の小銃というのもあるかもしれぬけれども、いまの状況と、三十九年ごろ、四十年ごろの状況と、タイのベトナム戦争における地位はどういうふうに変化しているのですか、これはまあ通産省に聞くのは変な話だけれども大ざっぱでいいですよ、常識的なことで。
  80. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 刻々流動的でございまして、私も詳細その点外務省とも打ち合わせをいたしておりません。しかし、ごく常識的に考えまして、やはり四十一年に入りましてから、後半でございます、この辺の時期からは、相当常識的に考えて、これは前からの継続が一応切れておりますが、次の段階では慎重な判断を要するところにいっているんじゃないか、そういう国際的な機運にあるようにばく然と考えておるわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣、これは常識問題として、いま北爆しているわけですね。これも外務省に聞くのがほんとうなんですが、あなたに聞くのは常識的なことです、国務大臣として。アメリカが北爆しているのは、いまほとんどというか、半分くらいはタイの基地から北爆しているんじゃないですか。そういうところで、警察用の小銃にしろ、それが軍隊のものに転化する危険性というものは非常に大きいわけですね。だからそういうことを考えたときに、これは当然申請が出ても慎重に考慮するという以上に、そういうふうな現在のタイの情勢から見て、それは許可しない方針だということが言えるんじゃないですか。
  82. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまも局長から申しましたとおり、昭和三十九年末と現在とは事情が違っておりますから、したがって、タイからかりに拳銃の注文があっても、これは警察用だといっても、これはいままでとは態度が違って考慮すべき問題だと、こう考えております。これはもしかりに注文があった場合に、具体的にこれはいかにするかということを吟味したらいい、こう私は思っております。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、関連してくるのでお聞きするんですが、ベトナムへいろいろいわゆる特需というものが出ていくわけですね。これは通産省の管轄でやっているわけでしょう。あのときに、何か輸出検査を省略しているわけですか。アメリカが調達する場合、APAが調達する場合ですよ。
  84. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 日本国内で在日米車、あるいは在日の公の調達機関が公用の調達をいたします場合には、安保条約に基づいて、在日米軍の地位に関する協定というものがございます、それに基づいて免税その他の措置をとっております。それから調達したものを米軍が海外にかりに持ち出すというような場合には、やはり特例によりまして輸出貿易管理例による制限もしくは禁止というものを免除されておるわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうして輸出検査や何かが免除されるんですか。税制の問題は、これは大蔵省の関係でしょう。だから通産省の関係じゃありませんが、輸出検査なんか免除されるんでしょう、どういうわけですか。
  86. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 米軍が日本の国内で調達いたします場合には、これは国内の取引でございますので、法制上、輸出というカテゴリーに入らぬわけであります。したがいまして、その貨物が現実に国外に持ち出されるというようなことがあるかもしれませんですが、これは先ほど申し上げましたように、輸出の管理からはずれておりますので、それがどういうふうになっておるかということはすぐには把握できないというような状況になっておるわけであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 APAですか、あれが調達する場合に、国内で使うという前提で調達するわけでしょうか。だから輸出の検査なんか要らないというんですか。APAが調達したものをどこへどう持っていくかは、こっちの関係しないものだ、そこまで関与できぬのだ、だから検査しない、こういうのですか。
  88. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 在日米軍は、原則として、日本国内で自由に調達ができるということになっておりますので、したがいまして、調達しましたものは必ずこれは日本の国内で使うという前提のもとに調達しておるわけではございませんので、一たん米軍の貨物になりますと、それは米軍の用途に従ってそれぞれ配分されるわけでございますので、その先は一応私どもは関知しないというたてまえになっておるのでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いわゆるベトナム特需というものが、税制なりそれから輸出検査が免除をされているということは安保条約、地位協定によるわけだけれども、それは、ベトナム戦争というものは日本の安全というものに関係しているから、だからということでそういう特典が与えられているんじゃないんですか。それはどうなっているんですか。これは通産省直接じゃないかもしれないけれども、しかし、輸出関係はあなたのほうですからね。安保条約と地位協定と輸出貿易管理令と、その三つの関係で、どういうふうになっていますか、その点は。
  90. 今村曻

    政府委員(今村曻君) ただいまの制度は、これはベトナム戦争が激化してまいりましたこの一、二年のことではございませんで、実は安保条約ができました当時にできたことでございますので、特にベトナム関係によってそういう措置をとったということではないと思います。先ほど来申し上げましたように、駐日米軍に対して、特殊の場合を除きまして、原則的に日本の国内で自由に調達ができると、こういうたてまえをとっております関係上、それはただいまの輸出管理令等の法制上の取り扱いは特例ということではずされておるのでございまして、特にベトナム関係ではずしたということではないと思ます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはあなたの言うとおりなんだけれども、ぼくの言うのは、日本にいる米軍が日本の安全に寄与するということ、そういうことの場合には税制なり輸出の面での特権を与えることはできるわけですよ、そういう意味で調達する場合には。ベトナム向けの特需ということは、何も日本の安全とは関係ないでしょう。それなのに税制なり輸出で特別の恩典を与えるのはおかしいじゃないか、こういうわけですよ。安保条約と地位協定といまのあれと見てごらんなさい、そこがどうなっているのか。
  92. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 安保条約に基づきまして米軍が日本に駐留するということ自体が日本の平和と安全に寄与すると、こういう前提でただいまの制度ができておりますと、こういうふうに了解しております。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは通産省のあれじゃなくて外務省なんですけれども、あなたのほうに関係するわけですよ。ただ外務省の言うことをそのまま受けていちゃいかぬと思うんです。だから、アメリカ軍が調達するというのは、日本の安全に寄与するという前提なら、それはいいわけですよ。ベトナムに持っていっちゃうことがはっきりわかっているのに、そういう特権をなぜ与えるのかということですよ。これはおかしいじゃないかということですね、筋が。だからベトナムに持っていくことが日本の安全に非常に大きく寄与するんだと、こういうことならぼくは理解できるんだけれども、いやベトナム戦争は日本の安全に関係ないと言っておきながら、そこに特権を与えるのはおかしいということなんですよ。条約の文言に基づいて説明してごらんなさい。条約と地位協定と、文言で説明してごらんなさい。あなたには悪いと思うんだけれども、外務省だと思うが、直接関係しているから。
  94. 今村曻

    政府委員(今村曻君) いま手元に条約そのものがございませんのではなはだ恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、大きく見て、在日米軍がわが国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためわが国は駐留を認めておる、こういうたてまえでございます。そこで、調達いたしましたものがべトナムに行っているかいないかという問題でございますが、これは先ほど申し上げましたようにはっきり把握できないんですが、全然行っていないとお答えすればこれはうそになると思いますが、はたしてどの程度それがどういうぐあいにいっておるかということがわからない状態でございますので、この分がベトナムの分だという特別の区別がなかなか困難でございます。その点御了解をいただきたいと思います。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 直接のあれじゃない。きょうそれが法案が出ているわけじゃありませんから、これ以上追及しませんけれども、これは問題なんですよ、通産省は外務省の言いなりになっているからいかぬのですよ、これは。これはベトナムの特需にいろんなものがあるけれども、それは特需班の小さい班だったものを何か課にしたんですか、何か通産省の中にそういうものをつくったのでしょう、いまどういうふうになっているのか。そこである程度の数字は把握しているのじゃないですか。もちろん間接的な一たん韓国なら韓国に行くのもあるし、APAで調達するものがすべてベトナムに行くわけでもありませんから、これは正確のものはわからないわけですけれども、わからないのはぼくもわかるんだけれども、しかし、そのために特需班というのを通産省では拡大したんじゃないですか、どういうふうにしたの、今度は。
  96. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 特需の処理体制につきまして簡単に申し上げますと、現在貿易振興局の中に輸出業務課というのがございまして、輸出業務課の中に特需班というのがございます。特需の実態を把握するのにどういうふうにしてやっておるかと申し上げますと、まず特需の収入の面は、日本銀行で、毎月外国為替統計というものを発表しておりますが、その中に貿易外収入の一つの項目として特需の項目がございます。それから米軍による調達状況の把握につきましては、米国大使館から定期的に契約書その他の資料を送付を受けまして、これを通産省で整理いたしまして、これを毎月統計として外部に発表しておる、こういう状況でございます。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまり法案から離れても悪いから法案に戻る関係があるので、あまり詳しく聞きませんけれども、そうすると、通産省自体としては、たとえば昨年なら昨年度どのくらいのベトナム特需があったというふうに把握しているのですか。これは特需という概念のきめ方にもぼくはよると思いますよ。だから非常に三億ドルとか四億ドルと少なく見る人もあるけれども、十億ドルと見る人もあるし、計算の方法がいろいろあるけれども、どのくらいに把握しているのか。
  98. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 昭和四十一年度の特需収入は約四億九千万ドルでございまして、その前年度に比べますと、一億四千万ドルばかり増加しております。で、この増加分がはたしてベトナムの影響によるものかどうか、あるいはどの程度ベトナムの影響を受けておるかということは把握困難でございますが、やはりその相当部分がベトナムの影響を受けているのではなかろうかということでございます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかりますけれども、大ざっぱでわかるんじゃないですか。三木さんはいつか三億ドルなんて言ったけれども、だいぶ前の話で、十億ドルとかなんとかいう。対等方法がいろいろありますから、大ざっぱにどのくらいと見ているんですか。どんなものが行っていると見ているんですか。
  100. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 的確に申し上げる数字がございませんのですが、私どもが事務当局の試算としてやっておりますのは、ただいま申し上げました一億四千万ドル、一昨年に比べて昨年度増加いたしました。それがかりにまるまるベトナムというふうに仮定いたしますと、直接特需で一億四千万ドルふえた。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 幾らになったんです。
  102. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 全部で昨年の特需収入が四億九千万ドル。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それが、幾らふえたんですか。
  104. 今村曻

    政府委員(今村曻君) その前の年が約三億五千万ドルですから、それに比べて四億九千万ドルということは一億四千万ドルふえたわけでございます。それからそのほかに、いわゆる間接特需と申しまして、アメリカなりあるいは東南アジア各国に輸出がふえておる。そのふえた分の中にベトナムの影響をこうむったのが幾らあるか、これもまたなかなか算定がむずかしいのでございますけれども、おおむね私どもの計算方法によりますと、五億ドル余りではなかろうか、したがいまして、間接、直接両方合わせまして七億ドルがふえた分というふうに考えておりますけれども、これは全くの試算でございまして、責任を持ってどうという数字ではございません。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 試算だから試算としてお聞きしておきますけれども、ふえたふえたと言うんだけれども、幾らになったんですか、ちょっとわからない。直接的なのが幾ら、四億九千万ドルぐらい――間接が幾らになったんですか。ふえた分だけでしょう、五億というのは。いま幾らになったというんですか。
  106. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 間接特需の分が、先ほど申し上げましたように、アメリカ及び東南アジアの各国に対する輸出の比較でございますので、非常に数字がたくさんございます。取りまとめて申し上げますと、直接特需で一億四千万ドルふえました。それから対アメリカの輸出増加のうち、ベトナム分と一応推定されます分が一億九千万ドルぐらい、それからベトナム及びベトナム周辺の東南アジア諸国に対する輸出の増加のうち、ベトナムの戦争の影響を受けておるんではなかろうかと思われる部分が、約三億七千万ドルぐらいと試算をしております。で、この三つを合計いたしますと、おおむね七億ドルということに相なるわけでございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうも何か話が一ふえたのは七億ドル、わからんのですが、前の分を加えて幾らになるか、あるいは発表されたのかもわからぬけれども、聞き違いかもわかりませんが。
  108. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 東南アジア各国も、韓国、香港、タイ、フィリピン、南ベトナム、琉球、おおむねこの六カ国が近接地域ということになりますが、これに対する四十年度の輸出実績が合計いたしまして十二億七百万ドルでございます。したがいまして、これと四十一年度の輸出実績とを比べあわせまして――そしてこれは四十一年度の四月から一月までの輸出実績がその六カ国で十七億四千三百万ドル、それを年間に換算いたしまして、そうして通常の年の伸びと、それから昨年の伸びとでその差額をとりまして、そうしてその差額をベトナムというふうに推定をした、こういうのが私どもの計算の方法でございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 計算方法なんかいろいろありますからいいですけれども、そうすると一番新しい統計で、直接、間接すべてを合計して、それで総額幾らになっているのかというんですよ。特需が総額幾らになっているのかと、こういうことを言っているんです。合わせて総額幾らぐらいになっているのかということです。
  110. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 特需の数字としてはっきり把握できますものは直接特需だけでございまして、ただいま申し上げましたのは、輸出の数字の中からそういうものを推定しているわけでございますから、輸出の中で特需的なものが幾つあって、どのくらいあるかという御質問にはなかなかお答えする適当な数字がつかめません。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 直接特需ははっきりしているというのだけれども、直接特需だってはっきりしていないじゃないですか。どうしてはっきりしているのですか。はっきりしていないじゃないですか。
  112. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 直接特需の収入ははっきり日本銀行の外国為替統計に出ておりますので、その金額ははっきりつかめております。ただ、その内容にわたりまして、どういう用途に、どういう方面にそれが行ったか、これはつかめないということを申し上げたわけでございます。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もうくどいことを聞いても同じですけれども、直接特需が現在ではあれですか、四億九千万ドルくらいだというのですが、それに間接が――いろいろ計算方法はあるが、間接のほうは推定になるというけれども、それが現在では七億ドルくらいだと、こういうのですか。ふえたのは七億ドルというのですか。どうもよくわからないのですよ。
  114. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 直接特需につきましては金額がはっきりつかめますので、先ほど来申し上げましたように、一昨年に比べて昨年は一億四千万ドルふえた。かりにこれをベトナムの影響と見ればそういう数字になります。  それから間接のほうにつきましては、これは輸出ということで出ておりますので、これを輸出の特別の推定によりまして計算をした数字がございます。これが、ふえた分が五億六千万ドル。ですから両方合わせまして七億ドルがふえただろうというふうに推定をしたということをお答えしたわけでございます。
  115. 北村暢

    北村暢君 関連。ただいまの答弁で、聞いていることは、四十年度の特需はふえた分だけで一億何千万だといいましたね。それから間接特需と思われるものが、四十年度幾らあって、四十一年度は幾らになって、幾らふえたかということを聞いているわけです。それをね、貿易が伸びただけ――伸びただけが間接特需で伸びたんだろうと、こういうふうにあなたは説明されておられるのですね。したがって、四十年度には間接特需というものはなかったのかどうなのか。なければふえた分だけが間接特需ということで理解できるけれども、四十年度も間接特需があったということになれば、その貿易のふえただけが間接特需ということにはならないから、この点ははっきりしてくれと、こう言っているわけですよ。
  116. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 少し私の答えが不十分であったと思いますが、四十年度にもやはり間接特需的なものはあったと思います。あったと思いますけれども、これについては私どもは数字を持っておりません。したがいまして、四十年の輸出の数字と四十一年の輸出の数字と、これを比べまして、伸びた分のうちの大部分がベトナムの影響だこういう推定をしたということでございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはきょうの法案のあれじゃありませんからね。ですけれども、前に言った、ぼくは疑問を持っているのは、ベトナム特需に関連して、税制の面で、あるいは輸出検査の面で恩典を与えておるのはこれは間違いだというぼくは考え方を持っているのですよ。これは安保条約の規定から言ってもおかしいと思う。ということは、安保条約は日本の安全に寄与するということを前提としているわけですから、ベトナムへ持っていくということと日本の安全ということとどういう関係があるかということになってくるわけですよそこに問題点があって、これは拡大解釈なんです。これを無批判に通産省が外務省の言うことを受け入れているのは間違いだと、こう思うのです。しかし、これはここの議論でありませんから法案に返りますが、法案にずっと返っちゃって、特許法の問題になってくるのですけれども、特許の問題で、これはあれですか、法案の改正ということを――特許法なり実用新案法ですか、法案の改正を条件として、人数をふやすということではなかったのですか。
  118. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 特許法並びに実用新案法の改正は昨年の通常国会に提案をされたわけでございます。そのいわゆる制度改正といいますか、その制度改正を前提とした人員増加を含まれた、定員改正を昨年設置法の改正でやったわけでございます。しかし、その制度改正の法案は、一回の実質的な審議なしに廃案になってしまったわけでございます。これは各界の一致した強力なる反対運動がございまして、それで国会のほうで審議しないで廃案になってしまった。したがって、現在は、工業所有権の審議会を再開いたしまして、また、新たな観点から制度改正問題に取っ組んでいるのが現状でございます。制度改正は制度改正といたしまして、特許の滞貨の処理をしていきます基本的な問題は、やはり人員の増加によって審査を促進するのが基本的な特許庁の方針でございます。この前の制度改正も制度改正をするから、人員増加は要らないという意味の制度改正ではないわけでございます。人員の増加だけではどうしても処理できない部面もありますので、それを補完する意味において制度改正をしようというのがこの前の国会に提案された法案の趣旨でございます。それがだめになった、こういうようなわすでございますので、割愛改正を条件にして人員を増加するという方針ではないわけでございます。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この法案の改正については私も知りませんけれども、あなたのほうとしては、そういう法案を改正してほしい、それが正しいと思って出したわけでしょう。それでなければ出さない。出したわけですね。それでどういう点を改正したいという意見であったんですか。どういう点を、各界が反対したというのですけれども、どういう点を反対したんですか。
  120. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 去年特許制度の改正について法案を出したのですが、いま申し上げましたとおり、審議が行なわれずして廃案になったのですが、この点について私も非常に責任を感じているわけです。というのは、この制度の改正案を出す前に、自民党の中でこの特許制度の改正特別委員会をつくりまして、私は委員長をやっておりましたので、そこで一年以上にわたってこの問題をいろいろ審議して、それで大体関係の協会などでもいろいろ意見を聞いて、そうして、これならいいだろうということで、法案を出したわけでございますが、出した後に、いままで賛成しておった協会方面も反対するということで四方八方から反対が出てきましたので、そこで前の通産大臣も、また国会におきましても、とてもこれは審議ができないだろうということで廃案としたわけでございます。しかし、そこで皆さん方のいろいろ意見もございましたので、またもう一度審議会を設けていまここで六回審議会を開いておりますが、これはもう議論百出で、利害が相反しておりますから、これはなかなかむずかしいと思いますが、しかし、これをやらなければいまの特許の滞貨というものは私は解決できない。人をふやしても、それだけではなかなかできない。この審査方法などについても根本的にひとつ改正をやるべきではないかということで、私も責任を感じておりますので、特許制度の改正は審議会でできるだけ早く審議していただいて、そうして今度はひとつみんなが大体まとめた意見でひとつ答申をしてもらって、そうしてまた国会へ提案して御審議をお願いしたい。そういうふうにしたいというふうに私としては考えております。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特許がたまっていて国民に迷惑をかけていることは前川委員から質問があるので、私は聞かないのですが、そこで考えますことは、これはやはり各国で、こういうふうに資本の自由化というか、経済が交流してきた段階になってきますと、各国でやはり統一的な形のものが当然できていなければならぬ。そういう方向へ進んでいくのではないかというように思うわけです。もちろん先進国と後進国と非常に違うと思いますけれども、これは工業所有権に関する。パリ条約と、こういう条約に入っていて、そうして日本なら日本は各自に特許法の制度というものを改善というか、改正していってもかまわないのですか。そこはどういうふうになっているのですか。それからまた、前にちょっと話があったけれども、韓国のように入らないほうが得なところもありますね。入ると縛られるから、入らないほうが得だというようなところも出てくるでしょう。そういうところとの関係は一体どういうふうにするのかですね。
  122. 川出千速

