運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-07-14 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十四日(金曜日)    午後一時二十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 石井  桂君                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 柳岡 秋夫君                 原田  立君     委 員                 植木 光教君                 奥村 悦造君                 木村 睦男君                 黒木 利克君                 紅露 みつ君                 土屋 義彦君                 柳田桃太郎君                 横山 フク君                 加藤シヅエ君                 戸田 菊雄君                 小平 芳平君                 林   塩君    国務大臣        運 輸 大 臣  大橋 武夫君    政府委員        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        海上保安庁長官  亀山 信郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        大蔵省主計局主        計官       長岡  実君        大蔵省銀行局保        険第二課長    磯辺 律男君        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤き一郎君        水産庁漁政部漁        業振興課長    藤村 弘毅君        水産庁漁政部調        査官       小関 信章君        通商産業省企業        局立地公害部長  馬場 一也君        運輸大臣官房審        議官       鈴木 珊吉君        運輸省海運局参        事官       野村 一彦君        運輸省港湾局技        術参事官     栗栖 義明君        建設省都市局下        水道課長     久保  赳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○船舶の油による海水汚濁防止に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)     —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  船舶の油による海水汚濁防止に関する法律案を議題といたします。前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。柳田君。
  3. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 先般の質問に多少不足いたすところがございますので、補充して申させていただきます。先般の質問でもお伺いいたしましたが、廃油処理施設は、本年度は六カ所行なう。しかも、それは港湾管理者が建設を引き受けたところに割り当てたというような答弁運輸大臣からございました。  本日、これは運輸省から提出になりました資料の七ページをごらん願いますと、ここに「入港船舶総数」という表がついでございます。これは船舶の総トン数と隻数が書いてございまして、わが国の千五十九余の港のうちの大港湾といわれるものが五十並べてあり、これはやはり油による海水汚濁の最も危険の多い港でございます炉、この中で今回はずれました港は、横浜神戸、川崎、和歌山下津、千葉、岡山水島の六つでございます。これはほんとうに油濁の危険を防止しようという見地から言いますならば、少なくともこの港湾統計と申しますか、船舶運航統計を見ますと、もう少し重点をほかに持っていくべきものがあったのじゃないかと思いますが、これは別といたしまして、三カ年計画で三十カ所程度しか考えてないと言われるのは、多少少な過ぎるのではないかということを運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は今年度六カ所選びましたのは、横浜神戸は申すまでもございませんが、続いて選びましたのは特にタンカー入港の多い、したがって、海水汚濁に対して特に優先的に取り扱うことが適当であるとこう考えました港の中で、港湾管理者から至急につくる意思はあるということを言われたものを取り上げて申し上げたような次第でございます。  で、来年度以降の予算につきましては、まだ何ら計画はございません。一応事務当局としては、三年間に三十港くらいというつもりでございましたが、運輸省といたしましては、やはり今後の情勢を見まして、できるだけ早く各港にまんべんなくつくるように努力をしなければならない、こう存じております。しかし、何ぶん後年度のことでございますので、予算の目鼻がまだつきませんので、数等について先ほど以上のことを申し上げる段階ではございません。
  5. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 大体この表の順位に油濁の件数も多いようでございますから、そういったアトランダムにおやりになる前に、十分お考えになって、今後少なくとも大港湾には一つ以上設置するように希望して次に進みたいと思います。  次に、廃油処理施設として鈴木説明員は、クリーニング・バージは、これは廃油処理施設と認めるということでございましたが、これは補助対象に入っておるものか、また当然廃油処理施設であれば補助対象になると思いますが、どうでしょうか。さらに今後、クリーニング・バージとは言わないまでも、本船から油性混合物集油をする集油船というのが、おそらくどの港でもかなり活発に使われると思いますが一これらの集油船廃油処理施設として補助対象として扱われるものかどうかをお伺いいたしたい。
  6. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいまの先生の御質問でございますけれどもクリーニング・バージにつきましては、主として船舶の修理港で、造船所で修理する場合に船を洗います。そういう廃油を受け入れるための大きなバージという意味で私申し上げたのでございますけれども、これにつきましては、補助というのではなしに財政融資、本年度開発銀行公害ワク の長期低利融資という融資制度考えております。それからさらに税制の面でも地方税の面におきまして固定資産税のある程度の減免ということもきまっておる次第でございます。そういう程度助成を行なうということになっております。  それから集油船でございますけれども、たとえば、港の状況によりまして、船が一カ所にとても入れないということもございますと思います。そういうような場合には、小さな船で油を集めてまいるということも考えられます。特にバラスト水とかあるいはクリーニング水が大量に出るのではなくて、順次ためたものを集めていくということも考えております。こういったものにつきましては、やはり廃油処理施設と見なしまして、この法律で十分なる監督と、場合によりましては助成も行なうというふうに考えておる次第であります。
  7. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 続いて運輸大臣にお尋ねをいたしますが、本法が成立をした日を記念いたしまして、先般の質問で私が申し上げました自衛隊であるとか、水産庁であるとか、あるいは民間航空あるいは漁協あるいは税関、あるいはパイロット組合というようなものに、一斉に本法が成立したことを知らせるとともに、この重要地域を指定して、油濁状況通報制度を設けたり、非常にPRの上においても、本法ができたということを知らせる点、実行に移す上にも効果があると思いますが、そういうような着意があるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御意見は非常に参考になると思います。実施前に十分に考えて善処いたしたいと思います。
  9. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 次に、トリーキャニオン号というのが、御承知のように、イギリスで遭難をして非常な被害を及ぼしておりますが、現在の瀬戸内海等船込み状況等から見ますと、東京湾瀬戸内海等におきまして、大型タンカーにどういう事故があるかもしれないという非常に危険を感ずるようになりましたが、トリーキャニオン号のあとの措置の問題については、英仏両国においてたいへんなばく大な費用と、その措置について非常な苦心をしたようでございますが、わが国においても、万一を想定して、こういう演習を定期的におもな地点でやっておく必要があるのではないかということを痛感いたしますが、運輸大臣はどういうぐあいにお考えでございますか。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 油の処理といたしまして、演習海上保安庁巡視船を使用いたしております。これは先般は東京湾でありましたが、瀬戸内海でやったことがあるかないか、おそらくまだではないかと思います。これも次の機会には、他の海域を選んで逐次地方の人にも見てもらいまして、事情処理の扱いについて心がまえをいたしてみるように指導いたしたいと思います。
  11. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 海上保安庁にお伺いいたしますが、現在の海上保安庁で非常の場合の廃油のそういった処理能力消火能力というようなものが、私の知る限りにおいては大きな力はないと思っておりますが、非常に拡充整備されておるかどうか、ちょっと簡単にお伺いいたしたいと思います。もし整備されてないならば、何らかの方法考える必要があると思いますので、参考のために簡単にお考えを承っておきたいと思います。
  12. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 海上保安庁現有船艇によります海上の油の火災あるいは油濁の緊急防止ということについて十分な能力があるかという御質問でございますが、かねて消防につきましては、大きな事故が起こりました場合の整備に鋭意つとめておりますが、現在これなら大丈夫だというところに至っておりません。ただ大型タンカーに対します特別な強い消火能力を持った消防艇建造するという必要があるという意見が非常に強うございました。本年度基本設計費をいただきまして、明年度から逐次着工していきたい、こういう手はずにいたしました。今後鋭意かかる火災あるいは油濁防止緊急措置のための船艇その他の資材の準備には全力をあげて当たりたい、かように考えております。
  13. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 本法海水油濁防止法でございますので、この中に万般の場合を考慮して、万一の救済措置を規定するということは、非常に困難であると私も了解できますので、ききに運輸大臣がそういうような答弁をなされておることに、私も同感でございます。しかし、事実上一億キロリッターの油の輸入をいたしておりますわが国としては、各地に海水油濁事件が発生いたしておりますので、この救済措置については、本法に関連した事項として十分にひとつ考えていただかなければならないと思うのでございます。で、これにつきまして、運輸大臣にあるいは鈴木説明員にお伺いいたしたいと思いますが、先般お伺いいたしまして、内容は確かめておりませんが、商法の六百九十条の船舶所有者免責事項というものでございます。これを、非常にわかりにくい条文でございますから、わかりやすく一ぺん例をあげて説明を願いたいと思いますのは、かりに百億という大損害ができた場合に、その船舶船舶の持っておるいろんな損害賠償権あるいは報酬の請求権というようなものが、かりに六十五億というように、損害額より少ない場合は、それを全部損害に充当してしまえば、船舶所有者責任は免除されるというのが商法六百九十条の精神のようでございますが、いや、それは制限があるのだというようなことか、あるいは船込み、運賃込み、保険込みやってしまえば、それで免責されるということか、そのことを具体的にお伺いしておきたいと思います。
  14. 野村一彦

    説明員野村一彦君) ただいまの柳田先生の御質問でございますが、賠償の問題につきましては、いわゆるPI保険といいます保険制度がありますことは御案内のとおりでございますが、その保険制度につきましていろいろ契約のしかたがございますが、たとえば、百重量トン以上の鋼船につきまして基本契約を結びますと、重量トン当たり五百五十円の基本契約がありまして、そのほかに第一エクセスと第二エクセスと申しまして、その基本契約をこえた契約が可能でございます。まず四百五十万トン・首六十二億円までの契約をするという最高限度がございますし、さらにそれをとえて超過分保険金額全額船主責任ありと判定された場合、その責任全額を担保するという制度もできる保険の仕組みになっておりますので、ただいま先生の御質問商法から直ちにくる問題ではございませんが、船主相互責任保険制度として超過額保険及び青天井と申しますか、無限に実額を全部賠償する制度、そのさらに下は、先ほど申し上げました百六十二億円という制度がございます。
  15. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 トリーキャニオン号の場合は、これは海運局からいただいた資料によりますと、イギリス政府が訴訟を起こそうとしておる損害額は、日本円にしまして二十九億円でございますが、船会社自体保険会社から取れる金は六十五億、当然、これは六十五億のうちで二十九億のイギリス政府損害賠償額は補てんできるものと考えております。この中に、いや、本船の場合は十五億が賠償の最高額であるということが書いてあるので、日本でもそういうような制限でもあったら、この六百九十条と抵触するかと思いまして、私は質問をしたのでございますが、日本ではそういうような例はないわけでございますね。
  16. 野村一彦

    説明員野村一彦君) ただいま先生御指摘の事例、私はいま直ちに明確なお答えはできませんが、わが国の先ほど申し上げましたPI制度保険を、損害賠償額保険でカバーいたします前提といたしまして、故意もしくは重過失がない場合に、初めて保険によって補てんされるわけでありますから、もし個々のケースを審査いたしまして、船主側故意または過失がありという判断になりますれば、保険ではカバーされない、こういう事態も出てくるわけであります。
  17. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 PI保険の問題について野村参事官はちょっとお触れになりましたが、よくわかりませんので、もう少しお伺いしたいと思いますが、日本船主相互保険というのがあります。PI保険というのはこれであろうと思いますが、これの対象となる船舶はどんなものですか。
  18. 野村一彦

    説明員野村一彦君) 木船を除きまして鋼船の百重量トン以上の船でございます。
  19. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 それでは百トン未満鋼船木船は除外されておることと思われますが、このPI保険——現在これは任意加入でございますようですが、付保率はどのくらいになっておりますか。どのくらい保険にかかっておられるのか。
  20. 野村一彦

    説明員野村一彦君) 四十二年三月末現在におきまして、二千百三十五隻、千九百七十万重量トン加入しておりまして、加入率適用範囲船舶の大体三〇%程度でございます。
  21. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 もし、このことが真実であるかどうかわかりませんが、わが国海運局が、イギリストリーキャニオン号事件から、急遽百六隻の五千トン以上の外航タンカーについてPI保険加入状況を調べたところ、そのうち十隻は無保険であったということが書いてあります。そういう外航タンカーがこのPI保険に入っていないというような状態は、これは万一の場合にたいへん憂慮すべき事態になると思われますが、これに対して運輸大臣行政指導をもって、任意加入であっても、大型タンカーについてはぜひひとつ加入するように指導をする必要があるのではないかと思いますが、どうお考えですか。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 現在の指導状況といたしましては、御承知のように、船舶運輸大臣建造許可が必要でございますので、十万トン以上のタンカー建造にあたりましては、保険加入を条件として建造許可をいたすというやり方をいたしております。
  23. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 そうして私の希望するところは現在は付保率が三〇%程度であるということは、大型船は大部分入っているけれども小型はほとんど加入していないという状態で、しかも第三者に損害を及ぼしたときに、一番損害賠償資力のないものが保険にまだ入っていないという事態になっておりますので、何らかの方法でこれを付保するように行政指導を加え、将来は、先日申し上げましたように、やはり自賠法のように強制加入のところまでいくことが好ましいので希望として申し上げておきます。  次に、このPI保険保険料支払い額とそれから保険料収入との大体の大きなバランスでございますが、もし、手元資料がございますれば承っておきたいと思います。
  24. 野村一彦

    説明員野村一彦君) ただいま手元に最新の資料がございませんので、後ほど……。
  25. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 私は持っておるのでございます。が、かなり余裕を残しておるということは、料率がかなり高率であるということになるのではないかと思いますので、御研究願いたいと思います。  次に、大体の概念として承っておきたいと思いますが、PI保険というものは重量トン、それから船型によって、船の種類によって保険料保険金額は違うようでございますが、一番下の鋼船で百トンというようなもの——一番これは付保するものの最低でございますが、それで、月なり年なりでどのくらいかければ、保険金額はどのくらいになるがということがおわかりならば、参考のために伺うておきたいと思います。
  26. 野村一彦

    説明員野村一彦君) これは総トンでございますけれども、百総トンを例にとって申し上げますと、基本契約について申し上げますと、保険料は二万三千四百六十円で、その保険金額は三十五万七千五百円、こういうことになっております。
  27. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 それではタンカーの一番大きいのでどのぐらいですか。いまお手元資料はどうかと思いますが、二十万トン級のタンカーがあるわけですが、これの場合はどのくらいになりますか。——いまわからなければ後日承っていいわけですが、ほぼ年間三百万円以上で一億以上の金額になるかと思いますが、これでは少しまだ小さ過ぎると考えますので、御研究願いたいと思います。  で、これは大蔵省にお伺いをいたしたいのですが、百トン未満鋼船並び木船についても、何らかこういう保険制度研究していただくことはできないかどうか、大蔵省保険関係の方がおいでになっておれば、意見を聞きたい。
  28. 磯辺律男

    説明員磯辺律男君) 御承知のように、保険関係が成立いたしますためには、一定の保険集団があって、その事故に対しまして、いわゆる大数の法則が働く余地のあるということ、そしてブレーク、いわゆる損害額とそれから保険料率というものが、それぞれ適正に見合うような保険であるということが必要であるかと思います。ただいま御質問の、いわゆる船主賠償責任につきましては、現在、木船相互保険組合が、いわゆる船主責任保険というものをやっておりませんのは、いわゆる船主責任が起こりました場合には、その被害額というものがはかり知れないような大きなものになる可能性がある。それを担保いたしますにはかなり高額の保険料を取らなければならない。いわゆる保険料率とそれから損害額との見合いにおいて、容易に、現時点においては、まだ責任保険まで担保する保険が行なわれていないような状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、いま先生の御質問のありました、いわゆる百重量トン未満鋼船、それから木船の数がどの程度ありまして、それによってどの程度保険集団ができるかということについては、まだはっきりした資料を持っておりませんので、にわかにお答えすることができないことは残念でございますが、確かにおっしゃいましたように、船主責任については、そのランクがブランクになっているということも、これまた事実でございます。したがいまして、運輸省のほうから、そういった案につきまして相談がありましたような場合には、私たちも研究さしていただきたいとか、ように考えております。
  29. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 ぜひ運輸省におきまして、このPI保険範囲を拡充、整備をいたしまして、万一の場合に備えるように御研究を願いたいと思います。PI保険の問題につきましてはこの程度にとどめたいと思います。  時間がございませんので、次に進ましていただきますが、水産庁、お見えになっておりますか。水産庁は私がいま憂慮をいたしているように、この海水油濁事件が起きて、その被害者損害賠償を訴えたけれども賠償能力がなかったと、困ったというような事態は、実例として発生しているかどうか、こういう事件がなければもうそういう心配はないわけですから。そういう事例はございませんか。
  30. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 四十年度の私ども調査によりますと、八十七件が油による漁業被害を受けておりまして、このうち補償あるいは見舞金をもらって解決しておりますのは三件でございます。八十四件が加害者不明ということでございます。
  31. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 加害者が判明しているものについては、PI保険等が拡充されると非常に救済ができると思っておりますが、夜間の航行、または小型船舶海水汚濁防止法適用外に置かれるために、今後とも原因不明の油濁事件沿岸には随所に起きる可能性があると思います。それで漁業者の中にはPI保険にかわる共済制度のようなものを、油濁共済制度と申しますものを考えてもらいたいという意見があるようでありますが、研究する余地があるかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  32. 小関信章

