運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-03-27 第55回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十七日(月曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 中澤 茂一君    理事 小平  忠君 理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    井出一太郎君       川崎 秀二君    北澤 直吉君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    藤波 孝生君       船田  中君    保利  茂君       松浦周太郎君    松野 頼三君       石橋 政嗣君    大原  亨君       角屋堅次郎君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    高田 富之君       芳賀  貢君    畑   和君       八木  昇君    山中 吾郎君       横路 節雄君    曽祢  益君       永末 英一君    小濱 新次君       正木 良明君    谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警察庁刑事局長 内海  倫君         防衛庁長官官房         長       海原  治君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁経理局長 大村 筆雄君         防衛庁装備局長 國井  眞君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         文部大臣官房長 岩間英太郎君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         厚生省援護局長 実本 博次君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         食糧庁長官   大口 駿一君         林野庁長官   若林 正武君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         通商産業省重工         業局長     高島 節男君         中小企業庁長官 影山 衛司君         郵政省電波監理         局長      淺野 賢澄君         建設省計画局長 志村 清一君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         日本学術会議副         会長      江上不二夫君         会計検査院事務         総長      宇ノ沢智雄君         農林漁業金融公         庫総裁     大澤  融君         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    片柳 眞吉君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算  昭和四十二年度一般会計暫定予算  昭和四十二年度特別会計暫定予算  昭和四十二年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算並びに昭和四十二年度一般会計暫定予算昭和四十二年度特別会計暫定予算昭和四十二年度政府関係機関暫定予算、右の各案を一括して議題とし、質疑を行ないます。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 私は、社会党を代表して、明年度予算案並び暫定予算関連をいたしまして、政府に若干の質疑をいたしたいと存じます。  その前に、三年余でもって再び舞い戻ってまいりましたので、同僚諸君の一そうの御指導をお願いを申し上げます。  最初にお尋ねをいたしますことは、総理お尋ねをしますが、総理施政方針演説の中で、議会民主主義を確立するということを言われたわけであります。これはもちろん、議会政治家がその言動を慎んでりっぱな人間であるということが必要であると同時に、また議会そのものが、国会そのものが生き生きと機能するということ、働くということでなければならぬと思うわけであります。ただ政治がりっぱなだけでは、これは政治にはならないわけでありまして、国会国民信頼にこたえて、そして国民の要望する政治をどんどん実行していく、これが議会民主主義を守る一つの大きな要素であると考えるのであります。その点から現在の議会政治国会政府関係を見ますというと、いわゆる議院内閣制のために、多数党である与党から政府がつくられておる。したがって、ともすると、国会の場は政府与党が話し合ってきめた法律案予算案を、ただこれを押し通す、成立をさせるということに主眼が置かれまして、国会そのもの機能というものがマンネリ化し、あるいは停滞をしているというような印象を強く受けるわけであります。これではいかぬと思うのでありまして、この点について、私は国会機能を活発にするためには、少数野党意見をどんどん国会の場で発言させ、また、これを政治の中に吸収していくというような心がまえが政府あるいは与党の中になければならぬと思うわけであります。こういう点で、われわれはそういう角度から、国会機能というものを国民信頼にこたえるような生き生きとしたものにする。選挙を何べんしても政治は少しも変わらない、国会を何べん開いても少しも問題が解決をされない、これではいかぬと思うわけであります。こういう点についての総理のお考えを、まずもって伺っておきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりましたように、私は議会制民主政治を確立して国民政治に対する信頼を高める、これが今日私どもに課されたと申しますか、あるいは国民至上命令だと、かように実は感じておるのであります。ただいま北山君が御指摘になったとおりであります。その場合に、この議院内閣制をとってはおりますが、少数意見についても十分注意を払わなければならぬことはもちろんであります。問題は、やはりわれわれの政治目標は一体何なのか、このことを考えますと、多数、少数と、かように分かれてはおりますが、国民福祉向上、そこの一点に共通の場があるわけでありますから、とるべきりっぱな考え方は、少数だろうが、これはもうどんどん発言もしていただきたいし、またそれも政治に採用していく、そうして国民のためにりっぱな政治をする考えでございます。ただいまのお話にもありましたように、議会制民主政治、そのもとにおいては、多数、少数考え方を、いま申し上げるような最終目標国民福祉向上にあるんだ、かような観点に置きまして、各党が謙虚に国政のために審議をはかる、そうして議会審議が効率をあげるようにする、そこに国民の期待もあると、かように私は考えておりますので、今後の国会運営におきましても、これらの点において十分御考慮をいただきたい、かように私は考えております。
  5. 北山愛郎

    北山委員 そういう角度から見た場合に、この前、明年度予算編成の時期にあたりまして、野党社会民主、公明の三党の政策協定に基づいた予算編成に関する五項目の申し入れ、これなどについて、はほとんど政府としてはこれを軽視して、さっぱりこれを顧みないというような姿勢であったんではないか、私はそういう点でまことに不満に思うわけであります。社会党としては御承知のように、世間で、社会党反対のための反対をするんだ、何が何でも、いいものでも反対するんだというようなことを言われておりますけれども、これは全く事実に反することでありまして、毎国会、皆さん御承知のように、社会党は、政府提出をした二百件くらいの法案、これに対して約七、八割は賛成をしておるわけであります。あるいは一部のものはこれを修正して通過をさしておる。もちろん社会党としては、政府案に対しては不満な点が多いのでありますけれども、少なくとも、現状から一歩でも二歩でも前進をするというものについては、あえて賛成を惜しまないのであります。ところが、むしろ自民党与党のほうが反対のための反対をしている。社会党は、毎国会に約五十件くらいの法案提案をしておるのであります。ところが、私の記憶では、与党がこの社会党提案を十分に審議して、取り上げて、そうして、もちろん賛成などをしたというためしは、ほとんど私は覚えておらないのであります。私から言うならば、反対のための反対をするのは自民党であって、社会党ではない、これが事実であると思うのでございますが、この点について、与党自民党総裁として、また政府として、総理の御見解を聞きたいのであります。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど申しましたように、りっぱな御意見であればそれを採用する、取り上げる、これについて決してやぶさかではございません。ただいま、野党共同申し入れというものに一顧も与えておらないという御批判のようですが、そうじゃございません。予算編成上の全般の問題で納得のいくことであれば、私どもは採用いたしております。これは参議院で申したことですが、共産党の提案でも、交通問題について私ども採用いたしております。そういうように謙虚に、国民のためになるような事柄は、採用いたしております。野党申し入れが採用されておらない、こういう御批判でございますが、これは予算編成の全般的な編成の過程におきまして、このものがそのまま採用できない、こういうような状況でございます。これはどうも責任所在がはっきりいたしております政府といたしましては、やむを得ないことでございまして、この責任所在から、全責任を持って歳入、歳出全体のバランスを考えておりますので、これは採用ができなかった、かように思います。ただいま、社会党は何でも反対する政党だと、かように言われる、そうじゃないと、こういうことで社会党を弁護されました。私はちょうどそれと同じように、何でもかんでも多数横暴だ、押し通すんだ、自民党はそれをやっておる、こういうような御批判の当たってないことも、国会審議を通じて御了承だと思います。私が申し上げるまでもなく、法案が多数修正されております。修正されて成立したということ、これはもう明らかに与野党話し合いの結果修正、そこで成立いたしたのでありまして、こういうことをお考え願うと、社会党、何でも反対する政党、これも言い過ぎなら、何でも多数で、力で押し通す、このことも実情に合っておらないと思います。いままで大事な問題と申しますか、それぞれの政党の基本的な主張から対立する問題はございます。そういう場合に、民主主義デモクラシー原則に立って、そうして円満なうちに多数決が採用される、多数決で決定される、こういうことが国民の望む国会運営ではないかと思います。私は、社会党の力も、今日までの国会審議において国民の輿望にこたえておられると思います。私ども自由民主党も、いわゆる多数の横暴、何でもかんでも数で押しつける、かような考え方は持っておりませんから、この上ともひとつ、民主政治を確立する、デモクラシー原則も取り入れる、これは最後の問題だ、かように私考えておる次第であります。
  7. 北山愛郎

    北山委員 少数意見野党意見も十分取りしげるということでございますが、事実は、国会の場におけるいわゆる政府提案というものをいつでも優先して、議員提出案件についてはあと回しにして、ほとんど審議もしないで、たなざらしにして廃案にしておるというのが現状でございまして、この点については、十分与党としても、また政府としてもお考えを願いたいと思うのであります。  私はこの際、一つの具体的な問題について伺いたいのでありますが、実は昨年の八月、成田書記長と私が当時の愛知官房長官にお目にかかりまして、戦争中、大陸、南方その他の外地に残された戦死者遺骨遺品処理に関して申し入れをしておるわけであります。これに対しては愛知官房長官から、はっきり回答いたしますという御返事をいただいたのでありますが、いまもって回答がないのであります。この問題は、昨年の春の国会でも、わが党の滝井委員から賛同があった問題でありまして、戦時中、外地において戦死した者は二百十万人ある。その中で、遺骨として帰った者はその三分の一にしかすぎないのであります。あとの百四十万の遺骸は、ほとんど大部分が放置されておるというような事態になっている。これは重大な問題だと思うのであります。総理は、今度の在外資産の補償問題が終われば大体戦後処理は済んだんだというようでございますけれども、百万をこえる戦死者外地における戦死者の遺体あるいは遺品が収集処理されておらないという重大な問題が残されておる。いままで政府は、九回ばかり調査団を派遣して、一万体の遺骨を収容したのでございますけれども、まことにそのやり方が不熱心といいますか、これでは全く適当でないと思うわけであります。そこでわれわれは、この大きな百万余の戦争中において外地戦死をした人たち遺骸を収容するということが重大な問題であると考えまして、それで政府申し入れたわけでありますが、いまもって回答されておらない。この点について、その内容をこの際明らかにしていただきたいのであります。
  8. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまお話しのようなお申し入れがございましたことは、私も承知をいたしておりまして、事情をよく関係諸君からも聴取いたしましたのでございますが、御指摘のごとく、非常に広範囲にわたりましていま仰せのような事態がございます。政府は、すでに数次にわたりまして遺骨収集等の処置を講じたのでございますが、なお山野に遺骨がさらされているというような事態のある情報等も得ておる次第でございます。先ほどお話しのように、戦後の処理はこれをもって、と言われましたが、この種の問題は、また別途考慮すべきものであろうとも考える次第でございまして、なお今後ともさらにその種のことをやらなければならない、かように考えておる次第でございますが、何ぶんにも地域が非常に広大にわたります。また、先方との話し合いもつけなければならないわけでございまして、四十二年度におきましては、フィリピンのレイテ、ルソンあるいは内南洋の主要な諸島、こういうような地域にわたって遺骨収集等をいたしたい、かように考えておる次第でございます。  社会党さんへの御回答等につきましても、厚生省その他所管の関係者に、すみやかにその措置をとるべきであることは、官房長官としても申しておるのでございますが、四十二年度の予算が成立いたしました時点において具体的にお答えを申し上げたい、かように言っておる次第でございまして、お話の点につきましては、誠意をもって今後に処したいと考える次第でございます。
  9. 北山愛郎

    北山委員 この問題は、実は私がある地方の新聞でペリリュー島の写真を見て気がついたのでありますが、戦後二十年たっておるのに、まだ現地においてたくさんの遺骸が、ほとんど軍衣を着て、装具をつけたようなかっこうで、累々として散乱しておる、そういう写真を見まして、これではいけないというので政府に対して申し入れをしたのであります。ところが、厚生省について聞きますと、四十一年のこの予算はわずかに二百三十万であります。これで何ができるか。たったペリリュー島一カ所だけを見る、これがまだ済んでおらないわけであります。四十二年度の予算はよくわかっておりませんが、伝え聞くところによりますと、千三百万しかないといっております。こんな少しばかりの金ではどうにもしようがない。われわれが要求しますのは、この重大な問題は、実は平和条約を締結する際に外国といわゆる戦場掃除協定をして、その時点からほんとうに大規模な計画を持ってこれを処理すべきであったのです。それを放置しておった。しかも、いまだにそれにほとんど実質上手がついてないというような事態であります。いまこのような、いわゆる戦後は終わったという中でも、やはりいまでも南方諸島にはこういうたくさんのわれわれの同胞がそのままの姿で横たわっている。これでは、毎年政府追悼式をやってみたり、靖国神社にみんながお参りをしたり、勲章を出したりしても、ほんとうのそういう人たちに対する気持ちというものがそこに出てないのじゃないか、こういうふうに考えまして、特に要求するものでございます。時間がございませんので突っ込んだお話はいたしませんけれども、ひとつこの点は千三百万とか、そんなはした金ではなくて、何年計画というような形でもって思い切った予算を立てて、そうして船を雇って、恒久的にこの問題を処理されることを強く要望するものであります。  次に、予算案について質疑をするわけでございますが、実はこの膨大な予算昭和四十二年度の一般会計四兆九千五百九億、特別会計を入れますと十兆円以上になります。それに財政投融資あるいは政府関係機関地方財政、膨大なこの予算案に対する説明資料というものがまるで貧弱である。予算案をいただきましたけれども、その関係資料積算資料というものは、暫定予算についても、支出明細がまだ出ておらないのであります。予算積算の基礎のない、資料も持たないままで私ども予算案審議しなければならぬ。一体支出明細はいつ出すのですか、大蔵大臣
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 各日の明細書は、本日提出することになっております。
  11. 北山愛郎

    北山委員 いま審議をやっておるというのに、支出明細書をいままだ出しておらないのであります。われわれは見ておらないのであります。資料を見ないで明年度予算案が適当かどうか審議をしろといっても、これは実は無理な話であります。実はことしだけの問題ではございません。毎年の予算審議が、とかく、予算委員会であるのに、予算案内容的な審議をしないで、その他の政治外交等の一般的な問題を審議するというのは、いろいろな原因があると思うのでありますけれども一つは、政府大蔵省が、予算を十分に審議できるだけの資料を出しておらない、こういうところに私はあるのではないかと思うのであります。  まず佐藤総理お尋ねをするのでありますが、一体その各目別支出明細とか、そういう資料なしで審議をしてくれと、こういうのでありますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回に限ったことではないと、こういって北山君も言われますように、まあ過去におきましてのこれが普通の——これがいいというわけじゃございませんが、過去においてもこの種のことで皆さま方に御審議を願っておるのでございます。これは今後何らかくふうしなければならない問題とは思いますけれども、現実の問題としては、予算編成から提出、そうしてさらに審議、その関係から見ますと、改善は幾ぶんかはかられつつはございますけれども、根本的にはまだ全然改善の実をあげておらない、かように思います。どうか、過去の例もあることでございますから、御審議をお願いしておきます。
  13. 北山愛郎

    北山委員 過去の悪例は、そのままほおかぶりして続けていいものではございません。このような膨大な予算案を非常に短い時間で審議をするという以上は、十分な資料を添付して、そして、すみやかに審議が円滑に進むような配慮が必要なわけであります。ところが、毎年毎年同じようなことで、できるだけ予算内容を、むしろ私から言うならば、知らせないほうがよろしいというような形でもって予算審議を進めているところに問題があると思うのであります。この問題は、国会予算審議あり方ということにも関連をしますけれども、私は、政府が、現在の言うならばマンネリ化しているこの予算案というもの、予算のスタイル、あるいは編成やり方、あるいはこの提出についての手続その他について、やはり根本的にここで改革をしなければならぬと考えるのであります。  そこで、時間もありませんから、最終的にこの点だけを要求しておきますが、私は、予算委員長におきましても、今度の予算案審議が済みましたあとで、ひとつ予算委員会としても、現存の予算審議あり方を根本的に改革をするための調査委員会というものを設けまして、そして予算案不在予算委員会ということのないように、あるいは場合によっては国会構成委員会構成というものまで変えなければならぬかと思いますけれども、そういうものまで含めて、やはり抜本的な予算審議あり方、これの改革案調査をするということを要望いたしますと同時に、また、政府に対しても、一体財政制度審議会というものがあって、そして予算の基本問題について審議をしているわけなんですが、いま申し上げたように、いまだにろくな資料も出さないような、そういうような形でほおかぶりをして押し通しているこういう姿を、これは政府としても改善考えてもらいたい。委員長はいま返答はできないでしょうが、あと理事会等ではかって、そのことをきめていただきたい。同時に、大蔵大臣あるいは総理から、この予算審議改革について、ひとつこれを取り上げて検討するという言明をいただきたいのであります。
  14. 植木庚子郎

    植木委員長 北山君に申し上げます。  暫定予算の各目明細は、昨日配付いたしてございます。もっとも、一部残っておる分につきましては、今朝提出がありましたので、お届けいたしてあります。ただし、その他の、予算そのものにつきましては、御指摘のとおり、まだ出ておりません。  政府側にお願いいたしますが、至急御提出方のお計らいをお願いいたします。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまの各日明細書は、これは大蔵省説明は、御承知のとおり予算書説明書は出ておりますが、これは慣例として各省から提出するということになっておりますので、いま各省にお願いして急いでおりましたが、きょうあたり全部出そろうのじゃないかというふうに思っております。  それから、予算審議についてのいろいろな改善策ということは、十分われわれも検討したいと思います。
  16. 北山愛郎

    北山委員 私は、ただあげ足をとるために言っているわけではないのです。一体この国会での予算審議がこういう姿で進められていいかどうか、ろくな資料もない、ただ金額だけで、去年よりも何%ふえたとか減ったとか、そういうことで、内容審議をしないで、積算の基礎も明らかにしないで、それでほんとうに良心的な審議といえるか、こういう点から申し上げているのでありまして、繰り返しますけれども、私は、こういう予算審議あり方であってはならないし、また、政府もいままでのような姿勢で、ろくな資料も出さないでほおかぶりをするというような形でこのまま進めてはならない。ここでひとつ政府及び国会においては、この予算審議というものがほんとうに実のあるような良心的な審議になるように、ひとつ改革をしてもらいたい、改善してもらいたいという気持ちから、私は言っておるわけであります。  各日明細は労働、郵政がまだ出ておらぬようでありますが、こういう点についても、これは怠慢だと思うのであります。それから、前にも問題になりましたけれども、公債の償還計画とかあるいは減債基金の問題は、前国会からの政府の約束でありますが、そういうものが出されておらないままで予算審議をやっておる。重ねてひとつ大蔵大臣から、こういう事態改革するために、さっそくこの予算審議の制度なりそういうものの改革を取り上げるという言明をいただきたい。
  17. 水田三喜男

    水田国務大臣 この予算審議あり方については、これは御承知のとおりいろいろ批判もあることでございますし、改善の余地は、私やっぱり十分あると思いますので、これは検討いたします。
  18. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、加藤清二君の関連質疑を許します。
  19. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ただいまの大蔵大臣の答弁では承服できません。なぜかならば、すでに予算の明細並びに公債におけるところの償還計画、減債基金なるものは、法律によって提出をせんければならぬということが明らかになっているはずでございます。この点について、大蔵大臣は一体どうお考えでございますか。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは昨日、この問題が出て答弁したとおりでございます。いわゆる償還計画というものは、もう御承知のとおり、審議会においてもいろいろ討議されましたが、要するに、これは満期償還であるか、あるいは期限を何年にするか、結局そういうことを審議の便宜に国会に提供するということが、あの財政法の命ずる償還計画である。それ以上のものは、これは実際においてできないということになっておりますので、その範囲の資料提出しておるということでございます。
  21. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 承服できない。あなた、財政法の第四条を読んでみてください。読み上げてみましょうか。第四条に「前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画国会提出しなければならない。」と明記されている。ところで、去年、戦後初めて公債が発行されまする場合に、この問題について私が福田大蔵大臣に尋ねましたところ、借りかえをする。きのうの八木君に対する答弁も、去年と同じ答えです。借りかえをすると言われただけで、何年先に償還するのやら、償還のための基金があるのやらないのやら、まるっきりわからない。これでは法律違反である、至急提出を願いたいと言うたところ、出ないので、この会はストップになってしまった。そこで緊急理事会ということになり、理事会において福田大蔵大臣も、時の委員長福田氏も、理事諸公も相寄り相集まって、今国会、この予算が参議院で通過するまでに必ず提出するからかんべんしてくれ、こういうことだった。そこで、かんべんということになって継続したわけなんです。ところが、今日に至るもそれが出ていない。またぞろ、このたびは八千億の公債を発行するというのに、その減債基金もなければ、返済計画もなければ、あるいは先年度分の剰余金の繰り入れもうたわれていない。明らかにこれは法律違反である。同時に、これは去年の約束違反である。怠慢のそしりを免れるわけにはいきません。さあ出してもらいたい。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 結局、そういうものの考え方について文章にして提出すると福田大蔵大臣が約束されましたが、それは文章にして、この二十五日に提出してございます。  それから、償還計画を出せと財政法で言っておりますが、これは十分研究された結果、結局財政法の求める償還計画というものは、さっき申しましたように、分割償還であるとか、あるいは満期償還であるとか、あるいは公債の期限を何年にするとか、こういうようなものを審議の便宜のために出す。財政法の求めるのは、大体その程度のものである、それ以外のものはできないというようなことで審議が行なわれたことも御承知と思いますが、この公債は、経済情勢いかんによって満期前に償還することもございますし、これは情勢によっていろいろやり方がございますので、その先を全部見通して、これをはっきり金額で計画を出すということは、事実上不可能だ、これはもう事実そうでございますので、財政法がそこまでのものは要求しないということになって、いま出しているのが、大体財政法の要求するものだろうと私どもは思っております。
  23. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 承服できない。そんな言いのがれで事が済むと思ったら大間違いだ。大体公債とは、国家が国民に借金をする証文なんで、借金の証文に返済計画がなかったり、支払い期日がないような、そんな証文がどこにありますか。田中大蔵大臣は私の質問に答えて、かつて、不渡り手形や不良手形は体刑に処するとまで言っておる。町の不渡り、不良手形に対しては体刑、刑罰、倒産、このようなことが行なわれておるにもかかわらず、それを取り締まる大蔵省、国家みずからが国民に借金をする場合に、返済計画はないの、支払いはいつするかわかりませんの、その元金はありませんの、こんなばかな話がどこにありますか。それで済むと思いますか。これで国民はこの公債に対して信頼が置けると思いますか。いつ返すんだ、七年たったら、期限がきたらどうするんだと言ったら、借りかえをすると言う。借りかえとは何だ。手形でいえば、これは支払い期日に落ちぬと、延期書きかえをするということなんだ。そんなところだったら、市中銀行といえども金を貸しませんぞ。それがよろしいとおっしゃるなら、今後中小企業金融に対して銀行法並びに証券関係法を改めてもらいたい。さあ、出してもらいましょう。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 ですから、公債発行について国民信頼を得るために、今度減債制度を新たに設けたということでございまして、この点については、国民の不信を買うことはないだろうと私は思います。  それからもう一つ、いま、前のこの委員会で加藤委員の御質問がございまして、福田大臣から答弁がございましたが、この考え方自体を文章にして、そうして御審議の一助にしていただくために、至急資料を出したいということを述べたのでございます。それに対してあなたも、そういうものを提出するということですから、私はこれを了として次に進めると言われた。当時においても、こうする以外には方法はないだろうということは、加藤委員も了とされたと思っております。
  25. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 冗談言っちゃいけません。そんな三百代言のようなことばが許されると思いますか。私は、その場を継続したい、これを再開したい、予算を通したいとおっしゃるから、やむなく許した。ところで、理事会を開いて——理事会の記録は別にあるでしょう、約束ですから。この四十一年度予算、去年ですよ、その予算が通るまでに必ず提出するからかんべんしてくれ、こういうことだった。したがって、ことしまた返済計画もなければ、減債基金もないので、理事会において、この問題がまた持ち出されますよと言った。それからすでに十日の余たっておるのに、いまだに出てない。出してもらいましょう。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年はそういうことで、確かに提出されなかったと思いますので、本年は三月二十二日に「公債償還の考え方及び減債制度について」というものを、去年のお約束で本年は提出しているということでございます。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いま大蔵大臣が出したとおっしゃるのは、それは説明書であって、計画書ではございません。基金ではございません。もしも出したとおっしゃるならば、基金が幾らあります、返済はいついたします、計画書であるなら、それがあるはずだ。期日と金額があるはずだ。はっきりしてもらいましょう。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、こういう公債の償還計画書というものは、事実上なかなかむずかしいものであるし、財政法の要求する計画書は、そういうものではない。結局、公債を発行する以上、何年の満期で返す予定のものかというようなことを求めているのが、財政法の償還計画というものであるというふうに、みな解釈をせざるを得ないということになっています。それ以上のものは、事実上できないと私は思っています。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 承服はできない。公債は、国家が国民に対する借金の証文なんです。その証文の中に期日もなければ、返済の基金もなければ、いつ幾ら返すという計画もない、そんなものがどこにあります。そういうことが世の中に通用するのですか。総理大臣に承る。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 そのために、減債制度というものができておって、今年度の予算の中にも百分の一・六というものが、すでに基金の中へ繰り入れられておる。個々の公債をどういうふうに返済するというような、こういう、いまおっしゃられるような公債の償還計画というものは、それを持たないところがどこにあるということでございますが、事実上、各国ともそういう形の償還計画というものは持たないということになっております。事実上これは持てないと思います。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 冗談言ってはいけません。あなたのところから発行している蔵券、米券、これだって一年以内に償還することが法律できちっときめられているがゆえに、それが守られてきておるのです。もう一度申し上げます。公債とは、国家の国民に対する借金なんです。その証文なんです。その証文に返済の期日がないということは、すでに証文の条件を欠くものなのです。もはや公債としての資格がないわけなんです。その期日のないものは、手形としても不良としてこれを体刑に処すると、さきの大蔵大臣田中角榮君は言っているわけなんです。それをせずに、ほっかむりしていこうたって、この公債は、あなた、何を目標としている。市中消化ですぞ。市中消化だ。市中消化とは何かといったら、国民に持たせるということなんです。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 公債に期限がないということはございません。公債には期限がございまして、期限のとき、国はこれを現金で返済するというのが原則でございます。
  33. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 七年の期限はあるけれども、七年たったら借りかえすると、きのう答えているではないか。そんなばかな話がどこにある、総理
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 公債には期限がございますので、期限到来のときにはこれは償還する。償還する場合には現金で償還する。その現金の原資を得るために、借りかえをすることもあり得るということで、返済することは必ず返済するというのが原則でございます。
  35. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あたりまえの話なんです。借りた金は返すにきまっておる。ただ、いつ返すかということを聞いておる。その計画がありやいなやと聞いておる。その計画を備えることが、財政法第四条にきめられている。だから法律に従ってそれを提出していただきたいと言うておる。何が無理であるか。借りかえをすると言ったが、それでは次に聞こう。あなたは借りかえすると言ったが、何回借りかえするのです。借りかえしたものはいつ払うのです。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 問題は、返済期日には返済をするということでございまして、返済には間違いございません。ただ、そのときに減債基金が不足して、あるいは一般会計からその原資を入れることもございますし、そうでなくて、借りかえによってその資金を調達することもございましょうが、いずれにしろ、公債を発行した以上、期限に、満期に返済するということについては間違いございません。
  37. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三百代言はもう承りとうない。こんなことで時間はとりとうないから、いますぐ出してもらいたい。法律に従って出してもらいたい。政府みずから法律を守ってもらいたい。みずからもって範を示してもらいたい。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ加藤君の言われることも理解できないことはございませんが、この際、私が特に発言を求めましたのは、いま大蔵大臣との間の技術上の問題ではなくて、一体公債の返還、これはどうしているのだ、こういうお話ですが、しかし、これはいま大蔵大臣が申しますように、公債に支払い期限のない公債は発行されてない。それぞれのものはみな七年なら七年の間に払うようになっておりますから、この問題はいいと思います。そこで、これから先の、それを支払う原資がないだろう、原資の計画は一体どういうようにするのだ、こういうお話だと思います。ただいまその問題を明確にしろ、こういうことのようですが、私、いま考えますのに、なかなかむずかしいことのようです。そこで、いろいろ財政法の解釈等において、昨年の四十一年度の予算書、それが一体どういうようになっておるか、かように考えますと、大体四十一年度を踏襲したのが今年度の予算書のように思います。で、この四十一年度がとにかく済まされた。それは済ましたのではない、がまんしたのだ、こういうようなお話ですが、私は、やはり予算編成上の手続とすれば、四十一年度と本年度が特に変わったものだとは思わないのです。先ほど来北山君からも、審議等においてさらに改正を加える要があるのではないか、こういうような一般的なお話がございましたけれども、公債の問題については、昨年同様の予算説明並びに皆さんに差し上げました資料、これでひとつ御判断を願いたいと思います。ただいまおっしゃることはよく私もわかりますから、さらにくふうはするだろうと思いますけれども、ただいまどうも意見が相互にこう食い違っている、さように私は聞きました。
  39. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、あまりこの問題で時間をとってはいけませんので、私は、この際この問題にピリオドを打ちたいと思いますが、要は、私が要求しているところの償還計画、減基債金、これは財政法第四条に基づくところの公債発行に対する不可決な条件なんです。その条件が満たされていないということは、政府みずからが法律を破るということである。そういう範をたれるということは、やがて、いま市中に横行しているところの融手その他、これを一そう誘発する原因になるから、あえて私は申し上げるわけなんです。政府はみずからもって法律を守り、みずからもって範をたれ、不良手形、悪質手形の一掃に努力すべきである。そういうやさきであるから申し上げる。いずれ本件については、私が質問台に立ちましたおりにあらためて質問をする。つまり、質問と、要求を留保して、この際は引き下がります。
  40. 北山愛郎

