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加藤シヅエ君 私は、先だって公害
基本法につきまして、本
会議でわが党の
柳岡議員から
質問がございまして、その
質問の内容は非常によく検討され、内容が整っておりまして、言い尽くされておりましたということを感じました。けれ
ども、現実に公害によってたくさんの方が全国的にいろいろの種類の被害を受けている、犠牲者になっている、命さえもとられて、そうして自分たちが長年住んでいた平和な環境がどんどんと破壊されている、こういうような現状をにらみ合わせてみますと、いまごろ
基本法が出たというようなことは、すでに十年以上もこれは手おくれであったのではないか。私はそういう感想を持ったわけでございます。しかし、一方、日本は資源はあまり十分ではございませんし、人口は非常に多いのでございますし、国土は狭隘でございまして、その中で産業開発をしていかなければならないということになれば、そこに相当程度のいろいろの無理が起こってくるということは理解されるわけでございますけれ
ども、私が今日申し上げたいことは、どうか、この手おくれになっている公害の問題がこれ以上手おくれになったり、それから事後処置の問題だけを追い回しているような
対策であってはならない、こういう見地から今日は
質問をいたしたいのでございます。
せんだって、今月の初めでございましたか、NHKの朝の八時四十五分のプログラムで「こんにちは奥さん」という番組があるのでございますが、それには厚生大臣も出られましたし、それから東京都立大学の柴田教授とかおっしゃる方がお出になりまして、そうして全国から集まりました主婦あるいは男子の方、これは、それぞれの地区においていろいろの種類の公害を受けて、もうひどい目にあっていらっしゃる方たち、こういう方たちがその実情を現実にそこへ持ち出して素朴な声で訴えられたのでございます。これは非常によくできたプログラムでございまして、
〔理事
大倉精一君退席、
委員長着席〕
私はすぐNHKに聞いて、あれがもしビデオテープでとられているものならば、ああいうものは国会の先生方の皆さんに見ていただきたい、政府の方々にも皆さんに見ていただきたいと思いましたのですけれ
ども、そういう用意がなかったそうでございまして、一回限りで終わってしまったのでございます。けれ
ども、その中には、大気汚染の被害者、濁水、
汚水の被害者、騒音の被害者、もうそれは
お話にならないような現実の被害者たちの訴えでございます。私は、それを一々ここで皆さんに、もう一度繰り返して申し上げたいくらいでございますけれ
ども、それは時間の都合上省きます。ただ今日は、
原田委員から
水質の問題につきまして、先ほど非常に行き届いた御
質問がございまして傾聴いたしました。その中で、あるいはこの問題もタッチされるかしらと思っておりましたが、ついにそこが出ませんでしたのは、最近、福岡県の博多湾で起こった黒い水の問題でございました。
それで、先ほど
水資源局長
あたりからいろいろと許容量とかなんとかいうことで、むずかしいことばで、いろいろ御
説明がございましたけれ
ども、そういうようなむずかしいことを何べんも何べんも繰り返して伺いましても、五年先になったら何とかなるであろうというような結論では、これはほんとうに被害を受けている方たちにとっては耐えられないことだと私は思います。それで、ことに今日は、私も、
部長、局長の方々においでいただいて答弁していただくつもりなんでございますが、こうしたような問題をその取り扱っていらっしゃる局の
責任者の方だけに伺ったのでは、ほんとうは十分ではございませんで、これはやはり政府の
責任者が答弁なされ、責任を持たれなければならない問題だと思います。ただ、この委員会にそうした方々を一々お呼びしてくることができませんから、やむを得ないと思いましたけれ
ども、たとえば、
原田委員からもいろいろ御
質問になっておりましたが、私、せんだってテレビで見ました博多湾の黒い水の問題なんかを見ておりましても、もう現にそこは、福岡市がもっとよく
浄化装置をしてきれいな水で博多湾に流すという約束をしておきながら、一番いい
浄化装置を省いて二番目のほうの簡単な
方法でやったために、黒い水がどんどん流れ込んで、そしてもうすでにアカガイが億という額でそこで死んでしまった。漁民にとっては実に死活の問題であるというわけで、はち巻きをした漁民の男女が市役所になだれ込みまして苦情を訴えているのでございます。ところが、それに答弁なすったのはどなたかといいますと、まことにお気の毒な一人のお役人さんが、まん中の椅子にぽんと腰かけさせられて、まわりのみんなにつるし上げられて、げんこで卓をたたかれて漁民たちに取りかこまれている。そんなことではこれはどうにもならないのでございます。したがいまして、今度のこの公害
