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1967-06-15 第55回国会 参議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十五日(木曜日)    午前十時四十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         赤間 文三君     理 事                 木内 四郎君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 佐藤 一郎君                 高橋  衛君                 山本 利壽君                 岡田 宗司君                 加藤シヅエ君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 大和 与一君                 渋谷 邦彦君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        外務政務次官   田中 榮一君        外務省中近東ア        フリカ局長    力石健次郎君        運輸省航空局長  澤  雄次君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        外務省条約局参        事官       高島 益郎君        外務省国際連合        局参事官     滝川 正久君     —————————————   本日の会議に付した案件国際法定計量機関設立する条約改正受諾  について承認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○千九百二十九年十月十二日にワルソー署名さ  れた国際航空運送についてのある規則統一に  関する条約改正する議定書締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国政府シンガポール共  和国政府との間の協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名さ  れた国際博覧会に関する条約第四条を改正する  議定書締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 赤間文三

    委員長赤間文三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際法定計量機関設立する条約改正受諾について承認を求めるの件  及び  千九百二十九年十月十二日ワルソー署名された国際航空運送についてのある規則統一に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件  以上二つの案件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。三木外務大臣
  3. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいま議題となりました国際法定計量機関設立する条約改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和三十年十月にパリで作成されたこの条約は、計量に関する諸問題、特に計量器類使用に伴って生ずる技術上、行政上の諸問題を国際間で統一的に解決することを目的とする国際法定計量機関設立機構、任務、事業等について定めたものでありますが、この機関は、現在英、仏、ソ連等三十三カ国が加盟しており、すでにその設立後約十年間に多くの業績をあげております。  この機関執行機関である国際法定計量委員会は二十人以内の委員で構成されることになっていますが、このたび、この機関業務を一そう効果的かつ円滑に行なうようにするため、同委員会を全加盟国代表者で構成するように条約改正することになりました。  わが国は、昭和三十六年に条約に加入して以来積極的にその事業に参加して、計量の分野における国際協力に寄与するとともに、わが国計量制度の改善、計量器技術的進歩等につとめておりまして、わが国がこの機構を改善するためのこのたびの条約改正受諾することはきわめて有意義と存ぜられます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。  次に、千九百二十九年十月十二日にワルソー署名された国際航空運送についてのある規則統一に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件につき提案理由を御説明いたします。  一九二九年にワルソー署名された国際航空運送についてのある規則統一に関する条約は、国際航空運送における運送人責任及び運送証券国際間で統一的に規律することを目的とする条約で、わが国は、一九五三年八月十八日にその当事国となった次第であります。その後、航空運送事業の飛躍的な発展に伴い、前記条約に、旅客運送における運送人責任限度額を引き上げるほか、運送証券に関する規定を整備する等の改正を加えるこの議定書が一九五五年にヘーグで作成されました。しかし、その当時、わが国としては、前記ワルソー条約で定める運送人責任限度額は、わが国一般損害賠償額水準に比べて必ずしも低過ぎることはないと考えたので、とりあえず一九五六年五月二日にこの議定書署名はいたしましたが、批准は、差し控えていた次第であります。最近では、わが国国民所得の増加、物価水準上昇等を反映して損害賠償額水準が一般的に上昇したほか、わが国国際航空企業も成長を遂げるに至り、保険制度の発達とも相まって、責任限度額の引き上げによる負担に十分たえ得る力を有すると判断されるに至りました。  今般この議定書締結することにより、新たな基盤の上に立つ航空運送人責任及び航空運送証券に関する国際的統一事業に参加することは、わが国国際航空企業に対する信頼及び国際航空旅客の利益を増すとともに、航空業務面におけるわが国の地位を高めるゆえんであると考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。以上二点につきまして何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あられんことを希望いたします。
  4. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 次に、補足説明を聴取いたします。高島参事官
  5. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 補足説明を申し上げます。  初めに、国際法定計量機関改正につきましてでございます。  わが国は一九六一年に国際法定計量機関に加入いたしまして、その後およそ六年間この中で積極的に活動してまいっておりますが、あらましこの機関活動の大要を申し上げますと、計量器使用から生じます行政上、技術上の諸問題を国際的に解決するという大目的のために、現在加盟しておる国の間でいろいろ情報の交換、それからいろいろな問題についての勧告決定等を行なっております。一九六四年に分銅とかはかりの公差、つまり公認の誤差でございますけれども、これの問題約八点につきまして勧告を採択いたしまして、現在計量法の施行に関します政令、あるいは省令の段階でこれを日本でも取り入れようというふうに考えておる次第であります。そのほかまた、現在七十項目にわたりますいろいろなこういう行政上、技術上の問題につきまして、勧告案研究調査を行なっておりまして、日本もそのうち約三十項目以上のものにつきまして、担当して研究調査しておるわけであります。  そのほか、各国計量制度、あるいは計量器に関する技術上の問題につきましても、情報がよくわかりますために、間接的にではございますが、日本計量器の輸出に関しまして好影響をもたらしてきておるという事情がございます。そういうことで、現在この法定計量機関の中で非常に積極的に日本活動しておるわけでございますが、この計量機関最初の設置の段階から委員会のメンバーを二十ヵ国に限るのは、どうも加盟国の数から申しましてあまり適切でない。全加盟国が参加したほうがもっと有効適切な活動ができるというふうな事情がございまして、その関係から、全加盟国を含みました一つ委員会というのは執行機関でございますが、一つ執行機関にしようということで、この際改正に踏み切ったわけであります。この改正は一九六二年の計量会議、つまり総会でございますが、そこでそのような方針を決定いたしまして、これを委員会に委託いたしまして、委員会のほうで改正条約案を作成するように命じ、また委員会のほうでその作成された改正案各国受諾方勧告するということを決定いたしました。その後六三年十一月に委員会が、現在お手元に配付してございますような十三条に関します改正を採択いたしまして、一九六四年の四月に在京大使館からわがほうへそのような勧告が通達されました。それを今回御承認いただくわけでございます。内容は、したがいまして、やはり二十カ国の委員会を、全加盟国委員会、つまり三十三カ国でございますが、そういう委員会にしようというだけのものでございます。  それから、ワルソー条約改正いたしますヘーグ議定書でございますが、これは一九五三年日本平和条約に附属します宣言に基づきまして加入いたしました。もともとこのワルソー条約は非常に古い条約で、世界国際航空企業が発達した最初段階に、一九二九年に採択されまして、当時航空事故のあった場合の各国国内法における取り扱いが非常にまちまちであったために、航空運送人責任につきまして非常に問題が多く、これを、世界統一した私法をつくりまして、事故のあった際その航空運送人責任を安定したものにしようということが動機になりまして、二九年に採択されたのが先般改正されます前のワルソー条約でございます。  それの骨子は、旅客国際航空、つまり出発地及び到達地がそれぞれワルソー条約当事国であります場合に、万一事故があって損害を生じた場合には、その国際運送に従事します運送人、つまり航空会社は、約三百万円を限度としてその被害者損害賠償を支払うということにきめたのがこのワルソー条約骨子でございます。  その後、現在に至りまして、世界の約八十カ国、つまり航空企業を持っておりますほとんどすべての国が参加いたしまして、いわば世界航空に関する統一した私法ということになっている次第でございます。戦後約三百万円という責任限度額が非常に低きに過ぎるというような世界の趨勢になりまして、一九五五年ヘーグ改正のための会議が開かれまして、ただいまお手元に配付されましたような趣旨の改正案が採択されました。この骨子は、三百万円の限度額をちょうど二倍に引き上げまして、約六百万円の限度額を定めたものであります。したがいまして、旅客出発地または到達地が今度の改正ヘーグ議定書当事国である場合、あるいは同じ出発地からほかの国へ行って、そこへまた帰ってくるというような、そういう運送の場合、その出発地ヘーグ議定書当事国である場合には、事故が起こったときは、国際運送に従事した運送人は六百万円を限度として賠償を支払うということになったわけであります。現在そういうことで、ヘーグ議定書は、まだ五五年に採択されましてその後年数もたっておりません関係上、ワルソー条約当事国全部についてまだ批准しておりませんのですが、約五十カ国がこれをすでに批准しておりまして、世界の大勢はワルソー条約からこのヘーグ議定書、つまりワルソー条約改正に移ってきつつあるという状況でございます。ただ、しかし、それにもかかわりませず、米国は、このへーグ議定書によります約六百万円の責任限度額が低きに過ぎるというふうな不満を持ちまして、一九六五年にワルソー条約から脱退するという通告をいたしました。米国がこのワルソー条約から脱退いたしますと、米国乗り入れます各国航空企業は、もし万一米国事故があり、それに対しまして損害賠償せざるを得ないというようなことになりますと、米国国内法によりまして非常に同額の賠償責任を負わせられるというふうな事情から、何とかしてこのワルソー条約米国をとどめ置きたいというふうなことで、モントリオールにございますICAO——国際民間航空機関、それから、民間航空企業主体といたします国際航空運送協会等主体になりまして、米国乗り入れております各国航空企業を中心として別途モントリオール協定というものを締結しまして、ワルソー条約とは額も違います非常に高額な賠償責任限度額を定めました。これによりますと、訴訟費用その他の経費を含まない場合には五万八千ドル、訴訟費用を含みます場合は七万五千ドルまでを限度とする損害賠償を定めました。これは現在米国乗り入れております各国航空企業は、それの当事国になっておりまして、航空機が米国出発地到達地または寄航地とするような、そういう航空運送の場合には、万一事故があったときは、そのような協定に拘束されるということになっております。日本航空ももちろんこのモントリオール協定当事国になっておりまして、それに拘束されておるわけであります。そのようなわけで、現在ワルソー条約ワルソー条約改正したヘーグ議定書、さらにまたモントリオール・アグリーメント、三つの、何と申しますか、損害賠償に関する責任体制でございまして、非常にまちまちなものでございますので、現在さらにまたこのへーグ議定書改正して、全面的な新しい責任体制を確立する条約を採択しようという動きがあります。昨年、先ほど申しました国際民間航空機関特別会議を開きまして、モントリオール協定も考慮に入れた新しい協定研究中でございます。現在同機関理事会内部で、技術的ないろいろな問題を検討して、来年あたりそれの外交会議が開催されるという見通しになっております。
  6. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 以上をもって二案件に対する説明は終了いたします。二案件に関する事後の審査は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  7. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 航空業務に関する日本国政府シンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  及び  千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件  以上二案件を便宜一括して議題といたします。  質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 シンガポールのほう、ちょっと一つ聞きたいと思うのだが、東南アジア、南太平洋方面に飛ばす飛行機、この場合、政府シドニーへの乗り入れを最終の、遠いところの目標ということを頭に置かれたんだと思う。それが証拠に、三十八年のインドネシアとの航空協定、四十年のマレイシアとの航空協定、終点はシドニーになっている。今度のシンガポール航空協定を見ると、シンガポールジャカルタどまりにしようというふうに航空路線がなっておるようなんですが、その間の事情説明してもらいたい。
  9. 高島益郎