    北山委員 現在の公債の問題は、実は先ほど私が申し上げたような予算、財政制度の改革にも関連するわけであります。実は地方の市町村や府県等におきましても、起債をいたしますときには、償還年次表をちゃんとつけるのです。最高利率を含めた議決をして借金をするのです。ところが、国の公債については、そういうふうなきちんとしたやり方をやっておらない。いいかげんに借りかえなどということを言っておりますけれども、借りかえというのは、新規の公債を新たに発行すると同じなんです。そんなルーズに借りかえ借りかえで、政府限りで国債整理基金特別会計の中で適当に運営してきたところに間違いがあるわけでありますから、こういう点も含めて、ひとつ政府としては御反省を願い、また改革をしてもらいたい、間違った点は直してもらいたいと思うのです。われわれ国民が不安に思うのは、毎年毎年このように多額の公債を発行するために、政府の償還年次表を見ると、昭和四十七年には二千五百七十七億のものを返さなければならぬ。四十八年は七千四百五十七億、四十九年には九千十八億というものを償還しなければならぬという年次表になっているのです。一体九千億のものを一年度でもってどうするのか。毎年毎年公債を発行していくならば、これは累積をしていってどうにも始末がつかないじゃないかということで不安に思うわけでありますから、そういう不安がないような償還計画というものを、いまこうして発行しても、このようにして十分将来これを処理できるのだという計画を出すのが政府責任であり、また国会責任でもある。こういう意味でひとつ御反省を願い、改善をしてもらいたいとも思うわけであります。  公債について一つお伺いしたいのでありますが、去年の稲田大蔵大臣が公債発行した場合には、公債発行の理論として、いわゆる公債というものを財政政策の中に導入する理論として、いわゆるフィスカルポリシーというものを入れた。景気が悪いときには公債を発行して景気を刺激するのだ、景気がよくなったら、好況のときにはこれを抑制するというようなことを、その公債発行の理由として入れられたわけなんです。水田大蔵大臣は、この福田前蔵相の方針を踏襲なさるのか、これを変えられたのか、この点を承りたいのです。
  41. 水田三喜男

    水田国務大臣 変えてはおりません。これを踏襲して、やはりフィスカルポリシーを私はやっていきたいと思っております。
  42. 北山愛郎

    北山委員 そうすると矛盾するわけなんです。現在は、経済情勢が昨年とはまるきり違って、この委員会でもすでに議論のあったように、また政府が言っておりますように、景気はむしろ過熱が心配されるような状態になっているというのでありますから、そのフィスカルポリシーから言うならば、去年は公債を発行したが、ことしは当然引き続き発行するのではなくて、あらためてこの情勢の中で検討するというのがフィスカルポリシーだと思うのです。ところが公債をふやしている。七千三百億を基準にして七百億ふやしたということだけでなしに、実質すでに四十一年度の公債は五百五十億ふやすというような措置をとっているはずなんです。そうなると六千七百五十億になる。六千七百五十億に対して八千億でありますから、千二百五十億ふえているわけです。景気がよくなると減らすべきものをふやしている。それ以外に、政府保証債を千百億もふやしているのです。合わせて二千三百五十億公債並びに政保債をふやしている。これじゃ、いま水田蔵相の言った、前蔵相の福田さんの財政政策を踏襲した、公債政策を踏襲したということにはならないのじゃないですか。ですから私どもは、少なくともこの暫定予算の中に公債を含ますべきじゃないのだ、今年は今年で、公債を出すか出さないかはあらためて十分検討の上でやるべきである、そういう意味で、この暫定には含めるべきでないというのが社会党の主張であります。その点はどうなんですか。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、財政需要というものは非常に多い。その多い財政需要の中で、やはり私ども考えなければならぬのは経済の均衡発展であり、この均衡発展を害しているいろいろな要素が、日本の社会資本のたちおくれとか公共投資の不足とか、こういうようなものが大きい影響を与えておるのでございますから、私どもとしては、こういうものをできるだけ推進するという必要にやはり迫られておる。こういうことを全部考えますと、やはり必要な財政需要はこれを満たさなければならぬということと、一方、こういう経済情勢のときでございますから、経済に刺激を与えないように予算のワクを抑制するとか、いろいろなことを考えなければならぬ。もう一つは、減税をどうするかということでございますが、昨年、自然増があまりないときにも三千億をこす大きい減税をやっており、したがって、その影響がまだ明年度にも及んで、相当あるべき自然増にやはり千億円くらいの影響が与えられておるということから見まして、私どもは、できるだけ明年度は減税を控えたいという考えすらございました。しかし所得税の現状を見ますと、どうしてもこれは高い。所得税の減税だけは思い切って明年度もやる必要ありと考えましたために、そういうものと公債発行額というものとの関連で、もう若干減らす余地はあったかもしれませんが、減税を私どもは一千億以上やるというからには、大体八千億の国債発行が妥当であるという判断をしたわけでございます。  額が多くなったというお話でございましたが、しかし、経済がこれだけ規模が大きくなり、財政規模というものが違っておるときでございますから、問題は、一般会計の公債への依存率をどうするかが現実の問題であって、依存率を私どもは減らすということについて非常な苦心をしてこういう予算編成をやったということでございまして、私は、もう当初予算編成それ自身が相当フィスカルポリシーを取り入れた編成になっておるというふうに考えております。
  44. 北山愛郎

    北山委員 それは、大蔵大臣の答弁はごまかしですよ。私の聞いていないことまで言っておられるわけだ。私は、いわゆる大蔵大臣が言うような安定成長をするために——おそらく福田前大蔵大臣は、いわゆるフィスカルポリシー、景気の悪いときには公債をどんどん発行して景気を刺激するのだ、景気がよくなったらまたこれを抑制するように、公債なら公債を減らすなりなくするようにするのだ、これがフィスカルポリシーでしょう。安定成長のためにはそういうことが必要だというのが、去年のいわゆる公債発行の導入の基本だったのです。ところがいまの大蔵大臣の話は、話が変わってきているわけだ。逆なんです。いわゆる財政需要がほかにもあるから公債を発行するのだ、こういうことになってきて、変わってきておる。私は、大蔵大臣は答弁しなくても、腹の中じゃ、自分の話は矛盾しておるとよくおわかりだと思うのです。  そこで端的にひとつ、時間も惜しいですから、お答え願いたいのですが、いわゆる情勢によって、ことしこの時点でもって昨年よりも二千三百億も上回るような公債、政保債を出すということは、やはり私は誤りだと思う。これはいわゆるフィスカルポリシーからしても誤りだと思う。そこで、今後の情勢を見て国債を減額するなり何なりというようなことをお答え願いたいのです。そのほうが率直でいいですよ。
  45. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはもういままでの財政演説で申し上げましたとおり、情勢によって十分弾力的な運用をする、これだけはしっかりやりたいと思っております。
  46. 北山愛郎

    北山委員 大蔵大臣は意地になっておることはわかりますが、しかし誤りは誤りですから、これはどんどん直さなければならぬ。  それからもう一つ。きのうも公債の問題が出ましたが、やはり一年おくれに買いオペの対象にしていく、あるいは日銀の担保にしていくということになれば、ことしの公債の市中消化の分は、昨年発行したものを日銀が買いオペをして、資金供給をして、その命でことしの分は消化をする、また来年は、ことしの分を買いオペをしてやっていくということで、初年度しかほんとうの意味の市中消化にはならない。どんどん日銀に累積をしていくという危険性を感ずるわけだ。いわゆる公債発行によるインフレの危険性を私どもは感ずるわけです。ですから、きのうのような話をそのまま聞き捨てはならないわけだ。買いオペなり担保に一年過ぎたものはするというのでは、これは何の歯どめにもならない。われわれの心配しておったことを政府は実行する、日銀は実行するということでありますから、そういう点はどうするんですか、その点をお伺いしておきたい。  それからさらに、先ほど加藤委員が言われたような、償還計画というものはひとつあまりこだわらぬで、いま申し上げたことで大体わかると思うから、やはり国民が安心するような、いま公債を発行するが、これは漸次減らしていってなしにするのだとか、そういうふうな計画をひとつ出してもらいたいと思うのです。いまお話しのあったように、社会開発のために公債を出すのなら、これは毎年毎年何千億と出すということになる。そうなれば、いまお話し申し上げたように、七年先ですから四十九年は九千億それから五十年には一兆円をこすでしょう。そういうことになってしまう。そういう不安を持っておりますから、そこでわれわれが償還年次計画というものを要求するわけたんです。そういう点は、率直に国民の納得できるような計画を出すということを言明してもらいたいと思うのであります。これは総理からお答え願いたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御心配のようですが、その一番の御心配は、これは何といっても、イレフレになるのじゃないか、そうして経済自身をぶちこわすのじゃないかと、こういうお話だと思います。したがいまして、私どもは、この公債を発行する当初から、インフレに対しては、インフレにはならないようにあらゆる努力をいたします、また経済は生きものであるから、その運用においても十分弾力的な運用をいたします、こういって実は申し上げてまいりました。したがいまして、ただいまの御心配は、そういう点、これについては同じような心配をしておりますから、政府国民の期待に沿うように、この上とも努力をするつもりであります。  また、加藤君からの先ほどの話も引き合いに出されましたが、私は、現在の公債自身、これはもう国民に償還をしゃんと約束しているものでありますし、その償還について国民は何ら疑っていないと思います。こういうことがやはりインフレ防止、もしもここらに信用がないならば、これはやはりインフレになるわけでございます。その問題と真剣に取り組んでまいるつもりでございますから、この上とも、北山君からも、こういう事態について御注意をいただくようにお願いしておきます。
  48. 北山愛郎

    北山委員 すでにいままでの審議の中でも、この消費者物価、物価の値上がりについての政府の取り細みというのはまことに不熱心だということがわかっておりますが、私は、ここでこの問題に深く立ち入る時間はございません。しかし、ただ一つ指摘しておきたいのは、この銀行信用、その背後には日銀がおりますが、そういう信用を創造して、その金でもってどんどん設備投資をやってきたという、この日本のいまの三十年来の経済成長政策、ここからしてやはりインフレの原因というのは、またインフレの様相というのは、すでに公債発行前からあらわれておったわけであります。そういうことは、この通貨の量と国民総生産とのギャップの中にも出ているわけなんです。昭和三十五年と三十九年を比較してみますというと、現金通貨と預金通貨の量の比較は二・三倍になっているんですね。ところが、国民総生産のほうは一・八倍にしかなっておらぬ。いわゆる国民の経済活動を上回る通貨の増発という結果になっている。これは三十年からとってみてもそうなんです。そういう点がいまの物価高の大きな原因になっている、こういうふうに思うんです。特にその要因となっておった、その点についての政府の見解を聞けば長くなりますから私は聞きませんけれども、特に地価の値上がりですね。地価対策というのは、もう数年来非常に活発に行なわれました。私の記憶では、たしか昭和三十四年だったと思いますが、菅野さんが企画庁長官の当時、この場でもって地価対策のことをお尋ねしたことがございます。それからもう何年かたっているわけです。政府でも審議会等をつくって、あるいは閣僚の協議会もつくって、いろいろ取っ組んでいるのですが、この地価対策について一体どういうふうに具体的にやるのか、これをお聞きしたいんです。これは建設大臣ですか。
  49. 西村英一

    ○西村国務大臣 地価の問題でございまするが、産業、人口が都市に集中いたしましたので、住宅のための宅地その他の諸目的で宅地の需要が非常にふえまして、非常に需要がふえましたために地価の暴騰を来たしておるのは御指摘のとおりでございます。しかし、これを解決する道というものは、一つや二つのきめ手はないわけでございまして、政府は従来からもいろいろな政策をもってこれに対処しておりますが、今後もやはり総合的な政策をもってやはり対処しなければならぬと思っておる次第でございます。  いままでとられ、また今後もとりたいという方法は、とにかくやはり宅地の不足でございまするから、公的機関によって宅地を大規模に取得する、あるいは宅地を造成するというようなことを第一に考えなければならぬと思うのであります。そのためには、来年度の予算におきましても、日本住宅公団やあるいは公庫等におきまして、そういう資金を多少よけい増大をいたしております。  それから、第二番の問題は、既成市街地の問題でございます。これにつきましては、やはり土地を高度に利用する、立体化を進めるというようなことを計画しなければならぬと思っています。いままで政府といたしましても、工場等のあと地を買いまして、これを宅地用として立体的に使うということを考えております。いわゆる都市の再開発ということであります。この問題につきましては、いろいろな御意見もございまするが、ただいま都市再開発法を、できれば提出したいということで検討中でございます。  それから、もう一つの問題は、都市の周辺にいろいろ無計画にばら建築ができる。それで、無秩序な都市ができつつあるのが現状でございます。このためには、やはりどうしても在地の利用計画考えなければならぬと思っています。しかしこの問題は、いままでの都市計画法の範囲ではできないのでありまして、新たなやはり立法を考えなければならぬ、かように思っておる次第であります。  それから、もう一つの問題は、この土地の取得の制度でございまして、この点につきましては、やはり土地収用法を改正するというのが、去る五十一国会政府提出いたしまして、衆議院は通ったのでございまするが、参議院で審議未了になりました。あくまでもやはり適正な値段で買う。したがいまして、収用法のこの主目的も、やはり事業の裁定の時期をもって価格としなくて、事業の計画の時期をもってその値段にきめたいというようなことで、この土地の公共投資によるところの利益をうまく配分する。以上述べましたようないろいろな方法を総合的に考えまして地価対策に対処したい、かように考えておる次第でございます。
  50. 北山愛郎

    北山委員 これはまるっきりの失望です。いまの段階に至ってそういうふうなまことに素朴な答弁をされるのでは困ると思うのです。一体土地需要の中に、ほんとうに自分がうちを建てたいという人が土地を買う需要というのは幾らあるか。実際はそれは一部なのです。そうではなくて、それ以前に土地を買って金をもうけようといういわゆる土地投機、あるいは不動産会社が投資をする、こういうものがものすごくふえている。一つの統計を見ると、特に会社、法人が、土地の値上がりをねらって土地をどんどん持っているのです。昭和三十年に法人、企業の土地資産額というのは千五百五十三億しかなかった。四十年には二兆五千億にはね上がっているのです。自分では使いもしないような土地をどんどん会社が買っている。そしてその値上がりを待っている。また一方では、その土地投機をやるいわゆる不動産業というものが大きく発展をしている。不動産会社の売り上げというのは、昭和三十五年にはたった七百三十九億であったものが、四十年では四千五百億にふえている。こういうふうにして、大臣がお答えになったように、うちを建てる人の需要が多いからなんというのは、これはもう素朴な答弁ですよ。土地を値上がりさせるのは、このような土地を商品と考えて、その値上がりによって利益を得ようとする投機資金、これが大きくふえておる。こういうようなことは、もうすでに周知の事実なんです。だから、それに対する対策を立てなければならぬ。政府の宅地開発なら宅地開発供給事業なるものが、かえって逆にその周辺の土地の値上がりを誘発しているというのが事実なんです。ですから、もっと実態に合うような施策をとらなければならぬ段階である。一体総理はこの問題をどう考えますか。内閣の中には地価対策の協議会なんかもつくって、一昨年ですか、やったはずです。また、当時の瀬戸山建設大臣は、土地は商品ではないという勇ましいことを言われましたが、しかし、それが実際の政策の上に少しも実現されておらない。そしていまの段階になって、いまのような建設大臣の答弁では、全く納得がいかないわけです。総理はどのようにこの問題を処理されようとするのか、ひとつ総理考えを聞きたいのであります。
  51. 西村英一

    ○西村国務大臣 ぼくの答弁に失望したと言う、失望せぬでください。いま北山さんおっしゃいましたこと、これは私一つ抜かしたのでありまして、もろもろの方法を総合してやるということなんでして、いまあなたがおっしゃいましたのは、宅地建物業が非常に弊害を来たしておるということでございます。この問題につきましても、宅地建物もおびただしい数でふえています。しかし、これはいまの宅地建物取引業法がことしの四月から許可制になる。いままでは登録制でむやみやたらにできたのです。それで悪宣伝をしたのです。したがいまして、今回も、ただいま検討いたしておりますが、やはり誇大広告をしないように、それから売買をするときに、その土地の売買に対して明瞭な契約をする。いままでの業法に非常に手抜かりなところがたくさんあるのです。こういうこともやはり検討して改正をしていきたいということを考えておるのですが、要は、私の言わんとするところは、やはり一つや二つのきめ手はない、しかしあらゆる手をもってこの地価対策に対処しなければならぬということを私は言いたいのでございます。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近消費者物価、これはたいへん物価問題はいまの政治の課題でございますが、その物価の問題の根幹をなすものが地価の問題だ、こうもいわれております。それほど地価対策というものは、物価問題と真剣に取り組めば組むだけに、どうしても解決をしなければならない問題だ、かように政府は思っております。そこであらゆる努力をしたのでございますし、また、ただいま建設大臣から詳細に御報告、説明もいたしました。  そこで、私考えますのに、土地を何とかしてふやさなければならない。その土地をふやす方法についてあらゆる努力をいたしておりますが、これが一つと、もう一つは、土地の利用計画というか、これはまたくふうすべきじゃないか、かように思います。これは量をふやすことにも通ずる、こういう意味で土地の開拓、都市の再開発、いわゆる高度利用、こういう問題が、そこで研究というか、これからの対策の課題になってくるわけであります。しかし、こういうような事柄をいたしましても、土地を積極的にふやすといっても、これは限度がございますし、また、土地の取得を在来のように自然にまかしておいたら、どうも値段がどんどん上がる、かようにも考えられますので、そこで何か土地を取得するいい方法はないか、またそれが地価の値上がりを押える上に役立つのじゃないだろうか、かようなくふうもしたわけであります。そこで収用法の改正をひとつはかろう、これは前国会からの懸案に実はなっております。この国会においても、同じような考え方でこれと取り組んでまいるつもりであります。しこうして、ただいまもお話がありましたように、これは政府だけで簡単に効果をあげる問題ではないし、各界、各方面の御協力のもとに、物価問題の基盤、基本をなす問題がこの地価の問題だ、かように思いますので、その意味で真剣に取り組んでまいるつもりでございます。
  53. 北山愛郎

    北山委員 政府考えることは、総合施策の中で先行しているのはいわゆる宅地開発だ、宅地の供給をふやすのだということ。もう一つは、権力を使うということですよ。強権を用いて土地収用法みたいなものをやる。土地利用計画も、これはほんとうにやろうとすれば、実は一つの権力です。たとえば、東京のある周辺をグリーンベルトにしようとすれば、その土地が値下がりをしますから、その地域人たち反対する。そのグリーンベルトに指定されない地域の人と指定された人との不公平が非常に生ずるわけですよ。ですから簡単な問題じゃないのです。地図の上に線を引けばいいという問題じゃない。先日この委員会で宮澤経済企画庁長官が、この土地利用計画は一体どこの所管だかわからぬような、自信のないようなお話をされておりましたが、宮津さんの弟さんだと思いますが、土地利用基本法というような案もいろいろつくっておられる。土地利用計画を、建設省なりどこなりの各省の中で、どこで一体進めてどのようになっているのか。どういう考えなのか。社会党としては、実は十年も前から国土総合利用調査要綱というものをつくって、土地利用計画あるいはそれに基づく土地利用区分というようなことで、実際の相当具体的な手続まで含めた政策を持っているわけです。しかし、こういうことを一体政府はどの役所でどのように進めていくつもりなのか。その点を経済企画庁からでもいいですが、お聞きしたいのであります。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに先日、土地利用計画につきまして少し私の答弁が歯切れが悪かったと思うのでございます。と申しますのは、この問題、宅地審議会の答申でございますが、これは二つむずかしい問題がございまして、一つは、長年の習慣であったいわゆる私有権の問題についてかなり思い切った提案をしているということ、それからもう一つは、ただいま仰せのこの問題についての各省の権限が非常に複雑になっておるということ、その二つの点でございます。それで、実は同じような提案は、物価問題懇談会でもなされておりますので、私の立場といたしましては、ただいま閣内で非公式に関係各大臣に、宅地審議会の勧告についての感触を伺っておるところなのでございます。そうして、できることならば、先ほど御指摘の地価問題閣僚協議会でこの提案をひとつ受け取って検討してみて——相当大きな問題を含んでおりますので、できるものはひとつ早急にやっていくというふうにいくべきではないだろうか。その下相談のようなことを、私も一人として取りかかったところなのでございますが、やはり中心になりますのは、従来の都市計画法の関係から申しましても建設省であろうと思いますが、各省の権限が非常に混淆いたしておりますから、その点についてはやはり閣僚レベルで整理をすることが必要なのではないだろうか。ただ、これはまだ非公式の動きでございますので、私としてはそんな考え方をいたしております。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕
  55. 北山愛郎

    北山委員 この問題は、いまの段階で議論をし、お尋ねをしても、政府の中には地価対策について具体的なものがさっぱりない、土地収用法を出すということです。これでは時間を食うだけですから先へ進みますけれども、しかし、土地利用計画にしても、土地収用法にしても、すぐ強権をもって財産権を抑えよう、こういうやり方はまずい。その前提となるものは、やはり国民の中の相互の公平だと思うのです。収用法にかかったものが損をして、その周辺のものはその値上がりによってもうけるということでは、そういう政策では通らない。ですから、収用法にしても、あるいは土地利用計画にしても、それをやる前提としては、土地の投機、思惑によって金はもうからないのだという条件をつくる必要がある。いわゆる藤波所得なりを確実に捕捉をするとか、あるいは空間地米利用税をつくるとか、そういう施策をまずやって、むしろ公共用地として差し出したほうが経済的に見ても有利であるという条件をつくらなければだめだ。ほかの条件はそのままにして、いまのように土地を買えばもうかるといったような状況をそのままにしておいて、ある一定地域だけを、これはほしいからと権力でもって収用するんだというやり方は、これは政治としてはとらないということです。そういう点について十分検討していただきたい。まだ政府の宅地対策というものは熟しておらないというような感じを持って、まことに、この点は、不満でございます。  時間がありませんから先に進みますが、その次は税の問題であります。  これは冒頭にわが党の横路委員が指摘した点でありますが、いわゆる配当利子の分離課税をさらに延長するという問題、この配当所得などについては、五人の標準世帯で、配当だけで何も仕事をしないで暮らしているという者に対しては、二百二十六万五千円まで所得税はかからない、こういうことなんです。ところが、これが給与所得者、勤労所得者で二百二十六万も所得があれば、所得税だけでも二十七万六千円かかる。住民税はさらに十一万三千円かかるというようにいわれておるのですが、この事実を、数字を明らかにしていただきたい。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 それでは局長から詳しい数字を申し上げさせます。
  57. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 お答え申し上げます。  配当所得者二百二十六万五千五百二十九円までは所得税はかかりません。住民税は四万九千円でございます。給与所得者ならば所得税は二十八万三千円、住民税は十二万三千円、合計四十万五千円でございます。同額の事業所得者ならば、所得税が二十八万九千円、住民税が十三万五千円、事業税が九万四千円、合計五十一万八千円でございます。
  58. 北山愛郎

    北山委員 いまの数字なんですが、私は総理にお伺いしたい。一体、働いている者が四十万も税金がかかるのに、働かないで、そして配当だけで生活をしている、しかもこれは資産家にきまっているんですね。二百万以上の配当所得を持つ者は、株だって時価で四千万円くらいの株を持っておる、もちろんうちも持っているという資産家ですよ。毎日何もしないでのうのうと暮らしておる。そういう者は所得税が一文もかからない。そうして、給与所得二百万といえば多いのですけれども、かりに高等学校を出て一万七千五百円くらいの月給を取れば、直ちに所得税も住民税もかかってくる。こういうことでいいかということです。私は、この問題は、前にもこの委員会で取り上げたことがございますが、いまだにこれは廃止されておらない。こういう不公平を続けていって、ほんとうに公平な政治と言えるか、これをひとつ総理から承りたい。
  59. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう昔から有名な問題になっておるのでございますが、これは御承知のようにシャウプ税制の改正のときからの問題でございまして、結局、法人税というものの性格をどう見るかということと関連しておる。この前お答えしたとおりでございまして、法人税というものが個人株主の配当に対する税の先払いという性格のものであるというふうに見まして、この配当についての控除が株主にあるということで、一応シャウプ税制において理論的な構成はできておったのでございますが、現実がこういう結果になっておることがはたしていいか悪いかということになりますと、これは当然改正すべきだと思っております。しかし、この改正は、結局、法人税というものを根本的に検討しなければならぬという大きい問題とつながっておりますので、これはそういう意味で長期税制のあり方についての検討の際に、あわせてこの問題を関係機関で検討してもらうということになっております。
  60. 北山愛郎

    北山委員 いまのようなことは、もう何年も前から問題になって、税制調査会では、何回も何回も検討しきっているんです。悪いことだと大臣は言っているでしょう。あまり好ましくないでしょう。総理だって、これは公平ではないと思うでしょう。こんなことが行なわれるなら、働く者はほんとうにまじめに正直に働く気持ちを失いますよ。財産を持っておる者は税金は安くていいんだ、働く者からよけい税金を取るんだ。日本の国を立てておるのは、やはり勤労者だと思うのです。労働者や農民が働いておるから、われわれ毎日の生活が立っていくのです。資本家なんかおらぬでもいいわけでしょう。そういう者にはこのような、まるっきりの優遇措置をそのまま続けておって、いま始まった問題ではないように、前から議論になっておる問題をいまだに存続さしておる。一体、どういう気持ちなんですか。いま大蔵大臣は、いわゆる法人擬制説のことを言われましたが、その法人擬制説なんか、もうすでに破綻しているのですよ。それに矛盾したことをどんどんやっているのですよ。しかも外国では、私は例を調べてみたのですが、アメリカでもイギリスでもドイツでも、フランスでも、個人の配当所得というのはみな総合課税になっておるんですよ。また、利子所得についてもほとんど総合課税ですね。なぜ日本だけこれを分離課税に相変わらず続けていくのか。しかも今度は、あと三年間続けるというのです。これは、自民党が金持ち階級の政党であり、資本家の政党であるからなんですか。総理から私は聞きたい。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣が答えましたように、この問題はもう、長い問題でございます。また、ここであなたと論争するつもりもございません。もういま結論が出る段階でございまして、税制調査会も十分これを審議いたしまして、そして、やはりこれがいま直ちに非常な画期的な改正というわけにもいかない。税制あたりはそういうものです。大体、過去からずっと長く続いてきておりますから、一ぺんにそれを変えるということは、たいへんな変化がある。そういう意味で、漸次改正していく、こういう答申をしております。私どももその答申を尊重して、今回改正に踏み切った、かような考えであります。どうかひとつ御了承をいただきます。
  62. 北山愛郎

    北山委員 これは税制調査会の問題じゃないんですよ、ほんとうは。政治姿勢の問題ですよ。一体、政府自民党は、こういう政治を続けておいていいのか。あるいは、一時的にはシャウプ税制の問題もあったでしょうし、あるいは資本蓄積という名分もあったかもしれない。しかし、いまはもうないですよ。もうとうの昔にほんとうは廃止しなければならぬのです。前に田中大蔵大臣のときにも私はこの席で言ったのですが、もう何年も前の話ですよ。いまだに同じような答弁をしておる。やはり自民党は、あるいは政府は、資本家の味方だ。消費者米価を上げても金持ち減税だけはやりたい、こういう気持もであることがこのことで明瞭だと思うのです。一体、利子配当の分離課税のためにどれだけ国が減収になるかということを、ひとつ主税局長から述べてもらいたい。
  63. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 四十一年度の減収見込み額につきましては、すでに国会に御提出申し上げておるのでございますが、少額貯蓄を除きますと約六百億円でございます。
  64. 北山愛郎

