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1967-04-27 第55回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十七日(木曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 北澤 直吉君 理事 田中 龍夫君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    井出一太郎君       池田正之輔君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       塩谷 一夫君    正示啓次郎君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       登坂重次郎君    野原 正勝君       福田  一君    古井 喜實君       保利  茂君    細田 吉藏君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       石橋 政嗣君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    高田 富之君       芳賀  貢君    畑   和君       八木  昇君    山中 吾郎君       山本 幸一君    田畑 金光君       吉田 泰造君    浅井 美幸君       大橋 敏雄君    正木 良明君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣外         務大臣臨時代理 佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         防衛庁装備局長 國井  眞君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長事務代理  辻本 隆一君         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省経済局長         事務代理    鶴見 清彦君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         国税庁長官   泉 美之松君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部大臣官房会         計課長     井内慶次郎君         厚生政務次官  田川 誠一君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林大臣官房         予算課長   大河原太一郎君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省蚕糸局長 石田  朗君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省通商         局長事務代理  原田  明君         通商産業省貿易         振興局長事務代         理       高橋 淑郎君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君         通商産業省繊維         雑貨局長    乙竹 虔三君         中小企業庁長官 影山 衛司君         運輸大臣官房長 町田  直君         郵政大臣官房長 竹下 一記君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         建設省計画局長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省選挙局長 降矢 敬義君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         国民金融公庫総         裁       河野 通一君         中小企業金融公         庫総裁     佐久  洋君         中小企業信用保         険公庫総裁   長村 貞一君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 四月二十七日  委員船田中君、大原亨君、角屋堅次郎君、横路  節雄君及び大橋敏雄辞任につき、その補欠と  して塩谷一夫君、淡谷悠藏君、川崎寛治君、山  本幸一君及び浅井美幸君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員塩谷一夫君、淡谷悠藏君、川崎寛治君及び  山本幸一辞任につき、その補欠として船田中  君、大原亨君、角屋堅次郎君及び横路節雄君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより締めくくりの総括質疑に入ります。山本幸一君。
  3. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、予算審議の現段階におきまして、あまり政府側のあげ足をとったりなどはしないつもりでおります。できるだけ時間も節約するつもりでおります。それだけに、総理のほうもひとつ誠実をもって御答弁をお願いしたいと思います。  きょう私がお尋ねしようとするのは、主としてベトナム戦争に関係する問題及び中国問題、これをお尋ねいたしたいのですが、その前に、私はきわめて一般論として、総理見解を少しお尋ねしたいと思います。  これは、実は私たち日本社会党は、各国との友好関係については、その国との間の政体の違いあるいは思想、信条の違いがありましても、それにかかわることなく、友好関係はできるだけ打ち立てて、しかもこれを促進、拡大する、こういう考え方でおりますが、総理はこの考え方にどういう御意見をお持ちなのか、伺いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、日本社会党の諸外国とのつき合いについての態度お話しでございます。私も全然同一の考え方を持っております。すべての国と仲よくしていきたい、これが本来の自由を守り、平和に徹するというその基本的態度でございます。その点は同じだと、かように考えております。
  5. 山本幸一

    山本(幸)委員 きわめて明快な答弁です。そこでひとつ総理お尋ねしたいのですが、私のあるいは聞き違いかもしれませんが、いろいろ総理発言を聞いておりますと、自分はどうも社会主義、そういうものは自分の皮膚に合わぬ、いわば意に合わない。したがって、社会主義国家はあまり好ましくない、こういうことをたびたび私は伺ったような記憶があります。総理は、いまでもそういう考え方に間違いございませんか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、しばしば個人的な感覚で私の意見も表明しております。いま社会主義国家と言われますが、私は、共産主義、イデオロギー的にもこれを納得できない、そういう立場でございますから、そういう意味で、共産主義国に対する批判は今日もしておると、かように思います。
  7. 山本幸一

    山本(幸)委員 そこのところ、議論は私はいたしません。いたしませんが、共産主義社会主義一つなんですよ。だから、そこの議論はやめましょう。やったところで、とてもあなたと一晩じゅう議論をやったって片づかぬですからやめますが、そうすると、社会主義国といえども、あるいは共産主義国といえども、かりに自分が好ましくないと思っても、いまの総理発言からいけば、友好関係は別個の問題だと、こういうふうに理解していいですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、あらゆる国と友好でありたいと、かように念願しております。また、日本憲法自身が、国際紛争を武力によって解決する、これを放棄する、こういうもうはっきりした平和国家としての行き方を進めております。そういう立場からものごと考えてみますると、特に毛ぎらいするというようなことがあってはならない。これはもう国と国とのつき合いでございますから、そういう意味では、個人的な考え方もよほど抑制しておるつもりでございます。
  9. 山本幸一

    山本(幸)委員 いまの総理のきわめて前向きな答弁で、これからの答弁もやってもらいたいと思います。  私は、さらにもう一つお尋ねしたいのですが、これはどんな国といえども侵略することは許されない。これはもう総理も同じ意見だと思います。あるいは内政干渉をやったり、また主権を侵したり、そういうことは絶対に許されない。これはもうきまりきった話だと思いますが、同時にこのことは、国連憲章も示しておることは御承知のとおりであります。こういう当然なことでありますが、この当然なことは、アメリカといえども例外でない、こう私は考えるのですが、その点は意見は一致しておりましょうな。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いずれの国も独立尊重、その主権を尊重し、そうして内政に干渉しないということ、これがただいまの友好関係を進めていくゆえんだと、かように思っております。まあ、それぞれの政体においてそれぞれのことを言っておりますが、平和を愛好しておるすべての国が同じようなことだ、同じような考え方だと、かように私考えております。
  11. 山本幸一

    山本(幸)委員 大体一般的な問題については、総理と私の意見が一致しております。そこで、これからベトナム問題について、総理の御所見を少し伺ってみたいと思います。  私は、アメリカ政府発行資料、あるいはベトナム戦争参戦国であるこれらの諸国資料、そういうものを除いて、世界各国資料をいろいろ常に拝見いたしておりますが、その中でも、特にアメリカに好意的な諸国、そういう好意的な諸国でも、ベトナム戦争は何としてもアメリカ側に無理がある、こういうことを言っております。無理があるという中身は、それぞれ違いましょう。違いましょうが、ともかく無理があるということを言っております。これは率直に言うなら、いわばアメリカベトナム戦争内政干渉に過ぎるのじゃないか、こういうことも言っておると思いますし、また中には、明らかに主権の侵害である、こういうことも言っております。私は、ベトナム戦争が始まってから今日までの経過を見て、私もそうだと思っておるのですが、総理は、この際ひとつ思い切ってほんとのことを言ってもらいたい。まあ、あまり政治発言でなしに、あなたの腹の中のほんとうのことを言ってもらいたい、こう思いますが、どうですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山本君のたいへん率直なお尋ねです。私、国会が一番大事な場所だ、かように考えておりますので、いままでもほんとうのことをいつも申しております。これはもう腹を打ち割ってほんとうのことを国民に聞いてもらいたいと思いますから、この場ではいいかげんなことを申したつもりはございません。もうしばしば申しておりますように、ベトナム紛争はなぜ起こったか。これはもう申すまでもなく、ベトナムの北からの浸透、これに対して南ベトナム独立を守りたい、この立場において自衛的な紛争、戦いが展開された、かように私は理解しておりますが、その自衛的な立場に立った南ベトナムが、自己の独立を守るためにアメリカ援助を求めておる、これが今日の状況だと思います。したがいまして、私、いま言われるように内政に干渉したとか、あるいはアメリカ自身主権を侵害したとか、かようには実は考えておりません。しかしながら、起きておる事態は、その原因がどうあろうと紛争であり、アジアの平和に対する一つの脅威であること、これはアジアにいる日本といたしましても、  そのことを考えるのでございまして、その原因がどうあろうと、とにかく早くこの事態が平静になること、これを心から念願しておる。この点は、いままでしばしば申し上げたことであります。また、社会党の方も、この平和が一日も早く招来されることについては、これはもう議論のないことだ、かように私も思っておりますが、そういう意味政府努力、また、国際的にそういう雰囲気がまだでき上がらない、こういうことをただいままことに残念に思っておる、こういう事情でございます。
  13. 山本幸一

    山本(幸)委員 いまの総理の御答弁によると、ベトナム戦争は北側の浸透によって南が独立を守るために始めたものである、アメリカは南の要請によって援助をしておる、これは法律的な立場をおっしゃってみえると思う。この御意見ですが、問題はそこにあるわけですね。そこのところが、社会党考え方政府考え方にはかなりの隔たりがあります。私どもは、理屈がどうあろうと、アメリカがともかく遠いところからわざわざベトナムに兵隊を派遣しておるという事態は、これはもう法律的に少々小理屈を言うより、現実はやはり内政干渉をしておると思っておるのですよ。私  は、むしろベトナム戦争が始まってから、言うならば、ジュネーブ協定以後のあの状態を見ると、百歩、二百歩譲歩しても、どうしてもアメリカ内政干渉だと思っております。しかし、ここで社会党意見を申し上げても、なかなか政府側も御理解がしてもらえぬと思いますから、私は、むしろアメリカ内における意見を二、三ひとつここで御披露いたしますから、これについての見解をそれぞれ承りたいと思います。  一つは、御承知のとおり、ジュネーブ協定は一九五四年の七月に結ばれておるわけですね。ところが、その前の一九五四年四月四日、これはアメリカ大統領アイゼンハワー、この方がチャーチル・イギリス首相に対して親書を送っております。書簡を送っております。この内容を私ども調べてみると、要約すれば、ホー・チ・ミンに対する連合干渉軍提案をしておるわけです。よろしゅうございますね。これはジュネーブ協定三月前ですよ。こういうことを提案しております。これはもう有名な話であります。おそらくこのことは総理も御承知だと思いますが、いま強調したように、こういう提案ジュネーブ協定前である。だとするならば、すでにアメリカ政府は、そのころからホー・チ・ミンを締めつける、ホー・チ・ミン連合干渉をやる、そういう意図があったことを明らかに物語っておると思います。これは何も社会党意見じゃございませんよ。現実にあった問題ですが、これに対して、一体総理はどういう御認識をお持ちなのか、承りたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の事情をいろいろ――各国でいろいろなことを考えるだろうと思います。国連におきましても、いろいろな議論があったろうと思います。しかし、それが具体化したのがジュネーブ協定だ。いまも言われるように、ジュネーブ協定前のいろいろの意見、これはもちろん参考になるだろうと思いますが、取りきめとして関係国がきめたのがジュネーブ協定だ、かように理解しておりますので、その以前にありました議論、それを一々とやかく言うべきではないだろう、かように私は思っております。
  15. 山本幸一

    山本(幸)委員 私がいま申し上げておるのは、すでにアメリカがその当時、ジュネーブ協定以前に、そういう意図があったということを、客観的な事実をあげて申し上げておるわけですが、私、その点では総理答弁はいささかどうかと思うわけです。  次に、総理も御承知ですが、アメリカ人で国際問題で有名な学者シューマン博士は、こういうことを言っておりますね。これはごく最近の話です。アメリカは、南北戦争以来のいかなる時期にもまして国家的自殺に近づいている、ベトナム戦争は従来最も恥ずかしいと思った一八四六年のメキシコ戦争、同じく一八九八年のスぺイン戦争の前例があるとしても、アメリカの名において行なわれた組織的に仕組まれた虚偽と謀略と人種絶滅  の行為である、これはヒトラー以後の空前の事柄である、こういう言明をいたしております。また、就いて最近のある文献等によると、一九六四年の二月までアメリカの国務省で、あなたも御承知極東担当次官補の重職にあったヒルズマン氏は、その著書の中でこういうことを書いております。南ベトナムに対する北の軍隊南下が始まったのは北爆開始以後である、こう書いております。これはいずれもアメリカの著名の方々、特にいま申し上げたヒルズマン氏は、少なくともアメリカ極東担当次官補をやってみえた。こういうことをはっきり次官補をやっておられた人も認めておるわけですから、そういう意味において、やはり北の軍隊南下が始まったのは北爆開始以後である、こういうように私ども認識しておりますが、その点、総理はどういうふうにお考えでしょうか。こういうことをお読みになりましたか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、まだヒルズマンのその文献は見ておりません。見ておりませんが、アメリカにいろいろな意見が出ている。また二、三政府考え方を必ずしも支持してないもの、そういう意見のあること、これは承知しております。また、それがただ単に学者だけでもなく、国民の間にもそういう意見のあることは、これはもう民主主義国として当然のことだろう、かように私は思っております。
  17. 山本幸一

    山本(幸)委員 私が申し上げたのは、総理は特にアメリカ内のベトナム戦争についての批判側意見をことさらに二、三ということばを使ってみえるが、そんなものじゃないんですよ。けさの新聞をごらんくだすっても、昨日のアメリカ国内における発言は、上院議員ではやはりベトナム戦争批判発言が多いのです。これは総理も無視していけないと私は思うのです。そういう点は、いささか総理アメリカに遠慮してみえるような気分が、私はしてならない。これは善意に解釈して、遠慮なすってみえるような気分がする。  そこで、私は、さらにもう一つ申し上げてみますが、ベトナム戦争に賛成しておった。いわゆるアメリカ方針に賛成しておった上院議員モースさん、この人はこういうことを言っているのですよ。一九五四年のジュネーブ協定以来十カ年間、アメリカ南ベトナムを事実上の保護領にした、十カ年間保護領にしたと言っているのです。当時のゴ・ジン・ジェム政権は、南北ベトナム統一選  挙が行なわれることの取りきめを無視した、こう言っております。ゴ・ジン・ジェム政権があの協定を無視したのだ、こう言っております。われわれもまた、この取りきめを愚弄することに同調した、この取りきめを愚弄することに同調したと言っております。この人は、もうこのことばによっても、アメリカ政府ベトナム戦争政策について当時賛成した側ですね。われわれが愚弄したということは、これはホー・チ・ミン南北双方選挙で勝つであろうと見た、これを知っていた。勝つであろうと見たことを知っていた。したがって、いま振り返ってみると、自由のために、また、ジュネーブ協定実施のために戦うというお説教をすることは、ますますぐあいが悪くなった、こうモース上院議員は言明いたしております。このことはどういうことかといえば、先ほどからるる御説明申し上げておるように、アメリカジュネーブ協定を破る指導の地位にあった、立場をとった。自分らもホー・チ・ミン選挙で勝つ  ことをおそれた、したがって、あの協定を愚弄するようなことに同調したのだ、全く恥ずかしいことだ、だから、むしろ反省すべきことである、こうモース議員発言をしております。私は、こういうモース議員発言は、かなり貴重な発言ではないか、これは軽々しく見のがす発言ではない、きわめて重要な発言として、政府も私どもも、こういうものに重要な関心を持たなければならぬと思います。これでもあなたは、アメリカ内政干渉をしていない、こういうふうにお考えですか。くどいようですけれども、なおお伺いしたいと思います。ただ、あなたの御答弁は、アメリカ国内にもそういう意見がありましょう、個人の意見としては出ておりましょう、こういう御答弁がありましょうが、それは日本でも一緒です。政府批判する意見もあります。一緒ですが、私の言うのは、少なくとも、アメリカ戦争政策方針に当時同調した人、こういう人々ですらも反省しているのですから、日本政府はそれを軽視してならないのじゃないか、こういうことを強調しているわけですが、どうですか、総理
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このベトナムの問題、これは原因を探求する点についていろいろな意見が出ている。また、これを早くとめるということについて、平静に復帰するということについて、いろいろ努力がされておる。漫画を見ましても、タカ派だあるいはハト派だというようなことがございます。したがいまして、この問題の原因についての探求もさることながら、長くこういう紛争が続くという、そういうことについての、一日も早く平和を招来すべきじゃないかという、そういう意味努力、これがなされておるものだと私は解したいのです。実は問題は、過去を探求することもさることだが、一日も早く平和をここへ招来すること、これが何よりも今日の問題だ、かように私は思っておりますので、先ほど来お話をしたのも、主として今後の問題についての私ども立場を申し上げたのであります。山本君のお話も、平和を招来することについて、その前に反省が必要なんではないか、こういう点に特に重点を置かれたお尋ねかと思いますが、そういう意味では、私はもうとにかく前向きであってほしい、かように思っております。
  19. 山本幸一

    山本(幸)委員 いま総理が言われたように、私もいまの危険な状況を一日も早く終息させたい、終息するについてはどうすべきかという問題が、今後出てくると思います。どうすべきかという問題を討議するには、やはり原因というものをある程度明らかにしないと、どうすべきかという意見がなかなかうまく出てこない、こういうことから申し上げておるので、その点は総理も御了承いただきたいと思います。  特に私は、ごく最近の事実を一つ見たのですが、四月二十一日に、あなたの師匠格、お師匠さんですな、吉田総理が会長をやってみえるアジア調査会で、御承知のとおりフランスの戦略理論家ボーフル将軍を招聘して、講演をやっていらっしゃいますね。その講演の内容を私はちょっと見てみた。なかなかこれはうがったことを書いておると思って感心したのですが、「ベトナム戦争と中ソ対立」こういう問題で講演をしております。このボーフル将軍は、御承知のとおり反共主義者です。共産主義には反対、社会主義にも反対、こういう方であることは、もう言うまでもありません。そういう意見は、あの講演の中にもにじみ出ております。この人が、アメリカの北爆を始める前後の情勢について、こういうことを言っておられます。南ベトナム内の相次ぐクーデターによって政府軍は動揺した、分裂傾向を強めたので、政府軍が急速に崩壊した、解放戦線が政治的にも勝利するかもしれない危険的状況に発展した。これはいわば北爆を始める前後の情勢を言っておるわけです。これを回避するために、米国は北ベトナムを空から威圧し、強力な軍事力を介入させて情勢の立て直しをはかった。こう言明しております。しかし、これもその後の経過が証明するように、全く間違っておったことが明らかになる。というのは、南における情勢の悪化は、北からの浸透によって造成されたという前提に立っていたが――これは重要な問題だと思います。南における情勢の悪化は北からの浸透によって造成されていたと思ったが、それも間違いである、事実の真因は、第一にサイゴンの政権の不安定が第一である、第二は、排他的な平定計画戦略にあったためである、こう言っております。ここでアメリカ南ベトナムに本格的な介入を余儀なくされることになった、このように述べておられます。こういう反共主義的立場を堅持する人、いわば社会主義を好ましくないと思われる有名なボーフル将軍という戦略家がこのことに触れておられることは、明らかにベトナム戦争アメリカの軍事的介入によって拡大したのだ、始まったのだ、こういうことを指摘しておると私は思うわけであります。そこで、先ほどから強調しておるように、総理はもちろん政府を代表していらっしゃるから、なるべく軽率なことばを避けよう――軽率というのか、腹の中に思っていらっしゃることも、時によっては避けなければならぬという立場にあることは、私も同情いたします、推察いたします。しかし、ここで私は特に総理に申し上げたいのは、最近ウ・タント国連事務総長、これは世界の公正な官吏だ、こう私どもは認識をいたしておりますが、この事務総長がベトナム戦争の和平提案をいたしております。この和平提案の一番骨になっておるのは、何といっても北爆の中止が先決だ、こういうことを強調しております。強調しておりますね。このウ・タント事務総長が、和平を行なうには北爆中止を先決にしなければいけない、こういうふうに述べておるということは、これもやはり事務総長の考え方は、原因をある程度追及しておる、ベトナム戦争拡大の原因をある程度追及しておる、こういうことが私には想像できると思うのです。この原因を取り除かなければ和平は進まないということを、事務総長は実証しておると私は思います。  そこで、あなたにこれは具体的にお尋ねしたいんですが、事務総長の提案する北爆中止、こういうことについてはどうなんですか、私も、一切の戦闘行為を中止しなければならぬことは言うまでもありませんけれども、まず一切の戦闘行為を中止し、和平のテーブルを持とうと思えば、世界各国が言っておるように北爆中止、事務総長の言っておるように北爆中止、これがやはり出てこなければ本ものじゃないと思いますが、日本政府はそれにどういうお考えなのか、これは具体的な問題としてお尋ねしたいと思います。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま直接のお尋ね、ウ・タント事務総長の提案、これについてどうかというその前に、ボーフル将軍の話を引用されました。実は私もボーフル将軍と一時間ばかり懇談をいたしました。最近の核拡散防止協定、その問題もございますが、その一時間の大部分はこのベトナム問題に費やして、そうしてベトナムに二度も駐在したというボーフル将軍の話を、身をもって実は受け取りたい、かように思っていろいろ相談をいたしました。その話の中に、ただいま、北からの浸透は北爆が始まってから始まったんだ、こういうお話がございますが、これはちょっと山本君の考え方が違ってないかと思います。確かに南ベトナム内政が動揺しておる、不安である、そういうことがこの問題を引き起こした大きな原因だ、こういうことについてはボーフル将軍も言っておる、かように私も理解しております。しかし、その内政が動揺しておる、そういうときに、初めて外からの力も加わってくるのでありますから、これは先後の、どちらが先だ、こういつてきめてかかったものではない。ボーフルさんのお話にいたしましても、その重点は、一国の政治が乱れるのは内政がしっかりしてないからなんだ、そういう意味の点に重点を置いている。そういう際でございますから、その点はやや誤解があるのじゃないか。私はちょっと別な感じを持ちます。しかし、そういう点で、このボーフル将軍もたいへん事態を心配しております。そうして一日も早く平和が招来するように――そして将軍の言っていることでは、これはもう徹底した勝利感というか、そういうことで戦争は終わらない、こういう見方をしておるようです。私はそういうようにも考えますが、そこでウ・タント事務総長の提案というのが問題だと思います。ウ・タント事務総長は、北爆に重点を置いての即時停戦といいますか、両者が停戦すること、これを提案しておる。このことをアメリカ側においても了承しておりますように、私どもも即時停戦、そうして予備会談に入る、そうして話し合いの場につくという、これはたいへん望ましいことだと思います。この点では、遺憾ながら北側においてこれが了承されておらない。私は、別に北を非難するわけじゃございません。しかし、提案されたそのものが直ちに了承される、こういうことにまだなっておらないことを遺憾に思っております。アメリカ側では、一応ウ・タント提案というものを、これはいいじゃないかと、かように申しておるのですから、そういう意味一つのきっかけであることはわかります。ウ・タント事務総長は近く日本にも来る、来日するということでありますから、私どもはそういう機会に、この平和、和平交渉、これを進め得るかどうか、さらに協力するような考えでございます。
  21. 山本幸一

    山本(幸)委員 これは総理のちょっと聞き違いだと思いますがね。私は何もボーフル将軍の講演で、別段北が早かったとか、アメリカが早かったとか、南が早かったとかいうことは、ボーフルさんは触れておりません。そういうなまのことばでは触れておりませんが、要するに、南の情勢の悪化は北からの浸透によってつくられたんじゃない、こういうことを言っている。北からの浸透によってつくられたんじゃない、情勢の悪化は。これはさらに追及していけば、結局やはりアメリカのちょっと無理があるんじゃないかということばに私は値すると思っているだけで、ボーフルさんが別になまにそういうことばを使われたわけじゃない、こういうことをひとつ御理解願いたいと思います。そうしないと、ボーフルさんに失礼ですからね。  そこで、いま総理は、ウ・タント事務総長の三項目ですか、あの提案は、アメリカは承認したが、北ベトナム側はこれを拒絶した、こういうことをおっしゃったが、これにも間違いがあると思います。確かに北ベトナム側はこれを拒否いたしました。アメリカも拒否と同じことをやっているんです。条件づきなんですね。要するに、第二項にある予備会談の出席者は南の政府、こういう条件をつけております。グエン・カオ・キ政権、これの出席を条件にしております。これは明らかにやはり拒否ですよ。いわゆるアメリカ側はきわめて巧みな政治的な拒否をやり、北側は正直な拒否をやった、こういうことの違いであって、拒否の名に変わりありませんよ。だから総理、やはり事実をもっと事実として見ぬと、あなた方がこれから努力せられる大きなファクターになってこないんですね。どうもあなたの御発言は、アメリカのほうの悪いことはなるべく隠すというように印象づけられるんですね。私は、あなたはそんな人じゃないと思いますよ。ないと思いますが、いまのなんかははっきりした事実ですから、新聞をごらんくださいよ、どの新聞を見たってそういうことを書いておりますよ。だから、そういうように、やはり事実を正確にきちんとわれわれは認識しないと、その後の問題が進んでいかない、こう思いますから、その点は、私はむしろ御注意を申し上げておきたいと思います。そういう点の事実認識をもっとしっかりしてもらいたい。これからさらに私がお尋ねすることに関連してきますから、そういう点でひとつ御理解をちょうだいしたいと思います。  そこで、ひとつもう一ぺん元に戻って、私は先ほどからるる申し上げているように、アメリカ内政干渉アメリカの他国へのいわゆる主権侵害、こういう表現を使っておるわけですが、この際に一体侵略とはどういうことなのか、この定義をひとつ総理から御意見を伺いたいと思います。私、第一にお尋ねしたいのは、他の一国に対する開戦の宣言、これは侵略になりますか。   〔「宣言しても行動がなければだめだよ」と呼ぶ者あり〕
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも口で簡単に侵略と言いますが、実は侵略とは一体何なのか、これはまだ定義がきまっておらないようです。さように私も聞いております。また、これはたいへんなことだと思います。でありますから、はっきりした定義ができれば、これは非常に扱いいいんだと思います。国連でも、こういう事柄を一体どういうように考えようかといって、ずいぶん、数年これは研究しておるようですが、結論が出ておらない、かようにいわれております。ただいませっかくお尋ねでございますが、私もまだそれについて結論を出しておりませんし、また、そういう事柄は、国際的な世論、そういうもので最後にきまるものではないかと思いますが、ただいまどうも、これが侵略だ、こういう結論が出ておらないことをまことに遺憾に思っております。
  23. 山本幸一

    山本(幸)委員 ちょっと私にはわからぬですね、総理答弁が。ちょっと、頭が悪いのか知らぬが、理解ができません。一国が他の国に開戦を宣言することは侵略じゃないのか。まあ、いま小川半次君がきわめて御親切に横から、宣言しても行動がなければだめだとおっしゃったが、宣言したことは行動するということなんですよ。だから、そういう前提に立って私はものをしゃべっているんだが、それじゃ、もっと具体的に、戦争開戦の宣言がなくとも、一つの国が他の国に兵力による領域の侵入、これは侵略でしような。開戦の宣言がなくとも、一つの国が他の国に兵力で侵入する、これは侵略ですな。――そんなのは、あなた、相談する必要はないですよ、佐藤さん。これは明らかに侵略だよ。   〔「領土的野心がなかったら侵略じゃないぞ」と呼ぶ者あり〕
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、先ほど申しましたように、国連でもいろいろ研究しているようですが、結論をまだ出しておりません。これは、侵略というのは、なかなかむずかしいようですね、考えますと。とにかく、どんどん入ってきて、いま不規則発言が出ておるように、領土的野心がはっきりすればこれは侵略だろう、こう言われますが、しかし、領土的野心がはっきりするかどうか、その行為だけで判断のできない場合もあるんじゃないのか、かように考えます。しかしまあ、日本の自衛戦争というか、自衛の立場といいますか、こういう場合においては、日本は攻めていくということは絶対にいたしませんし、また、みずからが国際紛争を武力によって解決するというような態度はとりませんから、日本の場合、自衛的立場という、この自衛戦争というものは、これは非常にはっきりするんですがね。どうも、その他の国、どれにもこれが適用できるかどうか、ちょっと私は、いま国連あたりで議論しておるところを見ますると、その結論が出ないのではないかと思います。しかし、日本の場合は、これは非常にはっきりしている、かように御理解をいただきたいと思います。
  25. 山本幸一

    山本(幸)委員 どうも私は、佐藤さんあまり自信がなさ過ぎるのじゃないか。そう国連国連と言わぬでも、もうこういうことはわかり切ったことですから、あなたの思っていらっしゃることをずばり言ったほうがりっぱじゃないか、こう思うんです。私は、少なくとも、さっきから申し上げているように、一国が他国に対して開戦を宣言することは侵略だと思います。それから、開戦の宣言がなくとも、武力でもって他国に入れば、私はこれはやっぱり侵略だと思います。これを否定することはできぬと思いますよ。それから、もう一つは、開戦の宣言がなくとも、一国の海軍、空軍あるいは陸軍、こういうものが他の国の領域や、あるいは船舶や航空機の攻撃に当たれば、これは私はやっぱり侵略だと思いますよ。理由のいかんを問わず、そうだと思います。少なくとも、国連の基本的な原則は、国際紛争は話し合いでやろう、こう言っているのですから、国際紛争の内容にはいろいろありましょうが、話し合いで片づける、武力では片づけない、こういうことを国連は明らかに宣言しているのです。その精神からいったって、これは総理、あなたもその精神から、そうなんだ、山本君の言うとおりなんだ、こう言わなければうそですよ、それはおかしいですよ。そういうところまで否定したのでは話にならぬ。何でも国連になすりつけてしまうということは、私は一国の総理の権威にかかわる問題だと思う。わかり切った問題だから、そういうことはもっと率直に私は言ってもらいたいと思うんですね。  申し上げておきますが、私がこう言ったからといって、あとからそれでひっかけるとか、そういうことはしません。さっき冒頭に申し上げたように、この予算審議の現段階からいって、あげ足とりはやらないと言っているのだから、これほどもののわかったことはないのです。少し誠意をもってやってもらわないと困るよ、実際。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま私が、定義をどうするかということですから、非常に慎重にお答えをしておるのです。定義には確かに自信はございません。ただ、過去におきまして、昭和九年に、侵略の定義に関する条約というものがある。この条約には、ただいま山本君がおあげになりましたような場合、これは侵略だ、かように申しております。
  27. 山本幸一

    山本(幸)委員 大体近づいたと思います。やや、三〇%近づいた。まだ距離は七〇%ありますが、それ以上はやめましょう。  そこで、ひとつあなたにお尋ねしたいのですが、アメリカは一体今後ベトナム戦争を拡大する方針なのか、それとも、できるだけ武力は限定して早く終息する方針なのか、拡大する方針なのか、平和解決の方針なのか。なぜ私がこれを特に尋ねるかというと、先般グアム島で会議がありましたね。このグアム島会議では、かなり重要な問題が検討されておる。このグアム島会議以後に、べトナム戦争をめぐる国際情勢は非常な流動状況であります。したがって、私は、まず基本的に、アメリカベトナム戦争を拡大する方針なのか、それとも、そうでないのか。もう一つは、グアム島会議の内容、これをひとつ説明してもらいたいと思うのです。これは、グアム島会議の内容は、他国のことだからとおっしゃるかもしらぬけれども、前もって私は申し上げておきます。日本政府アメリカとは、これはもう切っても切れぬ関係にあるわけです。特に、日本政府アメリカ政府を信頼していらっしゃるので、そういう立場からいっても、あるいは日本アメリカの軍事基地があったり、沖繩に核装備をせられておるという状況からいって、グアム島会議の内容をよもや政府は知らぬと、こうおっしゃることはないと思う。したがって、この機会に、あの内容をわかる範囲にひとつ御親切に説明をしていただきたい。この二点です。拡大をするのか、せぬのか。グアム島会議の内容はどうなのか。この点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日までアメリカがしばしば声明しておりますのは、拡大しないという、これはもうはっきり声明しておりますから、その声明をただいま繰り返して申し上げておきます。  また、グアム島の会議、これは過去におきましてホノルルあるいはマニラであり、今度は三度目だ。アメリカの首脳者と南ベトナムの首脳者、これが会議をしている。この会議の結果は、共同コミュニケが出ておりますから、すでに共同コミュニケをお読みになったことだと思います。両国は防衛努力の継続の決意をしている、同時に、名誉ある平和を探求することを強調しておる。一方、その平定計画や経済建設計画等につきましても十分話し合った、非軍事的な事柄についても話し合った、こういうことでございます。これはすでに共同コミュニケが出ております。
  29. 山本幸一