    説明員小関信章君) 現在私どものほうで、漁業災害補償制度というものを設けております。これは先生承知のように、いわゆる中小漁業者の構成する共同組織を中心にいたしまして、自主的に共済事業を行なっております。しかし、これは現在のところ、自然の災害というものについて、漁業者相互救済し合うという形に実はなっているわけでございます。したがって、これの中に含めて考えるかどうかということが一つございますが、もしこれについてこの中で処理するということになりますと、たとえば、廃油なんかの問題、こういったものは漁業者共同負担という形で解決するというふうなことになるので、これは妥当ではないのじゃないか、かように考えるわけでございます。したがって、こういった問題につきましては、水産ワク内でいろいろ対策というものを考えなければならないのじゃないかと思っております。
  33. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 自然災害のほかに人災というものもあり得るので、別途政府財政援助も与えて、そういう基金制度を設ける必要があるのじゃないかと思われますので、御研究願いたい。お答えはいま求めませんが、研究をぜひお願いしたいと思います。  それから水産庁にお伺いいたしますが、たとえば、瀬戸内海等ノリ業者は、河口がだんだん水質汚濁のために漁場として不適地になりまして、島の周辺ノリ漁場を移すというような傾向にあったわけでありますが、しかるところ、また島の周辺が油の汚濁によって好個の漁場でなくなりつつあるという事態でございます。これは必ずしも大型船のみならず、適用外小型船舶による場合もございますけれども沿岸漁業をある程度保護する必要があるならば、保存地域というものを設けるか、あるいは水産資源の保護のために何らかの規則、省令を出すかしなければ、これはどうしても防げないのじゃないかということが一つ。これは水産庁のほうにお伺いしたいと思います。  第二は、港湾局からもお見えになっていると思いますが、この瀬戸内海や伊勢湾あるいは東京湾等に、大型輸送船がかくのごとく入港し、将来これがさらに倍増するような趨勢にありますが、港湾管理者港湾行政の立場から、これが適当であるのかどうなのか。近い将来の輸入量考えた場合、港内の入り口の地点において、これを大きなパイプにつないで、欧州方面でやるような陸送形態パイプでやるような時代がくるんじゃないかと考えますので、根本的に油の埠頭を考え直す時期が近づいておると思われますが、十分に御研究願いたいと思いますが、御意見を伺っておきたいと思います。
  34. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 瀬戸内海を中心にしまして公害による漁場の荒廃が最近目立っておりますが、船舶廃油ばかりではなしに、公害全体につきまして工場排水を含めまして、水産庁といたしましては一本年度から全国海域のうち二十を指定いたしまして一被害の未然防止のための水質パトロールを実施するような補助金を交付して実施しておりますし、将来これをさらに強化していきたい考えでございます。
  35. 栗栖義明

    説明員(栗栖義明君) ただいまの東京湾とか瀬戸内海とかの問題でございますが、現在すでにかなり東京湾の湾口なり、瀬戸内海の航路がふくそうしておりますので、当面これを極力改良しまして危険を防止するということにつとめておるわけでありますが、ただいま御質問にございましたように、将来を考えまして、いまの現在運行しておる船がこれ以上大きくなるとか、量がうんとふえるといったような場合につきましては、御説のとおり、今後の重要な研究課題だと思いまして、われわれも鋭意研究していきたいと思います。
  36. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 最後に、運輸大臣にぜひひとつ本法ができましたならば、監視、取り締まりを厳重にし、船舶側にもこの法を守らせるようにして、わが国の自然を守り、また、海水油濁による公害防止するということに万全の策がとれるような物理的施設もしまして、本法がざる法というようなことにならぬように、特に大臣にお願いをして私の質問を終わりたいと思います。
  37. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 柳岡君。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 若干柳田委員の質問に重複する点もあるかと思いますけれども質問をしてまいりたいと思いますが、まず、日本の油による海水汚濁の現状ですね、現状と、さらにその原因というものが一体どこにあるのか、そういう点をどう把握をしておられるのか。これはどこが担当であるのか、ちょっとあれですけれども、まずそこからお聞きをしていきたいと思います。
  39. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 漁業の被害につきまして水産庁で取りまとめておるのでありますが、ただいま御説明申し上げましたように、加害者が明確になっておりませんので、船舶廃油であるのか、工場の油の、コンビナートの廃油であるかということが不明確なものもございますが、油によりまして漁獲物あるいは漁民が直接被害を受けましたのが、一昭和四十年度におきまして約四億六千万円でございます。それからその他油によりまして漁場が荒廃して漁業ができなくなったことによる被害、あるいは異臭魚によりまして魚の価格の低下というような間接的な被害を、大きく推進いたしますと約四十九億程度になると考えております。  以上でございます。
  40. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 海上保安庁が関知いたしました過去三カ年における海水汚濁の発生状況は、三十九年から四十一年まででございますが、件数として百七件でございます。このうち油によるものは七十四件、したがいまして、その差は油以外のものによるものでございます。これは三十九年からと申しますのは、三十九年に私どものほうで出先に通牒をいたしまして、海水汚濁状況を発見した場合の措置等について、これは法律に基づく港則法以外の面につきましても、関係の各個所に対して通報その他を依頼いたしまして、これは実際に起こった件数のうちのごくわずかであると私ども考えております。
  41. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 以上のような現状でございまして、これに対します現行法といたしましては、ただいま海上保安庁長官申し上げましたように、港則法というのがございまして、これは港内並びに港の区域の境界から外一万メートルの水域につきましての油その他のものを廃棄する場合の規制でございます。あとそれ以外には水産資源保護法に基づきます規則がございまして、これは水産物に対する保護の規制の法律でございます。それ以外には現行法といたしまして、本法ができませんと、それ以外のカバーする法律がない現状でございます。
  42. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 現状は大体、いまのお話によってある程度了解できますが、その汚濁の原因ですね、それは一体どういうところにあるのか、いろいろあると思うのです。工場から排出される場合もあるでしょうし、あるいは船舶から流される場合もあるでしょうし、そういうのをどういうふうに把握されておるのか、また、どういうものが一番その大きな原因をなしておるのか、その辺をお聞きしたいわけです。
  43. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 一つの例として四十一年、昨年中に油による海水汚濁事件がございましたが、当庁が関知したものの内容を分析しますと、不法投棄、かってに捨てたということの容疑のあるものが八件、これはすべて船舶からでございます。それから船舶の荷役の場合のバルブの操作の誤りによるものが二十六件、陸上の施設からのものが三件、それから海難によるものが十九件、こういうふうな数字が一応出ております。
  44. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 非常に最近石油コンビナートなんかの工場などの造成によりまして、あるいは石油の輸入ですか、そういうものが非常に多くなってきておると、こういうことからも、この海水の油による汚濁が非常に多くなってきておる、こう言われておるわけですが、その原因というものをいまお聞きしたわけでございますけれども、違法投棄とか、あるいは荷役中の機械の操作の誤り、こういうものもあるようでございますが、これはやはり問題は、私は日本の場合は非常に、この中小、小型タンカーが非常に多い。そこに港則法というような法律ができておっても十分守ることができない、あるいは故意に守らない場合もあろうかと思いますけれども、そうしたことからくること、それからまた、やっぱりそうした中小、小型タンカーの場合には、経済的にも非常に力が弱いというようなことで、十分な廃油処理というものができない、こういうところに原因があるんではないかと思うのですね。そこで、問題は、今度の法律を見ますと、タンカーの場合百五十トン以上、それ以外は五百トン以上と、こういうことになっておるのですが、私はこの規制の、いわゆる適用船舶ですね、この範囲を百五十トンなり五百トンときめた理由というのは、一体どこにあるのか。条約でそういうふうにきまっておるからということだろうと、私は思うのですけれども、しかし、条約でそうあっても、それはやはりその国、国の現状に即応して私はきめなければ何にもならないと思うのです。そり油による海水汚濁防止法律、こういう法律をつくってもですね、日本のいまの現状が中、小型タンカーによって汚濁されるのが非常に割合として大きいということになれば、私はやっぱりその適用船舶というものをもっときびしくしていくと、こういう必要があるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点をひとつ。
  45. 大橋武夫

