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1967-07-19 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十九日(水曜日)    午前十一時五十九分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 石井  桂君                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 柳岡 秋夫君                 原田  立君     委 員                 奥村 悦造君                 木村 睦男君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 中津井 真君                 柳田桃太郎君                 城山 フク君                 加藤シヅエ君                 戸田 菊雄君                 中村 順造君                 小平 芳平君                 瓜生  清君                 林   塩君    衆議院議員        発  議  者  八木 一男君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君    政府委員        内閣総理大臣官        房陸上交通安全        調査室長     宮崎 清文君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省社会局長  今村  譲君        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君        通商産業省化学        工業局長     吉光  久君        海上保安庁次長  井上  弘君        建設政務次官   澁谷 直藏君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     菅川  薫君        通商産業省企業        局立地公害部長  馬場 一也君        運輸省自動車局        整備部長     堀山  健君        建設省計画局建        設業課長     高橋  明君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)  (交通対策に関する件)  (交通安全対策に関する決議に関する件) ○船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○公害対策基本法案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害及び交通対策に関する件について調査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。加藤君。
  3. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、産業公害の中のごく一部分になることかと思いますが、最近、あるテレビの画面に映し出されましたその情景を基礎といたしまして調べまして、それにつきましての現実対策というものはどういうふうになっているかと、こういうような観点から質問いたしたいと思います。  その私が見ました画面と申しますのは、神奈川県の相模原市の公害でございます。そうして、そのある会社が、資本金約五千万円くらいの会社でございますが、建設省許可を受けて、もう今日では川砂利が取り尽くされてしまったような形なので、今度は山の砂利採掘するという方向に向かっている。この例もその一つでございまして、これは、相模原のある場所におきまして山の砂利採掘を始めたのでございます。ところが、画面に出ましたところから想像いたしますと、山砂利採掘するというような所でございますから、非常にいなかの町でございまして、道路もまだできていないし、何にも、たくさんの交通量に適応するような施設は全くできていない、いなか道でございます。そして、突如としてそこから砂利採掘が始まるということになりまして、毎日非常にたくさんの数のダンプカーがここに入り込んでくる。往復する。深夜も走るというような状態が起こりまして、その画面で見ておりますと、狭いところにいっぱいに往復二台の砂利トラックが走っております。そういたしますと、そこに住んでいる住民人たちが野らに行ったり、あるいは主婦が買い物に行っている姿を見ましたら、全然あぶなくて道が通れなくて、ダンプが来るたんびに、よけるためにたんぼの中に入ってしまう。そして車をやり過ごして、またもとの道に戻ってきてようやく少し歩く、また車が来る、またたんぼの中に逃げ込む、こういう状態でございます。それから子供たち学校へ通っております。その子供たちは、ガードレールもないし、歩道橋なんか、ましてなくて、しかも黄色い旗を持ったおばさんもいない、そうしたところで、そのダンプカーの間を、ほんとうに縫うようにして道を横切っておりました。見ているだけでもはらはらするような状況でございました。  で、こういうような状況、これは私が一つ画面によって一つの例をとらえているのでございますが、これは全国至るところにこういう状況が起こっておりまして、そうしてそれにどういうふうに対処したらいいかというようなことは、あまり私たちにはわかりませんです。それで、私たちも今度いろいろこれに基づいて調べてみたのでございますが、これからだんだんふえるであろうと思う砂利採掘する、そうしてダンプがあぶなく、設備もないところを、ほこりを立てて盛んに往復をするという問題につきまして、いろいろの法律がこれに関係していて、そしてその関係所管の官庁というのが実に多岐にわたっておりまして、これがどうして片方通産省で、片方建設省で、そうしてまた運輸省警察庁経済企画庁、あるいは厚生省と、こういうふうにいろいろまたがっているのか、これはとてもしろうとには判断ができないように複雑になっているわけでございます。こんなに複雑であるということは、その被害を受けている、公害を受けている住民は、どこへどう訴えていいのか、全然これはわからないことであろうと私は心配するわけでございます。  それで、さらに、いま申し上げました例につきまして、もう少し詳しく御説明をして、御答弁をいただきたいと思いますのは、だんだん川の砂利が少なくなって、山の砂利のほうに移る、こういうことになってまいりますと、この山の砂利をとるということにつきましては、砂利採取法、それから採石法、こういうような二つの法律があるということを私知ったのでございますけれども、こういうような山砂利をとるというようなことの許可というのは、これは事前に許可を得て始めるのでございますか。それとも、仕事を全部準備しちゃって、あとで、始めたということを事後通知をすればいいのでございますか、そこをまず伺いたいと思います。
  4. 吉光久

    政府委員吉光久君) ただいまの砂利採取法、あるいは採石法につきましての現行制度の御質問をいただきましたわけでございますが、砂利採取法につきましては、現在許可制というものは採用いたしておりませんで、事業を着手いたしました後に、事後届け出をすれば足りるということになっております。ただし、砂利採取でございましても、河川法上の河川許可を得ますとか、あるいは森林法上の特別の許可を要しますとか、他の法令許可にかかっている区域について掘採する場合には、その法令自身許可が要る、こういうたてまえに砂利採取法はなっておるわけでございます。砂利採取法そのものといたしましては、そういう特別の許可を要しない地域でとります際には、事後届け出をすれば足りる、こういう仕組みになっております。  それから採石法関係でございますが、これは砂利あるいは砕き石そのものではなく、砕き石のもとになります大きな石をとる業でございますが、これは、山でいわゆる岩石を掘っておる、こういう業種でございますけれども、この採石法におきましても、事業自身は自由な事業のたてまえになっておりまして、ただ、とり方いかんによりまして、たとえば採石権そのもの、これは物権でございますけれども物権としての採石権をほしいというふうな場合に、これが一部行政行為にかかっている場合もございます。あるいは自分所有権につきまして自分土地岩石を掘採する、こういう場合はこれは自由でございます。あるいはまた、土地所有者から賃借権を設定いたしまして、その賃借権範囲内で岩石を掘る、これもまた自由でございまして、採石あるいは砂利採取業は、基本的にそれぞれの法律といたしましては、事業そのものは自由な事業ということになっておるわけでございます。
  5. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 こういうようなことが自由で、事後届け出をするというようなことで許されているということは、これは非常に危険なことでございまして、その近所の人が突如として、自分がいままで平和に暮らしていたその環境が、こういうあぶないところに自分たちが飛び込んでしまう。ほとんど不可抗力みたいにそういうところへ飛び込んでしまう。法律がそのようなことを許しているということ、私は非常にこれは法律の不備であって、やがてはこれは改正していただかなければならないと思っておりますが、それを改正しようという意図がおありになりますかどうか。ありましたら、どのように改正なさいますか。それを聞かしていただきます。
  6. 吉光久

    政府委員吉光久君) 先ほど御質問の中にございましたように、最近河川砂利が個渇いたしまして、だんだんと供給地域が、おか砂利山砂利、要するに農地でございますとかというところ、あるいは旧河川敷でございますけれども、おか砂利あるいは山砂利という方向にどんどん転換いたしておりまして、特に東京周辺及び大阪周辺名古屋周辺というところが、そういう現象の一番激しい地域でございます。したがいまして、以前考えておりました河川砂利中心にして砂利採掘されておりましたような時代の公害発生態様と違った発生態様がどんどんあらわれつつあるのが現状であろうかと思うわけでございます。と申しますのは、従前は、掘り過ぎると、河川の堤防でございますとか、あるいは橋脚そのものでございますとか、河川のいろいろの施設自身を損壊していく、あるいはまたそれとからみ合いまして道路を損壊してまいるというふうな河川砂利中心にした公害取り締まり体制であったわけでございます。したがいまして、実態がどんどん変わっておりますので、この変わった実態に対応したこれらの法律についての取り締まり規定を強化するという必要があるということで、実は先般来、私どもだけではなくて、関係している、先ほど御指摘いただきましたように、あるいは建設省、あるいは農林省、それぞれ多方面にわたっておりますので、各省連絡会議を持ちまして、そこらの点についての検討を現在開始いたしておるわけでございます。  で、私のほうで所管いたしております砂利採取法について申し上げますと、大体考え方といたしまして、自由営業であるという制度自身について、まず再検討を要するんではないであろうか、これを許可制にいたしますか、あるいは登録制ということにいたしまして、もし悪いことをやった場合には登録を抹殺することによって事業自身ができなくしてしまうというふうなことにするか、事業自身につきまして、そういうふうな意味で何らかの形での規制をいたしたいという点が第一でございます。  それから第二点は、今度は行為に着手いたします場合、その地形等いかんによりましては、一定の掘採計画を持たせて、その掘採計画に従って掘採する、ちょうど、鉱業をやります場合に、陥没等公害が起こります関係上、一定の施業案と申しますか、掘採計画自身をつまびらかにしたものについて、それについての許可を受けるような制度でやっておるわけでございますが、そういう行為自身につきましてもやはり現在野放しでございますけれども、何らかの意味での鉱業法に似通った形での規制行為が必要ではないであろうかというふうなことも考えております。  それから第三点といたしまして、公害態様が変わってまいっておりますので、現在、公益保護命令規定というのがございますけれども、この公益保護命令範囲が――公害範囲と申しましてもけっこうでございますけれども、非常に狭くできておりますので、この点についても現実実態に合うように範囲を広げていく必要があるんではないであろうか。  以上の三点を大きな眼目にいたしまして現在研究を進めてまいっておる状況でございます。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 砂利採取法採石法も、両方とも、その目的をうたっております中で「公共福祉増進に寄与することを目的とする。」という一文が入っておるわけでございますが、ここで「公共福祉増進」というのは、どういうことをいわれるのでございますか、採石法の第一条の目的。それから、砂利採取法のほうは川に限っているわけで、これもやはり通産省でございますか。
  8. 吉光久

    政府委員吉光久君) 実は、採石法は山の関係だと思うんでございますので、私ども鉱山局のほうで所管いたしております。  それから、砂利採取法のほうは私の方が所管いたしておりますので、砂利採取法についてお答えさしていただければと思いますが、いかがでございましょうか。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 はい。
  10. 吉光久

    政府委員吉光久君) 砂利採取法でございますけれども、この「公共福祉増進に寄与する」というのは、業界の発展あるいは河川保全、そういうふうなものについて、広くこれが国民一般と申しますか、の利便等に寄与するようにと、こういう意味であろうかと思います。
  11. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、そこに非常に問題があると思うわけでございます。公共福祉ということばがやたらに使われておりますけれども公共福祉というのは、いまの局長の御答弁によりますと、砂利をとって、そして運んでビルを建てる、そのビルが建ったことによって、あるいはそれが学校になるかしれません、あるいはキャバレーになるかしれません、何になるか知りませんけれども、とにかく建物が建つということによって何かが繁栄していくというふうに広く押えて、それを公共福祉だと、こういうふうに一応見ていらっしゃる。そうしますと、砂利を掘られるその近所は、およそ公害犠牲そのものにさらされていても、その人たち公共福祉は全然考えられていない。それでもって、この公共福祉ということばをそんなふうに解釈していてよろしいものかどうか。たとえば、砂利採取法のほうにいたしましても、いままで多摩川砂利をどんどん掘ってしまって、そして掘ったら、あと穴を埋めなければいけないというたてまえにはなっていても、だれがそれを埋めているのですか。ほとんど埋めている人はない。だれがそれを監督しているのですか。監督している人もない。聞くところによりますと、多摩川の近辺の家庭のおかあさんたちがママさんコントロールというような奉仕をやって、子供たちがその砂利の穴に入って水死したりしないようにやっている。それによって、かろうじて事故を避けるというような、そういうことをさせている。そして、公共福祉というようなことを片方には言って、ビルがどんどん建つ。ビルさえ建てば、それが公共に何か貢献しているかのごとき印象を与えるような、こういうことばをここに使って、そして、そのように解釈しているということは非常に片手落ちではないか。これを今後、局長も、改正なさるときにいろいろ考えていただかなければなりませんので、公共福祉ということはどれだけのことをカバーするかということについて、もう少し新しいお考え方を聞かしていただきたいと思います。
  12. 吉光久

    政府委員吉光久君) 砂利採取法は三十一年にできたわけでございますけれども、当時考えておりました砂利採取法自身のこの文章にもございますように、「砂利採取河川保全等との調整を図り、」ということで、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、河川砂利中心にして掘っておりました関係上、その間の調整をはかるということが一つの大きな眼目であったかと思われるわけでございます。したがいまして、この立法当時における公共福祉というものも、そういうものを中心にして観念づけられていたのではないであろうかというふうに考えられるわけでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、公害態様がどんどん変わっておりますし、掘採の態様も変わってまいっておりますので、そういう現実に変化いたしました地盤をひっとらえた上での公共福祉と申しますか、これは山砂利、おか砂利等への転換ということになりますと、従前と違いまして、先ほど御指摘いただきましたように、あるいはそれが学校の近く、幼稚園の近くで掘るというふうなこと自身も考えなければなりませんし、あるいはまた、運搬路がそういう通学路に近いところにあるというふうなことも避けなければなりませんし、そこらを一緒にひっくるめました上での一般国民利便をも当然頭に描いた上での公共福祉というようなことにまで、ここらの内容自身は変わっていかなければならないのじゃないであろうか、このように考えております。  先ほどの答弁で、一点だけ忘れておりましたので、ちょっとつけ加えさしていただきたいのですが、現在、おか砂利のほうでございますけれども、これが農地でございます場合には、農地転用許可ということが必要になっております。最近、農林省に御相談いたしまして、この法律を将来抜本的に改正いたしますけれども、いかにも現状のままで放任しておくというわけにはまいらぬという意味で、農地転用許可に関しまして、いま御指摘いただきましたような点につきまして、許可条件として、農林省のほうで都道府県農林担当部局のほうに指示していただくということで、第一点は、採取面で取り上げます場合の公害防止するように、先ほど穴というお話がありましたが、埋め戻しは確実にやること、その埋め戻しの条件、また、埋め戻しがやれるようなそういう砂利業者に対してであれば農地転用許可するというふうな埋め戻しの条件農地転用に対して必ずつけること、それから、公園とか通学路周辺でございますような、幼児、学童、生徒、こういうものに対して危険の多い位置については、砂利採取目的での農地転用許可を与えないということ、それから、運搬経路に、砂利運搬に使用する大型車について交通規制が行なわれている区域が含まれております場合には、その交通規制に違反しないものであるというふうな各種の観点から、農地転用につきまして、砂利採取目的のために農地転用許可をいたします場合には、こういう条件担当部局のほうでつけていただくということで話が成立いたしまして、今後、農林省もそういう角度で都道府県のほうに指示をすでに出しておると思いますが、こういう問題に対応して応急的北処置してまいりたい、このように考えておるわけでございます。先ほどちょっと答弁の中で忘れましたので、つけ加えさせていただきます。
  13. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いまの御答弁で、だんだんと一般公益住民公益ということが、やはりこの公共福祉ということばの中にはっきりと指摘されるような考え方に移行していらっしゃるようですが、ぜひはっきりとしていただきたいわけでございます。そして、採石法の第十条の「許可基準」というのを見ておりますと、学校、病院その他公共の用に供する敷地または用地、そういうものにかかっていたらいけない、そのほかいろいろの公共用地敷地にかかっていたらいけないという、そういう範囲できめられておるのでございますけれども、問題は、実際にそれがそういう敷地とか用地とかということでなくて、その敷地の隣であっても困るわけなんでございます。ですから、そういうような敷地用地というようなことばに、もう少しその近隣の状況というようなことも考えるということをつけ加えるべきではないかと思いますけれども、また、いま私が指摘している問題でも、そういうことが考えられていないからこういうことが起こっているのだ、こう思うわけでございますけれど、これは、今後改正なさるときにそういう考え方も織り込む考えでいらっしゃるのか、それを聞かせていただきたいと思います。
  14. 吉光久

    政府委員吉光久君) 先ほどもお答え申し上げましたように、採石法関係は私の局の所管ではございませんけれども鉱山局長がまいっておりませんので私がかわってお答えさせていただきたいと思いますけれども、この採石法の十条の許可基準でございますけれども、実はこれは採石権を付与するという意味でございます。ちょうど鉱業権を付与されました場合に鉱業が営めるという立場になる、そういう意味の、先ほど申し上げました採石業をやることにつきましてはこの十条の許可を得まして、採石権という形で、これは物権でございますが、それを取得して採石業をやるという立場もございますし、あるいは自分土地でございますと自分岩石を掘るということは自由な行為でございますし、あるいはまた他人の土地を賃借してやるというふうな場合もあるわけでございまして、これは採石権という物権自身がほしいという場合の手続規定一つでございます。それから採石行為自身について、とこで掘るか――その岩石を掘る場合でございます。その場合の規制のほうは、実はあとのほうの採石業の「届出」の次の三十二条の二に「公益保護」という規定がございますけれども、事前届け出いたしました土地が、ある特定の公益保護上まずい場所にあるという場合には、そこでは掘らせない、あるいは掘り方についてこのようにやって掘れと言えるような規定あとにあるわけでございます。行為のほうで、うしろのほうで規制をいたしておる、こういうたてまえの法律になっておるわけでございます。
  15. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、この法律の中に公益保護命令というのがあるわけでございますけれども、いま申し上げましたような――これは採石法の第十六条でございますけれども、「その土地における岩石若しくは砂利採取保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、又は農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共福祉に反するとき。」、こういうときにはいけないということになっているわけでございますが、いま私が指摘いたしましたのは、明らかにこの、うちのどれかに反することになると私は思うわけでございます。そういたしましたら、公益保護命令というものを出すことができるんでございますか。
  16. 吉光久

    政府委員吉光久君) いまの御指摘の十六条は、採石権自身がなかなか両当事者の間でまとまらないというときの手続規定でございます。いま私が申し上げましたのは、実は十六条ではなくて、あとの三十二条の二の「公益保護」という規定がございますが、具体的に現場におきまして非常に危険であるというふうな場合におきましては、「公害防止の方法を定め、その認可を受けるべき旨を命ずることができる。」――具体的な問題といたしまして、どこでどういうふうにして掘ります、あるいはそれをどういうふうにして搬出しますというふうな、具体的な問題につきまして具体的な設計を提出した上で通産局長認可を受けるというふうなことで、現実具体的行為のほうを規制しておる、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  17. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、公益保護命令というのは、どういうときに、どんなふうに使えるんでございますか。これは砂利採取法のほうかと思います。
  18. 吉光久

    政府委員吉光久君) ただいままで採石法のほうでお話し申し上げておりましたけれども砂利採取法につきましては、第九条に「公益保護」という規定があるわけでございます。これは先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、非常に範囲が狭うございまして、狭い原因だけ――これは、土地の掘さくによりまして、またはその砂利もしくは廃土の堆積、掘さくあるいは掘り上げたものの堆積、それによりまして……。原因行為が少し狭いかと思いますけれども、そういう原因行為で、公共の用に供する施設――道路でございますとか、橋梁でございますとかいうような、公共の用に供する施設を破壊し、または農業、林業、その他の産業の利益を損ずるというふうな原因を、まず、掘さく行為そのものと、掘さくした堆積そのものというところにまず限定し、同時にまた、他に与える被害のほうにつきましては、公共施設そのものを破壊するとか、あるいは他の産業の利益を損ずるとかというふうなことになっております場合に初めて公益保護命令――そういう行為自身について是正させるための必要な措置をとることができる、こういうふうなたてまえに現行法はなっておるわけでございます。
  19. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、現行法におきましては、最初私が申しましたこの相模原一つの例をとって、そこでいまにも学童がトラックにひき殺されるかもわからない、現にあちらこちらでそういうことが起こっておる、そういうことをみんなが見ていて、しかも現行の法律は不備であるから、だれかそのうちに殺されるのを待っている、手をつかねて待っている、そのほかこういうようなところで砂利がまわりの環境なんか考えないでどんどん採掘されることに対しては現在の法律では何にもできない、こういうふうに結論づけるべきでございますか、いまの段階においては。
  20. 吉光久

