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1967-03-23 第55回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十三日(木曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 中澤 茂一君    理事 小平  忠君 理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    池田正之輔君       北澤 直吉君    鯨岡 兵輔君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       登坂重次郎君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西岡 武夫君       野田 卯一君    野原 正勝君       福田  一君    藤波 孝生君       古井 喜實君    保利  茂君       松浦周太郎君    松野 頼三君       渡辺 栄一君    猪俣 浩三君       石橋 政嗣君    大原  亨君       角屋堅次郎君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    高田 富之君       芳賀  貢君    畑   和君       八木  昇君    山中 吾郎君       春日 一幸君    永末 英一君       広沢 直樹君    矢野 絢也君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         内閣総理大臣官         房臨時在外財産         問題調査室長  栗山 廉平君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         法務省民事局長 新谷 正夫君         外務政務次官  田中 榮一君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省証券局長 加治木俊道君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         厚生省年金局長 伊部 英男君         厚生省援護局長 実本 博次君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農政局長 森本  修君         通商産業省通商         局長      山崎 隆造君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         中小企業庁長官 影山 衛司君         労働省労政局長 松永 正男君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         労働省婦人少年         局長      高橋 展子君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省選挙局長 降矢 敬義君         自治省税務局長 松島 五郎君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月二十三日  委員荒木萬壽夫君、江崎真澄君、川崎秀二君、  重政誠之君及び竹本孫一辞任につき、その補  欠として西岡武夫君、登坂重次郎君、鯨岡兵輔  君、藤波孝生君及び永末英一君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として荒  木萬壽夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。春日一幸君。
  3. 春日一幸

    春日委員 私は、民社党を代表いたしまして、主として内政問題、なかんずく質問を経済問題に集約いたしまして、当面する重要なる諸点について、政府所見をお伺いいたしたいと思います。  まず、冒頭に政治姿勢の問題、同時に共和製糖事件に触れまして、政府所見、わけて内閣総理大臣の所信のほどを明らかにいたされたいと思います。  昨年の秋、田中彰治君の事件を発端といたしまして、わが国政界には次々と政治悪が露呈いたしてまいりました。かくて、国会国民信頼を失い、その権威を著しく失墜いたしました。かくて、世論のおもむくところ、われわれは出直し決意のもとに、あの一月の総選挙に身をさらしたものでございました。しかしながら、あの総選挙によりましては、必ずしも黒い霧は粛正されたと思えないで、かくて私どもは、問題を内包したままこの新しい国会に立ち臨んでおるのであります。