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1967-04-06 第55回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月六日(木)委員長指名で、次 の通り分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費国会、裁判所、会計検査  院、内閣総理府経済企画庁を除く)、法務  省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外  の事項)    主 査 鈴木 善幸君       有田 喜一君    植木庚子郎君       周東 英雄君    古井 喜實君       細田 吉藏君    八木 徹雄君       山崎  巖君    猪俣 浩三君       中澤 茂一君    畑   和君       八木  昇君  第二分科会(外務省、文部省厚生省及び労働  省所管)    主 査 北澤 直吉君       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    正示啓次郎君       藤波 孝生君    保利  茂君       石橋 政嗣君    大原  亨君       山中 吾郎君    和田 耕作君       伏木 和雄君    谷口善太郎君  第三分科会経済企画庁農林省及び通商産業  省所管)    主査 野原 正勝君       愛知 揆一君    池田正之輔君       小川 半次君    亀岡 高夫君       福田  一君    松浦周太郎君       角屋堅次郎君    北山 愛郎君       高田 富之君    芳賀  貢君       小平  忠君    広沢 直樹君  第四分科会運輸省、郵政省、建設省及び自治  省所管)    主査 野田 卯一君       荒木萬寿夫君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    田中 龍夫君       登坂重太郎君    船田  中君       加藤 清二君    阪上安太郎君       横路 節雄君    河村  勝君       正木 良明君 ――――――――――――――――――――― 昭和四十二年四月六日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 北澤 直吉君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 中澤 茂一君    理事 小平  忠君 理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    井出一太郎君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       木野 晴夫君    坂本三十次君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       藤波 孝生君    船田  中君       古井 喜實君    保利  茂君       松野 頼三君   三ツ林弥太郎君       石川 次夫君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    阪上安太郎君       高田 富之君    畑   和君       武藤 山治君    八木 一男君       山中 吾郎君    和田 耕作君       鈴切 康雄君    正木 良明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議室長   高柳 忠夫君         内閣法制局第一         部長      関  道雄君         内閣法制局第二         部長      真田 秀夫君         総理府総務副長         官       上村千一郎君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         防衛庁人事局長 宍戸 基男君         経済企画庁調整         局長      宮澤 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    加納 治郎君         科学技術庁長官         官房長     小林 貞雄君         科学技術庁計画         局長      梅澤 邦臣君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         中小企業庁長官 影山 衛司君         運輸政務次官  金丸  信君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         労働省職業訓練         局長      和田 勝美君         建設省計画局長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 四月六日  委員塩谷一夫君、猪俣造三君、石橋政嗣及び  芳賀貢辞任につき、その補欠として木野晴夫  君、石川次夫八木一男君及び武藤山治君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員木野晴夫君、久野忠治君、坂本三十次君、  灘尾弘吉君、松野頼三君、三ツ林弥太郎君、石  川次夫君、武藤山治君、八木一男君及び鈴切康  雄君辞任につき、その補欠として山崎巖君、細  田吉藏君、松浦周太郎君、亀岡高夫君、正示啓  次郎君、荒木萬壽夫君、猪俣浩三君、芳賀貢君、  石橋政嗣君及び広沢直樹君が議長の指名委員  に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  分科会の設置並びに分科員及び主査選任に関す  る件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 私は、未解放部落解放の問題、いわゆる同和問題について内閣総理大臣並びに各閣僚に御質問をいたしたいと思います。  総理大臣が未到着でございまするから順序を変更いたしまして、各国務大臣に御質問をいたしたいと思います。国務大臣の諸君、雑談をしないで、こっちを見てください。  昨年の二月十七日の本委員会において内閣総理大臣に対して、また二月二十三日の予算委員会で、各国務大臣に対して、私は同和問題について質問をいたしました。その際、内閣総理大臣はじめその当時の各閣僚は、非常にこの問題について熱意を示されました。そして、一昨年の八月に出ました同和対策審議会答申を完全に尊重するという態度で、前向きな非常な決意を込めて答弁をなさったわけであります。ところで、その後内閣の改造がございまして、各国務大臣の顔ぶれが変わっておられます。いま国務大臣の要職についておられる方は、それぞれりっぱな先輩であり、非常にりっぱな政治家であると思いますけれども、私はかねがね、一年ごとに閣僚がかわることは、国政の渋滞を来たす、ことに同和問題のような非常に重大な問題であり、しかも、一部の人は非常に無理解である問題については、特にそのようなことが渋滞を来たすということで、残念に思っているわけであります。ここに前々内閣から引き続きの閣僚の方もおられまするけれども、新しく、その当時は閣僚でなくて、いま国務大臣になっておられる方がございまするので、その同対審答申について、どのように勉強をされたか、どのように決意をされたか、順次お答えをいただきたいと思います。委員長から、昨年の二月国務大臣でない方に順次発言を求めていただきたい。
  4. 植木庚子郎

    植木委員長 八木君に申し上げますが、質問者から御指名を願います。
  5. 水田三喜男

    水田国務大臣 私から、総括的に先に申し上げます。  本年二月に、協議会中間意見がございまして、長期計画を策定するまでの間も主要な施策を進めるように、という要望がございましたので、私ども予算編成においてこのことを非常に重視いたしまして、昨年度の予算に対しまして今年度私どもは六五%アップという、相当同和対策予算強化いたしました。昨年二十六億の予算計上でございましたが、本年は四十三億円の予算を計上して、いろいろな施策強化をするということを今年度はいたしております。
  6. 八木一男

    八木(一)委員 いま、お一人だけ御答弁をいただいたわけでございますが、昨年の予算委員会質疑、討論の趣旨をあまりわきまえておられないように思いますし、同対審答申ほんとうに読んで理解をしておられるようにも思えないわけであります。そこで、私が申し上げますので、それをお聞きとりになった上で御判断を願って、決意のほどをまた水田大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。  同和対策答申精神について、少しくこの場で勉強をしていただきたいと思います。  同和対策答申は、昭和三十六年の十二月七日に内閣総理大臣から諮問がありました。その文章を簡単に読んでみますと、   昭和三十六年十二月七日、内閣総理大臣は本審議会に対して「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策」について諮問された。いうまでもなく、同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。したがって、審議会はこれを未解決に放置することは、断じて許されたいことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題であるとの認識に立って対策の探究に努力した。その間、審議会は問題の重要性にかんがみ存置期限を二度にわたって延長し、同和地区実情把握のために全国および特定の地区の実態の調査も行なった。その結果は附属報告書のとおり、きわめて憂慮すべき状態にあり、関係地区住民経済状態生活環境等がすみやかに改善され平等なる日本国民としての生活が確保されることの重要性をあらためて認識したのである。したがって、審議もきわめて慎重であり、総会を開くこと四十三回、部会百二十一回、小委員会二十一回におよんだ。しかしながら、現在の段階で対策のすべてにわたって具体的に答申することは困難である。しかし、問題の解決は焦眉の急を要するものであり、いたずらに日を重ねることは許されない状態にあるので、以下の結論をもってその諮問に答えることとした。 結語に、   政府においては、本答申報告を尊重し、有効適切な施策を実施して、問題を抜本的に解決し、恥ずべき社会悪を払拭して、あるべからざる差別の長き歴史の終止符が一日もすみやかに実現されるよう万全の処置をとられることを要望し期待するものである。 というように書いてあるわけであります。これはここに書いてございますように、日本国憲法に関する問題であります。  憲法の十一条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。」という条文があります。憲法第十四条には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とございます。憲法第二十二条には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住移転及び職業選択の自由を有する。」と書いてあり、この職業選択の自由あるいは居住移転の自由が実際上阻害されている現状にあるわけであります。  第二十四条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」とございます。ところが、この問題はほとんど解決がされておりません。相思相愛の仲も完全に引き裂かれているようなことが、この同和地区の人と一般地区の人の間に恋愛が成立した場合の状態でありまして、「両性の合憲のみに基いて成立」という憲法条文が、実際上完全にだめになっているわけであります。  その次に憲法第二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。」とございますが、これは御承知のとおり、健康を詰めて、だんだんやせて命を縮めるような貧乏な生活を、そして文化的とは絶対に言えないような生活環境で住んでいる人たちがあるわけであります。この憲法二十五条が完全に実施されておりません。  次に憲法二十六条でございます。「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と書いてございますが、御承知のとおり、統計にありますように長欠児童があり、未就学児童があります。これは同和地区子供たちであります。  次に憲法二十七条でありますが「すべて国民は、勤労権利を有し、義務を負ふ。」とあります。ところが、この勤労権利が保障されておりません。そういうふうに、憲法のあらゆる条文が侵害されている事実があります。この同和問題を完全に解決しないと、憲法条章が実施をされないということになるわけであります。各国務大臣は、憲法九十九条で、憲法を完全に尊重する義務を負う最も大きな責任を持っておられます。そのような意味で、この問題を重視して、そしてこの問題を推進されなければならないと思います。  ところが、私の調べたところでは、この問題に政府対処すると言いながら、同和問題の閣僚懇談会というものを一昨年開いておいて、ただの二回くらいしか開いていない。いまの大蔵大臣の御答弁でも、わずかな予算金額を増大して、それで一般ワクに比して増大率が多い、それで対処をしたように考えておられる。こういうところに、根本的な認識の不足があるというふうに思うわけであります。水田さんは非常にりっぱな政治家でありまして、私も他の点においては尊敬をいたしております。ですから、水田さんを責めているわけではありませんが、すべての方がそうなんであります。閣僚になられて、一々こういうことを申し上げないと本気になられない。閣僚がかわるごとに、四百年の差別の問題で、明治以来の百年の貧困の問題で、国会で十数年努力された問題が、閣僚がかわるごとに停とんをする。そのたびに、差別が解消する目限がおそくなるという問題があります。来年は明治百年といわれております。民主主義を浸透しなければならないはずのこの明治百年の時代に、基本的人権を侵害されている三百万の同胞がいる。そういう状態があることを考えると、この明治百年は全く恥ずべき汚辱歴史であります。もし明治百年をほんとうに満足な気持ちをもって祝いたいならば、この一年の間にこのような恥ずべき汚辱歴史を断ち切る、そのようなあらゆる方法を確立することが必要であります。そのような意味で、各国務大臣決意を込めてやっていただかなければならないと思います。  部落問題の歴史を私は前から言っておりますけれども、それを申し上げると三十分ほどかかります。でございまするから、その問題については、いま要約をして申し上げたことを一言も忘れずに、絶対にこれはしなければならない問題であり、なまけてはいけない問題であり、金を惜しんではいけない問題であり、かつまた、いままでの憲法条章を実際にやらなかった各法律政令、規則、慣習、そのようなものを、乗り越えて、この問題は完全に解決をしなければならない、そういう問題であります。そのようなことを耳に入れていただいた上での各閣僚の方々の御答弁をお願いいたしたいと思います。水田さんからお願いします。
  7. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和四十四年度から十年計画を立てて、この問題の根本的な解決対処したいということで、ことしの前半にまずその基礎調査をして、そして計画をつくるということがいま進んでおりますので、おっしゃられるような問題は、やはりこの十年計画解決するという方向でいきたいと考えております。
  8. 八木一男

    八木(一)委員 答弁の衝に立たれましたので、水田さんばかりに追及することになりますが、いまの御答弁は、はなはだこれはほんとう決意が足りない証拠になるわけです。同和対策審議会もいささかなまけておりまして、この問題を停とんさしております。ですから、この問題をさっき申し上げた精神で、この前、佐藤内閣総理大臣が確約した精神同和対策審議会答申を完全に尊重して、最も迅速にあらゆる方法をとるという答弁を、各閣僚に一人ずつしていただければ、次の別の質問に移りたいと思いまするが、それ以外に、いま政府のやっておられる、あるいは計画をしておられる、たいへん少ない、あるいはたいへんおくればせの計画について御答弁をなさいますと、それの一つ一つを突っ込んでいかなければならないことになります。同和対策審議会答申を完全に尊重する、これを最も迅速にやる、そして、いままでの法律政令慣習、そういうものを乗り越えてやる、法律を改正する必要があったら直ちに改正する、そのような勢いで取っ組むということを、国務大臣として、各省の長としてではなしに、国務大臣として御答弁をいただければしあわせに存じます。水田さん、ひとつお願いします。
  9. 水田三喜男

    水田国務大臣 長期計画は待てませんので、それまでの間もこの趣旨に沿った施策をするという要望に対して、本年度の予算も、いま申しましたように強化をする。そして今年、来年長期計画のできるまで、私どもはさらにこの対策強化いたしますし、法的改正も、答申趣旨を尊重してやりたいと存じております。
  10. 八木一男

    八木(一)委員 水田さんが言ったとおり御答弁いただければスムーズに済むのですけれども、あのくらいてふやして、それでよかったと思うようじゃ困りますよ。予算要求をあなたは査定をされましたでしょう。なたを入れられましたでしょう。各省要求額をそのまま通したかどうか、簡単に明確に答えていただきたい。
  11. 水田三喜男

    水田国務大臣 各省要求そのままは、全部の項目にわたって全部を通すということにはなっておりません。特に予算配賦におきましてもやはり比率を言うわけじゃございませんが、この問題については、私ども六割以上の予算強化をしたということは、相当この問題に私どもは真剣に取り組んだつもりでおります。
  12. 八木一男

    八木(一)委員 ひとつびっくりする数字を申し上げてみたいと思います。  明治の初年に、昔の身分制度をやめたときに、それの補償としてしたことがございます。武士階級には、その補償として秩禄公債というものを出しました。そして、いままでの斃獣処理権という特権を取り上げられた部落人たちには、何にもないだけではなしに、徴兵と納税を課しました。しかも、公侯伯子男というような制度を置き、位階を温存しましたから、形式的な万民平等の思想はそこでくずれてしまいました。人の上に人がある、そういう思想が残るような制度を残しておけば、人の下に人があるというような間違った観念が抜け切れません。そういうことで、就職上の差別を受け、商売上の差別を受け、何百万人の人が長いこと苦しんでおったわけであります。明治初年に、いままで俸禄を持った、特権を持った武士階級は、大体において国家公務員地方公務員に登用されました。そして開拓を通じて農民にもなる道を開かれました。それでありまするのに、二億一千万円という、その当時として非常に大きな金を秩禄公債として武士階級に分けたわけであります。この二億一千万円という金額は、現在の貨幣価値にするとどのくらいになるか御計算になったことがありますか。私の試算によると、二億一千万円は、いまの貨幣価値で二千五百倍になります。ということは、約五千億近くであります。しかも、そのときからいままでの利息を考えると、低く見て三%の複利計算にすると百六十六倍になるわけであります。五千億の百六十六倍、八十四兆、しかも、武士のほうが部落民より人数はずっと少ないのであります。これは一つの例ですけれども武士にそのような補償をしたなら、未解放部落の人に、しかも、三百年間非人間的々扱いを受けた人に補償するならば――武士のほうに、いまの貨幣価値計算すれば五千億、その五千億をそのときにもらえば利息計算でずっとそういうように財産がふえるわけです。それをかければ八十四兆という数字が出る。これは一つの例として申し上げます。  そういうことを考えますときに、いまのたった十億にも足りないものを出して、それで非常に対処をしたというような考え方がどだい間違っておる。大蔵省というものは、予算査定にあたって第一次要求、第二次要求を減らしさえすればいい、そんなものはほんとう財政担当者のとるべき態度ではありません。国のために必要である施策であれば、なたをふるうのではなしに、この部分はふやさなければならない、要求は少ないではないか、そのような態度をとってしかるべきところである。  一律になたをふるう、予算の第一次要求を三割のワクに押えてくれというようなことを閣議に提示をする。そういうことによってほんとう政治の大切なものが一般化され、大切でないものも一般化されて、政治ほんとうの必要なアクセントが出てこないわけだ。特にこの問題は、四百年の問題であり、そして明治以後百年の問題であり、国会においても、政府においても、十数年をかけて結論が出た問題である。その問題について、あなたが言われたように、長期計画がおくれておるのは非常に政府の怠慢でありますけれでも、その過渡的な問題でも、いささかも各省の提出した予算を値切るというような、そのような考え方では、この憲法条章ほんとうに考えて行動しておるとはいえないのであります。水田さんはりっぱな政治家でございまするけれども、主計局の人たちは、予算が出てきたら値切るものだと考えておる。頭のいいはずの予算官僚、主計局の官僚は、十年一日のごとく、ただ時分の省だけが予算ワクにおさめることに便利のように何でもかんでも一律に下げてくる。そのようなことで、国の政治を動脈硬化におとしいれておる。少なくとも、この同和問題に関する限り、びた一文でも値切ったということは、これは大蔵大臣の非常な施政の誤りである。また、このような乏しい予算要求した各省の大臣は、全くこの憲法条章を無視するといわれてもしかたがない。そのようなことについて各閣僚は、内閣総理大臣が約束されたことについて、やはり各国務大臣として、去年のときに約束されたことであっても、十二分に勉強をし、そのとおりにする、自分のところの局や課がなまけていたら叱咤激励をする、そういう態度でなければならないと思う。そういうことについて、最初の経過がありますから、水田大蔵大臣から答弁を願います。
  13. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、ただいま申しましたように、七省にわたった予算要求の否定におきまして、三割で押えるとかいろいろなことがございましたが、この問題はいままでのいきさつがございますので、御意見を尊重して、七省からの予算要求を昨年度、その前に比べてずっと強化した予算を考えたというふうに私は思っております。
  14. 植木庚子郎

    植木委員長 この際中澤茂一君から発言の申し出があります。これを許します、中澤君。
  15. 中澤茂一

    中澤委員 総理は、本会議において風格のある日本をつくる、そういうことを言われているが、一体風格のある日本とは何ですか。それからまずお伺いします。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 風格のある日本社会、これは私は、おわかりになるように二回ばかりお話をいたしました。しかし、また重ねてのお尋ねでございます。風格ある社会とは、私の観念で一つの解釈を与える、こういうものでないこと、これを前もって御了承おき願いたい。  いろいろ経済は進んでまいりました。経済的に進み、また近代文明も発進してまいりましたが、何だかどうも十分でないんじゃないだろうか。どうも合理主義的な、あるいは合目的主義な、あるいは実利主義的な、そういう考え方がわれわれの生活を全部支配しているような気がする。どうもこれは困ったことだ。だからそういう意味で、日本人が考えまして日本人らしい社会、そういうものがひとつ考えられやせぬだろうか。これは過去のとうとい歴史もございます。文化の成果もございます。したがいまして、私はそういうものを合わして、外国に負けないような一つのりっぱな社会、実力のある社会、これがまあ風格のある社会、こういう表現をしておるのであります。
  17. 中澤茂一

    中澤委員 風格のある社会、風格のある日本、それはこのごろわが党の山中吾郎委員教育問題で質問したように、風格のある人間の人格形成をやらないで、何で風格のある日本社会にできますか。特に総理は、昨日三多摩地区へ応援に行きまして、十一カ所で街頭演説をやっておる。その街頭演説の中で、あなたは風格のある社会と言いながら、全く風格のないことを言っておる。記憶にないですか。これは重大な問題です。少なくとも一国の総理が、応援者としてこういう発言をするということは、これはまさに重大な問題で、わが党としてもこれは容認できない、こういうことで、本朝の国対で、総理からじかにその真意を聞こう、こういうことでございます。  これが間違っておるかどうか、新聞は全部取り上げております。あるいは総理の失言――いろいろな形で取り上げておりますが、特に東京新聞が念入りにこの問題を今朝の新聞で掲示しております。それは「政権と対立する人には協力の義務ない」という見出しです。あなたは、内容はどういうことを言っているかというと、特に「首相演説要旨つぎのとおり。(表現は演説そのまま)」として、新聞は、あなたの表出をそのままと、わざわざつけて報道しております。こう言っておるのです。「現在の地方自治は二割自治、三割自治といわれており、残りの七割、八割は中央と直結しないとよい地方自治は生まれない。たとえば中央高速道路の建設ひとつにしても中央政府と協調していかなければうまくいかないのが実情だ」。これはどういうことですか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点はよく御承知だと思います。私は、地方に対して中央からも助成もし、援助もしておりますから、財政法の第一ページをお読みになればわかることだと思います。
  19. 中澤茂一

    中澤委員 そうすれば、あなたがそういう御答弁をなさるなら、公職選挙法の百三十六条を、ひとつどういう意味か説明してください。
  20. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 いわゆる利益誘導といわれておる条文でございます。
  21. 中澤茂一

    中澤委員 法務大臣、認めますか、利益誘導であるということを。
  22. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの、明らかにされました総理大臣の発言の内容を見ますると、これは政策論議に該当するもの、これすなわち、利益誘導として取り上げるべき筋合いのものではないと見受けられます。
  23. 中澤茂一

    中澤委員 そういうしらばくれた答弁をしちゃだめですよ。中央高速道路建設とはっきり言っているじゃないですか。具体性があるじゃないですか。中央高速道とはっきり総理は言っているじゃないですか。これを言ってなければ問題にしませんよ。中央高速道をつくるために協力するんだから、おまえらは選挙に協力しろということを意味している。利益誘導じゃないですか。百三十六条じゃないですか。
  24. 田中龍夫

    田中国務大臣 中央高速道路という一つの例証を引き出しまして、例をあげまして、道路政策に関する所見を申し述べたもの、この判断が私は当たるものと考えるのであります。
  25. 中澤茂一

    中澤委員 それなら総理にお伺いしますが、たとえば美濃部候補が当選した場合は、中央道は打ち切るのですか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 打ち切るようなことはいたしません。もういまちゃんとできております。
  27. 中澤茂一

    中澤委員 それでは一体なぜ、一国の総理ともあろう者が、こういうばかな利益誘導と思われるようなことを言うのですか。住民とすれば、中央道ができるためには松下候補を当選させなければいけないんだと言わんばかりじゃないですか。これはまさに、一つの利益誘導じゃないか。あまりにも次元が低過ぎるじゃないですか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、こういうところに風格を見つけてもらいたいと思いますが、いわゆる対決する、これは地方選挙で中央の政局と対決する、そんなことはないはずなんです。地方選挙は地方選挙なんです。しかし、中央と対決する、こういう方なら、そういう方は私のところへはいらっしゃらないだろう、そういうところへ私自身が積極的に協力する義務はない、これは当然のことであります。そのとおりを言っただけであります。
  29. 中澤茂一

    中澤委員 総理、それはあまりにも地方自治を無視した発言なんです。地方自治を無視しておりますよ。議員のほかの選挙では、そういう考え方が間違ってはおるが一応容認するとしても、地方自治に関しては、はっきりと憲法九十三条の二項で、自治体選挙というものの不可侵を規律しておるじゃありませんか。ちゃんと直接選挙でなければいかぬ、住民の意思をそのまま反映するのだ、これが地方自治の選挙の根幹じゃないですか。それに対して、一国の総理ともあろう者がそういう発言をして、あなたは、それで当然だとお考えですか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま申し上げましたように、おそらく、ことばのはずみでいろいろなことが出てくるんだと思いますが、相手が、対決するんだ、こう言っていれば、私のところにおそらくお願いにはいらっしゃらぬだろう。これはお願いする筋ではない、当然の権利だ、かように思いますが、私は、そういうところに積極的にこちらのほうから協力する、こういうわけのものじゃない。私は、そういう場合でも、いまの地方自治法、あるいはその他財政法を無視して、そんな当然のこともやりません、こうは私は申しておりません。だから、片言隻句から申せば、いろいろな批判がございましょうが、それは、演説というのは、全体をやっぱりかみしめていただかないと、ほんとうのねらいが出てこないように思います。だから私は、いま言われるように、私の片言隻句がどうもけしからぬ、こういう御批判のようですが、これからもちろん気はつけてまいりますが、ただいま申し上げるように、私自身の真意というものは、いま法律を無視するような考え方ではございません。そういう革命的な行為、これは絶対にいたしませんから、それは御信頼いただきたいと思います。
  31. 中澤茂一

    中澤委員 それは総理、あまりにも風格のある社会とは次元が低過ぎるんじゃないですか。一国の総理ともあろう者が、地方自治体選挙に行って、利益誘導にからむがごとき話をして、そして、私はそれは当然だと思う、それで一体風格のある社会、風格のある日本がどうしてできますか。もし私が総理大臣だったら、美濃部候補が当選しても都民のためにやると言いますよ。そのくらいの、あなた、風格のある人間になれないのですか。これはあまりにも低劣きわまる次元の低さじゃないですか。どうお考えですか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中澤君からおしかりを受けました、また、いろいろ教えもいただきました。ありがとうございました。
  33. 中澤茂一

    中澤委員 それは総理、総理が演説の中で、先ほどの答弁で、若干ことばのあやで行き過ぎがあったのを認めるんなら、私は、今後そういうことは厳重に慎んでもらいたいということで終わりますが、総理がどこまでも、そんなことは当然だというお考えなら、われわれは党としても考えがあるわけです。だから、そういう点について、総理は、ちょっと行き過ぎがあったかもしらぬ、こういう態度ですか。それとも、そんなことを言った覚えがないというのなら、私のほうは、このあなたの演説を三カ所聞いて歩いた証人がいるわけです。だからその点、あなたの気持ちで、こういうことは演説のあやで行き過ぎがあったかもしらない、そういうことなら、それで私は認めますが、どうなんですか、御心境は。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 さっきもちょっとお答えしたつもりですが、私はこういうような事柄で誤解を受けることはたいへん残念に思いますから、誤解のないように今後とも気をつけてまいります。
  35. 中澤茂一

