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説明員(
井上邦之君)
先生すでに十分御
承知のこととは思いますが、私
どものほうの
組合は三つございまして、
国労、動労、新
国労の三つございます。それぞれほとんど軌を同じくいたしまして昨年の十月ごろ新
賃金の
要求を開始いたしました。その後も
団体交渉をどのくらいやったかという
お尋ねでございますが、何ぶんにも問題が重大でございますし、また、いろいろの
調査を必要といたしますので、大体大ざっぱに申しまして、月に二回
程度の
団体交渉を重ねてことしの二月ごろまで推移してきたと申し上げてよかろうかと思いますが、その間、いろいろ
組合側の
要求の趣旨の解明などを求めたり、あるいは
当局側の見解を述べたりいたしまして、るる
団体交渉を重ねてまいったのでございますけれ
ども、
現時点におきます
国鉄の
事情といいますものは、ほかの
公社、あるいは五
現業の場合とかなり
事態が異なるという点をひとつ
先生に御理解いただきたいと思いますので、若干
説明をさしていただきたいと思います。
私
どもも、基本的には
労使問題のあり方については、先ほど来
労政局長から言われたとおり私
どもも
考えておりますし、ことに
賃金問題のごとく、重要問題につきましては、あくまで
労使双方の自主的な
交渉によって煮詰めるべきであるという
考えを持っております。
団体交渉で不幸にして話がつきませんで
調停段階に移りましても、でき得べくんば
調停段階において話をつけたいという
気持ちに毛頭変わりはございません。ただ、今年度の
国鉄の場合を
考えてみますと、いかんせん、
気持ちにおいては、
日鉄法の二十八条にもうたわれておりますとおり、
国鉄職員の
賃金は、
生計費、それから
国家公務員の
給与、あるいは
民間の
賃金相場その他の
条件を考慮して定めよとはっきり書いておりますとおり、私
どももよそさま並みの
賃金は支払いたいという
気持ちにおいては毛頭変わりはないのでございます。
しからば
国鉄の
財政能力として一体幾ら支払い得るかという
支払い能力の
段階になりますと、きわめて重大な
段階にあると率直に申し上げざるを得ないのであります。四十二年度の
予算がまだ確定いたしておりませんので、
予算がきまらない
段階でいろいろ
数字をあげて申し上げるのははばかりがあるかとも思いますけれ
ども、一応現在、案として上がっております
予算案の
数字をもとにして御
説明しなければ御理解願えないと思いますので、お許しいただきたいと思うのでありますが、まず、私
どもとして、一体この
ベースアップに応じ得るという場合はどういう場合かということを
考えてみますと、
予定収入以上に
増収があった場合、まず第一に
増収の場合ということが
考えられます。四十二年度の
予算案では、
運輸収入の
予定といたしましては、八千二百五十五億の
収入を案として計上いたしておりますが、これ以上に
増収があった場合、これがまず第一に
ベースアップの原資としてそれだけの財政的な余力があるということになります。ところが、この八千二百五十五億の今年度の
予定収入の
数字といいますものは、四十一年度の実績に比べまして約八%くらいの増になっておる
数字でございます。過去のこの
増収の経緯をずっとたどってみますと、
運賃改定をやりました年は、これは別でございますが、普通の年の年々の
増収の経理は大体五%ないし六%でございます。今年度一挙に八%の
増収をやろうということは非常にむずかしい
数字であるということを申し上げなければなりません。悪くすればまあその目標が達成されないで、
予定収入以下に減収になるのじゃなかろうかということさえ
——もちろんわれわれとしては
努力はいたしますけれ
ども、そういう
事態が
考えられるくらいにむずかしい
数字でございまして、
増収に
期待して
ベースアップに応ずるということはまず不可能であると率直に申し上げざるを得ないと思います。
それでは、今度は
経費の
節約はどうかということになってまいるわけでございますが、
経費の中で、まあ
経営費が六千四百五十三億という
予算案の
数字になっておりますが、これは四十一年度の
予算案に比べまして七%の増になっております。ところが、その中身を吟味いたして
考えますと、
経営費の六〇%を占める、まあ
大宗を占めると申していいと思いますが、
人件費は四十一年度に比べまして一〇%の増でございます。
経営費の
大宗を占める
人件費が一〇%の増であるということで、全体の
経営費が七%ということは、非常に窮屈な
経営費の
予算であるということを申し上げざるを得ないのであります。したがって、この
数字は当初から非常に
節約を要請された
予算案の
数字であるということになりますと、この
経営費から何が
しかを捻出して
ベースアップに応ずるということも、これは不可能であると
考えざるを得ません。
さらに、じゃ
予備費は一体どうなっておるか。
予備費は百二十億ということになっておりますが、これも年々の
災害の手当てを
考えてみますと、大体まあ
災害で五、六十億くらいは
考えざるを得ない。そうしますと、残り四十億ないしまあ五十億でございますが、これも先ほど言われました
予定収入に達し得ないという場合を
考えますと大体これが
一ぱいでございまして、これからも捻出する余地がない、こういうかっこうになっております。
最後に残るものが、それじゃ
工事費を切ったらどうかということになりますが、
工事費は三千七百八十億ということに今年度の
予定の
数字はなっておりますが、
国鉄が第三次
長期計画といたしまして、
政府の
計画として御決定願い、また、天下に公約いたしましたこの
計画を円滑に
遂行いたしてまいります上で、四十二年度といたしましてはまあ三千七百八十億というのは非常に
精一ぱい、ぎりぎりのところの
数字であると私
ども考えております。まあ忌憚なく言わしていただけば、大体四千億くらいは四十二年度はこの第三次
長期計画として使いたい。四千億くらいは使わなければ、まあ将来を
考えますと第三次
長期計画はうまく
遂行できないというくらいに
考えておりますが、これは私
どもの
考えでございますから別といたしまして、少なくとも三千七百八十億というのは、非常に
精一ぱいぎりぎりのところであるということを申し上げざるを得ないと思います。そうしますとこの三千七百八十億から何が
しかを生み出すということは、やはり
鉄道の保安の面、あるいはいま焦眉の問題になっております
通勤輸送の緩和、あるいは
輸送力増強、こういった面でこの
工事費を切るということは、それだけ
工事の
遂行がおくれるということで、
国民の皆さまにも多大の御迷惑をかけるということにもなりますし、この
工事費を切るということもわれわれは不可能だと、こういうふうに
考えております。大体
国鉄職員の
ベースアップを
考えますと、かりに一人平均千円の
ベースアップといたしましても百億の金を要するのでございます。かりに二千円となれば二百億という金になるのでございます。この金を一体どうして捻出するかということで、この
財源の確保ということに私
ども非常に頭を悩ましておる、まあこういう
段階でございまして、
気持ちとしては
民間賃金の
相場も
考えて、十分自主的な
交渉で話を煮詰めたいという
気持ちはございますけれ
ども、いかんせん、この
支払い能力という面で非常に厚い壁にぶつかっておるということで、
現実には、もうすでに
先生十分御
承知のことと思いますが、いまだに話がととのっていない。また、
調停段階におきましても、先ほど
松永労政局長から、三
公社五
現業から、
調停段階で今月中旬ないし下旬には何らかの前向きの
回答をするというふうな
お話がございましたが、
国鉄の場合は、遺憾ながら、本年におきましてはこの
財源の
めどがつかない限り、ほかの
公社あるいは
現業と同じような調子で御返事がむずかしいということは率直に申し上げざるを得ないと思います。
以上、長々と時間を使いまして恐縮でございましたが、
国鉄の場合はちょっと
事情が違っておりますので、あえて御
説明させていただいた次第でございます。