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1967-06-06 第55回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月六日(火曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員の異動  六月一日     辞任         補欠選任      黒柳  明君     北條  浩君      北條  浩君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         赤間 文三君     理 事                 木内 四郎君                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 森 元治郎君     委 員                 鹿島守之助君                 佐藤 一郎君                 高橋  衛君                 山本 利壽君                 岡田 宗司君                 加藤シヅエ君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 大和 与一君                 黒柳  明君                 渋谷 邦彦君    国務大臣        外 務 大 臣  三木 武夫君    政府委員        外務政務次官   田中 榮一君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    力石健次郎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        外務省条約局参        事官       高島 益郎君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間  の領事条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ノールウェー王国との間の条約の  締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (中近東における国際紛争に関する件)     —————————————
  2. 赤間文三

    委員長赤間文三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件  以上二案件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。三木外務大臣
  3. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ただいま議題となりました日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ソヴィエト連邦との間の領事の分野における関係規定するための領事条約締結につき昭和四十年七月以来同国政府との間で交渉を行ないました結果、最終的合意に達し、昭和四十一年七月二十九日に東京において椎名外務大臣と訪日中のグロムイコ外務大臣との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、本文四十三カ条から成り、これに条約と不可分の議定書が附属し、また、議定書に関連する交換公文があります。その内容は、すでに発効している日米間及び日英間の領事条約とほぼ同様のものであり、領事館の設置、領事任命手続等のほか、派遣国接受国において領事館について享有する特権免除派遣国領事領事館職員接受国において享有する特権免除について規定し、また、国民保護船舶遺産等に関する領事職務内容について規定しております。なお、交換公文におきましては、日ソ両国間の特殊な問題としまして、北太平洋において領海侵犯理由としてソヴィエト連邦当局により逮捕拘禁される日本国民に関して、その保護のための領事職務、権能について特別の規定を定めております。  わが国ソヴィエト連邦との間の経済的、文化的及び人的な交流は近年ますます盛んになっており、近く両国間で相互領事館を設置することも予定されておりますが、ソヴィエト連邦はその国内体制においてわが国と異なる点が多いので、この条約締結により領事職務特権について両国間で具体的に取りきめておくことによって、わが国領事の地位及び活動条約上の保障が与えられることとなることは、きわめて有意義なことと考える次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和三十四年二月二十一日に署名され、同年九月十五日に発効したノールウェーとの間の所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税の防止のための条約を改正する新条約締結について、昭和四十一年十一月以来ノールウェー政府との間で交渉を行ないました結果、最終的合意に達し、昭和四十二年五月十一日にオスロにおいて福田臨時代理大使ノールウェー王国リュング外務大臣との間でこの条約署名を行なった次第であります。  この条約は、本文二十九カ条及び附属議定書から成っております。その内容は、現行条約規定の全般にわたって、OECDモデル条約案規定をできるだけ採用しつつ改正を加えたものであります。条約内容及び現行条約との相違点の主なものは、次のとおりであります。すなわち、現行条約では、相手国支店等恒久的施設を有する法人利得に対する課税相手国が自国に源泉のあるその法人のすべての利得に対して課税するという方式によることとされているのに対し、新条約は、その恒久的施設に帰属する利得に対してのみ課税するという方式によることとしております。船舶及び航空機による国際運輸業所得につきましては、現行条約では、一定の登録要件を満たすものにつき、相手国における租税全額免除していますが、新条約は、そのような要件なしに全額免除とし、また、新たに、公海における漁獲活動により取得する所得についても租税免除する旨の規定を加えております。また、配当利子及び使用料に対する源泉地風課税制限税率は、現行条約では、配当利子使用料とも十五%の税率とされているのに対し、新条約は、親子会社間の配当については十%、その他の一般配当については十五%、利子及び使用料については、親子関係の有無にかかわらず、それぞれ十%としております。さらに、政府職員、百八十三日以内の短期滞在者、二年以内の短期滞在の教授及び教員並びに学生及び事業修習者の受け取る報酬や手当等につきましては、現行条約と同様に、滞在地国課税されないこととしております。また、二重課税回避は、現行条約では、両国とも外国税額控除方式によることとされているのに対し、新条約は、日本国においては外国税額控除方式により、ノールウェーにおいては、配当利子使用料等一部の所得を除き、原則として、外国所得免除方式によることとしております。  現在両国間の経済関係は、貿易、技術交流等の一面で緊密になりつつありますが、新しい条約締結によって、両国間の経済交流は一そう促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約二件の締結について御承認を求める次第であります。御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 次に、補足説明を聴取いたします。高島参事官
  5. 高島益郎

