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1967-06-13 第55回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十三日(火曜日)    午前十時四十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         赤間 文三君     理 事                 木内 四郎君                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 鹿島守之助君                 高橋  衛君                 山本 利壽君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 大和 与一君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        外務省中近東ア        フリカ局長    力石健次郎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        外務省欧亜局参        事官       岡田  晃君        外務省経済協力        局国際協力課長  野村  豊君        外務省条約局参        事官       高島 益郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○アジア生産性機構特権及び免除に関する日本  国政府アジア生産性機構との間の協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の領事条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ノールウェー王国との間の条約の  締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (中近東における国際紛争に関する件)     —————————————
  2. 赤間文三

    委員長赤間文三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  アジア生産性機構特権及び免除に関する日本国政府アジア生産性機構との間の協定締結について承認を求めるの件  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件について質疑のある方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 アジア生産性のほうで一点伺いたいんだが、このアジア生産性機構——オーガニゼーション、この種の国際機構というものは、OECDとか、日本国関係のある国際機構はどんなものがありますか。
  4. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 先生の御質問の意味は、日本にあるという意味じゃなくて、どういう……。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 国際機構国連関係かなんかの、 OECDとかいろいろあるね、こういうふうな日本が加わっている機構という名前が。OECDもそうだろう。
  6. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 御説明いたします。国際連合関係機関、これはいろいろ専門機関が、国連のもとに専門機関が十幾つございます。それ以外は、政府間機関としましては、日本加盟しておりますOECDがその典型でございますけれども、そういうような機関、それといま特権免除協定議題になっておりますアジア生産性機構のような、いわば研究情報のための学術団体類似の、あるいはそういう情報交換のためのような機関、こう大ざっぱに分けまして、政府間機関に三種類あると思います。ただ具体的にどういう機関がということですと、ちょっとこの場で全部列挙するわけにまいりませんけれども、大ざっぱに分けまして、国連専門機関と、それ以外の比較的重要な政府間機関、それと学術団体類似政府間機関政府間機関の中にそういう種類のものがございまして、日本は現在までいろいろ多くの機関に入っております。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 この名前は、このもととなるのはアジア生産性機構規約、この機構規約コンベンションという表現になっていますね。コンベンションというのは軽くない。条約のほうにトリーティにまで固まっていないが、相当重い表現だと思うんですね。このもととなる生産性機構規約、これは国会承認をとらなかったと思うんですが、どういう理由だったんですか。
  8. 高島益郎

    説明員高島益郎君) この今度の特権免除協定のもとになっておりますアジア生産性機構規約、これは一九六一年の四日十四日にフィリピンで作成されまして、四月の下旬に日本閣議決定の後受諾をいたしました。この規約は、先生の御指摘のとおり、国会承認は求めませんでした。その理由は、御参考皆さま方に御配付してございますアジア生産性機構規約、ごらんいただきますとおわかりのとおり、この第三十三条の加盟政府年次分担金に関する規定以外に関しましては、すべて政府法律に基づきまして行政権範囲内で処理し得る事項というふうに考えまして、特にこの年次分担金に関する規定につきましてのみ検討いたした次第でございますけれども、当時すでに三月三十一日に国会の御承認をいただきました予算の中に第一年度の分担金を計上いたしておりまして、なお第二年度以降の分担金につきましては、この規約の第四十一条の規定に基づきまして、もし万一国会でその予算につきまして御承認をいただけないという事態が生じました場合には、三カ月の予告をもっていつでもこの機構から脱退し得るというふうな規定になっておりますので、この関係で、唯一の政府義務を負いますいわゆる財政事項を定めます第三十三条の分担金に関します規定につきましても、そういうことでもって国会承認がもし予算につきまして得られなかった場合には日本脱退し得るということでございますので、全体として国会の御承認がなくても、いわゆる政府の行政取りきめとして加入し得るということで、当時四月の下旬に閣議決定を経て加入した次第であります。  これに類似するような国際機関としまして、いままで政府国会承認を得ませんで入りました国際機関、いろいろございます。これは、いま申しましたように、全体といたしまして政府がその法律予算範囲内で、行政権範囲内で処理し得るというふうなことで、特に国会承認を得なくても、新たに義務を負うというふうなことがないと判断をしたわけでございます。  数例を申し上げますと、だいぶ古い機関でございますが、FAOのもとにございます国際米穀委員会昭和二十七年に入っておりますが、これは名前はこの規約よりももっと重いコソスティチューション——憲章という字を使っておりますが、これは分担金そのものも実はございませんで、分担金FAO予算範囲内でまかなわれるということになっておりまして、規定の内容につきましても、いま申しましたとおり、アジア生産性機構と同じように、全然政府の権限の範囲内で処理し得るというふうな、そういう組織でございます。  それからインド太平洋漁業理事会というもの、これは協定でございます。やはり同じようにFA ○の予算範囲内でまかなうという趣旨のものでございます。  なおそのほかに国際ゴム研究会日本国連に入ります前のエカフェー国際連合アジア極東経済委員会国際連合に入りますれば当然メンバーになるわけでございますけれども、国際連合に入ります前に日本が準加盟をいたしました。これも分担金規定が、分担金が全然なかったということも一つ理由でございますけれども、国会承認は得ませんでした。アジア・アフリ方法律諮問委員会、これは分担金はございますけれども、これも毎年の予算で御承認をいただいておる次第でございます。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 まあちょっと見た感じでは、コンベンションというかたい表現、そうして三十三条の分担金規定、三十三条以外は行政権でやれるけれども、国を財政的に拘束する三十三条があった場合には、あらかじめ国会承認を得るほうが妥当だと思うのですが、どういうふうに解釈しますか。
  10. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私申しましたのは、いままでの、戦後日本が種々の国際機関に入ります際の一つの考え方といたしまして、分担金に関する規定がございましても、たとえば五年間とか十年間とかその機関から脱退できないというふうな場合は、これは当然債務負担行為でございますので国会承認を得なければならないというふうに考えますが、国会承認予算について得られない場合には、いつでも脱退し得るというふうな規定があるときには、そういう条件で、国際機関国会承認を得ずに入ることは必ずしも不可能ではないというふうに判断した次第でございます。妥当か妥当でないかという点につきましては、また別個の問題かと思いますので、この際は、そういう判断でなくて、法律的に申しまして差しつかえないという判断から行政取りきめとして扱ったわけでございます。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 少しく、何と言うのかな、行政技術の専門屋的な話なんだけれども、この機構の各条を見ていれば、りっぱなこれは条約ていさいをとっておるから、私は三十三条のような分担金の項目がある場合には、これはかけるべきだと思うのですね。かけるべきだと思う。脱退の条項といったって、脱退理由ということは、いまの御説明のあったような、その分担金が自分の国の国会で否決された場合、なぜすぐ脱退につながるのですか。分担金が出ない場合には脱退するのですか。
  12. 高島益郎

