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金丸(徳)
分科員 実は、
大臣は長野県でおられる。私は山梨県であります。山ではうんと苦労しておる。ことに私は山が好きなものだから山を歩く。台風の
あとなんかは、ことに私は心配になるものですから歩くのですが、そういう立場からしまして、私
どもの子供のころ歩いた山と最近における山とが何か非常な——子供のころは楽しんで歩けた山であったように記憶しておりますが、いまはそうではなくて、なるほど砂防ダムができたりいたしておるようですが、さてしかし、ダムのもう一歩上へ進んで行きますと、非常に心配の種がそちこちに見えるのです。その心配な種ばかりではなくて、そうした心配が
現実に、かつては三十四年のあの七号台風で
大臣の故郷のほうもずいぶんやられた。私のところもたいへんやられた。昨年は二十六号台風であのような全
日本を心配さしたような激甚な被害をこうむっておる。それが、山の上のほうに対する施策といいますか、山はだに対する対策がもう少しきめこまかに、あるいは事前に行なわれておったならば、ああいうことにはならなかったのではないか、かりになったとしても、もう少し被害を少なからしめたのではないか、こんな感がいたします。そこで、さらに県当局に、そのほかの地帯においてそういう心配はなかろうかと尋ねてみましたら、たくさんある。これはきっと林野庁のほうへも報告されておると思うのですが、あの狭い私の山梨県だけにおきましても八百何個所かの心配な谷があるんだそうです。特に緊急施行を要するところは二百もしくは三百個所あるということであります。もちろんそれは、ばく大な、何億、何十億の工事費を必要とするところではないと思いますけれ
ども、早目にこれに対して手当てをする必要があろうじゃないか、私はこう
考えます。これについては、もちろん中央
政府のほうの援助といいますか、指導も必要です。県におきましてもそれに対策を講じなければいかぬ。さてしかし、そういうふうな施策を講じても、はたして労力が現地において得られるだろうか。どんどん年寄りさえも減っていくというようなことであります。で、いまのようなお尋ねをし、これに対する対策を練っていただかなければと思ったのであります。実は私は、いままでのわが国の
農業対策というものが、構造改善に見られるところからいたしましても、あるいはまたその前の新農村建設
計画、そういうようなものを見ましても、大きな規模のところ、効果の多いところに目をつけられて進められてきたように思う。これはやむを得ないことと思います。そのとおりであろうとも思うのですけれ
ども、そのかわりに、非常にこまかいところが捨ておかれてきた。ことに、山地のほうは、工事の規模からいきましても、また工事の効果からいいましても少ないものですから、自然にそれは取り残されてきた。そういう結果が、山つきの
農業あるいは山合いの
農業というものが全く張り合いのない、前途の暗いものに置かれておった。適地適作という研究を進められておるそうでありまするけれ
ども、それが現地においてはたしてかゆいところへ手の届くような形で行き渡ったかどうか、私は非常に疑いを持たれるというようなことからして、このような、私
どもの子供のころから見れば心配の種をたくさんそちこちに残しておるような状況に立ち至ったのじゃないか、こんなように思うものであります。
そこで、今度は、そういう現象をつかまえて、こまかい、同時にその効果は薄いかもしれぬけれ
ども、将来のことを
考えて、山地保全に相当の、いままで捨ておいた分までも大きく力を入れていく必要があろうじゃないか、こう思う。そうして、そのためには、まず第一に、人々にその山にとどまっていてもらわなければなりません。山につき守る人をとどめておいてもらわなければならぬということになるわけです。
大臣はさっき所得政策を
考えなければいけないと言われた。私もそう思います。所得のないところに人をとどめるわけにいきません。ところが、山合いの
農業というものは、あるいは山つきの
農業というものは、どう
考えても平地の
農業と競争して勝てるわけにいかぬと思う。たまたまそこにワサビだとかあるいはシイタケだとかいうかりに若干の適地適作のものを発見し得たとしましても、それはごく部分的なものであって、全体的に言えば、総体的に言えばとうてい競争できないのであります。所得面で競争できないものがそこにとどまるということは無理である。したがって、そうなればどうしても他の所得方法を
考えなければ追いつかぬのじゃないかと思うのです。他の所得方法は、いままでは炭焼きだとかまきだとかいうこともあったかもしれませんけれ
ども、それが今日望み少ないということになれば、やはり何か
考えていかなければならぬのじゃないか。で、私は思いついたのであります。これも現地を歩いて思いついたのでありますけれ
ども、たとえば、林道を
開発してくださる、たいへんありがたいのですけれ
ども、その林道保全の金が十分に行っておらぬ。したがって、もしこれを現地における所得策と結びつけて
考えまするならば、せっかくつくった林道を補修するという経費でもたくさんやって、その人たちの
仕事を常時つくっておかれるというようなことも一つの策ではないか。もっと言うならば、道だけではない。そのほかに山はだを監視する、山の状況を査察する、山を守るというような
仕事を、これは生業としてつくっておかれることが、所得を
確保する上において一番手短かであり、言ってみまするならば一石二鳥の方法とも思われるのでありますが、こういうことについて
大臣はどんなふうな
考えをお持ちになっておられるか。