    説明員高島益郎君) シンガポールから新しい協定締結してもらいたいという要請がございましたのが昨年の五月二十八日でございますが、ちょうど同じ日にマレイシアのほうからも、マレイシアのほうは協定廃棄するという通告がございました。これは廃棄通告がございましてから一年間で発効いたしまして、つまり、ことしの五月二十八日までにこれにかわる新協定締結されない場合には、当然マレイシアとの協定も失効するということになったわけでございますので、日本政府といたしましては、さっそくこれに対応いたしまして、まず、マレイシア協定廃棄をしないで済むような交渉を進めたわけです。それは昨年の十一月二十九日から、まずマレイシアにわがほうから参りまして、協定本文につきましてはそのままにして、協定附表についての改正交渉をいたしました。マレイシアといたしましては、もしマレイシアのほうの要望要求に満足がいくような解決ができない場合には、あくまでも協定廃棄という立場をとった関係上、日本のほうといたしましては、当時すでにシンガポール乗り入れておりました関係上、当然いろいろ弱い点もあったわけでございますが、マレイシアのほうといたしましては、その際の交渉で新たに東京ホノルル間の路線要求をいたしてまいりました。わがほうの旧附表によりますと、先ほど先生御指摘のとおり、ダーウィンシドニーまでの要求であったのでございますが、強い東京ホノルル線要求をけるために、わがほうは、当面ジャカルタ線の延長としてのダーウィンシドニーまでの路線というのは考えておらないというような事情もございまして、主として東京ホノルル線の主張をけるために、ダーウィンシドニー線日本のほうとして削った次第でございます。そういうふうにいたしまして、マレイシアとの交渉では、旧附表改正して、東京ホノルル線は認めない、ダーウィンシドニー線は削る、それからさらに、日本内部大阪という地点がございましたけれども、大阪を削りまして、新たに東京からソウルまで延ばしまして、そういう新附表交渉の結果合意いたしました。マレイシア協定廃棄要求を撤回さした次第でございます。したがって、マレイシアとの交渉では、その結果、協定本文はそのままで、結局、附表だけを改正して、マレイシア側廃棄要求を撤回さしたわけでありますが、これと全く同じものを、今度すぐ続けましてシンガポール交渉した結果できましたものが、お手元に配付したシンガポールとの航空協定でございます。内容は、マレイシアとの間で改正された附表と同じものでございます。したがいまして、旧マレイシア協定におきまする附表内容とは若干違っておる次第でございます。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、マレイシア協定は現在有効なんですね。廃棄すると言ったのを交渉の結果廃棄しないことになったが、しかし、たいへんな譲歩というか、日本は既得のシドニー線を捨てさせられて、向こうは架空ホノルル要求を取り下げ、これじゃ、何もないものと現にあるものと取っかえっこするというのは、これはちょっとたいへんな譲歩だと思うのだが、その点の御説明を願いたい。  それから、そのかわりに、逆に前に認めたものを捨てさせといて、大阪経由ソウル乗り入れを新たな権利を取る。マレイシアとはたいへん関係がいいようなことになっているんですが、何かこっちに、先ほどの御説明でもあったが、弱いところがあるというのは、どういうところが弱いところであるのか、その間を御説明願いたい。
  11. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) お答え申し上げます。日本航空は、運輸省といたしましても、日航シドニーに入れるということはかねてから計画いたしておりまして、ごくここ一、二年の間にシドニーまで運航を延ばしたいと考えております。ただ、香港シンガポールシドニーという路線が、実は香港シドニーの間の非常にいい路線なんでございますが、したがって、シドニーに入ります香港シドニー、あるいはジャカルタ経由、あるいはシンガポールから直接シドニーというふうに入らなければ、なかなか採算が合わないのでございますが、香港シドニーというローカルトラフィックを取ることは、現在の情勢では非常にむずかしいということがございますので、香港シンガポールを経由いたしましてシドニーに入ることは、現在の時点におきましては実現性が非常に少ない。これはイギリスその他豪州でも、非常に大きな航空上の取引の問題があれば別でございますが、現在のところは非常にむずかしいということでこの路線を断念いたしました。シドニーにつきましては、別の路線で入っていくということを現在計画しておる次第でございます。それでシンガポールからの非常に強い要望もございますし、それから、ホノルル線要求するということは、必ずしも架空のものではなくて、これをもし実施されますと、これも日本航空に相当大きな影響を与えるということから、このような話し合いに到達した次第でございます。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 よく裏のこと詳しく私わからないからお聞きするのですが、香港経由シドニーにノンストップで飛ぶのですね。シンガポールに寄るのですか。
  13. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) シンガポールとの協定関係におきましては、香港シンガポールシドニー、こういう路線交渉の問題でございますが、このシンガポールシドニーだけではあまりお客がないのでございます。やはり、香港というものとシドニーというのの航空貿易が非常に大きいということから、日本側としては、香港シドニーがなければ、なかなかこっち回りでシドニーに入るということが採算的に非常に困難である。こういう事情にあるわけでございます。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 それは英国政府との話し合いで、シドニーを経由してシンガポールに行けるようになれば採算が合うのですか。
  15. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) さようでございます。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 いまは豪州のほうからは一方的に日本へ飛んでくる。カンタスというのはどういう経路で飛んできているのですか。
  17. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは豪州日本間のローカルトラフィック日本側で押さえております。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 押さえているというのは、そういう香港みたいな、たとえばシドニージャカルタマニラあるいはジャカルタからシンガポール香港経由というカンタスの線は向うからはないのですか、一方的な線は。
  19. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) いま香港経由で、御承知のように、カンタスは入っておりますが、香港日本との間のローカル・トラフィツクの経路日本側が押さえております。そのカンタスに許してない……。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 しかし、せっかくシドニーという目標にいま一歩というところに来て、そうしてこれをはずしてしまったということは、大きな譲歩といいますか、日航方針がたいへん後退したように思うのだが、実際にそろばんの上から、あるとないではたいへん違うのか、単なる名目上の問題なのか、どうなのですか。
  21. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 豪州線を始めます場合には、かりに香港シドニー間の権利日本側で取れたといたしましたら、これは日航がいろいろ実際上計画しておりました従来の乗り入れ計画では、シンガポールには寄らずに、東京から香港に行きまして、香港から直航するか、あるいはマニラ経由香港に入る。こういう線でございましたので、実際に香港が取れました場合にも、シンガポール経由権利はかりになくても、実際上の支障はない、このように考えております。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 シンガポールシドニー間というのは、あまり商売には——海ばかりあって、人の往来、物資の往来というのは少ないから、むしろ香港マニラ、南にまっすぐ下がってという線が取れるならば、そのほうが有利だ。だから、この協定附表からはシドニーははずれても、たいへんな損害ではない。そこで香港マニラ経由ジャカルタへ寄るのかどうか知らぬが、その南にまっすぐ下がる話し合いはしているのですか。
  23. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これは英国政府航空協定上の話し合いがありますたびに、香港シドニー要求はいたしております。しかし、これは英国が非常にかたいために、現在のところ、まだ成功していない状態でございます。それで、しかし、豪州には日本航空としてもぜひ飛ばなければならないので、ほかのルートによって入るということを現在計画中でございます。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 ほかのルートということはどういうことかというのが一つと、それと緊急性がどの程度あるのかないのか。シドニーと早くやらなければならないのだとか、あるいは人や物の動きがないから時間をかけても損はないのだとかいうようなこと、数字でもあったら——想定される数字ですね——いま香港カンタスがストップしているから、想定される数字、おおよそのラウンド・ナンバーでいいから、教えてもらいたい。
  25. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 先ほど香港日本間を日本政府が押えていると申し上げましたが、これは香港日木間のローカルトラフィックを押えているわけであります。シドニー日本間のお客カンタスが運んでいるのは十分御承知のとおりでございます。これは、日本豪州との間の貿易が、御承知のように、鉄鉱石その他の購入に伴いまして非常に盛んになってまいりまして、この路線は非常に有望でございまして、運輸省といたしましても、一日も早く日本豪州路線は開かなければならないと考えております。  それで、他のルートと申しましたのは、たとえばこれはフィリピンとの間の航空協定はまだやっておりませんが、たとえば日本マニラシドニーというような路線、あるいはDC8、現在55型でございますが、これは62型というのができますと、日本シドニーの間の直接の無着陸の飛行ができる。そうしますと、そのほうが採算がいいのかどうか、その辺を目下検討している次第でございます。
  26. 大和与一