基本法というようなものがほんとうに完全なものになって、そしてこの間総理の答弁を伺っておりますと、これは問題が多岐にわたるから窓口を一本にして総理大臣がその窓口を受けつけるというような、そういうようなことにしなくちゃいけない、こういうようなおことばもあったように思いました。早くそうした日が来て、五年先とかなんだとか、許容量がどれだけだとか、それをいま調べ中だとか、そんなことを言ってないで、もっと具体的にどんどん先手を打って防がなきゃならない。これはちょうど、病気で申しますと、今日の
公害対策というのは、病気のいろいろな悪い症状があらわれてから、やれこう薬を張るとか、あるいはこれは手術をしなければならないけれ
どももう助からないだろうとか、そういったお医者さんの診断を受けているみたいで、病気になった方にとっては、ほんとうに、とってもやりきれない。全く救いのないというような
状況に立っていると思います。
それで、私が今日
質問をいたしたいのは、どうか、こういうような状態でございますから、この公害の発生源というものを未然に防ぐために手を打たなければならない、そのためにどういうようなことがなされているか、こういうことと、それから公害がいろいろ出てくるその
一つの根拠であるところの産業開発のための土地の利用でございます。この土地の利用
計画というものに対して、予防
対策というものを考えながら土地の利用
計画が立てられているかどうか。この
二つの点に集約して私は今日
質問いたしたいと思います。
それで、土地の利用
計画の問題でございますが、いままでは産業開発ということが優先的でございまして、この開発の目的が非常に強く追求されておりますので、その利用
計画の周辺にいろいろの被害が起こるというようなことがほとんど見のがされている。いまも
松澤委員長からの御
質問を伺っておりましても、やはりそのことがよくうかがわれるわけでございまして、これではいけないので、どうか、その土地土地の特殊性を見ながら土地の利用
計画が立てられなければならない、こういうところにほんとに専門的な知識を持った
対策というものを立てていただきたい。
それで、私は今日はそういう観点から伺うのでございますけれ
ども、もう
一つは、具体的にそういう観点に一番適合いたしました
一つの例をここに持ってまいりました。それは、東京湾の江戸川河口の新浜地区、この地区の埋め立ての問題でございます。
ここは東京湾に面しておりまして、場所は千葉県でございます。市川市から浦安町、前の干がたで、そこには宮内庁のカモ猟の御猟場があるところでございます。で、その周辺が、いま産業開発という目的で埋め立てがどんどん行なわれようといたしております。その産業開発の目的はたいへんけっこうだと思いますけれ
ども、先ほど申し上げました
一つの公害が発生することに対する予防ということと、それから
土地利用の
計画という面でこの新浜地区というものを見たときに、適切なる
計画が立てられているかどうか、このことを私は伺わなきゃならないと思うわけでございます。
それで、
柳岡さんのせんだっての
質問の中にも、予防の
対策というようなことから、こういう問題をきめる場合に、研究機関、試験研究機関というものが十分になければならない。いわば
公害防止の総合研究機関の設置、それから大幅な研究費の増額、これが必要だということを
柳岡さんは主張されました。私もこれは非常に大切なことで同感でございます。ところが、この研究というようなことを一言で申しましても、これの内容というものは非常に多岐にわたっておるわけでございまして、私がいまこの新浜の地区と関連して申し上げます場合には、この試験とか研究とかいうことばの内容には、自然界と生物保護の学術的な研究というもの、そうした知識を十分に考えた上の
土地利用計画、こういうものがなされなければいけない、こう考えるわけでございます。私は、との問題につきまして各方面の権威者に教えを請うたわけでございますが、このことにつきまして、英国でも米国でも、こうした
土地利用の
計画、公害を未然に防ぐということにつきましての研究が非常に進んでいて、大学などでは、自然保護というものはどういうふうにしたらいいか、自然を保護することによって、生物を保護し、人間が住むのにふさわしいような環境をつくる、それが産業開発とどういうような調和を持っていったらいいか、そういうようなことが大学における
