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1967-06-09 第55回国会 参議院 沖縄問題等に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月九日(金曜日)    午前十時三十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本 利壽君     理 事                 内田 芳郎君                 小柳 牧衞君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 黒柳  明君     委 員                 植木 光教君                 大谷 贇雄君                 源田  実君                 谷口 慶吉君                 長谷川 仁君                 林田悠紀夫君                 増原 恵吉君                 安井  謙君                 伊藤 顕道君                 稲葉 誠一君                 鶴園 哲夫君                 森 元治郎君                 向井 長年君    国務大臣        労 働 大 臣  早川  崇君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  増田甲子七君    政府委員        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁人事局長  宍戸 基男君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    参考人        南方同胞援護会        会長       大浜 信泉君        南方同胞援護会        評議員      末次 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩居住者等に対する失業保険に関する特別措  置法案(内閣提出衆議院送付) ○沖繩その他の固有領土に関しての対策樹立に関  する調査  (沖繩施政権返還等に関する件)  (沖繩その他の固有領土に関する件)     —————————————
  2. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまから沖縄問題等に関する特別委員会開会いたします。  沖繩居住者等に対する失業保険に関する特別措置法案議題といたします。前回に引き続き、質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。  他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  3. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
  4. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。沖縄居住者等に対する失業保険に関する特別措置法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  5. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  6. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、午後一時再開することとして、暫時休憩いたします。    午前十時三十七分休憩      ——————————    午後一時四十分開会
  7. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまから沖縄問題等に関する特別委員会を再会いたします。  沖縄その他の固有領土に関しての対策樹立に関する調査中、沖縄施政権返還等に関する件を議題といたします。  本日は、参考人として南方同胞援護会会長大浜信泉君、南方同胞援護会評議員末次一郎君の御出席をいただいております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本特別委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  本日は、沖縄施政権返還等に関する件について御意見をお述べいただきます。なお、議事の都合上、まず御意見をお一人二十分程度で順次お述べいただき、その後委員からの質疑にお答えをお願いいたしたいと思っておりますので、よろしく御協力お願いいたします。まず、大浜参考人からお願いいたします。
  8. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) ただいま御指名いただきました大浜でございます。ここに御列席の末次一郎君と二人でアメリカに参りまして、前後四十日にわたりまして、アメリカ官辺筋では国防省国務省、それから大統領府等の官辺筋方々、並びに上院、下院の方々等に会い、その他民間としましては、極東問題の権威者である学者グループ、さらにアメリカ外交影響を持っておるかと思われます民間団体としてカウンシル・オブ・フォーリン・リレーションズ——外交懇談会と言っておるようでありますが、なお、ニューヨークにあります日本会、それからワシントンの日米協会会員等、その他スタンフォード大学カリフォルニア大学コロンビア大学等学者グループ等、大体百人近くの人に会ってまいったのであります。会うのは個別的に会いました場合もありますし、またはグループで会った場合もあるのであります。  どういう内容のことを話し、それに対してどういう反応があったかということを申し上げる前に、私の立場資格を申し上げたいと存じますが、私は政府の使節として参ったのでないことは申すまでもないのでありますが、その意味では民間人ではありますが、ただし、総理府の外郭団体沖縄問題を取り扱っております南方同胞援護会会長、さらに総務長官諮問機関として設けられた沖縄問題懇談会の座長という資格があり、かたがた、私自身沖縄出身者として従来から沖縄問題については政府方面に対しても進言、ある場合には助言等もしてきた立場にあり、社会的には非常に大きな責任があり、また、私の発言もある方面では相当反響が大きい立場にあるのだと、そういう立場から話をしてまいりましたし、アメリカ人々に会う際も私の立場を明白にして会ったのであります。なお、沖縄問題について、この問題提起前提条件といたしまして、このアプローチの角度にも関係しまして、これがおのずから私の発言の限界というものを規定するのじゃないかと思いまして、その点を先に申し上げたいと思うのであります。  御承知のように、沖縄には軍事基地があり、さらにアメリカ施政権があり、この二つが表裏の関係に不可分的にからみ合っておるわけであります。そこに沖縄問題の複雑性解決困難性があるのじゃないかと、こう思われるのであります。この二つ関係をどういうふうに理解するかということでありますが、アメリカは従来の声明から判断して、ほんとうにほしいのは軍事基地であって、施政権というのは基地維持、その使用の自由を保障する手段として考えておるのじゃないかというふうに考えられるのであります。そのことは、日本の歴代の総理大臣が渡米されてアメリカ大統領にお会いになって常に共同声明を出しておられるのでありますが、岸‐アイゼンハワー大統領共同声明、それから池田総理ケネディ大統領との共同声明、それから佐藤総理ジョンソン大統領との共同声明等について見ましても、日本側からは常に沖縄祖国復帰施政権返還というものを提起されたに対して、アメリカ側基地重要性を強調し、極東情勢が緩和しない限り施政権即時返還ということは困難である、しかし、アメリカ側としては一日も早く国際情勢が緩和してこの施政権返還、つまり、沖縄住民悲願である祖国復帰の実現が早くなることを期待しておるのだという趣旨声明を出されておるのであります。これに対して、日本側沖縄基地極東平和維持の上で果しておる大きな役割りを認め、さらに、ひいては日本国防との関連においても重要であるという見解をとっておらるるように理解しておるのであります。私の立場上、政府基本的方針を乗り越えた主張をすることはどうかと思いまして、今回はとにかく基地施政権というものを一応分離して考えて、ことばをかえて申しますれば、基地存続を認めながら、この施政については日本政府が直接責任を負い得るような態勢に持っていくべきであるという角度から主張をしてまいったのであります。  向こうで私から持ち出した意見は、これは、その相手方の立場なりあるいは前後の時間の関係等しんしゃくしまして、非常に詳しく述べたこともありますし、簡約して申したこともありますが、要は、戦後アメリカ沖縄統治というものが二十二年の久しきにわたっておる、当初の七年間は軍事占領でありますが、一九五二年から平和条約の発効とともに、アメリカ側平和条約の第三条に基づいて行政、立法、司法の全権を有するという規定に根拠を置いて、全面的にアメリカ施政のもとに置かれて今日に至っておる。これに対して沖縄住民がどう受け取ったかという点を申しますと、当時の敗戦に伴う精神的の虚脱、また経済的の窮乏、社会的混乱のさなかでアメリカ施政に移されたわけでありますので、沖縄住民もさほど強い抵抗を示すことなしにこれを甘受したということが言える。ところで、その後だんだん生活が安定してくると、沖縄住民も、自分たちの置かれておる特異な地位に疑惑の念を抱くと同時に、アメリカ施政に対していろいろ不信不満の点があらわれてきて、一日も早く祖国に復帰したいという考え方が強くなり、そういう運動が日を追うて盛んになりつつある。アメリカ沖縄に対する統治には、確かに一面においては明るい面がなきにしもあらずであるけれども、暗い面があるのだ。明るい面と申しますのは、アメリカ財政援助があり、なお大規模の軍事基地があって、常時数万のアメリカ軍人軍属が常駐しておりますので、そのことが沖縄経済にも大きく寄与している。裏返して言えば、沖縄経済基地に依存する形になっておる。その結果としまして、沖縄住民生活水準の向上、経済の繁栄の上に貢献していることは否定できない。しかし、独立の民族国家が、その領土の一部を本土から切り離して住民とともに他の国の統治下に置くということは、人類の歴史上あまり例のない、非常に異例の措置である。統治されるものの側から言えば、他民族による統治というものは、民族的の感情、ことに民族のプライドなり尊厳の上からたえがたいものがあるのだ。だから、どうしてもそういう特異な環境から解放されたいというふうな声が起こってくることは当然のことである。これは幾ら経済的の援助というものがあっても、民族感情というものは経済的の代償で相殺される性質のものではない。どうも、アメリカ側が非常にこれだけの財政援助をやり、また、基地が大いに沖縄経済に寄与しておることをアメリカの恩恵あるいは功績であるかのごとくに言われる人があるけれども、そういうものではないのだ。のみならず、長年の間のアメリカ統治の成果を振り返って見るというと、アメリカ軍人軍属と現地の住民との間にはたえずトラブルがあり、また、アメリカ人による犯罪——人権侵害だとか交通違反とかいろいろなトラブルが起こってくるけれども、それの処理のしかたを見ておるというと、あの体制では、アメリカ人の起こした事件の裁判の管轄権というものが軍法会議にあって、沖縄裁判所住民による裁判所にはないことになっているので、これが常に公正に処理されているかというと必ずしもそうではない。そこからアメリカ施政の公正に対する住民疑惑の念が起こってくるし、非常にアメリカ民主主義を誇示しているけれども、どうも実際にやっていることを見るというと、アメリカ民主主義を疑わしめるような事例も少なくない。そういうことがだんだんアメリカ施政に対する不信不満根拠になっているのだ。また、アメリカは財政的の寄与ということを非常に強調されるけれども、しかし、最近は日本経済高度成長の結果として、日本ではあらゆる面において生活水準その他が向上してきている。アメリカのやっている現在の財政援助だけではとうてい本土の類似県との比較においても著しい格差が出てきている。例を言えば、教育について言えば、学校の施設設備の面について見ても、日本本土と比べ格段の差がある。ことに社会保障という観点からすると、日本では社会保障制度というものが相当に拡充されているけれども沖縄ではいまだに——ようやく最近失業保険だとか健康保険という法が制定されたわけでありますけれども、しかし、日本本土に比べては非常に内容の貧弱なものであり、その面においても非常に格差が出てくる。そうなってくると、だんだんアメリカ施政に対する不信不満というものが起こり、それが同時に祖国復帰悲願となってあらわれてくるのじゃなかろうか。このままの情勢で放置するということになると、日米両国協力関係の上に大きな障害になるのじゃないかということもおそれる。で、基地が必要であるかどうかということは、これは別個の次元の問題であるので、私は一応は基地を肯定した上でものをこの際は考えるけれども、しかし、ああいう状態を放置するというとだんだん反米感情というものが高まる。また、日本本土内においてもアメリカの政策に対して非常な批判的な立場をとっている政治勢力がある。そういう人々立場から言えば、沖縄問題というものは、沖縄の実情というものは、反米感情をそそり、反米運動を起こさせるための好個の材料になるので、この点もアメリカ側で考うべきじゃないかということで、アメリカは最近財政援助の増大、それから自治権の拡大ということの方針をとって着々その方向へ必要な措置を講じておるけれども、むろん、それも必要なことであるけれども、そういう手段だけではとうてい沖縄問題というものは解決しないのだ。どうしても沖縄問題が日米両国協力関係の上に障害にならぬようにするためには、沖縄施政については直接日本政府責任を負い得る体制に切りかえていくことが両国のためではないかというふうに考えるのだ。むろん、理想的には全面的に施政権日本に返すということが望ましいけれども、一挙に全面返還がいま困難ならば、これは段階的に考えてもいい。段階的というのは、とにかく可能的なものからだんだん施政権日本に移すという姿勢で臨んでいくことが必要であるのではなかろうかということを強調し、もし段階的に進んでいく場合には、まず教育権を取り上げることが一番適当じゃないかということを考えておるわけであるが、しかし、教育の問題に何も限ったことではないのだというふうに説明をしてまいったのであります。そこでこの問題は、なかなか日本側にとってもアメリカ側にとっても重要な課題であると同時に、この解決にはいろいろな複雑な要素が入ってくることであるから、日米両国の間で沖縄問題をどう処理していくかということでお互い青写真をつくって、それを基礎にして、正式の外交ルートに乗せる前に外交ルートでも非公式に話し合いをするなり、あるいは国会議会レベル議員相互意見を交換するなり、あるいは民間団体あるいは学者グループ、あらゆるレベルお互い青写真をつくって具体的の討議を進めていくことが必要じゃないのだろうかということを強く強調してまいったのであります。そういう趣旨主張に対して示された反響としましては、官辺筋人々は非常に慎重でありまして、しかし、全然相手にしないというような態度は示さなかったのでありますが、昨年、末次君がこの種問題で南方同胞援護会からアメリカに行かれて官辺筋、あるいは民間グループとも会ってこられたのでありますが、昨年とことしとでは格段の相違が看取できるということを言っておられるのであります。昨年は、どこへ行っても、施政権に触れる問題は取りつく島がないほど非常にそっけない態度で応待したけれども、今回はそうでなしに、われわれの主張を大いに耳を傾けて聞き、官辺筋の人も、ポイントポイントに来ると、こういう点はどうかというふうに質問をしてきておりますし、また教育権返還問題などについても、ある高官は、内容はどういうものかと——私、いま懇談会検討しておる具体的内容を詳細に説明しましたが、それに対してよく理解したようであります。それで、官辺筋の受け答えの空気なり、ことばの節々から観測できることは、どうもアメリカ官辺筋でも、沖縄問題はこのままほうっておけない、何とかしなければならぬという空気が起こっておる。だから、部分的には、事務的のレベルではあらゆるいろいろな可能性について検討を始めだしているのじゃないかというふうに受け取れる面もあるのであります。また、議会方面方々立場官辺筋の人よりは自由な立場、より高度な立場におられるわけでありますが、大体この問題は国会そのものイニシアチブをとって持ち出す問題じゃなくて、アメリカ国務省なり国防省なり担当のエグゼキュティブ——行政府のほうから問題を提議されて、コングレスとしてアメリカ政府方針決定に取りかかるという段取りになるので、いまエグゼキュティブのほうから提議をなされていないのだということを前提として私ども主張をよく聞いてくれて、もしそうなったときにはこういうことが気になるのだがどうかという反問のしかたもいろいろあったのであります。非常に深い関心を示してくれたということが申せるのではないかと思うのであります。また学者グループ民間グループになりますと、立場がもっとフリーになりますので、その発言に直接責任を負わなくてもいい立場にありますから、相当思い切った議論が出たのであります。ある学者は、これはアメリカ政府筋相当影響力を持っておる学者でありますが、この沖縄問題の解決は三段階を経るものだと自分は観測している。第一段階自治権財政援助を増大して日本本土との格差の是正に重点を置く段階。その次には施政権返還。第三段階になって初めて軍事基地の撤収ということを考えなければならない。いまは第一段階にあるけれども施政権全面返還問題も検討しなければならない時期が来ているのだというようなことを言っておったのであります。いまベトナム戦争が盛んに行なわれておる最中でありますので、沖縄問題の施政権返還問題に触れることはタイミングの上からどうかということをただしたのに対しては、これはいますぐ返せないかもしれぬけれども、しかし、タイミングとしては決して悪くない。むしろ適当な時期だと自分たちは思っている。なぜならば、ベトナム戦争というものは、これはいつまでも続くものではない。いずれ近いうちに解決するものである。そうなれば沖縄返還するということと当然取り組まなければならないのだから、いまから検討することが望ましいのだというようなことを言っておる学者もあったのであります。それからもう一人、これは非常にアメリカ政府と密接な関係があり影響力のある学者でありますけれども、この方は、一九七〇年までに沖縄問題を解決する必要があると自分は痛感しているのだ。で、問題はきわめて簡単であるように思う。施政権を全面的に返還することが目標であるけれども、その前提として、いま軍事基地が、法律上の根拠としては平和条約に基づく施政権にその根拠を求めておるわけであります。施政権を返してしまうというと軍事基地根拠がなくなるので、だから、新たな条約締結してこの軍事基地存続法律上の根拠を与える、それから、その使用の自由について保障を与える、そういう新しい条約締結すれば、アメリカ施政権を返すことには何らやぶさかでないわけなので、その道が一番解決への近道ではないだろうかということを強調しておられたのでありますが、ただ、それに対して私のぼうから、どうも、確かにそれも一つ考え方ではあるけれども、問題は、日本の国内の政治情勢から見て、そういう条約締結ということは相当困難が予想されるのだということを言いましたら、その人は、この二、三年の日本の世論の動向を見ていると、必ずしもそう困難とは思えない。日本ではどうも国防意識が高まってきておるし、また、極東情勢に対する認識も高まってきておるので、政府さえ決意をすれば、そういう新たな条約締結も必ずしも不可能ではないのではないかというふうに自分は観測しているのだ。ただその場合、施政権日本返還された場合には、当然日本憲法沖縄にも適用されるわけなので、もし沖縄基地核兵器を持ち込む、そういう特殊な基地条約で認めるということになると、憲法との関係が大きな問題になるので、核兵器というものは攻撃兵器でありますので、はたして日本現行憲法核兵器を認める必要性基地を認める条約締結することができるかどうか、ここに一つの問題があるんだ、こういう角度から問題を提起しますと、その人が、どうも核兵器というものは、アメリカ立場から言えば、必ずしも沖縄基地を置かなければならぬという理由はないんだ、核兵器はミサイルで遠くから発射できる性質のものであるし、アメリカにはポラリス潜水艦が多数あるし、なお、沖縄のほかグアムにも基地を持っておるのであるから、核兵器の持ち込みというものは、日本政府が強く主張すればアメリカ側は必ずしも固執しないのではないか。残る問題は、むしろ、基地根拠にして作戦地域に軍隊を出動する際に、安保条約では事前協議が必要になっておりますけれども沖縄基地から出動する場合にも、一々事前協議が必要だということで、基地の利用の面に制約が加えられるということになると非常に困るけれども、そういう事前協議が要らないという趣旨条約締結ができればいいじゃないだろうかというような意見を言っておったのであります。これも一つの御参考になろうかと思いまして申し上げるわけでありますが、なお、学者によっては、どうも日本がもう少しみずからを守ること、日本国防自体について真剣になってもらう必要があるのではないか。とにかく、いまアメリカ援助によって国の安全を保っているような態勢にあるわけで、その点がもう少しはっきりしないというと、強く沖縄問題について主張ができないじゃないだろうかということを言う人もあったのであります。しかし、そういう方面のそういう趣旨発言というものは、官辺筋は話には全然出ておりませんし、非常にその点は慎重であったのであります。そこで、私が、官辺筋にも、あるいは民間団体に対しても、今後、日米両国お互い立場主張し、今後、沖縄問題をどういう方針でどういう段階を経て解決していくんだという具体的な点について意見を交換しよう、ディスカスをする機会をつくりたいんだということを強く主張しまして、民間学者グループ、あるいは民間団体等では、大体賛意を表されたのであります。この面については民間的なものでありますので、私ども今後、具体的にそういう機会をつくりたいということで、いま計画、検討中であるのでありますが、また青写真ができれば、これはアメリカ官辺筋日本官辺筋との間にも非公式の話し合いを始めていくべきじゃないかというふうに考えるのであります。これはあちらでも指摘されたことでありますけれども、問題の性質上、どこの国がインシアチブをとるかという問題があるのでありますが、これはどう考えましても、日本側からアメリカ側に問題を提起していく以外にはないので、アメリカ自分の持っておるものを返すのでありますから、向こうのほうから、こっちから求めないのに、向こう施政権のこの部分を返しましょうということが出てくる気づかいはないのであります。どこまでも日本側イニシアチブをとらなければならぬ問題であると考えるのであります。そのためにはどうしても日本側で明確な青写真をつくることが必要だということを痛感したのであります。青写真と申しましても、何年何月にどうというタイム・テーブルの意味では困難かと思いますけれども、とにかく、どういう基本方針のもとにどういう手順を経てこの問題を解決していくかという方針の確立は必要であるのじゃないかというふうに考えているのであります。  そこで、日本に帰りまして佐藤総理大臣並びに三木外務大臣にもお会いした際にも、私どもアメリカで話をしてきたこと、それに対して感じ取った反応、反響について詳細に報告申し上げるとともに、ぜひ政府部内に沖縄問題を全般的に高い次元から検討する審議会を設置していただきたい、そこで沖縄問題をあらゆる観点から検討して、日本側がどういう手順を経ていかなる手を打つべきか等々、できるだけその措置内容等について検討をしてもらって、それで日本政府方針を確立してもらいたいということをお願い申し上げてきたのであります。佐藤総理は、近く総理の諮問機関として沖縄問題審議会というものを設置し、そこにそういう問題の検討を委託するということを発表しておられますが、私の報告に対しても、ぜひそうしたいということを言っておられたのであります。  なお、新聞関係とも渡りをつけておくことが必要だと思いまして、外交問題については世論形成の上に権威のあるニューヨーク・タイムズの編集長、国内的に非常に影響力を持っておるワシントン・ポストの編集長にも会いまして、私ども主張をよく詳細に説明し、すぐこの問題を新聞に取り上げて書いてもらいたい、ということはいま頼むわけじゃないけれども、将来、適当な時期にそのときどきの情勢に応じて沖縄問題をこういう方向へ扱ってもらいたいということを希望を述べ、私もできるだけ関係資料というものはそのつど送るからよろしくということを申し上げ、向こうも大体了承したようでありまして、二、三日前アメリカから来た手紙によりますと、ワシントン・ポストは、教育権の分離返還問題を論説に取り上げて扱っておるようであります。私どもの今回の使命は、問題を提起してそこで交渉して結論を得るということに主眼があったわけではなく、アメリカの考慮を促して、とにかく、今後、日本政府沖縄問題を取り上げていかれる際の素地をつくる機運つくり出すという趣旨で参ったのであります。その限りにおいては一応は目的を達し得たのじゃないだろうか、こう思うのであります。  なお、問題が問題でありますので、幾ら政府が決意されましても、やはり背後の国民世論というものが強力に結成されなければならぬと思うのであります。その意味において、日本本土並びに沖縄の現地においても政府方針を実現するのにその背景になる世論の形成ということがぜひ必要じゃないだろうか。だが、その場合に、単なる大衆運動化し反米運動の形が強く打ち出されるということになると、結果においては逆効果になる点もあるので、世論の形成の上には細心の注意が必要じゃないかということを考えておるのであります。  一応、ざっと、アメリカで会った方面人々、私ども主張しました意見の大綱と、それに対して示された反応等を申し上げましたが、このくらいにとどめて、あとで御質問に応じてお答えを申し上げたいと存まじす。どうも長いこと御清聴ありがとうございました。
  9. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ありがとうございました。  次に、末次参考人にお願いいたします。はなはだ失礼でございますが、後ほどまた質問に答えていただきますので、できますことならば、二十分以内で意見をまとめていただきたいと思います。
  10. 末次一郎