    政府委員(川出千速君) パリ条約は現在七十七カ国加盟をしておりまして、後進国も相当に入っておるのでございます。これば相互に工業所有権を保護しようというのが趣旨でございまして、各国がいかなる制度をとっているかということは各国自主的にきめていけるわけでございます。したがって、たとえば審査制度をとっておる国もございます。あるいは少数でございますが、無審査制度の国もあるというように、制度そのものは各国まちまちになってきております。最近はなるべくそれを統一する方向に、非常に国際間の交流が緊密になりましたので、制度を統一する方向にいったらいいのではないかという思想が芽生えてきておるのが現状でございます。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特許法の問題はその程度で、あと一つ鉱害の問題が出ていますからちょっとこれお聞きしたいのは、実は私のところの近所ですけれども、栃木市というところで、鍋山の石灰の鉱害の問題が起きて、衛生上悪い、生活ができないというので、住宅が移転したいというふうなことを言ったり、いま問題になっているわけですね。これに対して通産省としてはどういう態度をいままでとってきているのか、どういうふうにしょうとしているのかというふうなことを概略をお聞かせ願いたいと思います。
  124. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) ただいまお話のございました石灰石工場でございますが、これは先生もお詳しいと思いますが、鍋山地区に五つの、従業員数で百人程度の中小鉱山がございまして、それぞれ鉱業権を持ちまして石灰石の採石をやっておる。それから採掘しました石灰石を消石灰の製造まで一貫して仕事をしている。そこで工程的に申しますと、生石灰を消石灰にいたします段階で、これは一般的にそうなんでございますが、非常に粉じんが発生しやすい、こういうことでございます。で、鉱山保安法のたてまえからいたしますと、まず沿革的には鉱山内の災害、労働者災害というものに重点を置いて法規がつくられまして、二回目にだんだんと第三者に対する問題も出てまいりまして、その際やはり一番大きな問題になりますのは、鉱山排水の問題と精錬所を中心にいたしました煙突から出る鉱煙の問題、付随しましてたとえば堆積場の水の問題というようなことで、いままで特に関心を払ってきたわけであります。もう一つは、石炭採掘の場合のような地盤沈下によります地上権の問題、この辺がいままでの問題であったわけでございますが、最近石灰石工場というのは概してこういう採石現場に近いところで行動している関係か、第三者との関係はあまり生じない場所に立地しておるのが通常であったわけでございますけれども、漸次市街化が進んでいくというような問題から、第三者問題も起こりやすい状態になっております。ことにいま申しましたように、非常に簡単単純な工程を中小規模でやっておりますために出ます粉じんというものは、その辺の周囲が非常に白くなる、これは非常に激しいものであることは、私どもも、もし住宅等が近接している場合にはたいへん問題になるということであらゆる石灰山を、あるいは石灰工場を見ているということではございませんで、どっちかといいますと、そういう問題を起こしやすいところに重点を置いて監督指導等を続けてきた、こういう形でございます。したがって、新しい石灰工場のようなものにおきましては、集じん装置を初めから設置してやっておるというような事例も最近では多くなっておりますし、また、そのような指導を進めてきておるわけでございますが、鍋山地区は、大体同地区にある住宅が八十戸前後というふうに承知しておりますし、大半が従業員の住宅であったり、あるいは鉱山へ物を納めている商店であるというようなことで、それほど問題は起こらないのではなかろうかという感じを持っておったのでございます。最近御指摘のとおり、新聞記事になったりしたというようなことから、先週私どものほうの、東京鉱山保安監督部へ鉱業権者を呼びまして、対策を相談しておる状況でございます。そのときに、わりあい鉱山と縁の深い方々が主体であるから、思い切ってすぱっと粉の飛んでこないところへ動きたいというような空気もありまして、鉱業者自身もそれを望んでおるかのような感じでございます。これはしかしなかなかむずかしい、八十戸にしても移転をするというむずかしい問題もあろうかと思いますので、もしそれをただ、移転をするから、それまでは現状でがまんするのだということで移転が進まないということは、私は問題があろうかと考えておりますので、むしろ集じん機をつけて、これは一〇〇%きれいになるとは申せませんけれども、大部分のものを防止するという観点で、現実の対策を進めていったほうがよろしいのではないか、ことに鉱業権は五つに分かれておりますけれども、何も石灰工場が五工場なくてはならないという筋合いのものではないと思います。中小企業の近代化ということを考えました場合に、たとえば集じん機取り付け等に非常に金がかかるということでございましたならば、これを機会に、もしそういう話ができれば、二つで一つにやっていくというようなことも、これは一つの中小企業対策として併用しながら進めていくということをやるべきではなかろうかと、かように考えておる次第でございます。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの通産省が集じん機ですか、それを取りつけるように行政指導だと思いますが、したのはいつごろしたのかということと、それで、だれとだれとだれを呼んで、どういうことを言って、呼ばれた会社側はどういう返事をしていったのか、そこら辺をお聞かせ願いたいと思います。要点だけでけっこうです。
  126. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 率直に申しまして、先ほど申し上げましたように先週のことでございます。鉱業権者は五人とも出てきたようでございまして、集じん機を取りつけろということについては、一緒になってひとつ相談しよう、こういう態度であるように、保安監督局から私のところに報告がまいっております。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一つの例をとってみても、そうすると、いまのような場合でも通産省のやり得る限界というものがあるわけですね、あとは通産省とか建設省とか、各省でやるんですか、いま通産省のあれだから、通産省のやれるところまでお聞かせ願いたいと思うのですが。ほかはほかですからまた。
  128. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 一つには公害問題というのは、だんだん社会が複雑化して都市化が進んでいく、こういうことで従来考えておったようなもの、法規だけでは律しされないという問題が出てくるかと思います。たとえばいま国の持っております法律では、騒音については法律を持っていない、基本法中心にしてそういう議論も出てきておる、先ほど申しましたように、鉱山保安法の中における鉱害についても、いまのような石灰石工場の粉じんをダイレクトに規制するという条項は、いまのところでは、まあ無理してほかの条項読めば、読めないでもないということはございますけれども、直接それを念頭においたというような規定はない、その意味では不備、こういう社会情勢の動きとともに、逐次これは省令ベースでやれますので直していくべきだと考えております。それが私どもとしてまず考えなきゃならぬことだろうと思っております。  それから法律的な規制の外でございましても、いま申しましたような集じん機をつけさせる鉱業権者のほうに若干の、これは経営的には確かにそういう感じもあろうかと思いますけれども、逡巡するところがございましても、十分に納得させながら指導していくという方法があろうかと思います。その際に、たとえば設備の融資というようなことでございますと、中小企業金融公庫の融資でございますとか、近代化融資だとかいう手だては、通産省のほかのファンクションとして十分併用さしていく。それから住宅移転というようなことになってまいりますと、これはそれぞれの関係者のほうに私のほうから実情を申し上げて協力をしていただく、こういうことになろうかと思います。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これで終わりますけれども、いまの集じん機というのは幾らぐらいかかるのですか。幾らぐらいかければ大体ある程度完全になるのですか。
  130. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) これは実は、集じん機と申しましても非常にピンからキリでございまして、たとえば化学工場等で使っておられるコットレルというものになりますと、採算性だとかいろいろなものが、これはもうたいへんな金額になるのでございます。この場合は石灰でございまするが、ただ工程中非常に高い熱を発するというようなことがございますので、どれくらいの集じん機が経済的でありかつ効率的であるかというのは、実はこれからもう少し詰めたいと思っておるところでございますが、監督部ではまあ二百万から三百万ぐらいでやれるのじゃなかろうかという感じを言っております。ただし、これは集じん機をほんとうに働かせますためには、いまの建屋――私は見ておりまんけれども、おそらく古いものだと思いますので、すき間があるものじゃ働かない、気密にするために、やはり建屋の補強が相当要るのじゃないか、それらのことを考えるとかなりな額になり得る可能性もあるわけでございます。
  131. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  132. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。  それでは午後一時三十五分再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十分開会
  133. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 委員会を再開いたします。  外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引続き質疑を行ないます。関係当局からの御出席は、三木外務大臣、各政府委員の方々でございます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  134. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて大臣中心に二、三お伺いしたいと思いますが、前回主として法案に直接関係の面についてお伺いいたしましたので、この際は二、三外交問題についてもお伺いしておきたいと思います。  まず、核拡散防止条約でございますが、この問題は衆参の予算委員会とか、あるいは外務委員会ですでに相当深められて論議されてまいりましたので、私はそういう重複を避けて、別の角度から簡明に一、二お伺いしたいと思うのであります。まず、この拡散防止条約の問題ですが、ジュネーブにおける十八カ国の軍縮委員会は再開されたわけでありますけれども、期待される核拡散防止条約の草案は米ソの意見調整がなかなかつかないままに結局提出されなかったと思うわけですが、そこで一部には、なかなか今年中はこの問題は無理であろう、そういう見通しを出しておる者もあるやに承っておるわけです。そこでお伺いしたいのは、この条約の今後の見通しについてはどういうふうにお考えになっているか、この点からまずもってお伺いしたいと思います。
  135. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も伊藤さん、見通しが立たないんです。それで田中大使を送ったわけです、様子がどうなっているのか、それをやはり報告してもらいたい、もうジュネーブに着いておるのですが、いま各国の代表者に会うような態勢で、いずれ見通しの情勢に来ると思いますが、どうも米ソがやっているわけですから、どういうふうに一体いつごろまでに米ソの妥協が成立して草案が出せるのかどうか、現在のところはちょっと見通しが立たない状態でございます。
  136. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この問題については、三木外相はこれまでに、いま御指摘がございましたが、どうも西村特使を派遣されたり、あるいはフォスター米軍縮局長官、あるいはブラント西独外相、あるいは駐日ソ連大使、こういう方々との会談を通じて日本政府の意向を条約草案の中に盛り込むように相当努力はされてきたと私ども思うわけです。ただ、本問題に対する今後の外務省としての取り組む態度は一体那辺にあるのか、その取り組む態度についてお伺いしておきたいと思うのです。
  137. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) こういう核兵器の保有国が次々にふえていく事態は核戦争の危険を増大する。精神においては賛成する、この条約に。しかしながら、ほかの、たとえば核の、原子力と言ったほうがいい、原子力の平和利用なんかについては、日本は核兵器を持とうとは思ってないけれども、原子力の平和利用に対しては相当進んだ段階にもあるし、将来も日本は原子力発電などに対しては非常な将来発展していく計画を持っておるわけでありますので、こういうことによって、この条約に加盟することによって、そういう平和利用の面における阻害を受けてはならない、こんこまもう念こま念を入れておきたい。だから無条件というわけではございません。基本的には賛成であるけれども、これは核兵器を押えようというのだから、それ以外の目的のためにこれが阻害されるということでは困る、こういうのが基本的な立場でございます。それと同時に、核兵器を持っておる国はやはり段階的に核軍縮を行なって、核兵器保有からくる人類の脅威を緩和すべきである、こういうのが基本的な立場でございます。
  138. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政府としては、ジュネーブの軍縮委員会に参加したい旨の意向を正式に表明してきておるわけですが、だがしかし、いまだ実現を見ていないと思うんですが、この軍縮問題に対する政府の熱意はどうも私どもから見ますとまだまだ足りないのではなかろうかと考えられるわけですけれども、この点に対しての大臣のお考えをひとつこの際お聞きしておきたいと思います。
  139. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 気持ちの上では持っているんですね、日本は核兵器などに対してはこれだけ神経過敏な国はないんですから、気持ちは持っているんですが、軍縮委員会にも参加しておりませんし、そういう点で軍縮というものに対する取り組み方がいままで足りないと私は思っている。この問題については今後外務省における、軍縮担当の係官もおるんですが、こういう機能は強化していきたい、そうしてやはり核禁止ばかりでなしに、一般の軍縮についても日本は将来世界に貢献できるような立場をとりたいと考えておるわけでございます。
  140. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで重ねてお伺いいたしますが、政府としては、この軍縮委員会に参加したい旨の意思は表向き表明しているわけですが、まだ実現していないことは、いま御指摘したわけですが、そこでこの見通しはどうなんですか。大体参加できる見通しになっているのかどうか、なかなか困難な問題なのか、この点をこの際お伺いしておきたい。
  141. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 従来、軍縮委員会のメンバーはトロイカ方式というようなことで、自由世界のメンバー、共産圏、中立というので、一国が入れば一緒に三カ国入らないとバランスがとれぬというような考え方で、なかなか日本一国だけの加入ということではなくして、影響するところが多いので、そう簡単な問題ではないわけです。まあ、しかし、いまさらトロイカ方式でもないではないかと私は言っているわけですが、なかなか軍事世界の、まだ東西のバランスというものが現実にやはりあるわけですから、だからなかなかこれが簡単に実現するとは思いませんが、今後ともあらゆる場で日本をメンバーにするようにひとつ賛成をしてもらいたいという努力は続けるつもりでございます。
  142. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 日本の憲法から考えても、世界において軍縮を通じて世界の平和を実現しよう、こういうことを主張する、この国としては日本ほど適当な国、かっこうな国はなかろうと当然に考えられるわけです。外務省はたしか昨年であったと思いますが、当委員会で軍縮課の設置を要求されたと思うのですが、とりあえずそれができないので軍縮室ですか、軍縮室を設けてこの軍縮問題の検討を始めるのだという意味の御答弁があったわけです。そこで考えますと、ことしもこの軍縮課は実現していないというのが実情だと思うんです。そこで、この間に先ほど御指摘のあった田中大使を軍縮担当の大使として任命したわけであろうかと思うんですが、少なくとも私ども考えるには、軍縮局ぐらいを設置して、この際軍縮実現のための専門的な検討を深めることが必要ではなかろうかと、かように考えられるわけです。前のは軍縮課ですが、そういうものではなく、せめて軍縮局くらい外務省に、この際平和実現のために軍縮局を設けようとするお考えはあるかないかということをお伺いします。
  143. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまようやく軍縮室ができたばかりですが、将来この機能は拡充していきたいと思っております。まだ課もできませんですから、いきなりこう局というのも飛躍し過ぎますが、この一つの機能は将来強化していく必要があると考えております。
  144. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこでさらにお伺いいたしますが、軍縮実現に至るまでの道程を外交上いかに進めるかということについて、過去の経緯とかあるいは具体案等を専門的に検討して、この検討の上に立って軍縮問題に対する確固たる政府の方針を確立する、こういう態度が当然に考えられるわけです。そこでお伺いしたいのは、今回の核拡散防止条約についても、わが国の態度もそうすることによって明確に打ち出すことができるのではなかろうかと、こういうことが考えられるわけですが、このことについて大臣のお考えをお伺いしておきたいと思うんです。
  145. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 最後にはやはり全面的軍縮条約というものを締結する必要がある、さように思います。それまでには段階的にいろんな段階がある。たとえば核兵器については地下爆発などはいま許されておるわけですが、これに対しては何かやっぱり査察の問題で、地下爆発というものの――核停条約の中に地下爆発が入らなかったわけでありますが、これにはいま国連の機構ではないですが、スウェーデンの提唱になる核探知クラブというものがあって、日本もこれに熱心に協力しておるわけです。こういうので何かオートマチックにそういう地下爆発に対する査察ができないかというような研究もやっておるわけです。こういうことでやはり核軍縮という場合に、地下爆発の禁止というところまで、これは核停条約を広げていく必要がある。そのために問題になってなかなか解決を見なかった査察の問題を解決するためには協力していこう、いま現実に日本が協力してやっておるのはこういう点でございますが、やはり段階的に日本は軍縮に対する日本の考え方も固めて、こういうふうな段階的な軍縮を行なうべきだという日本の案は、これはっくり上げなければならぬと私は思っております。
  146. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もありますので、次の問題をお伺いいたしますが、日米安全保障協議委員会については、去る十五日に開かれたわけですが、この日米安全保庫協議委員会ではいかなる問題が議題とされ、そうして討議されたのか。新聞の報道によりますと、アメリカ側ではベトナム問題について、それから日本側としては日米安保体制をめぐる国内諸論に、あるいはまた第三次防整備計画、こういうことが提議されたようでありますが、会談の内容について詳細は無理でしょうから、そのごく概要について御説明いただきたい。
  147. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ベトナムが、こういう極東の中において一番ベトナム問題というものが大問題になっておるわけでありますから、アメリカ側からベトナム情勢に対して報告があって、それはアメリカは常に和平の機会をねらっているんだ、北ベトナムの政権を力によって転覆さしたりする考えはない、北ベトナムの政府は北ベトナムとしてやっていけばいいので、この政府の転覆を考えているのではない、アメリカが望んでおることは南ベトナムの独立と自由というものが確保されなければならぬ、これにアメリカの大統領も三代にわたって南ベトナム政府の要請を受けて、アメリカはこれを援助するという約束をしたので、それがわれわれの行動の限界であって、だからこの考え方を誤りなくハノイというものに伝える方法はないかどうかということで、むろん軍事行動も続けておるけれども、やはり軍事行動だけによって問題が解決できると思っていないので、いま言ったわれわれのほんとうの意図というものをハノイに伝えたいという努力をしておるけれども、手がかりはないのだ、しかし、常に和平の機会をつかむために努力していきたいというようなことが、大体のベトナムの紛争に対するアメリカの態度として説明を受けたわけでございます。こちらの日本側としては、安保条約、これをどうすべきかという意見ではなくして、各方面の安保条約に対する見解、これはわれわれのほうとして安保条約をめぐる日本国内における各方面の意見というものを紹介して、自民党は安保条約を今日の極東情勢のもとにおいてこれを破棄するという考え方はない、安保条約を堅持していかなければならぬと考えている、こういう各方面の意見と自民党の考え方を述べたわけでございます。また、三次防についても触れて、三次防は大体こういう考え方で三次防というものを行なっていくんだということを述べたのがこの会談の内容でございます。
  148. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 報告ということでありまするので、この問題についてはまた後日機会を見て詳しくお伺いすることにして、この委員会については、今後大体一カ月に一回ぐらいの程度で引き続き行なわれるよう話し合われたというふうに新聞で報道を受けたわけですけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  149. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一カ月に一回という、開く考えはありません。一年に二回ぐらい、一年に一回でございます。
  150. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いしたいのは、外務省かう牛場事務次官とか、あるいは東郷北米局長、それから防衛庁から三輪事務次官、あるいは天野統幕議長、それからアメリカ側からジョンソン駐日大使とか、あるいはマックノートン国防次官補、あるいはマッキー在日米軍司令官、これらの方々が日米両国政府の外交、軍のいわゆる関係の方々が一つは日米安保条約の運営に関係する具体的な諸問題の検討、それからベトナムを焦点とする極東の軍事情勢の突っ込んだ分析、こういうようなことのために五月二十五日から二日間東京で協議が持たれたというふうに聞いているわけですが、そこでお伺いしたいのは、日米両国政府はまだこの会議のあったことも公表していないという、これは二三日前の時点ですから、その後公表されたのかどうかという点が一つ。  それから、その構成メンバーとか、議事の性質から見て、これは現在の日米安全保障協議委員会と並行していわゆる安全保障問題をより専門的に検討するものではなかろうかと、そういうふうに考えられるわけですが、この点はいかがですか。
  151. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは公表いたしました、会議のあったことは公表いたしたわけでございます。そして、この会議は安保協議委員会、これは一年ごとに私開きたいと思っております。この会議は、これはまあいま言った国防次官補が日本へ来た機会に、外務、防衛庁、その次官が参りまして、極東情勢、いろいろ話し合ったということで、これを定期的にしようという考えはもっておりません。この会議が安保協議委員会の下部機構として考えておるものではないのでございます。
  152. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この会合は、政府としては日米安保協議委員会の、いわゆる下部機構としての軍事専門委員会の、そういう新設を意味するものではないと思う、こういう意味のお答えはあるわけですが、さらに一歩突っ込んで考えますと、日米のこういう出席者の顔ぶれから見て、内容から見て、まさしくこれは協議委員会の下部機構としての軍事専門委員会の性格を多分にもったものであると断定せざるを得ないわけです、私どもから見ると。政府はどのようにおっしゃろうとも、われわれからは一応そういうふうに考えられるわけです。そこで、こういうことが私の指摘したとおりだということになると、日米両国の軍事的つながりはますます深くなってくるということを意味するものであろう。そういうふうに当然に考えられるわけですが、この点について、外務大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  153. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日米両国は、安全保障条約で日本の防衛の責任をアメリカがもっておるわけでありますから、そういう意味において、すでに軍事的つながりをもっておるわけですね、アメリカとは。それならば安保条約、あるいはまた、行政協定などによってわれわれが結んでおる条約、協定以上に軍事的なつながりができるかというと、そうは私は思わない。それはなぜかと言えば、日本の憲法で、そんなにむやみに日本は軍事的な、いかにアメリカとの間に安保条約を結んでおっても、それは憲法、条約の範囲内でありまして、それを逸脱することはできませんから、だから非常に日米間が軍事の面において、非常な結びつきが強くなるといっても、それは憲法、条約の範囲内に限られ、それを超えることはできない。いかにベトナムの紛争が今後激化しましても、ベトナムに対する軍事的介入は日本は絶対にできない。そういうことですから、いろいろ御心配になっての、いろいろ相談して、日本側が軍事的に深入りするような相談ができたのではないかという御心配であるとするならば、そういうことはできないですからね、日本は。そういうような会議というものは、いかにアメリカの国防省からどういう人がやってきたにしても、日本は条約と憲法の限界内でなければ日米の協力はできないので、あまり御心配になるようなことではないと御了解願いたいのでございます。
  154. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御答弁のとおりそのまますなおに受け入れると心配なさそうですが、なかなかそう簡単に安心するわけに相ならぬわけで、どうもその顔ぶれから当然そういう濃厚なにおいが出てくるわけですね。特に日本のいまの問題になっておる第三次防などとの緊密な関係が当然に考えられるわけですが、そういうような点についていかがですか。
  155. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いま申したように、日本の、私は基礎は、やっぱり平和――平和という、これほどやはり神経質に平和というものに対する国民的期待といいますかね、それを特っておるのは珍しいくらい平和というものに対して、これはもう基礎ですよ。国民のこの平和主義的なものは、憲法でもそうでありますが、憲法以上のものである。国民の胸の中にこれは焼きついておる、平和主義というものは。それがまた憲法を、それを裏書きする、日本の軍事的行動というものを、非常な制約を加えている。国民の中に定着したこの思想と、憲法の中における制約、これはもう何をやろうが、やはり日本はそんな、それを逸脱するようなやはり相談をやったり、行動を起こしたりすることは絶対にできない。これは伊藤さん、御安心を願いますよ。それはたいへんなものですよ、これは。思想と憲法による保障である平和主義。これはもう、これを打ち破るようなものが出てきたらば、それは国民は許すものじゃないですから、そうあまり三次防がどうだこうだといって、あまり御心配をなさらなくても、日本の現在及び将来、この平和主義というものに対しては、私は確信を持っておるものであります。
  156. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これもそのまますなおに聞いておりますと、そういうふうな気もせぬこともございませんけれども、現実の問題として、いま憲法論議を進めようとは毛頭考えておりません、いまは議題にはずれますから。だが、しかし、日本の憲法が、いわゆるなしくずしに空洞化されてきておる。そういう現実を踏まえて、さらに第三次防、現実の問題として提起されている問題、こういうことを結び合わせ、考えた場合に、当然に不安感に襲われるわけです。これは現実の問題としていま大臣は弁説さわやかにいろいろ安心なさるようなことをおっしゃいますけれども、現実はなかなかそうでない。憲法も長い間に空洞化されてきたという、こういう現実、こういうことからして、なかなかもって簡単には安心できないわけです。この点についても、さらにひとつお考えを深めてお答えをいただきたいと思います。
  157. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 三次防の、この予算の中に占める割合は七%ですからね。これはこの間もパキスタンの外務大臣が来まして、予算の中で六割を占めている、軍事費が。いま四八%だと言っておりました。たいてい二〇%をこえる国ばかりです。一〇%以下という国はないんですから。だから三次防なども日本の今日の国のスケールというものは防衛の対象になるわけですからね。それからしたらそんなに伊藤さん御心配になるような大規模な軍備拡充計画ではないですよ。どこにもないんですよ、一〇%以下の軍事費というものは、予算の中で。そういうことで日本の平和主義という国民の思想の柱、これがやはりぐらぐらするようなことは絶対にありません。それだから、どうかこの点については御安心を願いたい。日本は軍国主義の国には絶対にならない。それはまた、いまの現実がそんな大きな規模のものでもない、全体の予算の割合から見れば。
  158. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この論議については短時間で深めることもむずかしいようで、後日の問題として保留しておいて、次にいま一点だけお伺いしておきたいと思うのです。  その問題は、関税引き下げ問題に関連して、五年間にわたってのいわゆる関税一括引き下げの交渉が一応終わったと思うわけですが、そこで貿易に生きる日本の立場から低開発国へのいわゆる援助を主体とする南北の問題、あるいはまた、共産圏貿易を中心とする東西問題、今後ますます経済外交を強力に推し進めなければならぬ時点となってきたと思うのです。そこでお伺いするわけですが、いわゆる民間の経済界のいま問題になっておりまする資本自由化の波に対処するために、たとえば技術革新とか、いわゆる企業の合理化、こういう問題に追られているわけです。そこで政府も各省のいわゆる国内経済政策を調整した上で強力な経済外交を進めなければならぬ、こういう時点に立ち至っていると思うのです。そこでお伺いしたいのは、このことに対して外務省としては、どういうふうに基本的にお考えになっているのか。このことについての基本的なお考えを御説明いただきたいと思います。
  159. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今日、国際経済の中で日本が――国際経済ばかりではなしに、国際政治と言ったほうがいいかもしれぬが、置かれている立場ですね。先進国から資本の取引の自由化を、やはりこれはOECDに加入したときには留保条件をつけて、この点については留保条件をつけているけれども、その後、日本の経済というものはなかなかやはり発展をしているのではないか、この留保条件というものをだんだん撤廃する時期ではないか、こう先進国から見られる。後進国からは、世界に類例のないような経済成長を遂げて、そうして日本の経済というものは非常な発展を遂げているのではないか、もう少し低開発諸国に対する日本の寄与を増大したらどうか。――両方から攻められているわけであります。また、これは一つの大きな世界の流れだと思いますね。無理難題とは言えない。しかし、だからといって、日本の資本取引の自由化といっても、日本の産業自体非常な致命的な打撃を与えて、そして国際的な約束であるからというわけにはいきません。だから、大きな世界の流れと国内産業というものをどのように調和しながら世界の潮流に、まあ世界の流れに沿うていくかというところに経済政策のむずかしさがあると思います。そこで、やはり今後の経済政策の中心は、日本の産業というものが国際競争力を持つということだと思うのですね、国際競争力。そうしてやはりますますいろいろな制約をはずして、もってほんとうの開放的な世界経済の中に入っていっても日本がやはり競争力を持つような産業体質を持つ、こういう方向が一番やはり確かなよりどころだと思います。そうして一方においては、そうやって日本の産業がますます高度化していくならば、低開発諸国のいろいろな要望に対しても、日本の産業が高度化していって体質を改善して、そうしていわゆるまだ労働集約的な産業に対しては低開発国が活躍のできる余地をだんだん拡大していく、こういうことが産業政策の方向だと私は思っております。
  160. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後に、一点だけさらにお伺いしておきたいと思うわけです。  外務大臣の提唱されておりまするアジア太平洋圏の構想について、ごくその内容を御説明願いたいと思うわけです。それと、この構想にしても、国内のいわゆる経済協力体制の整備などが重大な問題でありまして、激化をたどっておるベトナム紛争に隠れて、いまややもすると後退したかに見える中国問題が、日本がやがて直面する戦後最大の課題であることは説明を要しないと思うのです。そこで、こういう問題をあわせ考えてきたとき、外相がこのための地ならしをどのように一体なさろうとしておるか、こういうことについてもひとつあわせてお考えを御説明いただきたい。
  161. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあこれからの世界の最大の問題は南北問題だと私は思っております。むろん戦争と平和の問題が一番大きな問題ですけれども、戦争と平和の問題は、南北問題によってやはりそういう戦争、平和という問題とが非常に密接に結びついておる。だから、南北問題の解決に向かって先進諸国はやはり全力を尽す責任がある、平和の維持のためにも。また、さらに世界の発展のためにも必要がある。そういう場合に考えてみますると、まあアジアですよ、われわれが一番関心を持っているのは。アジアというものは、これは日本だけですからね、先進国だと言われるのは。先進工業国は日本だけですから、日本だけでアジアの開発に対して責任を持つべきだといっても、これはやはりそんな力日本にないですから、どうしても。アジアの動向に対して関係を持ち影響を受ける地域、それはやはり太平洋地域だと思うのです。このアジア太平洋という、こう広い広さでアジア問題を解決したいと、そうでなければこれは解決できない。ヨーロッパといってもアジアは遠いですから、アフリカのほうがずっと関心があるのです。ところが、こう太平洋の先進諸国というものはアジアの動向というのが非常なやはり直接の影響を受けるのですから、これをやはり結びつけたアジアの南北問題解決のためのアジア太平洋というものが結びつけられないか、それ以外に道はないのではないか、これは私の悲願であります。しかし、いきなりそこに何か行くというのには、やはり一つにはそういう連帯の気持ちというもの、この地域に対する連帯感というもの、これはやはり助長していかなければならぬ。また、アジア自身も人のふんどしで相撲取るようなことばかり考えてはだめですから、自分もまたやろうという、こうしてやろうという考え方を少し地域的に広げて地域協力というやはり体制も進めなくてはいけない。そういう空気が現に起こっていますわね。日本もやはりできるだけのことはやったらいい。アジアの地域協力を推進するために、また、このアジア太平洋諸国、――アジア太平洋諸国でなしに、太平洋の先進諸国、太平洋先進諸国、こればお互いに貿易の上においても一番貿易量が多い相手ですから、これがますます貿易の自由化を目ざしてこの結びつきを強化していったらいい、こういう幾つかの側面がある。この側面を外交的に推進しながら最後はやはりアジアと太平洋先進諸国を結びつけてアジアの南北問題を解決することが世界の平和への寄与になる。世界の繁栄へのこれは貢献である、これは私の確信でございます。だから、こういう線に向かって今後外交をいろいろな側面から進めていきたいというのがアジア太平洋外交であるわけでございます。
  162. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法案に入る前に、少し一般的なことについてお伺いしたいのですけれども、私もわからないことが非常に多いものですから、教えていただくという意味においてひとつお伺いしたいと思うのですが、一つはいまのベトナム紛争ですね。ウ・タントさんが盛んにこのごろ言われているのが、これが拡大していって、あるいは米中衝突から非常に大きく世界的な戦争になるという、そういうような危機があるのではないかという意味のことを、これは公式か非公式かはっきり知らないけども、言っておられるようにまあ聞くわけですね。それでこういうふうなことでベトナム紛争というものが将来どういうふうに見通しとしてなっていくかということをどういうふうに把握されておりますか。私どもは、ウ・タントさんの言っておることを私は正確には把握しているわけではありませんけれども、あの人が言っておることは少し心配し過ぎだというふうにも大臣としてはお考えになっているのか、そういう点はどうなのですか。
  163. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ私はこのベトナム戦争が米中戦争に発展したり、それからこれがまた世界的な、大国が介入した戦争に発展はしないだろうと私は見ているのです。米中ともにそういうことに対しては意思がないと言っている。米中戦争などは考えていないと両方とも言っておるのですから。しかし、戦争自体が力を持っていますから、戦争は当事者の意思にかかわらず戦争自体の勢いがあるわけですから、だからこれはもう何も世界的な大戦争に発展しないのだと楽観しないで、早くこの戦争を終わらすための努力をすべきだと思っております。ただまあこれは結局は、将来の問題というものは民族自決の原則によるべきだと思います。その将来の運命をきめるものはベトナム人だと思いますが、いまはまだきめられるような、みんな外からの影響を受けておるわけですから、自由に将来ベトナムの将来というものをきめられるような客観条件はないわけですね、北も南も。そこでひとまずはやはり十七度線というあれを、境界線を境にして、そして停戦をやり、そして話し合って休戦というものへ持っていくことが解決だと思っております。戦争を続けても、アメリカが地上兵力を入れてハノイ政権を転覆さすということは私はアメリカはしないと思っております。断じてすべきでないと思っております。地上兵力をあそこに入れるべきでないと思うのです。そういうことになってくると、その十七度線以上に地上兵力を入れて、これをどうしようということはアメリカも考えていないでしょうし、できるものではないし、ホーチミンはまた南を共産化したいと思っているかもしれぬが、それはできるものではないわけです、いまのところ。そうなってくると、最後のやはりベトナム問題の暫定的解決の青写真というものはあるではないか。ここで一応両方が話し合いがつかないであろうかということを、まあ非常に絶えず考えるわけでございます。お互いに、北からすればアメリカがいまにももう攻めてくるのではないか。そうしてもうアメリカの大軍が永久に南ベトナムにおって、そうして撤退しないのではないかとか、いろいろなこう猜疑心を持っている。南からすれば、ベトコンを助けて南政府の安定というものを常にこいつは阻害しようという挙に出てくるのではないかということで、相互に不信感情があるわけです。これをハノイにもアメリカにも説いて、あるいは南ベトナムと言ったほうが適当かもしれぬが、説いて、そうして何かここで戦争を終わらせるような努力はできないものか。そうしてこれはまた可能性は私はないとは思わぬのです。結論というものがもうきまっているのですからね。暫定的にはそこで解決するよりほかにないわけですから、そういうことでこれはやはり各国が平和に関心を持ち、各国みんながやはりあきらめないで努力をしていくべきだと、こう考えております。
  164. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アジアの一員として日本が究極的に考えるのは、南北ベトナムが民族自決で統一する、そういう方向にもっていくことが一番望ましいわけですね、お話によると。私もそう思うのですが、そのためには日本がどういう態度で具体的にどういうことをしたらいいのかということが一つ出てくると思うのですね。それと、そのことが一体ベトナムの統一というか、その内政に対する干渉となるのかならぬのかという点なんですよ。ベトナム戦争――戦争と大臣も言ったからあれですけれども、戦争でなくて紛争かもしれませんけれども、そもそも日本がどの程度関与できるべき筋合いのものか、内政干渉と言われない範囲に関与できるのはどの程度のことなのかということが一つの問題ではないかと思うのですが、どの程度のことをどういうふうに日本としてはやっていくことがアジアの一員としていまの民族自決に役立つことなのかどうかですね。
  165. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは一日も早期に和平をもたらすためにはどんなことをやっても内政干渉だとは私は思わない。平和のためにどんな努力をしてもそれが内政干渉だということにはならない、こう考えております。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ベトナムの民族自決、統一、それに対する働きかけが内政干渉にならない、まあそれはそれとして、しかし日本が、一方の当事者である南ベトナムではないにしても、アメリカに加担をした形でいろいろ協力しているわけですね。そういうようなことをやっていながら、両方が十分統一できる、和平できるようになるようにと、こう言ったところで、相手方両方だってそれは問題としてすなおにとらないのじゃないですかね。いま現実には日本はベトナム紛争にどういうように協力をしているのですか、いろいろな面で。
  167. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは安保条約からくるわけです。ベトナム戦争の前から日本は安保条約を結んだわけですから、安保条約の範囲内での協力、安保条約による協力でありますから、そのことがベトナム和平のために努力することに、これはもう日本はそういう資格はないと私は考えない。そうなってきたら、世界では非同盟国だけということになる。イギリスだって一生懸命にやっているが、NATOの有力なメンバーではないか。そういうふうに言えば、もう非同盟諸国だけがこの問題に対して言える国だということはちょっと――、そういうふうに考える必要はないのではないでしょうか。日本はベトナム戦争が起こってから、にわかにベトナム戦争の影響を受けて日米の安保条約を結んだのではないのですからね。日本の安全保障政策から安保条約を結んで、そのあとでたまたまこういう不幸な事件が起こったのですから、そういう意味で、それは多少いろいろな障害にはなるかもしれませんが、そのことで和平のために努力を日本がする資格がないとは私は考えない。ことにアジアの一員でもありますし、日本がやはりよそのヨーロッパ諸国よりも、何かこの戦争に心を痛めておるというのは、われわれのほうがもっと心を痛めているかもしれませんからね、そういうふうには考えないでいいんじゃないかというふうにこう思うわけであります。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安保条約ができたときにはもちろんベトナム紛争というものは想像していなかったわけですがね、現在安保条約によってベトナム紛争に日本が協力しているといわれるのですけれども、安保条約ではベトナムはいわゆる極東の範囲内ではないということを盛んにいわれておりますね、ベトナムは極東の範囲内ではないのだけれども、そこで安保条約によって日本がベトナム紛争こ揚力するというのはどこから根処が出てくるのですか。
  169. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) たとえば協力というのは軍事的な直接な協力ではないのです。それは日本を作戦基地に使うならば安保条約の事前協議の対象になる。しかし、何ですかね、給油したり、向こうの輸送機が羽田なんかに寄って給油したりする、そういう点に対しては、向こうのやはりそういう飛行機に対して便宜を供与する約束になっておりますね、そういうふうないわゆる直接ベトナム戦争に介入するというふうな形の協力ではないのです。安保条約あるいはそれに属する協定による日米間の協力の約束、そのことだけを日本は果たしている、特にベトナムに、積極的にベトナムのこの戦争に協力しているという、そういうことはないのであります。
  170. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、間接的にはベトナム紛争の一方の当事国に日本も協力していると、こういうことにはなるわけですか、それは認めてもいいわけですか。
  171. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ結果的に見れば、そういうふうな協力といいますか、安保条約から来て、その安保条約というものがアメリカに対しての便宜を与えることになるのでしょうから、まあ回り回っての議論ならば、協力といえるかもしれません。しかし、直接的な軍事的な日本は協力はしていない、武器も渡しておりませんし、それからまた、そういうふうな作戦の基地にもなっておりませんしね、そういう点は直接にアメリカの軍事行動に協力しているのだというようなことばは表現として実際適当ではないのではないかと、こう思います。
  172. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカの軍用機なんかもいまの補給の問題にしても、それからけがした場合の療養の問題もあるだろうから、けがの問題はちょっと違うかもしれませんが、人道的な意味も加味されるかもわかりませんけれども、補給の基地としてあるいは兵たん基地といいますか、そういう形で安保条約上協力しているわけでしょう。しかし、それは日本の安全に関係があるということでなければ協力できないのじゃないですか、日本としては。そうすると、ベトナム戦争にそういう形にしろ協力しているということは、ベトナム紛争がひいては日本の安全にも現在――現在ですよ、現在関係があるからということでないと協力ということばが筋が違ってくるのではないですか、そこはどうなんでしょうか。
  173. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはいまのベトナム戦争というものはやはりもし戦争でも拡大すれば、これは非常にやはり将来の日本の安全、極東の安全にも影響するでしょう、だから、ベトナムの戦争が極東の安全に無関係だとは言えないと思うのです。これは範囲に入るとか入らぬということは別にして、ベトナム戦争というものが極東の安全に対して、やはりあの戦争というものは、将来もしも拡大すればそういう危険は非常にあるわけですね、やはり極東の安全に対して非常なやはり関連を持っているというふうにあのベトナム戦争は見ざるを得ないのではないかと、こう思うのであります。
  174. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、将来の問題は別としてですね、現在の時点でベトナム紛争が極東の安全に関係あるかどうかということですね。現在はないということですか。現在はないけれども、将来どうなるかわからない。将来は、これは拡大してくれば極東の安全に関係してくるかもわからない、こういうこととお聞きしてよろしいですか。
  175. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはり現在も、ベトナムの紛争、これだけやはり激化していますから、やはり極東の安全に影響を持っているとわれわれは判断をしているわけでございます。
  176. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとくどいですけれども、極東の安全に関係がしているというのは、いまの段階でですね、具体的にどこがどういうふうに関係してくることになるのでしょうか。
  177. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、なんでしょう、いままあベトナム戦争が南だけの範囲ではないですよね、北に対しても何かベトナム全体が、一つの平和というものが維持されていないわけですからね、地域的とは見られないわけです。そういうことで、まああのベトナムの、いま行なわれておる戦争の状態など見てみると、そういうことが極東の安全に対してはやっぱり関係を持っているとわれわれは判断をいたしておるのでございます。だれが見てもやっぱりベトナム戦争というものは極東の安全に関連を持っておるという判断がいまの場合はみなの判断じゃないでしょうか。社会党の方々も予算委員会で、ベトナム戦争が片づいたら沖縄はどうなるのかという御質問をされるようなところを見ますと、やはりだれの気持ちも常識的に考えれば、ベトナム戦争というものは極東の安全に何にも影響ないとはだれも思ってないのじゃないでしょうか。
  178. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私も、常識的には確かにそうだと思うのですよ。ですから、いま私がしている議論がどれだけ効果があるかというようなことは、ぼくも疑問に思っていますよ。ただ、従来の考え方は、南のベトナムも北のベトナムも極東の範囲ではないという考え方ではないですか。いま大臣が言われたように。じゃ、ベトナム戦争がどうかしたら沖縄はどうなるという話がありましたね、沖縄と関連をして、全体として沖縄を考慮に入れて極東の安全問題というものを考える、だからこそ、あれでしょう、極東の安全に関係があるというふうに見るのは常識的なわけですね。ということは、やはり沖縄が作戦基地として使われているから、その沖縄自身の安全ということがいまこの戦争の拡大によって非常に問題になってくることもあり得るということが前提になってくるのじゃないですか。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、やはり私は自分としてはおそらくこういうことになるだろう、そんなにそれは拡大しないだろうと思っていますよ。しかし、不確定な要素がありますから、戦争自体として。そうなってくると、あの全体の、ベトナムをおおうておる戦乱というものは、これはもう極東情勢、極東の安全に対して非常に影響を持っておる。沖縄があるからどうということではなしに、われわれはこうだろうと、こう言うけれども、その保証はないですからね、どんなことにならぬとも限らないですからね、そういうことで、まあ極東の範囲ということになってくると、これは一応政府の統一解釈があるようですけれども、しかし、主体はやっぱり日本の安全ということでしょうから、そういうことを考えたら、その極東の範囲に入らなくても、やはり極東に対して非常な影響を与えるということは、地理的に、こう、線を引いた外のことでもあり得るのではないか、ベトナムはそうではないか、あんまり私はこれをむやみに拡大はしないつもりだけれども、あのベトナムに起こっておる事態というものは、これはまさしく極東の安全というものに影響をすべきいろいろな要素というものがあの中に含まれておりはしないか。それでも、日本を作戦基地として使うときには事前に協議の対象になるということですからね。
  180. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ベトナム紛争が極東の安全に影響があるということも考えられると、そうなってくると、いまの時点から考えて、それが日本の安全にも非常に大きな影響があるということが言えるわけですか。
  181. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは言える、それはそうです。それは極東の中に日本はある。極東の安全と日本の安全というものは結びついた面がございます。
  182. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、ベトナム紛争が拡大していけば、日本も場合によっては直接戦争に巻き込まれるかどうかは別として、いろいろな形で戦争の影響を受けるということはあり得るわけですね。
  183. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは日本が巻き込まれるというおことばでしたが、巻き込まれるということはないですね。これは厳としてやはり憲法の規定があるし、軍事的に介入できないのですから。日本のアメリカに対する協力というのは安保条約のワク内でのことですから、だからそれでも作戦行動に日本が便宜を与えるということは事前協議の対象になるということですから、非常な制約があるわけですから、巻き込まれるというようなことには私はならぬということを信じております。
  184. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その事前協議といっても、あらゆる場合アメリカの作戦行動を断る、絶対に断わるんだという保証があるわけじゃなしでしょう。
  185. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) しかし、その事前協議を何もアメリカと日本はしたことはありませんしね。そういうことですから、日本を作戦の基地として使わないということでしょうね。アメリカはそういう事前協議を申し込んでくるような気配はありませんから。
  186. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカが日本を作戦基地として使わないということがどこでどういうように保証されているんですか。安保条約で別にそれが保証されているわけじゃないでしょう。ただ、そういう場合には事前協議が要るというだけの話じゃないですか。保証はないんじゃないですか。
  187. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それはしかし、岸・アイゼンハワー共同声明――日本政府の意思に反して極東に出動することはないということが共同声明の中にありますから。
  188. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは共同声明というのは古い文句でしょう。いつまでもそれが生きているわけじゃないでしょう、情勢が変わってくれば。条約の中にはそういうことはないわけですね。
  189. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) しかし、共同声明で、これは日本の場合としてもこの共同声明というのは情勢が変わったからほごになったとは私は考えないのです。大事なやはり共同声明です。アメリカの最高責任者がこれだけの発言を日本国民にして、世界にしたんだから情勢が変わったから、そんなのはいまは違うだろうというふうには考えない。やはり生きておるというのが私の考えでございます。
  190. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとそれとは変わるかもしれませんけれども、吉田・アチソンの交換公文で、国連軍に対して日本は便宜というか、いろいろ供与しますね。あの中に、国連の行動を支持するための日本国における施設及び役務の必要が継続し――当時の朝鮮戦争のときの国連軍に対してね、または再び生ずるかもしれませんので、云々と、そういうような場合にはこうするんだというふうになっているわけですね。それはまたそういうようなことが生ずるかもしれないというのは、これは一体どういう意味なんですか、吉田・アチソン交換公文にある意味は。
  191. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 安保条約の改定が行なわれましたときは、朝鮮動乱が休戦によって事態が平静になってからもうだいぶ経過しておったわけでございますが、この休戦協定が破られてまた戦闘が再開されるやもしれない、そういう事態を頭においてああいう規定にいたしておるわけでございます。
  192. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあ交換公文はいまでも生きておるわけですか。それでまた三十八度線で同じようなことが起きた場合には、やはり日本としては国連軍に対してそれだけの供与をすることになるのですか。
  193. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この安保条約を改定いたしましたときに、吉田・アチソン交換公文についてのあと始末もいたしたわけでございますが、これには、「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」とございまして、それじゃこの日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定はいつまで効力を持つかといいますと、朝鮮動乱のあと始末がつくまでと、こういうことに大ざっぱに言えばなっておるわけでございます。
  194. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから現在でもこれは効力があるわけですね。
  195. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) ございます。
  196. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこでいまいろいろと問題が出てきたのですけれども、私が疑問に思っていることで、これはちょっと私も変な質問じゃないかと思っているのですけれどもね。それはアメリカが北爆やっているわけでしょう、その根拠なんですね。これはぼくは根拠というのは発生原因という意味じゃなくして、これがアメリカにとっての自衛権の行使になるかどうかという考え方なんですがね。それはどういうふうに判断したらいいのですかね。
  197. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この国際連合憲章で自衛権の観念を従来よりも、従来の国際法上で言われた自衛権よりも広げまして、個別的または集団的というふうにいたしたわけでございますが、アメリカが南ベトナムの要請によってとっておる軍事行動というものは、二つに分けて言えば集団的自衛権の行使のほうに当たるというわけでございます。その自衛権の行使としては、本来南ベトナムが自衛権の行使としてやり得る以上のことはやっちゃいけないわけでございます。つまり侵略に対処するために必要最小限度の軍事行動しかとっちゃいけないわけでございますが、従前もベトナムだけで北からの浸透を封圧するための軍事行動をとっていたけれども、それでは一向らちがあかないというので、おととしの二月でございますか、北爆を開始した、それの趣旨は、要するに、北ベトナムから南ベトナムに対する浸透を封圧するためにはそれよりほかに方法がないということでやったことだと、これがアメリカ政府の法的な立場でございます。
  198. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカはアメリカ自身としての自衛権というものを持っているわけじゃないですね、南ベトナムとの条約によって与えられたと言うんですか。あるいは人の自衛権というものを援用しているという形になるか。
  199. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 従来の国際連合憲章ができる前の国際法理論から言いましても、ある国がほかの国から不当な侵略を受けたときにこれを助ける行為というものは国際法上禁ぜられていたわけじゃないわけでございますが、それを国際連合憲章では集団的自衛権というふうな名前をつけたわけでございます。それはしかし、本来その侵略を受けた南ベトナムがとり得るであろう軍事行動以上の行動をとり得るという意味じゃなくて、ただ南ベトナムだけでは自衛権の行使に十分な武力を持っていないような場合に、それを助ける国の行為を集団的自衛権というふうな名前で説明する、これが国際連合憲章の考え方でございまして、昔からの伝統的な国際法で言えば、アメリカの自衛権というものではない。しかし、南ベトナムの行為がもし正当な自衛権の行使であるとすれば、それを助ける第三国としてのアメリカの集団的自衛権の行使もまた正当な自衛権の行使であると、これは国際連合憲章の言い方によればそういうことになるわけでございます。
  200. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくはその点でよくわからないんですけれども、じゃあアメリカと南ベトナムとの条約があってやるわけでしょう。どういう条約か名前は忘れましたが、その結果は一々国際連合へ報告しているわけでもないでしょう。これはどうなっているんですか。
  201. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 集団的自衛権を行使する場合にやはり前提として統治国の間に条約関係がなければならないということはございません。それは要件になっておりません。そしてアメリカが集団的自衛権と申しますか、とにかく自衛権を援用して違法性を阻却しなければならないような軍事行動をとったのは、トンキン湾事件のときが初めてでございます。一九六四年の八月でございます。それ以前は南ベトナムの領域内で、いわば治安を乱す分子に対して、武力を行使しておった、これは何も国際法上自衛権を援用する必要のない行為だったわけでございます。トンキン湾事件の際、初めて公海上で北ベトナムの艦艇と衝突、砲撃し合った事件があるわけでございます。そのときに初めてそういう五十一条を援用しなくちゃならないような軍事行動をとったので、そのとき直ちにアメリカは安全保障理事会に報告したわけでございます。
  202. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの南ベトナムとアメリカとの間は、日本の安保条約のような条約があって、それに基づいてアメリカが、集団的自衛権はいろいろ議論があるとして、それを行使しているのじゃないですね。
  203. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) SEATO条約に、条約の当事国としてではございませんが、仏印の地域について要請があったときには、SEATO諸国がそれに対して援助の手を差し伸べるという規定はございます。しかし、法理論といたしましては、先ほど申し上げましたように、一国が他国を助けて軍事行動をとるためには、その前に条約上の相互防衛関係と申しますか、そういうものが設定されていなければならないということは、国際法上必要とされておらないわけでございます。
  204. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大体わかりました。条約的な根拠がないで、大統領の要請か何か知りませんけれども、アメリカがベトナムを助けている、こういうふうに良心的に聞いて――条約というものは、成文の条約という意味です。それより高次の国際憲章とかなんとかいうものでのそういうよりどころがあるとしても、直接南ベトナムとアメリカとの間の条約関係に基づいての権利の発生ではないのだということですね。
  205. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 直接南ベトナムとアメリカとの間の条約関係に基づくものではないということは、そのとおりでございます。
  206. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大臣、沖縄とそれから小笠原の返還の問題で、日本が非常に、当然なことですけれども熱意を持ってやっておられる。そうすると、沖縄ではなくして小笠原の問題ですね、小笠原のほうは、何か大臣の見解でも、沖縄と比べた場合に、実現の可能性が濃いように私どもは聞いたわけですね。ところが、アメリカのほうのいろいろなそれに対する談話、あるいはゼスチュアかもしれませんけれども、では、そうでもないようなことを言っているのですね。この点の小笠原返還の見通しというか、今後の交渉というか、こういうことに関連しては、どういうふうにお考えなんでしょう。
  207. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も小笠原が沖縄に比べて返還の実現性が濃いというふうには申し上げていないのです。そういうふうなことは、これはいろいろ話をしてみなければわかりませんからね。それだから、それで自分が実現性が濃いとか薄いとかと言っているのではないですけれども、なかなか極東情勢もこういう状態でありますから、沖縄の施政権の全面返還はなかなか今日の極東情勢でむずかしいですから、したがって、まあ何かいろいろ施政権の返還に一歩でも近づけるように、施政権の返還とは言えぬけれども、やがては沖縄は日本に返ってくるのですから、だからそれまでの間に一歩でもそういう状態に近づけるような方法というものを何でも努力をしてみたいと考えているのです、小さいことであっても。そういう角度から、小笠原問題も取り上げたいということで、あらゆる可能性、もう今度は沖縄のことをほっておいて、小笠原だけということではないのです。あらゆる可能性というものを考えてみたい。そういう場合の中に小笠原というものも当然入って、いろいろ可能性というものを探究してみたいということを申し上げておるので、見通しとして、これが確実であるとか、どうとかいうことは申し上げていないのであります。
  208. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 沖縄の場合と小笠原の場合とは、アメリカの戦略的な見地といいますか、そういうようなものから見ると、相当違いがあるわけですか。
  209. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 戦略的な点はわかりませんけれども、沖縄はやはりあれだけ集中して基地になっていますからね。小笠原はそういう集中した基地はないわけですから。したがって、戦略的に考えて、小笠原というものに対する戦略的な評価をどうしておるかは、ちょっとアメリカ当局でないから私にはわからないが、これはいま言ったように、沖縄の施政権というものが、いまの極東情勢では、これはなかなか国民の希望どおりにはいかないだろが、しかし、その目標に向かって、少しでも近づけるということは、小笠原といわず、沖縄といわず、やりたいということが私のいまの考えている立場でごごいます。
  210. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 かえっていまの問題はあまりお聞きしないほうがぼくはよろしいのじゃないかと思いますので、この程度にしますが、そこで私が常々疑問に思っておりますことは、平和条約三条によって、沖縄がアメリカに施政権が与えられた、その平和条約三条がどういう経過ででき上がってきたのか、ここが私は一つの問題点だと思うんですよ。これはその後の問題、施政権の内容とか潜在主権がどうとかということは、いろいろ論議されているようですが、どういう関係で第三条ができてきたかということですね。これはあれですか、日本のほうから希望して沖縄をアメリカの施政権のほうに提供したわけですか。
  211. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本が希望するわけはないので、日本は返してもらいたいということでしょうが、そのときにやはり沖縄はもう日本の領土からはずせという意見も国際的にはあったでしょう。いやそうでなしに、沖縄は日本に返したらどうか、いろいろの意見が沖縄の処置についてはあったと思います。その結果、一つの妥協として、平和条約の三条ができたのだというふうに私は解釈しております。
  212. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 平和条約だから、名前は条約ですが、条約というと、いかにも対等のようにとれますね。普通の条約なら対等なわけだけれども、平和条約というのは、率直に言えば契約でなしに、上から押しつけられたものですね。戦勝国が戦敗国に押しつけたものが講和条約であって、ぼくが聞きたいのは、これは答えにくいことですが、これはアメリカがなぜ平和条約三条で沖縄の施政権を持つようにしたかということですね。これは見方はいろいろあると思うのですけれどもね。これはその当時の歴史的な文献などをたどってみますと、結局は日本が再びアメリカと戦争するかもわからない。その場合に沖縄を確保しておかないと、アメリカとしてはあぶないからというようなことが原因で、そうして、アメリカが沖縄を施政権下に置こうとしたのが最初の出発点じゃないですか。あの当時は極東の情勢というものは、いまと全く違って、こういう緊張はなかったのじゃないですか、いまのような。
  213. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、そういうふうな、日本を将来押えておかなければというようなことではないと思いますよ。日本は、再び日本が日米戦争をやるほどの日本かどうかというようなことは、考えも及ばないことですから、沖縄のああいうアメリカの施政権というものが日本の将来の抬頭を押えるためというふうには考えておりません。もう少し条約局長がそのときの事情を知っておれば何かお答えがあると思います。できると思います。
  214. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) アメリカに対して日本が侵略するかもしれないという懸念は、少なくとも表面に出た文章では沖縄の地位をいまのようにする理由としてはあらわれていないと思います。ただ、オーストラリア、ニュージーランド等が日本の再軍備あるいは侵略主義の再興を懸念しまして、日本のそういう傾向になることを懸念してアメリカにそういうことを頼んで、あそこに一つくさびを打ち込んでもらうというような考慮があったということは、何かの文献などで見た記憶がございます。
  215. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですから、その当時の極東の情勢というのは別に緊張が特にあったわけではない段階じゃないですか。
  216. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) あの沖縄の平和条約を結んだのは、朝鮮動乱のほうが先に来ていますから、だからそういう点で極東情勢というものは非常に不安定な状態にあったことは事実ですから、だから朝鮮のいろいろあの動乱などを通じて極東情勢は今日よりもある意味において朝鮮半島については非常に緊張した状態でありましたから、だから非常に不安定な中にあったと見なければならぬと思います。
  217. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、朝鮮戦争で朝鮮半島で不安定な状態にあったということと、沖縄が平和条約三条でアメリカの施政権下に置かれたということとは関係があるのですか。
  218. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それはやはりあそこのところに極東というものが何らの、非常に安定した基礎にあれば、ああいう形に沖縄がなったかどうかということは私は疑問に思います、これはいろいろな意見があっても。しかし、極東情勢というものが、安保条約を結んでおりますからね、日本と、安保条約を結んでおるというアメリカの立場、日本の安全保障、それによってアメリカは防衛の義務を負っているというようなことから考えて、沖縄というものの地位にもやはり何にも関係なしとは私は言えぬ、関係を持っておると思います。
  219. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題はもう一つ、なぜ国連の信託統治地域にならなかったかということですね。国連のあの信託統治というのは二つありますね。通常の信託統治と戦略上の信託統治と二つあるのですね。なぜその二つにならなかったかということですよ、その当時ですよ。これもまたぼくは非常な問題だと思うのですよ。なぜならなかったのか。
  220. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 日本政府といたしましては、実は平和条約締結につきましては、先ほど稲葉委員も御指摘のとおり、交渉の相手方とはされなかったわけでございまして、ただ意見はいろいろ言う機会を与えられたわけでございますが、そういうときには必ず沖縄の点につきましては、たとえ平和条約の規定はどうあれ、信託統治などにはしないで、できる限り早く直接日本に返還してもらいたいという態度をはっきり表明いたしております。あるいはそういう日本の希望に沿うということで信託統治にすることをいままで差し控えておったと考えるのが一番筋が通っておるかと思います。そういう説明を聞いたことはございませんが。
  221. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外務省としても国連の信託統治に将来置くことをこれ問題にしておるわけでしょう。平和条約でそういうことを前提にしているわけでしょう、そうじゃないですか、これ、形の上では。それなら当然なぜじゃそのときに信託統治に置かれなかったのかぼくは問題にすべきだと思うのですね。信託統治、二つあるでしょう、二つのやり方があるのじゃないですか、国連憲章によって。それはどうなんですか、どういうふうに違うのですか。
  222. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 戦略区域としての信託統治とほかの一般の信託統治は、戦略でございましたら安保理事会が所管、そういう違いがございます。
  223. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 戦略的信託統治に置くためには安保理事会の決定が国連憲章の八十三条ですね、必要ですね。これは置けないですわね、ソ連が拒否権を行使する可能性がありますから置けないですね。それじゃ、もう一つの普通の、総会によって承認される国連の信託統治がありますね、八十五条で。これはどういうものですか。
  224. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 戦略地区ではなくて、非戦略地区であるということでございまして、別に、信託統治の内容そのものはそれぞれの信託統治協定によってきまるわけでございますから、この国連憲章の規定自体からは、所管が違うという以上には区別は別に規定されておらないわけでございます。
  225. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国連憲章の八十五条というのは通常の信託統治でしょう。それは憲章の七十六条を、当然前の規定で一般原則で七十六条を受けるでしょう、これ。その点はどうですか。
  226. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  227. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なぜ通常の信託統治にアメリカがしなかったかといえば、七十六条を受けるからじゃないですか。七十六条によれば、住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進し、民の自由に表明した願望に適合して自治または独立を促すことが義務づけられているわけですね。これをやられたのではアメリカは、沖縄県民が、日本本土に復帰したいという住民の自由に表明した願望が出てきますからね、当然日本に返さなければならないということがこの国連憲章で出てくるわけです。これじゃかなわないからというので、信託統治ということを普通のものも拒否して、現在のような、将来置く、置くけれども、いつ置くのだかわからないという形の平和条約三条というものをつくり上げたんじゃないですか。これはダレスが一生懸命考えたのですよね。これは非常に巧妙にダレスが考えてでき上がったものですね。だからアメリカの考えたことは、沖縄県民の意思が、日本本土に帰りたいのだ、その意思が表明されたらそれに従わなくちゃならない、普通の信託統治じゃ困るというので平和条約三条というものを編み出してきたのじゃないですか。これはもうだれが考えてもあたりまえなんじゃないですか。
  228. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 沖縄につきましては、私どもは、平和条約が国会にかかった当時から沖縄住民が自治能力がないというようなことはあり得ないことなんで、したがって、かりに沖縄が信託統治になってもこれは七十六条の二号のようなことは沖縄の場合にはもう必要のないことなんだ、そういうふうに説明いたしております。これは一般に信託統治を行なう場合にこういうようなことを心がけて行えよという趣旨の規定でございます。こういう規定があると自動的に、何といいますか、たとえばナウルが信託統治である、ナウルの住民が独立したいというとすぐ独立させると、そういうことじゃないわけでございまして、   〔委員長退席、理事石原幹市郎君着席〕 沖縄の場合に信託統治になっていないのは先ほどから申し上げますように、別にそういう特別の考慮じゃなくて、日本政府自身がそういうことはしないでもらいたいということを初めからアメリカ政府にいっているわけです。
  229. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは誤解されては困る。私は信託統治にしろと言っているのじゃない。当然初めから日本の領土なんですから、もう返してもらうというのがあたりまえだ。そういう主張なんです。当然なんですから。そういう主張のもとに立っている。誤解されると私は困りますけれども、どうも非常に巧妙に考えて、平和条約三条はダレスやなんかが中心となってやられたと思うのですよ、私は。どうもぼくは三条が出てきた経過がはっきりしないのです。日本は対等の条約ではありませんから、アメリカがかってにつくったりしていろいろ草案ありますけれども、押しつけたものですから、それに対してイエスもノーも言えなかったのだろうと思います。ぼくはこの点がなぜ三条ができたかというのは、いま言った点で疑問がある。  もう一つの疑問は、これは国会で何回も議論されたかと思いますけれども、平和条約の三条になぜ入れたか、安保条約に入れなかったという一そのほんとうのねらいがどこにあったのか。これはどういうふうに説明しているのですか、アメリカ側は。
  230. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 安保条約は日米間の安全保障に関する協定なのでございますが、この平和条約はそれと一応離れまして、日本に対する戦争関係のあと始末ということになっておるわけでございます。日本の領域の一部を日本の施政権から切り離すということは、これはいわば戦後処理の問題でございまして、安全保障のための取りきめの中に取り入れるべきことではないわけでございます。
  231. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、まあ安全保障条約と平和条約と一緒にできたのでしょう。これはそういう議論を無理にすれば、そういう議論になるかもしれませんけれども、それじゃ沖縄が安保条約の適用範囲になった場合とならない場合と具体的にどう違うのですか。アメリカ軍がそこで行動を起こす場合。これはわかり切ったことですよ。
  232. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いまの安保条約の第五条の条約区域に沖縄入ついないわけでございますが、かりに入ったとすれば、日本もこれに対して対処するために行動するということになるわけでございます。しかし、これは安保改定のときにそこまでいってはいけないということで、沖縄については、防衛については、アメリカが受け持つ、住民の福祉については日本も協力するという趣旨の合意議事録を作成いたし、そこで沖縄に対する手当てはその程度にするのが一番適当だろうということになったわけでございます。
  233. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の質問もちょっと誤解を与える危険性があるものですから、私もしゃべっているのを注意してしゃべっているものですから、ちょっと迫力を欠いているのじゃないかと思いますが、ぼくが言うのは、沖縄に安保条約を適用しろと言っているのじゃない。簡単なんですよ。沖縄に安保条約が適用されて、平和条約三条でなくて、安保条約が適用されておれば、アメリカはベトナム戦争というものを遂行できないのじゃないですか、いまのような形で。事前協議すべき対象になるわけでしょう、作戦行動を起こすとか。ベトナムへ行く場合に、日本が同意するかもしれないけれども、そういうことを予測していたかどうか、その当時わからなかったにしても、そこに非常に大きな違いが出てくるのじゃないですか。そういうことを十分考えての上で平和条約三条にそれをはめ込もうということだったのじゃないですか、実際問題としては。結果的には現実はそういうことになってきているのではないでしょうか。
  234. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 沖縄が日本の施政権のもとにそのまま置かれて、そうして旧安保条約が改正されないで、昔のままでございますというと、沖縄で戦闘作戦行動をかりにとろうとする場合でも、日本の政府に対して事前協議をする必要はなかったわけでございます。先生の御質問は、かりにあれが日本の施政権のもとに置かれたままになっていて、しかも、その後安保条約が現在のような形に改正されるならば、おっしゃるとおりでございますが、そういうところまで予見して南西諸島に関する規定を平和条約に置いたと、そういうことじゃないだろうと思います。
  235. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうもそこら辺のところが私は沖縄の基本的な問題としていろいろ研究しているのですけれども、どうもよく納得できないのですよ。いろいろ文献などを調べてはいますが、これはきょうの話じゃありませんから。そこで大臣お尋ねしたいのは、いまの沖縄の返還の問題ですよ。これがどういう状態のときに沖縄が返還をせられるか。ちょっと受け身ですけれども、そりゃ見方ですけれども、受け身で言うとそういうことですね、一つの問題としてはね。積極的に言えば、もう徹底的に日本は沖縄の返還を要求していくのかと、その支障になっているのは何かということですよ。
  236. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 稲葉さんと、われわれの、多少違いがあると思う。安保条約というものがありますから、そういうことで沖縄の極東の安全に果たしておる役割りというものをわれわれも評価し、認識しておるわけで、その点でアメリカとの意見の食い違いはないわけですよ。食い違いというか、沖縄の重要性を認め合っておる。これは安保条約を破棄せよということならば要らぬことだということですが。
  237. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安保条約に関係ないじゃないですか。
  238. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) われわれは関係があるのです。そこにやはり違いがあるわけであります。したがって、一つには、極東情勢、この変化だと。一つには軍事基地に対する軍事戦略的な変化だと、こういうようなことが、やはり沖縄の返還に関係するところがある。こういうふうに考えます。
  239. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま言った二つのことですね。そうすると前のことについては、日本としては、努力して極東の情勢を変化さすことはできるわけですか。あとは全然日本としては手の打ちようがないわけですか。
  240. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや、これは戦略上の変化というのは、武器などの変化、これはやはり日本はポラリスなんかを持っておりませんし、そういうふうなことで、これは、日本は方法ありません、あとのほうは。
  241. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、前のほうはどうするのですか、どういうふうにしたらいいか。
  242. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 前のほうは極東の安定に対して、たとえば日本が、経済協力なども考えようによったら、やはり安定への一つの寄与になるわけですから、それから、ベトナム問題の平和的解決、これに対する日本の努力、そういういろんな、日本が極東の安定に対して利用できる面は、これはいろいろあると思います。
  243. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 少し短兵急な質問で恐縮なんですけれども、そうすると、外務大臣としては、沖縄の返還というのは、一体いつごろ、というと語弊がありますけれども一体いつごろということの見通しなんですか。これは質問がちょっとラフで恐縮ですが。
  244. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はこういうふうに考えているのです。いつごろということは、これはやはり言えない。それは極東情勢もいろいろと流動性を帯びていますから、そういうふうな見通しは立たないけれども、あらゆる可能性というものをやはり検討してみたい、それは極東情勢といっても、極東情勢というものに必要なものは、やはり一つの基地としての沖縄ですから、そういうことでそのことがやはり極東情勢から沖縄を必要とするのですから、だからいろいろこう施政権の返還に向かって一歩前進になるようなことは、何でも可能性のあることはやってみたいということは、いろいろな方法が考えられるであろう。何だということをいま言ってみろと稲葉さん言われるかもしれませんが、これはここでいろいろなことを私が言うのは弊害がある。そんなことで、いろいろな角度から検討してみたいということをいま考えておるわけでございます。そうしてアメリカとの間にもこの問題を話をしてみたいと考えているわけです。
  245. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外交上の問題ですから、何もこまかい、ああだこうだと聞くべき筋合いのものではありませんから……。ただ、大臣のいま言われたことで気になりますことは、沖縄が基地であることは認めているわけですね、基地の内容は別として。そうすると、その沖縄が基地であると、いまのような基地のあり方で、それを返還される場合なんか、いまのような状態のままで日本に返還するといった場合に、一体日本の憲法でそれを受け入れることができるのかどうかということですね。たとえば沖縄には核基地があると、これは常識的に言われている。それをそのままの状態で返すといったときに、日本の憲法はそれを認めるのですか。そのままの状態で受け入れることができるのかどうか。
  246. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) もしアメリカが、核基地だということを正面から言ってないですけれども、だけど、常識的にはそういうことを言われておるわけです、それは、そういうことになってくれば、憲法というよりかは、政府の方針に反しますね。核の持ち込みは認めませんと、こう政府は言っているのですから、それは反しますね。憲法ということになってくると、これはいろいろ法律的には言い分があろうと思いますが、言い分があろうというのは、いろいろ解釈があると思いますよ、憲法では。そのことよりは政府は持ち込みを認めませんと、こう言っていることが、これは端的にその政府の方針が変更されなければ、これはやはり抵触する。繰り返し繰り返しこれだけ国会で言っていることはないですから……。
  247. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのお話で大体わかりました。実は私が沖縄に行ったときも、いろいろいわゆるオフ・レコの話として伝わってくるのは、現在の状態のままなら返してもいいという意見がオフ・レコで出ていることが盛んに伝わってきているのですよ、去年ですけれども、ぼくが行ったときも。だから、念を押してお聞きしておる。それはそれとして、せっかくですから設置法に返らないと悪いので設置法に返りますが、この防衛駐在官を今度は韓国に置くわけですね。これはどういう形で置くのですか。
  248. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) すべて各省から在外に派遣されるものは大使館員として外務省に身分を移してから配属されます。
  249. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何をするのですか、これは。防衛駐在官を防衛庁で置くのは、これは防衛庁の方でないとわからぬかもしらぬけれども、大使館員になるんだから、具体的に何をするのですか。
  250. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) ただいま申し上げましたように、大使館員としての行動でございまして、戦前、戦中ありましたようないわゆる武官とは性格を異にしております。したがいまして、大使館員としてのなすべき任務すはわち調査及びその国の防衛関係者との情報交換、主としてそういうものでございます。
  251. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、防衛駐在官ですか、正式の名前は何というのですか、それが調査するというのは、何を調査するのですか。
  252. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) これは正式の名前は、これは大使館の参事官なり書記官でございまして、あわせて防衛駐在官という名称を持っております。その任務は、ただいま申し上げましたように、主として調査……。
  253. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何を調査するのですか。
  254. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) これは軍事関係でございます。
  255. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは軍事関係といっても一ぱいありますね、一ぱいあるのだけれども、何をどうやって調査するんですか、それでそれをどうするんですか、調査したものを。
  256. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) これは軍事関係、防衛関係でございますので非常に広範にわたりますが、たとえば軍隊の動きとかそういったものではなくして、わが国の防衛に資するような情報を集める、ないしは調査をするということでございます。
  257. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 韓国でそんな日本の防衛に資するような調査というのは、どんなのがあるんですか、ちょっと外務省には悪いけれど、あなた言ったからこっちは聞くので……。
  258. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 私も防衛駐在官の仕事を監督したことがございますが、相手政府との軍事ないし防衛上の連絡ということは非常に広範でございまして、まさに専門家といいますか、防衛庁でなければわからないようなことが多うございますが、たとえば……ちょっと間違うといけませんからやめます。
  259. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 別に間違いはないですよ、あたりまえなんですね、日本の防衛に資するようなことやるのはあたりまえなんで、日本の防衛に資さないことをやるのだったら行く必要ないのだし、あたりまえなんで、それで韓国で日本の防衛に資するような調査というのは一体何かというのです。それはあなたが言われたから聞くわけじゃないので、これは常識ですよね、どうっていうことないじゃないですか、何を調査するのだ、あなたじゃぐあい悪いかな、防衛庁なら防衛庁の人呼んでもいいですよ。ぼくはなぜ聞くかといいますと、内輪話しては恐縮ですけれども、外務省は前に、去年ですか、私の質問に対して、いわゆる在韓国連軍に対して、日本の自衛隊はどの程度協力できるか、その限界を明らかにしろということを椎名さんにぼくは確かめたことがある、そうしたら、それについては研究中だから、統一見解出しますということを言ったのです、去年。それきり出さないんです、出さない理由もぼくはわかります、わかるけれども、出しますと言ったのだから、出してもらわなければ困るのですけれども。そうむちゃ言うつもりはありません。それはフリーハンドでいきたいですよね、それは国際情勢は変わるのですからわかりますがね、問題だと思うんですよ、いまの点が。防衛駐在官が韓国に行って何をするのか、日本の防衛に資するようなことを調査すると言うから、じゃ日本の防衛に資するような調査というのは具体的に何か、こういうことがはっきりしないと、外務省設置法はどうも通すわけにはいかぬということになってくるわけでもないですけれども、どうもちょっとあと回しになるな、これは。
  260. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) これは韓国だけに防衛駐在官を派遣するのじゃございませんで、これは非常に多数の国に派遣しております。したがいまして、どの国にはないというような特別な任務を与えているのでもございません。したがいまして、そのときそのときによって、その任務が変わるというようにお答えするよりしかたありません。
  261. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは十四、五ぐらいですか。
  262. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 十六。
  263. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前はたしか十四か十五でしたね。いま十六ですか。いずれにしてもぼくは韓国の大使館にいわゆる防衛駐在官が行くということは非常に大きな意味があると思う。日本の防衛に資するような調査ということになれば、これは三十八度線での両方の、片っ方国連軍、片っ方が北朝鮮軍ですね、この動きがどうなっておるかということを調査するのが、一番眼目なはずですよね、それじゃなければ、何しに行ったかわからないものね、そういうお考えございませんか、これは大臣どうですか。
  264. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も軍事のことあまり詳しくはないのですが、政治家として見れば、やはり韓国における南北の国境のこの状態、この客観的な、状態というものは、これは日本の防衛に影響があるということを思います。
  265. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはもうそのとおりですよね。そこで問題になりますのは、これは外務省どういうふうに調べているか、ぼくもこまかい通告してないのであれですけれども、韓国では、丁一権国務総理というのか、首相というのか、その人が韓国の国会の中で、三十八度線の境界線を越えて北が南へ来たときには日本の自衛隊が韓国を何か助けてくれる、こういうことを確信しているということを二度にわたって韓国の総理が国会で答弁しているんですよ。これはぼくは、日韓国会のときにも問題になったんですけれども、これは韓国の国会の議事録を当然外務省はとっているはずですね。これはきょう調べるわけにいかなければ調べておいていただきたいと思うんです。そういう事実関係がほんとうにあったのかどうか。あるいはことばのニュアンスは多少違うかもわかりませんけれども、ぼくも韓国の国会の議事録は前のやつは持っていますけれども、新しいのは持っていないものですから、その点よくわからないんですね。韓国の国会の議事録を日本の国内で市販しますと非常に大きな問題になるといって市販しないんですよね。そこはどうなんですか。まあきょうわからないならわからなくてもいいですわ。   〔理事石原幹市郎君退席、委員長着席〕
  266. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 調査してあとで御報告いたします。
  267. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなってきますと、まあ調査しなくちゃわからないことですけれども、そういうことを言ったということになってくれば、ぼくは日本と韓国との間で何か軍事に関する秘密協定が何らかの形でできているんではないか、そういう話し合いがあったんじゃないかというふうにも考えられる。それがないのに韓国の総理大臣が、そのとおりかどうかは別として、そういうようなことを韓国の国会で発言するのはぼくはおかしいと思うんですよね。ですから、その点はよく調べていただいて、その発言によっては、ぼくはその裏でどうも秘密の軍事協定があるんじゃないかということを考えているんです。それはまた調べてもらいましょう。  そこで、防衛駐在官にも関連するんですが、在韓国連軍に対して、これは外務省の問題なんですが、日本の自衛隊がどこまで協力できるのか、その限界ですよね。そこは何回聞いてもはっきり答弁しない。ここまではできるんだ、ここまではできないんだということを聞いても、言わないんですよ。これはどうなんですか。統一見解として出してもらいたいんですよ、ぼくは。これは外務委員会でやるべきことだと思うんですけれども
  268. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 前段の、何か韓国との間に軍事的秘密協定があるのではないか、これはもう絶対にありません。そんなものは、どうしてそんなものが結べるか、そんなものは絶対にありません。日本の自衛隊が韓国へ、どういうことが起ころうとも自衛隊が韓国に派兵をするようなことは、絶対に現在の憲法の条章からできることではありません。だから、そういう意思はないので、それはどうか、いろいろ韓国の国会でどういう発言があったかどうか、日本の国会の発言をどうぞこれは信用していただくよりほかない。それはもう絶対にそういうことはできるわけはありませんから、どうぞそういう御懸念はないように願います。そんなことは、国民がそういうことでもあるのかという疑念を持つことは国民を惑わすことになりますから、ここで申し上げておきます。  また、国連軍にしても、日本の自衛隊が韓国に派兵して国連軍に協力するというふうなことも、憲法の条章から私は許されないと考えております。
  269. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 憲法の条章から許されないというでしょう。ただそこは議論があるんじゃないですか。これはどうですか、条約局長のほうは。絶対に許されないですか、いまの憲法で。
  270. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 朝鮮の場合の国連軍は、あれは軍事行動をとることを目的とするものでございまして、つまり、そういうようなものについては日本の自衛隊は参加できない。これは日本憲法からきている制約でございます。そうでない監視的な仕事を持っているものについては、あるいは自衛隊は憲法の制約はないけれども、自衛隊法からの制約がある、これが従来から政府のとっている見解でございます。
  271. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あれですか、国連軍というものが韓国にありますね。これが正式な国連軍だか、いわゆる国連有志軍と称せられるものであるかは別として、じゃ日本の国内で国連軍を編成していって、そして自衛隊が国連軍へ入る。編成されるんでしょう。そしてそれが韓国へ行くというようなことはあり得るんですか。そういう場合はどうなんですか。
  272. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そういう場合でも自衛隊としては参加できないわけでございます。いまの朝鮮における国連軍のような形のものには参加できないということでございます。
  273. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうな参加できないという答えなら、参加できるような形の質問をするのはおかしな話ですから、ぼくも質問はこの程度にしますけれども、だから、在韓国連軍に対する日本の自衛隊の協力が許されるものと許されないもの、その限界、いろいろあると思うんですよ。それから、従来、国連がいろんな形で派遣していますね。韓国じゃないですよ、キプロスとか、いろいろありますね、あちこちに。それに対して日本の自衛隊が日本の憲法なり自衛隊法なりで参加できるものとできないものと、こうあるわけですね。これはどうなんですか。
  274. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 吉田・アチソン交換公文でも明らかでございますように、朝鮮動乱における国連の行動に対する日本の協力というのは、日本の施設区域を使って朝鮮の国連軍の行動に参加している国がその軍隊を支援することを許すという、いわば許容の義務でございまして、日本の自衛隊がこれに協力するというような関係のことは全然ないわけでございます。  それから、自衛隊が参加し得るような国連の行動というものはどういうものがあるかというお尋ねでございますが、これは先ほど申し上げましたように、武力行使を目的としないような国連の行動ならば憲法上は自衛隊が参加することは禁ぜられておらないということ以上には、ちょっとそれ以上には具体的には申し上げかねる次第でございます。
  275. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間の関係もあるものですからあれですが、そうすると、今度の法案の中で、領事事務の大臣官房への移管ということで領事課を置くということになっていますね。それで、いま領事条約が結ばれておるのはどことどこですか、日本の場合。
  276. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) アメリカとイギリスと、それからソ連との領事条約がいま審議をしていただいておるわけでございます。
  277. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはアメリカとの領事条約にしても、イギリスとの領事条約にしても、締結するまでにずいぶん日にちがかかったんですね。それからまあソ連のものもそうかもしれませんが、ことにアメリカとの領事条約はどういうふうな問題点があってこういうように長引いたのかということが一つと、それと、日本と韓国との間で、日本に韓国の領事がずっと来ていますね。そういうことなのに、日本と韓国との間には領事条約というのを結ばなくても、このままやっていくつもりなんですか。あるいは結ぶ必要がないんですか。
  278. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) アメリカの場合が最初の領事条約であったわけでございますが、最切に結んだ領事条約でございますだけに、非常にこまかい問題に一々議論が出て手間どった。それからもう一つは、いつまでに締結しなければならないという締め切りみたいなものがないものでございますから、お互いに法律論を応酬して数年を要したということでございます。しかし、一ぺんこういうようなひな形ができますというと、イギリスとの領事条約の場合はだいぶ手早く進められたというわけでございます。米英と領事条約を結びましたのは、アングロサクソン法系の国では、領事の特権、権限関係が非常に低く考えられておりますので、そういうものをできるだけ特権免除を高く確保したいという考慮があったわけでございます。それからもう一つは、アメリカの場合には州によって取り扱いが違ったりするようなことがありましたので、アメリカの場合は特にその必要が大きかったということでございます。ソ連の場合も、まあ、ああいう何といいますか、国でございますので、やはり特権免除ははっきり規定しておいたほうが将来問題を起こさないゆえんであるという考慮からでございまして、ほかの国とは別にいまさしあたり領事条約を結ぶことは考えておりません。ただブラジルについては、日本の領事館もあちこちにありますので、領事条約を結ぼうという話は出ておりますけれども、領事関係がある国とはすべて領事条約を結ぶというような方針でおるわけじゃないわけでございます。
  279. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 アメリカとの領事条約の中で、日本におるアメリカの領事の権限として、日本にいるアメリカ人のいわゆる徴兵事務ですね、徴兵事務も取り扱うのですか、そこはどういうふうになっているのですか。
  280. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 徴兵事務というと少し語弊があるかもしれませんが、もしそういう規定がなければ、一々本国に帰って身体検査を受けなくちゃならない人が、日本で身体検査が受けられるような便益を領事が提供することができるという趣旨の規定があるわけでございます。
  281. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本と韓国との間では領事条約というものが必要ないわけですか。必要なくても日本にいる韓国の領事の何といいますか、これは外交官じゃないでしょう、外交官じゃないのだから、特権というものも、それはどういうふうになるのですか。
  282. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 日本の取り扱いとしましては、従前から実際上、領事に対しても外交官に対すると同じような特権免除を与えております。
  283. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは各国の領事に対して全部ですか。
  284. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) さようでございます。
  285. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 領事に対して外交官と同じような特権を与えているというのは、これは近来の国際法の原則はそういうふうになっているわけですか、そこはどういうのですか。
  286. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国際法の原則とまで言いますと少し言い過ぎになるかもしれませんが、国際の慣行はそういうふうになってきておると申してよろしいかと思います。
  287. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあいろいろのことをお聞きして、基本的なことを中心にお聞きしたので、あまり深く中に入らなかったので恐縮ですけれども、ほかの方がお聞きになる、ほかの委員の方が法案の内容についていろいろなことをお聞きになるので、私も時間的なあれがあるからこの辺でやめますが、いまあなたのほうで調べると言ったことは、あとで調べて御報告願いたいと、こう思うのです。
  288. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま中東危機が叫ばれております。向こうの時間で二十九日の午後三時二十五分から、国連の安保理事会も中東危機に関してカナダ等の報告、勧告を受けて開かれたということがいわれますけれども、このアラブ連合によるアカバ湾封鎖問題あるいはイスラエル、アラブ連合両国の紛争につきまして、これは戦争の危機もはらんでおりまして重大な問題だと思います。また、中東紛争がもし起こるならば、日本においても原油の輸入が、九一%は中東から原油の輸入をしておる、そういうような状態でございます。非常にわが国にも関係のある大きな問題であると思いますが、外務大臣として、一つは国連大使にどのような中東危機に対して指示を与えて、いらっしゃるのか、またどういう見通しをしていらっしゃるのか、また三番目に、原油の輸入等に関しては全然心配がないのかどうか、その三つの問題をまずお聞きいたします。
  289. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) われわれも非常に心配をしておるのは、イスラエルとアラブ諸国というのは、これはもう宿命的な敵対関係にあるわけでありますから、そういうことで、非常にアカバ湾の封鎖、こういうことから、イスラエルとの間が非常に激化して、そうしてアラブ諸国に対しての中東諸国というものが、これに従来の対立関係がありますから、非常な動きがあるわけであります。それで、国連においてはカナダ、デンマークの提案である、これ以上関係国が紛争を激化させないような、そうして安保理事会において問題の解決をはかると、この提案に対して賛成をして、これ以上紛争の激化を食いとめるために、安保理事会における日本もメンバーでございますので、国連を通じて努力をいたしたいというのが国連大使に与えておる指示でございます。これは両方とも、しかしこれが対立を激化させて戦争に突入しようということを、イスラエル、アラブ諸国も腹をきめたとは見られない点もありますので、できる限り国連を中心としてこの問題の激化を防止したい。  油の点は、あのアカバ湾に対しては、いま日本に大きな影響というものは、油の転送に対しては現在のところない。これが中近東に戦争が拡大してくれば、これは影響があるわけですが、現在のところ、直接に原油の輸送に対して大きな影響力は持っていないわけでございます。
  290. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ国連を舞台にして、ソ連は当然アラブ連合を応援していますし、また、イギリス、アメリカ等はイスラエルを応援して、結局イスラエル、アラブ連合の紛争よりも、このうしろだてになっている国がある以上、その紛争がまた大きな問題になると思います。わが国はいまカナダの提案を支持するということでございましたけれども、アメリカの主張、またアラブ連合等の主張に対してどういう考えを持ちますか。
  291. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) アメリカもソ連も二大強国、これの拡大というものを望んでないわけです。アメリカもまたカナダ、デンマークのこの提案というものを支持する立場であります。これを何とかして戦争の拡大を食いとめようというのがアメリカの態度でもあるわけでありますから、われわれと考えが違っておるとは思っておりません。
  292. 多田省吾

