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1967-07-13 第55回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十三日(木曜日)    午前十時十六分開義  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 北澤 直吉君 理事 田中 龍夫君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       有田 喜一君    井出一太郎君       池田正之輔君    周東 英雄君       鈴木 善幸君    灘尾 弘吉君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    船田  中君       保利  茂君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三原 朝雄君       山崎  巖君    井岡 大治君       井上 普方君    猪俣 浩三君       大原  亨君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    高田 富之君       西宮  弘君    芳賀  貢君       畑   和君    矢尾喜三郎君       山中 吾郎君    竹本 孫一君       永江 一夫君    広沢 直樹君       山田 太郎君    谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 木村 俊夫君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官 亀岡 高夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         内閣総理大臣官         房臨時在外財産         問題調査室長  栗山 廉平君         総理府人事局長 増子 正宏君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛政務次官  浦野 幸男君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術政務次         官       始関 伊平君         科学技術庁長官         官房長     小林 貞雄君         科学技術庁長官         官房会計課長  藤井孝四郎君         科学技術庁計画         局長      梅澤 邦臣君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         科学技術庁振興         局長      谷敷  寛君         法務政務次官  井原 岸高君         外務政務次官  田中 榮一君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         国税庁長官   泉 美之松君         文部政務次官  谷川 和穗君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省境境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         厚生省援護局長 実本 博次君         社会保険庁医療         保険部長    加藤 威二君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         林野庁長官   若林 正武君         通商産業省通商         局長      山崎 隆造君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         気象庁長官   柴田 淑次君         労働政務次官  海部 俊樹君         労働省労政局長 松永 正男君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省河川局長 古賀雷四郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省財政局長 細郷 道一君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         外務省アジア局         長       小川平四郎君         食料庁業務第一         部長      馬場 二葉君         会計検査院事務         総長      宇ノ沢智雄君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 五月二日  委員亀岡高夫君仮谷忠男君、正示啓次郎君、  登坂重次郎君、藤波孝生君及び細田吉藏辞任  につき、その補欠として灘尾弘吉君、江崎真澄  君、荒木萬壽夫君、中野四郎君、重政誠之君及  び久野忠治君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員浅井美幸君及び正木良明辞任につき、そ  の補欠として矢野絢也君及び広沢直樹君が議長  の指名委員に選任された。 同月十六日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として赤路  友藏君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員畑和辞任につき、その補欠として八百板  正君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として畑  和君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員赤路友藏辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員宇都宮徳馬君、久野忠治君、中野四郎君及  び芳賀貢辞任につき、その補欠として川崎秀  二君、西村直己君、福永一臣君及び赤路友藏君  が議長指名委員に選任された。 六月二日  委員大原亨辞任につき、その補欠として千葉  佳男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員千葉佳男辞任につき、その補欠として大  原亨君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  實川清之君が議長指名委員に選任された。 同日  委員實川清之辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  栗林三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員大原亨辞任につき、その補欠として小松  幹君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小松幹君及び横路節雄辞任につき、その  補欠として大原亨君及び矢尾喜三郎君が議長の  指名委員に選任された。 同月二十日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  栗林三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十二日  委員福永一臣君及び角屋堅次郎辞任につき、  その補欠として福永健司君及び栗林三郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員愛知揆一君辞任につき、その補欠として赤  城宗徳君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員赤路友藏君及び角屋堅次郎辞任につき、  その補欠として芳賀貢君及び實川清之君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員實川清之辞任につき、その補欠として角  屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員猪俣浩三君及び芳賀貢辞任につき、その  補欠として帆足計君及び實川清之君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員實川清之辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員芳賀貢君及び谷口善太郎辞任につき、そ  の補欠として伊賀定盛君及び川上貫一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員伊賀定盛辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 七月四日  委員芳賀貫君及び永江一夫辞任につき、その  補欠として栗林三郎君及び山下榮二君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として實川  清之君が議長折名委員に選任された。 同日  委員實川清之辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員川上貫一辞任につき、その補欠として谷  口善太郎君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員芳賀貢君、山下榮二君及び広沢直樹辞任  につき、その補欠として栗林三郎君、永江一夫  君及び北側義一君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員福永健司君、石橋政嗣君角屋堅次郎君、  帆足計君、八木昇君、西村榮一君、北側義一君  及び矢野絢也君辞任につき、その補欠として三  原朝雄君、井上普方君、西宮弘君、猪俣浩三君、  井岡大治君、竹本孫一君、広沢直樹君及び山田  太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員三原朝雄君、井岡大治君、井上普方君、西  宮弘君及び竹本孫一辞任につき、その補欠と  して福永健司君、八木昇君、石橋政嗣君角屋  堅次郎君及び西村榮一君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  先般来の理事会の協議に基づきまして、本日は予算実施状況につき調査を行なうことといたしたいと存じます。よって、この際、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ――――◇―――――
  4. 植木庚子郎

    植木委員長 それでは、これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北山愛郎君。
  5. 北山愛郎

    北山委員 私は、当面する経済財政等の諸問題について御質問をいたしたいと思いますが、その前に、今回の西日本を襲いました集中豪雨によりまして多数の犠牲者を出しました。また、ばく大な損害が生じたわけでございます。しかも、この原因となるところは、天災というよりは人災による面が多いのではないか、こういう点を含みまして、心から痛嘆にたえないのでございます。この災害対策等については、あと同僚委員から政府に対していろいろ発言がございますので、私はその内容には触れませんけれども、冒頭に、心から被災者に対してお見舞いを申し上げ、また、政府の迅速かつ適切な処置を要望する次第でございます。  次に、質問に移りますが、まず、本年の当面する経済動向についてお伺いをしたいのであります。  いまの経済動向景気は、政府の本年度予算案審議の当時に予想しておりました目標よりも上回った、いわゆる景気上昇の現象があらわれておるわけでございます。たとえば、鉱工業生産においては、五月において前年に比べて一八・八%、これは政府見通しよりもずっと上回った数字であります。また、設備投資におきましても、本年は昨年に比べて一八%増、六兆六千億と予想されるのであります。これは政府の一四・八%、六兆二千億に対しまして相当に上回った傾向数字を示しておるわけであります。その他個人消費あるいは機械の受注、そのような指標がすべて当初の予想を上回った、経済上昇の機運にある、形勢にあるということを示しておるわけでありますが、この最近の経済動向につきまして、経済企画庁長官としては、どのようにこの現況をごらんになっておるか、これをまずお伺いしたいのであります。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま北山委員の御指摘になりましたことにつきましては、概して私どももそういうふうに感じております。そうして、これからあと、今年は民間設備投資も多少出おくれておりましたし、財政のほうも、いろいろな事情から、公共事業関係支出が多少おくれております。それから、おそらく今後生産者米価につきましてもある程度の引き上げがあると考えられますし、また、先般のいわゆるベースアップ等の影響もこれから出てくる分が多い、いろいろな事情から考えますと、やはり後半もなお強含みではないか、かように考えております。
  7. 北山愛郎

    北山委員 そのようにいたしますと、政府はことしの経済成長率というものを、名目でもって一三・四%、こう見ておったわけでありますが、その予想よりも、現状をもってするならば、ことしは経済成長は上回る、下期におきましても相当現状が続くという見通しでございますので、一三・四%よりも上回るのではないか、こういうように考えるのでありますが、企画庁も同じようにお考えですか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 下期のことを非常に明確には判断いたし得ませんけれども傾向といたしましては、やはりそう考えるべきではないかと、ただいま考えております。
  9. 北山愛郎

    北山委員 これは、まあいろいろな経済専門家なりあるいは銀行方面では、やはりいま企画庁長官お話しのとおり、ことしの経済成長率は一五%ないし一六%くらいになるのではないか、これが常識のようにいわれておるのでありますが、長官もそのようにお考えですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本予算が施行になりましてから日が浅うございますので、どのくらいになるかということを申し上げるほどのデータが整っておりません。見通しより上にいくのではないかという感じはいたしておりますけれども、計数で申し上げるほどの判断資料がまだございませんと思います。
  11. 北山愛郎

    北山委員 なるほど、経済はそのような政府の当初の見積もりよりも上回るような傾向を示しておりますが、一面においては、中小企業整理倒産も昨年よりも三割ぐらいの増加でございまして、最近も、この六月でも七百三十七件、その負債額においても昨年よりもずっと上回っておるわけであります。ですから、私どもは、手放しに、現在の経済上昇というのは、各階居とも同じようにその好況の恵みに浴しているというふうには考えませんけれども、とにかく、経済全体の大きさとしては確かに拡大しておる。長官大型経済ということを言っておるようでありますが、確かにそういう傾向だと思うのであります。  そこで、お伺いしたいのは、ことしの税の伸びでございます。これは当初予算では、いわゆる一三・四%の名目成長率に対して、租税弾性値というものを一・五三というふうにいたしましてはじき出しておるわけでありますが、当然この政府の当初の見積もりを上回る、経済成長伸び予想よりも上がるとするならば、税の自然増も、当初予算よりもふえるというふうに見ていいのか、大蔵大臣、その辺はどのようにお考えですか。これは世間でも、大蔵省やあるいは各省の部内でも、非公式には、ことしは三千億ぐらいの税の自然増は出てくるんじゃないか、こういうことを言っておりますが、どのように大蔵大臣としては見ておられるか、お伺いしたいのであります。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 この前の予算委員会で申し上げましたように、弾性値一・五三というふうに、過去の十年の平均から見ましても、本年度は非常に私どもは向くこれを見て予想をいたしましたが、その後この一三・四%という成長率は、いま企画庁長官から言われましたように、いまこれ以上の伸び率になるだろうという予想でございますので、したがって、当時の税収見込みも、それよりは上回ってくるだろうというふうには考えられますが、いまのところはまだ四月、五月という二月の実績が出ておるだけでございまして、この二月の実績から見まして、まだ一年の自然増を推定するという資料にはこれはなりませんので、いまのところは未定でございます。
  13. 北山愛郎

    北山委員 実は、昨年の租税の実収ですね、実際の収入というのは、もうすでに出納閉鎖は済んでおりますからわかると思うのでありますが、やはり四月、五月と相当伸びておりますので、最終的な四十一年度税収総額からするならば、いま大蔵大臣が言われたような弾性価というのは下がってくる。私の試算でございますけれども、一・五三じゃなくて、むしろ逆に一・三五ぐらいになるんじゃないか。ということは、私の試算の四十一年度一般会計税収見込みというのは、最終的には三兆四千二百六十億くらいになるんじゃないか、こう見ておるのです。大蔵当局としては、もうすでにわかっておると思うのですが、五月末の四十一年度税収はどの程度になっておるか、それを基礎にして考えるというと、いまの弾性値というのは下がるわけなんです。低過ぎるんじゃないか、一・五三じゃなくて一・三五になるんじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  14. 塩崎潤

    塩崎政府委員 四十一年度収入実績は、補正予算に対しまして六百二十億八千四百万円の増収となっております。四十一年度実績は、弾性値で見ますと一・三四、こういうことになります。
  15. 北山愛郎

    北山委員 いまのように弾性値が下がってくるということになりますと、ことしの弾性値を一・五三という高い率で見たんだということは実態に合わないわけです。予算編成期においてはそうだったかもしれぬが、現在においては、むしろことしの税収見積もりというものは低きに過ぎるというふうに考えられる。そういう点と同時に、先ほど来お話があったように、ことしの経済成長が一三・四%ではなくて一五なり一六になるということになれば、これは相当自然増がふえるんじゃないか、こういうふうなことに、これはだれでも考えるわけであります。したがって、常識的に三千億、四千億というものが出てくるんじゃないか、こう思うのでありますけれども、私がどんなに言っても、現在の段階で、大蔵大臣が三千億出ますというようなことはおそらく言わないでしょう。しかし、相当に税の伸びがあるということは予想される。そういう段階で、私の伺いたいことは、健康保険の問題にしろ、米価の問題にしろ、どうも国民生活に非常に関係のある、あるいは物価の問題に関係のあるような問題については、予算の出し惜しみをするんじゃないか、こういうふうに考えられるのですが、その点は、まことに私は残念だと思うのです。米価の問題、あるいは医療の問題については、またあと同僚の議員からお話がありますけれども、とにかくそういう自然増がふえるというような情勢である。またあるいは、私どもが当初の予算の組みかえ案でも申し上げましたとおり、現在大企業なりあるいは資産所得者には税は非常に軽い、取れば取れるという分があるわけでありますから、そういう点もからみ合わして、そして、このいまの時点において、生産農民がことしの生産者米価について、あるいは労働者があの健康保険改悪反対について、強く政府に要難していることに対しては、十分これは政府としても考えるべきである、かように思っておるわけでありますが、総理はどのようにお考えですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算編成当時、御審議を通じまして、いわゆる税収が非常にふえたら一体どうするのか、こういうお話がございましたが、そういう際に政府としてまず第一に考えなければならぬことは、ただいま借金政策をしておりますから、いわゆる健全――公債発行はしているが、まずその発行公債を減額する方向で取り組む、また、ただいま言われましたことですが、災害その他によりまして必要なる支出はしなければならないけれども経常費としては、ただいま言うような借金を減らすというその点に重点を置くということを申し上げております。最近の望ましい傾向にあるということ、これは予想を上回る上昇傾向をたどっているということは、いずれにいたしましてもけっこうなことだと思いますけれども、しかし、その点でも、これはやっぱり今後国際収支やあるいは設備投資動向など見まして、この景気を持続さすという、そういうことをしなければならないと思います。そういう場合に、われわれがまず第一に考えなければならぬのは財政金融政策弾力的運用だ、かように私は思っております。その場合は、ただいま申し上げますように、まず借金から減らしていく、かように考えております。
  17. 北山愛郎

    北山委員 国債を減額すべきであるという点は言うまでもございません。わが党としては、当初予算の際にも、国債発行すべきでないという主張をしたわけでございますから、その条件が許すならば、できるだけ国債を減額するという方向が正しいと思うのでありますが、それと同時に、国民生活に必要な経費というものは、渋らないで出していかなければならぬ、こういうことを主張するわけであります。  いま総理から、自然増がふえれば国債を減額するのだ、こういうお話でございましたが、すでに国債市中消化というものは非常に困難になってきているということで、四、五月の分を繰り延べておるという現状のようであります。いま大蔵大臣も、総理が言うように、今後の情勢によってことしの国債発行を減額するというふうにお考えですか、大蔵大臣からも伺っておきたいのであります。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 国債は無理しないで市中消化できるような範囲で発行するという方針を持っておりますので、市中消化の状況というものを見まして、また一面、税収見込みというようなものとあわせまして、国債は、いまのような経済上昇基調の非常に強い経済のときでございますし、昨年度国債の依存率よりは下げるということを最初から方針にしておりますので、そういう点からも、これからの弾力的な財政の運用という過和においては、国債の減額を私は考えたいというふうに思っております。
  19. 北山愛郎

    北山委員 政府は、予算の問題について、予算の成立後でありましても、いま申し上げましたとおりに、医療費の値上がりとか、あるいは生産肴米価の問題、また、これから起こってくる公務員給与の問題、こういう点については非常に消極的でありますが、その反面では、まことに気前のいい点もあるわけであります。たとえば、今度の国会に出ております例の在外資産の問題、いわゆる引き掲げ者等に対する交付金千九百二十五億です。これなども、ある人から見れば、立場をかえて見れば、まことに気前のいいやり方ではないか、こういうふうに思われるわけであります。  この問題の内心谷については、当核の委員会でやるので私は触れません。ただ、これに関連をして二、三お伺いをしたいことは、戦後処理について、これは前の予算審議の際のこの委員会のこの場所で、私は、例の海外に残されておる戦死者の遺体収容の問題についてお尋ねをしたわけであります。そのときに、いわゆる海外の戦死者というのは二百十万人あるのだ、そのうち、ほんとうに遺骨となって帰ってきたのは三分の一にすぎない。特に、南方を中心として約百万のまだ収容埋葬されないところの戦死者の遺体が残されておるということを指摘しまして、特に社会党としては、昨年の八月に政府に対してこの問題について申し入れをしているわけです。その回答を求めましたところが、予算委員会の席上で、福永官房長官から、予算成立の時点において具体的な回答をいたします、こういうふうにお答えになりました。ところが、いまもって何らの御回答もないわけなんです。私は、どうも政府は、社会党を軽視しているのか、あるいはこの問題を軽視しているのか、まことに納得がいかないのであります。なぜ、一体まじめになってこの問題と取っ組んでくれないのか。この点については、その当時、総理はこの場におられたわけで知っておられるわけですから、この際、総理からはっきりとした御答弁をいただきたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題は、社会党ばかりじゃございません、私どももたいへん気にかかっておる問題であります。いろいろ厚生省でも具体的に計画を立てておるようですから、厚生大臣からお答えいたさせます。
  21. 坊秀男

    ○坊国務大臣 この問題につきましては、昭和四十一年八月十一三日、社会党から「海外戦没者の遺体、遺品の埋葬処理に関する申入れ」というものをちょうだいしておりますが、この第一項目、海外戦没者の地域別の数、海外戦没者の遺骨の収集について政府が実施した措置、現在における未収集遺骨の状況等は、詳細な資料となっておりますので、後刻お手元にお届けいたします。  今後における海外戦没者の遺骨の収集につきましては、現地の状況等を勘案の上、本年度以降において計画的に実施することといたしたいと思っております。  なお、本年度はフィリピンのレイテ島及びルソン島、マリアナ諸島のサイパン島及びテニアン島、カロリン諸島のメレヨン島の遺骨収集を実施する予定でございます。海外戦没者の遺骨の収集は、政府の責任において実施することとしておりますので、民間団体が行なう遺骨収集等の計画に経費を補助するというようなことは考えておりません。なお、局間団体による遺骨収集の計画については、これが適正に行なわれるよう必要な指導を行なってまいりたい、かように考えております。  資料につきましては、後刻お手元へお届け申し上げます。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま厚生大臣からお答えしたとおりでございますが、これはもう戦後二十数年たっておる今日でありますから、国民感情から見ましても、早急にこの仕事をしなければならない、私かように考えておりますので、ただいまのお話もありましたし、一そう政府当局が責任を持って処理していく、こういうことにいたしたいと思いますので、この上とも御支援をお願いしておきます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 戦争犠牲者というのは、直接の犠牲者あるいは間接の被害者、いろいろあるわけであります。この戦争犠牲者に対する処遇というのは、やはり私は、何としても戦争によって命を失い、あるいはまた、けがをし、病気になった、こういう方々について優先してやるべきである。財産の初位等については、これはその次の段階考えるというふうにするのが当無であるし、西ドイツ等の例に見ましても、そのようになっておるわけであります。ところが、政府のいままでのやり方というのは、むしろさか立ちをしているのじゃないか。これは昭和三十何年ごろでですか、池田内閣当事、内閣の中に戦争犠牲者に対する総合的な調査会を設けて、そして総合的な処理をするんだという意見があったやに私は聞いておるわけです。ところが、そのことができなくて、そして例の農地報償と在外資産の問題と、この二つだけにしぼってやってきたわけです。私は、この措置はやはり誤っていると思うのです。ですから私は、また私だけではなくて、一般の感情からしても、また条理からしても、命を失ったり、けがをしたりした犠牲者、その人たちを優先した処置をすべきである、そう思うのですが、いま申し上げたような、海外にいまだにしかばねをさらしておる人たち、この問題こそが最初に精力的に取っ組んでやらなければならない問題だったわけです。ところが、いままで年々の予算を見ても一千万円足らずで、昨年度なんかは二百三十万しかないのです。それによってわずかにせんだってペリリュー島の遺骨を収集してきた。そのときの写真が朝日新聞の六月六日ですかの夕刊に載っておりますが、戦死者の骨が累々としてある。この写真を見て、おそらくたくさんの国民はショックを受けたと思うのであります。こういう問題がなおざりにされているということは、私は、問題がさか立ちをしている、こういうふうに考えるわけであります。特に私は、この際お伺いしたいのは、在外資産の問題の処理の結論が出ましたときに、総理あるいは総務長官が、これでもって戦後処理は終わったんだというような発言をされたやに伝えられておるわけであります。私はこれは間違いだと思うのです。現にこの海外の戦没者の遺体収容の問題すらも片づいておらない。戦後処理が終わったなんて、とんでもない話なんです。私は、これはおそらく間違った発言であり、誤って伝えられておると思うのですが、戦後処理は引き揚げ者交付金によって終わったのではない。問題はまだまだあるというふうに総理もお考えになっていると思うのでありますが、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 在外資産処理の問題につきましては、本会議でいろいろ質問を受けまして、そして戦後処理として財産的な補償をするとか、あるいは見舞いを出すとか、こういうような問題は、これで最後にするということを申し上げたと思います。ただいま遺骨収集あるいは遺品収集、それなどの仕事が残っておることはもちろんでありますし、また、その他の場合におきましても、未解決の問題もあろうかと思いますけれども、しかし私は、いわゆる農地報償だとか、あるいは在外資産の処理だとか、ああいう形のものは今後はないんだ、こういうことを申し上げたのでありまして、その意味においての誤解はないようにいたしたいと思います。
  25. 北山愛郎

    北山委員 いま厚生大臣から、海外の遺体の処理、埋葬等については、今後熱意を持ってやられるというお答えでございます。ただ、これはもちろん総理の言うように、社会党だけの問題ではございません。やはり国民全体が関心を持っている問題です。厚生省の中に、現在の実態がどうなっているか、現状がどうなっているか、詳細な調査があるとおっしゃった。ところが、外部に出ておらぬのですよ。明らかにされておらない。社会党に対してこの回答をなさると同時に、これは国民の前に、社会党が要求してまいりました海外の遺体、遺骨がどのような状態になっておるのか、地域別にできるだけ詳細に知らせるということが一つ。それから、いままでこういう手続を経、こういう経過を経てきておる、処理をしてきているという経過、並びにいま残されておる今後の問題等、もっと精力的にやるんだ、計画的にやるんだということを、あわせて国民の前に明らかにしていただきたいと思うのであります。  ことに私は、この際申し上げたいことは、数人の調査団で一つの島へ行って収集してくるというようなことでは、これは何年たっても片づかないと思うのであります。やはり十分な予算と人員等をもって、しかも、陣容を常駐さして、船でもチャーターして、そして思い切ってやる必要があると思うのであります。そういうふうな計画でもって進めていただきたいということを要望するものであります。  それから、厚生大臣の答弁にもありましたが、各地で、民間でもって遺族や戦友などが資金カンパなどをして戦跡を訪問するというようなケースが相当あるようであります。これについては補助金なんか出さないというお話ですが、これは政府がやらないからそういう問題が出てくるわけなんです。やはり海外のこれらの残された遺体の収容なり埋葬なりという問題は、国の責任として十分な処置をする、そういう処置の際には、遺族の関係者とかそういう人たちの要望も十分いれて、国が責任を持ってやるという体制にするならば、みんな金を集めてやるというようなことはないと思うのです。そういう点で、ただ民間に補助金は出しませんというような消極的な姿勢ではなくて、国が全責任を持ってこの問題を処理するということを明らかにして、そして、その上で民間の問題については処理をしていただきたい、こう思うのであります。いずれにしても、いままでのような消極的なことではなくて、もっと積極的に、この数年間でこれをできるだけ片づけるということでこの問題を進めていただくと同時に、至急御回答を要望いたしまして、一応この問題を終わります。  ただ、あわせて、総理のことばにもありましたとおりに、その他の問題としては、現にこの国会にもわれわれが提案しておりますところの原爆被爆者の問題があるわけであります。これはすでに国会としても、衆参両院で三十九年、援護強化の決議をやっておるわけです。この文章は読みませんけれども、院の決議として両院で決議している。このことをやはり政府としては実行しなければならない。特に今度の国会では、参議院の社労委員会ですか、原爆の被爆者対策の審議会を設置しろという要望決議が出されております。これは決議が出ているだけではなくて、前鈴木厚生大臣が、そういう措置をとるということを被爆者団体に言明しておるというような経過もございますので、院の決議を尊重するというたてまえからも、この原爆被爆者に対する対策のための審議会、これを設置してもらいたい。これは私の要望というよりはむしろ院の、国会の決議あるわけでございますから、その方向で処理をしていただきたいと思うのでありますが、厚生大臣あるいは総理から、この点明確に答弁をお願いいたしたい。
  26. 坊秀男

    ○坊国務大臣 原爆被爆者につきましては、国会から何回か御決議もいただいておりまして、これを尊重してまいらなければならないのは当然のことでございます。原爆被爆者に対しましては、すでに、三十二年でございますが、原爆被爆者の医療に関する法律というようなものがつくられまして、これに基づいて原爆被爆者の医療の問題につきましてはそれぞれの措置を行なっておりますが、この措置は、さらに今後も整備拡充していくべきものだと考えております。   その他の援護といったような問題につきましては、今日原爆被爆者の実態の調査をやっておるわけでございますが、この調査の結果がことしの秋ごろに判明をいたすということに相なっておりますので、そういったような実態の把握をいたしまして、その上に、必要であるならば、これに対して前向きに、ほんとうに何らかの措置を考えていかねばならない場合にはこれを考えていく、私はこういうような考えを持って進んでおるのでございます。  以上でございます。
  27. 北山愛郎

    北山委員 この点は、いま厚生大臣のお答えがありましたが、必ずしも明確でございません。決議を尊重して、援護についての処理を考えていくということでありますけれども、具体的に、参議院では審議会を設置してくれという決議もあるわけです。それから一般的には、両院の決議もあるわけであります。したがって、調査もさることながら、もうすでに対象は厳としてあるわけですから、やはりこれを処理するという立場でもって、審議会設置を考えてもらう必要があると思うのです。この点についての総理のお考えをお聞きしたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私、突然ですが、いま審議会をつくらなくてもいいのじゃないか、かように思っております。もちろん決議は尊重する、そういうことでございますから、御承知のように、医療には特に注意をして、さらに内容を充実するということを言っておりますし、また、実態調査をいたしました上で、生活保障、そういう点でさらに考える必要があるかどうかというようなことも、これは実態調査の上できめたい、かように思っております。
  29. 北山愛郎

    北山委員 なお、この問題について厚生省では、被爆者については、国といわゆる命令服従といいますか、身分関係において何らかの公務に従うとか、そういう関係がないのだから、特別な処理ができないというようなお考えを持っておるやに聞いているのです。これは明らかな間違いだと思うのです。今度の在外引き揚げ者の問題だって、何もみな公務員じゃないのです。一般の国民なんです。また、戦争に参加した者は軍人や官吏だけじゃないのです。国民が参加し、またひとしく犠牲を受けているのです。したがって、その措置を、身分関係において区別するなんていうことは明らかに間違いだ。そういうことは言うはずはないと思うのでありますが、一体、身分関係が原爆被爆者等の処理にじゃまになっているのかどうか。そういう差別待遇はしないのだ、こういうお考えなのかどうか、ここで明確にしていただきたいのであります。
  30. 坊秀男

    ○坊国務大臣 現行の援護諸制度といったようなものは、これは大体において身分関係がバックになっておると理解しております。しかしながら、原爆被爆といったようなものにつきましては、これはきわめて特殊なものであるということを考えてまいらなければならない。さような意味におきまして、身分関係を除いてこれを援護するといったようなことを考えますと、これは一極の非常に広義な特殊な社会保障――何も狭義に考えまして、生活保護とかなんとかいったようなことでなしに、非常に広義な社会保障というような考え方から、その中におきましてこれを広く包括いたしまして、そして考えていくべき問題ではなかろうか、かように考えておりますが、そういったようなことも、これは実態調査の上、正しい実態把握の上に立って、ただいま申し上げましたとおり、何もかた苦しい身分関係といったようなものにかかわることなく、広い意味における特殊なる社会保障というような考えでこれを処理していくべき問題であろう、かように考えております。
  31. 北山愛郎

    北山委員 海外の遺骨の問題にしろ、あるいはいまの原爆被爆者の問題にしろ、やはりもっと積極的に、もっと早く、政府として処理をすべき問題だと思うのであります。西ドイツやあるいはイギリス、フランス、どの国をとりましても、やはり戦争に関連をする措置として、すみやかに、しかも一般的な措置をとってきて、身分関係とかそういうことをあまり問題にしないという、積極的な戦争犠牲者対策を系統的にとったわけであります。日本は、残念ながらこれがばらばらに、ちぐはぐになって、圧力団体が強くやったものは処理をされるが、黙っておればやってくれない、こういうふうなアンバランスのかっこうになってきておる。残念ながら、そういう経過をとってきておると思うのであります。ですから、これをやはり今日の段階においても、できるだけ手直しをして、これを是正して、そして、やはり人情に合い、また条理、道理に適合するような戦後処理というものをやるべきではないだろうか。今日においては、もう二十何年もたっておりますから、手違いを全部直すわけにはいかないでしょうけれども、今後起こってくる、たとえば原爆被爆者でなくても、国内における空襲による死亡者というのはやはり五十万あるわけですから、そういうふうな問題もあわせ考えて、これでもって一線を引いて、今後はもう決してやらないのだというような、そういう姿勢でなく進めていただきたいということを、特に要望いたしておきます。  次に移りますが、こういうような問題については、どうも政府は消極的なようでありながら、しかも一方では、相当放漫な予算の使用をしている面がたくさんあるわけです。たとえば、この国会でも問題になりました内閣調査室の問題にしても、一つのわけのわからないような団体に二億円もの金を委託調査費として出して、どのように使っておるのかわからないというような問題もある。あるいは防庁の予算なんかはますます膨大になる、しかも、その内容についてははっきりしないというようなかっこうであります。特に四十年度の決算の会計検査報告を見ますと、決算未精算のものがたくさんあるのです。三十四年から四十年までの間に、ほとんどこれは防衛庁だけですが、四百九十億も未精算になっておる。前渡金を渡しておいて、三十四年以来何年もたっていまだに精算ができないというようなかっこうの経理をやっている。私は、この問題は触れませんけれども、こういうように、一方では予算の使い方についてまことに放漫な、だらしのないやり方をとっておるわけであります。  特に私は、ここでお伺いしたいのは、海外経済協力の問題であります。これは本年の経済協力基金においては二百九十億、輸出入銀行は三千億、そういうばく大な金をもって海外に対する輸出延べ払いとか、あるいは政府に対する借款とか、あるいは投資の資金に出しておるわけでありますが、どうも最近の新聞によりましても、総理が韓国に行って帰って来ると、すぐに四百三十万ドルの対韓借款がきまる、調印をされる、三分五厘、二十年の借款が成立するというようなことになる。この秋には東南アジアを回ってこられるわけですが、たくさんのおみやげを持参するか、あるいはおみやげを持ち帰ってこられるのじゃないか。インドネシアとかあるいはインドとかは、手ぐすね引いて待っておるといわれておるわけであります。  ですから私は、この海外経済協力基金の資金の使い方、これが問題だと思いますが、特にここでお尋ねしておきたいことは、この六月の初めに、インドネシアに対する円借款を調印したはずであります。これは現地の日本の出先と向こうの外務大臣との間に調印ができておる。六千万ドルであります。一千万ドルは贈与になって、あとの五千万ドルは五分の借款だ、こういうことになっておるのですが、この一千万ドルの贈与を一体どの予算から出すのか。しかも、そういう政府間の約束をした以上は、権利役務の関係がそこに生まれるわけでありますから、これは条約として考えても、あるいは憲法八十五条の点から考えましても、当然国会の議決を経なければならぬ事項だと思うのであります。これをどのようにしておられるのか、外務大臣なりあるいは大蔵大臣からお伺いしたいのであります。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 外務大臣がいまおりませんので、いつ協定が結ばれるかの時期がちょっと明確でございませんが、まだ協定が結ばれているわけではございませんので、それによって予備費で支出しますか、予算の補正をやりますか、いずれかによって支出するということになろうと思うのです。
  33. 北山愛郎

    北山委員 これは、新聞の報道によると、六月七日に、明らかに出先の大使館と向こうのマリク外相との間に調印ができておる、そう伝えられて煽るのですが、まだきまらぬのですか。
  34. 三木武夫

    ○三木国務大臣 インドネシアの六千万ドルの問題を御質問のようでありますが、いま交換公文かけでありまして、協定はこれから結ぶことになるわけです。協定を結ぶ場合に、グラント一千万ドルというものは、その処置をその場合において考えることになると思うのです。
  35. 北山愛郎

    北山委員 交換公文と協定と、どういうふうに違うのです。交換公文だってやはり取りきめ、そういう条件で一千万ドルは贈与するのだ、五千万ドルは貸すのだ、しかも五分の利子でもって二十年ですか、そういう条件できめて、そして交換公文が調印されたでしょう。それがすなわち協定じゃないのでしょうか。どこが違うのです。交換公文のほかに、また協定を結ぶのですか。何のためにそんなことをするのですか。
  36. 廣田しげる

    ○廣田政府委員 お答えいたします。  去る六月に結びましたのは、いわゆる交換公立でございまして、その中にいわゆる五千万ドルの円借款と一千万ドルの贈与のことがございますが、それは日本国の関係法令に従い、かつ予算の範囲内において与えることになっております。しかも、贈与につきましては、また、必要な取りきめは、今後両国政府間の協議によって合意されるということでありまして、いわゆる贈与につきましては、今後両国間の取りきめにおいてその内容等がきまるわけでございます。
  37. 北山愛郎

    北山委員 それは交換公文そのものが条約ですよ。あとの実施細目というものはつけ足りのものですよ。そういうふうな、とにかく交換公文で両国政府が取りきめしておるわけです、いまお話があったように。そうすれば、一下万ドル贈与しますという約束をしたわけですから、一千万ドルを国は出さなければならぬのです。財政の負担というか、財政支出の約束をしたわけです。予算の範囲内といっても、予算にはインドネシアに一千万ドルやるなんというような予算はどこにもありませんよ。どうするのです。一体どこの予算から出すのです。しかも、そういうふうな財政上の義務を負うようなことを国会にかけないできめられるのですか。憲法第八十五条ですか、どうなんです。
  38. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 財政法の問題でございますから、私からお答えさせていただきますが、ただいま外務省からお答えになりましたように、日本国の法令に基づいて予算の範囲内においてと書いてありますときには、財政法の手続に従って、予埠の御承諾が得られたときに、それが初めて発効をするということでございますので、憲法八十五条の債務負担を無条件でしておるということにはならないのでございます。
  39. 北山愛郎

    北山委員 その金を出すのはあとでしょうね。しかし、出すという約束を負っている場合、したがって、憲法七十三条の三号の国家間の権利役務を生じているわけです。そういう内容のものだから、そういう点から見ても、七十三条三号から見ても、これは交換公文を国会へ出さなければならぬですよ。政府がかってに国民の金を出すという約束をしてそういう条約を結んだなら、その条約を国会に出して承認を受けなければならぬですよ、財政の面から言わなくても、これは両面から当然国会に出すべきである。それを六月の九日に調印をしておきながら、いままで知らぬ顔をしている。これは一体どういうことなんです。
  40. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 こういう例はほかにもあるのでございまして、もしその場合に、あとで国会の議決を得られないというときには、その贈与についてはできないということになるわけでございますから、したがって、国内の法令の手続に従ってこういうふうなグラントの協定を結ぶということは、それ自体が債務負担にはならないわけでございまして、いままでもそういう先例はほかにもあるように私は伺っております。
  41. 北山愛郎

    北山委員 それは、もちろん条約ですから、事前に国会の議決を経てから政府が条約を結ぶというのではなくて、事前に判を押してから、それから条約の承認を受けるというのはあたりまえのことですよ。だけれども、私が問題にしているのは、六月の九日にはっきりと条約を結び、一千万ドル向こうへ出すという財政上の役務負担の約束をしている。そうしておいて、その処理をしないということは一体どういうことだ。いままで六月九日から一カ月もあるのですよ、なぜ国会に出さないのです。補正予算を出さないのです。条約を出さないのです。いままでも、こういう借款の問題だとかそういうことについては、憲法七十三条三号の規定かう言うならば、これは出さなければならぬですよ。たしか、よほど前にはそういう借款の協定についても国会に出しておったはずなんです。最近では、それを出さないで、輸出入銀行の処理で、いわゆる三千億円のワクの中で処理している。これは国会軽視ですよ。ところが、今度の問題は一千万ドルの贈与まで含んでいるのです。輸出入銀行の窓を通じても一千万ドルの贈与はできませんよ。国会が開会中なんです。いままで一カ月間、どういう処理をしようと政府考えておったのか、外務大臣あるいは総理、一体どうなんです。
  42. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 憲法の七十三条の三号なりあるいは八十五条なりの規定は御指摘のとおりでございますが、ただいまそれぞれの当局から御説明がありましたように、この一千万ドルの贈与につきましては、法令の範囲内あるいは予算の範囲内ということを特に御説明申し上げております。これは特に国会の条約として御審議を願います場合に、これは国権の発現にそれぞれ拘束を受けるという意味合いにおいて、国権の最高機関である国会の御承認を得るというたてまえになっておるわけでございますが、法令の範囲内、つまり法令を執行するのは政府でございますが、その法令で認められた範囲内、あるいは国会で御議決をいただいた予算の範囲内、これは、実は国会から政府に託された範囲内のことでございますので、その範囲内のことでできますことであれば、これはあらためて国会にかけることはない。そういう範囲を越えるものであれば、これはむろん、先生おっしゃいますように、条約として国会にかけなければなりませんが、いままで申し上げておりますように、法令の範囲内あるいは予算の範囲内ということになっておりますので、お説ごもっともな点はございますが、一般の条約とはそういう点において違うところがあるということを御説明申し上げたいと思います。
  43. 北山愛郎

    北山委員 法制局長官の答弁は、さっぱり意味をなしておらぬですよ。その一千万ドルの贈与の約束を取りきめをして、それをかってに政府がやってもいいなんという法令は日本にはないのです。むしろ、これは国会に出さなければならぬという法令がある。財政法だってそうでしょう。憲法だってそうでしょう。いわゆる支出役務負担をするようなことは、国会に出すのが原則だという法令はあるけれども、それ以外の法令はないじゃないですか。これは何もいまの憲法でなくたって、もとの明治憲法の当時だってそうですよ。やはり外国にこの権利義務、金を出さなければならぬという約束をするような条約は、国会に出して議決を経るのがあたりまえなんですよ。それ以外の法令が一体ありますか。しかも予算だってないでしょう。インドネシアに一千万ドルやるという予算は四十二年度予算にはないでしょう。
  44. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  いま、予算にあるかないか、これは次の問題でございますが、理論上の問題といたしましては、法令の範囲内、予算の範囲内でやるということをインドネシアとの間の協定には規定してあるわけでございます。したがって、予算にないのにやるわけにはまいらない、予算があれば、予算の中身に従ってやるというのが向こうとの話し合いの中身でございますから、したがって、予算がないではないか、それはまた次の話になるわけで、理論上の問題としては、予算の範囲内でやる、こう言っておるわけでございますので、法令上の問題としてはそういうことでございます。  それから、法令上の根拠いかんというお話でございますが、憲法の八十五条「國費を支出し、又は國が債務を質擔するには、國会の議決に基くことを必要とする。」ということは書いてあるとおりでございます。したがって、国費を支出するために、あるいは場合によって債務を負担するために、予算というものが国会の御承認にかかっているわけでございます。そういうことを申し上げれば、これは財政法の規定にもつながりがございますが、まさに憲法の八十五条の規定は、予算に載っているものに関する限り、国会の議決に基づいて支出するということになるのは当然でございます。
  45. 北山愛郎

    北山委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。私は、インドネシア政府の立場でものを聞いているのではない。政府がそういう約束をしたことは、それはインドネシア政府に対しての約束だ。しかし、そういう約束をした以上は、国会に出さなければならぬというのが日本の法律なんです。日本の憲法なんですよ。そういう取りきめをインドネシアとしておきながら、なぜいままで国会が開会中であるのに一月もほったらかしておいたのか。一体、政府はどうするつもりであったのか。国会が閉会になって、あとで予備費でもってちょろっとこうやるつもりか、そういうふうに言われるのですね、一体そんなことでいいのですか。かりに、その財政支出を伴わないものでも、その借款契約でも、これは国家間の権利義務に関する問題で、単なる事務的な、技術的な協定ではないのですから、七十三条三号の規定によって、円借款とかそういう借款協定というものは当然国会に出さなければならぬのですよ。それをいままでごまかして出さないできた、そこにも問題がある。このインドネシアとの協定は、これは典型的なやつなんですね。一体、政府はどうしていままで黙っておったのか、今後どうするつもりなのか、臨時国会に出すのですか。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、まだいつ贈与するとかいうことはきまっておりません。いつきまるかという問題でございますが、御承知のように、これは日本だけじゃなくて、債権国全体で、このインドネシアの外貨危機をどう共同で助けるかという問題で、各国の態度もみんなきまって、そうして、日本もそういうことをいつ実行しなければならぬかということは、もう少し先である。インドネシア側は最初、今年じゅうでもいいというようなことがあったくらいでございますので、これをいつ実行するかというときは、もう少し先になるというふうに私ども考えておりましたので、そのときに予算の補正をもってやるのか、あるいは、これはもし国会のない場合に急に払わなければならぬという協定ができた場合には、これを予備費で支出することがいいかというようなことは、先にいって私どもは検討するつもりでおります。
  47. 北山愛郎

