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1967-04-03 第55回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月三日(月曜日)     午後一時七分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 中澤 茂一君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       有田 喜一君    井出一太郎君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       北澤 直吉君    坂本三十次君       塩谷 一夫君    鈴木 善幸君       登坂重次郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       藤波 孝生君    船田  中君       保利  茂君    石野 久男君       岡本 隆一君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    阪上安太郎君       高田 富之君    長谷川正三君       山中 吾郎君    折小野良一君       河村  勝君    鈴切 康雄君       正木 良明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         通商産業大臣  菅野和太郎君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警察庁警務局長 高橋 幹夫君         警察庁警備局長 川島 広守君         科学技術庁計画         局長      梅澤 邦臣君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         国税庁長官   泉 美之松君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省管理局長 宮地  茂君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         農林政務次官  久保 勘一君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農地局長 和田 正明君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         運輸政務次官  金丸  信君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省自動車局         長       原山 亮三君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         建設省計画局長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 四月三日  委員愛知揆一君岡本茂君、松浦周太郎君、石  橋政嗣君大原亨君、畑和君、和田耕作君、沖  本泰幸君及び広沢直樹辞任につき、その補欠  として塩谷一夫君、山崎巖君、坂本三十次君、  岡本隆一君、石野久男君、長谷川正三君、河村  勝君、正木良明君及び鈴切康雄君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員石野久男君、岡本隆一君及び長谷川正三君  辞任につき、その補欠として大原亨君、石橋政  嗣君及び畑和君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑に入ります。長谷川正三君。
  3. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私は、現在非常に高まっております総評中立労連その他日本の主要な労働組合春闘の問題に関連いたしまして、以下、時間の許す範囲で二、三の点について政府の御見解をただしたいと存じます。  まず最初に、最低賃金制の問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。  この最低賃金制につきましては、私は当然全国、全産業一律の賃金制度確立するということが正しい姿であり、望ましい姿であり、その一日も早い実現確立に向かって努力すべきであると思いますが、政府の御見解はいかがでありますか。この点につきまして、労働大臣に御所見を承りたいと思います。
  4. 早川崇

    早川国務大臣 全国一律、全産業一律最低賃金ということも一つの有力な御意見でございます。また、地域別あるいは産業別という御意見もございます。そこで、最低賃金審議会におきまして目下審議をいたしまして、結論を急いでおる、こういう状況でございます。
  5. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま大臣お答えでは、全国一律最賃制一つ考え方である、その他の考え方もある。これを伺いますと、非常に並列的、同価値的にお述べになっているように承りました。しかし、その実施に若干の段階を踏むということは必要かもしれませんけれども、最終的に、私は全国一律の最賃制が正しいし、そうでなければ意味がない。また、日本実情からいっても、一日も早くそこに到達すべきだ、こう考えて御質問をしたのでありますけれども、いまのお答えは、何か問題をただ三つ並べただけの御答弁で、非常に積極的な御態度が見られなかったように思います。再度その点をただしたいのでありますけれども、今日、産業経済の近代的な発展に伴いまして、国民生活格差を是正し、安定させるという意味からいたしましても、このことは必要であると思うのであります。経済の二軍構造賃金の二布構造を維持固定して低賃金層を残存させることによって、資本の一時的な利益を守ろうというお考えも根強く残っているように存ぜられるのでありますけれども、大きい目から見ますと、結局これは、いま中小企業や農業の生産性の問題が問題になっておりますように、生産性向上を阻害し、結局は物価の安定を妨げまして、産業経済物価の安定を妨げる、停滞させる、こういうことになると思うのでありまして、そういう意味で、適正な全国一律最賃制を一刻も早く実現をする必要があると思うのですが、その点について再度、もう少し突っ込んだ大臣所見を伺いたいと思います。
  6. 早川崇

    早川国務大臣 理想論としては、お説のような御意見石田労働大臣時代に言われたことがございますが、北海道と鹿児島というのは、非常に生活条件が違う、また産業関係で、非常にこの一律の最低賃金を設けるのがむずかしい事情も相当あるということも一つ意見であります。したがって、諸外国におきましても、ちょうど同じ公務員でも、都会の人といなかの教員が違うような式の地域別あるいは業種別格差の最賃がほとんどあるわけなので、その理想論を直ちに日本のそういうものに適用することがはたして可能かどうか、そういうことも含めまして、公益委員労使を含めました審議会で、最も日本の国情に応じた妥当な結論を出そうというので努力をいたしておるわけであります。ただ、労働大臣としては、この業者間協定、いわゆる原案提案権業者閥にあるということは、ILO二十六号条約からながめまして、違反とはいえませんけれども、最終的には審議会決定するわけですが、疑義があるということで、密談会にはそういうことで疑義を解消するような線でひとつ結論を出してくれという意思表示はいたしておるわけでございます。
  7. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいまの労働大臣お答えによりますと、理想としてはということばがございました。理想としてはそういう一律最賃制というものも考えられるが、北海道東京実情も違うから、にわかにはどうか、こういうおことばでありました。けれども、その理想としてはということになりますと、やはり最終的には、最賃制としては全国一律最賃制確立というところに持っていかなければならない。それが近代国家としての正しいあり方だ、こういうお考えを基本にお持ちのようにうかがえたのですが、その点いかがですか。
  8. 早川崇

    早川国務大臣 石田労働大臣が在職のときに、理想としては全国一律、全産業一律最賃ということを申したと、こうお答えしたわけであります。
  9. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 石田労働大臣のお名前がしばしば出るのでございますが、大体この最賃制日本における歴史を顧みてみますと、十五年前、昭和二十七年に総評が一律八千円の最賃要求を正式にいたしたのが一つの端緒になったかと思います。自来、その後五年たちまして、十年前の三十二年の春闘におきましていわゆる三・二六最賃ゼネストというのが労働組合側計画をされまして、これは未然に回避をされたのでありますけれども、その際に、政府最低賃金について一つ制度をつくるというお約束をなすったと記憶をいたしております。ところが、その結果、二年後の、すなわちいまから八年前の三十四年に出てきましたものは、いま大目も触れられました業者間協定を中核とするいわゆる現行最低賃金法でありまして、これは労働者側から申しますと、要求とは似ても似つかない形だとして非常な不満を呼んで、今日までこれを一律最賃制に持っていくための努力が、私は労働組合側はもちろん、政府側においてもある程度そういう方向をとってこられたのではないかと理解をいたしております。ですから、現在の最低賃金法というものは、いわば似て非なる、いわゆる最低賃金制の名目はとっておるけれども、実質は最低賃金制度の本質から見まして遠いものである、こういうふうに考えられますし、また、現実的に考えましても、すでに実効のたいへん薄い、いわゆる低賃金に呻吟する者をなくしていくという、そういう考えからいいますと、非常に実効の薄いものに私はなっているのではないかと思いますが、その点いかがでございますか。
  10. 早川崇

    早川国務大臣 長谷川委員も御承知のように、最近、若年労働力が非常に不足をしてまいりまして、社会的、経済的背景初任給一万六千円、大産業で二万円、こういうふうになっている現状でございますので、大企業勤労者の場合には、いわゆる最賃というものの必要性が非常に薄くなってきていることは御承知のとおりであります。問題は中小企業——中小企業でも人手不足でありますから、一万ちょっとくらいではなかなか人が来ないという実情でございます。しかし、いわゆる移動できない勤労者をかかえている人というのは——移動できる勤労者の場合には、若年初任給というものは経済法則で平均化してくる。そういう地域、そういう業種考えまして、業者間協定が結ばれてないところには、十六条方式によりまして労使公益三者の審議会に御立案を願いまして職権最賃を設けております。これは業者間協定より少し高い。それからさらに、労働大臣として考えなければならないのは、やはり家内労働、これはいわゆる外へ出て自由に移動できない事情にある勤労者、これにはどうしても低い労賃でございますので、これに対しては、最近ようやく山梨と、もう一カ所奈良で家内労働の最賃ができました。しかし、それでは不十分でありますから、長沼さんを会長にした家内労働調査会というものを設けまして、ほんとうに移動できない。自分のうちで仕事をしなければならない、これは経済法則によって賃金が平均化しない境遇にございますから、そういった面の最賃、標準賃金というものも合わせまして実現をいたしたいと考えておるわけであります。御質問の、最賃法ができたけれどもあまり効果が発揮できない、私はそう思っておりません。
  11. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは端的に伺いますが、現行賃法でも、これができてから八年経過する間に、成果としてどういう成果があがったとお考えか、また、欠陥としてどういう点に欠陥が出てきているとお考えか、これをお伺いします。
  12. 早川崇

    早川国務大臣 最賃法適用になりました中小企業勤労者が五百三十万人にものぼっております。そうして、特別に低い最低賃金というものはそれで是正されて、勤労者福祉向上に大いに貢献しているということを御了解賜わりたいと思います。
  13. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま成果だけお話しになったんですが、欠陥としてどういうことをお考えになっているかということ、このほうが、私はむしろ、特に労働者を保護する任務を持つ労働省としては、最もこれを的確につかんでいなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  14. 早川崇

    早川国務大臣 むしろ、使用主のほうからたいへんな反対と苦情があるわけです。特に職権十六条方式なんかは、中小企業雇用主からは、最賃を設けられますと、設備の近代化とか生産性向上がそう大企業みたいにできませんので、これは中小企業がつぶれやせぬかとずいぶん反対が強いわけであります。その反対を押し切って、労働省労働基準局職権最賃を設けたところもずいぶんございます。そういう次第でございますから、これはあくまで最低賃金でこうしろというのじゃありません。そこの保障でございますから、大きい欠陥があるということは考えておりませんが、しかし、ILO二十六号条約精神からいいますと、業者間協定というのは、その最賃の決定原案を提案する権限業者だけであるというのは少し疑義がある。最終的には労使公益三者の審議会決定するんですけれども、イニシアチブをとる権限使用者側だけだというのは、これはやはりILO精神からいいまして一〇〇%いいとは申し上げられない。そういう点は、最低賃金審議会でひとつ改正につきまして御検討賜わりたい、こういう意思表示ははっきり申しておる次第でございます。
  15. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 欠陥として、業者間協定というのはILOの二十六号の精神から見て必ずしも完全に合致しないというお話で、何かそれはほんの少しの欠陥かのようなおっしゃり方だと思うのですが、むしろこれは一番基本的な問題であって、最も致命的な欠陥ではないかというふうに考えるのが正しいんじゃないかと思います。致命的ということばはちょっと大げさかもしれませんけれども、本来的に言いますと、そうではないか。十六条方式にたよるというようなことは、本来最も望ましい姿でないんじゃないか。賃金が何によってきまっていくかということを考える場合、最低賃金制の場合も、もちろん私はそこが一番大きな欠陥じゃないか。また、実効の上からも、先ほど五百三十万にのぼる働く人たちがこれの適用を受けることになったということを大きな成果としておっしゃったと思います。もちろんゼロから出発したとすれば大きい成果には違いありませんけれども、基幹産業、大産業以外の中小企業の、この最低賃金制等によって生活向上させることのできる、一つ水準に達することのできる層と見られる日本労働者は、全体で何人ぐらいあると押えておいでになりますか。
  16. 早川崇

    早川国務大臣 これはなかなかむずかしい問題ですが、いわゆる被雇用者が二千万人、その中で女子労働者が九百万人、中小企業はその三分の二とか、あるいは零細企業が幾らとか、こういうことになるわけでありまするが、全般的に見ますと、御承知のように若年労働力というものは非常に不足してきておるわけで、安い、いわゆる低賃金では来ないんですね、はっきり申しますと。ですから、どうしても最賃を設けなければならない。たとえば、総評なんか一万五千円最賃といっていますけれども、現実に相当しっかりした中小企業——企業はもちろんのこと、初任給は非常に高くなっているわけです。そうでない、ほんとうに安い初任給という範囲は、私はかなり限られてくるんではないだろうか。ただし、もう一つ考えなければならないのは家内労働者、これが大体八十万人おります。奥さんとか外に出てフルタイムに働けない勤労者、これは一時間労働が二十五円とかいうような、十時間働いて三百円とか、移動できない、フルタイムで働けない、子供をかかえている、こういう勤労者は、そういう賃金が上昇する経済の原則からはみ出るわけですね。この問題につきましては、労働省としては真剣に早く検討しなければなりませんから、審議会でこの問題もあわせまして結論を出したい、いわゆる中小企業零細企業の最賃審議会と並行して努力をいたしておるわけで、結論が出ましたら御審議を賜わりたいと思います。
  17. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いろいろ家内労働等に御着目をいただいて真剣に討議をされるということはたいへんけっこうだし、ぜひそうでなくちゃならないと思いますが、私のお聞きしました御答弁として、二千万人ということをおっしゃったのは、これは全体を含めての意味だったので、私が伺ったのは五百三十万人ということをおっしゃいましたが、最低賃金制を必要とする労働者の数をどのくらいと押えていらっしゃいますかと伺いました。その数をひとつ明確におっしゃっていただきたい。むずかしい点もあろうと思います。基準の引き方で若干動きもあると思いますが、労働省としてはどう考えておられるか。それから、業者間協定というのが二十六号条約に照らして疑義があるとおっしゃったが、そこに現在の最低賃金法の大きい欠陥があるというふうに考えられないかどうか。この二点についてお尋ねしたわけですから、それを明確にひとつお上願いいたします。
  18. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 大臣から先ほど御答弁申し上げましたように、最低賃金制実施すべき労働者数ということになりますと、取り方によりましてかなり数が違ってまいりますが、私ども、その必要性の一番大なるものは、いわゆる中小企業に属する労働者であると存じております。概数約千三百万、その中で中央最低賃金審議会が、従来業者間協定を進めるについても、まず必要業種を選定して、それに最低賃金額目安をきめまして、そして単なる業者だけの決定じゃなくて、最低賃金額目安をきめた、その額に接近せしめるように、適合せしめるように努力すべし、こう考えました対象労働者は約五百万近くでございます。先ほど大臣が申し上げました最賃の適用労働者五百三十万、その中で約四百数十万というものは、この必要業種として選定いたしましたその労働者に見合う数でございまして、中小企業全体で申しますと、千三百万に対する五百三十万でございますけれども、審議会が必要と認めた業種につきましては、八〇%近くが一応最低賃金決定を見た、こういう姿になっております。しかし、それ以外の労働者が非常に多いわけでございまして、それを今後どうして適用拡大していくかということに今後の重要な課題があるわけでございます。
  19. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣、もう一つ質問については——いまの御努力も、私か指摘した欠陥を何とか埋めようとする努力のあらわれだと思うのですが、いかがですか。
  20. 早川崇

    早川国務大臣 ほかにもいろいろ直すべき点はありますが、ILO精神から申しますと、業者間協定原案作成権を持っているというところにあろうかと思います。
  21. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは、この実情に合わないという点についてちょっと具体的に申し上げますが、労働省の四十二年二月の発表によりましても、最低賃金制実施状況金額のランクを見ますと、四百五十円から四百五十九円というところが一番多くなっている。これは四百五十円として押えますと、三十五日として月一万一千二百五十円ですね。ところが、同じ労働省の昨年六月の中卒初任給の平均を見ますと、一万四千八十円というようになっていると思います。これを出校しただけでも、いまの業者間協定を中心としております最賃制というものが、二年半から三年近く賃金水準から見ておくれていると申しますか、そういう感じがいたしまして、非常に意味が薄くなっているのじゃないか。ことしの東京都の労働局発表によりますと、中学卒初任給は男で一万五千六百七十円、女で一万五千九十円というふうに推定を発表されております。これらから見ましても、どうも実情に非常に即してないと思いますが、いかがですか。
  22. 早川崇

    早川国務大臣 三年前の業者間協定の最賃は、確かにお説のとおりだと思います。その後、職権賃あたりは五百六十円を上回っているところもございます。しかし、いずれにいたしましても、経済全体からいいまして、若年労働力不足現象が急速に中卒者初任給を引き上げた、これがまた中小企業の採用の場合にもやはりそうなってきておる。ですから、いまの経済情勢全般から見ますと、人手が多過ぎた時代の最賃の緊要性というものが薄らいできていることは、私は事実だと思います。同時に、そういう三年前の最賃ではもう人がこない。でございますから、その後もどんどん最賃はかさ上げされておると思いますけれども、なおその後の状況につきましては局長から御報告させます。
  23. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 先生御指摘のように、初任給が上昇しておるということは確かでございます。ただ、これは地域的に見ますとだいぶん格差がございまして、初任給中位数、まん中どころをとってみますと、東京で二万四千九百七十円といった数字になっておりますが、たとえば青森ですと一万百三十円とか、あるいは佐賀では一万九十三円、こういったことで、若干の地域的格差があるのが現状でございます。  ところで、そうはいうものの、最賃の額との見合いはどうか、こういうことになりますわけでございますが、現在やっておりますのは最低が四百十円、最高が五百二十円という幅がございますが、目安をつくりまして、それに適合するように業者間協定を指導しておるような次第でございます。そして、逐年その最賃の決定されます金額がだんだん引き上がってまいっておりまして、現在は四百五十円前後から五百円のものがだんだんふえてきておる、こういうことでございます。  ただ、最低賃金制度そのもの初任給だけを対象にするものか、あるいは中高年層のおばあちゃん方もおるわけでございますが、そういう方をもどう扱うかといった適用労働者の問題でいろいろ幅がございます。御承知のように、全部の労働者ひっくるめるわけでございますので、最近の傾向として、若年労働力不足するために初任給は上がる、ところが、中高年齢労働者はまだおる、それにも適合する最低賃金ということで、若干の乖離が生じてきておるということはいわれます。しかし、これは賃金額目安をさらに改定することによりまして、情勢に適応するという努力は今後なされなければならない、かように私ども存じておるわけでございます。問題点意識としては承知しつつ、さらに目安の額についてこれを適正化いたしたい、こういうことでございます。
  24. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これはいまずっとお話を伺っていまして、どうも全国一律最賃制への熱意といいますか、そういったものが、時代が進むに従って年々前へ進むならいいのですが、どうやらここ四、五年をとってみますと、むしろ政府の態度が後退しているのではないか。早川労働大臣はまだお若くて、自民党でもこれから先をになう方のように考えまして大いに期待をしておったのですが、先ほど石田労働大臣がちょっと言ったことがあるというようなことを例に出す程度で、どうも前向きでないという感じがしてならないのです。大体これはあれじゃないですか、中央最賃審議会の前の答申によりますと、四十一年の三月まででひとつ整理をして、新しい法律にしていくということになっていたのではないかと思うのです。そうして、しかも大橋労働大臣時代から、それでもおそ過ぎるので、一年ぐらい早めて実施をし、改正していきたいというほど非常に積極的な意欲が見えておったように記憶しておるのですけれども、どうもいまの大臣の姿勢あるいは政府の姿勢は、非常に前向きでないように思います。三木外務大臣もおいでですが、近代日本として、先日も非常に格調の高い外務大臣の本会議演説をお聞きしたのですが、ああいう立場からいって、この二十六号条約もまだ批准できないような状態に低迷しているこの日本労働行政は、恥ずかしいと私は思うのですけれども、いかがでございますか。
  25. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、日本は、国連外交、国連に協力するという立場です。そして日本の外交政策の背骨は平和外交ということですから、平和維持機構としての国連に協力していきたい、これがもう外交の産調であるわけです。ただしかし、ILO条約ということになりますと、各国ともやはり内政上の問題、経済、社会状態の相違があって、一律という点にいきにくいのです。ただしかし、これは国連の専門機関でありますから、日本は協力をしておるわけで、青木大使のごときは、いまILO理事であり、議長である。そういうふうな日本の協力は非常にいたしておるのですが、条約の問題になってくると、各国のいま言ったような内政、社会、経済上の相違があって、必ずしも一律にはいかぬ点があると思うのです、しかし、明年度は人権宣言二十周年というわけでありますから、できるだけ男女同一報酬の問題は国会に提案しようというのです。あと、残っておるのは三つですか、これもできるだけ前向きに考えることが必要である。しかし、いま言ったような各国とも事情があって、それをただ一律というようにはいきにくい。これは何も日本政府がことにうしろ向きということでもないし、国際的に恥ずかしいというわけでもない。各国ともやはり事情があるわけでありますから、そういうふうに私は考えておるものでございます。
  26. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 初めのお答えはたいへんいいのですが、どうも最後へいって逃げてしまって、うしろ向きになってしまったと思うのです。実際、青木さんも議長をつとめておって、肩身が狭いんじゃないかと思うのですね。大体、私の記録をたどってみましたらば、三十八年の四月九日、春闘の共闘の代表と大橋労働大臣がお会いになって交渉した際の回答として、現行法は不完全であり、本格的、最終的なものではない、早晩本格的なものに変えなければならない、こう考えている、こう答弁なすっている。いろいろあるわけですが、大橋労働大臣は、最低賃金制として、資本主義国においても全国一律が考えられ、日本近代国家として不可能とは考えてない、こういうふうに言っておられますね。これは三十八年四月です。もうだいぶ前の話です。それから翌年の三十九年の三月二十七日に、やはり同様に春闘共闘代表との折衝の中で、同じく大橋労働大臣は、現行法については根本的な改革を行なうべきであると考える、ある程度の地域的例外を認めるならば全国一律制も無理ではないと思う、こういうふうに言っておられます。またそのときに、新しい法律は来年、つまり来年というのは、そのときの時点で言うと昭和四十年のことです、来年の春ごろから準備を始めて、来年末からの通常国会に提出することも考えてみたい。つまり四十年の十二月から始まる通常国会、昨年の通常国会にはもう出したい、ここまで言っておられるのです。それから、同じく大橋労働大臣が三十九年の三月三十一日の衆議院の社労委の答弁で、昨年の最賃審議会の答申は三年間の実績を見て総合的に法律を再検討することになっているが、私としては、せめて一年ぐらい短縮して明年、つまり四十年末の通常国会に提案したい、国会の場でもこのことをはっきり大橋労働大臣が答えておるのであります。  それからまた次の、さっき早川労働大臣がおっしゃった石田労働大臣のときになりまして、石田さんも、これは今度は三十九年の十二月三日の総評の代表との話し合いの際の回答として、現行最低賃金制の役割りはもう果たしたものと思う。現行のものはもうその使命を終わっていると、こういう意味ですね。それから、答申の拡大を通じて積極的に展開していく中で全国一律を含めた検討に進んでいきたい、はっきり全国一律に向かって進んでいきたい、次にあるべきものとしては一律の姿勢を考えなくてはならないと思う、こうおっしゃっているのです。それから、新法案の提出については、審議会のいう四十一年末に総合検討というのはどうかと思うけれども、今度の通常国会には無理だと思う——これは三十九年のことです。前大臣が四十年末の通常国会に提出すると言ったのは、全国一律の問題をひっくるめて検討すると言ったのである、答申を高いところから引き上げる指導の中で全国一律を含めた改正にしよう、こういうふうなことをずっとおっしゃっておるのです。  こういうふうになりまして、私は昨年の予算委員会の議事録を読んでみましたところが、このことで非常に紛糾しておりますね。わが党の委員が全部退場するというような騒ぎを起こしている。これは、この前最賃法案を通すときに政府はうそをついたということを多賀谷委員がついているのです。これは山花委員がついた固定資産税の値上げを三年しないというのを二年にするという問題と二つからめまして、大問題になったのです。多賀谷委員はこう言っておるのです。「国会に対してうそを言っておるでしょう。私、非常に問題だと思うのですよ。国会を欺瞞しているのですよ。法案を通過してもらえれば批准できる、こう言って国会へ出したのです。」これはILO二十六号条約のことです。「その国会で法案が通過したら、批准ができない、こうなっておるのです。そのうちにILOに照会をする、こう言っておるでしょう。そうしてその結論が出たら、すみやかに処置をとるという結論は出たわけですから、そのとおりやってもらいたい、こう言っておるのですよ。もう少し国会に対して責任を持ってもらいたい。ですから、批准できる部分だけを批准して、抵触部分だけを早く改めて、今国会に提案をされたらどうですか。」つまり、いま早川さんもおっしゃっておる業者間協定の問題等は問題がある。だったらさっそくこれを直して、そうして二十六号条約が批准できるように持っていく、こういうように前に言っておいて、実際は批准ができなかったということで追及をされたのに対して、当時の小平国務大臣は明確にこう答えています。これはいま多賀谷さんの例を引きましたが、これはずっと八木昇委員質問しておった中で、多賀谷委員が関連質問で述べたところをいま申し上げたのですが、ずっと質問をしておった八木委員がこの問題に火をつけたわけでした。大臣はこう答えています。「八木委員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。労働大臣は、中央最低賃金審議会に、現行最低賃金法ILO二十六号条約に適合するよう、すみやかに、その改正案を求めるため、諮問をいたします。」こう言っております。早川労働大臣のさっきのお話だと、この線に沿って諮問をしておるのですか、どうですか。
  27. 早川崇