    説明員高島益郎君) もちろん脱退理由はいろいろあると思います。しかし、予算との関係で申しますと、分担金につきまして国会の御承認が得られないということは、当然日本がこのような国際機構に入って活動するということを御承認いただけなかったというふうなことでございますので、そういう立場からは当然継続して加入するということはできないというふうな判断に基づくものと思われます。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、アジア生産性機構のこの前文にあるようなその大目的なんかどうでもいい、国で何万ドルか払えなければ出つちまうのだというのじゃ少し腰の入れ方が足りないですな。どうですか、前文にかんがみて。
  14. 高島益郎

    説明員高島益郎君) その点は確かに先生の御指摘のとおり、もし日本がほんとうに本腰を入れて将来長くその機構を維持強化する立場でございますれば、当然国会承認を得た上で加入するのがたてまえだと思います。しかし、当時この条約加盟する際の政府立場といたしましては、そのような観点からは多少後退した線だと私は考えます。つまり、万一予算が認められなかった場合には脱退することもやむを得ないというふうな程度の決心でもって入ったということに御了解いただきたいと思います。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 どうも三十三条と四十一条の何かこのかね合いみたいなのがおかしいのですが、外務大臣は、これアジア生産性の拡大ということは、これはもうかねがね抱負として持っておられるんですが、この中で指導的な国といえば日本が位置している。そういうような心がけで入っているようでは、生産性機構特権免除なんかの協定を結んでもらうのに力が入らない。やはり国会承認を得て入るのが私は本筋だと思うんです。こういうことがあった場合には、そういうふうに持っていくべきだと思うんですね。違法だということは私は申し上げないが、どうもいまのこの生産性機構動き方を見ると、紙と鉛筆と口だけで動いているような——大来佐武郎君みたいな国際的なインテリが口でしゃべるだけで、まだ強い実効があらわれてきてないというふうに思うんです。ところで、この分担金ですが、六七年は九万二千ドルぐらいなんですか。
  16. 高島益郎

    説明員高島益郎君) そのとおりでございます。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、現在は加盟国十二、どのくらいの予算でまかなってやってるんですか。
  18. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 一九六七年度の分担金総額は二十一万六千ドルでございます。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。これは特権免除規定中心なんですが、実際にどういう仕事をやっておるのか。参考文書には若干出ておるけれども、具体的に実効をあげておるのかどうか、その辺はどうなんですか。どうもその辺、形式だけの感じが非常に濃厚ですが、少し説明していただきたい。
  20. 野村豊

    説明員野村豊君) 御説明申し上げます。アジア生産性機構は、アジア地域におきますところ生産性向上というかなりじみな目的をその任務といたしておるわけでございまして、具体的な任務といたしましては、主としてシンポジウムセミナー、あるいはまた視察団を東南アジア、その他先進国派遣いたしましたり、あるいはまた、その他の特定中小企業分野におきますところの訓練を行ないましたり、あるいは技術研修を行なうというような活動を具体的にやっておるわけでございます。で、アジア生産性機構が設立されましてから、そういったいろいろな会合を通じまして、日本中小企業その他に対するところ技術、経験を伝えられるわけでございますが、すでにもう六千名以上の人間がこういう事業に参加しておるような次第でございます。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 それは年に何回ぐらいやっておるんですか。
  22. 野村豊

    説明員野村豊君) 年度によって違いますけれども、必ず年大体一回生産性機構加盟している各国理事会というものを開きますほかに、代表者会議といいまして、主として生産性機構事業計画をつくるための会議を年一回やっております。そのほかに、シンポジウムは年間大体九件ないし十件ぐらいやっておりまして、一九六六年の実績で三十名ぐらいの者が参加いたしております。それから、視察団派遣は全部で三十五、六件に達しておりまして、これには百名前後の者が参加いたしております。そのほか、セミナー派遣は六六年では約五十名、そのほか専門家も十一名ぐらいの者が派遣されております。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 それで、政府が見て実効をあげてるんですか、会議はそういうふうに開かれておりますが、実効をあげておるのかどうか。
  24. 野村豊

    説明員野村豊君) アジア生産性機構は、いま申して上げましたとおり、アジアにおきますところ生産性向上に対するところ認識を深めるというところにその主眼があるわけでございまして、特に従来は、各地におきますところ中小企業の育成という面に協力してまいったわけでございます。その結果、いま申し上げた各機構いろいろ活動を通じましてやっておるわけでございますが、特に、各国生産性木部がございますが、そういった生産性本部というものを通じまして、いま申し上、げた活動をやっておるわけでございます。たとえば、いま申し上げました専門家派遣というようなことにつきましては、たとえば、わが国の専門家を特に企業診断というような分野におきまして、いろいろ中華民国その他に派遣されまして、それらの国におきますところ原価計算品質管理その他のことにつきまして、かなり有力な助言を与えておるわけでございます。そういう意味におきまして、政府といたしましても、この仕事が非常にじみな仕事でございますけれども大事な仕事であるということで、この生産性機構というものはまだ発足して間もないわけでございますけれども、それなりの活動はやっておる、そういうふうに認識をしておるわけでございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアジア生産性機構規約の最後の附表二に、「アジア生産性機構加盟政府地位を得る資格を有する国は、次のとおりである」として十六カ国の名前があがっておるのですが、現にアジア生産性機構にはこれらの国が全部参加しておるのかどうか。
  26. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 現在入っておりますのは、中華民国セイロンインド、イラン、日本、大韓民国、パキスタン共和国フィリピン共和国タイ王国ベトナム共和国、ネパール及び香港、以上の十二カ国です。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 入ってないアフガニスタンとかビルマ連邦とかカンボデイア王国とかインドネシア共和国ラオス王国マラヤ連邦は、この規約のできるときに署名をしておらないわけですね。こういうふうに附表に、「加盟政府地位を得る資格を有する国は、次のとおりである」とあげておいて、なぜこれらの国々が入らなかったか、その点はおわかりですか。
  28. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 現在入っております十二カ国政府は、それぞれその政府の一部あるいは政府外郭団体といたしまして、それぞれの国の生産性本部というものを持っておりまして、このアジア生産性機構は、各国生産性本部の一種の協力団体というふうなかっこうになっております。現在まだ加盟しておりません政府は、そういう、その国としての生産性本部というふうなものをまだ持っておらず、そのような活動協力のための中心がないというふうなことも一つ理由でございます。なお、それ以外に、分担金問題等理由もあるように聞いております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 こういうふうに入ってない国も入り得るというふうに余地を残しておくということになっているわけですが、その後、こういう国が入るようにすすめたり、あるいは促進をしたりするような努力は行なわれたのですか。
  30. 高島益郎