    北山委員 大蔵大臣の御説明だと、これは仮調印みたいなものだというのですが、とにかく約束したのでしょう。調印はしたのでしょう。一千万ドルを贈与します、時期はまだ先かもしれない、しかし協定を結んで、約束は現にしたのでしょう。何か大蔵大臣は周囲の情勢によって、アメリカさんが出すのか出さないのか、そういうことにも関連して、一応判こは押したけれども変わるかもしれぬといったような御答弁ですが、それでいいのですか。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 そうではございません。交換公文でそういう約束にはなりましたが、いま言われましたように、条件がついておる。ですから、まだ債務を明確に帯びたということにはなっておりませんので、この次の両国間の協定によって、はっきり日本が債務を帯びるということになります。そのときにこの贈与を具体的に贈与する問題が起こりますので、そのときにしかたを考えるということでございました。
  49. 北山愛郎

    北山委員 それはいまのお話だと、さも個人間の話し合いみたいなことなんです。いやしくも政府が外国と、金は少ないけれども、一千万ドルを贈与するというような約束を取りきめるのですから、当然それだけの手続を経てきめておるわけですよ。閣議決定をしてやっているわけです。「インドネシアに対する円借款及び贈与に関する書簡の交換に関する閣議決定」、そして相当ないろいろな条項がこまかく書いてある。内容を読み上げましょう。「日本側の書簡として百八十億円までの円貨による長期借款及び三十六億円までの額の贈与が、日本国の関係法令に従い、かつ予算の範囲内においてインドネシア共和国政府に供与され又は行なわれることになる。」云々、そしてその償還期間は、七年の据え置ぎ期間のあと十三年である。利子は年五%である。借款の使用期限は一九六八年六月三十日とするとか、そういうふうにちゃんと取りきめてあるじゃないですか。それは対外的には予算の範囲内とかいうことはあるけれども、これは日本の政府が外国と条約を結び、義務を負うているのですから、それを日本の憲法、法令に従って国会に出すのが当然じゃないですか。これは一体いつ出すのですか。
  50. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはいまお読みになったようなところに書いてあるように、日本の法令あるいは予算の範囲内、しかも贈与については両国間の協議ということになっておるわけでありますから、それがいよいよ協議をして、そして協議がまとまるような段階になれば、日本の法令とか予算に従って手続をすることは当然ですが、現在の段階としては、そういうまだ何も話し合いもしてないわけですから、それがいよいよほんとうの協定ということになれば、それはいろんな成規の手続をとるべきが当然でございます。
  51. 北山愛郎

    北山委員 この約束はすでに判こを押して、これは有効でしょう。きめたのでしょう。とにかく政府はこういう約束を調印したのでしょう。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは予算あるいは日本の法制の成規の手続がとれることに障害が起これば、これは実行できぬことになる。日本の条件、予算の範囲、日本の法制の範囲内、しかも両国間の協議がまとまるという、そういう条件のもとに日本の政府が意思表示をしたのである。それが法制的な手続がとれぬということになれば、これは実行できぬということになります。
  53. 北山愛郎

    北山委員 その手続というのは、自動的にそうなるのではなくて、政府がその手続をどうするのかと聞いているわけですよ。当然国会の議決を経なければならぬでしょう。それを聞いているのですよ。とにかくこれは両国間の交換公文としてちゃんと調印したものなのですから、これ自体は有効ですね。これに従ってこう政府がきめた以上は、それに応じた予算上の手続、あるいは国会に提案して条約を承認する手続、これをとるべきなんです。これをどうするのかということを私は聞いているのです。どうなんですか。
  54. 三木武夫

    ○三木国務大臣 どういう手続をとるかということは、いよいよこれがほんとうの協定――いまのは条件つきですからね。これが日本の手続がとれぬということになれば、これは実行できぬわけです。ちゃんと、予算の範囲内、日本の法制の範囲内というわけでありますから、それがいよいよ協定を結ぶ段階になれば、これはやはり成規の手続をとらなければならぬことは、それは申すまでもない。
  55. 北山愛郎

    北山委員 その手続をどうするのですかと私は聞いているのです。当然外国とそういう約束をした以上は、日本の憲法、法律に従った手続をとらなければならぬ、国会の承認を得なければならぬ、予算の議決をしなければならぬ、この手続をいままでしなかったし、今後はどうするのか、いままでしなかったのはなぜか、これからはどうするのか、臨時国会でやるのか、これを聞いているのです。
  56. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちょっと私の法制局の職掌柄にも関係しますので、一言だけ申し上げさせていただきますが…(加藤(清)委員「国会の承認を得ぬでもいいという答えは出てこない」と呼ぶ)そのとおりでありまして、実は条約を出すにつきまして、国会の承認にかける条約と両政府間で結ぶ協定、いわゆる行政協定あるいは行政取りきめと申されますが、これについて実は私どもは非常に神経質で、これは外務省にお聞きになればわかりますが、私どもの法制局が非常にやかましく言っているところでございます。その私が、実は今回の協定につきまして責任を持って申し上げられますことは、まず第一に、誤解があるといけませんが、ただいまの協定において、贈与の分につきましては、贈与は行なわれるものとするというような表現になっていると思いますが、贈与自身の取りきめと申しますか、契約と申しますか、それを決定する取りきめは、実は両政府間で別途に合意するということになっているわけでございます。したがって、ただいまこの席上でいろいろ御議論がございますが、この協定で、まずきまったのかと言われれば、それはまだきまっておらない。いわば政府の方針について向こうと合致をしたということはございます。しかし、実際に贈与分を向こうに贈与するという、その具体的な取りきめと申しますのは、別途に契約をされる、取りきめられるということに相なっておるわけでございます。それにしましても、ただいま御議論が出ておりますように、国会にかける必要があるのではないか。また、もし次の場合なら、次の取りきめなら次の取りきめでもいいが、それを国会にかける必要があるのではないかという御議論が出るのはよくわかりますが、それはただいままで申し上げておりますように、法令の範囲内、あるいは法令の執行に当たるのは政府でありますので、その法令――国会のすでに御議決を得ている法律あるいは予算、国会の御議決を得なければ予算というものは成立いたしませんが、そういうものの範囲内のものであれば、これは政府内で処理ができる。これは実は、今回がむろん初めてではございません。幾つも例があることでございまして、御承知のことかと思いますが、その一つの例でございます。念のために申し上げさせていただきます。
  57. 北山愛郎

    北山委員 この協定が主たる条約なのです。これに基づく実施細目とか技術的な事務務的な処理、それは、これが国会で承認を時ればかけなくともよいでしょう。しかし、これだけはかけなければならぬのです。これが本条約なのです。そんな長官の言うようなことはわかり切っている。だけれども、いまのお話しのようだと、実施細目までそろわないと条約にならぬというようなお話のように聞こえるんだが、そんな間違ったことを言ったんではだめですよ、法制局長官。これが主要条約なんです。権利義務の関係を規定する条約なんです。だから、これは当然国会にかけなければならぬ。あとの今度これを実行するための技術的なもの、事務的なものは、これが通っておればかけなくてもいいというのは常識ですよ。そんなことはわかり切っているんだ。それをわざわざ出てきて、わけのわからぬような話をするから話がこんがらかるんで、問題は、これは国会にいつかけるか、予算はいつ措置をするか、これを聞いているのです。どうなんです。
  58. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これが贈与については、両国間で協議を行なうこと――協議は合意か成立しなければなりません。したがって、そういう合意が成立して、いよいよこれを実際的に実施するという段階になれば、財政法その他いろんな法規を厳重に検討して、そのときの最善の方法で、法規、法令に反せない考え方のもとにこれは処理すべきものであると思います。
  59. 北山愛郎

    北山委員 そんな答弁は冗談じゃないですよ。そういうものはちゃんと憲法なり法令なり、そういうものに従って政府がやるのがあたりまえなんだから、その手続に従ってこれを調印したんでしょう、約束したんでしょう、これが条約ですよ。これはかけなければならぬ。私から言うならば、六月九日に調印しておいて、そしていままで国会の開会中に黙っておいて、そして今後どうするのか、いままでどうして黙っておるのか、どうも政府の気持ちははかりかねる。悪く考えると、国会が閉会になってから、これを予備費あたりでちょろっとやるというふうにも、そう疑われるのですよ。だから、はっきりとした日本の法律、日本の憲法に従った外交をやるというような気持ちで、はっきりと答弁してもらいたいのです。これは一たん条約として一応政府としては約束しているのです。
  60. 三木武夫

    ○三木国務大臣 北山さんが言われるように、何か国会が済んでちょろっとやる、そういうことは考えておりません。インドネシア、これは大事な、日本としてもその安定を望んでおる、アジアにおいても重要な地位を占めておる国ですから、これは国民に対しても、そんなにちょろっとやるような必要はない。政府はやはり堂々とやってよろしいのですが、いま御承知のように、政府間の協議をしなければならぬ。これもまだ済んでおりませんし、そういう合意にも達しておりませんから、その達したところで成規のいろんな法制に従った予算、法制に従った処置をとろうというので、国会の閉会を待っておるというようなことは、どうか邪推をなさらないようにお願いをいたします。
  61. 北山愛郎

    北山委員 それでは、こう了解していいのですね。とにかく、そういう何か細目の話し合いをする、そして、いざやるという段階になったときに、国会にこの条約を提案して承認を得る、予算措置もする、こう了解していいのですね。
  62. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私が申し上げておるのは、日本の予算、法制、こういう点から検討して、政府は最善と思う処置をとるということでございます。
  63. 北山愛郎

    北山委員 そんなわけのわからない答弁じゃ、ぼくがわからないだけじゃないですよ。これだけの調印をする以上は、いま申し上げたように、法令とか、そういうものに従って処理をしたにきまっている。日本の憲法や日本の法令では、こういう約束をしたときには国会の承認を受けるということになっている。それから憲法の八十五条の精神からいっても、財政支出の義務を負うのですから、国会に、その面から見ても予算上の議決を得なければならぬわけです。そのことだけは認めるでしょう。それは話がきまったら国会に出すということ、これは総理からはっきり答弁してもらいたい。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は、先ほど外務大臣がお答えいたしましたように、法令を無視するような考え方はございません。したがいまして、ただいまの取りきめができた暁に、法令を無視しない、そういう処置はどういうことか、それは十分考えるということであります。
  65. 北山愛郎

    北山委員 どうも総理の答弁もわけがわからない。われわれはお互いに法令に従ってやっておるのです。政府だって法令に従ってやっているでしょう。この調印をしたのも法令に従ってやったのだろうし、また、この処置も法令に従ってということだから、そうなれば、憲法で規定しておるように、日本の法令で規定しておるように、取りきめたならば国会に提出をし、また、その財政措置も国会の承認を受けるというのが、日本の法令なんです。だから、それをいつやるのかということを聞いているので、そんな抽象的な答弁を聞いているわけじゃない。法令に従って仕事をするのはあたりまえのことです。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われるように、法令に従って審議するのはあたりまえだと言われるが、法令を守ることは、これはあたりまえのことだ。どういうことでこういう問題をお尋ねになるのか、たいへんふしぎに思っておるのです。先ほど三木君が言っておりましたが、何か政府は法令でも無視するんじゃないかというような、そんなことは絶対にございません、こう言って、法令をちゃんと守るという、そのことをはっきり先ほど来申しているのです。それがどうして御理解いただくわけにいかないのですか。
  67. 北山愛郎

    北山委員 私が聞いているのは、先ほども言ったように、六月九日に調印したでしょう。だから、これを条約として有効ならしめるためには、国会の承認を得なければならぬ。しかし、一カ月もたって、国会が開かれておるのに黙っておるから、なぜだろうということを聞いているのです。これはだれだって疑問に思いますよ。だから、まだその条件が整わないというならば、これがきまったならば国会に提案しますな、こう聞いているのです。そういうふうに答えればいいじゃないですか。それがすなわち法令を守る道なんです。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来そういうように言っておるのですが、先ほど申し上げますように、はっきり取りきめをして贈与をやるということになっている。その場合に、前提として、日本の法令に従い、また予算の範囲内で、こういうことをはっきり言っているのです。だから、そういう事柄を何か無視して、ちょろちょろっとごまかしてやるのだ、かように思われては困るのです。だから、その点は先ほど来何度も申し上げますように、法令を政府はちゃんと守ります、法令に従って処理します、かように申しておるのです。ここらのところをよく御理解をいただきたいと思うのです。
  69. 北山愛郎

    北山委員 とにかく、これはいつかわからないけれども、この協定、交換公文を国会に提案して承認を求める、これだけは間違いないですね。そこのところが問題なんだよ。だから言わないのだ。
  70. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうも私の御説明が悪いとみえまして御了解をいただいておりませんが、要するに、国会の承認を求めるのかという御質問がただいまの御質問でございます。その点について先ほど申し上げたつもりでございますが、国会の承認を求める条約――条約は事前にあるいは事後に国会の承認を求めるわけでございますが、別途行政取りきめというものがございますことは、御承知のとおりでございます。行政取りきめがなぜ国会の承認にかけないで済むかということについて、もう一ぺん申し上げたいと思いますが、これは要するに、国会でおきめになった法律の範囲内、あるいは国会で議決されました条約の範囲内、つまり行政権の中身でやれることであるから、国会にあらためて御承認を求めないわけでございます。しかし、法律の範囲内であるとか、予算の範囲内であるとかいうようなことでありませんと、これは大きな条約は大体みんなそうでございますが、そういうものについては、憲法の規定するところに従い、国会の承認を経なければならぬことになるわけでございます。で、ただいまの協定につきましては、たびたび申し上げておりますように、まさに協定の中身がそう書いてございますように、法令の範囲内において、あるいは予算の範囲内においてということでございますので、あらためてそれは国会の御承認を求めることはないということであるわけでございます。この点につきましては、実はいま初めての問題ではございませんで、これはもうしばしばそういうことは申し上げている機会もあると思いますし、また、しばしばそういう事例がございます。別に弁解を申し上げるつもりはございませんが、いままでの取り扱いについてはすべてそういうことでございまして、これだけが特別のものではございません。   〔「前例がどこにある、そういう前例があったら出しなさい」と呼ぶ者あり〕
  71. 北山愛郎

    北山委員 そういう点が心配だから、私は聞いているのですよ。一体日本の憲法の八十五条なり、あるいは七十三条なり、国が外国に金を出すという協定を結んで、それを国会の承認を経なくてもいいなんという法令はどこにあるのです。憲法はむしろはっきりと、そういうものは国会の議決を経るんだというふうに書いてある。それから、国会の承認の対象となるべき条約の範囲の問題については、いままで、あなたが言われるように、議論がある。しかし、どれを見ましても、それはある本協定があって、それを施行するための事務的な、あるいは技術的なもの、こういうものは承認を経なくてもいいけれども、このように一千万ドルを日本がインドネシアにやるというような権利義務の関係、しかも、日本からするならば財政上の義務を負うわけですから、そういう条約は、これは戦前だって、当然国会の承認を経るのが日本の法令なんです、憲法なんです。そういう、しなくてもいいなんていう法令は、どこにあるのです。
  72. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 問題は二つございます。一つは、条約というのは何であるかという問題。これは、ただいまお話がございましたように、いろいろな意見がある。あるいはいろいろな考え方がある。いままでとってきた考え方につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  もう一つは、国費を支出するには国会の議決を必要とする。憲法八十五条に規定の明文がございます。その方策といたしまして、政府が国費を支出します場合に、一々国会の議決を得るのではなくて、議決を経たその予算にのっとって実は支出をいたしているわけでございます。したがって、一千万ドルが多額であるからどうだということを仰せになりますが、これはかりに十万円であっても、予算の範囲外にわたって出すようなことになりますれば、これはむろん、その点について予算の御議決を得るとか、あるいは条約として国会の御承認を得るとかいうような措置をしなければならぬわけでございますが、財政関係につきましては、ただいま申したとおり、予算として国会の議決を得ておる、その中身の執行に関するものであれば、あらためて国会にその点についてさらに御承認を求めることはないということでございます。ともかくも、条約のいままでの解釈あるいは財政上のいろんな諸規定等から見まして、法令の範囲内あるいは予算の範囲内ということでありますから、あらためてその協定について国会の御承認を得ることはないというふうに考え、いままでしばしばやっておるということでおしかりを受けましたようでございますが、これはまあ、しばしばも程度の問題でございまして、そうしばしばあったとは思いませんが、いままでの考え方としては、いままでのような取り扱いで、決してこれが初めての例ではない、これだけは確かでございます。
  73. 北山愛郎

    北山委員 いままでも、条約の国会の承認の対象となる範囲ということは、議論があるのです。しかし、どれを見ても、国家間の権利義務を規定するような取りきめについては、名称は何であっても、これは国会の承認を経るということが通説なんですよ。予算の範囲といったって、もしもインドネシアに一千万ドル贈与するということが予算の中に入っておれば別ですが、何もそんなものは入ってないじゃないですか。だから、これによって義務を負うのですから、法令の範囲内というのは、これはインドネシアに対する政府の約束なんです。日本の政府としての、日本の国民に対する、あるいは国会に対する義務としては、日本の法令がある、憲法があるのですから、それに基づいて国会へ出せばいいじゃないですか。承認を経ればいいじゃないですか。なぜ経られないのですか。予算の中にもないのですよ。インドネシアに一千万ドルやるなんということはないのです。しかも、かりにあったとしても、条約そのものとしては、そういう内容を含んだ条約は当然国会にかけなければならぬ。それが原則ですよ。いままでのいろんな学説を見ても、外国の例を見ても、国会の承認を経るのは当然のことなんです。なぜ経ちゃいかぬのです。
  74. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま御質問の中にありましたように、確かに、条約という名称がついているか、あるいは協定という名称がついているか、あるいは議定書という名称がついているか、それは実はどうでもいいので、性質が条約であれば国会に出さなければいかぬし、そうでなければ行政取りきめでよろしいという考え方でございますが、これにつきましては、御信用いただけるかどうか知りませんが、法制局が実にやかましく考えております。で、行政取りきめについては一々審査をしておりますが、その中身は、確かに日本国憲法にはそう書いてございます。そのとおりでございますが、しかし、やはり国会で議決をされた、国会の意思の範囲内で処理することでございますので、そこで、あらためて出すことはないだろうということを申し上げておるわけでございます。つまり、法令の範囲内あるいは予算の範囲内――もしそれがそうでなければ、むろん国会の御承認を得なければなりませんが、いま申しておりますように、法令の範囲内、予算の範囲内ということでありますので、そう申し上げておるわけでございます。
  75. 北山愛郎

    北山委員 これはただ金だけの問題じゃないのです。インドネシアに対して一千万ドル、こういう条約を結ぶというのは、政治的な意味があるから、ただ金だけの問題じゃないのですよ。だから、国会の承認を経べきなんです。   〔「答弁になってない」「休憩して練り直しなさい」と呼び、その他発言する者多し〕
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 贈与の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ取りきめの時期もきまっておりませんが、もし政府間の取りきめができましたときは、国会開会中でございましたら、補正予算を提出いたして御承認を受けますし、また、国会開会中でない場合に取りきめが行なわれました場合には、予備費をもって支出をしておき、あと承認を求めることにいたします。
  77. 北山愛郎

    北山委員 この問題は、いまの予算措置、財源、金の問題と、それから条約の扱い方の問題、二つの問題が含まれているわけです。いわゆる七十三条の問題と八十五条の問題ですか――私は、この種の条約は、条約そのものがこれは国会の承認を経べきものである。なぜなれば、これは単なる行政協定ではないんです。このインドネシアと日本との間に権利義務の関係を生ずる。しかも、それは金だけではなくて、やはりそういう際には政治的な意味もあるわけなんです。ですから、日本の国が、国としてインドネシアにこれだけの金を、一千万ドルやるということは、国家間の権利義務に関連する問題であるから、この種の条約は、学説によりましても、国会の承認を経べきものというふうなのが通説なんです。法制局長官の答弁は、そういう意味で私は納得をいたしません。ですが、時間の関係もございますから――私は、予算上の点については、それはお話しのとおりだと思います。しかし、これを条約として国会に出すべきであるという私の主張に対しては答弁がないので、この点の質問は保留いたしまして、あらためて、いずれ別の機会にさらに質問をするということにいたしたいと思います。  次に、時間がございませんから一点だけ、東京都の都営交通の再建問題に触れたいと思うのであります。これは、いま東京都議会における重大問題となっておるわけでありますが、要は、単に東京都だけの問題ではないわけです。都市交通全体として、政府としても、国としても大きな責任があるという問題、しかも、都営交通の路面電車等の赤字というのは、単に運営上の間違いということだけではなくて、やはり都市交通の、いわゆる路面交通に自動車がふえてくるというようなことで、運輸能率が下がってくるというような関係もあるわけですから、そこで、政府としてもあるいは国としても、単に東京都だけの問題としてではなくて、やはりお互いに責任を持ってこれは考えなければならぬ問題だと思います。  そこで、都の交通再建案を見ますと、やはり路面電車を撤去する、そして、あとは高速の大量輸送の地下鉄というようなものに振りかえていく、それから、バスにかわっていくというような案になっておりますが、問題は、その地下鉄等に切りかえた場合に、さらに赤字が出るという問題なんです。これは地下鉄の建設費が一キロ当たり三十億とか四十億あるいは五十億のばく大な経費を食いますから、当然、これは東京都でなくとも、どこがやっても、そのようなばく大な建設費を出しては経営が成り立たないわけなんです。ですから、東京都のみならず、他の大都市も同様でありますし、また世界的に見ても、路面交通から地下鉄等の大量の高速の電車に切りかえるという場合には、国が大幅な助成をして交通の近代化をはかっていくというのが、外国の場合でも同様なようであります。ところが、残念ながら、地下鉄に対する国の補助というのはきわめて少ないものです。利子補給ぐらいしかやっておりません。これでは、ほんとうの意味の都市交通の再建はできないと思うのです。ただ過去の赤字をたな上げすればそれでいいというものじゃない。やはり交通そのものを再建しなければならぬという立場から、今後東京都のみならず、名古屋とかあるいは大阪等における地下鉄の建設に対して、国が大幅の補助を出すべきだと思う。現に自治省においては、本年度予算の要求として、地下鉄のトンネルの部分については、これは道路並みに考えて三分の二の補助をすべきであるという考え方で予算要求をやったというふうに聞いておるわけでございますが、この点についての政府の、いわゆるほんとうの意味の交通再建をする場合に、地下鉄に対するいわゆる道路並みの補助といいますか、建設費に対する大幅の国庫補助、これを早急に方針をきめなければならぬ。そうでなければ、東京都があんなに苦労をして、労働者が犠牲を負い、また都民が負担をふやしても、ほんとうの交通再建にはならないと思うのです。そういう点で、政府考え方、方針を聞きたい。運輸大臣あるいは自治大臣のお考えも聞かせていただけばけっこうです。
  78. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 地下鉄につきましては、御案内のとおり、今年度予算におきまして建設費の一部、特に金利を中心として新たに補助金制度を設けましたわけでございます。これは後年度においては、毎年相当増額されていくものと思うのでございます。さらに、現在東京都におきましては料金の問題もあるようでございますので、地下鉄については財政全般の立場から考慮をいたしますとともに、他の地区の地下鉄等の関係もございますので、今後とも財政の問題には特に留意をいたしてまいりたいと存じます。
  79. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいま運輸大臣がお答えになったようなことでございまして、特に国庫補助につきましては、御承知のように、四十二年度から新方式による補助方式をとることにいたしましたが、この種の問題につきましては、関係各方面と十分連絡をいたしまして、その充実をはかってまいりたいと考えております。
  80. 北山愛郎

    北山委員 非常にお答えが抽象的なんですが、自治大臣に重ねてお伺いしますけれども、自治省としては、先ほど申し上げたとおり、この地下鉄の建設については、トンネル部分というのはこれは道路並みの考え方をしなければならぬというので、大幅な国庫補助の予算要求をしたかに私は聞いておるのです。そういうお考えがあるのか、そういう予算要求をしたのか、その経過をこの際明らかにしていただきたい。
  81. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいまお話のような意見を持ったこともございます。ただ、都市交通審議会におきまして、その最終的な答申においては、四十二年度から採用いたしましたような補助方式をとることを答申されておりますので、一応その方式を採用しておるわけでございます。先ほど申しましたように、今後地下鉄の都市交通に持つウエートの大きさにかんがみまして、さらに十分検討してまいりたいと考えております。
  82. 北山愛郎

    北山委員 時間がないので、まことに残念ですけれども、最後に総理にお伺いしたいのは、都営交通についてです。  いまもお話を申し上げたとおり、都市交通というのは、単なる経営、東京都が――都だけの問題じゃなくて、いま東京都内の自動車が、この十年間に四倍にもふえている。今後五年もたてば、また倍になるでしょう。そういう中で路面電車の運輸効率は下がる、バスもだんだんに効率が下がってコストが高くなる。これは東京都営だけの問題じゃなくて、今後どうするかという大きな問題なわけですね。したがって、都市のそのような交通事情考えて、今後大量の、しかもスピードのある高速の運輸機関、大量輸送の機関をつくるという以上は、思い切ってやはり国が都市交通のほんとうの近代化という意味で相当な財源措置もしてやるというふうにしなければ、この問題は解決しないのです。今度の再建案を見ても、地下鉄の分は切り離しておる。ほんとうは地下鉄のほうが赤字が出るのですね。路面交通、路面電車をなくしてバスに切りかえるといっても、バスもまた効率が落ちていくわけです。そういうふうな非常に根本の問題が前提となって解決をされなければ、今度の再建案が通っても、ほんとうの解決にはならないのです。赤字をなくすだけが能ではないのです。やはり都民の交通のサービスとか、そういうものも確保しながら、ほんとうに交通そのものが再建されなければならぬという重大な問題ですから、いま申し上げたとおり、もしも地下鉄という大量輸送機関に今後大都市の交通は依存していくとするならば、やはり国としては相当な覚悟を持って建設費に対して大幅な国庫助成をしなければ、都市交通の近代化はできないと思うので、その点についての御検討を私はいただきたいと思う。総理のお考えを聞いて、時間でございますから、私は質問をやめます。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま過大都市、過密都市、これが時勢から見ましてそういう方向にどんどん発展しておる。そういう場合に問題になりますのは、やはり交通機関の整備、これは東京都ばかりじゃございません、都市において同じような悩みがあるわけであります。この足を整備する、そういう場合に、いままでとっておりました原則的な考え方は、いわゆる公共企業体、その経営の責任といいますか、経営者の責任において公共企業体は運営さるべきものだ、こういう独立採算制の考え方でいままではやってきておりました。しかし、最近の問題から見まして、マスの輸送機関、これはなかなか建設費等もたいへんかさみますので、いままでのような独立採算制だけではなかなか取り取みにくいのではないかと、そういう意味の同情をするわけであります。  そこで、各方面の意見を聞いた結果は、まず国が低利資金の融資をしたらどうか、こういうのが、いままで独立採算制のもとにおいて考えられた行き方だと思います。さらにそれを進めまして、独立採算制、これは無理だ、さらに国家的な積極的な補助が必要だ、こういう議論にまで実は発展しておるんだと思います。私は、そういう場合に、国の経営、また公共企業体の経営、それぞれ経営主体も違いますが、そういうこともあわせて考えるべきじゃないだろうか。また路面から地下へ、あるいはバスへ、これらのこともまた考えなければならぬだろうし、道路自身の建設の問題もある、こういうことで、各方面からとにかくお知恵を拝借して、どういうようにしたら都民の足が確保できるか、この過密都市に対する交通の確保ができるか、こういうところへいま来ておると思います。私は、ただいままでの行き方だけではなかなか問題が解決しないだろう、新しい構想のもとにこれから進んでいかなければならぬのじゃないか、かように思っております。ただいま東京都において具体的に対策を立てておる、そのものはまだ料金の引き上げの認可申請など参っておりません。いずれそういうものが参れば、出てくれば、運輸省はもちろんのこと、経済企画庁におきましてもこれは真剣に取り組まなければならない。ただ今日、独立採算制のたてまえから、料金だけで片づける、こういうことでなしに、いま御指摘になりましたような長期的観点に立って、今後のあり方等についても十分納得のいくような措置をとらなければならぬ、かように私考えております。まだ、具体的にそれじゃどうするのか、そういう点までただいまの状況では発展しておらない。ただ、いままでのような考え方では不十分ではないか、かように思うだけでございます。
  84. 北山愛郎

    北山委員 それでは、これで終わります。
  85. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  86. 大原亨

    大原委員 私は、当面一番大きな政治問題になっております健康保険医療保障の問題を中心に、社会保障の問題、それから人事院勧告を中心にいたしまして公務員労働者の生活、権利の諸問題、それから引き続いて公安条例に最後に関係いたしまして、それぞれ質問をいたしたいと存じます。  佐藤内閣は、社会開発、とにかく社会保障を中心に人間尊重の政治をやるんだ、こういうことで出発をされたわけであります。しかし、最近は総理大臣は、てれくさいのかどうか知りませんが、あまりそういうことを言わなくなられました。現実が非常に離れておるために、言わないようであります。私見ますのに、いままでここ十年間を振り返ってみまして、今日くらい社会保障が停滞をし、混迷をしておることはないと思うのです。日本の社会保障の中で一番おくれているのは、よくいわれるのですが、国際的な比較の中でいわれているのは年金の問題が一つ、児童手当の問題、つまり、所得保障の面においては年金と児童手当の問題が大きな問題です。それから社会保障の大きな柱の一つである医療保険の問題ですが、御承知のように、医療保険の問題は混迷の極であります。  これらの問題を解決するために、私ども予算委員会あるいは各委員会におきましていろいろと議論をいたしまして、たとえば昨年のちょうどいまごろ、七月でございましたが、予算委員会において第三次防と中期経済計画について議論をしたことがありまして、第三次防衛計画は国内の経済社会発展計画と見合って独走させないと、こういうふうに総理大臣は御答弁になったこともあります。しかし、振り返ってみまして、経済社会発展五カ年計画はできたのですが、その裏づけになるような社会保障の長期計画はいまだにできていないのであります。社会保障に対する総合的な長期計画はできていない。医療保障の問題を焦点といたしまして、社会保障全体が混迷と停滞をいたしておるのであります。私は、社会開発を公約されました佐藤総理大臣の政治責任はきわめて重大であると思うのであります。そういう面において、私は、当面のそういう諸問題に対するお考え、特に社会保障の長期計画を策定する問題について、ひとつ総理大臣のイニシアチブというか指導性というか、そういうものについて冒頭所信をこの際明らかにしていただきたい、こう思うのであります。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる福祉国家を建設するということは、これは私どもの政治に課せられた重大使命だと思っております。これは福祉国家という場合に、何といっても社会保障制度の内容の充実整備、これをはからなければならない。  ところで、この社会保障制度の場合に、二つの行き方があるだろう。まあ、二通りの考え方がある。一つは、いま問題になっている医療保険のような保険制度のもとにおける社会保障制度の充実、また、この保険制度でなしに、国自身がやります各種の手当等々があると思います。したがって、社会保障と一口には言いますが、その場合に、これが保険制度のもとに行なわれておるという場合には、やはり保険制度を整備していく、力をつけていく、その他のものは、またそれぞれの趣旨に沿うようにしていかなければならぬと思います。  しばしば三次防の計画が引き合いに出されるようでありますが、わが国の防衛計画は、国力、国情に応じ整備するのだということでございますから、私は、いま社会保障制度が混迷しておるそういう際に防御計画だけ進む、こういうものではないので、これはもう国力に応じてやっていることは、大原君もその点はよく御承知のことだと思います。  最近困っておりますのは、何といいましても保険制度の整備がなかなかできていないことで、これはもともとが保険でございますから、そこにおいて加入者の責任もございますし、政府の責任もあるし、また、そういうことであんばいをするというか、その負担の公平などもはかっていかなければならない、かように私思いますので、いま混乱しておるようでありますが、これを脱皮すれば、今度はほんとうの保険制度が生まれてくるのじゃないだろうか。私は、いわゆる混迷の方向で崩壊へたどらせるようなことがあってはならない、こういう苦難の道、そこをひとつ切り抜けて、そうしてりっぱな制度をつくっていく、こういうことでありたいと思います。  いままで議論しておりますところのもの、社会保障制度の内容の整備充実をはかるということは申しておりますが、同時にまた、個々の手当等につきましてもこれをはかっていくように、それぞれ今後とも努力をする、こういうことでありたいと思います。
  88. 大原亨

    大原委員 これは私深入りして論議をするつもりはなかったのですが、総理大臣もあるいは坊厚生大臣も、しばしば国会、本会議等で言われるのですが、これは古くから議論されている問題ですけれども、保険主義か保障主義かという議論であります。しかし、あなたは、保険主義とは一体どういうことなのだということを御承知でそういうことをお話しになっておるのか、はなはだ失礼でありますが、私はそう思うのであります。保険主義とは一体どういうことなのか、保険主義で保険をりっぱにするというお考えのようでありますが、保険主役とは一体どういうことか。どうかこれはひとつ総理大臣に――あなたはきのうきょう大臣になられたのではないので、これは非常に議論を重ねておりますから、そういう点については、はっきりした識見があってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この保険主我は、大原君も御承知のとおり、これは政府が全然責任を待たないというものではございません。これは全部保険者、保険組合の処理で片づける、こういうものでもないわけであります。だから、ただいま私が申しますように、加入若または政府関係者、これらのそれぞれの責任において整備していくんだ、かように申しておりますから、単純ないわゆる保険とは違っております。これは私もよく知っております。
  90. 大原亨

    大原委員 ですから、保険主義だから金を出さないとか、そういう布石で用心深く言われるのだと思いますが、私は、そういうことは非常に社会保障の前進を誤らしめると思うのです。たとえば、いまこれからやる政府管掌の健康保険でも三千円から一万四千円、上限は二万四千円までランクがある。標準方式というランクがあるわけです。所得に応じて保険料を取って、必要に応じて分配をするのです。これは所得の再配分なんです。それは社会保障の原理を入れておるわけです。大蔵大臣も非常にきびしい査定で、二百二十五億円の国費を七百四十五億円の赤字の中に入れられております。これだってやはり所得の再配分なんです。税金から取ったやつを入れるのです。ですから、保険主義であるとか保障主義であるとか――自民党は自由主義ですから、保険主義です。こんな議論は全く中身のない非生産的な議論です。  厚生大臣はだいぶ厚生省におなれになったと思うのですが、あなたもときどき保険主義と言われるけれども、あなたの保険主義はどういう意味ですか。
  91. 坊秀男

    ○坊国務大臣 大原さんも十分御承知のとおり、いまの日本の国の社会保障は、保険の方式をとっておるのがあります。そこで、この保険の方式でいくか、あるいはまた完全なる保障でいくかということは、非常に重大なる問題だと私は思います。保険と申しますと、これは釈迦に説法でございますけれども、相互扶助といったような考え方が一つの根底にある。保障と申しますと、極端な場合を私申しておりますが、これは全然国なり政府なりというところからこれを保障していく、こういうようなことでございます。そこで、保険ということになりますと、先ほども申しましたとおり相互扶助といったようなことで、それに加入するいわゆる被保険者というものが一定の掛け金をするとか、こういうことでございます。しかし、これは国民皆年金でもございますし、政府管掌というようなことでございますので、全然普通の民間の保険のごとく掛け金だけでもって相互扶助をやっていくということではございません。保障ということになりますと、これは国の一般財源と申しますか、それでもってまかなっていく、こういうことに相なるのでございまして、いずれにいたしましても、一般財源といたしましても、これは国民全体が税を納めまして、そうして、その税収入以外の専売や、そんなものもありますけれども、そういったようなものからまかなわれる、こういうことに相なるのでございます。これを保険でいこうか、あるいは保障でいこうかというようなことは、ほんとうに重大なる根本的な問題でございまして、そういったような考え方を検討していくということについては、これは根本的な抜本的な考え方、抜本的な対策をどうやっていこうかという場合の一つの大きな問題であろう、かように私は考えております。
  92. 大原亨

    大原委員 坊厚生大臣は、やはりよくわかっておられぬ。保険料を所得に応じて取っていく、あるいは所得税、所得に応じて税金で取ったやつで、政府の中から財源を出していく。取り方は違うけれども、これは、それによって保険と保障が分かれるのではないのですよ。保険料という名前がついているから、保険料に財源を求めている場合に保険主義でいくんだ、こういうことは言えないのです。中身を知らないからそういうことを言われる。たとえば国民健康保険税、税とついているじゃないですか。たばこやその他目的税があるじゃないですか。道路税その他あるじゃないですか。だから、一般財源として国が一般税金から取っている場合に、そこから取って、そこから出す場合に社会保障だ、保険料から取っている場合は保険だ、そういう単純な議論では、これからの社会保障の長期計画も立たないし、あるいは医療保障の抜本改正もないのです。大蔵大臣、いかがですか。
  93. 水田三喜男

    水田国務大臣 たとえば生活保護費というような社会保障の重要部分の措置は、これはいわゆる保障主義で、国が一方的に支出しておる社会保障制度の一つのあり方でございます。保険制度で運営されている社会保障制度は、たとえば健康保険もそうでございますが、これは相互主義によって、この掛け金によって運営されるもので、したがって給付は、掛け金によって給付の内容もきまっていくというのが本質的なことでございます。そういう保険制度の形で運営していくということをきめた社会保障制度のやり方は、これをほかの制度と混同することはむしろ間違いであって、給付の内容を強化しようとするなら、保険金を上げるというそれ以外にはやりようがないというのがほんとうは保険制度の本質でございまして、そういう運営をさるべきであるのがあたりまえでありますが、いま御承知のように、日本の国民所得の水準がまだ低いというために、掛け金の余裕が十分ない。しかし、一定の保険給付はしなければならぬという必要から国がここに経費を支出して、これを補ってやるという措置も現在とっておりますが、これは保険制度の本体じゃない。国民所得が多くなるに従って国民の負担が増していって、そうして、国家のそういう金はその中に介入しないというのが諸外国の保険制度で運営されておる社会保障制度の実態でございます。  それが日本では、当然国が金を支出するのが保険制度のように考えておるほうが、保険制度というものを解しない、間違った考えだというふうに私は思っています。ですから、たとえば日本の租税の負担と社会保険の負担を見ましたら、先進国は国民負担が国民所得の四〇%をこすということでございます。わが国はまだその半分でございます。したがって、十分な保険金をかけるだけの国民の所得余力というものがないために、いまは暫定的に国がこれを補っておる。そうして給付の水準を上げているという実情になっておりますが、これはもうだんだんにそういう形のものを変えていくのが本筋であって、そのことをはっきりしないと、日本の将来の社会保障制度の立て方という将来計画というものは、全く混乱するのじゃないかというふうに私は考えております。
  94. 大原亨