    中澤委員 総理、あなたが若干非を認めておるから、今後そういうことは厳重に慎んでもらいたい。  私は、最後にあなたに警告しておきますのは、批判のないところに政治の進歩はありませんよ。政治というものは、必ず批判のあるところに前進、前進があるんですよ。その相手候補が批判候補であろうと何であろうと、そういうことをあなたが一々頭へきたような顔をして演説をぶつというのは、まさに、風格のない人は佐藤総理であると私は断言したい。そうじゃないですか。同時に、人間は、だれもあやまちをおかす。しかし、反省は人間の特権である。人間というものの特権は反省というところにあるんだということをある哲学者は言っておる。あなたは、この二つのことばを拳々服膺しなさい。これでこの質問を終わりにします。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 では引き続き、同和問題について御質問を申し上げたいと思います。  総理は、いまの中澤君の批判をまともに受け入れて、風格のある政治をする決意をさらに固められたはずであります。その風格ある政治というものは、このような置き去りにされた人たちの問題を、いままではなまけておっても、あなたが断じてやり抜くということに通じなければならないと思います。同和対策の問題について、昨年の二月十七日に総理大臣に御質問を申し上げました。その前の本会議の多賀谷真稔君の質問に対しましても、私の予算委員会質問に対しましても、総理大臣は、内閣を組織されておる国務大臣の中で最も積極的な、熱心な姿勢を示されました。ほかの政策については、佐藤さんの政策については私は批判するものがたくさんあるのですが、この問題については、総理大臣の熱意について敬意を表したいと考えております。  ところで、その熱意には敬意を表しておったのですが、なかなか問題が進んでおりません。同和対策特別措置法について、昨年本会議で、多賀谷君の、昨年の二月までに提出してもらいたいという質問に対して、二月は約束できないかもしれないけれども、至急に、三月中ぐらいに出したいというような御答弁をなさっておられます。さらに、総理大臣が総務長官に、早く提出するようにという積極的な努力をされたことは、私は知っております。それからこの前、残念ながら与党の議員の中の一部の人に、その問題にいささか消極的な人がいましたのがブレーキになりました。最後にILOと祝日法の問題で総務長官が日にちがないために延びた事情もわかっておりますし、それからそれが終わったときに、総理大臣がこの部屋で私のところへこられて、同和対策特別措置法が提出できなかったのは非常に残念でありました、次の国会には完全なよいものを絶対に出したいと思いますので了承をしてください、総理大臣のほうから私のほうに言ってこられました。そういうような経過は、総理大臣と私はよく存じているわけですが、いまの内閣のその準備が非常におくれているように思うのです。この特別国会に、できるだけ早期にそれを出していただいて、特別国会で十分な審議をされて成立をするように、ぜひする必要があろうと思う。総理大臣の、近日中に内容のいいものを提出せられるというお約束を、ぜひいただきたいと思います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 同和問題につきましては、八木君は、特に熱心に、また研究もしていらっしゃると思う。私もこういう時代に、いまなお同和問題、こういうような差別的なものが残っておる、まことに残念に思っております。もう近代国家から申しまして、かような問題がいまなお解決されないということは、まことに残念だ、かように思います。  そこで、同和対策協議会の堀木君からの答申、これを私、ついせんだって受けたばかりであります。なかなか調査会と申しますか、審議会と申しますか、これは熱心に堀木君のところでは検討してくれたのでございますが、しかし、何ぶんにも関係省が非常に多い。そういうところで、最終的な案をつくり上げますまでに日にちがかかる、こういうことで、まことに残念に思っております。しかし、ただいまも強い御要望もございますし、私もぜひとも、前国会からの続きのものでございますから、早く結論を出したい、かように思って、この上とも力を入れるつもりでございます。現在の状況では、まだ私どもがいつまでに出せるとか、こういうことが申し上げかねております。まことに残念で申しわけなく思います。一そう関係省を督励いたしまして、成案を得るようにいたしたい、かように思っております。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁、大体けっこうでございますが、そこで明らかにいたしておきたいのは、同和対策協議会、堀木鎌三さんが会長をしておられるところです。そこでは、いわゆる長期計画という前期五カ年計画、後期五カ年計画の問題について、いま検討をしておられるわけであります。  そこで、実はその問題と同和対策特別措置法との関連の問題であります。同和対策協議会のほうで中間答申を二月に出しましたが、そこでは、その長期計画とは切り離して、並行して同和対策特別措置法の制定の必要を言っているわけであります。まさに、そうなくてはならないと思います。あのような、長期計画というものを待っての同和対策特別措置法ではおそ過ぎますし、また、同和対策特別措置法ができ上がったあり方によって長期計画がつくられるものであろうと思います。そういう点で、長期計画のほうは促進をどんどんしていかなければなりませんが、それと切り離して、ぜひこの同和対策特別措置法を至急に、今国会で成立に間に合うような時期に、内容をよいものにして出していただきたいというふうにお願いをいたしたいと思います。総理大臣からひとつ御答弁を願います。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの御意見は、私もさように思いますが、今日の準備の状況を一ぺん説明しようと思います。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 いや、塚原さん、実は総理の時間が少ないので、塚原さんにはあとで十分に御高見を拝聴します。実は準備の状況は、私、十分に知っているわけです。その原案らしきものは昨年の四月か五月にできました。それは内容に、いいところもありますけれども、不十分なところがございます。その原案のところに、これは私どもの申し上げることをつけ加えていただいてお出しになるには、有能な方がそろっていらっしゃいますから、総理大臣決意を示して、そうしようとおっしゃれば、これは一週間ないし十日ぐらいでできる内容だと思います。私一人でもできるぐらいの内容ですから、総理府のたくさんの有能な公務員の方、法制局もおられますから、こんなものは、大急ぎでやれば三日でもできます。そういうような内容でございますから、ぜひ至急に出していただきたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ひとつ八木君の意見も十分伺うことに、よく係のほうに連絡をとるように申しつけておきます。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 同和対策特別措置法と私が呼んでおります法律内閣のほうの草案は、同和対策の促進に関する法律案というような名前で呼ばれております。促進ということばでは、一般的な行政でやらなければならないことを急ぐという表題になります。これは四百年間の非常な差別のもとに起ったものを取り返すには、特別中の特別の措置をしなければなりませんので、やはり題名は、特別措置法という題名で御提出をいただけるのが一番よいことではないかと思うわけです。  その次に、その一審で、非常に苦心をした作で前向きのところもありますし、非常に努力のあとが見えておりますが、国民の責任を書いて、国の責任が――国の実施すべき事項というふうに、いささかぼやけた表現がございます。これは岸さんの内閣以来、国会内閣との約束の点で、やはり国の責任ということを明確に出しておく必要があろうと思います。それとともに、具体的な問題を進める必要がございます。  具体的な問題について、この前も総理大臣と総括質問でお約束をしましてから各大臣とお話をし、各大臣がお約束を願った問題でありますが、たとえば、各省が補助をしていろんな事業をやります。これは厚生省にしても、文部省建設省農林省、通産者、あらゆるところで同和問題の推進のために、いささかながら、いままでしてきておられることに補助があります。二分の一補助もあり、三分の一補助もあるわけであります。それをできるだけ高率にいたしませんことには、特別な地域にだけ超過負担がふえてくるわけであります。それともう一つは、補助対象を十分にしませんと、建物の補助だけ出て土地の買収費の補助が出なかったり、あるいは整地費や前の建物の移転費等が出ないと、やるつもりでそのものが動かないことが起こります。それからもう一つは、一般的にいわれているところですが、予算単価と実質単価の差があります。それが非常にネックになります。これが障害になります。それは一般的に全部大事なことでございますけれども同和地区の集中しているのは、ある種の特別な府県に集中し、また、特別な市町村に集中をいたしております。でございますから、全体がそうでございますが、特にこの問題に関する限り、そのような補助率が少ないこと、補助対象が必要なもの全部に行き渡らないこと、それから実質単価と予算単価の差があること、これがブレーキをかけてしまいます。貧困な部落の同胞に、自己負担はこれは絶対さすべきじゃありませんし大字負担もさすべきじゃありませんし、市町村負担分がふえれば、それだけのものが多くなります。そういうようなことを進めるために、その同和対策特例措置法には、非常に風格あふれている憲法条章からきた前文をつけ、国の責任をうたい、地方自治体の責任をうたい、そういうことをしてから、具体的にものを動かす条項が必要であります。一つの例を申し上げたわけでございまするが、ひとつ、そういう点をできるだけ明確に規定する条文を入れていただく必要があろうと思います。  それともう一つは、地方自治体自体で、その所在の同和地区に対して、やはり積極的にやる義務がありますし、必要がございます。地方自治体は、その同和地区のある自治体に限って特にそういう財源が少のうございますし、必要度が多うございますから、特別交付税という制度を活用しなければなりません。ところが、特別交付税の制度は、交付税交付金の中の六%ということに限られておりまして、その大部分は災害その他のために充てる金額になっております。そうなると、特別交付税を活用するといっても、特別に同和地区のための特別交付税という制度を設けるか、その六%というワクを今度そういう問題に、同和対策のために特別交付税を活用するとなれば、そのワクを広げる操作をしないと、そこで制約を受けて、地方自治体がその施策を前進できないという問題があります。そういうような問題も、具体的な条項としてできるだけ入れる原案をつくっていただきたいと思うわけであります。総理大臣でいらっしゃいますからお時間がありませんので、柱だけを申し上げまして、あとは各主務大臣に申し上げますけれども、たとえば、雇用の問題にしますと、石炭離職者に対する特別の措置法がございます。また、職業安定法と緊急失業対策法という、いわゆる失対二法といわれた法律がございます。その石炭離職者に対してとられた方法が、半永久的な潜在失業群であるこの同和地区に当然とられてもいいのではないか、その条文そのままを。石炭離職者の特別措置法を同和地区の申請した住民に対しては適用するという簡単な書き方もありましょうし、それと同様な条文をそこにうたう書き方もございましょうけれども、とにもかくにも、具体的にそういう問題で動く、そういうことを書いていただく必要があろうと思います。  それから失対二法の中で、たとえば、失業多発地帯といって、失業保険の受給率が全国平均の二分の一以上のところには、特別の措置をすることになっております。ところが、同和地区の住民は、失業保険を受けるような企業に就職していない人が多いわけであります。失業状態は、いわゆる普通の失業多発地帯よりも多いのに、そのような規定では当てはまらないということになります。そういうことで、同和地区には、この失業多発地帯としての取り扱いとするというような規定をうたうという問題が、雇用の問題にあります。  それから地域の開発の問題では、離島振興法というような条文か、一つの参考事項になろうかと思います。それ以上の厚みをかけていただく必要があろうと思いますが、そういうような既存のいろいろな対処すべき法律があるわけであります。  そういうような問題を具体的に動かす条文を入れた同和対策特別措置法を至急に御検討になって、至急に御提出になり、さらに国会の前向きな審議を経てこれを制定をしていただきたい――制定は国会の権能になりますけれども、提出をしていただきたいと思うわけであります。これについて総理大臣のぜひ前向きな御決意を聞かしていただきたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま同和地区についての特殊性、それをるる説明されました。また、今後改善していくものは、生活環境の整備、これが中心になる、それば建物だけじゃないのだ、こういうような点にもお触れになりました。同和地区のあるような町村、これはあまり富裕な町村ではない、したがって、交付税あるいは特別交付税等が十分考えられるべきだ、また、こういう事柄に対する補助金、そういう場合も、財源に乏しい町村だから超過負担をさせないように特に気をつけろ、こういうようなお話、その他類似の対策、特別立法等の例を引かれて、それぞれ御説明がありました。これは詳細でございましたので、関係大臣におきましてもよく理解ができたと思います。私は、この機会に、それぞれの関係大臣におきまして十分御期待に沿えるような成案ができるかどうか、なお一そう目八体的に八木君の話も伺って、そしてりっぱな成案を得るように、ひとつ督励するつもりでございますから、どうかそれで御了承をいただきたいと思います。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 前向きな御答弁を伺ってありがたく存じます。  それと同町に、五カ年計画を立てておられる同和対策協議会の御努力が、堀木さん以下非常に熱心にやっておられますけれども、非常におくれているわけです。あそこの中間答申では六カ月間調査をして、それからそれに基づいて、来年じゃなしに、再来年が第一年度になるような内容を持っております。それは調査がおくれるからでございますけれども調査を進めて、来年度の予算から本格的なスタートが始まるということにしていただくことがぜひ必要だと思います。その準備の調査協議会の方は、官庁がほんとうに本腰を入れてやられたら進むということを少し割り引きして考えられまして、四月から六カ月かかると言っておられるわけです。それだけかかると、次の予算編成期を過ぎてしまいます。でございますから、そこの要請に基づいて、それ以上に、内閣各省が努力をされて、三カ月ぐらいで調査を終わって、それで来年度予算に本格的なものの最初のものが入るというふうにぜひしていただきたいと思いますとともに、もしその調査が六カ月かかりました場合でも、本年の十月には出るわけでございますから、来年度予算にはそれだけの分は推定して財源を残して、そして第一年度から本格的なものが始まるというふうにぜひしていただきたいと思います。  それからそれに関連いたしまして、なぜ同対協がおくれたかというと、事務局のスタッフが少ない点であります。それから内閣総理府審議室は、有能な人がおられますけれども、ほかのいろいろな問題を兼ねて持っておられまして、スタッフが足りないわけです。この大問題を進めるためには、内閣審議室を同和対策局なり、局と同様の室なり、そういうものにして、内閣の推進、同対協の推進、各省の督励に当たる機関を拡充していただきたいと思います。こういう新設の官庁をつくることはいかぬというようなことを臨時行政調査会が言っておるように見受けますけれども、あの調査会の内容を見ますると、社会開発であるとか、後進地域の問題であるとか、そうした問題については特につくらなければいけないという答申が中にあるわけです。一般的には減らしたいけれども、そういうことは特につくれ、そういう精神に基づいて、そういう機関の拡充もお願いいたしたいと思います。予算とその機構の問題について、前向きな御答弁を願いたい。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 予算のほうは、これはいまお話がございましたが、できるだけ来年度は間に合わす、そういう方向で検討する、いま大蔵大臣とも話し合っております。  もう一つの機構の問題は、たいへん政府を鞭撻していただいてありがたいことですが、必ずしも局をつくることが同和対策がうまくいくわけでもございませんから、まあ、その辺は、局をつくってもおしかりを受けない、かように理解をいたしまして、ただいま、同和対策の問題を十分こなす、そういう意味の陣容を整えたい、かように思っております。ありがとうございました。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 水田さんはじめ各国務大臣の方、いま総理大臣決意をじかにお聞き取りをいただいたと思います。実は閣議でどれだけこの問題が論議されたか、私は非常に疑問でございます。その点についても総理大臣に伺いたかったのですが、同和対策閣僚協議会というものをつくって、いままでの閣僚懇談会よりも前向きにやるという姿勢を内閣はとっておられたはずでございますが、その閣僚協議会が、同対審答申が出てから二回くらいしか開かれておらないように私は思っております。そういうことで、ほんとうにしなければならないことが有能な政治家でございますが、関西以西の方でないとぴんとこない問題であって、そういうことで停とんするということになろうと思う。これは全国民的に解決しなければならないし、政府が全責任を持ってやらなければならないし、財政的にも惜しんではならないし、いまの法令や規則でこれにブレーキをかけるようなことは一切してはならないという内容の問題でございます。それを御確認いただいて、ぜひ皆さんは、社会党の内閣でわれわれが閣僚になるまでは留任をしていただいて、ほかの人に申し継ぎなんかしないようにしていただきたい。それから申し継ぎをされるときには、厳重に、ほかのことよりまずまっ先に、このことを次の国務大臣に耳にタコができるほど申しつけて、それからやっていただきたい。そうでないと、何回でも同じことをやらなければならないことになる。そういうことをお願いするわけでございますが、それに関連して塚原さんから、その閣僚協議会が何回開かれたか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  47. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 私が就任いたしましてからは、閣僚協議会は開催いたしておりません。それはなぜかというならば、八木さん御承知のような同和対策審議会、それから同和対策協議会、これを中心とした論議が重ねられ、また、そのお話があるたびに、私は関係閣僚と、協議会という形式ではなく、いろいろお話し合いはいたしておる次第でございます。それは同和対策重要性というものを認識し、また八木委員からもたびたび私はレクチャーをいただいておりますので、そういった措置はとっておりますが、正式な協議会としては開いてはおりません。  それから、二月二十五日に対策協議会からまとまった意見害というものが出された。前期・後期五カ年にわたる長期計画を策定し、各省の協力を求めて云々ということでありますが、この報告を閣議でいたしましたときに、先ほど総理からも御答弁がありましたように、総理がこの問題をとらえて、関係者竹の協力なくしてはこの問題の解決はできないのであるから、名君においては十分協力をするよう、強い発言があったことを申し添えておきます。
  48. 八木一男

    八木(一)委員 閣僚協議会の長は、どなたでございましょうか。
  49. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 私が就任いたしましてから開きませんのでわかりませんでしたが、官房長官が座長だそうです。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 福永官房長官はおられませんが、いつごろ出てこられますか。――もうニクソンとの会談が終わって、記者会見が終わっているはずですから、督促してください、その間、遅参をしますということですから。  官房長官がおられませんから塚原さんに申し上げますけれども、そういうような塚原さんも座長を御存じないというようなことでは、これは非常に困ったことだと思う。座長には塚原さんから厳重に言っておいていただきたいと思うのです。それを開かせるのは、やはりこの問題の中心の取りまとめ役である総理府の力が、開かないのはけしからぬじゃないかというふうにやっていただかないと、塚原さんが政治力を利用されて、その人格でみんなにお話しになっても、正式の会議がないと、各閣僚は自分の所管官庁のことが忙しい、うわのそらで聞いていることもあると思う。右の耳から入って左の耳から抜けていることもあると思う。そういうことじゃなしに、そういうものをひんぱんに開いていただいて決意を強める。いままでは御認識はあまり厚くなかったのでしかたがありませんが、きょう、今日ただいまからは、その決意で、一週間に一ぺんぐらい開く、それから、いまの同和対策特別措置法をつくるのですから、そのためには一週間に三回ぐらい開く、十日後には提出をする、そのくらいの勢いでやってもらわなければ困る。それについて塚原さんの決意のほどを伺っておきたいと思う。
  51. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 座長を知らなかったからこの問題について熱意がないと仰せられると、私は非常に迷惑いたします。冒頭にも申しましたように、同和対策重要性というものは十分承知いたしておりまするし、八木委員をはじめとして各位からもたびたび教えをちょうだいいたしておる。また、事務当局からもいろいろと報告を承り、何せ守備範囲が広いものですから、毎日この問題に当たっておるわけにはまいりませんけれども、その重要性は十分認識いたしております。  なお、自分が所管でいまやっておりまする関係上、座長は私であると思って、またその気持ちで、今日まで問題があるたびに関係閣僚と相談をしておったようなわけで、思い上がりといわれればそれまでかもしれませんが、いまの御趣旨の点は官房長官にもよくお伝えし、官房長官が忙しくてだめなときには、自分がとって出てこれをやるような気持ちで、ひとつ今後この問題に当たっていきたいと考えております。  なお、立法措置につきましては、先ほど総理がお答えになったとおりでありまするが、御承知のように二月二十五日に出された意見書によりましても、また対策協議会のメンバーの方々の御意見によりましても、あの対策協議会は、八木委員は先ほどあまり積極的でないような御発言があったが、私は、ああいったものの委員会としては非常に積極的にやっている委員会であると考えております。この方々の御意見によりましても、立法措置についても、長期計画の策定と同時にいろいろ考えも持っておられるということも承っておりまするので、あれの結論を待ってから云々というようなことでなく、政府政府の立場でやることは間違いございませんが、緊密な連絡をとることが必要であると思います。前向きの姿勢で努力していきたいと思います。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 守備範囲が広いですから、やはり優秀な選手をたくさん集めなければいかぬ、そういう点で塚原さんは、いま総理大臣に私が申し上げた同和対策局を置くとか、局と同様の室にするとか、そういうような優秀な選手をたくさん集める努力をもっとしていただきたいと思う。それは本腰いかんで、臨時行政調査会の答申もよく御理解だと思いますけれども、あそこでは、こういうことについてはつくらなければいかぬ、なまけてはいかぬと書いてあることを、ほかの方で知らない方もありますから、それを極力宣伝されて、ほかは減らしても、これはつくらなければいかぬのだということで、積極的にやっていただく必要があろう。  それから同和対策協議会ですね。同和対策協議会の方は、堀木さんをはじめ熱心なことはわかっております。知っている人もたくさんおりますが、堀木さんも磯村さんもそれからほかの人も非常に熱心です。熱心ですけれども、しかし月に一回か二回しか開かないのじゃ、これは問題になりません。これはいろいろ御都合のある方もあるかもしれませんけれども、そういう人をぜひ要請をして、特に同和対策特別措置法を、総理大臣が言われたように、総務長官が非常な御努力になって至急にりっぱなものを出す時期ですから、この四月くらいは少なくとも月に五何や六回は開いて、それで総理府のほうの熱心な原案について、さらにそれをよくするような意見を求められて、この特別国会に提出が間に合うようにしていただきたいと思う。それについても、同和対策協議会委員の方々の待遇その他が非常に劣悪でありますから、この方々にはほんとうにお気の毒だと思いますが、それはいま間に合いませんから、そういう点について極力要請をされてやっていただきたいと思いますし、そのような御苦労をかける方々への対処の問題についても、総理府の長官として、次年度、あるいは補正予算によってそういうことに対処するというふうにしていただきたいと思います。総務長官のお話を伺いたい。
  53. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 立法措置につきまして重ねてのお尋ねでありますが、協議会のメンバーの方々、これは関係の方々が非常に多く、またベテランぞろいでございます。その方々の意見もよく拝聴し、政府政府として進めてまいるということは、先ほど申しましたとおりであります。なお、これをいよいよきめます際には、同和対策の方向を決定づけるものであり、また、同和地区住民の福祉厚生と申しますか、生活上重大な問題を決定する問題でありますから、あまりに急いで妙なものをつくるよりは、よく意見を相互調整しながらやっていきたい。しかし、御趣旨に沿った努力は今後とも続けてまいるつもりでございます。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことで熱心にやっておられるのはいいんですが、先ほど総理大臣に私が例示で申し上げましたああいう問題については、これはどの観点から見てもやっていいことであって、やらなければならないことであります。ほかの問題と違って、調査をしなければならない問題はありません。超過負担をさせないという問題、雇用の問題について、現にほかの失業者に適用されておるものを適用させるという問題、これは調査を必要とする問題ではございません。そういう点で、すぐにそれを入れる努力をしていただきたいと思います。そのほか、総理大臣から特に私の名前を言われまして、八木一男の意見をいれてつくるとおっしゃいました。私は、あなたのところにしょっちゅう参りますから、私の意見を十二分にいれたものを急速に出していただくということを、もう一回明確にひとつお約束を願いたいと思います。
  55. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 よくわかりました。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 よくわかりましたというのはあいまいなことばですが、そのとおりいたしますという御答弁と私は理解をしたいと思う。それが違うのでしたら、いま発言をしていただきたい。
  57. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 私が生まれた国では、そういうことは、いま八木委員がおっしゃったようにとっております。
  58. 八木一男

    八木(一)委員 私の言ったとおりなさるということを、もう一回確認をいたします。委員長が証人であります。  それで、次に自治大臣にお伺いをいたします。先ほど総理大臣に申し上げましたこと、これは自治大臣はもちろん全面的に御賛成であり、それ以上に御熱心であろうと思いますが、その点についてお答えをいただきたい。
  59. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 全面的に八木さんのおっしゃるとおりだと思います。超過負担の解消とか、あるいは――ただ、特別交付税が六%では足りないてはないかとの仰せでございますが、約九千億近くの交付税でございまして、特別交付税に五百億以上も回せますから、現在同和地区をかかえている県、市町村等の需要については対処できるものと考えております。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、自治大臣に重ねてお伺いをいたしますが、その同和対策特別交付税のワクが、各市町村、府県の要請をいれられない状態になったときには、これは完全にそのワクをはずすことをお約束いただけますか。
  61. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 特別交付税のワクをどれくらいにするかということはいろいろ問題がございます。しかし、それとは別に、同和地区をかかえておる県や市町村の需要が相当多くなるという場合には、十分それに対処するだけの措置はいたしたいと思います。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 そこでもう一つ、特別交付税は、いま災害その他になっておりますし、それから自治大臣が永久に自治大臣だったらいいけれども、ほかのわからず屋がなることもあります。それから局長なんかも、わかった人がなるときもあれば、わからず屋がなるときもありますから、ほんとう同和対策の特別交付税の制度を分離してつくったほうがこの問題に適当だと思うのです。その問題についてひとつ前向きに考えてみていただきたいと思います。
  63. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 特別交付税を配分するときに特定ワクをつくれという仰せかと存じます。特定ワクにつきましては、これは八木さん十分御承知のとおりに、災害不交付団体にもぜひやらなければならないというようなものだけにいたしております。した、かいまして、特定ワクにするということについてはなお研究はいたしますが、しかし、それを特定ワクにいたしませんでも、この同対審答申精神もございますので、十分対処してまいりたいと思います。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 また地方行政委員予算分科会で詰めてみたいと思いますが、元来百分の六、六%というワクをつくったのは、この同和対策審議会答申が出る前につくっております。ですから、これを予想いたしておりません。災害とか合併をしたとか、そういうことを予想をして百分の六をつくってあるわけです。ですから、どうしても、いま五百億ほどあるからと言われたけれども、これはそのワクが障害になろうと思います。でございまするから、これは緊急に、この特別措置法をつくるまでに間に合わせなければなりません。問に合わせるのが一番いいわけですが、特別な、同和対策特別交付税法というものをつくるか、その百分の六というものを、必要じゃないときにそれだけ出さなければいけないということじゃないのですから、百分の六を百分の十とか、そういうものに変えておいて、そうして十全部使わなければいけないというわけじゃありませんから、やりたいときにそのワクがあるために法律改正をしなければできないというようなことのないような、そのような準備をしておかれる必要があろうと思う。それを至急に御検討になって、特別措置法をつくるときにそういう内容が盛り込めるように、ひとつ前向きに御準備を願いたい。それについてひとつ御答弁を……。
  65. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいまも申し上げましたように、同対審答申精神を生かさなきゃならぬわけでございます。特別交付税ばかりでなくて、全体の地方財政といたしまして、この同和地区をかかえている県や市町村の需要を十分満たせるような財政措置は講ずるつもりでございます。また、特別交付税につきましても、なお研究はいたします。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 それをひとつ、なおぐらいじゃなしに、積極的に全力をあげて、十日間くらいでよい結論を出していただきたいと思います。これはまた地方行政委員会あるいは予算分科会質問をいたしますから、それは必ず前向きの答弁をなさっていただきたいと思います。  その次に、官房長官、実は官房長官の不在中に、たいへん官房長官の怠慢なことがわかりました。判明をいたしました。同和対策閣僚協議会というものがございます。調べましたところ、官房長官が座長だそうであります。いまだ、この内閣になってからその閣僚協議会が開かれておらないそうであります。こういうことでは非常に困った問題だと思います。実は、この前に、水田さんもそうでございましたけれども同和対策の問題については、非常にりっぱな政治家であり、有能な政治家であっても、理解に非常に濃度の厚薄があります。ですから、いままでのことはそうやかましくは申しません、しかし、ここで内閣総理大臣をはじめ各閣僚の、同対審答申についてほんとうに全力をあげて迅速にやるという意思統一ができたわけであります。官房長官おられなかったけれども、同様の意思統一を、いま総理大臣以下なさいましたので、その精神に従って、今後は同和問題閣僚懇談会をひんぱんに開いていただく必要があろうと思います。特に総理大臣と確約をいたしましたこととして、同和対策特別措置法を、必ずよいものを今国会政府の責任において提出をする、十分に審議のできるような時期に提出をするということになったわけであります。そういうような事態であり、また、来年度の予算において本格的なこの計画が始まるように、いろいろの調査その他も進め、そしてこの七月ごろからの予算編成期に間に合うようにする。それからもう一つは、もしそれがずれた場合には、予算ワクは全部残しておいて、十月にその調査ができても、来年の予算に間に合うようにするというようなことになったわけであります。そういう点について協議会を開く、各省を督励する、そういうような問題について熱意を込めた決意を伺わしていただきたいと思いますし、具体的な問題として、その意味における同和対策閣僚協議会をひんぱんに、熱心に迅速に開いていただくことをお約束いただきたいと思います。
  67. 福永健司

    ○福永国務大臣 閣僚協議会が私の就任以来開かれておりませんということは事実でございます。いまおっしゃった閣僚協議会が開かれておらない。で、閣僚協議会は現在十四ございます。閣議に準ずる重要事項を審議するという趣旨で、官房長官がこれを司会する、こういうことになっておるのでございますが、主任大臣の請求によって官房長官が開いている、こういうことなんであります。私が特に怠慢なるがゆえに開かなかったということでは、それは毛頭ございません。しかし、請求がなかったのであるから、その大臣が悪いのだという意味で申し上げるのでなくして、さような請求があれば私は遅滞なく開くであろうという意味でお答えを申し上げ、ただいま八木さんがなさいました御注意、私自身ただいま伺った次第でございまするから、場合によりましたら、主任大臣が請求なくても、請求したらいいじゃないか、何しているかというくらいな気持ちで今後に対処いたしたいと存じます。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 官房長官と総務長官がどっちが怠慢であったか、どちらでもよろしいです。これから、もうほんとうに、いまの瞬間から本腰を入れていただくようにしていただけばいいと思います。  それから次に総務長行に申し上げます。この前の二月の予算委員会で、法制局長官には厳重に申し渡しておきました。法律のつくり方に法制局流の変なくせがあります。変なくせで、当然国民要望し、国会がそれを是とし、内閣もやりたいと思っておるものを、書き方の彼らのくせでわかりにくくするようなくせが法制局にあります。そういうようなことでこれにブレーキをかけたら、法制局の長官は直ちにこれは解職をしなければならぬと厳重に申し渡してあります。法律の書き方にこういう例はありませんというけれどもこういう例はありませんというようないままでの政治で、この四百年の差別と貧乏が起こっておる。いままでのような法律ではこれを直すことができない。いままでのような法律ではない法律で推進をしなければならない。そこで、総務長官が私の意見を十分聞かれるわけでございますから、それで原案を至急にお互いに協力してつくりまして、それで出したときに、法制局の長官が、これは書けませんというようなことを言ったならば、この前ちゃんと約束をしておるわけですから、これは官房長官も聞いておいていただきたいと思いますが、総理大臣から、その無能にして国の政策を曲げる法制局長官は直ちに解職をする、そのような決意で……(「首切り反対だろう」と呼ぶ者あり)悪い者は首切らなければならぬ。そういうような、いままでのなまけた、技術的なやり方でこの問題にブレーキをかけることは一切許さないという態度で、この同和対策特別措置法の批准に当たっていただきたいと思います。それについての御決意を聞いておきたいと思います。
  69. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 人間平等をたてまえとする近代国家において、こういう問題の根本的な解決がはかられていないということは、まことに遺憾でありまするから、御趣旨を十分尊重いたしまして努力していきたいと思います。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 では、今度は労働大臣にお伺いをいたします。先ほど総理大ににお伺いをしたことであります。そのことについて、労働大臣は総理大臣より以上に専門でございまして、この問題の重要性も同じく認めておられると思いますから、それ以上の決意をお持ちになっておられると思いますが、さっき申し上げました石炭離職者の問題、失対二法の問題についての前向きの御決意をひとつ伺いたいと思います。
  71. 早川崇

    ○早川国務大臣 総理と同様、前向きに検討したいと思っております。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 検討したいと言われましたけれども、検討じゃなくて、それを入れることを――入れる同和対策特別措置法をつくる、それに全力を尽くすという意味の御決意を伺わしていただければ非常にしあわせだと思います。
  73. 早川崇

    ○早川国務大臣 八木先生の御意見を聞いておりましたが、そういうことは別にいたしまして、特別措置法に十分同和地区労働問題、あるいは労働者の福祉の向上を盛り込むように努力をいたしたいと思っております。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 それでもちょっと具体的な問題を伺いますが、実は職業安定局長が、ほかのところでは有能ですが、この問題については頑迷固陋なところがあります。実は大橋さんが労働大臣のときに、たとえば、いまの失対事業に就職促進措置をやって安定雇用を求めて、それがないときには、そういうほうに紹介するということが原則的にございます。しかし、失業多発地帯においては、安定雇用がない状態があるから、直通に失対事業に紹介をする方針でやるということを、何回もその当時――失対二法のころは大橋さんでしたが、その当時から約束をしておられるわけです。いまの労働大臣早川さんには、この問題は、まだ今度が初めてでございまするが、大橋さん以後の労働大臣も同じく約束をされておる。ところが実際のことになると、職業安定局が猛烈にブレーキをかけて、それが進んでいないわけです。特に大橋さんのときには、同和地区が永久的な半失業地帯であるので、そのような失業保険の適用率で判定したならば、それ以上に失業の状態か多いのに、失業多発地帯というものが適用されない。これではいけないから、同和地区については、直ちに失業多発地帯と同じように認定をしてやるということをやっておられるわけです。ところがそれが実行されてない。大臣が幾ら約束しても、職業安定局が意地になってやっておる。これは国会で大臣が答弁なさったことを、この一局がブレーキをかけるということでは、国の政治はひん曲がってしまいます。有馬君にうらみがあるわけじゃなしに、ほかの点では有能な公務員だと思いますが、そのあやまちを今後続けさせないように、労働大臣から有馬君に、労働大臣の考えのとおり、直ちにいまの趣旨のことをやるようにということを言明をしていただきたい。それについての労働大臣の御答弁を願いたい。
  75. 早川崇

    ○早川国務大臣 同和地区の人が、就職促進の措置をしないでストレートに失業対策にいけるような地域に指定しろ、こういう御意見かと思います。この問題は、われわれの理想は完全雇用、通年雇用、正規の職業につくということをまずやはり努力しなければ、同和地区の人にとって失対事業ということが幸福だとは私は決して思わないわけであります。したがって、就職促進措置というものをはずして、直ちにストレートに失業対策事業に入る地域に指定するということは、なお産炭地域その他と総合的に検討してまいりたい、かように考えております。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 そういう理屈があることは前から知っております。早川さん、前から知っております。そういう理屈があることに対して、しかしながら、そういうことをやってみても安定雇用のないところがある。だから、失対事業に直通することができるようにしろ、安定雇用が紹介できるのに、失対事業にほうり込めと言っているわけじゃない。ところが安定雇用がないわけです。ないところが多いわけです。それで失業多発地帯については、そういう規定があるわけです。それと同じように、それ以上に失業状態が多いところに、なぜその規定を適用しないのかと言うと、いままでの歴代の労働大臣は、そのとおりだ、適用すると言うわけです。早川さんも同じ考えになっていただかなければならない。そう言っておきながら、職業安定局でブレーキをかける。国会国務大臣との約束に局長がブレーキをかけるということをやっているわけです。そういうことについて、それでは綱紀が紊乱します。労働大臣の意思が局長によってひん曲げられるということであってはいけないと思う。いまのその雇用の問題の論戦は幾らでもやりますよ。そういうことを詰めてどんどんやるけれども、それができないところがあるときには直通の道を講せよ。もちろん安定雇用でやることはかまいません。失対事業に入れてからもそれをやってもかまわない。かまわないけれども、安全雇用がなくて、そういうことがあって、失対事業に入れないからぐあいが悪い点があるので、そういうことを言ってあるわけです。時間がありませんから、これは社会労働委員会でまた詰めさせていただきます。そういう点については、従前の論議の過程を、早川さん非常に聡明な方ですから、大橋さんはいま病気入院中でございますけれども、前回の経過をよく調べられて、そのとおりのことでございまするから、積極的にやっていただきたいと思います。  機関を少し延ばしていただきましたが、おいでになった国務大臣の皆さま方にお一人ずつ申し上げたいことがございます。引き続いて申し上げますが、農林大臣おられますね、倉石さん、農林大臣からひとつこの問題全体についての決意のほどを伺っておきたいと思います。
  77. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほどお話のございました同対審答申につきまして、御存じのように、農山漁村同和対策、これは土地基盤の整備、近代化設備の導入等についての総合施策を実施して、その事業規模の拡大に努力してまいっております。しかし、四十二年には、私ども予算にも計上いたしてありますように、先ほど来しばしばここで質疑応答がございました、ああいう総理大臣はじめ各大臣が申し述べております趣旨に沿いまして、われわれの担当の仕事を遂行してまいる決意でございます。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 ことしの予算は非常に不十分で、問題になりませんが、あとのほうの御決意はそれでけっこうであります。ただ、農林省に特に申し上げておきたいことは、同和対策を進める意味においてモデル地区という妙てけれんなことを各省でやっております。それの一番はなはだしいのが農林省であります。モデル地区というのは、普通の意味で、一つの地域に集中的にいろいろな施策をやって、その効果を見るというようなかっこうでやっておられるようであります。そういうふうにしてモデル地区というのをつくっておられますけれども、この同和対策に関する限りは、モデル地区というのは非常にその精神に偏向を来たすことになります。モデル地区ということをやることによって、ほかのそれを施行されない部落との格差が起こります。それを早くしてもらいたいために、ほんとう権利であるべき要求政府の有力者あるいは与党の有力者に、ひたすらにこいねがうというようなふうていになっているわけです。そういうようなモデル地区というんじゃなしに、全同和地区に対して、一斉に強力にこの問題を実行していかなければならない。そこで、農林省はモデル地区というような――ほかの点ではいいことばでございますが、この同和地区に関する限り、モデル地区というのは部落間の差別を生み、部落権利として要求すべきものを、権力者にひたすらにこいねがう、権力者は恩恵的にそれをやるというようなことに通ずるものがあります。そういう点で、農林省はモデル地区について一番態度が悪いわけです。それを直していただくようにしていただかなければならない、それについての農林大臣のお考えを伺いたいと思います。
  79. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林漁夫の関係につきましては、非モデル地区それからモデル地区、いまお話しのようにいろいろありますけれども、別に限定することはいたしませんで、地域住民の意向を尊重して、一般地区に対しましてもモデル地区と同様の対策を現に実施しております。したがって、今後においてもそのような方針に従って、同じように措置をしてまいる考えであります。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 時間がありませんから、これはまた分科会や農林委員会のほうに移しますが、ほかの方に伺いたいと思います。  外務大臣おられますか。お帰りになりましたか。――それではその次に、通産大臣おられますね。通産大臣にお伺いしたいことは、同和関係の部落の中小零細企業の問題であります。同和関係の金融公庫というものを熱望している向きが多いわけであります。それは大蔵省とも関係があるわけです。特に零細中の零細でございますし、また、中小企業金融公庫等の中小企業金融機関は、中小企業の大のほうに、厚くて小のほうに薄い。零細企業には特に薄いという状態であります。担保その他の条件もございます。そういうことをできるだけ軽くして、同和地区の零細企業あるいは零細農業の場合もそうでございまする、けれども、そういうことに対処できる同和金融公庫というようなものをぜひつくる必要があろうと思います。それについて、先ほどから論議を申し上げておりますことを頭に入れられて聞いていただきたいと思う。問題を全部知らないで、そういう金庫、公庫をあまりつくっちゃいけないというような一般的な風潮があります。各政党でもそういうことを言います。しかし、この問題の本質を知ったならば、ほかのものはやめても、これはつくらなければならないということになろうかと思います。臨時行政調査会の答申もそのようなことを示唆いたしております。それについて通産大臣が積極的に進めていただきたいと思う。なお、その問題についても、同和対策特別措置法の中に入れる努力をしていただきたい、そのことについての絶対に前向きの答弁を、要望いたします。
  81. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話のとおり、同和地区には零細企業者が多いことは私たちも承知いたしております。そこで一昨年来から、この零細企業に対して特別な対策を講じよということで、零細企業金融については特別な無担保、無保証というような金融対策を講じております。したがいまして、同和地区に対しても同じように、やはりそういう金融の道があると思うのでありまして、いま、特に同和地区に対して特別の金融機関を設けるという御要望がありましたが、その点につきましては、これは零細企業金融として一緒に扱ったほうがかえっていいのではないかという意見もあるのでありまして、なお、御趣旨の点はよくひとつ考慮したい、こう考えております。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 続けて菅野さんに。考慮するということですから、十分に考慮をしていただきたいと思う。そういうものを設けなくてもいいのじゃないかと言う人は、その人間には同対審答申を即時二時間かけて全部読ませてください。読まないでそんなことを言うわけです。全然知らない連中が、ただ一般的に金庫をふやしたらいけないという、ばく然とした論調に従ってそういうことを言うわけです。そういう無理解な者には絶対に、即座にこれを読ませるということをしていただきたい。それで、普通に一般的にやりますと、同和地区の多いところに、やはり地域的に配分が少なくなるということになります。ですから、そういうときに特別なワクをつくるとか何かしないと、同和地区の多いところには、特にそういう必要のある零細企業が多い、ところが、普通の人口率で分けた資金量じゃ、それは間に合わない、そういうこともありますから、そういう同和金融公庫というものは必要であるということを御認識いただいて、考慮ではなくて前進、善処――善処ではなくて実行をしていただくように、それを同和対策特別措置法に入れるようにしていただきたいと思います。  その次に、厚生大臣にお伺いをいたします。厚生省は、前からこの問題に一つ対処されていないときに、窓口の役割りをしておったそうであります。環境改善その他については、ちびちびながら努力をしてこられました。厚生大臣は、その歴史的な使命から見て、これは総務長官がまとめられますし、総理大臣が一番熱心ですけれども、それと同じようなハッパかけ役として活動をしてもらわなければならない。環境改善については、これは建設大臣とも関係がありますので、御一緒にお聞きをいただきたいと思いますが、いろいろ環境改善をやられる。やられて、それを先ほどみたいな補助率や何かの問題も全部片づけてどんどん推進されなければなりませんが、ところによっては谷間にあったり、がけの上にあったり、河川敷にあったりする村ではやり切れないところがある。これは建設大臣と両方に御質問しておきますけれども、そういう場合には、村全体を移さなければ完全な環境改善ができないというところもあります。そういうようなことも頭に入れて、こちょこちょとした問題ではなしに、雄大な計画をもって、それを迅速にやるというような決意を持っていただかなければならないと思う。その問題について、厚生大臣と建設大臣と両方からひとつ御答弁を願いたい。
  83. 坊秀男

