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1967-07-06 第55回国会 参議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月六日(木曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————    委員異動  七月五日     辞任         補欠選任      丸茂 重貞君     植木 光教君  七月六日     辞任         補欠選任      館  哲二君     丸茂 重貞君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本伊三郎君     理 事                 植木 光教君                 土屋 義彦君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君     委 員                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 丸茂 重貞君                 山下 春江君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 柳岡 秋夫君    国務大臣        労 働 大 臣  早川  崇君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君    政府委員        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        管理局長     小林  巖君        人事院事務総局        給与局長     尾崎 朝夷君        総理府人事局長  増子 正宏君        大蔵政務次官   米田 正文君        通商産業省鉱山        保安局長     中川理一郎君        労働政務次官   海部 俊樹君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        労働大臣官房労        働統計調査部長  石黒 拓爾君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別  措置法案内閣提出) ○炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関する特別措  置法案藤田藤太郎君外一名発議) ○労働問題に関する調査  (公務員の給与に関する件)     —————————————
  2. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  昨五日、丸茂重貞君が委員辞任され、その補欠として植木光教君が選任されました。また、本日、館哲二君が委員辞任され、その補欠として丸茂重貞君が選任されました。     —————————————
  3. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、理事補欠互選の件を議題にいたします。  丸茂重貞君の委員辞任に伴い、理事一名欠員となっておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選は、先例により、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事植木光教君を指名いたします。     —————————————
  5. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 ただいま議題になっています駐留軍関係労務者離職者の問題について若干お尋ねをいたしたいと思います。本件については、すでに衆議院審議の際にわが党の同僚議員から相当詳細に質疑が行なわれております。また、社会労働委員会も三回にわたって審議を重ねているようでありますから、なるべく重複を避けるようにしたいと思います。  それで、駐留軍労務者の直接雇用の責任は防衛施設庁にあるわけですが、防衛施設庁に対してのいろいろのお尋ねはこの次の機会にいたしたいと存じます。そこで、防衛施設庁への質疑はあらためて別の機会ということにいたしまして、当面、きょうは時間の制約もあるようですが、提案者でありまする労働省に対しまして若干の質疑を行なうことにいたしたいと存じます。  そこで、大臣まだお越しになっていませんが、有馬労働省職業安定局長は、衆議院での審議の中で、二十年の間に人員整理その他によって離職していった人たちに対して政府が行なってきた措置状況質問されたのに対しまして、有馬局長は、最近の十カ年、すなわち、三十二年度から今日までの間の離職者は二十一万三千余名である、これらの離職者のうち、安定所求職を申し込んだ者は十七万八千四百余名である、ところが、この求職申し込み者の中で就職した者は四万九千人余であると説明しておりますが、そうすると、十三万人余りの人たちは、仕事を求めて安定所の窓口をたずねましたけれども、結局就職機会場所を得られなかったということになるわけであります。この事実をどのように、大臣はおりませんから、局長は見ておられるのか、また、就職できなかった人たちはどうなっているのか、そのお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  7. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 過去十年間の離職者就職状況は、概略ただいま御指摘のあったとおりでございますが、駐留軍の場合に安定所を通ずる就職率が三割前後という状態で、やや低調でございますが、これは御承知のように、離職者の中で求職申し込みをする者につきましていろいろな角度から調べてみますと、やはり年齢が非常に高い、それから在職中の賃金が相当一般産業平均と比べまして高額である、職種駐留軍独特の職種で、にわかには一般産業に通用しないというような職場もございまして、再就職が非常にむずかしい条件が重なっておるのでございます。しかし、何と申しましても、離職者のうちで就職ができない者の年齢を見ますと、約七割近くまでが六十歳前後の方になっておるというふうな、高齢者である関係でなかなか就職ができないというふうな状態に相なっております。私どもとしましては、さらに一そう再就職の強力なあっせんをいたしまして就職率の向上につとめてまいりたいと思っておりますが、過去の実績はそういう状態に相なっております。
  8. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 ただいまの局長の御答弁も実際はわかるのですけれども、高年齢であるとか、あるいは賃金ベースが少し高いとかいうふうなことは、これは私は理由にはならぬのではないかと思います。特に大事な点は、就職申し込みをした人が十八万人おる、五万人の人が就職機会を与えられた、あと十三万人は安定所を通していろいろ運動したにかかわらず、就職機会場所を得ることができなかった、私はまことに遺憾だと思うのです。本来、これらの人たちはすべて働かなければ生活ができない、仕事がなければ生きていけない人々なんです。生活の道を求めて、おそらくなみなみならぬ苦労をしておると思うのですが、政府は、こういう駐留軍労務者は、ある意味において政府の要員でありまする者に対して、もっと真剣に積極的に就職の援助の努力をすべきであると思いますが、単に高年齢であるとか、家族構成がこうであるとか、あるいは賃金ベースがこうだということだけでこういうふうな状態を見のがすことはできないと思うのですが、その点いかがですか。
  9. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 離職者に対する就職援護措置につきましては、昨年に駐留軍離職者措置法を改正いたしまして、雇用奨励金、あるいは再就職促進のための就職促進手当石炭離職者並み援護措置を講じたわけでございますが、今回新たにそれに加えまして自営業援護措置といたしまして、自営支度金、あるいは債務保証制度というものを創設いたしました。離職者の中には約一割前後の自営業希望者が過去の実績から見ましてもございます。これにこたえてこういった措置をさらに創設いたしますならば、昨年の法改正とあわせまして、離職者就職援護に万全が期せられるというふうに考えますので、今後の再就職につきましては、さらに一段と効果があがってくる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  10. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 本来、駐留軍労務者在日米軍に使用されておるという特殊の事情のもとで働いておるわけです。したがって、普通一般労働者とは異なる慣習と条件の中で労働をしてきております。したがって、一般労働者と違う習性ができておることもまた否定できないと思うのです。そういうふうな事情就職の場合に多少の阻害の条件をつくっておるということも否定できないと思うのですが、しかし、そういうふうな阻害されるような条件の中で働いてきたという事実に対しては、私は、政府はもっと配慮のある援助なり、あるいはもっと親切な行政指導をしなければいかぬのじゃないかと思うわけです。特に駐留軍労務者昭和二十年の終戦によって生まれた新しい職場なんです。これらの人々は戦後の在日米軍支配下米軍に使用されるという特殊の環境の中で労働してきたわけです、よきにつけ、あしきにつけ。したがって、普通一般職場とは異なる条件のもとで、一般職場人たちには考えられないような苦労をしてきておるはずであります。使用主在日米軍であります。しかし、雇用主は国でありますから、日米共同管理方式によるすべての労務管理が行なわれておるわけですから、政府はそういう立場で対応する姿勢をとるべきであると考えます。そういうふうな考え方の上に立って、ひとつ政府の基本的な姿勢を私は伺っておきたいと思います。労働大臣にひとつお答えをお願いしたいと思います。
  11. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 佐野先生指摘のとおり、駐留軍関係日米安保体制のもとの落とし子でございまして、しかも、直接の雇用でなくて、間接雇用のような形式をとっておる関係上、労務の面でも若干日本のほかの労働者と違った不利な点もあることは御承知のとおりでございます。たとえば保安解雇というような特別措置も許されておる。そういう観点から、政府といたしましては、炭鉱離職者並み特別離職者対策を実施をいたしてきておる次第でございます。御承知のとおり、今回の債務保証は、五十万円まで無担保、無保証人で貸し出しをする、これはたいへんなことでございまして、従来の大蔵当局の常識からは考えられない、炭鉱離職者とこの駐留軍関係だけでございます。そういった措置を講じてまいりたいというのが本法案の趣旨でございますが、もちろんこれでも中高年が非常に多いということと、しかし、離職者というのは首切りによる、あるいは政府による強制的な処置というのはわりあい少ないのでございまして、みな自然に辞退していく。そういう関係上、今後石炭のように大量の整理強制的失業というものは考えられませんけれども、こういった人たちに対しましては、中高年である関係上、思ったほどの就職率はあげておりませんが、政府といたしましては、いま申しましたような事情を考慮いたしまして、石炭離職者と同様、手厚い措置を講じてまいりたい、今後ともそういたしたいと考えておる次第でございます。
  12. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 先ほど有馬局長のお話の中にもありましたように、確かに駐留軍労働者は高年齢の者が多いと思うのです。したがって、家族構成も高い率を持っていると考えられます。そういうふうないろいろな事情から、転職について一般求職者のようにはいかないという事実も私にはわかるわけです。しかし、私は、終戦駐留軍労働者が生まれましたじぶんからこの組合関係した経験を持っております。当時はほとんど一般人たちからは、駐留軍に働いておるということで、特別の目で見られるような状況であったわけです。そういう中で苦労して仕事をしてきたわけです。しかも、職場は、今日と違いまして、占領下という条件の中で働いておったわけです。それはそれとしまして、この人たちのこういう努力が、そうしてそういう人たち労働が、ある意味では占領下での日本が行なうべき重要な役割りを果たしてきたというふうに私は評価をしなければならぬと存じます。当然政府もまたそういう立場で、今日の駐留軍労働者占領下においてどんなに苦労して、どんなに世間からいろいろな目で見られながら、日本の政治と申しますか、経済と申しますか、社会進展に役立ってきたかということだけは忘れちゃならぬのじゃないか。今日の姿だけを見て、十年前、十五年前、あるいは二十年前の彼らの苦労を無視するようなことがあっては私はいかぬのじゃないかというふうに実は考えます。二十年の歴史の中で日米関係も変化してまいりました。日本の今日はたいへんな進展を示しております。この日本の発展した姿の中にこの人たち努力苦労が私はあると思うのですが、そういう点について大臣は一体どうお認めになりますか。
  13. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 全く佐野先生の御意見のとおりと考えます。
  14. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 全く同じ意見であるということはけっこうなんですが、それならそういう立場から私はいろいろお考えをいただきたいと思うわけです。いままででもそういうふうなお考えでいろいろ作業をされてきていると思うのですけれども、まだ十分ではないのではないかというふうに実は感じます。御承知のように、昭和二十年に駐留軍が参りましたじぶん駐留軍労務者は大体三十万人おったはずであります。それが今日では五万人になっておる。このことは、そのこと自体、日本の進歩と発展の成果の結果と言えると思います。そうすると、この間この職場から去って行った数多くの労務者に対しても、政府はもっと、いまのお考えからいいますならば、あたたかい目をもって見てやる必要があると思うのであります。そこで、これらの駐留軍関係労務者は三十万から五万になっているわけですけれども、二十万人をこえる駐留軍関係から去っていった駐留軍離職者について、その現状がどうなっておるかというようなことについて調査をされたことがありますかどうか、また、彼らのための保護対策をどういうふうにお考えになっておるか、局長から承りたいと思います。
  15. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 過去の離職者についての帰趨状況調査は、現在のところ、防衛庁が一年を限っての帰趨調査はやっておりますけれども、それ以上さかのぼっての帰趨調査は、現在のところ、やっておりませんので、私どもとして過去の離職者生活状態がどうなっておるか、詳しいことはわかりませんが、過去の離職者であっても、求職の活動を続けておる方々については、安定所としましてはこれを重点的に再就職あっせんをするという指導を行なっておりますので、古い離職者についても就職あっせんについては努力しておる、こういう状態でございます。まあそういう状況でございます。
  16. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 私は、先ほど申しましたように、駐留軍労働者ができましたじぶんから組合の世話をいたしておりました関係から、数年前まで、人員整理がありますたびにいろいろな相談を受けてまいりました。そういう人たちとともに、職場を失った人たちのためにいろいろの仕事努力も実はしてきた経験があるのです。県の協力を得ながら、あるいはクリーニングをやっておった者を集めてクリーニング工場の経営、あるいは作業をしてみたり、あるいはタクシー会社をつくって運転手をみなそこに集めたり、また、返還された土地の利用の方法を県とともに相談をして仕事をしたり、そういうことでいろいろな仕事をしてまいりました。そこで、彼らの今度の法案でも、自営の問題についての配慮がされておるようでありますけれども、先ほど有馬局長の言うように、高年齢である、家族構成がどうである、賃金がどうである、いろいろな事情があると思うのですが、そうすると、転職の困難な者でも、技術は十分に身につけているはずなんであります。したがって、そういうような者に対しては、そういうふうなあなたまかせといいますか、本人の力でかってにやるというだけではなしに、先ほど大臣が言われたように、もう少し駐留軍労務者に対しして特別配慮をするということであるならば、そういうふうな点についてももう少し積極的に手を尽くしてやるというふうな考え方が持てないものかどうか。単なる本人まかせの自営奨励だけではなしに、そういうふうなことが真剣に考えられないかというふうに私は主張いたしたいのです。そこで、聞きますと、追浜であるとか、小倉地域の一部返還された元の基地民間工場を誘致して、現在工場地域としているということを聞いておりますけれども、そういう例はほかにもあるように思います。そういう所があればこの際教えておいてもらいたいと思います。
