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政府委員(
中川理一郎君) ただいま
阿部先生御指摘のとおり、いま手元に私が持っております数字によりましても、
昭和三十一年のときの石
炭鉱業における
保安での見方でございますが、
鉱山労働者数三十三万三千人となっておりまして、四十一
年度のところでは十五万九千——もっと減っておると思いますが、おっしゃるとおり、ずいぶん
労働者数は減っておるわけでございます。それに対しまして
稼働延べ百万人当たりの
災害率をとりますと、三十一年から三十五年ぐらいまでは大体横ばい、微増程度でございましたものが、その
あとかなり高い水準まで上がりまして、その後横ばいになっている。御指摘のとおり、
稼働延べ百万人当たり
罹災率をとりますと、たとえば死亡者の絶対値は減っておるというようなこととは
関係なく、分母と分子の
関係で申しますと、あまりりっぱな
成績ではないというよりは、多少ではございますけれ
ども、悪い
傾向が出てきておるということは御指摘のとおりでございます。それに比べまして、私
どもの
保安確保に当たっております
監督官を中心にしました
保安の職員というものは思うように増員はできませんけれ
ども、微増しておることも御指摘のとおりでございます。そういうことでございますので、もし私
どもの
関係者のうちに、先ほど
大矢先生もおっしゃいましたような、いろいろな
意味でのマンネリズムが起こっておるというようなことがございましては、御指摘のとおり、たいへん申しわけのないことでございます。できるだけ絶えず
気持ちを新しくいたしまして、絶えず
気持ちを引き締めて
監督指導に当たらせておるつもりではございます。
それと、先ほどおっしゃいましたような
状況でございますので、
監督、検査等の頻度は確かに昔よりは足しげく
鉱山に行っておるような
状況に相なっております。にもかかわらず、いま
阿部先生おっしゃいましたように、必ずしも
成績がよくならない。どの辺に一体問題があるのだろうかということを私
どもしょっちゅう部内で
議論をしておるのでございます。あまり過度の
監督をやりますと、つまり回数だけが多いということになりますと、山側の労使ともに、大きい違反があれば
監督官が直してくれるというような、変な
意味での無責任さが出てきはしないだろうか、そういう
意味では頻度をふやすことだけが能事なのかどうかというようなことを最近私
どもはたいへん
考えさせられておるわけでございます。そのために数年来から自主
保安というようなことで、まず
鉱山の労使が
保安問題を真剣に、一致した目標として努力をしてもらい、その上に私
どもの国の
監督指導が加わっていったならば、もっといい
成績になるのじゃなかろうかというような
議論をいたしておる
状況でございます。
ただ、多少弁解がましく聞こえますと、これはかえって申し上げないほうがよろしいのでございますけれ
ども、御
承知のような
自然条件との戦いでございますので、
採掘個所も漸次深部に移行するとか、先ほどの
雄別のように、上の本層を取った下の層を
採掘しているというようなむずかしい
条件がだんだん出てきておるわけでございます。またここ一、両年の
状況で申しますと、
ガス突出というような技術的にまだ予知と予防についていろいろと問題のある
災害も起こっておるわけでございます。ことしに入りまして私
ども一番頭を痛めましたのは、人災にはなっていないのでございますけれ
ども、一たん
状況が変わると非常に大きな
事故になりかねない性格の自然発火とか、
ガス突出というようなものが起こっております。技術的にもまだ解明しなければならぬものがずいぶんあるという
感じがいたしておりまして、技術面でも力を入れておるわけでございますが、それよりもやはり基本的に、
監督官をはじめとした私
どもの
監督指導の衝に当たる者、
鉱山でお働きになる
方々全部をくるめまして、何がしかの
意味での緊張感とか真剣さとかいうようなものが薄まってきておるというようなことがあっては、これは基本的に技術が幾ら進みましても直らないのじゃなかろうかというような
感じがいたします。そういうような
意味合いにおきまして、私
どもは
監督のあり方というようなものについてもなお
考えなきゃならぬものが
相当あるという
感じでおります。
それからさっき
阿部先生は
監督官の数についておっしゃいましたが、私
どもかえりみまして数だけではやはり事足りるのじゃなくして、ほんとうに
監督指導をする能力があるかどうか、
監督官の研修問題といいますか、教育問題をもう少しまじめに取り組んでみる必要があるのじゃなかろうか、最近さようなことをいろいろと
考えさせられておるわけでございます。御質問に直接
お答えしたことになったかどうか、はなはだ心苦しいのでございますが、私
どもとしてはなお
先生方の御指導も得まして、できるだけこういう点、ああいう点というふうに御指摘を受けながら勉強を進めて、
保安確保の実があがるように努力いたしたいと思っておるわけでございます。