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1967-06-29 第55回国会 参議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十九日(木曜日)    午前十一時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本伊三郎君     理 事                 土屋 義彦君                 丸茂 重貞君                 佐野 芳雄君                 藤田藤太郎君    委 員                 川野 三暁君                 黒木 利克君                 佐藤 芳男君                 山本  杉君                 横山 フク君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 藤原 道子君                 小平 芳平君        発  議  者  藤田藤太郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        労 働 大 臣  早川  崇君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省社会局長  今村  譲君        労働政務次官   海部 俊樹君        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別  措置法案内閣提出) ○炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関する特別措  置法案藤田藤太郎君外一名発議) ○駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○雇用促進事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○労働問題に関する調査  (国際労働条約の諸問題に関する件)  (昭和電工鹿瀬工場従業員の水銀中毒問題に  関する件)  (職業病に関する件)     —————————————
  2. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を開会いたします。  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案議題にいたします。  これより本案に対し、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。  別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。  別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手
  5. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  6. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 ただいま社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案が成立したのでございますが、この際、附帯決議を、皆さんの御承認をいただいて、いたしたいと思います。  まず、文案を朗読いたします。  政府は、左記事項につきすみやかに実現するよう努力すべきである。 一 社会福祉施設が著しく不足している現状にかんがみ、要収容者(児)の実情把握につとめて、施設の計画的な整備をはかること。 二 増大する社会福祉事業資金需要を満たすため、今後、社会福祉事業振興会貸付資金の増加をはかるようつとめること。 三 とくに保育所設置については、政府の財政的な援助を一層強化し、児童育成の実をあげること。 四 社会福祉事業の健全な推進をはかるため、その関係者に対し、特別の助言及び事業援助等政府が行なうこと。  右決議する。 でありまするが、この際、厚生大臣に特に強く要望いたしたいことは、三の項で申し上げました「とくに保育所設置については、政府の財政的な援助を一層強化し、」という表現でございますが、この表現を、ただことばとして受け取るのでなしに、政府は財政的な援助計画を具体的に立てて実行するということを私たちは強く要望いたしておりますので、そういうふうな強い要望であることをお含みいただきたいと思います。  以上、決議案文案を朗読いたしました。
  7. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいま述べられました佐野芳雄提出附帯決議案議題といたします。  佐野芳雄提出附帯決議案賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手
  8. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、佐野芳雄提出附帯決議案は、本委員会決議とすることに決定いたしました。坊厚生大臣
  9. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま社会福祉事業振興会法の一部改正法案を御可決いただきまして、厚く御礼を申し上げます。また、附帯決議のありました四つの項目は、いずれも今後の社会福祉行政の伸展のためにまことに重要な事項でありますので、厚生省といたしましては、十分御決議趣旨を体して、今後大いに努力いたす所存でございます。
  10. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  12. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(閣法第一四二号)及び、炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(参第二号)の両案を一括して議題にいたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。早川労働大臣
  13. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ただいま議題となりました炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  炭鉱災害による一酸化炭素中毒症につきましては、昭和三十八年の三井三池の災害以来、とみに一般の関心が高まっておりますが、その後も昭和四十年における北炭夕張山野炭鉱ガス爆発等大規模な炭鉱災害が続発し、これにより重篤かつ多数の一酸化炭素中毒患者発生をみたのであります。政府としましては、かかる炭鉱災害防止に十全の努力を払うとともに、災害発生に際しては、被災労働者に対する救急対策災害補償に万全を期してまいったところでありますが、特に炭鉱災害に際しては、著しく多数の一酸化炭素中毒患者発生し、しかも、重篤な精神神経症状を呈する者が多いことから、昨年の通常国会におきましては、一酸化炭素中毒症について何らかの特別立法措置が必要ではないかとの論議が行なわれ、参議院社会労働委員会におきまして、「政府は、一酸化炭素中毒被災者援護措置について、差当り炭鉱労働者に限り、今後一ヶ年以内に立法措置を講ずるよう努力す」べき旨の決議が行なわれたのであります。政府といたしましては、かかる経過等にかんがみ、昨年十月、労働者災害補償保険審議会に対し、一酸化炭素中毒症に関する特別措置について諮問し、去る五月十六日答申を得たのでありますが、さらに社会保障制度審議会にも諮問の上、ここに炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案提出いたした次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律適用範囲につきましては、炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に限定しております。炭鉱災害に限った点につきましては、労働者災害補償保険審議会答申においても、一酸化炭素中毒症炭鉱において特に多数発生し、かつ、重篤な者が多い等の特殊事情及び国の石炭政策等にかんがみ、この際は、炭鉱における一酸化炭素中毒症に限って措置するのはやむを得ないとしておるところであり、また、さきに申し上げました参議院社会労働委員会における決議趣旨をも考慮して措置することとした次第であります。  第二に、使用者及び労働者に対し、一酸化炭素中毒症防止について適切な措置を講ずるよう努力すべき旨の努力義務規定を設けることといたしております。炭鉱における一酸化炭素中毒症防止につきましては、現在、鉱山保安法等において所要の定めがなされているのでありますが、さらに労使の自主的努力なくしては実効を期し得ないものであることにかんがみ、その趣旨を明文で定めることにしたのであります。  第三に、使用者に対し、一酸化炭素中毒症に関する特別健康診断実施を義務づけることとしております。健康診断については、現在、労働基準法におきましても、所要規定を設けておりますが、本法案におきましては、さらに一酸化炭素中毒症に関する災害直後の健康診断を義務づけるとともに、原則としてさらに二年間、定期に一酸化炭素中毒症に関する特別健康診断実施すべきこととしております。  第四に、一酸化炭素中毒症にかかった者に対する介護料支給についてであります。炭鉱災害被災者につきましては、もとより労働者災害補償保険法により、療養補償をはじめ、必要な災害補償が行なわれるのでありますが、一酸化炭素中毒症にかかった者のうちには、重篤な精神神経症状のため、家族等による特別介護を要する者が少なくないので、その実情に応じ、特別援護措置として一定介護料支給することとしたのであります。  最後に、一酸化炭素中毒症がなおったと認められた者につきましても、その特殊な症状の推移から、必要と認める場合にはアフターケアとして所要措置を講ずることとしております。  なお、この法律施行期日につきましては、健康診断方法等について専門家意見を徴するための期間をも考慮し、公布の日から起算して九十日をこえない範囲内において政令で定める日といたしております。  以上、この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  14. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、発議者参議院議員藤田藤太郎君から提案理由説明を聴取いたします。藤田藤太郎君。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ただいま議題となりました炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案提案理由と、その内容について説明いたします。  去る昭和三十八年十一月九日、三池炭鉱における炭じん爆発炭鉱合理化政策の途上に発生した悲惨な労働災害でありました。日本一の優良鉱といわれた三池三川坑の入気口よりわずか千メートルの地点で大爆発を起こし、大量の一酸化炭素ガス発生し、これが三川坑の全坑内、各切り羽に侵入充満して、坑内労働者は一瞬にして倒れ、四百五十八名の犠牲者と八百名にのぼる一酸化炭素中毒患者を出すという大災害となったのであります。  また、昭和四十年二月二十二日には、三井三池に劣らない優良鉱といわれる北海道の北炭夕張鉱において、ガス爆発により六十一名の死亡者と二十名にのぼる一酸化炭素中毒患者を出すという災害発生し、次いで四月九日には、日鉄伊王島炭鉱においてガス爆発により三十名の死亡者と十四名の重軽傷者を出し、さらに六月一日には、山野炭鉱においてガス爆発により二百三十七名の死亡者と二十名をこえる一酸化炭素中毒患者を出すという災害が連続して発生し、昭和四十一年十一月一日には、住友奔別鉱においてガス爆発により十六名の死亡者と五名の重軽傷を出すという災害発生し、炭鉱におけるガス爆発等による災害の絶滅は期しがたい状態にあります。  一酸化炭素中毒は、肺から吸入された一酸化炭素ガス血液に入って、血液中の酸素が減少し、その結果、人体の各組織、特に中枢神経系がおかされ、人体の各組織に回復不能な後遺症をもたらすものであります。また、心肺系もおかされ、それが再び中枢神経系その他に影響を与えるといわれています。一酸化炭素中毒症状は、中枢神経等のおかされた程度により異なりますが、重症の場合は、罹災後数年を経過するも、新生児に見られるような原始反射を示すほか、全く意識なく、全神経の麻痺した状態を示します。軽症の場合でも、痴呆状態を呈するものが多く、身体の動きも少なく、幻覚、妄想等に襲われ、精神分裂症に似た症状を見せるものであり、その他、記憶力障害意欲減退性格変化を来たすとともに、心肺機能循環器系障害をも伴うものであります。以上のごとく複雑な病状と悲惨な後遺症を残す疾病であるにもかかわらず、今日の高度の近代医学をもってしても、その根本的治療方法はなく、対症的治療が行なわれているにすぎないのであります。しかも、現行労働基準法労働者災害補償保険法及び鉱山保安法では、その発生予防において不十分であるのみならず、治療方法においても、この中毒症の特徴からみて、特に必要であると考えられる長期にわたる継続的治療回復訓練実施及び職場復帰の機会を与える措置等に欠けるところが多く、中毒患者に対して、適正かつ十分な治療災害補償が行なわれているとは認めがたいのであります。特に三池炭鉱爆発による約七百名以上の被災労働者はすでに罹災後三年以上を経過し、現行法に基づく補償ではその療養及び補償が困難となっております。したがって、炭鉱労働者一酸化炭素中毒症に関し、適切な予防及び労働者健康管理措置を講ずるとともに、一酸化炭素中毒症にかかった炭鉱労働者に対し、長期療養を保証し、また、残存労働能力を有する者については、その活用をはかるために特別措置が緊急に必要であります。  次に、本法律案のおもなる内容を申上げます。  第一に、石炭鉱業を行なう事業使用者及び労働者は、一酸化炭素ガス発生とこれによる中毒防止するため、作業環境条件整備関係労働者全員についての防護、その他適切な措置を講じなければならないこと。また使用者は、労働者に対して一酸化炭素ガス発生防止発生後の応急措置及び健康管理等のため必要な教育を行なわなければならないこと。  第二に、被災労働者健康管理に万全を期するため、使用者は、被災労働者に対して所定の健康診断を行ない、都道府県労働基準局長は、被災労働者健康管理区分を決定するとともに、健康管理手帳を交付すること。  第三に、被災労働者健康保持のため、使用者は、健康管理区分により就労可能な者は労働省令で定める危険な作業以外の作業に従事させるようつとめなければならないとともに、被災労働者作業転換をした場合は、当該作業転換前に支払っていた賃金に見合う賃金を払わねばならないこと。  第四に、使用者被災労働者健康管理区分が決定された場合は、その区分に応じて被災労働者が安定して長期にわたる療養に専念できるようにするとともに、また、残った労働能力を活用させるために、管理一に該当する被災労働者については二年、また、管理二に該当して一酸化炭素中毒症にかかっていると認められる被災労働者については、一定年齢に達するまでの期間は、労働基準法規定にかかわらず、これを解雇してはならないこと。  第五に、被災労働者一酸化炭素中毒症にかかる療養補償を受ける場合、またはリハビリテーションを受ける場合は、その期間中一日につき平均賃金の百分の四十の準障害補償を行なうとともに、一酸化炭素中毒症がなおった場合は、その障害程度に応じて、当該障害の存する期間一年につき平均賃金の三百六十日分から百二十日分までの障害補償を行なわなければならないこと。また、常時介護を要する被災労働者に対しては、月額五千円から一万円までの範囲内における額の介護補償を行なわなければならないこと。  第六に、この法律による補償は、労働者災害補償保険によって行なわれるべきものであること。  第七に、本法の規定により、準障害補償労働基準法規定による障害補償の額をこえる部分障害補償及び介護補償給付に要する費用の二分の一は国庫が、残りの二分の一に相当する部分当該保険加入者がそれぞれ負担するものとすること。  以上のほか、一酸化炭素中毒症に関する予防被災労働者健康管理障害等級区分、その他の事項について調査審議するため、関係労働者及び使用者を代表とする者と精神医学または神経医学に関し学識経験を有する者十五人以内の委員をもって組織する一酸化炭素中毒症対策審議会を設置すること等であります。なお、この法律施行時に、過去の突発事故により被災した労働者に対して、この法律を適用するため必要な経過措置を定めることにしました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申上げます。
  16. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 以上両案の自後の審査は、これを後日に譲ります。     —————————————
  17. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。早川労働大臣
  18. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  駐留軍関係においては、これまで相当数離職者発生を見ており、政府は、これら離職者の再就職の促進に鋭意つとめてきたところでありますが、今後も、中高年齢層を中心に、かなりの離職者発生が見込まれるところでありますので、従来の対策についてその充実をはかるとともに、離職者実情に即した対策を推進するため、雇用促進事業団の行なう援護業務を拡充し、自営を行なおうとする離職者に対する援護対策を強化することが肝要と考え、この法律案を提案した次第であります。  次に、法律案内容概略を御説明申し上げます。  改正の主眼は、雇用促進事業団の行なう援護業務を拡充することにあります。駐留軍関係離職者については、雇用促進事業団は、現在その援護業務として、訓練手当移転資金及び雇用奨励金支給を行なっているところでありますが、自営に対する援護対策を強化するため、この援護業務を拡充し、駐留軍関係離職者事業を開始する場合に自営支度金支給するとともに、金融機関から資金の貸し付けを受けることにより当該金融機関に対して負担する債務を保証しようとするものであります。  このほか、この改正では、雇用促進事業団支給する給付金について譲渡等を禁止するとともに、当該給付金のうち、駐留軍関係離職者に対して支給されるものを標準として租税その他の公課を課することができないことにするため、所要整備を行なうとともに、雇用促進事業団の行なう援護業務のこの法律の失効後の経過措置について規定を設けることにいたしております。  以上、この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  19. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 本案に対する自後の審査は、これを後日に譲ります。     —————————————
  20. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 次に、雇用促進事業団法の一部を改正する法律案議題とし、これより質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この前の審議のときに、雇用促進事業団がやっている業務労働省関係について二、三お尋ねをいたしました。この雇用促進事業団というのは、労働省雇用計画をこれから進めるにあたって、具体的な、重要なかなめになるところだと思います。ですから、私は、どちらが発想し、どちらが先に建議したということじゃなしに、私は、何と言っても、労働省そのもの完全雇用、あわせて、雇用対策根本は、労働省が何としても先行して、その下の委託経営みたいなかっこうになるものだと理解せざるを得ない。また、そういう趣旨でできたのが事業団だと考えているわけでございます。そういたしますと、いろいろの部分で問題が起きてきているわけです。先日の質問によると、雇用促進事業団が建議して相当な自主運営があってという話がありましたが、その自主運営というものの限界というものは、もしもこの雇用促進事業団が先行するようなことになってくるといろいろ問題が起きる。そこらの労働省雇用計画雇用行政促進事業団業務範囲、それらの問題についてもう一度お聞かせを願いたい、こう思うわけであります。
  22. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 雇用促進事業団は、御指摘のとおり、国が行ないます職業安定行政表裏一体となりまして運営されるものでございます。基本的には、先に策定されました雇用対策基本計画に基づきまして雇用対策基本方向がきまってきておりますが、この基本的な方向に従って業務拡充強化をはかっていく、もちろんその前提には、団交によりまして業務の種類、範囲というものが法定されております。その年度年度予算でもって事業内容の輪郭がきまっておりますので、法律予算範囲内におきまして、ある程度自主性を持ちながら、基本的には労働省表裏一体となって業務を運営していく、こういうことに相なっておるわけでございます。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いまの表裏一体という話は非常に聞こえがいいのでありますが、私は、やはり雇用基本計画を雇対法に応じて労働省がやるわけでありますから、だから、やっぱり主たる責任労働省が持って——労働省だけの業務じゃありません。これは雇用計画についてはいろいろ議論があるところですから、これはきょうは省きますけれども、やはり労働省責任を持って他の官庁との関係の調整をつけながら雇用対策を進めるようにしてもらいたいということを私は申し添えておきたいと思うわけであります。  それから、もう一つの問題は、いずれ失業保険法改正法案のときの審議にゆだねられると思いますが、この前の審議の後段として、どうも失業保障という概念がやはり失業保険の中ににじみ出てこなければならぬのではないか、私はそう思うわけです。一つは、若いうちから働いてもらい、社会に貢献してもらった方が、一定期限がくれば所得保障、年金で生活をしていくというぐあいに転換をしていく。そうなると、いまの五十五歳定年という問題がすぐ問題になってくる。五十五歳から六十歳は何でそれじゃ労働者が食っていくということになるのか、こういうことになるわけです。そういたしますと、失業保険というのは、失業者を救済するという問題意識からいきますならば、自然に所得保障転換していくというのが各国のとっている方式であると私は思うのです。働きたくても働けない人に一定のきめられた期限だけ失業保険を出して、あとは知らぬという失業保障概念というものを、私はもっともっといまある失業保険の中に精神を入れていこうという考え方がないと、私はいろいろの業務に支出されているような問題が、国が施策として一般会計から出さずに失業保険だけを使っていくというようなことになってくるとたいへんだと、私はそう思っておる。しかし、この問題については失業保険のときに審議をいたしますが、雇用促進事業団のおもなる業務事情が非常にこれに関連しているわけですからこういう意見を述べているわけです。ですから、何としても、今後は建設省住宅計画にあるから、それはもうやむを得ないのだと、それは建設省財投会計から金でも出してくるならそれは別でありますけれども、失業保険の金をもってこれに充てるなんていうことを実際に続けていいかどうかということは、私の非常に疑問とするところであります。そういう問題はあとに譲るとしても、私は、やはり大精神だけは大臣から意見を聞いておきたい、こう思うわけです。こういう失業補償というたてまえからいって、その大筋としては、やはり国が一般会計から独立してある失業保険をたよりにするようなことでなしに、国家の財政で処理をしていくというところに今後努力をしていくという心組みがなければ、私は大問題ではないか、行政上やすきにつくというようなことでは困るじゃないかということを考えるわけでありますが、大臣の所見をこの際承っておきたい。