  17. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 過去の自営業開始実績を、神奈川県の状況についてみましても、御指摘のような事業について自営業開始をしておる例が相当ございます。私どもも、今回債務保証制度を創設するにつきましては、これらのいままでの事例を十分調査した上でこの制度を設けるように踏み切ったわけでございまして、今後この制度による自営業開業促進と並んで、神奈川県、あるいは東京都、あるいは埼玉県、福岡県、各県が条例あるいは規則によって設けております生業資金貸し付け制度、あるいは設備に対する助成制度、こういったものはなお並行的に充実をはかってまいりたい、こういうふうな指導は加えていくつもりでございますので、これらの諸制度と相まって、今後まあ自営業開始がさらに容易になるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  18. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いま局長お答えはけっこうだと思うのですが、そこで、この際、大臣にお伺いしたいのですが、米軍兵力削減等によりまして、在日米軍が現在使用しておりまする基地の中においても広範囲の遊休施設があるように私たちは想像いたします。これらについて政府はすみやかにこれを返還せしめて、そして平和産業等の誘致を行なうということをする気持ちはないか、あるいはそういうことについての措置をとられる考えがないかどうか、大臣からお答えを願いたいと思います。
  19. 早川崇

    国務大臣早川崇君) もし遊休しておって、軍事上の支障のない地域がもしあるとするならば、今後これが平和産業への転換のための用地として利用できるように努力いたしたいと思います。
  20. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いままでにも三十万人の労務者が五万人になっておりますけれども、その過程では在日米軍戦略配置変更やら予算削減、政策の変更行政機構改革等での人員整理がおもに行なわれてきているわけですが、そういうことで駐留軍労務者は常に不安定な雇用条件に置かれておるわけであります。政府としてはこのような労務者不安状態を改善するためにどういうふうな考え方を将来にお持ちであるのか、そういう方法があればひとつこの際示してもらいたいと思うのです。したがって、政府は、駐留軍労務者離職者を、公共企業体、あるいは民間産業などに優先雇用する努力をしてきておるわけでありますけれども、最近はそういうふうなことについてもちょっと努力が薄くなっているように私たちは受け取るわけです。したがって、さらに積極的に、あるいは公共企業体に、あるいは民間産業にほんとうに今度の法改正によってされるような意欲的な点は見られないでもありませんけれども、具体的に離職者の再就職について、あるいは、また、その保護対策をさらにもっと強く進める御決意をお持ちになっているかどうか、一応お伺いしておきたいと思います。
  21. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 御承知のように、離職者発生状況は、最近数年前と比べまして非常に減っております。特にまあ離職を余儀なくされる人員整理による分はさらに減っておりまして、二千名程度に下がっておりますが、これらの方々について、政府関係機関、あるいは官公庁、こういった方面に極力再就職あっせんするという努力は今後ともなお続けてまいりたいと思います。それから、離職者がなるだけ出ないように、あるいは出る場合においても、事前に極力情報をキャッチいたしまして、再就職態勢を早く整備する、こういう点につきましても、施設庁を通じまして、米軍当局と連絡を緊密にしながら、その努力は今後も続けてまいりたいと思いますので、離職を余儀なくされる場合におきましても、再就職のためのあっせん体制、あるいは訓練体制というものはできるだけ前広に十分整備をしてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  22. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いま駐留軍労務者関係はそう変動がないようでありますけれども、しかし、それはいまベトナムの紛争によって、たとえば兵器の修理、あるいは野戦病院仕事、いろいろな仕事がふえていることが労働者の需用の条件をよくしておることは否定できないと思います。こういうふうな、ある意味では好ましくない事情の中で、とにかく米軍が今日必要とする労働者労働力の需要があるわけですけれども、このような事情はいつまでも続く性質のものではないのでありまするし、また、一日も早くベトナム問題の平和を私たちは取り戻さなければならぬと考えます。そうしますと、当然の結果として人員整理がそれと関連いたしまして、必ず整理が起こってくると予想されます。また、御承知のように、駐留軍労働者安保条約に基づく地位協定によって労務に従事する労働者でありますから、安保条約も一九七〇年までの期間であります。このような状況下にあって雇用状態は一そう不安定になると私たちは思うのですが、それだけに、労働者はまた非常な不安を絶えず抱き持って職場で働いておる、こういうふうに考えられるわけです。安保改定時期を目前に控えて、米軍駐留軍労働者の今後の方向について政府に何らかの申し入れを行なうことになると思いますが、政府全体としてはどのような方針でこういうことについて進んでいこうとされておるのか、ひとつ大臣から政府統一見解のようなものがあれば聞かせていただきたい。
  23. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 衆議院枝村議員からも御質問のありましたときに答えたのでございますが、結局駐留軍労務者が不安がっているのは、一九七〇年で安保条約が切れるのじゃないか、先行き非常に不安になっているという御質問でございました。また、ただいまの佐野先生の御質問も、基本的には、この駐留軍というものは矛盾した一つの性格を持っているわけでございます。平和で日米安保体制がなくなる、軍隊がなくなるという場合には当然必要のなくなる労務者である。しかし、政府といたしましては、予算委員会、本会議でたびたび佐藤総理が言明しておるとおり、日米安保体制というものは、一九七〇年がきましても、極東の全般的平和が一挙に改善されない限り、長く堅持すると、こう言明いたしておるわけでございまして、基本的に駐留軍労務者が非常に必要がなくなる、もうすでに非常に少なくなっていることは御承知のとおりであります。最小限度のそういう駐留軍労務関係必要性は、少なくとも、自民党政権が続く限り、御安心されていいのではないかと、こういうことを申し上げざるを得ない次第でございます。ただ、軍事的なものに伴う労働者でございますので、国際情勢にも影響されまして、若干の出入り、必要なふえたり減ったりということは、これはやむを得ないと思います。したがって、現在は大体この二千人程度で、大幅な整理ということは考えられませんが、そういう人たちに備えまして、今回御提案申し上げた自営業者をも含めまして、特別離職者対策石炭労務者並みの、手帳制度なんかはありませんが、ほほ炭鉱離職者並み特別措置を講じておる。したがって、駐留軍労務者も、そういう点では一応御安心いただいて、三年後はもうだめになるのじゃないかというお考えは、少なくとも、私は、現在の政府の方針が引き継がれていく限り、御心配ないように願いたい、かように存ずる次第であります。
  24. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 おっしゃるように、現在の国際的な情勢、その他いろいろから見まして、あすすぐに駐留軍労働者が要らなくなるとも考えませんし、また、安保条約の取り扱いの将来の問題も、これはいろいろ議論のあるところでありまして、問題でありますけれども、そういうふうなことをいろいろ想定をして、不安定な感情の中で労務にいそしんでおるという実情は否定できないと思う。したがって、いまおっしゃるような、なくならないから心配せぬでいいというようなことで問題の片づくものでないことだけはひとつ御承知置き願いたいと思います。  そこで、時間がありませんから問題に入りますが、雇用促進事業団が駐留軍関係離職者の援護業務として、自営に対する援護対策を強化するために、離職者が企業を開始する場合には自営支度金を支給する、こういうふうにいっておるようでありますが、その場合の自営支度金の額及びその支給要件をどのように考えておるのか。また、債務保証を含めて、自営援護対策を強化することの効果についてどれだけの確信を労働省のほうは持っておられるのか。また、その予算措置などについてどういうふうにすでに対策を持っておられるのか。さらに、自営業開始する離職者には自営支度金が支給されることになるのですが、再就職するものに修学資金、支度金の支給の制度が設けられないのは、同じように駐留軍に働いておる離職者としての均衡を失うことになると思うのですが、そういう点について、有馬局長はどう考えておられますか。特に先ほど申しました予算関係、あるいは自営支度金の額、支給の要件等についてひとつ御説明ができればしてもらいたい。
  25. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 自営支度金の支給の条件でございますが、これは離職後一年未満に自営業を開業する場合には、就職促進手当の日額の七十五日分を支給する。大体今度日額を引き上げまして、最高六百十円になりましたので、六百十円掛ける七十五日分といいますと、約四万五千円程度になります。さらに一年以上、一年半未満で自営業を開業した場合には五十日分、それから一年半以上で二年未満の場合には三十日分というふうな基準で支度金を支給する考えでございます。炭鉱離職者の場合には、雇用労働者として再就職するにあたりまして、早く再就職した場合には、いま申したような基準で再就職奨励制度がございまするが、駐留軍の場合にはその制度がない、この不均衡をどう考えるのかというふうな御指摘でございましたが、私ども、まあ関係者の意見をいろいろと聞いて今日まで対処しておるわけでございますが、再就職奨励金についてはいままで必ずしも強い要請がなかった。昨年の改正におきましても、これは危険手当の改正がございましたけれども雇用奨励金制度就職促進手当制度は創設されましたけれども、再就職奨励金については改正されなかった、こういうふうな経緯がございまして、私ども審議会等においてこの点の意見は十分徴しておりますが、その必要性が今後出てまいりますならば改正の検討が必要だと思いますが、今日の段階においては、この制度はまだ必要でないというふうに判断をいたしておるのでございます。  それから、第二点の、債務保証制度の効果の問題でございますが、これはいままでの離職者帰趨状況、あるいは希望条件等を調査してみますと、やはり一割内外の自営希望者がございます。そういうことを背景といたしまして今回の債務保証制度を創設したわけでございますが、この債務保証条件といたしましては、いろいろ大蔵省と今日まで折衝を重ねてきております。駐留軍債務保証制度石炭離職者と大体同様な条件考えておりますので、すでに石炭離職者につきましては、この七月一日以来、債務保証制度が実施されております。この条件は、保証の限度を原則として百万円にする、ただし、特に必要がある場合には二百万円まで限度を広げることができる。保証の期間は原則は五年でございますが、特に必要がある場合には七年まで延長ができる、こういったことを骨子といたしまして、業務方法書が石炭の場合についてはすでにできております。駐留軍につきましても、これにならって融資債務保証条件を確定いたしたいと思います。で、この条件は、いずれも衆議院の段階において債務保証制度審議した過程におきまして、いろいろ御質問によって出た問題を整理いたしまして、最初は保証限度も百万円というふうに考えておったのですが、それを二百万円まで例外的に限度を拡大できる、こういった措置も講じたわけでございまして、私どもとしましては、国会の審議の過程における御意見を十分尊重して、この業務方法書で融資条件をきめてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  26. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いまのお答えの中で一つお聞きしたいのですが、一年未満のものに七十五日分の就職促進手当を出すということですが、この場合に家族手当等はどういうふうに考えておられますか。
  27. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 扶養加算も含まれます。
  28. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 含んだ額で七十五日ですか、プラスですね。
  29. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) はい、含んだ額です。
  30. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 離職者自営のために資金を金融機関から借りるというふうな場合の債務保証をするということは、一体どういうふうな形式なのか、もう一ぺんひとつ御説明願いたい。  それから、債務保証制度のあらましをもうちょっと詳しく具体的にお示し願いたい。そうして債務保証についてどの程度の危険率を見込んでおられるのか。それから、本年度はどの程度予算を準備しておるのか。一般の融資の場合の危険率とどの程度考えておるのか。債務保証を決定するのは、離職者については職安の所長が認定することになると思うのですが、その具体的な認定基準等はすでにお話になっておるのですが、それを示してもらいたい。  それから、もう一つ、いま局長からお話があったのですけれども債務保証制度でなく、低利の直接融資制度考えることはできないのかどうか、あるいはそれを考えなかったという何か事情があるのかどうか。
  31. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 今回改正をお願いいたしておりまする債務保証制度は、離職者自営業を開業する場合に金融機関から融資を受けます。その債務を雇用促進事業団が保証する。すなわち、離職者が債務の弁済ができなくなった場合に、事業団がこれにかわって弁済をする制度、こういうのが債務保証制度の骨子でございます。で、その主たる条件は、先ほど申しましたように、限度額が原則は百万円、例外的には二百万円まで保証できる、さらに保証期間は最高五年、例外的には七年、こういう考え方でございます。保証料は、債務の額に対しまして日歩一厘、こういう条件でございます。で、予算の面から見ますと、保証費として百七十三万円を今年度は予定いたしております。危険率は五%という非常に高い危険率を見込んでおりますので、これは実際の実績が出ますと、この危険率はもう少し下がると思います。しかし、一応離職者の場合を想定したいままでの実績があまりございませんので危険率を高く見ておるという状態でございます。  さらに、この債務保証をする場合の認定でございますが、これは第一次的には金融機関が貸し付けの決定をいたしますので、その貸し付けの決定に対しまして事業団が債務を保証する。その間に安定機関が口添えをするという形でございますので、私どもの窓口の安定機関としましては、できるだけ債務の保証をするようにという立場から口添えをしますので、安定機関が積極的に、何といいますか、債務保証について否定的な関与をするということはまずないと思います。  それから、最後にお尋ね一般の融資、あるいは保証融資の関係がどうなるかということでございますが、これは今回債務保証制度が設けられましても、いままでの方式による一般融資、あるいは保証協会による保証融資というものは、これは並行的に存続いたしますので、その方法と併用しながら必要な資金の確保をするというふうに相なることと思います。
  32. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 だいぶ時間がなくなっているようですから、この際、少しまとめてお尋ねしておきますが、駐留軍関係離職者に対する職業訓練及び就職指導でありますが、駐留軍離職者についても、「必要に応じ、一般職業訓練所又は総合職業訓練所の設置、新たな教科の追加、夜間における職業訓練等特別措置」を行なうと臨時措置法の第十条でいっておりますが、職業訓練の実績は、駐留軍離職者に関しどうなっているのか、また、就職指導の成果が実際にあがっていると思うのかどうか。それから、この法律の存続期間ですけれども駐留軍労働者は、先ほど大臣おっしゃったように、まだ今後当分存続すると思うんですが、本法の存続期間を延長する予定があるかどうか、お聞きしたいと思います。
  33. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 訓練の実績は、最近三カ年の状態を見ますと、離職者が非常に減ってきた関係もございまして、漸次減少の傾向にございます。すなわち、三十九年度は七百四十七人が訓練所へ入所いたしましたが、四十一年は百十三人、非常に減ってまいっております。これは施設が減ったのではなくて、入所希望者が減ってきたという関係でございます。さらに就職促進手当を背景とする就職指導実績でございますが、これも昨年から今日までの状況を見ますと、手当の支給が約六百人ほどいまなされておりますが、大体実績としては順調な運営がなされているのではないかと思います。  最後に、この措置法が十年間の時限立法になっている関係で、来年の五月に期限がくるわけでございますが、その後の延長問題につきましては、私ども駐留軍離職者発生状況、あるいは在日米軍の今後の駐留の見通し、これらを勘案いたしまして、いずれその時期になって延長しなければならないのじゃないか、こういうふうに一応見通しております。
  34. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それでは、まだいろいろお尋ねいたしたい点もありますし、いままでのお答えの中で私の納得のできない点もあるのですが、きょうのところはこの程度で一応とどめておきたいと思うのですが、最後に資料を要求いたしておきますが、それあとで申し上げますけれども、最後にお尋ねいたしますが、駐留軍関係離職者等臨時措置法によります離職者等対策協議会が一体現在どのように活動しているのか、あるいは審議会のほうも、何か年に三回か四回ぐらいか、非常勤の方が寄ってやっている程度に聞いておりますけれども、一体その活動はどうなのか。それから、だんだん地方の駐留軍労働者は少なくなっているのですけれども、しかし、各地方にも今日なお対策協議会があるはずなんですが、そういう活動状況は一体どうなのか、これをひとつ御説明を願い、場合によってはひとつ資料もお願いしたいと思うのです。
