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1967-03-26 第55回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十六日(日曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    有田 喜一君       井出一太郎君    池田正之輔君       加藤 六月君    仮谷 忠男君       鯨岡 兵輔君    河野 洋平君       周東 英雄君    塚田  徹君       広川シズエ君    野原 正勝君       藤波 孝生君    保利  茂君       松浦周太郎君    松野 頼三君       箕輪  登君    赤路 友藏君       猪俣 浩三君    石橋 政嗣君       大原  亨君    角屋堅次郎君       川村 継義君    北山 愛郎君       中井徳次郎君    西宮  弘君       芳賀  貢君    畑   和君       八木  昇君    山花 秀雄君       横路 節雄君    曽祢  益君       永末 英一君    小濱 新次君       正木 良明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         防衛庁長官官房         長       海原  治君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         林野庁長官   若林 正武君         通商産業省貿易         振興局長    今村  曻君         通商産業省石炭         局長      井上  亮君         通商産業省公益         事業局長事務代         理       藤波 恒雄君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁宇佐美 洵君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月二十六日  委員加藤六月君、仮谷忠男君、鯨岡兵輔君、鈴  木善幸君、登坂重次郎君、灘尾弘吉君、野田卯  一君、山崎巖君、渡辺栄一君、猪俣浩三君、阪  上安太郎君、高田富之君、畑和君、山中吾郎  君、広沢直樹君及び矢野絢也君辞任につき、そ  の補欠として福田一君、中野四郎君、川崎秀二  君、箕輪登君、江崎真澄君、河野洋平君、広川  シズエ君、塚田徹君、船田中君、中井徳次郎  君、川村継義君、赤路友藏君、山花秀雄君、西  宮弘君、正木良明君及び小濱新次君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員河野洋平君、塚田徹君、広川シズエ君、箕  輪登君、赤路友藏君、川村継義君、中井徳次郎  君、西宮弘君及び山花秀雄君辞任につき、その  補欠として灘尾弘吉君、山崎巖君、野田卯一  君、鈴木善幸君、高田富之君、阪上安太郎君、  猪俣浩三君、山中吾郎君及び畑和君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  これより昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。  この際、申し上げます。本日、参考人として宇佐美日銀総裁の御出席をいただいております。  宇佐美参考人には、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございましす。厚くお礼を申し上げます。  参考人の御意見は、委員質疑に対する答弁の形で承ることにいたしますので、御了承願います。  なお、日銀総裁は、午前十一時には他の用務のため退席したいとのことでありますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと思います。  それでは、これより質疑に入ります。八木昇君。
  3. 八木昇

    八木(昇)委員 きょうは、さいわい日銀総裁が一時間御出席でございますので、当初の質問の予定を若干変更いたしまして、最初国債問題を中心にいたしまして、若干御質疑を申し上げたいと思うのであります。  総裁にお聞きをいたします前に、二、三の点について、まず大蔵大臣にあらためてお聞きしたい点を質問いたしたいと思います。  まず第一は、一昨年の予算編成におきまして、二千五百九十億円の公債発行されました。昨年度は七千三百億円、本年度予算において、さらに八千億円の公債発行をいま政府は提案をしておられるのでございますが、今後、一体何年間くらい、ほぼどの程度の金額の公債発行をいまのところ見込んでおられるのであるか、その点を最初大蔵大臣からお答えをいただきたいと存じます。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 年々の国債発行額をどうするかということは、今後の経済成長がどうなるか、これに応じて税収がどのように伸びて、またどの程度減税を行なうかというような問題、また一方、国民福祉増進をはかるためには歳出の規模をどの程度にする必要があるかというような問題と関連するものでございますので、長期にわたる公債見通しというものは非常に困難でございます。そのほか、道路をどうするとかというようなものは、年次計画というようなものを立てて予想をすることができますが、特に公債問題はこの長期予想がむずかしい。したがって、私どもは、いまやり得ることは、いろいろの調査会から御意見が出ておりますように、公債依存率というものを下げるくふうをしながら年々対処していくことが必要だという、この意見に従って今年度もそういうふうな処置をとったのでございますが、長期計画については、まだ私どもはできておりません。
  5. 八木昇

    八木(昇)委員 全くそういう無責任で、全くめくら運転でもって、とりあえずことしは八千億だ、また来年度になりますると、とりあえずまた八千億だ、こういうようなことでは、とうていわれわれは予算審議に応じられないわけであります。したがって、昨年度におきましても、前の福田大蔵大臣は、明確に言うことはできないけれども昭和四十工年度ぐらいまでの期間においてどういうことが予想されるかぐらいは当然言うべきだというわれわれの追及に対しまして、まあ大体昨年度発行した程度ぐらいの国債というものが、昭和四十五年度ぐらいまでには好むと好まざるとにかかわらず発行せざるを得ないだろう、こういうニュアンスの御答弁があったように思うのでございます。そうなりますると、大体昭和四十五年までの間に、答弁の中でも出ておりますが、四兆円とかあるいは五兆円とか、いまの程度の状態からいきますると、私どもは六兆円ぐらいになるのじゃないかと思うのでありますけれども、大体その程度ぐらいのところだというふうに大ざっぱに考えてよろしゅうございましょうか。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 前の大臣のときそういうようなお話があったということを聞きましたので、私どももそういう長期予想は一応する必要があると思って、いろいろ検討しましたが、これはさっきお話を申しましたように、経済の今後のあり方と関係いたしますので、これを明確に見通しをつけるということはできません。したがって、さっき申しましたように、国債発行する以上は、減債制度ははっきりしたものをつくらなければなりませんので、今回この減債制度をつくったということと、情勢に応じて、公債発行が必要であったにしても、必要依存度を減らすということで対処する以外にはない。これから長期的な見通しもつくりたいと思いますが、いまのところできておりません。
  7. 八木昇

    八木(昇)委員 そういった御答弁では、とうてい私どもは満足できませんので、それに関連いたしましてはあとでまた質問をいたしますし、今後も予算委員会で当然これは問題にしてまいります。  ところで、現在発行しておられる政府公債期限は七年間ということになっておる。ところが、この減債基金ということを言っておられまするけれども、世界の常識で、公債発行をしたならば、まあ返済の頭金というような意味で、発行額の二十分の一、つまり五%程度というものを減債基金とするということがまあ世間の常識でございまするが、政府は一・六%しかそれを予定していない。こういうことになりますと、七年たった後においても、とうていこの公債返済はできないわけでございますね。年々公債発行していく、何年かたって期限が来ても返済はできない。そうしますると、七年たってから後は一体どうなさるおつもりでございますか。結局、期限が来たけれども政府発行した公債政府が金を払って買い、戻すということはできないわけですね。七年たって後、その後はどうなさるおつもりでございましょうか。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう問題を含めて、私ども公債長期計画をする必要があるので、いまいろいろやっておりますが、さっき申しましたように、まだはっきりした額を示し得ないと言ったのも、そういうこととの関係もございますし、将来の私ども減税計画というものとも関係がございますので、いまのところその計画を述べられませんが、いずれにしましても、減債制度はいまのようにしております。これに前年度剰余金の二分の一を下らざる額、それから、必要に応じて一般会計から適宜繰り入れをするということになっておりますので、七年たったというときには、これは一般会計からそれとは無関係に別途の金を会計の中に入れてやることもございましょうし、この借りかえをもって対処することもございましょうし、方法はそのときになったらいろいろあろうと思います。
  9. 八木昇

    八木(昇)委員 そんなでたらめな答弁じゃとうてい承服できません。国債を国が発行するということは、言いかえれば国民借金をするということに通じておるわけです。しかも、いま公債発行の初年度ではないのです。すでに公債発行を始めて三年度目に入っておる。しかるにもかかわらず、ただいまのようなことでとにもかくにも借金はするのだ、これはひとつ認めてください、あとのことがどうなるかはいまだ検討中でございますという、公債発行の三年度目においてそういう答弁を受けて、われわれがどうして了承できましょうか。結局、落ちる期限なしの手形発行しておるということになるわけでしょう。これはもうまさしく不良手形ですね。そういう不良手形は厳罰に処すというのが政府方針でしょう。その政府がみずからこういうことをやっておって、一体どうなりますか。そこで、そういった事柄について、当然償還計画あるいはもっと本格的な減債制度、こういったものの内容を示していただくことを私は要求をいたしますが、それが示されざる限りは、この予算委員会は一歩も前進しないということを私は申し上げておきたいと思うのです。それはあと要求をいたします。  以上の前提の上に立って日銀総裁にお伺いをしたいと思うのでありますが、いまの政府公債は、市中消化である、日銀の直接引き受けではない、だから決して紙幣の増発にはならない、したがってインフレにはならないというのが、政府の繰り返して主張してきたところでございますけれども、現実は銀行シンジケート割り当てでございますね。ところが、その公債発行引き受け団の中でも、その中で一番大きく引き受けをしておりまするのは、申すまでもなく都市銀行ですね。ところが、これらの市中銀行の中でも、都市銀行が最も資金不足をしておるということは事実だと思うのであります。だとするならば、このシンジケート団、このシ団は軍隊の師団と違って、あまり勇ましくないのです。結局、そういう状況であれば、一応国債引き受けはしたけれども、一日も早く日銀、何とかこれを買い取ってくれ、こういうふうに日銀買いオペ要求するということは今日自然の事情ではないか、こう考えるのですが、この辺のところを、日銀総裁としてはどういうふうに見ておられるかが一点。  それから、第二の点は、信用金庫とか相互銀行等中小金融機関にとっては、これはもう逆ざやですね。六分五厘とか七分くらいに回していたのでは、とうてい成り立たないのがこれらの中小金融機関でございます。昨年の予算委員会におきましても、これは中澤委員から追及があったのでございまするけれども、もうはっきりと赤字が出る、損になるということがわかっておる、そういう国債を買うということは、中小金融機関の重役の背任であり、横領が成立するということすら中澤委員は指摘をしておったのでございまするけれども、そういった問題についてどういうふうに日銀総裁としてはお考えであるか、この二点についてまずお答えをいただきたい。
  10. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 ただいまの御質問お答えいたします。  最初に、国債消化の問題でございます。私は国債そのものにつきましては、日本の現状、いろいろの社会資本不足であるとか、こういうことは申し上げるまでもないことでありますが、福祉増進等につきまして、できればやはり国債発行ということが適当ではないかと思っておるのであります。ただ問題は、その量なり条件が適正であるかどうかということだろうと思うのであります。これにつきましては、私ども資金調節につきましてよく検討しまして、そうして無理でないような適正な発行ならばよろしいかと思っております。  ただいま御質問がありました、都市銀行が特に資金不足している際に、都市銀行にまあ大体申し上げますと全額の七〇%くらいやっておりますが、これは無理ではないかという御質問かと思うのであります。私ども資金調節をやっておりますのは、国債消化が――むろん国債消化というものは大事な問題でございますけれども国債消化のために資金調節を第一義的にやっておるのではなく、毎日毎日経済が動くために必要な資金をどういうふうに出すかというためにやっておるのです。そういう意味から資金調節をやっておるつもりでございます。したがって、その資金調節に必要な貸し出しなりあるいはオペレーションをやる場合に、やはり一番信用度の高い、市場性のあるものを、われわれはその担保なりあるいはまたオペレーション対象にすべきものだろうと思っております。これは日本銀行の本質的の問題でございますが、そういう意味から言いますと、やはり国債あるいは政府保証債というものをオペレーション対象にするのは当然であろうと思っておるわけであります。ただ、御承知のように、国債につきましても、オペレーション対象にする場合に、まあ一年経過ものをいま実行いたしております。その趣旨は、やはり国債というものを、日本銀行引き受けというよりも、市場で一応批判を受けたものを取り扱うのがわれわれの責任だと思っておるので、そういう意味から言いまして、一年間批判を受けたものをわれわれはオペレーション対象にしておるというわけでございます。その間、繰り返して申し上げますが、決して国債をよけい発行しようとか、あるいは価格を維持しようとかという意図でないことは、ひとつ御了承を願いたいと思うのであります。  それから、中小金融機関逆ざやではないかというお話でございますが、これはある場合においてそういうこともあろうかと思いますが、しかしこれは、資金の調達のためにやっておるので、中小金融機関日本銀行に対して買いオペに応じてきますのは、その資金が必要だから応じてくるわけでございますので、その意味から言いまして、それだけを直接的に比較して、逆ざやとかなんとかということは、これはむろんその幅が非常に広くなり、また長期的になると問題ではございますが、短期的にはそれほど問題ではなかろう、かように思っております。  それから、前段の問題にも関係するのでございますが、割り当てではないかということでございますが、これにつきましては、政府におかれましても非常に配慮をされまして、御承知のように、国債発行懇談会というので、銀行側の人も出てもらいまして、その一年間なりあるいは半期なりの発行額はどれぐらいにしようかという御相談もございますし、また、毎月そういう直接いわゆるシンジケート団懇談会をやりまして、そうしてその月その月の発行額を相談してやっておるのでございます。決してわれわれは押しつけがましいことはしていないつもりでございますし、現に毎月その割り当て額も違っておりますし、個々の銀行になりますと、ある銀行は今月はやめてくれというところもございますし、また、ある銀行は、もう少しよけい買ってくれとか、いろいろございますので、それらをすべて各引き受け側の意向を十分尊重してやっておるつもりでございます。
  11. 八木昇

    八木(昇)委員 質問時間が十分でございませんので、はなはだ失礼でもけれども、できるだけひとつ要点を端的にお答えいただきたいと思うのであります。  続いてお伺いをいたしますが、ただいまの御答弁は、少なくとも一年間は、国債というようなものは、市中批判を受けてから、オペレーション対象にするにしても、そういうふうにすべきものであるというふうなお考えだと私はお聞きしたのでございます。ところで、一昨年発行されました例の赤字公債の分、これは二、三日前この委員会におきまして、大蔵大臣は、すでにその約六〇%が日銀保有になっているという御答弁があったのであります。それで、どういう状況になっておるのか。それから、昨年度発行国債七千三百億円分は、一体現在は日銀がこれを買いオペ対象にまだしていないのか。また、買いオペ対象のみならず、市中銀行に金を貸し出す場合の担保物件としても扱っていないのかどうか。また、現在いまだにそういうことをやっていないとするならば、一体いつからこれらを買いオペ対象にするというお考えをお持ちなのか。それから、本年度政府発行しようとしておる八千億円分については、一体どういうふうにお考えになっておるのであるか。これらを端的にお答えをいただきたい。
  12. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 いわゆる赤字公債分は、大蔵大臣がおっしゃったとおりであります。市中消化分が、千百億だったと思いますが、そのうち六割を日本銀行買いオペにいたしたわけであります。  それから、今後どうするかという御質問だと思うのでございますが、国債は現在担保にはいたしておりませんけれども、やはり貸し出し担保というものは、最も優秀で、信用度が高く市場性のあるものという見地から言いますと、私は国債は当然入ってくるのだろうと思うのでありますが、現在は国債担保に取っておりません。しかし、その場合でも、やはり国債につきましては、一年経過ものをできるだけ取ってまいりたい、つまり一年経過したものを、将来担保に取る場合はそういう趣旨でやってまいりたい、かように思っていますが、原則としては、やはり最も信用度が高いというところが、日本銀行の立場から言いまして、当然これは担保に取っていいのではなかろうか、かように考えております。
  13. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、一昨年の補正予算赤字公債発行がきまりましたのは、一昨年の十二月であったと思います。そうなりますと、そのうち市中引き受けの分が千百億、それの六割をすでに日銀が買い取っておる、こうおっしゃるのでございますが、いつごろから買い取りを始められたのでございますか。
  14. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 この二月に買い取りました。
  15. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、これは一年たっていないという状況になるのじゃございませんか。公債は昨年の一月から三月にかけて発行されておりますね。それがもうことしの二月には買い取られておる。こういうことになりますと、どうなりますか。
  16. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 この国債は三カ月ごとに仕切って発行いたしております。したがって、去年の一月から三月まで発行されたものは、一月に発行されたものも、二月に発行されたものも、三月に発行されたものも、同じものでございます。したがって私どもは、二月に買い取りましても、これはどれが一月分か二月分かというようなことは、しるしがございませんので、中をとって二月ということで一年経過ものとみなしてよろしいかと思っておるのであります。
  17. 八木昇

    八木(昇)委員 ただいまのような状況をお聞きいたしますと、もうこれは日銀が直接引き受けをすると、世論の批判もきびしいので、中にちょっとトンネルを通そうというだけであって、そのトンネルを通る期間も、もう一年すれすれ、こういうところでやっておるという印象を強く受けます。少なくとも一年間は絶対に日銀買いオペ対象にするようなことはしないということを、これは大蔵大臣やあるいは総理も、昨年あたりの予算委員会でたびたび言明をしておられるのでありますけれども、その辺は非常にごまかしのにおいが強いと私は判断をせざるを得ないわけであります。  そこで、これはできれば総理からお答えをいただきたいと思うのでありますが、七千三百億の昨年度分、今年度の八千億、これらについてはどういうふうに今後お考えでございましょうか。いまのような形で結局日銀が買い取るということであるならば、私はもう日銀直接引き受けと何ら違いない、こういうふうに思うのでございますが、その辺ひとつ国民安心感をはっきりと与える意味において、これはできれば総理から御答弁いただきたい。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後も同じように少なくとも一年を経過したものをオペの対象とするという方針は変わらないでやっていきたいと思っております。
  19. 八木昇

    八木(昇)委員 たとえばこれが一年以上経過したからといったって、私はこれは大きな問題だと思うのですね。いまのような安易なやり方はやらないということを総理からはっきりおっしゃるわけにいきませんか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公債発行について、基本的にずいぶん考え方が食い違っておるようであります。しかし私は、いま大蔵大臣並びに日銀総裁が説明をいたしましたとおり、このいき方でいわゆるインフレになるというようなことはない、かように確信をいたしております。したがいまして、在来の方針同様、今後ともこの状態でいくつもりでございます。
  21. 八木昇