    ○多田省吾君 ソ連のほうは、新聞によりますと、ソ連首相が手紙を出して、アカバ湾のアラブ連合の支配権が確立するまではもう、すなわち一九五六年のスエズ戦争以前の状態に戻すまではいかなる国の介入も許さない、そういうことをソ連は主張しているわけですが、この問題に対してはどうですか。
  293. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ああいう紛争が起こったら新聞でいろいろな報道がなされますけれども、ソ連も必ずしもこの紛争の拡大を望んでいるのではないのではないかというふうにわれわれは見ておるのでございます。こういう紛争が起これば新聞はいろんなことを書きますけれども、そういうふうにソ連の態度を見ておるわけでございます。
  294. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、小笠原返還の問題について若干お尋ねしたいのですが、外務大臣が二十三日に、小笠原諸島の返還に対して努力するとおっしゃったのに対して、アメリカの国務省の関係で、極東の緊張が続く限りは返還できないというような、また軍事的価値から見ても、返還もまた住民の帰島というものも困難であろう、そういうことを述べております。それに対してまた外務省の高官筋で、一九七〇年までに返還または帰島実現も早期に実現するように努力すると、そういうことをおっしゃられたということを報道されておりますけれども、小笠原返還に対して外務大臣はいまどういう努力をされていくおつもりですか。
  295. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一九七〇年というあの新聞記事は、ちょっと行き違いがあったようであります。というのは、何人も年限を切ってそれまでに実現をはかるというようなことはなかなかちょと言い切れるものではありませんので、あの点は少し記事には行き違いがある。語った者の真意を必ずしも伝えてない面があるということでございます。しかしこれは、私が言っておるのは、沖縄と小笠原問題を切り離してというふうな方針を立てておるわけではありませんが、小笠原、沖縄の返還については一歩でもそれに近づける、あるいは可能性というものを探求して努力をしたいと、こう申し上げておるわけで、これはやってみようということであって、必ずしもいつまでにという年限を切ってどうなるんだというその手がかりがあるわけではありません。努力をしてみたい、こう申し上げておるわけでございます。
  296. 多田省吾

    ○多田省吾君 ワシントン・ポストというアメリカの新聞でさえも、早期に返還すべきだということを主張しておる。また、その報道によると、気象観測所とか小さな海軍施設があるだけであると、そういうことをいっているそうですが、私はそういう点から見て、軍事的価値なんというのはそんなにないし、沖縄と違って非常に軍事的な価値は少ないし、早期実現に向かって強力に、沖縄と切り離しても主張すべきであると、またもう一つは、住民の帰島に関してはもっと早期実現をはかるように努力すべきだと、このように思いますが、いかがですか。
  297. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は小笠原の問題に限らず、沖縄の問題についてもできるだけ可能な範囲では一歩ずつこの施政権返還という目標に向かってあらゆる努力をしてみたいと考えております。小笠原帰島の問題も、むろんその中に含まれるわけでございます。
  298. 多田省吾

    ○多田省吾君 特に小笠原返還に対しては、政府として、いまのお話では、一九七〇年までに返還されることが望ましいということは真意を伝えるものではないというお話がありましたが、結局真意を伝えたものでないにせよ、大体早期に、期限を切っても実現したいというニュアンスのあらわれが、こういう記事になったのではないか、真意を伝えてなくても、ある程度そういう話のニュアンスを伝えているのではないか、こう思われる。やはりまた沖縄とも違って、小笠原の場合は、もっと見通しといいますか、いつごろまでに返せる――一九七〇年といわないまでも、大体五年をめどとしてとかあるいは十年以内を目途としてとか、そういう数年内に返還されることが望ましいというような目標がなければ努力もできないのじゃないか、こう思いますけれども、どうでしょうか。
  299. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ちょっと何年という目標ということは私は無理だと思うが、あらゆる努力、それは小笠原だけで、沖縄の問題というものをそのままに、もう沖縄はあきらめてしまうというものでもないわけで、そうして施政権の返還に至るまで、いろいろな可能性の問題というものがないかということをひっくるめて、真剣にわれわれとしては努力をしてみたいということで、何年先にどうなるということをちょっと申し上げることは、これは非常にそのことによって国民に対して、まだこう、アメリカともいろいろ話し合ってみないのに、こっちだけで何年という見通しを与えることは誤解を生じますので、私はこの段階としては、申し上げないというのではなしに、申し上げられないということが実情だと思います。
  300. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは小笠原群島の軍事的価値については、大臣としてどのようにいまお考えですか。
  301. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 軍事的な施設は、これは沖縄と小笠原とは違いますが、いろいろな戦略的価値ということについては、いろいろ話をしてみなければならぬ、しかし、施設は違う、こういうふうに考えています。
  302. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうすると、施設は違うというのは、施設はもう沖縄と違ってほんとうに微弱なものであって、論ずるに足らないほど微弱なものであって、軍事的価値も当然施設とつながっている問題ですから、まあ、軍事的施設はあまりないのじゃないかという、そういうお考えですか。
  303. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いや私が言っているのは、施設は沖縄とは小笠原は違うけれども、戦略的ないろいろな必要性というものについては、これはアメリカ側の意向もたださなければならぬので、私からこうだというものは、いまここで申し上げることは適当でないと思います。
  304. 多田省吾

    ○多田省吾君 それは島民の帰島の問題はどうでしょうか。沖縄でもまあ、住民の方、いるわけですが、小笠原は全然もう帰島の問題についてもまだなされていないのですか。
  305. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 帰島の問題のほかにいろいろ問題があると思いますよ。施政権の返還に至らない前においても、何かこう一歩近づけていく問題というものは取り上げていきたいと思っておりますが、帰島の問題もその一つであることはこれは明らかでございます。
  306. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に沖縄の返還問題でありますけれども、きょうの新聞にも、アンガー米琉球高等弁務官が、いままでの考えをさらに強調して、共産主義の脅威が存続する限りは早期返還の可能性はあり得ないという発言がなされたと報道されているのですけれども、もし共産主義の脅威が存続する限りとなったら、もうこれは半永久的な問題になりかねないと思いますけれども、この問題に関してはどうでしょう。
  307. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 脅威というものの一つの考え方をどう見るかということも、やはりいろいろ考え方が違ってくるんじゃないでしょうかね。脅威とは何ぞや、ただ共産国が核兵器を持っておるということだけでそれを脅威と見るかどうかということで、それはやはりこういう問題についてはいろいろアメリカ側とも、こういう極東の安全、極東の安定というものをよく話し合ってみる必要があると思います。
  308. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど外務大臣が、日米安保条約と沖縄の返還問題は関係があるというお話をなさいましたけれども、まあ直接の関係はないと思いますが、どういう面で関係がありますか。
  309. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは、安保条約というものは日本の防衛に対しての責任をアメリカが負うておるわけでありますから、その防衛の責任を負うておるというアメリカとして、沖縄の基地が軍事的に重要な役割りを果たしておるとするならば、安保条約と関連を持っておるということでございます。
  310. 多田省吾

    ○多田省吾君 で、話を進めまして、先ほどお話がありましたけれども、核拡散防止条約につきまして一、二お尋ねしますが、田中特命大使が行っておられると思いますけれども、外務大臣としてあれですか、やはり指示を与えられたのは、軍縮の方法を織り込みなさいというような四つの提案をされましたけれども、その問題の範囲を出ないわけですか。その問題の範囲に限って田中大使に指示を与えて、その実現に努力するようにしているわけですか。
  311. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そのとおりであります。日本の主張というものは、まああの中に盛り込まれておるわけですから、その日本の主張ができるだけ条約に公正に反映をするように努力するようにというのが指示でございます。
  312. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、もうアメリカとソ連の合意案というものはなかなかむずかしいと思いますけれども、もしそれが成案が出てからでは、それを訂正するというのは非常にむずかしい問題である、こう思います。したがって、その努力をするにしましても、その成案が成るまでにやはり外交努力を強力に続けていくべきであると、このように思うわけでございますけれども、まあ先ほどは、田中大使のほうからは全然まだこちらに話が着かないというお話でありますけれども、たとえばこの前、大臣お話しなさった学術会議とかあるいは石油業者の方々の、原子力の平和利用の査察の問題等に関してですね、いろいろ意見を聞きたいというようなことをおっしゃっていましたけれども、早急にそういった意見をまとめて、日本側の意見としてまとめて、そして田中大使に強く査察の問題等に対しても指示を与えるべきであると、こう思いますけれども、このいわゆる学者あるいはそういった財界等の平和利用に対する査察の問題に関しては、全然まだ意見はまとめておられないのですか。それとも少しはまとまったのですか。
  313. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私自身もいろいろそういう関係者には個々には会っておりますが、草案が出れば、草案――これはどういうふうな草案になるか、いまちょっとわれわれとしても見当のつきかねる面もございますので、草案が出れば一つのそういう原子力産業とかあるいは科学者というものと、もっと草案を基礎にして話をしてみたいと考えております。
  314. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ草案が出ればとおっしゃいますけれども、草案が出てからではなかなか草案の訂正というのはむずかしいと思う。当然大体、前のアメリカ、前のソ連案も出ていましたし、また、ドイツの新聞等には草案のようなものも出ているわけでございますから、また、外務省でもそれを見られたと聞いておりますし、当然大体予想はできるわけでございます。IAEAの査察にしましても、ユーラトムの査察にしましても、あるいは現在IAEAの日本に対する査察の現状を考え合わせましても、大体こういった査察であろうという予想はつくわけでございます。そういった面からですね、もっと強力に草案が出るまでの努力というのを続けるべきである。そうして、草案がもう出るまでの間に日本の主張というものを強力に相手方に感じさせるべきであると思いますが、重ねて、くどいようですけれども、どうでしょう。
  315. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この査察の問題が、この草案でまあいろいろ問題点でして、日本はいままで国際原子力機構の査察を受けておるわけです。査察をみな受けろと、核保有国も非保有国もみな査察を受けろということで、日本の立場というものはきわめて明瞭な立場なんですね。これに対してまあユーラトムなどの査察問題というのが起きて、草案が出るまでにですね。草案が一体どういう形で査察の問題というものに対して草案をまとめるかということはどうも草案が出てこないとはっきりしないものですから、やはり草案が出てからが適当だと思う。一番やっぱり査察の問題というのは大きな問題ですから、それは見当がつかないわけです。これが一番もめているわけであります。
  316. 多田省吾

    ○多田省吾君 だから、この前も申し上げたんですが、もう一つの問題は期限の問題です。五年間終わってから再査察をするというのと、それから五年間の期限を設けると、この二つはもう純然と違うと思うのです。で、五年終わってから再査察としますと、やはり拒否権認めないとはいっても、なかなかこれはいろいろ変更をするということはむずかしいし、また、それを拒否して脱退するときの条件にしましても、いろいろめんどうなことが起こるわけです。むしろ五年で再審査をするというよりも、条約そのものを五年間の期限でつくるという、そういう方法が強いと思うのですね。どうしてそういう五年の期限としないで、五年の再審査という意見を述べられたのか、その辺お聞きしたい。
  317. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ再審査の機会、これがなければ期限というのはっけるべきだと思いますが、しかし、再審査をして、そうしていろいろ検討をしてという現実とこの条約の運営との間にいろいろなギャップがあれば、これは条約改正の問題にもなってくるしするので、まあこういう再審査をする機会があるということが実際的だという考え方で、むしろ再審査の点にアクセントをつけて、われわれとしてはこれをぜひとも条約の中に織り込みたいという努力をしておるわけであります。どうもこういう条約が五年間の有効期限というのは私は短か過ぎるという感じです。もう五年したら条約は効力を失うのだという、こういう条約がそんなに短期間の有効期間を切るというやり方は、少しどうも短か過ぎるのではないかと、だから、そういうふうな国もおりますよ。しかし、全体としてのどうも感じは、あんまり短い。五年だったらもうこれが、条約がなくなるのだということになれば、その間にでもですね、いろいろなこの五年後のことを考えて、そうして核兵器というようなものに対して関心を持つということは、まあ核兵器をなくしていこうと、人類の社会からなくしていこうということにはちょっと矛盾する面があるのではないかという点で、まあ五年すれば再審査するということのほうが実際的ではないかとまあわれわれ考えておるわけでございます。
  318. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ五年という期限をつける利点というのはですね、やはり軍縮の成案を盛り込むべきだという私の主張ですね。そうして、どうしてもそれを本文の中に盛り込まなければちょっと読めないというような問題もありますし、そういったものともからめて五年の期限ということにすれば、もっと条約そのものが有効に働くのじゃないか、そういう意味で申し上げたのですけれども、この問題は別にしまして、十八カ国の軍縮委員会に加入をソ連等に働きかけて強力に申し入れている、そういうお話でございますけれども、やはりこのジュネーブ軍縮委員会に加入を申し入れるという以上は、軍縮に対するあるいは軍備管理等に対する日本としての段階的な提案あるいははっきりした軍縮に対する考えというものがなければなかなかこれは申し込みもできないし加入してもたいへんだ、当然加入を申し込んだ以上はそういったお考えは当然あると思います。それにしては、まあ先ほどお話がありましたけれども、外務省の軍縮室というのは、お話によりますと二、三人しかここに室員がいない、こういう状態です。また、防衛研修所では軍備管理相当研究しておられるということも聞いています。私がお尋ねしたいのは、この現在における日本としての軍縮に対する態度、段階的な成案、それからもう一つは軍縮室の姿と防衛研修所等との関連は全然ないのかどうかですね、話し合いはないのかどうか、その二点をお伺いします。
  319. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この軍縮の問題、何かもうちゃんとまとまった青写真はあるかという、非常にこれはどこの国でもむずかしい問題だと思います。それはなぜかといえば、中共もフランスなどもこの核拡散防止条約には入らぬだろうといわれておるわけですから、全部が、軍縮、全部まあ入ってやろうというわけでないわけでありますから、どうしてもやはり不徹底にならざるを得ない点があると思います。そこでだれもこの軍縮に対して段階的に青写真を持っておる国というものは私はなかなかないのではないか。それはなぜかといったら、それに入らぬ国もおるわけでありますから……。そういうことで、これは日本自身としても軍縮委員会に入ろうという希望を申し出ているわけでありますから、今後軍縮室、この機能を強化して日本自身も段階的な軍縮案というものを固めていく必要があると思います。ただ日本が入るべきであると私が思うのは、これは平和に対する日本の強い熱意、こういうものを持っておるし、また、核兵器などに対しても日本人は唯一の被爆国民としてこれはよその国とは違った感覚を持っておりますし、軍縮というものを推進していく上において日本の立場というものは非常に貢献のできる余地があるのではないか、こういう点で軍縮委員会にも日本は入っていきたいと考えておるわけで、今後この軍縮の問題というものに真剣に日本が取り組み、そうして日本自身の案を持つべきであるということは御指摘のとおりに考えております。
  320. 多田省吾