  35. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 中央離対協、さらに地方の離対協、これは都道府県は八県、市町村は十八市町村にございます。これらの協議会の開催の状況でございますが、中央の分につきましては、主として幹事会を中心に開催されておりまして、昨年一年間におきまして幹事会が四回、さらに労働省に設置されておりまする離職者対策審議会は昨年八月設けられましたのですが、今日まで三回開催をいたしております。地方協議会においても、それぞれ予算を流して援助いたしておりますので、協議会をその地区ごとに開催をいたしております。こういった協議会の活動については、じみではございまするけれども、相当活発に行なわれているというふうな状況でございます。
  36. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 それでは、きょうのところは私の質問は一応これで終わりたいと思うのですが、初めに申し上げましたように、防衛施設庁が本来のこの責任者でございますから、後日あらためて質問する機会を持ちたいと存じます。  そこで、そういう機会を持ちますために、この際、資料の提出をお願いしたいと思うのです。  一つは、駐留軍関係離職者の現状についてであります。一つは、駐留軍在職者の人員及び年齢構成、そうして性別の構成、それから、その人員の推移、それをひとつお願いしたい。  それから、その次には、駐留軍離職者発生状況の推移と今後の発生の見通し、それをお願いしたいと思います。それから駐留軍離職者の今日までの就職状況離職者の対策の現状、それをひとつお出し願いたいと思います。防衛庁のほうから法人関係のほうは三十二年からいただきましたから、そのほかのものがありましたらお願いいたしたいと思います。駐留軍離職者自営業を営んでいる者がどれぐらいあるのか、自営業の内容はどういうことなのか、それらの人々の収入の状況はどういうことなのか。また、自営業を希望する者は現在どのくらいあると想定をされるのか、そういうひとつ資料をこの際お出し願いたいと思います。それに基づいてあらためてまたお尋ねしたいと思います。  これで私のきょうの質問は終わります。
  37. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 至急取りそろえて提出いたします。
  38. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  39. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案及び炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案、両案を一括して議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  40. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、まず第一に、ガス爆発による犠牲者というのは、非常に多大な、たくさんな人がお気の毒な状態に置かれているわけであります。皆さん御承知だと思いますけれども、三十八年には三池三川鉱で四百五十八人の死亡者、八百名にのぼる一酸化炭素中毒者。これが四十年には北海道の夕張鉱において六十一名の死亡者、二十名の中毒患者。それから、四月九日には伊王島で三十名の死亡で、十四名の重軽傷。六月一日に山野炭鉱で二百三十七名の死亡者があって、二十名の中毒者。四十一年には住友本別で十六名の死亡者に、五名の重傷者が出ている。私らから考えたら、こういうガス爆発というのは規定があって、何%以上あれば作業を停止して引き揚げるとかいういろいろの鉱山保安の問題の規律があるわけです。これは一貫して生産と予防と一緒にやるようなことは困る。だから人間の生命を守る労働省に鉱山保安問題を一本にせいということをやかましく言ってきた。ところが、通産省の鉱山保安局は、いまだに鉱山保安の問題は生産と一緒にてんびんにかけてやっておる。私は、このたくさんな犠牲者が出られて、根本的に聞きたいんだが、通産省鉱山保安局はどういうその後対策を立てておるのか。一体労働大臣労働省としては、このたくさんの犠牲を、おそらくこれはよそのことだからといって見ているわけにはまいらない。だから通産省と連絡協議をしてどういう対策をその後立てられたのか。まずそれを聞きたい。
  41. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) ただいま藤田先生おっしゃいましたとおり、三十八年の三池災害以降におきまして数次の爆発事故がございまして、多数の方々がたいへん不幸な結果に相なっておることは、私どもとしてもまことに遺憾にたえないところでございます。おっしゃいますように、理論的に申しますと、炭じんなりガスなりがあって、それに火源になるものがありまして結びついた場合に炭じん爆発なりガス爆発なりということが起こるわけでございますけれども、この二つの結びつきが起こらないようにするということを努力いたしますならば、理論的には絶滅し得るものであるわけでございます。ただ、石炭鉱山におきましては、炭じんなりメタンガスなりというものは不可避的に存在をしております。さらに相当複雑な自然的、人的災害要件が加わりまして重なりまして、各鉱山におきまして労使双方並びに国として私どもが監督指導の強化をつとめてまいったわけでございますけれども、なおお説のとおり、事故がその後もあったわけでございます。お尋ねの点は、三池災害以降、政府はどういうことをやったかということでございますので、この点を中心にしてお答えを申し上げたいと思います。労働省からも、この災害以降、数次にわたりまして私ども勧告を受けております。それに対しましてとりました措置労働大臣のほうに御連絡いたしておるわけでございますが、三池災害以降とりました主要な私ども措置につきまして御説明をいたしたいと思います。  第一点は、法規面での改正でございます。保安法規面では、三池災害以降、保安統轄者の制度、それから保安監督員の補佐員制度の創設という改正を行ないまして、保安管理機構の整備をいたしたわけでございます。御承知のように、監督員補佐員は、うち一名は必ず労働者の代表を選ばなければならないということに相なっておるわけでございます。さらに、炭じんに関する規定は、この以前におきましては、特に注意すべき炭鉱だけを対象にしてやっておりましたのでございますが、石炭鉱種の鉱種別制度というものを廃止いたしまして、炭じんの爆発防止のための規制強化は全鉱山についてやるということを主たる内容とする整備を行なってまいったわけでございます。  第二点は、私どもの監督体制についての改善でございます。これはその後監督官の増員をいたしますとか、特に九州には保安監督局に指導課を新設するというようなことで、組織上の強化もいたしますと同時に、巡回検査等の監督の頻度を高めますと同時に、従来やっておりませんでした総合検査でございますとか、ある個所を指摘いたしましたあと、十分に直っておるかどうかというような追跡調査をやるというようなくふうをこらしまして監督指導体制の強化につとめておるわけでございます。  第三点は、企業側が保安施設を完全に完備してくれますために、いまの石炭産業ではなお資力的に不十分な点もございますので、国としてこれを助成するということを努力してまいったわけでございます。この助成面について申しますと、今年度で申しますと、工事ベースで約三十二億円の保安融資というものを、これは融資としては半額でございますが、石炭鉱業合理化事業団を通じまして、保安に直接貢献する施設の融資をいたしております。なお、今年度からは坑道掘進を従来の融資ベースから補助金ベースにかえまして、二分の一の補助金を交付することにいたしております。これは先ほどの爆発等について申しますと、一番基本的に必要な入排気の通気関係の改善等には格段の役割りを果たすものと考えております。また、一方、この災害以降に真剣になりまして関係者が開発いたしましたガス自動警報機等の、石炭鉱山における保安施設の中身になります保安機器開発を目的といたしまして、今後機器の開発に補助金を交付することといたしております。  第四点は、技術面についての改善でございます。先ほど申しましたとおり、技術面での進歩は保安に関しましてもずいぶん変わってきておるのでございますが、さらにガス炭じん爆発防止に関する保安技術を開発普及するということで、たとえば従来の通気によるガス対策に加えまして、先進ボーリング等をやりますことによりまして濃いガスを直接パイプによって外へ出してしまうというようなガス抜きの技術開発、これはその後実施をされて相当に成功をいたしておるわけでございますが、そういうことでございますとか、従来人間の手によりまして先ほどお話しのございましたガスの濃度を必要なときに測定しておくというのがこの災害以前の状態であったわけでございます。これはそうひんぱんにやらせるということをいたしましても、時々刻々とガスの状態は変わりつつあるわけでございますので、固定的な自動測定装置がそこにあって、人の手によるエラーでなくて、機械がきちっとはかってくれる、そうしてはかったならば自動的に警報が通じ、かつ、一定の危険度を越えますと自動的に電源を遮断して着火原因をなくするような機器の開発をやってまいりました。二、三トライアルをいたしまして、湿度その他の関係でうまくいかない状態もあったのでございますが、四十一年ごろからはほぼ満足すべきものができ上がりまして、各鉱山にこれの設置をいま指導し、相当程度普及をいたしておるわけでございます。なお、また、この際に問題になりました一酸化炭素の自己救命器につきましては、各鉱山のある時点におきましての最高数の作業員の数、これに見合う自己救命器の設置というものを強制してまいったわけでございます。なお、通産省自身といたしましても、これらのいろいろな技術開発に各種委員会等を使いましてやっておりますほかに、三池のあと炭じん爆発というもののたいへんなおそろしさということからいたしまして、この予防試験のための試験炭鉱というのを、九州に二億数千万円の国費を投入いたしまして、そこで炭じん爆発の防止、これについての技術開発を進めてまいったわけでございますが、これは主としてどんな状態で炭じんが爆発しやすいか、それから、爆発したときにこれが伝播することを防止するにはどういう措置がいいかというようなことで、従来の岩粉だなによる対策を水だなによる措置対策に切りかえたほうがより確実であるとか、あるいは自動水膜の技術を開発するとかいうようなことでやってまいったわけでございます。  以上申し上げましたように、防止面、監督体制面、助成面、抜術面、私どもといたしましては、考え得ることについてのすべてにつきまして、一応鉱山保安協議会の学識経験者、労使代表といった方々の御意見も十分に尊重いたしまして最高の努力をしておるわけでございますが、申すまでもないことでございますが、鉱山における保安の確保をはかるためには、私ども人命尊重の基本理念に立ちまして、経営者、労働者相携えて保安法規を完全に順守するとともに、徹底した自主保安体制を確立して予防保安につとめることが絶対に必要であると考えております。そのつもりで努力はいたしておるわけでございますが、残念ながら、いろいろな点で進歩をいたしましても、御承知のように、また、自然条件は刻々と悪くなって、深部に入ってまいりますし、採掘しやすい所を先に掘っておりますので、残った条件の悪い場所に入っていくというようなことから、必ずしも良好な成績をいまおさめておりません。この点はまことに残念でございますが、今後とも努力をいたすつもりでございます。
  42. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 藤田委員の御質問は、こういうように炭鉱災害の多いときに、労働省が当然この主管官庁でなければならぬという御意見であるやに承っておるわけでございます。これには歴史がありまして、従来労働省の鉱山課でこれを扱っておったのでございますが、加藤勘十労働大臣、それから水谷長三郎通産大臣のときに通産省に取られちゃったわけでございます。それ以来、現在のように通産の行政としてやられておるのでございまするが、私は通産省でやっていただいてけっこうだと思いますが、ただ、やはりこの災害をなくするには、いろんな技術的な問題と同時に、責任感というものがなければならない。ですから、通産省がほんとうに責任感を持ち、会社が責任感を持ち、三池炭鉱のときに社長がやめられました。非常にぼくはりっぱな態度だと思います。何しろ現役の岡崎君が全日空の事故で責任をとられました。私が国家公安委員長で、ライシャワー事件で責任をとりました。そういうようなきちっとしたことがやはり監督官庁にもなければならない、会社にもなければならない。それが事故を最小限度に食いとめる、それが末端にまで浸透するわけであります。私は日本航空の社長と親しいのですけれども、非常にほんとうに毎日航空事故のことを心配しておられます。最近日航には事故がない。私は炭鉱においても同じことなんで、通産大臣、ひいては各鉱山会社の社長さんというものが、ほんとうにこんなに災害の多い事業の監督者であり、また、経営者である場合には、日夜そういうことに責任感を持ち、関心を持っておるということが根本ではなかろうか。したがって、これを労働省に移管するとか通産省に移管するとかという問題を越えた私は問題だと考えます。  二番目に、具体的に、労働省も、実は鉱山保安法ですか、勧告権があるのでございます。それから、協議権もあるのでありまして、昭和三十二年以来、三池、山野の炭鉱災害に至るまで四回勧告権を行使いたしまして、ただいま保安局長からお話のような規則の改正、将来にわたって、労働災害の労働省は専門家でございますから、微に入り細をうがった勧告を実施をいたしました。その結果、その中の相当部分が、ただいま局長御答弁のように、取り入れられてまいったわけでございまして、われわれは主管官庁ではありませんが、労働者全体の災害というものに深い関心を持ち、また、責任を感じておるわけでございます。今後とも通産省に協力をいたしまして、特に法律上許されました勧告権、協議権というものを最大限に活用して、こういう悲惨な労働災害がなくなるように最善の努力をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いまお答えがありましたけれども、通産省は三池爆発以後いろいろな措置をとったと、こうおっしゃった。おっしゃったけれども、三池爆発以後四回も爆発しているわけですね。学問的には、いまの保安規程を守っていたら事故は起きないということをあなた自身も認めている。私も炭鉱保安の問題については、水没事故であるとか落盤事故であるとか、これはガス爆発と違うと私は思うのです。流通している中のガスをコントロールさえしていれば起きないという、学問的にそういう結論が出るならば、私はそういう予防をやっていかなければいかぬ、ガス爆発が起きないという予防をやっていかなければいかぬ。いまの労働大臣の返事を聞いていると、社長が責任とったから事が済んだというようなものの考え方でこれと取り組むなんてとんでもないことです。災害を受けた労働者やその家族はどうする、このことを明らかにしなければならぬ。私は前段に予防の問題を申し上げたからそういう返事になったのかもしれませんけれども、保安監督が通産省であれ労働省であれ、こんなことをここでいまこの時点のもとで議論をしているのじゃない、この起きた被災者をどう救済するか、または将来起きるかもしれない炭鉱労働者をどう守っていくか、起きないようにどうしていくか、起きた人の援護をどうしていくのかというのがわれわれきょうの議題とする中心問題だとぼくは思う。ですから、私は、何といっても生産をあげるために事業を行なう、そこで業務中に事故が起きた、これは何といっても、理屈がいろいろいわれたとしても、事業主の責任である。だから最善の事業主の責任を果たす処置をとらなければならぬというのが私は今日の事態であると思う。通産省はそこのところあたりはどう考えておいでになるか、もう一度だけ聞いておきたい。生産第一主義だといわれている通産省は、人命の尊重についてどのように考えられておるか。
  44. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 通産省といたしましても、鉱山保安につきましては、鉱山保安に関連いたします、ことに石炭産業、鉱山産業につきましては人命尊重ということが何よりも優先することだ、かように考えております。これは私どもとしては当然のことでありますだけでなく、企業にとりましても、いま藤田先生おっしゃいましたように、落盤事故でございますとか運搬事故ですとかいうような頻発災害でございますと、これはまたあるいは心得の違った経営者の中にはそういう考えを持たない方もいらっしゃるかもしれません。あるいは不十分である方がいらっしゃるかもしれませんが、いま当面、藤田先生おっしゃっております炭じん爆発なりガス爆発なりというものは一山の生命をも奪うことになるわけでございます。これは労働者の人命の尊重ということは当然のことでございますが、この当然のことはひとつ別にいたしまして、企業として考えましても、かような重大災害を起こしました石炭産業では、いまの石炭産業全体の情勢もございますけれども、もはや生産を再開するとか経営を続けるということはあり得ないと私は考えております。みんなそのつもりでいま労使とも真剣に保安問題に取り組んでくれているものと私は信じているわけでございます。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、この参議院の社労委員会というのは、たくさんの犠牲者が出られて、そしてまあ責任者が責任をとったぐらいでおさまらない。人間の生命なんです。ここで援護法をつくろうという決議をいたしたということで、院がそういう姿勢をきめた、そうして今日この国会で援護処置をきめようとしているわけであります。通産省もよく御存じだと私は思う。だから、むしろ被災労働者の援護を早くやってくれと、いま人命が大事だといわれるなら、もっと熱心に立法府で認めてそれを進めるという段階において通産省も努力されてあたりまえだとぼくは思っているわけです。そういうぐあいに理解されるものだと思う。一応私は通産省の質問はこれでとどめておきます。  そこで、労働大臣お尋ねをしたいわけでありますが、昨年の国会で石炭労働者の援護処置を決議としてきめたわけでございます。これは大臣よく御承知だと私は思うのです。そこで、今度の政府が提案された法律を見てみますと、一からためで申し上げますならば、労災審議会にかけました、かけましたけれども、その労働者が健康で働いておって、そして働けなくなったから自分の就職の保障もなくなってしまう、後遺症ができて働けなくなっても、前の健康で働いた当時の収入の保障もなくなってしまう、そういう悲惨な議論は、国民として身に迫る議論だと私は思う。被災者の皆さんや家族の実情を見てみたら、これはもう涙なしには聞かれないほど悲惨な状態に置かれている。ところが、そういう保障は何もなしで、審議会で意見があったからまとまらなかったといって、今度のようにそこだけ抜いて立法してここに持ってくるということがどうしても私にはわからぬ。私たち社会党のほうも援護措置法を出しました。しかし、これも討論の場でありますから、援護しようという精神はどことどこをどうしようということは、そこはきっちり協定のようにきめたわけではないけれども援護をする基本的な、根本的な問題から、療養と、その人本人、家族も含めて出発して、健康で働いた当時の収入と生活が守られるという条件がなくては、これはけがをしたら損のしっぱなしということになってしまうわけです。そんなことを抜いて立法化して提案されたことがよくわからぬのです、私たちにしてみたら。それをひとつ聞かしていただきたい。その中の考え方はどうなんだ、国会でいろいろ皆さんと相談して何とか直したいというのか、労働省はもうあのままでいいというのか、そこらあたりのことを聞かしてもらわなければいけないと思う。
