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1967-05-11 第55回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月十一日(木曜日)    午前十一時十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         千葉千代世君     理 事                 土屋 義彦君                 丸茂 重貞君                 藤田藤太郎君     委 員                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 山本  杉君                 大橋 和孝君                 杉山善太郎君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君                 小平 芳平君    政府委員        郵政省人事局長  山本  博君        労働政務次官   海部 俊樹君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省造幣局東        京支局長     大島  弘君        大蔵省印刷局長  高田 壽史君        林野庁職員部長  吉原平二郎君        通商産業省化学        工業局アルコー        ル事業部長    秋本  保君        日本専売公社総        務理事      山口 龍夫君        日本国有鉄道常        務理事      井上 邦之君        日本電信電話公        社職員局長    遠藤 正介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働問題に関する調査  (公労協賃金問題に関する件)  (最低賃金に関する件)     —————————————
  2. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、いま大きな問題になっております三公社現業の、特に賃金問題を中心にした最近の情勢等について、それぞれの関係者の方に質問をしたいと思います。  まず、九日の日に、三公社現業のいわゆる公労協組合、さらに交運共闘所属組合ストライキを宣言いたしております。これに対して労働大臣警告談話を当日出しておるわけでございますが、まさにこの数年間、型どおりの春闘の推移であって、近代的な労使関係を確立をするという労働省なり政府のしばしばの言明にもかかわらず、ひとつも進歩しておらない、こういうふうに私は考えます。したがって、私は、きょうは大臣がおりませんけれども、特に政府関係機関の労働問題について、特にこの労働行政の面で関係の深い労働省当局は、この公労協スト宣言に対してどういうふうに理解をしておるのか、まずこの辺からお伺いをしたいと思います。
  4. 松永正男

    政府委員松永正男君) ただいま御指摘のございました公労協スト宣言に対しましては、新聞紙にも報道されておりますが、労働大臣から談話を発表をいたしておりまして、労働省並びに政府といたしまして考えておりますことは、この談話の中に盛り込まれた事柄に尽きると思うのでございますが、要旨といたしましては、三公社現業職員につきましては、企業の持っておる高度の公共性にかんがみまして、ストライキを含む一切の争議行為は禁止されておる。しかし、その代償措置といたしまして、公労委という公正な第三者機関による解決の道が開かれておる。そして仲裁裁定については、政府も常にこれを尊重して、完全実施の慣行がすでに確立されておる。今回の賃金紛争につきましても、関係組合公労委にみずから調停の申請をしておりまして、その手続が進行中である。また、当局もいろいろな困難な事情がありますけれども調停委員会におきまして当事者としての誠意を示すということを調停委員会の場において言明をしておるのであります。また、内閣官房長官からも、このスト宣言が行なわれます前日の八日の日に公労協及び全官公の幹部の方方と会談をしました際に、三公社現業当局調停の場において誠意ある態度を今月の中下旬ごろに示すことを期待しておるということを公に発言をいたしておるのであります。それにもかかわらず、このような段階において、あえてストライキ遂行を宣言するということは、労使関係のルールを二重に破るものであるということを申しておりまして、万一そのような状態になりました場合には、国民日常生活国民経済に非常な混乱と迷惑を及ぼす結果になることは必至でありますし、世論の批判もきびしいことになるであろう。また、このような事態になりますと、法律に基づく処分も行なわれるということになりますので、そのようなことになれば組合員にとってもきわめて不幸な事態であるので、関係者の反省と自重をお願いをいたしたいということが大臣談話内容でございまして、政府労働省といたしましてもこのように考えておる次第でございます。
  5. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあ公労協ストライキ宣言をするということは、これは私からいまさら申し上げるまでもないのですが、決してストライキそのものが目的ではございませんで、現在の生活を何とかしたいという、そういう賃金を引き上げるための一つの手段だというふうに理解されるのですね。したがって、当然そういう公労協のまあ方針と申しますか、そういう労働組合として、労働者として当然の問題について、単にこの警告を出すということのみで私は解決するものではないし、これは各関係公社現業を総括する労働行政責任者としては、私はもっとそのような立場労働組合を追い込まないように、各機関に対する指導と申しますか、そういうものが必要だと思うのですね。で、いま労政局長のほうから、たとえば八日の日に公労協代表者と会って、五月中下旬ごろそういうような回答期待しているとか、あるいは早川労働大臣も、今度はひとつ調停段階誠意のある回答をしたいとか、まあこういうことをしばしば言っておるわけです。しかし、そういう言明を裏づけるような一体具体的な行動とか、具体的な組合納得せしめるようなものが一体あったのかどうか、その辺をお聞きしたいわけです。ただ期待をしておるだけではこれは何にもならないわけで、具体的に関係当局に対して、調停段階十分組合納得するような方針を出させるそういう指導をやっぱりやらなくちゃいかぬと思うのです。そのことがいままでやられておるのかどうか、まずお伺いしたい。
  6. 松永正男

    政府委員松永正男君) ただいま先生指摘のごとく、三公五現におきましても、労使関係処理でございますので、大原則といたしまして、労使関係処理は自主的な形で行なわれるということが最も望ましいことだと思うのでございまして、三公社現業それぞれ要求提出後、団体交渉等におきまして努力をされたことと思うのでありますが、現段階は全官公関係日林労を除きましては、すべて調停段階にいま上がっておるわけでございます。労働省といたしましては、できるだけこの調停段階で円満な解決がはかられることが望ましいというふうに考えておるのでございまして、先般官房長官から公労協、全官公等回答をいたしました際にも、今月の中下旬ごろに誠意ある態度を示すことを期待するということは、表現は期待するということであるけれども官房長官として政府の公の立場において期待するという意味で、まあそのようになるということをお考え願ってけっこうであるということを言われましたので、また、調停段階におきましてまだそれぞれの組合につきまして事情聴取中でございますが、すでに八日の段階におきまして事情聴取の終わりました公社側からは、中下旬において誠意ある態度を示したいということを公式に発言をしておられるような事態でございますので、そのような形におきまして、公労委調停段階においてできるだけ円満な形で解決していただけるようにということを期待をいたしますと同時に、ただいま御指摘ございましたように、三公社現業等ともいろいろ御連絡をとりましてそのような運びにいたしたいと考えております。  なおかつ、また、この三公五現の特質といたしまして、事業公共性からいたしまして、国会で議決のありました予算との関係が非常に重要でございますので、政府部内におきましても関係大臣大蔵大臣も含めましていろいろ御相談を願いまして、その方向で実現できるようにということで努力をいたしたいと考えておる段階でございます。
  7. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 重ねて一言で質問したいのですが、このいまの公労協賃金問題の中でストライキ宣言が出された。このストライキを回避するための一番いい方法はどういう方法だとお考えですか。
  8. 松永正男

    政府委員松永正男君) 問題が賃金問題でございますので、解決方法といたしまして、やはり両当事者納得をするということが一番大事なことであると思うのであります。調停段階におきまして、額等を含めまして、両者歩み寄りまして納得をするということが基本路線ではないかと考えております。
  9. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それでは、各関係当局にお伺いしたいのですが、いま労政局長も、労使間の問題は自主交渉によって解決することが望ましいと、こういうふうに言われています。これは原則として私もそのとおりであるし、そうあらねばならないということを何回かこの委員会等におきましても政府に対し要求をしてきたわけです。ところが、いまなおそういう問題が解決をしておらないのがいまのような現状をつくり出していると思うのですけれども、各当局にまずお伺いしたいのは、過去の仲裁裁定決定書の中に、各組合はもっと自主交渉をしなくちゃいかん、もっと煮詰めて調停委員会なりに持ってこいと、こういうことが言われておるわけですね。そこで、各当局は、一体、組合とどの程度ことしは団体交渉をしてきたのか、また、どういう結末になって調停委員会に申し込んだのか、その辺をひとつ御報告をいただきたいと思います。これは順序はどこからでもけっこうですから。
  10. 井上邦之

    説明員井上邦之君) 先生すでに十分御承知のこととは思いますが、私どものほうの組合は三つございまして、国労、動労、新国労の三つございます。それぞれほとんど軌を同じくいたしまして昨年の十月ごろ新賃金要求を開始いたしました。その後も団体交渉をどのくらいやったかというお尋ねでございますが、何ぶんにも問題が重大でございますし、また、いろいろの調査を必要といたしますので、大体大ざっぱに申しまして、月に二回程度団体交渉を重ねてことしの二月ごろまで推移してきたと申し上げてよかろうかと思いますが、その間、いろいろ組合側要求の趣旨の解明などを求めたり、あるいは当局側の見解を述べたりいたしまして、るる団体交渉を重ねてまいったのでございますけれども現時点におきます国鉄事情といいますものは、ほかの公社、あるいは五現業の場合とかなり事態が異なるという点をひとつ先生に御理解いただきたいと思いますので、若干説明をさしていただきたいと思います。  私どもも、基本的には労使問題のあり方については、先ほど来労政局長から言われたとおり私ども考えておりますし、ことに賃金問題のごとく、重要問題につきましては、あくまで労使双方の自主的な交渉によって煮詰めるべきであるという考えを持っております。団体交渉で不幸にして話がつきませんで調停段階に移りましても、でき得べくんば調停段階において話をつけたいという気持ちに毛頭変わりはございません。ただ、今年度の国鉄の場合を考えてみますと、いかんせん、気持ちにおいては、日鉄法の二十八条にもうたわれておりますとおり、国鉄職員賃金は、生計費、それから国家公務員給与、あるいは民間賃金相場その他の条件を考慮して定めよとはっきり書いておりますとおり、私どももよそさま並みの賃金は支払いたいという気持ちにおいては毛頭変わりはないのでございます。しからば国鉄財政能力として一体幾ら支払い得るかという支払い能力段階になりますと、きわめて重大な段階にあると率直に申し上げざるを得ないのであります。四十二年度の予算がまだ確定いたしておりませんので、予算がきまらない段階でいろいろ数字をあげて申し上げるのははばかりがあるかとも思いますけれども、一応現在、案として上がっております予算案数字をもとにして御説明しなければ御理解願えないと思いますので、お許しいただきたいと思うのでありますが、まず、私どもとして、一体このベースアップに応じ得るという場合はどういう場合かということを考えてみますと、予定収入以上に増収があった場合、まず第一に増収の場合ということが考えられます。四十二年度の予算案では、運輸収入予定といたしましては、八千二百五十五億の収入を案として計上いたしておりますが、これ以上に増収があった場合、これがまず第一にベースアップの原資としてそれだけの財政的な余力があるということになります。ところが、この八千二百五十五億の今年度の予定収入数字といいますものは、四十一年度の実績に比べまして約八%くらいの増になっておる数字でございます。過去のこの増収の経緯をずっとたどってみますと、運賃改定をやりました年は、これは別でございますが、普通の年の年々の増収の経理は大体五%ないし六%でございます。今年度一挙に八%の増収をやろうということは非常にむずかしい数字であるということを申し上げなければなりません。悪くすればまあその目標が達成されないで、予定収入以下に減収になるのじゃなかろうかということさえ——もちろんわれわれとしては努力はいたしますけれども、そういう事態考えられるくらいにむずかしい数字でございまして、増収期待してベースアップに応ずるということはまず不可能であると率直に申し上げざるを得ないと思います。  それでは、今度は経費節約はどうかということになってまいるわけでございますが、経費の中で、まあ経営費が六千四百五十三億という予算案数字になっておりますが、これは四十一年度の予算案に比べまして七%の増になっております。ところが、その中身を吟味いたして考えますと、経営費の六〇%を占める、まあ大宗を占めると申していいと思いますが、人件費は四十一年度に比べまして一〇%の増でございます。経営費大宗を占める人件費が一〇%の増であるということで、全体の経営費が七%ということは、非常に窮屈な経営費予算であるということを申し上げざるを得ないのであります。したがって、この数字は当初から非常に節約を要請された予算案数字であるということになりますと、この経営費から何がしかを捻出してベースアップに応ずるということも、これは不可能であると考えざるを得ません。  さらに、じゃ予備費は一体どうなっておるか。予備費は百二十億ということになっておりますが、これも年々の災害の手当てを考えてみますと、大体まあ災害で五、六十億くらいは考えざるを得ない。そうしますと、残り四十億ないしまあ五十億でございますが、これも先ほど言われました予定収入に達し得ないという場合を考えますと大体これが一ぱいでございまして、これからも捻出する余地がない、こういうかっこうになっております。  最後に残るものが、それじゃ工事費を切ったらどうかということになりますが、工事費は三千七百八十億ということに今年度の予定数字はなっておりますが、国鉄が第三次長期計画といたしまして、政府計画として御決定願い、また、天下に公約いたしましたこの計画を円滑に遂行いたしてまいります上で、四十二年度といたしましてはまあ三千七百八十億というのは非常に精一ぱい、ぎりぎりのところの数字であると私ども考えております。まあ忌憚なく言わしていただけば、大体四千億くらいは四十二年度はこの第三次長期計画として使いたい。四千億くらいは使わなければ、まあ将来を考えますと第三次長期計画はうまく遂行できないというくらいに考えておりますが、これは私ども考えでございますから別といたしまして、少なくとも三千七百八十億というのは、非常に精一ぱいぎりぎりのところであるということを申し上げざるを得ないと思います。そうしますとこの三千七百八十億から何がしかを生み出すということは、やはり鉄道の保安の面、あるいはいま焦眉の問題になっております通勤輸送の緩和、あるいは輸送力増強、こういった面でこの工事費を切るということは、それだけ工事遂行がおくれるということで、国民の皆さまにも多大の御迷惑をかけるということにもなりますし、この工事費を切るということもわれわれは不可能だと、こういうふうに考えております。大体国鉄職員ベースアップ考えますと、かりに一人平均千円のベースアップといたしましても百億の金を要するのでございます。かりに二千円となれば二百億という金になるのでございます。この金を一体どうして捻出するかということで、この財源の確保ということに私ども非常に頭を悩ましておる、まあこういう段階でございまして、気持ちとしては民間賃金相場考えて、十分自主的な交渉で話を煮詰めたいという気持ちはございますけれども、いかんせん、この支払い能力という面で非常に厚い壁にぶつかっておるということで、現実には、もうすでに先生十分御承知のことと思いますが、いまだに話がととのっていない。また、調停段階におきましても、先ほど松永労政局長から、三公社現業から、調停段階で今月中旬ないし下旬には何らかの前向きの回答をするというふうなお話がございましたが、国鉄の場合は、遺憾ながら、本年におきましてはこの財源めどがつかない限り、ほかの公社あるいは現業と同じような調子で御返事がむずかしいということは率直に申し上げざるを得ないと思います。  以上、長々と時間を使いまして恐縮でございましたが、国鉄の場合はちょっと事情が違っておりますので、あえて御説明させていただいた次第でございます。
  11. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 続けて御報告願えばいいのですけれども、いまのお話の中でちょっと確認しておきたいのですけれども、そうすると、国鉄としては支払い能力がないから、賃金問題についての煮詰め、いわゆる協定はできない、支払い能力さえあれば協定はできると、こういうことですか。
  12. 井上邦之