    八木(昇)委員 総理がそういうふうな御答弁をなさるのならば、私も若干お聞きをいたしたいと思います。  一体、政府公債政策は成功したのであるかどうかの評価の問題だ、こう思うのであります。私は、これは将来において、あの佐藤内閣の時代に発足をした公債政策が今日の重大事態をもたらしたというときがきっと来ると思う。私はしろうとでありますがゆえに、かえって私は変な知識がないので、素朴にこの感じがいたします。それのほうがむしろ正しいと思う。というのは、公債政策の効果という点について、総理は、非常に景気が回復をした、日本の経済が調子がよくなった、こういうことをおっしゃりたいのだろうと思うのですね。まず短期的な視野での評価、それからさらに長期的な視野での問題は、あとで私は意見を申し上げますが、そういうふうに言いたいところだろうと思うのですけれども、なるほど景気が若干上向いてきた、そうして各産業の生産が非常に伸びてきた、そうして大企業の会社の収入はたいへんふえてきておりますね。三月末の決算は、重要基幹産業、大企業においては、たいへん好調であります。特に鉄鋼のごときは笑いがとまらない、こういう状態ですね。結局、そのことは、大企業や基幹産業を担当しておる大資本の筋に対しては、たいへん公債政策は調子がいい結果をもたらしたということは事実でありますけれども、中小企業は依然として倒産の記録を続けておるということについて、どうお考えでありますか。あるいは、農村はどんどん専業農家が減少しておる。出かせぎ労働者の問題が出ておる。昨日でございましたか、四名の方が不幸にもなくなられるという事態が起きておる。労働者の状態は一体どうであるか。こういうことを考えますと、私は短期的にこれを見てみても、公債政策が成功しておるとはいえないと思う。東京都知事候補の美濃部さんの話ではございませんけれども、いま佐藤内閣は、こういう公債政策とベトナム特需という二つの麻薬によって当面を糊塗しておるけれども、これは近い将来に重大な事態をもたらすということを彼は断言をしておりまして、こういう佐藤内閣の政策と対決をするということが今回の都知事立候補の目的の最大なるものであるということを言っておる。そのことは都民の生活を守る――むろん、そういう佐藤内閣の政策に、地方の首長が、政治は中央依存であってはならない、都民の生活を守るために、そういった経済政策に対しても、あくまでも佐藤内閣のやり方に対して、主張すべきは主張していくというお考えのようであります。そういった点について、一体総理はどういう見解をお持ちであるか。これはもう実際、現実です。大企業にとっては潤っておるけれども、一般大衆はあえぎ苦しんでおる。どうお考えでありますか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、景気論争をよほどいたしましたので、重ねてするつもりはございません。私もいわゆる経済評論家ではございません。しかし、経済を担当しておる政治家として言いますると、公債はりっぱにその目的を達し、成功しておる。これは、何とおっしゃろうと、不況を克服するために、公債発行したということを申しました。これは明らかにその目的を達しておる。ただいま大企業と中小企業に分けて、そして大企業には幸いしているが、中小企業には幸いしていない。倒産等から云々と、こういうお話でございました。私は、いま不況を克服をしたと言うのは、経済全般について言うのであります。したがいまして、ある部門におきまして、これは中小企業全体ではございません、個々のものについて非常に苦しい状態にあるか知りませんけれども経済全体が上向いたことは、これは専門家もしろうともひとしくみんなさように言っておるのであります。これは私、最も素朴な考え方が非常に端的にこれを表明しておると思います。  また、地方選挙で国政について対決するような問題はございません。その点は、社会党もそういうことを本気でおっしゃらないだろうと思いますから、どうかひとつ誤解のないように願っておきます。
  23. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの答弁は全く的をはずれておりますね。専門家も、大衆も、総理のお考えとむしろ逆に見ております。  それから、地方政治の首長といえども、ただ政府から分け与えられたところの資金のワク内で、何か住民にいろんな日常の生活の問題を、そのおこぼれを配分してやるのが地方自治じゃございませんから、その点を論議するつもりはございません。  ところで、今度は長期的にこの公債政策が成功であったかどうかを見てみた場合も、私はたいへん問題があると思う。ということは、先ほど来の大蔵大臣の御答弁その他から判断をいたしましても、やはり今後、少なくとも昭和四十五年ぐらいまでの間は、相当程度公債発行していかれるお考えのようでございます。それでは一体、昭和四十五年度国債の総額はどのくらいになるだろうかということについて、私も専門家に少し計算をしていただいたのであります。そうしますると、大体財政規模が今後年間一割くらいずつ伸びていくものと一応想定して、それからまた租税の弾性値というものを一・二ないし一・五くらいに見ていきますと、公債の累積総額は、昭和四十五年で六兆円ということになる。この数字については、そんなにはっきりと規定することはできないでしょうが、そういうことがほぼ想定をされる。現在はまだ政府は償還の原資としてわずかに一・六%しか本年度予算に提案をしておりませんけれども、これを世界水準にみなして五%償還をしていく、こういうことに見て、そうして公債の金利を六分程度に押えてみましても、昭和四十五年度には、いままでのずっと発行してきた公債の元利の昭和四十五年度だけの償還金が幾らになるかといいますると、六千九百億円になる勘定になります。この約七千億円の金というものは、今日一年間の国全体の社会保障費の総額にも見合うものです。しかも、なおかつ膨大なる国債の元本の大部分は残っておる。そうして、それを返済するにはさらに相当の長期を要する。しかもその間には、ベトナム戦争はおそらく、そんなに五年も十年もあの惨烈な戦争を続けるとは思えない。こういうようなことを考えると、一体どういう見通しをもって今度やっていかれるつもりであるか、この公債政策は危険千万であって、しかも償還計画も示さずに、あるいは減債基金についての確たる計画も示さないでおって、国民の代表であるわれわれにこれをのめ、今後一日か二日の審議でもって押し通せというようなことを政府要求をしてこれを提案をしておられるわけでしょう。どういうふうにお考えになりますか。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま出しておる公債は、いわゆる建設公債でございまして、この公債によってつくられる資産は、国民経済の上で非常に役に立つ資産である。今後どのくらい長期にわたって役に立つかと申しますと、平均して少なくとも六十年ぐらいの効果を続ける資産であるだろう。見合い資産は少なくとも六十年ぐらいは国民生活に非常に役立つ資産であるというふうに考えますと、そういう資産を国が公債という借金によって、一方有効資産を、見合い資産をつくっておるときに、期限がたとえば七年で来たといっても、長期にわたってそれだけの効果を発掘しておる資産を持ちながら、これを全部七年で決済するというほうが、実際においては財政上非常な無理であって、当然にそのうちで償還すべきものは償還するし、借りかえのきくものは借りかえるという借りかえ政策をとるということは当然でございまして、したがって、私ども減債制度をつくって、全体に償還に見合ったこれだけの財源を積んでおくんなら、長期にわたって差しつかえないであろうという制度は一応つくりながら、現実の期限の来た場合には、これは借りかえとかいろんなことによって対処しながら、順にこれを長期に延ばして、その間の経済の成長によって、これを全部決済をする方法をとる。もう公債というものは、発行しだしたら、その返済は相当長期的な対策をもって臨まなければならないということは、国際間の常識でございますので、そういう意味で、私どもはそう簡単にこの対策を立てられない。どうしても必要だといってその作業はやっておりますが、そう簡単にすぐにお示しできるようなものにはならないということを言っておることでございまして、いまやっておるのが全くでたらめな公債政策というものではございませんで、私どもは十分将来を考えた政策をやっておるつもりであります。
  25. 八木昇

    八木(昇)委員 そんな答弁では、とうてい満足できません。なお、今度の政府公債政策の影響として、国際収支も悪化しておりまするし、あるいは、いろんな現象から卸売り物価が値上がりを始めてきておるというようないろんな問題がございますので、それらはとうてい短時間でやれませんから省きますけれども、ともかく償還計画の、もっといわば財政計画的なものですね、それと、並びにいまの本格的な減債制度、こういうものを直ちにお示しになれますか。昨年の予算委員会におきまして、勝間田委員質問に対しても、中澤委員質問に対しましても、総理並びに前大蔵大臣はそれぞれ非常に明確に答弁をしておるのです、議事録を読み上げませんけれども。要するに、いましばらくお待ちを願いたい、でき得べくんばこの予算案が参議院通過までの間に何とか示したいというふうに考えておるという趣旨を言っておられますね。しかもその後加藤委員質疑で、ついに予算委員会休憩という状態になった。理事会の席上では、いまの参議院通過までに何とか計画を示すからごかんべん願いたいということで、昨年は事態が収拾をされておりますね。ことしもそれは示さないままで、ほおかむりのままで通ろうとなさるのでありますか、その点ひとつ明確に御答弁願いたい。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年そういう答弁がございましたかどうか、私はよく知りませんが、しかしそういう答弁をして、いままで努力しておって、まだそれができなかったということだと私は考えておりますが、私もこの公債発行についてはそういう計画は持ちたい。私の考えはできるだけ早くこれを打ち切る方法はないかという、また新しい考えを入れていろいろやってましたために、とうとうやはり私もきょうまでそういうものをお出しすることは間に合いませんが、私もいましばらくこれはお持ち願いたいというふうに考えます。
  27. 八木昇

    八木(昇)委員 いましばらく、いましばらくということで、予算委員会を、一昨年の補正から含めますると、三たびそれで押し通すということはできません。どう言ったか知らぬけれどもとおっしゃるならば、勝間田委員質問に対する佐藤内閣総理大臣答弁を読みますと、「この予算委員会の審議中にと、こういう条件をつけられるのですが、できるだけ早い機会にただいま要望されました各点について成案を得るようにしたい」、できるだけ早い機会にというのは、これは去年の三月ですね。そしてあなた、ことしまた八千億の公債発行をやろうというこのときまで出さないでもって、一体この答弁が成り立ちますか。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の言っているのは、その金額のめどを入れた計画のことでございまして、そうでないものは一応考え方を示そうということに去年なっておった、その考え方というものは、この三月二十二日に資料として大蔵省のほうから出してございます。これが去年の考え方を示すということの回答でございまして、私のさっき申しました、まだしばらく待ってくれというのは、金額の入ったそういう長期計画という意味でございます。
  29. 八木昇

    八木(昇)委員 もうきょうは時間がございませんから、この議論はこういたしましても、これは将来、この予算案が成立するかいなかというようなときには、それまでの間に必ずわれわれの党としても問題にいたしますので、一応その点は留保いたしておきたいと思うのでありますけれども、ただいまのような答弁では全然了承できません。  それからまた、考え方などとおっしゃるけれども、今年度予算について、あるいは暫定予算についての提案説明の中でも、あるいはこの予算説明書の中でも、述べてあることは、もう全然説明になっていないです、それは。問題にならない。もう少しはっきりした約束ができませんか。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 いまのお話でございますが、速記録によりますと、福田大臣の御答弁でございますが、この数字を並べる、何年度の財政はどうなるというようなことについて、「それを並べることは意味がないことである、私はこういうふうに考えております。先ほど申し上げたとおりであります。しかし、考え方自体を文章にする、そうして御理解の一助ともしていただく、こういうことは私は意義のあることであると思います。さような意味においての資料は早急に提出いたします。」と、こういうふうにお約束したようでございまして、このお約束に基づいた資料は三月二十二日に提出したということになっております。
  31. 八木昇

    八木(昇)委員 それは近い将来必ず問題にいたしますので、その点については権利を一応留保いたしておきます。  いよいよ総裁の時間が来ておりますので、最後に総裁に二点だけ伺って、国債関係質問を終わりたいと思うのでありますが、国債発行はやむを得ないものといたしましても、それを安易に日銀買いオペ対象にするということについては、確かにだれが考えても大いに危険性があるということは言えると思うのであります。しかしながら、そういった事柄については、やはり現実の問題として政府筋から日銀へ場合によってはいろいろ圧力がかかるという場合もあるだろう。そこでこういった事柄について、国債買いオペ対象にすべきかどうかなどという重要な問題について、これはあくまでも日銀政策委員会というものが自主性を持って、権限を持って、また権威を持って、これをみずからの考えでもって、日銀の持っておる使命にかんがみて、その使命の線に沿って自主的にやっていくという確たるお考え総裁におありかどうか。  それから、それと関連をしてついでに聞きますけれども、こういった非常に基本的な課題については、そういった問題をきめる法律上の権限、これは一体大蔵大臣側にあるのか、日銀側にあるのか、あるいは両者が協議するものか、協議がどうしても十分にまとまらない場合に一体どうなるのであるか、ここいら辺をひとつお答えをいただきたい。  それからもう一点は、せっかく日銀総裁がお見えになったのでありますから、昨年の衆議院で問題になったままで、そのままこれを見のがすわけにまいりませんから、もう一度念を押しておきますが、これは山一証券問題であります。二百八十二億円というような膨大な金額を、しかも日銀が直接個々の企業に貸し出したということそれ自体、これは非常に重大な問題でございまするが、しかもそれが無担保で、無期限で、しかも当時無利子だ、こう言われておったのでございまするが、これは重大問題ですね。再三再四の国会の追及の結果、その担保の内容、これを国会に示す、こういうお約束をなさっておるのでございますが、もうあれから一年たっておりますが、具体的にそういった資料を出されるおつもりがおありであるかどうか、これも念を押しておきます。
  32. 宇佐美洵

    宇佐美参考人 最初の、金融調節をどうするのか、あるいは国債の償還について資金が要る場合にどういうふうにやるのかというようなことについて、これは国債消化するというよりも、全般のそのときの金融状況がどうなっておるかということによって判断いたしておりまして、この調節につきましては、御承知のように財政の支払いとかあるいは引き揚げ超過とか、いろいろ全体の金融に影響するものが非常に多うございますので、それらにつきましてはむろんよく大蔵省の意見も聞きますけれども、しかしその決定をいたすのは全く政策委員であり、その間に大蔵省と政策委員意見が違った場合には、むろんこれは私ども意見が最後の決定だと私は思っております。  それから山一の問題でございますが、これは御承知のように昨年九月一日に新会社を発足いたしまして、それからいわゆる再建計画に基づいてやっております。最初の金利をどうするかというのは、これは公定歩合の条件に従いまして全額金利は取っております。  それからもう一つ、担保をどうするかという問題でございますが、これもあの発足当時、この前の国会で申し上げましたとおり担保約二十二億でございますか、を取りまして、そのうち処分できるものは処分して、そうしていま二十億くらい残っておるわけであります。これらのものは私どもとしては一応の明細を差し上げたつもりにしておりますが、しかし、その処分価格等につきましては、これは今後の処分のいろいろの関係もございますので、どういうところにどういう担保を取っておる、たとえば不動産でいえば何坪くらいあるんだということは御報告申し上げたつもりにいたしております。この程度でごかんべんを願いたいと思うのであります。  それから山一の整理につきましてどういうふうになっておるかということでございますが、これは計画どおり順調に進んでおります。そうして現在においては約二十億特融が減っております。二百八十二億でございましたか、対していまは二百六十二億強になっておるかと思うのであります。そうして、そのほかに担保につきましては新会社が発足しましたときに営業権を譲渡いたしました。それに対しまして資本金九十億で発足したわけでございますが、そのうち四十億は整理会社であります旧山一にまいっております。これも一応整理会社の担保になるわけであります。そのほかいろいろの取引銀行も株を持ちましたので、その株を持ったことによってあいたものもわれわれの担保にする手続をいたしておるところでございます。
  33. 八木昇

    八木(昇)委員 もう約束の時間でありますから終わりますが、ただいまの日銀総裁の御答弁のように、いまの国債問題については権限に基づいてあくまでも自主性をもってやっていくというお答えでございますので、ひとつぜひそうやっていただきたい。しかしながら、総裁そのものが内閣から任命をせられておりますがゆえに、私どもは従来の日銀のあり方にかんがみて、特に国債という重要な問題についての今後の日銀のあり方については非常な危惧を持っておりますので、われわれの期待を裏切らないようにぜひ願いたいと思います。  それからなお、山一の問題については、わずか二十二億の担保というのはこれは何といったって問題があります。その二十二億の担保の中身だって、実際に担保価値がないものが私は相当あるんじゃないかと想像をいたしております。これらにつきましてもぜひひとつ実際文書にした資料をお出しいただくように最後に要望をいたして終わりたいと思います。たいへんどうもありがとうございました。
  34. 植木庚子郎

    ○植木委員長 それでは日銀総裁にはありがとうございました。  八木君に申し上げますが、先ほどの資料は三月二十二日付で皆さんの箱にお届けしてございます。  それでは質疑をお続け願います。八木君。
  35. 八木昇

    八木(昇)委員 それではなお労働問題を若干お伺いをいたしたいと思います。  第一は、最低賃金法に関してお伺いをいたしたいと思います。去年の予算委員会で私の質問の結果、審議が中途でストップになって、当時の小平労働大臣から今後の最低賃金についてはILO二十六号条約に適合するごとき答申を中賃ですね、中央最低賃金審議会に求める、そういう態度で政府はいくということの答弁があって一応収拾をしたわけでございますが、それから一年たった今日、なお最賃法の問題について質問をしなければならないということを非常に遺憾に思うのでありますけれども、第一にお伺いをいたしたい点は、前の大橋労働大臣、あるいは石田労働大臣、続いて小平労働大臣、次ぎ次ぎに何回かにわたって総評、中立の組合の代表にも、場合によっては文書によっても回答をしておられますが、あるいはメモの回答もあっておりますが、それからまた衆参両院の委員会においても答弁があっておるのでございますけれども、従来述べてこられた過去の労働大臣の見解は、やはりこの最低賃金は全国全産業一律という方向に向かうべきものである――いま直ちにこれが実施できるという段階にあるかどうかについては、これは必ずしもはっきりしておりませんでしたが、そういった態度を大体とってこられたのでありまするけれども、山手労働大臣になられてからその態度が変化をしておる、こういうふうに私は感じておるのでありますが、現在の労働大臣はこれらの点についてどういうお考えでございましょう。
  36. 早川崇

    ○早川国務大臣 石田元労相、大橋元労相が全国一律の最賃制度は理想論として八木委員の言われたようなことを言われたことも承知をいたしております。しかし具体的にどうするかという段階以前の問題でありまして、現在は最賃審議会におきまして全国一律制も一つの考え方、また地域別あるいは職業別、産業別に考えていこうという考え方もございます。また、諸外国におきましては全国一律最賃制をとっておる国がございませんので、そういう先進国の例も参酌いたしまして、目下中央最低賃金審議会におきまして検討中でございまして、できるだけ早く結論を出すように要請をいたしておる段階でございます。
  37. 八木昇

    八木(昇)委員 いまに至って、だんだん大臣がかわっていくと、あとになるほど悪くなっていくというようなことは非常にけしからぬのです。読み上げますが、大橋労働大臣は一九六三年四月九日ですから、もう何年か前に「最低賃金制として資本主義国家においても全国一律が考えられ、日本も近代国家として不可能とは考えていない。」と、はっきりおっしゃっておられますね。それからまたこうも言っておられる。「現行法については、根本的な改革を行なうべきであると考える。ある程度の地域的な例外を認めるならば、全国一律制も無理ではないと思う。」と、こういうふうにも言っておられますね。当時の労働大臣は、現在の閣僚でございますから、そこにすわっておられるけれども、よもや御否定をなさらないと思う。こういった態度が、大体石田労働大臣のときにも引き継がれておるわけでありますけれども、今度、昨年の十月に至りまして、中央最低賃金審議会において、一体労働大臣は根本的な考えとして、最賃制についていかなる考えを持っておるのであるか、ここであらためて考え趣旨を述べろということになって、そうして述べられたところが、結局、その中で全国一律というようなことばが一言も出ないのはもちろんのこと、山手労働大臣がそのときに言われたこの考えの中心点にどういう点を置いてあるかというと、「将来のわが国経済、賃金事情の見通しについては、いろいろの見解がありましょうが、実情に即して考えて、どのような最低賃金制が実行可能でありかつ実際上効果的であるかということが最も問題であると存じます。」こういうふうに、まず現状に照らして、実施可能なそういう答申をしてもらいたいという点にことさらに力点をかけた、こういう諮問のやり方をされたために、これがやはり紛糾のきっかけとなって、今日、労働者側委員が昨年の秋以来、中央最低賃金審議会から抜けておるわけですね。事実上ボイコットしておるという事態になっておるのでありますが、こういった事態について、この審議会の会長としては事態を非常に憂慮して、当事者といろいろ話をされたようでありまするけれども、話がつかない。これは、この審議会の会長、が努力をされても私はだめだと思う。政府自体が、従来の態度に返って、もっと全国一律最賃制について前向きの姿勢を示すということによってしか事態は解決しない、こう思うのであります。総理大臣のお考えをお述べいただきたいと思います。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど早川労働大臣からお答えしたとおりでございまして、ただいまいろいろの方式の問題について、それを取り上げて比較研究している最中だと思います。いずれ、もう一昨年来の問題でありますから、近く審議はまとまって、答申が出てくるのじゃないかと思います。私は、いましばらく待っていただく。そうして、ただいまもお話がありましたが、やっぱりこういう審議会にはできるだけすべてが参画し、一部のボイコットとかいうことのないように、そして審議会が早くりっぱな権威のあるものを答申できるように、ひとつ御協力を願いたいと思います。
  39. 八木昇