    山本(幸)委員 私もその範囲のコミュニケは見ておりますが、それ以外にありませんか、総理、もう少し具体的なことが。アメリカと連絡があったのじゃないですか、何か情報の交換という意味で。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまこれが一番はっきりした公のものでございますから、これを御信頼いただきたいと思います。
  31. 山本幸一

    山本(幸)委員 いや、私は、公のものじゃない、もう少し国会で少しは語れるというものを聞きたいのですが、どうですか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうものを私は持っておりません。
  33. 山本幸一

    山本(幸)委員 まあ、最初からそういう答弁をされると思っておりましたがね。私は、グアム島会議の内容は、いま総理お話のように共同コミュニケの範囲しか知りません。共同コミュニケの中心は、私はやはり武力平定に力を置いていると思います。あのコミュニケを詳細に検討してみると、いろいろのことば、表現は使っておりますが、やはり武力平定、この点が一番強調されているような気がしてならぬ。これは私の思い過ごしかもしらぬが、私はそう認識しております。なぜ私はそういう認識をしておるかということは、グアム島会議のその後の状況を見ると、やはり私どもの認識が間違っていない、こういうふうに思うわけですね。御承知のとおり、グアム島会議の直後、B52がタイに移動集結しておりますね。これは御案内のとおりです。それからまた、ごく最近、いままで手をつけていなかったグエンカーン工業地域、これの爆撃をやりましたね。これはグアム島会議のあとです。この爆撃をやりました。それから、二十日にはハイフォン一・八キロの付近に爆撃をやりましたね。発電所の爆撃をやりました。それから同時に、ハノイに対して三キロ半付近の爆撃をやっておりますね。特に私どもがおそれたことは、ミグ戦闘機基地の爆撃を始めたですね。これはいずれもグアム島会議後の問題です。ミグ戦闘機基地の爆撃も決行した。これは、アメリカがその前にSEATOで提案しましたね。その提案の内容は、御承知のように、北ベトナム南ベトナムとの境界十七度線、この十七度線を十六キロに広める、いわゆる非武装地帯を広める、こういう提案をしましたね。提案を行なうと、すぐこういうことが始まっているのですよ。グアム島会議が終わるとすぐ始まる。そういう提案を行なうとすぐこれが始まる。こういうことは、これは否定できぬと思うのです、これは事実だから。そうすると、率直なことばで表現するならば、アメリカは政治的に世界の目をくらませながら、実際には、いま申し上げた武力平定強化の方針を堅持して一そうベトナム戦争を拡大する、こういうふうに私は見なければならぬと思うのです。このグアム島会議、SEATOにおける提案後のこの種の爆撃、特にわれわれがおそれておったミグ戦闘機基地の爆撃、こういう事実は、これは否定できぬのですが、その点からいったら、やはり拡大方針じゃないですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま山本君が言われるように、一つの新しい提案をした、提案が受け入れられない、そういうところで攻撃が始まっている、これは、いずれの場合におきましてもそういう事態が起きておる。たとえば、グアム島の会議の後にも、またその前後に一つ提案をしておる、これも拒否されておる、こういうことでございますから、いわゆる戦争というものは双方に責任のあるものじゃないか、かように私は思います。いま言われますこと自身も、その見方によってはそのとおりだと思っておりますが、だからこそ、一日も早く両者が話し合いに入らなければいかないのだ、そういう意味で、私どもがウ・タントの提案というものを歓迎もし、また、たいへんこれに協力しておるという、そういうようなことでございます。だから、問題は、一日も早く戦いをやめさす、平和を招来する、そういう方向の努力だと、こういうこともいえるんじゃないかと思います。ただいま双方においてまだ意見が一致しないこと、これはまことに残念でございます。
  35. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理のおっしゃることも一つの理屈なんですよ。ところが現実は、SEATO提案をした翌々日に始めているのですよ。あなたは、相手がのまなかったからと言うけれども、これほどの重大な問題を、二十四時間や五十時間で、すぐ回答がこなかったから始めたんだ、やむを得ず始めたんだという解釈は、現実的には成り立たない。  それから、もう一つの問題は、いわゆる平定をする、平和解決をする一方法として爆撃が始まったんだ、こういうことをあなたはおっしゃった。いまそういうことをおっしゃったですね。そうすると、やはりアメリカは拡大する方針ですね。方法論であろうと何であろうと、ともかく拡大する方針ですね。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は拡大する方針とは思っておりません。
  37. 山本幸一

    山本(幸)委員 それじゃ総理、もしアメリカが拡大しないとするならば――今後もそういう方針だというつもりでおっしゃってみえると思うが、そうすると、アメリカが拡大しないためにこれから手控える問題はどういう問題がありますか。手控える場所、手控える方法、手控える手段、拡大しない手段、方法、言うならば、どこどこを爆撃するという計算がちゃんと立っているから、それを手控えよう、拡大しないというなら、その手控えるところはどことどこで、どういう方法があるか、これはひとつぜひ参考のために伺っておきたいと思う。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん残念ですが、あまり参考になることを答えられません。私、実は戦争をいまやっておる当事者でございませんし、先ほど来から言っておる、アメリカが拡大しないという、これは過去のたびたびの声明によってこれを信じているのだ、こういうことを申し上げました。それじゃ、具体的に一体どういうことがあるのか、これは私にはわからないことですから、いま私どもが心配しておるのは、こういうエスカレートがどんどん行なわれること、これを一番心配しておる、かように思いますが、そういう点については、たびたびのアメリカの声明で、これは拡大しないのだ、こういうように私は信じておるだけでございます。
  39. 山本幸一

    山本(幸)委員 私はそんなことないと思いますがね。だてや酔狂で防衛庁長官ができておるわけじゃないし、だてや酔狂で、べトナムまで行ってわざわざ自衛隊の隊員がいろいろな調査をしているわけじゃないし、だてや酔狂であの周辺に日本政府が大使館を持っておるわけじゃないし、いわんや、サイゴンに大使館を持っておる、外交機関を持っておる、それが、アメリカが戦争を拡大しないとするならば、一体今後どういう場所、どういう方法は手控えるのかということがわからぬことはないと思います。しかし、まあしいて申しませんが、その調査によると、総理、これはもし手控えようとするなら、ハイフォン港の封鎖があると思う。それから、川に機雷を投下するという問題があると思う。それから、対空防衛司令部や、または通信基地あるいはハノイ、ハイフォン地域周辺の堤防の破壊。私はなぜこれを言うかというと、私は去年ベトナムへ行ってそういうことを調査しているんですよ。だから、ややそういうことを知っているのですが、政府がこのくらいのことを知らぬわけはないですね。手控えようとするなら、ここらがまだ残っているのだ、本格的な戦争は別にして、それに入る前としては、ここらが残っているのだ、こういうことが私は大体わかると思います。  そこで、私が心配するのは、こうした問題のうち、一つでも今後アメリカが攻撃にかかってくれば、理屈抜きにソ連の援助船団を戦争に巻き込むと思います。これはもうきのう、きょうの新聞等は、かなり緊迫感を私たちに告げております。私は、グアム島会議以後の情勢を見ていると、何としても心配になることは、アメリカはまだ一そう拡大するのじゃないか、拡大するとすれば、いま言ったような問題の一つか二つか三つか知らぬが、やり得るのじゃないか、そういうことをやってくれば、ソ連の援助船団をまず戦争に巻き込む危険性が出てくる、こういう心配をするんですよ。これは私の思い過ごしかもしらぬが、私はそういう心配をしていいと思います。  それはなぜかというと、日本にも関連するから心配するわけです。それからまた、新聞が伝えておりますが、ミグ戦闘機の基地を爆撃した、そこで北ベトナム側は、このミグ戦闘機の基地を中国国境へ移動させる、こういうことも新聞は伝えております。これは事実上の問題として、ある程度私どもは肯定しなければならぬ問題だと思います。あるいは専門家は、八十キロも百キロもあるから、それらミグ戦闘機の活用効果がないのじゃないかとおっしゃるかもしらぬが、少なくとも十分か十二、三分の違いで、私は活用効果がないとは思わない。したがって、中国の国境線にまでミグ戦闘機の基地を移動させるということになると、いよいよ戦争が非常に大きく広がる危険性がある、こういう心配を総理はなさっておるんでしょうか。私は、どうも総理の脳裏、総理だけでなしに、政府の頭の中には、アメリカとソビエトは平和共存をやっているから、両国の諸種の立場からいって、まずまずソ連がいろいろ巻き込まれる危険性はなかろう、心配はなかろう、こういうものが頭の一角にあるような気がする。私は、それは戦争の本質からいって、甘く見てはいかぬと思うのです。現にソ連は、ここ二、三日来の爆撃に対して厳重な抗議を始めているし、それから、中国もかなり高姿勢で、ベトナム人民には中国が大後方にある、こういうことも言明しだした。これは初めて使ったことばです。大後方にある、そういうことばも使っておる。すると、いよいよ戦争の危険性、戦争拡大の危険性、私どもはそういう心配がしてならない。だからこそ、総理は、平和解決を一日も早く望むんだ、こうおっしゃるが、その気持ちは私も了とします。その考え方は、私も了としますけれども、現状は、あなたが考えていらっしゃる平和解決を望むというものは反対の動きをしておる。これをひとつお認め願えるかどうかということです。こういうものをはっきりせぬと、あなたのおっしゃる平和解決への方向というものが、これからどういう手を打っていくか、どうすべきかという問題が、具体的に出てこないのじゃないか、こう思いますから、ひとつその点を、どうも心配だ、拡大しつつあるというふうにお認めなのか、それとも、そんな心配はない、こういうふうにお考えなのか、伺っておきたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、一般的に、世界大戦にでもなるという危険性がどこかにあるのじゃないか、そういうことをも含めて、一日も早く平和招来、こういうことを願っておるわけでございます。  そこで、ただいま拡大とは一体何なのか。これは、先ほどから、別に定義を申すわけじゃございません、この拡大という意味で、爆撃をやはり限定する、こういうことはしばしば言ってきた。しかしながら、その爆撃の対象がだんだん拡大されているじゃないか、こういうことで、これが平和論者から見ましても、一そう心配の種であります。かつては非常にしぼって、そうして軍事的な施設、これについての爆撃だけするんだ、一般の平和産業、あるいは一般の市民に対しては、そういう損害を与えないようにする、こういうことを盛んに言ってきました。そうしてまた、国際紛争を引き起こすようなことはしない、そして機雷の投下などもしなかったが、機雷の川に、あるいは沿岸に投下される、また、ハイフォンの爆撃は、ただいまのような、国際的紛争の種になるからこれはしないんだ、かようにも聞いておりましたが、ハイフォンの近くにまでそういう爆撃の手が伸びておる。あるいは石油の貯蔵所が爆撃された。それぞれ爆撃の目標が順次拡大しておることは、私も認めます。しかし、それをもって直ちに拡大だ、かように言い得るかどうか。そこは私は一つの問題だと思います。ただいまあげられましたように、ミグ専用の飛行場が国境付近に行く、そうすれば、これはたいへんなことだとか、いろいろな心配があると思います。こういうことをひっくるめまして、私は別に戦術家、戦略家ではございませんし、また、軍人ではございませんが、しかし外交、そういう立場から、ばくとしたことではあるが、これは、重大なる事態が起きてはたいへんだ、そういう意味で、できるだけひとつ何とか話し合いできないものか。  そこで、どちらが先だとか、いろいろな議論をしております、か、それよりも、とにかく平和への積極的な前向きの交渉かどうしても必要なんだ、そうして、話し合いの場においてそれぞれの責任を追及することも可能じゃないか、また、将来いかにするかということをそこで話し合えばいいじゃないか、一番大事なことは、いまの戦闘を停止することだ、かように私は思って、先ほど来議論を展開しておる。山本君のお話も、やはりそこに集中して、同じことだ。いまアメリカ自身がやっていることを、平和を招来すると言いながらも、だんだん爆撃の対象を拡大している、危険への道を行っているじゃないか、こういうことを話したいんだと思いますが、その点は私も了承しますけれども、しかし、とにかく、だからこそ、一日も早く停戦することが必要だ、このことに重点を置い  て議論し、そうして責任の有無、悪かったとかどうだというようなことば、この会議の場において  話し合う、そうして将来はいかにするか、こうい  うことが一番大事なことじゃないかと思います。しかし、ただいまは当事国としては冷静さを欠いておりますから、なかなか話し合いの場がここに招来されない。第三者がそういう意味ではあっせんすることが必要だろうと思いますし、また、関係  国等もそういう意味努力が必要だと思います。  昨年、グロムイコが日本を訪問したときのソ連の考え方と、最近ロンドンにコスイギン首相が出かけてからの話とずいぶん変わってきたようにも  思います。国際的な世論が最終的な判断を下すいまの民主的な国際間の紛争の処理、こういうことがだんだん出てきたんじゃないだろうか。私は、現状において楽観はしませんけれども、悲観すべきものとは思っておりません。いかにも拡大することが悲観材料のようにも考えられますが、そうじゃないように、私はぜひとも積極的な平和招来  への努力をこの際すべきだ、かように考えておる次第でございます。
  41. 山本幸一

    山本(幸)委員 いまの総理の後段の答弁はあまりよくありませんが、前段はやや前向きだと思います。少なくとも、これは先ほど私とあなたとでやりとりをして平行線になっておりますから、私はこのことは二度と触れておりませんよ。要するに、どちらが先に浸透、侵略したかという議論、このことはすでに先ほど平行線で終わっておるんですね。そこで私は、今度は現実をとらえて申し上げておる。あなたの答弁の前段は、やはり戦争拡大の心配もある、そういうことじゃないですか。だから、アジア戦争、米中戦争あるいは世界戦争をも含んで、そういうことばを使われた。世界戦争をも含んでおる。そういう心配が全く否定はできぬというようなことを言われたわけですから、その点では、私も、きょう初めて総理がそういう点を具体的に言われたということについては、やや見上げたところがあると思います。  そこで、ひとつ話題を変えて、これはほんとうは三木外務大臣にお尋ねすべき事項です。ただ、三木さん、失敬にもわれわれが質問するのにどっかへ行ってしまった。よくないと思いますが、これはしようがない、行ってしまったあとだから。そこで外務大臣事務取り扱いを命ぜられたあなたにひとつ伺ってみたいと思います。  三木外務大臣は、四月の十三日、帝国ホテルで内外情勢調査会の席上で、当面の外交政策について、約四、五十分間にわたって演説をされておられる。その中をちょっと私がメモして見ますと、ベトナム戦争の早期終息は、米中関係をこれ以上悪化させないためにも大切である。これは重要な個所だと思います。まず事実上の軍事縮小をやり、次いで停戦から話し合いに入るのが実際的な方法である。そして一九五四年のジュネーブ協定に基づいて、十七度線で南の自由国と北の共産国とに分け、この安定の中で冷静に将来を考える必要がある、こういう演説をしておられるのですね。  そこで私がお伺いしたいのは、前段の、ベトナム戦争の早期終息は、米中関係をこれ以上悪化させないためにも大切である、このくだりは、ベトナム戦争が拡大すると、先ほどから申し上げておるように、場合によると米中戦争の悪化、危険性、そういうものがないとは神ならぬ身、保証できない、こういうことを三木さんは言っておるような気がするのですがね。そのあとのことは、みなアメリカの言っておることをそのまま言っておるのであって、問題じゃないと思うのですが、米・中戦争を悪化させる、これは米中間に非常な危険があるんだ、こういうことを指摘しておると思うが、これはそういうふうに理解していいわけですね。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府といたしましては、三木君の考え方を一々、私自身がただいま代理をつとめておりますけれども、そのままことばどおり賛成というわけのものでもないと思いますが、いまベトナム問題について、将来の危険を山本君も指摘なさいましたソ連あるいは中共、これらのことを考えると、やはりベトナム問題が、これはばくとしたことが――ただいまパーセンテージが非常に高いとか、こういうわけのものでもございませんが、ばくとしてですよ。とにかく世界の平和を希望するものから見て、やはりベトナム紛争が早く解決することを願っておること、これはもう間違いのないことでありますし、またそういう意味では、この佐藤内閣も同じような考え方をしております。とにかく世界の平和を欲する、そのために、ただいまの中国問題はやはり解決されなければならないし、またベトナム問題はいまのままで進んでいく筋のものでもない、かように思いますから、そういう点を心配した話じゃないだろうかと思います。どういう趣旨で話したか、私にはちょっとそこはわかりませんけれども
  43. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、国会の答弁で、各大臣がたまに言いそこなったり、あるいはことばが足りなかったり、これは原稿を持つわけじゃないのだから、そういうことがたまたまあるということは知っておりますよ。あとからあわてて政府の統一見解だとかなんとかいって、法制局長官あたりを呼んで、いろいろと悪知恵をやられることも知っておりますよ。知っておりますが、三木さんがやった演説は、原稿を持ってやっておるのですよ、約一時間近く。一国の外務大臣が、その最高責任者である総理意図に反するようなことは言っておらぬと思うのです。やはり総理の意思と、表裏一体になってものをしゃべっておると思う。それをあなた、しゃべっておらなかったら首にしたらいいのだからね。しゃべっておるに間違いない。それを、三木君が言ったことは、わしの意見じゃないとか、三木君の言ったことは必ずしも賛成できぬとか、そんなことは総理、言わぬほうがいいと思うのですね。私は、やはりこれは率直に認めたほうがいいと思う、三木さんは心配してそういうことを考えたのだから。また、あなたのさっきの発言の中にも、ややそれに近いことをおっしゃっておられるのだから、そういう心配ごとがあるという前提に立つことは私は正しいと思う。だからこそ、われわれは今後どうすべきかという問題が総理考え方として出ておるわけです。その具体案は出てないけれども、その決意は出ておるわけだ。したがって、これはやはりお認めになったほうがいいと思います。どうですか、お認めになりますか。すなおにお認めになったほうがいいんじゃないですか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私お答えしたように、政策の面については、これはもう間違いがないもちろん認めておる、こういうことでございます。
  45. 山本幸一

    山本(幸)委員 わかりました。政策の面でということばをお使いになったが、政策というものは、少なくとも政府が実行するのですから、あなた、実行の伴わない政策ならおやめになったほうがいい。そういう意味で私は理解します。  そうすると、三木さんの最後のくだりに、十七度線で南と北に分け、この安定の中で将来を冷静に考える、こういうことを言っておられるわけですね。御承知のとおり、これは私が説明するまでもない、釈迦に説法です。ジュネーズ協定が、当時、ベトナム人民軍とフランス連合軍との再集結地という形の危険を考えて、南北に一時的に分けられたことは間違いない事実だと思います。しかし、この状態は、ジュネーブ協定が示しているように、二年後の五六年の統一選挙によって自動的に終わる、その選挙が終われば自動的に終わるんだ、こういうふうになっていることも間違いない事実だと思います。私が先ほどから申し上げておるように、これは総理はお気に召さぬか知らぬけれども、当時の南べトナム政権のゴ・ジン・ジェムがこれを破棄した。そうして、どういう計画があったか知りませんが、アメリカに軍事顧問団の要求をした。ここらから問題がもつれてきていることは間違いないのですよ。  そこで、私がいま言ったように、五四年の協定で南北に一時的に、危険地域を境にして分けられておることも事実だし、二年後の五六年の統一選挙でそれは自動的になくなるんだということも事実です、ジュネーブ協定は。そうするとこの解釈は、要するに、現在の分かれた状況が固定化されているのではない、こう理解していいわけですね。もっとはっきり言うなら、ベトナムの国は二つでない、一つである、こういう点が私はこのジュネーブ協定によって明らかだと思います。ところが、三木さんの論理を追っていくと、これからも南北に分けて、その安定の中、こう言っているのですね。どうも三木さんの皮膚にあるものは、考えの中にあるものは、やはりベトナムを朝鮮のように二つのベトナムに持っていこう、そういう考え方があるように私は感じました。もしそういう考え方があると、これはたいへんなことですね。おそらく総理にはそういう考え方はない、やはりジュネーブ協定を、時間はずれているけれども、今後も完全実施をしていくんだという立場にお立ちである、私はそう信じておりますが、まさか、あなたにそういう考え方はございませんね。これは三木さんの真意を聞いてみなければわかりませんけれども、文章によれば、私はそう理解するんだから――理解するということばが行き過ぎなら、そういう心配をするわけです。したがって、総理に確認しておきたい。あくまでも総理は、ベトナム一つである、ジュネーブ協定を完全実施するんだ、時期がおくれておってもするんだ、こういうふうにお考えかどうかを、この機会にはっきりさせていただきたいと思います。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この十七度線、これはなかなか問題が――いまの朝鮮の場合、韓国と北朝鮮、さらにドイツの西と東との問題、ベトナムの問題、この三つがいま国際的には一番の問題だと思うのです。同一の民族だという、そういう方向からいえば一国家、こういう議論が出てくるでしょうし、しかしまた、それを達成する前には、どういうようにすればこれは達成できるかという問題、やはりそれぞれの勢力範囲が明確になっている、その勢力範囲を明確にした上で一民族なら一国家という、そういう方向へいくのが望ましいかどうか、それは議論すべきじゃないかと思う。いま、三木君の使われたことばが、ちょっと私にもわからないのですが、ただいまの十七度線、これはジュネーブ協定でも、その後の紛争の扱い方におきましても、一つの休戦ラインというか、あるいは停戦ラインというか、そういう意味で便宜的にいま十七度線というものを考えている。そういうところからスタートして、そして話し合いのきっかけができ、即時停戦ができれば、まずその十七度線が一応の目安になるだろう、そういうところから、今度はそれじゃ交渉に入った、そうして平和への道はどういうことになるのか、ただいまのような二国家に分けるか、あるいは単一国家にするか、さらにもう一つは、むずかしいベトコンというものがあるのだから、南ベトナムの中にあるベトコンの扱い方はどうするのかとか、いろいろな問題があるだろうと思うんですね。だからそういう事柄は、結局停戦後において、休戦後において話し合うべき筋のもののように思う。私はかように思いますので、その点は、三木君がもう断定的に言っているわけでもないんじゃないだろうか、かように思います。また外でそういうことをきめ得るものでもございませんから、一つの話し合いのきっかけになる具体的な提案、そういう提案とお考え願えればいいのかと思います。
  47. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理、そんなむずかしいことを答弁なさらなくてもいいんですよ。問題は、日本政府としてそのジュネーブ協定を完全実施する――その前に問題がありますよ。その前に、要するにアメリカ側アメリカの案がありましょう、それから南の政府は南の案がありましょう、それから民族解放戦線は民族解放戦線、北ベトナムは北ベトナムの案がありましょう。ありましょうが、そのことは、まずここでちょっと別にして、いかなる形でくるか知らぬが、その案がかりにまとまったとすると、そこで結局ジュネーブ協定を実施するということについては、この点は総理、もう間違いないでしょうな、そういう意見は。総理ジュネーブ協定を完全実施しようとするにはもちろん会議を持つんですよ。したがって、それへくるまでには、各国にそれぞれの意見があって、いろいろな道程を通してくると思うが、ここで仮定論、かりにいろんな道程を通して会議を持たれた、しかし、そのジュネーブ協定の実施ということについては、日本政府は賛成なんでしょうね、こう私は聞いているわけですから、それのことばだけでけっこうです。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはあげ足をとられるというわけじゃございませんが、非常に外交的機微に関することですから、やや詳しくお答えしないといかぬと思います。  いま問題は、十七度線を境にして、そうして停戦する、休戦をする、こういう意味では、ジュネーブ協定はひとつ必要だ、それに返ることはいい、しかし、その後さらに、選挙等による単一国家論がこれは出ているんだと思います。そういうような点が、さらに停戦した後に話し合う一つの問題じゃないか、ジュネーブ協定がそのまま実施できれば、これは一つのたいへんないいことだと思います。しかし、その後の事情の変化、情勢の変化によりまして、あるいはもっといい結論も出るかもわかりませんから、そういう意味のものが望ましいのじゃないか。だから、いま停戦する、休戦する、そのきっかけに何が持ってこられるか、やはり過去の話し合いでジュネーブ協定が出てくる、かように思いますけれども、話し合いの結果は、もっと時宜に適したものがあっていいんじゃないかと私は思います。
  49. 山本幸一

    山本(幸)委員 それでは、私は具体的にお尋ねしましよう。いまのはちょっと抽象的でしたからね。ジュネーブ協定の完全実施ということばは抽象的でしょう。ということは、そういう会議が持たれる前に、ジュネーブ協定が半分なり三分の一なり実施されているのだし、形は多少変わっても実施されてくるのだ、あるいは各国意見に多少異論があっても、実施されてくるという段階を通すのですから、それはそのとおりです。ただ、私がさっきから御質問しているのは、十七度線で分けておるのは、これは五四年のジュネーブ協定が、フランス連合軍とベトナム人民軍との、いわゆる危険地域として、そこから分けたんだ。それでいま両方に分かれているんだ。しかし、五六年の総選挙によって、それは自動的になくなるんだ、これはジュネーブ協定一つなんですね。一つより、むしろ将来を処理するに重大な要素なんですね。そういう内容のものはお認めかどうか、具体的に言いますと、そのことですね。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま山本君が指示なすったジュネーブ協定をつくったときの実情は、フランス軍等の問題もあったろうと思います。これはもっと詳細に事務当局から説明されたらはっきりすると思います、私が誤解していると困りますから。しかして、同時に、ジュネーブ協定の中身は、その後話し合いができて、選挙による単一国家、そういうところに重点が置かれているだろうと思いますが、この点はさらに話し合ってみる必要があるのじゃないのか、私はこういうことを実は申しておるのでありますし、また外務大臣の言い方も、ジュネーブ協定ジュネーブ協定と言うが、全部をそのまま行なえるかどうか、さらに双方で話し合う必要があるのじゃないか、かように思うのでございます。  なお、――いいですか、当時の……。
  51. 山本幸一