    大原委員 これは、あと総理大臣が中座されるときにまた議論を少ししたい、これはたいへんな問題です。  日本の社会保障の給付は、国民所得に比較をいたしまして欧米よりも低いですよ。あなたは別な角度から数字を出されたけれども、低いのです。給付の水準を上げようと思えば、たとえば保険料で取っても所得で取っても同じでしょう。同じ率を、千分の六十五を、政府管掌の健康保険だって標準報酬にかけているのです。十万四千円までは比例してやっているのです。そこで切っているのはおかしいけれども、やっているのですよ。ですから一般所得税、個人、法人の所得税の付加税で社会保障の費用を取ってもいいのです。どういう名目や形式で取るということではなしに、国民の所得に応じて、税源、財源を求めていって、そして必要に応じて再配分をしていって、国民の最低生活を保障する、こういうのが社会保障全体の前進であり、原則なんですよ。そのときに足りない場合に、税金で取った、所得割りで取った――日本の税金は非常に悪政であるから所得割りでない、不公平である、だけれども、所得割りで取っていった税源、一般財源から負担をしてもよろしいし、あるいは国民年金のように二百円、二百五十円というふうに受益行が頭割りに負担する場合もある。しかし、その場合だってものすごい減免措置をやっているのです。低所得階層から取ってない。しかし、保険給付、年金給付に対する権利は保障しているのです。ですから、そういう保険主義か保障主義かということで、国の財源か保険料かというふうな一般的な議論のしかたというものは、日本の社会保障を前進させるという考え方ではない。それは財政上いろいろな角度から値切って、削減して削減して、そういうときにあなたが言うことばであって、日本の総理大臣や厚生大臣が全体の社会保障の推進をどうやるかということは、所得に応じて財源を取っていって、必要に応じて再配分をしていく、これは資本主義の制度であっても、最低生活を保障するという憲法二十五条の精神から、これは当然のことなのである。そういうことを考えていかなければ、医療保障や所得保障の前進や停滞を克服することはできない、こういうふうに私は思う。総理大臣にその点についてひとつ私は見解を聞かしてもらいたい点と、経済社会発展計画の中で、それぞれの各分野から、各省から長期経済計画が逐次出ておりますが、社会保障の面だけはなぜ出ていないのか、こういう点について総理大臣か、あるいは厚生大臣からお答えをいただきたい。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君のお話を聞いていると、社会保障を充実するためには増税をしたってかまわない、こういう御議論のように聞けるのですが、私どもは、国民負担を軽減しようという、そういう意味で絶えず減税を研究してきた。また、それは社会党の諸君にも非常に喜ばれてきた。それからまた、ただいま、福祉国家を整備するという意味で、これはぜひとも中身をひとつ拡充整備しろ、こういうことを言われておる。しかし、いまの二つがなかなか両立しないものです。片一方で国民負担は軽減する、社会保障制度は充実していく、国はたくさん金を出す、そこで考えられたものが、いわゆる保険制度というか、いわゆる社会保障制度も、政府の生活扶助その他のように、政府自身が一般の財源から支出するものもあるけれども、同時に、保険料の収入を主体にものごとを考えていこうという、こういう保険制度と、二つができてきているのだと思います。私は、いまの制度が一応発足したのは、いま言うような国民負担の適正化、そういうことをはかる意味において、社会保障とはいいながらも、個人負担というものをある程度ふやしていかざるを得ないのじゃないのか、保険制度のもとにおいてそれを主体にしてひとつ考えていこう、こういうことであったと思います。私は、そういう意味で、ただいまの別にあげ足をとるわけじゃございませんが、そういう意味で全般の適正化をはかっていく、こういうことでないと国自身はやっていけない、かように思っております。  それから次の、経済社会発展計画、その面から、ただいま言われるような社会保障というようなものをなぜとらないか、こういう点は厚生省のほうからお答えさせたいと思います。
  96. 坊秀男

    ○坊国務大臣 経済社会発展計画の中に社会保障の計画がなぜ出ていないのだ、こういう御指摘でございますが、社会保障の長期計画につきましては、先般策定されました経済社会発展計画において、わが国の社会保障水準を西欧諸国の水準に近づける方向で引き上げることを目標といたしまして、医療保障部門の総合的な調整、それから所得保障部門の拡充強化、その他経済社会の発展と即応いたしまして、保健衛生、社会福祉、児童福祉等の増進をはかることといたしまして、したがって、振りかえ所得の規模におきまして、昭和四十年度の対国民所得比が五・五%でございますが、目標時の四十六年度には二%程度引き上げることといたしておるのでございます。  社会保障の具体的な計画につきましては、経済発展計画と並行して検討を進めてきたのでございますけれども、当初予定しておりました医療保険の抜本的な対策が、その後のいろいろな事情によりまして、経済社会発展計画の決定の時期までに確定することができませんでした。財政規模においてもこの医療保障が非常に大きなウエートを占めておるというようなことで、この部門がはっきりいたしておりませんので、四十六年までの具体的な姿をつかむということができなかったなどのために、全体のバランスを考慮した具体的な社会保障の長期計画をつくるまでには至らなかったのでございます。しかし、今後医療保険の抜本的な対策、児童手当の構想の具体化などと並行いたしまして、より具体的な社会保障の長期構想ないし長期計画を固めてまいりたい、かように考えております。  なお、今度御審議を願っておりまする緊急対策というものをぜひとも御決定を願いまして、そうして、医療保障についてのほんとうに全体的の姿というものもこれを確定いたしまして、そして社会保障の年次的な計画というものをぜひとも確定してまいりたい、かように考えております。
  97. 大原亨

    大原委員 あなたの考えは、主客転倒というのはそのことを言うわけです。つまり、これはいままでも議論しておってわかるのですが、たとえば第三次防衛計画をやるときに、やはり社会保障や社会開発を中心にした政策というものの一つの裏打ちというか、そういう大筋の決定の上に政治をやっていくべきじゃないかという議論をしたわけですよ。それが佐藤内閣が言った池田さんと違うところじゃないか、あるいは誤りというか、欠陥を克服する道じゃないかという議論をしたことが何回もあるわけです。そういう総合計画がなくて、ちびりちびりやっているから、混迷と停滞をして、全くこれはもう――厚生省へ行ってごらんなさい、役人はもう熱意を失っているですよ。それから、厚生省に協力してもらいたいといって学者なんか行ったら、みんなそっぽ向いちゃう。厚生大臣は次から次へかわるし、全くなっちゃおらぬですよ。そういう総合計画、長期計画を総理大臣がイニシアチブをとってやる、社会保障についての長期計画をやるということが、私は政治の一つの大きな柱でなければならぬと思うのですよ、あなたの言ったことから言えば。だから、これは国民不在とか政治不信とかいうことがいわれるわけです。ですから、私は、そういう面において、実のある社会保障の長期計画というものを策定して、世界で六十二カ国がやっておる児童手当なんかは、こういう財源を基礎としてこういう方針でやるのだとか、給付の水準はどういう方向でどこまで持っていくのだとか、そういう問題について、おくれている所得保障と医療保障についての混迷を打破するような、そういう政策を総合的に立てなければだめです。長期計画の確立につきましては、私はその点を強く要望しておきます。これは古井さんが社会保障制度審議会でやはり同じようなことを言っている。私は、自民党の中にもたいへん卓見の士があると思っている。これは古井さんで、名前は古井だが、古くないと思っておる。これは年金制度に限らず、社会保障全般のビジョンが全くない。この際、社会保障の長期計画を策定して推進し、かつ専門の独立官庁ぐらい設けて総合的にやらなければならぬ。医療保障がおくれることによって全部が停滞しているというふうな、そういうことはおかしいじゃないかという議論が与党の中でも出る。全くそのとおりであります。  私はそういうことを前提に、あと総理大臣の退席の時間もありますから申し上げるのですが、児童手当については、あなたは総裁に立候補を宣言し、あるいはこの前の総選挙、そういうときにたび重ねて言っておられる。この前の国会におきましても、私の質問に対しまして、四十三年をひとつ目標にいたしまして検討いたします、こういうことを言っておられるのです。実施するよう検討いたしますと、こういうように言っておるのです。その点につきまして、いままで参議院やあるいは衆議院の決算委員会その他で、私が三月二十五日に質問をして総理大臣が答弁されたことを中心にいろいろな議論が出ている。しかし、最近の様子を見てみると、だんだんと中身が色あせてきまして、どうも怪しくなってきた。私は、当初予算審議するときに私どもが議論したこの問題、重要な問題について総理大臣がひとつこの際イニシアチブをとってもらうという意味において、決意を新たにしてもらいたい。御決意のほどを、具体的に、端的にお伺いしたい。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 児童手当についての私の所信には、今日も変わりはございません。
  99. 大原亨

    大原委員 昭和四十三年の実施を目ざして検討いたしておる、準備をする、こういうことですね。
  100. 坊秀男

    ○坊国務大臣 児童手当につきましては、総理からのお指図もございまして、厚生省といたしましては、四十三年度を目途といたしまして、目下鋭意検討をいたしております。しかし、その児童手当のどういうところが非常に重大な問題であり、今後これについて固めていかなければならないというような問題が山積いたしておりますが、それはここでちょっと申し上げますと、もうこれは大原さん、あるいは十分御存じのことかもしれませんけれども、支給の対象とする児童の範囲、児童の対象年齢をどうするか。義務教育終了前にいたすか、あるいは十八歳未満といたしますか。それから第一子から児童手当をつけるか、第二子からつけるか、第三子からつけるか。それからまた、給付水準にもいろいろございまして、まだはっきりとした確定的なものではございませんけれども、一子から始めて月額二千円にするか、あるいは三千円にするか。それから財政負担方式を拠出制にするか無拠出制にするかといったようなことによりまして、これはずいぶん変わってくるということもございますし、それから財源の規模でございますが、義務教育終了前第一子からいたしますと、対象児童数が約二千五百万人と、こういうことに相なります。月額千円といたしますと、年間所要額が約三千億円、それから義務教育終了前第二子からといたしますと、対象児童数が約千百万人になります。月額二千円といたしますと年間所要額が二千六百億円、月額三千円といたしますと約三千九億円。義務教育終了前第三子からといたしますと、対象児童数約三百四十万人と、こういうことになります。これに対しまして月額二千円といたしますと年間所要額が約八百億円、月額三千円といたしますと年間所要額約千二百億円といったような数字と和なりまして、これをどう詰めていくかというようなことにつきましては、今後慎重にこれを検討してまいらなければならない、かように考えております。
  101. 大原亨

    大原委員 この件だけについて総理大臣にひとつ……。総理大臣は、前の三月二十三日の衆議院の予算委員会で、私の質問に対しまして、「ただいま前鈴木厚生大臣のお話を引き合いに出されました。」――鈴木さんは四十三年からやると言われた。「確かに四十三年にはこれを実現するようにしようというのでいろいろ各方面でただいま検討している最中でございます。」実施するように検討しておる、つまり、児童手当などというのは、いまお話がありましたように、十六歳以下の児童に対しまして、一人について千円出すといたしましても三千億円。三千億円ということになると、少なくとも一人について三千円くらい出さなければいかぬとすれば、一兆円単位の仕事である。そうすれば、やっぱり五年計画か何年計画かを立てて、そうして給付の財源その他について検討しなければいけない。長期計画を立てなかったらできない。大砲だったらナイキアジャックスをちゃんとつくるということをやっているんだから、児童手当についても、それ以前にやっぱり若干の期間が要るだろう。しかしながら、児童手当はこういう年次計画でこういうようにやると、こういうことについても私はやっぱり明確に決定をすべきである、そういうことをしないと、いつまでたってもできない。四十三年目標に実施すると、こういうことについては変わりはありませんね。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま児童手当を実施するについて、大原君からも具体的に検討すべき点をお示しになりました。私は、先ほど厚生大臣のお答えを静かに聞いていたのでありますが、これはなかなか問題だ。しかし、いずれにしても、何らかの方法で手をつけることがまず第一だ、かように思いますので、そういう意味で、ただいまの政府調査も研究も、これは成果をあげるように、この上とも努力するつもりでございます。しかし、なかなか簡単な問題でないことは大原君の御指摘のとおりでございますから、さらにさらに慎重に十分検討したいと思っております。
  103. 大原亨

    大原委員 それでは、これもやはり選挙の公約、政治の信頼に対する問題ですが、この前の三月の子算委員会で議論いたしました農民のための年金、農民恩給の問題であります。これは私は農林大臣に……。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私から便宜その方向をお答えいたします。これは農民年金と、かように申しておりますが、農林省の所管でなくて厚生省の所管でひとつ検討しろ、かように申しておりますので、厚生大臣からお答えすることで要領を得るのではないか、かように思っております。
  105. 大原亨

    大原委員 この経過は、前の議事録もございますし、さらに選挙のときには、倉石さんと佐藤総理がまっ先に農民のための恩給をつくると、こういうようにやって、一斉に全国の自民党の候補者諸君が言われたのであります。したがって、そういう経過があり、国会においてもいろいろ議論いたしておりましたので、農林大臣がどのような見地から農民年金を考えて構想を進め、準備を進めておるのか、必ずやりますという答弁ですから、私も歓迎いたします。いたしますが、これはずっといままで経過があることですから、そのときの質疑応答で明らかなように、厚生大臣の答弁とは対立いたしました。ですから、そういう点は、私ども国会といたしましても重要な関心を持ってひとつやりたい、こう思うので、農林大臣の出席を求めます。そのつなぎにひとつあなたに……。
  106. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ちょうどだだいま農林大臣が参っておりませんので、私から……。  この問題については厚生省が所管をするのだ、こういうことを総理大臣もかねて予算委員会において申されましたし、私も総理大臣からこれもまたお指図を受けまして、厚生省で検討を続けてまいっておりますので、便宜私からお答え申し上げます。  厚生省といたしましては、去る三月の予算委員会における総理の答弁の趣旨に沿って、国民年金との関連を中心に、農林省とも連絡をとりつつ、鋭意検討しております。国民年金審議会でも四月からすでに四回の会合を開き、その間農林省の出席も得まして、農民の特殊性等をも十分勘案いたしつつ今昔検討を進めておる、こういう段階でございます。
  107. 大原亨

    大原委員 これは農林大臣が見えてからにしましょう。さっそく出席を要求します。  そこで、この問題はあとに回しまして、次の健康保険ですが、いままでいろいろ社会労働委員会や各委員会において議論があったわけです。健康保険の臨時特例という名前で出ておるわけですが、七百四十五億円の赤字、この赤字は何が原因で出たのか、いままでいろんなやりとりがありましたけれども、その点、私は厚生大臣から明快に、よくわかるように御答弁いただきたい。原因は何か。――問答集は要らぬだろう。
  108. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答え申します。  最近の政管健保等の財政悪化は、主として医療給付費の急増によるものでありますが、この急増の要因といたしましては、近年の署しい医学、薬学の進歩、医療機関の整備充実、それから一般の所得水準の向上、人口構造の変化等、社会的要因による医療需要の増加とともに、現行の診療報酬体系のあり方等、制度的に検討すべき問題もあるのではないかと考えております。政府といたしましても、今後医療保険制度の長期にわたる財政の安定について十分検討すべきであると考えまして、現在山積しております諸問題の解決のために、制度の抜本的改革を四十三年度からぜひとも実現したい、かように考えております。
  109. 大原亨

    大原委員 今回七再四十五億円の赤字を埋めるために、保険料を千分の六十五から七十二に引き上げる、これは去年もやり、おととしも議論したやつをまた持ち出してきて今年もやる。こういうこと。あと総理がお帰りになりましてからこの議論はいたしますが、そういうことであります。連続パンチだ。そして患者に対しましては医療費の一郎負担をやる、初診料あるいは入院費あるいは薬代の一部負担、こういう、いままで議論になりました点についてやる、こういうことであります。いま原因について厚生大臣の答弁を聞きました。メモをお読みになったのだと思うのですが、私は的確に内容を把握しておられぬと思う。日本の総医療費はこの三、四年来どのくらい増大をしておるか。もう一つは、一日当たり、あるいは受診率、あるいは一件当たりの費用について特徴的にどこが伸びておるか、こういう点について、ひとつ明快に御答弁いただきたい。
  110. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ちょっと私いま資料を持ち合わせておりませんので、事務当局からお答え申します。
  111. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  総医療費は、三十五年で四千四百億程度でございましたのが、四十一年度では一兆三千億程度になっております。それから医療費の動向といたしましては、先生御承知のように、医療費の中に占める薬代、注射代の経費がふえておりまして、これが三十五年で二〇%程度でございましたものが、四十一年度では三七、八%、四〇%近くになっておる。こういうことでございまして、的に、一人当たりの医療費の中に占める薬代の費用がふえておる、こういうことでございます。
  112. 大原亨

    大原委員 総医療費が、昭和三十五年の四千億円台が四十一年には一兆三千億円になる、こういうことで相当ふえておる。そこで、いままでいろいろ議論してまいりましたが、問題は、総医療費の中に占める薬剤や注射料の比率というものが、世界じゅうどこの国に比べましても日本のほうが非常に大きいわけであります。全体の四割、五千数百億円を占めておるということになります。外国でございましたら、たかだか半分の二〇%程度であります。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 これは欧米各国の保険の財政を分析いたしますと、大体そうであります。そこで、いつも議論になるわけですが、薬価基準の改定を、前の鈴木厚生大臣は、年に一回は必ずやります、社会保険審議会においても、国会においても、こういう御答弁でありましたが、それをやっておられないのはどういう理由でありますか。抜本改正の問題と今回の臨時措置の問題は切り離すことはできない。日本のように医者や薬剤師の技術が低く評価されておる国はない。しかし一方において、日本のように薬代が多額に医療費の中で占めておる国もない。この二つの問題は一つずつ解決するというのではなしに、総合的に解決しなければ、これは問題の解決にならぬ。これは何回もここで議論したことであります。ですから、今回薬代の一部負担を政府は改正案として出しておられますが、この問題は、前の前の神田厚生大臣のときに薬代の半額負担ということで大問題になって、そしてこの問題が取りやめになった経過があります。ですから、少なくとも鈴木前厚生大臣が言明された薬価基準の改定等については、厚生大臣の権限でありますから、権限と責任において実行すべきであるのにこれをやらないというようなことは、私はもってのほかではないかと思う。この点が第一。  それから、前の社会労働委員会において山本代議士が指摘をいたしましたが、販売サイドからの薬価の調査、実勢調査というものは非常な疑問があるのではないか。昭和四十年の十一月の調査方法とは違う調査をやっておるわけでありますが、そういう問題があるのではないか。つまり、今日の赤字というふうなものは、厚生大臣がやるべきことをやっていない、あるいは抜本改正をおくらせておる、こういうことが一つの大きな原因ではないか。その責任をたな上げにしておいて、患者や国民だけに負担をさせるということはけしからぬのじゃないか、こう思うわけです。  この二点につきまして、ひとつお答えをいただきたい。
  113. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のとおり、医療費の中で薬価、薬代が占むる割合というものは非常に大きなものがございまして、それでこの薬代というものを、何と申しますか、実勢価格というものに近づけていくことが保険医療の中でも非常に大事なことだと私は思っております。さような意味におきまして、この薬価を調査していくということについては、私も非常に芳心をいたしてまいったのでございます。なるほど、厚生大臣の権限とおっしゃられますのはそのとおりでございますけれども、この調査をやっていくためには、どうしても関係各方面の協力を得なければ、なかなか実を期し得ないというようなことでございましたが、幸いにして販売サイドの調査ということに取りかかりまして、そうして、大体におきましてそれの報告と申しますか、レポートといいますか、これが集まってまいっておりますので、おっつけもう近い機会にこの調査の結果等を参照いたしまして薬価の基準といったようなものが新たに作成される、こういうような段階に相なっておるのでございます。
  114. 大原亨

    大原委員 私が質問したのは、こういうことですよ。鈴木さんが厚生大臣をおやりになっておった昭和四十年の十一月に、薬価基準の改定を四五%されました。そして三%を技術料に振り向けて、一・五%を薬価の切り下げにやられたわけです。これは応急の措置であります。その当時、年一回あるいは一回以上、実勢価格に応じて保険に採用する薬の値段あるいは薬価基準についての基準の調整をするのだということを言われたわけであります。ところが、その四十一年が過ぎておるわけです。四十二年も、従来の方針でございましたならば、六月までに調査を完了して、七月には薬価基準の改定告示をやるのだ、こういう話でございました。最近聞くところによると、秋になるということであるが、赤字は幾らでもふえるじゃないか。そういう、厚生大臣がやるべきことをやらないでおいて、臨時特例でございますの、何でございますのと言ってこれを通そうということは、国民の立場から見ると、その政府の失策――やるべきことをやらない、その結果というものを患者や国民に転嫁するものではないか、こういう疑惑が出てくるのであります。私は、反対は当然だと思うのです。だから、やると言明したことをなぜやらなかったのか、こういうことを私は質問いたしておりますから、私の責任でありますとか、どういう理由でできなかったとか、私の責任云々の隠題について明確にひとつ後答弁をいただきたい。
  115. 坊秀男

    ○坊国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、この薬価調査ということは、なるほど厚生大臣の権限の範囲のことではございますけれども、何しろ相手方がございまして、それの協力を得られない限りはなかなか困難である。そこで、協力を書られないから販売サイドにおいての調査ということに踏み切りまして、それをやっておるということでございます。どうしても薬価の調査ということは厚生大臣としてはやらなければならないことであり、それがおくれておるということにつきましては、これは非常に遺憾だと思います。
  116. 大原亨

    大原委員 昨年一カ年間やらないでおいて、本年もさらにおくれる、こういうことは許せないと私は言っておるのです。薬価基準の改定はいつ告示をされますか。
  117. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  販売サイドの本年の二月分の調査を完了いたしておりますので、現在集計中でございます。四十年に全面薬価改正をやりまして、四十一年の分につきましては、四十一年度中の、二月になりますが、二月分をやったわけでございます。それを現在集計をいたしておりまして、近く八月ぐらいの間にはやれるという見通しを持っております。
  118. 大原亨

    大原委員 この前、社会労働委員会で、つまり販売サイドの調査というのは卸の値段を調査する、そうするとメーカーのほうから、こうずっと薬価基準に登載されている品目について値段の水増しをやるという問題について指摘をされたときに、これを厚生大臣は知らなかった。これは事実を調べて厳重に措置する、こういう話があったことが一つ。これは事実はどうであって、どういう措置をされたかということについて私は伺いたい。つまり、メーカーがメーカーの力をもって卸の値段をこういうふうに報告しなさい、こういうふうに水増しをすれば、薬価基準というものはバルクライン九〇という異例の高い水準ですから、幾らでも上がるわけですよ。  もう一つの問題は、去る七月一日に、新しく薬価基準に千五百以上の新薬を登載した。新しい薬をメーカーの要請に従ってどんどん登載するということになると、時間がたてば、競争もあるしコストは下がる。しかし、新しい薬はいろいろな理由をつけて開発費もあって高い。そうすると、結果としては、千五百も七千の中でやるとすれば、薬価基準をつり上げる結果になるのではないか、そういう操作になるのではないか。しかも、薬価基準を調査をし、改定をするというどたんばにおいて、新薬を千五百も登載をするということは、これは全く厚生大臣がみずからの責任を放棄して、そうして全く国民を無視した、こういうふうに言ってもよろしいのではないかと私は思う。  この二つの点について、ひとつ事情を明らかにしてもらいたい。
  119. 坊秀男

    ○坊国務大臣 第一点の販売サイドにおける薬価調査について、何かメーカーのほうから、こういうふうに薬価を報告してもらいたいというような棉望でございますか、そういったようなことがそれぞれの販売店にもたらされたといったようなことを前回の委員会において――参議院の委員会でございますか、お聞きをいたしたのでございますが、その後、これにつきましては、私もこれはまことに重大なる問題だということを申し上げまして、そうして、もしさような事実がありとするならば、これに対しましてはきびしい態度でもって臨まなければならないということも申し上げたのでございます。いまそういったような線に沿いまして、鋭意その調査を続けてまいっております。  それから第二点の、新しい薬の薬価基準登載の件につきましては、これは担当の局長からお答え申させます。
  120. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  鈴木前大臣のときにも、毎年一回薬価調査はやる、しかし、と同時に、やはり新薬については、なるべくすみやかに薬価基準に登載をするという話をずっといたしております。したがいまして、今度の御指摘の新薬の登載につきましては、私どもとしては、なるべく早くやるというたてまえで、なるべく早くやりたいというふうに思っておったわけでございます。御指摘のように、薬価調査のほうがなかなか話し合いがつかないままで、二月の販売サイドでやるというふうにきまりましたので、きまった時点におきまして、従来の四十年の十月から四十二年の二月までの新薬につきまして、至急新薬の登載をやる必要があるということで作業を進めたわけでございます。したがいまして、予定としましては、大体四月ないし五月ごろまでには新薬の登載をやるという方針で作業をいたしたわけでございますが、医師会等のいろいろな事情によりまして、それが若干おくれたということで、七月一日に新薬の登載をやったわけでございます。したがいまして、四十年のときからのルールに従って、新薬の登載をやったわけでございます。  それから、品目の数が非常に多いように先生は御指摘でございましたが、これは従来統一品名でやっておりましたのを、それぞれ銘柄別の品名に改めましたので数がふえておるわけでございまして、実質的な品目の数としては、従来の線に従えば大体三分の一程度というふうに御理解いただきます。
  121. 大原亨

    大原委員 これは予算委員会の場ですから、あまりこまかなことは議論しませんが、三分の一というのだから、五百ぐらいが従来の基準からいえば増大した、こういうことだ。千五百の中で五百。しかし、それにいたしましても統一品目――薬のもとの名前でやるのと、会社の薬の名前、銘柄別を千登載し、それから統一品目を五百やった、こういうことになると思うのだが、しかし、そういうやり方というものは私は問題じゃないか。構造式、カメの甲をちょっと変えておいて、そして値段をつり上げておいては新しい薬だといって許可して登載するということになれば、これは幾らでもつり上がってくるんじゃないか。そんなことをやるならば、メーカーの立場に立ってどんな操作でもできる。それでは問題の解決にならぬのじゃないか。あま与専門約だから、ごまかそうとしたって、それはいけないのじゃないか。そういうことはもう少しきびしい態度で、従来の慣例があろうとなかろうと、その点については一つの方海を持ってやるべきである。これは新薬の特許法その他の改正問題もあるけれども、とにかく、そういう点をあまりでたらめをやってはいけない。私が指摘したいことは、つまり、こういう薬の問題については、厚生省が幾ら皆保険のもとであっても、メーカーだけは自由である、メーカーは自由主義だといっても、メーカーに対するチェックとか規制というものについては、当然なすべきことはなさなければいけない。それでなければ、皆保険ということで患苦や被保険者、保険者に対して犠牲を負担させることはできない。だから、そういうあまりにも専門的で、こまかいことにかこつけて一方的なことをやるということはいけない。ですから、赤字の原因等については、これはあくまでも抜本改正にかかわる問題ではないか。つまり薬代の一部負担というのは、半額負担のときにも議論をした、その後も議論をしておるけれども、やはり医者の技術、薬剤師の技術を思い切って国際的な水準に上げていく、しかし、薬においてはもうけない、こういう制度をつくらなければいかぬ。そのことを早くやることが赤字を解消する道である。鈴木厚生大臣は四十二年中にやると言ったけれども、いまは四十三年があぶなくなっている。これは、あと総理大臣が見えてからひとつ追及をいたしたいと思います。私どもが戦前、小さいときには、薬屋へ行きましたならば大体三日分ぐらいな薬をもらったものだ。いまは国立の、あるいは大学病院なんかに行きましても、売るほど薬をくれる。調べてみたら、それを飲んでないというのが一ぱいある。これは結局は経営にもかかわるけれども、医者の技術の評価というものが非常に前近代的である、こういうことに原因がある。あるいは薬のメーカーがこういう制度に介入し過ぎるというところに問題がある。そういう問題の本質をつかないでおいて、小手先のことばかりやって患者や国民に犠牲を負担させるということは、私は絶対に辞すことはできぬ、こう思うのです。これは総理大臣にも、いままで何何も議論しておるんだから、見解を聞きたい点ですが、厚生大臣いかがですか。改正法案、改忍法案は撤回しなさい。
  122. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘の診療報酬、これにつきましては、非常にこの中に不合理な点もありまして、そしてお医者さんが薬を非常に経理上の重大なものとして扱っておられるというようなことも私はよく聞いてもおりますし、私もまたそれを感じております。さようなことに相なりますのは、これはやはり診療報酬のやり方といったようなものについて非常に欠陥があるというようなことは、これはおおうべくもない事実だと私は思います。さような意味におきまして、ぜひともこの診療報酬体系というものは改定をしていかなければならない。そういうような観点から、この次に考えるべき医療保険の抜本的改正にあたりましては、どうしてもその診療報酬体系というものを、ひとつ周辺の最も重大なる問題として扱っていかなければならない、かように考えておるのでございますが、この点につきましては、目下中医協におきまして熱心に御検討を願っておるという段階でございます。
  123. 大原亨

    大原委員 つまり薬の値段の中に技術料が入っておる。潜在技術料、これが一種の既得権というふうに言われておるところに問題がある。しかし、既得権として主張せざるを得ないところに問題がある。ですから、医者の技術や薬剤師の技術というものを思い切って尊重する、そういうたてまえと、それから医薬についてはブツでもうける、売薬的な医療に走らないようにする、こういう点について、薬価基準や実勢価格の位置というような問題等、そういう施策を進めていく。これは一ぺんにやらないと、近代化して前向きに建設的に処理はできない。それを薬代の一部負担だけを取り上げるなどということは、私はもってのほか、だと思う。  そこで、私は一つ指摘をいたしますが、一日一剤について十五円の薬剤費を負担させる、こう言うんです。一口一剤について十五円の薬剤費を負担させるということになると、たとえば中表を適用している大病院、乙表を適用しておる診療所その他、乙表の中には技術料と薬が込みになっておる。ですから、十五円の負担という立場に立って考えると、甲病院と乙病院に行った場合には違う。甲病院に行けば十五円の負担、五日間で七十五円の負担、こういうものです。長くなったり二割であればまた多くなる。そういう負担等があるけれども、甲病院へ行けばないのに、乙病院へ行けばそういうものを負担しなきゃならぬ、こういうことになる。ですから、小手先のことを一つ一つ赤字対策としてやっておると、患者や国民の立場に立つと、矛盾を拡大するのではないか、差別を再生産するのではないか、低所得階層をいじめるのではないか、こういう議論が出てくる。具体的に私は一つの例を取り上げて言ったのでありますが、この点について、厚生大臣は政治のあり方として、あなたは財政通であるというんで厚生大臣にすわられたわけだろうが、しかし、厚生行政というものはそういうものじゃない。そういう立場から考えてみた場合に、私が指摘をいたしました例は矛盾を拡大するものである、差別を再生産するものである、そして低所得階層をいじめるものである、こう思うが、あなたの責任ある見解をひとつはっきりしてもらいたい。
  124. 坊秀男

    ○坊国務大臣 薬の一部負担というものが、甲表と乙表とによりまして同じ薬で負担が違ってくるということは、いま御指摘のとおりでございます。これは私も一つの矛盾だと考えます。しかしこの問題は、甲表、乙表という既定の制度と申しますか、それがございまして、それで甲表、乙表ということは、私もこれは決していい制度であるとは思っておりません。だから、この甲表、乙表ということにつきましても、これは制度の問題でございますけれども、この甲表、乙表というものがあって、そしてそこで薬の一部負担ということをやりますと、どうしてもこれはそこにやむを得ない一つの矛盾としてあらわれてくるわけでございます。けれども、甲表、乙表というものは、できるだけこれはすみやかに抜本対策に際しまして解消していかなければならない問題の一つだと考えております。
  125. 大原亨

    大原委員 私が質問したのは、甲表、乙表がある現実の上に薬代の一日一剤十五円の負担をさせると、これこれ三つの矛盾が拡大するじゃないか、そういうことをやるから、あと既成事実ができて取り返しのつかぬことになるじゃないか、こういうことを私は言ったんです。処理がだんだんむずかしくなるんじゃないか。あなたはいつ厚生大臣をおやめになるかわからぬけれども、厚生行政はでたらめになる、端的に言えばこういうことだ。単なる赤字対策という観点だけでこの問題を処理すべきではないということです。つまり、どういうことかといえば、抜本対策なるものを、総合対策なるものを一日も早く国民の支持を得てやることが大切である。佐藤総理以下全部が政治力をかけてやるべきである。そういうことなしにこの問題の解決方法はない、そういうことを私は申し上げておるんです。結果として矛盾を拡大するじゃないか、こういうことを言っているのです。いかがですか。
  126. 坊秀男

    ○坊国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、この薬の一部負担というものが、そこに一つの矛盾を露呈してくるということは、私も承認せざるを得ないと思います。お説のとおり、どうしても抜本対策をやらなければならないということにつきましては、私はいまの日本の医療保障というものが全くその段階に逢着しておる、どうしても抜本対策をやらなければならないということは、もう私も全く痛感しております。その抜本対策をやるにつけましても、毎年毎年赤字に苦しんでおる、赤字の対策をやっていかなければならないといったような状態のもとにおきまして抜本対策をやるということが私は非常に困難であるということも体験いたしまして、そこで、どうしても本属会におきましては、今度のこの暫定対策、緊急対策というものをひとつ御審議願って、そしてここをひとつ切り抜けまして、そうして即刻抜本対策というものを考えていきたい、かように考えております。
  127. 大原亨

    大原委員 これは総理にお聞きしたいことですが、私が総理大臣であり厚生大臣であったら、こういうつまらぬことはしない。こういうつまらぬような臨時特例を出さない。やはり臨時特例を出さないでおいて、七百四十五億円の赤字の中で二百二十五億円を国が負担しておるのだから、あと五百二十億円だ。いままでのたな上げ分は千四十六億円、ついでにひとつたな上げしておいて、抜本改正について一日も早く取りかかっていく、それに全精力を注いでいく。ことしもこんなにして健康保険を通じて大きな騒動をする、これは政府が悪いからだ。去年もやった、おととしもやった。神田厚生大臣、鈴木厚生大臣、これはわりあいスムーズにいったけれども、やっぱり相当修正した。ことしもやる。さらに来年から、四十三年からやろうという意思があるかないかわからぬけれどもあとでお聞きいたしますが、また大改正をやろうというようなことは、これは私は、およそ政治を預かる者といたしましては、これはできないことである。全く責任のがれだと思うんだ。その犠牲をすべて国民に転嫁するというようなことは、私はもってのほかであると思う。これは総理大臣にかわって大蔵大臣、ひとつ答弁してください。あなたが大体元凶らしいけれども、答えてください。大蔵大臣の見解を言ってください。
  128. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまこの保険制度がこうなっておって、困っている人がないというのは実にふしぎな現象だと思いますが、赤字は全部政府の預金部資金でまかなわせておる。結局、足らないものは全部国民の貯蓄の中におっかぶせて何人も責任を負わない。現実に赤字が出ても支払いは続けられ、支払いを受けておるというこの制度をこのまま置いておいていいか。もうすでに保険制度自身は、このままいけば崩壊してしまいますし、その跡始末を一体どうするのかという、これは大きい問題でございますので、根本対策をする必要があると同時に、当面、とにかくこの財政を崩壊させない措置、緊急措置というものは、これは当然ここではっきりと確立しておかなければ次の改正も望めないという、これは非常に緊急性を持っておるものでございますので、やり方によっては、確かにそれは将来改革に影響をなす問題もございましょうし、矛盾の拡大を含んでおる要素はやはりあると思います。しかし、それ以上に、当面この赤字を防いで財政の崩壊を避けるという措置だけは、この制度として待ったのないところにきておるというふうに私は考えております。
  129. 大原亨

    大原委員 つまり、自然増収の議論が午前中からあるわけです。この種の支出というものはそう長く続く支出ではないわけです。ですから、矛盾だらけの臨時特例を積み重ねていって、時間がたつに従って赤字の原因をつくる、あるいは改正のそういう困難性を増していくようなことをするよりも、りこうなそろばんのはじき方をするならば、やっぱり抜本改正を総合的にやっていかなければ、これは解決できないのだ。でなければ患者や、あなたが言うように国代や被保険者の負担にしてこれを何とかごまかそうということになる。それではいけないのじゃありませんか。大蔵大臣の立場はあるでしょうが、私は、総理大臣その他、やっぱり内閣をあげてこの問題の解決に当たらないと、厚生大臣一人ではこれはどうにもならない、こういう問題ではないか、こういうことを言っているわけです。もう一回ひとつあなたのお考えを言ってください。あなたの答弁いかん。いまの客観情勢というものは、国民の世論からいっても、国会の客観情勢からいっても、この法律案は通りはしませんよ。だから私どもは、この問題についてもう少し虚心たんかいに、国民の医療をどうするのだという考え方から大所高所から考えていかないと、単なる目先の赤字対策だけでこの問題を処理するということはいけない、私はこう思うのです。いかがですか。
  130. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう同感でございまして、根本的な対策を関係者によって真剣に立てられなければならぬというふうに私も考えております。ただその場合に、先ほども申しましたように、こういう社会保障制度、保険制度でやるのか、そのほかの制度でやるのかということは大きい問題でございまして、保険制度でもって運営するという基本をきめました以上は、その線に沿った改革でなければ、これは根本的な改革にならぬと私は考えております。国の税収がちょっと多かったからみな赤字を持てとか、税収がなかったときは、それはしかたがないなんというふうな、そういうものにこだわった制度を考えておったら根本解決にはなりません。保険制度で運営するというはっきりした基礎をここでやはり立てなければ改革のしかたがないというふうに考えておりますので、私はそういいかげんに考える制度じゃないというふうに思っております。
  131. 大原亨

    大原委員 前段において同感しながら、あとでまるで逆のことを答弁される。それはおかしい。  厚生大臣、大蔵省予算折衝の過程の中で、大衆保健薬、ビタミン剤や肝臓薬をはずす、こういう提案をいたしまして、それが途中で一日一剤十五円の負担に変わった。理由を聞いてみると、大蔵省が提案をいたしましたのは抜本対策にかかわる問題である、あとのほうはない、こういうインチキなへ理屈がついておる。どういう考え方、どういう経過でそれが変わったのか、事情を明らかにしてもらいたい。
  132. 坊秀男

    ○坊国務大臣 予算折衝の過程におきましては、いろいろなことが、ああでもない、こうでもないということではございませんけれども、いろいろ材料と申しますか、いろいろな問題についてお互いに折衝、検討をいたしておるわけでございます。その間におきましても、確かに大衆保健薬の問題も論議されたのでございますけれども、大衆保健薬と申しましても、一体何が大衆保健薬かといったようなことにつきましても、いろいろとむずかしい学問的な議論といったようなものもありますし、それで予算折衝の非常にあわただしい間におきまして、これを一つの大衆保健薬ということによって措置をするということも、必ずしもたやすいことではないといったようないろいろのことがございます。いずれにいたしましても、予算折衝過程におきましては、非常に複雑多岐なる議論が行なわれまして、そして結局薬の一部負担ということに落ちついた、こういうわけでございます。
  133. 大原亨

    大原委員 いまの御答弁は中身がないですよ。ずるずる話をしただけであって、何も中身がない。昭和四十一年度までの健康保険の赤字が千四十六億円も累積をしておるわけであります。四十二年度ではなしに、四十一年度までが十四十六億円、この赤字は一体どういうふうに処理されますか。赤字はどうするのですか。これは抜本改正でもやって、今度は患者のほうにでも食掛をかけようと、こういうのですか。いままでのついでに、やはりこれは患者や被保険者に犠性を負わそうと、こういうことですか、いかがですか。これは大蔵大臣にひとつお聞きしましょう。
  134. 水田三喜男

    水田国務大臣 この処理については、まだ方針がきまっておりません。将来この会計が黒字会計になって、その中から返済するようなこともなかなかむずかしい問題だと思っており出すし、まだ方針はきめておりません。
  135. 大原亨

    大原委員 千四十六億円の四十一年までの赤字があるわけです。しかも政府は、いろいろやるべきことをやらなかった、そういう結果からいたしまして赤字がふえておるわけです。七百四十五億円の中の五百二十億が足らないわけですが、それについて私どもは、政府はしかるべき措置をとって、そしてこういう激突のような情勢をつくらないで抜本改正をやるべきだ、いままでやるべきだった、いまでもおそくないからやるべきである、こういう見解を持っておるわけであります。これは厚生大臣に御答弁を求めましても、私が満足すべき答弁はできないかもしれない。もし満足すべき答弁、決断が示されるならば、ひとつお答えをいただきたい。
  136. 坊秀男

    ○坊国務大臣 四十一年度までの赤字は、まだ、大蔵大臣お答え申し上げましたとおりです。これは抜本改正の際に、どういうふうにしていくか、その処理を考えるわけでございます。  それから、その抜本改正をすぐやれ、私もできるだけすみやかにこれをやりたい、ぜひとも抜本改正をやりたいと考えておりますが、それをやるにつけましても、ぜひとも今度の緊急対策というものを御審議、御決定をお願い申し上げたい。どうぞお願い申します。
  137. 大原亨