    八木(昇)委員 いろんな抽象的な議論をしておればいろいろあると思いまするけれども、これは実際問題としてお伺いをいたします。  最低賃金法ができましてからすでにもう七年経過をしておる。八年目に入っておると思いますが、しかしながら一向に進んでいないわけですね。そこで最低賃金審議会におきましては、これではどうにもならないからというので、昭和三十八年に政府に答申をいたしまして、今後三カ年計画でもって一つの最低賃金の目安というものを労働省で定めて、そうしてその目安にのっとってひとつ最低賃金制が実際に実施をされるように、業者間協定を待っていたのではだめだから、労働基準局が先頭に立って、そうして地方のこの最低賃金審議会の議を経て、職権によってひとつ実施をやれ、これは現行法の十六条、職権方式によってこれが推進をやれということになったわけで、それをやったわけです。しかし、それをやった結果も、現在千三百万人以上中小企業に働く労働者がおると思いますが、そのうちで五百万人に達していないじゃないかと思うのです、最低賃金法の適用にやっとこぎつけたのは。したがって、今日まで八カ年間にもなるけれども、もう業者間協定では一向に最低賃金は進まない、職権、方式によっても進まないという現実に逢着をしておる。しかるにもかかわらず、いま労働省の考えておられるところは、――なるほど業者間協定は、もうとても、それではILO二十六号条約にも違反するし、現実にもそれは進まない。けれども、全国一律最賃制に持っていくことも踏み切りができない。結局、現在ある最賃法の中の職権方式という部分に中心を据えたものに今後の最賃法はしたいというお考えのように見受けられるけれども、現実にその職権方式は行き詰まっておるでしょう。いま私が申し上げた数字と実態は誤りであるかどうか。これは労働大臣から願います。
  40. 早川崇

    ○早川国務大臣 昨年十二月末で五百三十万人まで到達をいたしております。
  41. 八木昇

    八木(昇)委員 それでも、中小企業に働く千数百万の労働者の半数にも満たないわけですね。一体最低賃金というのは何のために必要ですか。それは、一人の人間が一カ月働けば、その人の働いておる職場が中小企業であれ、大企業であれ、産業の差のいかんを問わず、また本人の男女の性別のいかんを問わず、一カ月働く以上は、その人が最低生活ができるだけの賃金を保障すべきである。こういうことなんであります。その保障をされていないのは中小企業に働く労働者ですね。大企業に働く労働者の場合には、当面さしたる問題はない。しかるにもかかわらず、中小企業に働く労働者は一千数百万人のうちにわずか五百何十万人しか、今日までの間それだけの努力をしても、最低賃金法の適用になっていない。しかも金額は四百円ないし五百円でしょう。金額も問題にならない。こういうことを考えると、そういう職権方式を中心に置いた新たな最低賃金法であっても、とうてい最低賃金法の目的は達し得られない、こういうふうにお考えになりませんか。
  42. 早川崇

    ○早川国務大臣 最低貸金が五百三十万人という相当の数でありますが、もう一つの理由は、最近は非常に人手不足になりまして、中卒でも一万五千円という非常に高い初任給に経済の復興に伴ってなってまいりました。そういった事情で、最低賃金は、総評なんかでは二万五千円といっておりますが、それをすでにはるかに上回っておる業種が非常に多いわけであります。ですから、そういう経済的、客観的情勢から、その最賃法を制定する要請の度合いが必ずしも強くない業種も出てきておるということも原因をいたしております。しかし、八木委員の申されますように、現在の最賃法の業者間協定が最賃の原案をつくるという問題は、ILO二十六号から見まして審議会の決定にはなりますけれども、原案作成におきまして、業者間協定というのは常に二十六号からいうと疑義がある、違反とは申しませんが。そこで、今度の審議会でILO二十六号に即応するような答申が出ることを期待し、現在有沢さんにも非常にお骨折りを願いまして――労働組合では、同盟は入っておりますが、総評だけが入ってこられない。そこで総評の議長、事務局長に有沢会長から、二、三日前も、とにかく審議の場に入っていただきたいという要請をいたしたと、こういう段階になるわけであります。
  43. 八木昇

    八木(昇)委員 私の質問に直接一つも答えておられないのでありますけれども、全国一律最賃制が望ましいという方向については、歴代の大臣も言っておられるわけですね。しかし、現実の情勢がまだそれを実施するにはやや困難性が――日本は近代国家に近づいておるとはいうものの、なお若干残っておる、こういうことがちゅうちょの主たる原因ですね。ところが、その困難性は今日もうほとんど払拭されておるのじゃございませんか。たとえば最低賃金の適用対象は、ほとんど初めて労働者になる人ですから、初任給をもらう人たちが対象であるということは申すまでもございませんね。そうしますると、全国の初任給の状態というものを考えますると、少なくとも初任給に関する限りは産業別あるいは企業の規模別、男女別の格差はない、これは労働省の統計の数字が示しておりますね。それからなお残っておるのは、若干の地域差は残っておりますね。これは政府統計によりますると、一番高い東京と一番末端のいなかでは一〇〇対八五ということになっておる。これは残っておるけれど、ほかに何らの格差は残っていない、地ならしはもはやほぼでき上がっておる、それでもなお全国一律の最賃制が実施できないという理由は一体何でありますか。
  44. 早川崇

    ○早川国務大臣 八木委員の言われるように、平準化は完全には進んでおりません。地域別にも差があります。また大企業と中小企業、その他にも完全な平準化は行なわれておりません。それから、東京と鹿児島なんかはたいへん開いておる。そこで、地域別あるいは業種別というような考え方もある。また総評なんかのいわれておる全国一律最低賃金という、そういう御主張もあるわけであります。ですから、審議会でそういう意見をそれぞれ出されて、いまの日本の現状において最もベターな案を早く出してもらいたい、こういうことを期待をいたしておるわけであります。
  45. 八木昇

    八木(昇)委員 いろいろな格差が完全になくなってから最低賃金法を実施するのでは、あなた、最低賃金法なんというようなものは不必要じゃありませんか、どだい。そんなものは必要じゃありませんよ。でありまするからして、労働基準法でもそうであります。幾ら小さい企業であって相当苦しくとも、やはり原則として労働時間が八時間だと、それ以上労働者を使ってはならない、おれの企業は苦しいからとか小さいからなんということを理由にしてはならないということになるのは当然であって、全然いまのは答弁になっておりませんぞ。  そこで、いずれにいたしましても、ILO二十六号条約並びに三十号勧告というものは、申すまでもなく最低賃金という問題については労使対等の立場に立って、これらがすべて解決をされていかれなければならない、こういうことになっておるわけでございまするから、総理にお伺いいたしますが、これは一方的に使用者側の委員と公益委員だけでもって出した結論に基づいて、政府が最低賃金法の原案をつくるというような態度はぜひ避けてもらいたい、そういう点について十分の配慮を願いたい、こう思うのでありますが、御答弁願いたいと思います。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは八木君よく御承知だと思うが、ずいぶんむずかしい問題ですね。私が習うまでもなく、最低賃金制、そういう制度が生まれた、その置かれた最低賃金制をつくらなければならないその状態と、現在のような労働需給の問題、あるいは賃金の実際のあり方とを考えると、やはり関係者相互にほんとに納得のいく最低賃金制というものはなかなかむずかしい状態じゃないか、いまのような状態なら、先ほども言われておりますが、あまりこれにひっかかる数が少ないのだというような状況でもある、だからたてまえは、どうしてもこれをつくるのがILOの精神から申しても必要なことのように思います。そこでただいまのような御議論が出るのだと思います。一そう実情に合った制度をつくるように労使双方で十分話し合いを遂げたい、かように私も思います。
  47. 八木昇

    八木(昇)委員 なお申し上げたいですが、先へ進みます。  次に、ILOの百五号条約批准の問題について伺いたいと思うのであります。これはもう当然政府は御承知だと思うのでありますが、昨年六月のILO総会が次のような決議をしたわけであります。これは総理も御承知だと思いますけれども、来年は国際人権年になっておるわけであります。国連が人権宣言を発してから来年が二十周年に当たるわけであります。したがって、昨年六月のILO総会はこういうことを決議をしたわけであります。人権関係条約の批准をまだやっていない国に対しては、ぜひ来年の国際人権年までの間にこれらの条約を批准をするように強力に要請をする、それからなおすでに人権関係の条約の批准を終わっておる国に対しては、その完全適用を強く要請する、こういう決議をしたわけであります。その人権関係の条約というのは何であるかというと、七つの条約をあげてあるわけであります。その中でわが国はすでに三つ批准を終わっております。批准をしていないものの中におきましても、先般の本会議総理が御答弁になりましたところの、男女同一賃金をきめております百号条約については近く批准する、こうおっしゃっておられますから、残り三つということになります。残り三つのうちで農業関係についての結社権の条約と、それから人種、宗教等による差別待遇を禁止しておる雇用、職業に関する条約、これは事実、当面の問題として私どもは急を要すると必ずしも考えませんけれども、しかしながらその中の一つでありまする強制労働廃止条約、すなわち百五号条約、これはぜひ来年までに批准をしてもらわなければならぬ。特にいまの政府の各種のいわゆる弾圧政策というものが強行されておるという実情にかんがみても、百五号条約はどうしても直ちに批准をしてもらわなければならぬと思うのでありますけれども、これは総理、どうお考えでございましょう。
  48. 早川崇

    ○早川国務大臣 百五号条約の強制労働の解釈が非常にはっきりいたきないわけであります。現在先進国の例を見ましても、この百五号条約を批准してないのはフランス、またイタリア、アメリカ、ソビエト、批准しておるのはイギリスと西ドイツでありますけれども、西ドイツが批准して、今度は刑罰を科した。これは重労働を科さない刑罰を科している。すでに、そこでILOで問題になって、ここに結論を得ないような実情であります。したがって、われわれといたしましても、国家公務員法、あるいは地方公務員法で刑罰規定がございますので、こういうものがILOの強制労働とどういう関係があるか、いろいろそういったむずかしい、はっきりした結論が得られない問題が残っておりますので、よく検討して慎重にこの問題は考えなければならない、こういう立場に立っておるわけでございます。
  49. 八木昇

    八木(昇)委員 これは一労働大臣でなくて、内閣総理大臣が決断をしなければできない問題であるのでございますけれども、いまフランスなんかのことを言われるというのは、もうほんとうに片腹痛いですよね。フランスは、公務員であろうと、教員であろうと、堂々とストライキ権があるのですよ。そうして警察官だって団結権、団体行動権があって、七、八年前に私がパリに行ったときには、パリの警視庁の巡査諸料が、武装だけははずして国会へ押しかけておりましたよ、夜間勤務の時間外労働賃金の値上げを要求して。ですから、そんなのは全然理由になりませんよ。  そこで具体的にお伺いをいたしますが、これはあるいは外務省ではないかと思うのでありますけれども、ILOのモース事務総長から、本年の一月、日本政府に対して、いまの百五号条約に関して何らかのことをいってきたはずであります。また、総長代理からも、二月には外務大臣あてに、この百五号条約に関連して、日本の事情の報告を本年の七月一日までにやれ、こういう文書が来ておるはずだと思います。その際、労使団体の意見も付さねばならないわけでありまするが、いまだ総評方面その他に対して何らの連絡がございませんが、簡潔に事情を御釈明願いたい。
  50. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういう書簡を受け取っておることは事実でございます。労働省が中心になって、これには日本の政府の態度がきまり次第、回答すべき性質のものでありますので、今後とも労働省を中心にして日本の考え方をまとめる必要があると考えております。
  51. 八木昇

    八木(昇)委員 その場合、百五号条約早急批准の方向での基本的な態度、そういうものの上に立っての報告をなさるおつもりでございますか。
  52. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その点はこれからよく検討をしまして、そうして政府部内でいろいろ意見をまとめて回答をいたしますので、この場合、まだそれが終わってない段階で結論を申し上げることは適当ではないと思います。
  53. 八木昇

    八木(昇)委員 その報告書の内容いかんによりましては、これは国際舞台でまた大きく問題になると私は思うのでありますけれども、その点は善処方を強く要望いたしておきたいと思います。  なお、もう一点お伺いをいたします。これはILOと、それからユネスコの双方でいみじくも意見が一致をいたしまして、そうして教師の地位に関するところの勧告、これが採択されたということはすでに御存じだと思うのでございますけれども、これについて政府はいかなる態度をお持ちになっておるか、これを伺いたいと思います。  その内容につきましてはすでに御承知だと思いまするけれども、そのポイントだけを私はここで読み上げてみたいと思うわけであります。勧告の一番最後の項のところで、「教員の権利」ということがずっと規定をされております。特にその中で、教員の政治活動や公的生活というようなことについては、「公職につくことによって、教員が教育の業務をやめなければならないことになっているばあい、教員は、先任権、年金のために教職にその籍を保持し、公職の任期終了後には、前職ないしは、これと同等の職務に復帰することが可能でなければならない。」というようなこと等が規定してございます。たとえば教員が議員に立候補した、議員に立候補することはむろんできるし、それで議員になった、次の改選の時期に再び立候補したが落選をした、こういう場合にはまた教師に戻らせなければいかぬ、そういう地位を保障しなければならない、こういうことですね。あるいはまた八十三項には、「法的ないし任意の交渉機関を設置し、これにより教員が教員団体を通じてその公的または私的雇用主と団体交渉を行なう権利が保障されねばならない。」八十四項では、詳しく読み上げませんけれども、労働条件等については適切な労使合同の機関が設置されなければならない。「もしこの目的のために設けられた手段と手続が使い尽され、あるいは当事者間の交渉が行きづまった場合、教員団体は、他の団体がその正当な利益を保護するため普通もっているような他の手段をとる権利を持たなければならない。」民間の労働団体あたりが持っておるのと同じような権利を教員団体にも当然持たせなければならない、こういうことがこの内容になっておるわけでございますね。といいますのは、世界的にやはり近代国家になっていきますると、教師になる人が少ない、減ってくる、質が低下してくる、こういった事情等が深刻な問題になっておるのでありまして、わが国においても私はこれは例外でないと思います。そういう点がこの背景になっておることは私は事実だと思います。こういった勧告、これは各国の政府代表、七十カ国の代表が集まってこれが決定をされ、日本からも政府代表が出ておるわけであります。そうして、さらにこれが総会で確認をされておる。こういう経過を経ておるのでございまするが、これに忠実に従うおつもりでございましょうね。これは総理でも、あるいは直接これに関係を持たれる大臣でもけっこうでございます。
  54. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 教員の地位の確保に関します勧告につきましては、いま申されましたように、世界各国におきましてだんだん優良な教員を獲得することが非常に困難になっておりますので、この地位を向上させ、確保するという意味の勧告でございます。私どもとしましては、その趣旨につきましては十分これを考慮していきたいと思いますが、もちろんこれは勧告でございまして、わが国に対しまして一定のことを強制するものではございません。  なお、内容面につきましては、わが国の教育におきまして、教員の地位の向上につきまして政府としてずっと努力をしてまいった点も多々あるのでございまして、個々の条文につきましては十分検討してまいりたいと思っております。
  55. 八木昇

    八木(昇)委員 ともかく日本の公務員労働者に対するところの政府のいろいろなやり方が、もはやこのユネスコの教師の地位に関する勧告を見ても、ILOの条約を見ても、単にその条約とか勧告だけでなくて、全体として国際会議の舞台の場においても、日本の政府の国内における公務員労働者に対する感覚というものは、もう適用しなくなっておるわけですね。これはもうおおいがたい事実ですね。それで、外国から日本政府に繰り返し、繰り返し圧力がかかってくるという実情である。それから一方、日本の国内においても政府の態度は通用しなくなっておるわけです。そのことは申すまでもなく全逓中郵の問題に対する最高裁の判決すらも、これは私は、国際的なる今日の実情と、それから国内世論、そういったものの上に立ってあの最高裁判決はなされておると思うのでありまして、日本の国内のそういった事情からも政府の態度はもはや通用しなくなっておる。ただこれに抵抗を示しておるのは、反動団体あるいは使用者の団体以外にはない。こうなりますと、ここは政府としてはもう時間の問題であって、これは踏み切らなければならぬ、もうそこの局面に好むと好まざるとにかかわらず来ておる、こういうふうに私は考えておるわけでございますが、最後に一点だけ、それに関連をして法務大臣にお伺いをいたしたい。  昨年の一〇・二一の日教組の休暇闘争というものに対して、たいへんな弾圧政策をとられたわけであります。これはILOにおいてもユネスコにおいても非常に問題になっておるそうであります。おそらくこれは近い将来において必ず議題にのって、そして大きく問題が提起されると思います。私は九州の片いなかの佐賀県でございますけれども、この佐賀県の教員組合も休暇闘争に参加したわけです。わずかに四千七百名しか小中学校の組合員がいない。全国二十何府県が同じようにやった休暇闘争でございましたが、これに対して佐賀県と岩手県と東京都とをやった。しかも佐賀県が御承知のとおり一番の大弾圧だったわけですね。十名以上の人を逮捕する。それから十六名の人間を検察庁に送検したわけであります。四千七百名しかいない組合員で、その中に休暇闘争に参加していないのが一千名ぐらいいる。したがって参加したのは三千数百名。参加した者もしない者も含めまして、実に二千名に及ぶ教師の取り調べをやっておる。しかもそれが、私服刑事が入れかわり学校の校長室に来て、校長を介して、教師を校長室に呼んに調べる。はなはだしきところにおきましては、授業中の先生の教室まで来ておる。それから、むろん各家庭はもう漏れなく私服が押しかけていって調べておる。そうしてしかも、それだけの大弾圧をかけておきながら、最後はたった一人、県教組の委員長だけを起訴しておるわけであります。これは弾圧じゃありませんか。しかもこれは、いまのILOやユネスコのこの態度にまっこうから反する態度ではありませんか。これは法務大臣としてどういう考えをお持ちでございますか。何か形式的な法理論を聞いておるのじゃありませんから……。
  56. 田中伊三次

    田中国務大臣 法理論で答えを申し上げるつもりはないのでありますが、しかし法律に基づく取り締まりをしたのでありますから、一口申し上げなければならぬ。  それはどういうことかと申しますと、地方公務員法では、すでに御承知のとおりに、争議行為をあおる行為、そそのかす行為、共謀する行為、かつこれを企てる行為、いずれもこの行動は労働組合法第一条第二項に基づく免責規定は適用されないのだ、一口に申しますと罪になるのだということが規定のたてまえでございます。その規定のたてまえに基づいて起訴をいたします場合に、その起訴を最小限度に食いとめたいという努力を政府はしたわけでございます。最低限度に食いとめたいということでございましたが、とにかく、たとえ一人でも二人でも起訴をいたしましたが、起訴の内容は、争議行為をあおる行為というわけです。あおるということはどういうことなのかというと、その被疑者、起訴をされた一人の者が、何千名という多数の人に争議行為をあおった。午前中二時間の授業を休め、あるいは午前中は怠業すべきものだという、授業の休業ということについてあおる行為を行なった。あおる行為を行なったから取り調べをしたいということを希望したのでありますが、この取り調べには応じてこない。応じてこなければ、証拠を立てる以外に道はない。証拠を立てるには、あおられた何千名の人を一々お呼びをして事情を聞く以外に検察当局は仕事の道がないわけでございます。そういうことでありますから、これはわが国の法規及び刑事訴訟法の手続によってそういう苦心と努力を払ったということで、大ぜいの人を調べたことであるが、しかし起訴をいたしましたのはたった一名ということに遠慮をしておるわけでございます、そういうふうに御承知おきを願いたい。
  57. 八木昇