    政府委員吉光久君) 現行法上、これは交通規制のほうになりますと別かと思いますけれども砂利採取法そのものにおきましては、非常に残念でございますけれども、御指摘のとおりでございまして、現状自身に、もし何らか手を打つといたしますれば、これは一つは、砂利採取業者そのものに対する行政指導で処理するか、あるいは交通取り締まり法規等によって交通の観点から取り締まりをしていただくか、いずれかの立場しかないんではないでしょうか。このように考えます。
  21. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 現状ははなはだ遺憾な状態であると思いますから、先ほどの法律の改正について十分研究をして、いずれ国会でそのことを審議するように努力をしていただきたいと思います。  それで、結局は、建設省関係ではそういうことになっている、あとは交通取り締まりのほうでやらなければならない、こういうふうな御答弁と理解いたしましたが、建設省ダンプカーの運賃というようなものについて、何か発注するときに、実際のダンプカーの能力というものよりは三〇%ぐらい安い運賃で運ばなければならないような状態建設省ではいろいろな注文をお出しになる、そういうふうなことも聞いているのでございます。そして、これは群馬県で起こったのでございますけれども、あんまり県庁や建設省の命令、命令っていうわけではないでしょうけれども、認めている適正運賃というのが安くて、事実上それではやっていかれないので、もう群馬県では、業者が一致して、しばらく県庁には砂利を納めないというようなボイコットをした例があるように聞いております。これはたまたま群馬県の例を引きましたけれども、例の大阪の万国博覧会でもそういう話を聞いております。何か適正運賃というようなものに対して建設省のほうでそういうような指導をやっていらっしゃるのでございますか。
  22. 吉光久

    政府委員吉光久君) 実は、建設省でどういう御指導になっていらっしゃいますか、私詳細に存じませんけれども、おそらく三割引きで引き取れとかなんとかというような指導でなさるのではないかと、これは推察いたしますが、砂利の価格につきまして、昨年まで大体、東京持ち込み標準価格で申しますと、一立米あたり千九百五十円というのが、東京持ち込み標準もの二十五ミリでありますけれども、標準ものの持ち込み価格であったわけでございますが、去年の例のダンプ取り締まり等が非常に強化されまして、過積みがなくなる、あるいはスピード等についても自粛してまいるというようなことから、砂利業界のほうから値上げの要請がございました。これは、具体的には、生コン業者あるいは建設業者というものと話し合ってそれぞれ個別的にきめてまいるわけでございますけれども、本年の三月現在におきましては、昨年の千九百五十円が二千三百円前後にまで値上げになっております。ただ、いまの交通規制の問題とからみ合いまして、さらに自粛してまいるというふうなことになりますと、この二千三百円ではまだ少し安過ぎるというふうな感じがいたすわけでございますけれども、結局は、需要業界、特に建設業界、あるいはまた建設業界自身に発注いたしますところの公共事業諸官庁というところの御協力をいただかなければ、砂利の適正価格を決定するのはむずかしい状況でございますので、そういう点につきましても、関係当局とそれぞれ連絡を密にして処理してまいりたいというふうに考えておるのが現状でございます。
  23. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私だけたくさん時間をとりましてはいけませんから、もうこれで最後の質問にいたしますが、この砂利トラックを深夜営業させるということは、これは許されていることでございますか。ことに砂利運搬やなにかは、会社ではなくて、いわゆる一匹オオカミの営業をやっている人が多い。そういうところには労働基準法も何も及ばない、深夜だけをねらって運ぶというような傾向が多いということを聞いておりますけれども、それはなぜかというと、過積みをすることによって少しでも利益をよけいあげよう、そのために、深夜は取り締まりが非常に手薄になるので、その深夜をねらって運搬する、したがって疲労の度もはなはだしくなってくる、そしてそれが事故の原因をつくる、こういうような状態ではないかと考えますけれども、その深夜の営業というようなことは、交通取り締まりの上では、これはもう、昼間寝ていて夜働くというようなことをやっていても、それはやむを得ないことなんでございましょうか。何か指導の方法がありますでしょうか。
  24. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) ただいまお尋ねの件につきまして、深夜自動車を運行することの制限、禁止規定はございません。ただいま御指摘になりましたように、過積みをするために深夜営業をする、自動車を運転させるという、そういう見方もあろうかと思いますけれども、昼間ですと非常に自動車交通がふくそうしておりますので、深夜のほうが事故防止上安全だという観点からもやっていると思います。いろいろそういうことで、深夜運転させるということについての過労運転その他の問題もあろうと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、深夜運転することについての制限禁止規定はございません。しかし、これは指導の問題でちょっと触れられましたけれども、指導面で、過積みの問題は、深夜取り締まりが手薄だから過積みをするということがあれば、これは厳重に警告して、そういうことをさせないようにいたしたいと思いますが、ただ交通ふくそうしていない夜間を選ぶということについては、私ども立場といたしましては賛意を表せざるを得ないという事情になっております。
  25. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、もうやめたいと思いますけれども、最後に、内閣総理大臣官房の安全調査室長に御質問いたします。  それは、最初に私が申し上げましたように、いま私が一つ現実の例をとらえて問題を提起しようと思いましても、いろいろの法律がこれに関係しております。しかも、砂利の場合には、公益を少しも守ってもらえないような不備な法律、そしていろいろな種類の違ったお役所が関係しているというようなことで、たとえば水質保全経済企画庁のところでやっていらっしゃるなんていうことになる。厚生省かしらと思うと経済企画庁のほうで水質保全法に関係していらっしゃる。まことに多岐にわたっておりまして、これでは公害で泣かされている人はどこの窓口へ行って、何を訴えればいいか、全然わかりませんです。これは将来どのような対策を講じて、ほんとうにいろいろな種類の違った公害によって苦しんでいる人が苦情を持ち込む、それについて相談をして指導をするとか、いろいろ対策を講じてあげるというような窓口としての仕事は、どのようになさるお気持ちですか。それを聞かしていただきます。
  26. 菅川薫

    説明員(菅川薫君) ダンプの問題につきましては、現在の交通対策本部の中に、ダンプカーの事故防止対策専門部会というものを設けておりまして、そこで、大型の猿投町におきますような事件が起きましたときには、それに応じて政府としての総合的な対策をきめたわけでございまして、本日いろいろ御指摘になりました点、そのダンプカーの専門部会で、関係各省庁となっておりますのをそこで総合的に対策検討していきたいと思いますが、御指摘のような点につきましても、その場で最も適切なる方向対策検討したいと思います。
  27. 大倉精一

    ○大倉精一君 関連してお尋ねしたいと思うのだが、残念ながら、だれに何を尋ねていいかわからぬ。いまここでいろいろ言っておること、たとえばいま加藤さんの御質問は、砂利採取等による交通安全並びに公害問題だろうと思うのです。それを、この前質問した続きをやろうと思っているのだが、顔ぶれを見ると、一体答弁できるのか。たとえば、通産省に念のためにお尋ねしてみるのですけれども砂利採取じゃなくて、砂利の集積場、これは認可が要るのか、許可が要るのか、届け出が要るのか、自由にどこでも集積場を持つことができるのか、それをお尋ねいたします。
  28. 吉光久

    政府委員吉光久君) 集積場そのものについて、原則といたしましては、現状は自由になっていると思います。ただし、他の法令によって規制を受けておる、そういう土地につきましては、その法令規制に従うというたてまえになっておるものと思います。
  29. 大倉精一

    ○大倉精一君 これは法律がないから無理かもしれませんけれども、いずれ建設省のほうにも来てもらいますけれども、建設関係でも、民間の土木会社がやる宅地造成等の土木工事については、これは認可許可も何にも要らぬそうですね。私はこの前もお尋ねしたのだけれども、たとえば砂利の集積場をつくる場合に、これは一体どこから持ってくるのか、一日何台くらいのダンプカーを必要とするのか、その通路の状況はどうか、危険はないか、こういうことを、集積場を設置する場合に考えなければならぬのですね。それを考慮せずに集積場をやったんでは、そこはダンプカーが多くなってどうするか、こう言ってみたって、これは始まらぬことなんですよ。どうにもならぬことなんです。それを私は聞きたいと思う。今度、公害基本法をずっとめくってみましても、事業者は事業活動による公害防止するために必要な措置を講じなければならぬというのだが、一体だれがこれを講ずるのか、こういうことですね。たとえば、いま建設省おりませんから通産関係にお伺いするのですけれども砂利の大きな集積場がフリーにできたという場合に、これができたことによって、公害あるいは交通の安全を脅かすような事態が発生したといたします。そういう場合にはどうしますか。これを所管する管轄の通産省としては。
  30. 吉光久

    政府委員吉光久君) 実は、砂利の大きな集積場につきまして、私ども、輸送転換とかどうとかいう意味運輸省とも御連絡した上でいろいろとまだ検討いたしておりますけれども現実にいまのような御質問に出た問題でございますと、おそらく土建業界等でお集まりになっていらっしゃるというふうな、そういうことが多いんではないだろうかと思うわけでありますが、どちらのほうでどうという問題を離れまして、抽象的な問題として、そういうふうな、何といいますか、輸送計画あるいは輸送路というふうなものについての判断なしにそういう大集積場がつくられるということ自身は、これはやはり何らかの形で押えられてしかるべき筋のものではないだろうかというふうに考えますけれども、ただ、現実に具体的にそういう集積場そのものについて私知識がございませんので、的確な答弁にならないかと思いますけれども、一応私の感じといたしましては、そういう感じがいたしておるのであります。
  31. 大倉精一

    ○大倉精一君 総理府にお伺いするのですけれども砂利の集積場の担当省庁はどこですか。これは、たとえば土建業者が集積するにしても、あるいは砂利採取業者が集積するにしても、あなた、ごらんになったことありませんか。この集積場というやつは。相当大規模な集積場がありますね。これはどこが所管するのですか。
  32. 菅川薫

    説明員(菅川薫君) まあ、集積場それ自体として法律で現在はつくられていないのじゃないかと思いますが、それはたとえば道路工事の関係でそういう砂利の集積が行なわれておるとすれば、それに関する道路管理者なりあるいは建設省関係のそういう工事の各関係者が管理することになるものと思います。そのおのおのの集積される場所によって、現在のところはそういう管理なりの方向に分かれております。
  33. 大倉精一

    ○大倉精一君 じゃ、鈴木さんにお尋ねしますけれども、集積場なり、あるいは大きな土木工事なり、現にそういう工事の実施あるいはその施行によって、交通の麻痺なりあるいはその他の騒音なり、そういうはなはだしい公害が起こっておるという場合に、警察庁としては、どこへ、どの省庁に連絡するのですか。たとえば、砂利集積場も方々知っておりますけれども、これによっていま申し上げたような非常な害が起こっておるという場合には、どこの省庁、どこのお役所に警察としては連絡をするわけなんですか。ただ警察だけで取り締まるということになるのですか。
  34. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) 加藤委員からもちょっとお話がございまして、先般の委員会の席上でもお話が出たわけでございますが、最近、いろいろなところで、砂利あるいはおか砂利の、あるいは建築現場、道路の建築現場、いろいろたくさんそういう状況が出てきております。私どもの警察の立場といたしましては、交通事故防止という観点から、そういう現場がありますれば、その現場を所轄する警察署長、さらにそれが道路交通でございますから、非常に庁範囲にわたる場合にはその県本部におきまして、そういう大きな工事の伴う場合には、事故防止観点から、それに対する対策を立てなければならないわけでございまして、その際に、通例の形といたしましては、そこを出入りするダンプ業者、それから要すれば道路管理者も、それから建設省の方々も集まっていただきまして、主として警察がイニシアチブをとりまして座談会等を催しまして、いろいろ事故防止対策を協議していくのが通例の形でございます。その際にいろいろ問題点が出るわけですけれども、たとえば大阪の富田林であった事例でございますが、山奥の山砂利をとる現場ができまして、非常にたくさんのダンプが出入りするという事態が出たわけでございます。その際、その山の付近に部落がございまして、部落の児童が――児童のみならず、一般住民もそうですが、バスがそこまで行っている。ところが、バスとダンプの交差する、必ずしも交差できないような道路であったために、途中に交差できるような施設道路管理者にしてもらいまして、それからバスの時間帯とダンプの出入りの時間といったようなことも調節しまして、そうして対策を練ったという事例もございます。そういうことで、現場現場に応じてそういう安全対策ということを、警察の立場から、できるだけ今後も推進してまいりたいと思っております。それぞれ御指摘のように関係官庁にわたる事項がございます。そういう点を含んだ上で、事故防止という観点から、公害の問題はまた別の問題でございますが、事故防止という観点からは、そういう方策を警察としては従来もとってまいりましたが、今後もさらに、こういう状況でございますから、推進いたしてまいりたいというふうに考えております。
  35. 大倉精一

    ○大倉精一君 これは、残念ながら、きょうはまたこの前と同じように、総括して答えてくれる人がいないと困るのですよ。いまは砂利の話が出ておりますけれども砂利ばかりではない。役所が許認可する場合に、これを認可し、許可をした場合にどういう現象が起こるかということをよく調査し、検討をして、関係省庁と連絡をとって遺憾のないようにして許認可をするということをやらないというと、いまの砂利の集積とかあるいは土地の造成という、フリーのことは別としまして、許認可する場合には、そういう措置をとらないと、自分のところ、省庁だけで勝手に認可して、いろいろな現象が起こってどうにもならぬ。警察が飛んで行ったりなんかしてもどうにもならぬという現象が起こる。私はこの前も言ったけれども、これの対策は、いま言ったように、許認可する出発にあたって十分調査をする、調査した結果許認可する、許認可したら、その後の環境、その他の周辺の変化によって、重大なといいまするか、相当の公害なり、あるいは交通関係の故障が起こってきた、こういった場合には、いま鈴木さんの言ったことも必要でありましょうが、そうでない場合には、その発生源をストップさせる。つまり、ほかの対策を講じるまでその事業活動は待てと……。これができなければ何にもならぬじゃありませんか、できなければ。対策対策といったって、発生源をそのままにしておいて、そしてじゃんじゃんダンプなり騒音なりをやっておいて、そしてそれをとめようといったって、発生源が動いていれば、とまらないんですよ。ですから、そういうものをとめるにはどうすればいいか。これは総括して答弁できる人、ありますか。総理府、だれが答弁する。
  36. 菅川薫

    説明員(菅川薫君) いま鈴木交通局長からもお話がありましたように、その地域地域の実情に応じて、かなり総合的に対策を講じていかなければならないと思いますが、先ほども申し上げましたように、総理府においてまずその関係の総合的な観点検討をいたしておりますので、御指摘に従って、その問題について最も有効な対策を講ずるように今後もつとめたいと思っております。
  37. 大倉精一

    ○大倉精一君 これはまあ答弁する人がいないから、またこの前のように平行線になるんですけれども通産省のほうにお尋ねしますけれども砂利の集積場を例に引きましたが、この集積場によってたいへんな交通事情の悪化、あるいは騒音、そういうものが起こっておるという現状があった場合に、とりあえずその場所における砂利の集積を一時とめなきゃならぬと思う。それ以外にないと思うんだが、それは、通産省、できますか。
  38. 吉光久

    政府委員吉光久君) いまの、集積場それ自身が交通事情の悪化あるいは公害等を起こしておるという場合に、通産省でその集積場に対して集積することをとめることができるかどうか、こういう御質問であったかと思います。で、先ほど総理府のほうからお答えございましたように、これは、砂利採取業者が持っておる集積場でございまするならば、いまのような事態であれば、現実に、法令自身はございませんけれども、やはり通産省が中に立って、とめるように努力しなければならないというふうなケースであろうかと思うわけでございますが、先ほど御答弁ございましたように、たとえば、道路工事のために道路管理者のほうで砂利の集積場を持っているというふうな場合、これはちょっと通産省の手の届かないところでございますし、あるいはまた建設業者自身が、あるいは宅地造成なり大工事をやっております土建業者自身がそういう大集積場を持っているという場合につきましても、ちょっと手の及ばないところでございますが、先ほど申し上げましたように、砂利業者自身がそういう集積場を持っておるということになっておりますれば、これは当然に、私どもとしてそれに積極的に関与してまいらなければならないところではないかというふうに考えます。
  39. 大倉精一

    ○大倉精一君 それでは、いまは砂利業者に限って御質問申し上げておりますけれども、今度は通産省で許認可する問題ですね。許認可するような事業といいますか、そういう場合に、その認可許可したことによって公害発生をしておる、こういう場合には、その許認可事業活動を一時ストップさせるということは、できるんですか。
  40. 吉光久

    政府委員吉光久君) 砂利採取業につきましては、実は許認可という事項が現在まで制度としてはございませんので、砂利採取業を離れまして、一般的な事項といたしましてお答え申し上げたいと思うわけでございますが、その法律それぞれの内容によりまして違っておりますけれども、許認可自身にある特定の害を与えました場合には、あるいは許可の取り消し、あるいはまた営業停止処分、事業停止処分等の規定を持った法律もあるわけでございますので、そういう場合には、営業停止処分そのものとして処理してまいるということになろうと思いますが、そうでない場合につきましては、やはり一般的な行政指導として、操業自身一定期間とめてもらうというふうな措置しかできないのではないだろうか、このように考えます。
  41. 大倉精一

    ○大倉精一君 まあ、これ以上聞いてもしかたがありませんが、これができなければ、公害防止なんといったって、それはもう幾ら絵にかいたって字に書いたってだめですよ、これは。ただ、先ほど、砂利集積場が砂利採取業者のものであればこれを事業活動を一時ストップするように努力して協力させると、こう言っておりますけれども、そう簡単に業者はうんと言いませんよ、業者は。死活問題ですから。ですから、とりわけ許認可事項にかかるもの、役所が責任をもって認可許可したものをちょっと待てというのは、そう簡単にできませんよ。許認可というのは、そう権威のないものじゃない。ですから、認可許可する前に、そういうことによってどういう状況が起こるか、判断しなければならない。それをやっていないでしょう。場合によっては消防署とも連絡しなければならぬものがあるでしょう。あるいは警察とも連絡しなければならぬものがあるでしょう。運輸省とも連絡しなければならぬものがあるでしょう。厚生省とも連絡しなければならぬものもある。あるが、やっておりませんよ。通産省通産省オンリーの判断でやる。運輸省運輸省オンリーの判断でやる。そこに公害が起こってくる。起こってきても、今度はストップさせることができぬ。まことに弱い存在と言わなければならぬが、そういう状態であるから、この公害基本法ができましても公害は防げない、それができなければ。たとえば、いまはこの基本法の中に入っておりませんけれども、第三条にも事業君は協力しなければならぬというふうに書いてあるけれども、協力しなければならぬということは、たとえば、自分でやっておることで非常に公害が起こっておる、こういった場合に、協力する方法は、その事業活動をストップすること以外ありませんよ。それができなければ死文ですね、これは。  まあ答えてくださる人はないと思うのですけれども建設省おいでになったようですから、いま通産省のほうにお聞きしておったのですけれども、今度あなたのほうで、たとえば土木事業――いま加藤さんの御質問の場合は、砂利採取場から事業現場に運ぶダンプが非常に狭い道をたくさん運んで困る、非常にたいへんな問題が起こっておるという御質問なんですけれども、いま通産省にもお伺いしたのですけれども、その土木工事なり何なりを起こす場合、それは公共事業であればあなたのほうが許可認可をするらしいのですけれども、そうでない場合はフリーだということを聞きました。しかし、公害が起こるのは、公共事業であろうが、そうでなかろうが、同じなんです、これは。ですから、そういうものを考慮する前に、この工事をやったならばどういう状況が起こるか、砂利はどこからどの道を通って運んでくるか、ダンプカーは何台ぐらいあるか、その場合にはその状況はどうなるかということをあらかじめ調査検討して、そして認可許可をする、あるいは何なりをする、あるいは、フリーであればフリーであるように何か措置を講じなければならぬ。フリーの場合に、これが自由に大きな土木工事をやったんだが、それによって加藤さんのおっしゃるようなそういう公害が現に起こってきた、そういった場合には、たとえば他に道路をつくらせるとか、何か方法を講じなければなりませんが、その方法ができるまでその土木工事は一応待てと、こういうことをしてもらわなきゃならぬと思うのですが、そういうことについて建設省としてできるかどうか、そういうことをお答え願いたい。
  42. 高橋明

