○池田(正)
委員 この問題については、いま深く触れようとは思いませんし、
総理の御
答弁で、私はこれ以上申し上げません。
ただ私は、ここに特に注意を喚起したいことは、要するに、日中貿易を盛んにするためにあらゆる
努力を払うということは絶対に必要な条件でございますが、中国側から、あるいはLT貿易といい、あるいは
友好商社といい、
日本側を二つに扱っておる、これが問題なんです。二つの中国をつくる陰謀をやっておるというような
批判をわれわれは受けながら、相手側がそういう形をとっておる、これでよいのかどうか。さらに、最近は御
承知のように、その
友好商社の中からソ連邦と関係の深い貿易商社三社が除名をされて、取引停止を食った。まさに三つの
日本をつくった。もしも
日本でそういうような
態度をとったならば、中国側は、おそらくは三つの中国をつくる陰謀をやっていると言うでありましょう。私はこれに注目したいと思うのであります。しかし、このことはいろいろな問題もありまして、今日私の
立場からこれ以上この問題は触れようとは思いません。御
答弁も求めません。
そこで、次に
内政問題について若干申し上げておきたいことは、
内政問題は言うまでもなく、何といってもこれは社会保障制度及び公共事業、これが私は予算の面でも施策の面でも大きな二本の柱になる、かように
考えております。それでありますから、私
どもは今度の予算面で拝見いたしましても、埋設関係の建設省、農林省、その他すべてを含めて、おそらく一兆円をこえる、これだけの大きな予算を私
どもは審議しておるわけでございます。また一方、社会保障制度、福祉国家を建設するという目的のためには、あらゆる社会福祉事業というものをこれから幅広く、しかも、きめのこまかい施策をやっていかなければならぬというたてまえで進められておることは、今回の
政府
の提出されました予算から見ましても、たとえば厚生省関係で約七千億近い予算のように
承知いたしております。ただ、そこで私が特に閣僚諸君に注意を喚起したいことは、それは何か、なるほど
日本はいま経済的にも非常に発展しております。
したがって、予算規模も大きくなり、いろいろな新しい事業に着手し、民生安定への道をたどり、
一方、経済発展への
援助をやっている、設備、施設を行なっていくということは当然でありますが、しかし、ここで案外気がついておられないことがあるのじゃないか。それは何かというと、この五兆円の予算の中で一兆円余りの建設予算といいますか公共予算、七千億前後のこの社会保障制度の予算と、いずれも最も大きなウエートを持った数字でございます。しかるにもかかわらず、今日われわれが、たとえばこの議場においてもいろいろなきめのこまかい御
議論もあったようでございますが、地方に参りましても、ヨーロッパの先進国に比べて
日本の社会保障制度に使っておる、投資されておる金があまりにも少ない、また、設備が足りないということを常にある方面から攻撃を受けておるのであります。これは当然に、
日本の発展がいわゆる後進性を持っておるために、時
間的にもそこに手が及ばないということもございましょうが、最大の
原因は何かといえば、いわゆる公共事業予算、これ
一つ考えてみたときに、われわれは非常に
考えさせられるものが多いと思います。というのは、公共事業予算約一兆円前後の中で占める最もウエートの多いものは道路予算であります。あるいは建築なりすべてのものがありますけれ
ども、一例を私は道路予算にとるのでありますが、道路予算を見まして、これは残念ながら、西欧
諸国におきましては、すでに御
承知のように、ローマ帝国以来あるいはその以前において、中央
アジアその他の古い国家においては、今から何千年前にすでにあの大きな道路や上水道や下水道ができ上がっております。最近考古学の発展と古代史の研究の盛んになった今日、いろいろなそういうものがますます新しくわれわれの目の前に展開されておることは御
承知のとおりであります。そういうふうに、すでに過去においてでき上がっておった。なるほど最も新しいといえば、十字軍のためにつくった道路、その後ヒトラーがつくったいわゆるアウトバーンというようなものもございますが、それらも含めてヨーロッパやそれらの国々は、すでに、
日本で最も予算面でのウエートを持っておるそういう公共事業予算、上下水道をも含めて、そういうものがすでに要らなくなっておる。これは極端な言い方でありますけれ
ども、そういうものはすでにでき上がっておる。この二本の柱のうちの一本の、しかもウエートの重い公共事業予算というものはなくなっておる。このことを十分に
政府の閣僚諸君は認識して、
国民に十分に納得していただくということがまず必要であります。今日までこうした
議論がなされたことを聞かないことを、私ははなはだ遺憾に存ずるのであります。ただいま問題になりました水道の問題にいたしましても、御