    ○大和与一君 関連して。去年香港とバンコクの日本航空責任者と会ったのですが、そのときに、香港マニラあるいはサイゴン、これはちょっといまだめでしょうけれども、ジャカルタ、この辺がドル箱だというので本社に強く要請していると言ったが、ちょっといまお触れになったようだが、そういう現地の声が間違いなく政府のほうに入っているのかどうか。実際にフィリピン政府にいままで交渉されたのか。その具体的障害は何なのか。将来はそういうふうにやったほうが、いまのお話の裏づけといいますか、うまくいけばいいのでしょうから、その辺のことをちょっとお聞きしたいのです。
  27. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 香港を中心といたしまして、バンコク、マニラ、この辺のトラフィックは数が多いいうことはわれわれもよく承知しております。それで、バンコクその他現在路線を持っております。問題はマニラでございます。マニラとの間の航空協定交渉したいということは、これは現実には日本航空と向こうのマニラのエア・ラインとの実際の交渉は進めさしておりますが、政府間の協定につきましても、これを早急に開始したいということを、外務省を通じて先方のほうに申し入れをお願いしている次第でございます。
  28. 羽生三七

    ○羽生三七君 この協定は、シンガポールマレイシアの共同運営だと思うのですが、かりに問題があったときには、その相手とはどういう交渉をするわけですか。どこが主体になるわけですか、相手側は。
  29. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 航空企業といたしましての相手方は、マレイシアシンガポール航空という共同運営によります会社でございます。政府といたしましては、それぞれ別個にマレイシアシンガポールがございますけれども、航空企業間の争いでございますれば、当然共同運営によります会社、三四%ずつ政府が株を保有しておりますマレイシアシンガポール航空会社にあるものと存じます。
  30. 森元治郎

    森元治郎君 あと一つ、お手数ですが。どうも向こうのややこしいトリックに引っかかっているような感じがするのですが、片一方−片一方というのはシドニーマレイシアに入れるような航空協定ができておる。今度シンガポール政府のほうでは、マレイシアシドニーまでは困るということを言い出したことをたてにとって、自分のほうでは附表からシドニーをはずしてしまう。二人で組んで、何を目標としてか、せっかくできたものを附表に入れたりはずしたり、芸がちょっとこまかいと思うのだが、何か深い意図があるのでしょうかね。
  31. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 日本側としては、ぜひシンガポール協定上の権利として乗り入れを実施したいということと、それから、シンガポール側がそのホノルル線要求してきたというようなこと、それから、最近のこれはシンガポール航空庁の政策が非常に制限的になりまして、これはわれわれのほうの調査でございますので、外務省を通じての正式な情報ではございませんが、シンガポールシドニー間の運輸権——トラフィック・ライトを最近シンガポール政府はフランス、ドイツ、イタリーのエア・ラインから取り上げたという情報がわれわれのほうの調査で、日本航空を通じての調査では入っております。このような情勢を分析して、シンガポール政庁とこのような話し合いをつけたわけであります。  それから、先ほど申し上げましたように、シンガポール経由シドニー乗り入れば、これはやはりシンガポールシドニーだけではたいした経済価値はないのでございまして、やはり香港というものを経由して、香港シンガポールシドニーと入ることによって初めて非常に大きな経済的価値が出てまいりますので、香港シドニー間は現在非常に難航しておるというような状況ともからみ合わせまして、この話し合いに応じたわけでございます。
  32. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、シンガポール及びマレイシア——航空会社一つだけれども、シンガポールマレイシアのナショナリズムみたいなもんなんですかね。われわれがペイしないものを、シンガポールがどの飛行機を使ってくるか知らぬが、シンガポールシドニーだけ飛んだって、シンガポールの何とか航空会社がたいしてもうけにもなんないのじゃないかな。どこかの補助でも——イギリスからでも大補助でももらわない限り、そんな意地悪しなくてもよさそうだがね。どうなんですか、その点は。
  33. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) その辺、シンガポール政庁の考え方の裏まで私たちもよくわからないのでございますが、現実的にシンガポール乗り入れを向こうとして、協定上の権利として早く確保したいということと、それから経済的にシンガポールシドニーというものを日本側日航が経営した場合に、あまり大きな価値を認めることが実際上非常に困難であるということから、シドニー乗り入ればまた別な路線乗り入れるということを現在計画をいたしております。それでこのような話し合いに応じた次第でございます。
  34. 森元治郎

    森元治郎君 外務省ね、香港政庁のことは航空運輸省の所管じゃないようなお話だが、香港政庁の裏表——あそこには大使館もあるんだから、そこらのところはどのくらいわかっているの。何もわかってないのか。
  35. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 森委員の御質問は、シンガポール政府のこの問題に対する態度ということでございますか。
  36. 森元治郎

    森元治郎君 そう。この航空路線の既得権を取られているんだから、しかも、向こうは架空な、これから相談するというホノルル線要求して、いれられないからといって、現にあるものを取ってしまうというのはひどいもんだ。そんなものを譲る必要はないと思うのだがね。
  37. 高島益郎

    説明員高島益郎君) これは先ほど申し上げましたマレイシアシンガポール航空というのは、従来イギリス、オーストラリア経由の資本で運営されていたマレーシアの会社を、新しくマレーシア政府シンガポール政府が株の大部分を保有いたしまして、残りの株をBOACとカンタスが持つというふうな、そういう共同の組織になりましてから、従来の会社と少し変えまして、先ほど航空局長からお話があったように、新しい路線を確保するというふうな立場に変わったものであると私は考えております。
  38. 森元治郎

    森元治郎君 ちょっとお願いがあるのです。きょうは質問しなかったけれども、資料の要求、例のシンガポールのいわゆる血債ですね。あれの交渉経過、金額、そんなものをちょっと詳しく書いて資料として出していただければそれについて御質問をする、ぜひお願いします。
  39. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) きまった段階で資料として出します。
  40. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、二案件に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  41. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  42. 羽生三七