    ○国務大屋(大橋武夫君) 柳岡委員の仰せられることは、真に道理至極でございまして、私どももさようあるべきだとは存じますが、何分にも従来無統制でありましたものを新しく統制の道を開くわけであります。取り締まり等につきましても、有効に処置して法の目的を達しなければならない。それには、まず何よりも、条約がねらっておりまするその点だけは、少なくとも完全にカバーして、そしてその取り締まりを完全に励行しよう、で、むろんこれだけで完全な効果はあげ得ないかもしれませんが、相当大部分の油の防止がこれでできるわけでございますから、まず最初にはこれをやって、そしてこれが完全にいったならば、次の段階として先生の御指摘になったような方面にまで及んでいく、これがまあわが国の実情から見て、こうした法を実施する上からいってよろしいのじゃないか、こう思いまして、そういう含みをもって立案をいたしたつもりでございます。
  46. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この資料によりますと、四十年七月一日現在の規制対象船舶並びに規制対象船舶、この隻数並びにトン数が出ているわけでございますが、これで見ますと、規制対象船舶の数が非常に多いわけですよね。しかもそうした五トンから百五十トン、こういうものの汚濁の寄与率というものは非常に高いと、こういうふうにいわれているわけですけれども、しかも、もう一つこの前の柳田委員の質問でも明らかになっておりますけれども、この資料にありますけれども、港則法による一万メートル以内の海域での違反事件、こういうものも小型船舶というものが非常に多いわけですね、そうしますと、やはり私はこの際、せっかくこういう法律をつくるなら、百五十トンとか五百トンとかというふうなことではなしに、タンカーはすべてこれを適用していく、こういうくらいのきびしいものにしていく。そうしなければ、先ほど来説明されましたような漁業水産資源に対する被害というものもまぬかれないし、あるいはまた、沿岸の自然美ということはますますそこなわれる、こういうように思うんですね。そういう点を、とりあえずこうやって、今後検討していくと、こういうことでございますけれども、一体そうした海水汚濁の、この船舶による海水汚濁の寄与率というものは中小船舶はどの程度持っておるのか、そのようなことを調査なりあるいは把握しておるわけですか。
  47. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) お手元の船腹表でございますけれども、それに基づきまして、またさらに、船舶の出します油性汚水すなわちビルジというものがございます。それから油性バラスト汚水、それからタンク洗浄汚水、三種類に分けまして、どのくらいのどの船がその三つの種類の油性類を大体一日どのくらい出すだろうかと、推定でございますけれども、そういうことで計算いたしましたのでございますけれども、それによりますと、ただいまのこの法案でいっておりますタンカー百五十トン、それから一般船が五百トン以上のものにつきまして計算してみますと、大体年間のそういったような船から出します油性混合物の全体のトン数の中の七九・三%、約八割程度はこの法案で考えておりますトン数の制限で押えられるというふうに推定しておるのでございます。数は小船が多いのでございますけれどもトン数からいきますと、やはり数の割りには比較して少ない。したがいまして、二割くらいは本法適用外の船になるという推計はいたしております。
  48. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 日本海水汚濁、油によるもの非常に港湾の内外に多いわけですね。したがって、私は先ほどから柳田委員も言われましたように、油の輸送の手段というものが、パイプであるとか、そういうものではない。ほとんどいわゆる船舶でもってやられておる。しかも東京湾とか瀬戸内海とか、そういうところは、あまり大きい船というものよりも、中、小型のほうが、そうした役割りを持って動いておる。こういうことを考えますと、まあ七九・三%くらい今度の法案でできるだろうと、こう言われますけれども、しかし、トン数は少ないけれども、非常に隻数が多いわけですから、私は汚濁に対する影響というものは非常に大きいんじゃないかと思うんですけれどもね。そこで、こういうものを除外をした理由というのが、先ほどちょっと言われましたけれども、経済的に非常に弱いこうした船舶に対しての汚濁防止のための措置、こういうものはやっぱり政府が、国が積極的に取り組んでいくということでないと、大きい船舶、そういう企業は自力でもってできると思いますけれども、中小船舶の場合はなかなかそうしたいろんな施設をつくるについても困難であろうと思う。ですから、そういうものこそ、私は園が十分めんどうを見てやるというような体制をとる必要があると思うのですね。ところが今度の場合、これが適用除外されるということは、私は日本タンカーの現状からいって、実情に合わないものではないか、こういうふうに思うのです。その点はいかがですか。
  49. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは法律には書いてありませんけれども、全く野放しにしようというつもりではございません。やはり新しくこういう法律ができたのでございますから、この法の適用を受けない船についても、すでに港則法は適用があるわけでございまして、従来港則法の適用についても至って不十分な点があったのでございますが、この点は新しい法の趣旨とにらみ合わせて取り締まりの徹底をはかっていきますとともに、港則法適用区域外におきましても、東京港内等におきましてはできるだけ行政指導によりまして、将来法規制に移行すべく港備を進めていこう、こういうふうに考えておるわけでございます。どうぞその点御了解を賜りたいと思います。
  50. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 最近先ほど申しましたように、石油精製工場というものが臨海工業地帯に多くなっているわけですけれども、その精製過程に生ずる半固型状の油性汚物ですね、これを小型の船で海上投棄するわけです。それがいま大臣の言われた港則法のいう一万メートル以内では禁止をされているわけでございますけれども、しかし、実際には先ほど違反があげられておりますように、不法な投棄と申しますか、監視の目を逃れて夜間捨ててしまう。こういう実情が多いと、こういうふうに聞いているんですけれども、そういう現状についてはどう把握しておりますか。
  51. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 現在まで港則法による取り締まりの状態は必ずしも十全ではなかったということにつきましては、私どもも反省をいたしておりますが、仰せのとおり、夜間等、たとえば、湾内で捨てるというのを検挙するということはなかなか事実問題として困難でございます。しかし、それと従来は港則法による取り締まりという点では、港則法の適用範囲内、つまり港域から一万メートル以内におきましても、たとえば、そういう汚水処理施設が全然ないというふうな状況から、この検挙いたしましたものは相当多量であり、また、害が及びそうだというふうな現場の判断で、これを検挙する、悪質というふうに考えて検挙するのでありまして、今後陸上に施設ができてまいりますれば、少量といえどもこれは悪質と断ぜざるを得ない。そういう施設を利用することが可能な状態において利用しないということでありますから、そういうふうな取り締まりの立場として、従来若干弱い点があったのでございますが、この法律の施行によりまして、直接港則法の取り締まり、港則法を変えるものではございませんけれども、港則法による取り締まりのやり方についても、本法によって陸上に汚水の受け入れ施設ができてくるということによって、取り締まりがしやすくなるというふうに私ども考えておりますので、今後は海上保安庁の持っておる船艇及び航空機等によって十分取り締まり体制の研究をいたしまして、こういう違反の摘発あるいは事前の防止ということに努力をいたすつもりでございます。
  52. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この精製過程から生ずる固型汚物ですが、油性汚物ですけれども、これは海底に沈んで海水でだんだん溶けて、そして油が浮き上がってきて、漁業水産資源被害を与える、こういうのが現状らしいんですね。こういうものも今度の処理施設の中で処理をされるということなんですか。
  53. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) この法律制度によりますと、船舶が廃棄する油性混合物というわけでございますから、ですから、陸上からそういうものを船に積んで捨てにいくというやつはやはり同じように規制対象になるというふうに考えております。
  54. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いずれにいたしましても、この適用船舶の問題については、ひとつ条約でこうなっているからというのでなしに、単に条約を批准するために、世界の海運国と言われている日本のメンツを保つために、この条約をただ単に批准すればいいのだという、こういうことではなしに、いま大きな被害水産資源その他に与えているという現状をなくしていくということが、法律の目的だと思うわけです。ですから、その日本の現状に即応した適用船舶対象船舶考えていく、こういうことをひとつ十分考えていただきたいというふうに思います。  それから、この政令で定める沿岸海域の設定でございますけれども、これは一体どういう基準できめようとするわけですか。
  55. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 先生の御質問は第五条だと存じます。第五条1項二号で「本邦及び外国の沿岸海域であって、政令で定めるもの」、本法では一応第1項に「五十海里以内」と、こういうふうに書いてございますけれども、これはまだよく調査しておりませんのでわかりませんけれども、潮流とかあるいは風向きとかいうことで、ある海域で五十海里以上のとこで、かりにそういった関係で油が五十海里以内に入ってくるというようなことがもしあれば、そういう点については五十海里をこえても政令で指定していきたいという余地を残しているものでございます。  それから「外国の沿岸海域」とございますのは、この元になります条約で、各外国の海岸につきまして、原則として五十海里、その特例といたしまして百海里のところもございますので、それを条約の附属書Aにありますそれをそのまま政令に入れておきませんと、日本の船が行く場合にわかりませんので、入れておくというつもりでおるのでございます。
  56. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この沿岸海域の政令で定める問題についても、私は、単に五十海里という形式的な、機械的な設定ではなく、やはり日本の場合は黒潮というふうな潮の流れもあるわけですし、それから沿岸漁業がいま非常に盛んに行なわれている、あるいは養殖業が行なわれているということを考えますと、そうした日本水産業なり、海流の実態というものを十分調査をして、その上に立って有効な海域を設定していくということが必要だと思うんですね。その辺もひとつこの海域の設定に当っては考えていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから先ほどちょっと質問にありましたが、廃油処理施設の問題ですが、一体この廃油処理施設はどのくらいあればこの法の目的を達成できるのか、それをお聞きしたい。
  57. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 私どものほうで、大体一日百トン以上の油性汚水、これはビルジもありますし、バラスト水もありますし、タンク・クリーニング汚水もありますけれども、その三種類のものを合計しまして大体一日百トン以上が船から出されるであろうという推定を船別、船型別、港別につくりましたのでございますけれども、それで見ますと、わが国港湾の中で大体百トン以上のそういった汚水を捨てるところが二十七港ございます。それで先ほど、今年度計画港湾管理者がつくりますのは六港程度というふうに申し上げたのでございますけれども、いま申しました二十七港のうち、特にその量が多いところは、千葉、これは一日三千トンぐらい、それから川崎が四千トン横浜が三千トン和歌山下津が二千七百トン、水島地区が四千トン、それから神戸が千五、六百トン、さらに岩国が三千トン、徳山・下松が四千トンというのが非常に多うございます。今回の六港は、そのうちの六港入っておりますけれども、そういったように、一番一日のそういったトン数の多い港から逐次整備していきたい。したがいまして、ここで私が申し上げました二十七港、まあ三十港ぐらいにつきまして、港湾管理者をして整備せしめれば、まず内航船はいいのではないか。  それから外航船につきましては、これは先ほども出ましたのでございますけれども、大きな船、タンカーが修理する場合に、特に非常な水を流す、これは内航船と違いまして大きいものでございますから、これにつきましては、港湾管理者の施設ではなしに、造船会社等が金を出し合って、クリーニングを兼ねた処理施設をつくるというふうに指導しております。これにつきましては、大体東京湾あるいは大阪湾、瀬戸内に二カ所ぐらい、それから西九州という大造船所のございます地域に、そういうものをつくらしていきたい。それでことしは二カ所ぐらいできる予定になっております。これらにつきましても、やはり財政融資というような助成をしてやっていきたい。  それからなおそれ以外に、法律にもございますけれども、自家用処理施設ということも考えられるのではないか、特に船主さん方が金を出し合って、自分らだけでそういうような共同の処理施設をつくるとか、あるいはまた石油精製会社が、その積み出し港におきまして、たとえば、自社船とかあるいは自分の系列の会社の船とか、そういった専属している船の自家用の処理施設もつくらせたらいいんではないかというようなことで、そういった意味の自家用処理施設ということも規定に入れておりますので、以上申しましたような処理施設整備すれば、まずいいんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  58. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 港湾管理者の施設と民間業者の施設、これの分担区分というものはどういうふうになりますか。
  59. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいま申し上げましたけれども、おもに外航の大きいタンカーでございます。これにつきましては、修理港におきまして、民間の特に造船会社が出資して、そういうような業としてやらせる、それ以外の内航船につきましては、港湾管理者でやってもらう、もちろん自家用等もございますけれども、そういうような大ざっぱな区分でございます。
  60. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 先ほど三十港三カ年の間にやる、こういうことですが、しかし大臣の先ほどの答弁では、ことしは六港だけれども、来年度以降については、まだ予算の問題もあるし、はっきりしないという、こういうことなんですね、どっちがほんとうなんですか。
  61. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) その点につきましては、まだ来年度ははっきりしておりません。ただわれわれ事務当局としまして、こういう計画を立てておりますので、大蔵当局とも来年度予算につきまして十分御相談したいと思っておる次第でございます。
  62. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それからこの料金が許可制になるわけですね。この料金の許可制と、国の補助十分の五というのは、関連があるのですか。
  63. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 料金の許可制につきましては、港湾管理者の場合は、これは港湾管理者地方自治体でございますので、みずからつくりますし、さらに港湾法によりまして運輸大臣の監督規定もございますので、料金の許可制は布いておりません、届け出制だけでございます。ですから、国の補助のほうは、港湾管理者に対しまして建設費の半額を補助するということでございます。ですから、港湾管理者につきましては許可制ではない、届け出制であるということでございまして、それに対する国の補助という関係は別に特にございません。
  64. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 ちょっと質問があれだったのですが、料金を許可制にしておいて、一方では補助はしない、いわゆる民間の場合。港湾の場合、届け出制だけだ。だから料金を許可制にしておきながら、国が補助をしないというのは、一体どういうことなのかということを聞きたかったのですが。
  65. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 料金の許可制にいたしました理由は、これはもちろん民間の廃油処理業者の場合でございます。だからやはりこの法律で、船舶に対しまして、油を流しちゃいかぬという禁止の義務を課すものでございますから、しかも、禁止の義務を課しておいて、処理料金を認可制にせずに野放しにしておきますと、場合によっては非常に法外な料金を要求するところが出てくるのではないかというので、その点につきまして適正な料金を守るようにという意味で認可制を取ったわけでございます。
  66. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうことになると、民間の廃油処理業者に対する資金の助成というか、そういうものはやはり十分にやらなくちゃいかぬわけですね。どういう具体的な内容かお聞きしたいわけですけれども日本開発銀行、この中で産業公害融資のワクとして十五億ですか、こういう中から外航タンカー用としての資金を貸し付ける、こういうことになったわけですね。これを具体的な内容としてどのくらいの港に、いわゆるどこの港に何カ所ぐらい、この民間業者というものを許可していくのか、まずそこを。
  67. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 先ほど出ましたのでございますけれども、開銀融資の対象になりますのは、主として外航のタンカーが修理します場合に洗います。洗って出る汚水でございます。これにつきましては、主に造船会社等が金を出しまして、そういった廃油処理業を業として営む、これは大体そういった造船所の多い地域にそういう施設を置いたらどうかということで、東京湾とそれから大阪湾あるいは瀬戸内は二、三カ所、それから西九州というふうに考えております。それで、そういった全国六、七カ所だと存じますけれども、そういったものに対して開銀の融資、それからもう一つ地方税固定資産税の軽減という程度助成をやっていきたいというふうに考えておるのでございます。
  68. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その場合、民間の処理能力というものをどのぐらいに考えておりますか。   〔委員長退席、理事大倉精一君着席〕
  69. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) はっきりした数字は実は出しておりませんけれども、まあ主に外航タンカーということで、油性混合物といたしまして、約年間九十万トンぐらいではないかというふうに推定しております。
  70. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういう九十万トンという量を処理することのできる施設を全国に作るわけですね。この十五億という開銀の融資ワクは、これは全額そうしたものに貸すわけじゃないのですね。  これは産業公害全般についての融資ワクだと思う。その中でどのくらいこの船舶廃油防止のために、いわゆる廃油処理施設のために貸し付けるのか。そのワクはもうきまっておるわけですか。
  71. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) そのワクの中で特にこの廃油処理施設というふうに区分はしておりません。その本年度出るものにつきまして、そのワクの中で処理すると。大体、もしも出ますれば二カ所ぐらい出ると思うのでございますけれども、本年度は。そうしますと、まあ二、三億円ぐらいではないかと思うのでございます。
  72. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その場合の貸し付け条件というものはどういうふうになっていますか。
  73. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) これは一般の場合と同一でございまして、半額につきまして最初の三年間が七分で、あとは七分五厘という金利で十年間の償還という普通の基準でございます。
  74. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 公害防止事業団なり、あるいは中小企業近代化資金、そういうものの貸し付け条件とは違うんですか。
  75. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 事業団のほうが安うございまして、償還期限二十年、金利が六分五厘でございます。
  76. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあ経済力の強い大きな企業ですから、それほど国の援助は必要じゃないかもしれませんけれども、しかし、法律できめて、そして料金を許可制にして、これから海水汚濁防止していこうというからには、やっぱり公害防止全体の融資の条件と同じような条件のもとに、そうした処理施設の促進をはかっていくということが必要だろうと思うんですね。その辺をひとつ十分考えていただきたいということです。それから次の問題としては、先ほど一番最初に申し上げましたけれども、非常にこの日本の場合に中小タンカーが多い。しかも、その中小タンカーは、どちらかというと、石油精製業者に専属をして、いわゆるこの石油精製業者が荷主になっているわけですけれども、専属しているために、経済的に非常に支配をされていると思うんですね。ですから海水汚濁しちゃいかぬという、そういう責任は当然船主にあると思いますけれども、しかし、究極的には、経済的に支配をしているそういう石油精製業がやはり私は責任を負うということも必要だと思うんですね。そういう点、この今回の法律をつくる場合に考慮されなかったかどうかですね。聞くところによると、通産省が非常に反対をしたと、こういうことも聞いておりますけれども、その辺をひとつお聞きしたい。
  77. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 本法では、やはり原因、これはあくまで船主、船でございますので、荷主である石油精製業者には全然関係ございません。ただ先生がおっしゃいましたように、確かに中小タンカーはやはり荷主さんには、どちらかといいますと、多少弱い立場にございます。しかし、今回の法律でそういった石油精製業者をしばるような規定を置かなかったのは、通産省が反対したわけではちっともございませんで、これにつきましては別途、たとえば、運賃がそれによって上がるとか、あるいはまた石油精製業者のほうで、先ほど申しましたような自家用の専属廃油処理施設を  つくるというようなことで、十分御協力いただきますように、通産省とも話し合っておりますし、通産省のほうもできるだけの御協力はいたしますということを申しておりますので、そういう点につきまして十分まあ協調してやっていきたいというふうに考えております。
  78. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 通産省の方おると思いますが、いま申し上げたようなことについて、当然この石油精製業がこうした義務を負ってもいいんじゃないかと、これは中小のいわゆる内航タンカー責任についてですね。そういうことについてどう考えておられるか。そしてまた、当然この廃油処理する施設をそれぞれの企業が自分でつくるということも必要ではないかと思うんですが、現在どういう現状にあるのか、今後どうしようとするのか、そこをお聞きしたい。
  79. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) ただいま運輸省のほうから御説明がございましたように、本法対象は直接にはやっぱり船舶でございますので、石油精製業者も間接には関係ございますけれども、ただいま運輸省から御答弁ありましたように、間接のたとえば荷主であるという立場で廃油処理経費等いろいろ伴いますが、そういう面等について、運輸省と十分協調しながら、石油精製業者を指導していく、そういう基本の考え方でございます。  それから、石油精製業者が自家用で施設をつくるようにするということでございますが、これは先ほど来運輸省からお話しございますように、各港湾管理者が施設をつくられることになっておりますけれども、非常に込み合うような港湾におきましては、石油精製業者のところで自家用の施設を持っておりましたほうがタンカーの操作等にもお互いに都合がいいという場合ももちろんありましょうから、そういう場合に、自家用の船、自分のところの自社船、あるいは定期的に自分のところで契約をしておる、文字どおり自家用の船につきましての処理施設を石油精製業者が単独でつくるという場合も起ころうかと思いまして、その規定も法律の中にあるわけでございます。  なお、この石油精製業者が自家用で処理施設をつくります場合には、先ほど来運輸省から御答弁のありましたのに準じまして、やはり開銀融資でありますとか、あるいは地方税の減免措置というのは同様に講じて育成してまいりたい、かように存じております。
  80. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 まあそうした、経済的に非常に弱い立場にあるこの中小タンカーに対する配慮というものは、これは今回の法律によって、一応罰則をもって義務づけていくわけですから、これは荷主である精製業としても十分考えてやっていただきたいと思います。そういう指導を通産省としてはやってもらう、こういうことが必要だと思います。  そこで、先ほどちょっと触れたんですが、この精製過程の中で出る汚物ですね。で、こういうものを船で捨てるということでなしに、   〔理事大倉精一君退席、委員長着席〕 そこの企業で処理施設をつくって、それで汚濁の基準に合うというか、合わないというか、基準以下のものにして出すというようなことは必要だと思うのですね。そういう処理施設をそれぞれの企業に設置をきせるという、そうしたものを義務づけていく、そういうことは必要だと思うのですけれども、それはどうですか。これは両方からお聞きしたい。
  81. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 石油精製工程からきます、そういうものを含んだ廃棄物でございます。これは海洋投棄をいたしますと、どうしてもまあ先ほど来お話が出ておりましたように、海水汚濁するという原因になりがちでございますので、ただいま先生のおっしゃいましたように、なるべくそういう精製工程から出ます廃棄物は、石油精製業の工場内におきましてこれを焼却をする。あるいはその中で処理をする。海洋投棄をしなくても済むというように石油精製業を指導してまいりたいというふうに考えております。
  82. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうしたものを義務づけていこうという考えはないですか。ただ指導するというだけで。
  83. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) ただいまのところ法的にこれを義務づけて行なわしめるということは考えておりません。
  84. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これはまたあとでも触れようと思っているのですけれども、いわゆるこの船舶による海水汚濁以外に、やっぱりこのいまのような京葉コンビナート地帯、あるいは京浜、あるいは瀬戸内海、こういうところでは、工場からの排水、廃油、こういうものが海水汚濁のやっぱり大きな原因にもなっていると思うのですね。したがって、それぞれの企業は、自分たちのところの廃油は自分たちで処理していくということがやはり海水汚濁防止する面では非常に大事だと思うのです。だからいまそういう法律がなければ、この機会にやはりそうした義務づけるような規則、法律をつくっていく必要があると思うのですが、これは大臣いかがですか。
  85. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) こういう新しい法律をつくりますと、各方面にいろいろな関係がございます。ことに公害関係の問題は、一つところだけで占めようといっても、なかなかむずかしい面もございますので、いろいろ関係官庁とも相談をいたし、その御協力を期待しながら立案をいたした次第でございますが、将来の問題といたしまして、どうしてもこれだけでは不十分である、石油業者にも義務づける法律が必要だというようなことになりましたならば、その際においては十分通産省の御協力を得たいと思っております。
  86. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 どうも公害問題に対する政府の基本的な姿勢というものが、公害本法の中でも明らかにしているように、経済の健全な発展との調和をはかりつつと、こういう基本的な姿勢があらゆるものに出てきているような感じがするわけですね。やはり十分その企業に対して資金的な助成をしていくと同時に、企業にきびしい、そうした原因を発生しないような義務づけをしていくということをあわせてやらなければ、私は公害というものはいつまでたっても絶えないというふうに思うわけです。したがって、これはひとつ十分今後考えてやっていただきたいというふうに思います。  それからビルジ排出防止装置ですね、これは非常に設置費用が高いということが言われているわけですけれども、これの装置のために資金助成が行なわれるわけでございますが、どのくらい予定をされているのですか。
  87. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ビルジ排出防止措置につきましては、これは船につけるものでございますが、これにつきましては船舶整備公団というのがございます。その公団から約一億のワクで希望者に対しまして低利の融資をするというふうに現在考えております。まだ詳細につきましてはきめておりませんけれども、一応そういうふうにワクはきまっておる次第であります。
  88. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いま外航船舶の場合、こうした防止装置を設置しているのはどのくらいあるのですか、あるいはまた内航船舶ではどの程度設置されておるわけですか。
  89. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 外航船舶につきましては、大半自分の船にこういう分離器をつけております。内航につきましては、あまり明確な数字はわかりませんけれども、ほとんどないのじゃないかというふうに存じます。
  90. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これは一個つけるのにどのくらいかかるのですか。聞くところによると、二万トンタンカーの場合は四百万くらいかかる、それ以外でも大体六十五万くらいかかるのじゃないか、こういうことをいわれておるわけですが、そうしますと、一億円のワクだということになりますと、対象船舶が大体二千二百隻以上あるわけですね。そうしますと、六十五万円もかかるということになれば、一億円くらいのワクではとても足りない。かりに半分融資をしたとしても二百六十隻しか装置できない、こういうようになるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  91. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいまのお話ですと、油水分離器もございますし、ビルジためという受けざらのものもございますので、両方船の大小によりましてつけるわけでございます。特に小さい船につきましては、受けざらを船底に置くとかいうことをいたしまして、これはほんとうの安いものでございますけれども、それにためては捨てるということになります。それから油水分離器のほうは、おっしゃいましたように、大小ございますけれども、小で五、六十万くらいではないかと思っております。  なお、ただいま船舶整備公団の融資と申し上げましたけれども、それ以外に中小企業金融公庫でございますか、そういった点の融資のあっせんも運輸省としては考えておる次第でございます。
  92. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 中小企業近代化資金もありましょうが、それもやはり先ほどのように、この船だけに融資をするわけではないのですよね。ですから、そのワクもおそらくまだどのくらい取れるのかはっきりつかんでいないと思うのですよね。しかも、この条約が批准されますと、タンカーの場合一年以内に、それからタンカー以外の場合は三年以内に義務づけられておる。だからよほど計画的にこれを予算的にもやっていかないと、これはできないのじゃないかと思うのですよ。そういう見通しがあるのですか。
  93. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 極力予算等につきまして努力したいと思っております。
  94. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 大蔵省の方おりましたら……。  大蔵省としてはこうした条約が批准をされ、法律がつくられれば、当然これに基づいた予算的な措置というものが必要になってくるわけですが、これはどういうふうにお考えですか。
  95. 長岡実

    説明員(長岡実君) ただいままいりまして、先生の御質問全体をよく把握してないかもしれませんが、廃油処理施設に関する御質問と理解してよろしゅうございますか。
  96. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 廃油処理施設もそうですが、それと同時に船舶内に装置するビルジ排出防止装置ですね、そういうものが今度義務づけられるわけです。それに予算がいまの段階では廃油処理施設の場合は、開銀融資が十五億というワクはあっても、十五億全部がそういうものに使われるわけではない。あるいは貸し付け条件にしても、公害防止事業団の貸し付け条件と若干違っているというようなこと、それからもう一つは、この船舶内に装置をする防止装置ですね、これの予算船舶整備公団に一億円というワクがあるといわれておりますけれども、一億円では、対象船舶を今後一年以内なりあるいは三年以内に全部装置をしていくには、とても足りないわけなんですよね。それをやはりよほど計画的に、予算的な裏づけをもってやっていかないといけないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども大蔵省として、この法律なり条約を批准するに当たって、どういうふうな対処のしかたをしておるか。
  97. 長岡実