    八木(昇)委員 結局そういう大弾圧をかけたけれども、内外のいろいろな情勢から、困ったのだろうと私は思うのです。それでもう最小限、裁判に勝とうが負けようが、ここまでやっておって、そして起訴猶予とか不起訴とかできないというようなことに追い詰められたのが真相だ、私はそう思います。けれども、そういった政府の態度というものはいずれ長持ちしませんね、いまの国際情勢から見て。しかし、そこを粘って何年かやられると、かわいそうなのはわれわれ労働者ですから、その点はぜひ重大なる反省をしていただかなければならない、私はそういうふうに考えておるようなわけであります。  そこで、この点に関しては最後に一点だけお伺いいたしますが、日本の教師に対して、わずか半日の休暇をしたということに対していまのような弾圧をかけるについては、これは国際的にも相当問題があるということは、法務省当局だって重々御承知であったと思いますが、この起訴をするにつきましても、あるいはそれ以前におきましても、聞くところによりますと、外務省やあるいは労働省あたりには何の連絡やあるいは連携もなくして、法務省単独でずばりおやりになったというふうに聞いております。そのようなことについて、これも事実かどうか知りませんよ、ジュネーブの青木大使が、各国から非常なつるし上げを食って、まことに困るという非常なふんまんの態度でもって本国のほうへある種の要請といいますか、希望を伝えてきたというふうに聞いておるのでありますけれども、法務省はそういう配慮を全然せずにやられたのですか。それでいいとお思いですか。
  58. 田中伊三次

    田中国務大臣 わが国の検察のたてまえでございますが、検察のたてまえは、法規、罰則の適用ということに重点を置く、その罰則の適用をするについて、ことばをかえると、犯罪ありと思量いたしました場合に、関係官庁、政府関係当局に意見を聞くということは原則としてはやらないのであります。本件の場合においても、そういう意見の聴取はいたしておりません。法律の精神に基づきまして、これをいかに法律を守るかということ以外には考えていないのでございます。
  59. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう石頭で硬直しているのが法務省かもしれませんけれども、それは一般の問題と、それから労働法にからむ問題、これは厳重に区別しなければならない。これはもういまさら専門家の田中法務大臣に言うのはどうかと思うのですけれども、法務大臣というよりは現在の検察庁の頭が石頭なんですよ。それで労働組合法第一条二項をいまさら言うまでもありません。公務員といえども、労働組合法第一条二項の適用はあるということを最高裁すらいっておるわけです。これはいかなる労働者であろうとも、その種類を問わず、これはストライキをやる権利があるんだ。しかし、それは国内法の関係やその他において制約はあるだろう。だから、その言わんとするところは、かりにそのことによって行政罰を受けるというようなことがあり得ても、刑事罰を科してはならないということになっておるわけなんでありまするから、いわゆる労働関係法に対する認識が根本的に検察陣営にないということについては、これはやはり民衆の中から選び出されてきた国会議員たる法務大臣がその点を十分に考えて指揮をせられないというと、検察当局の頭は、これはもう全くその点では石頭ですから、この点をひとつぜひ今後御配慮願いたいということを要望する次第であります。  いよいよあと持ち時間二十分以内くらいかと思いますので、最後に石炭問題をお伺いをいたしたいと思います。  私は、今日、日本の石炭産業が重大な事態に立っておるということを、いまさらちょうちょうなんなんするつもりはございませんが、石炭鉱業審議会の昨年の答申ですね、これに基づいて、本年度その具体策を政府は実施に移されるわけでありますけれども、一口に言いまして、政府の石炭対策は、これは産業政策になっていないと思います。それは、個別企業救済政策の制度化、一口に言えば、そういうものである、こういうふうに考えざるを得ないのであります。たとえば、これはもう石炭産業の危機というものは、個々の企業に対して若干の救済策を打つということだけではどうにもならぬ。全産業的危機でございますから、当然この石炭鉱業審議会の答申の中にもうたわれておりまするように、鉱区調整、これをやらなければだめだ、あるいは石炭の販売機構の一元化をやらなければだめだということが柱の中の大きな一つになっておるのでございまするが、全然これに手をつけていないというのはどういうわけでありますか。たとえば、私の県にも明治初年以来の大炭鉱がございますが、もういいところの鉱区をほぼ掘り尽くした。なおありまするけれども、その先を掘っていくと、たんぼの下を掘っていきまするから、たいへんな鉱害が発生する。方向を変えて掘り進むと、そこには別の会社の鉱区の非常にいいものがある。ところがこれは他の会社の持っておる鉱区である。しかし、他の会社のすでに持っておる炭鉱からは断層があって、そこの鉱区に来ることは非常に困難性がある、将来その会社はこの鉱区を掘るということは、これはもうここ二十年やそこらとうてい考えられない。こういうようなものについては、当然鉱区調整というものをやらなければならないわけでありまするが、そういうような事柄について全然手をつけていないのはどういうわけであるか。鉱区調整について今後どういうふうにするつもりか。さらにはまた、流通体制の問題につきましては、いま電力用炭の引き取り会社等がございまするけれども、そういったものに、たとえば貯炭調整等の仕事もやらせるとか、そういうような具体的な措置というものを講じなければ、これは産業政策にならないわけであります。どうしてそれらには全然手をつけないのか。これは石炭問題は総理がお詳しゅうございますから、その辺の基本的態度をお願いした
  60. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今度の石炭対策についての御質問があったと思いますが、この石炭政策につきましては、消極的と積極的な対策を持っておるのでありまして、お話しのとおり、もちろん消極的な策も立てておりますが、また積極的な面もあるのでありまして、たとえば坑道掘進等についての助成金を出すとか、あるいは石炭の採掘量を五千万トン程度にするとかいうように、ちゃんと一定の方針のもとに積極的な政策を立てておるのであります。いまお話しの鉱区の調整につきましては、これは今日までは不十分であったと思いますが、今後につきましては、この鉱区の調整はぜひ進めていきたい、こう考えております。  販売機構の問題につきましては、これはできればけっこうだと思いますが、この販売機構の問題については、これを一定にするということはなかなか困難な問題だと思います。が、しかし、お話しの貯炭の問題等などについては、これは今後においてやはり考えなければならぬ問題だと、こう考えております。
  61. 八木昇

    八木(昇)委員 時間に追い詰められてしまいましたので、非常に残念でありますけれども、各項目について端的に質問いたしますので、お答えも端的に願いたいと思うのであります。  この衆議院の石炭特別委員会では、各党一致で、今後の石炭需要五千二百万トンをぜひ確保すべきであるということを決定しましたが、政府は五千万トン程度というものを今後確保していくのだということの態度を閣議御決定になったわけであります。これが非常に危険になってきておることは御承知だと思うのであります。というのは、この原料炭やその他につきましては、粘結炭等につきましては鉄鋼の好況でもってむしろ不足がちでございまするけれども、一般炭については非常に貯炭がふえておる。三池炭鉱なんかでもたいへんな貯炭の山である。一体、この五千万トン程度の需要はあくまでも責任をもって確保せられるつもりであるかどうか、これが確保のためには、たとえば電源開発会社はすでに着工しておるものが三基ございますが、さらに本年度着工するものが二基、衆議院の石炭特別委員会の各党一致の決議によりましても、昭和四十五年度までに新たにもう三基石炭専焼の火力を建設すべきであるということを強く決議をいたしておるのでございます。これらについての御回答をいただきたい。
  62. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話しのとおり、五千万トン程度の石炭を確保することはよほど努力しなければならぬと考えております。それにつきましては、やはり販売についての確保がなければならない、こう思うのでありまして、したがいまして、いまお話しの電源開発の石炭の専焼火力を建設するという問題につきましてもただいま検討中でありまして、これは慎重にひとつやっていきたいと、こう考えております。
  63. 八木昇

    八木(昇)委員 大手炭鉱に対しましては、約一千億円の炭鉱の借金政府が肩がわりしてやる。これは大企業の救済策としてはたいへん思い切った措置であると思うのでありまするが、中小炭鉱に対する措置というものがほとんど何も見るべきものがないわけであります。この安定補給金等につきましても非常に少ないわけですね。これを一体どういうふうにお考えになっておるか、総ワクとして二十五億円という予算が組まれておりますけれども、本年度これをどうするか、また来年度どういうふうにしていくか、これらについて、これは通産大臣並びに大蔵大臣からもお答えをいただきたい。
  64. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 安定補給金の問題につきましては、これは答申案が百円と出ておりましたので、したがいましてこれを百円以上にしたいというのがわれわれの念願でありまして、この点については大蔵省とずいぶん折衝いたしたのでありましたが、結局、来年度は二十五億円ということで、つかみ金ということになったのであります。したがいまして、これによってできるだけ多く配分するようにしたいと考えておりますが、また次年度におきましてはわれわれとしては一そうその金額をふやしたい、こう考えております。
  65. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま通産大臣お答えになったとおりでございます。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 これは大蔵大臣にお伺いしたいのでありまするが、この石炭対策というものがほんとうに効果を奏するためには、ここ二、三年のところが非常に重要だと思うのであります。そこで、重油関税一〇%のワク内で来年も再来年もおさまり切らないという場合も大いにあり得ると私は思うのであります。実際に石炭対策を効果あらしめるためには、一般会計から一時支出をするというようなことが今後とも相当必要である。こういうふうに考えるのですが、そういった弾力的な運用をなさるおつもりがあるかどうか。ぜひそうしてもらいたい。  それから第二点は、この炭鉱の労働者に関しては賃金のベースアップは大体年間七%、それから特別の、いわゆる再建資金貸し出しておるいわゆる再建炭鉱と称せられるものについては、ベースアップは年間三%だということを事実上経理審査会が――したがって背景に大蔵省があるわけでありますが、これを強く考えておりまして、労働者のベースアップについて非常に強い規制をしておる。ところが、年間これだけ物価が上がるときに、他産業の労働者の賃上げはどんどん獲得される。新聞等で報じておりますように、ことしの春闘相場は四千円を割ることはあるまいというようなときに、一体これで乗り切れるとお思いであるかどうか。もし強引にそれで乗り切ったとしても、近い将来、炭鉱の場合必ず労働倒産が来る、そう私は思っております。坑内夫の中堅的な仕事をしまする人たちがいないと、数だけ坑内労働者をそろえましてもだめなんです。そういった点について大蔵大臣の御見解を承りたいのであります。  あと一つ二つ聞いて終わりたいと思います。
  67. 水田三喜男

    水田国務大臣 私どもは必ずしもこの特定収入内で、特定財源内で対処するというふうには思っておりません。必要ならば一般会計から繰り入れをする。現に今年度予算は繰り入れをいたしました。しかし、長期的に見ますというと、この財源は今後非常に伸びる財源でございまして、そうして石炭の再建が進むにしたがいましてこの特別会計には相当余裕が出ることと思っております。したがって将来の余裕に見合って、当面必要な費用はこの一般会計からも入れるというふうに考えております。  あとの御質問は、これは再建ができるように政府でもこれだけのいろいろの助成をやっておるのでございますから、その間において、これは当事者において適当に解決されるべき問題だと思っております。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 その七%、三%というようなことに必ずしもこだわっていないというふうにお聞きしてよろしゅうございますか、いまの御答弁は。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは再建の実情に応じて、そうかたく考えるべき問題じゃないと思います。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 それではあと三点、御答弁いただく大臣はそれぞれ変わると思いますが、一括して質問をいたしまして終わりたいと思います。  第一は炭鉱特別年金法がいよいよ今国会に提出されそうでございますが、もういま炭鉱労働者の期待はただこの一点にかかっております。この成り行きいかんによって、三十四、五歳ぐらいの中堅炭鉱労働者は、もうこれが期待に反するようなものであるならば、いまのうちに職業を転換しておかなければ、もうそれ以上年をくったらどうもならぬということで、これに唯一の期待をかけておるときでありますので、ただ形だけを整えて中身が伴わないものであっては絶対にならないと私は思っております。これについては一体どういうふうにお考えになっておるか。  それからCO中毒法でありますが、これはいまの段階においては当然単独法で、やはり石炭におけるCO中毒、こういうことに中心を置いたそういう法案として緊急に提案をする以外にないのではないか、こういうふうに思っておりますが、その点についてどういうお考えであるか。  それからもう一点は産炭地教育であります。これは現地の実態というものを相当詳しく訴えて、個々について聞きたいと思ったのでありますが、時間がまいりましたので、これは石炭特別委員会その他において質問をいたしたいと思うのでありますけれども、非常に惨たんたる状況ですね。家庭が破壊をされております。実際に私も何カ所かを見させていただきましたが、小学校一年生に入ってくるとき、もうくずれている。入学する前にくずれておる。こういう惨たんたる実情にもかかわらず、教師の配当は特段の配慮がないわけです。これはやはりどうしてももうそういった地域におきましては、単に授業を教える場ではないのであります、学校が。レクリエーションをやってやる場であるし、病気の治療を保健室でやってやる場でありますし、それからもっと人間的な愛情というものを植えつけてやる場でありますし、そうなりますと、これは教師の負荷というものは、これは非常に大きい。しかしながら特段のこれに対する配慮が文部省からはございません。幸いいま生徒児童が減っておるので、教師の定数が浮いてくる分を県が全額単独でその費用をまかなって、教師を若干一般の地域以上に配置しておるという実情ですから、これらについて一体どうされるか、これはもう数年来日をすっぱくしてわれわれが主張してきたにもかかわらず、たったそれだけのことがどうしてできないのか、これについてお答えをいただきたいと思います。  以上申し上げまして私の質問を終わりますので、それぞれについて御答弁をいただきたいと思います。
  71. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御質問の年金の部分についてお答えを申し上げます。  石炭年金につきましては、昨年七月石炭鉱業審議会からの答申、同年八月の閣議決定、その趣旨に基づきまして、厚生省といたしましては四十二年度に実現をいたしたい、かように考えまして、引き続き審議会の年金小委員会でこれを研究を進めて、急いでもらっております。この検討の結果を待ちまして、本国会に提出いたしまして、ぜひ御審議を願いたい、かように考えておる次第でございます。
  72. 早川崇

    ○早川国務大臣 COの中毒立法につきましては、労災審議会の議にかけております。今国会に成案を得まして提案いたしたいと存じます。
  73. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 産炭地の教育につきましては、昭和四十二年度予算におきましては各方面から相当の配慮を行なったつもりでございます。特に、ただいまお話しございました産炭地の教員の問題、これは標準法によりまして、急激に児童生徒が減りました場合にこれを調整するように処置をいたしておりまして、佐賀県におきましても、ある程度の適用があると思います。  なお、児童の不良化防止に関しましては、特に充て指導主事の増員をいたしまして、相当の数を増員してまいることにいたしましたし、また、教員の事務量の増加につきまして、要保護児童の相当数おる小中学校につきまして、事務職員を標準法の中におきまして配置するように処置をいたして、不良化防止につきまして、その他の点もあわせて配慮いたしておるのでございます。
  74. 八木昇

    八木(昇)委員 これで終わります。
  75. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  午後は一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時十分開議
  76. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昭和四十二年度予算に対する質疑を続行いたします。曽祢益君。
  77. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、先日の本院本会議におきまするわが党西尾委員長質問の際に、わが国の外交政策あるいは政府の外交姿勢について三つ足らざるところがある。第一は、自主性と使命感といいますか、ビジョンが足らない、第二は、いわゆるナショナル・コンセンサス、国民の合意といいますか、これを求める努力が足りない、第三は、積極的行動性に欠くる、このことを明らかにした質問が展開されたのでありますが、私は、今日その同じ観点に立ちまして、以下二、三の大きな外交問題を例にとりながら御質問を申し上げ、同時に、従来とかく外交に関する質疑応答が単なるすれ違いであった感がなきにしもあらずでございまするが、そうではなくて、本院における、本委員会における外交質問政府国民との間の実りのある対話という結果が招来されることを念願し、以下、特に私が指示、指名申し上げませんときには、総理大臣から簡明率直な御回答を受けたいと存じます。  まず第一に御質問を申し上げたいのは、何といっても火のふいている戦争、ベトナム戦争の終結についてであります。  総理は、先般の施政方針演説におきまして、「日本も関係国と接触し、和平実現の端緒を得るためにつとめた」と言っておられます。また総理は、「当事者が平和交渉の発展に信頼を寄せ、勇断をもって、話し合いのテーブルに着くよう強く訴える」と言っておられます。これはきわめて抽象的でございまして、一体総理は、従来関係国と接触し、和平実現の端緒を得るためにどういう具体的行動をとられたか。当然に、和平を招来するのにあたって関係国に対するいろいろな、こうしてほしいというような具体的の、たとえば停戦あるいはディエスカレーション、戦争のテンポをかえって下げていくというようなことに触れた意向を示しながら具体的行動をやったのかどうか。また、当事者が平和交渉の発展に信頼を寄せ、勇断をもって話し合いのテーブルに着くよう訴えるということは、一体どういうことなのか。たとえば両方に対して無条件の停戦に応じよということなのか。そこらの辺をひとつはっきりとお示し願いたいと思います。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 曽祢君も外交関係の御出身者ですから、よく事情を御存じだと思いますが、いまどういうような交渉をしたか、また、これからどういうように交渉するつもりか、こういうことをただいま具体的に申し上げることは、必ずしもいいことだとは思いません、いい結果をもたらすとは思いません。私どももベトナムが一日も早く紛争が解決することを念願しておりますので、そういう意味で、今日も在外公館を使い、あるいは特別な人を使ったり、いろいろやっておりますから、これで御了承いただきたいと思います。  また、ただいまの勇断をもって話し合いをしなさいということは、無条件で話し合いに入ること、そうしてその上でいろいろな条件が出てくるのは当然のことであり、まず話し合いを始めることだ、このほうが先だ。それを具体的に申せば、いまの紛争状態、これは停戦して、そうして話し合いに入れというのが、私の気持でございます。
  79. 曾禰益

    ○曽祢委員 きわめて明確でないと思うんです。ただ和平を念願するというのは、これはお祈りであって、外交にならないと思います。したがって、それじゃ、こういうように伺いましょうか。最近の和平へのいろいろな重要な動きがございました。なかんずく二月のいわゆる旧正月における旧正月中の停戦を延長して、そうして北爆停止ということからひとつ和平の会談にこぎつけようとするイギリス及びソ連、ウィルソン、コスイギンの非常な努力がありました。その後、まだ続いておるようでありまするが、ウ・タント事務総長の和平への努力が現に続いていると思うのです。これらのことについてどの程度の情報を得ておられるか。また、日本がそういうことについて、ああしたらどうだとか、こうすべきだということのアドバイスをしたり、あるいは共同でアメリカなりソ連に呼びかけるというようなことをされたのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  80. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま曽祢さんが御指摘のように、ウ・タント事務総長あるいはコスイギン、ウィルソン首相の会談、こういう一連のベトナム和平への努力に対しては、できる限りの情報は、政府は詳細――どの程度までという限度はございますけれども、こういうものに対しては情報はできる限り収集することにいたしておるわけでございます。そして出先の外交機関、これに対してもあらゆる関係国との接触を通じてベトナム和平への糸口をつかむようにという強い指示を与えてありますし、また、閣僚が海外に出ます場合には、ベトナムの和平促進について絶えず努力を重ねておるわけでございます。椎名前外相も、訪ソの場合にはこういう問題が相当大きな議題でありましたし、私も総理の指示によって訪ソの場合も、あるいはドゴールとの会談、コスイギンとの会談、あるいは最近ではカンボジアのシアヌーク殿下との会談等にも、何とかして一日も早くベトナムに和平がもたらせるような方法はないかという努力はいたしておるわけでございますが、いまだ和平に導き得る端緒がつかめないことは、アジアのためにもまことに残念に思っておる次第でございます。
  81. 曾禰益