かくて、あの共和製糖事件関係をいたしまして、多数の同僚議員がなお検察当局取り調べを受けておるということは、まことに重視せなければ相ならぬ事柄でございます。  これらの諸問題について、総理は先般来国会答弁におかれて、正すものは正す、厳然としてえりを正して事に当たると述べられておるのでありまするが、総理は第一党の総裁として、わけて、あの共和製糖事件中心人物と目される人が、貴党の所属の議員であられまするだけに、責任はひとしおに痛感されておるところであろうと思うのでございます。したがいまして、共和製糖事件においては、少なくともこの疑惑の焦点にあられる重政議員に対しましては、やはり第一党の責任を明確にいたされる必要があろうと思うのでございます。すなわち、統制上の規律、これを国民の前に明らかにされる必要があると思うのであります。現に社会党におかれましては、相澤参議院議員に対して、党籍除名処分が行なわれましたことにあわせ照らしまして、この際自由民主党におかれましても、この問題について厳然たるところがなければ相ならぬと思うのでございます。すなわち、この際国民の前に、政府党として最高責任をになわれる自由民主党総裁は、この重政議員にまつわる国民疑惑、これをどのようにして明らかにされんとする御決意であるのか、その具体的な御方針について、この際お述べをいただきたいと思うのであります。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  私は、政治道義を確立することが政治遂行の基盤だと、かように思っております。その意味におきまして、最近の不祥事件、これは国民信頼を失うものではないかと、こういう点について深く私どもは反省し、自粛し、みずからをひとつ責め、そして国民からそういう非難を受けるようなことのないように、また国民に対する責任を十分果たしていく、こういう心がけで今後とも取り組んでまいるつもりでございます。  ただいまのお話にありましたように、さきの総選挙によりまして出直しの結果をした、しかしながらこれで済んだのではない、それはそのとおりであります。私は、絶えずそういう国民に対する責任を各政治家が果たしていくということでなければならない。各政党はもちろんのことであります。そういう意味において、他を責むることもこれは当然でありますが、また、みずから姿勢を正すことが必要だと思います。私、政府におきましては、その意味で正すべきは正す、問題に対して国民の目をおおうようなことはいたしませんと、こういうことを実は申してまいりました。ただいまお話しになりました共和製糖事件そのものにつきましても、ただいま捜査検察当局によって行なわれております。また全貌というものが明らかになっておりません。そういう際でございますから、個々の代議士の責任を云々するのは、その時期が早いのではないかと、私はかように思います。問題は、やはり国民から申せば、すべての政治家国民に対する責任を果たしてくれているかどうか、ここに一番の関係があるのでございます。私は、そういう意味でみずからの責任を果たしていく、この決意でただいま取り組んでおります。また、ただいまお話がありましたように、総理自身がその最高責任者ではないか、私は確かにそういう意味では国民に対して全責任を負うべきその立場にございます。与党たると野党たるを問わず、私が全責任を負うべき筋だと思います。  私は、この際皆さん方にお願いするのは、私自身もさような意味姿勢を正してまいりますから、どうか政治家各人がお互いに国民に対する責任を果たすという積極的な態度がほしいと思いますし、そこらにおのずから問題を解決する糸口が見出されるんじゃないかと、かように私は思っております。
  5. 春日一幸

    春日委員 私は、ただいま総理大臣に対して、政治家心がまえ一般基準をお伺いしたわけではないのであります。すなわち、天下公党として、国民の前に、この場合いかなる実行行為によってそのえりを正しくされるのであるか、このことをお伺いいたしておるのであります。各党ともそれぞれ公党責任において、党に責任を負うてまいることは、これ当然のことでございまして、さればこそ、社会党におかれましては、相澤君に対して厳粛なる除名処分をなされておるのでございます。社会党といえども、本日の段階においては、いまだ相澤君に対する検察当局処分は決定されてはいないのでございます。けれども国民に対してそのような大いなる疑惑を与えたことに対する公党としての政治責任、すなわち、そのことを痛感されてこのような厳然たる処置に出られたものと拝察をいたしておるのでございます。  このようなとき、あわせ照らし考えて、少なくとも第一党として、特に政府党たる自由民主党が、——共和製糖事件中枢人物が、まことに失礼な言い方ではありまするけれども重政議員であられるということは、天下衆目の見るところ一致している。この問題について、何ら自由民主党厳然たる党内統制処置をとられないということは、まことに異様なことに存じます。