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猪俣委員 これはいま言ったように時間がないから、
自衛権の
本質についてあなたとの論争はやめます。あなたの
議論は間違っているんだ。正しいのは、
憲法制定当時の吉田
総理大臣なり金森国務大臣が
答弁したことが正しいのです。
憲法九条のすなおなる
解釈ですよ。吉田さんは、
自衛戦争を否認するとまで言っているじゃないか。
自衛戦争という名のもとにいままで
戦争をたびたび重ねてきた、こう吉田さんは
答弁している。これはあなたの大親分じゃありませんか。それをあなた、子分がだんだんこれを空洞化してしまって、そうして危険な情勢をつくっている。それでは親分に対して申しわけないだろう。この
憲法制定当時の
精神をいま
議論しませんが、もう一ぺん速記録をよく読みなさい。あなた方の
解釈は間違っているんだ。それは結局
自衛隊を拡張せんとするために
憲法の
解釈をひん曲げて、ほとんど、
憲法九条を、あるけれ
どもなきがごとく空洞化してしまった。ここにぼくは保守党の政権の非常な罪悪があると思う。しかし、これ以上言うたって水かけ論になります。だから私はやめますが、それは非常に間違っておるのです。初心忘るべからずということばがあるが、
憲法制定当時の初心を忘れないように、もう一ぺん吉田
総理大臣の
答弁から、金森の
答弁からよく読みなさいよ。
総理大臣として大事なことですよ、
憲法問題は。そんな属僚にまかせずに……。
解釈は全く間違っています。間違っていますが、この程度にいたします。
それからいま
一つ、第二問は、この
自衛隊の膨張、軍需産業資本の発展と好戦的政治勢力の増大についてという題であります。これは実は第二次
世界大戦後のアメリカの平和的性格の変貌についてというのですが、これはアメリカのアイゼンハワーが一九六一年一月十七日の夜、大統領をやめるときに、あれはワシントン以来の伝統だそうですが、
国民に対して告別の辞という特別放送をやるそうです。ところが彼は、その最後に至って非常に驚くべき発言をしたために全米に非常にショックを与えたという。どういう発言かというと、アメリカの民主主義は新しい巨大な陰険な勢力によって脅威を受けている。それは軍部・産業ブロックとも称すべき脅威であって、何百万という人間と何十億ドルというばく大な金を空費しており、その影響力は全米の都市、州議会、連邦
政府の各機関にまで浸透している。こういうことで結んだので、これは非常なショックを与えた。それをきっかけにいたしまして、アメリカの政治評論家のフレッド・クックという人が「
戦争国家」という本を書いた。この中には実に驚くべきことが書いてある。たとえば、朝鮮
戦争のときには、ゼネラルモーターズの会長であるチャールズ・ウィルソンが国防長官になって朝鮮
戦争をやっている。そうすると、二十五万人のアメリカの兵隊が死傷しているのに、ゼネラルモーターズは一兆億円の金もうけをしたというのです。いままた、フォード株式会社の重役マクナマラが国防長官になって、そして
ベトナム戦争をやっておる。このフォード自動車株式会社がどのくらいもうけるか、まだ
戦争がやまっていないからわからない。こういう産業資本のチャンピオンが国防長官になって、そして
軍隊と産業資本が結合して、大統領といえ
どもこれの命に従わざるを得ないような現状にアメリカは変化してきている。だから第一次
大戦以前の自由、民主、平和のアメリカというものは、第二次
世界大戦以後は変わってきた。私
どもが青少年の
時分に教わりました平和、自由、民主というアメリカを想定しておると、いまのアメリカは非常に違ってしまったということを、アメリカ人の有名な評論家があらゆる材料を駆使して書いてある。これははなはだ警戒を要する。
イギリスの政治
学者ノエル・ベーカーが「軍備競争」という本を書いている。これはノーベル賞をもらった本だ。この中に、一九五五年まではソ連が
戦争国家であったが、それ以後はアメリカが
戦争国家になったという
結論を下している。これはアメリカの最も友邦であるイギリスの政治
学者である。なぜこうなったか。結局軍事
予算をたくさんとって、軍需産業家が非常に大きくなってしまって、もう
政府といえ
ども押え切れなくなった。私はこれを聞きまして非常に心配なんです。一体、今度は三次防、二兆三千何百億円、たいへんな金であります。そして、そのうちの四〇%、九千四百億円というのは装備費であるとして民間に全部これをやらせる。だから、民間の軍需産業、死の商人
どもはもう笑いがとまらぬ状態である。こういうものがだんだん大きくなる。そしてこれが一部の野心家と結びついて、
自衛隊、軍需産業、その上に野心のある政治家が乗っかりましたらどういうことになりますか。ヒトラーや東条みたいなのが出てこないとも限らぬ。
佐藤さんはそうならぬかもしれませんがね。しかし、はなはだ私は
日本の将来
——こういうふうに
自衛隊をだんだん膨張させていって、そして軍需産業が非常に強大になってくる。そうすると、
日本の平和にして民主的なる政治勢力が変貌を遂げて、アメリカみたいになってしまうのじゃなかろうか。アメリカの
ベトナム戦争はどう考えても狂気のさたです。
そこで、あなたはどういう自信がおありになるか。こういう軍需産業をどんどん育成強化して、今度は国産にするらしい。それと
自衛隊の増強、こういう勢力が出てきて、これを政党なりあるいは文官系統がどういうふうにコントロールできるか。あなたはその自信があるかないか。あるとするならば、どういう方法でやっていくか。私はこれは
国家の大計として相当考えなければならぬ問題じゃないかと思うのであります。これに対して、あなたの決意のほどを承りたい。