○
国務大臣(
藤枝泉介君) ただいま
議題となりました
地方税法等の一部を改正する
法律案について、その提案の
理由と
内容の大要を御説明申し上げます。
地方税につきましては、最近の数次にわたる改正により、
地方財政の実情を考慮しつつ、負担の軽減につとめてまいったのでありますが、なお引き続き住民負担の合理化をはかっていく必要があると存じます。ただ、昭和四十二年度においては、
地方税、
地方交付税等の自然増収は見込まれますが、一方、国庫予算の増加に伴う
公共事業費の増大、社会保障の
充実、または
地方公務員の給与改定に伴う給与費の増加等による経費の増高も避けることができませんので、
地方財政については、なお健全化を促進する必要があるのであります。したがいまして、昭和四十二年度の
地方税制の改正にあたりましては、このような実情を考慮いたしまして、第一種臨時
地方特例交付金の交付にかえて、たばこ消費税の税率を引き上げることにより、
地方税源の
充実をはかりつつ、事業主控除及び事業専従者控除の引き上げにより、個人の住民税、個人の事業税を軽減する等、
地方税負担の合理化をはかるため所要の改正を行なうことといたしたのであります。
次に、以下順を追って
地方税制の改正の概要について御説明申し上げます。
第一は、道
府県民税及び市町村民税についてであります。まず、個人の道
府県民税及び市町村民税につきましては、中小事業者の負担の軽減をはかるため、専従者控除を二万円引き上げることとしました。また、障害者、未成年者、老年者または寡婦についての非課税の範囲を、年所得二十六万円までに拡大するほか、前年の合計所得金額が五万円をこえる配偶者がある場合の第一人目の扶養控除額も一万円引き上げることといたしております。
なお、昨年の所得税法の改正による給与所得控除の引き上げが、本年度以降、個人の住民税の課税標準の算定に反映することとなりますので、給与所得者にかかる個人の住民税につきましては、本年度約百四十億円の減税が行なわれることとなっております。
また、障害者、老年者、寡婦または勤労学生について現在行なっている税額控除を、所得税の改正に準じて所得控除に改めることといたしましたが、この改正は昭和四十三年一月一日から施行することといたしております。
次に、法人の道
府県民税及び市町村民税につきましては、法人の均等割りの税率を合理化するため、資本または出資の金額によって税率を区分することとし、資本または出資の金額が千万円をこえる法人及び
相互会社の標準税率を、道
府県民税にあっては千円、市町村民税にあっては四千円に、その他の法人等の標準税率を、道
府県民税にあっては六百円、市町村民税にあっては二千四百円にそれぞれ改めるとともに、これに伴い市町村民税の均等割りの制限税率についても、所要の
調整を行なうこととしました。また、租税特別措置法の改正により、法人税額の控除が拡大されますので、これによる減収を回避するため、法人税割りの課税標準である法人税額は、この法人税額の控除が行なわれる前の税額によることといたしております。
第二は、事業税についてであります。まず、個人の事業税につきましては、中小事業者の負担の軽減をはかるため、事業主控除及び専従者控除をそれぞれ二万円引き上げることとしました。また、農業協同組合連合会が行なっている社会保険診療については事業税を課さないものとしています。
第三は、不動産取得税についてであります。不動産取得税につきましては、産炭
地域振興事業団が建設する工場用建物の取得について、その敷地と同様に非課税とする等、合理化をはかるほか、開拓者の開拓農地等の取得についての非課税及び農業委員会のあっせんによる農地の交換分合によって取得する土地の課税標準の特例は、いずれも昭和四十二年三月末でその期限が満了しますが、その期限をさらに五年間延長することといたしました。
第四は、たばこ消費税についてであります。たばこ消費税につきましては、第一種臨時
地方特例交付金のたばこ消費税への移行に伴い、道
府県たばこ消費税の税率を百分の一〇・三に、市町村たばこ消費税の税率を百分の一八・一に引き上げることとしました。この税率の引き上げは、昭和四十二年三月以降に売り渡した製造たばこから適用することとしていますので、これに伴い、昭和四十二年四月分及び五月分のたばこ消費税につきましては、この改正後の税率によって算定した税額と現行の税率によって算定した税額との差額に相当する額を、それぞれ同年六月分及び七月分に合わせて申告納付することとしています。
第五は、固定資産税についてであります。固定資産税につきましては、
地方鉄道業者または軌道経営者が、都市計画
区域内において所有する地下道または跨線
道路橋、一定期間内に新設された自動列車停止装置及び重油にかかる水素化脱硫装置について課税標準の算定上特例を設けることにより、その負担を軽減することとするほか、大規模の償却資産にかかる固定資産税の市町村の課税限度額について
調整をはかるため、人口五万人以上の市町村についても、人口の増加に応じて課税定額を順次増額し、人口二十万人以上の市については二十五億円とするとともに、市町村の課税最低限度保障額及び課税定額を増額する場合の前年度の基準財政需要額に乗ずべき
財源保障率も引き上げることとしました。
第六は、電気ガス税についてであります。電気ガス税につきましては、ガスに対する電気ガス税の免税点を七百円に引き上げて、その軽減をはかることといたしました。また、三年間の非課税期間が満了するポリプロピレン等、四品目を非課税品目に加えるとともに、紙の製造の用に使用する電気に対して課する電気ガス税の税率は、当分の間、百分の五とすることとしています。
第七は、税制の簡素化についてであります。税制の簡素化につきましては、国税の簡素化とも対応して、延滞金が一日百円につき二銭の割合で計算される期間について合理化をはかるとともに、給与等の支払を受ける者が常時十人未満である事業所等にかかる個人の道
府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の納期等について簡素化をはかるほか、事業税または法人税割りの分割基準である従業者の数についても、原則として事業年度等の末日現在の従業者の数によることとする等、申告手続についても簡素化することといたしました。
以上のほか、軽油引取税の保全に必要な担保の提供を命じ、または特別徴収義務者の指定を取り消すことができる等、軽油引取税の徴収を合理化するとともに、所得税法の一部を改正する法律の施行に伴い、昭和四十二年六月一日前に支払われた退職手当等にかかる分離課税にかかる所得割りの額のうち過納となる額について還付の特例を設けるほか、所得税法の改正に伴う
関係規定の整備等、所要の規定の整備を行なっております。
以上、
地方税法等の改正につきまして、その概要を御説明申し上げましたが、これに伴う増減収額は、初年度であります昭和四十二年度におきましては、個人の住民税につきまして四十一億円、個人の事業税につきまして二十九億円、電気ガス税につきまして七億円、その他一億円の減収が見込まれますが、一方、法人の均等割りの税率の
調整により四億円、国税の改正に伴い十四億円の増収が見込まれますので、これらの増減収額を差し引きずると、初年度においては六十億円の減収となります。また、平年度におきましては、所得税における給与所得控除の引き上げに伴う個人の住民税の減収等により三百八十五億円の減収となるのであります。ただ、第一種臨時
地方特例交付金のたばこ消費税への移行に伴い、初年度、平年度とも二百六十五億円の増収が見込まれますので、これを加えると、初年度においては二百五億円の増収であり、平年度においては百二十億円の減収となります。
以上が
地方税法等の一部を改する
法律案の
提案理由及びその大要であります。何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。