    説明員(長岡実君) 私、担当は予算のほうでございますので、御質問のうち開銀融資その他について責任あるお答えはできないかもしれないのでございますけれども、こういう条約も批准されたことでございますし、政府といたしましても、法律を制定して汚濁防止に万全を期そうということでございますので、全体の計画のほうはこれから運輸省が中心になられていろいろ詰めていかれるわけでございますから、初年度として必ずしも予算措置その他が十分ではないかもしれませんけれども、今後そのような計画を詰めていく過程におきまして、財政的な面においてもそれを裏づけるような措置をとるように努力いたしたいと思います。
  98. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 時間がありませんので、ひとっこうした資金的な助成、裏づけというものは、やはり政府としても十分今後の予算の中で確保するということをぜひお願いしたい。  それからもう一つは、排水基準ですね。たとえば、今度の法律によりますと、一〇〇PPM以上のものについて排出することを禁止しているわけですね。ところが、この基準というものは、水質保全法、これに基づいて四日市あるいは鈴鹿水域に水質基準というものを設けているわけですが、これと比べますと非常にゆるやかになっているわけですね。これはどうしてこんなに開きをつけたのですか。
  99. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 先生御指摘のように、四日市・鈴鹿地区の海域につきましては、水質保全法によりまして、石油精製業等からの排水につきまして水質基準を設けております。これにつきましては、たとえば石油精製業は暫定的に四PPM以下、活性汚泥法による処理ができるようになりましたときにはそれによる一PPM以下ということを規定しておるわけでございます。これに比べますと、この船舶からの一〇〇PPMというのはかなり差がある、こういうふうに思われるのでございますが、しかし、工場から出てまいります水の量と、船舶から出します水の量とにはかなり差がございまして、工場から出ます水の量が、たとえばこの四日市・鈴鹿地区を考えてみましても、かなり多いという事情がございます。また、この廃油処理施設を設置いたしまして、そこへ入れまして、そこで処理をする、こういうこともあるわけでございます。また、こういうふうな廃油処理施設をつくりまして、そこで処理をした上でその水を海上へ廃棄するという場合には、これは水質保全法の処理対象、規制対象といたしまして法を適用するかどうか、これは今後運輸省とも十分研究の上やっていきたいと思いますが、法的な対象になるかどうかは別といたしまして、十分運輸省と協議いたしまして、その地区におきましてすでに水質基準がかけられておりますようなときには、それとのバランスを十分考えてやっていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。  また、港湾では、先生御指摘のように、百五十トン・五百トン以下という船がかなり多いわけでございますが、これにつきましては、港則法によりまして行政指導的にもいろいろ規制を加えていく、こういうことになっていることでございます。また、現在の処理技術等から考えまして、現在廃棄されております廃油のよごれぐあい、たとえばビルジでありますと大体一万PPMぐらい、バラストでありますと一、〇〇〇PPMぐらい、あるいはまたクリーニングでありますと一〇万PPMぐらいというようなかなり汚濁が激しいというようなことに比べますと、このPPMというものもかなりの改善でございます。そういった事情を考えておるわけでございまして、特に問題になりますのは、廃油処理施設をつくりましたときのその排出基準でございますが、それは、先ほど申しましたように、その地域におきます汚濁状況なり、あるいは水質基準なりを勘案いたしまして、それとのバランスを考えてやっていきたいと思っております。
  100. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この一〇〇PPMという基準をつくる場合に経済企画庁のほうでは運輸省と相談したんですか。
  101. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 運輸省といろいろ御相談いたしました。その結果、現在の国際条約におきまして一〇〇PPMと規定されておりますということ、それから現在の船内における処理施設の技術、そういったことの事情、それからまた、廃油処理場をつくってそこで処理した上で排出するという場合もいろいろふえてくる、こういう事情、また、現在の汚濁状況から比べますれば、この一〇〇PPMで規制するということもかなりの改善だという、そういったことから、この一〇〇PPMというものも現在の事情としてはやむを得ないところであると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  102. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうことを言うと、今後、たとえば四日市や鈴鹿水域のように水島なりあるいは京葉地帯で一つの基準をつくる場合、こうした  一〇〇PPMというものが一つの基準というか、足かせになって、よりきびしくするようなことができなくなってくるんじゃないですか。それはどうですか。
  103. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 船舶から排出されます廃油につきましての排水される分につきましては一〇〇PPMでございますが、しかし、一つは、この廃油処理施設に収容してそこで処理した上で海に流すといった場合の処理基準は、その水質の状況等を十分考えまして、もしその地域にすでに石油精製業について幾らというふうな水質基準が出されております場合には、それとのバランスを十分よく考えてやっていくという、また、百五十トン・五百トン以下の小さな船につきましても、港湾というふうな特に汚濁の激しいところでは、そういうところにつきましては港則法によりましていろいろ指導もされていくと、こういうことを考えまして、法律に規定されておりますこの一〇〇PPMということで適当である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 どうも、せっかく廃油処理施設を金をかけてつくる、しかも、一方では非常な被害を受けているということになれば、そのためにこの四日市あたりは四PPMとか三〇PPMときめたわけでしょう。ですから、企画庁としてはもっとシビアにして、そうして少しでもよごれをなくしていくということを考えなくちゃならぬと思うのですけれども、どうもいまのお話を聞いておりますと、運輸省にしても経済企画庁にしても、何か条約さえ批准をすればこれでいいんだ、メンツが立てばいいんだ、あとはどうでもいいんだという感じを受けるんですね。やはり、もっと日本の実情に即応した基準なり、あるいは法律の規制というものをしていかなければ私はいけないと思うんですよ。そういう先の見通しもないままに、かえってこうした一〇〇PPMというものが足かせになって、今後の基準をきめる場合に非常にゆるい基準になってしまうということを私はおそれるわけです。廃油処理施設からどのくらいで捨てることができるか、その辺は今後の研究というか、運輸省と話し合って協議していくと、こういうことを言っていますけれども、私は、すでに四PPMとか三〇PPMとか暫定的にしろ基準をつくっているわけですから、したがって、今後は廃油処理施設から捨てる場合でも、この基準以上は絶対認めないとか、そういったやはり経済企画庁としてのしっかりした方針というものをこの際聞きたいわけです。今後協議してきめるということになると、これは非常に弱いものになるんじゃないかと私は思うんですが、この点どうですか。
  105. 松本茂

    政府委員(松本茂君) この法案に関連いたしまして運輸省とよく協議いたしまして、一つは、この廃油処理施設をつくりました場合、そこの排出される水の水質基準につきましては、その地域におきます石油精製業なり、あるいはそれに類似した工場から排出される汚水の水質基準を十分参考にいたしまして、それとのバランスを考えながらその水質基準を決定していくということにいたしております。また、百五十トン・五百トン以下の小さな船につきましても、特にそれが港湾というふうに、そういった小さい船が特に重要な意味をもっておりますものにつきましては、港則法によりましても運輸省のほうで十分今後指導していってもらう、そういうことになっておるわけでございまして、船舶から排出される水につきましても、一〇〇PPM以下ということにいたしておりますが、そういった点につきましては十分慎重にやっていきたいと思っております。
  106. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 どうも時間がないので、これ以上この問題については触れませんけれども、ひとつ十分この法の目的が達せられ、そして特に漁民が迷惑を受けないように、被害を受けないように、そして沿岸の自然美というものが守られる、そういうものをぜひ考えていただきたいと思います。  最後に、先ほどちょっとお話が出ましたが、被害救済制度について、これは防止法だから救済のほうは必要ないのだ、必要ないというか、規定できないのだ、こう言われますけれども、しかし、幾ら防止をしても被害というものは現実に起きるわけです。これは、たとえば法の第七条ですか、第七条によって、規制されずに捨てる場合があるわけですね。そういう場合なんか、これは当然海水汚濁されて被害を受ける。あるいは東京湾とか瀬戸内海は、先ほどのお話のように非常に船舶の航行がはげしい、いつ遭難事故が起きないとも限らない、座礁する、あるいは衝突する、そういうものによって油が流れ出す。そういうものについても、やはり被害を受けるものに対する補償というものは、これはやはり考えなくちゃいかぬわけです。せっかくこうした防止法をつくるわけですから、こうした救済制度についても私はあわせて確立をして、そして、いままで四十九億ですか、こういうばく大な水産資源被害を受けているこの漁民の生活をやはり守って行く必要があると思うのです。こういうような救済制度についはどういうふうにお考えになっておるのか?
  107. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 先生御指摘のとおり、この法案ではそういった救済の問題は触れておりません。しかし、実際的に大きな問題であることはわれわれも十分承知しておりますので、現在のところは、船主責任といいますか、につきまして保険制度の問題がございまして、これによりまして第三者に対する損害責任の限度におきましててん補するという制度が現在ございます。それから、この前のイギリスの沖でのトリーキャニオン号事件がございまして、ああいったような被害を第三者に与えたということで、国連の下部機関でございまする政府間海事協議機構というのがございまして、そこで緊急の理事会が開かれまして、船でございますから国際的な問題でございますが、今後こういったものについてその保護をどうするかということにつきまして、国際的な場におきましても検討しておりまして、そのために法律委員会というものをつくりまして、早急に検討していこうということになっております。わが国といたしましても、やはりそういったような国際的な会議もございますから、国際的な問題とのかね合いもございますので、そういう点の動向もにらみ合わせながら、船主責任制度についての強化ということにつきまして今後十分検討していきたいというふうに考えております。  なお、これは船側ではそういうところでございますけれども、それ以外に、たとえばそういった被害を受けた漁民の方というものにつきまして、これは公害本法でもうたっておりますので、今後厚生省なり関係の省庁と十分御相談していきまして、どういう救済制度をつくったらいいのかにつきまして、今後十分検討していきたいというふうに存じておる次第でございます。
  108. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 水産庁にちょっとお聞きしますが、四十年度で四億六千万被害を受けているというのですが、これでどの程度補償されているのですか。
  109. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 件数にいたしまして八十七件のうち、補償を受けましたのは一件でございます。北海道で一件補償を受けておりまして、あと二件は見舞い金が出されております。あと八十四件は加害者不明でございます。
  110. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 加害者がはっきりしていれば、いまのような補償もある程度できると思いますが、これはやはり公害と同じように、加害者が非常にわからないわけですね。しかも、監視体制も十分でないというような現状ではなおさらです。そこで私は、この際救済制度一つの手段として、やはり船舶に対して、先ほど保険をかけているからということを言っておりますが、わずかに三〇%といいますね。しかも、百トン以上だ、こういうことになっているわけです。これを全船舶に対して、お話がございましたように義務づけていく、そういういわゆる損害賠償責任保険契約を締結させていくということをひとつ考えていくべきではないか。そうしてこの船舶の無過失責任というものについても十分救済されるような道を開いていく、これをひとつ、この救済制度の確立のためにぜひ検討していただきたいというふうに思います。  次の人もありますから、まだ足りない点は十分あるのですけれども、きょうはこのぐらいで質問を終わりますけれども、最後に、運輸大臣にもう一度はっきりしていただきたいのですが、どうも今度の法律案は、いろいろ説明を聞いていますと、何回も言うようですけれども、条約をこの際、批准をすればいいのだ、そういう態度がよくうかがえるわけです。ほんとうに東京湾なり瀬戸内海なり、日本沿岸海水汚濁防止するのだという積極的な法律の内容になっていない、こういうように私は思うのです。したがって、私どもも、これはないよりはいいのですから、この際は賛成をして通しますけれども、しかし、いつまでもこのままほうっておかれたのでは何にもならない。したがって、早急にもっと充実した内容のものにしていただきたい。そういうかまえを、取り組みをぜひお願いしたい、こういうふうに思うのです。
  111. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私もそのとおりにやりたいと思います。努力いたします。   〔委員長退席、理事大倉精一君着席〕
  112. 大倉精一

    ○理事(大倉精一君) 戸田君。
  113. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 前の質問者と大体同じ方向でありますから、できるだけ重複しないで質問してまいりたいと思いますが、第一点は、港湾施設の整備状況についてでありますが、現在四十二年度でありますが、どのように進めようとしておられるわけですか、具体的な内容についてお伺いしたいと思います。それから施設設備の重点方向は一体どういうところにございますか。この内容について。それからそれらに要する経費は一体どのくらいであるか。さらに、四十二年度予算内容を見ますと、港湾設備特別会計の歳入歳出予算額、港湾設備五カ年計画の三年目で、前年度より約七十七億円の増加、総体で七百六億八千九百七十八万五千円、こういうことになっておるのでありますけれども、こういった予算でいま運輸省考えている港湾設備計画というのもが大体十分なのかどうか、この辺の見通しについてもひとつお伺いをしたいと思うわけです。
  114. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 最初に廃油処理施設整備計画につきましてお答え申し上げます。  四十二年度につきましては、全国で三十港くらいのうちで最も油性汚水を捨てる分量の多い港のうちから六港選びまして、そこの港湾管理者に、そこで内航船を中心とする廃油処理施設をつくっていただくというふうに考えております。その六港現在予定しておりますところは、川崎、千葉、横浜、それから下津、水島、あと神戸というふうに考えておりますが、それで港湾管理者に対しましては建設費の半額を国庫で補助する。これにつきましては、四十二年度予算におきまして三億の予算を計上いたしております。それから重点と先生おっしゃいましたのですけれども、ただいま申し上げましたように、一日百トン以上のそういったような油性汚水を船が流す港湾、全部でもって三十港ございますけれども、その中で特に三千トンないし一千五百トン、そういったような大口のところがございます。そういうものを順次整備していきたい。本年はとりあえず六港を選んだというわけでございます。  それからなお、これは主に内航船を主にしておりますのでございまして、たとえば外航タンカーにつきましては、外航タンカーはおもにイランから日本へ原油を持ってまいりますのが八割くらいございますのですけれども、これは日本で油を揚げますので、日本の港でバラストを捨てる機会がございません。こういう船は、修理する場合とか、あるいは定期検査に入ってドックするというような場合に、大きな船倉を水で洗いまして、そのクリーニングの汚水が出るというので、これにつきましては、そういった船舶の修理港、つまり造船所の多い場所、区域を選びまして、これは全国で、たとえば東京湾とか大阪湾とか瀬戸内に二カ所とか、あるいは西九州、そういうところでそういったような大型タンカー外航タンカー用のクリーニング汚水を受け入れる処理施設をつくらせる、これはクリーニングを兼ねますので、民間の業者がやるということで、現在東京湾で一社できておりますが、これが全国で八カ所できればいいんではないか。それで、これにつきましては、開銀の公害ワクで低利長期融資の助成を行なうというふうにいたしております。  それからそれ以外には、たとえば船主さんが金を出し合いまして、自家用の処理施設をつくるとか、あるいはまた石油精製業者が自分の石油工場に出入りいたします船がバラストを流しますので、専属の船につきまして自家用の処理施設をつくらせる、そういう規定も置いておりまして、それにつきましても融資等の助成を行なうという計画で今後進めていきたいというふうに考えております。  なお、港湾設備費の問題につきましては、港湾局事官からお答え願いたいと思います。
  115. 栗栖義明

    説明員(栗栖義明君) 港湾設備の問題につきましては、ただいま御指摘ございましたように、昭和四十年度から港湾設備五カ年計画をもちまして、総事業量が五千五百億という規模で進めてまいっておりまして、現在四十二年度は第二年目になるわけでございます。大体の進行の割合は、総事業量が年々増加してまいっておりますが、全体で約五〇%程度進捗しております。おおむね予定どおり進行しておるというふうに考えております。
  116. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いろいろと最近政府計画は立てるんでありまするが、今のお話ですと、予定どおり進行しておる、そういう状況ですけれども、やはり実行されなければ私は何にもならないと思いますね。そうなりますと、どうしても財政措置が私は問題じゃないかというふうに考える。で、いまおっしゃられましたように、かりに六港の四十二年度の重点施策をやって、これに対して約六億円、三億補助体制、こういうことでありますが、これは管理者の名義でそういうことをやるんでありますから、地方自治体においても私はいろいろあるんじゃないかと思う。ことに、この政府の財投計画をちょっと見ますると、一つ公害防止事業団を通じてやるもの、それから日本開発銀行、これから融資するもの、それから中小企業金融公庫、さらに地方債、こういうふうになっておるようでありまするが、この四十二年度の財投計画も、それぞれのいま言った融資額というものは一体どのくらい見られておるのか、その内訳をお知らせ願いたいことと、もう一つは、二分の一補助体制ではたして完ぺきかどうかということでありますがね。ひとつの特例でありますが、これは、きょう法案として通過をいたしました通学道路のああいった問題についてはこの補助金の引き上げが考えられておるのでありますが、もっと私は、やはり国で意欲的に補助体制というものをとって行く必要があるんじゃないか。少なくとも二分の一という体制は私は必ずしも完ぺきではないと思う。ですから、一つのそういった例もあるのでありまするから、二分の一ないしは三分の二あたりまで補助金というものを引き上げてもらえないのかどうか。この辺に対する運輸省の見解と、大蔵省がおられると思いますが、その辺に対するひとつ考え方を説明していただきたい。
  117. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 最初の御質問財政融資関係でございますけれども、これにつきましては、民間の廃油処理施設をつくる場合に、開発銀行公害ワクがございます。これは十五億と聞いておりまするけれども、そのワクの中で原油処理施設についての資金の融資を受けるというふうにしております。それからこれは廃油処理施設ではなしに、船舶がつけまする油水分離機というものがございます。これにつきましては、船舶整備公団がございまして、船舶整備公団を通じまして、その資金を低利で貸す、これは約一億予定いたしております。財政融資につきましては、今年度はそういうような手当てをいたした次第でございます。  それから港湾管理者に対します補助の問題、二分の一では少ないのではないかという御質問につきましては、これは公害でございまして、やはり原因者がある程度の負担する、国も負担する、それからまた、その自分の庭先である港湾のある自治体も負担する、三者で負担し合うということから考えますれば、国から二分の一、建設費の二分の一ということで適当ではないかというふうにわれわれ考えておる次第でございます。
  118. 長岡実