    北山委員 私は、これは相当内輪な計算だというふうに考えるのであります。たとえば利子所得課税、それから配当所得の分離課税のために、銀行の預金については、いわゆる無記名の貯蓄というものが相当ある。六千億以上もあるわけです。それ以外に匿名の貯蓄もある、あの森脇将光の問題を見ましても、七十七億円の脱税だといっているのですが、調べてみると千何百通かの預金通帳を持っている。たくさんの無記名なりあるいは匿名の通帳をあっちこっちの銀行に分けて、そうして脱税しているわけです。これは分離課税の結果ですよ。ですから、そういうものも考えに入れますと、相当ばく大なものを、こういう脱税者を含めて分離課税のために国が損をしているのです。それだけの恩典を与えている。不当なる優遇です。こんなものは即刻やめなければならぬですよ、税制調再会の答申を待つまでもなく。しかも税制調査会の答申は、去年の十月の答申においても、所得税については、すべての所得を総合することが本来のあり方であって、利子配当の分離課税は所得税の本質をゆがめるものだという中間報告をやっているのです。その後、どういうわけだかこの税制調査会が軟化をして、昨年の十二月の二十三日には、漸進的な指貫を講ずるという答申に変わってきているのです。しかも、これはことしの一月一日の毎日新聞の記事でございますが、ちょうど十二月の十七日に、自民党の蒲田幹事長が経団連に対して例の二十億円の選挙資金の番付を要請した。そうして十二月の二十日には、自民党政調の中の財政部会の証券小委員会に証券業者の団体の代表も列席をして、いまの利子配当所得の優遇措置をさらに延長すると決定したということが報ぜられておる。ちょうどその同じ日に、経団連が二十億の政治献金を決定したということで、毎日新聞がその問題を取り上げておるのです。私はこの席で、その新聞だけの記事からそれらの因果関係があるとは申しませんよ。だけれども、これは疑われてもしようがないのです。財界から二十億円の政治献金をする。そのかわりにというか、それに応じて、また数百億の金持ち、資産家優遇の利子配当所得の優遇措置をさらに延長するという決定を自民党がやる、これを毎日新聞が書いているのです。そしてみんながこれを疑っているのです。こういうことこそが、私はいわゆる黒い霧としていまの政治あり方に対する批判を生むゆえんだと思うのです。こういう点から考えましても、私は、ひとつここでもってもっと明確な答えをしていただかなければならぬと思うのです。たとえば、ことしは無理だけれども、来年からやめるならやめるとか。そうでないと、これでは働く国民大衆は承知しませんよ。どうですか、総理大臣。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように、これは政策の必要性からきた特例の措置でございますが、はたして貯蓄増強という政策的な効果を果たしているかどうか、これはいろいろまだ議論の余地があると思います。しかし、すでに昭和二十八年から利子の分離課税が行なわれて、十何年という間これは実施されてきているものでございますから、国民の貯蓄心というものとは非常に結びついていることは事実でございますので、ここにきて一挙にこれを廃止することがいいか悪いか、非常に問題でございますので、私どもは、やはりこれは漸進的に対策することがいいというふうに考えて、今回漸進的な措置をとることにした次第でございまして、一挙にこれを廃止する影響というものは、私はやはり相当大きいものがあると思っております。
  66. 北山愛郎

    北山委員 そんなことを言ったら、いつまでたってもこれは廃止できませんよ。いままでそういうチャンスはたくさんあったのです。それをずるずる引き延ばしたというのは、やはり資本家擁護の制度を続けていきたいという気持ちと、それから、そういう圧力があったに違いないと思う。  いまの貯蓄増強の問題でありますが、全国の銀行の預金高を見ると、十万円未満、まあ銀行に十万円未満といっても、大衆はほんとうは銀行なんか使いませんから、これも限られた人だと思うのですけれども、一兆三千三百三十八億です。ところが一千万円以上の預金は、口座の数からすれば百分の一、二百分の一ですよ。金額からするというと九兆七千六百八十二億ですよ。問題にならないですよ。零細な貯金というのはふえないで、いわゆる一千万円以上も一口でもって預金をする連中ですから、これは金持ちにきまっている。そういう連中の分が十兆円にも及ぶというような預蓄増強政策というものは、金持ち階級をどんどん肥え太らせるという結果になっている。このような不公平な、他の資本主義の先進国ですらもやっておらないようなことをいつまでも続けている。私は、これは断じて許せないと思う。社会党としては、これは法案の中でも出てまいりますので、断固としてこの法案の阻止をやります。いま出ておる法案の中でも、社会党賛成して通したい、通してもいいという法案が多数あります。先ほど申し上げたとおりです。ところが、この法案だけは断じて許せない。こういうような不公平な制度は、国民の名において、私は絶対に、社会党は断固として反対をし、今後の国会の中でも、これを阻止するために全力をあげるということを私は宣言をいたします。こんなことを許しておいてはいかぬですよ、いかに自民党が保守政党であろうが。こんなふうな金持ち優遇の措置をやっておる。しかも、それ以外に株の譲渡所得は取らない、あるいは会社が受ける配当については益金算入をしないとか、あらゆる手でもって大きな会社やああるいは金持ち階級を保護している。自民党というのはこういう政党なんですか。それならば階級政党じゃないですか。国民政党とは言えないでしょう。実態がそうじゃないですか。私は、この点については断じて納得ができないということを強く申し上げる次第であります。  時間がございませんから先にまいりますが、短い時間ですけれども、私は外交問題について一言だけ聞いておきたいのであります。  それは安全保障の基本理念の問題でありますが、昨年の六月ですか出されました自民党の安全保障に関する調査会の報告を見ておりますというと、自民党は、防衛といって国を守ると言うのですが、一体何を守るのか、私は疑問になってきた。ということは、まあ私どもの通念からすれば、防衛なり安全保障というのは、国の安全を守る、あるいは国民の生命財産、そういうものを守るというのが防衛あるいは安全保障の基本理念でなければならぬと思うのですが、中間報告の中には、安全保障の理念として、自由民主政治社会体制を守る、その脅威となる社会主義、共産主義は不倶戴天の敵であるというようなまことに——イデオロギーですね、国土や国民を守るんじゃなくて、一定の社会体制、政治体制を守るということが主眼に置かれているような印象を受けるのです。総理も同じような見解を持っておりますか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 北山君のお説とも考えられない。防衛体制というか、安全を確保するという、それに疑問を持たれたということは、一体どういうことなんですか。いま言われるようなイデオロギー的な問題じゃございません。私どもは、この国土、この国の独立を守る、こういう立場から安全保障のいろいろの問題と真剣に取り組んでおります。
  68. 北山愛郎

    北山委員 それは中間報告でございますけれども、わが国の安全保障に関する中間報告として自由民主党の安全保障に関する調査会の出したもので、全体を通じてその印象が強いのです。非常にイデオロギー的なんです。「現下の情勢においては、われわれの守ろうとする政治社会体制を根底から破壊しようとする幾多の勢力がある。」ということで、いわゆる平和運動なり労働運動も敵視するような考え方、したがって、治安対策とか労働対策も強化しようとか、全体を通じてそういうふうな印象を受けるのです。やはり防衛というもの、あるいは安全保障というものは、そういうふうなイデオロギー的なものじゃなくて、そして、やはり国土と国民を守るんだ、こういう気持ちであるならば、私どもはこれは決して反対するものじゃないのです。賛成なんです。ですが、どうもいまの資本主義の体制を守るというふうに見られてもしようがないような中間報告が出ているわけですよ。これは最終結論ではないと思うけれども、そういう問題が出ている。私はその点に疑問を持ったのですが、総理が、そういうものじゃないんだ、国土と国民を守るのであって、いまの資本主義の制度なり、いわゆる自由民主の制度というのですが、資本主義の現在の政治社会の仕組みを守るんだということでないとするならば、その点ははっきりしたと思うのであります。ただ、日米安全保障条約の第二条に「自由な諸制度を強化する」こういうふうに書いてある、この点はどうなんです。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はあらゆる機会に申し上げておりますが、自由を守り平和に徹する、この考え方でおわかりだと思います。
  70. 北山愛郎

    北山委員 自由主義陣営といいますか、いわゆる資本主義陣営のためのいわゆる神聖同盟のような感じが私はするわけであります。総理は、そういう意味はないとおっしゃるのですか。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げましたとおり、自由を守り平和に徹する、これが日本の国の行き方でございます。
  72. 北山愛郎

    北山委員 そうしますと、国内のいろいろないまの体制に反対するとか、あるいは平和運動であるとか、そういうものに対しては、いわゆる間接侵略とか、そういうふうなことでその運動を見ないということですね。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと私、聞きとりかねたのですが、どういうことですか、重ねてお尋ねをいただきます。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 北山愛郎

    北山委員 いまの自民党の、安全保障に関する中間報告、あちこち引用すればいいのですが、そういう印象を私は受けたから質問したのですけれども、もしそういう国内の社会体制がかりに社会主義になっても、そのことは防衛の問題とは関係がないんだ、民主的に平和的に国内の制度が移行するのであれば、それは別に反対するものじゃないんだ、こういう意味ですか。いわゆる防衛の問題として考えないんだということですか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国土、国民を守る、これがもう防衛の基本でございます。その前提になりますものに、ただいま申すように、自由を守り平和に徹するという、こういう考え方がございます。これは日本憲法の命ずるところであります。また、そのもとにおいて政治形態はいかにあるべきか、また経済形態はどういうことが望ましいか、これはわれわれがきめていくことだ、かように考えております。政治のほうはきまっておる、かように思っております。
  76. 北山愛郎

    北山委員 昨年の春の国会総理が、たしか施政方針演説の中で、政治社会体制を異にする国の間でも平和共存が可能であるというようなことを言われた。私は、やはり国内的にもそういうことが言えると思うのであります。ですから、われわれ社会党が言っておるように、いまの資本主義を社会主義に変革をする、それは憲法にのっとって平和的に、民主的に、議会を通じてやるのだというふうなやり方であるならば、それがいわゆる自衛隊が弾圧するとか、自衛隊を使ってやるとか、そういうことはとらないのだ、こういうことでございますか。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の政治、これを一体どの政党にまかすかということは、国民がきめる、これは選挙を通じてきまると、こういうことでございまして、その間に暴力を用いることはもう絶対に排撃されておる、ここの誤解のないようにお願いしておきます。
  78. 北山愛郎

    北山委員 そのような方向で行ってもらいたいと私は思うのであります。どうも、ともすると、この安全保障に関する中間報告を見ると、いわゆる日本の敵が内外にあるんだ、いわゆる自民党が基礎にしているようないまの政治社会体制に反するものは、みな侵略する敵に見えておるようだ、だから国内にもいわゆる間接侵略があるとか、そういうことに見えてくるので、私は、そういうふうなイデオロギー的な考え方を防衛思想の中に入れてはならないと思うのであります。国土や国民、民族というのは、これはもうずっと何千年、何万年も前からできておるのです。しかし、政治社会の体制というのは時代の進展によって変わるわけです。それを、その体制が変わる、いわゆる封建時代から資本主義の時代に変わる場合に、いままではやはり流血を伴っておる。しかし、いまのような民主主義の進んだ時代においては、その社会政治、経済の制度が変革をされるのにも、流血を避けて、そして民主的に、平和的に移行するという条件がだんだんできつつある。日本の憲法はそれを保障していると私ども考えて、それを基礎にして社会党の綱領ができ、そしてまた、われわれのいろんな方針がとられておるわけであります。何かしら自民党が、いまの社会制度、資本主義の制度を守るために、これを防衛の観念の中に入れて、そして自衛隊も利用するように、いわゆる間接侵略として解釈をするように、こう見られるような印象を受ける報告です。これは、総理はあるいはよく読んでおらないかもしれませんけれども、よく読んで、そしていまの国内の政治社会あるいは経済の体制の変革というものを、民主的に、平和的にやっていく、これがやはり日本民族あるいは国民としての英知だ、こういうふうに考えるのです。その発展というもの、そういう変革というものを、武力なり軍事力、警察力でもって弾圧をするとか、これは間接侵略であるというような理由でそのような方法をとらないような、もっと進んだ考え方に徹していただきたいということを私は申し上げ、もし答弁があれば答弁していただきたいと思います。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは答弁なしというわけにはいきません。ただいまいろいろ、いま民主的また平和的というお話がありました。そういうことで主権者がきめていくことはよろしいのです。また、こういう国でございますから、すべての自由を許しております。わが国の国内にいろんな政党のあることも、これも承知しております。しかし、一たん社会的な秩序が力によって破壊されようとすれば、これはもう断固私どもは秩序を守る、そうして国民を苦しみから守っていくと、こういうことをしなければならぬ。私はあえて社会党批判するわけじゃありませんが、佐々木君と西尾君との公開討論で、革命政党だと言われた。私は、この革命政党というのは、もう少し説明を要するように思うのです。いわゆる民主的な方法によっての政権のなにじゃないというのがわれわれの解釈です。だから、革命政党というところに、革命行為になると、いまのような状態で笑って過ごすわけにはいかない、かように思います。
  80. 北山愛郎

    北山委員 それは、革命ということばを非常に特殊に受け取って、先入観を持って考えればそうなるのです。しかし、消費革命であるとか、革命ということばはざらに使われておるのですよ。何もびくびくすることはないのです。要するに、社会の基本理念、社会、経済をささえておる原則なり、そういうものが変わっていく、あるいは社会観なり、そういうものが原則的に変わっていくということを言っておるのであって、それは、昔はそういう革命の際には必ず流血、武力を用いる、これは当然だというような考え方はありましたけれども社会党の綱領を読み、方針、政策の中に、どこに一体それがあるかというのです。私どもは綱領の中でも、あるいは「明日への期待」とか、その他いろんな方針の中で、この点を極力言っておるわけです。平和的に民主的な方法で、しかも議会を通じて、いわゆる国民多数の同意を得てやるのだ、進めていくのだということを強調しておるのでありますから、ただ革命ということばを使ったから、それは暴力革命だと言うのは、少し総理考え方はおくれておると思うのです。その点に誤解のないようにしていただきまして、この問題は、やはりわれわれ日本人というものが、ほんとうに時代の進展に沿うて、そして、必ずしも一つの制度というものに固定しないで、もっと進んだ制度にどんどん発展していくという、いわゆる生々発展していくための条件だと私は思うのであります。そういう意味で、きょうの短い時間でこういう論議をするのは適当でなかったかとも思いますけれども、若干それに触れた次第であります。  以上をもって私の質問を終わります。
  81. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて北山君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      ————◇—————    午後一時四十一分開議
  82. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算並びに昭和四十二年度暫定予算に対する質疑を続行いたします。永末英一君。
  83. 永末英一

    ○永末委員 私は民社党を代表いたしまして、春日一幸、曽祢益両委員のあとに続きまして、防衛問題を中心に政府考え方をただしたいと存じます。  今回政府は第三次防を決定をいたしました。同時にまた、核をめぐる国際的な再編成の機に遭遇いたしております。さらに、第三次防は、その年度内に安保条約の一応の期限切れを迎える、こういうことでございますので、この際、私は特に佐藤内閣の防衛問題の基本的な考え方、これをただしたいと存じます。  われわれ民社党は、防衛問題の取り組み方といたしましては、何よりも政府国民生活を安定発展せしめる政策を実施すること、これが先決だと考えますと同時に、その外交方針は、わが国を敵視する国を極少にする、平和方針に徹することが第二、この二つの条件の上に国民に安全感を与える防衛体制をつくる、これが私どもの防衛問題のとらえ方でございます。このようなことを前提にいたしまして、この国民に安全感を与えるというのは、言うまでもなく一〇〇%の安全感はございませんが、国民政府の施策に信頼を持たなければなりません。国民政府の施策に信頼を持つためには、政府は明らかに自分の考え国民に知らせなくてはならない。まず第一に、総理は、そういう国民的合意の上にわが国の防衛力がなければならぬとお考えになるかどうかを伺いたい。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の防衛力はただいま言われたとおりでございます。
  85. 永末英一

    ○永末委員 国民のこの防衛に関する感覚はいろいろございますが、一応大別をいたしまして、二十数年前の戦争を経験いたしました者は、政府の防衛に関する発表、これを必ずしも一〇〇%信用するという心がまえにはなっていない経験を持っております。さらにまた、戦争の経験のない青年たち、これはきわめて実証的な考え方に立っておる、こういうことを考えまして、今回の三次防というものの意味合いを、私はぜひこの機会に総理を中心にして明らかにしていきたいと思うのです。すなわち、防衛方針や計画がその有効度——どの程度これが有効なのかということもあわせて国民に知らせることが政府責任である、私どもはそのように思いますが、総理はどうお考えか、伺いたい。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府国民の理解のもとにわが国の防衛力を充実する、これを効果的ならしめる、これが政府責任だと私も考えております。
  87. 永末英一

    ○永末委員 今回の第三次防の大綱、昨年十一月二十九日にきまったもの、この中には、「日米安全保障体制を基調として侵略に対する抑止力として有効な防衛力を整備」云々、こういうことばがきめられております。だといたしますと、侵略ということばを使われるからには、どこからの侵略かということを一応想定をなすっておるはずだと思いますが、お考えを伺いたい。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国は基本的に自由を守り平和に徹する、いずれの国とも仲よくする、こういう立場でございますから、仮想敵国の考え方ではございません。
  89. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官にお伺いいたしますが、この予算委員会におきましても、この種の問題が出ましたときに、防衛庁としては仮想敵国などという文字は使わないが、対象国ということばは使っております、こういう説明を受けましたが、事実ですか。
  90. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 仮想敵国ということばは使ったことはございません。対象国ということばは使ったかどうかは、あとでお知らせいたします。
  91. 永末英一

    ○永末委員 早急に質問を続ける間に御返答願いたいと思います。  そこで総理、いまのようなお考えでございますが、第三次防衛力整備計画の大綱は、日米安全保障体制を基調にしている、こういうことであって、この委員会でも何べんもこれは繰り返されておる。そこでわれわれとしては、一体アメリカがどういう考え方に立っておるか、これを見ざるを得ないのである。一番近いところで本年の一月二十三日、アメリカのマクナマラ国防長官が議会に報告をいたしました報告書の中で、アメリカが対処すべき脅威という、そういう項目がある。その中でソ連と中共というものをはっきりと名をあげて、アメリカ国民、アメリカ政府が対処しなければならない脅威を持つ国はこれだということを示しておる。佐藤内閣が日米安全保障体制を基調としている以上は、このアメリカの考え方が伝染してきておると思いますが、いかがですか。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは誤解ないだろうと思いますが、日本は攻撃的な兵器は持たない。いわゆる国際紛争を武力によって解決するという、そういうことは禁止されております。そこで、われわれが持ち得る防衛力、これは国防に関する基本方針、これは三十二年にきめた。それに基づいて二次防、さらに今回は第三次防が策定されておるのであります。これはもっとわかりやすく言えば、通常兵器による局地的な侵略に対してこれを抑止する力、その効果をあげるもの、これがわが国が持っておる防衛力、こういうものでございます。そこで、いまの国際情勢等から見まして、ただいま言うような、攻めては行かない、それにしても通常兵器による局地的な戦争だけではないだろう、こういうことがございますね。先ほどお尋ねがありましたように、わが国の国防は、これは何といっても国民の理解、またその協力、そのもとにおいて祖国を守るという、それでなければならないのですから、ただいまお尋ねのように、日米安全保障条約、これを基調にしてということは、これは誤解を生みやすい、かように私思います。私はこの前の答弁でも、この国民的な防衛力を基調にして、そうしてこの日米安全保障条約を補完的にしてわが国の安全を確保するのだ、こういうことを実は申したのでございます。これがいまのお尋ねに該当するかどうか疑問でございますが、私の気持ちはそういうものでございますから、アメリカの考え方というよりも、他国はどうあろうと、わが国は、憲法によってわれわれがきめられておる、そうしてわれわれが持ち得る防衛力、その観点からこういう問題について判断をすべきじゃないか、今日まで非常に限定された防衛力のように考えられるが、この自衛力さらにプラス日米安全保障条約によって戦後二十年も経過をし、今日までわが国の安全は確保されておる、この事実について、国民も現在の状態を信頼している、私はかように考えておりますので、先ほど戦争経験者、——これはあなた御自身もそのうちの一人だと思いますが、また経験、未経験の方々もわが国の安全を確保することについて、ただいま申し上げるような観点に立っておるのじゃないか、私はかように思います。
  93. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣としては、なかなか歯に衣を着せないような、ストレートな表現というのはむずかしいときがあろうということはお察しをいたします。防衛庁長官、先ほどお伺いいたしましたやつですね、これはもうお調べがつきましたか。現在あなたの所管されておる自衛隊が演習などをいたしますときには、青国であるとか赤国であるとか緑国であるとかというようなことで、ある想定を立ててやっておる。その場合に、やはりわが自衛隊の相手方というものは考えておる。おらなければ演習というものは実施されないのである。その点についてのお調べがつきましたら御返答願いたい。
  94. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 対象国ということばをいまだかつて使ったことはございません。明確にいたしておきます。  それから、演習等の際には別段でございまするから、侵略者がこういうふうに来た場合にはこういうふうにするというようなことはございましょう、演習でございますから。しかしながら、侵略国がというような意味においてわれわれは考えたことはないのでございます。対象国ということばを使っておらないことをここに明瞭にいたしておきます。
  95. 永末英一

    ○永末委員 委員会の質問というのは、あることを申しますと、そのことずばりが当たってなければ、知らぬ、これで通りますわね、それは明確ですからね。しかしながら、自衛隊法には、直接侵略に自衛隊が立ち向かうと規定してあるわけであって、そうして、その自衛隊法に基づいて自衛隊が演習を行ない、いろいろなことをやっておる。その場合の想定があるという場合には、国民からすれば、いまあなたがおっしゃったように、言外の意味をわかってくれろというつもりかもしれませんが、先ほど申したように、国民がぼやっとしているような方針ではなかろうかというところに疑いがある。本年度の予算を見ましても、一日十億円というものが費やされていくのであって、十億円を費やすからには、やはり目標が明確であって、こうだという説明を受けたいというのが国民だと思うのですね。  観点を変えまして、防衛庁長官は、中共の核開発の現状とこれからの見通しについて、どのような判断をお持ちか、伺いたい。
  96. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 私からお答えできる範囲外のことは、科学技術庁長官とかその他の閣僚からお聞き願いたいと思います。  私の長官として入手しておるところは、中共においては核実験を五回行なった、これだけでございます。
  97. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、現在の世界の恐怖の一番の大きな点というのは、核戦争が起こりやしないか、これをおそれているわけである。したがって、この予算委員会においても核拡散防止条約についてあれほど何人かの委員が立って政府の見解をただしてきたではありませんか。その核拡散防止条約の一つの焦点は——わが国の場合ですよ、中共の核というものをどうすれば縛り得るだろうか、核拡散防止条約はこれに役立つだろうかということが、おそらく各質問者の頭の中にあったのではなかろうか。その意味合いでは、われわれ日本人の命を預かっておるのは佐藤さん、その代官であなたがその次に預かっておるわけだ。それが、中共の核武装の現状と見通しについては、核実験が五回あっただけ知っておって、あとは知らぬ、そんなことで済みますか。佐藤総理大臣、ちょっと御見解を伺いたい。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 中共の核爆発——核物質開発計画といいますか、あるいは核兵器開発計画、これは一時言われたよりもよほど早目に開発が成功しつつある、かように私は思っております。
  99. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣はこの点についていろいろ情報をとっておられると思います。外務大臣、御見解を伺います。
  100. 三木武夫

    ○三木国務大臣 情報程度で、これは各国の非常な高度な国の秘密に関係することでしょうから、なかなか的確にむずかしいが、いま言われたように、核兵器の開発が世間が考えておったよりも非常に早い、そして一九七〇年代になれば、長距離弾道弾の開発までいくというような見通しを持たれておるようでございます。
  101. 永末英一

    ○永末委員 先ほど申し上げましたアメリカのマクナマラ国防長官は、一月二十三日の議会報告の中で、最近の情報によれば一九六七年末までに中共は宇宙ミサイルか長距離弾道弾の発射を行なうかもしれない、こういうことを報告しております。この事実は防衛庁長官は御存じですか。
  102. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 マクナマラ国防長官とかあるいはラスク長官が発言した事実は知っております。
  103. 永末英一

    ○永末委員 このアメリカ政府側によるところの中共の核武装のスピードに対する評価は、何もこのごろ突然に行なわれたのではなくて、何度も何度も行なわれてきておる。といたしますと、防衛庁長官は、先ほどあなたがここで御答弁になったように、中共が五回核爆発をしたという事実以外には知らぬ、そういうことで通りますか。これはただアメリカが言うたんであるということだけであって、それ以外には、防衛庁として中共の核武装のスピードそのものに対する判断はされていないのですか、伺いたい。
  104. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 たびたび総理や外務大臣のおっしゃっているとおり、核兵器がわが国以外の国で開発されようとも、われわれは日米安全保障体制のもとにおいてそういう核兵器に対する抑止力を期待いたしておる、こういうことで終始一貫いたしておるのでございます。防衛庁長官といたしましては、総理大臣がもとより三自衛隊の総指揮官でございまするが、通常兵器による局地戦争的の侵略に対処する自衛力というものを持ち、かつ、訓練を行なっておる次第でございます。
  105. 永末英一

    ○永末委員 先ほど申しましたように、総理、われわれは命をあなたに預けておるわけだ。命は通常兵器だけから脅威を受けておるのではなくて、核からも脅威を受けておる。いま防衛庁長官のお話ですと、核のほうは知らぬのだ、こういうように聞こえる答弁なんですね。私はこれはいかがかと思う。やはり核に対しても、日本政府あとう限りの対処策を講じておる。しかし、いまの三十二年度の国防の基本方針のことばを使えば、「国力、国情に応じ、」からすれば、これだけしかできない。これを国民が承認するかしないかがやはり政権を決定する要点であると私は思う。その意味合いで伺っておるのでありまして、したがって、防衛庁長官、もう一つ伺いたいのは、いまのあなたの御発言ですと、第三次防衛力整備計画なるものは、この核攻撃に対しては何ら対処していない、こういうことでありますか。
  106. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 そのとおりでございます。
  107. 永末英一

    ○永末委員 これは簡単にそのとおりでありますというので、はなはだどうもわれわれとしては遺憾にたえないのでございますが、在日米軍基地に放射能の退避施設があると伺っております。この事実がございますか、防衛庁長官。
  108. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 そういう事実はございません。
  109. 永末英一

    ○永末委員 海上自衛隊の自衛艦が放射能をこうむったとき、その放射能を洗い落とすための洗浄訓練をしておるということが伝えられておりますが、そのことはやっておりますか。
  110. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 政府委員をして答弁せしめます。
  111. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 自衛隊は核の使用そのものについての訓練はもちろん一切やらないわけでございますが、核の防護に関しまして隊員に対しまして知識を与え、また防護に必要な資材を備え、また訓練をするということはやっておりまして、ただいま御指摘の艦艇におきまして、そういった種類の訓練をやっておるかということでございますが、これはやっておるわけでございます。
  112. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官お聞きになりましたか。あなたのところの防衛局長が、自衛艦がそういう訓練をやっておる、そのために資材を与えておると言っておるじゃありませんか。予算なくしてこれができるものではない。したがって、自衛隊の一部においては核というものを想定して訓練をやっておる。事実じゃありませんか。あなた無関係だと、こう言った。無関係ですか。もう一ぺんお答え願いたい。
  113. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 永末君は、私が無関係だと言ったということでございますが、私は無関係とは申しておりません。その点については政府委員をして答弁せしめますということを申しておるのでございます。
  114. 永末英一

    ○永末委員 ふかしぎなことを言われますね、その前に無関係だ、第三次防は無関係だと言っておいて。この訓練の、在日米軍の退避壕の話は政府にそれは伺いました。おかしいですね。ちょっとこれは速記録でもお調べ願わないと、いま言ったことを言わないなんて言われますと、質問できやしませんよ。もう一ぺん思い出して答えてください。あなた、言ったのですよ。第三次防は、核に対する攻撃等のことについて無関係であるとあなたここでさっき言ったじゃありませんか。もう一ぺん答えてください。
  115. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 核兵器による侵略に対する抑止力ということは考えていないという意味において、無関係ということを申したのでございます。
  116. 永末英一