    ○羽生三七君 国際情勢というほどのことでもないのですが、二、三アジア・太平洋地域の三木構想というものに関連をしてお伺いをしたいと思っております。特にその前に、ASPACについてはこの前私かなり詳しくお伺いをして、この会議については、政治問題を含めて自由な討議は行なうが、特定の結論は出さないという、こういう御方針のようでありますが、実を言うと、これはまあ前回、第一回の会議において日本側がかなり努力をして、特に反共的な特定の政治目的を出すことを取りやめたということは、私は非常にこれは相当な評価をしておるわけです。それから見ると、自由な討議だから結論は出さないにしても、何か、むしろそれをよりどころにしてまた新しい問題が起こるのじゃないかという気もするのですが、まあそれはそれとして、そこで考えてみるというと、東南アジア、太平洋地域のいろいろな組織を見ると、東南アジア開発閣僚会議、それからいわゆるアジア・太平洋地域の閣僚会議のASPAC、それからアジア開発銀行、東南アジア農業開発会議、それからまあ、これは国連の機関ではあるけれども、国連アジア極東経済委員会、それから対マレイシア、フィリピン等の東南アジア連合、それから先般は、財界中心に日本、オーストラリア、ニュージーランド、米国等の太平洋経済委員会設立準備会ですか、たいへんなものですね、これは。こういうようなたくさんな機関があるわけですが、三木構想というのは、これら既存の諸機関を何らか整理統合した上で何か別途のものを考えられようとしておるのか、あるいは、ややそういうものを統合したものにされようとするのか、それはそのままにしておいて別に新しい機構をつくろうとなさっておるのか。いま日本が先ばしって機構をつくるというようなことを言うのは適当でない、というこの前お話がありました。それはそれでいいのです。いいのですが、この種のたくさんな機構をそのままにしておいて、別途にまた何かおつくりになろうとするのか、統合しようとするのか、その辺のところはどうでしょう。
  43. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはいまそれぞれの機関がみんな競合する面もありますけれども、なかなかそれぞれの機関がそれぞれ役割りを果たしていると思うのです。アジアというものに関心がいままで薄かったわけですね。最近になってアジア、アジアということになってきたわけです。こういう一つの時期には、いろいろそういう会議体といいますか、組織というか、そういうものがやはりアジアの開発の役割りを果たしていくのじゃないでしょうか。だから、これはもう全部こいつをやめて統合なんと、そういうふうには——それはみなそういう会議の提唱国も違いますしね、そういうふうに考えることは思い上がりである。むしろ、やはりそれそれの役割りを果たして、そうしてその役割りがみなそれぞれ、私の言っているアジア・太平洋圏構想というもののみなそれぞれの役割りを果たしていくのではないかと、そういうことです。だから、それを一ぺんに御破算にして別の機構というのをその段階で考えるのは適当でないと私は思っています。
  44. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこでですね。まだ三木構想が具体的にならない先にかれこれ言うのもどうかと思うけれども、どうも私、ずっと考えて見て、このアジアが何か影が薄くなってしまって、アジア・太平洋地域ということで一番問題になるのはやはり南北問題といわれておるのですから、その主たる焦点はアジアにあるわけですね。それで、まあ豪州、ニュージーランド等を含めてアジア・太平洋地域と言って、何か、このアジアが、一番の焦点であるべきアジアのほうが影が若干薄い感じがするということ、これが一つと、それからもう一つは、豪州、ニュージーランドを含めて、それから何らかの経済的な協力を得ようとするならば、これは特別の援助が、つまり普通国連等で一応きまっておるような援助以外に、豪州、ニュージーランド等が特殊の援助をアジア地域にやるということを含めてのアジア・太平洋地域圏構想というものでなかったならば、これは全然意味のないことになって、それならばまた既存の国連のいろいろな諸機関を通ずる南北問題の線に沿って事を運べば足りるという、そういう感じがするわけですね。したがって、この一番問題のあるアジア、貧しい地域に、特にニュージーランドとかオーストラリアが特段の奮発をした援助をするということがあってそういう構想をお持ちになったというなら、これは話はわかりますが、そうでなかったら、国連の一般的な南北問題と一体どういう違いがあるのか、ちょっと私は理解に苦しむのですが、その点はいかがでしょう。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 第一点の、影が薄くなるんではないか、それはもう御心配は私要らぬ。もう当分はやはりアジアは国際問題の中心ですよ。南北問題にしても、人口は集中的に多いですからね。南北問題の、これはやはり解決という中に、アジアというものは非常にやっぱり重要な地点である。もうどんな名前を・アジア・太平洋と言おうが、何の名前をつけようが、アジアというものの影が薄れることは絶対にない。世界史の中におけるアジアというものは、たいへん、ここ何十年か重要な地位を占めている。影が薄くなる日はない。これは第一点ですね。それから第二の点は、これは言われるとおりです。いままでのようなことするんだったら何も格別いろんなことを言う必要はないんですからね。御承知のように、低開発国の援助でもアジア一番低いですよ。東南アジアなんかだったら、パー・ヘッドだったら一ドル五十セントくらいですから、人口も多いということもあるければも、何かこう世界国際的な援助という面では、アジアは何か国際的援助の面では軽んぜられているとは言いたくはないけれども、非常に薄い地域である。したがって、これから声を大にしてやはり言わなければ、なかなかいまのような状態では、援助の受け取り額は他の地域ではパー・ヘッド平均五ドル以上です。しかし東南アジアは一ドル五十セントです。羽生さんお調べになったら、国際機関からのアジアに対する援助というのはほとんどないですよ、第二世銀なんか東南アジアなどに対して。こういうことで、まあこれから、いままでやっておる努力では足りないぞ、これはやっぱりみなでやろうではないかという、一段とやっぱり気合いをかける必要が私はある。従来のでいいんだったら、格別いろんなことを言い出す必要はない。従来のでは足りない。やはりみなが努力をする必要があるという点でございます。
  46. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの、アジアの影が薄くなるというのは、アジア問題の影が薄くなるということを言うのじゃないんですよ。そういうわけじゃなしに、実際問題として、援助の対象がアジアということに一応限定されておる場合に、それに太平洋ということを含めても、豪州、ニュージーランド等、これにカナダあるいはアメリカも含めるかどうか、その辺は知りませんが、そういうところがら、いままで以上の特別の協力援助というものが含まれないならば、この三木構想というのは一体どういうことになるのか、はなはだ疑いなきを得ないわけです。それならば、西欧——まあ西欧とは言いませんが、欧州あるいは北欧等も含めて、国連全体の南北問題でこと足りる、特に三木外相がああいう構想を持ち出された以上は、しかも、就任をなさってから半年、まあ、まだそんな時期でないと言われておりますが、もう半年たっております。それから、けさの新聞を見ると、何か太平洋に五本の柱がある。これはほんとうかどうか知りませんが、一応外務当局で何か試案というものをつくったようにも報ぜられておりますけれども、とにかく、先般お話しのように、日本が先ばしってある種の構想を示してあとの国がついてこいと言うことは適当でないというお話でありますが、それはよくわかります。しかし、わかりますが、半年以上もたって、しかも、三木構想というものは三木さんの外交姿勢の一番大きな柱になっておるものでありますから、外国についてはとにかく、この委員会ぐらいにはもう少し具体的に、いまお話しの程度ならば、格別、そう言っちゃはなはだ気を悪くなさるかしらぬけれども、三木構想と銘を打たれて大上段に振りかぶられるほどのことはないように思う。先ばしって言うのはどうかということは私もよく理解いたしております。おるけれども、もう少しこの委員会くらいには、ほぼ私としてはこういう程度のことを考えておる、しかし、相手国もあることだから、手順もあるし、いますぐというわけにはいかぬが、このくらいに持っていきたい、というくらいは一応お考えを示されてしかるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  47. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは一つの、最初の言われたこと、まあ何もアジア・太平洋というのじゃなしに、世界の南北問題として解決してはどうか、アジアの問題をね。これはこの間もブラント西独外相が来まして定期会談をやったのです。そして、まあアジアの農業開発基金の話をしたわけです。よくわかると、それはね。おつき合いはできるにしても、やっぱりアフリカだと、こう言うのです。アフリカならとにかく、西欧諸国——西欧とは言わなかったが、西独としてはやっぱりアフリカというものに大きな援助をこれからしていかなければならぬ。どうしても私は、こう地域的に見ると、アジアというものに一番関心を持つ地域というのは太平洋の先進諸国だと思うのですよ。だから、アジアの開発というのは世界の課題ですよ。だから西欧というものの何も援助要らぬということはないのですよ。これは世界の問題ですけれども、一番アジアの安定とかアジアの発展というものに対して直接の影響を持つものはやはり太平洋の先進諸国だと思うのです。そこで、やはりみな世界各国の問題ではあるけれども、ことにアジアの問題というものを今後みなでひとつ協力してやっていこうではないかという呼びかける広さというものは、これはやはりアジア・太平洋という広さを持つと私は思うのですよ。これが一点。だから羽生さん、六カ月もおまえたつけれども、全然……これは少し気が早い。それはEECなどごらんなさい。あれができるまで何十年かかっているでしょう、前後。だから、私は、いま必要なことは、第一やはりこうみながアジアというものに目を向ける必要がありますよ。オーストラリアだってせいぜいやっぱりインドネシアですよ、関心持っているのは。あれはインドネシアの、自分のニューギニアですか。またニュージランドだって、必ずしもアジア全体というところまでやっぱり関心は、ニュージランドはむろんオーストラリアよりも関心の度合いは薄いかもしれない。カナダだって、やっぱりみな大西洋のほうに向いておる面が多いですからね。アメリカは、これはアジアというのはいろいろな形でアジアから手を引けないような状態。しかし、全体としてアジア・太平洋という地域が、みながひとつアジアの問題の重要性というものを認識してやろうではないかという、そういうふうな全体の空気が盛り上がっておるわけではないのですよ。あらゆる機会にこいつはPRをやらにゃならぬ面がありますよ。アジアが安定しないというと、世界というのは安定しないですからね。国際問題というのがみな集中的にアジアに——中東もああいうふうな状態でありますけれども、もっともっとアジアというものは重大になるということで、そういうPRの面があるし、それから太平洋の先進諸国の援助といりても、アジア自体がそれを受け入れるだけのみずからの態勢が要ります。地域協力ということは非常に私は大事だと思う。アジアの排他的なナショナリズムということで、みながお互いに隣同士ほどあまりよくないということは、アジアの開発というものを非常におくらせますからね。この地域協力に日本がある程度の寄与をしているということが、やはり地域協力を生んでおる原動力だと思うんですよ。あれに日本が何の寄与もしないで、アジアだけが寄っておるといったら、こんなに地域協力の効果が出ておるかどうか疑問だと思う。アジア地域協力のせっかく機運が盛り上がりつつあることを助長していくことは、日本の外交として大事だと思う。アジア開銀にしても、農業開発基金にしても、日本が推進力ですよ。こういう面がありますよ。これはみないわゆる私の言うアジア・太平洋外交の重要な一面なんですよ。そういうふうな努力を積み重ねて、そして、その上に太平洋諸国とアジアというものを結びつける何らかの協力機構が私はできると思う。EECのような機構というものとは条件も違いますし、それは一ぺんには無理ですよ。ただ、農業開発基金でも、やっぱり結びつける一つ機構ですよね。あるいはまた、アジア開銀でも、やっぱり先進諸国とアジアとを結びつけている機構ですよね。あの新聞に出ているのは、私が言ったんではなしに、ああいう意見もあるということを大使会議に出したのです。たとえば肥料回転基金なんかをこしらえて、そしてブラントに協力して、その見返り資金で農業開発をやったらどうかとか、いろんな案が出てくるわけです。私は羽生さんや皆さんにいろいろアイデアを出してもらいたい。ねらいはアジアの南北問題の解決ですから、みながアイデアを出して、一番これが重要な問題であるとするならば、そういう問題というものを一歩でも——一ぺんに大きな機構ができなくても、アジアと太平洋先進諸国を結びつけるいろんな機構があってもいいんではないかと、こういうことです。どうかあんまりせっかちに、おまえ半年になって言い始めて……。これはできたらたいへんな人類初めての機構ですよ。(笑声)なぜかといったら、ヨーロッパなんというのは、同じような文明や文化の上に咲いた一つ機構でしょう。これはアジアと太平洋だもの、白いのと黄色いのがやるんですから、これで協力関係ができたら、たいへんな歴史的なことですよ。どうかあまりせっかちにおっしゃらずに、やはりこれだけの大事業だから、相当時間をかけてやれや、あまり急いでするなという御注意を先輩からいただきたい。
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 ずいぶん長くお話を承ったけれども、そういう一般的なことなら、もう外相のおっしゃるとおりよくわかるんですよ、問題の重要性はね。  それから、そんなに気早にとも言われておるし、私のほうもそんなむちゃ言う気はありませんが、しかし、参議院の外務委員会はみんなそろっておりますが、かなり気長にあなたを見守っているほうです。ほんとうなら、あれだけの大演説をぶたれたら、一体中身は具体的に何があるのかと開き直らなきゃならぬところです。とにかく気長に見ているほうです。ですから、この前の質問のときに、日本が音頭をとるわけにはいかぬけれども、最終的には何らか一つのまとまった機構をつくりたいというお話がありましたが、結局、既存の機関をつぶすわけではないけれども、それはそれなりに生かしながら、しかし、終局的には何か一つのまとまった統合の機関を持ちたい、条件はそれはEECと違うでしょうが、最終的にはそういうことを含みとしておるわけでしょうか。それとも、それは主として経済的な問題ですか。重点はそこにあるのかどうか。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いいえ、私は経済ばかりではないと思うんですよ。アジアと太平洋が結びつくということは、経済というばかりでなしに、いろいろ文化の根も違う地域ですから、文化面でも、あるいはまた学術面でも、単に経済という狭い範囲内でなしに、東洋、西洋を一つに結びつけた新しい一つのコミュニティーというものができないかという夢なんです、これは。だから、それは経済だけでないわけです。
  50. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 関連して。いま外務大臣からいろいろと、何かいい案があったらおまえたちも少し出してくれというおことばがございまして、大いにわれわれも協力をしなけりゃならないことだと思っております。私は、列国議会同盟の社会経済委員会に連続四回出席をいたしておりまして、南北問題の一いつも国際会議の中に入って、各国のいろいろの論議、あるいは日本の主張等に関与いたしてまいりました。それで、せんだっての春季会議におきましても、日本は、外務大臣がいろいろ御主宰なさって、東南アジアの方々を呼んで農業開発の問題その他いろいろ会合を開いてリーダーシップをとる——と言っては僭越になるかもしれませんけれども、事実上のリーダーシップをとっていろいろやってくださっておることを大いに宣伝してまいりました。そして、みんなもそれに対して非常に傾聴してくれました。特に私が気がつきましたことは、アジア・アフリカのいわゆる開発途上にある国々は、少しも早く工業国になりたいという夢を持っている。それはまことにもっともなことでございますけれども、自分たちの文化の発展のいろいろの段階を経過しないで飛躍的に工業国になるという夢はとうてい実現できなくて、それよりも先に、まず食べることをやらなくてはいけない、そういう問題で日本がいろいろと協力をなさったことをみんなよく理解して喜ばれたと思います。  それで、さらに私はもう一つ外務大臣に考えていただきたいのは、日本の人口問題を、日本の国が明治維新以来いかに解決したかというその実例を、私は機会あるごとにアジア・アフリカの方々に話をして、そうして、生産力を上回るような人口の増加率というものがあったのではとうてい蓄積ができないと、そこには発展というものが考えられないという、まあ日本の経験というようなことでいつもこういう方たちに話しかけて、それもたいへんよく聞いてもらえるのでございますけれども、もう一歩進んで、人口問題に対してもう少し積極的に、アジアの方々との会合でこの問題を取り上げるようにしてくださったら一番いいのじゃないか。いまいろいろ考えていただいているようでございますけれども、まだ取り上げ方が非常に消極的で一もちろん、これは押しつけることのできない問題ですから、ある程度消極的にもなりますけれども、それは、おまえの国はあまり生み過ぎるというようなことを言ったら悪いですけれども、そうじゃなくて、母子保護の問題は非常に重要だからというような観点から、いろんな、医療の問題で援助をするとか協力をするとかということをもう少し大きく取り上げていただいたらいいのではないか、私はこういうふうに考えますけれども、外務大臣はいかがでございましょうか。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 加藤さんずいぶんこういう点で日本の人口問題に貢献をされておる。やはり加藤さんみたいな人が東南アジアに要るときですね、いまは。(笑声)それは、なぜかといったら、やはり成長率は四%なんですね、平均したら二・五%ですからね、人口の増加は。で、一・五%の成長しかないわけですね。一・五%の成長というのは、停滞ということになりますからね。どうしてもやはり人口問題というものは大きなアジアの問題にのしかかってくる。しかし、国際会議でも、いままでは何か、いまおっしゃられるように、おまえのほうは生み過ぎるぞと言うことは、いかにも何か、ちょっとそういうサイコロジカルにぐあいが悪いですからね。いままで遠慮がちだつたのだが、食糧問題というものがこんなに重要になってまいりますと——大部分は農業国でしょう。七、八割は農民で、食糧が余っている国はタイかビルマくらいしかないのですから、ほとんどが食糧の輸入国である。だから、食糧問題というのが大問題になってきているわけですから、まあここ二年ぐらい——おととしぐらいからですか、家族計画というものが大問題になって、国際会議でもまともにこれを論じられるようになりまして、そうして各国とも、インドなんかも政府自体がなかなか熱心にやっていますね。こういうことですから、この問題は真剣に、母子保護というような見地、あるいはまた食糧問題、栄養問題というのもありますからね、こういうことで、この問題はやはりアジアの大問題として、何か強制するというのでなしに、この問題は取り上げるべき問題の核心だと私は思います。これはぜもとも加藤さん、関心を持っていただきたいと思うのですね。大問題ですからね、アジアでは。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 他にまだ御発言もあるようですから、簡単にいたしますが、いまの私の質問に関連して、ASPACで自由な政治討議なんかが行なわれないで一定の結論を出さぬにしても、韓国等が中心になって、三木構想のアジア・太平洋圏構想というものの母体にASPACを利用しょうというようなことの起こる危険はないかどうか。  それからジョンソン大統領のアジア・ドクトリンですね、これはフルブライト外交委員長の反撃に出会いまして、一時沈黙しております。しかし、これは昨日のアジア公館長会議ですか、その際にも、ベトナム問題が片づいても、アメリカに簡単に撤兵してもらっては困ると言った大使があったときよう報じられておりますが、実はこれはジョンソンがアジア・ドクトリンを出したときにフルブライトが、そういうことにまで先ばしってアジアに深入りすべきじゃないじゃないかという警告を発したわけですね。そういう問題もある。これはいま一時下火になっております。しかし、これはASPACの問題なんか発展していって、それが三木構想のアジア・太平洋圏構想の母体になるような危険はないのかどうか。そういうものを十分排除して、あなたのほんとうの意味の考え方を貫ける確信がおありかどうか。また、そういうふうにしてもらいたいと思う。これは私は将来非常に重要な問題になると思います。ぜひひとつお考えをお聞かせいただきたい。
  53. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あれはいまのところではカンボジア、ビルマ、シンガポール、インドネシアは参加しないということですから、将来のことはともかく、そういうふうになってまいりますと、いま参加しない国々は、それは重要な国々ですから、だから、アジア・太平洋圏外交というものの母体には、参加国も限られていますし、そういうことにはなかなかなれませんし、私もそれは適当でないと考えております。
  54. 羽生三七