    参考人末次一郎君) 時間もございませんから、ごく要点のみ簡潔に補足さしていただきます。  先ほど来大浜会長から御報告がございました私どもが会いました人々は、官民百名をこえる人々でありますが、その中のおもなる方々をまず申し上げす。  政府関係ではホワイトハウスで大統領がちょうど不在でもありましたので、その補佐官をしておられるウォルト・ホイットマン・ロストウ特別補佐官、それから安全保障を担当しておられますウィリアム・ジョルデン特別補佐官、そのほかスタッフの人々とお会いいたしました。国防総省——ペンタゴンでは、極東関係を担当しておられますマックノートン国防次官補、陸軍長官リーザー氏、同じく陸軍省のホルト陸軍次官補という方々、及びそのスタッフの人々であります。国務省ではユージン・ロストウ国務次官、極東担当のバーガー国務次官補代理、そのほか文化担当のフランケル国務次官補、あるいは日本部長のスナイダー氏その他のスタッフの方々でございました。議会関係では、上院がちょうど審議が非常に忙しいさなかでありましたために十分に会えなかったのでありますが、ハワイ選出のダニエル・井上氏とは十分話し合いをいたしました。なお、外交委員長のフルブライト氏及びマンスフィールド院内総務はそれぞれ時間がないからというので、先方の御指定によりまして、それぞれの政策補佐官をしておられるジョーンズ氏あるいはヴァレオ氏というような人々と長時間話し合いをいたしました。下院関係では十数名の議員と話し合いをいたしましたが、特にマコーミック議長とは約一時間にわたって話し合いをいたしました。そのほか、日本になじみの深いスパーク・松永氏、あるいは外交委員会の極東委員長をしておられますザブロッキー氏、あるいは軍事委員の海外援助で知られておるプライス氏、あるいはアルバート院内総務、その他軍事委員会、外交委員会のメンバー十数名と食事をともにしながら話し合いをいたしました。  一般の学界関係では、せんだってまで日本の大使をしておられて、いまハーバード大学教授をしておられるライシャワー氏、あるいはコンロン報告の執筆者として知られておるカリフォルニア大学のスカラピーノ氏、あるいはサンフランシスコ近郊のスタンフォード大学でライシャワー氏のもとで講師をしておられるエマーソン氏ほか極東関係の教授約十名程度の方々話し合いをいたしました。またコロンビア大学では、カーク総長以下極東研究所の主要教授メンバーと二回にわたって前後五時間程度の話し合いをいたしましたし、ワシントンでは、アメリカン大学の教授グループ話し合いをいたしました。ロスアンゼルスでは、カリフォルニア大学のロスアンゼルス分校あるいは南カリフォルニア大学及び州立大学などの関係者約六大学の代表にお集まりいただいて、ここではセミナー形式で約三時間に及ぶ沖縄問題に関する討論をいたしました。  以上の学者関係のほかに、先ほどお話がありましたワシントン・ポストあるいはニューヨーク・タイムズのそれぞれの編集長と会いましたほか、ニューヨークのフォーリン・アフェァーズという雑誌を出しておられることで知られておりますカウンシル・オブ・フォーリン・リレーションズのメンバー、それからニューヨークの日本協会、ワシントンの日米協会方々とそれぞれ数時間にわたって話し合いをいたしました。  以上がおもな方々でありますが、その方々との意見交換の方式は、先ほど会長からお話がありましたように、会長の御主張をできるだけ訴えるということでありますが、同時に、その間に相手方の意見をできるだけ引っぱり出したいという着意で話し合いをいたしました。したがって、相手の方の立場やあるいは与えられている時間を考慮して、話し合いのしかたはそのつどやり方を変えるなどくふうをこらして、できるだけ密度の高い話し合いをすることにつとめていたわけであります。したがいまして、先ほど御説明がありましたように、当方の考え方を十分に説明すると同時に、先方の話を引っぱり出す、あるいはまた、将来の日米間の話し合いが必要であるということを強調する意味で、特に状況に応じて、私が先生のお許しを得て、私見と称していろいろな問題をぶつけるなど、いろいろとくふういたしました。たとえば講和条約第三条の有効性の問題とか、あるいは日米安保条約第五条の防衛区域の規定が、御承知のように、「日本施政下にある領域」というふうに規定されているのでありますが、一九六 ○年の段階では、およそ日本施政沖縄に及んでいなかったのであります。しかし、昨今では財政援助が急速にふえたのをはじめとして、かなり接触面がふえておりますし、今後数年の間にはかなり拡大していくであろう。そういう場合に、アメリカ側として、大体安保条約沖縄とは無関係だという考え方をとっている向きが多いので、はたして無関係と言えるかどうかということの問題提起をいたしました。それから、基地重要性があらゆる場合に提起されましたが、基地が重要であることは認めるとしても、その基地が一体どのように重要であるかということについて明確に答えが出されない限り、現地沖縄人々は納得できないだろうという意味で、そういうことを説明するために、過去二十年に及ぶアメリカ基地が、情勢の変化に応じて基地そのものの性格が常に変わってきたのではないかというようなことを綿密に指摘するなど、いろいろな角度から問題提起をいたしまして、できるだけアメリカ側考え方を引っぱり出そうとしたのであります。先ほど大浜会長からお話がありました、アメリカ側のわれわれに与えた感触というのは、そういうやり取りの中から得られたものであるということを補足申し上げたいと思います。  なおその次に、やはりさっきのお話の中に、昨年と今年ではかなり違っているということにお触れになりました。これはお話にも出ましたように、ちょうど一年前に同じく南方同胞援護会の使いとして私自身アメリカに行ってまいりまして、今回と同じように、各方面人々と率直に意見を交換してまいりました。そのときの印象と今回の印象とを比較いたしますと、先ほどお話しのように、著しく違うのであります。  その点を簡単に若干御説明いたします。先ほど大浜会長のお話の中に、ある学者沖縄問題を解決する方法として三つの段階を考えるということを述べた人がいるということにお触れになりましたが、この見解を述べたある学者というのは、日本及び沖縄にかなり深い関係を持つ人でありますが、昨年私が参りました段階におきましては、そうした具体的な考え方はほとんど明らかにしなかった、というよりも、まだ持っていなかったと申し上げていいと思います。ただ、沖縄を知り、日本を知っている立場から、とにかくこのままではいけないのだ、何とかしなければならんということは繰り返し繰り返し強調いたしました。それではという具体的な論議に入りますと、なかなか自分の考えをまとめていないという態度でありましたが、今回はみずから進んで自分考え方を披瀝するなど、非常に積極的に、しかも建設的にいろいろ考えているということを強く感じました。また一般民間学者グループの場合にも、昨年の段階では、現地の施政を改善する。つまり、財政援助の拡大とか、琉球政府自治権を広げるとか、そういうことにほとんど限定されておりましたのが、今回はさらに本質的な問題である施政権返還という問題について積極的に考えておる姿勢あるいはその考え方がきわめて明らかにされてまいりました。この点は非常に大きな昨年との対比による相違点でありまして、私どもとしては非常に意を強くしたわけです。また、政府筋におきましても、昨年われわれが参りました段階は、まだ現在のアンガー・ハイ・コミッショナーが到着しておりませんで、前のワトソン高等弁務官の時代でございました。そうして、御存じの裁判権移送問題がまだ問題とされていた時期でございまして、さかのぼって、キャラウェー高等弁務官時代に起こったいろいろな問題を始末するという意味も含めて、ワトソン氏時代になるとかなり改善されたとはいいながら、それはほんの緒についた段階でありましたが、現在は御存じのように、かなり積極的に施政改善が行なわれております。したがいまして、施政の改善、つまり現地において高等弁務官の許される権限内における施政の改善という問題についても、昨年の段階ではさほど積極的な意気込みを見せておらなかったのが、今回は非常な意気込みを見せておりまして、政府関係との話し合いの中でも、随所に、もっとわれわれは権限を琉球政府に渡したい、しかし、琉球政府側の能力にも限度があるから一ぺんにはいかぬのだというようなことを政府筋側からもしきりに繰り返すというほどでございました。もちろん私どもとしては、それを聞き流すのじゃなくて、琉球政府の自治能力を拡大するためには、日本政府との間に人事交流の道を開くなど本質に触れないでこの自治能力の問題を改めるだけではだめだとか、あるいはアメリカの民政府は、つまりUSCARが四百名をこえるスタッフをかかえていつまでもおって、ああいう形でいて、権限を譲るといったってできっこないので、あれを思い切って縮小して、ほんの十数名あるいは数十名のアドバイザー・グループにする考えでなければだめじゃないかといったような問題の切り出しもいたしましたが、いずれにいたしましても、施政改善に関しましては、非常に積極的な意気込みがありました。また、これは先ほどお触れになりました点でありますが、昨年は施政権の問題にわれわれが触れますと、かたくなな態度を見せまして、われわれはかまわずに一方的にわれわれの考え方をぶつけたわけでありましたが、これに対する応答というものはほとんど見るべきものがございませんでした。しかし今回は、将来の基本的な解決のためには施政権日本に返すというところに踏み込まねばならぬのだということを会長から繰り返し力説されるのに対し、初めは慎重でありましたが、次第にわれわれのペースに乗って問答を始めることになり、やがては先方からいろいろな問題提起をしてくるという反応のしかたの中に、昨年との非常な違いを見出すことができたと思います。こまかいことはいろいろございますが、一応そういうふうに、昨年とことしは違っておったというふうに申し上げられると思います。  最後に、会長のお話の結びにありますように、結局は日本側が積極的な姿勢をもって問題提起をすべきである。そのためには、ただ漠然とした問題提起ではなくて、将来の青写真を描き、それへのプロセスを描いてアメリカの説得に当たるべきであるということを強調なさったのでありますが、そういうことの根底として、われわれがはっきりつかんでおかなければならぬと思われます幾つかの点に触れて終わりたいと思います。  その第一は、アメリカ側では、この沖縄基地の有用性あるいは基地必要性ということについては譲歩する余地が全くないほどこれに対する執着がある。これはいろんな理由があるわけでありまして、ここでは触れませんが、要するに、別の言い方をいたしますと、直ちに基地を撤廃させるということは、これはもうおよそ不可能であるという感触をわれわれとしては受けたということであります。もちろん、基地内容については、先ほど御紹介のように、学者によっていろいろの所見の違いはございますけれども基地に対する執着というものは牢固たるものがあるということが第一であります。  第二には、したがってと考えてよろしいと思うのですが、施政権の問題に触れますと、つまり施政権日本に返しなさいという問題に触れますと、全般を通じてきわめて慎重でありましたのは、実はアメリカ側の認識としては、基地をささえておる根拠施政権を持っておるということに由来するという点を深く考慮しておるからだと思われます。つまり、もしも施政権日本に返すということになりますと、それによってささえられておる基地保有の権限というものはなくなる、あるいはくずれていくわけでありまして、この点から施政権の問題に触れることについては非常に慎重であったというふうにわれわれは観察をいたしました。  第三番目の問題は、しかしながら、だからといって、いまのままでいいという考え方アメリカ側にあるわけじゃない。それが、先ほど来申し上げる現地において高等弁務官に与えられておる権限内における施政の改善ということについて、きわめて意欲的な姿勢を見せておる。つまり、このままではいけないということでの対応の一つがこれであるというふうに私どもとしては受けとめたわけであります。  さらに進んで、これも先ほど来のお話にありましたように、それでは現地の施政を改善するだけで沖縄の問題が解決するのかというと、必ずしもそうではないという認識が、これはもう昨年はあまり見ることができなかった点でありますが、ことしは各方面に非常に深く認識されつつある。もちろん、これが大きく大方針として取り上げられておるというほどわれわれ甘く見ません。しかし、それぞれの省、あるいはそれぞれの担当分野において、やはり将来の問題を考えなければならぬのだというかまえがうかがえるのは、実は現地における施政改善だけで問題の本質的な解決はできないということを次第に認識してきつつあるからだというふうにわれわれは理解するわけです。したがいまして、われわれとしましては、最後に申し述べたこの点に今後対応していくポイントがある、それには、ただいたずらにただ返せと言うだけではなくて、こういう方法で、こういう解決のしかたがあるではないかという積極的な、建設的な姿勢をもって臨むということが必要であるし、そういう姿勢をとって臨むとすれば、アメリカ側はこれに応じてくる可能性を十分に持っておると見て間違いないだろうと、こういうことが会長の最後にお述べになりました、政府が早急に青写真づくりに取り組むべしとする考えの基礎をなす認識であるということをつけ加えておきたいと思います。終わり。
  11. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまの参考人意見に対し質疑のある方は、順次御発言を願います。  なお、最初にお願いしておきますが、だいぶ時間も狂いましたので、できればお一人十分程度につづめていただきたいと思います。
  12. 森元治郎