    説明員高島益郎君) APOができましてから、いま先生が御指摘のような未加盟国内部におきまして、このような生産性向上に関する国際協力必要性が非常に強く痛感されまして、現在まずその内部生産性本部を設立しようというふうな動きがございます。また、たとえばオーストラリアは現在この附表の二の中にはございませんけれども、規約の四十六条にございますとおり、エカフェメンバーはすべて加入できるようになっておりますけれども、オーストラリアにつきましては、エカフェメンバーとして加入資格を特っております、か、近年このAPO企業活動に非常に積極的な興味を示しまして、東京にございます在日大使館を通じて情報の収集に当たっておる。それから、インドネシア労働大臣は、昨年十二月APO事務局を訪問いたしまして、APO組織活動の状況の説明を受けた際に、インドネシア政府APO加盟促進したいというふうな約束をしております。またマレーシアは、従来APO主催生産者代表会議シンポジウム等にオブザーバーを派遣しております。そうして現在その加盟問題について政府も真剣に検討中というふうに承っております。またシンガポール生産性本部が新たに設置され、また、国連専門家シンガポール政府に対しましてAPO加盟を打診したというふうな情報もありまして、シンガーポールAPO加盟の問題を今後積極的に考慮するというふうに承知しております。その他ほかの国につきましては、それぞれの国内事情等が、あるいは先ほど申しましたような事情で、まだ加盟検討というところまで参っておらない国もございますけれども、一般的には未加盟政府におきましてそのような動きがあるということは事実でございます。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 この規約の第四十六条の(1)に、「この規約は、国際連合アジア極東経済委員会構成員であるすべてのアジア諸国政府加入のため開放されるものとする」と書いてある。 つまり、エカフェ構成員であるものが入り得るということになっているわけなんですが、ほかのところに直接エカフェとの関係というものは規定されておらないのですが、この機構エカフェとの関係はどういうことになっておりますか。
  32. 高島益郎

    説明員高島益郎君) アジア生産性機構といたしまして国際連合エカフェと直接の活動上におきます関係はございません。しかし、実際に機構上の関係はございませんけれども、エカフェのほか国際連合専門機関といたしましてのFAOとか、ILO、コロンボ機構等生産性問題につきましていろいろな面で協力関係にあるということは事実でございます。加盟国としての資格につきましてのエカフェとの関連は確かに規約の中に規定してございますけれども、いま申しましたとおり、活動関係におきましては規約の中では特別に規定をしてございません。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 この機構ができるときに、どういう目的をもってつくられたかということはこの前文に書いてあるのですが、こういうことはやはり私は非常にエカフェ目的なり活動なりと非常に密接な関係があるし、メンバーも大体同じメンバーにもなり得るものだとそう思うのです。そうすると、こういうものをつくるときに、やはりエカフェと密接な関係を持ち、そうしてあるいはエカフェ活動の一部分としてこういうものをつくったほうがよかったのではないかと思うのです。おそらくこれからもいろいろなこういうアジアにおいての機構ができる際に、どれもこれもばらばらにできてそうして統一がないということになる。重複もあろうし、ずいぶんめんどうなことにもなると思うので、やはりこういうものはエカフェという国際連合機関、しかも、極東方面経済社会の問題について一つの権威のある機関があるのですから、そうして、その活動が漸次拡大されていくのですから、そういうものとの関係を持たしたほうがいいんじゃないでしょうかね。この機構をつくるにあたって、やはり日本リーダーシップをとったであろうということは予想されるところであります。そうして、そのためでしょう。とにかく暫定的にも東京に、本部といいますか、事務所が置かれることになっておるのでありますが、もし日本リーダーシップをとる、しかも、やはり政府に無関係でなくてこういうものができていくとするならば、私は、政府としてはそういう配慮をしたほうがよかったのではないか、今後のこともあるから、そういうふうないろいろなアジア機関ができる際には、できるだけ総合的にするようにしていったらどうでしょうかね。
  34. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 先生の御指摘のとおり、現在、世界での経済的社会的協力という面は、国際連合すべての機関でいろいろな面で活動しておりまして、現にそれらの活動調整ということが非常に国際連合自体で問題になっております。このアジア生産性機構のようなそういう地域内部経済的社会的協力につきましても、そのような観点から、全体の機構活動調整という点が非常に重要な点であると思います。先ほど申しましたように、現在現実に活動の面では確かにエカフェ協力しておりますが、機構規約の中でそのようなことをはっきり規定している規定はないということは事実でございますが、今後このような機構の設立にあたりまして日本リーダーシップをとる場合においては、そういう観点から検討いたしたいと思う次第であります。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 というのは、コカフェにはかなり多くの国、しかも、二つに分かれている国は別として、かなり多くの国が入っておると思う。社会主義国に属するものも入っておる。そこで非常に広範なんです。それと別にこういうものができる。どうも一方に片寄りがちになるのですね。ですから私どもは、そういう点からしても、エカフェを土台にしてつくったほうが、アジアにおいて非常に包含的なものができる、そう考えるので、今後こういう経済的あるいは社会的な機構がつくられる場合は、そういうふうな、できるだけいろいろな国を包含できるような体制のものをつくる、これが日本立場としてとられなければならない、こう思いますがね。  それからもう一つ協定特権及び免除を受ける人がどれくらいの数になるか。つまり、東京本部とか事務所がありますから、外国の何人かの人が来てそこで働くがためにこういう協定が設けられるわけですが、どのくらいの人が現在来ておるのですか。
  36. 高島益郎

    説明員高島益郎君) まずこのアジア生産性機構東京にあります本部での職員は、全体で三十名でございますけれども、その中で特権免除協定の対象として具体的に特権免除を受けますのは、専門職であります十名だけでございます。十名のうち日本人は四名でございまして、この四名の日本人につきましては、さらにある特定特権免除を制限いたしまして、たとえば課税免除というようなことは与えられておりません。したがいまして、全体としては、職員につきましては十名でございます。そのほかへ先ほど申しましたように、いろいろな会議等がございますれば、その代表者には当然この規定に基づきます特権が与えられる、こういうことでございます。
  37. 鹿島守之助

    鹿島守之助君 それに関連いたしまして、いまの岡田委員の言われるのに全く同感なんです。できるだけアジアを包含する。しかし、いままでのあれから言いますと、私は経済団体に関係していますが、これはスカルノのいた時分ですが、インドネシアそれからビルマ、カンボジア、あの辺に参加を求めたのですけれども返事がないのですね。やはり自由主義国だけの段階です、あれは過去において。あるいはそういう一ぺん招待すれば中に入るということがあるかもしれないと思いますが、われわれの関係する経済団体では、そういうアジアだけ一緒にやろうじゃないかといっても、向こうのほうからそれに乗ってこないという事実もあるのです。しかし、これからは、やはり岡田さんの言うように、三木構想のアジア・太平洋共同体樹立とか、そういうかっこうで、特に経済、政治も入れるといろいろむずかしい問題があるが、そういう方向にやはり外務省としては指導していくことが望ましいのじゃないかと思います。ですから、今回一ぺん招待してみたら——日本が主導力を持つならば招待してみたらどういう回答が出るか。おそらく、インドネシアあたりはだいぶ変わりましたから、入ってくるのじゃないか、こういう感じがするのですが。
  38. 森元治郎