    説明員井上邦之君) そういうことになりますけれども、この支払い能力の面で、現時点考えますと、まあ先ほど申しましたように、かりに千円上げるといたしましても百億、二千円になりますと二百億ということになります。それだけの金を捻出するめど現時点においては非常にむずかしい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  13. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その現時点の問題としてでなくて、一般的と申しますか、労使間の問題として、財源さえあれば労働組合と自主的に協定を結ぶことができるのだと、こういうふうに確認していいのですか。
  14. 井上邦之

    説明員井上邦之君) 原理的にはおっしゃるとおりでございますけれども、実際問題としてそういうことにならないのが実情でございます。
  15. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 ことしはいま言われたような財源がないからできないということであって、原理的とか実際問題とかいうことでなしに、私は、全然組合要求するような一万円という、あるいは八千円というような賃上げは、それは財源の面からないということもあるかもしれませんけれどもしかし、たとえばの話ですけれども、百円とか二百円という金も全然ない、そういう支払い能力もないということはあり得ないと思うのですよ。それは時にはそういう場合は当然賃金協定というものは結べるのじゃないか、先ほどのお話からいうとそう思うのです。
  16. 井上邦之

    説明員井上邦之君) それは百円とか二百円とかいうようなくらいのことになりますと、現実にこれは団体交渉でいろいろ自主的に解決しておるものもございますので、これが賃金の問題になりますと給与総額関係もございますが、その他の問題につきましては、百円二百円の問題ならば自主的にいろいろな問題が解決いたしております。それから、ことしは支払い能力がないからそういうふうに言うのだろうが、それじゃ支払い能力がある場合には協約を結ぶのか、あるいは結べるのじゃないかというお話でございますが、それはおっしゃるとおりでございまして、かりに四十三年度——四十二年度はいま申したとおりでございますけれども、四十三年度を考えてみました場合に、四十二年度の増収状態というものが非常によかったということで、国家予算に定められた八千二百五十五億の予定収入にも十分達したし、また、将来を予測すると非常に国鉄増収見込みがあるというような事態考えました場合においては、これは増収し得るとわれわれが考えた範囲においては積極的に協約を結ぶということも、理屈としてはあるわけでございます。
  17. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 当事者能力はあるということですか。
  18. 井上邦之

    説明員井上邦之君) 当事者能力はもちろんごございます。団体交渉でほとんど大半の問題は解決いたしておりますから、これはもう当事者能力は十分ございます。ただ、ベースアップというような多額な資金を要します問題、あるいは給与総額の制限をこえるというような問題、この問題につきましては、かなり御承知のとおり制約された面がございますので、その面については制限された当事者能力と言わざるを得ないと思います。ただ、しかし、先ほど来先生の御質問になっておられる財政的な力がある場合に、それじゃ当局は自主的に賃金協定を結ぶのかというお尋ねにつきましては、これは十六条の関係もございますが、理屈としては、これはそれだけの力があるとわれわれ判断した場合、たとえば四十三年度かなり増収見込みがあるといったふうに判断した場合、これはやり得るわけでございます。
  19. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 十六条の関係は、これは財源があってもなくても賃金協定はできることだと思うのですね。十六条の関係は、資金上あるいは予算上支払い不可能な協定をした場合には国会にというようなあれですからね、ですから、それは別としても、賃金問題について私たちいま論議をしているわけですが、賃金問題についても当事者能力があるのかどうかということなんですね。で、原理的にはある、こう言われますけれども、実際に実現しない原理なんというのは、これは私何にもならない理屈であって、現実に今度の団体交渉ではゼロ回答で、そのまま調停委員会に持ち込んでいるわけでしょう。
  20. 井上邦之

    説明員井上邦之君) その点は先ほど来申し上げておるとおり、支払い能力がないから、たとい当事者能力があっても、支払う金がなければべースアップに応ずるわけにいかないのですから、現実支払い能力がないという面でゼロ回答にひとしいような結果になっておる、こういうことでございます。これは当事者能力がないということではないと思います。ただ、先ほど来申し上げておるとおり、ベースアップというような多額の資金を要する問題、あるいは給与総額ワクをこえるという面については制約された当事者能力であるということだけは言わなければならないと思います。
  21. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 三十九年の臨時行政調査会が答申をしている内容があるのです。これは国鉄と電電の給与管理及び労使関係についてというようなこの中で、臨時行政調査会は、「労働条件の基本的な柱である賃金ベースについては、給与総額制度によって公社交渉当事者能力は実質上無きに等しい状態である。」、このことは認めるわけですか。
  22. 井上邦之

    説明員井上邦之君) それは認めますけれども、たとえば国鉄法の四十四条に「裁定があった場合」とありますが、裁定が出た場合には、給与総額ワクをこえて運輸大臣の認可を受けて支出し得るということもございますので、実質的に労使だけでかってに給与総額ワクをこえるというわけにはまいりませんけれども裁定が出たような場合には給与総額ワクをこえるということもございます。したがって、全然当事者能力がないということも言えないと思います。裁定が出るのは、これは当事者能力の問題とは別じゃないかというお話もあるかもしれませんが、やはり裁定が出るまでには、双方団体交渉もやり、あるいは調停段階に移すと、その段階の経過がございますので、その場合のいろいろな経過をもとにして裁定が出るということも考えますと、全然当事者能力がないと頭からきめつけてしまうわけにはいかないだろうと思います。
  23. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 どうも詭弁的なふうに聞こえるのですが、ほんとうに当事者能力賃金問題であるとするならば、私はもっと団体交渉で煮詰めることができると思うんです。財源の問題で何とかといいますけれども、ほんとうに労働組合——公労法の第一条、あるいは第八条を読んでいただけばわかると思いますが、公労法の第一条にはこの目的が書いてあるわけですよ。その目的の中には、当事者に対しても、責任というか、義務があるわけですよ、その目的を達成するために。あるいは第八条では賃金協定についても結ぶことができるというふうに書いてあるわけですけれども、そういう公労法上からいけば、いまの当事者能力があるならば、私は当然あらゆる労使間の紛争の解決のためにもつと公社努力をして、そうしてとにかくいまの公社財源ではこうなんだ、一万円から八千円要求しているのに全然ゼロだという、そんなばかな団体交渉はない。ほんとうに公労法に基づいて団体交渉をするならば、私はもっと労働組合もある程度納得するような形の、あるいは納得しないまでも、とにかく調停を最終的には申請するのかもしれませんが、団体交渉の中ではある程度やむを得ないという額が私は示されてこそ、初めていわゆる経営者と申しますか、使用者としての責任を果すものであると思うんです。それが全然先ほどから工事資金がどうのとか、あるいは収入がどうのとか、こう言われておりまするけれども、そういうことでは私は使用者としてのほんとうの能力は持っていないんじゃないか、こういうふうに思うんですがね。
  24. 井上邦之

    説明員井上邦之君) おっしゃるとおり、私どもも自主的に労使間で話をきめたいという気持ちには変わりはないということは冒頭に申し上げたとおりでございますが、かりに百円とか二百円というようなベースアップ回答をいたしましたところで、これは問題にならぬわけでございまして、組合は頭から、ばかにするなというだけのことでございます。一応組合と話になるような金額を提示するには、現在の国鉄財政能力をもってしては支払い能力がゼロにひとしいというようなことを申し上げているのでございまして、現実にその気持ちはありましても、支払い能力の面で回答ができないということでございます。  それから、当事者能力の問題については、繰り返して申し上げておりますとおり、きわめて制限された当事者能力を持っておるということであって、完全な当事者能力であるということを申し上げておるわけじゃございません。
  25. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 労政局長の見解を聞きたいんですが、第十六条「公共企業体等の予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」、こうなっておりますね。政府を拘束しない、しかし、公社当局予算上、資金上不可能な支出を内容とする協定も結べるということでしょう。そういう解釈じゃないですか。
  26. 松永正男

    政府委員松永正男君) 協定締結の能力はあるというふうに考えられるわけでございますが、ただいま御指摘になりましたように、この協定が実現されるためには、予算資金上不可能な場合には国会の議決を経て初めてこれが実現されるような運びになるわけでございますので、理論的に分けますというとそのような御説もあるかと思いますが、実際的な効果といたしましては、やはりこの所定の手続を経ることが必要であるというふうに考えております。
  27. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 あと関係当局ありますから、これでやめますけれども、いまのような理論からいけば、私はほんとうに公社当局が、国鉄が従業員、労働者生活を守ってやろうとか考えてやろうというならば、支払い能力現実予算上制約があっても、政府に対し、あるいは運輸省に対してもっと積極的に突き上げをするなり、あるいは資金上不可能であっても、ほんとうに労働者のためにはいま八千円なら八千円必要なんだと思えば、そういう能力があるならば締結できるわけでしょう。団体交渉でそこまで使用者としての責任を感ずるならば煮詰めていくことがほんとうじゃないですか。
  28. 井上邦之