もとより私は、これは他党の内政に立ち入ったまことに失礼なことであるということについては自覚をいたしておりまするけれども、しかしながら、いま当面しておりまするわれわれ国会議員共通の責務というものは、すなわち黒い霧を晴らすことである、そうしてまた、国会権威を、共通使命として最もすみやかに回復することにあると思うのでございます。こういう意味で、自民党の中においてそのような問題の渦中にある人が、いまだ最終的刑事処分が決定されないからといって、何らの措置もとられていないということ、しこうして総理は、国会において正すべきものは正して、厳然えりを正していく、こう申されておるにもかかわらず、何らなすところがないのであります。質問をすれば、いまそのような政治家心がまえ一般基準を、あたかも精神訓話のごとくに述べられて、そうして問題のほこ先をかわそうとされておるのである。私は、総理大臣として適当な態度ではないと思う。この際、重政議員除名されるべきであると思うが、いかがでありますか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただ単に訓話を申したわけではございません。正すべきは正すということで、ただいま検察当局がせっかく捜査している、そういう際でございますから、その結果を待とうじゃないか、こういうことを申しておるのであります。また、自由民主党におきましては、さき田中彰治君につきましてそれぞれの処置をとっております。私は、自由民主党が党紀の粛正について厳然たる態度をとっておること、これはもう別にとやかくいわれる筋のものとは思っておりません。したがいまして、私自身総裁として、自由民主党のことは私が責任を持って処理してまいります。ただいま春日君からも、内政干渉めいたことは言わない、こういうお話でございますから、これは自由民主党におまかせをいただきたい、かように思いますし、そうしてまた、ただいま申しますように、どこまでも正すべきは正す、この態度でございますので、検察当局がただいま捜査を続行しておる、このことを十分お考えいただきたいと思います。
  7. 春日一幸

    春日委員 私も、みずから申し述べておりまするとおり、このような問題については、党人といたしまして、まことに他党の人事、統制に立ち入った非礼の言動である、このことについては深く自覚をいたしてはおるのでありまするが、しかしながら、私のような政党人が、かつはまた大常識家が、あえてその非礼を顧みず、このような総理決意を促さざるを得ないというこの理由は何であるか、よくひとつお考えを願いたいと思うのでございます。  すなわち、あの解放は黒い霧を粛正するための解散であった。あのように国民信頼を失った国権最高機関たる国会が、昨年の秋以来全くその機能を失って、上げ下げならぬ状態になってしまった。だから、あのような解散によって、われわれは出直し国会として、多くの困難を耐え忍んでここに出直してまいったものでございます。こういうときに、総理大臣たる者、すなわち政党総裁たる者、問題の渦中中枢にある人物に対して、党内統制を何ら行なわないで、ただ口に、正すべきものは正すとか、政治えりを正すとか、そのようなことを申されておっても、これはまことに陳腐な口頭禅にしかすぎないものである。何ら国民に対して説得力を持たず、感銘を与えないのである。最もすみやかに国会は粛正されなければならぬが、第一党の総裁がそのような態度であっては、すみやかに粛正しなければならぬというその至上命令を、われわれ国会議員共通使命として果たすことができないので、したがって、われわれはこのことを傍観するに忍びずとして、あえて非礼をおかしてこの質問を行なっておるのでございます。重ねて御決意のほどを伺いたい。同様の立場にありながら、社会党においては、相澤君に除名の断をとっておるではありませんか。何事かがなされなければならぬと思うが、重政君については、最終の時点まで何事もなさらぬのでございますか。すなわち、刑事的にその責任が立証されない限り、政治的責任というものはとられないのでありますか。党員に対しても、その規律を求められないのでありますか。問題は、すべて刑事責任によって立証を待つまで、何といわれようとも、何をやろうとも、無罪であればそれでよろしい、こういう態度であられまするか。また、そのような態度であって、はたして国会を粛正することができるのか、政治姿勢を正すことができるのか。御決意のほどを承りたい。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねは、私は、国会一の常識家春日君としては意外に思うのであります。私は先ほど来、ことば表現等については気をつけておりますが、はっきり私の決意のあることを申しました。正すべきは正す、そうして、それから国民の目をおおうようなことはいたしませんということは、はっきり申しております。これが今日、私どものとるべき態度ではないかと思います。いまの憲法は、一体どうなっておりますか。これは、最終判決が下るまでは白だというのが、ただいまの憲法のたてまえではございませんか。