    森元治郎君 だから、政府がこういう協定閣議でこそこそきめてしまうからこういうことになるので、やはりこの内容から見ても条約ですから、だから、こういう、こそこそ閣議決定をやらないで、国会の審議を経れば、うるさいわれわれがおか目八日でいいものをつくってあげるのですよ。その点だけを注意しておく。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま鹿島さんの言われたように、自由主義陣営だけだなんということになると来ない国も多いけれども、とにかくエカフェというものが土台になっていると、やはりそうでない国も入ってくるわけで、広いものができると思うのです。そういう点からいって、やはり今後エカフェというものを土台にしたものをつくっていくことが、鹿島さんの言われるように、多くの国を参加させるようにすれば、望ましいことになる。  それから、先ほどから森さんが言われておったこの生産性機構規約は、とにかく政府のためにだれそれが署名をするというようなことが書いてあるのですから、これはもう当然国会にかけられるべきものだと私どもは思うのですがね。今後やはりこういうものができます場合には、ちゃんと政府の代表なり何なりが出て署名したものは、国会にかけるようにしていただきたいと思いますね。
  40. 森元治郎

    森元治郎君 それじゃ、日ソ領事条約の御質問をしますが、小さい点は何かロシア語と日本語の翻訳が食い違って、ロシア語では一語で表現するところ日本語では二つのことばになっているがこういうことを、何かロシア語の専門家みたいな人が指摘したようだが、それはどういうことを言うのか。  もう一つは批准の問題で、アメリカはやっと難航の末上院の本会議も通ってオーケーになったと思うのだが、ソヴィエト側はどうなっているのか。アメリカは批准を了したと思うのだが。それから、イギリスはこれも難航をしている。ソ連のほうも黙っている。せっかくあれだけ苦労して結んでおいて、まだ米英とソヴィエトとの間の領事条約が発効していない理由は一体どこにあるのかちょっと不思議なんですが、その点の御説明を承りたい。この二つ。
  41. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 第一点につきましては、衆議院の外務委員会で御質問がございまして、御答弁をしたのでございますが、日ソ領事条約の第三十三条に、領事館の職員についての規定がございます。その中の一番最後に、これは査証、旅券に関する事務でございますけれども、「査証及び旅券その他これに類する書類を発給し、修正し、更新し、有効にし、及び無効にすること」というような規定がございます。一般に日本の在ソ領事館あるいはソ連の在日領事館がそれぞれ自国民に対しまして旅券その他の事務を行なう場合の根本的な規定でございます。この点に関しまして、この条文そのものは、日本がこれまで戦後締結いたしました領事条約、日米領事条約、日英領事条約と全く同文でございます。実は日本から同文のものを提案いたしまして、これに対しまして何ら異議の申し立てがなく、そのまま片づいた次第でございますが、ロシア語につきまして、ソ連のほうでは、この中で、「有効にし」ということばに相当するロシア語がないために、「更新し、有効にし」という一語にするロシア語を使って、これで差しつかえないということで、結局、交渉は妥結をいたしまして、形の上から申しますとロシア語に関する限り、「有効にし、更新し」、これに対応するロシア語がないというかっこうになっておりますが、会議の経過におきまして、両者それぞれその点を指摘いたしまして、その結果、そうなっておるけれども差しつかえないという了解を得た結果、こういう規定になった次第でございます。したがって、日本語とロシア語とそれぞれ対応いたしますと、確かに仰せのとおり、「有効」に対応するロシア語はないわけでございますけれども、全体の領事官の職務権限に関します限り何ら問題はないというふうに考えております。  それから米ソ領事条約につきまして、先般の外務委員会におきまして、実は私たいへん先礼を申し上げまして間違った答えをした次第でございますが、これはソ連のほうではまだ何ら批准等の措置をとっておりませんで、アメリカにおきましては、三月十六日上院の承認があり、三月三十一日大統領がこれに署名をいたしました。完全に国内上の手続は完了しております。これはソ連のほうでそれに対します手続は済んでいないというのは事実でございますけれども、その背景といたしましてどういう理由があるかということにつきましては私は詳しくは存じませんが、現在領事館の設置個所につきましても、単にうわさがある程度でございまして、実際にそのような合意がまだできておりません。日本の場合は、すでに領事館の設置個所につきましても日ソ間で合意がございますので、そういう観点から申しますと、領事条約の批准の手続という点に関しまして英米の場合と若干事情が違うのではないかと思います。  なお、英ソ領事条約につきましては、おそらく、私どもの想像では、米ソ領事条約の見通しを見た上でこれにならって手続が行なわれるのではないかというふうに考えております。現在何ら進んでおりません。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 先日お尋ねした北回りの場合と羽田モスクワ直行の場合、これは先日お話があった週一便ですから、いまのところほとんどたいした問題になっていないというお話ですが、それはそれでいいのですが、その場合、モスクワへ直行する人が多いのか、モスクワ、レニングラード、つまり、ソヴィエトへ行くことを目的にする人が多いのか、あるいはモスクワ経由で欧州に行く人との関係はどうなっているのか、そこを聞きたかったわけです。その点わかっておりましたらどうぞ。
  43. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 具体的な数字は持ってきておりませんけれども、現在のところ、いま航空局及び日航等に問い合わせて調査さしておりますけれども、現在のところは、主としてソ連内部を一応旅行して、その後西欧に行く人のほうがやや多いのではないかと思っております。まだ正確な統計は整備されておりません。整備し次第御報告いたします。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 そういう趨勢でいった場合に、これは週一便がもっと回数がふえてやる場合には具体的にはどういう影響があらわれてくるのか。その辺はおわかりになりますか。いまの週一便から判断をして、わかっていたら。
  45. 岡田晃

    説明員岡田晃君) まだ判断をしてという段階ではございませんのですが、週一便を二便に直します場合には、航空当局間の話し合い、すなわち、日本の運輸省とソ連の運輸省との間で話し合いをして一便を増便することになるわけでございますが、その際に北回りの旅客はどの程度減少し、かっ、そのためにモスタワ——東京がどの程度増加する、その結果日航の採算にどういう影響があるかということについては、まだ日本航空が商業ベースで計算しておる段階でございまして、政府としてはまだそこまで立ち入って検討はいたしておりません。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 それから、何かSASがどこか——何かソ連に同じような航路を申し入れているそうですが、それはどうなっておるんでしょうか。
  47. 岡田晃

    説明員岡田晃君) SASはモスクワとの——ソ連のアエロフロートとの間でシベリア経由で東京に来ることを希望したということは情報としてもございますし、私ども外務省に対しましても非公式にそういうことを申し出てきております。それから、この間ロギノフ航空相が日本に参りましたときにも、政府に対してそれらしいことを申しております。
  48. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの羽生君に関連してですが、SASが申し入れをしたと、いずれ交渉が始まるでしょうし、また、SASが相互乗り入れをやって、シベリアを通って日本へ来る可能性が出てくる。おそらくそうなるとまた他のヨーロッパの航空会社もそういう航路をとることになる可能性が出てくる。そうすると、一体北回りというものは将来どうなるか、そのことをもうすでに考慮に入れられておるかどうか。それで検討されておるかどうか。その点、お聞きしたい。
  49. 岡田晃

