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1967-06-09 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月九日(金曜日)    午後二時十七分開会     —————————————    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 柳岡 秋夫君                 原田  立君     委 員                 黒木 利克君                 土屋 義彦君                 中津井 真君                 中野 文門君                 横山 フク君                 戸田 菊雄君                 矢追 秀彦君                 林   塩君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君    政府委員        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        通商産業省鉱山        保安局長     中川理一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)     —————————————
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、小平芳平君が委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  3. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 理事補欠互選についておはかりいたします。  ただいまの委員異動に伴いまして、理事が欠員となっております。この際、理事補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 御異議ないと認めます。  それでは理事に原田立君を指名いたします。     —————————————
  5. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害対策に関する件について調査を行ないたいと思います。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。矢追君。
  6. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 きょうは、私はまず厚生大臣質問をいたいます。  去る五月二十六日に、当委員会におきまして、いわゆる痛い痛い病——冨山県神通川流域発生をしております特殊な病気、しかも非常に悲惨な病気でありまして、水俣病よりも死亡率が高く、また発生率も高いこの病気原因、またそれに対する補償、またこれを公害と断定するやいなや、そういった問題につきまして政府委員の方に質問をいたしましたけれども、残念ながらはっきりとした答弁を得ることはできませんでした。重ねて本委員会でこの問題を取り上げまして、まず厚生大臣質問いたしたいと思います。  このいわゆる痛い痛い病は、厚生省公害課報告によりますと、「カドミウムが本病に関係している事は確かである。」「原因カドミウムと他の要因によるもので、他の要因としては、栄養不良、多産、過労等考えられる。カドミウムと他の要因とでは、どちらがウェイトが大きいかは定かでない。」三番目には、「カドミウム由来については簡単に決定されない。例えば、黒部川流域に同一症状を示す患者が一人発見され、死後臓器、ことに腎臓に大量のカドミウムを貯溜していることが判明したが、この症例は既往にも神通川水系と全く無関係であり、患家の米、飲用水(井戸)中のカドミウムも他地区と同程度に微量であって、この症例カドミウム由来が分っていない。」、まあ、こういう報告が出ておりますが、カドミウムが関係しておることははっきりしておると認めておるわけです。このカドミウムが他の要因とのウェートがどうであるかははっきりしていない、さらにカドミウム由来についてはっきりしていない、こういうことから、この痛い痛い病というものが、ただ単なる風土病として、いろいろ学会においても問題にされながら、今日まで放置をされてきましたし、これでは患者自身が非常にかわいそうでありますし、特にカドミウムまでははっきりしておるとなれば、あの神通川流域カドミウムがもともとあったものかどうか、あとから流れてきたものかどうか、これを調べれば、もういとも明瞭にわかるわけです。この神通川の源にありますところの神岡鉱山というものからカドミウムが多量に流れてきたことは間違いないわけです。これはかなり古い話でございますので、現在幾ら水質調査しても、カドミウムの量というものはごく微量にしか定量されておりません。したがいまして、現在幾ら調べても出ないからというので、この犯人カドミウムであると、こうは断定されないということで今日まで延び延びになってまいりました。  