    早川国務大臣 私は、そういった速記録を全部目を通しました。しかし、石田君にしましても、大橋さんの労働大臣時代にしましても、全国一律制は理想であるけれども、それに至る道程というものにはいろいろ方法があるから、審議会には全国一律、全産業一律最賃をも含めて検討したいという答弁になっておるわけであります。私も審議会に対しましては、総評などが要求しておる全国一律、全産業一律最賃というものも含めて御検討をいただきたい、こういうことでおるわけであります。ところが、この最終段階になりまして、同盟、中立労連の代表は参加されておるわけでありまするが、総評の代表の方が審議会から中途から出ていきまして、ボイコットしておる。私は、そういう自己の意見というものが通らないならば一切審議会に入らないといういき方でなくて、それは、理想としては、使用者側意見がありましょうし、公益委員意見がありましょうし、同盟も意見がありましょうし、そういう全部の最大公約数というように、一歩でも二歩でもILO精神に沿うように業者間協定を直していくとか、あるいは一挙に全国一律方式が無理なれば、地域別あるいは産業の幅も広げてもいいじゃありませんか、そういうことが民主的な前進への道である、こう考えまして、有沢会長からも総評委員に、早く入ってきて意見を述べてもらいたい、こう言っておるわけでございます。そういう意味で、長谷川先生も首教組御出身でありますから、やはりそういう御意見は御意見として、ひとつ審議会に入って、ILOに適合するような最賃という方向まで御努力を賜わりたい。そうしなければ、総評が入っておらぬ審議会で多数決で結論を出して国会に提案するということは、民主的な政治を理想とする私としてはなかなかやりにくい、こういうことだと私は思います。
  28. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私も御質問を申し上げようと思った点にもお触れになったのですが、なぜ総評の代表が参加を拒否したか、これを私は逆に伺いたかったのです。単に自分の主張が通らないから出ない、そういうことでは絶対ないと思うのです。これは総評でも、最賃法ができたときにこの審議会に参加するかどうか、大きな議論があったところでありますけれども、先ほどちょっと触れたように、似ても似つかぬ最賃法ではあっても、やはり中に入って主張すべきものは主張しようということで入った。そうして、さっき私が申し上げたように、大橋労働大臣から石田労働大臣を通じて、前向きの姿勢でずっときておった。早川労働大臣理想ということばを使われましたけれども、全国一律の最賃制というのが正しいし、そういう方向へ向かって努力したい、こういうことを絶えず言い続けてきた。ところが、この段階になってその態度が後退して、冒頭にも申し上げたとおり、何か並列的ないろいろな場合がただあり得るのだという程度の姿勢に逆転をしましたので、その不誠意をなじって、反省を求めるために出ないという態度をとっておると私は思うのです。出ないことが目的ではなくて、せめて政府に、一律最賃制に向かって努力するという方向、そういう方向性を出して、その間には、もちろん国内の事情によってこういう段階を踏まなければならないとか、こういう地域的配慮が必要だとかいうことはあるかもしれません。あるかもしれませんが、最賃制の本来のあるべき姿に向かって積極的に進むという姿勢を示してはかってないところに、ついに審議会に参加できないという態度をとらざるを得なかった。政府のいままでの態度をひるがえした、この不誠意を追及してのあらわれだと私は思うのです。私どもが考えても当然そういうふうに考えられます。ですから私は、この点を政府がどうしてももう一つ踏み込んで、総評の代表もすみやかに審議会に参加して審議が進むように、一律最賃制への熱意というものを前向きに示す必要があると思いますが、いかがですか。
  29. 早川崇

    早川国務大臣 ILO二十六号条約は、全国一律最賃制を規定した条約ではございません。ILO二十六号条約でこの予算委員会で紛争が起こったのは、業者間協定が実は疑義があるのだ、労使同数でなければならぬ、そこが問題で、それはどうしても改めたい、そこへ、世界各国では、先進国でも、沖繩と、アメリカの州にまたがる企業だけより採用しておらない全国一律最賃制、あるいは全産業一律最賃制という御要望が入ってきたわけであります。そこで、これは石田労働大臣もと言われましたが、理想論として、地域格差もない——沖繩のように小さい県、あるいは産業別のいろいろな格差もないとき、いわゆる理想の形においてはそうでありましょう。しかし、ちょうど軍備がないのが理想ですけれども、現実に軍備を持たなければならぬのと同じような意味でありまして、それぞれの国情によりまして、産業の分布状態によりまして、フランスでもイギリスでも、先進諸国は全国一律制、全産業一律制の最賃をとっておらぬわけであります。しかし、それも一つの有力な御意見として、そして使用者側公益委員、ほかの労働組合の方と審議会で御論議願って、われわれねらうのは、ILO精神に抵触する疑義のある問題だけでも一歩前進できれば、それは勤労者のためにいいことじゃないか、こういう立場で臨んでおるわけでございますから、あくまでILO二十六号の精神に沿った最賃法をつくりたいという熱意は、従来の労働大臣と比べて決して劣るものではないということだけは御了解賜わりたいと思います。
  30. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣おっしゃるように、ILO二十六号が一律最賃制を規定しているものでないことは、そのとおりです。これは最賃制そのものの精神からいって、労働者側の要望にこたえるべきだ、それが正しいということを、私は、必ずしも三十六号条約にこだわらずに申し上げているわけです。  それで、よく地域格差地域格差とおっしゃるのですが、この最賃制の一番大事な精神からいいますと、日本実情は、地域格差の問題で、この問題を適切でないということはできないと思うのです。というのは、東京にもひどい賃金が存在しているのです。それから、非常に日の当たる産業といわれるその産業別に見ましても、どの産業の中にもやはりひどい低賃金が存在しているのです。それはおわかりでしょう。平均の賃金からいってしまうと、あるものは悪くてあるものはいいように見えますけれども、個々の一人一人の労働者を保護するという立場から見たときには、地域的にも、業種的にも、どこにも非常にひどい劣悪な賃金のものがおるのですよ。ですから、全国一律が正しいし、そう持っていかなければならない、そうでないと前近代的な姿が産業の中にいつも残っていく、こういうことを私は申し上げているのです。  そこでこの点は、時間がありませんから、一律制をぜひひとつ前向きの、少なくとも前の姿勢をもっと進める方向にひとつお若い早川労働大臣あたりが推進をしていただかなければならないという意味で要望をいたしますが、いまもお話のあった二十六号条約については、これは実際批准をする気があるのかないのか、明確にひとつお答えを願いたいと思います。
  31. 早川崇

    早川国務大臣 審議会におきまして、ILO二十六号条約の線に沿った改正の答申が出まして、国内法を整備して二十六号条約を批准いたしたい、こういうように考えております。
  32. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは、くどいようですが、二十六号条約の批准ができるように、国内法を必ず答申を待って改正をする、これはここではっきりお約束願えますね。
  33. 早川崇

    早川国務大臣 審議会総評代表の委員が全然入らないで審議会結論をまとめてそのまま出そうということは、いまのところはまだその段階にありません。しかし、あくまで、審議会の答申というものが出て、そうして国会に御審議を願い、いわゆる現在の法律でILO二十六号条約疑義のある業者間協定というようなものを改めまして、法律ができ次第、二十六号を批准いたしたいと考えております。
  34. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 最低賃金制の問題につきましては、一応以上にとどめまして、次に進みます。  政府は、今国会に失業保険法の改正案を提案するために、職業安定審議会に改正要綱を去る十五日にお示しになって諮問されたというふうに存じておりますけれども、その要点と理由を簡潔にひとつお願いいたします。
  35. 早川崇

    早川国務大臣 先般も予算委員会でお答え申し上げましたが、現在の失業保険法、労災保険法の適用を除外されておる五人未満の零細事業所の勤労者、約二百万ございまするが、これらの人たちは、御承知のように失業の危険が非常に多い勤労者諸君であります。そういう意味におきまして、今度の国会に提案を検討いたしておりますのは、そういう日の当たらない零細企業勤労者にも社会保障の恩典を均てんさそうというのが、失業保険法改正の根本の理由であります。同時に、給付内容の改善、たとえば扶養家族の加算を増加させるとか、あるいは日雇い労働者の給付内容を、新たに別の項目を設けまして改善するとか、そういうことも含まれております。そうしてもう一つは、季節労務者といいまして、要するに必ず六カ月働いたならば、あと失業する、いわゆる繰り返し循環季節労働者というものがございます。これがわずか数年間に、十万くらいでありましたのが、工十八万人に達しました。このために三%の失業保険を受け得る資格の人が三〇%こえる給付金をもらっておる。ことばをかえていえば、四日分の保険料を支払うだけで九十日分を毎年必ずもらう、こういう人が五十八万人おるわけであります。本来、保険というのは、予期しない失業あるいは予期しない火災とかいうことで保険が成り立つのですが、必ず毎年繰り返すというと、たとえば保険財政が破産いたしてしまうわけであります。そこで、零細企業の二百万に近い勤労者に失業保険をやると同時に、しかし、すでに五十八万人という既得権を持っておる方には、それによって生活設計をされてまいりますので、激変を与えることは好ましくない、従来どおり、非常に不公平でございますけれども、この人たちの既得権は尊重して、ずっと長く二十数倍の保険金を毎年払っていこう、三百億円くらい払っていこう。しかし、新たにそういう方式でくる人には、御承知のように、二年間は二十数倍の保険料を払いますけれども、三年目からはその二分の一、それでも保険料の十数倍のお金をもらうわけですが、その程度は、ほかとのバランスから申しましてやむを得ないのではないか、こういうことが今度の失業保険法改正の内容になっておるわけでございます。
  36. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 時間がありませんので、そういう季節労働者、循環的失業の状態が生じてきたのはどこに一番その責任があるか、そういうような問題について議論をすることはできませんが、端的に結論的に申し上げますと、これはそういう存在がなくなることによって、自然にその保険による——いま五十八万人とおっしゃいましたか、何かそれが他に非常に迷惑をかけておるような言い方だったと思うのですけれども、そうではなくて、そういう保険をもらわなくてもいいような、ちゃんと定職について働けるような態勢に持っていくのが政治だと思うのです。しかし、そのことは抜きにしまして、ただ、ふえてきた、たいへんだから、これを三年後には半額にする、こういうあれは明らかに改悪であると思いますが、そうでありませんか。
  37. 早川崇

    早川国務大臣 保険の原理からいえば、諸外国でもこういうものは全部保険の対象にしないというのが先進諸国の例でありますが、わが国におきましては、いわゆる農村と都市との格差もありましょう、そういう関係から、保険本来の原理からいいますと、本来打ち切るべしという学者の意見もありますけれども、政治は現実でありますから、そういうドラスティックな激変を与えるような措置は、むろんわが党政府はとらない。しかし、同時に、この新たな人に対して保険料の恩典を与えないというのではないのです。二年間は二十数倍の繰り返し保険も認めましょう、しかし、三年目からはその半分、それでも非常な特典でございますが、同時に、いわゆる季節労務をやらなくても通年雇用ができるように、あるいは土建業なり、あるいはまた人手不足が非常に激化しておりますから、職業紹介所を通じて一年間を通じて働けるような職業に御紹介申し上げるとか、あるいは農林省のお考えになっておる農業構造改善というような面もあわせて、それによって東北とか北海道の、そういう新たになる人が困らないように、本来の姿に持っていこう、あわせて実行いたしまして、せっかくこの失業保険というものが育ってまいったのでありますから、これをカナダのように破滅に持っていかないで育ててまいりたい、こういう意味でございますので、御協力を賜わりたいと思います。
  38. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの御努力の趣旨はたいへんいいと思います。そういうことで、こういう循環的失業という現象が起こらないように持っていくのが政治だと思いますが、それを起こさないように持っていくために、これを——もし現実に、それでもなお毎年毎年こういう循環的な失業にさらされる者が残った場合に、その者も三年目には四十五日分に、半分に減らされる、こういうふうな追い込み方と申しますか、これは本来を転倒しているのではないですか。
  39. 早川崇

    早川国務大臣 先ほど申しましたように、新たに失業保険というものを希望される者は、数はだんだん少なくなる。ほとんど季節労働者は出尽くしたような感じがありますが、なお年々五千人くらいは新規に失業保険をもらおうというような人々があろうかと思います。こういう人たちは、三年目には保険金が半分になるというような事態にかんがみまして、いま失業保険審議会におきましても、こういう人たちを通年雇用に持っていく方法はどうすればいいか、北海道や東北では土建業は冬場休む、ドイツやその他は冬場もやれる仕事をやっておるわけです。それには転換融資を雇用促進事業団から低利で貸すとか、あらゆる方法を講じますならば、それによって非常に困る、生活保護費をもらわなければならぬというような事態はこない、だから、目下審議会で御検討を願っておる。労働省といたしましても、保険本来の姿ではどうかと思いますけれども、やはり政治は、困っておる勤労者生活確保ということが政治の最大目標でありますから、あらゆる角度からそういう人たちに対しましても通年雇用なり、生活に困らないように努力いたしたい、こういうことで努力いたしておるわけでございます。
  40. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの御答弁でも、どうも打ち切るというか、減らすということに納得のいく説明になっていないと思うのです。  そこでお尋ねしますが、昨年の四月二十六日の社会労働委員会の議事録によりますと、失業保険法の一部を改正する法律案が社労委員会を通過する際に附帯決議がつけられたと思います。三党共同の附帯決議が満場一致で決定されておると思いますが、その中に次のような一節がございます。その本文は     失業保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、昭和四十二年度を目途として失業保険給付等の改善について努力すること。 これについて八木一男委員が提案の趣旨説明をいたしております。それによりますと、こう言っております。「この失業保険給付等の改善については、当委員会において論議をされた内容を実現することにあるわけでございまして、失業保険法と憲法二十五条に従った社会保障の理念に従って大幅に急速に改善をする内容であります。国民及び被保険者に対して不利なことを一切盛らない改正をするという意味であります。」こうしるされております。そしてこれに対して小平労働大臣が、「附帯決議の御趣旨を体しまして善処いたしてまいる所存でございます。」と答えております。にもかかわらず、いま出てきたのは明らかにこの趣旨に反すると思いますがいかがですか。
  41. 早川崇

    早川国務大臣 それは根本的な誤解でありまして、五人未満の事業所に働く二百万近い零細企業勤労者諸君に、失業保険、労災保険を適用するということは、これは画期的な保険の改正でございます。なおまた、扶養家族の加算も保険金の場合に増額するとか、あるいは日雇い労働者の給付内容を改善するとか、そういう面では、社労の御決議をむしろほんとうに尊重したあれだと思います。ただ、一つ新規に季節労務なり——これは単に農村だけではないのです。都会でもタクシーなんかで、ここへ雇って、すぐ形式上失業した形で三カ月もらってまた、ということも一部には予想される問題であります。こういうものは、従来の被保険者のものは、社労の御決議に従いまして、既得権というものは法律上あるわけですから、三百億円という持ち出しは覚悟の上で、旧被保険者のあれを不利にしないという御趣旨を実現しておるわけです。しいていえば、新規に今度は季節労務に入ってくるものがどれだけあるかわかりませんが、これが三年目から、現在もらっている人に比べれば二分の一になるという点だろうと思います。けれども、先ほども繰り返し申し上げましたように、それでも非常に多額な保険金をもらうわけですから、それによって困るものは、別途保険以外のいろいろな施策でカバーしていこうというわけでありますから、社労の御決議というものは十分尊重しておると私は信じております。
  42. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま労働大臣が前半に言われた、小さい事業所にも強制適用するというこの点が、社労の決議に従った前向きの施策であることは、これは私も認めるにやぶさかではありません。ただ、いま私が読み上げましたように、「不利なことを一切盛らない」というふうに言っておるのですね。これは提案理由を述べられまして、満場一致で決定しておるのです。これは明らかに不利じゃないか。むしろいまお話しのように、ただ現在の資格ある者はいいというお話しのようですけれども、これは制度的な既得権といいますか、それを対人的既得権にすりかえていくものじゃないか、こういうように思いますが、その一点ですね。私が申し上げたのは、季節労務者の、三年目から半額にするという点ですね。その点を申し上げておるのですけれども、これは明らかに「不利なことを一切盛らない」改正だということには矛盾すると思います。これはだれが考えてもそうだと思いますが、いかがですか。
  43. 早川崇

    早川国務大臣 保険料を納めている人が、大企業の労務者、使用主も含めて千八百万人おるわけです。これらの人は、ほとんど保険金をもらわない人たちであります。ですから、この失業保険の改善ということは、全体の公平ということも考えなければならない。それから全体の公平からいうと不公平だけれども、すでに五十八万人はこれを何年か繰り返して、一つ生活設計をしておるのだから、この人たちをいま激変さすということは、世の中の通念と、既得権でもいかない。あとの人は三年目から二分の一という、これは保険全体の公平という立場から決して改悪ではない。そのために各新聞の論説では、あげて、これでもなまぬるい、二分の一、三年目、なまぬるいという社説が大部分ですけれども、世論がこれを支持いたしておることは長谷川委員も御承知のとおりでございまして、そういう意味では社労の趣旨というものは前向きに尊重されると、全般的にながめて私は信じております。
  44. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 世論が支持しているとおっしゃいますが、しかしこれから出てくる当事者が、依然としてこういう季節労務に携わり、循環的失業にさらされる場合がまだ起こり得ることを考えると、これは死活問題になることではないか、その点から見れば、どうしてもやはり不利益なことは一切盛らないという趣旨からは、全般的にいい価もありましょうけれども、やはり毒が入っているといわざるを得ないと思うのです。ですから、この点につきまして、どうしてこれを除いた他のいい部分だけの改正にすることができないのか、そして、いまもし矛盾があるとすれば、それは政治の力で永年雇用になるような職を与えていく、こういうことにしていって、事実上必要がなくなる段階で廃止すればいいのだ、そう思うのですが、いかがですか。
  45. 早川崇

    早川国務大臣 法案が通って三年後の問題になるわけで、そのときに二分の一に減らされる、大体半年近く働いて、おそらく四万円くらいもらう、いま、七、八万円もらっている。それでいま非常に困るという場合も、そう数は多くないと思いますけれども予想されますので、それまでの期間に通年雇用に対するいろいろな手も打ってまいります。また職業紹介もしてまいります。お説のように、支障を来たさないように、労働省のみならず農林省、建設省にも御協力願って、努力いたしたいと思うわけであります。しかし、失業保険制度全体が、カナダのように季節労務を片端から入れたために、またたく間にぶっつぶれた、どうにもならないというような姿には持っていきたくない、これは千八百万の保険料を納めておられる勤労者使用主、また税金というものを考えますと、やはりあまりに不公平なことはこの際是正して、せっかくの失業保険制度を盛り立ててまいりたい、かように考える次第であります。
  46. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの御答弁ではございますが、この不利な面を盛らないという前回の附帯決議の精神というものをぜひひとつ尊重をされて、いずれどういうふうな答申が出るかわかりませんが、善処されることを私は強く要望いたしまして、時間がありませんので、この点はこれで打ち切ります。  次に、ILOの問題についてちょっと伺いたいと思います。  先ほど外務大臣も、世界人権宣言二十周年で、いわゆる世界人権宣言年が来年くるというお話がございましたが、この年を前にしましてILO当局からは、特に基本的人権に関する諸条項についてすみやかにその批准をし、この実施をするように、政府に要請が来ているように伺っておりますが、その点はいかがですか。
  47. 早川崇

    早川国務大臣 モース事務総長から来年度の世界人権宣言イヤーに備えまして、できるだけ、七条約だったと思いますが、批准を急いでもらいたい、その半数はすでに批准をしておることでございますけれども、こういう要請が来ておりましたことは事実でございます。
  48. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 実施状況についての報告書を七月一日までに出すことになっておりますね、批准した条約について。これについて労働者側意見を聞くおつもりがありますか。
  49. 早川崇