    ○多田省吾君 防衛研修所との軍縮に対する話し合いなんか全然ないのですか。
  321. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 毎月一回くらい軍縮室と防衛研修所との間に定期的に会議を開いておるようでございます。連絡を持っているということでございます。
  322. 多田省吾

    ○多田省吾君 当然それでは防衛研修所と連絡している以上は、まあ軍備管理の問題なんかも軍縮とあわせていろいろ考慮されていると思いますが、どうでしょう。
  323. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 将来やっぱりそういうことに必要が起こってくる段階が私はあると思うのです。たとえば核兵器なんかの問題、管理という問題がやっぱり起こってくるので、そういうこともやはりある段階が来たら起こる可能性を持っております。
  324. 多田省吾

    ○多田省吾君 私たちは、前からそういった問題をからめて軍縮庁というようなものを設けて、非常に日本はおくれていますからやはり考えるべきだ。いままた、伊藤委員からも軍縮局ぐらいは少なくとも設けるべきだという強い御意見があったわけですね。軍縮室を少し強化して二、三人を五、六人にしてというようなニュアンスに聞こえますけれども、ほんとうにやはり軍縮という問題は今後の安全保障にとって非常に重大な問題だと思いますので、どうかひとついまの防衛研修所との話し合い等の問題にからめて、ひっくるめてひとつ大きな方針を立ててやっていかれることを強くお願いするわけでございます。まあそれは答弁要りませんけれども……。  それでは次に、アジア・太平洋構想、大臣がおっしゃっているその問題について二、三お尋ねをしますが、南北問題を中心にして日本それからアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、そういった太平洋五カ国が低開発諸国であるアジア、東南アジア諸地域を経済的に援助する、そういうのが趣旨であるというようなお話と承っておりますけれども 大体東南アジアの範囲ですね、インド、パキスタンなんか入るのか、それからいろいろ共産主義国も一応頭の中に入れておられるのか、大体どういった国々をおっしゃっておるのか、具体的に東南アジアの国々の名前をあげて御説明をいただきたいと思います。
  325. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いまは、この国は入ってこの国は入らぬといって、こういろいろやらないほうが私はいいと思います。いまはまだそういう一つの太平洋とアジアとを結びつける機構も、協力の機構も何も生まれておるわけではありませんから、やはりアジアはアジアで地域的な協力の機運を高めるし、日本もそれに対して寄与していく。太平洋は太平洋諸国でただ援助するといっても、太平洋諸国もますますやはり経済発展をしていって、そういう人を援助できる力も持たなければなりませんから、いまのところでは、そういうアジア・太平洋という地域の中で導つかの側面がある、推進していかなければならぬ幾つかの側面があって、みな側面というものを推し進めていくべきであって、いまのうちに、まだ協力体制もできてないのにあの国は入る、この国は入らぬといって、そういうことをやらないほうがいい、現在の段階ではそういう考えでございます。
  326. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、そのアジア・太平洋構想につきまして二つの心配があると思う。一つはやはり日本が強力にそういった東南アジア低開発諸国の援助ということを唱えている以上、早くその総生産の一%の援助を確立すべきだ。現在は〇・七%というようなことを聞いておりますけれども、それがなされていないのに強力に主張する何かうしろめたい点がなきにしもあらずではないか、主張が鈍るのではないか、こういう点と、もう一つは東南アジア諸国にはやはり共産主義諸国もあるわけです。それに対してまたいろいろ政治的な思惑を生じさせるのではないか、その二つが大きな隘路になっているのじゃないか。それで大臣としてはこの二つの隣路に対してどういう取り組入方をしてアジア、太平洋構想を進められるおつもりかお尋ねいたします。
  327. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 日本のような成長度の高い国で、国民所得の一%というのはやはりたいへんな水準である。したがって、これを一ぺんに直ちに実現をするということには無理があって、やはり今後数年をかけていく必要があるでしょうね。できるだけ早くということだけれども、それはやっぱり今後二、三年くらいかかるでしょう。そういうところに、この一%に持っていく努力をするべきであって、一ぺんにいま直ちに一%になっていないから、そのアジアの南北問題を解決しようという日本の熱意、そんなことはうしろめいて言えないのじゃないかというふうには考えていないわけです。国民に対してもいろいろ国内でやりたいことがあるけれども、これと並行して早く一%にもつていくことに対して国民の理解を得たいという訴えは当然になされなければならぬし、また、そういう困難な中でも一%にもっていきたいという努力をしておる日本の誠意というものを軸にして東南アジアの地域的な協力というものを盛り上げていく日本の役割りというものはやっぱり私は大いにあると思います。そういうことで日本が一%に達していないからなかなかやれないではないかとは考えていないのでございます。
  328. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、低開発諸国に対する援助でありますけれども、平和部隊なんかはありますが、当然効果のある援助が望ましいわけです。私たちの、国民の税金がやはり援助にかわるわけですから、その点からもそうあるべきだと思います。たとえば一つの問題でございますが、留学生問題を一つ取り上げましても、かなり語学的なことばの問題で日本に留学しても効果があがらないということもあります。  それからもう一つは、東南アジア諸国は、一応民度が低いとされておりますから教育がまだ進んでいないわけです。そういった点で幾ら工業、農業の技術援助がなされても中途はんぱになってしまって立ち消えになる、そういう点が非常に多いわけです。こっちが援助して技術者が行っている間はいいが、帰ってきてしまうととぎれてしまうとか、そういう問題をからめて平和部隊等に関連して、現地の東南アジア諸国に日本語学校のようなものを設けて日本語を習得させるとか、あるいはそういう問題で語学の問題を解決するとか、もう一点は、日本語だけに片寄らないで、英語等でこちらが留学生に対していろいろ教育の援助をするとか、そういった点も考えられていいのではないかという提案もあるわけでございます。その具体的な効果のある援助ということで、また技術援助ということで、そういった提案に対してはいかがお考えですか。
  329. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 低開発国への援助は金ばかりではなく、御指摘のように、金といってもその金を有効に使うためには技術が要る、いろいろな管理能力が要る。いろいろな金だけでない面がありますので、御指摘のように、諸外国から学生、留学生、研修生、これを受け入れる。日本の専門家が現地に出向いて行って技術協力といいますかね、そういう研修をするというようなことは、これから力を入れていかなければならぬ問題だと思います。各国ともやはりそういう意味の技術協力というものの政府借款の中で占める割合というものは日本が一番低いのであります。大体先進諸国は一八%くらいの技術協力、日本は七%程度でありまして低いのですから、力を入れていかなければならぬ。  それから、ことばのことは御指摘のとおりですけれども、英語でみんな教えるということになれば、日本に来なければならないという問題があるんですね。英語でみんな教育を受けるなら英語の本場の国に行って教育を受けようということで、非常にむずかしい問題です。日本でみな英語でやるというなら、英語をもともと話している国へ行ったほうが早いじゃないかというようなことで、これはなかなか割り切れぬ問題です。やはりある意味において日本語の教育もして、そうして日本での実際の研修生も会社の中へ入らなければならぬわけですから、研修生のために工場がみな英語を使うというわけにはいきませんから、どうしたって日本へ来る人たちには日本語を習ってもらわぬと不便があるわけですね。そういう点でなかなかことばを国際語的なことばに割り切れということには割り切れぬ面がある。こういうことで非常にそれは不便な非常なハンディキャップだと思いますが、そういう中においても、できるだけそういう留学生、研修生などが将来その国に帰って、国の再建に中堅となって活躍のできるような人材を、そういう困難な条件の中で養成するよりほかはないのではないか、こう考えておるのでございます。
  330. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、英語の提案と、もう一つは、日本語を使うんだったら、現地に日本語学校みたいなものをつくったらいいんではないかという提案です。
  331. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はそういう必要はあると思いますよ。ですから、日本語科を置いておる大学が東南アジアにあるわけです。これはもう少し日本語の科目、これは大学ばかりでなしに、高等学校なんかにもそういう科を置いて、そうして日本が協力して、そういう人は日本語を習って、その人が日本に来るということになれば、語学を習うために一年ぐらい語学教育のために実際の専門科教育を受けられないという、そういう時間のロスはなくなるわけでありますから、非常にけっこうなことだと、これから少し積極的にやったらいいと考えております。
  332. 多田省吾

    ○多田省吾君 インド、パキスタンは非常に食糧危機に脅かされておりますけれども、日本からのインド、パキスタンに対する食糧援助はどのような状態ですか。それから今後どういう努力をなされていかれるつもりですか。
  333. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ロストフというアメリカの大統領の代理が参りまして、インドの食糧飢饉に対しては国際的な協力を必要とする、日本に対しても協力してほしいという要請がございます。日本は直ちに、西欧諸国はまだ返事しない国が多いんですけれども、アジアの一員である日本として、インドの食糧飢饉という人間生活の中における一番の問題である食糧という問題に関連をしておりますから、七百万ドルの食糧の援助を与えるということを、これはもうほとんど時間をかけずに決定をいたしました。金額は向こうが予定しておった金額ではございませんでしたけれども、決定が早かったということに対して、アメリカもインドも敬意を表しておる次第でございます。
  334. 多田省吾

    ○多田省吾君 アジア・太平洋構想にからんで、今度七月五日に第二回のアジア閣僚会議がバンコックで開かれる予定ですが、第一回目のソウルで開かれた会議では、極力政治色を排するということで非常に紛争がなかったということを聞いております。第二回目の閣僚会議では、外務省として、基本方針としては政治討議の場に転換したいというようなお考えのように聞いておりますけれども、すでにマレーシアのラーマン首相なども政治色は排すべきだということを強く主張しておるということも聞いております。この第二回目の閣僚会議には、政治色を織り込むといいますと語弊がありますけれども、そういった政治の問題も相当織り込まれるおつもりですか。
  335. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは少し――日本の考え方というものは何も政治色を持たそうと考えていないんです。しかし、第一回のときはこれが非常に反共政治連盟的性格を帯びるのではないかということで、国会などにおいても論議を呼んだわけであります。そういうのであまり政治は第一回のときに、話さないほうが、政治問題にあまり触れないほうが、こういう会議の将来継続してやっていくためには必要でないかということで、必要以上に政治というものが入ってくることを、第一回のときは警戒したのですね。今度何も政治色を出そうと思いませんが、これは外務大臣が寄る会議というのはほかにないのですから、アジアの外務大臣がみな寄ってきて、政治のことは一切話してはいけぬというのもおかしなものではないか。無理に政治色を持たす必要はないけれども、みな政治も経済も自由に話してみたらどうだろう、この問題は話してはいけぬというのは、外務大臣が寄ってきて、経済の問題以外は何も話してはいけぬという窮屈なことをする必要はないのではないか。みなが自由に話したらいいではないか。そういうことを、一回しかない会議ですから、アジアの外相会議、みなが話してそれで何らかの結論を出そう、こういうことにするから何かなるので、結論出なくていいんで、みなが話し合って、お互いに理解をし合うということで意義があるので、何かこういう結論に持っていきたいと考えてそういう会議にするということならば、弊害が出てくると思います。そうでなしに、何も政治を話したくない人は話さなくてもいいし、話したいと思う人は話してもいいではないか、そんなに窮屈に、これ以上はいけぬのだ、境界線を設けて、話してはいけぬのだという会議に外務大臣の会議をするのは、すでに第一回のときには非常に警戒してそういうことがあったにしても、もう第二回にもなったら、みな自由に話したらいいではないか。そのかわりに、結論を何かここへ持っていこうということにしなければ、みな話していいではないかと私は考えております。無理に政治色を持たそうという考えは毛頭ありません。みな政治のことを話すのがいやな人は話さなければいいんで、それはみな自由にやればいいんじゃないかというのが私の考えでございます。
  336. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、前のソウルのときには政治色を排そうとして、極力政治の問題に触れないで経済とか社会とか文化問題なんかに集約して話し合われたような姿になったと思うのです。今度は政治問題も話し合われるわけですが、相当範囲も広くなると思うのです。大体具体的に、これは前よりもどういった問題が主眼となって話される予定なんですか。
  337. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 政治色というから、色というのは私はよくわからぬので、外務大臣ですから、やはりアジアとか世界の政治情勢というものをとういうふうに考えているのか、そういう話などもあっていいんで、それだけは言うなという、そういう窮屈な会議にする必要はないのではないか。それできまった結論に持っていこうという意図を持っておれば弊害出ますよ。そうでなくて、自由に話し合うのはいいではないかということで、何が出るかわからぬが、おそらくやはり世界情勢というものをどういうふうに見ているのか、アジアの情勢をどういうふうに見ているのか、経済の問題についてもアジアの経済協力というものをどう進めていくのか、もっと大所高所からながめて、個々のプロジェクトごとの議論ということよりも、全体としてのアジアの経済協力というものはどういうことでもっと推進していけるのか、そういう話というものは自由にしていいではないか。初めから窮屈に、何かこういう話、これ以外はやらぬとか、こういうことだけ話しするとか、そんなに縛らぬほうがいいと私は思っているのです。サロンみたいにやったらいいんじゃないかと私は思うのでございます。
  338. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、当然、一番大きな問題であるベトナム紛争の問題なんか出ると思います。ところが、アジア・太平洋閣僚会議のメンバーといいますと、ほとんどベトナム派兵国になってしまう。そういった問題で、ベトナム紛争のお話が出たときに、ひとつ日本の外務大臣としてどういう指示をなされるつもりか、どういう話し合いをなされるつもりか。その点だけお聞きしたいと思います。
  339. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それは何ぼ外相でも、日本が参戦国のように兵を出すわけにいかぬのですから、そんなにいろいろ日本がベトナム戦争といったってやれる限界がある。ことに日本はこの戦争の一日も早き平和的解決を望んでおるわけでありますから、それは参戦しておる国だって、いつまでも続けばいいと思っていないでしょうから、ベトナム問題が出るとも思いませんが、もし出たところで、みなやはり一日も早く平和と思う考え方には違いはないわけでありますから、そういう問題が出たところにおいても、やはりそれが重大問題だということで、いろいろなその国の立場を話して、これでみながそろうて結論を出す会議でないとなれば、そういうものが出てもやむを得ないのじゃないかと私は思っております。
  340. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまのお話しでも、外務大臣は、あらゆる機会をとらえてあらゆる観点からベトナム紛争を解決する方向に向かっていく。そうしたら派兵国なんかがたくさん集まれば、外務大臣がたくさん集まればすごくいい機会だと思うのですけれども、そのあらゆる機会にあらゆる努力をしていく機会としては。その二つの観点から見まして、やはりベトナム問題が出たらと申しますけれども、当然出ることは予想されます。で、その際、そういったきわめてばく然としたお話ではなくて、先ほどお話しされておるように、十七度線云々というお話もされておりますが、具体的な提案というものは全然なされないおつもりですか。
  341. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 具体的なベトナム問題に対して提案をしようという考えはありません。やはり私は、そうやって外務大臣が一年に一回、アジアの外務大臣が寄って、自由にいろいろの考え方をみな話し合うということだけでも大きな意義があるので、そこで何らかの結論を自分が提案をして、そうして結論を出さにゃいかぬとも考えていないのです。みなが自由に話し合って、そのことだけでも大きな意義があるのではないかというふうに考えておりますから、あまり気負い立ってこの会議に臨もうとはしていないのであります。
  342. 多田省吾

    ○多田省吾君 ベトナム紛争は非常にまた深みに入って、ウエストモーランドなんかも、六十万にふやしたいという意向もあるようでありますし、また、ニューヨークタイムズの有名なソールズベリーという記者なんかも、中国の介入も考えられる、そういう危険性が増大しておるというような講演を二十九日にやっておるようであります。また、核兵器の使用も考えられるのじゃないかというような、きわめて切迫した報道がなされておるわけであります。また、今回も非武装地帯にとうとうアメリカ軍が入りまして、非常に重大な危機に入っております。で、やはりこの段階において、一つは非武装地帯に入ったことに対して、十七度線を中心とする休戦を主張しておられた大臣として、アメリカ等に対してどういう抗議提案をなさるお考えか。それからもう一つは、こういったきわめて切迫した状況において、やはり日本としても強力に紛争解決の、ここで提案をなすべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  343. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 非武装地帯に対しては、アメリカもだんだんと撤退をしていっておるようでありますが、また一方からいえば、北のほうは、非武装地帯どころか、正規軍が南に入ってきておるわけでありますから、非武装地帯よりも南のほうに北からは入ってきておるわけでありますから、やはりこの紛争というものは、考えてみると、両方がやはりいろいろな言い分を持っているわけですね。だから一方だけを、間違っておるのはおまえだと、こう言ってきめつけてもなかなかやはり和平はこないので、一日も早く一つの停戦をして、そうして話し合いに入り、休戦の協定に入る、こういうふうな何か一日も早く戦争をやめさすということに努力しないと、おまえのほうは非武装地帯に入った、そうすると非武装地帯どころか南ベトナムそのものに兵力を入れてきているではないかと言い始めたら、それはやはり平和的な解決というものに役立つとは思いません。そういうことで一日も早くこの平和的な解決をするということに努力をすることが、私はこの際に必要なことだと思っているのでございます。
  344. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、亡命問題についてお尋ねいたしますけれども、この前グリッグス一等兵が亡命したわけでございますが、その問題と、それからソ連の技師のバカノビッチという人もアメリカに亡命を求めておりますけれども、この二つの亡命の問題は一カ月以上たっておりますけれども、現在はどういう状態になっておりますか。話してください。
  345. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これはキューバ大使館は、キューバ政府は亡命を受け入れるという決定を行なったという通知をしてきておる。しかし、大使館の中に日本の警察権は及びませんから、だから外に出てくればこれは日本の警察は逮捕せざるを得ない。しかし、大使館におる間はこれはどうにもならない。そういうのが現状でございます。
  346. 多田省吾

    ○多田省吾君 ソ連の技師の亡命はどうなっていますか。
  347. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 日付のところは私ちょっと覚えておりませんけれども、ソ連国籍の者が米国に亡命の希望を持って在京米大使館にあっせんを求めた。そこでアメリカ大使館は、さっそくそれを外務省を通じまして日本政府に知らせてまいりまして、日本の警察の手によって本人の意思を確認いたしまして、そして本人の希望を尊重いたしまして、出国いたしたわけでございます。
  348. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでそのグリッグス一等兵ですね、キューバに対する亡命を希望しているのに、そっちのほうはキューバ大使館を出たとたんに日本の警察がつかまえてアメリカ側に引き渡そうとしているというそういう姿が見られるのに、ソ連の技師のほうは直ちにアメリカのほうに移送しちゃった。そういう姿があるわけです。ですから、共産主義圏に対する亡命は非常にきびしい、自由圏に対する亡命は非常に寛大だと、そういうふうにとられておりますけれども、これはどうですか。
  349. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) キューバにおりますのは確認していないわけです。米軍人だというけれども、日本が確認したわけではない。それが米軍人であるかどうかということによって、米軍人でなければ出入国違反になるでしょう。米軍人の場合はそれはアメリカに引き渡すということになるわけでありまして、米軍人であればそういうことで、原則的にはやはり差別、共産圏と何とは差別しているわけではないわけです。承認している国の話ですよね、承認している国では原則的には差別はできない。
  350. 北村暢

    北村暢君 それじゃ私はもういろいろ外交上の問題については出尽くしたようですから、法案に直接関係のある点、二、三点質問をいたして終わりたいと思います。  まず、お伺いしたいのは、今度の法案に関係する点で海外渡航の、海外における邦人の生命、財産等の保護に関する事務について非常に多くなったので、それに対する処置をとる、こういうのですが、一体海外渡航者とそれから海外で仕事をしてやや長期にわたって滞在しているというような状態は、いま地域的にいってどんなような状況になっているのですか。その現状を若干教えてください。
  351. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) ただいま資料を持ち合わせておりませんので、調査の上至急御回答いたします。
  352. 北村暢

    北村暢君 高度の外交論議は答弁できるけれども法案にごく関係の深いこういうものの資料を持ってこないのはけしからぬじゃないですか。法案審議するのに態勢ができていないじゃないか。法案について聞ているのだよ。
  353. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 現在判明しております資料について申上げますが、昨年度の全海外渡航の総数は二十一万でございます。そのうちの六割がアジア、その他がアメリカその他の諸国でございます。なお、海外渡航でなく、従来から在住者として中南米にいた者が六十七万でございます。現在お尋ねの各商社等から行った者も、いまの二十一万人に含まれております。
  354. 北村暢

    北村暢君 そうすると、中南米の六十七万ですか、これは移住していった人でしょう。したがって、移住していったのですから、向こうの政府の保護を受けるわけですね。そうでなしに、貿易、商用その他で相当長期に滞在するという者はこの二十一万の中に入っていると、こういうことですね。
  355. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) そのとおりでございます。
  356. 北村暢

    北村暢君 それで、この二十一万のうちに、たとえば、やや観光旅行的に――いま非常にはやっているわけなんですが、観光旅行に行く人と、商用で相当二カ月、三カ月というふうに滞在される人と、約二十日間の、外貨割り当ての範囲内で二十日間くらい行かれる人と、これの比率はどんな程度になっていますか。
  357. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 現在の、総数のうちで観光目的を持って渡航した者が、そのうちの四五%、業務関係で渡航しました者が四二%、その他が残りでございます。
  358. 北村暢

    北村暢君 実際、最近のそういう海外渡航される方が非常に多くなったということについて、従来の地域局で所管したものを官房で一括する、そうしたほうがいいということのようですが、その理由は一体どういうことなんですか。  それともう一つは、最近における生命、財産等の保護の問題について、特に海外においてそういう危険な事態があった例というのがそんなにふえているのか、どうなっているのか、その点ひとつ二点についてお伺いします。
  359. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) お尋ねの生命、財産の保護という意味は、危険があるから保護するということよりも、むしろ非常に日常の業務で在留邦人の生命、財産に関係するものが多いわけでございます。一例を申し上げますと、戸籍業務のごときもの、これは各地域局でやっておりますが、共通の点が七、八〇%でございますので、これは一つのところでまとめてやったほうがより統一的にできる。あるいは国家援護法と申しまして、外で旅行しておったところが帰れなくなった、財政的に貧困して帰れなくなった、そういうケースがわりあいにございます。その場合に国家がこれに対して貸し付けをするわけでございますが、こういう業務も各地域でやるよりも、一括してやったほうがよろしい。あるいは最近これは諸先生方の非常なサポートもございますが、在外の子弟の教育、在外職員の子弟の教育等につきましても、たとえばアジア地域、中南米では事情は違いますけれども、教育そのものにつきましては共通の点が非常に多いわけでございます。たとえて申し上げますと、教科書の問題とかあるいはこれらの子弟が日本に帰りましてからあとの日本の学校へ入学するときの課程の問題とか、そういった子弟教育についても共通の仕事が多いということで、むしろそういう危険な場合に対する処理ということでない事務が大部分でございます。ただ危険な場合につきまして申し上げますと、たとえば漁船拿捕のような場合でございますが、これはそこにもついてありますように、初めの段階においてはむしろかなり高度の外交交渉を必要とする場合が多々ございます。そういう場合には地域局において処理して、つかまった漁船の釈放と、釈放が大体きまってからあとの処置はこの領事課でやるとか、そういうことを考えておる次第でございます。
  360. 北村暢

    北村暢君 そういう事務的な問題は官房でやるのが便利でしょう。そこで、そのために人員が増加されているのは、大体在外公館の人員が大幅にふえているわけですね。そこでお伺いしたいのは、この生命、財産の保護ということなんだが、これは地域的にいって、まあ国際紛争のある東南アジアとかあるいは先ほど話のありましたソビエトの拿捕事件ですね、そういうような問題とも関連して、この実際の危険ですね、海外における危険、こういうものについて地域的に人員の増強とも関連して、私は、一律に在外公館にずっと一人か二人やるのか、それとも何か地域的に非常に危険の地域の、問題の起こりやすいところがあって、そこに特に配置しなければならないのか、まあこれは起こった事象に対する外交的なことをやるので、とても在外公館これだけの人間をふやしたからといって、危険なものを実際には在外公館の人が保護するというわけにはいかないだろうと思うのですけれども、そういう点の配慮は一体どのようになされているのか、これをちょっとお伺いしたいと思います。
  361. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 本省と在外公館に分けて申しあげますが、本省につきましては、ただいまもちょっと触れましたように、各地域にある事務を領事課において統一的に行なうというのが本旨でございますので、各地域局から人員を拠出させて新しい課をつくるということでございまして、本省に関する限りは増員はございません。それから在外につきましては、ふえたものの中で、問題の多いアジア地域には、そのうちから四名領事事務でふやしております。それから旅券その他の事務で非常に多忙な北米地域に、二名をふやしております。これは領事事務についてでございますが、その他者公館によっては非常に小さ過ぎて、いまの規模では適当でないというために増員になったところも多々ございますし、あるいは経済外交を推進するために必要だというために増員になったところもございますので、領事事務につきましては全体で七名の増員を予定しております。
  362. 北村暢

    北村暢君 大体わかりましたがね、ただ一つ問題になるのは、最近拿捕事件が盛んに起こっている北朝鮮との拿捕事件の問題について、これは外交関係がないので、赤十字を通じてやるという程度のことしかやっていないようでございますが、これは外務省として一体どのような対策を持っておられるのか、まあ赤十字に頼んでやっているのかどうか知りませんけれども、そういうような点について最近しばしば出ているようでありますから、どのように対処していかれるのか。
  363. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 領事事務に関しましては、ただいまの説明のごとき事件は、これはむしろ政治的な色彩が強い問題でございますので、今後とも領事課で処理するのではなくて、地域局であるアジア局で処理することになっております。そういう意味でアジア局長から御答弁いたします。
  364. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) ただいま御指摘の北鮮の漁船の問題につきまして、船長が北鮮の船に乗せられて連れていかれたという情報がございましたので、直ちに日本赤十字社と協議いたしまして、日本赤十字から朝鮮赤十字に対しまして、船長の身の安全と早期釈放を依頼する電報を打ってもらいました。
  365. 北村暢

    北村暢君 大体、質問は終わりますけれども、最後に人員の増加について、これは仕事の量が多いということでふえたということで認められたのか、いまは定員をふやさない方針できているようでございますから、その認められた理由というのは一体どこにあるのか、これをちょっとお伺いしたい。
  366. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 増員は一名がこの領事課長、本省でございまして、その他はすべて在外でございます。在外につきましてはまあ忙しいといいますか、在外公館の質を向上させるという意味で、三名、四名の小さな公館にふやすという意味が一つと、もう一つは、新設公館がございますので、このためには最小限の人員を入れるという趣旨でございます。
  367. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま北村さんが質問したことに関連するのですが、法案のことで二つばかりお聞きしたいのですが、一つは官房の所掌事務というのですか、海外における邦人の生命、身体及び財産の保護に関すること、こういうのがあるわけですね。この海外という場合に、中華人民共和国の場合も含むのですか、これはどういうのですか。
  368. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) これは在外公館との関連、在外公館に対する指示という関係でございますので、具体的にはわが国と国交を持っている国という意味でございます。
  369. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 中国へ行く人の旅券を見ますと、行く先は中華人民共和国になっているわけでしょう。そうしてその行く先々だけに対して、日本の外務大臣からその行く日本人の生命、身体、財産の保護をしてくれと書いてあるわけですね。そうすると、中華人民共和国に行く場合には、日本の外務省としては中華人民共和国に、そこへ行く日本人の保護を頼んでおるわけですか。
  370. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 旅券に、地域名として中華人民共和国というように書いてありますので、旅券の場合には、国名ということではないということと、便宜供与を与えてくれということは、その地域に到達する過程において幾つかの承認国を経由して行くので、その承認国に対して便宜供与を依頼するということでございます。
  371. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 なかなか苦しいのはわかりますが、中華人民共和国というのは地域ですか、これはあなた国名でしょうが。
  372. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 旅券の場合には、その承認国のみが対象になりますので、その他に書く場合には地域というように了解しております。
  373. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはなかなか苦しいね。なかなか技術的な答弁ですが、また事実上あれですね、最初北京と書いておったのを現在は中華人民共和国と書くわけですね旅券に。最初と変わってきたのですよね。だから外務省としてはこれは言えないけれども、事実上中国は承認しているようなものだ、こういう考え方をとっているんじゃないでしょうか。だって中華人民共和国という地域があるということになると、どこからどこまでということになりますね。これは問題になってくるわけですね。それは北朝鮮みたいに平壌と書くのならまだわかる。そうじゃないでしょう。中華人民共和国は広いのだ。どこからどこが中華人民共和国か、こういう議論になってくる。そうなってくると、二つの中国論になっていろいろ問題になってくる。
  374. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) その点になりますと条約論になりますから、条約局長から……。
  375. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはいいよ、わかっているから。  逆に中華人民共和国から日本へ来るでしょう、来た人の生命、身体、財産の保護は、これは日本政府として法律的な責任はないのですか、どうなんですか。
  376. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 法律的にはございません。
  377. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまぼくが質問したことは変化があるのですよね。最初北京だったものが変わってきたのですからね。それは外務省の人は、事実上中華人民共和国というものは承認したようなものだということをはっきり言っていますよ。だれが言ったかということはこれは言えませんがね。それ、委員会の席で速記とられているところでそういうことを言うわけにもいきませんけれどもね。あなた、うなづいているからそうなるものと思いますが……。
  378. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) うなづいたためにそれを了承したということになると困ります。制度的あるいは法律的にはそうではございません。
  379. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 取り扱いとしては北朝鮮の場合と相当隔たりがある取り扱いをしている。旅券の発給等についてもこいつは言えるわけでしょう。
  380. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 実際問題として、法律的、制度的には何ら区別はございません。
  381. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まあそういうふうに答えざるを得ないでしょうからね。  それから外務審議官を二人にしたというわけでしょう。これは大臣、何か特別な考えというと語弊がありますが、一人の外務審議官がこういうことをする、もう一人はこういうようなことをする、こういうように私らちょっと聞いているのですがね、それはどういうふうなんでしょうか、これは大臣から……。
  382. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 一人は長期的な政策立案、一人は日常のいろいろの外交事務の処理、大きくはこう考えておるわけでございます。
  383. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外務審議官の一人が長期的なものをやるのですか。長期というのは、当面外務省の問題となっている安保問題、それから中国問題、これが中心だというようにもお伺いしているわけですがね、仄聞というか、お伺いしているわけですけれども、そういうように考えて大体よろしいですか。
  384. 齋藤鎮男

    政府委員(齋藤鎮男君) 具体的にはこれは大臣の命を受けてということになっておりまして、大臣の命によってきまります。で、一番いい例は、アジア・太平洋構想のように、地域的にも非常に広いし、それから時間的にもかなり長期にわたるというものについてのプランニングから、ある程度まではその実施ということが新しい審議官の任務となっております。
  385. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その長期的という意味、いろいろあると思いますが、現実には、やはり中国問題と限定できませんけれども、大体中国問題なり安保問題、こういうふうなものに外務省としては積極的に取り組むということのあらわれだ、こういうふうに見てもいいのじゃないですか、これは大臣、どうですか。
  386. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中国問題というものに限りませんけれども、中国問題もやはり大きな課題たり得ると思います。
  387. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 安保問題はどうですか。
  388. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 安保もそうです。安全保障の問題も一つの問題たり得ると思います。
  389. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  390. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。     ―――――――――――――
  391. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) この際、委員異動について御報告いたします。森八三一君が辞任され、その補欠として木村睦男君が選任されました。     ―――――――――――――
  392. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 他に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のある方は、替否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようてございますから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。  外務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  393. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  394. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   速記とめて、   〔速記中止〕
  395. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。
  396. 小川平四郎

    政府委員小川平四郎君) 先ほど御指摘の点でございますが、記録を調べましたところ、六五年の八月の韓国の国会で、質問として、もし北鮮が再侵略した場合、日本はいかなる立場をとるかという質問が出たようでございます。これに対しまして丁総理は、これは日本がきめるべき問題であるが、日本は憲法上からいっても海外派兵はできないと思う、また、国連軍の一員として援助ということも考えられるが、これも憲法上実現できないと思う、こういうふうに丁総理は答えております。
  397. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  398. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。     ―――――――――――――
  399. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 次に、通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、午前に引き続き、本案質疑を続行いたします。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  400. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案については、午前中すでに北村稲葉委員から質疑がありましたので、極力重複を避けて御質問を二、三いたしたいと思います。午前中は法案自体に関することが比較的少なかったので、特に法案自体の関係について順を追って二、三お伺いしたいと思います。  まずお伺いしたいのは、先般の提案理由説明によりますと、企業局の産業立地部立地公害部と改称するということでありますので、まずそのことに関連してお伺いいたします。現在の産業立地部の構成とか所掌事務、このことをまず順序としてお伺いいたしますが、そのことにあわせて立地公害部と改称する理由は、行政内容の変化に対応されるためであると説明はされておりますが、その実情についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
  401. 馬場一也