    説明員井上邦之君) ただいま予算資金上不可能な支出を必要とする場合でも、経営者がその気になれば協約を締結できるじゃないかというお話でございますが、一応四十二年度なら四十二年度と定められた現在の予算におきましては予算上の制約がある。あるいは、また、予算からくる資金上の制約があると考えましても、将来、国鉄の場合でありますと、増収がかなり期待できるというような場合、実質的な財政的な余力があるという場合には、現在の予算資金上の制約をこえてでも協約を締結できるということは言えると思います。しかし、将来の増収見込みもなくて、いわば財政的な余力があるという自信がなくてそういう協約を締結するということは、これは経営者としてははなはだ無責任な態度ではなかろうかと、かように思います。
  29. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は井上さんに一言だけ聞きたいんですが、八千二百五十五億の収入見込みで、八%見込みですかの計画を立てた。そして項目的に計画予算が立てられた。平生の年は五、六%だから、この八%の計画を立てるのになかなかむずかしい、それだから工事やなんか分けて財源がなかなか稔出されない、見込みがつかないからいまのところはできない。それじゃあ予算を立てるというのは、国鉄当局はほうっといて予算が立ったんでしょうか、これが一つ第一に聞きたい点です。それから、物価がこれだけ上昇して業績があがっているのに、それでは労働者の、働いている人の労働再生産ということの面から見ても、労働者生活維持というものを考えないで人を使うというのは少しあつかまし過ぎる、経営能力ありやいなやという議論になるのではないかと思う。だから、いまおっしゃっていることがよくわからぬと柳岡さんが言っているのもそこなんだと思う。だから労働者の困窮事態、物価の値上がりする困窮事態、その他の生活上の困窮事態をどう処理していくかということになると、一つは、この予算書をさわって労働者生活状態を救済し、再生産の道を開いていくという考え方、それができなければこの八千二百五十五億プラス幾らかの国家財源か社会財源か、何らかの措置をもってそして労働者生活を建設するわけですから、そのことを考えるということ以外にないじゃないか。ただ、いまのような議論を聞いていたら、労働者のことは知らぬのじゃと、余裕がないさかい、もうそれはしようがないんだ、これ一点ばりで押し通そうというんですか。そういうぐあいに私には聞けるんです。一銭も出せないということだから出せないんだ、予算がきまっているんだから、それに到達するのにもいまのところ無理なんだということで、負担能力がありませんから出せませんのだということで、あなた四十二年度一銭のベースアップも、労働条件の改善もしないでいくと言うのか。経営者としては、経営努力によって何らかのことをしなければならぬというようなことがちょっぴり出たようなかっこうなんです。そのときにやることは、この予算をさわるか、プラス政府要求して金をとるかですね。それから企業努力の見通しをどこでつけて、どれだけのことをしなければいかぬか。いまの話ですと何にもしないということしか聞こえないんですが、そこら公社の経営というのはそんなものですかね。
  30. 井上邦之

    説明員井上邦之君) まず、第一に、八千二百五十五億のこの予定収入を立てる場合、国鉄は何も無考えでやるんじゃなかろうというお話でございます。これはそのとおりでございまして、普通に考えますと、大体先ほど申しましたとおり、過去の経緯からすれば、五%ないし六%ぐらいの増収の経緯をたどっておりますので、そのくらいの増収見込みしか立ちません。立ちませんが、四十二年度経費はこれだけ要るということを一方考えますと、五%ないし六%ぐらいの対前年度増収では経費の出どころがないということで、無理をして八千二百五十五億という数字を出しているんですが、これは初めから達成不能ということであれば、これは話にならぬけれども努力をすればそれだけの収入には達するだろうという一応の見込みがあって八千三百五十五億の運輸収入予定を立てているわけでございますが、その点も、先生指摘のとおり、労働者の再生産というものを考えないで、労働者生活費は置いてきぼりにして、そうして経費考えておるのかと、こういうお話になるかと思いますが、現在の予算の編成の仕組みにおきましては、翌年度の四十二年度は——本年度になりましたけれども、翌年度のベースアップはこのくらいはせなければいかぬだろうということがかりにあるといたしましても、翌年度のベースアップの費用は予算に計上できない、予算に計上しないことになっております。既定経費の支出だけが経費にかかっておるという仕組みになっております。そこに非常にむずかしい問題があるのでございます。現時点におきましては、ただ仲裁裁定が出ましたならばその財源を何とかあとで努力してひねり出す、その場合には借金の問題が出てくる、いろんな手を使ってやるということでございます。前もってそれだけのものを予算に計上する仕組みになっていないのでございます。決して私ども労働者の再生産ということを考えていないわけではございません。その意味においては、冒頭申し上げたとおり、よそさま並みの賃金を支払いたいという気持ちに毛頭変わりはございません。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それはちょっとおかしいじゃないか。いつもそういうことを毎年おっしゃっているんで、当事者能力があるという限界はどこなんだという議論は、私は長くなるからいたしませんけれども、何か知らぬけれども、仲裁なら仲裁が出て、それを大蔵省にまかして金がおりるようになってきたら金を出す、それまでは肝心の大蔵省が国鉄職員を使っているわけじゃない、事業をやっているわけじゃない。事業をやっている人が全くそんなふうに、会計の制度がそうなっていると言われるか知らぬけれども、人を使って生産性をあげて事業を発展させ、今日まかされて事業をやっている理事者がそんな無責任な状態だ。じゃ法律を変えたらいいじゃないか。あなたのほうから法律を要求して変えたらいい、変えるような努力をしたらいいじゃないですか。あなたのところ、国鉄ばかりじゃなしに、三公社現業もそうだというなら、なぜそういう手続をおとりにならないか。だんだんしまいのほうになってくると、借金してどうじゃこうじゃ。いずれにしたって、何千億何百億赤字、はい、よろしいというわけにいかぬでしょう。これから一年たって赤字が三百億、五百億出ました、それは別な要件で借金をするというわけにはいかぬ。全体の国鉄の運営の中で問題を処理しなければならぬ。それにはどういうぐあいに事業を発展させるか、国民の足をまかなっている国鉄財源上、営業上、経済の動脈である国鉄という交通機関事業そのものでいけなければ国家がめんどうをみるとか何とかいうかっこうの問題に持っていかなければならぬ。そのときの発想に、労働者のことは知らぬという無責任な態度で経営をやられるというのがどうも私にはわからぬわけです。
  32. 井上邦之

    説明員井上邦之君) まことに先生指摘のとおりでございます。そういう法律改正までいかなければならぬのじゃないかという先生の御指摘、まさにそのとおりでございますけれども、この問題に関しましては、現在公務員制度審議会でも、公社のあり方、そういったものも含めまして、基本的な議論をなされることになっております。まあ私ども努力がいままで法律改正までいかなかった、それだけ熱意が足りないじゃないかというおしかりをこうむればごもっともでございますけれども、根本問題として、現在公務員制度審議会で議論されるということになっております。御意見は全くそのとおりでございます。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 公務員制度審議会というものはあまりうまく動いていないんじゃないですか、実際。それは別としまして、毎年当事者能力ありゃなしやという話で、何もかも予算資金上云々ということをもって逃げてしまう。それじゃ柳岡さんとの間に議論があったように、当事者能力があるんだ、当事者能力があるんだけれども、経営内容がこうだから一銭も出せない、こういう話が続くわけです。それじゃ民間賃金云々という前段の御議論のように、事業自身に負担能力がなければ一銭も出せない、そうはいかぬでしょう。毎年国鉄労働者だけ一銭も賃上げもせずにそれで通りますというわけにはいかぬ。だから、そういう前段のことをおっしゃらずに、事業はこうこうじゃというと、どこにおっしゃっているのかよくわからぬ。政府要求し、発言をなされているのかという感じすら私らは受ける。労働者はそれじゃ承知しませぬぞ。だから、やはり働いている労働者の再生産、生活というものと事業経営発展というものが同じレベルの中で議論されて、足りないものはどこへ要求したらいいかという形になっていかなければ問題は処理できないんじゃないんですか。私は、そこらをなぜおやりにならないか。それでこそ初めて当事者能力ができる。予算資金上の国家の関係はどうしたらいいかということは、むしろ労働組合側がするのじゃなしに、当局が、あなたのほうが政府要求し、国会にこうしてもらいたいということをされるのが道筋じゃないですか。私は、どうもいつも聞いていて、何かあなたまかせで、政府が何かきめてくれたらそれによって出しましょう、一時借金をする、それではあとの処理をどうするか、結末をつけなければならぬ。去年のベースアップのときも同じことをおっしゃって、あなたそれをほっぽらかしていますか。事業自体の問題として処理しなければいかぬでしょう。だから、そこらあたりが問題がいつもはっきりしないわけですね。私は聞いていてもようわからぬですよ、その辺議論しても。あなたは当局の理事者ですから、当局側でよくお考えになって、労働者はこれではいかぬぐらいのことを、ここに問題があるのだから、そこをこういうぐあいに直して変えていかなければならぬならならぬということをやはり明らかにされていかなければ、これは労働者というものは無知で働かされて、おまえらの生活は知らぬぞ、そんなことを国民期待しない。事業をやはり発展してもろうて、経済、他方では国民生活向上の動脈であるところの国鉄の任務を果してもらいたい。その中で事業を経営される方々は、そこで働いている労働者の要するに生活再生産にどうしたら続くかぐらいのことは考えられて、円満に、スムーズにいくということを国民期待している、私はそう思うんです。いつも同じようなレベルのここから上を議論いたしませんと、何かあなたまかせのような議論が横からきているというようなことは、私はなかなか納得できないという気がするんですよ。これは柳岡君のいまのお話を聞いていても、何かそういう感じがする。まあもっと赤裸々に言えば、当局というのは無責任過ぎるんじゃないか。主権在民の国家における国民労働者に対してあまりにも無責任過ぎる。もう権力といいましょうか、そういう力で押し切っている、無理押しをしているという以外に感じられないんですね、私の心境を申し上げますと。
  34. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 質問者にちょっとお尋ねいたしますけれども、三公社現業関係者のまだ御答弁いただかない方が七人あるわけなんですけれども、だいぶ問題点があるようですが、一応お述べいただいて、そして問題点のある方に質問を集中するという方式でいかがでしょうか。いかがですか、そういうふうに。よろしゅうございますか。  それでは、たいへん僣越ですが、順々にこちらで御指名申し上げてよろしいでしょうか。  それでは電々公社の遠藤職員局長さんから順にこちらで御指名申し上げます。おそれ入りますが、簡単に要点だけ。また足りない点は質問で補足いたしたいと思います。
  35. 遠藤正介

    説明員(遠藤正介君) この委員会でも前回御報告をいたしましたように、私どものほうは昨年の暮れに賃金要求を全電通と全電電という二つの組合からいただきました。その後私どものほうは、自主交渉というのは約二十回ばかりやってきました。やってきました内容は、たとえば物価の上がりぐあいでありますとか、生活水準の向上のぐあいでありますとか、民間賃金との比較というような基礎的な交渉をやってまいりまして、最終的には私どものほうは、前回も申し上げましたように、民間賃金相場、あるいはその他の情勢を見てから御回答を申し上げるという形で自主交渉段階は一応終わりまして、現在調停段階に入っております。そして調停委員会も二回開かれましたが、第二回目の調停委員会事情聴取が、先ほど先生指摘のように、全電通に対しては八日、それから全電電に対しては九日に開かれまして、いずれの組合に対しましても私のほうから、まあ先ほど労政局長がおっしゃいましたこととダブリますが、五月の中旬ごろに民間相場も出そろうと思いますので、その上で諸情勢も見まして、誠意のある回答をお示しすると、こういうぐあいに御回答を申し上げております。私どもといたしましては、自主性の問題については、基本的には、先ほど国鉄井上常務もおっしゃいましたのと変わりはないのでございますが、御指摘のように、多年にわたってこの問題はなかなか進展がなかったのでございますが、ことしはぜひ調停段階で円満に妥結することができるように努力をしたいと、こう思っております。
  36. 千葉千代世

  37. 山口龍夫

    説明員(山口龍夫君) 専売公社におきましても、三月二十六日まで十二回の団体交渉を重ねてまいっております。交渉内容はいろいろ複雑多岐にわたるわけでございますが、組合側要求が、一つは九千五百円の賃上げの問題、もう一つが初任給の値上げ問題、さらにもう一つ、いわゆる給与の不均衡是正という、まあ公社としての企業内の特殊の問題かと思いますが、そういう考え方が出されております。それぞれについて各調査資料を集めて論争をかわしましてやってまいってきておるわけでございます。で、この不均衡是正の問題は特殊な問題でございますので、中身については御説明を省略さしていただきたいと思いますが、これにつきましても労使間の意見が不一致で、対立したままだということになっております。  賃上げの問題並びに初任給の問題につきましては、昨年度のベースアップ以後の物価の諸統計、さらに民間賃金の諸統計、公務員の給与の問題、特に組合側から要求がありました大規模の食品工業について具体的な調査ができないかという御要求がございましたので、それに基づいてできるだけの調査をやったことがあるわけでございますが、それについての双方の見解の表明といいますか、どれを基準にとるべきかというようなことで相当論争を重ねてまいっております。資料のとり方についても若干の対立を残したままになったというような結果でございます。何といいますか、終結的には民間賃金の動向をさらに煮詰まった段階まで追っていきませんと金額に結びつくほどの資料が得られなかったということで、なお民間賃金の煮詰まり方を見さしてもらいたいということを言っておるわけでございますが、組合側は待てないというようなことで、三月二十六日に団交を打ち切り、調停申請という運びになったわけでございます。調停に進みましてから二回ほど事情聴取がございました。聴取の段階におきましては、なお賃金動向といいますか、各民間企業の賃金の煮詰まり方をもう少し見さしてもらいたいということを申してきておったわけでございますが、だんだんと煮詰まってまいりまして、各企業が煮詰まってきたのも相当ふえてまいっておることをわれわれも十分承知しておるわけでございます。現在注目しておりますのは、私鉄大手の賃金がどういうようにきまっていくかということを注目しておるわけでございまして、これがきまりましたような段階、先ほどお話がございましたような五月の中下旬の段階になるかと思いますが、この段階において公社としての誠意ある態度をお示ししたいと、かように考えておるわけでございます。十五日に第三回の事情聴取がございまして、こういうことを公社側態度として表明いたしたいと考えておる次第でございます。  簡単でございますが。
  38. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 郵政省山本人事局長
  39. 山本博