  24. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 御指摘の雇用促進事業団の住宅建設等の事業につきましては、財政の許す限り、建設省の住宅建設と、一般会計からの事業の進展に伴いまして、できる限り雇用促進事業団でそういう事業をやる必要がないように、今後とも、一挙にはまいりませんが、御趣旨に沿って努力をしてまいりたいと思っております。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、もう少しこまかいことを一つ二つ聞いておきたいのですが、この雇用促進事業団が建てておる住宅について、私は、こういう事業団は、地方公共団体の雇用、失業情勢なんか地域的な問題ですから、公共団体と話し合ってきめるというぐあいに説明されておると思うのです。一つの問題は移転就職者用宿舎ですから二年ですけれども、しかし、その二年の範疇に入る人を、やはり地域の雇用、失業情勢というものは地方自治体が一番よくつかんでおるわけですから、そこらの問題は十分に地域的な、立地的な条件を生かしてこの宿舎利用というものを考えてもらいたい、これが一つであります。  それから、そういう点が十分いってないのと、やはり地方自治体というのは、何といっても固定資産税が根元になって財政が維持されているわけです。プラス地方交付税という財源との関係があるわけでありますから、なかなか喜んでいるのか喜んでいないのか、住宅を建ててもらうことについては、地域の住宅不足を解消してもらうのですから、いいですが、そこらあたりの息が労働省と地方自治体との間にぴったり合ってない面があるのではないかというのが、私は、話し合いといいますか、そういうものが少し足らな過ぎやせぬか、何か命令歩調で地方自治体ついてこいというようなことになってやせぬか、そこらをひとつ心配するわけであります。そこらをどうやっているか、聞かしていただきたいし、それから、もう一つは、これに関連して、いまの住宅のスペースというのですか、部屋の。第二種住宅になっているわけですが、ここらの問題についても、家族の多い人には少し適合の欠けるようなところがありはせぬか、そこらの問題はどう検討されているのかということも第二点としてお聞きしておきたいと思う。
  26. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 移転就職者用宿舎の問題につきましては、藤田先生、また、小平先生からいろいろ当委員会で御意見なり御主張がございました。労働大臣といたしましては、その趣旨に沿ってひとつこの運営の方法を改善していきたいと思っております。たとえば御指摘のように、建設省の住宅建設が進んでおりませんので、やむを得ず勤労者のための補完的なアパートとしてやっておるというのが現在の移動労働者アパートでございます。したがって、第一に移転就職者用宿舎という名前から直していきたい。それから、二年間たてば出ていけというようなことも、あまりにも転職というものにこだわり過ぎておるのではないだろうか。そこで、失業保険を納めているのは大部分勤労者であれば、この宿舎の入居条件として、移動労働者の入居の希望者があれば、それは優先するという原則は残しますけれども、地盤の人でも、勤労者で非常に住宅に困っている人にはどんどん私は入れてもいいんじゃないか。勤労者が住宅に困っているときに、小平先生の御指摘のように、二割、三割部屋が余っているとか、これは全く政治不在でございますので、そういった点もひとつ改めてまいりたいと思っております。  それから、藤田先生は、あまり潤いがないじゃないかとこの前御指摘されましたが、これも予算関係がございますけれども、予算の許す限り住居として潤いのあるようにいたしたいと思いますし、家族持ちの人に対して六畳、四畳半、キッチン、ふろ場というのもむろん非常に窮屈でございます。将来これを壁を取り払って、五人家族の人にはその倍にするとか、いろいろ設計の面でも配慮して、せっかく国の貴重なお金でアパートをつくるのですから、現在の住宅不足からいえば、部屋があいている、しかも、入って非常に苦痛だというようなことはお金のむだ使いになりますから、大きく政治的立場からこの問題は十分ひとつ配慮してまいる所存でございます。
  27. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 関連してお尋ねしたいのですが、いま移転就職者住宅の宿舎の表が資料としてもらったんですが、いま大臣のおっしゃったように、将来建設坪数についても広くするような考え方を持ちたいというような意味の御発言がございましたが、この資料によりますると、四十一年度の実績は坪数で一月当たり一二・六六坪になっている。約十三坪近い。ところが、四十二年度の予算実績を見ますと十二坪になっているわけです。むしろいまの大臣の話と違って、狭くなるような傾向がこの資料では見られるわけですが、この考え方と非常な食い違いがあるのですが、その点をひとつ御説明を願いたいと思うのです。  それから、建築費の問題ですけれども、四十一年度の坪単価八万一千円、これはこんなに安くできないと思うのですけれども、それはそれとして、八万一千四百六十五円、ところが、四十二年度の単価の見積もりが八万一千五百二十四円、わずか四、五十円しか上がっていないんですが、一体四十一年と四十二年度の物価の上昇、あるいは賃金の上昇等から見ますると、機械的にこれを見ましてもこんな資料は出てこないはずなんですが、一体その点どういうふうになっておるのか、ひとつ説明してもらいたい。  それから、ついでですから、この際、いまの藤田委員の御質問にも関連するのですけれども、現在の移転就職者の平均年齢は一体どのくらいになっておるのか。それから、その家族構成は一体どうなっておるのか。これは独身もしくは夫婦者なら十二坪でもけっこうでしょうけれども、おそらく移転就職する者は相当の年齢ではないかと思う。あるいはその家族構成もおそらく四人ないし五人、あるいは六人というふうになるのじゃないかと思うんです。そうすると、夫婦二人なら十二坪でも何とかなるが、もし五人で、しかも、その子供が相当の年齢になっておる、あるいは中学校、あるいは高校、しかも、男女ということになりますと、これはとても住める条件ではない。だから、失業している者を入れるのだからこれでもいいのだということにはなりませんから、いま大臣のおっしゃったように、将来こう改めるということならこうなるはずはないんですが、その点ひとつ御説明願いたい。
  28. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 最初に、移転宿舎の建設費の単価の問題でございますが、お手元にお配りしました資料でごらんのとおり、四十二年度の予算は、これは坪数と単価でございます。実績は、昨年度実績が一二・六六坪でございますので、今度も実際はその程度の坪数にしたいと思っております。したがって、去年の実績より下がっておるというのは、予算の単価がちょっと下回っておるという状態でございまして、実績は必ず上回ると思います。それから、坪当たりの単価でございますが、この比較も昨年度の予算単価は坪七万七千四百二十円でございました。これはことし八万一千五百二十四円、約四千百円ほど単価アップをいたしております。これでも実際実施いたしてみますと若干足りないのじゃないかという感じがいたしますが、予算面におきましても相当改善をしておるというように考えておるわけでございます。  それから、第二点の年齢構成、家族構成、これはいまちょっと私ども手元に正確な資料を持っておりませんのでお答え申しかねますけれども、大体離職者年齢が中高年が多いということは一般的に言えるわけでございますので、したがって、家族構成もわりあいに高いという場合が多いわけでございます。そういう場合には二間では足りませんので二軒分を提供する、たとえば家族五人以上の者については二軒を提供する、幸い若干のあきがありますので、そういうふうな利用はさせております。なお、先ほど大臣から御答弁がありましたように、将来の企画といたしましては、できるだけ住みここちのいい施設にするという方向で坪数も広げてまいる、あるいは古いものについては壁をとり払って二軒分を一軒に使うというくふうを重ねてまいりたいと思います。  なお、藤田委員から御質問がございました地方団体、府県との関係が不十分ではないかというふうな御指摘がございましたが、これはもともとどこに建てるかという立地、土地の選定につきましては、府県が申請をしてまいりまして、その府県の候補地から選んで建設をいたしておりますので、その辺のそごはないわけでございます。また、入居者につきましても、事業団の判断によるものではなくて、府県並びに安定機関の判断によってその者を入れてもらいたいというふうなことで入居者を決定いたしておりますので、その間、事業団と地方団体側との連絡の不十分はないというような仕組みに相なっておるわけでございます。
  29. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いまの局長の答弁は、何かその場しのぎのような感じと私は受け取るんですが、たとえば家族構成が多い、五人、六人おる場合二軒分を提供しているんだということですが、一体ほんとうにそせなことをやっているんですか。家族が多ければ、一つではなくて二つもらえるということですか。
  30. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 五人以上の場合には二軒を提供いたしております。
  31. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そういたしますと、この間いただきました資料の中で、現在の入居状況は九〇何%ということをいっておりますけれども、九〇何%というのは、二軒を一つに使っておる人も加えてのことですか。そうすると、人数と部屋の利用状況は違ってくるんですが、その点はどうなんですか。
  32. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 入居率の算定には、二軒提供する場合には、入居者として入居率に計算してあります。
  33. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そうすると、たとえば八十人が一つずつ部屋を使って、あとの十人が二つずつ使っておると、これは一〇〇%入っておると、こういうふうな理解でいいんですか。
  34. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) そのとおりでございます。
  35. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 これはどうもおかしいんで、少し掘り下げたお尋ねもしたいし、分析もしなければならぬと思うんですが、審議の都合もありますので、きょうは差し控えますが、局長、この法案審議とは別に、一つ早急に現在の入居者の平均年齢、そして、その家族構成、それから、いまおっしゃった一人で二つの部屋を持っておる者が一体何人いるかという点の資料をすぐ出してください。
  36. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) さっそく調べて提出いたします。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いまのお話は、佐野さんの言われたとおり、少し納得がいきにくいですね。五人いれば二つ宿舎を提供しておるというのは、これは具体的に資料を出してもらって、あらためてやってもらいましょう。しかし、それは問題だと思うんです。  この百二十億の融資の問題ですね、これについて、私はこの前、現在の福祉事業団との関係で処理をしなさいとぼくは言っているんですが、要するに財投から持ってきておるんだから、失業保険の会計とは関係がないと、事実そうでありましょうけれども、しかし、どうも一つ政府がなわ張り争いのようなことをしておるということについては、私はもうちょっと研究をしてもらいたい。で、向こうは住宅が不足なら財源は幾らでもあるといっていいほどあるわけですから、これはひとつ検討してもらいたいと思うんです。同じようなシステムでこっちが百二十億、向こうは非常に多い、三百五十億か四百億融資しておりますので、それを拡大したらいいんですから、そこらの点はひとつ研究をしてもらいたいということを私は提議しておきます。  それから、もう一つは、この住宅の問題については、転用宿舎ということですけれども、たとえば農漁民の皆さんが食べられなくなって都会へ出てきた、そういうときに提供する形にはなっていないようなんですが、そこらも少し深刻な人には配慮しなければならぬのじゃないかと、こう思うんですが、どうですか。その二つの問題について。
  38. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 前段の御指摘の点は、早急に研究いたします。  後段の農漁民の場合の移転就職は、これも安定機関を通じて再就職される場合には、宿舎の提供を、本人が希望する場合にいたしておりますので、この移転就職者の宿舎の利用も可能でございます。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、附帯決議に明らかにしておきたいと私は思っておるわけですけれども、職業訓練所は、一般訓練所と総合訓練所と、事業内訓練所は事業内で処理されるでしょう。それから、一般訓練所と総合訓練所を出た人の就職確保といいますか、私は保証だと思うのですが、そういうものはもっと力を入れて、あそこの訓練所を出たら、職業は、自分らが受けたその業務において生活の保障がある、就職の保証があるという、私はそういう前提条件の安心感というものがなければ、せっかく訓練所の課程を経たけれども就職の場がなかったんだということでは、労働省努力されておると思いますけれども、それではどうにもならぬのではないか。だから、そこら辺はやっぱり常時の問題として保証してもらいたいということ。  それから、雇用相談員ができるわけです。まだ出発点は少数ですが、将来効果があがれば、これを置かれることについては、私は、いままだ未知数ですから意見は言いませんけれども、これができると、これも有効に発展するのかどうか未知数です。しかし、有効に発展してもらわなきゃならぬ。しかし、業務上有効に発展していくと、どうしても私は労使関係に介入をしてくる場というものの危険がなきにしもあらずだと、そう思うのです。そこらの労使関係については、やっぱり不介入の原則というものを明確にしておいてもらわなければならぬのではないかということが一つ。この二点をまずお聞きしたい。
  40. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 公共職業訓練所の修了者の就職問題でございますが、全国の総合と一般の平均で申しますと、就職率が九四%、これは修了後一カ月以内の就職率でございます。したがって、私どもは、さらに一〇〇%にすべく努力いたしておるわけでございますが、特に中高年齢者を主たる対象とする石炭離職者の訓練につきまして、修了者の就職率が多少悪いというふうな現実もございますので、この点に最重点を置いて私ども今後努力してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  今回の改正によりまして雇用相談員制度が創設されるわけでございますが、御指摘のように、これが労使関係に介入をするというふうなことになりますと、これは目的外でございます。私どもとしましては、労使関係に絶対に介入しないように相談員の指導を十分してまいりたいと思っております。
  41. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いま藤田委員の質問に対して、局長のほうから、職業訓練所を修了した者の就職率は一カ月以内に大体九四%、これを一〇〇%にしたいと、そのこと自体はけっこうだと思うのですが、私はこの間の委員会で身体障害者の職業訓練所の実情についてお尋ねをいたしました。そのときに、一体定着率はどうなんだということをお尋ねしたのですが、その状況は労働省のほうでは把握していないということでございました。そこで、せっかく訓練所を出て就職ができた者が、一年先にはどこにいるかわからぬ。なお、さらに仕事を続けておるのか、あるいは転職したのか全然わからぬということでは少し不親切でもあるし、あるいは行政上でも不十分ではないかということをお尋ねしたのですが、その後せっかく労働省のほうでは調査を進められておるようでありますが、いまだにその資料が実は私の手元にはこないわけなんです。したがって、訓練所を出た者が一年先、二年先にはどこにいるかわからぬというようなことではまことに行政上まずいのじゃないかと思うのです。このことは身体障害者の訓練所の問題について私がお尋ねした九つなんです。九つの訓練所ですらそういう状態であるといたしますならば、おそらく総合職業訓練所はたくさんあるわけです。百近くあるわけです。そこを出た者が一体二年先、三年先はどういうふうになっておるのかという問題は、おそらく私はわかってないのじゃないかと思うのです。そういう定着率の条件を把握できてなくてどうして雇用促進ができるかということを私はおそれるのですが、一体その点を局長どう考えておるのか、お答え願っておきます。
  42. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 御指摘の身体障害者の訓練所修了生についての離職、定着率状況、これは目下調査中でございますので、集計でき次第提出いたしたいと思います。ただ、身体障害者の全般につきまして離職率はどうなっておるかと、こういうふうな御指摘もございましたので、私ども昭和四十一年一月から六月の半年にかけまして調査いたしました資料がございますので申し上げますが、在籍者が四万五千九百七十九人の身体障害者につきまして、離職者が千三百九十人、パーセンテージにいたしまして三・一%という離職率でございます。これを一般の健常者の離職率と比べますと、一般の離職率が九・七%でございますので、まあ非常に離職率自体は低い。問題は、この率が低いからいいということは必ずしも言えないと思いますが、定着率自体は一般の健常者と比べて悪くないということは言えるかと思います。もちろん労働条件がこれにどうからんでおるかということが問題だろうと思いますけれども、一応定着率の比較はそういう状態でございます。
  43. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 総合職業訓練所の定着率はどうですか、修了者の。
  44. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 最初にお断わり申し上げましたとおり、いま調査中でございますので、この点ちょっと御猶予いただきたいと思います。
  45. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いま身体障害者の問題が出たが、私は、前段の訓練所のやつは一般の身体障害者じゃないということで、一応そういう努力をしてもらいたいと言ったのですが、身体障害者の雇用促進ということは、法律までつくっておって最高その一・五、一・三、一・一ということじゃ私はやっぱりどうにもならぬ。このたびこの法律資金融資をしようということですから、趣旨はけっこうなんです。だから、この際、この資金融資の拡大といいましょうかね、私はやっぱり道義に訴えるという問題が先行すると思うのです。身体障害者を使って、単に何の援護も融資もなければ、身体障害者を雇うというのは、いまの経済事情からいったら、なかなかそれは、その方針は改良の方向はない。だから融資でもやってやろうというのですから、これはもう法律でもう少ししばらなければだめだろうと思う。だから一・五とか一・三とかということじゃなくて、私は、やっぱり身体障害者の雇用の機会を身体障害者雇用促進法で率を上げて、まず率先して官庁から見本を示していくというぐあいに身体障害者雇用促進法を変えていかなければならぬのじゃないか。それと相まって、今度の法律で書いておられるような援護措置をつけてくると実効があがるのではないかという気がするのです。これはこの前も少し触れましたから、あまり長くやりませんけれども、その考え方は、やっぱりせっかく資金融資をおやりになるのですから、考え方は確立してもらった上でこうなったのだとこれは理解していいのかどうか。だから、これに付随して身体障害者雇用促進法を改正する、率の高い雇用を実現するということになったのだろうと思うのだが、そう理解していいんですか。また考えがあったら聞かしてもらいたい。
  46. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 基本的には先生の御指摘のとおりでございます。私ども一昨年来、身体障害者雇用審議会に今後の身体障害者の雇用対策につきまして諮問を申し上げました。近く答申が出る予定になっておりますが、答申が出ましたならば、この線に沿い現まして予算措置立法措置を講じてまいりたいと思います。現行の身体障害者雇用促進法だけでは不十分でございますので、いずれ法律改正という問題に答申を受けることに相なると思うわけでございます。
  47. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、今度の融資になるわけですが、融資をもらうために身体障害者を雇いますということを言って、融資で設備ができたら、やはり身体障害者は残存労働力が少ないですから、それを解雇するとかいう問題が出てきやしないかという心配をしているわけであります。だから、そういうところに融資をして雇ってもらうのでありますから、それはやはり継続して雇用が続かなければならない。そこらはどういう手当てをしておいでになるか、これも聞いておきたい。
  48. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 今度の改正によりまして、身体障害者向けの施設、設備を対象に独特の融資を考えるということに相なるわけでございますが、融資を受けて身体障害者用の施設、設備を整備してその職場に身体障害者を雇用した場合には、このこと自体によりましても、雇用は継続というか、安定をしていくということが予定されるわけでございますが、なお、御指摘のように、それだけでは企業の経営採算上ハンディキャップを持っている方々については不十分ではないかというふうな御意見もございますので、目下審議会等におきましては、主として重症者を考えておるようでありますが、減税の問題、あるいは雇用奨励金の問題、これが真剣に検討されておる段階でございます。いずれ近く答申がまとまりましたならば、その点も十分来年度以降の施策に繰り入れてまいりたい、こういうふうに考えております。