    ○曽祢委員 いろいろ情報をとる等に努力をされておられるようでありまして、それを私は決して否定はしません。しかし、何か重要な点が欠けているのではないか。たとえば、おことばにあった椎名外相が訪ソのときという、あのときと最近のソ連の態度とが非常に違っていることは御承知のとおりです。イギリスが幾ら呼びかけても、いわゆる和平交渉のあっせんにがえんじなかったソ連が、ロンドン会談以来非常に積極的になってきたということは、私は大きなファクター、要素だと思います。そういう意味で、時間の節約もありまするから私のほうから申し上げますると、少なくともロンドンにおけるウィルソン、コスイギンのあの努力は、ウィルソン首相がはっきり言っておりまするように、これはもうちょっとで和平会談にいくのではないかというところまでいった。しかし、残念ながら、双方ともアメリカも北越もお互いにその相手方の誠意を信頼することはできないということから、もうちょっとのところが非常にむずかしいので失敗に終わった。しかし、何といっても、ソ連が積極的に和平に乗り出したということを、さらには、やはり二月の初めのころに、お互いにアメリカと北越とが直接に、とにかくこの和平の問題で交渉した。これは非常に大きな進展だと私は思う。したがいまして、なるほどその後このあれが実らなかった。ウ・タント事務総長の現在のあっせんも、必ずしも楽観は許さないということを言われております。また、純粋に軍事的にだけ眼を転ずるならば、確かに一方においてはエスカレーションといいますか、戦争激化の様相もあります。しかし私は、何といっても客観的に見るならば、かつて二年前、あるいは一年半前のように、北ベトナム側といえども、アメリカ軍を実力で追っ払ってしまう、ゲリラ戦が勝つ、そういう軍事的勝利は可能だと思っているはずはない。また、アメリカが、幾らタカ派の強いのがおっても、アメリカが北爆をやろうが、南爆をやろうが、メコンデルタに大作戦を展開しようが、力だけで軍事的に南ベトナムを平定することができると思っているほどばかではない。だとするならば、ようやく南ベトナムにおける軍事情勢は、もう何といっても事実上のディエスカレーション、戦闘縮小にやがてはいくか、あるいはそういう軍事的なステールメート、つまりバランスといいますか、流動的でなくて、一つのつり合いといいますか、こういうことができることによって、やはり和平会談のチャンスというものは、客観的にはむしろ濃厚になっているのじゃないか。問題は、そのきっかけをどういうふうにみんなでつくってやるかということじゃないかと思うのです。だとするならば、ウィルソン首相の努力はえらいと思うけれども、しかし、これは何にいっても日本ほど切実に、緊切にはだ身にしみてベトナム戦争のおそろしさを感じている国とは思えない。やはりアジアの安定勢力である日本こそ、また一面においてはアメリカとの軍事関係、基地関係等を持っている日本こそ、もっと積極的に、いまこそ、いままでのことはいままでのこととし、これからの数カ月の間に、この和平に対する真剣な具体的な努力をなすべき時期がきているのではないか、私はかように思う。特に、あえて覆うならば、たとえば朝鮮戦争というものがどういうふうにして終結したかということを考えてみると、御承知のように、二年間の間戦いに戦って、首都京城のごときは、一ぺん北の勢力にじゅうりんされ、マッカーサー軍がまたこれを回復し、今度は中共が参戦してマッカーサー軍が負けて京城から逃げ、それからまた押し返して、ちょうど二年たったときに大体三十八度線におけるステールメート、軍事的な一種の膠着状態みたいなのができ、そのときの軍事情勢から、やはり時の氏神といいますか、ソ連が和平の話を出した。そして戦争を形の上では継続しながら、一年間和平の会談が続いた。二年間戦争してあとの一年間は戦争しながら和平の会談をして、そしてついにはジュネーブ会議において朝鮮戦争が少なくとも停戦協定ができるという終結になった。こういうことを考えるならば、私は、政府がいろいろおっしゃるけれども、現実にただ祈っているだけではだめだ。具体的にやはりアメリカなり北越なりの双方に相当痛いことを示しつつも、具体的の停戦の努力をすべきじゃないか。そのようにお考えになるかどうか。それとも、拱手傍観をされるのであるか。私はそう考えたくありませんが、もう少しこの辺で国民がなるほどというような、具体的な、積極的な努力があってしかるべきではないかと思うので、あえて総理の決意を伺いたい。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは曽祢君もよくおわかりだと思います。外交で不断の努力を続けていくこと、これはもちろん必要なことであります。しかし、同時に、外交で一つの成果をあげるためには、やはりチャンスをつかまなければいけないと思います。ただいまのところ、遺憾ながらまだそのチャンスがきていない、かように私ども考えております。ただいまは何とかして国際世論を和平への方向に高めることだ、そういう意味で努力をしておる、これが現状でございます。しかし、ただいまも言われるとおり、いまがチャンスだ、かように見るのか、私どものように、和平への不断の努力はする、ただいまはそのチャンスでない、かように見るか、そこらの相違だと私は思っております。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 チャンスという動物は、前のほうだけ髪の毛があって、うしろのほうは、もうまるはげなんです。チャンスは求めてできるものではありません。つくらなければいけない。チャンスができるまで何もしないというのが無為無策で、それこそビジョンがない、積極性がない、あるいはナショナル・コンセンサスを求めないということになる。一方においては、アメリカさえ帰れば万事オーケーだというような、これは決して無理からぬ平和への念願であるけれども、そのこと自身の考え方としては間違っておるような和平的な動きも国内にはあります。これは非常に重要なことなんです。ただチャンスがくるまで待っておるなら、何も日本の役割りは要らないのです。そうではなくて、やはりこの際にチャンスをつくってあげる、あるいはみずからそのチャンスをつくる努力をするということが必要なのではないか。抽象請ではしようがありませんから具体的に申し上げますが、大体この間からアメリカの中でも、たとえばロバート・ケネディ上院議員あるいはウォルター・リップマン――これはかなり現在のアドミニストレーションにはつらいことを言う人でしょうけれども、こういう人たちが言っておることに私は無理からぬ点があると思う。たとえば、アメリカが相当前に、無条件で会談に応ずるならば北爆は停止してもいいということを言っておる。ところが、ウォルター・リップマンに言わせれば、アメリカは確かに条件をつり上げているのですね。無条件でくるだけじゃなくて、北爆をやめる条件として、少なくとも北越が南に対する補給その他をストップするとか、南から兵力を一部でもいいから北に帰すというような具体的な努力をしなければ北爆をやめない。これはアメリカが軍事的な優位に乗じた条件のつり上げであるかどうかは別として――また同時に、私どもは、いつまでもアメリカだけに無条件に北爆をやめろ、これは私は無理だと思う。それでは北越の侵透にだけ賛成する。と同時に、アメリカが言っておるように、北越の補給のほうをやめろ、そうしたら北爆はやめてやるということは、十個師団北越の軍隊を南越に出しているのに、それだったら袋のネズミにしてしまうようなものだ。そういう具体的な軍事的条件では、これは北ベトナムがイエスを言わないことも当然ではないか。このことは、はっきりとではないけれども、大体そういうふうにとれるような意味で、アメリカの友人である、一番理解者であるといって、自分の党の左派からも突き上げられておるウィルソン首相が言っておるように、それはやはりあれだけの軍隊を送っているのだから、軍事的な増強はいけないかもしれないけれども、食糧、衣料等を送るくらいならしかたがないじゃないか。問題はそういうところにあると思う。ですから、私は、これは大体ロバート・ケネディの案に近いようなことですけれども、こういうような条件で、ひとつ両方に呼びかけてみる必要があるのではないか。まず第一に強いほうに対して、アメリカが一応無条件で北爆をやめてみろ。期間を限ってもいい、無条件でやめる。そのことによっていわゆるコスイギンの動くようなチャンスをつくって、そして両方がいわゆる戦闘行為を縮小するような会談に入る。その会談の要件はむろん北爆の停止ですから、北からの補給の停止ということをその会談の中から約束させる。そのための監視員を、国連の監視チームでもよければ、あそこのジュネーブ会議でできたいわゆる国際監視委員会をもう少し人員をふやす等によって、南北の国境なりあるいは港湾等に派遣して、いわゆる純粋の軍事的な補強ということはやらないように、両方がディエスカレーションをするということを現地において見届ける、そういうチームを派遣する。そういう話がどうしてもできないときには、これはどうもやむを得ないけれども、それだけの努力をして、そして和平会議のチャンスをつくるべきではないか。このぐらいのことを日本ともあろうものがアメリカにサゼストし、強くこれをアドバイスし、またソ連に対して、ソ連を通じて北越があまり中共のような過激化のほうにいかぬように、やはり北越に対しても働きかける、私はそんなことをするのは当然だと思うのです。もしそれでひとつ世論調査でもおやりになったら、断然賛成、それをやらない政府はたちどころに国民からあかれてしまいます。私は、いいことをやるなら佐藤内閣が点数をかせいでもけっこうだから、それぐらいのことをおやりになるお気持ちはないですか。(「賛成」と呼ぶ者あり)みんな賛成している。超党派外交ができますよ、どうです。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま具体的な提案がございました。ウ・タント国連事務総長の提案も、あるいはその前の英国のウィルソン首相なども、大体同じような話だと思います。しかして最近の最もはっきりした話といいますか、これはアメリカ自身が北ベトナム大統領にも手紙を出している。これは北越の外務省筋が発表するところでございますけれども、これなどは、いまのような他の国が非常に心配しておりましても、肝心の両国、ことにまたアメリカ側においても具体的な案を示しておるけれども、とにかく話し合いに応じないという拒否の手紙をもらっておる、こういう状況ですね。確かにいま言われるように、ソ連の考え方は昨年よりかよほど変わっております。私ども、昨年グロムイコにいろいろ話をしたときと、今度コスイギンがロンドンに行っての話とはよほど変わっている。だから、われわれのいままでの努力は目に見えない努力だ、かように言われますが、やはり国際情勢、国際世論というものが、関係国にも反映すべきものがあるということ、そういうものを考えさしている、かように私は思います。したがいまして、今後とも、いままでのような不断の努力を続けてまいりまして、そうして一日も早く平和が招来されるようにいたすべきものだ、かように私は考えております。ただ単に念願というだけではございません。あらゆる機会をつかまえるつもりであります。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 むろん単なる念願ではないと思います。これは真剣な問題ですから、いろいろアドバイスもされておるだろうし――大体外交なんかというのは、そう表面だけはでなことをやるだけが能じゃない。しかし、少なくともアメリカに対して、いま申し上げた程度の――ジョンソンの提案がそのままいいと言うなら、これは北越に対する無条件降伏要求とほとんど実質的にはあまり変わらないのではないか。そうではなくて、一定期間でもいいから無条件で北爆を停止してみろ、そのあとはこれこれだ、そのくらいのことは、あなたが直接言いたくなかったら、野党から言わしておいて、そのとおりだと言ってもいいのです。そのぐらいのことを誓わないで、お祈りだけじゃしようがないのです。ですから、これは単に念願だけであるとは私は断定しません。それから、全部外にぎらつくだけで外交だとは思いません。こういうことは慎重にやる手もあります。しかし、どこの国でも、基本的にはアメリカに何でもイエスマンでなくて、アメリカのためを考えたアドバイスがあっていいと思うのです。そういう線はぐっと出して、日本国民がこれをバックしているんだ。どう考えたって無責任なる反米行動ではないのですからね、そういうような線を出しながら、また北越に対しても呼びかける。こういう努力をやっていただきたい。新聞によると、核禁問題等について特使を考えておられる。これは三木さんの話かしれませんけれども、そういうこともけっこうかもしれないが、私は、むしろこういったような和平提案というようなものをひっさげて――単に三木外務大臣が言っていられるように、今後とも外交機能をあげてできる限りの努力を重ねたい、そう言えばそうだけれども、単なる外交機能どころじゃだめなんで、これは要すれば総理大臣クラスが出かけていくぐらいの積極的な努力がなされてしかるべきではないか。総理が韓国に行かれる、あるいは台湾に行かれる、われわれは決して否定しません。だけれども、もっと切実に日本が動くべきものは、まずこのベトナム戦争終結への努力ではないか。この意味で、従来もやっていますじゃなくて、従来は別として、これからこそ本気でそういう積極的な努力をやります、こういう力強いことをこの機会を通じて内外に示されてはいかがかと思うので、重ねてお伺いします。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過去のことを私は多くは申しません。ただいまも曽祢君から鞭撻をされております。一そう在来の方針を強化するつもりでございます。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 時間の関係で次の問題に移ります。  次には、いわゆる核兵器の禁止と拡散防止問題について申し上げたいと思います。  中共の核開発以来、核兵器の禁止とその一環としての核拡散の防止は、わが国の安全上、死活的な重要かつ緊急な課題となったことは、御承知のとおりであります。そこで、核保有国がまず核兵器を縮小せよという議論、そんなことを言っていると、新たな核保有国がどんどん出てきてしまって、これはもう核兵器の禁止が不可能に近くなるから、いや新たな保有国の出現を禁止する、つまり核拡散防止のほうが先だというような議論は、私はあまり意味がないと思う。これは両方とも、言うならば並行して進められなければならない。片方が片方を条件にするような態度は、根本的に間違っていると思います。しこうして、最近中仏両国の核に関する独自の主張を前にいたしまして、御承知のように米ソの接近が深まった。そうしてややもすれば、そのこと自身はいいけれども、今度は米ソが一緒になって核を持ち得る潜在的能力ある国に対して、おまえらは核を持つなという、拡散防止という形における核拡散防止問題が非常にクローズアップしてきた。それが一昨日一応休会になりましたけれども、いまのジュネーブにおける十八カ国軍縮会議において、今度こそ何か核禁条約ができそうだという急な高まりが起こったのは、そういうバックグラウンドの結果だと思います。  そこで、いまこそ、わが国は核に関する潜在的能力においては確かに自信を持って、中仏に次ぐのはわが国だと思ってよろしいと思いますが、単に核問題を論議することすら何かタブーであるというような考えを改めて、あくまでわが国は核武装しないという基本方針を貫きつつ、同時に、核保有国のかっては許さない、核兵器をやめさせること、究極的になくすことと同時に、平和的な核開発は徹底的にやるということを目ざして、一方においては国論を統一し、他方においては強力な外交を展開すべきではないか。わが平和外交のもう一つの幹は、ベトナム戦争終結に努力することと、やはり核に関する平和外交だと私は考える。ところが、昨日同僚の石橋委員が指摘されたように、どうもこれだけ世界も国民も注目している問題に対する政府の態度が、まあ一吏僚と言っちゃ失礼かもしれませんが、外務省高官の――これは私は警告的発言だったと思います、それがあったのに、総理は二月十八日の記者会児では、この問題についてはむしろことばを満したような――ある新聞の論評でも言ったように、ドイツのキージンガー首相が、その内容のいい悪いは別として、はっきりとドイツの言わんとするところを言っているのに対して、総理の態度はこれは逃げ腰です。ステーツマンシップがございません。今度の施政方針演説においても、核拡散防止条約の精神に賛成だ、非核保有国の立場も尊重されることを望む、まるで人に頼んでいるような、全く何か力が足らない。私は、これは残念ですけれども、ステーツマンシップがない。さらに、わが党の西尾委員長の提案である非核クラブについても、総理は賛成とはっきり言われ、翌日になって官房長官はあわてて――証拠物件はいつでも読み上げますが、時間の関係で省略しますけれども、実際は積極的にはやらないんだぞという、水をぶっかけるようなことを言っている。今度は三木外務大臣が、さすがにセンスがいいとみえて、核拡散防止問題については、これは超党派外交の踏み出しにしよう。しかし、何といっても、政府にはこの問題について真剣に考えて積極的に中外に呼びかけるという態度がない。これは私は残念です。ことにこの問題について、昨日もどのくらいの期間のゆとりを持って考えたらいいかという有益な質疑応答がございましたが、私をして言わしむるならば、拙速がいいとか、あるいは時間をかけても完全なものをつくったほうがいいかといえば、それはもう後者のほうがいいにきまっているというようなものの、しかし、わが国だけのイニシアチブではきめられないファクターがある。したがって、五月九日までの十八カ国軍縮会議の休会という時点は、私はこれは非常に重要であると思う。もしこの際におたおたして何も言わなければ、何といってもこれはゲームセットですよ。そんなおたおたしていることではいけないので、やはりこういうものはタイミングが非常に重要だ。したがって、私をして言わせるならば、いまからでもおそくはない。いままでのことを誓うのではない、大きな問題なんですから。だけれども、あさってではもうおそ過ぎるという、それだけの切迫感をもってこの問題に対する政府の態度をより明確にし、国民の支持を求めて、そしてあらゆる形の国際外交――なかんずくアメリカさんにお願いします、ソ連に話せばいい、その態度だけではだめです。高利貸しから金を借りればいい、自前の資金は要らないというのと同じことですよ。私は、アメリカに対して反抗的な態度をとれと言っているのではない。しかし、核保有国と持たざる国との考えは、違うのがあたりまえです。日本と西ドイツとの違う点はあるけれども、それだったら、なぜあなた方日本政府は、国連総会においてAAグループとも話をするのですか。非核グループをつくって話をするのがあたりまえじゃないですか。私は、そういう意味から、政府がもっとこの際に、基本的な態度において核問題にまじめに取り組んでもらいたいと思うのです。まず、この基本的な態度について伺います。総理大臣からお答えを願いたい。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考え方は、もうしばしば申し上げてまいりました。そうしてこれはただいま御指摘になりましたとおり、ただいまの最も重要な、大事な問題でございます。そういう意味でこれに真剣に取り組んでいるというのが、政府の態度でございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 そこで、この内容について伺いますが、大体どの程度の情報を得ておられるのか。私どもは、少なくとも一九六五年のアメリカのこの問題に対する提案、及び去年のソ連の提案というものを一応外務省から得ております。それによりますると、ある意味では非常に簡単で、たとえば平和爆発は禁止しておらない、それからまた、国際原子力機関の査察は強制的でない、比較的ゆるやかなといいますか、つまり拡散防止の、これから持とうという国に対する締めつけといいますか、制限といいますか、わりあいにゆるやかなものだったことは明瞭です。ところが、まあ最近新聞が伝えていることですから、そしてまた、これは最終的に完全な字句まで米ソの間に共同案ができていないから、だからまだチャンスだと言っておるのですけれども、しかし、おそらく大体共同通信が伝えておるような内容のものじゃないかと思うのですが、そういう最近の米ソが考えておるような方向というものは、かなりいまの最初の米ソ案よりもきつい、非核保有国にはいろいろな問題を投げかけておる内容のようです。大体米ソの共同の案として考えられておるようなことは、まだ固まってはいないけれども、大体いま私が申し上げた、わが国の新聞に出ておりました、具体的にはジュネーブの三月十七日発の共同通信が伝えておる、大体このものと思っていいのですか。これは内容のことですから、外務大臣からでも伺ったらけっこうです。
  90. 三木武夫