    説明員(長岡実君) 船舶の油濁防止の事業の補助率が二分の一が十分であるかどうかという御質問でございますけれども、公共事業の補助率の体系というのが、先生承知のように非常に複雑になっております。たとえば道路で申しますと、国道であれば四分の三負担する。地方道で三分の二の負担になる。河川で申しますと、一級水系は四分の三の負担で、中小河川は二分の一であるとか、非常に複雑な負担になっております。私ども公共事業の予算を担当いたしております立場といたしまして、何か非常にすっきりと国民のすべてに御説明のつくような補助率の体系ということについては、鋭意勉強いたしておりますけれども、現在一応考えられることは非常に規模が大きい、したがって、その事業の効果も広範囲に及んでいる、かつその事業の効果の及ぼす範囲が非常に不特定多数の人間であるといったようなものほど補助率が高く、それが逆に行くに従って補助率を低くしておるといったような傾向が見られるわけでございます。たとえば国道であれば、そこの道路を通過する自動車というのは、どこの人、どこの県のどこの市の自動車が通るかわからぬ、にもかかわらず、その地先の地方公共団体が道路の整備の負担をするというのではやはり気の毒だからというので、国の負担を高めるとか、そういったような一つのルールらしきものがあるようでございます。港湾につきましては、実は港湾全般について、その補助率の体系が、やや何かこう、いま私の申し上げたこととは違っておるような気がするわけでございますけれども、そういうような問題について、本年度予算のときにも、大蔵省といたしましては、ひとつ運輸省と根本的に検討しようじゃないかという話をしたわけでございます。  さて、この油濁防止補助率の二分の一でございますけれども運輸省のほうからもご説明がございましたけれども、この事業についてだれの責任でどうするんだといったような問題よりも、やはり設置の責任をその港湾管理者に負わせて、国は財政的に援助して行く、かたがた、その施設に対しては、施設の利用はやはりある程度料金でカバーしていかなきゃならない、要するに、公害防止あるいは公害除去事業全般についての一つ考え方といたしまして、原因者のはっきりしているものにつきましては、その原因者の負担において一般に迷惑を及ぼさないようにするというのは、これは実際問題としてなかなかむずかしい場合もございますけれども、理屈としては一つ考え方だろうと思うのでございます。そう言う風な考え方もあわせまして、いま、たとえば下水道、下水道の中でも特に工場の排水による公害防止する特別措置下水道といったようなものは四分の一の補助でやるといったように、大体二分の一から四分の一の範囲内くらいに、この油濁防止に類似していると思われるような事業の補助率がなっておるようでございますから、そういう意味で大体二分の一でいいんじゃないかというようなことを運輸省とお話し合いをいたしました上で、きめたような次第でございます。
  119. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、確かに現行の行なわれているそういう態様については、それはわかるのでありますが、これは正しいとは思わないんですよ。ただ、あなたがいま言ったように、いろんな角度の補助金体制というものはあります。割合も違います。しかし、とどのつまりは、結果的に、地域負担であるが、国民全部におおいかぶさっているんですね。この前もちょっと申し上げたと思いますが、学校一つ建てるにいたしましても、小学校を建てる場合はその三分の一ですか、あるいは中学校二分の一、地域的にまた交付基準が違う。あるいは木造、鉄筋というぐあいに建築物によってまた違う。そうして、なおかつ実際交付をするときは、その現地の時価に見合わないのですね。一定の机上プランによってその交付基準というものがきめられてしまっていますから一実際交付されるのは総工費の三分の一、二分の一といわれていながらも、五分の一ないしは四分の一、その全責任はどこにいくかというと、国民が全部負担をする。さっき、漁業関係の被害程度がいろいろ、こうありますけれども、そのうち救済されたものはわずかに一件しかないというのでしょう。公害なんというものは、それはいろいろ基本的な考え方……。これから公害本法が出てきてやられますけれども、これはやっぱり特定人がやむを得ずそういう被害を及ぼしている九すね。それを単に、政府の手によって意欲的に取り組まないから、そういうところまでいってないと思うのですが、そういうことになると、結局、海水汚濁等によって被害を受けるのは漁民、ことに零細漁業、ほんとうにノリ、カキ、きつい労働でもって一生懸命働いていろ、そういう人たちが最大の被害者になっている。これに対しては何ら補償は加えられていない。これは、救済問題にもいろいろあとで触れますけれども、そういう問題から考えますと、もう少しやっぱり、この行きつく被害の方向というものを考えて、意欲的に、港湾施設なり、そういうものはもう抜本的に改善をしていかなければならない。そのいわば端緒を得て三年目に入ったわけであります。もっとやはりものごとの考えというものは前進をしてもいいんじゃないか。問題はやっぱり財政措置なんですね。だから、いろいろ大蔵省の専門家から考えれば、そういった従来の慣行というものがあるでありましょう。しかし、それにとらわれずに、ひとつ新しい角度からこれらの補助金体制というものを整理、もしくは率の引き上げ、こういうことをやっていいんではないか。たとえば、地方財政等の問題についても、いま地方財政は非常に困っている状況だと思いますけれども、いろいろその都道府県によっても違うようであります。また、その公害基本的なそういうものの対策をとってない県もあるようであります。すべては、地方でとっているところの、行きつくところの、結局は地域負担的な、国民からさらに巻き上げて、そうしてそういう港湾施設とか、被害防止というものがやられる、こういう状況です。だから、こういうことでは、国民は二重にも三重にも、結局は国策なり、地方自治体のそういう公共事業が悪いために被害一者となっているのでありますから、結局、その中心はそういう金の問題です。補助金体制。だから、これに対して抜本的な率の引き上げというものが私は必要だと思うのですがね。その方向で今後検討する考えはございませんか。
  120. 長岡実

    説明員(長岡実君) 先ほど申し上げましたように、現在の公共事業の補助率の体系が絶対に正しいものであるという御説明はなかなかむずかしいと思います。ただ、一つ一つの事業について、なぜこの事業がこういう補助率になっておるのだということを聞きますと、やはりそのつどは、非常に真剣に議論をした上でそういう補助率がきまり、かつそれが積み重なって、いまの非常に複雑な補助率体系になっておるわけでございます。そういうわけでございますので、簡単に補助率体系をいじるということはむずかしい問題かと思いますけれども、私どもとしては、やはり大きな宿題として勉強はいたしております。  それからもう一つの、補助率を大幅に引き上げることと、それからその公共事業の促進といいますか、社会資本の整備の促進といいますか、これを大幅に促進する。ですから、事業を大幅に促進し、かつ補助率を大幅に引き上げるということになりますと、国の財政としては、二重の、何と申しますか、財政負担の増加になるわけでございますけれども、結局は、先生がおっしゃいましたように、国と地方との財政の両方合わせてどれだけの事業が促進できるか。かりに、国には無限に金があって、補助率も非常に高くあげる、事業もうんと伸ばせるという場合でも、現在の地方財政制度のもとでは、それを地方が受けとめられないというのでは何にもなりませんので、結局、国家財政と地方財政という二つのワクの中で一体どれだけの資金配分の上で社会資本の整備に重点的に金を投じられるかという問題として、政府といたしましては、今後とも十分にこの問題についての検討を続けていかなければならないのじゃないかと、かように考えております。
  121. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 公害問題に関する資料によりますと、公害防止事業団に対して四十一年度は四十五億、それから、日本開発銀行の融資関係が二十億、中小企業金融公庫の融資額が十億、さらに地方債でもって四百二十九億で、総計五百四億であります。それに対して政府補助金体制というものは、昨年よりわずか七十七億、ことしに引き当てて見ても非常に多い額だと私は言えないと思うのですね。だから、こういう問題について、ことに公害に対して最近国民の世論というものも非常にきびしくなってきている。また、大局的に早期にやっぱり整備していかなくちゃいけないわけであります。そういう重点施策というものに対して、いま言ったように補助金体制を含めて抜本的な財政計画というものがあっていいんじゃないか、こういうふうに考えるのですがね。そういう方向についてはどうですか。
  122. 長岡実

    説明員(長岡実君) 現在一公共事業の予算が四十二年度で一兆円をこえております。国の一般会計予算の二割をこえているわけでございます。この程度公共事業に国費を投じております国は、わが国が社会資本の整備が非常におくれておるというまあ悪い条件はございますけれども、諸外国でも例がない。そういう意味で、私どもとしては、現在でも財政的には公共投資には相当な力を入れておると考えております。たいへん、なまいきなことを申し上げるようでございますけれども、その中で特に重要な道路とか港湾とかあるいは治山治水というようなものにつきましては、やはり政府として計画的に施設を整備していかなければならない。そのために五カ年計画という制度があるわけでございます。財政の立場からだけ申しますと、五カ年計画というものが非常にたくさんできるということは、財政の運営が非常に硬直的になり弾力性に乏しくなるというきらいもあるわけでございますけれども、一方、非常に国としての重要な事業については長期的な見通しのもとに年々の投資を行なうべきであるという観点から五カ年計画という制度があるわけでございまして、現行の港湾整備五カ年計画が十分であるか十分でないかという御議論の余地はあろうかと思いますけれども、先ほど運輸省の栗栖参事官お答えいたしましたように、政府としては現行港湾整備五カ年計画を着実に実施していくような予算措置ということはやっておるつもりでございます。
  123. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 一番この人間の生命、財産ないし健康というものを侵害しているのは、この公害問題だと思うのですね。ですから、あなたがいま具体的に一兆円近いものをそういう方向に向けられた、こう言うけれども、結局、五兆円の予算の中には、あらかじめ八千億という公債を発行して建設費に向けるのだ、こういうこともあるのだし、さらに財投にだって六兆数百億あるというのですね。そういうことを総合的に考えれば一重点施策として私はずいぶん金の裏づけがあるのじゃないかというように考える。そういう意味合いにおいて、この財政措置、いわば補助金体制です。公害全般——港湾ないし一般の交通対策も入るでしょう、そういうものに対して、ほんとうに財産や生命、健康というものを守るということなら、もう少し私はやっぱり力点を、その大蔵省の金の使い方の力点というものを、そういうところに向けてもいいんじゃないか。これはもう形は補助金体制でもいいのです。当面。そういう意味合いにおいて十分私は検討していただきたいと思うのです。加えて、運輸大臣のその辺に対する御見解をひとつお伺いをしたいと思います。
  124. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) なかなか、補助率をどうすればいいか、また年々の公共事業費をどう扱うべきか、これは財政当局におかれましては苦心のあるところだろうと存じます。私どもといたしましては、具体的な公害対策につきまして補助率等を策定いたしまする際には、現実の必要性に応ずる施設をいかにして早期に実行するか、それがために負担関係に無理がないかどうかというような点を勘案をいたしておるようなわけでございまして、このたびの補助率につきましても、とにかくこの程度でひとつスタートをしたい、将来この補助率について再検討をしなければならぬ時期はあるいはあるかもしれませんが、それまでは。ききに大蔵当局から言われましたように、これは純然たる公共物ではないのでございまして、多少業務上の収入も伴います。その収入というのは、やはり原因者に対して原因から生ずる結果を予防する責任を負わせるというような意味において、公害についての補償の基本的な精神の一部が料金という形であらわれたものでもございましょう。したがって、これについて料金をとることはある程度当然のことだという前提のもとに、一般のあり方に従いまして、まず二分の一の補助率ならばさしあたり他の補助金に比べまして見劣るところはないと、こう考えたわけでございます。
  125. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 農林省のほうにちょっとお伺いしたいのでありますが一農林省の公害関係の資料によりますと、現在、「漁業はもっぱら被害をこうむるばかり」と書いてある。加えて、この事業場数が全体で二千二百七十九カ所であると書いてあるのですね。こういうものに対して積極的に農林省としても防止策に乗り出さなければいけないというようなことになっておるのでありますが、その一つ方法として、沿岸地帯二十カ所に水質巡回監視事業というものをやられておるわけなんですが、この事業は十分農林省が考える方向で進められておるのでありましょうか。その点はどうですか。
  126. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 水質監視事業と申しますものは四十一年度から始めまして、四十一年度は内水面だけを実施いたしまして、四十二年度二十水域を指定いたしまして実施することになっておりまして、現在実施の始まったところでございまして、その効果につきましで、十分効果があがっているかいないかということまでまだ検討しておりません。ただいまから始めるところでございます。
  127. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 これは、先ほども明らかにされておるわけですがね。大体全体の被害推定額というものは七十四億五千三百万円、これは公害の農林省の資料に明確になっておるわけでありますが、そのほか損害推定、こういうものが四十八億三千四百万円、こういうふうになっておるわけであります。それで、おもなるものは、ノリとかカキとか、主として沿岸漁業ですね。こういうものが該当だと、こう言う。あるいはアユやサケ、マス、こういうものなんでありますが、そういうことで泣き寝入りしている漁民というものが数にして相当大きいわけですね。一つの例でありますが、松島湾のカキ、ノリが死滅をした、その原因がいまだにわからない、総額にして約四億程度損害をこうむった。こういう問題についても早急にこの原因の探求——これが無過失主義でもっていくなら、国家なり地方自治体がそれなりに損害補償なりあるいはそういう救済措置をとるのでしょうけれども、全然それがないのですね。こういうことになりますると漁民の生活が成り立ちません。ですから、こういうものを強化をして十分効果をあげて、そういう漁民の生活保障というか、そういうところまで引き上げていく、こういう問題の取り組みを十分やっていただきたいと思うのでありますが、二十カ所では、私はどういうふうに配置をされておるかわかりませんが、この巡回監視体制としては少ないのじゃないかと思うのですが、それはどうですか。
  128. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) ただいま申し上げましたとおり、海面につきまして本年から始めましたのが二十カ所でございまして、来年度もこれを強化していく方向に努力いたしたいと存じております。
  129. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 具体的にどういう内容ですか。
  130. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 個所数の増加と、それから内容の強化をはかりたいと存じております。
  131. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 海上保安庁のほうにちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、この前資料もいただきましたけれども、この港則法二十四条によるいわゆる違反事件というものは非常に少ない、こういうことでありますが、逆面を突けば、いわゆるそういう取り締まり体制といいますか、こういうものの整備が不十分なんではないかと思うんですが、その辺はどうでしょうか。
  132. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 現在、海上保安庁の船といたしまして約二百八十八隻、航空機十六機を保有しております。油による港則法の違反を取り締まる手段といたしましては、大部分がわがほうの船舶及び航空機によるわけでございますが、いまの勢力で十分かとおっしゃられますと、私どもとしては、なお新しく法律も成立するようでございますので、これらの取り締まりを強化するためには、やはり船艇、航空機の増強をいたきなければならないというふうに考えております。そういう線に沿いまして今後とも予算折衝においては力を尽くしたいと、かように考えております。
  133. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いろいろと政府なり地方自治体で海水汚濁防止について努力をしていることは認めるんでありますが、それにも増して、依然としてそういうものがなくならないと、こういうことですね。このいただきました資料によりますと、「日本船舶及び規制対象船舶の数」、これは、いわゆるいま規制対象となっていない百五十トン以下の船舶が、隻数で言いますと圧倒的に多いんであります。全体をながめますと、規制対象船舶が二十一万六千九百三隻、規制対象船舶が二百五十三隻、トン数においては確かに規制対象のほうが割合としては多いのであります。で、こういういわば規制対象外の小さい船によって、海水汚濁といいますか、そういうものが相当やられておるんではないかと思うのでありますが、この辺のトン制限の規制というものですね、さっきもちょっと質問に出たようでありますが、これをもっと拡大する必要はないかどうか、この辺はどうお考えですか。
  134. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お説のとおり、できるだけたくさんの船を規制することが将来の理想であると思います。ただ、今回はとにかく一ぺんに全部をやるといってもたいへんでございますので、まずまず、国際条約の要求しておる範囲だけでも一応やろうと、そして一刻も早く海水汚濁防止の実をあげたいと、こういう気持ちで、これを第一歩という含みで立案をいたした次第でございます。  しこうして、この規制船舶の出す油が、どの程度全体の油の中で防止されておるかという計算をざっといたしてみますると、まず、船舶から出る油のうちで八〇%はこの大型船の規制によって防止されるであろうという推定をいたしております。
  135. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大臣の意向も、何らかの処置をとらなければいけないと、こういう御趣旨のようですが、それは明確に何トン以上と、こういうことで規制対象にしていくのか、具体的にそういう内容がいま検討されておるのか、そういう点はどうですか。
  136. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) さしあたりは、まず規制対象を条約に合わせて、これでスタートしていこう、そして、これの完全なる実施をするのも相当な努力が要りますので、これをまず完ぺきを期していこう、そしてその他の船舶についてはその後の問題として考えて行きたいと、こういう考えでございます。
  137. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 失礼ですけれども、大臣のいまの資性というのは非常に私消極的だと思います。日本は御存じのように海運国なのでありますから、当然、そういう意味合いでは、条約を待たずして積極的に日本自身がそういうものを確立していく必要があるのじゃないかと思うのです。何でもかんでも条約を待って、その上に立って政治をしていくということになれば、少なくとも海運国としての日本は相当後退をする、こういう印象を私は受けるのでありますが、もう少し意欲的に大臣自身がお考えになっていただいて、そして条約待ちじゃなくて、日本独特のそういういわば規制条項というものをつくり上げてはどうか、こういうふうに考えるのでありますが、その辺はどうですか。
  138. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 小型船舶まで規制するということになりますと、施設も膨大になりまするし、また、小型船舶についていろいろ運営上にも問題がございまして、これらの問題を一挙に解決する、そのいい案ができるまでは海水汚濁するにまかせるというような状況にないと思いますので、現在の状況では少しでも有効な防止装置に早く着手すべきだ、こういう考えでございまして、あながち消極的とばかりは考えでおりません。
  139. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから一救済制度について、大臣は、損害保険制度的なものをつくる趣旨に対しては賛成でしょうか、どうでしょうか。
  140. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 船舶賠償責任保険については、現在のところ、すでに制度がございます。
  141. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 日本船主責任相互保険組合というのがあります。この定款をいろいろ見てみますと、当該組合員だけに対してのそれぞれの補償体制ですね。他に、そこに働いておる船員やあるいは漁港中心に住んでおる住民、こういうものに対して、あるいはさっきもいろいろと指摘をしましたけれども、漁民の被害に対しての補償、こういうものは全然ないんです。ですから、そういう問題に対して、ことにこの定款を見ますと除外規定というものがありまして、そういうものはおおむねこの除外規定に挿入されるような状況であります。ですから、どうしてもこれを完ぺきな体制に持っていくためには、私は損害保険体制、これの制度化を促進する必要があるのじゃないかというふうに考える。そういうことでないと、やはりこの救済制度は非常に片手落ちになってぐるのじゃないか、こういうふうに考えるのです。運輸省の当該資料によりましても、そういういわば海水汚濁に伴って被害をこうむるばかりじゃなくて、海難事故が発生するおそれがある、それが非常に高い事故になる、こういうことを指摘されているのであります。そういうものがもし発生をした場合には、相当甚大な被害を受けると思うのであります。ですから、そういうものをいまかりに救済をするということになれば、当面丁政府は十分救済措置をとるということにはいかないでしょうが・保険制度的なものをひとつ確立をしまして、そのことによって被害発生時において幾ばくでも救済措置をとっていく、こういうことがいいのじゃないかと思いますが、その辺に対する大臣の御見解はどうでしょう。
  142. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま御質問で指摘されました損害保険というのは、たとえば公害被害者となるおそれのある漁業者が、将来発生すべき自己の損害に対して保険をかけると、こういう意味かと伺いましたが、それでよろしゅうございましょうか。
  143. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それに地域住民も入ると……。
  144. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) わかりました。公害被害者国体のこうむる損害保険するという制度につきましては、他の省において検討されておろかもしれませんが、運輸省といたしましては、公害の原因である船舶の無過失あるいは過失、故意の不法行為、そういうものから他人に迷惑をかけた場合には船舶所有者がそれを当然賠償するというのが一般の観念でございますので、その場合に、自分の賠償するべき責任を平素から保険にかけておると、こういう意味で船主保険があるわけでございます。被害者の方々の保険は、運輸省の所管としてはただいま考えておりません。
  145. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 確かにその辺いろいろとむずかしい問題だと私も思います。たとえば船主関係についてはこういう相互保険組合というものがある。働いている船員たちに対して船員労災がある。いろいろ入り組んでおります。しかし、いま運輸省が指摘をいたしますように船舶の海難事故というものは今後非常に危険な状態にある。こういうわけでありまするから、そういうものを総合的に一つ保険制度によって救済する措置等が必要ではないかと、こう私は考える。たとえば、前国会におきまして地震災害保険というものが成立をみた。これは、いわば東京がかつての関東大震災のような震災にあった場合に、これはたいへんなことだ、そういうものに対して政府が約三千億出資いたしまして、保険業者と相談の上に立ってそういう保険というものをつくった。ですから、そういういわば一つのケースもあるのでありますから、そういうものにならって、そういう被害者をやはり救済する、事故発生時にいろいろ危険の度合いがあるわけですから、制度化の方向というものは検討されてもいいんじゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、これは、大蔵省保険部長かなんか来られでおりませんか。——それじゃ、帰ったそうですから、どうでしょうか、このこと、大臣は。
  146. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 運輸省といたしましては、船の関係からかような問題を取り扱っておるわけでございます。したがって、船の与えた損害に対しては運輸省の受け持ち範囲でございますので、それについての責任保険するという制度については十分に考えておるわけでございます。したがって、それが海難の場合でありましょうとも、あるいはまたその他の事故による場合でありましょうとも、船舶の構造あるいは状態が原因になって損害を与えた場合は、これは船舶責任考えていくベきものでありますから保険範囲内に入ると思います。しかし、たとえば漁業者なりあるいは海岸の利用者が公害のために損害を受けました場合においては、それが船舶から来たものだということがはっきりいたしましたなら、先ほどの船舶保険でカバーできるわけです。その他の陸上からの被害であるとか、たとえば工場の汚水が河川に流れてきている、それによって海岸がいたんだ、あるいは魚族が死滅した、という場合におきましては、運輸省のほうでそれまで引き受けるという手段は、いま考えておらないのでございます。しかし、そういった問題は一つ考え方として、ことに公害等の場合は原因者が不明の場合もございまするので、総合的な保険制度あるいは救済制度として考える値打ちは確かにある事柄だと思います。おそらく今後、政府関係各省が協力してそういった問題についての対策を立案する、考えていく、そういう時期も必ずあるものと考えております。
  147. 大倉精一