    説明員岡田晃君) SASないしはその他のヨーロッパの航空会社がシベリア経由で東京に飛行することを認めるかどうかということは、ソ連及び日本政府の同意を要することでございまして、特に日本政府として、それがわが国にとって有利であるかどうかということが判断の許可をするかどうかということの基準の一つになりますので、これには十分慎重な考慮を必要とすると思っております。その考慮の中に、その北回り便がどういう影響、特に日本航空北回り便その他国際関係の北回り便にどういう影響を与えるかということが当然考慮の最も大きな条件の一つになるであろうと考えております。
  50. 岡田宗司

    岡田宗司君 その条件の一つになることはわかっているのだけれども、どういう影響を与えるかという見通しを持っておられるかということを聞きたかった。
  51. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 見通しといたしましては、現在飛行機はTU411機が飛んでおるわけでございますが、IL62機が就航いたしまして、これは性能においても収容旅客の能力におきましても、大体DC8に相当する機種でございますが、それが就航する段階が一つ。それからもう一つ、その一     ━━━━━━━━━━━━━
  52. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 見通しといたしましては、現在飛行機はTU411機が飛んでおるわけでございますが、IL62機が就航いたしまして、これは性能においても収容旅客の能力におきましても、大体DC8に相当する機種でございますが、それが就航する段階が一つ。それからもう一つ、その一けの段階、モスクワ・ビヨンドで欧州に行くルートが開かれる段階。それから、その後最も重要な点は、日本航空の単独運航が許されまして、DC8でモスクワ・ビヨンドでヨーロッパの土地に行く段階。そういういろいろな段階によって北回りの旅客の増減ということが当然考えられるわけでございまして、したがって、最終段階におきまして、日本航空が単独運航でモスクワ経由でヨーロッパの一地点に飛行するという事態においては、北回りの旅客は非常に減少するのであろうということは予想しておる次第でございます。
  53. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、二年後にはそういうことを検討されるもっと具体的な条件が出てくるわけなんで、運賃その他の点からいっても、シベリア経由でモスクワから今度ヨーロッパへ行くほうがずっと安上りになる。そうなると、北回りというものの存在価値というものが非常に薄れてくるわけだと思うのです。日本としても重大なる関係のある。私どもとしては、やはりその方向に日本政府としても努力をしていくほうがいいんじゃないか、こう考えております。  それからもう一つですね、北極海を通ってヨーロッパへ行く航路ですか、最初は北洋を通ってムルマンスクへ行くのが第一ですが、このことが考えられておりますか。たとえば、今度の経済使節団がモスクワへ行っておって、こういう問題についても話を持ち出すように聞いておるんですが、その点について政府としては了解を与えておるんですか。
  54. 岡田晃

    説明員岡田晃君) ある日本の船舶会社がそういう計画を持っておるということは承知いたしております。それから、その場合には当然ロシアの砕氷船の援助、現在の段階では援助が必要ではないかというふうに——日本自身が砕氷船を持つ、ないしはそういう砕氷の能力のある船舶を建造する段階になれば別でございますけれども、現在の段階においてはそういうことも必要であろうかと思いますが、これはすべてコマーシャルベースの問題で民間ベースで話し合いをしておる段階でございますので、そういう情報は存じておりますけれども、政府がそれに許可を与えた、ないしは、それに何かの援助を与えるというような話し合いにまではなっておらないと承知いたしております。
  55. 岡田宗司

    岡田宗司君 もし将来ソ連側もたとえば砕氷等のための便宜を与えるということになって、北氷洋の航海ができるような事態になるとすれば、そういう話し合いがつくとすれば、それはやはり日本政府とソ連の政府間との取りきめに基づいて行なわれることになるのか。
  56. 岡田晃

    説明員岡田晃君) それは内容いかんによるものではないかと思います。日本政府が直接それによって義務を負うというような段階になるかどうか、その内容いかんによると思いますわけでございます。
  57. 大和与一

    ○大和与一君 一つお尋ねいたします。日ソ平和条約は現在どういうふうになっておるのか。で、日本政府からソヴィエトに何べんくらい話しかけて努力をされたか。もし努力されだとすると、何が大きな障害になって平和条約が進まないのか、そういうことをお尋ねしたいと思います。
  58. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日ソ間の懸案は領土問題だけです。ほかに何も懸案はありません。これがやはり平和条約締結の障害になっておるわけで、ほかには何も問題はないと思います。これは毎回領土問題というのは蒸し返されておる。解決に至らない。
  59. 大和与一

    ○大和与一君 いままであまり一生懸命しなかったのは、外務省の怠慢ですね。それで一九五七年に私は佐多さんなんかと一緒にクレムリンでフルシチョフ、ミコヤン、スースロフと意見交換いたしました。そのときにこんな話をした。一つにはアジアの集団安全保障、こういうのはどうだろうか、かりにソヴィエトが入るとしても、アメリカがうんと言わない、だろう。  もう一つは、北方領土を返したらいいんじゃないか。こう言ったところが、アメリカが大砲をこっちに向けるからいやだという話をしたんですが、一九六〇年のキューバの問題から若干これは米ソの間には間違いなく力の均衡ができておる。外務大臣は近くソヴィエトへ行くそうですが、そういう前提をお考えになって、外務大臣としては、やはりこれは日ソの平和条約を推進することが鳩山さんの宿願でもあったんですし、日本のやはり国民の声なんですから、それに対して漫然と行かれるのではなくて、相当やはりこれは具体的な私はお考えを持って行っていいと思うのです。だから、いまここで外務大臣がおっしゃると、ソヴィエトに聞こえていい面もあるんですから、少しラッパを吹いてもいいから、ちょっと具体的に、どういう腹がまえで、日ソの平和条約を進めるためにどうするんだ、こういうお考えを一応お伺いしたい。
  60. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これは平和条約ができることにこしたことはないんですけれども、ほかに何もないんですよ、領土問題のほかに。領土問題の解決というものがなかなかやはりいま両方の主張が違いますからどうも解決の可能性を見出せないという状態であります。そういうことで参りましても、このことで大きな進展はちょっと予定できないというのが現状だと思います。
  61. 大和与一

    ○大和与一君 じゃ、手ぶらで行って手ぶらで帰ってくるんですか。
  62. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 手ぶらというのは、いま御指摘のように、平和条約がおみやげになると解するならば、平和条約のおみやげはないと解釈していただくよりほかにない。
  63. 羽生三七