    説明員高島益郎君) ただいまの二条約につきまして補足説明いたします。  最初に日ソ領事条約でございますが、戦後日本アメリカ及びイギリスと結びました二領事条約がございますが、今度ソ連との間に結びました領事条約は第三番目の領事条約になります。日本が戦後結びました日米日英領事条約と比べまして、日ソ領事条約は若干の特色を持っております。これは、一つには従来領事官制度領事官職務ないしは特権につきまして、われわれが通常伝統的に考えております考え方ソ連考え方が多少違いまして、伝統的な領事官制度につきましての考え方は、外交官と違いまして、領事官というのは自国民利益保護増進ということが主たる任務、外交官のほうはその国を代表して国と国との接触の機関になるという点で根本的に違うわけであります。したがって、この根本的な考えに基づきます特権免除等がそれぞれ違いまして、領事官のほうは外交官よりは、若干少ない特権免除が認められている次第であります。ソ連は、少しこういう伝統的な考え方と違いまして、外交官に近い、つまり、従来領事官に認められております一般的な特権免除よりも大きい特権免除を認めるようにという主張をしております。戦後ソ連が、共産圏諸国約三十カ国——共産圏だけじゃありませんが——約三十くらい締結しております領事条約のその根本的なたてまえが、そういう考え方に基づいております。そういうことで、今回締結いたしました日ソ領事条約は、日米日英の両領事条約とは違っておりますが、また他面におきまして、日本領事官が、ソ連社会特異性にかんがみましてそれだけ厚い保護を受けるという結果になることにかんがみまして、この日米日英領事条約と違うたてまえのソ連との条約締結した次第であります。  おもな相違を申し上げますと、まず領事官制度、たとえば館長につきまして、外交官の場合、大使ですと事前にアグレマンを取るということになっております。それと類似の制度を設けまして、領事館館長につきましても、外交官の場合と同様に、事前相手国の同意を求めるというたて方にいたしました。これは従来の領事官にはない制度でございます。  それからもう一つ外交官の場合にございます、ペルソナ・ノン・ダラータという制度がございます。つまり、受諾しがたい人物ということになりました場合に、それの帰国を求めるという制度でございますが、これに類似するやはり制度をこの領事官制度にも設けております。  二番目に、特権免除内容につきましては、従来一般領事官の場合ですと、領事館の事務所については不可侵が認められておりますが、それ以外の住所につきましては、そういう不可侵は認められないのが原則でございますけれども、この場合には、領事館館長及び館員すべての住居につきましても不可侵を認めた次第でございます。  それから、一般的に裁判管轄権免除という制度がございますが、外交官の場合ですと、民事、刑事を問わず、一切その駐在国の裁判権から免除されるわけでありますが、領事官の場合は、公務上の公務についてだけ裁判権免除いたします。そうして、公務外のことにつきましては免除を認めないのがたてまえでございますが、この日ソ領事条約の場合は外交官に一歩近づきまして、全く同じではございませんけれども公務外のことにつきましても刑事裁判権につきましては免除するというたてまえにいたしております。  それから、これは普通の条約の場合ですと規定しないことでございますけれども管轄区域内における移動、旅行の自由ということをはっきりきめております。ほかの国の場合、こういう規定は必要ない関係上、特に規定しなかったわけでありますが、日ソの場合は特殊な関係で、そういう規定を特に設けました。  三番目に、職務につきまして、特に自国民逮捕、拘禁された場合の通報義務、これを訪問したり、これと通信したりする権利につきまして、特にその日限を限った次第であります。日米日英領事条約の場合ですと、ただ単に遅滞なく通報する、遅滞なく通信する権利を与えるということになっておりますが、日ソの場合は、やはりソ連社会特異性にかんがみまして、国民逮捕、拘禁された場合には、一日から三日の間に通報しなければならないということにいたしております。それからまた、これを訪問し、これと通信する権利につきましては、二日ないし四日の間にそういう権利を与えなければならないというたてまえにしております。  それから最後に、やはり職務につきまして、北西太平洋におきまして、従来日本漁民領海侵犯等理由をもちましてしばしば逮捕されておりますので、必ずそういう逮捕等の行なわれた場合におきましては日本通報する。通報するのみならず、これに対して訪問、通信の権利を与えるということにいたしまして、その日限をやはり一日から十日以内というふうにはっきり定めまして、従来は、このような抑留ないし拿捕された漁船、漁民につきましては何らこちらの要請なしには通報を受けませんでしたのを、この際はっきり通報義務を定めまして、しかも、その期間を限ったわけであります。これによりまして北太平洋条約におきます日本漁民利益が幾ぶんなりとも保護されるという結果を確信する次第であります。  次に、ノールウェーとの租税条約につきまして簡単に補足説明をいたします。  現在の租税条約は、昭和三十四年に締結しました租税条約でございまして、その後日本OECDに加盟し、OECD租税条約に関するモデル条約を新しく締結する場合、またこれを改正する場合に必ずこれを採択するようにという勧告がございまして、その勧告にのっとりまして、現在の古いノールウェーとの租税条約を全面的に改正したものでございます。OECDモデル条約の主要な目的は、源泉地国課税権を制限するのが主たる内容になっております。したがいまして、ノールウェー企業所得課税日本出先企業に対するノールウェー側課税率を従来よりも制限するというのが一般OECD租税条約内容でございまして、この例によりまして、従来企業利得——日本企業利得あるいはノールウェー企業利得に対しまして、それぞれノールウェー側日本側に課しておりました課税方式を、恒久的施設に帰属する部分についてのみ限定するというふうにしまして、従来非常に広範な範囲で課税されているのを制限されたわけでございます  それから第二点といたしましては、投資所得、これは配当利子使用料の三種類でございますけれども、これを従来一五%であったのを、一般的な原則としまして一〇%にしたわけでございます。この結果、現実に日本——ノールウェー間で影響がありますのは、技術輸出を伴います使用料税率でございます。これが、いま申し上げましたとおり五%減になる関係上、昨年の例で申しますと、日本からノールウェーへ約七十三万ドル使用料を払っております。また逆にノールウェーから日本へこの技術輸出に伴ないます使用料といたしまして約二十六万ドル払っております。したがいまして、この差額の四十七万ドルにつきまして五%だけ減になるわけでございますので、約二万数千ドルの税の減収ということになるわけでございます。  それ以外には、実際上その租税条約によりまして両国間に課税関係に特別な影響はございません。  以上簡単でございますが。
  6. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 以上をもちまして説明は終了いたしました。  二案件に対する事後の審査は、後日に譲ることにいたします。     —————————————
  7. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 中近東における戦闘が始まりまして、このことは世界の平和にとりまして非常に危険な問題でございます。一日も早くこの戦闘が停止されなければならないというのは世界の大多数の国の願いであり、またその努力がなされ始めているわけでございます。  ところで、いまこの状況を見ておりますというと、いずれが先に手を出したかは別といたしまして、その戦闘は各方面においてかなり熾烈になってまいりまして、また爆撃等相互に行なわれだしまして、そうして、イスラエル側に立つといいますか、イスラエルに同情を寄せている英米艦隊は、すでに地中海、紅海におきましてある種の行動を起こしております。またソ連艦隊は、ダーダネルス、ボスポラス海峡を通りまして、すでに地中海に入ってきております。このイスラエル並びアラブ諸国うしろに立つ国々との間の緊張もようやく高まってきております。こういうふうな状況におきまして、わが国としても、それらの動きについては非常に大きな関心を持たなければならない問題である。また、場合によりますというと、これがわが国戦闘に巻き込まれかねないような事態になろうかと思うのであります。私どもは、この中近東の現在の情勢世界戦争につながっていくことを非常におそれるものでありますが、まず第一に、外務大臣にお伺いしたいのは、この中近東情勢見通しでございます。すでに昨日あたり牛場事務次官がこの見通しについて発言もされておりますけれども、ここにあらためて大臣からこの中近東情勢に対する日本政府としての見通しについてお伺いをしたいのでございます。
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私ども中近東情勢、この進展というものに対しては非常に憂慮をいたしておるわけでございます。カイロにも空襲が行なわれ、イスラエル空襲を受けたようでございますし、それからアラブ九カ国はイスラエルに向かって宣戦を布告をいたしたわけで、非常に本格的に戦争拡大していく傾向を帯びておるわけであります。そこで一体この見通しはどういうふうに考えておるかということでありますが、これはまず紛争当事国あるいはその当事国と深い関係を持っておる大国、こういう人たちが一体これをどう収拾しようとしておるのかということでありますが、国連もやはり昨日は五十分間会議をやってすぐ休憩に入って、むしろ国連安保理事会よりも舞台裏でこの収拾のために努力が払われておるようであります。日本とすれば、この戦争拡大というものは、これは日本にも、ことにわれわれは中近東石油の大部分を依存しておるわけでありますから、現在のところはペルシア湾によっておるわけで石油の供給に不安はないけれども、こういう戦争拡大によってわれわれとしても十分警戒をしなきゃならぬわけでありますので、国連中心にして、日本とすればどちらにも介入はしない厳正中立立場をとって紛争早期解決のために努力をしようということで、松井大使中心にして動いておるわけであります。一体これがどういう見通しかということについては、むろんわれわれはこれが全面的な衝突に至らないことを期待し、また、当事国の背後におる大国もこれを全面的衝突に持っていかない責任が私はあると思うのであります。そういうことで、責任を持っておる大国による努力、自制、こういうことによって戦争拡大をしないように努力が行なわるべきであるし、われわれもそういう面から早期解決努力をしようという考えであって、的確な見通しをわれわれがいま持つということはなかなか困難であります。できるだけこれを拡大しないよう、また、その国と特殊な関係を持つ大国責任というものを強調して、これをやはり戦争拡大に至らないように早期解決するように努力をするということが現在のわれわれの立場でございます。
  10. 岡田宗司