    大原委員 農林大臣お見えになりましたから、途中質問を中断いたしまして、総理大臣が見えてからこの締めくくりをいたしますが、農林大臣、あなたが総選挙のときに農民年金、農民恩給と、こういうことをお話しになって、この前国会で議論いたしました。若干厚生大臣との対立がございましたが、議論が進みました。私ども素朴な国民の感覚からいえば、これは歓迎でございます。大歓迎であります。しかし、少しく国民年金その他所得保障の実情を知っておる者といたしますと、なかなかこれはたくさん問題があるのじゃないか。よくも、中身がわからぬのに、選挙のときは背に腹はかえられないとは言うものの、選挙のときだから言ったものだという、二つの気持ちがあるわけであります。そこで二千方円ほど大蔵省から予算をおとりになって、厚生省でもやっておられるが、農林省独自でやっておられる、こういうことですが、その後の進捗状況についてひとつお答えいただきたい。
  138. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府がいわゆる農民年金、農業者年金、これを言い出したのは、いまお話しのような、選挙ににわか仕立てに、当てずっぽうを言ったわけではありません。農業につきましては、御承知のように、産業構造の変化から、各国においてもそれぞれいろいろ態様が違っておりますが、日本は日本なりにやはり非常な変化がきておる。このいわゆる農業者年金というものを活用いたして、土地の移譲等をやりやすくして、経営規模の拡大等に資しておる国も御存じのようにございます。そういうものも、やはり国によっては、いわゆる農民年金というふうな呼び方の中でやっている。もう一つの傾向は、やはりいわゆる社会保障的な考え方で、ことにいまのように置かれた農村のあと継ぎが永続して農業を守っていただくために、年金的な気持ちでやっておるものもあります。そこでわれわれは、わが国の土壌に合ったやり方はどういうことが一番いいだろうということで、いまお話しのように四十二年度予算調査費を計上いたしまして、農林省にはこの農民年金等について特段の研究をしておる学識経験計が集まっております研究会がございますので、それに委託をいたしまして、鋭意検討を続けておりますと同時に、政府部内としては、厚生省と農林省とが、いま申し上げましたような二つの考え方等がどのように調整をして実施できるかということについて、専門家をわずらわして検討いたしておる。御承知のように年金の審議会、国民保険の審議会があります。ああいうところにもお願いして研究を続けておる。まだ結論は出てまいりませんが、そういう段階であります。
  139. 大原亨

    大原委員 後継者を対象にされるのですか、それとも離農者を対象にされるのですか。
  140. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 それらをどのように結びつけるかということについての学問的研究をいま継続しておるということであります。
  141. 大原亨

    大原委員 国民に公約しておいて、これから何をやろうかということを研究しておる、どろぼうを見てなわをなうと昔からよく言ったものですが、そういうことですか。国民年金のワク内でおやりになりますか、ワク外でおやりになりますか。
  142. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 一部には、国民年金に上積みすればいいではないかという安直な考えの論者もあります。しかし、これはやはり農業政策としての基本的な考え方に立脚したものでありますから、そういう立場でわれわれは研究をしてもらっております。
  143. 大原亨

    大原委員 それでは最後に厚生大臣。国民年金の加入者の四割は自営業者である農民であります。国民年金をより改善するという立場に立てば、いまのような農林大臣のお考えをどうお考えになりますか。
  144. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御質疑のとおり、国民年金の多くの部分がこれは農民であるということでございます。そこで、この問題につきましては、そういったような問題も含めまして、ただいま審議会において研究をしていただいておる、こういうことでございます。
  145. 大原亨

    大原委員 所得保障、つまり年金の水準が低いというところに私は問題があると思うのです。それから、最初から議論いたしておりますが、日本の社会保障政策には、児童手当の問題を含めて総合計画がないというところに問題があると思う。長期計画がないというところに問題があると思うのです。つまり、圧力とか利権のないところには政治の恩恵が及ばぬようになっておる。ですから、総合的な長期計画を立てるということが、この点においても必要である。そういう展望の中で、ほんとうに農民のための恩給、年金というものはどうあるべきか、こういうことを考えていただく、それは総理大臣が先ほどもお話しになったが、厚生省を中心にこの問題を議論する、こういうことでございました。ですから私は、そういう点において、きょうはあげ足をとるわけではございませんから、とにかく、最も日本の社会保障制度のおくれた部面を前進させるという意味において、ひとつ十分早急に御努力をいただくように要望いたします。  そこで、人事院の勧告問題でありますが、人事院総裁にひとつ。人事院は今日まで十二回の勧告を実施されてきたわけでありますが、一回も完全実施されていないわけであります。人事院は、公務員も憲法二十八条にいう勤労者であって、労働三権を憲法で不可侵の権利として保障されておるわけでありますが、その代償機能として人事院は設立されました。この人事院がそういう代償機能としての役割りを果たしてきたかどうか、これは民主主義の根本にかかる問題ですから、当事者の人事院総裁として、いままでの勧告、その実施を振り返ってみられての御所見をひとつ明らかにしてもらいたい。
  146. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまおことばにありました点は、むしろお尋ねを待つまでもなく、私どものほうから積極的に訴えたいというような気持ちでおるわけであります。要するに、いまお話しのとおりに、従来少なくとも実施期日の関係におきましては、近年やはり若干の切り下げを受けておる、これはまことに残念である、そういう一言に尽きると存じます。
  147. 大原亨

    大原委員 まことに残念であるというだけでは済まぬと思うのであります。私は、これは法律論ですけれども、人事院の勧告と公共企業体の仲裁裁定の制度、人事院勧告と仲裁というものは、法律的に軽重というか、そういう法律的な性格において差異があるのかどうか、これは人事院総裁にひとつまずお尋ねいたします。
  148. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまの点も、実はかねがね私どもがお訴えしておるところでございまして、制度の条文を比べますというと、確かに公労法なり、あるいは給与法というものの条文の形は違います。形式も違いますけれども、法の精神としては、いずれも尊重せらるべきものであるということは同じであろうと私は確信しております。
  149. 大原亨

    大原委員 労働大臣、公労協では、昭和三十四年より、関係者の努力によって、四月実施で完全実施をされておるわけであります。しかし、指摘いたしましたように、公務員においては、十二回の人事院勧告で一回も完全実施をされていないのであります。しかも、人事院総裁が言われたように、勧告と仲裁の法律的な効果、性格というものは同じものであります。これでは、やはり私は国民を差別扱いすることにはならないか、その意味において人権を抑圧し、圧迫することにならないか、こういう点につきまして、ひとつ賢明な御見解を明らかにしてもらいたい。
  150. 早川崇

    ○早川国務大臣 仲裁裁定は、最近完全実施されてまいっております。これは法律ではっきり三公社を制約するように書いてあります。しかし、公務員給与につきましても、人事院総裁が答えられましたように、法律の精神からいいまして、むろん尊重すべきものと考えるわけであります。しかしながら、人事院勧告は非常におくれて、年度中途に勧告が出ます関係上、特に地方自治体の財源問題等がからみまして、いままで時期の面で実施がおくれてまいりましたことは事実でございます。私といたしましても、時期の問題におきましても完全実施に近づくように、今後とも努力すべきものだと考えております。
  151. 大原亨

    大原委員 年間の途中の勧告であるから、財源その他で大きな障害がある、こういう御見解であります。しかし、それによって法を曲げるという理由には私はならぬと思うのであります。人事院勧告と仲裁裁定が法律的に同じであるとするならば、当然同じような扱いを政府としてはなすべきであります。それが公平の原則であり、でなければ差別待遇ということになります。長期間なにしますと、非常にたくさんの損害ということになります。そこで、藤枝自治大臣にお尋ねいたしますが、二つあります。  近く人事院勧告がなされると思いますが、その財源措置の問題、特にこの藤枝構想なるものがあるのであります。つまり、これは大蔵大臣にもお聞きいただきたいし、総理大臣にもお聞きいただきたいのですが、大体GNP、国民所得その他の指数をもって見れば、三カ年ぐらい平均すればどのくらい生活水準、給与が上がっているということがわかるわけであります。ですから、そういう基準となるべきものを当初の予算に計上しておいて、年度の途中の勧告に対しましては中央・地方の財源措置を補正していく、こういうのが藤枝構想であるやに伺っておるわけであります。これはあなたのお考えであると存じますが、この事実につきまして、あるいは御考えにつきまして、この際明らかにしてもらいたい。
  152. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 第一に、この次に出るであろう人事院勧告について、地方公務員にどうするかという問題につきましては、従来とも国家公務員の給与ベースの引き上げに準じて行なっておりますので、そのようにいたしたいと思います。その財源につきましては、中央財政の現況ともにらみ合わせまして適切な財源措置をやってまいりたいと思います。  藤枝構想とおっしゃられましたが、実はこういう人事院勧告が八月等に行なわれて、さかのぼって実施されますと、国会あるいは地方議会において本年度の給与費はどれくらいであるということが議決になっておるわけでございまして、それを一カ月たった――直ちに変えるというようなことは、議会の議決、予算案とどういう――いろいろな問題が起こるわけでございます。そういうようなことから、大体最近の物価の上昇状態等を見まして、あらかじめ地方団体が給与費の中にある含みを持たして議決をしてもらって、そうして勧告が出たら、それが完全に実施できるようにということが望ましいのではないかということを考えたわけでございます。ただその場合に、地方団体の長が恣意的にこれくらいというわけにはいかないものですから、たとえば人事院において予備的な勧告等をして、その基礎をつくっていただけないものであろうかというようなことを考えたわけでございます。
  153. 大原亨

    大原委員 いま六人委員会の一人である藤枝さんのほうから藤枝構想なるものを公表されたわけですが、これはやや具体的な、建設的な提案だと思うのです。六人委員会の中には大蔵大臣もお入りになっておるわけですが、総理大臣、いままで議論いたしました人事院勧告と仲裁裁定というものは、法律的には効果は同じである、性格は同じようなものである。しかしながら、一方が完全実施され、一方が十二回も不完全実施をされて、実施が延ばされるというようなことについてはまことに遺徳である。差別の問題でもあるし、あるいは罷業権や交渉権を復活すべしという憲法上の議論にも当然なる。そこで私は、人事院勧告の完全実施という問題について、この際、総理大臣としての見解を明らかにしてもらいたい。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君も御承知のように、いままで政府も、人事院勧告を尊重するというたてまえでいろいろくふうしてまいりました。しかし、どうしても時期の面で勧告どおりにこれを実施することができない。たいへん残念に思っておりますが、過去の経過等が、これは人事院勧告を無視したというものではない。政府の誠意のあるところは十分認めていただきたいと思いますが、いまの予算途中において非常に多額のものが出てくる、そういう意味で、さかのぼってこれを実施するというところになかなか問題がある、かように思っております。そこで、いろいろ政府関係者の意見を調整し、そうして実施の方向で努力すべきだろうということで、いろいろ研究している。その中の一つがいまの藤枝君の考え方のようだ、かように私は理解しておりますが、とにかく、こと問題はまことに重大な問題でございますから、簡単な結論は出てまいりません。しかし、基本的には大原君の御指摘のとおり、人事院勧告、仲裁裁定、そういうものは同じように扱われるべきものだ、この原則的な考え方、私も賛成でございます。
  155. 大原亨

    大原委員 人事院総裁にまとめて質問いたしますが、勧告の時期はいつですか。あるいは実施は五月にさかのばりますか。あるいは内容についてば、昨年よりも民間賃金は上昇いたしておりますが、それを当然上回るというふうに予想いたして間違いありませんか。それから賃金以外に、住宅手当その他の勧告についてはどういうふうにお考えでありますか。いまの段階について、できるだけ具体的に明らかにしてもらいたい。
  156. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 第一点のお尋ねにつきましては、本年も従前どおりの手続でやっております。したがいまして、四月の給与について六千数百の事業所に個別に当たって表を集めまして、その集計を目下進めておる段階でございます。大体、スピードにおいて例年とことしも変わりはないと思いますから、勧告の時期も八月の半ばごろというめどになろうかと考えております。  それから、いまパーセンテージのお話がちょっと出ましたから、それにつけ加えてそのほうを申し上げますが、ただいま申しましたように、私どもは諸般の経済情勢、ことに春期闘争と申しますか、春期における賃上げの状況などももちろん注目はしておりますけれども、私どもの基本の手がかりは、いま申しました六千数百の事業所を個別に、直接われわれの責任において当たって調べましたデータによって民間給与の水準を求めまして、これに対応する公務員の給与の水準と突き合わせた上でその違いを発見する、何%という違いが出ますれば、それを埋めていただく。したがいまして、先ほどのお尋ねにも触れますけれども、私ども、四月の調査の結果でございますから、そこで発見されました格差は、少なくとも五月にはさかのぼって埋めていただかないと筋が通らないという立場でおるわけです。パーセンテージの点につきましては、以上のような事情でございますからして、まだ私どもとしては全然見当はつきません。ただし、新聞などにも伝えられております一般の観測というものがございますが、これらの観測は、あながち非常識だと笑い捨てる、だけのデータもわれわれは持っておらぬというところが率直な実情でございます。  住宅手当は、これは御承知のように、もう長年の問題でありまして、公務員諸君の要望も非常に強い。また、公務員宿舎に入っておる人と入っておらない人というバランスの点から申しましても、私どもはとうてい無関心では過ごせない問題だという気持ちを持ちまして、そういう認識のもとに、従来数年間続けて、ことしもやっておりますが、民間事業における住宅手当の支給状況を調べております。この数字が非常に多くなるということになりますと、われわれとしても考えざるを得ないだろう、こういう立場でおるわけでございます。
  157. 大原亨

    大原委員 総理府総務長官、あなたにも御質問しないと失礼ですから……。  公労協では団体交渉権があるわけです。仲裁裁定の前に調停制度というのがあるわけです。だから、公共企業体と公務員の労働者では、制度上のそういう差があるわけです。調停制度、それから団体交渉権が公共企業体にはあるわけです。しかし、公務員には団体交渉権を保障されていない。人事院勧告と仲裁裁定は同じようにあるわけですが、これも実施されていない。そこで、やっぱり公務興にも団体交渉権というようなものを復活いたしまして、同じような条件の中で公平に扱ってはどうですか、世界の例もそうです。あるいは文部省は承認をいたしましたが、教師の地位――保留をした部分ではない教師の地位の部分にも団体交渉桁の保障があるわけです。世界の各国の例にもあるわけです。そういう面において、公務員のそういう団体交渉権等の基本的な権利について、やはり回復すべきものは回復すべきではないか。こういう点について、人事局をせっかくおつくりになりまして努力されておりますが、総務長官の御見解を明らかにしてもらいたい。
  158. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 三公社五現業の場合、特にことしは調停の段階において当事者能力が云々されながらも問題の解決があり得た、しかるに一方、公務員の場合には不均衡があるではないか、しかも長い間同じようなことが続いているではないか、これは至るところで御批判もいただき、また御注意もいただき、おしかりもいただいておるわけでございます。したがって、今日まで六人委員会を中心として、この人事院勧告は、そのあり方から尊重すべきことは当然でありまするが、ことしはひとつ従来と変わったものということを考えて、いろいろと検討いたしました。しかし、四月の調査という時期までに、いろいろな案はありましたけれども、結論を得るに至らず、今年も四月調査、そして、いま人事院総裁のお答えになりましたように、八月勧告ということになったわけであります。そこで、人事院勧告を尊重するたてまえから、私は給与を担当いたす者としては、従来の御批判というものを十分頭に入れて、マンネリを脱却して、一歩でも二歩でも前進する体制をとりたいという気持ちで、六人委員会を中心としていま鋭意対策を練っておるわけであります。これも八月に勧告が出ましたあとの問題になりまするが、私は誠心誠意この問題の解決に取り組む考えでございます。  なお、団体交渉権の問題でありまするが、やはり人事院というものがありまする以上、勧告を無視しているではないかという御批判はありましても、公共に奉仕する公務員の立場から、団体交渉権の問題については、私は大原委員とは考えを異にするものであります。
  159. 大原亨

    大原委員 総務長官、おかしなことを言われますね。最後がいけない。つまり、私が言ったのは、人事院勧告も完全実施しないでおいて、ものすごい差別待遇をしておきながら、一方においては権利の面においても差別待避があるではないか。だから、その点をそろえていって、人事院勧告を完全実施するようにすれば、これは公平な政治ではないかということを私は言っておるわけだ。あなたは、人事院勧告は実施しておらぬのは遺憾であります、団体交渉権については与える意思はありませんと、こういうことであります。これでは話にならぬわけであります。だから、言うのは、人事院励告は、あなたはからだを張ってでも完全実施すべきである。それで初めて人事院制度というものがあるのじゃないですか。そうでなければ、話が合わないですよ。
  160. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 どうも舌足らずと申しますか、ことばが足りなかったようでありまするが、人事院勧告というものを、そのあり方から十分に尊重しなければならないという強い考えを私は持っておりまするので、この実施のためにできるだけの努力をいたす、したがって、団体交渉権云々というような問題はやらないでも、人事院勧告を尊重するところに問題の解決をはかりたい、こういうことでございますから、どうぞ誤解のないように願います。
  161. 大原亨

    大原委員 人事院勧告の完全実施について、総理大臣の御見解をひとつ明らかにしてもらいたい。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、時期の問題として、これはなかなかむずかしい。いままでの実績はもちろん尊重いたしてまいりますが、しかし、これからさらに改善をするということ、努力はしますが、なかなかむずかしいことのように思っております。
  163. 大原亨

    大原委員 まだ最後に一つ問題が残っておりますから、総理大臣も中座されておりましたので、ここでひとつ、医療問題について締めくくって質問いたします。  私は、今日、保険料の大幅引き上げの問題、それから医療費の一部患者負担の問題、この問題を中心にして臨時特例で出ておるのですが、たとえば薬の問題一つとりましても、私は薬価基準その他、政府の責任に嘱する問題が多いということを議論いたしてまいりました。あるいは一日一剤十五円という、そういうことをやるだけで、今日、矛盾は拡大するだけだということについても私は指摘をいたしてまいりました。で、私は総理大臣のイテシアチブ、指導性あるいは責任という問題についてお聞きしたいのですが、総理大臣が社会開発をスローガンに出されましてから、たとえば厚生大臣とか経済企画庁長官は伴食大臣であってはならぬ、こういうことを言われたこともあると思うのであります。しかしながら、神田厚生大臣、鈴木厚生大臣、坊厚生大臣、一年ごとにどんどんかわってまいりまして、ようやく中身がわかったころには更迭ということであります。そういたしますと、医療保障だけでなしに、そういうたびごとに初めから総合的に研究しなければならぬ。そして医療保険の問題で毎年毎年こういう同じこと繰り返しておる。暫定対策ではなくて、抜本対策に関係がある。たとえば薬価基準について、実勢価格と合致させれば相当予算が浮くんだ。しかしながら、医者の技術や薬剤師の技術を尊重するという総合対策や医療制度の問題全体の改革をやらなければ、これは実現できぬ。そういうことについて、できないような状況に総理大臣は組閣その他の方針を通じて持っていったのではないか、こういう点について、私は総理大臣の政治責任はきわめて大きいと思うのです。これが第一点。  それから抜本対策については、いままでの国会の議事録をひもといてみますと、昭和四十年十二月二十四日の予算委員会におきましても、私の質問に対しまして出時の鈴木厚生大臣はずっと問題点をあげられまして、そして「昭和四十二年度予算編成にはそういう抜本的な対策の上に立った制度の改善を実現いたしたい、このように考えております。」というふうに言われたのです。それを受けて当時の福田大蔵大臣、いまの幹事長、これは「いま厚生大臣が申されたように、来年一年かけて、ほんとうに根本的にどうするのだということをきめて、そして、四十二年度からは明るい展望を持って保険制度というものが全面的に動き出す、こういうことにいたしたい、かように考えるわけであります。」と大蔵大臣も言われたのです。それを、当面の情勢を糊塗する赤字対策、臨時対策だけを積み上げてきて、矛盾が拡大するというふうなことをやっている。この赤字の問題は、私がいままで長い間時間をかけて議論をいたしまして明らかなように、政府、厚生省当局の責任である。それを患者や被保険者に転嫁するということはいけない。政治の不信であり、あるいは国民不在の政治であるといってもこれは過言ではない。歴代厚生大臣、あるいは医療費の問題の取り組み方において総理大臣が欠くるところがあるのではないか。国民の命と健康にかかわる問題が非常に大きなピンチにきている。そのことが日本の社会保障制度全体を混迷と停滞におとしいれておる。そして圧力や利権のあるところに政治の恩恵が及ぶというふうなことは、これは私は許しがたいことではないかと思う。政治資金規正法もいまやまさに流れんとしている。私は、いまの厚生大臣、坊さんについてとやかく言うのではない、鈴木厚生大臣について言うのではない、神田厚生大臣について言うのではない。ないけれども、次から次へ大臣をとっかえて、そして習熟したかと思えばすぐかわっていくというようなことでは、これはだれが責任を持つのか。厚生省の良心的な官僚諸君も非常にこれは疑惑を持ち、勇気が出ない、学者も協力しない、そのことを私は指摘いたしました。これは私はまさに総理大臣の政治責任であると思う。  もう一つは、抜本改正について、歴代の厚生大臣あるいは大蔵大臣が、昭和四十二年にやると、こういうことを言ってきた。総理大臣もそれを裏づけてきた。議事録にあるけれども、内閣の責任としてやっていきたいということを言ってきた。何らできないばかりでなしに、期間も示されないような臨時特例を設けてここにやるというようなことは、患者の負担と国民の負担でやるというようなことになるので、これはいけない。このようなことをやって混迷を倍加するよりも、こういう法案はすべからく撤回をして、一日も早く国民の声を聞いて抜本対策をやるべきである。そのために五百二十億円の赤字、これは七百四十五億円で、二百二十五億円は政府はもう予算に計上しているのですから、五百二十億円の赤字というふうなものは、これは大局的に見て、単なる赤字の問題として、赤字対策として処理するのでなしに、そういう政治的な見解から処理すべきである。けさから北山委員も指摘したとおりである。  この二点について、私は総理大臣の責任はきわめて重大であると思うので、この際、この予算委員会を通じて国民に所信を明らかにしてもらいたい。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの社会保障制度、ことに医療制度について抜本的な改正をすると、こういうことをしばしば申し上げております。また政府自身は、その抜本的改正をすることにおいて、今日その考え方に空わりはございません。しかし抜本的改正、口では簡単な字句でおさまりますが、なかなか複雑広範にわたるものでございますから、そう簡単に短い期間に抜本的な改革のかかなかできない。そこで、今回御審議をいただいておりますのは、暫定的な臨時的な処置、対応策を一応考えて、その案をお願いしておるのでございます。この抜本的対策は、そのうちどうしてもやらなければならない状態にございます。現状をそのままにしておいて、そして抜本的対策を早くやればいいじゃないか、かように言われますが、この抜本対策、たいへん広範にわたるものでございますから、この時期を失すればいまの赤字はますますふえてくる、抜本対策を実施する上にも困難を来たすこと、これは火を見るよりも明らかでございます。私は、今日臨時の暫定対策をやるという、そのことと抜本対策と取り組むこと、これは二つながら矛盾するものではなくて、むしろこれは望ましい形にいくのじゃないか、かように思います。で、特に社会党の皆さんにもそういう意味でお願いをしておるのでありまして、その内容等について、保険料率やあるいは負担の状況なりというようなものについていろいろな御意見もおありだと思いますが、政府も何も原案に固執するわけじゃございません。ございませんが、とにかく今日、この赤字に対する対策を手がけないと、将来抜本的対策を講ずるにしても、この電荷というものはたいへん支障を来たすだろう、かように私どもは心配しておるのでございます。どうかそういう意味で、今回の改正案についてもお取り組みをいただきたいと思います。  第二の問題で、どうも大事な際に厚生大臣を次次にかえるじゃないか、これでは政治がうまくできない、これはあたりまえだ、かような御指摘でございます。私は今日の議会政治、そのもとにおける政党政治のあり方、これは重点をそこに置くべきじゃないか、かように思っております。ただいまのような基本的な社会保障制度あるいは医療保険制度、こういうような問題については、もちろん党の政策というものが十分これに関与するのでございますし、見方によりましてはそれが根幹をなす、かように申してもいいのだと思います。個人的な大臣の影響よりも、そのほうが重大な意義を持つのだ、かように私は思っております。短い期間に大臣がかわることでうまくいっている、かようには私も思いません。思いませんが、いま大事な点は、人よりも党にあるのじゃないだろうか、ことにこういうような重大な政策、そういう場合に、政党のはっきりした政策遂行、その態度がものごとをきめていく、かように私は思っておりまするので、ただいまの人がどんどんかわるということ、これは必ずしも望ましい杉だとは私も思いませんが、しかし、それによりましてその政策がどんどん変わる、かような表現はややオーバーな表現ではないだろうか、かように私は思います。
  165. 大原亨

    大原委員 最後ですが、総理大臣、せっかくですけれども、抜本対策については四十二年からやると言っていた。それに手をつけてどんどんやれば軌道に乗るのですよ。臨時対策、臨時対策で毎年大きなことをやっておいて、そうして、また来年抜本対策にかかろうとしても、そんな政治力は厚生省にはありませんよ。それは次のことができないということなのですよ。そのために、医療問題に手をかけて所得保障、年金の問題、その他児童手当の問題等もあと回しになってしまうのですよ。厚生省全体の、社会保障全体の行政が停滞するのですよ。私はそういうことを申し上げておる。大臣がかわったならば、それはいけませんよ、停滞しますよ。全部を知るまでにはたいへんですよ。坊さんは財政通かもしらぬけれども、社会保障については、最初のころからよく知っているけれども、やっぱりしろうとですよ。勉強しなければならない。適確なイニシアチブ、責任をとる者はないでしょう。内閣においては総理大臣、佐藤さん、あなたが責任をとられない、厚生大臣も責任をとられないということになって、何が進みますか。これは私はことばが過ぎておるかと思うのですが、事実であると私は思う。  最後に、私は、わがほうの同僚委員からも質問がございますが、公安条例の問題です。公安条例の問題で質問が残っておりますが、これはたび重ねて地裁の決定に異議申し立てをされるというようなことは、憲法の上からも、三権分立の上からも、政治、法律に対する信頼の上からも大きな問題であると思う。この点につきまして猪俣委員のほうからそれぞれ関連質問をいただく、こういうことにいたしまして、私の質問はこれで終わります。
  166. 植木庚子郎

  167. 猪俣浩三

    猪俣委員 時間がありませんから、簡単に御質問いたします。  この公安条例、普通、事務条例と申しております自治体の条例を立法化するという意見もあるわけでありますが、これに対しまする佐藤総理の御意見を承りたいと思います。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、私ども、条例を立法化するという、そういうような考え方をしておりません。
  169. 猪俣浩三

    猪俣委員 この間、新聞の報ずるところによれば、政府と自民党では、当分立法化はしない、こういうのでありますが、あなたの御答弁は、立法化は考えておらないということになると、当分じゃなくて、これは、あなたが総理の地位にある間は立法化は考えない、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまのところ考えておらないと申し上げました。
  171. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいまのところというのを、もう少し限定的に御答弁願いたいのです。これは私どもが大きな関心を持っておるところです。あなたが総理の地位にある間という意味ですか、あるいは来国会には提出しないという意味でありますか、ただいまのところというのはどういう意味ですか。もう少し具体的に限定していただきたい。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのところはただいまですが、この国会でいまどうこうということはございません。また、次の国会では、一体それではどうか、こういうお話でありますが、いま私ども考えていないその状態が、次の事態にどんなに度化するか、これはやや無理じゃないだろうか、かように思います。未来永却、私の考え方が変わらない、これを申し上げておるのじゃございません。ただいまさような点を考えておらない、こういうことであります。
  173. 猪俣浩三

    猪俣委員 どうもわかったような、わからぬような御答弁で、われわれ頭が悪くてさっぱりわからぬ。  ところが、この前、六月十三日、ちょうどいまから一カ月前です。私が本会議で、事務条例の、あなたの行政事件訴訟法二十七条に基づく異議申し立てに対して質問をいたしましたが、ちょうど一カ月目、またきょうも十三日。そのときのあなたの御答弁によると、国会というのは、会議があるときだけじゃないのだ。ちょうどあのときは土曜日であって、会議は何もなかった。そこを質問しましたら、国会は会議だけではないのだ、議員の出入りがあるような場合も、結局これは、公共の福祉に関係があるというふうに受け取れる御答弁があったわけであります。そうすると、これは、新聞なんかがよくいう国会聖域論の議論だと思うのでありますが、国会が、常任委員会も本会議も、その他一切の会議がない場合にも、国会議員が多少出入りする場合には、全部これが公共の福祉に関係ありとして、あなたは行政事件訴訟法二十七条を適用なさる意思なのであるか、その点をはっきりさしていただきたい。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いわゆる国会聖域、そういうような考え方は必ずしも持っておりません。しかし、土曜日で本会議がないじゃないか、そういうときは許すべきじゃないか、こういうようなお話がございますが、私は、やはり国会開会中、そういう場合には、これは特別な考慮が払われてしかるべきじゃないか、かように考えております。これもいろんな委員会もおありでしょうし、また、要務を帯びての議員諸公の出入りもありますし、また、この近くにはちゃんと会館があるのでございますし、そういうところでいろいろ皆さん方も御勉強していらっしやる。そういう際に、これはちょっといかがと思います。
  175. 植木庚子郎

    植木委員長 猪俣君に申し上げ出す。  この一問で御終了を願います。おまとめを願います。
  176. 猪俣浩三

    猪俣委員 国会開会中ならば、審議かあろうがなかろうが、とにかく公共の福祉に関係あり、こういう断定でございますね。私は、もう二、三分ありますから……。
  177. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆるデモといいますか、請願陳情、そういうようなことはいま許しておりますね。したがいまして、こういうところが示威連動の場になることは望ましいことじゃない、かように私は考えております。
  178. 猪俣浩三

    猪俣委員 ただいま大原君の質問に対して、あなたは、大臣がかわったって政党というものが小心であると言った。これはある程度正しいと思うのです。そうすると、その場合には、はなはだあなたは都合がいいが、今度の場合にははなはだ私はおかしく感ずる。いま、ちょうどここに委員長をやっていらっしゃる植木さんが法務大臣の時分だ。植木さんは実直な方で、はったりなんかやれる人じゃない。この方が、三十七年の法務委員会において再三再四答弁なさっておる。これは絶対に抜かないことが本則で、伝家の宝刀だ、そして、こういう司法権の優位を侵害するような規定は悪法であると、ちゃんと言っている。だから抜かぬのだ、そして、これをたびたび抜くようなことがあったら、それこそあなたの指摘しているとおり――あなたというのは猛俣のことを、言うのだ。指摘しておるとおり、これは司法権を行政権が侵害することになる、たびたび抜くようなことがあったらたいへんなことだ、だから、さようなことは絶対いたしません、こういうことを終始繰り返しておる。ところが、あなたのいまの答弁を聞くと、この実直なる植木法務大臣の答えたことと全く違っている。法律を通すときは低姿勢で、あれもいたしません、これもいたしませんといって答弁し、法律ができてしまうと、全くそれと違ったことをやっていらっしゃる。これは、あなたの論拠から言えば、大臣がかわっても、この植木法務大臣のやったり言ったりしたことを法の解釈の原則にしなければならぬと思う。そうでなければ、国会審議も何の急味もないことになる。それは違いやしませんか。だから私は、当時の審議の速記録をお読みになりましたかとお尋ねした。どういうふうにしてこの法律ができたのか、経過を知っておられますかと、この前本会議質問した。その後これをお読みになりましたか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は読んでおりませんけれども、要点は一応伺ったつもりでございます。
  180. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、植木法務大臣の答弁した趣旨と、あなたの答弁は非常に違っていないですか、それでいいですか。大臣がかわったって、やはり自民党内閣であることには変わりないのだ。政党が責任を負うならば、その法の解釈について、元大臣の答弁とまるっきり違ったように解釈するということは間違いでありませんか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 犯俣君のお話ですが、まるっきり違っておると、かようには私は思いません。
  182. 植木庚子郎

    植木委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は、本会議終了後直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後二時三十分休憩    午後三時三十二分開議
  183. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高田富之君。
  184. 高田富之

    ○高田委員 今朝、北山委員質問に先立ちまして一言申し述べましたとおり、去る九日の朝から午後にかけまして、九州西北部から中国、近畿地方、長野方面等にわたりまして、非常に広範囲な地方を襲いました豪雨は、多数の死者や行くえ不明者を出し、その他非常にばく大な被害を及ぼしておるわけでございます。  私は、この機会に要点だけについて、災害対策について質疑を申し上げたいと思うのでありますが、この際、なくなられました犠牲者並びに家族の皆さんに、心から弔意を表したいと思います。なお、罹災者の方々に対しましても、御同情の意を表する次第であります。  大体のことは、今日までに、政府におかれましても実情を把握されておると思いますので、とりあえず、現段階において把握されております人的、物的被害の全貌について、詳細でなくてけっこうでありますから、要点を御報告願い、あわせて総理から、今回のような大災害、しばしばこういうふうな類似の災害を繰り返しておるわけでありますし、特に、二度と再びこういうことがあってはならぬと思いますし、当面、罹災地におきましては、たいへんな不安におののいておるわけでありますので、政府を代表して、今次災害に対処する基本方針、態度というものを御宣明願いたいと思うわけであります。
  185. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 今次災害の状況について説明せよということでありまするから、簡単に御説明申し上げたいと思います。  今回の豪雨によりまして、不幸にもおなくなりになられました方々に対しては、つつしんで哀悼の意を表するとともに、罹災された多くの方々には、政府としてできる限りのことをいたし、一日も早く立ち直っていただけるよう努力いたす考えでございます。  まず、被害状況と、それに対する政府の対策について御説明いたします。  梅雨前線が日本の南岸沿いに停滞していたところへ、台風七号くずれの熱帯低気圧の接近に伴い、しめった気流が侵入し、七月八日早朝から、北九州、瀬戸内地方にかけて大雨が降り、この低気圧が東北東に進むにつれて、強い雨域も近畿、中部地方に移動し、西日本各地に大雨をもたらしたのであります。  七日九時から、九日十五時までの総降雨量は、佐世保市で三百五十四ミリ、福江市で三百五ミリ、なお、九日には三時間の間に、佐世保市で百五十九ミリ、呉市で百三十三ミリ、神戸市で百四十六ミリという記録的な降雨となり、長崎県、佐賀県、広島県、兵庫県等を中心に、西日本各地に大きな被害をもたらしました。  今回の災害の特色は、記録的な雨が短時間に降ったこと、及び都市周辺部において特に人的被害が大きかったことであります。  政府といたしましては、急遽九日に、災害対策基本法に基づき、私を本部長とする昭和四十二年七月豪雨非常災害対策本部を設置し、強力な応急対策を推進しております。  非常災害対策本部は、直ちに本部会談を開き、政府調査団を現地に派遣することを決定し、十一日、上村副本部長を団長とする兵庫班、渋谷副本部長を団長とする広島班、久保農林政務次官を団長とする長崎・佐賀班の三班を編成し、被害の状況を調査いたしてまいりましたが、それらの特色を総合すると、次のとおりであります。  兵庫県では、山くずれ、がけくずれによる住宅被害と、これに伴う人的被害が大きかったことであり、広島県では、山腹崩壊と、渓流での鉄砲水による住宅被害と、これに伴う人的被害が大きく、また都市(呉市)周辺の小河川のはんらんによる浸水被害が大きかったことであります。佐賀県、長崎県でも、やはり山腹崩壊と渓流での鉄砲水による住宅被害と、これに伴う人的被害及び冠水による農地の被害が大きかったことであります。  いままでに判明いたしました被害の概況について御説明申し上げまするが、まず、一般被害といたしましては、死者、行くえ不明が、広島県下での百五十九名を含めまして三百七十二名、負傷者四百六十二名、建物全半壊、流失一千八百四十四棟、床上、床下浸水二十七万棟、罹災者二千四万人の多くを数えております。  次に、施設関係等の被害といたしましては、県からの報告によりますと、公共土木施設二百七十六億、農地等百三十一億、中小企業関係八十三億等、総計六百十四億にのぼっております。  次に、政府のとりました措置を申し上げますると、警備、救助活動について申し上げますならば、警察庁及び管区警察局では、警備活動を強化するとともに、各府県警察では広報の実施、非難の勧告、警備を実施いたしております。  消防機関の職・団員も、二十四府県で避難の指示、誘導、人命の救出、救助及び行くえ不明者の捜索をはじめ、水防活動等を実施しております。  防衛庁では、自衛隊員延べ九千四百四十名を派遣いたしたほか、車両、航空機、艦艇等を派遣して、道路啓開、給水、通信支援、遺体収容を実施いたしております。  海上保安庁でも、巡視艇、航空機により、海中での遺体捜索のほか、緊急物資等の輸送を行なっております。  災害救助法の適用については、広島県ほか七府県の五十六市町村に発動し、避難所の設置、たき出し、飲料水の供給、被服寝具等の給与、医療、救出等を実施いたしております。  防疫対策について申し上げますと、都市部の被害が大きかったことにかんがみ、特に防疫対策について重視し、被災者の検病調査を行ない、伝染病の早期発見、流行の防止につとめており、避難所の衛生管理を強化しておりますが、幸いにも現在までには、赤痢その他の伝染病は、発生いたしておりません。  住宅対策について申し上げますが、応急仮設住宅の設置、住宅の応急修理については、すみやかに実施すべく手配中であります。  災害を受けた住宅に対しては、災害復興のための住宅資金の貸し付けを行なうほか、災害公営住宅の建設及び既設公営住宅の復旧についても、所要の措置を講ずることといたしております。  文教対策としては、罹災児童、生徒の学習に支障を生じないよう、教科書の調査、補給を行ない、また、就学援助費補助金を、市町村の申請に基づき交付するほか、授業料等の減免措置を講ずることといたしております。  交通関係について申し上げますと、主要道路については、一車線以上の交通を確保いたしております。  国鉄については、主要幹線は全線復旧し、運行いたしており、現在の不通個所は筑肥線ほか七線区、四十六区間であります。  中小企業対策としては、政府中小企業金融三機関に対し、元利金の支払い猶予、貸し付け期間の延長等の措置を講ずるほか、据え置き期間の設定、担保条件の緩和等の措置を講じております。  また、中小企業信用保険公庫からの融資、臨時金融相談所の設置などを行なっております。  公共土木施設等の復旧について申し上げますと、河川等公共土木施設については、緊急に復旧を必要とする個所は、急遽、復旧作業を実施いたしております。  農地、農業用施設についても、緊急に復旧を必要とする個所については、応急工事、査定前着工を行なうよう指導いたしております。  被災者援護対策については、被災者に対して郵便はがき等の無償交付、為替貯金の非常取り扱い、保険、年金の非常取り扱いを実施いたしております。  また、労災保険料の延納措置、被災事業場に対する薬品の配布を行なっております。  財政金融対策について申し上げますと、資金運用部短期資金による融資については、万全の措置を講じており、金融上の措置についても手続の簡易迅速化、政府関係金融機関の災害融資等の装置を講じております。  また、税制上の措置として、申告納付等の期限の延長、租税の軽減免除、納税の猶予、滞納処分の猶予を行なっております。  次に、普通交付税の繰り上げ交付についても検討いたしております。  以上、政府のとっております措置を簡単に御説明いたしましたか、今回の災害の特色を教訓として、原因等を十分調査した上、将来の対策を講じてまいりたいと考えております。
  186. 高田富之