    説明員馬場一也君) お答え申し上げます。現在の産業立地部には四課ございまして、立地政策課、立地指導課、工業用水課、産業公害課と四課あるわけでございます。立地部で担当しております仕事は、立地政策課、立地指導課はおもに工業立地あるいは工業立地企業が行ないますときのいろいろな助言指導あるいは必要な調査というようなものを主として担当いたしております。工業用水課におきましては、工業用水道の建設とかいうのをもっぱら担当しております。それから産業公害課におきましては、いわゆる産業公害の問題を担当しておるわけであります。しかしながら、立地行政を進めてまいります上に、各課の仕事必ずしも産業公害課のみならず、立地政策課の仕事につきましても、あるいは工業用水課の仕事の内容におきましても、最近非常に公害行政のウエートというのが高まっております。具体的に申しますと、立地政策課、立地指導課でやっておりますいわゆる工場立地ということを考えます場合にも、御承知のように、工場立地のありよう次第によりましては、非常に産業公害の問題と密接に関連をいたしておりますので、工場が建ちましてからあとでいろいろ出た公害を規制をするという狭義の産業公害行政のほかに、工場立地面からいろいろ産業公害の問題を考えながら指導してまいる、あるいは立地の適正化を行なうというような仕事が非常にふえております。また、工業用水課では、工業用水道の建設というのを重点にやっておるわけでありますが、これも東京、大阪等におきましては、御承知のように、地下水の汲み上げをたくさんやり過ぎますと地盤沈下を起こすという公害を発生いたしますので、この地盤沈下を防ぎますために地下水の汲み上げを規制する、そのために代替用の工業用水道を建設するという、公害に関連した工業用水道というのがこれまた非常に多いわけであります。それから産業公害課におきましては、これはばい煙なり汚水なり、すでに法律にございます公害の規制のほかに、いろいろ規制されておりません公害にどう対処していくかというような公害プロパーの問題があるわけでございます。このように考えますと、立地部の四課の仕事はいわゆる産業公害のみならず、すべての各課に公害行政の問題がかかってきておりますので、今般部の名称を産業立地部から立地公害部に改めまして、実態に即した行政をするという考え方をいたしたわけでございます。  それから公害課自身も今回の改正に伴いまして非常に公害プロパーの仕事がふえてきておりますので、課を一課増設をいたしまして、主として公害一課におきましては公害全般の問題を取り扱い、二課におきましては、具体的にばい煙なりあるいは汚水なりの法律の施行の事務を担当するというぐあいにしたいと、かように存じておる次第でございます。
  402. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、産業構造審議会というのがありますが、この審議会における産業公害に関するおもな論議について内容を御説明いただきたいと思います。
  403. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 産業構造審議会に産業公害部会という部会が設けられております。この部会は二、三年前から設けられておるのでございますが、この産業公害の問題をどう考えていったらいいかという基本的な方向あるいは個々の産業公害別にどう対処していったらいいかということにつきまして、年来御検討いただいておりまして、昨年の十月であったかと記憶してまりますが、そういう問題に対する答申をいただいておるのでございます。その産業公害部会の答申の結論を簡単に申し上げますと、産業公害問題というのはたいへん大事な問題だ、また、この問題を防止いたしますために、産業公害を出します企業の側におきまして個々の企業がそれぞれ自分のところから出す公害を最小限度にとどめますように、いままで以上に積極的にいろんな施設、施策を講じていくということの責任は当然もっと強調されなければならないというのが部会の答申の第一点でございます。  それから最近の産業公害問題を見ますと、こういう個々の企業がめいめいそれぞれ努力をするということはもちろんでございますが、一方におきましては、こういう大都市、大工業地帯に多くの企業が集中をいたしますと、一つ一つの企業はなし得る限りのことをやっておりましても、やはり公害そのものが一つ一つの企業でゼロにはならないわけでございますから、これが集積をいたしますと、全般として非常に大きな産業公害問題を起こすというのが最近のいわゆる大都市、大工業地帯において起こっておる公害問題の見のがしてはならない一つの要素である。こういう全般としての公害問題、企業の数もめいめいふえることにどう対処していくか、あるいは工場が次々ふえます場合に工場地帯といろいろな住宅地帯というような土地利用あるいは都市計画というようなものが十分に行なわれておりませんと、同じ量の公害が出ましても、ある場合には非常にスムーズにそれがうまくいっておりますと解決されますが、非常に計画等がふぐあいでございますと、また同じ公害でございましても非常に大きな問題を起こすというような問題もございます。そういうように現在の公害問題はめいめいの企業が一生懸命努力するということはもちろんでありますけれども、その個々の企業がめいめい自分のことを気をつけるというだけでは、それぞれの企業がたくさんにふえたという問題にどう対処するか、あるいは工業地帯と住宅地帯の問題をどう対処するかというような全般的な問題をあわせて考えて対策を講じませんと、現在の公害問題というのは全部解決するわけにはまいらない、こういうような問題意識が公害部会の二番目の問題意識でございました。  こういうような全体としての公害防除ということを考えますと、やはり企業責任を問うことのほかに、やはり国なりあるいは地方公共団体なりが全般的な立場から、必要な場合には企業立地について必要な調整を行ないあるいは都市計画について万全の策をつくるというような全体の立場からの施策というのが並行して行なわれなければ現在の公害問題は十分に解決できない。したがいまして、公害責任あるいは公害対策というものを考えます際に、企業責任のみならず、こういう全般の立場からの国なり、府県の責任も同様に重大であるというようなことが今回の公害部会で答申されました内容の結論を要約いたしますと、そういうような結論になっておるのでございます。
  404. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この産業公害の主としてあげられるのが四日市市だろうと思うのですが、この四日市市については重大な社会問題を提起しているわけです。そこでその後の四日市市に対する対策とか四日市市の現状はどうなのか、このことについても伺っておきたいと思います。
  405. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 四日市は、御承知のように、昭和三十年ごろからたいへん急速に工業化された都市であるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、この四日市の工業化が急速に進みまして、大きな工場地帯ができまして、ここにやはり全体の四日市としての土地利用と申しますか、都市計画といいますか、こういう点の配慮が必ずしも十分な配慮のもとに町づくりが行なわれませんでしたので、工場が次々生産を始めますと、御承知のような非常に大きな公害問題というのが起きたわけでございます。しかしながら、こういう問題に、一地方ではありますけれども、できる限り対処しなければなりませんので、御承知かとも思いますが、昭和三十八年に通産省厚生省とが合同いたしまして、黒川調査団という、黒川真武先生を団長とする学識経験者の調査団をつくりまして、四日市の公害問題をどう考えるべきかという共同の調査を両方で実施いたしたわけでございます。この調査団のリポートによりまして、いろいろ工場側自身もそれまでめいめいの工場が十分な公害防除施設にまだ欠ける点があったというような一つの事例も数々ございました。このような個々の工場に対して、まず公害防止施設をさらに強化しなければいかぬという勧告の線は、その後工場側に強力な行政指導を行ないまして、ほぼ調査団の勧告のとおりにそれぞれ個々に改善を見ております。  それからそのほかに調査団報告におきましては、ただいま申しました個々の工場のほかに、やはり全体としての四日市の都市構造でございますとか、全般的な問題も同様に指摘をされているわけでございます。現在個々の工場側はその勧告に基づきましていろいろな設備を改善をいたしましたので、その後の数字を見ますと、大体四日市全体の公害、特に一番問題でございました亜硫酸ガスによる大気汚染というのは少なくとも数字的に見ますと、相当顕著に改善をされました。四日市は冬季及び夏季に特に風の関係で公害が集中するわけでございますが、これらのデータを見ましても、四十年、四十一年と逐次数字的には改善をされつつございます。  それから現在四日前におきましては、亜硫酸ガスの大気汚染のほかに、いろいろな化学工場が生産を行ないます際に多少漏れると申しますか、いわゆる化学操作の過程における悪臭問題というのがただいま残っている困難な公害問題でございます。これらにつきましても鋭意調査を進めまして、昨年の十二月には、この黒川調査団のいわゆるアフターケアということで、再度その後の四日市というものを調査していただきまして、現在そのリポートを待ちつつある状況でございまして、これら残っている公害問題につきましては、通産省といたしましても、調査団の再度の勧告に基づきまして、必要がある面については一そうの行政指導を行なっていきたい、かように考えているわけでございます。
  406. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昭和三十七年に、都市の均衡ある発展に資するためあるいはまた国民経済の伸展に資するという目的で創設されたいわゆる新産業都市建設促進法、この公布以後の実施状況一体どうなっているかということ、それとあわせてこの受益の範囲に問題があろうかと思う。というのは、公害を心配して問題になっているところもあるんですから、こういうことについて実情は一体どうなのかということを簡明にひとつお答え願いたい。
  407. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 新産業都市並びに工業整備特別地域は、御承知のように、新産業都市が十五、工業整備特別地域が六指定をされておりますが、指定をされまして以後最近までのその各都市におけるいわゆる工業出荷の伸びというものを経済企画庁が最近調べましたところによりますと、大体指定後三年か四年ぐらいの現在までの全新産都市の伸びの率は、大体全国平均を少し上回っておりまして、いわゆる新産業都市の昭和五十年における計画目標の数字に大体マッチしたところまで伸びております。したがって、われわれとしては一応計画どおりのペースで工業生産が伸びておるというふうに大勢的には判断できると思います。しかし、十五ございますので、ある新産は非常に伸びておるものもございます、多少新産の中で伸びにでこぼこはございますけれども、全体として見まして計画ペースで伸びておると申し上げられるかと思います。それからこのように各新産で工業が伸びてまいりますと、そこにまた新しい公害問題というようなものも起きてくる可能性があるわけでございますので、通産省といたしましては、こういう四日市のような状況になってからあとで手を打つということはたいへんいろいろな面で困難がございますので、こういう新しい工業地帯におきましては、事前にひとつ、工場立地がきまりました際に事前調査ということを行ないまして、その工場立地が予定どおり計画どおり進めばどういう状況になるのかということを科学的に調査をしまして、もしふぐあいな点がございますれば、個々の工場立地の際にいろいろ工場の施設をあらかじめ変更させるというような行政指導を各新産、工特を重点に四十年からそれぞれ行なっております。たとえば水島あるいわ鹿島等におきましてはかなり有効な指導を行なっておるというふうに存じております。
  408. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 新工場建設の場合、地元の民意が十分に尊重されてきているかどうか。遺憾ながら過去において問題がそういう点で起きているわけですね。たとえば沼津市とか三島市、こういうところの石油コンビナートの建設については地元民の強い反対でこれを取りやめたという最近の事例もあるわけですね。また、工場新設について行政指導としてはどうなっておるかという点、こういう問題をあわせてお答えをいただきたいと思います。
  409. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 三島、沼津あるいは姫路等で先生の御指摘にございましたような事態がございますが、やはり工場立地します際には、十分地元と公害面その他について十分円滑な関係を取り結びました上で立地するということが望ましいのでございますので、特に公害に関しましては、われわれただいま申し上げましたような事前のいろいろな指導等を十分に行ないまして、地元に安心して受け入れていただくような建て方をするという指導を各地域各工場についてできるだけ綿密に通産省としてはやっておる、こういう状況でございます。
  410. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 騒音とか悪臭ですね、こういうものは産業に関連する未規制の公害になっておるわけですね。この面の検討はどの程度進んでおるかということ、それといま一つは、地方条例が法律に優先して騒音防止条例というような規制をしておるのがありますけれども、この点について通産省としてはどういうふうにお考えか、この点。
  411. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 現在法律で規制されております公害は、ばい煙規制法と申しますか、大気汚染関係、それから汚水でございます、工場排水、この二つのものがあるだけでございまして、そのほかの公害につきましては現在国の法律がございません。で、こういう騒音なり悪臭なりという未規制の公害につきまして新しい立法を考える必要があるのじゃないかという点につきましては、われわれ常々厚生省その他とも十分御連絡をいたしまして、つくるとすればどういう規制を行なうかということにつきまして、通産省の側としては、先ほど申し上げました構造審議会の公害部会等でもそれぞれ小委員会等をつくりまして鋭意検討中でございます。  それから法律がない場合に各府県ごとにそういう騒音等について条例が規定されておりますが、これをどう考えるかという御質問でございますが、これはいろいろな公害の種類にもよりますけれども、やはり大気汚染とか工場排水というような広域にわたる公害というのは、われわれとしてはなるべく国の立法で統一した基準公害規制をやるということがやはり理想ではなかろうかと思いますけれども、騒音でございますとか悪臭でございますとかいうような、多少局地的な、ローカルな公害につきましては、現在法律の検討が進みますまでの間、各府県でそれぞれ必要に応じて条例でその地域に応じた規制をされるということはその府県の実情に応じてこれまたけっこうであろうか、かように考えておるのでございます。
  412. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先般の提案理由説明によりますと、公害行政の比重は今後ますます強まるであろうという意味の説明を承ったわけです。そこで伺いますが、この国会に提案されております公害対策基本法とも関連して、通産省としての基本的な公害対策についてその概要でけっこうです、これは基本的な政策でありますので、ひとつ大臣に伺っておきたい。
  413. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 公害対策基本法はすでに法案ができ上がりまして、国会に提出してあるのでございますが、その基本法には大体の方針はきめられておるのであります。通産省としては御承知のとおり、産業が、企業加害者でありますからして、したがいまして、われわれはその加害者側に対していかに処すべきかということを調査し、また、それに対策を講じておるわけであります。すでに発生した公害については、これをできるだすその公害をなくするように指導をするということ、それから今後においては、公害の発生を未然に防ぐということ、そういうことについて通産省指導をしていくということでありまして、それからなお責任の問題については、現に公害が発生しておって、障害を与えているという場合に対しては、企業側の責任ということについては、通産省がそれについてはいろいろまた善処しなければならないというように考えておる次第であります。
  414. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 立地公害部の組織とか陣容については、名称を変更されたわけですが、ただ単なる名称変更であるだけなのか、どのようにまた強化されたのか、こういうことについて……。
  415. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 先ほども御説明を申し上げましたように、非常に公害行政のウエートが高まっておりますので、そういう行政の実態を正直に反映した名前にするということが第一の理由でございますが、そのほかに、ただ名前を変えるにとどまりませんで、今回公害課も従前一課でございましたのをさらにもう一課ふやしまして、公害一課、二課ということにして内容的にも公害行政をさらに実質的にも強化をしてまいりたい、かように存じておるのでございます。
  416. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま御説明あったわけですが、その程度で現在大きな社会問題となっておるこの公害行政を処理できるものであろうかどうか、疑いを持たざるを得ないわけですね。特に提案理由説明でもありましたように、今後公害行政の比重はますます高まるであろうということを自認されておるわけですね、通産省自体が。したがって、名称を変えて一課をふやすというこの程度でこれが完遂できるかどうか危惧の念を持たざるを得ない。その点はどうか、これでもう十分だとお考えなのか。
  417. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 公害対策の問題につきましては、厚生省のほうでは、また被害者側の立場に立って公害があるという調査、あるいは公害がどの程度あるかというような調査厚生省でしてもらいまして、それに対して公害を除くことができる処置が、装備ができるのであれば、そういうことを考えてわれわれはその装備を企業者にすすめ、また、未然公害が発生しないような方法を、あるいはその他の装備を研究してその装置の設置を企業者側に求めるというようなことをやるわけでありまして、今回立地公害部という部を設けましたのもそういう意味で、今後公害というものがますますふえてきたし、また、公害に対する国民の認識もだんだんと高まってきたように思うのであります。いままでは公害であったが、公害というふうにみんな考えていなかったのが、今日では公害とだんだんと認識してきたのでありますからして、したがって、この公害をこれをいかにして防止するかということが、政府としてもこれを重要な政策に考えておりまして、厚生省と相まって、あるいはまたほかの農林省も関係がありますが、厚生省と相まってこの公害対策をやっていきたい。厚生省もそういう公害の部ができましたので、したがって、両方でひとつ両々相助け、また相協力してやっていきたい、こう考えておる次第であります。
  418. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 通産省産業公害についての対策とか監督指導、こういう分野を担当しておるわけです。ただ、ここで問題なのは、どうも経済優先の企業者側に立っての考え方が強いという、そういう批判があるわけです。そこでお伺いするわけですが、この批判に対してどのようにお考え、またどのように反省しておるのか、こういうことについてもこの際伺っておきたいと思います。
  419. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 企業者の味方をするとかいうようなことでなくして、われわれはまず企業者側に公害というものの重要性を認識さすということ、それが重要なことだと思います。そこで、企業者側の公害に対する責任を痛感せしめるということ、そういう意味で、まあ公害対策基本法の中にもそういうような意味で文句を入れておるのでございまして、要するに、いままでは企業者側も無関心でおった、そんな無関心でおれぬぞということをひとつ認識してもらい、また、それに対して公害の発生しないように努力してもらうというところをわれわれはねらっておるのでありますからして、したがって、決して私は企業者側の味方をするとかなんとかいうようなことではなくして、今度の基本法を定めたような、通産省としては、基本法の中にわれわれの希望を織り込んでもらっておるということであります。
  420. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 経済優先の企業者側に立って特に考え方が強いということでなければたいへんけっこうなんですが、大体佐藤内閣の政治の柱の中に人命尊重ということがあるわけですね。そこで、あくまでもいわゆる人命が経済に優先する施策でなければならぬと当然考えられるわけです。そこで、そういうことは毛頭ないと、あくまで人命尊重で経済優先するようなことはないと確信おありなら問題ないわけですが、過去に、ややもするとそういう批判があったわけです。われわれも聞いておるわけです。したがって、今後ますますそういう心がまえでひとつ取り組んでいただきたいことをこの際強く要望申し上げておきたいと思います。  なお、公害防止事業団の構成とかあるいは事業種、活動の状況についてもこの際承っておきたいと思います。また、この事業団の監督は通産、厚生の両者にまたがっておるわけですね。その分野についてもこの際、通産はこういう面、厚生はこういう面というふうに大別でけっこう、そういうことについてもあわせてお答えいただきたいと思います。
  421. 馬場一也

    説明員馬場一也君) 公害防止事業団は、御承知のように、ただいまお話しになりましたように、通産省厚生省との共管の事業団でございまして、われわれは、両省共同してこの公害防止事業団を指導監督しておるわけでございます。現在公害防止事業団のおもなる業務といたしましては大体次のようなもの、一つは企業者が共同で公害の処理施設をつくる。具体的に申しますと、たとえば汚水の共同処理施設をつくるというような場合に、公害防止事業団がこれに対して融資をする、あるいは単に融資のみならず、その共同処理施設を公害防止事業団が建設をいたしまして、これを長年賦で事業者に譲渡していくというようなことで、共同処理施設の建設を円滑ならしめるという面、そういう仕事が一つございます。  それから二番目には、個々の企業が自分の処理施設をつくりますときに、これに対して融資をするという融資業務がございます。  それから三番目の仕事といたしましては、いわゆる緩衝緑地と申しますか、工場地帯と住宅地帯とをある程度離しますために、緩衝緑地帯のようなものを、これは府県も企業も入る場合が多うございますけれども、一緒になりまして、こういう緩衝緑地の建設を公害防止事業団がやって、管理者にそれを譲渡していくというような仕事。  それからもう一つの仕事は、公害を防止し、かつまた、その工場に働きます従業員の福利等を増進いたしますために、工場アパートというようなものをつくっていく。これに対して融資をし、あるいは建設を引き受けてこれを譲渡していくというような、大体四つの系統の仕事がございます。  それぞれ、通産省厚生省とにおきましては、大体共同の処理施設の建設、譲渡、あるいは個々の工場に対する融資というような、工場施設そのものに直結するような業務につきましては、大体仕事の面といたしまして通産省が主としてその面の事業団の業務を監督すると申しますか、見ていく。それから共同福利施設でありますとか、あるいは緩衝緑地帯というような仕事につきましては、厚生省が主として責任を持っていただくというようなことで、仕事の中身をある程度両省で分担をいたしまして見ていっておる、こういう状態でございます。むろん四つの仕事それぞれについて、おのおの各業務につきまして両省連絡を密にいたしておることは当然のことでございます。事業の内容といたしましては、大体その四つの仕事を合わせまして、昨年度は大体仕事量といたしましては、おおむね六十数億の業務を公害防止事業団はやっておりまして、その仕事を目下引き続きやっておると、こういう状況でございます。
  422. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先般の提案理由説明によりますと、まず重油ボイラー規制審議会を廃止するということでございますので、このことに関連してお伺いしたいと思いますが、提案理由でもございましたが、どうも廃止の理由がまだ具体的に明確でないということで、重ねて廃止の理由について承りたいということ。それからいま一つは、本審議会が廃止されても、石炭の需要は確保されるかどうかという点、一応も二応も危惧されるわけです。この点はどうなのか。なお、政策、利用の方針についてもあわせてこの際御説明いただきたいと思います。
  423. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 重油ボイラーの規制法というものは、御承知のとおり、一般産業における一般炭需要を確保するという目的でこの法案ができて、数度延長を重ねて今日まで来たのでありますが、今回の石炭対策といたしまして、政策需要と申しますか、電力用炭、あるいは鉄鋼用の原料炭の大口の政策需要の増加をはかって、そうして一般産業向けの一般炭の比重も低下しましたが、本法の規則による効果は、これによって大体満たされるのじゃないかということで、重油ボイラーの規制法というものを廃止しても影響ないという見通しが大体できたのであります。それで重油ボイラーの規制法を廃止することにいたした次第であります。
  424. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、お尋ねいたしますが、これも提案理由説明で伺ったわけですが、特許庁に審査第五部を新設するということでございますので、このことに関連してお伺いいたしますが、特許庁は、私がこれは指摘するまでもなく、年々大幅の増員をはかっておるわけです。これは事務の改善、合理化ということにももちろん努力されておるわけですが、資料によりますと、昨年末現在で審査については七十二万二千件、審判については三万件に及ぶ膨大な滞貨状況であるわけです。そこで、この点一体どういうふうに処理なさろうと思っておるのか、特許庁の滞貨問題については、本委員会でも、ここ十数年来そのつど問題になってきているわけです。引き続き、これが抜本的にまだ解決されていない。これが現状でありますので、この際、その施策についても伺っておきたいと思います。
  425. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 詳細なことは長官が来ておりますから御説明申し上げますが、お話のとおり、滞貨がふえたということは、出願者が非常に激増したということであって、そして審査なんかが間に合わなくなったというところに滞貨があると思います。そこで従来毎年定員も増加して審査する人をふやすという方針できたのでありますが、もう一つ根本的な問題は、特許制度を改正するということです。これで昨年特許制度の改正の法案を皆さんに審議をお願いすることにしたのでありましたが、各方面のいろいろの反対陳情がありまして、そこで結局廃案にせざるを得ないということになったのでありますが、結局、やはり特許制度自体を改善しなければ、この滞貨の処置はできないじゃないかということを考えておりますので、こういう工業所有権の問題につきまして、いま審議会を設けまして、これまで六回審議会を開いておるのでありますが、しかし、これについては議論続出、利害関係相反すということで、なかなか決着は容易に見出しがたいという状況であります。がしかし、私は、結局これはやらなければならぬと思うのでありますからして、いろいろ議論はありますけれども、できるだけ議論をしていただいて、そして大体の見当がつけば、ひとつまた特許制度の改正の法案を、まあ成文化していきたいと、こう存じておる次第であります。
  426. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この特許庁の滞貨解消対策ということについて、先ほども申し上げたように、ここ十数年来問題になってきているわけですが、そのつど通産省側としては、いわゆる制度の改正以外にない。制度の改正を検討中である。そういうふうに明回答があるわけですけれども、いまだに実現していないわけです。そこで、今回の場合を見ますと、審査第五部を新設するということ、それと百三十人、これを内訳すると、定員増が六十七名で、凍結欠員の解除が六十三名ですか、計百三十名の増員をはかること。それと今後における事務の改善、合理化、こういうことで滞貨を消化しようと考えておるという提案理由説明があったわけですが、この程度で、こういう大きな、先ほども申し上げた七十二万二千とか三万件に及ぶ滞貨が解消できるであろうか、どうも危ぶまれるわけです。この点どのようにお考えかということです。
  427. 川出千速

    政府委員(川出千速君) はなはだ申しわけないことでございますけれども、御指摘のように、特許権、実用新案権、意匠権、商標権いわゆる工業所有権の滞貨が年々累増してまいりました。現在七十万件をこえておるような次第でございます。それに対応する対策といたしまして、何といたしましても、人員を増加して審査主義をとっておりますから、審査の量をふやすということが根本でございますけれども、それだけでは十分でございませんので、制度改正を検討しておりますけれども、いまだ結論ができていないわけでございます。人員の増加につきましては、最近三年間で平均百十八名の非常に大幅の増員をしておるわけでございますけれども、これで十分かとおっしゃれば、必ずしも十分とは言えないと思います。しかしながら、人員の増加ができましても、これまた採用の面でなかなか技術者の採用というのが最近むずかしいわけでございまして、単に人員の増加だけではなくて、待遇の改善問題というような問題もございまして、いろいろ今後なさねばならない問題はまだ残されておるわけでございます。
  428. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この特許庁の定員増が行なわれるたびごとに、先ほど大臣からも御答弁ございましたが、制度自体を抜本的に改正したい。そういう意味の御答弁がそのつどなされておるわけです。昨年も百四十四人という大量の増員があったわけです。これと並行してさらに特許法とか実用新案法の改正案が提案されたわけですけれども結論とすれば、これは、聞くところによるわけで、確たる私は裏づけを持っておりませんが、関係業者――関係業者といいますと、実用新案権を有する方々あるいは弁理士あるいは弁護士、これらの方々の圧力があって、ついに廃案となってしまったというふうに聞いておるわけです。そこで、はたして、そういうものがあるのかないのかということをこの際確かめておきたいということと、それから、抜本的な制度の改正に踏み切る以外にはどうも解決策は考えられない。私自体もそう考えてきておるわけです。大臣もひとつ、制度それ自体を改正したいと、いま審議会で云々という御答弁があったので、その点は了解できるわけですけれども、もうずいぶん長い間の課題でありますので、この辺でひとつ大臣の就任中に、これをひとつ実現されるよう特段のお骨折りをいただきたいと思うのですが、そういうことをあわせてひとつお答えいただきたいと思います。
  429. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話しのとおり、この特許制度の根本的な改正をしなければ、この滞貨の処置というものが困難だということを考えておるので、いままで、これは歴代の大臣もそういうことを申し上げておったと思うのであります。そこでこの前は特許制度の改正の審議会を設けまして、大体成案ができて、それには発明協会の人も、それから弁理士の人もみんな参加して、そうして、またメーカーの人も参加したりして、大体成案ができて、答申が出たのです。その答申に基づいて昨年法案を作成したのでありますが、さて法案をつくってみると、いままで賛成しておった人も、また反対をしてくるというようなことで、圧力というよりも、いろいろ疑義を皆さん持ってこられて、そこで、こういうことでは、もう皆さんの御賛成を得たというようなことではないということで、もう一ぺん根本的にひとつまた考え直そうじゃないかということで、廃案ということに相なったと、こう思うのでありまして、私三身も先ほども申し上げましたが、自民党の特許制度改正の特別委員長をやっておりまして、もう一年半この問題を私も取り組んでやって、そうして、いろいろの利害関係者の人からも意見を聞いて、大体これならばもういいじゃないかという感があったのでありますが、さていよいよ草案をつくってみると、いろいろの方面から反対意見が出てきて、それじゃとてもこれは成案を得ることは困難じゃないかというようなことで、もう一ぺんこの審議会をやり直そうということで、前大臣がまた審議会を設けることに相なったと、こう思う次第であります。
  430. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この問題については先ほど稲葉委員からも相当の御質問がございましたし、後ほどまた前川委員からもこの問題に重点を置いて御質問があると承っておりますので、私は、あとこの問題については一問だけお伺いして次に移りたいと思いますが、そこでお伺いしたいのは、日本と諸外国との間におけるいわゆる特許権の侵害事案、これはどの程度あるのか、その実情について概要を少しこの際御説明いただきたいと思います。
  431. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 特許権につきまして、諸外国との間にいろいろな紛争があるということでございますが、午前中に御質問ございました韓国との関係で、これは条約関係はできていないわけでございますけれども、日本の民間の企業から相当類似の商標みたいなようなものが韓国にあるという話を聞いて、非公式ではございますけれども、自粛をしてもらいたいという要望はしたことがございますが、そのほか特許権の問題について外国との間にさほどの紛争事件というものは現在のところございません。
  432. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、これも提案理由説明によって承ったことについての問題でありますが、定員改正と凍結欠員数についてまず説明いただきたいと思います。
  433. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 御承知のように、欠員ができますと補充について凍結をされるわけでございますが、特許庁はこの凍結の程度が明快になっておりまして、技術職員につきましては一割程度の凍結になっておるわけでございます。今回増員にあたりましては、全部で百三十名増員のうちの十八名が凍結定員の解除でございます。したがって、百三十名から十八名を引いた百十二名が増員ということになります。
  434. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、この凍結については三十九年の閣議決定以来内示を受けているのですが、その三十九年閣議決定以来、特許庁は特別扱いでその一割程度であるということは、三十九年以来現在までずっと続いているわけですか、そのこともあわせて……。
  435. 川出千速

    政府委員(川出千速君) さようでございます。
  436. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、通産行政に関する一般的な事項について、一、二お伺いしておきたいと思いますが、大蔵省は本年度の国際収支について、去る二月の下旬に、総理に対して約三億ドルの赤字見込みを報告されておるわけです。また、三月末の大蔵省と日銀の定例会議でも、警戒論とか悲観論を再確認されておるわけです。中でも日銀については、昨年の秋から欧米、特にアメリカとか西ドイツ等ですが、景気の後退ということ、それから世界的な安値競争を理由に、輸出の先行きを憂慮しておるということですが、この警戒、悲観論についてのいわゆる見解は、一体通産省としてはどういうふうに思っておられるのかということ。それからまた、その対策についてもこの際承っておきたいと思います。
  437. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 日本の経済、ことに貿易関係におきまして、今日までは輸出が減り、輸入が増加しております。で、これは大体日本は上半期が輸入時代で、下半期が輸出時代でございまして、そこでいままで輸出が減退しておるのは、これはアメリカの景気が悪いということが原因でありますし、それからまた、低開発国の商品が輸出されておって、日本商品との競合というようなことで、輸出が減り、輸入が増加しておるので、また民間投資が盛んになって、それに対する原材料の輸入の増加ということで、輸入が増加しておるのであります。そこで、下期になりますと、アメリカの景気も大体立ち直るというのが一般の見通しでありますし、それからアメリカもその他の国も金利の引き下げをやっておりますし、そういう関係もありますし、それから日本の民間の産業もだんだんと設備の完成などで、したがって、それが能力を、生産性を高めていくというようなことにもなりますので、この輸出は、下期にはふえるという大体見通しをしているので、決して悲感的な考えはしていない。ただ問題は、一時民間投資が盛んであったから、過熱を来たすのではないかという心配を日本銀行も持つし、経済企画庁もそういうような意味のことの発表もあったのでありますが、われわれは過熱しないというような考えをしているのでありまして、もし過熱があるような場合には、それぞれの対策を講じなければならないと思いますけれども、いまのところでは、過熱はないという大体の見通しをしておりますからして、したがって、特別の対策ということは必要はない、こう考えている次第でございます。
  438. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 一方産業界の本年度の輸出目標をあるいは商品別あるいは産業別に検討しているわけですが、どうも四十二年度に百十一億ドル、という、そういう政府の見通しの実現には危惧の念を抱いているものであるわけですが、特に外貨獲得の花形である、たとえば造船、たとえば鉄鋼あるいは合成繊維の先行きを心配されているわけですが、こういうのが実情だろうと思うのです。いま輸出の現況を見ますと、対先進国向けが五一%、パーセントが間違いであったら御指摘いただきたい。開発途上国向けが四三・三%、共産圏向けが五・七%、こういう点から見ても対米輸出の伸び率の鈍化がひしひしと予想される現在、どうしても他地域、特に最近対日接近の態度を熱心に示している、いわゆる東欧の共産圏への輸出の開拓を積極的に打ち出すべき時期に来ているのではないだろうか、当然そういうことが考えられるわけですが、そこで、このことについての通産省の基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  439. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、今日ではいわゆる先進国への輸出が多いわけでございますが、しかし、今後東南アジア諸国への経済協力、これは米国も、日本もやろうとしているわけですが、現にやっているわけですが、東南アジアの経済協力が盛んになることによって日本の東南アジアに対する貿易がふえるという大体見通をいたしております。  それから将来は共産圏との貿易というものはこれは私はますます盛んになると思います。ことにこの東欧の共産圏などは、最近しきりと向こうのほうから日本と貿易をしたいということを盛んに申し出ておりますし、現に大臣ども来ておるのでありますが、そういうことで、東欧の共産圏はもちろん、ソ連、あるいは中国もあわせて共産圏との貿易というものは今後盛んになると思うし、これは日本ばかりではなくて、世界的に見て東西の貿易が盛んになるというふうに考えておりますからして、そういうことでひとつ貿易を盛んにしていきたいと考えております。  それからケネディラウンドの問題で、この輸入税が、関税がみんな減じられますからして、したがって、これは世界の貿易を盛んにするという目的で、ケネディラウンドが締結されることになっておりますからして、それによって私は日本の貿易もまた盛んになると、こう考えているのであります。
  440. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、特需の問題についてお伺いしたいと予定しておりましたけれども、午前中すでに稲葉委員から相当御質問ございましたので、時間の関係もございますから、この点については省略したいと思うのですが、なだ一点だけこの問題でお伺いしておきたいわけです。と申しますのは、ベトナム動乱が、あるいは韓国とか台湾、香港、タイあるいはフィリピン、南ベトナム等に対するわが国の輸出を飛躍的に増大させているということは現実の姿であろうと思うのです。しかし、このことは動乱が終わればやがて終わるわけですが、これらに対する輸出面で重大な影響が直ちに起こってくるということは当然考えられることで、その結果、本年度は百十一億ドルの輸出目標を立てたわけですけれども、これもたちまちにくずれて国際収支は予想以上に悪化するであろうことが容易に推察できるわけですね。この点について、通産省としてはどのようにお考えなのか。
  441. 今村曻

    政府委員(今村曻君) 先生御指摘のとおり、ベトナム戦争の影響を受けまして、直接の特需ないしはいわゆる間接特需と申しておりますものがございますが、はたしてこれがベトナム戦争が終わった場合にどういう影響を受けるかというようなことにつきまして、もちろん先行きを見通しますことは非常に困難でございますが、私どもは、さしあたり四十二年度の見通しとしまして、かりに、仮定としてベトナム戦争が現状のような姿で続くということを想定いたしました場合に特需の収入はどうなるかということでございますが、実際問題としては、現在の水準から特需が急激にふえるということはもうあり得ないだろう。すなわち、アメリカその他の供給力が相当ふえてきておりますので、さらにバイアメリカンとかいうような政策が漸次とられておりますので、日本からの買い付けが増大をすることは、無限に増大をすることはないのでございまして、おそらくことしは横ばいの状態でいくのではなかろうか。あるいは場合によっては現在よりも少し減るくらいの見通しがございます。  それから将来この動乱が終息をいたしました場合にどうなるか。これまたたいへん見通しの困難な問題でございます。現在の日本の経済の規模ないしは輸出の規模から申しまして、ベトナム関係によって生じておりますところの特需がかりに全部なくなったといたしましても、そう致命的な問題にはなり得ないわけでございます。それと同時に、このベトナム戦争がもし終わりましたとしても、これにかわるべき新たな需要が出てくる。すなわち、米国におきましては新たな景気対策を打ち出してまいるだろうと思われますので、そういう新たな財政支出による需要が起こってくる。それから東南アジアにつきましては、やはり最近非常に産業が発展してまいりました。工業化もおいおい進んでまいっております。おそらくはそういうものの需要が今後だんだんと台頭してまいります。それと同時に、戦後の復興のための需要というものが起こってまいりますので、これに各国からの経済協力というようなものも加わってまいりますから、そうそのためにがた落ちをしていくということはないのではなかろうかというふうに私どもは見通しておるのでございます。
  442. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、資本の自由化に伴って政府はどのような産業政策を打ち立てておるか。もちろん、これは基本的な大綱についてでけっこうです。  それと、いま国内の合弁会社の外資比率の引き上げという問題が起こっておるわけです。そこでお伺いしたいのは、このことについて政府の基本的な考え方ですね、これをあわせてお答えをいただきたいということと、さらにこの外資攻勢に破れた例が日本にも間々あるわけです、たとえば西独のヘキスト社と興和医薬品社ですか、それと豊年製油会社などですね。こういう苦い経緯もあるので、この面については、十分な配慮があってしかるべきだと思うのです。したがって、こういう問題についても、ひとつこの際お伺いしておきたいと思うのです。
  443. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 資本自由化に対する政府の根本態度といたしましては、資本取引の自由化ということがプラスになる面が相当あると思うのです。技術の開発、資本力の増加あるいは販売力の増加とか、合理化というようなことで、プラスになる面が相当ありますが、またしかし、マイナスになる点もある、日本の市場の混乱とか、ことに中小企業に対する打撃、影響力とかいうようなことも考えられるのでありますからして、資本取引の自由化自体については、これは前向きで臨むという態度をとっておりますが、しかし、一方においてマイナスを生ずる場合も仮定されるので、そういう場合には、体質の改善をして、国際競争力を持つようになった場合に自由化を認めるということで、実はけさほど新聞記者には発表したのでありますが、これは通産省だけで考えておるところであって、政府として決定したものではありません。一〇〇%の資本自由化を認めるものが大体七つ、それから五〇%でいこうというのが十三ということで、けさ発表しまして、それ以外、ことに中小企業はすべていまのところでは自由化は認めない、一々これは審査して認めるということで、これは体質改善して国際競争力を持ち、技術の改善もちゃんとできて、対立できるという見通しがついたらやるということで、第一次発表では中小企業は一切触れておらぬ、通産省の今日までの事務的の調査によって、大体そういうことをけさ発表いたしたのでありますが、これはまだ産業構造審議会にかけ、外資審議会にもかけ、そしてそれらの審議会の答申として政府に提案されて、また閣議でこれが討議されるということになると思います。そういうことで、中小企業については、いまのところではこれが打撃を受けないような、まず対策を講じておるということだけ、ひとつはっきり申し上げておきたい、こう思うのです。
  444. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、いま一時的にしろ、いわゆる景気回復については、上昇傾向にある、これは一時的でしょうが、これは認められるわけですけれども、依然として中小企業の倒産はあとを断たないわけですね。特に大資本本位の経済政策とか、資金なり人手不足、こういう悪条件下に中小企業は四苦八苦しているわけです。この国会で中小企業振興事業団法案、これが提案されているようですが、このことによって、倒産防止に期待が持てるのかどうかということ、資本の自由化とも関連して、この際その要点だけをお答え願いたいと思います。
  445. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 景気が上昇したにもかかわらず中小企業者の倒産者がふえているということは、まことに遺憾なことだと思うのでありますが、これはもう御承知のとおり、中小企業者の倒産ということは、これは労働需給の逼迫で、これは国内的にですが、国際的には、発展途上国の品物が出てきた、こういうようなことに直面して倒産者が出ているし、そうして景気がよくなってきたのでありますが、中小企業者はその景気の上昇に沿い得なかったということで、倒産せざるを得なかったということになったのでありまして、要は中小企業者の体質を改善して、そうして今後の、ことに自由化に対しても、これに対立できるような対策を考慮しなければならぬということで考え出したのが、中小企業振興事業団法案であるし、それからことに繊維の問題は、これは発展途上の国が製品をつくって海外へ輸出しておりますから、彼らは賃金安いですからして、安い品物を出すということで、勢い日本品が圧迫されるというようなことも事実でありますので、したがって、この繊維産業につきましては、これはひとつ抜本的にこれを構造改善をやらなきゃならぬというので、繊維産業の構造改善についての特別措置法の御審議をお願いしておるのであります。そういうような対策を講じて中小企業をひとつ安定せしめたいということでいろいろ考えておりますが、なお詳細なことは政府委員からもお答えさしたいと思います。
  446. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 で、まあいまの中小企業振興事業団法案、こういうことによって中小企業の体質改善ということを含めて、何とかこれを救済しなければならぬ。要はいま中小企業対策は喫緊の要務であろうと思うのですがね。そしてあの体質改善と一口に言っても、これを具体的にいえば、やはり中小企業近代化しなきゃいかぬ。近代化するためには基盤を強化する必要がある。基盤を強化するためにはいわゆる、もちろんこれは中小企業者の自主性を専重した上での共同化を進めなければならない。そのためにはこの共同化を遂行させるためには、国の資金面での援助とか、あるいは税制、金融、こういう広範な面にわたっての優遇措置が当然に講ぜられなければ、なかなかもって立ち上がることはむずかしいと思うんですが、こういう基本的な考え方に対して、通産大臣としてはどのようにお考えなのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  447. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまお話しのとおり、資金面、税制面についてはいろいろ具体的に対策を講じております。なお数字については政府委員からお答えさせますが、そういう資金面を豊富にし、また、税制の点についてもできるだけ中小企業に有利なというふうにしたいということで、まあ今度も特別に、大蔵省からいま提案をしております税制の中にも中小企業に関する項目が入っておるのでございます。そういうことで、ひとつ税制面並びに資金面から中小企業の安定をはかりたいと、こう存じておる次第でございます。
  448. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、長い間私ども社会党から毎国会へ提案しております中小企業省ですね。中小企業を抜本的に振興させるためには中小企業省を設置する必要がある。いまこの法案についてではございませんから、一点だけお伺いするわけですが、この基本的な考え方に対して通産大臣としてはどのようにお考えになっておるのか、そのお考えだけをお聞きしておきたいと思う。
  449. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) いまのところでは中小企業省を設けるという気はありませんが、私もかって中小企業省を設けたらいいじゃないかという意見を発表したことがあります。がしかし、この中小企業省を設けるについて、もう政府の組織を根本的に考え直さなければならぬ大きな仕事であると思っておりますので、これは根本的なひとつ政府の制度を変えるかどうかということを先に腹をきめないと、この中小企業省の問題というものは取りかかれないとこう考えておるのでありまして、中小企業省だけというわけにはいかぬと、こう考えておる次第でございます。
  450. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま一つお伺いいたしますが、日本の企業者はほとんど大部分は中小企業、特に零細企業が多いわけですね。こういう中で、いわゆる下請条件が非常に過酷に悪いわけですね。下請代金というのは言うなれば、下請企業者のいわゆる賃金にも匹敵するものであって、これは当然商品納めたらそれと引き換えに現金で払うとか、そういうことからまず改める必要は大いにあるわけですね、にもかかわらず、商品を納めても数カ月後に、それも現金でなく手形とか、きわめて悪条件下にあるわけで、そのためにはどうしても下請け条件を抜本的に改めない限りは下請け企業は浮かばれぬと思うのですね。そういうことについては、この面について通産省としては一体どういうふうにお考えで――ただ考えただけではとうにもなりませんが、どのように手を打っておられるのか、そういうことをこの際伺っておきたいと思います。
  451. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 中小企業、下請け企業と親企業との関係は、下請け業者のほうがみな弱いですから、個人的に個々別で言えば。そこで私たちの考えといたしましては、下請け業者がひとつ団結していくということ、これが必要じゃないかと思うのです。そして団結の力によって親企業と対立していくことが必要じゃないかと思うのでありますが、これは、しかし、なかなか困難なことでありまして、私たちがいつも出会うことは抜けがけの功名をしたがるということで、なかなか下請け業者が団結するということは困難である。しかし、今後はこの下請け業者の団結ということを極力ひとつ推進していきたい、こう考えておるのでありまして、幸い商工会議所あたりでも、下請け業者の請負契約についての協会などをつくって、下請け業者を擁護するというふうな態度をとってくれておりますから、そこらでひとつ民間側にもそういう奨励をするし、われわれもひとつ下請け業者が強くなるように極力指導していきたい、こう存じておる次第でございます。
  452. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして、この法案に対する私の質問は終わっておきたいと思いますが、最後にお伺いしたいのは、中小企業に対する融資の面ですね。中小企業に対する融資の面を円滑にするために無担保無保証の資金を何とか一口二百万ぐらいに引き上げられないものか、この問題については、前は全然なかったわけですけれども、私ども社会党の強い要求が続けられてきて、最初は三十万になったわけです。ゼロから三十万になったから一歩前進したわけですが、その当時私は本会議で、三木さんが通産大臣のおり、本会議で質問したことがあって、この三十万を二百万ぐらいにという、そういう要請に対して、そのときの三木通産大臣は、これは耳を傾けるに値する問題だから真剣に検討したい、こういう答弁があったわけです。その後間もなく五十万になったわけです。たがって、現在は五十万です。しかし、この物価高のおりから、一口五十万ではどうにもならない。先ほど大臣のおっしゃったように、中小企業の近代化、体質改善、こういうことにはせめて二百万ぐらいの無担保無保証の資金が必要であろう。そこでひとつ大臣に最後のお尋ねでございますから、この問題に対して大臣もひとつこれは耳を傾けるに値する問題だから、十分真剣に検討したいという答えをいただきたいと思うんですが、このことについて最後にお伺いしておきたい。
  453. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話のとおり、無担保無保証は三十万が五十万になったのでありますが、この無担保だけの問題で、保証はあるんですが、無担保だけは二百万を三百万に増額いたしまして、そうしてこの四月から増額した三百万円を無担保で貸すという方針をとっているのであります。それだけ伊藤さんの御希望に多少沿うてきたんやないかと、こう存じている次第であります。
  454. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それは承知しているわけですが、私のいまお伺いしているのは無担保無保証で二百万ぐらいはどうかとお伺いしているわけです。三木さんも通産大臣のとき傾聴に値する問題だから真剣に検討したいということでその後間もなく三十万、五十万、現在五十万ですから、ひとつ大臣も、先ほど伺いしたように、これは十分傾聴に傾する問題だからひとつ早急に考えて二百万になるような努力をしたいという、そういう御答弁がいただきたい。
  455. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 今日までの無担保無保証の実態がどういうようになっているか私もはっきりしておりませんが、そこらの今日までの経緯等をよく調べて、そしていまの御希望の点については慎重に検討したい、こういうことでございます。
  456. 前川旦