    ○森元治郎君 お話を伺ってちょっと期待が違ったというか、大浜さんの前提条件——南方同胞援護会会長、総理府の沖縄問題懇談会会長沖縄出身、そういう前提条件。それからもう一つ前提は、大浜さんの行かれた大きな内容前提としては、軍事基地施政権を分けて相談を持ちかけたという点にちょっと私は、もう一段前にやはり全面返還、いわゆる条約には軍事基地なんて書いてないから、あの条約のそのままの沖縄、小笠原で、東経、西経何度でいって、次にお分けになったらまたよかったと思うが、議論はいたしません。  そこで、いままで政府は岸・アイゼンハワー、池田・ケネディ、佐藤・ジョンソン、いろんな共同声明を出しながら、一生懸命交渉しているようなことを——交渉じゃない——話し合いをしているように聞いておったんだが、声明は出たけれども、それほど向こうではシーリアスにとってないという感じを受けることが第一点。  それから、私も先ほどお話があった学者連中その他とも四、五年前十分懇談したことがあるが、アメリカは自由な国で、デモクラシーの国だから何かおもしろい、われわれの想像できないような若々しい意見があるかと思うと、案外一本なんですね。ものの思考方法、この点が私はアメリカへ行って驚いて、デモクラシーと言うが、さっぱり固いということ、それからもう一つ大浜さんのことばでは、官辺筋は相手にしない態度ではないと、慎重だと、この問題出すと。そこで一体、官辺筋では昨年より格段の相違が見られるが、どこかで真剣にある機関で検討をしているんだろうかどうだろうか。ただ慎重、聞こう、聞こうという空気だけなのか。私は大浜さんが行かれてよかったと思うのは、向こうがやっと気がついたような顔をしたんだか、ほんとうに気がついたか知らぬが、初めてたいへん耳をかしたと。大浜さんのお話では、エグゼキュティブのほうがイニシアチブをとるならばと、コングレスのほうは言っていると言うが、アメリカという国は、御承知のようにコングレスのほうが強いんですから、やはり共和、民主両党の相当な人がイニシアをとることが大事だと思うが、さっぱり議会のほうは冷たい。まず行政府がとれと、こういうところに、まだ真剣になっていないんじゃないか。  第四点、この学者連中が三段階に分けていると言いますが、アメリカのものの考え方には、基地というのはこれは別なんだと、沖縄、小笠原というものをただ基地としてとらえているのか、この点が私返還問題に分けて考えていることがおかしいと思うんです。  もう一つは、この青写真を持ってきたらというのは、持ってお話し合いに臨んだほうが政府としてはいいんじゃないかと進言をされたが、そういう場合に向こう話し合いに乗るかどうか。国防あるいは国務、議会方面がそういうことを受ける態勢があるという確信がおありであるかどうかですね。それらのことについて、簡単でけっこうですが、ひとつ感想をお聞かせ願います。
  13. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) 第一点の、歴代の総理がアメリカ大統領と会見して、沖縄問題を提起しそうして共同声明を発しておるけれども、はたして歴代総理というものが強くこの問題を打ち出してアメリカも非常にシーリアスにこれを受けとめたかどうかということでありますが、これはちょっと過去の過ぎ去ったことのせんさくになるんでありますけれども、どうもどの程度突っ込んで話し合いなされたか、これは私は今回の渡米では知ることはできなかったんでありますけれども。  第二点、官辺筋の人が非常に慎重であったと申し上げましたが、まあ、相手にしないということではありませんで、民間の人のようないろんな角度から、こういうこともあるんじゃないかとか、段階を経なければならぬとか、ああいう言い方をしないで、また、こういう条約締結すれば簡単に解決するじゃないかという新しいその方針を打ち出すような意見は出さないで、とにかくこっちの言うことを聞いて、いろんな要点要点に質問をするという程度であったということでありまして、別に相手にしなかったということではないんであります。こっちから言うことはよく聞いてくれたと、こう話をしておるんであります。  なお、コングレスと行政府との関係でありますけれども、確かにコングレスが非常に強いのでありますけれども、どうも具体的にこれをすでにきまっておる事態に新しい局面を打開していこうとコングレスのほうから問題を提起されることもありましょうけれども、まず施政権返還とかなんとかいうようなことになると、やっぱり行政府のほうから問題を先に持ち出してこないと、自分たちのほうからイニシアチブをとってやるわけにはいかないんだという弁明が一、二の議員からあったんであります。だけれども、決して、じゃあ、議員諸君が、議員の方々がこの問題に自分たち全然熱意を示さないかというと、必ずしもそうではないように私はとるんでありますけれども、それは学者グループが、やはり基地の存在というものを肯定した上で、問題打開の別の面のことを言っておることは確かでありますが、どうもアメリカでは、国家の利益、国の外交方針ということになると、自由な立場にある学者というものも、大体その線に沿ってものを考えるという人が多いので、全くアメリカのナショナル・インタレストなり政府の指示の線を離れた批判的の意見というものが、まあ、概して非常に弱いんじゃないか。これは日本と非常に国情が違うと思うのであります。非常にわれわれから見ると歯がゆいと思うのでありますけれどもアメリカの国の体質がそういうふうじゃないかというふうに受け取るのであります。  なお最後に、こっちが青写真を持って当たっていけば、打開する見込みが、確信があるかというお尋ねでありますけれども、これはまあはっきりした方針を打ち立てて話を進めていけば、一挙に全面返還ということはできないかもしれませんけれども、あるいは部分的な解決くらいのことは、あるいは解決のめどは一応つくんじゃないか。また、門戸は開けていくんじゃないかというふうに考える。いままで総理が行かれ、あらゆる機会沖縄祖国復帰施政権返還、いろいろな問題が提起されておるけれども、具体的な内容を持ってぶつかったことはないので、ごく漫然と理想を述べて、遠くへボールを投げておるようなことになっておる。ほんとうに問題の核心に触れて向こうと突っ込んで話をした機会というものがないんじゃないだろうか。だから、こっちに確固たる方針を持って強く押していけば、打開の道が開けるんじゃないかというふうな観測をするんでありますが、相手のあることでありますので、きっとそうなるという確信ということは申し上げることは差し控えたいと思うのであります。まあ、前提条件で申し上げたことは、確かに歯がゆいという、期待に反したとおっしゃることはごもっともでありますが、この点は、私参るについて、どういう立場で、どういう角度主張しようかということをいろいろ考えてみましたけれども、いま政府がとられておるワク内で一応ぶつかってみることが、一応私の立場上は適当だと考えまして、基地存続は一応前提とした上で、基地施政権を離して、施政権返還という点に重点を置いたんであります。
  14. 森元治郎