  49. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこのところは非常にむずかしい問題だと私は思うのです。単に減税とか何とかしてもらうためにマイナス分をそれで補っていくんだということだけではどうにもならぬ、人間の道徳に訴えるだけであります。生産機関は社会全体の公器でありますから、その公器に、社会生産の量をつかさどることができるためにこれだけの義務が必要なんだという、やはり最低限の身体障害者を雇用しなければならないという法律的な規制というものが、やはりその話を聞いてもどうしても必要になってくるわけでありますから、そういう点については身体障害者雇用促進法の問題を早急にひとつやってもらいたい。そうでなければどうにもならぬし、この前も申し上げました、身体障害者でやれる作業内容というものはわれわれの前にたくさん私はあると思う。最近こういうことを外国の専門家という人から言われたわけでありますが、全く私もそういう意見を持っているわけですが、日本は技術労働者が足らぬ足らぬといって、若いフレッシュな健康体の人がエレベーターの前で頭を下げているということで、日本は技術労働者が足りないなどということはどこから出てくるのかということを私は言われて、私自身、政治をやる者として恥ずかしい思いをしたわけなんです。そういうことを私は外国人から言われて、身にしみて恥ずかしい思いをしたのですから、そこらもひとつ検討していただきたい。  もう一つ、こまかいことはもうやめますが、今度は国民年金や厚生年金もありますけれども、身体障害者、母子家族の国民年金もベースを上げて保障するということになりました。しかし、加入者だけであります。加入していない人はほっぽらかし。何といっても戦傷病者については援護の措置があるわけですね、しかし、一般の身体障害者という方々には援護措置がないわけです。だから、今度労働の職場につけば労働省の管轄でありますが、つかなければ労働行政の範疇に入らないということになると問題は幾らか残る。幾らかどころでない、非常に残ると思う。やはり私は所得保障の問題を含めて、労働省でも、国民年金、共済年金もあるわけですから、そういうところに要求をしてもらって、ひとつそこらから話し合いをしてもらって、どちらかの方法でやはり身体障害者の雇用の問題や、それから生活の問題やら、社会保障に関する審議会も、これは労働問題と社会保障の問題を一緒にやらなければ解決できないのだという結論を向こうの審議会が出している。労働省のほうの審議会もそういう結論に両方から一緒に協力してやらなければならぬということを言いながら、何かしらん、私らが見ておっても、どうも息がぴったり合っていないという感じを持っておるから、これはひとつ閣議でもきめていただいて、そうして身体障害者の雇用、生活、所得保障という一連の問題をどうするかということを、これは別個の審議会であっても、常時協議して検討していくというかっこうの、この前、身体障害者のときに申し上げましたが、その点は一段と身体障害者の問題については援護の措置というものを十分に考えてもらいたいということを私は希望しておきます。そうでなければ、身体障害者の問題は、いろいろ職場に入ってからも問題が残ってくると思います。根本的にそういう問題と取り組みまして、身体障害者の雇用、生活の問題これを生活保護のほうに落としてしまうということは、その人にとっても不幸だし、労働力のある人を埋没させていくということは社会的にも損失でありますから、そういう点の作業の問題、これは社会保障と雇用対策と一緒にやらなければならない問題がいろいろあると思いますから、そういう点を根本的に労働行政の立場から厚生行政と協力してやってもらいたいということも最後に希望して、私の質問をやめます。
  50. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 この際、ついでに資料要求いたしまして、先ほどいただきました「移転就職者用宿舎建設費予算調」のこの表はこれでけっこうですが、そこで誤解があるといけませんからはっきりしておきますが、先ほどからいろいろ私もお尋ねし、局長からお答えがあったのですが、建物の一戸当たり坪数が非常に少ない。私も十二坪と申し上げたのですが、これは予算額に対する建築費の対象で十二坪と考えておられると思いますが、実際住宅として入居者が使えば、住宅の使用面積はおそらく七坪半ないし八坪じゃないかと思いますが、そうですね。
  51. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 共用部分も含めております。
  52. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 そこで、この十二坪は廊下も階段も入っているのですから、実際の使用面積は七坪半、あるいは八坪程度になるのじゃないかと思うのです。したがって、この資料は建設の予算調べですから、予算としては共用部分も入ってもいいと思いますが、そういうことで、今後こういう資料を出すときには誤解のないように、ひとつしろうとがわかるように、建物は予算額に対して十二坪の建設費を考えているが、しかし、実際の使用面積は七坪半であるとか八坪であるというふうに示してもらわないと困る。  そこで、この際、この法律審議は大体終局に近づいてきておるのですが、四十二年度のこれ一万戸と言っていますけれども、おそらくこの状況でいきますと、実績は九千戸を割るのではないかと私は思うのですけれども、そういうことはこの際申し上げませんが、現在の四十二年度として建てようとしておる建物の見取り図を、平面図でけっこうですから、ひとつ早急に出していただきたい。それから、それは部屋ごとの見取り図だけでなしに、共用部分が相当ありますから、階段をこれだけとっておる、あるいは廊下をこれだけとっておる、したがってこういうふうになるのだということをひとつ資料としてお出し願うようにお願いをいたしたいと思います。  それから、現在すでに建設予定地、あるいは土地を取得されているところもあると思いますので、この近辺、私は兵庫ですから、兵庫近くでもいいのですけれども、この土地をこれだけ確保しておる、そうしてここにはこういうふうに建てるつもりでおるという、その土地費と、それから、もし見積もりがすでにきまっておりましたら、建築費の——業者まで言うのはどうか知りませんけれども、実際の実績をひとつ資料として出してもらいたいと思います。よろしゅうございますか。
  53. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 資料として提出いたします。
  54. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めることに御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。なお、修正意見等のある方は討論中にお述べを願います。
  56. 丸茂重貞

    ○丸茂重貞君 本法律案は適切な措置と認めますので、賛成いたします。  なお、「この法律は、昭和四十二年六月一日から施行する。」ということになっておりますので、これを「公布の日から施行する。」ことに改める修正案を提出いたします。
  57. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより雇用促進事業団法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、討論中にありました丸茂重貞君提出の修正案を問題に供します。丸茂重貞君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手
  59. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、丸茂重貞君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手
  60. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は全会一致をもって可決されました。  以上の結果、本案全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、各派の皆さんの御賛成をいただきまして、雇用促進事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を提案いたします。  案文を朗読いたします。  一、各種職業訓練所の所定の課程を終了した者については、政府は、責任をもつて就労を確保すること。  二、雇用相談員は、労使関係については不介入の原則を確立すべきこと。  三、早急に身体障害者雇用促進法を改正して、身体障害者の雇用機会の拡大をはかること。  四、身体障害者の自営業開始者に対する援護措置の強化をはかること。  五、事業団運営協議会の活動を活発ならしめるよう配慮すること。    右決議する。
  62. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいま述べられました藤田藤太郎提出附帯決議案議題といたします。  藤田藤太郎提出附帯決議案賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手
  63. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 全会一致と認めます。よって、藤田藤太郎提出附帯決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、早川労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  64. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重して努力いたしたいと思います。
  65. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午前の議事はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。   午後零時十六分休憩      —————・—————   午後一時二十二分開会
  67. 山本伊三郎

    委員長山本伊三郎君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  68. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、ILOの問題について少し大臣に質疑をしたいのですが、時間が三十分くらいしかないので非常に残念ですが、先日も本会議でILOの問題について質問をいたしました。どうもILOの問題について私はこういう疑念がどうも頭から抜けないのでございます。一九一九年にILOに参加して、日本は常任理事国になって、三七年脱退するというときまでのILO活動というのは、川西さんはじめ、前田さんなんかがいろいろ順番におかわりになって活動をされてこられたけれども、もっと真理の探求というものをやるかまえがあった。ところが、三七年にILOを脱退して三国同盟をやって、そうして正式には五四年ですか、復帰をしたわけでありますが、どうもその間における日本の資本家諸君の考え方が間違っていやせぬかという感じを持つわけであります。いまの日本の経済を見ても、生産力ばかりふえていくわけですが、人権の尊重というような問題が主としてILOの議題でありますが、労働を保護するための国際労働機構なんでありますから、だから、当然生産と消費のバランスにおいて、労働者の保護というものが、または労働者の生命を守るというような問題がILOであれだけ熱心に議論が行なわれているにかかわらず、日本の経営者団体がILOなんというものの決議には従いたくない。ただ、何でILOに再加入を要請したかというと、将来一等国というか大国というか、いずれにしても、外国との貿易を再開するのにはこれに参加しなければ都合が悪い、再加入したら、あとはもうどうでもいいのだ、そういうものの考え方というものが、どうも日本の経済界の中にあるように私は思う、全部であるかどうか知りませんけれども。たとえば再加入のときにはILOの協会をつくって、私らも全国に動員されたわけです。労働省が先頭に立ち、日経連や、時の総評ですが、全国に三者がともに遊説に歩いて再加盟が実現をした。ところが、再加盟は実現したけれども、政府二、労一、使一の会議で問題がきめられる、そういう形できまるものには従いにくい、従いにくいというのが日本の経営者の立場だと私は思うわけであります。ILOに加盟したとたんに、ILOを広める運動から手を引くという、こういう歴史が、片一方の日本の経済をささえている団体がそういうものの考え方で、ですから政府側も熱が入らない。ILOが百二十一条約を結んで、日本は常任理事国でありながら、これに対して非常に不熱心だと私は思う。私は十年前のようなひどいことを通産省や企画庁は言わぬと思いますが、通産省の諸君なんかは、ILOは日本の経済政策のどこに関係があるのだということを当時言っているわけでありますから、そこから一つ前へ出ようなんていうようなものの考え方があるのかないのか、これ労働大臣に聞いても無理だと思うから、これは通産省や企画庁に聞かなければならぬが、労働省としては一つでも早く批准をして、名実ともに日本の経済も発展する、国民生活も向上する、労働者もより高い生産をあげるような労働の再生産への道を開いていこうという、これが労働省の立場だと私は思う。だから、そんなに労働省に対して私は誤解を持っているわけじゃないのだけれども、何となしにILO条約に対する取り組み方が足らぬという感じなんです。  もう一つの問題は、勧告というものがきめられるわけですが、むしろ私は、ILOというものを理解したら、常任理事国や先進国は、勧告をきめたら勧告を実施する、単に条約を批准するというよりか前に、勧告をきめたら勧告を実施するというかまえが日本の私は立場じゃないかと、こういうぐあいに思うわけであります。ですから、私は、一番大事なことは、このILOのいまの動き、恒久平和、その他国民の、要するに人類の貧困は繁栄の障害になるというところまで宣言をするようなILOになっておるのにもかかわらず、常任理事国の日本がどうもILOとの取り組み方が鈍いような感じがしてならないのです。だから、私はその点について労働大臣の所見を承って、これからILOのいろいろたくさんの条約があるわけですが、二十五しか批准をしていない、これでいいかどうかという一つ一つの検討というものをやはりやっていかなければならぬのではないか。ちょうど昭和三十三年でございましたが、ILO批准促進委員会というものをもって検討したことがあります、この社会労働委員会で。ところが、これもあまり熱心さがないのでそのままになってしまったのでありますが、今日こそそういう専門委員会をつくって促進する時期にきているのではないか。十年一昔といいますけれども、大体十年たつが、日本が積極的にILOと取り組まなければならぬのじゃないかという気が私はするわけです。そこらを含めて、ひとつ労働大臣の所見を聞きたいと思うのです。
  69. 早川崇

    国務大臣早川崇君) まあ総理大臣がお答えするような大問題だと思いますが、労働大臣としての所見を要約してお答え申し上げたいと思います、  フィラデルフィア宣言で三つの原則が確立されまして、労働は商品ではない。結社の自由、表現の自由は人類進歩の原動力である。また、一部の貧困は全体の繁栄にとって非常に危険なものである。この三つの大原則、私は非常に大きい理想を掲げたものだと存じます。この三つの点が、日本の現在の戦後の政治におきまして、私は完全とは申し上げませんけれども、政治の基本理念はやはりこの線に沿って行なわれておるのではないだろうか。これにはいろいろ御批判があろうかと思いますけれども、大きい政治の流れは、現在の政府のやっておる福祉国家、その他新憲法による政治、すべてこの線で進んでおると思うわけでございます。  具体的にこの条約の問題でございまするが、藤田先生御指摘のように、一部にILO恐怖病といいますか、八十七号条約その他にからみまして、このILOというものを、非常に何というか、さわりたくないという空気も一部にあることは事実でありますけれども、それは木を見て森を見ざる批判でございまして、労働大臣といたしましては、できるだけ条約を批准してまいりたいと努力を傾注いたしておる次第でございます。後進国、その他中近東、アジア諸国は何でも条約を簡単に批准するんですけれども、ところが、国内法ではずいぶん矛盾したことを平気でやっておるという事例も間間見られるのでありますが、わが国に関する限りは、条約を批准した以上、あくまでも国内法、あるいは政治、行政の面においてこれを実行していくと、誠実な態度で取り組んでおります関係上、条約の批准というものも、あるいは二十五という少ない数字、まあ各国の平均が二十七ですから、非常に少ないとは申しませんが、なっておるという半面の事実もあろうかと存じます。しかしながら、われわれといたしましては、たとえば今国会で男女平等の百五号条約を批准することに踏み切りました。また、皆さんの御同意によりまして最賃法というのが現在改正案で出ておりまするが、最賃法の改正案が成立いたしましたならば二十六号条約というものを批准する国内法の体制ができまするので、こういったものも引き続き批准していくというようにするつもりでございまして、一歩一歩ILO条約というものを数多く批准してまいりたいと存じております。  もう一つ重要な問題は、来年度アジアILO地域総会を、外務政務次官が先日参りましたときに、日本で開催するということの要請を受けました。まあこれも喜んで、来年度であれば、日本で、アジア及びアジアに影響ある太平洋地域の国家を入れまして、日本におきまして半額費用四千万負担いたしましてアジア地域のILO総会を日本へ招致するということも、ILOの代表に訓令を先般いたしたような次第でございます。まあそういったことでございますから、労働大臣といたしましては、着実にILO精神を国内政治に実現してまいりたい、条約も批准してまいりたいと、こういう心組みでございます。
  70. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ来年は人権年といわれて、国連も世界人権宣言の二十周年に当たる。まあILOの理事会はこれと四つに組んで、六十八年度に人権関係の条約を各国批准してもらいたい、これはまあ要請の出ていることは明らかでありますけれども、まあILOというのは、大臣御承知のとおり、労働時間の問題から、賃金から休暇の問題、婦人労働、安全、衛生、福祉、海上、社会保障というぐあいに、多岐にわたって条約、勧告、決議というものをやっているわけでございます。労働時間にしても、今日世界じゅうの国といっていいほど、後進国は別といたしまして、先進国は四十時間労働というかっこうになっておりますし、賃金のほうを見ると、ILO条約に分配論は出ておりませんけれども、労働分配率というものを高めて、むしろ根元である経済を発展さすためには生産と消費のバランスをとっていこうという主張がだんだんあがってきている。ヨーロッパの各国を歩いてみると、それが非常に目に立つわけでございます。社会保障にいたしましても、老齢者に対する問題、身体障害者や母子家族に対する所得保障というものが、この労働者を保護するといううらはらの問題として社会保障というものが進んでいく、私はそれが政治の姿でないかと思うわけであります。ですから、その人権年に対して日本政府がどうこたえていくか。先日も本会議で百五号の問題が議論になりましたが、その百五号の問題についてはいろいろ障害があるだろうということで片づけられるわけでありますけれども、さらにもっともっと直剣にその百五号条約に適合するような国内法の整備をやって、そして百五号条約を人権年の来年には批准するような形をとられることがいいんではないか、こういうことを深く考えるものでございます。しかし、私は、もう一つの根が、先ほどILOというのはどうもいやがる傾向があると、こうおっしゃったわけでありますけれども、日本の経済施策の中で、ILOできまったようなものには従いにくいから云々というようなことで日本の経済を握る経済界が逃げるというふうなこの風潮を、私は、労働教育の面からしっかりやってもらわない限り、ILOとしっかり取り組むということがなかなかできないのではないか、私はそういう気がするわけです。だから、私は冒頭に申しましたように、ILO条約はむろんのことであるけれども、ILOの勧告を、少なくとも、常任理事国やその他先進国といわれておる国はILOの勧告を実施していくというところへ、日本もその一つでありますけれども、やはり心を置いていかない限り、ILOの精神というものは日本の労働行政や厚生行政の中に生きてこないのではないかというぐあいに非常に痛感をするわけであります。それがまあ母体であります。それから、その上に何が起きてくるか、そういうILOがやっている条件を満たすのには国の経済施策をどうしたらいいかというところへ私は出てくるんだと思う。たとえば一口に言って、それは気に沿わないかもしらぬけれども、機械設備、生産設備をこしらえさえすれば国民の生活は自然についてくるんだというものの考え方、今日のILOの中心団体でありますヨーロッパの各国はそうじゃなしに、この経済計画をやるのにはどれだけの雇用労働者、要するに完全雇用の道をいくか、どれだけの国民生活を上げるかということが主体になって経済計画が立てられている。その違いというものをどうしていくか。この違いを明らかにせぬ限り、もっと主権在民の国家にふさわしいような経済計画を立てない限り、いまのILOにははだに沿わないような状態で動いていくのではないか、そういう気がしてならないわけであります。ですから、まあ所得倍増計画以来、中期計画、今度の経済計画を見ましても、盛んに国会の質疑の中では、いや、国民がどうの、労働者がどうのとおっしゃられるわけでありますけれども、板についたような経済政策が表へ出てこない、そこが私はやっぱし問題であろう。そのかなめは労働大臣であると私は思う。そうやっていけば、人間を尊重し、国民生活を第一に考えてあげていくという経済政策、政治の政策が生まれてきたら、ILOがイギリスやフランスや、あそこらの六十から七十というところは別といたしましても、せめて百二十の、あるいは五十ぐらいの批准をいま直ちにしてもいいような条件が日本の国家に生まれるのではないかという気がするわけであります。だから、そのいろいろの施策の前提として、日本の経営者教育というものが私は前提として必要ではないか、労働省はそこらあたりはどう感じておられるかということが聞きたいわけであります。
  71. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 最近は経営者も、特に大企業の経営者も非常にこの労働問題に深い関心を持ってまいりまして、労務担当重役というものを中心に、非常なこれはむしろ有能な者を充てておる。これには、労働組合運動の発展とともに、戦後初めて人手不足の時代が到来してまいりました。人間労働力というものをそういう面からも大事にしなければならないということになってまいりまして、特に中小企業あたりも、勤労者の福祉向上、賃金上昇に非常に積極的に取り組むようになったわけでございます。ただ、同時に、経営者の立場は、やはりその事業を発展させなければなりません。いわんや国際競争というものを控えておりますので、事業がつぶれて賃金だけ上がったというのでは、結局勤労者の不幸につながりますので、そういう両面を踏まえながら労働問題というものに真剣に取り組んでおる、まあこういう実情であろうかと思うわけでございます。なお、公労協、公共企業体等の問題につきましても、従来と違いまして、今回はお互いに調停段階で腹を出し合って、信頼し合って春の春闘の賃上げが実質的に調停できまっていったというような姿も、私は、日本の労働運動にとりまして大きい前進の一つではなかろうかと思っておるわけでございます。さらに最高裁の判決で、昨年東京中央郵便局の中郵事件につきまして、非常に政治的な、あるいは暴力を伴うというようなストには刑罰を科せられてもやむを得ないが、正常な形の無作為という程度の問題については刑事罰を科せないという判決もございまして、これまさにILO精神というものを判決の面にも生かしたもので、私は労働問題については一歩の前進であるとはっきり評価をするということを本会議でも申し上げたわけでございます。あれやこれや考え合わせますと、藤田先生の御指摘のように、一〇〇%とは申しませんが、一歩一歩やはりILOの精神というものが、経営者の面におきましても、また、国内のいろんな面におきましても、やはりこれを前進しつつあるんじゃないかと思っておるわけでございまして、何ぶん日本は先進国とは申しながら、経済的にもまだまだ欧米水準までいっておりません。そういうこともあわせ考えて、着実にひとつILO精神の実現に努力してまいりたいと、かように思っておるわけでございます。
