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1967-07-21 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月二十一日(金曜日)    午後一時四十分開会     —————————————    委員異動  七月二十一日     辞任         補欠選任      瓜生  清君     向井 長年君      林   塩君     山高しげり君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 石井  桂君                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 柳岡 秋夫君                 原田  立君     委 員                 植木 光教君                 奥村 悦造君                 木村 睦男君                 楠  正俊君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 中津井 真君                 柳田桃太郎君                 横山 フク君                 加藤シヅエ君                 戸田 菊雄君                 中村 順造君                 成瀬 幡治君                 小平 芳平君                 林   塩君                 山高しげり君    衆議院議員        発  議  者  山下 榮二君        発  議  者  古川 丈吉君        発  議  者  山田 耻目君        発  議  者  松本 忠助君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣総理大臣官        房        陸上交通安全調        査室長      宮崎 清文君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        経済企画庁総合        開発局長     加納 治郎君        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        通商産業省企業        局立地公害部長  馬場 一也君        運輸省自動車局        整備課長     景山  久君        建設省河川局水        攻課長      上妻 尚志君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○横断歩道橋設置のための予算大幅増額に関する  請願(第三五三号) ○児童、生徒に対する交通安全対策推進に関す  る請願(第五四五号)(第六三〇号) ○公害対策基本法制定等に関する請願(第六〇五  号) ○交通事故防止のための抜本対策確立に関する請  願(第七五〇号)(第八四八号)(第八五六号) ○罰則強化による交通事故防止策反対並びに基本  的交通事故防止対策樹立に関する請願(第七六  四号) ○競輪用型自転車の道路上使用禁止に関する請願  (第九三一号) ○公害対策基本法等早期制定等に関する請願  (第一一五一号) ○罰則強化等による交通事故防止策反対に関する  請願(第一四一八号)(第一五六三号) ○交通事故防止対策に関する請願(第一五六四号) ○盟和産業長野工場排煙に起因すると思われる  農作物等被害調査に関する請願(第四〇四三号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件 ○公害対策基本法案内閣提出衆議院送付) ○土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の  防止等に関する特別措置法案衆議院提出)     —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、瓜生清君が委員を辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     —————————————
  3. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) まず、請願の審査を行ないます。  第三五三号、横断歩道橋設置のための予算大幅増額に関する請願外十三件の請願を一括して議題といたします。  これらの請願につきましては、委員長及び理事打ち合わせ会におきまして慎重検討いたしました結果、請願第三五三号及び第四〇四三号は採択することに意見が一致いたしました。  右理事会一致のとおり、この請願は、議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものと決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議こざいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。     —————————————
  6. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 継続調査要求についておはかりいたします。  産業公害及び交通対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本院規則第五十三条により本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 委員派遣についておはかりいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、委員長にその取り扱いを御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  11. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 公害対策基本法案(閣法第一二八号)を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。柳岡君。
  12. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まず、大臣にお伺いしたいのですが、この法案は、先般衆議院において四党の共同修正上本院に送られました。修正内容は幾つかございますが、特にこの第一条の目的修正をされております。その修正の結果ですと、政府原案とその修正内容によって、この法案目的というか、基本的な理念というか、そういうものに変更があったとお考えでございますか。
  13. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今度の修正によりまして、政府原案の意図するところがはっきりしてきた、こういうことでございまして、趣旨ががらっと変わったということは考えておりません。と申しますることは、第一条におきまして、原案によりますれば、「国民の健康を保護する」ということが第一目的でございまして、これは絶対に保護するのだ、こういうことをうたっております。ところが、「生活環境を保全する」というのも目的でございますが、その生活環境を保全するためには経済の健全な発展との調和をはかる、こういうことが一つ制約して法律に載っているわけでございますが、さように国民の健康を守ることは絶対である。生活環境を保全するためには、経済の健全な発展との調和をはかるということを原案規定しておりますので、そこのところをきわめて明確に、修正によりまして実にこれは明確になったと、かように思います。
  14. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 政府の意図するところがより明確になった——私も政府原案と変わらないというふうには考えます。そこで、世評ですね。この基本法は、公害審議会答申、あるいはその答申に基づいてつくった厚生省試案、そういうものからたいへん後退をした法律だと、こういうことが言われているわけです。先般の衆議院における大臣答弁によりますと、若干の修正は加えたけれども基本法理念としては後退はしていない、こう言われているのです。どういう根拠、と申しますかね。厚生省試案によりますと、すなおにこの文章を読めば、私ば、たいへん政府原案、この原案とは大きな違いがあるように思うのですけれども、そういう理念が変わっておらないということは、どういう根拠をもって大臣はそう答弁をされたのか、お伺いしたいと思います。
  15. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) この政府原案基本法によりますれば、これはやっぱり厚生省試案厚生省の案、あるいは審議会の案といったようなものと比べてみまして、やはり私は、政府原案というものが、国民の健康を守るということはこれはもう絶対であるということをはっきりとうたっておる——まず基本方針におきまして、またむずかしく言いますれば、公害処理公害対策理念といたしまして、ともかく国民の健康を守るということは絶対であるということをはっきりと政府原案は打ち出しておる、こういうことにおきまして、基本方針において後退はしていない。ただ、その厚生省案を、内閣連絡会議において、十数省庁というところの関係者が集まりまして、それでこの審議をやったその過程において、あるいは文句の調整とか、そういったようなことが行なわれておりますけれども、基本方針におきましては、終始、この国民の健康を第一義的に、これは絶対であるということをはっきりとさせたということにおきまして私は後退はしていないと、かように考える次第でございます。
  16. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 厚生省試案では、産業と申しますか、経済の健全な発展との調和をはかるという文言はなかったんじゃないかと思うのですね。これが原案の中に入ってきたということが、その後退をしたという大きな一つのポイントになっているわけです。また、マスコミ等もその点を指摘をしているわけですね。これが入ったとしても厚生省試案と変わりはないと、こういう理解ですか。
  17. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) これはですね。生活環境をよりよくしていくためには、経済の健全な発展調和をしていくんだが、しかしそうでない、事いやしくも健康にかかわることであるというものについては、これはもう経済発展などとは全然かかり合わさないんだということで、むしろ逆に、健康保持するためには絶対に何ものとも妥協もしなければ調和をもはからないということが、むしろ私はこの文句を入れることによってアクセントがついたんじゃないかというふうに私は考えております。
  18. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 人間の健康と生活環境というものは私は切り離せないものじゃないかと思います。しかも、ばい煙規制法などのいままでの運用の経過を見ますと、この産業との調和をはかるということが大きな足かせとなって、いわゆるざる法といわれて今日問題を起こしているわけですね。したがって、この基本法で、そうした過去の経験と申しますか、そういうものが、また同じような理念と申しますか、そういう考え方が取り入れられたということは、これは少なくとも経済発展過程で生じてきている公害から人間の健康を第一義として守っていくんだという、いまの厚生大臣の熱意からすれば、私はこれこそ、厚生大臣は、その厚生省任務としてでも、これを排除して、そして本来の基本姿勢としての公害から国民を守るという立場を明確にすることが、厚生大臣としての任務ではなかろうか、こういうように思います。というのは、厚生省設置法、これ読んでもらってわかりますように、第四条には、厚生省社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進をはかることを任務としている、こういうことになっているわけですね。ですから、私は、ほんとうに先ほど大臣が強く主張されたような気持ちがあるならば、二度とばい煙規制法のような轍を踏まないためにも、この産業との調和をはかるというような文面は削除していくということが、厚生省としては本来あるべき姿ではないか、こういうふうに思うんですが、どうですか。
  19. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 重ねて繰り返すようなことを申しますけれども、生活環境をよりよくしていくということについては産業との調和をはかるけれども、しかしながら、事いやしくも生命関係することは、何らこれは調和だとか、妥協だとかということはしないんだということをはっきりさせるためには、私は、その生活環境については御修正いただきましたとおり経済の健全な発展調和をはかるということにいたしましたほうがはっきりするんじゃないか。  それから、生活環境と、生命関係する、健康に関係するような条件等は別個のものではない、それで、そこに何か区分と申しますか、そういうことができるかと、こういうような御趣旨の御質問のように理解いたしたんでございますが、その点につきましては、たとえば四日市公害が発生しておる、四日市で発生しておる公害は現在はぜんそくなんかを引き起こしておる、こういう前提の上に立ちますと、四日市公害は、ぜんそくその他の病気もあるかもしれませんが、そういったような人間の健康に害を与えるといったような四日市環境を、これを、絶対にぜんそくなんかはもう起こらないんだ、ほかの病気があるいは公害によって起こっておるかもしれない、そういったような病気も絶対に起こらないんだというところまでは、これはもう経済等々は顧慮せずにそれを排除してしまう、現在はそこまでいっておりません。御承知のとおり現在はそこまでいっておりませんけれども、しかし、この公害基本法で実行していく趣旨というのは、その四日市ならば、ぜんそく等病気というものは絶対に起こらないようにしていくんだ、それがつまり生命関係のある限度でございまして、しかし、まだ四日市は、なるほど病気にはならないけれども、もう少し空気を清澄にして、われわれの生活を、これを快的なものになるようにしていこうじゃないか、こういったような場合に、もう一歩進めて快的なものにしていこうといったような場合には、経済発展との、何と申しますか、にらみ合いと申しますか、そこに調和を求めていこう、こういうことでございますので、そこに私は区分ができる、こういうふうに考えるのでございます。
  20. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 調和ということは非常に便利なことばだと思うのですけれども、この中身は、企業経営の許す範囲でそうした生活環境というものをつくっていく、こういうことになると思うんですが、どうですか。企業経営が破壊されても、制約をされても、生活環境をよくするためにはやむを得ないんだという考え方がこの中に入るわけですか。
  21. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 非常に観念的な話でございますけれども、健康にも関係がある、この公害は健康に関係があって、健康を侵食するといったような公害であるならば、私は、そういったような場合には、たとえその経済として、むろん利益も出てこないし、またあるいは損をする、非常に観念的な話でございますが、そういったような場合には健康が優先する、こういうことにこの基本法趣旨はなろうと思います。しかしながら、生活環境をよくしていくために産業との調和をやっていこうという場合には、たとえば、産業が十の利益を得ておる、ところがその十の利益を得ておる場合に、それではまだ少し生活環境がよろしくない、そこで生活環境をよくしていくために、十の利益を得ておるものを全然なくしてしまうところまで公害を排除して生活環境をよくするということでなくして、たとえば十の利益を得ておるものは、そのうちの五まではこれは利益を得てもいい、しかしながら、生活環境をよくするためには十の利益のうちに五はひとつがまんしてもらおうじゃないかというようなところに——まことに観念論でございますけれども、そこに経済発展との調和ということがあるんじゃないかと、かように理解をいたします。
  22. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 大臣の言うことは、さっぱりわからないです。私は、生活環境と人の健康とは、これは切り離せないものだと思いますね。したがって、生活環境が悪くなれば健康が阻害されることはあたりまえだと思うのですよ。そうなると、その場合に、調和はあくまでいまのような形ではかるというのであれば、大臣先ほど声を大にして、健康はもう何よりもまず第一に守るんだというようなことは、この生活環境経済発展との調和という中で、もうすでに無視されてきておる、こういうふうに私は考えます。これはまたひとつ、総理が来れば総理の見解も聞きたいと思いますので次に進みたいと思いますが、この基本法主管省は、衆議院段階での質疑を見ますと、厚生省だ、こういうことになっております。しかし、この法案の中では、所管省厚生省だというふうにはどこにもないはずであります。ただ二十五条の七項で、庶務厚生省環境衛生局処理する、こういうふうに規定をされております。ここで庶務というのは一体どういう範囲のことをいうのか、お伺いしたい。
  23. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) たとえば、公害対策会議庶務は、会長たる内閣総理大臣の名をもって会議が開催されるわけでございますが、その開催の手続、あるいは必要な資料の調製、また場合によりましては会議に付する原案作成というようなこと、やはり一般の事務的なことでございます。
  24. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 同じ衆議院質疑の中で、公害対策基本法全般について厚生省責任を持つんだ、こういう答弁をしておりますね。そうしますと、いまの庶務というものの範囲は事務的な仕事だということになると、この基本法の中で厚生省責任を持つというのは、どういう役割りをこの基本法の中で持っておるのか、事務的な以外に。この基本法にいろいろ規定されておりますけれども、それぞれの規定について厚生省は全部この責任を持つ、そういう立場にあるのか、そうでなくて、法文上からいくと事務的な庶務仕事だということになっているのですけれども、全般的な責任を持つというのは一体どういうことなのか、お伺いしたい。
  25. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この公害対策基本法主務大臣厚生大臣であるということでございますが、この基本法の中には公害対策のそれぞれ各省にまたがるいろいろの施策が織り込まれておるわけでございます。その意味合いにおきまして、この基本法の中のそれぞれ各省関連のある仕事に関しましては、この基本法の中にある事項でも、それぞれの所管大臣主務大臣である、こういう関係でございまして、公害対策基本法全般としてこれを推進し、法律案として取りまとめ、その推進をはかるという立場厚生大臣がある。総括的な世話役といいますか、総代といいますか、そういう立場厚生大臣があるわけでございまして、この基本法に基づいた個々の各条文のそれぞれの実施にあたりましては、それぞれの所管関連大臣主務大臣になっていくわけでございます。
  26. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすると、個々公害対策については厚生大臣責任がない、責任がないと言うと語弊がありますけれども、それは所管するものではない、こういうことですね。そうすると、一体この厚生省設置法の中の第五条「厚生省権限」という中で、それぞれ規定をされておりますね。そうすると、この基本法制定されることによって、どういう権限厚生省の中に持つことができるようになるのか。
  27. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この公害対策基本法の性格は、一種の国の宣言的な法律でございます。国がこういう施策を講ずる、こういう方針でこういう考えのもとに公害対策を行なうという宣言的のような法律でございます。したがいまして、この法律そのものによって直ちに、ある種の規制をこれで加えるとか、罰則が加わるとか、そういった権限に伴う仕事がこれで直ちに発生するものではないわけでございますので、厚生大臣所管の中に公害対策基本法に関する件というような形で入ってないわけでございまして、これは、農業基本法にしましても同じような制度になっております。ただ、この公害対策基本法の宣言の基本方針に基づく各法が設けられ、それぞれの各法に従って具体的な権限がこれに付随してまいる場合には、それぞれその内容に応じまして所管大臣責任を負って仕事をするという関係にあるわけでございます。
  28. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすると、この基本法は、公害対策の実質的な内容は何もない、今後、この基本法に基づいて各法律がそれぞれつくられて初めて公害処理が現実にのぼってくる、こういうことですね。
  29. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 例が悪いかもしれませんが、一種憲法のようなものでございまして、公害対策に対する国の基本方針基本姿勢でございます。この基本姿勢に沿うように具体的な法律がつくられるわけでございまして、したがいまして、たとえばこの法律に基づいて事業者公害防止の責務を負うと言ったところで、直ちに事業者公害防止措置を講じなかったら罰則を受けるというものではなくて、ここのばい煙の排出についてはこういう装置をつけなければならない——この法律を受けて各法ができ、これが具体化するわけでございます。そのような段階において権限が生じ具体的な措置が講ぜられていくということでございまして、そのうしろにある基本の態度、基本方針がこれによってきめられるわけでございまして、これそのもの具体性を持っておりませんけれども、ちょうど憲法があらゆる法律根源になっているように、公害対策のあらゆる根源がここに発していくわけでございます。
  30. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 憲法とはちょっと比較にならないと思うのですね。私は、基本法はあくまでも法律的には各法を制約することはできないと思うのです、法律的にはね。ただ、理論と申しますか、一つの共通な方針を与えるというわけです。憲法は、もちろん、これは憲法の中にはっきりと法律憲法に違反してはならないと、こうなっておりますから、そういう関係がありますけれども、この基本法の場合にはそういう関係がないということになりますと、私は、公害対策をより積極的に進めるためには、この各法を一日も早く制定をする、あるいは現在あるものをよりよくしていくということがなされなければならない。ところが、いまだもってそういうものが出てこない。この国会の中にも二、三出されておりますけれども、そういう法律あとで質問したいと思いますけれども、はたしてこの公害基本法に基づいて出されているのかどうかということも私は疑念を持つわけです。  それはまたあとにして、この法案の中で、公害対策審議会というのを今度つくる、そして厚生省公害審議会生活環境審議会に名前を変える、こういうのですね。この二つの関係はどうですか。
  31. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 従来の厚生省公害審議会というものと、今回の法律に基づきます公害審議会というものと、まぎらわしいということから、従来の厚生省におきます公害審議会生活環境審議会というように名称を変えたわけでございまして、内容の機能においては何らの変更がないわけでございます。  それでは、両者の関係はどうかと言いますと、生活環境審議会は、公害もありますが、その他一般生活環境を含めまして、人の健康を守る、国民生活環境を健全にする目標で、そういう施策厚生大臣が行なうにあたって重要な事項審議していただく審議会でございます。今回のこの公害対策基本法に基づきます公害対策審議会は、人の健康という分野のみならず、関係各省全般を総合した、国の全施策を総合した基本的な公審に対する方向、重要な事項審議する審議会でございます。
  32. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 おそらく通産省でもそういう形のものがあるのじゃないかと思うのですね。あるいは企画庁の中にそういうものがあると思う。どうも、船頭多くして舟山に登るということばがありますけれども、何か各省ごとにばらばらにこうしたものがつくられて、そしてばらばらな施策が持ち寄られる、そして公害対策会議でそれが調整をされる、こういうことになるのじゃないかと思うのですがね。これでは、私は、一つ施策を実施するに非常に時間がかかるような気がするのですよね。これは、きめこまかに施策をやっていくにはある程度必要かもしれませんけれども、しかし、まず厚生省厚生省環境基準をきめる場合に、生活環境審議会に諮問をして、まず一つの案をつくる、それを今度は公害対策会議に持っていって、そこでまた練り直すというようなことになるのではないかと思うのです。そうすると、非常に時間がかかるような気がしますがね。その点はどうですか。
  33. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 御指摘の点が、公害施策を国が一元的に行なうに際して、国の機関として公害対策会議考えていくにあたって、一つ懸念せられる点であります。そういう点を懸念して、むしろ一つの行政機関のような、国家行政組織法の中の第三条の機関のような公害委員会とか、あるいは公害防止庁とかなんとかいうような、はっきりした責任を持つ役所をつくったほうがいいのではないかという議論の際の比較検討せられる論点であろうと思います。確かに、それぞれの責任者は集まることは集まっても、なかなかきまらぬかもしれない。それらの調整に手間をとって、きまらないかもしれないという点は懸念せられる点であります。しかしまた、それぞれ各省、たとえば企業に対する各種の制約に関する措置は通産省が実施しており、自動車の機構そのものは運輸省がやっており、あるいは都市計画のような面では建設省がやっておるというような、それぞれの関連した仕事から浮き上がって一つの案を立ててみたところで、これは実施に際して、かえってそれが渋滞してしまうということもあるわけでございまして、それこれ勘案しまして、今回政府といたしましては、この形が公害対策を進めるには一番よろしい方式であるということにいたしたわけであります。ただ、問題点としては、お説のように、これでいたずらに調整に手間どって、案がまとまらない、時間がかかってしまうということは十分警戒いたしまして、それぞれ各省相互に調整をはかって、お互いに相協調して努力をしていく必要があることは十分考える必要があると思います。
  34. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 公害対策会議が、いままでの経済企画庁の中に置かれた公害対策推進会議、こういうものと私は同じようなことにならなければいいと思いますけれども、おそらく、そういうことになるのではないかというふうに私は懸念をいたします。  そこで、次に、環境基準の性格というものについてお伺いしたいのですが、結局、発生源の増加に伴って、個々の企業の排出基準というものは一そうきびしくしなければならない、そういうことになると思いますが、その点はどうですか。
  35. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お説のとおり、昭和何年何月の時点で排出基準をきめる、その時点としては、でき得る限りの科学的な資料をもとにして最善の排出基準をきめたといたしましても、その後において大気の状況が悪くなって、もっときびしくしなければならないというようなことによりまして、排出の基準を変える場合があり得るわけであります。現に、ばい煙規制法によってそういう施策を講じております。しかし、それにはおのずから限度があるわけであります。もうそれ以上きびしい規制をしたところで、もはや今日の科学の限界ではそれ以上煙突から煙をきれいにできない。なぜかというと、非常に煙突の数が多過ぎて個々のものを一つぐらいよくしたところで、とうていこの大気の環境がよくならないというときには、別途の方途を講ずる必要があるわけであります。したがいまして、環境基準を守るためには、排出基準はできるだけ近代科学の新しい方式を考えて、企業の耐え得る最高限度のものを考える必要があるわけでありまして、これも時代とともに改定をする必要もありますけれども、また、その限界を越えたものに対しましては、工場の立地制限とか、あるいは何か別の方式を考える。煙突の高さをより高くするとか、グリーンベルトをつくるとか、そういうような方法によって措置するしか、しかたがない段階もあると思います。
  36. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうような環境基準がつくられる地区は、当然、いま局長が言われたように、立地規制というものが伴うのじゃないかと思います。通産省は、今度工業立地適正化法ですか、をつくられておりますが、あるいは建設省は都市計画法の改正を考えておられますけれども、そういう中で、この環境基準と排出基準を十分考慮をしておられるのかどうかですね。これは、先ほどちょっと言いましたように、基本法に基づいてそれぞれの各法がつくられるとするならば、当然そうしたものが考慮されて法律というものがつくられなければならない、こういうふうに思うのですが、通産省おられましたらお伺いしたい。
  37. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) ただいまお話のございました工業立地適正化法というものを今度の国会に公害防止の観点からつくるべく努力いたしたのでございますけれども、残念なことに、若干関係各省との間に未調整の問題が残りまして、今度の国会には時間的に間に合わなくなりまして、他日を期したいという心組みでございます。ただ、この適正化法の原案考えておりましたのは、ただいまの環境基準というのが基本法に基づいてきめられました場合に、工場の立地規制等が行ないますときの一番大事な一つの基準といたしまして、この環境基準に適合するという範囲内での工場の立地を認めるという考え行で原案を書いておるわけであります。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 今度のいわゆるばい煙規制法が、ざる法だという反省を加えて、そして公害対策法をより積極的に進めようという一つの大きな対策でこの環境基準というものができてきたわけですね。したがって、その環境基準と排出基準という関係からすると、この立地規制というものは非常に重要になってくるわけです。それがこの公害対策会議の中で十分論議されて、その上に立って適正化法もあるいは都市計画の問題も考えられないと、通産省は通産省だけでもって通産省の考え方法案をつくる、建設省は建設省でそういう考え法案をつくっていくとなると、これはあと公害対策会議で問題になっても、そのときはすでにおそいのではないか、こういうふうに思うのですがね。そういう、まだ公害対策会議が発足をしない段階でそうしたものをつくるという場合には、一体どう政府は対処をしていこうとされるのですか。これは大臣にお聞きしたいと思います。
  39. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御案内のとおり、まだ公害対策基本法は御審議をいただいておるという過程でございまして、もちろん、公害対策会議というものが存在いたさない状態でございます。しかしながら、そういった事態におきましても、基本法はまだできておりませんけれども、公害は現実に発生しておる。基本法ができるまで待って諸般の対策をするというようなことでは、これは私は策の当を得たものではないと思います。さような意味におきまして、公害対策基本法がまだできない、また公害対策会議が存在しないというようなときにでも、これはやっぱりそれぞれ公害を発生するような事業を、仕事所管しておる各省といたしましては、通産省もむろんそうでございまして、そういったような公害を未然に防止する、あるいはできた公害を排除するといったような諸般の施策というものは考えていかなければならない。しかしながら、まだ、環境基準といったようなものだとか、会議もできておりませんけれども、しかし、そういった過程においていろいろなことが得られましたことは、今度環境基準がつくられたり、公害対策会議が組織されたりといったような場合には、これは必要に応じまして私は再検討をせられるべきものである。したがいまして、現在のすでに立法をされておりまするばい煙規制法といったようなもの、そういったようなものは、これはやはり公害対策基本法というものができまして、環境基準あるいは排出基準といったようなものが基本法に基づいて規定せられるということに相なりますれば、そういった既存のものは再検討をせられるべきものだと私は考えます。
  40. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 法律に基づいて立地規制をして、すでに工場がどんどん建てられるという段階になって、これは環境基準上おかしいから工場は操業を停止しろというようなことは、私はできない、経済の健全な発展との調和をはかるということが出てきて、環境基準というものが非常にゆるやかと申しますか、排出基準というものが、企業が守れるような段階での基準、いわゆる非常に最低限の基準がきめられてしまう、そういう懸念もするわけです。ですから、非常に、先ほど通産省は未調整であるということをちょっと言われたんですけれども、そういう調整ができないようなばらばらの対策ですね、政府公害対策、こういうところを反省して、この新しい基本法に取り組んでいくという姿勢がなければならないと思います。ところが、依然として公害行政の一元化というものが、各審議会あるいは社会保障制度審議会等でも意見として出されておりながら、まだまだ閣僚会議のような、何と申しますか、寄り合い世帯のような会議、機構をつくる、こういうことで、非常に私は残念だと思うわけでございます。そこで、この環境基準というものは、一体どういう目安でつくられるのか。いわゆる受忍限度というものを示すものとなるのかどうか、環境基準というものは。
  41. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 環境基準というものは、わかりやすく申し上げますと、行政目標というのがちょうど適当かと思います。行政目標というと、妙なあれでございますが、大気汚染につきまして例をあげますと、これ以上よごさないという一つの目標である。したがって、これから工場立地などをだんだんやっていくところは、その基準を越えないようにあらゆる施策考えていく、また、現に基準を越えているところは、それ以下に下げるためにあらゆる施策を動員して考えていく、そういう一つの目標でございます。そういう政策目標でございますから、これが直ちに、いままでそこに住んでいる人ががまんをしろという限界であるというのは必ずしも適当ではない。結果的には、なるほどそこに政策目標をおいて、それ以下にきれいにしよう、それ以下の状態に保とうとするわけでございますから、結果的には、まあそこまで下がったら、そこの住民の方々にがまんをしていただきたいというようなことになるかもしれませんけれども、そこまではがまんしなさいというつもりで、別のことばで言えば、そこまではよごしてもいいというような許された範囲であるわけではなしに、がまんをしろという限界でもない。ただ、通常受忍の限度というようなとらえ方をいたしますと、私法上の損害賠償のときに賠償の対象になるかならないか、その公害の害を与えた場合に、その害が社会通念上がまんができる範囲の害であるのか、あるいは賠償しなければならないほどの他に害を与えたかという限度の、その意味の受忍の限度ということばを、もしそういう場合に使うといたしますと、そういう意味の受忍の限度よりは、はるかに環境基準は高いものを少なくとも政策目標としては掲げたい、こういうことでございまして、その意味合いからしましても、これが住民の方々の受忍の限度であるというようには考えたくないと思っております。
  42. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 排出基準が、経済との調和をはかるということで非常に高いところで考えられると、一方では、環境基準は、いま言ったような形で、まあ健康を完全に守れる、そういう目標を立てた基準であればいいですけれども、そうでないとすれば、これは環境基準とかいうものをきめても、法の目的とする国民の健康を保護することにはならないのじゃないかと思いますが、その点はいかがですか。
  43. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 環境基準は、第一義的には健康を保護する、病人が出るようなことはしない、少なくとも大気の状態はそういう病人の出るような状態には絶対しないということを目標に基準をつくるわけでございますので、その基準がしっかり守られ、施策が行なわれれば、病人が出るようなことにならぬわけであります。問題は、その施策が、すぐさま、きょうすでにその限度を越えておるようなものがその限界まで下げられるかどうかという、時間的なズレもありましょうし、あるいは、だんだん事業の側から出てくる原因が急速に高まってきまして施策が追いつかないということで、その限界を越えるという事態がないとは申せませんけれども、基本的には、環境基準が定まり、これがしつかり守られれば、公害による病人が出るようなことがないという事態を考えております。
  44. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、それぞれの企業が排出基準を完全に守っておる、かつての環境基準のワクも越えない、そういうことをやっておりながら、なおかつ住民に被害を与えた、被害を生じたという場合の被害に対する救済の責任というのは、一体どこにあるのか。
  45. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) あらゆる場合、公害の際に被害を受けた人が生じたというときには、原則的にはその被害の根源になった害を発生した発生者が責任を負うべき筋合いであることは申すまでもないわけであります。問題は、その発生者がどこかにおるに違いないけれども、その因果関係が必ずしも明確にならないということによって、原因の追及、損害の賠償というような形で、はっきりセットできないのが現状でございますけれども、たてまえとしましては、あくまでも原因者が責任を負うべきものでございます。たとえその原因者たる者が法律によって定められた排出の基準以下の排出をいたしておりましても、結果的に、それによって損害を人に与えたということであれば、それに対する責任は負わなければならない、かように考えます。
  46. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 企業は、自分の工場は排出基準を守っておるんだから、もうそれでいわゆる免責されるんだ、いわゆる排出基準というのは免責基準になるんだ、こういうふうに主張しているんですが、この点はいかがですか。
  47. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 排出の基準は、排出を規制する法律の定めによって企業に対して行政上加えられておる制約でございまして、これが免責基準になるわけではございません。被害を与えた場合の責任は別の問題でございます。
  48. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこで、救済制度の問題も出てくるし、また、この公害防止のための技術の開発の問題も出てくるわけですね。この研究開発、こういうものについてあわせて取り組んでいかないと公害の防止の対策はできないと思うんですけれども、日本の技術の開発というものが非常におくれているわけですね。で、科学技術庁が発表した白書によりますと、三十九年度には、研究開発のための予算としては二千四百三十九億円、同じ年に民間企業は交際費として五千三百六十五億円使っているのですね。こういうことを見ると、いかに日本の企業が、そうした社会的責任というものを自覚をしないかという一つの証左にもなっているんじゃないかと私は思うのですね。もっと公害というものに、あるいはその他の技術の開発というものに真剣に取り組もうとするならば、こういう交際費に金を使うよりも、技術開発のほうに回すということがなければならないと思うのですね。きょうは、通産省のほうは、立地部長でしょう、だから関係がない部門だと思うんですけれども、そういうことを一つの問題点として私は提起をしたいわけです。  さらにまた、同じ年に民間と政府の研究開発のための予算、これを見ますと、政府が千三百七十九億円、民間支出経費の五六%ですね。研究開発の総投資額の中に占める割合は三六%でございます。これを世界の欧米各国から見ますと、欧米諸国では、政府の支出率は六〇%から七〇%を占めているわけです。そういう各国との比較から見ても、非常に日本はおくれている。政府のこの研究開発に対する熱意というものが非常に低い。それで、世界第三番目の工業国だと、こういばっておるわけでございますけれども、私は、そういう点もひとつ、この公害対策の問題として、今後積極的に取り組んでいただかなければならないんではないかと思います。  それから、そういう中で、それでは公害防止技術の研究開発に向けられた政府予算はどうかということを見ますと、四十年度を見ますと、通産省関係で十二億、厚生省関係で一億、文部省関係で五千万、合計で十三億五千万、こういう非常に低いものになっておりますね。これは総理にもあとで私は要求をしていきたいと思うんですけれども、これは厚生省に聞いてもしょうがないと思うのですけれども、厚生省としてはどういう考えを持っておられるか。あるいは通産省もおりましたら、考えを聞かしていただきたい。
  49. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害行政の進み方が過去においては非常にスローでございました。わが国の工業の発達のほうがそれよりはるかに上回っておるという事態があったわけであります。近年に至りまして、ようやく公害行政を充実しようということになったわけでありまして、国の行政機構にいたしましても、あるいは地方のこれに対する力の入れ方にいたしましても、ごくここ一、二年になってようやく充実しようという機運が出てまいったわけでありまして、お尋ねの研究の分野につきましても同様でございまして、漸次急速に充足をはかってまいっておるところでございます。厚生省としましても、本年度は飛躍的に研究費を増加いたしましたし、通産も非常な努力をしておられるように聞いておるわけでございまして、これは今後非常に努力をして充足してまいる必要があると、私どももかように考えております。
  50. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 次に、法第十八条の問題についてお伺いいたします。  特定地域の問題ですが、これは具体的にどういうところが特定地域になるのかということ、それからその地域の防止計画の基本的な方針なり施策内容というものが、もうできておるのかどうか。大体考えられておるのかどうか。たとえば、四日市なら四日市というものが特定地域として指定された場合、その四日市という町が具体的にどういうふうになるのか、そういうことをお聞きしたい。  それからもう一つは、そういう特定地域の対策として、この公害対策のためのいろいろな法律がございますが、そういう法律がどういうふうに適用され、その法律がどういうような役割りを持っていくのか。  それからもう一つは、費用の負担というのはどういうふうになるのか、一括してお伺いしたい。
  51. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この特定地域に対して特別施策をやっていくということの理由は、特にそこに集中的に総合的施策をしなければほうっておけない、こういう地域であります。公害対策を総合的に精力的に集中する必要がある、こういう地域でございまして、今日では、京浜、阪神などの地域の一部あるいは四日市などは、とりあえずこういう地区の対象といたして考えたい、かように私どもとしては思っております。そこで、かりに四日市を例にとりますと、まずその前に、環境基準が定められる必要があるわけであります。その環境基準から考えて、四日市が現在どういう地位にあるかということを考えるわけです。すでにそれを越えておるものであれば、それ以下に下げるのにはどういう手段があるか、それからもし越えようとしておる寸前であるならば、これをとめるのにはどうしたらいいか、こういうことになるわけでありまして、その場合に、先ほど来お話のございましたように、排出規制を精一っぱい努力をしたらどの程度まで防げるか、しかしそれには限度があって、それ以上防ぐには煙突の高さをもう少し伸ばすというような方法で何か手段はないか、あるいは油の使い方を変える、非常に大気汚染のひどいような時期にはもっと硫黄の少ないような油に変えるというような方法の限度はどこまでであるか、それでもなおかつ、そういう工場側の措置によってはどうしようもない、越えがたいものがある場合には、非常に汚染のひどいところには人間が住まないような緩衝地帯のようなものを設けてはどうか、さらには都市の改造をしてはどうか、というようなことを総合的に計画いたしまして、それと同時に十分な調査をして今後の見通しを立てる、そしてどの手段をどの程度までとるかということを総合的にきめる、その基本的な考え方公害対策会議できめまして、具体案は知事がきめる、こういうことになるわけでございます。その場合に、排出の規制に対しましては、ばい煙規制法を、あるいは排水による汚濁のようなものに対しましては水質保全法を適用いたしますし、もしもその法律が今日では不備でございますれば改正をいたしまして完全なものにして施行をいたします。また、都市の改造なり、工場をこれ以上ふやさないという措置を講ずる必要がございますれば都市計画法を使うなり、もしも都市計画法ではなお不十分でございまして、何らかの立地制限を必要とするということでございますれば、ただいま通産省で検討されております立地規制法のような法律を設けまして、それによって規制をする、こういうことになるわけでございます。
  52. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 費用の負担については、どういうふうになりますか。
  53. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) その場合、企業側が防止のために設ける装置は当然に企業側の負担でございますけれども、緩衝地帯を設けたり、あるいは特別な排水路を設けるというようなことで、公共事業の面でも総合対策の一環としてやる必要があるという場合には、その公共事業の中の——もちろん、これは公共事業で県なり市なりがやるわけでございますが、それぞれの公共事業の主体の地方公共団体が負担はいたしますけれども、国もこれに対して補助金を出し、あるいは企業側にも、その事業の内容の性質によりましては負担させる、その場合に、代執行のような、全く企業のための施設であれば全部を負担させる場合もございましょうし、また、多くの場合は一部を負担するというようなことにするわけでございまして、これに対しましては、今後法律のない間は協議によりましてそれぞれ納得づくで負担をしていく、現に、四日市におきましては、グリーンベルトにつきまして協議の上負担をするという措置が講ぜられておりますが、今後は、法律を設けまして、法律によって強制的に負担をはかる、こういうことになるわけでございます。
  54. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いま軽油引取税とか、あるいは石油ガス税、あるいはガソリン税とか地方道路税とか、こういう目的財源があるわけですね。こういうものは、たとえば道路整備などに使用されているわけですけれども、公害防止のために使うという方法も考えられていいじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  55. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 実は、そういう意見がございまして私どももかなりうまい方法ではなかろうかと——私どもは実は税のことはあまり専門でございませんでわかりませんが、たとえば、今日の大気汚染の大きなもとになっておりますのは石油でございます。あの石油は、たかれまして石油の中に含まれておる硫黄が亜硫酸ガスとなって慢性気管支炎を起こしたりして人を苦しめたりする、したがって、石油に何らかのそういう税のようなものをかぶせておくということができれば一番よろしい。今日、これらの輸入税の一部が、道路の整備とか、あるいは石炭の何か救済というようなものに一種目的をもって使われていると同じように、その輸入関税のような、一部が公害に使われるという方法も理論としてはあり得る。しかし、これは税制上非常に重要な問題でございまして、簡単には結論は出ないことと思いますけれども、私どもとしても、そういう議論は議論としてあり得る、公害の費用負担を、公害のための公共事業をするのに対して企業側に持たせると言いましても、これはどの範囲に持たせるか、大きいところだけに持たせるのか、公害のひどいところだけに持たせるのか、というような持たせ方も非常にむずかしいのでございますし、一般会計の中から公害の特別費用を地方公共団体が負担していくということも容易じゃないという事実もございますので、いまのような、元でかけてしまえば、いずれはこれはたかれて煙になって出てくるのであるから、平等に負担することになるので、一つの方法ではあるということで私どもも考えたことがございまして、これは今後の研究課題として考えていきたいと思っております。
  56. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 ひとつ検討していただくことにして、もう一つ。  これは、厚生省の試案の中に出しておったと思うのですが、補償基金というようなもの——これとはまた別な考え方で、たとえば企業全体が共同してこれの連帯責任を負うという立場から、この業種別なり、あるいは発生物質の別とか、いろいろこういう企業別、そういうもので基金をつくって、そうして防止計画なり救済の費用に充てるとか、そういうことも考えられるのではないかと思うのですね。これは、特に四日市あるいは水島とか、あるいは京葉地帯とか、ああいう工場地帯の密集した一つのコンビナート的な地域は、そういうことも考えて、公害防止のために企業がお互いに責任を持っていくということが非常にいいんじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、そういう点もひとつ考えていただきたいと、こういうふうに思います。  時間がないので、あと二、三点お伺いしたいのですが、この環境基準というものについて、あるいは排出基準、これは大気汚染、騒音、水質ですか、そういう三つですね。あとの、公害と言われている悪臭、それから振動、地盤沈下、こういうものは、技術的に非常にそういう基準をつくるということはむずかしいと思いますけれども、しかし、こういう悪臭の規制等についても、相当検討し、研究をし、さらに現在の、たとえばと畜場とか、へい獣処理場とか、そういうものの処理方法、あるいは構造、こういうものについても改善をしていくということをあわせてやっていかなければならない、こういうふうに思うのですけれども、こういう点はいかがですか。
  57. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今日の科学の限界では、悪臭の限度というようなものを調べる方法がなかなかむずかしいものでございますので、お尋ねのような基準、   〔委員長退席、理事石井桂君着席〕 環境の基準にいたしましても、排出の基準にいたしましても、むずかしいわけでございますが、これはでき得る限り科学的な研究調査をいたしまして、お説のように、何らか基準のようなものを設けられるように努力をしてまいりたいと思います。
  58. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 悪臭は非常にむずかしい面もあるのかもしれませんけれども、振動と地盤沈下、これは、私はできないことはないと思うのですね。たとえば神奈川県では、県の規制で振動基準というものをつくっておるわけですね。これによりますと、住居あるいは商工業などのそれぞれの用途地域ごとに一定の時間帯の振動基準をきめておるわけです。だから、こういうものは私はつくればつくれないことはないというふうに思うわけです。それから地盤沈下にしましても、年間の沈下率、あるいは沈下の最高限の地域のそうした条件というものを考えて、工業用水のくみ上げを禁止するとか、いろいろできるのじゃないかと思うのですね。こういう点について、まあこれから検討するということになるのかもしれませんけれども、しかし、せっかく公害という定義の中に含めた問題であり、しかも、現在非常にこの市民生活の中では大きな問題として起きているわけですから、これらの問題についても十分対処していただきたい、こう思います。  そこで、この水質基準の問題で、ひとつ建設省なり経済企画庁にお伺いしたいのですけれども、   〔理事石井桂君退席、委員長着席〕 建設省は、河川法の二十九条に基づいて、河川の汚濁面に対する規制というものをしよう、こういうふうに考えたようでございます。しかし、何か各省間の調整がうまくいかないというようなことだろうと思うのですけれども、今日まだその政令案というものができておらぬ。この建設省の河川の汚濁に対する規制と、経済企画庁が行なっている水質保全の対策、これとの関連は一体どういうことになるのか。川は一つですから、その川に対して、経済企画庁は経済企画庁として、建設省は建設省として、勝手にそういう規制をすべきものではないと私は思うのです。やはり政府全体が、お互いに一つの基準というか、そういう規則というものをつくって、そうして河川を本来のあらゆる用途に使えるようなものにしていくということが必要ではないかと思うのですが、その点をお伺いしたい。
  59. 松本茂