    政府委員山本博君) 私のほうは、昨年の年末から二つの組合賃金交渉を続けてまいりました。それぞれ八回ないし十回交渉をいたしました。そこで両者いろいろな資料を合わせまして賃金決定のための交渉を重ねてまいりましたが、たとえば民間賃金との比較、その方法、いろいろな点で必ずしも意見が一致いたしておりませんでした。私のほうといたしましては、これはゼロだという回答ではなくて、なお民間賃金の動向を見定めた上で回答のことといたしたいということで、日にちは、ことしの三月ないし四月まで交渉を続けてまいりました結果、一方の組合は、三月、他方の組合は四月、それぞれ調停申請をいたしました。で、この八日に一つ側の組合調停がございました際に、私のほうから、先ほど来他の公社からお話がありましたように、民間賃金の大綱の把握というのがこの中旬ないし下旬にできるであろうから、その時期において当局として誠意のある回答をしたいという意思を通じまして、また、もう一つの組合のほうは本日でございますが、すでに八日に一つの組合に先ほど申し上げました意見を通じますと同時に、事実上お話をそちらのほうにも連絡をいたしてございます。現在そういう段階でございます。
  40. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 林野庁吉原職員部長。
  41. 吉原平二郎

    説明員吉原平二郎君) 林野庁には、月給制の定員外職員に関します賃金要求といたしまして、二つの組合から出ています。一つが全林野労働組合、これは昨年十二月一日に出されておりまして、九千五百円の賃金上昇を四十二年の一月一日から行ないたいということでございまして、その後三月の末まで約十回の団交を行ないました。団交の中身につきましては大体大同小異でございますけれども、物価の動向、それに関連します実質賃金の水準の変化がありまして、同じくそれに関連しまして定期昇給の見方という問題もありまして、そういう問題と、それから、もう一つ大きな問題は、やはり民間賃金の動向ということでございます。大体三月末の団交におきまして、われわれとしましては、民間賃金の動向が、より煮詰まって、客観的に把握できる時期においては何らかの解決をはかるように努力したいということを申しておったのでございますが、四月一日に調停に申請されたわけでございます。  それから、もう一つの口林労という組合がございまして、これは同じく昨年の十二月二十七日に、七千七百円の賃金上昇を四十二年の四月一日から行なえという御要求がございまして、その後約六回ばかり団交を継続しております。この組合はいまのところ自主団交を継続中でございます。同じ民間賃金につきましても、他の組合に申しましたと同じような回答段階でございまして、決してゼロ回答ではないということを御了承願いたいと思います。  それから、なお、私たちのほうでは日給制の定員外の作業員がございまして、これにつきましては全林野の労働組合のほうから同じく昨年の暮れに、十二月一日に要求が出ております。四十二年の一月一日以降の賃金引き上げでございまして、これにつきましては、その後現在まで約十回ばかり団交を継続しております。この問題は多少定員内の月給制職員と違いまして、やはり特殊な問題もございますけれども、共通的な問題としましては、民間賃金の見方というものをどこに求めたかということが大きな問題になっております。その点の見解につきましては、まだ組合とかなり大きな懸隔がございまして、現在のところ、まだ団体交渉を継続中でございます。  こういう段階でございます。
  42. 千葉千代世

  43. 高田壽史

    説明員(高田壽史君) 印刷局におきましては、昨年の十一月三十日に一万円のベースアップを基本としまして、これの配分の方法に関する件とあわせまして要求がございましたわけでございます。これにつきまして、先ほども他の公社現業からもお話がございましたが、民間賃金との比較でありますとか、消費者物価指数と実質賃金等の資料を双方逐次出し合いまして、どういうところに議論があるかを詰めて資料を検討してまいったわけでございます。そして、当時私たちの態度といたしましては、四十一年度内に再度賃上げをすることは応じにくい、しかし、四十二年度以降の賃金については、今後の民間賃金の動向を見まして、その他諸般の情勢を検討いたしまして回答いたしたいという態度を表明いたしたわけでございます。これに対しまして、組合側としましては三月三十日に調停申請が出されたわけでございます。それで四月十七日、四月二十七日の二回にわたりまして事情聴取がございまして、調停申請の経緯でございますとか、印刷関係事業民間賃金との比較等をやってまいっておるわけで、その他いろいろ検討いたして御説明いたしておるわけでございます。それで、私どもといたしましては、やはり民間賃金の全般的な動向を十分見きわめるまでに至っていないので、もう少し判断を下すのに時間をかしてほしいというふうに発言してまいっているのが先般までの調停の経緯でございます。  今後におきまする方向といたしましては、先ほど労政局長からのお話もございましたが、民間賃金の動向が、ことしは、いわゆる春闘相場といいますか、そういうものが逐次だんだん出ておりますので、全面的に判断いたして確信を持てるところまできておりませんのでございますが、たとえば私鉄の賃金紛争というようなものもだんだん進んで、妥結とか、いろいろ議論が行なわれておるようでございますので、中下旬ぐらいになってくればわれわれとしても誠意ある態度を表明いたしたい。そうしまして、できるだけ調停段階でも論議を尽くしまして、妥当な線でまとまることも望ましいことと考えておりますが、予算的、法律的な制約もあるということも承知いたしておりますが、その点を考慮しつつ、何とか妥当な解決をはかるという方向で努力を続けたいと存じております。
  44. 千葉千代世

  45. 秋本保

    説明員(秋本保君) アルコール関係のものについての経緯を御説明申し上げます。  アルコールにつきましても、昨年の十二月に組合から要求がございまして、三月の二十七日までの間に約九回団体交渉を持ったわけでございます。その間、主として議論になりました点は、物価上昇と給与改定との関係、あるいは国家公務員と当事業部の職員関係、さらには民間給与と当事業部の職員給与の比較等の意見の交換がありました。また、組合側は一万円のベースアップ要求があるわけでございますが、そういう改定をした場合の事業に対する影響等についての意見の交換、さらに同一年度内に賃金改定を二回実施することの当否、そういった点につきまして意見を戦わしたわけでございますが、結局組合側といたしましては、三月二十七日に当局の最終的な考え要求がありまして、私どもといたしましては、同一年度内に二度の改定ということは考えていない、しかし、四十二年度につきましては、民間企業における賃金の動向、その他の情勢を慎重に検討して、あらためて考え方を申し述べたいという考えを述べたわけでございますが、これに対して組合側は不満として調停に移行したわけでございます。  調停におきましては、ただいままで、二回ございましたが、その間におきまする委員会における審議は、各現業のほうからお話がございましたのと大同小異でございまして、近く第三回の調停委員会がございまして、そこで事業の経営状況等、あるいは国家公務員との関係、一般公務員との関係説明するというふうな段階になっているわけでございまして、今後の能度につきましては、先ほど来各当局側から述べておるような考えを私どもは持っておる次第でございます。
  46. 千葉千代世

  47. 大島弘

    説明員(大島弘君) ただいま造幣局長は大阪の本局におられますので、私かわりましてお答え申し上げます。  造幣局におきましては、昨年末要求書が提出されましたが、その内容は、賃上げの問題、それから高校率初任給の問題、それから定員外職員についての問題、それから最後に、上記の措置は昭和四十二年一月一日から実施すること、こういう要求でございます。それに対しまして、三月終わりまで九回団交を重ねましたが、当局の最終的態度といたしましては、四十一年度基準内賃金については、もうすでに昨年の仲裁裁定の結果実施し、かつ、特別の変更がないからこれには応じられない。ただし、四十二年度以降の賃金についてはあらためて回答する、こういうことで最終的態度をとりまして、以後調停に移りました。その後第一回、第二回ございまして、近く第三回が開催見込みでございますけれども、今後の問題につきましては、先ほど労政局長の御答弁並びに他の三公社現業の方々の御説明と同じく、具体的回答につきましては、諸般の事情を勘案いたしまして、誠意ある態度を示したいと存じております。  以上でございます。
  48. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 ありがとうございました。  各御報告を聞いておりまして感じますことは、依然としていままでと変わりばえのしない形式的な団交と申しますか、そういうことによって調停に移ったと、こういうふうに理解せざるを得ないわけでございますけれども、先ほどからそれぞれ同じように、五月の中下旬ごろ民間賃金の動向を見て誠意のある回答をしたい、こういうふうに言われております。そこで、私は、まず各当局にお願いをしたいのは、やっぱり民間賃金というのは、もうすでに大綱は四千数百円の賃上げが出ているわけです。したがって、そうした動向の上に立って、常識的に世間的にも受け入れられるような、やっぱり労働者納得するようなものが回答として出されない限り、私はやっぱり問題が残るかと思うんです。したがって、そういうことも十分頭に入れて、ひとつこれからできるだけ一歩でも労使関係が改善されるような、そういう早期の解決ストライキを回避することができるような解決策をぜひとっていただきたいと、こういうふうに思います。  そこで、労働省のほうにちょっとお聞きをしたいんですが、いまの各組合との団体交渉の経過等を聞いておりまして、私は、いままで労働省として、こうした三公社現業に対するいわゆる当事者能力、これを与えるためにどのような努力をしてきたのかということです。で、私から申し上げるまでもないと思うのですけれども、すでにこの公共企業体等の労働問題について、昭和二十九年の十一月には臨時公共企業体合理化審議会、あるいは昭和三十一年の二月には臨時公労法審議会、こういうものの答申が出ておりますし、さらには昭和三十二年の十二月には公共企業体審議会の答申と、こういうふうにありまして、いずれも給与総額制度というものは廃止をすべきであるとか、あるいはもっと企業努力を十二分に働かすという点からも、給与の融通性というものをもっと持たせるべきではないかとか、こういうような内容のものが出ているわけです。そして、しかも、三十九年の太田・池田会談ですか、四・一七ストの回避をめぐってトップ会談が行なわれ、その中でも、この公企体の問題についての検討を約束しているわけです。そして、先ほど申し上げましたが、三十九年には臨時行政調査会がこの電電と国鉄に対する給与管理のあり方について答申をしている。こういう一連のこの改善策というものが出されているわけですけれども、いまもって具体的に労働省として、あるいは政府としてそうした問題について真剣に取り組んできたというふうに私どもは聞いておらないわけですけれども、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  49. 松永正男