  72. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、まあ大学の名前はいいませんけれども、ある大学の教授や助教授、講師クラスと三時間ほど話をしたことが昨年あるわけです。しかし、私は、その教授クラスの連中、特に若い連中がどういうそのものの考え方で日本の経済を動かしていくかという話を聞いて、あきれてものが言えなかった。もう池田さんじゃないけれども、機械や設備ができたら国民は自然に潤ってくるのだ。だから、国民生活を上げるということは日本の経済にとってプラスにならぬのだというものの考え方がその大学の諸君の頭で、それが大学生を教えているということを、私はそのとき話を聞いてまああきれたわけなんですね。ILOどころか、主権者国民であるという国家体系も忘れたような教育を大学生にしているなんというようなことは、私はもうあきれてものが言えぬ。まあそこで、私は、そんなら君らは何を考えているか、一九二九年当時からの世界恐慌におけるニューディール政策を君らはどう考えているのだという話をしたことがございます。だから、そういうものの考え方が日本の経済の中心になるとしたら、これはもうたいへんじゃないかという気が私はする。そういうところには、大臣が幾ら気ばっても、ILOの精神に沿っていくなんというようなものが出てくるのだろうかという感じを持つ。日本はILOの常任理事国として政府の代表が出られ、労使が参加をしているわけでありますけれども、全体のILO運動というものに実際にしっかり取り組んでいこうというものが、そういう考えのどこから出てくるのだろうかという、まあいみじくも、先ほどILOというといやがる団体があるというお話が出たのだろうと私は思いますけれども、ただ、労使の慣行がよくなった、労働者が少なくなったから、自然に中小企業も労働力を奪い合うので賃金を上げなきゃしようがないという現象が今日出ております。大企業一〇〇に対して三〇%くらいのやつが五〇%くらいに違いが縮まってきたことも事実でございます。しかし、そういうものがILOの運動であろうかということになると、そうでもない。ILOというのは、全体に政府則が二名も出るようにしてつくられている労働保護の世界機関なんです。先ほど言われた三原則、フィラデルフィア宣言の三原則をはじめといたしまして、憲章というものによって恒久平和をどうするか、社会正義をどう高めていくかという基本に立ってILOに参加している。単に貿易の一つの道具として日本がILOに参加しているというようなことであれは、これはとんでもないことで、そんならもう日本は常任理事国に参加する資格がありませんから、引かしてもらいますというぐらいにまで労働省、労働大臣としては私は言わなきゃいかぬ段階にあるのではないか、私はそう思うのです。ですから、そこらのところが十分に払拭されてないところに、ILOと取り組む今日の事態というものが少しも前へ進んでいないのではないか。一度三十三年、十年ぐらい前に、たとえば各省に関係のある条約の検討をしたことがありますけれども、まあ一々これはこの条約に問題ないけれども、手続としてはどうのこうのというぐあいにして、それで自分の国の国内法を完全な整備をするまではILOと取り組まぬ、それがサボる現象になってしまって条約の批准がおくれている。ましてやILOの勧告、私は代表として参加し、地域会議も代表したし、また、総会にも代表して意見を述べて議論をしてきた。これならいいだろうといって勧告を、たとえば有給休暇の問題でも、私が行ったときに勧告をきめてきた。しかし、そんなものが労働行政、労働省ばかりとはいいませんけれども、日本の国内については見向きもしない、ILOの休暇に対する勧告なんてあったのかなという状態で国内行政は進んでいる。私はこんなことではどうにもならぬのではないか。だから、その勧告を十分に理解し、その方針に沿って実現する中から条約を批准していく、または産業別には決議もあるわけでありますから、その決議をどう生かしていくかというような問題を、もっと真剣に私はILOの問題を考えていかなければいかぬのじゃないか。  そこで、百五号の条約にいたしましてもいろいろ問題がある。昭和三十三年にはこの社会労働委員会で、これを批准いたしますと、かように人権を尊重して国内の政治をやりますと時の大臣が約束している問題ですらほったらかしになって、いまじぶんになってからどことどこに問題があるので困りますというようなものの言い方を私はされちゃ困るということになるわけであります。一つの例ですよ、個々の条約をいま言っているわけじゃない。ILOというものについていかにして日本が取り組むかという姿勢の問題について私は話をしているわけです。だから、昔の日本の労働運動の中でも、ILOなんというようなものはもうどうもおかしいからという段階がありました。しかし、その一段階が済んで、ILOのやはり世界労働水準によって取り組んで、労働者の生活保護も高めると同時に、日本の経済、政治も国際並みに人権が尊重される中で、働く者が保護される中でこのILOをしっかり盛り立てて世界じゅうの労働者がよくなるようにしようじゃないかというように労働組合運動も転換をして、その頂点が私の記憶ではILOの再加入だったと思うんです。再加入になって、加入になったとたんに経営者団体からそっぽを向かれたという、その状態で今日まできている、私はそう思う。だから、大臣としてはILOというものをどう育てていくか、どう守っていくかという問題についてどこに障害があるかということをもっと真剣に私は取り組んでもらわなければ困るんではないか。さしあたって来年は世界人権宣言の二十周年記念で、ILOとがっちり取り組んで、七条約を少なくとも来年中には批准してもらいたい、国内で検討してもらいたいという要請をしていることは、私はおそらく満場一致でこの総会も確認しているんだろう。次官は総会に行かれたんだから、そこらのことはあとから聞きますけれども、それが日本のILO条約勧告決議、また、ILOの大精神と取り組むときには、全く取り組む姿勢がない、無関心、ただ自然発生的に物象の中で出てくる一つ一つの現象をとらえて、昔からは進んだというような議論をやっていては、ILO条約というものは、ILO精神を日本の国内に持ち込むことはむずかしいんではないか、私はそういう気がするわけであります。ですから、私は、これをそれじゃどうしたらいいかということになれば、労働大臣一人でできる問題じゃない、それは私もよく理解しております。しかし、そういう方向に持っていこうというセッターは労働大臣だと私は思う。国内政治を変えていこう、そしてILOとしっかり取り組もうという、閣内においても国においても、指導は労働大臣の役目ではないか、私はそう思いますから前段についてこういう意見を述べているわけです。
  73. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 藤田先生のILOに対する非常な情熱と御熱意に対しまして、心から敬意を表しながら拝聴しておりました。そこで、先生の御意見にございまするので、この際、労働省内に、いままでの勧告、条約全部ひとつ総洗い、フォローしてみたいと思います。そうして当委員会の御発言趣旨に沿いまして、こういう点はこういうように直していけばILOの精神に対して前進するのではないだろうか。また、ILO百号という問題も、いままでは経営者は反対しておったのですが、イギリスすら、これは男女平等なんてけしからぬといって、イギリスもあれだけほかの条約を批准しておりながら、百号には否定的だったのですけれども、これも案ずるはかたく、生むはやすしでございまして、思い切って批准するような運びになりましたので、それ以外の条約、あるいは勧告につきましても、熱意を持ってやればさらに前進し、また、批准できるものも多々あるかと思います。本日の委員会のあれを機会にいたしまして、労働省といたしましては、各条約、あるいは勧告の洗いざらいひとつ検討を部内の機関でやりたいと思っておるわけであります。同時に、勧告のみならず、たとえばドライヤー報告というような報告もございます。これはまた労働組合に対しても、政治一辺倒というのはけしからぬというおしかりもあるので、経営者のみならず、労働組合のあり方につきましても、勧告あるいは報告等も洗いざらいフォローいたしまして、ILO精神というものができるだけ日本に豊かに実っていくように、さっそくひとつ措置をとりたいと思っております。そういう意味で、ひとつ御鞭撻を賜わりたいということを一言申し上げておく次第でございます。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ大臣には時間がないようですから、またいずれあらためてもう少し議論をしたいと思うのです。まあ行ってください。  そこで、次官が見えましたから、あなたは先日からILOの総会に出席されておったのですね。ですから、総会に出席されたあなたの感想といいますか、それから報告を、まあ努力をしてILO全体の動きについても把握しておいでになったのだと私は思うので、だから、この総会にはどういう条約がきまり、どういう勧告がきまり、そうして条約検討委員会その他の専門委員会はどういう活動をしておったか、あなたはたとえばそこでどういう発言をしておいでになったか、こういう問題について、ひとつ御説明を願えたらけっこうだと思います。
  75. 海部俊樹

    政府委員(海部俊樹君) 御報告いたします。第五十一回の総会に政府代表として出席させていただきましたが、御承知のように、七日から始まりまして、ちょうど本日の二十九日までジュネーブで総会をやっておるわけであります。私は、国会の開会中でもございましたので、六月七日の開会式から参加いたしましたが、十六日の会議までつとめました。十七日に現地を離れてこちらへ帰って参りましたので、御報告できますのは初日から十日間の、ごく前期のILO総会の状況であります。  実は、今回の総会の始まります前の日に、現地の青木大使の公邸に日本代表団が労使とも全部集まりまして、特に中東戦争が開会式の前の日に始まるという異常なふんいきでありましたので、ILOの総会を成功に導かせるためには、中東戦争に会議そのものが巻き込まれてはたいへんなことになるというので、ちょうど日本の青木大使が理事会の議長をしております関係で、総会の冒頭の議長演説の原稿を急拠変更していただきまして、不幸な状態を持つ国の代表団もすでにおいでにはなっておるが、この総会は労働条件の改善、ひいては世界の平和のために寄与する労働問題の会議であるから、政治的な発言は一切してもらわないようにということを日本の代表の名において発言をするようにいたしまして、そして総会に臨んだ次第であります。総会は中東戦争の影響は受けないで、きわめてスムーズに進んだと思うのでありますが、初めの十日間でありますから、午前中の総会、午後の総会、ほとんど各国の政府並びに労働代表の総会に対する演説にすべての日程が集中しております。私は十二日の現地時間の午前十時四十五分からでありますが、政府代表の演説をいたしましたが、御承知のように、総会のテーマとして今年ILOが示してまいりました問題点は非筋肉労働者の現状というテーマでありますので、このテーマに従って日本政府の考え方を述べたのであります。時間は十五分でございましたが、その中身を簡単に要約して申し上げますと、現代という時代を、先進工業諸国における技術革新と新興独立諸国における工業化への努力によって特徴づけられる進歩の時代であるというふうにわれわれは判断するということを大前提にいたしまして、日本の社会的、経済的な開発において非筋肉労働者の果たしておる役割りがいかに大きいかということ、特にわが国の国民総生産が最近十年の間に三倍以上に増大したわけでありますが、このような発展の陰には、直接生産工程に従事する勤労者の力もさることながら、事務管理部門、そこに働く非筋肉労働者努力が大いに力があったのであるということを申し上げ、しかも、経済成長の過程において、第二次産業部門では技術革新の影響を受けて生産部門が次第に拡大してまいっておりますし、あるいは第三次産業部門に従事する非筋肉労働者の数も顕著に増加しておりますので、これらの非筋肉労働者に対しては日本政府としてもいろいろな施策を講じようとしておる。その一端を申し上げますと、特に技術革新の進展に伴って、非筋肉労働者の問題の中で技術者が非常に不足してきておる。ですから、生産工程に従事する技能労働者の不足とともに、非筋肉労働者の中における技術者の不足の問題を取り上げたわけでありますが、わが国では、いまのところは文科系の学歴を有する者の中に非筋肉労働者に就職を希望する者が比較的多くおりますので、今日までのところはたいした混乱もなく過ごしてまいりましたけれども、これからは、産業政策、教育政策を含めて、総合的な観点からこれの対策を進めなければならないということを第一点で申し上げました。  第二点では、非筋肉労働者の中で、特に中高年齢層の方に対する事態に触れまして、職業転換を余儀なくさせられる人たちも今後はふえてくるわけでありますから、転職訓練であるとか、あるいは追加的な教育訓練、離職者の方が再就職するまでの間諸手当を支給するなど、いろいろときめのこまかい施策、あるいは調査研究を続けておりますし、また、これと並んで、いわば人材銀行の構想を発表いたしまして、職業安定組織の中に、特別に中高年齢者の再就職を促進するような専門的な部門も置いておるというようなわが国の施策について報告をいたしたわけであります。  それから、もう一点、昨年末のアジア諮問委員会においてアジア労働力計画のことについて提案されておった議題がございましたので、このことに触れまして、このアジア労働力計画、特にアジアの貧困というのは、アジア各国における人口の増大と、それに伴って雇用の機会というものが増大していない、そこにアジアの貧困の一つの原因もあるのではなかろうか、地域的な協力のもとでこれが解決できるならば、お互いアジア各国が協力し、努力をすべきであるというような点で、もし今年、近く予想されるアジア地域会議における討議の際には、さらにこの計画が具体化されて有効な措置がとられるように日本としても努力をしてみたいということを申し述べました。  大体以上のようなことで十五分にわたる政府代表演説をやったわけでありますが、各委員会は、まだ初めの十日間でありましたので、ほとんど開かれていないような状態でありましたが、ただ一つだけことしの議題の中の第六番目になっておりますが、労働者一人当たり運搬許容最大重量をきめるかどうかというテーマの委員会は、この議題自体が全人類に同一の運搬重量の最大限をきめるということは不可能であり、実情に沿わないのじゃなかろうかという各国代表の意見がありまして、この問題を委員会で討議しようということだけはやめる、このことは明確に決定したわけであります。  それから、条約、勧告の適用に関する情報及び報告の委員会は、私のおります間には二度ほど開かれたわけでありますが、日本代表といたしましては、委員会に出席をした現地駐在の久野木参事官を通じて、ILOの百号条約についてただいま政府が閣議で決定をして国会に提案をして、その批准をお願いしておる最中であるという状況の報告だけはいたしておきました。  その後の点につきましては、十六日までに明確になった問題はございませんでしたので、たいへん失礼でありますが、きょうまだどういう結果が出ておるか聞いておりませんので、いずれ結果はまとめて御報告申し上げたいと思います。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、これは大臣でなければよくわからないけれども、あなたジュネーブの総会に行かれたのは初めてだと思うけれども、日本は二十五しか批准していない、ILOの中心になっている諸国は六十か七十の批准をしている。全部の条約を読んでおいでになるわけでもないでしょうが、そのILOの機関というものをはだにつけてお帰りになったと思うんですが、その印象はどうですか。
  77. 海部俊樹

    政府委員(海部俊樹君) ILOの条約の要約されたものを一生懸命全部読んでおりますけれども、二十五わが国が批准をしているという状態でありまして、たとえば向こうでモース事務局長とかジェンクス次長とか、いろいろお目にかかってお話をいたしますときにも、でき得るだけ国に帰ったら批准に協力をしてほしいというような申し出もございますし、おっしゃいましたようなILOの中心をなしておりますヨーロッパの各国では、大体条約を六十とか四十とか、わが国の批准よりもはるかに上回った数を批准していることもよく承知いたしておりますので、批准可能な条件が整ったものがあったならば、これはせっかく加盟をして理事国として努力もしているさなかでもございますので、これは批准をして、国際社会におけるわが国の労働に対する立場というもの、あるいはその姿勢というものを高めていく必要があろうということを私は感じ取って帰って参りました。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 いずれ大臣が出られたら質問をしたいと思うのですけれども、しかし、私は、ILOの来年にはアジア会議が日本で開かれる、日本で開かれたのは昭和二十八年でしたか九年でしたか、開かれました。アジアの国同士のいろいろの決議が行なわれて、この前のインドにおけるアジア会議の議事録を読んでみますと、後進国にあるべき課題というものは何か、そうしてアジア地域におけるいろいろの問題の提起がされているわけであります。そういう問題をまたあらためて来年やるわけですから、だから、それから進歩した形でアジア会議が開かれると私は思います。ですから、そういう中で次官がことし行って身につけておいでになったんですから、大いにアジア会議を意義あるものにしてもらいたい。あなたは何でもやれそうなタイプだし、若さだということでやれるんですから、ひとつがんばってもらいたいということをいまからお願いをしたいわけでございます。  それで、もう一つは、これは松永さんでもけっこうですけれども、私はずっと前に、衆参両院の社会労働委員が、ILOの総会をやるときには行って勉強したらいいじゃないかという発言をしたことがあります。三者構成で行くわけですから、どこから費用を出すかという問題がありそうでありますけれども、私は、やっぱり立法府がさしあたり行けないというなら、労働省はもっと真剣にILOと取り組んでもらいたい。  それから、大使館における労働省派遣の書記官というか参事官というか、ジェネバ、イギリス、ドイツですかフランスですか、アメリカにも行っているのでしょうが、その人方の悪口を私は言うわけじゃありませんけれども、労働一般に対する相手方の国または周囲の国の状況がどうなっているかということ、それを知るために私はおいでになっていると思う。だから、つぶさに、間髪を入れずに、ヨーロッパの労働事情なんというものは、ことばのできる人で専門の人ですから、一カ月に一ぺんくらいはレポートをよこして、そしてこれを社会労働委員会に報告する。それから、単に報告するばかりじゃなしに、そのもののよしあしは別として、日本の労働界、それから労働行政の関係者にその報告書提出する、そういうくらいのことはあってもしかりだと私は思うのですよ。私は二度ほどあちらへ行きましたけれども、その大使館に出ておいでになるあらゆる官庁から行っておられる方々は、それじゃ労働関係は知らぬというかっこうなのかどうかと言うてみると、案外中心のところをつかんでおいでになる。私は通訳を頼んで一週間も二週間も歩いたことがあるけれども、案外その国のわれわれが想像しているようなポイントをつかんでおられる。ところが、国内には報告書も状況も一つも報告されてないという感じを非常に受ける。だから、私は、大臣がおられぬので非常に残念なんですけれども、日本の労働省から派遣されているなら、EECのブラッセルにも私は派遣すべきだと思う。EECの六カ国の情報は全部理事会でまとめているわけですから、そういう人がそんなものを端的に日本に送ってくる、日本の立法府である社会労働委員会または社会保障の関係に、行っておられる人が毎月レポートを日本に送ってくる、そしてそれをわれわれが見るということでなければならない。たとえばそのレポートを送るとしたら、飛行便なら簡単に二日か三日でくる、翻訳するとしてもそんなに長くかからないと思うのです。半月か一カ月したら翻訳して報告書として国民や議会に出せる。ところが、残念ながら、そういう新しいなまの資料というものは労働省に行ったってないという状態なんですね。それで、われわれが資料を寄せてきてこっちで翻訳して、そしてそれを見なければならぬというほどつんぼさじきに日本の政治をやる者はみんな置かれているということでいいのかどうかということを考える。ILOの精神を各国がどういうぐあいに生かし、どういう状況のもとに人間尊重、労働者保護の行政というもの、恒久平和への道の行政というものが行なわれているか、そういう点では日本は非常に足らぬのじゃないかという気がするわけです。もっと的確にジェネバにおいでになる方がILOの情報を送ることもできるでしょう。東京にあるのはILOの東京支局ですから、支局には限界があると思うのですよ。自分のことは何だけれども、政府は国民に対して事実を知らすという義務があるので、そのために人を派遣せられる、それくらいのことはやらなければいけないと私は思っているのですけれども、労働省はどう考えているか。
