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1967-05-26 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十六日(金曜日)   午前十時五十四分開会     —————————————    委員異動  五月二十六日     辞任         補欠選任      小平 芳平君     矢追 秀彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         成瀬 幡治君     理 事                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 柳岡 秋夫君     委 員                 植木 光教君                 紅露 みつ君                 塩見 俊二君                 土屋 義彦君                 中津井 真君                 中野 文門君                 丸茂 重貞君                 横山 フク君                 原田  立君                 矢追 秀彦君                 瓜生  清君                 林   塩君    国務大臣        運 輸 大 臣  大橋 武夫君    政府委員        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君        通商産業省鉱山        保安局長     中川理一郎君        運輸省船舶局長  芥川 輝孝君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        運輸省自動車局        長        原山 亮三君        運輸省航空局長  澤  雄次君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        文部省管理局教        育施設部指導課        長        大串不二雄君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬場 一也君        通商産業省重工        業局自動車課長  中村 俊夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○船舶の油による海水汚濁防止に関する法律  案(内閣送付予備審査) ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)     —————————————
  2. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、小平芳平君が委員を辞任され、その補欠として矢追秀彦君が選任されました。     —————————————
  3. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 船舶の油による海水汚濁防止に関する法律案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。大橋運輸大臣
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま議題となりました「船舶の油による海水汚濁防止に関する法律案」の提案理由につきまして御説明申し上げます。  この法律案提案いたしました第一の理由は、今国会に別途提出されております「千九百五十四年の油による海水汚濁防止のための国際条約」の受諾に伴い、国内の法制を整備する必要があるからであります。この条約当事国は、すでに三十一カ国に及んでおり、わが国のような大海運国が、いつまでもこれに加入しないのは、国際協力の見地から好ましくないと考えられるに至っておりますので、この条約受諾と並んで、関係国内法の制定が急がれているわけであります。  提案の第二の理由は、国内において、船舶から排出される油による海水汚濁が大きな問題となっておりますが、その対策を講ずる必要があるからであります。油による海水汚濁は、特に水産物に対しかなりの被害を与えておりますとともに、港内、海水浴場等における衛生環境や美観をそこないつつあり、その度合いは石油関連産業の急速な発展に伴って今後ますます増加していくものと思われますので、いまや、その対策は急務とされておるのであります。  以上のような現状にかんがみまして、船舶から海上に油を排出することを規制し、あわせて廃油処理事業等の適正な運営を確保すること等により、船舶の油による海水汚濁防止する必要があります。  次に、この法律案概要を御説明申し上げます。  第一に、船舶からの油の排出を規制することといたしております。  その主要点は、油送船以外の船舶総トン数五百トン以上のもの及び油送船総トン数百五十トン以上のものが、わが国の海岸から五十海里以内の海域及び政令で定める沿岸海域において、油を排出することを禁止するとともに、総トン数二万トン以上の一定の船舶について、すべての海域において油を排出することを禁止することであります。さらに油を排出することを禁止される船舶につきましては、ビルジ排出防止装置を設置し、及び油記録簿を備えつけて、油の排出等に関し記録をすることを義務づけることといたしました。  第二に、廃油処理事業に関し、必要な監督を行なうことといたしております。  廃油処理事業は、港湾管理者以外の者が行なう場合と港湾管理者が行なう場合とありますが、港湾管理者以外の者がこの事業を行なうときは運輸大臣の許可を要し、港湾管理者がこの事業を行なうときは運輸大臣への届け出を要するものといたしまして、それぞれ必要な監督の規定を設けております。  第三に、廃油処理施設整備を促進することといたしております。  運輸大臣は、廃油処理施設整備につきまして、港湾管理者に勧告できるものといたしました。また、国は、廃油処理施設建設または改良を行なう港湾管理者に対しまして、予算範囲内で、その建設または改良に要する費用の十分の五を補助するものとしております。  このほか、船舶からの油の排出等違反行為に対しまして所要の罰則の整備をいたしております。また、船舶からの油の排出規制等につき所要経過措置を定めております。  以上が、この法律案提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  5. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————
  6. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査議題とし、産業公害対策に関する件について調査を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、きょうは航空機騒音等について質問をいたす予定にしておったのでございますが、大臣もおりませんし、また政府のほうから、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律案」というものが提出をされておりますので、この問題につきましては、いずれその法律審議過程で論議をしてまいりたいと思います。  そこで、きょうはとりあえず、運輸省が三十七年以来航空機騒音について……、だれですか、一体答弁するのは。
  8. 成瀬幡治

  9. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 三十七年以来航空機騒音の測定を実施し、またさらに、羽田なり大阪等にこの対策委員会というものを設置しているということが報告されておるんですけれども、これの資料をひとつお出し願いたいということでございます。  それから、もう一つは、この航空機騒音のための消音及び防音のための技術の開発がおそらく進められておると思うんですけれども、どういう形と申しますか、どういう方法とか、そういう内容ですね、どの程度進められておるのか、どういうものがあるのか、そういう点もひとつ資料としてお出しを願いたいと思います。  それから、文部省の方、きょう来ておりますか。——航空機騒音の問題で、学校防音工事が進められておるようでございますが、聞くところによりますと、防音工事を施したために、中で非常に蒸しぶろ的な、非常に暑苦しい教室で、生徒勉強もろくに頭に入らない、こういうような状態だということが報道されておるわけでございますが、これに対して、文部省はこの問題についての調査をやっておると、こういうことでございますが、これの調査を完全に終わってないと思いますけれども、調査経過ですか、あるいは中間的な報告についてお願いをしたい、こういうふうに思いますが、これもきょうできなければ、資料としてお出しを願いたい、こういうふうに思います。  きょうは以上で、資料提出要求だけで終わります。
  10. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ただいま先生から御要求のございました、大阪及び東京におきましていままでとってまいりました騒音対策資料等でございますとか、それから、騒音の軽減のための技術的な検討資料、この二つの資料運輸省からできるだけすみやかに当委員会へ御提出いたしたいと思います。
  11. 大串不二雄

    説明員大串不二雄君) 学校校舎につきまして、防音のためにこれまで防音校舎がつくられております。これまでにつくられておりまするものは、おもに米軍基地及び自衛隊の基地周辺学校教育支障なく行なうことができるようにということで防音工事が行なわれております。で、騒音程度によりまして校舎防音方法は多少違ってまいりますけれども、音を防ぐという点では防衛庁、それから文部省協力いたしまして研究をしてまいりましたので、まず満足すべき状態になっておりますけれども、何ぶん音を防ぐためには外界と遮断しなければいけませんので、そこで、遮断するということに伴って教室の中のいわゆるエアコンでございますね、この設備をしなければならないということが起こってまいります。これにつきまして、この防音工事防衛施設庁で担当してやってもらっておりますので、防衛施設庁でもいろいろと研究をして、夏の冷房ということについていろいろと検討して、実施してまいっておりますけれども、何ぶん予算等の制約によりまして、かなり成功しているものもありますけれども、中にはまだ十分ではないというものもありまして、夏になりますと十分な防音効果をあげることが困難になるという事態がございますので、文部省におきましてもその方面の学識経験者お願いをしまして、実態調査、それから対策等について検討してもらっているわけでございます。まだ結論を得るまでには至っておりませんけれども、実際の学校機械の運用、管理が十分ではないというふうな問題などもございますし、あるいはその土地の、つまり現在行なっております冷房方法は、おもに井戸水によりまして空気を冷やすという方法をとっておりますが、そのもとになります井戸水の温度の問題によりまして、成功しているものもあり、十分な効果をあげていないものもあるというようなことなどもございますし、そういう点を十分調査をしまして、機械設備管理の問題ですとか、あるいは、さらに効果的なエアコン設備等につきましてただいま学識経験者検討してもらっている段階でございます。以上のような段階で、さらに結論が出ましたら御報告申し上げることができると思います。  以上のようなことでございます。
  12. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この公害による被害がどの程度学校に及ぼすのかというような調査を、文部省がしておることは、事実でございますね。
  13. 大串不二雄

    説明員大串不二雄君) 騒音学校教育に及ぼす影響、あるいは児童、生徒に及ぼす影響につきましては調査をいたしております。
  14. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 騒音に限らず、いろいろあると思うのです。大気汚染の問題もあるだろうし、それからもちろん騒音もありますが、そういう公害影響をどの程度学校が受けておるかということについて、調査をしているということを、聞いているわけです。そして、その一環として騒音被害というものがやはりある、相当大きくあると、それの中間的な報告でもいいのですが、どういうふうな被害——いろいろな公害があると思うのですけれども、学校として受けておるのか。しかも騒音の場合には、いま申し上げましたようなエアコンディションがないために、非常に蒸しぶろに入ったような教室勉強しなければならない。もうすでに夏になってきているわけでございますけれども、ことしもまた、同じような状態の中に置かれるということについては、これはやっぱり問題があると思うのですね。いま研究中だと言いますけれども、こういうのは研究というよりも、もう予算の問題だと思うのです。金さえあればそういう施設はできるわけですから、そういう施設をつくるために文部省は、この四十二年度の予算なりでどういうことをやったのか。その辺を私はお聞きをしたいわけなんですけれども、そういうのはひとつ調査の中間的な報告でもけっこうですから、お出しを願いたいと思います。
  15. 大串不二雄