    早川国務大臣 労働省としては、特に形式上聞くという必要はございません。労働者側が、直接ILOにいろいろな意見を出し得るのであります。しかし、政府は全体の奉仕者であり、国民の政府でありますから、当然労働組合なんかの考え方も含めまして政府としてレポートを出す、こういうことになると思います。
  50. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうしますと、聞かなければならない義務はないけれども、政府として答える場合には、国民を代表する政府という意味労働者側意見も十分に聞きたい、こういう意味にとってよろしゅうございますか。
  51. 早川崇

    早川国務大臣 随時、労働大臣はフランクに労働組合総評、同盟ともお会いしておりますし、皆さんの御意見はしょっちゅう聞いておるわけであります。
  52. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは端的に伺いますが、残っている四つの条約がございます。百五号、百号、百十一号、十一号であったかと思いますが、これらについて、ILOのモース事務総長からの要請に従って、すみやかにその批准をはかろうとするのが政府の姿勢であろうと思いますが、具体的に現在どう進めておられるか、お尋ねいたします。
  53. 早川崇

    早川国務大臣 その中で百号条約、男女同一賃金、同一労働の条約は、今国会で御審議をいただきまして批准をいたしたいと考えております。
  54. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この百号だけを批准するというお考えのようでございますが、これは男女同一賃金の問題でございますね。これがたいへん前向きの線だけならいいんですが、いま一部に、この批准をめぐりまして、逆に職務給等を強化してくる意図があるのではないか、こういう危惧が流れておるようであります。その点についてのお考えをお尋ねいたします。
  55. 早川崇

    早川国務大臣 一部というのはどこか存じませんが、先般、総評中立労連議長、代表から、ぜひ百号条約を批准してもらいたいという要請を受けております。同盟からも御同様でございますし、一般言論界その他からもそういう御要望を受けております。この百号条約は、本来西欧諸国の職務給、能率給というものの前提の上の条約ではありまするが、日本は、すでに労働基準法第四条におきまして、男女同一賃金の法律ができております。その精神におきましては、結局男女の差別を勤労者の間でやるなということでございます。いわば女性の勤労者の人権宣言みたいなものであります。まことにけっこうで、そこでわれわれといたしましても今国会に提案いたしまして、御審議を賜わりたい、こういう次第でございます。
  56. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま百号条約の批准の姿勢は、たいへん前向きのお考えであるというふうに確認をいたしまして、けっこうだと存じます。  ただ私は、いま日本で非常に問題なのは、この百五号条約ではないかと思います。これこそ一刻も早く批准を急がなければならない。これが批准されていないために、労働運動等に非常に不当な刑事弾圧等がいま加えられておるのではないか、こういうことを危惧いたすのでありますし、また具体的事例が続出しておるのでありますけれども、百五号条約について早期に批准するお考えがあるかないかをお尋ねいたします。
  57. 早川崇

    早川国務大臣 これは労働行政だけではまいらぬ重要な条約でありまして、国家公務員法、地方公務員法あるいは郵便法、鉄道営業法、あらゆる面に関係する問題でございまして、いわゆるエセンシャルサービスというものに対して、ILOは刑事罰あるいは強制労働をどの程度禁止しておるのかということにつきましては、なかなかこの結論がないのであります。したがって、百五号条約につきましては、御承知のように、批准しているのは先進国ではイギリスと西ドイツだけでありまして、ソビエトもアメリカもフランスもイタリアも全部批准しておらないのであります。その批准をしておった西ドイツが、公務員の政治活動に対する刑罰という問題で、これは違反じゃないか、いや、これは重労働を科するのじゃないから、ILO百五号条約に違反ではないといっていま争っているわけでございます。批准した国においてすら争っておるわけでございます。そういう次第でございます。また刑事罰の場合には、懲役が悪いなら、禁錮なら強制労働じゃないじゃないか、こういう非常にいろいろな問題が錯綜いたしておりまするので、政府としてはそう簡単に結論は出ない、慎重に検討すべき問題だということで、条約の批准を急いでおらぬのは、そういう事情があることを御了承賜わりたいと思います。
  58. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 労働大臣の御見解を承りまして、外国の例などをあげてこの批准がなかなかむずかしいというお話でありまするが、私は、これは当然やはり批准に向かって努力すべきである。特に百五号条約精神から見ますと、それに沿わない労働行政なり、あるいはさらに言うならば、刑事弾圧等が非常に加えられておるという事例を思うのであります。ILO条約のこの百五号条約は、まあ議論はしばらくきょうはしないとして、ドライヤーの先般の勧告については、これは政府も受け入れていると承知しておりますが、間違いありませんか。
  59. 早川崇

    早川国務大臣 一部に政府見解と違ったところがありまして、たとえば、同盟罷業をやったために刑事罰をしたことに対する不満というのがドライヤー報告に盛られておった。ところが、これに対して政府は別の見解を述べまして、これは次の総会の公式速記録からは削除されたというような、一部そういった問題がございますけれども、原則としてはまことにけっこうな勧告だと思います。
  60. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 このドライヤーの勧告がありまして以後、例の全逓の中郵事件についての判決がございまして、これは非常にドライヤーの精神等が生かされておるということで、ILO等ではたいへん好感を持ったというふうに私は伺っております。そうしてまたその後、教師の地位に関する勧告がユネスコ並びにILOの総会でそれぞれ満場一致可決されましたことも御承知のとおりだと思いますが、この教師の地位の勧告の中でも、教師の労働基本権に関連しまして、第三者機関のようなものがその任務を果たさないときには、他の同種の労働組合の持っている権利といいますか、それは保障されるべきで、というふうに書いてあるのは御承知のとおりであります。こういうものが世界できめられた直後に、例の昨年の十月二十一日の公務員共闘の行動に関連しまして、日教組の宮之原委員長以下多数の教組関係の方々が逮捕をされた。さらにまたその後、三名にしぼりまして起訴をされるという事件が起こっておりますが、これはILOの結社の自由委員会等で非常にいま疑問を呼んでおる、こういうふうに承っております。先ほどお話の出ました青木さんも、これについて非常にまあ詰問をされたというようなことも聞いておるのでありますけれども、私は、こういうやり方は非常に遺憾だから、どうしてもこれは百五号条約を批准いたしまして、労働運動から刑事罰というものを取り除く、正常な労働運動というものができるようにするということが非常にいま大切だ、こういうふうに思うのであります。ILOの空気等から見まして、これはぜひ必要だと思います。結社の自由を阻害しているのではないか、労働運動を不当に抑圧しているのではないか、こういう見方に対しまして、どうしてもこの際百五号条約を批准することがよろしい、それに基づく国内法の改正をすることが望ましいと思いますが、この件に関して外務大臣労働大臣の御見解をお願いいたします。
  61. 早川崇

    早川国務大臣 先般お答え申し上げたとおりでございます。同時に、正常な労働運動は、労働大臣といたしましても全力をあげて発展するように今後とも努力をいたしたいと思っております。
  62. 三木武夫

    ○三木国務大臣 労働大臣と同意見でございます。
  63. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 外務大臣、この間の演説は総理大臣以上だと思って私は傾聴したのですが、きょうの御答弁はどうもちょっといただけませんですね。(「世界の孤児だ」と呼ぶ者あり)まさに世界の孤児になろうとしているんですが、それでは一つだけ、いま申し上げた日教組の逮捕事件並びにその後の起訴の問題について、これは労働大臣と国家公安委員長長にお聞きしたいと思います。  時間がないので詳しく申し上げられませんが、人事院の勧告すら——人事院自体がすでに第三者機関とはいえないわけで、それよりもさらに後退したものでありますが、その勧告すら実施されないことに対して抗議した労働組合の行動に対して、大量の逮捕をするというようなことは非常な行き過ぎだ、弾圧ではないか。ことに問題は、起訴状を見ますと、日教組の執行委員長以下、執行委員会や中央委員会等の会議で、こういういわゆる賃金闘争の問題を討議し、戦術等をきめることをもって共謀としてこれを起訴しておる。これは、まあ起訴の段階になりますと国家公安委員長じゃなくて法務大臣の問題になろうかと思いますが、こういうことは非常な行き過ぎであって、実は私自身も三十三年の勤務評定問題の際に、これに抗議をして一斉休暇闘争を行なったというかどで、いや被告とされて最高裁で争っております。執行委員長として指令を出したことが教唆扇動に値する、姿を見せれば、何にも言わなくても、ああ長谷川委員長が来たといって組合員は士気を鼓舞されるから、これは助長したことになるんだという、まことに荒唐無稽な、噴飯ものの理由で起訴をされておるわけなんでございますが、自分の経験から見ましても、こういうことではもう労働運動そのものをまっこうから否定している、私はこういうことにつながると思うのです。ですから、百五号条約の批准ということを切に望むわけでございます。こういうことは非常に行き過ぎだと思うのですけれども、いかがですか。
  64. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 昨年十月二十一日のいわゆる二一ストに関連いたしまして、日教組関係の違法行為について検挙をいたしまして、それが非常に多量ではないかというお話でございますけれども、私どもの捜査いたしました限りにおきましては、その程度の人が違法な行為を犯しておると認定をいたしまして逮捕あるいは任意出頭を求めた次第でございますが、その後、検察当局におきましてはそのうち四名を起訴されて、その中にあおりと、あおりの企てと、二つを罪名として起訴したということは承知をいたしております。従来も、これはもう長谷川さん十分御承知だと思いますが、従来でもあおり及びあおりの企てで起訴した事例はございます。決して今回特にその範囲を拡げたということではございません。もちろん私どもは、組合運動の正当な運動につきましては十分尊重をいたしますが、たとえ組合の会議といえども、違法な行為を謀議いたすというようなことになれば、これは捜査当局としては捜査せざるを得ない、こういう事情でございます。
  65. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その違法か違法でないかという議論もありますが、私がきょう大臣に伺っているのは、いま法の運用をいろいろやっておる、ただそういうこまかい論争をしようと思っておるんじゃなくて、やはり日本労働運動を正常化するという大きい立場から、こういう労働運動に対する刑事罰の介入というようなものはもうそろそろ取っていい時期じゃないか、こういう高い政治判断をする時期じゃないか、こういうことを私は実は申し上げたかったんであります。これに対しまして、どうも国家公安委員長はその辺の刑事さんの言うことと同じようなことしか言わないので、私はがっかりしておるのですが、労働大臣どうですか。
  66. 早川崇

    早川国務大臣 先ほど百五号条約お答えしたとおりでございます。
  67. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは、ただいまの問題に対しての答弁は私は全面的に納得できないことばかりでありますから、またいずれ別の機会を得ることといたしまして、もう時間がまいっておりますが、一つだけ最後に、公労協関係の問題についてお伺いいたしたいと思います。  また春闘の時期でありまして、公労協、国鉄を中心としましていろいろ全逓、電通等の組合が御要求を出しておると思いますが、これは、いざ話し合いがまとまらなかった場合には非常に不幸な事態にいつもなるわけでございます。これを未然に防ごうとする努力が、私は、ことしは特に双方に、政府側にも組合側にも強く見られるようにいままでの交渉経過から感じておりまして、この点はひとつ明るい感じを持っておるわけであります。これについて、これを完全に私が申し上げた明るい見通しが文字どおり明るく解決されるについて、政府側はどういうお考え、どういう努力をなさろうとしていますか、御決意のほどを承りたいと思います。
  68. 早川崇

    早川国務大臣 御承知のように、公労協も当事者能力を持っておるわけでございます。私の希望するのは、調停段階に労使ともお互いに譲り合って、仲裁裁定か形式的な——これは仲裁裁定はどうせやらなければなりませんが、それまでに妥結できれば、これにこしたことはないわけであります。これはしかし使のほうだけでもいかぬ、労のほうも、お互いに歩み寄って自主解決するように努力してもらわなければなりません。それがどうしてもだめな場合には、やむを得ず仲裁裁定ということにならざるを得ないのでございます。御協力を得たいと思います。
  69. 植木庚子郎