  79. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 藤田先生のお話はまことにごもっともだと思います。初めにILO自体に対する対処のしかたについて申し上げますならば、今回政務次官が政府代表で行かれましたほか、私のほうのILO担当の審議官並びに国際労働課長が参って出席をいたしておりまするし、外務省国連局のILO担当の社会課長も東京から参りまして出席をいたしております。その状況等につきましては、例年国会にILO憲章に基づきまして御報告しておるもの以外にも、一応総会ごとにレポートをつくっておるわけでございます。先般藤田先生から御指摘をいただきまして気がつきましたが、国会の先生方に差し上げてございませんので、まことに不手ぎわでございましたが、つくりましたならば国会の先生方にも間違いなくごらんいただけるような手続をいたしたい。  なお、お話にございますように、条約なり勧告なりというものが、日本の政府部内はもちろん、労使の間で理解されるということが非常に重要でございます。従来ともPR等にはつとめてはおりますけれども、なお不十分な点もあろうかと思いますので、一そう努力をいたしたいと存じます。  それから、アタッシェのレポートの問題でございます。これは御指摘まことにごもっともだと思いますが、これはやや役所風に申し上げますならば、大使館の一応所属職員になりまして、労働だけを担当するということでなく、やや広く担当もさせられておりまして、いろいろ多忙な点もあろうかと思います。外務省のそういう公式報告というものは何か一定のスタイルがあるようであります。しかし、それはそれといたしまして、労働関係で重要な問題につきまして資料その他を送付してくれておる場合もございますので、今後とも先生の御趣旨が生きますように、アタッシェの諸君にも連絡をいたしまして、十分生きた情報が入りますような手配を整える努力をいたしてみたいと思います。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はそこらがどうもオーバーの上からさわっているような感じがするんですよ。だから、日本の外務省にそういう方がおって、それ以上のことをさせないなんということは私はおかしいと思うのですよ。ことしの春でしたか、私は、EEC諸国の社会保障の一般共通の基準書というものがつくられておるわけですが、それを外務省にやかましく言うて取り寄せてもらった。そうすると、外務省では、これはいい資料だから、これはうちにももらっておきますと、そういう話なんですね。そういう一年もたったものが、いい資料がありましたからうちのほうに一部リプリントしてもらっておきますと言うて、自分のところで写してから私のところによこした、一年もたってからですよ。そんなものは間髪を入れず、一九六六年のものならば、六六年の暮れか、六七年の正月にきていなければならぬ。それを去年の暮れからやかましく言うて、ようやく送ってきたらば、ああ、こんないいものがあったのか、知りませんでした、これはいいですなと言ってとっておる。私は、そういう感覚では、外務省の仕組みの中に労働関係とか何とかというもののアタッシェがおると言うたって、労働省、通産省、厚生省、各省から派遣しているのですからね。外務省の規律にあるものは規律にあるものとして、専門のものは専門のものとしてレポートをよこすような規律を外務省は要求してつくるべきだと思う。そういうシステムをとるべきですよ。そういうことをやらぬでおいて資料がないなんということじゃ私は話にならぬと思う。だから、われわれが勉強をして国民のためにしようとしたって資料がない。私は、一カ月もせぬうちになまの資料をどんどん送ってきて、そうして日本語に訳されて皆さんに配られてみんなが勉強する、国民のためならいいじゃないですか。当然やるべきことでしょう。それがやっておられないというのは、私はILOの精神のためにも残念なことで、日本の経営者団体の言うことに便乗して、政府がそのしっぽについて歩いているというふうにしか考えられない。私は非常に残念だと思うのです。あとはもう今度大臣が来てから、少し関係省の人にも来てもろうてILOの問題をやりたいと存じますので、私はきょうはやめますけれども、それくらいのことは私は省内の省議で相談してやるべきことだと思いますから、もっと労働省派遣の事務官を活用してもらいたいと思いますね。それだけは特にお願いしておきたいと思います。
  81. 辻英雄

    政府委員(辻英雄君) 先生の御趣旨のように努力をいたしてみたいと思います。
  82. 佐藤芳男

    ○佐藤芳男君 私は、藤田委員のお話に関連いたしまして、先ほど大臣は、ILO条約を中心として、すべて洗いざらいこれを対象として検討をいたし、その結果を御報告くださるという、まことに当然のことながら、ありがたいおことばをちょうだいをいたしたのでありますが、私は、その際、特に単なる検討だけでなしに、見通しをひとつ調査をされて報告にあずかりたい問題があるのであります。  それは百二号の問題でございますが、御承知のように、百二号は、各種の給付について共通するような条項の条件を満たしていなければならない、これは問題がないのでございますが、第二の案件でありまする各種給付についての規定でありまするところのその内容の問題、これにつきましては、三つ、三部を欠くるところがなければ百二号は批准ができるのでありますが、今日ずっと私ども調べてみますというと、第三部の疾病給付、これは完ぺきを期しておられるのであります。また、第四部の失業給付も完ぺきを期しておられるのであります。ところが、基準を満たしておるかどうか疑問であるというのが相当数あるのであります。すなわち、第五部の老令給付、第六部の業務災害給付、第九部の廃疾給付と、このうちであなた方の御関係のは第六部の業務災害給付の問題であります。これは私は、解釈によりましてはこれは満たしておるのだと、かように言い得ると思うのでありますが、すなわち、現行労働者災害補償保険は、おおむねこの条約の定める基準に適合しておりましたけれども、条約では、労働能力喪失者に対する給付については、その程度が軽微なものに限り一時金とすることができる。ところが、現行の第八級ですね、八級がその軽微なものに該当するかどうかということだけが問題であります。この八級が軽微なものと、こうILOで認めてくだされば、もうこれも完ぺきを尽くしたと言い得るのでございますが、その点、洗いざらい対象として御検討くださる際に、ただ単に御検討だけでなしに、ジュネーブの青木大使でも通じて、一体これは軽微なものと見なすことができるじゃないかというような主張で向こうに内々当たっておいていただき、それがよろしいという情報でありまするならば、現状のままでも、それで合計三つになりますから批准ができるということになるのであります。そういうような向こうに当たってみるというその作業をあわせてお考えを賜わりたいことを、関連して希望を申し上げておきたいと思います。
  83. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 佐藤先生の御質問の点は、私ども、かねてその点を承知いたしておりまして、研究中の問題でございます。  そこで、その問題は二つあると思うのですが、一つは、条約の文言解釈の問題として処理するという問題が一つございます。それから、いま一つ、これは国内的な問題ですが、先般労働省では障害等級専門家会議を開きまして、現在の障害の評価が適切であるかどうか、現在の障害等級表というのはかなり古いものでございまして、第一級から第十四級まであげておりますけれども、それの当てはめ方が、主として外傷による、たとえば両手、両足をなくしたといったような障害をかなり重く見ておりまして、内部臓器の疾患、心臓とか、じん臓、その他内部臓器の疾患、精神障害という点については必ずしも十分ではないという意見がありますので、そういったもろもろの障害をどのように評価し、位置づけをしたらよいかというので、いま専門家で検討しておるわけであります。その結果、等級は同じなんですが、その等級に当てはめる中身が変わるということで、かりに重いものが上に移行するということになれば実質的に問題がなくなるということも、筋としては考えられるわけであります。そういう実質的な問題がございますけれども、先生仰せのとおり、文言解釈として当てはまるならばできるだけ早く批准したらよかろう、こういう御意見もあるわけであります。せっかくひとつ研究を鋭意促進いたしたいと考えます。
  84. 佐藤芳男

    ○佐藤芳男君 ただいま局長のおっしゃったように、いろいろ実質的に審議会等で御検討くださることはけっこうだと思いますけれども、私はきょうまでずっと見ておりますというと、そういうことでいたずらに日にちを費やし、そうして批准が早まることに効験がさっぱりないというのが実情のように私は痛感をいたしております。したがって、文言解釈によって差しつかえないということならば、まず批准を行ないますれば、ただ単に本件のみならず、まだ批准の資格のない項目等につきましても政府はこれに刺激を受けて熱心にならざるを得ない、労働省厚生省も熱意を傾けざるを得ない。そうすることによって厚生行政も労働行政も飛躍を見ることができるのであります。従来の態度を考えますると、なかなか百年河清を待つのたぐいとは酷評いたしませんけれども、急速に批准は行なわれない、文言解釈だけでいいから、とにかく批准を行なう、行なうことによって進展を見さしたいという、これが私の考え方の根本になっておるのでございまするので、その研究もけっこうでございますが、先ほどお願い申し上げましたように、青木君等を通じて、文言解釈はこうだから、八級を軽微と認めてくださればいいじゃないかという、そうした主張でひとつ向こうの内部を探ってもらう、それでもいいとなったら直ちに批准にとりかかってもらいたい、かように私は考えますので、ただいまの局長さんのおことばがございましたけれども、それはそれとしてお進めを賜わりたいし、それとかかわりなしに、文言解釈ということをもって、ひとつそのほうをお進めを願いたいということを重ねてお願い申し上げるわけでございます。
  85. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これはまあ文言解釈をオフィシャルに尋ねるということは、条約批准前でございますから、なかなかオフィシャルな見解が聞けますかどうか、かつていろいろな経験から見まして問題もあろうかと思います。しかし、それは別といたしまして、ただ問題は、各国の障害補償のきめ方というのが国によって非常に違うのでございます。わが国のようなきめ方以外に、労働能力の喪失度合いをパーセンテージできめておるとか、さまざまの方式がございますので、その評価については、大体のことなら私どもも見当がつくのでありますけれども、各国さまざまな等級表を使っておるということからして、技術的な困難がございますということだけは御了承おきいただきまして、鋭意検討を促進いたしたいと思います。
  86. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 それでは、まあ対話の形式でひとつじっくり——といっても時間はむだにはさせません。で、主としてきょうは村上労働基準局長を窓口としまして、いろいろ労働省側に御配慮をいただきたいと、こう思いまして、そういう心組みで質問をいたすことにいたします。  まず、お尋ねに入る前に、二、三の資料をひとつ参考にしていただくといいと思いますので申し上げます。昭和電工鹿瀬工場従業員の略歴をちょっと御紹介申し上げますが、現住所は新潟県東蒲原郡三川村字九島、氏名は斉藤忠夫、年齢が五十九歳と、こういうわけであります。で、斉藤氏は昭和十年十月同工場に入社、昭和三十八年回工場を退職したが、三十年近くも同工場のアセトアルデヒド製造工程で無機水銀を扱っていた工員であるが、退職時には組長であったと、こういうわけであります。同工場は昭和十一年から無機水銀を使い始めたが、斉藤氏は昭和十二、三年ごろから無機水銀の中毒症症状が出始めたと言っておる、こういうことが一つであります。  もう一つの参考資料は、新潟の水俣病弁護団側は、工場の水銀取り扱いがルーズであったことが新潟大学神経内科椿教授の精密診断の結果明るみに出たとしており、今後の公害裁判の有力な傍証になると言っておる、こういうのが第二点であります。  それから、第三点の参考の資料でありますが、六月二十六日、鹿瀬保健所員二十一名が、一人十ないし十五世帯を受け持って戸別訪問、その調査目的と内容は、昭和四十年八月ごろ手足がしびれていたか、川魚を食べていたか、犬やネコに異状はなかったかと、調査員の質問は二年前にさかのぼって行なわれ、調査は同日中に終わっておると、こういうわけであります。これはいま私が村上労働基準局長にお尋ねをするために、一応参考の意見として、資料として、前口上として申し上げておくわけであります。  そこで、本題に入りますが、去る六月の八日、九日の両日にわたって、社会党阿賀野川有機水銀中毒事件調査団が、角屋堅次郎党公害対策特別委員長を団長として、現地調査の結果、無機水銀中毒後遺症に苦しんでおる昭和電工の元従業員からの訴えを直接本人から聞き、また、ほかにも類似の症状を訴える者があると聞き、県の理事者及び関係部課長に対して、阿賀野川流域における無機水銀中毒に関する再検診、言うならば、もう一度調べ直せと、そういうことと、後遺症に悩む人々の医療及び生活補償について自治体及び国の責任において早急に対策を講ずべきであることを強く申し入れたわけであります。その後、新潟県の水銀対策本部は、われわれのこの申し入れにこたえて、後遺症の疑いのある人々に対する現地調査と、昭和四十年八月の時点における大がかりな調査対象からはずしていた、これが私どもが今後えぐり出さなければならぬ非常に重大な問題であると思いまするけれども、実は阿賀野川流域に無機性水銀の事件で第二の水俣病が発生したときに非常に大がかりな調査をやったわけでありますけれども、どういうわけか、今日発生原因者であろうと断定されておるこの鹿瀬工場の地域とその周辺、これは鹿瀬町というところにありまして、この周辺を大鹿瀬というわけでありますけれでも、そこだけをぽかっと調査の対象からはずしてしまっておるわけなんです。これは非常に七ふしぎの一つじゃないかと思うわけでありますけれども、とにかくぽかっとはずしてしまったのでありまするが、今度はそこの工場所在地の東蒲原郡鹿瀬町大鹿瀬地区の調査を今度始めたわけであります。と同時に、先ほど参考事例として申し上げました、いままでアセトアルデヒドの製造工程で無機水銀を取り扱っておったこの元従業員は、工場の扱い方は、これは動脈硬化症だというような形で扱っておった。私どもが現地へ調査に参りまして、そうして、とにかくそういうような人たちが、無機水銀を実際に生産、製造工程上扱っておるわけでありまするから、したがって、その症状も、現象面で後遺症が出ている人がたくさんあるわけでありまするけれども、要するにこれは動脈硬化症だといったような形で扱っておった。そういう状態にあったものをわれわれ調査団が掘り起こしまして、本人の口から聞いた関連もこれありまして、とにかく新潟大学の椿教授、これは元東大におられまして、さらに十年前の熊本県水俣のあの水俣病に対する非常に経験と造詣のある、権威のある学者でありますが、その椿教授がいま新潟大学におる。それにひとつ県はぜひ精密検査をしてもらい、はたして会社側の言う動脈硬化症かどうか、無機水銀を扱ったその水銀中毒症であるかどうかということをひとつ精密に検診をしてほしいということを強く要望しておいた関係もこれありますのでありますが、したがいまして、新潟大学医学部の神経内科椿教授の、昭和電工元従業員の斉藤忠夫、五十九歳の精密検診の結果、今月の二十六日、椿教授によって、斉藤忠夫は無機水銀中毒患者であるという、ほとんど断定的な診断を下したわけであります。で、その結果、目下新潟県議会は開会中でありまして、本件が非常な問題になってきたと、こういうわけでありまして、したがいまして、いまちょっとさっきの大がかりな調査の中で、二年前に治外法権的にとにかくほっぽらかされておったのが、今度あらためてその地域が調査の対象になってきたわけでありますが、そういうような関係で、あとでまた順を追って質問いたしますが、何か新潟県議会で問題になっておる関係上、言うならば工場の無機水銀を扱っておった衛生管理の問題であるとか、衛生管理のルーズからいわゆる無機水銀の中毒、あるいはその後遺症というものが現に歴然として出ている限りにおいては、その関連において労働災害という問題に対する補償問題も出てくるが、一体そういった問題について県議会が、あるいは県の衛生部が、もしくは新潟大学から出先の労働基準局に何か連絡があって、そうして基準局長を窓口として何か連絡がどうでしょうかというような伺いを今日的にまた立てておる事実はありませんかどうか、その辺からまずお伺いの糸をほぐしていきたいと、こう思うのです。
  87. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) いま御指摘の昭和電工鹿瀬工場、現在は鹿瀬電工というふうに名称は変わっておるようでありますが、いま申されました諸点につきまして、十分とは言えないかもしれませんが、一応私ども調査をいたしたところでございます。そこで、まあ個別的問題の前に、一般的に申しますと、労働省といたしましては、無機水銀であろうと有機水銀でありましょうと、これは伝統的な職業病の最たるものの一つでございますから、水銀中毒については職業病対策としても最も重点を置いておるものの一つでございます。そこで、特に昭和三十二年以降は特殊健康診断という制度を採用いたしまして、こういった疾病を発生しやすい工場につきましては特殊健康診断の検査項目を大体設定いたしまして、所定の検査を行なわせるというふうに指導してきた次第でございまして、その結果、御指摘のような例はその結果からは出てきておらないのであります。しかし、いま御指摘の斉藤さんという方につきまして椿教授が診断をなされたという話も伺っております。そこで、これは一般論としてお答えいたしますので恐縮でございますが、斉藤さんの場合は、まあ今後私どものほうでも調査いたしますが、一般にこういった職業性疾患につきましては、本人の素因と、特にその中には既存疾病とか、そういったものもございますけれども、そういったものと職業病を発生せしめるような原因との結合関係等につきまして、医学的にいろいろ精密な検査をしなければならないという問題もございまして、職業病の認定につきましてはいろいろ問題のあるところでございます。しかしながら、その疾病と原因との因果関係が把握できるというものについては、これは業務起因性が明らかでございますので、そういったものについては業務上疾病として補償するのが当然のことであるわけでございます。斉藤さんの問題につきましては、そういったケースがございましたときには請求する請求手続がございまして、それで行政ベースに乗ってくるわけであります。きょうまでのところ、聞きましたところでは、まだそういった行政手続の問題には乗っていないということでございます。しかしながら、問題の性質にかんがみまして、私どもも椿教授の診断等によって一応情報を収集したという経過になっておるわけでございます。
  88. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そうしますというと、新潟労働基準局からは、この問題に関連いたしましては、一応労働省のほうへ連絡なり関連の指示とか、何かこういうことがあったのだというくらいの連絡があることはあったわけですね。
  89. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 問題になっておりますことは私どもも聞きましたので、連絡という形で情報は集めておるということでございます。ただ、御指摘の中で、地区住民の診断をするという問題につきましては、ちょっと労働行政のワクをこえました公害の問題でございますので、この点につきましては行政的にはタッチいたしかねておりますが、個々の労働者の問題については、当然こちらの所管でございます。
  90. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これは今後いろいろな問題で尾を引きますので、私も頭の中では何もかもごっちゃにするという形ではなくて、とにかく会社は、いわゆる工場側は、われわれ調査団が現地に行って、これは無機水銀の取り扱い工程の中で管理がずさんであって、われわれはしろうとであるから、まだ無機水銀の中毒症状としての後遺症であるということはわかりがたいけれども、われわれが対話をしている中で非常な発作的な症状が起きるというような状態にありまするから、これは精密検査をしてもらわなければいかぬということと、これはひとり斉藤さんだけではなくて、類似の患者、今日的にはもう会社を去っておるけれども、後遺症に悩んでおる実在の人がある、こういう話でありまするから、そこで、ちょっと前段参考として資料を、こういうことがあるということを調査の結果掘り当てたのだということと、それから、いま新潟県議会が開かれて、この問題は、今後の発展いかんによってはなかなか大きな問題になってくるのだという、そういうことを位置づけるために、一応参考にちょっと新聞を御披露申し上げておきますが、二十四日の新潟県議会本会議で、「北野衛生部長は、社会党の勝又一郎県議が、無機水銀中毒症の疑いある元昭電鹿瀬工場従業員の検診結果について報告を求めたのに対し、「二十三日、新大の椿教授から、無機水銀中毒後遺証の疑いが濃厚なので、本人が水銀を取り扱った時期や仕事の内容について調べてほしいとの依頼を受けた」」、この従業員は、社会党新潟水俣病調査団によって存在が明らかとなり、去る二十日、新大医学部神経内科で椿教授の精密検診を受けたが、検診に先立って、鹿瀬工場が、「動脈硬化症」であるという反論をしたところから、検診結果が注目されていた。本人は十年くらい前にすでに水銀操業現場を離れているもようだが、詳細は目下県が調査中。水銀を取り扱った時期と発病期が一致すれば、無機水銀中毒症と断定される。」こういうふうなことを言っているわけです。また、もう一点、これは一応新聞でありますけれども、この点だけはまた今後のこともありますので、記録に残しておきたいと思うのでありますが、「北野部長は勝又県議が「同社元従業員の中には同様の患者が他にもいると聞く。もし事実ならやはり新大で受診させるか。また、社宅居住者の健康調査を拒否した鹿瀬電工に対しては、県として厳重抗議すべきでないか」と重ねて質問したのに対し、「無機水銀中毒は、労働災害に属し、新潟水俣病の原因論争と直接的な関係はない。しかし、健康管理上ほうっておけぬので、労働基準局とも話し合って善処したい。」こう言っておるわけでありますので、こういう関連で、これはこれで消える問題ではないのでありますから、さらに質問を進めますが、新潟県は、六月二十二日、東浦原郡鹿瀬町、昭和電工社長谷本哲郎氏に対して、阿賀野川無機水銀中毒事件に関する再検診の一つとして、同社の社宅二百七十八世帯、千百六十八人について健康調査を行ないたいと、津川保健所を通して、文書で協力を求めたが、同社はこの申し入れには応じられないとして協力を断わった事実があるが、いずれ県から新潟大学椿教授の昭電元従業員斉藤君の診断書を添付して、社宅に居住する全従業員の検診について会社側が応ずるよう、出先の労働基準局に対し配慮方の要請があると思うが、本件に関し、新潟労働基準局から本省に連絡があったかどうか。あったとすれば労基法に基づいて何らかの処置をとるか、労働省の見解を伺いたい。こういうわけで、紋切り型のようでありますが、時間不足でありますから、なければない、あるならあるでいいですよ、いずれくることになっているんだそうです。実は新潟県の県会議員から聞いてくれということを言ってきておりますので。
  91. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ただいまのところ、正式にそういったいきさつを背景にして労働省に進達をしてきているということはないそうでございます。しかし、それとは別に、一応私どもの考えを申し上げますと、この問題は地区住民に対する問題と工場の労働者に対する問題と、二つあるように私どもは考えております。その受けとめ方が、労働者の場合と地区住民の場合と、やや違う点がある。それは補償の点であります。御承知のように、労働者の場合は使用者の故意・過失の問題に入るわけでございます——無過失責任。そこで、従来の監督の実績などを見ますると、衛生に関する基準に違反しているかどうか、たとえば局所における吸引、排出は、機械もしくは装置の密閉などの処置がなされておったかどうかという点については、基準法違反の事実なしというのが過去数回にわたって監督した結果でございます。しかし、こういう違反がございませんでも、水銀中毒だということが認定されれば、故意・過失の問題ではなしに補償が行なわれるわけでございます。しかし、一般の住民の関係になりますと、そういった関係使用者労働者とで違いますから、問題のアプローチのしかたが違うんじゃないかというふうに思います。労働省としましては、要するに業務上の疾病であるということが明らかであれば補償するようにしてございます。そして、その手続も、使用者がどうこうということでなくて、労働者が監督署に申請をしてきて、それを受けて行政自体が判断するということになります。そういった問題については、従来の扱い方を申し上げますれば、現地の監督署、あるいは基準局で判断する、専門のお医者さんにみせ、あるいは日本で権威といわれる先生方にさらに認定に加わってもらうといったような形で認定をいたしておるわけでございます。ですから、そういった問題、手続的には労働基準局のほうに補償の問題として申請をするという手続をとってくだされば、それ自体が動くわけでございます。  それから、健康診断の問題も、どういう形でいたしますか、たとえば医師の健康診断という形で従業員に対して診断するというようなことでございますと、労働基準監督機関でこの問題を推進するということが可能でございます。したがいまして、行政機関として処理する、そういった一応のたてまえがあるわけでございます。私どもはそういったたてまえにお乗せいただきまして処理さしていただきたい、かように考えます。