    政府委員松本茂君) 河川法二十九条を根拠規定といたしまして、それに基づきまして政令を制定して河川の清潔をはかっていきたい、こういう御意見を建設省はお持ちでございまして、この案の内容につきまして御説明を聞いたことはございます。それにつきまして、経済企画庁といたしまして、内部で目下検討いたしておるところでございますが、そのうち、たとえばじんあい、汚物の河川に対する放棄を禁止する、そういった点につきましては、経済企画庁といたしましては何ら異存のないところでございます。しかしながら、河川の水質につきましていろいろの規定を予定されておるわけでございますが、この点につきましては、一つは、同様な目的につきまして、水質保全法、それから二十九条による政令、こういうことで二元的に法体系がなっていくということは、なるべくそういったことは一本の法律によって簡素にやっていくべきである、そういう基本的な方針からいたしまして、問題が一つございます。  それからまた、同様な法律目的につきまして一つ法律制定し、法律によってやっていくということでやっておるものにつきまして、一つの法が法律根拠がございましても、政令でやっていくという点につきまして法律上の疑義があるのではなかろうか、こういった疑問点が、経済企画庁の中にも、また各省の中にもございまして、そういった点につきまして、現在より協議検討いたしておるところでございます。しかし、ここには公害を防止する基本法が提案され、審議をいろいろお願いいたしておる、こういう状況でございます。最も効率的に河川の水質の保全をはかっていくにはどういうようにやったらいいのか、そういう基本的な考え方に立ちまして、この問題を十分よく検討してまいりたいと思っております。
  60. 上妻尚志