    ○羽生三七君 それですから、結局韓国の企図しておることは、今度の第二回会議でどういう発言をされるか、どういう方向に持っていこうとするか知りませんか、それで、少なくとも昨年の外務当局がとった態度は、先ほど申し上げたように、私はそれなりの評価をしております。日本が非常に努力をしてあの線にまとめたわけですね。それがくずれるようなことがあっては困るので、今回の会議にその辺十分な確信を持ってお臨みになるかどうか、これを承って私の質問を終わります。
  55. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も、あれに何か政治的色彩を持たすことはよくないと思う。去年非常に心を配ったでしょう。それが回を重ねるごとに、この外相会議で経済のプロジェクトだけしか話されぬというような外相会議というものではということから、回を重ねるにしたがって、どこの何でも自由に討議するということが必要なんじゃないかということで一もちろん政治討議をやろうという意思じゃないんですよ、私自身も。しかし、専門家でもない外務大臣が集まってプロジェクトばかりの話というのも会議の性格としてどうだろうか、もう少し自由にみんなが討議をしたらどうだろうかというのが私の発想の出発点で、あそこで特に政治問題を討議しょうという意図は何もないんです。しかし、プロジェクトだけしか話さないでおこうという外務大臣の会議というものは、少し片寄り過ぎているのではないかということです。むろん、昨年から政府が気を配って、何か政治的色彩を持たせないようにした椎名前外務大臣のあれは非常に賢明な方針だと思うし、私もこれを引き継ぎたいと考えております。
  56. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、さっきの私の発言にもうちょっとつけ加えまして、大臣にこの際お願いいたしたいのは、この家族計画につきましてのいろいろな医療の協力というような形は向こうが望んでいるところと聞いております。インドなども前からいろいろと日本からヘルプしてもらっていたと思います。そのほかの国でもそういうことは非常に喜ばれるのではないかと思います。したがいまして、やはり外務当局でも、外国との関係で、日本から医者その他そういう指導に適格な人を派遣するとか、あるいは必要な物資を供与するというようなことの具体的なものをもう少し前進させるように御考慮を願いたいと思いますが、何か御構想がおありになったらお聞かせ願いたいと思います。
  57. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはやはり先方の政府の要請ということが前提になると思います。そうでないと、大々的にこちらから派遣していくというようなことは何か好ましくない。心理的な影響を与えますから、政府から要請があればそういう面の協力は日本はやるべきだという意見でございます。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それでは、向こうから要請がございましたらぜひ積極的にやっていただきますようにお願いいたします。
  59. 森元治郎

