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政府委員(川井
英良君) 実はまだ正確な判決書ができておらないのでございまして、私
どものほうへも大阪の
地方検察庁からおおよその判決の骨組みだけをとりあえず報告をしてきておるような状況でございますが、それを見ますというと、先ほど問題になりました租
税法律主義のたてまえからいって、先ほどのような標準率表とか効率表というようなものは、これを公にすることによって脱税のおそれはあるけれ
ども、憲法八十四条の
法律主義のたてまえからいって秘密にしておくことは相当でないというようなこと、それから、国家公務員法百条でいいますところの職務上の秘密、職務上知り得た秘密、この秘密というのは実質的な秘密をいうのであって、ただ役人がとりあえずある文書について秘密の表示をしたというだけのことでは、この
法律が保護する秘密にはならないのであって、実質的に事柄自体が秘密でなければならない、こういうふうな大きな二つの前提のもとに本件の標準率表並びに効率表は、ここでいう秘密として
法律が保護するというふうに
考えることはできないのだというように理論づけまして、本件の起訴を無罪の判決をした、こういうふうな報告を受けておりますが、おそらく正式な判決書の理論もそういうふうな筋道をたどってくるのだろうと、こういうふうに
考えております。
そこで、私
どもの立場からの
考え方でございますが、この百条の秘密というのについて、従来いわゆる実質的な秘密だけをいうのであって、形式的な指定された秘密はここにいうところの秘密にならないんじゃないかというふうな
意見もあるわけでございますが、これにつきましては、御承知かと思いますけれ
ども、かつてラストボロフ事件というのがございまして、この事件の
関係者の裁判で東京高裁、それから最高裁まで行って確定した事件がございますが、この裁判の過程で、この百条の秘密は実質的な秘密だけに限るのかあるいはいわゆる形式的な指定秘も含むのかということにつきまして争いがございまして、これにつきましては、東京高裁の判決は、この立法趣旨その他から
考えまして、これは純然たる実質的な秘密だけをいうのではなくて、国家機関がその行政の推進上公表することが適当でないと、こういうふうに判断いたしまして、その事項を秘密の指定をしたというふうな場合に、いわゆる指定秘の場合におきましてもこの百条の秘密に含まれるのだと、こういうふうな見解を明らかにいたしまして、問題になりましたラストボロフ事件の
関係は税の
関係のものではございません、外交
関係の秘密文書でございますが、これにつきましては実質的にも秘密であるし、また指定された文書そのものによりましても秘密の指定があるというふうなことから
考えまして、有罪は免れないのだというふうな趣旨で高裁が判決し、また最高裁に行ってその判決が確定しているというふうな先例が
一つあるわけでございまして、学説はいろいろあるわけでございますが、私
どもの立場から、この百条の秘密につきましては、先ほどの判例を
一つの手がかりといたしまして、純粋の実質秘だけを含むんではないというふうな立場をとっておりますので、そういうふうな
考え方から申しますというと、今回の大阪地裁の判決は私
どもの従来の
考え方と食い違っておりますので、そういうふうな点におきましてもこのまま確定するわけにはいかないんじゃないかというふうなこと。
もう
一つ、くどいようでありますが、租
税法律主義の解釈が問題になると思いますが、
課税標準なんかについて、確かに法定主義をとるということはわかるのでありますけれ
ども、先ほど長官の御説明にもありましたように、効率表でありますとかあるいは標準率表とかいうふうなもの、私
どもしろうとでございまして十分な
研究ではございませんけれ
ども、一とおり
研究した範囲内におきましては、これは憲法が
法律をもって規定すべき事項だと、こういうふうにきめている事項ではありませんで、まことに徴税の行政を推進するために必要な事項であり、それがまた
国民の納税義務を履行させるための徴税という大きな行政事務を十分に円滑に履行するため、ひいては、さかさに申しますというと、要するに脱税を防止するというふうな目的からこれを公表することは適当でない、こういうふうな立場に立っているものと
考えるのでございまして、そういうふうな
考えから申しましても、この判決の八十四条についての解釈はややきびし過ぎるのではなかろうか。それから、もう
一つ、全く同じ事件でございまして、その後三十八年に横浜の地裁で、この効率表とそれから標準率表を公にしたやはり職員が起訴されておりまして、この事件は一審で有罪になりまして、上訴しないでそのまま確定している事件もございますので、全く同じようなことを同じように漏らしたということに対して、
一つは有罪が確定し、
一つは無罪になっておるというふうなことにもなっておりますので、判決を統一するというふうな目的からも、何度も上訴してくどいようでありますけれ
ども、検察官の立場といたしまして、もう一回控訴して判決を統一するということもこれもやむを得ないことかと、こう思いまするので、この判決に対しまして再び大阪検察庁が大阪高裁に控訴を提起したということは、私
ども中央におります法務
当局の立場といたしましても、やむを得ないことではなかったかと、かように
考えるものでございます。