  46. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 審議会は、参議院の御決議の趣旨に沿いまして、過去十回にわたりまして真剣にこの問題を検討いたしたわけでございまして、政府も、あるいは審議委員も、被災炭鉱労働者に対する気持ちにおきましては藤田先生と御同様だと信じておるわけでございます。ただ、出てまいりました法案が、社会党から出ておる法案と多少違っております関係上、藤田委員から不十分だというような印象を受ける御発言でございますが、実際問題として、政府の出しておりまするこの法案というものは、炭鉱労働者に限りまして、かなり画期的な立法だと思っております。一産業に特別措置を講ずるということ、また、健康の問題、さらに介護料を国から出すということは非常に重要な改正だと信じておるわけでございます。ただ、本来直接の責任は、御承知のように、会社にあるわけでありますから、会社におきましては、労使の団体交渉によって相当ないろんなそういった雇用されておる労働者の災害補償につきましては、労使とも、私は血の通った団体交渉が持たれると思うわけでございます。そういうものをあわせ考えますと、炭鉱労働災害にかかられた方に対しましても、まあ納得のいけるような措置がこの法案とあわせ考えまして期待できるものと考えておる次第でございます。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣は会社にあると、こうおっしゃっている。しかし、どの企業でも、自分が事業を興こして利益をあげるために業務を進めるその中で業務中に災害が起きて、今日の社会道徳からいっても、もうおまえは労働力が少なくなったから首を切る、あとの援護をしないなんていうことは許されないことだと私は思う。しかし、たとえばそういう災害責任を持たないような業者ができて、そういう感覚でその被災を受けた人を首切ってよろしいということを継続することは断じて許すべきではない。たとえばいまの基準法の十九条や七十五条や八十一条ということになってくると、打ち切り補償の問題が書いてある。しかし、労災法の立場からいえば、それを乗り越えて治癒までは療養をする、生活をみていく、病気もなおしていくというぐあいに、もはや労災保険法がだんだんと人間の生命または被害者に対して完全に治癒してもとに返そうという努力の立法で前に進んでいくわけです。そして会社とみんな交渉してやったらいいというなら、なぜ法律で明確にできないのか。これこそ業務中に起こった災害の被災者というものは法律で守ってやる。不心得者の業者が出ても、労働者はこの法律で守られていくというところに第一の目をつけていくのが今日の憲法に基づく法律じゃないか。たとえばいままで千円もらっておった人が、だんだん労働力が少なくなって、そして六百円の価値しかない、五百円の価値しかないということでそれでほっぽらかしていいんですか。いまの労働大臣の言をかりれば、会社はそんなことをしないだろう、こうおっしゃるけれども、これもまた不心得者ができたらこれは切り捨てごめんということになってしまうじゃないか。災害の責任について最近の議論をみてごらんなさい。たとえば公害基本法に出てきたように、人間の生命と健康を守ると言い出しながら、最後の対策をやるには経済との調和だと、こう言う。経済の調和が整わなければ公害の処置もしないというような法律に転化していく。最近の汚水とか大気汚染とか、ああいうものを見ておっても、いろいろの数式によって、これは被害がありませんと大言壮語しておっても、阿賀野川しかり、また、水島しかりであります。それでも魚が死に、木が枯れ、人間の生活が非常に大気の汚染の中で圧迫されている。こんなことを許しておったら、肝心な日本の生産を高める労働者の生命や健康までが、そういう形で無過失責任の無過失のような理屈を言い張って、そしてこれを処理しようとする。これまたわれわれ人間社会が認めるわけにいかない。業者がこぞってやるという不心得者が出ないように法律で規制しておくべきじゃないか。何の実害もないと言い切れないじゃないですか。不心得者が出てきたら法律で規制するのがあたりまえじゃないですか。法律ですることが近代社会のおきてじゃありませんか。そこを私は聞いている。こんな状態で、会社がしているからとか、精神は一緒だとか言うけれども、会社がしているからそれでやらないということでこの法律を出したということは、私はなかなか了解ができない。もう一度大臣からひとつ。
  48. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 御指摘の問題は解雇制限の問題にからんだ御意見だと承知いたします。御承知のように、労働基準法では、三年にわたって業務上の災害で仕事ができない人は、補償を出せばその解雇を禁止しないという規定があるわけでありまして、一般論として、こういう規定は先進諸国にもない、三年も解雇制限をしているというのはない基準法でありまして、そういう意味では私は進んだ基準法だと思っておるわけであります。  そこで、問題は、罹災した人の実際の実質的な補償をどうするか、法律上これをもう永遠に社員として解雇しないでおくという法律上の問題、いずれをとるかということが審議会でも御議論になったわけであります。そこで意見がいろいろ出ましたのでありまするが、結局法律上は、労働基準法という、諸外国に比べて進んだ法律があるわけでありますから、それ以上ずっと社員として採用していくという——まあ自由企業ですから、そういう会社もあるでしょう。おそらく三池なんかの会社は二十六人全部首を切るかどうか、私は知りませんが、そういうことはひとつ団体交渉なりで解決するということがいいのではないか。労働省としては、そういう業務上労働不能になった人を一生療養をみていく、そうして家族も食えるという姿の実質的な補償ということを考えればいいのであって、そのためには介護料を月一万円出そうと思っております。労災補償で三万円内外の長期療養補償を労災保険でもらえるわけであります。会社も、私の聞くところでは、見舞い金をずっと続けていこう、合計すると現在の給料よりもたくさんその人たちに差し上げられることになるわけなんで、そういった実質的な補償ということで目的は達するのではないだろうか、こう考えておるわけでありまして、法律上こういう諸外国もとっていない制度をとるということは、企業の経営権、あるいは人事権——現在の日本社会はいろいろな自由企業体制でございますので、かえって波及するマイナスの面もあるという御意見審議会で出たのはごもっともでございます。そこで、政府といたしましては、ただいま御提案申し上げましたように、そういう実質的な補償という面で介護料という制度を立法化しようと、こういうように踏み切ったわけでございまして、決して何といいますか、会社で自由にやれという意味じゃございません。労災補償とこの介護料とをあわせて、しかも、会社というものは社員に対する考え方というものをあわせて実質的補償と考えておりますので、その点はひとつ御理解賜わりたいと思う次第でございます。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 あなたのおっしゃる実質的な補償とは何か、そこに問題が出てくるわけですね。いま介護料と健康の診断と二つだけが政府の提案された法律案ですね。労災補償によっていけば治癒まで補償をしていくことができる。しかし、介護料といったところで、それじゃけがした人がだんだん労働力が少なくなって収入が少なくなった人に、幾らかでも残存労働力に対して介護料という概念が出てくるか。それはどういう理屈がつくのか知らないが、出てこないのではないか。本来の健康で働いておった人たちが、会社の責任、事業者の責任によって爆発して、そうして労働力削減された、けがをした、後遺症になった、こういう人たちは、それじゃ残存労働力だけで労働賃金を処理していったらいい、これでは保護でも何でもない。そういうことも、それは病気になって動けない人の保護云々という問題をここで言っておられるのだと思う。しかし、あしたから働けないという人まで認定をして職場にほうり出そうとしたことがあるじゃないですか。そういう議論をしたら長くなるから、私は基本的な問題だけにいましぼっているわけだけれども、こういうものの考え方自身が私らには納得できぬのですよ、労働者になりかわって。皆さんは労働者の家族の皆さんとお会いになったことがありますか。その日の生活に困っている不安定な状態に置かれていって、そして認定の一枚の紙になるか通告になるか知りませんけれども、その後は何の保障もない。炭鉱の労働者社会の暗やみに落ちていくのじゃないですか。これは他の産業とは人間の生命にものさしを合わしたら一緒やとおっしゃるかもわからない。しかし、通産省も言われたように、学問的、理論的にガス爆発、炭じん爆発は起こり得ないということは、私もそう思います。水没事故、落盤事故については作業の過失から出てきたような問題もありました。企業家が全責任を持つような問題もありました。しかし、ガス爆発は、保安がちゃんときめられておって、それから三池以後五回も出て、それじゃ今後再び起きないとだれが保証するか、そのことが一つであり、いまその傷病のために呻吟している皆さん方にはそれじゃどうこたえるのですか。当然じゃないですか。当然どの企業も、そういう事業場に起きた災害のことは守っておるとおっしゃるけれども、その守っているというのは、何で社会の規律だから法律に書けないか、不心得者が出ぬように書けないか、あたりまえのことですよ。それくらい今度のガス爆発の事故の皆さんなんかを守っていくというのが、近代化していく社会の私は法律というものはそういうものだ。どこに支障がありますか。支障がくるというなら、もっと根掘り葉掘りいえばどうなっていくのですか。それじゃ切り捨てごめんでいい、よく世間でいわれる生産第一主義だから、人間の生命は軽く見ていいという結論しか出てこないじゃないですか。その基本的な問題を守るということに前へ話が進まなければ、私はその問題だけを言っても、労働省があれでいいと言わぬばかりのことをおっしゃる。気持ちの上ではようわかるけれども、それでは炭鉱労働者を守ることはできぬのですよ。また似たような産業が今後たくさん職業病として出てくるかわかりません。そういう労働者を守るけじめというものを私はつけておくべきが当然だと思う。どうもそこのところあたりがよくわからぬ。
  50. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 基本的な考え方大臣からお話がございましたので、私からいまの質問に関連して補足させていただきたいと思います。  業務上の災害を受けられました労働者方々につきまして、できるだけ手厚い措置をいたしたいという考え方は藤田先生と私ども何ら違いはないわけであります。ただ、その措置をできるだけ実情に沿いまして考えたいということから、大臣は先ほど長期傷病補償に移行した人の例につきましてのお考えを申し上げたわけでございます。長期傷病補償に移行したという者についてはそのような考えもある。それから、長期傷病補償に移行しない、一応職場復帰できるといったような認定を受けた者についてはどうするか、こういう問題が出てまいります。今回提出した法案で特色の一つは、アフターケア制度を法律的に確立するということでございます。特に一酸化炭素中毒患者のように、精神障害、神経障害が生ずるという方々に対しましては、かりに医療を施すことがほぼ終わりましたような平衡状態に達しましても、そのあとでさらにアフターケアが必要であるということは十分考えられる。そういうものをどうするかという問題につきまして、詳しい内容は労働省令で定めますけれども、アフターケアという制度を設けたわけであります。  それから、賃金補償の面につきましては、確かに触れておりません。しかし、その問題につきましては、職場復帰が可能だとされた後における職場の配置が個々具体的にどうなるかという問題がございます。それは一種の労務管理の問題にも属するわけでございまして、対象労働者のすべてを画一的に扱うということは必ずしも当を得ないかと存じます。その障害の程度にもよりますし、当人の能力にもよりまして、かりに配置転換をいたすといたしましても、個々具体的にきめなければならない問題だ。その場合に、労働能力が失なわれておるという者について前と同じ賃金が得られないじゃないかという問題が当然考えられる。私はその問題に結びついておるのが障害補償の問題だろうと思うわけであります。障害を受けまして身体に障害が残る、労働能力が低下する、これはもう明らかなことであります。その低下した労働能力の部分をどのようにして補うのか、それを補償という面でどのようにして補うのかという面があるわけでございます。その点につきましては、現行の制度の上に立ちまして、できるだけ適切に障害補償を行なうように行政的にも努力をするということは、審議会の審議の中でも申し上げ、審議会の答申にも出たところでございます。しこうして、その障害補償が現在適当かどうかという点については意見がございます。その意見がありますことにかんがみまして、労働省では障害補償専門家会議を開きまして、鋭意検討をいたしておるところでございます。その過程におきまして、精神、神経障害と他の障害との評価が適切であるかどうかといった基本問題が検討されるわけであります。したがいまして、私どもは問題意識として、神経障害とか精神障害をより適切に評価することが必要ではなかろうかというふうに存じておりますが、いま専門家の間で議論を進めております過程なものですから、今回の立法措置としてはそれが間に合わなかったというのが現実の姿でございまして、その精神といたしましては、CO中毒患者のような精神、神経障害の残る方々に適当な補償をいたしたいということについては、私どもの気持ちは、何と申しますか、相当その点については向いておると申し上げて差しつかえないかと思います。そのような問題がございますので、ただいま藤田先生が御指摘になりましたもろもろの点につきまして、これを具体的にどう措置するかという点については、それぞれこまかい対応のしかたがあろうかと存ずるわけであります。目下も鋭意検討を継続しておるわけでございまして、国会の審議過程におきましても、私どもまた意のあるところを申し上げまして御了承を賜わりたいと存じておる次第でございます。
  51. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのアフターケアとかリハビリテーションなんというものは、それは一般の病人においても当然国家や社会がやることです。それをやってやり抜いても、それじゃ後遺症のできた労働力は健康な労働力に返りますか。似たようなことで、けがして後遺症のある人はどうして前の健康当時の労働力が生まれてくるのですか。いま学者で検討中だと言うけれども、学者で検討して今回のこの法律に入れられるのですか。それはいずれ追ってなんという話では、それじゃ何が補償になるのですか、ならぬでしょう。だから、この国会でそういう減収補償や生活保障ができたり、家族の皆さん方や遺族の皆さん方のいろいろの処置をこの法律の中に盛り込んで仕上げたいとおっしゃるなら、解雇制限も含めて検討してやってもらいたいという形のすべての意思なら私もわからぬことはない。将来において云々というようなことでこの場をのがれていくというようなことではなかなか納得はできぬ。それはあまりにも少し私は扱いが軽んじられているんじゃないですか。この間、佐藤総理大臣でも、政府案と社会党案とがある。しかし、これは超党派で、炭鉱労働者が一番喜んでもらえるものをつくってくれと答弁をしているじゃないですか。それは何ですか。それはやはりいまの被災労働者が保障され、守られるということに尽きるんじゃないですか。ここで法律を出したから、それはあなたの立場はあるか知りませんし、労働省立場はあるかもしれませんけれども、これでは足らないというところは一ぺん足して、炭鉱労働者に一番喜んでもらうような立法援護措置をつくってもらいたい、閣議で総理大臣がそう言っているんですよ。これは私たち参議院の社会労働委員会で決議したばかりじゃありませんよ、与党の自民党と社会党が覚え書きをつくっている、これは御承知のとおりだと私は思っているんです。労働省が、それじゃどの企業においても、業務上災害が起きたら会社でうまくやるだろうということで、首を切らないで減収をしておいて、それを全部労働省の責任で、佐藤内閣の手で全企業にそれはきちっと約束ができるんですか。できないでしょう、なかなかそんなことは。そこを私は明らかにしてもらいたい。