    岡田宗司君 現在、いわゆる四大国舞台裏でもっていろいろな話し合いをする努力をしておるようでございます。しかしながら、この四大国話し合いだけで私はこの問題が急速に片づくとは思わない。現在、英米ソ連とは、ともに戦争拡大を好まない立場にはあるけれども、やはりいろいろと立場相違もありまして、それを一致させることはなかなか困難である。また、フランスは中立的な立場にありますけれどもフランスが、両陣営と申しますか、両側に対する圧力というものもそれほど大きいとは思われないのであります。そういたしますと、やはり世界世論というもの、世界の圧倒的な多数の国々がやはり大きな圧力を加えて、そうして四大国の間に見解の一致をさせるようにし、さらにそれがアラブ側並びにイスラエル側一つの大きな圧力となって初めて戦闘の中止、そして拡大防止ということができるのではないかと思います。この世界各国動きというものも、そういう意味で私は大きな力になると思いますが、その際における日本立場並びに役割りというものも、私は重大だと思うのであります。で、過日国連におきまして松井大使からの発言もございましたけれども、さらに日本としては厳正中立立場に立って、収拾に対して世界世論を形成する上においてやはり大きな働きをすべきではないか、こういうふうに考えておるわけでありますが、この厳正中立立場に立つということが、これはなかなか私は容易なことではないと思うのであります。いまのうちはそれでいいのでありますけれども、しかしながら、もしもう少し進んでまいりますというと、たとえばアメリカ側見解日本側に伝えられて、そうして日本側アメリカ側意見に一致するように求められる、あるいはまたアメリカ行動を共にするように求められるということになってまいりますというと、これまた勢い、厳正中立立場というものを失うような結果にもなろうかと思うのであります。もし厳正中立立場がそういうようなことから失われてまいりますというと、やはり日本に供給される石油の問題にも関係してまいりましょうし、あるいはまたスエズ運河通航の問題にも関連を持ってくると思うのでありますが、そういうような観点からこの厳正中立の維持ということについては、これは単に現時点だけではなくて、私は相当長きにわたってこの事態の終息するまで続けられるべき立場であると思うのでありますが、その点についての外務大臣見解並びにそれに対する外務大臣の方途をお伺いしたい。
  11. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私も、いま言われたように、国際世論というもの、これはやはり特殊な関係にある大国責任ということは非常にあると思いますよ。しかし、そればかりではこの紛争早期解決ということが十分だとは言えません、いろいろな利害関係がありますから。だから、国際世論をやっぱり喚起すべきである、国連中心にしてそういう収拾のために日本は動くべきだという御意見には全く同感で、松井大使にも、そういう政府の趣旨に従って今後この収拾国連を舞台に活動してもらいたいと考えております。そういう日本のような場合は、これは実際に日本立場というものは、こういう戦争によって、どちらかの側に立って相手を非難するという立場に私はないと思います。そういう点から、日本がこの紛争に中立的な立場を維持することによって、できる限り早期にこの紛争解決努力するという立場は、いま現在の時点というよりかは、紛争解決に至る日本の基本的な態度でなくてはならぬと考えておる次第でございます。
  12. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本としては、イスラエルとも、それからアラブ連合その他のアラブ諸国との間にも外交関係を持っております。おそらく両側大使からそれぞれの国の立場説明があったと思います。また、日本がどういう立場をとるかということについても、おそらく向こう側から聞かれたことと思うのでありますが、この両陣営の国に対する日本側立場は、すでに説明されたのでしょうか。
  13. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 出先大使を通じて、両国政府日本立場というものはすでに通達をいたしてございます。したがって、現地の政府に、日本政府態度というものは誤りなく伝えられておるものと考えております。
  14. 岡田宗司