    ○森元治郎君 もう一点、アメリカ青写真の私の御質問の趣旨は、打開できるかという重点の前に、その申し入れをすれば、向こう外交チャンネルの議題として乗るかどうか、受け取るかどうか、それすらも受け取らないかもしらんからね。それが一つ。  それから小笠原の問題も、やはりそうやって軍事基地施政権と分けて話されたのかどうか。沖縄列島以外の小笠原の問題が一緒に主張されたかどうか、その反応。  もう一つは、アメリカ沖縄軍事基地を自由に使えれば、あそこにプライス法だの何だの、文句を言われながら財政援助するのはもうめんどうなんだ、足手まといなんだ、全部基地としての沖縄がほしいので、ほかはもう荷やっかいで、できれば日本に、筋さえ立てればというふうな、財政負担に少しアメリカはつらいといいますか、そういう感じを持っているのかどうか、その三点をお尋ねいたします。それで終わりです。
  15. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) 第一点の、こっちから青写真を持って向こうに当たった場合に正式の話題に乗せて応じてくるかという観測でありますが、これは私は応じてくるんじゃないか。結論がどうなるか知りませんけれども、一応話題に乗せて、折衝には相手になるんじゃないかと、こういうふうに観測するのであります。  第二点の小笠原の問題でありますが、今回私ども沖縄に集中しまして、小笠原問題にはあまり触れなかったのであります。  それから第三点の、どうも施政責任を負うことにもう荷やっかいになってその施政権は返してもいい……
  16. 森元治郎

    ○森元治郎君 基地だけほしい、と。
  17. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) というような、確かに財政負担には相当悩んでおるんじゃないかと思われることは、いまプライス法のアメリカ財政援助が千二百万ドルになっておるのを二千五百万ドルに増額するという改正案が出て、下院は通過しましたけれども、上院でひっかかっておった時代でありますが、上院の責任者に会ったときにその観測を聞いてみたのでありますけれども、どうも二千五百万ドルは困難じゃないか、あるいは千七百万ドル、八百万ドルになるんじゃないだろうかというふうに考えておるんだという話をしておったぐらいでありますから、私は機会あるごとに、日本政府財政援助がだんだんふえてきて、昭和四十二年度の財政援助は百三億をこえておる、それでアメリカ財政援助は現在のところは四十何億しかならないので、プライス法が二千五百万ドルまで改正されても、やはり日本援助には及ばない、日本財政援助がだんだん大きくなれば、日本国内において、これは政治的には、これは金を出す以上は、もう少し発言権を持つべきじゃないかという意見も出てくる、これは当然のことだということを強調してきたのですけれども、しかし、そう言いながら、どうもこの基地というものが非常に沖縄経済に寄与しておる点を強調するのでありますが、いま、年間、輸入超過が一億四、五千万ドルに毎年なっておるのでありますが、この輸入超過というものは何でペイしておるかといえば、やはり基地を通じてドルが流れるわけです。それを非常にアメリカ援助みたいに考えてものを考えるべきであると言う人があるのです。これに対しては、援助をされることと全然別個である、これは間違いだということは、私は強く主張してきたのでありますが、確かに財政負担のほうは荷やっかいになったと考えておることは事実だと思います。そうかといって、基地がほしいからその根拠になる施政権がほしいというのがアメリカ立場ではないかというふうに考えております。
  18. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 大浜先生から、アメリカ側と交渉するにはやはりこちら側でブルー・プリントをつくっていかなければならぬ——私ももちろんそれには賛成なんであります。ただ返せ、返せと言うだけではいけないと思うのであります。ブルー・プリントというのは、かなり具体的になると思うのです。しかし、その前提として、私はやっぱり佐藤総理なり、あるいはまた、その次にどなたが総理になろうが、その総理とジョンソン大統領あるいはその他の大統領、そういうものとの間に、大体沖縄全面返還とか、あるいはまた、しばらく軍事基地は保留するが施政権は返そう。それは年数は限らないけれども、大体いつごろまでに返そう、そういうトップ・レベルにおいて大体の話ができて、その上で日本側から、それじゃこうこうこういう方法があるではないかというので出して、初めてブルー・プリントというのが生きてくると思うのです。だからブルー・プリントをいきなり出して、それで話の糸口がつくのだ、返るのだということではないと思うのです。これは私の意見なんです。やはりそういうために、私は日本政府がちゃんとした姿勢をとること、また国民の世論、また現地の住民方々が強い希望と意思を表明されて、それがささえになっていくことが必要であろうと思っております。で、その点で私はいまの佐藤総理考え方が多少動揺をしておるのではないかと思うのです。たとえば佐藤内閣ができましてから、森総務長官のときには教育権の分離返還ということでアメリカ側と交渉をされるような態勢をとっておった。しかしながら、昨年の十一月にジョンソン・アメリカ大使から、それはできないということでだめになったわけであります。国会の答弁におきましても、だんだん変わってまいりまして、最近ではいわゆる分離返還、これは地域的分離返還でもあるいは機能別分離返還でもこれは観念的であると、こういうようなことでいわゆる全面返還主張される。あるいはまた下田発言に対しては否定的な態度をとられる。私どもに言わせれば、いわゆる全面返還論のような立場をとっておられたように思うのです。こういうふうに、内閣自身においてその方針に動揺があるということは、これは私はやはり話がなかなかやりにくい面があるのじゃないか、また、そういうようなことであると、いわゆるブルー・プリントをつくる場合に迷いが出てくる。ブルー・プリントなんか何通つくってもいいかもしれませんけれども、それにしても基本的態度というものがしゃんとしていないと話はしにくくなる、こう思っておるのです。いずれにせよ、政府態度をしゃんとしていただくことが私はあらゆる交渉に先立って必要である。そういう意味で、もし総理の諮問機関として新しい審議会なり懇談会なりが出発した場合には、これは大浜先生のほうからも、そういう点について政府自身が外から見て動揺しておるのでないというしゃんとした態度をとるように十分にハッパをかけていただく、あるいは入れ知恵をしていただく、策を献じていただく、そういうふうにしていただきたいと思う。これは私のほうから大浜先生に対するお願いです。
  19. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ちょっと速記とめて。
  20. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記を始めて。
  21. 植木光教

    ○植木光教君 どうぞおすわりになったままでけっこうですから。  基地存続を肯定するという立場向こうへ行かれていろいろお話しになったわけですけれども基地としての沖縄、特に核基地としての沖縄アメリカ側がどう評価しているかというようなことについてお聞きしたいのです。と申しますのは、軍事的な技術が進歩する、あるいは軍事戦略が変化していくというようなことに応じて、特に核基地としての価値はだんだん薄れていくんじゃないか、むしろゼロじゃないか。さっきも少しお話がありましたけれども、そういうような考え方があるわけです。その点についてまず第一点、お聞きしたいと思います。  それから第二点は、いまちょっと出ましたが、教育権の分離返還ですが、特に大浜先生は、沖縄地区の教育権返還構想というようなものもお書きになって、この点についてたいへん熱心な姿勢をとっておられたわけでございまけれども向こうでお話しになって、いわゆる青写真一つの足がかりとしての、また返還の足がかりとしての教育権返還ということが、可能性がどれぐらいあるとお感じになったか、これが第二点です。  それから第三点は、先生方の日程表を見ますと、パナマだとか、プエルトリコなんかにも行っておられるわけですが、沖縄と事情は違うと思いますが、何か沖縄と関連して参考になることがありましたならばお聞かせをいただきたいと思います。  それから最後に第四点として、先ほど来、今後の日本の取り組み方で、青写真の問題、政府態度の問題というのが出ておりましたけれども、国民運動の点について積極的、建設的でなければならぬというのとともに、反米運動はかえってマイナスになるんじゃないか、基地撤廃闘争一本やりではどうにもならぬのじゃないかというようなお話がございましたが、国民運動を今後どういうふうに展開していけばよいとお考えになっているか、さらにもう少しお考えをお聞かせいただきたいと思います。  以上でございます。
  22. 大浜信泉

    参考人大浜信泉君) お許しを得ましてすわったままでお答えしたいと思います。  第一点の基地に関するアメリカの評価でありますが、これは学者グループでも、官辺筋でも、基地重要性というものを強調される人が非常に多かったのであります。ことにある高官のごときは、地図をかいて、沖縄基地の位置と、将来国際紛争が予想されるような場所、場所を指摘しまして、どうもこの基地というものが大きなかなめになっておって非常に重要であるのだ、基地という点にしぼって強調したわけじゃありませんけれども、で、アメリカ政府が一番困ることは、東洋の情勢というものが非常に流動的であって、非常に思わざる所に思わざる事態が発生する、予測がなかなか困難だという例を朝鮮戦争の例にまずとりまして、一九五〇年にああいう時点でああいう形の動乱が起こるということはだれも予想しなかった。中共政権がその前にできておるわけでありますが、その後、中ソ関係というものの変化がどうもだれも予想できなかったし、また、これが今後どういうふうに変わってくるか予想がつかない。ことに、中国の紅衛兵があの時期にああいう事態で事が起こってくるということは、どうも専門家といえども予測がつかなかった。将来、台湾海峡というところでどういう事態が起こるか、これもなかなか予測が困難だ。そういう国際情勢下にあるので、将来の見通しをつけることが非常に困難だ。あらゆる場合を予想すると、どうしても沖縄基地というものが大きな役割りを果たすんじゃないかという点が強調されて、なかなかこの基地というものはアメリカとしては手放せないのだというような角度からの発言があったのであります。特に核を持ち込むかどうかという点に焦点をしぼって議論はしなかったのでありますけれども、いまの基地は、核兵器を持ち込んでも文句の言えぬような立場に置かれているので、向こうもあまりそれに触れなかったのだろうと思うのですけれども、そういうことであったのであります。第二の教育権の分離返還でありますが、実はこの点につきましては、さきに岡田議員からも御指摘のように、総理の発言がぐらぐらしておることがアメリカにも非常に響いておるらしいのですが、どうも総理は、全面返還を求めると言い、ある場合には、教育権の分離返還政府部内で取り上げて検討しておられて、またそれを打ち消すような議論があって、佐藤総理のほんとうの考えがどこにあるのだろうかということを官辺筋の人からも実は二、三質問を受けたのでありますが、私それに対しまして、佐藤総理に直接会って意見を聞いておるわけじゃないけれども、私はこう理解しておるんだ、どうも総理の立場では、全面返還をいままで理想として掲げてしょっちゅう打ち出しておることなんですけれども、その理想を捨てて部分返還を求めるんだということはなかなか言いにくい立場にあるんじゃないか。なぜかというと、教育権返還を求めるんだということを強く打ち出しますと、この次は何を求めるかという追及が必ず来るに違いないし、また、沖縄住民に与える影響から見ても、教育権返還を求めてあとをどうするということをはっきりしない限りは、どうも教育権返還を求めてあとは現状固定されるのではないか、現状固定の手段として部分返還を求められるんじゃないかという反論が出てくるんじゃないか、だから総理としては、全般のどういう過程を経るかという基本方針がきまらないと、うっかり部分返還を持ち出せぬというのが佐藤総理立場じゃないだろうかと私は理解しておる、もしアメリカ側が進んで教育権なら返そうというときに、総理といえども、それはいやだとは言わないに違いないというふうに説明をしておいたんでありますけれども佐藤総理は、やはり全般的の方針がきまらないからしょっちゅうぐらぐらしておるんじゃなかろうかというふうな理解をするわけであります。それで、教育権返還をほんとうに俎上にのぼせて推し進めていったときに、それで向こうが受けるだろうかという観測でありますが、これは観測にすぎませんけれども、全般的の方針がはっきりすれば、やはり教育権だけでもじゃあ返そうかという気分になるんじゃなかろうかというふうに私は観測するわけであります。  あとのプエルトリコ等の問題は、むしろパナマには末次君一人行かれたので、末次君からその問題について、なお国民運動の問題も末次君からお答え願いたいと思います。
  23. 末次一郎

