○
政府委員(井上亮君) ただいま御
指摘のありました
石炭鉱業の現状と、その対策の大きな項目につきまして御
説明をさせていただきます。御
指摘のありましたように、
石炭鉱業の現状は、一言で申しますと、大手企業におきましても、
中小炭鉱におきましても、ほとんど今日の経理状態を見てみますと、命脈をわずかに保っておるといっても過言でないような現状でございます。特に過去数年にわたりまして
石炭鉱業は、エネルギー革命の
影響を激しく受けておりまして、その過程で企業におきましては、この自己防衛策といたしましてやはり老朽化した
炭鉱を閉山し、なお炭量等たくさんあります山につきまして、ビルド
炭鉱につきましては鋭意これについて能率をあげ、坑道掘進等につきましてもさらに
近代化していくというような政策を強行してまいった
昭和三十六年当時、
炭鉱労務者の数はたしか二十一、二万人おりました。それがその後老朽
炭鉱の閉鎖とかあるいは
合理化政策、これはやはりエネルギー
事情からいたしましてどうしても自由価格が低落をしてまいりますので、石炭の価格も引き下げなきゃいかぬというようなことから、やむなく行なった
合理化政策でございますけれども、こういった政策のために、大手企業だけで見ましても、退職金に千億近い金を
支出いたしております。それから、閉山
合理化費用そのものといたしましても、千四百億円くらいの
支出をいたしました。そういった過程でコストの切り下げ、炭価の引き下げ――炭価を引き下げまして自由価格と対抗できるような、そういった政策を強行してまいったわけでございます。ところが、ただいま申しましたような、こういった異常な、急激かつ大規模な閉山
合理化政策の遂行の過程で、
石炭鉱業の負債は非常に異常負債が累増してまいっておりまして、今日借り入れ
残高だけを見ますと、二千億以上の借り入れ
残高を持っております。-なお、
合理化政策を始めます当初、
昭和三十四年当時におきましては、六百億くらいの借り入れ
残高、それが今日二千億程度、しかも出炭の規模は、当時におきましても年間五千万トン程度、今日でも大体五千万トン程度ということで生産額そのものとしては大差ないのに、借り入れがこのように累増いたしましたのは、ただいま申しましたような
事情で、異常
債務が累増しておる。
政府におきましても、こういう
状況を放置いたしますと、どの企業が助かるという関係ではなくして、全企業が崩壊のおそれがあるというようなことから、一昨年三木通産大臣が大臣に就任されましたときに、ちょうど御
指摘のありました
炭鉱の事故等も当時相次いでおりましたので、これらもやはり企業のそういった窮乏化した現状が一つの起因ではないかというような意味から、
石炭鉱業政策全体についての抜本策の樹立を命ぜられまして、自来一年有余、
石炭鉱業審議会が中心となりまして、熱心な検討をやっていただいたわけでございますが、昨年七月に答申をいただきまして、
政府におきましては、直ちに昨年の八月に閣議決定を行ないまして、今後の石炭対策の基本方向を決定いたしたわけでございます。四十二
年度予算につきましては、この基本方向に沿って
予算編成をいたしておるわけでございますが、その
政府のきめました政策の大きなやはり柱として、ただいま先生から御
指摘のありましたような、過去の企業の責めに帰せさせるにはあまりに
事情として気の毒であり、かつ過大な、過重な負担と思われます二千億円程度の異常
債務といいますか、累積赤字といいますか、そういうものを市中銀行の
融資につきましては十年の均等償還、それから
政府関係の
金融機関につきましては十二年の均等償還というようなことで、元利均等償還を行なうというような政策をとっておるわけでございます。
なお、これだけのこの措置を行ないましてもなお
石炭鉱業は、それでは今後とも赤字を出さないでやっていけるかと申しますと、企業自身も今後さらに能率をあげまして、企業の
合理化といいますか、再建
計画について最善の努力をいたすわけでございますが、なおやはり私どもの見通しでは、赤字をぬぐえないというような意味合いから、今度の
予算編成に際しましても、坑道掘進についての補助制度を導入するとか、あるいは特に
中小炭鉱あるいは大手
炭鉱につきましても、特に経営の苦しい企業につきましては、安定補給金を
支出するというような政策を講じておるわけでございまして、ただこういった助成策を前提にいたしまするならば、一応
昭和四十五
年度くらいまでの見通しといたしましては、まあほぼ大多数の企業が一応やっていける態勢になるのではないか、もちろんこれは労使の努力にまつところもございますけれども。というような見通しを今日得ておるわけでございます。しかし、何ぶんにも石炭の位置づけと申しますか、今後の生産の規模あるいは需要確保の見通し等につきまして、これを位置づけと申しておりますが、総合需要対策の中の位置づけが五千万トン程度というふうに考えられますので、この五千万トン程度の出炭見通し、あるいは需要確保の見通しというような点でいきますと、どうしてもビルド山については増産をいたします、増産しなければまたコストダウンができない、賃金を上げていけないということになりますので、どうしても増産をし、能率をあげ、賃金も上げ得るような態勢をつくらなければいかぬ。しかし、需要が一応五千万トン程度、
政府はこれにつきまして五千万トンをこえるように努力するという
政府の閣議決定を行なっておりますが、まあしかし、ふえるといいましても、そう何百万トン一気にふえるというわけにはまいりませんので、そういった宿命を持っております。その反面、やはり老朽