    ○坊国務大臣 だんだん八木委員の御意見を承りまして、非常に重大なる問題である、かように考えております。さような意味におきまして、同和対策協議会から意見も出ておりますし、厚生省といたしましては、おっしゃるとおり、ずっと昔は厚生省がこの窓口であったことも私は聞いております。さような意味におきまして、この問題について、私としてでき得る限りのことをやってまいりたい、かように考えております。特に厚生省所管といたしましては、八木さんちょっぴり、ちょっぴりとおっしゃられましたけれども、今日までも社会福祉、生活環境といったようなものについは、鋭意努力を重ねてまいったのでございますが、さらに一段と努力を傾けてまいりたい、かように考えております。
  84. 西村英一

    ○西村国務大臣 建設省といたしましては、公営住宅、改良住宅あるいは住宅改良の融資、下水路、それから区画整理、そういうようなことをやっておる次第でございます。八木さん非常にこの問題は御熱心なことは、かねて私は承知をいたしておりますが、この際、せっかくでございますから、来年度のこれらにつきます大体のことを申し上げて御参考に供したいと思います。  大体昭和三十五年から昭和四十一年までにこの同和対策で取り上げました改良住宅の建設は、五千八百八十三戸でありまして、一年に平均しますと八百四十戸ぐらいであったのでございます。それが来年度昭和四十一年度には千三十六戸。公営住宅につきましては、この六カ年計画では――三十五年から四十一年ですから七カ年の間です。この間におきまして五銭三百三十一戸を建てました。年平均にならしますと七百六十戸しか建っておりませんが、来年度は二千四百六十戸建設いたします。住宅改良費の融資につきましては、これまでは約五百件ぐらいしか取り扱っていませんが、来年度は千件ぐらい取り扱うつもりでございます。その他下水の問題とか、あるいは区画整理の問題とか、いままで一般には基準として取り上げられておらなかったものも、基準を緩和して取り上げるつもりでございます。総計いたしまして、いままでは年平均十億ぐらいであったものが、来年度は、建設省関係で三十三億の費用をつぎ込む次第でございます。しかし、いま御提案になりました、非常に危険な場所もあるというようなこともありますので、今後十分この問題には前向きで取り組んでいきたい、かように思っておる次第でございます。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 時間の関係上、要望だけ申し上げておきます。  建設大臣は、住宅の問題は次の質問で申し上げるつもりでございましたが、そちらから申されました。御努力のあとは認めますけれども同和地区における住宅の逼迫した事情は、この程度ではまだまだ解決をいたしません。これにさらにマルをつけた、一つ単位を上に上げた程度でなければ早く解決をしないわけであります。特に熱心な御推進を、きょう御決意をいただいた立場において、今後の熱心な前進をひとつお願いをいたしておきたいと思います。それから、大々的な村移転というような問題についても、積極的にひとつどんどんと善処をしていただきたいと思います。また建設委員会分科会でこの問題を詰めて、西村大臣の御熱意を伺いつつ、ひとつやってまいりたいと思います。  それから、おいでいただいた国務大臣の方々に御質問申し上げないと、来ていただいてあれなんで、あとの国務大臣に御決意のほどを一言ずつ伺いまして、それから最後の締めくくりに一言さしていただいて終わりたいと思います。  各国務大臣から御決意のほどを一言ずつ伺いたいと思います。委員長のほうからひとつ御指名を……。
  86. 植木庚子郎

    植木委員長 剱木文部大臣。
  87. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 はなはだ私ごとを申し上げて相すみませんが、私は、自民党の政調の中にございます同和対策の特別委員会委員長な数年いたしまして、この問題につきましては真剣に取り組んでまいったつもりでございますが、しかし、まだ不十分であったことは私も認めます。教育関係におきましても、今後十分努力してまいりたい所存でございます。
  88. 植木庚子郎

    植木委員長 田中法務大臣。
  89. 田中龍夫

    田中国務大臣 今年の二月の答申、一昨年の八月の答申、この二つの答申の上に八木先生の御意見を加えまして、これを総合いたしまして、考えることが二つございます。  私の役所には基本的人権をめぐる担当官といたしまして、本省には十六人の少数でございますが役人がおります。それから、全国法務局には百七十名の人員がおります。その手足となって働いてくれております人権擁護委員は、全国に九千二百名に及んでいる。これは法律の上では二万名まで置けるのでございますが、現在は予算の都合上半数足らず置いてあります。そういうものが置いてありまして、大体八千五百件の人権擁護に関する案件を受理いたしまして処理をいたしておりますということであります。  ただいま御意見を伺いまして考えます第一は、これらの関係の人々が、この憲法基本的人権として差別をされない本本的人権のあるという、この重大な、深刻な重要性をもっと深く認識する必要があるということが一点でございます。  それからもう一点は、童話地区をめぐる、一口に申します周辺地域、その周辺地域の人々が認識を改めることが非常に必要であろう。  この二点に重点を貫きまして、乏しい予算でありますけれども、また乏しい人員でございますが、その範囲において全力を傾けて、御期待に沿うように人権擁護の任務を来たしたい、こう考える次第であります。
  90. 植木庚子郎

  91. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 この問題に関しましては、総理の御決意も承りましたので、真剣に御協力をいたしたいと思います。
  92. 植木庚子郎

    植木委員長 増田防衛庁長官。
  93. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 自衛隊におきましては、防衛対策につきましてきわめて熱心に対処いたしております。教育の方針その他についても、法の前に人間が平等であり、人間性の尊重、基本人権の尊重という見地から、教育方針を徹底さしてまいる所存でございます。
  94. 植木庚子郎

  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済社会発展計画では、調和のとれた、格差のない社会の建設というのを目ざしておりますので、生活環境にいたしましても、雇用計画にいたしましても、御指摘のような方向で解決していきたいと考えております。
  96. 植木庚子郎

    植木委員長 松平行政管理庁長官。
  97. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 同和対策の問題はきわめて重要な問題でございますので、先ほどお話のとおり、臨調の答申の線に沿いまして慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 水田大蔵大臣と福永官房長官、内閣の番頭役と、さいふのほんとうの大番頭と、このお二人がおられますから要望しておきたいと思いますが、きょう申し上げたことは、私は実は、これは何回も言っておりまして、何回もやりたくないのです。実を言うと、ほかの問題の質問で、たくさんしたいことがあるのです。ところが、閣僚がかわられますと問題が沈滞するので、毎年どうしてもこれをやらなければならない責任があるわけです。そういうことがないように、ずっと閣議でいつもこれについて熱心な姿勢でやっていただきたいと思いますし、それから、大蔵省を預かっておられます水田さんは、先ほど、いつも御熱心な水田さんに少し風当たりがきつかったようでございますが、たとえば、後進国に対して、後進国のほうから先進国に対して援助、協力を求めてきて、国民所得の一%を拠出してくれという話があると思う、日本が〇・五しか出さないで問題になりました。世界じゅうの後進地域に対して、世界の世論として、国民所得の一%を出してくれというような要請がある時代でございますから、日本の同じ国の中で同じ同胞が、ほんとうに人権を侵害されて何百年きて、この百年ほど非常に貧困になった問題を根本的に直す、その職業を直す、あるいは労働の問題を解決をする、あるいは小さな農業、小さな商業、小さな工業の問題を解決する、水産業の問題を解決する、あるいは環境を直す、あるいは教育の問題に対処するというような問題で、絶対に金を惜しんではならないと思う。水田さんは、歴代の大蔵大臣がこういう問題が盛り上がってこないときからのあとを受けられて、この問題の重要な時期に大蔵大臣になられたので、いままでの大蔵省の方々の考え方を変えるにも相当の困難があろうと思います。しかし閣僚として、総理大臣の意見と一緒に決意を固めていただいたので、大蔵省のたとえば主計局におもに申しましたけれども、融資の問題では理財局があります。国有財産の問題で、ほんとうに狭いうしろの山を開いて家を建てたいときには、またそういうような関係の省も関係があります。それからまた、起債の問題を、きょう言う時間がございませんでしたけれども、そういう関係の自治体が起債をするときにはこれを認める、あるいはまた利子補給もするというようなあらゆる方策で、資金的にこの問題を前進していただくのが大蔵省の責任であろうかと思います。いままでのことは私とやかく申しません。きょう御決意をいただいたその瞬間から、大蔵省の端から端まで、このきょうの御決意のほどが浸透して、一々何回もぎゃあぎゃあ大きな声で言わなければ問題が進まないようなことではなしに、この問題でこうしたいが、こういう問題について検討してくれと言ったら、すぐすっと入るように大蔵省の全員に侵透させていただきたいと思いますとともに、それを大蔵大臣として、次年度の財政上、金融上の問題、起債上の問題について十二分に対処をしていただきたい。それから、もし大蔵大臣が次のだれかにバトンタッチをされるときには、その大蔵大臣には絶対に厳正にそれを申し送りをしておいていただきたいというふうに思うわけであります。その点についての大蔵大臣官房長官との一〇〇%の前向きの御決意を承っておいて、次は分科会や各委員会に移りたいと思いますので、ぜひ全面的な御決意のほどをひとつ承っておきたいと思います。
  99. 水田三喜男

    水田国務大臣 各省施策には十分御協力いたすつもりでおります。
  100. 福永健司

    ○福永国務大臣 八木さん御発言の御趣旨を体しまして、善処いたしたいと存じます。
  101. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――    千後一時二十二分開議
  102. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算に対する質疑を続行いたします。和田耕作君。
  103. 和田耕作

    和田委員 きょうはこれから第一に物価の問題、その次が医僚保険等の社会保障関係の問題、最後に労働関係の問題と、この三点を大臣の皆さん方にお伺いを申し上げたいと思います。  最初に、質疑の参考にと思いまして、大蔵大臣に一言お伺いをしたいことがございます。  予算委員会でもっていろいろ質疑をされる、そこでいろいろ修正をしたい問題が出てくる、こういうような問題を大蔵大臣として――まあ大臣としての答弁がしにくいことでございましたら個人でもけっこうですけれども、修正の問題についてどのような考え方ができるのかということでございます。たとえば、現在東京駅で妙な形の爆発事故がある、あるいは今度の都知事選挙で、杉並の団地の上のほうから空気銃で撃つ、精神に障害がありはしないかというような人たちがいろいろな事故を起こしておる。これは現在の社会不安の問題の一つなんですけれども、こういうような問題を何とか至急に解決しなければならないということがあるわけだと思います。この問題、たとえば五十億の予算があれば、大体現状では満足ではないけれども一応の措置がとれるという判断に私が達して、それをお願いを申し上げた場合に、大蔵大臣もそれは、よろしかろうということで御承認なさる、その場合のそういうふうな修正について、予算の体系その他を著しくこわすとは思わないのですが、たいへんめんどうなものかどうかということでございます。その問題をひとつお伺いをしてみたいと思います。
  104. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう問題に対処するために予備費の制度がございますし、必要な場合に予算の補正という制度がございますので、政府提出の予算案決定の前にこれをさらに修正するということは、私どもは大体しないのが本則であろうと考えております。
  105. 和田耕作

    和田委員 その場合に、修正してはいけないという法律的な何か根拠のようなものがございますか。
  106. 水田三喜男

    水田国務大臣 修正してはならぬという法的根拠は別にないと思います。
  107. 和田耕作

    和田委員 そうであれば、予算の修正というものも法律的には可能なわけですね。慣例としてはそういう慣例はあまりないわけですか。
  108. 水田三喜男

    水田国務大臣 昔、特別会計の修正をやったという例はあるそうでございますが、本予算の修正というのは、例はないようでございます。
  109. 和田耕作

    和田委員 私は、この問題を特に重視したいと思いますのは、最近これは新聞紙上のいろいろな論説、雑誌の論文なんかにも載ることですけれども国会予算審議という問題について、これが全然修正ができない、大きな項目はむろん責任を持って出されておりますからできないと思いますけれども、そう大きな問題でなくても、なかなか事実上修正ができないということになりますと、国会予算審議というものについて、お互いに議員がなかなか一生懸命になれない、こういうような風潮が出ておるのではないか。したがって、こういうふうな場で必要以上に、たとえば防衛問題とかあるいはそういうふうな問題が次から次へと貴重な――これは大事でないとは申し上げませんけれども、貴重な時間の大部分がそういうふうにとられてしまうという感じを私自身が持つ。全くこれは一年生議員で、しろうとなんで、こんなことを言うのはおかしいかどうかわかりませんけれども、私自身はそういう感じを持つわけなんです。したがって、予算審議というものをもっと、実のある審議にするようにしなければならないんじゃないかという感じを持つわけで、この問題をお伺いしたわけですけれども、やろうと思えばできるわけですね。
  110. 水田三喜男

    水田国務大臣 国会は国権の最高機関でございますから、やろうと思えばこういうことはできる。しかし私の考えでは、予算というものは、これは政府施策を集中的に表現したものでございまして、これが否決されるというようなことは、政府が運命をかけているものでございまして、この認められない場合は、政府が辞職するというぐらいの覚悟をした問題で、政治責任の所在をはっきり示すものが私は予算案だというふうに考えますので、これがみだりに修正されるということは、それ自身政府責任の問題にまで及ぶ重大なことであって、私はそういう意味予算というものは簡単に修正されるべきものではないというふうに考えております。
  111. 和田耕作

    和田委員 そういう答弁があることは承知しておりましたけれども、それで最初に一つの例を申し上げたわけでございまして、厚生省精神衛生関係の予算が一応出ている、それが足らないので五十億程度の金なれば、しかもそれが緊急に必要なものであれば、――必要かどうかということは申し上げたわけですけれども、それはいま水田大蔵大臣からの御答弁で、原則としてはなかなかむずかしいことだけれども、やろうと思えばできるということに了解してよろしゅうございますか。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 やろうとしてできないことはないと思います。
  113. 和田耕作

    和田委員 それに関連しまして、私、国会議員になっていろいろと考えるのですけれども、これは一般に有識者によく言われることなんです。つまり国会でもっていろいろ審議をする、この予算審議をしていただきたいというけれども予算全体が修正できないようなものをなかなか本気になれない。それに対する付帯条件、希望意見、将来へのあれをするということはありますけれども、やはり何らかのそういう中身がなければならないということを、私自身だけではなくて、私の知る範囲の多くの有識者はそういう感じを持っておるわけでございまして、そういうことを御質問申し上げたわけですけれども、たとえば、水田大蔵大臣、こういう問題はどうでしょうか。昨年から、大蔵大臣の御努力で国債というものが川まして、国債というのは、ある意味で、上はむずかしいけれども、その範囲内であれば余裕のある弾力性のあるものだというふうな感じがするわけですけれども、たとえば今年度五兆円の予算の規模がある。その一%、五百億というようなワクを、そのような重要な、議員の側から、主として野党の側から、内容はいろいろむずかしい問題ですけれども、議員の側からの要求に応ぜられるような資金のプールというようなものを設定できる、こういうようなことを考えるのですけれども、ひとつこういう問題を含めて御検討をいただけないかと思いまして……。
  114. 水田三喜男

    水田国務大臣 これまでそういう問題はございまして、資金を一定額保留しておくという予算の組み方が可能かどうか、これはもっぱら使わないほうの、いざというときには使わなくてもいいというような目的からそういうことが考えられたことはございます。今回の場合は、それを使えるようにということだろうと思いますが、これはたびたび私どもも昔から研究したことでございまして、非常にむずかしい問題でございますか、研究の余地はあろうかと思います。
  115. 和田耕作

    和田委員 どうもありがとうございました。  それでは本論の物価の問題についてお伺いをしたいと思います。  経済企画庁長官にお伺いをしたいのですけれども、今度の内閣ができまして、物価安定推進会議という総理大臣を長にする強力な物価対策の本拠ができたわけですが、そのメンバーになっておる方々を拝見しますと、前の物価問題懇談会の責任者をしておられた中山伊知郎さん、その他都留重人さん、有沢広巳さんといったその道のベテランの人たちが、同じく推進会議の中心になっておられる。こういうようなことは非常にけっこうだと思いますけれども、と申しますのは、私は物価問題懇談会、――前内閣のときにやった物価問題懇談会というものの趣旨が、あるいはその果たした役割りというものが、かなり大きいという判断をしますがゆえに、そのような人たちが引き続いてやるということは了承するわけですけれども、そこで前の物価問題懇談会で十一の提案をなさった。その提案のたびに新聞にも大きく報道されたし、それだけでもある意味を持っておったと思うのですけれども、この十一の提案が、今年度の予算並びに政府施策の中に、個別的な問題はいろいろと反映されていると思います。またそういうふうな報告も私拝見をしたのですけれども、あの物価問題懇談会が取り上げた中心の幾つかの問題については、無視ないし逆行している感じがしないでもないということでございます。この問題を経済企画庁長官、どのようにお考えでございましょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あの提案の全部を文字どおり実現できていないことは仰せのとおりであります。ことに、諸制度、慣行等々に基づくものにつきましては、なかなか一朝一夕で直らない。これは政府自身の問題でもございますし、また政府以外にも同じような問題があるわけでございますが、しかし大筋で申しますと、たとえば財政のあるべき姿について、国債等について一つの提言をしておる。それについて私どもはあの提言のとおりはできておりませんけれども、前年度の国債を減額し、あるいは今年度当初予定しておりました発行額を多少下げておる、あるいは予算の五兆円という規模をともかくも守ってきたといったようなことは、やはりああいう提言がありまして、そこから起こります世論の認識を反映して、私どもそういう措置をとったということは申し上げてもいいのではなかろうか、この点はあの提言をなされました方の中でおもな役割りをになわれたある方でありますが、この四十一年度及び四十二年度の国債に関する政府施策を見ておられて、満足とは言えないけれども、ある程度われわれの意をくんでおると考えるというふうに言っておられますので、まあ、私どものそういう気持ちはくみとっていただいておるのではないかと思います。  むずかしいのは土地問題でございますが、これは今年度の予算では住宅公団あるいは住宅金融公庫の宅地取得のための財源措置であるとか、あるいはまた公共用地の先行取得のための地方債の措置であるとか、そういったものはとられております。しかし根幹になりますところの部分は、やはりその後に宅地審議会から答申のございました問題でありまして、これは物価問題懇談会が、答申が出たときにはそれを尊重するように提言をしておるわけでございます。これについては先般もちょっと申し上げましたが、総理大臣を中心にまず関係閣僚がこの問題についての根本的な態度をきめますために、事務当局でなく、まず閣僚レベルで提言の内容を聞こう、これは明日あたりに予定しておるのでございますが、それによって前へ進めるものとすればひとつ困難を排除しながら進もう、ちょうどこういうところにおるわけでございます。この点も、もとはと申しますと、物価問題懇談会の提言を背景にしたものだ、こう考えておりますので、私どもに対してもこれからもかなりいろいろな指針をあの提言は与えてくれるもの、こう考えておるわけでございます。
  117. 和田耕作

    和田委員 いまお話のありました幾つかの問題で、あの精神が無視ないし逆行しておるということを申し上げたのです。土地の問題でも、この国会に幾つかの項目のあの提案の線に沿った案が出ておりますけれども、しかし、あの提案の土地問題に対する趣旨と申しますのは、つまり一つ一つばらばらにやれば逆に物価を引き上げるという結果になるから、くれぐれも注意をするようにということが一つの根幹になっているような感じがするわけです。そういう配慮が、この個別的な、この国会に出ておる提案の中には含まれていないような感じがするわけでございます。あの提案はそういうふうな趣旨のものだから、非常に金もかかり、準備もかかるけれども、一挙に包括的にやってもらいたいという趣旨精神があの底に流れておるという感じがするのですが、そういうような点から見て、個々の問題としては取り上げられておっても、あの土地問題についての提案の精神が不十分なだけでなくて、無視されておるという感じを持つわけでございます。どうでございましょう。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 土地問題についての提案は幾つかに分かれておるわけでございまして、確かに仰せのように、ばらばらでなく、一つにまとめて考えろという考えに立っております。ただ幾つかに分かれておりますその中で、ただいま御提案をいたしましたものは、前回に引き続きまして、土地収用法の関係、これは事業認定時で補償価格をきめたいという点と、それから税法関係を、もうすでに御提案いたしましたか、あるいは不日御提案を申し上げるかでございますが、この両者は、両方ともそれ自身が逆の作用を持つとは考えられません。すなわち事業認定時に補償価格をきめるということは、これが逆に土地の高騰をもたらすということは、それ自身では、ないように思います。それから税法関係でございますが、これについては、私自身は、あの物価問題懇談会の提案あるいは宅地審議会答申と多少違った意見を持っております。その点は、つまり未利用税等々の課税に関するものでございまして、私が過般申し上げましたように、どうも新しく税を創設するということは、地価を抑制することにならずに、逆の効果を持つのではないかという、多少提案とは違った考えを持っておることもございまして、過般大蔵大臣からあるいは建設大臣からお話のございましたように、この点の可否はもう少し検討をいたしたい、こういうことにいたしております。  それから、しかし大部分は、物価問題懇談会は、来たるべき宅地審議会答申が出たならばそれを尊重するようにと、こういうことで、ほとんど同じことでありますために、正式の答申に譲っておるわけでございます。答申は三月二十四日に出たわけでございまして、したがっていまさしずめ私ども、あの宅地審議会答申をできるならば前向きに実現することによって、ほぼ物価問題懇談会の土地に関する提言のかなりの部分をなし得る。そのほかに相当大きな公共用地を東京周辺に一挙に政府は取得すべきであるという提案がございます。しかしこれは三千億ないし四千億の金がかかりますために、このたびの予算においては、先ほど申しましたような、それに比べますとスケールの小さな予定しかできておらないのでございますけれども、しかしこれは土地利用計画の作成なんかと相まってやらなければならないものでございましょうから、いずれにいたしましても、宅地審議会答申を私どもがどういうふうに扱い得るかということにかかってくるのではないかと思っております。
  119. 和田耕作

    和田委員 それからもう一点は国債の問題でございます。あの答申では昨年度を下回らなければならないというはっきりした明文があるわけでございますけれども、今年度の国債は昨年度よりは上回っておるじゃございませんか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのところ発行予定の金額は、すでに発行されました四十一年度分を上回っております。しかしこれは先般来大蔵大臣が言明しておられますように、年度が進むにつれまして、なお調整の余地のあることでございます。それから国債依存卒は、当初を比較いたしますと、御承知のように下がっておるわけでございます。それから、実はあの答申を書かれました方々が前年度を下回るように書かれましたのは、多少意識的に衝撃的な表現をしたのだということを御自分で言っておられまして、私どものいたしましたことは、決して満足ではないが、方向としてはよろしい、こういうような評点を提案者からもらっておるよりに考えます。
  121. 和田耕作

    和田委員 それからもう一点、著しく無視ないし逆行しているという例で米価の問題でございます。米価の問題でも、あの書き力は、できるだけ上げてはいけないという趣旨の文章があるだけでなくて、農家の生産費並びに所得の補償という問題は、指数が出てくる、これ以外のよけいな追加をしてはいけないということがあったと思いますけれども、そういうことが、これは政府自身の責任というより、いろいろ問題があると思いますが、しかし結局は政府がおきめになったことでございますけれども、そういう点でも答申趣旨に反しておる、あるいは逆行しているというふうに思うのですが、どうでしょう。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 提案が出ましてからあと、政府としてある程度意思決定をいたしましたのは、いわゆる予算に組まれております予算米価、今年の十月からの消費者米価の問題でございますが、これに関する限り提案に反しておるというふうには考えないのでございます。問題は、今後生産者米価を決定いたしますときに、いわゆる政治加算といったようなものは排除すべきである。生産費所得補償方式そのものは認めるから、それによって純粋な決定をしろ、こういうのが提言でございまして、したがってこの点はこれから私どもがどういうふうに生産者米価をきめるかということによって評価が分かれてくることになるのではないか、こう思っております。
  123. 和田耕作

    和田委員 私がこういう一連の質問を申し上げておりますのは、いろいろけちをつける意味ではございません。今後、せっかく総理大臣を中心にした物価上安定推進会議というものをおつくりになっておやりになろうとしているわけですけれども、その責任者である中山さん、――またその中山さんは物価問題懇談会の責任者でもあった。中心のメンバーも同じく横すべりに入っておられる。こういう人たち佐藤総理大臣が任命をされたというこの問題について、物価問題懇談会のいろいろ問題点があるとしても、その中心点を政府ははっきり認めての人選であるかということをお聞きしたいために、このことをいろいろ申し上げたわけであります。同じメンバー、同じ中心の活動家を物価、安定推進会議のメンバーにしている以上は、物懇の提案の中心の趣旨を総理並びに企画庁長官はお認めになっている、こう考えてよろしゅうございますか。いろいろこまかい問題は、御意見もございましょうけれども、中心の提案の趣旨をお認めになっておる、その意味で中山氏を頂点にしたああいう人選をなさった、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりと思います。
  125. 和田耕作

    和田委員 どうぞひとつ、この問題はその趣旨に沿って、非常にむずかしい問題ばかりでございますし、一挙にできないことはよく承知しておりますから、できるだけ意欲的におやりになっていただきたいということを申し上げたいと思います。こういういままでの企画庁中心のいろいろな大きな計画が行なわれたのですけれども、この計画は、事実実行されたもの、されないもの、いろいろ評価が違うと思いますが、大体その結果がどうなっておるかということについて責任をお持ちにならないというような感じがあるわけでございまして、今度は、申すまでもなしに総理も企画庁長官も認めておる物価を一日も早く、安定をさせるという強い決意のあらわれと受け取りまして、しっかりとやっていただきたいと思う意味で御質問申し上げたわけであります。  その次の問題ですけれども、企画庁が昨年発表された文書に経済社会発展計画というのがございます。これも新しい決意をもって宮澤長官が意欲的におつくりになられたものだと思いますし、あれにお書きになっているものを私は拝見しましたけれども、非常によくできたものだという感じがいたします。部分的なものとしては私いろいろ意見の違ったものもありますけれども、大体あの方向はいいと思いますが、あの経済社会発展計画の中に、最近の三十五年から四十年までの物価のアップの六%から、この計画年度の四十六年度には三%に引き下げてくるという最終的な一つの目標が立てられているわけでございますね。こういうような目標を立てる。ということ自体は、現在物価の問題にすれば、今後どうなるかもわからぬという心配が、労働組合の人たちにしても、一般国民にしても一番気になる点でございます。したがって、そういうはっきりした目標を立てるということの意味は現在非常に大きい、そういう意味で高く評価をするわけですけれども、さてあの内容を、よく伺ってみますというと、六%台から三%に引き下げてくるという、この方針を裏づけるものが非常に欠けておるという感じがするわけです。まあきっちり三%ということは申しませんが、大体そういう線にするための、たとえば四十三年は大体どれぐらいにする、四十四年は何ぼにする、四十五年は、四十六年はという、年度計画まで詳しくいかなくても、大体そのような計画的な裏づけがあるかどうかということをお伺いしたい。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あの計画はいろいろ政策的に考えましたいわゆる文章になっております部分と、そのある程度裏づけになります計量経済学によります電子計算機を使いました作業と、その両方からなっておるわけであります。それで最終年度に三%台の物価を実現するということは計算のほうで申しますと、結局、私も深い知識で申し上げるわけにまいりませんが、マクロモデルというものをつくりまして、これは何十本かの連立方程式になるわけでございますが、それを一度に満足させる数値を求めていくわけでございますが、いろいろな数値を入れまして、電子計算機にかけましていわゆるシミュレーションというものをいたすわけでございます。そういたしますと、いろんなシミュレーションが可能でありますが、その中で、消費者物価が四十六年に四%台に達するような、そういう結果のシミュレーションは全部捨てまして、四%に乗せない結果が出るような部分だけをとったわけでございます。その中にもいろんな組み合わせが可能でございますけれども、その中で比較的成長が高くて、しかも物価を四%に乗せないというシミュレーションを一つ最終的にとったと、こういうことになっておりますから、従来のように機械あるいは数学を用いずに、ただかってに、これなら三%でいくであろう、ここはちょっと鉛筆をなめればいくじゃないかといったような、そういうかってのきかないような作業をいたしております。したがってその作業に関する限りは三%台で済むはずだという結果になると思うのでございます。  さて、政策の上では、それについて、そういうことが少なくとも計量の上では可能であるから、したがって現実の政策はどういうふうにやっていけばいいかということにつきましては、まず最初の前半で国民に消費者物価というものはやや騰勢がおさまったという安心ないし認識を与えて、それによっていろいろな行動を国民がしてもいいような、そういう状況をつくるということを書いておるわけでございます。したがってそれは、前半においては、いろいろな政府の関与し得る料金等々の決定もある程度控え目にせよ、それによってもう物価はあまり上がらないという安心が築かれれば、また経済はその前提のもとに立って運営されるであろう、したがって前半を特に気をつけろ、そうして最終年次にはそのシミュレーションの結果によればこうなれるはずである、そういう作業でございます。でございますから、具体的にはそれに従って、ことに前半分に気をつけて施策をしていくということになると思うのでございます。
  127. 和田耕作

    和田委員 六%から三%へのあの数字をお出しになった根拠は大体わかりました。しかし、いまのお話の中でも、経済審議会の計量部会で現在政府が成長率としておられる八・三%という、この成長率で見れば、いまのような方式ではじいてみれば、物価はいまの計画年度にせいぜい四%ぐらいだというような数字が出ておるようでございますね。こういう四%とはじき出たいまの数字的な根拠が三%になるというためには、何か政策的な意図が入ったわけですか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、つくりましたマクロモデルが非常に金利に鋭敏なモデルだったようでございます。これは数値でいろいろいたしますと、しかたのないことのようなんでございます。そういったようなことから、ある程度金利が下がりますと自然に成長するというような、現実と少し違ったようなことが敏感に起こり過ぎておるように思いますが、最終的には三%台、四%ぎりぎりというようなことで、したがって政策努力としてやはりできるだけ、ことに前半分には気をつけなければいけない、こういうことになったものと思います。
  129. 和田耕作

    和田委員 その意図はよくわかりますが、先ほども申し上げたように、単なる一つ数字というものではなくて、できるだけすみやかに確実に、あるいはそれよりももっと下目に――下目というか、早くできるように実現をするというのが緊急な大事であるわけだと思います。私、そういう点で少し危惧の念を感じますのは、たとえば今年の十月に米価が一四・四%上がる、その前の六月に再び米価審議会というものが行なわれて、生産者米価の問題が審議され、当然これはある程度上がらざるを得ない。これはたてまえからいって上がらざるを得ない問題があると思いますけれども、こういうようなことを考えますと、公共料金ないしは政府がいろんな形で関与し得る物価に対しては、もっと品目別に、具体的にこの年度間に三%台に引き下げるような計画が必要だというように思うのです。たとえば今度の米価の問題でも、生産費所得補償というものから見れば、特に物価の問題を考慮するということになれば当然上がらざるを得ませんが、その点、どういうことでございましょう。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは非常に具体的な問題でございますので、所管の大臣からそういうことであればお答えをいただいたほうがいいと思いますが、ただいまの生産費所得補償方式でまいりますと、都市の労働報酬の三分の二――一割上がりますと六、七%というものは自然に生産者米価に反映されるようになっておるわけであります。そういうこともございまして、実は国民経済の中における賃金決定という問題について私どもいろいろ考えたりするのでございますが、その部分は、おそらくこれは生産費所得補償方式がある限り避けがたいであろう、こう考えなければならないのではないか。ただ、それが幾ばくであるかということについては、ただいまお答えを申し上げることがまだできないということでございます。
  131. 和田耕作

    和田委員 時間がありませんから先を急がしていただきますが、この点で私、特にお願いをしておきたい点は、公共料金につきまして、もっと政府の意欲的な一つの目標を、示すような具体的な措置あるいは目標を考える必要があるということですね。たとえば、電信世話の料金の問題もいろいろ話になっておりますし、まあバス代の問題もあるし、また運賃その他の問題でも、またいまの牛乳なんかの問題を考えますと、今後どういうふうなことになるかもわからないというような不安の念があるわけでございますから、少なくとも政府がこういう計画をお立てになる限りは、政府の意図でどうにでもなるとは申しませんけれども、大きな影響の及ぼせる公共料金並びにそれに準ずる重要な物価については、もっと明確な意図を示すような具体的な措置を必要とすると思うのです。その問題はどうでごさいましょうか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは原則論としては仰せられるとおりだと思うのでございます。ただ、ただいまの予算制度が単年度主義をとっておることもございまして、たとえば、ただいま電話の例をお引きになりましたが、将来電話に対してどの程度の財政投融資が可能であるかとか、あるいはその他の会計においては、一般会計からどの程度の出資が約束し得るものであるかといったようなことの見当が立ちませんと、原価計算ができてこない。そういうところまで含めましての長期計画が立ちますと、私どももかなりいろいろなそういう問題の見当がつくことになるわけでございますけれども、遺憾ながらただいまの予算制度ではそういうことが可能でない。実は、それでもある程度見通しをつけるべきじゃないかと仰せられることは、私はごもっとものように思いますが、ただいまのところ、まだ完全にはできないような状態でございます。
  133. 和田耕作