    岡田宗司君 いま戦闘が始まったので、いままでとられてきたいろいろな方策というようなものは一時中絶をしたわけでございます。たとえばアカバ湾航行につきまして、米英におきましては、大きな海運国に対して働きかけて、アカバ湾航行自由宣言をするというような案がありました。そして、日本も大きな海運国一つでありまして、当然米英のほうから何らか働きかけがあったと思うのです。しかしながら、これらはいますぐ問題にはなりませんけれども、しかし、これに対しまして、たとえば日本がこの米英案に加わるというようなことになりますというと、これはアラブ連合をはじめ他のアラブ諸国からはイスラエルに加担したものととられるおそれも出てくるわけであります。こういうような問題について、私は日本は当然慎重な立場をとるべきであると思うのでありますが、そういうことについてすでに米英から話があったか、そしてまた日本はこれに対してどういう立場で対処しようとしておったか。これはいますぐもう問題にならなくなったわけでありますけれども、しかし、この問題はなかなか重大な問題でありますので、これらについて日本政府としての考え方をお伺いいたします。
  15. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) その世界海運国の共同宣言ですね、公海自由の原則、こういうものに対してまだ公式まで行かなかったのです。非公式な連絡は受けておったわけでありますが、この問題については政府態度は慎重でなければならぬ。なぜかといえば、日本のような海洋国として、公海自由の原則はだれよりも日本はこれは賛成ですからね。当然にそうなければ、日本としてはこういうふうな海洋国として日本のこの立場から考えていっても、これは当然にどこの国よりも日本はそういう原則の支持国である。これは言うまでもないのですが、現在の時点に立ってそういう共同宣言というものが事態収拾にどういう役割りを果たすであろうかということについては、政府は慎重に考えざるを得ない、原則にはもう前から賛成しているのですから。そういうことで、もし公式にこういう申し出があったときには、きわめて慎重な態度で検討を加えたいという考えでしたが、いまここに、ああいうぐあいに戦争になってしまったものですから、これはまた新たなる事態になったと、こういうふうに考えております。
  16. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 速記をとめてください。
  17. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 速記を起こして。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 このアカバ湾航行の問題は、直接日本にも関係のある問題だと思うのです。と申しますのは、日本イスラエルの間に貿易が行なわれておりまして、日本からイスラエルに行く船がアカバ湾を入りまして、そしてエイラートの港に行っておるわけであります。現在その航行は非常にむずかしい状態になってきたと思うのでありますが、これは日本にとりましては重大な、原則的に非常に重大な問題であると同時に、実際的にも現在戦争に巻き込まれる地帯にあるわけでありますから、その航行は危険であり、また、場合によれば停止されなければならぬ問題であるわけであります。現在エイラートに日本の船がいるのかどうか。それからまた、イスラエル向けの船は、日本船はすでに航行を停止しておるのかどうか、または途中にあるものは、そのイスラエルの港に向かうのを避けるように命令が出されているのかどうか、その点はどうか。
  19. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまはアカバ湾には日本国籍の船は行っておりません。
  20. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、向こうへ行く船もない、あるいはまた、途中にある船もないわけですか。
  21. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 定期船がないもんですから、ああいう紛争になったからむろん行けるわけはないのですが、ああいう紛争のときには日本の国籍の船は行っていなかった。定期船もない。
  22. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから次に予想されるのは、たとえばスエズ運河を通ってハイファの港に入る日本船ですね、こういうものについて、スエズ運河の通行を禁止される、あるいは停止されるおそれがあるし、また、そういうことも起こり得ると思うのですが、その点についてはどういう措置をとられていますか。
  23. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いまハイファに来る定期船はないようですけれども、しかし、われわれとしてはこれに対してはやはりあらゆる場合を考えての配慮は必要であると考えております。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまの状況がさらに拡大していくというと、スエズ運河の航行がとめられるという事態が起こりかねないと思うのでございます。これは日本の貿易——中近東、ヨーロッパあるいは北アフリカに対する貿易にとりましても非常な打撃になることであります。当然スエズ運河の航行が行なわれるように日本側としてもアラブ連合側に働きかけるべきであると思いますが、こういうような措置はとられておりますか。
  25. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) お説のとおり、スエズというものはこれはたいへんな影響を与えますから、事態がいかに進展しようとも、スエズ運河を閉鎖するようなことのないような、やはりこの点については特に政府からも出先外交関係を通じてもこの確保には最大の努力を払いたいと考えております。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、こういうようにイスラエル並びアラブ諸国との間の戦闘拡大されてきますと、やはり両国にその戦闘を中止させるための圧力として、両側の国からそれぞれの国に対して武器等を供給することを中止すると申しますか、そういうような案が出てくるだろうと思うのであります。アメリカ側ではすでにそれを提案しだしているようでありますけれども、当然そういうような措置もとられてくる。しかし、この武器といいましても、直接戦闘に役に立つ武器以外にそれぞれの国のいわば戦力の培養になるような物資もあるわけでありまして、これらのものまで含まれてくるということになりますというと、これは日本にとりましてもやはり相当影響もあろうかと思います。また同時に、そういう措置がとられたことに対する一つの対抗措置として石油の供給の中止というようなことも考えられると思うのでありますが、それらの点について日本政府としてはどういう配慮をしておりますか、お伺いしたい。
  27. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 従来とも、いまの紛争地帯に日本は武器などは売っておりません。したがって、これによって、この紛争が起こったから、特別に日本政府態度が変わったということにはならない。だから、日本の場合はこの武器の問題については関係は非常に薄いわけですが、また、ほかの国々でも紛争地帯へやっぱり武器というものの輸出というものは当然にやめられなければ、一方に平和というもののために努力しながら、一方で武器を売るというようなことは、武器を供給するということは非常な矛盾でありますから、紛争地帯に対しては、これはいずれの国も武器の輸出はとめるべき性質のものだと、私も岡田さんと同様に考える次第でございます。
  28. 岡田宗司

    岡田宗司君 その直接の武器はもちろん日本から送ってもいないし、また、そんなことはない、これからもないと思うのでありますけれども、いわゆる間接的に戦力の培養になるようなものというと、これは非常に広いわけであります。そういうものについて相手側からの指摘があり、そしてそれによってまた片方で対抗措置をとるということになってまいりますと、ただ直接的な武器でなくて、そういうものまで含めるということになると、これはまた将来影響も出てこようかと思うのであります。特に私どもがおそれるのは、そういう場合に、アラブ諸国の結束によって石油の供給が停止されるような事態が起こるのではないかということですが、その点について、まあ、一面においてはかなり楽観的な意見がある。別に、アラブ諸国からの石油の供給はとまらないだろうという楽観的な意見もあるし、しかし、戦火が拡大すればあるいはそういうことになりかねないというか、かなり警戒的な意見もあるわけであります。政府としては、この問題についてはどういうように対処されていきますか。
  29. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 直接の武器でなく、それに戦力ということになってくると、関連性を考えていけば、思いがけないものがそういうふうな関連性ももたらしてくるのかもしれませんが、いま原則的にこうだとは言い切れませんが、やはり早期に、平和的にこの紛争解決をしたいという願望に反しないように、その問題、問題で処理するよりほかにないと考えております。いまここで線を引くというようなことはなかなかむずかしい状態でありますから、一日も早く紛争の平和的な解決日本としたら一番望む国の一つですから、そういう角度からいろいろ良識のある措置をするということ以外に、何か個々についてどうということはちょっとなかなか申し上げられないと思います。
  30. 岡田宗司

