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参考人(
遠藤一三君) 炭職協の
遠藤でございます。前の四人の方々がるる述べられましたのでございますが、せっかくの
機会でございますので、多少重複する面もあろうかと思いますが、二、三の問題点につきまして述べさせていただきたいと思います。
まず最初に、今度の
石炭新
政策をわれわれはじめ一般
組合員がどう受けとめておるかということでございます。
抜本策と言われておりました
答申、そしてそれに基づいた新
政策、そしてこれに基づく初
年度の
予算だけに、私
どもとしましても諸
先生方あるいは
政府当局にもいろいろと
お願いをし、また期待もしていたのでございます。しかしながら、端的なあらわれ方としまして、今次
賃金交渉で見られるごとく、
政府首脳の方々にいろいろ御
努力をなさっていただいたにもかかわらず、他産業では一二%から
一三%と上がっておるのに対しまして全く遊離しました七%で押え、管理
炭鉱におきましては三%ということでありましたのですが、このことは
予算的には五百二十一億という膨大な
予算でございますけれ
ども、その内容につきまして、
施策が
ほんとうに
抜本策にふさわしいものかどうかということになりますと、この点私
ども幹部はもちろんでございますが、一般
組合員も抜本的なものではないというふうに非常に失望しているというのが
実態でございます。いな、これまでの激しい
合理化、すなわち十年前と比べますと
炭鉱の
労働者数におきましては、
昭和三十二年のときには二十九万八千名、それから
炭鉱数におきましては八百二十、
能率は一四・六トン、出炭は五千三百万程度と、こういう
規模だったわけでございますけれ
ども、現在では人員は九万六千名、三分の一でございまして、
炭鉱数にしては二百以下ということで四分の一、それから出炭は横すべりの大体五千三十万トン、それから
能率にしましては四三・八トン、これはまさに三倍ということでございまして、
答申を出されました
政策メンバーの諸
先生方も同情するほどの、過酷なまでの
合理化の体験を経てきた
人たちに対する
抜本策というものはこういうものなのかということを思いますと、失望というよりかは、むしろ憤りを感ずるというのが私
どもの真意でございます。
このことは、五百二十一億という多額な
予算とは言いますが、
企業収支に
関係するものにつきましては約二百億、それから当面の五千万トン確保を前提としてのビルド
対策費が百二十数億と、こういうふうに少ないわけでございまして、これらの
施策をもってしても、なおかつ
トン当たり二百円程度の赤字だといわれておりますが、これは
企業の背景が根底に横たわっているからでありましょう。さらにまた、今後の展望を見まするに、物価それから運賃、電力料金、それから異常な
貯炭でございますから、
貯炭の維持経費の増大、それから
賃金など、コスト要因は上昇の一途をたどることは明らかでございます。反面、炭価は据え置き、むしろ低下しつつあるのではないか。さらにはまた今後の
生産能率等をいろいろ
考えた場合、
企業のみの
努力ではなかなかこの
コストアップを吸収し得る
状態にはないということもまた明らかではないかと思う次第でございます。したがって、
先ほどから労働側の
代表からいろいろ言われておりますが、
企業再建の原動力でありますところの
労働力の確保、それからさらには
生産意欲の高揚をはかるためにも、社会性に順応した
賃金であること、さらには
石炭産業のビルド
対策に重点を置いた真の
抜本策にふさわしい諸
対策を講じていただきたい、こういうふうに心から
お願いする次第でございます。なお、これまでの
対策が常に時期おくれという感もいたしますので、補正もしくは明
年度の
予算で思い切った
抜本策を講じていただきたいと
お願いする次第であります。
次に
需要の確保についてでございますが、鉄鋼の好況からして
原料炭につきましては当面問題はないようでございますけれ
ども、問題は
一般炭でございます。
一般炭の大口
需要先である九電力につきましては二千百三十万トン、それから電力計としましては二千五百四十四万トンの