    ○高田委員 たいへん詳細な御説明をいただいたのですが、質問時間にも制限がありますので、できるだけ要点だけを御説明願って、詳細は関係委員会でまた御発表願うというふうにしていただきたいと思います。  そこで、総理にお伺いしたいのですが、今度のような大きな被害を出したことにつきまして、これは単純な天災だというふうには考えられない面が特に今回は多いと思うのです。これは当時の新聞論調などを見てもそうでありますが、最近におきまする都市の無計画な膨張、過密化のようなものが原因になる、あるいは中小河川に対して、ほとんど言うに足るほどの治水事業が進んでおらぬとか、あるいは傾斜地に対する予防措置が講じられていないとか、そういった面が一斉に指摘されておるわけであります。特に、当日の問題を見ましても、台風が来て梅雨前線とどういうふうになるのでありますか、その関係で、数日後には相当の雨が本土に降るぞというようなことは、予報にもあったわけであります。私ども聞いておるのですよ。そういうふうに、相当前からある程度のことは当然予想されていたにもかかわらず、それに対する事前の措置というものがほとんど講ぜられているような気配がないのであります。これらの点を考えますと、今度の被害を単純に天災だというようなことで片づつけられたのでは、国民はほんとうに泣き切れないと思うのでありまして、やはり政府は、こういう問題については相当の責任を痛感されて、そうして対策についても思い切った対世をどんどんやっていく。必要とあればどしどし立法でも何でもしたらいいのでありまして、どうかひとつ徹底した措置を緊急に、かつ思い切ってやる、こういうことを私は特に強く要望したいのでありますが、総理の御所見を伺いたい。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 災害から国土並びに国民の生命、財産を守るということは、これは政治の基本的な姿勢でございます。そういう意味で、平素から万全の策を立てなければなりません。  ところで、いままであり余る無限の予算ではございません。国力相応な使い方をいたしておりますが、そういう点で、通常予測される災害に対しては、これに対する対策が一応できておる。しかし、今回のような集中豪雨は、予測できないようなものでございますから、そういう点で十分の対策が立てられていなかったということ、ことに、ただいま御指摘になりましたように、過密都市ができた、ことにまた住宅問題が一つのネックだ、あるいは中小河川等の改修が思うようにいっておらない、こういうようなことも重なりまして、計画的な都市計画、あるいは住宅計画等がないところに今回のような災害ができたということだと思います。  また、ただいま指摘されました気象通報にいたしましても、現在の気象観測、これは私は万全だとは申しませんが、しかし、それにいたしましても、もっと周知徹底する方法が緻密に計画されて用意されるべきじゃないだろうか、かように思いますので、これらの点も、今回の経験に顧みましてくふうをこらすつもりでございます。問題は、地方自治体の積極的な協力ということが望ましいのでありますから、そういう意味の点も、さらにくふうするつもりでありますし、ただいま言われますように、何事によらず早期対第を立てなければならないこと、実効のあがるような方法をしなければならない。ただ責められましても、ただいま申し上げますように無限の予算、そういう財力ではないのでありますから、最も重点的に、そういうものが効果をあげるように予算的にも使わなければならぬだろう、かように思います。
  188. 高田富之

    ○高田委員 国力相応というようなことをおっしゃいますけれども、人命尊重の立場を特に強調しておられる佐藤内閣でありますから、今回のように、たくさんの同胞が、そのために死ぬというようなこと、これは何をおいても優先的に考えなければならぬと思うのです。そういう面に対する措置は、私はきわめて不十分だと思うのですよ。これはひとつ真剣にお考え願いたいのです。たとえば、今度のような、――思いがけないとかなんとかおっしゃいますけれども、同じような、ややこれに類似したような豪雨の災害というものは、そうして多くの人命を失った例というものは、過去にたくさんあるわけでございます。昭和二十八年、三十二年、三十六年、三十七年、三十九年とあるわけなんですよ。ですから、これは初めてこういう事件が起こったわけじゃないのです。今回の場合は、特に過密都市の都市対策が論ぜられておるときでもありますが、そういう都市の一種の無計画な膨張のために被害をよけいに多くしているということが、特に目立ちますけれども、そういうことでありますので、そういう点については、先ほど私が強調しました点は、とくとひとつお考えを願いたいと思います。  そこで、時間の関係もありますから、具体的な点を二、三ただしておきたいのでありますが、こういうときに復旧工事を、ただ原形に復旧するというようなことでありますと、同じことをまた繰り返すわけでありますので、できるだけ改良工事、防災の見地からの工事を、同時にあわせて行なっていくというような意味での改良復旧を原則として進めていくというふうに徹底していただきたいのであります。これが第一点であります。  それから宅地の造成につきましては、法律もあるわけではございますが、いままでのところ必ずしも十分ではないのでありまして、今回のようなことにかんがみますと、宅地造成に対する規制措置というものは、相当思い切って強化しなければならぬというふうに考えるのであります。したがいまして、今度の復旧にあたりましても、その点で、住宅の建設等につきましては、もとあったところへまた建てるというようなことでなしに考えなければならぬと思うのであります。それから、今後の宅地造成に対する措置というものについては、思い切った強力な規制を加えて、禁止地区などを指定して、一切そういう危険なところには建てさせないというふうなことを進めていただきたい。  第三点は、傾斜地の問題は相当論議されておるようでありますが、特に今回の中国、四国方面におきましては、ミカン畑などの傾斜地における樹園地、これが最近は非常にたくさんふえておるわけであります。こういうふうなものの開墾にあたりましては、同時にあわせて防災工事をやっていくというくらいのことはどうしてもやらなければならぬと思います。こういうことについて、ひとつ特段の配慮をしてもらいたいのであります。  それから、いまも申しましたように、今度の特徴的な点は、都市災害という点にあるわけなんですが、この都市における災害復旧事業につきましては、在来のようなことでなしに、補助率などもさらにこれを引き上げていく、できれば全額公費でと言いたいところでありますが、少なくとも、公共土木施設と同様程度に三分の二以上の補助をして、そうして都市災害の復旧工事をすみやかにやっていく。  それから、堆積しております土砂などの問題も、当面非常に大きな問題になっておるわけであります。上砂を片づける問題、これについても、いままでは一定限度の制限がございまして、それに該当しない限りはやらない、各個人がやるというようなことになっておるわけでありますが、そういうことでは、とてもこれの復旧はできないと思いますし、大体個人の責任じゃなく、これは都市計画その他のやはり政治的なものが原因でありますので、極力そういう点につきましては制限等は撤廃いたしまして、都市災害の復旧について全力をあげていただきたい。  また、罹災者の住宅復旧などにつきましても、貸し出しのワクだとか、利率であるとか、そういうことについても、そういう意味で特段の配慮をする。個人の責めに帰すべき災害だとは思われませんので、こういう点について国が責任を持ってやっていくということが特に必要だと思います。  要点だけを並べて申し上げますから、並べて御回答願いたいのであります。  それから、都市におきましては、中小企業者の商品でありますとか、民間の人たちの家財道具でありますとか、そういうふうなものにつきましても相当の被害があるわけであります。これらのものにつきましての補償というようなことも、やはりこの際考えなければならぬのではないか。立法措置が必要であれば、立法措置をいたしましてもこれは何とかしなければならぬ。概して、個人災害に対する援護措置というものがほとんどないわけでありまして、今回のようなことにあたりまして、特にわれわれが痛切に感じますことは、たとえば、われわれがかねて主張しておりますような被災者援護法というようなものを制定して、そして家屋を失った、生活にも非常に困っておるというような被災者に対しまして、生活資金の貸し付けをやるとか、あるいはまた、なくなった家庭に対しまして弔慰金を出しますとか、あるいは家屋の流出等に対する見舞い金を出しますとか、あるいは負傷した、あるいは病気になったというようなことに対しましても、医療費について国でめんどうを見るとかいったような、個人の災害による大きな打撃に対しまして、これに対する援護措置というものがないということは、これははなはだしい政治の欠陥だと思うのでありまして、この機会に、ぜひこういう問題を真剣に考えて、ひとつ立法措置を考えていただきたい。当面、これらの罹災者に対する応急措置としての援護手段は十分講じてもらわなければなりませんが、法的にも、きちっとしたものをこの機会にぜひお考え願いたい、こう思うわけでございます。  とりあえず、以上につきまして関係大臣の御回答を願いたい。
  189. 西村英一

    西村国務大臣 ただいまお話がありましたように、今回の災害は、やはりどうしても都市災害として特別な特徴があるようでございまして、やはり御指摘のように、問題は中小河川、それからがけくずれというようなことでございます。  実は、中小河川の問題につきましては、もうかねてからやはり事故があるということで力を入れてまいりました。本年も相当中小河川には着手をいたしております。そのうちで、なかんずく特別に促進しなければならぬというのが、いままで災害を受けておった河川、あるいは都市内の河川――私たちのほうでは都市河川と言っておりますが、都市河川、それから内水の非常にひどい河川というようなものに力を入れてやっておるのであります。改修促進河川三百三十カ所ほどことし手をつけております。その他の一般河川、中小河川にいきますと、九百数十カ所手をつけておりまするが、今回やはり同じようなことを繰り返したのは、まことに遺憾にたえない次第でございます。中小河川につきましては、今後も十分力を入れたいということを考えております。  それから、もう一つ御指摘のありました、宅地造成のためにずいぶん荒されるのだということで、調査官をやりましてそれぞれ調べております。まだ正確なことはわかりませんが、いまわかりました一、二の例をちょっと御参考までに申し上げますると、佐世保市でございます。長崎県でございます。これは宅地造成規制の指定を受けておる県でございまして、その佐世保におきましてがけくずれの崩壊が二十六件ありました。その二十六件のうち、自然にがけがくずれたのが十六件、それから宅地造成のためにこわれたのが十件あります。この十件のうち、この規制法ができまして、適用前の宅地でがけがくずれたのが九件、それから許可をとった後にこわれたのが一件となっております。  その他、兵庫県につきましても、広場についても調べましたが、時間がありませんから省きますが、要するに、今回のがけくずれによる事故がひどかったということは確かでございます。そのうち、自然のがけくずれということもある。あるいは宅地造成のためのがけくずれということもあるのでございます。しかし、この宅地造成につきましては、今後も技術的な基準をもう少しきびしくしたいと思います。それから、現在は二十九府県に適用されておりまするが、その適用府県の問題につきましても、もう少し考えてみたいと思います。もちろん、事故でございまするから、応急対策はいたします。その場合には原形復旧じゃ困るという話でございます。もちろんでございます。改良復旧をやり、関連公共事業もやりたいと思います。恒久対策につきましては、現在の治山治水五カ年計画も、こういうようにやはり事故が起こるということになりますれば、今回の事故を参考にいたしまして、特別治山治水五カ年計画もひとつ再検討してみたい、再検討しなければならぬ、かように考えておるものでございます。  ごく大ざっぱな話でございまするが、十分応急処置には力をいたして、恒久対策についても考えたい、かように思う次第でございます。
  190. 高田富之

    ○高田委員 個人災害の問題は……。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど具体的にお尋ねでございましたから具体的にお答えいたしますが、原形復旧がただいま原則であります。改良復旧を原則にしろということですが、これは、そうは簡単にまいりません。  また、宅地造成について、ただいまの規制を強化しろという、私も、これについてはさらにくふうしたいと思います。傾斜地の問題についても、これは先ほどお答えしたとおりであります。  都市災害、そういう意味で、地方自治体の財政力が弱いからその補助率を引き上げろということでございますが、これはいま、ちょうど現地で調査をいたしておりますから、その結果、さらに私どもが特別な補助率を設けなければならぬかどうか、さらにそういう点を研究するということにいたしたいと思います。都市災害の復旧には、もちろん土砂の片づけ等があることは御指摘のとおりであります。  次に、中小企業に対しまして、ただいまは金融措置で、あるいは税制措置で大体片づくかと思っておりましたが、ただいまお話しになりまるように、商品その他の被害、これは個人の財産災害と同様に、いかに処置をとるかということを考えるというお話でありますが、ただいままでのところ、これらのことは、個人についての特別考慮をしないのがいままでの考え方でございます。したがいまして、ただいまのような特別な御要望、そういうことにつきましては、さらに私どもは検討はいたしてみまするが、なかなかむずかしいことじゃないかと思います。  以上、お答えをしておきます。
  192. 高田富之

    ○高田委員 いまの、改良復旧はできないというようなことでありますが、これはやはり相当現地の強い要望でありますし、また実際問題として、そうでなければならぬと思うのでありまして、ひとつ、もう一歩前進した考え方を持っていただきたいと思います。  個人災害についても同様であります。積極的にひとつ取り組んでいただきたい。  それから、時間がありませんので官房長官に、これもまとめてお伺いしますが、先般わが党から、正式に文書をもちまして、災害対策についての要望を申し上げておるわけでございます。いまだに回答のない部分が多いのでありまして、たいへん遺憾に思っておりますが、今回のこの集中豪雨もありまして、特にこれは緊急に御回答願わなければならないので、この席から、特にその中で重要な問題だけ申し上げますから、はっきり御回答願いたいと思います。  まず第一は、天災融資法の発動に関するものでございます。これは、いままでは大体被害額が三十億が基準なんですが、どうしてもこの基準をもっとゆるめる必要がございます。これを二十億程度に緩和すべきだと思う。この点について、そういう措置をぜ要望したいわけであります。これが第一点であります。  それから同様に、第二点として、特別被害農業者の指定の場合の基準も、これを緩和するということを、ぜひ実行してもらいたいのであります。これが第二点であります。  それから第三点は、貸し付け額の運用につきまして、償還期限に再検討を加えてほしい。貸し付け金利については、一般農業者はいままで六分五厘でありますが、これを三分五厘に引き下げる、それから特別被害者が三分というやつを、特別彼等者につきましては無利子の融資にする、この程度の、ひとつ思い切った天災融資法の軍用についての改善措置を、ぜひ実現してもらいたいのであります。  それから次に、被災地域における農業者の負債でございます。特に最近は、農業改善事業等のために融資を受けまして、制度金融の償還金が相当かさんでおるわけであります。したがって、被災地域におきましては、これらの負債につきまして、償還の延期の措置をぜひともとるべきである、こう考えますので、これにつきましても、はっきりとした御回答を願いたいのであります。  それから、もう一点でございますが、今回は特に激甚災害に対処するための特別の財政援助に関する法律、激甚災害法、これの指定を急いで実施していただきたい。  以上でございますが、官房長官から責任を持って御回答を願いたいと思います。
  193. 木村俊夫

    ○木村国務大臣 一般の災害対策に関する御陳情は、承ったことがございますが、これは災害対策全般にわたる問題でもございますので、政府部内で慎重検討中でございます。なるべく近い将来にお答えいたしたいと思います。  今回の災害につきましては、御承知のとおり、御陳情を受けるまでもなしに、私どものほうでさっそく災害対策本部を設けまして、緊急及び恒久的対策を講じつつございます。  以上、お答えいたします。
  194. 高田富之

    ○高田委員 詳細は、関係委員会において質問をいたすことにいたしまして、以上、とりあえずの要点だけを御質問いたしました。ぜひとも早急に諸般の対策を講じまして、予算措置についても遺憾なきを期してもらいたい。必要あれば早急に補正予算などを組むというようなことで、ひとつ徹底した対策をとっていただくことを強く要望いたします。  そこで、質問の項目を前進させまして、ただいま問題となっております本年度米価の決定をめぐりまして、若干の質問をいたしたいと思います。  米価問題につきまして質問を申し上げるにあたりまして、一言申し上げたいことがあるのでありますが、ただいま、御承知のとおり米価審議会が最終段階を迎えておるわけであります。この米価審議会において、いかような答申がなされるかということにつきましては、全国の農民が非常に深い関心を持ちましてこれを注視いたしておりますことは、申すまでもないことであります。たまたま昨日は、たくさんの農民諸君が、米価審議会の最終日であるということで、その様子を知りたい、あるいは陳情したいというような気持ちから、かなりの数の農民が現地におったわけであります。私が最も遺憾に思いますことは、こういう農民の心情というものについて、あたたかい思いやりのある態度で接するのではなしに、何か乱暴でもしはせぬかというようなことで、初めから会場の中にさくを設けたり、特に昨日のごときは、機動隊を待機させておく、これはもう、農民の心情を刺激するといいますか、非常に間違った措置だと思うのであります。こういうことをやりますから、起こらないでもいい混乱を起こさしておるわけであります。本日も、朝から警官隊をだいぶ門前に配置して、門をかたく閉ざして陳情者を入れないというような態度に出ておられる。国会議員でさえも、車で行きましても門をあけてくれないので、入れない。わが党の書記長までが、何時間もあそこで立ち往生しておるというようなことで、何か小ぜり合いがありまして、一名逮捕されたというようなことでありますが、そういうふうな――農民を一体何とお考えになっておるか。私が非常に残念に思いますことは、農民は、この米価の決定という、生死にかかわるような重大問題を前にいたしまして、もちろん労働者のようなスト権があるわけではありませんし、あるいは人事院勧告のような制度があるわけじゃありませんし、とにかく、米価審議会において公正な答申がなされ、それが尊重されていい結果が出るということを、唯一の頼みにしておる。しかも、農家の実情というものは、私がここでちょうちょう申し上げるまでもないのであります。もうどんどん若い者は農業を去っていく、前途まっ暗であります。いまの出かせぎの状態なんというのは、人道上の問題でさえもあるわけであります。そういう中で、農民に対する態度というものは、全くこれを罪人扱いにするというか、暴徒扱いする。そういうことだから混乱を起こすのであります。昨日、一昨日、大臣も現地において農民の前で簡単なごあいさつをなさる、あるいは農民と質疑応答をなさる、そういう場合には非常に平穏に済んでおったわけであります。またかつては、福田農林大臣のごときは、玄関の前まで一ぱいになった大ぜいの農民の前にみずから出ていって、そうして自分の気持ちを率直に吐露する、それで、結局はあそこに行った農民に胴上げされておるのですよ。これが農民の心理なんです。それを、農民を敵視する、初めから機動隊でも配置しなければというような気持ちでいたのでは、これは混乱が起こるのは私はあたりまえだと思うのであります。どうか、そういう点について根本的に考え方をひとつ改めてもらいたい。二度と再びそういうようなことのないように、私は厳重に政府に対して警告を発しておきます。こういう態度では、これからの農政というものは満足に行なわれる道理は私はないと思うのですよ。  以上を強く私は申し上げて、これから米価の問題につきましての質問を続けたいと思います。総理は、いま私が申し上げたことについてどういう御見解をお持ちになっておるか、一言ひとつ申し述べていただきたい。
  195. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私に関係のありますことでありますから、先にお答えいたしたいと思います。  政府は、農村の人々を、敵視などいたしておりません。米審が始まりましてから、毎日大ぜいの農村の方々が陳情に見えました。当方の役人と、それからその農村の人々の代表とで話し合いをいたしまして、私が会議の休憩時間にはお目にかかって、できるだけお話を承りましょうという話がつきまして、当初、農業団体四団体を代表して、四団体としてお会いくださるということで、数回その会合が行なわれました。私は、米審の合い間合い間にその方々にお目にかかって、るるわれわれの考えを申し上げました。ところが、そのうちにだんだん違った様相の方々が見えまして、それまでお話し合いをいたしておった方々よりだいぶ違うような方で、私が約束の時間がきたものですから、役所のほうに帰ろうといたしましたところが、両手を広げて私の行動を阻害したばかりでなく、私に威圧を加えた。そこで、これは話が違う。大体米審に対して、あるいは農林大臣に対して御要望のある方には、つとめてお目にかかってお話をいたして、あるときには万歳が叫ばれ、私を激励したことも二度、三度あります。私は、そういうるもりでやっておりましたのに、私の行動に手を加えるような、そういう人たちとはお目にかかっても意味がないと考えておりましたやさき、昨日は、ついに一部の人々が、これは私はまじめな農業団体の方であるかどうか、お目にかかっておりませんから存じませんけれども、大挙して裏庭に侵入し、暴行を働き、職員の事務をとっておる机を転覆し、やりましたことは、けさの新聞等にも明らかであります。生命の危険を感ずるようなことであっては、米審の委員の方々が、まじめに審議することは、不可能でありますから、これは退去をしてもらうよりいたし方がない。高田さんは、そのときの様子を御自分の目で見られて、よくご存じのはずであります。そこで今日は、所轄の警察が参りまして、米審というものを一日十分やっていただくために、警察が責任を負うから、警察の計画のとおりに進めさしてもらいたいという要望があった模様であります。したがって、どういうようなことが行なわれておるか、私はまだ目で見ておりませんけれども、経過はそういうことでありまして、私どもは、農村の方々のためにできるだけのことをやりたいと考えてこそおれ、敵視などは決していたしておりませんから、その点は政府考え方を申し上げ、また、あの場所の実績を御報告いたしておきます。
  196. 高田富之

    ○高田委員 ですから、そういうふうに農民が興奮するというとは、先ほど私が申しましたように、いままでなかったことですね。さくを結ったり、それから警官隊を待機させておく、何もないときに待機させておくのですからね、こういうことが刺激するのですよ。それを私は申し上げた。だから、その点を強く私は反省を求めておるわけであります。  米価の問題は、特に本年は、いろいろな方面からいろいろの意見も出されまして、そして米価の問題自体につきまして、非常に農民団体や何かの圧力で、その上に議員が踊ってどうこうというふうな扱いをされる動きが多いのであります。しかし、私考えますのに、米価問題は、米価問題だけ切り離して実は考えられない。米価問題が、特に今日こういうふうな農民の運動としましてはほとんど典型的な唯一のものにいまなっておるのですが、こういうふうになりました背景には、やはり私は、ずっと積み重ねられてまいっておりますいまの農政というものが、その根本的な点において相当是正されなければならないものを含んでいる、そういうことを抜きにいたしまして米価問題は論じられないと思うのであります。私は、あと米価の具体的な問題についても質問あるわけでございますが、このいまの、特にわれわれが米価問題を重視し、農民が重視しておる背景をなしております基本的な問題についての政府考え方というものを、この機会にどうしてもはっきりさせておきたいと思うのであります。  その第一点は、一体政府は、わが国における食糧の自給度ということをどのように考えているのだろうか、ただいまの傾向としまして、わが国の食糧自給率、自給度というものは、過去数年間どのように変化してきておるか、このままに推移すれば、どのようになっていくか、まず第一に、その点につきまして農林大臣から数字的に一応御説明を願っておきたいと思うのです。
  197. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 数字のことはあとで救済委員から申し上げますが、私どもは、いわゆる食糧の自給度は、政府の発表いたしております計画書等にも示しておりますように、ただいまは御承知のように米においては大体八二%、しかし、この自給度はどうしても落としたくない、補完的には、外米の輸入をもって全体の国民の食糧を充足することではありますけれども、みずから生産する自給度は、現状を落としたくない、そのために諸般の施策をしなければならない、こういう角度で農政をいたしておるわけであります。
  198. 高田富之

    ○高田委員 その数字をひとつあげてください、過去数年……。
  199. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答えを申し上げます。  食糧農産物の総合自給率は、当年価格で算出いたしたものでお答え申し上げますと、三十年度が八四%、三十五年が八七%、三十八年が八二%、三十九年八一%、四十年八二%という経過でございます。
  200. 高田富之

    ○高田委員 いまのは価格で示されたのだと思うのでありますが、これで三十九年と四十年のところが、ちょっと傾向的には違っておりますけれども、三十年が八四%でしょう。ですから、傾向的にはずっと低下している。特に自給の問題は、金額でいくことも一つでありますし、量でいくということを考えることも必婆でございます。まあ、大体総合的な食糧、米だけでなく、総合約な食糧の自給度としましては、特に食生活の内容等も変わってまいります。畜産物や何かの消費がどんどんふえていくというような関係から、飼料の輸入が非常な勢いで増大してまいっておりますので、そういった需要面のこれからの趨勢を考えますと、いまの生産の伸び方というもと比較して考えました場合に、いまの数字から出ておりますよりも、もっと、はっきりとした自給度の低下傾向ということが明白に言えるのではないかと思いますが、この点についていかがですか。
  201. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 高田さん御指摘のように、全体の農作物、大体御存じのような傾向でありますが、いわゆる選択的拡大と称して特に力を入れております畜産関係につきましては御承知のとおり。そこで、濃厚飼料の輸入量というものは、いまのままでありますと、逐年増加いたしてまいります。しかし、それによる食肉の需要はさらに増加してまいる。そこで、私どもといたしましては、第一には、国内産の租飼料を増産することにまずつとめなければなりませんし、もう一つは、草地の造成等をいたしまして、飼料の自給度をできるだけ高めていくということの努力をいたさなければならない、そういう方面で進めてまいりたいと思っております。
  202. 高田富之

    ○高田委員 いまの傾向でいきますれば、どうしても食糧の自給率というものは低下せざるを得ないし、今日までも、過去の実績から見ても、低下してきたということは争えないと思うのです。そこで、いま大臣の言うように、これからできるだけ自給率を落とさないようにしていくという方針でいくとするならば、これは農業農産をになっていくにない手としての、政府でいままで考えておったものでいえば、いわゆる自立経営、われわれはその自立経営については可能性はない、むずかしいということは前から指摘してきておるんですが、いずれにしましても、農業生産を担当していける農業の経営主体というもの、健全なしっかりとした経営主体というものが育成されていかなければこれはできっこないんであって、いま現在、はたしてそういう傾向にあるのかどうか。農業生産を担当し、生産をあげていく、需要の増大に見合ってあげていくという、農業生産のにない手たるにふさわしい経営主体というものを育てていくという方向に、いま一体あるのかどうか。それは逆の方向に進んでいるんじゃないか。政府の言っておる自立経営で言ってもけっこうであります。自立経営というものは、将来の農業の基幹的なにない手であるということでやったはずでありますが、その自立経営というものが、はたして今日まで、過去数年の間にふえてきたのか減ってきたのか。この点はひとつはっきりさしていただきたいと思うのです。
  203. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農業基本法はお互いにつくりました法律でありますが、あの方向というものは、わが国の農政の指針であると私どもは確信をいたしております。しかし、その方向に進むにいたしましても、いろいろなファクターで、その計画どおりに進んでおりませんことは、私どもも率直に認めます。それには、もうすでにあなたもよく御存じのように、なかなか規模拡大をいたそうといたしましても、あるいは土地価格が異常な増高をいたしました結果、土地というものを農作地帯として考えるよりも、財産価値と考えるような傾向が農村にも出てまいっておる等、いろいろ支障はあります。しかしながら、政府も、四十二年度予算のときにも御説明申し上げましたように、やはり生産性をあげて、そして能率をあげ、コストダウンをして国際競争力に対抗し得るような農業を育て上げるためには、やはり基本法の申しておりますように、経営規模を拡大いたしてまいるということが、まず何よりも大事だ。そのためには、その土台になる土地基盤の醸成、長期土地改良等が必要でございますので、それぞれ予算を計上いたし、継続してその事業に邁進するわけでありますが、それにもかかわらず、御承知のように、最近の他産業の発展の結果は、やはり労働力が流出して思うようにならない。しかし、それを放置しようというんではなくて、やはりこれを近代化し、機械化することによって、この労働力の減ってまいるのを埋め合わせる。いろいろ困難はありますけれども、私は、主食の米について先行きを見てみますと、今日の段階から見て、今日程度の自給度を維持してまいることは困難ではない、そういうように考えております。
  204. 高田富之

    ○高田委員 いま思うようには自立経営はいっておらぬというようなお話でありますが、現在は、雑業農家が八一・四%、年々激増いたしております。つまり、農家全体の兼業化傾向というものが猛列な勢いで進んでおります。これはもう申し上げるまでもないのであります。自立経営のほうも、たとえば二ヘクタール以上の農家は、昭和三十五年に三十八万九千であった。それが逆に三十八万七千に減っておる。また、農家所得の中では、農業所得が三十五年に五五%であったのが、四十年には四四%と激減しておる、こういうようなことであります。また、労働力もどんどん若い労働力が流出して、ほとんど老齢化し、女性化してきておるというような形でありますから、これはいままでの実績が示しておりますとおり、方向としましては、いま食糧自給度を維持していくというふうに申しますけれども、農業のにない手たるべき、基幹になるべき経営体というものは、細っていく一方なんです。全体が、つまりくずれていっている、こういう傾向にあるのでありますが、これをお認めになると思うのです。いまお認めになったと思うのでありますが、一体こうなったことの根本的な原因はどこにあるのです。何が一体根本的な原因なんでしょうか、農林大臣。
  205. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いろいろありますけれども、農業の低生産性というのが大きな力であると思って――力と申しますか、原因であると思っております。
  206. 高田富之

    ○高田委員 ですから、いままでのやり方の農政では、生産性があがらないのですね。あがっても、他産業の生産性のあがるのに比べて、非常にあがり方が低いわけです。これはますます開いていくわけですよ。あなたのいまおっしゃるとおりなんです。こういうふうでありますから、結局、それはどういうことになってあらわれるかといえば、生産性のあがり方の格差が開きますから、農民の立場からすれば、所得が他産業と比較して格差が開くという結果になるわけです。三十年から三十九年までの十年間を見ますと、名目で農業所得は一・五二倍になっている。第二次産業では、四・〇一倍になっておる。第三次産業で三・二九倍になっておるのですね。ですから、結局、一人当たりの農業所得というものは、農業の所得だけをとってみますというと、非農業所持のおおよそ三分の一なんですね。こういう他産業との所得の極端な格差、この極端な格差が存続し、続いていきます限り、これはどうしたって兼業化せざるを得ぬ。若い者はよそへ出ていかざるを得ない。自立経営に残る者は、どんどん減っていかざるを得ないのです。これが自給度がどんどん落ちていくという原因にもなってまいります。この所得の格差ということ、これが存続することをどこかでとめなければならないのです。生産性をあげる施策が五年計画、十年計画、十五年計画でやられていく間にもこの格差が続いていったら、これはたいへんなことになるのでありますから、格差は極力これを何らかの手段によって埋め合わせながら、一方に生産性の向上をはからなければならぬでしょう、どうですか。だから、端的に言って、一番欠けているのは、いまの段階では価格保障政策が欠けているのですよ。農基法の最大欠陥はここなんですよ。いかがですか、農林大臣。
  207. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、価格政策はもちろん大事な問題でありますが、それだけではないと思います。御存じのように、よその国でも、たとえばイギリスなんか見ましても、全従業者の四%そこそこしか農業人口がないのに、生産は減っておりません。統計の示しているとおりであります。高田さんもよく御存じのように、政府の発表いたしておる統計を読んでみますと、土地生産性というものは、諸外国の農業に比べて落ちてないのであります。労働生産性ががた落ちであります。なぜこういう現象があるかといえば、日本の農業というものが近代化されておらないということで、労働のエフィシェンシーが悪いということであります。ですから、政府が申しておりますように、やはり規模を拡大し、構造政策を推進すること等によって近代化をして労働の生産性を引き上げていく、これが一つ。もう一つ、そういう長期的な政策と並んで、価格政策が大事であることはもちろん申すまでもありませんが、私は、農業を守っていただく若人たち、あと継ぎの人たちの話を聞いても、両方が大事だということは考えております。しかし、政策面について非常にウエートを置いてわれわれが努力しなければならないのが、農政ではないか、こう思っております。
  208. 高田富之

    ○高田委員 必ずそういうふうに、両方必要なんだという答弁をなさるのです。また、一般の評論家なども、主としてそういう議論が多いわけでありますが、いままでの実績が証明するとおり、そう言っております間に、どんどん格差が開いて、いま言いましたように、健全なる農業経営のにない手というものがなくなっていくのです。全般的兼業化傾向、これは結局、所得の格差というものを早急に埋めながら、一方に長期にわたる構造政策が行なわれるという方法をとっていないからなのであります。すりかえるからであります。価格政策ではなしに、構造改善政策だ、農基法は大体そういう精神なのです。そういうことを実際やっておるのです。だから、今日のこういう問題になる。だから、この所得格差というものを手っとり早く縮めていく施策を絶えず講じながら、一方、いままでの何倍か力を入れた計画的な構造政策をおやりになる、これがいわゆる池田さんの革命的農業施策だと思う。これをやらないから、理屈ではそういうことを言っている間に、どんどん農業は退廃していくじゃありませんか。ここに私はいまの農業政策の最大欠陥がある、いま申したとおりであります。そこから、いま農産物の中で一番大きな比重を占めております。およそ半ばを占めておるこの米に対する価格の安定、そうして、これによって所得の格差を埋めていく生産費所得補償方式というものによって政府が買い上げる制度というものは、きわめて重大である。ここに相当のウエートをいま置かざるを得ないのです。それを、あたかも食管法はもういかぬ、これはもう間接統制がいいとか、いろいろなことを申しまして、現段階においては、何しろ一番大事な所得格差を埋め合わせなければならぬ制度を軽視する言動というものが一般に非常に多過ぎる。政府もそういう態度をとっているかのごとくである。私はこれは非常に大きな間違いであると思うのでありますが、食管制度について、どこまでもその重要な役割りというものを高く評価して、そうして、これをゆるめないように、これを実施面で骨を抜いていかないように、そうして、いわゆる所得補償方式という方式を文字通り実行していく、そうして、都市における他産業所得と均衡をとるような方向でこの制度を運用する、こういうことを私は特に強く主張したいのでありますが、大臣の御所見を承りたい。
  209. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 価格政策についてお話がございましたけれども、私どもは、一般論としては、お米の価格については適正な価格で決定をいたしたいと思っております。しかし、単に価格だけをもって農業の保護をするということは、私はにわかに賛意を表しがたいのであります。なぜならば、私どもは、やはり大衆消費昔というものの消費、こういうものとバランスのとれた経済を営んでいかなければ維持できないと思うのであります。高田さん御存じのように、農村の人々でもそうであります。われわれは、決してやみくもに高い米を買えというのではないのだ、適正なる価格で買ってもらいたい、まことにそのとおりであります。しかしながら、いまお話しのように、生産費所得補償というのは、政府のたてまえでもありますからして、そういうことをいたしますためには、先ほど申しましたように、できるだけ土地改良その他をやって、生産費を安くして、農家の供出する米の価格を、消費片も納得できるような適正な価格できめるべきである、そういう基本的考えに立っておるわけでありますから、そういう意味においては、私は価格については大事だと思いますが、お話しの食管制度につきましては、これは常にわれわれの立場としては研究はいたしておりますけれども、もちろん、政府のただいまの立場は、食管法の根幹はかたく維持していく、そして合理的に運営をいたしてまいりたい、こう思っております。
  210. 高田富之

    ○高田委員 そこで、米価のいまのきめ方なんですが、私の特に申し上げたいことは、いま行なわれております米価審議会なんかにつきましても、政府米価審議会というものをどこまで本気で尊重する気か、私は疑いなきを得ない。先般は国会議員を除外する、なるべく文句の少ない、簡単に済むような米癖にしようというようなことで、これは結局御要望のとおりにはならなかったんですけれども、そういう考え方を起こすこと自体が問題なんです。大体、いま米価の各専門権威者を集めての審議機関としては一つしかないわけでありますから、できれば一週間でも十日でも開いて、徹底的に論議を尽くさせるというくらいの気持ちであってほしいと思うのですよ。今度だって、開いた最初の日は、資料が整っていないというので審議ができない、あとたった二日だ、やむを得ず一日延びたというようなことで、ただ諮問しましたという形をつくる。結局、いまの米価の決定のやり方を見ますと、私は非常におかしいと思うのです。生産者団体が、たとえば全日農あるいは農協というようなところで米価の要求を出しております。ところが、この農民側が出しておりますところの要求につきまして、これを買い入れる側であるところの政府が、その農比例の要求について検討を加えるというような、これとまつ正面から取り組んで売り手の要望を検討していく、また、買い手としての意見を述べていくというようなことでの真剣なやりとり、真剣な法的な折価の場というものが現在全然ないのですね。そうして、たとえば農協の要求米価をひっさげましての大会などがあれば、与党の幹事長あたりが参りまして、大いに賛成だというようなことで大演説をぶって満場をわかすのですね。ところが、その要求米価というものは、全日農の要求米価にしましても、あるいは農協側の要求米価にしましても、どういうふうに扱われたんだか全然わかりません。正式な折衝の場というものがないわけでありますが、唐突に政府は諮問案というものを米審にぽいっと出してくる。見ますというと、まるっきり隔たることほど遠いようなものを一方的に出してまいりまして、しかも、その価格について諮問しているのじゃないのだ、これは参考にして、方法だけ聞くのだというような態度で審議をする。それで、とにかく審議をさせたという形にして、あとは与党側の顔を立てるのか何か知りませんが、ごちゃごちゃっとわずかなものをちょっとプラスアルファしてきめてしまう。これが毎年やっておるやり方じゃありませんか。これでは私は、ほんとうに農民を納得させる米価の決定方式だとは言えないと思うのであります。やはりどうしても農民側、売り手側の要求と公式に取り組んで、買い手側の意見に対して十分論議をし、そして、さらに第三者機関が中に入って公正な判定を下していくといったような形のものが必要なんではないか。一体ああやって幹事長や何かが賛成演説をぶつのですが、全日農の出しておる米価一俵一万一千円、あるいは農協で出しております八千九百二円だとか、こういうものについて、政府は一体どうお考えになっているのですか、それが第一点です。いま言いましたように、決定方式は、いまのでいいと考えておるのかどうか、決定のシステム、この二点についてひとつお答え願いたい。
  211. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 率直に申し上げますが、高田さん、少し事情を御存じないのじゃないかと思います。従来は知りませんけれども、今回は、農協をはじめその他の生産者の団体の方々と十数回農林省の担当官はお目にかかっております。そうして農協が決定をされたあの米価のよってきたる原因については、非常に詳しくそのデータをお互いに交換し合って、農林省側はどういう計算の基礎を持っているか、生産者側はどういうことを考えているかということについて、私は係官を督励して徹底的に追求させたのであります。ちっとも話してないということは、たいへんな間違いでありまして、そういうふうに熱心に生産者とはやっておるわけであります。そこで、いま御存じのように米審が開かれておるのでありますが、米価審議会でもそうですよ。米価審議会は、朝から晩まで非常に熱心に専門家の諸君が一生懸命で努力をしておるのでありますから、私は、米審というものを軽んじられる考え方というものは、非常にああやって勉強しておいでになる人々に対しては残念だと思うのであります。  そこで、いまのお尋ねのことにお答えいたしますが、生産者側が出しております価格についてどう思うかということは、きょうの夕方米審の答申が出ることになっておるやさきでありますから、私は、そういうことをここで申し上げることは遠慮いたしたいと思います。  政府側が諮問いたしました三つの案は、第一は、指数化方式でやればこういう計算になります、しかしながら、三十九年度産米を基準とした指数化方式には必ずしもこだわっておりません、こういう言い方をしておりますのは、つまり、米価を三十九年にとっておりますから、もうすでに三年になります。そういうデータを基礎にする指数化というものについては、本来ならば検証もしなければならなくなっておる時代でございますから、あえてこのことに固執するわけではありませんと言ってはおりますが、その一、その二と、二つの積み上げ方式をお示ししまして、この二つについては、第一はこういう結果になる、第二はこういう結果になります、そういうことについて米価審議会の御意見を承りたい、こういうこと々言っておるわけでありますから、きょうの夕方米審の答申が出てから、それを見て、尊重いたして決定をしてまいりたい、こう思っています。
  212. 植木庚子郎

    植木委員長 芳賀貢君から関連質疑の申し出があります。これを許します。芳賀君。
  213. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの高田委員質問に関連して、総理にまずお尋ねします。  第一の点は、今夕おそらく米価審議会の答申が農林大臣に対してなされるわけでありますが、それを受けて政府は、閣議決定で買い入れ価格を告示することになるわけであります。先般農林大臣は、農林水産委員会において、米価決定の予定を十五日に置いておるということを明らかにしておるわけであります。そういたしますと、当然きょう答申が出れば、すみやかに検討を加えて、十五日に決定して発表するということになると思うわけでありますが、この点については、閣議決定を要するわけですから、総理の方針をお尋ねしたいと思うわけです。  なお、これに関連して、先般来水田大蔵大臣の会期中における海外出張の問題が取りざたされまして、この点については、衆参両院の議長あるいは野党各派からも、重要な会期末の海外出張等はこれは不謹慎である、取りやめるべきであるという強い申し入れ等が行なわれておりますので、その点も米価決定に関係がありますので、明確にしてもらいたいと思うのです。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これからの米価決定の段取りについてのお尋ねですが、まだ私、農林大臣からも閣議禀請を受けておりません。そういうものが出てまいりますれば、もちろんできるだけ早く閣議決定をします。  それから、水田大蔵大臣の問題ですが、いろいろ大蔵大臣の出かけることが政府といたしましては望ましいことだと思いましたが、両院議長からも、ただいま御議論のありましたような御意見が出ておりますし、ことに国会の会期末でございますから、それらのことを勘案いたしまして、今回は大蔵大臣の外国出張を取りやめる、かような処置をとりました。
  215. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、高田委員から指摘のありました生産舌米価の決定のやり方であります。現在の米価審議会は、実は食糧管理法に直接の関係を持っていないことは御承知のとおりであります。これは農林省設置法の中の食糧庁の付属機関として農林大臣の諮問機関であることは、政府も御承知のとおりでありますが、すでに米価審議会の機能も限界に達しておるというふうにわれわれは判断しておるわけであります。そこで、食糧管理法の第三条の規定、さらに財政法第三条の規定に照らした場合に、当然重要な米価の決定等については、国会の議決を要するという軌道に乗せることが至当であるというふうに考えますが、この点は総理としてどう考えておられますか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は現行でいい、かように考えております。
  217. 芳賀貢