    岡田宗司君 石油の供給については、大体政府は心配ないというお考えですか。
  31. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 現在のところ、やはり石油の供給に対しては不安はないと考えております。
  32. 岡田宗司

    岡田宗司君 イスラエルアラブ連合その他の国々日本人の滞在しておる者はありますが、それらがやはり戦争の危険を受けなければならぬような事態にもあるわけです。特にそれぞれの首都に対して空襲が行なわれておるというような状況は、やはりそれぞれの国におります日本人が非常に危険だ。これに対しては、至急引き揚げなり何なりの措置が講ぜられなければならないわけでありますが、それらの措置はすでに命令をされておるかどうか。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま紛争の地帯における在留日本人は五百四十五名おりますが、イスラエルに百十五名、アラブ連合に二百二十名、シリアに十三名、レバノンに百九十二名、ヨルダンに五名いるわけでございますが、御承知のように、カイロはいま空襲どもあって、民間飛行場というものが、通告があるまでということで閉鎖になっているわけであります。したがって、カイロの飛行場から日本に帰るとか、あるいはどっか場所を移動するというようなことが、なかなか飛行場を使えませんから、いまは非常に困難でありますが、しかし、アラブ連合政府当局も、飛行場付近の戦闘が平穏になれば、特別機のカイロ飛行場へ立ち寄ることに対してはこれを解くという意向でもありますので、この戦争の進展とにらみ合わして、場合によったならば、アテネから特別機を回して——戦争の進展いかんによってですが、在留日本人の引き揚げに万遺憾なき処置をいま行なっている次第でございます。外交のいろいろな折衝を行なっている、そういう場合のことを考えて。
  34. 岡田宗司

    岡田宗司君 イスラエルの場合は非常に出にくいわけでありますが、これはやはりアテネに集結さすという方針ですか。
  35. 力石健次郎

    政府委員力石健次郎君) イスラエルの場合、事実非常に出にくいので、もし日航が特別機をイスラエルのテルアビブの飛行場に着けることができない状態であればどういう手を打てばいいかということを、現地の大使館にすぐ調べて返事をくれるように訓令している段階でございます。
  36. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本から特別機を出す場合に、中近東アラブ諸国の上空を通るわけですが、これは現在の戦闘状況からいって必ずしも危険ではないというふうにお考えですか、大体通れるとお考えですか。  それから、日本とヨーロッパとの間の南回りの定期航空便は、カイロに寄らないで、直接カラチその他からベイルートあるいはアテネというふうに行けば危険なしに行ける、そういうふうにお考えですか。
  37. 力石健次郎

    政府委員力石健次郎君) これは特別機を飛ばしますときは、あらかじめ相手国政府及びそれの反対側のつまりUARに飛ばしますときには、イスラエルに対しても事前に了解を求めまして飛ばすつもりでございますので、さほどあぶないことはないんじゃないかというふうに考えております。
  38. 岡田宗司