で、この間、政府委員である舘林さんのほうからの答弁の中に、「あくまでも特殊の鉱山から排出されたものか、すなわち天然自然に川にあった、あるいは山から流れてきたカドミウムではなくて、確かに鉱山から排出されたカドミウム原因で疾病を起こした、この要素が大部分であるということが明確になれば、当然にその原因者が、医療費のみならず、一般的な補償の責めに任ずべきものでございますが、それらの点が不明確のままに補償を求めるということは、実際問題としては容易でございません」このような答弁をなさいましたが、ここでやはり、どうしてもこの犯人カドミウムであることがわかっておる。しからば、もう鉱山から来たものということははっきりしておるわけです。にもかかわらず、それが断定できないということ、その辺を研究研究と言われても、いまはどうしようもないわけです。その当時の土とか、その当時の水も、ちゃんと現在それを研究のために取っておるところもあるわけですし、学会においていろいろな論争の経過もある。特に最近の、この四月の日本衛生学会総会におきまして、岡山の農業生物研究所小林教授が「イタイイタイ病の原因金属鉱山による河川の汚濁(第2報)カドミウム投与がラットのカルシウム代謝に及ぼす影響について」というので発表しまして、いままでいろいろ異論を唱えておった学者もそのときには全然反論をしなかった、このようにその学会報告で聞いております。しからば、もうここら辺で、そのカドミウム原因である、その源はどうしても神岡鉱山にあるということは、これはもう断定しなければならない。そういう断定をして、そうして患者に対する補償をやっていく、こう私は、政府が積極的に乗り出していただきたいと、このように思うのでありますけれども、厚生大臣見解をお伺いしたいと思います。
  7. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 神通川地方に起こっております痛い痛い病原因が、これは御答弁が重複するかもしれませんけれども、カドミウムが体内に残るということと、それから低たん白、低カルシウムといったようなことであるといわれておりますので、痛い痛い病原因一つカドミウムであるということまでは、学説上これは探究をされておるということでございます。そこで、そのカドミウム犯人であるが、一体カドミウムがどこから流出してきたか、どこから出てきたかということに相なりますと、なるほどその上流に神岡鉱山というものがある。現にやっておるというわけでございまして、そこで、その鉱山カドミウムが排出されるかどうかということは、その鉱山カドミウムを持っていったというわけではなかろうと思います。その鉱山で鉱石を採取するにあたりましてカドミウムが出てくるかということに相なりますと、これは鉱山ができなくても、それは分量においてはどうだかわかりませんが、そのあたりの土壌——土壌と申しますか、岩盤と申しますか、地質カドミウムがあるいは含まれているのかもしれない。そういうようなことも勘案いたしますと、この痛い痛い病発生した唯一の原因は、これは神岡鉱山であるということを断定するには少し早いのじゃないか。そこで、厚生省といたしましては、これらの病原の探究につきましては、今日鋭意これをしっかりと把握いたしますようにつとめておるわけでございますが、今後とも、こういうような研究をしていただく学者専門家という方々の御意見を承りまして、そうしてこれを総合的にキャッチいたしまして、最も正鵠を得た判断をいたしまして、そうして原因者に対しまして第一次の責任をとらせるという考えでやっておるわけであります。
  8. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま大臣のお考えを伺っておりますと、やはりどうも神岡鉱山だけと決定するのがちょっと片手落ちであるという御意見に伺いますが、やはり私は、さっきも申し上げましたように、この鉱山がいわゆるカドミウムを流さなくなってからは病気が起こっていないし、前はカドミウムをたくさん流したときには、すでにイネに相当に悪影響が出まして、それには相当補償を出しておることは御存じだと思いますが、病気に対してはそれをしなかった。カドミウム原因であることは確かである。だけれども、どこから来たのかわからない——どこから来たのかわからないのではなくて、私はもう、神岡鉱山がもしそこに存在しなければ、そこにカドミウムが絶対流れてきていないはずです。金沢大学も最近地質調査をやりまして、それがはっきりしておりますし、この病気自体非常に複雑でありますが、カドミウムがそれに引っかかりがなければおそらく起こらなかったであろう病気なんです。それは、低たん白であるとか、栄養障害、いろいろあります。そこへ持ってきて、たくさん子供を生んだ中年の女性というものにカドミウムが引っかかって、いわば触媒のような形で——触媒ということばは当たりませんけれども、のような形でこの病気は起こってきた。しかし、カドミウムがなければ絶対に起こっていない病気です。これはネズミの実験ではっきりわかっておるわけです。したがいまして、いまカドミウムは認められているのですから、これが鉱毒である、神岡鉱山から流れてきたものであるということは火を見るよりも明らかなところです。それが、何もそうではないという立場の上からの調査は、いままでの過去の経過を見ておりますと、私は、ちっとも行なわれてないように思えてならないわけです。最近の医学会総会で、いままで反論しておった方——絶対神岡鉱山ではないと、岐阜大学のある教授でありますけれども、おっしゃっております。