一つの講座になっていて、そして、将来政治家になり、あるいは役人になるというような人々は、こうした講座をほとんど必須科目のようにして大学で学んでくる。したがって、いま
柳岡さんが主張されましたところの総合的な研究機関というようなものに参加していろいろ
発言する方たちは、そういう知識を十分に持っていて
発言をする。したがいまして、英国
あたりでは相当うまく調和のとれるようなことができているという実例を伺っておりますけれ
ども、日本の場合には、不幸にして、まだ大学でそういうような講座があるということを聞きません。これは、文部当局にも将来はいろいろと進言しなければならない点だと思いますが、現在は、たとえばいま私が取り上げようとしているこの新浜地区の問題などにつきましても、これに対してどういうような
調査がなされたかというようなことを調べてみますと、県当局から委任されました学識経験者の諮問委員会のようなものがあって、そこに県から委嘱された数人の方々が出て、いろいろ
発言していらっしゃるようでございます。しかし、その
発言なさっていらっしゃる方々の中に、必ずしも、こうしたほんとうに人間が住むために必要な環境、自然保護地区というようなものを持つためにこういうことが必要であるというようなことを強く
発言なされるような立場にいらした方が非常に少ない。また、
発言なすったかもしれないけれ
ども、その声は必ずしも強くはなかったというふうに私は受け取りました。したがいまして、将来は、そういう点も大いに政府に要求して考えてもらわなければならないのでございますが、いま当面私が問題にしなきゃならないのは、この東京湾に面した新浜地区の埋め立ての問題、この問題でございます。この問題は、すでにたくさんの請願書が「新浜を守る会」という名で国
会議員の諸先生方が紹介議員になって提出されております。それで、この請願書の一部をちょっと読ましていただきます。「千葉県新浜の野鳥保護に関する陳情書、新浜を守る会」、こうなっております。そして、その中にはこういうことが言われております。「東京湾に面した江戸川河口附近の干潟は古くからシギ、チドリ、ガン等の渡来地として知られ、記録鳥種は最近一〇カ年をみましても二一三種の多きに至っております。また、この地の特色としては非常に珍しいとされる鳥が多々訪れることがいえ、国内にての記録がここのみというものもあります。大都会の近くにこのような地が残されていること自体珍しく、国際的な研究である渡り鳥の標識試験等も行なわれて学術上の価値もまた極めて高いところであります。ところが最近、埋立てが着々と進行し、ために数種の鳥はその数を著しく減じております。かように昔日のおもかげのなくなった干潟に、なお、わが国の名誉を傷つけまいと努力しているかの如く、年毎にシギ、チドリ等の旅鳥が来ております。」――こういうようなことを言っております。そして、「やがて全面的に埋立てが完成し、渡るべき干潟のなくなった時、あらためて東京近郊からこのような地を失ったことの重大さに気のつくこと、歴史に示されているとおりであります。干潟はなくなりつつあります。住吉浦、鍋田はすでになくなり、東京湾のここが最後である。」――こういうことを言っております。
それで、こういうようなところは、私は、ただ鳥が好きだとか、鳥をかわいがるとか、そういうことで言っているんではございません。こういうような野鳥というようなものが来る環境というものが国民の健康を守る環境として大切であるということと、一たびこれをこわしてしまいますと、今度はどんなにお金をかけても、どんな優秀な技術をもってしても、干潟というものを人工的に再びつくることはできない、取り返しのつかないことになる、ということをおそれますので、これはどうしても守る必要があるのではないか、こういうことを考えまして、ここの埋め立てに直接御関係していらっしゃる方々に御
質問いたします。
最初に、
首都圏整備委員会の鮎川事務局長、おいでになっていらっしゃいますか。――鮎川さんに伺います。
この
首都圏整備委員会の
計画の中に、こういうところの干潟――東京の過密人口、衛生的な、そして平和な環境がだんだん狭められて困っているというときに、この東京からすぐ隣のこうした地区にこんないい環境がまだ残されている、こういうようなものは、ぜひ、首都圏の
整備委員会としても、将来の
計画の中にできるだけこういうものは残しておくということが、東京都民あるいは首都圏
整備圏の中に住んでいる人々のために、あるいは日本じゅう全体の人のために、これは非常に大切なことだというふうにお考えにならないかどうか。そういうようなことにつきましていままで何か委員会で
審議があったかどうか、そういうような経過がもしございましたら、そういったことを聞かしていただきたいと思います。