    岡田宗司君 またもとの問題に戻りまして、日本側のなす役割りですが、もちろん四大国のような大きな役割りは演ぜられないと思うけれども、国際的世論を高めていく上での一つ役割りはできると思う。特に安保理事会ですね。これは日本も非常任理事国として安保理事会に加わっているわけでありますが、したがって、安保理事会の段階において何らかの活動ができるというふうに考えるけれども安保理事会は、いまのところなかなか五大国意見の一致も見られそうもないので、問題はむずかしいわけでありますけれども日本側として、たとえばアメリカ側に対して、あるいはソ連側に対して、日本側として考えておる提案、単に厳正中立を維持するとか、戦闘をすみやかに中止して平和的解決をもたらすというような抽象的なことではなくて、アメリカ並びにソ連に対して何らかの具体的な提案をするつもりがあるかどうか、この点お伺いしたい。
  39. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、安保理事会は毎日のように開かれておる。ウ・タント事務総長からも訪日中止の通告も受け取ったわけであります。早期にこれを解決しようという根限りの努力が続けられておるので、いま日本が、特にこういう点で新しい提案というものは考えておりませんが、日本は両方とも、日本関係は、どちらにも片寄るという立場日本はないわけでありますから、日本の果たす役割り国連を舞台にして相当あるわけでありますから、必要に応じてソ連にも話すだろうし、アメリカにも話す。そして、とにかくこれ以上拡大しないようにその努力をするということが今日の日本立場としては一番適当だろうと考えておる次第でございます。
  40. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本政府としては、この中近東のこういう情勢がさらに悪化してくるということが、アジアにおける最大の紛争であるベトナム問題、これにどういう影響を与えるか、これどういうふうにお考えになっておりますか。これは、私は相当大きな影響がある。また、このために、ベトナム戦争があるために向こうでああいう事態が起こったとも考えられる。また、ああいう事態が起こったことによってベトナム戦争解決が非常にむずかしくなったというふうにも考えられる。決してこの二つの事態は別々のものではない。こういうふうに特に重大に考えられるのですが、この点についての政府見解はどういうふうにごらんになりますか。
  41. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いま、問題がむずかしくなったのではないかと、国際政治のいろんな推測を加えれば、そういうお考えも成り立つでしょうが、私はどこもかしこも、なかなか局地戦といいますか、そういうものが収拾できないという事態に対して、これはもうこういうことになれば、たいへんなことになるということで、一面から言えば、そういう戦争の終息というものに対して一段とやはり世界の世論というものが盛り上がってきて、そしてかえってむずかしいというよりかは、やはり平和解決を促進する一面もあるのではないかと、そういうことで、必ずしも政府意見でなしに、いまのイスラエルアラブ連合とのこの紛争がベトナム戦争の終息をむずかしくするというよりかも、何とかしてこれは地域的な紛争解決を早くしなければ人類の将来にたいへんなことになるという、こういう世界的世論というものは一段と盛り上がってくる面もあって、そういうことで、必ずしもあのイスラエルアラブとの紛争が、より一段とベトナム戦争解決をむずかしくしたという観測はいたしていないのでございます。
  42. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういうふうになっていけば、私どももたいへんいいと思うのですけれども、しかし、なかなかそう楽観も許されない状況にある。やはり日本政府としても、国際世論の喚起につとめられて、日本自身も、その場合に、積極的に厳正中立立場をとりつつ、早くこの事態が終息されるように御努力を願いたいと思うのであります。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して、いまの問題で一問だけ、簡単ですが。  いままでの岡田委員の質問に対する外相の御答弁、これは全面的に同感です。大いに敬意を表します。ただ問題は、紛争が起こった最初からどっちか一方に加担するなどということはあり得ざることで、これは現時点では外相のおっしゃるとおりだと思いますが、しかし、米英陣営のうち、特に米英あたりから特に強い要請があり、あるいは将来問題が発展していったような場合、いまの様相と異なるような条件が出てきたような場合、それでも、このアラブイスラエルとの紛争には、とにかくこの戦争にはいかなる事態に発展しようとも、絶対に日本が、先ほどお話しになったような中立を守り通すと、こういう理解をしてよろしいかどうか。私自身は、それほどこれが大規模な戦争に発展するかどうかはいささか疑問に思っておりますが、しかし、それにしても、万一そういうことが起こった場合にも、いわゆる終局的にその態度を貫かれると理解してよろしいかどうか。
  44. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私は、これは日本がこれに介入する理由がないではないか。やはり、この紛争に対して介入をしないで、中立的な立場で、そうして、紛争早期解決のために努力することが日本の方針だと私は信じておるものでございます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 私の最後の質問ですが、これは沖縄の船舶がインドネシアでインドネシア海軍に拿捕された問題ですけれども、過日沖縄特別委員会で私が外務当局に対しましてどういう措置をとったかということを聞いたのでありますが、その際に、西山大使がマリク外務大臣あるいはまたスハルト代理大統領と会ったときにその話を持ち出しておるようでございますけれども、アンボンに抑留されておる人たちとの連絡はとれてない。特にアンボンに出向いて実情についての調査あるいはそのつかまった人たちと会っておるというようなことが行なわれておらない。そこで私は、それを当然行なうべきであるということを言っておいたのであります。これらの点につきまして外務省はその後どういう措置をとったか。とにかく、もうつかまって、第一のものは約一カ月になるわけであります。当然私は、つかまったものに対して、日本大使館は現地におもむいて、つかまった人たちと面会をし、事情を聞き、あるいは当時の実情を調査すべきであると思うが、そういう点がどの程度まで明らかにされておるか、また、そういう措置がとられたかどうか。その点をお伺いしたい。
  46. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 前回、沖縄特別委員会においてその問題に関しまして、私、交通が不便だということを申し上げたわけでございますが、この拿捕がありましてから、できるだけ早く現地に行くようにということはすでに訓令しておったわけでございますけれども、現実にアンボンに行く飛行機は、マカッサル経由で週一往復、そのマカッサル飛行場の故障か何かで五月初めからその飛行機が全然飛んでおらない。船で行きますにも定期船もなく、特にサンパンをさがしまして行くならば行く。それにしても十日かかるし、便船がなかなかつかまらないというのが実情でございまして、まことに遺憾ながら、まだ大使館員を現地に派遣することはできないでいる次第でございます。しかしながら、お話しのとおり、なるべく早くわれわれとしても現場において実情を調べる必要があると思っておりますので、なお、最近の便をさがして行くように、努力するようにということを出先大使に申しておる次第でございます。先週以来、遺憾ながら、まだ館員が現場に行くところまでいっておらないわけでございます。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 外務大臣、非常に遺憾なことでありますので、やはり至急にそういうふうな処置をとっていただきたいと思います。特に私、インドネシアとの関係で、この領水の問題ですか、これはやはりインドネシア側との間に話を進めて、そして安全操業のできるような措置を講じていただきたい。これはやはり沖縄だけでなくて、日本の漁業にとりましても重大な問題だと思うのです。何といっても日本とインドネシアが友好関係にあり、相当日本側からも財政援助もし、また、いろいろな経済開発等についての協力もしているおりでありますから、こういう事態が起こることは、今後のインドネシアとの外交関係の上にもおもしろくない事態である。これはひとつ、単に事務的な解決がなくて、外交上の一つの問題として解決をされるように御努力を願いたい、こういうことを一つ。  もう一つは、前々から沖縄の漁船員等が外国でつかまった場合には、これは第一義の外交保護権は日本にあるということで、外務大臣もそういう処置をとられておる。また、そうも言明されておったわけでありますけれども、アンガー高等弁務官とアメリカ側とは、船員並びに船についての問題はアメリカ側保護権があるのだということを言っているようでありますが、この点について、まだアメリカ側が船員の外交保護権についてはっきりした了解がないために、そういうことになっているのじゃないかと思うのですが、その点について日本側としてはもっとはっきり主張されたらどうか。そしてアメリカ側に、この問題について、いま言ったように、船員等の保護権については日本側にあるのだということを認めさせるような措置をとられたらと思うのですが、その点いかがでしょう。
  48. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 岡田さんの最初の、やはりインドネシアとの間に、つかまって釈放みたいなことばかり繰り返してはいかぬではないか。これは安全操業について外交交渉を通じてもっと根本的な解決をはかれということ、私もその必要を感じておる。この前も日本人でありましたけれども、そのときも非常にたいへんな——釈放されましたけれどもぽんとうに船員の人たち、船員の家族は非常に不安な気持ちで、この問題は、問題が起こってから処理するということではだめなので、安全操業についてインドネシアと話し合いをする考えでございます。いま検討を加えているわけでございます。  それから、沖縄の漁船の船舶と船員については、船舶は船籍が沖縄であるものでありますから、第一義的な保護アメリカがやるわけです。船から離れた沖縄人というものは、日本国籍を持っているし、これは日本が第一義的にこれの保護に当たることは当然のことだと考えておりますので、岡田さんのおっしゃるような、そういうお話があるならば、これは明らかにするつもりでございます。そうでないと、船から離れたらこれはもう日本の国籍がある。保護の第一義的な任務はわれわれ日本政府にある。しかし、アメリカとはこれは連絡をとって、船と人間というのは、分けても、やはりこれは非常に結びつくものですから、アメリカ出先外交機関とは連絡はとらなければならぬけれども考え方としてはそういう考え方でやりたいと考えております。
  49. 森元治郎