承知のように、ロンドンの水道あるいはパリの地下の水道、今日船を浮かべて見物ができるというようなものは数百年前にでき上がっておるというような国国、それともう
一つ、これも案外気がついておられないのでありますが、気候風土の関係からいたしまして、
日本の道路をつくるにいたしましても、道路の建設費用が全く違うのであります。これは
日本の道路予算をこまかく見てみますとおわかりになりますように、畑地帯や砂丘地のようなところに高速道路をつくるということになりますと、大体メーター当たりが三万円前後であります。水田地帯になりますと、これが六万円から七万円であります。それは御
承知のように、一種の湿地帯のような状態でありますから、そこで倍以上かかっておる。もしそれ海岸線やその他を通す場合には、これが二十万以上にもなっておる。こういうことを
考えた場合に、ヨーロッパやあるいは
アメリカ等において、ある畑地帯でしかも雨量が少ない。雨量が少ないということ、これまた重要な要素なんです。御
承知のように、ヨーロッパの平均雨量は七百ミリであります。
日本の年間雨量は大体二千ミリ前後と私は
承知しております。そのために、いわゆる沼地に道路をつくるようなことになりますので、道路一本をつくるにしましても、ヨーロッパにつくる道路と
日本につくる道路とでは、その建設費用が倍以上かかっておるのであります。上下水道においてまたしかり、あるいは住宅を建てる場合にも同様であります。こういう地理的条件、気候的条件にある
日本が、今日この乏しい予算の中から建設を進めていくということは、これは非常にむずかしいことであります。このことをはっきり認識していただいて、そうすることによって、この社会保障制度に振り向ける予算がどうしても足りない、これはただ単に
国民所得の比較ばかりでは解決できません。そういうような問題か非常に多いのであります。これは、私いまきわめて簡単に申し上げましたけれ
ども、こういう、だれでも言われればわかっておるような問題、気がつく問題でありますけれ
ども、これがいままで
国民によく納得のできるように示されておらない。そこで私は、今日この席をかりて、
総理大臣以下各閣僚諸君には、われわれをも含めて、この地域格差と申しましょうか、気候風土の相違と申しましょうかそういった要素がある、したがって、この二本の柱の一本というものは向こうでは要らない、つまり、ヨーロッパの諸君は軽い荷物を
一つしょっておる、こっちはより重い荷物を二つ
一緒にしょっておる、このことを十分に認識していただいて今後の施策に向かうと同時に、これは十分に
国民に納得してもらう。言うまでもなく、民主主義政治の要諦は
国民の了解を求め、
国民の納得の上に立って行なう政治、これが民主主義の政治だと私は信ずるものであります。そういう
意味において、時間の関係上、これには
総理も何か御
意見があるかと思いますけれ
ども、これ以上
申し上げません。私はあえて
答弁を求めません。
そこで最後に、時間もありませんから、一体
総理大臣が、このごろ新聞その他で、この議会が終わって内閣の――なるほど私も気がつかなかったのでありますが、党役員の改選を行なう時期になっております。これはわが党の関係でありますけれ
ども、その時期において内閣の改造を行なうんじゃないかということがいわれております。これに対して一言、私は
総理に申し伝えておきたいことは、一体、
吉田内閣以来
日本の内閣が、しかも自尽党単独内閣で安定内閣であったものが、何のために半年や一年で首を切るか、内閣改造をやるのか、私はその理由がわからない。おそらく、今日ここに並んでおる閣僚諸君も、大臣になったばかりで、失礼ながら、何もわからない連中もだいぶいるはずなんです。やっとこれから勉強しようというところで、そこで内閣の改造、首が飛んじまった。役所の役人は、
自分の大臣はどうせあと何カ月だと言うて、大臣、大臣と言っておだてて浮かしておいて、何にもしない。それの連続をやってきたのが今日までの行政じゃありませんか。それは今後の
総理の政治姿勢の上にも大きなウエートを持つ問題だと私は思います。あえて
総理の――これはいろいろな関係もあって、いまそんなことを
考えてないとあなたはおっしゃるかもしれませんが、ただ、私が言いたいのは、さようなことはやるべきじゃない。軽はずみに、短期に内閣改造というものはやるべきものじゃないというのが私の
見解でございます。どうしても悪いやつがあったらたたき切ってしまえばいい、取りかえたらいいのであって、いたずらに半年、一年で内閣をしょっちゅうかえるというようなことは、これは最も慎まなければならぬことだと思います。
もし
総理から御
答弁がありましたらなんですし、なければ、一応これだけを申し上げておいて、時間の関係もあるようですから、これで終わりたいと思います。