需要計画で昨年よりかは約二百万トン程度の増が見込まれておるわけでございますが、反面、いわゆる
政策需要以外の
一般炭の
需要は
答申時の見通しよりも百六十五万トンも減退をする見通しでございます。ちなみに四十一年と四十二年の二年間でこの
一般炭の減退が五百六万トンにも達しているということは、私
どもは重大な問題として取り上げねばならない、こういうふうに
考えております。
その内訳を見ますと食料品あるいは繊維、紙、パルプ
関係が百二十五万トン、それから化学重工業が百十二万トンで、この二年間で約二百四十万トンのものが減退をいたしているということでございますし、今後、重油ボイラー
規制法の失効等の
関係から、こういう傾向はなお拍車をかけるのではないかというふうに予想されますし、また
一般炭のうちの暖厨房炭につきましては四十
年度までには幾らか増す傾向であったわけでございますけれ
ども、重油の進出によりましてこれも年間三十万トンの減退をしてきた。四十一年、四十二年では三十万トンの減退、さらに今後もこの減少傾向が続くことが予想されます。結局四十五
年度時点では
答申よりも少なくとも二百万トン程度減退の方向で狂うのではないか、こういうふうに
考えられますので、緊急な
対策が必要であろうというふうに判断いたします。
一方、
貯炭のほうでございますけれ
ども、
先ほど麻生
会長さんのほうからるるお話がございましたけれ
ども、ことしの三月で千三百十五万トン、それから明年の三月ではおそらく千四百万トンに達するでありましょう。ひいてはこのまま推移するならば、四十五年には千五百万トンとなることも予想されますので、この面は
資金繰りあるいは
企業収支に重大な影響を与えることは明らかであります。したがって、このようなことは不十分とはいえ、せっかくのビルド
対策を無にすることでもありますし、また
生産意欲の減退にも波及する問題でもありますので、そのうち特に
貯炭の特定
会社への片寄りは
政策の破綻をもたらすものでございますから、ひとつ
貯炭対策というものは最重点項目として御検討を
お願いしたい、こういうふうに
考える次第でございます。
対策としましては、一応一般産業への
需要拡大というものはなかなかむずかしいわけでございますから、勢い
政策需要の拡大ということにならざるを得ないわけでございまして、昨年国会で御決議いただきました電発火力の三基増設を早期に御決定願いまして、そうして着工に移していただきたい、こういうのが
お願いでございます。また一般産業につきましても、
電力用炭と同じような形のもので奨励金制度というものも御検討をひとつ
お願いしたい、こういうふうに
考えるわけでございます。
それからこれは
政府に対する
お願いでございますけれ
ども、
業界の
努力としましては暖房用炭の販路の拡大、こういうことをひとつ
お願いできぬものだろうか。一つには燃焼器具の改良を推進する。石油のほうではポット式という新しいストーブがどんどんできておるわけでございますから、
石炭のほうでも機器の改良を行なって、そうしてPRをし、アフターケアもするという態勢も必要ではないかと思います。それから、おもに北海道
関係でございますけれ
ども、今度は関東、北陸、東北方面までひとつ新規
需要開拓を行なうための調査なり、あるいはそういう班をつくっていただいて、そうして積極的に暖房用炭の確保につとめるべきではないかと、こういうふうに思います。あわせてこれらに対する行政指導なりあるいは
資金的な
援助なりも
お願いいたしたい、こういうふうに
考える次第でございます。
次に
貯炭でございますけれ
ども、何といっても、いま急にこの
貯炭を解消するという見込みはないわけでございますので、こういう
貯炭が
資金繰りあるいは
企業収支に重大な影響を与えますので、ひとつ無利子の
貯炭融資なり、あるいは安定供給というたてまえから三百万トンないし四百万トン前後のプール
貯炭ということもひとつ
考えてはどうかというふうに
考えております。
次に
保安対策でございますけれ
ども、三池の大
災害あるいは山野、一昨年ですか起きたああいう続発した大
災害はこのごろ起きませんので、非常にこの面は喜ばしいことでございます。しかしながら、頻発