    説明員(高橋明君) 強制的なやり方でできるかどうかは、まだ検討の余地があると思いますが、現在のやり方では、特に建設省発注工事あるいは公団発注工事等につきましては、あらかじめ、ダンプの通行する道路、経路あるいは運送時、運搬時間等について、よく発注者と建設業者の間で話し合いをいたしましてやらせるようにしております。その際に、当然、交通規制をやる警察との関係がございますから、地元警察署長とも十分連絡をとりまして、発注者と建設業者、地元警察署長との間でよく相談の上で工事をやるようにしているわけです。それ以上の強制的な措置等につきましては、これは建設業者に対して交通事故が起きないように具体的に指導はしておりますけれども、発注のほうで十分考えろということにつきましては、私どもの直接の所管ではございませんが、発注者としての建設省として十分に検討をするように関係者とよく話し合いをいたしましてやらせたいというふうには考えておりますが、ただ、それは具体的な発注の際の考慮、建設業者との話し合いに関する具体的な考慮であって、それ以上の強行的な措置ということにつきましては、なお十分考えなきゃならぬ問題があろうかと思います。
  43. 大倉精一

    ○大倉精一君 いまのあなたの答弁は、建設省が発注する場合ですね。公共事業の場合ですね。そうでない場合、たとえば何々建設会社、何々土木会社というものが大きな宅地造成をする。これはあなた方が発注者じゃないですね。そうでしょう。その場合に、発注者じゃないのだけれども、現にその土木工事をやっていることによって、加藤さんから指摘されたような、そういう交通上の大きな害が起こっておるという場合、そういう場合には、建設省としてどうしますか。
  44. 高橋明

    説明員(高橋明君) その点につきましては、たとえば、これはたとえ話で恐縮ですが、宅地造成に関して問題がある場合には、建設業者を規制するというよりは、宅地造成等規制法で、あらかじめ宅地造成の設計施工に関して所管の局が監督をする。爆発物等につきましては、その爆発物の取り締まりに関する所管部局で監督されておりますから、砂利採取場あるいは運行経路等につきましても、それらの取り締まり御当局で御監督いただくほかはないんではないかと私ども思いますが、ただ、そのような取り締まり規定に違反して建設業者が問題を起こした場合、たとえば道路交通法に違反して罰金以上の刑に処せられた場合には、建設業法二十八条によって、建設業者として不適当ではないか、したがって、今後こういうようなことをすべきだというような指示処分ができることになっておりますし、さらに、もっと不適当であると考えられます場合には、営業の停止、進んでは登録の取り消し、つまり営業が二年間できないというような処分もいたすようにしておりますし、この処分につきましては年間大体百件以上の処分を具体的にやっておりますから、建設業者に対する取り締まりとしては、いまのところ、そのような処分をすることによって問題のある程度目的は達成されるのではないか。それ以上に建設業者に対して、どこそこの経路を走れ、あるいはどこそこで砂利を取ってはいかぬ、あるいは取るべきだというようなことにつきましては、それぞれの所管御当局において建設業者に対して必要な措置命令をさせるほかはないんではないかというふうに考えますが……。
  45. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は法律のことは知りませんけれども、いまあなたがおっしゃっていることは、何か土建業者が悪いことでもやっておるという前提に立っておりますね、停止するとかなんとか。そうでなくて、その土木業者が悪いことをやっているわけじゃないんだ、正当に工事をやっておるんだが、その工事によって、どんどんダンプがやってきて、そして交通規制とかなんとかいうことでたいへんな障害が起こっておる。悪いことをやっているわけじゃないんです。  そこで、警察に聞きますが、そういう状況になった場合に、加藤さんの質問の現場を私は知りませんけれども、これはダンプに通るなというわけにもまいりますまい。一日に半分にせいというわけにもいきますまい。工事をしておるから。そうすれば、その工事を一時ちょっととめてくださいという以外にないのですけれども、そのほかに何か方法はありますか。警察として適当に取り締まってもらうよりしかたがないということを建設省が言っているのだが、具体的に警察として、ダンプは半分しか通っちゃいけない、この道を通っちゃいけないということができますか、警察として。
  46. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) 御引例のような場合に、警察が大型ダンプカーを全面的に通行禁止にするということはできないと思いますが、いろいろその現場に行く通路がたくさんあった場合には、分散させるということもできます。
  47. 大倉精一

    ○大倉精一君 ない場合です。
  48. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) それから制限することはできると思います、ある程度制限する場合は。たとえば、朝の通学通園時の時間帯は大型ダンプカーは通れないという、時間帯で制限することはできると思いますが、全面的に禁止するということは、先ほど申しましたような代替路を見つけてなるべく交通量を分散させるような方策あるいは一方通行といったような規制のしかた以外にはなかろうと思います。
  49. 大倉精一

    ○大倉精一君 まあ、幾ら言っても始まらぬことですがね。結局、処置なしということですね。結論は処置なし。いま加藤先生のおっしゃった、御質問なさっている現場ですね、どこの工事で、どこから運んでいるかということをお調べになりましたか、通産省建設省か。この前に質問がありましたね、どこの場所であったかということをお調べになりましたか。
  50. 吉光久

    政府委員吉光久君) 現在、相模原付近につきまして、いろいろのダンプカーが入っているようでございますけれども、まず、岩石のほうの砕き石業者でございますけれども、これは二ないし三業者程度でございまして、土木事業そのものの分でございますと少ないのでございますが、大体相模原付近を通過するダンプトラックになりますと、泰野付近で岩石砂利をやりました分もこの方向に入ってまいりますので、そうなりますと、大体量的に申し上げますと、月に十万トン程度というふうなものが想定されるわけでございます。と同時に、この相模原付近におきましては、先ほどもお話がございましたおか砂利関係が非常に多うございまして、おか砂利関係につきましては大体約三十業者がここでおか砂利を掘っております。その月の産出量は、月によって違いますけれども、二十万から三十万トンというふうな量が掘られておるようでございます。大体相模原付近における岩石及び砂利採取関係現状及び運ばれておる量というものは、以上のようなものではないかと推定いたしているわけでございます。
  51. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、その場所だけにしぼってお伺いしますが、加藤先生のお尋ねになったその現場は、非常に危険なものである、あるいは何とかしなければならぬというぐあいにお考えになりますか。あるいは、いやこれはほうっておけばいいのだというぐあいにお考えになるのですか。これはどこのお答えですか。
  52. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) 先般の加藤委員が御指摘になりましたテレビ、三多摩地区というお話がございまして、私どもその後調べましたところ、おそらく都下の八王子市の美山砕石場というのがございますが、そこに関連するダンプカーの運行をNHKが描写したというふうに私ども考えておりますが、私ども調査では、この美山砕石場におきましては、山の岩盤を採掘いたしまして石に砕いた砕石にいたしまして、砂利販売業者や建設業者に販売しているという実態でございまして、たくさんの業者が関係しております。それで、お話は、何か一日に三千台ぐらいというお話でございましたが、私ども調査では、ダンプカーの一日の平均往復台数は八百台ないし千二百台ということでございまして、その付近におきまして交通規制もある程度実施しております。制限速度も三十キロまでに制限したものもございますし、駐車禁止をやられたということもございました。それで、この現場に出入りする業者を集めまして、先ほど申しましたように、交通安全対策の座談会を三回ほど開いておりまして、安全運転の励行、物の落下防止、計量積載を励行するようなこと、それから道路の非常に狭いところでは低速運転を励行するような指導、それから出入り業者が自主的な規制をやるようにといったようないろいろな問題点につきまして座談会を開いておる実績はございますが、おそらくこの美山砕石場の現場であろうかと存じます。
  53. 大倉精一

    ○大倉精一君 それで、その状況は改善されましたが。現場の状況は、私がこういうことを聞くのは、この委員会で具体的な事例を指摘されて質問をされても、何にもその効果がなかった、現場においては依然としてダンプがブーブーうなっておるということでは、一体国会では何をやっているかわからない。ですから、そういう点を私はこの前からずっと言っているのであって、美山砕石場ですか、そこがいわゆる砕石の、大きな石を運ぶかなにかわかりませんけれども、その事業を開始するのは、これはフリーだと思うのですが、事業を開始するにあたって全然そういうことが考慮されておらずに始まったと思う。始まったらこうなっちゃった、さあたいへんだということで、いまいろいろ鈴木さんおっしゃるようなことになって座談会を開いた、なかなかこれは向こうも命がけでやっておるのだから、座談会だけではなかなかうんと言ってやりませんよ。じゃどうするか。具体的に、公害基本法なんて高度なものをつくってみても、こういうところ一つ始末ができぬことには、どうにもならぬでしょう。担当はどこですか、これは担当は。
  54. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) この現場で、八王子の追分というところから美山街道というのがございまして、美山の砕石場まで行っているわけでございますが、このほかに代替道路がない状況でございますので、先ほど言ったような措置は講ぜられてないわけですが、この道路につきましてのスピード規制その他は実施しているわけですが、警察の立場として改善できる余地がありますのは、実はこの付近に学校が、中学校と小学校が美山街道から入ったところにございますので、まあ学童の通学通園時にある程度の交通規制をするという程度のことはできると思いますが、それ以外に、代替道路、一方通行というふうな措置も講ぜられませんので、抜本的な対策は警察としてはとれない立場ですが、できるだけ事故防止という観点から、付近の出入り業者、ダンプ業者にはもちろんございますけれども、付近の住民にも呼びかけまして、両方の立場で事故防止交通安全対策ということをさらに推進してまいりたいと考えております。
  55. 大倉精一

    ○大倉精一君 これはもうやめますがね。いずれ、総理がおいでになるから、総理に私はこれをきっぱりと追及しますが、念のために、皆さん方も公害基本法をお読みになっていると思うから、この際お尋ねしておきますけれども、第三条の「事業者は、その事業活動による公害防止するために必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する公害防止に関する施策に協力する責務を有する。」と、こうなっておる。この場合に、別段ほかに通る道路もない、道も狭い、こうなった場合に、その何とかという事業者の事業活動を一応停止してもらう、これがいわゆる協力するということなんですけれども、これはどこが停止させますか。これができなければ、三条は、これはいわゆる何と言いますかね、何にもならぬ条文になりますね。念のためにひとつ伺っておきたい。これは総理にも聞きますけれども、担当者としてひとつお答えを願いたいと思います。
  56. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害基本法のお尋ねでございますので、厚生省からお答え申し上げます。  第三条で公害対策に対しまする事業者の責任がうたわれておるわけでございます。その中に、事業者は公害を起こさないようにしなければならないと書いてございます。この基本法は、これから国が公害対策を進める上での基本方針でございまして、今日の段階では、個々の法律は必ずしもこの線に沿って十分整備されておるわけではございませんので、この基本法の成立を契機に、事業者も十分その趣旨によって公害防止の責任を果たすようにするように、また国もその筋に沿って監督するように、各種の法律をそれにそろえて個々の法律規制をしてまいるということで今後努力をしてまいりたい。したがいまして、今日の段階では、この線に沿って整備されておる面もございますが、必ずしも十分でない面もございまして、今後も努力していくつもりでございます。
  57. 大倉精一

    ○大倉精一君 最後に、念のために申し上げておきますけれども、精神訓話だけじゃ公害防止できませんよ。協力してください、協力させるという精神訓話だけでは。それで、いまのような場合に――答弁要りませんよ。いまのような場合に発生源の事業活動を一時ストップするという、これでなければ、この現実公害は直らないといった場合に、現実にストップしなければいけないんだ。それを、するように協力しなさい、努力しなさいという精神訓話だけではだめだ。でありますから、せっかく基本法ができますれば、それによって具体的にそれができるような法律整備をしてもらわなければ、精神訓話だけでは、観念だけでは、公害が直らないということだけはこの際念のために申し上げて、あとは総理がおいでになったら続いてやります。
  58. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回公害基本法でこのような基本方針をきめて、国が公害対策に取り組みます対象としました公害の種類は、大気汚染、水質汚濁防止、あるいは騒音防止、あるいは地盤沈下、悪臭の防止というような特定の、特に早急な、しかも公法上の諸種の施策を必要とするものを対象としたわけでございまして、ここにうたわれない個々の別途の公害もあるわけでございまして、それらはそれらの規制の措置を講じてまいるというわけでございまして、お尋ねの、先ほど来交通関係に関連する諸問題がございましたものの中に、この基本法に含まれるものもあれば、基本法外の問題もございますので、それぞれその事態によりまして今後措置することになると思います。
  59. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 瓜生君。
  60. 瓜生清

    ○瓜生清君 時間がございませんから、私、簡単に、少し角度を変えて交通安全の問題をお伺いしたいと思います。  それは、最近非常に乗用車の事故というものがふえておるわけです。これは運輸省所管だろうと思います。けれども、お尋ねしたいのですが、日本シートベルト工業会というのですか、そこの発行しておりますものを見ますと、自動車の運転者、あるいはうしろに乗っておる同乗者が、そのJIS規格の安全ベルトをつけると、少なくともいままでの死亡なり、けがなりというものが五〇%くらいに減るだろうと、こういうことを言っておるのですが、運輸省当局としては、この安全ベルトの、何といいますか、科学的効果というようなものについて、どういうお考えを持っておられるか、まずお聞きしたい。
  61. 堀山健

    説明員(堀山健君) お答えいたします。  安全ベルトにつきましては、実は日本では、まだ高速道路というのがあまり発達をしておりませんので、諸外国では、高速道路の発達しておるところへ行きますと、たとえば時速百キロメートルとか、百五十キロメートル、こういう条件のもとで衝突をする、こういった場合には、シートベルトがありますと非常に効果があるということは私どもも知っておりますし、いろんな実験をやった結果、そういうものに効果があるというふうに私ども考えております。
  62. 瓜生清

    ○瓜生清君 そうすると、日本でも、そういうものをいろいろな角度から試験をされておるわけですか。その点、どうです。
  63. 堀山健

    説明員(堀山健君) 試験につきましては、JIS規格をきめるとか、あるいはそれとは別に、私どもの船舶技術研究所がございますが、そういうもの、あるいはメーカー団体、そういうものがそれぞれ研究をしております。
  64. 瓜生清

    ○瓜生清君 これは私正確な資料じゃないのですけれども、何か、アメリカの連邦自動車安全基準とかなんとかいう法律か何かがあるそうですね。それによりますと、ことしの三月から乗用車に対して、運転する者も乗っておる者も、すべて、何といいますか、安全ベルトをつけなけりゃならないということが法制化されたというふうに聞いておるのですが、この点はそういう事実があったのかないのか、お聞かせ願いたい。
  65. 堀山健

    説明員(堀山健君) アメリカで車の安全規格につきましていろんな規定が設けられましたが、いまちょっと資料を持っておりませんが、日付は忘れましたけれども、安全ベルトについて装着するように義務づけられるはずでございます。
  66. 瓜生清

    ○瓜生清君 そうしますと、日本の場合、これから自動車はどんどん急速にふえていくと思いますが、確かにアメリカに比べると高速道路というのがまだ発達はしていないという状態なんですけれども、今後そういった推移を見て、そういう安全ベルトをつけなさいと、こういうふうなことを法制化でもしてみようかというのは、一体いつごろのようにお考えですか。まだ、現段階ではその必要が全然ないと、こういう考えなのか、その点を聞かしてもらいたいのです。
  67. 堀山健

    説明員(堀山健君) これは、いま御指摘がありましたように、日本は全体として低速度における事故のほうが多いということで、私どもの車の安全性につきましては、保安基準という規則がござまいして、そこでいろんな規制をしておるわけでございます。そこで、重点は、ただいま問題になっております大型ダンプカー、そういったものの規制、あるいは歩行者に対する規制、こういう面を重点的に現在やっておるわけでございます。安全ベルトにつきましては、逐次道路条件がよくなりますと、当然欧米並みの運転状況に変わって、くるということで、ある時期をとらえてそういう点に切りかえたいと思います。ただ、現在の時点では、メーカーその他につきましては行政指導で、その辺を、つけるとすれば、どういうふうにつける、こういう点についての行政指導をしておる段階でございます。
  68. 瓜生清

    ○瓜生清君 運輸省はもうけっこうです。  そこで、これは警察庁になるかどうかわかりませんけれども、一点だけ質問したいのですが、高速道路ですね。何か九十キロ以上、いわゆる早いスピードで走っておりますと、道路と自動車のタイヤの接点に空間ができて、何かハンドルを切るのが、どういうのですか、浮いたような調子になると、こういうことを耳にしておるわけですが、それをハイドロプレーニング現象と唱えられておるそうですが、そういうようなことについて、交通安全の立場から運転者にそういった教育をしておるのか、あるいはまた高速道路のスピードの制限、そういう起こってくる現象との間の関係などについて、どういうような対策を立てておられるのか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  69. 堀山健

    説明員(堀山健君) ただいま御指摘の件は、昨年名神高速道路で、高速定期バスが、いわゆるハイドロプレーニングといいますか、その状況下にあって横転したという事件だと思います。その結果につきましてそれぞれの検討をいたしました結果、速度を規制する必要があるというのが現実にあらわれましたので、あそこは百キロで走行するようになっておりましたのを八十キロに落とすということで、現在そういう規制をして安全運転をやらしておる現状であります。
  70. 瓜生清

    ○瓜生清君 これでやめますけれども、その場合、いわゆるきょうのような、こういう天気のいい日と、雨が降って高速道路そのものがぬれておるというような場合の交通安全の対策というものは、そういうものには、別に、いまのところ、私しろうとでわからないけれども関係ないわけですか。その点警察のほういかがですか。
  71. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) 御指摘の点については、スピード規制関係してくると思います。御承知のように、そこを通っております首都高速道路は五十キロの速度制限をしておるわけですが、五十キロではひどいのじゃないか、もう少しスピード・アップしたらどうかという御意見が非常に多いのでございますけれども、御承知のように、非常にあれはカーブが多いところでございまして、カーブの際には、先ほど申し上げました現象が起きる、それから雨天の際にスリップするという事故も考慮して、オール・ウェザーの立場交通規制を実はしておるわけでございます。もっときめこまかく、雨が降ったときには何キロ、晴天のときには何キロ、という規制も考えられないことはございませんけれども、大体交通規制というものは、最悪の場合も含めた速度規制ということをやっておるのでございまして、そういういろいろなきめのこまかい点も配慮しての速度規制ということで御了解を願いたいと思います。
  72. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 原田君。
  73. 原田立