    山本(幸)委員 いいです。あなたの答弁で十分だ。ほかの人の答弁を受けたってしょうがない、責任のない者の答弁なんか。  それでいいんですよ。要するに、もし和平会議が持たれれば、それはあるいはジュネーブ協定にプラスアルファが出てくるかもしらぬし、そのときの客観情勢によって、さらに和平に必要な、発展する議論がされるかもしらぬし、それはそういうことがあり得るということを私は認めますよ。しかし、少なくとも、あなたも半ば認められたが、私が主張しているように、二つの国でない、ベトナム一つの国なんだということだけはあなたが認められれば、それでいいんですよ。何もほかの人の答弁なんか私は要りませんよ。  そこで、私はこの機会に、これは私の主観かもしれませんが、総理はたいへん涙もろい人だと私は認識しております。たいへん涙もろいと思っております。人の世話もよくされるということも聞いております。特に自分のほうの直系は、よけい世話されるということも聞いておりますが、その涙もろいあなただから私は聞くのですよ。そのベトナム戦争一つ下げて――下げてというとおかしいけれども、もっと重要かもしらぬ、重要でしょう。人道的な立場、いわゆる人間愛の立場、こういう点からあなたの意見を伺ってみたいと思う。  ベトナム戦争の爆撃で、御承知のとおり、罪もとがもない、がんぜない子供がたいへんな被害者になっておりますね。これはもう、むざんな事実については天下周知の事実だ、私もそう思っております。これの被害を与えるについては、そう言ってはなんですが、世界で一番優秀な兵器、世界で一番精鋭な人物、頑強な人物、そういう人が精巧な飛行機に乗って爆撃をしておる。そのために子供はナパーム弾、黄燐弾、こういうものでたいへんな被害を受けておることはあなたも知っておられると思う。聞くところによると、ナパーム弾は日本でつくって送られておるということを聞いておりますが、まだ私はその証拠を見ておりませんから、そこのことは議論しません。しかし、これは一ぺんあらためて議論するつもりです。ちゃんと部品、部品を別に、いわゆる分散加工をやらせて、向こうへ送って、向こうで仕組んでおるということも、私どもやや知っておるのですが、それはいずれあらためて次の機会に申し上げるつもりです。そういうように罪もない子供が、一ぺんこびりついたら離れないナパーム弾でやけどをして、それから手足をもぎ取られて、あるいは細菌感染をやったり、あるいは子供が目をむいたままそのまま死んでいく、こういうような全く悲惨な状況は、これは私どもは映画、テレビ、あらゆる書物で見ております。総理も、おそらく、涙もろい方だから見ておられると思うのですが、私は、特にある文章を読んでみた。小児科の先生で評論家です。この人がこういうことを書いています。人間の子供がこのように殺されていることは人類最大の悲劇であり、恥ずべきことである。今日までの歴史で、地上に生きたいかなる生物も、自分の種族の子をこのように殺さなかった。過去のいかなる場合にも、これほどたくさんの子供が、しかも子供だけがねらわれて殺された事実はない。こういうことを書いておられます。私は、まさにそのとおり。子供は共産主義だの、社会主義だの、自由主義だの知るわけがないのです。そういう何も知らない幼児に、非常な悲惨な被害が与えられておるということ、これは私は民主主義を唱え、自由を唱え、人間尊重を唱える、そういう近代社会にはとうてい考えられないことだと思います。私はいかなる理由をあげても、生きようとする人間が、全く納得のいかない事実だと思います。したがって、子供のこの悲惨な事実、こういうものを、人道的立場から総理は一体どう考えておられるか。これがまず一点です。  それからもう一つは、これとやはり同じことで、民間人、非戦闘員の被害も言語に絶するものがございます。一九六四年までに十七万人近い人人が殺されて、八十万人余の人々が、いわば大きなけがをしておる、傷ついている。また、拷問によって不具にされた人がたくさんある。婦人が暴行も受けておる。こういう事実もたくさんある。これはあなたも十分御承知だと思います。  先般医薬品を積んで北爆下の北ベトナムに航海したフェニックス号、この乗り組み員の一人のチャンプニーさんという人が日本に帰ってきまして、広島で記者会見をやっております。このチャンプニーさんの記者会見の中身を見てみると、ハノイ近郊のフサという部落では不発爆弾を見た。爆弾の中に、野球のボールくらいの破裂弾三百個ほどが詰まっておる。落ちると同時にこれが四方に風び散る。さらに一つ一つが爆発する。この爆弾は、人畜殺傷用の残虐なものである。部落の幼稚園には、教室の中に防空壕が掘ってあるのを見て、とてもショックを受けた。もう一つの村では、家屋の八〇%までが爆撃でこわされており、人々は掘っ立て小屋に住んでいた。こういうことを記者会見で報告もいたしております。  また一九六六年の一月、アメリカのハンフリーズ陸軍少将は、ベトナム戦争で軍人に対して民間人が何倍も多い死傷者を出している、こう言っております。同じく六六年の三月十七日、ザブロッキ米下院外交委員アジア極東文化委員長は、解放戦線の軍人一人に対して、一般市民が六人の割合で被害を受けている、こういうことを言っているのです。そうすると、私の調査では、六六年に大体民族解放戦線側の軍人は五万人死傷者が出ております。その六倍ですから、三十万人の非戦闘員、民間人が計算されることは、これはもう明確です。しかも、その中で七〇%が子供なんです。民間人のうちの七割が子供なんです。これは私はたいへんなことだと思うのですね。こういう人道的立場、愛情の立場から見て、こういう事実、あるいはいまのフェニックス号で帰られた人の報告事実、こういうものを見たら、だれでも胸を締めつけられる思いがすると私は思うのです。したがって、特にそういうことには痛切に感じておられる総理は、一体こういう非人道的ないまのベトナム戦争をどういう認識でもって迎えられるのか。ただ単にアメリカがこうだとか、どこの国がこうだとかいうのではなしに、もっと高い人道的立場からものを解釈すれば、私は総理の今後の決断がかなり明確につくのじゃないか、こう思いますが、一体こういう非人道的な行為をどう受けとめておられるのか、これはひとつ念のために聞いておきたいと思います。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま山本君がるるお話しになりましたが、特に山本君より以上に涙もろいわけでもございません。しかし私は、人道的立場に立ってのものの判断は、山本君と同様にしておるつもりでございます。ただいま非戦闘員あるいは子供、これらが殺傷されている、まことに惨たんたるものだ、こういう例をあげられました。こういうことがあればこそ、戦争を一日も早くやめなければならない、平和を招来しなければならない、かように実は思うのであります。実はさきの戦争につきましても、私どももいろいろ経験をいたしました。あるいは当時焦土戦術、いろいろなことが言われたものであります。しかし敗戦、無条件降伏、こういうことをあえていたしましたけれども、これも万世のために泰平を開かんというか、そういうほんとうに崇高な気持ちだと思います。私はこれは、人道的な立場においての当然の帰結じゃないだろうか。だから各方面で話し合いをしろ、こういうことを盛んに言われておるのだ、そういう際に、なぜ話し合いに応じないか、いま言われること、それは、それぞれの国においてそれぞれの主張があるだろう、しかし、それが戦い、武器によって解決しなくても、十分話し合いによってそれは幾らでもできるはずなんです。だからそういう意味で、ただいまの平和運動、平和工作等について非常な感銘も覚え、同時に称賛もし、また力も与えたい、かように私は思っておる次第であります。
  53. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理の御答弁の中で、人道的な立場から、早期にこれを片づけなければいかぬという点では、私は一致したと思います。その他のつけ加えられた意見は、ちょっとまぎらわしいところがありますが、その部分だけでは一致したと思います。私はこれは、私どもベトナム戦争をもし平和的に片づけようとするなら、それはやはり先ほどから申し上げておるように、まず北爆を停止することが先決だ、それから外国軍隊を撤退させなければいかぬ、全面的な戦闘停止をやらなければいかぬ、それから会議には民族解放戦線を認めて、その代表者を加えなければいけない、それから、かねがね私が言っているように、民族自決、この原則も認めなければいかぬ、同時に、先ほど申し上げたように、ジュネーブ協定の完全実施をやらなければいかぬ、これらはジュネーブ協定に含まれております。私は、このような立場でなければ、いまの私の見解からいけば、なかなか北ベトナム側あるいは民族解放戦線側を和平へのテーブルに引き込むことは困難ではないか、こう見ております。しかし、これは私ども意見です。  そこで総理に申し上げたいのですが、先ほどから私とあなたの中では、いずれが一体先に侵略したのか、内政干渉をやったのか、あるいは主権を侵害したのかという点では、残念ながらこれは平行議論になりましたね。そこで私は、平行議論の上でこれを進めてみたいと思うのですけれども、いま総理がお認めのように、その問題については平行的ではあるけれども、現状の人道的立場、愛情的立場を無視して人間社会はない、人間不在の社会である、こういう点について私は大体意見が一致しておると思います。だとするなら、ひとつこの際、日本政府アメリカに向かって積極的にものを言う決意があるかどうか。日本政府が北ベトナム側にものを言うということは、おっしゃることはけっこうだけれども、両国の関係からいって、それほど効果があるとは現段階では私は思っていません。しかし、アメリカ日本との関係においては、日本政府がかなり積極的にものを言う、何らかの平和解決への具体的な手を打たれる、私はもういまの人道的な立場からいって、すでにそういうところへきておるような気がするのです。これはまあ失礼な話ですけれども、四月の二十日ですか、あなたのほうの自由民主党の中の藤山さん、赤城、中曽根、古井、川崎さん、遠藤、宇都宮、大石、稲葉、この皆さんが会合を持たれて、ウ・タント提案を支持する、こういうことを申し合わしておられるわけですね。これは新聞で拝見したのだから、御本人の名前をあげることは失礼です。失礼ですけれども、新聞そのままを正直に申し上げる。それで自民党の中でも、やはりこの際最低限ウ・タント提案を支持していきたい、こういうことを言っておりますが、あなたもやはり人道的立場、これを平和的に解決つけるには、先ほどもちょっと触れられたが、ウ・タント事務総長の提案、これは支持しますか、アメリカの条件がなくとも。アメリカの条件が入っておりますよ、あそこには。予備会談には南の代表を入れろ、いわゆるグエン・カオ・キのほうの代表を入れろ、こういう条件が入っておりますが、あの条件を除く案ですよ。それを政府は支持しますか。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどウ・タントの最近の提案、これは最初から、私歓迎するということを申しました。ただいまアメリカが条件をつけた、条件をつけたと言われますが、少なくともアメリカはこれを了承したのです、その条件があったかないか知らないが。しかし片一方は、とにかくこれをいれてない、拒否している、こういうことですから、このウ・タント提案というものを私どもは歓迎しておる、この気持ちを十分北も理解していただき、また南も理解して、そうしてほんとうに一体となって話をきめることが先なんじゃないのか。どうもまだ話し合うというその段階にきておらない。これは私はまことに残念だと思います。そうして、話し合わないのは右のアメリカの責任だ、あるいは北の責任だ、かように言うこと自身がどうかしているので、何であろうと、とにかくこの際は話し合いを始めることなんだ、停止することなんだ、即時停戦だ、これに徹底することが必要なんじゃないかと思う。そうしていろんな話し合い、条件はあるだろう、それはその話し合いの場でやってほしい、それがいれられないから全然話し合いの場を持たないのだという、そういうかたくなな考え方はひとつやめてもらいたい、人道的見地からもそれは望ましいことだ、そうして話し合いをすることだ、かように私は思うのであります。でございますから、いずれを非難するわけじゃございません。北を非難して、このウ・タントの提案ができ上がらないのは北側に責任がある、かように私は思ってはいませんが、とにかくこの際は、こういう提案があるのだから即時停戦、そうして直ちに話し合いに入るという、このことがもう絶対に必要だ、私はかように思うのであります。
  55. 山本幸一

    山本(幸)委員 いま総理はウ・タント事務総長の提案は歓迎し、支持する、そういう御答弁をなすったわけですが、私は初めてきょうここでお伺いしたのですけれども、御支持なさるなら、ウ・タント事務総長の提案にかかわらず、日本政府がそういう提案を支持すると同時に、日本政府アメリカに向かって、条件をつけなさんな――あの条件は、それはあなたはアメリカは承認したとおっしゃるけれども、私はいかなる文書を読んでみても、やはりアメリカはあのまま承認しておらぬのですよ。南の政府の代表を予備会談に加えなければいかぬ、こういう条件をつけている限りは、あなたはひとつ一そう勇気を持って、その条件をやめなさい、そうしてウ・タント事務総長の案をそのまま承認してはどうですか、こういって日本政府は要求せられる決意があるのか。あなたは時期でないとおっしゃるが、時期でないと言っておったら、いつまでたってもこれは片づきませんよ。私は、やはりこういうことは、勇気を持って大胆に率直に訴えていく、こういうことが必要だと思います。特にウ・タント事務総長提案の一番前提になっておるのは、北爆の即時中止ですから、そのほかに二つの項目があるわけですが、これを支持されるなら、あなたはここで一番、それを支持する、したがってアメリカもぜひ条件をつけぬでのんではどうか、こういうことをひとつ進言してみたらどうですか。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 近くウ・タント来日もございます。そういう意味で、外務当局も絶えずこの問題は真剣に検討しております。また、それぞれの必要な手段は講じております。この際申し上げたいのは、この国会において私が山本君の質問に答えておる、このくらいはっきりした政府態度はないのでございます。この問題で新しくアメリカと会談を持つということをしなくとも、日本政府考え方ははっきりしておりますから、どうかそういう点は、いまの報道の非常に発達した今日でありますから、御心配なく、そういう点は政府のこの問題に対する真剣な態度を、ひとつこの上とも御支援、御鞭撻を願いたいと思います。
  57. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理、私はどうもそこを納得しかねるのですがね。おれはこう言ったから、それは近代のマスコミの発達からいけば当然相手にも伝わっておるだろう、それと、アメリカに向かってあなた自身が機関を通じて提唱することとは全く違うと思うのですよ。後者のほうがもっと力強いと思うのです。そういうことをあなたは言われるなら、それをアメリカに提唱したらどうですか。アメリカに、こうしてはどうですかと言ったらどうです。それを、いまここで私は答弁をいただこうとは思いませんよ、思いませんが、せめてもウ・タント事務総長が来たら、そういう点について少し決意を固めるような前向きの態度をとらぬと、日本政府はいつまでも疑われると思いますよ。いま私の知る範囲では、日本政府は相当疑われております。参戦国にいわせると、何だ、あいつら手もよごさぬで、そうしていい顔をしながらベトナム特需でえらく利益を上げてというような、不満を漏らしておるでしょう。しかし、参戦国以外の諸国は、逆に、日本政府アメリカベトナム戦争方針に対して、きわめて巧みな、高度なやり方で協力しているぞ、こういうことで疑いの限をもって見ておることは、西ヨーロッパの諸国がそうなんです。これは私はあらゆる資料を見て、そういうことが言えると思います。なぜ言えるかというと、私は先般来の国会の議論を承っておっても、政府答弁がどうも私には納得いきかねる。これは私はイデオロギーや思想や世界観の相違で言っているのじゃありませんよ。それは誤解ないようにしてもらいたいのだが、たとえば政府は、防衛、自制の名において、近代兵器の発達に見合う自衛、防衛の武器を持つことは憲法違反でない、こうおっしゃる。先般来の答弁でこう言ってみえますね。まあ詰めていえば、あなたの議論でいくと、小銃に対するピストルは自衛だ、あるいは機関銃に対する小銃は自衛だ、大砲に対する機関銃は自衛だ、いわゆる核兵器に対する通常兵器は自衛だ、こういうふうに発展していくわけですね。近代兵器の発展に見合う自衛、防衛の力を持つことは違反でない、こうおっしゃるならば、一例をとると、具体的にはそういうことになると思うのです。そうすると、その論理を追うていくと、核兵器がさらに発展していけば、日本が小型核兵器を持つのも、これは自衛の手段だ、こういうふうに発展していくのですがね。そういうことをあなた方が常に国会答弁でおっしゃるものだから、各国はやっぱり疑っているわけですね。だから、ひとつ、そういう態度というものをもっと検討してもらわなければいけないのじゃないか。憲法の精神に沿って検討してもらう、このことが私は特に必要じゃないかと思うのです。  さらに、この具体的な例をとると、これはたしか一昨年の七月二十一日、台風を理由にB52がグアム島から板付に移動したことがありますね。その際にたいへん世論が反発して、それで政府アメリカに要求し、一ぺんは受け入れられたけれども、さらにアメリカに話をして、二十七日に板付へ来た飛行機を、翌日の二十八日に沖繩へ移動させた。これは事実ですね。ところが、二十八日に沖繩に移動したそのB52が、翌日の二十九日にベトナムの戦場へ向かっておる、発進しておるわけですよ。これは、私は明らかに、形は別にして、最初からアメリカ軍が作戦行動のために、作戦行動に阻害があるから――台風に阻害されるとかりにするなら、台風によって阻害があるから、とりあえず板付に移動した、世論の反撃を受けて沖繩へ再移動した、その翌日、沖繩から戦闘現地へ発進しておる。これは最初から戦闘作戦行動の意図を持って板付へ来たと見なければならぬと私は思います。この経過からいって、そう見て決して差しつかえないと思います。こういうものは、事前協議の対象でないとされておる。こういう点が非常に日本政府は疑いを持たれておるのですよ。  それからさらに、私、一つ一つ申しません。時間がだんだんなくなりましたから、まとめて申しますが、同年の八月三日、あるいは十七、十八日の二度にわたってC130輸送機五十機か沖繩から避難しております。この輸送機といえども――沖繩から日本のほうへ避難しておるのですよ。この輸送機といえども、御承知のとおり、私はやっぱり作戦行動に準じておるものだと思います。ベトナム戦争で死傷した人々のための輸送機なんですから。したがって、私はやっぱり作戦行動に関連していると思う。そういうものもそのまま容認せられる態度、少しも真剣に検討されないそういう態度、これも私は疑ぐられていると思う。  それから、一昨年ですね。八月三十日ですか、参議院の決算委員会で、政府は、米機を追尾してきた敵の飛行機が日本の上空に入った場合には、自衛隊が出動してこれに処置する、いわゆる迎え撃つ、こういう答弁をなすってみえるのです。これは、私どもにしてみれば、安保改定論争のときに、すでにそういうことをたびたび指摘して、そうして、将来米軍が挑発をしかけた場合には、日本が戦争に巻き込まれる危険がある。こういうことを安保論争でくどいほど政府に向かってわれわれは主張いたしております。  この二、三の問題だけ私が取り上げてみても、日本政府はたいへん、むしろ佐藤総理のいまの御答弁とは全く逆に、何となしにアメリカの戦争政  策を支持している。これは、例はまだ幾らでもありますよ。椎名外務大臣の答弁などは全く見ちゃおれぬ。そういうものもたくさんありますが、私は、この際これは省略いたします。こういうことに各国が疑いを持っておる。各国だけじゃなしに、われわれ日本人ですらも、何か政府態度が煮え切らぬという疑いを持っております。こういうことをもっと今後は真剣に検討されて、疑いを持たれないようにおやりになっていただきたいと私は思うのですが、ひとつこの際、従来の態度をもう少し真剣に検討する、こういう気持ちになれませんか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府のとっている政策にどうか御鞭撻を願うと言ったら、さっそく御高見を拝聴する機会を与えられまして、いろいろ国内からも非難があるが、外国からもいろいろ疑われておる、こういう点はまずいじゃないか、こういうお話であります。御意見は御意見として伺っておきますが、私は、どこまでも、わが国のあり方、自由を守り、平和に徹する、そうして国益を守っていくという、この基本的な態度国民も各方面も、また国際的にも、これが理解されるように一そう努力するつもりでございます。
  59. 山本幸一

    山本(幸)委員 どうも、そういう問題になると、例によって、平和に徹するということばで簡単に片づけられるのですが、私は、総理は、今後もっと真剣に、その種の問題については日本総理大臣として取り組まれる必要があると思うのです。まあ、しかし、それ以上ここであなたと議論してもしようがないでしょう。  そこで、きのうたしか私ども淡谷委員がLSTの問題で質問いたしておりますね。あの五人の死傷者を出した問題、これは、政府側答弁を聞いても、千三百何十名か、約千四百名近い者がLSTの乗り組み員としていま乗っておる。これは、政府答弁によれば、職業の自由選択であり、本人の自発的な意思であるから、これはなかなかそういうことを国として押えるわけにはいかぬ、こういう答弁に終始しております。そのLSTは、これはまあ輸送船といわれておりますが、上陸用舟艇だと解釈するのが私は正しいと思います。したがって、単に衣料等、そういうものでなしに、軍需物資、そういうものも載せておると私は見ております。政府は、その点については、調査をしてみなければわからぬ、こういうことをおっしゃってみえるわけですが、私は、少なくとも、LSTが戦闘中の場所へ行っているのですから、非常に危険な区域へ行っていると思うのです。そういう認識で、LSTの乗り組み員については、政府は別の角度から検討し直さなければならぬのじゃないか、こう私どもは言っております。これに対して、大橋さんの昨日の答弁をちょっと私は伺っておりますが――大橋さん、答弁は要りませんよ、あなたはおからだが悪そうだから。伺っておりますと、こういうことを言っておりますね。従来、LSTは攻撃されたことはありません、一ぺんもありません、それによる被害はありません、今後もいまの情勢では危険と思われるような見通しはない、そういうことを言っておられる。ことばは違うかもしらぬけれども、そういう考え方を述べておられたわけですね。総理、私がいま申し上げたように、従来LSTに対する攻撃はなかったかもしらぬ、しかし、将来はどうかということになったら、政府の調査によると、さらに危険だと思われるような見通しはない、そういう資料はない、こういう答弁です。ところが、私がいま言ったように、私が納得できぬのは、現に戦闘地域へLSTは行っているのですよ。現に戦闘地域というのは、危険な場所と見なければならぬ。どこかの役人が、わが党のだれかの質問に対して、ヒマラヤの登山だとか、それから南極、これも危険ですよと、こういうばかな答弁をした人があるそうですが、これはよほど頭がどうかしている。人間の意思によって危険を避けれるものと、本人の意思によって危険の避けられない問題とをごったにして、おためごかしの答弁をしておりますが、私は、いま言ったように、戦闘区域におるんですから、大橋さん御答弁のように、今後危険はない、そういうことは断言しかねると思うのです。やはり戦闘区域に行っておる限りは危険があると見て、これについての措置を講ずるのはあたりまえじゃないですか。私は、もう公式論的なことは言いませんよ。人間の生命を尊重するという立場に立っても、やはり措置をすることが必要ではないか、こう思うのですが、この点について、きょうはひとつ総理からお伺いしたいと思います。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまLSTの死傷事故が起きたことをたいへん残念に思っております。こういう方々に対して心からお悔やみを申し上げるとともに、同時に、けがをされた方は一日も早く健康体になられるように、またそういう意味から、これらに対する補償等の手続については万全を期するように、これこそアメリカに十分交渉すべきものだ、かように思っております。同時にまた、将来の問題について十分の保障があるかという、こういう点についても、さらにもっと詳しく当時の実情もよく調査し、また、今後のあり方等についても万全を期するようにいたしたいものだと思います。昨日、私に対して淡谷君、そういう質問をしたかったと思うが、時間の制約がありまして、私そのお話を聞くことができなかった。大橋君がかわってお答えしたと思います。それで、ただいまの政府態度については誤解はない、かように思います。もちろん、いまあげられましたように、もともとこの種の雇用関係は、ただいまは米軍と直接雇用の形をとっておりますから、政府が在来あっせんしておった、そのときとは変わっております。したがって、職業選択の自由、もちろんこれはあると思いますし、また、こういう事柄に最も敏感な船員組合等におきましても、この雇用については多大の関心を示しておりますが、それがいままでのところは大体了承がされて、直接雇用が行なわれたのでありますから、この点では、私は、政府が直接干渉するような余地はなかったと思います。しかし、ただいまは現実に死傷事故が起きたのでありますから、これらの事後処理、または今後のあり方についてさらにさらに私どもは万全を期するようにしなければならぬと思っております。そういうことでございますから、政府はただいまの状態を十分調査いたしまして、そうして先ほどお答えしたように、ただいまの状況ではこれを変更する考えはない、こういうような結論を申したのではないかと思います。いずれにいたしましても、国民の生命に関する重大な問題でありますから、十分注意をしてまいるつもりであります。
  61. 山本幸一

    山本(幸)委員 くどくはやめますが、いま総理のお答えによると、本人の自由契約、本人らの雇用契約によって行なわれておるのであるから、政府はそれに介在することはできなかった、そこで、そのけが人、死んだ方々の補償は、ひとつできるだけ強く要求しよう、今後も危険のない保障を取りつけるようにしよう、さらに、いまは直ちに変えようと思わぬが、将来にわたっては検討してみよう、こういう答弁にまとまっていると思うのです。私は、ここでやや意見らしくなりますが、本人らの自由意思による雇用契約であるけれども、外国船に乗るLSTの乗り組み員は、政府の旅券がなければ乗れないでしょう。そうすると、政府が介在しないことはないのです、介在するんですよ。しかも、その旅券の規定でいけば、危険な区域には出さないことになっている。だとするならば、戦闘地域に行くようなそういう上陸用舟艇、最初から危険だということはわかっているんですから、私は、その意味において早急に検討してもらいたい、こういう意味です。これに対して、いまあなたの御答弁は、将来の問題として早急に検討しましょう、こういうことですね。そういうことですから、私は、その問題に触れるのはやめましょう。  そこで、いよいよ私はベトナム戦争の問題について最後的なことをお伺いをするのですが、総理はお気に召さなかったかもしらぬが、私が昨年の臨時国会の本会議の代表質問で、ベトナム戦争は一そう危険で不幸な事態であり、今後さらに拡大するであろう。その拡大するであろうということは、もうすでに、そのころはわかっていなくても、先ほどから申し上げておるように、グアム島会談以後各種の爆撃がどんどん行なわれておる。私が想像したとおり、当時は想像かもしれませんが、私が考えたとおりの状況になってきておると思います。それから、これは新聞の伝えていることですから、私もはっきりは確信がありませんけれどもアメリカの地上軍が現に四十三万ですか、四十三万とか四十四万派遣されておる。これは、私が昨年の本会議であなたに向かって、おそらくことしじゅう、昨年で言うことしじゅうに五十万近い地上軍が送られるであろうと申し上げたことにやや近いと思います。現状はそうなってお  ります。この地上軍のほかに陸海空軍、あるいは参戦国の派兵、こういうものを含めると、大体兵  隊の数は六十万をオーバーしております。そう  なってくると、いま申し上げたように、非常な戦争状況、緊迫感を私どもに思わしめておる。こういうように、いまの現状はそうなっており、それ  に加えて、先ほど私が申し上げたように、さらに戦争拡大の方針では、従来手控えておったという個所すらも、これから攻撃しないとは総理も保証ができぬと思います。そうなってくると、ソ連と北ベトナムとは新たなる武器の貸与協定、条約もでき上がった。さらに、新しく精鋭なミサイルの要求を北ベトナムはソ連に始めた。それから北ベトナム側は、この戦争は十年、二十年戦争である、こういう決意をまた新たにしてきた。また中国側は、先ほど申し上げたように、北ベトナム、いわゆるベトナム人民の大後方に中国はあるぞ、こういうことも言明しだした。したがって、いまの客観的な諸情勢は、これは私は率直に言って、拡大の方向をたどる危険なものがある、心配しなければならぬものがある、こういうように昨年私が御質問申し上げたですね。そういうように戦争が拡大すると、勢いのおもむくところアジア戦争に拡大したり、米中戦争がないとは保証できませんぞ、したがって、その際には日本が戦争に巻き込まれますよ。具体的に言うならば、沖繩はアメリカの世界で最も優秀な核兵器装備の基地である。あるいは日本にはいまだに百四十何カ所かの軍事基地があるそうです。その中で特に第七艦隊の基地といわれておる横須賀、佐世保もやはり危険な状況になるということの心配もされるわけです。そこで相手方が黙っておればよろしい。相手方がやられるままに黙っておればよろしいが、先ほどから申し上げておるように、ソ連も中国もここ一日、二日新たなる決意をし始めた。義勇軍の要請があればいつでもこれに応じる決意がある。これはソ連、中国にとどまらず、各国社会主義国家等が言明をしておる。そうなると、これは時によれば日本を戦争に巻き込み、あるいは私が本会議で御質問申し上げた、いわゆる報復攻撃、戦争に巻き込まれて、拡大すれば報復攻撃がないとは保証できないのじゃないか、こういうことを申し上げております。これに対して総理の当時の答弁は、「アメリカの圧倒的な核の報復を最初から覚悟して初めて沖繩やわが本土に対する攻撃が加えられるのであります。私は、かような暴挙をする国はどこにもないと、かように確信をしております。」こういう答弁をしておられる。しかし、当時の答弁と今日の事態とでは、むしろ私が主張した方向のほうがウエートは大きくなっているような気が私はいたします。したがってまた、戦争とか争いの本質からいけば、それは人間の意思とは別に、これはどんどん拡大していく性格を持っているのですから、私どもはそういう見通しを常に持って、それに対してどうすべきかという具体的な対処の方法を考えなければならぬと思うのです。これは常に考えておかなければならぬ。具体的には、沖繩がどうなるんだ、第七艦隊の基地がどうなるんだ、日本が戦争に巻き込まれる危険性があるのではないか、それは日本の意思にはなくても、客観的にそう巻き込まれる危険性がないとは言えない、私はこう思うのですが、総理はまだ昨年の答弁どおりの状況だとお考えかどうか。このベトナム戦争一つの締めくくりとして、この際私はお伺いしておきたいと思うのです。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日本の安全確保に心胆を砕いております。ただいまそういう観点からお答えをいたしますが、昨年の本会議山本君にお答えしたその考え方は、今日の状態におきましても変える考えはございません。私は、昨年同様の考え方を持っております。
  63. 植木庚子郎

    ○植木委員長 この際、川崎寛治君の関連質疑を許します。川崎君。
  64. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 明日は四月二十八日であります。平和条約が発効して十五年、ただいまも山本委員から、ベトナム戦争の平和解決の問題について詳しく追及がございました。平行線をたどっておるわけでありますが、太平洋の空を明るくしたならば沖繩を返そう、こういうことを、ラスク国務長官も最近は新しく言っておるわけです。ベトナム戦争の重要基地としての沖繩については、政府側は絶えずこれを確認をしております。また、アメリカ側も絶対に放さないことを明言いたしてまいっておるわけであります。  そこで、端的に私はお尋ねをいたしたいのでありますが、この本委員会等で繰り返し追及をされました中で、沖繩の基地の自由使用を条件の返還構想というものは、観念的であって実現不可能だ、こういうふうに総理並びに外務大臣は意思を統一された。あるいは核つきの返還、これは責任のある見解でない、また、私も採用しない、採用していない、こういうふうにこの委員会でも明言をされてまいったわけであります。そこで、私はまず第一にお尋ねをいたしたいのでありますが、基地の自由使用条件の沖繩返還の構想を打ち出したり、あるいは核つきの返還の構想を打ち出した前の下田外務次官が、ただいまアメリカの大使であります。でありますから、総理が国会で明確に否定をされたそういう線でアメリカ大使がアメリカ側と接触をすることはない、また、させないというふうにここで言明できるかどうか、それが一つ。  次には、マンスフィールド・アメリカ上院議員が一月の三十一日発言をして以来、いろいろの沖繩返還についての構想があちこちで言われておるわけであります。また、沖繩の松岡主席が行って、ジョンソン大統領をはじめそれぞれに接触をした中でも、いろいろなニュアンスというものがいま出されてまいっております。特に政府の諮問機関であります沖繩問題懇談会の会長大浜先生がただいまアメリカに行っておられますが、この大浜さんに対して、二年間駐日アメリカ大使であったライシャワー氏が、日本が沖繩の基地条約を締結すれば全面返還は一挙に解決をする、こうライシャワー前大使から大浜さんに言われておることが新聞でも報道されておるのであります。そこで第二のお尋ねは、日本側から沖繩基地条約を締結して全面返還を一挙に解決するという考えはないのかどうか、あるいはアメリカ側から提案をされたら、総理としては、これに対してどう対処されるか、この二点をお尋ねしたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君にお答えいたしますが、下田大使は政府の大使として向こうへ出かけるのであります。政府の意思に反したような交渉をするはずはございません。これは単独のものではございませんから、その点は御懸念なく。  第二の問題、この基地の問題につきましていろいろの御意見が出ておるようであります。第一でお尋ねがありましたように、日本政府考え方ははっきりしておりますから、その一部的な基地返還、あるいは基地の条約、そういうものが別途にあるとは、かようには考えておりません。したがいまして、政府からさような問題を提案することもなければ、また、アメリカ側からそういう提案をするとは思えませんが、万一いたしましても、それらの点ははっきり断わるつもりであります。
  66. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖繩の松岡主席が、日本政府を越えて、待ち切れずにアメリカ本土に参りました。そして、かつてない、ジョンソン大統領やラスク国務長官、あるいはマクナマラ国防長官、リーサー陸軍長官、こういう人たちに松岡主席は会われてきたわけであります。そうして非常に精力的な活躍をされて、母国の母親は相手にならぬということで、プライス法の改正についてもおおよその見通しをつけてきておる。このことはけっこうだと思います。たいへんなことだろうと思うのです。ところが、さらに経済問題で、沖繩がアメリカ憲法のもとにおいて統治をされておる、だから、経済的にも国内扱いをしてほしいのだ、そのことは、特恵関税の待遇を与えてほしい、こういう交渉をいたしておるのであります。背に腹はかえられない沖繩現地の要望であります。これについてはいろいろの見解がありますが、ここでは私は避けます。そこで、総理が一昨年沖繩に参られましたときに、鉄条網に囲まれ、軍靴に踏みにじられております沖繩の同胞を見て、先ほど山本委員長が指摘をされましたように、涙を流されて、沖繩の返還が実現をしなければ戦後は終わらない、こう名文句を吐かれたのであります。しかし、残念ながら、今日施政権返還についての外交日程はない、こういう繰り返しをされております現状からいたしますならば、総理のその沖繩の返還が実現をしなければ戦後は終わらないといった発言は、いささか時期が早過ぎたと思うのです。そこで、おそらくは、今日の事態の推移からいたしますならば、佐藤総理の時代には戦後は終わらない、こう断言せざるを得ないのではないか、失礼かもしれませんが、思わざるを得ないのであります。しかも、今回特恵関税の待遇を求める、そういう方向にいこう。また、前のケイセン調査団と同じような形で、一つの沖繩問題の調査委員会を派遣しようというアメリカ政府側の動きもいま出てきておるわけであります。そういたしますと、いみじくも佐藤総理は、一九五八年四月、大蔵大臣の当時に、ドル通貨への切りかえをお認めになったのであります。そしてまた今日、総理大臣として、特恵関税待遇の方向への事態を認めざるを得ない方向にいくのではないかという事態に立ち  至っておるのであります。そういたしますと、返還問題という、本土との一体化ということを言っておりますが、現状固定化ということは経済的にもますます深まっていかざるを得ない、こう指摘  せざるを得ないわけであります。そこで、私は関連でありますから、詳しいいろいろの問題等については、いずれ沖繩対策特別委員会でじっくりと総理に対してお尋ねいたしたいと思います。  総理は、秋に訪米をされるということを聞いておるのでありますが、端的にお尋ねします。戦後は終わらない、外交日程はない、こういうことでありますが、沖繩問題の検討をする総合的な機関を政府内におつくりになる考えがあるのかどうか、これが一つ。  次には、秋にアメリカに行かれてジョンソン大統領と会うということになれば、前の佐藤・ジョンソン共同声明で日米協議委員会の機能の拡大をやられました。しかし、それは自治権と事政権等は入らない。単なる民生福祉の項目が加わったにすぎない。現実には、経済援助の問題等に限られております今日の日米協議委員会でありますが、その際に、施政権問題を検討をする新たな日米協議委員会――名前はどうあろうとも、そうした新たな施政権問題等を検討する日米間の協議委員会を提案する御意思があるのかどうか、この二点をお尋ねいたします。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま沖繩、琉球問題は、総理府総務長官のところで南方連絡事務局はじめ所管しております。この機関で現状においては十分だ、私はかように思いますので、ただいまお尋ねになりましたように、総合委員会を設けるとか、そういうところは、いま考えておりません。  それから第二の問題で、いずれアメリカに行くだろう――もうアメリカに行くことをきめていらっしゃいますが、私もアメリカに行きたい、そういう気持ちは持っております。まだはっきり具体化しておりません。したがいまして、その場でどういう話を出すのか、こういうようなことまでは、ただいま申し上げる段階でありません。しかし、今日まで沖繩についてとってまいりました政策、これをさらに強化する必要はある、かように思っております。最近松岡行政主席がジョンソンと会って帰られたばかりであります。日本に立ち寄られて、その際も詳細な報告を受け、連絡を受け、これから後のあるべき姿等について、力を入れるべき点についても、いろいろなお話し合いをいたしたわけであります。私は、今後とも施政権  の全面返還が実現するまで、またそれに備えるためにも、内地との格差がないように、これをできるだけつとめていくつもりであります。それはただ単に教育あるいは社会福祉、そういうものばかりでもございません。経済的な問題や、あるいは地方自治の問題等について、積極的にさらにさらに掘り下げてまいるつもりであります。ただいまお尋ねになったこととあるいはやや違うかもわかりませんが、アメリカに行く、行かないにかかわらず、ただいまのような方針、これを強化していく、これはひとつこの上とも御鞭撻を賜わりたいと思います。
  68. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私関連ですから終わるつもりでしたが、非常に無責任なといいますか、いいかげんな答弁をされますので、もう一点お尋ねしたいと思うのであります。それは、総務長官のもとにあります沖繩問題懇談会、これは御承知のように、教育権分離返還で騒いだときに、私的な機関としてつくった機関であります。その後政府のものになった。こういうふうにオフィシャルなものになった。ところが総務長官は返還問題について扱う機関ではない、森構想は独走だと、あなたは参議院の予算委員会で言っておられるじゃないですか。そういたしますと、総務長官のところでは返還問題等は扱えないのだ、そう言っておきながら、その諮問機関が沖繩返還問題等もやっていくのだということ、これはいいかげんな答弁じゃないですか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君、それは私ちょっと誤解しておりました。ただいまの沖繩問題懇談会、これはいままで森総務長官のもとにありました。しかし、今度はこれを内閣のもとに置こう、そういう意味で懇談会の諸君にも了承をとっておるわけであります。このお話なら、これはもう機構の改正の一つだ、かように思いますので、先ほど申し上げたのは、いまとっておる組織を変える、こういう意味でないことでございますから、これは私の誤解であったので、あらためてお答えしておきます。
  70. 山本幸一