    森元治郎君 私は質問するのじゃなくて、大臣、あまり片方でラッパばかり吹かれる、私も賛成したようにとってもらったのではまずいし、また意見を聞かせろというのだから、一言聞かせます。人間関係、国の関係はやっぱり銭なんですね。銭ですよ。周恩来がアフリカをずっと回ったあとにちゃんと銭を置いてきておりますね、借款、贈与。言うことばかりじゃ、これは国を一つもつかめないですよ。経済同友会で四カ条か何かあげてアジア問題で大演説をぶたれた。で、アジアは一つだなんというのは、岡倉天心なんかじゃないですけれども、昔からある。あのころのアジアは北緯何度の中国、インド、シナなんかだった。いまは赤道以南の太平洋の向こうまでも入る。大きくなっただけだ。まず銭を出しなさいよ。国民総生産の一%を出すなんと言いながら出さないで、何%とかなんとか、日本世界の標準に及ばないとか、そういう話ばかりしていないで、出せば連中も寄ってくる。寄ってくれば、銭金の話ばかりでなく、ひとつ人口問題も話をしよう、宗教、戦争、平和の確立、そういうところに引っぱっていける。ただ三木さんの講演会じゃ、東南アジアは寄ってこない。これは新聞によれば、マレイシアの総理大臣ラーマンが三木構想を聞いておるときは下を向いて拝聴しておったけれども、銭金の問題になったとたん、おい、秘書、メモをつけろ、こんなことが新聞に書いてあった。ほんとうかどうかわからないが、そこらが現状じゃないですかね。あなたの気持ちはわかるが、どうかひとつ、現実にやっていかなければ人は引きつけられない。早く後進国援助のやつを片づけなさい、DACで言われているやつですね。そうすれば、現実に人がついてくると思うのです。応援しますよ。
  60. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 非常にけっこうなお話で……。森さん、国内にもやりたいことはたくさんあるですからね。国内の投資というものを必要とする面が多いですからね。こういうことで超党派的に、それはそれとして、しっかりやれという御声援はアジア外交のために非常に力強く、を表しておきます。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 待っておれば近いうちに具体的な案が出てくるのですか、率直に言って。
  62. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、ああいう、いま言った幾つかの側面があって、最後に羽生さんの言われたのは、何かのEECみたいな、機構機構ということを頭にお置きになりますと、これは時間がかかるのです。しかし、そんなにいきなり機構というのでなしに、いま森さんの言われるように、もっとアジアに金を出せ、地域協力を進めよ、これはやはりアジア太平洋外交の大きな原動力かもしれぬですよ、これは。そういう点で、これもやはり、これは現にいまやっておるのだけれども、まだ足らぬと森さんは言われるわけです。そういうことを、これをやはり積極的に進めていくということも、現実にはやはり課題としてアジア・太平洋外交の一つの大きな側面ですから、だから、あなたの頭に描かれる何かEECかなんかの機構ということなら時間がかかりますが、そうでなくて、幾つかの側面、これをやはりじみちに推進していくというのがアジア・太平洋外交としての大きなやはりこれが出発点だとすれば、そうすれば、羽生さんの言うように、何かこう世界がびっくりするような大きな機構ができなければおまえの言うことはだめではないかという御批判が、だいぶ変わってくるのじゃないでしょうか。
  63. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはだいぶ違うのですよ。私も、EECのような共通の条件を持っておる地域と、アジアのような全く異なったそれぞれの条件の国々が同じような組織ができると思っておらぬし、そういうことをつくることを私は必ずしも頭に描いているわけじゃない。しかし、あれだけ三木さんが大きな構想として打ち出されたのだから、少なくともいまの既存のいろいろな諸機関を利用して十分経済的な協力をするということだけなら、特にあれほど声を大にして言われる必要はないのじゃないか。あれだけ言われるのには、それなりにもう少し具体性があっていいじゃないかということを言っておるわけでして、別にEECにかわるべきものを頭に描いておるわけじゃない。しかも、先ほど申し上げたように、かなりの時間がたっておるのだから、たとえばこの問題についてはこうしたい、あの問題についてはこうしたいというもう少し具体性が出てきていいじゃないかということを言っておるわけです。ですから、全然そういうふうな突拍子もない、それは外交に奇想天外の人をあっと言わせるようなアイデアがあるわけじゃありませんから、そんなことを言っているわけじゃないのです。
  64. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) たとえば、あらゆる機会にアジアに対する援助というのを日本がもっと積極的にやろうという、これはやはり国民の各位にもわかってもらわなければならぬわけですから、この点のPRは私は足らぬと思っているのです。アジア、アジアと言って、国内のやりたいこと一ぱいあるじゃないか、こういう、ときどき新聞の投書欄に出たりなんかする。これは国内においても国民の理解——タックス・ペイヤーの理解を求めなければならぬ。これはこれからやはりやらなければならぬアジア外交の大きな一つの側面だと思う。それからやはり太平洋先進諸国に対しても、いま言ったように、少ないですから、アジアにもっと出そうではないかというような面も、これはやはり外交の大きな側面だし、いろいろこうした両方を結びつけた大きな構想はすぐにできなくてもやらなければならぬ。アジア外交というものはたくさんに課題をかかえておるのですから、これをじみちに積み上げていくという、そういうじみちな努力も必要なんではないでしょうか。それは大きな機構でもできれば非常にはなやかですけれども、そんなの、あまり情勢が熟さないのに頭だけで考える機構というのはうまくいかないですから、そういう点でこれをじみちに積み上げて、黙ってやれとこうおっしゃるかもしらぬが、やはりアジア・太平洋ということでいって、国民にも関心を高めるし、太平洋先進諸国にもそういう関心を持ってもらうし、また、いろいろなアイデアを出してくれる人がたくさん出てくると思いますから、そういうのに、一つのああいう考えで進みたいのだという方針を明らかにすることは、それだけの効果があるのじゃないでしょうか、黙ってやるよりも。
  65. 羽生三七