    ○理事(大倉精一君) 原田君。
  148. 原田立

    ○原田立君 たいへん時間もたっておりますし、ダブる点があるだろうと思いますが、その点はひとつ御了解願いたいと思います。  まず、私が思うことは、今回の法律は、いわゆる一九五四年国際条約並びに一九六二年の同条約の改正の批准に伴っての関係国内法である。しかも、それが十数年もたってやっと今回こうやって国会に提出されるようになった、この点について非常に私は不思議に思うのです。特に、いままでもいろいろと指摘されているように、世界の主要海運国がほとんどこの条約を批准し、また最近は油についての需要量も増大して、各種の公害問題も起こり、しております。日本の場合においても、油の使用量は年間総需要量は一億二千万トン、こういうふうに言われます。今後またどんどん伸びて行くであろう、こう言われております。また、現に沿岸漁業被害は目に余るものがあり、新聞紙上で非常に騒がれているわけでありますが、大分、徳山、門司、水島、下津あるいは京葉方面でいろいろと被害が続発しております。そういうようなことで、今回の法案がおくればせながらも出てきたということには、それなりに意義はあると思うんでありますが、いかにもおそ過ぎたというような感じがするのであります。それで、政府は条約の批准と関係国内法の成立のため現在までどのような努力を払ってきたか、また、どうしてその批准がおくれたか、ないしは国内法の提案がおくれたのか、そこら辺の事情等を御説明願いたいと思います。
  149. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 本法がこのたび初めて国会に上程されましたということでございますが、実は、御指摘のとおり、最初の条約が昭和二十九年、それからその改正が三十七年でございまして、確かに十何年も、その間わが国といたしましては、条約の批准もいたしませんでしたし、国内法も制定いたしませんのは事実でございます。まあ、怠慢と言われれば怠慢かと存じますけれども、何ぶん公害という関係がここ五、六年ごろから一般に世論として出てまいりましたような雰囲気でございまして、ということで、ようやく昨年の衆議院の公害委員会の御決議をいただきまして、今回ここに、ついに法案を出すということに踏み切った次第でございます。たいへんおくれましたことにつきましては申しわけないことと存じますけれども、とにかく、それによりましても、これからこの法律をつくりまして十分やっていきたいという覚悟でございますので、ひとつ何とぞ御了承をお願い申し上げたいというふうに存ずる次第でございます。
  150. 原田立

    ○原田立君 怠慢のそしりは免れないと、これを自覚なさっておられるようでありますが、ところで、この条約批准国は数多くございます。それで、その国々はそれぞれ国内法も整備してやっていることであろうと思うのです。今回の法案を提案なさったのも、先ほどからの説明を聞いてみると、その緒についたのだ、糸口のところへ来たのだから、ここら辺でいいじゃないかというような御趣旨の御答弁でありました。ところが、私考えるのですが、一つの法案ができると、そのあとの手直しというのができるものではないと思うのです。そうなると、やはり当初から思い切った内容を織り込んだものにしていかなければ、やはりずっとおくれていくのではないか。特に海洋国日本にあっては、なおさら笑いものになっていくのではないか、こういう心配をするわけです。ですから、今回の提案なさったこれはどうしても動かしがたいものでありましょうけれども、これは先走った話になりますけれども、いまいろいろと各委員が指摘した内容の矛盾、足りない点、これらを一体どんなふうにまた手直しをなさるお考えがあるのか、この点はいかがですか。
  151. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 何ぶんにも、この法律の施行は予算を伴うものでございまして、各省の経験から申しましても、最初の予算を獲得するということは金額のいかんにかかわらず、なかなかむつかしいことでございますが、幸いに今年度にある程度予算が獲得でき、そうしてそれを足がかりとして、最小限度の規制ではございまするが、この汚濁防止法を提案することができたということは、これはひとえに昨年来国会の各機関から非常に熱意のある御決議による御支援をいただいたたまものだと思うのでございます。私どもは、今回の措置で決して当分満足だというものではございませんで、今後とも規制の範囲を広げてまいりたいと存じますが、それには、何と申しましても、廃油処理施設その他の施設の拡充を行ないませんと、法律の実施はむつかしいものでございまするし、また、施設の拡充には相当予算も必要でございますので、今後年々予算獲得に努力し、すみやかに施設を拡充して公害を絶対に防除するということをできるだけすみやかに実現するように努力をいたしたいと思います。   〔理事大倉精一君退席、委員長着席〕
  152. 原田立

    ○原田立君 ちょっと中身についてお伺いしたいと思うのですが、第十条、これもしばしば他の委員より指摘されている問題であります「総トン数五百トン未満のもの及び総トン数百五十未満の油送船には、適用しない。」、ここのところは各委員が発言するくらい大事な問題点だと思うのです。それで、ある一般の意見では、普通船舶では百トンまで下げるべきだと、あるいはタンカーについては全部規制すべきじゃないかと、こういうような声が非常に多く出ております。先ほどもお伺いしていると、今回のこの百五十トン未満タンカー並びに五百トン以上のもので八割ないし九割ぐらいは押えられると、だから、これでいいじゃないかと、こういうふうなお話でございましたけれども、なお重ねて、全船規制すべきであると、こう私は思うのですが、その点御見解をお伺いしたい。これはどうしてかと言えば、事実、港湾管理者あるいはまた沿岸漁民の多くの人から全部規制すべきだという声が非常に大きい。その声を無視して、それで八割、九割つかめるからこれでいいじゃないかというのは私納得しがたいわけです。
  153. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 一つ御理解をいただきたいと存じまする点は、この法律においては、なるほど百五十トン未満タンカー及び五百トン未満の一般船舶が野放しになっているわけでございますが、しかし、これらの船はあらゆる水域において今後何らの規制を受けないというわけのものではなぐ、御承知のとおり、すでに従来からの港則法によりまして、これらの船舶といえども港湾の水域及びその水域より一万メートル以内の水面内におきましては、こうしたものを水上に、海中に投棄することは厳重に禁止されておったのでありまして、しかし、肝心の港にそれを処理する施設がありませんために、そのせっかくの規則がありながら、これを励行さして厳重に取り締まりを行なうということがなかなか困難な状況にありました。このたびは、たまたま大型タンカー大型船舶について陸上に施設ができましたので、これらの施設は小型の船のためにも役立ち得るものでございますから、こういう具体的な救済の施設ができた以上は、従来の取り締まりを一そう厳重にすることによりまして、少なくとも港則法でカバーしている水面においては、あらゆる船舶の油の登記を取り締まるようにいたしたいと思っております。これを励行いたしますると、少なくとも東京湾などではほとんど全水域について油の投棄が予防されるということになるわけでございます。そうした面において、まずできるだけ徹底した措置を講じていくというふうにいたしたいと思っております。
  154. 原田立

    ○原田立君 多少技術的なことでお伺いするようになると思うのですが、八割ないし九割ですね、押えられるのは。そうすると、あと二割ないし一割ぐらいは逃げるわけですね。この逃げるのは一体どうやって捕捉するのですか。
  155. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 大体あとの二割は百五十トン未満でございまして主として平水区域の資格を持つ船が多うございますので、東京湾で申しますと、東京湾の中はもちろん平水区域でございますし、かつ港則法で取り締まれる範囲の一万一メートル以内に全部なるわけでございます。そういったような船が大体でありますので、抜けると申しましても、多くの部分は港則法によって取り締まれるのだというふうにわれわれ考えております。
  156. 原田立

    ○原田立君 私は、公害という面でお伺いするのですが、その公害も、絶えず、があっと被害がある、そういう考え方の公害と、たまたまであっても、ばっと油が流されちゃって全滅しちゃうという、そういう場合があると思うのであります。ですから、八割ないし九割ぐらいは捕捉できるけれども、あとの二割ないし一割ぐらいのものが、ばっとやったらどうなるか、現に、ある人の話を聞いてみれば、油は、たとえば二・五トン、ドラムかんで約十四本ぐらいなものだそうでありますが、これがもし流出したとすると、直径五百メートルぐらいのところが全部紫の海になるというふうに聞いております。そうなってしまったものは、全体の八割ないし九割を押えているからいいじゃないかというようなことは、どうも合点がいかないわけなんであります。また、数多くでなくて、たった一ぺんでも全滅のおそれもあります。こういう事故が起きた場合、責任の所在とかなんとかということにもなってくると思うのですけれども、これはもうどこにも持っていけないとなれば、結局、零細の漁民等は泣かなければならない。こういうようなことになってくるので、その八割ないし九割ぐらいつかまえておけばいいじゃないかという議論には、どうも私合点がいかないのです。
  157. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ちょっと言い方によって御趣旨のような意味にもとれたかもしれませんが、八割を押える、あとの二割は野放しにしてある、ということではないのでありまして、この法律では八割だけしか押えられないことになっております。しかし、あとの二割は、従来からありました港則法の規定で少なくとも東京湾内くらいのところならば全部もともと押えられているのでございます。したがいまして、いままでは、せっかく港則法というものがありながら、肝心の油の受け入れ装置がなかったために十分な取り締まりをやっておりませんでしたが、今度東京湾内にそういう施設ができるということになりますと、取り締まりを厳重にやることができますから、したがって、従来の港則法の禁止規定が全面的に活用される。したがって、この法律の適用を受けない二割についても少なくとも東京湾内くらいのところならば取り締まりができますから御心配は要らないのではないか、こういう説明を先ほど来いたしておるのでございます。
  158. 原田立

    ○原田立君 大臣の説明のように心配ないというふうに考えていいわけですね。また、今後もしいろいろこんな問題で事故が起きたら、いまの大臣の言明と事実は相違する重大な問題になりますよ。  その点は別にして、いまの施設の問題ですけれども整備港の整備計画についてお伺いしたいんですが、廃油処理施設を初年度には補助金三億円で合計六カ所、絶対数が非常に足りないと思うのでありますが、当然ここで、今後の年次計画ですね、先ほどお話がちょっとあったかのように思うんですけれども、年次計画はどういうふうにお考えですか。
  159. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 大体全部の港を見まして、その港に入る船の数、それから船の種類、それから船の型ですね、その実績を基礎にいたしまして、そういったような種類に基づきまして、油性汚水、すなわちビルジ、バラスト水及びタンククリーニング水と三種類ございますが、それが一隻当たりどのくらい出るかという計算をいたしました結果がございますけれども、一日百トン以上のそういったような油性汚水が船から出る港は全部で三十港でございます。その中で特に千トン以上出ますのが十一港でございます。その十一港は、千葉、川崎、横浜、四日市、大阪、神戸、下津、和歌山、水島、岩国、松山、下松となっております。それで、本年度はそのうちの六港でございますけれども、川崎、横浜、千葉、下津・和歌山、神戸、水島、十一のうちのビッグシックスをまず港湾管理者で施設をつくっていただき、次は、その残りの千トン以上のものにつくっていく、それからさらにその次はその下というような計画で今後やっていきたいというふうに、一応廃油を出す量に応じた港を選びましてやっていく。大体石油精製工場のある港が多うございまして、そういった順に整備していくわけでございます。これは港湾管理者がやる場合でございます。  それ以外にも、場所がダブりますけれども、外航大型タンカー造船所へ入って修理する、それから定期検査をするという場合に多量のクリーニング汚水を出します。それについては、港湾管理者でなしに、関係造船会社等が出資してタンククリーニング等をあわせました石油処理事業というものの会社をつくらせましてこれらの油性汚水を受け入れる。これは大体東京湾、大阪湾に二カ所くらい、瀬戸内に二カ所それから西九州に一カ所というふうに考えておりまして、本年度は二カ所くらい、東京湾ほか二カ所くらいそういう処理事業ができると思います。したがいまして、あとまあ、残り五カ所くらい、また来年、再来年というふうに整備をしていきたいというふうに考えてる次第でございます。
  160. 原田立

    ○原田立君 整備なさるということはわかりました。また来年、再来年になさるというお話もわかりました。何年計画とか、第何次計画というふうに具体的にきちんとあげてやるような計画はもうすでにできているのですか。
  161. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) いまそのはっきりしたものはできておりません。これは予算問題もございますので、財務当局等とも御相談しなければならぬと思います。一応の線は、いまのような三十港くらいを三カ年くらいという案は持っております。
  162. 原田立

    ○原田立君 予算の問題でしょうけれども、三十港三カ年——大ざっぱな話ですよ。やはりお金がつく問題でしょうから、また運輸省のほうで大蔵省と折衝なさるにも、もう少しはっきりした計画をお立てになるべきじゃないか、こう思うのですけれども、現に、来年の予算編成でやるでしょうから、はっきりしないといけないのじゃないですか。
  163. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 来年の予算もいま準備いたしておりますけれども、来年度につきましていま現在検討しておりますので、はっきりした計画をつくるつもりでおります。
  164. 原田立

    ○原田立君 それから、先ほどの六港の、今年度やったということなんですが、そのどき、大臣の御答弁の中に、地方港湾管理者のほうからつくると申し出があったのできめました、三十幾つかのうち六つだけきめました、こういうお話でした。つくると申し出があったからきめた、じゃ、申し出がなかったらやらないのか。逆説的なことになりますけれども、この点どうなんですか。
  165. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は、ことしは、先ほど来たびたび申し上げておりますとおり、一カ所五千万円の見積もりをいたしまして、補助費が三億でございますから六カ所しかつくる予算がなかったわけでございます。そのうち、大きな港につくるようにいろいろ話をいたしておりましたが、港湾管理者のほうもなかなか財政的な負担もございますとか、初めてのことでございまするから、経営の状況もわかりませんので、しり込みするものがいまして、まあ、よそが一年先にやったのを見て、それから来年自分のほうもやりたいというようなものもございまして、中に勇敢なのが、ことしぜひ自分がまっ先にやる、そういうようなのがちょうど六港ありましたので、それにきめた、こういう意味でございます。
  166. 原田立

    ○原田立君 どうもはっきりよくわからないのですけれども、次に、自家用廃油処理の問題ですが、廃油処理事業者ないし自家用施設による処理者及び港湾管理者の三者を予定して規定してあるのだろうと思いますが、廃油処理施設を所有して行なう、廃油施設については採算が合わない仕事なので、結局第二十七条による勧告規定により港湾管理者がやることを余儀なくされるのじゃないか、こう思うのですが、そこで、やはりいろいろと先ほど戸田委員の質問もありました財政的な、現在赤字等をかかえているところで、またこの新らしい仕事が出る、こうなると、港湾管理者自体もアップアップになるのではないか、結局国のほうから手厚いものを出すべきじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。それから先ほどお話がありました、石油ターミナルまたは造船所等に処理施設を義務づける必要があると思うがどうかと、こういう質問に対して、現在考えていないということなんですが、考えていないで、今後この法律をつくって、きちんと油による汚濁をとめていく自信がおありになりますか。なぜこんなことを聞くかと言えば、現在、石油は約一億二千万キロリットルと、こう言われておりますが、試算されたのを見たわけでありますが、五十年には二・五倍、二億五千万キロリットル、あるいは六十年には四・六倍、今後どんどんと需要が増していくだろうと思う。そうなると、現段階においては、石油ターミナルまたは造船所等に処理施設を義務づけないというのがはたして適当なのかどうか。現状では義務づけることを考えないけれども、将来は義務づけるということを考えているのか、その点はどうですか。
  167. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 申し上げ得ることは、現在の法案では義務づけることまでは考えていないということであります。しかし、永久に義務づけるべきものではないという考えを持っておるのではございませんので、何と申しましても、石油精製業者は資本力も大きゅうございまするし、また、廃油処理施設をつくりました場合に、最もその利用の利益に浴するものも石油精製業者でございまするから、どちらかといえば、原則的に石油精製業者は自己の生産品を運搬するタンカーのための廃油処理施設をつくるべきだという考え方が成り立ち得ると思うのでございます。しかし、これにつきましては、現在の段階では、そこまでいかずとも、政府の行政的な指導によりまして石油業者に必要な廃油処理施設をみずからつくらせることが可能である、こういう考えを持っておるわけでございまして、そういう意味で法的措置は今回は行なわないというわけでございます。将来、必要があれば当然法的措置考えていくべきものだと思います。
  168. 原田立

