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国務大臣(宮澤喜一君) このたびの関税一括引き下げ交渉のバランスシートがわが国にとってマイナスであるか
プラスであるかということにつきましては、私自身はかなり大きな
プラスであるというふうに
考えておるわけでございますから、
木村委員がマイナスになるのではないかと言われましたのは、私としては
幾らか意外に感ずるわけであります。しかし、いろいろ詳しく御承知の上でのお尋ねであることは疑いもありませんから、その点については特段のお尋ねがない限り、あまり詳しくは申し上げません。むしろ
木村委員のマイナスではないかと指摘せられるほうの問題について申し上げるほうがよろしいのじゃないかと思います。
で、まず小麦価格でございますが、一ドル七十三セントという
最低価格に合意したわけでございますけれ
ども、御承知のように、このところ実勢価格がかなり上がってきておりますので、この価格そのものは私は別に不合理な価格ではない。短期的に見る限り、また実勢価格が
現実に上がりっつございますので、これによって特に食管会計の負担がふえることは短期的にはないと、こう
考えております。
長期的にはどうかということになりますと、このたびの小麦輸出国の希望なり主張なりから判断をいたしますと、これは増産を背景にしていろいろな主張をし、いろいろなことを
考えておるわけでございますから、
長期的には相当の増産が行なわれるであろうというふうに私は予測をいたします。したがって、その結果、
長期的に見て価格が必ず上がると
考えなければならないかどうかには問題があろうと思います。
〔理事青柳秀夫君退席、
委員長着席〕
むしろ増産から来るところの価格の低下要因というものをかなり
考えていいのではないかと思います。これはいずれとも断定が困難でございますけれ
ども、
長期的には必ず上がるであろうと
考えるほどの理由はないのではないか、ただいまそう思っておるわけでございます。
それから、穀物協定との関連においてのわが国の援助の問題でありますが、わが国としては、御承知のように、この協定との
関係で食糧あるいは現金をもってする援助の分は受諾できない、わが国独自の立場において独自の方法においてこれを行なうというたてまえは、公に認められたわけでありまして、その際その援助の総額としては、各国の合意いたしましたところ、すなわちわが国のシニアは四百五十万トンの五%である。それだけの援助はわが国としても向こう三年間独自の立場で行なうということは同意をいたしました。そこで、五%といたしますと、二十二万五千トンになるわけでございますから、これを一ブッシェル一ドル七十三セントで換算いたしますと、千四百万ドル見当になります。邦貨にいたしまして五十億円をちょっとこえることになると思いますが、このたびの会議では、この援助分が従来の援助に新たに加わるネットの増加であるかどうかということについては、別段そうであるという合意はなされておらないわけでございます。それはわが国に限ったことではございませんで、たとえば小麦による援助が米国の場合四二%であるとか、あるいはEECが二三%であるとかという、そのこと自身がこれはネットの増加分であるというふうには合意されておりません。したがって、わが国のただいま申し上げました五十億円がらみのものも、従来のものに加えて新しいネットの増加であるという
約束はいたしておらないわけでございます。おそらく、しかし、
現実の問題といたしますと、わが国は対外援助について漸増していくという
目標も持っておりますし、かりにパーセンテージが増加いたしませんでも、
国民所得の増加が非常に大きゅうございますから、実額はどうしても増加していく。この五十億円程度のものはまるまるネット毎年増加していくであろうとは思いますけれ
ども、それはこの協定で義務づけられたというのではない、こういうように御理解願ってよろしいと思います。
そこで、こういうことがわが国にとってマイナスであるか、
プラスであるかということでございます。ことに後段で、将来は南北問題というものもあって、特恵関税の問題も出るであろうし、一次産品の価格の問題もあるであろうということを御指摘になりました。私はそのとおりであろうと思います。けれ
ども、それが世界平和に貢献するのであれば、やはり先進国になりつつあるわが国としては、これに対して応分の義務を果たしていくということは、ただ金の面で一応それだけの流出になってマイナスだというようなふうに割り切っていいものかどうか。私自身は広い、わが国の持っております国際社会の一員としての国際平和を希求する反面の義務として、決して負担に耐え得ないものであるとは
考えませんので、それをマイナス要因と
考えることは、私には私なりの違った意見がある、こういうふうに申し上げておくべきかと思います。