ところが、小林教授が話をしに行かれますと、やはり鉱毒から来たものであるということは認めざるを得なくなって、その反論はついにやめられたと、このように私は小林教授からも直接伺っております。そうなると、学問的にもはっきり鉱毒ということが言えるわけです。ただ、言われるように、確かにおもな原因でないかもしれません。だけれども、それがあればその病気が起こる。なれば一つ原因である。そうなれば、やはりそれに対してここまで放置をして、いま対策を講ずる、研究をやっているとおっしゃいますけれども、もうすでに、この地方病の、特殊病対策委員会というものは解散になっておるわけです。県のほうでも解散しておりますし、また厚生省のほうでも、ちゃんと研究班は解散した。このように報告が出ておるわけです。  こういう重要な病気であるわけです。大臣もごらんになったと思いますけれども、まあお知りになりたかったら、ここにちゃんと写真があります。こんな悲惨な病気はちょっと珍しいわけです。特に私がやかましく言うのは、一万人とか二万人とか、たくさんいるならば、それは補償もたいへんでしょう。お金もたいへんです。だけれども、わずか百人か二百人の数なんですから——鉱山側も折れて、これはうちが流したんだと稲のほうはちゃんとしたのですから、今度は、これはカドミウム原因だとはっきりしたら、その犯人うちだ、では補償をしようと言うのがこれは当然だと思う。それに対して国のほうももっと積極的な姿勢をとるべきだと思うのです。  研究研究とおっしゃいますけれども、いまから何をほじくり出しても出ません。やるとしたら、国のほうで、その当時の土もあります、水もあります、それからその当時のいろんなデータもあるわけですから、それをもう一回総合判断して、偏見をまじえないでやっていくという姿勢でやってもらいたいと思うのです。いまからそこの土を幾らほじくり出そうが、もう鉱山のほうでカドミウムを流すことについてはストップしているわけですから、これはもう出ないわけです。もうこれは古い話といえば古い話ですけれども、これが放置されておったことは、これは政府公害問題に対する態度も……。今度公害基本法が出てまいりますけれども、こういうものも出る時期でもありますし、私は特に一つの例として、こういうことが今後あってはならない、これに対してはちゃんとしてもらいたいし、今後こういう問題については積極的にやってもらいたいと思うから、特に強くこういう問題を、ごく一部の限局された、非常に学問的にも問題があるかもわかりませんけれども、出した次第であります。  この対策をやっていくとおっしゃいますけれども、大臣として具体的に、じゃ本年はこのようにやろう、そうしてこれに対してはこういう学者を集めて、へんぱのないように国としてやっていこうとか……。特に県のほうでは、これも生ぬるいやり方しかいままでやってきませんでした。県と国とで、行政面責任をなすりつけ合って、いや国がやらないとか、あるいはもっと県がやるべきだとか——あるかもわかりませんけれども、厚生省としても大いに積極的にやっていただきたい、こう思うわけです。  したがいまして、私の聞いている点は、一つはやはり神岡鉱山鉱毒であるということの疑いを持って大臣は臨んでもらいたい。このお考えはないかどうか。もう一つは、今後の対策を具体的にお示し願いたいと思います。
  9. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御指摘のとおり、痛い痛い病にかかられておる方々というものは、非常に悲惨な病気でございまして、お気の毒であるということは私も痛感いたしておりますし、その病状等については私もわかっております。そこで、これに対する対策といたしましては、できるだけすみやかにその対策というものも考えていかなければならないのでございますけれども、何しろその原因が、まあこれは厚生省といたしましては、今日まで専門学者数名の方々にお願いしまして、これの調査研究をやっていただいておる。その学者先生の総合的な調査の結果というものをできるだけすみやかにいただきまして、そうしてこれに対する対策考えてまいりたい。  なお、厚生省といたしましては、四十一年度まで数名の方々にお願いをして研究をしていただいておりますけれども、四十二年度から、さらにこういったような学者先生を若干人数をふやしまして、そうして正鵠を得た実体の把握をしてもらいたい。あくまでも科学的な総合研究調査の結果を待ちたい。しかもそれは、のんべんだらりとやるということでは決してございません。私どもといたしましても、その病気にかかられた方の状況実情等考えますと、これはいつまでも遷延しておくべきものではない。ただ願うところは、正確な結果というもの、これをもとといたしまして対策を立ててまいりたい。できるだけ早くその調査を進めてもらいたい。鋭意努力をいたす覚悟でございます。
  10. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまも鋭意努力をいたしますという大臣お話でありますので、一応信用いたしまして、これからどのようにやっていかれるか、経過を見ていきたいと思います。  この神岡鉱山に対して、通産省のほうとしては、これはもう相当古い話でありまして、おもに戦前、戦争中から問題になっておるわけでありますけれども、今日まで鉱山局としてこの問題についてタッチをされたことがあるかどうか。この痛い痛い病原因カドミウムのもとがこの神岡鉱山だということでそれに対する指導を行なわれたことがあるかどうか、お聞きしたい。