    ○原田立君 さきに当委員会で矢追委員より質問した富山県の痛い痛い病について、厚生省より現地に調査官が派遣され、話し合われたと聞いております。どのような結末になったのか、お伺いいたします。
  74. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 六月三十日の日に、富山県に厚生省から係官が出向きまして、本年度以降の痛い痛い病の調査に関する打ち合わせをいたしたわけであります。同日出席いたしましたのは、厚生省、富山県副知事以下、班長といいますか、座長といたしまして、国立公衆衛生院疫学部長重松部長、そのほか金澤大学、岡山大学、富山大学の六人の専門家が出席いたしまして打ち合わせしたわけであります。その結果、厚生省の研究といたしましては、本年度約七百の検体をもって痛い痛い病の病原の主たるものの一つのカドミウムの由来を調査しろということになったわけでございます。その検体の採取は、まず水でありまして、水は神通川、その上流から下流に至るまで、あるいは周辺の井戸水その他でございます。それから土壌につきましては、その流域の土壌、神岡鉱山の構内の土をも調べるということであります。それから穀物も調べたいということでございまして、穀物は本年度とれました穀物を調べるということでございます。そのようにいたしまして徹底的な調査をいたすということにいたしたわけでございまして、このような打ち合わせをしたわけでございますが、そのほかに、富山県といたしましては独自の別途の調査をする、主として患者の健康診断をする、そのほか患者のみならず、周辺の人を含めて約六千人程度調べたいということ、あるいは簡易水道を、本病予防の意味合いもあって敷設するについての、その水源調査をするというようなこと、あるいは神通川の水質の調査をするというような部門につきましては県独自の調査をするというような点について話し合いが行なわれたわけであります。
  75. 原田立

    ○原田立君 現在及び今後のことについて調べるというようなお話ですけれども、さきに矢追委員が指摘したように、現在その病気にかかって苦しんでいる人、これはもうすでに過去にそういうカドミウム等によって痛めつけられた人なんです。それを反省して、神岡鉱山等も、ダムの建設とか、あるいはまたその他の予防措置を講じて、現在はよくなっている。こんなことは、もう前の委員会においても指摘した点なんです。ですから、いまのお話を聞いてみると、これから新たに調べるんだというようなことでございますが、何か、とても非常に見当はずれのような、感じがするわけなんです。現に痛い痛い病にかかっている人たち、その人たちの原因等々について、現地とは一体どういうふうなお話し合いをなされたのですか。
  76. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 痛い痛い病につきましては、以前は栄養失調ということで扱われておったわけでございます。それが、ごく最近の調査に至りまして、カドミウムの慢性中毒が影響しているのではないかということで、その方面の調査を、近年、厚生省、富山県あるいは文部省等の調査費によって行なっておったわけであります。したがいまして、今日の段階でそれがようやく明らかになったわけであります。もちろん、カドミウムだけではないことは、他のカドミウムを製錬する工場におきましては、そのような下流あるいはその付近に同じような患者が出ていないということから、そのほかに何らかの要素があろうということで、それについても従来調査が行なわれておったわけでございまして、これは、蛋白質あるいはカルシウム等の摂取が少し少な過ぎるということが影響しているのではないかということが今日の学問上明らかになった点であります。  そこで、そのカドミウムがどこから来たのか、日常飲んでいる井戸水等から来たのか、あるいは河川上流から流れてきたものを食物を介して摂取したのか、そこらの、カドミウムがどこから来たかという問題が、なお残されております、これか工場の排水であれば、すなわち公害でありましょうし、そのほかのもの、そういうものでなくて、山にあるものが天然自然に水に流れてくるものであれば、公害としての処理ではない、別途の考えをもって処理するということでありまして、そのカドミウムの由来をこれから次の新段階において調査するということでございまして、患者の広い範囲の検診もされたような観点もあり、あるいは隠れた患者がないかということも含めて調査をするわけであります。今日のところ、患者は二十八名おります。なお、患者の容疑のあるものは三十三名いるわけであります。これらの患者はいずれも入院している状態ではなくて、それほど重い疾病の状態ではございません。特殊な治療を必要とするとか、非常に重篤な状態であるというものは一名もないわけであります。
  77. 原田立

    ○原田立君 富山県議会においてもこの問題が取り上げられ、県知事は公害であるという発言をしたと聞いております。富山県民全体がこの痛い痛い病について重大な関心を示しております。厚生省のほうにおいても、もう公害と認定していいのではないかと考えますが、いかがですか。
  78. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま申しましたように、カドミウムが大きな原因であることは、すでに学問的に明らかになったわけでありますが、それがどこから来たかということが、これからの研究課題でございまして、現在の段階で、これがいわゆる人為的な事業活動に基づく廃液等による慢性中毒であるという断定ができる状態ではございません。
  79. 原田立

    ○原田立君 あまり時間がないので申し上げませんが、はなはだ不満に思います。それはそれとして、痛い痛い病患者に対する医療補償等の措置は現在どんなふうに講じられておりますか。
  80. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) これは、従来は、ただいま申しましたように、特殊な地方病である、あるいは栄養失調による、ちょうど別の分野で言えば、かっけのような特殊な栄養障害のような病気であるということでございましたので、特にこれに対して補償とか保護とか特殊な対策が講じられていなかったのでございますが、今日の段階では、これは重金属の慢性中毒が加味したものであるということでございますので、国といたしましては、これに対して医療費の研究的な分野を持つ必要があろうかということで、本年度、先ほどの調査費を含めて二百五十万の予算をもってこれに取り組む考えております。
  81. 原田立

    ○原田立君 公害基本法でも、企業の責任を明らかにし、国民の福祉増進していくのが法の精神であると思います。この件については、毒性物質を流した企業もはっきりしているのだし、現実に病に呻吟し、苦しんでいる人もおります。基本法を制定する今日、このようにはっきりした公害をなぜ公害と認定しないのか、ふしぎでならない。調査調査といって人間をモルモット扱いにするのは国民を侮辱するのもはなはだしいと思うのです。これから調査ということですが、重ねてお伺いするのです、はっきりと公害の認定をすべき段階に来ているのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  82. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この痛い痛い病は、発生の最もピークでありましたのは戦前の昭和十八年から終戦に至るまでの間であったようであります。これは、今日までの各種の記録、あるいは昔からそこにおられる開業医師の方々の発言に徴して、そういう想像ができるわけであります。近年においては、新しい患者の発生はほとんど見られない、こういう状況であります。また、お尋ねの神岡鉱山におきましても、昭和三十年以来、特殊な沈澱池を設けまして、廃水の処理をいたしておるわけでございまして、その意味合いから、県が最近調査いたしましたところによりますと、最近の発生患者はほとんど発見できない、こういうことを言っている状況でありまして、いまから二十年前の患者の発生の事例でございますので、これの原因を厚生省といたしましても探求する努力をするわけでございますが、この今日の段階でそれか公害であるという断定は、先ほど来申し上げておるように、できないわけでございます。
  83. 原田立

    ○原田立君 委員長にお願いしたいと思うんですが、この痛い痛い病に関して、学者、医師または現地の代表者等々の参考人を当委員会にお呼びいただきたいと思いますが、お取り計らいいただきたいと思います。
  84. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 原田君のただいまの御要望につきましては、前回も委員長理事打ち合わせ会におきましていろいろ慎重審議いたしました。重ねての御要望でございますので、後日、委員長理事打ち合わせ会で協議いたしまして、参考人を呼ぶ必要があれば呼ぶように善処いたしたいと思います。  本日の調査は、この程度といたします。  暫時休憩いたします。    午後一時四十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十八分開会
  85. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 再開いたします。  この際、交通対策に関する件について大倉君から発言を求められておりますので、これを許しまa。大倉君。
  86. 大倉精一

    ○大倉精一君 交通事故問題につきましては、非常に重大な開顕でありますので、この特別委員会におきましては、交通事故の防止につきまして、各委員から終始きわめて熱心な質疑が行なわれまして、また貴重な御意見も数多く出されたのであります。けれども、この際、本特別委員会として、これらを取りまとめ、政府に対し善処方を要望するため決議をすべきものと思われますので、次のような決議案を提案をいたします。    交通安全対策に関する決議(案)   近年、自動車台数の激増に伴い、交通事故に  よる被害者が逐年増加の一途を辿りつつあるこ  とは、まことに深刻かつ重大な問題である。   このような事態に対処して、政府は、人命尊  重の理念に徹し、交通の安全を確保するため、左に揚げる措置を総合的、かつ強力に推進すべきである。 一 交通安全に関する施策を総合的かつ強力に  実施するため、交通安全行政の一元化につい  て検討すること。 二 交通安全思想の普及徹底を図るため、学  校、職域、地域を通じて交通安全教育を計画  的かつ組織的に実施すること。 三 通園通学路、踏切道、バス停留所等をすみ  やかに総点検し、危険箇所については、事故  防止のため、さしあたっての応急措置を講ず  ること。 四 道路の整備については、交通容量の増大の  みならず、交通安全の確保の見地に立って、  これを推進するものとし、またトンネルの保  安施設の整備について、充分配慮すること。 五 交通安全施設の整備を強力に推進するもの  とし、とりわけ学童幼児の安全を確保するた  め、通学通園路の安全施設を緊急に整備する  とともに、児童遊園等安全な遊び場を確保す  ること。 六 信号機、道路標識等の設置及び交通の規制  については、道路環境交通量、交通の形態  等を科学的に調査し、実情に適応するよう、  これを実施すること。 七 踏切道の改良を強力に促進することとし、  特に、立体交差化、高架化の場合における地  方公共団体及び鉄道事業者の費用負担の適正  化を図ること。 八 運転者の労働時間、休憩時間、給与等の労  働条件については、その適正化を図るため、  関係者に対する指導監督を強化すること。 九 ダンプカー等大型貨物自動車による事故を  防止するため、すみやかに特段の方策を検討  の上これを実施すること。 十 大規模な土建工事の施行又は砂利等採取  の許可にあたっては、周辺地域道路事情、  交通状況、生活環境等を勘案の上慎重にこれ  を行なうこと。    また、工事の施行等により、交通事故発生   の危険が増大した場合には、建設業者等に対   し、事故防止のため、必要な措置をとるよう   指導すること。  十一 運転免許の申請に際しての診断書添附制   度については、更にこれを実効性ある適切な   ものとするよう慎重に検討すること。  十二 交通警察及び陸運行政の強化を図り、交   通安全の指導取締り体制を拡充整備する   こと。  十三 救急体制については、特に整備の遅れて   いる地方都市に重点をおいて、これを整備拡   充することとし、このため所要の助成措置を   講ずること。    また、救急隊員の救護技能の向上を図るた   め、その指導、講習を充実すること。  十四 救急医療施設及び更生医療施設の整備拡   充を推進するとともに、必要な地域に救急医   療センターを設けることとし、これらの施設   の整備、運営については、所要の助成措置を   講ずること。なお、脳外科専門医について   は、極力養成人員の増加に努めること。  十五 交通事故による被害者に対して迅速かつ   適正な損害賠償が行なわれるようにするた   め、自動車損害賠償責任保険等による損害賠   償保障制度を充実するとともに、交通事故相   談所の拡充等により、被害者に対する援助を   強化すること。   右決議する。  以上提案いたします。
  87. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御発言もなければ、ただいまの大倉君提案の決議案の採決をいたします。  本決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  88. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致でございます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、総理府総務長官、運輸大臣、建設政務次官警察庁交通局長から発言を求められておりますので、順次これを許します。総理府総務長官。
  89. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨に沿って十分検討し、努力いたしたいと存じております。
  90. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 運輸大臣。
  91. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 運輸省といたしましても、ただいまの御決議になりました事項につきましては、今後の行政にあたり、誠心誠意御趣旨に沿うように努力いたします。
  92. 松澤兼人

  93. 澁谷直藏

    政府委員(澁谷直藏君) 建設省といたしましても、ただいま決議されました事項につきましては最善の努力をいたしたいと考えております。
  94. 松澤兼人

  95. 鈴木光一

    政府委員(鈴木光一君) 警察庁といたしましても、ただいま御決議のありました事項中、警察に関連いたします問題につきましては十分尊重いたしまして、最善の努力を尽くしたいと思います。     ―――――――――――――
  96. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 次に、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案を議題といたします。  本案は、前回までに質疑を終了いたしておりますので、これより討論に入ります。  御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。
  97. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 私は、本法律案に対し賛成いたすものであります。  なお、この際各派の御了承を得まして附帯決議案を提出いたしたいと存じます。  まず、案文を朗読いたします。    船舶の油による海水の汚濁の防止に関する    法律案に対する附帯決議(案)   政府は、この法律の施行にあたって、次の事  項について措置を講ずべきである。  一、各種廃油処理施設の設置及び整備を促進す   ることに努め、これに必要な国庫補助金の増   額及び融資に関する枠の拡大、条件の緩和等   に努力すること。  二、排油規制を適用する船舶の範囲の拡大を検   討すること。  三、巡視にあたる船艇航空機等を整備するとと   もに、監視に関する官民協力体制を確立し   て、違反船舶の監視取締の強化を図ること。  四、排油の測定機器の開発を急ぐとともに、関   係者に対する啓豪及び知識の普及に努める   こと。  五、船舶廃油によつて生ずる被害に対する賠償   保険制度の拡充等救剤制度の整備に努める   こと。   右決議する。  ただいまの附帯決議案の内容は、すでに質疑の段階で明らかになっておりますので、説明は省略させていただきますが、何とぞ御賛成くださいますようお願いいたします。
  98. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  100. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました柳田君提出の附帯決議案を議題といたします。  柳田君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  101. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 全会一致と認めます。よって、柳田君の提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、運輸大臣から発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。大橋運輸大臣。
  102. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) ただいま慎重御審議の上御議決をいただき、まことにありがとうございました。  また決議になりました附帯決議につきましては、政府といたしまして、その趣旨を十分に尊重し、その実現に努力いたしたいと存じます。
  103. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。さように決定いたします。  午後三時まで休憩いたします。    午後一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時十八分開会
  105. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を再開いたします。  公害対策基本法案(閣法第一二八号)を議題といたします。  この際、本案に対する衆議院における修正点について、修正案提出者、衆議院議員八木一男君より説明を聴取いたします。
  106. 八木一男