    ○永末委員 そんなことはさっき言いやしませんよ。簡単に無関係、こう言ったのだ。しかしこれは事実なんだ。  それならば、防衛庁長官、海上自衛隊はそういう訓練をしておる。陸上自衛隊、航空自衛隊はそういう訓練をしておるか、伺いたい。
  117. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 陸上自衛隊につきましては、ただいま申し上げましたように核防護に関します必要な知識を付与する、あるいは防護被服を保有いたしておりますので、それの使用等に関する訓練、こういうものはやっております。航空自衛隊については、現在そういう訓練はやっていないというふうに考えております。
  118. 永末英一

    ○永末委員 陸上自衛隊の被服、これはやはり国の予算ですね。そうすると、自衛隊はやはり核というものを何ぼか念頭に置きながらそれをやっておるということになる。国民のほうはどうなんでしょう。これはだれがお答えになりますか。国民に対して核攻撃というようなものが一体どんなことか。これは技術庁長官ですか。(「総理大臣だ、命を預けたのだから」と呼ぶ者あり)命の問題は総理大臣ですかね。ひとつお答え願いたい。国民には一体どうしているか。
  119. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 中共等が行なっております爆発による通常いわれておる死の灰、その測定等については、そのつど行なっておりますし、また日常海を通じ、空を通じて、放射能の影響を測定する調査は行なっております。
  120. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣に付いたいのですが、あなたの所轄しておられる自衛隊では、やはりどうしても核ということに一切触れずにはおられないというので、そういう訓練は一部実施しておる。そういうことは、やはり全然無関係に現在の自衛隊があるということにはならぬ。これはこの委員会ではっきりしたと思います。であるならば、国民のほうに対しても核というものの攻撃、その余波がくるかもしれない。これに対して、国民にも何らかのやはり身がまえをさせるということが総理大臣としては必要だとはお考えになりませんか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういうことは理論的に考えられるもので、一つの必要性がある。しかし、現状においてそういう必要性を身近に感ずるかどうか。そうでないと、身近に感ずるもの、それを政治問題として取り上げるということでないと、いろいろ国民に不安を与えたり、その他のことで必ずしもいい影響だけではないように実は思います。私はいまの状況であらゆる事態考えれば、いま害われるようなこともその一部にあるだろうと思います。しかし、わが国の防衛力、国防、安全確保、この点では、われわれの自衛隊は、先ほど申しますように通常兵器に対応する局地戦争、その抑止力、こういうものですけれども、国そのものとすれば、やはり日米安全保障条約のもとにおいて、私とジョンソン大統領との一昨年の会見でも、あらゆる攻撃に対して日本を守る、こういうことをアメリカははっきり言ってくれておるのです。私は、その状態のもとにおいてわが国の安全を確保することが、ただいまの状態では適当な方法だ、かように実は考えております。したがって、核攻撃に対する抑止力、これは現在の状況で十分だ、かように私は考えておる次第でございます。
  122. 永末英一

    ○永末委員 抑止力ということばに、何と申しますか、違った観念があるのであって、つまり抑止力というのは、それが防げると映るわけですね。しかし、いまの核戦略十における抑止力は、防げるというのは物理的な手段で防ぐのではないのであって、心理的にやらせないということだけ、それだけの話。そこで、あなたとジョンソン大統領とがああいうコミュニケを発せられたということは私ども承知をいたしております。しかし、そのコミュニケがあれば、わが国が全然核の脅威のもとにないとは言えない。それは別な話。全然次元の違う話である。そこで、命を預かっておるあなたとしては、自衛隊の一部がやっておるのですから、国民のほうに対しても何らかやはり政府責任において考えることがあってしかるべきではないかと私は思うのですが、もう一度伺いたい。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような点は、わが国の国防、そういう観点の知識の普及徹底と申しますか、そういう形においてはただいま行なっております。しかし、それより以上に、あるいは退避訓練をするとか、あるいは地下壕を掘るとか、そういうところまでを言わない、そういうところまでの計画はただいま持っておらない、こういうことを実は申しておるのでありまして、いまの核戦争に対する抑止力、これは言われるとおりでございます。これはいま攻撃を加えればその報復的な処置がとられることを十分考えるし、報復的な処置をとられればどういう結果になるかということが現状においてはっきりわかるわけですから、したがって、核保有国も日本に対しての核攻撃をしない、そういう意味の抑止力であります。したがって、私は現状において、わが国の日米安全保障条約、これは十分な効果をあげておる、かように確信しております。
  124. 永末英一

    ○永末委員 先ほど御紹介しましたように、もし中共の核ミサイルの実験、核はつけなくてもミサイルの実験がアメリカの判断のように一九六七年、すなわち、本年日本列島線を越えて行なわれる。つまり二千キロ以上飛ぶのだというような実験が行なわれたときに、この第三次防衛力整備計画なるものは手直しをする、こういう用意がありますか。これは総理大臣ですね、お答え願いたい。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま隣国でどういう武器が開発されるか、こういうことで私の三次防の計画を変えるつもりはございません。これもしばしば申し上げますように、ただいまもうすでにソ連はいま指摘されたような長距離弾道弾も持っておりますし、核兵器はたいへんな進歩でございます。だから、そういう状態のもとにおいても、私どもは通常兵器による局地戦、これに対する抑止力、これは日本の行き方だとはっきりきめて、その態度でございますから、いま中共自身の核兵器の開発で計画を変更する、かような考え方ではございません。
  126. 永末英一

    ○永末委員 いまの総理大臣の御説明で、わが自衛隊の持っておる力というのは通常戦以下のものに対する抑止力、こういうのですね。通常戦というのは、同じ武器が攻撃にも防御にも使われる。したがって、物理的にある一定の力を備えていれば、防御に回れば抑止力というわけである。これは先ほど申し上げましたように、核戦略の場合の抑止力とはきわめて意味の違うものでございます。これはあとでお伺いいたしますが、ひとつここではっきりしていただきたいのは、第三次防衛力整備計画は、その名前のとおり、これは自衛隊に関するいわゆる軍事力の整備計画であって、それ以上のものではない。ことばをかえるならば、これはわが自衛隊の軍事力整備計画、まあことばはちょっと悪いのでありますが、兵力量整備計画である、このように理解してよろしいか。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三十二年にきめましたわが国の国防に関する基本方針、それに基づいておるものだ、かように御了承いただきます。
  128. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁設置法で国防会議が設けられました。その国防会議の議長が総理大臣でございます。その国防会議の所掌事務として国防の基本方針、これは三十二年にきめられた。ところが、二つ目に、防衛計画の大綱というものがあります。三つ目には、この防衛計画関連する産業等の調整計画の大綱、防衛計画の大綱というのがございまして、一次防、二次防、三次防とは申しておりますけれども、これは防衛力整備計画であって、私どもは防衛計画ではないのではないかと思う。つまり、これは自衛隊の力の整備計画である。国防の基本方針は上にある。自衛隊の力の整備計画は三次防まで来た。国民は一体どうなったのだろう。国民あるいはまた政府の持っておるいろいろな行政機能、それと防衛との関係は一体どうなったのだろう。言うならば、そういう意味での防衛計画は抜けておるのではないか、このようにわれわれは考えます。この点について国防会議議長はどうお考えか、伺いたい。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛計画、これはどういうことを意味してお尋ねか、ちょっとわかりかねておりますが、先ほど来言われるように、総合的な防衛力、この動員計画がなきゃいかぬだろう、こういう意味では、お説のようなものがあってしかるべきだと私も思います。
  130. 永末英一

    ○永末委員 この委員会で明確になりましたように、自衛隊というのは、わが国土の中で行動するのである、これは防衛庁長官がお答えになりました。われわれも、現憲法下においては、そういうかまえを自衛隊がしておると承知をいたしております。そうしますと、もし——われわれは望まないことではございますが、もしこの国土内で戦闘行為が起こるとするならば、戦闘員である者だけが、命に、あるいはからだに差しさわる被害を受けるのではない。国民国民の財産がこうむるのである。その意味合いで、これは非常に重大なことでございます。この前の戦争の末期、昭和二十年の初めに大本営が、一体、本土決戦なんてどうやったらできるだろうかということをいろいろ考えました。あのときの状況でも、陸海軍の軍人軍属合わせて三百五十五万人の動員をやりました。そして国民義勇戦闘隊というような妙な名前で二千八百万人にイヤマークしたわけですね。つまり、それほどやらなければ自信がない。ところが、現在第三次防衛力整備計画は、陸上自衛隊十八万人というようなことが目標になっておる。私が申し上げたいのは、この防衛力整備計画というものは、、大東亜戦争中のことは、一つのわれわれ日本人が経験した経験でございますが、たとえば交通の問題、通信の問題、道路、そういういろんなことが起こった場合一体どうなるか、これを準備をしておかなければならぬのではないか。二年前のわが委員会で問題になりました三矢研究事件、これはどこに一体問題の発生の根拠があったかといえば、そういうものがなかった、そういうことがああいう問題を引き起こした一つの原因であったとわれわれは考えております。そこで、この現在の法律をもってしても、防衛庁設置法の六十二条の二項の二号、防衛計画の大綱ということは、そういうことも含んでおるとわれわれは考えるが、政府のお考えはいかがですか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 永末君、これはもう外国の例もいろいろおわかりかと思います。たとえばスイス、スウェーデン等の国防、防衛力整備といいますか、そういう観点に立ってのものがございます。また、わが国もそういうものを考えるべき状態なのかどうなのか、これは、問題は、先ほど中共が核兵器を持つということでいろいろお尋ねがございましたこの四囲の状況あるいは国際情勢の変化というような、そういうような事柄から、やはり国防の具体的方策が進められるのであります。しかし、いまの状況のもとにおいての日本の防衛計画、これは先ほど来議論になっております程度の国防、これがいま考えられるものじゃないだろうか。私は、それより以上に四囲の情勢が非常に悪化している、かようには考えませんので、ただいまの防衛計画、三次防でこれを効率的に果たすのが本来の筋じゃないだろうか。問題は、国民が全然無関心では困りますが、積極的に国防、それから防衛力に協力する、こういう考え方で取り組んでくだされば、ただいまの状況でいいのではないかと思います。しかし自衛隊、これの無視論もございますし、また一方で、日米安全保障条約にたより過ぎやしないかというような議論もございますから、この国防、防衛の最高責任者である総理といたしましては、さらに広い視野に立ちまして、こういう問題は考うべき事柄だ、かように思います。しかし問題は、どこまでも現実的な問題と混淆されやすい問題でございますから、そういう点では、慎重に四囲の情勢を勘案して、しかる上で、ただいまのようなくふうもすべきじゃないだろうか、かように思います。いまの状態ではその必要はないように私は考えております。
  132. 永末英一

    ○永末委員 第三次防衛力整備計画は、国民の税金で全部まかなうということがたてまえなんです。いままではアメリカからの供与というのがございました。言うならば、半分はあっち持ちでございますから、自主性がなかった。今度は自主的にやらざるを得ない。その意味合いでは。しかも、国民は税金でこれを全部まかなわされておるということになれば、国民の意思というものが一〇〇%これに反映してくるべき状態になっておると思うんですね。そこで、あなたはまだまだその時期ではないとおっしゃるが、そういう意味合いで、自主防衛というものは一体どうなのか。わが国の防衛生産でものをつくるということ、それを税金で払う、これは自主防衛の一つの形ではあるけれども、自主防衛そのものではない。あなたは時期ではないと言われましたが、時期である、そのことをこれから論証してまいりますから、お答え願いたい。  第一、一体政府は、アメリカに、日米安保体制を基調としてと言うのですが、何を期待しておるのか、この辺から伺いたいと思います。防衛庁長官、わが国土内で戦闘行為が発生した場合、アメリカ軍の援助を期待しておるのか伺いたい。
  133. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国土内におけるあくまでもわれわれは防衛でございますから、侵略という現象が起きたときでございます。国土内において、通常兵器による侵略等が起きた場合には、自衛隊をもって対処してまいりたいと思います。
  134. 永末英一

    ○永末委員 自衛隊で対処したい、こうおっしゃいましたが、この委員会でも、三次防というのは二次防の引き続きである。二次防の中には、おおむね一カ月分の弾薬等の備蓄等に重点をと、こう書いてある。そういう準備はされたようです。今度の三次防の中にはこういう文句はございませんが、必然引き続いておるだろう。予算等を見ましても、大体そんな程度、事情によってはその日数がもっと減るのではないかという見方もございますが、その程度の弾薬を備蓄していらっしゃるらしい。とすれば、一カ月後はどうなりますか。その辺のところを防衛庁長官に伺いたい。
  135. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 種々の仮定のもとに御質問なさいまするが、日米安保体制のもとにおいて、日本は通常兵器の侵略があった場合には自衛隊で対処する、こういうことでございまするから、おのずからあとのことは常識でおわかりだと思います。
  136. 永末英一

    ○永末委員 国と国との問題が常識でわかるようなら、だれも苦労はいたしません。もっとはっきりお答え願いたい。三次防ではこの文句があったんだ。そしてこの委員会でもあなたは、二次防からの引き続きの意味合いが三次防であるということをお答えになっておるんだ。であるならば、弾薬の備蓄量はどの程度のことを目途と三次防でしておられるか、お答え願いたい。
  137. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 三次防におきまして、弾薬の備蓄につきましては、二次防の目標をおおむね維持していく、こういう考え方でございます。
  138. 永末英一

    ○永末委員 もっと率直に答えていただきたい。逆に聞きましょうか。わが陸上自衛隊が、同程度の兵力の侵略軍と非常に激しい交戦状態に入った場合、その場合に、一年独力で戦えるか、お答え願いたい、防衛庁長官。
  139. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 通常兵器による局地的侵略戦に対応するということでございまして、そのとき、もし足りなければ米国の援助を求めて、つまり協力関係において防衛の事実をあげる、あくまで防衛でございます。侵略に対する排除でございます。そういうことをするわけでございます。
  140. 永末英一

    ○永末委員 ようやく援助ということばが出ましたね。国民が、役に立たないじゃないか、こういう意見があるわけだ。アクセサリーじゃないか、こういう意見がある。だから、やはりその力の限界を国民の前にはっきりしてほしい。期日は明示されませんが、足らぬ場合は援助だ。援助をされるということを前提にしておられるならば、アメリカ軍とわが自衛隊との間の、どういうような作戦行動をやるかという連合計画は持ち合わせがありますか、伺いたい。
  141. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 各種の合同演習等をいたしておりまするが、機密のことは申し上げかねます。  それから、一カ月たてば必ずわれわれの兵たんがなくなるわけではございませんで、われわれは、弾丸等は、あるいは火薬等は製造いたしておるのでございます。全然製造がないような前提の御質問は困るのでございます。
  142. 永末英一

    ○永末委員 あなた、そんなことをおっしゃるなら、製造量を聞きますよ。それなら、想定せられる一会戦に消費せられる弾薬量というものをあなたに伺います。あなたお答えになりますか。それを言うてもらわなければ、歯みがきのチューブのしぼり出しみたいに幾らでも、打ち出の小づちじゃないですよ。聞きましょう。われわれの現有する弾薬工場でできる弾薬量、それから予想せられる会戦で消費せられる分量を明示してください。なかなかむずかしいですよ。その中身は。やってください。
  143. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 ある程度の補給はできるということを私は申し上げておるわけでございます。
  144. 永末英一

    ○永末委員 機密というのが、委員長、困りましてね。合同演習はしておる、しかしあとは機密だ、こう言う。これは何も詳しい動き方を一々言えと言うておるのじゃなくて、連合計画や取りきめなどはしておられますかと、こう言うた。それは答えられますでしょうね。何も中身を言えというのではない。何とかという名前を言えと言うておるのではないのであって、そういうことはやっておられますね。やっていなければ来援頼むことできないでしょう。その事実だけを伺います。お答え願いたい。
  145. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 従来存在する地位協定その他の援助協定等は存在いたしておるわけでございます。
  146. 永末英一

    ○永末委員 地位協定と援助協定とは性質が違いますよ。援助協定というのは、これは新しいことばでしょうな。普通のいままでの安全保障条約下における地位協定や援助協定のことばと違いますよ、いま言っているのは。作戦のことなんです。もう一ぺんお答え願いたい。違うことを答えないでくださいよ。
  147. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 作戦の際の取りきめ等はいたしておりません。
  148. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣、わが自衛隊は、いま防衛庁長官が明らかにしましたように、やはり足らぬときには頼まなければいかぬ、こういうかまえのものですね。そうすると、頼むそのときにならぬとわからぬということでしょうか。おそらく実施部隊では、そういう点の責任政府がぴしゃっとしてくれないから、一体どこまでがどうなんだということを、現実的には困っておるんではないかと思われる節があります。何もそういうものをこの場で明らかにせよと言うておるわけではなくて、そういうことは共同作戦をする以上はイロハのイの字であって、なければできないのでございますから、そういうことは私はあるべきはずだと思うのでありますが、ひとつお答え願いたい。
  149. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 平素合同演習等をいたし、また意思の疎通をはかっておりまするから、別段取りきめがなくても不安心という状態ではないのでございます。
  150. 永末英一

    ○永末委員 合同演習のときの申し合わせと、それから別の取りきめというのは、少しでも軍隊の経験のある者はわかっていることであって……。ちょっと問題を変えましょう。なかなかそういう逃げ方で時間を食うといけませんから……。  空の問題をちょっと考えてみたいと思います。侵略でございますから、空の侵略もあると思うのでありますが、一体どんな飛行機が飛んでくるとお考えですか、防衛庁長官。
  151. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 侵略の態様等はわかりません。
  152. 永末英一

    ○永末委員 B29に竹やりを突きつけたのは二十数年前の話だ。侵略の態様がわからなければ、それならナイキハーキュリーズもホークも104も一体何ですか、これは。何のために持っておるか、こうなるでしょう。私が聞いておるのは、どこの国のなんて聞いておるのじゃありませんよ。空からというんだったら、おそらくミサイルを撃ち落とすということはいまのわれわれの実力ではできませんから、飛行機だろうと思いますから飛行機と申しておるのであって、どの程度の飛行機、スピード、それから力。
  153. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 侵略軒の計画まで私どもはそんたくできないということでございます。
  154. 永末英一

    ○永末委員 まあ議会の答弁ならそれでいいですよ。しかし国民は、これを聞いておりますと、わからぬものに対して準備をしておる、こういうことになりますよ。わからぬものに対して、自衛隊はナイキハーキュリーズでなくてはならぬ、ナイキアジャックスはいけないのだ、ハーキュリーズでなくてはならぬのだ、いや、まだ二大隊、三大隊必要なんだと、わからぬですよそれは、あなた国民に知らさぬのだから……。われがきめたものは正当なんだ、万全の備えなんだ。それだけでは通りませんよ。大体これなら撃ち落とせるようなものが飛んでくるという想定なんでしょうな。お答え願いたい。
  155. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 いつも総理がおっしゃっておる通常兵器による侵略に対処する、しこうしてハーキュリーズは、今国会において皆さまの御協賛を求めておりまするが、これは従来のアジャックスに比べまして射程が三倍でございます。三倍くらいな射程を持った三マッハ半くらいのスピードです。そうして敵の攻撃を抑止しよう、こういうわけでございます。
  156. 永末英一

    ○永末委員 敵の攻撃ですね。そのわれわれの持っておる防空能力というのは、一体その能力はどこへ使う、何を守るのですか。具体的に言えば、戦略的なあるいは戦術的な基地を守るのか、都市を守るのか、要城を守るのか、どういう御方針ですか承りたい。
  157. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国土を守るのでございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 私が伺っておるのは、あなたはおわかりにならぬわけはないと思う。いわゆる戦術的な基地を守るということであるならば、先ほどあなた言われたでしょう、かなわぬ、足らなくなれはアメリカの援助を受けるのだと。アメリカの軍事基地があるではありませんか。一体われわれの防空能力というものがアメリカの軍事基地を第一に思考せられて、そして日本人の住んでおるところはずっと後順位である、こういうような方針であるかどうか、国民は知りたいと思いますよ。その点をお答え願いたい。
  159. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 陸の侵略に対しては陸上兵力をもって対処し、海上の侵略に対しては海上の兵力をもって対処する、また、空から来る急迫不正なる侵略に対しましては、航空自衛力をもって対処する、こういうことでございます。
  160. 永末英一

    ○永末委員 あなたは何の紙を見て言われているのですか。そんなことを聞いているのではありませんよ。わが国の空の防衛力というものは、わが国土の中の何を守ることに専心をしておられるか。  国土と言われましたから、また別の質問をいたしましょうか。国土全域に一切そういう空からの侵略が来ないように守れるとあなたは断言できますか、空からと言われるなら。
  161. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 大切なる国土、国民を守ることを主眼といたしております。
  162. 永末英一

    ○永末委員 私は先ほど申し上げたでしょう。十数年前に、大本営の発表なんというようなものは、われわれ戦争を経験した者はなかなかもう信じ得ない気持ちになっている。あなたは大本営発表みたいなことを言っているのですね。それじゃ、いけないというのです。限界があるなら限界を示されたほうが国民ははっきりしますよ。国民予算を出すのですからね。  それなら一体、一〇〇%、どんな外から来る空からの侵略も撃墜できると明言できますか。撃ち落としたいという気持ちを聞く必要はないのですよ。撃ち落としたいということはみなあたりまえのことであって、国を守りたい、国土を守りたい、これはあたりまえなことです。それとは別に、撃ち落とせるかどうかの判定をあなた方のほうでしておるでしょう。
  163. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 一〇〇%守るということはわれわれの理想でございまするが、これはできないということは永末君もよく御存じだと思います。
  164. 永末英一

    ○永末委員 実際国民予算を要求せられて、しかも三次防では、新しいまた次期の戦闘機を買おうという、こういう計画が出ておる。われわれは一体グラマンとロッキードがどっちがよかったかどうか、国民のわからぬところでいろいろな問題が起こっている。この三次防の遂行過程において似たような問題が起こって、国民にますます、防御というものはだれかがもうけるものだ、こう思われては、本来の防衛の問題に差しさわりがあるわけであります。  したがって、現在持っておる要撃戦闘機やあるいはまた地対空ミサイルというものは、どういう能力があるか、だからこういうものがほしいのだ、こういうことでなかったら国民は承認せぬではありませんか。一〇〇%ないのがあたりまえです。どこの国だってそうであって、われわれのほうが特別能力が低いわけでも何でもございませんね。もっと低い国もあると思います。  私が申し上げましょう。一五ないし三〇ですか。
  165. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 永末君の一五ないし三〇ということはよくわかりません。
  166. 永末英一

    ○永末委員 他国の空からの侵略をして来る、まあ航空機といいましょうか、それに対して、わが自衛隊の持っている対空一切の兵器で被害を与えて撃墜する撃墜率が一五ないし三〇%であるか、伺いたい。
  167. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 わが国に対する空中からの侵攻の形態というものは、一つはミサイルによる攻撃が考えられますし、もう一つは、御指摘のように航空機による攻撃が考えられるわけでございます。それに対しましてわがほうは、航空機によりましてわが国土の全般的な防空に任じますし、それからミサイル部隊によりまして、各種のいろいろな重要な地域、いわゆる要域防空を担当するつもりでおります。  わが国の防空体系としましては、有人機とミサイル、そういうものの総合的な力というものによって確保するわけでございますが、ただいまお尋ねの、わが国の現在の対処能力というものが、相手方の航空機の第一撃に対しましてどの程度の総合的な撃墜率を持つものであるかということにつきましては、これは航空機が非常に低空から侵入して来ます場合、あるいは御承知のとおりにECMをかけてまいります場合、いろいろな条件がございますので、これを現在の力ではたして何%くらいの総合撃墜率を確保できるかということについては、私からははっきり申し上げることはできません。
  168. 永末英一

    ○永末委員 何%とはっきり言えないけれども、ともかく一〇〇%防ぎとめる力はない。何ぼか入って来る。そうすると、われわれは被害をこうむる、こういうことでよろしいか、防衛庁長官。
  169. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 もちろん一〇〇%の対処能力はございません。ただいま御指摘のような一五%あるいは三〇%、これが正確に計算いたしまして当たるかどうかわかりませんけれども、とにかく現在の力ではまだ十分な力を持っておらないということは行えると思います。
  170. 永末英一

    ○永末委員 総理、いまお聞きになりましたように、空の問題につきましても、つまり被害があるということを自衛隊は承知をいたしておる。であるならば、被害をこうむった国民側に対する対処のしかたというものは、やはり政府部内のどこかで考えておいてもらわなければ、被害をこうむってから、しようがない、これでは困ると思うのです。この辺のことを私は、先ほど国民の防衛計画と申したのはこれです。  もう一つ事例をあげましょう。今度は海。  この防衛力整備計画の大綱で、海上交通の安全確保能力を向上する、こういうことでございますが、防衛庁長官、何キロぐらいの安全を確保する能力が海上自衛隊にはございますか。
  171. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 大体千五百キロ前後と聞いております。
  172. 永末英一

    ○永末委員 これはもちろん護衛する船団の数にもいろいろございましょうが、千五百キロからあっちはどうなんですか。
  173. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 そこが日米安全保障体制の効果を発揮するゆえんでございます。
  174. 永末英一

    ○永末委員 海の場合には、これで、答弁ではっきりしましたわけですね。陸等の場合には、やってみてあとから足らぬところは補ってもらうですが、これはもうそのときにすぐに援助をこうむらなくてはならぬ。しかし、アメリカの海軍力は、日本の船団を全部、一体そんなことをやってもらえるかどうか問題ではございましょうけれども、そういう交渉をされましたか、防衛庁長官。
  175. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 全般的に各般の具体問題に対する取りきめはないということを先ほど申しました。ただし、日米相互間においては意思疎通はきわめて円滑に行なわれておりまするから、御安心を願いたいということでございます。
  176. 永末英一

    ○永末委員 このごろの青年は、先ほど申し上げましたが、きわめて実証的でございますから、内容を示さずに安心しろといわれても、これはなかなかどうも安心するわけにいかない。  そこで、いまの船団の護衛というようなことが日程にのぼってくれば、これは自衛艦隊だけが走ったってしようがないのであって、護衛すべき日本の国の船というものが問題でございまして、一体これはどの程度の力が要るか。いま防衛庁では、たとえば油船だけとってみても、一体どの程度海に浮いておる計算になっておるか、お調べがあればお知らせ願いたい。
  177. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 現在わが国周辺に、どれぐらいの油船が毎日おるかということにつきまして、正確な数字を持ち合わしておりませんので、一応調べましてお答え申し上げます。
  178. 永末英一

    ○永末委員 それは時期にもよりましょうけれども、古い話でありますが、昭和四十一年一月一日現在で約九十七隻ぐらい。いまもっとふえておると思いますね。だから、常時海のしにおるわけです。船団護衛というのは、あるところで組んでのろのろ行くんじゃなくて、これはいろんなことをやらなくちゃならぬ。船側に問題がある。運輸大臣、そういう船団護衛を組むような訓練はされたことがございますか。
  179. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在の状態では船団を組む練習はいたしておりません。
  180. 永末英一

    ○永末委員 なるほど、いまの状態では、総理大臣お聞きのように、すぐやらんでいいかもしれませんね。しかし、これは一たん有事の場合にはどうしてもやらなくちゃならぬ問題だ。この辺が先ほど申しましたように、今度は行政官庁間の、やはりもう一つの防衛計画というものがなければこういうことが実施できない。これはやはり、私は国防会議責任ではないかと思います。この船団護衛あるいは海上交通の安全確保という問題にからんで、沖繩の船が日の丸の旗を上げて走るようになりました。この前、議会で総理大臣からたしか御報告があったと思います。この沖繩の船に対して、日本の海上自衛隊は、この船がもしよその国から攻撃を受けるということがあった場合には、これを守りますか、伺いたい。
  181. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 わが国施政権のもとにある国土を守るのが自衛隊のたてまえでございます。
  182. 永末英一

    ○永末委員 日の丸の旗を上げた沖繩の船が他国の船から砲撃を受けておる。たまたま海上自衛隊の自衛艦がおっても何もしませんか。施政権と関係ない、いまの場合。
  183. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 防衛庁法、自衛隊法等には、明瞭に、わが国施政権のもとにある国土を守る、こう書いてあるわけでございます。
  184. 永末英一

    ○永末委員 そういう場合、守るのですか、守らぬのですか。どっちか答えてください。ほかのことは要りません。あなたは指揮権者じゃありませんか。総理大臣の命を受けてあなたが命令を発するのだ。その場合に、そういう報告があった、どうするか。施政権のもとでと、そんなことを言いますか。守れというか、守らぬというか、どちらかでしょう。言ってください。
  185. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 国防の最高責任者、すなわち総理の命を受けまして守るのでございます。
  186. 永末英一