    芳賀委員 私の尋ねておるのは、食管法第三条第一項は、政府が有権的に米の生産者に対して一方的に売り渡しの義務を負わせておる。いわゆる権力的に独占的に米価というものを決定して、政府以外に売ってはならぬということを厳重に規定しておるわけであります。したがって、その代償として、第三条第二項で農民の生産費と所得を完全に補償するということが今度は政府に義務づけられておるわけであります。一方、財政法第三条は、言うまでもなく、国が法律上事実上独占的にきめる価格あるいは料金等については、当然法律または国会の議決を要するということが明定されておるわけです。ただ、第三条については、特例措置が講ぜられておることは私ども承知しておりますが、この食管法と財政法の基本的な規定に照らした場合に、当然戦後二十年たちました今日の時点においては国会の議決を要する。当然その基礎をなす食糧管理特別会計の予算等については、国会が慎重な審議を行なっておることを考えた場合に、その内容について十分国会が審議をして、適正な価格というものに対して議決を与えるということは当然であると思いますので、この点、責任のある政府の方針を明らかにしてもらいたい。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御高見を拝聴いたしましたが、ただいまの政府の決定方法、方向、これでよろしいように思っております。
  219. 芳賀貢

    芳賀委員 それは総理が食管法の第三条の規定、あるいは財政法第三条の真髄をわきまえておらないので、簡単に、必要ないというような、そういう軽率な答弁を行なっておるわけですからして、この点は十分後刻勉強して、次の適当な機会に明らかにしてもらいたいと思うわけです。  その次に私がお尋ねしたいのは、今回の米審等を通じましても、政府がいままでと違った諮問の具体約な方法を行なっておるわけです。たとえば、諮問に付随いたしまして、政府試算いたしました生産者未価決定の三つの試算を並列的に審議会に提出いたしまして、これを土台にして審議会の委員諸君の審議をわずらわしておるわけであります。この中でわれわれが注目すべきことは、指数化方式ではなくて積み上げ方式の第二の方式、この中に、特にことしは地代の問題について新しい方式が打ち出されておるわけであります。従来は、農地法第二十一条の規定に基づいた、いわゆる三十年から十二年間据え置きになっておる統制小作料を基礎にした地代の計算がなされておったわけでありますが、今回は、初めて土地資本の判断に基づいたいわゆる地代の計算方式というものが出されたわけであります。内容は不十分でありますが、いわゆる自治省の行なっておる農地の固定資産評価の基準に基づいて農地の反当地価というものを計算いたしまして、この土地資本に対する年五分五厘の利回りを米価計算上の地代とみなして計上するという方法であります。これは米価計算上から見れば一歩前進と思われますが、この際明らかにしてもらいたいことは、農地法の規定に基づいた小作料の方式というものと、今回新しい算定方式として政府審議会に試算として出しました土地資本に基づく地代計算の方式というものは、これは非常に重要な問題でありますので、この点、新方式を打ち出した政策的な考え、あるいは将来農地制度の根本的な検討に及ぶ考え等については、これは農林大臣の答弁ではもの足らぬと私は思いますので、ぜひ総理からこの基本的な問題について明確にしてもらいたいと思います。総理大臣ですよ、あなたの出番じゃないですよ、まだ。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは専門の農林大臣に答えさせます。
  221. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 諮問をいたしました責任者でございますから、私がそう申し上げれば、芳賀さんは専門家ですから、もうすっかりおわかりだと思いますが、諮問案はいまここに持っておりませんけれども、ごく簡単な諮問をいたしております。そして、その参考資料試算として、御存じのように指数化方式と、いわゆる積み上げ方式の甲の二つを例示いたしまして、こういう形をとればこうなります、その中の一つに、ただいまお話しの地価算定のもの、それから法定小作料等が諭ぜられるような要素も入っておりますが、これはもうすでに御存じのように、いわゆる積み上げ方式というものをやってまいります段階においては、各方面から、こういうものも算入すべきである、こういうものも算入すべきであるといういろいろな御意見等もございまして……(芳賀委員「地代だけ言ってください」と呼ぶ)現にそういうことについて取り入れておりますからして、そこで、いまの問題の地代というものを、こうやればこうなるということで試算をして出したわけであります。したがって、その結果、これは御指摘のように法定小作料、こういうものが論じられるということになりますと、最後にお話しになりました農地法というものに触れてまいりますが、この際申し上げますならば、私どもは、法定小作料というものも、農地法全体を考えるときに、政府としては慎重に検討してまいりたい、こう思っています。
  222. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、この点だけを明確にしてもらいたいと思うわけです。この審議会に政府が並列的にお出しになった試算米価そのものに対しては、われわれは全然触れる意思はありませんが、審議会が検討した結果、地代のとり方については、従来の統制小作料方式をやめて、いわゆる農業の生産手段である土地資本に対する資本利子をもって地代にすべきであるという意見が出された場合には、政府がお出しになった三案の中の一つの方法として新しい地代方式を耕しておるわけですからして、そのときになって、いや、これはやる考えはありませんということにはならぬと思うわけです。ですから、審議会の意見が、あるいは答申の中で、ことしからの地代の計算というものは、従来方式でなくて、土地資本に対する利子の計上ということでやるべきであるということになった場合は、そのとおりおやりになるかどうか、その点はいかがですか。
  223. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま五時でございまして、米審は大体六時ごろ答申を私のところへ出したい、こういうことでいま一生懸命で起草委員がやっている最中でありますから、その最中に、仮定のことでお答えいたすのはいかがかと思いますので、遠慮いたしたいと思います。
  224. 芳賀貢

    芳賀委員 これは仮定じゃないですよ。指数化方式と積み上げの第一方式と第二方式を並列にことしは出しておるでしょう。その積み上げ第二方式の中に、地代のとり方については、従来の統制小作料を基礎にする方式ではなくして、土地資本という概念の上に立った土地の評価を行なって、それに対する利回りによるところの答えというものを地代にして計上すべきであるということを、政府みずからが試案の中に加えてお出しになっているわけですからして、それでおやりなさいという場合には、逃げるわけにはいかぬと思うのですよ。当然なことでありますが、重要な点ですからして、この際、そうやるべきであるということになった場合には、まともに受けて、正しい計算に基づく地代の評価をやるということを明確にしてもらえばいいわけです。
  225. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 たてまえは、米審の御答申を尊重してきめる、こういうことでございますから、その答申にただいまお話しのようなことがあるといたしますれば、もちろん尊重いたしたいと思っています。
  226. 芳賀貢

    芳賀委員 この機会に、農地法に関連した今後の小作料の取り扱いについても大臣からお触れになりましたが、現行の統制小作料は、昭和三十年に農地法二十一条の規定に基づいた発動をやって、十二年間経過しておるわけです。中位の田で反当千百円ということになっておるわけでありますが、これはいまの時代に全く適合しない小作料であるというふうに考えます。これは決してばく然と千百円を出したわけじゃありませんので、この際、検討するとすれば、いわゆる小作料の基準算定の内容というものはどうであったかということを、この際明らかにしてもらわなければ、当委員会においても検討のしょうがないわけです。ですから、この際、十二年前に計算したわけでありますが、この基準になる統制小作料の算出の内容について、専門の農林大臣から詳しく御説明を願いたいと思うわけです。
  227. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御存じのように、もっとも、その当時の基礎になった数字でありますから、御必要とあればあと資料として差し上げたいと思いますが、基本的には、やはり御指摘のように、農地法というものにつきまして政府はこの辺で再検討いたすべきである、こう思っております。そうなりますと、当然ただいま御指摘のような問題も並行して研究に入らなければならぬと思っています。
  228. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、小作料算出のそれぞれの数値というものを数字をあげて明らかにしてもらいたいという、無理なことは言ってないわけです。どういうような算出方式によって小作料というものは出されておるかという、そのいわゆる算定方式について、この際大臣から直接明らかにしてもらって、われわれとしても、今後の大事な農地制度の検討を進めていきたいというふうに考えておるわけですからして、ぜひこの機会に農林大臣から直接……。
  229. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員から申し上げます。
  230. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 昭和三十年に現在の小作料の統制基準をきめましたときには、芳賀先生御存じのように、いろいろな算定要素で農地を一つ一つ点数制にいたしまして、その点数に評価をしたものについて最岡小作料を告示できめておるわけでございます。その場合に、こまかく申し上げることを略しますれば、要するに、当時の粗収益と生産費とを計算をいたしまして、その差額を収益というふうに考えて、それをもとにして平均的な小作料基準をきめたわけでございます。
  231. 芳賀貢

    芳賀委員 その程度の政府委員の答弁では、何も算式にならぬじゃないですか。これは農林大臣から、どういうような算式で小作料というものが答えとして出ておるかということを――これはやはり方程式ですからね。いまの和田君のような答弁では落第生の答案で、何も答弁なんというものじゃないですよ。
  232. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 私は、その点研究が不足でありますから、政府委員の御答弁申し上げたことで足りませんでしたら、なお調査をいたして御報告いたします。
  233. 芳賀貢

    芳賀委員 これはぜひこの際明らかにしてもらいたいのです。このくらいのことがわからなければ農林大臣はつとまらぬ。あと資料なんということでなくて、この際、現在の法定小作料というものはこういうような算式に基づいておるということ、これは農地制度の基本に触れる問題ですからして、ぜひ明確にしてもらいたいと思います。
  234. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま申し上げましたように、粗収益から生産費、それは物財費、労賃費、資本利子、租税公課でございますが、そういうものを差し引きましたものが純収益として出ますので、それに経営利潤等を一応引きまして、それをもとにして土地収益性というものを出しておる、そういう計算方式でございます。で、その場合の物財費なり、あるいは労賃なり、資本利子をどう見ておるかということをお尋ねだろうと思いますが、当時の数字でございますので、細部にわたりますから、先ほど大臣おっしゃいましたように、数字については資料でお出しをいたします。
  235. 芳賀貢

    芳賀委員 この中で特にいま農地局長から、企業利潤というものが算式の中に入っている、こういうことを言っておるわけです。これが非常に重大なんですよ。小作料計算の場合は、農業経営上に小企業者と農業の小生産者は同様に取り扱うという農地法上の精神から、小作料をきめる場合も、当然この算式の内容というものは、米価を算定する要素と全く同様なわけです。ところが、小作料を出す場合には、農業の企業利潤というものをちゃんと計上しなさいということになっておるのですね。特に企業利潤の計算については、物財費、雇用労働費、資本利子及び租税公課の合計額に四%を乗じた額と定められていることは明白であるわけです。ところが、米価決定の場合は、企業利潤というものは、ことさらにいまの自民党政府はこれを取り上げてないのですよ。そこに問題があるわけですよ。企業利潤を取り上げて計上しなければならぬのに、その要素だけをことさら落として、そうして答えの少ない反当千百円の統制小作料を基礎にして米価計算上の生産費とするというようなやり方は、全くインチキきわまるものといわなければならぬと思うわけです。ですから、今年の米価計算の場合においては、当然新たなる項目として、企業利潤という、小作料の計算の基礎をなす要素を適用して加うべきであるというふうに私は考えておるわけでありますが、この点はどう思いますか。これは米審にも何にも諮問していないわけですからして、大事な予算委員会を通じて政府の方針というものを明らかにしてもらいたいと思います。
  236. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府米価を決定いたしますときには、答申をもとにして、それを尊重して研究をいたすのでありますから、いまここでどういうものを取り上げるというようなことをお答えすることは、御遠慮したほうがいいと思います。
  237. 芳賀貢

    芳賀委員 御遠慮というのはおかしいじゃないですか。わからぬから答えられないというたらまだ話はわかるが、わかっておっても御遠慮するというのは、これは情けないじゃないですか。入れるか入れないか、どういうわけでいままでことさらに企業利潤というものを米価計算から落としておったかということを、これは責任を持って答えてもらいたいと思います。何もこんなとき遠慮する必要はないですよ。
  238. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米価は、ことしこれからきめるのでありますから、そのきめるために答申を時っておる。その答申がどういうものが出てくるか、いまあなたの指摘のような、地代、資本利子等も入ってくるものかどうか、全然予測もついておりませんので、答申を見た上で政府の態度を決定するというわけでございます。
  239. 芳賀貢

    芳賀委員 これは総理大臣から答えてもらいたいと思います。大事なものが一つ落ちているわけですからね。それも、戦後二十年間も落ちているわけだから、この際回復するということになれば、相当の金額になると思うわけです。これはもうぜひこの際検討して、当然加うべきものは政府の責任において加える、こういう答弁をぜひ総理からお願いしたいと思います。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん専門的なことのように私先ほど来伺っていまして、どうもよくわからないのです。これを私に聞かれましても、私がお答えするというわけに、それだけの能力がないようですから、これはしばらくお待ちをいただきたい。
  241. 芳賀貢

    芳賀委員 一国の総理にそういう判断の能力がないということになれば、これ以上、武士の情けとして、追及はできないと思うのです。  最後に私は、重大な問題をお尋ねしたいわけでありますが、七月の七日に、農林省は、昭和四十一年の米の生産費の公表を行なっておるわけです。これによりますと、生産費の計算というものが全くインチキなやり方をとっておるわけです。たとえば、平均反収です。一反歩どれだけとれるかということは、やはり価格決定上重大な要素になるわけでありますが、これは食管法の規定によると、米の販売農家であるいわゆる四百三十万農家の平均の反収をもって反収としなさいということになっておるにもかかわらず、これがわずか二千数百戸足らずの上位の農家の平均反収というものを採用しておるわけです。ですから、実際の去年の実収に基づく平均反収は四百キロということになっておるが、この調査農家の反収をとるものですから四百五十五キロです。約六十キロ、一俵、これはごまかした計算をやっておるという点と、もう一つは、食管法に心づくと、農家の自家労働については、都会の勤労者のいわゆる都市均衡労賃をとるということが法律上明確になっておるにかかわらず、これをあえて農業日雇い労賃を農林省の生産費調査の中ではとっておるわけです。そうしますと、昨年のいわゆる臨時日雇い労賃というものは、一時間にするとこれは百二十二円、一日八時間労働にして千円に満たないわけであります。ところが、食管法に基づくところの都市均衡労賃というものをいままで採用いたしました製造業五人以上規模の男女込み賃金にいたしましても、ことしは一時間二百円を下ることはないと思うわけです。食管法で都市均衡労賃をとるということがきめられて、いままで生産費所得補償方式でやってきたのを、農林省自身の生産費の中において一番安い、適応性のない臨時日雇い労賃の一時間百二十二円をあえて計上しておる。こういうやり方をもってしては、いつまでたっても、農林省の行なう、いまの自民党政府の行なう米価の生産費計算というものは、納得のできる状態にはならぬと思うわけです。食管法を裏切ってまで、安い生産費というものを使って米価を決定しなければならぬということについては、これは重大な責任をわれわれは追及しなければならぬと考えておるわけでありますが、こういう点は、総理大臣が指図をしてやらしておるのか。総理は気がつかぬが、農林大臣が直接さいはいを振って、そういう安い米価の計算をやらしておるのか。これは、役人の答弁は要りませんからして、総理、農林大臣両氏から、ぜひこの元凶はだれであるかということを明らかにしてもらいたいと思います。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま農林省事務当局がいろいろ計算をいたしておりますが、国民に対しまして、また、生産者に対しまして適正なる米価を決定する、そういう立場でやっておりまして、いま芳賀君の言われるように、ごまかしたとか、あるいは特別安いものを考えたとか、かようなことは絶対にない、かように私考えております。
  243. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ごまかすなどということではありませんが、私は、生産費につきましては、最近開かれました米価審議会で、生産費の計算を事務当局から提出いたしました。それによって説明を聞いたわけでありますが、ただいまお話しのような点につきましては、若干私どもと見解の違うところがあるようでありますから、いずれよく詳細に検討いたしまして、あなた方とも誤解のないようにいたしたいと思います。
  244. 高田富之

    ○高田委員 時間がありませんから、端的にお伺いしますが、政府の米麦の運賃として日通に支払っております金額は幾らでございますか。
  245. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事務当局から御報告をいたします。
  246. 馬場二葉

    ○馬場説明員 食糧庁が米麦の輸送賃として日通に支払っておる金額を申し上げます。昭和四十一年度で百二十六億六千八百七十七万円であります。
  247. 高田富之

    ○高田委員 こういう事実を政府は知っておるか、知っていないか。知っている、知っていないという答えでいいですからね。それ以外の答えは、時間がありませんから必要ありません。  全国通運業連合会が去る六月九日、第十七回の全国大会を開いた。そして、政府所有の米麦輸送元請に参加したいという決議を行ない、日通による政府の米麦の輸送の独占を打破するということを強く主張しております。しかも、それがこの通運業連合会の過去十六年間の宿願だというようなことを言っておる。週去ずいぶん長い間こういう主張をしてきておるという事実、こういう事実を承知しておりますか、おりませんか。それだけでいいですよ。
  248. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 何も承知しておりません。
  249. 高田富之

    ○高田委員 この事実を知っているか、知っていないか。去年の九月に、消費者団体連合会、消団連の全国大会で、日通の米の元請輸送費に、三十億円が不出に水増しされて収受されているということが公然と問題として取り上げられたことがあるという、こういう事実を承知しておりますか、おりませんか。
  250. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 報告を受けておりません。
  251. 高田富之

    ○高田委員 昨年の初めごろ、大阪地区における不正運賃問題が大阪鉄道局から国鉄本社に報告され、日通の常務が陳謝をしたという事件がありましたか、どうですか、運輸大臣。
  252. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 調べまして、すぐお答えいたします。
  253. 高田富之

    ○高田委員 過去三十年間にわたって、日通一社だけにこの膨大な輸送業務を随意契約で、一本で契約してきたのはなぜでございますか。
  254. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 昔からのことのようでありますが、私は、就任いたしましてからそういうことについて話を聞きましたので、事務当局を呼んで聞いてみました。部内の話によりますと、全国の津津浦々から米が供出をされ、そしてまた津々浦々まで配達をする、そういう全国的な輸送機関を持っておるのは日通である、そういうことで、路線によってはもうかるところもあるだろうが、路線によっては損するところもあるだろう、そういうことを全国一斉にやれるのは日通であるから、長い間こういうやり方である、それで、その庫賃は、国鉄で決定いたしております運賃そのままで決定いたしておる、こういうだけの報告を受けております。
  255. 高田富之

    ○高田委員 いま、日通だけがそういう組織を持っているという話ですが、現在、日通が認可を受けて取り扱っている駅は、全国の貨物駅の中の全部ではないと思います。おおむね何割ぐらい日通がやっており、何制ぐらい日通以外のものがやっておるのですか、運輸大臣。
  256. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まことに申しわけございませんが、これも取り調べさしてお答えいたします。
  257. 植木庚子郎

    植木委員長 中澤茂一君の関連質問を許します。中澤君。
  258. 中澤茂一

    ○中澤委員 政府が契約をする場合、法律に基づいて契約をしなければならぬのです。それが会計法の命ずるところです。会計法第二十九条においては、明らかに、契約は競争によって行なうという原則があるのです。しからば、随意契約をやる場合の会計法の準則というものがあるのですが、その準則のどの条項に該当するのか、農林大臣、御答弁願います。
  259. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  260. 馬場二葉

    ○馬場説明員 会計法第二十九条の三第五項に基づいて、予算決算及び会計令第九十九条第八号で随意契約をいたしております。
  261. 中澤茂一

    ○中澤委員 二十九条三の五項は、読んでごらん、これは指名競争の随意契約じゃないか、何を言っているのだ。
  262. 馬場二葉

    ○馬場説明員 読み上げますが、「契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。」こういうことが規定してございます。それを受けまして、予算決算及び会計令第九十九条第八号でございますが、運送と保管の場合について随意契約でできるという規定に基づいて随意契約いたしております。
  263. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは少額である場合という前提があるんじゃないですか、この契約じゃないですよ。何を言っているんです。少額じゃないですか。
  264. 馬場二葉

    ○馬場説明員 運送と保管の場合はできるということの規定に基づいて随意契約をいたしておるわけでございます。
  265. 高田富之

    ○高田委員 法的な疑義の問題はまだ残っているんですが、時間がないから端的にお伺いします。会計検査院来ておりますね。この日通の運賃の問題につきまして、これには諸掛かりというような名目で、必ずしもさっきの御答弁にありましたように、法律その他できめられました料率によらない費用が相当あるわけであります。これらについて検査院は調査し、そうして、それに対して指摘をしたことがありますか。
  266. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の諸掛かり等については調査しております。それで、昨年それにつきまして、留意事項として検査報告に掲記してございます。
  267. 高田富之

    ○高田委員 ただいま検査院からも注意を掲記したことがあるということでございます。そうして、いろいろな問題がうわさされておるわけでございます。何しろ三十年も一社独占なんですから、いわれるのが私はあたりまえだと思う。事実かどうかについては、いまそういう点について検査院のほうから指摘もあったくらいですから、全部がうそだということは私は考えられないと思うのです。  そこで、諸掛かりというものの実態が相当問題になると思うのでありますが、よろしいですか、私がこういうことを聞いているのは、食管の赤字、食管の赤字とよくいいますけれども、こういうふうな問題に相当のむだがあるんじゃないか。だから、真剣にひとつお答えを願いたいのです。諸掛かり費につきましては、これはある新聞社の調査によるのですが、さっき言いましたように、日通が全部やれるんじゃないんですよ。日通が認可を受けておりますのは、全国の貨物駅五千三百七十六のうち四千三百二十三であります。しかも、そのうちで施設も何も持ってないで委託をしているのが四百五十三ですから、正味日通が仕事をしておるのは三千八百七十駅で、約七〇%なんです。そうすると、あとの三〇%というものは、受け取ったのを日通がほかの逆輪会社に下請をさしているわけですよ、そうでしょう。そうして、この調査によりますと、日通から支払いを受けているというある通運業者のその支払いの明細書を調べてみますと、通運取り扱い料、貨物取り扱い料、配達料、入庫料というようになりまして、合計トン出たり四百二十一円、こうなっております。しかるに、トン当たり日通が受け取っておりますのは四戸七十円四十八銭、差し引き四十九円四十八銭が一トンについての日通のピンはねだ、こうなっておるのです。よろしいですか。そういう例はほかにも幾つもあげてあるのですが、要するに、三割からのものは日通は自分でやってないのに、下請をさしてそういうピンはねをしている。座してそれだけの利益を取っておる。同時に、自分か受けている七割のほうには、それだけのよけいな利益分が入っているということなんです。こういういわゆる諸掛かり費というような名目で、非常にわけのわからない支払いがされておるということは、会計検査院からもその一部が実際に指摘を受けているのです。だから、さっき私が伺いましたように、消団連の全国大会で堂々と、おおよそ三十億円程度のものが不正に取られているんだということまでが公然と問題になっているのですね。こういう事実をどうお考えになりますか。
  268. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いまのようなお話も一部の新聞等で私は見ました。三十億円云々、そういう記事も拝見をいたしました。そこで、特に今日お話もございますので、きょうは食糧庁長官は米審のほうに行っておりますから、十分にひとつ、なお重ねて調査、研究をいたして明らかにいたしたいと思っております。
  269. 高田富之

    ○高田委員 大体三十年も一社に独占をさしておくから、そういう問題が生じてくるのはむしろ当然だといわざるを得ない。さっき申しましたように、全国通運業連合会では、われわれのほうも過去十六年間、そういうことに割り込みたいという運動をしてきておる、こう言っておる。じゃ、経済企画庁長官、こういう事実はどう処理されようというのでございますか。これは物価問題懇談会、昨年の六月三十日に「貨物運賃について」という物価に関する答申がございます。この「貨物運賃について」という答申には「当懇談会の審議の過程で特に問題となったのは、(イ)通運の仕事と鉄道による輸送の仕事との表裏一体関係を、競争の原理を生かしながら合理的に運営するためには、現在どのような点に改善の余地があるかという点」、この点を問題にいたしまして、問題のところだけ読みますと、そこで方策について、「たとえば、A、中小通達事業の統合等による広域運営化を進め、鉄道貨物輸送の近代化に即応した通運事業体制を確立するとともに、併せて経営基盤の強化を図ること。」というようなことが指摘されておるのであります。つまり鉄道との一体関係はもちろん大事でありますが、競争の原理を生かしていけということが指摘されておるのです。通運一社に独占されれば必ず弊害が生まれる。つまり、物価問題の見地から運賃の独占形態を打破しろという勧告なんです。だから、いま私が言いましたように、全国の通運業連合会で、おれのほうでももう引き受けられるんだぞ、おれのほうも一枚加えろということを要求している。こういうものと全部符節が合っておるのであります。これもどこまでも無視して一社独占でやらして、しかも、手の届かないところは又請けをさしておる。こういう状態で、会計検査院までから、一部ではありましょうが指摘を受けておる。こんな状態をいつまでも続けておいて、健全な食管の運営なんということが言えますか、いかがですか。
  270. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 競争原理の導入ということは、物価問題懇談会の一貫した態度であり、私とももそう考えております。その勧告が書かれますときには、関係各省の係官もむろんその場におりまして、討議の経緯もよく聞いておりました。したがって、関係各省でそういう基本方針に沿って研究をしておられるわけでございますけれども、御承知のように、非常に長い間にでき上がっておる制度でございますから、それをどのようにして改善するかということに、研究はしておられますが、多少時間がかかっておる。基本的には、私はその勧告の趣旨はそれでよろしいと思っております。
  271. 植木庚子郎

    植木委員長 大橋運輸大臣に申し上げます。先ほど保留されました答弁を願います。
  272. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 二点お答え申し上げます。  日通が運賃上問題を起こして、国鉄に陳謝した事件を承知しておるかということでございますが、運輸省といたしましては、これについて国鉄から何ら聞いておりません。なお取り調べをいたしてみたいと思います。  それから、日通の取り扱い店のあります駅あるいはない駅、この内訳でございますが、貨物取り扱い駅の総数は五千百四十五でございます。このうち、日通だけが営業いたしております駅の数が三千百六十三でございます。それから、日通のほかに他の通運業社が営業しておる、すなわち複数の業者が営業しておる駅が一千一駅でございます。これを差し引きますと、日通のない駅が九百八十一ございます。以上でございます。
  273. 中澤茂一

    ○中澤委員 この問題はなぜ取り上げるかといえば、いま食管赤字が、すべて農民のための赤字である、農民が悪いんだというような世の中の風潮に対して、われわれはこれは明らかにしなければいかぬ。まだ合理化すべき余地が食管会計の中にたくさんある。この問題以外にもたくさんあります。そこで、たとえば一千二百億の赤字だという場合、一体どういう経費が当然政府の支払うべき食糧管理法によるところの経費か、これを先ほど食糧庁から数字をとって見ますと、四十年の決算額で集荷経費が百二十一億、運賃が百二十一億、保管料が百四十四億、事務費が二百二十八億、金利が百九十四億、合わせて八百八億というものは、明らかに当然支払うべき行政費に属するものなんです。それを全部取り上げて農民のために赤字を出していると言うところに、われわれは抵抗を感ずるわけです。本年度は一体どのくらいの予定かと見込みを出さしてみたところが、集荷経費が百四十六億、運賃が百三十五億、保管料が百七十七億、事務費が二百五十三億、金利が二百七十三億、合わせて九百八十四億、約一千億というものは農民がもらっておるんじゃないのですよ。それをすべてが農民のために赤字を出していると言うようなところに、われわれは承服できないのです。しかも、重政氏が農村大臣のとき、明らかにこの事務費の二百二十八億というものは、当然これは農林省の一般会計から支払うべきものではないか、二万八千人の食料庁の事務費というものは、当然農林省の一般会計で払うものを、食管会計の中でどんぶり勘定で払っていって、これが農民のために出ておる赤字だ、赤字だと言うところに問題がある。しかも、重政氏は当予算委員会で私に約束しておるのです。重政農林大臣が、確かにこれは問違っております。だから、少なくとも行政費区分やこの食管会計の会計区分はいたしましょうと、当委員会で約束しておるのです。自来、三年もたってもひとつも手をつけていない。赤字は、こういうところの内容を分析しないと問題がある。時間がないけれども、まだ問題がたくさんあるのです。たとえば集荷経費という中で、一体この運賃以外にどれだけ日通の収入になっているか、日通の問題の中にはまだ幾多の問題が残っておる。かつて当委員会でこの問題を取り上げたこともあるのです。しかし、竜頭蛇尾に終わっておる。きょうもまた時間がないけれども、しかし、一応私はこの点だけは明らかにしておかなければいかぬと思うのです。これは契約書に、なぜこういう不合理を一体やっておるのか、これは第一部長、説明しなさい。たとえば看貫を実施した場合、次の料金を払うという契約をしておる。六十キロで、甲地、乙地、丙地ときめておる。甲地が十七円、乙地が十六円八十一銭、丙地が十六円六十二銭という契約をしておる。何のために一体こういう契約をしておるのですか。
  274. 馬場二葉

    ○馬場説明員 プール運賃の中に看貫荷役賃というものが織り込んでございますが、これは日通が産地から消費地に運送が完了して入庫いたす場合に、目切れがないか、あるいは乱袋がないか、主として量目の検収をいたしまして、政府が運送の完了を確認するというためにやっておる作業でございます。
  275. 中澤茂一

    ○中澤委員 それを聞いておるのではない。甲地、乙地、丙地といって、なぜこういう区分をするかということを聞いておるのです。
  276. 馬場二葉

    ○馬場説明員 倉庫の荷役料の、倉庫の看貫賃を適用しておりまして、甲地、乙地、丙地で料率が違いますので、そういう区分をいたしておる次第でございます。
  277. 中澤茂一

    ○中澤委員 では、四十年度にどのくらいな看貫の俵数をあげたか、それを悦明しなさい。何俵看貫したか。
  278. 馬場二葉

    ○馬場説明員 看貫荷役賃をやらしておりますのは、内地米麦につきましては、一定の抽出割合を示しましてそれをやらしております。すなわち、内地米麦につきましては、俵、かますの場合は一〇%、それから麻袋の場合は五%、紙袋の場合は二%、そういうふうに抽出割合を示して作業させております。
  279. 中澤茂一

    ○中澤委員 どのくらいやったという数字は確認してないのか。
  280. 馬場二葉

    ○馬場説明員 都会の事務所では、検定協会が立ち会いまして、指示どおりの割合で看貫をいたしたか、その結果がどうかという確認をいたしております。それから他の県においては、食糧事務所の職員が確認をいたしておる次第でございます。
  281. 中澤茂一

    ○中澤委員 その確認の報告は、四十年度に何俵のかます、何俵の俵を看貫したかという数量報告はあるでしょう。それでなければ支払いができないでしょう。看貫なんていうのは、ただ目方をはかって横に置くだけで、やらないといったってこれは払っているのでしょう。やらないものまで払っておるでしょう。
  282. 馬場二葉

    ○馬場説明員 これは必ずこの率をやらすように督励いたしまして、同時に、いま政府の日通運賃のきめ方は、前年の実績調査いたしまして、それでやっておりますので、実績調査で確認をいたしております。
  283. 中澤茂一

    ○中澤委員 それじゃ、四十年度のものは出ておるでしょう。かますを幾ら看貫した、県はどこで看質したと報告しなさい。
  284. 馬場二葉

    ○馬場説明員 では、その数量については、すぐ調査の上御報告申し上げます。
  285. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういうことをやっていないのだよ。看貫料というのは全く水増しなんだ。そういうことをやっていないのだ。ここに問題がある。
  286. 馬場二葉

    ○馬場説明員 すぐ調査の上お出しします。(加藤(清)委員「看貫の数量を早く出しなさい」と呼、ぶ)調査して必ずお出しします。
  287. 中澤茂一

    ○中澤委員 業務第一部長、さっきあなた何と答弁したか。答弁に食い違いがあるじゃないか。大体前年度実績の一〇%を推定して支払いをすると言っているじゃないですか。俵の場合は一〇%を推定支払いしますと言ったじゃないですか。話が違うじゃないですか。
  288. 馬場二葉

    ○馬場説明員 毎年日通にそういう割合を指示しまして、それを看貫するように指導をして、その結果を翌年実態調査した上で運賃をきめておる、こういうことを申し上げた次第でございます。
  289. 高田富之

    ○高田委員 まだまだたくさん疑惑がありますけれども、時間がありませんので別の機会にしたいと思うのですが、総理、この問題は、さっきから私が申し上げますように、相当いろいろな疑惑を生んでいることは事実でありますし、これはまた当然だと思うのですよ。三十年も一社独占で、しかも、独占にさせなければならない理由はきわめて薄弱です。いまも、さっきの数字でも示されておりますように、一千駅からのものが日通の手の及ばないところがあるのですから、どうしてもこれは物懇のこれらにありますように、競争の原理を導入していく、それには、いまの中小の業者を統合させるなり、力をつけるなりいたしまして、そうして当然この競争原理を導入していかなければならぬ道理なんですよ。それを、いまごろになってまだ弁護するようなことを言っていますが、弁護し切れるものではないと思うのです。どうしてもこれは徹底的に合理化する必要がある。こういうことをほったらかしておいて、さっき中津君が主張するとおり、全体の大きな赤字が米の売買で起こっておるかのごとき錯覚を起こさせるような経理をやっておるということは、はなはだ心外であります。この点は、ひとつ徹底的に合理化するように強く主張いたしまして、きょうのところは、一まず質問はこの程度で――もう一つ関連を……。
  290. 中澤茂一

    ○中澤委員 もう一つ関連質問で、しかも政府に警告しておきます。  いま参議院で、公社、公団の同級官僚の天下り人事が非常に問題になっておる。しからば、日通の場合はどうか。運輸大臣承知しておったら返事してください。現に日通の副社長は、小幡さんという運輸省の自動車局長が行っておる。しかも、承るところによると、自動車一台給与して月給五十万円ということを聞いている。それから、食糧庁からは前の長官であった前谷君が専務に入っておる。そのあと、また富岡という自動車局長が運輸省から日通へ大下りをしておる。このほか、まだ調べれば大体十三名くらいの高級官僚が日通へ天下りしておる。こういう事態と照合した場合、国民一般はだれが考えても、これは何かくさいところがあると考えるじゃありませんか。定年になった高級官僚が、月給五十万円もらってベンツを乗り回しておる。ふしぎに思わないですか。総理、これはいま参議院でいろいろ問題になっていることともからんでおるのですが、こういうことは、ほんとうに困った問題です。だれが見ても、国民は疑惑を持ちますよ。食管の赤字の中で――時間がないから、いまはこまかく触れなかったが、まだ諸掛かりの中に幾多問題がある。しかし、明らかに、こういう元食糧庁長官の前谷君が日通の専務に人っておる。歴代自動車局長が必ず日通の副社長なり常務に入っていく。だれが考えたって、ここに国民の血税が浪費されているということを推測するではないですか。こういうことは総理、これは厳重に今後慎んでもらわなきゃならない。国民の疑惑をますます深めるだけである。  最後に総理から、参議院では、いま各種公団のことが連日問題になっておるが、こういう点について今後どういう方向で内閣は進むかということについて、一言ひとつ御答弁願いたい。
  291. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いろいろいまのような刻係のあるところへ退職後の公務員が就職する、こういうことは間々見受けることであります。そういうのは、主として適材適所というか、そういう人員の配置だ、かように思っております。いま問題になりますのは、そういうような結びつきのために、そこに汚職があるとか、あるいは特別な利便を提供しておるとか、こういうようなことがありますと、これは実は問題だと思います。人事院におきましても、そういうところへ就職することについて、特にやかましい検査、資格条件を設けておるようでございますし、ただいまのような疑惑を払拭するということにつとめておりますから、私は、政府におきましても十分それらの点について考慮をいたして、疑惑や疑念が持たれるような、そういう人事をしてはならぬ、かように思います。
  292. 高田富之

    ○高田委員 では時間でもありますので……。
  293. 植木庚子郎

    植木委員長 高田君に申し上げます。  申し合わせの時間がまいりましたから、この一問で……。
  294. 高田富之

    ○高田委員 そういうわけですからやめますが、これは直接米麦問題ではありませんけれども、日通が受けているのは、米麦のほかに、防衛庁関係の物資、専売の塩、たばこ、およそ、三百億以上のものを日通は一手引き受けをしている。しかも非常に景気がよくて、配当を一割何分かやっておりますし、昨年の九月の決算では、常業利益三十二億円に対しまして、営業外の利益が十九億もある。しかも、九億円は土地の売却益なんです。あとの十億円は子会社からの配当なんです。これは物懇でも問題になったことがある。つまり、日通のような大会社がやたらに土地を買って、どんどん土地の値段を上げてしまうというので、物懇で物価問題の見地からそういうことが問題になったことがあるのであります。ですから、私どもは、まだまだいろいろな疑惑もたくさんありますし、世間の疑惑も招いておるのでありますから、もう少し厳粛にこういう問題については対処していただきたい。残りの部分につきましては、また別の機会に質問することいたしまして、きょうはこの程度で一応質問を打ち切ります。
  295. 植木庚子郎

    植木委員長 食料庁当局から、先ほど看貫の実績の答弁があるように言われしました、その答弁を求めます。
  296. 馬場二葉

    ○馬場説明員 先ほど御要求の日通の看貫の数量、これにつきましては、ただいま数字を持ち合わせいたしませんので、至急に作成いたしまして、当事務局を通じて委員会に提出いたしたいと思います。
  297. 中澤茂一

    ○中澤委員 資料要求。いまの答弁のその資料を出すとき、駅によって看貫のない駅か一ぱいあるのだよ。その看貫のない駅は、どこではかっているのか、それを明確に……。看貫のない駅は一体どこではかるために看貫料を払っているのか。これは膨大な金額ですから……。
  298. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて高田君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。
  299. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、現下最大の経済的な問題であります資本の自由化ということについてお尋ねをいたしたいと思いますが、質問に先だちまして、今回の西日本を中心とする集中豪雨犠牲者並びに家族の方々に、つつしんで弔慰を表したいと思います。なお、数多くの罹災者各位に対しましても、心から御同情を申し上げる次第であります。  さて、資本の自由化の問題でございますが、最初に総理にお伺いをいたしたいと思いますのは、御承知のように、この資本の自由化は、第二の黒船であるとか、いろいろとその深刻な影響について批判なり意見なりか出ております。また、これにどういうふうに取り組むのであるかという日本政府の基本的な姿勢に対しましても、巷間、はたして積極的にやられるのであるか、あるいはどうにかなるという程度に考えられておるのであるか、最近に至るまでほとんど政府の明確なる態度がわからなかったのであります。  そこできょうは、いままでこの問題にあまり触れられておりませんので、私はあらゆる角度から自由化の問題について本格的に取り組んでみたいと思うのでありますが、その意味におきまして、この自由化の問題に対する総理のお考え、第二の黒船といわれるこの問題に対する取り組み方の決意と構想について、最初にお伺いをいたしたいと思います。
  300. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま資本の自由化、これが強く要望されております。私、申し上げるまでもなく、ただいまの廃業、経済のあり方、これはもう一国の国内だけで考えるのでなくて、国際的視野に立って初めて今日の経済、今日の産業が考えられる、また、そういうことでなければならない、かように思います。その意味におきまして、わが国の産業あるいは経済のあり方から、この資本の自由化がわが国に及ぼす影響、それも十分考えまして、わが国の産業の育成強化に役立つような方向で基本的な態度をきめたわけであります。まだたいへん程度の低いものでございますが、しかし、これからわが国がこの資本自由化に取り組むその姿勢といたしましては、ただいま申し上げましたように、国内的な視野ばかりでなく、国際的視野に立ってこれから考えていく、そういう意味で、資本の自由化の方向で取り進んでいく、これがただいまの基本的姿勢でございます。
  301. 竹本孫一