    説明員(上妻尚志君) 実は、いま申し上げた水質保全法でいくか、あるいは河川法の政令でいくかという点が、いま政府のほうで調整を要する唯一の問題でございまして、調整をはかっている段階でございます。実は、この河川の水質汚濁の規制という問題については、非常に古い、何といいますか、歴史がございまして、現在私たちが、まあ政令の根拠とするところは、いま申し上げた河川法二十九条に、「河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、政令で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。」というこの規定を受けて政令を制定していきたい。こういう所存でございます。実は、河川法が制定になりましたのは昭和三十九年でございまして、施行されましたのが四十年の四月一日でございます。それ以前におきましては、いわゆる旧河川法という法律がございまして、それにもこれと同じような条文がございました。その際には、命令をもって規制することができるというような規定がございました。その命令は、また勅令で河川法施行規程という規定がございまして、それによって都道府県の規則でこれを規制しておった。そういういきさつがございます。それで、いままでは都道府県の規則にそういうものを定めておったわけでございますが、河川法が新河川法になると同時に、この施行規程がみな廃止になりまして、いままで都道府県の規則で規制しておったものが現在野放しになっているという実情でございます。それで、この政令を制定していきたい、こういう所存でございます。まあ、この公害基本法ができましたら、それをどの法律で実施していくかという問題は、今後各省ともお打ち合わせの上はっきりした方針をきめていきたい。こういうふうに思っております。
  61. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これは、そういう各省のなわ張りとかなんとかということでなしに、ひとつ国民的な立場に立って河川をいかに清潔にし、そしてあらゆる用途に使えるような河川にしていくかということが目的でなければならぬと思いますので、そういう点をひとつ十分配慮をしていただきたいと思います。  そこで、この水質基準の設定の条件というのは一体どういうふうになっているのか。いま申し上げましたように、本来川というのは、魚も住める、あるいは水道加水にもなる、あるいは水泳もできる、工業用水にもなると、こういう川でなければならないと思うのですね。ところが、もうすでによごれているのはしかたがないのだ、そのよごれたものをこれ以上よごさないようにするのだというような、そういう水質基準の設定の条件ではないかと、こういうふうに考えられるのですが、その点はいかがですか。
  62. 松本茂

    政府委員松本茂君) ただいま御質問の点は、現在どういうふうになっているか、こういう御質問だと思いますので、そういった点につきまして御説明してまいりたいと思います。  水質基準、工場等からの排出される水につきましての水質の基準でございますが、これを設定いたしますためには、その前提といたしまして、その流れている川、その流水の水質の基準、流水基準と略称いたしておりますが、それを制定いたしまして、そういう流水基準が維持されるためには、各工場からの排水の水質をどの程度に押さえるべきか、こういうふうに考えましてその水質基準を考えているわけでございます。ところで、この流水基準につきましては、確保すべき、守るべき利益、それからまた、これと同様なことでございますが、その水域ごとの利用目的、あるいはその汚濁の程度、それから改善の可能性、そういったことを十分勘案いたしまして、それぞれの水域の特性に応じましてその流水基準を設定していく、こういうふうにしております。それをやりまして、そしてこれを確保するために排水の水質基準を設定している。こういうふうにやっているわけでございまして、ただいま御指摘がございましたように、その水域がレクリエーションとして水泳等に使われるべきであるというところでありましたら、そういったことが可能になる程度に、また上水道の水源として使うべきところでございますれば、それに応じた流水の水質を維持する、こういったことで流水基本考え、それに応じて水質基準を設定しておる、こういうことでございます。
  63. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 もう一つ、地盤沈下の問題についてお伺いしたいんですが、最近、非常に地盤沈下が各地で起きております。政府も工業用水の規制をいたしておるわけでございますが、現存、この規制を行なっている地区はどことどこでございますか。
  64. 加納治郎

    政府委員(加納治郎君) 地盤沈下の関係でございますが、現在取り上げています地域は、東京、埼玉南部、神奈川横浜、川崎、千葉浦安、市川、船橋、名古屋市、四日市市、大阪、兵庫尼ヶ崎、西宮、それから新潟周辺、こういう地域が審議会で取り上げた地域になっております。あと、何か関連のことがありましたらお答えいたします。
  65. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そこが規制地区として指定されているわけですか。
  66. 加納治郎

    政府委員(加納治郎君) いま申し上げました地域が、工業用水法に基づく工業用水の規制に関する地区として通産省の所管事項とはなっておりますけれども、地盤沈下対策審議会が取り上げている地域がいま申し上げた地域と、こういうことでございます。
  67. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  68. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を起こして。
  69. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この際、総理に、公害対策についての基本的な問題について質問してまいりたいと思います。  その前に、もうすでにこの国会もあと数時間となっているわけです。しかも、重要法案と言われる法律案がまだ審議もされない、あるいは十分審議が尽くされない、こういう段階でございますが、この公害対策基本法案も、私はこれは政府の重要法案だと思うのですけれども、国民も大きな期待を持って監視をしていると思うんです。総理は、この国会でこの基本法案を成立さしたいというお気持ちがございましょうか。
  70. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、申すまでもなく、ぜひ成立さしたいと、心から願っておる次第でございます。ただいまも御指摘のように、あと数時間、かような状態ですが、衆議院もすでに通過して参議院に送っておるのでございますから、ぜひとも成立さしていただきたいと思います。
  71. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういう総理の決意でございますとすれば、私は総理にぜひお願いをしたいのでございますが、ぜひ、この基本法が、あるいはその他の重要法案が成立をして国民の期待にこたえられるような、総理としての立場からの国会に対する対策と申しますか、要請、あるいは自民党総裁としての立場から、この法案の取り扱いを積極的にやっていく、これは抽象的でございますが、具体的に言うならば、公害基本法衆議院の各党修正でこちらに参った。一酸化炭素中毒症患者に対する法案は参議院の四党共同修正衆議院に回っておるわけです。こういう問題を、お互いに超党派的な立場国民の健康を守るという立場から、ひとつ、あと残されたわずかな時間で成立させるような努力を払っていただきたい。こういうふうに思うんですが、いかがでしょう。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 申すまでもなく、ただいまお話しのとおり私も考えております。私が時間をいろいろ制限したりして申しわけないのですが、ただいま、あと数時間に迫っておるこの国会に、できるだけ多数の法案を成立さしたいし、ただ数ばかりじゃなく、内容の面から見ましても、重要法案をぜひ成立させ、また、それぞれの党におきまして主張しておられるそういうような問題についても、十分心して、これが成立を期する、そういう意味で、党のほうを中心にして、ただいまも督励してまいったようなわけであります。まだ数時間あるのでございますから、その間に有効適切な措置をとれば、必ず重要法案は通るだろうと思うし、ことに参議院の方が非常に熱心に修正された一酸化炭素のこの被害に対するあと始末に対しては、これは全く重要法案と、私もかように考えますので、ぜひ成立さしたいと考えております。
  73. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 今日、公害の問題は、いまさら言うまでもなく、非常に大きな問題でございますし、その原因というものが、これはあらゆるマスコミあるいはまた世間で言われておりますように、企業があまりにも政府産業優先の政策に甘えまして、企業としての社会的な責任というものが自覚がされない、そういうこと、あるいはまた、政府、地方自治体におきましても、企業の保護、生産第一主義、こういうような政治経済政策のしからしむるところから来ておるということが大きな一つの要因になっておるわけです。  そこで、総理はしばしば、経済の開発というのは人間の尊重あるいはまた社会公共の福祉に奉仕をすることが目的だ、こう言われておるわけですね。そういうことだとすれば、今日のこのような現状を見るときに、私は、現在の経済の開発というものは正常な形での経済の開発ではない、発展ではない、こう言っていいんではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいまの、たいへんむずかしいお話なんですが、とにかく、私どもが政治をやる、お互いがしあわせな、また住みいい社会をつくって、そして生活を向上させよう、こういうことを願っております。この内容を充実させ、生活の向上をはかる、そのためには、やはり産業が興こらなければできない。昔のような状態では、これはもう生活が豊富で中身が充実していかれるものではない。だから、そういう意味で、産業発展、これはやはり望まれるべきものだ。だけれども、ただいまのところ、都市化の傾向が非常に急激に出てきたし、また産業の開発も、これも自由濶達であることはしあわせであるが、そこらに計画的秩序的なものがない。そういうのが、ただいま言われる都市集中へのことと相まって非常な弊害をかもし出している。これをやはりなくしていかなければならない。  私はしばしば人間尊重ということを申したり、あるいは社会開発の必要性を説いてまいりました。ただいま言う経済開発もさることだが、やはり社会開発、それと結びついて初めてりっぱな社会ができるのだ。それが私の基本的な考えでありますから、いま柳岡君が、産業優先の社会をつくっている、こういう御指摘ですが、私は必ずしも産業優先だとは思いません。思いませんが、産業の発達、発展を願うあまり、そこらが野放図であり、これは自由濶達であることはけっこうですが、計画性を欠いてきた。それが、今日のような都市においての非常な公害が出てきた。都市ばかりじゃございません。いなかにおきましても、水銀中毒なぞは、いなかの例でございますが、そういうようなものが発生してきた。やはりこれをなくしていかなければ、真のお互いのしあわせ、幸福というものは願えない、かように思いますから、公害と積極的に取り組んでいく、こういう考え方であります。これはひとり、公害の場合に、人命尊重というだけではございません。この公害が健康を害する、生命に非常な重大な影響を与えている、そういう問題もございますが、そこまではいかないけれども、社会環境をすっかりこわしている、生活環境がすっかりこのために乱される、こういうものがしばしばあるのですね。そういう点が、これから、人命に直接関係しないが、やはり環境整備は大事なことですから、そういう意味の対策も怠らないようにしていく。公害対策として取り組む場合に、広い公害対策だと思いますが、そこで公害のかもし出す弊害から見まして、それに対する処置も、非常に強いもの、またそうでもないもの等がいろいろあるだろうと思いますし、また、国あるいは地方公共団体、さらにまた、原因者もちろんでありますが、国あるいは公共団体が公害防止についてつとめるべき役割りもあるだろうと、かように思います。やっぱり公害の態様からそれらの諸点が考えられなきゃならぬ、かように思いますが、なかなかむつかしい問題が山積しておりますし、ことにこれからの問題、これをひとつ公害が発生しないようにすること、これはひとつ、くふうしていただきたいと思うが、いままでの社会経済状態からかもし出しておる公害、そのあと始末の問題、それもなかなかたいへんな問題ですから、これから社会環境の基準をつくるとか、あるいは原因者の責任をどの辺まで原因者が責任を持つべきなのか、こういうような問題もありましょうし、処理の問題としてもたいへんな問題がある。たいへんなむつかしいポイントを包容しての公害基本法でありますから、これができ上がって、今後いろいろ具体的な問題に取り組んでさらに進めなきゃならぬ、かように私は思っております。
  75. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 総理が、社会開発ということを政治の基本というか、スローガンとして言われたのは、少なくとも、過去の経済政策が、どちらかというと、人間を無視し、人間性が疎外された経済政策の中から、一つの反省として私は出されてきたんじゃないかというふうに思うんですね。この公害対策も、私は今日の公害の現状をかもし出した、そうした企業なり、あるいは政府、地方自治体というものが、過去のそうした、あるいは現在に至る政治経済政策にきびしい批判、自己批判ですね、反省というものを、まずする、そのことが公害対策の私は出発点でなけりゃならないと思うんですよ。そういう点では、社会開発ということを一つの反省として打ち出された総理としては、この公害対策に取り組む姿勢としてはわかるのでございますけれども、まだまだ私は積極性が足りないと思うんですね。というのは、たとえば今度の公害対策基本法を見ますると、大体非常に抽象的である。しかも、いろんな具体的な実施の問題は、すべて今後の検討、あるいは別な法律にゆだねる、こういうことになっておる。総理は、先般の本会議で、りっぱな基本法だと、こう自賛をしているわけですね。一体、どこをとらえて、りっぱなと言えるのか、私はお伺いしたいわけなんです。マスコミも、世論も、この公害審議会答申から、あるいは社会保障制度審議会の意見等から比べると、非常に後退をした基本法だ、こう言われているわけですよね。悪評を買っているわけですが、いかがですか。
  76. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私は、必ずしも悪評を買っているとは思わぬです。基本法ですから、全部を網羅するわけにはいかない、かように思っております。ことに、公害と一口に申しますが、この公害というものは、何というか、多岐多様と言いますか、そういうところから考えますと、一つ法律だけで片づくものじゃない、かように思います。まあ、今後どの程度のものが考えられますか。いまだって、あるいは大気汚染、あるいは水の問題、最近考えられている飛行場付近の騒音防止、あるいはさらに石油の海水汚濁、それぞれが考えられておりますけれども、もっと、においの、臭気の問題もありましょうし、さらに振動の問題がある。まあ、そこまでいかなくとも、一般環境整備の面から見て、野鳥が来なくなるとか、あるいは木が枯れるとか、こういうような幾つもの問題がありますから、それに対する適当な立法というのは、なかなかこれは困難だと思います。これはもうよく御承知のことだと思います。
  77. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 具体的な法律で一切この基本法規定しなきゃならないということでは、私もないと思う。ただ問題は、指摘をされるのは、基本的な姿勢なんですね。経済の健全な発展調和をはかるということが、一つの問題点として国民がいま大きな疑問を抱いております。  そこで、私はここで確認をしておきたいのですけれども、総理がしばしば、経済の開発発展というのは公共の福祉に奉仕をするものだ、ということであれば、国民の健康の保護あるいは生活環境の保全というのは、そうした公共の福祉というものが前提にあって初めてこの経済との調和という解釈が成り立つ。もう一つは、国民の健康あるいは生活環境の保全というものが経済発展と矛盾をした場合、あるいは競合した場合、その場合には経済活動というのは制約を受けるのだ、こう私は理解したいと思うのですが、いかがでしょう。
  78. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 私の考えるところも、いまのお説も、同じだろうと思います。私は、政治活動あるいは経済活動と言っているのは、これはもうお互いの幸福のため、最終的にはそこへおさまらなければ、人間を疎外して経済発展だけあるという、そんなものじゃないだろう、かように私は思います。したがいまして、ずいぶん、たとえば炭鉱災害等がかもし出されて、とうとい生命を失いますが、もともと人のための経済活動、それに必要な石炭が、それが人の生命を断つ、これはもうそういうことは考えられないのじゃないかとしばしば申したのであります。そこで、保安施設というものをどうしてもりっぱなものにして、生命を奪うようなことがあってはならない。また、経済発展も、同じように、公共の福祉、さらにまた個人のしあわせにつながるもの、さように考えますから、当然それと矛盾するようなものであっては困りますね。しかし、それでは経済発展は必ず公害を引き起こすものだ、これはけしからぬのだ、こう言って経済を目のかたきにして征伐をしたら、一体どうなるのか。私ども、ただいま文明、そういう社会で生活をしているといって喜んでおる。昔のような非常な原始的な生活こそ、それは公害のない社会だろうと思いますが、そういうものは今日われわれ考えるべきじゃない。やはりこれは、進歩をし、発展し、そして文化的な生活ができる、もっと生活は向上していくのだ、だから経済発展は必要なんだ、こういうふうに私は考えております。  だから、いま問題になっておる経済との調整、調和をはかるとかいうようなことばが一応書かれておりましても、どちらが優先するのか。これはもう問題のないことなんです。人間が大事にされ、生命に関するものが優先することは、これはもう問題がございません。その議論をしておられるのだが、私はそういうふうに思っておりますから、これはもう矛盾するものではもちろんございませんが、同時に、産業一つある。その産業をやるためには、産業悪として、一つ公害が発生する。だけれども、それはがまんする、こういうのじゃないのですね。そういうものは、矛盾があれば、お互いの生命に悪影響があれば、それを科学技術の進歩で何とかくふうして、なくして、そして産業を育てていくということでなければならぬ、かように私思っております。だから、これは御議論を、御意見を伺うまでもなく、私は同じような考え方でございます。ただ、先ほど申しますように、環境整備をするという場合には、この辺はだいぶ程度の低い公害になりますが、そういう場合になってくると、いろいろのくふうのしかたがあるのじゃないかと私は思います。わざわざそんなところに住居をかまえなくてもいい場合もあるのじゃないか。その辺が、調整をはかるというようなことばが誤解を引きやすいのかもしれませんが、しかし運用においては、そういう点にも十分注意するつもりです。
  79. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 今回、基本法というものをここにつくって、公害対策に積極的に取り組んでいこうということについては、非常に私どもも賛成をいたすわけです。  ただ問題は、先ほどから言いましたように、非常に抽象的であり、すべてがあとに持ち越されているわけです。基本法だけでは公害対策はできない。したがって、私は、基本法の中に織り込むべきものは、明確に、政府、国としては国民生命を守る、公害から守る責任と義務があるということを明確にするということ、それからもう一つは、公害というものは最近経済活動が活発になって起きてきた現象ですから、いままでのような法体系、法制上では処理できない、いろいろな問題があるわけです。だから、ここで新しい概念といいますか、従来の概念とか法理とか、そういうものにはとらわれない、新しい指導理念というものを基本法の中に明確にして、あるいは政府としてはこれを明らかにしていくということが必要じゃないかと思う。たとえば、無過失責任の問題は、総理は、あるいは厚生大臣は、現在の法制上はできないと言われるけれども、しかし、公害の社会的な性格から言うと、私は、いまの法制上にとらわれないで、無過失責任というものをこの際確立する必要がある、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  80. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いまの基本法の法体系として、いろいろな、国、地方団体の責任、あるいは公害処理方法、それからのものがきまるとか、こういうこともございますが、いま御指摘になりました一番の問題は、原因者の責任です。それが無過失責任まで要求すべきではないか、これが一番大きな問題だと思います。先ほど来お話しになりましたように、法務大臣厚生大臣からもお答えをしたとおり、いまの法律のたてまえは、いわゆる責任主義というか、無過失責任の場合は格別な一、二のものだけについて無過失責任の制度をとっておりますけれども、その他は、これはもう戦後の民主主義的な行き方から見まして、いわゆる無過失責任はそう広い範囲には及んでおりません。この点は、もうこれでいいのだと思いますが、この公害問題と取り組む場合に、この原因者の責任を、場合によりますと、事柄によっては無過失な場合でもそれを問わなければならない場合もある。したがって、無過失責任のたてまえについては、おそらく厚生大臣もお答えしただろう、法務大臣もお答えしただろうと思いますが、さらに検討をする、こういうことを申したと思います。ただ検討するだけでは、どうも中身がはっきりしない。もっと公害の性質から、積極的にこういう問題も解決する方向で取り組まなければならぬと私は思います。無過失責任にいたしましても、あとの被害の状況、それの認定の方法、あるいはまた迅速にそういう処理をつける方法、これなども新しいものとしてくふうしていかなければならぬと思います。これが、基本法で一応考えている方向でございます。とにかく検討を要する問題であるという、ただそういうことばだけではなかなか納得なさらないだろうと思いますが、私は積極的に取り組むべき問題だと、かように思っております。
  81. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 もう一つの問題は、この公害行政の一元化ということが一つの問題です。公害対策会議総理が長として調整をする、こう言うのですが、私は、基本法の中で明確にこの公害対策に対する理念というものが明らかになっておれば、何も忙しい総理大臣公害対策会議に出席をして調整をする必要もないと思うのです。責任ある一つの省なりでもいいし、また新たな行政機構をつくってもいいと思うのですが、そういうものをつくって、そうして内閣としての責任体制を確立するということがこの公害対策の総合化をはかるためには必要だ、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  82. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) この公害という、これは先ほども申しましたように、その態様が非常に複雑であり、また多岐にわたっている。したがって、各行政庁からの公害に関するものだけ抽出して一つの役所を設ける、これはまずできないことじゃないかと私は思うのです。だから、言われるような一元化は当然必要ではございますが、抽出してそれだけの行政官庁をつくれ、これはたいへんむずかしいことのように思います。  そこで、いまの公害基本法ができて、公害と取り組むこれからの姿勢をはっきりする。各大臣ともそれで統一はとれると思っておりますが、しかし、なお新しく今回積極的に公害と取り組むのでございますから、各省の事務当局にいたしましても、また各大臣考え方も統一することは必要だと思います。お互いに連絡協調することがまた必要だと思います。さらにまた、扱い方が二、三になっては困るということで、積極的な協調協力、同時にまた取り扱い方が同一であるように、かように思って、連絡会議考えたのでございます。一つ考え方で、何か行政の、公害防止行政というようなものが抽出できればたいへんけっこうですが、なかなかできないですね。そこらにむずかしさがあるように思います。
  83. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 公害には、いわゆる予防、排除、救済、この三つが確立されなければ公害対策は完全でない、こう言われているわけです。その公害の予防には、多くの人々、予算というものが必要だと思うのです。先ほどもちょっと総理の来る前に論議しておったのですが、たとえば公害防止のための科学技術、いわゆる研究開発ですね、技術の。こういうものも非常に予算が少ない。外国から比べると非常に低い。こういう一つの例を見ましても、今後基本法をつくって積極的に公害対策に取り組もうとするには、これからの政府の姿勢としては相当思い切った予算の裏づけというものが必要だと思うのです。今後予算編成上、総理としてどういう考え方針を持っていかれる決意なのか、お伺いしたいわけです。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま御指摘になりましたように、これはもう科学的な、また技術的な問題があると思いますので、この研究開発、これは必要なことでありますから、むしろ民間が主になってこれはやる。たとえば柳岡君の千葉県、あそこの川崎製鉄はかつて黒い煙を吐いていたのですが、このごろ行ってみると、白い煙になっている。これは一つのくふうをこらした結果だと思う。また、石油コンビナートでございますが、いま脱硫装置をやらないようなところはなくなってきた。ずいぶん金もかかるところですが積極的に脱硫装置をやる。これで、これから起こるいわゆる四日市ぜんそくというようなものはなくなるでしょう。しかし、いまの状態だけで満足だとは言えない。さらにもっとりっぱなものをつくってほしい、こうなると思います。でありますから、そういうような研究開発にいろいろ金を使っていく。その場合の出る融資あるいはまた税のほうで免税措置をとる、いろいろくふうされると思います。また、政府自身も、こういうことに積極的に取り組めば、政府自身も研究開発に新しい道ができるんじゃないだろうかと思います。最近、農薬等の人体に及ぼす被害もずいぶん大きいですから、農薬の使用について政府も在来のようなものとはくふうをして変えていこうじゃないかというので、農林省に特に働いてもらっておりますが、この科学の点から、いろいろの問題が起こって、いままでのようでなく、よほど変わってくるだろうと思います。いままでは、とにかくこういうことに関心なしにどんどんやられたところに一つの問題があったと思いますけれども、それは農薬の例を言えば、いままでのような、非常によくきいた、今度これがあるいはきかなくなるかもしれないぞと言って心配をしておりますが、しかし、人体に悪影響がないようなもの、そういうことでやはり殺虫の目的を果たすような、そういう薬を考えなければならぬ、かように私は思っております。
  85. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 与えられた時間が来ましたので、私の質問を終わりますが、最後に、いま大気汚染の大きな原因となっている石油ですね。石油の輸入問題ですが、これは、低硫黄性の、たとえばアラスカなどの天然ガスとか、南方系の原油、こういうものを政治的に解決をすれば、政策的に行なえば、輸入ができるんじゃないかと思うのですよ。そういうこともひとつ政府としては十分考えていくことも公害対策一つの道だ、こういうふうに思います。私は、そういうところを総理として十分検討していただくと同時に、どうかひとつ、この基本法が単なるから証文に終わらないように、これにしっかりとした肉づけをしたりっぱな各法というものを、それぞれの実施法というものを早急につくっていただいて、国民の期待にこたえていただくことをお願いしたいと思います。
  86. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 原田君。
  87. 原田立