炭鉱の閉山と申しますか、
整理をやはり行なわざるを得なくなるというような困難な
事態をになっておるわけでございます。閉山につきましては、今度の
予算につきましても、閉山交付金を従来トン当たり千二百円程度でございましたが、これを倍額の二千四百円支給するというようなことを通じまして、従来閉山に伴いまして離職いたします
炭鉱離職者、これに対する退職金が必ずしも十分でなかった、非常にわずかであったというのが、今度は倍額に引き上げたというだけでなしに、さらに退職金とか社内預金とかいうようなものに対しましては二千四百円の半額相当分を、従来はこれは二割だったのですが、それを今度は五割程度は賃金あるいは社内預金の支払いにこれを充当するようにというような制度に改めまして、そういうことで従来よりだいぶ
改善されることにはなっております。
このような措置を通じまして、閉山されます企業につきまして、特にこの労務者あるいは地元の商工業者等に対して、少しでも円滑な閉山ができるような措置をやってまいりたいというふうに考えております。
賃金不払いの問題につきましても、先生から御
指摘がございましたが、この点につきましては、御
指摘のように、いままで
石炭鉱業、これは大手、中小を問わず、非常に経営が苦しかったために、賃上げはいたしますけれども、なかなか賃上げしただけの給料は支払えない、そうして金繰りも苦しいというようなことから、賃金不払いと申しますか、社内預金のような形にしている例がある。ですから経営が楽になれば払うというような式のものが相当あったわけでございますが、まあ私ども、先ほど来申しました肩がわり問題にいたしましても、あるいは坑道掘進の補助制度導入の問題、あるいは安定補給金を交付するというような方針を決定いたしましたのも、やはりこういった不健全な労務対策、労務
事情をそのままにおきますと、これは経理は一見よくなるように見えても、労務面から倒産するというようなおそれもあるわけでございますから、そういった意味で、こういったことが逐次そういった補助、助成制度あるいは
融資の政策を通じまして、解消できるようにというような配慮をいたしております。
それからなお、
石炭鉱業は斜陽産業であるから、ただいまも申しましたような経理が苦しい際に、働く労働者にしわ寄せをしないように配慮すべきであるという御
指摘がございました。私も、先生御
指摘のとおりであると思います。特に今日一般的に各産業ともに労働
事情がきびしく労務不足の
状況でございますので、
炭鉱におきましてもごたぶんに漏れず、また特に
炭鉱は御
指摘のようにやはりなかなか苦しい、今後ともきびしい
事情にございますので、より一そうやはり労務不安という問題がございますので、私どもといたしましては、これに先生の御
指摘のような、経理が苦しいからといってしわ寄せをいたしますと、今度は労務者が離散する、いなくなるというようなことになりますと、これまたせっかくの再建策も全うするわけにいきませんので、こういうことのないようにいろいろな面で私ども十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
なお、保安の問題につきまして御
指摘があったわけでございますが、これは通産省におきましては鉱山保安局があるわけでございます。実は保安
局長、今日付でおかわりになりまして、いま関係課長見えておりますが、石炭局と鉱山保安局はいつも一体となっていろいろ相助け合って行政やっておりますので、私どものサイドから一こと申し上げさしていただきますと、鉱山保安の問題につきましては、これは単に保安局だけでなくて、私ども石炭局の立場に立って考えましても、やはりこれは保安なくして生産はございませんし、経営もない。御承知のように
炭鉱が事故を起こしますときには、往々にして非常な大
災害を起こします。大
災害を起こしますと、企業によりましては再起不能になる場合もありますし、いたずらに累積赤字を重ねるというような結果になりますので、特に私どもの立場からいたしますと、これは通産省全体の考え方でございますが、やはり人命尊重というのを第一義といたしまして、保安対策については十分の努力をしてまいりたいというような決意でおるわけでございますが、御
指摘の保安監督官の増員につきましても、来
年度もやはりある程度増員を認められまして、なお私、これで完ぺきかといわれますと、鉱山保安局のほうに意見があるかもしれませんが、いずれにしましても年々充実さしておるという実情でございます。なお保安面につきましては、坑道掘進の補助というような制度も導入いたしましたが、これもまさに保安対策をねらっております。従来この事故を起こします最大の原因はやはり坑道掘進のおくれということが
指摘されておったわけでございまして、また坑道掘進のおくれというのは保安上大問題であるだけでなしに、生産面におきましても、将来の安定出炭に
影響があるというような関係もありますので、特にそういった保安の面も配慮して、坑道掘進については、
炭鉱経営者が積極的に坑道掘進をするようにというような配慮をいたしまして、坑道掘進を補助制度に踏み切ったというようなことでございます。
なお、保安
融資等につきましても、
合理化事業団からの
融資とか、あるいは開銀につきましても坑道掘進等につきましても
融資をいただいておりますが、今後とも御
指摘のように、保安は私どもにとっても最も大事な行政の一つでございますが、保安局はもとよりでございますが、石炭局におきましても十分そういった配慮でまいりたいと考えております。
簡単でございますが一応お答え申し上げます。