    説明員大串不二雄君) 学校教育に及ぼす公害という問題につきましては、最近非常にそういう事例がふえてまいっておりますので、ただいま全国的に、学校教育に及ぼす公害はいろいろな要素がございますので、それら主要な問題につきまして実態調査をいたしております。その中から航空機、特に空港関係でどういうような騒音による被害を受けているかというようなことも、まだ完全な集計ができておりませんけれども、集計が近くできますので、どのような範囲被害が及んでおるかということがわかるはずでございます。  それから、基地周辺学校教育支障がないように防音工事をやるという工事は、防衛施設庁でやっております。  それから、これから御審議を願います空港関係防音のことにつきましては、おそらく運輸省で担当されるようになるかと思いますので、文部省としては直接防音工事予算は担当しておりませんので、予算要求文部省としてはいたしておりませんけれども、その基礎的な問題につきましのいろいろな調査研究関係につきましては、予算要求いたしまして若干予算化されておりますので、最近数年、そのほうの調査研究は進めているわけでございます。これにつきましてその結論がまとまりましたら御報告ができると思います。
  16. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 結論が出るまで文部省は待っておられるのですか、子供たちが非常に暑い中で、健康を非常に害されるような状態の中で毎日勉強しなければならないという実態が出ているのにかかわらず、文部省は、それはもう防衛施設庁がやってくれることであるからいいのだということで、手をこまねいていることは、これは無責任だと思う。防衛施設庁防音工事とか、あるいは換気施設ですか、そういうものしかやらないわけですね。したがって、こういう完全な冷房装置まで防衛施設庁はおそらくみないと思うのです。あるいは今度の法律案には、もうおそらく、そういうものはないんじゃないかと思う。したがって、子供たち勉強の責任を持つ文部省が、やはりこの問題については積極的に取り組んでいくということが必要だと私は思う。したがって、あと何日たって結論が出るかわかりませんけれども、もうすでに夏になっているわけですから、早急に私は取りまとめて、状況——たちもできれば合い間を見て視察したいと思いますけれども、ひとつ御報告を願いたいと、こういうふうに思うのです。
  17. 大串不二雄

    説明員大串不二雄君) ただいま結論を得たらと申し上げましたけれども、実はその過程におきまして、中間的にいろいろな検討の結果が出てまいっておりますから、その段階では防衛施設庁のほうに資料を提供しまして——それから、ただいまはもう会談しておりますけれども、騒音対策協議会というのを文部省に設けまして、学校防音工事をどういうふうにしたら効果的であるかということにつきまして検討いたしました段階では、防衛施設庁の方にも参加をしていただいて、協力して検討を続けてまいりましたようなわけで、中間的な段階での報告資料を提供しまして、防衛施設庁とも連絡をとりまして、進めてまいっているような次第でございます。
  18. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その調査した経過、いま調査していると思うのですが——検討していると思うのですが、中間的な資料をここに出してもらえるかどうかということを聞いているわけです。出してもらいたいということを——。それは、いますぐでなくてもいいが、いずれこの法律案審議もあるわけですから、近いうちに中間的な資料出してもらいたい。こういうことなんです。
  19. 大串不二雄

