○
政府委員(
塩崎潤君) 私よりも
大臣が包括的にお答えするのが最も適当かと存じますが、いまのような御質問で私が答えられる範囲においてお答えいたします。まず第一に、来年度の成長率は一三%と見ておりますが、これによりまして私
どもの税の面では来年度七千三百五十億円の自然増収が免ずると見ております。で、この自然増収についてはとかくの御
意見があるようでありますが、私
どもは去年の減税の平年度高を考慮いたしますと八千億の自然増収と見積られておりますので、現在のところ適正な見積りだと信じております。それに引きかえまして、先生のおっしゃることは、減税がその割りに少ないではないか、公債を八千億も出すのにかかわらず、減税が少ないではないか、こういうお話でありますが、そういった面は、今年度だけつかまえて見ますと、確かに七千三百五十億円の自然増収に対しまして、
租税特別措置法による増収、あるいは印紙
登録税によりますところの増収、これを差し引く前におきましては千百億円、差し引いた後は八百億円でございますので、一〇%から一四%くらいの減税では少ないという御批判のあるのもごもっともでございます。しかし、この点はどうも私
どもは過去の自然増収と減税との
関係を見てみますと、
昭和三十年くらいまでは、たしかに減税というのが最も大きな政策でございました。と申しますのは、やはり
所得税の負担が非常に高かった。
所得税の合理化は最も魅力ある政策だと思うのでございます。したがいまして、その間の自然増収のうちの減税に割り当てられた割合は六三・八%でございます。自然増収が生じますと六割三分八厘、まあ六割四分は減税に向けられたわけでございますが、三十一年になりまして、ようやく戦後を脱してまいりますと、やはり歳出の増加の要請が非常に強まってきた、こういう傾向が
数字的に見られるわけでございます。したがいまして、三十一年から四十年までの自然増収のうち減税にどの
程度向けられたかを見てみますと、一六・一%、ここにまあ一時期を画した割合になっております。こんなふうに歳出の増加の要請が非常に強くなってきたと思うのでございます。一方、
所得税の
税金が、
税負担というものが合理化された。相当合理化されてきた。御批判はございますが、相当合理化されてきて自然増収の相当部分は歳出のほうに回わすことになってきた。そのように見られるわけでございます。しかしそこで、四十一年になりますと、自然増収が非常に減ってまいりまして、当初予算では千百九十億円しかない。それにもかかわらず
国税におきましては二千九十億円減税したわけでございます。
つまり自然増収に対しましては一七五%ばかりの減税をした、こういうことになります。昨年はそれだけの減税ができましたのは、やはり公債発行で、それまで公共事業に回わされておりました
税金分を引き抜きまして減税に回わしたと見られるわけでございます。しかし、公債発行による減税は一同限りの財源しかききませんので、その
程度はひとつやはり自然増収の中で減税をしなきゃならぬ。そうなりますと、やはり減税の規模が制約されざるを得ないというのが第一でございます。
第二には、景気過熱の折りからでございますので、公債発行の削減のほうに回わさなきゃいけない、こんなようなことで、一〇・九%ばかりの減
税率になっております。もちろんネットでございまして、
租税特別措置及び印紙税を差し引いた後でございます。これに三百億ばかり足しますと、四%くらい上がってまいりまして一四%くらいになりますが、この二年間を通算してみますと、結局三三・九%から三七%くらい減税したことになる、こういうふうに見られます。
つまり少ない、少ないといわれる去年の減税とを通算してみますと、四十一年、四十二年は一時期でございます。三十一年から四十年の二八・一%に余る減税をしておる、こういうところでひとつ御理解を願いたい。しかし私
どもは、やはり
所得税の減税はおっしゃるように早く百万円まで持っていきたい、かように
考えておるのでございます。
なお、百万円くらいのところはどうかというお話がございます。これもお答え申し上げなきゃならぬと思います。二つばかり御質問ございましたが、まず第一に、百万円ぐらいのところでどの
程度減税になるかというお話でございます。これもいずれ
所得税の
改正法律案の審査をやっていただくわけでございますが、現在の
所得税負担は、夫婦・子三人の百万円のところでは年額三万四千二百十五円でございまして、これが今度の
改正案では、初年度は二万五千百十円になりまして、
軽減額といたしましては九千百五円になります。平年分になりますと、二万二千八百十円と下がりまして、
軽減額が一万一千四百五円となります。よく清酒一級一本ぐらいの減税じゃないかと言われるわけでございますが、それは月に直してのお話のようでございます。七百五十円ばかりの清酒一級をもとといたしまして計算いたしますと、四十二年度の初年度におきましては、月額で七百五十九円軽くなるわけでございます。しかし、このたびの
所得税が月額でどの
程度の
税金となっておるかを見ますと、清酒一級で評価いたしますと、三・八本でございます。だから三・八本
税金を納めていただいておりますが、そのうちの一本だけひとつ
政府は遠慮する。これは平年分になりますと、九百五十円軽くなりまして、一・三本だけ
政府が遠慮する、そういうような
関係になります。
それからもう
一つの点は、消費者物価の上昇がどういうふうに影響するか。これもいつも
参議院の本委員会におきまして御
議論になるところでございます。
所得税の
税負担と消費者物価の上昇とをどういうふうに
考えるか、なかなかむずかしい問題であり、いろいろの
意見があるわけでございますが、私
どもは、消費者物価の上昇は、ここで御
指摘のように、
課税最低限と密接な関連がございます。生計費に影響をする、こういうふうに見られます。そこで、
課税最低限について、これを影響すると見ますと、四・五%引き上がりますと、約三百億円ばかりの減税をするならば、そこの消費者物価の上昇は相殺される、こういうふうになるわけでございます。ところが、減税のほうは、御
案内のように非常に大幅にいたしておりまして、独身者につきましては、平年分では二四%、初年度は二一%というような減税をいたしております。夫婦・子三人のところで、四十二年度、初年度では二八%ばかりの引き上げになっておりますので、四・五%の上昇は軽く吸収できるし、その上千百億円ばかりの減税をしておりますから、約八百億円ばかりの税額が、言うならば実質的な減税となっているということが言えようかと思います。