    ○三木国務大臣 その共同のは、新聞は読んでいますけれども、どういうことを書いてあるのか。結局、こういうことです。いま米ソ両国の草案というものは、曽祢君御承知のようにでき上がっていないわけです。しかし、この核拡散防止条約案に盛り込まれるであろうと考えられる内容は、核保有国あるいは核非保有国、これが保有国に対しては、これを譲り渡してはいけない、あるいは核兵器をつくることを援助してはいけない。また、非保有国に対しては、もらってはいけない、自分でつくってはいけない、それから援助を受けてはいけない。これが骨子になっておるわけなんです。そのほかに、平和利用に対しての保障、これは当然に、このことは核爆発エネルギーを軍事用に使うということ、これを抑えようというのでありますから、平和利用に対する十分な保障がなければならぬ。また、将来核爆発エネルギーが平和利用に実用化される段階に対するその利益を平等に聖堂できることが保障されなければならぬ。それからまた、核軍縮に対しても、これだけの世界の世論が帯まっておるのですから、ただ第六番目、第七番目の核兵器保有国を抑えるというだけでは目的は達成できない、核兵器を持っておる国も段階的に軍縮の意思を表明しろ、こういうことがいわれておるし、何らかの形でそういう問題が取り上げられるのではないか。次には手続の問題、条約の改正、あるいは脱退、あるいは再審議、年限の問題。こういういわゆる核兵器の取得に関する問題、それと平和利用に関する問題と手続、核軍縮に関する問題、これが大体条約の内容をなすものだと考えておるわけでございます。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 私の読んだところで、大体これはなるほどそうだろうなと思うのは、まず前文ですね。前文で、核軍縮と全面軍縮への念願が表明される。これは条約の義務にはならない。前文で、ちょっと悪く言うならば、ごまかされちゃうらしい。それから第一条が、いわゆる保有国によるディセミネーション、保有国が外にくれてやらぬというほうの主として保有国に対する禁止、第二条が、いわゆるこれから持とうとする国に対する禁止、プロリフェレーションと英語では使い分けておるようでありますが、要するに、非保有国が持つことの禁止ということになるようです。その場合に、核兵器だけを禁止するのか、核爆発装置ということでやるのか、そこら辺のことがまだ字句的に問題になっておるようであります。それから第三条としては、非核保有国に対する査察の問題、第四条が条約改正と核保有国の拒否権、それから五カ年後の再審査の問題が入るか入らないかということが問題、第五条が新規加入の問題で、第六条が、いま言われたような期限と脱退の問題に関連するもののようであります。  そこで、これはそれ以上できてない案文を追っかけたってしようがないですから、事項別に一つ一つ重要な点についてのお考えを伺ってまいります。  問題点の第一は、何といっても、この条約の究極の目的というものが明らかでなければならぬ。それは究極において核兵器をやめるんだ、核兵器をやめることと全面軍縮ということが現想であるということを、これはきわめて明確に出す必要があると思うが、その点に関する総理のお考え伺います。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思います。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 第二に、その究極の目的に達する過程として、その中途の問題として、核保有国側による核軍備縮小、減らしていく、こういうものの具体的な努力が何らかの形で、あるいはこれはこの条約でその点をはっきり義務条項にするのは無理かもしれない。それならばスウェーデンが言っておるように、これと並行して核兵器を持てる国による軍備縮小の具体的な努力、特に全面的な核実験の、地下を含む査察制度を伴う禁止とか、あるいは核兵器のストックを減らしていくとか、あるいはいわゆる要撃ミサイル系統の開発や、あるいは配置というものはやめにしていくとか、保有国による具体的な軍備の縮小ですね。いきなり撤廃でなく、縮小への努力というものが、何らかの形において並行的に義務づけられるか、この条約の中に義務条項として入ってくるということが私は必要だろうと思うが、これは基本的な問題ですから、これも総理からお答えを願いたい。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 究極の目的ははっきりしておりますが、その究極の目的に達するまでの間、これは漸進的に可能なものからやっていく、こういうことだ。何が可能かという具体的な問題については、さらに現状においてはもっと検討を必要といたします。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、ただその場の答弁で済む問題ではないので、これはいろいろ表現の問題、形式の問題もありますが、これから核を持とうという国だけが義務を負うのでなくて、保有国による軍縮というものが何らかの意味で義務づけられるということは、これは当然のことなんです。それがどこかに出てこないような片ちんばな条約ということは公平ではない。それを何らかの形で実現する一つの真剣な努力がなされなければならないと思うのですが、もう一ぺんその点を伺います。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申ましたように、究極の目的ははっきりしておる。これを達するために漸進的な可能なものからやっていくということでなければならない。何をどうするかということはさらに検討を要する、こういうことでございます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 必ずしも満足しないのですけれども、次に移ります。  第三の問題は、昨日も論議されました非核保有国に対する安全保障について有効な措置が講ぜられることが、これは絶対必要です。そうでなしに、おまえは持つなというだけの一方的な義務づけでは、日本は別としても、ほかの国が、潜在的核保有国が入らない条約になったのなら、中仏は別として――これは保有国のほうですけれども、これは意味をなさない。したがって、この安全保障についての問題を真剣に要求し、研究されなければならないと思います。  そこで、昨日も石橋委員が指摘されたところですが、私は、この安全保障について、核兵器を使用しない、核を保有せざる国あるいは核の持ち込みをやらない国に対しては、核兵器を使用しない、あるいは核の攻撃のおどしをかけないという、こういうソ連案ですね、あるいは中南米の条約の付属議定書の第二の第三条にあるような、こういうことは、私はこれだけあれば十分とは考えません。しかし、使用しないという約束を取りつけることは、やはり何といっても一つの効果がある。つまり、不可侵条約みたいなものです。ただし、それだけにたよることは危険なので、それが守られない場合の安全保障というのはなお必要です。これは私は当然に要求すべきだと思うけれども、この点についてのお考え伺います。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核を持たない国の安全保障について十分考えられなければならないこと、これは当然でございます。ただいま核保有国が攻撃をしないということ、それを取りつけろということですが、それについては、曽祢君も申しておられるように、これだけで十分ではない、こういうことだが、少なくともこれはやれ、こういうような御意見のようです。私は、十分に考慮が払われること、これが必要だ、かように思っていろいろ検討しておる最中でございます。
  99. 曾禰益

    ○曽祢委員 私のほうだけから申し上げているので少し変なのですけれども……。  そこで、私は、この約束は取りつけられたらいい。特に中南米のあのせっかくの非核武装の条約が、きのう石橋君がいみじくも指摘されたように、すべての核保有国による核兵器不使用の約束ができないと、せっかくできた非核武装条約は効力を発生しないという停止条件にすらなる。したがって、そういう点からいっても、また中国にしても、フランスにしても、一応は、表面的に考えれば、自分はしないよ、第一撃としては少なくとも核兵器を使わないぞということは言っているんですから、私は、やはり中仏をこういう大きな運動に加えさせる意味からいっても、繰り返して言うとおり、われわれはこれだけで安全保障は足りるとは思いません。思いませんが、この条項を取りつけるのが正しい、ぜひやっていただきたいと思う。  そこで、しかし、そういう場合に、要するに、核保有国のお情けにすがっているような、使用しないということだけに安心はできません。ゆえに、いろいろな防衛条約というものがそこにあるわけです。わが国の場合には、核に対する保障は、やはりアメリカのいわゆる抑止力を利用するという以外にございません。われわれはそういうふうに割り切っております。しかし、そうでない国がある。特に非同盟の国、インドのごときものは非常に複雑な関係を持ちます。したがって、どうしても単に、イギリスも、アメリカも、ソ連も、インドに保障するといういわゆる二国間のバイラテラルな約束だけではちょっと足りない。そうかといって、アメリカとソ連が一緒になってインドを保障するといえば、これは中共に対してあまりにも刺激的過ぎるという問題が起こる。しかしこの問題はほっておけない。だから、この問題について、やはり国連を通じて国連の議決――将来はこの核兵器を持ったりっぱな部隊でも国連だけが持つということになるかどうか知りませんが、少なくとも国連の決議によって、すべての核保有国が、核攻撃を受けたりおどしを受けたりする非核武装国に対して集団的な保障を与える、このことが私はきわめて望ましい。これなしには、インドなりあるいは場合によっては西ドイツを説得して核拡散防止条約にサインさせることは相当至難ではないか。どこの国でも自分の至高の、一番とうとい、一番大切な安全の問題を、核保有国のいわゆる好意だけにすがっているわけにいかない。集団的な国連を通ずる安全保障ということをぜひやるように、日本は自分の国は日米安保があるからいいという、これは国内にもいろいろ議論はありますが、そういうエゴイズムではなく、日本みずからが国連を通ずる集団安全保障を取りつけるように努力すべきではないか。そのことが、非核保有国が核拡散防止条約に踏み切る一つの大きな契機になる、こういうふうに私は考えますが、その点の総理のお考え伺います。
  100. 三木武夫

    ○三木国務大臣 やはりそういう形が私も好ましいのではないかと思う。あるいは核保有国の共同宣言とか国連決議とか、そういう地域的集団安全保障条約にたよれない国々があるんですから、総括的なそういう非核保有国に対する安全保障の問題というものは、曽祢君の御指摘のような方法が好ましいのではないかと私も考えておるものでございます。
  101. 曾禰益

    ○曽祢委員 ぜひその実現に御努力を願いたい。  第四に、非核保有国に対する核の平和利用についての差別待遇を防止する。これは実は言うべくしてなかなか――核保有国が現にあるのですから、そっちの問題ととかく差別待遇ができそうな問題であればこそ、私はこれは非常に重要な問題だと思います。しかし、差別待遇が平和利用に関してはあってはならない。そこでわが国は、この点に関しては非常に割り切っておりまして、御承知のように、核燃料をもらったことや何かからも国際原子力機関の保障措置に対しては喜んで査察を受けておる。国際的には非常に優等生なんで、たいへんこれはけっこうなことだと思います。しかし、いよいよ今度核禁条約を結ぶと、日本は、ある意味においては国際原子力機関の条約そのものから、そこまで来ないような義務を、もっときちんとした義務として核拡散防止条約の中から、しかも、核保有国は持たないであろう義務を、平和利用についても非常にシビアな、厳重過ぎるような査察を受けるということを、いままでは簡単にこうやって任意にやっていたけれども、はたして義務としてそこまで受けていいかどうかということは慎重に考えなければならぬと思うのですが、その点はどういうふうに政府はお考えになっておるか。外務大臣でけっこうです。
  102. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この査察は、御承知のように、日本は現に国際原子力機構から査察を受けておる。これが非常にきびしくなって、原子力の平和利用というものが非常に阻害されるようなものには私はならぬと思う。結局は、この条約は核兵器の拡散を防ごうというのですから、平和利用に対する非核保有国の権利というものは十二分に保障されるものだと私は考えておる。そうでなければ、非核保有国はこういう条約を支持しません。日本は第六の核兵器保有国にならないと、日本のように一番能力のある国が割り切っているのですから、平和利用に対する日本の主張はどんなに強くてもいい。割り切らないで、あいまいで、ことによったら核兵器をつくろうという下心があるというのではない。一番能力を持っておる国が割り切ったのですから、平和利用に対する日本の主張というものはどんなに強い主張をとってもい。そういう意味で、私は、曽祢君の心配されておるような、日本の原子力の平和利用に対する活動が、査察ができても制約を受けるようなそういう条約であってはならぬし、そういうふうになるとは私は考えていないものでございます。
  103. 曾禰益

    ○曽祢委員 理屈を言うとそのようですけれども、同時に、きわめて冷厳なる事実は、しかし、この核禁条約においては、平和的利用について義務的に査察を受けるのは、単に非核保有国だけになると思うのです。アメリカ等が、ある種の原子力発電装置等を国際原子力機関の査察に服してもいいというので、モデルケースとしてやっていますけれども、元来研究そのものは平和的――目的は違うけれども、研究そのものは分けられないのですから、保有国に関しては、平和的な利用であっても国際査察を許さないと言われれば、そこに不平等関係ができるのですよ。そこを私は問題にしておる。特に私は、この原子力基本法の精神に全く賛成です。平和、民生、自主、公開、ただこの原則を守りながらやっておっても、あまり煩瑣ないろいろ国際的な機関の査察を受け入れることになると、公開がある程度の核兵器に通ずる秘密を漏らすということになるのじゃないかという心配すら起こす。あまりこの査察そのものが繁雑であるということは、せっかくの原子力基本法の平和、民主、自主、公開の原則にも一つの問題を生ずるおそれがないか。したがって、この査察の受け入れは賛成ですけれども、あくまで平等に、そうしてでき得る限り保有国に対しても査察をさせるということと、査察の結果については、やはり受ける国の誠意を信じたら、自主的に従来国際原子力機関の査察を受け入れていた程度のゆとりを持ってやらないと、私はえらいことになりやしないか、かように思いますが、その点について、これも外務大臣でけっこうですが、お答えを願います。
  104. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も曽祢君と同じように、やはり核保有国も平和利用のためには査察を受けるべきである。そうでなければ、軍縮の努力といっても、これは平和利用と軍事利用とが一緒になれば、その軍縮の努力をわれわれが検討する場合においても根拠がないですから、やはり平和利用に関しては核保有国も受けるということがよろしい、こういう線で努力をいたしたいと思うのでございます。  また査察については、これは一気にきわめて厳重な査察というものは、私は実現できるとは思っていない。これはユーラトムと国際原子力機構との間のいろいろな問題もありますから、そういうことでいろいろ紆余曲折はあると思いますが、結局は核保有国も平和利用については平等に査察を受けるべきであるという考え方で努力をいたしたいと思うのでございます。
  105. 曾禰益

    ○曽祢委員 原子力委員長からも伺いたいのです。いま申し上げたこの原子力基本法の精神を、核拡散防止条約による監督を受け入れることによって、特に公開ですね、この原則をやって、思わず知らず悪意の国に日本の相当すぐれた――日本は絶対に核保有に努力しませんからいいのですけれども、相当高度の秘密が漏れることが核拡散防止条約による義務違反にならないかという問題と公開の原則とは、十分に両建てでいけるかどうかということについての確信がありますか。
  106. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 この原子力の平和利用の問題につきましては、三木外務大臣からお話があったとおりでありまして、原子力委員会としても、その精神は、単に核を持たない国に対する査察が行なわれることは、これはそうなろうかと思っていますが、それと同時に、やはり持てる国に対しても、平和利用については平等な査察が行なわれるべきだと私は思っております。現在、わが国における原子力利用についての査察は、先ほどお話がありましたとおり、平和利用に限られておる、公開の原則がある、こういうことでございますが、これは現在わが国で行なわれておるものが軍事的目的に転用されるおそれはないかどうかということについてきびしい査察が行なわれると思っておりますので、そういうことから考えましても、あるいはきびしい査察制度が将来とられるかどうか。条約の内容がまだはっきりいたしておりませんが、そういうふうになった場合でも、やはり公開の原則というものは日本にも行なわれる。同吟に、これはあくまでも平和利用である、こういう査察はやはり持てる国も持たない国も、平和利用に関しては同じような措置がとらるべきだ、私はかように考えております。
  107. 曾禰益

    ○曽祢委員 何かはっきりしないのだけれども、要するに公開の原則を堅待しつつ、査察を受けて差しつかえないという御答弁だと理解いたしまして、それでけっこうです。  そこで、平和的爆発の問題ですが、御承知のように、ラテンアメリカの条約は、本条約の第十八条で、これははっきりと平和的核の爆発はできるということになっております。しかし、それをめぐって、第一この条約自身が、先ほど申し上げたような停止条件がついているので、まだ発効しそうにもございませんが、効力を発生した場合に、アメリカはやはり、こうは一応十八条で書いてあるけれども、実際上は区別ができないのだから、これは架空の権利で、将来平和的な爆発と純粋軍事的な爆発とを画然と区別ができるような場合における権利の留保にすぎないというのは、私は文理的に見ると非常に無理な解釈だと思いますが、そういうことを言っております。この問題については、私は冷静に考えて、わが国としては、むしろ核保有国を含めて、地下爆発実験も含めて全面的に禁止すべきである、ただし、禁止した上で、平和的な問題なら公開してかまわないわけですから、平和的にいわゆる爆発力を使わなければならぬような場合には、そこまでテクニックが進んだ場合には、それは国際原子力機関の完全な査察のもとにこれを許すということがあるなら、これは核保有国も非核保有国も完全に平等な権利になるのだから、特別に非核保有国だけが平和的核爆発の権利を名目的に留保しておくという必要はないと思うのです。したがって、そういう努力をすべきだと思うが、この点についてはまず総理から伺い、次いで外務大臣、原子力委員長のお考え伺います。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も曽祢君の説に賛成なんです。ただそれで誤解を招かないように、現状においてそれじゃ日本はどうするのかというと、現状においては、ただいま軍事と平和利用と区別もできませんし、放射能に対する克服もまだできてない現状でございますから、どんなことも私どもはしない、核爆発はしない、こういう状況でございます。誤解のないように願っておきます。
  109. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣、ラ米条約の十八条に関することも含めて、ひとつ御答弁願います。
  110. 三木武夫

    ○三木国務大臣 ラ米条約は、曽祢君も条約をごらんになったらおわかりでしょう。第五条に核兵器の定義が入っております。核兵器とはコントロールなしに一ぺんに核エネルギーを放出することが一つ。それと軍事利用に転用されるおそれがあるというのですから、平和目的の核爆発エネルギーといいましても、いろいろ疑義を起こすことは明らかでございます。
  111. 曾禰益

    ○曽祢委員 ただ、十八条でははっきりいたしておりますね。そこに矛盾がある。
  112. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういうことでありますので、あの条約については、将来やはり相当な条約解釈上の問題が起こってくると私は思う。ただしかし、言えることは、もし将来核爆発エネルギーが平和利用と軍事利用とにはっきり分けられるというような事態のときには、おそらく国際機関においても、それをそういう利益――核爆発エネルギーを平和に使えるような国際的に何か請負会社ができるかもしれぬし、平和爆発請負会社というようなものができるかもしれぬし、とにかく、そういう事態というものはやはり非常に大きな情勢の変化があるのですから、それは相当な将来のことであります。そういうことで、いまは平和利用のために核爆発ができるのだ、できるのだという、そんなに単に時間的な距離、科学技術の進歩というプロセスを抜きにして、いきなり結論に急ぐような問題のとらえ方は、国民をミスリードすると私は思っている。もし平和利用と軍事利用が区別できるというときになったならば、それは核爆発エネルギーの平和利用というのは非常に形が変わってきて、日本あるいは非核保有国はみな当然にその利益に平等にあずかることにならなければ、これは世界は承知しないですから、あんまりいま、時間的な距離を抜きにして結論を出すような議論ということは国民に対するミスリードになると思うので、私はとらない。とにかくいまはやらぬのだ、これでいいと思う。将来、将来と先のことをいって、やるのだということは国民をミスリードする。やらぬのだ、これで私はいいと思うのであります。
  113. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 ただいま外務大臣からお話があったとおりでございまして、核爆発が真の平和利用であるかどうか、軍事利用であるかどうかという区別をするまだ何ものもないわけですし、また、それが行なわれて放射能その他の被害があるかないかということを査察する管理機構と申しますか、そういうものもない現在においては、私どもの立場といたしましては、平和利用だとかいう名のもとに核爆発をやっていいということには賛成いたしかねるのであります。
  114. 曾禰益

