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森元治郎君 それでは、時間が短かいようですから、押し問答はできないようです。私、あまり押し問答は得意じゃないのでね。
そこで、ポイントは中東紛争と世界の平和との
関係。
政府は中東紛争に対してどんな方針で臨んだかということは、要約すれば、まず戦争はやらないでくれ、戦争はストップしてくれ、引いてくれ。そしてどっちにも片寄らず、厳正中立だ。それから第三点は、在留邦人の生命財産の保護だ。第四点は、ちょっと下品になりまして、おれの
ところに石油が入るかどうかというようなげすな商売上の御心配。それから第五点は、
国連安保
理事会における諸決議にあらわれた
日本の気持ち。賛成したのですから、ああいう方針であることはわかったが、それでちょっとほっとしているようなんですが、私はこれで足りないと思う。いまイスラエルは、
国連頼むに足りず、そうして血を流したのだからと言って、ガザ地区、ヨルダン側の狭い旧エルサレムの若干の
地域、シナイ半島の全部、シャルムエルシェイクの突端、こういう
ところに兵を依然として置いている。
関係国があまり打つ手もなくおたおたしている間に、向こう側のイスラエルの態度、あのままじっとしておれば、力の政治、領土の変更が力によって行なわれる。こんなことでは、せっかく第二次で戦後ダンパートン・オークス
会議をはじめとして
国連ができた経過、力で領土の変更はしないのだというこの原則が、しっかりしないとくずれるおそれがある。私は、いずれの国にも好ききらいは全然ありません。どちらにもそういう
感じは一切持っておりませんが、
理由のいかんを問わず、保障占領のような状態が長くなって固定化するということになれば、アラブは戦争に負けたが、やがて機を見て今度は力で取りかえせばいいのだということになる。そうなったならば、これは戦争になるから、私はソヴィエトと同じ態度をとれと言うわけではないけれども、やはり兵を引くということ、そしてその上に、十分彼らの気持ちもくんでやり、アラブの気持ちもくんでやる——時間はかかるでしょうが、とにかく兵を引くことが世界平和のために大事だということを中東紛争から非常に強く受けるのですよ。ですから、
日本政府の態度としては、石油の話などということよりももっと大きなことを、英米仏自由陣営に悪いかもしれぬ、ソヴィエトびいきの音がするかもしれぬが、この力の政治、領土の取得、領土の変更を力でやるということを固定化させないように、長く時間が経過しないうちにひとつイスラエルの善処を強く求める。そして、アラブの難民問題はむずかしいでしょうけれども、自分の国の四倍くらいの土地を力でやって、
国連頼むに足らず、来るなら来いという、こういうイスラエルの気持ちはわかりますが、野放しにすべきではない。
国連において第二次大戦後に新しくつくり上げた、力による領土変更を認めないという原則からも、いろいろに慎重なる善処を求め、そして彼らの気持ちも買ってやる。時間もかかりますが、そういう努力をすることが
日本政府のいまやるべきことだと思う。これは声を大にしてひとつ、あちらこちらを心配しないで、東西の顔を心配しないで強く高調することが第一。これはベトナムでもそうです。力で取ったものは取るのだ、非武装地帯から北に行った、これをアメリカは取ってもいいんだ、こういう原則が確立されたならばおそるべきことだし、第二次大戦のあの惨禍の教訓を捨ててしまうことになるので、ぜひとも
政府は勇断を持って、声を大にしてやってもらいたいと思うのですが、三木
外務大臣、世界政策についていかがですか。