    参考人末次一郎君) 時間がないと思いますから、簡単に申し上げます。  まずお尋ねのパナマでありますが、パナマには、お許しを得て私が二日行ってまいりました。時間があまりなかったのでありますが、可能な限りいろいろ調査いたしましたが、沖縄との関連における若干の問題点を申し上げますと、御承知のように、北海道よりもちょっと小さい程度の国でありますが、人口が百三十万でありまして、最も関連が深いのは、沖縄には大きな基地がありますし、パナマには現在運河地帯と呼ばれる特殊地域があるわけであります。そして、新聞等で報ぜられておりますように、対米紛争がおりおり起こっておるという状態でありますので、その点を中心として観察をいたしました。経済条件として、沖縄に非常に類似しておりますのは、先ほど大浜会長からお話があったように、沖縄は年間外貨収支の赤字が一億五千万ドルほどあるわけですが、このパナマは大体一億一千万ドル程度の赤字がございます。その赤字を埋めておる財源が沖縄に非常に似ておりまして、年間百九十三万ドルの運河使用料金のほか、運河地帯で働いているパナマ人が約二万四、五千と推定されますが、この人たちの俸給のたぐい、ここに駐留いたします運河政府及び米軍陸海空が基地を持っておりますが、これらの米側が調達いたします物資あるいは軍人及びその家族が使うドル、そういうもので埋めておるという意味では沖縄と全く類似であります。しかしながら、最近パナマ政府では、これに対して経済開発を進めて、その経済力を高めようということに非常に真剣に努力をしておるという点も関連して沖縄に似ております。特に私ども参考としたいのは、御承知のように、パナマにおける若干の紛争のあと、いまの大統領——現在のパナマの運河地帯に与えられておる、第三条に規定されておりますが、あたかも主権のあるかのごとく全権をアメリカが握っておるわけです。これは適当でないということをジョンソンも認めておりまして、そこで新しい運河をつくるという問題と関連させて、その運河地帯の権益をどういうふうに扱うか。そこに基地を設ける場合にそれをどのように位置づけるかというような問題について、パナマ政府アメリカ政府はそれぞれ三名の代表をもって構成する交渉団をつくりまして、ちょうどもうことしで三年目を迎えますが、それらの具体的なあり方についての話し合いを続けておるわけです。このやり方というのは、今後われわれがアメリカ沖縄の処理要領について、ブルー・プリントに基づいて問題を考えていく場合の一つの方式として参考とし得ると同時に、これは先ほど岡田先生がお話しになったこととちょっと関連いたしますが、青写真をいきなり出したって向こうは応じないだろう、トップ・レベルでその方向をきめなければならないということで、これは基本的には全くそうだと思うのでありますが、これは私の全く私見でありますけれども、実は青写真というのは、ないしょでこっそりつくらないほうがいいのであって、審議会等ができれば、ここで大いに青写真に関する論議をやるべきである。その論議をワシントンに大いに聞かせなければいけないわけで、その段階からすでに外交が始まるが、正式の話し合いが始まる以前のその過程が実は大事じゃないかと思うのでありますが、こういう意味でやるべきことは幾つもあると思います。ぐらぐらしない方針をきめてもらうこともその一つであります。従来はワシントンで沖縄問題に対するタッチはしてなかったのでありますが、私どもの感触では、これからワシントンの話題に相当なる。その意味で新しい大使は相当腹をきめて行ってもらわなければならないと思いますし、たとえば青写真の討議のあり方は、ワシントンの反応を正確にとらえるための機能をわがワシントン大使館が持たなければいけないわけでありまして、いろいろな問題が関連してくると思いますけれども、そういう作業過程を経て日米交渉の具体的な段階になると、現在存在する日米協議委員会のようなものではだめであって、むしろパナマがやっておるような方式もその参考一つになるのではないだろうか、こういうふうに感じました。  こまかい点はいろいろございますが、時間がありませんから省略して、プエルトリコ、これは御存じのように、カリブ海の中にある島でありまして、大体四国の半分ぐらいの島で、二百五十万ほどがおります。  われわれが参考にしたいと思って訪問いたしましたポイント二つありまして、一つは、沖縄と同じようにパイナップルとサトウキビしかとれない島である。その島が昨今は大小二千に近い工場をつくってたいへんな経済的な繁栄をもたらしているというのは一体どういう状況から由来したか、そして、それはどのようにして進められているかということを見たかったわけです。この点については、たいへん参考になりました。税の免税措置とか、あるいはまた、アメリカ合衆国政府のいろいろな保護措置などが大きな役割りを果しているということをつかむことができました。  第二点の、プエルトリコの反米運動というものがわが国の新聞等ではかなり伝えられましたけれども、ニューヨーク等では始終事件が起こっておるということから、そういう面がどういうふうに一体展開されておるかということも特に私にとっては関心の一つでありました。行って見ますと、われわれが新聞等で得ておった印象とは全く違っておりまして、島そのものでの反米的な動きというものは皆無とは言わないが、きわめて微少な存在であって、非常に現実的に問題をとらえながら、むしろプエルトリコのためにどうすることが有利であるかという考え方が圧倒的に支配している。こういう点は、われわれが今後沖縄問題を処するにあたって参考とすべき点であるというふうに感じました。  それから、最後にお尋ねの国民運動のあり方ということですが、これはどうあるべきかということをわれわれの立場から規定できないわけですが、われわれとしてはどう取り組みたいと考えているかという点を簡単に申し上げます。ついせんだって、ある学生グループと話し合っておりましたら、この学生グループの言うのには、沖縄問題がいまのような状態であることは、われわれが運動するのにたいへんぐあいがいい、つまり、アメリカに対してとことんまで食いついて文句が言えるのであって、なまはんかの改善はしてくれないほうがいいという議論をする学生グループと会いました。この連中の考え方というのは、実は沖縄問題を解決することを願っているというよりも、沖縄問題を道具に使ってこの反米運動をしようという考え方であります。この種の国民運動はできるだけ国民の良識で押えて、もっと建設的な、国民的な勢力の結集ということを目ざすべきである。相手を説得せなければならぬのでありますから、そういう説得でき得るような建設的な内容を持った国民運動をわれわれとしては目ざしたい。ただ、その前にすべてを一色に塗りつぶすということは事実上なかなか困難でありまして、たいへん強い触覚で、当たるもの、やわらかいタッチで当たるもの、いろいろなものが組み合わされていくべきであると思いますが、これは沖縄方々にお願いしておりますし、われわれも戒めねばならないと思うのは、お互い日本人同士が、あるいは沖縄の同胞の仲間同士が何かお互いに向き合ってむきになってしまうということは断じて戒むべきである。われわれはアメリカに対して要求せねばならぬのでありますから、ときには芝居をすることだって必要でありまして、そういう意味では、お互いがゆとりを持って大局を観察しながら、よりよい効果的な動きができ得るように、こういう方向を指向して国民運動の努力をしていきたい、そう考えております。
  24. 山本利壽

    委員長山本利壽君) それでは、沖縄施政権返還等について参考人からの意見聴取はこの程度にいたします。  参考人各位には、御多忙中にもかかわらず、長時間にわたり御意見をお述べいただき、なお、かつ、質疑に対する御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。お述べいただきました御意見は、今後委員会の審査にきわめて有効に、しかも参考になることと存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  25. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 沖縄その他の固有領土に関しての対策樹立に関する調査中、沖縄その他の一固有領土に関する件を議題といたします。質疑のある方は、順次発言を願います。
  26. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛庁長官、初めは、特連局の人だと思うんですが、先日の続きで若干申しわけないと思いますけれども沖縄における自衛隊員の募集、先日のお話ですと、現地の人から照会があれば教える程度だと、ポスターも若干配付してある程度だと、このような御答弁であったのですが、それでよろしいですか、もう一回この点確認したいと思うんです。
  27. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) せんだっての委員会でも御説明申し上げましたけれども沖縄に籍のある方は日本人でございまして、自衛隊員になることができる、われわれとしては歓迎するわけでございます。ただ、募集方法そのものは、施政権がないわけでございますので、本土における募集と同じような方法はとり得ない。しかし、沖縄方々で自衛隊が好きで自衛隊に入りたいという方もおられますので、いろいろ問い合わせが参ります。それに答える意味で、ポスターなりパンフレットなりを事務所を通じてお送りしているというのが実情でございます。
  28. 黒柳明

    ○黒柳明君 要するに、現地の方が入りたいと、こういう希望があれば紹介程度にポスターも配ったりしているのだ、こういうことですね。まあ、そのこと自体、別に法律に触れることでも何でもないわけですけれどもね。自衛隊の幹部の方、日本にいる方で沖縄の学校の出身の方が現地の学校に、応募に対しての依頼あるいは推薦という手紙をほとんどこうやっているわけなんですけれども、このことは知っているかどうか。これはこまかいことであるといえばこまかいことなんですけれどもね。私も五、六そういう事実を持っております。たとえばその一つは、豊川駐とん地司令の第十特科連隊長馬木礼助という人が、出身校が沖縄の水産高校です。そこの先生あてに、名刺を入れて、まあ内容まで言うとこれは長くなりますから、要するに、自衛隊に学校の生徒を応募させることに協力してもらいたいと、こう依頼の手紙をみずからの名刺を入れて、出身校である高校の先生に出している。その他首里高校、沖縄高校、中央高校、石川高校等にも、日本にいる自衛隊の幹部の人が大多数ですが、その人が出身である高校に対して依頼手紙をやっているわけなんです。ある場合にはポスターも一緒に入れている。まあこういうことをですね、まずその事実を知っているかどうか。こまかいことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  29. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 豊川駐とん地司令の馬木礼助という一佐がおります。それが、隊に沖縄出身者がおりまして、それが沖縄に帰ります際に隊長としての紹介状を持たしたという事実は聞いております。ほかにも同じようなそういうことがあるんじゃないかと。御承知のように、この前も申し上げましたが、自衛隊には四百名程度の沖縄出身者がおられますので、休暇等で帰られるその際に、後輩にすすめる意味で学校等を尋ねます。その際に紹介状等を持っていくということは、この馬木一佐の場合もそうでございますが、そのほかにもあり得ることだと思っております。
  30. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういうことはあれですか、特別に指令なり、あるいは内部的に、やろうじゃないかと、こういうふうな相談なりしてあるのか。それとも、自発的にそういうことが行なわれているのか。どうでしょう。
  31. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 特に私どもから、こうしろああしろとうふうに具体的に指示したわけではございませんけれども、一般的に、御承知のように、自衛隊員、特に陸上自衛隊につきましては、隊員が必ずしも全部充足しているわけではございませんので、募集にいろいろ苦労いたしております。その一環として、出身地、もちろん、内地の場合もそうでございますが、青森なら青森に帰郷して後輩を誘ってこいというふうなことは一般的に言っておりますし、やっております。それと同じ意味で、沖縄出身の人々沖縄に休暇等で帰る場合に、そういう紹介状なり持っていって勧誘してこいということは、部隊等でおのずからやっておると思います。われわれとしては、別にそれで差しつかえないものと考えております。
  32. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、先ほどは、照会があれば知らせる程度だと、こういうふうなことにプラス今度は、部隊内では各郷里——当然沖縄も含めて、勧誘をやってこいと、こういうふうなことが行なわれていると、こういうわけですか。
  33. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) そのとおりでございます。いま申し上げましたようなとおりでございます。
  34. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、一番初めの、先回のときに特連局長がおっしゃった、まず初めは、行なわれていないと、こういう発言だったんです。まあ、これは若干のニュアンスの相違があるとは思うんですけれども、現在には行なわれていません、現地では。ですけれども、明らかに応募は行なわれている。相当のポスターも配られている。また、いまの人事局長のお話は、紹介程度であるということからさらに話は発展して、各部隊ごとに奨励されていると、勧誘されていると、こういうことまで話は進んでいるわけですね。そうすると、一番初めの、照会があれば知らせる程度だと、こういうおことばとちょっとここで若干、あるいは相当話がずれてくるんじゃないですか。さらにまた話はあとに発展するんですけれどもね。いかがでしょう。
  35. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 最初に申し上げ、あるいはせんだっての委員会で申し上げましたのは、内地の府県とか市町村におけるような事務を委託したり、地連を置いたりしての非常に積極的な募集活動は沖縄ではやっておりませんということを主にして申し上げたつもりでございます。そういう募集の委任とかいうふうな方法でなくて、問い合わせに応じたり、あるいは個人個人が後輩を勧誘したりするようなことはやっていますと、こういうことでございます。
  36. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、国内においてもですね、各学校の先輩、後輩の間柄を通して推薦状を送ったり勧誘したりすると、こういうことがどんどん行なわれている、こういう事実が相当あるわけですか。
  37. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 沖縄以外の本土におきましては、正規の市町村あるいは地連を通じての募集が大部分でございますけれども、それ以外に、おっしゃるように後輩等に個人個人が勧誘をするということも行なわれております。
  38. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ突っ込んで失礼ですけれどもね。そうすると、沖縄の場合は、これはまあ距離が離れておりますから、当然手紙、そこに名刺が入り、ポスターが入るというケースをとっていると思うのです。国内の場合ですと、口から耳、耳から口と、こういうふうになると思うのですけれどもね。そういう幾多のケース御存じでしょう。あそこにもこういう幹部がいてこの学校に行ってこういう誘いかけをしたとか、あそこにもこういう自衛隊の幹部が、出身者がいてこういう誘いかけをしたとか、そういう事実、相当御存じでしょうか。これは沖縄の場合一つじゃない。相当ある。いま言った高校五つ、六つ並べましたけれども、これは国内においても相当あるのか。こういうことですね。内地と同じようにやっているというのですから、内地でもそれ以上にやっているというのですから、そうすると、こういうケースも相当国内でもある。こういうふうに判断してよろしいでしょうか。あるいは、あればその事実を多少とも御存じでしょうか。
  39. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 国内といいますか、こちらでは相当もちろんあると思います、沖縄より本土のほうでは。それから、沖縄でも、先ほど申し上げましたように、この馬木一佐のことにつきまして私承知いたしております。それ以外の、何三佐なり一尉がいつ紹介状を持たしたというようなこと、個々には承知いたしておりませんけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、一般的な空気として奨励されておりますので、この馬木一佐以外にも、隊員の休暇等に紹介状を持たして帰したというふうなことはあり得ることだと、こういうふうに考えております。
  40. 黒柳明