    ○曽祢委員 私も、政治的に見て、権利の留保ということにのみとらわれてはならない、むしろそれよりも不平等性の除去という意味からいって、日本の主張は、全面的な、核実験といいますか、爆発を地下においてもやめる査察制度を推進して、行田が全部、平和的といっても国際的な機関の監督なしには爆発そのものができないのだというところに追い込むのが基本的には正しい。そのほうが権利の名目的な留保よりも重要である。したがって、いわゆるわが国の権利の留保ということになると、ただ平和的爆発は留保するというよりも、やはり条約そのものを、これは内容がよければ、いいものをつくるのに積極的に努力すべきであると思います。困難なことであるけれども、条約上は少し不十分なところがあってもこれをつくらせて、ただし、その条約の期限なりあるいは脱退なり再検討なり、こういう点からの一つの制約というものをつくっておく必要がある。ところが、これに関するあれを見ますと、やはり米ソ案は、これはちょっと無理もない点もあるかもしれませんが、部分的核停条約がそうであるがゆえに、事実上核保有国の拒否権ですね、核保有国を含む全体の過半数がとか、あるいはそういうことでなければ改正ができないというように、これは善意かあるいはわがままか知りませんが、考えておるようです。そこに非常に問題があると思いますから、やはり期限を切る。たとえば五年。そうでなければ、単に米ソ原案が考えているような部分的核停条約にあるような、いわゆる異常な事態が自国の非常に大きな利益を危うくしている場合には脱退できるというような、何か脱退して悪い子になるのではなくて、やはり条約に期限をつける、あるいは再検討条項をはっきりつけるということが必要だと思いますが、この点を、外務大臣でけっこうですから……
  115. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も再検討条項ははっきりつけたらいい。期限の点も、あるいはそういう再検討条項がつかぬということなら、期限は切る必要がある。しかし、期限の問題は、どうも米ソの草案は、期限は無期限のような草案であるようでありますが、これは核停条約が期限を切らぬという理屈も成り立つでしょう。期限を切るか、さもなければ何年目ごとにか再検討する機会はぜひともこの条約の中に入れなければならぬと考えておるわけであります。あるいはまた、脱退の条項は、これはどの条約にもあるわけですから当然に入るわけであります。
  116. 曾禰益

    ○曽祢委員 最後に、この条約の内容ではなくて、この問題の含んでいる二つの大きな問題に触れてこの問題を終わりたいと思う。  第一は中国とフランスの問題です。これは中仏を加えなければ非常に困る。と同時に、じゃ、中仏が入らなければ全部やめか、これもいささか暴論のような気がします。しかし、中仏をどうするかということは、非常に重要な問題であって、このことが私どもが言っている最後の第七番目の非核クラブの問題と非常に関係がある。つまり、非核クラブをつくれという主張の中にはいろいろの要素がある。一つは、やはり中仏に対する呼びかけが――中仏両国とも、ヤルタ体制といいますか、アメリカ、ソ連、イギリスが三国で何でもやるということに対する自主性の要求、反発というものはかなりあるわけです。したがって、彼らに対してやはり核保有の能力を持っている側から呼びかけるということは、これはもうやってみなければわからないことであるけれども、ある種の説得力がまた別にあろうというものだと思います。そういう意味から、私はこの非核クラブというものを申し上げているわけでありまするが、この点についてどうも政府の態度は私はわからない。先ほども申し上げたように、総理大臣はイエスと言われた、私はそれでいいと思うのです。こういうことは大きな感覚でいけばいいので、それをあとになって、いや、アメリカさんに頼んでいるんだからいいんだ、ソ連に頼むからいいんだ。これはさっきも言ったように、高利貸しから金を借りてればいいんだ、自前の金は要らないのだ、暴論のようだけれども、そういうものなんですね。片方をやれば片方は全然要らないということではありません。アメリカにもソ連にも呼びかけるのは当然です。しかし、時として、こういう問題については、非核保有国の間にもいろいろな意見の違いがあります。国の置かれた状況、安全保障条約の持ち方、いろいろの違いはあるけれども、一つの共通点はあるわけです、核保有をしないで済まそうではないかという。同時に、それでは核保有国がわがまま過ぎるではないか、これらの問題について、最小限度の、いわゆる最小公倍数といいますか、共通の利益というものをぴしっときめて、そして、あるいは米ソに、米ソだけで全部リードせぬように圧力をかける、また中仏に呼びかける、こういうことがわが党の西尾委員長が言っている非核クラブの結成ということだと思うのです。何でもこれだけやればいい、アメリカとソ連に対する呼びかけは要らない、自国だけで自主的にやる交渉を拒む問題じゃございません。あたかも国連総会におけるわが国の立場が独自の立場、アメリカとの協力関係、同時にアジアの連帯性というような、いろいろな要素からわが国が自主的な外交を進めているわけですから、そういう意味で、非核クラブというものを大いに私はやったらいいと思う。自分は言い出しっぺにはならぬ、言い出されたら乗ってもいいなんかという官房長官の意見なんか全くナンセンスだと思うのです。もっと気魄に満ちた外交があってしかるべきだ。総理大臣の御決意を伺います。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外交は、自主的に、同時に独自の立場を守る、これが外交の基本的な態度だと思います。ただいまこの独自の立場、自主的な外交を展開する、そういう場合に、いわゆる持たない国が共通の利益を守る、そういうことで意見が一致すればちっとも差しつかえない。それはいいことなんです。そのときに、いわゆる非核クラブ、こういうことで表現されて、特別な義務を負う、こういうことであってはならない、かように私は思います。しかし、本会議で説明をいたしましたように、私どもはそういうのに特別な人を派遣するわけじゃない。いまの公館を通じ、いまの外交ルートを通じて各国の意向も十分確かめていくんだ、こういうことを申し上げております。そこらに何らか誤解があるかもわかりませんが、基本的な態度としては、ただいまの自主的な外交、独自の立場で外交を進めていく、こういうことでございます。
  118. 曾禰益

    ○曽祢委員 この問題の最後に、これは意見になるかもしれませんが、伝えられる超党派外交をこの核拡散防止を中心にやられる、それは私は決して否定しません。大体こういうことは野党側から言うことじゃないですから、政府・与党から各野党、特に野党第一党を含めての真剣な要請と努力がなされなければならぬ。それが核拡散防止問題であれ、ベトナム戦争の問題であれ、安保問題であれ、けっこうですが、ただ問題は、そういう形をつくるとか、あるいはすぐ超党派チームを出すとかということではなくて、やはり私は、日本政府が、冒頭に申し上げたように、こういう問題について国民と活発に対話し、そして内外に日本の意見というものをくっきりと浮かび上がらせる。そのバックのもとに、アメリカとももっと、お願いしますでなくて、要求としてアメリカにも言い、それから、びくびくすることはないので、非核クラブをつくって、そして、やはり時としてはヤルタ体制国に対してデモをかけるぐらいの、非核クラブが気勢をあげたらいいと思うのです。そういう多角的な外交をやっていただきたい。超党派の形だけにとらわれないで内容を推進していただきたい。総理や外務大臣がベトナム和平の問題や核拡散防止問題について外国へ出ていくというときに、国民全体が、まあ一部の人は別としても、全体が羽田に送っていって、しっかりやってこいというような、そういうことをあなた方自身がやらないで、かっこうだけ言ったってだめですよ。あなたが腰を入れて誠心誠意をもって国民に呼びかけなさい、これを望みます。(中澤委員「羽田へ送って行ってやるからしっかりやりなさい」と呼ぶ)中津君が約束したからだいじょうぶです。  第三に、日米安保条約と、時間がありましたら三次防にちょっと触れたいと思います。  戦後二十二年、東西の冷戦の様相が一変いたしまして、中ソの対立は決定的となる一方、兵器の体系が革命的に変化して、中共の核武装が現実となってきました。この新しい時代に即した日米協力のあり方とわが国の防衛問題について、私はいまや根本的な検討が必要であると思います。日米安保条約も十年目の再検討の時期を迎えようとしつつあります。また、自衛力に関しても、この際第二次防衛計画が決定の段階にあります。したがって、以下、安保条約と第三次防の重要点について総理意見伺いたいと思います。  まず、安保でありますが、わが国の安全保障の論議が、従来ともすれば日米安保を無条件に礼賛するという議論と、他方において、安保破棄、自衛隊解散という議論、つまりこれは両極の不合のすれ違い論争に終わっているのははなはだ不幸かつ危険だと思います。日米安保に過度に依存することは、これは自主性の喪失であります。同時に、安保の無条件破棄は、あるいはこれが日本の重武装に通ずるのか、それとも無防衛主義に終わるのか、どちらもわが国としてとるべきではないと思います。私は、日本としてはどの国とも平和共存の外交を推し進めていく。同時に、憲法が容認する――私は容認していると信じますが、限定されたわが国の自主防衛力を保持し、その補完として、補いとして――その補いの部分がずいぶん大きいとは思いますが、国連の集団安全保障が確立するまで、さしあたりアメリカとの防衛上の協力を受け入れる、これ以外にないという意味で正しいのではないかと信じます。問題の核心は、総理のしばしば言われるように、単に安保体制を堅持するというような問題ではこれはないのです。安保体制の内容は何なんだ、条約の内容はどうなんだ、防衛協力のあり方はどうなんだ、こういうことを、少なくとも七〇年までの相当の時間がある間に検討し、そして、その検討が空費するのではなくて、国民とともに考え、憂え、そしてその結果、いわゆる国民世論の何といいますか、合致といいますか、ナショナル・コンセンサスを求めていくんだ、このことが私は一番大切な要点ではないか。一体政府はこれにいかに対処されるのか。どうもわが国のこの問題の受け入れ方が、アメリカがくしゃみをすると日本がかぜを引く。岸さんがラスク国務長官及び一部のアメリカのリーダーと会って話した。そのときに、国務当局としては、条約をもう一ぺんやり直せば確かに上院にかけなければならないので、いろいろな議論が起こるから、条約の改定はめんどうだなんというぐらいのことは言ったかもしらぬ。そうすると、まるでアメリカの御意見がこうだから、よって、長期固定論がおかしいんだとか自然延長論がいい、そんなことに考えるというのはどだい自主性の喪失です。そうじゃなくて、日本から見て、長期固定化なんということは、まるで社会党が政権をとったらこわいというようなもので、これは実際は失礼な話だけれども、保守党がそれだけ自信がないのかと反問したいくらいで、そういう日本の自主性から見て、長期固定化なんということが決していいものだとは思わないという自主性があっていいのじゃないか。政府は、一体いかにこの点を考えておられるのか。最近岸・ラスク会談から急に脚光を浴びたような感があります。そんなものじゃない、これは継続事業として真剣に考えなければならない問題であるけれども、少なくとも、長期固定化というような古くさい考えははっきりと否定されたらいいのではないか。アメリカからかぜを引いたのじゃなく、日本の独自の考えとしてそういうことをお考えになったらどうか。この点でも、まず総理から伺います。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点もたびたび申し上げたのですが、御承知のようにわが国の防衛力、これは憲法がはっきり明示しておりますから限界がある。昨日もその前からも問題になりましたように、通常兵器による局地戦、これを抑止する力、これしか持ってはならないといいますか、これが大きいとか小さいとか、世界で何番目という議論がございましたが、これははっきり私ども申し上げますように、通常兵器による局地侵害、これを抑止する力、しかも、それは十分とは私は現状においては申しません。しかし、最近の状況から見ますと通常兵器ばかりではない、よほど科学技術が進歩しております。そういうことを考えますと、わが国の安全を確保するのには、自衛力だけではどうしても足らない。だから、いままでたびたび申し上げておりますように、日米安全保障条約のもとでわが国の安全は確保されている、こういうのが情けないかな、ただいまの状況でございます。私は、しかし、この日米安全保障条約のもとで安全を確保しておると申しましても、国民の愛国心を疑うものではございませんし、また、国民がこぞってみずから防衛するに足る祖国だ、こういうような感じ、そういう気持ちで立ち上がっていることもよく私にはおかっております。ただいまの状況のもとにおいては、安保体制、この条約体制を堅持する、こういうことをしばしば申し上げておりますから、これをひとつ御了承いただき、その堅持する方法は一体どうするのか、こういうことについては、これは七〇年までいましばらくございますから、十分その間にどういう形がいいのかこれは検討して、国民の納得いくような形においてわが国の安全を確保していく、こういうことにしたい、かような決心でございます。
  120. 曾禰益

    ○曽祢委員 確かに時間はありますが、しかし、時間はどんどん走っておりまして、やはりもうそろそろ政府が自主的な立場から国民世論を結集するという明確な方向を出して、早きに及んでやはり日米間の交渉、折衝、対話等をやる必要があると思います。  そこで私は、以下、このわれわれの考え方を述べながら政府意見をただしたいと思います。私は、この安保条約は非常な特殊性があると思います。それは、現在の安保条約を見ればわかるように、第六条で米軍の施設、区域の使用権、簡単にいうならば米軍の駐留と基地を保有する権利を認めていること、しかも、その駐留の目的が日本の安全のためのみではなく、あわせて極東の国際平和及び安全のためということをはっきりうたっている点であります。これは言うまでもなく、旧安保条約では一そう明瞭でございまして、旧安保条約の第一条は、米軍の駐留権をはっきり認めまして、しかも、その目的が極東における国際平和と安全の維持に寄与し、日本の安全に使用することができる。皮肉な言い方をすれば、まあ極東の平和と安全――言うならば、朝鮮で戦争をやっているのだから、日本に独立を与えるけれども、駐留権に関しては従来と同様だ、極東の安全のために日本に駐留する、その付随的な結果として、ついでに日本の安全にも使うことができる、日本の安全に使うというのは付随的な結果みたいなことになっている。それを、御承知のような六〇年の岸内閣のときに、現在の安保条約に形の上で変えたということであります。しかし、普通の安全保障条約というものは、私はこういうものじゃないと思う。言うならば、現在の安保条約は、何といいますか、その糸を引いて、普通の相互安全保障条約でない。一方においては駐留権を設定する条約、他方においては対等国における相互安全保障条約、この両方の内容をそのまま持っておるのが現在の安保条約の一大特色だと思います。  まあ、ついでに伺いますが、一体普通の国の間の相互安全保障条約の中で、駐兵権あるいは基地権といいますか、これを響いた条約の例がどれだけあるか、これはひとつ外務省の当局でもけっこうですから、おっしゃっていただきたい。私は、これは日本の安保条約が唯一無二の例とは言いませんが、非常な特例であると思います。いかがですか。
  121. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 さしあたり思いつくのは米韓、米加の相互防衛援助条約でございます。
  122. 曾禰益

    ○曽祢委員 私の調べたところによりますると、アメリカと韓国との条約の第四条、アメリカと中華民国、国民政府との条約の第七条、まずこれは対等の国かどうかいろいろ議論があるかもしれないけれども、まあまあ対等の国の条約としてはこれくらいなものですね。きのうシンガポールの総理大臣が来ていたので、気がついてみたら、イギリスとマラヤ連邦との条約についても、防衛及び相互援助に関する協定がございまして、その第三条では、確かに駐留基地のことが書いてあります。これはイギリスが、マラヤ連邦という軍隊を持っていない国を育てていく場合の、軍隊を教える人から、軍隊をつくってやることからしてやる条約ですから、これは相互の防衛条約ということは言えないと思うのですね。それから御承知のように、アメリカとフィリピンにあっても、米比の相互援助条約五一年には、これは条約そのものは完全に対等の条約で基地条項はございません。これより先、フィリピンが独立したときの軍事基地に関する協定がありますが、これも、この独立国が軍隊をつくるのにアメリカが協力するというふうな条項があるので、これはやはりそういうことがあるのがあたりまえなので、ほかにどこがありますか。私は、こういう意味からいって、どうも日米安保条約を悪く言うと、これは日本がかつて満州国との間につくった日満議定書のような感じがするのです。日満議定書の第二条には、「日本國及満州國ハ締約國ノ一方ノ領土及治安ニ對スル一切ノ脅威ハ同時ニ締約國ノ他方ノ安寧及存立ニ對スル脅威タルノ事實ヲ確認シ兩國共同シテ國家ノ防衛二當ルヘキコトヲ約ス」これまでだったら共同防衛です。そのあとがある。「之カ爲所要ノ日本國軍ハ満州國内ニ駐屯スルモノトス」。私はこういう条約を、どうもそのままにいつまでもしておくということが、はたして長い目で見た日米間の安定された基礎における協力という形としていいのかどうか、これをもう少し二十二年たった今日、安保をつくり直した八年前と考えて、考え直すべきではないだろうか。これは何といっても、対等の国の条約としては、どうも形上こういうものを残しておくのは適当でないんではないか。ソ連とフィンランドの間の友好協力及び相互援助条約のように、国と国との力関係でもずいぶん違うところでも、御承知のように常時駐留は認めない。言うならば、フィンランドに対する攻撃あるいはフィンランドを通ずるソ連に対する攻撃があった場合には、ソ連の軍隊が入ってくる。私は、そのくらいのことを考えるのがほんとうではないかと思うのですが、そういったような、ほんとうの国の対等な協力という意味から、一体安保条約を金科玉条のように、何でもこのままでいいんだという安易な考え方をもう一ぺん考え直すお考えがないのか、これは総理の御意見伺いたい。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど申しましたように、日本の憲法の一つの特殊的なものもございます。また安全を確保する、その立場からこれが必要なように私は考えております。民社党で言われる常時駐留、これをやめるという考え方には、私賛成しかねております。ただいまの状態がいいように思っております。
  124. 曾禰益

    ○曽祢委員 米軍の基地使用権は、わが国の憲法のたてまえ上、ほかの国のように海外派兵を含んだ完全な双務的な、相互防衛条約を結ぶことができない、だから米軍の日本防衛の義務に対応するわが国の最小限度の集団安全保障の義務だという議論があるようです。あるようですじゃない、これはあるのです。外務省の去年の四月に発表したこの文章には、はっきりそう書いているのですね。四十一年四月十六日、日米安保の問題点について、外務省。ところが、この議論は私はおかしいと思う。一体それだったら――アメリカと韓国の条約は、日本の条約と違って、太平洋については、韓国は日本のような憲法の制約はございませんから、太平洋地域についてはアメリカのほうに応援するために出かけて行っていいということをはっきり書いてある。アメリカと中華民国、国民政府との条約についても、これまた日本のような憲法上の制約はございませんから、国民政府は西太平洋までは共同防衛区域だ、こう言っているのです。だから、共同防衛区域が日本地域だけだからという理由で駐兵権を認めるのだという議論は、私はおかしいと思う。それとは別なんですね、これは。うんうんばかり言わないで、はっきり声を出して、賛成なら賛成とはっきり言いなさいよ、総理大臣
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しましたように、これは必要からきているのです。
  126. 曾禰益

    ○曽祢委員 どうもうんうん言っているのに、全然逆なことを言っている。それだったら首を横に振ったらいいんです。これはどうも総理大臣は少し知識不足のようですね。外務大臣、これは外務省が出しているんですよ、外務省が。
  127. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま、曽祢君も御指摘になったように、日米安保条約は、特殊な日本国憲法の制約を受けた、これはちょっと類例のない条約であります。したがって、日本の防衛の義務を負うているわけで、これに対して防衛の義務を負い、しかも、日本の政府は有事駐留論をとらないわけです。やはり防衛は一つのそういう戦争に対する抑止力、防衛力という見地から、いざ事があってからするというのでなくして、事をなくしたいというところに白化党のやはり防衛の考えの基礎があるわけですから、いざというときに来たというのではなしに、来ておることが、いざというところを起こさないという、あなたのほうとの考えの基礎が違うわけであります。そういう意味でありますから、したがって、ていさいはいろいろございましょう、これは法律論からいったら条約局長からも法律論はありましょうが、とにかく日本としては有事駐留がいいという政府考え方から、やはり施設あるいは区域というものを提供する、これを一緒の条約の中に入れたわけでありまして、そういうことで……(「答弁が違ってる。常時駐留だ」と呼ぶ者あり)常時駐留がいい。それはいまことばの誤りで、有事のときに駐留でなくして、やはり常時に駐留がいいのだ、それは常時駐留すれば有事を起こさないのだ、こういうことが自民党の政府考え方で、多少そこは基礎が曽祢君と違っておりますから、したがって、条約に対しての考え方もそこに授け取り方の違いがあるわけでございます。
  128. 曾禰益