    羽生三七君 それに関連してですが、いまのような状態ではなかなか領土問題が近い将来簡単に解決されるとはわれわれも思いません。これは向こうとしても単に千島の問題だけでなしに、ソ連が関連をする各国との問題があるから、その関連上なかなかこれは容易に片づかないと思うのです。しかしその場合に国交回復の共同宣言だけで平和条約が長く結ばれない状態、しかも近い将来ちょっと予見しがたいというような状態がそんなに長く続いていいのかどうかということに相当な疑問を感ずるわけですね。ですから、この種の大国1と言ってはおかしいですが、日本とソ連のような関係で単に共同宣言だけで実質上の平和条約を持たないでこういう状態を続けておる例が過去にあるのかどうか。そういうことも一つの問題点だと思うのです。しかし、そうかといって、簡単に問題を片づけるために、この問題をないがしろにして便法的な安易なやり方をとるわけにもいかないと思う。そこはなかなかむずかしいところだと思いますけれども、しかし、ちょっと近い将来これは解決する可能性がないとすれば、こういう状態が相当しばらく続くんじゃないかと思うわけです。しかし、それは変則的だと思う。何かいいお考えはないですか。
  64. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま羽生さんも非常に前提条件——そんなに行って簡単に領土問題は片づけたらいかぬぞ、これは変則だ、こういういろんなやはり困難な条件があって、国際問題の中にはそれはなかなか解決のいい知恵はないんです、いま。やはりやむを得ないという場合もあり得るんですね、国際問題では。それをこの際何か便法でもという考えを持つなら別ですけれども、そういう考えも政府にございませんし、そうなってきたら、好ましいことではないけれども、解決の道が発見できない。国際問題は時期を待つということも一つのいろんな国際問題の場合にあり得るわけですから、それを何か別の方法を考えてみろと言うなら別ですよ。そうでない場合にはやはり時期を待つことはやむを得ない。政府も、便法を考えるという考え方ではないわけですから、やはり残念ながら相当時期がかかるのではないかというふうに思っております。
  65. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 日ソの文化協定についてですが、この文化協定については、これまで外務省当局は何か非常に消極的だったように思うんですが、しかるに、先般川島正次郎氏が特使として行かれた場合に、向こうの首脳部との会談の席上この問題を出されて、向こうもそれに対しては大いに乗り気だったというような返事だったというふうに伝えられておりますが、これに対しては大臣はどういうふうにお考えですか。
  66. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 先般川島正次郎君に、今回訪ソされたいろいろな詳細な話を聞いたんです。そのときには、民間の文化交流というものがなかなか盛んであることは好ましいことであるが、政府間においても文化交流というのは考えるべきではないかというような話で、その政府間の文化交流をする、しない、一切のものを含めて両国政府間で検討しようということがその話の内容であったんだということで、少し新聞の報道では、文化協定そのものについて、それを作成、文化協定締結について検討しようというような報道になっておったが、実際はそこまでの話ではなくして、政府間の文化交流をやる問題、やらぬ問題、やる場合、やらぬ場合、一切のものを含めて両国政府検討しようということが話の実体であったという報告を受けているわけでございます。
  67. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 政府間で文化交流を積極的にいろいろ進めようということを考え、主張されながら、さらに一歩進んで文化協定にまで問題が至らないのは、何か理由なり事情があるんですか。
  68. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) やはり文化協定ということになれば、川島君が特使として行かれて協定の話ということになれば、これはそういうこと、政府と打ち合わせて行ったわけではないんですから、だから、そこまでこう具体的に問題を推し進めなかったのだと思います。
  69. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それなら、外務大臣がおいでになるときは、その点はどういう態度で話がされるんですか。
  70. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いろいろ政府間で文化交流というものは検討する部門が私はあると思います。文化協定の問題も将来の課題として検討する値打ちがあると思っておりますが、さしあたって政府間では、いろいろ文化交流の面について現在の状態でどういう点が両国政府の間に不便があるかというような問題については、私が出発するまでに検討を加えて、話の一つ議題にもしたいと考えております。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 それに関連して。聞くところによると、ソ連はいまの問題について積極的だが、日本は、体制間の違いのために、それほど正式の協定を結んでも効果があがらない、いまのこの交流を深めるということでいいんじゃないかという説が強いというように聞いているんですが、そういうことなんですか。もっと積極的な意図を持っているかどうか。
  72. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 文化協定の問題に関しまして政府間で協定をいたします場合には、当然日本国政府予算、ソ連国政府予算との関係が生じてくるわけでございます。日本とソ連との文化交流を盛んにするということのほかに、予算上の措置ということが要請される次第でございますので、現在政府間で行なっております、たとえば学者の交換であるとか、あるいは映画祭の相互交換とか、そういうことはそれぞれ主催国主義で現在行なって、主催国、すなわち日本がソ連で日本の映画祭を行なう場合には日本国政府予算において行なうわけでございますし、ソ連が日本でソ連の映画祭を行なう場合にはソ連国政府予算において行なうわけでございますので、それぞれの予算規模ないしはそういうことの制約から来る種々の問題点がございますので、なかなか思うようにはいかないというのが現状でございます。したがいまして、ただいま大臣から御指摘のございましたように、政府間で文化交流を行ない得るのにどういう問題点があるのかということを、いま事務当局で、大臣御出発の前までに検討しておる最中でございます。
  73. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの問題に関連してですが、過去において、両国間で文化協定はかなり突っ込んで交渉がされて、そして、相当のところまで行って、しかも成立をしない。その成立しなかったことの理由ですね、最後にまとまらなかった理由は一体どこにあるんですか。
  74. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 過去七、八年間にわたりまして文化協定に関する話し合いが行なわれ——引き続き行なわれたのではございませんが、ぽつぽつと行なわれたことはございましたのですが、ただいま先生の、御指摘協定が非常に煮詰まってできなかった理由は何かという御質問でございますが、二点ございまして、奨励条項、すなわちこれが民間の交流をさらに奨励するものであるということをうたうかどうかという問題が第一点。第二点は、ただいま私が申し上げました予算上の問題がございますので、この予算上の問題から、双方なかなか平等な取り扱いをすることができないという問題がありまして、その話し合いが妥結しなかったわけでございます。
  75. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ、いまと相当事情が違うけれども、その当時、たとえば、そういう協定ができると赤化宣伝が容易になると、こういう反対論もあったと聞くんですが、そういうことも、やはり外務省で成立にちゅうちょした理由一つになってるんですか。
  76. 岡田晃

