○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、
昭和三十九
年度一般会計歳入歳出決算外二件につき、
不承認を表明するものであります。
昭和三十九
年度における日本経済は、その当初から、IMF八条国移行、OECD加盟等によって、対米従属下のいわゆる開放経済
体制を迎え、貿易為替の自由化と、高度成長
政策の矛盾の拡大など、深刻な経済の動揺期でありました。
政府、自民党は、これらの困難を切り抜けるため、いよいよ対米従属を深め、そのもとでの海外進出を強化しました。その結果、米価をはじめ諸物価はますます高騰し、
中小企業の倒産は、戦後最大を記録しました。それと同時に、安保
体制下の軍備増強がもたらされ、佐藤
内閣は、その発足当初から、F105D水爆戦闘爆撃機の横田、板付への配備、米原子力潜水艦の寄港承認など、アメリカのベトナム侵略戦争への協力、加担を露骨にするとともに、新暴力法の成立、さらには
国民多数の反対を押し切って一方的に日韓条約を強行しました。
このように、戦争と従属、人民収奪と独占擁護の反動
政策を推し進めるものとして、
一般会計三兆三千四百五億、財政投
融資一兆四千三百五億——これは補正を含むものです——。に及ぶ三十九
年度予算が
執行されたのであります。したがって、このような
予算の
執行は、アメリカ帝国主義と
政府自民党、
高級官僚との醜い癒着を来たし、そこに当然国家行財政の私物化による不正腐敗、汚職を生み出さずにおかなかったものがあります。
会計検査院の例示的な
指摘事項を見るだけでも、農林省を筆頭に六百六十余件、その中には、たとえば防衛庁が、かつてロッキード・グラマン
事件で問題になった丸紅飯田から、実際の六倍もの価格で戦車用部品を購入したことが指摘されています。しかし、問題はむしろ指摘外のところにある。その中でも、特に重大なのは、
共和製糖事件であります。周知のように、この
事件は、
政府の糖業
政策から発生しました。
政府は、砂糖自由化によるブドウ糖メーカーの保護と国内産製糖の助成に名をかりて、甘味資源特別
措置法、糖価安定法をつくり、また、それと前後して農林中央金庫、
農林漁業金融公庫、開発銀行等を通じて、計八十数億の不正
融資を
共和グループに行なったのであります。また、これをめぐる
国有林の払い下げ、
共和グループヘの
脱税の放置、政党、政界人の暗躍と贈収賄、
政治献金等々、いわゆる一連の黒い霧は、安保
体制下の現代日本の政界の縮図であり、ついに
国会解散の端緒となりました。しかも今日、これらの
国民の深刻な
疑惑は何ら晴らされていません。たとえば当
委員会の再三にわたるきびしい追及によって、
政府はついににせ領収書の存在を認めざるを得なかった。しかし、その
責任をどうするのか。にせ領収書に基づく不当、不正の
融資を今後どう処理するのかについては、一切触れようとはしません。また、
国会議員四十数人を取り調べておきながら、
疑惑のまっただ中にある
議員にさえ指一本触れようとはしていません。一体これでいいのか。日本の
政治道義はどうなるのか。問題は
政府の基本
態度であります。この問題を明らかにするために、再三にわたって佐藤総理の出席を要求しましたが、佐藤総理は一度も姿をあらわさなかったのであります。
事件は司直の手に渡っているのだから、その結論を待てばいいと考えるなら、これは大きな考え違いと言わざるを得ません。問題は、一国の
政治道義のあり方にあります。何が、
えりを正すでありますか。
政府は一体、
国民を忘れていると言わざるを得ない。
農林中金の場合一つを考えてみても、担保評価の常識を度外視した過大な見積もり、それをもとにしての数々の水増し不正
融資、東食を通じてのクッション
融資等々、湯水のように引き出された数十億の
資金額は、そも何であるか。それはほかでもない、全国数百万の農民の血と汗の結晶ではないか。農民の預貯金が農協を通じて中金に集積した金ではないか。
資金の性格上、それは当然に農民の生業と繁栄のために還元さるべきはずのものであります。しかるに零細農には二十万、三十万の営農
資金をさえ出し渋り、期限が来れば高利貸も顔負けの過酷な回収をやっているではないですか。そのため、これまで何人の農民が首をつり、一家離散のうき目を見ているか知れないのであります。ところが、ここではばく大な
資金が
政策融資の名のもとに、赤字欠損の泡沫会社に湯水のごとく流され、その一部は他の目的に流用され、その一部は政党、政界人の手に渡され、ますます政界の腐敗堕落を深めている。これが自民党佐藤
内閣治下の
政治の実体ではないですか。しかも
政府、自民党は、かかる実体にメスを入れようともしないし、また、入れることもできないのであります。いま
国会に提案されている
政治資金規正法もまた同じ運命をたどろうとしています。もともと不徹底な
審議会の答申をさえ骨抜きにし、依然として
独占資本、財閥とのくされ縁を温存しようとしている。これは
国民を愚弄するもはなはだしいと言わざるを得ません。いま
国民は激しい憤りをもって
事態の推移を見守っています。われわれは
国民とともに、これを容認しないのみか、抜本的な要求と
政策を掲げて、これと戦うものであります。
すなわち、政党は今後
独占資本、財閥等からは一切の
政治資金をもらわず、また、国の行財政を徹底的に民主化し、国の財政を物価、公共料金引き下げ、減税、働けば食える賃金、教育、
住宅、交通、公害、文化
対策等、
国民の暮らしと健康を守る
政策本位に使うこと、また、そのために、民主的に構成された
国民の監査機関を設けること、これ以外に日本の
政治の暗黒を解消する道は絶対にありません。
国会を解散に導いた導火線ともなった
共和製糖事件は、きびしくこのことをわれわれに教えています。そして、これはまた。厳粛な
国民の声でもあります。
なお、最後に私は一言したい。それは、当
決算委員会の
審議のあり方についてであります。
審議は、単に
会計検査院の報告書の限界に制限されることなく、国の行財政にわたる不正、腐敗、汚職の追及にとどまらず、常にその根源にさかのぼり、真剣な
政策論議を通じて国政の
運営に寄与することでなければなりません。このことを通じ、このことによってのみ、われわれは当
委員会に与えられた職責を遂行し、
国民の切実な要望にこたえ、真に民主的な
政治の
建設に貢献することができるのであります。
政府もまた、従来の
決算委員会軽視の
態度を根本から改め、総理まずみずからが多くの時間出席して、他の閣僚を激励して事に当たるべきであります。
このことをつけ加えて、
討論を終わります。