    政府委員松永正男君) ただいま柳岡先生指摘のように、それぞれ各審議会等におきまして、この当事者能力問題をめぐりましていろいろ御意見が出てきております。それから、また、三十九年に池田・太田会談の際の話し合いの中の一つといたしまして、当事者能力問題について検討をしようということが出ております。で、政府といたしましては、そのような事態に対処をいたしまして、当事者能力を基本的にどのようにやるべきかという問題につきましては、公務員制度審議会におきまして御検討を願うように諮問を申し上げておるのでありますが、その根本的な検討の結果が出ますまで、現在の制度を合理的に運用をいたしまして、できるだけ現在の制度におきましてもこれを生かす方向で努力をいたしたいということを次官会議で決定をいたしまして、これによりまして努力をいたしておるわけでございます。  なお、公務員制度審議会につきましては、先生方よく御承知のような事情がありまして、現在、審議会が開かれない状態になっておるのでございますが、最近私ども知りましたところでは、同盟系統の組合の方々から公務員制度審議会再開についての強い要望が何回か政府に対してなされております。と同時に、総評に対しましても公務員制度審議会の再開について検討をしようじゃないかという申し入れをされたようでありまして、総評側も検討をいたしたいというような返事をされたというふうに承っておるのでございます。で、おっしゃいますように、種々議論をされておりまして、政府といたしましても決してこれを等閑視しておったわけではないのでございますが、必ずしも早期にその検討の結果が出てこないということは事実でございます。その点につきましては、以上申し上げましたような情勢に立ちまして、やはりわれわれといたしましては、公務員制度審議会におきまして、できるだけ早い機会にこの審議会が正常に運営をされまして検討がなされるということを強く期待をいたしておる次第でございます。
  50. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 関連。若干視点を変えて基本的な問題を質問いたしますが、私ずっと聞いておりまして、いみじくも同僚の藤田委員が言ったことで、法律の悪いものは法律を変えたらよし、あるいは審議会が運用上、制度上、質的に矛盾があるならば変えることが骨子でなければならぬと思う。もう公労協の中核組織は、言うならば国労だと思うんですよ。それが数字で一万円なり八千円なりの要求をしておるんだ、しかも、これはストライキ宣言を出しておるんだ。しかし、これを受けとめられる政府の側では、たとえば大臣談話かあるいは声明か、ともかくも労政局長が、その要旨はおおむねかくかくだという、その要旨は一応うかがい知っておりますが、ぼくは基本的に、少なくともいま国鉄井上務理事が言っておられるような考え方は、ほんとうはこれは民間の経営者なら落第ですよ、実際は。当事者能力の制限云々は別問題として、これこれの数字要求があってゼロ回答なんということは、百円や二百円が人を侮辱しているということ以上に、ゼロ回答なんてもってのことです。このやむにやまれず公労協の出しておるスト宣言というものは、視点を変えて言うならば、基本的に浮き彫りにするならば、憲法に保障された生存権の切なる主張なんですよ、実際問題は、今日常識的に政治の場にある者が考えるべき一番内政上の大きな政治課題というものは、物価と所得、広範な勤労者、官公民を問わず、得た賃金収入によって生活をする者の立場から言うならば、物価といわゆる所得とのアンバランスの中から出る生存権の切なる主張というものが大幅賃上げという要求の姿であるわけなんです。したがって、言うならば、今日の公労協が位置づけられておるのは、奪われたスト権、現行法規上スト権がないという。スト権がないというものが、憲法に保障された生存権を、いわゆるスト権という一種の形式によって主張しておるのに対して、それをいつまでも柳の下のドジョウのごとく、法律にきめていないものをやれば、これをとにかく違法を犯すものは云々というような、そういう旧態依然たるようなそういう大臣談話というのは進歩がないですよ。率直に言って、私は過去四十年来、まあ政治家じゃなくて、むしろ労働運動者なんです。ここへきてほんとうに進歩のないこの現実というものを、だから、いみじくも法律や制度にしても、悪ければ変えるという、しかし、そう簡単には変えれないにしても、あるものを最大限前向きで活用し、善用する、そういう行政指導労働大臣労働大臣の補佐官のあなたたちがやってもらわなければ困る。以下準じて、いわゆる当事者能力の問題になっておる三公社現業の労務管理スタッフの人たちも、もう少し基本的な頭の切りかえをやってもらわなければ、これはいつまでたったって問題のらちはあかぬというふうに私はとらえておるわけで、申し上げまするけれども質問でもあり、意見でもあるわけでありますけれども、これは私どもの感情からいきますれば、いつも非常に、ことに国鉄井上さんですか、あなたの考え方で、かりに私鉄にしても、そういう考え方で、一体これで限界だというような考え方であるならば、あなたは落第ですよ、実際問題は。そういう立場考え方で一般民間企業——それは民間企業で、国鉄は違いますと、そして国鉄の場合は他の云々とは違うというような御意見もありましたけれども、結局私の言わんとするところは、きょうは政務次官もおられるようでありますけれども、何とか言ってもらわないと、ただお家のそれぞれの家庭事情をありのままに御説明願っただけでは、私も今度はいずれ勉強して出直してきますけれども、きょうは何にもしゃべりますまい、言いますまい、勉強しましょう、選挙ぼけの頭を切りかえに来ようというわけで初仕事なんですけれども、どうもあまり進歩性がないので、いささか義憤を感ぜざるを得ないのでしゃべらしていただいたわけでありますけれども、ひとつ労政局長でも政務次官でも、とにかく何とか言ってくださいよ、実際。
  51. 松永正男