    衆議院議員(八木一男君) 内閣提出公害対策基本法案に対する衆議院修正の趣旨について御説明申し上げます。  修正案文は、お手元に配付してありますので、その朗読は省略させていただきます。  修正の第一点は、本法の目的についてでありまして、政府原案の表現が必ずしも適切でなく、無用の誤解と不安感を与えてきたのを是正するため、第一条を二項に分け、第一項におきまして、まず、国民の健康の保護と生活環境保全が本法の基本目的であることを明らかにし、次いで、第二項におきまして、生活環境保全については経済の健全な発展との調和をはかる旨を規定しようとするものであります。  なお、この修正に伴い、閣法原案第八条環境基準規定につきましても、「考慮しなければならない。」を「考慮するものとする。」に改める字句修正を行なっております。  第二点は、国会に対する年次報告等について新たに規定しようとするものであります。これは、既存の他の基本法にならい、公害状況と政府の施策を、毎年国会に報告または提示すべきことを政府に義務づけたものであります。  第三点は、環境基準の常時検討でありまして、環境基準について常に科学的判断が加えられ、必要な改定がなされるべき旨を規定したものであります。  第四点は、政府原案の公害にかかる被害の救済の規定のほか、公害にかかる紛争の処理について明定しようとするものであります。  すなわち、第一項におきまして、紛争が生じた場合の和解の仲介、調停、その他諸般の紛争処理を確立すること、第二項におきまして、被害の救済の円滑な実施をはかるための制度を確立することを、それぞれ規定しております。なお、第二項につきましては、被害の救済に関する最も重要な制度として、事業者の無過失損害賠償責任の制度が逐次確立されるべきものと考えます。  第五点は、国または地方公共団体が、事業者の公害防止施設の整備について、金融上、税制上等の助成をする際に、中小企業者に対しては特別の配慮がなされるべき旨を規定しようとするものであります。  第六点は、公害対策審議会を地方公共団体も置くことができることを明定しようとするものであります。今後、この規定によりまして自主的な市民行政が活発化することを期待いたしております。  以上で御説明を終わらしていただきます。
  107. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。戸田君。
  108. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 公害基本法に対して若干質疑をしてまいりたいと思うのですが、まず第一番目に、公害の概念について質問したいわけです。御説明願います。
  109. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 通常は、公害ということばは私害に対して用いられることばでございます。しかしながら、最近、行政上あるいは社会の面で公害といわれておりますものは、私害というカテゴリーに入ったものまで含めて考慮せられる。すなわち、各種の行政対策の対象として、かなり私害的性格を持ったものまで対象として含まれ、それらを含めて公害ということばが使われるわけでございます。もちろん、それがきわめて極端になりまして、隣の家の煙突の煙を、端的なものを目して公害とは言いませんけれども、そういうものが集積いたしまして都市公害となり、あるいは発生源は一つの工場でございましても、その工場の被害がかなりな範囲に及び、相当な広がりにわたって害を与えるというようなものも、これは公害の対象として施策を講じていくことになっておるわけであります。もちろん、これは幾ら害が及ぶと申しましても、天然自然の害は、これは除くわけでございまして、その原因たるものは必ず人間の活動に伴って発生した何らかの原因というものが、人の健康あるいは動植物の生育等に影響するということでございまして、そのようなものを総称して公害というふうに言われておるわけであります。  その中で、この公害基本法として特に取り上げて、この法の対象としておりますものは、第二条に述べておりますように、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭、これらのものを特にこの公害対策基本法の施策の対象としてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも、やはりその辺の基本的な概念がはっきりしないと、私は、いつか今回の基本法の発効についても明確を欠くというのは、そういうところから出てきておると思うのです。確かに、いま局長の言われた一面も私は入っていると思いますが、この公害問題に関する資料集の中で、これは国立国会図書館の調査立法考査局で発表されたのですが、それによりますと、「「公害」という用語は、イギリスの「パブリック・ニューサンス」に由来しているという学者もある」、これを引用いたしまして、法律的な用語としてはあえて明確にしながら次のようなことをいっておる。「「特定又は不特定の工場・事業場その他の者の行為が原因となって公衆衛生又は財産を侵害し、被害者に対し現実の健康、不便、不快、不利益の損害を与える場合に、その被害又はその事態」を指すものと解釈されている。」――これが大体各国で意思統一をした公害に対する法律的用語ではないかと、こういうことを言われておるのでありますが、こういう問題について、局長ないしは大臣、どうお考えになりますか。明確に答弁をしていただきたい。
  111. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いまお尋ねの解釈の点は、イギリスの「パブリック・ニューサンス」ということばの解釈でございますが、そういうことばそのものはございましても、公害というような広い概念でそれを包括いたしまして一つの立法として施策を講じていくというようなことは、世界の各国まだ実施されておらないわけでありまして、今日、日本で公害と言っております広い概念の中の個々の、大気汚染、水の汚濁、騒音というような一つ一つのこの概念に包括せられる個々の障害を及ぼす事象、それをとらえて行政施策が行なわれ、独特の法律がつくられるということで各国言われているわけでございまして、わが国が法律でわざわざ「公害基本法」というような法律で明記し、これを包括的に公法上の規制を加えていこうという、こういう形の公害対策をしているところは、今回わが国がしようとするのが世界初めてでございます。
  112. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この基本法ですね。原案の第二条でありますが、これに「定義」となっておりますね。いろいろとあるわけでありますけれども、この定義の法律的用語解釈といいますか、これと概念との関係、どういうふうにお考えになっておりますか。この関係をひとつ説明していただきたい。
  113. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害という概念、心は、非常に極端なことを言えば、一人一人の個々人によって違うと申してもよろしいものでございます。学者によりますれば、交通戦争のようなものもやはり今日は公害である、極端な場合は、災害が起こることさえ災害防備を怠ったということで公害であるというような極端な議論さえ出てくる。この場合には、原因は人為的ではございませんから、決してそういう概念にはなじまないわけでございますが、人によりまして公害の解釈が違うわけでございます。従来、行政当局が公害として種々施策を立て、考慮してまいりました考え方は、先ほどお答え申し上げましたようなものが対象となっておるわけでございます。すなわち、何らかの人為的な原因によりまして起こった人間の健康に対する障害、あるいは動植物に対する障害でございまして、相当な広がりを持っておるものということは、すなわち、行政施策としてこれを措置する必要がある、個人個人の単純な民法上の争いで解決するようなものでないものということで行政対象となってくるわけでございます。したがいまして、そういうようなはっきりしない概念で扱われておりますけれども、この法律で対象としてこの施策を適用してまいるのは、ここに掲げてあります種類の公害に対して行なう。なぜこれだけに限ったかと申しますと、これらのものが今日最も大きな公害としての障害を与えておりますし、また当面、特に早急にこれらに対する対策が必要であるし、また、これらのものに対して共通のこのような方針を定めてやることが適当である。こういうことで、この種のものを特にこの法律による対象として定義として取り上げたわけでございまして、この定義の中に入らないから公害ではない、あるいは対策を立てないということとは別個の問題でございます。
  114. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 第二条で取り上げられておる種類の、五種類ありまするが、大体公害の概念から来る範囲の問題については、私はそう疑問は持っていないのです。やはり、通俗的に言われておるこの五種類でややいけるんじゃないか、こういう見通しは持っておるのであります。ただ、基本的に概念についての解釈、こういう問題について、だいぶ政府は何か一面おおいかぶせたというか、オブラートにでも包んだような抜け道を考えておるのじゃないかと、そういう気持ちを持つのですが、この法律全般をながめてみますと、以下いろいろと指摘をしてまいりまするけれども、そういう点がいろいろとあるわけです。ですから、この概念について先ほど局長もちょっとお話をされたのですけれども、結局、私害に対して公害という、そういう一つの用語の適用というか、そういうものも出てくるのでありますが、これは、局長も言われたようですが、その私害といえども私は公害の範疇に入るものだ。確かに最近各地方におきましても、工場誘致とか、そういうものがどんどんやられておる。そういう場合、その工場誘致によっていろいろ公害というものが発生するのでありまするから、その原因を探っていけば、当然私害と思われるような問題についても、やはり公害の範疇に入れて総体的な処置をするのが私は適当ではないか。このことは、結局、追っていくと、概念がはっきりしないと、いざ救済とか、そういういろいろな諸問題が起きた場合に、解決する場合に、どうも政府の意欲的な積極的な政策というものが打ち出されないという心配が一面隠されておるのじゃないか。こういうことを私は危惧するのでありますけれども、そういう意味合いにおいて、やはり何といっても、一つは民法上処理できる、こういうものは明らかに私害だ。さらに行政上措置しなければいけないのが公害だ。しかも、私害というものはそういう関連性を持ってやられていくわけでありますから、当然公害の範疇に入る、総体的にはそういう公害全般において政府は責任を持つというのが当然の措置ではないか。こういう形において公害というものを一面統一をされて、以下、この法律の適用なり今後の運用なり、こういうものがやられていかなければ私は完全な運用というものが、法律というものが生きていかない、こういうふうに考えるわけであります。そういう総体的な問題についてどう一体お考えであるか。
  115. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) たとえば、騒音を例にとりましても、隣のうちのラジオが非常に大きいというような単純なものでございますれば、処置としましては、軽犯罪法の法律の取り締まりなり、あるいは問題によりましては民法上の損害賠償という事例も起こるかもしれませんが、とにかく、そういう単純な処理で片づくものがあるわけでございますが、これが建築騒音でありまして、発生する場所はなるほど一つ事業所、一つの建築場所でございましても、影響するところはきわめて広範であり、多数の住民が共通にはなはだしい障害を受けるということでございますれば、当然にこれは公害対策の一環として措置していく必要があるわけでございまして、その点は御指摘のとおりでございます。
  116. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そういう概念の上に立つとすれば、まず第一に考えられなければいけないのは、私はこの公害行政の一元化問題だろうと思うのですね。少なくとも、私がいま理解することにおいては約十一の各省が関係をいたしておるわけでありますね。ですから、それぞれ官庁のなわ張り争いでいろいろな問題がありまして、これが一元化されておるならば、スムーズに、完ぺきに、早期にそれらの問題の解決に乗り出したり、調査をしたり、いろいろな諸作業というものができるのでありますけれども、そういうことがいま各省にまたがっておりますために、そういう迅速な諸作業というものができないかっこうになっておる。こういう問題について、大臣は、今後こういった法律を運用し、適用し、生かしていくという立場からすれば、どういうふうにこの一元化の問題について取り組んでいくか、この問題について大臣の答弁を願いたい。
  117. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 御案内のとおり、この公害というものが、先ほど概念についての議御論もございましたが、まことに広範多岐なものでございまして、これを行政官庁の所官別に考えてみましても、御指摘のとおり、十数省庁にまたがっておる。たとえば都市公害一つとってまいりましても、その都市公害発生原因が一体どこの役所がこれを所管しておるかということを数えてみますと、あるいは通産省があり、あるいは建設省があり、あるいは運輸省があり、それにまた厚生省がからんでおるといったように、たとえば一つの交通に対する公害といったようなものを考えてみましても、まことに多岐でございます。各省庁の分野に属する、行政に属するこういったようなことが、この公害の特徴だと思います。したがいまして、この公害に対する措置、公害防止といったようなことにつきましては、各分野における省庁がほんとうにこれに取り組んでいかなければ、一つの役所ではどうにもならない。こういう事態でありまして、この面から申しますと、この公害に対する措置というものは非常に分かれて、いろんな方面からこれを措置していかなければならないという面が一つございます。しかしながら、それだけにまかしておいたのでは、これは非常に措置が分離分断されるというようなことがございますので、一面においては各分野から、極力、これの障害、この公害についての措置を考えてもらうとともに、他面におきましては、これを統一総括してまいらなければならないという面が一つございます。そのような考え方、両面からこれをどう措置していくかということを考えまして、これを統一していくのが、すなわち、各省庁がやっていくのであるけれども、それでは分断されるというので、そこで一つのその統合機関と申しますか、統一機関と申しますか、他の面からこの各省庁の長が相集まりまして、そうして一つ会議体というものをつくる、そうしてこの上に総理大臣が長となってこれを司会していくということが、私は公害防止し、公害対策を立てていくのに、最もこの一元化をしていく方法であろうと、かように考えまして、法案におきましては、ごらんのとおり、公害対策会議というものをつくったわけでございます。
  118. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 非常にいろいろ大臣が強調されるのですけれども、中身がないと思いますね。どういうものの構想をもってこれらの法律を今後一体実施をしていくのかということになると、中身がない。かつて鈴木厚生大臣の当時に、厚生省の案として公害行政委員会をひとつつくろうじゃないかという具体的な案があったのです。しかし、これは各省庁のよってたかっての袋だたきにあいまして、これが消滅しておるのですね。もう一つは、その際に、鈴木前厚相は、この公害行政一元化の必要性から行政機構を設置する、こういうことを明確に責任ある場でもって公害をいたしておる。一体、いまの坊厚生大臣は、こういう構想を、今後つくる意思があるのかないのか。そういうものに一元化というものを求めながら運用というものを充実させていく、こういう考え方はないのかどうか、その辺を明確にお聞かせ願いたい。
  119. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 私は、ただいまの考え方といたしましては、先ほど御答弁申し上げました、一面においてはそれぞれの専門分野において大いに力を入れてもらうということと、他の分野からはこれを統一的総括的に指導していく、こういう両面からも、ただいまの公害対策会議というものが最も適切な考え方ではないかと、かように考えておりますので、今日ただいまのところは、ひとつその委員会といったような、行政何とかといったようなことは、私は今日考えておりません。
  120. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 前の大臣の回答の中に、これは衆議院の公害対策基本法案の審議のときの質疑に対する大臣の御答弁でありますが、これによりますと、今後の主管庁は、大臣はだれかということに対して、厚生大臣、と……。で、いまの厚生大臣の御答弁によりますと、総理を頂点に置いてやったほうがいいじゃないか、こうなりますと、いまの公害基本法から来る主管庁の責任大臣と、いま大臣がおっしゃられたこの基本法の運営について今後充実強化していくためには内閣総理大臣を長として、と、たいへんここに行き違いがあると思うのですね。これは一体どういう考え方に基づいてそういうことになったのか、これが一点であります。  それからもう一つは、いま大臣がおっしゃられたようなことでは、ほんとうに私は、この公害基本法をつくって、これからそういう公害で悩まされ、国民の健康、環境、こういうものを整備をして、よくしていくということにはならないと思うのです。だから、ほんとうに魂を入れていくためには、過去、これは何回かやって、もう基本法というものはつくられておるわけですね。たとえば農業基本法というものがつくられた。しかし、そのもとにおいて結果は農業の零細農家の切り捨てにいっている、逆に、ほんとうは。中小企業基本法というものがつくられた。しかし、中小企業が歩いて見たら、結局、毎月毎月その倒産の数がふえて来ている。こういう事態に追い込まれてきている。だから、ほんとうに国民が理解をし、期待をするような、そういう基本法というものをつくっていかなければいけないと思うのでありますが、そういうことになれば、いま言った運営処理上欠かせない一元化等の問題については重要な問題だと私は考えるのであります。そこをやはり掘り下げて考えていかないと、今後も、農基法やあるいは中小企業基本法と同じような結果というものを招来するのではないか、こういう心配が非常に危惧されるのでありますが、そういう問題も含めて、大臣の回答をお願いしたいと思います。
  121. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 公害を処理していくべき最高の機関と申しますか、これの衝に当たる最高の機関は、これが公害対策会議であるということは、公害基本法ではっきりとうたっているわけでございます。しこうして、その公害対策会議というものは総理府に設置する、こういうことに相なっておりまするから、総理府の一番の責任者と申しますか、これは総理大臣であることはもとより申すまでもないことでございますから、そこで、公害対策会議の主管というものは、これは明らかに総理大臣である。しかしながら、公害基本法の所管は厚生大臣だということに、これは閣議了解のもとに厚生大臣ということに相なっておるのでございまして、したがいまして、さような意味におきまして厚生大臣がこれを所管しておる。だから、公害対策会議というものは、これは総理大臣の所管である。しかし、その対策会議の庶務につきましては厚生省環境衛生局がこれをやっていく、こういうことに相なっておりまするから、この限りにおきましては、その庶務は厚生省環境衛生局でございまするから、その環境衛生局に対する、何と申しますか、指導と申しますか、監督と申しますか、これは厚生大臣が持っておる、こういうことに解釈されるであろうと思います。そうして、そういった機構のもとではこれはうまくいかぬのじゃないか、こういうお話でございますけれども一つ公害を取り上げてみましても、たとえば自動車から公害発生するという場合に、これはどうしてもその自動車の、何と申しますか、機械と申しますか、設備と申しますか、そういったようなものを、これができるだけ公害を出さないようにしていくということは、これは私は通産省だと思います。ところが、その自動車を幾らよくいたしましても、やはり排気ガスが出る。その排気量が少なくても、数が多ければ非常に公害発生する、というようなことはこれは建設省道路計画といったような、道路が十分整備されていないといけないといったようなことで、自動車の公害一つをとってみましても、いろんな役所が関係しておるといったようなことから考えてみまして、それをたとえば、建設省から、あるいは通産省から、あるいは厚生省から人間を出しまして、そうして異質の者が集まったところの機関、そういったようなものをつくってこれを処理していくということよりも、むしろ、公害対策会議といったところで、各省庁のほんとうの責任者であり、これを主管しておる大臣がそこへ行きまして、一つ会議体の一員として参加いたしまして、そうして相談をする。しかも、それには総理大臣がこれを主宰するという行き方のほうが私は実効をあげるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  122. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも私は、話を聞いておりますと、大臣はほんとうにこの基本法の発足にあたって、公害というものの発生防止、その他発生した場合の救済措置を真剣にやろうという、そういう筋道のお話が聞けないですね。そういう、いま各省にゆだねたようなかっこうでやってまいっておるから、結果的には、いま公害というものが各所に発生しておるのだと思う。そうして、そういう事態というものが、いま公害基本法の第二条で、五種類でもって、たとえば大気の汚染であるとか、水質の汚濁であるとか、騒音、振動、地盤の沈下、こういうことになってきているのです。そういうものを公害だと称して、これに対する具体的な対策をとらなければいけないというのでありますから、しからば大気汚染はどういうところから発生するのか。これはやはり、専門的にその発生要因を探究し、これらの問題をなくする措置というものをとっていかなければならないと思う。各省にまかしてやっているところで、いまこういう状況に来ている。だから、それは確かに一酸化炭素がタクシーの排気ガスとして出てきて、それが公害、こういう場合に、運輸省としては、車の増車やあるいは生産部面や、あるいは動かすことにつきまして、そういうことについては非常に一生懸命取り組みますけれども、この公害を出すところの排気ガス、一酸化炭素等についての公害防止については、最近は非常に熱意を入れてきているようでありますが、しかし、そういうところに主点があるのではなくて、むしろ車を動かすことに重点がかかっている。だから、そういうものをチェックする意味合いにおいて、公害基本法というものによって一つの一元化された機構でもってこれに対処していくということにならないと、私は、なかなか思うとおりの公害防止策というものは出てこない、こういうように考えますから、結局、大臣としても一元化がとれるならば私はそれに越したことはないのじゃないかと、こう思うのですがね、正直に。それが、各省のなわ張り争いやなにかでむずかしい。結局、それは無理押ししないで、現状に迎合するといいますか、そういう状態じゃないかと思うのですが、この点どうですか。もう一回ひとつお聞かせ願いたい。
  123. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 一つのそういった公害を、たとえば大気汚染でも、あるいは水質汚濁でも、これを公害対策会議で取り上げまして、そうしますと、そこへ出席いたしておりまする、たとえばいま御指摘になりました運輸省あるいは通産省――運輸大臣のほうでは、自分のほうでいかに少なくしょうとしても自動車の一酸化炭素の有毒ガスを排気することをあまりしないようにやってもらわなければ困るじゃないか、また運輸大臣に対しましては通産大臣のほうから、これは自分のほうでいかにやっても建設省において道路計画といったようなものをもっとやってもらわなければとても実効を期することができないじゃないかと、お互いにそこでいろいろ議論をやり、注文をやり、そういうようなことをやって、しこうしてその上に総理大臣がおりまして、これを指導し、判定していくという行き方が、その生き方が、生まれたなりの赤ん坊であると、これは生まれたままの赤ん坊のような時代におきましては、これは直ちに実効を上げるということはむずかしいのではないかと思いますけれども、これをりっぱに育て、これを運営していくということには、そんなに時間がかからないで、この会議体によりまして私は実効を期していくことができると、かようにいまのところは考えておるのでございます。
  124. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも大臣の答弁は的はずれだと思うのですよ。私の端的に聞いておるのは、一元化の必要があるかないかということです、結論は。それについて、あとでひとつ答弁をしていただきたいと思います。  それから、衆議院で大臣が答えられておるのですが、要約すると、今後の運営措置で、機構として設けられるのは、この主管庁は厚生省、そして会議の招集権限は総務長官、そしてその庶務は厚生省でやる、こういう運営措置で、はたしてうまくいきますかどうか、これをちょっと……。これは厚生大臣が答えているのですね。対策会議所管は総理府総務長官で、その庶務は厚生省でやる、こういうことなんです。会議の招集は総務長官なんです。しかし、その庶務をやるのは、扱うのは、一切準備をしたりなにかするのは、あるいは議事録をとったり、あるいは残務整理をやったり、こういうことは全部厚生省だ、主管庁は厚生省だ、一体こういうことで、よい運営措置ができると思うのですか、どうですか、具体的に。
  125. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害対策が進まないことの原因の一つに、所管が分かれておる、先ほども加藤委員から、公害問題が起こった場合に、どこへ持っていったらいいかわからない、一つの事例をとらえても、関係省が非常に多いという御指摘があったことはそのとおりでございまして、確かにそのものの立場からいえば、公害の窓口そのものが今日まだきまっておらない、どこに持っていったらいいかわからないという実情でございますし、公害の解決も各省庁に分かれておることは事実でございます。で、公害対策を強力に進めるには、これを何とかして解決しなければならぬ、これも御指摘のとおりでございます。厚生省におきましても、これは一つの行政委員会、強力な行政委員会として、国家行政組織法の第三条のような強力な機関、公害対策委員会というようなものが適当であろうかと考えて、厚生省の試案にはそのような案を組み込んでおいたわけであります。その後、この試案をもとにしまして関係各省いろいろ検討したわけでございますが、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、公害の、たとえば大原の交差点で非常に自動車の一酸化炭素が多いという問題そのものの解決も、自動車を直すことだけではなくて、あそこを立体交差にしなければどうにもならない。立体交差にするとなれば、これはまさに建設省、それから交通取り締まりも必要である、これは警察庁である。そのそれぞれの省庁から公害という部分だけを引っこ抜いていって一つ場所にまとめてみたところで、なかなかうまくいくものではない。たとえば下水道にいたしましても、公害関係のある下水だけを一カ所に引き抜いてくるということでは、どうも下水道行政もなかなかうまくいかないということで、それよりはむしろ、それぞれの行政の最高責任者が集まって方針をきめたらどうだろう、それが公害対策会議である。いま一つは、今度、公害集中地域に対しては特別な公害施策を集中的にやる、特別対策をやる、その特別対策もこの大臣ペースの会議にかけてきめる、そこで最高方針がきまったら、その方針に従って各省がそれぞれの分野の仕事をきまったとおりに施す、こういうことが一番いいのではないかということで、各行政の最高責任者がメンバーになった会議で方針をきめていく、総理がそれを司会する、こういうことにいたしたわけでございます。もちろん、これによって十分促進されるというか、あるいはお尋ねのような別個の公害だけをつかさどる行政庁をつくることが適当であるかということは、論議としては残るわけでございまして、私どもとしては、すなわち政府としましては、この対策会議の形で公害対策を強力に進めたいし、各大臣もその強い決意であるし、総理もこれを強く推進する、こういう決意であるということでございまして、お尋ねのような御意見も十分あり得ると、かように思います。
  126. 大倉精一