    ○前川旦君 私は、特許の最近非常に問題になっております滞貨の問題についてお尋ねしたいと思いますが、いろいろ基本的な問題につきましては、伊藤委員なり稲葉委員にお答えになりましたので、たいへん申しわけないんですが、少しこまかい質問を申し上げたいと思います。初めにお伺いしたいのは、先ほど大臣は根本的には法改正しなければやれないんだ、滞貨の解消はないんだという信念であるというお答えでありました。これはずいぶんむずかしい問題であろうと思うのですけれども、法改正のそれでは骨子といいますか、基本的な方針、それをごく簡単におっしゃっていただきたいと思うんです、こうすればなるんだと。こういう、ただ法改正法改正というだけしか伺っておりませんので、その方向を、どういう方向で法改正をしてそれを解決するのか、それを伺いたい。
  457. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 昨年の特許制度の改正で問題になったのは無審査公示、それが問題になったわけです。これで賛否相半ばすると申しますか、反対の意見が強くて、無審査公示ということができれば滞貨は早く片づくということでございますが、いまの工業所有権の審議会でそういう点がどういうように審議されているか私はまだ聞いておりませんが、長官からその点は答えさせます。
  458. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 昨年の秋から再開された審議会で、今後の工業所有権制度のあり方について審議を重ねておりますが、現在は審議の過程でございまして、まだ結論にはほど遠いわけでございます。どういう問題をテーマにしているかと申しますと、いろいろございますが、一つは実用新案制度、これはこの前の制度改正のときに基本的な問題として取り上げたわけでございます。実用新案制度のあり方をいかに考えていくべきか、無審査にするかという問題を含めまして、これを検討しなければいけない。それから次は、これは世界的な傾向、研究課題になりつつありますけれども、審査請求制度と申しますか、現在は出願されたものは必ず審査をしなければならないというのが現行制度でございますけれども、これを変えまして、出願をした中でも審査を請求しない人もいるわけでございます。出願をして先願の地位を占めるだけで、権利化をしなくてもいいという出願者もいるわけでございまして、出願のほかに、審査を請求して初めて審査をするというようにしますと、出願された案件の中でかなりの数が審査をしないで済むのじゃないか。どのくらいの数が審査しないで済むかどうかということは、やってみないとわかりませんけれども、外国の場合ですと、かなり審査しないで済むものがあると思います。  もう一つの問題は、これは必ずしも滞貨の処理、審査の促進ということと直接に結びつく問題じゃございませんけれども、こういうように審査が非常に遅延してまいりますと、工業所有権制度のねらいの一つである特許権の公開をする時期、つまり発明の公開をする時期がおくれている。権利化してから公開するわけです。それで審査が終了しない前に一定期間が、たとえば一年半という期間が経過をしました場合には、審査の過程においても発表することにしてしまうということにしますと、どういう出願が出ているかということが一般の人、特に産業界によくわかりますので、その内容を参考にして、さらに研究を進めるとか、あるいはそういう出願がすでに出ておれば自分は出願をやめようと、そういう重複出願、あるいは重複研究投資というようなことがセーブをされるのではないだろうかというようなことで、その問題を取り上げるべきかどうかということをいま審議会で研究をしているところでございます。
  459. 前川旦

    ○前川旦君 これ大臣お尋ねしますが、先ほど伊藤委員から、制度の改正を任期中におやりなさいという御意見がありました。いま私の手元には、五月の十九日までの衆議院の会議録、それ以後はありませんが、たしか十九日でしたか、衆議院内閣委員会で、私の任期中に制度改正をやりますとおっしゃっておられるように載っております、会議録に。それはやはり同じ御意見ですか。その後お変わりになりましたか。お伺いしたいと思います。
  460. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 任期というのは、もう大臣は任期わからぬのですが、私の在任中にこの問題を解決したいと、こう私は言ったのです。
  461. 前川旦

    ○前川旦君 わかりました。  大臣の在任中とおっしゃれば、大体いままでの慣例からいって期間がわかります。かなり何年という長い間ではないように思うんですけれども、たいへん失礼なものの言い方をしてお許しを願いたいのですけれども、そうしますと、その短い間に制度改正というものがはたしていまの審議会で熟して日程に載せられるかどうか、私はたいへん疑問だと思うんです。と申しますのも、第五十二国会でしたか、この前お出しになって、利害がいろいろ――初めは賛成意見だったけれども、利害が相半ばして、とうとう廃案になったとまあ大臣もおっしゃいましたけれども、会議録によりますと、参考人十人来ておりますが、一人だけがまあ修正意見をつけながらしぶしぶ賛成、あとの九人までが反対、たいへんことばはきたなくて悪いんですが、いわば袋だたきになったようなかっこうになっています。なかなかこれをいまのような制度改正へ持っていくのは、ずいぶんいまの審議会でも長い時間がかかるだろうと思うんです。そう私は早急に制度改正というものをやったのでは混乱も起こりますし、十分に熟して、反対がなくて、だれが見てもこれをやらなくちゃだめなんだと、これでなけりゃだめなんだという形でやるにはずいぶん時間がかかるだろうと思うのです。その点は任期中におやりになるとおっしゃいましたけれども、これ先の見通しですね。ちょっとお答えいただきたいと思います。
  462. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この前の工業所有権の改正の、いわゆる特許制度のときには、実は三年かかったんです。三年の間相当議論されたはずです。それであの答申が出たのであります。したがって、もう相当議論は出尽くしておるのではないかと私は思うのです。ただ利害関係が相反するために、まあそこでお互いがそういう自分の主張をされておるので、もうその問題は出尽くして議論はもう三年間の間ずいぶんやられたのではないかと思うのでありまして、で、私はまあひとつ工業所有権のいまの審議会を極力ひとつ促進して、そうしてひとつ早く成案を、答申をしてもらいたい、こう私は念願いたしておるようなわけであります。
  463. 前川旦

    ○前川旦君 大臣のそのお気持ちはわかりますが、実際問題として、これはずいぶん長い時間がかかる。やはり昭和三十四年ですか、根本的に改めて、まだあまり年がたっておりません。新しい制度になれていないでですね、さらにまたがらっとこう転換をするというようなことは、まあ混乱を招くという危険性もありますし、やはりかなり熟したタイミンングというものが必要だと思います。そういう意味で言えばですね、やはりそう早急にはこれはできる問題じゃないというのがこれはもう常識論であると思います。であればですね、この滞貨の問題を解決するのに制度改正しかないのだと、それ以外にはないのだということでは、これはいまのほんとうに差し迫ったこの滞貨の問題解決することはできないと思うのです。そこでまあもう少しですね、それまでの間、暫定的に何をやるのだというような、そういう突っ込んだ姿勢をお示しいただきたいと思うのです。
  464. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それではまあその定員の増加ですね。まあ去年もお願いし、今度もお願しておるのですが、審査する人を増すということが一つの方法ですが、それからこの設備、審査に対していろいろの設備の改善ということ、これは具体的に長官からお答えすると思いますが、そういうことで書類の審査、書類の整理など早くできるようなこと、そういうようなことでいろいろ事務の簡捷をはかる、そうして人をふやしていくということしかほかに手はないのじゃないかと、こう考えております。
  465. 川出千速

    政府委員(川出千速君) ただいま大臣の御答弁にございましたように、日本は審査主義をとっております。そうして案件も逐次むずかしくなってまいります。したがって、これはやはり人員をある程度増加していかなければ基本的には解決できない問題を含んでおると思いますが、長期的にやはり計画を立てまして人員の増加をはからなければならないと思います。  それから設備の問題でございますが、これはいろいろ事務機械の導入でございますとか、あるいは非常に庁舎も古くなっておりますので、こういう環境の整備でございますとか、そういう問題を含めて長期的に検討していくつもりでございます。
  466. 前川旦

    ○前川旦君 先ほどの制度改正の問題にちょっと返りますが、滞貨の処理という面だけでのいまの制度改正という論議がなされたように思うのです。しかし、この特許の問題ではほかにいろいろ問題があると思うのですね。たとえば、いわゆる資本の自由化で外国からかりに外国資本で生産工場を立てる、いろいろ特許を取っていく。それだけならいいのですけれども、防衛的な意味で非常にたくさんの実施をしない特許を取る。現在でも大企業の中にはそういう傾向が非常に強いわけです、国内の場合でもですね。外国の資本がそういう形で防衛のためのどんどん実施をしない特許を取って国内でやられると、これはまともな国民の権利というものが圧迫されるという面もあると思うのですね。その辺のことも考慮に入れての制度改正をお考えになっていらっしゃるのか。たとえば、アメリカの場合であればこれは独占禁止法がずいぶんきく場合があります。例のじぐざぐミシンですか、あの輸入のときにずいぶんそういう問題がありましたが、判決で勝ったと記憶しておりますけれども、日本では独占禁止法が非常に不備ですから、防衛的に非常にたくさんの実施しない特許を取っておいてそれに競合する日本の企業を困らすというのに対してそれを規制する方法というものはあまりないように思うのです。その辺のことも勘案されての上でのやはり大局的な見地に立った制度改正というものをそういう面からも考えていただきたいというふうに思いますが、その点の御意見を伺いたい。
  467. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在、外資法によりまして外国企業の資本の進出、あるいは技術提携による進出という場合にチェックすることになっておりますけれども、これがだんだん緩和をされてまいりますと、ただいま御指摘のようないろいろな問題も生じてこようかと思います。現行の特許法で申しますと、特許をとって、しかも、それが非常に役立つのに実施をしないでおるというような場合、これはその期間が三年をこえますと勧告をすることができることになっております。それから、自分の特許を実施をするためには、そのもとになる特許をどうしても使わないと自分の特許が生かして使えない、もとになる特許に触れてしまうというような場合にはこれも規定がございまして、そういう場合には、もとの特許を使わしてもらうための裁定を特許庁に申請をする道も開かれておるわけでございます。それからまた、特許権というのは独占権でございますので、独禁法の適用除外になっております。これを自分だけが使ってけっこうでございまして、人に使わせるか使わせないかということは特許権者のこれはもうかってでございます。それが独占権でございます。そういう場合に、独占権でございますから、使わせないと言われればそれっきりになってしまうわけでございますが、それを使うことが公共の利益に非常になるというような場合には、これも規定がございまして、九十三条でございますけれども大臣が終局的にはその特許権の実施について裁定をすることができることになっております。もちろん、その発動の条件は相当きびしく制約はされておりますけれども、これを弾力的に運用することによりまして、活用することによりまして、そういう機能を果たすことも可能になるかと思います。ただ現在、特許法を改正をして云々ということは現在のところは考えていないわけでございますが、先ほど申し上げました工業所有権審議会の審議事項に入っておるわけでございます。
  468. 前川旦

    ○前川旦君 実施をしない場合にはいろいろあるようですけれども、実施ということが非常にあいまいです。第二条で実施という内容が述べられておりますが、きわめて簡単なことをやればもう実施したというふうにもみなされるようになっております。そこであなたそうおっしゃったけれども、私はやはり実施をしたという形にして、たくさんのやはり防衛的な特許を外国資本がうんと抱え込んで国内のあれが困るというようなことが出てくるのではないかと思います。それはやはり真剣に考えてもらいたいと思う。そのことも考えて、制度改正ということにはそういう見地からもやはり取り組んでもらいたいということを私要望しておきます。  それから次に、十九日の衆議院内閣委員会で手数料の問題がだいぶやかましく言われました。手数料が安い安いという話がずいぶん出ておりました。大臣お答えになりませんでしたけれども、この手数料お上げになるお気持ちはありますか。
  469. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在のところ、具体的に上げる計画は持っていないわけでございますけれども、特許庁の行政をしていくためには相当の予算は今後必要とするわけでございますし、現在の出願手数料は国際的に見ますと非常に安いのは事実でございますが、今後の研究課題になろうかと思います。
  470. 前川旦

    ○前川旦君 ただいまのもけっこうですが、やはりこの特許の問題でいつも議論になることなんで、何年来議論になっておりますか、例の歳出歳入の問題、最近もやはりずっと歳入のほうが歳出に――特許庁のあれだけとってみた場合、つまびらかにとってみた場合にやはり出ていると思うのです。そこでこの問題は御承知のように、あれは昭和三十四年の三月二十七日ですか、大きな法改正がありましたときに、非常に強い附帯決議がついております。御存じでしょうけれども、ちょっと念のために読みますけれども、附帯決議の一番初めに非常に強いのが出ております。「今回の改正による特許料、登録料及び手数料の値上げに伴う増収分は、あげて人員の増加を初め、審査、審判事務の促進の為の経費に充当し、出来得れば補正予算で措置すること。」、「あげて」という非常に強い表現が実は使われておるわけであります。これはだいぶ古い話ですけれども、その後一向に改まっておりません。やはり依然として歳入のほうが上回っております。この点は特許庁が資料の中で歳入歳出を特にぽんと出しておられるということは、特許庁の方々も腹の中では、これはけしからぬ、もっと予算を取るべきだというやはりそういう気持ちが私はにじみ出ているんじゃないかと思うのです。そこでその点についての御見解をお伺いしたいと思います。政府委員(川出千速君) ただいまお話がございましたように、従来、支出よりも歳入のほうが相当上回っておったことは事実でございます。最近に至りまして、人員増加その他機械化等によりまして支出の面がふえてまいりました。現在はようやくとんとんというところでございます。大まかに言いまして、歳入歳出とんとんに近い状態になっておるわけでございます。
  471. 前川旦

    ○前川旦君 これは大臣にお伺いしたいのですが、昭和三十九年の六月二十六日の衆議院の商工委員会で、そのときの通産大臣の福田さんが、やはりこの問題で非常に強い発言をしていらっしゃる。というのは、「いわゆる特許によりまして収入があげられておるにかかわらず、その収入が全部特許の事務に使われておらないというこの姿は、私はやはり不合理だと思うのです。これは何ももうけ仕事でやっておるのじゃないのであります。むしろ支出が多くなっても問題はない、」とこう言っておられる。私は、いまの大臣もこれくらいのやはり、この問題について強いかまえというか、御発言なり強い決意がほしいと思うのですが、どうぞひとつ大臣の見解を伺いたいと思います。これくらいの強い決意を私は述べていただきたいと思います。
  472. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この特許制度の改正ということは、いろいろ産業の発展ということに寄与しますから、先ほど申し上げましたとおり、私はこの特許制度を改正して滞貨の処置も見通しをつけたいというのが私の念願であります。したがって、この念願を達成するために予算がもっと要るということであれば、予算の要求もしたい、こう思っております。
  473. 前川旦

    ○前川旦君 予算が要るということであればとおっしゃいましたけれども、現実にいま人海戦術でなければ、いま当面人海戦術をとらなければこれは解決できないわけでしょう。人海戦術をとることになったら金も要るわけです、当然必要なんですから、私は大臣、もっと強い姿勢で取り組んでいただきたいと、こういうふうに思います、いかがでしょうか。いまの必要があればということじゃなくして、私はもっと強い姿勢を示していただきたい、このように思います。
  474. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 必要あればということは、これは特許庁のほうでいろいろ調査をして、これは何人ぐらいふやさなければならぬというようなことの大体見当をつけてもらわなければいかぬので、これを解決するためには、何人人が要るのだということをはっきり特許庁のほうで考えていただければ、それに応じて私予算も要求をしたいと、こう考えております。
  475. 前川旦

    ○前川旦君 特許庁のほうではやはり滞貨解消の人員を幾らふやして、毎年ふえていくのですから、幾らふやしていくという、こういうやはり長期計画が昔はなかった。最近できておるはずです、最近数年間に。それにいまの実態なっていますか、そのとおりなっていますか、計画どおり。おそらく私はなっていないと思う。ということは、まだまだ人員も不足しているし、金も不足している。非常にそういう要素が出ていると思うので、大臣計画をつくってそれがあればとおっしゃったけれども、もうそういう段階になっていると思いますので、そういうことじゃなくして、もっと本腰を入れて金を、大蔵省相手になりますが、注ぎ込まなければだめだということだろうと思いますが……。
  476. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この前の昭和三十四年ですか、特許庁の改正のときも私がその委員でありましたので、そのときたしか計画的にこれだけ増せば大体解決できるというような計画をしておったように私記憶しておるのですが、しかし、それだけ十分予算がとれなかったし、それが同時に最近申請がふえた、そこに原因があると思います。昭和三十四年のときのような申請の増加ぶりであれば大体解決できるということだったが、最近において申請がふえてきたところが原因だと思うのでありますが、そこで、今後ふえべき申請の増加に対してどれだけの人を増したらいいのかということについては、ひとつ計画を立てさせたい、こう考えております。
  477. 前川旦

    ○前川旦君 それからもう一つ、これは非常に言い古されたことで恐縮なんですが、特許庁長官の任期が非常に短いということが毎年言い古されておるわけです。たいへん皆さんお笑いになりますけれども、長年何年もいじめられたというあれでありますけれども、いろいろつっかえておられたと思うのです。そこで私ちょっと調べてみましたら、他の例ですと、たとえば、防衛施設庁、これなんかちょっと四人見ると、三年二カ月、二年一カ月、一年十カ月、それからいまの現職の小幡さんも二年こえて、いままだやっていらっしゃる。気象庁の和達さん十六年やっておられる、御存じのように。そのあとの方が二年、その次の方が二年二カ月、もうみんな長いですね。公安調査庁はどうかというと、最初の藤井さんは九年七カ月、斎藤さんは二年四カ月、現在の吉河さんは三年こえていらっしゃる。これも長い。国税庁も大体二年以上の人が多いようです。こういう形で皆さんずいぶんわりあいに腰を落ちつけていらっしゃる方が多いのですが、特許庁に限って最近のところずっと見ますと、七年間に七人長官がおかわりになった。一年ちょっと欠けるぐらいな、平均して。非常にこれは毎年問題になるところだろうと思いますが、一年ぐらいでは実際に仕事になれて意欲を持って何とかしょうと思ったらもう転任になる。大体どんな頭のいい人でも私はやはり一年や一年未満では、これだけ問題のある特許庁の滞貨のあるときこれはひど過ぎると思うんです。特に私が一番ひどく思いましたのは、実はこれはこの前の国会で、衆議院の本会議、これは四十一年の四月十九日です。衆議院本会議でわが党の沢田政治委員が同じことを質問しておるわけです。総理大臣、何と答えたかというと、「たいへん在任期間が短い、こういうことでおしかりを受けましたが、政府自身も今後とも十分注意いたしまして、成果があがるように、あまり人をしばしばかえないように努力いたしたい、かように考えます。」総理大臣はこう答えている。一週間日に前の長官がかわりましたね。総理大臣、これを言われて一週間日に前のこの長官がかわられた。四月十九日、前の長官かわられたのは四月二十五日ですか、六日しかない。私はたいへん人をばかにした話だと思うんですね。総理が責任を持って本会議で国民の前ではっきり言った一週間日にかわられた。私はこういうような首だけをくるくる一種の名誉職的な考えで、特許庁の長官というものをかえられたのでは、これは非常に迷惑すると思うんです。そこで大臣に、これは特許庁の長官というものは、やはりもっとじっくり腰を落ちつけるべきである、私はそういう答弁をいただきたいのですが、一年でかわっていいということであってはならぬと思うのですが、仕事をするためにはやはり責任のある人、最高の長官はやはりもう少しじっくり腰を落ちつけてやるべきだと、こう思いますが大臣の御意見を伺いたい。
  478. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 私自身が大臣になってみて、局長その他の異動が激しいことを、私は決してこれはいいことじゃないという感じがしております。少なくとも二年以上は同じポストにおってほしいという私は感じがしておるのでありまして、これはいままでのいろいろ慣例や何かで一年ぐらいでみな交代するということになってきておると思いますが、この制度自体については、もう少し根本的に考えくみなければならないのじゃないかということを私は考えておりますが、このことについてはもう少し私も検討させてもらいたい、こう存じております。
  479. 前川旦

    ○前川旦君 実はいまの長官、一年間おたちになりました。いままでの平均おたちになりましたね、それで実は庁内の方々の御意見を聞きますと、あなた非常にまじめで熱心であると非常に評判がいいために、庁内の方々にもう少しせめてもう二、三年じっくり落ちついて、いまのあれをやってもらいたいという非常に素朴な要望が実はあるように思いました、実際あります。そこでこういうことは聞きにくいけれども、また答えにくいでしょうけれども、もう一年、任期がきましたけれども、長官かわるんですか。もう少しがんばりますか、もうかわるんですか、予定があるんですか、――まあそれはけっこうです。ただ私申し上げたいのは、やはり特許庁の業務というものは、あまり単に他へ転出するための一つの腰かけの場所だというふうに安易に私は考えていただきたくない、その点をいま大臣検討するとおっしゃいましたけれども、まあ当たりさわりのない御答弁ですけれども、私は本気で考えてもらいたいと思います。  それから現状での滞貨処理は、これはやはりいまのところは人海戦術しかないということはしかたない、これしかないと思うんです、いまのところ。そこで定員、これはことしはふえますね。ところが、定員のいままでの経過を見ておりますと、増員を要求する、要求したら要求どおりとれません、削られる、何人か削られて、あくる年は増員要求がゼロ、こういうことを二へんほど繰り返しておる、これは一体どういう経過で増員を要求して――何年かちょっと申し上げましょうか。たぶんそちら御存じだろうと思いますが、要求の実態をちょっと申し上げますと、これは審査官の場合、昭和三十五年は要求が七十人に対して査定が四十七名、だいぶ、二十三名削られていますね。ところが、その次の三十六年、三十七年要求がゼロだというのはどういうふうにお考えですか。それから、審判官の場合には、やはり三十三年に要求が二十二名で査定が九名、翌年はゼロである。一ぺんゼロで通ったら次の年に要求し直して、最初から説明し直さなければいかぬという非常に不利な状況になるはずなんです。それを増員要求していて削られていながら、その次の年、次の年、二年続けてゼロだというのはどういうことでやられたのか、これは古い話で、もしわかればお聞きしたい、あなたに申し上げるのは気の毒かもしれませんけれども
  480. 川出千速

    政府委員(川出千速君) だいぶ前でございますので、私よくその辺の具体的な事情を存じませんが、少なくとも最近は毎年相当数を要求しているわけでございます。
  481. 前川旦

    ○前川旦君 それから、要求出して定員がとれますね、とれた定員のとおりに実際にこの審査官を採った場合に、採れていません、実際に。せっかく定員とりながら、なぜそれだけ審査官が実際に採れないのか、その点について長官にお尋ねしたいと思うのです。
  482. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 審査官は、上級職試験を通りました技術屋を採用することにしておりますので、そういう上級職の高級の技術屋というものは、民間企業と競合いたす関係もございまして、大量に採ることがむずかしいような事情でございます。まあ待遇等の問題もからんでおるわけでございます。
  483. 前川旦

    ○前川旦君 それじゃついでにお尋ねしておきますが、採用を決定していながら、実際には来ない人がかなりいるはずなんですね。これはことし、去年、この二年間くらいをちょっとおっしゃってください。せっかく採用を決定しながら実際に来ないという……。
  484. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 採用を最終的に確定した者はほとんど参ります。確定しても来なかったのは、ことしにつきましては三名か、四名くらいしかおりません。その前の段階で、内定という段階でございますが、そういう段階ではかなりの数が民間あるいはその他に行っている例がございます。その数字はいま持っておりませんです。
  485. 前川旦

    ○前川旦君 採用が内定をしたということは、本人はこれは試験も受けたし、来る意思があったということだろうと思う。来る意思がありながら、いざとなって来るのをしぶった人が何人かいる、これは私は非常に大きな問題だと思う。というのは、それだけやはり魅力がないということになるだろうと思うのです。なぜその魅力がないのか、これはいろいろ問題あると思います。先ほど待遇の問題言われました。環境の問題も言われました。待遇の問題でお答え願いたいのですが、それじゃ待遇をこれからよくしていくような努力は一体どういう形でなさいますか。
  486. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在審査、審判官につきましては、調整額という割り増しの手当がつくことになっております。それが官補で四%、官で八%、これの増額を毎年人事院並びに大蔵省に要求しております。これを今後も強力に推し進めたいと思っております。
  487. 前川旦

    ○前川旦君 通産省の本省のほうに比べますと、本俸を見ますと勤続年数が、あとになってきて――そのグラフを見ますと、本省の技官に比べて、本俸でやはり差があるように実は思うんです、現実の問題として特許庁の技術屋のほうがですね。これはやはり基本的に解決する方法としてどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  488. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 本省の技官と私はそれほどの差があるとは聞いておりません。若干、非に早い常人に比べると差がある場合があるかもしれません。これは大量に採用した人を一斉に昇級昇格していくことが現在の人事院規則の職階制のたてまえから非常に困難な問題でございまして、これをいかに実現していくかということはいま人事院ともよく相談しておるところでございます。なかなかむずかしい問題でございます。
  489. 前川旦

    ○前川旦君 結局それは等級別の定数改正ということになるのじゃないかと思うのですが、やはりその人事院とのかけ合いの問題も実はあるのです。その点で長官うんと腹くくって、これは滞貨処理という大きな問題と関連があるのですから、強い姿勢で、いま相談とおっしゃいましたけれども、人事院との折衝をなさっていただきたいと思いますが、やっぱりそういうお気持ちございますか。
  490. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 非常に強い決意でやってまいるつもりでおります。
  491. 前川旦

    ○前川旦君 魅力がないということは、一つには給与の面もありましょうけれども、もう一つは審査官というものが、普通対外的に見て審判官、審査官の社会的な地位というものが真実のとおりに知られていないという面が私はずいぶんあると思います。そういう意味で、実は外国なんかではかなり社会的な地位が高い。アメリカなんかでもずいぶん高いようです。この審判官あるいは審査官の一方で給与を上げる、これは努力する、それは必要なことであります。同時に、社会的な地位を上げるための努力というものをほとんでなされていないように思いますが、これは今後されるお気持ちありますか。たとえばアメリカの場合では、研究その他に参加せよということを非常にすすめております。大学への講師として出ていったりあるいは研究論文をどんどんすすめて発表さしたり、こういうことをやっておりますが、日本の場合やられていないように思いますので、これからそういう気がまえなり御予定があればお聞きしたいと思います。   〔委員長退席、理事八田一朗君着席〕
  492. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 御指摘のとおりでございまして、根本的には工業所有権に対する社会的な評価、それに従事する人に対する社会的な評価を向上させなければ情熱もわいてこないわけでございます。能率もあがらないわけでございます。これはそういうことについて一番やっていかなければならぬと思いますので、今後私は大いに努力をしたいと思います。
  493. 前川旦

    ○前川旦君 時間がだいぶおそいので次へいきますが、事務職員とそれからいまの技術――審査官との数の割合、これも常識的に考えて、いろいろいままでいわれてきておることだと思いますが、現在その審査官と事務職員との人員の比率、これをおっしゃっていただきたいのと、外国の例たくさん要りません。たとえばアメリカと西ドイツ二つくらいでいいのですが、よそは一体どうなっているのか。
  494. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 詳しい数字は存じませんが、大ざっぱに申しますと、外国は事務職のほうが技術より多いと思います。一対一・五くらいではないかと思います。日本の場合はほぼ同じ――若干技術のほうが多いと思います。
  495. 前川旦

    ○前川旦君 私が調べたのでは、外国は一人に対して二名あるいは三名、一番多いところで三名――審査官一人に対して事務職二名ないし三名という非常に高い比率になっております。日本の場合は大体同じような数ということは、本来事務の方がする事務的なことまで審査官がずいぶんやはり自分でやっているのじゃないか、そういうふうに実は思うわけです、外国に比べましてあまりに比率が少ないものですから。これまた一つの、能率を阻害するまた一つの原因にもなると思うのですが、その点について事務職といまの審査官との一対一というふうな割合、これは今後このままお続けになるつもりですか。これは今後事務職をふやしていくように努力するおつもりですか。これをお伺いしたいとおもいます。
  496. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 事務職をふやしていくつもりでおります。
  497. 前川旦

    ○前川旦君 この事務職の定員と実数とが今度は普通の例とは逆になっておりますが、これについて、当たりさわりのない程度でけっこうですから、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  498. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 実数と定員はかなり食い違っておりまして、技術屋の定員は事務職でやむを得ずカバーしているというようなことがございますけれども、これは変則でございますので、長期的な計画を立ててでも少しずつ修正していかなければならないと私は考えております。
  499. 前川旦

    ○前川旦君 たいへん御苦心のことだと思います。そのたいへんきびしい条件の中で非常に苦労されておることは私も理解します。それ以上申しませんが、ただやはり正しい姿でやるのがほんとうだと思いますので、その方向で御努力を願いたい、このことを強くお願いしておきます。もちろんあなた方だけでできません、相手のあることですけれども、その辺もひとつがんばっていただきたい、このように思います。  それからもう一つ、非常に、これもこの前の国会以来、皆さんずいぶん耳にたこができるくらい言われている問題ですけれども、機械化の問題ですね、電子計算機、これはいかがですか。いま作動状況というか、効果というか、いまの現在の状況はどの程度までこれをお使いになっていらっしゃいますか。
  500. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在、電子計算機は出願事務に使っております。三十九年以降の出願について、ほぼ九割方テープに入っておるわけでございます。いろいろ新しい、世界でも試みないやり方なものですから、必ずしも予定どおりスムーズにいくとは申しませんけれども、おいおい軌道に乗ってきておるところでございます。
  501. 前川旦

    ○前川旦君 この電子計算機を入れたがためにかえって混乱をする、能率が下がったという批判がずいぶん出ておりました。現在でもやはりそういう批判が実はあると思います。あくまでもこれは能率をあげるために入れたはずであるのに、現実の問題としては能率が下がる。たとえばこれは普通の国民の側からいって、前には自分が一度出したもの、出願したものを閲覧したいと特許庁へ参りまして頼んだら、一時間かそこら以内でさっと出してくれた。最近は行くと電子計算機にかけなければいけませんから、一週間待ってください、三日待ってください、こういう実態が実は私耳に入っておるわけです。それから中の事務をやる場合でも、前の書類を審査官の人が出してもらいたいというと、前は電話一本でわずかの時間ですぐ出た。いまは一々書類を書いてキーパンチャーに回して、電子計算機にかけて戻ってくるのに一週間近くかかる、こういう実は不満も私は聞くわけなんです。そういうことになると、一体これは電子計算機は何のために入れたのか。混乱と事務を滞らせるための結果になったのではないか、こういう批判も実は出てくると思うのです。そのことを含めて、いまの状態、実際事務の簡素化、事務の迅速化に役立っているのか、いまの実態を教えていただきたいと思います。
  502. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 出願事務を人でやるということになりますと、非常に機械的な仕事でございまして、相当の人海戦術でないとできない。それを現在電子計算機でわずかな人といいましても、かなりのパンチャーがおりますけれども、そういう人でやっておりますが、反面御指摘のような不便な点も現在のところ電子計算機の容量じゃあることは事実でございます。その点は早急に改善をしたいわけでございますけれども、機械のことでございますので、いますぐにというわけにはいきません。
  503. 前川旦

    ○前川旦君 この次にはいま出願事務は電子計算機にかけているとおっしゃる。今度は登録事務をかける順番だろうと思うのですが、いままでの失敗から、私はやはり反省というものを生み出していただきたいと思うのです。というのは、せっかちにそういう機械化をやって十分に習熟しない、機械にもなれない、人間もなれないうちにやって、かえって混乱をするということであれば本末転倒になります。そこで、これから、のせていく順番というのは登録事務だろうと思いますが、それは機械にのせる、機械にかけてのせるとおっしゃるでしょうが、やはり十分習熟をする、やはり十分な検討をする、時期が熟して、のせても混乱が起きないのだ、のせたらすぐスムーズにいくのだ、こういう慎重な準備態勢というか、それが必要だと思いますが、そういう十分な習熟態勢、準備態勢、これをとっていくのが本筋だと思いますが、そのようにおやりになりますか。
  504. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 登録事務の電子計算機の活用は既定の方針でございますけれども、問題がいろいろあろうかと思いますので、できるだけ慎重に取り扱いたいと思います。
  505. 前川旦

    ○前川旦君 できるだけ慎重にということでございますが、これは、もうだれでも物事をするのにできるだけ慎重にやるのは、これは普通のことです。私はそういった慎重にということばでなくて、やはり十分に、何というか、これはだいじょうぶなんだ、こういう確信が持てる、お使いになる方も持てるし、管理される方も持てる、混乱は起きない、こういう確信がやはり持てるような段階まで十分な御研究をなさる必要があると思いますが、その点についていかがですか。
  506. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 全く同感でございます。
  507. 前川旦

    ○前川旦君 それじゃ、もう一つだけお伺いしておきますが、いま特許庁の事務は、これから機械を中心に集中管理体制というか、やはりそういう体制をとっていかれるだろうと思うのです。そういうお考え方だと思いますが、そうなると、特許庁が、内部がいろいろ地理的に分散をしていると非常にこれはまずいことになるのではないかと思います。現在、審判部ですか、出ているのは。一カ所出ておりますね。それが出たために、これは正確にはわかりませんが、中に働いている人の話を聞きますと、やはり二割やそこらは、その辺は能率が落ちただろうなという、これは直感で言っておられますが、現実にやはり分かれてくると能率が落ちる、これは当然だろうと思うのです。できるだけこういう、特にたまっている、何か早く処理しなければいけないという段階ですから、分散をさせない、なるべく一緒に、動かさない、これは原則だろうと思いますが、長官、どのようにお考えになりますか。
  508. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 特許庁は事務の分散をしますと、ほかの仕事以上に能率が下がります。
  509. 前川旦

    ○前川旦君 では、いまの分散をしておる審判部はできるだけ早い機会に当然これは一緒になる、そういうことだろうと思います。  そこで、これはちょっと問題が少しはずれますが、いま庁舎が問題になっておりますね、通産省としても庁舎の問題、これは官房長にもちょっとお答え願いたいのですけれども、いま庁舎を建てていますね、第一期工事ですか。第一期工事ができますと、これはどうなるのでしょうか。やはり、分散したままで入るということになるのですか。まとめて特許庁は入るという御意向なんですか。たいへんこれはこまかい問題で恐縮なんですけれども
  510. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 第一期工事にどこがどれだけ入るという方針はまだきまっておりません。
  511. 前川旦

    ○前川旦君 それでは、官房長にちょっとついでにお尋ねしておきますが、第一期工事は近く完成でしょう。第二期工事は、これはいつから着工なさって、大体、完成の見込みはいつなのか。
  512. 大慈彌嘉久

    政府委員(大慈彌嘉久君) 庁舎の問題、御説明さしていただきます。  第一期工事は御指摘のとおり、いま建設にかかっておりまして、来年の九月に完成の予定でございます。四十三年九月でございます。  それから私のほうの庁舎の問題は、特許庁はもちろんでございますが、本省といわず非常に狭隘でございまして、現在、会議室もほとんどない。廊下を使っている。それから貸しビルといいますか、特許庁も貸しビルに入っておりますが、本省のほうも一部貸しビルに入っておりまして、非常に困っております。  それから第一期工事をやるにつきまして、取りこわした建物がございまして、それがいま仮設の建物に入っております。したがいまして、第一期工事が完成した場合には、いま申し上げましたような取りこわし分、あるいは今後の増員、それらを全部総合的に対処しなければならない状況にあります。  それからお尋ねの第二期工事でございますが、これは現在のところまだ確定しておりません。今後、予算折衝するわけでありますが、私のほうとしましてはもちろんできるだけ早く希望どおりの建坪と申しますか、規模で建設したいと思いますが、今年末なり今後の折衝に待つ、こういうことでございます。
  513. 前川旦

    ○前川旦君 特許庁はこれは原則として分散ささない、特にこれは滞貨たまっているのですから、分散すればなお能率が落ちる。そこで私、聞いておりますのは、長官はさっきお答えになりませんでしたけれども、いまの第一期工事が完成すれば特許庁は分散して中に入る、こういう話を実は伺っておりますが、そういう事実はありませんか。
  514. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 特許庁としましては、なるべく早い時期に同じ建物に集結したいわけでございますけれども通産省全体の方針というものはまだきまってはいないわけでございます。
  515. 前川旦

    ○前川旦君 これはまだきまっていらっしゃらないのですから蛇足になりますけれども、分散しては困る、しかも、その分散をして入れた、しかも第二期工事もめどが立たないということになると、もしかりに分散して入れた場合に、非常に長い間、分散状態が続くという非常に危険性があるのであります。そのことも私は長官のほうで、これは滞貨解消という立場から十分私は考慮をしていただきたい、このように実は思います。もうたいへん問題がこまかくなり過ぎて申しわけございませんでした。大体そういうことでもう質問終わりますが、ただ、いま、大体一件三年半かかりますと言われていますね、三年半。いまの状態見ますと、先ほどの答弁聞いてみますと、審査官なかなかふえない、非常に定員はふえても実数がなかなか集めるのにむずかしい。せっかく採用しても抜けていく者もいる。民間のほうがやはり魅力あるわけでしょうね、いまの状態ではなかなか集まりにくいという一つのネックがあります。それから、事務職員、これもせめて諸外国ぐらいにしていく、これが理想でしょうけれども、これにはやはり人事院とかあるいはそのほかの壁があります。非常に苦しいですね、これは私どもよくわかります。機械化も十分にまだ軌道に乗っていない。その上さらにいま庁舎が狭くなって一部分散をするというかっこうになっておる、こういうことであれば、いまのところ先の見通しというものは一体どうなんですか、まだまだ滞貨がたまっていくという暗い見通しなのか、それとも皆さん方の見通しとして、いや、そうじゃありませんと、たとえばいま滞貨たまって、来年から少しずつ減っていきますという見通しが立っているのか、まだまだ実は暗い見通しなのか、その辺のところを私は率直に皆さん方にお聞きしたいと思います。特に、いま三年半ですが、もしかりに五年にもなりますと、これは特許権の期間十五年ですけれども、出願が二十年という制限がありますから、もしかりにこれが五年こえたら二十年という制限から、出願から二十年という制限がありますから、権利の十五年と食い込むたいへんなことになると思います。しかもこれは国民の側だけでなくて、やはり産業の側からも早くしてもらいたいという強い要望だろうと思います。そこで、一日も早く滞貨をなくしてもらいたいと思うのですが、いまそのお伺いした点では非常にその見通しがやはり暗いような感じがするのです。その点で、私は大臣なり長官からこれからの見通しというものを率直に私はお話ししていただきたいと思います。その見通しによってまたそれぞれ対策もいろいろあるでしょうけれども、一部ではお先まっ暗で、ますます滞貨たまるのだと、非常にこういう暗い予測もされておりますので、その辺の御見解を最後に伺って終わります。
  516. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 人員の増加をいたしましても、この増加された人員がほんとうに能率を発揮するのには何年もかかります。したがって、短期的に見ますと、滞貨というのは今後もある程度ふえていくのは否定できないと思います。来年、今年より下がる、あるいは同じかと言われればふえる。しかしながら、われわれは、長期的に計画を立てて、これは人員増加も含めて総合的に計画を立てて、少なくとも三年以下にしたいと思っております。
  517. 前川旦