  11. 両角良彦

    政府委員両角良彦君) 神岡鉱山カドミウムと、ただいまお話のございまする痛い痛い病との関係につきましては、先ほど厚生大臣お話もございましたように、両者の関連はいまだ十分解明されていないと承っておりますので、この未確定な状態のもとで、原因究明その他が明確になりません段階におきまして損害賠償その他の問題を議論するには、まだ時期尚早と考えております。今後とも、厚生省側におきまする原因究明を待ちまして十分連絡をとった上で万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
  12. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もちろん、原因がわからなければ、それは向こうの会社に言うのも酷かもしれませんけれども、私この前も申し上げましたように、疑わしきは罰せずというのが現在の日本の行き方なんです。特にこういう公害問題などについては、いままでの水俣病経過を見ましても、十分それを感じ取れるわけでございます。そのほか、たばこと肺ガンの問題にしても、政府は、そういうことに対して、結論が出てからと、いつもそういうふうに言われるわけです。この前も申し上げましたけれども、この病気は非常にむずかしい病気ではあります。特に骨の病気というものはなかなかわかっておりませんし、骨がどうして石灰化が行なわれて、どうしてその骨が脱灰されるか、その機序については、まだまだ不明確なことが非常に多いわけです。その学問的結論を待っておったのでは、これは百年かかるかもわからない。じゃ、その間苦しんでいる人はどうなるか。カドミウムらしき原因が出ておるのですから、私は、たとえ全額でないにしても、鉱山側としては幾らか出しましょう、補償しましょうというふうに努力をさせるように持っていくのが政府のあり方ではないか、このように思うのですが、その点、鉱山局長、どう思われますか。
  13. 両角良彦

    政府委員両角良彦君) お気持ちとしては、まことにごもっともでございますが、法律上の損害賠償の問題になりますれば、やはりその原因究明ということが明確になりました上で、所定の手続に従って鉱害処理が行なわれることが必要でございますので、さような意味における鉱害に対する賠償その他の問題につきましては、原因明確化を待たざるを得ない状況にあるわけでございます。
  14. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生大臣にお伺いしますが、いま鉱山局長お話では、原因がはっきりしたならば補償を出させる。じゃ、原因がわからない間、その患者さんはどうするのか。そういうことに対する処置は現在ないのかどうか。それをお伺いしたいと思います。
  15. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今日の制度におきましては、いま鉱山局長が申し上げたとおりでございまして、これに対してどういう対策を立てるか、制度上は私は措置のしようがない、かように考えておりますが、しかし、将来の問題といたしましては、こういったような学問上のいろいろ議論があったり、説があったり、学問究明ということは、学的究明、科学的なせんさくということは、これは十人の学者が十人、百人の学者が百人意見が一致して、そして何らかのそれに対するきちっとした学説と申しますか、それができ上がるということは、お説のとおり、私は、とてもいかなるケースにもそれができるということは考えられない事実だと思います。そこで、患者なり、あるいはそういう被害者というものは、そこまでも待たずに何とかしろ、こういうお気持ちは私もわからぬじゃございません。そんなら、学的な結論というものがそんなに一致したものが出ないからというて、中途はんぱで何か対策をきめるということも、これも私は少し行き過ぎるかと思います。そこらの問題はたいへんデリケートな問題がございまして、今後、まあ公害対策基本法というものも今日御審議をお願い申し上げることに相なっておるのでございますが、きちんと、学的、科学的な見解が完全に一致してしまうまでということと、それから、まあまあここいらでひとつ、ということとの間の調整と申しますか、そこいらが、今度の公害基本法を御審議願って御決定願って、この基本法に基づいて処理をしていかなければならない問題でございますが、そこいらに非常に私は重大なる問題をはらんでおる。そういったようなことを今後御審議を願うということになるのではないか。きちんときまってしまわにゃもう絶対にどうにもならないんだ、それだと、先ほどおっしゃられましたとおり、疑わしきは罰せず——私は、刑法上の処罰をするにあたって疑わしきは罰せずということと、この鉱害処理していくという立場とは、これは何も刑法と一致しなければならない問題だというふうに私は考えておりませんが、今日ただいまの制度といたしましては、先ほど鉱山局長が御答弁申し上げたようなことでございまして、今後の問題として大いに検討をしてまいらねばならない問題だと、かように考えております。
  16. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ、さっき言われました、まあまあここらで、というのにこれは当てはまらないと大臣は思われるのですか、この痛い痛い病は。どうですか。