    ○黒柳明君 日本の国内でですね、沖縄ではいいわけですよ。相当あるわけです。それと同じようなことが国内でも行なわれていると、こういう可能性があると、こういうわけですね。ですから、まあ行なわれていれば、そういう事実を一つでも二つでも三つでも御存じであるかどうかと。私残念ながら、沖縄のことは知っているのです、具体的に。国内のほうは知らないわけです。で、いま局長さんの御答弁ですと、国内でもあると、当然やっていると。そうすると、それじゃ具体的な事実は、こういうところにもこういう先輩がいてこういうことをやったと、こういう事実御存じでしょうかと、こういうことなんです。
  41. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 国内でございましたら、これはもう無数と言ってもあれですが、二十数万の隊員がおりますので、それぞれ上層幹部から中級幹部からあるいは曹クラスから、たくさんおりますので、出身学校等にそういう、いまお示しのような方法をやっていることはたくさんございます。個々に知っているのも、何とか一佐がどの学校の出身で後輩を呼んで来たというようなことを個々に知っているのもございますが、個々に私が知っているのはほんの一部でございまして、非常にたくさんあると思っております。
  42. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官にお伺いしますけれどもね、当然、沖縄は地理的にも国際的にも、あるいはいろいろな面において特殊な地位にあるわけです。先ほども参考人がおっしゃいましたように、また幾多大臣の人が述べていますように、異常な状態にあるわけですね。その地においてですね、部隊で奨励して、そうして、幾ら自分の出身校とはいいながらですね、そういう紹介状を持たせてどんどん募集をやる。これに対して地元がどういう感覚を持って受けるか。あるいは、このことはどのように内地の人たちに受けられるか。まあ、これは推測の域でも、長官の想像でもけっこうですけれどもね、いかがでしょう。
  43. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) この前も黒柳さんにお答え申し上げましたが、黒柳さんの御心配は一応ごもっともでございます。そこで、数等を調べてみますというと、わずかに四百二十名でございまして、内地でございましたならば、人口百万について二千五、六百人というところでございます。でございますから、その六分の一という程度の自衛官の応募しかないわけでございまして、そこへ潜在主権がある。しかしながら、立法、司法、行政の三権、すなわち施政権アメリカにある。しかし、日本人である。日本人であるならば、やっぱり日本の国の守りにつくという崇高なる使命に挺身し得るということは、私はやっぱり沖縄県人の——琉球人と言ったほうが正確かもしれませんが、その辺ははっきりよくわかりませんが、沖縄の人の誇りである、こういうふうに私は考えております。弊害の面もそれはないではございませんでしょうが、やはりうれしいといったような気分がよけいあるのじゃないか。喜び勇んで自衛隊員になれるのだ、なるのだということでなっているのが四百二十名でございます。
  44. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほども、この前のときもそれに対して長官にお尋ねしたわけですけれども、そうしてもっともっと沖縄の人に喜びを与える方法がある。それはそれとして、喜び勇んで応募するであろうと。それならなおさら、わが国の自衛隊が沖縄をなぜ守らない。守る権利も責任も当然あるのじゃないか。いまの状態でおいてはできない。それではそれを改善する方向にどうしていかないのか。一方的に、応募するほうだけは喜んでいるのだ、喜んでいるのだと。喜んでいるかどうかわかりませんよ。現地の人は喜んでいないのです、現実問題。これは応募する人は、応募するのですから、喜んでやっているかわからない。ですけれども、全体の島民の感情としては決して、喜んでいるとはとんでもない話なんですよ。そのことを一方的に、応募する人が喜んでいると。それはこちらから沖縄に対していろいろなさらに大きな喜びを与えるものが、それは経済援助も御苦労さんだし、日の丸の旗もたいへんだと思いますが、まだまだ根本的には九十五万の島民はそんなことを願っているわけじゃないのです。全面的復帰を願っている。これに対して、いまも答弁、応答もありましたように、ブルー・プリントをつくれ、沖縄でも積極的で、アメリカでも積極的で、肝心な日本がいつも手ぶらでは、理想論じゃないか。もしほんとうに、長官の、喜んでいると、こういうおことばが真実であるとするならば、今度はもっともっと長官が沖縄の人たちに最大の喜びを与える最大の努力、全面返還に対してどのような構想を持ち、どのような努力をしてきたか、あるいはこれからするつもりであるか。
  45. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 私も国務大臣でございまするから、国務全般について責任はございまするが、やはりこの問題は内閣総理大臣並びに主務大臣たる総務長官が一生懸命心配し努力いたしておるわけでございまして、それで日米安保条約第五条によりますというと、日本施政権下における——つまり本土です——本土に対する武力攻撃がありたるときにアメリカ日本と共同してこれが阻止並びに排除につとめる、こういうわけでございまして、遺憾ながら施政権はないわけでございます。そこで、施政権返還ができるだけ早くあって、そうして、できれば施政権返還があれば、われわれは全面的に九十五万の、黒柳さんのおっしゃる日本人を守り得るわけでございまするから、守り得るようにいたしたいという気持ちは黒柳委員と同じように持っているわけでございます。
  46. 黒柳明

    ○黒柳明君 沖縄の人が喜んでいる、これは現地の新聞、沖縄タイムスの報道です。ですから、このあとは新聞も若干オーバーなところもあるのですけれども、そういう自衛隊の募集、あるいはこれは来島も含みますけれども、二万何千の毎年中卒があるわけです。それに対して、日本の若い働き手が不足である、わが沖縄の年間中卒者二万八千に対して日本政府はその触手を伸ばしているのじゃないか、こういうようなことまで書くくらい——そんなことは私はないと思いますよ——何も、日本の若い人だってその何倍、何十倍いるわけですしね。自衛隊だって別に、欠員はあるけれども、そんなたいした欠員もないと思います。まだまだなり手だって一ぱいいる。若干PRが不足だし、待遇が悪いから入ってこないのですけれども、現地においては、沖縄においてはこのような自衛隊の募集方法、あるいは来島も含めての話ですけれども日本本土においては若い自衛隊になり手がいない。いよいよ沖縄の中卒、毎年二万八千人、この中卒の若手の人々に対して触手を向けてきたのだと、こういうような記事も出ている。どうですか長官、こういう記事をお読みになったことございますか。
  47. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 私はその記事をまだ読んでおりませんけれども、しかし、ちょっと傾向的な記事じゃないかと思うのです。やはり人口百万について二千五、六百人が日本の各府県の自衛官の状況でございます。でございますところを四百二十人でございますから、やはり日本の自衛官になれるのだというようなこと、そういうような既成事実はやはり積み上げまして、内地と琉球との交流といったほうがことばが正確か、ちょっとそのことばはよく存じませんが、やはり各般の交流の事実をあげて日本人たる誇りを持たせるということが、アメリカ政府がじゃまするなら別でございますが、じゃまもしていないわけでございますから、私は、黒柳さん御存じのとおり、役人もたくさんおります。役人がおるなら、自衛官だけその道をふさぐということはまずいのでして、やはり自衛官にもなってもらうというわけで、いま自衛官——陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊——の充足率は非常によいのでございまして、従来は陸上自衛隊ちょっと率が落ちておりましたが、最近は九〇%近くなっております。われわれも、内地のほうが足りなくなったから沖縄へさがしに行くというわけではないのでございまして、こういう機会も均等に日本人である以上与えられておるというような立場で募集をしておるわけでございますから、どうぞそういう傾向的な記事には、黒柳さんのことでございますから、決してとらわれないと思いまするが、やはりおおらかな心持ちで対処していただきたい、こう考えておるわけでございます。
  48. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も、沖縄なんかへ行ってこそこそ人を引っぱってくるようなことは決してないと——天下の日本の自衛隊ですからね——確信していたんですが、何かそういう反発的な記事が出ているもんですから若干お尋ねしたのですが、それと、先ほど局長さんのほうから、各部隊で自発的にやっていることだ、奨励していることだ、あるいは勧誘していることだと、こういうことでありましたけれども、当然、長官としてそういう面に対しても責任があると思うのですが、こういうこと、当然防衛庁長官は、喜んで来ているのだからということで、知ってはいなかったとは思うのですけれども、あるいはお知りになっていたか。将来ともども沖縄にこういう形で自衛隊の募集をしていく、勧誘をしていく、この事態を認める、あるいは大いに奨励したい、こういうようにお考えでしょうか。
  49. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 従来どおりの程度で私はいいのじゃないかと思います。特に奨励したいということは考えておりません。従来どおりの奨励をしてまいりたい、こう考えております。
  50. 黒柳明

    ○黒柳明君 また、これ先日のことですけれども、長官が、沖縄に自衛隊が行く、私が、自衛隊行くことは非常にうまくない、現地の感情は。いや、うまくないたって、新聞で自衛隊歓迎という記事が一ぱいありましたよと、こう言われたもんですから、私見ました、現地のタイムスも新報も。あるいはテレビ、ラジオ、マスコミで放送されていたかどうか見ましたけれども、残念ながら私の目に触れなかったのですが、長官そういう記事お読みになったでしょうか。
  51. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) この前たしか黒柳さんとは予算委員会の応答のときだったと思いますが、私は防衛庁に来る前に、沖縄へ行くことは非常に歓迎されておるのだということを、安全保障に関する調査会でときどき聞いたことがございます。その従来の知識をもってお答えしたわけでございまするが、その後の話によりまして、記事がここにございます。十月六日の記事でございます。昨年行った自衛隊に対してこんなことを書いてございます。「音楽隊を先頭に純白のセーラー服に身を固めた二百三十三人の隊員が日章旗を掲げて堂々と行進、沿道を埋めた観衆の目をうばい拍手がわいた」、こういうことでございますから、これはやはり歓迎であります。それから琉球新報の論説でございまます、「話の卵」というこれは囲み記事でございます。「自衛隊音楽隊の楽しい演奏」と書いてございまして、これは題目でございます。そのうち特に強調いたしたい点は、演奏隊の「高度の演奏技術と、キビキビした音楽隊員らしい態度が多くの市民から好感を持って迎えられた」、こういうことでございまして、やはり私が申し上げた、昔持っておった知識、経験の裏づけをするのがこの新聞記事でございます。
  52. 黒柳明