  52. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 大臣が先ほどお答えしましたのと私が申し上げました点は、基本的な考え方は、労使間における労働条件の問題につきましては、労働法の基本構想としては、法律で労働条件をここにきめまして使用者に強制するものと、それから、労使の自主的な交渉によってさらにより以上のものを獲得できるという構造になって、おるのではないか。そこで、法律で使用者に強制し、あるいは国みずからが行なうとすれば、どういう理論のもとにどの程度措置をするかということになろうかと思うのであります。藤田先生のおっしゃいますことは、労働者を守るために必要があるということは私も十分同感でありますけれども、理解できるんでありますけれども、ただ、法律という形態で使用者に強制し、あるいは国がみずから行なうという点につきましては、そこにはおのずから限度というものがあるのではなかろうか、その点を申しておるわけであります。したがいまして、もし実質的に満たされ得るものであるならば法律で書く必要はないじゃないか、あるいは、また、理論的に他の現行法律制度とぶつかり合うものにつきましてはきっちり筋道をつけまして、法律として処置をしなければいかぬということであります。いまの障害補償の格づけの問題にいたしましても、いま専門家の間で非常に大きな論争があるわけであります。たとえば両眼失明と両手両足の喪失はどうかとか、それと脳神経の障害はどのように、どっちを上にするか下にするかという、身体のいろいろな障害の状態とバランスをとった評価をどうするかという点について非常に議論があるところでございまして、先生御承知のところでございます。そういった問題につきまして結論が出ておりませんものですから、これは事を回避するのではなくして、いま専門家の間で各種障害との比較評価といったような点について非常に真剣に検討されておりますので、そういった問題についてはにわかに具体的な結論が出ない、こういうことを申しておるわけであります。かような基本的な立場に立ちまして、今後どうするかという点につきましては、法律の問題以外に、行政措置としてなし得る問題があるわけであります。この点につきまして、基本的な内容は労災保険審議会の答申にすでに指摘してあるところでございますので、問題に向き合う姿勢といたしましては、総合的に私ども考えたいと存じておる次第でございます。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いままでの政府経験立場から、法律にするのはどうかという御意見、ここは立法府ですから、考え方が同じなら立法府で法律をつくる、それから労使の間にいろいろのことが進むのじゃないか。行政措置としてはできるだけのことをしたいというなら、それは労働省で大いにおやりになったらいい、それを社会の規律にわれわれはしたらいい、こう思うわけです、立法府ですからね。私は、だからそういうものが一年の間検討されてきて、一番最初労働省意見を申し上げたのは、そういう事態の中できておるのに、なぜそういうものには触れないでこういう法律をお出しになったかということが質問の出発点です。だから、いまおっしゃったように、いままで答弁されたことは、労使関係でできるだけのことを行政上の問題として援助したい。法律上の問題はいままで私らの立場からは言えないけれども、法律できめるか行政できめるか、それは立法府の話です、こういうことに考え方は同じだけれどもというお話なら、それはそれなりにこの委員会は進めます。しかし、それだけで棒にもくいにもかからぬ、知らぬということをおっしゃるのかと私は思ったのですが、そうでもないようですから、きょうは大臣が時間で引っぱられておるので、これでやめますけれども、なかなかはいよろしいというわけにはいかぬわけです。まあひとつ行政をおやりになる立場から、私たちは、院の決議であり、与党とわれわれの覚え書きもできておる問題でありますから、むしろどうしたら総理の言うように炭鉱労働者が一番喜ぶかという規律をここでつくるために労働省は大いにがんばってもらいたい、これはお願いしておきます。
  54. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  午前の議事はこの程度として、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  55. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  労働問題に関する調査議題といたします。これより質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  56. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 きょうは、御承知のように、各民間の企業、あるいは政府関係の機関におきましても、すでに本年度の賃金の引き上げが決定をされまして、例年にない高額賃金の引き上げ、こういうことがいわれているわけでございますが、そういう中で、国家公務員、地方公務員合わせまして二百五十万、家族を含めますと五百万人以上の労働者がひとり取り残されて、いま物価の値上がり、ことに雑費の値上がり等の中で苦しい生活をしいられているわけでございますが、したがって、そういう国家公務員、地方公務員の労働者の皆さんは人事院の勧告に対して一斉に目を向けて注目をしているところでございます。そこで、きょう総務長官がまだおいでになりませんから、人事院総裁にまずお伺いをしたいと思うのでございますが、すでに例年からいたしましても、八月の中ごろには勧告が出される、こういう見通しでございます。そこで、先ほど申しましたように、もう民間の企業でも、あるいは公労協関係でも決定をした段階で、人事院としてはもう資料が整った、こういうふうに私は思うわけでございます。したがって、ほぼ勧告の大綱については固まっておるのではないか、こういうふうに思うのでございますけれども、その辺の経過と申しますか、現在の状況についてまずお伺いしたいと思うのです。
  57. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御承知のとおり、私ども給与勧告は、五千数百の民間の事業所を直接にとらえまして、そこで四十数万人の従業員の一人一人の給与をシラミつぶしに調べ、これは大体四月時点でやっております。その結果、複雑な計算をいたしましてその水準を求めて、そうして公務員の四月現在の給与水準とこれを突き合わせて、その隔たりがどのくらいあるか、そうして隔たりがあればそれを埋めなければならぬという態度で、ずっと従来やっておるのでありまして、したがいまして、その基本的な民間調査の進捗状況を申し上げなければいけませんが、これは五月中に取りまとめをやりまして、目下整理の段階、それからさらにこれをまたいろいろな数学の方式で分析をするという段階に入るわけであります。したがって、その結果が出ますのが大体今月の末、あるいは八月上旬というのが例年の実績でございまして、それによって、先ほど申しましたように、官民の水準をとらえましてわがほうの勧告の基礎にするということでございますので、その辺の正確な見通しというものは、今日全然とは言いません、途中でその表をあけて抜き取り検査式にやってみたところで意義のないことでございますし、それもできませんが、したがって、そういう意味の見通しはついておりませんが、いまお話がありましたように、従来一般に公表されておる労働省、あるいは経済界その他の見方から申しますというと、この春の民間における賃上げの攻勢は相当大きなものがあったということでございますから、私どもとしても勧告は免れないだろうということで考えております。
  58. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 過去衆議院なり参議院のそれぞれの予算委員会なり内閣委員会等で論議をされておりますから、そういう点についての重複は避けたいと思いますが、人事院というこの機関と申しますか、一体どういう任務を持ち、それから、勧告をするということはどういう目的を持って勧告をするのか、その辺まことに常識的な質問でございますけれども、お伺いしたいわけです。
  59. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 十分御承知の上のお尋ねだと思いますけれども、われわれのお預かりしております仕事は、試験とか公正審理とかいろいろございますけれども、その中で、当面は給与の問題だろうと思いますので、それに焦点を合わせて申し上げますが、要するに、御承知のように、公務員は公務員法によりまして団体交渉権、あるいは争議権というものを否定されておるわけでございます。否定しっぱなしでとうていこれはいいことではない、それで済むことではありませんので、公務員法で中立機関である人事院に公正な立場から給与の勧告権というものを与えられまして、そして公務員給与のあるべき姿を勧告する、そして内閣なり国会なりの適切なる御措置を期待しておるというのが法のたてまえであろうと思います。したがいまして、普通に人事院は労働基本権の代償的機関だというようなことをいわれておりますが、その意味においてはまさにそうであろうというふうに考えております。
  60. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、また人事院総裁にあとで具体的な問題についてお伺いしたいわけですが、いま人事総裁の言われたように、人事院というものが昭和二十三年ですか、公務員のストライキ権の代償機関として設置をされた、そういうふうになっているわけでございます。給与担当長官として、この人事院の使命がそういうような使命である立場からすれば、当然人事院勧告というものは政府においてこれを完全実施をするということが、これは使用者としての責務からも当然である。そこで、五月の二十三日ですか四日ですか、長官は、国家公務員共闘会議という一つの会議がございますが、そこの代表と会見をされております。その際に、この勧告の取り扱いについて従来よりも少しでも前向きで努力をしたい、あるいは完全実施を目標にして従来のマンネリを打破したい、こういう発言をされておるわけですね。一体、その発言の中身というのはどういうことなのか、具体的にどういうふうなことを想定をしてこういう発言をされたのか、その辺をお伺いしたい。
  61. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 人事院の勧告を尊重しなければならないことは、これは言うまでもありません。政府としては十分にこれを尊重して、完全実施のために努力することは、これまた言うまでもないことであります。今日まで完全実施ができていないことについて長い間いろいろの御不満もあり、御批判もあることも私は承知いたしております。給与担当大臣となりましてからも、この問題を非常に重要視いたしまして、長年かかってなかなか問題の解決ができなかった事情も知っておりまするけれども給与担当六人委員会という委員会がありまするので、その方々とも御相談いたしまして、いまおっしゃったような一歩でも前進という、何かマンネリを打破するという方向がとれないものだろうかという御相談をいたしてまいったのであります。しかし、四月の調査時期にも入りましたので、四月の調査、そしてこれから勧告をいただくという従来の方針とまたことしも一致してしまったわけでありますが、従来あったような批判を少しでも少なくするための努力というものは、これはいたさなければならない。完全な満足は得られないとしても、批判を脱して一歩前進したいという気持ちには変わりはないのであります。そこで、関係閣僚の間で御相談いたしておりまするが、その内容について具体的に述べろとおっしゃるのでありまするが、いまその点を述べる時期ではないと私は考えております。また、先ほどのお話は、笹川君の国家公務員共闘のお話でありまするか、あの方々ともたびたびお目にかかっていまのようなお話を私は申し上げましたが、しからば具体的にどういうことをやるのかということについては、いまちょっとその話は差し控えたい、このように考えております。
  62. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 長官の来る前に前置きとして、もうすでに民間企業においても、あるいは公労協関係の機関においても、例年にない高額の賃金の引き上げだといわれるような本年度の賃金の決定がなされておる。ひとり国家公務員、地方公務員のみがいま取り残されてこの苦しい生活をしいられておる。したがって、国家公務員、地方公務員の労働者は、一斉に人事院勧告、あるいはその勧告をどういうふうに政府が取り扱うかということについて非常な関心を持って見つめておる。したがって、私は、この際、具体的に勧告が出されなければわからぬというようなことではなしに、問題は政府がどういう誠意を示すかということが労働者が期待しておるところですから、そういう抽象的なことばではなしに、具体的に勧告が出た場合にはどうするという、まあそれは断定的なことは言えないにしても、少なくとも、いままでのような、財源がないからどうのこうのということでなしに、政府の一歩前進した中身というものをこの際明らかにしてやることが、私は、いま家族を含めて五百万人以上の国民に対する政府の義務ではないか、使用者としての責務ではないか、こういうふうに思うのですね。
  63. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) いまおっしゃったこと、私全くそのとおりであろうと考えております。昨年度の場合には、まあ国家財政の状況から云々ということも承っておりまするが、今回、昨年の十二月から私このほうの仕事を担当いたしましたにつきましても、できるだけ組合の方、あるいは関係者の御意見を聞きながら前進したいという気持ちで実は対策を練ってまいったのでありまするが、先ほども申しましたように、やはり四月調査という同じような形を踏むことになってしまいまして、いわゆる根本的な問題について触れることは、根本的な問題についての解決ということはなるほど困難になったことは、これは言うまでもないのでありまするが、しかし、今後勧告が出て、これをどうするか、もちろん一番いい姿は完全実施であります。しかし、それが財政状況その他とにらみ合わせてできない場合についてどうするか、その具体案を示せというたってのお話でありまするが、やはりいまの段階においてはもう少しわれわれにおまかせを願って、口頭禅に終わらないように、幾らかでもマンネリを打破した前向きの姿勢でこの問題の解決に当たる努力を続けるということで御了解を願いたいと思います。
  64. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 長官は二時までだそうですから、またいずれ機会を見てやりますけれども、公務員は、御承知のように、公務員法の九十六条、あるいは九十八条等の服務という規定の中で、非常にきびしい規定があるわけですね。これは条文をいまさら読み上げるまでもないのですけれども、そういうきびしい服務が規定されておる、そういう勤務をしいられておるそういう中で、公務員に対する待遇、処遇というものは、やはり労働基本権がいま剥奪をされておる現状からすれば、当然この代償機関としての人事院の勧告というものは、政府は一方ではそうしたきびしい服務をしいておるわけですから、それに対応する措置としての政府の責務というものをこの際明確にしていくということが必要だと思うのですけれども、一体長官としては、それではこの代償機能を完全に果たすためにはどうしたらいいのか、そういう国家公務員の服務の現状等も照らし合わせまして、こうした国家公務員なり地方公務員の利益を保護するためには一体どうしたらいいのか。いままでのように人事院勧告がほとんどというか、もう完全に無視をされてきた今日を振り返ってみても、こうした国家公務員なり地方公務員の利益を保護するためには、これはこの際真剣にそれこそマンネリを打破して取り組む必要があるわけですけれども、もう一度そうした公務員に対する使用者としての責務をどうしたら果たせるのか、あるいはストライキ権の、あるいは団交権の代償機能というものを完全に果たしていくにはどうしたらいいのか、ひとつそういう点をもう一度お聞かせ願いたいわけです。  それから、もう一つは、御承知のように、公労協労働者は、三十三年以降、仲裁裁定というものが完全に実施をされております。しかし、国家公務員関係は勧告が完全実施をされておらない。で、これはあとで労働大臣にお聞きしたいのですけれども、公労協関係労働者の仲裁裁定が完全に実施をされるようになった一体その趣旨と申しますか、どういうことでそういうことになったのか。それで、公務員だけがいまもって差別を受けているこの現状をどういうふうに考えておられるのか。これはひとつ総務長官並びに労働大臣からもお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  65. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 公務員の立場というものも私はよく存じておるつもりであります。そこで、どうすることが一番よろしい方策であるかということでありまするが、やはり人事院の勧告を忠実に守って、これを完全に実施するということ、国家財政の許す限りにおいてそれをなすということが私はベストであろうと考えております。しかし、財政状況とにらみ合わしてそのベストの措置がとれない場合、ベターの方法というものが私はやはりあるはずだと考えておるが、それがとれないところにいままでいろいろ御批判があったと思うのであります。もちろんベストをできるだけ望むのでありますが、できるだけ、それができない場合にも、次善の策として公務員の方々措置をとるということが私は給与担当大臣としての責任であると考えておるのであります。  それから、第二の御質問でありますが、三公社五現業の場合、今回調停段階で当事者能力がどうこうということをいわれながら解決をみたということは、これはまことにけっこうなことであります。また、従来とも、三公社五現業が解決をして、そうして公務員のみが日の目を見ないというお話も私はよく承知しておりまするし、そこに公務員の方々の御不満もあることは私はよく存じております。三公社五現業は独立採算制の企業体であり、一般公務員とはその給与財源の調達方法並びに給与決定方式を異にしている結果、両者が必ずしも同じように取り扱われていないという実情はありまするけれども、同じ仕事、まあ完全な同じ仕事とは申せませんが、同じような畑で働いている方にそういう格差があるというか、不均衡があるということは、これは私はたいへんな問題だと、このように考えておるわけであります。したがって、繰り返すようでありまするが、公務員の方々の心情というものを私は考え、人事院の勧告というものをできるだけ完全に実施する方向に向かって努力することが私たちの責任であり、また、できるだけの努力をその線に沿って私はやっていきたい、このように考えております。