    ○大倉精一君 関連して……。  これの論議を聞いておりますと、各省庁の責任者が集まってやるのだから効果があるとおっしゃるが、私は逆に、そういう責任者が集まっておるから、この問題に関する限りは効果がない、こういう考えを持っているのです。きょう午前中、大臣おいでにならなかったのですけれども、いろいろ質問しても、総括的に答える人がいない。いないですよ。これが実態なんです。それで、まず私は、なぜ責任者が集まったらかえっていけないということを考えるかということは、今度の基本法をつくるときに、過程において、いわゆる一番問題になった経済の発展との調和という問題があるのですけれども、これは相当のいきさつがあってこういうものが入ったと思うのですね。端的にお伺いするのですが、ひとつ率直に答えてもらいたいが、この経済との調和ということばを強く主張した省庁はどこですか。そうして、その真意はどういう真意であったか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  127. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 率直に申し上げますが、「経済の健全な発展との調和」という文言でございますが、これはすでに何回か、総理府に設けられました連絡会議で折衝いたしまして、そうしてでき上がったものでございまして、何大臣がこれを強く主張したとかなんとかということではございません。この経済健全なる発展との調和ということが、いやしくもこれが、健康だ、生命だというものに対して調和をしなければならないといったような制約がついておるということであるならば、私も強く閣議の席上でこれに対し反駁をしたのでございますけれども、この条項というものは、そうでなくして、一歩進めて、生活環境というものをよくしていく、そのためには経済の発展と調和さしていかなければならない、こういうような趣旨でございましたので、これに対しまして私も別に反駁の必要はない、ただ生命に関係があるということであるならば断固としてこれは反対をしたわけでございますけれども、そういうようないきさつでございまして、特にこれが大きな議論になったということは、私は記憶いたしておりません。
  128. 大倉精一

    ○大倉精一君 こういうことは、審議の条件として非常に重要な問題でありますから、正直にずばりと答えてもらわぬとぐあいが悪いので、一応私は、新聞やその他に書いていること、人の言っていることを、そうだというぐあいに解釈をしておりますが、何も経済の発展なんていうことは法律の法文に書く必要はないんであって、それは本来ならば、これは基本法でありまするから、これから何年かかるかわからぬが、個々の具体的な立法措置をしなきゃならぬ、具体的な措置をしなきゃならぬ、この措置をする段階において産業と経済の発展調和ということを考えるべきであって、法文に書くべきじゃないと思う。そこで、通産省なり運輸省あたりがどうしても経済の何とかいうのを入れろということで相当すったもんだしたということを聞いておりまするが、これがほんとうだとすれば、たとえば、まあ環境基準の決定を具体的にしなきゃなりませんが、これはまあ大体いまの法律の中でやっていかれると思う。そうすれば、たとえば大気の汚染については、ばい煙規制法というものがある。ばい煙規制法というものは通産省厚生省との共管ですよね。実際は環境基準をつくるということが大事であって、通産と厚生と、いわゆる経済の云々ということで大いに論争した両省が共管しておる中で基準をつくるということでしょう。ここに非常に大きな問題がある。ですから、通産省だ何だのの代表選手じゃなくて、いま戸田君の言っておるように、公害庁でも何でもいいんですけれども、中央に一元的な機関をつくるべきだ、そうしなければ各省庁の主張なりあるいは壁というのは解けない。あんたもおっしゃったように、気象庁からも責任者が出てきておるから、よけいにややこしくなるんですよ。それを戸田君が言っているのだと思う。  そこで、もう一点聞きますけれども、総理大臣の諮問機関というのは方々にあるんですけれども、総理大臣の諮問機関の答申については政府はどういう考えを持っておられるのですか。尊重されるんですか。そういうことをまずひとつ基本的な問題について聞きたい。
  129. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 諮問機関の意見なり、諮問機関の答申というものは、これはでき得る限り尊重していくというのがたてまえでございます。
  130. 大倉精一

    ○大倉精一君 そうならなければならないと思うのですけれども、総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会、これが答申しておる中に、ちょうどいま戸田君の言っておるとおりのことを言っておるのですね。つまり「このままでは、現行法制からくる制約や産業界からの要請もあって、基本法がほとんど実効を上げえないおそれがある。」あと途中抜かしまして、「まず公害行政の一元化につき責任をもつ中央機構を設置し、各種公害に対する個々の法律を作るとともに、それらを一つの体系として統一整備しなければならない。」と言っている。しかも、あなたのおっしゃるとおりの何とか会議というものをつくってみたところが、法的の拘束力はありませんよ。ですから、総理大臣のつくった諮問機関がこういう答申をし、こういう意見を述べておるのですが、政府は全くこれを無視しておるじゃありませんか。戸田君が言っておるとおりのことを諮問機関が答申しておるじゃありませんか。これはどう思いますか。
  131. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) いま御指摘になりました社会保障制度審議会の御意見につきましては、これはむろん、公害対策基本法は、制度審議会へ諮問をいたしまして、そしてこれに対して答申をいただいたという性質のものではございません。公害対策基本法は、これも非常に大事な法案でございますし、制度審議会のほうから、一ぺん説明をしろと、こういう御注文がございまして、その御注文に応じて御説明を申し上げたわけでございますが、それに対しまして、そういう申し入れと申しますか、御意見をちょうだいしたわけであります。もちろん、諮問したものではないからこういうものはどうということはないのだと、さようなことを考えておるわけではございません。御意見でございまするから、できるだけこれは尊重してまいるつもりでございますが、ただいまの公害行政の一元化についての中央機構というものは、私どもといたしましては、この公害対策会議というものがこれが一元化された機構である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  132. 大倉精一

    ○大倉精一君 それは大臣ごまかしですよ、あなた。会議なんというのは機構じゃありませんよ。そこで、まあそういう意見は一応省いて、関連質問ですから端的にお伺いするが、この意見は賛成ですか、反対ですか。尊重ということは非常に便利なことばですね。賛成ですか、反対ですか、政府はこれに対して。
  133. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 反対か賛成かと言うて詰められますと、これはいろいろな項目、条目について少し考えてみなければ、いかに尊重いたしますとしても、全面的にこれをうのみにすることが必ずしも尊重ではない。私は、御意見に対しまして慎重にこれを検討するということがすなわち尊重であろうと……。大内先生は私も尊敬する方でございますけれども、公人の大内会長が制度審議会においておきめになったということは、それだから、大内先生の制度審議会でおきめになったのだから、それはもうそっくりそのままうのみにする、これは必ずしも私は尊重でないと思います。だから私は、おきめいただいたことは慎重に検討いたしまして、その御意見の中ででき得るだけこれを取り入れていくということが私は尊重だと思います。
  134. 大倉精一

    ○大倉精一君 これはもう何べん聞いても同じだろうと思うのです。尊重とか前向きということばがはやるのですがね。あまりそういう形容詞は使わぬようにしてください。ですから、いまあなたのほうで、この意見は検討をすると、いわゆる答申なり意見書というものは検討をするとおっしゃるから、まあ検討なさることだと、私はそう解釈しましよう。  先般も、この委員会において、交通安全について松平長官に対しまして、交通戦争ということは司令官がいなければできないじゃないか、交通安全庁をつくったらどうか、考えておきましょうと、こうおっしゃったが、これと同じでありまして、こういうものはほんとうに司令官がいなければだめだ。きょうも午前中やって、そしてある一つ事業活動において公害発生しておる、この事業活動を一応ストップしなければこの公害対策はできない、だれがストップするのだと、だれも返答がない。でありまするから、いま戸田君が言ったように、そういうようなものをきちんと構成するために、あるいは司令部を置くために一元的な機構をつくれ――あなたは閣僚会議のあれが機構だとおっしゃるけれども、これはごまかしだ。ですから、これはひとつ検討してくださいよ。
  135. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも私は、局長が言われることと大臣の言うことに、若干この問題ではそごがある、開きがあると思う。局長は、私の言った一元化の方向一つの論理としてはある、しかし、いま法案として政府が提案しておる、そういう方向もある、こういうことである。大臣はその点については明確な答弁をやってないのですね。ですから、先ほど聞きましたけれども、一元化の必要があるのかないのか、もう一回これをひとつお答えを願いたい。  それからもう一つは、衆議院の特別委員会の中で、橋本公害課長がこういうことを言っておるのですよ。これを読むと長くなりますから読みませんが、私が要約いたしますと、こういうことだ。主管大臣は厚生大臣、各省の関係あるものはそれぞれの大臣が並列に並ぶ、そうして会議の招集は総務長官、その庶務は結局厚生省である、そうしてなお合議体制というものをとって事務局体制をとっていくということ、こんな複雑な機構で、今後の公害対策に一体政府が熱意をもってやれるか、あるいは円滑なる業務遂行というものができるかどうかということについて、私は非常に疑念を抱くのです。一体そういう機構と運営でうまくいけると思いますか。大臣どうですか、その点は。
  136. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 先ほども申し上げましたとおり、実際、公告文集会議において基本方針を検討しきめていくということは、総理大臣を長とする公害対策会議、その庶務をやっていくということは、総理府にはそういったような、何と申しますか、機構、これがない。そこで、この法律を主管いたしておりまする厚生大臣のもとの環境衛生局が庶務をやっていく。こういうような仕組みでございまして、私は、こういったような行政上の組織が、ちょっと私のいまの頭の中には、具体的に何々があるということを申し上げる知識もございませんけれども、そういったような仕組みで今日やってきておるような機構と申しますか、仕組みと申しますか、それもあるように私は思うのでございますが、そういうことになっておるからこれはうまくいかぬのじゃないか――それは初めてのことでございますから、公害基本法というものは世界にも類例のない、それに取り組むものでございますから、そういうような意味におきまして、しょっぱなから何らの遺憾なく支障なくやっていけるというような大言壮語は私はいたしませんけれども、こういう仕組みだからいけないというふうには私は考えないのであります。
  137. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 一カ所にとどまっているわけにもまいりませんので、時間もありませんから先へ急ぎますが、いま大倉委員への答弁で、大臣が答申からは後退はしていない、こういうことを言われているのですが、これは六月の二十二日の各新聞に、答申後退はいかぬという政府への異例の意見書ということで、大内兵衛会長が意見書というものを政府に対して提出をいたしております。意見書の内容を見ますると、おおむね三項目でありまするが、その第一項に、予防対策や被害者に対する救済措置体制を確立させるべきだ。二は、の種類によっては無過失責任を負わせるようにすべきだというようなこと、それからいまの一元化の問題、こういうことを具体的に意見書として政府に申し入れている。こういうことがあるのでありまするが、これが事実だとすれば、私は明らかに、基本法全体をながめてみまして、政府の今回の公害基本法というものは答申案より数段後退している、こういうふうに率直に見るのが私は至当じゃないかと思いますが、この辺はどうですか。
  138. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 御承知のとおり、この公害基本法を策定するにあたりましては、内閣の連絡会議にかけまして、それに関係のある各省庁等の関係者が出てまいりまして、そうして論議に論議を重ねた結果策定されたのでございますが、その過程におきましては、いろいろとそれは調整は行なわれたのでございますけれども、原案に比べて非常にこれが後退したというようには私は考えていないのでございます。
  139. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 じゃ、具体的に質問をしてまいりたいと思うのですが、通産省並びに財界が主張している公害の定義、こういうものについて、いまこの法案から除去されておりますが、私は、陰でそういう精神支配があるんじゃないかというふうに考える。そういう意味合いから質問するのでありますが、加害者も被害者も不特定多数だと当初は言っておった。この公害の加害者、被害者はいずれも私は特定のものであると考える。これは、たとえば自動車の排気ガス問題を一つ考えてみましても、自動車という特定の機械、これは不特定ではないと思う。それから亜硫酸ガスについても、排出するのはその工場、こういうところにあると思う。明らかに特定だと思う。さらに被害者の場合を考えてみましても、健康がおかされたと規定すれば、これは特定のものに限定される。こういうことになれば、私は、不特定ということではなくて、特定という存在が明らかだと思う。そういうことに基づいて公害が起こり被害者が発生する、こういう状態になってくると思う。だから、いまの世界保健機構、WHOでは、こういう不特定ということばのは使っておらないのです。明らかに特定と言っているんですね。こういうことから推してみましても、世界的なものの考えの標準というものはそこにいっているんであります。もしそういうものが大臣や局長の考えにあるとすれば、今回の公害基本法というものは、いわば全く骨抜きになっている、無過失責任体制の中において明らかに骨抜きになっている。そういう意味合いにおいて、どうお考えになりますか。
  140. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) たいへんむずかしい問題でございますが、一体、公害というものを受けた、たとえば大原町におきまして公害を受けた、私が大原町を通って、そうしてあそこで長い間自動車をとめられて、非常な長時間にわたって悪い空気を吸ったから、そこで私が障害を受けたと、こういうことになってまいりますと、坊秀男というものはまさにこれは特定の人間でございまして、これは特定でございます。だがしかし、それは公害というものが発生しておる地域という所にたまたま坊秀男が参りまして、そして障害を受けたということでございます。で、もしも、この特定の坊秀男でございますけれども、何か自動車に乗ってそれが公害発生するまで自動車が集積していくということになってまいると、これは特定の自動車ということにあらずして、相当不特定多数の自動車が、一つ一つではまだ、公害発生する、人を障害するというところまではいっていないけれども、これがだんだんと量的にふえていくと、何と申しますか、質的に非常に悪いガスを数によって出すという、何と申しますか、転換が行なわれるというようなことで、私はその公害というものを、先ほども一体公害の概念というのはどういうものかというようなお話もございまして、決して私は学者でも何でもございませんから、これは定説だとか確定的なものだと主張するわけではございませんけれども一般公害という概念を考えて見ますると、やっぱり公害というものは、障害を受けるほうも不特定多数であり、相当不特定で広い地域の人が障害を受ける、被害者の側からいいまして。加害者の上からいいましても、これは、あるいは自動車である、あるいは工場であるといったようなものが加害者の立場においてやっぱり不特定多数であろう、私は、公害のほんとうの――ほんとうのと申しますか、概念を抽象的に申しますと、そうであろうと思うのです。ところがしかし、公害を除去していく、公害を阻止していく、こういったような立場から申しますと、私は、加害者は、たとえ不特定多数でない、あるいは一人である、あるいは一つ会社であるといったような場合にでも、その会社なり一人の人間が、その工場なりが、非常に不特定多数の地域、不特定多数の人たちに障害を与えたということであるならば、これは公害を除去する、こういう立場から申しますと、その会社なり、たとえ一つであろうとも、その会社に対しまして、この公害基本法による、何と申しますか、責務と申しますか、そういったようなものを規定していかなければ、公害防止ということは私は困難であろう、だから公害基本法において公害規定しておるのは、第二条に何と何と何というようなことを書いてございますけれども、それとは別個の観点におきまして、公害の概念は抽象的に言えばいずれも加害者も被害者も不特定多数であろうと思いますけれども公害防止する、この法律にひっかけて公害防止する、こういう立場から言いますならば、加害者必ずしも不特定多数でなくとも、この公害基本法によって、これによって責務を負わしていくといったような必要があるのじゃなかろうか、かように考えます。
  141. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 当初、厚生省案というものは、非常に私は一定の筋を貫いておったと思うんですね。いわゆる無過失責任制をとった。ところが、一方で、審議会がそういうことを主張して進行してきた、あるいは厚生省もそういう考え方で固まりつつあったということになりましたら、経団連会長の石坂さんが、こういうことを政府に対して意見具申をした、公害をおそれるあまり産業振興を忘れることは許されない、公害発生の責任は企業側にもあるが、その一切を企業に押しつけるのは誤りだ、こういうことを言われてから、急に無過失責任制というものは後退していった、こういう声が事実あるのでありますけれども、その辺は、財界に押されて、厚生省はせっかくいい案を考えてつくったのだけれども、そういう財界の押しによって後退してしまった、こういうことはないんですか。大臣どうですか。
  142. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害審議会の中間報告にはことにそれが明瞭に出ておりますが、最終答申においても無過失賠償責任の思想が出ておるわけであります。厚生省公害基本法のもとになる試案をつくります場合に、この無過失賠償責任の具体的な取り扱いをどうするかということをずいぶん検討いたしたわけでございますが、その段階では、なかなか具体的な措置としてあがってこないということで、その項目を基本としないで試案をつくったわけでございますが、今回厚生省の試案をもとにしまして総理府において各省庁が集まりまして討議をいたしたわけでございますが、その議論の間におきましても、無過失責任というものは十分考慮する必要がある、何らかこれを具体的に考えていくことはできないかということで、かなり突っ込んだ論議が行なわれ、努力も払われたわけでございます。それは、原子力基本法において、すでに無過失賠償責任の項目がございますし、基本的にそのような考え方公害に対する救済措置を考えていくことは十分考えられることであるということで、その具体策について相当考慮したわけでございますが、この段階でそれを具体的に法文にする、一般的な通則として法文にしてまいるということはできないことでございますので、今後の研究課題ということにいたして、今回の法案に載せなかったわけでございまして、決して外部の特殊な分野からの意見によってこれが法文化ができなかったというものではございません。
  143. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大臣が時間の関係で行かなければならないそうであります。大臣関係のものをあと二点ほどこの際聞いておきたいと思うのですが、その一つは、公害の主要な原因は私は産業公害であると思う。したがって、産業公害をどう一体解決するかが重要な問題であると思いますが、そこで問題は、この事業者に対して一定の責任体制をとらせる、その具体的なものは、一つ公害税をかけていくとか、あるいは公害保険制度、こういうものを設置をして明確な責任体制を確立させる、こういうことがいいのではないかと思うのですが、こういう構想は一体大臣はお持ちかどうか、その点が一つ。  もう一つは、被害者救済制度制度化の問題でありますが、こういう今後の救済制度全般に向けて必要かどうか、必要と考えているかどうか、必要であればどういう制度というものを一体考えられておるか、この辺をひとつ第二点として明らかにしていただきたい。
  144. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 事業者に対しましては、三条におきまして「事業者の責務」ということを、これは基本法でございまするから、きわめて抽象的一般的にきめてあるわけでございますが、そういうようなことをやっていくために、ただいま、税制それから保険等について考えたらどうか、こういう御質問のように承ったのでございますが、公害に対しまして税制と申しますと、現在は、公害防止するにあたって、いろいろな工場等がその施設をやる、そういった場合に、これに対して特別償却といったようなことを認めていくというようなことでございますが、公害を出すというものに対してひとつ税をかけたら、非常に自粛自戒して、あまり公害を出さぬようになるのじゃないか、こういったような御意見もあるのでございまするが、もしさような意味でございましたら、一つには、私は、公害というものはわれわれによって否定、否認されるべきものだろうと思うのですが、その否定、否認されるべき公害発生するものに対して税をかけるということは、一面におきまして何らかおれは税を払っているのだという、一つの否定されるべき悪に、免罪符と申しまするか、それはよろしくないのですよ、私はよろしくないと思いますけれども一つの免責口実と申しますか、そういったような心理状態になる。こういうことも考えなければならない。それから税である以上は、課税客体とか課税標準とか、そういうものをきめてかからなければならない。そうするというと、公害は否定されるべきものであるということは、これは前提でございますけれども、そうすると、課税客体、課税標準が大きいものに対しては大きくかけることができる。そうすると公害の大きなものに対しては大きな税源である。それから小さい公害に対しましては、そんなに大きな税はかけられないということになりますと、小さい公害は税源としては小さい。税をかける以上は、税源としては大きいほうがありがたいのでございますが、しかしそれは、もともと公害なんというものは否定されるべきものである。できるだけ小さく、できるだけないことを期待されるものを、ちょうどこれは罰金でも同じようなものでございますけれども、それを税源ということには、これはちょっと不合理と申しまするか、税源としては、税をかける対象としては、私は適当でないと、かように考えるのでございます。  しかし、こういったようなときに、保険はどうかと、こういうお話もございましたが、私は、これは一つの重大なる問題として検討をしていくべき――直ちに私はそれならここで保険制度を取り入れるべきということをお答えするには少し検討を要するのでございますけれども、これは一つの重大なる問題として前向きに検討をしていくべき事柄であろうと、かように考えます。  それから救済の問題でございますが、これは、紛争処理ということも私どもは含めて考えておったのでございますけれども公害が起こりまして、そしていろいろ被害者から苦情があったり、こういったような場合に、とにかくこれは原因関係がなかなかはっきりしない、原因が、先ほど申しましたとおり、個体と申しますか、非常に単独の場合も、これは私は公害として扱うべきだと、概念のいかんにかかわらず公害として扱うべきだと、こう申し上げましたが、しかし、その他の場合には多くの場合に不特定多数であるといったような場合には、この因果関係というものをつかまえると申しますか、これをはっきりさしていくのははなはだ容易なことでなくして、そのために解決とか救済とかということが非常にじんぜんおくれているということはよろしくない、私はさように考えまして、何とかこれに対しては救済の機構と申しまするか、何らかの具体的なる救済の措置を考えていかなければならないと、かように考えております。
  145. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大臣に対する質問は、これで終わりたいと思うんですが、一つ、これはちょっと基本からはずれておるのでありますが、この前大臣がおらなかったから、局長だと思いますが、この問題を次回に回答してくださいということにしておったのですが、実は、四十二年の六月七日の朝日新聞でありますが、「輪禍共済金を差引く」、「保護家庭に冷たい基準」、こういうのが出ているのであります。この内容をちょっと読んでみますると、こういうことなんです。成田発でありますが、「千葉県の成田市で二つの坊やが車にはねられ大けがをし、市の交通災害共済制度から一万円の見舞金を受けた。しかし、坊やの家庭が父親の病気で生活保護を受けていたため臨時収入とみなされ、生活扶助費からその分が差引かれた。「あまりにも無慈悲な生活保護基準だ」という声が周囲で上がっている。」、こういう状況になっているのであります。まあ、言ってみれば、だんなさんと子供さん二人と奥さんと、四人の生活者でありますけれども、このうち、おとうさんは病気で入院、それで生活保護対象者。その間に二つになる坊やが自動車ではねられて、また病院に入院しなければならない。そして一歳の子供さんを背負って、それの治療と看病で、働き手がないんです。わずか二万数千円の生活保護対象者でありながら、市の災害共済制度からもらった一万何がし、これを除外されておる。二万何ぼしかもらえない。病気療養をし、生活をしなければならないのでありますから、こういった無慈悲ないまの生活保護体制、これは確かに法律にはそういうことになっています。なっていますけれども、こういうものに対する免責や特例措置という取り扱いですね、こういうものは私はぜひ必要じゃないかと思うんです。せっかく、これがけがをして、そういうものに対する見舞い金、これを収入とみなして、生活保護支給費をそれだけ削るという、こんな無慈悲なことは私はないと思います。だから、こういう問題について、大臣のほうに上申をして、十分検討して、次回に回答してくださいと私は言っておったのでありますが、この機会にひとつ大臣に、具体的にこの問題に対してどういう措置をとられようとするのか、検討内容についてひとつ御回答願います。
  146. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。  先ほど例にあげられました千葉の交通傷害の問題、見舞い金の問題でございますが、これは、私どもも行政を運営してまいります点におきましては、何とか解決をしたいというふうな気持ちでいろいろ検討している段階ではございます。ただ問題は、こういう生活保護法の場合には、全国民平等に取り扱わなければならない。たとえば、いろいろな、けがであろうが病気であろうが、あるいは老齢であろうが、現に生活に困っている人は、その理由のいかんを問わずに、国がその生活を保護するというのが一つ。それからもう一つには、補足性と申しますか、生活ができるために自分の資産なり能力なりを全部自分の生活維持に注ぎ込んで、なおかつ足らざるの部分について国家が責任を持つ。したがって、その運用がおかしければ訴訟までできる請求権である、こういう一つの自立の原則といいますか、できるだけ自分で努力して一切の収入を生活に充て、なおかつ足りないところというふうな、二本の、無差別平等と補足の原則ということに立っておりますので、見ようによっては非常にきびしいというふうな法律でございます。  で、今度の問題は、救護者でありますが、現実に子供さんがけがをされまして、一万円出るということになったわけでありますけれども、これは、何といいますか、現在の、先ほど申し上げましたように、恩給であれ、業務上の労災保障であれ、あるいは障害年金であれ、すべて生活の資になるものは全部それは収入として見る、こういうたてまえになっておりますので、この自動車の問題につきましても、これは市が立案して市が運営しております一つの保険制度であるということで、この問題は事実的には非常に気の毒な問題でありますが、それが一切が、あるいは自動車の賠償保険法の給付金、あるいは恩給、あるいは障害年金というものすべてに関連してきます問題でありますだけに、この一点だけで特例扱いをするというふうなかっこうにはまいらない。しかも、各市町村全国一斉にそういう制度があるというものでもないし、特定の市が――ぼつぼつ多くなっておりますけれども、そういう制度をつくっておられる。そういうことで、この事態だけの処理には終わらない。何か方法がないかということでいろいろ検討はいたしておりますが、そういう状況でございますので、まあ、たとえは一万円というと――千円末満のものならばこれは収入とは見ない。一世帯千円ぐらいなら。そういうところの限界まで来ておりますので、その千円というのは、三千円、五千円がいいのか、それをどういうふうに各制度に及ぼすか、そういう限度の問題もありますので、もうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  147. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 結局、いまの回答では、法律上はどうにもならぬという回答ですね。では一体、別な見当で検討さしてくれと言うんだけれども、どういう方法があるんですか。これは非常に、かりに落伍者といわれるような人たちは相当いるわけであります。そういう人は、きびしく取り立てる税金ですら免責事項があるわけであります。ましてや、状況から考えても四人生活ですよ。二万一千円か幾らの生活保護対象者。生活保護対象者とは、御存じのように生活の収入の道がない人です。そういう人に対して一定基準を設けて政府が保障しているのでありますけれども、そういう者がけがをして、その見舞い金ですよ。それが来たからといって取り上げるということは、法律上は、厳密にいけばあなたがいま解釈するようになるだろう。しかし、何かもう一つ、やはり行政官庁としての運用上そういう特別措置があっていいような気がするわけです。これは確かに、その一つの例を設けることは、それが全国一律に広がっていくことだから、そういう心配もおありでしょう。しかし、そういうものに対して、もう少しあたたかい運用措置というものがあってけっこうではないかと、こういうふうに考えるんですが、何か別に検討するというのは、方向はどういうふうに考えておりますか。その点だけひとつ簡単にお願いします。
  148. 今村譲