    山本(幸)委員 どうも、自民党の皆さんからも早くやめてほしいという御要求もあります。やはりたまには御要求も聞かぬと、今度こちらが要求することがありますから、そういう意味で質問をはしょります。私、実はまだ中国の国連加盟の問題だとか、それから天津における展示会の問題等ありますが、これは省きます。次の何らかの機会にまたお尋ねしたいと思います。  そこで私は、まずさっそく中国問題を少しお尋ねしたいと思いますが、できるだけはしょる意味で簡単に申し上げます。中国と日本とは、もうすでに戦後二十二年になっているわけですが、法律的には依然として戦争状態が続いている。いわゆる日中間における決済がされていない。この事実は間違いないことです。そこで先般、佐々木委員長がこの特別国会の冒頭で、中国問題を取り上げて総理に質問いたしております。私は、もうこのことでは大体言い尺くされていると思うわけですが、私は、むしろ現段階において、具体的に問題をひとつ提起して、意見を伺いたいのです。  言うまでもなく、歴史的にもあるいは両国の民族的な関係からも、中国関係を早く正常化しなければならぬことは当然なことであるし、また、特に先ほどから申し上げておるアジアの流動状況から見ると、一日も早く中国関係を正常化する必要がある。これはアジアの平和、世界の平和のためにも必要なことだ、私はこう思っておるわけですが、たまたまいま文化革命が中国で進行中ですね。この文化革命で私は総理意見を伺ってみたいのですが、私どもは、中国の文化革命について、こういう態度です。私ども態度は、言うならば、これは中国の内政問題である。あくまでも内政問題である。したがって、文化革命に対していろいろと希望的観測を持ったり、これについての軽率な評価等をすべきではない。こういう立場、もう少しこれを長い目で見守ってはどうかという立場社会党は明らかにしております。これは私は、言うまでもなく、革命とか変革というも  のは、その国の歴史、その国の民族性、その国の土壌の上において行なわれるものであって、したがって、中国の革命を私どもは輸入しようと思っ  ていないし、見習おうとも思っていないし、これを取り入れようとは思っておりません、社会党社会党としての、日本の国にふさわしい方針を持っておりますから。ところが、たまたま一部の方々は、特に自民党の中の一部の方々は、まるっきり社会党の何たるかを御存じなしに、かってな意見をおっしゃってみえるが、これは私は、あまりにも幼稚じゃないかと思う。こういうことは、ひとつ総理から御注意なすったほうがよろしいと思  います。  そこで総理お尋ねしたいのは、この文化革命が続いているから、まさかと思いますが、あなたも希望的観測をお持ちじゃないかというような気がする。言うなれば、文化革命が失敗するとおもしろいな、という希望的観測をお持ちでないと私は信じておりますが、文化革命が継続しておろうと、中国の政体がどうなろうと、やはり日中間の友好問題については、これを進めていく、それからできるだけ日中の国交正常化問題については前  向きの姿勢で取り組む、こういうことは変わりませんか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる文化大革命、これはもう中共の内政問題、私どもがとやかく言う筋のものでないこと、これは御指摘のとおりであります。私は、ことに日本総理でありますから、文化大革命についても、批評などはよほど厳に戒めて、慎んでおるつもりであります。したがいまして、まさか、何か希望的なことを考えてはいないだろうと言われますが、私は、そうではなくして、  一日も早く隣の国が平静になるように、このことを心から望んでおります。そのことは、もう日本の基礎的な、基本的な外交方針でもあります。とにかく、ベトナム問題で先ほどいろいろお尋ねがありましたが、これが平和であることを望んでおるのも、ちょうど中国の場合も同様であります。あの大陸でいろいろな問題が起こってはたいへんでありますから、これはもうそういう意味で、こういう事柄についても、希望としては、できるだけ平静なうちに世の中が進んでいくように、また、繁栄への道をたどられるように心から願っておる次第であります。今日、この後の問題にいたしましても、LT貿易の期限ももうきておりますから、これなども年内にぜひとも更新する、そういう話がまとまることを心から願っておるような次第であります。
  72. 山本幸一

    山本(幸)委員 中国問題については、私はほんとうは、たくさん資料を集めておりますから、もっと御質問したいのです。一時間くらいかかります。そこではしょりますが、いま総理もお認めのように、今日アジアにおける諸課題を処理するに、中国を無視してはこれは事実上不可能だと私は思います。やはり中国をなるべく仲間に入れるという前向きの姿勢でやらなければいけない。いまの文化大革命についての総理の御意見は、まあ、総理の御意見の中ではいいほうだと私は思います。  そこで、具体的な問題に入ります。中途を飛ばして入りますが、モンゴルの問題がいま出ておりますね。このモンゴルの問題については、三木外務大臣が国会の答弁で、将来の課題として前向きに取り組むことは当然である、取り組まなければならぬ、必要によっては外交官を派遣する、こういう答弁をしておりますね。さらにそれにふえんして質問に対して答えられたことは、モンゴルとの国交正常化の問題について、台湾から圧力を受けておりません、台湾から反対のことばがあるということも聞いておりません、こういうこともあわせて答弁をしておられるわけです。これはこういうふうに理解していいですね。答弁は簡単でいいですよ。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  74. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、モンゴルには前向きで国交正常化に取り組む。中国もやはり前向きに国交正常化に取り組みますか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この中国問題というのは、基本的にこの点が問題なのです。一体中国は一つ、その考え方ものごとが処理できるのかどうなのか。現実にあるその政府といろいろ話をつけていかざるを得ないのか、こういう問題があるのだと思います。  モンゴルの場合は、モンゴルが国連に入る、承認した、その場合に、いわゆるこれに賛成した、そのことによって日本政府がこれを承認しておる。ただ、ここに公館を持っていないというだけでございます。
  76. 山本幸一

    山本(幸)委員 またそういう答弁が出るから、私は時間がほしかったのですよ。私とあなたの間に一時間もやりとりすると大体わかると思いますが、はなはだ私は残念な答弁だと思います。そんな日本と中国の関係をなまやさしく考えてはいけない。国連の承認を受けてないからモンゴルとは違うのだ、こういうことばもどうかと思います。それはあなた、国連の加盟問題は、私きょうはずしましたが、日本政府国連加盟を妨害しているのじゃありませんか。たとえば核兵器の問題だって、中国だとかフランスを入れるのももっと意義がある。そういう際にも、あるいはベトナム戦争の終息についても、アジアの経済の問題についても、やはり対中国問題というのはより必要な問題だ。したがって、日本自身が国連加盟に対してもっと積極的な態度をとるべきだ。私がもしあなたの立場考えてあげるなら、最低限、あんなばかな重要事項指定方式の賛成国だとか提案国にならぬで、棄権くらいしてもいいのじゃないか、そのくらいに私は思っておりますよ、あなたの立場を最低限に譲歩してあげて。そういうことをあなた方はやらぬで、そして中国問題は基本的にたいへんだ、たいへんだ、モンゴルとは一緒にならぬ、これはおかしいと思います。ですから、中国問題を前向きに正常化をやろうとするなら、おのずから国連の加盟問題を積極的にやっていくということになるわけです。だから、加盟問題とこの正常化問題とは表裏一体の関係にあることは、もう間違いないですね。そういうものを含んでいわゆる中国問題を前向きに処理してはどうか、取り組んだらどうか。処理ということばがもし言い過ぎなら、取り組んではどうか、こういうことを言っているわけです。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと私の発言が誤解を受けているようです。これはモンゴルの問題とそれから中共の問題と関連させたところに、やや理解しにくいものがあったのじゃないか。もともと言えば、モンゴルも中国の一つだ。だから、中国の中でこれは分離さるべき筋のものではない。これは、もうかねてから中共政府もそういうことを言い、また、台湾の国民政府もそういうことを言ってきている。しかし、モンゴルは、とにかく国連加盟ができた、そのときに日本はこれを事実上承認した、そういう形である。ただ、そこにそれでは公館を、大使館か公使館を置くかといえば、それだけは置いていない、こういうことでありますから、もう外務大臣が答えたように、いまそれでは進んで公館を置くような考え方があるかと言われるならば、これはありません、こういうことを申し上げている。それで、中国から分離したモンゴル、ここに議論があると思うからこそ、山木君も国民政府から文句は言われないのか、こういうお尋ねがあったと思います。これは、とにかく国連に加盟したというその事実で、当事国は反対はいたしておりましても、これは事実上の承認をしているということでありますから、しばらくその点は分けておく。今度の中国の問題になりますと、いまとにかく二つの実力のある政府が、それぞれの地域において政治をしていること、これはもうだれでも認めるところであります。しかし、基本的に、中国はやはり一つだというその考え方でありますから、たとえば中共を国連に加盟さすならば国府を追放しろという、こういう議論が出ているし、また、国府のほうからも、中共加盟を承認するなら国府がそのままここにいることは困るのだというような議論も出ている。その基本的な問題がまだなかなかきまらないでいるのだという話をしている。だからこそ、日本が重要事項指定問題としてこれを扱うというのも、そういう意味では理解していただけるのではないかと思う。ただいま言われるように、日本は隣の国ではあるけれども、重要事項指定問題なんかにしないで、みなの話についていけばいいじゃないか、そのほうが楽じゃないか、こういうせっかくのサゼスチョンをいただいておりますが、私はそうは思わないので、これこそは隣の国日本として、また、国府を承認していままで親善関係、外交関係もずっと続けてきたその立場から、この問題と真剣に取り組めば取り組むだけに重要問題である、かように私は思っております。在来の考え方をいま変えるつもりはございません。
  78. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、何もよその国の意見についていけということは一言も言いませんよ。そんなサゼスチョンは申しません。むしろ、日本が進んで中国との国交正常化に前向きで取り組んではどうですか、こう言っているんです。だから、一言でいいんですよ。今後前向きに取り組まれるかどうか。あなたが、たしか第一回の組閣のときに、中国問題を前向きに進めていきたいとおっしゃった。そのことばはいまでも記憶にあるんですが、今後前向きに取り組んでいかれるのですか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 前向きということばがずいぶんはやりますが、私は、現状のままでいつまでも推移すべきではない、かように思っております。
  80. 山本幸一

    山本(幸)委員 現状のままでということはどういうことなんですか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま中共とは事実問題として交渉している、こういう状態でいつまでも続ける筋のものではない、かように思っておる。
  82. 山本幸一

    山本(幸)委員 私が心配しているのは、ベトナム戦争がいわゆる拡大した場合は別として、幸いにベトナム戦争が平和的に終息する、そうなれば、アメリカといえども、中国問題については、従来と異なった態度を出してくるに間違いない、だから、そうなると、日本は置いてきぼりを食うんじゃないか、それじゃ、日本政府アジア諸国から信頼を失ってくる、そういうこともあるんですよ。だから、前向きというのは、流行語で使っているのじゃなしに、前向きとはどういうことか、中国の国連承認の問題であるとか国交正常化の問題、いろいろ外交上むずかしい点があるけれども、そういう点に前向きで取り組まれるかどうかということをお尋ねしているんです。実はもっと長く言わなければならないのだけれども、結論だけを言っているのです。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま非常に御懸念で、日本が取り残されるのじゃないか、こういうことを言われますが、日本政府は、中国問題について他の国から取り残されるようなばかなことはいたしません。御安心願っておきます。
  84. 山本幸一

    山本(幸)委員 そういう決意ならよろしいです。そういう決意ならよろしいが、意見として申し上げるのは、もっと国連加盟あるいは正常化についての方針をきちんと立てて、その方針に向かって取り組んでいかれるということを私は希望しておきます。  では、具体的に一つ問題を提起しますが、日中貿易ですね。日中買切はいま約六億ドルですか、詳細な金額は知りませんが、約六億ドル。そのうちの七〇%が友好取引あるいは配慮物資とでも申しますか、友好取引が七〇%、LTはごくわずかですね。日中貿易を本格的に拡大していくには、当然私は政府協定が必要だと思います。しかし、いまその議論はやめましょう。現状に立ってものを言えば、少なくともLTというものを拡大しなければ、日中貿易がこかれら拡大する見込みはなかなか持ちがたいと思うのです。したがって、政府はLTを拡大するような方向につとめるのか、そういう努力をするのか、そういうような点に力を入れていくのかどうか。  もう時間がないからついでに聞いておきますが、LTは本年度中で契約が切れますね。そこで、次にLTの契約を更新されるのか、これも伺っておきたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私の答弁のほうが先ばしりまして、実はLTがことしで期限がくる、これを更新してまいりますということをお答えいたしたのであります。それを、更新するというこちらの考え方だけでもいきませんから、そういう気持ちで日本政府がいること、これをひとつ向こうも理解していただきたいと思います。また、LT自身が、友好商社の取引のほうがいま七〇%、こういうお話であります。そのとおりになっております。しかし、やはり将来政府協定に進むものはLT協定だ、かように思っておりますので、これを中心にして進めるのが当然だと思います。しかし、いま友好商社であろうが、何であろうが、それが不都合だとか、かように私は思いません。思わぬで、両国間の貿易が拡大されること、これは心から望むことであります。しかし、それにはやはりLTというような話し合いのものを基礎にして、それが根幹であるのが望ましい姿ではないか、かように思っております。
  86. 山本幸一

    山本(幸)委員 そうすると、あれですか、LTをひとつ伸ばしていきたい、もちろん友好だっていいんですよ。いいが、本格的に貿易を拡大するのはやはりLTだ。この点は私もあなたも意見が一致していると思う。LTを伸ばそうとすると、LTの障害はあの吉田書簡がまた出てくるんですよ。そこで、いま私は、あなたに吉田書簡を破棄しろなんて言いませんよ。言いませんが、私の見  解で言えば、吉田書簡なんというものは、もはや  古証文で時効にかかっておる。したがって、これを乗り越えてLTを拡大する、そういう御意思ですかどうか。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田書簡を古証文と言うわけにはいかないだろうと思います。けれどもこれは、とにかく吉田書簡というものがあったということ、しかし、これは政府自身のものではないということ、そこに運用の妙がある。だから、吉田書簡はありましても、もうすでに政府が答えたように、これから先はケース・バイ・ケースでものごとをきめていく、こういう態度でもございますから、どこまでもアジアの平和、安全というか、そういう観点に立ちまして貿易を伸ばしていくように努力するつもりであります。
  88. 山本幸一

    山本(幸)委員 アジアの平和という妙なことばを途中で使われたので、いよいよおかしくなったのですが、その点はやめましょう。やめますが、吉田書簡は乗り越えるというわけにいかぬ、古証文ではない、それにはかかわらずにケース・バイ・ケースでやっていきたい、ここは正直に受け取りましょう。そうすると、LTを拡大するためには輸銀問題ですよ、吉田書簡に関連する輸銀問題。これはやはり拡大するという方針でケース・バイ・ケースで考える。そうすると、この問題も近く御検討なさる予定ですね。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでも輸銀は使っておると思いますよ。全然使わないわけではない。これは長期決済に輸銀を使うか使わないかという問題です。短期のものは使っておるのですから、そう御心配なく、十分ケース・バイ・ケースで検討していくようにいたします。
  90. 山本幸一

    山本(幸)委員 長期は使えませんか。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 長期というものは、いろいろな最近の特殊な開発途上にある国、これらに対する二十五年だとかいうのは、これは考えられませんね。しかしてまた、それでは五年以上考えられるか考えられないか、こういうようなことが今度は問題になるだろうと思います。そういうことをやはりもっとケース・バイ・ケースで考えざるを得ないのではないかということを言っておる。
  92. 山本幸一

    山本(幸)委員 わかりました。  それでは、いよいよ最後になりますが、いま日本と中国とは政府の制限を受けておるとはいいながら、経済の交流、文化、人事の交流をやっておりますね。ところが、中国へ日本から行こう、北京へ日本から行こう、北京から日本に来よう、そうすると、どうしても三日かかる。飛行機で三日かかる。中国と日本とが航空協定ができておると、これは三時間か四時間で行くのじゃないですか。私は専門家じゃないからわからないが、行くでしょう。そうすると、制限を受けておるとはいいながら、少なくとも人事、経済、文化の交流をやっておるのだが、この際やはり航空協定という  ことを考えてはどうか。もう一つダウンしてものを言うと、航空協定政府間でむずかしければ、貿易のように、民間協定をやらせたらどうなんですか、日航と中国側と。そういうようなところまでお考えになっておられるか。これは私は大切な問題だと思うのです。六億ドルからの経済交流をやり、制限を受けておるといいながら人事、文化の交流をやっておって、そうして三日もかからなければ中国に行かれない。およそ前時代的な問題だと思う。これと同じように郵便協定、海運協定、そういうものがあると思うのですが、これはひとつぼつぼつ考えてみてはどうなんですか。政府として、政府がやらなかったらこうするんだとかなんとか、ぼつぼつ考えるときにきているのじゃないですか。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま郵便協定と航空協定一緒に言われますが、郵便協定のほうは、もうすでに業務協定をしてもよろしいのだ、日本にはその考え方があるということを申しております。相手の国はそこまではきておらないということであります。だから、郵便協定のほうは、単純な業務協定ですから、これは可能だと思います。しかし、航空協定になると、そうしかく簡単にはまいりません。ただいま言われますように、三時間だからこれをやったらどうか、こう言われる。これは確かに航空協定ができるような両国間になることをただいま急いでおるんだ、かように御理解をいただきまして、ただいままだ航空協定は現状においてはできない、かように思っております。
  94. 山本幸一

    山本(幸)委員 要するに、その時期でないということですね。まだその時期でない。そうすると、政府が、その時期でないから、その時期を早くつくるような努力をしなければならぬ。そこで、私は一つ案を出すのですが、どうですか、議員間でひとつそういう相談を始める、政府のその時期でないという時期を早くつくる、そういうことをやってみたいと思うのですが、どうですか、その点は。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、政府は、いまのような外交問題その他からただいまその時期でない。日本の国会の方々も政府考え方を御支援いただけると私は思っておりますので、ちょっと、政府はどうあろうとおれたちがやると言われないで、ひとつしばらくごしんぼう願いたいと思います。
  96. 山本幸一

    山本(幸)委員 国会議員がやるんですよ。国会と政府とは立場が違いますよ。国会議員が自主的に話し合うことがなぜいけない。そんなばかな話はないですよ。しかし、議論はもうやめましょう。そんなばかな話はないですよ。あなたは、少なくとも国会議員を十何年やっておって、国会対策委員長までやって、そんなこと知らぬということは、だめですよ。私は時間がありませんからもう二点だけ。(「まだやるのか」と呼ぶ者あり)それはしょうがない。総理答弁が悪いからしようがない。  それで、核の拡散防止条約について伺いたい。一つは、どういうことかというと、三木さんが核拡散防止条約に日本を参加させる前に、十五日でしたか、各野党の代表と会われたですね。そうして三木さんは、いかにも意見が一致したようなことを言われておる。私は、これからもあると思うが、与党と野党とが重要な問題について事前に話し合いをすることは悪くはないと思います。これは、私個人の意見としても、いいことだと思います。ただし、政府が何でもその案をコンクリート化してしまってから野党と話してみたところで、それは独善的な運営なんですね。したがって私は、総理にお伺いしたいのは、政府がコンクリート化する前に、かりに野党側の意見を取り入れられぬにしても、コンクリート化する前に話し合うという、そういう運用、習慣をつけることが一番いいと思うのですが、どうですか。そうしないと、もうあなた方とそういう話をする限度が将来きますよ。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへんむずかしい話ですが、政府は責任を持っていろいろなことをやります。そのときに、超党派外交というか、各党の意見を聞く。何にも持たないで出ていけば、おそらく皆さん方は、政府は何にも持たないで一体何ということだ、と必ず言われるだろう。それかといって、政府自身がもう一切変える余地のないような案を持てば、何のための相談かと言われる。これは正直に申してそういうむずかしさがある。最後にはこれは政府が責任を持つのですから、そういう意味の話し合いの場があるだろう、だから、野党の諸君だと、かように言って、これはもう同調できないんだ、ただ話だけはするけれども、それはていさいをつくるんだ、こんないいかげんなことはしないつもりであります。また、皆さん方の御意見も伺って、そうして政府の原案を直すべきものだ、かように考えれば、それは直すことにやぶさかでございません。しかし、どこまでも政府自身が問題を遂行してまいるのですし、また、過去の一連の行き方もございますから、それが急に変わるというわけにもいかない、こういうようなむずかしさがあります。だから、お話をする以上、その話を取り入れる余地がない、そういうものではない、かように御理解をいただきたい。私は、せっかくこの種の話ができた、これは私、核拡散防止について各党で話し合ったというのは、新しい行き方で、たいへんいいことだと思います。これは、もう大体が核拡散防止、基本的にはその考え方に賛成だ、しかし、それを実現するためのいろいろの各種の条件等については、各党でいろいろな意見があるのだ、それをひとつ政府でまとめてみるというようなつもりで御相談したのですから、これはもう政府自身が何か先入観、一つの前提をきめてそれで話をした、こういうものでないことだけは御了承いただきたいと思います。
  98. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、かなり弾力的にものを言っているのですよ。政府が、かりに野党側の意見が最終的に聞き入れられないにしても、政府のこの案は動かせぬものだということで会議をやってもだめですよ。野党側の意見に取り入れられるものがあるなら取り入れるという姿勢で会議をやりなさい、私はこう言っているのですよ。あなたは人の話をよく聞かなければだめですよ、そのことを言っているんだから。したがって、何でもこれは動かしませんというようなものをつくって野党に呼びかけても、それは限界がありますよ。こういうことを言っているから、その点は十分ひとつ今後の運営に注意をしてもらいたいと思います。ほんとう言ったら野党の意見としてもっと言いたいことがありますよ。私に言わせれば、なぜ野党の意見というものを国際外交で活用しないのか、野党はかく言っておりますよ。野党はかくかく言っておりますが、日本政府は、いまの段階ではこうでございます、そういうものをなぜ活用しないのか。私は、そういうものを活用しなければほんとうの外交にならぬと思いますから、そういうことも十分今後は配慮してもらいたい、こう思います。  それから、この際ひとつ、いま総理からも話がありましたが、私ども意見が一致したように思われているのは残念です。そんなことはありません。これはひとつ聞いていただきたい。私どもは、少なくともこの核拡散防止問題については、核拡散防止そのもの、その名称そのもの、それにはもちろん賛成です。防止そのものには賛成。しかし、それには内容があるんだ。その内容は何かというと、核兵器全廃の目的を掲げなさい。それを第一歩としてやらなければ意義はありません。これが内容です。これが掲げられないような核の拡散防止は意義がないのですよ。したがって、核の拡散防止というその名称そのものには反対はしない、賛成であるが、やはり全面禁止をするという目標を掲げる、そうすることによって意義があるのだ、こう申し上げておる。  それから、さらに地下核実験が許されておる。地下核実験が許されるということは、いわばしり抜け条約ですね。したがって、地下核実験はしり抜け条約であると同時に、大国の核独占、核脅迫の危険性もある。したがって、地下核実験もひとつ禁止するようにしなさい。こういうことを第二に言っているわけです。  それからまた第三番目は、安全保障の措置として特に緊急を要することは、核兵器を外国に持ち込んだり、あるいは通過させたり、または配備すること、核兵器のために外国に基地を設けるこ  と、これを禁止しなければいけません。また、核兵器の使用の禁止はもちろんのこと、特に非核保有国に対して攻撃を加えないことを相互に保障す  ること、あるいはその次には、国際的な厳格な保障措置のもとで核エネルギー平和利用を積極的に進めること。  第四番目には、どのような核拡散防止条約を結ぶにしても、フランスや中国の参加しないものは意義が薄い。こういう点を党は明らかにしているわけです。したがって、三水さんのように、意見がおおむね一致したというようなばかな解釈をかってにしてもらっちゃ困るということを私はまず申し上げておきたい。  そこで、ここで具体的な問題として総理お尋ねしたい。総理はかねがね、核は持ち込まない、核武装はしない、こういうことをおっしゃってみえる。そういう決意があるなら、さらにその決意を公にし、強化するために、非核武装の宣言あるいは決議、そういうものをやってみられたらどうですか。あなたの言明がより裏づけされるのじゃないですか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 非核武装宣言をしたらどうか、こういうことですが、私は、もう日本が核の持ち込みをしない、製造もしない、持たない、これは長い主張で声明してまいっておりますので、いまさら決議を必要とする、あるいはこの際宣言をする、こういうことは実は必要ないのじゃないか、かように考えております。
  100. 山本幸一

    山本(幸)委員 私は、だからそれを前段に言っているのですよ。そういう言明をしていらっしゃるなら、よりこれをりっぱにするために宣言をなさってはどうか。そこで、あなたは、もうおれはさんざんやったんだから、経緯上からもその必要がない、こうおっしゃる。それなら、ひとつ国会で、各党間でそういう決議なり宣言なりをやるために話し合いをしてみたいと思いますが、どうですか。それはいいでしょう、国会と政府と違うんだから。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど、しかられたばかりですから、国会でおやりになることは、これは御自由でございます。
  102. 山本幸一

    山本(幸)委員 よろしゅうございますね。わかりました。それじゃ、最後に一つだけ、二点と言ったんだから。  これは私とあなたとが決済ついてない問題なんですよ、わかっていますか。朝鮮の貿易技術団の  入国の問題ですが、池田内閣当時に、大平外相、それから賀屋法務大臣、私との間にいろいろ意見の交換があって、国会で、その結果統一見解が出た。その統一見解は、純経済的な問題として、できるだけすみやかにこれを処置する、こういう統  一見解が出ている。そこで私は、たしか昨年の四月か五月ころあなたにお会いして、そうしてその経過を説明したら、あなたもたいへん御理解があって、いや、全くそのとおりだということになって、ひとつ関係大臣にも私から話そうという御答弁であって、私は非常に感心したわけですよ。その後ちょっと時間がかかりましたが、これはあなたのにいさんの岸さんが韓国へ行かれるとかなんとかいう問題が起きて――結果は中止になりましたけれども、多少時間がかかりました。そうして、いろいろ折衝した結果、昨年の七月十五日に、政府は日朝両国間の貿易促進の必要を認めて、いわゆる技術団の入国を承認する閣議決定をされた。ところが、二、三日たって、いよいよ手続を始めかけたら、韓国側からべらぼうな反対と圧力があって、しかも、銀行まで圧力をかけて、それを許すならおまえのところの銀行の支店は認めぬぞというような暴言まであるような圧力をかけて、ついに日本政府の権威のある閣議決定が、そのまま今日に至っておるわけです。これは私とあなたのまだ決済が済んでないのですよ。約束が守られてないのですよ。一体、日本政府が閣議決定したものを、他国のそういう干渉でこれが無期延期になっておるというような、ばかな、情けない話はないですよ。私はくどいことを申しません。くどいことを申しませんが、この際、私との約束を守ってもらいたいということが一つ。閣議決定は死んでないと了解するが、どうか。だから、この閣議決定を生かして、できるだけすみやかに私との約束を――私とというより、党の約束をひとつ実行してもらいたい。これなんです。これは決済が済んでいませんから、この機会に決済をつけてもらいたいと思う。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも山本君と決済の済んでいないことはないと思っていたのですが、いまお話しのように、これは政府は、しゃんと閣議決定をした、そういうことであります。また、その閣議決定は、今日もしゃんと生きておる。したがいまして、ただ民間において該当するような事件がなくなった。それで、具体的には入って来る人はなかった。しかし、ただいま閣議決定は生きておる。これははっきり申し上げておきます。したがいまして、山本君との間には決済は済んでおる……。
  104. 山本幸一

    山本(幸)委員 済んでいませんよ、あなた。あなたはだれにいま知恵を授けられたか知らぬが、民間で入って来る人が入って来なくなった、そんなことはありませんよ。本人はまだ取り消していませんよ、全然そういうことは。取り消しするということを法務省に言っておりませんよ。そんなことは断じてない。そのまま残っておるのだ。それは、商人というものは、あなた御承知のように、政府がしかったり、融資を受ける銀行からいろいろ言われると、かなり腰が弱くなることは事実ですよ。しかし、ほんとうの腹の中は、あんな有利な取引はないのだからやりたいのですよ。したがって、法務省に具体的に断わっていない。だから、私が決済は済んでいないと言うのは――閣議決定であなたは決済したと思っちゃだめですよ。閣議決定が実行されなければ決済にならぬじゃないの。椎名さんは私に何と言ったか。こう言っておるのですよ。借金は返しますよ。その借金とは、大平、賀屋両大臣と約束の統一見解の借金、返すと言っておるのだ。借金を返していないじゃないか。私は、早く借金を返してもらいたい。生きておるのだから、ひとつ早く実行するように促進してくださいよ。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお答えしましたように、閣議決定は生きています。したがいまして、そういう申請があれば、そういう線で処理するわけです。ただいま私聞いておるのでは、民間のそういう入って来るという、そういう申請がいまなくなっておる、立ち消えになっておる、かように聞いております。したがいまして、これは山本君と私との間は、もう閣議決定で決済が済んだ。その入って来る人をだれが実際に処理するかということは、これは私は、約束じゃないのですから、さように思います。どうぞそういう具体的な話があれば、その上で、今度はまた新しい決済問題になりますから、どうぞ……。
  106. 山本幸一

    山本(幸)委員 そんな答弁はだめですよ。私は一年間この問題に当たっておるのだから、余人はいざ知らず、私にはそんな答弁は通用しません。それはちゃんと民間のほうは手続したけれども、拒絶された。代理手続をしたのだけれども拒絶された。そんなことは事実のことですし、私自身が法務省と交渉したのだから、間違いないことです。だからあなたは、政府の段階においては、閣議決定は、おまえとの約束は守ったのだ、しかし、あなたのところの機関が手続を受けなければ、約束は守っていませんよ。それは、借用証書だけ出して、期限がきても金を払っておらぬのと一緒だ。それと同じことだ。(「不渡りだ」と呼ぶ者あり)だから、不渡りでなしに守ってもらいたい。これだけを私は特に念を押しておきます。これが守られなんだら、私は次の機会に立って、さらにいろいろなことを言いますよ、具体的な事実をあげて。頼みますよ、いいですか。あなたは首ばかり下げていないで、いいならいいとはっきり言ったらいい。いいですな。――それではいいということだそうですから、委員長、これで遠慮いたします。
  107. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  午後は二時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時十八分開議
  108. 小川半次