  66. 早川崇

    国務大臣早川崇君) この仲裁裁定につきましては、法律上はっきり使用者、三公社の場合には公社を拘束する。それから、政府は裁定を尊重しなければならないと、文字どおりずばり規定されておるわけであります。人事院勧告の場合にはそういう規定はございません。そういう点は、三公社、いわゆる現業機関というものとまた一般公務員と若干のやはりニュアンスがあるわけであります。で、ILOなんかの考え方にいたしましても、代償措置というものの解釈につきましては、三公社、あるいは現業の場合には、いわゆる仲裁裁定——公労委というもので出しておるわけであります。代償措置の解釈は、一般公務員の場合には給与並びに労働、勤務条件を法律できめればよろしい、いわゆる国会でこれをきめるんだから、人事院というものの勧告というようなものを代償機関とは認められない、むしろプラスアルファーとしていいことでありますから、人事院という特殊な機関が日本にあるということは非常にけっこうなんだ、われわれは非常に多とする、尊重しておるところでありますが、若干のニュアンスがある。しかし、そういう法律的な考え方、また、ILO的な考え方を離れまして、労働行政全般として考えました場合に、根本精神において、やはり人事院勧告というものはできるだけ尊重して、総務長官のいわれますように、完全実施に近づけていきたい、できれば完全実施というような方針につきましては私も全く同感をいたしておるところでございます。
  67. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 人事院が、いま労働大臣の言われたように、ILOの原則からいって、完全な代償機関ではないということは、私もそのとおりだと思います。それだからこそ、私は、よけいこの公務員に対する使用者としての責務、あるいは労働基本権を剥奪をしているという立場からするこの公務員に対する態度、こういうものは、私は、公労協関係、あるいはその他の政府関係機関労働者以上に、もっと真剣になって取り組んでいく必要があるというふうに思うのです。ところが、それがいまいろいろお話がございますように、ほとんど守られておらないというところに今日国家公務員、地方公務員の皆さんの大きな不満が出てきているわけですから、私は、こういうことであれば、当然この完全な代償機関というものがない以上、国家公務員、地方公務員には憲法で保障された労働基本権というものが明らかにあると、法律的に。こういうふうに考えられるわけでございますけれども、その辺はどうお考えになっておりますか。これは労働大臣でも、あるいは総務長官でもけっこうです。
  68. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 私の申し上げましたのは、ILO的な解釈では、要するに、国家公務員、一般公務員というものの給与並びに勤務条件は国会における法令できめるということになっていること自体がもうすでに代償措置である。なぜならば、国会は最高の国民の総意のあれでありますから、西ドイツなんかの場合にはそういうことでストライキ権も団交権も公務員は認められておりませんが、ILOの解釈ではそれでいいのだという、この法律解釈に立っておるわけでございます。したがって、この代償機関というものは、そういう面でそれが代償機関だ、こういう解釈でございます。したがって、このストライキ権がないのだから、ストライキ権を認めるとか、あるいは団交権を認めるとか、そういうようには結びつかない。また、最高裁の判例を見ましても、公務員は全体の奉仕者であるから、そういう面からの制約は違憲ではないという解釈、判例がたくさん出ておることは御承知のとおりだろうと思っておる次第であります。
  69. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 国会が代償機関である、こういうことですか。  では、人事院総裁にちょっとお伺いしますが、いまの労働大臣の、国会が代償機関であるという見解について、人事院総裁としてはどういうふうにお考えになり、いままで人事院総裁として人事院勧告なりを出してきた考え方というものとどういうふうに見解が合致するし、あるいは、また、それとも違うのか、それをお尋ねします。
  70. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ただいまの質疑応答を拝聴いたしまして、だんだんさびしいような気持ちに追い込まれてきたわけでありますが、私は最初に、人事院は世にいう代償機関でありますとはっきり申し上げた理由は、先ほど前段に述べましたように、憲法二十八条の勤労者としての地位を公務員は持っておる。しかし、これはまたいま労働大臣が言われましたように、その他の条文からくる理由によって団交権及び争議権を否認されている、これも事実で、説明としてはそういうふうになると思うのでありますが、それに対して、しからば団交権にかわるべき機能を営むものがどこかになければならない、また、それを設けるのが筋だというのが、また大きな目から見た憲法の精神であろうと思います。したがって、国家公務員法には人事院というものを設けて、中立的な立場から適正な給与その他についての勧告権を与えた、これは一種の代償機関であると私は言っていいと思うし、また、いま申しましたような前提からいえば、これは間違いじゃないと思います。ただ、労働大臣の言われましたところもこれは一理あるので、私どもの勧告がそのものずばり法律としての効力をもってこれはもう給与法そのものになってしまうということであれば、完全に機能として代償的機能までも持つことになりますけれども、それはそうではないので、政府に勧告し、あるいは国会に勧告し、そうして立法ということによってわれわれの勧告を実現さしていただくということからいえば、われわれは代償機関ではありますけれども、代償機能の面においては最終の立法機関である国会とともに代償機能を営んでいる、こういう筋になるのじゃないかと思うわけであります。
  71. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私も、昭和二十三年に国家公務員が政令二〇一号でストライキ権を奪われた、そうしてその際に公務員法が制定をされてこうした人事院ができたという経過を考えますと、私は、やはりいま人事院総裁の言われたような国家公務員のそうした団体交渉権、そういうものにかわるものとしてそういう人事院ができたというふうに私も考えます。しかし、それは先ほど申しましたように、ILOの原則からいくと完全な代償機関ではない、また、そういう機能は人事院は持っておらないということは私も言えると思います。  そこで、労働大臣はことしの春闘ではたいへん株を上げまして、まあ公労協関係のいままでのような仲裁裁定という段階から一歩前進をした解決のために指導された、こういうことになっているわけでございますが、六人委員会の一人として、労働大臣は、この人事院の勧告の取り扱いについては、そうした公労協関係労働者に見せたようなやはり積極的な姿勢というものがとられるべきだ、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  72. 早川崇

    国務大臣早川崇君) まことに微力でございますので、柳岡先生の御期待どおりいくかどうか存じませんが、人事院勧告というものは公労協の仲裁裁定ほどの強い法律的な権限はございませんけれども労働大臣といたしましては、一歩でも二歩でも前向きに人事院勧告が実施されるように、微力ではありますけれども、私の与えられました権限内で努力をいたしたいと思っております。
  73. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 抽象的なお答えで、どうも納得がいかないのですけれども、この公労協の場合には三十五条でもって法的拘束力というものが仲裁裁定についてはあるわけです。しかし、この人事院勧告については、先ほどの機能なり代償機関との厳密な意味での解釈からくるのかもしれませんけれども、勧告等に対する法的な拘束力というものが規定をされておらないわけですね。一体そういう根拠と申しますか、理由というものはどういうところにあるのか。これは先ほど労働大臣は、すべて国会できめる、こういうことだといわれればそれまでですけれども、一方ではやはりはっきりと労使の決定に服従する義務というものがうたわれているわけであります。ところが、勧告についてはそうした法的拘束力というものが規定をされておらない、そういうところに今日の問題がまた出てきていると思うのです。こういう点についての見解、それはどういうふうにお考えですか。
  74. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 法律論としましては若干ニュアンスの違いが確かにございます。たとえば全逓の郵便関係の先般の中郵事件の判決を読みましても、いわゆる現業関係のあれにはストライキをある程度認めるという判決でありまして、一般公務員は全体の奉仕者であるということで、国家公務員法も地方公務員法でも、最高裁の判例をいろいろ調べましても、むしろはっきりやはり争議権というものを全面的に認めないという立場をとっており、いま言った仲裁裁定の法律的な拘束力と人事院というものの法律的拘束力、これまた若干のニュアンスがございますので、法律的な立場から申しますとニュアンスの差は私は明らかにあると思いますが、しかし、政治論としてものを考えますると、同じく勤労者であり、また、生活に必要な俸給をもらう権利はあるわけであります。人事院勧告というものも、そういう立場からそれぞれ給与、あるいは三公社五現業等を御参考にして勧告を出され、これをできるだけ尊重してまいるというのは、これは当然のことでございまして、そういう根本精神におきましては御指摘のとおりだと考えております。
  75. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、そうした勧告が現在まで一回も完全実施されなかった一体原因というものはどこにあるのか。これはまあ財源の問題だというふうにいわれるかもしれませんけれども、どういうふうに大臣考えになっていますか。
  76. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) 従来、人事院の勧告がいわゆる勧告どおりに実施されていないという理由でございますが、ただいまも御指摘がございましたように、主としては財政的な事情ということが言えるかと思うのでございますが、と申しますのは、人事院の勧告は、御承知のように、四月現在における民間給与調査をいたしまして、その結果に基づいて勧告を具体的に提出されるのは、まあ従来七月なり八月という時期になるわけでございます。つまり年度の途中ということになるわけでございますが、しかも、その内容は、御承知のように、五月にさかのぼって実施するというようなことになるわけでございます。こういう点からいいますと、すでに相当慎重な審議をして新年度の予算が決定され、そしてそれが進行しつつある途上においてかなり多額の補正を要する勧告が出てくる、まあこういうことになるわけでございまして、具体的な処理の場合には、したがって、その勧告の実施にどれだけの財源が必要であるか、そして、また、年度内にどれだけの財源を調達することができるか、そういった面が非常に大きな問題になるということでございます。もちろん、その他この勧告が実施されます際の経済的な影響、事情、そういったものもいろいろな角度から検討されるわけでございますが、それらの点を総合いたしまして従来におきましては勧告どおりに実施されないという遺憾な事態が継続してきたわけでございます。
  77. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 三十九年と四十年ですか、実施時期が一カ月さかのほってというよりも、一カ月早くなって九月実施ということになったのですが、これは一体どういう観点からそういうふうになったのか。私は、財源の問題よりも、やはり当時の政府の勧告に対する考え方なり、あるいは公務員全体に対する考え方というような、そういう姿勢のほうがそうした一カ月早めたということになったのではないか、こういうふうに思うのですけれども、この一カ月早めたのをどういうふうに見ておりますか。これはだれですか。
  78. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) 私から申し上げるのが適当かどうか存じませんが、関係者の一員として申し上げますが、いま申し上げましたように、従来とも、勧告の実施というものは非常に困難にあっておるわけでございます。しかし、それにもかかわらず、何とかこれを改善したいという意向が政府の部内に強くあることも事実でございます。まあ私どもの見方としましては、三十九年以来、それ以前の十月実施が一カ月繰り上がって九月になったということは、やはりそういったいろんな困難な事情にかかわらず、何とか少しでもよくすべきだという努力がここで出てきた、あらわれたというふうに見ているわけでございます。
  79. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 きょう大蔵省から来ておりますか。ことしは非常に昨年後半からの好景気によって税収入が異常な伸びを示していると、まあこういうふうに予測をされているわけです。そこで、一部では予算編成当時でも二千億から三千億の自然増収というものがあるだろうといわれておるわけです。そして最近ではさらにそれが大幅に伸びまして、八千億近いこの自然増収が見込まれるんでははないか、まあこういわれているわけですが、大蔵省はどういうふうに予想と申しますか、現在予測を立てておりますか。
  80. 米田正文

    政府委員(米田正文君) ことしの自然増収については、いろいろ新聞や雑誌等でもいわれておることも承知をいたしておりますし、当院の委員会においてもそういう御意見のあることも承知をいたしておりますが、大蔵省といたしましては、この自然増収の測定については、省内でいろいろと資料を集めて研究を要する問題でございますが、今日の時点ではまだ数字的には出しておりません。したがいまして、数字的に今日申し上げることはできないのでございますが、まあいまのところ財政が悪くなるという見通しはございません。ある程度よくなるであろうということは予測をいたしておりますが、数字的にまだ申し上げる段階ではございません。
  81. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 財政的にもある程度明るい見通しがある。それで、労働大臣も総務長官も、とにかく前向きでマンネリを打破してことしのは解決をしていきたい、まあこういうことですから、私たちとしても、ことしの人事院勧告はおそらく完全に実施をされるであろうと、まあこういうひとつ期待を強く持ちたいと思います。  〔委員長退席、理事藤田藤太郎君着席〕  そこで、もう一つお聞きしたいのは、行政調査会ですか、これが三十九年の九月に、国家公務員に対しても、団交権、あるいはストライキ権というような労働基本権を与えるべきではないか、与えるべきだと、まあこういう意見を出しております。しかも、先ほど来お話がございましたように、人事院というものが完全にこの代償機関としての機能を持っておらないということであれば、私は、憲法で保障されたそうした基本権は当然公務員にはあると、まあこういうふうに考えるわけでございますけれども、今日これについて労働大臣はどういうふうにお考えですか。
  82. 増子正宏

    政府委員(増子正宏君) 労働大臣お答えになる前に、私一言申し上げたいと思いますが、公務員のいわゆる労働基本権の問題につきましては、御指摘のように、臨時行政調査会の答申もございます。また、それ以前にもいろいろな観点から調査審議をしたことがあるわけでございますが、現在におきましては、政府としまして、引き続きいろいろな角度から検討いたしておりますが、実は、御承知のように、国家公務員のほか、地方公務員、あるいは公共企業体の職員をも含めまして、その労働関係の基本に関する事項というものは公務員制度審議会の調査審議に委託をされておるわけでございます。現在いろいろな事情から審議が行なわれておりませんけれども、できるだけ早くこの審議会が再開されて、それらの問題が審議されることを私ども望んでおるわけでございます。