    政府委員松永正男君) ただいま杉山先生のおっしゃいましたごとく、毎回スト宣言、毎回警告というようなことで進歩がなく、また、遺憾な状態であるということにつきましては全く同感でございます。先ほども申し上げましたように、政府といたしまして、官房長官の談にもございますように、スト宣言の前に、一日前でございますけれども、結果においては一日後にスト宣言が出されたわけでございますが、調停段階におきまして、ただいま御説明がありましたように、三公社現業全部そろってということはむずかしい事情もあるようでございますが、調停前には誠意ある回答を示すことを期待するということで、私どもといたしましては、困難な事情の中で一歩でも二歩でもおっしゃるような線で前進をいたしたいということで努力をいたしております。もちろん努力が足らない面も多々あるかと思いますが、今後ともそういうつもりで前向きの姿勢で取り組みたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  52. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 時間がございませんからもうやめますが、いま当事者能力の問題で、現制度の合理的な運用によってやっていきたいということを申されましたけれども、具体的にはどういうことなのか、その辺わかりませんけれどもしかし、現実に公労法上団体交渉というものが認められておる、賃金問題について。にもかかわらず、いろいろ聞いてみましても、その団体交渉が実を結ばない。これはもう団体交渉の拒否と同じだと思うのですよ。これは労働省で出しているこの解説書を見てもそう書いてあるのですよ。ちょっと読んでみますと、「交渉の申入れに対して妥当な期間内に応諾の返答をしない場合」とか、あるいは「形式的には交渉を行っても、相応の権限を持たない職員をしてこれに当らしめ、単に組合要求を聞きおくというにすぎない場合、要求には応じられない旨のみを述べて組合側にこれを納得せしめようともせず、また対案を提出しようともしない場合、」こういうものは実質的には団体交渉の拒否であろう、こういっているのですよ。労働省みずからがこういう解釈を出しておって、これはしかも三十二年ですよ。もう十年たっているわけですよ。いまもってそうした近代的な労使関係が樹立できないということは、私はおかしいと思うのですね。ですから、政府としては公務員制度審議会がどうのこうのといっていますけれども、すでに先ほど言いましたように、昭和二十九年からいろいろ具体的な意見が出されておるわけですから、政府はそういう意見に基づいて公務員制度審議会の検討待ちだといっても、一体、政府としては具体的にどういう案を持っているのかということも聞きたいのですよ、おそらくそれは答えられないと思うのですけれどもね。そういう具体的なものをいまだ持っておらないということは、私は政府の怠慢だと思うのですね。で、一方では近代的な労使関係の問題について、大臣がかわるたびに所信表明で言明をしておる。これは私はほんとうにことばだけであって、佐藤内閣の一番悪い面をあらわしていると思うのですけれども、とにかくきょうはこの程度でやめますけれども、ひとつこの当事者能力の問題についての早期の政府の案というか、そういうものもぜひ私たちに示してもらいたいと思います。それから、この十七日、あるいは二十一日、二十四日には、とにかくストライキがいまのままでいけば行なわれることが必至だと思うのですね。ですから、そういうストライキを回避するための、やっぱり先ほどから申されておる誠意のある回答ですか、組合側がやはり納得するような、そういうようなものを、この際、政府としても関係当局指導していただいて、関係当局もひとつ政府に十分要求をして、私は早期の解決をここで要望いたしまして、本日の質問を終わりたいと思います。
  53. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 午前中の質疑はこの程度にとどめて、午後は二時まで休憩といたします。    午後零時四十八分休憩      —————・—————    午後二時十五分開会
  54. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  55. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 最賃の問題で、ことに中央最賃審議会の基本問題小委員会が審議の最終段階に入ったように伝えられておりますが、その状況はどんなふうになっておりましょうか。
  56. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 経過の説明でございますから、私から御説明申し上げます。  最低賃金審議会に対しましては、昭和四十年の八月に、労働大臣から、将来の最低賃金制のあり方について正式に諮問申し上げ、その後、小委員会を設けまして慎重に検討を進めてまいったのでございます。ところで、審議会としましては、昭和三十八年に答申を行なっておりまして、その答申の中で、昭和四十二年度以降の最低賃金制のあり方については、さらに総合的に検討して判断すべきだというので、昭和四十二年の三月までに、審議会で、昭和四十二年四月以降の最低賃金制の問題について総合的に検討しようという答申を出しておった次第もあり、何とか考え方をまとめたいというお考えを持たれたようでございまして、特に最近に至りましては、公益委員が中心になって労使各側にいろいろ接触されまして、労使各側の意向を聞きつつ公益委員の案なるものをまとめてまいったのであります。本日十時から最低賃金審議会を開きまして、正式に文書で答申案の考え方を労使各側に対しまして提示されたような次第であります。
  57. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その内容的に伝えられるところでは、その答申案の内容が、いまおっしゃいましたように、二年後に業者間協定方式を廃止する、あるいは、また、その後は十六条方式を中心にしてその法を運用するというふうなことがいわれておる、やはりそういうふうでございますか。
  58. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 答申の内容といたしましては、最低賃金制度の現在の状態につきまして触れ、それから、最低賃金の基盤になる、あるいは最低賃金制度の周辺におけるいろいろの諸条件につきまして問題を指摘し、さらに審議会としては、これまで最低賃金制基本問題特別小委員会を中心に、かなりの審議を行なってきたところであるが、まだ審議を尽くしていない面もあり、現在までのところ、委員の間で意見の相違もあり、また、わが国の経済、労働事情の推移の展望や、諸外国における最低賃金制の運営の実態等、なお検討すべき問題も残っておる。そういうことからいたしまして、そういった問題についてはなお継続して検討するが、現行法の業者間協定に基づく最低賃金方式については、これまで最低賃金制の普及に大きな機能を果たしてきたことを認めるが、より効果的な最低賃金制に進むためにはこれを廃止することが適当である。ただ、現に業者間協定に基づく最低賃金方式が広く実施されている実情にかんがみ、無用な混乱を生ぜしめないためには、これが廃止についてはある程度の経過措置が必要であろうという観点に立ちまして、その経過期間はおおむね二年程度という考え方を示されたわけでございます。したがいまして、先生指摘のように、業者間協定は廃止をする、したがいまして、審議会方式がいわば中心になるわけでございますが、従来の審議会方式というのは、業者間協定方式、あるいは労働協約に基づく方式などが設定されない場合に必要に応じて設定するという、いわば条件つきの方式でございました。それを今度はいわば中心にいたしまして、審議会方式で最低賃金を決定していくというふうに方式を改める、こういうことでございます。
  59. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 そのようになったとしますと、やはり私は今日なおまだ疑問点が非常に明らかにされてないと思うのでありますが、第一番目に、そのようにして審議をするその審議会に対しての依存度、あるいは、また、それに対する手続なんかの問題に非常に問題点があるだろうと思います。特に、審議を尽くされて、大臣が職権的に決定をするということになるわけでありましょうが、そういう問題から考えてみますと、やはりこの審議会の持ち方、あるいは、また、審議会で尽くされておる審議会の答申というものは相当重大な意味を持ってなされるものだと思うわけでありますが、そういうふうな点について問題点があろうと思うんですが、どういうふうに解釈をなすっておられるか。それから、また、職権決定方式というのはどうもあれだと思う。その関係を……。
  60. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生承知かと存じますが、中央最低賃金審議会におきましては、一部委員の欠席の問題がございました。これは昨年十月の総会におきまして一部委員の退席という問題がございまして、その後欠席されておるという事実がございます。ただ、政府といたしましては、審議会に諮問を申し上げたのでございますが、審議会の運営につきましては審議会の自主的な御判断にまかせておるわけであります。で、現実に中央最低賃金審議会ではどのように御判断になったかと申しますと、その十月の総会で一部委員の欠席がありましても、従来の方針どおり最低賃金制のあり方の検討は続ける、こういうお取りきめをいたされまして今日まで及んだわけであります。ただ、委員の欠席がございますことは、これは望ましいことではないということは、これはもう申すまでないわけでございまして、審議会会長といたしましては、欠席された委員の出席方につきましていろいろ努力をされました次第もございまして、ごく最近の数日前の段階におきましても、さらに出席を要請されたという次第もあるわけでございます。一応審議会自体の運営の問題としまして、会長以下、いろいろ御努力をされておるわけでありますが、まあ労働省といたしましても、大臣以下、機会をとらえまして欠席された委員の出席方を要請申し上げた次第でございますが、そのような経過を持っております。ただ、審議会で、今後審議会方式で最低賃金を決定するという場合につきましても、委員が欠席したままいわば強引に最低賃金を決定するかどうかと、こういう問題になりますれば、これはそのときどきの事情にはよりますけれどもしかも、かつ、審議会にかかりました最低賃金決定事案の性質にもよりまして、関係労働者の欠席というような問題になりますと、それは個別に判断せざるを得ないと思います。ただいま問題になっておりますのは、最低賃金制のあり方というような、個別最賃の決定じゃなくして、そういった基本制度の問題についてでございますので、しかも、最終答申を出すのではない、いままで大体意見の一致された、労働側も異存のない業者間協定廃止を内容とする答申を出そうというような性質のものでございますから、当面しております問題と、今後の審議会方式による最賃審議会の運営の問題、これは同一に論ずるわけにはいかないと思うのでございますけれども、後者につきましては、ケース・バイケースで処理するよりない、かように考えております。
  61. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その大筋の問題だからと言うのでありますが、いま私の聞いたのも、いまのいわゆる労働者の代表である総評代表が出席していないままに進められているというのは、私はこれは非常に大きな問題があるのではないかと思うわけです。ことに代表との意思疎通はいろいろしているといまお話しになりましたが、一体事実上どういうふうなことをどうされたか、どういうふうな折衝をされて進められているのかということももっと詳しく説明していただきたいと思います。
  62. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先ほども申し上げましたように、本年の二月以降は公益委員が中心になりまして労使の各側に接触されたのでありますが、公益側委員の全員が労使それぞれの側に会われたのであります。最初はただ賃金審議会委員という立場の人々にお会いするという形でございましたけれども、特に総評側に対しましてはそういう範囲に限定せず、代表者の最高トップの方にもお会いしまして意見を伺ったわけであります。その際は公益委員が全員出席いたしまして、各側の意見を伺うという形でまず会っております。そうしてその各側の意見を伺ったあとで公益委員として一つの考えをまとめまして、それをもとにしてさらに各側に当たったということでありまして、その間、会長、小委員長など、責任ある方々が正式に申し入れをいたしましてお会いをして、最初は意向聴取、第二回目は公益委員の考え方をお示しして御意見を伺うという形で接触されたわけであります。
  63. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 その折衝の過程において労働者側の代表との間にはどういう点が問題点になっておったか、そして了解が得られないというのはどこにあるのかということを明確にしていただきたい。
  64. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 各側に会われました際のいろいろな話のやり取りにつきましては、これはいわば懇談的な話し合いでございますので、その一々につきまして申し上げるのは不適当だと思います。しかし、経営者側におきましては、従来どおりの現在の業者間協定をなぜ廃止しなければならないのか、それなりに機能を果たしてきているじゃないかということからいたしまして、業者間協定廃止にいわば反対をするという態度を持してきたわけであります。かつ、また、全国全産業一律制については反対という意向を示しているわけでありまして、一方、労働側におきましては、総評、中立、同盟、新産別と、考え方に差がございます。総評につきましては、従来のように、全国全産業一律方式ということを主張されたわけでありますが、同盟側におきましてはそれとは違いまして、地域別、職種別、産業別といったような考え方の強い一つの考え方を主張されてきたというようなことで、大まかに申しますと、従来各側が組合決定としていろいろ主張されておりましたそのような考え方を強調されておるということであるわけでございます。
  65. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 これはやはりこういうようなふうにして、最終的にも、こうした労働者側の代表が入ってないということでこういう答申案の内容をもしまとめていこうという、あるいは、また、それを進めて最終段階に進めていこうという、こういうあり方は、私は、やはりILOの二十六号ですか、何かにもあれすると思います。きめ方自身に非常に問題があるし、この二十六号条約の精神に対しても、非常にもとるものと思うわけでありますが、どういう点からして、やはり今後のこうした進め方はどのように考えておられるのか、あるいは、また、こうしたことに対しては、もっと真摯な気持ちで話し合いの場で成り立たないものかどうか、こういうふうなことでもってもし職権決定方式が行なわれるということになると、たいへんなことになるのではないかと思いますが、いかがですか。
  66. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) これは政府側の立場と審議会の立場があろうかと思います。労働省といたしましては、諮問いたしまして、そしてできるだけ早く答申を賜わりたいというふうにお願いをしているわけであります。ただ、一方、審議会自体がその諮問を受けまして、どのように運営されておるかという問題があるわけであります。いまの先生の御指摘は、いわば後者の審議会運営の問題として考えました場合に、労働省として中央最低賃金審議会のいわば自主的な運営にかれこれ申し上げるというのはいかがかと存ずるわけでございまして、会長以下、いろいろ御苦心なさっているわけであります。現在までのところ、公益委員側としては相当手を尽くされて各側の意向を打診された、そして全国全産業一律とか、地域別、職種別とか、いろいろな方式につきましては議論があるから、これはさらに継続検討しよう。ただ、業者間協定廃止については、いずれの組合におきましても反対、異存はないのではないか、公益委員の先生方も廃止に異存はない。そこで、経営者のほうがこれに賛意を表するならば、問題の業者間協定方式廃止というのは差しつかえないのではなかろうか、このような判断に立たれたように私ども想像いたしております。したがいまして、全国全産業一律が是か非かとか、そういう問題についてはまだ結論を出していないので、継続審議という形になっているわけでございます。そこで、この答申自体につきまして、いわば業者間協定廃止に賛成か不賛成か、継続審議かどうかという内容になってまいるわけでございますので、そういう内容のものについて審議会でどう処理されるか、公益委員としては案を取りまとめたので、できるだけ賛成を得たいというふうに努力されておるわけであります。そのような経過になっておりますので、将来具体的な最低賃金をきめる場合の賃金審議会の運営の問題とは、やや趣を異にしているような点もあるかと私どもは存じます。ただ、公益委員としては、審議会運営の技術的な問題のみならず、一般の世論にも十分考慮を払っているように私ども想像いたしておるわけでありまして、そういった世論の動向をも判断して努力されているということをつけ加えて申し上げたいと思います。
  67. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 大体了解できましたが、特に、しかし、労働省としましても、審議会の議決の手続や何か、その問題に対しては十分そうした問題点を配慮して、そうしてできるだけそれは独立自主的なものは認めるのはあるでありましょうが、労働省としての態度も相当慎重にそのほうに向かって進めていただきたいと、こう思うわけであります。  それから、最賃を決定する原則の第一に労働者生計費というものをあげられておるわけでありますが、生計費がどれだけにあるかということについて、生活保護基準の法定原則、これは生活保護法の第八条でありますが、あるいは、また、給与所得の課税最低限度決定、これは所得税法の第二十八条ですか、あるわけであります。それから、また、ボーダーラインの定義等につきましても、非常にそれぞれの政策的な考慮が働くためでありましょうか、統一がないわけであります。政府の責任においてやはりこれは必要な最低生活費を算定して、そのつどこれを公にされるのがほんとうじゃないかと思うわけでありますが、非常に解釈が別々であります。特に、また、四十二年度の所得税課税最低限は、単身者では二十六万七千六百二十二円ですか、扶養家族三人では六十三万三千五百九十九円、こういうふうになっておるわけで、そうしてみますと、生活保護費と比べてみますと大きな格差があるわけでありまして、一体どれが生活費としていいのかということが明確でない。私は、こういう賃金を論ずる場合には、もっと明確に最低の生活費というものを算定して公にすべきじゃないかと思うのですが、その点はどう思いますか。
  68. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) いわゆる生計費につきましてはいろいろ論議のあるところでございまして、生計費自体につきましても、理論生計費だとか実際生計費だとか、いろいろございます。そこで、生計費をこう政策的に取り上げます場合、それは必要生計費とか標準生計費とか最低生計費とか、いろいろあるわけでございまして、それぞれの政策目的に従いましていろいろな取り上げ方がなされるものと私は考えておるわけであります。これを一義的にどうでなければならないというふうにきめ得るのかどうか、これは最貸問題のみならず、政府の各般の施策に関係することでございますから、私からこれ以上申し上げるのはいかがかと存じますけれども、少なくとも最低賃金の場におきまして生計費ということを考えます場合には、最低賃金決定の趣旨ということに照らしまして判断すべきものであろうと思います。ただ、そうは言いましても、具体的資料として何かあるかという、具体的な資料というものがなければ、理論的にいろいろ考えましても具体的な数字は出てこないわけであります。従来私どもが用いてまいりましたのは、たとえば総理府統計局の家計調査、消費者物価、それから人事院、それから、地方では人事委員会などでございますが、標準生計費といった調査をいたしております。そういった各種の調査を考慮して、それから、最賃法にもございますように、類似の労働者賃金などをも考慮いたしまして最低賃金の額を考えておるわけであります。たとえば最低賃金の額の目安をどうきめるかというような具体的な問題につきましてもそのような配慮をいたし、具体的な資料といたしましてはそういったものを総合的に判断をしながら決定しておるということでございます。
  69. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 藤本武さんの最賃制の本の中にもちょっと出ておったし、私それを少し読んだのでありますが、やはりこの最賃の算出要素であるところの労働者生計費というわけでありますが、これはほんとうにその必要生計費、あるいは、また、家計費というだけで、どうもいまおっしゃっておることにおいても明確でないわけでありますが、これはいわゆる生活するだけの費用であるのか、それから、また、何と申しますか、文化的な水準を保ち得るものであるかというのでは相当大きな開きがあるわけですね。ですから、これはどうしても何と申しますか、ある程度の目安がきちっとしていなかったら、その最賃の場合を論じてみても始まらないわけであって、私はそういうことからいろいろ問題になってくると思うわけであります。それから、これはやはり労働者が、何と申しますか、その生計を営むに十分であるというようなことが基準になるのではないかと、ある程度文化的な水準を営むためのものでなければならないと、こういうふうに考えなければならぬと思うのですが、その辺の点はどんなものでありましょうか。それから、また、生きていけるだけの賃金ということになれば、非常に生活保護法に準じた低い賃金になるわけでありますし、やはり人間らしい生活を営むというのも、また非常にその段階はあると思うのですが、しかし、その解釈は、いろいろ段階もあるにしても、少なくとも賃金を論ずる場合には、やはりいろいろ考えなければならぬ問題だと思うわけです。労働省としては、やはり私は何かの統計によって、あるいは、また、何かのものによって、人間というのは文化的な動物でありますから、その文化的な生活というのは、これは当然ついてくるわけでありますから、文化的な生活が維持されるということが含まれているように思うわけであります。私はそういう点で非常に生活費というものを出すことが非常に大きな問題だと思うわけですが、フランスあたりでは全国的、全産業的な最低保障賃金といいますか、SMIGなんというのが出ておるのを私も読みましたが、これをきめるときに、やはり団体協約高等委員会というのができて、ここで標準生活費を研究して、そしてSMIGの原案を作成する任務をまず持たされておる。こういうので、このSMIGのいわゆる団体協約高等委員会というものがあるわけであります。やはり労働省あたりでもこれくらいのものがあって、あるいは、まあ政府機関でもいいですが、日本にこういうものがあって、そしてこういうところである程度の作業をして、そうして少なくとも賃金をきめる場合には、文化的な水準としてはこれくらいを認めなければならないというような作業があってもしかるべきじゃないかと思うのですが、そういうようなところはどうでございましょうか。
  70. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生指摘の問題はたいへん基本的な重要な問題でございまして、やや議論にわたりまして恐縮でございますが、その最低賃金制を考える場合のアプローチのしかたとしまして、最低賃金をどう考えるか、まず一般の賃金がございまして、一般の賃金と比較しても著しいものがある。それについて最低賃金を設定いたしまして、国家権力でそれを払わせる。まず最低賃金があるものではなくて、一般の賃金がございまして、その中における低賃金層に対してどういうささえをするか、そうしますと孤立した存在にならないということになろうかと存ずるわけでございます。きわめて常識的なことを申し上げまして恐縮ですが、そこで、最賃法におきましても、最低賃金は、労働者生計費、類似の労働者賃金及び通常のその事業所の賃金支払い能力を考慮してという大きなファクターとして三つあげておるわけでして、生計費だけで最低賃金を決定するという思想は出していないわけであります。しかし、生計費をここで掲げておりますものは、やはり生活の実態というものを十分考慮しろという趣旨のあらわれであるわけであります。そこで、その生活の実態というものを考えます場合に、いわゆる理論的に考えられる生計費が中心か、実際その地域なり当該関係労働者にかかわる生活実態というものはどういうものであろうかという面からこの生計費というものを考える、こういう考え方も出てくるわけであります。いずれかと申しますと、ILOなどで考えております、二十六号条約に明確には出ておりませんけれども、いずれかといいますと、その実態的な生計費というものを考えておるように私ども考えておる次第でございます。  ところで、そういうものを明らかにする意味においてフランスにおける制度などを参考として考えたらどうかという御指摘がございました。御指摘のように、フランスの最低賃金決定の場合には、政府が団体協約最高委員会の意見を聞いて決定するという方式と、いま一つは、スライド方式で政府が諮問常設機関である国立統計経済研究所の算定する小売り物価指数の変動に応じて、必要に応じ政令によって改定する、こういう方法があるわけでございます。この後者のほうはいわゆるスライドの問題でございますが、前者のほうは団体協約最高委員会という委員会の意見を聞いてきめるという方式でございますけれども、このような委員会を特設するかどうかについては、行政組織のあり方がフランスとわが国と違いますわけでございますから、直ちに比較できませんけれども、現在の機構といたしましては最低賃金審議会に専門部会を設置いたしまして、専門家の方々にお集まり願って検討していただくという組織がございますので、そういった点につきましては、現在あります機構を十分活用して対処するということが考えられるわけであります。
  71. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 専門部会で考えられておる、じゃ、それはどんなものがいままでに報告されておるのですか、内容をひとつ聞かしてください。また、その経過をちょっと、どういうふうな経過でそれが論議を進められておるか。
  72. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 専門部会につきましては、たとえば例を申し上げますと、中央最低賃金審議会におきまして、石炭鉱業における最低賃金、金属工業における最低賃金を決定したわけでありますが、その石炭及び金属工業における最低賃金を決定する場合には専門部会を置きまして、最低賃金審議会の委員以外にも、専門的な知識を持たれる方々を御委嘱申し上げまして、審議、調査に携わっていただくということで専門部会を設けております。それから、地方最低賃金審議会におきまして、ある限定された職種などに最低賃金が設けられるわけでありますけれども、必要に応じまして専門部会を設けるということにいたしております。これは常設でございません。ある最低賃金をきめようというときに、それに関係のあります専門の委員を御委嘱申し上げるという形式をとっております。
  73. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 そのときにやはり標準生活費というものは出ていたわけですね、その過程を示してもらいたい。どういう過程で標準生活費をきめたか。
  74. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) それはそのときの問題によりますけれども、たとえば石炭鉱業における最低賃金というように、生計費そのものが議論にならずに、あらかじめ組合側で提示されました金額というものが明らかになっております場合に、それを中心にしてまとめていくということでございますから、生計費の議論は必ずしも起きてこない。ですから、その個別に最低賃金を決定する場合の必要性に応じて判断されるということでございます。
  75. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 結局標準生計費ということをあまり問題にしないで、どんぶり勘定でやっているということですね。いわゆる全国一律の賃金という考え方でないために当然そういうことになって、その場合場合のケースで、それできめたということでありますけれども、私がいま言っておるのは、フランスあたりではそういう標準生計費をきめるための組織を持ってるのだから、何かきめるときにも、一応そういう標準生計費はどのくらいだということで、それの目安の上に立っての論議がされているのかいないのか聞きたかったのですが、やられてないと解釈していいわけですね。
  76. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先ほど申しましたように、最低賃金を個別にきめる場合の問題と、それから、業者間協定ではあるが、ひとつ最低賃金額の目安を中央最低賃金審議会できめようじゃないか、そして指導の一つの基準にしようじゃないか、こういう問題があるわけでございます。その後者の賃金額の目安をきめようという場合には、もちろん生計費というものが考慮される。ただし、生計費を考慮すると申しましても、具体的な資料がなければ判断がつきかねるわけであります。そこで、資料としてはどのようなものを用いているかと申しますと、総理府統計局の家計調査であるとか、あるいは人事院の標準生計費といったようなものを用いているということでございまするので、これによって御判断願いたいと思います。
  77. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 それから、この医療扶助を除いたところのその他の扶助を受けている者のこの世帯数、あれはやっぱり四十年の調査でありますか、あれによりますと、常用の労働者世帯であって生活保護を受けているというものは三万六千七百八十世帯あるというふうに聞いております。同時に、また、被保護世帯の全体二十一万五百世帯から比べると一八%ぐらいに当たるというわけであります。やっぱり働いている人の低い賃金の人では、このような二〇%に近い人が生活保護を受けているというわけでありますが、国の補助を受けて、しかも、その低い賃金で働いておる労働者がおる。これは一つは国の補助を受けて、それから、また、その企業の中では低賃金で奉仕しておるという形になるわけですから、ここらのところを考えてみると、私は非常に大きな矛盾を感ずるのですが、これはどんなふうなものでしょうか、ひとつお考えを聞きたいと思います。
  78. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 生活保護とか、そういった現在あります制度に関する点については私から申し上げるのは差し控えたいと存じますが、最低賃金の場から申しますと、これはあくまでも一般に賃金が払われておるということが前提になって考えられる問題でございまして、ある賃金が低いかどうかということも一般の賃金との見合いで考えるべきものであろうと思います。したがいまして、生活保護の面と引き比べたらどうかということにつきましては、引き比べることもこれは適当でございましょうが、ぜひそうしなければならないかと申しますと、これはいろいろ議論のあるところだろうと思います。そこで、実際問題としては、そういった資料も考慮いたしまして総合検討の際には用いております。おりますけれども、理論的にそういうものと直ちに結びつくかどうかということになれば別の問題であろうかと思うわけでございます。ちょっと舌足らずかとも存じまするけれども、要するに、一般賃金がございまして、それがいろいろな状態できめられておるということを前提にいたしまして、その中にあって低い賃金をどうやって下からささえていくかという場合に、まず着目しなければならないのは現にある賃金で、そして低いものはどういう観点から見てそれが低いか、そのときに一つのものさしとして生計費といったような考慮が払われてくるわけでありますが、何ぶんにも一元的にそのものをずばりと決定することが困難であり、したがって、最賃法におきましても、生計費とか同種の類似の労働者に支払われる賃金であるとか、そういったものを賃金の決定の判断基準というふうに採用しているものと私ども考えております。
  79. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 私がいま言うていることは、いわゆる生活保護というものが最賃というものをカバーしている、代用品になっているということです。結局賃金で支払わなければならないものを国が生活保護で出しているということでありますから、私は、そういうものがずっと調べてみて一八%に準ずるような人がおるとすれば、これはたいへんな問題じゃないかと思ったからこれを提起してみたわけです。これは賃金として支払われるべきものを払っていないから生活保護を受けなければならないというものがあるから、これは常用労働者なんですから、それを受けているのは。私はそのところに問題があると思うのです。特に、また、名目賃金というものは、日本との比較を考えてみたら、アメリカなんか六・三倍とか、あるいはイギリス、あるいはドイツあたりでは二・三、フランス、イタリーあたり一・五と、こうなっておりますね、あるいは、また、鋼材あたりでは、トン当たりのコストなんか見てみますと、日本の労務費というものはアメリカの四分の一であり、ドイツの二分の一であり、イギリスの四〇%である。ヨーロッパで大体比べたら、日本の賃金は約四分の一だといわれておりますね。それからして、私は、生計費というものがいろいろな賃金から考えてみて、一人でぎりぎりの生活を維持するためにも二万円くらいかかるのだという説も別にあるわけで、いろいろ考えてみると、生計費というものは幾らくらいにしなければならぬかということは、先ほどから申しておるように、ある程度設定するような機関があって設定しないとこういうような間違いが起こってくるし、この辺私は非常に問題があるように考えるわけですが、その辺どうですか。
  80. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御趣旨はよくわかるのでございますが、ただ、生計費と申します場合には、その地域におきます生活条件しかも、風土的な影響も受けますので、北海道と鹿児島が同一の生計費で足るかということになりますと、必要生計費も違ってくるだろうと思います。いわんや東京はどうかということになりますと、違ってまいろうかと思います。そういう差が現実にあるということは、生計費そのものが悪いのじゃなくて、各地域における風土的条件のもとに生活の実態が違うということでございますので、したがって、その最低賃金考えます場合に生計費を考慮するといたしましても、極端な例で恐縮でございますけれども、北海道の場合、鹿児島の場合、東京の場合、違うと思うのでございます。そこで、一律の生計費を使っていいのか、全国平均のものを使っても最低賃金の決定の場合にはあまり実益がないということで、むしろその場合には、北海道は北海道、鹿児島は鹿児島の生計費の実態を考慮せざるを得ないということになるわけでございます。そういうことで、生計費を要件として考える場合にはいろいろな問題があろうかと存じます。ただ、その問題以外に、将来の方向といたしまして、生計費というものをもっとより科学的に算定し、そうして一般の納得のいくようなものを今後築き上げまして、そういったものを参考にしつつ、より適切なものにするということは、これは十分考えなければならぬことだと思いますが、しかし、これも具体的には、現在あります統計調査をどのように今後展開していくかということに関連いたしますので、その問題になりますと私の立場でかれこれ申すわけにはまいらないと思います。  それから、二万円がいいかどうかという問題に関連いたしまして、いわゆる労務費の配分、分配率の問題もございまして、確かに欧米先進諸国に比較いたしますと低うございます。ただ、これは日本のみの特有な現象というよりも、いわば経済発展が急激に進行しつつある社会においては、おおむね労務費の配分率が低いというのが事実としてある傾向でございます。したがって、つまり経済が伸びますときには、設備投資であるとか、そういう資本面に対する配慮がどうしても大きくならざるを得ない。したがいまして、経済発展のいわば進行過程にある状態のところと、ある段階に到達いたしまして、いわゆる経済成長率で、もう幅も小さく、安定状態に達したという国におきましては、傾向としては差が見られる。たまたまわが国におきましては経済発展が非常に急激な勢いで伸びている過程にありますので、世界的なそういった例といたしましては、欧米先進国の場合よりも、むしろ経済が急激に伸びておるといった傾向の分類に属するというのが現状ではなかろうかと思います。これはよしあしの問題は別にしまして、そういう過程にあるわけでございます。そういった基本的な問題がございますので、いろいろ金額の具体的な額についても御議論があると思いますけれども、まあ現状のままで判断するか、将来の展望をも考えていろいろ配慮するかという問題はあろうかと思います。したがいまして、先ほどちょっと触れました最低賃金審議会できょう提示されました公益委員の案におきましても、わが国の経済、労働事情の推移の展望やその他の条件が、今後検討すべき問題として残っておるということを触れておるわけでございます。
  81. 藤原道子