  92. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 一般論として、やはり二つの側面があるというとらまえ方にはそれはそれでわかると思います。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、きょうもいまの質疑の過程に、これは端的に言ってみて直接関係がないかもわからぬけれども、これは別な側面をとらまえて究明をしなければなりませんが、阿賀野川の水銀、あるいは無機水銀中毒事件が起きたという、そういう点で、とにかくずっと全域の健康の調査をやっているわけです。鹿瀬工場の地域と鹿瀬工場の社宅は、つまりこれは昭和四十年の七、八月ごろの時点でやった検査ですからはずしてあったわけですね。なぜはずしたということはわかりませんが、行政的な形だったのですけれども、ところが、今日はそこだけはずしていくわけにはいかぬということになってきたというのは、言うならば、社会党の調査団が行って無機水銀を扱い、そうして会社側は、やはりこれは動脈硬化症であるというふうな形で、われわれが行っても、なおかつ、あれは無機水銀中毒後遺症ではないということを言っておったわけです。しかし、県はその論議を避けさせるために権威ある診断を受けた結果、こうだというだということで、ただ斉藤君一人だけの問題ではなくて、類似症状の人が他にもあるということでありますれば、そこで昭和電工の社宅というところには従業員とその家族が千数百名くらいいるということでありますが、しかし、今度の昭和電工の社宅だけをその圏外に置くわけにはいかない、そういう側面もありますが、同時に、もう一つの側面は、このアセトアルデヒドの生産工程で無機水銀を扱っておった以前の従業員もいまなおいるわけでありますから、そういうふうな者に類似の症状があることが予想される。会社側が、少なくともどういう側面をとらまえても、働く者の健康と生命というものを、やはり健康診断をするということについて拒否するといったようなことは、これはどの側面をとらまえてみても、常道としては考えられないが、ただ、もう一つの側面をとらまえれば、いま局長の言われるように、一般的にはこれこれだということもあり得るでしょうが、ただこんなことを言っておってもしようがないから、問題は、そうしまするとあれですね、会社が文書でとにかく工場の社長に対して、ひとつ健康調査に協力してほしいということで、会社は協力を断わってきておるが、県も困っておるわけですが、そこで、何としてもやりたいということで、労働基準局に何とかならぬかということまでは、これは事実なんですが、しかし、これはそうするというと、それは一般論的なものとして、わがほうは畑違いであるから、これは関知すべき問題じゃないというのか。大体あなたのほうの出先の労働基準局にしても、それを統括、掌握しておられる労働基準局長としても、それはしようがないのだ、会社側が断われば処置なしということに受けとめておいていいのですか。どうですか、その辺は。
  93. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 地区住民の問題になりますと、これは労働基準監督機関としては行政的に対処する手段を持たないわけでございます。その点は御了察を賜わりたいと思います。しかし、大体水銀中毒が考えられるような場合には、たとえば健康診断にしましても、職歴調査、問診、視診、尿中たん白、潜血及び沈査といったように、この検査項目は、大体もういわゆる産業医ならば承知しておることでございますし、その症状につきましても、たとえば不眠だとか頭痛だとか手の指がふるえるとか、あるいは歯の肉に炎症を起こすとか血性下痢とか、そういった水銀中毒一つの傾向というものは判断できるわけです。ですから、たとえば斉藤さんの問題にしても、これは腎盂炎で、かつ低血圧だといったような診断をしておるわけで、水銀中毒を一応疑って検診をするといったような角度での結論が出ていないわけです。そういった点について、どうも扱い方に、いまでは私どもしろうとでも、大体水銀中毒ならこういう検診をして、症状として注意するのはどういうことだということは大体見当がつくのでございますけれども、そういった診断、検診等も十分行なっていない。その結果、当時においては水銀による中毒だという判断も、いまいいますと非常にむずかしくなる、こういう結果になっておりますことを非常に遺憾に思うわけでございます。したがいまして、労働者につきましては特殊健康診断の項目がきまっておりますから、こういうものを正確に行なわせまして処理するということであるわけです。もう疾病状態になっておる、どうも異状を来たしておるということでございますならば医療補償の請求ということになってまいります。私どもは病院の医者がどうこうということじゃなくて、労働省として指定いたしました適当な病院に診察を頼むといったようなことで処理をしておるわけでございまして、したがいまして、行政ベースに乗ります方については、いま申しました事業所に対しては健康診断を正確に行なわしめる。それから、疑わしい人については、療養その他を通じて、行政の手続に従って処理をするということで、何と申しますか、低迷状態と申しますか、そういったことではなしに、できるだけ明確に、そして行政的に処理できるものは処理していきたい、かように思っております。
  94. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 この問題は、その元昭電の従業員の斉藤君がいわゆる無機水銀の中毒症後遺症であるということは、今日的には医学的に立証されてきておるわけですから、ただ、過去において腎盂炎であるとか、あるいは動脈硬化であると、そういう時点については、本人は三十八年にこの工場を去っておるわけでありますから、その時点においてとらえた当時においては、やはり本人が無機水銀を扱っておるというような、また、無機水銀で自分が症状を起こしていると本人も知っていないし、そういう直接的ないま水銀問題がない環境の中におったわけですから、診察をした医者も、やはり本人が無機水銀を扱っての症状というようなことは、いろいろその状況診断のときには聞いていなかったという事実もあるわけですので、だから問題は、これが無機水銀の後遺症であるかないかは、やはりあの二十六日に新大の椿教授が、これは無機水銀の後遺症であると、これに対して会社側は、これは動脈硬化症だと反論しておる。それはいずれは新大の椿教授が出した診断のようになると思いますけれども、問題は、やはりいま一般の行政ルートの中で、水俣病の問題を別の側面から、その地域住民の再び検診をすると、その再び検診をするということは、この地域では初めてということになるわけですね。前の昭和四十年の八月の時点で、昭和電工のある社宅とその地域周辺の大鹿瀬地区というところは、今度は再検診ということに一般はなるのですけれども、この地域だけは初めてということになるわけで、でありまするから、私どもとしては、それはあなたのほうの行政的権限はこうだということであれば、あとでこれは研究してみまするけれども、今日的な時点におきましては、そうしますと、県が会社の社長に対して、無機水銀中毒事件に関する再診査の一つとして、同社の社宅にこれこれの世帯とこれこれの員数がおって、そしてそれは会社の従業員であるから、ひとつぜひ再検——初めての検診だけれども、一般の例外とせず協力してくれということを要請しておるわけですが、断わられちゃったんだ。取りつく島がないから、その労働基準局に、これは無機水銀中毒後遺症だという診断書を付してひとつということになっているわけで、これは理屈じゃない、現実だから、そこで一応お聞きしているわけなんですが、わからなければわからないで、それはだめならだめでいいということになれば、これは非常に問題は制度や慣行はどうあっても、このことをやるかやらないかということは、やはり健康と生命に関する大きな問題であるからこれをしいて聞くわけですが、ここで論議がから回りということじゃないけれども、そうきょうは時間を多く費すということじゃありませんから。
  95. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 前と同じような答弁になりまして恐縮でありますが、地方の基準局長にかりにそのような問題について努力させましても、権限がございませんので、所期の目的どおりいかなかった場合には、またかえって行政責任も生ずるということになろうかと思っております。ただ、そういった面でとらえるのがよいのか、いわゆる公害問題としてこれほどの社会問題になっておるわけでございます。所管としては厚生省になろうかと存じまするが、そういった面から関係機関と私ども連絡をとりまして問題の解決に努力をするという点については、私どもできるだけのことをいたすということにはやぶさかではございません。
  96. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 では、もう一、二点ありますから。会社がこの無機水銀の取り扱いがルーズであって、それで手落ちがあって、そしていまはっきりとこれは無機水銀の後遺症であり、中毒症であるという診断書が出る。他の類似の人があるわけですから、今度出てきますから、基本的に原因を究明すると、むろんそれはカーバイトに無機水銀を混入してアセトアルデヒドからビニールを生産する工程ですから、必ず大量の無機水銀を、しかも、十年も二十年も扱っておったわけですから、当然寒暖計の中に水銀を入れる程度の工場でも、やっぱりそういう取り扱いいかんによってはその無機水銀の中毒症を起こす場合もあるわけですから、大量の無機水銀を扱うわけですから、その管理がルーズであったということが確証があがれば、やっぱりこの衛生管理の面について、労働基準法のあなたのほうの関係では、それは通産省の行政指導が悪いんで、おれのほうの関係したことではないということになりますか。その辺のところはどういうことになりますか。無機水銀の取り扱い方がルーズであったと……。
  97. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 通産省関係の法規がございますときには、その法規の定めるところによって判断するわけですから、労働省としては労働基準法で、先ほど申しましたように、そういった有害蒸気の取り扱いについては、もう密閉しちゃって外に出ないようにしてしまうか、あるいは逆に吸引装置をつけまして外に出してしまうといったような幾つかの方法を考えまして、それをそういう措置をとるように使用者に命じておるわけであります。ですから、そのいずれの措置もしていないという場合には基準法違反になるわけであります。ただ、ここに工場内における問題と公害の問題との一つのからみが出てまいりまして、かりに工場内においては、そういう有害ガスはないという状態になりましても、それが裸のまま、ただ排気装置で外へ出てしまうという場合には、工場内では有害ではないが、その吐き出された工場外部では有害だという問題は起こり得るわけであります。現在規則では定めておりませんが、要は、そういう有害なガスの収集処理、吸収して集めて処理する方法をどうしたらよいかというので、吸じん装置の研究だとか、現在農薬製造の会社とか、相当すぐれた工場内にその有害ガスをばらまかぬとか、外部にも直接出さないように、浄化してきれいにしてから出すといったような装置を研究し、その使用を行政指導しているという面がございます。  そこで、先生の御指摘の問題につきましても、工場内においては基準法違反じゃないというような場合でも、工場外に出た場合には公害としてどういうことになるかという問題がこれは大事じゃないか。そういったからみの問題がございまして、しかも、それが労働災害としての補償じゃなくて、一般民事上の賠償問題ということになりますとなかなかむずかしいケースがあるだろう。そういう問題になりますと、ちょっと労働省としても、行政的にはそこまで介入できないということになろうかと存じます。
  98. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 あのね、基準局長は私の質問の意を理解していないんですが、工場外のことを言ってるんじゃない。工場外のことは、もう大がかりにこれは大きな問題ですから、ぼくらはこれは精力的に別なことをやりますけれども、工場内のことを言っているんですよ。率直に言って、いま実は昭和電工の鹿瀬工場は、これは全部この工程をやめちゃっておるんですよね。問題は、やめちゃっておるわけですよ。重要な機械は全部はずしてしまっているわけですよ。幾ら学者先生方が行っても工場の中にも入れないんです。調査団が行っても、なかなかその元あった残骸の所も見せないわけですから、そこで、われわれが行くときには通産省のお役人さん方がついて行くというようなことでありますから、まあそのことを聞く——ちょっとお聞きください。その工場内の扱いに非常にずさんがあったわけだ。あなたのほうはいろいろな数字を出しておられるでしょうけれども、ただ、ぼくはこの問題と取り組むようになって感じたことは、通産省でもあなたのほうでも、真剣な立ち入り検査というか、それはやっているやっていないという論議はありますけれども、全くその立ち入り検査が厳密に行なわれていない。私は外のことを言ってるんじゃない。外のことは問題がない。その会社側の無機水銀の取り扱いがルーズであったとしたら、もう一つルーズであることには間違いないということを一つ材料をあげますと、この(「ちょっと関連させて」と呼ぶ者あり)ちょっと待ってください。そういう点で、かりに操業中、何か電流、電力がストップするといった場合について、すぐその自家発電と直結できないようなときについては、いわゆる浄化装置というものが、この無機水銀を生産工程で扱うというと、いろいろと中和された毒物が出ますから、それを排気として出すわけですけれども、その浄化装置がとまるというと、それはたれ流しでどんどん川へ出てしまう。川へ出てからのことはこれは別ですよ。ですから、結局非常にこの無機水銀の取り扱いがルーズであったということだけは、これは間違いないけれども、しかし、問題は、ルーズであるかないかということについて非常にむずかしい点は、とにかくいまその機械の工場といまの操業をストップしてしまっておるわけなんですから、そこで、問題は、起きている現象の、たとえば無機水銀の中毒症、その当時においては医者は無機水銀を扱って中毒ということを、その前にいろいろのことをお医者さんでもすぐ、易者と違って、坐りなさい、ぴたりというわけにいきませんから、いろいろと容態を聞きますね。その場合に、本人は無機水銀を扱っておるなどとはちっとも言ってない。そこで、動脈硬化とか腎盂炎とか心臓病が出ておりますが、それはそれとして、これはやめます、なかなかかわかないようですから。ですけれども、はっきりと言って、無機水銀の取り扱いにルーズな点があったら、手落ちがあったならば、工場の外ではない、中でこれはやはり衛生管理上、労働基準法上から言ってどうなんですか、そういうこと。いまどうも基準局長の頭の中には、何かぼくらが一般の阿賀野川の第二の水俣病で騒いでおるが、そういうことはきょうは全然関係ないという形で、健康管理であるとか、あるいは労働基準や、それから、それで災害を受けた人の補償というような問題について、外じゃないですよ、そこでそれに無機水銀を扱った、そして中毒症状を起こしている人々の問題について、突っ込んだところはどうでしょうか。もう一点で終わりますから、関連があったらあとで。
  99. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 現在操業をやってない機械施設も、いま先生のお話ですと、移動してしまったという場合に、  〔委員長退席、理事佐野芳雄君着席〕 あとから立証するということが非常に困難な問題であるわけですが、少なくとも、かつて労働基準監督官が監督しました場合には基準法違反はなかった、こういうことに相なっております。したがって、たとえばこういうことはあり得ると思います。密閉装置からの機械の開閉をしなければならんという場合に、担当者がマスクを使用するというふうに義務づけられておる。このマスクの使用の問題がどうかとか、個別的にはいろいろな問題があろうかと思います。しかし、全体としては基準法違反がなかったということで、法令で定めておる基準に違反しておりませんと、それ以上のことはあとはまあいわゆる指導ということになるわけでありますが、そういった点について過去数回監督をいたしましたけれども、違反という事実はなかったということが私どもの承知しておる問題でございますが、しかしながら、そのことと、その後発生した疾病状況から水銀中毒ではないかという疑いがあるなら、そしてその当人が従事しておった作業の種類、それから、作業状態等から判断いたしまして、他に既応症とかその他の素因がなければ、これはもう水銀中毒ということになりますれば、これは立証その他の問題じゃなしに、労災補償の対象になるということでございます。ですから、そういったケースはきわめて個別的な状況判断ということになりますから、そういった問題がございますれば、行政手続に従いまして処理させていただきたいということでございます。
  100. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そうしますと、つまり新潟労働基準局関係の監督署には、そのじぶんのむろん一つの主体的な事実が、過去の暦の中には点が打たれるわけですから、何月何日何を検査したという、そのカルテというか、データというものは新潟労働基準局にありますね、そのデータは。どうせぼくは新潟の者ですから、新潟で調べますから、それは何年か書類を保存すると思うのですが、どうですか、そのほうは。
  101. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) あるようでございます。  それから、労働省としましては、職業性疾患の疑いのありますものを、これは抽象的に御議論願うよりも、請求手続なら手続をとっていただきまして、そうして認定を進めていくということでございますので、斉藤さんの場合もまだその手続はしていないようでございますけれども、そういった問題は、私ども、法令の定める手続に従いまして、円滑に処理していきたいと考えております。
  102. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ちょっと関連して伺いますが、こういうような病気が、いま話を聞いておりますと、会社におった当時は、まだ結論的に水銀の中毒で云々ということが出ていなかったのではないかと思うのですね。それで、杉山先生おっしゃるように、患者はそういうことを意識していなかった。だから、そういうふうな診断をしてもらったときには、見るほうも見てもらうほうも、意識せずに見てもらったから、そういう診断の結果が出ておったが、あとからそういう中毒があるということになれば、そのとき振り返って見て、最近の診断ではそれはやはり中毒であろうといわれておる大学の教授もおるわけですね。そういう場合に、私はいま聞いておって、それは健康診断を要請しないからそれはベースに乗ってこないのだというふうなとらえ方、私は、そうなってくると、一般的に考えれば、そういう職業病の人があるのに、言うてこなかったらほうっておくのだということになれば、一体それを監督すべき責任のある労働省として、私はそういうことでいいのかという疑問を持つのですけれども、その点どうですか。
  103. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 請求は口頭による請求でもいいわけであります。何らか言っていただかないと、これは補償請求権の行使であるわけですから。ですから、それはどんどん言っていただいたほうがいいのじゃないかと思います。監督機関のほうで、君は疑わしいのではないかということで処理せられるというのは、一応たてまえ上、精神の問題は別としまして、口でもいいのでございますから、申し出てもらいたい、そうすれば処理をする。そうして退職したあと業務上の疾病じゃないかといったような問題が起こりますことは、水銀だけじゃありません、ほかにもあるのでありまして、けい肺なんかは幾らでもあり得るわけです。ですから、そういった問題、退職後においても、その因果関係が明らかであれば、問題の処理は、すでに労災の担当職員としてはそういうことは承知しておるわけですから、先ほど申し上げましたように、行政の手続のほうに乗せていただいたら適正に処理をするということを申し上げておきます。
  104. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 行政の上に乗せればとおっしゃるが、それは法解釈でそうかもしれませんが、それでは伝染病の場合はどうしますか、どんどん伝染していったら。そういうこともあり得るわけですね。そうしたら、行政のベースに乗せてこないからわしは知らぬぞということで、どんどん流行した場合にはどうするのですか。
  105. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) それは極端な場合は脊椎損傷でけがしまして、本人は意識不明の場合があるわけです。しかし、当人にかわりまして請求する方がおりますればそれで処理するわけであります。したがいまして、当人が伝染病になった、意識不明になった、あるいは墜落しましたりして本人が直接請求できない場合は、これは幾らでもあるわけであります。しかし、本人の名において請求する、これはまあ労災ばかりでなくて、普通法律上の手続はそうでございます。その一般の例に従って処理さしていただきたいと思います。
  106. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 この水銀のような場合は、法律の中には健康診断しなければならぬ項目の中に入っていますね。ですから、それはその当時は水銀であるということがわからなかったからしなかったというのかもしれませんけれども、その間の健康診断はどうなっていますか、その昭和電工の。
  107. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 特殊健康診断は行なっておったようであります。念のために申し上げておきますが、補償請求の手続問題でございます。別に基準法上は、たとえば病気になった者の就業制限というもの、使用者に制限の義務がある、そういったものがあるわけでございます。健康診断のほうは使用者、そういうものがございまして、何と申しますか、当人がなすべき手続とか使用者がなすべき手続、いろいろあるわけでございますから、もしそういった関係で誤解があると何でございますから……。
  108. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 ぼくこれはあとからもう一ぺんやりますが、ぼくはちょっと職業病について聞きたいから、この問題は非常にまだ疑問を持っていますからあとで聞きますが、今度のような場合、もしそういうことがいわれておったら、私は、そういうようなことをしなさいということを、労働監督署は、かわって請求するのでも何でもアドバイスしてやるほうがいいじゃないか。これは再審査請求しなければならぬでしょうと思いますけれども、そういう点なんかから考えてみて、私はもっとアドバイスすべきじゃないかと思いますが、どうなんですか。本人が申請してこないからほうっておくのではなく、それは中毒らしいとほかに診断されておったから、それを何か労災法のベースに乗せるような方向でアドバイスしておっても、それは労働行政の誤りではないと思います。