    ○原田立君 いま柳岡委員から御質問がありましたが、多少ダブる点があるだろうと思いますが、御答弁いただきたいと思います。  基本的に、公害の企業責任、特に無過失責任と、それに基づく公害修正費用あるいは損失補償の費用の負担の問題、これは、公害基本法を語るにあたっては非常に大事な問題であります。また、健康の保護と生活環境の保全は、憲法で定められた国民の大切な権利である。これを守るためには、企業活動を制限することもあるのは当然のことではないか、こう思うのであります。しかるに、今回の法案にも「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」というこの項目を第二項目に残したということは、これは一種の逃げ口上ではないか、そういうふうに思う。基本的な態度を示すべき基本法にその点を明らかにしないで、実施法の段階でそれが取り入れられるとは考えられません。経済成長を優先しているにおいが非常にある。原則だけはきちんとすべきだと思いますが、いかがですか。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま、柳岡君にずいぶん私としてはおしゃべりでお答えをいたしたのでございますが、この点は、原田君ずっと聞いていらしたからおわかりだと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。(笑声)
  89. 原田立

    ○原田立君 非常に簡単なごあいさつですが、どうもそれではなかなか納得しがたいのですが……。  次に、これは佐藤内閣の閣僚の方々が発言した中のことでお伺いするのですが、田中法相は、公害被害を人権侵犯の対象として扱い、人権侵犯の立場から最善を尽くす、こういうふうに言っております。被害者救済は急務であると思います。これに加えて、公害による事件としてその責任を明確にしなければならないと思いますが、いかがでしょう。基本法には実際に被害者の保護が全然うたわれておりません。具体的に法案提出はいつか、どういう内容にするのか、あるいはまた倉石農相は、水質汚濁による農林漁業の被害について紛争処理救済制度等に関する専門機関の整備に努力すると、こういうふうに言明しておりますが、これは公害対策会議をさしているのか、そうでないならどういうものをさすのか、具体的な内容は何か、また、これらの専門機関を今回の基本法に取り入れられなかったのはどういうわけなのか、今後のことについてお伺いしたい。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど柳岡君に申したのと、いまの原田君のは私はダブっているように思いますが、これも申し上げるまでもなく、基本法一般的なものですけれども、具体的な法律をどうしても次々につくっていかなければなりません。その具体的な法律として、いまもこの国会にも提案して、空港の近くの騒音防止だとか、あるいは石油による海水汚濁、これは防止責任を持たす法律を、立法措置をとっておりますから、こういうように、今後も引き続いてこういう具体的なものと取り組まなければ、これはただ基本法だけでは片づかないと思います。いま言われますように、これからどの程度そういう問題と取り組むか、また、いま言われておりますように、在来の考え方ならばこれは無過失責任は問わないのですが、しかし今度はそうばかりも言っておれないから、紛争処理の場合に新しい方向をやはり考えなければならぬ、これが田中法務大臣のお答えしたところのものではないかと思います。私は、新しい問題である公害と取り組む場合に、やはり法理論も在来のものと変わってくる。これは当然のことのように思っております。ことに公害で一番処理のしにくいのは、原因者が非常にはっきりしない場合、多数のものが集まって初めて公害が発生しておる、たとえば自動車の排気ガスの問題とか、こういうものはやはり運転者だけの責任じゃないだろう。やはり自動車もくふうされまして、今度は排気装置、ガスについての防止装置がなければ自動車を販売できないということも、その次には考えられるだろう。これなぞは、いままでのたてまえではあまり考えられない、そこまでは制限しないというものだったろうと思います。あるいはまた、今度のこの考え方からは、土地を幾ら持ったからといって、その利用計画といいますか、こちらのほうでそこへ工場をつくってもらってはいけない、それはひとつやめてください、こういうような使用制限の立法も、そのうちに必要になるんじゃないだろうか、かように思いますし、ずいぶん私権についての制限、拘束がこれから当然起こってこなければならない、かように私は思います。これらの点が、この立法だけでは非常に不明確だと思いますから、その他のものの整備とあわせまして、順次ただいま申し上げるような期待に沿うようなものにいたしたい、かように私は思っております。
  91. 原田立

    ○原田立君 どうも、総理のお答えは、ちょっとこれは、中途で曲がっているような感じがするのですけれども、それも時間がないので、あとをやりますが、第二十二条に、費用の分担とか、第九条に環境などについてありますが、もう少し明確なものを打ち出さないことには、個別法の制定や行政の段階などで、さらに一そうの後退をする危険性があるのじゃないか。要するに、基本法でうたっていても、実施法をきめる段階に至っては、おくれるのじゃないか、後退するのじゃないか、こういう心配をするのであります。政府は勇断をもって前向きの姿勢で当たる所信及び具体性ある内容を発表していただきたい。  なおまた、公害については、その因果関係の立証がなかなかむずかしく、結論が出しにくいことは、水俣病の事件、阿賀野川の水銀事件、あるいは富山県神通川の痛い痛い病の事件等々、経験済みであります。非常に長くかかる。だが、そうした立証ができなくても、被害が実際に起こっているのを救済するような行政的措置を早くとることが何よりも急務であり、そうした制度を至急に確立する必要があると、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) せっかくこの基本法をつくったのですから、これが後退するようなことがあってはなりません。前進は望ましいことですが、後退は絶対にしない。これは皆さん方も十分監視してもらえると思いますので、政府後退は絶対しない、前進はすることがある、かように御了承願いたい。  そこで、ただいまの、因果関係を立証することはむずかしい、非常に理解のあるお話をいただいたのですが、過去におきましても、原因者を抽出することは非常にむずかしい。原因はわかったけれども、原因者はだれかということがわからない。阿賀野川の事件などはその一つのいい例だと思います。原因はわかっておる。しかし原因者はだれかと。まだ明確でない。そこで、そういう場合に、原因者の責任を追及するだけでは、これは政府責任は果たされません。お説のように、やはりそういう事態が起これば、好もしいことではございませんけれども、救済に何よりも力をいたさなければならない。その点は御指摘のとおりでありまして、私は、この救済と、それからその原因者の責任と、これは二つに分けて処理すべきじゃないかと、かように思っております。
  93. 原田立

    ○原田立君 私は、第二点でお伺いした、その立証がむずかしくてなかなか結論が出ない、出ないけれども、実際に病気している人がある、かわいそうな人がいる、そういう人たちに具体的に手を差し伸べる問題ですね、これはそんなに数が多い問題ではありません、少ない範囲のことですから、もう少し人権尊重の面でも、あたたかい意味の配慮というものが加えられていただきたいと思うのです。  なお、先ほど柳岡委員から質問がありましたが、公害行政の一元化のための官庁機構を持つと総理は言っておりますが、公害対策会議でなく、実地に主務担当していくものがなければならない。現在、やっと厚生省公害部ができ上がりましたけれども、これを、近い将来において、局とか、ないしは庁に昇格せしめ、今後の公害増加に対してかまえるべきではないか、こう実は私は思います。先ほど柳岡委員の御質問に対して、公害の問題は抽出できない、そして専門のものをつくらないというようなお話でありましたが、国民の側に立って健康を守っていくのは、これは厚生省です。この厚生省に、やはり権威ある局なり庁なりというようなものがつくられるべきではないか、ないしはまた、各省に、各省ですね、これに、課だとか部あたりのような小さな小範囲のものでなしに、もう一歩前進をせしめて、局等のものをつくり上げていくのが至当ではないか、そうすることが、佐藤総理がいつも言う、公害に対して真剣な態度だと、こう私は思うのですが、いかがでしょう。
  94. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 原田君にお答えします。  さっきの救済と、それから原因者の責任は、区別して両方ともやるべきだというお話、お説のような意味で救済と取り組む、こういうことでございますから、誤解のないようにお願いします。  ただいまの行政機構の問題ですが、まあ公害をそこまでお考えいただくというと、これは結局、今度は公害が各役所に移ってくるのではないかと思うのですが、私はこれは、ちょっとわかりにくい表現か知らないが、役所の部局ばかりふやしたって、これは各省とも実は困るので、公害がそのほうに発展していくような気がしてならない。それで私は、いまの厚生省責任官庁としてひとつこれを取り上げよう——これはずいぶん所管省をきめるのに最初苦労したのです。しかし、やっぱり、いま言われますように、厚生省がいいのだと思って、ここにまとめたのです。それにいたしましても、各省ともそれぞれがみな関係してくれないと、りっぱなものにならない、かように思うのですから、まあ各省に部局まではみなつくらないにいたしましても、横の連絡を緊密にし、方針を明確にするという意味で連絡会議でやろう、かように考えたのであります。これから厚生省の一部ではだめだ、さらに局にしろと、こういうようなお話ですが、問題は、やっぱり仕事の量や、それらよくにらみ合わせまして、ただいま言われるように、小さな部局ではまかなえない——公害範囲は非常に多岐多様になっておりますから、おそらく役所を開いてみると、これからますます膨脹する一方だろうと思いますが、しかし、あまり役所だけふやしてもこれも能のないことですから、公害をあまり発展させないようにいたしたいものだと、かように私は考えております。
  95. 原田立

    ○原田立君 この問題に対しては、多少くどいようになりますが、先ほど舘林環境衛生局長は、厚生省各省のいわゆる世話役である、世話役という表現を使われた。こんな国の大きな問題を取り扱うのに世話役なんかで一体何ができますか。そういう意味で申し上げるわけなんです。  さらに、この基本法をほんとうに効果あらしめるために、都市計画、あるいは工場の立地計画、地域開発計画といったものに対して、もっと公害問題を重視し、これを防止するための各種の配慮がなされなければならないと思います。国も地方公共団体も企業も、いままでよりか、頭の切りかえが不可欠の問題であろうと思うのであります。そうでなければ、この基本法は、一つの、先ほどから何度も言われている、宣言ですか、一つの宣言で終わってしまう。相変らず国民は泣かねばならないし、健康上の不安にさらされ続けなければならなくなってしまいます。人間のための経済発展であることを銘記して、これらに取り組むべきであると、こう思います。今後の計画を、もっと責任ある、しっかりした計画をはっきりとさせるべきだと思うのであります。そういう意味において、今後のことについて、総理は先ほども柳岡委員にお答えありましたけれども、さらにお答えいただきたいと思います。
  96. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま原田君の言われるように、その前提はお説のとおりであります。この公害問題と真剣に取り組まなければ、私どものねらう政治の目的も果たすことができない、かように私考えております。  そこで、それならば、これから具体的にどういう問題と取り組んでいくのか、これはまあ、そのときそのときの思潮によりまして変わっていくだろうと思います。社会環境の基準にいたしましても、一つそれをとりましても、やはり時代とともにどんどん変わってまいりますから、これこれでもういいのだというようなものは絶対にないと私思っております。要は、経済発展も政治活動も全部が個人のしあわせに帰するのだ、しあわせのためにあるのだ、そこに結びつくようにこれからくふうしていかなければならないと思います。ただいまの原田君のお説、全面的に私も同感でございます。
  97. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 向井君。
  98. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、二、三点質問いたしますが、特に総理、いままでお答えありましたように、いま社会問題化している公害の問題について、今回、国民の要望にこたえてこの基本法ができることは、非常にわれわれは賛同いたしておるんでございますが、そういう意味から考えて、先ほどからお話ありましたように、この法案の中で、いわゆる十数省にわたりいろいろな関連を持っておると思いますが、そういう中で一元化するために公害対策会議なるものをつくられるわけですが、これは総理、相当強いリーダーシップをもって当たらなければ、どう考えても現在の各省のなわ張り根性というか、これは非常に強いと思うんですよ、われわれがいままで体験する中で。これを解消するためには、総理は相当決意をもって当たるべきだと思うんです。したがって、言うならば、特に強固なリーダーシップを発揮する、こういう決意がなければならぬと思います。同時に、それとあわせて、先ほどもお話がありましたように、国自体あるいは公共団体自体の参加という問題についても、相当思い切った形でこれが行なわれなければ非常に無理ではないか、基本法ができても実際実効あるいは効果があがらぬ、こういう気持ちがするわけです。こういう点について、私は、質問というよりも、総理の決意ですね、その公害対策に対する、あるいは各省に対するいわゆるリーダーシップについての決意のほどを私はお聞きしたい。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 向井君からたいへん激励を受けて、私もありがたく思いますが、この公害基本法をとにかく早く出そうじゃないかといった、そうして今日それを出し、まあ皆さんの御協力を得てでき上がろうとする、成案を得ようとしているこの段階におきまして、私はまず、責任は、提案したところからもう始まっている、かように御理解をいただきたいと思います。いままでも、この公害防止、これと積極的に取り組む問題があり、それぞれがその立場において、先ほど例にとりました脱硫装置、石油コンビナートの脱硫装置あるいは製鉄事業の特別な処置なども、こういうような意味で産業界の協力を得てきた、しかし、どうも協力だけじゃいかない、さらに積極的に政府がこういうものに指示を与えることにならなければならない。最近は、先ほどここでお話をしました自動車の排気ガス防止の施設取りつけ、そういう車がなければ今後は販売ができないようにしようじゃないか、そういうのにいろいろくふうしておる。これなども、今後こういう法律をつくって初めて責任を明確にするべきだと思います。いままで言われていた、ただ単に大気の汚染、汚濁防止、あるいは水質保全の法律だけじゃ不十分である。これがもっと具体的にそれぞれができて、もう目に見えるような、汚水の処理などもいままでは野放図に川や海へ流していたような、そういうものを今度は積極的に処理していく、そういう形に変わっていかなければならぬ、これなども、今度は積極的に、法律がありますから、そのもとにおいてこういうものと取り組んでいく、こういうようになっていくんですね。私はもう各省とも、いまやそういう方向に踏み切ったと思います。皆さん方が心配しておられることもよくわかります。かつての、しばしば言われる炭鉱災害など、もっと保全に注意したらああいう災害はないだろう、あれとまた同じようなことが公害でも繰り返されるんじゃないだろうか、こういう御心配だろうと思います。しかし、私は先ほど来申し上げましたように、これは、十二分に私の考えを表現することが私はへただからできませんが、公害基本法ができ、また具体的なものと取り組んで、そして産業も必要だ、お互いの生活を向上さす上で必要だと思いますけれども、しかし、何よりも人命に関するような場合には、これはもう産業発展も、その点では忠実に人命保護に踏み切ってもらいたい、こういうように考えております。各省の事務のとり方も、いままでとは今度は変わる、かように私期待しておりますので、厚生省自身がいわゆる産業官庁でない、そういうような意味から、いろいろお困りの点があるかもわからない。しかし、そういうものは私がうしろだてになり、また産業官庁である通産、農林等に対しましても積極的に厚生省基本的な考え方を進めていきたい、かように思いますので、これだけ議論され、また皆さんの御意見を聞き、そうしてこの方向にはみんな御賛成なんだろうと思いますし、また、それだけに今後の行政のあり方については、これはもう監視を怠れないと思いますから、皆さんから絶えず監視されておる、かように思いますので、事務当局にも積極的にせいぜい取り組んでもらうつもりでおります。
  100. 向井長年