    ○藤原道子君 いろいろに御答弁になるのですけれども、聞いていてどうしても納得がいかない点がありますが、とにかく常用労働者で一八%の生活保護を受けておる。そこで、厚生省の生保のときは、生活保護費が非常に低過ぎるという、こういう問題になると、やはりこれは低所得層とのかね合いもあるといって逃げるのですよ。そうすると、少なくとも働いている以上は、その労働によって生活ができるというものでなければ私は納得いかないのですね。あなたの話を聞いていると、労働省労働者のサービス機関だろうと私は思う。ところが、あべこべに何だか言いのがれするような答弁のように聞かれてならないのです。少なくともいまの御答弁の中を伺っておると、働きながら生保を受けるということについての考えですけれども、私たちはこういう労働省考えでいきますと、結局最賃では食っていけない、だから生保をもらう。そうすると、生活保護基準に達しない場合にのみ生活保護が与えられる。そうすると、遊んでいても生活保護がもらえるのです。骨折っても、遊んでいてもらえる率と同じしか所得がないとすれば、ダニを養成することになりはしないでしょうか。少なくとも、働いておればそれで安心してやっていけるということでなければならぬ。全林野の問題でしたかしらん、病人が出たからたまたま生保を受けたのであるということになると、いまの労働者は、一人病人が出ても生活保護を受けなければやっていけないというぎりぎりのところに押えられているところが問題だと思う。こういう雇用関係のあり方が、それでよろしいと局長はお考えになっておいでになるか。私はその点がどうも納得がいかない。厚生省のほうでは、生活保護費をあまり上げると、結局低所得層に抵触してくるので、その点を考えなければならぬ。それなら貧乏人は食わずにがまんするよりしようがない。これは暴論かもしれないけれども、そういうふうにまあ考えざるを得ない。最賃制を画期的なものを成立しようとするならば、その点よほど踏んまえてやっていただかなければ、最近の業者は、何とかそういうことをのがれるためにパートタイマーが非常にふえてきている。女子が高齢、高給になれば首を切る、それで、その人を今度パートで雇っている。あの手この手で資本家は自分たちの有利な方向を考えているときに、労働省そのものが労働者生活を守っていくのだ、労働者にどう対処していくかということをむしろ考えてもらわなければ、業者の側に立ったような御答弁を聞いていたのじゃ私は納得がいかない。どうなんでしょう。
  82. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) ちょっと誤解をされたようなふうに存じまして恐縮に存じますが、私は最低賃金の問題について筋道の議論をいましておったわけでございます。したがいまして、いま先生の御指摘のような状態がよいか悪いかということは別であるわけでございます。しかも、その問題は最低賃金の額をどうきめるかという場合に考慮すべきであるという問題でございまして、低くていいというようなことは私はさらさら申し上げているわけではありません。最低賃金審議会で額をどうきめるかというときに、何を基準にするかというときに生計費というが、しかし、その生計費というものはその地域の状態を根本とせざるを得ないのだ、必ずしも全国一律ということになると適当でない場合がある。現在においては、地方の最低賃金審議会で決定するというような場合には、地方の生活の実態というものを考慮すべきであろう、こういうことを主として申し上げたのでございまして、生活保護費の扶助料を割るかどうかという点につきましては、そういった面から考えるのが最低賃金考える場合のアプローチのしかたとして正しいとか、いや、そうじゃなくて、一般賃金がまずあって、それの面からアプローチするのが正しいかというような点についてはいろいろ議論がございましょうということを私は申し上げたいと思って先ほど来答弁しておったわけであります。そこで、生活保護費より低い賃金があるじゃないかとか、それはいろいろあるだろうと思います。しかし、これは労働の態様とか、あるいは年齢だとか職歴だとか、さまざまの事情がありまして差があるわけでございます。  それから、いま先生指摘のように、パートタイマーの傾向のものがある。しかし、これはパートタイマーでございますから、労働の時間が短いという特殊事情に置かれる。それから、さらには家内労働の工賃の問題があるのでございます。私どもとしては、最低賃金考えます場合には、家内労働の最低工賃の問題とか、いろいろ考慮せざるを得ない問題が多々あるわけであります。フランスのように、むしろ家内労働構成が整備いたしまして、そっちのほうの問題が固まりまして後に最低賃金制度が確立しているという国もあるわけでございまして、フランスはフランスでそうでございますが、現在の日本でわれわれが問題を考えます場合には、制度的には違いますけれども、そういう実態も考慮しなければいかんということは私ども十分認識しているつもりでございます。ですから、いま考え方を申し上げておるのでございまして、金額そのものについていいかどうかということになりますと、これは別な問題である、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はきょうは関連ですから、ちょっと納得いかない点を聞いたのです。だけれども、いまあなたがいみじくも言われたように、最賃をきめる場合には内職の問題とパートタイマーの問題をやっぱり勘案しなければきまらないと思うのです。お互いの足を引っぱり合うような形になりますから、そういう点が非常に心配でございます。いずれそのとき私の質問もあるのですが、それは日を改めまして、きょうは関連でたいへん失礼いたしました。そういう点で地域差地域差とおっしゃるけれども、このごろむしろ地方のほうが高い場合もある。日用品など、生産地でありながら、みんな中央へ集まっちゃって、また逆輸入というような関係もあって、むしろ地方のほうが生計費がよけいかかっているというような傾向も、釈迦に説法でございましょうけれども、そういう傾向もございますので、あまり地域差地域差ということにウエートを置かないようにお考えを願いたい。要望しておきます。
  84. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 いまの問題は、いま藤原先生から御指摘いただいたけれども、私が解釈するのには、とにかく企業に対して国が生計費を持っている形になるわけですね。私もそういう点まだ納得いかないので、またそういう点についても将来お話を承りたいと思います。  それから、こんな問題も、これを読んでいてふしぎに思ったのですが、熟練工というのは、仕事が一人前になるために、やはり数年間の徒弟修業生活が必要なわけですが、そして熟練工になる。ところが、未熟練工というのはやはり訓練をまだ必要としているものである。そうすると、今度は、その中で結局最賃の対象になる労働者というのは、やはり未熟練工がおもであって、熟練工対策というものは賃金の場合にはどんなふうに考えておられるのですかどうか、ここのところをちょっと聞いておきたいと思います。
  85. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 現在の最低賃金のきまった結果を見ますると、要するに、右のほうの一番単純な労働が中心になっておりますが、しかし、ものによりましては熟練者の場合もございます。熟練者の例として、たとえば理髪、美容というのは、ある程度技能を持ってなければできないのでございますが、そういうことで、ものによって違いがございます。ただ、工場ごとにきめるとか、そういった場合には一番単純な労働に落ちつかざるを得ない、こういうことになるわけでございます。それが実態でございます。したがって、単純技能労働者最低賃金の上に有技労働者賃金というものがどういうふうに配分されておるかということが埋没しておりまして、ないというのが現状ではないか。ドイツの最低賃金のように、職種ごとにきめて詳細な職務分析をいたしまして、それに応じた最低賃金額がいわばピースレート的にきまっておるということでございますと、技能の程度に応じまして最低賃金がきまるということになりますが、わが国の現実ではそうなっていないということでございます。
  86. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 どうもちょっとまだはっきりしない点があるのですが、先ほど局長は地域差の問題を言われたのですが、私はこの地域差というのはその点確かにあるだろうと思うのですが、それは製造業なんかの平均賃金なんか見まして、東京を一〇〇といたしますと、一番低いのは鳥取のようですが、五一%くらいで約半分、それから、事務職員を中心とするところの金融業を見ましても、鳥取は六一・九、こういわれるわけですが、このように賃金の格差は非常に大きなものがあるわけですね。しかし、生計費は多少まだ大きな差があるように言われましたけれども、私は、やはり先ほど藤原先生から御意見がございましたが、生計費の格差というものはこんなに賃金とマッチするだけの差があるのか、私は東京に住んでいる人と鳥取に住んでいる人では、鳥取は東京に住んでいる人の半分で生計費が済むんだということになるのかどうか。こういうところからいっても、私は賃金の性格というものがだいぶ大きな食い違いがあるんじゃないかと思うのです。それから、中卒の初任給を見ましても平均一万四千八百円ですが、東京は一万四千九百七十円、長崎あたり、あるいは、また、青森あたりは一万百三十円、こういうふうに、これはまただいぶ大きな差があります。印刷業で見ましても、東京では一万四千七百円、島根に入って一万四百円、こういうふうになっているのですが、こういうふうな大きな差があるわけです。これらを考えて、イギリスなんか、賃金審議会の報告を読んでみますと、その格差は、たとえば非常にローカル的な地方の市場というふうに限定されている、あるいは洗濯業、こういうふうに限定されてしまって、やはり最低限七%の開きがあるといわれているんですね、英国あたりでは。あるいは、また、必要生計費の水準の差なんかも、英国あたりではせいぜい一〇%くらい、こういっているのですが、そういう点から比較してみまして、私はもっと日本のあり方を格差の少ないものに近づけなければならない。賃金というようなものはほんとに半分であって、生計費が半分というが、私はいなかといえども生計費は半分ではなかろうと感ずるわけでありまして、そういう点からいっても、だいぶ日本の問題には大きな格差があるんじゃないか、非常に矛盾があるんじゃないか、こういうふうに思うのですが、どんなものでしょうか。
  87. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 先生の御指摘の点で、生計費の格差の問題と賃金の格差の問題がございまして、かつ、イギリスの例などをお引きになりましたわけでございますが、生計費の問題になりますと、地方でもかなり物価の高いところがある。生産地でかえって高かったりするという藤原先生の御指摘もございました。そういう現状もあるわけでありますが、一般的に大都市と比較すると地方都市、さらに、よりいなかにおきましては生計費が低いということは、これは傾向としては否定できないと思います。ただ、それがいいかどうかというよりも、風土的な条件もあるわけであります。特にイギリス、フランスと日本の場合を比べると、御承知のように、日本の場合には、緯度の関係で、北海道から鹿児島まで飛びますと、かなり北から南にわたっておりまして、国自体の立地条件も違う。いろいろありまして、したがいまして、生活的にもかなり格差がある。生活と申しますか、普通の生活のあり方自身に違いがあるというのが事実だと思うのであります。したがって、生計費の問題を考えます場合に、将来あるべき姿がどうであるかということを考える場合に、そういった風土的なもの、その他の基本条件というものは、これはなかなか否定視されることはできない、こう私は思うわけであります。ただ、賃金の問題につきましては、生活実態の問題とは別に、賃金もいわば労働力の取引の結果きまるものとして、労働力の需給関係がどうかということに差があるわけでありますから、労働力の乏しい地域と労働力の豊かな地域とでは、これは賃金に差がある。だから、鳥取における労働力の状況、あるいは北九州地域における労働力の事情といったようなものと、東京、大阪、名古屋とでは違う、こういう事情のようであります。生計費だけでなくて、そういった労働市場における事情といったようなものも考えられるわけでありまして、したがって、生計費賃金をパラレルに考えることは問題があるわけであります。そういう観点から、最賃法におきましても、生計費、その次に類似の労働者賃金ということになっておりまして、類似の労働者賃金というものを最賃決定の場合の条件にしている、どういうふうにしているのだろうと存ずるわけであります。
  88. 大橋和孝