  109. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 特殊検査で発見されたというような場合には処理してございます。しかし、斉藤さんの場合は椿教授の診断ではっきりしておったというような経過をたどっておるわけであります。そういった事実問題として非常にはっきりした場合は別ですけれども、そうでない場合には、あなたはどうですかというようなことは、監督機関としても限られた人数で行政処理しておりますから、精神的な問題はありますけれども、実際的にはなかなかそこまで手が打てないのではないかと思います。
  110. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これはもう少しぼくも今度はあらためてよく勉強をしてきますがね。じゃこれだけひとつ確認しておきます。新潟大学医学部神経内科椿教授から、無機水銀中毒後遺症だと診断された斉藤忠夫本人から労働災害補償の適用の申請があれば、これは労災法の適用で当然処置されると思うのですが、そういう確認でいいのですか、本人から診断書を添えて。
  111. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 申請があれば認定されまして、それが業務上であるという認定がなされましたらこれはなります。ただ、それには認定の場合の必要な調査等は行ないますけれども、もちろん業務上であるということがはっきりいたしますれば労災法上の措置をいたします。
  112. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 それはだれが認定するのですか。労働基準局の監督署ですか。
  113. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 法的な権限は監督署長にありますが、決定を下す前には専門医の参考意見を聞くとか、そういうふうな扱いをいたしておるわけであります。
  114. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大体これでやめますが、もう一点。この場合はもちろん無機水銀を製造工程の中で使ったという一つの事実というものが過去にあって、その当時の症状について医者は動脈硬化だという形で、本人もそうだと思っておったのだが、それからずっと今日まで後遺症状でいろいろ苦しんでおったのだが、いわゆる無機水銀の中毒症後遺症だという形で診断が出たわけだから、それが具体的に新潟大学医学部神経内科の椿教授から精密検査の結果そうなったというのだから、その診断書を添えて申し出があったのだ。しかし、認定に対しては監督署が監督署の指定する医者の参考意見というものを併用して、それが業務上のつまり疾病であったかどうかということの条件が一致したそういう時点でということに理解していいわけですね。
  115. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) いまから即断はできませんけれども、おっしゃったような手続で処理はいたします。
  116. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 きょうはこれで、また他日に譲って、大体そういうことできょうはとめて、やめておきます。
  117. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私もこの問題を聞いていて、いつも非常に現在のこうした労働者が、非常に産業の発展をする中で、いろいろ職業病と申しますか、あるいは、また、いろんな内容中毒とか、いろんなことが起こって、労働者にこれがしわ寄せされているわけでありますが、特に私は、このごろの非常に発展をしてまいりますところの現在の職業開発の中で、私は労働者というのがほんとうに何と申しますか、過労によったり、あるいは、また、悪条件によったり、あるいは、また、非常に単純労務になったために、同じところのどっかが痛めつけられるためにからだの中に故障が起こっているというような形、これは当然職業病として補償されるべきものが、そうでないとしてほうっておかれるという状態が非常にあるのではないか。これをよく考えてみますと、いままでに、じん肺法とかできているわけでありますけれども、そういうものができておりましても、やっぱり大企業ではほぼそれに準じて検診は行なわれておりますけれども、私は、それでも摘発する率は少なくて、特にじん肺なんかを見てみましても、現在非常に検診が行なわれておる、義務づけられておりながら、非常にいまごろでは三年か四年でもって、非常な重篤になって死んでいく例もあるわけですね。こういうふうなことを考えてみますと、いま私は、労働者が現在の進んだ産業形態の中でほんとうにしわ寄せをされて、これが悩んだままで補償されていかないという現況が非常にあるんではないか。先ほどの話の中でも、私はもしそういうようなことが診断をされておって、本人はそういうような気持ちを持ちながらも、まあいろんな意味でなかなか、いつまでもほうっておかれていると、私はやっぱりこれは、弱い者に対してのもう少しかばう力がどっかになかったら、私はこれは不合理きわまるじゃないか、こういう観点で、私はきょうは少しこの職業病の問題を取り上げて、一ぺんよく考えていただきたいし、そういう観点からひとついろいろな御意見も伺いたい、こういうふうに私は思って、職業病について少しお話を承りたいと考えておるわけでありますが、特に私はこのごろ考えておるのは、やはり働いている人が職場の環境が非常に悪いために起こってくる病気、いろいろあるわけでありますね。非常に騒音であったり、熱が高かったり、熱いところで働いておったり、あるいは、また、光線だとか振動だとか、あるは、また、二次的にあらわれてくるところのガスだとか、いろんな問題がこの原因をなして、環境からくるような職業病がある。しかし、それがなかなか直接明確でないために、それはいま申したように、高血圧だろうとか、何かいろんなものとして取り扱われているという例もかなりあるだろうと思います。それから、また、一方からいいますと、非常に災害が起きて、それから二次的にくるところの職業病もあるわけであります。あるいは、また、労働者が絶えずオーバーに過労を続けているために起こってくるところの職業病もあるわけでありますが、いろいろな分類のしかたをされて報告もされているし、いろいろなそういう問題に対してもあげられておりますから、それに対する処置は労働省のほうではとってもらっていると思いますけれども、いろいろこれを詳しく考えてみますと、いわゆるもういま、じん肺法できめておられるものであっても、それが十分にいかなくて、非常に急性に病状が進んで死に至っているという例もたくさんあるわけであります。こういうものをいろいろ繰ってみますと、私は、非常にいまの状態が、職業病として、あるいは、また、そういうふうなものとして、ひとつ新しい観点からこういうものに取り組んでもらわなければいま非常にそういうところが弱くなっているのではないかと、こういうふうに思うわけでありますが、そういうことに対して大臣のほうではどういうふうにお考えになっているか、あるいは、また、基準局のほうも、どうぞひとつ局長のほうも、こういうものについてどういうふうに考えておられるか、ひとつ。
  118. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生の御指摘の点で二つの内容があるように私は伺ったのですが、一つは、職業病一般の問題と、それから、第二の問題は、対策と申しますか、一般的に実はこの職業病と世間で申しておりますが、職業病については、医学上も法律上も、定説は現在のところないわけであります。職業病と本来申しておりますのは、予防補償の面でですね、特殊な考慮ないしは措置を必要とするというものを、外国の例を見ましても、たとえば水銀中毒であるとか、けい肺症であるとか、そういったものを特掲いたしまして、予防につきましても法令上の特段の定めをする、補償についても補償の対象とするというように、いわば法令で特掲いたしまして、格別にその疾病と、それから発生する場所——作業などですね、特掲して示してきたようであります。その点から見ますと、わが国の基準法は、施行規則の三十五条でほとんどのものが業務上疾病として扱われ得るようになっているわけでございます。そうしてその中には災害によって生じた疾病もございます。あるいはやけどとか日射病といったようなものもございます。それから、各種の中毒症もあるわけでございます。非常に多種多様のものを含んでいるわけでございますので、したがって、第二の御質問の内容対策につきましても、職業病一般として対策を考えるということは、ほとんど意味がないのじゃないか。それぞれの疾病につきまして、それぞれにふさわしい予防措置を講ずるということが必要になろうかと思うわけでございます。それを労働省としましては、従来、安全衛生規則の中に労働衛生に関する基準を設けておりましたけれども、その後、特に最近数年間におきましては、労働基準法の付属命令といたしまして、幾つかの単独省令を制定いたしまして、特殊な規制措置を講じてきたわけであります。法律の中では、じん肺法などがあるわけであります。結局外国の例を見ましても、そのような特定のものを重点といたしまして、逐次法制的にも整備して予防措置を適切ならしめる、こういったことで処理してきたように思います。そこで、緩急の度合いはございますけれども、特に最近数年間はわれわれもスピードアップしまして、必要な施行規則はできるだけ早く整備をいたしたいということで整備をいたしております。ただ、それには行政機関として努力いたしましても、その規則の内容となる技術的基準が明確になりませんと、これは規則をつくろうと考えましても、現実には具体的な基準ができない、こういった悩みがあるわけでございます。そこで、労働省といたしましては、そういった問題ごとに、たとえば最近におきましてはガス爆発、火災といったような問題を重点にしまして専門家会議を開き、そうして案を練っていただきまして規則を新たに整備したいというふうな、客観的な技術的な基準をできるだけ明らかにしまして所要の法令の整備を行なうという方向で進んでいきたいと思っているわけでありまして、それに対応して、行政指導としては、民間における産業医の体制の整備、それから、たとえば衛生管理者にしましても設置基準を拡大いたしまして、従来よりさらに小規模の事業場におきましても衛生管理者を設置するようにというふうに、その範囲を広げるといったような形で、法令による基準の整備、それから衛生管理組織整備、それから民間における知識の普及徹底を産業医を中心にいたしましてはかるといったような方向で今日まで進んでおるような次第でございます。
  119. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ただいま基準局長から詳細にわたってお答えになりましたとおりでございます。ただ一つ私からつけ加えたいのは、従来、中毒とか炭じんとかけい肺とか、二万件に近い職業病についての対策がやられておりますが、一つ新しい問題をとり上げました。それは、技術革新が進むにつれまして、いわゆる人間疎外の単純繰り返し労働というものが非常に多くなってまいりました。その典型的な労働はパンチャーで、パンパンと数字を何時間もたたく。これは私なんか現場を見ましたが、われわれなら十分も続かない、気違いになってしまう。そこで、これに表象されるいわゆるオートメ化した単調人間疎外労働というものがどういうように人間のからだに影響を持つか。パンチャーは一種のノイローゼを起こしまして、それから手に病気が出まして自殺する者も出てくる。孤独感、恐怖感ということで、いわばいままでは非常に重労働、肉体労働がヘビイワークでありましたけれども、むしろ単調な人間疎外の労働という精神的な苦痛というのが、これが近代産業の一つの大きい労働のタイプになりまして、そこで、このような精神病、それから手の病気というものに対しては、労働省として特別の労働基準をつくりまして、六十分に十五分休憩をさせるとか、いろいろなことを指示をいたして、かなり改善をされたわけでございます。しかし、これはパンチャーにかかわらず、たとえばIC工業という電子工業関係におきましても同じものをずっと見ているわけですね。そうすると、大体一年もそれをやっていると目がつぶれる。それから、最近は計器の監視業といいまして、計器板を一日じゅう見ておる、これも一種の孤独感というか、精神がかたわになるわけです、その間完全に人間が死んでいますから。ですから、これからの新しい職業病といいますか、職業衛生という観点からしますると、こういった単純繰り返し労働、ベルトコンベヤー労働、その間は完全に人間が死んでいる、これによる精神的苦痛、そのために尿に出るホルモンまで変わってきているという結果も出てきておるわけでございます。新しい分野といたしましては、こういった近代産業の発展に伴うチャップリンのモダンタイムスに出てくる機械化されたかたわの人間。そこで、昨日東大の尾高教授を会長にいたしまして、医学、工学、経営学及び心理学その他の各界の専門家に、医学の面、工学面、あるいは環境、経営面というので、真剣にこれにメスを入れていただきたいというので、専門家会議が設置されまして発足いたした次第でございます。従来の職業病と違った新しい形の、これは病気とまで言えるかどうか、病気になればもちろんパンチャーみたいに対策を講じますが、精神面のノイローゼ、孤独感、いわゆるかたわという問題は今後の新しい分野として取り組んでいかなければならぬと思って、すでに専門家会議を設置いたしましたことを、局長の答弁につけ加えて、皆さんに御披露したいと思います。
  120. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 仰せのように、そういうような形で職業病というものが新しく出てくるわけでございます。特にいま申したように、環境が悪いためにも起こってくるでありましょうし、あるいは、また、一定の負担なり、あるいは、また、著しい過重された職場で、一定の悪い条件のために、たとえば腰痛とか、ああいうふうなものも起こってくるわけであります。あるいは二次的に有害ガスによる中毒からくる職業病もあるわけですが、こういうものも職業病として入れるのか、あるいは職業病として取り扱うのか、こういうようなことが非常に問題になるわけなんでありますが、それを取り扱う前に、私はいま一番やらなければならぬことは、そういう職業病に対しての実態調査といいますか、あるいは具体的にそういうようないろいろの職業に、あるいは、また、非常にいろいろ開発されたそういうようないまのオートメーション化された職業についての実態の調査というものがもっともっと私は徹底的にされるべきではないかと、こういうふうに思っているわけです。たとえば現在職業病として研究もされ、あるいは、また、検診も広く行なわれているといわれているところの、最先端を行ったところの、たとえばじん肺について考えてみましても、先ほど申し上げたように、非常に早く急性に進行して三、四年で死んでしまうというような人があるわけです。たとえば滑石だとか石綿だとか、あるいはアルミニュームの精製工場とか、あるいは活性炭の工場、これも四、五年ぐらいの就労期間で相当きついじん肺を起こして、四、五年で死んでしまっている例がたくさん報告されているわけです。あるいは、また、いままでそうでないといわれておったところの有機じんですね、たとえば清掃局の従事者とか、そういうような者の中にもかなりきついじん肺があり、これが結核なんかとまじったり、あるいは気管支炎を併発したりして、非常な重篤な症状が出てきているというふうな例もたくさん報告されているわけです。あるいは非常に問題になっておりますのは、こういうような、いままで考えられていないような職業の病気が相当急テンポに起こってきている。私は、じん肺の問題を見ましても、非常に私はいまの段階であの法律ができて施行されておりましても、実際において私は減っていないように思うのですがね、じん肺患者というものは。そうすると、大企業あたりは特にそういうようなことに力を入れられているが、中小企業ではまだそれが行なわれていない。また、一面、考えてみますと、大企業でも、そういう職業病を起こしやすいようなものは、請負といいますか、下請工場のほうに流していっている、こういうふうな例もたくさんあるわけです。結局有害な作業はなるべく大工場ではやらないで下請に持っていく、あるいは検診をやる場合でも、法律を先ほどちょっと借りて見てみますと、これは会社がやるわけであって、会社が適当にやっているわけですね。本人の申請があって、自分の指定する医師に見てもらいたいというときになって初めて見てもらえるのだというような便利な法律になっているわけですね。あるいは、また、何かはかのほうを調べてみますと、何か監督官か医者の場合には立ち入ってそれを審査ができるような条項もあるようですね。それはそういうことで法律になっているから、法律によってそれをするといえばそうでありますけれども、やはり事業主も職業病としてあまり摘発はされたくない、そういうものに指定はされたくないという意識と、それから、また、法律の上では事業主ができるという規則のたてまえで、都合のいい診断だけをして、ほんとうにやはりそれが職業病であり、業務上の疾病であるというものを摘発されないまま済んでいってしまうものが相当多い、こういうことは私はあり得ると思うのです。全部がそうだということではないけれども、そういうことがあり得ると思うのです。こういう問題について、だれが一体そういうことに対して歯どめをしていくか。やはり産業構造がどんどん進展をして、そのしわ寄せが労働者にいきそうだということに対して歯どめをするのは、やはりこれは労働省じゃないかと思うのですね。非常に初期にそれが発見できたならば早く助かっているのに、それが発見できないために非常に重症になるという例もある。それから、非常に患者が出始めて、労働組合あたりがいろいろな要求をし出して初めてそれが問題になってきているというのが、いままでの例を見てみると、ほとんどそういうことになっている。監督署のほうが、あるいは、また、事業主のほうが積極的にやられた場合もあるでしょうけれども、全体の面からいえば、ほとんどもうこれがどうにも職業病になっているということがだれが見てもそうなって、しかも、大きく世論になり、運動になって、あるいは交渉になって、あるいは労働組合の一つの闘争にまで展開しないと非常に表立ってこない、こういうような例もあるのです。私はこういうような角度から考えてみると、少数例で、ごく初期のものは、もう何にも知られないうちに葬られてしまって、結局はそういうふうな産業の発展に対して泣いている者はそこで働いている弱い労働者であったということになるのではないか、こういうことを私は心配して、いつもいろんな問題のたびごとに聞いているのです。この被害を受けているところの労働者を一体だれが助けるのか、これは労働省はこういうことを監督するところの責任がどうしてもあるんだと、労働省にやってもらわなかったらそれが歯どめできぬと思うのですが、そういう点に対してはどういうふうにお考えになっていますか。
  121. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生の御指摘の点、私どもも職業病対策を強化しなければいかぬし、御指摘のような問題があるんじゃないかという点については日ごろから懸念をいたし、先生の御指摘の点について十分配慮をいたさなければいかぬというふうに感じておるものでございます。ただ、従来の職業病に対する問題を考えてみますと、法令整備の問題もございますけれども、医師の方々に診断の段階でできるだけ職業病であることの配慮をお願い申し上げたい。そういう点から、たとえば先ほど申しました産業医という方々に御協力を願いまして、いわゆる職業病としての病的な現象及びその検診方法などにつきましても、いろいろな形で普及指導をいたしておるつもりでございます。ただ、それにしても、末端にいきますと、ある疾病を職業性疾患であるかどうかということを判断することは非常にむずかしいという面がございますので、昨年から特に中小企業を対象にいたしまして労働衛生モニター制度を設けたわけであります。これは一般の民間のお医者さんでございますとか、有害物を扱いますような地区を大体選定いたしまして、適当な方にモニターになっていただきまして、普通の病気になっている者であっても、これこれの職業疾患である場合があるから、特に注意して診断をしていただきまして、そしてそういった発見につとめていただきたいということが主眼であるわけであります。もちろん労働基準監督官が法的にはそういったものについての発見、法的な基準によって是正を行なわなければならぬわけでありますが、何ぶんにも医師の御協力をいただかなければならない問題でございますので、そういった面について今後さらに御協力いただけるように、労働衛生についての関心を医学的にもさらに一そう高めていただくように私どもはお願いしたいと思っております。  なお、先生のいまの御質問の昌頭に、私どもは職業病として考えるのがよろしいのか、そうでなくて、健康管理として考えるべき問題か、これを職業病という観点から扱いますと、伝統的な職業病としての扱い方は、先ほど私が申し上げましたように、労働基準法で申し上げますれば、労働基準法施行規則の三十五条に規定されておる「業務上の疾病」のうち、第四号と、第七号から二十五号、第二十七号ないしは第三十二号に掲げる疾病が、これが諸外国におきましても職業病として予防面においても特別の規制をする、補償の面についても、特別の立証を要せずして、当然として職業病として扱うということになっているわけでございます。それ以外に疲労だとか、そういった問題も職業病として扱うのか、それはむしろ健康管理の問題として、もっと幅広く、普通の労務管理の問題との関連において扱うのかといったような問題がございます。意見にわたって恐縮ですけれども、そういった点を私どもはそれぞれの面から対策を講じたい。したがいまして、大臣が申し上げましたキーパンチャーの問題、あるいは単純労働による身体上の問題というものも職業病として扱うべきか、健康管理の問題として身体上の不快状態を解消するのがよろしいのか、いろいろなアプローチのしかたがあると存じますので、そういったものを多角的に配慮したいということを申し上げさしていただきたいと思います。
  122. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いや、健康管理で済ますというような問題は、もちろんそれは健康管理はしてもらわなければならぬのでありますが、私は、職業病ではいまのおっしゃっている中には入っていないけれども、それと同じように、産業開発のために職業病としては同じぐらいのウエートを占めているような病気があるので、こういうものに対しての議論を進めているわけですが、あなたのほうではそう言っておられないで、いまモニター制、それもけっこうでありましょうが、それも一つ方法だろうと思うんですが、それじゃ職業病に対して現在の実態をどういうふうにして把握するための調査をしておられるか、調査の結果はどうなっているか。もうあの法律どおりにやっているだけであって、モニター制で少しぐらいはできるか知らぬが、実態調査をして一体どれくらい把握して、どういうふうな現状を把握しておられるか、聞かしていただきたい。