    ○永末委員 いま防衛庁長官は、命を受けて守ると言いましたね。命を受けて、ちょっとあいまいでございますが、総理大臣は守れと命令をされますか、そういう場合に。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、ただいま権利義務というような観点で議論をなさいますと、たいへん誤解を受けると思います。しかし、私は、いまのような設例の場合に、権利義務という考え方ではございません。同じ日本人として日本の——これは外国の施政権下にありましょうが、そういうものを守れ、かような命令をいたします。
  188. 永末英一

    ○永末委員 これが沖繩の島々の付近を航海しておるという場合に、そうして、攻撃は同時にかかってきておるということがあり得ますわね。昨年のこの国会で、沖繩に対する防衛問題が議論になりました。その場合に、アメリカと協定が成立するならば守る、沖繩の島々を。これが政府の態度であったと拝察しております。ところが、いま船は公海の上においても、総理大臣はそういう御発言をなさった、はなはだ私はけっこうだと思います。しかし、それがたまたま沖繩の島々の近辺の公海で動いており、同時に、攻撃が二つにかかった、こういう場合がございますね。むしろそういう場合が多いのじゃないかと思うのでありますけれども、その場合には沖繩の島々のほうについての態度を伺いたい。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの権利義務というほうから申しますと、施政権下にある沖繩でございますから、これは第一はアメリカがやることでございます。また、設例のような場合に、その沖繩の島々、そういうものが攻撃を受けるというような事態に、日本の自衛艦がその近海をのろのろしておるかどうか、これはまた別の問題のように思いますけど、そこらはよくお考えをいただいて、どうも設例がちょっと適当じゃないじゃないだろうか、私かように思います。
  190. 永末英一

    ○永末委員 これは法律的にいえば、沖繩の船がわが日の丸を掲げておっても、これは日本国の船が日の丸を掲げておると同一の対処のしかたを日本政府はやるのではないと思いますね。それにもかかわらず、いま総理大臣は、そのような措置をされようというのでありますから、いわゆるいまの法律上の権利義務、政府の義務という観点からお考えをいただいていない。これはしかしながら別の観点からいたしますと、われわれが望んでおります施政権の返還に対する、これは一つの突破口を開く考え方だと私は思います。その意味合いで、わが党としては歓迎をいたしたい。そこまでいくのなら、もう一歩歩を進めて、そういう防衛の面、こういう面から沖繩の島々、こういうところも考えられるのではないか。だからそのつなぎとして、その船がそういうところにあった場合には、つなぎになるでしょう。そこでその設例をいたした。もう一度——ちょっと不適当だ、全然仮想のことを申し上げているのじゃなくて、そういう法律上のつなぎ、こういう観点でございますから、もう一度お答えを願いたい。
  191. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、かつて参議院で、もし沖繩が攻撃された場合に、日本はそれを黙って見ているか、こういうお尋ねがございました。これも権利義務ではない。しかしそういう場合において、われわれが沖繩の日本人が苦しい状態にあるのをこれを座して見ているというようなわけにはいくまい、こういうお話をいたしました。これはたいへん議論を引き起こしたと思います。ただいまのお話も、それと大体同じような事態の設例でございます。私は先ほど申し上げますように、第一義的には、これは施政権を持っておるアメリカが沖繩を守る、これが本来の筋でございます。だから、現状におきまして、それより以上のことを考えなくてもいいのではないか。ましてアメリカの防衛力、軍事力というものと日本の防衛力は格段の相違がございますから、日本が出かけるといえば、案外場合によったらじゃまになると言うかもわかりません。私は、そういう点はもう少し事態についてどういうように対処するか、これはその場合といいますか、そういう事態について対処する、それ以外に考え方はないのじゃないか、かように思っております。だから議論から申せば、これはもう日本の出る幕ではない、また、それは感情だけから申すと、これはしかしどうも割り切れないので、そこに出て行くというようなものがあるのじゃないか、かように私は思っております。
  192. 永末英一

    ○永末委員 ただいままで陸海空三つにつきましてわれわれの備える力の一種の限界、そしてまたその限界をわれわれが認識するとともに、アメリカとの関連が発生してまいるということを明らかにしてまいりました。  そこで、もう一ぺんそういうことを、実態をひとつ頭に入れながら、日米安保条約のもとにおきましては、アメリカはわが国の国土内で起こるいろいろな侵略事態に対してわが国を守る義務を負うているわけですね。防衛庁長官はいかなる名目にもせよ明示的な何らの協定はない、こう言われましたが、私は協定を求めるのがあたりまえではないかと思う。求める御意思はありませんか、総理大臣、伺いたい。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現実の場合に支障を来たすようなことがあってはなりません。私はそういう意味で大局的な話し合いについては、もちろん十分意見の交換をしております。これが一昨年のジョンソン大統領と私との共同コミュニケでもその点が出ておる、かように思います。また、実施部隊等におきましてそごを来たさないような了解、これに達することは最も必要なことだと思います。しかし、いま言われますように、具体的にこまかい協定をすると、いろいろな誤解を受けることもございますので、そういう点はまた注意しているのだと思いますけれども、私は、御指摘になりましたような点が、もし実際問題としてそごを来たすようなことがあるなら、これはやらなくてはならぬことだ、かように思います。いまのところその必要がないというのが、先ほど来の防衛庁長官のお答えでもございます。
  194. 永末英一

    ○永末委員 この三次防では、自衛隊員の士気を高揚させることも一つの目的になっておる。士気の高揚というのは、おまえはその場で死ね、そしてまた、その本人がそこで死ぬ値打ちがあるのだ。人間としてここで配置を守る値打ちがあるのだと思うときに、自衛隊員としての士気が高揚するのであって、おまえのやることは一月くらいだ、あるところまではやるけれどもあとは頼まなくてはならぬ、こういうようなかまえであっては、そして、それがどうなるかはまだはっきりしておらぬのだ、こういうことであっては、なかなか命を捨てる気にならぬものです。私は、そういう面で、そういうことが必要だということを論じてまいりましたが、しかし、いまのお答えでその必要がないというなら——いまのところ必要がない、こういうことですよ。逆に、そういう取りきめをしなくても、日米安全保障条約というものは、この国土内で起こるいろいろな戦闘状況を想定してこまかい取りきめをするということが本旨ではなくて、むしろアメリカの現在持っておる膨大な軍事力、これを日本の自衛力が背景にしておるのだ、こういうことをこの日米安全保障条約で取りつけておる。そういう機能を実は政府は知っておられるのではないか。そちらのほうにむしろ重点を置いておられるのではないか。このようにも考えたくなるわけであります。そうであるかどうか、これはひとつ総理大臣から伺いたい。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の防衛でございますから、先ほども申しましたように、わが政府、またわが国民、これはまず第一に考うべきことだ。そうして、どこまでも自主性のある防衛力といいますか、そういうものを持ちたい、その気持ちがございます。しかし、わが国の憲法は特別な憲法が制定されておりますし、国民のもとにおきまして、非常な防衛力を持つにつきましても制約を受けております。そういう意味から、この日米安全保障条約、これに期待しておるものは、わが国の安全を確保する、こういうことで日米安全保障条約に期待しておるのであります。したがって、ただわが国の自衛力と、日米安全保障条約のその期待と、この二つを合わして初めてわが国の安全が確保されるのであります。最近におきましては、日米間においていろいろな話し合いをするという、そういう機会も多くなっております。私は、いわゆる事務レベルの話ではなしに、こういうものが上のレベルでいろいろ話し合いがされる、こういうような状況のもとにおいてなら、ただいまのようなその独立性あるいは自主性、そういうことをそこなうことなしに、この防衛、国の安全を確保する、こういうところでも効果があげられるのじゃないか、かように思っておりますが、そういうこともだんだん経過として進んでおりますので、いま永末君の言われるような点、十分今後とも注意をいたしまして、万全を期していく考えでございます。これは私の責任でもあります。総理といたしまして、この国の安全を確保する最高責任者でございますし、また、国民の福祉ともつながる問題でありますし、私自身が最善を尽くすのは当然であります。ただいまいろいろの御意見も聞かしてくださいましたので、よくそれらの点を勘案しながら、今後私の責任を果たしていくということに注意してまいるつもりでございます。
  196. 永末英一

    ○永末委員 私は、総理責任を果たす決意を非常にかたくしておられるということを疑うものではございません。私のお伺いしたいところは、いままで伺いましたように、日米安全保障体制を基調として、この侵略に対する抑止力、これをつくるのだ、こういう御方針であるけれども、この日米安全保障体刑を基調とするということばの中に、アメリカ軍の陸海空の来援を前提としておるということであるならば、そうして、この国土内で行なわれる戦闘にそれが予定せられておるというのであるならば、アメリカ軍と日本の自衛隊との間にそれぞれの取りきめということをはっきりしておかなければ、指揮権の問題、実際起こるであろうところの混乱について、きわめて困難なことがあるではないか。しかし、いまはそういう時期ではないという政府の見解と私は承りました。とするならば、今度は逆にひっくり返って、一体日米安全保障体制のもとだということを政府はどう判断しておるか。私どもは、端的に申して、アメリカの持つ大きな核抑止力、これを背景に日米安全保障体制ということで日本がくくりつける、取りつけておるのだ、これ以外にはないのではないか。  私どもは、先日曽祢益委員から申し上げましたように、われわれは敗戦の結果占領されました。日本の国土内にアメリカの軍事基地ができました。それを安保条約で貸与基地に変えてまいりました。これが二回変わってきたのでございますけれども、いまわれわれ日本人が、いま総理が言いわれましたように、自主性、独立性と言われるからには、その魂の一番の問題点は、われの命はわれで守れるかどうか、こういうことを日本人が考え出すということが私どもは一番の出発点ではないかと思うのです。そういう観点に立つならば、一体敗戦から二十二年間やってきたあのアメリカの軍事基地というものは、われわれがわれわれの命を守るためにどういう作用をしておるだろうかと反省するのは、私は当然じゃないかと思う。それは、その軍事基地をわれわれ政府が承認しておるのは、いま申しましたように、日米安全保障条約でございますから、したがって、この日米安全保障条約というものは一体どういう性格のものなのか。これが最初の安保、第二の安保とは、先ほど申し上げましたように核の問題がぐっと急展開をしておる。いま核拡散防止条約をわれわれが一生懸命考えておるのは、三木外務大臣は無関係だと言われました、それも一つの見解でしょう。しかしながら、核戦略がこうやって変わってきた場合に、われわれが一体日米安保条約に何を期待するかということについては真剣に考えなくてはならぬ。われわれはこれを核抑止力だと考えるときに、初めて日本の自主防衛の方針というものが出てくるはずだ。その自主防衛を完成させようとすれば、国防の基本方針、そして自衛隊の整備力、その中に各官庁間の防衛に対する一つの方向づけ、国民政府との間の防衛に対する方向づけ、これが完備しなければ、国民的合意は防御に対してできない。これが欠けておるならばできない。こういうことをわれわれは考えておるのでございまして、その点についてもう一ぺん、それを背景にして日米安全保障条約の機能を一体どう考えるかということをお答えを願いたい。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 永末君とだんだん話が狭まってきたようですが、私は、まだもう一つ永末君の認識と私の認識で相違があると思いますのは、米軍が日本にいること、これを占領後も引き続き、こういう認識をしておられる、ここに私はやや相違を持っておるのであります。なるほど、占領後から米軍はそのままずっと続いておりますから、これは引き続きだ、かように言われることも一理ございます。しかし、いまいます米軍の駐留は、これは日米安全保障条約に基づいての駐留でございますから、いわゆる占領下の状態とは違う。これは明らかに区別しなければならないと思うのであります。それで、米軍が日米安全保障条約で駐留することが必要なりやいなや、私は、これは必要だ、かように考えておる。そこで、民社党のほうでは駐留なき安全保障体制というものは考えられぬか、こういうことを言っておられて、この点は曽祢君との質疑応答でやりとりをいたしたわけであります。私は、駐留が、米軍が現実にだんだん減っておりますから、この状態から見まして、いわゆる必要でなくなることはたいへんけっこうなことだと思います。しかし、これから先の攻撃体制、そういうことをいろいろ考えますと、これは、いっそういう攻撃を受けるかわからない状況でございますから、そのときに米軍が来るというのでは時期を失することもあるだろうと思います。私は、そういう意味で、これは好ましい状況でないことは確かでございます。外国の兵隊が日本に来ておる、しかし、こういう状態のもとにおいて初めて日本の安全は確保されておるのであります。だから、西ドイツの場合においては、西ドイツの国民も米軍の駐留することをほんとうに望んでおる、こういう状況であります。私は、米軍がなぜ日本に来ておるかということをわが国の国民にももっと知っていただきたいと思いますし、私はドイツと同じような状態に理解しろとまでは申しませんが、私はもっと理解があってしかるべきじゃないかと思います。そうして、ただいま米軍がいることによりまして、私どもの自衛力の不足の分をこれで補っておるという、その状況で初めてわが国の安全は確保されているんだ、これが大事なことでございます。先ほど来いろいろのお話が出ておりますが、安全の確保という面でさらに万全を期せ、こういう御意見でございます。私もそのとおりだと思いますが、こういう事柄はいろいろ誤解を受けやすいことでございますから、いまの国際情勢が非常に急迫している、かように考えておりません。国民の理解のもとに、わが国の国防は順次また漸増していくように考えたいものだと思います。これが私どもがかねてから申しております国力、国情に応じて自衛力を整備する、この考え方と一致するのでございます。ただいまの状況では、四囲の情勢もさることながら、国内の情勢、国情等から見ましても、先ほど来言われるような体制を積極的に整えるのは、私はまだ無理のように思います。それで、米軍との関係は私誤解はないと思いますが、われわれの期待しておるのは、米軍によって自衛力の足らない点を補ってわが国の安全を確保しておる、これを期待しておる、これが現状でございます。
  198. 永末英一

    ○永末委員 いまお話を伺っておりますと、何かあなたのほうの政府の方針とわが民社党の防衛方針とが似ておるとあなたが判断せられたような気がいたしましたが、違うのです。どこが違うかといえば、われわれは、日本の防衛というのはまず第一に日本人の心、これが土台にならなければできぬと考えておる。お話を伺っておりますと、機力——機力というのは機械の力ですね、それに重点を置いてお考えのようだ。たとえば、そういう点で防衛力という考え方が違ってくるのである。私ども計画と申し上げましたから、あなたは何かある計画の一種類とお考えになったかもしれませんが、そもそも現憲法における日本の国土、日本の社会を守るためには、これこれをすることが防衛なんだとわれわれは考える。これは抑止力だ。われわれはここで戦争をしてはならぬと考える。われわれはここで戦争がないために何をすべきか、これがわが民社党の考える防衛の方針の一番の筋金なんですね。この辺があなたのほうとだいぶん違う。だから、駐留というものも、いまの米軍の駐留でもって役立つようにお考えになるし、われわれのほうは役立たぬということを考える。この辺の違いがございますが、これはぼちぼちとまたやってまいりましょう。  そこで、ちょっと小さいことでございますけれども、気になる話がございますので……。第三次防衛計画でも広報活動をやる、こういうことでございますが、防衛庁は「日本の安全保障」というカラーの宣伝映画を、千四百五十万円という相当の金を使ってつくりました。これを松竹系統の映画館に無償で貸与したようでございますが、これが京都で上映せられるという宣伝がございましたところ、京都府教育委員会が教育長の名前をもって、三月十八日付の文書でこれに対して——名前は変わっております。「日本の安全保障」という名前ではなくて「科学の驚異」という名前になっておりますが、こういう映画を上映しないよう配慮されたい、こういう文書が松竹の当該の映画館とそれからその関西支社とに参って、現実に二十五日から映写されてない、こういう事実がございます。文部大臣は、こういう事実をごらんになってどうお考えになるか。防衛庁長官もあとで感想をお聞きしたい。
  199. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 「科学の驚異」という映画につきまして、東部の教育委員会が松竹会社のほうに映画を上映しないようにという依頼状を出したことは事実でございます。ただ、その内容におきましては、子供の映画と併映いたすことをやめてほしい、子供が見まして、子供に教育上の影響をすることがあるかもしれないというので、松竹の会社のほうもその申し出を承知しまして、もっともだというので、子供の映画との併映は取りやめるということにしたようでございます。
  200. 永末英一

    ○永末委員 文部大臣、認識が違いますよ。この京都府教育委員会から出た文書は、「科学の驚異については、その内容が新聞紙上や各種団体等で社会的に問題視されており、」これが先に書いてある。それから併映のことが書いてある。防衛庁長官、あなたのところでつくった映画というものは、千四百万円もかけて、国民の税金でつくったのですよ。これが京都府教育委員会社会的に問題視されていると判定を受けた。あなたはどんな気がしますか。そうして、しかも、私の聞くところによれば、その映画の実物を京都府教育委員会は見ていない。見ずに一体だれがどう言うたか知りませんけれども、こういう公式の文書が出るということでございまして、そうすると、あなたは三次防で広報活動を一生懸命やるんだと言いますけれども、続々とこういうことが出てくると困るでしょうね。われわれも、そんなもの税金の金をかけぬほうがいいという感じがいたしますね。御見解を承りたい。
  201. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 新しい憲法のもとにおきまして、瀞論、集会、出版、結社その他の自由が保障されております。そこで出版、映画等の検閲をしてはならないことになっております。そこで、映倫等においてはやっておりますが、これは自主的にやっておるわけでございまして、映倫等においては、もとよりこれはよろしいということになっております。また、防衛庁がつくったあの映画は、「科学の驚異」という見地から見まして非常に有益だと思います。また、防衛庁、自衛隊のPRにもなると思いますから、ぜひ見ていただきたいと思います。
  202. 永末英一

    ○永末委員 新しい教育委員会制度では、教育委員会は自主的な性格を持っております。しかし、大体地方の行政府、中央政府、あんまりぎくしゃくするとぐあいが悪いこともございましょうが、文部大臣、一体教育委員会が実物を見ずに判断をするということは——京都府教育委員会批判してくれと言うておるのと違いますよ。府県の教育委員会が、ある実物を見ずしてある評価をするというようなことについて、あなたはどんな感じを持たれますか。
  203. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 永末委員のおっしゃいますとおりに、新聞その他の話がございまして、教育委員会は実物を見ないでこれを出したのは事実でございます。ただ、この映画の内容につきましては、文部省といたしまして、教育上有効な映画につきましては選奨いたしておりますが、まだこの映画についての選奨のあれはございませんので、その内容等においては私ども見ておりません。ただ、その理由が、子供の映画との併映だけを取りやめてくれないかというので、松竹のほうでもっともだということで取りやめたのでございまして、その間におきまして、教育委員会が見ないで軽々にそういう行為に出たことは遺憾なことだと思いますが、結論といたしましては、いまさら私のほうからそういう通知を出したのはけしからぬというようなとがめだてをするほどの問題ではないと考えておりました。
  204. 永末英一

    ○永末委員 文部大臣、併映も一つの理由ですよ。しかし、一番初めに書いてあるのが、その映画の内容が問題にされておるというのですから、これはひとつ文部大臣として防衛庁とよく相談をして、問題があるのならば、当該の京都府教育委員会に、どの点が問題があるのか、これは京都府教育委員会意見もよく聞いて——あっちこっちで映してもらえぬようなものに税金を出してつくるということは、おかしな話です。私は見ましたよ。広報活動というものは非常にむずかしい話でございますけれども、これはひとつ慎重にやってほしい。  ちょっと三次防の整備力計画一つだけ聞いておきたいのですが、いわゆるXという字の書いてある問題、次期戦闘機、次期輸送機、それから高等練習機、あとでつくるやつ、これはもう一ぺん国防会議にかけられますかどうか、これをきめるときに。これだけをちょっと伺っておきたい。
  205. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 要すれば、FXは国防会議にかけます。TX、CX等は報告すればよろしいものではないかと考えております。
  206. 永末英一

    ○永末委員 私どもは、国の防衛につきましては、先ほど申し上げましたように、ともかくこの国土内に戦闘行為を起こさしてはならぬのだ、そのための抑止力をつくるべし。その抑止力というのは、総理大臣が時として触れられましたように、相対する物理的な機力をいうのではないのであって、何とかしてこっちへ来させないような力、こういうことになりますと、ことばをかえますと、この抑止力というのは国民的合意の上に成り立つものでございますから、国の総力の、いわば防衛の角度から見た力、こう名づければいいのじゃないかと思うのです。その意味合いで、まず、われわれが国の総力に国民一人一人が自信を持つような、信頼をし、そしてそれを守ろうと決意をさせるような、こういうような施策が必要ではないかと思います。その意味合いで、少なくとも二十世紀後半のわが日本の国にとりまして、科学技術力を開発するということは、きわめて重要だ、いまの点につきましても問題だとわが党は考えます。したがって、こういう点に着目をしつつ質問を申したいと思うのでございます。その一つの象徴が原子力であり、そのもう一つがロケットであります。したがって、まず原子力からまいりたいと思います。  三月二十二日に、原子力委員会の長期計画専門部会が、委員長に原子力開発利用長期計画なるものを報告され、この三十日に委員会の決定があると承っております。これらにはいろいろなことが書いてあるようでございますけれども、一体、日本の原子力の問題につきましては、相当歴史は長いのでございます。しかし、われわれは、核といえばそれはこわいんだというようなことではなく、この問題をやはり国民が消化をして、核を自分のものにするということでなくてはならぬ。核兵器とは関係ございません、原子力。その意味合いで、核燃料というものをわれわれがはっきり確保していなければ、どんなほかのことを申しましても、どうにもならぬ問題ではないか。科学技術庁長官、燃料公社はつくりましたけれども、何かやりましたか。
  207. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 おっしゃるとおり、燃料は大事な問題でありまして、国内におきましては、御承知の人形峠におきまして、現在採掘、探鉱をやっておりますし、今後もまた国内資源の探鉱、開発を積極的に進めていくつもりでございます。
  208. 永末英一

    ○永末委員 燃料公社というのは、人形峠の探鉱、開発だけをやるためにつくったのですか。そうじゃないでしょう。目的があったでしょう。そういうわが原子力の開発のために十分の燃料を供給するのが、燃料公社のぼくは目的であったと思う。しかも、それはただ単に山から取り出すのではなくて、それぞれウランからプルトニウムに変わり、あるいはまたいろいろ加工されていく。それ全体の核燃料のサイクル、こういうものを考えつつ燃料公社が考えられたと思う。そういう実績を果たしましたかと聞いている。
  209. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 もちろんそれだけではないわけでありまして、燃料サイクルの問題等につきましても真剣に取り組んでまいっておりますが、プルトニウムを中心とする燃料の再開発、あるいは一たん利用いたしました燃料の毎処理の問題につきましても、研究開発を行なっておると存じております。
  210. 永末英一

    ○永末委員 聞くところによりますと、今度動力炉・核燃料開発中業団ができますと、燃料公社がここに吸収合併される。それはどういうことですか。燃料公社なるものは、いまあなたのお話はあいまいでよくわからぬのであります。人形峠というのは聞きましたが、あとは成功したのやらせぬのやら、目的となったプラントをつくるというが、そのプラントがちゃんとできておるのやら、それはできなかったのやら、実績が悪いから吸収しようというのか、どうなったのか、少しもわからぬのである。どう判定されておられるのですか。
  211. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 お説のとおり、私は、りっぱな完全な使命を、今日までつくられております燃料公社が果たしておるとは考えておりません。しかしながら、核燃料の問題は重要な問題でありまして、今後電力の問題等を考えてみましても、エネルギー源に使用される燃料というものは、相当大幅な燃料が考えられますのでして、そこでまあ今後は、新しい炉——動力炉、新型転換炉とか、あるいは高速増殖炉というものなどを開発いたしまして、わが国におけるこの燃料の自主的な開発をやっていきたい、こういうふうに考えておりますし、また、今回燃料公社が改組をされて新しい事業団をつくることになりますけれども、この燃料も、国際協定等によりまして国有から民有、民間の事業も持てるということになりますので、こういう機会に原子燃料公社法も改正いたさなければなりません。また新しい動力炉の開発も、自主的な開発、平和利用の開発をいたさなければなりませんので、この機会にこれを解消して、ばらばらにやるというわけではありませんが、発展的解消をして、もっとわが国における燃料対策というものを計画に沿って積極的に進めたい、こういうことで公社の改組も考えておりますし、また、新しい積極的な姿勢で動力炉の開発もやりたい、こういう考えでございます。
  212. 永末英一

    ○永末委員 燃料の問題で新型転換炉やあるいはまた高速増殖炉のことを申されましたが、その燃料自体、これは各国が核燃料を求めてあっちこっちへ走って、そして原子力開発のここ数十年を見通しつつ分け取りをしてしまって、わが国が気がついたときにはどこに一体あるのか、人形峠を幾ら掘ってもこれは出てこぬということになってしまっておる。これからよその国へ行って核燃料を求めなければ、自主的な原子力の開発と申しても、これはなかなかできない、そういう事態じゃないかということをわれわれは心配をいたしておる。何か今度おつくりになる事業団で外国の開発取得をやれるような、そういうようなことはめどがついておやりになっておるのか。あるいはこれをやろうとすれば、とんでもない準備とかまえとが要りますが、これは何とでもしてやろう、こういう御決意であるか。二点伺いたい。
  213. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 先ほどもお話し申し上げましたとおり、燃料につきましては、現在も民間の原子力産業界あるいは電力事業界等も、ウラン鉱、いわゆる燃料の獲得につきまして、カナダとかアメリカ等からも入手するように努力をいたしておることでありますし、また事業団といたしましても、先ほど申し上げましたとおり、この燃料対策につきましては、積極的に取り組む考え方でございますので、いま永末さんがおっしゃったような外国における鉱区あるいはウラン鉱等の入手につきましては、積極的に取り組んでいく考えでございます。
  214. 永末英一

    ○永末委員 大体積極的にやっていくとすると、ここ十年くらいでどれくらい金がかかるというお見通しですか、原子力開発全体として。
  215. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 いま将来の計画についていろいろ検討いたして、研究いたしておりますから、ここでどのくらいということを明確に数字を申し上げる段階ではないと思いますけれども、大体事務当局から聞きますと、一千億ぐらいは必要じゃないか、こう言っております。私はもっとよけい要るんじゃないかと思っておりますが、いまここで明確にどのくらいということを申し上げる段階にはなっていないようであります。
  216. 永末英一

    ○永末委員 事業団関係だけでもその程度のものはかかるだろう、こういうことで、大きな金をかけていく。そうなってきますと、それに対する体制というものを整えなくてはならぬ。  ところで、原子力船開発事業団ができて、わが国も原子力の船をつくろうということをやってきましたが、毎年予算期になりますと、できるのかできぬのか、一年刻みにずれて、今度はできるようでございますが、なぜ原子力船が進まなかったか、この原因はどこにあるとお考えですか。
  217. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 本年から原子力船を着工することになりましたが、この問題は、三年ぐらい前からつくるべく事業団も発足いたしておったようでありますけれども、何しろ新しい船でありますし、また相当詳細な計画も——外国等もやっておりますが、研究いたさなければならぬ関係もありましたし、また、これをつくりますのには、民間の出資も取り入れたければならぬということで、民間との間の出資の割合とか、あるいはどこがこういう船を引き受けるのかというようなこと等につきましても、いろいろ問題があって、今日までその着工がおくれておりましたけれども、四十二年度の予算において、これに着手するということになったわけであります。
  218. 永末英一

    ○永末委員 こういう体制をつくります場合には、国の総力がそこへ結集せられておるというのでなくては、なかなかこれは前進をしないわけである。営利会社は営利会社のことを考えましょうし、官庁は官庁のなわ張りのことを考えましょうし、したがって、やはり事の初めというのは大切でございますから、原子力の問題につきましても、そういう体制をやはりあらゆる層が——この競争に負けますと、日本の力というものはうんと落ちてくるわけである。したがって、そういう点について、大いにひとつこれはやってもらわなくてはならぬ問題だと思います。目標を明確にして総力を結集できるような体制、そのためには金がたくさんかかりますが、経企庁長官、そういうようなことがあなたのほうの評価に入っていますか。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済社会発展計画では、技術の自主開発ということはかなり重視して書いてございまして、昭和四十年の国民所得の一・七%程度が技術開発に充てられておるわけでございますが、四十六年にはそれを二・五%ぐらいにすべきである、相当大きな額になると思いますが、そういうことを申しております。かなりこの点には計画そのものは重点を置いて考えておるように思っております。
  220. 永末英一