    政府委員(今村譲君) いま申し上げましたように、現在のたてまえから言いますならば、この事件、これと同じような事例ばかりじゃなしに、たとえば産業災害による補償、あるいは自動車事故による補償、あるいは障害年金の支給、すべては収入として保護費から差っ引く、それを生活の資に充ててもらうというたてまえでありますが、今度の場合に、たとえば少額な保険金でという場合には――一世帯に千円だけは、いろんな経費が要るかもしれぬので、ほかとの収入面での振り合い上やっておりますが、そこまでは計算しないという、その千円の限度額を上げるか、上げるならば、すべてそれに類似したような制度にも全部及ぼさなければならぬ、そういう面で検討はいたしたいと思いますけれども、基本的には、やはり収入があれば生活に入れてもらう、足らず前は国が出すというふうな制度下においては、これは特別だから、慰謝料であるからというふうなかっこうのものにはとてもいまの情勢としては及ぼせない、こういうふうに考えるわけです。したがいまして、これは千円だけは別だと、千円以下は、たとえば臨時収入があっても、あるいは物を売りましても、その部分は計算に見ないという部分をもっと広げるかどうかというふうな問題だと、こういうふうに理解しているわけです。
  149. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大臣どう考えますか。
  150. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) いまの御指摘の問題は、これは全く人情の機微に属する大事な問題だと私は思います。そこで、実は非常に大事な問題であるがゆえに、末端のそれに当たるケースワーカーの段階におきまして、何とまあ血も涙もないやり方じゃないかという御批判の声は、私どももしばしば耳にするところでございます。しからば、その血も涙も少し加味したらどうかということになりますと、私は、この制度についての非常に大きな一つの弱点になると思います。そこで、たとえば末端において、さじかげんができるんだということになりますと、これは、たとえば大きな問題として、予算の折衝をするにいたしましても、何にいたしましても、さじかげんができるんじゃないかというようなことになりますと、きわめて力が弱いものになりまして、そこで、ケースワーカーも人間でございますから、そのときには現実の事態に処しまして、それこそ涙をのんで、そういったような処置をやっておるんだと私は思いますが、そこで、さじかげんとか、これはかわいそうだからということをケース・バイ・ケースにやりますと、制度そのものが非常に弱化されるというようなおそれも考えられます。そこで私は、第一線の人たちから、こういった場合はかわいそうじゃないかと、こういった場合に何とか考えりゃいいじゃないかということを、厚生省なら厚生省へ反映をさせてもらいまして、一般的の問題といたしまして、そうして今後厚生省においてこれを一般的な重大なる問題として検討していく、先ほど局長から時間をかしていただきたいということを申し上げた趣旨も私はそこにあるんだと思いますが、現行制度の上において、あんまりその末端において――非常に冷酷なようなことを申しますけれども、血あり涙ありといったようなことをやってまいりますと制度そのものが非常に弱いものになっていくんじゃないかと、かように考えますので、これは一つの大きな問題として中央として取り上げていくべき問題だと、かように考えます。
  151. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 小平君。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣に対する質問を、大臣の御都合で、二、三初めに聞きたいと思います。  公害基本法案が提出されたときに、参議院の本会議で総理大臣にも厚生大臣にもお尋ねしたわけですが、十七日に衆議院本会議を修正通過したという新しい今日の段階で、なお、大臣に二、三お尋ねしておきたいことがあるわけであります。  まず、先ほど来、戸田委員あるいは大倉委員からも指摘されておりましたが、「経済の健全な発展との調和」ですね。佐藤総理は、こうして公害防止することとともに産業の発展が大事であると……。たとえば、四日市のような例を私があげたのに対して、そうした例をあげましても、全部工場をなくして昔のような状態に返したんじゃ、それは文化の発展にならないではないかというふうに、すぐこういうことを何回も、総理大臣は、ほかの方にも御答弁なさっていらっしゃったわけですが、私が申し上げていることも、経済の発展をやめて工場をなくせと言っているわけじゃないのです。問題は、公害基本法というもの、この法律自体が、この目的に出ているように、国民の健康を保護する、あるいは生活環境保全することが目的であって、経済の発展はほかに幾らも法律があるわけだと思います。ほかに、経済の健全な発展のためには、金融、財政あるいは土地収用、あるいはいろいろな経済発展のための法律があるわけです。そういう法律が、一々経済のほうの発展をはかるとともに国民の健康を保護する、生活環境保全すると、そういっているわけでもないと思うんです、ですから、公害防止していこうというこの法律目的は、国民の健康あるいは生活環境保全目的であると。そこで、どうしてこの「経済の健全な発展との調和」を入れなければならないか。経済をなくするのじゃない、それは当然なことなんですが、この法律目的自体は先ほど来申し上げているところにあるのだと、これは厚生大臣も御同感じゃないかと思うのです。ついでに申し上げますと、先ほど来、こうした経済の問題は、財界などの、あるいはほかの省あたりの強い意見でそういうふうになったのじゃないかという質問に対して、大臣は、決してそういうことはないというふうにも答弁されておられましたが、この基本法が通過することになったとたんに、そのときに新聞に出ているところによると、財界筋では特に今回の修正で安心をしている、この修正の結果、財界が注目しているのは、「経済の健全な発展との調和」が、まずこの基本法に入ったということ、それからまた、無過失責任が入ってないということ、そういうことで財界は安心した、というこまかい記事が出ておりますが、当然、そういうようないきさつでこうなったのだということでよろしいですか。
  153. 坊秀男