    ○植木委員長 長谷川君、簡潔に願います。
  70. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま労働大臣が、できれば調停の段階で解決をしたいということをおっしゃいましたが、私は、労働組合側も同様に考えておると思います。特に今度の内閣で、この公労協関係を見ますと、大橋運輸大臣にしましても倉石農林大臣にしましても、かつての労働大臣をつとめた方でもありますし、そういう意味では非常に労働問題についてはベテランの方々ばかりであり、しかも、それぞれ前向きの姿勢を持たれている方々ではないかと私は思います。こういう絶好の時機に公労協問題についてはいい例を開くということにぜひひとつ努力をしていただきたい。そしていつも調停段階には、まだ民間と比較しての給与の内容等は出さずに、最後の仲裁裁定の段階まで何か取っておくというようなくせがあるのではないか。そういうことは、ひとつ今回は払拭をしていただきまして、国民全体が喜び、また公労協の労働者も満足をし、しかも、政府側としても十分ひとつ誠意を尽くしたという形の解決ができますように、私は、もう一息のところまで来ているように見ますので、特にこの点を強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  71. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて長谷川君の質疑は終了いたしました。  次、岡本隆一君。
  72. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 最初に厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、インターンの問題であります。経済の成長と一緒に、また同時に医学知識の普及と相まちまして、医療需要は非常に増大いたしております。したがって、たださえ医師不足で困っておるという現状で、本年は三千百名のインターン諸君のその八〇%以上が国家試験を受けなかった。したがって、ことしはお医者ができないことになってまいります。そのために非常な医師不足が起こってくるのではないか、こういうふうに思うのでございますが、厚生省はそれに対してどう対処しようとお考えになっていらっしゃいますか、まずお伺いしたいと思います。
  73. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のように、インターンの人たち現行制度に非常に不満がございまして、そういったようなことから試験を受けなかった人がたいへん多くて、わずかの人が試験を受けたということによって、その限りにおきましては、お医者さんがそれだけ減るということは、これは否定できない事実だと思います。しかし、今度受けなかった方々も、ぜひとも九月における第二次の国家試験には受けていただくということを今日から鋭意努力をいたしております。そこで、お医者さんの絶対数が現在なお足りないというおりからでございますので、——もちろん絶対数においては十分だとは考えられませんけれども、今度インターンの人たちが試験を受けなかったことによって、非常にこれが影響して、そうしてお医者さんが足りないといったような影響が、もちろん絶無とは申しません、申しませんけれども、現在のところ、それほど大きな支障はないであろう、かように考えております。
  74. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 厚生大臣、それはあなたの認識不足です。いま大体人口が非常にふえてきた。だから新しくできたところのいわゆる団地ですね、至るところに新しい団地がどんどん開けております。そこで若い、一応学位も取り、一応自分の修練ができたと思う人たちは、そういうところでどんどん開業し始めておる。だから各大学の医局では非常に人手が足りなくて困っている。そのやさきへこの受験拒否、新しく医局へ入る人は全部医師免許証を持っておらない。だから医局のほうでは、ことしはとても人手不足でたいへんだということで、自分のほうの診療と、それから教室の研究とを十分にやっていくためには、どんどん若い人を地方へ出しておる。一応大学を卒業して、一年か二年医局で勉強して、学位を取るまでのしばらくの間、地方の病院で一、二年、要求があるものですから、医局としてはそれぞれの医療機関へ派遣をしております。だから、たとえていえば、いまの社会保険の病院とか組合立病院であるとか、そういうところへたくさんの若いお医者さんが派遣されておりますが、そういう人たちをどんどん回収し始めておるのです。一昨日、私のうちへ遊びにまいりました親戚の若い者も、婦人科の医者でありますが、群馬県へ派遣されておった。ところが、今度医局へ帰るんだと言います。どうして帰るのかといえば、医局に人手が足りなくなったから帰る、それじゃ後任はどうなるんだというと、後任は補充しないままで帰るんだ、それじゃたいへんじゃないか、しかし、そんなことは教室の命令だからしようがありません、こういうことです。だから、山間僻地の診療所ではなかなか開業のお医者さんは来てくれない、そういうところでは、インターンを終わって間もない若いお医者さんで、ようやく医療機関を運営しておる。ところが、そういうところがどんどん引き揚げが始まるわけであります。そういたしますと、あなたは九月にとおっしゃいますが、九月までの間に無医地帯が全国至るところにできてくる。いま、あなたは口で、いや、九月には補充するからだいじょうぶだという、しかし、それはあまりに考え方が甘いのです。だから、そういうふうな現実を踏まれて、こういうふうなことによって発生するところのことしの医師の大きな不足状態というものを、あなたはどう解決する自信をお持ちか、こういうことを伺います。
  75. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、現在の日本の状態におきましてはお医者さんが非常に払底をしておる、少ないというこの事態は、私も岡本委員と同感でございます。ところが、今度のインターンが試験を受けなかったということで、——試験を受けて医師免許を取った方が、従前からも直ちにこれがお医者さんとしてお医者さんの仕事をしていくというのはそんなに多くはない、もちろん絶無とは申しませんけれども。そういうような関係で、今度の試験を受けなかったということで、直ちにこれが現在の状態を非常に悪くしていく、こういうようなことは、私はそれほど大きな影響がない、こういうことを申し上げたつもりです。
  76. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 とにかく、しかし、三千名の医師が毎年春に補給されることによって、不足ながらも医療担当者、医師の一応需要というものが満たされていっておる。ところが、その三千名が今度は全然穴があいてくるわけです。そのことによって大きな支障が出るということは十分予想されるところであります。さらに加えて、あなたはいま、秋に国家試験をやるから、それに受けてもらうのだ、こういうことをおっしゃっておりますが、しかしながら、けさの新聞でしたか、昨日の新聞でしたか見ますと、インターンの諸君が、秋にも受けないということを決議しております。それは、インターン問題は単にインターン問題としての解決を要求しておるのではなくて、無給医局員の問題をも含めて解決を要求しているわけであります。したがって、それらの問題をも含めた解決をしなければ、この事態が秋には解決されるとは考えられない。したがって、そういう点について、あなたの考え方が、秋には何とか解決つけるとおっしゃるその御自信があるなら、秋にはどういうふうな解決の方法をもって事態を収拾しようとしておられるのか、お伺いしたいと思います。
  77. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、このままで放置しておきますれば、現在直ちに悪影響がないにしても、それだけ穴ができるということは、御指摘のとおりだと思います。そこで、従来からこのインターン制度に対しましては、お説のようにたいへんこれは問題でありまして、そうして批判の多い制度でございます。そこで、このインターン制度というものを、厚生省といたしましても、どうしてもこれを改善しなければならない、かような考えにおきまして、医学教育懇談会におきまして、この問題をどうするか、こういう検討をしていただいておるのでございますが、すでにこの懇談会から中間答申といたしまして、インターン制度はこれを廃止すべきだ、こういう御意見があったわけであります。厚生省はその御意見を尊重いたします。ただしかし、現在あるインターン制度を、これをヘビのしっぽを切ったようにやめちゃって、全然あとのアフターケアというものをやらぬということでは、これはたいへんなことになりますので、やめたならば、これにかわるべきもっと妥当ないい制度をつくってもらわなければならない、こういうことで、医学教育懇談会に、引き続きましてその検討をお願いしておりますが、これをできるだけ急いでまいりまして、でき得る限り今度の国会へこの制度をお出しいたしまして、そして岡本委員など専門家の方々にもぜひひとつ御審議を願って、いい制度をつくりたいということで、私は、単に九月に試験を受けてください、こういうようなことでなく、そういったような周辺、基礎の問題をひとつ解決をしてまいりたい、かように考えております。
  78. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 懇談会から中間の答申が出ておるのも知っております。しかしながら、そういうふうな卒業後の教育をするのには相当金がかかるわけであります。また、政府がいままでそういうふうな面の財政的な措置を講じなかったところに、インターン問題の出てきた原因があるわけでございます。  それでは大蔵大臣にお伺いいたしますが、このインターン問題の解決の方針について、厚生大臣並びに総理から何か相談を受けられ、財政措置について何かもうすでに案を考えておられますか、あるいは全然まだ大蔵省としては白紙なのか、まずそれを御説明願いたいと思います。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 懇談会からの中間答申は承知しております。これはまだ中間でございますので、いずれほんとうの答申が私は出てくると思いますので、その際にそういう問題をわれわれは考えるという立場で、本年度は、とりあえず従来の倍以上の予算でございますが、インターン問題を中心にして二億円以上の予算を計上しておいた。これは本格的なものではございませんで、今年度の臨時的な経費でございます。
  80. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 インターン問題は、これは新しい問題じゃないのです。私どもは、もう昭和三十年ごろからインターンは全く無用の長物であるということを痛感いたしておりました。私の病院でも、インターンがアルバイトにやってきておりまして、それで、診療業務にタッチさすわけにいかぬから、お医者の筆記役、裁判所でも裁判官の横に筆記役がいるような、シュライバーといっておりますが、そういう仕事をしてもらって、インターンに協力してもらっておりましたが、とにかくインターンというものが、卒業はしているわ、収入は皆無だ、だから何かやはり小づかいがなくちゃ困るということで、至るところの医療機関に、使ってくれないかというふうなことで、若い、ほんとうに勉強しなければならない時期を非常にむだな使い方をしておるということを痛感して、インターン制度を廃止すべきだということを私自身考え、機会のあるごとにそういう意見を述べておりましたが、昭和三十六年に国立大学の医学部長会議で、インターン制度は廃止すべきだということを打ち出しております。それからもう六、七年たっておるわけです。しかも、三十八年には全国民学生連盟が、インターンをボイコットしようというふうな運動を始めております。だからインターンボイコットの運動が昭和三十八年から始まっておるにかかわらず、今日までそのインターンについて何ら真剣な取り組みを政府としてしなかった、また、そういう事態を知りながら、国のほうでそれに対する財政措置を何も講じなかったというところに大きな今日の問題があるわけであります。そこで、このインターンと同じく、今度は司法修習生というのがございます。その司法修習生の制度を調べてみますと、現在では大学を卒業した司法修習生が毎月二万七千円の手当を受けながら、一年六カ月間裁判所あるいは検察庁、あるいは弁護士のところでもって実地修練をしておるわけなんです。だから、そういうふうな処遇をインターンにしておられましたら、今日これほど大きな不満がインターンの間に起こってこなかったであろうと思うのであります。かりに本年度の受験者三千百名として二万七千円ずつ一年間支給すると、約十億要るわけなんです。だから、十億のお金でもってこのインターン問題の混乱を防ぐことができたら、私は国家的な見地から見たら決してこれはむだな投資ではないと思うのであります。人権を守るためには、これは司法修習生の制度は必要であります。しかし、人命を守るのには、やはり何といってもインターンに対して十分な勉強ができるような財政的な裏づけをする必要かある。司法修習生だけにそういう制度があって、人命を尊重すべき医学の修習生に対して、何らそういう裏づけがないということは非常に片手落ちであると思うのでありますが、大蔵大臣はいかがお考えになりますか。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、国家試験合格後のインターン、お医者さんの今度は性格の問題になると思いますが、いま司法制度でとっておる研修制度は、一応公務員という立場で研修しているのですから、それとどういう関係になるのか、どういうふうに考えるのかというようなものは、一切いま懇談会で研究してくれておるはずでございますので、この結論を見ないと、私どもの対処のしかたも、一応いまのところは事前に考えられないというところでございます。
  82. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 とにかく裁判官が、これが有罪なりやいなや、あるいは検察官が、これは犯罪を構成するやいなやということを判断するということは、それはもうその人の一生にとって非常に重要な問題です。だから、そういう人の生涯を左右するような大きな問題を扱う人たちには、やはり国のほうでりっぱな、それに値するだけの人格と、それからそれに値するだけの教養とをつけなくてはいかぬ、だから、そのために国は司法修習生の制度を設けるのだ、こういうことを司法修習生の制度の、法律ではございませんけれども、規則に書いてございます。だから、人の一生を左右するような人権の問題、それにはなるほどそれだけの研修は必要だから、国はそれに対する措置を行なう。しかし、それじゃ人の病気、これはその人の命にも関係するのです。また、それが適切な措置を誤れば不具者なることもしばしばであります。治療がうまくいかなければ足腰が、たとえば手足の屈折が不可能になるとか、あるいは切断をしなければならなくなってしまう、そういうふうな、その人の生涯に大きな後遺症が残ってくるような、そんな重要な問題を扱うところの医学の研修生に対して、司法修習生と同じ措置ができないというのは私には納得できないのでございますが、これは総理お見えになったから、ちょうどいいので総理に……。  さっそくで意味がおわかりにならぬですから、もう一ぺん説明いたしますが、いま非常にインターンの問題がたいへんでございます。そして、先ほども厚生大臣に説明しておったのでありますが、ことしは三千百名受験すべきインターンが八七%試験を受けておらない。したがって、約三千名近いところの、当然ことし誕生すべき若いお医者が誕生しない。年々三千名程度のお医者が新たに補給されることによって、日本の医療は、現在適切ではありませんが、不足ながらも運営されておるわけなんです。ところが、その現状に今度はぽそっと三千名の欠員ができる。そして、一方では団地がどんどん開発されます。そこはお医者がおりません。郊外地でもってたくさんの勤労者が住んでおる、お医者がおらないから、そこでもってどんどん若いお医者が開業いたします。そうすると医局のほうは、もう古くいて、長くいて、一応の修練を積んだ人は全部開業しておる。しかも、人手不足になってきておるところに新たな補給がきかないというようなことから、地方へ出しておるところの若い医局のお医者さんをどんどんいなかから引き揚げさせ始めているというのが実情なんです。そうなってまいりますと、全国的に、現在でも無医村が問題になっておるのに、一そう急激に無医村がどんどん発生してくるというようなことになってまいりますので、この問題を早急に解決しなければならぬ、それには一日も早くインターン問題を解決しなければならない、こういうふうに思うのであります。それについて、いまインターン問題の解決の一端として、インターンは学校を卒業した後の教育課程ということでございますが、その教育課程にある程度の財政的な措置をしなければだめだ、こういうことを言っておるわけなんです。それに対して、いまインターン問題についての懇談会がありますね、大蔵省としてはその答申待ちだ、こういうのんびりしたことを大蔵大臣言っておられますから、そんな消極的な姿勢ではいまの急迫してくるところの日本の医療危機を打開できないではないか、だから、もっと積極的に取り組まなければだめではないか、こういうことを申しておりますのですが、総理の御見解を承りたい。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 あとから総理に……。さっきの続きでございますから。  厚生大臣が申しましたように、インターン制度を急速にやめて、そのあとをそのままにするわけにはいかぬから、この合理的な解決を考えているということと、インターン制度にはとにかくいろいろ欠点がございましたために、今度これを改革するということになったのでございますから、これを中心とした新しい改善策が当然立てられなければならぬし、いまこれと取り組んでおるというところでございます。たとえば卒業後一年の研修を必要とするのか二年にするのか、こういうような具体案がまだ全く関係者の間できまっていませんで、早晩これは結論を出してくるということでございますから、それを見てから私どもは考えるつもりでございます。
  84. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 医学問題懇談会でいろいろ取り上げているが、私はことしの状況についてはたいへん心配した一人でございます。とにかく新しいお医者さんが出てこない、しかも、いまの制度を、これはちょっと私は解せないのですが、ストライキ的な形において改正させよう、こういうのはちょっと本筋でないように思います。しかし、医学問題懇談会ではインターン制について現行のものに必ずしも賛成ではないようだ。それではあとどうするかというと、それはまだはっきりきまらないようでありますから、できるだけ早くこれを片づけるようにいたしたいものだと思います。一年に二回、いまの制度は受験さしておるようですから、秋までにはもっと見通しがはっきり立ちはしないか、かように思っております。しかして、とにかくいろい御意見はあるでしょうが、現行制度はやはり法的に改正されるまではぜひ守っていただきたいと、かように私は思います。
  85. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 総理は秋までにとおっしゃいますが、いま大蔵大臣にも申しておりましたのですが、インターンの諸君は、現在の懇談会の答申では不満として、秋には受験しない、こういうことをきょうですか決議しておる。だから、よほどの姿勢を政府のほうでとっていただかなければ、この問題は解決しないと思います。先ほども申しておりましたのですが、現在司法修習生に月額二万七千円の手当が出ておるわけですね。それでもって一年と四カ月研修さしておる。かりに、大学卒業と同時に国家試験を受けて免許証を与える、これが現在の答申の模様でございますが、それから後一年間研修をさして、それで開業の許可を与える、こういうのが大体の方向のようでございます。その一年が二年であるのか、その点については問題はあろうと思いますね。それで、私自身の医者としての経験から申しますなれば、二年くらいは医局でもってじっくり勉強さして、そこで、一応これで開業してよろしい、また専門の医局に入っておれば、耳鼻科なら耳鼻科、眼科なら眼科ということを標榜してよろしい、こういう標榜の許可を与えるというような制度でもつくれば一番いいのではないか。しかしながら、その二年間は、現在はでっち奉公であります。全然小づかいもなしのでっち奉公でもって二年間、現在の制度でありますと大学を六年かかって、さらに一年インターンをやり、その上にまだ二年間でっち奉公しなければ完全な医者になれない。医者になりたければそれだけの犠牲を払いなさいというのなら、これは話は別でございます。しかしながら、他の学部を出た諸君が、大学四年でもってすぐすいすいと就職して、それでけっこう暮らしておるときに、医者の卵にだけそれを要求するというのはあまりに酷である。だから卒業後の教育については、佐藤さんのいつもの人間尊重、したがって人命に直接深い関係を持つところの医者を、完全な、十分な素養を身につけて世に出すということのためには、国はそれくらいの措置をしていいのではないか。司法修習生に二万七千円出ておるのなら、さらにそれを上回るところの処遇をしながら、二年間じっくり勉強さす、その間、それは全然その医療教育機関である病院に無用ではないのです。それはやはりりっぱな医者としての、医療労働力として間に合っておるわけであります。だから、そういう点について、現在司法修習生に与えておると同様の処遇をすべてのインターン卒業生、三千百名の医学研修生に与えるとして、年間に要るお金は十億ないし二十億、二年間であればそれにダブってきますから四十億くらいかかるかもしれませんが、しかしながら、それがいいお医者を世に出すための方法としたら、これは当然、国としてそれくらいの措置を講ずべきである。またそうあってこそ佐藤総理の言われるところの人間尊重の政治というものがほんとうに生き生きとした姿になるのではないか、こう思うのでございますが、総理の、それについての財政的な措置を十分に講ずる用意ありやという腹がまえをお伺いしたいと思うのです。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 いま財政的措置が講ぜられるようにしろ、こういうお話ですが、私は、もっとこのインターン制というものの本質を考えていただきたいと思う。岡本君はもう特別に能力があり、したがって人命をまかしてもだいじょうぶだ、こういうことであってお医者さんになられた、かように思いますが、私は、資格のうちでも、お医者さんというのは特に社会的にその重要性が要求されるんじゃないか、かように思いますからこそ、学校を一応卒業してもやはり国家試験を必要とする、こういうことだと思います。その国家試験を必要とするのに、さらにインターン制を一年やるか二年やるか、そういうことは別ですが、とにかく資格をきめる上に特に大事を踏んでおるのは、人の生命に関する問題だ。だから鈴木というお医者さんがいつか出ましたが、ああいうような医者は困る、こういうところで特に資格にやかましいんだと思います。したがいまして、私は国家試験云々はそれで差しつかえないんだ。また資格を取るまでこれの給与その他をまかなうんだ、そこはどうも政府も割り切れないような気がします。だから私は、お医者さんに特別な資格を取るまで要求する、それに合格して初めてお医者になるんだ、こういうことが望ましいと思います。しかし私、もう一つどうも解せないのは、最近のお医者さんの場合に、学位を取ることが何か特別な一つの資格になっておるようにいわれておるようです。学位を取るには医局で働くことだ、それは給料も必要ございませんとか、こういうようなお話もしばしば聞くのですが、とにかく仕事の本質、それの理解がやや違うのじゃないだろうか、かように思います。私は別に医者でございませんけれども、私の親戚にもたくさん医者がいるのです。ところがこれはみんな昔の医者ですから、学位を取るとか、あるいは資格を取るにつきましても、それぞれいまよりかあるいは簡単であった、かようにも思います。でありますが、現行制度のもとにおいては、この辺は人の生命を預かるだけに大事なことじゃないだろうか。人命尊重から、お医者さんになる者の資格を取る間、やはり人命尊重でこれを大事にしろというお話もわかりますが、その前の根本に、人の命を預かっている、それが医者なんだ、だからその意味でお医者さんも勉強していただきたい、かように私は思います。
  87. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 学位の無用なことは、私も総理と同意見です。だから、こういう点も含めていまのインターンは改革を要求しておるわけです。そして先ほど総理は、ああいうストライキ的なことをやるのはけしからぬ、こう言われました。しかしながら、ああいうふうなところまで発展したから政府のみこしが上がったんで、先ほども大蔵大臣に言っていたが、昭和三十八年にすでにボイコット運動を始めておる。大学の医学部の部長会議がインターン制度を廃止すべきだという結論を出したのは昭和三十六年なんですよ。昭和三十六年にそういう結論が出ておりながら、政府は、それじゃインターンにかわるところの卒業後の教育をどうするんだ、やはり金がかかる、金の要ることはかんにんしてくれということで横を向いてきた。そっぽを向いてきたということが、今日ストライキをかけてというところまできているわけです。せっかく大学を卒業しながら、お医者の免許を取れる資格がありながら、その試験を受けない、こんなばかなことをだれが好んでしますか。こういうようなことに立ち至らしたところに政府の責任があるわけです。その責任を感ぜずに、どうも私はああいうことはきらいです。これでは総理、話になりませんよ。だから、そういうふうな気持ち、そういうふうな考え方から、頭を切りかえてもらわなければならぬということ、それほどまた事態が緊迫しておるということの認識の上に立って、しかしながら一面、それじゃ大学を卒業しました、国家試験をやりました、それで私は医者でございますと言った人に、あなたは、おれ、声がかれてきた、池田みたいに喉頭ガンにならぬやろか、こういって見てもらう気持ちになりますか、ならないでしょう。それなら、やはり少なくとも二年や三年、ある程度の設備のあるところの医療機関でもって勉強しなさい、そうしたら、あなたは耳鼻科の専門だ、専門といわなくとも耳鼻科でございますと言ってよろしい、またあなたは産婦人科の医者でございます、あなたは眼科の医者でごいざますと標榜してよろしい、こういうような制度にしなければだめなんですね。しかし、そうするのには、それだけの高度な、より以上の経験——今度は教養とか学問という以上に、経験というものを要求するわけですね。それだけの経験を国が国民全体の生命のために要求するということであれば、それに対してある程度の経済的な裏づけをしてやるということも、これは当然であろうと思うのです。またそういうふうな裏づけをしておらないのは日本だけであって、どこの国でも大体たいていは一年、中には二年の卒業後の教育を要求しているところもあります。だから、そういうふうな制度というもの、制度的なものを日本につくる必要があるのではないか、そのための財政的な裏づけをやるというかまえが政府になくては、インターン問題としては解決しません。だからそういう用意があるか、腹がまえがあるか、そのことがどうせ答申したって金は出してくれぬならしようがない、こういうことならだめです。懇談会もまじめな気持になって答申できません。この機会に、いや、少々のことは十分財政的な措置を講ずる用意があります、こういうふうな総理の声明があってこそ、初めて懇談会も真剣に取り組めると思うのでございますから、私はこの機会に総理の気持ちをはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  88. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 どうも私は、岡本君が声を大にされましても、ちょっと違うのです。ただいまのインターン生、大学を卒業したら直ちにお医者さんとして働けるか、そうじゃないんだ、やはり臨床に相当の経験を積まないと医者としては不十分だ、こういうようなお話、そうすると、まだ未熟ないわゆる卵の状態だ、その間に政府が特別に手当てをしなければならないかどうか、これはひとつ考えていただきたいと思うのです。だから、私は、もうすでに国家的な資格はあるんだ、医者としてりっぱに通用するのです、しかしながら、どうも開業するのには不十分でございますとか、あるいはまた病院につとめるには不十分でございます、だからもう少し臨床を積むのです、これなら、その御本人の責任において片づけるべきではないか、かように思います。私はどうも国家云々の話がわからないのですが、いまもう一度詳しく申せば、学校を卒業した、これだけでは医者じゃないのです。臨床を積んで初めて医者になるのです。そうすると、その臨床を積んだところで初めて資格を受ける。それから先は、国家が有資格者に対してそれを処遇する道を開くべきだ、かように私は思うのです。だから、学校は卒業したがまだ臨床を積まないからだめだ、それはインターン制で片づいている、こうだと、そこまで国がめんどうを見るということは少し行き過ぎないでしょうか。たとえば工科を卒業した、これはりっぱな技師なんだ、だから、もうそこで工科の技師として、技術者として採用はした、しかしそれが責任を持って自分で設計ができるかどうかというと、それはまだできません。これはやはり経験をもう少し積んでやらなければいかぬ。そうなると、これはやっぱり技術者が採用されたばかりで、給料は安くてもがまんしてもらう、そのうち経験を積んで初めて給料も上がると、こういうことじゃないか、こういうように思うのですね。私は、ただ働き云々という問題を、これを何か解消しろということ、これは先ほど申すようないまの学位その他ともやっぱり結びついているようだと、この辺にも問題があると思いますよ。  それからまたインターンの期間が一年がいいのか、あるいは一年でなくていいのか。昔の先生の場合に、卒業試験のときに、いろいろ問い詰めたが、どうしてもわからない、そうしたら生徒が、いや、そのときには先生を私が連れていきます、こう言ったというので、卒業さし、資格をやったという話もあります。けれど、そうなると、いまとちょっと違うのじゃないかと、かように思うのですよ。だから、まだ卵のうちに給料を出せというのは少し過ぎやしないか。しかし一人前の働きができるものを、これを無理にただ働きさしている、こういうようなことについては政府考えなければならぬ、かように私思います。
  89. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 総理の時間に制約がありますのですが、いまの総理の答弁では、だいぶまだまだわかっていらっしゃらない。だから、これは健康保険法の改正のときに、いずれ医療費問題でこれはやりますから、そのときに委員会でじっくり総理に御説明申し上げます。あなたのいまのような考え方では医療問題は解決しません。健康保険の問題も解決しません。だから、これはもう一ぺんじっくりひとつお話しさしていただきたいと思います。  そこでもう一つ、きょう緊急の問題として、南海の踏切事故の問題について、また関連して、私は交通安全の問題について総理に御見解を承っておきたいと思うのです。  今度の事故は死者が五名、重軽傷者が二百名をこえると、こういうことでございましたね。けさもまた関西でもう一つ踏切事故があったということをテレビが報道したということを聞いておりますが、こういう踏切事故が頻発するということ、これは交通安全施設に対する投資が不十分なのである。企業のほうでどんどんスピードアップはやる、ダイヤも過密にする、そういうふうな輸送力の増強にだけはものすごく金は投入しておる。しかしながら、踏切の安全施設であるとか、あるいは交通の事故を防ぐための緊急のブレーキの制動装置だとか、そういうことについては一向投資しない。企業のそういうふうな営利第一主義といいますか、収益をあげるということにはどんどん金を入れるが、しかしながら、ほんとうの安全施設にはあまり投資をしない、こういうふうなことが今度の事故の一番直接の大きな原因ではないか、こういうふうに私は思うのでございます。まさにこれは人間軽視の企業のあり方であり、そういうものをそのまま許しておるということは、日ごろ人間尊重を言われる総理とされては、しかも運輸畑の総理がこういうふうな運輸行政をそのまま見過ごしておられるということは、これは人間軽視の交通行政だと、こういうように私には感じられる。これに対して緊急にどう対処されますか。この交通安全施設ですね、たとえば立体交差の問題であるとか、あるいは踏切の改良——立体交差でなくて踏切が非常に狭かったり、坂になっておったり、ごてんごてんと凹凸がひどかったり、いろいろな悪い条件の踏切が至るところにあります。それをどのように早急に整備されるか、その御方針を承りたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 南海の事故についてのお尋ねですが、私も現地に行き、同時にまた、病院も見舞って帰ったばかりであります。また、私の経験から申しましても、ただいまのように平面交差しておる限りにおいては、事故は絶滅を期す、こういうわけにいかないことは、これはお説のとおりでございます。しかし、全部が全部立体交差というわけにはなかなかいきかねるようであります。いままで、交通のひんぱんなところから順次線路自身を高架にする、あるいは特別な踏切については人を配置する等々、計画しておるのでございますが、しかし、ただいまのような事故が起きておる。南海の場合は、たいへん場所も悪いですね、ちょうどそのカーブを通り越して鉄橋にかかる、こういうことですから、自動車が踏切に差しかかってエンストを起こした、だから踏切に差しかかったときは、まだ警報機は鳴らなかった、そうして、エンストを起こしたとたんに警報機が鳴り出した、それで、助手が飛び出して、合い図をしたけれども、そこはカーブだから、そう遠方までは見えない、こういうようなことでああいう不幸な事故を起こしたようです。こういうことはやっぱり地形から片づけて、地形に沿ったような踏切設備にしない限り、どうしてもこういう事故は起こります。だから事故絶滅を期する、こういう意味からは全部平面交差をなくすという、それができないなら、少なくともこういう場所に人をつけるとか、あるいはこの踏切自身も非常に簡易な踏切の施設のようですから、警報機はついておりますけれども、もっと踏切そのものも整備する、のぼったところでエンストを起こすというようなことのないようにしなければならぬだろうと、かように思います。とにかくたいへん残念なことです。ただいま御指摘のように、この上とも督励するつもりでございます。
  91. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 きょうの南海の運輸部長の談話を見ますと、ああいうふうな堤防の上の踏切などは、これはさくを打って車を通させないようにするのだ、こういうふうなことを新聞に書いておりました。ところが、あの踏切は遮断機があるという——警報機はあるんですね遮断機があるとなっておりましたかね、警報機だけですか。とにかく、しかし、警報機を備えるというのは、やっぱりある程度の交通量があるからやっているわけなんですね。あれは一応堤防ではあるが、地方道にはなっておると思うのです。少なくも町村道にはなっておると思うのですね。だから、そういう道路になっておるところを、もう事故が起こるようなあぶないところなら通さぬようにする、そういうふうな暴言を会社の責任者がはいておるということは、これは私は許せないと思うのですね。だから、むしろああいうところは高架に早急に直すとか、ことに、そういう全然スピードに対するところの見通しがきかないというふうなところでありますなら、やっぱり安全施設を考えていただかなければいかぬ。いまのあり方というものは、四、五年前までは、あまりそう交通量の多くないところでも大体警手を置いていた、置いている踏切が多かったのです。ところがどんどんどんどん警手ははずされました。いまも警手のおらない踏切がほとんどで、そのかわりに警報機がつき、あるいは、遮断機がつくというふうなことになって、いわゆる合理化の名において盛んに警手をはずしていくという危険化が行なわれておる。だから、こういうふうないまの合理化に名をかりるところの踏切改良、しかも、それが危険化に通じておるというふうな今日のあり方というものは、緊急に、少なくも安全施設が完全になるまでは、もう一ぺん警手の昔おったところは残す。さらにまた、これから後、市街地なんかの発展、発達で、どんどん団地ができます。だから、団地ができて、新たに交通量がどんどんふえる、そういうところについては、警手を置かなければならないことにする。こういうような形に、ひとつこれは法律的な規制もあわせてやっていただかなければならないと思うのでございますが、いかがでしょう。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは岡本君の言われるとおり、立体交差ができなければ有人踏切にする、人をつける。さらにまた程度の低いところで初めて警報機だとかあるいは遮断機だとか、こういうように機械化にすべきです。そういう点で、さらに督励するつもりでございます。
  93. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 次に、今度の事故によって被害の程度はどの程度発生したのか、私も新聞でごく大ざっぱななにでございますから、どの程度の重傷者ですか、どういうふうな程度の発生の状況か、さらに今度は、この負傷者とかそれから死者に対する補償の問題でございますが、直接は自動車のエンストだ、そうすると会社のほうは、おれのほうは被害者だ、こういうことを言い出してこないとも限らないと思うのです。しかしながら、直接的な目で見れば、あるいはそういう言い分は成り立つかしれませんが、一方は過密ダイヤによってやっておった、スピードアップをしておった。しかも、踏切をそういうふうな不良の状態に置いておったというところで、会社の責任は非常に重大であると思いますが、それに対してどのような行政指導を行なわれますか、被害の状況並びにそれに対するところの補償についての行政指導をお伺いしたい。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま五人がなくなった。そうして、あと重軽傷者約二百名。私、そのうち、二カ所病院を見舞いまして、そうして、けがをした人たちの病床に立って、それぞれお見舞いを申し上げたのです。ただいまは、手当てをすることに専念しておるようです。よくあんなにベッドがあいていたなと言ったのですが、病院としては、ちょうど一日だったものですから、退院してあいている、ちょうどそのときだったから、あと入れないでいたらちょうどうまく入りました、こういうことを申しております。休みの日ではありますし……。  そこで、困るのは付き添いとお医者さんがなかなか足らない。だから、あるけがをした人は、直接私にもそういうことを言っていました。何か困ることはないかと言ったら、これは単に包帯を取りかえるだけなんだが、なかなかやってくれない。やっぱり、手当てする付添人、医者が足らないようですと——きのうは休みの日でもありますから、なおさらだったろうと思います。そこで、病院長、事務長その他にも、これはひとつ大至急人手をふやすようにくふうしてください、こういうことを申して帰ったのであります。きのうまでは、どうしたら早く傷が直るか、こういうことでございますから、それでいいかと思いますが、あとで補償の問題というか、それぞれの見舞いの問題がございます。あるいは南海自身——まだ私、南海の社長に会うという機会はございませんでした。しかし、私が事故の現場を視察しているときに、南海の社長も専務もその席にあらわれて、たいへん申しわけございません、こう言っておりましたから、これはもちろん南海電鉄もそういうことについては、自分たちで始末するつもりでおるだろうと思います。  トラック会社そのものには、おそらくそれだけの能力がない、かように私は思います。これがどんなに処理されるかは別といたしまして、運輸省におきましても、十分今後の処置に気をつけてまいるつもりでございます。
  95. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 この事故の発生の際に、運転手が家族を一緒に運転席に乗せておったというふうな問題が出てきて、新聞なんかでも、これは公私の混同もはなはだしいというふうなことがいわれております。私は、これは重要な問題であり、はなはだ遺憾であると思います。しかしながら、こういうふうな遺憾な状況を発生させたということについては、運転手個人、本人の心がまえの問題で、これはたいへんだと思います。許すべからざるものがあると思います。しかしながら、やっぱり、会社のそういう点についての綱紀の維持というものについて、ゆるんでいるところがあったのではないか。  先般、私は国鉄から、何か国鉄の過密ダイヤに対して一ぺん運転手のひどい勤務状況を見てくれと言われて運転手席に、朝、大宮から東京駅まで同乗したことがございます。あのときに、なるほどこれだけ緊張して運転をしなければならぬものか、またこれだけ緊張して運転するということはとうといことだと私は思っておりましたが、その発車のときにも、一々「発車」と、横にいる私がびっくりするような大きな声をあげて、号令を自分自身にかげながら運転している。それから、信号なんかでも、一々声をたてて点検しつつ、信号のところを通過していきます。これは安全運転のためには当然こういうふうな措置がとられなければならぬ。私はそのことを思いました。ところが、今度の場合は、子供を自分の席へ入れている、こういうふうなことについては、やはり会社の中に、そういう勤務の状態についての綱紀の問題があったと私は思います。そういう点、政府としても、これは非常に多くの人命の問題でございますから、今後会社に対して、十分な指導体制を会社みずからがとり、あるいはまた会社の中でも、従業員に対して、そういうものをとるように指導していただきたいと思うのでございますが、総理の御見解を承っておきます。
  96. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 お説のとおり、岡本君の視察は、たいへん行き届いた御認識だと思います。全部確認、これは自分に号令をかけるのではなく、確認をしておるわけで、「信号オーライ」だとか、こういうものを一々やるわけです。それを大きい声でやるわけです。それは確認なんです。それで間違いがない。こういうわけでございます。ただ、子供を運転席に連れていった、こういう話で、事故の直前に運転席から子供が逃げたというような話が出ておりますが、事故はとっさでございますから、あるいはその前に運転席に子供が行ったかわかりませんけれども、その事故と同時に子供が逃げたというようなことはないだろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、こういうところが批判を受けるものだと思いますし、事故が起きた今日におきましては、一そう公私の区別を立てて、そして厳正にしなければなりません。また、職務中は一切家庭の用もしてはいけない、そういう訓練をしなければならぬと思います。これは南海電鉄にも、また一般の会社にも、よくそういうことは注意をすべきだ、かように思います。ありがとうございました。
  97. 植木庚子郎