    向井長年君 公害はあらゆる関係者が協力して絶滅をしなけりゃならぬ、まあそういうことは当然でございますけれども、いま、公害がどんどん先行しておる。そういう中で、この被害者等、あるいはまたそれに対する科学的ないわゆる研究開発、いろいろございますけれども、いまきょうここでかかっているところの法案は、どこまでもこれは基本法ですから、これによって具体的に保護政策なり規制というものは、これはおそらくほとんどないと思うのですよ、基本法ですから。したがって、これに伴って、救済あるいは規制等の立法化がおそらく早急に必要だと思います。これは直ちに次期国会にでも出す用意をしておられるか、また、それをしなければならぬと思いますが、この点についてどう考えておられますか。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) これはもう、言われるまでもなく、救済や規制について積極的に将来取り組んでいかなければなりません。まあ、それぞれ計画もされておるようであります。おそらく、いままで各大臣からお話があったんだろうと思います。これを具体的な問題として、そういうことに取り組んでまいります。
  102. 向井長年

    向井長年君 時間がございませんから、質問は終わりまして、総理に要望をしておきたいと思います。  これは先ほどから他の委員からも言われておりますが、公害は何ゆえ起こるかということ、あるいはまた、それを防ぐためにはどうすればいいか、科学的に調査あるいはまた実験等もやらなけりゃならぬと思いますが、こういう点について、科学技術の振興、試験研究あるいはまたそれに対する体制の整備拡充、こういう問題、並びに人員の養成、こういうことが必要になってくると思いますが、この点について、総理は最大の精力を注いで公害防止に当たっていただきたいということを強く要望いたしまして、終わります。
  103. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 林君。
  104. 林塩

    ○林塩君 総理にお伺いいたしますが、これ、基本法でございますので、こまかいことはなかなかできませんことはよく承知をしております。先ほどから総理の御趣旨も伺いました。いろいろ、なさらなけりゃならないことがずいぶんあると思いますが、まず第一番に、何から一番最初にしたいとお思いになるか、たくさんございましょうと思いますが、ちょっとそういう点でお聞かせいただきたいと思います。
  105. 佐藤榮作

    政府委員(佐藤榮作君) まず、まあ先ほど来言っている、現在もう公害をかもし出している、そのかもし出している公害の処置、これがまず第一の問題で、これにはずいぶん不幸な被害が出ております。人命に関するような問題が出ている。そういう人の救済にやっぱり積極的に当たらなければならない。それと、やっぱり基本的には、これから公害が起こらないように処置する、その場合の産業者の責任、あるいは国や地方公共団体のそれと取り組む態度である、かように私思っております。
  106. 林塩

    ○林塩君 それで、私も、一番先にしていただきたいことは、公害によって若しんでいる人の救済がまず第一、その次は予防であろうと思います。で、考えてみますと、産業の状態、近代の産業などを考えてみますと、すっかり公害がなくなるというようなことは期し得られないと思います。ある程度、個人個人も、その中でいかに生活していくか、そして自分の健康を守っていくかというようなことについても考えていかなくちゃなりませんと思いますが、それでもなお、基本法の精神によりますと、国は健康を守るという意味では責任があるという意味におきまして、まず病気にならないような予防というようなことが非常に大事だと思います。国民も協力をせねばなりませんが、国もまずその施策を立てていかなくてはならぬじゃないかと思います。よく、お役所仕事で、とことんまでいってしまったら何とかなるだろうというようなことがよくあります。そして、そのうちには何とかなるから、そのうちにはだれかが何とかするだろうからということで予算がつかないことがたくさんある。いまのうちにしておけばいいのに、もっととことんにならないでいいのに、という点で予防がおくれております。それから家庭も同じでございまして、お金が少なくて、予防まで、そこまで行き届かない。病気になってしまってから、まず医師を呼んで、そして高い治療費を出して、またもともとだというようなことはあり得ると思いますが、公害もやはりそういうものがあるのじゃないかと考えます。そして、予防の面について積極的に予算その他の措置、対策も必要でございます。人も要ります。それから、そういう点につきましてはどうすれば予防できるかというようなことについての研究も必要だと思いますが、この点、総理はどういうふうにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) なかなかむずかしい話をいまなされましたが、しかし、これは実際的には必要だ。だから、予算を惜しんで、けちけち使っていると、ただいまのような、いろいろ努力した割りに効果があがらない、さらにまた、よけいな予算を出すということになる。やはり制限のある、限りあるお金でございますから、そこでどうしても重点的な使用ということを考えなければなりません。それで、やはりいまの公害の問題にいたしましても、重点的な対策を立てていくということになると、いまの予算制度のもとではやむを得ないんじゃないかと私は思います。どうしても生活環境整備のほうがおくれてくるようであります。しかし、それにいたしましても、河川の汚水を処理する、隅田川を清浄にするということ、これは生活環境から見ましても一番大きな問題だと思っております。しかし、これなどもある程度成功したと言われ……。しかしながら、この辺で小成に安んじていちゃいけないと思います。積極的にもっと、せっかくこれは方向がわかって、かくかくすれば川の水はきれいになるというその方向が示されたから、各工場、企業家の協力、またさらに積極的に政府や公共団体がこの問題と取り組む、こういうことであってほしいと思います。それが、ただいま言われるように、生きていく金の使い方だ、この面に十分注意してまいりたいと思います。
  108. 林塩

    ○林塩君 今回、こういう基本法ができまして、そして各省一つになって、そして総理大臣のもとにこれが統合されるという基本法の精神は私はたいへんによいと思うのです。と言いますのは、やはり政府各省が一緒になる、それからまた、そういう対策もみんなでやっていこう、それから国民もそれに協力する、自分の健康を守ることは国民一つの責務でもあると、この基本法には書いてございますので、そういうことで、国家総動員というような形で、日本としても健康な社会をつくるためにこの基本法が役に立つように、具体的に積極的な施策を立てていただくようにお願いしたいわけでございます。  時間が終わりましたので、これで終わります。
  109. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 加藤君。
  110. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いま、林さんが予防ということをおっしゃって、私も一言伺いたいと思いますが、第十条に、「政府は、公害を防止するため、土地利用に関し、必要な規制措置を講ずるとともに、公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域について、公害の原因となる施設の設置を規制する措置を講じなければならない。」、その他、こうした予防、広い意味の予防ということについて、この中にうたっていらっしゃるわけでございます。私は、林さんの申されました個々の予防ということでなくして、これからあちらこちらで土地利用の計画が起こるときの予防ということが、これは非常に大きなスケールで予防しなければならないことでございまして、これはなかなか、一つのお役所だけでそういうような問題が起こったときにそれを規制することはむずかしい。各お役所が協同してそういう問題に同じような気持ちで熱心にやってくださらなければならない、こう考えまして、ある特定の地域につきまして、予防がほんとうにできるかできないかという一つのテストケース、モデルケースというような意味で、総理にもいろいろ御相談申し上げておるわけでございます。総理は、この精神で、大いに今後も御協力くださることだと存じますけれども、なおこうしたモデルケースを、ひとつこの基本法ができる記念として、これをひとつぜひ完成するという、そういうお気持ちがおありになるかどうか、ちょっとお伺いします。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) いま、土地の利用計画と言いますか、そういうものを立てろ、こういうものが、最近の都市再開発、都市計画法、それらでも議論になっておると思います。あるいは土地収用の場合でもこういうことが問題になる。しかし、公害の場合、公害発生を防止するという意味で、先ほども申しましたように、幾ら私有権だと言っても、これは絶対ではない、やはり規制を受けざるを得ない、実はこう申したのであります。そこで、それがただ単に、先ほどのお話でやや触れたと思いますけれども、いま加藤さんのお尋ねになるのはもっともで、明確に申し上げたほうがいいと思います。環境整備といいますか、そういう面で、もう少しわれわれも頭を使わなければいかぬのじゃないか、近代産業がかもし出したその結果、まず野鳥が来なくなる、あるいは樹木が枯れる、こういうことがある。こういうものはやはり自然そのまま保存されるのがしかるべきだと思うし、幾ら産業が発達いたしましても、やはり自然の状態を保存していく、ことに得がたい野鳥の生息地、それなどは、国自身がやはり積極的に取り組んで保存すべきじゃないか、かように思います。私は、欧州の先進国あたりの例を見ましても、こういう事柄についてなかなか敏感にそれぞれ処置をとっている、どうも日本の場合には、こういうものについての愛護ということは言われながらも、どうもやや考え方が違っている。たとえば、食用になるとか、あるいは狩猟を対象には野鳥も考えるけれども、特別な地域を指定をして野鳥の保護を積極的にやるというようなことが抜かっている、あるいは最近の経済発展から見て、何でもかんでも土地を広げていく、経済的な利用をする、こういうようなことで、都市部付近には珍しいような野鳥の生息地がつぶれていく、こういうようなことは、私はほんとうにたえられないようなことに実は思うのです。したがいまして、これは各方面に積極的に呼びかけて、少なくとも、そういう点も、公害の問題が起きた際に、人間ばかりじゃなく、広く鳥や動物、あるいは植物にまでこの範囲を広げまして、そしてその環境の整備に努力すべきじゃないか、かように私は思っております。  ただいま言われたことが、あるいは東京、ああいう付近の野鳥生息地に特別な関心を持て、こういうようなお話かと思い、ただいまお答えしたのでございますが、私もそういう点では、もっと積極的に考えるべきだと思います。
  112. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  113. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後四時十分休憩      —————・—————    午後五時二十一分開会
  114. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害対策基本法案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。原田君。
  115. 原田立

    ○原田立君 先ほど総理にもお伺いし、また柳岡委員からもいろいろ質問等がありまして、だいぶ重複する面もありますが、それはある程度割愛してまいりたいと思います。  巷間いろいろ伝えられているところによりますと、今回の基本法は、通産省あるいは業界、そういうところから非常に圧力があって、企業保護色が強くなったと、これは私の意見ではなしに、いろいろ新聞界、ジャーナリスト等、そういうふうな批評をいたしております。特に、「経済の健全な発展」ということばにどうしてもとらわれるので、そう言われてもしかたがないのではないかと、こう私思うのです。先ほど大臣は、そんなことはないのだと、国民の健康第一だというように仰せでありましたけれども、この点重ねてお伺いしたいと思います。
  116. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 総理府の連絡会議におきましては、通産省のみならず関係各省庁が集まりまして検討を加えたのでございまして、その間におきまして、それぞれの省庁は、これはそれぞれの立場がございまするから、その立場からの意見というものが出たわけでございますが、おっしゃられるように、外部の業界、財界といったようなところから圧力が加わって、その圧力に影響されたといったようなことは、これは全然私は感じておりません。そういうようなことで、いずれにいたしましても、生命、健康ということにつきましては、もういかなるものとも妥協しないで、そしてそれを保つというのが公害対策の根本の理念だと、こういうように考えております。
  117. 原田立

    ○原田立君 きのう小平委員から質問したのと、それに引き続いたようなことでありますが、各都道府県あるいは市町村に、公害課なり、いわゆる窓口を一本化していったらいいのじゃないかという意見がありました。ごみの問題はこっちの課である、あるいはまた、ばいじんの問題はこっちであると、あっちこっちと行かなくてはならない、そういうものでなしに、そういう末端行政において一つの窓口をきちんときめてあげる、そこに行けば、大気汚染にしても、あるいは騒音にしても、あるいはまた水にしても、いろいろ受け付けられる、こういうふうな機構というものがつくられなければならないじゃないか、私こう考えるのです。それで、すでに都道府県で、公害課なりあるいは部等もつくられているところもありますけれども、今後どういうふうにそれを指導をしていかれるのか、また現状は、まだ公害課あるいは公害部というようなのが地方にはほとんどできていないのではないかと思うわけです。実際、国民の相談に行くべきところがいろいろあっては迷惑するばかりでありますし、そういうふうな意味合いで、地方団体等においても一元化した窓口というものがあるべきではないか、こういうことに対して、公害の総元締めである厚生省としては、どうお考えになっておるか。
  118. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いつも申し上げますとおり、この公害というものはまことに複雑多岐なものでございまして、所管省もたくさんある、こういったようなもので、そういったような、たとえば水に関するもの、大気に関するもの、交通に関するもの、これ、数えあげますと、所管省だけでも十幾つかある。こういったようなのが公害の特色でございますから、そういったようなものを、地方庁におきまして、先ほど総理も申されておりましたけれども、公害の面だけを各省庁から抽出してきて、そうして一つの機関と申しますか、一つの窓口をつくるということは、これは、一面におきましては私は便利だと思います。そういったようなものを抽出して、被害者にとってそこへ行けばいいということは一面においては便利かと思いますけれども、それを抽出いたしまして一つの窓口なり、一つの機関なりということにいたしますと、そこではもう何か相談所みたいなことになりまして、そういったような窓口なり機関がこれを処理するということは、そういったことだけでは非常に困難になりまして、必ずや、それの一番の大もとであるところへ相談をせにゃならぬといったようなことで、相談機関になるというようなことに相なるおそれもある。そういうようなことから、実は私は、苦情処理といったようなことを、もし公害が起こった、被害が生じたといったようなときに、これは私は、地方庁でもどこでも、苦情を申し込む窓口というものは一つである、公害処理とは別に。——処理一つの窓口では私はできるものではない。苦情を申し込むのに、まるで、一つのところへ行けば、それはおれのところじゃない、向こうへ行け、向こうへ行ったら、それはおれのところじゃない、あっちに行ってくれ、といったようなことでは私は非常によろしくない、ピンポン玉みたいに……。これでは、公害の被害者にとりまして非常に私はそんなことではよろしくない。だから、苦情というものはどこか一本の機関にこれを申し入れるというようなたてまえをとるのが非常に大事なことであろうと思いますけれども、公害処理ということになりますと、なかなか、これだけ広範にして多岐なものを一つの窓口に処理さそうとしましても、困難ではなかろうかと、かように考えます。
  119. 原田立

    ○原田立君 処理の面に関しては、いま大臣が仰せになったようないろいろな困難な面があるかもしれません。苦情処理的な問題等について、それじゃ市長や町長のところに行けばいいじゃないかというようなお話ですけれども、現実に実際に被害があった場合に、調べたり、あるいは何かやるについて調査をしたりするについて、幾ら市長や町長のところに行ったからと言って、すぐそこでぱっと、はい、やりましょうというようなぐあいにいかないのが、お役所仕事じゃないかと思う。そういうようなことで、進んだところにおいては、公害課なりあるいは公害部というものが最近つくられつつあるわけです。これはもっと助長していくべきではないか、こう私は思うのですがね。
  120. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ちょっと私が申し上げたことが舌足らずであったかもしれません。私は、苦情ということについては、一本の窓口を置いて、あわせて、そこの苦情処理機関におる人間ですね、これは、地方の職員にいたしましても、何にいたしましても、その苦情には責任をもって御相談に応ずる、こういうような機関で、あっちに行け、こっちに行け、そういうようなことを言わずに、みずから苦情を受け付けまして、しかるべき機関が責任を持って相談し、当たっていく、そういったような苦情処理機関といったようなものが私は必要ではなかろうか。ただいまそこでおっしゃる公害課というものは、全国の県では、これはすでに十五ばかりできておる。こういうことでございます。
  121. 原田立

    ○原田立君 大臣も忙しいようですから、かいつまんでお伺いしたいと思うのですが、第四条には、国の責務をきめ、「公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」、こういうようにきめてありますが、この策定は各省でやるのか、総理府でやるのか、厚生省でやるのか、その点はいかがですか。また、もし各省となれば、旧来と少しも変わらない姿になるわけでありますが、この統一的把握、あるいは指導等を行なうには、いまの話と一緒になるのですが、どうしても一元的機関というものが必要ではないか、こう考えるわけなんです。それで、まず、「基本的かつ総合的な施策」という内容は一体どういうのか、どこでやられるのか、その点はいかがですか。
  122. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 第四条にきめておることでございますが、総合的な施策、「公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策」というものは、これは結局、公害対策会議でこの基本方針をきめるということになるわけでございますが、これに基づきまして、国の施策というものを、第二章の環境基準から始まりまして、それから国の具体的な施策に相なりますが、それぞれ第二章にきめておるということでございます。
  123. 原田立

    ○原田立君 第六条には住民の責務規定が入っておりますけれども、普通公害問題を議論するときは、住民は絶えず被害者の立場に立つものである。こう私は思うのです。しかるに、「公害の防止に関する施策に協力する等公害の防止に寄与するように努めなければならない。」というような協力規定が載っているわけでありますけれども、内容は一体どういうのか。どういうことをお考えになっているのか。ある人、厚生省局長、どなただったか名前は忘れましたが、住民の責務というのは、これはたとえば企業を誘致するにあたって議会できめる、議会に出る議員は住民が選出するのだから、そういうふうな意味合いにおいて住民の責務規定というのがあるのだというようなことも聞きました。そんなことはどうも筋が通らないのであります。またもう一つの面で言えば、企業があとから入ってきたと、ところが、だんだん公害が激しくなったので、そのいる場所を追い出されて、ほかの地区にいく。これは四日市なんかにある例であります。そういうような、公害が強くなってきたならば出ていきなさいと、ちょっとことばがおかしいのでありますが、そういうのが協力規定なのか。具体的にどういうことですか。
  124. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 第六条の住民の責務でございますが、たとえば、国または地方公共団体が、公害の防止、公害の予防につきましていろいろな施策をやっていく。たとえば、都市におきまして暖房で燃料を燃やす、その燃料を燃やす場合に、たとえば非常に亜硫酸ガス、一酸化炭素といったようなものを発生するといったようなものは、ひとつこの際規制をしようじゃないかといったような場合に、それに、そういった施策にひとつ住民に協力をしてもらいたい、こういうことだとか、それからまた、住民は大体において私は被害者の立場にあると思いますけれども、またこれ、加害者の立場にあるということもあるわけでありますね。たとえば、住宅の暖房をとって、そして空気をよごす、家庭暖房がですね。こういったような場合には、それぞれの住民がそれによって被害を受ける。ともに、みずからそういったような原因者になっている。それからまた、自動車に乗って走る場合に、たとえば大原町におきまして、これは住民でございます東京都民——都民に限りませんけれども、一般の不特定多数の住民と申しますか、自動車を利用する人が自動車で走る。そうすると、大原町にさしかかった場合は、その人は自動車の排気ガスによって非常な被害を受ける、その場所において。ところが、みずからも自動車の排気ガスを発生せしめている。被害者の立場であり、加害者の立場である、というような場合も考えられるわけでございますが、そういったような場合に、加害者の立場にあるその加害者としての行為ですね、そういったことをできるだけひとつ公害を少なからしめるために協力をしてもらうというようなことが、この第六条の規定だろうと思います。
  125. 原田立