    竹本委員 具体的にまずお伺いをいたしますが、OECDに三十九年に日本が入りましてから、この資本の自由化ということは、あるいは道義的義務であるという意見もあります。さらにIMFの条約、あるいは日米通商航海条約等の立場から、これは単なる道義的義務ではなくして、法律的に国際条約上の義務であるという意見があります。政府は、はたしてこれは法的な義務として取り組んでおられるのであるか、政策選択の課題として取り組んでおられるのであるか、その辺について関係大臣から御答弁を願いたいと思います。
  302. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 OECDとの関係でございますが、OECDはあのような一つのクラブのような組織でございますから、これに加入をいたすべきか、いたすべきでないかという判断は、当時行なわれたわけでございます。そしてわが国としては、相当の留保を付しまして加入をいたしました。留保したものにつきましては、なるべく早い機会にいわばクラブの規則に沿うような措置をする、こういう政府の意志表示をいたして、留保したまま加盟をしたわけでございます。したがって、加盟をいたしましたときに、後日何年かたちましたらやはりその規則に沿ったメンバーにならなければならない、また、それを踏んまえての上で加盟をすることが適当である、こういう判断で加盟をいたしたわけでございます。したがって、これは法律的な義務だというふうには私は考えておりませんけれども、わが国としては、何年かたったらばOECDのルールにだんだん留保を少なくしていくという意思表示をいたしておりますから、そのOECDという組織体に対して、そういったような何年とはっきりきめたわけでもございませんし、どういうふうに留保を消していくかということも具体的には言っておりませんけれども、加盟をいたしましたときの一つの約束であろうというふうに考えております。  それから日米通商航海条約との関係で申しますと、これはいわゆる内国民待遇という点が関係するわけでございますけれども、わが国の場合には、それと別に、為替管理に伴いますいわゆるバランス・オブ・ペイメントと申しますか、BPリーズンというものが御承知のようにございますので、それによって資本を自由化しあるいは自由化しないという選択をわがほうでできる、こう考えておりますから、通商航海条約上の義務はない。両方あわせまして、申すまでもないことでございますが、何か約束をしたから、あるいは義務であるからということよりは、いずれこういう時期がくるであろうということは加盟当時から考えておりましたので、政府の自主的な選択によって今回の措置を第一回としてとった、このように御了解いただきたいと思います。
  303. 竹本孫一

    竹本委員 通産大臣の御意見もついでに。あわせて、この問題に対する基本的な考えとして、いまの義務であるかどうかということについてもお伺いをいたしたい。  なお、いま経企庁長官がお答えになりましたBPリーズンの問題につきましては、後ほど外務大臣がお見えになりましたときに、もう少し本格的に伺いたいと思います。と申しますのは、これはあくまでも通貨準備の問題であり、御承知のように為替管理の上での問題でございまして、自由化対策といったような問題とはカテゴリーが違うと私は思っておりますので、これは外務大臣がお見えになって御答弁を願いたいと思います。通産大臣ひとつ……。
  304. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 OECDの問題につきましては、ただいま経済企画庁長官が答弁したと同じ意見であります。したがいまして、今回の問題につきましても、これは日本の自主的な考え方からしてこの資本の自由化の問題を考えたような次第であります。
  305. 竹本孫一

    竹本委員 私ども民社党といたしましては、この資本の自由化の問題につきましては、わが国の生産性の向上に対する一つの有効な刺激として、また、消費生活の多様化、向上といったような観点につきまして、基本的には賛成でありまして、反対するものではありませんが、ただ、これに取り組んでいくということには、十分の準備、また計画、さらにまた政治的には幾多の警戒を必要とすると考えておるのであります。そこで、きょうはそうした観点から、まず最初に政治的な観点から問題を伺ってみたいと思いますが、御承知のように、アメリカがワールドエンタープライズ、世界企業というところに発展をしてきております。その世界企業は、最初はイギリスをねらいました。次にはドイツをねらって、ドイツに入り込むことによってEEC市場を席巻しようとしておるわけであります。その次にねらわれる、と言うと語弊があるかもしれませんけれども、アメリカ資本、アメリカの世界企業がねらっておるのは、日本であります。言うまでもなく、日本に進出することによって東南アジア市場を席巻しようというものではないかと私は思っております。そこで、世界企業の進出というものが、いわゆる第二の黒船といわれるほどに深刻なものであるということにつきましては、政府においても、また一般においても、非常に認識が甘いように私は感じますので、具体的な例をきょうはいろいろと取り上げて質問をしてみたいと思います。  ドイツに入っていった外国資本、これはもちろんアメリカだけではありませんが、よその資本も入れましておおむね千三百億マルク、約十二兆円といわれております。全体の資本の一〇%を占めております。これだけの大きな力が入ってきておる。そこで、まず最初にお伺いをします。大蔵大臣、日本の全法人の資本額というものは一体どのくらいございますか。
  306. 水田三喜男

    水田国務大臣 全法人の資本額は七兆三千億であります。
  307. 竹本孫一

    竹本委員 法人資本では七兆円、あれこれ入れましても、持っている資産は十一兆円ぐらいだと私は理解いたしておりますが、いま申しましたように、ドイツに入っていた外国資本だけが大体十二兆円であります。そこで、七兆円もしくは十兆円程度の日本の産業を席巻するということになれば、これはきわめて簡単なことではないかという点を私はいま強調いたしておるわけでございますが、これだけの深刻な理解を持って取り組まれておるのであるかどうか、もう一度通産大臣に伺いたい。
  308. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 アメリカ資本か西ドイツ並びに英国へ侵入する、と言うと語弊があるかもしれませんが、上陸しておるということにつきましては、いろいろお説のとおりであります。したがいまして、わが日本のこれに対する心がまえということにつきましては、この西ドイツや英国の先例によりまして、われわれとしては非常に注意しなければならぬということについて、それぞれ対策を講じておる次第であります。
  309. 竹本孫一

    竹本委員 政府がどの程度注意を払っておられるかということにつきましては、後ほど具体的に項目をあげて御質問をいたします。  そこで、外務大臣もお見えになりましたから、先ほどの話に返りまして、もう一度お尋ねをいたします。資本の自由化ということは、国際条約上の義務であるという理解でやっておられるか、あるいは単にクラブに入ったのであるから、OECDのゆるやかなクラブに入ったようなものであって、道義的な考え方で取り組んでおるという程度のものであるかという点が一つ。先ほど経済企画庁長官は、BPリーズンということを中心に御義倫になりましたけれども、これはやはりどこまでも為替管理の関係から出てきた問題でありまして、資本自由化の基本的な問題とは観点が違うと思いますが、この点についてはどうであるか。この二つは先ほど御質問いたしましたが、時間もありませんので、あわせてもう一つお伺いをいたしたいと思います。  それば、政治的な面でございますけれども経済的な問題につきましては、これから具体的にお尋ねをいたしますが、政治的な資本自由化の影響というものがとかく軽視をされておりますので、これも一つ触れておきたいと思います。それは、例を申し上げますと、一九六四年イギリスの労働党政府ができましたときに、アメリカのドルが大幅に流出をいたしまして、イギリスの経済を一時混乱させたことがあります。さらに、イタリアの中道左派政権が、一九六四年六月に資本の逃避の圧力によりまして、その革新政策の展開を阻止されたこともあります。また日本におきましても、シベリアのパイプラインの問題等についても、いろいろなうわさが出てまいりました。資本の自由化ということをやれば、それが、後ほど申しますように、一国の経済に大きな影響を持つだけではなくして、それが資本の力によりまして、さらに政治的な影響まで持ち得るものであるということがわれわれは心配されるのでございますけれども政府はその点についてはいかなるお考えを持っておられるのか、これもあわせてお伺いをいたします。
  310. 三木武夫

    ○三木国務大臣 第一点については、OECDの自由化のコードの中に留保ができることになっておるわけですから、それに従って日本が留保をしたわけであります。そこで日本は、しかしながら、この自由化の線に沿うて、この趣旨に沿うて、面接投資の場合も自由化を促進するという覚え書きを出しておりますから、道義的な責任は持っておると思います。  第二点の日米通商航海条約については、議定書の中に、通貨準備の保護あるいはある水準を維持するために増加するという理由によって、いろいろ内国民待遇に例外的な事項が認められておりますから、日本通商航海条約に違反するという考えは、私は持っておりません。  また第三点の、資本取引の自由化というものが非常に政治的な意味を持つということ、それは経済ばかりでなしに、いろいろな点で政治、経済、なかなか分けにくいことは明らかでございますから、そういう点で影響は持ち得ると考えます。
  311. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣のただいまの答弁は、どうも納得ができません。きょうは法律論をあまり詳しくやろうとは思いませんが、ただ一つだけ伺っておきたい。  いまお話もありましたように、日米通商航海条約第七条ということで、ナショナル・トリートメントの話について例外規定がありますのは、あくまでも通貨準備の観点なんです。しからば、逆に伺いますけれども政府は自由化対策には通貨準備の問題として取り組んでおられますか。
  312. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この説明は、なかなか回りくどい説明を実際問題としてはせざるを得ないのです。まあ回り回ってきて日本の経済が悪くなってくれば、通貨準備にも影響するという、相当――簡明直截になかなか言うわけにはいかないので、それがいろいろ回り回って通貨準備に影響するという説明を従来いたしてきておるわけでございます。
  313. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣の御答弁はずいぶん回り回った御答弁でございます。しかし、私は、この際時間もありませんから、実は自由化の問題で経済界は非常な心配を持っておりますので、そちらに重点を置いて深く突っ込みませんけれども、回り回っても、最後まで第七条の規定というものは通貨準備であるという性格がはっきりしておりますので、この解釈については、もう少し端的な御説明を用意なさらないと、国際条約上の義務の問題ですから、私は国家のためにも決して有利ではないと思います。そのことだけ申し上げて、さらに外務大臣に、続いてASPACの演説について御質問をいたしたいと思います。(「名演説」と呼ぶ者あり)いまお話がありますように、たいへん名演説であったと私は思います。しかし、私、なおいろいろもの足りないものを感じますので、若干その点を触れてみたいと思います。   この点につきましては、ベトナムの戦局に関するわれわれの考えをひとつ申し上げないと話が進みません。そこで、防衛庁長官もいらっしゃいますか。――私はベトナムの問題について、具体的にわれわれの考えを申し上げてみたいと思います。私どもは、ベトナムの戦局について次のように考えております。  第一に、この戦局はアメリカが非常に不利な立場にいま追い込まれておるということであります。それはどういうことかと申しますと、アメリカの軍事エスカレーションというものは、相当行くところまでいっておる。防衛庁長官にお伺いするのでございますけれども、たとえば、現在四十七万の軍隊を入れておる。それに今後、マクナマラさんが現地に行きまして、さらに七万加えるとか、あるいは多ければ十五万増派をしようということを言っておるようでありますが、かれこれ合わせまして、軍人の数は六十万になります。昨年一年間にベトナムに落とした爆弾は、大体六十万トンと聞いております。六十万トンの爆弾といい、さらに六十万人の兵隊といい、さらに経済的に見ると、御承知のように、ことしの予算は二百二十五億ドルでありますけれども、これに追加要求がありまして、四十億ドル追加するか六十億ドル追加するかということが今日問題になっておる。もし六十億ドル追加するということになれば、合計二百八十五億ドルの戦費であります。大体毎日二百八十億円の金を使うというのであります。そういたしますと、われわれの常識で考えるところによれば、六十万人の兵隊、六十万トンの年間爆弾、毎日二百八十億円をこえる金を使う。それがためにアメリカの経済にも重圧を加えておりますが、大体この辺が軍事エスカレーションの限界ではないかと思いますけれども、まず防衛庁長官の判断を伺いたい。
  314. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 竹本さんの御質問に対しましては、答弁能力はないわけでございます。
  315. 竹本孫一

    竹本委員 御答弁がなければ残念でありますが、常識的に考えまして、私は、これはある力の限界点にきておると思うのです。  そこで、これは三木さんのASPAC演説に関連するわけでございますが、私は、アメリカの立場から考えてみても、この辺で、いままでのような力の政策一本やりでなくて、何らかの方向転換を求めるべき段階にきておると思います。しかも、これは特に戦局全体に対する政治判断で今度は申しますと、アメリカは、この際勝たなければ負けである。ベトコンのほうは、北ベトナムのほうは、負けなければ勝ちである。これは重大な問題です。アメリカがここで徹底的な勝利をあげて、この問題の積極的、具体的解決を得なければ、国内の経済の動き、国内のアメリカ世論の動き、さらに世界の世論の動きから考えてみまして、これはアメリカにとっては敗北になる危険が多い。ところが一方、北ベトナムのほうから申しますと、こういう形でゲリラ専門にがんばっておりさえすれば、そのうち世界情勢も変わるだろう、世界の世論も変わってくるだろう、すなわち負けなければ勝ちである、一方は徹底的に勝たなければ負けである。こういう段階に入りますと、私は、全体の戦局はむしろアメリカにとってあせりを感ずるような情勢ではないかと思います。そういう背景の中で三木さんの演説が行なわれたのでございますから、これは日本のためにも、あるいはアメリカのためにも、むしろ歓迎される演説ではないかと私は思うのです。三木さんが日本の外務大臣として、そういうことを意識して発言をされたのであるかどうか。私は二元外交とかなんとかいう問題はきょうは触れませんか、三木さんの御発言の背景にはどういう問題意識があったかということだけは、承っておきたいと思います。
  316. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ベトナム戦争について、これが軍事的にもう手詰まりの状態にきておるかどうかという判断は、おのおのこれは専門家の判断もまたなければなりませんけれども、こういう戦争状態が長期に続いていくということは、これはもう非常に不幸なことであるばかりじゃなく、非常な不自然なことでもありますから、私は、やはりこの機会に和平という世界の声がさらに一段と高まって、そしてベトナムの戦争が平和的に解決をされて、いま竹本さんも御指摘になったように、戦争に使う膨大なエネルギーが国内の建設に使わるべきである、これはもう世界の声だと思います。したがって、コミュニケの中にも、やはりベトナムの和平ということが相当強調されておったゆえんでございます。やはりベトナムは、両陣営とも軍事的には解決できぬ、こう言っておるのです。アメリカも、またハノイも、この問題を軍事的に解決することは困難であるというのが両者の認識でありますから、やはり平和的な解決を望みたい、この考え方が共同コミュニケの中にもあらわれておるということでございます。
  317. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、外務大臣にもう一つ重ねてお伺いをいたします。  私は、軍事的に解決するということは望ましくないということだけではなくて、ほとんどそれは、いまお話しのことばでいえば、困難になった。まあ、私に言わせれば、ほとんど不可能に近くなったということでありますが、この点は別といたしまして、そこでそれだけの認識の上に立たれるならば、コミュニケがもう少し前向きになり得なかったか、あるいはなさるべきではなかったか。特に私どもの印象で申しますと、これが反共声明にならなかったことは、三木外交の非常な成功であると思います。しかし、それだけにとどまっておって、消極的な成功はあるかもしらぬけれども、何だかもの足りない。と申しますのは、先ほど来申し上げましたように、大きな転換のチャンスにきておる。そのときに、さらに三木外務大臣が勇を鼓し、信念を貫かれて、なぜもう一押し進んだ、このアジアの勢力を結集してベトナムの知平のためにはこういう手を打つべきである、こういう手を打たせるべきであるという積極的なプッシュするものがなかったかということを、私は非常に残念に思うのです。  そこで、それと関連して申し上げますけれども、外務大臣、ウ・タント事務総長が言っておりますような、北爆を一時まずアメリカからやめろ、戦線はお互いに縮小しよう、そして平和のテーブルにはベトコンも入れなければならぬという、いわゆるウ・タント事務総長の三原則みたいなものが、だいぶ前に出ました。この考え方には、基本的に日本は賛成であるのかどうか、また賛成であるとすれば、これはASPACの会合の場合においても、もう少しその線で具体的な行動の結論を出さるべきではなかったか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  318. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ウ・タソト事務総長の最初の提案ですね。とにかく撃ち方やめろ。だから、その中には北爆の無条件停止というような、そういう端的なものではなしに、両方とも、とにかく撃ち方やめろ、停戦をしろ、話し合いをして休戦に持っていけ、これが最初のウ・タント提案であります。アメリカはこれを受諾したわけです。ハノイは受諾に至らなかった。これは私は非常に解決の可能性を持っておる案であると思います。それはアメリカの北爆無条件停止というばかりでなしに、そのかわりに北のほうも、その北爆を停止している時期に南に向かって軍事力を増強するようなことがあれば、そのいい悪いは別として、これはなかなかアメリカとしてもそう長期にわたって北爆停止というようなことはむずかしくなるかもしれない。そこで、無条件にやはり皆が撃ち方をやめて停戦して、話し合いに入るという案は、できれば、これは非常に現実的な案だと、日本政府はこれを支持したわけでありますが、残念ながらできませんでした。その後、ウ・タント事務総長の提案というものが、新聞紙上では少しその提案とは変化しておるように見受けられますが、ちょうどウ・タント氏が日本に来る予定であった。非常にいい機会である、ベトナムの和平について話したいと思っておったが、中東の紛争で来られなくなって残念に思っておりますが、最初のウ・タント提案というものは、非常に現実的な案だと考えております。  また、ASPACは、御承知のように参戦国が多い会議でありますから、やはりベトナムの和平について、今後和平実現のために最後まで努力するという共同コミュニケが出るということが、ああいう雰囲気の中では、なかなかそれ以上のことは私はむずかしい環境であると考えたわけでございます。
  319. 竹本孫一

    竹本委員 希望を申し添えておきますけれども、ウ・タント事務総長の考え方に、日本政府が現実的な提案として賛成をされる、支持をされる、非常にけっこうなことであります。ウ・タント事務総長が日本に見えましたときには、ぜひ総理も外務大臣もひとつ体当たりで、この辺でベトナムの和平のために日本も一役やるのだという呼応を示していただきたいことをお願いしておきます。そうでないと、三木外相のASPAC演説その他、ことばとして非常に美しいのでありますけれども、それは評論家のことばになってしまう。政治家のことばというものは、具体的行動に裏づけされなければならぬ。その裏づけが今後残されておりますから、ぜひそういう意味で御努力を願いたいと思います。  関連して、総理にお尋ねいたしたいと思います。まずお伺いしておきたいことは、総理はかつて、ベトナムの和平工作に対するフリーハンドをわれわれは常に確保しておかなければならぬと言われました。その意味においてお尋ねをするわけでありますが、総理が、ジョンソンさんがハワイにやって来て参戦国の会合を開かれたときに、日本がオブザーバーとして出席するといったような問題についても遠慮された。あるいは南ベトナムの首相が日本に訪ねてくるということについても、その政治的影響等も御勘案いただいて、えんきょくにこれを断わられたと私は理解しておるわけでございますが、そうした総理の態度、われわれはそれを貫いていただきたいと思うのでございますけれども総理が今後考えておられますアジアの旅行といったようなものが、そういう線と少し違和感がある、何だか方針が変わったような印象を一般に与えるのではないかと心配でございますので、念のため、そのことをひとつお伺いをいたしたいと思います。   〔委員長退席、赤津委員長代理着席〕
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このたびの東南アジア訪問、これは私のかねての希望でもあるし、また、相手の国からもそれを要望しております。これによりましていままでの外交の姿勢を変える、こういうものではございません。その点だけは、はっきり申し上げておきます。
  321. 竹本孫一

    竹本委員 姿勢が変わらないことを私も望んでおるわけでございますが、これに関連をいたしまして、最近私どもが非常に不愉快に存じております点をひとつ率直に申し上げたいと思います。それは、総理が南ベトナムに行かれる、社会党の委員長さんが北ベトナムに行かれる、外部から見れば、日本の外交についての考え方がばらばらであるような印象を与えて、私は、これを国際的、アジア的規模における日本外交の分裂行進曲であると言っておりますが、そういうようなことは、まことにこれは残念であります。しかし、総理のほうから、社会党の委員長に行ってほしいとか、行っては困るとかいうことを言われる筋合いでもないと思います。そこで私は、ここで一つ御提案を申し上げようと思うのでございます。  私どもは、かつて日本の軍部が戦争中にAの機関、Bのグループ、いろいろなものが、たとえば蒋介石のほうにも和平の工作の手を差し伸べた。蒋介石が、一体日本の外交は幾つあるのか、七つも八つも手が出てきておる、どの手を握れば日本と握手することになるのかといって、非常に深刻な問題を投げつけてきたことがあります。同様に、これからの日本のアジア平和外交というものが、政党の数ほどばらばらにあったのでは、私はたまらないと思います。日本の基本的な外交姿勢というものは、一本に集約をされなければならぬのではないか。私どもはナショナルインタレストの上に立って、少なくとも外にあらわれる外交の姿勢というものは、政党の数ほどたくさんあって、ばらばらな分裂行進をやるのではなくして、一つにまとまった姿において、アジアの和平のために、アジアの民衆の福利増進のために真剣に取り組むのでなければならぬと思います。そういう意味において、私どもは、外交は超党派でやるべきであるということを言っております。特に超党派で平和の使節を送るべきであると思うのであります。そういう観点から私が総理にお伺いをいたしたいのは、この際、社会党の委員長さんがおいでになるということについてかれこれわれわれ他党から言うことはできませんが、逆に、行くほうから総理のほうにあいさつに行くべきだと意見が一部にあるのは、当然であります。しかし、だれが先にあいさつに来るべきであるとかなんとかいったような問題は、末梢的な問題でありまして、この辺で日本の外交を一本の姿にまとめて、アジアの平和、ベトナムの和平のために真剣に取り組むのだ、この姿勢を示すことが一番大切であると思いますので、私は、党派のいままでの行きがかりとか、過去の形式的な議論は別にして、この際はひとつ各党の首脳部をまとめて、そしてアジアの和平、特にベトナムの和平の問題についての大かたの考え方を集約されて、そのまとまった日本の外交方針の一つとして、ある人は南ベトナムに行く、ある人は北ベトナムに行く、ある人はソ連に行く、ある人はアメリカに行く、こういうようなまとまった日本の外交方針の中で、各党がそれぞれの持ち味を生かしながらアジアの和平のために真剣に取り組む、こういう一つの姿を打ち出してもらいたい。そのためには、何と申しましても政権を担当しておられる佐藤総理のほうからそういう動きを、それこそ朝のティーパーティでもけっこうです、何の形でもけっこうですが、具体的にそういう手を打っていただくことはお考えいただけないかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  322. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外交が一本に集約されること、これはたいへん望ましい、好もしい状況でございます。そういう意味でこれから私どもは努力し、そしてそれの成果があがればたいへんけっこうなことだ、かように思いますが、現実にはなかなかむずかしい点があり、ただいま竹本委員も言われるように、各党のそのあり方でただいまの外交がそれぞれ展開されるようだと――ただ、外交権を持つ政党とそうでないものとの間に、相手方が受ける印象もいろいろあるだろう、かように私思いますが、一本に集約されないところに、今日の悩みがあるように思います。
  323. 竹本孫一

    竹本委員 私は、悩みを解決するために、総理に積極的な御努力を願いたい。われわれの比社党は、申すまでもありませんけれども、そうした場合、あるいは前の西尾委員長、あるいは現在の西村委員長は、あくまでも超党派の国民的な利益の上に立って真剣にこの問題を考えて、御協力すべきものは御協力するんだということを申し上げておきたいと思います。  そこで本論に入りまして、私はさらに進めまして、資本の自由の問題について申し上げますが、このことの根本は、アメリカの世界企業、ワールドエンタープライズにあると思うのです。その生産力の余力をもって国外にどんどん進出してくる。ところが、それはどこまでもエンタープライズであって、私企業なんです。アメリカの一つの企業なんです。しかも、それはまたそういう形において、その大きな力で、先ほどドイツの例を申し上げました、あとで詳しく申し上げますが、アメリカが出てくる、侵入ということばもありましたけれども、そういうふうに出てくる。そうしますと、受ける側から見れば、これは当然エコノミックナショナリズムというものが台頭してこざるを得ない。ところが、ほんとうに世界平和を愛するわれわれの立場から申しますならば、アズリカの世界企業が自由にどんどんのしていく。それに対して、受ける側においては、その資本の大きな圧力の前にみずからを守っていこう、あるいはみずからも立ち上がって戦っていこうということのために、不当にエコノミックナショナリズムというものが台頭する危険があるが、これはほんとうの意味で世界の平和、アジアの繁栄のためにはプラスでない。  そこで外務大臣にもお伺いをいたしたいのでございますけれども、これから一番大きなわれわれの外交問題というものは、あるいは世界政策における課題というものは、ワールドエンタープライズが自由に伸びても、相手の国の産業を押しつぶす心配がないように、したがって、エコノミックナショナリズムが台頭する余地のないように、新しい世界秩序、すなわち、かつて産業資本ができたときには、封建国家ではもうまかないができませんので、民族統一国家ができました。いまその民族国家の中にある企業がワールドエンタープライズになった。そうなれば、当然新しい世界の秩序というものが考えられなければならぬ。これは今後の私どもの外交、あるいは世界政策の上における一番大きな具体的な課題であります。その点について、一体日本の政治、日本の外交はいかなる構想を持っておられるのか。たとえば、具体的に申します。国連の改組ということについて、どういうお考えを持っておられるか。あるいは非核クラブの結成ということについて、どういうお考えを持っておられるか。特にワールドエンタープライズが都合のいいところだけ食い荒らすということでは困りますので、いわゆるプレビッシュの国連の買切開発会議といったような構想について、どういうお考えを持っておられるか。四番目には、アメリカの技術が非常にすぐれておる、これがために、ヨーロッパのほうはいま非常な犠牲を受けておりますので、第二の技術マーシャルプランをやれ、それでなければヨーロッパの経済成長は停滞する。現に、御承知のようにフランスの経済成長率なんというものは、設備投資でも、去年八%ぐらいあったものが、ことしはその半分ぐらいになりました。鉱工業生産成長率も、ぐっと落ちております。それはいろいろ原因があるでしょうけれども、一つには、技術の独占といったような面が相当あるらしい。そういう点を考えますと、やはりかつてはドルがアメリカに偏在したために、ドルの再配分をしなければ世界の新しい平和はできないということになった。同じように、技術をアメリカが独占しているために、このアメリカに向かって技術の開放を叫ぶのでなければ、その他の国は安心してエコノミックナショナリズムに走って自分たちの経済をまかなうということができません。そういういろいろな観点から、結論だけでけっこうでございますが、新しい世界企業にまで発展するアメリカ資本主義の現在の段階において、われわれは当然新しい世界秩序というものを考えなければならぬではないか。その秩序の中のにない手としての国連の改組の問題、非核クラブの問題、プレビッシュの国連の貿易開発会議の問題、いま申しました第二の技術マーシャルプランの考え方について、どういうお考えであるか、また、これからどういうお取り細みをなさろうというのであるか、承っておきたいと思います。
  324. 三木武夫

    ○三木国務大臣 広範な、たいへん世界政策全般に触れた御質問でございますが、一口に申せば、いま御指摘のように、経済的な意味におけるナショナリズム、これはやはり当然にあるわけであります。そのナショナリズムがインターナショナリズムとの間に調和を保っていく、そのためには、日本側からいっても産業の体制が問題であるし、また外資も、入ってくるときの一つのビヘービアといいますか、そういう態度というものが問題である。だから、ナショナリズムを全然なくするというようなことはできるものではありません。それはやはり世界全体の経済発展の中に調和を保っていかなければならぬと思うのでございます。  第二の御質問の、国連の問題、国連は人によったら非常に無力ということで、批判もありますけれども、これはやはり、これにかわる国際的な平和機構というものは、われわれ考えられないのでありますから、国連というものが、やはり唯一の世界的な平和機構として――国連のいろいろな内容について、時代の進運に合わないところは改組をいたしていかなければならぬと思いますが、いまここで、こういう点は改組すべきだという結論には、まだ達しておりません。  第三の、非核クラブ、これがやはり核兵器の拡散を防止しようという意見については、世界のほとんどの国が意見の一致を見ておると思います。しかしながら、核を持たない国々がクラブをつくって、そうして団体の共同の行動をとるということについては、非核保有国の中にも、いろいろな立場によって利害が違うわけでございます。したがって、これがクラブを形成して団体行動をとるということは、現実には私はできないと思います。原子力の平和利用の面などに対する機会均等、こういう点で連携をとることは可能でしょう。しかし、クラブをつくって団体行動というものは、現実にできない。  それから、国連貿易開発会議、これはやはり南北問題というものが世界の一番の中心課題になっておるし、世界の平和もこの面からくずされる危険がありますから、この国連貿易開発会議というものは、また二月にはニューデリーで開かれるわけで、日本も準備を整えて、この世界の大きな流れを踏まえた上で、これに協力をすべきものだと考えるわけでございます。
  325. 竹本孫一

    竹本委員 外務大臣の御意見に必ずしも賛成でない問題もありますけれども、論争の点はきょうは避けまして、さらに第二段の問題に入ってまいります。  そこで、経済企画庁並びに通産大臣にお伺いをいたしますが、資本自由化のこの過程において、外資がねらっておる日本の産業分野はどういうものであると考えておられますか。
  326. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お答えいたします。  アメリカ資本が欧州に進出した状況を見ますと、自動車工業、あるいは機械工業、石油化学工業等の化学工業、それから電子計算機等の電子工業、電気機械工業のような成長産業に集中しておるようであります。したがいまして、日本に対しても、やはりこういうような業種に向かって資本進出するのではないか、こう考えております。
  327. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま通産大臣の答弁されたとおりだと思いますが、少し別の観点から申しますと、非常に特殊な技術を持った中小企業、それから、これから発展しそうな流通機構、そういったようなものもまた関心の対象になるのではないかと思います。
  328. 竹本孫一

    竹本委員 食料品についてはどう見ておられますか。消費財産業についてはどうでありますか。原子力産業についてはどう見ておられますか。この三つをお尋ねいたします。
  329. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 食料品につきましては、御承知のように、わが国の食品加工に関する部門の発展が非常におくれておりました関係もありまして、やはり目をつけてくるところではないかと思います。原子力産業については、これからの産業でございますから、それも考えられることでございます。  もう一つ、何とおっしゃいましたか、恐縮でございますが……。
  330. 竹本孫一

    竹本委員 消費財。
  331. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費財につきましては、化粧品でございますとか、そういったもの、あるいは紙でありますとか、そういうものは、やはりおくれておるほうの産業でございますので、ことに中小が多うございますから、やはり着目をするところではないかと思います。
  332. 竹本孫一

    竹本委員 一つお伺いいたしますが、いま大体あげられたものが私もねらわれておると思うのです。そこで、君らはねらわれておるぞということについて、政府はそれぞれの産業部門に、何らかの警告か指導をしておられますか、おられませんか。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  333. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 資本の自由化の問題につきまして、まずわれわれは、日本の産業に対しての心がまえと申しますか、そういうことについて注意を促しております。問題は、外国の資本が入ってくるにつきましては、一方においては歓迎すべき点もあります。それは技術の開発、あるいは資本力の増大、あるいは経営力の改善というような点において、われわれは資本の自由化を歓迎いたすのでありますが、同時にまた、外国資本の日本進出に対しまして、日本の経済の混乱ということも考えられるのでありますからして、そこで、日本の経済の混乱を紡ぐということについては、それだけの心がまえをしなければならぬという点において注意を促しておるのでありまして、その注意は、まず第一には、体質の改善あるいは産業構造の改善というようなことについて注意を促しまして、外国の企業に対しての競争力を持つようにしなければならぬというような注意を促しております。
  334. 竹本孫一

    竹本委員 当然の御措置だと思いますが、私が聞いているのは、それだけではありません。体質改善が必要だというようなことは新聞でも書いておりますし、政府ももちろん御指導になっておるだろう。しかし、私が先ほど来申し上げておるのは、いわゆる第二の黒船という問題に関連をいたしますが、たとえば、一つの例を申し上げます。  アメリカ企業が、西ドイツにおいて市場占有率の激しい、高いものを申し上げますと、たとえば事務用の電子機器、資料の分類整理機、制御技術の部門等では、実に八五%から九〇%アメリカ資本がいま押えておる。自動車については、いろいろ議論もありますけれども、大体四〇%ぐらいを押えておる。石油につきましては三五%といわれておる。ガラス工業についても大体四〇%と見られておる。こういうふうに、アメリカ資本といいますか、外国資本は、きわめて集中的に、きわめて計画的にねらい撃ちでくるのです。ねらい撃ちでくるときに、一般的な体質改善のお説教をしておっても間に合わない。  そこで私は、総理にもう一度要望申し上げますが、私は、やはりドイツの例、フランスの例、欧州の例を見て、外資がどこをねらってくるかということは大体見当がつくのです、いま御答弁がありましたとおりなんですから、もう少し具体的な指導というものをやらなければ、外資がくれば、体質が改善されていないと困りますよといった般論では間に合わないと思いますが、いかがでございますか。
  335. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 資本の自由化、これも準備ができていないものを――幾ら国際産業のあり方と申しましても、準備のできていないものを自由化するつもりはございません。ただいまその準備、それを急ぐという、そういう意味の菅野君のお答えでございます。したがいまして、政府が今日方針としてきめましたものは、まことに程度の低いものであって、あるいは各国が失望したかもわかりません。しかし、エコノミストなどの批評では、とにかく、程度は不十分だが、しかし、その方向へ向かって門戸を開いたということ、これはたいへん喜ぶべきことだ、かような意味で歓迎はしております。
  336. 竹本孫一

    竹本委員 せっかくの御答弁でございますけれども、いわゆる程度が低くて、私は、日本の取り組み方はあまりにもおそく、あまりにも不徹底であるという点を心配いたしますので、なお若干の質問をいたしてみたいと思います。  国際競争力が引当についてきたというような雑誌の特集号もあります。あるいは、政府筋のいろいろ意見も散見されますが、そこでこの際、もう一度それを集約してみたいと思うのでございますが、私は、たとえば輸出が自億ドルになったとか、六〇年から六五年までの間の輸出の増加の要因は、その五三・七%までか競争力が強くなったために伸びたのである、こういうふうな見方を通商白書その他ではしておられる。これも一つの楽観の材料でしょう。また、生産性が、この数年の間に二倍半もしくは三倍半に伸びたということも一つの根拠でありましょう。さらには、輸出の六四%までは重化学工業品になったということで、日本の体質は非常に改善されたというお考えのようであります。しかし、私の指摘したい点は、その点もそうでありますけれども、もっと暗い面もひとつ正直に、客観的に見なければいかぬじゃないかという点であります。  たとえば、その第一点は、輸出が増加したという点でございますけれども、どこに向かって出たかというと、七三%まではアメリカと東南アジアでありまして、最近における全部が、それがベトナムのおかげだとは申しませんけれども、非常に片寄ったものであって、ほんとうに日本の産業競争力が強まったおかげで世界市場に伸びておるとは受け取れない、これが第一点であります。第二番目には、重化学工業品が六四%まで占めるようになった、輸出の中で、貿易構造の中で、といいますけれども、アメリカ市場におけるシェアは、日本はむしろ下がっておる。外国のほうがもっと伸びておるという点は、一体どう考えるのであるか。さらに、設備の生産性、労働の生産性というものは、はたして日本はそれほどすぐれたものであるとお考えであるかどうか、これも大きな疑問があります。さらに、自己資本の問題、先ほど来お話も出ておりますけれども、あるいは内部留保の比率の問題、金融費用が一〇%を越しておるといったような問題、こういうような問題を見れば、総資への利益率は、言うまでもなく、われわれは企業の体質をよくするんだとおっしゃいますけれども、現実にはあまりにもよくなっていたい。この点、相当短期間に、しかも計画的に準備を整えられるつもりであるか。私がいま申しました強みとしての点も、私は率直に認めておりますが、特に私が日本産業の弱みとして指摘いたしました点については、経済企画庁や通産大臣はどういうお考えを持っておられるか、お伺いをいたしたい。
  337. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お答えいたします。  日本の輸出が主として米国や東南アジアへ行っておるということの御指摘がございましたが、米国へ日本の輸出が相当たくさん行っておるということは、日本の企業がそれだけ進んでおるということを意味すると思うのです。日本よりはるかに企業が伸展しておる米国へ、日本の輸出品がたくさん行っておるというのでありますから、それだけ、あるいは鉄鋼、あるいはその他綿製品にしても、日本の産業のほうがすぐれておるということを意味しておると思います。したがいまして、今日は日本の重化学工業が発展してまいりまして、輸出品も重化学工業品が重要な要素を占めてきたのでありまして、それだけ日本の産業というものが発展してきておるということを意味すると思うのであります。が、しかし、そこで設備の生産性あるいは労働の生産性というような問題につきましては、これはまだまだ私は劣っておると思います。たとえば今日、国民総生産額の一千億ドル以上をあげておる国は、世界で四国ありますが、西ドイツと日本とが相拮抗しております。それにつきましては、西ドイツは日本の人口の半分であって同じ生産額をあげておるということは、それだけ西ドイツのほうでは、いわゆる機械を使用する生産が多いということを意味するし、あるいは労働の生産性が高まっておるということを意味すると思うのであります。でありますから、国民総生産額は西ドイツと同じであるけれども、しかし、設備や、あるいは労働の生産性ということについては、私は決して西ドイツよりすぐれておるとは考えておりません。そういう点において、今後大いに検討しなければならないと思っておるのであります。そのほか、あるいは金融の問題などにつきましても、なお考えなければならぬ問題が多々あるとは思っております。  そこで要するに、今後日本の企業をもっと発展せしめるという点におきましては、やはり技術の開発ということが先決問題だと思うのでありまして、そのほか、企業能力を改善するというようなこと、そういうことについては今後一そう努力して、そうして第一流国として企業の発展、産業の発展を期したい、こう考えておる次第であります。
  338. 竹本孫一

    竹本委員 なるべく時間を倹約いたしまして、議論にならないように進めてまいりたいと思いますが、大蔵大臣にひとつ伺いたい。  いま申しました自己資本、内部留保あるいは金融費用等の問題と関連をいたしまして、一つの例を申し上げます。御承知のように、八幡製鉄の場合で自己資本は二九・六%、三〇%を割っております。通産省の企業調査課でおやりになった調査によって私は見たのでありますけれども、USスチールの場合には、自己資本が大体六八%、ちょうど三と七が逆になっております。そういう情勢であります。特にまた驚きましたのは、剰余金が、八幡製鉄の場合にはわずかに四%しかありませんけれども、USスチールの場合には四四%、十倍あります。逆に八幡製鉄の場合には、借り入れ金が四〇%を占めておる、こういうような調査が通産省の調査でもあります。これは大体事実に近いし、ただに八幡製鉄や日立だけの問題ではなくして、いわゆる日本の企業の体質の問題、財務構成の問題として一般的な傾向であると思います。そういう点から、これはやはり資本の自由化ということに備えて、金融の体制をいかに整備をするかということは、企業の体質改善の上からも重要な課題であると思います。その点から見ますと、最近になりまして銀行の集中合併ということが非常に議論になってまいりました。確かに銀行の数が多い。昭和元年には千四百からありました銀行が、昭和十年には四百六十六に減ったはずであります。それが最近は、あれこれ数えてみますと、八千の数を数える農協は別としましても、預金を預かるものが多過ぎる、金を貸し出す機関が多過ぎる。その過当競争によって、金融のコストがますます高くなっておるわけであります。その金融機関の集中合併ということがいわれてはおるのでありますけれども大蔵大臣、この際一体どういう方針でこれを集中合併、自由化に対応する姿勢に持っていかれるつもりであるか、基本の方針、特にいつごろまでにそれをやられるつもりでありますか、その時間的見通し、さらに三番目に、日本の金利水準が高いことはもう常識でございますが、特に長期金利水準は、いつまでにどの程度まで下げて、国際競争力に耐え得る姿勢に持っていかれるつもりであるか、金融再編成についての大体のお考えを、この際あわせて伺っておきたいと思うのです。
  339. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本の企業が国際競争に耐え得るように体質ができておりますれば、この資本の自由化をやってもそう心配はございませんが、今回の場合、私どもは、業種について非常な吟味をいたしまして、結局、新たに日本の中に外資の合弁会社を許すというときに、一〇〇%の資本をもう自動承認するという業種は十七種類に限定いたしましたし、それから、合弁会社、五〇%の外資は自動承認するという業種を三十三業種、計五十種類の業種しか選べませんでした。それ以上の自由化ができなかったということは、日本の企業の全般がまだ国際競争に耐えられるような体質を持ったものではないということでございまして、これを急速に耐えられるようなものにしていきたい。一、二年の間に、企業も努力するし、政府もいろいろな施策をやって、そうして努力した結果、その成果を一、二年の間に見直す、そうして、さらに新しい業種の自由化を拡大していくというようなことで、昭和四十六年までに、相当多数の業種を自由化に耐えられるように育てていきたいというのが、大体私ども考えでございます。  そこで、政府は国際競争に耐え得るような企業体質をつくっていくのに、どの点に注意しなければならぬかということでございますが、私どもの研究したところでは、やはりここで国産技術の研究、開発ということに力を入れなければならぬということと、もう一つは、いまおっしゃられた金融の問題でございまして、やはり日本の金利を国際水準にする、特に長期金利を国際水準まで持っていく仕事というものが重要であるというふうに考えまして、ただいま中小企業の金融機関については、金融制度調査会にいろいろの問題を諮問しておりまして、この秋までには答申を得られるということになっております。これが得られましたらすぐ、ただいまおっしゃられたような問題、日本の金融機関を今後どういうふうにいろいろ編成していくかというような問題に私どもはとりかかりたいと思って、ここにこの諮問をいたして、そうして自由化に対応するこれからの金融体制のあり方というものに取り組みたいと考えておりますが、時期をいつにするか、いつごろにこの結論がつくかということはまだわかっておりません。できるだけ早くこの体制に取り組みたいと考えておる次第でございます。
  340. 竹本孫一