    和田委員 いま申し上げました趣旨を長官は原則としてお認めいただけるように拝聴するわけですけれども、どうかひとつ物価安定推進会議というようなものをせっかくおつくりになりましたので、日本の知能的な人もたくさん集められておるわけでございますから、そういう問題をお含みいただいて、できるだけひとつ確実に意欲的につくっていただきたいと思うわけでございます。  次に、それと関連がございますが、農林大臣にお伺いしたいのですけれども、いまの米価の問題について大臣からもお答えいただきたいのですが、それと並びまして牛乳の価格の問題なんですが、今度消費者の手には二円ぐらいのアップになってはね返ってくるような乳価の引き上げが行なわれたわけですけれども、これはいろいろと問題が出ておるように思います。これは前に上げましたのは、いつでしたか、三年前ですか、お上げになったわけですけれども、今回農林省の行政指導というものをおはずしになって、そしてこういうふうなことが自由に価格を上げるというたてまえで乳価が上げられておる。しかし、行政指導をおやめになるという趣旨は私も賛成ですけれども、これをやめたわ、しかもそれにかわる弊害を除去するような対策あるいは処置なしにやめたという感じがするのですけれども、そういう問題を農林大臣はどのようにお考えになるでしょうか。
  134. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 指導価格制をやめましたことは、ただいまお話にございましたとおりでありますが、元来この指導価格についても、ああいうものをやっているから値が上がるんだというような消費者側からの、反対論もございました。自由に形成されるべき価格の性質のものでありますから、本来ならばやはり自由な形成に待つべきものだと思います。今般それをはずしまして、ちょうど、いま値上げ云々の問題が論議されておる最中でありますけれども、やはり牛乳生産全体については、政府がいろいろめんどうを見ておることは御承知のとおりでありますから、指導価格制をやめましても、いろいろな問題について私どもにも相談もし、また協力的な態度をとっておるのが今日の実情でございますから、私は指導価格制をはずしたからといって、すぐに大幅に非常に値上げになるものだ、このようには思っておりません。
  135. 和田耕作

    和田委員 たとえば、いま現在起こっておる一つの混乱面と申しますか、至急に対策をしなければならない問題の一つとして、小売り段階で、あるいは買い付けのいろいろな段階で、協定による価格協定というカルテル行動、独占禁止法違反のいろいろな事件が起こってくる可能性があると思いますけれども、公取委員長は現在の状態をどのように判断なさっておられるでしょうか。
  136. 北島武雄

    ○北島政府委員 先ほどから問題になっております行政官庁の価格指導、これは私ども独占禁止法をあずかるものから申しますと非常にぐあいが悪いのであります。これは独占禁止政策そのものからいいましてもぐあいが悪いのですが、実行の運用面において非常にぐあいが悪い。はたして価格協定があるや、行政官庁がそれを認めたからやったんだというようなことがありますので、あまり好ましくないのでありまして、これを価格指導をやめて自由競争にまかせるということばたいへんけっこうなことだと原則的には思います。したがいまして、今後、たとえば牛乳一合について一円二十銭生産者のほうに出すことになった。これは生産者関係は団体交渉が認められておりますからいいといたしましても、その後のことが、かりに乳業メーカーが協定してさらにそれ以上に値上げするとか、あるいはまた、小売り業者が協定してさらに上げるということになると、私どもの分野になってまいりまして、独占禁止法違反、こういうことになってくるわけでございます。現在私どもその状況を厳粛に監視しているというのが実情でございます。さらに、現在問題になっておる件がすでに三件ばかりございまして、これについてはすでに実際の審査行動を開始いたしておるわけでございます。
  137. 和田耕作

    和田委員 先ほど申し上げましたとおり、行政指導という制度は望ましくないけれども、それがはずされたあとで適当に国民が困らないように対処する方法なしにはずすということ、先ほどそういうおそれがないかと申し上げたのは、つまり公正取引委員会の活動というものは大体受け身のものでございますし、また発動してもなかなか実効が上がらないようなシステムになっているわけでございますから、これらの問題をもう少し公取の活動が効果的に響けるようにする方法が必要だと思うのですけれども、どうでしょうか、現在のこの運営から見て。
  138. 北島武雄

    ○北島政府委員 本来、価格面については自由競争が行なわれるのが好ましいのでございます。これはもう独占禁止法の精神でございますが、往々にして独占禁止法で認めていないところの地下カルテルがあるわけであります。こういうものにつきまして、私ども厳格な態度をもって摘発につとめているわけでありますが、ただいままでのところ、何と申しましても陣容が手薄でございまして、十全の効果を発揮いたしておるとは私どもも感じておりません。ただし、私どもも、少数の人員ではございますが、及ばずながらできるだけの範囲内において、私の手の届く限りにおいて、有効適切なカルテルの摘発をやってみたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、今後もそのとおりに実行いたしてまいるつもりであります。
  139. 和田耕作

    和田委員 これは、そういうふうな問題が今後たくさん出てくると思います。たとえば、いろいろ政府が干渉する、政府が統制をするという問題が従来からあったわけですけれども、いまの行政指導とか、あるいは国家管理的ないろいろなこと、あるいはイデオロギー的ないろいろな統制計画ということは、現在有害だという状態ですけれども、たとえば、自由な価格の機構が発動できるように市場ができるように、自由な取引を確保するために、これは逆説みたいなものですけれども、自由な取引を確保するための統制計画というものが必要になってくる段階だと思うのですけれども、こういうような問題を、ひとつ経済企画庁長官もぜひとも区別なさってお考えをしていただいて、自由な上取引が必要だからといって、正しい、新しい前向きの計画なりあるいは統制なりというものをちゅうちょしてはいけない。そのような感じがするわけでございまして、ぜひともこの問題をお願いを申し上げたいと思います。  時間がございませんから先へ進ませていただきます。――農林大臣けっこうでございます。  それから次に、賃金と物価と生産性という問題、これは非常にむずかしい問題ですけれども、現在労働組合の側でも、経営者の側でも、政府の側でも、賃金と物価というものは非常に関係がある。どちらが先かということは議論があるとしても、非常に関係があるということは皆さん認めておられる段階だと思います。こういうような状態のもとで、この賃金と物価と生産性というものを、労働者側は労働者側で、経営者側は経営者側で、あるいは政府政府で、いろいろ都合のいい数字を拾ってきて、そしてけんかをする。結局は腕づくでもって分け取りをするというような状態があるわけでございまして、何か共通の、労働者側も経営者側も、むろん政府も、よってもってこれは正しいというようなデータなり基準を設定をする必要がある。そのような段階にあると思うのですけれども、こういうふうなことができるのかどうかということを企画庁長官にお願いしたい。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに御指摘の点がこの問題の最も基礎的なしかも第一歩でありますが、現在のところその基礎を欠いておると考えております。共通の議論をするための基盤と申しますか、データというものを欠いておるわけでございます。  そこで、先般経済社会発展計画を経済審議会答申をいたしましたときに、この問題については、短時間で討議をすることができなかった。したがって、しかるべき場所において、この問題の基本的な研究を進める必要があるということが答申に書いてございまして、間もなく経済審議会の中に、おそらくは利害関係のない第三者、自然、学者になると思いますけれども、そういう方々で、この問題についての基本的な研究を、何らの予断なしに、いわば学問的に半年なりあるいはそれ以上かけてやってみよう、こういうことを経済審議会が考えておられるように承知しております。  他方、物価安定推進会議では、過般四つの部会をつくったわけでございますが、そのときの御議論では、この問題、賃金が物価に関係がないとはいわないけれども、しかし予断をもって早急に結論を出すようなことがあってはいけない、必要に応じてこれも基礎的な研究をすることが入り用かもしれない、こういったような御発行が労働委員からもございました。したがって、将来あるいはそういう問題についての基礎的な研究が、安定推進会議の中でも行なわれることがあるかもしれない、こう思っております。
  141. 和田耕作

    和田委員 特にこの問題は、総理も施政方針の演説で、生産性の向上した成果を労使で分け取りをしてはいけないので、消費者にも還元しなければならない。つまり物価の引き下げをしなければならないというそういうような強い意思の表明があったように思います。企画庁長官もそういうようなことがあったと思いますけれども、特に消費者への還元というものをいまのような形で取り上げてみますると、その基準のとり方が、これは非常にむずかしいことはわかります。わかりますけれども、むずかしいからといって何もしない、しばらく手をつけないという段階ではない。かりに間違っておるとしても、あとから見て、これはちょっとまずかったと思うことがあると思いますけれども、あるとしましても、いまの問題を何か公的な権威のあるオーソライズされる機関で取り上げてみるということが必要じゃないかと私は思うのです。そういうようなものがなければ、つまり生産性の向上、つまり収益の部分を消費者に還元するといっても、これはおざなりのことになるだけであって、ただ言うだけのことだということになるわけでございます。したがって、なかなか十分な成果はできないと思います。学問的にもいろいろな問題があってできないと思いますけれども、それはそれとして、できるだけの努力を傾けて、そういうようなことができるような、つまり一つのデータを権威化するようなものをつくるための公的な機関を設置することが必要だという感じがするわけですけれども、その点どうでございましょうか。いまお答えがありましたけれども、経済審議会の中にいろいろな部会を設けるとかいうことでなくて、独立の公的な機関を必要とすると思うのですけれども……。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば、いまのお話は、一定の生産性の向上がありましたときに、それを全部賃金あるいは全部利潤といったような分け方をせずに、消費者に一部を還元すべきではないか、そういうことからの御質問であると思うのでございます。もしそういう考え方国民各層の間に広く行き渡っておれば、公的な機関が、多少議論のあるデータであっても、何か示唆すれば、国民各層がそれを受け入れてくれるということになるのでございましょうが、なかなか、和田委員のようにそこまで問題を理解しておってくださる方が遺憾ながら多くはございません。したがって、多少でもデータに問題がございますと、その公的な機関なるものは権威を直ちにそこで失ってしまうというようなことが実状ではなかろうかと思いますので、むしろ、時間がかかりましても、ある程度議論の余地のないデータをつくり上げるということを先にすべきではないかというのが、いま私の考えているころでございます。しかし、そういう認識が非常に広く高まってまいりますれば、これに越したことはないと思っております。
  143. 和田耕作

    和田委員 まあ、そういうこともわからぬじゃないのですが、そういうことだと、つまり生産性の効果を消費者に分配をするという意味がほとんどもりなくなってくるという感じがするわけでございまして、単なるうたい文句でなくて、生産性の効果を消費者に還元をする、つまり物価を引き下げてくるというところを、何とかくふうをしていただくようにお考えいただきたいと思うわけでございます。  意外に時間を食ってしまいまして、質問の要旨がなかなかあれなんですけれども、次に、社会保障制度関係の問題に移らせていただきます。  まず第一に、私は、政府の管掌する保険制度の問題につきまして、たいへんな赤字が出ているということなんですけれども、詳しいことは必要じゃございません。この赤字の大体の実態をお話しいただきたい。
  144. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御質問政府管掌健康保険、船員保険、日雇健康保険等につきまして、巨額の赤字が出ておりますので、その赤字が四十一年度末にどういう状況になるかということを御報告を申し上げます。  政府管掌健康保険の累積赤字が四十一年度末に千四十六億円になります。それから、船員保険が十九億円になります。日雇労働者健康保険が三百十八億円になります。そこで合計が千三百八十三億円になるものと見込まれております。内訳等についてもっと申しましょうか。
  145. 和田耕作

    和田委員 それでけっこうでございます。  つまり、そのような膨大な赤字が、今後も放置すれば、せっかくの一番重要な制度一つである健康保険制度が崩壊をするということになるわけなんです。この問題につきまして、今年度の政府予算には、この赤字の対策として保険料率の引き上げを含む四つの項目、初診料、入院料、薬代ということについていろいろ引き上げの要求が出ているわけだし、国庫負担も二百二十五億という膨大な国庫負担を必要としているわけなんですが、このような赤字が、しかもこの二、三年急速にふえてきておるという原因はどこにありますか。
  146. 坊秀男

    ○坊国務大臣 これらの保険に対しまして赤字が出てまいったという理由は、保険の収入に対しまして保険の支出、収入の伸びに対しまして、保険の支出の伸びがこれを追い越していくということでございまして、支出が追い越していくということは、医療の需要が漸次年を追いましてふえてまいっておる。それば医療の技術も、それから薬の量、つまり質量ともに医療行為というものが非常にふえてまいっておるということと、もう一つは、保険財政というものが確立をしていないといったようなことにあろうと思います。
  147. 和田耕作

    和田委員 いろいろ問題はございますが、私はきょうの東京新聞を拝見しておりますと、「診療報酬、水増し請求」という大きな項目で、昨日の社会保険審議会の中で、労働者側の委員並びに経営者側の委員の発言があるようでございます。昨日の社会保険審議会のこの問題についての内容をちょっとお伺いいたしたい。
  148. 坊秀男

    ○坊国務大臣 昨日の社会保険審議会には、私はこの予算委員会に出ておりまして、欠席をいたしまして、つまびらかにいたしておりませんので、出席いたしました政府委員から御説明をいたさせます。
  149. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。昨日の社会保険審議会で論議されました中身は、政府管掌健康保険におきまして、名都道府県別の被保険者、本人、家族につきましての一人当たりの金額、各県別にいたしました資料の要求がございまして、その中身につきまして、各県で一人当たりの金額が非常にばらついておる。一番高いところは京都等が非常に高くなっておって、たとえば島根等が非常に低い。金額で申し上げますと、京都あたりが八百円をこえておる。ところが島根等は五百円台。こういうふうに、同一の保険料を払っておりながら、各県におきまして一人当たりの金額が非常に差があるというのは、どういうわけだろうかというふうなことで、それが論議をされた、こういうことでございます。
  150. 和田耕作

    和田委員 それにつきまして、きょうの新聞の報道によりますと、総評の、安恒君ですか、それと海員組合の小笠原君、この二人から赤字、つまりこのような問題を含めて、医療費がたくさん出てくるのは、医者の水増し請求があるのではないかという趣旨質問があったということがございますが、それは事実でございますか。
  151. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 おっしゃるとおり、そういうふうな意見が出ました。
  152. 和田耕作

    和田委員 なお、続きまして厚生省の側からの出席の人がつまり京都で同じように非常に一人当たりの医療費が高いというのは、水増しとは申しておらぬようですけれども、水増しと同じような内容のものだということを認めたとか認めぬとかいうような報道がございますが、これは事実でございますか。
  153. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いろいろと原因につきまして質問がかわされたわけでございますが、内容につきましてはいろいろと検討する必要があるにしても、過去におきまして、いわゆる三けた運動といいますか、そういうふうな運動みたいなものがあったという事実がある、それが原因ではなかろうかというふうな推測が行なわれまして、そのような事実があったことは厚生省としても認めておる――聞いておる、こういうふうに返事をいたしたわけでございます。
  154. 和田耕作

    和田委員 京都の問題、私もこの前の市長選挙にまいったときに、いろいろそれに類するうわさを聞いたことがございます。単なるうわさでございますけれども、いずれにしましても、現在の膨大な政府管掌の健康保険の赤字をこのままで放置すれば、国民の健康の問題で一番重要な、今後社会保障制度の根幹をなすこの問題が、非常な危機に瀕してくるという状態があると思います。その中心の原因をいま厚生大臣はいろいろと仰せになったのですけれども、薬代という問題が浮き彫りにされているということも、これはそういうふうに見てよろしゅうございますか。
  155. 坊秀男

    ○坊国務大臣 医療費の増高の中には、確かに薬剤費というものが増高するために、その一因をなしておるということは、私は認めていいものだと思います。
  156. 和田耕作

    和田委員 一因ですか、主因ですか、その問題をひとつ……。
  157. 坊秀男

    ○坊国務大臣 そこいらのことにつきましては、これから中央社会保険医療協議会におきましてこれを検討していただくということに相なっております。
  158. 和田耕作

    和田委員 この問題につきましては、つまり昭和三十一年に医薬分業をすべきだという根本の趣旨に沿って法律の改正が行なわれたわけでございますね。そのときに、ただし、例外規定のような形で、お医者さん自身も投薬できるというような項目があって、これはあくまでも例外規定だというふうに、法律精神として了解してよろしゅうございますか。
  159. 坊秀男

    ○坊国務大臣 法律の形式の上では確かに例外でございます。ただしかし、日本の今日までの医療行為についての慣習等も一挙にこれを改めるというわけにはまいりませんで、漸進的にこれをやっていかなければならない。医薬分業というものは、どうしてもこれはやっていかなければならない問題である、かように考えております。
  160. 和田耕作

    和田委員 三十一年から現在まで約十年間のそう短くはない時間が流れているわけですけれども、その間に、いまの厚生大臣のおっしゃいました、漸進的に医薬分業の方向に向かっていくという傾向、実績がございますか。
  161. 坊秀男

    ○坊国務大臣 漸進的にそういう傾向をたどっておりますことを診療報酬点数に占める薬剤点数の割合について見ますと、政府管掌保険について申し上げますと、昭和三十六年においては点数でございますが、入院で総点数の一六・四%、外来で三〇・六%、総数で三九・一%であったものが、昭和四十年におきましては、入院で二二.一%、外来で四六・七%、総数で三八・二%と顕著な増加を示しております。
  162. 和田耕作

    和田委員 この問題は、今度厚生省として医療制度の抜本的な対策をいろいろ御諮問なさったり、検討なさったりしておることでございますけれども、この問題は、ひとつぜひともいまの医薬費の増加という、特に最近急増しておるという問題の実態を突き詰めていただくことと、それに対する対策をぜひともお願いをしたい。この新聞にもありますように、水増し請求という問題は、これは厚生省の側から見ていろいろ監査をしたりする責任があるわけですけれども、監査をした場合の結果として、水増し的なものがどの程度にあるのか、あるいは、あるのかないのかという問題についての何か今までの監査の実績がございますか。
  163. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 四十年度の監査の実績を申し上げてみますと、全体で監査の実施対象になりました保険医療機関についてはお医者さんの場合百二十一件、歯科の場合に六十七件、それから薬局の場合五件で計百九十三件、それから国民健康保険の場合には、療養取り扱い機関ということになっておりますが、百六十四件ございまして、そのうち取り消しを行なった機関数は、保険医療機関で百九十三のうち百九取り消しを行なっております。それから国民健康保険のほうでは、百六十四件のうち九十五件療養取り扱い機関の取り消しを行なっておるわけでございまして、中身といたしましては、架空請求のある場合、あるいはつけ増し請求をしたりあるいは重複請求をしたりするような件数が大部分でございまして、それぞれ件数としては千件以上の数になっております。
  164. 和田耕作

    和田委員 監査した例というのは全体の数の非常に少ないものだと思いますので、それでは全体の問題はよくわからないと思いますけれども、私が今までいろいろな問題、世上いろいろとうわさされておるこの問題をお聞きしましたのは、お医者さんを追及していくという意味ではないのです。お医者さんという御商売は、お互いの生活のための最も重要な社会的な活動家でございますから、日本は先進国として先進国並みのお医者さんの所得が保障されるような諸政策、諸制度がとられなければならぬということは、私はそのとおりだと思います。思いますけれども、また人の命を預かっておる重要なお医者さんが、もしかりにこの水増し的なものによって自分の所得の相当部分かまかなわれておるとするなれば――これは仮定の問題を申し上げるのは失礼ですけれども、いろいろ問題が出ておりますから、なれば、これはいろいろな意味で重要な問題になるわけでございます。したがって、お医者さんが西欧並みの所得が得られるような、もっと合理的な正当な方法を考慮する必要がある、そういう段階に来ておるんじゃないかという感じがいたします。いまの赤字の問題を含めまして、その問題について厚生大臣どのようにお考えですか。
  165. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のとおりだと思います。かりにお医者さんがそういったような水増し的な要求をしておるというようなことは、今日の医療にあってあるべきものではない。さような意味におきまして、私はそういうことをしておるということはここで申し上げませんけれども、この際健康保険の制度の抜本的改正をやる。その抜本的改正の車の両輪の中の一つとして診療費体系というものをまともな姿のものに持っていかなければならない、こう思いまして、鋭意それに努力しておるわけでございます。  なお、先ほどちょっと申し上げましたが、医薬分業後のその後の状況を少しふえんさしていただきますと、この医薬分業の制度ができまして以来、その後の推進状況を保険薬局で取り扱った処方せんの枚数で見ますと、年を追って着実な伸展を見せ、昭和四十年の年間約三百七十八万三千枚は、昭和三十一年のときの約六万四千枚に比べまして五十九倍強という増加を示しておる、こういうことでございます。
  166. 和田耕作

    和田委員 いずれにしても、現在の日本の国民所得の中で約五%近い一兆三、四千億という金が医療費に使われておるというこの状態は、アメリカは別として、イギリスとか西欧諸国に比べてどういうことになりますか。大体最高レベルのうちに入りますか。現在のこの医療に対する支払いの額は……。
  167. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体現在の日本の国民総所得に対しまする総医療費は四・七、八%程度でございまして、この数字は、欧米諸国に比べますと、大体近い数字じゃないかと思います。もっとも、アメリカ等につきましては、保険制度がございませんので、総医療費ということになりますと、もう少しこれより上回ると思いますけれども、大体社会保障の発達した国と比べまして、平均のところまでいっておる、こういうふうに御理解いただきたいと思うのです。
  168. 和田耕作

    和田委員 そうでありますなれば、つまり合理的な配分の問題を考えることによって、日本のお医者さんの報酬が西欧並みの所得が得られるようにできるというめどはつくわけですね。その点厚生大臣どうでございましょう。
  169. 坊秀男

    ○坊国務大臣 日本全体の経済、その中においての関連もございますが、私は、この診療報酬体系というものをまともな姿に持っていきますれば、だんだんそれに近いものに――ただ日本全体の経済ということも考慮に入れなければならぬと思います。
  170. 和田耕作

    和田委員 相当長い間にわたって厚生省と医師との間でいろいろトラブルがある、これは私も承知しておりますし、国民もほとんど全部の方が承知をしておる。非常に悲しむべき問題だと思います。このように実態がだんだんと明らかになっても、もっと大事な実態がわからないという点もあると思いますので、またそれが明らかになってもどうもならぬ問題なら別ですけれども、大きく見ても何とかなる、あるいは何とかしなければならないというところにきているわけでありますから、何とか医師会の方々も、厚生省の方々も、相互不信をなくするように誠心誠意話し合ってみる。それが効果をあれするためには、いろいろな媒介機関を必要としても、話し合ってみる。話せばわかるということでないかと私は確信するのですけれども、いまのように日本の総医療費というものが西欧諸国の先進国の最高レベルの諸国とほとんど似たり寄ったりということであるし、そういうふうな国々のお医者さんの社会的な、あるいは所得上の問題と、そういう点から見れば似通わせることもできるわけですね。ただ、いろいろな問題があって、現在かりに伝えられるような水増しというものが、大事な職業を持っておるお医者さんの重要な所得になっておるという状態では、私は非常に悪い影響があると思う。いろいろな意味でお医者さん自身にとってもためにならない問題があると思うので、こういう問題を含めて、ひとつ――これは各党の問題でもあると思いますけれども、誠心誠意解決して、日本の医療制度の確立のために努力する時期だと私は思うので、あえて御質問申し上げたわけでございます。  次に進ましていただきますが、身体障害者の問題と精神障害者の問題があるわけです。水田大蔵大臣、この二つの部門の社会福祉審議会要求を完全に実施しても百五十億か二百億くらいの金でいくのじゃないかと思うのですが、厚生大臣、どのくらいの額になりますか、その二つ合わせて。
  171. 坊秀男

    ○坊国務大臣 審議会から答申を受けておりますが、その答申は、長期のビジョンを書いたものでございまして、具体的に、しからばこの政策をどういうふうにやっていくかというようなことだとか、あるいは国と地方との負担といったようなものもございますし、いまこの両方のものを、その審議会答申どおりにこれをやっていったら一体幾らになるかということにつきましては、ちょっとここで確答を申し上げるだけのデータがそろわないように思うのでございます。
  172. 和田耕作

    和田委員 それでは現在の段階で、厚生省大蔵省に、これだけの予算があれば二つの問題は一応片づくという御予算要求をなさっておると思いますけれども、その要求はどれくらいのものでございますか。水田大蔵大臣でちょっとちょん切られたという、その前の予算の請求はどのくらいのものでございますか。
  173. 今村譲

    ○今村(譲)政府委員 お答え申し上げます。  身体障害者の部分だけでありますが、四十一年度の予算そのものが約十八億というのが、四十二年度におきましては約二十二億ということで、四億ほどふえておりますが、要求そのものは、もう二、三倍多かったと思います。
  174. 中原龍之助

    ○中原政府委員 精神障害者のほうの予算要求について申し上げますと、四十二年度約二百八十億の要求でございました。
  175. 和田耕作

    和田委員 水田大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、この二つの問題は、社会保障制度というワクの中で考えましても、つまり対象のはっきりしているものだし、したがって金もそうたくさんかかる問題ではないし、これは私どもに対する陳情も非常に多いことなのですけれども――陳情があるから申し上げているわけではございませんが、また厚生省のちょうちんを持っているわけではございませんけれども、こういう問題を、ひとつ抜本的に解決したほうがいいと私は判断をするのです。水田大蔵大臣、どうでしょうか、この問題は。たとえば身体障害者の問題でも、訓練中の手当を支給するとか――これは石炭労働者の問題でもやっているものでございます。それから特殊なハンディキャップを持っている人ですから、特殊な工場を、代表的なものをつくり上げるとかいうふうな問題、あるいは住宅の特殊な設備を必要とするというようなものを改造する問題、これらの問題があると思いますけれども、こういう問題をやっても、そうたいしたお金でもないし、何よりもやらなければならない問題だと思うのです。けれども、一挙にこの身障者と精神障害者の問題を解決なさるというお気持ちはございませんか。
  176. 水田三喜男

    水田国務大臣 もう御承知のとおり、逐年この問題についての私ども予算配分はやっておりまして、本年度におきましても、いま予算請求の数字が言われたようでございますが、この二つで百二十八億、今年度の予算になっております。例年、相当の伸び率をもって伸びておりますが、急を要する問題だと私は思っております。
  177. 和田耕作

    和田委員 どうもありがとうございました。  それではこの問題の最後の質問をいたしたいのですが、劈頭に申し上げましたように、最近何らかの形で精神異常があると思われるいろいろな事件が出ておるわけです。たとえば、先ほど申し上げた今度の都知事選挙で起こっておるあの荻窪団地のアパートの上から空気銃を撃ったという男がございますが、あれは精神病者ですか、そうじゃないのですか、その問題をひとつ……。
  178. 坊秀男

    ○坊国務大臣 あの加害者が精神病者であるかどうかということは、これは厚生省ではその報告は受けていないのでございます。これはおそらく警察庁長官であろうと思いますが、厚生省ではまだ受けておりません。
  179. 和田耕作

    和田委員 自治大臣、どうぞ。
  180. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 どうも宿痾――長い病気がありまして、それで何と申しますか、相当ノイローゼぎみといいますか、そういうのでありまして、いわゆる精神病質でないようにいままでの取り調べでは聞いております。
  181. 和田耕作

    和田委員 まあ精神病であるかどうかというものの鑑定は非常にむずかしい問題のようでございますけれども、ああいう行動をするのは、これは精神病だというふうに申しても差しつかえないと思うのです。私はあそこで選挙中によく演説をやって、いまでもひやっとしておるのですが、そういう人がこのごろは非常に多いんですね。東京駅の問題でもそう思われる事故です。最近警察のほうでドライバーの意識の調査をするような制度をつくるというお話も聞いたのですけれども、これについて厚生省で何らかの、精神異常というような方々がどれくらいおるのか、あるいはそれに対してどういう処置をしたらいいのかという問題は、詳しく御検討になったことがございますか。
  182. 坊秀男

    ○坊国務大臣 日本に精神病者が何人おるかということは政府委員をしてお答えいたさせますが、これに対してどう対処したらいいかということにつきましては、重度の精神病者と申しますか、ともかく重度というか、その精神病の態様でございますね、これをそのまま放置しておけばあるいは自分のからだをそこなう、あるいは自殺する、あるいは他人に危害を及ぼすといったような態様の精神病者でございますが、そういったような者は、これは措置入院ということをやらせておる。その措置入院をやらすためには、精神衛生法によって、鑑定医でございますが、二人の鑑定医に鑑定させまして、その必要がある、こういうような場合には、措置入院をさせております。
  183. 和田耕作

    和田委員 私は、この精神病の問題について非常に判定がむずかしい、その処置のしかたも非常にこれはデリケートでむずかしいということはよくわかりますけれども、先ほどの企画庁長官の、賃金あるいは物価、生産性という問題についての標準のとり方が非常にむずかしいという問題と立場がよく似た問題がありはしないか。非常にむずかしいから処置なしだ、処置なしだという状態が現在あるんじゃございませんか。非常にむずかしいから処置なしだ、変にやれば人権じゅうりんになる、しかし野放しにしておけばいろいろな危害を加えることも起こり得るというような問題が、特にこの精神障害者の問題についてはあるんじゃございませんか。その点どうでございますか。
  184. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘の点はたいへんこれはデリケートな問題でございまして、病者自身のからだの安全をはかるという要請と、それから社会の危険を未然に予防する、こういう要請と、それからその個人につきましては、これは一つの人権尊重の要請の問題と、両方に相反するような要請がありまして、それをどういうふうに措置していくかということば、まことにこれは重大にしてデリケートな問題でございまするので、これは今後とも、御指摘の点は大いにこれは検討をいたしまして、妥当なる措置を見出していかなければならない、かように考えます。
  185. 和田耕作

    和田委員 確かにいまの実情という問題でも、精神医学の先生も少ないということもあるだろうし、見つかっても何とも処置なしだという状態、よくわかりますけれども、そうだといって手をこまねく手はないということですね。何とかこれは、かりに間違いがありましても、やはり現在最善と思われる方法をとる必要があるというような問題だと思いますので、ひとつ大蔵大臣も御了承いただいて、この問題を、調べなければいかぬもは金をかけても調べをする、それによってこうこう措置をとる、警察のほうともそういうような関係で措置をとるということをぜひとも緊急にひとつ御処置いただきたいと思うわけでございます。  最後に、もう時間がなくなりますから、よろしゅうございますか……。
  186. 植木庚子郎

    植木委員長 一問だけ。
  187. 和田耕作

    和田委員 それでは、第三の問題の、労使関係の問題でございます。今後政府の経済社会政策の中心の施策になっております社会発展計画の中には、経済の効率化という問題が中心になっているわけでございますけれども――労働大臣おられませんか、労働大臣にかわる方いられますか――それではけっこうでございます。政府委員の方からお答えいただきたいと思いますけれども、経済の効率化というものが柱になっている。つまり大規模な技術革新が行われると言う問題が背景にあるし、合理化という問題が当然かなり急ピッチに出てくるということを予想されるわけです。この問題については労働者の協力を必要とするという、これはどの先進国でももう十年も前から日程にのぼっている問題なんです。この協力を求める求め方について、どのような基本的なお考え方を持っておられるのか、そのことをお聞きしたいと思います。
  188. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいままで労働大臣がおりましたのですが、いまちょっと前に席を立ちましたので、たいへん恐縮でございますが……。  ただいま先生の御指摘のごとく、欧米各州におきまして、労使協議制度というものが発達をいたしておりまして、ドイツにおきましては経営組織法あるいは共同決定法、あるいはイギリスにおきましてはホイットレー協議会、あるいはまたフランスにおきまして工場委員会制度というようなものが発達いたしておりますが、それぞれの内容を見ますと、それぞれの歴史によりましていろいろのニュアンスが違うようでございます。わが国におきましても、労働協約の中におきまして労使協議の制度を持っておりますものが、相当数ございます。大体協約があります労使の間におきまして、六割から七割くらいは何らかの形の企業単位の協議制度を持っておるわけでございます。そのような協議の制度をできるだけ活用するということに、労働省といたしましても、従来とも指導、奨励をいたしておるのでございますが、最近におきまして特に企業の、あるいは産業の再編成あるいは合併、統合、提携というような事態が出てまいりまして、先生御承知のように、同盟会議におきましては、そのような問題に対しまして、労使が、あるいは企業レベルにおいて、あるいは産業レベルにおいて、あるいはまた全国レベルにおきまして協議をいたしまして、事前に労働者あるいは労働者の待遇に与える影響等を考えまして、独自の考え方を経営者のほうにも反映をいたしたいというような考え方が出てきておりまして、具体的にそのような動きがございますが、これに対しまして、また労働陣営の中におきましてもいろいろな議論がございます。われわれといたしましては、こういうような協議、そして労使が同意をした形におきましてこのような問題を共通の場において話し合うという方向は、望ましいことであるというふうに考えております。
  189. 和田耕作