  83. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 委員長から発言するのはあれですが、聞くにたえませんので、一言労働大臣に聞きたい。  先ほど国家公務員法並びに地方公務員法の問題とILOの問題を引き出されまして法的解釈をされましたが、労働大臣はたぶん御存じだと思いますが、昭和二十二年当時です、国家公務員法ができるときにはちょうど占領当時でありましたけれども、非常に問題が起こりまして、当時の国会議事録を見られるとわかると思う。やはり労働三権を剥奪するということは、公務員ということでも憲法二十八条からいったら非常に問題があるということから、公務員のストライキ権、あるいは団体交渉権を奪うということから、代償機関として人事院を設けるということであの人事院が設けられたのであります。しかし、それでも相当問題はあったのです。人事院じゃわれわれは承知できないということで、相当やった結果、多数をもってあの法律が通ったわけであります。その後仲裁裁定を出しましてもなかなか政府は完全にやらなかった。また、人事院も五月実施ということをなかなかやらなかった。しかし、どうしても何かの形で公務員を保護しなければならんということから、昭和三十五年に初めて人事院が五月から実施すべきであるということを実は勧告したわけなんです。そこに大きい意味があると思う。したがって、この問題は、法律解釈だけでこの完全実施を避けようと思うならば、私は政府をもっと追及しなければならんと思う。予算委員会で私が言ったように、公務員諸君は日本の全労働者の中にあって、ベースアップの率については民間単産おのおの違いましょう、あるいは公労協も違いますけれども、ほとんどの実施時期は四月に実は実施されておる現状なんですね。したがって、先ほど労働大臣は、法律解釈はこうなっておるから、一応完全に実施しなくても違法でないということを釈明した答弁だと思いますけれども、私は、やはり人事院が五月から実施すべきであるという勧告をした以上は、政府がこれを守らなければ、いわゆる私は政府の不誠意だけでなく、人事院の存在を無視したと私は思っておるんですよ。それならば人事院は要らんじゃないですか、政府はかってにきめてもいいじゃないですか。人事院の存在するという価値をあの法律でのわずかな解釈ではなくして、憲法二十八条からくるところの精神からいえば、当然政府は人事院勧告を私は尊重すべきであると思う。私はそれを迫っておるわけなんです。人事院もおそらくそのつもりで五月実施してもらいたいということでいると思う。五月でもわれわれ不服なんですよ。当然四月からやるべきであるけれども、せっかく代償機関の人事院が勧告したのであるから、一歩譲って五月からでもやむを得ないんじゃないかというのが、私の主張なんですね。それを労働大臣のいまの答弁を聞いておると、こういう法律解釈に若干公労協との間の差があるから、完全実施しなくてもいいではないかというニュアンスの答弁はわれわれとしてはどうしても受け取れませんから、その点ひとつ労働大臣からはっきり答弁を願いたい。
  84. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 私は、法律的に、確かにILOの場合の解釈、あるいは法律上の解釈だけを申しておるのでありまして、決してこれはILOはそうだけれども日本の場合は人事院勧告という、むしろそれにプラスしたものを含めての代償措置ということに解釈していいんではないでしょうか。ですから、私は、政治論としては、先ほどお答えいたしましたように、人事院ができており、勧告制度がある以上、できるだけこれを尊重するというのは当然でありまして、これは別に法律に抵触しないからといっても、その勧告権というものを尊重するという政治論といいますか、法律の法意というものを決して私は否定しようとするものではありません。むしろ逆でございます。その点はひとつ誤解されないようにお願いをいたしたいと思います。
  85. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 誤解じゃないです。われわれは絶対に誤解なんかいたしません。過去のずっと歴史を見まして、公務員の給与の問題でいろいろ問題があったことは御存じのとおりだと思います。たまたま労働大臣労働問題全般からいろいろ論じられておると思うのですが、私は、仲裁裁定の価値と人事院勧告の価値は同様であっていいと思うんですよ。それは法律解釈でそういうことは言えても、なぜしからば公務員についていわゆる人事院勧告どおりやれないかという理由は、私は財政的なもの以外はないと思うのです。池田総理にも私は聞きました、佐藤総理にも聞きましたが、財政の関係ということでこれはすべて処理されておりますよ。しかし、財政がしからばいいときに完全実施したかというと、そうでもない。三十五年、三十六年は非常に国の収入がよかったのでありますけれども、完全実施しておらない。しからば、私は、いま労働大臣が重要な発言をしたということは、財政以外にそういう法律的な問題があるからやれないというならば、これは根本的な大きな問題です。人事院は勧告をしなくてもいいんですよ。そこに私は大きい問題があったから、たまたま委員長の席を譲って質問をしておるわけなんです。その点を私は明らかにしてもらいたいと思います。そういう法律的な問題があるから人事院の勧告は無視してもいいという、そういう趣旨であるかどうかということを明らかにしてください。
  86. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ただいまお答えいたしましたように、人事院という機関があり、勧告する以上、当然これは尊重していかなければならぬということは、私たびたびお答えしておるとおりでございます。
  87. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはわかるのですよ。だから、先ほど言われた問題について、私の言っているのはこういうことなんです。私が特に質問しておるのは、仲裁裁定は別として、人事院勧告にはそういう法律上の強制がないという、そういうことであるから、結局人事院勧告は実施しなくてもいいのだという私は受け取り方をした。そうであれば、いままでの各関係閣僚の答弁はそうで全然なかった。また、そういうことを私は言うべきでないと思うのです。そういう意味にとったので、そうでなければそうでないということだけでけっこうなんです。
  88. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 先般の御質問は、法律的なILOの解釈とか、あるいは確かに仲裁裁定にははっきり拘束すると書いてある。また、それを政府は尊重しなければならないとはっきり書いておる。人事院勧告には、当然のことでそれを削除したのか知りませんが、国会を拘束するとも書いておりませんし、政府はこれを尊重しなければならないということを法律にも書いておらないのだと、こういうことだけを申したのでありまして、成立の経過、人事院というものの勧告権がある以上、政治的立場その他を、あるいは労働基本権の立場からいって、これをできるだけ尊重するということ、これは私は当然だと、こういうお答えをいたしたのでございまして、その間の食い違いはないものと確信いたしております。
  89. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはそういうぼくは釈明でけっこうだと思うのですが、これは重要な一つの問題を含んでおるというので、私はたびたびこういうことを重ねて言っておるのでありますけれども、私は、人事院の勧告をいままで過去七回だと思いますが、私は三十五年から内閣委員会をやっておりますから覚えておるのでありますが、その論議の過程では、総務長官はきょうおられませんが、あるときは労働大臣が担当大臣をやられたときもありますけれども、とにかく尊重すべきである、実は仲裁裁定も尊重すべきであるということは当然でありますけれども、人事院勧告も、あの国家公務員法全般を読んでみなさい、勧告を尊重しなければならぬようになっていますよ。と申しますのは、いわゆる争議権もなければ、団体交渉権、団結権もないというものであるから、したがって、人事院というものを置いて公務員のいわゆる給与とか労働条件を守って生活を守ろうという趣旨なんですよ。したがって、人事院勧告を尊重する必要はないというような解釈は絶対出てきませんよ。ただ、法律で強制しているかどうかということは、私は法文のあやだと思っております。労働法規から言うと、大きい問題から言うと、私は別に差別すべき問題ではない、こういう私らは考え方で今日まできておるんです。しかも、それは池田総理も佐藤総理も、予算委員会で私の質問に、そのとおりであります、ただ、国の財政がこういうことでありますので、やはりこの点でしんぼうしてもらいたいということで、二年前ですか三年前に、十月のやつを一カ月繰り上げて九月にしたことも私は経験があります。それ以外に何も理由がない。したがって、私は、今度の場合は、やはり財政問題で六人委員会でいろいろそういうことを論議をされると思う。それならば私はこれから別の問題に考える。労働大臣は先ほど釈明されましたので、私は、法律上の問題の差によって人事院勧告をいままで完全に実施していないということであると了解しますが、それで労働大臣いいですか。
  90. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 人事院総裁もおられますが、六人委員会で、常にこの人事院勧告に対する態度で私が主張しているのはそういうことでございます。法律上のお話が誤解を招きましたのでありまするならば、いま言われたような趣旨に御理解をし直していただければけっこうかと思います。
  91. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それではひとつ大蔵省に。米田さん、きょうは大臣に来てもらいたかったんですが、なかなか当該委員会でないから来られないと思いますが、私は予算委員会で言っておりますが、あのとき私総括質問で、政府昭和四十二年度の予算編成において、要するに七千三百五十億の自然増を見積もって予算を組みましたけれども、これ以上あると、私はそのときまだ三千億程度はあると言ったのでございますが、今日大蔵省では、これが相当多く伸びておるようであります。したがって、大臣に私言っておいてもらいたいと思いますが、あなたにも答弁をお願いしますけれども、今度は財政的に悪いから公務員の給与の五月完全実施を値切るというようなことは、大蔵省としてはよもや言うまいと、私はこう思っている。今年完全実施しなければするときが私はないと思うんですよ。昭和三十五、六年当時の国の税の増収から見て、まだ本年はいいように見ておりますので、この点はひとつ大蔵当局として、あなたが政務次官として私の言うとおりであるということを言ってもらえばけっこうですが、どうですか、その点は。
  92. 米田正文

    政府委員(米田正文君) まだだいぶ先のお話でございまして、いまからことしの税収の伸びが幾らあるかということについては、さっきもお答えをいたしたとおりでございますから、そういう時点でございます。今後の推移を見まして、私どももできるだけのこの問題については誠意をもって当たりたいということだけは御答弁できると思うわけでございます。
  93. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 政務次官に言っておきますが、大臣ともまた実は私この前いろいろ話したのですが、今度は相当誠意をもってやるということを言っておられました、これは正式な場所ではございませんでしたが。それで、あなたから十分お伝え願いたいと思うのです。私は社労の委員長になって、なかなかほかに行けませんので、この機会にあなたにお願いしておきますけれども大臣に、本年は、去年やおととしというような形でおさめようと思ってもそれはだめだ、大きい問題が起こっても、私は六人委員会の方々から何も聞いておりませんけれども、この前の福田大蔵大臣が、あれががんとして聞かなかった。大蔵省はさいふを握っているのですからやむを得ない点もありましたけれども、昨年は非常に不景気ということで、その後相当税収がありましたけれども、不景気ということであれはおさまったようでありますけれども、今年はそう簡単におさめられませんよということを、あなた女房役として、政務次官として十分ひとつ大蔵大臣に言ってもらいたいと思いますが、その点どうですか。
  94. 米田正文

    政府委員(米田正文君) 私からいまの趣旨はよくお伝えをいたしておきますが、自然増収等を目当てにして、たいへん希望を持っておられるようですが、私どもも決してそれに反対ではございません。ただ、いろいろとたくさんほかにも希望がございまして、これだけですとたいへん簡単でございますけれども、そうでなくて、いろいろございますから、この辺も、閣僚会議もあることでございますし、なお勧告が出た上でのことですが、十分御審議を願って、決して大蔵省は値切ることを専門にいたしておる省ではございませんから、誠意をもってこの問題に当たりたいと思っております。  〔理事藤田藤太郎君退席、委員長着席〕
  95. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、公務員の労働基本権の問題については、いま山本委員のほうからもそれに関連した発言がございました。私も先ほど申し上げましたように、昭和二十三年の政令二〇一号によって公務員の労働基本権が奪われた、そういう過去の経過からすれば、当然人事院勧告というものが代償機能として十分果たしていないということになれば、それは憲法に保障された労働基本権というものは当然公務員にはあるのだ、こういうやはり解釈が私は当然できる、こういうふうに思うわけです。これについては公務員制度審議会で全般的な問題を討議中だといいますけれども、しかし、それは公務員制度審議会でそういうような論議をすることを待つまでもなく、そうしたことは当然法律的な解釈からいってもあるというふうに私は考えます。この点については、ひとつ先ほど人事院のほうからのお答えだけで、労働大臣お答えをいただいておりませんから、労働大臣の見解をお聞きをしたいわけでございます。
  96. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 現状におきましては、憲法第十五条による公務員は全体の奉仕者であるという立場から、ある程度団交権、ストライキ権を制約するということは、最高裁判例によりましても合憲であるということの判決がございます。さらに、立法論といたしまして、団交権、あるいはストライキ権を与えたらどうかという御意見に対しましては、先ほど総理府からお答えいたしましたように、公務員制度審議会等の機関におきまして十分検討して結論を出したいと考える次第でございます。
  97. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 法律でそういうような基本権を制約をしているということは、やはりこれはILOの原則からいっても、それにかわるものがやはり前提としてなければならないわけですね。これはもう国際的な常識でございますから、当然人事院がそういう機能を持っているならば人事院の勧告は完全に実施をする、そういう前提があって初めてそうした基本権の制限というものは受けるであろうというふうに私は考えます。  そこで、人事院総裁にお伺いしたいのですが、毎年毎年勧告を出して、こうして政府によって無視をされてきておる。一体人事院としてはこれをどういうふうに考え、その勧告を出しっばなしでいいというふうにはならないと思うのですけれども、総裁の見解をお聞きしたい。
  98. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) いまさらという感じが先立つので、私どもの先ほど申しましたような使命から申しますというと、当然これは完全に実施していただかないと公務員制度そのものの趣旨に沿わないことになるという意気込みを持って毎年毎年できるだけの努力はしておりますけれども、その結果においては御承知のとおりでありまして、まことに残念と申しますか、遺憾と申しますか、ことばがございませんが、今回もまたこれいずれ先ほど触れましたように、勧告ということになろうかと思いますが、ことしこそは、先ほど両大臣のお話もありましたし、たいへん希望的なお話だと私は承っておりましたが、ぜひ完全実施をしていただきたい、そういう意気込みでさらに努力をするつもりでおります。
  99. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、勧告の内容については先ほどお話がございました。しかし、この勧告と申しますか、給与を決定する一つの基準として、たとえば予算委員会でちょっと出ましたけれども、五月実施が十月なりに実施をされたということで、実質的に昨年の場合は一万四、五千円の減損になっておる、こういわれておりますね。そうすれば、当然今度の勧告の中ではそういう実損もある程度考慮に入れた金額の決定ということが必要ではないか、当然ではないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  100. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その点がわれわれとしては大事なところでありまして、よくそういう要望を承っておりますけれども、これはどうも筋が通らないというのが私どもの基本的態度であります。それは、すなわち、私どもは公労委の仲裁裁定以上の重要な権限を与えられておる、それは、すなわち、国会に直接勧告申し上げるという権限さえ与えられておる。したがって、先ほどもお話に出ましたように、これが国会の立法措置によってもう完結してしまう。したがって、国会である形のものが最終的にきまりました以上は、これは国権の最高機関がおきめになったことでございますから、万事そこで結末がついてしまう。したがって、国会がおきめになる前に、ひとつ適切な形でこれが実現するようにということをわれわれあらゆる努力を申し上げてき、また、ここ数年来は、国会のこのような場面において勧告が出たらすぐ議員立法でも何でも出していただくくらいのひとつ御配慮をお願いしたいということを強く申し述べてきたのであります。したがいまして、国会においても十分お力をいただきたいということをこの機会に申し上げておきます。
  101. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、若干具体的な問題に入るわけですが、一つの問題は、現在の賃金体系についてです。これはすでに現在の体系が施行されましてから、もちろん若干の手直しはございましたけれども、大綱的には三十二年に決定をされましたものが現在施行されているわけです。その当時さえも、この体系は五年くらい使われればいろいろ矛盾も出てくるだろう、こういうことがいわれてきたわけでございますが、現在この体系が、現在の職員構成、こういうものとにらみ合わせてみまして非常に問題が出てきているというふうに思います。と申しますのは、御承知のように、職階制ですから、職階給をとっておりますから、ポストにつかなければ賃金が上がらない、こういうことになっております。したがって、この十年を経過した今日、ちょうど四十歳前後のあたりが一番頭打ちが多いという現象がいま出てきていると思うのです。したがって、この際、根本的な職階給制というものをやめるということもどうかと思いますけれども、しかし、そうした頭打ちを是正する何らかの体系の改善というものが必要ではないか、こういうふうに思うんですけれども、そういう点はいかがですか。