    小川(半)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算に対する質疑を続行いたします。  この際、理事会の申し合わせにより、先般保留されました淡谷悠藏君の質疑を許します。淡谷悠藏君。
  109. 淡谷悠藏

    淡谷委員 総理お尋ねいたしますが、昨日の御答弁によりますと、大体武器の輸出はすると。するが、自衛隊が使っている武器、防御用の武器の生産面で余裕のあったもの、受注のあったものは輸出するんだと、こういう御答弁のように承りましたが、そうしますと、いま輸出しております武器というのは、自衛隊がかって使った武器か、あるいは現在使いつつある武器というふうに理解するのが当然だと思うのでございます。その点をひとつ確実に御答弁願いたいと思うのであります。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体、まあ大体そんなことじゃないかと思います。しかしこれは厳密に申しますといろいろ議論も出てくるが、大体そういうことだ、そういう線だと、かように御了承いただきたいと思います。
  111. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも、大体と申しますと、中には自衛隊が使っていない武器も入っているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 きのうお答えいたしましたように、同じ種類ということを申しました。まだいま全然使わないものがあるのじゃないのか、こういうような御疑念もあろうかと思います。そこで私は、まあ大体ただいま言われるようなそのことだ、こういうことで、厳密に言いますと、まだ使わないとかいうようなこともあるのじゃないか、実はちょっと全部調べてみないとそこらがはっきり言えないが。しかし全然別なもの、これはない、かように私は確信を持ってお答えできる、かように思っております。
  113. 淡谷悠藏

    淡谷委員 昨日も質問の中で申し上げましたが、自衛隊が使っていた武器、あるいはこれに若干の手を加えた武器というふうにも拡大をしていくでしょうし、また防御と攻撃との区別がなかなかつかないのも、これも当然なので、防御用のつもりでやっております武器がだんだん攻撃用になって、平和を維持するつもりなのが、かえって侵略の武器になるということも考えられますので、われわれは武器は輸出すべきじゃないということを申し上げているわけなんです。ただ、いまの御答弁につきましても、私の質問の主になっております通産大臣と総理との輸出に関する御答弁の食い違い、特に、私、その意味総理自体の御答弁総理自体の御答弁と食い違っている点を明らかにしたいのであります。それはこの速記録を見ますというと、管野国務大臣が「ただいまお尋ねの件については、私全然聞いておりません。で、いま方針といたしましては、海外へ出す武器はつくらせないという方針でおります。」これに対してわが党の石橋委員が、「それじゃ、総理大臣に確認しておきます。おやりになりますか、お認めになりますか、兵器の輸出。」という質問に対して、あなたは「いま通産大臣が答えたとおりでございます。」と言っているのです。そうしますと、やはり「海外へ出す武器はつくらせない」という通産大臣のことばに同調されているのですから、あなた自身が予算委員会と決算委員会では全然別な御答弁をしているように受け取らざるを得ないのでございますが、その点は一体どうなります。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日その点は詳しくお答えをしたつもりでございます。ただいまその形だけとってみると、その菅野発言、それを私が肯定したときの点と、今度決算委員会で私がお答えしたこと、これは確かにそのままことばどおりそのものをとられると違っておる、かように思います。しかし、昨日もお答えいたしましたように、石橋委員から菅野通産大臣に質問をしたもの、これは国産の兵器、その値段を安くするために、コストダウンをねらう、そういう意味で外国に輸出するもの、こういう点に特に重点が置かれた、かように思います。したがって、菅野大臣はそういうことは考えていないのだ、こういうようなお答えだった、それを私また裏書きをしたのです。また私が決算委員会でお尋ねを受けましたのは、これは一般的、原則的な議論のように思う。それで私は武器の輸出ということについても原則論を実は申し上げた。だから当時の何かお尋ねがこれは違っておりますので、そういう意味でその質問に適当な答えをいたした、かように私は思っておりますので、基本的な考え方には相違はないのだ、食い違いはないのだ、食言したようなつもりはもちろんございません。
  115. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは、大臣が答弁に苦労されておる気持ちはわかるのですが、もっと率直に言って、違った答弁を違わないように直すために苦労されているのじゃないですか、これは大体が。コストダウン云々と言いますけれども、それじゃこういうような場合、どうなります。日本の自衛隊が一つの武器を使うためにつくらせている同じ武器の受注があった、それで同じ武器をつくった、自然にこれはコストダウンしますね、当然。あるいはまた受注があった武器、これはちょうどいま自衛隊が  使おうとしている武器だったので、一緒につくった場合は、自衛隊が使うためにつくる武器と一緒につくった武器はやはりコストダウンされますね。この場合海外へ武器の輸出はされるのじゃないですか、コストダウンされましても。コストダウン云々にはこれはもう関係ないと私は思う。ただあのときは――通産大臣しきりに総理の肩をつついておりますが、あなたは何も聞いていないと言うのですね、こういう話は。聞いていないが、海外に武器を輸出しません。これこそ原則に立ったのじゃないですか。それならそれでいいんですよ。いまここで訂正されたらよろしい。総理のほうが訂正されまして、海外へ武器の輸出はいたしませんと訂正されると、これは一〇〇%満足しますがね。そこまでいかなくても、じゃ通産大臣がどう訂正される、これはどんなに考えても、日本語で考えしますと、私は東北でずうずう弁ですから日本語じゃないかもしれませんけれども、つくらせないという方針と、海外へ武器の輸出をしますという日本語じゃ、全然反対なものだと思いますがね。つくらせないで何か輸出する方法がありますか、通産大臣。そんな方法があったら教えてもらいたい。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも淡谷君と議論をするつもりはございませんが、ただいまの動機論、これは値段を安くするんだから、そのためにたくさんつくるんだ、それにはやはり輸出も考えるんだ、そういう動機論が一つあるだろう。その動機論はないんだというのが通産大臣のお答えなので、たまたま同種のものを、外国から注文があったから出ていった、そうすると大体コストダウンするじゃないか、こういうのは一つの理論だと思いますが、たまたまの結果論だろう、かように思います。いまやはり大事なのは、淡谷君のお尋ね、武器の輸出を大体最初からねらっているんだ、そしてそれを増大するんだ、こういうようなことは日本のたてまえからはたしていいかどうか、こういう点が議論になっているんだと私は思います。だから私がいろいろお答えしたことも、国際紛争日本が武器を提供した、そして日本が介入する、こういう心配がないように厳に慎んでおるつもりであります。だから、結果は同じじゃないかと言われましても、動機論とたまたまそうなったのでは、よほど違うように思います。
  117. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どうも午前中の山本委員発言じゃございませんが、私も珍しく総理と同じ考えのようでございますが、やはり海外に売ることを目的にして武器の製造をしたり、あるいは戦争を挑発したりするのはよくないと思います。しかし現実は、アメリカの例を見ましても、日本でも最近起こってきます傾向を見ましても、いわゆる産軍依存態勢ということが非常に進んでおります。軍需産業を勃興するために逆に軍の装備を進めるということも、逆の面から見ると疑われているのであります。またその国産という立場に立ちますと、確かにコストが高い。コストは高いが国産をするというお考えの中に、暗にこうした危険がひそむということもやはり考えざるを得ないと思うのです。総理あるいは通産大臣が好ましくないと思いましても、軍需産業自体については、やはり自衛隊だけじゃとても引き合わないから、この設備をもってすれば海外輸出用もあわせて考えざるを得ないという考えが出るのは当然なんですね。したがって、それを押えるつもりで発言されたのがこの武器をつくらせない、こういう意味なんですか。これは通産大臣にお聞きしましょう。さっきの総理大臣の答弁と同じ考えなのかどうか、あなたははっきりつくらせないということを言っているんですから。
  118. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いまお尋ねの件についてお答えいたしますが、先般石橋委員が御質問になったときには、コストダウンのために輸出をやるのではないかというような御質問があって、一体これはだれが答えればいいのかということを石橋委員も言われて、通産大臣じゃないかということで、私自身も実はそのことを聞いておりませんということをお答えしたのであって、したがって私の答弁には少し舌足らずの点があったと思います。そこで、石橋委員の御質問を全部読んでいただいて私の答弁を読んでいただくと、ああなるほど、関連性があるというふうにお考えくださると思うのでありますが、しかしそこでもう少し私がことばをつけ加えれば、淡谷委員のような御疑問は起こらなかったと思います。その点は、いま言ったように、私もとっさの場合で、とっさに返事をしたので、したがって、私は石橋委員のコストダウンのために輸出する、そういうことは許しませんということを申し上げたので、一般的に武器の注文があった場合には、それは三原則以外のところへは輸出を許すということで、それはまた総理がお答えになったことでありまして、したがいまして、私のときと総理の答えられたときとで質問の内容が違うし、したがって答弁も違うというようになったと思っておるのであります。
  119. 淡谷悠藏

    淡谷委員 石橋委員の質問を私は二度も三度も暗記するくらい読んでからの質問なんですが、コストダウンをするためにはつくらせないと言いますが、つくった結果コストダウンすることはどうしてもあり得るでしょう。したがって、あなたのこの答弁というのは、つくらせないというのじゃなくて、やはりつくらせて輸出するということになりますわな。目的の違いでしょう。一方は、コストダウンするためにはつくらせないけれども、受注があったときにはつくらせると、こうあなたは言うのですから、これは区別がつかないじゃないですか。非常に重要な問題ですからね。海外へ武器輸出をするということは重大な問題ですから、これを舌足らずだとか、時のはずみでということは許されないと思うのです。そこに私のほんとうの質問の趣旨もあるわけなんですが、あくまでもやはりあなたとしては、総理の言うままに――私はむしろこのままとらして、通産大臣の言うことに総理が従ってくだすったほうがたいへん正しいと思うのです。しかし、まさかどうも通産大臣が総理をつぶすわけにいかないだろうから、いろいろ協議の結果、あなたの舌足らずにして、その意思がじゅうりんされた、こういうことは間々あります、ここでは。総理と食い違うと、これは必ず総理のほうが勝つのです、筋が通っても通らなくても、必ずやるのです。しかし、私は、やはり陰でいろいろな意思統一をしたり、陰でいろいろな協議をしたりする前に、国民の前に答弁をしたこの国会答弁というものは、まあ、あとでいろいろと弁解されますと、そんな理屈もつくような気がする人もありましょうけれども、少なくとも、国会で出した答弁というものは、国会の場において明朗にこれを取り消すなり、あるいは直すなりしない  と、けじめがつかぬと思うのです。国会で答弁しておいて、今度は陰のほうでかってにこれを取りかえたり一致したりしておったのでは筋が立たぬと思いますから、この、「海外へ出す武器はつくらせないという方針でおります。」ということばは、どう考えてもこれは――舌足らずであるとあなたはおっしゃいますが、間違いだと思うので、これを訂正するならはっきり訂正してもらいたいと思います。コストダウンのためにつくらせない  というのですが、つくってコストダウンするならこれはやむを得ないでしょう、それで安くなるのですから。それを、コストダウンをさせるためにつくったのか、これはちょっと区別がつかぬのじゃないですか。だから、あとでついた言いわけとしてあげておりますけれども、その当時のお答えとしては、これはどうしても受け取れない表現だと私は思うのです。これは通産大臣、もう一ぺんひとつ御答弁願いたい。
  120. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 石橋委員お尋ねは、コストダウンするために輸出ということを考えて増産する計画だ、第三次防の注文以上のものを増産するつもりらしいというような御質問がありましたから、第三次防用の武器はそれはもうそれで確定いたしておりますが、そのコストダウンをするために輸出をということは認められぬ。が、しかし、その武器をつくっておる会社で、もしも第三次防で使う兵器と同種類のものをかりに特別に注文があれば、それは、そのときは私は三原則以外のところであれば輸出してもいい、こう考えております。
  121. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃここは、海外へ出す武器もそういうたてまえからいえばつくらせますという答弁に変わるわけですね。つくらせませんから、つくらせますに変わりますね。コストダウンじゃなくて、受注があった場合、これはつくらせるという答弁が欠けておる、こうとってよろしいですね。  そこで防衛庁長官にひとつお聞きしたいのですが、国産のほうがコストが高いのに、どうして国産によって第三次防の武器をつくらせるんです。これはいまの質問と関連があります。
  122. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いろいろございまして、国産のほうが安い点もございます。しかし一般論として高い点もございましょうが、行く行くは安くなるのでございます。
  123. 淡谷悠藏

    淡谷委員 長官の答弁としては、無責任きわまるものですな。これは武士の商法かもしれませんけれども国民が払う武器の代金なんですからね。その点をもう少し配慮していいんじゃないですか、高いのははっきりしているでしょう、中には安いものもあるでしょうけれども……。いや、きょうは私は、いまの食い違いを直せばいいんですから、これ以上この場では答弁を求めませんけれども、だから総理がいろいろ御答弁がありましたけれども、結局はあなた方の考えている線が、国会の場では確かに輸出のためには武器をつくらせませんというけれども、私はやはり軍需産業の特質として、利益のない事業へは手を出さぬと思います。したがって、どうしてもこれは第三次防に使う武器というものは、もっと大量に生産されて海外輸出をねらうという線が出てくると思う。必ず出てきます。この際、その軍需産業の意思が、東洋の平和に対して、あるいは世界の平和に対して非常に大きな脅威を与える、その責任を国が負うということは非常に残念しごくの話でございますから、これはもう一ぺんお考えになって、その点を十分詰めて、武器の海外輸出はしな  いという答弁がもしできなかったならば、最小限に押えるという線ぐらい出せないですか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、これは淡谷君とそう  いう意味では同じなんですが、しばしば申し上げる輸出管理令、この運用によりまして問題を最後に残しておる。大体外国へ輸出する品物は自由にできるのです。しかし武器の持つ性格その他から、また、ただいま議論されておりますように、いろいろ誤解を受けたり、また日本の平和的意図をそこなうというようなことがあっては困る、こういうので、武器の輸出は輸出管理令にかけるんだ、こういうことで特に取り扱い方を厳重にしておる、ここが最後の調和点だ、かように実は考えておるのであります。産業そのものが量産すれば安くなるということ、また幾ら自衛隊にいたしましても、安い国防ができればそれにこしたことはございませんから、われわれも同時にそういう点には気をつける。だから最初から輸出を目的にしてつくりまして、安くはなっても、外国の平和を乱すというようなことがあっては、また国際的な破壊に力をかしたというようなことになっちゃ困るから、輸出管理令、これの運用には特に注意する、こういうことでございます。大体、ねらっている点は同じような政府考え方でございますから、淡谷君からの御指示もございますが、そういう意味で一そう注意して慎重にいたすつもりでございます。
  125. 淡谷悠藏

    淡谷委員 最後に一点だけ確かめておきたいのですが、けさの朝日新聞を見ますと、きのうあれだけの質疑応答の中でも、すでに輸出向けの武器をつくっておりますところではたいへん恐慌を起こしたような記事が出ております。これはあれだけの質疑応答でも出てくるわけですから、いよいよ本格的に輸出に対して一つの制限をやりますと、非常に大きな軍需産業からの抵抗が始まってくると思うのです。どうかひとつ負けないように、いまの御答弁をまたいつか取り消さなければならないような事態にならないように、十分ひとつ気をつけてやっていただきたいと思います。  以上で終わります。
  126. 小川半次

    小川(半)委員長代理 次に、加藤清二君。
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、委員長のお許しを得まして、特に野党の皆さんの御協力を得まして、格別、与党の皆さんの御協力を得まして、質問を試みたいと存じます。  ところで、すでにもう予算も審議は最後になりました。もう秒読みに近いときでございます。したがって、理事諸公が急げ急げと矢の催促でございまするので、きわめて簡潔に質問をしたいと存じます。したがって、御答弁なさる閣僚諸公におかせられましては、ぜひひとつ簡潔にずばりずばりとお答えのほどを最初にお願い申し上げるわけでございます。  本論に先立ちまして、私は、二、三点だけ時の問題をお尋ねしたいと存じます。  第一番は、兵器の売りの問題が出ましたので、買いの問題についてお尋ねしたいと存じます。  第三次防が行なわれるにあたりまして、戦闘機の購入が行なわれると存じまするが、その戦闘機の機種の選定その他についてお尋ねいたします。  第一番、予算はどれだけ組まれておりましょうか。
  128. 國井眞

    ○國井政府委員 いま手元に資料がございませんので、正確な数字はちょっと申し上げかねますが、ある引き当ての戦闘機の金額は組んでございますが、至急取り調べましてお答えいたしたいと思います。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 第三次防において戦闘機は何機種ぐらいお買いになる予定ですか。その単価はどの程度でございましょうか。――大臣に聞いておる。
  130. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 第三次防において、FXはたしか購入は二機でございまして、あとは国債つまり国庫債務負担行為として相当数を発注する。それは、昭和四十六年の後、すなわち四十七年以降に相なる次第でございます。
  131. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、戦闘機の機種の選定は、しからばいつ行なわれましょうか。
  132. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 昭和四十二年の六、七月ごろから始まりまして、決定までには一年くらいかかるんではないかと思っております。  それから、この前にもこの委員会において申し上げましたが、グラマン、ロッキードのときには国防会議にかけております。国防会議の案件というものは、防衛計画とかあるいは国防計画とか、そういうような大きなものでございまするが、従来、グラマン、ロッキードを国防会議に諮問いたしておりまするから、今回もFXに限りましては、国防会議にかけるのが至当である、こう考えておる次第でございます。
  133. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その際の予算の予定額はどの程度予定されておりましょうか。同時に、その空軍の兵員はどの程度でございましょうか。
  134. 國井眞

    ○國井政府委員 ただいま御質問の数字につきましては、先ほどと関連をいたしまして、取り寄せておりますので、追って後刻御報告いたしたいと思います。
  135. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 御用意がないようでございまするけれども、いま大臣もお答えになりましたが、かつてグラマン、ロッキード、いずれにすべきやという問題が起きましたおりに、国防会議のみならず、本席においても、また当該の委員会においても、相当長期にわたって論議がかわされているところでございます。したがって、私は、本日、防衛庁の予定されている範囲内で事柄をお尋ねしようとしているわけでございます。なぜそうせんければならぬかといえば、言うまでもなく、ロッキードの丸紅、グラマンの伊藤忠、ノースロップの日商、コンベア等々が非常な争いをいたしたようでございます。能力とか有効度とかいうことは問題外として、インポーターの商社ないしは相手国の売り込み測のメーカー、これとの争いがたいへんな勢いで行なわれたということでございます。その結果はどうなったかといえば、ずいぶん古い飛行機を買って、日本の大切な兵員が墜落事故でずいぶんなくなっておるわけでございます。同時にまた、スペアがない結果は、やがて他の飛行機をこわして、それをスペア用にせんければならぬということで、利用の歩どまりは非常に悪かったはずでございます、したがって、私は承るわけなんです。今度すでに防衛庁ないしはその関係当局にわかっている程度の機種並びにそれを売り込もうとしているところの商社、それは何々でございますか。
  136. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 各種の機種が石橋委員からあげられましたが、私の知っている程度はその程度でございまして、今度予算の御決議を得ました後に一生懸命勉強いたしたい、こう思っております。そこで、石橋委員のあげられたのは、F105、F111、F4、それからスウェーデンの何とかいう会社の名前もあげられましたが、あと、C1010というのがございまするが、その機能その他につきましては、きわめて公平なる立場で選びたいと思っております。  それから、加藤委員がロッキードの関係の維持補充の点が困難だとおっしゃいましたけれども、ライセンス生産でございまして、日本でライセンスを獲得して生産しておるわけでございまするから、部品とかあるいは補充とかいうことは困難を来たしていないのでございます。
  137. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いま大臣がお答えになりましたその機種、それの関係会社、これをひとつ後ほど表にして出していただきたいと思います。特にロッキードを扱っておりました丸紅は、今度、あなたはいまおっしゃられませんでしたけれども、CL1010、これはF104型の改良型ですね。それから、これに対抗する日商は、ファントムF4その他アメリカ製のみならず、スウェーデンのサーブ社のビィッゲン、それからフランスのマルセル・ダッソー社のミラージュIII型等々非常にたくさんあるようでございます。したがって、うわさに聞きますというと、この機種選定のために調査団を派遣なさるといううわさを聞いております。それはいつごろどういう方法で行なわれますか。
  138. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 どこの社がどういう機種を売り込もうとしておるかということは、実は私は全然存じませんで、あとで表をつくりまして、こういうものがある、ああいうものがあるということはお答えいたす所存でございます。  それから、C1010と言ったのは、CL1010でございますから、一応は申し上げてあるつもりでございます。それから、ミラージュということも聞き及んでおるわけでございます。あなたのお説のとおり、何と申しましても、第三次防としてはたくさん金額は上がってきませんが、第四次防において予算化される第三次防の範囲内における国庫債務負担行為というものは、たとえば一機五億にいたしましても百機であれば五百億という膨大なる  数字になりますから、きわめてきびしい態度で、正しい態度で調査をいたしたい。その調査も数次にわたって行なう模様でございまするが、詳細なことはまだ私は答えかねるわけでございます。
  139. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 機種選定にあたっての基準と申しましょうか、能力と申しましょうか、あるいは  この間お話に出ましたところの足、いわゆる航続  距離、航続時間等々の基準をお示し願いたい。
  140. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 基準等につきましても、私はまだこれからの勉強でございまするが、F104よりは機能の高いもの、すなわちテークオフについても早いもの、オールウエザーについてもよいもの、それからマッハについても早いもの、こういうものが初めて合格するラインではないか。すなわち要撃能力の高いもの、こういうことに――われわれお互い政治家でございまして、その範囲しか知らないわけでございます。
  141. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 機種選定にあたっての基準を承りたいと申しました。
  142. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 まだこれから調査しようというわけで、基準と申しますと、いま申しましたとおりのことで、すなわち要撃能力がロッキードF104よりも高いもの、こういうことを標準にしておるわけでございまして、それにつきましては幾つも候補が載っておりますが、要撃能力の最も高い、しかも精密なる、しこうして正確なる戦闘機を選びたい、こう考えておる次第でございます。
  143. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 戦闘爆撃機は持つか持たないか。
  144. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 この前お答えいたしたとおりでございまして、F86程度のものにおきましては爆弾装置を施して、空対地の爆撃の練習をしておりまするが、ほかのものにつきましては、F104は現にやっておりません。それから将来のFXにつきましては持たない、また持たせないつもりでございます。
  145. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 戦闘機も迎撃用である。戦闘爆撃機は持たない。間違いございませんですね。間違いないですね。
  146. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 間違いございません。
  147. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理大臣、いまのことばに間違いございませんか。あなたの考えはいかがでございますか。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 間違いございません。
  149. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 間違いないということは、戦闘機はあくまで迎撃用である。同時に、戦闘爆撃機は持たない、こういうことでございますか。総理総理お尋ねいたしておるのでございます。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど防衛庁長官が答えたとおりでございますし、いまお尋ねになったとおりを答えた、かように私聞いております。
  151. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 基準がきまらないうちに、大体防衛用しか持たない、こういうことだけは一放しておるようでございます。しかし、防衛と攻撃の区別は、飛行機の場合、どこでおきめになりましょうか、防衛庁長官……。
  152. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 あまりまだ武器の専門家ではございませんから、しろうととしてある程度防衛庁長官が調べた範囲のことを申し上げます。  すなわち、迎撃能力、要撃能力、その範囲できめるのでございます。その能力が在米のロッキードF104よりは高いもの、こういうことを考えておるわけでございます。そしてF104は、この前石橋委員にもお答えいたしましたが、西ドイツにおきましては爆撃用にも使っておるが、わが日本においては、爆撃用の装置は施さないで使っておるわけでございます。ちょうどナイキハーキュリーズが核をつけ得ようとも、日本において製造するものは核をつけ得ない。初めからそういう装置にするのでございます。またランチャーのほうも初めからそういうふうなものにする、そういうわけでございまして、いろいろな軍事専門家等が、将来の戦闘機は必ず戦闘爆撃機であるというようないろい  ろな話をされたり書いたりしたものも、私は相当拝見しておりまするが、爆撃機用の装置をしな  い、この点でひとつ与野党ともに監視をされまして私どもを見いただきたい、こう考えておる次  第でございます。
  153. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 爆撃機と変化する飛行機であっても、それに武器を搭載しない、こういう答弁でございます。総理大臣、これに間違いございませんか。  二番目、次にもう一つ申し上げます。  総理ことばは、よく君子豹変するのでございます。公債を発行せずと言うて、一年たたないうちに公債を発行なさるのでございます。したがって、このことば、もし爆撃機を現実に持ったとなりましたならば、総理は、あなたの総理就任中であれば、これを禁止なさる用意がございますか。
  154. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 爆撃装置はしないとはっきり答えております。
  155. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もし持つ、現実に持ったという  ことが起きた場合には、あなたの総理就任中はこれを禁止なさる用意がございますかとお尋ねしておる。
  156. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまもしとか言われますが、爆撃装置はしないとはっきり申し上げておりますから、もしというようなことはないのです。
  157. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あったらどうしますかと聞いておる。
  158. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 爆撃装置はしないとはっきり言っていますから、どうぞ御信用ください。
  159. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では私は、もしさようなことがあった場合には、総理の英断と英知をもってこれを禁止なさる、かように受け取ってよろしゅうごございますか。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 加藤君の御期待に沿うつもりでございます。
  161. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 二番目の問題でございます。  第一番、ただいまこの院外では春闘が盛んに行なわれておりますですね。その春闘相場についてお尋ねいたしまするが、すでに決定された民間企業におきましては四千数百円、こう相なっております。しかし、それでもなお物価の値上がり、付加価値の上昇、分配率の低下等々から考えますと、必ずしもこれは不当ではない、まだまだ足りないという声もあるようでございます。これについて総理は何とお考えでございましょうか。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、春闘の相場というような、そういうことばは不適当だと思います。賃金をきめるということは、その会社においてそれぞれにおいてきめるものでございまして、いわゆる相場という、そういう考え方でこういうものを見るのは間違っていると思います。
  163. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 じゃあ、いかなることばをお使いなさろうとも、あなたの自由なことばを使って、これが妥当であるかどうか、金額が妥当であるかどうかをお尋ねいたします。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題は、労使双方で話し合いできめればいいのです。政府がとやかく言う筋ではございません。
  165. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ところが大臣、政府みずからがきめなければならない問題があり、それをきめる、それを促進すると官房長官は答えていらっしゃるのでございます。官房長官は過ぐる先月の二十日と二十五日の両日に、紛争を未然に防止するために調停の段階でまとめることが望ましい、ごもっともなおことばでございます。三公社五現業、公労協の賃金について交渉の席で述べていらっしゃいます。それはいかがでございますか。
  166. 福永健司

    ○福永国務大臣 いまお読みになったとおりに私が申し上げておりますかどうか、必ずしもそれが全面的に正確であるとは申しませんが、調停段階で解決がつくなら、これまたけっこうだと思っておりますが、わが国の現実が、必ずしも一律にさようにいくというような事情でもございません。おそらく希望的な意味においてさような表現が聞き取られ、また私がそういう意味に聞かれるようなことを申したということになっておるのだと思うのでございますが、この問題は加藤さんよく御存じのとおり、なかなか公社、現業等においてもそ  れぞれに事情を持っております。簡単に一律には  申せない実情にあることを御了承いただきたいと  存じます。
  167. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、私がお尋ねしているのは、紛争を未然に防止する、これはけっこうなことですね。そのために調停の段階でまとめよう、さっそく関係閣僚と話し合ってみましょうとあなたは約束していらっしゃるわけなんです。その後これを実行に移されましたかいなかとお尋ねしておる。
  168. 福永健司

    ○福永国務大臣 約束とまでは私はいたしておりませんし、私が給与担当の大臣ではございませんので、そこまでは元来が申せない立場でございます。しかし、政府全体をまとめて、その種の陳情等を受けるということがしばしばございます。したがって、陳情者の諸君の御希望を受けまして努力をいたしましょうというような種類の発言はいたしておりまするし、間々、またそういうことはすべきである、こう考えておるのでございますが、御指摘の事態につきましては、関係の閣僚諸君にもそのことを伝えまして、このことについて、もとより検証もいたした次第でございます。よって、誠意を持って対処したつもりでございます。
  169. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうあってしかるべきだと思います。ただいま総理は、そういうことに関係したくないという意味の御答弁でしたが、もう一度ニュアンスが違うといけませんから、ひとつ――いや、いや、今度は総理に聞く。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は民間のことを申しました。それもお尋ねが、民間の相場は一体こうだ、こういうお話からスタートしている。これはもう三公社五現業は別でございます。
  171. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、公共企業体、三公社五現業の場合はこの限りにあらず、こういうことでございますか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 純民間と三公社五現業の場合は、こういうものをきめるしかたも違うでしょう。その点は加藤さん御存じのとおりです。加藤君も御存じですから、私もその程度の知識は持っておるのでございます。だから、民間と三公社五現業は別にきめる。
  173. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あたかも全然別個のもののようなお考え方のようでございまするが、それでよろしゅうございますか。人事院の勧告は何を基礎としているか。公務員の給与ベース決定の基準は前年度の民間の給与ベースなんです。基礎を研究すること、基礎について調査すること、それに対して意見を述べること、それができないということであれば、グラマン、ロッキードを選定するにあたって、その基礎となる基準を審議することが拒否されると同じ意味になる。  そこで申し上げましょう。かつてのあなたの先輩の池田さんは、そうではなかったという実例を  申し上げます。三十九年の四月六日、池田・太田会談ということが行なわれております。そのときの約束、きめられたことばは、「公共企業体と民間との賃金格差は、公労委が賃金問題を処理するにあたって当然考慮すべき」次が大事です。「法律上の義務である。公労委における調停の場を通じて、労使ともこの是正に努力するものとする。」この確認が行われ、公共企業体労使間の紛争を未然に防止する策として、当時の新聞はこれを大きくうたい出し、労使一歩前進であるということで歓迎したものでございました。この池田前総理考え方は、あなたはどう思われますか。
  174. 小川半次

    小川(半)委員長代理 福永官房長官。
  175. 福永健司

    ○福永国務大臣 ……
  176. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、いや、私は総理に聞いているんだ。
  177. 小川半次