  17. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 現段階においては、私は、まあここいらで、ということには、ちょっとまだ少し早いのじゃないかと思います。
  18. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これもこの前申し上げたことでありますけれども、そういった学問的に結論が出ない間は、それにかわるべきものとして——研究費相当厚生省も出しておられるわけです。また、文部省のほうも基本研究費として出しておられるわけです。研究には治療研究もあるわけですから、この病気にはビタミンDと、それから男性ホルモン投与によりましてかなりの効果を見ておるわけです。したがいまして、研究費ということでこの治療をしてあげる補助といいますか、それはできなかったのか。また、この痛い痛い病じゃなくても、こういう問題が起こった場合に、やはり一番困っておるのは、結局病気で苦しんでおる人です。その人たちに対する処置として、ただ結論が出るまでしないと政府はほうっておくのではなしに、これに対する対策を講じてもらいたい。今回のこの痛い痛い病については、そういった治療費補助もないわけです。いままで全然されておらなかったわけですから、私はこれを一つ意見として申し上げるわけでありますけれども、ぜひ、研究費として出せるのですから、せめて医療費を出してあげる、どこかの病院で無料で全部治療をしてあげる、こういうことは私は可能であると思うのですが、この問題について。それから今後このような問題が起こった場合、そういう研究費として治療費を出す、そういう制度といいますか、方法が私はあると思うのですが、それに対する大臣見解をお伺いしたいと思います。
  19. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま、厚生省といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、専門学者に委託をいたしまして鋭意研究を続けておるわけでございますが、この研究につきましては、医療の問題といったようなことも含めて研究をしていただいておる。先ほどから申し上げております総合的研究調査の結果を待ちたいと、かように申し上げておりますことは、いまおっしゃられました医療とかいったようなものについても研究をしてもらっておるということでございますので、その結果を待って、厚生省として、政府として検討をしていきたい、かように考えております。
  20. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生省検討されて、その結果が出なければ通産省のほうも動かない、こういうことにいまなっておるわけでして、これから公害基本法が出ますので、またいろいろそのときにも質問が出ると思いますし、われわれとしてもいろいろ考えておりますけれども、結局、その二つの省の谷間に患者は置かれてしまう。それが実情であると思うのです。こういった場合の連係といいますか、お互いに困っておる人に対して何とかしていこうという近寄りがなければならない。あっちは法律でこうだからだめだ、こっちは学問研究がなければできない、これは水俣病にも言われたわけです。特に、いつも日本で発言権もあり、わりあい力も持っておるのは財界です。今度も関係しておるのは三井系統であります。特にこれは戦争中軍需工場としてどんどん仕事をやって、そのためにカドミウムが流れておったわけです。そういうことで、こっちのほうがいろいろな面で圧力をかけてくると、これは確実に証拠をにぎったわけじゃありませんけれども、一応うわさとして言われておることは、金沢大学というのは三井系に就職をたくさん依頼をしておる、だからあまり強いことを言えないのだなんということを世間で言っておるようでありまして、こういうことであれば、学問自体も曲がってくるわけです。そういうことはないと私は信じたいのでありますけれども、そういうわけで、やはりこのメンバーを選ぶにいたしましても、賛成論者、反対論者いろいろ含めて、それを総合的に冷静にやってもらいたい。それを決定していくのは、やはり私はその困っておる人を何とかしてあげようというところから出ていかなければならないと思いますが、いま二つの省の話を聞いておりますと、結局この谷間で患者は困っておる。これは、ただ単に一年や二年ほったらかしにされているならいいんですけれども、もう相当の年月たっておるわけです。これからやります、これからやりますでは、もしここに苦しんでいるような人をここに置いておいて、その患者がいまの答弁を聞いておって、一体どうなるんかしら、いつもやられるのは調べることばかり……。向こうのほうでは、普通にわれわれが行っても土一つ調べさしてくれません、個人で行っても。絶対だめなんです。それほど閉鎖的にまでなってしまっている。それほど住民は硬化しておるわけです。それをここまで追い込んだのは厚生省にも責任がある。また、いままで厚生省学問的結論をただ待つということで、もっともっと真剣に鉱山のほうとも取り組まなかった通産省にも責任があると思うんです。通産省と厚生省は、いままでのこれに対する責任を感じておられるのかどうか。感じておられるなら、先ほどから対策を講ずるとおっしゃっておられますから、すみやかに、それもただすみやかにでなしに、かなり具体的にお伺いしたいと思うんです。どっちでもけっこうですから。