    ○植木委員長 総理、お約束の時間が参りましたからどうぞ……。
  98. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは先ほどの問題に返りますが、インターン問題については、これは総理自体にも認識が十分でありませんし、また、大蔵大臣も、これはどうもわかっちゃいないということの模様でございます。したがって、これはじっくり時間をかけて、もう一度議論をいたしたいと思いますが、それに関連して、私は、医療費の問題について少しお尋ねをいたしたいと思うのです。  先般、大蔵省から、おとなの一日の食費が二百五円である、こういうふうな発表をしておられます。あの二百五円の標準食費、あれには調味料とか燃料あるいは人件費というものが一体入っているのか、入っておらないのか、それを承りたいと思います。
  99. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは主税局長に説明いたさせます。
  100. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先般大蔵委員会の要求で出しました課税最低限と基準生計費との関係におきまして、その中であらわれておりますところの二百五円という食料費は、御案内のように、昭和四十年分の国立栄養研究所の献立に従いました百六十七円四十八銭の食料費をもとといたしております。今回は昭和四十一年の改正の際の百八十六円八十七銭を昭和四十一年、四十二年の消費者物価指数の伸びで伸ばしただけでございます。そのときはエンゲル係数をもとにいたしまして消費支出を推計したわけでございますが、そのときの食料費の中には調味料は入っておりますが、ただいま御指摘の燃料費その他等は入っておりません。純粋の食料費だけでございます。それを、エンゲル係数で逆算いたしまして、全体としての基準生計費を出しております。したがいまして、燃料費等は、食料費以外の消費支出に入っていることになるわけでございます。
  101. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは厚生大臣にお伺いいたしますが、入院患者の食費ですね。乙表では二百十七円です。それから人件費、燃料費あるいは食器の破損、そういうふうな諸雑費を引いて、いまの大蔵省の言われるところの食事の材料費ですね、主食と副食ですな、それに相当するものは一体どれくらいと計上しておられますか。
  102. 坊秀男

    ○坊国務大臣 数字のことについては、ちょっと記憶がございませんので、所管局長からお答えさせます。
  103. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 保険局長でございますが、現在の点数表の中に入っておりますいわゆる食事分といいますか、それにつきましては二一・七ということになっておりまして、基準給食の加算があった場合には六・六加算することになっております。実はこの点数表の中に材料その他どういう形で計上されておるかということにつきましては、先生御承知のように、点数表の積算をする場合に、何%上げるといった場合に、過去の物価上昇その他のスライドをいたしまして、ずいぶん古い資料に基づいてスライドしておるわけでございまして、数字自体は明白になっておらないわけでございます。現在の点数表の中の材料費の分がどのくらいというようなことは明確になっておらないわけでございます。
  104. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 しかし、一応医療費、その中で入院患者の食費が二百十七円と、こうきまった場合に、大体材料費はどれくらい必要で、人件費はどれくらい要るだろう、調味料はどれくらいにつくだろう、こういうような積算の基礎がなければ、そんなものはきめられぬじゃないですか。大まかにつかみ金で二百十七円というのは、そんなきめ方がありますか、そうでしょう。また、いつの場合でもきちんとした積算の基礎がなければ、厚生省はそんなものは承認しないですよ。たとえば、大体かん腸は何点だ、あるいは盲腸の手術は何点だ、それには医者の労働力がどれくらいとされて、タイムウォッチではかってきめたんじゃないですか。それほど労働力の計算には、タイムウォッチではかって、何分間でいけるのだからどれくらいだというふうなきめ方をしておきながら、食費については、そんなものつかみ金でございます、積算の基礎は何にもございません、そんなことじゃ通用しませんよ。  それではお伺いしますが、療養所課長か、あるいは国立病院課長か、だれかおられると思うが、大体国立病院では、二百十七円ではありませんが、しかしながら食費の材料費は一体幾らのものを患者に提供しておりますか。
  105. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 国立病院、療養所の四十二年度の予算の中には、普通食といたしまして、四月から九月までは百五十三円、それから十月以降は百六十円ということに予算は計上されておるわけでございます。いま先生が言われました点数表の計算をやる場合に調査をいたしましたのは、これは事実でございます。しかし、それが実は御承知のように、非常に古い資料に基づいた分で、実態調査に基づいてやった分で、それからあとの分はここ十年間以上それによっていろいろスライドをしていって中身をきめていくということでございますので、現在の中身がどのようになっておるかということは明確になってないということでございます。
  106. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは、いま国立病院で一応去年の九月まで百五十三円、それ以後は百六十円ということでございます。そうすると、大蔵大臣にお伺いしますが、達者な人は二百五円なんですよ。それで患者は病気で寝て、栄養をとって、それでからだをよくしなければならぬという人の分は百六十円なんです。これでいいんですか。——これは大蔵大臣、答えなさい。そんな事務官の答弁を求めてませんよ、私は政治的な配慮について聞いているわけでありますからね。
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私も十分その関係がわかりませんが、病院あたりで大量に購入するというようなことから、病院費のほうの費用が低く見積もられているというようなことは聞きましたが、詳しいことはわかりません。
  108. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 病院で大量に買うたら安く買えるといったって、二割も三割も安くなりますか。とにかく材料費二百五円のものを百六十円で病院ではまかなっておる。しかも、それは国立病院の話ですね。だから、これは国立病院だけじゃありませんよ。一般の医療機関、乙表でありますから、小さな病院もみなこれでいくわけですね。だから小さな病院は百六十円で、人件費その他を見たらそろばんが持てませんから、もっと切り詰めなければやっていけない。だから大体達者な者が二百五円で、患者は百五十三円、それでよろしい、こういう。よけい買うてきなさい、大量購入しなさいと言うても、大量購入しようにも小さな病院では大量購入はできませんよ。どないして大量購入したらいいですか、腐るだけじゃないですか。
  109. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この事務的な積算を私がやったわけではございませんので、詳しいことは私にはわかりません。もし必要なら、政府委員答弁させます。
  110. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私はそんな積算の根拠など聞いているのではないのです。あなたの政治的なものの考え方を聞いているのです。いまきめられておるところの医療費、入院患者の食費というものが二百十七円に、これで四年間据え置かれているのです。四年間二百十七円に据え置かれておって、それで大蔵省の食費は二百五円だ、しかしながら材料費は国立病院ですらが百六十円だ、これじゃ少し病院の入院患者に対するところの処遇というものが、これはその範囲内のことよりやれないんですから、そうすると、非常にお粗末な食事より出ないが、それでは困るから、あなたが何かこれから後、新たなる観点に立った配慮をすべきであるということを言っておるわけなんです。そこで、もう一歩それを突っ込んでいけば、この二百十七円というのは、昭和四十年一月の緊急是正です。だからいままる二年たつわけです。二年前に二百十七円ときめられておる。しかしながら、それは三十九年の四月の答申に対応するものなんです。三十九年四月の時点で大体二百十七円程度の食費にすべきであるというふうな中央医療協議会の答申が出て、それに基づいて二百十七円というものがきめられておりますから、まる三年間入院患者の食費というものは据え置かれておる。そこへ昭和四十年と四十一年の二年間に物価の上昇は一五%上がっております。また、米の値上げもそれから後二回ありました。また、公務員給与のベースアップも二回ございました。だから、その食費の中に含まれるところの主食の米あるいは副食物、それに伴う人件費、あるいは燃料等の公共料金、みんなそれから後上がっておるわけなんです。そういうことからいきますと、現在のこの二百十七円という患者食費というものはとても無理だから、これは緊急に是正をする必要があると思いますが、そうでなければ患者にまともな栄養を——病院では患者の食事というものもこれは治療の一部分である、こういう考え方に立って病院というものは運営されておるわけなんです。だから、それについて大蔵大臣はこれの緊急是正をやられる、応じられる御意思があるかどうか承りたいと思います。
  111. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま申しましたように、お聞きすれば不合理のようでございますが、何か根拠があったのではないかと思います。私もその根拠を聞かなければ、緊急是正するとかどうとかという考えができませんので、なぜそういうふうに低かったのかという理由を私自身も知りませんから、それでそうお答え申し上げておるわけでございます。
  112. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私が聞いておるのは、そのときの積算の根拠よりも、そのときかりに、昭和四十年一月の時点において二百十七円でいいとして、それから後、物価の上昇、人件費の上昇、そういうふうなものがあった今日の時点において緊急是正の必要があると私は考えるのですが、大蔵大臣はどう思うか、こう聞いておるのですよ。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 緊急是正の必要があるはずなのをなぜしてなかったかという理由が、私はそれをはっきり知らなかったからということをお答えしているので、これから、なぜやらなかったのか私も調べます。
  114. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 なぜやらなかったかというよりも、いまの話を聞いて、今後やる必要をあなたはお感じにならないか。そういうふうに見忘れられた存在があるのなら、入院しておるところの患者にも、食事が実質的にどうしても低下せざるを得ないのです。やはり物価の上昇に応じて内容は落ちざるを得ないのです。それをもとに戻す。少なくとも一般の二百五円という、あなたが言われる標準食にまで戻すに必要なだけの経費は、当然本年度予算に見積もるべきでしょう。大蔵大臣はそういうふうな積算を当然やらなければいかぬのですよ。やらなかったところに、知らぬ顔してほおかぶりしておるのです。だから、それをやります、やるべきであるのを見落としていたのだから、すなおに見落としていたなら見落としていたと、こう答えられたらいいのです。
  115. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 見落としていたわけじゃございませんで、どうしてそれがやられなかったかということを一応説明させようと思っておったのですが、なかなかその説明を聞いてくださいませんので、主計局長から説明させます。
  116. 村上孝太郎

    村上(孝)政府委員 私もあまり詳しくないのですが、こまかいことを大蔵大臣に聞いておられますので、私からちょっと御説明申し上げますけれども、実は二百十七円とおっしゃっているのは、医療の食費に対する点数、収入のことをおっしゃっているわけです。これは厚生大臣が中医協に諮問されてきめられるわけです。歳出部門の問題になりますと、国立病院の食糧費は幾ら組んでおるかという話になるわけでありますが、これは決してもとどおりに据え置いているわけではございませんので、毎年上げております。もちろん、どういう献立にするかという中身まで私も聞いておりませんし、厚生省もそういう小さな毎日の献立まではつくっておるわけではございませんけれども、しかし、ことしの四十二年度予算に組みました食費というのは、去年に比べて内容の改善も入れまして四・七%のアップが組んでおって、そこで先ほど言及されました百六十円になるわけであります。
  117. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 これはまた全然大蔵省もおわかりになっておられぬ。しかしながら、そんなものは一応すなおに話を話として聞かれたら、ああそうですかと、すぐわかっている問題をわざととぼけていられる。これは議論の余地がないですから、健康保険法の改正問題のときに、もう一ぺんじっくりやります。きょうは看護婦の問題や看護婦不足をどうするか、助産婦の不足をどうするか、これも重要な問題で、文部大臣せっかく来ていただいているのでお尋ねしようと思っておったんですが、それと一緒にもう一つ、地価問題、これも重要な問題がありますから、これを建設大臣——大臣おられないですね。それでは文部大臣に。最近看護婦が足りないからベットを閉鎖するというふうな問題が出てまいっております。これはたとえば私の出ました学校の京都の府立医科大学で、非常にこの春問題になったのです。とにかく二〇%病室閉鎖した。それは看護婦が足りないからだ。それで府費を一億二千万、閉鎖するための収入減に対して投入したわけです。それなら、それだけのものを看護婦に回して、看護婦の待遇改善をしたらいいじゃないか、ところが、そういうことをして看護婦を公金によってかき集めたら、また近くの病院がもうそれこそ困ってくる、だからそうもならない。また他の公務員との比率もある。こういうことで、ベッド閉鎖をしました。それと同じことが東京都内でも新聞にちらちら出ておりますのを見ておりますと、国立小児病院で四百床あるのを百床もあけておる。あるいは慶応の大学病院でも、やはり看護婦不足でベッドをあけておる。こういうことが出ております。あるいはまた、身体障害者不自由児のなにでは、看護婦が足りないから、今度はそれに秋田おばこを看護婦のかわりに来てもらった。そうしたら、今度はそれは看護内容が落ちたから、基準看護をやっていたのをもうやらぬ、こういうことになって、厚生省は基準看護を一類であったのを二類に落とした。そのことのために、なには非常に財政難でピンチにおちいって、これは何という施設でございましたか、秋津療育園という施設でございますが、困っておるというふうなことが新聞に出ておりました。だから、いま看護婦不足というものがこのように非常な事態になっておるというのに際して、看護婦の志願者は最近わりあいにふえてきておる。たとえば、先日京都で私の出ました学校の府立医大で試験をやりましても、三十名の募集に対して三百名の受験者があった。あるいはまた、医師会のやっておるものも、百二、三十名の募集に対して三百五十から四百近い応募者があった。だから、非常に大量の者が入れないで、看護婦になりたくてなれない。一方看護婦を志願する者はあるが、養成機関が足りない、こういうことになっております。これは厚生省と文部省とにまたがっております。しかしながら、国の医療を運営するのに必要な人員というものは、国がその責任において養成するというかまえをとられなければならないと思うのでございますが、文部大臣のそれに対するお考えを承りたいと思います。
  118. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 看護婦の数が非常に足りないという実情については、私ども承知しておりますが、この点は厚生省と十分打ち合わせまして、文部省といたしましてはできるだけそれにお手伝いをしまして、その養成の増加につとめておる次第でございます。
  119. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 最近看護高等学校というものがぼつぼつでき始めております。それで、中学校を卒業して准看護婦になります。准看護婦になった者が、やはり高等教育を受けておらぬと何か肩身が狭いと考えますのか、自分の教養不足というものを痛感しますのか、せっかく准看護婦の資格をとっておりながら定時制の高校に行きたい、こういうふうなことを言うわけです。そうしますと、せっかく准看護婦の免状を持ちながら、深夜勤務とか、そういうふうなものは、夜間の定時制に行きます関係上できないわけです。勤務に差しつかえてくる。だから、医療機関のほうでも、そういうふうな点で、高等学校の中に看護科というものをつくって、それでもって看護婦の養成をすべきではないか。看護婦はせっかく二年も勉強するのだから、そこへもう少し一般教養の科目を勉強することによって、三年間看護科に入って勉強すれば、あえて医療機関が運営しておるところの看護学校に行かなくても、看護婦になれる。こういう制度が始まっておりますが、もっとふえるべきではないか。全国的に、いまでも大体県庁の所在地なんかには一校くらいができ始めております。しかしながら、これをもっと文部省でもって奨励する。そのためには必要な教員の補充をしなければならぬ。看護方面、医学方面のことを教える先生が要ります。それからまた、実地修練をする看護婦にも、インターンが要りますから、インターンの設備をやるとかいろいろな点で予算化も必要だと思うのでありますが、文部省として、いま国家的なというと大げさかもしれませんが、これだけ医療機関が看護婦不足で悩でおる。しかも、看護婦の勤務条件というものが、深夜勤務なんかをやらなければならぬ。こんな職業はほかにございません。したがって、それだけ多くの超過勤務をさすということができませんから、十分な人数が確保できるだけのものを、文部省としてもそれの補給に協力をするというよりも、主体となってもらいたい、こういうふうに思いますが、あなたのほうでそういうふうな具体策をお持ちになるかならないか。また、お持ちにならないとすれば、本年度じゅうくらいに早急にそういう方針を立てていただく、こういうことができないかどうか、御意向を承りたいと思います。
  120. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 高等学校の看護科につきましては、四十年ごろから急激に増加してまいりました。四十一年度におきましては五十二学校、五十五学科、それから四十二年度の予算におきましては、大体二十四学科が増加される予定でございます。そこで、これらの高等学校におきまする看護科につきましては、いままで設備に一千万円ばかり出しておりましたが、——実験、実習の設備でございますが、これに対しまして倍額以上の増額をいたしまして補助いたしますと同時に、新たに看護学校をつくります場合においては、これに対しまして——施設でございますか、これに対しましても四十二年度から補助の道を開きまして、看護科の増設につきまして今後とも努力してまいるつもりでございます。なおまた、これに対しまする教員養成の面につきましても、教員養成の特設単科をいままでの医学部等に置きまして、増設をいたしてまいる予定でございます。
  121. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 時間がないのでかけ足になりますが、さらに看護婦よりももう一つ大きな問題に助産婦の問題があります。それで、厚生大臣にお伺いいたしますが、いまの助産婦の平均年齢は一体幾らですか。
  122. 坊秀男

    ○坊国務大臣 担当局長からお答えさせます。
  123. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在ある助産婦の平均年齢を、一人一人の年齢を全部加重して平均を出すことはちょっといまできませんが、大体の年齢の分布を申し上げますと、開業助産婦におきましては、四十五歳から五十五歳の間が最高でございまして全体の三六%を占め、五十五歳から六十五歳になるものが約三〇%ほどございます。したがって、大ざっぱに申しますと、開業の助産婦については、平均年齢が五十歳をこえるということになろうと思います。これに対して病院勤務の助産婦につきましては、これは比較的若うございまして、最大の分布をしているところが三十歳から三十五歳、これが三二・五%、次に二十五歳から二十九歳までが二四・六%でございますので、過半数が二十五歳から三十五歳、したがって、平均年齢から申しますと、三十歳ちょっとくらいのところになろうかと思われます。
  124. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 あなたの数字、間違いではないですが、しかし、開業助産婦が非常に多くて、施設勤務の、病院勤務の助産婦というのは非常に少ないのです。それは一々いま言っているとなんですが、とにかく助産婦というのは、若い助産婦がほとんどなくて、五十前後の助産婦がもうほとんどだというのが今日の現状なんです。それはもうあなたのほうのなにも来ていただいて、数字、タベレをもらっておりますが、そのタベレをいま見つけてさがして読んでいるとたいへんですから、概略申し上げますと、とにかく今日助産婦というものは、若い人は助産婦にならない。そして昔つくられた助産婦だけが開業助産婦として非常にたくさんおるというふうな状態で、非常に若い助産婦が少ないという現状から、ここ十年もたちますと、いまのような状態で置きますと、助産婦というものは非常に少なくなってしまう。だから、緊急に助産婦の養成をやらなければ、これから一体日本の助産というものがどうなっていくのか。アメリカなんかは医者が取り上げるということになっておりますが、しかしながら、今日では日本は助産行為は助産婦がやるということになっております。したがって、助産婦の養成というものは、看護婦の養成以上に緊急の問題であると思いますが、これに対して厚生省ではどういう方針で今後この助産婦の補給をやっていこうとされますか。私は、この問題についても、看護婦以上に真剣な取り組みをしていただかなければならぬと思うのでございますが、大臣から御説明をお願いしたいと思います。
  125. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御指摘のとおり、助産婦の中で開業助産婦が非常に多くて、施設助産婦というものはおっしゃるとおり非常に少ない。しかも、助産婦になる志望者が若い人の中にはないということは、これは非常に考えなければならないことだ。そこで、そういった助産婦に対する待遇の問題だとか、あるいは勤務の環境だとか、そういったようなものを漸次改善していきまして、できるだけそういったような状態を直していきたい、かように考えております。
  126. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 いまは助産婦に対する勤務の状態の改善、あるいは待遇改善ということを、口では厚生大臣おっしゃっていますが、お産というものはほとんど夜なんです。初めてお産をする人は非常に長時間かかるわけなんです。その間ずっと助産婦はついているわけです。そういうふうな勤務をやらなければならぬ助産婦に対する——いまそれではそういうふうな助産婦の超過勤務あるいは深夜労働に対する報酬というものをどういうふうに厚生省では処遇しておられますか。
  127. 坊秀男