    ○国務大臣(坊秀男君) 「経済の健全な発展との調和を図りつつ」ということでございますが、もうしばしばお答えも申し上げましたが、必ずしも私は、財界の非常な強い要望によってこれを入れたと、こういうことでなくして、われわれといたしましては、もう健康を保全していくというためには絶対に経済との調和なんということは考えない、これは絶対無上のものである、こういうことでございまして、それからさらに推し進めて、生活環境というものをより快適にしていこうというときに、経済の発展と調和していこうということでございまして、その生活環境というものを無制限に――そんな非常識なことはありませんけれども、無制限によくしていこうということに相なりますと、工業立地なんということがどうも危ぶまれるというようなことも、あるいは財界は心配しているかもしれません。それで私は、いまおっしゃった、財界は非常に安心したのだという御意見でございますが、それはあるいはそうかもしれませんけれども、私は財界の意見に押されてこれを入れたということでは絶対にございません。この公害基本法の目的は、あくまでも生命を保全し、あるいはその生活環境をよくしていくということを目的としておるのでございまして、決して財界からの要望、圧力に屈したというふうには私は考えておりません。  それから無過失責任でございますが、何にいたしましても、公害問題を処理していくのに大事なことは、私は少なくとも、原因と結果、公害を起こした原因、公害が起こった結果という間の因果関係がはっきりする場合もございます。それは非常にはっきりする場合もございますが、多くの場合にこの因果関係がはっきりしないというところに公害処理のむずかしい問題があろうと思うんです。これがはっきりしてしまえは――私は、過失だとか故意だとか、あるいは悪意だとかいったような、主観的な条件と申しますか、要件と申しますか、そういったことよりも、因果関係の客観的要件というものがはっきりいたしますれば、公害処理は、過失があるとかないとかいったような主観的要件はそれほど大事なことではなくて、因果関係をいかにしてつかまえていくかということが私は大事なことだと思う。ところが、その因果関係がなかなかつかまえられない、しかしながら被害者はあらわれて非常に苦しんでおる、で、あくまでもただ一つである、一つに限るというはっきりした因果関係をつかまえようなんて思っておりますと、公害対策も何も非常に困難になる。そうでなしに、そういった因果関係がそれほどはっきりしない間にでも何らかこれは処置を講じなければならない、また、救済とか和解とか、そういったような紛争の処理をやっていかなければならないというところに、公害問題処理の一番大事なことが私はひそんでいるのではないか。無過失責任という、そういったような主観的な問題もこれも大事なことでございますが、それより先に、因果関係をいかにキャッチし、また因果関係をいかに、最後の最後までいかなくても、これに基づいた処理をするということが、私は公害問題の一番大事な点ではなかろうかと考えております。  それから、この法案に無過失責任についてきめなかったじゃないか、こういう御質問でございますが、何にいたしましても、この法律は基本法でございまして、いわば公害対策の通則ともいうべきものだと私は思います。いかなる公害に対しましてもこの法案のきめた基本方針に従ってこれを処理していく、こういうことになっておるのでございますが、この通則に無過失責任ということをはっきりとうたっていきますことは、これは日本の民事法といったようなものについての一大例外の規定でございます。その無過失責任を基本法である通則に取り上げていくということになりますと、すべての公害に一応この無過失責任といったようなものを当てはめるということになりますと、これは民事法の一大例外になるので、立法上も、いろいろの面から、角度から、これを検討していかなければならないということで、基本法にはきめなかったのでございますけれども、しかしながら、将来いろいろな具体的な法律をきめていく、これに伴う具体的な個々別々の法律がどんどんつくられるわけでございますが、そのケース・バイ・ケースにおきまして、この無過失責任というものを、重大なる問題として、これを研究し、取り入れるべきは取り入れていくべき問題だと、かように考えております。
  154. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  155. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をつけて。戸田君。
  156. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それでは、方針についてはいま大臣にお伺いをしましたので、こまかい点についてお伺いをしてまいりたいと思うんですが、結局、いまの事業者の責任問題については全く皆無にひとしいですね。確かに、この第三条ですか、何かこれにきわめて抽象的にはございます。しかし、このことで今後の責任体制をどうのこうのということにはなりません。   〔委員長退席、理事大倉精一君着席〕  ですから、こういう問題について、何か明確な、別の法律を立法化されていくのか、その辺について、局長の見解をまずお伺いしたいと思います。
  157. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 事業者の責任を負うべき分野は非常に広いわけでございまして、まず、そもそも事業者の設置する施設について公害発生しないようなものにする、これが公害対策としては最大のものであろうと思うわけであります。それに対しましては、今日、ばい煙防止法にいたしましても、水質保全法にいたしましても、あるいは自動車の規制の機械装置の法律にいたしましても、それぞれそのような規定が設けられるようになっております。問題は、それが徹底的に非常にきびしいものであるということであるかどうかという点と、いま一つは、現在得られる範囲の努力をしてみても、なおかつ、それが非常に集積いたしますと、ちりも積もって山となるで、個々の施設はそれほどたいした煙を出さなくても、これが何万と集まれば公害発生源になるというようなことから、もはやそれは責任を追及するというような方向、手段ではない。追及しきれないものになる。すなわち不特定多数の発生源がかもし出す公害というものになるわけでございまして、そのような種類のものに対してどう責任追及という形で措置できるか。あるいは別の施策でこれを考えていったら、たとえば都市の構造そのものを変える、商業地域と工業地域と住宅地域とちゃんと区別するとか、あるいは場合によればグリーンベルトをつくるとか、そういうような公共的な施策を講じて、これを補っていく必要が生じてくるわけであります。そのような場合にも企業側が負担すべきではないか。そのように公共的な施策を講じなければならないゆえんのものは、これはかりに個々の工場は規定以内の排出あるいは防止装置に相当努力をしておっても、なおかつ集積して公害が生ずることに対する措置なのか。企業側も一部は負担すべきではないかということで、本法によって企業側の負担責任をうたっておるわけであります。問題は、それはどの程度具体的に、どういう場合に負担するかということでございますが、これは別個の法律によりまして法規制をいたしたいということで、本法では別の規定にする、別の法律をつくってこれを規制するということにいたしておるのでありまして、その意味合いから言えば、企業側の負担に関しましては触れておるわけであります。問題は被害を生じた場合ですが、すなわち患者が出たとか、あるいは動植物に被害が生じた場合に、それをどう処置するかという具体問題であります。これが非常に小さい範囲のものでありますれば、民法の損害賠償で片がつくわけでありますが、不特定多数のものが集まって、しかも個々のものはできるだけの努力をして、ほとんど公害発生するほどの量を出さないというのが、集積して害を生じて被害を受けた人々があらわれたという場合に、これをどう処置するか。これは、もとはといえば、発生源から発生したものによって起こったかもしれないけれども、これは当然に許される範囲の企業活動によってあらわれたものである、それを損害賠償というような考え方で取れるか――従来の考え方から言えば、ないのでありまして、これをどう救済していくかという救済制度としては、今後十分検討していく必要がある。いままでの取り扱いとしましては、患者の治療費等につきましては相当部分公費で負担しておる。四日市市におきましては、いままでは市が全額患者負担分を出しておったという実態があるわけでございまして、これは、その個々の実情に応じて実施をしてまいるわけでありまして、その際において、やはり企業側にも一部持たせるという解決方法もあると思います。これは、今後具体的に個々の事例について考えてみたいと思います。
  158. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 被害者救済制度の問題ですけれども、いまの基本法によりますと、政府が考えている被害の救済等については、円滑な実施をはかるために必要な制度の整備を行なう、こういうことですね。具体的に、どういうような制度で、またどのような救済をするのか、全くないわけです。そして、なおかつ、この内容は全く抽象的ですから、一体これはやる気があるのかどうか、私非常に疑念を抱かざるを得ない。ですから、こういった問題について、たとえば私は具体的に事例を申し上げますけれども、水俣病で死亡した人がわずか三十万円ですね。それから葬祭料が二万円。生存者に対しては、おとな十万、子供三万円の補償です。しかし、これは物価の値上がりその他経済変動に伴ったスライド制は一つもとられていない。こういうぐあいに、人間の命が三十万円程度で飛んでしまう。最近、交通災害の場合には百五十万円であったのが三百万円に引き上げよう、一面において、そういう救済措置、あれは保険制度ですけれども、そういうのは引き上げつつあるわけです。ところが、公害関係によって救済をされたという具体的な事例によりますと、わずか三十万円程度に一個の生命が取り扱われておる。こういうことは、全く矛盾があるというふうに考えるわけでありますけれども、こういう問題について、一体どういった今後の取り扱い方法として検討され、具体的な内容というものを制定をされていこうとするのか。この辺についてひとつ明確にお答えを願います。
  159. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害基本法は、主として公害防止するという側から集中的に書かれておりまして、公害が起こり、公害の被害者が現にある、その被害者をどう助けていくかということが、非常に簡略といいますか、わずか一条、きわめて短かく処理しておるという点、私どもとしても必ずしも十分であると思うわけではございません。もちろん、公害防止が主眼点であることは間違いございませんけれども、現に公害発生し、被害者を救済していくということは大きな公害対策の一部であります。そこで、被害の救済をどう具体的に実現していくかと言いますと、まず第一に、先ほど来御指摘がありましたが、公害の苦情を受け付けるところを明確化する必要がある。今日は、保健所へ行き、警察へ行き、区役所へ行き、あちらこちら、場合によれば、たらい回しになるおそれもあるということで、公害のはっきりした窓口というものが確定してないわけです。そのような苦情を受け付け、それを処理する仲介の労をとる、あっせんするなり、そういう扱いをするところがまず第一点、最も必要であろう、こういうふうに考え、これの具体化を急ぎたいと思っております。今日、和解の仲介の制度としましては、法律上、ばい煙規制法にも、水質保全法にも、法文上はあるわけでございますが、その事例は非常にりょうりょうたるものでございます。それは、先ほど来申しておりますような、そもそも苦情の窓口というものがはっきりしない、この処理責任者というものが明確でないという点にあろうかと思いますので、その点は早急に明らかにしてまいりたい。  そこで、その次に起こってまいります問題は、補償問題であります。ところが、もちろん、原因者がきわめて明確でありまして、因果関係も立証できるというものでありますれば、これは、民事訴訟を起こし、損害賠償で片がつく種類であります。ところが、多くの公害は、それほど因果関係は明確化されない。原因者は一人ではない。きわめて多数である。その原因と目されるものと被害との結びつきというものを科学的に立証することは非常にむずかしい。たぶんあれが原因であろうと思われるがという種類の公害が非常に多いのでございます。現に、四日市におきましても、公害病患者の原因はそれでは何か、確実に何と何と何だ、どのくらいの割合で障害を与えたという立証をすることは非常に困難です。このような、困難であって、裁判にかからない種類のものに強制的に賠償させるということは、なおさら困難である。これはわが国の法体系上不可能に近い。したがって、真正面に取り組んで、こういうものを、疑わしいという程度で企業者側に強制負担をさせるという措置はとれないだろうと私ども想像しております。したがって、そういう真正面から損害を強制的に持たせるという形でなくて、何らか資金のプールのようなものを持っておりまして、そういう基金のようなものから被智者を救済していくという制度ができれば一番望ましいわけです。そのような制度として何がよろしいか。また、そのような基金、あるいは保険でもけっこうでございますが、そういうような基金に対してどのような企業が幾ら負担をするのか、具体的な案がなかなかむずかしいわけでございまして、私どもも何とかそういう制度の制定を急ぎたいと思って、実は大臣も非常にその点を御心配になっておられる。先ほどの答弁でも、大臣は心からそういう救済制度が必要であるということを前々から申しておられるのであります。私どもも、何とか事務的に具体案ができないものかと努力をいたしておりますが、早急に具体化をはかってまいりたいし、検討いたしたい、かように考えております。
  160. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 何とか意欲的にそういうことで具体化しようという誠意については、私もぜひそうあってほしいと思うのです。いま局長から言われたことは、ひとつここで苦情受け付けという、そういう窓口を明確化したい、もう一つは、公害基金制度ですか、言ってみれば、そういったものを至急に考慮していきたい、こういうものがやや具体的に出てきているのだが、その前に私はぜひお願いをしたいことは、そういう公害被害者が出たというときには、いま政府が行なっている、災害の場合に災害基本法を発動して、政府が一たん立てかえをして、手当てをするところはどんどんやっている。こういうことをやっているわけですが、公害の被害者についても、まず全面的に国がひとつそういった補償態様というものに一応手をつけてみよう、そういう上に立って、あとは段階的に、企業主が、その責任者がおればそれぞれのものに対して幾らか負担さしていく、こういう、いわば補償態様全般についての国の乗り出し方が、私は土台になくちゃならないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そういうふうに、いま局長が言われましたように、さらに円滑にこれを推し進めるために、一つの窓口の明確化をはかったり、あるいは公害基金制度をつくったり、具体的にそれと対応するという諸機関というものをつくって、より充実をはかっていく、こういうことになっていかなければ本物にならないのじゃないか。ですから、そういう問題について、国として、もう少し意欲的に取り上げてそれらの問題に対処していく、こういう姿勢はおありでしょうか。その辺はどうですか。   〔理事大倉精一君退席、委員長着席〕
  161. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今後、公害問題は、わが国としても非常に重要な大きな問題として取り組んでいかなければならないものでございますので、お説のように、何らか国としても救済に対して十分責任を感じて取り組んでいくというつもりでございます。ただ、救済に際しましては、天然自然の障害による被害を受けた人々の救済とは別に、公害のような、何らか人為的な原因によって被害を受けた人の救済の制度というものは、公害に限らず、全般的にやはり国の行政との調和と言いますか、バランスと言いますか、そういうものも当然に考慮せられる筋合いかと思います。たとえば、人が殺された、一家の主人たるべき人が殺されたという場合も、今日は、刑事責任は問われますけれども、その人によってのその家族の非常な収入減というものに対しての民事的な補償という制度は必ずしも明確になっているわけじゃございませんので、そういうような全般的な被害を受けた人々の救済というものとの関連とにらみ合わせまして、政府としては最も適切なものにするように取り組んでまいりたいと思います。
  162. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは通産省にもちょっと関係をすると思いますけれども、いま、東京都内においては、ばい煙、排気ガスですね、こういったものによって、小学校、中学校の各児童が、ほとんどその被害を受けておる。ことに、具体的なあらわれ方としては、かぜや、たんや、せきに非常に悩まされる、こういう状態が出ているのでありますが、そこで、その問題は、ばい煙等に対する一つ施設状況について、今後どういうぐあいに厚生省なり通産省では考えておられるのか、こういう問題について若干お尋ねをしたいと思うのでありますが、そういうばい煙処理施設の整備を促進するために、公害防止設備改善資金貸し付け、こういうのが実はあるわけです。これは私は当初建設省関係だと思いまして、厚生省にあるいはあらかじめ言ってなかったかもしれませんが、それで、資料がなければあとでお調べになってお願いしたいと思いますが、これによりますと、国としては、一つは資金のあっせん、それから技術的助言その他の援助を行なうことになっているわけです。それで、一つは税制上の特例措置というものがあるわけであります。固定資産税の非課税の問題、あるいは耐用年数の短縮の問題、それからもう一つは、金融上の特例措置というものがありまして、これには大体中小企業近代化資金助成法、これに基づいて無利子貸し付けをやる、それからもう一つは、中小企業高度化資金、これに基づいて融資関係をやっている。それから開発銀行からの融資制度をとっている。それからもう一つは、公害防止事業団、だいぶ助成範囲というものは融資その他広範にわたっておりますが、それ自体私は非常に喜ばしいことだと思うのでありますが、こういうものを通じて、今後ばい煙の処理施設等についてどのくらい一体ばい煙の施設があるのか、今後何年でこれが解消するのか、それがために一体どれくらいの資金を要するのか、その辺についてひとつ厚生省通産省からお答え願いたい。
  163. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お説のとおり、ばい煙防止施設に対しましては国が融資措置を講じ、あるいは非常に高い煙突あるいは防止装置等につきましては、税制上の優遇措置が講ぜられております。それで、いまお話しのような、こういう施設に対して今後どの程度の金がかかる見通しであるかということでございますが、これは、このばい煙防止のみならず、排出する排水の処理を含めまして、公害関係の重化学工業におきましては、設備資金の数%程度はそういう装置に金を投ずる必要があるであろう。これは、企業の種類によりまして明確ではございません。非常に概括的なことを申し上げて恐縮でございますが、近代の文明国におきますこの分野の投資は三ないし五%と言われております。こういう公害防止装置に対します設備投資に必要な割合は、概括的に言いまして、三ないし五%の金が要るということでございまして、最近におけるわが国の電力の、発電所-火力発電所でございますが、火力発電所とか、あるいは石油関係の企業におきましても、非常に高額の防止施設に金を投資いたしております。なお、詳細は、通産省が来ておられますので……。
  164. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) ただいま厚生省局長のほうからお話がございましたが、私どもでも、この全国にある企業が設備投資をいろいろいたしますけれども、大体このうちどれくらいをこの公害関係防止するための施設に使っているだろうということは、なかなか全部について承知するということは困難でありますけれども、わりあい大きな企業につきまして現在調査して集計中でございますので、まだ十分まとまっておりませんが一例を申し上げますと、たとえば石油精製、これは、ただいま調査いたしましたところでは、二十五の工場につきまして調査をいたしておりますけれども、石油精製について見ますと、この工場の生産施設、これは土地を除きますいわゆる有形の固定資産でございますけれども、大体五%程度の公害防止施設に対する投資を行なっているというような実績が出ております。それから重油専焼の火力、これも十六ばかり調査いたしましたところによりますと、重油専焼につきましては大体三・二%程度という、これは十六の平均でございますけれども、そういう結果が出ております。御承知のように、石油精製なり重油専焼の火力というのは、企業の中でも特に大きいほうの企業でございますし、また、非常に多くのばい煙、亜硫酸ガスを排出いたしますので、防止施設についても非常に大きなものが要るわけでございますけれども、その他もろもろの工場につきましては、それぞれまた値が異なるかと思いますけれども、大体非常に大きな公害を出すようなタイプの産業につきましては、一例を申し上げますとその程度の投資ということになっております。
  165. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 あまり明確でないようでございますけれども、今度どのくらい施設を整備するものがあって、それに要する財源はどのぐらいあるのか、この見通しなんかも含めて――いま若干の、二、三の例として、たとえば石油関係で五%とか、いろいろおっしゃられたようでありますが、そういうものを、できれば、あしたまたやりますので、資料としてひとつお出し願えれば出していただきたい。それを要求しておきます。  ことに、財政負担の問題で二十一条からあるわけですけれども、実際問題としては、こういうことでこの運用措置をはかられているわけですね。ですから、こういうものを具体的に、別に立法するならするでもけっこうでありますけれども、明確に法規水準としてとらえて入れていくということでないと、私は、財源確保上も非常に困難を招来するのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、そういう点については、全く、二十一条から財政負担のいろいろな問題があるわけでありますけれども、非常に抽象的で、しかし、この内容を見ると、こういう方法で実際は運用されている、こういうことがあるわけであります。こういうものを私は明確に法律に入れていくべきじゃないかというふうに考えるわけです。そうすれば、もっと運用措置――財源確保の問題ですね、非常に円滑に推し進められる点も出てくるのではないか、こういうふうに考えるのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  166. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) その点は、実は二十三条に一応述べられておるわけでございまして、国または地方公共団体がこういう施設に対して必要な金融上税制上の措置、あるいはその他の、場合によっては助成金を出す場合もございますが、そういう措置を講ずるという基本的なたてまえを書いてあるわけでございます。
  167. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 被害の度合いが非常に広範囲に及ぼされて、数が多くなって、ちょっと一例を申し上げましたが、東京都内等でも小中学校の児童が相当数一様にやられておる。こういうことになると、少なくとも、これからの世代を背負っていく青少年に対して、私は保健上きわめてゆゆしい問題があるんじゃないかというように考えるので、早期にやっぱりばい煙施設等については力を入れてやってもらわなければいけない事項だと思います。四十二年度はちょっと私勉強不足で、わかりませんが、四十一年度ですと、わずか五億二千五百万程度でありますね。これだけでは、中小企業その他数多くあるわけですから、とても間に合わないのじゃないかと思うわけです。一度厚生省も、そういう問題に対する調査を具体的にやっていただいて、意欲的にこれらの問題に取り組んでもらいたいと思うのですが、そういう意味合いもあって、この法律との関係でこの二十二条、二十三条、確かに、「地方公共団体に対する財政措置」、「事業者に対する助成」、一応ありまするけれども、それが具体的にどういう方法でなされるのか。これだけでいったのでは、私は一つの指針にしかならぬと思う、この法律は。もう少し、こういう問題について具体的に打ち出してもいいんではないか。たとえば、一つは、資金の確保であるとか、あるいは税制上の措置であるとか、あるいは助成金の交付など、こういうものをやっぱり法律の中に明確に挿入をして、それで初めて私はこの条文が具体化されてくるのだろうと思う。こういうものの運用が、より前進をするのだろうと思う。ですから、そういう意味合いにおいて、この財政確保について、何かもう一つ局長の、からみのある答弁を実はお願いをしたいと思うんですがね。
  168. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 基本法でございますので、国の基本的な姿勢なり方向、態度というものを示してあるわけでございますが、実際の運営上の措置は、たとえば、公害防止事業団による事業に対しましては公害防止事業団法がございますし、また、中小企業に対しましては中小企業近代化促進法という別途の法律がございまして、それぞれの法律によりまして、やはり中小企業に対する特別な措置なり、その他、大企業に対しましても融資措置なり、そういうようなことが別途に法律に明記せられて講ぜられるわけでございまして、公害基本法の各所に、基本だけを示しまして個々の法律を明記しない部分が非常に多いわけでございますが、これは、この法律があくまでも国の基本的態度を示すわけでございますので、この二十三条でこのような宣言をした上で、各法によってその実施にあたると、こういうたてまえでございます。
  169. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そうすると、いまの公害防止関係に対する財政金融等の対策は、現行行なわれているような方法で満足だという考えをお持ちですか、どうですか。
  170. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私は、かなり不十分なものだと思います。と申しますのは、現在公害防止事業団が貸し付けを行なっております金利が、中小企業といえども六分五厘、こういう相当高金利でございます。で、公害防止施設は生産施設でございませんで、全く、まあやっかいものといいますか、考え方によれば企業にとってはじゃまなものであります。これを、意欲をかり立たせる――まあ規則規則で攻め立てましても、企業側としては、それだけ損失でございますからなかなかやらないということで、何も法で強制するということが方法ではなくて、むしろ、ほとんど利子の要らないような安い金を貸してやって、しかも技術指導をして、実施するように国が指導をしていくことが、一番望ましいわけでございまして、私どもとしても、できるだけ低金利で、しかも条件のいい償還期間の長い金を貸してやるように今後とも大いに努力しなけりゃならぬと、かように考えております。
  171. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 公害防止事業団が四十年度に設置をされたわけでありますけれども公害防止事業団に対して年間どのくらい、助成金といいますか、そういうものを交付されておるのか。それから、公害防止事業団の事務内容は一体どういうあれを持っておるのか。その辺についてひとつお伺いをしたい。  それからもう一つは、いま公害防止事業団の役員は、大体どういうメンバーで行なわれておるか。その辺について、ひとつ御答弁を願います。
  172. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害防止事業団の事業は、大別いたしますと二種類ございまして、一つは、事業自身施設をつくりましてそれを企業側に譲渡をするという仕事でございます。いま一つは、事業団が金を貸すという仕事をするわけであります。その貸す内容は、公害防止施設についてでございます。そして、主力は中小企業でございまして、中小企業に対しましては六分五厘、大企業に対しましては七分という金利で貸しておるわけでございまして、その事務費は全額国が交付金で交付いたしております。昭和四十二年度の事業契約としましては、七十五億円を契約いたしました。そのほかに、国の交付金として一億三千万円事務費を交付いたしております。で、この七十五億円の事業契約が非常に円滑にいくかというと、必ずしもそうではございません。と申しますのは、公害防止事業団の実施しております防止施設をつくること、そのことは、中小企業をまとめて共同の処理施設をするということがたてまえでございまして、なかなか共同の施設をつくるまでにまとめるのがむずかしいのが一点と、それからいま一点は、ただいま申し上げましたように、金利がまだ高いというような点もございまして、公害防止事業団の手持ちの資金が枯渇するというほど事業が活発になっていないという点は、私ども非常に遺憾に思っておりまして、これは資金が足りないくらいに希望者がふえるようになってこそほんとうである、かように思って、いま申し上げました金利の事情をよくする、償還期間の事情をよくする、という努力をいたしておる次第でございます。  それからこの事業に対します役員は、理事長一名、理事三名、監事一名がこれにあたっております。
  173. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 役員の、何といいますか、前職は、どういうところにあったんでしょうか。
  174. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 理事長一名は、前の警視総監でございます。理事の一名は厚生省局長でございます。いま一人の理事は通産省の部長でございます。それからいま一人の理事は大蔵省の参事官でございます。それから監事の一名は自治省の参事官でございます。
  175. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最近、いろいろと各種事業団というものができてきているのですが、役員構成がもっぱら旧官僚で占められておる。やっぱり国とのつながりとか、そういう便宜主義的なところがあるのかもしれませんが、本来の事業団経営ということになれば、はたしてこれは妥当なのかどうか。そういう点について、局長、どう考えておるのか。また、もう少し私は、各種事業団というものに対しては、民間人を起用してもいいんじゃないかと思うのですね。ところが、そういう点はいささかも顧みられないというのがいまの現状じゃないかと思うのですがね。そういう点についても、民間人起用ということについて大体どういうふうにお考えになっておりますか。
  176. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま御説明申し上げましたような事業分野でございまして、事業団が金融措置を講じたり、あるいは緩衝地帯――少し説明を落としましたが、緩衝地帯をつくりまして、その中へ厚生福利施設をつくるというようなこと、あるいは企業に対して助成していくというような点、それから関係各省の役人であった人がこれに当たっておるわけでございまして、また地方自治体との交渉もございますので、自治省から担当者が来ておるわけでございますが、お説のように民間の人でこの事業団の事業をするにふさわしい人で適任者があれば、今後ともにそれは十分私どもとしても検討してまいる必要があろうかと思います。
  177. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それは政策上の問題でもあるから、またあした、大蔵大臣が来られたら聞きたいと思うのですが、それでは、五時半という約束もありますから、あしたまた継続でやってまいるという話をして、きょうはこれで終わります。
  178. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時三十三分散会      ―――――・―――――