    説明員岡田晃君) その問題は、行政府である外務省が判断する要件の一つということにはなっておらなかったと聞いております。
  77. 岡田宗司

    岡田宗司君 しかし、そういうことがあったことは事実なんですね。そういう意見がだいぶ出ておったということは事実なんですね。
  78. 岡田晃

    説明員岡田晃君) そういう意見が出ていたということは聞いております。
  79. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは自民党側から出たんですが、今度はひとつ、三木さんが行かれるときに、そういうことでもって成立の妨げにならないように御配慮を願いたいと思うんです。いずれにせよ、文化協定については、日本も相当方々の国と結んでおって、そして、それに基づいて事実上文化交流が行なわれておるわけです。やはり、現在の日本とソ連との関係からいえば、こういうものも多少予算上その他において問題があるとしても、大局的には成立をさしたほうがいいんじゃないか。もちろん、民間の交流も盛んに行なわれておりまして、これも私は、今後さらに発展していくことがいいと思うのでありますが、その上にも政府協定ができることが、いまの日ソ問の関係をさらによくしていく上に有効な措置になるだろうと、そこを考えて、赤化宣伝が強化されるというようなことに惑わされることなくひとつやっていただきたいと思います。
  80. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いま外務省のほうからお話しのあった、両国間に二点問題があったと、その第一点の奨励条項について意見がまとまらなかったというお話のようですが、それはもっと具体的に言うとどういうことですか。
  81. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 当時の内閣のもとにおきましては、先ほど来御説明いたしましたように、両国間の民間の交流というものが現実にその当時存在しておったわけでございますが、その政府間の文化協定を結ぶことによって、このような民間の文化交流がますます奨励されていくことになるという、そういう奨励を両国政府はするのだという規定を入れるかどうかということについて、当時の政府としてはいろいろ意見もあったように聞いております。私はその当時の書類を読んでおるわけですが、そういうように書類には残っております。
  82. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、日本政府側としては、それを奨励するというようなことは条文に書かないということなんですか。
  83. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 当時の政府は、日本政府及びソ連政府が、その政府の権限において行ない得ることのみを書こうではないかということを主張したようでございます。
  84. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いまの問題になった二つの条項という問題は、ソ連とアメリカとの文化協定締結の場合は、問題がやはりあったのですか、どうなんですか。そこは、両国の間では、どういうふうに解決されたんですか。
  85. 岡田晃

    説明員岡田晃君) 米ソ文化協定検討いたしてみましたが、この奨励条項に該当するような規定はございません。米ソ文化協定に関しましては、包括的な文化交流の網を全部かぶせておるわけでありまして、すなわち、ソ連とアメリカとの間におおよそ交流し得る文化のワクはこういうものであるというような形で、その交流の協定の書き方が行なわれておるわけで、私ども普通、実施協定的なものと言っておりますが、二つの方式がございまして、一般的な通俗語で私ども言いますので、あるいはことばが悪いかもしれませんが、ラブレター方式という方式と、実施協定方式と二つ方式がございまして、ラブレター方式というのは、何でもかでも全部やろうという、できるものもできないものもかまわず、とにかく協定に書いて、大いに文化の交流をしよう、しかし中身は何もないというやり方と、中身は非常にある、やれるものだけ書くというやり方と二つあるのでございますが、私どもが現実に考えておりますのは、実施協定的なことを考えております。
  86. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  アジア生産性機構特権及び免除に関する日本国政府アジア生産性機構との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  89. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 全会一致と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  90. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 全会一致と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  91. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 全会一致と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、右三案件に関し本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたしました。     —————————————
  93. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。御質疑のある方は、順次御発言願います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  94. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 速記をつけて。
  95. 森元治郎

    森元治郎君 それでは、時間が短かいようですから、押し問答はできないようです。私、あまり押し問答は得意じゃないのでね。  そこで、ポイントは中東紛争と世界の平和との関係政府は中東紛争に対してどんな方針で臨んだかということは、要約すれば、まず戦争はやらないでくれ、戦争はストップしてくれ、引いてくれ。そしてどっちにも片寄らず、厳正中立だ。それから第三点は、在留邦人の生命財産の保護だ。第四点は、ちょっと下品になりまして、おれのところに石油が入るかどうかというようなげすな商売上の御心配。それから第五点は、国連安保理事会における諸決議にあらわれた日本の気持ち。賛成したのですから、ああいう方針であることはわかったが、それでちょっとほっとしているようなんですが、私はこれで足りないと思う。いまイスラエルは、国連頼むに足りず、そうして血を流したのだからと言って、ガザ地区、ヨルダン側の狭い旧エルサレムの若干の地域、シナイ半島の全部、シャルムエルシェイクの突端、こういうところに兵を依然として置いている。関係国があまり打つ手もなくおたおたしている間に、向こう側のイスラエルの態度、あのままじっとしておれば、力の政治、領土の変更が力によって行なわれる。こんなことでは、せっかく第二次で戦後ダンパートン・オークス会議をはじめとして国連ができた経過、力で領土の変更はしないのだというこの原則が、しっかりしないとくずれるおそれがある。私は、いずれの国にも好ききらいは全然ありません。どちらにもそういう感じは一切持っておりませんが、理由のいかんを問わず、保障占領のような状態が長くなって固定化するということになれば、アラブは戦争に負けたが、やがて機を見て今度は力で取りかえせばいいのだということになる。そうなったならば、これは戦争になるから、私はソヴィエトと同じ態度をとれと言うわけではないけれども、やはり兵を引くということ、そしてその上に、十分彼らの気持ちもくんでやり、アラブの気持ちもくんでやる——時間はかかるでしょうが、とにかく兵を引くことが世界平和のために大事だということを中東紛争から非常に強く受けるのですよ。ですから、日本政府の態度としては、石油の話などということよりももっと大きなことを、英米仏自由陣営に悪いかもしれぬ、ソヴィエトびいきの音がするかもしれぬが、この力の政治、領土の取得、領土の変更を力でやるということを固定化させないように、長く時間が経過しないうちにひとつイスラエルの善処を強く求める。そして、アラブの難民問題はむずかしいでしょうけれども、自分の国の四倍くらいの土地を力でやって、国連頼むに足らず、来るなら来いという、こういうイスラエルの気持ちはわかりますが、野放しにすべきではない。国連において第二次大戦後に新しくつくり上げた、力による領土変更を認めないという原則からも、いろいろに慎重なる善処を求め、そして彼らの気持ちも買ってやる。時間もかかりますが、そういう努力をすることが日本政府のいまやるべきことだと思う。これは声を大にしてひとつ、あちらこちらを心配しないで、東西の顔を心配しないで強く高調することが第一。これはベトナムでもそうです。力で取ったものは取るのだ、非武装地帯から北に行った、これをアメリカは取ってもいいんだ、こういう原則が確立されたならばおそるべきことだし、第二次大戦のあの惨禍の教訓を捨ててしまうことになるので、ぜひとも政府は勇断を持って、声を大にしてやってもらいたいと思うのですが、三木外務大臣、世界政策についていかがですか。
  96. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 政府の考えも全くそれに異議はありません。日本は平和主義に徹するという考え方で、力による現状の変更というものに日本政府は賛成しないという立場でありますから、したがって、この問題は——この問題にはいろいろな複雑な背景があると思います。——いろいろな複雑な背景がありますから、これは国連の場においていろいろな問題を一緒に解決しなければならぬ問題があります。こういうふうな基本的な立場に立って、これが少し——少しと言ったら語弊がありますが、少しではなく、長続きのする安定した秩序をつくり出すために、今後国連を舞台にして政府はできる限りの努力をいたしたい。その根底には、やっぱり平和主義の考え方というものが根底になくてはならないと考えております。
  97. 森元治郎