    和田委員 もう時間もございませんから質問もはしょって申しわけございませんが、もう一言だけ希望を申しあげておしまいにしたいと思います。  いまおっしゃるように、労使協議の問題というものは、すでにもう日程にのぼっておるわけでございますけれども、これを何とか制度化していくということが必要な段階にきておる。つまり制度化しないと、この問題はいつも戦争とかあるいは大きな経済的な破綻が起こったときには一生懸命になるけれども、普通になるとすぐルーズになっていくというたちのものなんでございまして、その大きな原因の一つは、双方にはありますけれども、経営者が本気になるかならぬかによって――現在でも非常にうまくいっているところは、経営者が本気になっているところが多いのでございます。したがって、経営者が本気になるためには、何らかの制度的なものにして、そして何らかの責任を感ずるような、そのようなことをしていくことが必要じゃないか。労使協議法というものを法制化することが必要だと私個人は考えますけれども、そういうふうな制度化を目ざして労使の協議が円満にいくような方法を講じていただきたいということと、先進諸国にありますように、たとえば経済審議会という重要な経済企画の場には、労働者代表がいまでもいろいろな形で入っておりますけれども、ほとんど有力な発言ができるような形で入っていないという問題も多いと思いますので、この問題をひとつ今後の経済の効率化という問題とにらみ合わして、本気になって考えていただきたい、このことを特に最後に要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。  どうも一年生議員でございまして、時間の配分が非常にまずくて申しわけございません。ありがとうございました。(拍手)
  190. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  次に武藤山治君。
  191. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは三点ばかりにわたってお尋ねをしてみたいと存じますが、最初に自治大臣と大蔵大臣に、地方税の減税の問題を中心にお尋ねをしてみたいと思います。  いま、日本の財政は国債発行をしている段階で、減税よりも財政自体を健全にするほうがいいというような意見も耳にするのでありますが、いずれにいたしましても、物価がどんどん上がって、実質生活水準というものが維持できない、向上しない、こういう面から年々所得税あるいは所得を基礎にした税金の減税をしなければならない、こういう要請にこたえるために、政府は減税をしてきていると思うのであります。  そこで、まず最初に自治大臣にお尋ねいたしますが、本年の地方税の減税の中で、本人の所得を基礎にした所得割りの県民税、所得割りの市町村民税、これは幾ら減税をする予定でございますか。
  192. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 約百九十六億円と思います。
  193. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは所得割りではなくて、地方税全体を答えておるのでありまして、私が聞いておるのは、個人の所得を源泉として、それに付加される税金、それの減税分、すなわち、個人に帰着する所得に付加されておる分――自治大臣、それでは分けて質問をしますから、いいですか。道府県税の普通県民税、その中の所得割り、これは一体幾ら減税しますか。さらに、市町村民税の所得割りは幾ら減税するか。こういう、尋ね方ならはっきりすると思いますが。
  194. 松島五郎

    ○松島政府委員 お答えをいたします。  個人住民税につきましては、御承知のとおり、専従者控除の引き上げ、それから障害者等に対します非課税範囲の拡大、それから控除対象配遇者の制限を緩和いたしまして、扶養親族の第一人目についての扶養控除額の引き上げというようなことをいたしております。そのほかに、退職所得の控除の引き上げをやっております。これらの合計をいたしますと、県民税におきましては十六億ばかりでございます。さらに退職所得の最低限の引き上げをいたしますので、二十一億余になります。それから個人市町村民税につきましては三十五億ばかりになります。そのほかに、昨年度行なわれました所得税の改正に伴いまして、御承知のとおり、給与所得控除が引き上げに相なります。住民税は一年おくれでございますので、本年度から適用になる分が百四十億円ございますので、合計いたしまして、先ほど申し上げました百九十六億円になるわけでございます。
  195. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの報告によると、あるいは予算委員会に配付したのか、自治省が四十二年三月に国会に出した資料と数字が合いませんね。これは、あなたの説明が正しいのか、国会議員に配ったこの資料が正しいのか、いずれが正しいのかはっきりしてください。
  196. 松島五郎

    ○松島政府委員 ただいま先生御指摘になっております資料がどれをさしておりますのか、私存じませんので、正確なお答えになるかどうか存じませんが――ただいまお示しになりました所得税の改正に伴います百四十億円の給与所得控除の分は、本年度の税法改正と直接関連をいたしませんで、前年度に所得税法が改正になりましたことが今年度に当然影響するという問題でございますので、減税は本年度行なわれるわけでございますけれども、本年度の税制改正による減としては立ててない。そういう数字の違いかと思います。
  197. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにいたしましても、自治大臣、この表によると、所得割りはわずか十六億五千三百万円しか減税しない。市町村民税でわずか二十四億五千四百万円しか減税しない。しかも、いま政府が年々減税減税と宣伝をするけれども、受ける側の国民の立場に立つと、さっぱり減税は行なわれていないじゃないか、こういう不満が非常に強いわけであります。すなわち、負担感が軽くなっていない。解消していない。それはなぜかというと、やはり地方税の思い切った減税が行なわれないから、国税はとられないけれども、地方税をとられておるたくさんの納税者がおるわけですね。あとで人数などもひとつ発表してもらいますが、そういう人たちに減税の効果が及んでいない、ここに大衆課税の最たるものがあると思うのです。ですから、大衆課税の面から地方税というものを考えた場合に、これは全く無視できない重大な問題であると思うのです。特に住民税の増税の傾向というものに対しては、特に青色申告のできない農家あるいは零細な商人、こういう人たちは、全く減税の恩恵を受けないで、逆に画定資産税は上がってくる、あるいは寄付金は年々多くなっている、こういう点から、政府のやっておることは、そういう低所得の人には全く思いやりのない減税ではないか、無縁である、こういう批判が出てくるのは当然だろうと思うわけであります。  そこで、少しく中身をお尋ねいたしますが、自治大臣、市町村民税の所得割りの課税最低限というのは一体幾らになっておりますか。独身者の場合、さらに三人子供、夫婦の標準世帯の場合、どういう傾向になっておりますか。
  198. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 標準世帯におきまして四十三万余になっております。
  199. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、地方税では、標準世帯で四十三万三千円ですが、国税では四十二年度改正で、平年度課税最低限は幾らになりますか。
  200. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府委員から答弁させます。
  201. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 いま主税局長がおりませんので、私、かわりにお答えいたしますが、七十三万九千円でございます。
  202. 武藤山治

    武藤(山)委員 自治大臣、いま国税の課税最低限と地方税の課税最低限を比較した数字が出ました。それによりますというと、いまの答弁で、差額は、給与所得者の場合三十万六千二十円、いかに地方税が収入の少ない人に、低所得の人に課税されておるかということをこれが物語っておると思います。こういう課税最低限で、大衆に対する税負担を軽減しておるというお答えができますか、自治大臣のひとつ感触を……。
  203. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 税にお詳しい武藤さんですから、釈迦に説法のようでございますが、所得税と住民税とでは、やはり性格が違うのではないか。ことに税制調査会においても言われましたように、広く分に応じて負担するという原則は認められておるわけでございます。したがいまして、国税の課税最低限と地方税の最低限とが差があることはやむを得ないと思います。ただしかし、それだからどんなにかけてもいいという意味ではございません。できるだけ地方財政の状況をにらみ合わせ、物価の上昇などをも考え合わせながら、住民税の課税最低限は引き上げていくべきものという心得で、検討はいたしております。
  204. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの大臣の見解にはいささか私不満であります。なぜ所得割りの住民税まで――住民税というものは、その地方自治体の範囲内に住んでいる者に広く公平に分担をしてもらうといういま大臣の答弁でありますが、均等割りというものなら、その自治体に住んでいる者に均等に、公平に、平等に賦課するということも、これは納得できます。しかし、事、所得割りということになれば、やはり生計費に課税をしないという所得税の原則というものは、地方税においても私は採用さるべき原則だと思うのです。さらに税というのは、強制的に個人の財産権を侵すわけですからね。もちろん法律によって、国家権力によって、税というものは強制的に取り立てるものでありますから、したがって、地方自治体に住んでいる者は低所得でもみな地方税というものは納めなければならないのだという、その感覚に私は問題があると思うのです。所得割りだけを聞いておるのですよ、いま。均等割りのほうを聞いておりません。いまの大臣の答弁で、そういう考え方で自治省は所得割りの推移というものをずっと今日まで検討してきたのですか、もう一度ひとつ確認をしておきます。
  205. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 住民税全体として、いわゆる所得割りにつきましても、やはり地域住民が地域の団体であるその市町村なり、道府県に分に応じて負担をするということが住民税の性格だと思います。しかし、それはいまお話のございましたように、いろいろ生計費に食い込むというような問題もございますから、私も決してこれでいいのだというわけではないのでございまして、地方財政とにらみ合わせながら、これが軽減をはかっていくために努力をいたしたいと考えておるわけであります。
  206. 武藤山治

    武藤(山)委員 租税の原則なり性格というものがどういうものであるかということを議論する時間がきょうはございません。一時間半の持ち時間でありますから、先へ進みますが、しからば、自治大臣、今日市町村民税の均等割りの納税者人員はどのくらいおりますか。
  207. 松島五郎

    ○松島政府委員 約三千万人でございます。
  208. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、国税所得税の納税者人口はどのくらいになっておりますか。
  209. 水田三喜男

    水田国務大臣 約二千百万人でございます。
  210. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、国税は取られないけれども、地方税だけ上取られている人が約一千万人国税よりも多いわけであります。ですから、その一千万人の人たちの層というものをまず考えていただきたい。国税を取られない層はどういう人たちであろうか。農村の非常に収入の少ない農家、あるいは小さな駄菓子屋や小さな家庭工業、家内工業をやっている人たち、あるいは内職収入で奥さんも一緒にかせいで細々生活をしている人たち、こういう人たちが一千万人の中にかなりの部分を占めている。こういう人たちは、特にここ三、四年来の物価騰貴で、公共料金はばたばた引き上げられ、消費者物価も上がり、買うものの値段はどんどん高くなって、支出が非常に増加している。そういう増加を考えたときに、この一千万人の人たちの実質生活水準というものは、今日の自治省の減税方針で低下しないで上昇すると大臣お考えになれますか。もしそういうお考えでございますならば、その資料をちょっと示していただきたい。いかがですか。
  211. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、住民税の減税百九十六億、そのうち、各種の控除の引き上げによります減税が百八十億でございます。かりに物価が五%上がったといたしまして、課税最低限をその分だけ引き上げるといたしますと、約百六十億が必要でございますので、大体見合って、物価高がいままでの税金以上に響くということにはならない程度ではあると思います。
  212. 武藤山治

    武藤(山)委員 だろうと思いますというのでありますが、大臣、所得割りの税率というのは百分の三と百分の四ですか、二本立てになっている。百五十万円以下の所得ということで一本ですね、百分の二は。そうすると、かりに一年間課税最低限が二万円引き上げられたとしても、税額にしては四百円です。大体月収五万円以下の人たちですから、国税の減税の恩恵を全然受けていない。こういう人たちの税率は百分の二ですから、どうですか、二万円ぐらいの課税最低限の引き上げをかりに見たとしても四百円。ところが、自治省のこの資料によると、昭和三十七年度、八年度、九年度の三カ年間は課税最低限を一銭もいじっていない、引き上げていないのですね。四十年にわずか引き上げ、四十一年に引き上げ、今回は独身者の場合で見るとわずか一万円、夫婦子三人の場合でも課税最低限の引き上げは一万円ですよ。二万円というと税額にして二百円。これで一体低所得の人は減税の恩恵を受けたと感じましょうか。大蔵大臣いかがでしょうか、国民の受ける側の感じから見て。この表によると、ことし課税最低限一万円引き上げです。税金にしてわずか二百円。物価はどんどん上がって、公共料金はどんどん引き上げられて、出る金は非常に多い。おまけに、税金は二百円安くなるはずなのが、所得が幾らか上がるから、実際の納める税金は一銭も安くならない、去年と比較して、納税者の立場から見ると。これでは、自民党内閣は減税しているなどと一千万の人たちは思いませんね。いかがでしょうか、大臣。
  213. 水田三喜男

    水田国務大臣 国税の減税に比ぶれば、地方税の減税は非常に少ないものでございます。
  214. 武藤山治

    武藤(山)委員 したがって、やはり国税を減税して、一千億なら一千億の減税をするという場合には、全く減税の恩恵を受けない、そういう国税の課税最低限以下の人、こういう人たちに対して自治省はもうちょっと科学的な、さらに大臣自身がもうちょっと愛情のある、思いやりのある、庶民にもうちょっと歓迎される減税の基本方針というのを持ってしかるべきだと私は思うのです。あなたの地方税に対する減税の基本方針いかん、ひとつ聞かしてください。
  215. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 御承知のように、昨年も相当な減税をいたしました。その際でございまして、ことに地方財政の現状は、武藤さん先刻御承知のとおりでございます。そういう中でも、しかし、とりあえず各棟控除の引き上げ等を行なったわけでございます。決してこれで足れりという考え方ではございません。地方財政の将来を見通しながら、住民税、特に所得があまり多くない方々にかかるこれらの住民税につきましては、今後十分減税の方向で考慮をいたしてまいります。
  216. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣が、今後十分減税に力を入れて検討する、こういう答弁でありますから一応大臣のこれからの誠意を私は見つめていきたいと存じます。  そこで大臣、ひとつ、こういう点考えてみてはどうか。いままで自治省というのは非常に大蔵省に腰が弱くて、今回自治省は、この配付した資料を見ましても、地方税収見込み額というこの表の中で減税になる分、増税になる分、そして足らないものをたばこ消費税ならたばこ消費税で埋める。非常にこそくな、それこそ重箱の中をようじでつついているような、数字のほんのわずかなもののやり繰りをして、減税というのはこの程度やりました、こういうものに、ワクにとらわれ過ぎている。納税者なり国民の立場、低所得者の立場というものを基本にして、この人たちの実質生活水準をどう引き上げていこうか、世界第二十一番目の日本の国民所得の一人当たりの水準を、ほんとうに低所得の人にまで恩恵が行くような富の再分配、所得の再分配――大体所得税というのはそういう機能を果たす税目ですから、所得割りだって、私は、そういう機能というものがかなりの部分その性格の中に含まれていると思うのであります。したがって、所得の多い者には、やはり百分の四という高いほうの税率が賦課される。これはやはり所得の再分配、富の再分配という機能を果たそうという精神が含まれているからだと思うのであります。均等税率じゃありません。ですから、やはりそういう可処分所得の増加なり、実質生活水準の上昇というものにライトを当てて、そこから、一体本年の減税の基本方針はどういくべきか、こういう姿勢を自治省がとらなきゃだめですよ。いまの自治省は逆です。市町村長から、うちのほうの市町村の税収が減っちゃうと事業ができない、あれもできない、だから、ひとつ減税はしないでくれという。住民のほうを向いているんじゃなくて、市長なり村長が施策をしやすいように税額を確保しておきたいということが先行している。だから、大衆への税金が非常に冷たい、こういうことに私はなろうと思うのであります。そこで、そういう焦点を合わせる場所を来年から変えてもらうということの約束が、自治大臣、ひとつできませんか、どうですか。
  217. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 たいへんみみっちい税が多いということ、まさに、そのとおりでございます。これは現在の国、地方を通ずる税制のあり方がそういうことになっておるわけでございます。しかし、住民税一つを考えましても、その他の地方税を考えましても、問題の多いものが非常に多いわけでございます。したがいまして、これら全体を、ことに国税ともにらみ合わせながら、全体としての見直しをする時期にきておると私は考えております。
  218. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、自治大臣はたいへん遠慮しておりますから、ひとつあなたが明年度予算編成まで大蔵大臣の地位におる場合には、いまの一千万人の国税を納めない人たちへの配慮、こういう問題について、十分私は地方税減税にひとつ目を当ててみよう、こういうお気持ちに、水田さんおなりになれますか。ひとつ心境を聞かしてください。
  219. 水田三喜男

    水田国務大臣 来年度の予算編成をやるところまでおりましたら、十分……。
  220. 武藤山治

    武藤(山)委員 少しく自治大臣、この中身に入りますが、本年の地方税法一部改正の法律要綱を見ますと、これは独身者、それから白色申告の農家、零細商人、こういうものに対する課税最低限度は、白色申告者については現行控除額を六万円から八万円に引き上げる、二万円の課税最低限を引き上げるだけで、全然恩恵はありませんね。いかがですか。
  221. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 二万円引き上げただけの恩恵はあろうと思います。
  222. 武藤山治

    武藤(山)委員 二万円引き上げると税額にして四百円。まあ、四百円だけの恩恵は、主として農家、こういう人も該当する。これはほんの微々たる、冷たい減税だと思うのでありますが、来年はひとつ減税調整、これこそ物価調整にも――私は個人の立場に立って考えたら、四百円の減税をしたって、これは一年ですよ、一カ月幾らになるか、三十何円の減税じゃありませんか。これじゃたばこ一つにもならぬ。それよりも物価のほうが先にいきますわね。だから、自民党政府の地方税に対するものの考え方はまことに冷淡で、考慮がない、こういうことに結果は(「そんなことない」と呼ぶ者あり)自民党の人がやじっても、具体的な数字がそれを物語っておる。感情でものを言ってはいけません。やはり冷静に、科学的に物事はやらなければいかぬと思うのであります。そこで、次にもう一つ、私は国税と比較してふに落ちないのは、配偶者の場合です。妻の場合に、扶養家族として適用されるのは、年所得幾ら以下ですか。年所得幾ら以下ならば妻は扶養家族に入るのか。
  223. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 五万円以下でございます。
  224. 武藤山治

    武藤(山)委員 女房が一年間に五万円以上所得があると、その妻は扶養親族にならない。この五万円という額がまことにけちな、少ない額だと私は思うのであります。いかがですか、企画庁長官、笑っておるけれども、あなたの感触はどうですか。私ども社会党は、長い間、男女平等の憲法をいただいた今日の社会で、妻に収入が五万円以上あると、もう扶養家族でないなんという、こんなわずかな収入まで否認するようではけしからぬ、したがって、内職の収入は十万円まで認めろ、あるいはパートタイムでかせいだり、内職で一年間に十万円程度の所得の人は、扶養家族として当然認むべきではないか、こういう意見を四年ほど前から社会党は主張し続けてまいりました。ようやく本年の税制改正において、水田大蔵大臣の配慮で、十万円でも女房は扶養家族として認めることになりました。私は、当然地方税も同時に、本年の税制改正の中にその点は入っていると思ったのであります。ところが、この法案を見ましたら、相変わらず、五万円以上あると女房は扶養家族からはずされる。ずいぶんけちな話だと思うのでありますが、自治大臣いかがですか。気がつかなかったためにこうなってしまったとお答えになりますか、どうしますか。
  225. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 お話しのように、国税におきましては十万円に上げました。これはもちろん、十万円に国税が上がることは承知をいたしておりましたが、本年度の税制におきましては従来どおり五万円にいたしたわけでございます。御承知のように、住民税は一年前の所得の課税でございますので、四十三年度につきましては十分考慮いたしたいと考えております。
  226. 武藤山治

    武藤(山)委員 今回の地方税法改正の眼目は、いろいろなねらいはあったろうと思います。一つは、物価調整をしなければ実質生活水準が低下する、あるいは所得や富の再分配の機能というものがうまく働くような減税でなければいけないという限目もあったかもしれない。いろいろあったにしても、どうも今回のこの法案を見ると、障害者、未成年者、老齢者、寡婦、特別なものだけちょっと色をつけたというかっこうであります。こういう減税では、今日の社会情勢に対応してもこれは大衆の期待にこたえるわけにはいきません。しかも物価の問題は、あとで宮澤さんとやりますけれども政府の見通した物価騰貴率ぐらいでは、とても本年もこれは落ちつかない情勢にあります。したがって、今後一そう地方税の減税に力を入れるという自治大臣のはっきりした答弁がいまありましたし、妻の十万円も来年からはひとつ何とかしたいという前向きの答弁がありましたから、ぜひそれをひとつ実現をしてもらいたいと強く要望しておきます。  もう一つ、ついででありますが、自治大臣、税外負担というのがいまどのくらい地方住民に課せられているか、自治省ではそういう数字をお調べになったことございますか、税外負担の額。
  227. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方団体の決算にあらわれた以外の面につきましては、なかなか把握しにくいのでございますけれども、地方団体の決算にあらわれました税外負担につきましては、四十二年度においてこれは解消いたしたいと考えておりますが、約百五億円でございます。
  228. 武藤山治

    武藤(山)委員 約百五億円というのは、地方交付税の算定の中に入れたということですか、百五億寄付が行なわれたということですか。
  229. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方財政計画の中でこれを解消するような計算をいたしておるわけです。
  230. 武藤山治

    武藤(山)委員 計算をしているということは、基準財政需要の中にはっきりそれは含まれているわけですね、百五億円。そう受け取ってよろしゅうございますね――。ところが、地方に行ってみますと、基準財政需要の中にそういうものが含まれていて、政府のほうでは交付税の中にそれが当然含まれた交付になってきているはずであるけれども、依然として税外負担というのは消えていない。したがって、私はやはり地方財政法三十七条の四でございますか、そういう規定で税外負担というものを取ってはいけない、そういうことを、一回やはり自治大臣がきちっとこの際通達を出すべきである、法律にあるのですからね。どうですか、通達を出して、そういう父兄負担や住民負担の税金以外の負担を思い切って解消するという方向で通達を出してもらいたい。もし最近出ているとしたら、その出ている年月日をちょっと発表してください。
  231. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 最近の年月日は存じませんけれども、ちょっと記憶をいたしておりませんが、数次にわたって通達を出しております。今回地方財政計画においてそういう措置をした機会に、さらに厳重な指導をいたしたいと考えております。
  232. 武藤山治

    武藤(山)委員 次に、自治大臣、租税特別措置法という、わが党から見た場合に好ましからざる制度があって、利子、配当をはじめ、三十数項目にわたって特別減税が行なわれている。それの影響を受けて地方税も当然減収になる。その減収額は昭和四十一年度幾らになり、四十二年度の見込みで幾ら減収になりますか、租税特別措置法による地方税の減収。
  233. 松島五郎

    ○松島政府委員 お答えをいたします。  租税特別措置法そのものによりまして減収となっております額は、昭和四十一年度で六百三十七億円と算定をされております。四十二年度につきましては、ただいま精査中でございます。武藤(山)委員 ただいま精査中だという答弁でありますが、自治省は作業おそいのですかな、大蔵省のほうは大体もう出ておりますが、大蔵大臣、国税は租税特別措置による四十一年度の減収はどのくらいになりました。たいへんなこれは恩典を与える税額ですから、覚えているでしょう。
  234. 水田三喜男

    水田国務大臣 四十一年度は二千三百億円前後だったと思います。
  235. 武藤山治

    武藤(山)委員 自治大臣、いまのは国税の租税特別措置法による地方税へのはね返り、今度は地方税法の非課税措置による減収額、これはどのくらいになりますか、地方税法のほうで非課税措置を認めている、その減収額はどのくらいになりますか。
  236. 松島五郎

    ○松島政府委員 地方税の非課税としておりますものの、減収額をどういうふうに算定するかということにつきましては、いろいろ問題がございますが、大体国税の租税特別措置にほぼ対応するものと考えられますものについて算定をいたしますと、昭和四十一年度で七百五十六億円でございます。
  237. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、いまの数字で明らかなように、国税で二千三百億程度、地方税で千四百億、三千七百億円に達しますね。租税特別措置に基づく減収、非課税措置、膨大な数字ですよ。これは資本蓄積だとか、いろいろな名目はついておると思います。しかし、やはり地方税にまでこれだけの減収をもたらしているという租税特別措置というもののあり方は、根本から真剣に、国家、国民の立場に立って、自由民主党の立場だけでなくて、国家、国民の立場に立って、私は真剣に、深刻に反省をする必要があろうと思います。大蔵大臣の御所見いかがですか。
  238. 水田三喜男

    水田国務大臣 預貯金利子課税、配当課税についていろいろいままで御議論はございますが、それ以外のもので、租税の特別措置、みんなどれもこれも必要に応じてできた、政策的要請によってできたものでございまして、いまある特別措置、私は、そう悪いものは事実上ないのではないかというふうに思っております。
  239. 武藤山治

    武藤(山)委員 それは大臣、いまある中で悪いものがないと思うというのは何の意味ですか。私は、いいとか悪いよりも、効果があるかないかなんです。これは善悪の問題じゃないのです。そうでしょう。いいとか悪いなんていう、そんな単純な割り切り方で片づけられる問題でない、租税特別措置というのは。それによって一体効果があって、なるほどと国民が納得をし、租税の公平の原則にも適合し、応能の原則にも当てはまり、効果はこれこれこうあるんだ、だから社会党よ反対するな、というならわかるのです。効果が証明されないで、悪くありませんという答弁は、いただけないのですね。
  240. 水田三喜男

    水田国務大臣 結局同じことでございまして、いい、悪いというものの判断は何でするかといったら、この特例措置が効果があるかないかで判断するよりほかしかたがありませんから、同じことだと思います。そこで、その効果があるかないかでいま一番議論の、問題になっておるのが――さっき上げた二つの特例措置というようなものは、若干そういう議論の余地がございますので、私どもは、今度漸進的にこの税金は改善しようといって、本年度改正の法案をお願いしているというわけでございます。
  241. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、悪いとは思わない。それでは善なるものと思いますか。
  242. 水田三喜男

    水田国務大臣 みんな必要に応じてできた特例でございますので、それぞれ現在政策的効果をみんな発揮しておるものだと思っております。
  243. 武藤山治

    武藤(山)委員 悪いと思わないとお答えになりましたから、それではよい制度だ、善なるものか。悪い、いいという、善か悪かと、いま聞いておるわけなんです。善なるものか、どうなんですか。
  244. 水田三喜男

    水田国務大臣 効果を発揮しておるものは善でありますから、そういう意味で、大部分の租税特別措置法はいま効果を発揮しておると思います。
  245. 武藤山治

    武藤(山)委員 これはあなたに、租税特別措置法は善なるものである、こういうお答えをいただいたことだけでも私は私なりの成果があったと見ています。  主税局長いらっしゃいますね。ちょっと数字の点で恐縮でありますが、配当所得の所得階級別表でちょっと発表願いたいのでありますが、配当収入のある階層というのは、一千万円以上の所得者の中で納税人員はどのくらいおって、そのうち配当収入は何%ぐらいその人たちの所得の中で占めているか、これをちょっと明らかにしてください。
  246. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 いま資料を持ち合わせておりませんが、先般大蔵委員会に提出しました資料では、千万円超のクラスでは、八千人納税人員がおります。そのうちで、配当所得者は六千人というふうに記憶いたしております。そのうちの総所得中に占める配当の割合は約三〇%程度ではなかったかというふうに、記憶しております。いま資料を調べますが、そんなような構成割合と記憶しております。
  247. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの数字から見ても、大蔵大臣、大体配当収入のある階層というのは非常に収入の多い階層ですね。大体所得人員からいうと、百万以下の所得の人員というのはたいへんな数おりまして、二百万を突破します。その人員の中で、配当収入のある人はわずか七%。片方は、一千万以上の人は七五%の納税者が配当収入がある。百万円以下の人は七%しか配当収入はない。しかも、その所得額の中のパーセンテージを見ると、いま主税局長が言うように、一千万円以上の人は三割見当がそのうち配当収入、百万円以下の収入の人はまことに微々たるもので、総額で百三十四億目の所得しかない。この一事を見ても公平でない。納税モラルというものがくずされるという点は、こういう数字からも明らかであります。あなたは善なるものと答えたけれども、善なるものじゃありません。もしこれを、善悪を多数決で国民全体にこの内容を明らかにさしたら、おそらく国民の絶対多数が、これは悪なるものであるから廃止すべきだというでありましょう。ただ、自由民主党は選挙の得票数で四八・何%を衆議院で確保して、頭数が多いから、自由民主党の国会議員が多数できめたものは善なるものだという三段論法を使うかもしれないけれども、こういう数字からいったら、決して善なるものではありません。これはやはり早急に再検討して、租税特別措置というのは、もっとスピーディーに整理すべき段階にある。特に景気が今日のように過熱をしてきて、租税収入の自然増収というものはたいへん見込まれる段階が来た、こういうときに、企業にいろいろな恩恵を与えて、資本蓄積だ、内部留保だ、財政が援助する必要はない経済情勢にも本年はなりそうであります。企画庁の経済見通しよりも、経済の動向はずっと先行するのじゃありませんか。四十二年度は自然増収もかなり見込めるのじゃありませんか。大蔵大臣、自然増収はどのくらい見込めるとお考えですか。
  248. 水田三喜男

    水田国務大臣 もし、私どもの当初見込んでおる経済の伸び方ということを基礎にしますと、やはり七千三百億前後の自然増収があるだろう、経済が予想外によくなるというような事態がありましたら、これはそれに伴ってもう少しの自然増があるということになろうと思います。
  249. 武藤山治

    武藤(山)委員 自然増は大体八千億円ぐらいになるのじゃないですか。いかがですか、大体の目見当の数はどうですか。
  250. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはよく申しますように、去年の減税の平年度化が今年一千億ございますので、それを入れて、私どもは大体当初から八千億前後ということになりましたが、これを引いて七千億台ということを、一応いまのところは見込んでおります。
  251. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう情勢のときは、年の途中でやはり財政を非常に弾力的に動かすという場合には、私は租税特別措置を整理することも一つの財政のあるべき道だと思うのです。あるいはその八千億の自然増収のうち、補正財源に最小限必要なものだけは残して、あとのものは国債発行を減らすなり――いまこそ私は、日本の財政運用というものが、よく水田さんが言うように弾力的運営――弾力的運営というのは、決まった予算を早く支出するかおそく支出するかなどという、そんな小手先のことだけじゃなくて、もっと大胆に、財政運用というものを、本年はいままでにはないスタイルを打ち出すぐらいの勇気がなければ、なかなか政府の経済見通しのようなわけにはいきませんぜ。どうですか。
  252. 水田三喜男

    水田国務大臣 弾力的にという次に、私は果敢にということばを今度は入れてございますが、大体これが気持ちをあらわしていると思います。
  253. 武藤山治

    武藤(山)委員 農林大臣がおかぜを召しておるようでございますから、先に農林大臣に簡単にお尋ねをしてみたいと思います。  日本農業は衰退の一途をたどりつつある。高度経済成長、所得倍増といわれたころ、農業基本法ができた直後、たいへん生産も張り合いづいて、畜産部門もたいへん前進をいたしたのでありますが、昭和四十年ごろから選択的拡大というものも、とんざをして、政府は、やれ豚だ、やれ牛だ、やれ青果物だと、いろいろ選択的拡大を農林省で指導をしてきたけれども、どうもうまいぐあいにいってない。そういう最大の原因は何だろう。私、いろいろあろうと思いますが、まず畜産のことについてひとつお尋ねしますけれども、これが停滞をし、かえって後退をしている。酪農などは、もう去年もたいへんやめる農家がふえた。何が最大の原因だと農林大臣はお考えでございましょうか。端的にひとつ、ぴちっと教えてくれませんか。
  254. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農業の生産につきましては、いまお話がございましたように、政府は農業基本法の精神に沿うて生産対策、価格対策、構造対策等をやってまいったのでありますが、農業基本法制定当時から今日までを振り返ってみますと、やはり日本の産業がほかの方面においては非常に大きな変化を見、著しい成長をいたしました。それに伴って、農業の方面においては、たとえば他のほうで経済成長する、それに必要なる労働力を持っていかれるとか、いろいろ産業構造全体から見て跛行的な傾向にたってまいっておることは事実であります。したがって、私どもは、いま産業構造として調和のとれた形で持っていかれるように全力をあげておるわけでありますが、ただいまお話しのように、ここ昭和三十九年から四十年にかけて、やや景気の伸びが停滞しておる傾向であるにもかかわらず、国民の食生活に対する嗜好は依然として変化がありません。いま御指摘のように畜産、果樹、野菜、そういうほうの需要が非常に拡大されている。これは一方においては農村の都会化ともいえるでありましょうが、とにかく、国民の食生活がそういうふうになってきておりますので、いまお話しのような、われわれとしては選択的拡大の方向をとって、そして調和のとれた需給量を維持していこうといたしておるのであります。ただいま御指摘の畜産につきましては、これはいま農業構造全体について農林省としても鋭意、一生懸命研究中でありますけれども、御承知のように、畜産につきましては非常に濃厚飼料が必要であるにもかかわらず、それの供給はわが国においては思うようにいっておりません。これが一つであります。  そこで、私どもといたしましては、たとえば国有林野を効果的に活用して草地の造成をするとか、それから裏作地帯をなくして、そして裏作にはぜひ牧草の作付をやってまいるとかいうふうにして、この飼料の自給制度を高めるということ、これがまず何よりも必要であると存じます。御承知のように、政府のいろいろな諮問機関であります、たとえば経済審議会、農政審議会等の答申によりましても、わが国の国民の食料に対する嗜好の動向というものについては、ほぼ見当がついておる。そういう見当から見ますと、米のほうはやや安定した供給が保ち得るかもしれませんが、畜産においては、いまにしてその手を打っていかなければ、たいへん前途は楽観を許さない、こういうことをわれわれは言えると思います。そのことについて、いま私どもとして努力をいたしておるわけであります。
  255. 武藤山治

