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政府委員(
中川理一郎君) ただいま藤田先生おっしゃいましたとおり、三十八年の三池災害以降におきまして数次の爆発事故がございまして、多数の
方々がたいへん不幸な結果に相なっておることは、私
どもとしてもまことに遺憾にたえないところでございます。おっしゃいますように、理論的に申しますと、炭じんなりガスなりがあって、それに火源になるものがありまして結びついた場合に炭じん爆発なりガス爆発なりということが起こるわけでございますけれ
ども、この二つの結びつきが起こらないようにするということを
努力いたしますならば、理論的には絶滅し得るものであるわけでございます。ただ、
石炭鉱山におきましては、炭じんなりメタンガスなりというものは不可避的に存在をしております。さらに相当複雑な自然的、人的災害要件が加わりまして重なりまして、各鉱山におきまして労使双方並びに国として私
どもが監督
指導の強化をつとめてまいったわけでございますけれ
ども、なおお説のとおり、事故がその後もあったわけでございます。
お尋ねの点は、三池災害以降、
政府はどういうことをやったかということでございますので、この点を中心にして
お答えを申し上げたいと思います。
労働省からも、この災害以降、数次にわたりまして私
ども勧告を受けております。それに対しましてとりました
措置は
労働大臣のほうに御連絡いたしておるわけでございますが、三池災害以降とりました主要な私
どもの
措置につきまして御説明をいたしたいと思います。
第一点は、法規面での改正でございます。保安法規面では、三池災害以降、保安統轄者の
制度、それから保安監督員の補佐員
制度の創設という改正を行ないまして、保安管理機構の整備をいたしたわけでございます。御
承知のように、監督員補佐員は、うち一名は必ず
労働者の代表を選ばなければならないということに相なっておるわけでございます。さらに、炭じんに関する規定は、この以前におきましては、特に注意すべき炭鉱だけを対象にしてやっておりましたのでございますが、
石炭鉱種の鉱種別
制度というものを廃止いたしまして、炭じんの爆発防止のための規制強化は全鉱山についてやるということを主たる内容とする整備を行なってまいったわけでございます。
第二点は、私
どもの監督体制についての改善でございます。これはその後監督官の増員をいたしますとか、特に九州には保安監督局に
指導課を新設するというようなことで、組織上の強化もいたしますと同時に、巡回検査等の監督の頻度を高めますと同時に、従来やっておりませんでした総合検査でございますとか、ある個所を
指摘いたしましたあと、十分に直っておるかどうかというような追跡
調査をやるというようなくふうをこらしまして監督
指導体制の強化につとめておるわけでございます。
第三点は、企業側が保安施設を完全に完備してくれますために、いまの
石炭産業ではなお資力的に不十分な点もございますので、国としてこれを助成するということを
努力してまいったわけでございます。この助成面について申しますと、今年度で申しますと、工事
ベースで約三十二億円の保安融資というものを、これは融資としては半額でございますが、
石炭鉱業合理化事業団を通じまして、保安に直接貢献する施設の融資をいたしております。なお、今年度からは坑道掘進を従来の融資
ベースから補助金
ベースにかえまして、二分の一の補助金を交付することにいたしております。これは先ほどの爆発等について申しますと、一番基本的に必要な入排気の通気
関係の改善等には格段の
役割りを果たすものと
考えております。また、一方、この災害以降に真剣になりまして
関係者が開発いたしましたガス自動警報機等の、
石炭鉱山における保安施設の中身になります保安機器開発を目的といたしまして、今後機器の開発に補助金を交付することといたしております。
第四点は、技術面についての改善でございます。先ほど申しましたとおり、技術面での進歩は保安に関しましてもずい
ぶん変わってきておるのでございますが、さらにガス炭じん爆発防止に関する保安技術を開発普及するということで、たとえば従来の通気によるガス対策に加えまして、先進ボーリング等をやりますことによりまして濃いガスを直接パイプによって外へ出してしまうというようなガス抜きの技術開発、これはその後実施をされて相当に成功をいたしておるわけでございますが、そういうことでございますとか、従来人間の手によりまして先ほどお話しのございましたガスの濃度を必要なときに測定しておくというのがこの災害以前の
状態であったわけでございます。これはそうひんぱんにやらせるということをいたしましても、時々刻々とガスの
状態は変わりつつあるわけでございますので、固定的な自動測定装置がそこにあって、人の手によるエラーでなくて、機械がきちっとはかってくれる、そうしてはかったならば自動的に警報が通じ、かつ、一定の危険度を越えますと自動的に電源を遮断して着火原因をなくするような機器の開発をやってまいりました。二、三トライアルをいたしまして、湿度その他の
関係でうまくいかない
状態もあったのでございますが、四十一年ごろからはほぼ満足すべきものができ上がりまして、各鉱山にこれの設置をいま
指導し、相当
程度普及をいたしておるわけでございます。なお、また、この際に問題になりました一酸化炭素の自己救命器につきましては、各鉱山のある時点におきましての最高数の
作業員の数、これに見合う自己救命器の設置というものを強制してまいったわけでございます。なお、通産省自身といたしましても、これらのいろいろな技術開発に各種
委員会等を使いましてやっておりますほかに、三池のあと炭じん爆発というもののたいへんなおそろしさということからいたしまして、この予防試験のための試験炭鉱というのを、九州に二億数千万円の国費を投入いたしまして、そこで炭じん爆発の防止、これについての技術開発を進めてまいったわけでございますが、これは主としてどんな
状態で炭じんが爆発しやすいか、それから、爆発したときにこれが伝播することを防止するにはどういう
措置がいいかというようなことで、従来の岩粉だなによる対策を水だなによる
措置対策に切りかえたほうがより確実であるとか、あるいは自動水膜の技術を開発するとかいうようなことでやってまいったわけでございます。
以上申し上げましたように、防止面、監督体制面、助成面、抜術面、私
どもといたしましては、
考え得ることについてのすべてにつきまして、一応鉱山保安協議会の学識
経験者、労使代表といった
方々の御
意見も十分に尊重いたしまして最高の
努力をしておるわけでございますが、申すまでもないことでございますが、鉱山における保安の確保をはかるためには、私
ども人命尊重の基本理念に立ちまして、経営者、
労働者相携えて保安法規を完全に順守するとともに、徹底した自主保安体制を確立して予防保安につとめることが絶対に必要であると
考えております。そのつもりで
努力はいたしておるわけでございますが、残念ながら、いろいろな点で進歩をいたしましても、御
承知のように、また、自然
条件は刻々と悪くなって、深部に入ってまいりますし、採掘しやすい所を先に掘っておりますので、残った
条件の悪い
場所に入っていくというようなことから、必ずしも良好な成績をいまおさめておりません。この点はまことに残念でございますが、今後とも
努力をいたすつもりでございます。