    ○前川旦君 三年以下にしたいという希望は自由に述べられますけれども、いまの状況を見るとなかなか困難であると思います。あなたの答弁は、滞貨はまだこれはふえるだろうという、やがて何とか三年くらいにしたい、こういうことはだれでも言えることです。もっと具体性を持って、これからの長期の見通しというものはきっと私はあるはずです。なければお先まつ暗で皆さん方やっているはずはないので、もっと確たるこれからの見通しとか、信念というか、これを私は最後にもう一度お聞きしたいと思います。
  518. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 私の多少個人的な意見も入りますけれども、五年先に二年、三年以下に審査期間をしようと思いますと、毎年九十名くらいの審査官を採用していかなければいけないと思います。なお、制度改正の問題でございますが、制度改正をすれば人員は少しセーブできるのではないかということで現在検討しております。したがって、われわれは長期的に具体的に計画を立て、そして滞貨の処理を促進するつもりでございます。
  519. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は最初に、この法律案の中で産業立地部立地公害部と改称されて構成も変えられましたけれども、今度の公害対策基本法を設定して行政の一元化をはかるという方針で進んでおられますけれども、このたびは名称を変更して、また、厚生省の環境衛生局公害部と相当公害対策面についてはお互いに競ってやっていると思いますけれども、行政の一元化ということを考えますと、このたびの名称変更もちょっとおかしいと思いますし、それからどのようにして今後行政の一元化をはかっていこうとされているのか、その二点をまずお伺いします。
  520. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 公害については、通産省加害者側の立場であります。厚生省被害者側の立場であるということで、これは厚生省厚生省として公害の存在、公害程度というものを調査をしてもらうということで、それに対して通産省ではそれじゃその公害をいかにして軽減させるか、あるいはそれをなくするか、また、そういう公害未然に防ぐかということを通産省がやるわけであります。したがいまして、今度の基本法によって大体双方の意見を取りまとめて、基本法で一元化して、大体厚生省でその処分をとってもらうということにしたわけであります。   〔理事八田一朗君退席、委員長着席〕
  521. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度の公害対策基本法では答申よりもだいぶ骨抜きになって、第一条の中に「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」この文章というものがだいぶ通産省あるいは業界から圧力がかかってこのことばを挿入したのじゃないか。したがって、公害基本対策にこういった文章が入る以上は、相当産業界から圧力がかかって、実際に国民のための公害対策が行なわれないのじゃないか、そういう懸念が非常にあるのですが、これに対する大臣の見解を伺いたいと思います。
  522. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その問題につきましては、先ほどもお答えしたのでありますが、この健康という点から見ると、これはもう健康を確保するということについては、われわれ通産省のほうとしては何らこれにはまあ関与できないという立場をとっておりますが、生活の環境をよくするという点において、これは経済の調和ということをいっておるのであって、そういう点において経済の調和をはかりながら生活環境をよくしたいという考えでおるのであります。決して産業界の圧迫や何かでそういうことをしたわけじゃないのであります。それから経済の調和ということばをことさら入れておるのは、先ほど伊藤委員にお答えしましたとおり、とにかく企業者側がこの公害という点においては関係があるということをはっきり認識してもらいたいというわれわれ考えをしておるのです。したがって、経済の調和とか、あるいは企業企業者というようなことばを使っておるのでありますが、いままでは企業者側も公害ということをまあ無視して企業をやっておったけれども公害ということを決して無視しては企業はやれないぞという認識をひとつ高めてもらいたいという意味で、経済の調和ということばをことさら使っておるのであって、何もこの産業界の圧迫とかいうことはわれわれのほうは全然考えておりません。
  523. 多田省吾

    ○多田省吾君 行政の一元化という問題で、総理府の中に公害行政委員会というものをつくったほうがいいんじゃないかという意見が強いわけでございますが、大臣としてはどうお考えでございますか。
  524. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) これは、公害はいろいろ各省に関係をしておりますからして、したがって、これを統一的に実施するために、公害対策基本法案では、関係各省大臣で構成する公害対策会議を設置して、そして公害対策の総合的かっ統一的な実施をしたいということで、この会議をつくることにいたしたのであります。
  525. 多田省吾

    ○多田省吾君 問題が重複しますのでこの程度にとどめまして、  次に、いまいろいろ審議されましたけれども、特許庁の審査、審判の処理の問題で若干お伺いしたいと思いますが、先ほど制度改正の問題で無審査主義にしたいというお話がありましたけれども、特許については審査主義、それから実用の新案制度については無審査主義という、そういう方向でございますか。
  526. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 無審査主義にしたいということは言っておりませんです。
  527. 多田省吾

    ○多田省吾君 私の聞き違いかと思いますが、審査を早めるために、それでは実用新案制度については無審査主義というのは、ドイツあたりでも特許のほうは審査主義である、それから実用新案制度については無審査主義でやっておる、そういう例もあるわけでありますけれども、その点に関してはいかがお考えですか。
  528. 川出千速

    政府委員(川出千速君) この前の制度改正――昨年の国会に出た制度改正は、実用新案制度は無審査じゃございませんが、簡略審査、無審査に近い簡略審査で滞貨を一掃しようという案でございましたけれども、これは反対が多かったために廃案になったような経緯もございます。いまの審議会ではその案も含めまして実用新案制度のあり方について検討を加えておるところでございます。
  529. 多田省吾

    ○多田省吾君 その実用新案制度については、簡略な審査にするということもありましょうし、あるいは医薬品も飲食物なんかも無審査にするという点もあろうと思いますけれども、また無審査にすると無効審判が飛躍的にふえるというような懸念もあると思いますけれども、その辺の関連において、いま現在法改正も考えておられるようでありますけれども、最も反対が少なく最も効率のいい審査制度というものはどのようにお考えですか。
  530. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 昨年の案が政府の案であったわけでございますけれども、やはりこの権利の信用性という点から考えますと、無審査制度はその点は信用の点は薄くなる、審査しないわけでございますから。それから御指摘のように、紛争事件が起きる例は多いわけでございます。したがって、審判なりあるいは裁判所の事務はふえるということはあろうかと思います。
  531. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ審査がおくれる一つの原因として、外国人の特許出願が非常に多いということもお答えありましたけれども、特別翻訳の時間がかかるとか、日本人の特許と違って非常に時間がかかるというような制約があるそうでございますけれども、その点はどうですか。
  532. 川出千速

    政府委員(川出千速君) そのとおりでございまして、国内の特許に比べますと、これは平均でございますが、四倍くらいの労力がかかります。
  533. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ特許料の支払いでも、私資料が古いのですけれども、三十八年度あたりは、日本からの特許料の支払いが一億三千万ドル、日本の技術輸出は五百万ドルである、そういうことも聞いておるわけでございますが、一番新しいデータではどうなっておりますか。まあそれだけ一応聞いておきます。
  534. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 四十一年の数字で申し上げますと、支払いが約一億八千万ドル、推計でございます。受け取りつまり技術輸出、特許料の収入でございますが、一千六百万ドルくらい、約一割弱でございます。
  535. 多田省吾

    ○多田省吾君 お金のほうはわかりましたけれども、外国人の特許案件はどのくらいあるのでしょう。
  536. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 特許の出願のうちの二六%でございます。
  537. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですからどのくらい申請されてどのくらい、案件ですね、数をおっしゃってください。
  538. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在特許の出願は約八万件でございまして、その四分の一が外国出願でございます。
  539. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうすると八万、外国だけの出願が八万ですか。
  540. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 概数で申しましたのですが、外国、内国特許出願のトータルが八万件でございまして、そのうちの二六%が外国出願でございます。
  541. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、外国のほうが二六%だといっても、四倍か五倍か時間かかると申しますと、結局外国審査のほうが日本の審査よりも時間がかかると、そういう状況でございますね。それに対する何かもっと早くする方法とかそういう考え方はないですか。
  542. 川出千速

    政府委員(川出千速君) これは外国出願は内容も高度でございますけれども、翻訳等が非常に短期間にやるもんですから非常に誤訳が多かったりいろんなことがありますので、非常に手数がかかりますので、これは関係方面、つまり弁理士等の協力あるいは出願人の協力を得て、わかりやすい申請書類にしていただくことが非常に大切でございますし、現在協議中でございます。
  543. 多田省吾

    ○多田省吾君 外国の特許の出願は、時間が切れる直前にもうあわててやるから非常に翻訳にミスが出ると思うのですけれども、協議中ということでございますが、これは日本だけの大きな特徴だと思うのですけれども、外国なんかの例は言語学的にそんなにむずかしいことはないわけで、案外スムーズにいっているのじゃないかと思うのですけれども、これは日本だけの特徴ですか。  それからもう一つは、協議中ということでございますが、ただ、口で、誤訳がないようにしてもらいたいとか、そういうことだけでなくて、何かこちらの対抗策ですね、そういうものはないでしょうか。
  544. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 誤訳が多かったり、へたくそな訳の多い弁理士は呼び出して注意をしております。
  545. 多田省吾

    ○多田省吾君 注意だけじゃなくて、そういうのは絶対ないようにというようなことはできないですか。
  546. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在、制度的にそれを法律でもつくってやるという方法がないものですから、やはり協力を得てやっていくのが一番いいかと思って、それに努力をしている次第でございます。
  547. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから三十九年度の、電子計算機を入れるというのも、会議録を見ておりますと、三年の滞貨を二年にしたいから電子計算機を入れるのだというようなことを言っているのですが、結局三年半逆に滞貨がふえているというような現状なんですが、今度も長官のお話を聞きますと、このぐらい人員を入れたんではまたかえって滞貨がふえる状況だと、そういうお話なんですね。まあ三十九年のときはずいぶんごまかされたような答弁だったと思うのですけれども、今度の長官は非常にまじめでいらっしゃるから、ありのままにおっしゃったのでしょうけれども、実際前のことを蒸し返すようですみませんけれども、三十九年に電子計算機を入れたときの状況では、三年を二年にできるという成案はあったのですか、そういう見通しはあったんでしょうか。
  548. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 私は三十九年に長官をしておりませんので、そのときの見通しはわからないわけです。ただ電子計算機は出願事務の合理化でございます、審査事務の合理化ではございませんので、審査はまた別個の問題でございます。
  549. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど長官は、人員を六十七名増員しても数年かかる、五年ぐらいかかるのではないかと思うのですけれども、そうしますと、この六十七名増員したことによって、この二、三年は少しも改善されないことになるわけですね。
  550. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 来年はもう一年先でございますので、これは先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、五年ぐらいの計画を立ててやはり短期化していかなければならないし、またそうするつもりでおります。
  551. 多田省吾

    ○多田省吾君 日本の出願というのは非常に多いようでありますけれども、毎年年度別にしたら大体この出願はどのくらいずつふえていっているのですか。
  552. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 最近十年間に、日本の出願は二倍以上になっております。
  553. 多田省吾

    ○多田省吾君 何万から何万……。
  554. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 現在三十二万ですから、十年前は十五万台でございます。それからそのうち特に最近五年間は八割ふえております。
  555. 多田省吾

    ○多田省吾君 日本の特許の出願が非常に多いということは特徴でありますけれども、外国の例なんかはあまりふえていない、日本は非常に多い。ところが、企業化される率が非常に少ないということがあるわけですね。これは非常に大きな欠陥があるんではないか、こう思われます。これはもう特許庁というよりも、大臣にお答えいただきたいのですけれども、その特許が工業化されないという隘路は大体どういう理由にあるんでしょうか。
  556. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 出願は非常に多いわけでございますけれども、国内の特許出願は半分以上が不合格になります。外国出願は六割が合格でございます。したがって、国内の特許出願には質の悪いものが多いということがいえると思います。
  557. 多田省吾

    ○多田省吾君 外国の合格率の多いのは当然だと思うのです、外国のあれを通ってきているのですから、日本の四分の一だといっても相当の量が審査を通過しているわけですね。それにもかかわらず、企業化、工業化が外国に比べて非常に少ない。ですから事実、輸出なんかも非常に少なくてようやく一割近くになったようでありますけれども、どういう点がその隘路になっておりますか、その点をひとつ……。
  558. 川出千速

    政府委員(川出千速君) 外国にもあると思いますけれども、日本の場合いわゆる防衛的出願がかなりございます。つまり権利化しますけれども、実施をするつもりではないという自分の権利を防衛するために出願している。特許権は取るけれども使わないというのもございましょうし、それからやはり企業化して収益が上がる、あるいは市場があるかないかというような問題もございまして、これは特許権になったからすぐに実施をするというものではないわけでございまして、その比率は非常に低いわけでございます。
  559. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは特許関係は終わりまして、資本の自由化で若干質問したいんですが、山本通産事務次官が二十二日ころ、記者会見では、一〇〇%外資という形は当分とれないと、そういう反対をして三分類方式には反対していたわけですね。このために通産大臣お話では、七品目について一〇〇%外資ということを内定したということでございますが、どういうお考えの変化でですね、このようになったのでしょうか。
  560. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 山本次官が発言した当時におきましては、一〇〇%の自由化ができるかどうかということについてまだ確信がなかったものだから、したがって、二分類でいいんじゃないかという考えをいたしておったわけでございますが、その後いろいろ調査した結果、一〇〇%の自由化ということの業種が存在するということがはっきりわかりましたから、そこで第一が五〇%、第二が一〇〇%ということにしたわけです。
  561. 多田省吾

    ○多田省吾君 A、B、Cにしますと、Aを一〇〇%外資とすれば、いま七品目だけは内定したようでありますけれども、大体十種目くらい通産省関係できめられるのじゃないかというような見通しもあるようでございますが、もう少しふえる可能性はあるでしょうか。
  562. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 今後なお検討いたしておりますので、多少ふえるかもしれませんが、その数は多くはない、かように考えております。
  563. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣は前から、経済関係閣僚会議を開いて、資本自由化に対して閣僚で検討したいというお考えのようでありますけれども、これはあれですか、六月の二日の前に開かれるか、そのあとでございますか。答申が出てからですか。
  564. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) それは答申が出てから閣僚会議を開きたい、こう存じております。
  565. 多田省吾

    ○多田省吾君 西ドイツなんかでも資本の自由化を前に、非常に技術開発ということに対して大きな力を入れてやっているわけでございますけれども、当然資本の自由化にあたっては、政府として早急な政策を確立しなければいけないと思うのですが、それもやはり場当たり的なものじゃなくて、基礎研究に重点を置く、あるいは総合的な研究をする、また、工業技術院に対して補助金制度というようなものも確立すべきだというような強い意見もありますし、こういった問題に対しては、技術開発に力を入れるという問題に対しては、大臣はどのようにお考えですか。
  566. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この資本取引の自由化に対して、一番重要な問題は、技術開発でございます。したがいまして、技術開発のことについては今後ひとつ積極的に取り組みたい、こう考えている次第であります。
  567. 多田省吾

    ○多田省吾君 積極的ということじゃなくて、具体的にいま申し上げましたように、工業技術院に対する補助金制度というようなものを設けるとか、基礎研究に力を入れるにはどうしたらいいかとか、そういう具体的なことは通産省として何かお考えはないんですか。
  568. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 具体的に技術開発についてどうしていくかというお尋ねだろうと思いますが、御承知のように、やはり国、民間を合わせました技術開発に使う金というのは、諸外国に比べまして日本は非常に少のうございます。したがいまして、民間についても国についても支出額をふやさなきゃいかぬ、こういうことでございます。それと同時に、やはり御指摘のように、基本的なものにつきましてはやはり国が相当責任を持って開発するという体制が必要であろうかと思います。そういう問題につきましては、今後産業構造審議会の中に技術部会というのがございます。そこで今後の重点施策として詰めてまいりたい、かように考えております。外資審議会の答申におきましても技術開発の点につきましては、最も力を入れて答申が行なわれる、こういう予定になっております。
  569. 多田省吾

    ○多田省吾君 前に、二十二日ころは一〇〇%外資に対しては反対だと、そういう意見が強かったわけです。特にまた外資に対して非常に通産省として消極的な面が見られたわけでございますけれども、今度、大臣が、外資審議会の骨子は大体できておりますので、答申に対しては大体納得できるというようなお話をなさっているようでございますが、具体的にどういう点が組み込まれる、どういう点が変化したから賛成されるようになったのか、その点を簡単にお聞きしておきます。
  570. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 外資審議会の答申で、考え方として問題になりました点は幾つかございますが、一つは先ほど御指摘になりましたように、一〇〇%でいくのか五〇%でいくのか、こういう問題でございます。通産省の基本的な考え方は、日本の現在の経済の実情から見まして一〇〇%外資というのを原則にするというのは無理である。やはり共存共栄的に五〇、五〇でいくというのが基本でなければならない。したがいまして、業界の実態から見て一〇〇でもいいというものがある場合は、これは自由化してよろしい、こういうことで実態調査をやった結果、先ほど申し上げましたように、一〇〇を少ししたわけでございますが、外資審議会の答申も、その産業実態と自由化のかね合わせというものを十分理解していただきまして、五〇が今後五年間の基本である、こういうことになったわけでございます。それからもう一つのポイントは、今後自由化を五年間に漸次進めてまいります場合に、私ども考え方としては、これに対応する企業を強くする、あるいは外資の弊害をできるだけ少なくするという対策がなくてはいけない。そういうことを主張いたしたわけでございますが、外資審議会におきましてもその点は今後の施策の方向として、自由化を進めると同時に、対策も、中小企業、流通、含めて強力な対策をやっていくという形になりましたので、私どもとしては、経済の実態と合わして今後自由化が進め得る、こういう判断をいたしましたので、先ほど大臣が申し上げましたように、進めるという態度をきめたわけでございます。
  571. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでこの自由化に伴って当然外資法というのもありますけれども、そのほかの関係法の法体系の整備というものは当然やらなくっちゃならないと思いますが、その点に関してはどういう方向で進めようというお考えですか。
  572. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) いろいろな面で今後制度的な問題が出てまいろうかと思います。例示的に申し上げますと、先ほど御指摘がございました技術独占といいますか、そういうものに対して現在の特許法でいいかどうかという問題もあろうかと思います。また、今後外資が入ってまいりまして、非常に過当競争というか、ダンピングをする、あるいは景品付販売をするというような一時的な混乱の問題もあろうかと思います。そういう点に関しましては、独禁法の運用の問題とか、あるいは割賦販売法という法律がございますが、それをどういうように改正し運用していくかというようないろいろの面の問題が出てこようかと思います。この問題につきましては、今後専門的に外資審議会におきましても、あるいは通産省におきましても、協力して検討していく、こういうつもりでございます。
  573. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、この外資による乗っ取りを防ぐ問題というものがだいぶ真剣に考えなくちゃならないと思いますが、総合政策研究会なんかでも、これは乗っ取り防止策として、民間で株保有機関をつくったらいいじゃないかということを提言しておりますけれども通産省としては、この問題一般に関し、どのようにお考えでございますか。
  574. 熊谷典文

    政府委員(熊谷典文君) 外資が既存企業を乗っ取るという問題は、欧州においても非常に重要な問題になっております。したがいまして、通産省考え方といたしましては、既存会社の株の取得につきましては、現在一五%までは自由に取得できるということになっておりますが、これを多少緩和いたしまして、二〇%までは取得できるという程度に改める、それ以上のものにはしない、こういう考え方であります。  それからもう一つは、今後だんだん自由化が行なわれてまいりました場合に、御指摘のように、乗っ取られるという問題が出てこようと思います。その対策の根本はやはり安定株主構想というような問題あるいは身売りせざるを得なくなったような場合に、業界が共同して、それを救うような問題があろうかと思います。したがいまして、われわれとしては、そういう面の業界が協力組織をつくるように今後相談をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  575. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  576. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記を始めて。
  577. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 先刻質問した例のタイへの警察用小銃だとかピストルというのがありましたね。それ調べてみますと、豊和工業というのがつくったので、六四式ら二十連発のもので、日本の自衛隊が使っているものと同じだということを言われているのですが、警察用の小銃じゃなくて、実際軍隊用の小銃らしいのですがね。それで、いまでなくていいが、いつどのくらいの、どういうものの輸出を許可したのか、これ、二回あると言っていましたね、どのくらいの量でどういうものであったかということをあとで明らかにして資料で出してくれませんか。
  578. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 資料は提出するそうです。  他に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それではこれより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を求めます。   〔賛成者挙手〕
  579. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  580. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  581. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) それでは速記再開。  八時半再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後八時五分休憩      ―――――・―――――    午後八時三十六分開会
  582. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) これより委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。田中茂穂君が辞任され、その補欠として迫水久常君が選任されました。     ―――――――――――――
  583. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、去る二十六日衆議院から送付され、付託されました。なお、提案理由説明はすでに聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。関係当局からの出席は、剱木文部大臣政府委員の方々でございます。御質疑のある方は順次御発言願います。
  584. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、質問の要旨についてはきわめて簡明に、しかも重点にしぼってお伺いいたしますので、極力明快にひとつ、しかも簡にして要を得たお答えをいただきたいと、まずもってお願いしておきます。  さて、先日大臣から提案理由説明伺いましたので、その順に従って以下お伺いしたいと思います。  まず、京都国立近代美術館についてお伺いいたしますが、今度の改正で、国立近代美術館の京都分館を独立させて、文部省の独立附属機関たる京都国立近代美術館、こう改名しようとしておるわけでありますので、このことについてまずお伺いいたしますが、現在の分館のままでもよいのではないかという意見もあるわけです。そこで、分館のままでは不都合だというのであるならば、まずその最大な理由はどういうことかということ。  それとあわせて、京都の四十二年度定員は十七人となっているようでありますが、独立したことによって分館時代の定員、配置及び内部機構等に変更はないかどうかという点。  それから、さらに三つの点としては、東京国立近代美術館の四十二年度定員は四十七名となっておると思うのですが、京都の定員は十七名丁これは比較いたしますと少なきに失する感があるわけでございます。これで業務上支障ないのかどうかという点。  それから、四点といたしましては、京都分館は従来工芸を中心とする展覧会を開催したきたとのことでございますが、今度独立したならばどのような運営方針を立てられるのか。  こういう点について、一括四点に分けて簡明にお答えいただきたい。
  585. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 御承知のとおり、いまの京都分館は昭和三十七年に分館として設置されまして今日まで運営してまいったのでありますが、分館の形では、経理とか人事の面、あるいは物品管理の点、さらに展覧会を開催いたしました場合の運営等につきましていろいろと本館の指示を受けなければならないような仕組みになっておりますので、非常にその点不便を感じてきたわけでございますが、当初から京都、地元といたしましては、ぜひ独立にこれを持っていきたいという強い要望がございました。なお、最近御承知のように京都の国際会館が設置されまして、非常に外国人の鑑賞者がふえてまいりますし、さらに近くまた大阪に万国博覧会が開催されるというふうなことも考えまして、国際的な観点からぜひすみやかにこれを独立させたい、こういう気持ちで今回提案したわけでございます。  なお、定員につきましては、おっしゃるとおりに、十七人の定員でございまして、この独立に伴いまして今回は定員の増員は考えられなかったのでございますけれども、とにかく申しましたような必要性からとりあえず独立をいたしまして、さらに漸次将来にわたって定員その他についても整備充実をしてまいりたい、かように考えております。  なお、いま仰せのように、京都の分館は工芸中心の美術館として運営されてきたのでございますけれども、これが独立を見ました暁には、ただ工芸だけでなくて、その他の分野においてもこれを充実してまいりたい、かように考えております。
  586. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、学術審議会についてでありますが、学術に関する重要事項を調査審議するために、今回学術奨励審議会を改組して学術審議会を設けようとしておるわけでありますので、この点に関して一、二お伺いいたします。  まず、学術審議会の調査事項である「学術に関する重要事項」については、現在の中央教育審議会のいわゆる調査審議事項である「学術又は文化に関する基本的な重要施策」とどうも重複する面があるのではないかと考えられるわけですが、その点はどうなのかという点。  それと次にお伺いしたいのは、この審議会の整理はいま行管を中心に強調されておる折から、こういう類似の審議会については当然統合整理すべきではないか、こういう意見が当然に成り立ってくるわけです。なぜ統合整理しないのかという点、こういう点についてお伺いしたい。
  587. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 現在、学術奨励審議会がございまして、これは学術の奨励及び普及に関する事項を調査審議するということで、かなり具体的な専門的な仕事をいたしております。このたびこの学術奨励審議会――実はこれはいろいろな分科会が集まって学術奨励審議会となっておるわけでございまして、その沿革は、各種の審議会がありましたのをいろいろな機会に整理して現在の審議会になっております。したがって、構成が従来の分科審議会の集まりという実態がございますので、このたび学術の基本問題を研究する体制にいたしますために学術審議会と改めたのがこの学術奨励審議会の改組の主たるねらいでございます。  それから、中教審との関係でございますが、中教審は全体として教育、学術、文化に関する事項を取り扱いますが、中教審で取り扱いますものは全体的な観点から考えますが、学術奨励審議会のほうはかなり具体的専門的な問題の取り上げ方でございます。たとえば研究の長期計画の問題ですとか、あるいは研究体制の整備、あるいは研究所の個々の取り上げ方、あるいは科学研究費の配分とかいう具体的な仕事がかなり入っておりますもんですから、中教審とは重複いたさないと考えております。
  588. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、従来の学術奨励審議会は七分科会に分かれておって、それぞれ、科学研究費補助金の配分とか、学術研究体制、あるいは学術用語の制定普及、あるいは学術文献総合目録の作成、こういうことについて担当部門別に調査審議を行なってきたようでありますけれども、今度の学術審議会では、学術に関する重要事項の調査審議と、その目的はどうもはっきりしないようでありますので、この点具体的にひとつ御説明いただきたいと思います。
  589. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のように、従来七つの分科会を持っておりまして、それぞれ分科会はかなり具体的な任務を持っておりまして、御指摘のように、かなり専門的な具体的な仕事をいたしております。このたびの改組によりまして、分科会のほうはできるだけ統廃合いたしまして、四つの分科会、すなわち、科学研究費分科会、学術情報分科会、それから学術資料の分科会、学術用語の分科会、この四つにまとめまして、この学術審議会の内部に入れますと同時に、学術審議会は学術に関する基本的な問題、先ほど申し上げましたような長期計画の問題ですとか、研究体制の問題、そういう総合的な機能を果たそう、こういう考え方でおるわけでございます。
  590. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 従来の学術奨励審議会は、委員数が四百二十人以内となっておりますわけですね、実際には三百六十人であったと思いますが。それから専門委員も三百二十二名というふうに、非常に多数であったわけです。今度設けられる学術審議会は、委員が三十名、専門委員が二百三十名と、組織は相当縮小しておるわけです。こういう組織を縮小しても従来以上の成果を期待できるのかどうかという当然の疑問が出てくるわけです。その点どうですか。
  591. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 御指摘のとおり、実はたいへんこの学術奨励幕議会は数が多くて、これも行管と制度の上のお話が起きましたときにも、非常に特殊な委員会であるということがいろいろ指摘されたケースがございます。したがいまして、今度は審議会の一般方式に従いまして、三十人の委員にして、あとは専門委員という形で処理いたしていこうと考えております。御指摘のように、従来の人数が減っておりますが、分科会の整理、それからあとは総合的に運営するという形で、従来のやっておりました仕事を十分こなせるという前提で整理いたしたわけでございます。
  592. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この学術審議会の会長、委員、専門委員、この構成メンバーについてはどのような方面から選ばれようとしておられるのか。従来から各省庁は、審議会等の構成メンバーについては、政府にとって好都合の人物という点に重点があったように見受けられるわけです。過去の長年の間の経緯から、そういうことが指摘できるわけです。たとえば憲法調査会については、多くの改憲論者をその構成メンバーとしておったというのも一つの事例であるわけです。こういう批判もあるので、今回のこの構成メンバーについては、十分民主的に考えて公平厳正に当然選ぶべきであるということが指摘できるわけです。この点についての大臣のお考え一体どうか、明確にひとつお答えいただきたいと思います。これは基本的な問題だから、大臣に。
  593. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ちょっと制度の問題について先に申し上げます。  専門分野がかなり分かれておるものでございますので、自然科学、人文科学を通じまして大体分野をきめまして、その中から学識経験のある方をお願いする。それから分科会のほうにつきましては、特に具体的な分野に応じてそれぞれ専門委員の選び方を考えておりますが、たとえば科学研究費の配分のような学界にきわめて関係の深いものについては、委員の選任については学術会議と緊密な連携をとって選ぶというような方法を考えておるわけでございます。
  594. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) これはきわめて専門的な会議でございまして、文部省と、ああいう政策的なものと相当違いますので、学者の学術会議その他と相談をいたしましたり、その道の権威者をできるだけ集めるというので、文部省の私的な意見はほとんど入れないで選んでまいる予定でございます。
  595. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に定員問題についてお伺いいたしますが、今回の改正案では、さきに成立したいわゆる暫定予算関係の学年進行等による増員以外に、文部省職員を三千三百九十九名増員しようとしておるわけですが、このことに関連して二、三お伺いいたします。  まずお伺いしたのいは、文部省職員の法律定員は今回全体で三千三百九十九名となっておりますが、法律案に出てこないいわゆる凍結欠員の補充の状況については四十二年度は一体どうなっておるのかという点、本省内部部局とか、あるいは所轄機関等、国立学校関係及び文化財保護委員会について、それぞれ簡明にひとつ御説明いただきたいと思います。
  596. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 本省所轄機関、文化財保護委員会及び国立学校におきます欠員補充の措置は、これは前年度に引き続きまして行なっておりますけれども、昭和四十年の十月一日から四十一年の九月三十日までの補充不能数は三百五十一人でございまして、そのうち本省が二十人、国立学校の教官以外の職員は三百三十一人になっております。昭和四十二年度の文部省の職員の新規増員にあたりましては、この補充不能数に昭和四十一年度の定員増にあたって凍結となりました百五十人を加えました五百一人のうち三百八十七入を国立学校ごとに新規増員と差しかえております。この結果、昭和四十二年度の凍結人員は百十四人となっております。
  597. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、所轄機関等の増員五十四名のうちに四十人を占めておるいわゆる国立第五青年の家について、予算とか、完成予定、収容人員、これを簡明にお答えをいただきたいということと、国立大雪青年の家でも六人の増員を予定しておるようでありますが、既設の青年の家ですね、中央、磐梯、阿蘇、大雪の整備状況並びに利用状況をひとつ簡単にお答えいただきたい。
  598. 岩間英太郎

    政府委員岩間英太郎君) 国立青年の家は、今度お願いいたしております四十名は、これは広島の分でございますが、前年度に約五千万円の予算をいただきまして、これによりまして設計その他をいたしまして、本年度におきましては、その後の建物、それから設備等約二億円の予算を計上しております。その他の青年の家の整備状況でございますけれども、これも年次計画をもちまして逐次充実してまいるということで計画をいたしておりますが、大体これは予算で総ワクをきめておりまして、大体次年度に五名なら五名というふうな充実のしかたをしております。現在、国立大雪青年の家、それから国立磐梯青年の家、これは新しいものでございますが、現在の充実状況は約四十六名ということでございまして、今後必要に応じましてさらに充実をしていくということを私どもは希望いたしております。
  599. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、国立国語研究所においては、言語計量調査室の充実ということで、昨年三名、ことし一名増員しておるわけですが、その研究所で充員しようとしておる言語計量調査とは一体どういうことをさせているのか、これを簡単に御説明いただきたい。
  600. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 一名の増員は、キーパンチャーのいわゆる技術者を入れる要求でございます。
  601. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 国立高専の新設のために七十五人が増員されようとしておるわけですが、このうち商船高校から商船高専に昇格する五校関係の増員は大体何人くらいであるかということ。それから、工業高専の新設については、昨年度はゼロであったわけですが、今年度木更津に一校、これで全国計四十四校となるわけですが、今後の設置計画は一体どうなっておるかという点。それからさらに、三十七年に設置された国立工業高専は十二校で、ことし第一回の卒業生を送り出すことになろうと思うわけですが、卒業生の就職状況ですね、こういう点はどうなっておるのか、この点を簡明にひとつお答えいただきたい。
  602. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 国立商船高専につきましては、振りかえが、高等学校から来る者が三十八名、それから新規の増員が七名という計算でございます。  それから高専の学科増につきましては、工業高専の整備につきましては、三十六年から設置されてまいりました学校につきまして、二学科三学級あるいは三学科三学級という形で発足しました高専につきまして学科数をふやしあるいは学級数をふやすということで、われわれ年次校別と言っておりますが、完成の古いほうから逐次拡充をしていくというやり方をいたしたわけであります。  それから、御質問の順序が、お答えが狂うかもしれませんが、高専の卒業生の状況でございますが、本年度第一期で約二千五百人卒業いたしましたけれども、就職希望者につきましては一〇〇%の就職状況でございます。  なお、初任給につきましても、大体短大と四年制大学の中間くらいのところに格づけされているのが一般の様子でございます。  工業高専につきましては、御指摘のとおり四十三校でございまして、このたび木更津に設置することによって四十四校になります。実はこれ以外に公立、私立の高専がございまして、現在五十五校にこれでなると思います。工業関係は、したがいまして、国公私立を合わせまして、埼玉県を除いては各県に工業高専が全部存在することになりますので、一応私たちは高専の普及は一段落したと考えております。それで、先ほど申したように、既設の高専の第二期の充実にいま入っておる、こういう考え方でおるわけです。
  603. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本年度の大学附属病院関係のいわゆる増員は、定員増が二千三百九十九名、それと欠員補充が八十二名ということであるようですが、昨年度は全国で八千人おるといわれた問題の無給医局員で定員化される分はこの中で何名含まれておるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  604. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 結論的に申しますと、医療病院におきます診療要員の増加は本年度として百名でございます。と申しますのは、御案内のように、インターン問題をめぐりまして医学教育、特に卒業後の研修についてはいろいろ議論がございまして、ちょうど予算編成のころ、文部、厚生両大臣が一緒になってお願いしております懇談会が審議中でございましてまだ結論が出ない段階でございましたので、いわゆるインターン問題と無給医局員の問題につきましては本年度はいわば暫定的な形で措置せざるを得なかったわけでございます。このたび去る五月の二十三日にこの懇談会からの最終の答申をいただきましたので、その線に沿いまして今後いわゆる臨床研修生の問題と無給医局員の問題をあらためて本格的に処理する、本格的な処理に当たりたい、こう考えておわけでございます。
  605. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この無給医局員対策として、文部省は本年度から診察協力謝金という名目で無給医局員に対し一人一日大枚四百円を支給する方針を発表したようでございますが、この謝金を受ける条件、それから人員、本年度予算、こういうものについて御説明いただきたい。
  606. 天城勲

    政府委員(天城勲君) ただいま申し上げましたように、基本的な方策がまだ出ない段階でございましたので、本格的な対策がとれませんでした。百名の講師の増員以外は、いわゆる八千人の無給医局員というものに対する基本的な対策が立てにくかったのでございますが、いまの御指摘の診療の協力謝金の考え方は、このいわゆる無給医局員といわれている人々の研修の実態、あるいは勤務の実態、診療に対する関係度合いというものが非常に複雑でございますので、本年度少なくとも前半にこの実態を十分に調査いたしまして、いわゆる無給医局員の中で診療に従事しながら研修する、臨床実習に当たっている者が病院の診療業務に寄与する度合いというものがいろいろ違うわけでございます。その寄与の度合いに応じまして協力謝金を支払う、こういう何と申しますか考え方をきめたわけでございます。それで、金額として総計一億円を入れてございますが、いま申したように、実態をできるだけ明らかにいたしませんとどういう支払いのしかたをしていいのか現場において非常に困りますので、それの結果を待って支払いたい、こう考えております。いまおっしゃった単価その他につきましては、最終的にはまだきまっておりません。
  607. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この診察協力謝金なるものも、一時的便法としては考えられるわけでありますけれども、このようなこそくの手段でなく、前回も繰り返し申し上げてきた世界に全く類例を見ないこういう無給医局員なるものを抜本的に解消する方策を文部省としても着々整備しつつあろうかと思うんです。まあ佐藤内閣は、その政策の大きな柱の一つとして人命尊重ということを言っておるわけですね。その人命尊重につながる医師の待遇を常識的に改善していく、まあ良知良識で医師の待遇をきめるという考え方からいうならば、もう無給医局員なるものは全く考えられない一つの悪制度であろうかと思うのです。そういう考え方に立ってひとつ今後抜本的な対策を講じてしかるべきだと思うわけですけれども、この時点で文部大臣としてはどのようにお考えか、ひとつ率直にお答え願いたい。
  608. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) インターンの問題に関しまして、ただいま申しました医療教育懇談会、これが最終答申を最近において出してまいりました。そこで、今後インターンを廃止いたしまして、大学を卒業いたしますと同時に国家試験を受けまして、国家試験を受けました際に、この診療研修を、まあ義務制ではございませんけれども、これをやる。やる場合は、国立大学の附属病院と厚生省の教育病院、こう分かれてやると存じますが、そこでこの研修生を引き受ける国立大学のウエイトは非常に大きいと思います。それで、この研修制度に沿いまして新しい研修体制を今後病院にもつくらなければなりませんので、これもいままでの無給医局員の問題等とあわせまして、この際抜本的な解決をしてまいりたい、かように考えてお次第でございます。
  609. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この大学附属病院関係で、病院の創設による増員が二千三十五人となっておるわけですが、その病院別の、大体大別でけっこうですが、内訳を御説明いただきたい。
  610. 天城勲