    ○原田立君 ちょっと受け取りがたい御説明であります。非常に端的な、わずかなことばで、住民の責務ということをここでうたってあるわけですけれども、これは、えてして、今後公害発生の場合、住民の側にも責任があるのだというような悪用のほうに向かないように、これはぜひ考えてもらいたいと思うのです。また、深い中身の問題等については次の機会にいろいろとお伺いしたいと思います。  次に、法二十一条の二項でありますが、「負担の対象となる費用の範囲、費用を負担させる事業者範囲、各事業者に負担させる額の算出方法その他その負担に関し必要な事項については、別に法律で定める。」、これは、公害を扱う場合に、ここのところが一番大事な課題だと思うんですよ。その一番大きな課題をこの基本法ではっきりとうたわずに、別の法律で定めると、こういうのは、ここら辺が今度の公害基本法が非常に力の弱いものじゃないかと、私こう思うんです。実施の段階になったときに、また、この法をきめるのに非常にもめることでありましょうし、技術的にも容易ではないではないかと、こう思うんです。今回の法律案のときにこそ、きちんときめて入れるべきではなかったか、ここのところをどういうふうにお考えになっておられるのか、その点をお伺いしたい。
  126. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この公害基本法の構成は、すべて総括的な基本方針を示したものでございまして、個々のそれぞれの規定をこまかく規定をするという方針をとっていないわけでございます。この費用負担、公共的事業に対して事業者に費用負担をさせるという事例につきましても、基本的には公害防止のためのこういう事業に対しては企業者に持たせるというたてまえだとうたいましたが、それを具体的に持たせるためには、ここの第二項に書いてございますような、「費用の範囲、費用を負担させる事業者範囲」というような、個々法律規定すべき内容を特定いたしまして、負担区分を明らかにし、また負担割合を明確にするという必要があるわけでございまして、そのような細部にわたったことは、この基本法の範疇よりは別個の単独法によってきめる、こういうことでございまして、その意味から別の法律に譲ってあるわけで、ございます。
  127. 原田立

    ○原田立君 私は、いま局長が言われたようなことは非常にあいまいではないかと、こう思うんです。実際に今度はこの法を具体的につくりあげていくとき、必ずいろんな大きな問題が出てくると思うんですよ。それは基本法だから総括的にやるんだからと、こういうことで、ことばはおかしいですけれども、逃げるのは、この公害基本法自身を弱めていくことになりはしないか、私は強くその点を心配するんです。その点、十分含んでおいてもらいたいと思うんです。  それから次に、二十四条の二項に中小企業への助成が明記されたことは、公害対策をより効果的にしたことになって、たいへんけっこうなことであると思うんですが、この「中小企業者に対する特別な配慮がなされなければならない。」、こういうふうになっておりますが、具体的には一体どういうことをさすんですか。金融の面であるとか、あるいは税制上の措置とか、そういうふうなこと等であろうと思うんですが、内容等も御検討になったんだろうと思うんですが、具体的にお伺いしたい。
  128. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今日でも、すでに中小企業に対しては金融上特段の措置が講ぜられておるところでございまして、中小企業近代化促進法に基づきまする融資の対象といたしましては、公害施設には中小企業は無利子の融資が通産省の手によって行なわれておりますし、また、公害防止事業団の貸し付けの利率におきましても、中小企業者に対しましては、大企業よりは利率を安くいたしてあるわけでございます。そのようなことによりまして中小企業を今日は優遇するという方針をとっておりますが、ただ、公害防止事業団の金利は、そのような措置をとっておる今日といえども、なお高いわけでございまして、今日の程度では、中小企業としても公害防止施設をすることは容易でないという事態がございますので、今後とも、もしもこの改正案の線で法案を御可決いただきますれば、特段に努力を今後ともいたしてまいるつもりでございます。
  129. 原田立

    ○原田立君 いままで大体基本的なことばかり聞いてきたわけですが、それでは、具体的にいわゆる公害を是正せしめていく、絶滅していく、そのための実施法ですね。大気汚染関係でも八つ、水質関係で十三、騒音関係で五、地盤沈下等の関係で二、その他の一般的なもので二十、たいへんな法律があるわけです。この実施法について、どういうふうな手を打っていくのか。改正等していかなければならないと思うのでありますが、次の国会等でなさるのかどうか。先ほど向井委員からもちょっとその点質問がありましたけれども、所見をお伺いしたいと思います。
  130. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先ほど先生が仰せられたように、この基本法の中で、すでに別に法律をつくるということをはっきりさしておるものもございますし、基本法制定されましても、それを受けてその基本法のとおりの施策が行なわれるように個々法律がしっかり制定され、それがそのとおり実施されなければ、この基本法の役は出てこないわけになるわけでありまして、したがいまして、この基本法制定趣旨にのっとって、既存のばい煙防止法あるいは水質保全法の改正もできるだけ早急に必要となるであろうと思っておりますし、また、すでにこの基本法の精神をくんで都市計画法の改正案は出ておりますし、また先ほど話がございましたように、通産省も立地規制法案の検討をするというよりは、むしろかなり突っ込んだ研究をしておられますし、また、この法律に書いてございますように、費用負担の法律を別個にするということで、それを早急に政府としても検討いたしたいと考えておりますし、また、救済制度につきましては、これはおそらくは法律規制を必要とするというようになるのではないかと思いますので、そういう法的な準備も早急にとりかかりたい、かように思っておりますし、また、環境基準も、とりあえずは、必ずしもこれは行政方針でございますから、法律を必要とするわけではございませんけれども、法律によって基本を明らかにするという必要が検討の結果生ずれば、これまた法的な準備をいたしますし、また未規制公害として、騒音につきましては、早急にこれは準備をいたしたいと思っております。   〔委員長退席、理事柳岡秋夫君着席〕  なお、今国会に海水の油による汚濁防止の法案、あるいは飛行場の周辺の騒音防止に関する新しい法律も今国会に提出した次第でございます。
  131. 原田立

    ○原田立君 具体的に御説明がありましたばい煙規制法あるいは水質保全法等は改正しなきゃいけないだろう、あるいはまた騒音等に関しては新たに立法するというようなお話でありました。そのほか、先ほど申し上げたように、法律はたくさんあります。それでいろいろ改正に手をつけられるだろうと思いますけれども、これは各省でやることであって、厚生省がひとりでやるわけではありませんから、他の省はわからないと言えばそれまでですけれども、どういうようなものをどういう法律で直ちに手をつけてやってほしいというような、そういう要望等は各省になさったのかどうか、その点はどうでしょう。
  132. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いまの段階で、どの法律をどのような改正をお願いしたいというまでには立ち至っておりません。これは、今後環境基準がまずきめられまして、その環境基準を達成するためには現行法ではどうしようもない、総合施策考えて、どうしてもこういう法規制が必要である、あるいは従来の法律のこういう点を改正する必要があるということがまず判明してくるわけでございますので、それに応じて、それに沿った改正をする点が一点でございます。そのほか、総合施策関係のない救済というようなこと、あるいは費用の負担というような点につきましては、これは早急に私どもの手で検討してまいりたい、かように考えております。
  133. 原田立

    ○原田立君 他の省に頼む場合ですね。厚生省の意見——厚生省の意見というよりか、国民の健康保持という、そういう面に立ってのいろいろな意見等も言われるんではないかと思うんですが、仰せになりますか。
  134. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今後の公害対策基本的な総合的な重要問題は、いずれも公害対策会議審議される、検討されることになるわけでございまして、当然に、その際にそういう問題も議題として検討せられるものと、かように思っております。
  135. 原田立

    ○原田立君 もう少しこまかにお聞きしたいんですが、一つの法を改正するときに、厚生省の意見を十分聞かねばならないというような形にするのか。あるいは、厚生省の意見等を用いることを義務化するというような、そんなお考えはありませんか。
  136. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 国民の健康を保持し、国民の健康に関連する生活環境を守るということにきわめて関係の深い法律につきましては、当然に厚生省の意見を聞くということよりは、むしろ厚生大臣がやはりその所管の一端をになう必要もあるわけでございまして、また、内容によりましては、関連するという程度でございますれば、厚生大臣は意見を述べる程度でよろしいものもございますが、内容につきまして、必要に応じてそのような措置をとってまいることが必要かと思っております。
  137. 原田立

    ○原田立君 必要とかなんとかではなしに、国民の健康保持という面で厚生省の意見をきちっといれなきゃならぬというような、義務化といいますかね、そういうことは考えていないかどうか。たいへん失礼な言い方をして悪いんですけれども、通産省と厚生省といろいろ議論した場合に、いつも厚生省が負けると、こういう話を聞いております。そんなことをやっていたんじゃ、いつまでたっても、基本法はできた、だけど実際実施法について厚生省の意見が十分反映されない、いつも迷惑するのは国民ばかりだ、こういうことであっては相当ならぬと、こういう心配の上から聞くわけなんです。過日、地方行政委員会で、プロパンガス等の取り扱いについて通産省で許可したものについては消防署のほうに届け出をしなければいけない、あるいは設置する等については必ず消防署の意見を十分聞かなきゃいけないというような規定が入ったと記憶しているんです。そういうふうな意味合い等において、今後、先ほど申し上げたような、法律はたくさんありますけれども、それらに厚生省の意見というものが十分に反映される、なおそれがきちっと順守されていく、こんなふうになっていかなければ、基本法それ自体無意味になってくるんじゃないか、こう考えるのでお聞きするのです。大臣の御所見、いかがですか。
  138. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 公害問題に関しまして厚生省が通産省に対して弱い、こういうたいへん同情ある、また激励的なおことばをいただきまして、たいへん感謝をいたしております。  公害問題について厚生省の意見を聞かねばならぬとか聞くとかということよりも、私は、今度の公害対策会議というものは、もっとこれは強いものだ、法律の上で厚生省の意見を聞くとか聞かねばならぬといったようなことよりも、公害対策会議におきまして、とにかくその公害の対策が論議をされるにあたりまして、意見を聞く聞かぬとかということよりも、厚生大臣が個人的に力が弱いとか強いとか、これは別個の問題でございますけれども、私は決して、私は強いのだなんというような、そういううぬぼれは申しませんけれども、要するに、その会議において厚生省としての主張を会議体において十分主張できるということで、総理大臣がその会議の司会者であり、また、これを判断していくということに相なっておるのでございまするから、単に意見を聞くとか聞かねばならぬとかということよりも、もっと私は強く主張ができる。ただ個人的に——厚生大臣は私だけのことじゃない。将来どういう方がなるか、その個人的に強いとか弱いとかということは、これは別といたしまして、仕組みの上においては最も強く立場を主張できる、こういうことではなかろうかと思います。
  139. 向井長年

    向井長年君 関連。  大臣ね。いま、総理大臣が中心になって国防会議というのがありますな。国防会議と同じくらいに今度のこの公害基本法に基づく公害会議はなりますか。それぐらいの評価をしてよろしいですか。国防会議は、総理大臣が国防会議の議長になって、それぞれの担当大臣が加わっていろいろとこの計画を立てています。今度のこの公害基本法ができた中においてのこの会議はですよ、総理が議長になってやるというような、そのくらいの権威をもってやる。しからば、それに対する主管大臣はあくまでも厚生大臣である、こうなってまいりますね。で、国防会議の場合には主管大臣は防衛庁長官でしょう。だから、そういうかっこうになれば、いま原田委員が言われたように、産業関係で非常に問題点がありますけれども、主管大臣としてやはり強く自信を持ってやらなきゃならぬという結果になってくると思うのですけれどもね。だから、弱いとかなんとかということよりも、強くなります、強くやります、これくらい自信を持ってやるのだ、こういう決意があっていいのじゃないですか。別にそう何も遠慮しなくてもいいんですよ。いかがですか。
  140. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 現在たまたま私が厚生大臣をやっておる。で、この公害対策会議には関係各省大臣も出てくる。そこで私がどういう立場をとるかと申しますと、これはまさに被害者の立場を持っておる。で、被害者が公害を防止する、これはもう被害者といたしましては真一文字にそういう方向にいかなきゃいけない。ところが、ほかの大臣は、これは被害者の立場ではない。たとえば産業だとか、いろいろなものの立場も持っておられる。ところが、しかし、産業立場を持っておりましても、しゃにむに、もう国民の健康がどうなろうと、生命がどうなろうと、それは産業さえ進んでいきゃいいんだ、こういう立場国務大臣としては私はないと思います。しかしながら、被害者擁護という立場厚生大臣が持っております。少なくとも私は、厚生大臣といたしまして、被害者を保護する、公害を除去する、こういう立場で私は全力を尽くしてまいる、こういう覚悟でございます。
  141. 原田立

    ○原田立君 現実の多岐にわたる公害状況は、もはや事業者責任を明確にしない限り、公害は防止できない。衆議院の附帯決議で、政府は前進的に制度の整備をはかること等が要望されておりますが、具体的に事業者責任をどの程度まで考えておられるのですか。精神規定とか、宣言だけでなく、実際論で示してもらいたい。
  142. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) まず第一に、公害を出さない、公害の発生源を出さないような責任は第一の重要な責務でありまして、これにつきましては、今日でも大気汚染と水の汚染に関しましては排出の規制の整備の規定があるわけでございます。そのほか、今後におきましては、設置に関しまして規制をするというようなことによりまして事業者に対して義務を課していく。そういうことのほかに、費用の負担に関しましても、先ほどお話がございましたように、公共的な事業に対しては一定の割合の費用を持たなければならないというような規定をこれから設けていくわけであります。また今後は、救済の制度の中において、発生源となり得る事業者がやはり救済のための費用の相当な部分を負担するというような——制度の確実なところは、これはまだ検討する必要がございますけれども、おそらくはそういう方向で検討されるようになるだろうと思われるわけでございます。
  143. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ちょっと関連して。  いまの局長の御答弁関連いたしまして、私は資料をお願いしたいのでございます。それは、四日市市の大気汚染の状況につきまして、詳しく、どういうような会社がどういうような設備をそこでして、そして何年間ぐらいの間にどういうような大気汚染をしたかというような、そういうことのわかるような資料がほしいのでございます。  それからもう一つは、京葉臨海工業地帯、これは、国立図書館が出しました公害問題に関する資料の中に言われておりますところは、いま臨海地帯のたいへん大規模な埋め立てをやっておりまして、ここでいろいろたいへん大きなコンビナートを中心とする鉄鋼、石油精製、電力などの工場が将来できるというようなことが書いてあるのでございますが、もしこれらの大きな工場が操業に入りますと、そして、この地域が完成した場合の大気汚染の公害は非常に大きな規模になるであろうということが予想されている。それで、ここに出ております数字は、規模の大きいことは四日市の三倍、それから亜硫酸ガスの発生予測というようなことを見ましても四日市の六倍というようなことが予想されている。こういうことを、具体的におわかりになっていらっしゃる程度で資料として提出していただきたいのでございます。  それからもう一つ、京都市、これはまだあまり大気が現在のところは汚染されていないけれども、こういう盆地というような地形のために、将来ここで大気が汚染した場合には、これまたちょっと、ほかと違ったような大気の汚染が起こるであろう、こういうようなことが言われておりますので、それがどういうような形であらわれ、公害がここで起こるであろうということが予測されるか、そういうようなことの資料もひとつつくっていただきたい。  それから、産業公害の元祖みたいに言われております浦安事件、これは、局長が御存じの範囲で、どんなふうに発生して、どんなふうに処理されたか、もしいまおわかりでしたら、それを答弁していただきたい。おわかりでなかったら、資料として提出していただきたい。
  144. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 前段の四日市、京葉地帯の産業側の公害防止施設の実態並びにそれらの施設から発生する大気汚染の状況に関しましては、資料がございますので提出いたします。  それから、京都の盆地のような地形の今後の公害の推移に関する調査もございますので、提出いたします。  それから最後の浦安事件は、これは水の汚濁の問題でございまして、ちょっと私承知いたしておりません。おそらくは、経済企画庁か、農林省、通産省というような、これは漁業に関連する問題でございますので、そちらの関連の官庁が御承知かと思います。
  145. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは委員長、それぞれの官庁に、それぞれ資料を請求していただきたいと思います。
  146. 原田立

    ○原田立君 日本は、国土等からいって非常に地域も狭いし、また、その狭い地域に人口が約一億というような大ぜいの人がおりますし、また太平洋岸にずっと人口が集まっておる、こういう形成のときに、すなわち人口が過密であり、不備な地域計画の上に、狭くて防音、耐震の構造を持たぬ住宅に住む、これが日本の住生活の特殊事情だろうと思うのであります。国民の健康と生活を守るための規制、基準は、外国に比べて、むしろ厳格でなければバランスがとれない。日本の場合においては、むしろ外国よりも厳格でなければならぬ、こう私は思うのです。ところで、今回の法は基本法でありますが、この精神がゆるやかにされておるのではないかと非常に心配するわけですが、こういうようなゆるやかな点があっては、これはとんでもない限りであります。その点はいかがですか。
  147. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私どもは、今後の日本の発展の方向は、おそらく公害を非常に発生する源たる重化学工業がより一そう発展する、発達するに違いない、それは、すでに二十年後のわが国の将来の予測ということが各方面で言われておる内容からも、わかるわけでありまして、その予測も、すでに今日の状況から推論して想像すればどの程度の公害がこのままでいけば出るであろうかということも、かなりな確からしさで推定できるわけであります。これらの産業の発達する地域は、必ずしも日本国土どこでもいいということではなくて、産業には産業それぞれの立地条件があるわけでありまして、不幸にして、その立地条件のいい場所が日本の住宅とする場所でもあるわけでありまして、この狭い国土で世界有数の工業を発達さしていく日本の将来としては、この調整をはかることは容易なことでは実はないと私ども考えております。よほど決意をしっかりして公害防止施策を進める必要がある、かように思っておるわけでありまして、その意味合いからも、公害の各種の基準、水準というものは相当厳格なものである必要があろうと、かように思っております。今日、外国では数十年来、あるいは極端な場合は二百年以前から公害的な配慮でいろいろの社会施策が行なわれてきております。しかしながら、水準、基準という点においては、かなりゆるい現状もあるわけであります。ロサンゼルス等におきますスモッグ警報というようなものは、かなり高い水準の場合に初めて規制が行なわれるという状況でございまして、今日私どもが東京でとりつつある、わが国のばい煙防止法の指定地域でとりつつある基準から考えると、はるかに汚染がひどい状況でようやく発動されるという状況でございまして、私どもがいま念願しております環境の基準というものは、相当それらに比べればよろしい状況を頭に描いて進んでいるつもりでおるわけでありまして、御指摘のような心配のないように努力をしてまいるつもりでおります。   〔理事柳岡秋夫君退席、委員長着席〕
  148. 原田立

    ○原田立君 これはまた具体的な問題等になるのですが、第三条、第四条、第五条と、ずっと関係することでありますが、たまたま都市から隔絶した地点に建設された工場の周辺に新たに住宅街が開発された、そのときに起きた工場公害等については、都市計画あるいは都市行政の側も、無統制なその責任を免れることはできないのじゃないかと思うのです。あらかじめ工場と協議し、十分な対策を講ずることを怠った無計画の責任というものは、これは当局にあるのじゃないか。こう思うのですが、この場合、事業者の責務、国の責務、地方公共団体の責務、それは一体どういうふうになりますか。
  149. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害対策の大きな柱といたしまして、個々事業者が排出の規制のために相当な装置をするということにあるわけでありますが、それだけではどうにもならなくて、都市計画なり、何か工場の立地を考えるというようなことによらなければ解決しないものも相当あるわけであります。今日、公害がひどい地域が生じたことの原因の一つに、いま少し前からそういう土地利用なり立地なりということを配慮しておったらこのようにはならなかったと思われる事例もあるわけであります。それには、わが国の公害に対する認識が不十分であって、公害の進展が非常に急速にまいったという点もございまして、結果的には、施策必ずしもよろしきを得たわけではないという事例があるわけでございまして、その点は、今後その轍を踏まないように事前に十分配慮してまいる必要があると、かように考えております。
  150. 原田立

    ○原田立君 その事前の問題になると、第九条の第三項、「第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」と、こういう規定が入っていて、事前の調査等がなされる。この点については、確かに適宜な法の挿入であったと、こう私は思うわけでありますが、これも、先ほどから何度も言っているように、精神規定であるとか、あるいは宣言であるというようなことになれば、これは何にもならない。具体的に実施法として、どういうことをお考えになっておられるか。
  151. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) すでに数年来、この問題につきましては、厚生省と通産省と両省で協議をして、公害が起こらない配慮の指導をいたしておるわけであります。すなわち、工業特別都市、新産都市というようなところが、いよいよ具体的に工場を誘致しようというときには、まず現状を十分調査いたしまして、今日どの程度よごれておるか、それからどういう種類の工場が来る予定であるか、どこへ来る予定であるかということによりまして、気象条件、排出の濃度等を考える。場合によれば、飛行機を飛ばし、風洞実験をし、という詳細な調査をしまして、これならだいじょうぶというような計画を設定いたしましてその地元の地方公共団体を指導する。その結果、もうこれ以上このままで開発しては危険であるというものに対しては、その旨を十分警告をするというような措置を最近講じておるわけでありまして、従来は必ずしもそれが十分でなかったことを先ほど申し上げましたけれども、今日では、両者ともに相当な予算をとりましてその調査をいたし、指導をいたしておるわけでございます。
  152. 原田立