    ○大橋和孝君 時間が超過いたしましたので、もっと言いたいことがたくさんあるのですが、これでやめさせていただきます。  いま言われたように、もう一つは、業者間協定賃金であっては、一年、二年とほうっておかれるのがあるわけですね。中卒の初任給では毎年一〇%—二〇%くらいスライドして上がっているわけです。これなんかもいまのあなたのおっしゃるような考え方で、この需要のもとであたりまえであるということならば、これはいつまでたっても賃金の格差というものは縮まっていかない、こういう状態にある。  それから、いまの問題でも、やはり生活保護を受けながら常雇いで雇われている労働者もある。また、一面には、都会と比べて五〇%くらいしか賃金をもらっていない、それもそういう市場の関係であたりまえだということじゃなくて、これはそこにもっと大きな生活に必要とする生活費というものがもっとあるのに、賃金が安いために生保に追い込まれているというのが入ってくるわけですから、そういう観点は、やはり賃金の問題を論ずる場合には、私はそういうものを大きく取り上げて考えてもらわなければ、矛盾というものはいつまでも放置されておる、弱い者にはいつもしわ寄せをされておるのではいけないということできょうは論議を進めたわけであります。そういうようなことでありますので、この賃金の問題については、私はこの生計費というものが相当大きくウエートをもって考えられるべきものであるし、当然必要であろうという生計費、いわゆる動物のような生計費ではなくて、やはりある程度の文化水準を営むための生計費というものを考えて、そしてこれがいまあなたのおっしゃるようないろいろな条件に、そこに他の賃金条件も加えて、そして私はされるべきで、最低の生計費というものを侵食しておるような状態賃金がきめられるというようなことは、私は非常に問題ではなかろうかと思ってきょうは論議を進めたわけであります。まだたくさん私は考えておることがありますが、時間が過ぎておりますので、きょうはこれくらいにしておきます。
  89. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 村上さん、外国の最低賃金というのは、大体家内工賃が進行したような形で最低賃金に発展してきた歴史があるのですが、日本は家内労働というものが、いつか知らぬ間に業者というかっこうで、私もだいぶ調べてみましたけれども、なってきて、いまではそれが内職で、チープレーバーになっておる。そういうぐあいになっておるわけです。だからいまのような議論が出てくるわけですから、家内工賃から最低賃金に移行したそれらの各国の例と、それから、いまの最低賃金を、単にどこがどういう方式だということじゃなしに、もう少し説明した資料をこの次の委員会、どうせこれは最低賃金を議論するのですから、家内工賃と最低賃金関係、それから最低賃金の方式、これはILOの三十五号関係できちっとしておるわけですから、ああいう関係でだんだんやっておるのだから、それが各国どうなっておるかという資料をいただきたいと思うのですが、きょうでなくて、いま出せといってもありませんでしょうから、できるだけ早い機会に、いずれ最低賃金の問題が国会でも議論せられますから、できれば来週もやりますから、来週できなければ再来週の労働関係のときでけっこうですから、そういうのをかいつまんで、一応見れば要綱的に説明のできるようなものを、家内工賃と、それから最低賃金方式、外国の主要の国の、特にヨーロッパがいいと思いますがね。アメリカのは大体よく伝わっていますから、ヨーロッパのやつをひとつ十カ国ぐらいあげて出してください。できますか。
  90. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私どももいろいろ調査いたしております。可能な限り努力したいと思います。ただ、家内労働の法制と最低賃金の法制とのからみ合い、それを受けた最低工賃と最低賃金のからみ合いということになりますと、具体的な資料がちょっとない面があろうかと存じますけれども、できるだけ調べていきたいと思います。
  91. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私はそれを言うておるのじゃない。日本の最賃法のように、業者間協定で関連産業だけの工賃をきめるのだというようなことじゃなしに、世界各国の最低賃金法は家内労働法から始まってきた歴史を持っているのです。それで、現在の各国の最低賃金決定の方式とあわせて、家内労働法はどうなっておるかということを別々に資料を集めていただけばいい、そういう意味です。
  92. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御趣旨はわかりましたから、できるだけまとめまして近い機会に提出いたしたいと思います。
  93. 千葉千代世

    委員長千葉千代世君) 他に御発言もなければ、本日の質疑はこの程度にとどめておきます。  次回の委員会につきましては委員長に御一任願い、追って公報をもってお知らせすることにし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会