    政府委員(天城勲君) このたび附属病院につきまして、山口それから兵庫、岐阜の三大学に公立医科大学の附属病院を移管いたします。これは公立学校への学年進行で、本年度から――四十二年度から病院を移すことになりますので、その分が千七百六十八名でございます。そのほかに、病院といたしまして歯学部を新たに九州大学、北海道大学等に創設いたします。その創設に要します、歯学部関係の病院で二百八十八名というのが病院関係の増員でございます。ちょっと失礼いたしました。先ほど私、高専のときにちょっと記憶違いをいたしましたので、訂正さしていただきたいと思うのでございますけれども、工業高専が全然ない県は、埼玉は私立が一つございますので、山梨、滋賀、佐賀の三県が高専のないところでございます。がたいへん申しわけございませんが、この機会に訂正さしていただきます。
  611. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この際でございますので、文教政策の一環について一、二お伺いをしておきたいと思いますが、幼児教育について一、二お伺いしたいと思います。  最近、幼児教育の必要性が非常に重視されて、文部省も、幼児教育振興七ヵ年計画、これは三十九年から四十五年までに実施しようとのことでありますけれども、計画が予定どおり実施されると、四十五年度までに約三千七百幼稚園の新設、既設の幼稚園に約千クラスの増設が見られる、こういうことでありますけれども、もうすでに本年度は計画の四年目に入っているわけです。そこで、現在までの進行状況はどうなのかということをお伺いしたいと思います。
  612. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 大体全国を通じます幼稚園数といたしましては、予定どおり達しております。ただ、現実になお計画設置不十分なところに計画どおりいくかという点について若干のズレのございます、その点は、後年度なお行政指導を強めて調整していきたい。園数といたしましては、おおむね計画どおりに進行いたしております。
  613. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 全国三千八百八十八の市区町村のうちで、幼稚園のある市町村が約半数、それから厚生省所管の保育所のない市町村が約二四%、両方とも全くない幼児教育のいわゆる真空地帯、これは約一三%、こういうことであるようですが、この九千三十八カ所の幼稚園を公・私立別に分けますと、公立は四の割合、私立が六の割合になっておるわけです。今度は逆に保育所について見ると、公立が六、私立が四の割合となっておるわけです。全く文部省と厚生省で反対の現象になっておるわけですね。このような点をあわせ考えますと、幼児教育に関する限り、教育専門の文部省より厚生省のほうが非常に熱心だと言えると思うのです、この点だけから考えると。この点は、そうだとすると、まことに遺憾だと思うのですが、大臣、この点についてどういうふうにお考えですか。
  614. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 実は、幼稚園、幼児教育につきましては、御承知のように、沿革的に私立が先にずっとできてまいりまして、公立幼稚園というのがだんだんだいぶおくれてから建設を急いでまいったわけでございますが、おそらくいままで町村等におきまして、私立ではなかなかできにくい町村がいま残っておるのでございますから、今後はそういうものを充足するのには公立でどんどん充足していくということが予定されるのでございまして、沿革的に初め私立が多くできたのですが、しかしこれからは相当たくさん公立が充足してまいる、こういうことになると思います。
  615. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に幼稚園の場合ですが、このように公立の立ちおくれが目立っておるわけです。特に市町村で私立はあっても公立のないところが二三%あるということは、全く不可解千万だと思うのです。この傾向は、園児数で見ると一そう明確になってくるのですがね。すなわち、公立の園児は三十一万三千人に対して、私立の園児は九十万三千人というふうに、約三倍近くになっておるわけです、私立のほうが。もちろん、数量だけが問題ではないわけで、いわゆる教育の中身も非常に大事なわけですが、その中身を見ても、まだまだ貧弱であると指摘せざるを得ないわけです。公・私立の幼稚園とも、一学級当たりの幼児数は三十六人から四十人が多いわけです。幼稚園の設置基準をこえたいわゆる四十一人以上――四十人が制限になっておると思いますが、この四十一人以上のすし詰め学級ですね、いわゆるいうところのすし詰め学級が、公立で千七百八十六学級、私立で五千六百三学級というふうになっておるわけです。特に手数のかかる幼児教育のすし詰め学級というのは、あまり感心せぬと思うのです。小中高でも盛んにすし詰め学級ということが批判されておるわけですが、特に幼児教育では――幼稚園、保育所などでは非常に手数がかかるわけですから、それらが四十人おったのでは、かえって逆効果になるのではなかろうかという憂慮さえ出てくるわけです。そういうことで、この設置が、数についてもさることながら、内容についても十分今後改善を要するのではなかろうか、このように考えられるわけですが、この点はどのように対策を講ぜられておられますか。
  616. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 幼雅園の設備につきましては、公・私立を通じて、新設のみならず、学級増の形をとるものにも助成をし、年々予算を拡充してまいりましたが、今後なおそういう助成の方策を講じてまいりたいと思います。また、施設につきましても、この整備の補助金を年々相当増しておりますので、そういう財政的な援助を強化いたしますとともに、行政指導を加え、実質的な内容を高めるようにいたしたいと思っております。
  617. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 もう少し掘り下げたいところでございますが、時間の関係もございますから、次の問題に入りたいと思います。  次にお伺いしたいのば、教職員の超勤手当についてであります。これは、人事院総裁は三十九年の勧告で、支給すべき方法を明らかにし研究の必要を勧告したのだから、あとは文部省が研究して予算化すべきだとして、当時の中村文相に要請しているわけです。また総裁は、本年の四月二十日の当委員会でも私の質問に答えてこのことを再確認しているわけです。そうだとすると、総裁の勧告以来すでに三カ年を経過しているわけですが、この問題が一体どうなっているのか。その後十分検討したと思うわけですが、この三カ年経過しておりますから、しかもいま申し上げたように人事院総裁も勧告しているのですね。もし勧告を尊重するという立場に立つならば、当然三カ年を経過したのだから、いつまでも検討していないで、もうそろそろ実現してしかるべき時期に到来していると言えるわけですが、この点はいかがですか。これは基本問題ですから、大臣からお伺いしたいと思います。
  618. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) この問題につきましては、去る三月三十一日まで、昨年じゅうかかりまして実態調査をいたしました。その勤務の実態調査の結果をいま集計中でございますが、今度の予算には必ず間に合わせるように解決するつもりでございます。
  619. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 文部省は、いま申し上げたように、これという根拠もなくして教職員の超勤手当をいわゆる例外として適用されないままに従来放置してきたわけですね。これはもう不可解千万だといま指摘申し上げたわけですが、いうなればこれは文部省のいままでが怠慢であったと言わざるを得ないわけです。剱木文部大臣が怠慢とはあえて言いませんけれども、従来から歴代の大臣はきわめて怠慢であったということが言えると思うのです。この問題については、しばしば地方の組合からも問題が取り上げられて、訴訟問題にまで発展しておるわけです。その裁判所の裁決は、いずれも超勤手当は支払うべきだとしておるわけですね。そういう結論がもう出ておるわけです、数カ所で。こういう観点からも、一般職公務員に支給されているものが教育公務員に限って支給されていないのは、これはまことに不可解千万で、いま真剣に取り組んでおるということでありますので、了解しておるわけですが、ひとつこの点早急に、しかも合理的な結論が出ますよう、さらに一段と懸命な努力を願いたいということを重ねてお伺いするわけです。
  620. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 終戦直後におきまして教育公務員の給与をきめます場合に、私どもの基本的な考え方といたしましては、教員の勤務の態様は一般の勤労者の態様とは異なるものがございまして、この超勤等は考慮しないで、普通の公務員とは違った給与体系、特にあの当時でございましたら、たぶん二号俸だったと存じますが、これの上で給与体系をきめまして、超勤のほうを考えないというような考え方でスタートを切ったのでございますが、その後しばしば給与体系が変更いたしまして、現段階におきましてはその二号俸の差がついたということはほとんど識別できないような状況になってまいりました。そこで超勤の問題が起こってまいったのでございます。そこで私は、個人としましては、基本的には教育公務員につきましては何らか別の勤務体系があっていいんじゃないかと考えるのでございますけれども、今日の状況におきましては、やはりどうしても勤務時間というものをきめてまいります関係から、超勤というものを考えなければならぬ、こういう状況になっておると思います。少なくとも今度の予算までにはこの問題をぜひ解決するつもりでございます。
  621. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは最後に一点だけお伺いして私の質問を終わりますが、警備員の設置の問題ですね。学校の警備員設置については、目下国会でも検討が進められておりますし、また国立大学の場合の多くがすでに警備員を設置しておるという実情もありますし、なお人事院としては国家公務員を対象とするというこの性格上からあえてその勧告はしておりませんが、だからといって文部省がほっかぶりすることだけは許されない。これは公務員公平の原則にはなはだ反している。こういう観点から、警備員の設置の問題についても、早急に実施の方向で、前向きの方向でひとつ結論を急いでいただきたいということを、この機会に重ねてお伺いしておきたいと思います。
  622. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 警備員の問題は、同時に宿日直の問題だと思いますが、宿日直の問題につきましては、超勤と同じように必ず決定したいと存じます。ただ、警備員のあり方につきましては、学校の実情に応じまして、これが必置の状況にいたしますか、あるいは町村等におきまして他のものとあわせて警備をやるとか、そういう状況によりまして、学校の必置の職員といたすかどうかということはもう少し研究していかなければ、いまのところ私としましては、最後の決定をしていきますにはもう少し検討さしていただきたいと思います。
  623. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 国立大学の場合は、その大部分がすでに警備員制度を設置しておるわけですね。間違いありますか、間違いないでしょう。国立大学の大部分は警備員制度をすでに実施しておるという前提に立つならば、地方教育職員についても当然警備員設置をしてしかるべきだと思うのです。地方教育職員に限って、日宿直が依然としてやっている。日宿直をやって、翌日の授業に勘案があるわけではない。やはり平常どおり授業をやらなければならないということは、ことばをかえて言うと、非常に過重労働になるということは当然考えられる。その過重労働の条件の中で、なかなかもって生きた教育はできないと思う。特に大きな学校はいいのです、大きな学校は自分の番が回ってくるまで相当期間がありますから。小さい学校は、隔日くらいに日宿直をつとめなければならない。ぐるぐる順番に回ってくるわけです。日宿直でも夜になって完全に寝てしまえば、それは日宿直の意味が全くない。警備員がおれば夜休んで翌日休むということがこれは合法的にできるが、先生が日宿直をやる場合には、特に宿直の場合には寝るわけにはいかない。寝込んでしまえば、警備のつとめができない。結局睡眠不足になることは必定だ。そういう睡眠不足の状況で、翌日の授業に勘案があるかというと、それはない。規定どおりやらなければならない。それを小さい学校では繰り返しやっているから、労働過重になるというのは必然であります。先ほど言った――間違いがあれば御訂正いただけばいいわけですが――国立大学のほうは警備員制度をやっているのです。そういうことを比較すると、どうも公務員公平の原則にはなはだしく反しているということが指摘できると思います。こういう点で、先ほどのいわゆる超勤手当の問題と、日宿直の廃止に伴う警備員制度の問題は、早急に真剣に取り組んでいただきたい大きな課題の一つだと思います。この点重ねて大臣にお答え願いたいと思います。
  624. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 日宿直は、これは義務教育におきましては、設置の一つの大きな歴史的なものでございまして、おそらく昔御真影とかそういうものを守るという意味を持っておったのじゃないかと思います。日宿直をいたしまする一番大きな理由は、火災予防とか、盗難とか、また不慮の学校に対する災害、災難等ございますが、これらの問題につきましては、日宿直という問題とは多少観念が違う問題でございまして、たとえばこれを警備員を置くという場合でも、その村の状況によりましては、その町村の役場だとかほかの建物とあわせて学校も考えられると思いますが、学校だけにそれだけを置く必要もない場合もあろうかと思います。また不慮の問題については、校長との電話連絡等ということを考えれば、私は、日宿直をかりにやめましたということと、警備員を必ず必置しておかなければならぬということは、少し違いはしないか。この態様につきましては、もう少し研究させていただきたい。ただ、日宿直についでは、ぜひ解決をしたいと、こう考えておるのでございます。それのかわりに警備員を必ず置くという、職員として置くようにするかどうかということは、もう少し研究させていただきたいと思います。
  625. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それは研究を深めることはたいへんけっこうなことでありますけれども、おそらく警備員制度を必置するということになるというと、当然に予算を伴うということで足踏みしておると思うのですが、過去の経緯から見て、往々にして警備員がいないために失火して貴重な校舎を焼いてしまったという事例はあまりにも多いわけですね。そういうことをあわせ考えた場合、高くつくようで、実はあまり高い予算にはならないわけですね。こういう建物管理一切を警備員が担当することによって、これはもう先生はあすも清新な気持ちで活動できる。宿直といって、文字どおりただ寝るだけなら、何も校舎に先生を寝かせる必要はない。やはり睡眠不足になる程度に起きて、夜中にずっと起きっぱなしでなくしても、ときどき二時間おきぐらいに校舎を見回るということが、大きな学校は先ほど言ったようにわりあいに間隔をおいて回ってくるからいいけれども、小さな学校ではひんぱんに回ってくるわけです。それを繰り返しておって何の効果があるか。教師のほんとうの使命は、教育そのものに精魂を打ち込むことで、校舎を守ることじゃないわけです。そういう観点から言うと、あまりにも過酷ではないかということが当然言えるわけですね。それで、そのことと、先ほど伺いした国立学校の面ではほとんど警備員制度が整備されておるということについてはどうなんですか、実情は、そのこともあわせてお答えをいただきたい。
  626. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 国立学校では、警備要員でやっておるところもありますし、いわゆる地方でいえば吏員に相当する事務職員というものが責任者として残るというようなのと、いろいろでございます。で、大臣お答えいたしましたのは、宿日直問題は、いま実態調査をやっておりますから、その結果を見てぜひ解決するように努力をする。ただ、いま先生が、それが直ちに全面警備員必置というふうに御質問なさいましたから、それの宿日直の問題を解決する方策としてどういうものをとり得るかということについてなお検討し、それに基づいて、また財源措置等が必要ならばそのくふうに基づいてやるということでございまして、宿日直の問題の解決については積極的に検討するということを大臣はお答えになったわけでございます。ただ、すぐ直ちに警備員全面設置という方向になるかならぬか、その点は今後の研究課題だ、こういうことを大臣申されたわけであります。
  627. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間の関係で、一つ。今度二人ふやす国立教育研究所というのがありますね、これはいままではどういうふうなことをやってきたのですか。
  628. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 教育研究所にこのたび二名の増員がございますのは、この教育普及事業費におきまして、新たにアジア地域の教育指導者の研修事業を行なうために研修室を増設しようとするものでございます。このアジア地域の教育指導者の研修という事業は、ユネスコの唱道によりますアジア地域の教育計画事業の一環といたしまして特に日本に依頼があったのでございまして、ユネスコからもこの事業について参加者の旅費その他の経費負担がございますが、教育研究所は従来からやっておりました研究実績が評価されまして、ぜひ日本で引き受けてくれということで新たに設置したわけでございます。この研修は、ユネスコの事業の一環としてやると同時に、日本の教育研究所自身の仕事としても必要がある、こう考えてこのたび予算定員の増加をお願いしておる次第でございます。
  629. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうじゃなくて、国立教育研究所というのはいままでどういう仕事をやってきたかということを聞いておるわけですけれども、これはいいですよ、あとで。これは資料か何かいただけばいいので、これは前の中村文部大臣のころに、この教育研究所に対して、教科書検定の制度をもっと合理的にする方法はないかということで研究を命じたことがあるというふうに当時伝えられたのですがね。そういう事実があったのですか。あったとすれば、その後どういう経過をたどってきたのかということを聞きたいわけなんです。
  630. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 中村大臣がたしか教育研究所の創立記念に行かれたときのお話が新聞に報じられたのですが、これは研究所にその検定の権限を与えるということでなくて、各国の教科書制度、それから検定制度、そういうものを広く研究してもらって、それをわが国の教科書制度の改善のための資料にしたいということでございまして、やや当時の報道についてはニュアンスの違いがございます。
  631. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その後教科書検定の制度について各国の制度を研究したり何かして、それをいまの文部行政の中に取り入れていこうという動きが現実にあったんですか。
  632. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) この点は、制度問題でございますから、必ずしもその調査研究が直ちに施策に反映するという短期の問題でございませんから、将来の問題になるわけでございますが、文部省といたしましては、現在行なわれております検定制度というものをより合理的にするように、あるいは事務その他につきましての改善をはかるということで、基本的に研究をやっているところがございます。
  633. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現在行なわれている教科書検定制度等については、きょうは夜おそいし時間の関係があるから聞きませんが、この場合、特に家永訴訟の国側の答弁書をいまずっと見ているのですが、あまり膨大でわからないし、あの中で問題が、こういうふうなのは使い方がいかぬというので却下になっているのがあるのですね。きょうはその質問じゃありませんが、たとえば日本に基地があるというふうに書いてあると、それはいかぬといって直さしているわけですね。なるほど安保条約には基地という文字はないわけですね。正確に言えば、基地ということばは正確ではないわけだ。しかし、だれが考えても日本に基地があるわけだ。しかし、それを間違いだと言って訂正さしているところが一つあの中に出てくるのですが、それは非常に問題なんで、これは別の機会にいたします。  ところで、その教科書法案が廃案になりましたね。そのときに文部省としては、教科書法案通そうとして出したわけでしょう。これはあたりまえですわね。廃案になったということで、それではということで、それに対する対策を練ってきたわけでしょう。練らなければおかしいわね。実質的に教科書法案の中にあるものを取り入れていったわけでしょう。そういうわけでしょう。これはどうなんです。
  634. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 教科書法案は、教科書制度のあり方について、まあいわゆる法典の形で各種のものを入れたということでございます。で、文部省があれが廃案になりました後に行ないますのは、現在の文部省設置法範囲内におきまして、たとえば調査等の仕事が細密に行なわれるように調査官の配置等も行なったことでございますので、教科書法案の廃案によりまして、権限自体についての何も変更を加えたものじゃなくて、現行の文部大臣の権限をより明確にするための措置をとった、かように御了解になっていだたきたいと思います。
  635. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはそのとおりで、教科書法案が廃案になったのに、法案に書いてあることを別な形でやっていったというのでは、問題ですけれどもね。実質的には、教科書法案に盛られたことを、一般の人はなかなかわからないようなかっこうでじわりじわりとやってきている、それの実現をはかっていこうという方向に進んでいるのではないかとぼくは思うのですけれどもね。これは独立の大きな問題ですね。ですけれども、教科書調査官というのはつくったんでしょう。これは省令でつくったの、法律でつくったの、どうなっているの。
  636. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) これは、文部省に置かれます補助職員、大臣の権限を行使するための補助職員につきまして、専門的な職種につきましては省令で、たとえばカリキュラムを扱う者については教科調査官、あるいは教科書検定をするのは教科書調査官、そういうようなことを省令で規定しているわけであります。
  637. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは教科書法案が流れてすぐですか、だいぶ時間がたって……、ぼくは文部省のことをあまりよく知らぬから聞くのですが。
  638. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 昭和三十一年に、教科書調査官を創設したわけであります。
  639. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 教科書法案が出て流れたのはいつだっけ。
  640. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) たしか委員会法の全面改正とそれから教科書法案と同時の時期で、私どもも年月を正碓に記憶しておりません。同時の、同じ国会でございました。教育委員会法の改正とそれから教科書法案、たしか三十年か、その辺だろうと思います。
  641. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ですからね、教科書法案が流れて、そうしてすぐ教科書調査官というものをつくったんじゃないですか。結局実質的な効果を同じものにしようということで、そういう意図も多分に含まれて教科書調査官というのがつくられたのじゃないの。それが一つと、それから教科書調査官というのも、補助職員か何か知らぬけれども相当な大学の教授クラスの人ですか、これ。たくさん科目によってありますね。どういう人がおるかということと――これは資料でいいですよ――その人の経歴ですね。たとえば自然科学系統の人はぼくはいいですよ。それは自然科学系統だから、思想的に違いがあるのじゃないんで。それは社会科だとか――特に社会科ね、まあ国語とか、いろいろあるでしょう。その調査官の経歴ですよね、それとその人のあらわした本ですね、こいつはわれわれのほうへ資料として出してください。これは何かものすごい権限持っておるそうですね。ものすごい権限というと語弊があるけれども、実質的に文部省の中でえらい権限持っておるそうですね。だから、これあとでいいですから資料を出してください、いまこの場で言っても無理でしょうから。そのうちの一人はなかなか問題になっていると称せられているんだ、名前は言わぬけれども。なお、資料として出していただきたい。
  642. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 資料として提出いたします。
  643. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点は出していただいてから……。その一人の調査官というのは、なかなか問題の調査官だということになっているわけですね。何もそこでかれこれ私が言うんじゃなくて、それでその調査官は文部大臣の補助職員だと言ったけれども、教科書検定に関しては文部大臣も、初中局長ですか、これも全然関与できない仕組みになっているでしょう。これはどうなってんの。
  644. 斎藤正

    政府委員(斎藤正君) 権限としては、文部大臣が検定をするわけでございますから、文部大臣も、したがいまして私もあるわけでございますけれども、むしろ問題は、そういう教科書の検定のような専門的なことでございますから、むしろ運用といたしましては、この審議会のその審議というものをそのままわれわれが認めて、その答申どおりに措置するという意味で、われわれが――まあわれわれのような行政的な職員がいたずらに斧鉞を加えないで、審議会の答申そのままを大体認可をするという形においてやるための権限を行使しておるわけでありますが、責任としてはもちろん私どもにございます。
  645. 北村暢

    北村暢君 一つだけ。すでに出ているんですが、この学術審議会の権限の問題で、科学研究費の予算の組み方、流し方、要求はどういうふうな形でやるのか、そういう点について、従来の科学技術審議会のやっておったことがどういうふうにやられるのか、これをひとつ説明をしていただきたいんです。
  646. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 現状を最初に申し上げたいと思います。学術奨励審議会の中に科学研究費分科会というものがございまして、これが具体的に科学研究費の配分の仕事をいたしております。で、科学研究費は、御存じのように、総合研究、あるいは機関研究、奨励研究、あるいは特定のガンの特別研究というような、いろいろな項目が入っております。これにつきまして、専門分野別の委員をあげまして、この配分に当たるわけでございますが、その委員の選考につきましては、これは従来から慣行がございまして、学術会議に各部会がございますものですから、そこから委員の候補者を御推薦をいただきたく、その委員の中から文部大臣が委嘱をいたしまして、科学研究費分科会におきまして、予算ではたいへん大ざっぱな積算でございまして、本年度につきましてはたとえば四十二億を積算してございますけれども、そのうちガンのワクは三億なら三億、あとは科学研究費の分がどれだけで、機関研究費がそのうちどれだけだと、こういうワクだけでございますので、最初に、それぞれの総ワクの中でどのくらいの件数を本年はとろうかとか、同じ自然といっても、理工系あるいは生物系というようなものも、大体配分が最初の合同会議できまりまして、そうして学者から申請をとるという手続をいたしますので、一定の期間までに全部学者から申請が出てまいります。その申請書に基づきまして、これはかなり専門的な、精力的な審査に入るわけでござますが、その結果、分科会がまとめた結果が答申になると、私たちは、非常に専門的な仕事で、われわれのスタッフとしましてもあらゆる分野の専門職を持ち切れないものですから、科学研究費の配分につきましては、分科会の御答申を実質的な決定といたしまして、実質的にはそれをそのまま承認をいたしまして配分をいたすというのが実態でございます。
  647. 北村暢

    北村暢君 その申請が、まあ四十二億なら四十二億で申請したものが、毎年度の予算というものと見合わして、そして適当にこの四十二億くらいに近いものになって出てくるんですか。申請というものは相当膨大なものが出てくるんですか。研究費は非常に足りないということを言われているわけですね。したがって、この申請と査定とがどのようになっているのか、これをひとつ、実態がどうなっているのか、それから新しい学術審議会でも科学研究費の補助の配分は従来と同じように権限を持ってやるのかどうか、その点をひとつ。
  648. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 四十一年度の実情を申し上げたほうが早いと思いますので、研究課題の数で申しますと、申請が一万九千九百二十三件とかなり多いのでございます。このうち採択された研究課題が四千二百十一でございますので、合計、全部ならしますと、採択率というのは二一%ほどでございます。たいへん申請が多い、申請に応じ切れないのが率直に言って実態でございます。  それから今後の科学研究費の配分の方法でございますが、新しい学術審議会になりましても、科学研究費の分科会は先ほど申しました整理いたしましても残すつもりでございまして、その実際上の運営も従来の方法をとっていくつもりでおります。
  649. 北村暢

    北村暢君 もう一問でやめますが、いまそういうことで、最近の新聞を見ましても、その配分について、どうも湯川さんの研究をやっているところにゼロだとかいうふうに、ああいうふうにでかでかと出るわけですね。したがって、申請したものの二〇%ちょっとくらいしか応じられないということになれば、膨大な研究員が遊んでいるようなかっこうに私はなるのじゃないかというような感じがする。そのために、個人的な負担によって研究をやったり、とんでもないアメリカの陸軍から金をもらって研究したり、他の委託研究を受けたり、まあいろいろ不明朗な問題が私は出てきているのじゃないかと思う。したがって、この問題については、やはり審査するのも自主的に――頭から無理やりに切るということでなくて、何かもう少し文部省としても内容の実態というものを改善する必要があるのじゃないかと思うのですがね。どうもあまり権限を振り回すというと、研究の自由を束縛することにもなるわけなんですが、そういう点の改善策というものは何かあるような感じ、またほうっておけないような感じがするのですが、これは大臣ひとつ、これはもう予算委員会からずっと論議になってきておる問題でございますから、さらにまあいろいろな問題出てきておりますからね。ここでひとつ文部省の方針を伺って、私の質問を終わります。
  650. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 実は国立大学の研究費につきましては、一般に科学研究費だけが研究費のようにとられるのでございますけれども、本質的な大学の研究につきましては、いわゆる講座研究費というものがございまして、本年度でも合計これは二百三十四億くらいございます。これによって基本的な研究ができるように体制としてはいたしておるわけでございますが、この講座研究費を基本的にはできるだけ増額するというのを第一の項目に考えまして、これも逐次増額してまいりまして、分野によっては大体戦前の研究費の水準まではカバーできておる状況でございます。科学研究費というのは、元来特定研究でございまして、テーマごとに与えられる研究費でございますので、これは学術的に見て、新たに集中的に研究費を投ずる価値のあるもの、あるいは将来の方向として大いに助成する必要のあるものという観点から配分いたすものですから、当然採択件数も少なくなってくるわけでございます。必要な経費を全部ここでまかなえるという前提ではございませんので、この二〇%余という採択率が、たいへん少ないという御批判が多いわけでございますが、事の性質はそういう形になっております。もちろん、科学研究費はわれわれ日本の研究のためにぜひ必要な経費と考えておりまして、来年度予算要求におきましてもほんとうに重点的に取り上げておるのでございますけれども、残念ながらまだ十分でないということは、しばしば御指摘されるとおりでございます。  なお、科学研究費の配分方法につきまして、配分とその実効をあげることにつきましては、この新しい学術審議会のまさに一つの課題になろうかと思います。研究体制の問題と新しい研究の推進方法について、科学研究費の配分のしかたはいままでどおりでいいのだろうかとか、あるいは、もちろん研究の自主制は認めますけれども研究費に対して全く配分しっばなしでいいのだろうかという問題が起きておりまして、この科学研究費の個々の研究の採択のしかたは別といたしまして、全体のものの考え方については学術審議会でぜひ私たちも検討していただくつもりでおります。
  651. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) なお、私から付言さしていただきますが、実は先般から非常に問題になりました、アメリカの陸軍当局から学術研究費の援助を受けまして問題になったという点でございますが、その内容を調査いたしてみますと、大体このいま申します科学研究費としてテーマを出しまして、それに許可を得て科学技術研究費の配分を受けましたデータがほとんどそのまま、もしくはそれに類似のテーマで援助を受けている例が非常に多いのでございます。この例から見ますと、科学研究費として配分いたしました金額が十分でないものですから、なお、そういう方法がありながら、ひとつここで申請してまあ金を少しでもたくさんもらって研究しようという学者の意図に出た場合が多かったのでございます。そういう結論からいたしますと、やはり科学研究費のテーマによって配分いたしておりますのが非常に不十分であったという如実な例証になると存じますし、ああいう問題が将来起こってまいらないためにも、もちろんこのいま申しました講座研究費、基礎になるものも今後ふやしてまいらなければなりませんけれども、各学者がことにテーマを持ちまして力を入れて研究しようといたします研究課題につきましては、できるだけやはり、一万九千件という膨大な数になりますが、これを全部採択するというわけにいかないかもしれませんが、その中でやはり正当な採択をいたしまして、これは重要研究だというものにつきましてはもっとやはり潤沢な、潤沢といっても少なくともその研究は他の援助をかりなくてもできるような程度の科学研究費をこれはどうしても計上しなければいかぬ、今度のことはよい教訓と存じまして、この科学研究費の増額につきましては全力を注いで予算的措置を考慮して努力してまいりたい、こう決意をいたしておるわけであります。
  652. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 私、おそく参りましたから、あるいはもう前に論議されたかとも思いますが、若干文部大臣お尋ねしたいと思います。  さきに 私学助成法を四十三年度から考慮しているという文部大臣お話でございますが、これは、私学振興調査会のほうの答申が六月に出て、それを待っておやりになるというお話でございますが、大体腹案としてどういうことをお考えになっておるか、内容をお漏らしできるならばお話しいただきたい。
  653. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 私学振興調査会の答申が六月の末日に出てくる予定になっておりますが、これでは相当、私どもとしましては、抜本的な私学振興救済策と申しますか、答申が得られるものと期待をいたしておるわけでございます。でございますので、もしそれが出ました場合におきましては、私学助成につきましてあるいは法律が要るかもしれないということを私は新聞社の方々に一度話をしたことがございますが、それが私学助成法という法律を出すということでだいぶ誤り伝えられたと思います。その法案の内容を、そういう法律を出す必要があるかどうか、また出す場合におきましてはどういう法律を出すかということを、私学の調査会の答申の結果によりまして、これを助成するほうがきまりましてから、立法措置が要るかどうかを検討してまいりたい、こう考えておるのでございます。
  654. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 名目は私学振興助成法、あるいは具体的にそういう法案をお出しになるならないということは、いまのでよくわかりましたが、いずれにいたしましても、今日の私学経営が極度に財政的に悪化している。これに対してむろん答申も出ると思いますが、これは文部行政に対しては大臣は非常な大家ですから、どのようにお考えになっておるか。法案そのものをお出しになるならないは第二としまして、私学振興対策に対してどういうお考えをお持ちになっておるか、お聞きしたい。
  655. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 実は、私学振興調査会に基本的な対策をお願いし、諮問をいたしまして、いまや最終段階におきまして、調査会におきまして最後の結論をただいま得つつある状況でございます。私は、現段階におきましては、文部省といたしまして一つの方針とかいうような問題を投げかけまして私学振興調査会の結論影響を及ぼすということは避けるべきだと存じまして、ただいまは答申をひたすら待っておるという状況でございます。
  656. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これも新聞の報道ですから確実なことはわかりませんけれども大臣は大学の教職員の給与に補助をする、つまりベースアップ分を国が負担する、だだしそれは授業料抑制を条件にする、こういうお話が伝わっておりますが、これは事実であるかどうかお伺いしたい。
  657. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) いま文部省の基本的態度は、先ほど私が申し上げましたとおり、私どもの文部省であらかじめ方針をきめまして、調査会の結論影響を及ぼすというようなことのないようにできるだけ避けておるわけでございますが、この新聞記事等に載りましたのは、やはりこういったようないろいろの考え方がございますので、文部省の中でもそういうような考え方を申した者もいるかもしれません、そういうことで、値入的な意見がいかにも文部省の意見のように新聞に報道されたのじゃないかと思います。あくまでやはり、これは調査会のほうにもこの新聞記事についてはお断わりを申し上げまして、文部省では決して調査会の御決定をわれわれの考え方でいま影響を及ぼすというような意見を持っておるわけじゃございませんから、こういうことにかかわらず調査会は調査会として独自の立場結論を出していただくようにお願いをいたしておりますし、その点は調査会も了承をいただいておるのでございます。
  658. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そのようにおっしゃれば、これに対して私ども意見もありますけれども、自分の責任でそういうことを発表したのでないと、こういうお話であれば、論議の対象にならぬと思いますけれども、抜本的な私学助成に対して改善策をお考えになると、こういうことで諮問されたのだと、振興会に答申を求められたのだと思いますが、いずれにしましても、私学がわが国の教育界に占める比重というものはきわめて大きく、大学レベルでは約八割が私大に進学しておると、こういうふうに承っておりますが、今年度の大体予算の私学に対する貸し付け金の模様を見ますというと、一般施設費あるいは大学生の増員施設費ですか、これに百十億二千万余、それから百十八億ですか、これが償還期間が七年ないし十二年であったのを二十年に延長されたと、これは間違いございませんか。
  659. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) お答えいたします。  今年度――四十二年度の私立学校振興会が私立学校に融資をいたしますその内訳でございますが、これは全体で三百十億でございます。その内訳は非常にこまかく分かれておりまして、先ほど御指摘になりました学生の増員施設、これは大体、一応の計画でございますが百十億余り、それから理工系の学生の増募施設関係が三十四億、それから一般の、現在ございます大学等が老朽になってくると、これを建てかえなければいけないといったようなものを私ども一般施設費と呼んでおりますが、これが百十八億、まあそのほかございますが、そのようになっております。  それから、償還年限等の改善でございますが、これもいま申しましたような融資対象によりまして非常にこまかく年限等も違っております。それで、二、三の例を申しますと、一般施設費と先ほど申しましたが、これが、従来据え置き期間二年でございますが、それを含めまして償還年限が七年ないし十二年でございましたが、それが二十年になりました。それから、一番条件がよく改善になりましたのは、理工系の学生増募施設、これの償還年限が、これも据え置き期間を含めまして十七年でございましたが、これを二十五年というふうに改善する予定でございます。その他いろいろ年限が種類によって違いますので、以下省略いたします。
  660. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大体それでわかりましたが、償還利率の問題ですが、一般施設あるいは学生増員施設費の償還利率が、これは前年同様年六分五厘ですか、それから理工学系の増募施設費が年利率が五分五厘。これはどういうわけで、一般施設費は六分五厘、理工系の施設費は五分五厘と、こういう二様に利率に差別をつけたか、この根拠を伺いたい。
  661. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) これは、一応の根拠といたしましては、理工系学生の増募につきましては、特に従来から私立学校は文科系が多うございまして、理工系はきわめて少なうございます。しかしながら、国立大学、私立大学の学部学科のバランスと申しましょうか、そういう点につきまして、かねてから私立学校も理工系を大いに充実していったらよいではないか、ただ法文科系だけではなくて、理工系も私学がやるようにしたらという声もございましたし、またそれ以上に技術者養成といったような国家的な要請もございまして、特に一般の施設よりも私立学校で経費のかかる、また国家的に必要とする理工系の学生増募に対しての施設費は他のものよりも優遇しようというのがその根拠でございます。
  662. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それは少しおかしいですね。優遇するということはわかりますけれどもね。優遇するのだったら、私はもう少し、これは増員募集の予算が少ないと思う、三十四億では。そういうことは、これはむろん理工系の技術者養成と、そういう教育の振興をはかるということはわかりますけれども、それは私は大事なことだと思いますけれども、金利の関係とは、私はそんなことはあまり関係ないと思う。理工学のほうには安く貸す、それ以外には高くするというのは。そうじゃなくて、これはあなた方が大蔵省からやられたのじゃないですか。事実これは差別のないようにということで、あなた方は要求したのじゃないですか。
  663. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) これは、先ほど大臣がお答えになられました私学調査会におきましても、私どもこの四十二年度予算を作成しますのに間に合わせるといったような意味から、中間答申をいただきまして、その調査会の中間答申にも、現在振興会で私立学校に融資をいたしております利子なり償還年限は、いずれももう少し利率を下、げる、あるいは償還年限を延ばすといったようなことをやるべきであるという御答申をいただきましたが、まだそれは実現いたしておりません。ただ、従来からも、私どもといたしましては、できることであれば利子の低いものが好ましい、すべてが少なくとも五分五厘ぐらいでありたいというような念願は持っておりましたが、まあ大蔵省のほうといたしましても、いろいろ財政上の問題もございましょうし、それにこれは政府出資金以外に財投からの資金を相当仰いでおります。そういったような関係で、財投の利率が六分五厘でございますから、財投から六分五厘で借りて、それを私立学校へは、特に理工系については、理工増募については財投から借りた利子よりも安い五分五厘で貸しておる。しかし、その他のものは財投から借りた利子が六分五厘ですから、それをそのまま私立学校のほうへやるといったようなことで、御指摘のように、できることなら私どももう少し低利が好ましいわけでございますが、しかしいろんな諸般の関係からそれが無理とすれば、ともかく理工系については、私立大学は一般に文科系はつくり得るけれども、経費の関係等で理工系というものはなかなかっくりにくい、そういう実情、それから技術者養成という国家的要請、そういうようなことから、せめて全部ができないんなら理工系だけでもといったような従来のいきさつはございます。
  664. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 だから、あなたたちが努力が足りなくて、それは理工科系が大事ということはわかりますよ。わかりますけれども、文科系統のほうは六分五厘で、片方は五分五厘、しかも償還年限も二十年、片方は二十五年と、これ償還するほうの側に立っては、やはり私立大学、私学ですからね、学校は変わりませんからね。だから、その償還するほうの立場になれば、教育の振興ということに対しては、それはあなたもおっしゃるように、理工科系を、国家技術者の養成の立場から、それは大事だとおっしゃるかもしれないけれども、それはまあ私ども一応了解しますけれども、償還する学校側に立ったら同じことじゃないですか。差別をつけられたんじゃ、しかもこれは非常に予算も大きいですからね。貸し付けも大きいですからね。わずかな貸し付け金で、これが逆であれば、また理屈はわかるけれども、結局あなた方のおっしゃっていることは一応はわかりますけれどもね。一応はわかりますけれども、実際に即したこれはあなた方のお考えじゃないと私は思う。実際はあなた方は、困るから一緒にしてもらいたいと、こういうお考えなんだ。それをただ単に答弁のためにそういう答弁をされてると私は思うのですよ。納得できないんです。これは実際、例年の累積赤字の解消に各私学は青息吐息しているんですよ。その点どうお考えになるんですか、あなた方。私学の助成にならぬじゃないですか。
  665. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) これは同じ財投の関係でも、鬼木さん御存じのように、財投関係ではそのいろいろ貸し出しの対象によりまして利率は違って、財投だけでも違っておるのでございまして、私学の貸し付けの問題でも、大体から申しますと、六分五厘で財投から借りてまいりますから、六分五厘の利子をとるというのが通常でございますが、特にまあ理工科系だけは国家的要請もございますので、これを五分五厘にこの財投から借りた利子を下げて貸し付けるというのが普通でございます。ただ私どもは、この利率及びこの貸し付け期限で、今年は大蔵省と私ども直接折衝をいたしまして、いろいろやったんでございますが、今年は調査会の中間報告でございましたので、おそらくこの利率の問題につきましても、今度の最終段階の答申では、こういう利率及び貸し付け期限の問題につきましても、基本的な答申が得られるものと期待されておりますので、その答申が出ますれば、その問題もあわせて基本的に解決をしたいと考えておるのでございます。まあ本年は暫定的な中間報告でございましたから、この程度でやむを得ずがまんせざるを得なかったのでございますが、本答申が出ますれば、十分その点は改善をしてまいりたいと考えております。
  666. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 さすがに大臣の御答弁はりっぱだ。そうでなくてはならない。ただ、あなた方は理屈ばかり言って、実際に合わないような理屈を言ったって納得できませんよ。大臣のおっしゃるような今度本答申が出て、そういう点も加味して十分考えていくと、それが大学の抜本的助成になるのであって、そういうことでは助成にならないです。大臣のいまの御答弁で、私は了解します。  時間がありませんので、いろいろお聞きしたいことがありますけれども、ただ最後に申し上げたいことは、大臣は本答申が出てからとおっしゃっておりますが、大臣の腹案は十分お持ちであることは私わかっておりますけれども、でございますから、したがいまして、この本答申が出ましたならば、あくまで抜本的に、今日私学が非常に経営難におちいっているということをよくお考えの上に、私学の十分なひとつ私は助成方法をとっていただきたい。と同時に、これは杞憂かもしれませんけれども、来年ということをおっしゃっておりますので、剱木文部大臣がかりに万一更送されておかわりになるようなことがあっても、あときちっと、もうおれはかわったからそういうことは知らないなんということをおっしゃらないように、六月に答申が出るんですから、あとどなたがおかわりになっても、この私学助成に対しては万全の措置をとっていただくように、強くこの点を要望いたしておきます。
  667. 剱木亨弘

    国務大臣(剱木亨弘君) 私自身、私学振興と申しますか、私学対策は重要な私の課題の一つだと覚悟いたしておりますので、最善の努力をいたすつもりでございますが、たとえ更迭されましても、議員である限りは、最後までこの問題は努力してまいる決意をいたしております。
  668. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 まことにありがとうございました。じゃこれで終わります。
  669. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 他に御発言もないようでございますから、質疑は尽きたものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますから討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  文部省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  670. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 総員挙手と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  671. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後十時十九分散会      ―――――・―――――