    説明員大串不二雄君) それは、資料をまとめまして御提出できると思います。
  20. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それでは、私は……。
  21. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は本日、すでに相当昔から問題になっておりながら、現在なお未解決のまま、極端にいえば完全に放置されているといってもいい富山県の神通川流域に局限的に発生しております痛い痛い病の問題についてお尋ねしたいと思います。  これが問題になりましたのは、昭和二十年ごろから、古くは大正年間よりこの病気発生いたしておったと言われておりますが、昭和三十年ごろより問題にされてまいりましたが、今日まで国としてどのような対策が講じられてきたか、その経過について最初にお聞きしたいと思います。
  22. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 神通川流域富山県婦負郡婦中町熊野地区及び富山新保地区原因不明の疾患が昭和十八年ごろからかなり多発いたしました。その後やや発生が減少いたしまして、今日に至っておるわけでございますが、この問題に関しましては、昭和三十年河野臨床医学研究所長などのリューマチスにつきましての調査契機といたしまして、世の中の関心を引くに至りました。その後、現地の萩野という開業のお医者さん、その他の調査研究によりまして全国的に知られるようになり、学問的にも取り上げられるようになったのであります。この病気はおもに三十歳を過ぎましたころからの発病で、更年期まで続き、非常にたびたび多産をしたような経産婦に発病いたしております。症状といたしましては、まず腰、肩、ひざなどの鈍痛として始まりまして、特有の歩行状態が見られ、次第に骨の脱灰——石灰が骨からなくなる脱灰現象が見られまして、簡単な動作をしてもすぐに骨折が起こるということで、このとき非常に強い痛みを訴え、もう最後には息をしても痛いというほどの状況になるということでございます。  昭和三十七年から四十年ころまで富山県が取り上げまして検診をいたしているわけでありますが、これらの検診の結果によりますと、患者はその当時二十八名、疑わしい者が、三十三名、こういうことであったわけであります。このうち、現在までに八名死亡しております。なお、この調査によりますると、生存者は現在自覚症状はほとんどなく、後遺症を残しておる者はない、こういうことでございます。  昭和三十七年以前の患者の数などにつきましては明らかではございませんが、地元医師会病院等調査によりますれば、昭和三十七年以前の本病によると思われる死亡者は四十八名とされております。また、現在まで通算しての患者及び疑いのある者は約百十名にのぼると推定されておりますが、一説によりますると、患者容疑者を含めれば二百人。このうち百二十名が死亡しておる、かようにもいわれております。最近の患者発生につきましては、地元萩野医師によりますると、昭和四十一年に何か疑わしいような患者が数名出ておるということでございまして、これにつきましては県が調査をいたす段階になっております。  この病気に対しまして、国並びに県が実施いたしました対策について申し上げますと、昭和三十年に先ほど申しましたように、本病が発見されましたのを契機に、本病の実態を明らかにするために、県がこの地域に対する疫学調査を実施いたし、患者県立病院などに収容いたしまして、臨床面調査を行なっております。また、昭和三十一年にこの地区に対しまして、栄養関係はないかということで栄養調査を実施いたしまして、その結果、栄養上不十分なところがあるということで、栄養改善その他保健上の指導を実施いたしております。  それから、この病気原因につきまして、栄養不足や過労によるもの、あるいは重金属中毒によるものというような諸説ふんぷんでございまして、その原因が明らかでないために、昭和三十六年に富山県が地方特殊病対策委員会を設けまして、実態調査をいたしております。  厚生省といたしましては、昭和三十八年にこれらの患者医療助成金を百万円支出いたしまして、金沢大学平松教授等委託をいたしまして、診断、治療、予防に関する研究を行なっております。そのほか文部省が、昭和三十八年から四十年まで、計六百七十六万円の研究費を支出いたしまして、金沢大学委託をして研究いたしております。で、以上の研究は、すべて富山県の地方特殊病対策委員会のもとに合同研究として行なわれてまいったものであります。  その後、昭和四十年に至りまして——四十年、四十一年と厚生省はこの種疾病調査を行なうことにいたしまして、二百万円の予算によりまして、重金属環境汚染及び人体に対する影響という観点から調査を行なってきております。  以上が、本病の経緯並びに国が本病に対しまする対策概要でございます。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われました国のとった対策結論といいますか、最後でございますが、この調査は、昨年の九月で一応研究班解散をしておる。富山県の地方特殊病対策委員会も昨年の九月三十日で一応解散をしておるわけです。原因についてまだ明らかにされていないにもかかわらず、このように解散をされてしまったその理由につきまして、説明をしていただきたい。
  24. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 富山県といたしましては、一応委員会結論が得られたという見解のもとにこの委員会解散しておるようでございますが、厚生省といたしましては、今後引き続き、この問題の検討を続けるという意図で、厚生省に関する研究班、これは長崎大学相沢教授金沢大学石崎教授等、数名の先生方お願いをいたしておりますが、これらの研究は今後続けていくつもりでおります。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほど発表されましたように、死亡者の推定が昭和三十七年以前で四十八名といわれておりますが、いま非常に問題となっております水俣病にいたしましても、昭和三十八年以前でわずか三十八名。百十一名の症例に対して三十八名、こういうようなデータが出ております。それから比べますと、非常に病気としてはおそろしい病気であると考えられるわけです。で、症状を見ましても、非常にたいへんな病気であります。このように非常に重大な病気であり、しかも、その一説カドミウム中毒がいわれておるわけです。このカドミウム中毒につきましては、どうしても神通川流域にあります神岡鉱山ということをやはり重要視し、注目して考えなければならない。そうなりますと、やはり公害ということになってくるわけであります。この問題につきましても、かなり前に議論が行なわれましたにもかかわらず、この点について何かすっきりした結論の出ないまま今日まできておる。水俣病の場合もそうであります。特に、こういう人間の体というものは非常にまだ解明されておらない面が多いのでありますし、特にこの痛い痛い病は骨に関係しておりますので、御承知のように、骨というものにどうして脱灰が行なわれるかということも、まだ完全に解明ができておりませんので、したがいまして、そういう状態でありますから——まあこの病気は一部に限局されておるし、発生可能性というものも非常に薄いかもしれません。特に子供をたくさん生んだ中年の女性に起こる。しかし厚生省医療研究班にいたしましても、富山県の地方特殊病対策委員会にしてもカドミウム原因しておるということは、かなりはっきり認められておるわけであります。したがいまして、ここにやはり公害ということを考慮していかなければならないと思うのですが、その点についての厚生省としての考え方なり、これに対する態度をお伺いしたいと思います。
  26. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この問題の原因につきましては、当初は特殊な栄養障害あるいは生活習慣の問題等がきわめて懸念せられるという考えが支配いたしておったわけでございますが、その後、重金属影響があるかもしれないというような学説が出てまいりまして、先ほど御説明申し上げましたように、研究班研究の結果、今日までのところ、カドミウム影響しておるように思われる。しかしそれのみでなくて、そのほかの要素もあるかもしれないというようなことで、必ずしも結論が得られてない状況でございます。厚生省としましては、重金属の、ことにカドミウム影響しておるかもしれないというようなことがごさいましたので、昨年は、全国の同じ種類のカドミウム関係鉱山の廃水の下流地域の健康調査をいたしまして、同種の病人がないかどうか調べたわけであります。その結果は、どこにも痛い痛い病と診断できるような患者はなかったわけでありますが、しかしながら、ただいま申しましたように、研究班研究によれば関係があるようにも思われるとなりますと、この地域に何か別の要素が加わっておるかもしれないということも考えられるわけでありまして、カドミウムが一つの原因であるかもしれないけれども、それにさらに別の要素が加わって、そういうような症状が起こるかもしれないということで、今後、本年度以降調査をいたしてまいりたい。かように思っておるわけであります。ただ、調査をする上でやや支障がございますのは、近年新しい患者発生がとまっておるように見えるわけでありまして、その意味合いから調査はかなり困難をきたし、また、先ほど申しましたような、百名とか二百名とかいう推定の、疑わしい患者らしい過去の例は、戦前からの集計で、しかもかなりな推定でございまして、そのような意味合いからこの調査はかなりむずかしい調査のようでございます。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま、どこにもないとおっしゃいましたけれども、対馬の厳原ですか、こういうところにあるとも伺っておるのですが、そういう点は調査されましたか。
  28. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お尋ねの長崎県の対馬の疑わしい患者調査は、本年度行なう予定でおります。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いまのお話を聞いておりますと、かもしれない、かもしれないできておるわけです。確かな、それが病気原因というものはわかりません。いろいろ学説もありますし、また先ほど申し上げましたように、人間の体というものは、そう単純に原因の究明ができないほど複雑なものであります。しかしながら、カドミウムが一因であるということがはっきりしておる以上、それに対する対策を講じなければならない。この公害問題について、日本としてはこれに対する考え方が非常に甘い。相当の年限がたっていながら、このように悲惨な病気が、わずかであればわずかであるほど、わずかのお金で簡単に私はできると思う。それをここまで放置しておいたところに、私は問題があると思うわけです。特に、このために非常に困っておる患者さんに対しては、何らの補償もされてない。たとえ原因の究明は、これは学問に譲るとして、これには十年、二十年あるいは百年かかるかもしれません。しかしながら、この非常に苦しんでおる、非常に困っておる患者に対して何の手も打たれてない。また、カドミウムが流れておる、現在でも神通川カドミウムはちゃんとトレースされておるわけであります。しかし現在は、いま言われましたようにカドミウムの量は減ってきております。神岡鉱山がちゃんとダムをつくって、そうして前ほどカドミウムを流さなくなっています。また昔と違って、現在カドミウムが非常に役立つ金属とされてまいりました関係上、よけいそれを捨てるということが少なくなった、そういう関係で流れなくなった。したがって病人の発生は減っております。しかし今年に入っても二人、類似の患者が出ておりますし、昨年においては八名出ているとも言われております。したがいまして、これに対して私がまず言いたいことは、この原因究明に対して、厚生省としても非常に手の打ち方がなまぬるい。もう一つは、これに対する対策というものが全然なされていない。水道すらまだしかれていない、このような状態であります。こういうことに対して——これは何も私が今回この病気を取り上げたのは、こういう一つの例を出して、そうしてこれが今後、公害基本法というものも出されてまいりますけれども、公害に対する政府の考え方、それに対する処置のやり方をもっと敏速にしなければ、人間の命を扱うことでありますから、私は大きな問題である、その一つのいい例としてこれを取り上げたわけであります。この点に対して、まず最初にお聞きしたいのは、この対策がただ原因研究だけをやるのであって、その原因がはっきりしてから何か手を打つ、それではもう患者は死んでしまうわけです。そうでなくて、いま患者は確かに減ってきております。これはいま言ったカドミウムが流れてこなくなった、神岡鉱山のほうも稲に対する補償はちゃんと出しました。しかし、この病人に対する補償は、原因が明確でないということで逃げ回って、今日まで何もしていないわけです。これに対する厚生省として、いままで補償に対して、また医療に対してとった処置、またこれからどうやっていくか、それに対する態度をお聞きしたい。
  30. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この痛い痛い病は、長い間、栄養失調がかなり大きな原因ではないかということが言われておったわけでありまして、ごく近年に至りまして重金属影響しているかもしれないということが注目され、かなり勢力的な研究が行なわれ、カドミウム関係しているおそれがあるということが漸次判明してきたわけでございまして、当初におきましては栄養失調であろうということで、栄養指導などを県が続けてきた地方病であったわけであります。このように今後、何か工場排水のようなものに起因するかもしれない、それが懸念されるようなことに基づく何か公害患者と申しますか、そういうものが出た場合の救済措置というものは、公害対策の一部として、今後国としても真剣に取り上げていかなければならない問題でございますが、これは公害とまだ確定してない段階で、どのように一般救済以上に、さらにこれを補償していくのか、やはりあくまでも方針としては、その原因究明に最大の努力を注ぐのか、それらの点は一般の疾病にかかっているものの救済等ともにらみ合わせまして、国としては考えていきたい。もちろん、このような事例がおおむね公害によるものであろうということが判断できました暁には、当然にそれに基づく補償その他の措置が漸次具体化してまいるわけでございますが、そこに至る前の、まだ疑わしい段階調査が一般疾病と別な扱いになるかどうかということは、今後の公害対策関係することでございますので、私どもとしては十分真剣に検討してまいりたい、かように思います。
  31. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま言われました疑わしいものにはどうやって処置をするか、これから研究をする、こういう考え、こういう態度が私は今日までこの病気が解決されないで放置された。また水俣病にしても今日まで御承知のような経過で来た。その他現在いろいろ問題になっている職業病にいたしましても、また、いわゆる産業公害にいたしましても、たばこと肺ガンの関係にしても、結局政府のとっている態度というものは、結論が出ないからとか、やれ疑わしい点はどうしようもないとか、そういうことできておるわけです。これに対して研究しなければならないのではなくして、もうこれだけ、いま公害問題は大きく国民の間にも考えが浸透してきておりますし、この際、公害基本法も出ることでありますから、もっとはっきりして、かなり疑わしい線が出ている、そういう場合には何らかの処置をとる。そうしなければ、その病気になっている人、それによって影響をこうむっている人が非常にかわいそうである、こう思うのです。ただ、原因が究明されるまで待つとか、そういうなまぬるいのではなしに、はっきりしていただきたいと思うわけです。特に念を押しますけれども、この痛い痛い病については、その医療補償は何もしないで、このままほうっておいておるわけですか、今後どのようにされますか、お聞きしたい。
  32. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この問題の究明の結果によりまして、それらの点は措置が異なってくるだろうと思います。単に重金属の障害だけでは起こらないで、平生の個人個人の生活様式、栄養不足状況、そういう個人の責めに属すべき素地が、これに加わって、初めて発病するものかどうかというような、そういう点が解明されまして、その結果、あくまでも特殊の鉱山から排出されたものか、すなわち天然自然に川にあった、あるいは山から流れてきたカドミウムではなくて、確かに鉱山から排出されたカドミウム原因で疾病を起こした、この要素が大部分であるということが明確になれば、当然にその原因者が、医療費のみならず、一般的な補償の責めに任ずべきものでございますが、それらの点が不明確のままに補償を求めるということは、実際問題としては容易でございませんし、また不明確な原因のものはすべて国が補償するというような制度を、いま直ちに公害対策として打ち立てるというわけにもまいりませんので、あくまでも国としては原因の究明に努力をしてまいりたい、その上で、その原因のいかんに応じては、その補償救済の措置を講じてまいりたい、かように思います。