    ○坊国務大臣 夜間勤務に対しましては夜間勤務手当、それから超過勤務に対しましては超過勤務手当といったようなものを差し上げておる、こういう状態です。
  128. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 夜間勤務手当は、それでは何割つくのですか。
  129. 坊秀男

    ○坊国務大臣 夜間勤務一回百円のようでございます。
  130. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 夜間勤務一回百円というようなこと、しかも、数時間産婦についておるというふうなこと、こういうようなこと自体が、やはり助産婦になり手がないという原因なんですよ。だから、やはりそのこと自体——また、今度は、助産の国立の施設なんかが独立採算制でやっておる。しかも、そういうふうな助産というものは、ある程度料金を押えられておる。だから、それに見合うような給与ということで、独立採算制というものが今日助産婦の待遇というものをそういうふうな低いものに置き、しかも、その低いことが勢い助産婦のなり手がない、こういうようなことになっている。日本の医療というものは、先ほどの入院料の問題、あるいは看護婦の問題、みんな日本の低医療費につながっておるわけなんです。だから、保険経時そのものの赤字——おそらくことしは赤字でございますから、医療費の患者からの徴収は強化いたします。しかしながら、医療機関への収入というものは、今度の健保法の改正によって何ら変わらないのです。医療機関は、患者からもらうか、あるいは保険財政からもらうか、いずれかであって、ちっとも医療機関については——医療費は上がる、医療費は上がる、まるで医療機関が増収のあるようなイメージを与えるようなことがいわれておりますが、しかしながら、医療機関は全然収入はふえない。しかも、入院患者の食費はそのように低いものである。また、看護婦や助産婦に対するところの深夜勤務あるいは超過勤務に対するところの給与というものはそのように低い。これでは、日本の医療というものはよくなるはずがありません。だから、これは大蔵大臣、保険財政の立て直しのために薬価の徴収を始める、あるいは入院料はいままでの倍額患者から取らせることにする、あるいは初診料も百円のものを二百円にする、しかしながら、これは医療機関は増収にならないのですよ。医療機関は全然いまと同じなんです。だから、二面、医療担当者の処遇というものは、いま言ったように、数時間助産婦が産婦について介抱しておっても、百円の超過勤務がつくだけだ、こういうようなことでは、医療機関の人員というものは十分な確保ができないということが当然おわかりになると思うのです。時間がありませんから、健康保険法の改正のときに、私はこれをもう一度じっくり大蔵大臣に来ていただいて、あなたと議論したいと思いますから、それまでひとつ十分勉強しておいてもらいたいと思うのです。きょうのように漫然としたお答えでなく、やっぱりまじめな姿勢でもって日本の医療をよくするという立場に立った議論をしていただくようにお願いいたしまして、もう時間がまいりましたから、これで質問を打ち切ります。
  131. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕
  132. 石野久男

    石野委員 春闘に関連して、石炭政策の問題を一、二お尋ねしたいと思います。  石炭政策については、もうすでに一千億の旧債たな上げを中心にした予算案も提出されておって、石炭対策特別会計はすでに五百二十億の予算を出しておるのですが、石炭産業救済の名のもとに、石炭産業資本家に非常に手厚いこうした予算措置をしておるわりあいに、労働者に対する対策というものは非常に手薄いように感じられるのです。  特に、一つ二つお尋ねしたいのですが、その第一点は、炭鉱特別年金制度についてです。年金小委員会は去る三月二十九日の小委員会で、大体この炭鉱特別年金制度の問題についての考え方を四月十日までに出すということを約束して、三者共闘のスト回避を一応やっているわけですが、この際、ひとつ通産大臣に、この四月十日に大体答案が出るように指導できるかどうか、大臣一つの確信のあるところをお聞かせ願いたいと思います。
  133. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お説のとおり、いま特別年金小委員会でこの問題を審議しておりまして、四月の中旬までには答申、結論を出したいというようになっておりますが、目下いろいろ問題もありますので、はたして四月中旬までに結論が出るかどうか、私のほうでは結論を早く出してもらいたいということを、念願いたしておるのであります。
  134. 石野久男

    石野委員 これは大臣ももうすでに御承知のように、先月の十八日に三者共闘では一応ストを決意して実行に移ろうとしたときに、中立委員のほうから、とにかく四月十日ぐらいまでにはというようなことで、そのストを中止するということを三者共闘も了解したわけです。その後、三月二十九日に、あらためて小委員会は、十日ぐらいまでに出すということの約束をしておるわけでから、やはり労働者のほうも、春闘のかまえの中でそういう中立委員の発言を非常に尊重して、できるだけこのスト決行を回避することに協力してきたわけです。だから、だまし討ちをするようなことをしてもらっては困るのです。ただ努力しておるだけでなしに、この際、労働者の側ではそれを信じておるのだから、十日までに、しりをひっぱたいてでもいいから、小委員会の結論を出させるように、やはりそういう当局側の決意をひとつこの際はっきりしておいてもらいたいと思う。もう一度ひとつ……。
  135. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 御存じのとおり、この年金の問題は主管は厚生省なのでありまして、私らのほうといたしましてはこの問題を早く解決してもらいたいという念願を持っておりますが、厚生省との関係もいろいろありますので、はたして十日までに結論が出るかどうか、大体が厚生省が主管になっておりますから、したがいまして、私のほうではっきり十日までに出すという、それだけの断言は私ではできないのであります。できるだけ厚生省とも折衝して、早く結論を出してもらうように努力したい、こう考えております。
  136. 石野久男

    石野委員 この問題は確かに厚生省の主管内容になっておる。しかし、事実上は石炭局長が中に入っていろいろなあっせんをしておるということなんだから、この際ひとつ厚生大臣にも——いま通産大臣からの積極的な努力意思表示があったのですが、主管官庁として、厚生大臣はそれに努力する決意のほどを明確にひとつ示しておいていただきたい。
  137. 坊秀男

    ○坊国務大臣 厚生省といたしましても、でき得る限り積極的にこれを実現するという方向に努力をいたしたいと思います。
  138. 石野久男

    石野委員 ごまかしのないようにひとつお願いします。  それから、この委員会で問題になっておるこの立法内容の問題について経営者のほうから出された問題の中に、坑外夫は適用しないということが出ております。この坑外夫を適用しないという問題については、これは経営者の側からすれば、坑内夫だけの労働者を確保すればいいんだという趣旨からきておるのかもしれない。この立法の内容は、雇用の安定確保をはかるためにされるということだから、ただ坑内夫さえ確保すればいい、こういう意味だとすれば、これは非常に片手落ちだと思うのです。坑内夫と坑外夫とを差別する、こういう立法措置というのは、必ずこれは労使紛糾の種をここに残しておくことになるだろうと思う。同じ石炭産業の中で、坑内夫と坑外夫を特に特別年金制度の中で差別する理由はどこにあるのか。また、そういうことを残しておいたら、これは必ず労使紛糾の種を残すことになるとわれわれは考えておるのだけれども、当局にはそういうことについては別に考えもしないのかどうか。そのような点について、これは厚生大臣あるいはまた通産大臣、どちらでもいいですが、御答弁願いたい。
  139. 坊秀男

    ○坊国務大臣 有沢委員会の答申が、坑外夫には適用しない——それから私の就任前でございますけれども、去年の閣議でも坑内夫ということになっておるやに承っておりますが、目下のところは、そういったような方針でまいっております。  なお、これは私はちょっと聞いたことでございますけれども、職種における坑内夫、坑外夫と、年金における坑内夫、坑外夫というものが、必ずしも一致していない。そこで、今度坑内夫に適用されるその坑内夫というのは、職種の坑内夫より概念が少し広いんじゃないか、かようなことを承っておりますが、詳細のことは政府委員からお答えさせます。
  140. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 坑外夫にも年金制度をやってくれという御希望は、私もよく聞いております。また、事情を聞いてみるともっともな点もあると思うのでありますが、その由はいまの年金の小委員会のほうにも通じてありますので、結局はその小委員会でどういうように結論するかというところにあると思いますが、私のほうでは、皆さんの御希望の点はよく通じてあると存じておる次第です。
  141. 石野久男

    石野委員 これはひとつ政府のほうで、労働者の側としてはそういう差別はおそらく受けるはずはないのだし、必ず問題を残すことですから、いま両大臣からお話しがあったように、積極的に努力して、差別のないようにしてもらいたいと思うのです。  もう一つ問題になるのは、経営者側から出ておる今度の年金の原資になるそのネットを、トン当たり三十円とするという案が出ておるようです。一千億円の債務に対するたな上げ処置をして、そして予算の中で五百二十一億円という特別会計の処置をしておるという政府が、そうしてまたそれを受けておる経営者が、その年金を出すにあたっての原資、トン当たり三十円ということになりますと、これは五千万トン生産で計算したら、十五億円です。十五億円というと、五百億円の中でもたった三%にすぎない。これでは、経営者に対して国が協力していることを、経営者としてはあたりまえのことだ、何にも恩恵を感じていない、ただおれのほうは原資を出すんだから三%でいいじゃないかというようなことで、これは同じ石炭産業に対する国の施策としてのやり方としては、全然片手落ちだと思うのです。私は、このトン当たり三十円というのは、あまりにも経営者の利己本位の、利益採算だけを考え考え方で、あまりにも少ない、こう考える。労働者の側では、こんなものではとても承知できないわけです。これはもっと、少なくともトン当たり百円ぐらいは出すべきだ、一割ぐらいのものは出したっていいじゃないか、国が経営者に出している一割ぐらいのものは年金の原資として出してもいいじゃないか、こういうように私は考えるのだが、特にこれは通産省あたりはそういう問題についてどういうように考えるか、ひとつ御答弁願いたい。
  142. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 なるほどお説のとおり、三十円としますと十五億円ですからして、五百二十億円の全体から見るとごくわずかのように見えますが、しかし、大体石炭産業の経理をよくするということが根本で、したがって、この三十円出すということでも、これは十五億円ですが、これはやはり相当な金額になるので、ほかのほうにも相当金を支出するわけでありますからして、したがいまして、石炭産業としては経営を合理化していく、経営の改善をはかるということ、これによって経営者も経常ができるし、また労務者も喜んで働けるというところをねらっておるのでありますからして、いま三十円を、これをもう少し金額を上げるということについては、いろいろ問題があるかと思います。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、この問題も結局年金の小委員会の結論を待たなければならぬというのでありまして、これをいまお説のとおり百円に上げるというようなことは、とうてい困難ではないか、こういうふうに考えております。
  143. 石野久男

    石野委員 大臣がいまここで値段をどういうふうにきめろというようなことで、トン当たり幾らにしろということの答弁は、すぐにはできないだろうと思うのです。小委員会でおそらく論議すべき問題だと思いますが、しかし、いま経営者側から出ておるトン当たり三十円という申し出というものは、あまりにも経営者本位であり過ぎる。こういうことについては、これは石炭産業を安定化させていき、発展させていくという産業政策の上からいきまして、考えなければならぬ問題だと私は思うのです。そういう点で私は申し上げているのです。ただ、いまここで百円にするか、あるいは七十円にするかということの問題はともかくとして、いまの三十円という問題については、これはやはりもう一度考えさせなければいけないという私の意見について、大臣はどういうふうにお考えになっているか、もう一度所見を聞かしていただきたい。
  144. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、石炭産業の経営自体の改善ということをやることによって、経営者も経営を持続ができるし、また、炭鉱労務者の人もまた慰んで働けるという立場からすべてを判断しなければならぬと、こう考えておるのであって、したがって、いまの原資の問題も一トン三十円を値上げすることによって、他のまたなすべき、いろいろの出すべき経費を、それをまた削減するというようなことになってくると、またそれに支障を来たすということになりますから、全体を勘案して、私はこの問題を解決すべきじゃないかということを考えております。まあ三十円が非常に少ないということの皆さんの、年金の小委員会でそういう御意見になれば、私はまたそれによって決定されてもいいと、考えておるのでありますが、まあいま申し上げましたとおり、全体の経営の改善という立場からこの問題を解決すべきじゃないかと、こう考えておる次第であります。
  145. 石野久男

    石野委員 管理炭鉱について、労働者賃金問題でございますが、この問題はどうも石炭局の指導なのかあるいはどうなのかわかりませんが、大体賃金のアップについては三%というところで天井をきめておるようでございますね。そのために、労働者はどんなに物価が上がろうとどうしようと、ここで働いておる労働者については、アップ三%というところでワクがはめられておるという不合理があるようです。したがって、たとえば失対などでボーナスなどが出てまいります場合に、期末手当で、失対のほうで四万円ぐらい取れるときに、管理炭鉱の場合は二万五千円ぐらいしか取れないというきわめて不合理な問題が出ておるのですが、こういう問題については、石炭局にどういうふうに指導させておるのか、通産大臣、ひとつ意見を聞かしてもらいたい。
  146. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 管理炭鉱ということは、まあ再建する炭鉱のことだと思いますが、賃金の問題については、あくまで労使で話し合ってもらうというたてまえをとっておるのであって、決して政府側から三%というようなことを指令したことはありません。あくまで労使で話し合って、その会社の経営がうまくやっていけるようにひとつ定めてもらいたい、こう存じておる次第であります。
  147. 石野久男

    石野委員 重ねて聞きますが、これは従来の例から見ると、大体その三%が天井なんですよね。いま大臣から聞くと、その三%は別にワクをはめておるわけでも何でもないというのだから、労使の話し合いによっては、それは天井を突き破ってもいいんだということのようです。しかし、実際には、大体そこらがワクなんだからということで、常に労働者は押えられているわけですね。そういうことは別に指示してないわけですね。
  148. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 そういうことは一切指示しておりません。
  149. 石野久男

    石野委員 もう一つ聞きたいのですが、この管理炭鉱に融資をするときの条件の中に、操業日数の確保が強要されておるようでございます。そのために、労働者がいろいろ問題があって、たとえばストライキを組もうとする場合に、操業日数を確保しなければ管理炭鉱のいろいろなむずかしい問題が出てきて、労働者のストライキ自体ができない、こういう実態が強要されているようでございます。これだとすると、憲法上保障された労働者のストライキ権などが完全に押えつけられて、むしろ憲法違反という問題も出てくるんじゃないかというふうに考えられる事態があちこちにあるようです。実質上その操業日数確保のために労働者のストライキを押えるようにさせるという指導などやっているのですか。
  150. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 賃上げとか労働の条件などは一切労使できめてもらうという方針でありまして、私のほうから操業日数は何日というようなことは一切指令しておりません。
  151. 石野久男

    石野委員 管理炭鉱では操業日数を確保するということが絶対的な命令だというふうにいわれているようですが、そうでなければけっこうです。  一酸化炭素の中毒症については、さきに昨年の六月参議院の社労で立法化のことを決議しておりました。これについて、これは労働省と厚生省にお聞きしますが、法的救済措置についていまどういうような指導をなさっており、また、どういうふうにそれが進んでおるか、ひとつ御説明願いたい。
  152. 早川崇

    早川国務大臣 昨年の参議院の御決議に従いまして、現在労災保険審議会におきまして、CO中毒者に対する特別立法を検討中でございます。その内容につきましては、目下審議中でございまするので、いずれ結論が出まして御審議対象にしていただきたいと存じます。石野委員 昨年の参議院の決議では、今後一カ年以内に立法措置を講ずるということをきめているわけです。現在の見通しでは、この時点から一年といいますと、もうあと一カ月か二カ月しかありませんが、その間に立法化を進めるということの段取りが大体進んでおりますか。
  153. 早川崇

    早川国務大臣 今国会に提案するつもりでおります。
  154. 石野久男

    石野委員 この立法措置をするにあたって、その法の対象として石炭産業における公害といいますか、その一酸化炭素の被害だけを対象にするか、その他のものを一緒にするかということで、やはり対象をどう選ぶかということでずいぶんもめておるようでございます。しかし、現在一酸化炭素の中毒患者が八百五十名もいて、そしてその中にはいまだにまだ流動物を流し込んでいかなければならぬ患者がたくさんおる。三池やあるいはその他の夕張あたりの患者の中にたくさんおるわけです。これは一日も早くこれに対する立法措置を講じて、その対策をしなければならないと思うのです。昨年の参議院の社労の決議の線にのっとっての立法措置というのは、それは、ほかの一酸化炭素の被害者に対する処置も必要でございましょうけれども、この際としては、やはり国の石炭産業政策との関係も考え、考慮して、石炭産業における被害者に対する処置、そういうものを法の対象とする立法化が進められるべきでないか、こういうように考えておるのですが、当局はどういうふうにお考えですか。
  155. 早川崇

    早川国務大臣 CO災害は石炭に限らない産業にも起こり得ますけれども、審議会審議を仄聞するに、石炭事業に限ってという有力な意見が出ておることだけは御報告しておきます。
  156. 石野久男

    石野委員 これは意見が出ているというだけじゃなしに、この際、私は、その事態の緊急性にかんがみても、その他のものを含めると必ずまたおくれてしまいますから、やはりその意見、大多数の意見に沿って当局としては指導すべきだというふうに思うわけです。これはまたあとでひとつ所見を聞かしていただきます。  それから、立法措置について、その中で問題になる点が一、二あるようです。特に解雇制限処置をはずすということが問題になっておるようでございますね、この一酸化炭素に対する立法化の中で。この解雇制限の処置をはずすというようなことをされると困るので、こういうことをしないようにしてもらいたいと私は思っておる。これはすでに御承知だと思いますけれども、昨年の十月には、資本家の側からしますと、労災補償の打ち切りの通告をしてきておるわけですよ。それからまた、本年一月には大牟田の労災病院では休職の停止、それからお医者さんの総引き揚げということをやられておるわけです。こういう状態の中で解雇制限をはずしてしまうわ、おまえらかってにやりなさいというようなことをやられたら、これはどうにもならぬということになってくる。ですから、資本の側ではすでにそういうような形でやっているし、また昨年の十一月には、三井鉱山でこれに対する実質的に団体交渉も拒否してきておるという状態ですから、全く被害者はもうほうりっぱなしになっちゃっておるのが実情です。それを救済しなければならないこの立法の中で、解雇制限を排除するというようなことをやられては取りつく島もなくなってしまう。だから、そういう意味で解雇制限を排除するということはやめるべきだというように私は考えるのだが、労働大臣はどういうふうにお考えですか。
  157. 早川崇

    早川国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でございますので、目下審議会におきまして検討中でございます。その結論を待ちまして御審議を賜わりたいと思っております。
  158. 石野久男

    石野委員 私は、これは審議会にかかっておることですから、審議会で論議するのは、もちろんその内容だと思っておりますけれども、しかし、この際私のお尋ねしておるのは、労働省として、いまこういう事情の中で、一酸化炭素被害に対する立法化をはかっておるときに、やはり一つの方針が持たれていなければならぬと思うのですよ。審議会で論ぜられる問題は、あくまでも政府に対する参考意見だろうと思うのです。だから、政府はもっと確固とした方針を持っておるべきだと私は思います。そういう意味で、これはぜひひとつ解雇制限をはずすということはやめなければいかぬ、こう思う。その点もう一度、労働大臣所見を聞かしてもらいたい。
  159. 早川崇

    早川国務大臣 お答えします。  CO立法は、CO中毒にかかる可能性のある、また、かかった労働者に対する福祉の向上のための立法でありますから、そういう趣旨で労働省は対処いたしてまいりたいと思うわけであります。ただ、解雇制限の問題は、経営権とかいろいろな問題がからみ合っておりますから、審議会で目下重要問題として検討中だ、こういうことよりお答えできないわけであります。
  160. 石野久男

    石野委員 経営権との問題があり、経営者側の意向があるということは、それはよくわかります。だけれども、被害を受けて罹災した者は、すでに生活権まで奪われているというような実情ですね。そういうときに、まだ立法は十分に成り立たないわ、しかも経営者との雇用の関係は、もうおれは知らぬぞというような形でほうりっぱなされたということになったら、取りつく島がないと思うのです。やはり、この解除制限の問題は、経営者側の意向としては、出費をなるべく少なくしようとするのは当然のことだけれども、労働者の側、被災者の側からすれば、政府審議会まかせでございますというようなことを言われたのじゃ立つ瀬がなくなってしまう。これはやはり解雇制限を排除するという問題は、政府としてはあくまでもそうさせないように指導すべきだと思うのです。それでなければ、政府考え方は全く経営者側の考え方と同じになっちゃって、救済の考え方なんか何にもないということと同じだと思うのです。これはひとつ、もう一度労働大臣意見を聞きたい。と同時に、やはりこういう被災患者に対しては、前収入の確保ということはどうしても必要だと思うのです。そういう点もあわせて、政府としてはひとつの考え方を明確に示すべきだと思いまするので、所見を承りたい。
  161. 早川崇

    早川国務大臣 立法問題となると、なかなか審議会で論議がされておるわけですが、実際問題として、三池その他のCO中毒患者に対しては会社側は解雇してないわけであります。また、労働省としてできることは、労災保険の関係とか、あるいはいろいろな手当とか、そういうものはもちろん、CO中毒者に対して特別の援護措置を考慮している。また審議会の検討でもやっておるわけでありまして、その解雇制限の問題はまだ検討中だと言う以外に答えられません。しかし、実際は会社は解雇はいたしておりません。
  162. 石野久男

    石野委員 いま一つ大臣労働者にとっては生活保障のための前収保障というものがあるのです。その問題についても、経営者の側からすれば、そういうことはいやだというのはあたりまえなんだ。それではいけない。やはり政府としては、前収入に対する保障をある時点で明確に指導し、また、それを保障するような態度を示してもらわなければ困る。その点について、大臣の御所見をひとつ……。
  163. 早川崇