    森元治郎君 先ほど申し上、げたように、私が五つばかりに分類した日本政府の態度を見ても、どうも利己主義が少し強いのじゃないか。うちの人はどうなってしまうのだろう、飛行機はキプロスに飛ばしたほうがいいとか、船で逃がすとか、そういうことばかり言っておるが、そんなものはあとのことですよ。私は、外交をやるときにはもっと原則というものを考えなければならない。昔から兵を引くということはむずかしい、勇将、名将のやることです。豊臣秀吉は小牧・長久手の戦いで負けた。負けたけれども、不利だと見たらば、さっと兵を引いた。豊臣秀吉は名将ですよ。あのくらいの者はいないですよ、いまはこまかくて。日本だって、日米交渉で、御承知のように、何が難点だといったら、中国における撤兵問題で、近衛さん等が苦労した撤兵問題ですよ。あれを日本が撤兵するということだけ言っただけでも、あの日米戦争回避への大きな力になったと思う。また、アメリカの南ベトナムにおける戦いで兵を引くなんということは軍人はとても許さない。断じて引かない。兵を引くということ、これをなすことが名将、勇将で、りつばな国なんですね。ところが、いまは小ものの集まりだから引かない。取ったら手離さないという貧乏根性がある。だから、兵を引くということがいかに重大な意義を持つか。これは少し古来の戦史をお調べになって、そうしてイスラエル、アラブあたりにでかいことを言って説得するのですよ。力による領土の現状変更ということはいかぬというこの原則だけは何かの機会にラッパを吹いてもらいたい。こういうことです。これだけです。こまかいことは言いません。
  98. 岡田宗司

    岡田宗司君 その中東の問題ですがね。まあ、どうやら軍事行動は一段落がついて、そのあとの問題が残ってたいへんむずかしい。いま森君の言われました軍事力による現状の変更は認めないという立場は、これは日本が原則としてとってもらいたいと思うわけですが、そのほかにいま日本に直接関係のある石油の問題についてこれからどういう方針をとられるのかをお伺いしたい。いままでの委員会において、まあ、中東でああいう情勢があったけれども、しかし石油の供給は続けられておって、直接たいした影響はないというふうな御答弁をされておったわけですけれども、しかし現実には、たとえばクウェートあたりにおいても、あるいはアラビア石油のやっていろカフジ基地においてもアラブ人のストライキが起こって石油の積み出しはとまっている。サウジアラビアのほうの石油の積み出しもとまっている。そして日本のタンカーはあそこで相当待たなければならないか、あるいはからのまま帰ってこなければならないような事態になっているわけであります。こういう事態が、ストライキが早く終息するということならば問題はないでしょうけれども、しかし、このストライキは単なる経済要求の問題ではなくて、アラブ諸国がやはり今後の戦後の問題処理の一つの方法としてとっていくということになりますというと、複雑な問題になってきます。そのほか各国政府が、たとえばアラブの各国政府日本へ石油を積み出すと、それが日本に来るのではなくてアメリカへでも行くのではないかというような疑いも持って積み出しをとめておるということも言われておるわけです。そういうことになると、これまたたいへん複雑になってきます。一体、こういうように石油の積み出しがとめられるという事態が続いていくというと、日本の貯油量はそれほどたくさんないわけでありますから、問題が起こってくる。この点について外務省はどういう外交交渉をされるのか。アラブ諸国との間に、日本への積み出しを確保するための措置をすみやかにとるための交渉をされるのかどうかその点をお伺いしたい。
  99. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、クウェートは米英に対しては石油の供給を停止しておるわけですが、日本には停止していない。ところが、このアラビア石油はクウェートとサウジアラビアの境目の中立地帯で操業しておったのです。停戦後一部の労務者の間にストライキが起こりまして、いま操業がとまっている模様であります。アラビア石油としても、現地の労務者の感情がもっと静まってくればこの問題は解決を見るものだと見ておりますが、これは相当な石油の量の供給を受けておりますから、政府としてもこの事態を重視いたしまして、われわれとしてもクウェートの動向というものには注意をしてまいりたいと考えております。
  100. 大和与一

    ○大和与一君 関連して。私は、クウェートは別ですが、その他の国が石油を売らないと言ってもだめだと思うのです。一九五五年だったと思いますが、イランの時の総理大臣がアメリカかイギリスの石油をみなとめてしまって国有化にしたが、それでえらい目にあって内閣を投げ出したことがある。そういうことを考えると、サウジアラビヤでもイラクでも、そんな大きなことを言っているけれども、そう簡単には私はできないと思うのです。そうすると、日本政府が火事どろ的に少しでもあっちこっちからということで、ほかのほうに大きな金を使って、政策転換というか、そんなことをそう簡単にはしないほうがいいのではないか、そういうふうに個人としては思いますが、いかがですか。
  101. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) これはそもそも日本の石油は中近東にその供給を九割も依存しているわけですから、九割の依存度というものは非常に集中し過ぎることは、これは言うまでもない。しかし、ほかのほうに転換といいましても、これはなかなかほかに簡単に転換できるものでないですから、将来長期にわたって、集中した供給量、供給地をもっと分散するという必要はエネルギー政策から私はあると思う。エネルギーの長期計画の中にも、二十年かかって五割程度の依存度にしたいということも長期計画の中に出ておりますが、しかし、実際にそう短期間の間にこれはできませんから、実際問題としてはいろいろ御注意のあったとおりの結果になるのではないかと、こう見ております。
  102. 岡田宗司

    岡田宗司君 やはり石油の問題は、おそらくアラブ諸国はこれからの戦後処理の問題の一つのタクティックスに利用すると思うので、日本としては厳正中立の立場をとっておるので、こういうタクティックスによる日本への積み出し禁止なんということが起こってまいりますと、非常な不利なことになって、日本は思わざることで巻き込まれることになってまいりますから、やはり積極的にアラブ諸国との間の外交交渉を進めて、石油の確保について早急に手を打っていただきたいと思います。  と同時に、スエズ運河の問題ですが、これも戦争が終わったらすぐ再開されるような状況ではない。船が沈められてあそこのところが通れなくなったが、単に沈められた船をのければ通れるような状況ではない。やはりこのスエズ運河の問題は、アラブ連合としては今後の戦後処理に臨む大きなかけ引きの道具になるわけですから、したがって、相当長期にとめられる。もちろん、それによってアラブ連合は財政的に非常なマイナスになるわけですけれども、しかし、アラブ連合としては危急存亡のときであるから、スエズ運河をかけ引きの道具に使うでしょう。そうすると、日本のやはりヨーロッパ貿易に対しても非常な影響があるわけですが、この問題について、日本としては早期に解決されて通ることができるようになることを望んでおると思うのですが、この点について、すでにアラブ連合と接触して何らかの情報を得るなり、あるいはまた日本側の意向を伝えるなり、そういうことをされているかどうか、それをお伺いしたい。
  103. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ、アラブ連合のほうでは、スエズ運河に引き船が沈んで十日間ぐらいかかると、こう言っているのですが、われわれとしては、これはああいう国際水路というものはやはり公海の自由を持たなければならぬわけでありますから、できるだけ再開を促進するような努力をアラブ連合に対しても働きかけたいと思っております。
  104. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後零時十八分散会