  33. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 さっきから同じような答弁でありますけれども、要するに、もう何人かの人が死んでいるわけです。たとえば死んだ人はやむを得ないとしても、いまもやはり発病する人もいるわけですから、この治療法については、わりあい現在のところビタミンBの投与と、それから男性ホルモンの投与でかなりの治療効果があがっているのです。そうすると、そんなに高い金額ではないわけです。だから、いま犯人がはっきりしなければ補償はできない。そうではなしに、何らかの形でこれに対する治療をやらせるという方法は全然ないものか。たとえば、研究をされるのですから、研究の場合、治療の研究ということもあるわけですから、その研究費の中にその治療費を含めて、ビタミンBの投与と、それから男性ホルモンをこれだけ投与して、これだけの結果が出た、研究費の中にその金額を入れて、全患者にそれをやる。それでかなり、なおってくるだけでも、現地の人はそれだけでも喜ぶと思うのです。そうでなくて、現在の現地の人たちの感情というものは、とにかく研究ばかりされて、おれたちを見せものにばかりしてしまっている。何ら補償もされない。何らこれに対する対策も講じられないまま今日まできた。ただ騒がれてしまっている。だから普通の人が行ったって、向こうは絶対に見せてくれませんし、何にも返事をしてくれません。土ひとつとることもできないわけです、個人が行った場合は。そのように、あの地区の住民たちは硬化してしまっているわけです。このように追い込んだのは、やはり政府及び県の当局に責任があると思うわけです。私は、とにかくいま困っている人たち——あの辺はそんなに裕福な土地でもありませんし、その人たちに何らかのあたたかい手が差し伸べられるという方法はないものかどうか。もちろん公害に決定しなくても、それに対して何かしてあげなければ悲惨である。同じ人間であり同じ日本人である。たまたまそこにいたから病気になった、ああかわいそうだが、しょうがない、それではあまりにも冷酷無比な国のやり方である、こう思うわけでありますが、これに対して何らかの方法はないであろうか、重ねてお聞きいたします。
  34. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 個人が自動車事故でけがをしたとか、あるいはガンになったとかいうような、そういう種類の病気以外に、原因が全くつかめないで、しかも地方的に、全国各地に特殊な疾病があるわけでございまして、行政当局は、そういう不明の原因のものの調査にはできるだけ努力を今後ともしていきたいと思いますし、また、それぞれの患者は疾病のために生活困窮状態におちいっている状況もございましょうから、既定の救済措置をできるだけ活用して患者の援護に当たってまいりたい、かように思います。
  35. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう少し具体的に何らかの方法を示していただきたい。ただ、ばく然とした話ではなしに、これはいま言われたガンで死んだのも一緒かもしれませんが、かなりカドミウムというのが出てきているのですから、もともとあったカドミウム——土の中のカドミウムの量、それから川の汚染によるカドミウムかどうか、その点はもうかなり学問的にははっきり出てきているはずです。私、もう一つ、うなずけないことは、これは学問の世界にはありがちでありますけれども、地方特殊病対策委員会の学者のメンバーでありますけれども、大体カドミウム中毒にあまり賛成的でないような人でおもに構成されている。かなりカドミウム中毒説を強く主張している学者はこの中には入れられていない。こういった点も私は、かなりへんぱと感ずるわけです。ことに神岡鉱山は、この前にも言っていることを全然逃げているわけです。確かにこの病気は逃げようと思ったら逃げられるわけです。それほどややこしい病気であるわけです。それだけに何らかの措置を講じてあげなければいけない、こう思いますから、私はここで強く要望する次第なんです。  それから水道を——いまでも少しは流れてきておるわけですが、やはり水道は早急につくらなければならないと思います。それに対して、国としては県に対して何らかの要請をされるつもりがあるかどうか、お聞きしたいと思います。
  36. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この問題の究明が最大の問題点だろうと思います。原因がわからない間はすべて国が救済するというような制度は、必ずしも今日わが国で確立していないわけでありまして、今後とも公害によらないかもしれない患者に対する対策は至るところで起こってまいりまして、それらに対してどういう施策を国がとっていくかということは、今後国が直面する大きな問題でございまして、私どもとしても、公害かもしれないような患者の救済ということは、これからの行政施策としては非常に重要なことであろうと思うわけであります。しかし、公害と断定できない程度患者に他の患者と違った、国の保護を与えていくかどうかについては、これは相当検討を要する問題でございます。しからば公害であると断定された場合に、原因者がつかめなければ、国が具体的な補償をするかというようなことは、これもまた、かなり重要な施策の決定を必要とすることでございまして、これらの措置については、今後公害対策の基本的なきめ方として、私どもとしては十分検討はしてまいりたいし、まあ公害として決定した場合には、原因者の究明ということはあくまでも私ども本来の目標として進みたいという従来の方針でございますので、それ以上にさらに国なり県なりが原因究明の場合に、あるいは私法として成り立たないような程度の因果関係のものを、みな公共の資金をもって救済していくかどうかという問題は、かなり基本的に今後検討を要する問題である、かように思っております。
  37. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ言われることはわからないでもありませんけれども、さっきから聞いているように、この病気についてはもういまのままでいくわけですか。原因究明はやる、これはわかりましたけれども、ほうっておくわけですね。国としては治療費は何もしない。いま私が言っているように、研究費として出して、それで治療もしてあげる。研究費の中に含めた、それは別に何もインチキではないわけです。治療の研究をやるわけですからね。それで十分やってあげられると私は思います。それをやる気はありませんか。その点、お伺いしておきます。
  38. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 調査段階において、治療も研究の一環であるという場合には、その研究費の一環として治療に該当するものを公費で出す場合が従来もありましたし、あるいは、今後もあるかもしれません。この問題は、あくまでも、国といたしましては、まず原因の究明をいたしたい。同時に、いままでとっておりましたように、患者の治療などもこれは十分な対象として考えていく必要がございますので、先年研究費出したわけでありますから、必要に応じては、今後、それも継続していく必要がある、かように思うわけでございまして、お尋ねのような治療研究費的なものも必要に応じては、私どもとしては、今後検討してまいりたい、かように思います。
  39. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 必要に応じてはであって、今回はまだ態度はきめられないわけですね。その点、どうですか。
  40. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 現在、水俣病の阿賀野川における患者対策は、御承知のように、県と地元の町村が話し合いまして患者の救済にあたっておるわけであります。これは、もちろん、十分なものではございませんけれども、あくまでも原因が確定するまでの間の臨時措置として、見舞い金のような形の保護を行なっておるわけでありまして、また、医療費につきましても、各種社会保険が負担しておりますもののほかに、自己負担分は県と町村が持っておるわけでありまして、国としても生活保護を通じまして生活費を持ち、あるいは治療費を持っておるわけでありますが、このような措置をこの疾病にも適用するかどうかということは、県とも相談をして本年度から考えてまいりたい、かような考えでございます。
  41. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 特に要望したいことは、その問題ともう一つは、いま言った水道です。一応富山県としては二百五十七万円を出してやるということを言っておりますけれども、この推進も特にお願いをしたいと思います。  次に、通産省の鉱山保安局長、お見えになっておりますのでお聞きしますが、いまの厚生省の環境衛生局長のお話を聞いておりますと、結局、その原因がはっきりして後に対策を講ずる、こういうことであると思うのです。もちろんいま言われましたように、十の因子があったうちの一が公害である、その場合に一々やっていたらたまったものではないというふうなお話でありますけれども、かなりの線が出た場合には、これは公害としてやっていくのが私は近代国家のあるべき姿だと思いますし、これだけ科学技術が進歩いたしましたし、これから幾らでも公害が起こってまいりますので、公害基本法が出ようとしておる段階において、通産省としても、疑わしきは罰せずではなしに、疑わしきものに対しても処置を積極的にとっていく。この姿勢をはっきりしていただきたいと思うわけです。この点について、今後、どのようにやっていかれるか、その方針をお聞きしたいと思います。
  42. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) ただいまの矢追先生の御質問で、厚生省から御答弁になっておりますような経緯並びに考え方というものは、私どものほうも、厚生省と連絡をとって、十分承知しておるところでございます。  いま問題になっておりますのは、端的に申しますと、いろんな問題があって原因不明であるけれども、あるいはカドミウム関係をしておるのではないか、こういうところが問題の焦点であろうかと思います。私どものほうの一般的な鉱山の公害予防というものにつきましては、鉱山保安法、あるいはそれを受けました金属鉱山等保安規則という一連の規則がございまして、その中で鉱山業者側の行なわなければならない義務、それに対しまして国が監督をしなければならない事柄、そういうものを定めておるわけでございます。いまのような問題が出ておるということを承知しておりますので、これらの話が出てきまして以来、特に神岡鉱山に対しましては所管の名古屋鉱山保安監督部のほうでも特別の注意と関心を払って監督をいたしておるわけでございます。定期的な巡回検査のほかに、特定検査と申しまして、この場合には特に排水口あるいは廃水が高原川に入ります地点の高原川の水質につきましても、三十八年、四十一年と特別の検査をいたしました。なかなか微量の問題でございますので、分析方法等にも問題があるようでございますが、ジチゾン法という方法によりまして、三十八年に検査をいたしましたときには、坑内からの——鉱山からの排水につきましても、あるいは高原川の水につきましても、カドミウムを検出することができない、こういう状況でございます。四十一年の検査の結果はまだ検査中でございますが、そういう状態で、私どもは、神岡鉱山からの鉱排水、それが高原川に入りましたとき、これには当然に拡散効果も行なわれますし、自然浄化作用も行なわれるわけでございますので、いまの鉱山の地点で見ておるところでも、カドミウムを検出するところまでいかないという状況からいたしますと、御心配になるように、カドミウムが高原川に出ておるというふうには私どもは思わないわけでございます。  ただ、いろいろ医学的な問題もございましょうと存じますので、坑内水及び洗鉱場、精錬所、砕石場の排水につきましては、特別の厳重な監督指導をやっているわけでございます。これらにつきましては、一般的な方法ではございますが、アルカリ中和による沈でんを行ないまして、上澄み水を流す。この施設は全国的な水準におきましても、あるいは国際的な水準におきましても神岡の施設は私ども鉱山保安の指導監督面から見ますと、満足すべきものと考えております。  疑いが持たれておるという状況におきましては、私どもはなお継続して、十分な監督指導の立場を堅持してまいりたいと思っております。お話に出ておりました医学的な問題その他はいろいろございましょうが、鉱山側としてはさように考えておるわけでございます。
  43. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これはいま調べてもだめなわけです。御承知の神岡鉱山がダムをつくった、その前の時点、すなわち相当、稲等もやられた時点があったわけです。そのときを中心として、その前あたりからずっとそこの水を飲んでいる人に発生しているわけです、非常にむずかしいわけですけれども、この病気は。カドミウムの相当入ったあの鉱山から流れておって、相当、稲等も枯れてしまった、またアユ等も相当死んでしまった、ああいうふうな事態。以前から——二十年、三十年くらい同じ水を飲んで、しかも、子供をたくさん生んだ婦人におもに起こっているわけです。非常に、原因の一つとしては弱いかもしれません。だから、いま幾ら調査しても、いまあそこの水を幾ら飲んでも、これは痛い痛い病にはかからないわけです。前の時点のことをほじくり返しているわけですけれども、私がこれを取り上げた理由は、先ほども申し上げておりますように、「疑わしきは罰せず」の方式で放置してはいけない。この神岡鉱山がダムをつくって一応はやっておりますけれども、あのダムははたして完全なものであるかどうか。もし台風等があって水がたくさん出た場合、あのダムは切れる可能性もなきにしもあらずだと思うのです。だから今後、神岡鉱山をはじめとして、やはりその他の地域においても、このようなことが起こる可能性があるかもしれません。先ほど、ほかの地域の鉱山のカドミウムも調べた。そこには起こっていない、だからこの痛い痛い病カドミウムではない、こうは言えないと思うのです。それは、人間の体は複雑であって、要するに、カドミウム——あの地域の牛首用水を中心とした、あの婦中町の周辺の人は、体質の上で何かはかの地域の人と違うところがある、そこにカドミウムがひっかかってあの病気が出た。したがいまして、私が言いたいことは、この鉱害問題について単純な原因で単純な病気が起こって、それをなくしてしまえば直ちに全部病気がなくなってしまう、そういう非常に簡単な因果関係のものであれば、それは問題にならぬでしょうし、対策も考えられぬのですけれども、人間の体はかなり複雑なものでありますから、だからある程度疑わしきものには何かしなければいけない、それはやはり今後の政府としての、公害に対する対策をやる姿勢がいまなければいけないと思うのですけれども、先ほどから厚生省の方の答弁といい、あなたの答弁といい、その点は何が原因かはっきりしなければ何もできない、国は動けない、これではだめだと思うのです。原因究明には時間がかかるおけです。まだ学問だって進歩していないわけです。御承知のように、痛い痛い病は骨がとける病気です。骨軟化症と違いますけれども、異論はありますが、骨軟化症であるか、すなわちオステオ・マラチアであるか、オステオ・ポローゼであるか、いろいろ問題はありますけれども、とにかく骨についてはまだわかっていないわけです。骨がどうしてできるか、骨がどうしてとけるか、その基準がわかっていないのが現在の医学の段階ですから、それがわかるまで待っていたら、いつまでたっても、それに対して病気になった人は不幸な目に合うわけですから、それをやるのが私は政治であると思う、政府の仕事であると思う。そういった点の学問と行政面との連携というか、ある程度学問的にこれができたら、直ちに行政機関で処置をしていく、そういう点の操作というものが日本の場合は非常にへたであると思う。これは話が違いますが、先ほども少し申し上げました、たばこと肺ガンの関係についても、政府当局からは、はっきりと肺ガンの一つの因子である、だから、たばこはよくないんだ、だから注意をすべきであるというようなことは、政府当局の口からは全然出てこないわけです。そこでやはり、この神岡鉱山が、また水俣病についてもやはり工場等が逃げ回っているわけです。私は、そういうものには左右されないで、ある程度学問的な線が出たならば、それを行政機関に移してできるだけ被害を少なくしていく、予防をしていくというのが、これからの姿勢でなければならない。その点に対して今後はっきりした態度を持って臨んでもらいたい、こう思うのですけれども、これについてどうでしょうか。
  44. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 先生のおっしゃる御意見は、非常によく御意見としてわかるのでございますが、堆積場等につきましても現在使っておりますのは二つございます。それ以前に使っておりました堆積場も相当古いころからやっておりまして、施設的に見ます限り、昭和六年ころからの施設にはさほど問題があったというふうには私ども考えておりません。ただ、神岡鉱山は明治の初めから動いておる鉱山でございます。あるいはわれわれのわからないいろいろな問題があろうかと思います。私どもはいま鉱山保安法という非常にがっちりした法律で厳格に、つまり国の監督行政としてはこれ以上やれないくらいの行政システムを使っておるわけでございまして、その法律のたてまえから私はお答えしたわけでございます。いろいろ問題は解明されておりませんけれども、被害者に対する迅速なる救済、要するに、原因云々というよりも、問題が起こるという事態をどうするかという事柄に相なりますと、医療その他の点は、これは厚生省関係でございますので、先ほど舘林局長から御答弁ございましたように、いろいろむずかしい問題がございますが、私どもも御相談しながらやってまいりたい。私どもの任務としてはこれから先、とにかくそういう疑いを持たれているのでありますから、厳重な監督を加えていくということに尽きるわけであります。それからまた、今後の調査研究等が進みまして、疑う余地のない十分な因果関係というものが出てまいりますれば、それにさかのぼっても賠償の責めを負うという問題が出てくるのは、そのとおりであります。ただ舘林局長から御説明がございましたように、まだ因果関係その他については十分なものを学問的に持ち得ないという状態でありますので、これは御答弁になっていないかもしれませんが、私はそういうように考えております。
  45. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この前の昭和四十一年九月二十六日の商工委員会におきましても渡良瀬川の問題が大きく取り上げられましたが、これを見ましても、かなり前に問題になっておったことがまだ実行されていない、明治以来放置されている。ようやく、ここで問題にして、初めて手が打たれ、水質調査が行なわれたというような状況であったわけであります。そのように結局かなり問題になって、悲惨な人々が出て、それがもみにもまれて出てくるのはいけないということを言っているのであります。もっと前から——予防というものは起こる前にやらないと、これは予防にならないはずですから——日本の国全体には公害が起こる原因をはらんでいるところは一ぱいあるわけでございますから、この点をよく監督調査お願いしたいと思います。
  46. 原田立