    早川国務大臣 この問題も審議会で検討中でありますし、労働省としては、炭鉱離職者、CO患者を含めまして、非常に援護措置は御承知のように労働者の福祉の向上の立場でやっておるわけでありまするから、審議会の結果を待って労働省としてもその結論を検討して、勤労者福祉向上に万遺憾なきように期したい、こういうお答えをいたしておきます。
  164. 石野久男

    石野委員 これは早川労働大臣にひとつお願いしたいのですが、審議会はもちろんいろいろの点を勘案して論議されると思うのです。だけれども、実際に被災患者というのは生活そのものが、もうどうにもこうにもならぬ状態になっているわけです、実際問題として自分は働けないのですから、そういうときに、前収保障というものがなかったら、だれがめんどうを見てやるか、おそらくそれはこの法案ができましても、そこで出てくる保障などというものはごくわずかなものだと思います。だから、そういう意味で、前収保障に対する何がしかの手がかり、足がかりがなかったら、生活に対する安定感というものは出てこないと思うのです。労働省としてはそれについて、積極的に経営者に対する指導なり指示なりすべきだと私は思う。そういう審議会にまかしているのだからというような無責任な答弁では、ちょっと私はわかりましたとは言えない。もう一度大臣の御答弁を伺いたい。
  165. 早川崇

    早川国務大臣 具体的な結論はまかしておるわけでありまして、参議院の委員会の御決議を尊重して、CO患者に対してあたたかい労働福祉政策をやろうという気持ちは、強く審議会委員には伝わっておるわけであります。
  166. 石野久男

    石野委員 この際、炭鉱離職者の問題ですが、離職者の見通しは、本年度どのくらい離職する見通しでしょうか。そしてまた、それに対してどういうような援護措置をしようとしているか。その点、厚生省と両方に聞かしてもらいたい。
  167. 早川崇

    早川国務大臣 四十二年度は一万一千名であります。これに対する援護あるいは救済措置といたしましては、従来の炭鉱離職者と同様、就職促進手当あるいはその他の移住資金等、あらゆる手厚い援護をやることになっております。  なお、今国会にまた新たに提案するのは、自立営業をやろうという人に対しましては自立営業資金を貸し付ける、しかもこれは非常に大蔵省にも抵抗があったのですけれども、御了承いただきまして、その自営資金に対しては債務保証を雇用促進事業団でやるという手厚い援護の法律を今国会に御提案する、こういうことになっております。
  168. 石野久男

    石野委員 この際、COとの関係はこれでやめます。  科学技術の問題についてひとつお聞きしたい。  二階堂長官にお尋ねしますが、科学技術振興のための基本法をつくるという構想が昨年からずっとありますが、いまそれはどういうふうになっておるのか。そしてまた、ことしその問題についてどういうような処置をなさるかひとつ所見を聞かしていただきたい。
  169. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 石野さんも御承知のとおり、この科学技術基本法の制定の問題につきましては、もうずいぶん長い間の問題であるようでありまして、三十七年以来、科学技術会議の第一号答申も出ておりますし、それを受けて基本法を策定しようということで、文部省との間にもいろいろ調整を進めてまいっております。さらにまた、四十年度でありましたか、二回目の答申が出ておりまして、この線に沿って科学技術の基本法というものを制定すべくいろいろ検討を加えておりますが、できるだけ早くこの調整を必要とするところもありますので、と申しますのは、人文科学と自然科学との問題がいろいろ議論があるようでございますので、これらの問題について検討を至急にいたしまして、できる限り今国会に基本法を提出いたしたい、こういう考えでおります。
  170. 石野久男

    石野委員 自然科学と人文科学との間の問題で、政府部内にいわゆるなわ張り争いがあって、結局、基本法の提出ができないというような実情であろうと思うのですが、この基本法を出すにあたっては、それらの問題をどこかで調整しなければならぬだろうと思います。大体その調整が政府部内ではできておるのですか。
  171. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 現在、文部省と科学技術庁との間では大体調整ができておるわけでございます。先ほど申し上げました科学技術基本法の中に人文に関する範囲をどこまで取り入れるかということにつきましては、文部省との間においては、答申の意思を尊重いたしまして大体解決ができておる。ただ、率直に申しまして、党との間に多少いろいろなむずかしい議論があることは御承知のとおりでございまして、私も専門的な、哲学的ないろいろな問題についての研究も不十分でございますけれども、しかし、そういう関係につきましては、文部省との間においては了解ができておる、こういうことでございます。
  172. 石野久男

    石野委員 文部大臣、それはよろしいのですか。
  173. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 まあ文部省関係でも、いわゆる人文科学の面についていろいろ論議がございますけれども、科学技術庁長官がおっしゃいましたように、政府部内においては、その取り扱いの方法によりまして何とか解決点を見出す方法はあるのではなかろうかと存じております。
  174. 石野久男

    石野委員 重ねて聞きますが、この科学技術振興のための基本法というのは、今国会には出せるところまでもう段取りは——まだできていないということですか、党との関係で。
  175. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 出すべく鋭意検討を急がしておる、急いでおる、こういうことでございます。
  176. 石野久男

    石野委員 宇宙開発の問題に関連して長官に聞きますが、四十五年までに実用衛星を打ち上げる目標を持っているんだということはしばしば言われているわけですが、その段取りといいますか、コースは、大体順調に進んでおるのですか。
  177. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 宇宙開発につきましては、御承知のとおり科学技術庁といたしましては、通信衛星、実用衛生を四十五年度までには打ち上げる、こういう計画政府といたしましては明確にいたしておるわけであります。その基礎的な研究とか、あるいは宇宙空間の物理研究等につきましては、御承知のとおり東京大学の研究所で、今日まで十年間にわたって研究をいたしております。これらの研究を基礎といたしまして、打ち上げの制御の問題とか、あるいは燃料の開発の問題等について、まだ研究開発をいたさなければならないところもございますので、そういうことをばここ二年くらい行ないまして、四十五年度を目途として実用衛星を打ち上げる、こういう計画を明確にいたして、その方針に向かって努力をいたしておる最中でございます。
  178. 石野久男

    石野委員 宇宙開発については、まあ実用衛星の打ち上げのためのいろいろな、政府部内における各省間にやはり関連する部門が多いようでございます。特に文部、科学技術庁、それから郵政等の管轄がいろいろばらばらにあって、それを一元化することがいま非常に大事だというふうにいわれておる。佐藤総理から、その一元化の問題について、先般強い要請がなされたやに聞いておりますけれども、その宇宙開発に関する一元化の問題について、大体政府では構想をまとめられておるのですか。それをいまどういうふうにやられておるかということを、この際ひとつ説明してもらいたい。
  179. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 御承知のとおり、最近この宇宙開発は、世界各国真剣に取り組んでおりまして、しかもその規模が膨大になってきておるということは御承知のとおりであります。わが国におきましても、先ほど申し上げまするように、東大におきましても宇宙空間のいろんな現象を科学的に、物理的に研究する開発が進められてきておる。私は、東大のこの研究はそれなりに非常な成果と平和利用の面において貢献をいたしておるものだと考えております。また先ほど申し上げまするように、科学技術庁といたしましても四十五年度を目途として科学衛星、通信衛星を打ち上げる、こういうことで進んでおりまするが、また気象関係の研究も気象庁で行なっておる。これは一部は東大の施設を使ってやっておるところもありまするし、また今後は私どもと協力して、施設を使って宇宙間の気象観測、——非常な貢献を今日日本の宇宙開発もやっておりまするが、そういう研究も行なっておる。あるいはまた測地衛星、これは運輸省等でもやろうという計画もあります。したがいまして、わが国における宇宙開発の規模、構想というものも、日々大きな規模になってまいってきておることは御承知のとおりでございます。こういう大きな大型プロジェクトになりますと、やはり基礎研究をやる大学その他でやっている部門はそれぞれの目的がございますので、基礎研究等はやってもらわなければなりませんが、大きな開発の規模になりますと、どこかでやはり一元的にこの機構をつくって、そして開発実験を行なうということが国民の血税を有効に効果的に利用するということにもなりますので、そういう方向でぜひひとつこの機構等については関係各省において検討せよ——私もそう考えておりますが、総理からもそういう御指示がございましたので、その機構等については、どういうふうに持っていくかということについては、いろいろな、アメリカ等で行なわれておりまするNASAの機構等も参考になりましょうし、あるいはまた実際開発実験をやる機構は特殊法人にしたらよかろうというような構想もございます、あるいはまた宇宙開発省というようなものをつくって、そこで開発をやったらよかろうというような考えもございますので、これらにつきましては、関係各省等、あるいは民間の協力等も得まして、真剣にそういう構想のうち、どういう構想がわが国の自主的開発に一番適応しておるかということ等も考えて、できるだけそういう方向で検討を、できる限り早く、できるなら四十二年度を目途として進めてまいりたい、こういう考えでおります。
  180. 石野久男

    石野委員 長官としては、まだその一元化についての構想はまとまっていないのですか。
  181. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 私は、方向としては、やはり先ほど申し上げた一元的な機構をつくるべきだという方向は持っております。持っておりますが、その機構の内容をどういう形にするかということについては、先ほど申し上げましたごとく、もう少し慎重に検討する必要があろうと思いまして、まあ五月ごろからでも、国会がひまになりましたならば、ひとつ関係各省や私のところで真剣に検討をいたしてみたいと考えております。
  182. 石野久男

    石野委員 一元化の問題についてはそうですが、開発の問題に関連して名地でいろいろな問題がやはり起きておりますが、特に種子島でロケットの打ち上げをやろうとしてこれができなかったですね。長官はあすこへ行っていろいろ現地との折衝もされたけれども、結局できなかったようです。こういうような問題を含んで一元化の問題と、種子島のあすこで漁民の反対する実情等の関連性を、私もあすこへ行って見てきておりますので、真剣に考えなければいかぬのではないか。内之浦でやはり一つのロケットを発射します。それから別にまた米軍の海上基地がある。それから今度また種子島でというようなことで、宮崎の漁民はほんとうに自分の漁場はほとんどそういうもので塗りつぶされているのが実情ですね。ああいうような状態になっておれば、現地の漁民が種子島の新しい試射場に対して、やはり発射に反対するというようなことが出てくるのはあたりまえだと私は思うのですよ。長官があすこへ行って、長官は地元のほうでもありますし、いろいろごらんになってきておられますが、こういう開発の問題と、一元化の問題と、それから各地の事情とかね合わせてごらんになって、特にあの種子島あたりで発射が困難になってきておる実情をどういうように見ておるか。また、あの種子島の発射場は、それではいつごろ試射できるのか。そういう見通しはどうなのか。この際ひとつ聞かしてもらいたい。
  183. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 種子島における試射が延期せざるを得なくなったということにつきましては、私といたしましては非常に遺憾に考えておるわけでございますけれども、しかしながら、御承知のとおり、この大きな宇宙開発をやらなければならないという国の政策というものは、私はぜひともこれは進めていくべきものだと考えております。しかしながら、こういう実験をいたしまする場合には、何と申しましても地元民の協力というものが私は何より大事だと思っております。特に海上に、実験いたしましたものが落下してくる、そうすると、その日、あるいは天気が悪いとその翌日等にその実験が繰り延べになる、したがって、漁民はその漁場において操業はできない、こういう実情を私も十分承知をいたしております。また東大の実験につきましても、大体実験の計画というものが今日まで、長いときで四十日間ぐらいというものが予定されておったわけですけれども、天気等の関係で大体百日程度は漁民の操業ができない。したがって、漁民が受ける影響というものも大きいものがある、こういう漁民からの訴えでありますし、私も、そのとおりであろう、こういうことがよくわかったわけでございますが、そういうこと等もございますので、何としてもこの打ち上げる実験をいたします際には漁民の協力がなければならない。協力を求めるためには、政府といたしましても、これは科学技術庁がやる、文部省がやる、あるいはその他の機関がいろいろな実験をやる。でありますから、政府全体がその漁民の、簡単に言うと漁業の被害をできるだけ少なくする。そのためには、打ち上げる基数とか方向とか時期とかいうものもちゃんと話をして、そのきめたワク内においてこれを実施していく。あるいは打ち上げる方向等もそうでありますが、そうしてこの漁民に与える被害を極力少なくしてやるということが第一であると思っております。そうして漁民に信頼を高めていく。それと同時に、やはり政府全体がそれらの問題について責任を持って、ある程度の漁業振興の方策をとる、あるいは新しい漁場をさがしてやるとか、あるいは実際に実害があった場合、それに対して政府が責任持って謝礼金というか報償費というか、いろいろな形でその損害の補償をしてやるというようなことも明確にしていかなければいけないのじゃないか、私はかように考えまして、政府の部内におきましても、種子島周辺の漁業対策に関する協議会というものをつくりまして——官房、あるいは総理府、あるいは私のところ、文部省、あるいは運輸省、郵政省、水産庁、全部入れまして協議会をつくって、いま申し上げましたような対策等について真剣に考慮をいたしておるという段階でございます。  したがいまして、機構の問題も、やはり政府一つの窓口になって、責任を持って政府のやる方針も明確にする、同時に地元民、あるいは漁民の協力を得る、そのための施策、そういう明確な一つの対策を打ち出して、そうして協力を求めていくということが必要ではないかと考えておりますので、そういった意味からも、私は、どこかでやはりこれを一元的にまとめて実験をするならするという機関をつくるべきではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、昭和四十一年度の年度内における、種子島の実験は、宮崎側の漁民、漁連——鹿児島県のほうは漁連も漁民も納得をしてくれました。もとより鹿児島のほうからは九カ条の項目にわたる漁業振興対策、協力に必要な条件を持ってまいりまして、それを全部私のほうで話をきめまして、私と漁連会長との間において、異例な措置ではありましたが、調印をいたしまして了解がついたわけであります。ところが、宮崎県のほうでは、先ほど申されましたとおり、いろいろ漁場に与える被害が大きいということで、やはり何としても納得を求めることができなかったので、延期せざるを得なくなったわけであります。しかしながら、先ほど申し上げましたような機構を通じ、あるいは漁民の納得のいくような交渉を今後も積極的に続けまして、そうして、できれば六月以降、七月ころから——最も漁期に差しさわりのない時期が八月、九月といわれておりますからして、そういう時期には、ぜひとも打ち上げて実験を進めてまいりたい、こういう考えでおります。
  184. 石野久男

    石野委員 いま長官から言われたように、漁期にあまり関係のないときにはぜひ打ち上げさしてもらいたいというような御意向がありましたが、それをやる前に、やはり漁民の理解と協力がなければだめだと思うのです。しかし、四十五年に実用衛星を打ち上げようという一つの大きい目標がありますから、いやでもおうでも、あの射場を何とか活用したいというのが本意だろうと思います。そうすると、漁民との間の折衝が十分にいかないままに、漁閑期であるからやらしてもらいたいというようなことをやれば、必ずここで係争が起きると思うのです。その場合、漁民が反対するからというので、政府が力をもって漁民を排除するというようなことがあってはならないと私は思います。そういうことは長官はさせないでしょうね。これはひとつはっきり約束しておいてもらわなければいかぬと思う。
  185. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 私が今日まで宮崎側の漁連とか漁民の方々と折衝を続けてまいりましたのもそこにあるわけであります。役所の側も、十九回にわたって役所の人も派遣をいたしておりますし、懇談の機会もつくっておりますし、私自身も出かけてまいりまして、二百数十名の漁民とざっくばらんにいろいろな話をいたしてまいっております。国策だからといって、何が何でも力づくでこういう問題を解決することは、私はよろしくないと思っております。あくまでも地元民の方々、あるいは漁民の方々の協力を得ていかなければならぬ、こういうふうに基本的に私は考えております。
  186. 石野久男

    石野委員 種子局の漁場の問題については、漁民の側にいろいろな問題があるのじゃなくて、むしろああいう施設をして、内之浦だとか、あるいは種子島だとか、あるいは米軍の演習場だとかいうように、海面全体をおおってしまって、ほとんど漁場の余地のないようにしておる事態が問題なのです。だから、そういう点もありますから、国の政策だからというので力による強行をされないように、特に私は希望しておきたいと思うのです。  それから、この際また長官にお尋ねしますが、科学技術の振興について特に自主開発という問題がわれわれにとって非常に大事だと思うのです。この自主開発という問題は、最近、たとえば原子力委員会の兼重部会でも、原子力の自主開発の問題についての長期計画が出たりしております。しかし、特にこの原子力の開発の問題についての自主開発ということは、口では自主開発と言うけれども、実際には、自主開発の内容というのは、外国の炉を全部輸入しておいて、それに対して燃料は全部また外国の濃縮ウランを入れるのだ、ただ日本では工場をつくり、発電所をつくるというだけが自主開発だというふうに読み取れるのじゃないかと思われるような心配が私どもにはあるわけですね。こういうことでは実は自主開発にならない。たとえば昭和六十年に四千万キロワットの原子力発電をするのだ、しかし、その四千万キロの原子力発電が行なわれる炉は何かというと、みんなアメリカの軽水炉だ、こういうことになってまいります。そうすれば、それに対する燃料はほとんどアメリカの濃縮ウランを買わなければいけないということになる。こういうようなことでは、とても自主開発ではなくて、むしろアメリカさんの炉を買い、アメリカの燃料を買い、それで日本が国家的にいろいろな協力をして電力産業を育成する、こういうようなことになってきたのでは、ほんとう意味の自主開発にならないのじゃないかと思うのです。長官はよく自主開発ということを言われますけれども、長官の言う自主開発というのはどういうことを意味しているのか、ほんとう日本の自力で開発するということへの熱意を込めた自主開発なのかどうか、この際ひとつその自主開発の考え方を聞かしてもらいたい。
  187. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 自主開発というのは、ことばにあるとおり、あくまでも自分の力で自分の技術で開発をする、こういうことでございます。おっしゃるとおり、日本の原子力エネルギーの開発は、東海村に原子力研究所等を設置いたしましてからもう十年余りになるわけでござますが、これは世界各国がいま非常に基礎研究、開発研究をやっておるさなかでございまして、日本も十年になりまして、私は相当開発が進んできておると思っております。そこで、電力の需給関係から考えてみましても、いま東海村で開発しておる電力は十六万五、六千キロではございますけれども、その他現在、東電であるとか、あるいは関西電力であるとか、あるいは日本原子力発電所であるとかいうところが開発の設備を急いでおります。これができ上がりますと大体百三十万キロワットになります。原子力委員会で作成いたしました長期計画によりましても、昭和五十年度には大体六百万キロワットの原子力発電を考えておる、六十年度になりますというと飛躍的にこれが伸びまして、約三千万キロから四千万キロの発電を目途としておるわけであります。したがって、先ほどおっしゃいましたとおり、第一に問題になるのは燃料であります。わが国におきましても、この燃料公社等を通じて、わが国のウラン鉱の試掘やあるいは開発を行なっておりますが、何と申しましても現在はアメリカその他の燃料に依存しなければならぬということでございますので、今後はそういう燃料の関係から考えましても、あるいは電力の需給関係の将来から考えましても、やはりあくまでももっと積極的な自主開発をやらなければならぬということで、今回はこの国会に提案をいたすべく準備をいたしておりますが、新しい動力炉を開発するための法人をつくるということで、この法人を中心といたしまして、燃料対策につきましても、民間は民間でそれぞれ燃料の確保につきましては真剣に諸外国との間に交渉を進め、輸入の計画を進めておりますが、国にいたしましても、やはり民間のそうした仕事を圧迫するということではなしに、やはりある程度の燃料対策も考えていかなければならぬ。同時に、動力炉の開発にいたしましても、高速増殖炉というような新しい長期にわたる計画ではございますが、そういうものを開発いたしまして、プルトニウムの新しい燃料を開発するとか、あるいは燃料が長く使えるような動力炉というものを開発していかなければならない。私は、非常に積極的にこの問題とは取り組んでまいるつもりでおります。そうしなければ、第一、先ほど申し上げましたような電力の計画考えてみましても、燃料がまず問題になる。この燃料の問題につきましては、自主的にわが国において新しい燃料を開発する。プルトニウムの燃料などはそうでございますが、そうしたようなものを考えて、わが国も自主的に燃料の解決をはかっていく、こういう構想を積極的に進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  188. 石野久男

    石野委員 事業団をつくることについてはあとでお伺いしますが、昭和六十年のときに四千万キロワットの発電をする、それはほとんど軽水炉でやるのだということになります。東海を除けばほとんど軽水炉でやることになるだろうと思うのですが、それに使う濃縮ウランというものがほとんどアメリカから入れるんだということになりますと、これは濃縮ウランを自国産する、日本でつくるということをかまえなかったら、ほとんど燃料はアメリカに依存するということになってしまうのじゃなかろうか、こういうふうに思いますが、その点はどうか。  それから、こまかいことはまたあとで委員会で聞きますが、いま科学技術庁がカナダで探鉱しております。こういう探鉱をしている場合のさがしあてた鉱石、ウラン鉱を処理するにあたって、われわれの聞き及ぶところでは、科学技術庁がそれをやるけれども、実際には、そこで探鉱するのは単独探鉱ではないのですね。これはやはり日米合弁になってくるのですか、そういう形で探鉱されるし、探鉱された鉱石をこっちへすぐ持ってくるわけじゃありませんから、濃縮されるわけだと思います。それは大体アメリカのAECで濃縮する、日本へ持ってくれば、日本で今度は日米合弁のいわゆる燃料会社でそれを加工する、こういうことになってくると、実際には日本が海外で探鉱するということじゃなくて、むしろアメリカとの合併の中で全部やってしまうので、日本のそこでの自主性というものはほとんどなくなってしまうのではないか。ほんとう日本の自主的な開発という意図はないのじゃないかというふうに見られるのですが、その点について科学技術庁長官はどういうふうにお考えになっていますか。
  189. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 いま私どものほうで研究いたしておる炉の中に新型転換炉というのがございます。これが開発されるのが長くて十年だと思っておりますが、それも一つの自主的な燃料政策の一環として考えておる。さらに、長期的には高速増殖炉というもので考えておる。現在ウラン二三五というものをアメリカから約二・七トンばかり輸入するワクがありますが、これだけでは現在足りませんので、これを近く日米の燃料協定を改定いたしまして、約百三十トンくらいにふやしたいと考えております。私は当分、何といたしましてもわが国の燃料というものは不足をいたしております、また間に合いませんので、アメリカその他から輸入せざるを得ないと思っておりますが、そういうことではどうしてもいけないというので、新しく事業団をつくって研究開発を行なっていく。もとより、その間やはり外国との間に燃料の協定なども結びまして、外国のウラン鉱の獲得などもはかっていかなければならないと考えておりますが、すべてがすべて今後何年間も外国の燃料に依存するということであってはならないと思っております。また、そういうことがないように、自主的にいろいろ研究開発を進めてまいろう、こういうことでございます。
  190. 石野久男