    竹本委員 経済評論なら別でございますけれども、政治の取り細み方としては、やはり金融再編成も、ほとんどすべてを答申待ちということでは非常に残念なあり方でございまして、やはり、大体いつごろまでに、どの辺までは金利も下げるという方針を政府が持って、これで指導していただくように私は希望をするものであります。  さらに先へ進みまして、資本力の相違の問題について、先ほど五十の業種について自由化をするにとどめた事情についてもお話がございましたが、私は、その五十の業種についても、なお若干の不安を持っております。それは規模の利益あるいは資本力の相違というような点からでございますけれども、一つの例を申し上げますと、自動車の場合にも、トヨタがいま七十万、日産が六十万、東洋工業が四十万といったような規模のものでございますけれども、先般財界のほうで発表したものを見ましても、やはりこれは百万台でなければ問題にはならぬ。問題にならぬと言ったらことばが少し強過ぎますけれども、十分でないというお考えがある。これについて、私はやはり一つの不安を感ずるわけであります。また、造船業のごときにつきましては、特にいろいろ聞いてみますと、また雑誌等にも論文が出ておりますけれども、五十万重量トンのタンカーの場合でも、建造費は大体二百億円だ、運転費の資金を入れても三百億そこそこで大体でき上がっちゃうということを聞くのであります。三百億とか三百六十億円というとたいへんでございますけれども、アメリカ資本、国際石油資本からいえば一億ドルなんです。でありまするから、これはたいしたことではないので、先ほどドイツの例も申し上げましたけれども、容易に日本が押し倒されてしまう危険があるのではないか。いままで、特に資本の自由化と貿易商品の自由化と混同した考え方が日本には非常に多い。これは非常な間違いでございまして、日本は労賃が安い。いまではそうではないかもしれませんけれども、そういうのが一つの強みでありましたが、その安い労働力、あるいは豊富な労働力というものを、アメリカの資本が国内に入ってきて使うということになれば、われわれのプラスのものはマイナスになってしまうということを、深刻にこれは考えなければならぬという点でお尋ねをするわけでございます。資本力という点から考えると、自動車にしても、造船にしても、まだまだ非常な心配があるのではないか。特に先ほど経企庁長官からもお話がありました中小企業の場合には、特にこれは問題が深刻でありまして、消費財の部門にも入ってくる、あるいは流通機構にも入ってくる、中小企業もねらってくるといったような場合に、中小企業についても非常な心配があるわけでございますが、この辺についてはどれだけの警戒と準備を進められておるのか、ちょっと承りたいと思います。
  341. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 まず、自動車の問題についてお話し申し上げたいと思いますが、自動車工業は、御承知のとおり最近非常な発展をいたしまして、製品の品質や性能及び価格の点においては、大体国際的な水準に達しておると思うのであります。しかしながら、これを国際的な競争という立場から見ますと、外国の自動車会社は大資本を持っておりまするし、日本の自動車会社は、資本力の点においては劣っております。したがいまして、そういう点においての格差がありますから、私は、自動車工業というものはこのままではいけない、自由化を認めてはいけないという考えをいたしておるのでありまして、この国内の販売体制なり、あるいは新規の合理化投資というような点から、もう少し国際競争力を持つように自動車工業を奨励したいと考えておるのであります。大体自動車工業についてはそういうことを考えております。  それから、中小企業は、今後はいまのところでは自由化を認めない方針をとっております。これは先ほど申し上げましたとおり、体質の改善あるいは構造の改善等をはかりまして、そうして国際競争力を持つようになった場合に自由化を認めるという方針で、目下その体質の改善その他の点について競争力を持つように指導をしておるのでありまして、大体そうにわかに体質改善ができるものではありませんので、ここ二、三年の間に体質の改善をはかって、その上で自由化をやりたい、こう考えておる次第であります。
  342. 竹本孫一

    竹本委員 次に、技術格差について二、三伺っておきたいと思います。  原子力商船というようなものでも、日本のほうが、たとえばドイツよりも光に着手したといわれておりますが、でき上がるのはドイツのほうが数年先になってしまうというようなことでございまして、西ドイツの技術は、フランスやイギリスの対応力に比較して若干立ちおくれをしておる、すなわち、イギリスやフランスは、ドイツよりも先に行っておるというのでございますが、そのドイツに対して、また日本は非常な立ちおくれをしておるようでございますけれども、その点はそうでございますか。また、一体これはだれの責任でそういうふうに立ちおくれをしておるのであるかということについても、お考えを承りたいと思います。
  343. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 原子力の関係は、確かにアメリカとか英国あるいは西ドイツにおくれておることは事実であります。そこで、私どもといたしましては、新しい技術の開発に、官民一体となって総力を結集するような体制を整備して、追いつき、また追い越さなければならぬという決意を持って臨んでおるわけでございます。
  344. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、追いつき追い越す気魄は大いに壮といたしますけれども、一体、日本の予算の面ではどのくらいになっておるかということを、具体的に伺ってみたいと思います。主要国における広義の科学振興予算というものが国の予算に占める割合というものについて、最初に文部省にお伺いいたしたいと思います。
  345. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 通産大臣がお答えいたしましたように、技術開発ということが資本自由化に対してきわめて重要なことだと思います。現在文部省の担当いたしておりますのは、主として大学におきまする学術研究でございます。これも年々この増額に努力はしておりますが、ただいま十分でないのでございまして、大学におきまする科学研究費の増額につきましては、今後画期的な増額をはかりまして、この技術開発に向かいまして最善の努力をしてまいりたいと存じております。
  346. 竹本孫一

    竹本委員 文部大臣、具体的な御答弁がありませんでしたけれども、国の予算の中で占めておる科学振興費というものの予算は、大体アメリカが一五・六%ぐらい、また西ドイツが六・一%、フランスが五・七%であるのに、日本は三・四%であります。もともとおくれておる日本が、アメリカの五分の一、西ドイツやフランスの二分の一の予算で、追いつき追い越すとは、一体どういう計算でありますか、その辺を聞きたい。
  347. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 おっしゃるとおり、この科学振興費の投資、これは国の出すべき投資、あるいは民間の研究費の割合というものが非常に少ない。そこで、先ほど文部大臣もお話しになりましたとおり、ここ数年の間に、大体国民所得に対する研究投資の割合というものをば、現在は大体一・七%程度でございますが、これを二・五%の水準にまでぜひ持っていきたい、こういう考え方でございます。さらにまた技術の開発につきましては、何と申しましても、やはり官民総力をあげて取り組んでいかなければならない問題でもございますので、国として投資すべき金額あるいは研究費の助成等、あるいはまた、民間の研究費に対する税制上の優遇措置等もあわせて、強力な政策を実施してまいらなければならぬと考えております。
  348. 竹本孫一

    竹本委員 総理大蔵大臣にもよく聞いておいていただきたいのでございますけれども、もともとおくれておる日本の科学技術に対して、予算が先進国のあるいは半分、あるいは五分の一であるということで、私はどうして追いつくか、納得できません。これは資本の自由化というものが、半分は資本力の競争である、半分は科学技術の競争であるということについての認識が少し甘過ぎるのではないか、その点を非常に心配をいたすので、特にこの点を強調いたしておきたいと思います。何と申しましても、科学技術ということがこれからの資本自由化の過程において一方の大きな課題であります。  そこで、最近新聞で見ましたので私も気がついて調べてみましたが、文部省にお伺いをいたします。頭脳の流出の問題であります。何とかいう数学者が日本に帰ってくるというので、えらい感激美談の一つに数えられておりますけれども、わが国の頭脳の長期流出について、大体私は年千人、最近五年間に五千人の人が流れているというふうに――大学、研究機関、会社、合わせてでございますけれども、五千人も、年々千人も出ておるように統計では出ておるようでございます。この実態は一体どうであるか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  349. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 科学技術庁と共同いたしまして、頭脳の海外流出につきましていろいろ問題がございますので調査いたしました。三十四年から五カ年間にわたりまする海外に参りました学者の数は大体六千名でございます。しかし、その六千名の中で、向こうの大学、大学院で研究いたしましたりして二年以内に帰ってまいりましたのが約八割、残りの相当長く向こうに帯在し、または向こうで就職をいたしております者が、そのときの調査では三・二%、約百四十四名ということになっております。数から申しますと比較的に少ないのでございますが、しかしその中には、特に物理学者とか、そういった面におきましては優秀な業績をあげておる人がおるのでございまして、こういうふうに、やはり少数でございましても、向こうに定着をしまして、いわゆる頭脳の流出ということがございますのは、日本の産業面からいいまして、科学研究面からして望ましいことではないと存じます。したがいまして、これらの頭脳流出を防ぐためには、何と申しましても、国内におきまする研究者の、一面におきまして待遇でございますとか、研究費の問題でございますとか、研究条件を整備いたしまして、外国に流出することをできるだけとどめるように措置をしてまいりたいと考えております。
  350. 竹本孫一

    竹本委員 六千人の流出があるというお話でございますが、そのうち八割は何とか帰ってくるというのでございますけれども、全然帰らない、しかも優秀な人がおる。  そこで私は、総理にひとつお伺いをいたしたいと思いますのは、私ども、イギリスの労働党のあり方には、政治的にもあるいは経済政策の面でもいろいろと教訓を与えられると思っておりますが、特にウイルソン内閣あるいはウイルソン内閣首班、このイギリスの総理大臣のいろいろな言動の中で、私が一番注目をするのは、あのスカーバラにおける演説におきまして、イギリス労働党と科学尊命という演説をいたしました。これは社会的にも非常な反響のあった演説でございますが、そのウイルソンが言っていることばに、社会主義政党にはダダイツ、機械をぶちこわしたり、生産性向上に反対するといったようなことを入れる余地はないということを言っておる。これは非常に注目すべき発言でありますが、同時に、いまの頭脳流出の問題について、ウイルソンはこういうことを言っております。科学者よ、英国にとどまってほしい、英国を去ってしまった人々も帰ってくることを考えてほしい、これからの英国には諸君が必要なのであるからと、こういう呼びかけをいたしております。もちろんウィルソンは、ただにそういう演説をしただけではありません。イギリスは資本の自由化を前にして科学革命をやらなければ、イギリスの産業は国際市場に伍していくことかできないというので、御承知のように技術省をつくり、教育科学省をつくり、大学の研究を指導いたしておりますところのSRCをつくり、さらには全国研究開発公社もつくっております。それだけの受入れ体制、それだけの真剣でかつ大規模な科学技術開発に取り組み方をいたしながら、彼はこの呼びかけをやっておる。日本の頭脳流出が非常に悲壮感をもって叫ばれておるときに、日本の総理大臣は一体いかなる呼びかけをなさるお考えであるか、あるいはなさらないお考えであるか。イギリスのウイルソンのやり方についても、われわれ学ぶべきものがあるのではないかと私は思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。
  351. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国におきましても、頭脳流出、これはたいへんなことだ、こういうことで、あらゆる流出しないような対策をいろいろいま考え、また、それを実施する、こういう態度でございます。
  352. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、科学技術庁に、特に、並びにこれは政府全体の姿勢の問題でございますが、いま予算が少ない、三分の一、五分の一という問題も言いましたけれども、さらに考え方の根本が一つ問題であります。特に、私この際強調いたしたいことは、自由化のあらしの前に科学技術が大切である。民間におきましても、科学の自主開発ということに最近非常に力を入れてまいりました。けっこうなことであります。しかし、それはどの程度の期待が持てるか。先ほど二階堂長官は、追いつき追い越すという勇ましい御発言がございましたけれども、はたして民間の科学技術の自主開発で日本は先進国に追いつき追い越せるかどうかということを、これから具体的に伺いたいのです。特に私は、この際皆さんに強調したいのは、日本の過去の歴史をひとつ振り返ってみてもらいたい。民間の自主開発で技術がほんとうに急速に進んだという例はあまり聞きません。たとえば、いま世界でも第一位といわれている造船は、旧海軍が開発したものである。鉄道は国鉄がある。普通鋼は旧日本製鉄である。電信電話は電電公社がいま中心になってやっておる。電子顕微鏡は旧軍である。最近におきましてはYS11ですらも、これは民間だけではない、特殊会社でやっておる。過去において科学技術が急速に大規模に伸びたというのは、みんな国のてこ入れであります。国が中心になってやっておるものが多い。そういう例を日本の実情に即して考えてみた物合に、これからの猛烈な国際市場における競争に対処して、しかも、立ちおくれている日本の科学技術を国際的水準に持っていくということのためには、ただに民間の自主開発にまかせるべきではない。もっと積極的な国家的な企画と努力がなければならぬと思いますが、いかがでございますか。
  353. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 先ほど竹本さんもおっしゃいましたとおり、技術のおくれておることは事実であります。技術を制する者がその国の経済を制する、こういうことが最近国際舞台におきましても非常に論争されておりますが、私は、やはり自由化に対処する一つの基本的な考え方といたしましては、何といたしましても、わが国の自主的な技術開発ということに国も大きな力を入れるべきときがきたと思っております。また、最近民間におきましても、技術の開発につきましては相当意欲的な姿勢を示しております。相当な研究費もつぎ込んできております。そこで、国におきましては、やはり国が科学技術政策にどう取り組んでいくかということが、私は大きな問題であろうと思っております。このことについては、政府全体の責任において、総理も非常に強い考えを持っておりますので、そういう姿勢のもとに取り組んでいきたいと思いますが、また、民間における自主的な開発に対する助成あるいは融資、あるいはまた、税制上の優遇措置というものも積極的に考えていかなければ、自由化に対処する企業の体制というものは私はできていかないのではないかと考えております。私は、こういうことを考えまして、真剣にこの技術開発については取り組んでまいりたい、かように考えております。
  354. 竹本孫一

    竹本委員 この際、総理の御決意を伺いたいと思います。  いま二階堂長官は、国がどう取り組むかというような御答弁でございましたけれども、私が先ほど来、具体的な例を引いて、造船の場合も鉄の場合も申し上げたのは、国の一般的な科学行政に対するあり方を言っておるのではありません。具体的に取り組むというのは、国が取り組まなければだめなんだ、民間だけではだめなんだということを強調いたしておるのです。その点をひとつ具体的な例で、もう一つだけ申し上げて、総理の御決意を伺いたいと思います。  たとえば、これから先は、原子力産業というものはエネルギーの革命でありまして、申し上げるまでもありませんが、いままでの産業のほかにプラスアルファ、一つのものとして原子力産業が出てくるのではありません。イギリスのこの問題に対する取り組み方は、御承知のように、これは一つのエネルギー革命なんだ、これに成功しなければ、イギリスは生き残ることができないのだという真剣な取り組み方をいたして、国が先頭に立ってやっておる。しかるに、日本の原子力開発の企業間の競争を見てみますと、三菱原子力工業、日本原子力事業、これは三井系。東京原子力産業、これは日立。第一原子力産業、富士、古河。住友原子力工業、五つの原子力関係のものが互いに企業間の競争をやっておる。こんなぐうたらで、しかも資本の小さいものが五つ、これも分裂行進曲でありますが、ばらばらの体制で一体原子力産業に取り組む姿勢ができておると総理はお考えになるのかどうか。私が申し上げておるように、やはり国が中心になって取り組まなければ、将来イギリスその他を向こうに回して、原子力産業、エネルギー革命でわれわれが勝利することは、ほとんど不可能であると私は思います。  また、これから先は、一番大きな問題は電子計算機でございますが、IBMは、コンピューターの部門だけで年間の研究費は四百五十億円といわれております。しかるに日本の、六つかのメーカーがおりますが、その電子計算機のメーカーの売り上げが幾らあるかというと、向こうは研究費が四百五十億あるのに対して、日本は六つの会社の売り上げがわずかに百八十億円である。日本は国が小さいから、資本が弱いからといったのでは科学技術競争に勝つわけにはまいりません。弁解にはなりません。やはり現実に科学の成果をそこへあげなければ意味がない。そういう点から考えてみますと、この電子計算機の部門、原子力産業の部門、これからの科学技術競争における一番の中心的課題の分野においてもこんなに立ちおくれをして、こんなにばらばらの体制で取り組んでいく。それで一体、先ほど来の追いつき追い越せができるのかどうか、総理の御決意を伺ってまいりたいと思います。
  355. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど二階堂君が、国もまた民間も協力して技術開発をやるんだ、かように申しました。これも他の見方をいたしますと、一体基礎研究、こういうものは会社、民間においてはたしてできるだろうか、こういう問題があると思います。基礎研究、こういうような点については、やはり国が積極的にやらないとなかなかうまくできないだろう。しかし利用開発、こういうようなことになると、これはもう民間にまかしても、その点ではやれる。したがいまして、一がいに国でなければいかぬとか、あるいは民間でやれるんだとか、こういうことは研究の対象、性質を十分わきまえない議論じゃないか、私はかように考えております。そういう意味で、原子力研究所、これは国あるいは特別な機関でやっておる。民間のそれぞれの機関もいろいろ原子力の研究をやっておりますし、もう電力会社など、どんどん発電所をつくりつつあります。しかし、やはり基礎的な研究は、何としても国がやらなければならない。その辺も十分考えてこの問題と取り組むつもりであります。
  356. 竹本孫一

    竹本委員 総理の御答弁、基礎研究ということでございますが、私は先ほど例を申し上げましたように、日本の具体的な産業発展の歴史を見ましても、多くは軍国的な目的で軍がてこ入れをしておるのでございますけれども、われわれは平和に徹する、総理のたびたび御説明がありますように、この新しい民主政治の中で、やはり軍ということではなくして、国の公社的な性格のもので、国の力、国のてこ入れの中で科学技術を急速に伸ばしてまいりたい。それは基礎研究だけではない。具体的な産業分野において、先ほど指摘いたしましたように、原子力産業でも五つも六つもばらばらにできておるようなことでは、とうてい勝負にはならないのでございますから、さらに御検討を願っておきたいと思います。  最後に、科学技術に関する最後でございますが、もう一つ伺っておきたいのは、私は、この科学技術の行政のあり方について一つ注文があるのであります。これは先ほど、厚生大臣がたびたびかわり過ぎて、大事な厚生行政はめちゃくちゃではないかという御質問大原委員からございました。私、同感でございます。厚生省も大切なお役所でございますけれども、いま申しました意味において、日本の科学技術の躍進的な体制を整えるということになれば、やはり科学技術庁というものが大きな責任を持っていただかなければならぬと思います。ところが、その長官がかわり過ぎておる。時間がありませんから、私結論を申し上げますけれども、三十一年にできましてから十一年間に十六人の長官がかわっております。そういたしますと、平均をいたしますと一年続いていないのです。こんなことで原子力がわかるはずはない。中には、原子力産業があの人でわかるだろうかと、私がある大臣ができたときに聞いたら、いや、これから原子力を勉強するのだそうだと言った人がおりますが、大事な科学技術庁を、自分の勉強のけいこ台にされたのでは、国民はたまったものではありません。やはりこれはまじめに、科学技術というものはもう少し党派を離れて、それこそ、超党的にナショナルインタレストの上に立って取り組んでいただきたいと思うのであります。  そこで私は、将来のあり方について、一つ基本的な問題でございますが、総理にお伺いをいたしておきたいのは、憲法六十八条の問題であります。日本の政治には、ことしはまだありませんが、七月改造人事という定期異動があります。私は、こんなに国民をばかにした政治のあり方はないと思いますが、くだらぬ大臣ならば――そう言っては失礼でございますけれども、これは直ちにやめればいい。いい大臣なら何年間も続けてがんばってもらえばよろしい。それを、七月になれば、派閥の関係か党利党略か知りませんけれども、これを異動させる。そんなばかげたことは国民不在の政治でありまして、もう佐藤総理には二度と再びやっていただきたくないと思うのであります。そういう意味で、われわれは派閥や党利党略を越えて、特に科学技術については真剣に超党派で取り組んでもらいたい。そういうことを考えますと、憲法の六十八条のあり方というものを少し活用されて、御承知のように憲法六十八条では、大臣の半分は議員でなくともよろしいのだということが書いてある。私は、二階堂長官のことをかれこれ言うわけじゃありませんが、とにかくまじめに、科学技術がわかり、日本の科学技術の躍進体制に命がけで取り組む人を、憲法六十八条を活用しながらひとつ考えるべきではないか。十一年間に十六人も科学技術庁の長官がかわるといったようなでたらめなあり方は、この際改むべきではないか。総理のお考えを承っておきたいと思います。
  357. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 閣僚には定期異動はございません。憲法六十八条を活用しろという御意見は、よく伺っておきます。
  358. 竹本孫一

    竹本委員 次に進みます。  そこで、これから具体的に、さらに自由化の問題についてもう少し伺っておきたいと思います。政府は、先ほど来五十の業種について自由化をやられたということのお話がございました。五〇%のものもあり、一〇〇%のものもありますが、これからの方針としては、一〇〇%を考えていくのか、五〇%――五〇、五〇を中心に考えていくのか、併用でいくのか、あるいは、そういう基本方針を持たずしていくのかということを、ひとつ伺いたいのです。  時間がありませんので、私の考えを申し上げます。これはやはり外資五〇%主義ということでたいと、今後の産業のあり方としてはどうもあぶない。ヨーロッパのほうは、一〇〇%主義のものがだいぶあります。そこで、一部の短見者流は、いやヨーロッパでも一〇〇%やっているではないかと言われるのだけれども、これは国柄が違う。すなわち、ヨーロッパの国は、一〇〇%輸入して一〇〇%輸出すればいいのです。そういう意味で、一〇〇%主義は、むしろ自分の国のナショナルインタレストにプラスになる。ところが、日本はそういかない。そういう日本の特殊事情というものを考えると、日本は一〇〇%主義というような美しいことばにだけ酔っておるのは無理だ。あまり走り過ぎてけがをする。やはり日本の実力相応、もちろん前向きに、計画的に自由化に取り組んでいく道義的な義務か法律的な義務はあるわけでございますから、大いに取り組んでもらうことはけっこうでございますけれども、実力以上に走り過ぎてはならない。そういう点を考えますと、私は、この際、日本の自由化の基本方針としては、大体五〇%主義でいくべきではないか。特にヨーロッパにおきましても、先ほど申しましたドイツやフランスの苦い経験から、やはり日本のほうがりこうであったという批判すらあるわけでございますので、この辺では、まず政府の基本方針として五〇、五〇を原則とするのか、一〇〇%主義を目標とするのか、この辺の点を伺っておきたいと思います。
  359. 水田三喜男

    水田国務大臣 審議会の答申にもございますように、五〇%の自動認可し得る自由化を、まず昭和四十六年までにこれを広げていくというのが、大体の自由化の当面の方針になっております。
  360. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、その四十六年の問題を具体的に伺いますが、四十六年までに自由化の業種、品目というものを、ことしの秋か来年の秋、第二次のつけ加えといいますか、追加をなされる予定であるかどうかということが一つ。さらにもう一つは、四十六年になったならば、どのくらいの程度の自由化になるのか、その点も伺いたいと思います。
  361. 水田三喜男

    水田国務大臣 何種類までいくとかいうようなことは、まだ全然きめてございません。いずれにしましても、民間の努力、政府の努力によって、一、二年の後に見直して、そして、さらに業種をつけ加えるというような形で、昭和四十六年までには相当数の自由化業種をつくりたいということでございまして、全業種の何%まで持っていくとかいうような、まだそういうこまかい計画は立っておりません。
  362. 竹本孫一

    竹本委員 内容とパーセンテージの問題ではなくて、さらに私は、もう一つ具体的に伺います。時期は、たとえば通産省の熊谷企業局長は、新聞によれば、来年の秋にも第二次の追加をやるのだといったようなことを言っておるようでありますが、時期的には、次にはいつごろにその問題の追加なら追加があるのかということが一つ。さらに、具体的にいきますよ。原子力と電子計算機と航空機等については、四十六年の姿はどうなるのか。それから、流通部門、中小企業の業種については、その段階においてどうであるか、具体的に伺っておきたいと思います。
  363. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 企業局長が発表したことは、これは企業局長の意見として、来年の秋までには第二次的な発表をしたいという考え方を述べたのでありまして、いま事務当局は、そういうような一つの考え方で作業を進めております。しかし、はたして来年の秋に第二次の発表ができるかどうか、その点については、まだ確信を持っておりません。  それから、自由化の問題につきましては、四十六年までに、とにかく自由化のできるものを自由化をするのでありまして、自由化のできない、体質の改善とかその他技術の改善とかいうようなことについて、自由化をしては日本の産業が混乱におちいるというものは自由化はいたしませんから、自由化のできるものだけするということで進めております。したがって、まだ幾らできるというような、幾らのパーセンテージができるというようなことの発表はまだできないので、目下いろいろ研究中であります。
  364. 竹本孫一

    竹本委員 そうしますと、企業局長のは、まだ省の方針としてはまとまっていないということですね。――わかりました。  さらに、時間がないので質問を続けまして、国民の疑惑を明らかにしておきたいと思いますが、対内証券投資は、今回の措置で、御承知のように一般の業種が一五%から二〇%、制限業種は一〇%から一五%に広げられたようでございます。これについては、基本的には大体その辺が妥当だということか、あるいは、さらに二〇%なり一五%をもっと高めていくというお考えであるのか、その辺も伺いたいと思います。もしお考えがあるなら、その時期も伺いたいと思います。
  365. 水田三喜男

    水田国務大臣 わが国の株式保有が分散していることと、累積投票請求権の発生するのが二五%以上であるということから見まして、やはり経営権の問題から、これに影響のない範囲は大体二〇%であるというふうに考えて、いま一五%でございましたが、五%は引き上げる。それから、外国投資家が一人当たり五%という制限を七%まではいいというふうに緩和はいたしましたが、大体この辺によってそう心配な事態は起こらないというふうに考えています。また、これを実施して、その結果を慎重に見ましてから、将来のこの緩和率というものは考えていいと思いますが、当分この程度でいきたいと思っております。
  366. 竹本孫一

    竹本委員 具体的に伺います。第一類の業種は五〇、五〇ということでございますが、こちらの日本側の業者が経営難におちいる、資金難におちいったというような事情で、結果的にこれを外資に売り渡してしまう。これは具体的な例が御承知のようにございます。豊年リーバとかシモンズ東京ベッドとか目魯ハインツ、台糖ファイザー等々の具体的例がございますが、そういう形で五〇、五〇の原則が破れてしまう場合に、これを何とか食いとめる方法を考えておられますか、おられませんか。
  367. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいまのお話のように、そういう危険もあり得るということを考えておりますので、したがいまして、そういう場合には、できるだけ他の同業者によってこれを救済するとかいうような方法も考えてみたいと考えておりますが、また、政府といたしましては、政府の金融機関を動員するとか、あるいは中小企業の投資育成会社というものがありますからして、これをもう少し活躍さして、そうして日本の会社の身売りを防ぎたい、こう考えておる次第でございます。
  368. 竹本孫一

    竹本委員 今回の自由化業種として一〇〇%の自由化業種に入った、これがそういう部門で進出してきて、さらに他の部門、他の業種へ進出するということを企んだ場合には、たとえば、二輪車部門に入ってきて、今度は自動車へ出ていこう、こういったような場合には、それは押えるのですか、押えないのですか。押えるとすれば、いかなる過程を通じて押えるつもりでございますか。
  369. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 それは押える方針でおります。その点につきましては、具体的にどういうことでどういう方法で押えるかということについては、目下いろいろと研究中であります。
  370. 竹本孫一

    竹本委員 もう一つ具体的な例を伺います。外国の投資家が――株式譲渡制限の問題でございますけれども、証券取引所の内規であるところの株式の上場基準というものを改正しなければ、商法二百四条の関係でございますけれども、外国の投資家に対する譲渡制限というのはなかなかむずかしいが、へたに制限をすれば今度は、中小企業の場合には上場の心配がないから問題はないとして、それがある場合には非常な矛盾に逢着をします。その点は一体今後どうしていかれるつもりでございますか。あるいは、内規を変えて、別な指導でそういう問題には解決をはかる御予定でありますか。
  371. 加治木俊道

    ○加治木政府委員 譲渡制限の問題と取引所上場というものは、なかなかなじみにくい問題でございます。ただし、外国人だけについて譲渡制限が行なわれる。しかも、この譲渡制限の結果、市場内取引が行なわれても、買受人である外国人だけに取引の結果の経済的または法律的なリスクが、すべてその買受人のみにかかるというような方法が可能であるならば、必ずしも上場になじまないというふうには考えておりません。
  372. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんので、具体的な問題だけ二、三ついでに伺いますが、通産省では、最近において工作機械の十グループを集めて、中堅の機械の持ち株会社をつくろうという御意見を持っておられるということが新聞にも伝えられております。はたして持っておられるのかどうかということであります。  次には、持っておられるといった場合、公取のほうに伺いたいのでございますが、独禁法の第三条、第九条等の関係において、そうした中堅持ち株会社は矛盾が出てくるのではないかと思いますが、公取の御意見を伺いたい。
  373. 北島武雄

    ○北島政府委員 新聞で伝えられております持ち株会社なるものはどういうものか、私、よくわからないのでございますが、独占禁止法で禁止しております持ち株会社は、会社の株式を所有することによって、国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社、こういうことになっておりますから、もしそういう持ち株会社でございますなら、これは設立はできない、こういうわけでございます。
  374. 竹本孫一

    竹本委員 主たる事業にするかどうか、支配するとはどうかということについては、きわめて具体的なケースとしては問題が多いと思います。したがいまして、これは日本の産業の民主主義の一つのとりでであります独禁法の問題でございますので、ぜひひとつ真剣に検討を願わないと、とんでもない問題がそこに出てくるのではないかと思いますので、警告をいたしておきます。  なお、最後に、自由化の取り組み方の問題として、いまの中堅持ち株会社のようなもののほかに、最近いろいろの案が出ております。時間がありませんので、私の結論を申し上げますけれども、財界等で発表いたしておりまする、一つの輝業部門を二つか三つの会社にする、そして整理統合すれば、それで自由化のあらしに耐え得るのではないか、こういう考え方がありますけれども、私はこれに疑問を持っております。  第一の疑問は、はたして二つか三つにうまくまとまり得るかどうかということが問題。間に合うようにまとまるかどうかということが問題。第二には、まとまったものをごっそり外国資本がとってしまえば、こんなに簡単に、いわゆる日本侵略ができる場合はない。しかもこれは、こういう例があります。きょうはもう時間がなくなりましたからヨーロッパの例は申し上げませんけれども、具体的な例があることは通産大臣も御承知のとおり。したがいまして、財界で言っておる、業種別に大体二、三種類の大きな会社に集中統合合併をするという考え方は、第一に、いつできるかわからないし、第二に、できた場合、かえって外国資本の進出を、あるいは支配を招くことになりはしないかという点。第三には、国内の国民の立場を考えた場合にも、それは望ましいだけでなくて、特に問題になりますのは、外国の大きな資本  に、三、三の企業が集まったぐらいのことで、はたして太刀打ちができるかということが、やはりこれはシムカの例を申し上げるまでもなく、たい  へんな問題でございます。その点について、一体政府は、いま財界が言っておるような案を、案としてでなくても、あり方として、業界を二つ、三  つにまとめていくというような行き方について、どういうお考えを持っておられるか、基本的なお考えを伺っておきたいと思います。
  375. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 寡占企業のことについてのお尋ねと思うのでありますが、資本自由化に対して、外国が大資本を持っておりますからして、したがいまして、それに対抗する意味において、日本の群小の会社を合併して、そうして大資本の会社にしなければならぬという財界人の意見でありまして、私は、そういう点においては、これは必ずしも否定すべき問題ではないと考えております。がしかし、そこでせっかく寡占企業になったから、それがそのままそっくり外国にとられはせぬかという御心配でございます。これはドイツにおいてもそういう例はあったのでありますが、今日のドイツ人は、これではいかぬという、最近それに対する反抗連動か起こっておるのでありまして、私は、日本も、このドイツの先例にかんがみまして、おそらく日本人が外国資本に売り込むということの危険はないように思いまするし、また、そういうような危険があれば、政府といたしましては、極力これを防止したいと考えておる次第であります。  また、寡占企業になりましてから、私は自由競争を決して制限するものではない、こう考えておりますから、したがって、産業界が唱えておるような意味の寡占企業であれば、決してこれは否定すべきものでないという意見を持っております。しかし、この点については、もう少しわれわれも検討させてもらいたいと思っておる次第であります。
  376. 竹本孫一

    竹本委員 時間がなくなりましたので、最後に、私のこれは意見を特に申し上げてみたいと思うのでございますが、中堅持ち株会社といったようなものも独禁法に触れる心配もありますし、運営が必ずしもうまくいくとも考えられない。さらに、いまお話しの二、三の会社に集中合併をするというような行き方も、必ずしも適切でないということになりますと、これもやはりイギリスの例でございますけれども、イギリスは御承知のように、産業再編成公社というものを実現をしました。千五百億円の金を用意して、そうして、しかもこれは、自動車会社の場合には、具体的に、ただに近代化とか合理化ということだけでなくして、アメリカのクライスラーが魔の手を伸ばしてきたときに、政府がその中に介入をいたしまして、株の一部はおれが持つ、役員の一部は英国人から出す、外国の役員はこれまでだといって、イギリスの自動車産業の支配をクライスラーの手から押えるという手を打ちました。産業再編成公社というのは、イギリスの――きょうはそれが私のほんとうは結論でございますけれども、非常に力強いイギリスの合理化、近代化、集中化という問題のにない手として登場しておる。さらに、最近の自由化のあらしに対しましては、外国資本でイギリスの企業が乗っ取られるときには、その再編成公社が援助、協力を買って出て、国家の力で外国の魔の手をはねのけておる。これは具体的にその成果をあげておることは、通産大臣御承知のとおりであります。  そういう意味から申しますと、やはり持ち株会社とかなんとかいうものでなくして、日本がこの自由化のあらしに立ち向かう産業再編成をやるには、金融の再編成も必要でありますが、特に産業についてはイタリアのENIのまねをするか、イギリスの産業再編成公社にならうか、いろいろ行き方はありますけれども、要は、個人企業が集まったものではその資本力にも限界がある。幾ら大きな日立でも東芝でも限界がある。さらに、企業の性格からいって、公共的、国家的目的を追求するのには限界がある。どうしても国の大きな性格と力をそこに発揮するような、イギリスの産業再編成公社みたいな公的な機関というか、機構というか、たとえば、日本で申しますならば開発銀行、そういうようなものの性格を変えたものを中心にしたもので、自由化に取り組む一つの大きな足場をつくらなければならぬと思いますが、その点について、ひとつ基本的にそういう考え方を持っておられるかどうか、総理並びに通産大臣のお考えを承って、この問題については終わりにいたしたいと思います。
  377. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 あのように自由をとうとんでおる英国が、いまお話しのとおり、産業上の問題については、政府みずからが乗り出すようなことになってきたということは、これは私は、やはり世界の経済の大勢を暗示しておるものと考えております。したがいまして、日本におきましても、もちろん民間人にやってもらうことが多いのでありますが、今日いろいろの産業においても、官民一体でやらなければならない空気になってきたことは質実であります。したがいまして、たとえば、いま皆さん方の御審議をお願いしております繊維産業の特別措置法のような問題、これは従来紡績業というものは全く民間人でやった産業でありますが、今日では、政府の援助を得なければ構造改善ができないというようなことで、今度皆さん方の御審議をお願いしておるのでありまして、そういうようなことで、この産業については、政府もみずから乗り出し、民間人もまた政府と協力してやるというような空気がだんだんと醸成されつつあるということは事実であります。そういう点において、今後の日本の産業の再編成については、できるだけ政府が民間人と協力してやっていきたいというつもりで今後進む考えでおります。
  378. 竹本孫一

    竹本委員 総理のお答えがございませんでしたけれども、通産大臣が、自由をとうとぶイギリスにおいても、産業再編成公社を考えなければ自由化に対決ができないのだ、そこに世界経済の大勢を暗示するものがあるのだという御答弁がございました。ぜひ総理におきましても、その点をひとつ御理解をいただいて、国家的な規模において取り組みを願いたいと思います。  時間がまいりましたので、一口だけ、最後に米の問題でお伺いをいたします。農林大臣、一口だけです。  私は、自由化の問題で、米が一万九千五百円にきまるか、幾らにきまるかわかりません。しかし、かりにこれがきまったとしても、農民からいえば不満が強い。ところが、中小企業あるいは働く労働者、国民一般からいえば米は高い。農民からいえば米は安い。ここに問題があると思うのですね。  一体、日本の農業は――まとめて御答弁いただけばよろしいが、何年先になれば――いま日本の米は、アメリカ・カリフォルニアの米なんかに比べて大体倍です。年々一〇%ずつ上げていくと、あと数年たてば、いまが倍ですから、へたをすると四倍になってしまう。そんな高い食糧を国民に食えなんということは残酷ですよ。したがいまして、消費者の立場から考えるならば、米は高い。しかも、生産者からいえば米は安過ぎて困る。農民は年じゅうはち巻きをしなければ問題が解決しない。こういうあり方は、これは日本の政治の貧困をきわめて端的に物語っておると思うのです。農業の自由化も考えなければならぬ。ヨーロッパにおきましても、これが一番大きな政治の問題になっておることは御承知のとおりです。そういう観点から、自由化の一連の問題として考えるのでございますが、何年たてば日本は外国と国際的な比価において無理のない水準の米の供給ができるのか。自給率は米について九〇%、その他の食糧で八〇%、御承知のとおりであります。  一体、食糧の自給というものを考えておるのかどうか。食糧を自給しても、それが四倍も高い米ではどうにもなりません。一体、国際的なバランスのとれた価格で日本においては食糧の自給ができる日があるのかないのか。この問題は、農業がただ価格政策だけに今日はたよっておる。農民はしたがって、米の値上げをするためにはち巻きして東京に何万という人が繰り出してくる。これは、農業基本法はできたけれども、農業の構造改革の、ほんとうの意味の農業を近代産業として育て上げる裏づけのある政策がないからです。その点について、一体構造政策はどの程度の規模を何カ年計画でやられて、その結果、何年後には自給が量的にはできて、質的には、国際的に無理のない価格で米、麦が保障されるということになるのか、ならないのか、この点について、一点だけお伺いして終わりにしたいと思います。
  379. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 米の自給につきましては、ただいまの自給度は御指摘のとおりでありますが、経済社会発展計画等にもわれわれの見込み政府として言っております。私どもは、自給度につきましては、大体一人当たりの消費量が微減しつつありますけれども、やはり現在の程度の自給度、あるいはもう二%ぐらいは上昇をたどっていくのではないか、したがって、それに合わせますには、おっしゃいましたように、さっき私も申しましたが、つまり、価格政策だけではだめでありまして、当面価格政策、そうして、根本的には構造政策を推進することによって、経済社会発展計画が政府の意向を示しておるような過程をたどりつつ、自給度は維持していき得るものだ、そのように考えております。
  380. 竹本孫一

    竹本委員 以上、いろいろと申し上げましたけれども、自由化の問題は、日本の産業革命あるいは経済革命を招来するものである、この認識に立たなければ、私は、イギリスやあるいはドイツ、フランス等と国際市場において日本が競争することはできないと思う。ただに、価格政策や金融の再編成だけではありません。文字どおり産業の再編成、経済の再編成を一番焦眉の課題として取り組んでいただくように要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  381. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして質疑は全部終了いたしました。      ――――◇―――――
  382. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  予算実施状況に関する件及び予算委員会運営の改善に関する件以上二件につきまして、議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  383. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、閉会中審査案件が付託された場合、委員を派遣して現地を調査する必要もあるかと任じますが、その際の派遣委員の選定、派遣地の決定等につきましては、委員長に御一任を願い、議長承認を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  384. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時四十九分散会