    ○黒柳明君 好感をもって受け入れられる、大いに私もけっこうだと思うのですけれども、そうすると、今度はこういう記事がある。これはちょっとでっかいですよ。長官の、囲み記事じゃないですよ。二、三行の記事じゃないですよ。そこから読めますか。ちょっと読んでいただきたい。「自衛隊は来るな」、これはすごいですよ、一段、二段、三段、四段、五段、六段、七段抜きです。そうでしょう。長官のはボックスであり、わずかな記事です。これは読むと長くなりますから……これはついせんだってのことなんです。読んでみますと、これのほうが相当権威があると思うのですけれども。どういうことかというと、この前も予算で言いましたから、もう長官頭がいいからお覚えになっておると思いますけれども、要するに、沖縄の国民的な祖国復帰運動、要するに祖国復帰協議会です。そこの第十二回の定期協議会で、自衛隊の来島は好ましくないと。これも私は全面的にそうであると、こう言いたくないです。いま言ったように、誤解もありましょうし、評判もあります。ですけれども、事実そういう国民的な大会において、いままで行なわれたことがないような決議がされておるわけです、自衛隊来るなと。これには、合同訓練やっているとかなんとか、事実に反しているとは思いますよ。そういうことを理由としてあげているのです。それはともかくとしても、こういう世論があるということもこれは事実なんですね。ですから、必ずしもそういうボックスあるいは二、三行、あるいは着物がきれいだから、音楽がすばらしいから、拍手が起こったから、そんなことをもって歓迎されていると、こういうような御答弁ですと、これは幼稚園の質疑応答になるので、ここはあくまでも国会ですから、そういうことの歓迎という意味じゃなくして、もっともっと根幹的に自衛隊の募集、それから自衛隊の来島、またさらに質問は発展したいと思うのですが、そういうことについて非常に現地においては反感的な空気がある。こういうことをあくまでも認識をされ、だから応募しちゃいけない、だから自衛隊が行っちゃいけないと、こうは話が行くかどうかわかりませんが、まず、現状の認識から始めていかなければならない、こう思うのですけれども、どうでしょう、長官。
  53. 増田甲子七

    政府委員増田甲子七君) 黒柳委員、この前も総括質問の際に同様な御質問がございまして、その新聞も私も拝見しております。大きさから見ると、こちらのほうがちょっと大きいような気がしますけれども、(笑声)同じ沖縄タイムスです。いかがでしょう。そこで、やはりあのときに黒柳さんに申し上げたのですが、沖縄の島民というのは日本国民でありながら、施政権は外国が持っておる。しかしながら、潜在主権はあって日本国民である。そういう非常に複雑な環境下にあるのであるから、複雑なる環境下にある九十五万の方々感情というものをいたわり、尊重申し上げねばならないと思いますということを黒柳委員にお答え申し上げましたが、今日もそのことにつきまして私ども留意の上にも注意を加えねばならない、こう考えておる次第でございます。
  54. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから、自衛隊の派遣も当然年々ずっと多くなっているわけですけれども、四十二年の派遣計画、これはどのようになっておりますでしょうか。
  55. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) お答えいたしますが、昨四十一年度千二百六十九名ということでございますが、大体同じような規模の人たちを大体同じようなやり方で沖縄に行かす予定でいまのところは事務を進めております。
  56. 黒柳明

    ○黒柳明君 四十一年が千二百六十九ですか、四十年が八百四十三、三十九年が六百五十一、三十八年が七十八、非常に、半分から倍ぐらいに急速にふえていますね。四十一年と四十二年は現状維持ですか。大体五割ずつ増してきていますね、数の上で見るだけでも。四十一、四十、三十九、三十八と、三十九からはぐっとふえておりますけれども、ことしは現状維持ですか、大体。
  57. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 本年度は昨年度と同様の規模でございます。
  58. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、これは私ごとき者が言うまでもなく、要するに、沖縄の複雑な現況下のもとにこれは再三質疑応答されましたし、また同じことを答弁いただくようにもなるかと思いますけれども、どうしてそこに自衛隊を派遣しなければならないか。前回のときにも稲葉委員からいろんな疑惑あるいは事実らしきものが質問されまして、長官それに対して御答弁された。しかしながら、そういううわさにしても疑惑にしても、火のないところには煙というようなことわざもありますし、もしかすると、そのうちの一つの事実があるかわからない。そういう疑惑を起こすような、あるいは、たとえうそにしても、そういううわさが出るような、それをあえてどうして沖縄に自衛隊の派遣をしなければならないか。この点どうでしょう。
  59. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 何回かいつかの委員会で御説明しましたとおりに、御承知のとおりでございますけれども沖縄は第二次大戦中に日本の国内——当時国内でございますけれども——国内で行なわれました激戦地、そこが戦闘の行なわれたところであるという、そういうところをやはり見るということは、見学に行くということは、自衛隊としてはぜひ必要なことであるということと、それから、御承知のように、沖縄には米軍のいろいろな施設がございますので、そういうものを見せていただくということも、これもいまの自衛隊にとって非常に意味のあることであるということでございます。
  60. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かに私も自衛隊の発展のために必要だと思うんですけれども、それと、今度はその自衛隊に関するいろんな疑惑国会でそれを取り上げられ追及されなければならない、それについてのウエート、そのウエートをてんびんにかけたとき、どちらがはたして重いか。自衛隊の方が、第二次世界大戦の戦跡はいろんな勉強になると思う。また今後のことにも当然参考にもなると思うんです。沖縄はすぐそばですし、米軍のいろんな施設もあるし、近代的な施設を見ると参考になると思います。ただし、それだけで済めばいいんですけれども、いろんな疑惑が起こり、さらにこの委員会が行なわれる過程において、もっともっとこの自衛隊をめぐっていろんな論議が、まあ私たちから言えば、追及がなされるだろう、こういうことを思います。そうなると、これをてんびんにかけたとき、ほんとうに沖縄じゃなければならないか。ほんとうに自衛隊が沖縄アメリカ基地の施設を見なければならないのか。この前長官おっしゃいました、沖縄で何も練習やらなくたって日本でも幾らだって練習やるところがあると、稲葉委員に対して。沖縄に行って合同訓練なんかやる必要ないじゃないかということは、同じ論法は、沖縄の米軍施設なんか見なくたって日本でも幾らでもある。同じじゃないか。これは長官の御答弁そっくりにできると思うんです。それから、第二次世界大戦の戦跡見たからといって、また戦いをやる日本じゃないんです。また、第三次世界大戦にそれを参考にするような日本立場じゃない。そこを見てはたして何のプラスになるのか。そのいうことが非常に疑問になるわけですけれども、どうでしょう。
  61. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 本土防衛という任務につきましては、これは日本の国内で、あるいは直接侵略、間接侵略の場合はそれに対処する任務を負わされております自衛隊としましては、国内——当時におきましては国内であったところで戦闘の行なわれたところはほかにはございませんので、ああいう大規模に行なわれたところはほかにございませんので、やはり私は参考になると思っているわけでございます。それから、米軍の施設としましても、ああいういろいろな種類の部隊のある、あれだけの施設のしてあるところは日本の国内にはございませんので、それを見せていただければ見聞も広まることになるし、幹部自衛官としても必要だというふうに考えております。  それから、先ほど誤解のお話がございましたけれども、米軍の施設を見学をしあるいは部隊を見せていただく際に、米軍の基地の中に行くわけでございますが、その基地の中で非常に短時間見ておりますことが、あるいは誤解を生んでいることになっているのかなというふうに思いますけれども、それは非常に短い時間見学さしてもらっているという程度でございますので、おそらくいろいろな地元の人たちの御意見はあると思いますけれども、私は誤解だと思っております。
  62. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですから、私も参考にならないと言うのじゃなく、参考になるだろう、当然なると思うのですよ。しかしながら、誤解だ、誤解だ、なに、おまえたちがかってに火のないところに煙を立てているのだとばかりは言えないと思うのです。やはり当事者としてはいろいろな問題点が出てくる。地元から反感を呼び、あるいは国会において論争を巻き起こす。そういうマイナスと比べて、はたして私は、参考になると思いますというような、何か非常に消極的な御答弁みたいに私は感覚は受けたのですけれども、絶対これは行かなければならない、絶対これは必要であるのだと、こういうことよりも一歩、二歩後退したような御答弁のように感じるわけです、私は。何だか、そういう参考になると思います、こういうようなこと。そうすると、何かくどいようですけれども参考にならないのじゃないか—なると、私もそう思います。だけれども、非常に私その根拠が何か意思薄弱というか、自信ないというか、そうすると、今度はマイナスの面と比べた場合には、今後もいろいろ出てくると思います。どうしても行かなければならない絶対必要性があるのかどうか。
  63. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 私の発言に誤解を黒柳先生が受けているかもしれませんけれども、私は絶対に必要だと、いまの段階では思っております。
  64. 黒柳明

    ○黒柳明君 長官、どうです。
  65. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 私は、レイテ島の上陸、ルソン島の上陸、沖縄の上陸、硫黄島の上陸というものがございますが、そのうち米車が沖縄に上陸したし、施政権を持っていながら見せてけっこうと言われるのですから、やはり見に行きまして、わが自衛隊というものは、日本本土に上陸せんとする通常兵器による侵略者を阻止しこれを排除すると、こういう使命がございまするから、ただの演習だけでしたら、日本はすべて海なし県というものは少ないのでございまして、どこでもできるということは、それは申し上げたには申し上げたのですけれども、実際の戦跡があって、そうしてそのことの説明をして、こちらも説明するでしょうし、向こうも説明するでしょうが、そういうことが一番生きた参考である。それは、日本本土を守る上からは、本土に来る来襲者があるとすれば、侵略者があるとすれば、それは海からでございまするから、通常兵器の関係では。でございまするから、私は、昔のことばで言うと、敵前上陸というようなことのあとをよく見学してそして研修するということは、たった四、五日のことでございますが必要であると、こう考えておるわけでございまして、教育局長と所見が同じでございます。
  66. 黒柳明

    ○黒柳明君 通常兵器による侵略は海からも空からも当然考えられると思うのです。いまのイスラエル、アラブ、あれは核を使わなくても空から戦っておりますね。当然海からだけではないと思う、空は自由ですから。ただ、またくどいようですけれども、とにかく沖縄基地はベトナムの前線基地であることは明確なんです。それから、核基地であることも明確なんです。また、沖縄島民が非常に祖国復帰に対して、ある意味においては対米感情が悪い、そういうことも相当これは濃厚なんです。非常に条件が悪いのですよ。そこにあえて絶対必要だ、また教育局長さんは言い直しましたのですけれども、ほんとうにそういうすべての悪条件を乗り越えてそれでも行かなければならない、それでも見学して、それでも見て、わが国の防衛のために、自衛隊のために参考にしなければ絶対ならないのだと、こういうことですか。くどいようでほんとうに申しわけないですが、長官。
  67. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) どうも黒柳さんの御質問が非常におじょうずで、絶対必要でなければならぬという信念でございますから、そこで教育局長が絶対ということばを申し上げたわけだと思いますが、私は必要である、こういうことを何べんでも繰り返します。必要である。こういうことです。
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、結局まあ、これは先ほど、米軍基地をちょっと見ただけで疑惑が起こるのだ、あるいは四、五日行っただけではないか、政府の側が、そういうわけで何もないのだと、こういうふうにおっしゃいますけれども、そういうこと自体がわが国防衛のために、本土防衛のために絶対必要なんだ、見学するのだと、そういうことなら、それじゃあ第二次世界大戦のときに、アメリカがLSTに乗って沖縄に上陸した。こういうところを見、また、こういうことも当然やるのだろう、やっているのだろう、こういう三段論法も成り立っていくわけですよ。いま長官おっしゃいましたように、あるいは教育局長もおっしゃった第二次世界大戦の戦闘のあと、わが国の本土防衛のために、攻めてくるなら海からだ、そのために絶対第二次世界大戦のあとである沖縄、海から攻めてくる、そのことを想定して、その条件に合った沖縄、こういうことを発言されて自衛隊を派遣するから、だから五日行ったって何もやってこないのだ、こう言ったからといって、ちょっと見るだけなんだ、こう答弁されたところで、すぐそのことばの裏には、そういうことはうそだと、こういうもう話をする中において誤解を招くような点が出てくる。それじゃ第二次世界大戦の戦跡、非常にくどいようですけれども、海から来るそういう敵に対して防衛する、そのために沖縄と、先ほど、戦跡のあとを見るだけじゃなくて、実際にアメリカがどうして沖縄に上陸したか、あるいは、いま沖縄をどういうふうにしてアメリカ軍が守っているのか、そういうところまでも見、あるいは、そういうことも実際に行なっているのじゃないか、あるいは、たとえば緊急に武力攻撃でもあったときに、自衛隊が緊急に出動でもして、そのときの準備のために、LSTではどのくらいかかるというような、こういう下調べまでもしているのじゃないかというようなところまで疑惑が発展していく。現にLSTで行っているのですから、輸送機で行っているのですから。そういうところまで疑惑疑惑を産んでいくわけです。これはそんなことをやってはいないのだ、そんなこと思うほうがかってだと言われてもだめだと思うのです。これは、沖縄に対しての青写真もでき、総理がアメリカを訪問すれば、ますますこういう論議が活発になっていくと思うんですよ。それでもあえて自衛隊を派遣するということは、私は、これは私見にとどめておきますけれどもね、非常にマイナスの面がますます大きくなるのではないか。いま聞くところによりますと、いままで五割増し、五割増し、五割増しと、四年間続けてきた派遣の人員も、今年は横ばいである。充足率は非常にいい、当然今年あたりに倍にしようというふうな御答弁、あるいは従来どおり五割増しだと、こういうような御答弁もあるかと思っていたのですが、充足率はよくなっているのにもかかわらず、四十一年と同じようにしていくと、こういうわけです。来年はどうでしょうかね。来年のことを言えば何とかということもありますけれども、来年はどうお考えになっておりますか、派遣に対して。
  69. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 行く要素になっている人たちの数が、いまの場合ふえたとすると、その行く人たち、幹部学校とか、幹部候補生学校とか、こういうような人たちの数がふえた分がふえるのでございますけれども、来年同じような規模のかっこうの学生の数でございましたならば、やはり同じような数になると私どものほうでは思っております。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから、安保条約の三条あるいは五条、これは私言うまでもなく、当然沖縄に武力攻撃があった場合には、沖縄住民を守る、このような条項もありますし、それから五条においては、防衛区域内に入っていない、こういうような第三条と第五条、この関係から見ても、日本施政権下に入っていない。たとえそこに何事が起こっても、防衛区域じゃないわけですよ。こちらが守る区域に入っていないわけですよ。総理も、感情論としては行きたいけれども実際的には派兵もしないと、このような御答弁もありましたけれどもこの第五条、わが国の防衛区域内に入っていない。このようなことも不必要な刺激をこれは与えているように私は思うのです。何のために、そういう区域に対して派遣しているのか。この第五条との関連性はどうですか。
  71. 増田甲子七