    石野委員 動力炉・核燃料開発事業団のことが先ほど大臣からお話がありましたが、これは原研とか原燃が現在まだようやく本来の仕事に取り組む段階に来ておる段階で、なぜこういう事業団をつくらなければいかぬのかという問題が一つあると思うのです。その点についてひとつ説明願いたいし、それからいま一つは、この事業団ができたときに原子力の平和利用の三原則は完全に守られるかどうかということが非常に心配です。そういう点について、三原則を守らせるということが確実に言えるかどうか、そういう点ひとつ大臣から……。
  191. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、新しい事業団をつくる理由というのは、何といたしましても、将来の原子力発電、将来を考え、また燃料を考えますと、やはり十年もたった今日でありますし、原子力のあり方等につきましても研究が相当進んでまいっておりますから、新しい事業体、法人をつくって、そこで、真の平和目的ということの方針は変わりませんが、そういう方針のもとで新しい開発を自主的にやらなければならない、こういうことでございます。一つはまた、御承知のとおり、核燃料の国有化から今度は民有にアメリカも変わってまいりましたし、したがって、わが国も法律改正等を行ないまして、そういう方向に移行せざるを得ないわけでございます。そういうときでもございますので、臨調の方針にのっとりまして燃料公社というものを改組いたしまして、そして新しい事業団にこれを吸収して、自主開発、燃料の対策等に真剣に取り組みたい、こういうことで新しい事業団というものをつくることにいたしたのであります。
  192. 石野久男

    石野委員 事業団は、いま大臣から言われるように、大体核燃料の民有化というものへ移行するという段階でこういう形は出てきておると思うのですが、そこで日本の原子力基本法、平和三原則のその問題が、核燃料の民有化等が行なわれる段階ではたして守れるかどうか、そういう点についての処置が十分できるかどうか、その点をひとつはっきりと御答弁願いたい。
  193. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 石野さんも御承知のとおり、わが国における原子力開発は、原子力基本法にのっとりまして、自主的に平和利用のために、しかも、その成果というものは公開するということになっております。日本ほど大っぴらに、オープンにこういうものを査察機関にゆだねているところはないと思っております。私は、新しい事業団ができましても、その目的とするところはあくまでも原子力の平和利用、電力の開発にあるのだ、こういうたてまえでございますので、新しい事業団ができましても、そういう平和利用に限るという原則だけは堅持してまいりたいと思っておりますし、また国際原子力機構の監査が行なわれるゆえんのものも、そういうものが軍事的に利用されないかどうかということについての監査をやるわけでございまして、そういう監査機関の監督、査察を受けるのは当然であろうと思っておりますので、平和利用ということを逸脱するような考え方は許すべきでないと考えております。
  194. 石野久男

    石野委員 事業団ができると、原燃はそれに吸収されてしまうようですが、原研は、この事業団との関係ではどういうふうに位置づけられるか、そういう点についてひとつ……。
  195. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 原子力研究所は、今度新しい事業団ができたからといって、その性格なりあるいは目的なりというものはごうもそこなわれるものではないと考えておりますし、あくまでも基礎的な研究というものは多種多岐にわたるいろいろな問題がございますので、そこでやはりいままでの研究というものを進めてもらう、こういう考え方でございます。もとより、新しく事業団ができます場合、それに全然関係なくして原子力研究所というものが存在するかというと、やはりそうではない。そこで研究された基礎的な研究というものの成果は、新しい応用される部門に適用されますので、そういうものとやはり関係はあるということでございます。
  196. 石野久男

    石野委員 再処理の問題について、プルトニウムの問題が出てきますが、このプルトニウムの所有の問題です。再処理でプルトニウムが発生しますね、そこから出た所有権を国有からはずすと非常に危険だと私は思うのです。ことに現在では、原爆などはそうたいしてトップレベルでつくられるものではなくて、一般的にも、どこでもつくれるような状態になってきている。そういう事情で、これを国有からはずすということは非常に危険だと思うけれども、大臣はそれをどういうふうにお考えになりますか。
  197. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 もとより民間におきましても、それぞれの研究開発が進められると思っておりますが、当分は国の機関において、プルトニウムというものを一切買い上げて、そうしてそれを平和利用に使う、こういうことにいたさざるを得ないと思っております。しかしながら、また将来二十年もたってどんどん進んでまいりましたときにも、やはり査察とか監督とかいうものは、国内においてもあるいは国際的な機構においてもなされるものでございますので、危険な方向にこれが利用されるということにはならないように考えていきたいと思っております。
  198. 石野久男

    石野委員 いまの段階で、プルトニウムの民有化ということについて、もう踏み切って考えておりますか。
  199. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 燃料の民有化というのは、いま国においても外国においても進められておりますので、やはりそういうことになるということは考えてもいいのじゃないかと思っております。
  200. 石野久男

    石野委員 この前、原子力の利用の問題で、軍事利用と平和利用との限界はなかなかわからないという答弁がありますね、そういう答弁をわれわれは政府のほうから聞いているわけだ。それだのに、いまここで民有化へいってしまうというと、非常に平和三原則の立場から見て危険ですよ。それでもやはり民有化は要るのですか。
  201. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 誤解があると困りますけれども、民有化されると申しましても、いますぐ直ちにこれが民有化されるような状態にもない。また、将来はそういうことになろうということを申し上げましたが、その際でも、国内におけるプルトニウムの取り扱いにつきましては厳重な規制というものを設ける、また、それについては国際的な原子力機構の監査も受ける、こういうことでございます。私どもは、これが軍事利用されはしないかということで、非常に法律的な規制も行ないますが、また国際的な原子力機構の監査もそこにあるということでございますから、そういう心配はないと思っております。
  202. 石野久男

    石野委員 大臣は心配はない、こう言うけれども、やはり平和利用と軍事利用との限界はわからないのでしょう。それははっきりできるのですか。
  203. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 現時点においては、どういうところが平和利用か、どういうところが軍事利用かということの区別は私はつかないと思っております。しかし、どんどん開発が進んでおりますから、ほんとうに、たとえば爆発でも真の平和利用だ、しかも、それを行なった場合、何ら危険はないんだというような、国際的な監査機関というものができてきて、平和利用が一般化されたときには、そういうこともあり得ると思いますが、現在は、私はそういう区別はつかない、つかないからこそ、非常にそういうことについて私どもも神経を使って、やかましく言っているわけでございます。
  204. 石野久男

    石野委員 私がいま聞いているのは、将来というよりも、現在の時点で民有化の問題をということでは非常に問題がある。特に平和利用と軍事利用との限界がわからないということが政府答弁でも出ておるときに、大臣がプルトニウムの民有化ということを言うことになると、これは平和三原則の立場から非常に疑義が生じてくるのです。だから、大臣の先ほど言われた、プルトニウムの民有化という方向を示唆するような答弁であるならば、これは平和利用と軍事利用との限界を明確にしなければ、ちょっと納得ができない。
  205. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 私が申し上げておるのは、あくまでも平和利用に限るということでありまして、石野さんがおっしゃっておるのは、核爆発というような考え方でおっしゃっているんじゃないかと思います。そういうことになりますと、これは原子力法の精神から申し上げましても許すべきものでもないし、また、国際原子力機構の監督が行なわれておるのも、そういう軍事的な目的のために使われるんじゃないか、爆発は使われはしないかということを取り締まるために、私はそういう機構で、わが国においても査察が行なわれているということであろうかと思っておりますので、核爆発ということになりますと、これはもう絶対に許すべからざることである。あくまでもプルトニウムにしましても平和利用に使うということについて規制をするし、また監査を受ける、こういうことに私は考えております。
  206. 石野久男

    石野委員 事が核爆発ということそのものであれば、日本現状では、だれでもそれはやらないんだというのがいまの常識です。しかし、平和利用と軍事利用との限界がわからない。しかも、たとえば原爆をつくるというのも、昔は非常にむずかしい作業であったけれども、いまはもうそんなトップレベルの作業ではなくなってきているんですよ。だから、いまプルトニウムの民有化という問題を安易に言われたのでは問題を残す。この点ははっきりしておかないといけない。やはり大臣の言い方、答弁のしかたが民有化の方向だということを言うならば、平和利用と軍事利用との限界を明確にしてでなければ、こっちは納得ができないということを言うのです。だから、その限界が明確でないのならば、やはりプルトニウムの民有化ということは、いま言うのはちょっと早いんじゃないか。これはたいへんな問題になると思う。
  207. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 たいへんな問題だとおっしゃいますが、プルトニウムをわが国が使用するというのは、あくまでも燃料としてこれを利用する、こういうことにあるわけでありますので、これがすぐ爆発に使われるんだというふうに……(「爆発の燃料じゃないか」と呼ぶ者あり)そういうことには使わないということで規制をするし、また、国際原子力機構の監査もあるわけですから、私はプルトニウムは電力を開発するための燃料として使う、それはあくまでも平和利用だ、それをほかの目的、爆発に使うというようなことは許さないという規定を設けるということでございます。
  208. 石野久男

    石野委員 問題は、爆発に使うか使わないよりも、民有化されるというと、国家管理をしている間は、いま大臣が言うようにいろんな規制はできるのです。だけれども、民有化になってしまったら、そういう規制はできなくなってしまうのです。だから、その民有化という問題をここで簡単に言われたのでは、平和三原則の側面から見てもこれは納得できないし、われわれの危険は依然として、残るということを言うのです。
  209. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 少し誤解があったかもわかりませんが、この民有化されるというのは、だれでもかれでも自由に民間が持てるということにはならぬ。これはあくまでも、そうしたような、一面からいうと危険なものでありますからして、たとえ民有になってもどこがどれだけ持っているというようなことについては国が全部管理監督をする、こういうことになろうかと思っております。国が監督管理する場合には平和利用のみに限るということになっておりますので、そういう民間がかってに持っても、それをすぐ軍事利用に使うのだということはできないのです。制限を厳重に加えていく考えであります。
  210. 石野久男

    石野委員 大臣がプルトニウムをいわゆる核爆発燃料に使わせないという意図だと言う意味はよくわかります。だけれども、われわれの心配しているのは、そういう大臣の意図はあったにしても、プルトニウムを民有化するということが現実に政府の意図であり、それが実施されたとすれば、その民有化されたプルトニウムはどこにいくかということの探索はできないし、とてもそういうことでは平和三原則は確立しなくなってくる。だから、そういう民有化は、いまの段階では早いのじゃないかということを言うのです。
  211. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 プルトニウムの存在というか、どこにどのくらいのプルトニウムがあるということは、全部国際的にも届け出をしなくちゃならぬことになっていますし、また、国においても国が全部これを管理する。どこにどういう会社がどのくらい持っている、その使用その他についても一切その国が管理する、監督する。また国際的にもどこの国にどれくらいのものがあって、それがどういうふうになっているかということまで厳正に監督されることになっておるようでございますので、私はそういう心配はない、こういうように考えております。
  212. 石野久男

    石野委員 心配があるとかないとかじゃなくて、このプルトニウムの民有化という問題がやがて——プルトニウムというのは、現状では、先ほどから何べんも言っているように、非常に簡単に原爆になる可能性をいまは持っているわけですよ。ですから、これが民有化ということになってくると、平和三原則のたてまえというものはくずれてくるし、われわれの心配している点が如実に出てくるわけです。だから、政府がいまプルトニウムの民有化ということをはっきり言うなれば、そしてまた政府がいま言うようなそういう趣旨であるとするなら、法律的に何らかの制限をするというような処置をしてからでなければだめだろうと思うのです。そういう制限立法とかなんというものをつくって、そういう民有化ということをするのかどうか、そこのところをはっきりしてもらわにゃ困る。国家管理と同じような意味を持っておるのかどうか。
  213. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 現在の原子炉規制法という法律がございますが、その法律の中にも、その存在、所在というものは明らかにするということになっておるわけでございます。現在の規制法の中にもそういうふうに明らかになっている。
  214. 石野久男

    石野委員 しかし現在では、まだプルトニウムの民有化というものは、そんなに認めているわけじゃないでしょう。
  215. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 現在はまだ認めておるわけではありません。すぐ直ちにその民有化がなるかというと、これは将来の問題になることでありますので……。
  216. 石野久男

    石野委員 大臣、いま現在の状況では、プルトニウムの民有化はされてないんですよ。だからそれを新しくするということになると、平和三原則の問題にからんで、これはたいへんな問題になってくる。だからこの問題では、少なくとも政府は明確に国家管理と同じような、同じ価値のあるような処置をしなければだめですよ。われわれは、やはり現在では民有化すべきでないという考え方を持っているんだから、その点は大臣答弁を取り消しか何かしてもらわなければ困るんだ。
  217. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 いま直ちに民有化されるということではないのでございますが、やはり諸外国におきましても民有化ということが進められてきておる。ですから、わが国におきましても、そういうものを取引する関係から、やはり一応民有化というものを認めざるを得ない。しかし、その場合でも国際管理機構のもとにおきましても、また原子炉規制法におきましても、プルトニウムがどこにあるのか、どういうものに使うのかということについては、平和目的のためにわが国はこれを利用するということに限られておりますので、その精神を破って、何でも民間でもそれを使わしていいということにはならない。もっと厳重な規制が私は加えられていくのではないか、——いきます。ですから、その方向はそうですから、それを取り消さなければできないということには、私はいたさないと考えております。
  218. 石野久男

    石野委員 大臣は、プルトニウムの民有化というものを簡単に言っているんですが、私はこれだと原子力核燃料に対しての政府考え方、特に総理などが従来われわれに答弁しているところとだいぶ違うと思うんですよ。ことに平和利用と軍事利用との問題は非常に微妙であり、なかなか限界がわからないという実情のもとでプルトニウムを現在民有化することを政府がはっきり言うということになれば、私はこれは総理大臣意見も聞かにゃいかぬと思うのです。これは長官だけの話で私たちはそれを受けることはできないし、もし大臣がそれを主張なさるんならば、われわれとしても、もう少しこれは政府に対して強く聞かなくちゃならぬと思うんだ。大臣がどうしても答弁を取り消されないなら、私は総理大臣にひとつこの問題については再質問をさしてもらいます。
  219. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 昨年の十月の閣議におきまして、核燃料の民有化という方針は確認されておる、こういうことでございます。
  220. 石野久男

    石野委員 大臣は、いまそういう答弁ですが、先ほどから何べんも言っているように、軍事利用と平和利用との限界がわからないというのが政府答弁なんだ。そういう段階でプルトニウムの民有化という問題をこのまま大臣答弁だけで私は納得できませんから、これはもう一度総理大臣にこの点は聞かしていただきたいと思います。  文部行政についてお聞きしますが、最近地域開発が非常に進んで、あるいは住宅開発が進んでまいりますに従って、その開発に文教政策が追いつかないという状態がある。特にその中で校舎の敷地、校地が求められないという事情が各地に出ているわけです。本年度の予算の中でも、相当程度いわゆる校舎施設等についての予算は取っておるというように見受けられますが、しかし校地についての施策が十分に出ていないと思います。で、地方自治体では、このために非常な苦労をしておるわけですね。  私は、この際、文部大臣それから大蔵大臣にひとつお尋ねしたいのですが、校地を優先的に確保するという施策を何かこの際考えるべきじゃないだろうか。ことに団地構成をする場合には、どうしても先に校地を取得するという手段、方法を講じなければ、地方自治体ではどうにも財政指貫ができなくなってきておると思うのです。そのためには大蔵省としてはこういう校地を取得するための単独起債のようなものを与える項目を設けて、それで措置させるような方法を講じたらどうかというようなふうにも考えておるが、こういう点もあわせてひとつ文相あるいは大蔵大臣からお話を伺いたい。  それからいま一つお聞きしておきたいのは、本年度大体この校地がどのくらい不足するだろうか、住宅開発について、地域開発について、それらに伴って起きる校地の不足というものはどの程度あるかというようなこともこの際聞かしてもらいたい。
  221. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 最近におきまする校舎の社会増に基づきます不足は、相当深刻なものがございます。校地といたしましては、教室の坪数としましては、約四十三万平米が大体不足するとして四十二年度を見積もっておりますが、これに見合うところの校地が不足するというわけでございます。申し上げますとおりに、校地の取得ということは非常に困難でございますが、校地につきましては、御承知のように地価が非常に変動いたしておりますのと、それから地域によりまして非常に価格の格差がございまして、これを補助対象として考えますのにはどうしても不適当でございますので、申されましたように、あくまでこの起債の線で考えていかなければならないと思います。  そこで、起債の問題につきましては、四十二年度はわずかではございますけれども、十億だけは起債のワクを取ったのでございますが、しかし、これはきわめて一小部分でございまして、不十分でございます。ただ、住宅公団なんかで団地をつくりますときに、一千戸以上の団地をつくるというような場合におきましては、その団地計画の中に校舎施設を入れてもらいまして、さしあたり住宅公団のほうで校舎施設をいたしてもらいまして、これが建ちましたあとで、三年とか五年の期間においてその市町村におきましてこれを買い上げます。買い上げますものについては——まあ主として校舎でございますが、校舎については、国のほうで補助対象としまして、みずからが建てるときと同じ補助をつける、こういうふうにいたしております。
  222. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま文部大臣が言われたように、最後に市町村が教育施設を買収するというときの起債を許可するということになっておりますし、それからこの団地造成のために起こる校地の先行買収というためには、さっき申しましたように、少ないかもしれませんが、本年度は十億の政府資金による起債ワクというものを取ってございます。
  223. 石野久男

    石野委員 私は、校地はできるだけ国が買い上げるべきもあだから、国が予算ですぐ処置すれば一番いいと思うんだけれども、それができない段階でこれを聞いているわけですから……。  それから、あともう一つ聞いておきたいのですが、この義務教育の問題でいろいろなにしているが、中学校と小学校とで、施設関係の補助が二分の一と三分の一の差があることは、どうしてもこれは納得いかないんだけれども、大蔵大臣、どうして中学校は二分の一、小学校は三分の一というふうにしているのか、それは二分の一にしないのか。
  224. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 その中学校と小学校の補助率の差ができておりますのは、現在の状況から見れば非常におかしいとお思いになるのは当然だと思いますが、しかし、これは実は六・三制のできました際における沿革的な事由がございまして、御承知のように、この六・三制をつくりますときには、中学校の校舎の建設ということが優先的にまず考えられたわけでございまして、小学校の校舎はすでにあるものでございますから、これについては補助ということはあとになって起こった問題でございます。そこで六・三制の補助としては二分の一ということになっておりまして、後に起こりました小学校の校舎の、危険校舎とか、そういうものにつきましては三分の一ということで、実は沿革的な理由がございます。しかし、文部省としましては、現在になりましたならば、できるだけ補助率を統一したいという希望を持ちまして、大蔵省等にもお願いをしておるわけでございますが、しかし、現段階におきましては、たとえばこの超過負担の解消というような問題から、単価アップとか、あるいは構造技術のアップとか、あるいは事業量の要望が相当大きいのでございますから、これらのほうを相当増額してまいらなければなりませんので、ただいまのところまでは、いわゆる主として財政的理由でこれが実現ができない状況でございます。これは将来の問題として、私ども財政事情が許す限り、将来におきましてはこれは単価も直していただきたいと希望いたしておるわけでございます。
  225. 石野久男

    石野委員 時間がありませんから、まだ質問はたくさんありますけれども、これで私はおきますが、大蔵大臣にいまの問題でひとつ答弁をしておいてもらいたい。  それからいま一つは、これは委員長になにしておきますが、先ほどのプルトニウムの民有化の問題は、非常に重要でございます。これはあとで総理に質問をさせてもらいたいと思いますから、それだけひとつ申し上げておきます。
  226. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまの問題ですが、三分の一、二分の一のいきさつはもうさっき説明されたとおりでございますが、それじゃ、いま小学校の施設に対する財政措置がどうなっておるかと申しますと、国の補助が三分の一、そうして今度は国の補助を差し引いた残りの九〇%は地方債でもって充当する。しかも今度は、国の補助を引いたこの地方の負担分というものは、償却費方式基準財政需要額にこれを算入されるということになっておりますので、三分の一の補助であっても、最後は地方起債により、交付税でこれが見てもらえるというたてまえになっております。戦前は、そうじゃなくて、国の補助はございませんで、全部地方債で設置者の責任においてこれは建てるということになっておりましたが、その後義務教育費の二分の一負担というような問題が起こったときに、経費と建物というものは区別さるべきものだ、建物というものは財産であって、あとへ残るものだ、したがって、補助率というものは、財産になって残るものへの補助と国の経費補助というものは、補助率を別個にすべきだといういろいろな補助率の均衡から、三分の一というものが出てきた、こういういきさつから見ますと、実際はこの中学校の二分の一、これはもう急に迫られてやったのですが、一応これが終わったら、これは三分の一に、ほんとうはまたこの件は戻したいということまで私どもは考えておる問題でございます。  そこで、補助金というものは多くすればするほどいいのですが、この補助金を、どこまでの補助率にしたらいいかということをとことんまで言ってしまいますと、交付税との関係が出てくる。地方財政をまかなうのに、地方の固有の収入と、国の補助と、それから交付税で見る、この割合や何かをどうするかということになってきますと、補助率というのには私は限度がある。やはり国の全体の補助率は一応均衡のとれたものでなければ、これは非常に乱れると思いますので、そういう意味から私どもは簡単に二分の一にできるかどうかということは、これはよほどまだ私どもとしてはゆっくり検討したいと思っておる問題でございまして、そう無条件に、私どもは補助率というものはいじらないという方針でいままで来ておりますが、検討はいたします。検討はいたしますが、一理屈言うとしますと、そう簡単に、これは無条件にはいかないという問題だろうと思います。
  227. 植木庚子郎

    ○植木委員長 石野君に申し上げます。だいぶ時間がお約束の時間を過ぎましたから、もし御質問がぜひとも必要なら簡潔にもう一問だけ……。
  228. 石野久男

    石野委員 いまの説明に対して保留さしてもらいます。じゃ、これで終わります。
  229. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  次会は、明四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十一分散会