    ○羽生三七君 それできのうDACの会議で、中国とか北ベトナム、北朝鮮等にも門戸を広く開く、こういうふうな議論があったようでありますが、それはけっこうだと思いますが、ASPACのようなアジアのいろいろの会議の中心になったときに、これら諸国が入るはずがない。ですから、まあいまのは三国は別としても、いままでオブザーバーで出ておったような国々あるいはビルマ、カンボジア等ですか、これらに対してもっと積極的に何かはんとうの意味の協力を呼びかけるようなそういうこともお考えにならぬと、これは口では言っても、結局特定の国だけが集まって、かけ声はいいけれども、内容的には一方の陣営だけの小さなかたまり、しかも、それに韓国ですかが中心で音頭をとるというような、いわゆる三木構想とはおよそ違ったようなものになるのじゃないか、その辺の配慮はどうですか。
  66. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはきのうも申したのは、アジア・太平洋圏というのは、中国は地理から見ても入りますね。だから、もう当然に地理的に見てもアジア・太平洋圏に中国があることは事実ですから、しかし、いろいろの協力機構ができたときにそれは入るとか入らぬとかいうのは別の問題であって、地理的に見ればやっぱり中国もアジア・太平洋圏にあるので、しかし、いろいろの機構ができてそれに入るか入らぬかというのは別個の問題であるという説明をしたのです。私はそう思っているのです。したがって、これは何かすぐに中共が何かの機構の中に入ってくるような状態だとは私は思いません。しかし、地理的に見れば、これは中に入ることはだれの目にも明らかでありますから、機構の問題になってくるとそれは別問題であると言ったので、私は、これはやっぱり南北問題というものの解決には東西問題の平和共存というようなもの自体がやっぱり根底になければ、南北問題でも、安定したアジア情勢のもとになければ国内の建設は進まないから、これは、そういう意味で、あんまり片寄った態度を、たとえばASPACならASPACにおいてもあまり非常に片寄った立場ではかえって安定したアジアをつくるために有効な役割りを果たしていき得る道ではないのではないかと私は思っております。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いままではアジア・太平洋三木構想というたいへん大きな将来に向かっての問題を論議されたわけですが、今度私は現実問題で、まことにみみっちい問題を一つお伺いしたい。  それは韓国の朴大統領が再選されて、それの就任式ですか、そこに佐藤総理が列席をするという、そういうことが伝えられている。それははたして正式に決定をして派遣されることになっているのかどうか、まず、それをお聞きしたい。
  68. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 佐藤総理としては、朴大統領の就任式に隣国として非常に慶事——慶事は喜ばしいことでありますから、就任式に都合が許せば自分が行ってもいいという意向だと思います。しかし、国会開会中ですから、それは各党の了承を得るということが必要でしょうね。了承を得られれば総理みずから行って祝意を表したいという気持ちがあることは事実でありますが、何ぶんにも国会開会中ですから、これは各党のやはり行ってらっしゃいという、こういう了承が必要だと思います。ちょうどあの日が土曜、日曜日ですから、国会にはあまり差しつかえのない日時でありますけれども、いずれにしても国会開会中でございますので、会期延長がどういうふうになるかということとも結びついておりますが、そういうことと結びついて国会がそういうことで了承しようということが前提になると思います。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国会開会中ですから、私どもは、重要法案もかかっておるときですし、会期延長は大体必至と見られるので、総理が朴大統領の就任式に出かけるということには賛成しかねる。しかし、私が賛成しかねるのは、単に国会開会中であるというだけではないのであります。こういうことを言うのはあるいは儀礼に反するかもしれませんけれども、しかし、日本と韓国との関係ばかりでなく、韓国のいまアジアにおけるいろいろな行動というところから見て、現在の日本の首相が朴大統領の就任式に出ることについては、国民の間にいろいろな疑惑あるいはまたある種の下安を抱かしめるものがあるのじゃないか。つまり、国民が全部喜んで首相を送れる状態にはないということ、それを考えていただきたい。というのは、朴大統領の就任式の直後にアジア・太平洋閣僚会議が開かれることになりました。このアジア・太平洋会議は先ほど羽生君からも言われましたように、韓国が主唱をした形になっている。そうして最初韓国は、これを反共的色彩の強いもの、むしろ反共的な各国会議にしようという構想を持っていた。朴大統領はおそらくその考え方を持ち続けておるでしょう。そういう会議の前に総理がわざわざおいでになって、総理のことですから、たいへん八方美人、そうして韓国のほうから、やあ、これからのアジアの問題ではこう考える、こういうふうにしてもらいたい、よろしゅうございますというようなことになって、共同声明でも出ると、これは三木さんの考えられたようなこととも違った方向に行くおそれもある、こう考えるのですよ。とにかく韓国は、御承知のように、ベトナム戦争にはたいへん積極的で、たいへんな軍隊を出している、そうして、さらに送ろうという考え方も持っております。こういう姿勢をとっておるということ、そこへ首相がわざわざ出かけて行く。まあ何ですね、いままで首相が出かけて行くというようなことは、友好国でもあまりなかった。アメリカの大統領の就任式に池田さんがお出かけになったことはありますけれども、首相が出かけられたということはなかったように思うのであります。私は、外務省や何か、まさかいま韓国へ行くということについて、そういうような理由だから出せないのだとは言えないと思うのですよ。まあ、せいぜい出せないという理由づけとしては国会開会中くらいのところでしょうけれども、私はずばずばものを言いますが、そういう点も考慮すべきではないか。たとえばフィリピンも日本と近い関係にあるし、重要な隣国と見ていいでしょう。フィリピンのときにだれが行ったですか、総理ではなかったと思う。台湾の蒋介石が何べん目かの就任をされたときにもだれが行きましたか。これは総理大臣じゃなかった。ことさらに、近い隣である、友好関係にある——特別に、日本と韓国との関係で、国会開会中にもかかわらず首相が出かけるというようなそういう形で表現しないでもいいのじゃないか、こういうふうに考える。  それからもう一つ。いまの韓国の政情からいっても私は好ましくない。御承知のように、今回の韓国の大統領選挙、総選挙で非常な不正が行なわれた。これは韓国の国内のことですから、われわれがここでとやかく問題にすることではございませんが、それが響いて、いまや韓国の国内政情はきわめて不安、そして大きな学生のデモンストレーションが起こっている。それは相当大きく発展するような可能性もあるような事態、しかも、この学生連動は排日運動に転化する可能性も持ってるわけです。そういうような事態のもとに私は首相が行くということは、また考えてみなければならないことではないか。ですから、首相の断わる理由はどうでも、私ども、外務省でたいへん適当な方法を講じられるものと思いますが、事実上出かけられないほうがよろしい、こう考えるのですがね。
  70. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 岡田さんとはたいてい意見が一致することが多いのですけれども、この問題はどうも私はそんなに考えなくてもいいのではないか。やはり一番隣国でありますし、圧倒的な支持で大統領に当選されて、大統領選挙に対しては、学生の批判も、見てみると、起こっていないわけですね。大統領選挙は、そういうふうなことで、やはり韓国という一番近い国が安定して、そうして政治も安定してくれることは日本としても好ましいことですから、これだけの国民の支持を得て大統領に就任されるということを一番近い国の総理が祝意を表するということは、国民の大多数も岡田さんみたいに考えないのではないでしょうか。ただしかし、国会開会中ですから、そういう点では各党の了解を必要といたすことはこれは当然のことだと思いますが、しかし、韓国に行って祝意を表するということが、国民多数も岡田さんのような考え方だとは私は思いません。これはやはり一番隣の国だし、祝意を表したらいいという気持ちだと私は考えます。残念ながら、良識ある岡田さんとこの問題については意見が一致いたしません。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうも良識のないような意見ですけれども、しかし、いま言ったように、こういう考え方もあるし、それから、もし了解を得るといいましても、それを多少強行をするというような形になってまいりますと、やはり国会の中において相当な数の人が私と同じような意見で反対をする。そしてその声を大にして叫ぶというような事態になれば、行かれる人もたいへんまずいと思うのですよ。だから、そこらは強行するなどというようなことはされないで、やはり慎重に考慮をさるべきではないかと思います。それが一つ。  もう一つ。これも緊急当面の問題で、そう大きな問題とは言えませんけれども、国連の安保理事会でソ連の出しましたイスラエル非難並びに即時撤兵の決議案が出され、そうしてソ連の要求で国連緊急総会が招集される。ウ・タント事務総長から加盟各国に対してその賛否の問い合わせが来ている。私は、日本政府はこれに対して賛成をする、そうして緊急総会を開くことに賛成するものだと、こう考えておりますが、すでにそういう態度で返事が出されたかどうか、まずそれをお伺いしたい。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはソ連が、緊急総会を開いて中東問題を討議したい。討議の結果、いろいろな結論が出てくることはこれはあり得るでしょうが、初めから結論を出さないで、ただ中東問題を討議しょうという緊急総会であれば、特に反対する理由はないと思っていますが、そういうことでいろいろわれわれのほうにも松井大使から請訓を仰いでくれば検討を加えたいと思っております。
  73. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 緊急総会の招集ということは一つの手続で、たとえば、特に、安保理事会にソ連が提案をしたようなものを審議しろという意味で、私は総会の招集ということが行なわれると思う。そうすれば、日本としても当然出席することになると思いますが、やはり中東問題についての解決が論議される場になってくる。日本としてどういう態度でもって臨むかということが、やはり私は重要な問題だと思うわけです。安保理事会に臨む際にも、日本は一定の方針を持って臨むと思いますが、今度は停戦の問題とかなんとかではない。あと始末の問題である。あと始末の問題で一番の問題になるのは、やはり撤兵の問題になってくるかと思います。私どもは、前々からこの問題について、武力の行使によって国境を変更するということに反対であるということを申し上げております。そして外務大臣も、そうお考えになっているように言われましたが、この態度は、今度の緊急総会が開かれて、中東問題の解決等について日本側としても発言をしてその見解を述べなければならないときに、そういう方針を堅持されるつもりであるかどうか、その点を確かめておきたいと思います。
  74. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これはもう岡田さんの言われることは、今日の世界一つの原則的なルールになっているんじゃないでしょうか。武力によって領土の変更というものは認められないという一つの大きな道義的な国際的秩序というものができ上がっている。それが好ましいことでないことは言うまでもない。ただ、現在平和の話し合いでいろいろ論議されている段階でありますから、われわれが望むことは、正義、道義というものを基礎にして長続きする平和が中東に確保されることを望んでおるわけで、こういう線に沿うて国連の場においてもわれわれは積極的にそういう方向に向かって努力をいたしたいと考えております。
  75. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、やはりその際に日本側の態度として、イスラエルの主張するように、アラブ諸国と直接交渉をする、他国の介入はイスラエルとしては認めることができない。これはイスラエルの一方的な態度の表明でありますから、必ずしもそのとおりになるとは私は思わないけれども、しかし、そういうふうな態度に対してたとえば支持をする国もあるいは大国もあるかもしれないけれども、この問題はやはり戦争勃発以来の経過、特に停戦の実現の経過から見まして、将来の問題としては、単にイスラエルとアラブ諸国だけの関係ではなく、スエズ運河、アカバ湾の国際航行の問題もありますし、それらが確保される関係、それからまた、かくするためのいろいろな論議、さらにまたあそこに非常に深い関係のある大国がそれぞれいろいろな関係も持っております。したがって、当然これは国際連合の場で解決さるべきものであるという、そして当事国だけでなくて、国際的に国際連合の場で解決する、そういう方針日本政府としては堅持してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も岡田さんと同じように考えるのは、直接当事国といいましても、イスラエルとアラブと直接両方でやれといいましても、これはなかなかむ、ずかしい。長続きのする解決が、話が、当事国だけでできるということは私はむずかしいと思う。どうしてもやはり調停者——調停者と言いますかどうか、とにかく第三者が長続きのする平和を確立するために努力することがなければ、直接当事国だけでやれといっても、これだけの長い歴史的な対立関係にある両国では私はむずかしい、私も岡田さんとその点はやはり同じ意見に考えております。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっとそれに関連して。  イスラエルの占領地区からの撤兵決議、あれは日本は棄権したのですね。その辺の御事情はいままでの説明とどういう関係になりますか。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは日本は、安保理事会でしたら当然のことだと思います。日本は安保理事会のメンバーでございますし、もう少し安保理事会でこの問題の解決をやったらどうかということで、いきなり緊急総会をやるよりも、安保理事会でもっと解決ができぬかということが安保理事会における日本の立場であったと思うのです。ですから、安保理事会としては当然のことだと思います。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 関連。  羽生さんの質問はこんなふうに感じたのですが、安保理事会において日本がソ連の決議に対して棄権した理由、その点大臣ちょっと取り違えておるようですが、その説明を。
  80. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 安保理事会では、一方的にイスラエルを侵略者と非難するような決議があって、そういうふうなことが平和的解決にはこの際には役立たないという判断でなかったかと思います。
  81. 滝川正久