    小川(半)委員長代理 委員長は福永官房長官と発言しました。
  178. 福永健司

    ○福永国務大臣 まあお聞きくだすった上でまたひとつ新たに……。  先ほど若干の民間給与につきまして、すでに妥結を見た事例等をあげられて、この相場をどう思うかというような形においての御質問でございます。よって、総理大臣は、その程度のことで直ち  に政府が、これが高いとか、安いとか、妥当であ  ろうとかというようなことは、申すべきにあらずという見解を述べられたと私は受け取りました。そこで、あとで加藤さんのおっしゃる人事院や公労委がこうした民間給与の多くのものについて、ある期間内のものを、そしてある規模のものを、これを全体を集約いたしまして、その上ではじいた数字をきわめて適切な数字においてこれを算定し、かつあなたが御指摘になったような三公社五現業の給与等と関連して検討されるわけでございますので、したがって、総理大臣は全体としての前年度のもの、または、さらにこれらについて正しく人事院、公労委等が検討いたしましたものについての評価は、おのずから総理大臣にあろうかと思います。さような意味において、前総理大臣たる池田総理大臣がこうしたというようなことと、いまお話になったようなことに話が及ぶわけでございます。まだ今年の民間給与についてはごくわずかでございます。したがって、そのはしりの幾つかにつきまして、直ちにもってこれがどうこうであるという批判は、総理大臣たる立場においては怪々にいたすべきものではない、かように私はそばにおりまして受け取っておった次第でございます。多分さような意味ではなかろうかと存ずる次第でございます。
  179. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さきの池田総理にも、このたびの佐藤総理にも仕えられて、女房役として敏腕をふるっていらっしゃるあなたの苦衷はよくわかります。主人の立場を守られるあなたの気持ちは、これはまことにけっこうでございます。しかし、私がお尋ねしておりまするのは、いたずらなる紛争を未然に防止するために、両者の代表が話し合いの場で解決しよう、こういう申し出に対して、一体さきの池田さんは快く引き受けて紳士協約を結ばれたようでございます。佐藤さん、池田さんの弟弟子とも兄弟子とも、弟たりがたく兄たりがたしと思うその佐藤さんは、一体これをどうお考えでございますかとお尋ねしておるのでございます。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三公社五現業の立場につきましては、先ほど福永官房長官がお答えしたとおりです。これは佐藤内閣といたしましても、話がうまく妥結ができればそれに越したことはございません。しかし、ただいまの法制上からでは最終的に人事院勧告、これを尊重する、一般公務員についてはそういうことになりますし、また三公社五現業についてはまた別途のきめ方をしておりますから、それにしても全然当時者能力のない現在、これをいかにすればいいか、これが福永君のいろいろ苦心の点でありまして、先ほどお答えしたような点であります。
  181. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 すでに昨年の妥結において三千四百二十五円という結果が行なわれておりまするけれども、これが予算補正されたようなことを聞いておりません。この問題について大蔵大臣にお尋ねしたいのですけれども、もう先を急ぎまするがゆえにあなたにお尋ねしておきたいのですが、私は、労使双方が紛争を避ける、それを未然に防ぐ、そのための話し合いというものは、これは歓迎さるべきことである。にもかかわらず、閣僚の中にはそれを忌みきらって、会わないことを得意然とし、そのことが何やら時の政府に忠義を尽くしているかのごとき印象を持っていらっしゃる向きがあるようです。それをここでどうこうとは私は言いません。しかし、調停の段階でまとめるようにするということ、特に当事者能力のない三公社五現業におきましては、調停の段階においてこれをまとめるように政府が指導なさるということは、当然事務的にいっても、法的にいっても、必要なことであると思うわけでございます。したがって、この市場相場――あなたは相場ということばがお気に召さぬようでございますが、しかし、はしなくも官房長官はそのことばを使ってみえるわけです。もうこれは通り相場になっているのですね。  それで、あなたの御意見を承りたいのでございますが、この鉄鋼の相場がきまりましたおりに藤井丙午氏はこう言っている。四千数百円、なるほど高いという意見もあるけれども、しかし生産性の向上は三六%以上伸びている、ただし分配率はわずか九・六%程度である、まだまだ低いほうである。このことばを聞いたそこの労働者たちは、よき主人を持ったものだと奮起したと伝え聞いておるのでございます。これは事実なんです。争いは起きなかったでしょう。労使が敵味方になり、兄弟かきに相せめぐがごときことは未然に防ぐべきだと思いまするが、現段階において総理は、この当事者能力のなき三公社五現業、これに対してどのような御見解をお持ちでございましょうか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま当事者能力云々を言われました。確かに当事者能力も完全にあるわけじゃありませんが、もう一つ大事なのは、まだ予算も成立しておりません。したがいまして、ただいまのような突き進んだ考え方になかなかなれないのです、現状は。したがって、この問題は単純な理論闘争の問題じゃないのです。まず実質的に、そして現実に即してきめるべき問題だ、かように実は思っております。ただいま三公社五現業それぞれ会見しないというようなことは、おそらく三公社五現業についてはないだろうと思いますけれども、その三公社五現業のそれぞれの長が、ただいまこういう問題をいろいろ伺いましても、基本的には現実にまだこれを解決する方法がないんだ、かように私は考えております。いずれにいたしましても、早く予算も成立さしていただき、そうして現実にこれらの問題も、非常な争いを起こさないでそれらのものを処理ができるように、私も一そう努力いたしますが、皆さま方にもお骨折りを願いたい、かように思っておる次第であります。
  183. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 佐藤総理大臣、これからが真剣  勝負の本論でございます。  あなたは就任の当初に人間尊重ということ、このことばを政治姿勢の基本とし、あなたの政治哲学理念の基本とするとおっしゃられました。私はそのおりに、資本主義を遂行していく場合の人間尊  重は非常に難渋する、したがって、看板をおはずしになったほうが揚言不実行にならないではないかとお尋ねしたことがある。そこで…(「それは逆じゃないか」と呼ぶ者あり)逆でないかというやじがそこらでありまするけれども、しからばお尋ねいたしまするが、人間尊重の政治の基本はいかなる観念でございましょうか。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもがいま政治をやったりあるいは経済活動をする、しかしその目標、目的は一体何なのか。すべてこれは人間につながるものだし、したがいまして人間の福祉、その人格の尊厳、これは尊重されなければならない。したがいまして、ただいま資本主義を捨てろと言われるけれども、(加藤(清)委員「捨てろとは言ってない」と呼ぶ)私は、資本主義のもとではそれは無理でしょうと言われたから、捨てろというお考えのように聞いたのですが、そうじゃなくて、いまの経済活動自身が人間につながる、人間の福祉向上につながる、かように考えれば非常にわかりいいことでありまして、いわゆる生産第一というようなことは考えられない。だから、そういう意味の経済活動あるいは政治活動、その目標が全部人間に帰一するというところでなければならない。それを無視するような方向で政治活動もなければ経済活動もないということであります。でありますから、もっと具体的な例で申せば、いま公害問題が非常にやかましいことになっています。公害問題、これは経済活動の面から見まして、あるいは利潤をあげる面から見て、会社が一切そういうことを考えないほうがもっと生産は楽であり、利潤はあげ得る。かように考えますが、この経済活動をした結果、人命を損傷するとかあるいは生活環境を乱すとか、こういうようなことになれば、それはたいへんだ。そこに私の言う人間尊重があるわけであります。あるいはまた交通の利便、これを進めていこう。これは経済活動あるいは政治活動から見ましても非常な利便があると思いますが、その結果が交通事故を発生して生命を断つ、こういうようなことがあってはならない、  かように私は思うのであります。あるいはまた、  いままでしばしば言われました炭鉱災害、石炭は  なるほど掘って、そうしてその国の産業を興すエネルギー源だと言われましても、そのために非常な災害を起こして労働者がその生命を失う。こういうようなことがあってはならないんだ、かように私は考えておる次第であります。
  185. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 人格の尊重と福祉の増進とおっしゃられました。しかし、まあ最後に人命の尊重が出ましたから、これは額面どおり受け取らさしていただきたいと存じます。人間のうちで何よりも大切なものが、私は人命だと思います。人の命より大切なものはないと思います。その人の命を大切にし、その人の意思の自由と、その人の義務が平等に課されるというところに初めてヒューマニズムが生まれてくると思うのです。こういう意味におきまして、あなたの人間尊重がほんとうに人命と、自由と、平等と、これが行なわれるような施策を具体化される勇気、たいへんな勇気が要ることです。それが今後もございますか、ございませんか、最初に承っておきます。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん私、一国の総理でございます。私の責任はただいま御指摘になりました点にあるだろうと、かように思って、この上とも最善を尽くしてまいるつもりであります。
  187. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのことばがどのように行政化されておりますか。まず四十二年度予算で、あなたの言うところのいわゆる人間尊重、これとこれだけは予算上はっきりしているんだというものがあったらお示しを願いたい。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申すような、予算編成はそういう意味でできるだけ人間尊重、その実効をあげるようにいたしたいと努力しております。この点は、この予算をいろいろ精査なさる面からおわかりだと思います。   一、二の例で申せば、最近自動車の事故防止のために各種の施設をいたしておりますが、これも予算に計上してございますし、あるいはまた公害防止対策、これなども予算に計上してありますし、あるいはまたさらに大きくいたしましては環境整備の問題、厚生省予算などはその大部分がただいま申し上げるような点に重点が置かれておる、かように御理解をいただいていいと思います。さらにまたその他の各省の予算も、人件費を除きましてはただいま申し上げるような、そこに帰一していくような政策の実行、それに必要な経費が計上されてあります。この点は十分予算を審議していただきたいと思います。
  189. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いずれこの問題は三党協定、これで個々に、銘柄別に順次お尋ねする予定でございます。  ところで、その前に政治資金規正法並びに選挙制度審議会の答申、これに基づいて二、三御質問をしたいと存じます。  第一番、この政治資金規制の問題か、選挙制度審議会長高橋さんのところから内閣総理大臣あてに提出されているはずでございます。これについて担当主務大臣は、これをどのように受け取ってみえまするか。
  190. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 現在の政治資金につきまして、入るほうも出すほうもある種の規制をさらに強めることが、現在の政治の現況から考えて必要である、そういう意味においての御答申と考えております。
  191. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この答申を主務大臣はどう実現しようとしていらっしゃいますか。
  192. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 答申の趣旨を十分尊重してこれを成文化し、御審議をいただきたいと考えております。
  193. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 十分尊重して、成文化するということばと、分科会で質問いたしました島上君にお答えになりました答弁、文字どおりこれを尊重するということばとの間に開きがありますか、ありませんか。
  194. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ないはずでございます。
  195. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さきのことばと今回のことばは同じである、つまり言うと、文字どおりとは、そのままイコールということですね。
  196. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 これはこの席でもお答えいたしたかと存じますが、答申の中にはおおむねとか準ずるとか、そういうことばもございます。したがいまして、イコールとそのまま書き得ないものもございますから、その辺はもう十分御承知のところであろうと存じます。
  197. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは具体的に申し上げましょう。第一は寄付の制限が行なわれておりますね。第二は特定会社の寄付の制限、寄付の制限というより禁止が行なわれておりますね、うたわれております。次には匿名の寄付等の禁止と、こうなっておりますね。この内容を文字どおり尊重なさいまするか。
  198. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 そのとおりでございます。
  199. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もしあなたの所属なさる党のほうに異論があった場合、なおあえていまのことば、いまの決意を守り通されまするか。
  200. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 私、自治大臣としての責任は、この答申の趣旨も十分尊重して成文化することが私の責任であると考えております。
  201. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでこそあなたはりっぱです。必ず歴史に残るでしょう。ただし、もし一そのことばを具体化するときにくつがえしなさったならば、今度はあなたの汚名が歴史に残るでございましょう。  さて、それでは総理大臣、主務大臣があのごとき悲壮な決意で臨んでいらっしゃるようでございます。これについて総理としてはどうお考でございますか。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理としても同じ考えでございますし、自治大臣の藤枝君を全面的に支援するつもりでおります。
  203. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは党の総裁であると同時に政府総理大臣でございます。もし党のほうが藤枝氏の意見というよりは、この答申に反するような具体化をしようとなさったときに、総理としてはいずれの使い分けをなさいまするか。総裁のほうが優位であるのか、総理大臣のほうが優位であるのか、これを承りたい。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 加藤君ともあるまじきお尋ねのように思います。この法案は政府がつくるのであります。だから総理として考えていくと御了承いただきます。
  205. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私としてあるまじき質問をしたり、総理としてあるまじき答弁をする、これが現実の姿なんです。これはよし、これは是としながらも、なお必要悪が次から次へと出てくるのが現実なんです。その現実に処して、はたしてあなたがどの程度の決意があるか、もしありとすれば、せっかくありとすれば、国民の前へそれを表現なさることが、一そうその決意を固める原因になればこそ、あえて質問しておるのであります。  もう一度お尋ねいたします。二律背反した場合に、あなたはいまの勇断を実行なさる用意がございますか、ございませんか。それとも前言を豹変なさいまするか。
  206. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりであります。  ただいま必要悪というようなことばも出ておりますが、私はこの問題はもう国民の至上命令だと、かように考えておりますし、そういう意味で答申を尊重する、藤枝君が成案を得るようにこれを全面的に支援する、これに間違いございません。
  207. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 至上命令ということばが出ました。カントの哲学でございます。私もこれはけっこうだと思います。国民の声は、これはいまや天の声である、東洋流にいえば天の声でございます。私も、いや、私もというよりは、これは与党も野党もともにこぞって賛成をしていかなければならぬことばだと思います。  さて、それではお尋ねせんければなりませんが、条文化はいつ行なわれますか。
  208. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 目下鋭意検討をいたしておりますが、ざっくばらんに申し上げまして、連休等もございますので、五月の中旬までにはぜひ出したいと考えております。
  209. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 五月の中旬までにいわゆる法案ができ上がる、こういうことでございますです  ね。
  210. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 その目途で鋭意勉強をいたしております。
  211. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その法案は今議会に通過させる予定ですか、それとも次々と延ばす予定でございますか。
  212. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 もちろんこの国会で成立をはかっていただきたいと念願をいたしております。
  213. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、その答申の中に「五箇年を目途として」ということばがございますね、期限を制限しておるようでございます。それを条文化なさいますか、なさいませんか。
  214. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 簡潔に答弁しろというお話でございましたが、これだけはちょっと饒舌になりますが、お許しをいただきたい。  答申、すでに御承知のことではございますけれども、もう一度申し上げたいと思います。答申の中に「政党は、できるだけすみやかに近代化、組織化を図り、おおむね五箇年を目途として個人献金と党費によりその運営を行なうものとし、当審議会は差し当り、次の措置を講ずべきものと考える。」この「当審議会は差し当り、次の措置を講ずべきものと考える。」これを法文化いたすつもりでございます。
  215. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 さしあたり、急げというのは全体にいわれていることでございます。しかし、そのさしあたり全体に急げだが、これだけは五年以内にとうたい出してあるのが二ページの「政党は、できるだけすみやかに近代化、組織化を図り、おおむね五箇年を目途として個人献金と党費によりその運営を行なう」べきものとすると、はっきりうたっておるのでございます。前文にうたっておいて、あと個々に至っておるわけでございます。この五年というところがポイントでございます。これを抜きにすれば、かりに今国会に法案が成立したといえども、それは仏つくって魂入れずだ。画竜点睛を欠くわけなんです。そこを逃げてしまったら、それは形は似せたけれども、実質は逃げ切ったということになる。いかがです。
  216. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 この点に関して加藤さんと意見を異にするのはたいへん残念なんでございますが、私は、この答申の趣旨は、政党が組織化、近代化を急ぎ、個人献金と党費によってまかなえるようにしろという、そうした政党に対する――もちろんこの答申は政府に対する答申ではございまするけれども、政党に警告を発せられておるものと考えております。
  217. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こっちを見てくださいよ。ここにその特別委員がいらっしゃいます。私のほうにも特別委員がおります。私はこれを逐一見ました。もちろん国民全般も、朝日、毎日、読売をはじめとして、この問題については大キャンペーンを張っておるわけなんです。国民はこぞって答申が実現されることを期待しているわけなんです。そのやさきに――五年と入れておかなければいつまでたってもできないではないかという懸念があったればこそ、ほかの個所には入ってないけど、この個所にだけ五年と入っているわけなんだ。なぜこう入れなければならぬかといえば、かつて七年前にこれと相似た答申が出ているにもかかわらず、今日なおできていない。あなたのほうの党の内情を言ってもあれだが、いま大臣の席にいらっしゃる人、いま外国へ行ってしまっていらっしゃる人、この人もかつては党の近代化のためにずいぶん意見を吐かれたはずなんです。その意見は、今国会においても並みいる大臣のうちで私どもは野党としては一番前向きの姿勢で、一番の努力型であるなと思っていた。ところが、どうしたはずみか、最後の段階になってぷっとどこやらへ逃げていってしまいやがった。私は一人一人に聞きたいのですけれども、それじゃ時間を浪費すると言われてもいけませんから、もう一度聞くのです。この五年という字はあだやおろそかで入った字ではないのです。実行を迫っているわけなんです。もしあなたがこの五年を入れないとするならば、じゃあなたは何年かかってやるつもりなんです。
  218. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 現在政治資金に対するいろいろな国民批判はきびしいものであると私は考えます。そうして、こういう答申が出された以上、政党はその国民の監視の中において近代化、組織化をはかっていくことは当然だと思っております。私は、おおねむ五年というこの目標に向かって各政党とも――各政党と言ってはあるいはおしかりを受けるかもしれませんが、各政党は努力をされるものと期待をいたしております。
  219. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 五年という文字を入れなければ、あなたは何年たったらそれができるとお考えですかと聞いておるのです。
  220. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 おおむね五年というこの答申につきましては、各政党とも大いに努力をされるものと私は期待をいたしております。
  221. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それならば条文に入れるべきじゃございませんか。あなたは文字どおりと口に言いながら、文字は五年と書いてある。それを、そこだけを抜けば文字どおりじゃないじゃないですか。一番ポイントを。
  222. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 五年については先ほど答弁したわけでございます。また、そういう政党の努力が実れば、おそらくこうした政治資金規正法などというものも必要なくなってくるのではないかというふうに考えております。
  223. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは、五年がむずかしいから、五年という文字を入れることはかんべん。しからば何年ならいいのです。もう一度聞く。
  224. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 何年というよりも、私はこの答申の趣旨を各政党ともその実現に努力されるものと期待をいたしておる次第でございます。
  225. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 期待ということは、これは立法じゃないのです。これは精神現象なんです。いまは立法のことを論議しているのです。何年たったらやれるとお考えです、五年が無理なら。
  226. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 五年が無理とか無理でないとか私は申し上げておるのではなくて、この趣旨は、各政党がこの趣旨に従って努力されるべきものということを言われておるのでございまして、それに向かって国民監視のもとに各政党は努力をされるものと私は確信をいたしておる次第でございます。
  227. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 確信をしているなら、確信をもって何年と答えなさい。
  228. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 同じことを繰り返すようでございますが、私は各政党ともこの答申に従って努力をされるものと信じておるものでございます。
  229. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 五年が無理だから五年という字は――ほかは全部文字どおり受け取るけれども、五年だけはごかんべん、こういうことなんです。入れませんということなんです。しからば何年なら入れたらいいかと聞いているじゃないか。何年と答えてもらいたい。数字を開いておる。抽象論でない。
  230. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 五年が無理とか無理でないとかいうことを申し上げているのではないのでございまして、法文には、この「差し当り」以下を法文化すればよろしい。そうしてまた、政党の近代化、組織化は、各政党が懸命に努力されるものと私は信じておるわけでございます。
  231. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 無理でないとおっしゃった。無理でなければ入れたらいいでしょう。私の言うていることは無理でないとおっしゃった。無理でなければ入れるべきだ。なぜこういうことを私が言わなければならぬかといえば、大臣、よく聞いてくださいよ。答申はこう述べたけれども、党の各意見は、新聞で先刻御案内のとおり、おのおのの意見があって、この五年では無理である。そこで、先ほど来あなたがおっしゃったように、国民はこれを注目している。額面どおり受け取ると言わぬことには、党に対する批判が大きくなる。そこで、額面どおり受け取ったかっこうだけをして、ポイントのところを骨抜きにして逃げ切ろう、すでにこういう評論も行なわれているわけなんだ。したがって、そうではございません、ほんとうに文字どおりですというならば、これをかりにあなたが六年と直しなさったって、それは実態は六年  でなければできぬとおっしゃれば、これは国民もある程度納得すると思う。それを、何年ということを入れなかったら、これはあなた、仏つくって魂どころか、空文化しちゃうじゃございませんか。ざる法になるじゃございませんか。さあ、総理大臣、勇断を持って臨むとおっしゃった総理大臣、これをどうなさる。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど藤枝君がお答えしたあの答申の趣旨をずって読んでみると、そういうお答えしたとおりじゃございませんか。五年を目途として、さしあたりはこういうことをしろというのじゃないですか。これはだから、いまの読み  方がちょっと違っているようでございますが……(加藤(清)委員「では五年を入れたらいいじゃないか」と呼ぶ)ちょっと待ってください、その話は。  私の話を聞いてください。これは立法技術のいろいろの問題もあると思いますが、一番はっきりするのは、五年間の有効期限でこういう法律をつくったら一体どうなるのか、かように思います。  これは一つの案ですよ。だけど、現状からいきなり規制をする、その方法のものは、現状においては、各政党ともその用意ができてないじゃないか、だからそれは各政党がこれから五年のうちにやるべきなんだ、実はこういうことのように思ってこの答申が出ておる。それを、先ほど来藤枝君がいろいろお答えしているのですが、どうしても御理解されないようです。これは私も、いろいろ法制局長官とも話をして意見を交換して、どういうような立法措置がとれるか、それをいろいろ考えておるわけです。
  233. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私はあくまで藤枝大臣に聞こうと思った。しかし、見ておるというと、だんだん顔が青うなってきた。これじゃ気の毒だから、人権をじゅうりんしたといわれては相すまぬから、そこであなたにお尋ねするのですが、あなたも五年は無理であるというお考えですか。それともあなたは、五年という文字が――こっちを向いておってもらいたい。さっきと同じじゃ。そんなところで三百代言でごちゃごちゃ言う必要はない。ちゃんとこっちを向いていらっしゃい。あなたがそんなところで私の質問をじゃまする必要はない。頼んだら出なさい、あなたは。私が指名したら、出なさいと言ったら……。  総理、五年が無理なら、何年たったらいいとお考えになります。これはきょう私だけで終わる質問じゃありませんよ。まだ参議院が控えておる。まだ小平君そのほか公明党、次々と控えておる。まだ予算は上がったんじゃないですよ。答弁のいかんによっては、予算はどうなるかわかりませんよ。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもこの答申の読み方が、加藤君と私はちょっと違うようです。もう一度そのために、国民の皆さんにも何が論点になっているかよく理解していただく、こういう意味でひとつこの答申そのものを読みますから、これが聡明な加藤君のような議論になると私はどうしても思えないのですけれども、それをひとつお聞き取りいただきたいと思います。「政党は、できるだけすみやかに近代化、組織化を図り、おおむね五箇年を目途として個人献金と党費によりその運営を行なうものとし、当審議会」これからが審議会で、「当審議会は差し当り、次の措置を講ずべきものと考える。」ただいまの「五箇年」云々は、いわゆるまくらことばになっておるという状況でありますので、「当審議会は差し当り、次の措置を講ずべきものと」する。これから「寄附の制限」、「政治資金の寄附については」云々等が出ておるのであります。したがいまして、この審議会がいっている五年というものが短いとか長いとか言っているのじゃないので、この審議会の答申で注意してある、そのためには審議会が要求しておる法文化すべきもの、それをやればいい、こういうのでございます。
  235. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 まあ法制局長官はとかくスコラ哲学が得意でして、中世紀のスコラ哲学と同じ考え方なんです。あなた、私はいまここで文学論を論じようとか日本国語の文法を論じようとは思わぬけれども、はしなくもおっしゃった。まくらことばとおっしゃった。まくらことばは、次に出てくる各個条に全部引っかかるのがまくらことばなんです。副詞や助詞ではありませんぜ。形容詞でもないのですよ。まくらことばとは、次に出てくる条章に全部引っかかってくる。  そこで問題は――もう一歩譲ってあげましょう。譲って、話を先へ進めましょう。そのために譲りましょう。そこで、たとえば「個人は、年間、おおむね一千万円」とする、こういうことばと、2、3と次々にありまするが、その五年を、1はよろしいけれども、2はちょっと無理だとか、3はいいけれども4のところは無理であるとか、こういう話なら、私、わかるのです。それならわかるのです。ところが、これはまくらことばであって全然別個のものである――まくらことばか何で別個でございますか。これは修飾語じゃないのです。全部にかかることばなんです。冗談言っちゃいけません。もしそういうことばで逃げようとおっしゃるならば、もっとこの問題だけに時間をかけてゆっくりやってみましょうか。そしたら延びるだけです、この、予算は。
  236. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 この点でたいへん加藤さんと意見を異にするのは非常に残念なんですが、ただいま総理もお読みになりましたように、政党はかくすべし、そうして当審議会はさしあたりこの措置をするということでございまして、加藤さんがいまお示しになったようなまくらことばではないと考えておるのでございます。
  237. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本件は留保いたします。これでは、ただいたずらに時間が遷延されるだけですから、留保いたします。必ず予算通過までに、もう一度それまでによく検討しておいていただきた  次、問題は、政治献金、政党献金が、他の資金、頭金等々と違って、特殊な立場に置かれている点がございますね。それは、自治省に届け出たらそれでよろしいということになっているわけだ。これは、税法上からいっても司法の立場からいっても、特殊な位置に置かれているということなんだ。問題は、すべてのものに立ち入り検査ということがあるわけなんだ。検査が行なわれる。これだけは検査せぬでもいいことになっている。届け出たらそれでおしまいということになっている。この点について私の言うてることがうそであるか、間違いであるか、あるいは正しいか、主務大臣にお尋ねする。
  238. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 これはもう加藤さん先刻御承知のことと思いますが、政治資金規制というやつは、ガラス箱の中にどういう種類の寄付金が流れてきて、どういう種類のものが流れ出たか、これを公開し、そうして国民批判にまつというのが、この政治資金の規制の方式でございます。しかも、この届け出につきましては、それが偽りでない誓約書を出すことになっております。したがって、さような方式であることが現在の制度でございます。
  239. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 つまり現在の制度は、これに立ち入り検査とか追い打ち検査とかいうことがないんですね。
  240. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ございません。
  241. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 届け出すればよろしいということになっているわけだ。したがって、その結果から、この資金の使途についていろいろな問題が発生すると存じます。まあうそ、悪事とは申しませんけれども、流用であるとか、あるいは警察庁や警視庁が解散を命じたところの団体を養成したり、それを支援したりというようなことにも使われないとは限らないんでございます。したがって、でき得べくんば法改正にあたりまして、せめて税務関係と同じように立ち入り検査をすることができる、こう改正するほうが国民の期待にこたえられまするし、なおこの答申のそれこそ前段にうたっておりまする公明正大、清廉潔白、このことばに通ずると思いまするが、いかがでございますか。
  242. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 先ほど申しましたような仕組みでございますので、立ち入り検査までやることがはたして妥当かどうかということは、私さらに検討を――あまり積極的でないわけでございますが、ある種の是正措置ができる程度のことは考えなければならないのではないかと思っております。
  243. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ある種の是正とはいかなることでございますか。
  244. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 たとえば数字が非常に違っておるとかあるいは――まあそういうことで、ちょっと実例は浮かびませんけれども、そういう意味でございます。
  245. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 まあ具体的にいま立法の段階でございまするので、それはいま具体的に言えなくてもやむを得ませんが、とにかくある種の是正といいましょうか、検査と申しましょうか、それが必要であるとはお認めでございますね。
  246. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 さような意味において必要ではないかと考えておる最中でございます。
  247. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私もそう思うのです。公明正大、清廉潔白、これを要求し、それが行なわれることによって明るく正しい選挙、こう答申が来ておるのですから、それに合うように立法するには、あなたのことばをかりて言えば、ある程度の是正――私は具体的に立ち入り検査と申しましたが、この立ち入り検査でなくてもいいですよ。いいが、それに相似たそういう効果を発揮することを法文の中に、条文の中に入れられますか。これもことばだけで、口頭の禅ですか。
  248. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 この出してはならないものを規制するには、やはり本文的に規制をしなければならないと思うのです。答申にもありまするように、選挙区において寄付をしてはならぬというようなことがありますが、そういうことだと思います。しかし、それでなくて、数字の違いその他につきまして明らかに間違っておると思われるようなものの是正措置、そういうものは必要だと考えております。
  249. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、この問題の最後に一つお尋ねいたします。  この答申は、経済でいいますると、入ることを規制するのですね、金の入ることを。党の側からいえば、議員の側からいえば、入ることを主として規制しているようでございます。しかし、入ることを規制して、出るほうを野放しにしたら、一体議員の諸公は、政党はどうなるであろうか。これをこの間座談で、名前は言いませんけれども、某席上で与党、野党の代表の方々が話し合いました。それは困ったことになるだろうと、意見が与野党一致したわけでございます。出ることを規制しておいて、それから入ることをはかるならば、これはもう問題はないですね。ところが、入ることを規制して、出るほうだけは野放しということだったら、これは立ち行きませんですね。それをどうすべきやという問題でございます。そこで、それだけでは御理解が願えないかもしれませんので、簡単に申し上げましょう。たとえば、議員は寄付行為が行なわれる。議員が寄付行為を行なうことを当然の義務のように、日本国民は思うている向きがたくさんあります。大都会における知識程度の高いところはそうでございません。しかし、どちらかといえば、議員は寄付行為をすることがあたりまえであると、寄付を受け取る側も出す側も、そう思いがちでございます。次に、選挙の場合の応援費であるとか、あるいはきのうきょう修学旅行の生徒がたくさん参ります。これに対しておみやげを上げなければ、どうもつき合いが悪いとか、このつき合いがだんだん競争になって、生徒一人当たり三百円ずつもかかるおみやげを出していらっしゃる方がございます。合わせると、それだけで年間六百万も要るのです。陳情団が参ります。この人の汽車賃のみならず、宿銭までも持つことが当然のように考えられている向さがあるようでございます。開店とか冠婚葬祭における花輪その他は、もうこれは当然の義務のように思われている向きがあります。このように、出ていく、これをどうすべきやという問題でございまするが、これを一体法務大臣はどうお考えでございましょう。私どもは、これが事前運動になったり、間接買収になったりという気がしないでもないのですが、いかがでございます。
  250. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説のとおりに考えます。これは政治資金規正法を御答申の趣旨を尊重して思い切って改正を行なうということを断行いたしまして、入るほうに非常にきびしい規制を行なうということになりましょう。ところが、各議員の立場から申しますと、それだけでは政界の粛正はむずかしいと考えます。もう一つ、各議員のふところから出ていくあまりかんばしからざる支出の面について、やはり公職選挙法の立場において厳格にこれを禁止、制限をしていくということが必要ではなかろうか。その具体的な例は、いまおあげになった中で、私の調査をいたしましたところでは、綱紀粛正の点から調査をした筋でございますが、その点から申しますと、第一は、たいへん申しにくいのでありますが、葬式の際における花輪、香典でございます。第二は、いまおことばのありましたような修学旅行等、国会参観、東京旅行、視察等に対する、団体に対する食事、おみやげもの等の気風でございます。それ以外、お正月が来れば宴会が開かれ、年末がくれば忘年会が開かれる。そういう方面に対して金を持ってまいるような寄付、そういう一切の寄付というものを、こんりんざい――親族なら親族、何親等内の姻族ということは法律で規定し得るのでありますから、それを除き、それ以外はこれらの支出は一切厳禁するということをつくりますならば、政治資金規正法の規制と相まって、政界の浄化は期せずして行なわれざるを得ない。これは合理的に必ずそれならば行なえるという見通しが立つわけでございます。そういう点から、規正法と、反面において公職選挙法の規定を、徹底したものをつくっていくべきものである。加藤委員承知のとおり、しからば現在の公職選挙法においては規定がないのかというと、これはお気づきにならないかもしれませんが、りっぱな規定があるわけであります。一切選挙のあるなしにかかわらず、三百六十五日、二十四時間、公職にある者、公職になろうとする者は、選挙区に寄付をすることを許さないという厳格な規定があるわけでございますが、困ったことにはただし書きがありまして、ただし社交の程度を越えざるものはこの限りでない。何もかも、いま私がおしゃべりをしたようなものは、全部社交の程度であると称して、この法律を議員各位がお守りにならぬ。こういうことから、これは空文となっておるわけでございます。そういうものをしっかりひとつ押えるような改正をやりたい、そういう明文をつくりたい、こう考えます。
  251. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 問題ですね、これは。すべての法律は国会でできます。この国会でつくられまする法律は、議員の身からすれば、おのれみずからを規制する法律でございます。それが法律のはずでございます。それが民主主議下における法律のはずでございます。おのれみずからがつくった法律によって、みずからが縛られる。特にこの政治資金規制の問題と選挙法の問題は、それが特に濃いのでございます。だから、現状を無視してこの法律を立法化しようとしても、無理がある。同時にまた、現状を無視して法律をつくったとしても、実行が不可能であっては、とうてい守られっこございません。特に虚礼廃止の議決を何回もして、そのポスターを事務所に、部屋に、応接間に、それぞれ掲げておきながら、その虚礼廃止のポスターの下で虚礼実行のはがきを書く。これではどうにもならないのですね。総理、この問題についてどうお考えですか。
  252. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ちょっとその前に。今度の答申に、すでに御承知のように、親族または政党その他の政治団体もしくは候補者に対する寄付以外は、選挙区において、候補者あるいは候補者となろうとする者、公職にある者並びにその後援団体は、一切寄付をしてはならぬという答申がございますので、これは私は忠実に法文化したいと考えております。
  253. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この問題について、総理はどうお考えでございまするか。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま加藤君から、現状はどんな申し合わせをしても、それが実行されてない。虚礼廃止の下ではがきを書いているという、たいへん皮肉な、みずからを自嘲したようなお話が出ております。今回の政治資金規制、これをめぐりましては、在来からやってきたようなやり方は大改革をしない限り、これはできるものではございません。ここに私は、いわゆる勇断を要求されておる、勇気を要求されておる、また各政治家とも同じような気持ちで自粛自戒して、そうして金のかからない政治、金のかからない選挙、これと真剣に取り組むということにもう一度反省していただきたい、かように思います。これがいまの審議会が答申をしておるゆえんでありますし、私がこれを行なうにあたりましては、勇断を要するというのはこの点でございまして、また皆さん方にもずいぶん御無理をお願いするようになるだろう。在来のしきたりを変えて、新しい立場ものごとをきめてかからなければならない、かように思っております。
  255. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 虚礼のゆえに金がかかる。その金を求めるために無理をする。おのれみずからが首を締めている。それが今日の議員の現状である。私は、これは法務大臣を責め、ようなどとは思っておりません。われわれみずからがほんとうに反省せんければならぬ時期だと思っております。ただ、あなたにお尋ねしておるのは、あなたが副議長でいらした。そこでおきめになって、議長名をもってしたところの虚礼廃止が行なわれないというゆえんに、あなたに聞いたわけだ。問題は、少なくともこの答申に盛られた虚礼廃止の各条項、それに匹敵する各条項がここにあるわけです。それをほんとうに実行すべく規制し、罰則をつける、ないしはその罰則が体刑であろうと何であろうと、あるいはこういう公の席上において、せめてその虚礼をした者をはっきりと国民に官伝するということをやることが、少なくとも一歩前進、二歩前進だと思う。それをなさらなければ、総理のおっしゃるところの風格ある政治、このことはとその内容は風とともに去っていく人格ということになるわけです。あなたのおっしゃるところの風格ある政治が風とともに去っていくところの人格であるなどということにならないように、この答申を法文化するにあたって実現をしてもらいたい。これは与党にだけじゃないのです。おのれみずからも反省せんければならぬことであると申し加えまして、あなたの所見を承りたい。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま加藤君が最終的に言われたので、はっきり加藤君の考えも私の考えも同一だと思って喜んでおるのですが、何だか先ほど来の御意見を聞いていると、今回の答申をやるのはむずかしいことで、なるべくやらないようにしてくれとでも言うのではないかしらと実は聞いていたのです。ところが、いま最後になりまして、ようやくたいへんむずかしいことだが、これをひとつ実施するようにしろ、政府や与党ばかり責めるのではないのだ、野党におきましても十分考える、個々一人一人の議員諸君がみずから反省して、そうして申し合わせを厳重にし、そして国民の期待に沿うという、そのことをやるのだ、こういうお話でありますので、たいへん私は意を強うしたのです。これは勇断をもってこれと取り組まない限りできるものではございません。ひとり政府ばかりではございません。議員皆さん方が勇断をもってこの問題と真剣に取り組む、これではじめて実現できるものだ、かように私は思っております。
  257. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは次には国内経済、主として総理の人間尊重が国内経済、国内充ての予算等々にどのように具現されているかという問題について、二、三触れてみたいと存じます。  まず第一番に、国民の希望は物価を安定し、税金の高過ぎるのを減らし、一世帯一住宅の住宅をつくり、交通、公害から国民の生命を守る、これが最も緊急にして大切な国民の要望であると思うのでございます。  さて、物価の安定でございまするが、あなたは総理になられまするおりに、池田財政が過熱し過ぎて所得倍増が行き過ぎである、これは是正せんければならぬと、こういう趣旨のことを総裁立候補の前に新聞にりっぱに書かれました。人間尊重と同時に、国民とともに歩む政治ということばでございました。まことにけっこう、そうあらねばならぬと思うております。ところが総理、物価はどうなりましたでしょうか。景気はどうなりましたでしょうか。池田財政のころには、少なくとも卸売り物価は上がらなかったのでございます。そのときといえども、私どもは下方硬直性の卸売り物価は、これはあやまちであると指摘しました。今日いかがです。卸売り物価が下がらなかったときでも、いけないとおっしゃったあなたがやってごらんになったら、今度は消費者物価だけでなしに、卸売り物価までがどんどん上がるようになってしまった。これはお認めでございましょう。さてしからば、消費者物価を引き下げるための手は、いかなる方法において、具体策において、打っていらっしゃいますか。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価を安定さすということは私どもに課せられた政治上の最大課題だと、かように思っております。したがいまして、物価を安定さす、これを下げるといいますか、あるいは上昇率をだんだん下げていく、そういう努力を実はいたしております。そのためには、やはり安定成長に乗ること、同時にまた各業種間の格差をなくする。非常に生産性の低い部門、たとえば農業であるとか中小企業あるいはサービス業等について、特殊な考慮を払っていく。こうしてやはり金融、税制等とあわせて物価鎮静の方法を講じてまいったわけであります。私が政治、政局を担当いたします最初の年、これは御承知のようにたいへんな経済の変動の期でございます。そうしてその後は経済か沈潜した、たいへんな不景気に見舞われました。その意味で景気を直すこと、これがただいまの御指摘になる物価とも関連するということで、さらに刺激的な政策もとりました。刺激的な政策をとれば物価について必ず悪い影響があるはずでありますが、幸いにしてこの景気は立ち直ることができた。物価そのものも、強含みではあったけれども、在来の高い物価の上昇率を引き下げることができた、かように思っております。最近におきましても、絶えずこれらに注意いたしておりますから、ただいま卸売り物価等についても、最近の情勢はやや動かないような形に向かっておるのではないかと思っておりますが、こういう点は絶えずこまかな留意をいたしまして、基本的な政策を忠実に、着実に実施していく、こういうことが必要だと、かように考えております。
  259. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そこで、各党がそれぞれに与党に対して申し入れておりまするところの公共料金のストップ、せめて一年、せめて二年、この問題について池田さんの場合は勇断をもっておやりになりました。あなたの場合はいかがでございますか。やったのですよ。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公共料金といえども経済法則に従って定められているものが多いのでありますから、これを力でもってストップをするという立場は、私は元来あまりしばしばやっていいことではないというふうに考えております。
  261. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 やらないということですか。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの状況では、私はやるつもりはございません。
  263. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは卸売り物価の上昇、これはいかがなさいますか。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、この予算委員会が暫定予算を御審議の最初の段階から何度か御議論のあったことでございますが、私は、卸売り物価というものは、概していわゆる市況商品が中心なんでございますから、昨年度あれだけの騰貴があれば、これは反落があるのが本筋である。また、騰貴の原因が御承知のようなことでございますから、木材を除けば反落のあるのがほんとうだ、こう申しました。過去三旬、ずっと卸売り物価は反落をしております。まだ短期間でございますから、私の申しましたことが当たっておりますなどとは決して申し上げませんけれども、私は卸売り物価というものはそういうものだと思っております。
  265. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 残念なことに、現実は卸売り物価も、池田財政のときにはずっと高原状態を保ってきたのです。ところが、去年はさほどでもございませんでしたが、公債を発行して景気刺激をやりなさってからは、ずっとのぼる一方になってきた。これをこのままにおいて今度の景気過熱が来た場合に、はたしてあなたの期待されるとおりいくとお考えでございますか。
  266. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現実に四十一年度の卸売り物価の上昇を見ますと、簡潔に申し上げますが、最初に非鉄金属があり、そして終わりに近く鉄と繊維があったわけでございます。これらはすべて現在ほとんど反落をして、問題が片づいておる。木材だけが徐々にずっと上がってきております。これは今後も上がるであろうと思われますが、木材の持っておるウエートからいたしますと、卸売り物価水準が四十一年度のように四%も上がるなんということは、私は何度も繰り返される筋合いのものではない、こういうふうに前から思っておるのでございます。
  267. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あとで銘柄別に順番にお尋ねしていきますが、あなたは繊維が下がってきたとおっしゃるのですが、繊維の下がったのは、これはそんな原因じゃございませんよ。繊維の三品市場の値段は、ここ数年来底値をついて、コス  ト割れをしておったのですよ。二十番手一こおり少なくとも七万円から六万円しなければならないものが、ときに四万円を割っておったのだ。出血だったのだ。これではいけないというので、制限に制限を加えて、てこを入れたおかげで上がったのです。同時に、その上がった原因は、インドネシアヘの特別輸出であり、輸出が解除になって債権国が相談をしてあそこへ運んだからなんです。同時にベトナムの特需あり、きのう話のあった保税加工の問題があり、あるいは中国におけるところのあの状態は、やがて中国の輸出力を減退させたのです。インドにおけるあの政変は、やがてインドの下級繊維の輸出能力を下げたのです。そのはね返りが日本へ来ただけの話なんです。そこでがあっと上がった。上がり過ぎたのです、今度は。四万円のものが八万円にもなった。それが下がるのはあたりまえの話なんです。あな  たの経済政策がよかったからだとか、卸売り物価の硬直性をある程度てこを入れたから下がった、そういう問題じゃない。一つ一つやっていきます、あなたがそんなふうに答弁なさるなら。
  268. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何も経済政策がよかったから繊維が下がったと申していないんで、特殊な事情で上がったものは必ず反落をするのだということを申し上げただけでございます。
  269. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 卸売り物価の下方硬直性は、特殊事情は特殊事情でも、それは政府の管理価格、カルテル価格を許容するところから発生してきておる。  それでは問題が一般的でないかもしれませんから、もっと一般論で話してみましょう。日本の物価構造は、諸外国のそれと比較しまして異常でございます。あなたはどう思われますか。ちゃんと聞きますよ。私は異常な物価構造をしておると思います。識者、それに携わる学者、プロフェッサー、ほとんどがそう言っておる。あなたは、バッチもなき時代から好まれて、重要ポストに招かれようとなさったあなたでございまするから、国民の期待は大きいのです。あなたが野におるときに望まれたかっこうといまのかっこう、変わったようですね。あなたは権力に招かれてきたんですから、権力に従うとか、それだけが問題じゃないと思う。そこで申し上げましょう。日本の物価構造のうちで、内地人ならば高く、外国人ならば安くという物価のシステムがありますが、これはいかがです。どう思われます。
  270. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題でございますけれども、結局、やはり市場経済というものが非常にいいんだと思うのでございます、卸売り物価がそういうふうに一方的に上がったり下がったり長く行なわれないということば。そういう意味では経済政策とも無関係じゃないと思います。  いまの後段のお尋ねでございますけれども、それは実は国際的な影響を考えて御答弁をしないといけない問題でございますが、やはり市場開拓をしようというようなことで、多少そういうことはあるように思います。
  271. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 国際問題を遠慮なさる必要はございません。それをいまさらこの国会で秘密にしておったって、世界各国はちゃんとデータをとって知っておるのですから。そのことがやがて貿易にはね返ってきておるのです。レーバーダンピング、チープレーバー、これはやがて日本の輸出品を、自由であるといいながら、アメリカ国において日本品を制限する原因になっている。そのことは、やがてカナダヘ影響して、カナダはアメリカと同じ方法をとっている。ガットに先進国並みになったという。IMFもそうなったという。しかし、見てごらんなさい。EEC諸国日本に対してどうなんです。ガット三十五条第二項の援用をしているじゃございませんか。制限品目がずらり並んでいるじゃございませんか。決して平等ではありません。貿易は自由化されたというけれども、買いの自由は与えられたにもかかわりませず、売りの自由は制限、制限です。なぜそうなっているか。チープレーバー、レーバーダンピング……。(「向こうでやることを、君、ジャスティファイしちゃいかぬよ」と呼ぶ者あり)何を言うか。何を言うか、事実を言っているんじゃないか。あなた、演説したかったら、ここにいらっしゃい。
  272. 小川半次