    ○永末委員 こうして一生懸命やりまして、独自の核燃料が入手できる、こういうことになる。しかし、それは民有も認められておる。そこへ、外務大臣、核拡散防止条約で、もしこの平和利用といえども国際的な査察——国際原子力機関になろうと思いますが、その場合に、こういうものに対しても全部査察が平等にやってくるんだというようなことになりますと、それは私企業は私企業の商業上の秘密は私は守られるのじゃないかと思いますが、この点の担保というものはする御決意がございますか。
  221. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま査察といわれておるのは、ウランの行方なんですよ。その間、技術自体に査察が詳細に行なわれるとは、私は了解していないのです。ウランが一体軍事利用に使われるかどうかということが査察の目標ですから、ウランの行方を追及することであって、技術を一々査察するという性質のものではない、こう了解しております。
  222. 永末英一

    ○永末委員 原子力の問題のこれからのあり方を少し質問したのですが、総理大臣、これを頭に置いていただいて、次にロケットにいってからひとつ締めくくりをしていただきたいと思います。  私どもは、この原子力の開発と宇宙ロケットというものが、先ほど申し上げましたように、日本のこれからの技術の水準を決定する一つの標識になる、このように考えております。  そこで、第一に文部大臣に伺いたいのは、四月の六日、内之浦でラムダ4S型ロケットを打ち上げる。これは人工衛星にする目的で打ち上げるものですか、伺いたい。
  223. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 お答えします。  四月六日に行なわれますのは、ミュー型の人工衛星を打ち上げます準備といたしまして、実験段階においてやるのでございますが、しかし、実際の実験におきましては、相当高い程度の人工衛星になりますことを期待して実験を行なう予定でございます。
  224. 永末英一

    ○永末委員 私が伺ったのは、高いということを聞いておるんじゃなくて、人工衛星を飛ばすんだ、こういう目的を持ってこれを打ち上げるのかと聞いておる。
  225. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 お答えします。  人工衛星にいたすということを直接目的にしてやるのではございません。
  226. 永末英一

    ○永末委員 科学的実験というのは、ある目的のためにあらゆるデータを収集して、それで機材をつくって、そうしてその目的を完成させるにあるもの、これがぼくは科学だと思うのです。しかし、いまの文部大臣のお話では、直接に目的としていないというなら、何か間接に目的としているのですか。
  227. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 内之浦の研究所におきましては、最終の目的としましては、ミュー型ロケットを打ち上げるということが目的でございまして、そのミュー型ロケットの整備のために、実験段階においてこれをいたす、これが直接の目的でございます。
  228. 永末英一

    ○永末委員 巷間、四月六日には日の丸衛星が上がる、こういうことが伝えられておる。国民もみんなそう思っておりますよ。いま伺いますと、いや、何かそれは目的でないんだ……。ただ、こういうことですか、何か操作をしておって、もし水平制御でも成功して、一番最終の頭がくるくると回れば、わが日本国は人工衛星を飛ばした、こういう発表でもされる、そんなお気持ちなんですか、伺いたい。
  229. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 もちろん、ただいままで実験をいたしておりまして、四段目が制御、コントロールできますれば科学衛星になるという期待を持ってやっておりますけれども、それはあくまで人工衛星にいたすというそのものが目的ではないのでございまして、やはりミュー型の開発のために実験段階でやっておる。もちろんこれが成功いたしますれば、日本で最初の科学衛星が打ち上がるということになるわけでございます。
  230. 永末英一

    ○永末委員 何かたよりない話ですね。打ち上げるんだとして一生懸命仕組んでやるのと、もし成功いたしますれば最初の科学衛星だ、そんな話ですかね。つまり、いままでもこういうことがございましたよ。内之浦から上がるものについて、今度上がるんだ、確率は百分の十四だ。選挙の当選が百分の十四だったら、私は立候補する人はないと思います。五分五分だからやるんでしょう。百分の十四なら、人工衛星になるなんて発表するのは間違っていますよ。そんな期待を持たして——もっと日本の国民に日本の科学の現段階を了解してもらうなら、正確に言われたらいいと私は思う。  この件ですでに四十一年度までに九十一億円、四十二年度では三十四億円国費が費やされておるわけである。これはもちろん地球観測年から出発したのであって、人工衛星を飛ばすというために金を出したのではないと思いますけれども……。ところが、このごろ会計検査院が四十年度決算検査報告というものを出しました文部省のくだりに「観測ロケット関係経費の経理について」というのがございます。その中で、「その経理について検討を要すると認められるものがある。」こういうことを報告書に記載をいたしまして、これらにつきまして新聞あるいはまた週刊誌等をにぎわしております。この際、国会で会計検査院の見解、どういう点が検討を要するのかということを明らかにしていただきたいと思います。
  231. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のように、四十年度会計検査報告に、文部省のロケットの関係につきまして意見を表示いたしましたが、御承知のように、ロケットは新しい開発途上にあるものでございますし、これを東大の宇宙航空研究所が業者に機体の発注とかなんとかする場合におきましても、一方で研究を進めながら製作していく、しかも、その製作期間というものがかなり長期にわたるということで、普通の会計経理のベースではなかなか経理上困難な面があるということで、当局もかなりその点御苦心されておるようでございますが、私のほうで会計検査をいたしましたところ、手続上納得のいかない点がある。で、これは結局、その研究部門と経理担当部門との間の連携といいますか、連絡が不十分なためにこういうことが起きたのであろうということで、今後は両部門のそうした連絡調整といいますかを密にして、経理上も、われわれが検査に参りました場合、十分納得のいくような形にしておいていただきたいということで、御注意申し上げた次第でございます。
  232. 永末英一

    ○永末委員 重ねてお伺いいたしますが、ただいま、その経理と研究部門との連絡が不十分であったという理由をおあげになりましたが、由来、研究所というものは大学の付属機関でございまして、研究するのが主眼であります。しかし、これが大きな発注をする、そうして大きな金を動かす、こういうことになってきておる。なるほど大学の研究機関も物を発注することはございますが、これは小さな機械等は光学、理工学部門でも発注いたしておるのが実情だと思います。しかし今度の予算では三十四億円、こうなりますと、一体連絡不十分なのか、経理部門に経理をする能力がないのか、この辺のところをわれわれとしては知りたい。会計検査院としては、連絡さえ十分にすれば経理能力あり、こういうことになりますか。
  233. 宇ノ沢智雄

    ○宇ノ沢会計検査院説明員 多少説明が足らない面がございましたが、確かにおっしゃるように、連絡さえ密にいけばそれじゃうまくいくかという点でございまするが、これは私たちも検査をいたしまして、なかなかこういうものについての知識、あるいは具体的に申し上げますとその価格が適正であるかどうか、その金額がはたして妥当であるかどうかというような点、これは非常にむずかしいものがございます。それと同じようなことで、やはりこの宇宙航空研究所における経理部門の方々も、そういう面で非常に苦労をされているのではないかと思いまするが、この点はひとつ文部省のほうでお考えを願うことにして、とにかく、そういう経理部門の実体的な作業の能力というものも高める意味において、研究部門と経理部門との連絡調整をもっと密にやっていただきたい、かように考えておるのでございます。
  234. 永末英一

    ○永末委員 新聞では、受け取った人が小学生であるとか、ちょっと常識ではわからぬような……。これは連絡が不十分どころじゃなくて、何かこう経理処置がうまくいっておらぬ。なるほど、開発途上のものでございますから、見積もり契約が最初からかっちりできる、これはなかなかむずかしい問題があると思います。しかし、領収書を受け取った者あるいはまたその仕事の処理能力、こういうものが疑われますと、これはいろいろ問題が起ころうと思います。  ひとつ学術会議責任者が来ておられますので伺いたいのですが、学術会議というのは科学に関する重要事項を審議したり、科学に関する研究の連絡をはかったり、あるいはまた政府所管の研究所の予算編成の方針を政府が諮問をしたらちゃんと諮問を受ける、こういう形になっておると思いますが、この東大宇宙航空研究所の件については、学術会議は何らか対処されたことがありますか、あるいはまた対処しようとしておられるか、伺いたい。
  235. 江上不二夫

    ○江上説明員 学術会議は、個々の研究あるいは個々の研究機関のことを査察するというような権限もありませんし、当然そういうことをすべきでもないというふうに考えております。日本の学術全体が健全に発達するために、その学術全体がどのようにあるべきか、その中において宇宙開発あるいは宇宙科学の研究というものがどのように位置づけられ、全体の経費の間においてとの程度のものであるべきかというような基本的な考えを検討いたしまして、そういうことにつきまして政府に、意見がまとまりましたならば勧告するというふうなことをしておりますので、個々の研究、個々の研究所のことについて、それを査察するようなことはいたしておりません。
  236. 永末英一

    ○永末委員 ある報道によりますと、あなたのほうの長期研究計画委員会で、この東大宇宙研の科学衛星の計画について検討する、こういうようなことを報道で見たのでありますけれども、何か、いまおっしゃったようにごたごたしておるというような印象をこれは与えるわけであります。いまのお話ですと、そういうことは一切無関係だ、こういうお話ですが、この点はどうなんですか。
  237. 江上不二夫

    ○江上説明員 学術会議の中には、宇宙空間特別委員会もございますし、ただいま申されました長期研究計画委員会もございますので、そういうところにおきましても、先ほど申しましたような立場において、日本の科学全体が健全に発展するという立場から、そのものを検討するということは当然いたします。
  238. 永末英一

    ○永末委員 文部大臣、東京大学はあなたのほうの所管ですね。会計検査院は、不法か不当かという目でものを見ます。しかしあなたのほうは、各大学——東京大学に限らず、ほかの大学にもいろいろ研究費の問題があるわけなんです。ところが、この宇宙ロケットの開発について、もしその経理がおかしいという実態があるのなら、これは現在の会計法上、証憑書類が整っておれば不当にも不法にもならぬかもしれませんけれども、ほかの少ない研究費しかもらえないような大学から見るならば、もっと有効に国民の税金を使ってほしい、いや大学のみならず、国民の目から見るならば、もっと有効に税金を使ってほしいと思うのが当然ではないか。この伝えられておるような事実、これについて文部大臣はどのような考えを持っておられるか、伺いたい。
  239. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 東大の宇宙航空研究所におきまするこのロケットの経理につきまして、いろいろ会計検査院から留意事項として指摘されたことは事実でございまして、私ども、これにつきまして十分調査をいたしました。その内容につきまして、検査院からもいまお話がございましたが、ロケットの開発途上しにおきまして、あらかじめ発注をいたしますときに、ロケットのこれが幾らかかるのか、実際においてその見積もりその他は非常に困難でございまして、そういう意味からいたしまして、契約の形式において不十分な点があったことは事実でございます。そこで、会計検査院からの注意もございましたし、なお経理事務におきまして不十分じゃないかということもございまして、四十一年度におきまして経理関係に五名、四十二年度において五名増員をお願いしておるわけでございますが、経理関係を充実すると同時に、契約をやる方法におきまして、あらかじめ大体の見積もりによりまして計算をいたしましてこれを契約して、自後、完成いたしましたときに実際要りました費用を確認して正式の金額の決定をしよう、こういう方式につきましていま研究をいたしておるわけでございます。このロケットの研究につきましては、私どもとしましては、この研究が国際的にも非常に高く評価されておるのでございまして、経理の問題についてのこういう問題は、十分私どもは改めてまいると存じますが、しかし、その経理上におきましてむだの金を使うとか、そういうような、国民の税金をむだに使ったというようなことは絶対にないと確信いたしております。
  240. 永末英一

    ○永末委員 宇宙ロケットは何も東大の宇宙航空研究所だけでやっているのでなくて、科学技術庁でもやっておる。科学技術庁と東大関係でつくっておるロケットについて、そのロケットの本体と、それから搭載機器と人工衛星部分と、どういったメーカーがこれをやっておるかということを調べてみました。ダブっておるわけですね。両方ともダブっておる。間違いございませんね、科学技術庁長官、文部大臣、それだけ答えてください、時間がないものですから。
  241. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 ダブっておると思います。
  242. 永末英一

    ○永末委員 総理大臣、お聞き及びのとおり、ここに国民の税金がある。それからひとつロケットを開発しようという目標がある、そうして胴体がこう割れておるわけですね。それから、いよいよそれをつくっているところもまた同じところに流れてくる。どこが一体狂っているかというと、胴体がばらばらになっているところが狂っているのではないか、こう思われる節がある。もしこのことがわが国のロケット開発の時間をおくらせる、こういうことであるならば、私はいろいろな差しさわりが出てくるのではないかと思います。たとえば郵政大臣、これで人工衛星をくっつけるスピードがおくれるということによって、すでに宇宙を走っておる電波の先取りをされて、わが国がこれを開発するというようなときにはだいぶ損をする、こういうことがありはしないかと、私はしろうとではございますが心配をするわけである。そういう心配ございませんか。一言お答え願いたい。
  243. 小林武治

    ○小林国務大臣 結論的に一言で申し上げまするが、ただいま、当分の問日本も相当な割り当てをもらっておる、こういうことでございますから、御心配のような事態はない、こういうことをお答え申し上げておきます。
  244. 永末英一

    ○永末委員 わが国の郵政大臣ははなはだ安心をしておられますが、各国はそうではないのでございます。そこでヨーロッパにおきましても、各国は今度は共同して、たとえばELDO、ESROというようなもの、そうしてヨーロッパが一つになってこいつを飛ばして自分たちの一つのシェアをとろう、こういうことで一生懸命になっておる。わが国の場合は小さいくせに分かれておる。また気象庁も、気象観測の特別のロケットを飛ばそう、防衛庁はどうしているか知りませんけれども……。  そこで私どもは、この種の問題につきましては、一体近代国家というのは何だ。近代国家というのは、各国のいろいろな競争もございますけれども、これが人数の福祉や自国の国民の発展に寄与し得る、こういう国家目標を立てるならば、総力を結集し得る能力を持つ国、これが近代国家の資格であると思う。先ほどから、原子力につきましても、まだなかなかすっきりした形になっていない。いまの宇宙ロケットにつきましても、なかなかすっきりした形になっていない。これらはやはり一つの国家目標を立てて、これを一元的に、官僚統制をやるというのではございません。民間の知識、学者の知識、これをやはり政府が集めて、そして強力な前進をする体制をつくる。そしてこれは体制だけではいかぬのであって、大蔵大臣、やっぱりちゃんと予算をつける、各国と競争していくのでございますから。そういう近代国家としての力のありどころ、これをひとつ示してもらう。これが過般の代表質問でわが西尾委員長佐藤総理に注文をつけたところである。この御見解を承りたいと存じます。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから御指摘になっておりますように、新しい科学の開発、そういう場合には、総力を結集しなければだめだ、これはそのとおりであります。ただ単に総力結集というばかりでなく、最近の科学の開発から申しましても、ロケットの開発であるとか、あるいは原子力の平和利用等につきましては、各部門の総合的な効果を発揮するようにしない限り、これはできるものではございません。小さな狭い範囲で幾ら研究に熱中したといっても、効果のあがるものではございません。ただいまのロケットあるいは人工衛星の問題等につきましても、これは新しい部門でございますから、国力を結集する、そういう意味で大蔵省にも大いに力を入れてもらいますが、同時に、科学陣が総合的に結びついて、そうして成果をあげるということでなければならぬことは、これは御指摘のとおりだと思います。ただいまわが国のロケット開発については、愛知文部大臣時分以来、総合開発をするようないろいろ計画を進めております。まだ十分成果があがっておらないこと、まことに残念に思います。御指摘のとおりでございます。
  246. 永末英一

    ○永末委員 これをもって質問を終わります。(拍手)
  247. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて永末君の質疑は終了いたしました。  この際、申し上げます。ただいま参考人として片柳農林中央金庫理事長の御出席をいただいております。  片柳参考人には御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。厚くお礼を申し上げます。  なお、参考人の御意見は、委員の質疑に対する答弁の形で承ることにいたしますので、御了承願います。  それでは畑和君。
  248. 畑和

    ○畑委員 私は、現在大きな問題となっておりまする共和製糖の問題、それからさらにそれと関連して、政界の浄化のために政治資金の規正をどうしたらよろしいか、こういう政治資金規正の問題に重点をしぼりまして質問をいたします。さらに時間が余りましたならば、郵政大臣等に対しまして、ラジオの聴取料の免除の問題、それからさらに番組規制への政府の不当介入の意図等につきまして質問をいたしてみたいと思います。  まず、共和製糖の問題でございますけれども、この事件は、御承知のように、一番最初は、この間起訴されました、実はわれわれ社会党のかつて同志でございました相澤君が火をつけたのでありまして、その後、また大森君あるいは公明党の二宮君等がいろいろ財産の不当払い下げ等の問題をめぐって火をつけました。その後、参議院の決算委員会あるいは衆議院の決算、法務の委員会、あるいは参議院農林委員会等におきまして、非常な熱心な審議が続けられまして、初めは農林当局もあるいはまた関係の金融機関も非常に不誠意な態度でありましたけれども、だんだんと事件がこれらの人々によって追及される段になりまして、ようやく自分たちの非を認めてまいったのであります。この問題につきまして、わが社会党から相澤議員が出ましたことは、まことに党といたしまして、国民に対して申しわけない次第でございます。しかし、この相澤君の問題は、私は大きな共和製糖の問題の中でほんとのちょっぴりとした枝葉の問題だと思うのです。それは、やった行為自体はいわゆるマッチ・ポンプでございました。間違いございません。この間起訴になりました起訴事実からいたしましてもそういったことでございまして、この点は、われわれきわめて遺憾でございました。わが社会党は、御承知のように即刻彼を除名処分にいたしたのでありました。まあ、この点は、自民党のほうでかつての田中彰治君をとうとう除名することができなかったということに比べれば、まだまだわが党のほうは国民に対してまじめにこたえたと言えるのでありますが、この点、いずれにいたしましても、深くおわびを申さなければならぬのでございます。  ところで、この問題の処理に関しまして、現在検察庁において取り調べが進められておりまするけれども、今月の末あるいはおそくとも来月の初めには全部の結論を出すと過般法務大臣が言明をされておるところでございますけれども、その処理に関して私は質問をまず申し上げたいのでございます。  この間の法務大臣の答弁によりますると、まだ一億二、三千万円ほどの使途不明金がある。それを追及をいたしておる。また、関係議員について、もう数名の者が現在俎上にのぼっておる、こういうようなことでございましたけれども、一体この数名の議員の中には、いろいろいままでうわさに出ておりましたところの重政元農相が入っておるのかどうか、この点をまず聞きたい。
  249. 田中伊三次

    田中国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまお尋ねになった事項でございますが、先般の当委員会の席で私からお答えをいたしましたように、捜査は最終段階を迎えております。非常な慎重な態度で捜査当局は捜査に臨んでおるというのが事情でございます。それが特殊な事情でございます。長くやってまいりました中で、最終段階で最も慎重を要する。その慎重を要するという事情は、私の意見をもって申し上げますと、私の見解でございますが、法務大臣としての見解でございますが、政治的な圧力を及ぼすようなことをすべて避けて、公正な検察の手で厳正な判断のもとに罪になるものかならぬものか、これの見通しをつけさす段階がきておるのでございます。この席におきましてせっかくのお尋ねでありますから、いろいろのことを申し上げたいのでありますけれども、これを申し上げます結果は、その決意の前に、検察に対してたいへんな強い影響を及ぼすことを考えますというと、ここで私は、重政君が含まれるかどうかというお尋ねでございますが、だれが含まれるか、何人が捜査を受けておるか、だれが取り調べを受けたのか、ようやくにして、差しつかえのない限度において、わずか数十名ということをようやく申し上げたのであります。その数十名はだれかということを申し上げかねておる事情でございます。いずれも捜査の秘密として、おくみ取りをいただきたいと思います。
  250. 畑和

    ○畑委員 参考人あるいは被疑者として取り調べを受けた者が数十名ということでしたが、現在起訴すべきかせざるべきかということで問題になっておる者数名というふうにきのうの毎日新聞に出ておるのであります。そういたしますると、その問題の人が数名ということも法務大臣としては言えない、こういうことですか。
  251. 田中伊三次

    田中国務大臣 前回の私の発言は、参考人として調べたる人あり、また幾らか疑いをもって調べた者もある、その数は数十名に及んでおる、何名かについては重大なる段階にあるということを御報告を申し上げたのでございます。それ以上は、捜査の秘密としてごかんべんをいただきたいのであります。
  252. 畑和

    ○畑委員 実は先ほど法務大臣から、あくまでも政治的な配慮を加えずに、検察庁として、検察陣として公正な立場で処理をするように考えておる、こういうことでございます。そのとおりならばけっこうなんでありまするけれども、うわさによりますれば——これはあくまでうわさですから、どうかわかりませんけれども、検察部内におきましても、それらの処分に関して、扱いに関して意見の対立があるというようなこともちらほら聞いておるのであります。少壮な第一線の検事のほうでは、いわゆる大ものを何とか起訴したいということで主張いたしておるのに、上部のほうでそれに水をさすような態度であるかのようなうわさがあるのでありますけれども、こういうことはありませんか。
  253. 田中伊三次

    田中国務大臣 結論を申し上げますと、そういうけしからぬことはございません。ございませんが、非常に重要な御発言でありますので、一言申し上げなければならないと思いますが、何十人という特捜本部員が分担をいたしまして取り調べを進めております。そのそれぞれの取り調べの対象になる人物について、それぞれの事情が違うのであります。よって、取り調べを受けた数十名の全体の人につきまして意見が一致するということは、むしろあり得ないことでありまして、意見がいろいろあるということは、私は貴重な意見として差しつかえのないものと考える。ただ、そういういろいろな意見のあります中で、検察庁独自の過去の永年の伝統によりまして、不偏不党の立場に立って、相手が何党であろうと、また何党におけるいかなる地位に立つ人であろうと、それを顧慮することなく、事実の有無と、この事実をいかにして立証するか、その立証がはたして困難なりやいなや、立証がはたして可能なりやいなや。一口に申しますならば、公判廷における公判維持が立証によって困難なりやいなやという見通しをつけまして、その見通しが立ちます限りにおいては起訴をすべきもの、しからざる場合においては起訴をすべきものにあらず、こういう方向に検察が独自の立場で意見の一致を見て、これを私のほうに上申してまいることを私は待っておる。そして、検察独自の意向を私が尊重して私の意見を述べる、こういう方向でいく考えで、終始、本件は一貫しておるのであります。新聞記者等もいろいろ見解を述べに来る人々がございますが、私の主義といたしましては、妙な、片意地な、石頭でありますが、一切本件に関しましては発言をしない、声を出さないという方針をとって今日に至っておりますので、圧力をかけるようなことは絶対にあり得ないことでございます。この点は御信用いただきたいと思います。
  254. 畑和

    ○畑委員 いろいろな意見があることは事実である、この点はお認めになりました。しかし、検察部内として、起訴すべきか、せざるべきかという段階になったときに、それを総合して検察部内自体で独自に判断をする、証拠関係その他からいろいろにらみ合わしてやるということでやって、一切政治的な配慮はしない、こういうことでありますけれども、それは田中法務大臣はそういう態度であっても、検察陣のほうの最高首脳部が、あなたの干渉があるというわけでなくても、いろいろな政治的な配慮を加えることがあり得るのではないか、こう思うのでありますが、その点は間違いないですか、保証できますか、田中さん。
  255. 田中伊三次

    田中国務大臣 ちょっと、この検察のものをきめるきめ方というものについて、何か誤解をお持ちいただいておるのではないかと思う。検察独自の意見を決定いたしますには、検事総長以下の首脳部もこれに参加いたしまして、検察独自の意見を決定するのでございます。現場の第一線だけが独自の意見をきめて、これを検事総長が押えるとか押えぬとかいうようなことは、わが検察陣の取り扱いとしては、過去においてかつて一度もそういうことはない、あり得ないことでございます。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  256. 畑和

    ○畑委員 なかなか法務大臣うまいことを言っておられます。日本の検察陣に関してだけはちっともそういうことはないということでありますけれども、しかし、最後の段階で、検察の首脳が政治的な配慮をもってやられた例が、私はないとは言えないと思うのです。それだけに、その心配があるから私はこの話をしているのであります。しかし、あなたのほうから、そうだということがおそらく言えるわけでもあるまいと思います。したがって、その点はさらに追及はいたしませんけれども、しかし、この問題は、ともかく国民がすべて注視をいたしておる大事件でございますので、ひとつ政治的配慮だけはせずに、ほんとうの検察陣の意向で、そうした法律的な立場からの検討の上に立って処置をいたしていただきたい、かように思うのです。  いままでの例をもっていたしましても、なかなか法務大臣のいまの答弁を一〇〇%信用するわけにはいかぬというような事例がございました。それは検察庁独自の中で、われわれのひがみかもしらぬけれども、相当証拠がかたまっておるにもかかわらず、第一線のほうでは、これで起訴は可能だと思っておるのに、一番上のほうから、それでは証拠が足りぬ、足りぬというので、何度も補充捜査をさせるというようなことで時間を遷延して、そしてとうとう起訴にならなかったという例がある。しかし、こう言っても、あなたのほうから答弁させれば、そのこと自体確かに証拠が足りなかったのだからしかたがない、こう言われるかもしれませんけれども、しかし、そこには、一番上のほうになりますると、幾ら検察陣でも相当政治的な配慮を加えるという傾向が私はあると思うのです。  かつての、例の新潟県知事の塚田さんの事件の場合におきましても、第一線の現地の検察庁は非常に熱心にやりまして、起訴可能だというような意見でありましたけれども、高検あるいは最高検において、これがやはり証拠の関係で、それでは足りぬ、足りぬということで補充捜査をして、とうとうしまいには不起訴ということになった。あの事件のごときは、どう見ても、世間が見ても、これは有罪だ、少なくとも、裁判の結果を待つといたしましても、一応起訴はするというような事件ではなかったかと私は思うのです。それが私は本来だと思うのです。事件にもいろいろありますから、ああいった重大な事件で注目を集めているような事件は、私はやはり公判維持という点にあまり憶病にならずに、あえてやるべきだ、かように思うのです。あの事件のごときは、一人で二十万円以上のものを議員がおのおのもらっておるのです。総額で一千万円近い金が動いておるのに、何ともならぬということは、まことに国民としては了解がしにくい。裁判の結果、証拠が足りぬということであれば、国民も了解をすると思うのです。この事件のごときも、まさにそのとおりだと私は思う。したがって、先ほどの相澤君の問題のごときは、私は枝葉末節だと思います。可燃物質がなければマッチもつかぬのでありまして、可燃物質が問題なのです。ポンプも必要ないのです。ところが、可燃物質のほうを、重大な幹を問題にせぬ——といっては何だけれども、見過ごすというようなことになったら、国民承知をしない。このことは、十分法務大臣も、また総理も御承知だと思うのでありまして、ひとつそういう配慮を加えずに、悪い意味の政治的配慮を加えずに、私の言うたような配慮で、疑わしき点は、若干証拠が足りないでも私はやるべきだ、そして、最後は裁判官の判断にゆだねるということが私はむしろ正しいのではないか、かように思うのです。これはまた法律問題ですから、田中さんはおそらく了解してもらえると思うが、ともかくそういう態度で私は臨んでもらいたい。要するに、大きな魚が網にかからぬということではならぬと思うのであります。悪い人はどんどんやったらよろしいのであります。どうぞそういう点でやってもらいたい。いかがでございますか。
  257. 田中伊三次

    田中国務大臣 証拠が十分でなくとも断固やるべきだ、それが世論を背景としてとるべき道であるという御所論に御発言が聞こえるのであります。これは、いやしくも国会における御発言としては、容易ならざる御発言であると私は思う。  そこで、あえて一口申し上げるのでありますが、この事件は、御承知のとおり、昨年の十一月の九日に社会党十一君より告発をせられて発足をいたしまして、捜査に着手をしたのでございます。二万六千点の一件書類を押収いたしまして、年末年始、休日を返上いたしまして、実に熱心にこの事件の捜査をして今日の最終段階に及んでおる、こういう事件でございます。与党諸君はもちろんのこと、野党諸君におかれても、この事件の困難さというものを、どうぞひとつ検察の苦心というものを理解してやっていただきたいのであります。それはこういうことでございます。表は、大部分は金銭の授受は政治資金規正法に基づいて政府に届け出が行なわれております。その届け出は、申し上げるまでもなく、法律の明文に基づきまして、政府は直ちにこれを公表することが前提となって届け出をしておるのでありまして、新聞に書く、書かぬは別でありますが、政府はこれを公開しております。そういう、一体公開をすることを前提とした汚職、公にした汚職というものが、人間社会にあるであろうかということが一つであります。しかしながら、こういうこともあり得る。悪質な場合を考えてみれば、政治資金規正法上による金銭授受という形式をとっておることはカムフラージュである、事実はそうでなくて、法案その他の国会議員の権限に関する汚職である、しかしながら、この汚職は、あぶないから、新友会なる団体をつくって、献金の道を踏んで届け出をしようじゃないかというようなカムフラージュの道を講じたものであるということが、積極的に立証ができます場合においては、私の意見は、事大小を問わず、あなたは大きなものがこう、小さいものがこうとおっしゃいましたが、世論の動向にかんがみて、この場合は事大小を問わず、私はそういうことが立証のできます限りにおいては処置をすべきものである、積極的に措置をとるべきものである、こう考えるのでございます。こういうことでございますので、どうか公正な検察を信じていただきまして、おことばのとおりにいたします。政治的配慮を加えません。私、就任に際しましても、一切の事柄について政治的配慮を加えるべきものでない、それゆえにおまえを法務大臣に頼むのだというおことばもあるわけであります。私はこれを信ずるのであります。どうか検察を信じておまかせをいただきたいと思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕
  258. 畑和