    武藤(山)委員 需給事情が反映して、飼料の問題がやはり日本の農業にとっては非常に大きな壁に突き当たっている。私個人としては、この際もう飼料というものは国家管理にしなければ、農産物というものはどんどん上がらざるを得ないと思う。生産量は年間三・一%ぐらいしか成長しない状態でありますから、他の産業に従事する者との所得格差というものは開く、そのためにはどうしても量がふえない農産物は、値段を上げる以外に農家所得の確保はできなくなってくる、こういう矛盾が出てまいります。私は、日本の農業問題というのは、ほんとうに真剣に、いまこそ再検討し、大転換をしないと、人口増には追いつけない、あるいは食生活の今日の傾向には追いついていけない、外貨は農産物にたいへんとられてしまう、こういう国に転落をしつつあるのではないか。あとで飼料の自給度の問題については御質問を申し上げたいと思いますが、どなたか役人のほうで、最近一カ年間の農産物全体の輸入の金額、わかったらちょっと発表しておいてください。
  256. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 お答えします。  四十年の年間におきます農産物の輸入金額は十九億四千万ドルということに相なっておりまして、四十一年度は約二十二億ドル程度になるかと推測をされております。
  257. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、どうですか。農産物の輸入だけで、邦貨にして四十年が六千九百八十四億円、四十一年は二十二億ドルですから、さらにこれを上回る。たいへんな数字であります。八千億になんなんとしている。これだけの農畜産物を輸入しなければ日本の食生活というものが維持できない。もちろん、それは低開発国との関係で、向こうの農産物を買わざるを得ない、日本の工業製品がそれの見返りに輸出されるという問題もあるでしょう。しかし私は、根本はやはり日本の農林省の農作物や畜産物に対する指導方針というものが誤った、あるいは真剣さがなかった、ビジョンを持たなかった、そういう点から今日の農畜産物の総体的不足というものをもたらしたと思うのであります。きょうはそれを論争する時間はございません。ございませんが、いまの数字を見ても、いろいろな角度から見て、もったいない気がするわけであります。このままこれがずっと推移した場合には、本年などは、ケネディラウンドがもし締結をされて、アメリカの穀物協定が締結をされるということになりますと、これは農産物の値段ががあっとまた上がりますわ、そうなってまいりますと、この金額はさらに上回る。日本はまさに食糧輸入で外貨を非常に苦しくするという数字が、ここに一つ出てきたような気がするのであります。このいま発表になった四十年の輸入金額というものは、日本の総輸入の二四%に当たる。二十三億ドルになりますと、おそらく、これは三〇%近くの総輸入に占める農産物の輸入ということになります。これはたいへんな事態だと思いますが、いや、そんなに心配した事態じゃない、こうお考えになるか、農林大臣と大蔵大臣の見解をひとつお聞かせ願いたい。
  258. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いま申し上げましたように、私どもは自給度を高めることに全力をあげておるわけでありますが、米麦については申し上げましたように、大体八二%ぐらいな自給度を維持しておる。その他合わせますと七六%ぐらいな自給度だと思いますが、これはやはりこの程度以下に落とさないように全力をあげなければいけない、さように心得て農林政策を進めてまいりたいと思うわけであります。
  259. 水田三喜男

    水田国務大臣 国際的分業化の方向ということもある程度避けられない。イギリスあたりの国際収支の古いときからのあり方を見ますと、工業用品の輸出がふえる、その反面、食糧の輸入割合というものがふえてくる、こういう型をとってきている国もございますが、日本もそういう傾向が非常に今後強くなるのじゃないかということを考えますので、私は、この自給度をできるだけいまの程度に維持するということに、やはり政策の焦点を当てなければいけぬのじゃないかと思っております。
  260. 武藤山治

    武藤(山)委員 先ほど倉石さんのお話の中で、重要な、きちっときめておかなければならぬ問題が一つあろうと思うのであります。それは、何といっても飼料の自給度を高めて、草地改良をし、あるいは国有林を牧草地にする、こういう点は現在も進行しておるし、けっこうな施策だと思うのでありますが、問題は米作地帯、平たん地ですね。こういうところの酪農もかなりあるわけであります。草はほしいのであるけれども、田畑の面積が少ないために、自分のうちだけではできない。ところが、農林省のここ四、五年の指導が悪かったために、裏作というものはほとんど活用されていない。大臣、列車に乗ってみたり車に乗ってみて、これは二毛作できるのじゃないかというところは一ぱいあいていますね。レンゲソウをつくって、牧草をサイロに入れてもよろしいと思うようなところが至るところあいている。今日、裏作の利用度というものはどの程度になっていますか。農林省、わかりますか。わからなければ先へ進むけれども農林省わかりますか、裏作の利用度。
  261. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 裏作の利用率というのは、これは裏作可能面積をどう抑えるかという非常にむずかしいことになるわけでございますが、耕地の利用率ということで見ますと、一二三%ということで、一回以上使う面積が二三%あるというふうに見てよいかと思います。
  262. 武藤山治

    武藤(山)委員 農林省がそんな答弁しているようだから酪農振興も何もできないんですよ。それはいいとして、大臣、いまの裏作を、牧草をとるために活用できるためには、いまの農地法が少々障害になる。もっと簡単に、牧草だけ裏作に利用できるような賃貸契約が結べて、しかも借りた人が、いや借りたんだから農地法でもう返さないという紛争が起こらないように、この裏作活用のために、農地法をある程度手直しをするという検討の時期に来たと思うのですが、大臣の御見解はいかがですか。
  263. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 実はそういうことも含めまして、ただいま農林省部内で構造政策推進会議というものを持ちまして、鋭意勉強を続けさせておるわけでありますが、一つには、御承知のように、構造改全をして、そして経営規模の拡大をはかって近代化していくことが必要だ。そういうことを考えますと、いまのお話のような農地の問題が出てまいります。御承知のように、政府は過去二回にわたって農地管理事業団法というふうなものを提案いたしましたが、成立を見ておりませんので、そういうことをも含めて、私どもといたしましては、農地の問題について根本的に考え方をひとつ再検討したい、こういうことを考えまして、構造政策推進会議でいま検討を続けておるわけであります。
  264. 武藤山治

    武藤(山)委員 管理事業団法は、これは規模の拡大をするために農地を手放して売ってもいいという人を、事業団がかわって買って経営規模を拡大していこう、こういう趣旨法律でありますから、私のいまの質問とは全然ねらいが違うわけであります。私は、いま言った裏作だけを酪農のために利用できるような契約を簡単にできる、紛争が起こらない、こういうように農地法というものを手慣しする必要があるのではなかろうか。もう一回その点答えてもらいたい。  それともう一つ、管理事業団法は、今国会のいつごろ提案をするんですか。財政投融資計画ではすでに繰り越して載っておるようでありますが……。
  265. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 あとのほうからお答えいたしますが、管理事業団法というものをただいま提出する考えは持っておらないわけであります。違う形で、どのように所期の目的を達成することができるかということで、検討を続けておる。  それから最初のほうのお話は、私どもも同感でございまして、そういうことについても農地法、その他小作料の問題もございますし、あわせて検討を続けておる最中であります。
  266. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、話がよそへそれますが、管理事業団法は出さないで、別なものを考えている、こうおっしゃるんですが、予算には事業団というものの予算が載っておるじゃありませんか。財政投融資の中に載っておるじゃありませんか。これはどういうわけですか。
  267. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 前年度の分は載っておりますが、当年度の分は載っておらないはずだと思いますが。
  268. 武藤山治

    武藤(山)委員 しかし、前年度の分も、法律ができてないのに一応載せてあるわけですか、どうなんですか。
  269. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 前年度には法案の提出を予定いたしておりましたので、その裏づけとしての財政投融資計画の提出をいたしたのでございます。
  270. 武藤山治

    武藤(山)委員 そんなことはわかっておるけれども、事業団というものはつくらないと大臣は答弁したんですよ。別の構想でいま検討している。そうしたら、この四十億の予算は削除すべきじゃありませんか。新たにこういう構想ができ、固まって、こういう法律を出すときまってから予算というものは出すべきじゃありませんか。大蔵大臣どうですか。一たんきめた予算だから繰り越すんだという場合には、繰り越し明許なり、あるいは別な形できちっと国会の議決をとって本年は出すべきですよ。まだ出すか出さないかわからない、事業団はつくらないとはっきり大臣に言っているのに、予算だけ四十億載っておるのはおかしいじゃありませんか。これは納得できません。
  271. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 これは別に財政法に関係ございませんが、ここに、ごらんになるとおわかりになりますけれども、「農地管理事業団(仮称)」と書いてございまして、四十一年のほうには載っておりますが、四十二年には載ってないんです。したがって、これは全部抹殺してもよかったのでございますけれども、昨年との続きをほかの公団についても財投計画を出しておりますので、御審議の御便宜のために、わざわざこれに載せておるわけでございます。――これは四十二年度の財投計画の中に入っておりません。入っておりまんけれども、ほかの事業団について四十、四十一と並べてございますので、去年法律案を出しまして、財投計画のほうにも載せておりましたということを、参考のために載せたわけでございます。
  272. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういたしますと、この四十億は、かりに事業団という名称でなく、ほかの名称で何か公団ができたら、この予算というものは、去年のは引き継ぎがないですね。この予算というものは全く消えてしまったわけですね、法律も何もないんですから。この金は残っておるんでしょう。
  273. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 この金はすでに引き継ぐわけにまいりませんか、四二年度の年末融資とか、それらのもののいわば財投の追加の原資として使われたかどうかは、私は主管でありませんからわかりませんけれども、これをほかの事業団ができたからといって、すぐ引き継ぐというわけではございません。これはもう消えておるわけでございます。
  274. 武藤山治

    武藤(山)委員 こういうものは、法律が通ってないで流れたんですから、載せるにしても、最後の備考欄のほうの一番下に、これは当然主計局長、親切な説明だったら、一番下へ一応載せたけれども、これは法案が流れたためにちょんになった、この予算は使えません、こう省くのが、サラリーをもらっている主計局長の当然の任務じゃありませんか。これは与党も異議ないと言っているから、時間がないから、答えなくともよろしい。  そこで、もう一つ農林大臣にお尋ねいたしますが、先ほどの輸入に関連して、四十二年度の予算によると、小麦の輸入というものがかなりふえておりますが、小麦の輸入量は何トンで、昨年と比較してどのくらいふえますか。
  275. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 飼料の輸入といたしまして、昭和四十年度の輸入数量は、原料形態で六百十二万トンで昭和三十五年度の約三倍でございます。輸入金額は四億八千六百万ドル。これは三十五年の約三・四倍でございます。  この輸入飼料のおもな品目は、トウモロコシ三百万トン、マイロ百六十二万トン、小麦が九十二万トン、ふすまが三十九万トン、大麦が三十七万トン、こういうわけでございます。  四十一年度の飼料輸入見込みを申し上げます。輸入数量で、原料形態で約八百三十万トン。これは四十年度に比べますと一七%増でありますが、輸入金額で約五億七千万ドルと推定されております。このうち、トウモロコシの伸び悩みと、マイロの急増が目立っております。四十二年度にも輸入は引き続いて増加いたしておるわけでありますが、輸入数量は原料形態で約九百二十万トン、輸入金額は約六億二千万ドルに達する見通しと推算をいたしておるわけであります。
  276. 武藤山治

    武藤(山)委員 小麦の買い入れ予定額だけで、四十二年度は三百十六万四千トン、大臣、四十三年度の予算で小麦の買い入れは三百十六万四千トンになります。間違いありませんね。去年は三百六十六万三千トンです。どうして一挙に五十万トンも小麦の買い付けがふえるのか、ふやさなければならないのか。その理由を聞きたいわけであります。
  277. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府委員からちょっと申し上げます。
  278. 大口駿一

    ○大口政府委員 四十、一年度会計年度の小麦の輸入量三百十六万四千トン、それから昨年度の当初予算計画が、二百六十六万三千トン、差し引きをいたしまして、五十万一千トンの増になっておるわけでございます。この内訳はどういうことになっておるかと申しますと、そのうち、需要量の増加によるものが三十四万トン、それから内地麦の買い入れ数量が、昨年とことしとで減っております数量が八万トン。それから、年度初めの持ち越し数量の減っておりますのを穴埋めしますものが一万二千トン、それから期末の要在庫数量が、需要量の増加に伴いましてふえます分が六万九千トン、全部合わせまして五十万一千トン、かようになっております。
  279. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの食糧庁長官答弁は、この間大蔵委員会で少しこの問題を取り上げたものですから、どうもその中身を適当に分解をしてきょうは説明をしている。この間大蔵委員会でやったときには、こういう答弁は出てこなかった。これはケネディラウンド、すなわち、一括関税引き下げが本年締結されると、それの見返りと言ってはおかしいのですが、アメリカは産物を低開発国に援助する義務を、先進各国に結ばせよう、そしてアメリカ、カナダのそういう麦類、農産物というものが、かなり外国へ安心して売れる、安定して輸出できる、こういうような穀物協定をケネディラウンドと一緒に締結をしようとアメリカはねらっている。そこで、おそらくそういう穀物協定ができると麦の値段が上がる。それを見越して、五十万トンも余分に本年は輸入をするのではないだろうか。あるいは、おそらくアメリカのかなり強い意見があって、来年は協定ができると単価が上がりますぞ、いまのうちに買っておきなさいよ、予算にはいい値で計上しておきなさいよ、というようなサゼスチョンがあって、こんなにも小麦を買い付ける予算を計上したのではないか、こういう疑いをわれわれは持つのであります。しかし、いま食糧庁長官答弁では、三十四万トンは需要に見合うだけで、八万トンは内地の農民から買い上げる小麦の数量が減るからだ、在庫が六万九千トン必要だからだ。つい十日ばかり前は、あなた、こういう中身を全然知らなかったじゃありませんか。大蔵委員会でぎゅうぎゅうやられても、いや、それは需要がありますからとかいって、とうとう中身の分析の答弁はできなかった。これはあとで分解して、きょうに間に合うようにこれを説明したと私は判断する。  しかし、それはここでやってもしかたありませんから、いずれにしても五十万トンもふえるのですよ。初めての人は内容がわからぬと思いますから、ちょっと申し上げますが、四十年と四十一年の輸入の差、ふえたのは十三万七千トン、その前の年は三十二万二千トン、本年は一挙に五十万トンふえるのですよ。農民から買い上げる小麦の減る量というのは、ことしは八万トン、去年は二万トンしか減らなかったのです。八万トンしか日本の農民から買う量は少なくならないのに、輸入だけは五十万トンもふえるというのは、どうもこれは少し予算の乱用のような計上ではなかろうか、私はこういう感じがするわけであります。しかし、先はどの食糧庁長官答弁を信用いたすといたしまして、五十万トン輸入するというのはやむを得ないものと一応認めて論を進めてみますと、本年買うところのトン当たり価格というものは、去年と比較して高いのか安いのか。高いとしたら、一体高くなった理由は何か。これをひとつ明らかにしてください。
  280. 大口駿一

    ○大口政府委員 外国の麦の買い付け状況は、最近の国際的な麦の需給が非常に窮屈になっておりまする関係上、全体的にやや値上がり傾向に現在ございます。そこで、予算上組んでおりまする単価は、四十一年度の予算単価よりも高目の価格で予算を組んでおる次第でございます。
  281. 武藤山治

    武藤(山)委員 高目なんていう、そんな大ざっぱなことでなくて、去年の小麦価格より何%高い値段で予定をしているか。
  282. 大口駿一

    ○大口政府委員 手元に資料を持っておりませんが、二、三%というふうに記憶いたしております。
  283. 武藤山治

    武藤(山)委員 食糧庁長官がそんなずさんな答弁で済みますか。あなた、二、三%だったらはっきり単価を聞きますよ。去年の単価は幾らで、ことしの単価は幾らですか。食糧庁長官ともあろう者が、そんないいかげんな低い数字を発表してごまかそうなんてだめですよ。
  284. 大口駿一

    ○大口政府委員 資料を探すのにひまどりましてたいへん失礼申し上げました。  四十二会計年度で組んでおりまする外麦の買い付け単価でございますが、これは種類によっていろいろ、たとえばアメリカのソフトの小麦でありますとか、あるいはハードの小麦とかで違っております。たとえば、ソフトの小麦でありますると、円に換算をいたしましてトン当たり三万一千円、それからセミハードの小麦が三万一千二百七円、それからハードの小麦が三万三千七百三十四円と、それぞれの算出基礎をもってやっておりまするので、全部の加重平均の価格が昨年の予算単価と比べて何%に上がっておるかという正確な計算を私ちょっとこれからいたしますので、ちょっと御容赦いただきたいと思いまするけれども、先ほど申し上げましたように、各種類ごとのそれぞれの買い付け価格の趨勢その他を織り込んで計算をいたしました上で、最終的に品目別の買い付け比率で加重平均をして計算をすべきものと思っております。
  285. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまのを私が自分で積算をしてみて加重平均で出してみると、四十二年の予算単価ではトン当たり三万二千六百十四円になる。去年は二万九千六百九十六円、しかし、四十一年度の実績がどうなるかは、あとで食糧庁長官、ちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、この予算単価だけの比較でいくと、一挙に小麦の買い入れ価格は一側近く、九・八%上がるのです、高くなるのです。それを先ほど二、三%と言うから、食糧庁長官ともあろう者が一割も値が上がるのにそんな答弁をしたから、私もちょっとむくれたわけなんです。  そこで、農林大臣、小麦の買い付けが九・八%値が高くなるということになりますと、これからとれるえさ、すなわちふすま、政府が管理しているもの、こういうようなものが上がるのではないだろうかと農民は心配するわけであります。輸入を原料とした飼料の値段は本年じゅうは上げない、買い付けは九・八%上がっても農民には上げないと、こうはっきりお答えがいただけますか。
  286. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのようなお話の前に、すでに飼料につきましては、農業団体その他と政府との間にいろいろな話し合いを続けておりますが、輸入飼料が、ことに配合飼料の原料が、先ほど来ここでお話のありましたようなわけでありますので、政府管掌の品物について若干の値上げというのはやむを得ない情勢になってきておるのではないか、私どもはこのように見ておるわけでありますが、こまかな数字的なことについては、政府委員のほうからお答えいたします。
  287. 武藤山治

    武藤(山)委員 これは農民が聞いたら、それはまたたいへんな不安と動揺であります。若干上げざるを得ない、若干とは一体どの程度それでは上げるのか。政府当局の担当官おったら、ひとつ、いま農業団体と話し合っている上げ幅というのはどうなっているのですか、飼料のほうの。
  288. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいま大臣からお話がありました点でございますが、小麦の輸入価格が上がることに伴いまして若干の値上げをせざるを得ないというふうに考えております。御承知のように飼料といたしましては、小麦からふすまをとりまして、ふすまを売り渡すことになるわけでございますが、三十キロ当たり二十九円程度の値上げになるというわけでございます。
  289. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、これは何月から値上げになるのですか。
  290. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま話をいたしておりますのは、四、九月は据え置いて、六月からそのようにしなければならないのではないかと考えております。
  291. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういうことになりますと、農家の生産費というのはまたまた上がって、鶏を飼えば養鶏家がえさ屋のえさにされ、豚を飼えば勘定はとんとんで、それではとても酪農はやっていけないじゃありませんか。牛乳は、いままで生産費が七百五円で、これでは少々赤字になるというので、生産者団体か牛乳の値上げをしてくれということでメーカーとすったもんだやっているわけでしょう。今度はまた、えさが三十キロ二十九円上がったらまた生産費が上がって、畜産物というのは軒並み上がらざるを得なくなるじゃありませんか。政府の企図している四・五%の物価騰貴なんということじゃ、これまたおさまりませんぞ。  企画庁長官、きのうあなたは、物価対策特別委員会で私の質問に対して、まあ、農産物は生産費が上がり、飼料が上がり、そういう生産資材が上がって赤字になるような状態なら、これは資本主義の観念じゃなくて、自由競争の価格じゃなくて、政府が指導する価格でよろしいのだ、こういう見解を述べられた。そうすると、またこれ飼料がこういう形で上がってまいりますと、畜産物は軒並みだあっと上がる傾向になります。上がらなかったら農民はとても所得が後退しますからね。この、いまの小麦の買い付けの値上げに関連して飼料が上がるということについての企画庁長官の見解いかがですか。
  292. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは政府の専管の物資でございますから、制度的には私ども相談を受けるということにはなっておりませんが、やはり一次産品でありますので、ある程度上昇がやむを得ないとすれば、それははやむを得ないものとして考えざるを得ないと思います。
  293. 武藤山治

    武藤(山)委員 それじゃ、経済社会発展計画の物価騰貴率も、あるいは、これなどは本来なら卸売り価格に関係するわけだ。卸の値段が大体輸入で九・八%上がれば、おそらく農業団体に渡す卸値も上がってくる。卸売り物価まで指数に出てくれば――これは政府管掌だから、おそらく入らぬと思いますが、入らぬものがどんどん上がったら、実質的には一・二%の卸売り物価の上昇なんというのは、これだけでももうどこかに吹っ飛んでしまいます。あなたの計画自体が全然現実と合わなくなる、これは原因をつくるようなものですね。どうしますか。経済社会発展計画のほうを変更しますか、現実に合わなくなってきたんだから。それとも、あの計画は、あんなものは単なる指針だ、紙くずで捨ててもいいんだ、これはこういう受け取り方をわれわれがせざるを得ないようになってきました。企画庁長官は、まあ、そういう政府管理のものだから、上がったら当然、しようがない。それじゃ、農畜産物もみなまた右へならえになりますが、しようがないですね。政府がそれをうまく指導して、消費者物価がはね上がらぬように、これはもう指導できませんね。いかがですか。
  294. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも、ただいまだけのことからそういう結論へは、少し飛躍があるように思いますが……。
  295. 武藤山治

    武藤(山)委員 持ち時間がきまっておりますからやむを得ませんが、まあ、きょうの質問の中で重大なことを幾つか私は発見しました。農林大臣、いまの質疑応答の中で約束された問題も幾つかあります。それから、いまの値上げの問題も、これが国民生活にどういう影響を与えるかということも、これは深刻に考えなけりゃならぬ問題を含んでおります。買い入れ価格の上昇が九・八%ですからね。しかも、それが三十キロ当たり二十九円上がったら、千羽鶏を飼っている農かはたいへんですよ。これが全部原価にはね返ってくるのですからね。そういう…で、政府施策がもう初年度の最初の月からくずれるような傾向になってきている。私は事重大だと思うのであります。全国の農民が見たら、佐藤内閣をまた恨むと思うのであります。  しかし、それはもう論議のほかにいたしますが、最後に、企画庁長官にちょっとお尋ねします。長官は、最近ときどき、あるいはときどきでないかもわかりませんが、四月四日の経済閣僚協議会の月例経済報告のときに、景気の基調は過熱を警戒すべき段階にある、こう強調したと新聞は報じております。政府の言うデフレギャップだの、あるいは景気は離陸しただの、あるいは低圧経済だの、いろんなことばを時の大臣は使って国民を惑わすわけでありますが、この過熱を警戒しなければならぬという、その過熱とは、一体何がどの程度の状態になったら過熱というのか、何がどの程度の状態を過熱とあなたは想定をして、そういう発言をなされているのか、ひとつはっきりとお示しを願いたいのであります。
  296. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのは、たぶん四月ではなくて三月のかと思います。過熱の様相がある、正確な表現は、たしか、景気の動向には注意を要するという表現であったと思います。それは三月でございます。  どういう状態を過熱というかということでございますけれども、まあ、たとえば、設備投資が経済各層を通じて相当大きくなって、しかもそれが、自己資金でまかなえる度合いが非常に低く、銀行借り入れにたよるということ、その結果またコールがかなり上がっていくというような状態、そうして、国内に、輸出のための、普通、玉と申しますけれども、それが少なくなって、輸出が減退をする。そういったような状態がそろって出てきましたときには、やはり過熱である。そのときには在庫も相当に減っていくわけでございますが、抽象的には、そういう状態と思います。
  297. 武藤山治

    武藤(山)委員 そういう状態が、いまかなり濃厚に傾向が出てきたわけでありますね。先行指標の中で判断をすると、そういう傾向はもう過熱――いま過熱の一歩手前ですか、この状態でいくと大体何月ごろ過熱という範疇に入るのですか。
  298. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこへ一歩入ってきたというふうには考えておりません。実績の指標によりますと、一月、二月、三月とも、必ずしもそういう方向を示しておりませんけれども、ただ季節修正なんかをいたしますと、全体はかなり強含みである。季節修正そのものにまた問題があるということはございますけれども、まあまあ経済は相当のテンポで上昇しつつある、こう与えるわけであります。しかし、過去に比べますと、企業の手元流動性というものが、御承知のように、相当まだ高うございますから、過去の水準よりは高うございますので、すぐにこれが現実に銀行貸し出しになってあらわれてきておるという状態ではない。  それから輸出には一部に伸び悩みが見られます。それは、その部分については、確かに内需にとられていくという状態でありますけれども、しかし、輸出の伸びが減ったというのではないので、伸び率が落ちておるということでございます。
  299. 武藤山治

    武藤(山)委員 輸出の場合を見ても、伸び率はこれからずっと減るというような客観的情勢が強くなってきた。アメリカの景気の沈滞、これによる日本の輸出の減退が出てくる。あるいは銀行の調査による投資の状況なども、銀行ではすでに発表いたしておりますように、全銀協では一兆二千億円の資金不足が生ずるであろうという調査の結果を彼らは発表している。しかも、その一兆二千億円のうち、日本銀行の信用が六千億円、コール、普通の市場調達が五千二百億円、一兆二千億円をそういう方法で操作をする以外に方法がない、こういうことを全銀協は新聞にも発表しておる。そうなってまいりますと、日銀の信用が拡大され、コールもレートが上がり――まあ私は、銀行の調査、これはかなり銀行は詳しい調査をしていると思うのであります。これには長期銀行、信託銀行もみな入っておりますから、設備投資動向というものは、企画庁が調査しているよりも、かなり事実をつかんでいる数字に近いと私は思うのであります。ですから、これは、ことしの何月ごろからということはなかなか想定がむずかしいと思いますが、かなりの設備投資が行なわれ、いろいろな面にこれが波及してきて、たいへんな問題が出てくる。矛盾が一ぱい出てくる。その矛盾をうまく調和をはからぬと、とてもいまの経済社会発展計画の線に沿った経済運営などというものはできない。  そこで、長官にちょっと、時間がありませんが、お尋ねいたします。四十一年度の当初の経済運営の見通し、政府の策定した経済見通しでは、成長率は幾らに見た。結果は実質九・七%になった。当初見込んだのは幾ら見込んだわけですか。
  300. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお話でございますが、その一兆何千億円というのは全銀協の調査でございまして、これは全銀協だけのカバレージでございますから、その他の金融機関との金のやり取りが御承知のように別にございます。私は、あの数字には多少懐疑的なんでございまして、政府の揚げ超を相当きつく見ているとか、いろいろございますと思います。  それから、各銀行の設備投資の動向調査でございますが、これは、一つは、私どもが工事ベースで考えておりますのを支払いベースで見ております。カバレージは製造業を見ておりますので、それもかなり大きな製造業だけを見ております。私どもは全体を見ております。その点に第二の違いがございます。  それから第三の違いは、やはり銀行に、まあとりあえず申し込みをしておこうという、そういう数字の推計でございますから、いわゆる達成率といったような問題もあるわけでございます。  それから、経済成長の見通し、七・五でございますか、それが九・七になるわけでございます。
  301. 武藤山治

    武藤(山)委員 四十二年度も、政府は当初のやつをまた変更して九%に直したわけでありますが、去年と同様に――去年は二・何%狂いが出たわけでありますね。ことしもこの九%というもの、どうですか、狂いがかなり出るのじゃないですか。あなたの見通しいかがですか。
  302. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、国際収支を総合でゼロに見ておりますところでもおわかりのように、相当の努力を払わないと、この九%というものは、ただほうっておいて達成できる数字ではない。したがって、先ほど大蔵大臣の言われましたように、弾力的かつ果敢な措置が必要とされる場合がある。そういうときは、そうしろということを、運営の基本方針にも書いておるわけでございます。
  303. 武藤山治

    武藤(山)委員 努力を払えば九%が維持できる方法が現実の経済であると確信いたしますか。
  304. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、これから十二カ月のことを考えておるわけでございますから、実際、あるいは武藤委員の言われますように、相当強含みの動きをするかもしれず、あるいはそうでないかもしれません。ただいまから一年間を予測するということは、実際のところ少し困難だと思います。したがって、私どもは、注意さえ払っておけばこれができる、ただいまのところ最善の見通しだと考えております。
  305. 武藤山治

    武藤(山)委員 九%で押えるなんということはできませんよ。これは不可能です。  次に、もう一つ、もうすでに卸売り物価についても、経済見通しに破綻が来ているじゃありませんか。というのは、物価指数は、昭和三十年を一〇〇として、四十年の平均が一〇二・八ですね。四十一年は、四%卸売り物価が上がったということですから、一〇六・八となるわけですね。今度は一・二%上昇だということになると、六・八に一・二ですから、ちょうど四十二年の卸売り物価の指数が一〇八になる。その立論はどうですか。――いいですか、もう一回申しますよ。日銀の卸売り物価指数は昭和四十年の平均が一〇三・八である。四十一は、四%上がったのであるから一〇六・八だ。四十二年は一・二%しか上がらないというのですから、一〇八にならなければならぬわけですね。それまでの意味はわかりますね、ぼくが言おうとしておる意味は。そうだといたしますと、あなたのほうの経済見通しの一・三の上昇ということは、指数が一〇八でありますから、ことしの二月すでにもう一〇八をこえたじゃありませんか。日銀の指数を見ると、卸売り物価が一〇八・五ですね。もうすでに昭和四十二年度の経済見通しの一・二%というものは、この二月にきてしまっているわけですね。そういたしますと、二月よりも〇・五%卸売り物価がこの一年間に下がらなければいけない。そんなことが見通しとして現実にありますか。もう卸売り物価の点で、私は、経済見通しというものは完全にくずれた、したがって、経済の見通しのすべての数字にもこれは波及してきて、消費者物価にもみんな波及してくる。国際収支はとんとんなんて、とんでもないと思うのです。これは二億ドルか三億ドルの赤字になると思うのです。そういうような問題も全部これは手直しをしなければだめな段階にきた。すなわち、経済社会発展計画は、これはもう紙くずに入れるような、単なる指針になって意味がなくなってきた。同時に、政府の経済見通しも、一カ所がくずれれば全部にそれがまた波及していくわけでありますから、この見通しも完全にくずれた、こう私は、酷評でありますが、断定をしたいのですが、企画庁長官の反論を聞いて私の質問を終わります。
  306. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは立論の過程で多少私の考えておりますことと違います。まず最初は、小さな点でございますけれども、これはパーセンテージでございますから、ポイントではございませんので、単純に足し算をするということは多少違うというのが一つでございます。  それからその次に、一・二%四十二年度に卸売り物価の上昇を見込んでおるということは、これは御指摘のように、私ども、四十二年度に卸売り物価が上がると考えておるのではなくて、逆に下がると考えておるのでございます。それにもかかわらず一・二%上昇という数字が出ますのは、お時間がございませんのでくどくどは申しませんが、これだけが四十一年度の卸売り物価の上昇率といたしますと、この平均がこの点でございますから、これが四十一年度の水準になるわけで、したがって、一・二であるとすれば、これからかなり下降しなければ、これとの差が一・二にならないわけでございます。私どもは、げたをはいておると申します。そこで私は、四十二年度に卸売り物価の下降がある、こういうふうに考えております。それはなぜそう考えるかといいますと、四十一年度に上がりましたものは、最初に非鉄金属でございます。次に鉄鋼であり、そうして繊維であった。それからその間を通じて木材がずっと上がっております。しかし、これは商品市況のようなもので、これだけ上がりますと、むしろ反落に転ずるのがほんとうであろうと、見通しを立てるときにそう思っておりました。すでに形鋼にしても丸棒にしても、かなり高水準ではありますが、いっときに比べると相当下がっております。繊維についても、操短解除以来下がりかけておる。木材だけは、これは一次産品でありますので、おそらく上がり続けるであろうと私は思いますが、このウエートはたいして大きくございません。したがって、全体としては、四十三年度中には卸売り物価はむしろ反落がある。なければおかしいのでございまして、これは工業製品がおもでございますから……。そういうふうに考えております。
  307. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま、あなたのおっしゃったことは、日銀の調査月報にそっくりそのまま書いてありますけれども、私は、やはり二月の水準より〇・五%卸売り物価が下がるという根拠が――それは確かに大量生産なり設備投資が行なわれて供給が多くなれば、当然単価は下がらなければいかぬ。したがって、卸売り物価は下がるというあなたの常識判断はわかりますけれども、現実の日銀の統計数字を見ていくと、そうはいかぬのです。しかしそれはここで論争しても、結果が証明しますから……。  問題は、あなたは、そういう一・二%なり、この見通しが実現しなかった場合には、よし、首にかけると、そのぐらいの確信があるのかどうか、それを聞いて終わりにします。
  308. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとしては、政治的な作為なしに、最善の見通しを立てておるつもりでございます。
  309. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて武藤君の質疑は終了いたしました。  次に、石川次夫君。
  310. 石川次夫

