○北山
委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和四十二年度暫定予算三案に対し、反対の態度を表明するものであります。
本年度の予算編成は、一月
選挙によって中断されましたが、総
選挙の前後を通じて例年のような予算ぶんどりが行なわれたことは、まことに遺憾に思うのであります。昨年、公債発行が導入された結果、本年においても、
政府良民党の予算編成への態度は、ますます慎重を欠き、各種の圧力団体、地方自治体その他の
関係者も参加して、入り乱れてのぶんどり合戦の末、例のごとく大蔵省の隠し財源が気前よく分配されたのであります。この放漫な予算編成の
やり方のもとで公債が発行されることの危険性を、一そう痛感せざるを得ないのであります。
さらに、私が遺憾に思いますことは、本年度予算編成についての社会党、民主社会党、公明党三党の協定に基づく共同申し入れに対し、
政府が一顧をも与えない冷淡な態度であります。消費者米価など物価の抑制、中堅以下の勤労者、
事業者に対する減税、経済成長によって激化された交通難、住宅難及び公害等五項目についての三党申し入れば、広範な
国民大衆の要望を代表したものであると信じますが、
政府は野党の意見を尊重すると口に言いながら、事実においてその要請に応じ、予算編成に再検討を加えるだけの一片の誠意も示されなかったことは、了承しがたい点であり、深く遺憾に存ずるものであります。
以下、数点について、暫定予算案反対の
理由を申し述べます。
第一は、無
計画な公債発行についてであります。
昨年、公債を導入される際の
政府の方針は、いわゆるフィスカルポリシーといわれる景気調整のための公債政策であったのでありますから、景気が上昇し、産業活動が過熱化し、物価の上昇と国際収支の悪化が憂慮される現状においては、公債発行をやめ、あるいはこれを大幅に削減することが当然であります。しかるに、本年は、昨年の公債七千三百億に対して八千億と、逆に七百億円を増額し、
政府保証債についても一千百億円をふやしているのであります。このような筋の通らない放漫な財政政策には、断じて賛成はできないのであります。しかも、一年おくれに国債の日本銀行の買い入れまたは担保貸し付けを認めることは、インフレに通じ、実質上財政法違反を犯すものであります。すでに公債は急速に累積し、信頼できる償還年次
計画すらも示されないのであります。昨年とは全く経済環境を異にする今日における公債発行の是非は、あらためて慎重に検討すべき重要な政策であり、これを軽々に暫定予算に計上することは許されざるところであります。
第二は、物価抑制について何らの配慮をせず、逆に、消費者米価をはじめとし、健康保険料の値上げなど、むしろ物価上昇に拍車をかけていることであります。しかも
政府は、農業基本法農政は完全に破綻し、農畜産物の生産は停滞し、生鮮食料品高騰を招いているのに、これに対してはほとんど見るべき対策を講じておらないのであります。これら
政府の物価対策の無策と、公債発行、インフレによって、ますます消費者物価の高騰と
国民大衆の生活を圧迫することは明らかであります。
第三点は、税制改正についてであります。
勤労者軽視、大企業と金持ち階級優遇のわが国の税制は、租税公平の大原則に反し、大衆の憤激の的であります。
本年度は、給与所得に対し、標準世帯の非課税限度を約十万円引き上げたとはいえ、減税額はわずかに千九十億円であります。約八千億円以上と見込まれる租税の増収の中では、全く申しわけばかりの減税にすぎません。これでは米価をはじめとする物
価値上がりにも追いつけないことは明らかであります。反面、
政府は、本年三月末をもって期限切れとなる利子配当所得の分離課税をさらに三年間延期することを決定しましたが、
昭和二十八年以来、資本蓄積の名のもとに暫定的に続けられてきたこの金持ち減税をさらに延伸することは、絶対に承服し得ないところであります。この制度は、資産階級のばく大な財産の隠匿と脱税を許し、配当所得の税額控除と相まって、数千万円の株券を所有する者に対しては、標準世帯二百二十六万五千円の配当所持があっても、所得税は一文もかからないという結果になっておるのであります。高校新卒の就職者も、一万七、八千円の月収があれば所得税がかかるのに、資産家に対しては、利子配当の分離課税をはじめとし、株式の譲渡所得を非課税とし、あるいは法人の受け取り配当の益金不算入の制度など、至れり尽くせりの優遇を行なっていることは、他の資本主義国にも例を見ないところであります。わが党は、このような資産階級擁護の税制に反対し、給与所得者に対する標準世帯百万円までの非課税限度引き上げのすみやかなる実現に努力するものであります。
第四は、防衛費増額と
国民生活軽視の点であります。
政府は、第三次防衛力整備
計画を決定し、
昭和四十六年まで約二兆三千四百億円の膨大な軍備拡充の方針をきめましたが、これによって喜ぶのは、軍事支出によって金もうけをたくらんでいる兵器産業、死の商人であります。
国民は、この
憲法違反の
自衛隊増強によって年々約四百億円もふくれ上がる防衛費を負担しなければなりません。これによって、
国民生活は圧迫をせられ、いわゆる社会開発に支障が生まれ、社会保障が立ちおくれることは明らかであります。
政府は、部分的には、生活保護の生活扶助基準、失対賃金など、若干の改善の点はあるにしても、厚生、労働、教育、住宅、生活環境対策など、また、交通、医療、公害など、今日
国民生活が直面しておる複雑にして困難な問題の根本的解決のため体当たりする姿勢は、どこにも見ることができないのであります。防衛長期
計画はできても、社会保障の
計画はつくられておらないのであります。ミサイルや戦闘機の整備のためにはばく大な国費を計上しながら、広島、長崎の原爆被爆者の生活保障に対するわずかな予算は惜しんでおるのであります。われわれは、危険な軍国主義への道につながり、
国民生活圧迫の
政府案に対して、断固反対の意思を宣明するものであります。
なお、一言つけ加えたいことは、議題となりました四、五月の暫定予算案は、以上の基盤の上に立つ予算のうち二カ月分のいわば部分的な応急の予算でありますが、しかし、その
内容は、一般会計をはじめ四十六の特別会計、十四の
政府関係機関予算並びに財政投融資など、膨大複雑な
内容を含むものでありまして、これを短時間の間に審議する必要があればあるほど、審議に
関係する資料はすみやかに提出しなければならないにもかかわらず、支出各日明細書などその提出がおくれましたことは、まことに遺憾であります。従来の予算案審議にあたりましても、予算案そのものの
内容に突っ込んだ実質審議がきわめて不十分であり、多くの改善を要する点が少なくないのでありまして、予算不在の予算
委員会の観を呈する場合が少なくなかったのであります。予算制度につきましては、これらの予算制度並びに予算に対する
国会の審議の抜本的な改革のために、
国会及び
政府が真剣に取り組む必要を痛感するものであります。私は、この点につきまして、この予算制度並びに予算案
国会審議に関する根本的な、抜本的な改革について
政府並びに
国会において
調査、検討することを強く要望を申し上げまして、以上反対討論を終わるものであります。(拍手)