  21. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、現に痛い痛い病にかかっておられる患者さんというものに対しましては、非常に痛ましい、お気の毒だというようなことを感じております。ところが、これが公害によるものか、あるいはそうでないのか、そこのところがはっきりと判明するということでないと、国が補償するとか国が救護をするとかということを、これをきめるには少し早いんじゃないか、しかし、政府といたしましては、それだからといって、これ、のんべんだらりとして、そして見送ってしまう、そういうようなつもりは毛頭ございませんし、また、他からの何らかの干渉や圧力的なものがあるというようなことは、これはもう絶対にさようなことはございません。ただ、先ほども申し上げましたとおり、学説の一致を見なければ何にもしないんだと、そういったような気持ちは、現在の制度ではそうでございますが、公害基本法をつくって公害を防除する、こういう態度を政府は打ち出しております以上は、この公害基本法によりまして、公害を受けた方に対する、どうして救済していくかということについては、基本法に基づいていろんな制度を整備していかなければならないことはもうはっきりしておるのでありますから、そういった制度を、基本法に基づく何らかの制度をつくりまして、そして公害であるという以上は、何らかの救済の手を考えていかなければならない、こういうことでございまして、ただ、今日ただいますぐ何らかのことをやれと、こういうふうにおっしゃられましても、いまのところは、ちょっとそういうところまで踏み切るわけにはまいらない、かように考えております。
  22. 栗原祐幸

    政府委員(栗原祐幸君) ただいま厚生大臣からお話しになったことと同じになるわけでございますが、矢追先生の御意見は、私ども実感としまして気持ちの上でよくわかります。何とかしてやらなきゃならぬ、そういう気持ちではございますが、ただいま、通産省と厚生省との谷間にあるというお話でございますが、通産省と厚生省の中の谷間というよりも、むしろ公害として原因・結果というものが明確にならない、そうかもしれない、そうであった場合でもその部分というものが確定をしない、そういういろいろの要件がございますので、ただちにこの段階において賠償をせよと、そういうようなことは通産省としては言えない。したがいまして、この問題につきましては、厚生省のほうでも大学のほうへ研究を委託して、原因をいま早急に調査をしているということでございますので、厚生省ともよく連絡をとりまして、早くその結論を出していただいて、それに基づいて善処をいたしたい、かように考えるわけでございます。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それでは、この問題について大臣にお伺いしたいことは、この痛い痛い病について、この問題だけで厚生省の中で何か委員会とかつくって、そうして力を入れてやられる、こういう御計画ですか。
  24. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今日まで専門学者の方方に問題の究明を委託申し上げてまいったのでございますが、今後もそういう方向でやってまいりたいと思います。先ほども申し上げましたとおり、この学者先生を、さらに四十二年度は増員をしてまいりたい、かように考えております。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや、委員会のようなものをつくられるかどうか、聞いているのです。
  26. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) あるいは、この問題を学者先生研究をしていただいている過程で、そういう必要が生ずるかもしれません。そういうことに相なりますれば、そういうことになるかと思いますが、ただいまは、先ほども申し上げたとおり、先生方に委託を申し上げて研究をしていただいていると、こういうことでございます。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その辺が、私、納得できないのですがね。委員会は、それは厚生省としての直接の管轄の中ではなかったかもしれませんけれども、県にはあったわけでしょう。それはもう解散されてしまった。いまも聞いていると、必要性があればつくってもいい——もう解明されて、そうして解散になる、これは私はけっこうだと思うのです。しかし、まだはっきりわからない、わからぬ、と言われるわけです。こっちは、もうわかっていると言いたいですけれども、わからないと意地を張られますので私も申し上げる次第ですけれども、だから、じゃ委員会をつくってもいいのじゃないですか、厚生大臣が、じゃつくろうと、こう言われたら、私はできると思うのです。その点、どうですか。