  102. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御指摘のように、現実の職員構成を見ますと、相当これはゆがんだ形になっている、これは事実であります。これは結局終戦後に大量に採用されました公務員の方々が一団となって上へ進んでおられるという、これも異常な現象からくる結果だと思いますけれども、私どもはできるだけの配慮をいたしましてそれらの人々に対する措置を考慮してまいっておるわけであります。しかし、基本的にこれを考えますと、やはりそこには法的な制約がある、それは、すなわち、申すまでもございませんが、公務員の給与関係の鉄則といたしまして、職務の性質と責任ということをはっきりうたっておりますために、それらにわれわれはどうしても重点を置いて考えなければならぬ。したがって、いま御指摘の役職のような、一種の看板のようなものがないと無制限には扱えないというのが法の原則になりますために、そういうワクの中で私どもとしてはできるだけのことをやっている。また、今後もそういう配慮を続けてまいりたいという気持ちでおります。
  103. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 上級公務員のほうはある程度手直しをされて、実際には等級があってもなきにひとしい状態に現在なっております。ところが、下級公務員の場合は、いま申しましたように、そうした職務と責任に応じてこれを支給するという立場から矛盾が出てきておる。したがって、私は、この金額を決定する基準というものをどこに置くかということがまず一つの問題になろうかと思いますけれども、この法律で「給与の根本基準」というものの六十二条を読んでみますると、必ずしもこれでやらなければならないということにもなってないんじゃないかと思うんですよ。というのは、その第二項に、「前項の規定の趣旨は、できるだけすみやかに達成されなければならない。」と、こういうことになっておりまして、達成する目標にはなっておりますけれども、しかし、現実にこの公務員労働者生活の面で非常に困っているということであれば、やはりこの際は、まず給与の改定基準というものは生計費を重点に置くということも、そのときどきの経済情勢、社会生活の情勢によって給与の改定というものは考えるべきだと、こういうふうに思うんです。そういう観点から、この四十歳前後の頭打ちというものをこの際改善する、たとえば一定の年齢がきたらば上げていくと、こういうような措置もこの際考えていいんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、いかがですか。
  104. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) いまお尋ねの点はまことにごもっともなんで、大きな意味で私ども立場を申しますというと、職務と責任云々と、こういう基準がありますけれども、一方においては、やはり公務員といえども生きものである、生計というものを維持していってもらわなきゃならぬというたてまえがございますから、いまおことばにも出ましたように、生計費なども調べておるわけです。こういう点も勘案いたしまして、いまの号俸の延伸、あるいは頭打ち関係をどう善処するかというようなことも考えておりますし、昨年やりました配偶者に対する手当の増額というようなものも、そういう考え方の一環としてお認めいただけると思うのであります。先ほど申しましたような法の基本的なたてまえがございますので、それは尊重しながら、その中でできるだけのことをしてまいりたい、こういう気持ちでおります。
  105. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 もう一つは、住宅手当の問題でございますが、人事院のほうでは、住宅手当については民間企業との関係からいますぐ実施はできない、こういうふうなお話のようでございます。そこで、労働省にまずお伺いしたいのは、民間企業は一体どのくらいの法定外の福利費を支給しておるか、そういう中で住宅手当というものがどの程度出されておるか、あるいは、いわゆる社宅というものが民間企業ではたくさんあると思うのです。そういう社宅を各事業所でどのくらい持っておられるか、そういう点がおわかりでしたらお答えを願いたい。
  106. 石黒拓爾

    説明員(石黒拓爾君) 法定外福利費について申し上げますと、昭和三十九年の調べでございますけれども、大体現金給与総額の五ないし六%ぐらいを平均して法定外福利費として出しております。実額では千七、八百円に相なると思います。そのうちの住居施設費というのは法定外福利費のうちの非常に大きなウエートを占めておりまして、法定外福利費のうちの三分の一強が住居施設費に相なっております。しかし、これは実物給与の分でございまして、実物給与から社宅費等として徴収した金を差し引いた金額でございます。御質問の中心の住宅手当は法定外福利費のほうには入っておりません。現金給与総額、要するに俸給の調査の中のその他の手当というところに入れて計算をしておるわけでございますので、ただいま申し上げました法定外福利費のワク外と御了承いただきたいと思います。住宅手当を支給しております事業所の数は、大体これは三十人以上の事業所についてでございますが、全事業所の四分の一強に相なっております。それから、住宅手当の支給を受けている労働者の割合は、調査対象労働者の一〇・四%というふうに相なっておるわけでございます。
  107. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 人事院の調査では、住宅施設を持っている事業所、いわゆる社宅を持っておる事業所というのは全体の八三%以上を占めておる、こういうことが出ているわけですね。あるいは入居割合にいたしましても二七・四%、手当の支給割合は三七・六%、こういう調べがあります。公務員の場合は、いま公務員住宅というものが建てられていますけれども、それでもなお二二%の入居率だと、こういうことで、民間企業と比べますと比較にはならないという現状であります。そこで、私は、こういう住宅手当についても、今回はそろそろ考えていく時期ではないか、こういうふうに思うのですけれども、今回の勧告の中で、調査の結果、どういう方針を出していこうとするのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  108. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 住宅手当の問題は、ここ数年来、公務員諸君の相当強い要請もございますし、また、いまお話に出ました公務員宿舎に入っておる者とのバランスの関係から申しましても、私どもとしてはとうていこれを無関心では過ごせないということで、問題としての意識は強く持っておるわけであります。したがいまして、ここ数年来、毎年民間の住宅手当の支給状況調査してまいって、ことしもやっております。ただ、問題は、基本的に申しますというと、民間における住宅手当、これはいま労働省の御説明がありましたように、これは民間の給与として払われておりますから、私どもが四月につかまえてくる給与の中には実は入っておるわけです。民間の給与の中に住宅手当も含んでおるものとして公務員のと比べた上で格差を見ておりまして、その格差を埋めておりますから、給与全体としては別に損にはなっていない、どこかに配分されておるということで、損にはなりません。ただ、特に住宅手当を取り出す必要があるかどうかという問題として、私どもは、従来民間における手当支給の実績を調べると、ただいまお話のとおり、昨年は三七%ということであります。これはことしはどういう数字が出ますか、これは年々民間におけるパーセンテージの上昇は著しいものがございますから、去年よりは相当上回るであろうということは考えられますけれども、これはふたをあけてみないとわかりません。民間の圧倒的多数の事業所がこれを支給しておるということになりますというと、公務員の場合もこれは捨ててはおけないだろうというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。したがって、その帰趨を見守っておる。ただし、一方においては、先ほど触れましたように、給与全体の原資の配分の問題にからまってきますから、かりに民間との格差がパーセンテージとして非常に少ないというのにかかわらず、民間の大多数の企業が住宅手当を出しておるから、じゃ公務員のほうも住宅手当を出そうじゃないかということになりますというと、今度は普通の本俸の引き上げのほうを全部、あるいは大部分犠牲にしてもらわなければならぬ。それとの配分問題がございますから、両々勘案してひとつ適切な方向を歩みたい。したがって、現在のところはまだ調査の結果待ちということでございます。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 佐藤総裁にこの際一言だけ聞いておきたいのですが、国家公務員の給与の問題というのは、「生計費、民間における賃金その他」と、こう書いてある。賃金をきめる前提というのは、労働を通じて国家に貢献し、社会に貢献をする、それで賃金労働条件がきまる。基準法の第二条を見ると、賃金労働条件は対等の立場できめるということが明らかになっているわけです。そういう意味労働三権があるのであって、三権をもぎ取られた公務員の諸君の給与というものは——公務員というのは国家行政の執行者ですね。国民に対する奉仕の面もありますけれども、一面、業務の柱は国家行政の執行ですね。国家行政の執行者だから、その国家行政の執行が可能であるかないかということから、それに必要な賃金というものがおのずから出てくる。その役目に応じた賃金、あわせて生計費、生活水準、それが労働再生産につながっていくわけです。この間も公企体の当局、三公社五現業の話を聞いていると、民間の給与がきまってから、それをこっちからながめてきめる。じゃ事業をやって働かして、そして事業主と申しますか、生産をあげるために働かした者がみずからの主観で賃金を出さずに、よその傾向を見ておいてから、それで賃金をきめていくんだということなら、経営をする能力がないのじゃないか。みずから公務員を働かせて、そしてその賃金はよその賃金がきまったのをながめてきめるなんていうような意識でいるということは、賃金そのものをきめていくという概念と違ってくるのじゃなかろうか。だから、労働三権がないということとあわせて、国家行政の執行者である公務員に対して、再生産への道、生活への道を考えてやる。それを執行させる権限がある者が公務員の賃金というものをおのずからきめていく、その代替の機関が人事院だと私は思うのです。だから、そういう意味で、ことしは国家行政の執行者の再生産と生活を認める賃金ということに賃金をきめるときのウエートがかかってくるとぼくは思うのですけれども、そこらあたりはどういう感情でおいでになるでしょうか。総裁の意見をちょっとこの際伺いたい。
  110. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) お尋ねの趣旨をとらえそこなっておるかもしれませんけれども、一応申し上げて、さらにお尋ねを待ちたいと思いますが、いまのお話は、せんじ詰めますと、公務員は公務員の独自の任務を持っておるのだから、確かに民間に右へならえの必要はないので、公務員そのものずばり、職務に必要な、あるいは生活に必要な給与というものをとらえてやったらどうかということじゃないかと思いますが、そういうことですか。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いや、だから賃金労働条件というものは、基準法であらわしている対等の立場、そうしてそれにつながる三権がきちっとあるからおのずからきまるわけなんですね、私は一応そういうものだと思うのです。だからILOでもそういうたてまえをとっておる。で、世界中がそういうたてまえをとっているのだから、法律上そうなっているのだということで、賃金をきめるときにあなたまかせというかっこうでは困るのですよ、賃金をきめる本則から言えば。だから、やっぱし国家行政の執行者としての非常に重大な任務を持つのにふさわしい再生産への道と生活の道とをあわせた賃金というものが何かものさしになるのだ、ものさしのウエートというものは、やっぱりそこらあたりがウエートになって今後賃金をきめていくべきではないかと私は思うのです。ですが、法律を見ると、「生計費、民間における賃金その他」と、こうあるから、人事院総裁賃金をきめるときの心境を聞いているわけなんです。
  112. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) わかりました。心境を率直に述べよということになりますと、実はよその場面でも私申し上げたことがあるかと思うのでありますが、私は明治憲法のころから内閣の法制局におりましたのですが、そのころは実は官吏と申しました。官吏の給与というものは私ども法制局が立案しておったわけです。その意味では給与制度とは私は縁故が非常に深いわけであります。そのころは民間給与を糧密に調べてというようなことは全然やりません。官吏の仕事にふさわしい額、それから、また、官吏の生活を維持するのにふさわしい額、及び、官吏の体面を維持するのにふさわしい額というような三つぐらいのポイントを頭に置きまして、ほんとうは白紙の上に数字を並べるぐらいのおおらかな給与制度であったわけであります。したがいまして、物価の上がり下がりとも直接関係はなかったわけであります。私は大体二十年近くおりましたけれども、在任中は給与の大幅な賃上げ、賃下げもなかったと思っております。そういうことは私は一つの行き方であろうと思います。あるいは本来望ましい姿ではないかと、回顧的復古調になりますけれども、そういう気持ちをときどき抱くことがございますけれども、ただし、今日の現状から申しますと、やはり一方においては公務員もやはり民間の労働者と同じ労働者だ、公務員だからという特権的な立場というものは一般には認められない、同じ労働者じゃないかという見方をする場合においては、やはり民間の労働者方々関係も十分これは配慮いたしませんと、国民大衆、あるいは納税大衆の納得するような給与制度にはならない、あるいは支持を受けられないゆえんではないかということが考えられて、それでおそらくいまの制度ができておると思います。したがいまして、いまのお話からいきますと、たとえば、本来、憲法二十八条の団交権を持ってしかるべき性質の労働者ではないか、しかるに団交権はこれを否定されておる、そこで代償機関ということがさっきからの御議論にありましたけれども、代償機関を設けて、その間を縫って適切な給与を勧告させようということになってまいります。それで、観点を変えてこれを見ますと、今度は四月調査といっておりますその調査の対象となります民間の給与というものは、団交の結果、物価が上がったからこれだけ上げてくれという労働者諸君の力、それから使用者側の力というものがそこに結び合わされまして賃上げの結果というものが出ておるわけであります。それをまずとらえてわれわれがこれを手がかりにするということは、大きな意味からいって間違っていないのじゃないかという気持ちでおるわけであります。しかし、それにしても、実施時期の問題になれば、四月調査の現在でそうだったのだから、せめて五月ごろまでは完全にさかのぼっていただきませんとその筋が通りませんよというお話になるわけであります。
  113. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 時間がきましたからこれでやめますけれども、いままで論議をされましたように、人事院というものが法律上その完全な代償機関機能というものを持っていないと一応いわれておる。しかしながら、歴史的な経過、あるいは現在公務員が労働基本権というものの制限を受けているという現実の上に立つと、やはり国民も人事院というものに対して非常な大きな期待というものを持っておるわけです。しかも、政府はこれを完全に人事院の勧告を実施をするという使用者としての責務を持っているわけです。したがって、こうした人事院の機能というものをこの際十二分に発揮をしていただかなければ、政府と公務員との間の相互の理解、あるいは信頼というものが確保されないと私は思う。確保されなければ公務の執行上私はやはり問題がある、これは当然その責任は使用者として負わなければならないものであろう、こういうふうに思うわけです。したがって、またいずれ次の機会でこれを論議することがあろうかと思いますけれども、先ほど来の論議の過程では、財政的にも非常に明るい見通しがあるし、また、労働大臣も非常に積極的なかまえを持っているようですし、総務長官もマンネリ化を打破したい、こういうことも言っておるわけですから、今回はひとつ人事院総裁ともども、国家公務員全体の生活の確保のために、昨年を下回ることのないような十分な勧告と、それを実施をするひとつ体制をとっていただくように強く要望をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。大臣のひとつ御所見を承りたい。
  114. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 直接私の所管ではございませんが、労政問題で頭を悩ましておるのが人事院勧告の問題でございます。御趣旨に沿いまして、微力ではございますが、これは大蔵大臣、あるいは総務長官あたりにも強く要望して、人事院勧告を尊重する体制に努力をいたしたいと思っております。
  115. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もないようでございますので、本日の調査はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三分散会