    ○原田立君 保安局長さんにお伺いしますが、国として正式な調査——こういう疑わしい点として指摘されているその点について、県の段階にまかせるのではなしに、国として正式な調査、それはなさいましたか。また、したのであるならば、どういうふうな結論が出ているか、どういう方法がなされているのか、その点はいかがですか。
  47. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 私どものほうは医学的とか疫学的というような担当ではございませんで、これは主として厚生省でございますので、私どものほうは従来の考え方から見まして、カドミウムというものが鉱山側からどのくらい出るのか出ないかの、出たものが高原川におきまして、どのくらいのものとしてあるのか、あるいはないのか、こういうことを調べているわけであります。先ほどお答えいたしましたように、昭和三十一年の十一月に鉛、亜鉛を中心にやりまして、カドミウムにつきましては、特に三十八年十一月までに鉱山のそれぞれの排出口から出る地点と高原川のまじわる地点を選びまして、約三十カ地点の水質について調査をいたしたわけであります。これにつきましては、先ほどお答えいたしましたように、カドミウムを検出することができなかったわけでございます。ただ理論的に申しますと、鉱石の組成からいたしますと、亜鉛がかりに二百数十あるといたしました場合、二百数十分の一のカドミウムがあるはずだという推定が成り立ちます。それをもとにしていろいろ試算いたしてみますというと、先ほど申しました利用地点に至る間の拡散希釈あるいは自然浄化というものから見ますと、あるとしても〇・〇〇〇一、ゼロのあとにゼロが三つついて、次に一がくるという数字に相なるわけでございまして、カドミウムがどの辺まで許容されるかという点については、先ほど来、矢追先生御自身なかなかむずかしい、なかなか複雑な要因がからんでいるからとおっしゃっているように、わからぬところがあるわけでございますが、私の承知しているところでは、ソ連の水道のカドミウムの最大許容量というものが〇・一PPM、それからアメリカの許容量が〇・〇一PPM、かように聞いておりますので、こういう数字から見ますというと、いまのコンマのあとゼロが三つついてのオーダーで出てくるカドミウムというものは、これは検出し得ないのですが、私どもよほどの場合を考えて、もしあったとすれば、どのくらいあり得るであろうかということを考えましても、どういう状態でございますので、このことそれ自身によって問題が起こるということには相ならないのではなかろうか、かようにいまのところは考えておるわけであります。ただ、これは前からも申し上げておりますように、医学的な検討が十分に進んでまいりますならば、現状では私はそう考えておるということだけでございまして、これが絶対永遠に固執される理屈だとは考えておりません。ただ、そういう状況でございますので、今後も水質につきましては十分に検査、分析をやってまいりたい。これは場合によりましては厚生省当局とも御相談いたしまして、客観的なものとしてできるだけのことをやっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  48. 原田立