  28. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) この調査は、専門学者先生に御委託をしておりますが、これらの先生方が、委員会の必要があるということに相なりますれば、もちろん、委員会をつくるべきものである、厚生省といたしましてもそういう必要があるということでありますれば、委員会をつくるということに何もやぶさかではございませんが、とにかくいまは、専門学者先生に御委託を申し上げて、そうして学者先生の御意見を尊重してまいりたいと、こういう過程でございます。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 だからね。解決するためにですよ。意見の尊重もけっこうです。もう大体出尽くしてるんですから、この人は公害とは認めない、この人は鉱毒として認めると、もう大体わかってるわけです。それからあとのそういう研究の、いわゆる学問的なものの飛躍というものはないと思うのです。あとは、それに対する実証ですね。これは神岡鉱山から来たものだという、それをとるかどうかという問題です。だから委員会をつくって、学識経験者、また厚生省や通産省、そういうものも全部入れて、そうしてあとは、黒と断定するか白と断定するかの問題だけですよ。それを、これから意見を聞いて、先生方が必要と言われたらつくる……。厚生省としては、つくりたい、だから学者の人も協力してくれと、そうでなかったら、たとえば十人学者がいて、九人は、これはもうたいしたことはない、風土病だからほうっておけばいい、一人が、いやこれは委員会をつくってくれ、と言ったら、厚生省は、九人がつくらなくてもいいと言われるんだからつくらないと、こうなるんですか。それじゃ私はちょっと逆じゃないかと、こう思うのですが、大臣はいかがお考えになりますか。
  30. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 数名の専門家にいま調査研究していただいている、そこでそういった先生方から意見を徴するわけでございますが、その意見を徴しまして、そうしてその意見をどういうふうに総合していくか。おそらく、おっしゃるとおり、その意見一つに決定するということは、これはあり得ない。必ずや意見が分れるであろう。まだ四十二年度もこれからお願いしようと思っておるのでございまするから、そういう先生方の御意見はまだ出てきておりません。そういった御意見が出てきた結果、これを総合調整する、おそらくまちまちの御意見、決定的なものではない、そういったような場合に、これはひとつ委員会をつくって、そうして総合的にまとめにやならぬじゃないかということに相なりますれば、これは何も、委員会をつくることをちゅうちょしておるわけでも何でもございません。ただ、現段階といたしましては、これに携わっておられる学者先生の御意見を承っての上にしたいと、かように考えておるわけでございます。
  31. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣と私と考えが逆でありますから、幾ら言っても押し問答だと思いますし、時間も三時までという約束になっておりますので、もう終わりますけれども、こういうふうな問題は、この痛い痛い病だけではなしに、いまいろいろ出てきているわけです。阿賀野川の問題とか、また各河川における水質の問題は、これから相当全国各地において起こってまいりますし、また水だけではなしに、いろんな公害問題が、これから世の中が近代化されればされるほど、大きな問題としてわれわれの体に降りかかってくるわけです。学者意見を聞いて、委員会をつくればいい。だからつくる、そんななまぬるいんじゃ、いつまでたってもいわゆる人命尊重はできないと思うわけです。何でもかでも、あとからあとから膏薬を張る式で行なうという、この点は、諸外国においては私はもっときびしい態度で、もっと積極的な姿勢で臨んでいると思うわけです。したがいまして、今後の問題として、政府はもっと積極的に、人間の命が関係していることですから、大臣は環境のいいところにお住みだろうと思いますけれども、大臣だって関係ないとは言えないことなんです、法律問題にしても何にしても。だから、一人病人が出た、自分もなるかもしれない、だから真剣にやろうというのが、これが私は政府であり政治家の立場じゃないかと思う。その意味で、どうか、あとから委員会をつくろう、そういうことじゃなしに、大臣が命令を出して、そうして委員会をつくろう、この問題についても委員会をつくってどんどん進めよう、こうしてこそ、私は、厚生省であり、厚生大臣であると、このように要望するわけです。この痛い痛い病については、これ以上言っても押し問答が続くようでありますから、私は、できれば今後参考人をここへ呼んでわれわれの目の前で議論を戦わせていただいて、そうして委員の方もよく聞いていただいて、公害特別委員会としてこの問題を取り上げて、そうしてこれに対する対策を講じていくとともに、これを一つの例として、これからの公害に対する対策のあり方を検討し、さらに前進的なものにするのに一番いい例だ、こう思うわけです。そういった意味で、この参考人を呼ぶ件は委員長にお願いして、理事会にはかっていただきたいと思います。  以上で、残念でございますけれども、時間が切れましたので、一応これで質問を終わらせていただきます。
  32. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  33. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 速記を始めてください。  本日の調査はこの程度として、これにて散会いたします。   午後三時五分散会