    ○曽祢委員 自民党の考え方がこうだから、だから私たち言っている国民的な意見に対して賛成できないというのは、これは結論として議論するならいいですけれども、その前に、少なくとも、あなた方が言っておられる議論がいかに薄弱であるかということは明瞭だと思うのです。むろんアメリカの抑止力というものをわれわれの自衛の補完として利用するのが現実的である。それは正しいのだ。ただ、そのアメリカの抑止力というのは、日本に置いているいわば見せ金的な――西ドイツあたりは、アメリカの軍隊を置いておくことが、いわゆる人質論というのがございまして、アメリカの軍隊を置いておけば、そのこと自身がNATO条約を結んでいる以上に、現実にソ連のほうにいたずらをさせない政治的、心理的抑止力があるという見方はあります。わが国の場合にはそうじゃなくて、いることがかえっていろいろなトラブルなり無責任なる反米運動に利用されている面もあるし、少なくとも議論としては、日本に置いておるアメリカの小さな軍隊が抑止力ではなくて、アメリカの抑止力はグローバルな地球全体の抑止力なんですね。そんなことはみんな承知の助のくせに、常時駐留の問題になると、これは日本の防衛のために必要だ、こういう議論にすりかえている。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕 ところが、現実に日本におる軍隊の目的は、日本防衛のためにおるのかどうかということはきわめて疑わしい。極東の安全と平和という――むろんその一部には日本の防衛もありましょう。もしここに現に置いてある陸海空軍、これがあるかないかによって日本の防衛ができるかできないかという、それだけの大きな力だというなら、これはおかしな議論で、だんだん減っている。全体のグローバルなアメリカの抑止力とかたき約束がある、その約束の信憑性というものが抑止力として働いている。日本におるあれは確かに日本を踏み台として極東に出て行くのには都合がいいかもしれないけれども、ほんとうに日本を防衛するための抑止力としては、ここに置いてある兵力は一体どのくらいあるのか、これはひとつ防衛庁長官から御証言願いましょう。どのくらいの兵力があるのですか。
  129. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 お答えいたします。  駐留軍の人員は約三万六千四百人でございます。そのうち陸軍は八千百人、海軍は約一万三百人、そのうちにマリーンも含んでおります。空軍は約一万八千人でございます。
  130. 曾禰益

    ○曽祢委員 私の得ている数字は少し古かったのですが、三万四千七百人、これは大体いまおっしゃったような程度のあれでありまして、陸軍といっても補給部隊ですね。実際上日本防衛と極東の防衛に役立っているかと思われるのは、横田のF105の三スコードロン、三沢のF100の二スコードロン、そのほかに二ないし三の偵察機のスコードロン、これだけじゃないですか。これだけですよ。あとは、それは訓練のために厚木や岩国には来ているでしょう。あとのいろいろな基地とかございますけれども、これはお互いに承知のように、極東全体のためにアメリカが通信施設や何か、非常に重要なものを持っているし、またアメリカが横須賀、佐世保の軍港を補給基地として、あるいは修理基地として使うことは、これは絶対欠くべからざる要素かもしれません。しかし、いわゆる戦闘的な軍隊としての、日本を守るためにあるというものは、これは非常に少ないもの、しかも、それはだんだん減りつつある。現実はそうなんですね。ですから、たいへん失礼な言い方だけれども、そういう問題のすりかえの議論で、日本はアメリカに守ってもらう以上は、日本を守るためにも必要な軍隊はいてもらうんだというのは、これは事実じゃないのですよ。そういううその議論では弱いんです、私に言わせれば。どうしても、もっとまじめな議論をしていかなければいけないのではないか。そこで私どもが言っているのは、やはり有事駐留じゃないのですよ。常時駐留なき形の、新しい安全保障の約束にしたらどうだ、つまり、駐留なき安全保障の条約を提唱したい。駐留軍がなくなれば、いまの条約でもいいじゃないか、――そうじゃない、たてまえが違うんだから。ああいう、占領時代からだんだんにオタマジャクシがカエルになったようなものでなくて、ほんとうにここで、二十二年たったんだから、もう一ぺん、お互いに頭を整理して――日本の憲法の特殊性がありますから、日本はむろん外国に出かけて行って防衛の協力はしません。日本の防衛をやることは、アメリカが日本を愛するからでなくて、アメリカが絶対に必要だと思うから、私は十分にその対等関係は成り立つ、こういうふうに考えて――一体、国防省みたいな、言うならば純粋に軍事的な御都合論からいえば、日本防衛のためには必要でないことは知っているんですよ。だけれども、極東に対する展開のステップストーン、踏み石として、現在のままのほうが楽なんだから、都合がいいんだから、なるべくこのままでいきたい。こういうのはわかる。しかし、その議論でいくと、政治的なポイントを失うんではないか。これはアメリカのことですけれども、いわゆる国務省的見解というものがあっていいんじゃないかと思うんですね。日本の心、国民の心を抑えないで、基地だといって押しつけておいて、いざ、ほんとうに大局的な、大きな紛争が起こったときに、その基地を含めて、日本との関係がまずくいくことは、これはアメリカの好むところじゃない。したがって、私は、有事のときだけ駐留する、だから常時要らぬというんだ。駐留なき形の、普通の形の安全保障の約束に変えたほうがベターではないか、政治的に、より安定した基礎に日米の必要なる協力関係というものを置きかえたほうがいい、こういう意味から言っているのです。(「一歩前進だ」と呼び、その他発言する者あり)盛んに隣からも応援があるようで、たいへんうれしいんですけれども、少なくともそういうことをやって――あまりにも安保破棄論と安保固定論とで対立して、一番因るのは日本国民ですよ。(「そうなんだ」と呼び、その他発言する者あり)だんだんギャラリーのほうがにぎやかになってきましたけれども、ほんとうに駐留が事実なくなればいいのではなくて、これは条約のたてまえ――条約のたてまえということは、やはり国民の覚悟の問題ですよ。両国の協力の基本ですよ。そういうところに不平等な影を残しておくことは、長く見て得策じゃない。せっかくあなたのおにいさんがおやりになったことだけれども、私はあれは失敗だと思う、一九五〇の形だけの安保。国内であれだけの騒動を起こす。そうでなくて、一九七〇年を迎えるための衆議院ができている。その前に解散があるかどうか知りませんが、当面は小康を得ているようです。おそらくそんなに長く持たないと思うけれども、理屈からいえば、この衆議院は国民に対して一九七〇年まで責任があるのです。いまからこういう問題を真剣に考えるのは当然じゃありませんか。自民党の従来の考えは、アメリカにいてもらうのが安全だ、その考えもあるでしょう。しかし、もう少し広い見地に立って、こんな重大な問題で少なくとも野党第一党との間に全然対話ができないより、半畳にせよ、一歩前進だと言ってくれるのがいるんだ。そのくらいのことを真剣に努力しないで、総理大臣の任務は私はつとまらないと思う。したがって、この日米協力を、そういう意味の永続的な基礎に置く。このためにもっと真剣にお考えになって、そう簡単に否定したり、あるいはただもう拱手傍観で研究中、研究中と言ったり、自民党の考えはこれだからといって一歩も変えない、そういうかたくなな態度をとるべきじゃない。総理のお考えをもう一回伺いたいと思います。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話で、曽祢君のお考えは有事駐留という考え方じゃなくて、駐留なき日米安全保障体制だ、こう言われるようでございます。この主張はよく私も理解いたしたのであります。私は必ずしも賛成はいたしません。いまの状態で、日米安全保障体制を堅持するのがいいと思っております。御指摘にもなりましたように、駐留しておる兵はどんどん数が減っております。この事態自身が、それは必要のないものは自衛隊にだんだん置きかわりつつあることも、これも御承知だと思います。私は、この状態で、この点だけに特に議論を集中してとやかく言うことはあまり感心しないのです。いまの状態が適当だと、かように私は考えております。
  132. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、そういう意味で、今日すぐに一番いいこの案に賛成できないのは、これは頭が悪いからしようがないと思いますけれども、しかし、これは真剣にナショナル・コンセンサスを求める努力の一環として――私ども考えだけが、まるで天から降ってきたような、一番ベストの完備したものじゃありません。安全保障なんというものは、完備したものなんかありませんよ。しかし、国民がほんとうにこれならばといって、国論を分裂させないような形を真剣に努力し、模索するのが、私は政治の要諦だと思う。その意味で、もっと真剣にお考えになって、少なくとも右寄りの長期固定化論というようなことを抑えて、そうしてナショナル・コンセンサスを求める、その一環として、この問題は長くこれからやりますから、きょうはまずファーストラウンドですから――幾らでもやります。執拗なくらい国民のためにやります。日本のためにやりますが、もっとお考えを強く要請しておきまして、最後に第三次防について、きわめて時間は短かいけれども、簡単に触れたいと思います。  第三次防については同僚永末委員、並びに実は時局的な問題である沖繩についても同様に永末委員にこの議論の展開をお願いしますが、安保条約に触れた、この前段の情勢が変わったんだという点からいって、やはりこの第三次防のきまり方、あるいはきまった内容の重要点について、どうもわれわれは納得できない。その納得できないのは、これは社会党さんとその点は残念ながら迷うのですけれども、自衛力は全部違憲だ、憲法違反だというたてまえとか、あるいは自衛隊を全部解散すればいいという考えではございません。しかし、異なった国際環境と背景において、やはり異なった考えに立った、もっとまじめな施策がなければいかぬのではないか。首相はこの二兆三千四百億円プラスマイナス二百五十億というような数字上の政治的裁断をされた。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 これはきのう石橋君も言われたように、こんなことは総理の政治的裁断の問題ではありませんよ、そんな計数の問題で。しかも、上下二百五十億という大きなあれをつけておくのは裁断にならぬです。裁断というものはどんぴしゃりだ。そんな、失礼ですけれども、低い次元のことを国民総理に求めているのじゃないと私は思うのです。総理は、おかしなことには、一方においてはこの第三次防をおきめになっており、他方においては、新聞の伝うるところであるからほんとうであるかどうか、いまお答え願いたいのですけれども、国防会議で、中共の核開発に対する日本の対応策をできるだけ考えていくように指示された。これはどういうことなんですか。これは第三次防じゃノータッチだから、そのあとのこととして中共の核開発に対する日本の対応策を考えろと言ったのか。第三次防ではきめておって、それじゃ、これじゃほとんど中共の核開発に対する日本の対応策になっていないと私は思うのです。だから、第三次防をそういうものにしろというのじゃないですよ。言っていることが二途に出ているじゃないか。第三次防は、従来の路線に従った、言うならば官僚の作文で、いままでのやつに数字を、陸は十八万にするとか、ただ伸ばしたような、あめ細工みたいなものをつくっておいて、そして別の方向では中共の核開発に対する日本の対応策、これは非常に重要な問題であるけれども、どういう意味なんですか。国防上どういうふうに具現するか。安保にいくというなら、これはいい悪いは別として、話はわかる。国防会議でこの第三次防をきめておきながら、中共の核対策をしろ、金は出してやらないけれども別に考えろというのですか。どういうことなんですか。はっきりしてください。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国防会議で中共の核開発に対応する検討をしろ、そんなこと言った覚えはございません。はっきり申し上げておきます。
  134. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは具体的に新聞の記事がありますから、あとで――これの関係は留保しておきます。確かにそういうことが新聞に伝えられている。新聞はそうでたらめなことを書かないと私は思うので、いまの御答弁には満足いたしません。これは留保して、直ちに理事会において御検討のしに質問の権利を留保しておきます。  第三次防は、いま申し上げたように、米ソの和解、中共の孤立化と核武装、こういったような激変があったんですね。ところが、どうもできている第三次防は、その激変に対応してつくられていると思えない。言うならば、かつての池田・ロバートソン会談の基礎の上に、三十二万五千は現実じゃないから十八万の陸兵をつくれ、こういうことのようです。当時は確かに、主としてソ連からの脅威ということを――仮想敵国をつくらぬとかなんとかいうけれども、現実には上陸能力あるいは落下傘部隊を派遣する能力のある空軍、海軍を持っているソ連方面からの上陸攻撃ということを予想してつくったんだろうと思う。しかし現実には、いまはソ連からの攻撃なんかということは、政治的にありそうもない。問題は、中共の問題を中心とするこの国際関係。したがって、外交が必要であったり、日米安保が必要であるけれども、それだけの激変があるのに、どうもいままでの考えと同じような十八万の陸兵だ、そういうことじゃおかしいんじゃないか。海軍にしても、ほんとうにソ連の――海軍言ったらしかられるかもしれない。海上自衛隊と言いかえますが、海上自衛隊にしても、ソ連の潜水艦全体に対抗して日本の補給線を守るというのは、これは絶対ないことでしょう。それだったら、中共の原子力潜水艦、あるかないかは別として、中共の潜水艦というものを一応計算に入れての計算として第三次防をつくっているのか、ここら辺の要点というものを国民に明らかにしなければ、ただ数字だけの問題じゃ済まないと思う。そういう点についてどれほどの考慮を加えられたのか、総理からひとつ御説明を願いたい。基本的なことですから、総理から御説明を願いたい。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第三次防、これは申すまでもなく、わが国の国防に関する基本方針、これは三十三年でしたか、つくったものがございますね。これに基づいて第二次防衛計画ができ、それに引き続いての第三次防衛計画でございます。したがいまして、国防に関する基本方針、これより以上の変わったものではございません。しばしば申し上げますように、通常兵器による局地戦、これを抑止する力、これを今回第三次防でも計画をしたのであります。しかも、それをわが国の国力、国情に応じて整備しよう、こういうのでありまして、いま言われますように外はどんどん変わってきておりましても、わが国の憲法はありますし、また、私どもの国防に関する基本方針、それを変えたような考えはございません。そこに、先ほどのような中共が核を開発している、だからそれに対応する考え方を練れとか、かようなことを申し上げるはずはございませんので、先ほどきっぱり申し上げましたが、そこらに誤解のないようにお願いしておきます。
  136. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、中共の核開発に対してわれわれはどうするか。対応策ということを、直ちにわが国の防衛力としてみずから持つという意味でなくて、対応策を考えない政治なんということはないと思うのですよ。考えるから外交もあろうし、日米間の協力もあろうし、核のいわゆる拡散防止なり、核兵器禁止運動もあろうし……。しかし問題は、どうも陸兵十八万という点にあまりにこだわり過ぎる。むろんこれは有事の際に、徴兵をしいておるような国と違いますから、やはりある程度の陸上自衛隊兵力というものが要るだろうということはわかります。しかし、従来のなにと全然変わってないじゃないですか。大陸からの現実の浸透は別として、そういったような上陸作戦的なもの等も考える必要がある。国民の税金を使って最も有効な最小限度の自衛力を持つという観点からいって、いままでの路線の延長だけでいいんじゃなくて、新たなる考慮がなされてしかるべきではないか。あまりにも月並みに過ぎる。あめ細工じゃないかという感じがする。そこで、私は中共の核武装に対する対応策を国防会議考えろと言ったことに反対しているのじゃないのです。こんなこと、お考えになっている総理大臣だと思うけれども、ただ、第三次防とは別に、そういうことを言ったと伝えられたから、それじゃおかしいじゃないか。第三次防のときにそれを考えつつ、なおかつ日本の自衛力としてはこんなようなものだというふうに判断をされたのでなければおかしいということを言ったわけであります。  そこで、最後に、ちょうど時間が参りましたからこれだけを伺いますが、中共が非脆弱のいわゆるICBM、大陸間弾道弾ですね、これを少数ながら配備する。これは大体一九七五年度代だろうといわれております。そういう場合にわれわれはどう考えるか。安全保障条約はある。しかし、安全保障条約はあるけれどもという議論からいえば、だったら、なぜ小兵が核武装をするんだ。中ソ友好同盟条約がある、NATOがあるにかかわらず、フランスはみずからの核武装に踏み切った、そういう問題があるわけですね。当面中国がどうあれしても、アメリカをほんとうに脅かすほどの非脆弱性の大陸間弾道弾を一九七五年度台にすぐ持てるとは思えぬ。当面の問題でないにせよ、やはりわれわれの国防を考えたときに、その点に対してはどういうふうに基本的にお考えになっておるのか。安保との関連もありまするから、この重要な一点についての方向を伺って、私は自分の質問を終わりたいと思います。とにかく、一応そのお考えを伺ってから、あるいはもう一ぺん質問するかもしれません。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の基本的な態度は、自由を守り平和に徹する、こういう国の基本方針をきめております。しかも、またわが国の憲法、これはもうはっきり国際紛争を武力によらないといいますか、武力解決をしない、こういう平和の国家として行き方をはっきりきめておるわけです。これはもう一億国民に確約した、かように申してもいいことでございます。そのもとにおいてこの国の安全を確保する、これが私に課せられた責任であります。そういう意味で、国民の協力を得てただいまの自衛隊、これを持っておりますが、同時にまた、日米安全保障条約、そのもとにおいてわが国の安全を確保する、これが私の考えでもあるし、またわが国の考え方でもある、かように確信をしております。
  138. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう少し具体的に……。
  139. 植木庚子郎

    ○植木委員長 曽祢君に申し上げます。時間は過ぎておりますから、簡単にお願いします。
  140. 曾禰益

    ○曽祢委員 もうこれだけです。いまのをもう少し……。七五年度台において中共はいわゆる非脆弱性ICBMを持つだろう、これは大体世界が認めておりますね。その場合の日本の安全保障あるいは防衛の基本について、現時点においてではあるけれども、そういう長期的なプランの上に立った考えというものがなければならぬ、それはどういうふうにお考えかということを聞きたい。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現在ソ連も持っておりますし、別に中共が持ったからといって、いまの日本の置かれた状態は変わっておりません。私が先ほど来申しておるのは、基本的なわが国の態度を申しておる。外国の、四囲の情勢の変わることによりまして、もちろん私ども考えなければなりませんが、しかし、私どもの行く方向はもうはっきりしているのですから、それを申し上げたのでございます。
  142. 曾禰益

    ○曽祢委員 言いかえれば、日米安全保障条約にたよって、抑止力をたよっていくこと、と同時に、自衛力を持っていく、こういうことですか。その点をはっきり言ってください。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この自衛力、これはもう憲法の許しておる、その範囲において自衛隊、自衛力を持つわけです。これはもう国防の基本的なものでもあります。その足らない点が日米安全保障条約によって補われておる、かように御理解をいただきます。
  144. 曾禰益

    ○曽祢委員 質問を終わります。
  145. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて曽祢君の質疑は終了しました。  明二十七日からは、昭和四十二年度予算並びに昭和四十二年度暫定予算を一括して審査を進めることにいたしますから、あらかじめ御了承願います。      ――――◇―――――
  146. 植木庚子郎

    ○植木委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十七日午後、農林中央金庫理事長を参考人として出席を求めたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。  次会は明二十七日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十四分散会