    ○畑委員 先ほどの私が申し上げましたことで誤解があってはなんですから申し上げるのでありますけれども、証拠がなくとも、とにかく世間が注目しているんだから起訴しろという意味ではないのであります。いわゆるぎりぎりの線がございますね。ぎりぎりの線がどっちかということがありますよ、その証拠関係の判断でも。いろいろ意見が分かれます。そういった際に、ぎりぎりの点のときには、やはり起訴しておいて、そして公正な裁判所の判断を請うということが正しいのではないか、こういう意味なんでありまして、証拠がなくとも、とにかく国民が注目しているからやれという意味では決してないのであります。この点は、うしろで聞いておられる方々にも誤解のないように、また、言い方が悪かったかもしれませんけれども、この点誤解がないようにお願いをいたします。  先ほど田中法務大臣から、まことに頼もしい御返答がございました。私は、田中法務大臣が佐藤総理から、おまえを見込んで法務大臣にしたのだということで、その信頼にこたえるということで、一生懸命やっておるのだという話を聞きまして、ひとつ先ほど言われたように、絶対に政治的配慮を加えずにやってもらいたい、これを要望いたしておきたいと思います。  ともかく国民が注目をいたしております。大きな幹のほうをひとつよく調べてもらいたい。なかなか巧妙に仕組まれておるかのごとき印象を受けるのでありまして、その辺、捜査陣といたしましても苦労はあると思います。しかし、そういう国民監視の的になっておりまする事件だけに、ぜひとも政治的な配慮を一切加えずに、断固としてやるべきはやるということでやってもらいたい。この際、総理にその点の考えを承りたいと思います。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、共和製糖事件、これを取り上げたについては、社会党からの告訴もございましたが、ただすべきはただし、きわむべきはきわむという、そうして国民の目をおおうようなことはしないと、たびたび申し上げてきております。したがいまして、ただいまは、私の法務大臣を選んだこと、間違いなかった、正しかった、こういうおほめをいただいておりますが、田中法務大臣が、先ほど来申したように、絶対に政治的な考慮は一切しない、そうして政界を正していき、そうして国民政治に対する信頼を高める、これが現下の最も大事なことだ、かように私考えております。
  260. 畑和

    ○畑委員 私は、若干共和製糖の問題についていませとぎわまで来ている関係で、その問題を先に質問をいたしたのでありますけれども、さらに若干こまかく共和製糖の問題について質問をいたしたいと思います。  この共和製糖の問題は、御承知のように、管貞人という人物、これは本来日本人ではなくて、十年前に帰化をした人であります。共和製糖株式会社という会社自体が、最初の資本金はわずかに九百万円という会社でありましたけれども、またたく間にこれが資本金も八億五千万というような、大きな資本金の会社になった。それでどんどんと業界の併合等をやりまして、そうして急激に伸びた。その裏には、結局調べてみればいろんな不正があったのでありまして、その不正の一つの大きな柱は国有林野の払い下げでございました。それからもう一つ大きな柱は融資の問題。不正であり、かつ過剰な融資であった。これは政府並びに政府関係の金融機関からばく大な金額を引き出したということであります。このこと二つだけならば、私は一つのときどきある事件のうちで大きい事件というふうにも見られますけれども、その間にいろんな政治家がまつわっておることがちょいちょい出てくるのであります。それだけに非常に大きな問題になったと思うのであります。  まず最初の払い下げの問題につきましては、大阪府下の高槻市の霊仙寺の国有林三十六ヘクタールの払い下げの問題、これは参議院等でいろいろもう詳しく言われておりまするからこまかくは申しませんけれども、この問題は、これは林野庁の管轄だと思いますけれども、一体この払い下げの価格は三千五百万円と聞いておるけれども、それは間違いないのかどうか。これが正当な価格の払い下げということに——これは交換でございますけれども、評価が三千五百万円、こういうことになっておりますけれども、これは正しい評価であるというふうに農林省は現在でも考えておられるかどうか承りたい。
  261. 田中伊三次

    田中国務大臣 いまお尋ねになったようなことが、機密なのであります。いや、それはそうです。それが機密なんです。それは二月に家宅捜索を行ない、そうして起訴をいたしました。社会党の告発に基づく私文書偽造行使かつ詐欺罪に、これを起訴の手続を踏んで余罪を取り調べておる最中でございます。ただいま仰せのような事柄は、それは当を得ておったものなりやいなやという事柄につきましては、すべて機密中の機密に属するものであります。
  262. 畑和

    ○畑委員 私は法務大臣にいま聞いたんじゃないんだ。かって出ちゃって見当違いな返事をされては困るのでありまして、実は農林大臣に聞いておったのですが、まあ言われたからですけれども、しかし、いま問題になっておるのは、田中さんあれじゃないですか。その払い下げの問題、これも大いにやってくれるのはけっこうですよ。その辺に不正があるかどうか、検察庁でやってくれるのはけっこうです。もちろんわれわれはそれを期待したのだ。不当払い下げ、これが私は相当問題だと思うのでありまするけれども、これは参議院ではそんなことはなかったというふうに答弁をされております。それで、この間起訴になりました事件は、その払い下げられた物件をさらに根抵当に入れるときに三十六ヘクタールを六十九ヘクタールに水増しをして、そして、しかも宅地造成の図面まで引いて、これだけありますというようなことで、これは宅地でござんすということで資金を引っぱり出したから、それが詐欺罪ということになって起訴されておることは、私も承知しております。その前の段階の払い下げの問題について、機密であるほど捜査をされておるならば、私は非常にけっこうだと思うのでありますが、そういう意味ですか、取り違えているんじゃないですか、どうですか法務大臣。
  263. 田中伊三次

    田中国務大臣 取り違えてはおりません。起訴になりました起訴事項以外の事柄は、目下慎重に取り調べております。したがって、ここでいろいろ論及することはいかがかと思います。  なお、これは私からひとつお願いを申し上げるのでありますが、最終段階に参りまして、近く重大なる事柄の結論を出して、しかも私が先般の当委員会においての発言のとおりに、それは全国民が本件について得心のいくように理由を付して、つまびらかにその調査内容を発表するとまで言っておることでありますから、どうかこの重要段階において、とかくここでその論議をすることは、でき得る限りお許しをいただきたいと希望をいたします。
  264. 畑和

    ○畑委員 しかしこれは、そこまでほんとうに調べておるならば、私はむしろ敬意を表するのですが、しかし、そうでなくて、ただ共和製糖問題について、何でも全般について結論を下してともかく発表するから、共和製糖の問題については国会では論議しないでくれ、こういうことであっては私は重大だと思うのです。結局私は、払い下げ価格が不当であったか、不当でなかったかということ自体の質問でございますから、これは農林大臣が答えてよろしいのじゃなかろうかと思うのです。それはどうも刑事問題になっておるとか、なりそうだとかという話もまだ聞いたことはございませんし、私はむしろここにあるのじゃないかとすら思うのでありますけれども、ただ普通でこんな安い金で払い下げられるはずはない。すでに三十六ヘクタールのうちの約一ヘクタールが、払い下げを受けてから幾ばくもなくして関西電力の高圧線の敷地として買い取られた。その価格が一坪当たり一万五千円くらいですから、もうすでにそれで合計で六千何百万円、わずか三十五分の一の土地が、全部で三千五百万円よりもはるかにオーバーした、その倍の金で売り払われているということですから、それからいたしましても非常に不当だと思う。それで、農林大臣のほうでは、依然として正当な評価の払い下げであるということで主張されるのかどうかということを聞いているのですから、そんなに心配ないと思うのですよ。
  265. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お答えいたしますが、農林省といたしましては、当時の価額としては妥当な価額であると考えておると報告を受けております。
  266. 畑和

    ○畑委員 私は、これを妥当な価格なんといったら決して世間が承知せぬと思うのです。これはしばしにわたりまして、農林委員会、決算委員会等で問題になりましたから、幾ら政府が、当時としてはといいましても、ほとんど時間的にそう長くかかっているわけではないです。そういうことを、いまだに当時としては正当な評価であった、こういうように逃げられるのは、きわめて私は不可解なんです。  それなら聞きますけれども、農林大臣、あなたのときじゃない、松野さんのときなんですけれども、共和製糖問題に対する農林省と大蔵省で共同調査をした結果の調査報告書というのが、この前、解散前の国会委員会のほうに配付されたことがございます。それによりますれば、とにかく、担保としての評価の問題のときに、本件の高槻の山林についての評価はおおむね十億円から十五億円程度と推定されるというふうに報告しております。幾らも時間はかかっておりません。それで、十億円から十五億円と農林省自体が——食糧庁と林野庁と、両方を下に持っている農林大臣が、十億か十五億程度だと、こういうふうに報告をいたしておる。これと矛盾するじゃありませんか。担保のときの評価の問題になってくると、いや、そんな担保不足ではありません、たいした担保不足ではございません、これだけありますというし、それから、払い下げのときのことについては、林野庁のほうの関係では、正当な評価でございましたというようなことの返事をするけれども、これは同じ農林省ですね、そういう食い違いがあるのはおかしいと思うのですが、いかがですか。
  267. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 高槻のものが払い下げられました当時、農林省で査定いたしております金額は、その当時はあれで妥当であった、こういうことを言っておるわけでありますが、その後の報告書はいまお読みになったとおりであります。私、その間の事情をあまりつまびらかにいたしませんので、必要があれば事務当局からお答えいたします。
  268. 畑和

    ○畑委員 どうもいまのではだれもわからぬと思いますね。当時、評価はこうであったけれども、これは間違えました、実は現在調べてみますと、十億か十五億程度の金額と推定されるということならよろしいのだが、前の場合は正しいのだ、今度の場合は、正しくなかったことを裏づけるように、十億から十五億だ、こういう報告書を出している。前後矛盾しているから私は聞くのです。これだけでは了解できません。
  269. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事務当局から御報告いたします。
  270. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 昨年の十一月に、私ども調査書で申し上げましたことは、この高槻の山林は、中金が融資いたしますときの添え担保でございますから、厳密な評価はいたしておらないわけでございます。したがいまして、この報告書におきましても、正式の評価を行なっていないが、当該山林の一部及び近隣地の売買事例よりすれば、評価額はおおむね十億円ないし十五億円程度と推定されるとしているというふうに申し上げてあるわけでございます。その後、中金にも私ども指導いたしまして、できるだけ早い機会に正式の鑑定をいたすように申し入れておるわけでございまして、現在鑑定中というふうに聞いております。
  271. 畑和

    ○畑委員 どうもそれはおかしいね。じゃ、農林中金がどんな評価を今度出してくるのですか。その当時の価格としてそんなに評価が違うはずはないですね。農林大臣の報告は十億円か十五億円と言っているんです。その前は、あなた、三千五百万円ですよ。三千五百万円と十億じゃえらい違いますね。そういうごまかしをするからいかぬと思う。それは払い下げの制度が私は悪いと思う。払い下げ当時の評価のしかたが悪い。とにかく交換の場所になったもう一つのところは広島県の土地です。これは不便なところです。それで片方のほうの高槻のほうは高槻市外でありますから、そういったところで非常に場所的なあれが違うわけであります。そういうことを加味する割合を非常に少なく見ている。こういうことが、こういった国民の疑惑を持つゆえんではないか。あくまで、ただ山林のことばかり頭に入れてやるからこういうことになる。そういうことであっては、妥当な払い下げはできないと思いますよ。あくまで山林だから、国有財産だからといっても、山林としての問題だけじゃないのです。土地の価格がえらい違うですね、場所的にも。そういう点は、一々問答していたら時間が長くなりますから、この点はひとつ注意を喚起しておきたいと思う。こういう点は、国民は最も敏感です。だから簡単なそういう国会の言いのがれだけじゃ承知をいたしません。その点をひとつ十分に考えてもらいたいと思う。  そこで、ついでに聞くのですけれども、この払い下げはいつやられたのですか。
  272. 若林正武

    ○若林政府委員 お答え申し上げます。交換契約を締結いたしましたのは三十八年十月二日でございます。
  273. 畑和

    ○畑委員 この三十八年十月二日というのは、重政元農相がやめられて二カ月ぐらいたったときであります。それからまた、さらにこの交換の対象になったほうの広島の土地、この土地は、一々質問していると時間が長くなりますからいたしませんけれども、これは実はあらかじめ高槻の土地を目当てにしておいて、それと交換する適当なものを探した。その探して仮登記をした人が実は重政さんの義兄でありました。いまはもういなくなってしまっている。その人の名義で仮登記がされたということは私調べてわかっているのですが、こういう事実もあるのであります。こういう点が国民の疑惑を非常に買うのじゃないかと思う。しかもまたさらに、この払い下げを受けた農林開発興業の代表者が高橋喜壽丸でありまして、この人がまた重政さんの元秘書であった、こういう関係でございました。その辺は検察当局等がいろいろ調べの参考にしておると思うのでありますけれども、こういう点で、国民はこういう事実を聞くとその辺に非常に大きな疑惑を持つのでありますから、この辺の解明をぜひやってもらいたいと思います。  それからさらに芦屋の土地の払い下げの問題あり、それから滋賀県の志賀町の山林の払い下げあり、こうした三件の払い下げが、小さい資本金で税金もちっとも納めておらない農林開発に続けざまに払い下げをしておるということが、これまた私は問題だと思う。この辺も、検察当局がどう捜査をされているか聞こうと思っても、これは捜査の機密でございましょうからあえてお聞きをいたしません。  それから次に融資の問題について質問をいたしますが、この共和製糖グループに対する農林漁業金融公庫、農林中金、それから日本開発銀行、これらの三行から融資をした金が四十八億余あるわけであります。こうした多額の融資を受けておるが、しかしこの共和製糖グループはほとんど自己資金を持っておらない。資金計画ではいろいろな自己資金があるようなうそのことを出しておりまするけれども、ほとんど自己資金がない。それから民間資金もたいして借りておらない。ほとんどあげてこれ政府関係の金融機関に求めておる。このことであります。しかも重政誠之代議士は、三十七年の八月に就任をする前までは共和製糖の会長であった、こういう事実も御承知だと思うのであります。こういう点が国民が大きな疑惑を抱く点であることも十分御承知だと思うのでありますが、法務大臣ひとつ頼みます。こうした融資の問題あるいは国有林の払い下げの問題、それがいずれも非常に不可思議である。ただ単に管が巧妙だったというだけでは済まないと私は思うのでありまして、この辺の問題が大きな問題であろうと思う。  それからさらにお聞きいたしたいのは、これは農林中金のほうにお聞きをいたしますが、この農林中金の融資の問題、この回収はどうなっておるか。それを承りたい。
  274. 片柳眞吉

    ○片柳参考人 お答えいたします。  ただいま御指摘の私のほうの金庫の融資は共和製糖ではございませんで、同じグループの共和糖化工業に対する融資でございまして、調査報告書にもございまするように、昨年の八月末の残高が二十七億八千万円になっております。これに対して、約十億の担保不足というような御報告になっておりまして、私といたしましては、就任以来この債権の回収確保と、これからかような事態の起こらぬように現在鋭意努力をしておる最中でございます。  現在、まず担保不足が約十億ございまするので、いろいろ担保の追加徴収をいたしておりまして、御指摘の滋賀の山林、あるいは兵庫の山林、その他数件につきまして鋭意担保の追徴をいたしております。もちろん担保物件の評価のしかたはいろいろございまするけれども、何とか不足のないようにいま追徴をいたしておる最中でございます。(「どこまでやっておるんだ。」と呼ぶ者あり)これは後ほど具体的に御説明いたします。しかし、金融機関でございまするから、もちろん担保もできるだけ追徴いたしまするが、本来はこの企業を生かしまして、その中から元本の回収をはかることが、これが本命だと考えておりまして、さような趣旨から、現在のままではとうてい各方面の協力も得ることができませんので、共和糖化と別個に、債権者その他関連業者の話し合いがつきまして、最近新しい会社を設立いたしまして、とりあえずこの新会社が共和製糖の工場を賃借りいたしまして、各方面の協力を得て逐次債権の回収に努力をしてまいりたいということでございまして、これから担保の追徴と新会社による事業を軌道に乗せることによりまして、あわせまして今後の債権の回収確保に遺憾なきを期してまいりたい、かような次第でございますので、御了承いただきたいと思います。  担保について、なにでしたら具体的に申し上げてもけっこうですが……。
  275. 畑和

    ○畑委員 いや、いいです。  農林中金のいまの理事長は事件後に就任をされたのでありますから、どうもいろいろ責めるあれもないのであります。前の理事長がやめ、それから大山田、渡邊両理事責任をとってやめておられるというふうに聞いておりますけれども、法務大臣、これは言えませんかね。大山田、渡邊、それらの理事、それから理事長はどうか知らぬけれども、そういった人たちに対する関係の何か捜査はされましたか。
  276. 田中伊三次

    田中国務大臣 やめました理事長以下、いまおことばに出ましたような理事その他の役員は厳重に取り調べをしております。
  277. 畑和

    ○畑委員 新聞で見ただけでありますけれども、いろいろ農林中金の場合は、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律、これでもし贈収賄ありとすればこれによって贈収賄になるということでありますが、非常に多額な金が融資をされ、しかも相当な便宜を与えておる経過が見られるのでありますけれども国民はこの間に相当の問題があると見ておる見方が支配的でございます。新聞によりますると、カラーテレビやカメラ等ぐらいをもらった程度で、しかもそれがお歳暮、年始の時期等にもからみ合っておるので、しかも、経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律自体がもう死にかけておるような法律だから、あえて責任はとらないことにしたというような記事がございましたけれども、そのとおりでございますか。
  278. 田中伊三次

    田中国務大臣 最終段階において、すべてただいまおことばのような事柄も決定をする考えでございます。まだ未決定でございます。
  279. 畑和

    ○畑委員 どうも最終段階、最終段階というので、法務大臣も慎重のようでして、答弁が得られませんが、しかしまあそれだけの多額な金に比べたら、カラーテレビや何かぐらいはたいした金額じゃないだろうけれども、一般の国民からすれば、カラーテレビなどはまだ手が届かぬ、こういう状態であるので、したがって、こういった問題につきましても、私はやはりそういった国民の声を背景にしてやるべきことはやらないと、なかなか国民が納得をしないと思うのです。しかし最後の段階ということで答弁を避けられましたので、これ以上申し上げることはやめにいたしたいと思います。  それから二、三まだあるのでありますけれども、同じようなことで、共和製糖の問題については捜査の機密ということでお答えがなかろうと思いまして省略をいたしまして、共和製糖の問題につきましては以上でもって質問を終わります。法務大臣、もうけっこうです。  次に、私は、この共和製糖の問題等についても大きに関係のある、要するに政治の浄化に関連をいたしまして、政治資金の規制の問題、この問題についてひとつ政府当局、特に総理、自治大臣等から承りたい。  私はこの政治資金の問題は非常に重大だと思っています。総理もしばしば政治の浄化を叫ばれ、金のかからない選挙、正しい政治の運営というようなことを言うておられますけれども、この問題は与野党を通じての私は重大な問題だと思う。政治が金によって汚されるということではならぬのでありますが、残念ながら、こうした共和製糖の問題等、いままでたくさんいわゆる政治にからまる汚職事件があることはきわめて残念でございます。そこで、いまこの政治資金をどうするかという問題が朝野をあげて大きな問題になっておる。新聞等におきましても、朝日、毎日等においてもそれぞれ政治資金についての提言をいまいたしております。まじめな意味での検討がなされておる。それから、選挙制度審議会におきましても同様でございます。そういう観点から、建設的な見方から、私はこれから質問をいたそうと思うのでありますが、そういうところで、やはり総理以下もひとつ真摯な態度で率直に答えていただきたいと思うのであります。  ともかく、この間の選挙などは金をかけない選挙といっておりますけれども、新聞記事等を見ますると、百億に達するというようなそれだけの金額がこの選挙で動いておる、こういうことでございます。きれいな選挙にするからには、やはり資金を適正にして、多額な政治資金をまず出さないようにするということが私は非常に大きな問題だと思うのでありますが、その点総理はどうお考えですか。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま畑君も御指摘になりますように、この政治資金の問題はたいへん重大な問題でございます。これはこの扱い方いかんによっては、政界を毒し、また国民政治に対する信頼をなくする、こういう問題だと思います。前回の選挙は、こういう事柄、この批判を背景にいたしまして戦われた選挙でございます。それにいたしましても、たいへん多額な金がなおかかっておる、こういう批判でございます。御承知のように、選挙に金がかかる、これはある程度といいますか、やむを得ない。選挙自身におきましても、法定で許される金額は幾らだと、こういうことがございますし、またそういう機会には、選挙の場合だと党の活動は非常に盛んでございますから、党自身の活動資金としても相当の金が出ていくわけでございます。ただいまのように、政治資金が幾ら使われたから、これが直ちに選挙の法定費用を乱しているのだ、かように申すわけにもいかないと思います。しかし、とにかく金をかけないように、また金のかからないように、そういう選挙でなければ、政界の浄化など幾ら期待いたしましても、から念仏に終わると思います。そこで今回も、人ごとのように申すわけではございません。各界のお知恵も拝借しよう、こういうわけで、ただいま選挙制度審議会におきまして、これらの政治資金の問題、これをもちあわしていろいろ各方面から検討を続けていただいております。いずれそのうちに答申をいただくことだと思います。答申をいただきましたら、私は勇断をもってこれを行なっていく。また、各党ともこの政治資金のことについてはたいへん神経も悩んでいらっしゃる、かように私思いますので、必ずこの公正な、また政治浄化、こういう観点から考えられる選挙制度審議会、この結論というものを、政府自身も尊重しますが、各党におきましても、十分尊重する、かようなたてまえで御協力を願いたいものだ、かように思います。  ただいま資金についてどういうように考えるかというお尋ねでございますが、私は全般的に申したのであります。ちょうどいま選挙制度審議会に諮問している最中でございますから、私の意見を先走って申し上げることは穏当でない、かように考えております。
  281. 畑和

    ○畑委員 総理も、この政界の浄化のキーポイントは政治資金の規正いかんにある、こういうような意見でございますけれども、ただその規正の方法をいかにするかということについては、選挙制度審議会がただいま審議中であるからとやかく言いたくない、それにまかせて、それが出たら尊重して法制化したい、かような御答弁でございました。ところで、この選挙制度審議会における答申というものは、御承知のように、一次、二次、三次、四次とありまして、今度は五次目でございます。第一次の答申におきましては、政治資金の規正に関しては、原則として政治資金の献金は個人に限るというような答申をいたしております。ただ、とりあえずは——急にでもなんだから、そのうち、とりあえずの処置といたしましては、政府だとかあるいは地方公共団体等、そういったところと請負契約その他の利益を伴う契約をするような者は政治献金をしてはならぬ。あるいはまた、政府あるいは地方公共団体から補助金、助成金等をもらい、あるいは補給金等をもらうような会社はこれまた同様である。こういうような答申を第一次にこの政治資金に関していたしておるのです。ところが、これが御承知のように答申がそのまま採用されなかった。個人に限るという問題はそのときすぐ実施しろというわけではありませんでしたけれども、いまのあとで申し上げたことについての答申がそのまま採用されないで、「選挙に関し」てだけはそうしたものあるいは会社は選挙資金として献金はしてはならぬということに狭められたのです。これは御承知のとおりだと思う。これは非常に当時世間の批判を買いました。ほかの連座制強化の問題あるいはさらにはまた高級公務員立候補の禁止の問題等とあわせまして、非常に世論がわいたのでありまして、このことによって、「選挙に関し」というわずか五文字の挿入によって、もうすっかり骨抜きになったということであります。まあこういう点がありまするが、この点は今度は総理はどうお考えになりますか。これまたやはり答申に待つということでありましょうか。この点を承りたい。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどもちょっとその片りんをお話ししたいのでございますが、政治にはやはり金がかかります。また選挙にも金がかかります。問題は、そういうものが適正な規模ならば、だれも文句は言わぬだろう。また将来に尾を引くようなものでないならば、それもあまり批判にはならない。どこまでも金が多額なものでなくて、また尾を引かないようなきれいな浄財であることが必要だろう、かように思います。過去におきましても政治資金の問題についていろんな意見が出ております。しかし、これは各党ともそれぞれの事情が違っております。各党とも、この政治資金の問題はたいへん頭を悩ましながらも、いかにすれば公正な結果が出るだろうか、こういうことで苦心をしたのだと思います。したがって、政治に金のかかる現状において、まず少なくともひとつワクをはめよう、それにはやっぱり「選挙に関し」ということが最も手っ取り早い話じゃないだろうか、こういうのが過去の各党の間において意見の一致した点だった、かように思います。しかし、私は、そういう意味で、今回も選挙に関してだけ制限しろと、かようには申しません。いずれ選挙制度審議会がどういうような意見を出してきますか、これは各党ともそれぞれの事情下に置かれておりますから、なかなか簡単にはいかないだろうと思います。会社、法人あるいは団体等からの献金もございますし、あるいは個人献金というものもございますし、またその金額にワクをはめようというような考え方もありますし、そういう事柄、どういうような具体案が出てまいりますか、出てきた上で、各党は事情はよし違っておるにしろ、そのねらいが政界の浄化に置かれておる以上、そこらでひとつお互いに謙虚に話し合ってみる必要があるのじゃないだろうか、かように思います。また、連座制の強化の問題あるいは高級公務員の立候補制限の問題等々がいろいろ審議されるだろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、ただいまは、畑君のまずお尋ねになりましたものが金の問題、これが各党とも最も敏感にどうしたらいいだろうかという悩みの問題だと、かように思います。具体的には、ただいまの答申の出てくるのを、ひとつ持つことにいたします。
  283. 畑和

    ○畑委員 ただいまの総理の答弁の中でちょっと誤解があると思います。間違っておる点がありますから申し上げますが、第一次のいま言った答申ですね、それを骨抜きにした。すなわち「選挙に関し」という五文字を入れたことが、各党の申し合わせの結果そうなったんだというような御理解、答弁でございましたが、そう了解していただいたら、それは間違いで、あのときは池田さんが総理のときでありましたけれども、これはもう社会党は猛烈に反対をいたした。私自身が最初の本会議における質問に立ちまして、この点を申しました中の三本の反対理由の一つ政治資金の「選挙に関し」という文字を入れたことでありますから、この点は社会党は全然反対であります。その点は何かの総理の間違いと思いますが、もしその点お気づきなら御訂正を願います。
  284. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の経過はただいま畑君が言われるとおりならば、そのとおり——私はまあいま誤解をしたように思います。
  285. 畑和