    ○原田立君 その研究機関というのは、たとえば工業科学院とかなんとかというようなものをおつくりになってやられるのか、あるいは既設の大学の教授等やなにかに委嘱してなさるのか、その他方法もおありだろうと思いますが、それはどういうことですか。
  153. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ほとんどの場合が、専門の先生の特別班をつくりまして、それによって調査をいたしております。
  154. 原田立

    ○原田立君 公害が発生した場合に、いろいろとそれを相談する、あるいはまた公害に関する特別な立法措置等も講じていかなければならない、そういうときに、この法律のほうでは、二十五条のところに公害対策会議、あるいは中央公害対策審議会、地方公害対策審議会等々がきめられておりますが、もっと末端にいった場合に、その地域の住民の代表を入れるとか、学識経験者は入っているようになっていますが、そういう地域の住民の代表を入れるというようなことをして、そして関係者の意思疎通をはかる組織が確立されるような、そんなふうにしていかなければ、ますます今後の公害は混乱していくのではないかと、こう思うのですが、その点はいかがですか。
  155. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いままでの公害のいろいろのトラブルの中に、その地域の方々が理屈以上に公害に対して心配になられるということで工場誘致がだめになったという事例が現にございます。その意味合いから、地域の住民の方々が十分納得した上でなければ今後の新しい重化学工業地帯を開発するということは非常にむずかしい事態が起こってまいっております。今後、地方におきましてそのような一大開発計画というようなものを立てる場合に、十分地域の住民の方々の意見が反映するような、そういう方々の御意見を取り上げられるような機構によって総合計画を立てるということが必要でございまして、そのために、衆議院修正によりまして、地方公害対策審議会というものが設けられることになったわけでございますが、その審議会の構成等に際しましても、それらの配慮は必要であろうかと思う次第でございます。
  156. 原田立

    ○原田立君 公害の中で、大気の汚染あるいは水質汚濁というのが、たいへん多くの人に関係することでありますが、自動車による排気ガス、これらについて、この公害責任をその発生者である自動車側が負担するというのは、これはまあ当然なことであろうと思うのですが、その車を実際使っている使用者、あるいは車をつくる製作者、あるいはその環境整備等をやっていく地方自治体等々の、この関係でありますけれども、その責任は一体どういうふうになっていくのか。「必要な措置」云々と言っておりますが、どういうふうに規定していくのか。まず自動車関係で……。
  157. 景山久

    説明員(景山久君) いま御質問の自動車の排気ガスによります大気汚染の防止の件でございますが、運輸省といたしましては、自動車から出ます排気ガス、これがなるべくきれいな状態であるようにということで、昨年の七月に自動車排気ガス試験方法を定めまして、これに基づきまして試験を実施いたしております。排気ガス中の一酸化炭素につきまして、昨年の九月から、新しいタイプの車、いわゆる新型車につきましては昨年の九月から規制をいたしております。そしてまた、在来の型式でそのまま引き続き製造いたします車、これにつきましては、本年九月までに全部きれいな状態になりますように改造をさせまして、本年の九月からの新車につきましては全部規制に適合するような状態で供給販売される、そういうふうに考えておる次第でございます。この自動車のそのもののほか、あといろいろ、それを使います上におきまして、道路関係、その他あるかと思いますが、これは私どもの所管でございませんので、そちらのほうから御答弁いただきたいと思います。
  158. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 自動車の排気ガスの問題は、ほとんど主として人体に対する影響でございますので、総合的に便宜私のほうからお答え申し上げますと、自動車の排気ガスによる人体への障害を減らす手段は、自動車の構造を変えることのみではないわけでありますが、自動車の構造を変えることにも相当問題がございます。これは運輸省のほうからお答えになられる範疇かと思いますけれども、世界的に見ましても、まだ技術開発の途上にあると申してもいいかと思います。アメリカ自身が、まだ確定的な決定版となっておるような防止装置があるとは私ども思っておりません。ましてや、ヨーロッパ、わが国におきましても、ようやく開発し始めたというところでございまして、したがいまして、その程度のものを必ず自動車につけさせる、そしてまた新しいものが改良になったら、またそれを強制的につけさせるというようなことは非常にむずかしい問題でございまして、一方においてそういうむずかしい問題があるということと、いま一つは、むしろわが国の特徴は、道路事情にある。立体交差がどうしてもできておらぬ。立体交差が十分できれば、排気ガスの問題はある程度解決するというような、そちらの面の改善の必要もあるわけでございまして、自動車の排気ガスの問題は、それらを総合して、国として今後研究して考えていきたい、かように私どもは考えておる次第でございます。
  159. 原田立

    ○原田立君 この自動車の排気ガスのことですけれども、去年でしたか、一つの装置を取りつけたらたいへんいいと、東京都庁なんかでそれをつけて、これは非常にいいんじゃないか、まあこういうふうな意見等が新聞等にも出ましたし、当委員会でも発表がありました。ところが、ことしになってから、あれはあまり効果がないんだというようなふうに意見が変わってきました。たいへん残念に思うんです。実際その効果がないものであるならば、これはいたしかたありませんけれども、例として申し上げるのはたいへんちょっとおかしいんですが、環七の付近にいる住民が、うがいをした、マスクをした、そういうふうにやって自衛手段を講じたと、こういうことが言われておりました。そうしたら、厚生政務次官ですか、新聞に発表になった、あんなことやったってだめだと。まるっきり暴論みたいな否定的なことば等がありまして、非常に地域の人々も失望したということがあります。それで、この自動車の排気ガス等について、それを、有害から少なくとも無害にしていく開発ですね、これは、現状は一体どうなっているのか、環境衛生局長は、まだあまり開発されていないんだというようなお話でありましたけれども、専門的な立場から……。
  160. 景山久

    説明員(景山久君) ただいま御質問のございました排気ガスをきれいにする装置の件でございますが、いろいろな考え方のものが、いま研究あるいは試験的に使用されております。お話のございました東京都庁でやっているというような件につきましても、私どものほうでも役所の車に何台かつけまして、いろいろなものの実用、試験と申しますか、やっておりますが、これは、使い方とか、あるいはその車との相性と申しますか、この辺のところにかなりの問題がございまして、十分な成果が必ずしも得られないで、少し使っておりますと効果がすぐに下がるというようなケースも、これはまあ、使い方いろいろございますので、一がいには申し上げられませんが、そういったような場合もかなりございます。したがいまして、この問題につきましては相当な研究開発を要する、こういうふうに考えておりまして、私どものほうでも、この七月十日に設置法の改正を御審議いただいて成立させていただきましたので、研究所のほうに交通公害部という部を設置いたしまして、目下こういった問題につきましても鋭意研究中でございます。
  161. 原田立

    ○原田立君 先ほど総理大臣にもちょっとお伺いした点だったのですが、例の痛い痛い病等、これが公害と認定されるまでに相当の期間を要している。これは戦前の問題で、いまになってもまだまだ解決してない。今後も、もしいろんな問題が起きると、そういうふうに公害という認定がおくれる事例が数多く出るんじゃないか、この点実は心配するわけです。痛い痛い病の患者も、二十数年間、骨はやわらかくなり、ぼきぼきと折れる、そういうようなことでたいへん苦しんでおる。一体こういう人たちの救済措置はどうするのか。全然なされてない。公害と認定されてないからやらないというようなことなんですが、こういう公害に対する責任の所在をできるだけ早くかつ公正に判定して、これらの問題を適正迅速に解決するための公的機関の存在があることが非常に望ましいと、こう考えるわけです。それと同時に、その損害賠償、あるいはまた救済措置等について、公害と認定されない以前においても救済措置等が行なわれなきゃならないのじゃないか、人道的に言っても。そういうことについて、環境衛生局長、どういうふうにお考えですか。二つ質問しているのですけども……。
  162. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 全国各地には、公害かもしれないというような患者が発生する事例が今後とも出てくると思います。そういう者を積極的にさがし出す、あるいは患者側の苦情を受け付けて調査に当たるというようなことを今後一つのルートに乗せてやる必要がある、その点は御指摘のとおりでございまして、今日は、多くの場合、地方衛生部局が、地方の衛生研究所等の力を借りて、場合によりましては、その地の大学あるいは研究機関の御協力を得て調査をする、その調査がむずかしくなった場合には国の協力を求める、その場合に、厚生省が直接、あるいはそれぞれ大学研究機関の専門家を委嘱して調査に当たる、こういうことをいままでやってきておるわけでございます。今後も、基本的にはその方針でまいりたい、かように思っておるわけでございまして、すなわち、総括的には国はできるだけめんどうを見ていきたい。地方で解決するものはもちろん地方で解決していただきますけれども、地方で解決のむずかしいものは国みずから調査に当たっていきたい、かように思っております。  問題は、こういう調査にあたって、まだ公害であるかどうかも明らかでないような患者の方々の救済をどうするかという問題の御質問でございますが、痛い痛い病を例にとりますと、あれは長い間、栄養失調である、非常な栄養のない、たん白質やカルシウムの非常に少ない食物をとっておったために起こったのである、ということが言われておったわけであります。そのような方々に対して救済するのかしないのか、公害という疑いが持たれたら、とたんに国なり地方公共団体が特に救済を手厚くするのかどうか、それは、筋道から言うと非常におかしいことになるわけであります。公害の発生源がわからないが、どうも公害らしいということがわかっただけで特に救済の手厚いことをするんだという筋書きは出てこないわけでありまして、地方にはいろいろ地方病がある、あるいは個人の責任においてうまくやってない、たとえば栄養失調のような病気もある、そういうものを、おしなべて国は救済制度として何を考えるかということでなければならないと思うわけであります。そういう場合に、国の今日の救済の制度としては生活保護法があるわけでありまして、それ以上に何らか特殊の救済を病人に考えていくということは、新しい制度の制定になるわけでございますので、この段階でそれをどうするかということは申し上げかねるわけでございます。ただ、これが公害、ほとんど公害に間違いないということになりますると、公害であれば、当然に公害の発生源者が責任を負うべきものである。それに対して、違法行為によって障害を起こしておれば賠償しなければならない、こういうことでございますし、それがたまたま、原因者がはっきり因果関係がつかめないというだけのために、そのまま放置されるということであれば、これに対して何らかの救済の措置も国なり地方公共団体があるいは検討したらよかろう、こういうことが出てくるわけでございまして、その考え方から、最近は、国としましても医療費の一部を研究費の形で持つ、あるいは地方公共団体が患者の医療費の自己負担分を持つという制度がようやく確立され始めてきておるわけでございまして、ただいま私が申し上げましたような考え方で今後ともにこれは整備をしてまいるべきもの、かように考えております。
  163. 原田立

    ○原田立君 公害対策は、ほとんどの場合、将来の配慮よりも、過去への対策であるというのが現実であります。過去の公害の発生事実の背後には、入り組んだ責任所在の問題があるために、結局取り残されるのが住民だということになります。ゆえに、過去に対する対策と、将来への計画、これを混同してはならない、こういうふうに思うわけであります。法の中に、公害防止計画が第二章の第四節できめられておりますが、この防止計画というのは、ある特定の地域に立てられるのか、あるいは全国的に計画されるのか、一体その点はいかがですか。
  164. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この公害防止計画と申しますのは、十八条の公害防止計画と申しますのは、かなり具体性を持った計画でございます。公害防止政策ではなくて、公害防止の具体計画でございます。したがいまして、特定の地域に対して行なうわけでございまして、公害の特にひどい地域——ここに書いてございますように、一と二と区分けをいたしまして明記いたしました。特別の場合に限って国が特に指定をして——指定という指定行為をするわけではないのですが、特に選びまして公害防止計画を立てる、そしてその線に沿って地元の知事に具体計画を立てさせる、こういうようにいたしたわけでございます。
  165. 原田立

    ○原田立君 最後に、何度もいままでも申し上げてまいりましたが、被害者に対する救済、損害補償についても、責任ある手段が明文化されていないのでありますが、これでは、救済の遅延、不完全、不履行等を黙視することになる。これは非常に重要な問題であると思うのです。第五節の中に、今回は二十一条の一項、二項等に相当すると思うのでありますが、これだけのことでは、被害を受けた、公害を受けた住民の側にとっては、まことに片手落ちな、中途半端な——こんな感じを非常に強く持つわけです。基本法だからしようがないのだと言えばそれっきりなんですが、もっとこれは具体性を帯びて入れなければならなかったのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  166. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) その点は、お説のとおりだと私は思います。公害に現にかかっておる人の救済ということも、公害対策の中では大きな部分である。現に四日市で被害を受けている人、あるいは水俣病、阿賀野川の下流の水銀中毒というように、現に苦しんでおる人々の救済制度というのは、先ほど申し上げましたように確立していない。これは、制度として何らかの救済措置を講ずべきであるということは私どもは痛感いたしておりまして、大臣からも、前々から具体的に十分検討するようにということを言われておるわけでありますが、さて、この具体策を考えることになりますと、なかなか、当面これがその制度に当たるものであるということをはっきり申し上げる段階になっていないわけでございます。ここに、今回の修正によりまして入りましたこの苦情を処理するとか、何かそういうような苦情処理、あるいは調停というような部分については、かなり具体的にも構想が浮かぶわけでございますが、被害を受けた人々の賠償にかわるべき何か生活の補給金を与えるとか、医療費を出していくという、その生活の補給金なり見舞い金なり生業資金なりを考えていくという、そこまでは出てくるわけでございますが、それでは、そのような金を、どのような形で、だれに負担をさせて集めるかという具体案になりますと、これは今後この基本法基本精神を体して私どもとしては検討してまいりたい、早急に考えてまいりたいということでございまして、この段階で、その制度はこれだということを申し上げかねるわけでございます。  先ほど、これに対しては基金のような制度はどうかというお話でございました。現に、ほかの法律にはそういう制度が設けられてあるわけでございまして、私どもとしても、それは一つ考えの中に置きまして検討してまいりたい、かように思っております。
  167. 原田立

    ○原田立君 最後に要望をしておきたいと思うのですが、これは何度も言われておる問題ですが、厚生省はひとつ国民の側に立って強力な意見等を述べていってもらいたいと思うのです。先ほど、大臣がいるところで通産省には弱いというようなことをちょっと申し上げましたけれども、失礼であったかとは思いますが、現実にそういう声が非常に多い。また当委員会においての御答弁も、ただ政治的な配慮ばかりのものではなしに、もっと国民をあたたかく見る目において、しっかり研究されたものの答弁等であってもらいたいと強く要望しておきます。
  168. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 石井君。
  169. 石井桂

    ○石井桂君 いままで各委員からいろいろ御質問がありましたので、重複しない程度で簡単に質問を申し上げます。  この法律案の定義ですが、公害の対象になるものについて私は具体的に質問いたしますから、それがなぜ公害にならないかということをまずお伺いいたします。  ある中小都市のじんあい焼却場のわきを通りますと、日常ひどい刺激性なガスが出ていることがわかります。目が痛くて、のどが痛い。それが東京の近郊の都市にあるわけです。夜行っても昼行っても、じんあい焼却場から、のどを刺激し、せきが出るような、くさいホルマリンのようなにおいが出る、これはだれも近所の人が訴えないから、放てきされておりますが、私は明らかに、こういうものは公害だと思うがどうか、まずそれをお尋ねします。
  170. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お尋ねの事例は、においの点では悪臭に該当すると思いますし、刺激的な何ものかがあるということは大気汚染でもあるということで、今回の定義に必ずしもはずれておるとは私は思いません。ただ、この公害基本法施策の対象としてとらえておりますものは、一定の広がりがあるものでございまして、そのじんあい焼却場は非常に小さなものでございまして、それに隣接する家は二軒か三軒であるというような場合でございますと、その発生源着たるたった一カ所のじんあい焼却場対二軒か三軒の人間の争いでございますから、今日の民法でさばき得る範囲でございまして、必ずしも公害基本法の公共事業とか国の施策というものを持ち出さなくても、国のそれをさばく手段はあるわけでございます。ところが、それが大きなものになりまして、近所の多数の住民が困るというような事態が起こってまいりますと、国の施策、あるいは地方の施策としてこれを取り上げる必要が起こるかもしれません。したがいまして、種類としてはこの法律の定義に入っておりますけれども、はたして施策でこれがびたりと当たるかどうかは、その事例によって異なるわけでございます。
  171. 石井桂

    ○石井桂君 この件につきましては、いま同席していらっしゃる課長さんに一応お伺いしたことがあるのですが、人口、あれは十万ぐらいの都市なんですが、その郊外でじんあいを焼くということで、何からそういう原因が出るかということを聞いたときに、このごろポリエチレンの袋がずいぶん出ていますね。あれが一緒にごみとともに入ってくるのですよ、こういうことです。そうすると、私はごみ焼き場で焼くだけが能でなくて、最近発展しているような高圧の水圧かなんかかけてプレスして埋め立てに使うとか、そういう方法はあるはずだと思うのです。そういうことを小さなうちに主務官庁で指導することこそ公害防止になるので、いま人間が少ないとか、交通をしている人が気がついて言ってくる人が少ないとかいうことで放てきしたんじゃ、指導性がちっともないと思うんだ。公害防止基本対策としては、人に言われないと発動しないようなことじゃ困る。で、そういうことはどうなのか。これは、この間もちょっと課長さんにお話ししたから、局長さんがわからなければ、課長さんに……。
  172. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私が申し上げましたのは、対策としてこの基本法に盛られておる各種の規定とかなんとかというものを用いるものは、ここに書かれてある定義のものであると申し上げたわけでありまして、それでは、ここの定義に乗らなかったものについて行政当局が何もしないかというと、別にそれは何も関係がないことでございまして、御指摘のように、行政庁が十分指導する必要がある、かように思います。お説のような、ごみは必ずしも焼くことだけがいいわけではございませんで、確かにポリエチレンのようなものがだんだんふえてまいりますと、これを焼いた場合に刺激的なガスが出てまいるわけでございます。最近、お説のように、高圧を加えてプレスいたしまして、海の底に沈めるというような案が考案されつつございます。私どもも、その成果を非常に注目いたしておるわけでございまして、十分それらのことは考慮してまいりたいと思います。
  173. 石井桂