    ○原田立君 第七条の「次の各号の一に該当する油の排出には、適用しない。」ということで五項目あげてございますが、いわゆるPI保険と法案の七条との関係についてお伺いしたいのですが、この七条では、五つの場合には排出してもよいとされております。この一の場合ですね、「船舶の安全を確保し、船舶若しくは積荷の損傷を防止し、又は海上において人命を救助するための油の排出」、それから二、この一号ないし二号のような場合に生じた損害損害保険対象になるのですか。
  169. 野村一彦

    説明員野村一彦君) ただいまの御質問でございますけれども、現在のPI保険でカバーいたしております損害範囲につきまして、そのカバーできないものは、その責任者の故意または重大なる過失によってこれらの損失、損害または費用が発生したときには、このPI保険でカバーできないということになっております。したがいまして、いま先生の御質問の「船舶の安全を確保し、」という、「人命を救助するための油の排出」ということで、まきにそのとおりの事由によってやむを得ず油を排出したということによって他人に損害を与えたならば、それは、まあ私の考えでございますけれども、現在のPI保険がこういう条項を予想しておりませんので、それに適合するかどうかわかりませんけれども、私どもは、解釈といたしましては、保険ではカバーできるのではないかと考えております。
  170. 原田立

    ○原田立君 それは、当局の正式見解としてお伺いしていいわけですね。
  171. 野村一彦

    説明員野村一彦君) まだ法制当局と打ち合わせをしておりませんので、その点、確言をもってはできませんけれども、私ども運輸省事務当局としては、そのように考えております。
  172. 原田立

    ○原田立君 こういうことは間々起きてくる問題だと思います。それで、ただあいまいに終わったんでは相ならないと思うわけです。さっそくその点明確にしておいてもらいたいと思うのです。  それからなお、廃油処理施設からの処理かす、それはどうなのか。どこに捨てることになるのか。いろいろ、清掃施設にしても、汚水処理施設にしても、この処理かすの処理にたいへん困っているわけです。この点はどうですか。
  173. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 目下考えておりますのは、陸上で集めまして焼却処分する。それから廃油をさらにまた活用するという商売もございますので、そういう買い手のある場合には売り払うということでございます。
  174. 原田立

    ○原田立君 最後に、取り締まりの問題でお伺いしたいと思うのですが、政府は規制外船舶について港則法で規制でき得るとしているのでございますが、港則法は、立法趣旨が問題であって、全然公害防止を目的としておりません。また、取り締まるべき海上保安庁の警備体制にも問題があるのではないか。規制外小型船舶まで手が回らないのが実情じゃないかとこう思うのですが、いかがですか。
  175. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) 私どもといたしましては、実は、今回のこの法律が成立いたしますと、距岸五十海里以内が投棄禁止区域になります。これは相当の遠距離でございまして、これは日本の全沿岸にわたって投棄禁止区域というものが新たに設定されるわけでございますので、われわれは、これの取り締まりにつきましては、原油の選定、航空機を効果的に運用するその取り締まり方法等についても現在一生懸命研究をいたしております。  ただ、犯罪捜査として行なう場合には、御承知のように、相当困難な問題があるということは私ども承知いたしております。したがって、捜査技術上の問題としては、なおいろいろ科学的に検討を重ねます。また、港内につきましては、実は現在の港内のパトロールは港内艇をもって実施いたしております。これらの実施の効果が今日までは必ずしも十分ではなかったという点は御指摘のとおりでございます。この法律全体が公害防止でありまして、従来の港則法というものも、ただ廃油、バラストをみだりに捨ててはならないというような簡単な文言だけであって、実際に、これには罰則がついておりますけれども、よほどたちが悪くないと検挙して送検するという段取りまでいきにくかったわけでございます。この法律によりまして、たとえばバラスト水にしても一〇〇PPMという基準が明確になっております。また、それら処理する施設もできてまいるということになりますれば、私どもとしては、そういう基準から判断いたしまして、港則法と法目的に若干の相違がございますけれども、現実に廃油を投棄する、あるいはバラストを港内に投棄するという行為についての取り締まりはやりよくなるというふうに考えておりますので、でき得る限りこれらの取り締まり検挙ということをやるように努力をいたします。
  176. 原田立

    ○原田立君 いまも、港則法からいってのことであっで、ちょっと今回の法制正による犯罪摘発というような問題にまではいっていないというようなお話でありました。言ってみれば、今度の法律によって監視していかなければいけないのは、海上保安庁としては、まあ変なことばでしょうけれども、片手間な仕事というふうな部類に入るのではないか、監視とか苦情処理ということは。また、片手間でなしに、今度はしっかりやっていこうということになれば、いままでより仕事がふえていくということになると思うのですが、具体的に現体制で効果的にやっていくと言いますけれども、現体制でちゃんとできますか。
  177. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) これは、そういうことを申しては何ですが、船舶側においてこういう法律を全然守らないで片っ端から違反するというのであれば、われわれの勢力をもってしてはとうてい防ぎ得ないわけであります。しかしながら、こういう法律ができ、これが徹底され、また各船が、先ほど来いろいろ御議論のございますように、そういうものを排出しないような、われわれのほうから申しますと犯罪を起こさないような環境が整備されてまいりますれば、こういうものを犯す者は少なくなるであろう、そういう点で、現有勢力で片手間とおっしゃいましたが、この法律が制定されまして施行される暁には、私どもとしては一般の仕事と同様に、やはり事柄の重大性にかんがみまして力を尽くしていきたい、かように考えております。そのため、もちろん船艇並びに航空機等のわれわれの道具を増強していくことは当然必要でございます。そのために、私どもとしては、こういう仕事は新たにわれわれに課せられた新しい仕事でございますので、それに対応するだけの道具をぜひつくっていただくということで、来年度予算を現在検討しておるところでございますが、やはりそれによって業務量が増加する分については、船艇の増強を予算上お願いするということで進みたいと考えております。
  178. 原田立

    ○原田立君 結局、そういうことだろうと思うのですよ。私も心配したのは、現体制で効果的にやっていくという長官の話がありましたから、それではとうてい足りないのではないか、こういう心配でお聞きしたわけなんです。それで、来年度予算についてもいま検討中であるというようなことでありますが、それは内部の問題でしょうけれども、この新しい仕事がふえたことによってどれだけのものをふやしてやっていくお考えなのか。それから第二に、この問題が一番大事な問題だと思うのですが、来年度予算要求等について、これは格段の努力をなさるだろうと思いますけれども、その点のお考え、これもお伺いしたいと思います。
  179. 亀山信郎

    政府委員亀山信郎君) この取り締まりのために何隻ふやすかということでございますが、実は私ども巡視船艇は、御承知のように、人命救助、密入国の取り締まり、あるいは他の海事法令違反、その他陸上の警察と消防と一緒にしたような仕事をしておりまして、全体としてやはり業務量がふえてまいりました。さらにまた、最近の東京湾内等の交通事情というものはたいへんなものでございまして、ここで油船が衝突、乗り上げ等の事故を起こした場合、これは本法適用外でございますけれども、現実に積み荷の油を大量に流すということになれば、バラスト水が少々こぼれたというぐらいでは済まない。したがって、交通安全のための交通規制という仕事もだんだん強化してまいらなければならないと総合的に判断いたしまして、現在船舶増強計画ということで検討している最中でございますので、この仕事のためにどれだけということを明確に申し上げられないので、その点は御了承いただきたいと思います。
  180. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私は、この法律の実施のために取り締まりを厳重にすることはむろん当然であるし、そのための予算についても、また取り締まりばかりでなく、法律を実施すること自体に伴う予算措置についても努力をいたしたいと思っております。  ただ、この法律は、取り締まりはともかくといたしまして、もっと大事な点は、こういう法律ができた機会に、油の取り扱いについて関係者を行政的に指導していく、そうしてできるだけ油の取り扱いによって海水汚濁が防げるような、そういう指導をすることが大事ではないかということを思っているのであります。たとえば、従来一部の石油業者におきましては、工場からできまする石油混合物を海上に投棄をする、そういうことのために船に載せて持っていかせて投棄させたというようなやり方、こういうことをやっております。こういうことは、こういう法律ができたならば第一にやめきせるべきではなかろうか。これは投棄用の船を扱っておりまする運送業者の方面に対しても指導をいたすことができまするし、また、運送を頼んでおりまする石油業者に対する指導面からもできると思うのでございまして、従来のそういう扱い方を行政的に指導して変えさしていく。そうして、そういう方面の努力がむしろ海水汚濁防止の上からいって、より多く効果をあげる面があるのじゃなかろうか。その辺のことをこの法の実施に際しましては十分に研究し、まじめに努力をいたしまして、ぜひともこの法律の目的を達成するようにいたしたいと思っております。
  181. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 大倉君。
  182. 大倉精一

    ○大倉精一君 最後ですから、私もちょっと、法律をすらっと読んで気になる点がありますので、お伺いいたしますけれども、第八条関係ですね。これは法律の発効後一年までにやれと、こういう趣旨のように思うのですが、だとすれば、ずいぶんたくさん船があるのですけれども、その全部の船舶にそういうビルジ排出防止装置をやるという能力があるでしょうかね。一年間に全部やってしまう能力があるのですか。ちょっと気になるものですから。
  183. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) これは、大型船につきましては大半が油水分離器を持っております。問題は小さい船でございますけれども、これにつきましては、ビルジ排出防止装置と申しましても、金がかかる油水分離器と違って、ビルジだめと申しまして、おけみたいなものがありまして、船底に置いて廃油をためておいて、そうして捨てるということで、金がかからない設備のものもございます。そのいずれでもよろしいのでございまして、油水分離器につきましては多少金のかかるものでございますから、これにつきましては船舶整備公団を通じて融資きせるという措置、あるいは中小企業金融公庫を通じて融資きせるということで極力やらせるということで、一年間で整備できるというふうに考えております。
  184. 大倉精一

    ○大倉精一君 わかりました。とにかく、高いものにしろ安いものにしろ、一年間でつくれ、こういうことですね。  そこで、附則の第二条の二項ですが、油の排出は海岸からできるだけ離れてやれというのですが、できるだけ離れるというのは、どのくらい離れればいいのですか。
  185. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) これは航行しているときにできるだけ海岸から離れている地点というふうに考えておりますけれども、特に何キロというふうには別にきめておりませんけれども
  186. 大倉精一

    ○大倉精一君 これは法律ですからね。できるだけ行けといったって、どこまで行ったってできるだけですけれども、ですから、こういうふうなことはきちんとやはり明確に示したほうがいいですね。少なくともそこまで示さないと、できるだけ行った、いやできるだけ行かぬ、といってこれは紛糾のもとになるのじゃないかと思う。  それから立ち入り検査ですが、これは末尾にちらっと書いてありますけれども、犯罪のための立ち入りと解してはならないと書いてありますけれども、これは厳重にひとつそういうことのないようにしてもらいたいと思うのです。と同時に、この立ち入り検査は、船舶または引かれ船を管理する船舶所有者の事務所に立ち入り検査をするのですけれども、この事務所というのはどのくらいあるのですか、数は。
  187. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 事務所の数でございますか、これはいま何軒という資料はいま持っておりませんのでございますけれども、この場合の事務所は引かれ船の場合の事務所でございます。要するに船長の乗っていない船のほう……。
  188. 大倉精一

    ○大倉精一君 いや、ここに書いてありますよ、法律に。三十条には、こういう場所へ行って立ち入りをやれ、つまり、船舶または引かれ船を管理する船舶所有者の事務所へ行って検査をせい、こういうのですが、検査すべき場所は一体どのくらいあるのですか。
  189. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ちょっといまここで数字を覚えておりませんけれども、この場合、「船舶又は」で切れまして、引かれ船を管理する事務所と、二つに分かれるのでございます。後ほど調べてまいります。
  190. 大倉精一

    ○大倉精一君 別に、急に調べぬでいいですが、そこで問題になるのは、「運輸大臣は、」「その職員に、」というのですけれども、「その職員」というのは、運輸省のどこにおる職員ですか、これは。
  191. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 地方海運局が一番そばにおりますので、地方海運局職員にやらしたいと思っております。
  192. 大倉精一

    ○大倉精一君 それで私心配するのは、やはりこういう、高いにしろ安いにしろ装置をつける義務を負わしたのですから、これはやはり確認しないと、やっているのかやっていないのかわからぬでしょう。そうしますと、この職員さんが事務所を全部立ち入り検査するにはどのくらいの日数がかかるのですか。あるいは、これは全部はできないならできないで、確認する方法をとらなければならぬと思うのですけれども、いまの人数で、きつき海上保安庁から聞いておりましたけれども、これは立ち入り検査は一ぺんはやらないといけないでしょう、これはどうですね。いまの職員でやれますか。
  193. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) いまの職員で立ち入り検査は全部できるかということでございますか。
  194. 大倉精一

    ○大倉精一君 ええ、そうですね。
  195. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 極力やる以外に方法はないと思います。
  196. 大倉精一

    ○大倉精一君 そういうことだろうと思う。それで私心配するのは、いま二、三点質問しましたが、実施できないような法律をつくったってしようがないんだ、実施できない法律をつくったって。法律をつくれば、やはりきちんと実施をして、装置をしなければならぬといったら、装置しているかいないかちゃんと見なければいけない。そういうことを、運輸大臣、これは人数が少なければ少ないなりに一生懸命やるよりしかたがないとおっしゃいましたが、そのとおりだと思うのだが、これはぜひとも、こういう法律をつくったならば、的確にこれが実施できるように格別の配慮を願いたい、運輸大臣いかがですか。
  197. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ごもっともしごくと存じます。努力いたします。
  198. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。よって、質疑は終了いたしました。  本案に対する審査はこの程度といたします。     —————————————
  200. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 次に、産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害対策に関する件について調査を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。加藤君。
  201. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は、産業公害の問題につきましてただいま鋭意勉強中でございまして、まだいろいろむずかしい問題がたくさんあって、それについて十分に理解していない問題があるわけでございますけれども、この問題がむずかしいということは、これはこの委員会の委員としてもむずかしいのでございますから、いろいろの問題で公害によって被害を受けた一般の人たちがその被害をどこにどういうふうに訴えたらいいかというような問題については、さらにもつとむずかしい問題に直面しているわけだというふうに私は理解いたします。それで、今日伺いたいことは、こういうような問題で、産業公害で起こった一つの現実の問題について、その対策をどういうふうにするかということについて伺うわけでございます。  問題は、この六月に福岡市で起こった問題でございまして、私が質問するのは、下水の処理の問題で、下水の処理につきましては、その監督指導の官庁から、どういうふうに指導していらっしゃるか、どんなふうに監督していらっしゃるかということについて伺わなければなりませんです。それから、現実に起こった被害につきましては、これは漁民が非常な被害を受けましたので、水産庁でございますか、漁民の問題について扱っていらっしゃる当局から、これにどういうふうに対処なさるおつもりであるか、伺わなければなりませんです。  それからその被害を受けまして、どういう性質の被害であるかということは、汚水によって汚されたところの海水によって魚介が死滅したわけで、そういう死滅を起こした原因の汚れた水というものはどういう基準でどういうふうに検査するか、そうしてその検査する時期はいつであって、どういうところから問題になっている水を取るかというような、そういう問題について答弁していただきたい。これは私の全部の質問をカバーして一応申し上げました。  次には、具体的にこれを一つ一つ伺ってまいりたいと思いますが、福岡県の福岡市の博多湾に面した箱崎漁業協同組合ほか七組合が福岡市の当局といろいろ交渉を持ったわけでございます。そうして問題の起こった場所は、中部下水処理場設置について起こった問題で、その下水処理場をつくりますときに、そこに必要な土地を埋め立てをする付帯工事をする、そういうことにつきまして、間に調停者の有力な方を三人選んで協定書を結んだわけでございます。そうしてその埋め立てに付随して漁業権が消滅する補償の問題と、それから埋め立て工事に伴って今後問題を起こさないようにというような、近傍水域にある漁場損害を及ぼさないように努力をすること、万一漁場損害を及ぼしたときには損害補償をすること、こういうことを協定しております。その問題でございますけれども、そういうような協定を結んで始まったことでございますが、いま問題になっている下水の処理場というのは、全然きれいな、飲めるようなきれいな水を流すということで埋め立てて、排出された以外の場所の漁場に対しては何も影響を及ぼさないという約束のもとに、福岡市中部下水処理場というのができたそうでございます。この写真で見ますと、まあたいへんりっぱな処理場のようでございますが、その問題が起こりましたのは、この処理場の能力以上の水をどんどんと排水してしまった。しかも、雨が降りましたというような原因から、今度は海水が逆流してきたというようなことで、さらに膨大な汚濁水がどんどんと海面に流出してしまった。で、このことについて、この漁民は初めは何も知らなかったようでございますけれども、どうも自分たちの扱っている魚介が死滅をしてきたので、これはどういうことだろうかと心配をして、いろいろと調べてみたところが、最初は、それは何か赤潮のためであるというふうに水産試験場から言われたので、そうかしらと思った。しかし、その赤潮の出てくる時期がどうもいつもと違うので、少しおかしいと思って、この汚水処理場に行ってみたら、驚くほどのたいへんなたくさんの汚水が湾の中に流出していた。これは、このように写真をとられておりまして、約束とはたいへん違う、真っ黒な水がこんなにたくさん流されている、こういうわけで問題が起こったわけでございます。それで、もうすでにたいへんたくさんな赤貝その他小さいお魚、そういうものが死滅いたしましたので、それについて、約束が違うではないかということで、漁民たちが組合の人たちみんなで市当局に抗議を申し込みにまいりました。市当局のほうでは、この約束の違うことをやったということをすなおに認めて、ここに今後こういうことをしないという覚え書きを漁民に対して渡しているわけでございます。  私がこのことを知りましたのは、漁民から訴えを受けたのではなくて、この問題がテレビのニュースに大きく報道されて、私はそれを見たわけでございます。たくさんの漁民が非常に怒りの表情をもって、はち巻きをして福岡市当局になだれ込んで、そうして約束が違う、責任者を出せということで抗議を申し込みに行ったのに対して、その交渉相手に出ていたのは助役さん——あとで助役さんだということがわかりましたのですけれども、市長さんでないことは確かでした。その助役さんが当惑したような顔をしてまん中にすわらせられて、そうしてたくさんの漁民が取り巻いて卓をたたいておこっているわけです。そうして市当局としては、非常に当惑したような顔をして、ひたすらあやまっているような表情であった。これはどうして、もう少しはっきりした何か答弁ができないのかしらと、私はそのテレビの画面を見たときにそう思いましたけれども、なお私は、これを公害として取り上げなければならない問題だとして、さらに詳しく調べましたところが、その福岡市の助役さんと立ち会い人二名がちゃんと判こを押して、六月十二日にそういうことを申し入れております。「(一)本市は組合に対する公約を守らず中部下水処理場から下水を流した事は申し訳ありません。(二)今后はかゝることは致しません。日被害補償については組合と誠意をもって話し合います。」この三点をちゃんとこういうふうに一種の詫び証文みたいなものを入れているのですから、明らかにこういったことで福岡市当局の手落ちがあったということを当局は認めているわけでございます。で、私が伺いたいのは、この写真でいろいろと説明を聞きましたけれども、こういうふうな、なかなかりっぱな処理場のようでございますけれども、漁民のほうからの話と、テレビの画面でのいろいろの説明を聞きますと、処理場がもう少し高度の精密な処理をするものを使わなければ漁民との約束は果たせないにもかかわらず、簡単な処理場であったから、それでこういうふうな汚水が流れたというふうに漁民は理解したようでございます。それで、はたしてそれがそのような事実であったのか、何かほかのことであったか、その処理場がはたして適当なものであったかどうかということを最初に伺わなければなりませんし、また適当なものであったとしても、現実にこういうふうな事故が起こったということになりますと、こういうような処理場をつくったそのあとの指導というのはどういうふうなされたか、責任ある当局からそのことを初めに伺います。
  202. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 福岡市におきますし尿処理場に関係した問題につきましては、ただいま加藤先生から詳細な御説明がありましたとおりでございます。ただ、この問題につきまして私ども承知いたしておりますことは、処理場自体としては、ただいま先生がおっしゃいましたように、非常に適当なものでございます。ただ、本年の三月中旬から六月上旬まで、いわゆる溢流ゲートといいまして、雨が非常に多いときに海のほうに下水を流す施設が、いわゆるゲートがあるのでございますが、これのバルブが一時ゆるんでおりまして、晴天時におきまして、別に下水がどっさりならないときにもそのバルブがゆるんで、そうして海水が逆流をして、そうして処理場の能力をこえて処理がなされていた。逆流いたしまして、晴天時においても簡易処理をせざるを得ない状況になっていた。それがいわゆるいま御指摘のきたない水を出している、こういう状況でございます。この点につきましては、さっそくバルブを直しまして、現在では普通の状態処理が行なわれている状況でございます。  それから福岡市につきましては、この、先生の御指摘の処理場で現在下水の処理を行なっているわけでございますけれども、これは福岡市の全部の下水を処理しているわけではございません、一部をやっておるわけでございます。したがいまして、貝の死滅とその下水の処理との問題が直接因果関係があるかどうかという問題につきましては、そのほかの、たとえば家庭下水等が福岡市ではほかの川にもいろいろ流れておりまして、それが海のほうにも流れております。したがいまして、現在、厚生省といたしましては、県を指導いたしまして、調査団を編成いたしまして、水産関係の先生、その他の先生を入れまして、赤貝の死滅につきまして原因を現在調査中でございます。したがいまして、この問題につきまして、下水の処理とこの赤貝等の死滅につきましての、いわゆる科学的な調査を現在行なっている状態でございます。  なお、建設省のほうでも係官が行かれましていろいろ調査をしておられますので、そのほうからも御答弁いたしたいと思います。
  203. 久保赳