    ○原田立君 地元の係官を使って調べたのか、あるいは国のほうで特別に調査班みたいなものをつくってお調べになったのか、その点はいかがですか。
  49. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 私のお答え申し上げたのは、名古屋鉱山保安監督部の調査分析でございます。
  50. 原田立

    ○原田立君 こんなことを言ってどうかと思いますが、かつて新潟県の阿賀野川の水銀事件、あの当初は絶対工場排水ではない。もう舘林局長さんも絶えずその点は強くお答えになったし、保安局長もたしかその当時そうお話があったと思うのです。ところが、まもなく一年もたたないうちに、厚生省のほうの調査班ですか、その報告によれば工場排水であると、もう百分の九十九ぐらいまでは断定するような報告が出たんですね。もうそれは十年も二十年もたって、そういう結論になったのではなしに、ほんのわずかの期間にそういう意見が——前の意見とは全然うらはらの意見が出ております。それで名古屋の監督部のほうでお調べになったということなんですが、地元の人たちを使うことは使わなきゃならぬだろうと思いますけれども、もっと権威ある調査機関というものを設けて、地元の人たちの福祉のためなんですから、もっと納得のいくような調査をすべきではないか、調査をする機関を設けるべきではないか。厚生省のほうとも連絡をとっておやりになるだろうと思いますが、今後のことについてどうなさるのか。
  51. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) 先ほどお答えいたしましたように、鉱山保安法というのは非常に強力な法律でございまして、身分において鉱業警察権まで持っている監督官、これが地方におりまして、これがいまの神岡地区につきましては名古屋鉱山保安監督部であるわけでございます。私が単独にやれますことは、この保安監督部を使ってやる、これは司法警察権まで持っておる職員でございますので、厳正な立場で職務を行なわざるを得ないポストでございます。私は、これに十分な信頼を置いておりますけれども、もし何らかの客観性を持った立ち会い人等があったほうが、世間一般の受け取り方も、より公正なものとして見てもらえるというようなことでございますならば、それは厚生省とも、先ほどお答え申しましたように相談して、坑内の検査につきましては私どものほうが主体で厚生省に立ち会ってもらうとか、あるいは河川水域は厚生省中心にして私のほうが立ち会って見るとか、あるいは必要があれば、それに十分なる学識経験をお持ちになっておる方に加わっていただくというようなことも、今後相談してまいりたいとは思っております。
  52. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま、いろいろおっしゃいましたけれども、この調査でありますけれども、やはりいま言われましたように、いろんな広く人材を集めてやられると思いますけれども、これに対して調査費として、厚生省文部省から出ておるお金にしても非常に少ないわけです。さっき、これから今後もやっていくと言われましたけれども、年々その予算は減っておるわけです、研究費予算はね。しかも日本で出しておるお金は非常に少ない。こういう問題をアメリカのほうはいち早く、これはおもしろいというわけで、岡山大学の小林教授あたりはロックフェラーあたりから相当な研究費をもらって研究している。日本のほうがむしろ積極的に、日本の地元病気ですからやらなければならぬのに、外国のほうがむしろ——もちろん痛い痛い病だけではありません、それを含めてでありますけれども、相当の研究費出している。これでは調査は、やれやれといってもやれません。しかし、まあ調査としてはかなりできておるわけです。学問的裏づけとしてもかなりあるわけです。これからは、いままで行なわれたあらゆる研究を総合して、そういうおのおのの立場を越えた結論出していかなければならない。特に、いま言いましたように、たとえ一部の原因であっても、それは工場廃液であると断定をしなければならぬじゃないかと、こう思うわけです。その点について鉱山保安局長さんに伺いますけれども、あなたはこれを鉱害——カドミウムがまだはっきりしないと言われますけれども——量も少ないと言われますけれども、いまは少ないんですよ、先ほど言いましたように。しかも、あの病気が起ってくるのは牛首用水として流れてきている地帯、そこにカドミウムが沈でんする。しかも、その水を自分の家の中に引っ張ってきて、飲んでおるような人に起こってきているわけであります。だから、どこでも調べて、それでいいというわけにいかないと思いますし、しかも先ほど申し上げましたように、現在ではもう調べたって犯人はあがらないわけであります、過去の問題ですから。だからよけいに、いままで研究をした人たち——特にカドミウム中毒を唱えているような人の意見を私はかなり取り上げて——かなり実験もされておる、動物実験でもちゃんと骨がとけている、カドミウムで。そういうわけですから、その点をもっと考えてやれば、私は、犯人は神岡鉱山から流れた廃液ですと断定して何にも悪くない。断定したら鉱山は損をする。それはある程度の金を出さなければならぬから鉱山は損をするかもしれませんが、金を出さなければならぬとしても、そんなに大きな金額ではないと私は思う、人数がわずかですから。一万人とか、二万人とかならいざ知らず。その点、いつも残念に思うことは、そういった会社の人は結局資本家でありますから、金もうけ、このほうに走るのか何かしりませんけれども、出そうとしない。何とか自分のところは逃げようとする。先ほど聞いていましたように、人間のからだはどうなったって逃げられる、逃げようと思えば。その点は、私はやはり公害の線に持っていく方向で、調査なり対策を樹立していただきたい。この点については局長さんでは無理でしょうから、いずれ厚生大臣、また通産大臣がこちらの委員会にお見えになったときに、私から再度質問をさしていただく。できればもう一度、現在の調査ではなしに、過去からのいろんな調査事項を全部まとめ上げて、そうしてこれをはたしてほんとうに公害とするかどうか。また、カドミウムとしての中毒が一つの原因であるから——これは断定できているのです。一つの原因であるがゆえに何らかの形をとらなければいけない。これに対する何らかの調査機関なり、そういったことを審議する機関を設けるなりして、これに対して積極的に取り組んでいただいて、そうして私が先ほどから申し上げておりますように、これを一つの例として、今後の公害に対して政府としては、このようなことのないように、ある程度原因が究明されたものに対しては何らかの処置がとれるような、法律の上での制定なり、また、それに対する処置をやるような方向に持っていっていただきたいと、このように私は要望するわけです。その点についてお二人の意見を伺って、次に大臣に対して、私は、最終的にお伺いをしていきたいと、こう思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  53. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今後のわが国公害対策の中で、被害者の救済という問題は、かなり重要な部分を占めておると思うわけです。その場合に、私法上の対象として裁判が成り立つようなものにつきましての損害賠償というものは、当然裁判を通じまして明確になるわけです。すべての公害が必ずしも公判維持に耐えられるというような種類のものではない。民法上の対象としてはっきり答が出るものではないわけであります。公害原因たるものも必ずしも明確ではないし、被害も何%が公害であるか、何%が本来のものであるか。たとえばぜんそく病患者がここにおったといたしますと、それは公害影響があったかもしれないけれども、公害がなくてもその人はぜんそくを起こしたかもしれないというような、非常にあいまいもことしたものと、あいまいもことしたものとの組み合わせでございます。しかし公害かもしれない、被害者がそこにあるという場合。国はこれらにどういう措置をとっていくかということは、これからの公害対策ではかなり重要な部分であるというように私ども考えております。したがって、これを、わかるまではほうっておくというような、裁判にかけて明らかになれば片がつくが、裁判にかけて明らかにならない限りはほうっておくというようなことでいいのかどうか、これは十分考えていく必要があると思います。  先般の水俣病におきましても、御承知のように新日本窒素の廃液が必ずしも原因と完全には断定されなくても、会社側は相当の措置をとったというような事例もございまして、これは十分示唆に富んだ公害に対する一つの行き方であろうと、かように考えるわけでありまして、私どもとしましても今般の事例のような場合に、その公害かもしれないと思われるその程度に応じまして、やはり原因者かもしれない人に対して相応の措置を講ずるというような、何らかの施策をこれから講ずるか、あるいは断定し得ないものについては公共の金で保護していくかというようなことは、これは非常に重要な問題でございまして、御趣旨の点は十分体しまして、今後検討してまいりたいと、かように思います。
  54. 中川理一郎

    政府委員中川理一郎君) いま舘林環境衛生局長がお答えいたしました事柄につきましては、私も個人的には全く同感でございます。たいへんやっかいな、私法的救済の問題と公法的な救済をどうするかという問題でございまして、迅速なる救済という観点から言うと、何かの措置がとられてしかるべきような感じもいたしますと同時に、しかし、これはまた、けじめのない話になりますと、現在の法律制度そのものの根底をゆるがすようなことになるので、慎重に検討しなければいけないことだと思います。それから企業側が実際問題としてお金を出します場合も、責任があるから補償するというたてまえと、その点はわからないけれども、地元としてのお見舞いをするという感じの金の出し方とでは、これはずいぶん性質が違うと思います。その辺のところも含め、考えていきたいと思います。
  55. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 重ねての要望でありますけれども、いま言われましたように水俣病についてはある程度まで——、この病気水俣病よりは悲惨である。ここにも写真も持ってきておりますけれども、ごらんになったと思いますけれども、非常に悲惨な病気です。しかもレントゲン写真を見ても驚くべき症状を呈しておりますし、どうかこの点について、ただ現在の法律でどうしようもないとか、そんなんことではなしに、積極的に取り組んで今後進めていただきたい。また私たちも、これを、今後どのように行なわれていくかをよく見ていきたい、このように思います。  あと、大臣がこの次お見えになったときに、最終的な質問をさしていただくことにして、きょうはこれで……。
  56. 瓜生清