    ○石井桂君 それでは、非常にとっぴな話ですが、昨年、わずかばかりの庭ですが、アメリカシロヒトリが非常に出まして、桜の木、ツバキの木、カキの木、水木、広葉樹が、うちの庭全部アメリカシロヒトリにやられちゃったわけです。そこで、市役所に話しても、いますぐじゃ消毒はできないというので、やむを得ず私は植木屋をつれて来て、コンプレッサーをかけて、一年に三度ぐらいやりましたか、そして、ことしも一回やりまして、ようやく退治しましたが、これはその原因者がだれだかわかりませんけれど、アメリカシロヒトリの害なんというのは、バケツに二、三ばい出るのですよ、私のようなちっぽけな庭でも。そういうものは、やっぱり公害だと思うのですがね。これは公害対策の対象にならぬですか。
  174. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 何か、アメリカシロヒトリを利用する会社がありまして、それで何かアメリカシロヒトリの体から出した体液でも取って、それで香水でもつくるというような作業がありまして、その飛ばっちりで、近所でアメリカシロヒトリが広がったというようなことでもございますれば、すなわち、人為的な原因によりまして起こりました害でございますると、公害という考え方も出てまいりますけれども、今日わが国でアメリカシロヒトリが広がっておりますのは、もとはと言えば、どこかの国から特殊な事例で入ったことではございますが、その後の広がりは、これは天然自然の天敵みたいなものでございますので、これはちょっと公害としては、別にそういう範疇で扱わないわけでございます。しかし、公害という範疇にならないからといって、別に行政当局は努力をしないということとは別の問題でございまして、今日アメリカシロヒトリの対策というのは、農林省が一生懸命に各省の協力を求めて、全国的にそのキャンペーンを展開いたしておることでございまして、これは各省これに協力するということでいま対策を実施いたしておるところでございます。
  175. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ちょっと関連。  いまの質問、たいへんおもしろい質問だと思うのでございますけれども、あのアメリカシロヒトリが出たということで、局長は、これを公害範囲に入れるかどうかということでたいへんおもしろい答弁をなさったと思いますけれども、私が聞いておりますところでは、あれはやはり公害一種として考えてもよろしいのじゃないかと思います。それは、ああいうような害虫が、あんなにえらい勢いで発生するというのは、日本の植林政策と申しますか、一つの種類の木ばかりをたくさん植えるということは、一つの種類の害虫を非常に大量に短い期間にふやす原因をつくる。もし指導がよろしきを得て、雑木林のようなものをつくって植林しておけば、そういうような害を避けることができる。こういうようなことを植物関係の学者が言っているのを私聞いているのでございます。ですから、そういうようなところは、やはりこれはおたくの関係じゃございませんです、農林省だろうと思いますけれども、そういうような行政指導というものがもっと早く研究されてなされなくちゃいけなかった。それが少しもなされていないで放任されているから、これからだんだんまたああいうのがふえていくのじゃないか。これをほうっておけば、いつでもふえて、みんなが困るのじゃないか、こういうふうに思いますから、いまの御質問の、ああいうものを公害として考えるべきだという質問を、もう少しよく検討なさる必要があるのじゃないかと思います。
  176. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回、この公害基本法の対象といたしまして一括して施策を立ててやりたいというものは、環境基準をつくるとか、排出規制をするとか、工場の立地なり土地利用の計画を立てるというような施策によって解決できるような公害を対象としておるわけでありまして、アメリカシロヒトリの環境基準と言ってみたところで、これはどうしようもないわけでありますので、アメリカシロヒトリはあれは公害だと言ってみたところで、別に、この公害基本法にはあまり関係のない問題でございまして、むしろ、別のことばで何とか害には違いないのですが、ちょうどネズミがはびこるようなものとあまり変わりがない。要するに、人間生活環境を非常におかすものでございまして、これはこの基本法公害として範疇に入らないから政府は努力しないというようなことでございますれば、これはゆゆしきことでございますが、別にこの定義に入れなくても、政府としては非常に重要な問題として取り上げて努力をすべきものと思います。
  177. 石井桂

    ○石井桂君 加藤委員の後援で、私の質問は目的を達せられるかと思ったら、同情なく局長に切り離されてしまって、まことに遺憾であります。  それでは伺いますがね。加害者がない場合に公害にならないのなら、この第二条に書いてある地盤の沈下の問題は、公害、つまり、加害者があった場合も、あるいはない場合も、地盤沈下はあります、地質的に言えば。そういうものに関しては、これは対象にならないのですか。
  178. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 自然の地盤変動によりまして地盤が沈下するものは公害ではございません。人為的な原因によりまして、地下水を取るとか、地下からガスを取るとか、そういう人間の活動によって起こった現象だけをとらえて公害といたしております。
  179. 石井桂

    ○石井桂君 それならば、東京で丸の内から江東にかけて、たしか大正九年から五十年くらいになると思います、江東地区が東京では一番沈下しており、約二メートル五十センチくらい、二階建ての一階がもぐるくらい沈下している。それから日比谷のところで一メートル半くらい沈下している。ああいうものは総じて公害ですか、公害でないのですか。
  180. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私も地盤沈下のことはあまり詳しく存じませんけれども、今日ある地帯に工業用水道が引かれております。工業用水道が引かれるゆえんのものは、一部別のものもないわけではございませんが、地下水の汲み上げをやめさせる意味合いがありまして工業用水道を引くということになっておりまして、その意味合いから、あの地盤沈下は人為的に地下水を汲み上げることによる影響が相当あるものと思うわけでございます。ただ、海岸地区でございますので、天然自然の地盤沈下は私は存じませんけれども、あるかもしれません。
  181. 石井桂

    ○石井桂君 それでは、方面を変えて、尼崎が工場地帯でどんどんもぐっています。いま、昔の煙突が海の中にみんな移っていってしまっている。そういうところは、初めは地下水を汲み上げたから公害だったろうけれども、いまその沈下がとまっている分には……。伺っておくんですが、尼崎の地盤沈下は公害ですか、公害じゃないですか。困らせているんじゃないから、知らなければ知らないと言ってくれていいんです。
  182. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 地下水汲み上げの規制を、地区によっていたしておるわけでございまして、お話の尼崎地区は規制区域になっておると存じますので、したがいまして、尼崎地区における沈下は人為的な原因に基づく沈下と思っております。
  183. 石井桂

    ○石井桂君 いまの答弁でやや納得できるんですが、必ずしも工場が水を吸い上げたからのみの原因ではないと私は思う。なぜならば、どんどん吸い上げているときも沈下しているけれども、スピードは違っても、その後も幾らかづつ沈下してしまっているという場合には、それが公害公害でないかの判定はむずかしいだろうと思う。だから、まあこの問題を、この法律が通ったときに施行する参考になればと思って質問したんですが、ついでにもう一つ。新潟の市がどんどん地盤が沈下している。あれは確かにガスを取るための公害だろうと思うが、どうですか。
  184. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 新潟につきましては、調査の結果、ガスを取ったことの影響があるように認められたように聞いております。
  185. 石井桂

    ○石井桂君 それでは、質問がほうぼうへ飛びまして、非常に混乱するだろうと思うが、昨年、東京都の夢の島からハエが何十万匹一ぺんに出たことがある。これは、あそこにごみを捨てるからなんですが、これは公害ですか、公害じゃないですか。
  186. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 何が公害であるかというようなことは、辞林を引いても、あまりはっきりしないわけでございまして、公害として行政の対象としていくかどうかということが、公害範囲をきめることに意味があると思うわけでございます。そこで、お尋ねの、夢の島から非常にハエがたくさん出てきて、それが周囲の町に浸入して害をなすということは、少くとも当然に東京都の施策として精力的に努力をし、駆除すべきものでございますので、そういう意味合いから言えば、これは公害であるかどうか、ちょっとそういう虫が飛んでくる害——虫害といいますか、虫害には違いないですけれども、そういうものを公害と言うか言わないか、基本法の対象ではございません。ただ、そのにおいが非常に悪いのが周囲に飛んでくれば、これは悪臭でございますから、この公害基本法の対象でございますけれども、ハエが飛んでくるというのは、この定義の中にはないわけでございます。しかし、定義にないから東京都は何もしないというわけじゃなくて、御承知のように、あれは土をかけてハエが発生しないように駆除いたしたわけでございますから、別にこの中へ入らないから対策をしないというわけじゃございませんけれども、ハエが出てくるのを公害であるというような、そういう公害には違いないとも思いますけれども、あまりそういう表現を使っておりません。
  187. 石井桂

    ○石井桂君 ただいまの質問は、都民の人が、夢の島のごみの上で発生したきたないハエが、ばい菌を持ったハエが、こっちの何というか、どこかへ飛んでいって、食物にたかったりなにかするものだから、場合たよると病気を伝染するかもしらぬ、それが百匹や二百匹ならいいですけれども、テーブルの上の、食卓をまつ黒にするほどたかるようになっているのですね。それが公害でないとは、普通の常識からいうと、いかに局長さんのことばでも、これは公害だと私は思うのですがね。法律的には公害でないのですか、この基本法によると。
  188. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この基本法の第二条の定義の中にはないということを申し上げたわけでございまして、定義の中にないと申し上げても、公害的、すなわち世の中に非常に害を流す現象であるとして行政庁が対策を立てないというわけじゃないわけでございます。すなわち、いまのお尋ねの夢の島からハエが出てくるものを公害だと言ってみたところで、あるいは公害でないと言ってみたところで、何の変わりもないわけでございまして、公害であると言おうが、ないと言おうが、周囲の人に害を及ぼしておるのでございますから、行政庁は対策を立てなきゃならぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  189. 大倉精一

    ○大倉精一君 それは並行線になると思うのだが、私がお尋ねしたいことは、基本法に書いてある公害という定義というものは、将来変化はないのですか。これはずっと、いろいろな現象が起こってきて、そしてこれは当然公害基本法の定義の中に入れなきゃならぬという、そういう現象なり、あるいはそういう認識が出た場合には、この法案というもののやはり公害は変わるという、そういうこともあるのですね。
  190. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 原則的には、おっしゃるとおりでございますが、(「形容詞は要らぬから」と呼ぶ者あり)なぜ私がそう申し上げるかといいますと、この基本法でとらえた公害に対する対策の手法が、環境基準とか、排出の規制とか、立地の規制とか、そういうような手法によって対策を立てるものをここに集約してあるわけであります。すなわち、そういうような公共的な広汎な施策をもって対処するものをここに特に取り上げてあるわけでございまして、このような手法を用いないで施策を立てるもの、たとえば日照、何かによって日かげになるとか、あるいは電波障害であるとかというような、別個に公害と言われるものがあるわけでございまして、そういうものをここへ入れてみたところで、別にここに載せてあるような施策がそのまま適用にならないわけでございますので、何か将来、そういう種類の、この公害基本法のような施策を適用するのに適当なものが生じました暁において、当然にこの中に加えていくことになると思います。
  191. 石井桂

    ○石井桂君 あと、二つばかりお聞きしたいんですが、十二条に「緩衝地帯」というのがあるのですが、これはどういうものですか、具体的に……。
  192. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 石井先生の御専門のほうの分野のことでございますが、工場地帯と住宅地帯との中間地帯でございまして、その地帯に住宅がありますと、相当濃厚な汚染物質がまいりまして、何か障害を受けるおそれがあるというような地帯に対しまして、グリーン・ベルトのような緩衝地帯を設けまして、それを公園のような形にするか、あるいは厚生福利施設のようなものを設けるか、いたしまして、住宅地帯でないものにするという目的のためのものでございまして、現に、千葉県の市原市及び四日市市におきまして、公害防止事業団の事業によりまして現在建設中でございます。
  193. 石井桂

    ○石井桂君 その問題はわかりましたが、それでは、その前の十一条で、「土地利用及び施設の設置に関する規制」というのがあります。工場が非常にこの問題で迷惑を及ぼしているから、どこかへ移転する、あるいは移転したいという希望が、工場自身にもあり、まわりの人にもあるという場合に、この基本法はどういうふうな法律効果があるのですか。どういうふうな働きをしますか。
  194. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いまお尋ねの場合は、工場側が、近所の人にも迷惑だし、いろいろ言われるから自分自身でどこかへ移りたいというようなときのことのようでございます。その場合には、別に強制権を事業場に発動する必要はないので、事業場自身が、すでにどこかへ退散したい、こういうことでございますので、残るところは、そのようなものに対しまして何らか助成のような、それを促進させるような政策をどこかでとっていくことが必要である、こういうことでございます。今日、そのような場合に、公害防止事業団が主要な事業の一つといたしまして工場団地をつくるとか、あるいは総合的な工場アパートをつくるというようなことをいたしておるわけでございまして、企業に対する助成という形でそれを処置しておるわけでございます。
  195. 石井桂

    ○石井桂君 それでは最後に、これはもうすでにこの委員会で質問が出たかと思いますが、東京都下の各都市、府中市とか調布市、それから三鷹市とか、あすこらの下水が、おそらく終末が多摩川へいくようになっていると思うのです。ところが、その前に、各都市で、そのままいかないで途中から何かで浄化するようになっているんだと思うのですが、それが各都市に完備していない状態だと思います。そうすると、何十万か何百万かのお便所から出るもの、勝手から出るものを放置しておくと、非常な大きな公害が出るだろうと思う。それが多摩川へいくとすれば多摩川が汚染する。こういうものに対して、この基本法をどういうふうに働かせるつもりですか。
  196. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お説のとおり、たとえば多摩川を例にとりますと、多摩川の汚染の半分は企業工場排水の影響でございますが、半分は家庭汚水の影響でございます。したがいまして、都市公害といいますか、そういう面の努力をしなければ、幾ら企業だけを責めてみても改善しない分野もあるわけでございまして、そのためには、下水道を十分完備するか、あるいはそれまでの間、必要でございますれば、ふん尿を処理する処理場の完備が必要でございますが、遺憾ながら、東京都下はその点においてまだ不十分でございまして、政府としても努力しなければなりませんし、それぞれの市町村も努力をしていただく必要があるわけであります。ところが、この問題は、実際上はややむずかしい問題を含んでおりますので、困るのは下流でございます。ちょうど、淀川をよこすのは京都でございまして、被害を受けるのは、それから水をとっておる大阪であります。そういう点で利害が一致しないということで、上流の努力の程度が、どうも下流の意欲、希望と必ずしもマッチしないということで、その意味合いから、京都の下水に対しましては国が特段の補助率を上げて、その促進をはかっておるわけでございます。その意味合いから、やはり特にこういう公害に影響のあるような地域に対しましては、特別の下水道のような、広域の下水道のようなものをつくりまして、それを促進してまいるというようなことをする必要があるわけでございます。で、これに関しまする条文は、今度改正になりました前の政府の提案いたしました第十一条、今度の第十二条に、「下水道その他公害の防止に資する公共施設の整備の事業を推進する措置を講じなければならない。」、こう書いてございます。
  197. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 木村君。
  198. 木村睦男

    ○木村睦男君 地盤沈下で先ほどお話がありましたので、一つだけお聞きしたいのは、人工による地盤沈下は本法の適用を受ける公害だと、こういうことなんでしょう。そうすると、自然現象と人工とコンバインして地盤沈下した場合に、ちょっとでもそこに人工的な原因があれば、それを本法の対象の地盤沈下と見るかどうかという問題ですね、あるいは人工と自然の度合いによって、どこかで線を引く考え方なのかということが一点。  それからもう一つは、今度は、その公害の対策としていろいろ国なり地方公共団体なりが施策をする場合に、その度合いによって、施策の度合いに濃淡があるかどうか、この二点をちょっとお聞きしたい。
  199. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) その問題につきましては、経済企画庁に地盤沈下対策審議会がございます。その審議会の御意見を反映してきめてまいりたいと思います。
  200. 木村睦男

    ○木村睦男君 それはそれでいいのですがね。企画庁のその判断が、この地盤沈下は両方の原因だという判断が出た場合には、どうするのですか。
  201. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) その場合には、この法律に基づく公害の対象として考えていくのが当然かと思います。
  202. 木村睦男

    ○木村睦男君 じゃ、結論として、ちょっとでも人工が作用しておるということになれば本法の対象になると、こう考えていいわけですね。
  203. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そのちょっどの程度でございますけれども、そういう影響があるということがわかれば、当然にこの法律の対象として考えていくことは妥当だと思います。     —————————————
  204. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 委員異動について御報告いたします。  本日、林塩君が委員を辞任され、その補欠として山高しげり君が選任されました。  暫時休憩いたします。    午後七時八分休憩      —————・—————    午後九時二十分開会
  205. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を再開いたします。  公害対策基本法案(閣法第一二八号)を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。  別に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  207. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表して、公害対策基本法案について反対の討論をいたしたいと思います。  反対理由の第一は、公害対策基本的な姿勢に非常なあいまいさがあることであります。  公害審議会答申を無視して、経済の健全な発展との調和をはかるということがつけ加えられたことは、明らかに政府産業優先の基本的な性格を表明しているものと思うのであります。公害の問題というのは、今日、経済発展をあまりにも重視をし過ぎたことから生じているのであって、したがって、基本法の中では、国民の健康、生命というものを公害から守るという、そのことだけを明確にすべきものであろうと私は思うのであります。したがって、その基本姿勢は、人権尊重、国民の健康を確保するということを何よりも優先させるということでなければならないと思います。  反対の第二は、公害責任が不明確であることであります。  法案は一応発生者責任主義を貫いておりますけれども、具体的な補償の責任とか、あるいは防止事業に対する費用の負担、そういうものについては一切今後の検討なり別の法律にゆだねているのであります。公害というものが、先ほど申し上げましたように企業活動の結果から生じてくることは明らかであって、因果関係がある程度不明確であってもこの際公害という社会的性格の中におきましては、無過失責任の原則を確立をすべきであろうと思うのであります。  その第三は、救済制度が確立をされていないということであります。  今日、公害の中で、泣き寝入りや、あるいは不当な示談に甘んじている国民を、公害の紛争から守っていくためには、公害の被害から守っていくためには、紛争の和解、仲裁の制度あるいは調停の制度を設ける、そして被害者の申し立てによって、公害発生源に対する施設の改善命令とか行政処分の行使、さらには苦情受付の窓口の一元化、こういうようなもろもろの被害者の救済の措置というものを徹底的に行なう必要があると思うのであります。本法案は、こういう救済制度についても別の法律にゆだねて、いまもってその大綱さえも明らかにされていないのであります。  その第四は、公害審議会あるいは社会保障制度審議会等、あるいはまた一般国民の要求においても、公害行政の総合的な、統一的な、積極的な施策を実施するために、行政の一元化ということが強く要請をされているわけでございますが、今回の法案の中では、いままでのような公害対策推進連絡協議会、こういうようなものとほとんど変わらないような性格を持った機構をもってこの公害対策に当たる、こういうことでございますが、これでは、ほんとうに基本法というものを制定をして、これから積極的に国民の健康と生活を守っていこうという観点からすると、非常に疑義を感ずると申しますか、不安を感ずるものでございます。私どもは、あくまでも強力な一元的な行政を進めるための行政機構というものを強く要求するものであります。  以上四点にわたって、おもな反対の理由を申し上げ、社会党を代表しての反対討論にかえたいと思います。
  208. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議こざいませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  公害対策基本法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  210. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  211. 宮崎正雄

    宮崎正雄君 ただいま可決されました公害対策基本法案について、各派の御了承を得まして、附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    公害対策基本法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行にあたり、次の事項につい  て遺憾なきを期せられたい。  一 本法の各条項を具体化する施策の実施を急   ぐこと。  二 右の施策においては、国民の健康を第一義   とする本法制定趣旨にかんがみ、生活環境   の保全に特に留意すること。  三 公害原因者についての無過失賠償責任に関   しその法制の整備に努力するとともに、公害   によって生ずる被害に対する紛争処理整制度   及び救済制度の整備に努めること。  四 公害の予防及び防去のための技術開発につ   いて、国の研究体制を拡充するとともに、地   方公共団体、民間研究機関に対する助成措置   の強化に努めること。  五 法令に基づく事業等の許認可にあたって   は、公害防止の観点から充分な配慮がなされ   るよう制度又は運用について検討を行なうこ   と。  六 公害行政の一元的運営については、さらに   検討を加え、改善を図ること。   右決議する。  以上であります。何とぞ御賛成くださいますよう、お願いいたします。
  212. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいま述べられました宮崎君提出の附帯決議案を議題といたします。  宮崎君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  213. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、宮崎君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、坊厚生大臣から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。
  214. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 政府としては、ただいまの附帯決議を尊重し、公害対策推進にさらに努力を重ねてまいる所存でございます。
  215. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。さよう決定いたします。     —————————————
  217. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめて。   〔午後九時三十二分速記中止〕   〔午後九時五十分速記開始〕
  218. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をつけて。  土砂等を運搬する大型自動車による交通事故防止等に関する特別措置法案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言願います。大倉君。
  219. 大倉精一

    ○大倉精一君 時間がありませんので、十分な質疑をすることができないのが残念でありますけれども、一言要望だけ申し上げて、関係大臣の所見を伺っておきたいと思います。  なお、同僚委員からも御要望がおありになると思いますけれども、私としては、この法案内容について非常に重要な問題がたくさん含まれておると思います。が、しかしながら、最近、ダンプカーによる事故が非常に顕著である、国民も、この問題に対しまして非常に大きな関心を持っておる、こういうことで、本日この法案が可決をされることになるのでありますけれども、内容について、いわゆる人権上非常に問題が多い法案であろうかと思っておりますので、関係大臣は、この法案の運用については、そういう問題について遺憾のないようにしてもらいたい。角をためて牛を殺すことのないように、大臣は特にこの法案について運用していただきたい。こういうことを強くこの機会に要望いたします。
  220. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 本案の運用につきまして、ただいま御要望の点は十分御趣意に沿うように努力をいたします。
  221. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 大倉委員が御指摘になりました点は、よく了承いたしました。御趣旨を体して努力いたします。
  222. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  224. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  土砂等を運搬する大型自動車による交通事故防止等に関する特別措置法案を問題に供します。本・案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  225. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後九時五十四分散会