    ○森元治郎君 一つだけ、あと大和君がやりますから、一つだけ伺いたい。  大臣のお話を聞いていると、国連中心中近東問題は片づけていく、不拡大を願う、厳正中立でいきたいのだ、世界の平和的世論の喚起だ、こういうことでありましたが、ただ一つ御答弁の中に、「背後の大国責任」ということばがあったのですが、背後の大国責任云々というところがね。この事件は、背後の大国にあやつられているのかどうか。一体、それはいずれの側がいずれの大国にあやつられているのか。「背後の大国責任」というのはちょっと大事な発言だと思うのですが、その点の御説明をちょっと伺いたいと思います。
  50. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 「背後」ということばは使ったですか。
  51. 森元治郎

    ○森元治郎君 使いました。
  52. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは適当ではありません。これはやはり関係の深い大国それぞれの国、だから「背後」ということばは適当なことばじゃありません。それは訂正をいたします。これはやはりそれぞれの関係の深い国々ということで、「背後」というのは、これは私記憶しないのですけれども、もしあったとしたならば、不適当なことばであります。その国と関係の深い国ということであります。
  53. 森元治郎

    ○森元治郎君 三木大臣はなかなか答弁がうまいですよ。そのうまさがどこにあるかというと、簡単なんです。プレゼンテーションがうまいのです。内容よりプレゼンテーションがうまいから、なかなかいいといわれる。私はそうは思わない。そこで私は、さっきからあなたが言うのをちょっとメモしていたら、「背後の大国」というのがあったのですよ。そこで私は伺った。
  54. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは訂正いたします。「背後」というのは適当ではありません。
  55. 大和与一

    ○大和与一君 いまの「背後」というのは確かにおっしゃったのですけれども、それは別にして、国連中心にして中立的立場で行く、国連に協力する、こういうふうにおっしゃったと思うのですが、一体、今回の国連軍のガザ地区の撤退、これはウ・タント事務総長だけが独断で撤退を指示すとるいうことに間違いはないのか。国連法規に照らしてもどうなのか。それを一つ
  56. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が聞いておるのは、権限は事務総長にまかされておる。事務総長の独断でやれる権限を持っておって、それによってウ・タント事務総長がやったと、こう私は承知いたしております。
  57. 大和与一

    ○大和与一君 そうしますと、やはり今回のこの事件の拡大は、非常にそれが大きな問題だと私は思っておるのです。そこで国連を信頼ができない。われわれは、さっき外務大臣がおっしゃるけれども、いまの国連は分担金も払い込まれていない。なかなか力も足りぬ。あるいはウ・タント総長の今回の指示というものは重大な間違いをしたのではないかとも、私個人としては思っておるわけであります。そうしますと、私は、国連中心にして政府が協力すると言うが、それじゃ、国連に対して日本政府はどういう態度をきちんととっていらっしゃるのですか。中立ということだけを言うのか。具体的にいろいろな問題が起こった場合に、やはり一つ一つはっきりイエス、ノーと言いながら国連をあと押しをする、こういうことになると思うのですが、そういう点の見通しなり具体性はどうですか。
  58. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それはどういうことが起こるか、いま予想はつきませんが、この問題はこの紛争一つ戦闘行為によって片づけようとするものではなくて、やはり平和的に解決するという大きな方針のもとに、いろいろな起こってくる問題を処理していくよりほかにない。いろいろな問題ということは手がつきませんから、それはやはりこういう大きな太い線に沿うて、そして問題を処理するほかにはないのではないか。いろいろなことが起こることをいま想定して、その場合にこうだ、ああだということはちょっと言いにくいんじゃないでしょうか。
  59. 大和与一

    ○大和与一君 昨年私はアフリカに行ってきたのですが、アラブ連合の国の状態は、一つは、イエメンに相当の軍隊を送って非常にその収拾に手こずっておった。国内においてはアスワン・ハイダムがあって、ダムができるにはできたが、操業はまだまだで、そういうときにこういうふうな具体的な事実が起こったということは、さっき打ち消されたけれども、非常に関係の深い国との一つのつながり、それとあわせて、岡田さんおっしゃっているように、ベトナムとの問題でも大きく世界的に関連がある、こういうふうに考えますが、その関係の深い大きな国というのは一体何ですか。
  60. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 関係の深いというのは、たとえばアラブにしてもイスラエルにしても、従来からみな親密な関係を持って影響力がある国がありますから、それは単数ではないですよ。いろいろやはりイスラエルでもアラブ諸国に対しても従来から関係の深い国々影響力がある国々、こういうことであります。
  61. 大和与一

    ○大和与一君 チラーン海峡を船が通るのがむずかしい問題のようですが、もしもアラブ連合が言うように、十二海里説ということを唱えれば、海峡は全部アラブ連合の領土になってしまう。しかし、国際法の大原則による三海里説に従うならば、岩礁がたくさんあって通りにくいけれども、国際航路として、どこの船でも通過できるのだが、日本政府の現在の常識はどういうような見解でしょうか。
  62. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) あそこの海峡はいろいろな角度の議論があろうと思います。したがって、国際的な水路ということは間違いない。あのアカバ湾から入って四カ国ほどあるのです。これに対していろいろな意見が出てくる余地はあると思います。そういうことで紛争にもなるわけです。けれども、やはりそれは国際的な航路であるということには間違いがないが、それが領海説ということになってきますと、いろいろ各国によって領海というものも違うし、また、ああいう場合の領海というものが実際に適用になった場合にはどうなるか、普通の領海とも違ったものであって、これが紛争一つの原因にもなっておるわけでありますから、そういうことで紛争が起こっておるときに、やはりこの問題に対して日本政府がどうということは適当でないと思います。そういうことで、この問題が解決をすれば、そういう問題もやはり解決されなければならぬというふうに考えております。
  63. 大和与一