    小川(半)委員長代理 加藤君、加藤君、やじの相手になる必要はないです。
  273. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、いや、この問題について、輸出は安く……。(発言する者あり)何を言っているか。痛いところをつかれたからといったって、君が文句言う必要はないじゃないか。輸出は安く、内地には高く、いなとおっしゃるなら、銘柄をあげてみましょうか。肥料にしても、私が持っておりまする時計にしても、この被服にしても、一々値段をあげてみましょうか。自転車から、双眼鏡から、自動車から、カメラから、テレビから、あげてみましょうか。そうでないと言えますか。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の経済が敗戦から立ち直りました直後には、確かにあの当時そういうことがあったと思います。ですが、いまになって、日本の経済がレーバーダンピングをやっていると考えている国は、世界にはほとんどないのじゃないかと私は考えます。ちょうどいまから八年ぐらい前に、当時のドイツのエアハルト氏がわが国に参りまして、日本のレーバーダンピングだということを申しました。しかし、その後に、二年ほどたちまして、エアハルト氏は公式に、日本のレーバーダンピングというものはもうなくなった、チープレーバーではないということをわが国の総理大臣に向かって言っております。このことからでも明らかだと思うので、確かにヨーロッパの国の中にはまだ三十五条の援用をしておるものがある、対日制限リストを持っておるものがあります。それは、そうやっておるほうが不当なのであって、いまのわが国はそういう姿ではないと私は思います。
  275. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その意気たるや、もって壮とすべし。制限している相手が不当であって、こっちが正しいというのなら、なぜガット三十五条第二項の援用を撤回するの仕事をおやりにならぬ。なぜそれをおやりにならぬ。  次に、あなたの弟さんも、ついせんだってまでニューヨークに見えたからようおわかりのところでございまするが、いま現在、アメリカ日本商品に対してどれだけ制限しております。通産大臣に聞こう。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ガット三十五条を撤回しろという要求は絶えずやっております。それから、対日制限リストの数は、各国とも毎年毎年貿易交渉で減っておるわけであります。ただ、いま残っております三十五条を持っておる少数の国、これはわが国がガット関係に入りますときに、あるいは通商航海条約を結びますときに、そのいわゆる安全措置として向こう側がそれをとったわけでありますが、これはもうかなりの国がその後三十五条の援用をやめておりますし、まだ少し御指摘のように残っておりますけれども、そういう国に対しては、対日リストを減らすということ、三十五条を撤廃するということ、この交渉は絶えず執拗に行なわれておるわけであります。対米関係では、何かの形でいわゆる数量制限が行なわれているというものが四分の一程度あるということがいわれておるのであります。これは私、アメリカ側にやはり不当なところがあると思うので、これは少しずつやっぱり直していって、減ってきております。これはこっちが悪いのじゃない。いまの状態でいえばアメリカ側によろしくないところがある。ただ、過去のわが国が敗戦直後にかなりいわゆる無秩序な、オーダリーでないマーケッティングをいたしましたから、そういう記憶が先方にあって、年とともにそれが消えていく、そういう過程にあると思うのでございます。
  277. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それこそ日本人らしからざる答弁です。なぜかならば、アメリカ日本品に対して制限しておる理由が、あたかも日本の商社並びにメーカーにあるがごとき発言をなさるということは、それはいただけません。なぜいただけないか。どうして向こうへラッシュしたのです。レーバーダンピングということばがお気に召さなければ、ラッシュということばでいきましょう。向こうがそう言うておるんだから。ラッシュとは何%行ったらラッシュです。日本アメリカへの輸出品が、このツーピースではアメリカの使用量のわずか一%、だから三日分なんです、それを送ったらラッシュだと、こう言う。糸へんはどうなんです。これはクォータがきまっておるんだ。いわゆる毛であれば七百万ポンド、綿であれば三億八千万スクェア、それがふえて三億二千万スクェアにふえるにはふえたけれども、六十四品目にわたって縦割りで、季節割りで横に割って、スイッチをきかさないようにして、そうやって制限している。  一体、なぜそんなに制限されなければならないのか。その量は一体どれだけラッシュしたか。ラッシュした、ラッシュしたと言うから、量を調べてごらんなさい。向こうの総生産の何%、毛においては、全体の五%しか買いませんぞ。その五%のうちのイギリス、フランス、イタリアの占める率、五%のうちの日本はわずか三〇%前後。そうすると、全体の一・五%です。一・五%アメリカへ輸出されるというと、これはラッシュだと言う。どうして日本人が悪いのですか。アメリカ日本へ輸入されるところの映画を見てごらんなさい。  ージャー九社の映画を見てごらんなさい。日本オール生産の五〇%以上入っているじゃありませんか。あなた、知らぬとおっしゃったけれども、きのうきょうどうです。壁タイルとモザイクタイル、全部禁止されている。日本の力によって、貿管令で禁止すると同時に、アメリカのダンピング法によって禁止されて、倒産が続出しているじゃございませんか。通産大臣、これは何とする。ちゃんと根拠に基づいてものを言っているのだ。
  278. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その前に、私は加藤委員と同じことを申しておるのです。いまそういうクォータのようなことがあるのは、それはけしからぬのだ。なぜそうなっておるかといえば、アメリカ側の感じでは、終戦直後に日本からラッシュがありましたから、そういう記憶がなおあるのであろう。しかし、いま日本にはそういうことはないのですから、クォータというものはおもしろくない、よくないものだ、こう申し上げておるのであります。
  279. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いや、いま私が述べた実情はお認めになりますか。お認めになりませんか。――これは無理だわ、あなたにそんなことを聞くのは、通産大臣に聞いておる。
  280. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 先ほどから私承っておると、国外へ売ったものが国内価格よりも安い場合があるじゃないかというお話でありますが、それは品物によっては安い場合もありますし、また安くない場合もありますが、大体からいうと、国内価格よりも国外価格のほうが安い場合があるのであります。それはどういう理由であるかと申しますと、第一は、代金の現金化が容易であるということです。第二は、一般的にいって国内取引より取引単位が大きいということです。第三は、販売経費や宣伝費、アフターサービス費等が相手国業者持ちの場合が多いのであります。そうしまして、たとえば金融時等に優遇されている場合が多いのでありまして、こういう関係から、国内価格より安くても十分引き合うということでやっておりますので、いまの特に日本の賃金が安いから売れるというわけではないと考えております。
  281. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたは一国の通産大臣ですよ。そんなばかげた答弁で事が足りると思っていらっしゃるか。それじゃ、具体的に聞いてみましょうか。あなたのおっしゃられた条項のいずれに壁タイル、モザイクタイルが当たりますか。アメリカのダンピング法にひっかけられた壁タイル、そのおかげでいま倒産が続出している。それは何に匹敵しますか。そういうばかな観念論を言うものじゃないですよ、通産大臣をいじめて立ち往生させたってちっともうれしくない。問題は、せっかくの日米友好であるならば、それを前進させる意味においても、日本経済をより豊かにさせるためにおいても、不当な制限に属しておるようではいけないということを申し上げておる。  そこで、具体的にお尋ねするが、不当な制限に対して、総理としてはどのように経済閣僚を御指導なさって、これを解消なさろうとせられるのか。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理としては、もちろん申すまでもなく、わが国産業を保護育成すること、これが経済閣僚の本来の責務だ、かように考えております。したがって、貿易を拡大することも、やはりわが国産業の健全育成強化、それに役立つ、かような観点でございます。また、国際協調と、かように申しましても、わが国の主張をしないと、こういうことがあってはならない、むしろ最近の国際関係から申しますと、フランクな主張こそ一そう国際間の親善を強化し、そうして両国の最終的な利益を増進する、かように思っておりますので、対外的交渉におきましても、当方の要望また条件その他については、フランクに相手と話し合う、こういうことを絶えず指導しておるような次第であります。
  283. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いまここに外務大臣がいらっしやらぬことを非常に遺憾に思いまするが、せっかく経企庁長官が、EEC諸国がその圏内ではどんどんと関税障壁をはじめとするところの貿易障壁を削っておきながら、わが国には不当なガット三十五条第二項の援用によって差別待遇をして輸入制限をしている。イタリアのごときは百八十品目もやっている。これに対して、一体どのような態度を今後おとりになりますか、経企庁長官にお尋ねいたします。通産大臣、答弁を用意しておいてくださいよ。
  284. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいわゆる対日リストの問題であります。各国とも相当持っております。イタリア、フランスなどが持っておりますが、これは毎年貿易交渉でもうずっと減ってまいりました。もう、いまイタリアが百八十とおっしゃいましたが、分け方によりますが……。
  285. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは分け方によって一種類と言えるわ、日本商品と言えば……。
  286. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いやいや、この関税定率の分け方がございまして、百八十、その点は私は争わないことにいたしますが、ずっと減っております。もう百以上というのは私はないように記憶しておりますが、毎年とにかく貿易交渉でこれは減らしておりまして、これが在外公館の大きな仕事の一つでございます。
  287. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大きな仕事であることはわかっておりますが、それをどのように解決なさるか。なぜ私がこう聞かなければならぬかといえば、あなたよう御存じのとおりです。ケネディラウンドの実行、これによって関税障壁は世界的に下げる傾向にありますね。そうですね。これが外交交渉上の一つのポイントになっているわけです。このケネディラウンドを実行するということは、関税障壁の制限とかいうことを引き下げるということなんです。もっけのチャンスなんです。しかも資本の自由化は迫られている。資本の自由化の迫られるその前夜において、その先に行なっているところの商品の自由化をこそまずやるべきではないか。したがって、それを具体化するにあたってどうされるかと聞いておる。
  288. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりでございます。そこで、ケネディラウンドでは関税率のほかに、いわゆるNTBと言っておりますけれども、非関税障壁、これを二国間交渉及び多国間交渉でつぶしていくのだ、こういうことが最初から大臣限りで合意されておるわけで、その精神で交渉が進んできておるわけです。なお、イタリアは百四だそうでございます。
  289. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私もその品目のことで争おうとは思いませんが、通産大臣に聞きますと、アメリカの制限品目は何種類だと言ったら、二十種類と答えるのです。ところが、繊維製品だけでも六十種類もありますわ。だから、そんなことで争おうとは思いません。それはいまの経企庁長官のお気持ち並びに努力しようとなさるその精神を期待しまして、私は次に進みます。  もう一つの物価構造がございます。解せない物価構造でございます。通産大臣、調べておいてくださいよ、迷っておったらいけませんから。それは何か。これは、いま申し上げましたのは、同じ時期に波打ちぎわから中への卸売りならば高く、FOBならば安くということを申し上げたわけでございます。今度申し上げたいのは、同じ時期に、同じ場所において、大企業ならば安く、市民にならば高く、こういうことになっているわけです。この物価構造はどこから来ているかといえば、これまた管理価格、カルテル価格、同時に、それは政府援助のありなしによって違っているわけであります。さ、これをどうすべきや。例をあげて申し上げます。たとえば水道料金。飲料用水ならば四十四円。工業用水ならば四円。電気料金はどうです。ここで使いまするというと、これは最高一キロワットについて二十四円、最低でもって十四円、ところが、これを中小企業で使いますると七円五十銭。深夜に使えば五円。大企業が使いますると三円六十銭以下。もう一つ、通産大臣管理工場として許可を受けますると一円六十銭以下。ともに十分の一以下でございます。これを否定しますか、通産大臣。
  290. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 否定いたしません。
  291. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのとおりでございます。正直でけっこう、その点敬意を表します。  さて総理大臣、私はほんに電気料金、水道料金、国民が一般によくわかる問題に例をとっておるのでございます。例をとってもなかなかわかりにくい問題では数限りがないのでございます。ガス料金にしても同じこと、国民は十倍ぐらい高い値で買わされている。なぜそういうことになるのか。建設大臣、厚生大臣に承りたい。厚生大臣、水道料金。
  292. 坊秀男

    ○坊国務大臣 私のお答えする部分は、水道料金のことだけですか。
  293. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 飲料用水がなぜ十倍もするかということでございます。
  294. 坊秀男

    ○坊国務大臣 工業用水に比べてですね。
  295. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうです。
  296. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御承知のとおり、上水道の飲料用水は、人間のおるところ、いなかのずっとすみのほうは別といたしまして、条件のいかんにかかわらず、どうしてもこれをつけていかなければならないということが一つ。それから、工業用水と比べますと、工業用水は配管等につきまして一つの大きな工場へどかっとこう水を持っていくのと、それから上水道は、これはもうクモの網のように非常にこまかく配管をしていかなければならぬというようなことと、それからもう一つ、上水道は、これは工業用水と違いまして、ろ過とか沈でんとか、いろいろな物理的な水を清めるというような装置をしなければならないといったようなことがございまして、そういうようなことをすべて原価計算をいたしてまいりますと、これは、工業用水のおそらく数倍というようなことに原価計算がなるということと、もう一つは、工業用水に対しましては、今日まである年間において政府の補助ということがとられておった。それから、上水道については、そういうようなことが行なわれていなかった。四十三年度からは政心の補助はいたしますけれども、そういったようなことで、上水道はそれぞれ、そしてこれは各府県も若干ありますが、市町村というところで独立採算制度を原則としてとっておる、こういうような次第でございます。
  297. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 問題は、総理、私はいまの答弁だれに教えてもらった答弁、とらの巻か知らぬけれども予算審議の最中、そんな抽象論を言っておってはだめですよ。これは、問題は、基本は何かといえば、建設費の問題、雨は天から降ってくるときは仕入れ材料はただでございます。そうでしょう。材料費はただ。建設費だけ。この建設費を水道料金のコストに割り込むか割り込まないかの違いなんです。割り込んでもなお安いというのは何かといえば、建設費が、工業用水は、片や国家並びに地方公共団体がほとんど持つのでございます。ところが、水道料金は、先ほどちょっと触れられたが、地方自治団体か、以下です。個人持ちでございます。予算が水道料金に盛られたことを見たためしがありません。盛った盛ったとおっしゃるが、ことしはわずか七億しか盛ってない。ところが、片や一つの水道で、工業用水に七十億の余も盛ってある。ここにコストの違いが出てくる。問題は、政府ほんとうに工場を尊重しているのか、人間を尊重しているかの違いでございます。いかがです。
  298. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その実態だけ見ると、個人には高い、会社にはこれが安い。いかにも個人尊重してないじゃないか、こういうようなお話のように聞けるのですが、工場というのは一体何をしているのか。これは生産をつかさどっている。この生産が、これが高いコストになっているのか、したがって製品が高くなるのか、こういうことですから、そういうところに補助が出ているというのは、やはり補助の目的があったと思います。私は、個々の場合で非常に近視眼的にものを見ないで、総体として、社会的構成、国家的構成、そういうところから、また産業の立場等、また個人の生活等をにらみ合わして、そうして結論を出していただきたいと思います。
  299. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 十年前からちっとも変わらない答弁理論でございます。それほどおっしゃるなら、私は一つ聞きたいのです。建設費でも、材料費でも、消耗品費でも、特別に安うしてもらって、その上なお生産性が向上して付加価値がふえたならば、なぜ卸売り物価の下方硬直性が直らないのか。つまり政府の補助や工場に対する援助は、国民消費者にちっともはね返ってきていないではないか。ここに問題がある。あなたがあえてそう逃げ口上をおっしゃるならば、問題は、私は、いまの大工場ならば安く、国民ならば高くというこの具体的事実をつかんで、その是正の緒論だけを申し上げておる。基本論に持っていかれるのだったら、私はまた基本論で追っかけていかなければならない。こういう物価構造について、問題は、私は工場に対する援助がけしからぬなどとは一言も言っておりません。工場にそれだけ手厚くなさるのだったら、なぜ国民の側にも政府みずからの手でそれを行ないなさらぬかと言うておる。
  300. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、私も加藤君の説を理解しないわけではございません。おそらく加藤君のお話ならば、とにかく何であろうと安くするように国家的補助をもっと徹底したらどうか、こういう議論にもなるだろう。補助をやめろという御議論じゃない。だから、もっと徹底した補助をしたらどうか、こういうお話だろうと思うのです。しかし、これは予算をいろいろ御審議願うと、やはり予算の支出は歳入からまかなってくるのでありますから、そこらに自然的な制約を受けること、これはもう百も御承知のことなんだ、かように思います。あるいはまた、この補助が十分効果をあげない、もっとその補助の形を変えることによって、より効果をあける、こういうような問題があれば、それはもちろん政府も研究すべきだ、かように思います。
  301. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは問題は日本の物価構造は異常である。これは是正せんければならぬ。国民の消費物資、これの値上がりを政治的にも押える方途はある、こういうことはよくおわかりでございましょうから、それを実行に移すべく努力をなさるかなさらないか。どうなんです。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか加藤君もあれやこれやとお忙しいようですから、私の答弁をまじめに聞いてくださるかどうかと思って心配しておるのですが、ただいまのようなお尋ね、私、物価問題が今日の政府に課せられた重大課題でありますから、名案があればもちろん真剣に取り組む、そういうことにやぶさかではございません。ただ、いままでとっておりますものは、いわゆるオーソドックスと言われるかしれませんが、その基本的な態度で取り組んでおるのであります。先ほども、宮澤長官からお答えいたしましたように、あるいは公共料金、そういうものをオールストップすればそれで事は済むじゃないか、かように言われましても、これはやはり経済法則、それは守らなければらないと思います。そういう意味で、いずれが一番効果的な方法なりやということで政府もいろいろ苦心しておるのでありますから、具体的な名案等御指図があればさらに検討したい、かように思っております。
  303. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 せめて水道料金ぐらいは安うしてあげてください。せめて水ぐらいは安う飲ませるべきなんだ。それを工場の中で飲めば四円、工場のへいの外で飲めば四十四円から五十五円、これじゃ国民承知しないですよ。それは先ほどの御説明になったあれとは違う。工場の中のほうが網の目のように配管が行なわれておる。外のほうはまばらである。そこで水道料金に対する政府援助資金、これが飲料用水ならば――去年もおととしも毎年私やってきておる。ことし初めて七億ついた。工業用水のほうは一つの工場でその十倍の七十億の余ついておる。これは矛盾と思いませんか、大蔵大臣。
  304. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 工業用水確保のいきさつは、もう加藤さんも御承知だと思いますが、この工場のコストが上がることによってやはり日本の物価体系が変わってきますので、したがって、従来から工業用水には国が補助するという方式ができておりましたので、この方式に乗ってずっと年々これを強化してくるということで今日のようになっております。いま言われました上水道も必要ではございますが、どういうわけか、日本ではいままで大都会の水道は当然これは準備されてきましたが、一般には上水道よりも下水道の整備のほうが社会的には最も緊急として要請されておる問題でございましたので、ここ数年の政府努力というものはむしろそちらのほうへ向かっておって、これは五カ年計画で相当大きい予算をもって対処しようというふうに下水のほうに非常に行政の重点が置かれましたが、おっしゃられるように、またこれが再転してきまして、この上水道の確保ということが、日本の大都市だけでない一般の都市においてこの問題が緊急性を持ってくるんじゃないか、そういう傾向にあるのだというふうにいま思っておりますので、今年から金額はわずかでございましたが、この補助の踏み切りをしましたので、このルートに乗ってまた来年からはこういう方向が一段と強化される、そういう方向にいくのだろうと考えております。
  305. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 つまり上に厚く下に薄い。工場ならば援助が厚く、国民ならば援助が薄い、これを是正すべきであるということを申し上げておる。  もう一つ申し上げてみましょう。建設大臣、宅地造成の問題で、国家が行なえばこれは一〇〇%国家費用、地方自治団体が行なえば二分の一以下の補助、三分の一以下の融資、あなたの許可されました宅地の区画整理の組合、つまり私的に地方の団体がやりますね。そうなった場合にはいかほどの補助がありますか。
  306. 西村英一