    説明員(滝川正久君) ただいま大臣のおっしゃいましたとおりでございまして、ソ連の出しました案は、一方的にイスラエルを侵略者というふうにきめてしまって、だから、無条件に即時撤兵をしろということになっているのでありますが、一方的にイスラエルだけを侵略者として非難するということに賛成しますことは、いまの段階で、国連自体の調査等からいって、そう言ってきておりませんので、かたがた、今後の平和的解決のために決して資するものではないという観点から棄権しました。
  82. 森元治郎

    森元治郎君 棄権というのは、ある面ではいいところがあるが、ある面は賛成できないから、イエス、ノーいずれにもくみしないから引き下がってアブステンションするということですね。そうすると、イスラエルだけ非難して撤兵しろという、そうして非難ということには反対、撤兵というあとのほうのことには賛成、だから、全体としてイエス、ノーとも言えないから棄権したのだ。ここで私は、外務大臣、あなたは厳正中立ということばを使っている。国際法的に厳正中立というと質問がたくさん出てきますが、小理屈は抜いて、どちらにも厳正に片寄らないと言えば、あえて日本が決議案を出してもいいと思うんですね。いいチャンスだったと思うんですね。あなたは「背後の国」と言って、言い直して「関係のある国」とこの前言ったが、関係のある国ばかりしゃべっているのです。遠い日本が、厳正中立だから、まん中に割って入っていい決議案を出して引っぱるいいチャンスだったんですがね。太平洋圏構想ばかり考えているからだめですよ。グローバルにやるせっかくのチャンスだったのです。日本が決議案を出す、引っぱってやる、厳正中立なんだから。いまこの国際政治で世界の国々が全部間違っていることが一つあるのは、米ソというものが対立して二つ違うんだということを前提にして、いずれかに属した発言をしているわけですね。そんなことをかなぐり捨てて、米ソという二ブロック認めないというくらいの気概を持ってやることが外務大臣の第一課だと思うんだな。それだけ御意見を申し上げておきます。
  83. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまの森さん、棄権を分析されたが、そういうものでなくして、全体として、この機会にそういうものを非難するような決議がこの平和的解決に役立たないのではないかという一これはいいけれどもあれはいかぬという分析したものじゃないと思うんですね。全体として、こういう非難決議をこの際安保理事会でやることが平和的解決の促進に役立つということに疑問を持って棄権をした。こういうふうに、これは賛成だけれどもこれは反対だと、そういう分析に基づいたものではないということだけは御了承いただきたいと思います。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはそういう刺激的な部分だけを削除して何らかの修正案でもいいと思うのです。撤兵ということに重点を置いた。それはいまの森さんの言ったように、この点はもっと両国——特に大国のアメリカ——いずれかに賛成ということでなしに、もう少しその点で日本外交というものは独自性を持ったやり方というものがあったと思うのですが、これは今後もあることだと思いますから…。
  85. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時三十二分散会      —————・—————