災害による死亡者なり重軽症者は
あとを断たないわけでございます。昨年の実績でございますけれ
ども、死亡者は何と四百三十六名ということでございますから、二日に三人は
殉職されておる、こういう
状態でございまして、重軽症者は昨年の統計によりますと約四万五千人、一稼働日当たり百五十名がけがをしておる、こういう
実態でございます。頻発
災害に対します
対策は、いろいろ
保安局を中心にして検討しておるわけでございますけれ
ども、なかなかこれだというきめ手はございません。しかしながら、その背景としまして、やはり一つには貧困した
石炭産業の暗雲ムードというものがただよっている限りはなかなか明るい職場なりそういうものはできないわけでございますから、こういう精神面のものを払拭する意味においても、
先ほどお願いしましたような収支の
改善なり
企業の
改善というものをひとつやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
それから
災害につながる問題としまして、もちろん
賃金の問題もございますけれ
ども、
基本的な技術の面が欠けておる面も非常に
災害の原因として私
ども見受けるわけでございます。それからモラルの欠けているところも確かにございます。したがって、これらについては何といっても徹底した
保安教育を通して
改善をしなければなかなか直らないのじゃないかというふうに
考えております。幸い
保安局等の御
努力によりまして、ことしは九州、北海道に半分ずつ、来年は常磐にもということで
保安センターの設置が一応決定を見ているわけでございますけれ
ども、どうかその
保安センターを設置しても、今後の運営につきまして、なかなか
企業からは人は出せない、そういう面が危惧されますので、そういう
運用の面についても
当局あたり、あるいは諸
先生方の側面的な御
援助もひとつ
お願いしたいと思います。
それからもう一つ、
災害の原因になっておりますのは、やはり労働時間の問題、もちろん年齢構成の問題もございますけれ
ども、労働時間の問題も取り上げなければならぬじゃないか、常時
生産体制としましては二時間残業、いわゆる一日当たり十時間労働、いな十二時間労働をやっているところもございますものですから、
炭鉱労働者の
平均年齢が四十歳というふうに言われておりますので、やはりこの面からもひとつ
保安対策にメスを入れまして、十時間あるいは十二時間働かなければやっていけない山の
実態でございますから、こういうことを
政策の抜本的な素材として取り上げてもらって
改善をしていただきたいと思います。
次に
経理規制の問題でございますけれ
ども、国家の
資金が非常に
企業にいくわけでございますから、当然
経理規制というのは厳重であるというふうに
考えます。ここで、私
どもは職員でございますから、何とか
石炭産業というのはこれより飛躍的な発展はないわけでございますから、横ばいという形でございますから、他の仕事なり事業を起こして、そして
企業を繁栄させる、こういうことでいかなければならないと思います。したがって、いままでの、いわゆる傍系の
会社をつくるとかなんとかいっても、非常にちゃちな事業でございますので、どうかひとつがっちりした大
規模な事業をつくっていただきまして、これからもいろいろ流通機構の問題とかで
合理化が推進されるでしょう。その人員を引き取るためにも。そして共存共栄のためにも、ひとつ寛大な
措置あるいは特別な
措置を講じていただきたいと思います。
以上、簡単に申し上げましたけれ
ども、何せいま一番私
どもとしましては、
先ほど申し上げましたように、失望という感度が非常に強いわけでございますから、ひとつ今後当面の目標でございます五千万トン、さらには四十五年ごろには五千二百万トン、将来的には五千五百万トンという
石炭の位置づけをなされまして、そしてこれは国の恩恵的なものではなくて、国の要請として受けとめられるような国の姿勢、こういうことが
確立されるならば、私
どもも
炭鉱マンとしまして誇りを持って、そして将来に明るい希望を持って働けるもんだと、こういうふうに
考えております。簡単でございますが、
意見にかえさせていただきます。