    説明員(久保赳君) ただいまの厚生省の武藤公害部長さんからの説明でほぼ尽きておると思いますが、若干補足をきせていただきますと、処理場の構造機能が不十分であったのではないかと、こういう先生の御質問でございましたが、調査の結果、処理場の機能その他は不十分でございません。ただ一部、処理場ではなく、下水道の管渠の一部に、いま説明がありました降雨時に雨水を吐く設備の一部から海水が逆に逆流をした、その逆流をした海水がそのまま増量になって処理場に流れ込んだ、したがって、処理場のほうが、予定以上の水量を受けて一部簡易処理をしなければならなかった、こういう状況でございまして、その不完全——不完全といいますか、一部不十分でございましたゲートの修理をすることによりまして、現在ではほぼ漁民の方々とお約束をした処理がなされておるわけでございまして、今後もそういうようなことを維持管理その他の面で徹底していくことによりまして、下水による被害はない、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  204. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 これは、台所やなにかで使った下水と、それから水槽便所の水と両方でございますね。それで、いまの御答弁によりますと、厚生省のほうの御答弁でバルブがゆるんでいたというこの過失があったわけでございますね。それから建設省のほうからでは、この処理場の施設には不備はない、けれども不備がないという検査をなさっても、海水が逆流するというのは、やはりそれは不備ということにはならないのでございますか。
  205. 久保赳

    説明員(久保赳君) 処理場のほうの設備と、私がいま御説明をいたしました管渠のほうのゲートの部分は、一応場所的に別でございます。処理場は処理場の敷地の中の処理をする設備でございますので、そのゲートというのは処理場からずっと出まして、管渠の一部にゲートの部分があるわけでございます。したがいまして、処理場の設備、処理をする設備そのものには不備はない、管渠のゲートの部分については不備がございましたので、それは修理いたしまして、今後海水がその部分から逆流をして結局処理場のほうに流れ込まないような措置をとることによって十分だと、かように考えております。
  206. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、その処理場に対する指導、それからゲートに対する指導検査等は建設省がその責任をお持ちになるわけでございますか。
  207. 久保赳

    説明員(久保赳君) 実は、本年の六月二十一日に、下水道法の一部改正がなったわけでございますが、六月二十一日以降は終末処理場の建設並びに管渠の建設維持、これが建設省の所管となっております。でき上がりました終末処理場の維持管理につきましては厚生省が責任を持つと、こういうことでやることになったわけであります。
  208. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いろいろ法律のこまかい改正やなにかということは、被害を受けた人にはほとんど関係のないようなことで、わからないことで、そういう説明をされても非常に当惑することだと思いますけれども、この工事ができたのはその法律改正以前でございますから、そうなりますと建設省がその問題については全責任を負われるわけでございますね。それがはたして適当なものであったかどうかということは、建設省がこれでいいと思われたわけでございますね。
  209. 久保赳

    説明員(久保赳君) 今後は建設省の責任になります。  それからいま調査した結果は、処理場の機能は十分であると、処理場の設備につきましては不十分さはない、ただ管渠の一部のゲートの部分に不十分な点がありまして、それは修理をしたことになっております。
  210. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いまはもう不備はないというわけでございますけれども、この問題が起こったということに対しては不備があったと、こういうことでございますね。
  211. 久保赳

    説明員(久保赳君) さようでございます。
  212. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、これはやはり、漁民の訴えに対しましては、建設省はその点については責任をおとりになるわけでございますね。
  213. 久保赳

    説明員(久保赳君) ただいま厚生省の公害部長さんからお話がございましたように、水産関係に被害があった原因が下水道のただいまの簡易処理が原因であるかどうかにつきましては、これは調査中でございまして、その面においての責任ということは調査の結果を待った上になりますが、ただ施設の一部から海水が逆流をしたと、こういうことにつきましては確かに設備の不備があったと、今後ともそういうことのないように指導もし、措置をとってまいりたい、かように思います。
  214. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、これは、とにかく事はもう起こっちゃって、赤貝も死んじゃったのですから、もう現実にそういう問題が起こったという観点からこの問題を追及していかなければならないわけで、まあ建設省としてのお責任の問題は、いまの御答弁で明らかになったと思います。  今度は、赤貝がすでに死んでしまって、漁民が非常に困っているという問題に入っていくわけでございますが、そうなってくると、その放水された水のためにそういうような被害が起こったか、あるいはほかに原因があったかと、こういうことをただいま研究中なんでございますね。それをどういうふうに研究していらっしゃるのですか、具体的に。
  215. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 九大の水産関係の先生を含めて調査団を編成しておるように聞いております。調査団の全員についての名簿は現在の手元にございませんので、後ほど調べまして御連絡したいと思います。
  216. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それはどこから依頼なすったのですか。福岡市当局からですか、それともどこからですか。
  217. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 福岡市と聞いております。
  218. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この漁業組合のほうでも、みずからまた久留米大学に依頼いたしまして、この水質の検査をしてもらったわけでございます。この水質の検査の意見というのが報告されております。これは私、見ましたのですけれども、非常に学術的な専門用語がたくさん入っておりますから、これを見ただけで私はすぐ十分に理解することはできませんです。さらに勉強するつもりでございますけれども、現在は十分理解ができません。ただ、理解ができますのは、下水道法施行令の第六条に基づく放流水の水質の技術上の基準は次のとおり、こう言って、その基準というのがここに明示されて、そうしてこの水質を検査してくださった結果はこれこれという数字を見ますと、その基準よりみんな上回っているわけでございます。こういうふうに上回っているということは、やはりその水質が確かに有害なものであったということか、この事件に関する限りは証明されていると思います。そういうことをきいていらっしゃいますでしょうか。
  219. 久保赳

    説明員(久保赳君) 水産関係による被害の原因調査につきましてはただいま武藤公害部長からお話ございましたように、九州大学の水産学部の富山先生を中心に現在調査が進行中でございますが、建設省のほうで調べました放流量の水質によりますと、処理場から放流されている水の水質は——高級処理、それから簡易処理と二つございますが、高級処理を上回って……。先ほど申しました海水が逆流した折には簡易処理の形で放流がなされたわけでございますが、簡易処理の放流水の水質基準は、ただいま先生が申し述べられました表の中にあるいはあろうかと思いますが、下水道法施行令の第六条にございますように、たとえばBODで言いますと一二〇PPMという数字でございます。それに対しまして福岡市が簡易処理して滅菌だけして放流した数字がほぼ六〇から一〇〇の間でございますので、簡易処理には合格をしておるけれども高級処理には合格してない。もちろん簡易処理でございますから、高級処理よりもやや悪い水質が出るわけでございます。したがいまして、先生のいまの御指摘は高級処理を上回る——高級処理はBODで二〇でございます。それを上回る数字になりますが、簡易処理よりは上の範囲内に入っている、こういう実態でございます。したがいまして、私どもといたしましては、水質的には簡易処理範囲内にあり、しかもなお出てくる量がほぼ一日一万トンぐらいのものでございましたので、水産関係に対する影響は軽微であったのではなかろうかと、かような判断をいたしております。なお、詳細につきましては、水産学部の専門家に依頼した結果を待ちまして善処をしてまいりたいと、かように考えております。
  220. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その水質検査なんでございますけれども、福岡市当局のほうから依頼して検査している水は、いつどこから取った水であるかということを漁民は非常に心配しているわけでございます。自分たちのほうの大学へ持っていったその水と、それからまた別のときに、時期の違ったときに違った場所で取って持っていかれた水であるかどうかというようなこと、それがどんなふうになっているのだろうかという、それで、もし違った時期に取った水であったら……。その貝の死んだときの水でなければ問題にならないわけです。いろいろ処理されたあとの水で検査していただいても、それは、ただ論争の場合には一つ資料になるかもしれませんけれども、赤貝が死んだということにはどうにもならないことでございますから、そこのところは、どんな水をどんなふうに検査をしたかというようなことを、その被害者たちにどんなふうにして明らかになさるおつもりなんでしょうか。
  221. 久保赳

    説明員(久保赳君) ただいま私が申し上げました数字は、終末処理場におきましては水質管理の必要上もございましてほぼ毎日検査をいたしております。検査は、もちろん入ってくるなまの下水の水質、あるいは施設の途中での水質、それから一番最後には処理が終わりまして放流する直前の水質、かように分けまして、ほぼ毎日検査をいたしております。したがいまして、その検査の記録は下水道法によりまして保管をしなければいけないことになっておりますので、その事件が起こりましたのは五月と聞いておりますが、五月の以前からほぼ毎日の記録が残っておりまして、赤貝の死滅が起こったときには、終末処理場のほうの関係者はそのような事件処理水とが関係あるということを知らないで維持管理のため必要な検査を通常と変わらずに続けておりますので、その記録を見ることによって、それが故意に、おかしな時期におかしな場所から採水したものでないということは立証できるかと思います。
  222. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 赤潮ということが非常に言われておるのでございますけれども、赤潮というものはどういう原因でこの博多湾には出るのですか。その赤潮が出たと言われることと、この漁民たちがいま指摘しているきたない水が知らない間に相当期間流れ込んでいたということと、何か相互関係があるのでございますか。そこを明らかにしてもらいたいと思います。
  223. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 赤潮はプランクトンの異常発生で起こる現象でございますが、それが天然現象によるのか、内陸から流れ込みます水によって異常発生いたしますのか、因果関係はまだ明確にわかっておりません。現在それを一つのテーマとして研究を進めております。
  224. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 いままでの御答弁で、この問題についての疑問点は一通り表面に出たと思います。  で、問題は、漁民が被害を受けていることは事実でございまして、それが、この設備はもうよくなっているのだ、水の水質検査は現在もうちゃんと直っているのだ、これは天然現象による赤潮であるからこの問題とは関係がない、というような論法でもって処理をされたのでは、これはたいへんよろしくないのではないか。やはり、そこにいろいろなことが相互複雑に入り組んだ因果関係が起こったためにこんな問題になったのではないか、私はそういうふうに理解いたしますので、今後福岡市当局とこの漁業組合とがいろいろ交渉してまいります上では、とにかく被害を受けたことは受けたのである、そういう現実の問題から立脚して今後それぞれの当局において指導していただきたいということでございます。  それから最後に、この一つの問題を見ましても、問題が水質の検査とかいろいろ複雑な問題を含んでおりまして、公害対策というものに関しては非常に簡単でないということがここで明らかになりましたので、とにかく被害者の立場を十分考えて今後指導処理をしていただきますようにお願いして私の質問を終わります。
  225. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 現実に赤貝が死滅して漁民が困っておられるということ自体につきましては、はなはだ残念なことでございます。関係各省といたしましても、赤潮あるいは下水処理場の問題の水、あるいは先ほど申しましたように福岡市ではまだ下水が不十分でございまして、一般の家庭用下水が川を通じて海に流れ出る状況もあるわけであります。こういう点につきまして専門調査団の調査結果を待ってこの問題は科学的に究明されるべき問題だと思いますけれども、今後農林省、建設省、厚生省は、この問題処理については前向きの姿勢で検討していきたいと思います。
  226. 原田立

    ○原田立君 関連して。  調査団が組まれた、それでいつごろ決着するのですか。聞いておりますか。
  227. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) 正確な日にちはわかりませんけれども、七月上旬には計画ができまして、結果につきましては一カ月かあるいはもう少しかかるのか。その点については現在福岡市のほうから報告は受けておりません。
  228. 原田立

    ○原田立君 建設省にちょっとお伺いしますけれども、あの汚水処理場が原因ではないかというような意味のお話がさっきありまして、要するに、魚介類が死滅したその原因は汚水処理場不備の問題ではないというようなお話があったのですけれども、そうすると、あすこには、私よく知っているのですけれども、汚水の出るようなところはないですよ。もしありとするならば、博多川が非常にきたない都市下水みたいなものです。あすこから出てくるようなことだろうと思うのですけれども、ぼくはやはり汚水処理の不始末によるんじゃないかというように思うのですけれども……。
  229. 久保赳

    説明員(久保赳君) 私が現地の水質、汚水量を調査した印象を申し上げたわけでございますが、確たる被害の原因調査をしたわけではございませんが、一般的に言いますと、出ました水質がBODで六〇から一〇〇の間、しかも量的には一万トンという数字でございますが、福岡市の大部分がまだ下水道が未整備でございまして、先生ただいま御指摘のように、博多川その他を通じてかなりたくさんきたない水が出ております。これがあの地域に出ておりますので、終末処理場から出ているいま言われました六〇ないし一〇〇PPMのBODの水一万トンに比べまして、博多川その他に下水道の未整備地域から出てくる汚濁・量のほうが大きい、こういうふうに考えられますので、処理場の水そのものが直接原因であったかどうかについては、数字的に言えば若干疑問ではなかろうか、こういうふうに感じたわけで申し上げたわけでございます。
  230. 原田立

    ○原田立君 川がたいへんきたないことは御承知のとおりです。それと、あそこの博多湾には石油槽が、石油のタンクが非常に数多くあります。あるいはまた船の出入りも多いし、貯木場もかなり大きいのがあります。そっちのほうが原因なのかというふうにも勘ぐられるところなんですけれども、そこはせっかく御調査願いたいと思うんですが、現地の人たちは、やっぱりそれによって魚介類が死んで非常に生活上の不安を感じております。損害補償等についての見通し及び指導等は、お門違いかどうか知らぬけれども、どうですか。
  231. 藤村弘毅

    説明員藤村弘毅君) 水産庁としまして、地方的な被害につきまして個々の補償問題にタッチしてはおりませんが、この問題につきまして私どもが福岡県の水産課からの報告によりますと、先ほど加藤先生御指摘のとおり、三十六年の協定書の第五条に従って誠意をもって話し合いますという市当局の覚え書で今後補償を進めていくということに、いまその補償問題が進んでおると聞いておりまして、紛争が一応おさまったという報告を受けております。
  232. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会