    ○瓜生清君 まず、厚生省に伺ますが、例の新潟県の阿賀野川流域で起こりました、いわゆる第二水俣病と言われる問題について、この間厚生省研究班結論を出されたようですが、政府の最終的なことに対する統一見解といいますか、そういうようなものがいつごろ出るのかわかっておったら知らしてもらいたいと思います。あわせて現在のこの問題に対する調査状況、それもお願いします。
  57. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 最初に調査状況のほうを申し上げますが、新潟県の阿賀野川下流に生じました水俣病患者を、初めて水銀中毒らしい患者として行政当局が察知いたしましたのは、四十年の五月でございます。実は、患者はその前からあったわけでありまして、水銀中毒とはわからずに、ほかの病名で取り扱われておったわけであります。すなわち、それよりはほぼ半年あるいはそれ以上前、三十九年の八月ごろから漸次患者が出ておったわけであります。で、四十年の五月に、初めて水銀中毒かもしれないということで、行政的に取り上げられまして以来、県並びに厚生省が現地調査を続けておったわけでありますが、これは県ないし厚生省範囲調査にとどまらず、国としてもこの調査に総合的に当たる必要があるということから、四十年の八月から科学技術庁へ関係各省が寄りまして、科学技術庁の調整のもとに、この調査が行なわれるということになったわけであります。その結果、厚生省は臨床、検査、疫学の三班の調査班を設けまして、この科学技術庁の総括する調査に当たってきたわけであります。で、調査の結果が本年の四月十八日に厚生大臣あてに研究班から報告があったわけであります。その報告の結果によりますと、原因について特に申し上げますと、疫学班は、この病気原因は魚を食べて起こった、その魚は阿賀野川上流にあります工場の排水によって水銀に汚染されたためである、かような結論といいますか、疫学的に診断をされたわけであります。そのほか、臨床班は、この患者はアルキル水銀中毒であると思われるという診断をし、また検査班は、各所における物質の中の水銀含有量並びにその水銀の性質についての調査結果を報告したわけであります。  で、この三班それぞれ独立した立場において報告がなされましたので、厚生省といたしましては、四月の二十二日に厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会にこれを諮問いたしたわけであります。ただいまの段階は、この食品衛生調査会におきまして、先ほど申しました三班の調査結果、その他関係資料を材料といたし、また関係者の意見も聞いて慎重に検討を加えておるところでございます。この調査会の答申がいつ出るかは、行政当局から断定はできませんけれども、この学者の先生方が、先般の水俣病のときの程度審議で終わるということでございますれば、あのときは二カ月たって結論をいただいておりますので今回も大体それと同じような程度でいただけるものではなかろうか、かような期待をしておるわけであります。厚生省といたしましては、この調査会の答申が出ましたら、直ちに科学技術庁にこれを報告いたしまして、科学技術庁が関係各省の検討の結果を——科学技術庁におきまして関係各省が集まりまして、それぞれの省の立場において検討したところを持ち寄って国としての結論をそこで出す、かような運びになるわけでありまして、これは先般来、科学技術庁から伺っておりますところによりますと、科学技術庁としてもできるだけ早く結論が出るようにいたしたいということでございますので、そう長期にわたってこの検討が行なわれるとは思われませんし、それから四月の下旬に厚生省研究班資料を入手したあと、直ちに科学技術庁にこれを送ってありますし、各省もそれを入手しておりますので、各省のこの資料をもとにした検討もすでに行なわれておる段階でございますので、ただいま申しましたような経緯から、そう遠いことにはなるまい、かように私どもとしては考えております。
  58. 瓜生清

    ○瓜生清君 そうしますと、この間新聞によりますと、何といいますか、被害者が厚生省研究班報告をもとにして昭和電工に対して損害賠償の請求訴訟を起こすと、こういうようなことを言っておりますが、そういうことが起こった場合、被害者といたしましては、まだ厚生省でいま食品衛生調査会で審議中であるから、被害者にとりますと、いわばまだ最終的な結論が出ていない段段だから、そういうことをした場合でも、何といいますか、その行為の保証になる、裏づけになる結論というものが現段階ではまだ脆弱だというふうに解釈していいかどうか、お伺いします。
  59. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 厚生省として、あるいは国として、これは三班の御意見がそれぞれ独立した形で出ておりますので、それらを総合すると同時に、そのほか水産、あるいは潮流、川の流れ、あるいは工場の化学工程というようなものの判断も加えた総合判断をお願いいたしたいということで、いませっかく諮問中であるわけでございます。ちょうだいいたしました研究班の疫学的な診断は、これは全員医師で疫学的視野から御判断をいただいたものでございますので、ただいま申しましたようなことから、総合的な判断をいただきたい、かような考えで諮問をいたしておるわけでございます。そして裁判所がそのような結果をどう取り上げるかということは、これは裁判所の判断でございますので、私からは申し上げかねることでございます。
  60. 瓜生清

    ○瓜生清君 そこで局長、この問題について、昭和電工の安藤という総務部長をしておる人が、告訴されれば応じようと、こういうふうなことを新聞に答えているんです。しかもその内容は、まあ新聞のことですから前後の関係はよく記事になっておるのかどうかわからないけれども、こんなふうな発言をしておるのです。「厚生省調査班は、当初から農薬を対象外においた感じで、われわれとしては新潟地震の直後に新潟ふ頭倉庫から流出した農薬が原因だと思っている。被害者側が当社を相手どって補償の訴訟を起こすというが、このずさんな調査班の報告書をよく検討すれば、責任が当社にないことは明らかなはずだ。告訴されれば応訴して争う」と、こういうふうなことを言っておるんですね。受け取り方によれば、ずいぶん厚生省研究班調査というものを甘く見ておる。ことばをかえれば、攻撃しておると、こういうふうに受け取られるわけですが、本問題で、こういうふうな昭和電工側とそれから厚生省研究班の考え方の相違というものが現時点では浮きぼりにされておるわけですけれども、こういうようなことについて直接、厚生省昭和電工の企業と話をされたことがあるのか、あるいはまた、意見を交換されたことがあるのか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  61. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいままでの段階厚生省がみずから学術的な見解を発表したことはございません。ただ、調査班が昨年の春、中間的な検討の結果を公表いたしたことがございますが、それ以来、その結果・内容をもとにいたしまして、昭和電工側が各種の調査をし、あるいは検討を加え、それに基づいて調査班に対する意見を公表いたしてきておるわけでありまして、厚生省としましては、この調査の結果の適正を期するために、あらゆる意見を十分取り入れて、それをも検討の対象として加えた上での判断を希望しておったわけでございますが、調査班といたしましても、直接昭和電工側と会談いたしまして、昭和電工側の言い分を聞いておりますし、また、そういうような機会がない場合でも、間接的に厚生省は、昭和電工側の意見を出していただいて、調査班にこのような意見があるというようなことを伝えたりなんかいたしまして、昭和電工側の異論は十分考慮の中に入れた上で、調査班が最終結論出しておるわけでございます。
  62. 瓜生清

    ○瓜生清君 厚生省はもういいです。  通産省に伺います。いつだったか、私はこの委員会産業公害防止を促進するために、そういうふうな産業公害防止に関連のある産業の育成措置を考えたらどうかというようなことを言ったことがあるんです。その後、私、詳しいことは知りませんが、具体的にあらわれてきたのは昨夜、たしか衆議院を通過した租税特別措置法の中で、公害防止施設に対して特別償却を認める、こういうことが出てきておるのです。これは歴然たる具体的な事実なんです。そこで、その対象となるような施設とか機械ということについて、一体通産省ではどういうふうなものをお考えになっておるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  63. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) お答え申し上げます。  ただいま先生から仰せになりました今年度の租税特別措置法の改正によりまして、特別償却の対象になりましたのは、重油脱硫装置でございまして、これはむしろメーカーと申しますよりは、重油脱硫装置をつけるのは石油精製会社でございます。これが重油の中から硫黄分を抜く装置をつけます場合に、その装置がたいへん高いものでございますが、これに対しまして一定の特別償却を認めるという優遇措置でございます。それから、ただいままで、それと同じようないろんな税法上の優遇措置を講じております範囲は、現在のところにおきましては、ばい煙規制法に基づくばい煙規制、それから工場排水法に基づく汚水の規制をやっておりますが、これらの規制に対応いたしまして、それぞれの工場がばい煙を防止する機器を取りつけます、たとえば集じん機、あるいは工場排水を処理いたしますための処理設備を取りつけます。こういう処理設備を取りつけます場合におきましては、耐用年数の短縮ということで、それが早く償却できるように優遇いたしますが、また地方税関係におきましては、固定資産税を免ずるという優遇措置をとっておるというのが、現状でございます。
  64. 瓜生清

    ○瓜生清君 そこで私聞きたいのは、それはそういうものを取りつける側の費用が相当かかるからたいへんということで、そういう配慮がされておると思いますけれども、いま産業公害防止関係のいろんな機械とか、あるいはその他のものをつくっているメーカーの側それ自体が、この問題は最近急速に世論の対象になってきた問題であるために、そういったメーカーの態勢というものがやはり利潤本位であって、こういうものを産業公害防止という面から生産しなければならないが、コストが高くつく。だから、なかなかそういうメーカーというものが、そんなものをつくるよりは、ほかのもうかるものをつくったほうがましだという、こういう状態にあるのじゃないかと思います。そこで、先般もお尋ねしたのは、そういうものに対して、どういう、何と申しますか、指導なり、あるいは政府として考慮を払っていくのかということについて尋ねてみたいと思うのです。・
  65. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) ただいま申し上げましたのは、御指摘のように公害防止設備をいたします、むしろユーザーのほうに対する税制上の優遇措置でございますので、そういう防止機等をつくっておりますメーカーに対するいろんな助成でございますが、御承知のように、いろんな公害防止設備——大気汚染関係、工場排水関係、格般ございますが、産業公害問題は非常に新しい問題でございますだけに、大観いたしますと、どういう能率のいい、あるいはコストの安い公害防止機をつくるいろんな技術、あるいはどういうものが性能がいいかということに尽きます。いろんな生産体制の前にございます技術開発関係というものの研究が非常におくれておる、これは必ずしも日本ばかりではないかと思いますけれども、そういうのが一般の情勢でございます。そこで、現在通産省におきましては、むしろ能率のいいものができれば、これを安くつくっていくという生産段階になるわけでございますが、そのもう一つ前の、どういうものが能率的であるかという、いろんな技術研究公害防止に関してやるということにつきまして、これは従前から工業技術院にいろんな新しい技術試験研究の補助金制度というのがございますが、そういうメーカーがいろんな新しい能率のいい、公害防止関係の機器を生産するための必要な技術開発をやります試験研究に対しましては、この鉱工業補助金を——非常に重点項目として毎年相当の補助金をこれに対して出しておりまして、たとえば、過去六年間の実績を見ますと、ばい煙関係、あるいは汚水関係その他の公害関係におきましては、大体、総数にして四十件、金額にいたしますと約一億七千万円をこえる補助金を出しております。で、この補助金を受けましたメーカーの中には、すでにその補助金によって技術研究を行ないまして、その結果、具体的にそれが実用化されておる、つまり商品として生産されて、実際に役に立っているというもの一、二例があるようなわけでございます。また、そういうメーカーの研究に対しまして補助金を出すということのほかに、工業技術院自身といたしまして、各試験場におきましていろいろ公害防止に関する技術研究をやっておるわけでございますが、これらの成果は、それぞれ関係のメーカーに普及徹底をいたしまして、メーカーの技術開発を側面から援助するというようなこともやつておりますし、特に一番——御承知のように新年度から、工業技術院の大型プロジェクトということで、ばい煙脱硫、あるいはことしから重油脱硫という研究もやっておりますが、これから、こういうものも逐次完成いたしますにつれまして、これはメーカー側に伝えまして、これを実際のメーカーの生産体制に結びつける、こういう措置をとってまいりたい、かように考えております。
  66. 瓜生清