    石川委員 いよいよ予算委員会一般質問は私で終わりであります。たいへん関係大臣お疲れでございましょうけれども、なるべく短い時間で打ち上げたいと思いますので、ひとつ具体的に簡潔に御答弁を願いたいと思います。  最初に短時間でケリのつく問題から取り上げいきたいと思っておりますけれども、まず通産大臣に伺いたいと思います。  それは、いままで石炭問題が国会で非常に論議の対象となりまして、いわゆるスクラップ・アンド・ビルド政策というものが進められてまいっておるわけでありますけれども、大体エネルギー総合政策の中に占めるべき石炭の位置づけというものもどうやら固まってきたようではあります。いままでこの国会で論議をされておるのは、大体スクラップ・アンド・ビルドのスクラップ対策というものが重点になっておったのではなかろうか。私は自分の地方のことを申し上げてたいへん恐縮でありますけれども、常磐炭田地域であります。その中で一番基礎が安定していると思われておりました高萩炭鉱というのが突然休山という状態になりましたために、あの地方に非常に大きな打撃、心理的な影響を与えておることはいなめないわけであります。したがって、このビルドの関係で何とかこれを立て直すのだという希望の持てるような政策が石炭関係でとられなければいけないのではないか、こういう点で二、三点について大臣の答弁をいただきたいと思っておるわけであります。  それは、常磐炭鉱なんかは特にそうでありますけれども、中小炭鉱が非常に多いわけでありますだけに、非常に基礎が脆弱であります。中小炭鉱のこれを立て直すために、起死回生の方法といえば、どう考えても鉱区を調整するという方法以外にはないのではなかろうか。もう掘り尽くして、相当山が行き詰まっておるけれども、隣の鉱区にちょっと手を伸ばせば何とかそこで立ち直れるというふうな見通しがあっても、鉱区の問題が厳然として存在する限り、なかなかその調整がうまくいかぬために、みすみすその山が閉山を余儀なくされざるを得ないという状態になるという場合があるわけであります。したがって、これは非常にむずかしい問題であることはよくわかっております。わかっておりますけれども、鉱区を調整して中小炭鉱の起死一生の方法を講ずるということは、相当勇断を持ってやってもらわないと、これは大きな問題になると思うのでありまして、その点についての通産大臣の所信をひとつ承りたいと思うのであります。
  311. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この石炭対策といたしましては、お話のとおり、スクラップの問題も重要でありますし、同時にビルドの問題も重要でありますので、したがいまして、どうしても大体長期的に見て五千万トンの石炭は確保したいというようなことから、新しい坑道の掘進費なども計上したりしておりますが、いまのお話の鉱区の調整の問題、これも考えておるのでありまして、そういうことが可能であれば調整をして、そうして何とかして生かす道を考えてあげたいということで、いまそういう問題についていろいろ検討をいたしております。
  312. 石川次夫

    石川委員 いま可能であればという御説明でありましたけれども、中小炭鉱の起死回生の方法というのは、鉱区調整以外には抜本的な対策はないのじゃないか、そういう点で、鉱区の調整問題というのは、可能であればやりたいから調査をするというような段階はもう過ぎている。何とかして鉱区調整をやらなければだめだ、こういうかまえのもとに前進態勢をとってもらわなければならぬと思うのです。  それに関連する問題でありますけれども、常磐では、企業合同、統合問題というものが出ておるわけであります。これは労働者が離職するかどうかという問題もからみますので、にわかに私は賛成をするということではありませんけれども、行きつくところは、鉱区調整というものが大きく発展をすれば、統合というところに発展せざるを得ないという場合も考えられるということは認めざるを得ないわけであります。したがって、鉱区調整問題とあわせて統合問題というものを含めて、積極的にこれに取り組む、可能ならば何とか調査をしてみるというようなことではなしに、取り組むという所信をひとつ披瀝をしていただければ幸いだと思うのです。
  313. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 可能であろうという場合は双方ともに利益である、開催したほうがお互いに利益であるというときにやったらええという考え方であって、そこでいまの合同の問題もやはり同じことでありまして、鉱区を調整するについてはまたそこに合同という問題がおのずから起こってくると思います。合同さしたほうが双方ともにいいというように考えた場合には、むしろわれわれのほうも積極的に進めたいという考えをいたしております。
  314. 石川次夫

    石川委員 それから、ビルド対策の一環として、実は原料炭なんかは、大体今後とも希望の持てるというふうなことで、北海道あるいは九州あたりでは百万トンを目標とする調査、ボーリングをやっておるというふうなことがありますけれども、四十二年度の予算を見ますというと、この原料炭の炭田開発調査費というのがわずかに一億四千万円であります。この程度のことで、ビルド対策としての新鉱開発のために積極的に取り組んだ、こういう姿勢とはとうてい見えないと思うのであります。したがって、このビルド対策としての新鉱開発につきましては、もっと積極的にエネルギー源としての新しい優良な鉱区を見出すという姿勢を示すことが、やはりこの石炭対策としては絶対必要な条件ではないか、こう考えますので、これに対する対策としての調査費――もちろん安定補給金とか坑道掘進費という点で若干進歩のあとを認めるにやぶさかではありませんけれども、新鉱開発という面での積極性というものが乏しかったのではないか、こういう点での大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
  315. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、約五千万トンの石炭を確保するためにじゃ、有望な新鉱の開発は積極的にやりたいという考えをいたしておりますので、そういうような炭鉱については、できるだけ開発するように努力したい、こう考えております。
  316. 石川次夫

    石川委員 大蔵大臣も、これはよく確かめておいてもらいたいと思うのです。これは意見として申し上げておくわけでありますけれども、いまのスクラップ・アンド・ビルドのビルドの方向づけのための積極的な――いろいろ今度の予算では考慮のあとが見られますけれども、新鉱開発という面はもっと積極的に取り組んでもらいたいということを特に要望しておきたいと思うのであります。  それから御承知のように、ボイラー規制法というのは、ことしの三月から期限切れ――これは延ばしに延ばしたのでありますが、期限切れということになったわけであります。そういう点からくるところの需要減という事態がまた当然今後招来されるであろう、こういうことで、これに対処してこの暖房用のボイラー規制法というものを廃止をするときの条件――というのはおかしいのでありますけれども政府としては政策需要というものを積極的に起こすのだ、こういうことを答弁しておったと思うのであります。ところで、この需要というものを確保するための具体的にどういう見通しがついたかという点をひとつ御説明を願いたいと思うのであります。たとえば九電力の関係で昭和四十一年は二千五十万トン、昭和四十二年は二千百三十万トン、若干伸びたというふうなかっこうも見られますけれども、そういう内訳についてはっきり政策需要として確立をした内容――と申しますのは、御承知のように八百万トンが適正な貯炭だといわれておりますのが、現在では千二百万トンの貯炭、これが非常な圧迫材料になっておるわけであります。特に常磐関係なんかではこの貯炭がもう山をなして、身動きがとれないような状態になっておるということが、ここに働いている労働者あるいは経営者の気持ちを非常に暗くしているという面がありまして、こういう貯炭から来る圧迫をはねのけて、なおかつ新しい需要を政策需要として確立をするという見通しが立っておるものかどうか、こういう点でお伺いをしたいと思うのであります。
  317. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 政策的に石炭を需要さすという方法につきましては、お話のとおり九電力それから鉄鋼関係、九電力につきましては二千百三十万トン昭和四十二年度には確保することを約束いたしたのでありますが、そのほか電発は大体五基で、そのうち三基はすでに建設しておりますが、あとの二基については、もう一基はすでに建設して、いま一基はもう、二、三カ月のうちには建設開始をすることになると思います。そういうことで、そういう方面で石炭の需要を確保したいという考えをしております。  なお、お話のとおり、いま一千万トン以上の貯炭があるということは、これは多過ぎます。が、しかし、さしあたりそれに対しては金融の道も講じまして、石炭の所有者に対して困らないような方法をとっておるのでありまするが、私、政府といたしましてもこの石炭をできるだけ多く需要を確保したいということについて万全の策を講じたい、こう考えております。
  318. 石川次夫

    石川委員 政策需要を確立するためには、電発の問題が出ておりますけれども、これは国会ではたぶん八基ということに大体きまっておりまして、そのうち五基だけは大体きまったということでありますが、これは地域的な問題ではありますが、常磐あたりも電発あたりに非常な期待をつないでおる。これ以外にはもう起死回生の道はないのじゃないかというくらいこれに対してはたいへんな期待というか、願望を持っておるわけであります。そういう点をよく含んでいただきまして、このあと三基というのは、ことしの予算には含まれておらないわけでありますが、必ず早期にこれを実現させるという見通しがあるのかどうか、そういう点での大臣の確たる答弁を伺いたいと思うのです。
  319. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話のとおり、電発の問題については、これは政府の既定方針どおりやるつもりでおります。  なお、石炭産地において火力発電をやりたいということで、常磐地区においてはすでに常磐共同火力発電会社があるのですが、これが非常な好成績をあげておりますので、またできれば常磐地方にももう一基、そういうことをひとつ考えてみたい、こういうようにいま思っておる次第であります。
  320. 石川次夫

    石川委員 石炭対策のビルド関係でもっとたくさん伺いたいことがあるのでありますけれども、時間の制約がありまして、目ぼしい思いついた点だけを、二、三点申し上げただけでありますけれども、常磐炭鉱地帯も中小炭鉱が圧倒的に多くて、このままいけば、ほとんど全滅をするんじゃないか、こういうような非常に暗いうわさが流れている状態であります。したがって、ここには何とか五千万トンという石炭だけはどうしても絶対国家的な要請として必要なんだという点からこれを生かして、積極的に将来に希望が持てるんだという形に持っていけるようにぜひお願いをしたいと思いまするし、また閉山をした地方を大臣がごらんになったことがあるかどうかわかりませんけれども、それは人間らしい生活はしておりません。まことに惨たんたるみじめの限りを尽くしております。惨たんたるものであります。したがって、そういう点で今後ともこれは国会では相当大きな問題としていままでも取り上げられてきたわけでありますが、一応何かこれで政策がきまったんだというふうな安定ムードのような形も見られますけれども、まだまだ問題はたくさん残されております。したがって、スクラップ・アンド・ビルドの関係で、ビルド方面にも積極的に取り組むんだというひとつ誠意ある今後の取り組み方をお願いをいたしまして、この石炭関係についての若干の問題点だけの質問については、私の質問を終わりたいと思います。  次に、科学技術庁の関係であります。  科学技術の必要性ということについては、もう前々から言い古されておりますから、科学技術庁長官にいまさら申し上げるまでもない、こう思うのでありますけれども、たとえば国民所得の中で占める研究費の割合が日本は二%足らず、ほかの国は三%以上から五%ぐらい、しかもその中で特に問題になるのは、国で援助をしておるパーセントがきわめて少ない。これはよく言われるように、ほかの国では大体において研究費全体の中に占める政府の出資額というのは六割以上七割というふうなのが常識になっておる。ところが日本の場合は、御承知のように、政府が出しておる金はわずかに三割しかない、こういうふうなきわめて低い数字を示しておるわけであります。御承知のように、日本の国がほかの国に追いついて、しかもそれを追い越して繁栄をもたらすということのためには、日本人の持てる知能というものを十分に開発をさせる、これ以外に私は活路はないと思うのです。このことはいまさら申し上げるまでもないと思うのでありますけれども、英国のウィルソン――労働党でありますが、この党首か科学革命というものを一本の柱というか、唯一のスローガンと言ってもいい、これでなければ英国というものは立ち直れないんだということで、保守党と政策の対決をやった結果が、圧倒的な国民の支持を得たという形になって出ておりますことは、いまさら私から御説明するまでもないと思うのでありますけれども、このようなことにかんがみてみても、どうしても科学技術の推進というのが焦眉の急務だということは、御理解が願えると思うのであります。  ところで、そういうふうな必要性ということについては、科学技術庁長に聞いてもこれは始まらないのでありますけれども、現在の予算は徐々にではありますが、まあまあの伸びを示していることは否定いたしません。しかしながら、この程度の科学技術開発あるいは科学技術の関連――これは科学技術庁だけではありません、文部省の関係もありますけれども、この程度の予算をもってして、いわゆるビッグサイエンス――大陸だなの問題とかあるいは南極の問題にしても、宇宙の問題にしても、元氏力の加速炉の問題にいたしましても、これは民間でできる仕事ではないわけです。ビッグサイエンスの時代になれば、全部と言ってもいいくらい、国が中心になってやらなければ、どうにも動きのとれない問題であることは言うまでもないと思うのであります。そういうときに際して、現在程度の姿勢で、一体ほかの国に追いつぎ、近い越して、万全の日本の国の繁栄をもたらすことができるに是るものであるかどうかという点で、私は非常に危惧の念を押えることができないわけであります。こういう点で、大蔵大臣もこの予算査定に参画をしたわけでありましょうけれども大蔵大臣並びに科学技術庁長官の御意見をひとつ伺いたいと思うのです。
  321. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 科学技術の振興が申すまでもなくわが国の産業経済発展の基礎であり、またエネルギー源でもあるわけでございまして、そういう面から考えてみますと、最近の世界における科学技術の発達、進歩、こういう進捗状況から見ますと、確かに石川先生のおっしゃるとおり、わが国における国の研究開発に対する投資などは非常に少ないと思っております。しかし、おっしゃるとおり私も積極的な気持ちを持ちまして、本年度も大蔵省に対しまして相当大幅な予算要求もいたしましたし、また原子力開発等につきましては、もっと自主的な積極的な体制をつくるためにも新しい法人をつくって開発を進めたいという気持ちでおりますが、本年度は前年度に比しまして約一八・五、六%の予算の伸びも示しております。将来のことを考えますと、現在国民所得の割合に占めるわが国の研究投資は一・七%ぐらい現存はございますが、これを五年後には何としても二・五%程度に引き上げていかなければならぬ、これは企画庁で出されました経済社会発展計画の中にも明確に数字が出ておるわけでございまして、そういう方向に向かって、そしてまた総力をあげてこれは対処していかなければならない問題でもございますので、民間あるいは大学そして政府機関、こういうものが一体となってお説のような方向に進んでいく以外にないと思っております。一そう努力をいたしたいと思っております。
  322. 石川次夫

    石川委員 総理大臣答弁でないと、科学技術庁長官答弁ではどうにもしかたがないのですけれども昭和三十八年は千四十七億円の科学技術関係費が、昭和四十二年は千九百七億円、比較的順調に伸びているといえば伸びておりますけれども、絶対額が何としても少ない。これは問題にならないと思うのであります。これを比較するのはあまり当を得ているかどうかわかりませんけれども、万国博覧会の予算は、大蔵大臣、どのぐらいかかりますか。
  323. 水田三喜男

    水田国務大臣 設備の建設費は五百八十億前後という予算になっております。
  324. 石川次夫

    石川委員 どうもはっきりしませんでしたけれども、大体これは民間からの万国博覧会の関連事業費を全部含めますと二兆三千億円ぐらいの要求があって、これを通産省では七千億円ぐらいに査定をしたということにはなっております。大体一兆円ぐらいはどうしても下らないであろう、これは国家の予算だけではございません。ではありますけれども、そういうものに比べてみますと、万国博覧会も確かにやるべきことではありましょうし、必要なことであることを否定するつもりはございません。しかしながら、たとえば原子炉の開発の二十カ年計画というのは二千億円であります。しかも原子力というものは、御承知のようにヨーロッパにおいて高度成長したところの先進国の中で貿易を盛んにしなければならぬということがEECのできた発端にはなっておると思うのですが、あと一つはやはり原子力というものが一つの発端になったというくらい大きな力を持っておる。将来は、先ほど私は石炭の関係で、エネルギー源としての石炭についての質問をしたわけでありますけれども、石炭関係も含めまして、石油関係も石炭関係も無限大ではないわけです。どう考えても将来のエネルギーというものは相当程度原子力に依存しなければならぬ。その原子炉のことしの開発の予算は一体どのぐらいになっておりますか。科学技術庁長官、ちょっと伺います。
  325. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 百五十三億程度だと思っております。
  326. 石川次夫

    石川委員 実は原型炉の関係だけについて言いますと、大体十カ年計画で二千億円ということを目途としてこれから出発をするわけでありますけれども、六十九億というのが原子炉開発臨時推進本部から要求した金額であります。それに対して科学技術庁のほうでは四十五億と原案を出しまして、ことしは十六億六千万円というような数字になっておるわけであります。  そこでひとつ伺いたいのでありますが、高速炉を将来日本でつくるという目標のもとに開発を進めるわけでありますけれども、アメリカは非常にこれは例外的なところだと思います。ヨーロッパあたりではこれに参加している人間が一体どのぐらいおるというふうに科学技術庁長はお考えになっておりますか。
  327. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 原子力局長からお答えさせます。
  328. 村田浩

    ○村田政府委員 ヨーロッパにおきましては、イギリスが約三万人、それからフランスが約二万五人、ドイツが大体一万人、大体その程度の人員数でございます。
  329. 石川次夫

    石川委員 日本では、この最盛期では一体どのくらいのこれに関係する技術者を予定しておりますか。
  330. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 現在は原子力関係関連研究技術者というものは大体二万人程度でございますが、これが最盛期には大体三万人程度だ、こういうふうに推定しております。
  331. 石川次夫

    石川委員 どうも私の数字とだいぶ食い違うものですから、これはあとで科学技術特別委員会においてよく究明をしたいと思っておりますが、直接高速炉に関係をしている技術者で言いますと、大体ヨーロッパ関係は四、五千人ということであります。日本では最盛期において予定されておりますのは千三百人ぐらいでございます。こういう関係からも、こういうことに対するところの取り組み方というものが非常に弱い。私が原子炉のことを特に申し上げておるのは、一つの例として申し上げておるのであります。決して原子力だけが科学技術の全部でも何でもありませんけれども、たとえば、このようなことでたいへん立ちおくれがはなはだしいのではないかという点で、日本の繁栄のためにはこういう消極的な態度ではなしに、積極的に取り組んでもらいたいということのために、これを一つの例として申し上げたわけであります。  それから、これは科学技術庁長官に聞くのはどうかと思うのでありますけれども、先般下田次官が、核燃料の平和利用のためには、核爆発というものもやむを得ないのだ、これは当然その権利は保留しておくというようなことを言いました。これは核燃料というものを独占しておる国が、自分の国は査察させないけれども、非核保有国に対しては査察をするというふうなことは、はなはだ虫のいい話であって、その限りにおいては、私その言明は支持したいと思うのであります。これが非常に危険性が伴うという問題がありますが、それはこの場では一応おいておきますけれども、現在の核爆発の進歩というのは、かなり進んでおるということは私も知っております。カリフォルニウムというものによりますと、これによるところの爆発は、死の灰が非常に少なくて済む。予防装置さえあればこれは少なくて済むのだというふうなことになっております。その威力は、TNT火薬に換算をいたしまして大体数トンのものからできる。これが上のほうは切りがありません、何十万トンにまでも伸ばせるわけでありますけれども、そういったところから、小さな程度の、放射能というものの被害を受けることを少なくして実験ができるというところにまで、地下核実験の研究の成果として最近はそういう技術が可能になってきたということを聞いておるわけであります。したがって、そういうものを日本でもやりたいという気持ちはどこからか出ているのではないか。アメリカのほうの技術を導入をして、それを日本の場合にもやってみたいということは、あるいは政府、あるいは自民党の中で取りざたをされたといううわさを聞いておるわけでありますけれども、その点はどうですか。
  332. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 おっしゃるとおり、原子力の平和利用につきましては、アメリカなどではかなり進められておるということは承知をいたしております。そして、しかも規模が非常に小さくたってきておる、またその放射能等の影響もかなり防げるというような方向に研究が進められるということは聞いておりますが、現在わが国におきましては、原子力の研究開発は平和利用に限るということでございますので、そういうことは現在は考えておりません。
  333. 石川次夫

    石川委員 この原子力基本法には厳然として自主、民主、公開、しかも平和利用に限るということが議員立法で満場一致で決議をされて今日に至っておるわけでありますけれども、その中で平和利用の問題につきましては、ここは押し問答になりますから申し上げませんけれども、自主、民主、公開の場合に、自主開発という場合における現在の原子力の開発のことについて言いますと、軽水炉を入れるという形になっておるわけであります。これがほとんど主導権を握るというかっこうになりまして、その点から核燃料の民有化というふうなことが大きな問題として取り上げられてくるようになったのであると思いますけれども、この自主開発については、私は軽水炉だけでは不十分だという感じがするのです。いろいろな点でこれから自主開発をやってもらいたいと思いますけれども、軽水炉が何といってもいまのところは一番経済性があり、安くてアメリカの技術を導入しやすいということになって、それにおぼれてしまう危険があるのではないかと思うのでありますが、ここで大蔵大臣、一応念のために伺いたいと思うのであります。ということは、この軽水炉を導入するということが、現在の時点では、一番経済性が高い。しかし、ほかのものを自主的に開発しようとすると、なかなか困難であるし、時間もかかると思うのであります。ところが、御承知のように、いままで外国に技術の導入をして払った金と比べて、日本が外国に技術を出した金はわずかに一%です。アメリカの場合には、一〇〇輸入をすれば、一六五くらい輸出をしております。ヨーロッパの先進国におきましても、一〇〇ぐらい輸入いたしますと、四〇か五〇は逆に技術の輸出をするという形でありますけれども、日本の場合は、特許料だけについて言いますとわずか一%、まことに惨たんたる状態であります。これはもちろん特許料だけの関係で言うわけでありますが、したがって特許料に伴ういろいろな設備というものもあるわけであります。これを経済的に見ても、日本は技術のおくれのために非常な負担をしなければならぬという状態になっておる。したがって、どうしても自主開発というものは相当あたたかい目で、長い目で根気強く見てやらなければならぬ、こう思うのでありますけれども、いまの軽水炉を入れれば事は簡単だということで軽水炉を入れるということになると、アメリカに隷属をしてしまうという危険もあるのですが、それはさておきまして、自主開発の場合になかなか成果があがらないという場合、大蔵省のほうでは三年に一度チェックをするわけですね、その成果を。レビュー・アンド・チェックというのですか。で、三年間たって、もう見込みがないから、成果があがらぬからということで、予算は削っていくとか、押えるということをやれば、これは原子炉だけの問題に限りません、科学技術の問題というのは停滞をしてしまう。長い目で見て、どうしても百対一というような技術導入と技術輸出の比率というものを正していくということに目を向けていただいて、三年ごとのチェックというものをゆるめて、長い目でこれを育成していくという考え方に立ってもらわなければ、技術の発展というものはあり得ないのではないかという点で、大蔵大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
  334. 水田三喜男

    水田国務大臣 私も全くそのとおりに思います。ですから、たとえば原子炉の研究にいたしましても、すでに外国で研究されて、必要なら日本で買ったほうが早いというものの研究にあとから日本でついていくか、あるいは高速増殖炉のようなものにいま外国がみんな研究に向かっているときでございますから、日本もおくれをとらぬように独自の研究をしていくというような部門の開拓をここで急がなければならぬというふうに私も考えております。
  335. 石川次夫

    石川委員 科学技術の関係は、原子力基本法の場合は自主、民主、公開というものがうたわれておりますけれども、これは別に原子力だけには限らないと思うのです。そこで、日本の科学というものは、先ほど申し上げましたように、ビッグサイエンスというものに重点が移ってくるということを転期として、やはり国がやるというよりなことになれば、自主、民主、公開という原則は、今後とも原子力以外でもこれを適用していかなければならぬものだと思うのでありますけれども、その点科学技術庁長官の御意見を伺いたいと思うのです。
  336. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 原則としてはそのとおりであろうと思っておりますが、一般の商業用、民間で開発するものについても、全部これを公開――たとえば商業秘密に属するようなものも開発されていくのではないかというようなことも今日想像せざるを得ないのでございますけれども、現在におきましては、原則として私はそういう方針をとるべきだと考えております。
  337. 石川次夫

    石川委員 商業秘密の問題は、私は当然だと思うのです。ところで、実はこれは読売新聞の三月十七日の記事でありますけれども、動力炉・核燃料開発事業団の要綱ができたということで、実はその中に秘密保持は政令でもってやる、こういうことが出ておるわけであります。原案を私が拝見したところでは、この法令それ自体には、事業団の要綱の中には秘密保持ということは書いてありません。書いてありませんが、政令のほうでこれを書くという御意見なのかどうか、その点を念のために伺いたいと思うのです。
  338. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 私のほうでは考えておりません。
  339. 石川次夫

    石川委員 それでは念のために伺います。この読売新聞の記事によりますと、「原案では、動力炉の開発にともなう秘密保持義務を役員、職員に対し規定していたが、法律には書きこまず、政令によることにした。だが、新しい動力炉という商品を開発するための商業秘密を国内、国外的にどう守るか、核兵器を開発しないための原子力基本法の公開原則とどう調整するかは、問題として残されている。」こういう記事が出ておりますけれども、これは関係はありませんか。
  340. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 先ほどお答え申し上げたとおり、政令でも考えておりません。
  341. 石川次夫

    石川委員 それでは、この新聞が誤報だということになりますが、実は先ほど公開の原則について科学技術庁長官答弁の中で、商業秘密というものは、これはあり得るという御答弁があったわけであります。この中にも商業秘密ということがうたわれておるわけであります。したがって商業秘密をある程度守らなければならぬ場合があるということは、これは私は民間にいた関係でもってよくわかるのです。そういうことで、職員の人たちに、商業秘密は漏らしてはならぬ、ほかからいろんな委託を受けた場合なんかもあるでしょうから、漏らしてはならぬということを言うことはいいと思うのです。しかし、それは政令の範囲ではないと思うのです。法律には必要ないし、また政令に書くべき性質のものではないし、当然のこれは勤務する者の心がまえとして、モラルの問題として訴えてもいいのではないか、こう思うので、この秘密保持というものを政令でやる、あるいは法律の中にこれを書き込むということは、ここのアリの一穴から自主、民主、公開の提防というものはくずれ去る危険がきわめて大きい。こういう点で、私は、絶対にこれを載せないということをひとつ確約をしてもらいたいと思うのです。あと一度御答弁を願います。
  342. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 その点については、石川委員のおっしゃるとおりに考えております。ただ、商業用の秘密云々の問題は、先ほどモラルの問題だとおっしゃいましたが、私は、そういうものは就業規則等で考えらるべきものじゃないかと思っております。
  343. 石川次夫

    石川委員 何度も繰り返すようでありますけれども、最近は核燃料の平和利用、核爆発の平和利用というふうなことがあり、いろんな点で、何か平和利用というものの基礎がゆらいで、核保有の潜在能力というものを引き出そうとするのではないかというような危険が見られるために、平和利用という点については厳重に国民とともに監視をしなければならぬ、こういう責任とともに、いま申し上げましたように、自主、民主、公開の原則というものは、だいぶくずれておる。文部大臣の出席がないので申し上げることはできませんけれども、たとえば南極の観測のことなんかにつきましても、国会で決議をし、非常な情熱を持ってこれに取り組んだわけであります。しかしながら、それ以来、六年間の足取りを振り返ってという報告があるだけで、一般に公開されるものは、ほとんど目ほしいものがない。しかも、南極観測の特別委員会は、学術会議のほうの原則を破りまして、ほとんど秘密で行なわれておる。もう新聞記者なんかほとんど寄せつけないかっこうで行なわれておるというようなことも、どう考えても私は合点がいかない問題でありますけれども、きょうはその点については触れませんが、自主、民主、公開の原則というものは単なるお題目だけに終わらしてはならぬということで、ぜひひとつ政府のほうの反省というわけではありませんけれども、今後とも十分この点について戒めてもらいたいと思うのです。それに産業界なんかでも、高分子化学などに代表されるような研究集約型産業というものの役割りが、非常にふえてきたわけなんです。そういうふうなことに照らしてみても、この科学技術というものが、こういうものに対応し、あるいはこれをリードするという形の使命を政府自体が果たさなければならぬと思うのでありますけれども、その使命を果たしておらないというのが、悲しいかな現状だと思うのです。  そういう点で、先ほど申し上げたことに返るわけでありますけれども、日本の国の永遠の発展、追いつき、追い越すということのために、科学技術というものを少しぐらい、一八%くらい予算が伸びた、こういうことだけではその使命を果たすのには十分でないので、何とか思い切って――日本の持てる潜在能力というものが、創造力というものをどうしても引き出せないというのが現状なんです。能力がありながら創造力が引き出せない。ということは、外国では科学技術行政ということよりは、科学技術即政治ということばがあります。イコール政治である、こういうふうな取り組みをしておるのに、日本では行政の片すみでこれをあしらっておるというふうな傾向が強いのではないかという点で、最後に、科学技術の重要性というものをよく認識して、飛躍的な発展のための思い切った施策をやってもらいたいということを要望して、科学技術に関する質問はこれで終わりたいと思うのであります。  次に、先ほど来武藤委員のほうからも質問がありまして、重複をする危険がありますけれども、経済社会発展計画というものについて、どうもその基礎がすでにゆらいでおるのではないかということについての質問をしたいと思うわけであります。  それは、政府では矢つぎばやにいろいろな計画を出しております。経済自立五カ年計画、新長期経済計画国民所得倍増計画、中期経済計画、経済社会発展計画、今度の場合は社会という字が入ったのがひとつみそなんでありましょうけれども、そういうのが矢つぎばやに出ておりまして、これがあまり計画がひんぱんに変更されるというところから、どうもこういう長期計画あるいは中期計画というものをつくった場合の心がまえとして、まあ経済の見通しというものは非常に困難だ、困難だから見通しが変わればいつでもこれを変えればいいではないかというような気持ちで、こういう計画というものをつくられておるのかどうか、そういう点をまず伺いたいと思うのです。
  344. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうわけではございませんけれども、わが国のように成長の高い経済で五年先を的確に見通すということは、事実上かなり困難であります。ただ、何にもその目標を持たない、何にもそれについての考えを持たないということも、またいかがなことかと思いますから、むろんある程度の誤差は覚悟しながらも、現在としては五年後の姿を一応こう想定してものを考えようじゃないかということにしておるわけでございます。
  345. 石川次夫

    石川委員 いまのような考え方でありますと、一応の目安という程度に考えておりますから、この計画が変わっても、変えざるを符ない状態になっても、ほとんど経済企画庁長官並びに内閣は責任を持たないというような感じになっておりますが、私は非常に遺憾だと思うのであります。こういう計画というものは、しっかりした科学的基礎のもとに見通しを立てて、それに向かって何としても予算、あるいは財政、あるいは金融政策その他の経済政策を通じまして、間接的にその目標が達成できるように誘導あるいは規制をはかっていくという責任が、当然あるのではないか。いまのような考え方でありますと、まあ一応の目安だということでありますから、非常な食い違いが出たときの責任をどこでもとろうとしない。特に大きな食い違いというものを私は申し上げたいのは、いま経済企画庁長官も言われておりますように、経済成長の伸びが経済自立五カ年計画では五%、新長期経済計画では六・五%、国民所得倍増計画では七・二%、中期経済計画では八・一%、今度の経済社会発展計画では八・二%ということになっておりますが、ことしは九%、こういうふうに見ておりますけれども、実を申しますと、経済成長というものは、いま宮澤長官が言われましたように、大体一〇%という程度に非常に飛躍的に伸びておるわけであります。高成長がもたらすためのいろいろな構造的変動への、政治がこれに対応して責任を果たさなければならぬというものについて非常に手おくれになってしまったというのも、こういう見通しの狂いから出た当然の結果ではないか、こう言わざるを得ないのであります。たとえば農業とか中小企業の近代化政策の立ちおくれの問題とか、あるいは都市への人口集中に対する社会環境を整備しなければならぬという、その必要性を怠っておったという問題、あるいはその他経済成長に対応する経済や社会制度の改革というものをもたらさなければならぬものが立ちおくれておって、またその当然の結果として物価上昇に対する施策というものを非常に立ちおくれてしまったというようなことも、この中期経済計画あるいは長期経済計画というものを中途はんぱにつくって、それについていけなかったということの当然の責任ではないかと思っておるわけであります。この点を経済企画庁長官、どうお考えになっておりますか。
  346. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所得倍増計画の時代にはいわゆる計量経済というようなことをいたしませんでしたが、その後に電子計算機もできてまいりまして、中期あたりからそういう考え方をとっております。中期の場合と今回の場合と違いますのは、過去のそういうことを反省いたしまして、ともかくほうっておけば、おそらく昭和四十六年までの経済というものは、それは八・二%やそこらでない伸び方をいたすと思うのでございますけれども、その際に、社会開発ということと消費者物価を三%台に押えようということを政策目的として、今度は逆に掲げたわけでございます。その結果、成長率が八%程度で落ちついておるわけでありまして、過去の反省に基づいて筒一ぱい伸ばさずに、伸ばす部分を幾らか押えて消費者物価の安定と社会開発に向けよう、こういう意図を計画の中に含めておるわけでございます。これは過去に対する反省であります。
  347. 石川次夫