    ○西村国務大臣 区画整理組合に対していかほどの補助があるかということでございますが、国家か出し得るのは二分の一の地方公共団体――区画整理組合がある一定の条件を備えておりますればそれに対して補助するようになっております。しかも一組合に対するその限度がいままでは少なかったようなんで、その点につきましては、大蔵省とただいま折衝しまして、一組合に対するやつが一億というやつを三億くらいに上げたいということを考えておるわけでございます。政府のものにつきましては公的資金で、住宅公団やその他の公的資金でやっておるわけであります。
  307. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もう秒読みの時間ですから、ずばりずばりと答えてください、逃げ口上をせずに。  もう一度お尋ねします。国家が、住宅公団が行なえば全額国庫、地方公共団体すなわち県、六大都市等々が行なえば二分の一補助、同じ宅地造成をするにもかかわらず、区画整理組合が行なうといかほどの補助がありますか。
  308. 西村英一

    ○西村国務大臣 ちょっと記憶が……。いや、ちょっと待ってください。思い出せないのです、数字が――地方公共団体ですか、区画整理組合ですか。その辺がちょっとあれでしたが……。
  309. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こちらから説明しましょう、あなたを立ち往生さしてここで横に寝ころぼうとは思ってないのだから。こんなことは去年の建設大臣ともよく話し合って――いまさっきここへ立つ前にも去年の建設大臣と話し合ったのです。何をやっておるのですか。同じ宅地造成をしながらも、地方の区画整理組合ですぞ。個人じゃありませんぞ。そこへ国道が来たり、インターチェンジができたり、市電が来たり、また一つ国道が重なったりしてもなおどうなっておるか。補金助がありますか、ないでしょう。
  310. 西村英一

    ○西村国務大臣 どうも思い違いまして失礼しましたが、融資でございまして、補助金はないのでございます。
  311. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうでしょう。大臣、これでおわかりですか。上に厚く下に薄いということがよくおわかりでしょう。いかに上に厚く下に薄いか。そこで大都市周辺においては地方公共団体の赤字は耐え切れぬというので、このほとんどが区画整理組合にやらしておる。それに対する融資が一体どうあるかといったら、去年は十一億しかない。区画整理組合は一体全国に幾つある。そうしておまけにその融資は三分の一融資というにもかかわらず、一組合一億で頭打ちしておる。百億もかかる組合に対して一億で頭打ちなんだ。したがって、どうなる。これは区画整理の事業を行なう個人、地主が全部供出なんだ。その費用を全部負担なんだ。したがって、定年である程度の、三十坪、五十坪の土地を買って家をつくろうと思うと、これが、区画整理にひっかかる。それから三分の一からそれ以上のものを削られる。家ができなくなってしまう。これで宅地造成推進なんて言えますか。私はあくまで具体的事実をつかまえて言っておる。したがって、去年の委員会で建設大臣は私に約束した。必ず末年は努力すると言われた。どれだけ努力が行なわれたか、どれだけふえたか。
  312. 西村英一

    ○西村国務大臣 金の面はふえない。融資の一単位の、一組合に対する貸し付けの額が昨年までは一億のところが三億ぐらいにしよう、こういうことで大蔵省と話をしておるのでございます。おそらくそれで決定すると思います。
  313. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからば大蔵大臣、どうなりましたか。
  314. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 ただいま事務当局同士間で話し合いをいたしておりまして、おっしゃいました一億円という建設省の内規の限度がございますけれども、それを若干引き上げたところできめたいと思っておりますが、まだ現在検討中でございます。
  315. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 主計局長、限度額ってだれがきめたのです、そんなこと。法律違反ですぞ。
  316. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 これは結局先ほど申し上げましたように、予算というものは、財源との見合いでございますので、この関係の経費も十一億なら十一億、ことしはそれが十四億になっておりますけれども、十四億というふうにきまっておりますので、その十四億円でできるだけ御希望をかなえるためには、その配分におのずから限度があるということはいたし方ありませんので、これは建設省の内規においてきまっておると伺っております。
  317. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 去年の主計局長が、これはいまそこで耳打ちしておった局長にのませたのです。あなたがあくまで予算がないからとおっしゃるなら承りたくなる。国民のための住宅造成が必要であるというやさきに、法律にきめられて三分の一融資とあるにもかかわらず、それを内規で一億頭打ち。三十億から五十億、一つの組合で、百億もかかっておるところがある。百分の一の融資にしかならない。にもかかわらず、山一証券に対してはどうやった。法律を破って、法律をつくってまでも、二百八十四億もただで貸しておるではないか。無利子、無担保、無制限。なんと、それで担保を取ったかと言ったら、取りましたという。担保を打ってこいと言ったら、一年たってもいまだに持ってこないじゃないか。上に対してはこれほど手厚くしておきながら、口に住宅、住宅と言いながら、組合に対しては、法律に許されていても、その範囲内はおろか、ずっと下回ったものしか与えぬようにできているじゃないか。まま子扱いじゃないか。大蔵大臣、、どうする。大蔵大臣に聞いている。こんなことは、もはやそこでできることじゃない。
  318. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 ただいま仰せられましたことでございますが、この土地区画整理組合による土地の造成というのは、自発的に事業を行なう場合に組合をつくって土地の造成をするということでございます。住宅問題は、確かにわれわれといたしましても非常に重点課題であると考えておりまして、その主体は住宅公団あるいは先ほど仰せられました地方の団体の宅地造成、そういう公的な造成というものが主眼になっております。しかしながら、一般の個人が自発的に組合を結成しまして、それによって宅地を造成いたしますときにも、これに対して応分の補助をすべきであるということで、われわれといたしましても、できる限り予算をつけているわけでございます。  山一証券のお話は、私はちょっと所管が違いますけれども、三月二十二日に資料を提出してあるというふうに聞いております。
  319. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私が要求していないのに答弁をした。もうあと秒読みだとさっきから言っておる。この時間だけ除外してもらいます。  大蔵大臣、どうする。
  320. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま主計局長が説明したとおりでございます。
  321. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 失礼、何と言われましたか。こっちであれしておりましたから……。
  322. 小川半次

    小川(半)委員長代理 主計局長が申し上げたとおりでございますという大蔵大臣の答弁でした。
  323. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 最後に、片や、こういうように宅地造成、一世帯一住宅が必要であるということを承知しつつも、そちらへの融資、補助金――補助金はゼロであります。融資は、これほど削っておきながら、今度は一つできたものがありますね。環境衛生の関係の金庫ができましたね。できるですね。この予算は幾らですか。
  324. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の資金は、とりあえず三百億を予定して設立されるはずでございます。
  325. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、この三百億が多いとは言うておりません。去年二百億が十分使われていない。それに今度は三百億という。これは少しおかしいと思う。思いませんか。数字をやりましょうか。時間がありませんから、もう結論だけにしますが……。
  326. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 去年八月から特融をやりましたので、二百億の予定でございますが、八月から始めましたから百二十二億円去年はやっております。そうでない普通貸し付けのほうは、同じ国民公庫からでも三百四、五十億円という貸し付けが行なわれております。特融のほうは、おそく始まりましたから、百二十二億円というのが去年の実績でございます。
  327. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この主務大臣、所管はどうなっ  ておりますか。総理大臣はどこかへ行ってしまったな。あかぬよ、総理早く来なければ。
  328. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この公庫の設立の目的に沿うように、主務官庁をどういうふうにきめるかというのは、いま関係省で調整中でございまして、今明日中にきまる予定でございます。
  329. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 主務官庁もきまっていない。私はこの問題についてほんとうは一問一答をしたい。貸し出しの関係から役員から何もきまっていない。きまったのは予算だけです。  そこで承るが、厚生大臣、この主務官庁はどこにするとよろしゅうございますか。
  330. 坊秀男

    ○坊国務大臣 主務官庁は大蔵、厚生両省共管だと思います。
  331. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 が妥当であるということですね、だと思いますというのは。決定ではない……。
  332. 坊秀男

    ○坊国務大臣 そうです。
  333. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 はい、わかりました。  しからば通産大臣、あなたはどう思われますか。
  334. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 私どももいろいろ関係がありますが、大体いま厚生大臣が言われたとおりがよいと思っております。
  335. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 総理大臣、いずれが正しいのです。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれが正しいと言われるけれども、いま一致したような言い方のようでしたが、ただいま私にまかされておる問題だ、かように思っておりますので、今明日のうちにちゃんときめるつもりでおります。
  337. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私は、内政干渉をしようとは思うていない。しからばこの主務官庁は大蔵省と厚生省、こういうことでございますね。
  338. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだ私が断を下しておりません。ただいまそれぞれのところで個人個人の各大臣の意見が述べられた、かように思っております。そのうち、今明日のうちにきめる、こういうことでございます。
  339. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 今明日のうちにきめるにあたって、予算審議に必要な法案を提出していただきたい。それは何か。関係諸法案がここにございます、ここに。書いてある。しかるにもし関係法案か出ないとなるというと――これは時間がないから簡単に走ります。一人ずつ詰めたら一番いいんですけれども……。そこで関係法案を提出願いたい、そのように、きめられるために。特に中小企業金融公庫法の中にこの環衛業種は含まれておるわけでございます。それを除外せんければ二重恩典になります。国民金融公庫法、またしかりでございます。中小企業信用保険公庫法、これまたしかりでございます。もしいまのような御決定であるならば、予算審議中に調整関係法案は提出さるべきでございます。必ず提出していただきたい。と同様なことがいまだに出ていないものがございます。それは返済計画、減債基金すなわち公債発行に基づく第四条、第六条、この規定でございます。それを出せないとおっしゃるならば、出さぬでもいいようにその法案を……(佐藤内閣総理大臣「出しております」と呼ぶ)出してあると言ったって、あんなものがそうだとおっしゃるなら、私は承知しません。  さて、時間がまいりましたので、私はこの最後の二点ですね、最後の二点、それと、それから政治資金の五年の問題、それから三党協定申し入れについては、これは三党協定と与党側の理事との別な問題で協議せんければならぬ問題がございまするので、それは、その質問は留保してこれで終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  340. 小川半次

    小川(半)委員長代理 これにて加藤清二君の質問は終了いたしました。  次に、池田正之輔君
  341. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 私は、予算全般に対する姿勢と申しましょうか、骨格と申しましょうか、そうした問題について若干意見を申し上げ、質問したいと思っております。  言うまでもなく、政治の最大の目的は国家の安全と民族の繁栄であり、すなわち、民生の安定でありまして、そのための政策のポイントとなるのは、やはり外交と内政であることは言うまでもございません。そこで、まず外交関係からお尋ね申し上げたいと思うのでございます。  現在の世界情勢を私どもが冷静にこれをながめてみました場合に、たとえばベトナム問題はもとより、一枚岩といわれておった共産主義国家間の行動も、そのあまりにも複雑多岐にわたった問題が多く、その他おのおの国家間の関係や民族問題等がいかにも複雑であるばかりでなく、その瞬間、瞬間に流動し、動揺し、あらゆる意味において混乱、混迷と動乱の時代というべきでありましょう。この意味において、現代における世界の情勢は、おそらく世界の人類史しにおいていまだかつてわれわれが経験をしたことのない、また想像さえできなかったのであります。これが今日の世界情勢だと見るべきだと私は思っております。こうした世界情勢は何によって一体もたらされたか、これが問題であります。  まず第一に考えられることは、第二次大戦によって西欧諸国の植民地であった東南アジア及びアフリカ諸国等で多くの民族国家が解放され、あるいは独立を戦い取った。そして今日では百三十余の独立国が生まれて、しかも、それがほとんど国連に加入して、国連の場においてそれぞれ独自の立場発言権を持つようになったのであります。これは今後の世界情勢に影響を及ぼすことは当然でありまして、一つ一つの今後の外交の上における大きなファクターであると存じます。  第二に申し上げたいことは、五十年前にソビエトが共産主義国家を打ち立てた。以来、その後、東ヨーロッパあるいは中共、北ベトナム等が共産主義国家と変貌し、その巨大な共産主義の国家民族の団結によって、自由主義国家との対立はますます激化の一途をたどるかに見られてきたのであります。しかるに、いまや中共とソ連との間の関係は、すでに皆さま御承知のとおり、どういう方向にまで発展していくのかわれわれには全く予想がつきません。さらにまた、ソ連圏における国家間の離反というものも現実に起こっておることは御承知のとおりであります。また一方、米ソ間において、この巨大なアメリカ及びソビエトの間において共存外交を打ち出してきておる、この内容的に、あるいはそれぞれの目的がわれわれにおいてどこまでこれを額面どおり受け取っていいのか、その背後には何らかの意図するところがあるのかどうかというようなことも、われわれ十分にこれに注目をしていかなければなりません。すなわち、いずれの問題一つを取り上げて考えても、全く動揺と混乱の連続でありまして、われわれの予想や予測を絶するものがあると申し上げてよいのではないかと思うのであります。  さらに、第三に考えなければならぬことは、第二次大戦後、過去における科学の進歩、開発によって世界人類の生活の向上と産業の発展の上に、それがひいては人間の思考や考え方、思想発展の上にまで大きな影響と貢献をなしていることは御承知のとおりであります。また一方、端的にいえば、原子力の開発や宇宙科学の急激な進歩発展に伴って、世界各国民族のパワーバランスの上に限りない不安と恐怖をもたらしているというこの事実、これをわれわれは深く考慮しなければなりません。これらの三大要素のほかにも、またそれぞれの民族間の問題や南北問題等が大きく作用している事実等をあわせ考えた場合に、これが今後の発展と流動の方向に関して、わが国としていかにこれに対処していくか、政府はいかにこれに対  処していくかということを考えた場合に、こうした問題を解決し、人類を平和へ近づけていこうということは、今日、われわれ日本の政治家のみならず、世界全人類に課された最大の課題であるといわなければなりません。言うまでもなく、これはかつて、御承知のように中世紀以後にヨーロッパで起こったいわゆる三Rと申しましょうか、すなわち、文芸復興運動及び宗教革命、さらに産業革命というようなものが次々に起こりまして、当時のヨーロッパの社会構成や国家構成に重大な変革をもたらし、今日の世界情勢にまで影響していることは言うまでもございません。先ほど来申し上げましたように、今日、私どもが当面しておる世界情勢は、この三大革命と言われておるスリー・レボリューションと言われておるこれに比較いたしましても、その複雑な要素、その規模において、まさに雲泥の差があるのであります。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 これが今後どういうふう発展していくかということにについは、とうてい私どもの想像の及ばないところでございまして、したがって、これが評価につきましては、後世の歴史家にゆだねるしかないと私は思っております。したがって、端的に言うならば、世界の人類がいまだ経験したことのなかった激動期の中にあるわれわれ日本国家民族が、今後そうした世界激動の中に立っていかなる世界政策、または外交政策を打ち立てていこうとするのか、また、そのためには、もとより日本だけの力でいけるものではございません。そうした意味において、外交の重要性というものが出てくるのであります。今後の世界の動向は、もとよりそれぞれの国家及び民族発展の歴史や、慣習なり特異性をも十分に認識し、これを尊重していかなければならぬことはもちろんでございますが、これがほんとうに今後の世界平和へのわれわれの世界活動、世界政策への基礎的な重要要件であると私考えております。  ひるがえって考えれば、国際外交遂行への政治姿勢は、最も慎重に、あくまでも忍耐強く、最もじみちでなければなりません。いわゆる外交に勇み足があったり、そのときどきの現象に惑わされて、単なるそれに迎合したポーズやスタイルを考えていくような外交というものは断じてとるべきではない。このことを私は特に総理大臣に、きょうは外務大臣がおられませんから申し上げておきたいと思うのであります。すなわち、そうしたポーズやスタイルを気にするような軽率な態度というものは、断じて許さるべきではない、こういうことでございます。したがって、今後のわが国の外交を遂行する上においては、あくまでも最も高い次元の上に立って、そうして深い歴史観の上に、しかも、長期の見通しのもとに、確固たる信念を持って決断しなければならない、この外交姿勢、これが私は最も重要なことだと思っております。これに対する総理大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  342. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま池田君から、いろいろ現在の情勢の分析をされ、そうして結論として、たいへんな激動期だ、その激動期に対処する外交の基本姿勢を述べられました。私も現状の認識におきましては、いまあげられたこと、一々もっともだとうなずける問題でございます。戦後、旧植民地が解放され、それぞれが全部独立した、このことはたいへんな変化でございます。そうして、その後起こってまいりましたものは、かつての三革命、文芸復興、宗教改革あるいは産業革命、こういうものに匹敵する規模、それはもう比べてみればもっと大きなたいへんなものだ、こういう御指摘であります。それはそのとおりであります。そこで、最近の哲学的な考え方から、こういう国際変動に処して世界の平和と繁栄をいかに確保するか、これが私どもの今後とるべき外交の姿勢だと、かように思うのでありまして、それらの点について、高度の、また大局的な、長期にわたっての不動の信念のもとに国歩を進めていけという、これはたいへん力強い、またそうなければならない、かように思います。どこまでも、まず第一は、現状の把握、認識、そのもとに立ちまして、そうしてただいま御指摘になりましたような長期的な、次元の高いところから、そうして信念を持って世界の平和と繁栄のために貢献するという、そのもとにおける国運の進め方、これが必要だ、かように思います。その点では同感でございます。
  343. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そこで、最近、総理及び外務大臣等が各国を訪問されるということが伝えられております。このことについて私は決して反対するものではございません。しかし、前にも申しましたように、基本的なそうした外交姿勢なり、信念なり、決意なくして、ただ単なる親善外交、そうして自画自賛するような、そういう旅行であったならば、これは私は慎んでもらいたいと、こう申し上げておきたいと存じます。  次に、東南アジアの問題でございますけれども、東南アジア開発と申しましても、これは非常にむずかしいので、おそらく政府でもいまは研究中のようでありますけれども、ああいう特異な気候、風土あるいは民族性というようなものを考えたときに、簡単に政府が今日までやってきたようなああいう援助のしかたというものは、これは厳に慎まなければいけない。ということは、失礼ですけれども、民度が低くて使うこともできないような、使い得ない、そういうものをメーカーに押しつけられて持って行くような援助のしかたというものは、これは厳に慎んでもらいたい。あくまでも相手は農業国家であります。けさの朝刊で、三木君がマニラかどこかで談話を発表しておられますけれども、どうも私は読んであまりぴんとこないところがある。外務大臣の頭には、あまりじみちなところが入っていないのじゃないか、まだ少し足りないのじゃないかという感じをしながら読んだのでありますけれども、そういうことは、今後の課題として、いまこれ以上申し上げることを省きます。  そこで、次に申し上げたいことは、日本の経済の発展につれまして――今日答弁を求めるべきでありますけれども、私から時間の都合上簡単に申し上げますが、日本の貿易が非常に伸びてきておる。去年は大体百九十二億ドル、ことしはおそらく二百二十億ドルを突破するだろうといわれておることは、まことに喜びにたえません。そこで、その場合に、従来から問題となっておりました、私も関係してまいりました日中貿易の問題でございますが、これはあくまでも推し進めていかなければならぬことは当然であります。去年はたしか六億ドルで、ことしはそれよりも減るだろうといわれております。したがって、日本の貿易の全体に占めるウエートはそれほど大きいとは私は思いませんけれども、しかしながら、われわれ日本の経済の発展のためには、世界のあらゆる方面に新しい市場を開拓していくという努力が必要なことは申すまでもないのであります。そういう意味からいっても、また外交の姿勢として、われわれはあくまでもいかなる国家、民族とも州提携し、友好関係を結びながらいかなければならない。これは日本国家、民族の持つべき鉄則だと私は思っております。そういう意味において、私は日中貿易にかつては参加してまいったものでありますが、だからといって、一方的に中共側が言うことだけを聞いて、いかにもすべての点が日本側が悪いのだというような――いま事例はあげませんけれども、そうした意見が世間に伝えられることは、まことに残念に私は思っております。ということは、中共側は、今日まで日本は二つの中国をつくる陰謀をやっておる、陰謀に加担しておるということをよく申されておるのであります。この問題については、総理として、この二つの中国をつくる陰謀、従来も国会でしばしば問題になったのでありますが、一応御参考までにお尋ねしておきたいと思います。
  344. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国は善隣友好の関係をつくりたい、また、自由を守り平和に徹する外交、そういう立場で相互に主権を尊重し、内政不干渉、そういう原則のもとで仲よくつき合っていこう、こういう考え方でやっております。ところで、隣の国中国、これはただいまたいへんな状況であります。私どもがかつて中国を代表するものとして外交関係を結んだのが、台湾における国民政府であります。これは、しかし本土に対しては、ただいま行政権を持っていないという状況である。また、北京政府そのもの、いわゆる中共政府そのものは、中国大陸を支配している、こういう形であります。別に二つの中国をつくる陰謀などいたしておりませんが、この在来からの経緯等を考えてみますると、私どもは、やはり台湾におる国民政府、これには条約上の権利と義務を負っておるわけでありますし、また、それを否定するような考え方にはなかなかなれない、またそれをしてはならないものだ、国際上の責務を果たさないことになりますから。そこに一つの問題があります。そこで、ただいまその国府また北京政府そのものも、中国は一つなり、かように申しておるのであります。これがいつも問題が起こるゆえんで、国連加入にいたしましても、また北京政府承認の問題にいたしましても、いつも、ただいま両政府ともが唱えておる中国は一つだ、このことのためにいろいろむずかしい問題を起こしておるのであります。ただいまのところ、私どもは、これは中国内の問題だ、かように思いますので、それに第三者である日本がとやかく言うのは間違って  いる、かように思って、ただいま現実の問題として処理していこうということで、北京政府との間にはいわゆる友好関係で、政経分離の形において貿易はつき合っていこう、こういうことをしておるわけであります。また、その貿易も、ただいま御指摘になりましたように――あるいは数字はもっと大きいかと思いますが、二百億に近いわが国の総貿易額から見まして、日中貿易の額はなるほどまだ小さなパーセンテージではございますけれども、一国としてまとまった金額とすれば、これはなかなか無視はできない現状でありますし、さらに今後発展していく問題でありますから、これは十分育てていかなければならない。政治的な問題にすぐ結びつけられても、私ども非常に困難な立場になるのじゃないかと思って、政経分離、そういう形でつき合っていく、これが現状でございます。
  345. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 この問題については、いま深く触れようとは思いませんし、総理の御答弁で、私はこれ以上申し上げません。  ただ私は、ここに特に注意を喚起したいことは、要するに、日中貿易を盛んにするためにあらゆる努力を払うということは絶対に必要な条件でございますが、中国側から、あるいはLT貿易といい、あるいは友好商社といい、日本側を二つに扱っておる、これが問題なんです。二つの中国をつくる陰謀をやっておるというような批判をわれわれは受けながら、相手側がそういう形をとっておる、これでよいのかどうか。さらに、最近は御承知のように、その友好商社の中からソ連邦と関係の深い貿易商社三社が除名をされて、取引停止を食った。まさに三つの日本をつくった。もしも日本でそういうような態度をとったならば、中国側は、おそらくは三つの中国をつくる陰謀をやっていると言うでありましょう。私はこれに注目したいと思うのであります。しかし、このことはいろいろな問題もありまして、今日私の立場からこれ以上この問題は触れようとは思いません。御答弁も求めません。   そこで、次に内政問題について若干申し上げておきたいことは、内政問題は言うまでもなく、何といってもこれは社会保障制度及び公共事業、これが私は予算の面でも施策の面でも大きな二本の柱になる、かように考えております。それでありますから、私どもは今度の予算面で拝見いたしましても、埋設関係の建設省、農林省、その他すべてを含めて、おそらく一兆円をこえる、これだけの大きな予算を私どもは審議しておるわけでございます。また一方、社会保障制度、福祉国家を建設するという目的のためには、あらゆる社会福祉事業というものをこれから幅広く、しかも、きめのこまかい施策をやっていかなければならぬというたてまえで進められておることは、今回の政府  の提出されました予算から見ましても、たとえば厚生省関係で約七千億近い予算のように承知いたしております。ただ、そこで私が特に閣僚諸君に注意を喚起したいことは、それは何か、なるほど日本はいま経済的にも非常に発展しております。  したがって、予算規模も大きくなり、いろいろな新しい事業に着手し、民生安定への道をたどり、  一方、経済発展への援助をやっている、設備、施設を行なっていくということは当然でありますが、しかし、ここで案外気がついておられないことがあるのじゃないか。それは何かというと、この五兆円の予算の中で一兆円余りの建設予算といいますか公共予算、七千億前後のこの社会保障制度の予算と、いずれも最も大きなウエートを持った数字でございます。しかるにもかかわらず、今日われわれが、たとえばこの議場においてもいろいろなきめのこまかい御議論もあったようでございますが、地方に参りましても、ヨーロッパの先進国に比べて日本の社会保障制度に使っておる、投資されておる金があまりにも少ない、また、設備が足りないということを常にある方面から攻撃を受けておるのであります。これは当然に、日本の発展がいわゆる後進性を持っておるために、時  間的にもそこに手が及ばないということもございましょうが、最大の原因は何かといえば、いわゆる公共事業予算、これ一つ考えてみたときに、われわれは非常に考えさせられるものが多いと思います。というのは、公共事業予算約一兆円前後の中で占める最もウエートの多いものは道路予算であります。あるいは建築なりすべてのものがありますけれども、一例を私は道路予算にとるのでありますが、道路予算を見まして、これは残念ながら、西欧諸国におきましては、すでに御承知のように、ローマ帝国以来あるいはその以前において、中央アジアその他の古い国家においては、今から何千年前にすでにあの大きな道路や上水道や下水道ができ上がっております。最近考古学の発展と古代史の研究の盛んになった今日、いろいろなそういうものがますます新しくわれわれの目の前に展開されておることは御承知のとおりであります。そういうふうに、すでに過去においてでき上がっておった。なるほど最も新しいといえば、十字軍のためにつくった道路、その後ヒトラーがつくったいわゆるアウトバーンというようなものもございますが、それらも含めてヨーロッパやそれらの国々は、すでに、日本で最も予算面でのウエートを持っておるそういう公共事業予算、上下水道をも含めて、そういうものがすでに要らなくなっておる。これは極端な言い方でありますけれども、そういうものはすでにでき上がっておる。この二本の柱のうちの一本の、しかもウエートの重い公共事業予算というものはなくなっておる。このことを十分に政府の閣僚諸君は認識して、国民に十分に納得していただくということがまず必要であります。今日までこうした議論がなされたことを聞かないことを、私ははなはだ遺憾に存ずるのであります。ただいま問題になりました水道の問題にいたしましても、御承知のように、ロンドンの水道あるいはパリの地下の水道、今日船を浮かべて見物ができるというようなものは数百年前にでき上がっておるというような国国、それともう一つ、これも案外気がついておられないのでありますが、気候風土の関係からいたしまして、日本の道路をつくるにいたしましても、道路の建設費用が全く違うのであります。これは日本の道路予算をこまかく見てみますとおわかりになりますように、畑地帯や砂丘地のようなところに高速道路をつくるということになりますと、大体メーター当たりが三万円前後であります。水田地帯になりますと、これが六万円から七万円であります。それは御承知のように、一種の湿地帯のような状態でありますから、そこで倍以上かかっておる。もしそれ海岸線やその他を通す場合には、これが二十万以上にもなっておる。こういうことを考えた場合に、ヨーロッパやあるいはアメリカ等において、ある畑地帯でしかも雨量が少ない。雨量が少ないということ、これまた重要な要素なんです。御承知のように、ヨーロッパの平均雨量は七百ミリであります。日本の年間雨量は大体二千ミリ前後と私は承知しております。そのために、いわゆる沼地に道路をつくるようなことになりますので、道路一本をつくるにしましても、ヨーロッパにつくる道路と日本につくる道路とでは、その建設費用が倍以上かかっておるのであります。上下水道においてまたしかり、あるいは住宅を建てる場合にも同様であります。こういう地理的条件、気候的条件にある日本が、今日この乏しい予算の中から建設を進めていくということは、これは非常にむずかしいことであります。このことをはっきり認識していただいて、そうすることによって、この社会保障制度に振り向ける予算がどうしても足りない、これはただ単に国民所得の比較ばかりでは解決できません。そういうような問題か非常に多いのであります。これは、私いまきわめて簡単に申し上げましたけれども、こういう、だれでも言われればわかっておるような問題、気がつく問題でありますけれども、これがいままで国民によく納得のできるように示されておらない。そこで私は、今日この席をかりて、総理大臣以下各閣僚諸君には、われわれをも含めて、この地域格差と申しましょうか、気候風土の相違と申しましょうかそういった要素がある、したがって、この二本の柱の一本というものは向こうでは要らない、つまり、ヨーロッパの諸君は軽い荷物を一つしょっておる、こっちはより重い荷物を二つ一緒にしょっておる、このことを十分に認識していただいて今後の施策に向かうと同時に、これは十分に国民に納得してもらう。言うまでもなく、民主主義政治の要諦は国民の了解を求め、国民の納得の上に立って行なう政治、これが民主主義の政治だと私は信ずるものであります。そういう意味において、時間の関係上、これには総理も何か御意見があるかと思いますけれども、これ以上  申し上げません。私はあえて答弁を求めません。  そこで最後に、時間もありませんから、一体総理大臣が、このごろ新聞その他で、この議会が終わって内閣の――なるほど私も気がつかなかったのでありますが、党役員の改選を行なう時期になっております。これはわが党の関係でありますけれども、その時期において内閣の改造を行なうんじゃないかということがいわれております。これに対して一言、私は総理に申し伝えておきたいことは、一体、吉田内閣以来日本の内閣が、しかも自尽党単独内閣で安定内閣であったものが、何のために半年や一年で首を切るか、内閣改造をやるのか、私はその理由がわからない。おそらく、今日ここに並んでおる閣僚諸君も、大臣になったばかりで、失礼ながら、何もわからない連中もだいぶいるはずなんです。やっとこれから勉強しようというところで、そこで内閣の改造、首が飛んじまった。役所の役人は、自分の大臣はどうせあと何カ月だと言うて、大臣、大臣と言っておだてて浮かしておいて、何にもしない。それの連続をやってきたのが今日までの行政じゃありませんか。それは今後の総理の政治姿勢の上にも大きなウエートを持つ問題だと私は思います。あえて総理の――これはいろいろな関係もあって、いまそんなことを考えてないとあなたはおっしゃるかもしれませんが、ただ、私が言いたいのは、さようなことはやるべきじゃない。軽はずみに、短期に内閣改造というものはやるべきものじゃないというのが私の見解でございます。どうしても悪いやつがあったらたたき切ってしまえばいい、取りかえたらいいのであって、いたずらに半年、一年で内閣をしょっちゅうかえるというようなことは、これは最も慎まなければならぬことだと思います。  もし総理から御答弁がありましたらなんですし、なければ、一応これだけを申し上げておいて、時間の関係もあるようですから、これで終わりたいと思います。
  346. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次会は、明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会