    ○大和与一君 スエズ運河に万一のことがあるかもしれないということも一つ考えられますが、その紅海の入口にいま日本の清水組という会社が岩盤を掘っており、しゅんせつ船が置かれている。そこへ行ってきましたが、その船が横を向けばスエズ運河はとまってしまう。日本としてはそこの一番第一線に近いところに日本人がおるのです。その人たちが一番苦労するわけですが、それに対して政府としてはいまから具体的にどういう事前措置が考えられるか。
  64. 力石健次郎

    政府委員力石健次郎君) 清水組の人がスエズ運河に働いておられることは事実でありまして、多少カイロから離れているために、その人たちの安全を確保するために、約十日ほど前だったと思いますが、すでにわが方の在UAR大使館でも、何か事が起こればいつでも適当な措置がとれるように、すなわち、すみやかにカイロまで引き揚げてこられるように、油その他の準備をいたして置くようにという指示をいたしております。したがって、現在どうなっているかはまだ報告が来ておりませんが、現地ではそういう準備をしておると思います。
  65. 大和与一

    ○大和与一君 先ほど、イスラエルからの日本人を国外に引き揚げさせるための飛行機の話が出ましたね。しかし、そちらのお話としては、そんなに心配はない、日本に対する好意というか、そう悪意はないから。そうすると、飛行機だけでなくて、たとえば自動車でレバノンからイスタンブールに行くということは考えられるのですか、シリアでもいいが。
  66. 力石健次郎

    政府委員力石健次郎君) シリア、レバノンにおります在留邦人につきましては、一応いつでもレバノンに集まってこれるように……
  67. 大和与一

    ○大和与一君 イスラエルからは。
  68. 力石健次郎

    政府委員力石健次郎君) イスラエルからはむずかしいと思います。
  69. 大和与一

    ○大和与一君 最後ですが、そうすると、外務大臣は、今度の問題については厳正中立を堅持する。それで今後も押し通す。そうすると、ベトナムについてとちょっと形が違う。いろいろアメリカとの関係もあるからそんなに厳正中立でない、だから、特需も大目に見るしLSTも行っているということでありますか。
  70. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナムについては、われわれとしては安保条約、これに附属する協定の義務を果たす。ベトナム戦争に対してわれわれが軍事的に介入するなどというのはできるものでもないし、また、していないことも事実でございます。われわれは、条約上の義務はこれはどういう場合にも果たしていくということであります。
  71. 大和与一

    ○大和与一君 そういう大臣の巧妙なじょうず、なお答えが困るのですよ、わがほうの委員もいろいろ言っているように。中近東に対しても厳正中立堅持と言っておられる。そうしていまのベトナムのお話はわかりました。政府の言うのはわかっているけれども、争ういうことがだんだんともやもや起こってくる可能性があった場合に、一体大臣の言っているような厳正中立とは違うのじゃないか、色がついたのじゃないか、傾いたのじゃないか、こういうことを国民は心配する。だから、明らかにベトナムと違う、同じ中立でも違う、こういうおうにおっしゃるのですか。
  72. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 中立という意味が、日本が安保条約によっていろいろな協定をアメリカと結んでおるこの義務というものは履行しなければならない、その義務を履行するという責任はあるわけですから、それを中立的でないと言うならば、それは解釈の御自由ですと、しかし、われわれとしてはベトナム戦争に対して軍事的に介入していないことは事実でしょう。これはそういう意味において、われわれはできる限り、ベトナムに対して、日本が深くこの戦争に介入という態度はとろうとしていないのであります。ただしかし、条約上の義務を履行したいということであります。何も、いま森さんの言われるように、プレゼンテーションがじょうずへたということでなくて、私は誠心誠意答えておるのであります。
  73. 大和与一

    ○大和与一君 私も誠心誠意お尋ねしておりますが、純一無雑で中立を政府はいかなる国に対しても堅持してもらいたい。終わります。
  74. 岡田宗司

    岡田宗司君 関連。いまベトナム戦争に関連して、日米安全保障条約による日本側義務というようなことを言われたのですが、このベトナム戦争に対して一体日本は安全保障条約アメリカに対してどういう義務を具体的に負っているのか、具体的に示してもらいたい。
  75. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ベトナム戦争そのものが、安保条約から具体的に義務ということはないのですけれども、たとえばアメリカの飛行機が日本の空港に立ち寄ることはできるわけです、安保条約によって。そういう場合に、それがやっぱり休養したりするような場合がある。給油をしたりする場合もある。そういうことで、直接日米安保条約からベトナム戦争ということには直接の義務を負うておるというような規定があるとも思いませんが、そのことが、アメリカの安保条約から来る規定が、ベトナムに対する補給などの場合に、これがアメリカ自身が安保条約のワク内において、ベトナム戦争との間に、補給的なそれは利点が行なわれておるというような関係はあり得ると考えるわけでございます。
  76. 岡田宗司

    岡田宗司君 これはひとつ条約局長に、条約上法理論的にどういう関係にあるか、ひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  77. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 安保条約、地位協定上、合衆国が元来できることを、そのままベトナム戦争に関連しても継続していけるということでございまして、一口に言うならば、許容の義務と、日本義務として、そういうふうに言ったらよろしいかと思います。
  78. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、直接にはベトナム戦争について、日本がいままでより以上のものを与えるということはないわけですね。条約上。
  79. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 「以上の」ということばの意味でございますが、いままで与えていないような種類の権利というものを認めるとか、あるいは義務を負うとか、そういう関係はございません。
  80. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほど大和君がLSTの乗組員の問題を出しましたが、あのLST乗組員のアメリカ軍当局との私的契約、ああいうことは安保条約の条項に基づいて許されているのではないのですね。
  81. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 安保条約ないし地位協定に規定がなければできないという種類のことではないと思いますが、しかし、ああいうような直接雇用の形態があることを予想した規定は地位協定にございます。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 安保条約によって義務づけられるという場合、それは逆に考えれば、安保条約の精神、極東の平和と安全のために、いまのやり方では適当でない、かえって日本の安全をそこなうという議論もあるわけですね。ですから、必ずしも安保条約義務という解釈は、私たちは政府考えと一致しないということだけを申し上げておきます。これは答弁は要りません、本質的な問題ですから。ですから、またいずれ……。
  83. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) またわれわれもそれには賛成をしない。
  84. 赤間文三

    委員長赤間文三君) 他に御発言もなければ、事件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時四分散会      —————・—————