    ○畑委員 どうも総理の認識がそういうことでは、私はちょっと困ると思うのですね。それは重要な問題だったのです。たとえ池田さんがあの当時総理であったといたしましても……。これは非常に重要な問題だったのですが、各党での共同の考え方だったというようなことでおられるように、それほどどうも資金の問題についての関心が薄いのではないかと私は心配をいたすのです。これは非常に重大でありまして、「選挙に関し」というだけでありますると、選挙中でありましても、これは選挙に関しない普通の政治献金だといえばそれで通ってしまう。そういうことで、いままでせっかく公職選挙法に規定を設けましても、その文字だけの挿入によってえらく本質が変わってきたということをわれわれ社会党は問題にしたところであります。どうかひとつこの点は誤解のないように、しかもこうした小手先では私はならぬと思う。やはり思い切って自民党のほうでまず率先をして、そうして政治資金のあり方を正すということでなければならぬ。まず第一に、それだから手始めに、先ほど言った「選挙に関し」ということだけではなくて、政治資金については少なくともそういった団体は献金してはならぬ、こうあるべきじゃないかと私は思うのです。ところで、そういうところは政治資金を献金してはならぬということになりますと、特に自民党のほうが非常に財政に響くというような配慮からそういうことになったと思うのでありますが、どうもこの点はきわめて遺憾でございますから、今度の措置のときにはまっ先に何よりもこれを最初に取り上げるべきじゃないかと思うのです。その点は別に答弁は要りませんが、ひとつ注意を喚起いたしておきます。  それから献金は個人に限るべきだという私の考え方、同時にまたこれは党の考え方でもあるのです。なるほど、われわれも総評等から、選挙等におきましては一億円くらいの金を献金してもらっております。自民党さんの何十億というのに比べればまことにさびしいきわみでありまするけれども、そういうことになっております。しかし、それもあえてわれわれのほうでは個々の人たちの献金、こういうことに切りかえる用意があると言うておるのです。いまはすでに全電通の組合等のごときは政治委員会というのがございまして、そこへみんな登録をして、そこへ選挙資金だけは別に集める。それで組合員であって私はそういう会費は納めない、カンパはしないということであれば、それもいたし方がないというような態度でやっておるのです。ほかの組合につきましてもそういう用意があるのであります。したがって、われわれといたしましてはあくまで個人に限る。金を集める人は、これはよろしい。集める機関があってもよろしい。国民協会のようなものがあってもそれは認めるんだが、しかしまたいま言った組合が集めるというその集める機関の存在はいいんだ、こういう考え方で、あくまで個人に限るという考え方、その私らの考え方の一番基本になるのは、実はこういうのです。いまの民主政治というのは、御承知のようにオブ・ザ・ピープル、バイ・ザ・ピープル、フォア・ザ・ピープルという例のリンカーンのことばのとおりでありまして、人民による人民のための人民の政治、こういうことであるはずである。したがって、そういう民主主義体制のもとにおいては、有権者はあくまで個人である。したがって、その民主政治に参画をして政治寄金をするものは樹くまで有権者である個人であるべきだ、こういうことが私たちの考え方でありまして、それを法人である財閥がまとめて金を出すということは、私は政治資金のあり方としては好ましくない、そういう考えに立っておるのでありまするけれども、その点については総理はどうお考えですか。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもだんだん具体的な中身になりますが、私も事情、実情を知らない点もございますから、これはひとつ審議会からの答申、それに待たせていただきたいと思います。
  287. 畑和

    ○畑委員 どうも、選挙制度審議会の答申を待ちたいということで、総理みずからの考え方をお述べにならぬことは、まことに残念でございます。その答申を隠れみのにしておるような感じが、私はいたすのであります。一国の総理であり、自民党総裁であるのですから、しかも金が相当集まるほうの自民党総裁、しかもマスコミ等におきましても、いま問題にしておるものは、おそらく対象としては多くの場合が自民党さんだと思うのです。いろいろあのキャンペーンなりに書いてあるのを私は拝見いたしましたが、どうも社会党にはそれらに該当するような場合があんまりないのです。われわれ自身が、選挙のときでなければ金を陣中見舞いにもらうことはないのです。その以外のときは、どうも政治献金を受けることは、われわれの場合ほとんどない。少なくとも私の場合はそうなんです。選挙のときは少しはいわゆる陣中見舞いが来ますけれども、そうでない。そういうことでございまして、ともかく政治の資金を零細な個人から求める、こういうことが私は正しい行き方じゃないか、現在のようなことではならぬと思う。ところが、どうも自民党さんのほうでは、個人に限られたんではなかなか金が集まらないということだと思うのです。自民党さんの立場からすれば、それはそういうことになるかもしれませんが、これはやはり国民のための政治であるからには、あくまでそれを乗り越えてやらなければならぬと思うのです。赤澤さんも、この間選挙制度審議会へ出席をされて、特別委員として自民党考え方をお述べになったようであります。その御意見によると、自民党としては、政党に対する献金は少なくとも会社等の法人で制限しないほうがよろしい、いまの段階においてはまだまだそこまで至っておらぬ、党としては非常に金がかかるというようなことを力説しておられたようでありますけれども、私はやはりこれは踏み切るべきときは踏み切らなければいかぬのじゃないか、そういった立場で、ひとつ総理にも踏み切ってもらいたい。まあ、佐藤総理、いろいろなことをやられたといいますけれども、せめてこのことぐらいはひとつやって、後世にまで、佐藤総理政治資金規正でこうして自分の党の利害を踏み越えてやったんだというようなことで、ひとつ残してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 改正したいというその熱意で、いまの選挙制度審議会にお願いしておるのであります。(「逃げるんじゃないか」と呼ぶ者あり)私はその答申を待つということ、ただいま盛んに逃げるんじゃないか、かように言われますが、最初から逃げるようなら審議会も開きません。
  289. 畑和

    ○畑委員 どうも、なかなか逃げるつもりじゃないけれども、結局逃げているような感じがいたすのです。(「逃げ回っているよ」と呼ぶ者あり)逃げ回っているという話であります。そういうきらいがございますね。  自民党では、この間の選挙で、二十億の金を財界から集められた。とりあえず十大市中銀行が金をまず貸して、それを埋めていくということで、すでに十六億くらい集めて返しておるというような話でございますけれども、これはわれわれのほうに比べたらばく大な資金であります。どうですか、総理は常日ごろ、われわれ自民党国民政党だ、こういうふうに言われておるのですけれども、それであるからには、私の先ほど言うた提案、どうでしょうか。国民政党であるからには、広く国民の有権者から金を集めるというようなことでやってもらえないものでしょうか。私はそう思うのです。実際には財閥から相当金をもらって、そして票は国民のほうからもらう。どうも少し虫がよ過ぎるのではありませんか。財閥から相当の金をもらって選挙をして、そのかわりうまくごまかして、そして広く国民から票は集めるということでは、少しうま過ぎると思う。やっぱり、資本家からたくさんもらうならもらうで、それは私のほうは、実際は資本家の代表の階級政党です、実際こう言ったほうがいいと私は思うのですが、どうでしょうか。
  290. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とんでもないお話をいまなさいました。笑いながらやっていらっしゃいますけれども、事柄はまことに重大な話でございます。これは真剣に、まじめにひとつ——国民政党であることには間違いございません。したがいまして、私どもは産業界からも物的な支援を受けますが、同時に国民各層から受けております。国民協会においてもすでにそういう事例がございますし、また零細な金もそれぞれ献金がございます。そういう点を十分お考えになり、また党の活動自身が一党、一階級に限られておらない。私は自民党こそ階級政党じゃなくて国民政党である、このことをはっきり申し上げて、他の政党がどういう形であるか、階級政党であるかどうか、それは私、申し上げませんけれども自民党が階級政党でないことだけ、国民政党であることをはっきり申し上げておきます。
  291. 畑和

    ○畑委員 しかし、それもどうも私はちょっと納得できないのです。とにかく自民党の政策では、相当大財閥に便宜をはかるような政策をとっておると思うのです。現在すでに国から財政投融資、あるいは補助金、交付金、利子補給等を受けておる会社、そういった法人からは、もうさっそく政治資金を取るのはやめるべきだ、私はそう思うのです。これをせぬと、国民がちょっと納得せぬと思うのです。いかがですか。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから何度も申しました。ただいまの御意見は御意見として聞いておきます。
  293. 畑和

    ○畑委員 どうも逃げられるので困るのですけれども、ともかく選挙制度審議会の第一次で、個人の献金に限るという答申をし、第二次におきまして、それを再確認いたしておるのですよ。それを今度第五次で、意見ももう一つ違う意見が、自民党さんに有利なような意見が出ておるようでありますけれども、私はどうもこのこと自体がおかしいと思うのです。第一次、第二次、ずっと連続した一貫したものだと思う。それを二度にわたって再確認した事項、さらにそれに対して異論が出るということ自体が一貫性を欠くというように思うのでございます。しかし、これを議論いたしておりましても、なかなか時間がかかりまして、私の納得するような答弁は得られそうもありませんので、次に進みたいと思います。  いろいろいまの政治資金の規正の問題で、問題点が相当たくさん投げかけられております。これからあとは少し自治大臣のほうに聞きたいと思います。いまの政治資金規正法、これによりますると、一番最初は、この規正法というのは、すべて政治資金を公開して、すべて明るみに出して、そして金の動きを報告させる、それを国民に知らせるために官報でこれを公告するというようなことが本旨であるわけでありまするけれども、しかしこの現在の政治資金規正法は抜け穴だらけだというような批評がございます。この点については大ざっぱに自治大臣はどう考えておりますか。
  294. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 お話のように、現在の政治資金規正法は、むしろ公開法とでも申し上げたほうがいいのかもしれません。政治団体というガラス箱の中にどういう金が流れ込んだ。そうしてどういうところへ流れていったかということを公開する。そうしてそれを国民批判に待つということでございまして、どういう金が流れてきてはいかぬとか、どういう金が流れていってはいかぬとか、そういうものではございませんので、現在では抜け穴だらけとおっしゃいましたが、むしろそういうことをたてまえにしておる法律だ、これは十分御理解のところでございますが、申し上げたいのでございます。
  295. 畑和

    ○畑委員 どうも自治大臣だから抜け穴がございますという返事はできないかもしらぬけれども、しかしそれを肯定するような答弁もございました。ともかく政党に対する、あるいは政治団体に対する金の出入り、それをガラス張りで出すだけだということでありました。それをどういう資金は流れ込んでは因るとか、あるいはどういう金は外へ出してはいかぬとか、こういうような規定は確かにあなたの言うとおりないのであります。そこがまさに抜け穴だと私は思う。いわゆるざる法というのはそこにあると思う。したがって、いまや政治資金規正法は根本的な改正を必要とするのではないか、選挙制度審議会におきましても、その一つとしてこれをやっておるようでありますけれども、これを勇断をもってやらなければならぬと思います。たとえばいまの政治資金規正法によりますると、政党の定義もきわめて不明確だ。ああいう定義では政党であるかないかということが——私のほうは政党でございますと言いさえすれば政党になるようなかっこうでありまして、きわめて不明確である、こういうように思うのです。それから政党のほうへの寄付、あるいは政党以外への寄付、これは出さなければならぬ。しかしながら、その一般の収入については、政党は収支を明らかにしなければならぬけれども政党以外の団体は寄付金以外の収入は出さぬでもよろしいというたてまえになっておる。そのため、最近会費という名前の寄付金が非常に多い、御承知だと思いますけれども国民協会の場合のごときはまさにしかりでありまして、その最たるものである、後援会等にも会費という名前で寄付を取っておるところも相当あるようでございます。したがって、資金の出入りがはっきりわからない、国民の前に明らかでない、この間自治省からいただきました資料を見ましても、昭和四十一年度の上半期に自民党に入りました政治資金、寄付されたもの、それは一番最高が出光興産であったのに私はびっくりしたのです。鉄鋼だとか電気事業だとか、あるいは証券であるとか造船であるとか、こういった関係のものはあまりなくて、その中の一つほんとうのたいしたものでない出光興産が一番最高である、こういうようなことでありまして、ほかは大きな目ぼしいものはない。あとは個人でそのくらい、それ以上の献金をしている。個人で一千万円くらい寄付しているところもあります。ところが団体になると、出光が八百万円だったか六百万円だったか忘れましたが、それが一番最高ということであります。それ以外のものは国民にわからない、こういうようなことであります。したがって、私はこの点についても、そうした国民にわからない点をわからせる必要がある。したがって、この政党以外の団体については、寄付以外の収入は報告義務がないというようなことになる結果になる法律を改めなければならぬじゃないか、こう思うのであります。この点、自治大臣はどう考えますか。
  296. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 まず政党は、政治活動をいたしますのを本来としておりますので、その収支の全部を届け出るようにいたしております。その他の政治団体は他に目的があってそれが政治活動もいたすという意味で政治活動に当たる部分だけいま報告させておるわけでございますが、政党とは何ぞや、あるいはそういう政治団体とは何ぞやということも含めまして、現在の、それから御指摘になりました会費の問題等も含めまして、第五次審議会で、しかも早急に結論を出そうといたしておりますので、その答申を待ちたいと存じます。
  297. 畑和

    ○畑委員 そのほかにもいろいろ問題がございます。現在の自治省のそういった政治資金の問題の報告を扱っている人員は一体何名ですか。
  298. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 十六名でございます。
  299. 畑和

    ○畑委員 わずかに十六名では、私はなかなか足りぬと思う。もいとも、現在の法規によりますれば、調査権がないということになっておる。したがって、調査権がないのだから、調査することができないからそんなに人間は要らぬということでありましょう。そういうことにもつながると思いますが、これはやはり調査をする権能を自治省に与えては困るから、どこかの新聞の提案でありましたけれども、これに対して独立の調査機関を設けるべきだ。いろいろ情報その他によっても、立ち入り等のことをやったり何かすると非常な人権侵害になるから、そういうことをさせない範囲においての独立の監査機関を置く、こういうような提案がありますが、私は非常に傾聴すべき提案ではなかろうかと思うのです。この点に対する考え方を承りたい。  また、ついでですから申し上げますけれども、もう一つ、現在では政治家個人の収支は明らかにする必要はないことに御承知のようになっております。人によっては相当な政治資金が集まるそうでありますけれども、こうしたものがどこから入り、どこへ出たかということが、政治資金規正法上はあくまで団体を本位にして扱っておる関係上、そういう規定がない。したがって、その辺の政治家個人の関係の支出、あるいはその収入等がわからないのでありますが、これも同時にやはり政治を公明に、資金の流れを公明にするためには、これは必要だと思うのであります。現在の法規におきましては、御承知のように会社から個人がもらう場合に、会社のほうも団体に対するものではないから届ける必要はない。団体の場合には団体のほうで寄付として扱えば——会費として扱えば別だけれども、寄付として扱えば、寄付を受けたほうから届けがある。ところが個人に対する場合には、どんな会社が幾ら大きな金額を個人の政治家に献金しても、それはどこにも登録をされない。また受けた個人のほうもこれを届け出る必要はないということになっておる。それが最近の非常な政治の腐敗につながる可能性が多いと思うのであります。この点も一つ改正する必要があるのじゃないかと思うのですが、この点。  それからさらに政党の収支の問題等におきましても、寄付は細大漏らさず書くようになっておる。千円でしたか五百円でしたか、金額は忘れましたが、それ以上に達すると全部書かなければならぬ。これもどうも最近の物価の関係から、金の価値からいいますればちょっとどうかと思うのでありますが、この辺の改正も必要であろうとは思います。と同時に、またこの支出のほうにつきまして、人件費とか食糧費とか、あるいはこの間話に出た国会対策費とか、こういうような問題等、ただ大ざっぱにその費目がわかるというだけである。それだからこの間の公明党の質問というようなことにもなるわけでありまして、やはりあからさまにする必要があるのではないか、かように考えます。  この三点ばかりについて、自治省として、またやはりただいま審議中でありますということかもわからぬけれども、そうでなくて、ひとつ自治大臣としての考え方をぜひ承りたい。
  300. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 政治資金規正法は、冒頭にお答えしましたようないわば公開法的なものでございますので、あからさまに、しかもそれには真実を記載するという宣誓書も入れて出ているわけでございますので、現在のところは調査権というようなものを必要としないと考えているわけでございますが、将来出てまいりますいろいろ政治資金そのものの規正を、本来の意味で規正をいたすというようなこととあわせ考えていかなければならないことだと思います。  それから個人献金でございますが、やはりこの政治資金規正法のねらうところは政治にどういう金が入り、どういう金が使われたかということでございますので、個人といたしますと、われわれの受ける歳費も含めまして、その収入で政治活動もいたすというようなことで、個人の生活を家計費と政治活動の費用とに判然分けることはなかなかむずかしいのではないかという考え方を持ちますけれども、なお検討をいたしてまいりたいと思います。  また、政党の収支につきましても、収入のほうについてもあまりこまか過ぎるという点もございますし、支出の面につきまして、まあまあ現在のところはどういうところに金が流れたという程度でございますので、あの程度にいたしますが、これはさらに検討をいたす必要もあろうかと存じております。
  301. 畑和

    ○畑委員 時間がございませんから先へ進みます。  私はこの政治資金の規正が一番の重要な問題だと思います。いろいろ選挙法をやかましく改正してみたりなどすることはむしろ後回しにして、やらないで、それでこの資金の規正をちゃんとやるということが一番早道じゃないか、かように思うのです。やはりイギリスのように、金のほうについては規制法には書いてありませんけれども、ただ政党として、あるいは選挙に立候補する者が法定選挙費用というものをきちっと守っておる、こういうことであります。こういうことをきっちりと行なえば、それ以外のやかましい制限はやらずに済むのじゃないか。その政治資金のほうをそのままにほうっておいて、幾らでも入ってこい、幾らでも使えというような、いわばそういうようなことであり、反面ただやかましくやってみても私はならぬと思う。買収、供応、そういった悪質犯はもちろん厳重にすべきでありますけれども、それ以外の形式犯的なものは、これは極力削除すべきであろう、かように私は考えます。戸別訪問禁止などのごときも、私個人の考えですが、こんなものはなくしたらよろしい。イギリスにおきましても、御承知のように堂々と戸別訪問は許しております。日本の戸別訪問を禁止した理由の大きなものは、戸別訪問したときに買収が行なわれる危険性がある、こういうことのためにこういう規定になっておる。これは日本も戦後二十年たっておるのです、日本の有権者を侮辱するものだとすら私は思うのです。そういう点で、むしろ政治資金のほうをきっちりやる、これのほうが本来ではないか、かように思います。いまの選挙法はまことにさか立ちをいたしておると思うのです。やはり民衆、大衆の政治でございますから、これはもう大衆が参加をする選挙にしなければならぬ。いまのような暗い選挙では私はいかぬと思います。それというのは結局金が問題になるからです。金の出し入ればきっちりさせて、そして法定選挙費用以上は使わせないということ、またこれを守らせる、出すほうも入るほうも規正する、こういうことでやれば、選挙ももう少し明朗に行なわれるのではなかろうかと思うのであります。オイコラ選挙法とよくいわれております。これはどうも普選に移行するときの産物でありまして、大正十四年か何かのときに母法はきめられて、その後公職選挙法になってから相当な修正は加えましたけれども、基本はそういうところにある。まだ民主主義というものが日本に芽ばえない時代の選挙法であったと思う。これを新しいいまの時代にふさわしい選挙法にするには、やはり政治資金をまず第一にきちっとやることが先決だ。そして国民が明朗に、みんなが支持する人が金を出し合って、そして選挙をする、こういう明るい選挙にするのが私は理想であり、またこれをやらなければならぬと思うのです。この点に関する考え方、私の建設的な考え方なんですが、どうかひとつ、この私の考え方に対していますぐどうするということではなくとも、こうした方向に対しての意見に対する総理考え方をお聞きしたいと思います。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 選挙を自由にできるようにしろ、戸別訪問も許せ、こういうお話でございますが、しかし、現状においてはなかなか困難かと思います。そういう点をも含めて、ただいまちょうど審議会に諮問している最中でございますから、いずれ出てまいりました上で私の態度をきめます。
  303. 畑和

    ○畑委員 次に移ります。もう一つだけ聞いておきたい。これは郵政関係でございますが、簡単に質問をいたします。  NHKの受信料の問題、それから番組介入の問題、この点でございます。NHK受信料の問題について、過般選挙に入って間もなくだったと思いますけれども総理も、ラジオの聴取料は無料にしたい、こういうことを言うております。もちろんその中におきましては、とりあえず無料にするということが行政措置でできる面があるからそれでやる、そのあとは法改正でやるんだ、こういうことでございまして、新聞等にそれが出ました。もちろんわれわれ自体も、実は社会党の態度といたしましても、ラジオ等のごときはもうやめたらよろしいという考え方には、これは賛成なんです。ところが、総理やその他郵政大臣の発言が、どうもNHKのあり方というようなことをよく認識しておらないために発言されたのではないかと思うのです。NHKの予算は、御承知のように、NHKで予算案を立てて、そして郵政大臣がこれに対して意見をつけて、それが国会審議をされるということでありまして、政府としては予算に対して意見を付するだけの権能しかないのです。したがって、こういったことを言い出す前に、十分なNHKとの話し合いの上でやるべきであったと思うのでありまするが、それがなされた形跡はない。したがって、いろいろ当時の新聞の報道等によってみましても、こまかい問答等はやめにいたしまするけれども政府のほうではそう言って——選挙もちょうどあったから、選挙目当てだとも一つは思います。たいしてこれが物価に響くとも思いませんし、企画庁のほうでもさっぱりデーターに入れない、無視しているような少額の金額でございますから、選挙対策もあったと思いますけれども、このこと自体は私ども承知できないのでありますが、しかし、ラジオ受信料の無料それ自身には私は実際賛成です。ところが、福永さんなんかは、NHKに話したはずだ、こういった談話が載っておるが、NHKは聞いておらぬらしい。それでNHKとしても、前田さんから反発の発言がなされておる。私は、これはNHKが正しいと思うのです。これはやはりそういった行政措置でやるからには、NHKの発意でやらなければならぬと思う。法改正の場合につきましては、もちろん別の問題であります。しかし、法改正の場合におきましても、御承知のように、現在甲契約、乙契約とあるわけでありまするから、この基本体系をくずすということになるわけであります、放送法を改正いたしましても。単独法としてもちょっと行き過ぎだと思いますが、放送法を改正するといたしましても、こういう大問題がある。それを軽率に、私は郵政大臣の思いつきというような感じがいたすのでありまするが、この辺どうですか。郵政大臣になったばかりで、まだ放送法もよく読んでおらない。まあ、選挙にちょっといいだろうというようなことでやられたのでは、私はたまらぬと思うのですが、ちゃんとした根拠があるのですか。その点聞きたい。
  304. 小林武治

    ○小林国務大臣 私は、昨年十二月三日に郵政大臣になったのでありまして、たまたま選挙に遭遇した、こういうことでありますが、私も、従来社会党の皆さんと同じように、もうラジオ受信料はやめたらよかろうということは、大臣になる前から考えておりましたし、また、このことはNHKの当局もよく知っておったはずでございます。また、これを発言するにつきましても、私はさようなことは内々で話をしております。ただ、たまたま選挙になったから選挙対策などと仰せられまするが、さようなわけではない。たまたまそうなっただけで、私ども従来の持論を私が大臣になってからこれを申し出た、そういうわけであります。NHKの受信料というものは、これは放送法で取れるようになっておるのです。したがって、放送法は政府にいろいろな修正、改正の提案権がある。したがって、受信料についてはわれわれは口を出してはならないという根拠はない、かように思っておるものでございます。  さようなわけでありまして、受信料の問題は、畑さんもお話しのように、テレビが普及して、テレビはもうほとんど九五%の普及率を持っておる。こういうふうになれば、ラジオ受信料等を出しているのは、僻遠の地か、あるいは低所得の人たちがほとんどである。こういうことであるし、しかもその収入自体はNHK全体の収入の一%にも満たない、こういうことでありまするし、またこれを捕捉することが非常に困難でありまして、従来ともNHKは非常にぐちをこぼしておったのでありまして、場合によると徴収の経費が受信料の半分にも達する、こういうような事態でありまするので、役にも立たないだろうし、また徴収もめんどうであろうし、また社会福祉的な立場からも、もうおやめになるほうがよかろうということで話し合いをいたしたのでありまして、むろん今回の受信料の免除はNHKの発意によって免除の申請をお出しになって、私どもがこれを認可した、こういう事情にあるので、お話しのような事態でないということを、はっきり申し上げておきたいと思います。
  305. 畑和

    ○畑委員 どうもNHKの前田会長をここに呼んでおかなかったので残念ですが、そんな話し合いがあったというならば、こんな反発は新聞記者の前でしてないはずです。毎日の「余録」にこんなのが書いてあります。「前田NHK会長がさっそく定例記者会見で反論した。そのいい分は、放送法の精神に反するし、手続上、間違っているということらしい。これはどうやら、NHKの性格に対する政府考えとNHK当局の認識のギャップにあるらしい。佐藤首相だけでなく、一般的にもNHKは政府の機関ぐらいに考えている人が少なくない。ところがNHKの人々は政府の御用機関でなくて、独立した報道、娯楽機関だと考えている。」「政府の一方的意向でラジオ放送料金の減免を押しつけられる筋はない、」こういうふうに「余録」に書いてありますが、私は、このとおりだと思うのです。政府の従属機関と考えられては、われわれは迷惑である。これは国民の機関であるということをひとつ御了解願いたい。  時間がございませんから少し先へ進みます。(発言する者あり)私の持ち時間は四十七分までだそうです。そうするとまだ七分。もう一つだけ。  それからもう一つの問題は、放送番組の問題であります。これは二月の末ごろのことでありまするが、たまたまTBSが九日の夜に放送した「現代の主役」シリーズ「日の丸編」、NETが十一日朝流した「ウイークエンド・ショー」の建国記念の日に触れた部分、これが閣議で問題になったそうでございます。そしてさっそく、これは郵政大臣の報告によりますると、注意をしたら両社があやまりに来た、こういうことを言うておるが、両社は陳謝した覚えはない、こう言うておる。それからまた、郵政省はNHKの予算をそのまま機械的に国会提出しているが、今度の国会提出にあたっては行政指導を進めたい、こういう小林郵政大臣の閣議の報告が新聞の記事に載っております。これはやはり前の問題と同じように、私は大きな問題だと思います。「日の丸」問題と同じように、私は番組に対する不当な介入であると考える。同時にまた、NHKを政府の機関というふうに考えておるからこういうことになるのではないか、かように思うのであります。そのときの閣議の模様等を帯いた新聞、これは読み上げると非常におもしろいのです、各省大臣の発言等が載っておりまするから。ちょうどここにおられるから聞いてもよろしいのだが、時間がかかりまするから、そのことを一々聞くことをやめます。問題は、例のTBSの「現代の主役」それからNETの建国記念の日に触れた番組の問題、これに対する政府の態度でありますが、私はこうしたことは、とかく放送法上禁止されておりまする番組の不当介入だと解するのであります。この点は郵政大臣どうですか。
  306. 小林武治

    ○小林国務大臣 これはもう私どもは不当介入をした事実はありません。この番組につきましては、御承知のように、すぐその翌日の新聞に大きくこの番組に対して抗議をした、ひんぴんとして抗議の電話を受けたという記事があったので、たまたま私は見ておらなかったから、どんな内容であろうかということを事務当局に尋ねたところが、事務当局はTBSの当事者の好意でこれを見せてもらった、こういうことだけでありまして、その結果について、私はこれが不当であるとも、警告をしたことも何にもありません。ただ聞きおいただけでございます。また社長が出てきてほかの話をしたが、陳謝をしたなんという事実もない、こういうことでありまして、一時いろいろ伝えられましたが、その後この問題はもう消えておるということは、実態がなかったということの一つの証拠ではないかと私は思っておるのであります。NHKを政府機関とも考えておりません。これは公共機関だとは思っておりますが、お話しのような事態はない、こういうことを御了承願います。
  307. 畑和

    ○畑委員 もう時間が来ましたから、これも急ぐためにちょいと読み上げます。これは毎日新聞の「余録」で、こう書いてあるのです。これは非常に参考になると思いますから、読み上げます、私がしゃべるよりも、このほうが適切だと思うから。「これも閣議に出たといわれるNHKに関する閣僚の発言は問題だと思う。「NHKの場合は、予算も経営委員人事も国会の承認事項なのだし、もう少し、政府に協力的であってもいいではないか」という意味の発言があったと伝えられている。もし、これがほんとうだとしたら、とんでもない考え方の飛躍である。」「放送という影響力の大きいマスコミの手段が時の政府に勝手に利用されることは、将来に悪例を残す。政府が、放送をPRに利用するために頭を使うのはいいが、個々の番組編成の自主性は放送局側にあるのが、自由世界の原則である。」こういうようにありまするし、また朝日の「天声人語」には「放送局は「番組の責任」をだれに対して負うか。いうまでもなく、視聴者に対し、世論に対して負うのである。役所や政府に対して負っているのではない。電波を割当てたからといって、政府が番組の内容にまでクチバシを入れるのは大きなスジ違いである。郵政大臣はなにかカンちがいをしているのではあるまいか。」こういうように言うております。これに対する答弁はもう求めません、国民が判断をすると思いまするが、ともかく言論の抑圧になる、言論の統制になるようなことは、厳に慎んでもらいたい。今度の問題も、結局郵政大臣の勇み足、閣議で突き上げられたものだから、まだなまはんかでよくわからないんだけれども、突っ走っちゃった。放送法をもう少し勉強すれば、こんな発言があろうはずはない、私はかように思う。以後ひとつ厳重に——そういうことがなかったと言うのでありまするから、今後こそないようにしてもらいたい。  以上をもって終わります。
  308. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて畑君の質疑は終了いたしました。  次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会