  123. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これは意見になりますけれども、先生は職業病職業病とおっしゃいますけれども、いわゆる職業病については諸外国でも扱い方の一つの例があると思うのでございます。ですから、伝統的な職業病として、じん肺はどうだとか、あるいは一酸化炭素中毒症はどうだとか、そういうものについては格別の実態調査をするかどうかという点にいては、ある程度もうできているものもあるわけでございます。しかし、私どもは、いわゆる職業病ではないが、アクシデントによる疾病であるが、むち打ち病のようなものが自動車の運転手、そういうものに非常にふえてきた、こういう場合に、これを一般の職業病と申しておりますから、そういった観点から調査もするし、その判断及び治療方法についても専門家会議を設けましていま検討しているというようなことでございます。ただ、別に、先ほど申しましたように、従来は、じん肺職場でないと思っておったものが、じん肺患者がふえてきたとか、あるいは鉛中毒があまり起こらぬだろうと思われる職場に最近は鉛中毒患者がふえてきたというように、使用する物質の変化とか、あるいは未発見のものが新しく発見されたという事例は、率直に申して、ございます。そういうものについては、もちろんそのつど調査を行ないまして、さらに今後の対策に資したい、こういうふうにいたしております。職業病一般について調査せしめるというような進め方はいたしておりません。そういうことがいいのかどうか、どうもそれはあまりにも抽象的、概念的過ぎて、実際はそうではないのでありまして、やはり使う原材料の変更だとか、そういう事態の原因によって生じたものについては、それはそれとしてフォローアップしていくとか、いろいろなアプローチのしかたがあるというように考えております。全体としては先生の御趣旨賛成でございますけれども、そのアプローチのしかたが、職業病一般として扱っても、これはあまり実益がないんじゃないかということでございます。いま申しますような形で、必要な調査をそのつど実施するということでございます。
  124. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 労働大臣は何か四時から御都合があるそうですからそれなら労働大臣にちょっと結論的なことを一つ二つきょうはお尋ねしまして、時間もたっていますから、ぼちぼち私いろんな面からゆっくり討論をさしてもらいたい、また、御意見も伺わしてもらいたいと思っているわけですが、私は、この職業病といって、いま基準局長は言っていますけれども、私は、いろいろいまお話になったように、新しいのも出てくるわけですね。いろいろいま大臣もおっしゃいましたように、新しいいろいろな職業病として取り上げるべきではないかというものが出てくるのではないかと思うんですが、そういうものに対しては個々にやっていくんだというような話でありますけれども、私は、こういういまの段階では、もうやはりこういうふうないろいろ工場の中で働いている人たちに、何かいろいろなその条件、いわゆる過労も入っていると私は思うんです。過労からきて一定の病気が起こってくれば、私は、これはもうその会社が責任を持ってやらなければいけないという、その辺までの広さの考え方を持って、いろいろ起こるものを実態を把握するための、やはり疫学的にも、あるいは、また、実態の調査にしても当たらなければならぬ。そういうものを私はいま労働省の中に実際そういう機関を持っておられないんだと思う。私がいまここで特に考えていることは、せっかくこの労災病院があるんですから、労災病院は治療ばかりをやって、むしろ普通の開業の病院と相競合するようなことをいまやっているわけですけれども、やはりこれは事業団が経営している特殊の任務を持った病院でありますから、もうそういう競合するような面は廃止して、この労災病院あたりがほんとうにこういうような調査も、あるいは、また、そういうふうな疫学的な研究も、そのためにはこちらのほうにはやはり労災の研究所もありましょうし、あるいは、また、労働科学の研究所もありましょうし、いろいろまあ労働省ではそういう研究所を中央にお持ちになっているわけであります。しかし、中央のほうにはりっぱな施設があって、私もこの間見せてもらって、実に献身的な研究をなさっていらっしゃいました。私も非常に頭が下がって見せてもらってきたわけであります。中央はそれでけっこうでありますけれども、これは現場につながるものではないわけですね。したがって、現場のほうには衛生研究所があるんだと、あるんだかどうだか、私はそこのところを十分知らないんですが、そういうようなことであるので、これはむしろその労働災害のそういう病人をおもに扱うところの労災病院あたりが、むしろそこのところを研究機関や中央と連絡をとってその実態も調査し、あるいは、また、疫学的にもいろいろ調べ、あるいは、また、それをどういうふうに処理すべきかというふうな前向きな、そういう中央と連絡をとりながら、末端の各工場に対してまでそれが入っていけるような状態をやってもらったらどうだろう。  それから、もう一点は、私はいまこういう病気を摘発するためにはやはり検査が必要なわけだと思うんですね。予防に対しても何に対しても、早くそういう病気を見つけるためにも、私はその検査が必要だろうと思うんです。検査はやはり規定によってやられてはおりますけれども、私はそういう検査自身も、こういうところでもっと積極的にやるべきじゃないか。たとえばいまの法律でいえば工場がやればいいわけですから、工場の嘱託医によってやればいいということになるかもしれませんけれども、私はそういうようなわけじゃなしに、健康検査そのものをもっと、これはひどいことばでいえば、そういう検査をする一つの機関があって、私はまあ検査屋といってもいいぐらいだと思うんですが、各工場を回って歩いて、一定のきまった表面的な検査しかしてないというような状態で、これはほんとうにそれが病気の人たちのあれになるようなことにならない。あまりどんどんそこで摘発すれば事業主のほうからあまりよくいわれないというような形もあるんではなかろうかと想像されるような向きもあるわけなんでありますから、私はここらで一ぺん根本的に労災病院側あたりまでおろして、医者も、あるいは、また、そのほかのスタッフもそろって、そうして各工場の健康管理というものを進めながら、いまの言うそういう職業病なんかを早く発見するような検査に力を入れていくと、こういうようなことに私はいまごろもうぼつぼつ踏み切っていただいてやっていただくほうが、いろいろな意味において早期発見もできるし、あるいは、また、労災の経費の面からいっても、早く発見すれば労災補償に対しても簡単に済むことになろうし、これが両方のためで、私は、国の経済にもなり、労働者の健康を守る意味にもなるわけでありまして、もっとそういうふうな前向きの方法で何らかの方法を考えてもらうべきじゃなかろうか、これが第一点であります。  それから、もう一点は、先ほど学界の権威を集めてそういう審査機関を設けていただいたと、こういうこと、私はこれは一つの大きな進歩だと思って感謝してきたわけでありますが、私は、もっとそういうものを地方に、たとえば労災病院なら労災病院を中心とするとか、何かそういうような形で地方にそういうような審議会のようなものを設けて、いろいろな問題があればそこですぐそういうような予防の結果、検査の結果、あるいは、また、いろいろな実態の結果、あるいはそういうようなことに対していろいろ取り上げて、それを中央に反映をさしていくという出先のそういう審議会、あるいは職業病審議会とかというものをつくってもらったらどうかというふうなことを考えます。  もう一つ、第三点は、この職業病が次第にふえつつあるわけでありますから、私は、この職業病に対する一つ法律、いままでのじん肺法と同じようなぐあいに職業病法というものでもこしらえて、こういうものの早期発見のために、あるいは、また、その治療のために、あるいは、また、これに対する補償のためにもひとつ踏み切ってもらうほうがいいのではないか。これはまあ私のいまの質問は、大臣がお帰りになるので飛躍した質問をいたしております。ですけれども、結論的に言えば、この三つくらいのことを一ぺん考えてもらう時期ではなかろうかと思うのでありますが、大臣の御所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  125. 早川崇

    国務大臣早川崇君) いわゆる職業病がいまだに年二万件に及んでおりまするし、産業災害による死傷者数は約七十万人に及んでおるわけでございます。これはたいへんな、労働者福祉の問題としてはきわめて重要な問題でございまするので、今回労働省に安全衛生局を設置することになりまして、すでに参議院で最終的な御審議を願っておるのも、そういった職業病、産業災害というものはひとつ大きく取り上げようということの一つのかまえでございます。同時に、本年度予算におきまして、東京、大阪、新たに名古屋、福岡に安全衛生センターを設けまして、いまの大橋委員の御指摘の職業病のみならず、産業災害も含めまして、そこのセンター、東京、大阪にはもうすでに御承知のようにあるわけであります。それを中心といたしまして、単に職業病のみならず、産業災害も含めまして、いろいろな調査研究、また、会社に対するアドバイス、相談ということを実施することにいたしました。しかし、現在でも各企業に定期健康診断実施さしておりまして、四十年度では約九百三十万人、病気の早期発見率が六・一%というような成績もすでにあげておるわけでございます。御趣旨の線に沿いましてこの問題を重点的に取り上げていきたいと存じます。ただ、出先にいろいろな審議会を設けろといういろいろな御意見は、十分御意見として検討さしていただきたいと思っております。
  126. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 では、まあたいへんどうもお忙しいところを大臣に申しわけないと思いますが、まだこの点についてはあと少しいろいろな点をお伺いして、その結果、また次の機会にでも大臣からの御所見を伺うことがあると思いまするが、きょうは大臣に対してはこれぐらいにしておきたいと思います。あと、時間もあれしておるのですが、一、二だけ少し局長にお話を承って、そうしてきょうはやめさしていただきたいと思います。  これは局長に伺わなきゃならぬ点は、局長のお考え方と私の考え方とだいぶまだ開きがあると思うのです。これについては、よほどもう少しいろいろな視点を話し合っていかなければ了解は私はしてもらえないだろうと思うのでありますが、私は、人命とか人間を尊重するという意味で、もっともっとどうしても労使ともがその方向にならなければならないし、それを監督してもらっているところの労働省がもっと何かやらなかったら、いまの段階ではどうしてもいけないという気持ちが見られないわけです。何をするかといえば、私はそれをいま申しておるように、もっと実態の調査もそのつどつど深めていってもらいたいし、また、その予防対策としてはちゃんと手が打てるようにしてほしいし、また、それから出てきたところの、たとえば補償の問題についても非常にそれがその場でこなせるような状態にしてもらいたい。先ほど大臣のほうからそういう方向でひとつ考えてやろうというお話であって、私は概括的なお答えとしては非常にそれはありがたく受け取っておきますけれども、その調査に当たってもらうところの局長が、いま話してもらうと、また別な局もできるわけでありましょうけれども、いまは非常に局長の受け持ちの範囲が広くてなかなか手が回らない、あるいは、また、出先におきましてもこちらにおいても人が足らぬから、監督署につきましても人が足らぬから、そこまでのことはできないということも私はよくわかるのです、監督署の方とはいつも接触していますので。ところが、それを私は何とかもう少し機能的に動けるようなシステムにして、人が足らなければ人をふやし、監督署の方も、どこの大学の教授の意見を聞かなければこれは決定できないとか、たとえばこれからも、これは問題はこの次に譲って聞こうと思いますが、たとえば腰痛だとかむち打ちだとかいうことになれば、それは老人性にきているのではなかろうかと、ほかの病気で来ているのではなかろうかという診断なんかはいろいろまちまちになるわけです、大学教授といえども。だから出先にそういうことが必要だということです。そういうことがあればすぐそこで話し合って、労使ともに協調しながらそういう審議会にもかけて、また、監督署のほうもアドバイスしてもらって、ほんとうの実態が把握されてすぐ処理していけるというようなものがないと、ちゃんと大学のほうにだれか嘱託してあるからできますよといってもなかなかうまくいかない。再審査してもらえば中央でもやりますよといったようにシステムはできておるわけですけれども、なかなか実態においてこなされていかないという状態ですね。そういう点を考えてもらいたいというのが質問の主体であって、いまできておる法律でできるとはいいながらも、もっとそこを一歩進めなければいろいろな問題が残っておる。私はその問題をあげたいと思って全部ここに持ってきておりますから、一つ一つあげれば、もう昭和三十八年ごろからケース・バイ・ケースでやられてきている間に、そのしわ寄せが労働者に対してどれほどかかってきているかという例は私たくさん持ってきているわけですから、それをいろいろあげながら御意見を伺って話を進めたいと思っておったのですが、時間もあれですし、ほかの委員の方々にも御迷惑ですから、それは後の機会に譲りますけれども、こういうようないまの状態では、極端に言って、私は、働いている者が不利な状態に置かれておる。それからして、一つ健康診断にしたって、やはり使用者がかってにやるだけであって、そしてもう異議の申請をしなかったらできないというようなシステム自身も、もっと現状でもってうまくいけるような方法が考えられるべきではなかろうかというようなことを考えますし、ことに私は、今度の三池の問題で三池の状態を見に行ったりしましても、もっともっといろいろな点が頭にひっかかる問題が多いわけであります。ですから、今後とも、私、機会をあらためまして、この問題については、もっと一つ一つのケースについて局長とお話し合いをすれば、これで非常に問題が明るくなってはっきりしてくると思うのです。私はほんとうにいま大臣にかいつまんで申した事柄がいかに必要であるかということが、一つのことを詰めて話をしていけばそうならざるを得ぬようになってくるんじゃないかと私は考えておるわけでありますけれども、そういう意味で、私は、いまの労働行政の中でいかにしてそういうことをやっていけるかという実態、あるいは、また、そういうような予防の調査、あるいはそういうことに対するかまえをいまの段階ではどういうふうにもっと進めていこうとされるのか、その責任を持っておられる局長として考え方をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  127. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私は、職業病問題に対する問題意識と熱意の点につきまして、先生のだんだんのお話は私も同感なのでございます。ただ、これを具体的に進めるについて、具体的手段についてどうかという点について若干先生のお考えと違う点もあるように思いますけれども、私は、労働基準行政の中で、労働衛生の問題をもっともっと進めていかなければならない、これを痛感いたしております。今日まで、ここに課長もおりますけれども、一番やかましく私から課題が出ますのは労働衛生の部門でございます。しかるに、今日までやってまいりまして特に痛感いたしておりますのは、医学の面におきましても、いわゆる職業病等についての研究がややおくれているんじゃないか。産業医という方々につきましてもおくれておる。最近日本医師会で産業医養成講習会を労働省も後援いたしまして開くようになりました。肝心の医学的に最も私どもたよりに申し上げております医学の面におきまして私がかように申し上げるのは、はなはだいかがかと思いますが、相当の期間の行政経験を通じまして、医師の方々の職業病に対する御理解と御協力を賜わらなければこの問題の真の解決はできないというふうに存じておりますがゆえに先ほども申し上げたわけであります。そうして、その次には、それは個別の問題じゃなくて、職業病を扱う組織として、行政的にも医学的にも、もっとグループとして適当なものを考える必要があるんじゃないか、私は同感でございます。そこで、労働省としては必要に応じまして専門家会議ということで処理してきたわけでございます。労災病院の医師の活用の問題がございました。現在は障害等級の認定とか職業病の認定でほとんどフルに活動いたしておると思います。あまりにも依頼件数が多いので、災害学会などでは、私がいろいろその面について苦情を申されるほど現在御協力をいただいておるのでございますが、そういったものを将来労災病院などを拠点にしてどう発展させていくかということがやはり大きな課題であると存じます。それについても今後検討いたしたいと思います。  それから、町工場などで有害物質を使っているらしいが、どこで検査したらいいかわからない、そういった問題にこたえるのが先ほど大臣が御答弁申し上げました安全衛生センターでございまして、そこにそういう物質を持ち込んでいただければ有害度の検査もするといったようなことで、はなはだ手ぬるいかも存じませんけれども、問題意識としてはそういうことを私ども考えておるわけでございまして、逐次整備をいたしていきたい、かように考えております。ただ、最後に、職業病一般として問題を扱うということは、これは私個人としましても、この行政に役人として一番長く携っており、個人的にもいささか研究しておりますので、職業病一般として立法化するとか、そういったアプローチのしかたは外国にその例を私は知らないのであります。そういう性質のものじゃないので、やはり水銀中毒とか鉛中毒とか一酸化炭素中毒とか、そういうものの症例に応じまして予防措置を個々に具体的に講ずべき性質のものでありまして、一酸化炭素中毒と鉛中毒予防措置ということになりますと全然違うわけであります。それを職業病の名においてくくってみても予防法として何が出てくるのか、こういうことが問題になろうと思います。そういう意味におきまして、多少繰り返しになりますけれども、アプローチのしかたとしてそういうことがはたして実効があるのかどうかという点について、個人的にも疑問を持っておりますので申し上げたわけであります。しかし、そういうことばを使用し、いままでおくれておる問題をさらに前進させるためにそのほうが有意義だという政策的配慮でございますれば私どもも十分理解できますし、今後も、先ほど大臣が御答弁申し上げました意見に沿いまして具体的な対策を進めていきたい、かように存じておる次第でございます。
  128. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 だいぶもう時間がないので、これだけでとめて、もう一ぺんあらためてこまかしいことをこれからやりますが、いま申したのでも、私は少し局長とは意見が違う。と申しますのは、やはり職業病として全体をくくったらだめだというんじゃなしに、私は、やはり職業別にとらえることによって初めて、いま局長がおっしゃったように、何といいますか、職業病全体、特に私は職業病としていろいろ列記されているものはそれでいいと思うわけです、実際からいえば。いろいろ措置が講ぜられている。しかし、過労で来たり、腰痛とかそういうふうなものでくるようなものをとらえる場合には、私は、やはりそういうものの対策としてそれを研究したり何かする一つ立法措置がないとやはり前進しないという点が非常に多いような感じがしますので、こうした点から私はもっといろんな点で局長と話をして、私も質問があり、また、御意見を伺うことによってそうしたことの必要性を——私自身も、それくらいの取り組みがなかったならばこの問題はどうしても解決できぬのじゃないかというぐらいな感じを持っておりますので、そういうふうな観点から今後も話を進めたいと、さように考えております。  また、もう一点局長に考えておいていただきたいことは、もちろん労働者のいろいろ働く条件のもとで起こってくる病気、これがいろいろうまく処理されない。そういうものをどこで処理するか、どこで早くそれを吸い上げてやるかということは、いまセンターができたからセンターだと、センターあたりではとてもできることでは私はないと思うんですね、そういうような点は。ですから、そういうことをもっともっと実態に即して、予防なり、早く発見をするとか検査の実効をあげるという上において、私はもっと前向きな方法が必要だと思いますけれども、その点はどう考えておりますか。
  129. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先ほど申し上げましたように、現状で十分と私どもは考えておりませんけれども、逐次整備してまいりたいと思います。ただ、この取り組み方ですけれども、私は労働基準局長をしておりまして、労働者の問題で一番何が大事だといえば、労働者の命とからだを守ることが最大だと、かように申しており、そのように考えております。ですから、職業病にかかるということはたいへんなことでありますが、そういう問題意識が労使間の問題としてもだんだん高まってきておるということを私は非常に心強く思っております。一事が万事全部国でするのか、あるいは災害防止団体が一事が万事全部するのか、それよりもっと基底にございますのは労使関係におけるいろいろな問題であろうかと存じます。最近、特に四、五年の間、問題意識が高まってきておるように考えますので、そういった趨勢とも対応しながら処理いたしたいと考えております。ただ、その腰痛症は、これは職業病に関連して起こる疾病でありますが、腰痛症を職業病として扱っておる例は外国でも私はほとんどないと存じます。つまり年齢的にある程度ぎっくり腰になるという素因とも関連する問題で、しかも、起こるとすればアクシデントによってひょっとした拍子になるのでありまして、長期間じわじわ、じん肺のように、いつとはなしに疾病状態になってくるというような性質のものとは違いますので、俗称職業病はけっこうですけれども、外国の例などで、業務上の疾病の中に職業病としてあれを特記して扱っておるという、そういう例はほとんどないのであります。ただ、わが国の法制上はそういう職業病を特別に法令上明記してありません。基準法施行規則の三十五条で全部入ることになっておりますから、運搬作業におけるそういう腰痛症は業務起因性が明らかであれば補償の対象になっておるわけでございます。補償の対象になるわけでございまして、あとはどのような状態から業務起因性があると認めるか、認定の問題でございます。認定基準をどうつくるか、争いのないようにどうするかということで、これもまた専門家会議でやっておるような次第でございます。この点どうも私見にわたって恐縮ですが、腰痛症も、一般の疲労から中毒症状から、すべて同様に扱うという点については、これは技術的にも問題もございますし、外国の例等から見まして、これはやはり異例のものではなかろうかというふうに私は存じております。特に補償との関係から見ますると、それはほとんどわが国では問題がない、かように存じておりますので、やや繰り返しになって恐縮でございますが、申し上げさしていただきたいと思います。
  130. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 もうやめようやめようと思っても、いろいろ聞かしてもらうものだから、ぼくのほうも言わなければなりませんが、腰病症について私もちょっと一ぺんじっくりやりたいと思います。それは、しかし、その上であなた方が仰せられるなら、それで片づけられるなら、例を私はたくさん持っておりますから、それも出しましょう。だからして、それは個々の一つ一つのケースで、入れようと思ったら入るんだから補償はしているんだという職業病の取り方では私は納得できないと思う。きょうはおそいから、そんならひとつ委員長のほうにもこれは頼みまして、半日ぐらいゆっくりかけてもらってこの問題はやらないと、ぼくの気持ちもわかってもらえないし、ひとつ思い切ってやらしていただくことにして、きょうはこれでやめておきます。
  131. 藤原道子

    ○藤原道子君 私もこの問題に関してはやはり意見があるわけです。大橋さんのこの次の質問のときに、関連ででも、もう少しその点はただしたいと思います。
  132. 佐野芳雄

    ○理事(佐野芳雄君) 他に御発言ございませんか。——他に御発言もないようですから、本日の調査はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時二十六分散会      —————・—————