    ○瓜生清君 すでに生産体制に入ったのが、一、二ある、こういうお話ですが、どういうものですか。
  67. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) それは一、二の例を申し上げますと、先ほど申しました四十件、一億七千万円の補助金の中で例を申し上げますと、昭和三十八年度にこれはいろんな工場から出します亜硫酸ガス、その他の有毒ガスの除却方法及び装置に関する研究というものをある会社に、これは補助金として百二十万円でございますが、補助金を出しまして、その補助金を受けました会社がこれによって技術研究を行ないました結果、そう大規模の工場ではございませんが、比較的小規模の工場でそういう亜硫酸ガスその他の有毒ガスを出しますものを、一定の装置によりまして、わりあい簡単な設備で除去をするという研究が完成をいたしまして、これはそういうガス処理装置ということで、大体現在まで三、四十台をすでにユーザー側に販売をしておるという実例が一つございます。あるいは、こういう直接の除去装置でございませんが、いろいろなユーザー側で、ばい煙規制法等に基づきまして、自分のところから出すばいじん量を測定する、多ければこれは調整するわけでございますが、そういう出てまいりますばいじん量を自動的に測定する装置というものにも、これは同じく三十八年度に、ある会社に百八十万円の補助金を出しました。その結果、ばいじん量自動連続測定装置というのが完成いたしまして、これもすでに実用化されておるという例があるわけでございます。
  68. 瓜生清

    ○瓜生清君 そうすると、いまの段階では、そういう生産体制に入る前にいろいろな研究をして、そうしてサゼッションを与えるとか、資料出してやるとか、あるいはまた、そういう問題を取り組んでおる企業と通産省とがお互いに交流をしておるという段階ですね。ですから、そういうものがどんどん大量生産されるという時期までにはまだ相当期間がかかる、こういうぐあいに解釈していいですか。
  69. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) こういう技術の開発が非常におくれておりますので、こういう防止機器をメーカーが量産いたします前に、能率のいいものを試験研究をいたしましたり、いろいろ前段階がある、これに補助しておる、こういうことでございますが、すでにこの研究が完成いたしまして実用化できる、能率のいいものができ上がりましたならば、これは一般の産業機械同様、メーカーといたしましては営業として実用段階に入るわけでございます。で、その場合におきましても、これをできるだけコストの安いものをつくるということになりますと、一般の機械同様に、たとえばそれを量産しますのに必要な資金のあっせんをいたしますとかいうような、量産体制に対する一般の育成政策というものが、そのあとに出てまいるのでございます。これはおいおいそういうものが実用化されてまいりまして必要になってまいりますれば、そこにそういうメーカーに対しまして一般の機械の量産に対しますと同じような育成方策というものを資金面その他で講じてまいりたい、かように存じております。
  70. 瓜生清

    ○瓜生清君 そこで私、具体的な問題一つだけ聞きたいと思いますが、たしか去年の九月から新しい車にはガス排除装置ですか、これをつけるようなことが決定されたと思うのですが、その後、通産省の指示どおり自動車メーカーがそういうことをやっておるのかどうか。それから、それの点検は一体どこがしておるのか、伺いたいと思います。
  71. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 自動車の排気ガスの規制といたしましては、ただいま先生のお話になりましたように、これは昨年の九月から、それ以後に売り出されます新しいタイプの新型車でございますが、これに対しまして、運輸省の所管でございますが、道路運送車両法に基づきましてそういう新型車から出てまいる排気ガス中の一酸化炭素の量を三%以下に規制をする、こういう規制が道路運送車両法に基づきまして行なわれております。この規制の監督監視は道路運送車両法を担当しておられます運輸省において新型車の型式承認等の場合に実際に行なっておられる、かように承知をいたしております。
  72. 瓜生清

    ○瓜生清君 そこで監督運輸省がしていると思うのですが、そういう装置をつけることによって、いうならば従来よりはガス排除装置分だけ生産費が高くつくわけですね、どのくらいこれは高くつくのですか、乗用車の場合。
  73. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 詳しい数字につきましては担当の自動車課長等もまいっておりますので、そちらのほうからお聞き取りいただきたいと思いますが、この新型車の三%の規制を守りますのには、そういう新しい一酸化炭素の除去装置というのをつけることによって守ることもございましょうし、あるいはエンジンにいろいろ改善改良等を加えまして出てくる排気ガスの量を一定成分内に押える、エンジンの改良あるいは構造の改善というようなことによって対処いたしましたり、あるいは必要な除去機器をつけましたりというようなことで、メーカー側のほうはこれに対処するわけでございます。具体的にそういうことをやりますのに、乗用車の場合どのくらいの費用がかかるのかということにつきましては、私、手持ちの資料がございませんので、自動車課長がまいっておりますので、自動車課長のほうから御説明申し上げます。
  74. 中村俊夫

    説明員(中村俊夫君) 補足して御説明申し上げます。お尋ねの、そういう排気ガスの除去装置をつけますと、どのくらいコストが上がるかということでございますが、御承知のように日本の場合には、いま一酸化炭素の規制だけでございます。これは、先ほど部長から御説明いたしましたように、そもそも一酸化炭素が出ますのは、完全燃焼をしないから出てくるわけであります。したがいましてエンジンの中で完全燃焼をするということができれば一酸化炭素は急激に減ってくるわけであります。したがいまして、いまの日本の規制ではもっぱらシャシーメーカーがエンジンの改造ということで規定の三%以内に押えておるわけでございます。このほかに、アフターバーナー方式だとか、触媒方式とか、エンジンから出ました排気ガスの中で、さらにもう一ぺん燃焼させるとか、あるいは一酸化炭素を減らすというような方法もありますけれども、現在のところでは、いわゆるシャシーメーカーのエンジンの改造という形で大体充足をしておるわけであります。それでアメリカの場合は一酸化炭素のほかに、いわゆるスモッグの原因として炭化水素があげられておりますので、炭化水素と一酸化炭素と両方、これを減らそうということになりますと、なかなかエンジンそのものの改造だけではできませんので、ゼネラルモーターズとか、フォードがCAP方式とか、エア・インジェクション・パワー方式とかいうようなことで、それぞれ開発をいたしております。これにつきましてはその後コストもだんだん下がってまいりまして、大体二十五ドルから五十ドルくらいというふうに言われております。したがいまして、もし将来そういう必要が日本にも起こってまいりますと、そういった程度のコストアップといいますか、負担増がかかってくると思います。
  75. 瓜生清

    ○瓜生清君 実は私、大蔵委員会に行かなければならないので、これ一問で終わりますけれども、たしか一九六八年ですから来年ですか、ジョンソン大統領が排気ガスの装置をつけるように、アメリカの自動車業界にそれを義務づけましたですね。ところが、それが明年から確実に行なわれるということになると、日本からアメリカにも相当いま車を輸出しておるわけでしょう。いま課長の言われたように、二十五ドルから五、六十ドルくらいのコストアップになる。こういうことになると、やはり私は、先ほどから言っておるように、そういう部門に対して輸出振興その他を考慮すると、やはりいままで、たとえば百万円で売っておった、ところがそういったエンジンの改良とかあるいは何だとかで、排気ガスが、あるいは炭化水素が少なくなるような装置をつけていかなければならぬということになると、やはりメーカー側としては公害防止ということはよくわかるけれども、その生産費というものがどうしても高くつくので、理屈は了解しても実際踏み切るのにちゅうちょする、これは私、現在の日本のそういう業界の偽らざる状態でないかと思うのです。したがってきょうは、もうちょっと聞きたかったのですけれども、残念ながら次回に譲ることにしまして、私は通産省としてこの自動車の排気ガスの問題、特にそれを三%以下に下げる装置、ないしは自動車の改造、こういう問題についてはもっと積極的にやはり指導する必要があるんじゃないかということは、国内だけなら別としまして、輸出という問題がこれから関連してくるわけですから、そのことを要望しまして、これで終わります。
  76. 成瀬幡治

    委員長成瀬幡治君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時五十七分散会