    石川委員 そういう点は若干進歩があるのではないかというふうに思いますけれども、今度の経済社会発展計画というものは、政策が主で数字が従だというふうなことから、計量モデルというものを使ってやったということは、たいへん進歩だと思うのです。けれども、どうも政策がかち過ぎているのではないか。したがって、その政策がかち過ぎたために、科学的な根拠というものが薄らいで、この見通しが早くも、先ほど武藤委員が言ったように狂い始めているのではないかということを、私は非常に懸念をしておるわけであります。したがって、経済計画に合わせるために、計量モデルを変更していく、たとえて言うと、外生変数というふうなものをことさらに過小に見ていって成長率を押えるというようなこともあるでしょうし、あるいはまた、経済政策的な裏づけなしに、方程式の常数項を変更したりして消費者物価というものの上昇を低く押える。さらに言うならば、この消費者物価というものを押えるということを中心としてつくられた政策が主になった今度のような見通しというものが生まれてきているのではないかという点があっちこっちに見られるわけでありますけれども、それは具体的にまた触れるといたしまして、実は今度の経済計画は、宮澤長官は御承知のように、ニューライトのホープだというふうに目されておるので、その宮澤長官にしては、たいへん私は合点がいかないのは、この経済計画をやる場合に、いままでの経済計画にはない一つの特徴があると思うのであります。それは、一部の財界人が現役のままでこれに参加しておる、主導権を握ってやっておったわけであります。御承知のように、アメリカあたりでは、経済諮問委員会というふうなものは大統領の諮問機関としてあるわけでありますけれども、これは経済学者だけで構成されております。それからヨーロッパのこの種の計画審議というものは、国民の各層がこれに参加をするという形をとって見通しの是正をはかっておるわけでありますが、今度一部の財界人がこれに参加をしておるということを通じまして、学者なんかの仲間では批判が出ておることは、おそらく宮澤さんも御承知だと思うのでありますが、ちょうどタクシーの運転手が中心になって交通法規をつくっている、こういうことと同じではないか、こういうふうな批判が出ておるわけであります。したがって、こういう経済計画をつくる場合には、もちろん参加をされた財界の代表という人は権威者でありましょうけれども、誤解か何か知りませんが、非常に反動的だと思われるような、こういうおそれというものを払拭するためにも、今後はぜひ学者だけでやるとか、国民各層の代表を入れるとか、どうせ、私はこの計画はすぐに変えなければならぬところにきていると思うのでありますけれども、変えなければならぬ場合に、そういう形で今後は運営をはかるべきではないかと思うのであります。この点についての御意見を伺いたいと思うのです。
  348. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過去の経済計画の主体になって作業をしてこられましたのは、ずっと経済審議会でございます。したがって、経済審議会がどういうふうに構成されておるかということになるわけでございますが、仰せのとおり、大部分が実際に経済の運営に当たっておられる方であります。ただ、その方々が主導権を取って今度の計画をつくられたかというと、そうではありませんで、実際上、またそれだけの、こう言っては何ですが、学問的な知識をその方々が全部お持ちではないのでありまして、学界も労働界も、それから消費者代表も、とにかく何百人という数字でございますから、一緒になって、それに各省の関係官が一緒に作業しておるので、世の中でいっとき、確かに成長派であるとか、生活派であるとかという、多少そういう批判があったことは、私もジャーナリズムでは読んでおりますけれども、私その後、実際に自分で行ってみまして、そうではありませんで、それらの方々の間でかなり活発に議論が行なわれて、そうして、言ってみれば、どなたも不満であるようなものができ上ったのではないか、ということは特定の意図をもって一つの方向へ引っぱったということではございませんでした。また実際計量そのものは、そうああもこうもなるというものでもなかったように思います。
  349. 石川次夫

    石川委員 そういうふうに言わざるを得ないだろうと思うのです。そう言わざるを得ないだろうと思うのでありますけれども、やはり財界人がイニシアチブをとっておるような印象を、少なくとも外部には強く与えておるということだけは、否定できないと思うのです。その証拠には、新経済計画の基本的考え方というものを、最終的な発表の前に一回発表されたことがあるわけであります。しかし、これでは集中、合併、協調によるところの産業の再編成というものは、非常に強く出ておる。出ていたところが、これが発表になって、これは産業の寡占化ではないかというような、手ひどい反撃あるいは反論というものが出た結果、最終的な案では社会保障も盛り込む、いろいろな点もまんべんなく盛り込むというふうなことで、結局は、特徴のない総花的になったという批判もあるわけであります。しかし、その基本を流れておるのは、どう考えても、やはり御承知のように、経済の効率化、物価、社会開発、こういう三本の柱の中で、この経済の効率化というものが第一の重点になっておるという印象を、われわれ強く受けざるを得ない。また、そういうふうな指導が、今度の計画審議に際しては財界の指導によって行なわれたのではないかというふうに思われても、これはけだし当然ではないかと思うのです。そういう点で、たとえば経済の効率化というものが非常に重点になっておるとは思うのでありますが、今度のこの新経済計画では、社会開発というものが一つの新しい見せ場といいますか、そういうような新機軸を出したということですか、そういうことになっておりますけれども、これでいいますと、はたして社会開発に適当するかどうかという点で、私は非常に疑問に思うのです。ということは、昭和三十三年から昭和三十五年までは、公共投資の伸び率は一五%前後あるわけであります。それから昭和三十六年から昭和三十七年はさらにふえまして、二二%から二三%になっておる。ところが、今度出ましたこの社会開発の内容を見ますと、固定資本形成の伸び率というものは年率一〇・五%ということになっておるわけです。非常に少なくなっております。これはどう考えても、このままでいったのでは、いままで伸びたよりもこの固定資本の形成、公共投資というものががくんと減ってしまうという懸念があるわけで、社会資本というものを充実しなければならぬのだといいながら、アンバランスが逆に大きくなっていくのではないか。これは、どうも経済成長率というものを低く抑える必要から、そういう数字にならざるを得なかったのではないかという疑問を押えることができないわけでありますが、その点はどうお考えになっておりますか。
  350. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはきわめて適切な御指摘だと思います。私ども今度気を使いましたのは、その公共投資、項目で申しますと、政府の財貨サービス購入の中の資本支出でございますけれども、これが成長率を何ぼかでも上回るよりにというふうに考えたわけでございます。したがって、ごらんのように、成長率をいわゆる公共投資、ただいま仰せられましたものは二ポイント方上回っておるわけでございますが、確かに幾ら成長してもいいということで、筒一ぱい出しましたら、公共投資にさき得るところの総量も、それだけふえたであろうということは言えると思いますけれども、そういうわけにいかない。それでは消費者物価の問題も片づかないということもございますから、それで成長率より何ぼか上回る程度の公共投資を確保しよう、そうして国民生活審議会の言っておる国民所得の一、二ポイント多くを、いわゆる社会開発に向けよう、こういう計画になっておるわけであります。過去のような大きな公共投資の伸びというものは、これは当然のことながら見られない、成長率がそれだけ低まっておるだけ、見られないということだと思います。
  351. 石川次夫

    石川委員 大蔵大臣に伺いますけれども、建設公債を発行して、これは建設公債が公債としての役割りよりは、最近は、ことしの場合は、建設のほうの役割りを重視している。すなわち、社会資本が立ちおくれておるのだというようなことで、フィスカルポリシーから逸脱をしたような形で、建設のための建設公債を発行するというような形に転化していると思うのです。その場合、今度の計画によりますと、固定資本の形成伸び率は、いま宮澤長官から説明がありましたように、経済成長よりも低く押えるということで、わずか一〇・五%です。いままでは、この公共投資というものは、三十六年、三十七年で二二%か二三%ですから、非常に少ない率に押えられざるを得ないという形になりますけれども、ことしの予算はともかくといたしましても、今後こういうふうな伸び率で押えられたような予算を組まれますか。
  352. 水田三喜男

    水田国務大臣 規模が大きくなっていますので、率ということになりますと、いままでのような大きい伸び率というようなことには今後はならないと思います。
  353. 石川次夫

    石川委員 いまのような答弁では、答弁にならないのですけれども、とにかく二二%から二三%というのを、伸び率を非常に低く押えるというかっこうになるわけですから、これからは公債の必要なんかは、この限りにおいては必要ないという数字が出てくるのですよ。だから、この経済計画それ自体が非常にぼくは疑問だ、あやしげな基礎の上に立っているというふうに思わざるを得ない。どう考えても、物価というものを中心として計量モデルというものを操作している、こういうふうな印象を強く受けるわけです。したがって、この新経済計画というものは、私は非常に信が置けない。  私は、あえてあと一つ、社会開発の別な面で希望を申し上げたいのでありますけれども、今度の場合には、御承知のように一人当たりの国民所得というものは大体出ております。出ておりますけれども、われわれのほしいのは、階層別の所得は一体どうなるんだ、最低生活はどのくらいまで国家で保障し、めんどうを見てやるんだ、こういうような分配問題というものをきちっときめてかかれば、社会開発の人間的な面におけるところのりっぱな一つのモデルケースというものは出てくるわけでありますけれども、いまの場合は、そういう問題には全然触れておりません。ただ単に一人当たりの国民所得が幾ら幾らになるんだということだけでお茶を濁しておるというところに、きわめて不十分であり、社会開発とはいいながら、公共投資あるいはまた産業の成長ということ、産業再編成ということに無点を置いたその影響が、こういう面にも出てきているのではないか、私はこういう考えを持たざるを得ないのであります。今後はそういう点に触れた経済計画というものをおつくりになるようにしなければ、私は十分なものだとは言えないと思うのです。この点についてどうお考えですか。
  354. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはごもっともな仰せだと思いますけれども、ただいまのところ、昭和四十六年における国民所得の階層別の数字を出せということは、ただいまの作業の能力、持っておるデータでは、私は必要なことだとは思いますが、可能ではないと思うのでございます。全体の考え方としては、しかし振替所得の伸び率が一七%になっておりますので、これは相当思い切って、そういう意味での社会保障ということに重点を置いておる。これはかなりの前進だと私は思います。
  355. 石川次夫

    石川委員 それで、経済発展計画の中の見通しの狂いというものは、先ほど武藤委員のほうからも若干出ております。時間がありませんで非常に残念でありますけれども政府は、今度の設備投資によるところの、これは主導型の経済というふうなことが言われております。これは政府の試算によりますと、設備投資は一体どのくらいに見込んでおりますか。
  356. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十二年度六兆二千億でございます。
  357. 石川次夫

    石川委員 六兆二千億で大体一四・八%ということですね。ところで開発銀行は、この見通しは、これは支払いベースということは言えますけれども、三七・一%の伸びであります。それから、私があちこち拾い集めたのでありますけれども、日本経済の見通しとしては、プラス二六・二%の伸び、それから長期信用銀行の調査によりますと、これは支払いベースで二九・五%、それから五大都市の商工会議所、これは三千七百七十四社集めてあります。中小企業まで含めております。こういうので見ますとプラス二六・四%であります。ただひとり企画庁の見方だけが一四・八%、こういうことになっておりまして、非常な開きがあるわけであります。ほかの数字をあげますと、昭和四十一年の上期が大体底で、それから下期のほうは上期に比べまして一四%も一挙にふえました。四十二年度上期は、前年度下期に比べて一八%は最低ふえるであろう、こういうふうなことも一方では調査として出ておるわけであります。こういう点から見て、どう考えても一四・八%の伸び、そして六兆二千億ということにはおさまるという見込みはまずない。したがって、こういうところから見ても、政府の見近しというものはすでに狂い始めている、こう思わざるを得ないのですか、どうですか。
  358. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの気配が上昇気配でございますから、皆さんはそういう印象をお持ちになるようなんでございますけれども、一年というものを見ていきますと、実際これから半年先にどっちに向かっていくかということは、私は、そう簡単にただいまだけのなにで申せないのではないだろうか。ことに相当スピードが速くなれば、財政でも金融でもいろいろな手を使いますので、そういたしますと、方向が変わるということはしばしばございますから、一年の大きなマクロの見通しとしては、必ずしもそういうことは言えないように私は思うのでございます。  それから、幾つかの銀行の統計と私どもとで一番違いますのは、支払いベースと工事ベースの問題よりは、やはりカバレージなのではないだろうか、つまり大工業が――各統計はほとんどどうでございます。そうでないものもあると仰せられましたが、そうしますと、しかし、個人企業であるとか農業であるとかいうものは入っておりませんし、やはりカバレージの点で一番違うのだ、一番伸びの大きなところを各銀行の統計が把握しておる、こうではなかろうかと思うのであります。ことに大工業が過去二年ほど鎮静しておりましたから、大きな投資が出るということは考え得ることなんではないだろうか、そういうふうに思うのでございます。
  359. 石川次夫

    石川委員 まあ、農業その他の関係がありますから、これもカバレージの問題だという点は理解できないことはありません。しかし、中小企業の関係は、宮澤さんは非常に優秀な方であるけれども、まだ民間の実態を知らぬと思うのです。ということは、最近中小企業関係は、全体の額とすればたいした額ではないでしょうけれども、非常に設備投資の意欲は盛んになってきておる。ということはどういうことかというと、これは非常にいい傾向だと思うのです。大企業だけではなくて、中小企業も合理化のために設備投資をするようになったということはいい傾向であるとは思いますけれども、これはそうせざるを得ないところに追い詰められてきたということからそうなっておる。これはどういうことかというと、人手がまるっきり不足であります。大企業に集中的に取られてしまって、下請なんかでは人手はどうしても集まらぬ、こういうことで、どうしても設備を更新しなければ生産性を保持していくことができない、こういうような必要性から、中小企業なんかも相当設備投資をやっておるわけであります。したがって、四十一年の七一から九月までが一応回復期ということになったわけでありますが、四十一年の十月-十二月では、前年同期に比べまして、プラス四五%の設備投資ということになっております。それから四十二年に入っても三〇%を下らないであろう。カバレージの問題ということを言われますけれども、製造工業の大きなところを抜いて中小企業といっても、率は少ないにいたしましても、そういうところも、前よりは設備拡充を急がざるを得ないところに追い詰められておるのだというようなことを含めて考えますというと、どう考えても一四・八%なんという数字ではとうてい押えることはできない。したがって、これは、景気が過熱化する一つの大きな要素を形づくっておるということは、どう考えても言い得ると思うのであります。まあ、たとえば日銀券の増発にいたしましても、昭和四十二年の二月は、御承知のように一六・三%ふえております。三月は一六・一%ふえておりまして、これは、去年の一一・八、一三・〇というものに比べて、非常に飛躍的に日銀券の発行というものも増発をされておるというような傾向から見ましても、景気は過熱する懸念があるということは、宮澤さん、前にも、そうはおっしゃらなかったかもしれませんが、それと同じようなことを言われたわけであります。もう事ここに来たっては、このままいけば過熱をする。もう現在でも過熱の第一歩に入っているのではないかと思うのです。このままいけば過熱は必至である、こう思うのであります。この点はどうお考えになりますか。
  360. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の全国銀行勘定だけでも、中小企業向けの貸し出しが四六・七%という非常な高率であって、これは私もいいことだと思っておるのでございます。ところで、この際気をつけませんと、いわゆる大企業のシェア競争投資というものが始まりますと、ここでコールが上がって、地方の金が中央に吸い上げられてしまう。そこで中小企業の設備投資意欲が――設備投資が実際上不可能になる。そういうことを私は一番心配しておるので、したがって、シェア競争の投資だけはやめてくれということを言っておるのでございます。まあ、そうなれば、シェア競争投資が盛んになって、中小企業投資がとまれば非常に不幸なことでございますから、そうならないように運営していくというのが、この際の問題ではないかと思っておるのでございます。
  361. 石川次夫

    石川委員 私が過熱の危険があるのではないかということに対する答弁にはなっておらぬようでありますが、いま言うようなことは確かに可能性はありましょう。そういうことも含めて過熱の危険がきわめて大きいということは、これは宮澤さん何と否定されても、これは否定はできないのですよ。先ほど卸売り物価の問題で武藤委員のほうからも話がありましたけれども、卸売り物価の関係も、先ほどの数字はちょっと私と食い違っております。実はこれは四十一年が一〇六・九で、四十二年が一〇八・三という見通しが経済発展計画のほうから出ておるわけでありますが、すでに四十二年の三月の指数が一〇八・五なんですよ。これが宮澤さんの言い分によると、これはまだまだ下がる、逆に反落をするのだ、鉄鋼の関係から、非鉄金属の関係から下がるのだというふうなことを言っております。しかし、私はそうは絶対にならないと思うのです。たとえば大企業の管理価格という問題もありますし、不況カルテル、それから勧告操短、あるいは自主減産なんかをやっているふうなこともあって、卸売り物価は以前はかなり動いたのですよ。最近は下方はもう硬直しています。一たん上がったものは絶対下がらないというのは、統計がはっきりこれを示しています。したがって、鉄鋼関係やその他について下がる可能性があるというふうな御説明がありましたけれども、すでにもう一〇八・二が一〇八・五になっている。逆にこれが一〇八・二に下がるというふうなことは、現在のいろいろな設備投資の動向というようなものから見て考えられない。どう考えても、この見通しはもうすでに狂っておるということは断言してもいいのではないかと私は思っております。その点どうお考えになりますか。
  362. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私は、結局事実が示すことになると思いますので、私の言っていることが絶対当たっておりますと申し上げるわけにまいりませんけれども、これだけ上がったものが、これだけ全部下がるとは私も考えておらないわけでございます。ですから、一・二というものが残るわけでございますが、まあ、これは下がると考えるのが私は常識ではないかと思います。しかし、これ以上あまり強く申し上げますと、いずれわかることだと思いますので……。私はそう思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕 これは何も政策的な考慮でそう申しておるのではございません。卸売り物価というものは、そういうものだと思うのでございます。
  363. 石川次夫

    石川委員 宮澤さんが先にそういうことを言われておったことを私は聞いておるのですが、その場合でも、設備投資が肥満化して、総需要の超過がはなはだしくない限りという限界がついているわけですね。そういう限界がついているわけです。ところが、総需要の設備が肥満化するという可能性もあるわけですね、現在の状態からいいますと。そういうこともあったりして、これは押し問答になりますから、これ以上申し上げることはやめますけれども、しかし、これはかけてもいいと思うのです。これは絶対、ぼくは卸売り物価はこれ以上は下がらないというか、あの、一・二%なんという程度にはとどまらないということは、これはかけてもいいのですが、大臣のいすと、ぼくはかけるものはありませんから、かけるわけにもまいりません。宮澤企画庁長官は非常に聡明でありましょうけれども、この見通しは、私はおそらく狂うと思っているわけであります。それと、いま申し上げましたように、宮澤企画庁長官は非常に注意深く、過熱化というふうなことは言っておらないようでありますが、経済が非常に強気、強含みということばで、まあ逃げておるといっては語弊があるかもしれませんが、そういうことばで表現しておるわけです。確かに過熱の危険性は、このまま政策を怠る限りにおいてはあるということは言えると思うのです。この点はどうですか。
  364. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは総理の所信表明にもございますとおり、政策を怠ればそういう危険があるということは、そのとおりだと思います。
  365. 石川次夫

    石川委員 まあ、いまのところは漫然とこのまま放置するというつもりはもちろんないのでありましょうけれども、これは必ず過熱化するという危険な要素があちらこちら出ているいろいろな数字を私はたくさん持っております。たくさん持っておりますが、同じことの繰り返しのような形になりますから申し上げません。しかし、どこから見ても、過熱化をすることは必至ではないかと思われる危険な指標というものがあちこちに出ておるわけであります。ただ、もちろん、これからの政策によってこれをいかに押えていくかということが残された使命だと思うのでありますが、このままでは必ず過熱をする、そして物価は当然上がる、したがって、一四・八%の設備投資といい、あるいはまた経済成長の伸びといい、九%に押えてありますけれども、これも、とても問題にはならない。これはどうも、私が先ほど申し上げたように、物価を押えなければならぬというところから、逆に計数を求めて、こういう数字が引き出されてきておるのではないかというようなことを私は懸念をいたしておるわけであります。  そこで大蔵大臣に伺いたいのでありますけれども、こういうような状態でいきますと、これは民間設備というのも相当ふえるでありましょう。それから、公債も二百億円減らさなければならぬというようなことをおっしゃったときに、民間の設備投資を何とか押えるような自主調整をすることが望ましいというような談話も発表されておるようであります。  ところで、この過熱景気を押えるための方策として、過熱景気にならないとしても、過熱景気になる危険があるということを前提として、どういう方法でこれを押えようとされておるのかという点を、大蔵大臣に伺いたいと思うのです。
  366. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもは、去年の暮れから正月にかけたいろいろな経済指標によって見ますと、これが一本調子でいったら経済の過熱ということはあり得るだろうと非常に心配しましたが、その後の様子を見ますと、御承知のように、二月になりますと鉱工業生産指数も少し下がっている。それにつれて製品の出荷指数もちょっと落ちている。暮れから正月にかけた機械受注のこれを見ましても、この二月にはちょっと停滞がある。国際収支の面で見ましても、二月は経常収支も黒になるし、幅は減ったにしましても、資本収支も、両方黒になるというふうに、この様子を見ますと、一本調子にずっとあの傾向が続いている、続くというふうには見ませんので、その点で少し私はゆとりが出てきているような気がいたします。そうかといって、経済の基調が弱いというのではなくて、依然として強いことは間違いございません。そこで、そういう経済のこれからの動き方にどう対処するか、これを私どもが慎重にいまから考えて、十分現状を見きわめながらこの対策を怠らないようにすればいいと思うのですが、これはいろいろあると思います。たとえば、企業が非常に自己資金をいままで持っておりましたから、かりに設備投資が少し進んでも、銀行資金の需要というところと結びついてこない、相当先であろうというふうな考えもしましたが、最近はやはり預金も減ってくる、そして、銀行への借り入れが、少し需要が出てきているというような傾向も、いま出ておりますので、もう少しその傾向が進むというときになったら、金融政策面においていろいろ処置をとることも、この点で有効だというふうに考えられますし、また、金融政策でいくよりも財政政策でいくべきだという情勢が出てきたときには、財政政策をもって対処する。これはどうしても一体的な運営をしなければならぬと思いますので、私は情勢に応じて金融政策もとりますし、財政政策もとって、この設備投資の調整というようなことについては、ひとつ私どももできるだけの力を尽くしてみたい、そういうふうに考えております。
  367. 石川次夫

    石川委員 時間がたいへん足りなくなってきたので残念なんでありますけれども、実は設備投資があまりふえると、輸入がふえて国際収支が悪くなるというふうなことで、何か設備投資の見通しというものは、政策的な意図が相当強く働いている。そこで、科学的な見通しというものは持っておらないという感じがするわけです。二月に若干横ばいになった、停滞ぎみだとはいっても、依然として強含みであることは否定できないと思うのです。それより、何よりおそろしいことは、四十一年に入りましてから、最近のあれで言いますというと、製品の在庫率というものが一八・四%減っているのですよ。これはいままでの最低の記録、三十五年、三十六年の水準にほぼひとしいような状態で在庫が減っているというようなことで、きわめて危険な指数がここには出てきているのではないか、こういう懸念もあるわけです。それで、どうしても何とか過熱景気というものを押えるための具体的な方策というものが必要なんでありますけれども、先ほど大臣も申されたように、国債というものを発行してからマネーフローというものは変わっていますね。民間の資金というものは相当ふえておって、銀行の貸し出しも若干ふえてきたとはいうものの、いままでのように銀行にすぐかけつけなければならぬというような状態ではなくて、ある程度は自己資金でもってまかなえるという状態になっておるわけです。したがって、私は金融関係で操作をするという余地は、従来に比較してはきわめて少なくなってきているのではないか、こういう懸念を持っております。そういう見通しを持っております。したがって、過熱の場合に、もちろん金融関係から操作をするということも必要ではありましょうけれども、財政の面でこれは指導性を握って、この過熱景気というものを押えていくということがどうしても必要になってくるのではないかと思うのですが、その財政的な立場での過熱景気を押える、強含みの経済というものを過熱させないために押えるという方法としては、どういうものが考えられますか。
  368. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府支出の調整とか、あるいは公債の削減とか、いろいろの財政政策があると思います。
  369. 石川次夫

    石川委員 先ほど大蔵大臣答弁では、税収の伸びというものがあって、大体七千三百億円――七千三百五十億円だと思うのですけれども、七千三百五十億円ほどあるというのが大蔵の試算でも出ているわけです。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 いろいろの人のいろいろな数字を見ますというと、どうも八百五億円という減税分を除いても、なお八千億円以上は税収が伸びるであろう、こういうふうな見通しを立てておる学者が多いようであります。そうしますと、公債の必要はないのですね。今度の予算というのは中立予算だということを盛んに言っておられた。先ほど申し上げたように、建設公債が公債としてのフィスカルポリシーの使命を持ったという形でもって、去年は建設公債というものを出した。建設はつけ足りなんです。建設公債しか出せないという財政上の制約があったから、公債という面の裏づけとして建設という文字が出てきた。ことしは社会資本がおくれておるからということで、建設という文字が表面に出て、公債という文字があとに引っ込んだ。まあ、両方に公債を使い分けしているわけですよ。公債を使う場合には、一体どういう使命を持たせるかということを、はっきり所信を示してもらいたいと思うのです。建設公債ではありますよ。どうせ出すのは建設公債しか出せない。しかし、実際は赤字公債の性格を持っておると思うのです。しかし、それはともかくとして、建設公債の公債に重点を置くのか、建設公債の建設に重点を置くのか、その点をはっきりさしてもらいたいと思う。
  370. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、建設に重点を置いておると思います。さっきおっしゃいましたように、経済成長に伴って、いろいろ公共資本の立ちおくれとか不均衡が出ている。この不均衡が経済発展を阻害しておるいろいろな原因になっておりますので、そういう意味で、私どもは必要な財政資金の配分をしなければならぬ。そう考えてきますと、まだ公共事業そのほかの建設事業に相当の資金、財政需要が必要であるというのがいまの状態だろうと思います。その場合に、その需要を税によって補うか、あるいは民間蓄積を利用して公債発行して得た資金によってこれをまかなうかというようなことを考えますと、公債発行の理由が、建設事業をするためにあるという必要性が出てきておるために、公債の発行に昨年から踏み切ったということが言えると思います。ただ、昨年度は非常に不況でしたから、この不況克服ということが公債について非常に宣伝され過ぎている傾きがあると思いますが、本質は、やはり日本のいまの経済から見ますと、国債発行によって社会資本の立ちおくれを取り戻す必要がある、この必要性によって、私は公債がいま発行されておる、こういうふうに考えております。
  371. 石川次夫

    石川委員 どうもこれは押し問答になるのですが、先ほど申し上げたように、公共投資の伸び率は、今度の新経済発展計画ではずっと減らさなければならぬという数字なんですよ。建設公債の必要なんか、この経済発展計画からいえば、もうほとんで必要ないのですよ。それをこの建設公債の建設の面を強調するということは、福田財政とはだいぶ違いまして、水田大蔵大臣は非常に成長積極論者だというふうにとるわけでありますが、それにしても、非常な矛盾があるということを、時間がありませんから指摘するにとどめます。しかし私は、やはりフィスカルポリシーとしての建設公債でなければならぬということを最後に申し上げたいと思うのです。  それは御承知のように、私は公債を出せばすぐインフレで、すぐ物価が上がるというふうな単純な見方をしたいとは思わない。思わないけれども、いまの公債を続けていきますと、いまの予算の中で一六・九が一六・五に下がったとは言うけれども、ほかの国では、公債が占める割合というのは五%ぐらいなんですね。現在のように七千三百億円とか八千億円ということをやったら、減債基金一・六%繰り入れるというだけで六十年かかる。しかも六十年というのは、これから公債を発行したいという前提において六十年かかるということなんです。剰余金を繰り入れるということをいっても、剰余金というものは当てになるものじゃないわけです。これはあとからまた予算委員会加藤委員その他から要求があると思うのでありますけれども、これは財政上の義務に基づいて、この公債の償還の責任ある具体案というものをやはり出してもらわなければ、国民は安心できないと思うのです。そういう点で、今度の公債を含めた予算というものは、税収の伸びというものが非常に多いということを前提として考えるというと、きわめて財政を膨張させる積極予算であって、過熱景気に水をさすということにはならない。過熱景気を抑えるという性格は持たない。完全に過熱景気をあおるインフレ予算だということを、私ははっきり申し上げておきたいと思うのです。  それで、いまの卸売り物価のことで、関連して、最後に一点だけ聞きたいしたいと思うのであります。卸売り物価は下がるとおっしゃいますけれども、私は下がるとは思わない。ここで大蔵大臣に伺いたいのですが、卸売り物価を下げる一つの方途としては、いまのように下方硬直性の卸売り物価というものを、どうしても下方に押し下げるという努力が必要だと思うのです。そこでカルテル価格というものを解消させる必要がどうしても出てくる。あるいはまた管理価格というものをどうしても引き下げる、こういう努力をしない限りにおいては、卸売り物価を下げるということ、下方硬直性を打開するということは不可能ではないかと思うのですが、その点についてはどういうお考えを持っておられますか。
  372. 水田三喜男

    水田国務大臣 卸売り物価を下げるためには、そういう努力もむろん必要だと思います。しかし、そういうことをやりながらも、さっき宮澤長官が言われましたように、私は、卸売り物価が下がる経済的な基盤がいまできかかっておるというふうに思っております。と申しますのは、先ほどおっしゃいましたようにいままでは、中小企業が金融機関に対して求めた資金というものは三〇%前後ということでございましたが、昨年、一昨年から非常にこの率が上がりまして、四十何%というふうに中小企業に資金が出ておるということは、中小企業の近代化が非常に進んでいることをこれは示しておるものだと思います。そこで、日本のいまの物価の高いという原因が、単なる需要供給関係からきておるのではなくて、構造的関係から起こっておるのだ。その一番のもとは、中小企業の近代化が進まなかったこと、農業の基盤整備というようなものが進まなかったこと、ここに一番大きい原因があるといわれておるときでございますが、国家予算も、これに相当この一、二年力を入れておりますし、また、銀行の資金もそういうところに非常に投入されておる。これが響いてくるのが、おそらく今年の末ごろ、後半期にこの効果はあらわれてくるだろうというふうに私どもは考えておりますので、いま言われましたような管理価格というようなものに対することも考えますが、いままでの投資によって卸売り物価は、今年度後半にいって下がる可能性が非常にあるというふうに私は思っております。
  373. 石川次夫

    石川委員 時間がないのはたいへん残念であります。先ほどもちょっと触れたのでありますけれども昭和四十一年末の製品在庫率というのは、前年末に比べますと一八・四%在庫が減っているのです。これは過熱景気を謳歌された――謳歌したのかどうかわかりませんが、そのときの水準にきわめて近くなっている。こういうような状態から見て、輸入というのも相当伸びるであろうということも申し上げたいのでありますけれども、いまのままいけば、確かに景気は過熱する危険がきわめて多いし、卸売り物価というものは下方硬直性というものがある限りにおいては、物価の引き上げということにもつながってくる。いまのお話では、カルテル価格を解消させ、あるいは管理価格を引き下げる行政措置をやる意思があるということをおっしゃっておりますが、いままでは、そういう御答弁をしても実際にやったことはほとんどないのです。こういう点も、ぜひ積極的に取り組むということを通じて、行政的な面を通じての物価の引き下げに努力をするということにもつながると思うのでありますけれども、いまのままでは――設備投資というものから始まって、実は物価のほうにも触れたかったし、予算の内容に触れたかったのでありますが、時間がなくなりました。  ただ申し上げたいことは、物価の四・五%あるいは卸売り物価の一・二%増というふうなものは、成長率から逆算をしたということにしか私はどうしても受け取れない。これはきわめて不安な内容を持った見通しであるということを申し上げたいということと、それから公債政策というものを含めての現在の積極財政というものを中立なものに変えるために、もしことしの中ごろまでいって相当税収の伸びがあったというふうに仮定するならば、二百億円なんということじゃなくて、公債を思い切って減らす、こういうふうな考え方を持たない限りにおいては、私は、財政面から出る景気の指導というものはできないのじゃないか、こう思うのでありますが、その点はどうですか。
  374. 水田三喜男

    水田国務大臣 すでに四十一年度において、私どもはそういう財政政策をいろいろとりました。これと同じように、四十二年度においても弾力的な政策をとるつもりでおります。
  375. 石川次夫

    石川委員 私に与えられた時間がもうなくなりましたものですから、たいへん残念でありますけれども、これで質問を終わりますが、実は、建設大臣わざわざ来ていただいてたいへん申しわけありませんでした。実は地価対策のことにつきまして私か長年――土地というものは商品ではないということを瀬戸山前の建設大臣がおっしゃったわけなんです。しかし私は、自民党の限界としてはこの程度にしか言えない、しかし、商品ではないといっても、その商品ではないらしい政策というものは、まだ十分に熟しておらないと思うのです。私は、それを百尺竿頭一歩を進めて、土地というものは、やはり所有権を――個人の私有権というものを私は否定するつもは毛頭ありませんけれども、やはり国土であるという観念を相当普及徹底させない限りにおいては、基本的には地価の問題というものは解決をしないであろうと思います。同時に、土地の利用区分というものを厳重に規制するという都市計画法なんかには、その一片が出ております。しかしながら、この都市計画だけではなくて、日本全体の国土計画というものを地方の開発計画と結びつけて、利用計画というものをきちっときめるというようなことが確立をされないと、土地対策の前提条件というものは整わないのじゃないかということを申し上げたかったわけでありますけれども、その点について申し上げる時間がなくなったことは非常に残念であります。いずれ建設委員会におきまして、都市対策と含めて、地価対策のことにつきましては建設大臣とよくお話し合いをしたい、きょうはわざわざおいでいただいて、ほんとうに申しわけないと思っておりますが、時間がありませんので、たいへん中途はんぱな質問になって、私も不本意ではありますけれども、景気対策につきましては、いずれ機会をあらためて、経済企画庁長官と話し合いをしたいと思っております。  きょうの私の質問は、これで終わります。
  376. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて石川君の質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  377. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公聴会開会に関する諸般の手続につきましては、さきに委員長に御一任を願っておりましたが、理事と協議の結果、公聴会は、来たる四月十七日月曜日及び十八日火曜日の両日、いずれも午前十時より開会することといたします。  なお、公述人から意見を聴取する順序につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますので、御了承願います。      ――――◇―――――
  378. 植木庚子郎

    植木委員長 次に、分科会の件についておはかりいたします。  理事会の協議によりまして、昭和四十二年度総予算審査のため、四個の分科会を設置することとし、分科会の区分は、第一分科会は、皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣総理府経済企画庁を除く)、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管以外の事項。第二分科会は、外務省、文部省厚生省及び労働所管。第三分科会は、経済企画庁農林省及び通商産業所管。第四分科会は、運輸省、郵政省、建設省及び自治省所管。以上のとおりといたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  379. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、各分科会分科員の配置及び主査の選任につきましては、委員長に御一任願うこととし、また、委員の異動に伴う補欠委員分科会の所属、分科員辞任及びその補欠選任並びに主査辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  380. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、おはかりいたしますが、分科会の審査の際、最高裁判所当局から、出席説明の要求がありました場合には、これを承認することとし、その取り扱いは委員長に御一任願いたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  381. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十六分散会