    ○国務大臣(増田甲子七君) 有事の際は、施政権下の武力行使に対してこちらが正当防衛として武力の反撃をするだけでございます。実力をもってでございます。でございまするが、また極東の平和と安全を保持するために、日本基地をあるいは施設をアメリカに供与するという関係もございます。しかし、これは交換公文その他によりまして、沖縄に事があった場合に、日本基地から発進するとかそういうような装備の変更あるいは、アメリカは正式に軍でございますから、軍の動かし方等は事前協議になっております。でありますから、事前協議をする場合に、わが政府としては自主的な見地をもってイエスと言ったり、ノーと言ったり、あるいは半分イエスと言ったり、半分ノーと言ったり、いろいろな場合があるわけでございます。  それから、福祉関係は、同じく、交換公文によりまして、いつでも日本沖縄の福祉を守る、ことに事があった場合にはよけい守るという約束は果たさなくてはならない、こう考えておる次第でございます。これはもう黒柳さんの御存じのとおりでございます。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がおそくなりましたし、また、現地へも行きますし、総務長官のほうにお聞きしたいんですが、防衛庁長官、また後日。  あの山川議長の要請決議、当然ごらんになったと思うんですけれども、私もまた自民党の先生方もこれを読んで非常に語句が強いなと、こうおっしゃっていた。私たちが感じるならともかく、自民党の方々も、この立法院の要請文書、決議文書を見て非常に強く感じを受けられた。こういう印象を述べておりました。まあ長官、この全体に関してというより、特に私はこの二点、「独立国の国民の一部が、」云々というところから「日本国についてなおこのような事実があることは近代世界において許されるものではなく、日本の真の独立を侵すものであって、われわれは強い憤懣を覚えるものである。」と、こういうように怒りの表現をあらわしているわけです。さらにまん中ごろに行きますと、「軍事基地の保有を目的とする米国の施政権下において」云々というところに行って、「沖縄県民は施政権返還こそが県民の生活と権利を守る唯一の途であるという考えのもとに今日まで要求し続けてきた」、非常に語句の強い、きびしい憤りのことばといいますか、ふんまんやる方ないというか、そういうものが立法院の要請決議としてあらわれているわけなんです。このことについて総務長官も当然山川、安里の両議員にも会われたわけですし、また、その後いろいろ委員会に出て御発言もされていますけれども、お考えを持っていると思うんですが、どうでしょう、この要請決議は。
  73. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) ただいま御指摘の決議に対しましては、これは特連局からの報告でも拝見いたしましたし、また、議長並びに安里君がおいでになりまして親しく二、三回プライベートと申しますか、オフィシァルと申しますか、さしでお話をいたしました。また、参議院のこれに出ませんでしたが、衆議院の沖縄特別委員会で御両所の所見の開陳の際にもこれを拝聴させていただいておりますけれども、全文これまことにごもっとものことでございまして、だからこそ私もしょっちゅう申しておりまするように、九十五万の沖縄方々、また一億の日本国の方々悲願とも熱願とも言える施政権返還ということについても、たびたび申しておるのでありますけれども沖縄方々のこの御決議に盛られたおことば、私はよくわかりまするし、また、その裏にあるものを考えまするとじっとしてはいられないような気持にもなるわけでございます。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 今度議長の要請文の中に、これはいまも参考人との応答の中に出たんですが、政府が国論をすみやかに統一して米政府との交渉をやってもらいたい、このようなことばがあるわけですね。私も当然だと思う。あくまでもこういう委員会で、ありもしないことを、あるいはうわさを通してこういう事実であると言ったって、私たちに何のプラスもないし、あるいはそれに対して事実であるかどうかわかりませんとか、いろいろな討議をやったってしようがない。問題は日本政府アメリカ政府との話し合いです。これはもう当然なことです。ところが、この話し合いがどの程度まで真剣に行なわれておるか。いま長官がおっしゃったように、ほんとうにお説ごもっとも、いてもいたたまれない状態だと、こういう御心境は、ほんとうはその政府を代表している責任者の一角であるんですから、全面的にその責任を背負っておる方です。であるならば、あくまでもこの国会審議を通じていろいろな話し合いを行なうことは当然ですけれども、もうこのレベル話し合いをするよりも、日本政府アメリカ政府とがほんとうに話し合わなければならない段階に来ていなければうまくないと思うんですよ。この議長の要請の、国論を統一してアメリカ政府との交渉をすみやかにやれと、このことについてはいかがお感じになったでしょうか。
  75. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) 今日までトップ・レベルの会談で何回か沖縄問題は話し合われておることを私はよく存じておりまするが、もちろん、いずれの時期においても重要な問題ではありましたが、今日ほどこの問題に対する国民の、またアメリカ日本も関心が高まっておるときはないと私は考えております。直ちに日米の交渉という黒柳委員のおっしゃることは頂上会談、トップ・レベルでやれという意味と私は考えております。これがあすにでも開かれることを私は望んでおりまするが、その時期もいまいつになるかは申すことはできません。おそらく秋に総理が訪米されるときの重要な課題になる、最重要な課題になると私は信じておるのであります。なお私も、国務大臣として特連局を預かる総理府の総務長官として、この問題に重大関心を持っておりまするが、アメリカとの折衝になりますると、私のなし得ることは、まあプライベートにアメリカの大使館の関係の方、もちろんこれは公式にもございまするが、やはり正式の場でも、日米協議委員——私この職につきましてからは二回しかございませんが、まあ、私としてはできるだけの希望と要請、日米相互の理解と協力によってこの問題の解決を強くお願いしてありまするけれども、やはりワン・クッション置くねらいはありますが、やはり外務当局が当面の外交折衝の立場にありまするので、三木外務大臣とも連絡をとりながら、常時この問題についてのアメリカとの折衝はお願いしておるわけでございます。しかし、そういうものでは根本的な解決ははかれない、国論をバックとした施政権全面返還というようなことについては、やはりトップ・レベルの会談でなければならないであろう、私はこのように思っておる。その機会の一日も早い到来を待っておるわけでありまするが、なお、今度の国会から衆議院、参議院両方に沖縄問題等に関する特別委員会ができましたのも、私をして言わしめていただくならば、これをもって政争の場にしないで、それこそ文字どおり、九十五万の沖縄方々、一億の日本の国民の方々の熱願とも言うべき沖縄問題の解決について、非常によい御意見を承り、またその御開陳を願い、政府としてもあらゆる角度から検討いたしておりまするが、さらにそれとあわせまして、来たるべき非常に早い機会に行なわれることを希望いたしておりまするが、トップ・レベルの会談においてこの問題を国論を中心とした折衝に移っていただきたい、また移らなければならない、私はこのように考えております。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで当然、今秋予定あるいはある程度確定しました総理の訪米のときのこれは相当重要な話になると、そのときには先ほどから応答ありましたように、理想論ではだめだと、ブルー・プリントをつくり、これに対してやっぱり陰の力、これは総務長官だと思うのですが、今秋の総理のアメリカ行きに対して、何としてでも、先ほどもおっしゃったその信条を、ここで一つの結果を出すために努力をしてやろう、そういうお考えはあると思う。それはお考えだけではなくて、一つのやっぱり日本側態度を示す何らかの具体的な構想を持って出かけていただきませんと、また、総理にそういうものを持たせてやっていただきませんと、これはいつまでたってもまた同じような蒸し返しがある。長官の期待したような、この委員会における審議もできない。いろんなそれは難点もあります。ところが、国会審議よりも沖縄の人をまずその重点に考える、沖縄の島民の心情というものを最優先に考えてやる、これが一番重要である。まあ、いろんな考えは、もう琉球政府だって、琉球王国千年間も続いたんですから、じゃ、この際沖縄王国をつくって独立させたらどうか——これは突拍子もない話ですけれども、いろんな考えを含めてひとつ構想を練って、総理に、ぜひアメリカへ行くときには、総務長官が自信を持って、いまの発言のとおりに、ほんとうに長官の、沖縄が一日も早く日本復帰できる、これなら間違いない、米国も乗るだろう、こういうブルー・プリント、構想というものをぜひ練って、そして総理が持ってアメリカに行ってトップ・レベルの会談をやってもらいたい、こうお願いする次第ですが、それに対して長官の、あとまだ日にちがございますから、これは重要な問題ですからいろいろお考えもあると思うのですけれども、現在の御心境を吐露していただきたいと思うのです。
  77. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) 私のところは非常にたくさんの仕事を持っておりまするが、先ほどから申しておりまするように、この問題については私は最大の関心と、また一番心配いたしておる問題でありまするし、また私が総理大臣と接しておる限りにおきましても、総理の御心境もわかるような気がいたすのであります。総理も国会においてたびたびお答えいたしておりまするし、またこの間も総理から私は、この小笠原の問題と沖縄の問題とについて今日までも十分やったろうが、さらに検討を続けてこの問題の解決に当たる努力をしなければいけないという強い御指示をいただいたようなわけであります。で、至らない者ではあるけれども自分としてはできるだけのことをやっている。先ほど大浜さんがいろいろと訪米の成果を御報告されたでありましょう。ただいま総理府の一つの機関であるかもしれませんが、大浜さんをヘッドとする委員会は教育の問題についての御審議を願っております。これが近い機会に私は答申案が出ると思いまするが、総理も参議院の予算委員会、衆議院の委員会等においてお答えいたしておりまするように、この大浜コミッティというものが一応現在の任務が終了したあと、今度は総理大臣の直属の一つ諮問機関と申しまするか、形は私と官房長官で相談することになっておりますが、そこで沖縄の全般の問題について御審議を願うというお気持ちも、そういう御発言も、私は何かのものをひとつ見出してもらいたい——もちろん、政府も努力をしておりまするが、英知を傾けて、それこそ超党派的にこの問題のよい解決策というものを見出したいという気持ち以外の何ものでもないと私は考えております。決していま申しましたことが、私、他人まかせという意味ではございません。私もその驥尾に付しましてよい案を出して、この秋行なわれるであろうときには、その一つ青写真というものを持って、たとえ沖縄にブルー・スカイができなくとも、その施政権返還についての、この決議案に見られるような、沖縄方々の気持ちにこたえなければならないという強い決意を持ってこれからも勉強を続けていく考えでございます。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に一間だけお願いします。  いまの沖縄問題の懇談会、新しく新審議会ができると、それに基づいていま答申案の骨子というものが、まあこれはどの程度の答申案が出るかわかりませんが、新聞情報によりますと、おもなものは二つです。一つは、教育権の分離の問題、一つは南方連絡事務所を教育局にするという、このような答申の骨子が新聞で発表されておりますけれども、これはきっかりした答申案ができてから当然御勉強していただき、また結論を出していただくわけですけれども、いま現在の骨子、草案だと思うんですが、それに対して長官のお考えはどうでしょうか。教育権の分離の問題と、それと南方連絡事務所を教育局にすると、そういう問題に対しての……。
  79. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) いま黒柳委員の御指摘になったような問題は、新聞で私も拝見いたしましたが、私が伺っておるところでは——まだ伺っておると申しましても正式の答申が出ませんから、大浜さんなり委員方々からどういうものをお出しになるんだということは、私はお聞きしたことはございません。しかし、私はそういうものではないと思います。今日まで大浜委員会に私、出席いたしましたし、小委員——委員会には出ませんが、いろいろと私が聞いておりまするところでは、日本政府責任を持ち得る教育行政のあり方、それから教育の面におけるところの格差の是正という教育全般の問題についての御審議を願っておりまして、その答申の内容が、いまおっしゃったような二つの問題であるというふうには私聞いておりません。いずれにしろ、教育はいかにあるべきかと、日本政府責任を持って行なえる教育のあり方というものについてのお考えが示されるものと私は考えております。もうわずかでありまするから、時日を待っておるわけであります。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体いつごろ答申は——新聞だと七月とか何とか。見通しはまだ全然立たないのですか、大体七月ごろですか。
  81. 塚原俊郎

    ○国務大臣(塚原俊郎君) はっきり私も存じませんが、じゃないかと、そのころではないかと考えております。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうもおそくまでありがとうございました。
  83. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 他に御発言がなければ、本件に関する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回の委員会は六月十六日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会