おそらく最大最高常識家である春日君は、この点はよく御承知だと思います。私は、社会党がどういうような態度で、どういうような決心をなさったか、そのことは知りません。その道義的責任というものも、それは、やはりどこかに一つのみずからが正すべき責任を感じて、初めて道義的責任があるのではございませんか。他からしいるような道義的責任というものはないはずでございます。ただいま重政君と、具体的に名前を言われまして、そしてこれを除名しろというお話でございます。しかし、これはただいま今日検察当局において調べられたところ、それは一体どういうことになっておりますか。私は、いま言われるように、共和製糖事件のこれは中心人物だ、こう言って、その憎しみから道義的責任をとれと言われるこのことは、常識家であり、また法律家である春日君のことばとしては、私どうしても解せないのでございます。さような意味において、これはさらに私どもは慎重にこれに対する処置を考えるべきでございます。私は、自由民主党統制云々の問題ではないと思います。これはもう基本的な人権の問題でございます。もしもそういう点について、それぞれが自分たちで考えたその前提のもとに道義的責任をとれといって、そしてそれをしいるようなことになったら、それこそたいへんだと思います。私どもは、今日やはり法秩序は守らなければならない、かように思います。それこそが皆さん方の言われる議会人常識ではないか、私はかように思います。
  9. 春日一幸

    春日委員 申し上げますが、私は重政議員に対しては、何ら憎しみも感じておりませんし、また何ら私怨、含むところはございません。ただ、私がここで総理に申し述べたいことは、政治家には、憲法によって一般国民に保障されております基本的人権のほかに、政治家としてのモラルの別個の責任というものが課せられておると思うのでございます。そのようなモラル立場政治家政治家的責任というもの、この立場において問題を論じておるのでございますから、この点についても十分御理解があって御答弁を願いたいと思う。もとより、問題の中枢的人物というものが重政君であるかどうか、検察当局でなければ知る由もなく、また、われわれといえどもおぼろに知り得ておりますことは、この共和製糖事件の中核は、国会議員にあらずして、そのような不正融資を行なった当事者相互間であるということは知っておるけれども、そのことに介在をして、収賄、涜職、国会議員たるの品位を汚した、この政治責任中枢的人物重政議員であると、かく小生は申しておる。だから、そういう意味において、私はここに総理厳然たるところなくんば、百万言の抽象論議をなされても、この国会信頼国民から受けておる疑惑を晴らすことはできないのではないか。疑惑を晴らすにあらざれば、その信頼を取り戻すことはできないではないか。国権最高機関たる国会国民信頼なく、そしてその権威がなければ、その機能を果たすことができない。この問題を重視して、厳然たる能度をとられてしかるべし、このことを申し上げておるのでありますから、なおよく私の申し上げた真意を十分に含味あって、善処されんことを強く望みます。  続いて、私は法務大臣にお伺いをいたすのでありますが、この際関連をいたしまして法務大臣より、共和製糖事件全貌について、できるだけこれを集約されて、簡潔に御報告を願いたいと思います。共和製糖事件全貌は一体どのようなものであるのか、この機会にその全貌を明らかにいたされたいと思います。
  10. 田中伊三次

    田中国務大臣 全貌は、一部明らかとなり、一部は明らかとなっておらない点がございますが、とにかくせっかくの御質疑でありますから、捜査に差しさわりがないと私が信ずる限度において、ありのままに御報告を申し上げてみたいと思います。  昨年の十一月九日、社会党の十一議員より、共和製糖グループ代表者と見られる菅貞人を相手といたしまして、私印偽造——私印というのは私の判こという意味でございます。公印に対する私印私印偽造行使、私文書偽造行使罪の罪名のもとに告発が出されたのであります。まことに重大な告発であると捜査当局は存じまして、厳重な態度をもって直ちに捜査に着手をいたしました。その間、私は法務大臣にその後就任をしたわけでございますが、私が就任をいたしましてたしか五日目であると存じますから、十二月の八日であると存じます。十二月の八日に至りまして、検察職員二百名を動員いたしまして、全国二十七カ所にわたって強制捜索、いわゆる令状による家宅捜索を行なったのであります。これによって押収いたしました主として書類、帳簿でございますが、それは二万点、押収いたしましたものは二万点に及んでおります。これを捜索をいたしました結果、ほとんど年末年始、祭日、休日を返上しまして熱心に捜査を続けた模様でございます。その結果、二月八日、菅貞人と六名を逮捕いたしまして、三月一日に、そのうち六名を起訴したわけでございます。さらに、簡潔に申しますが、この十七日には、重政議員の秘書を逮捕すると同時に家宅捜索を行ない、翌十八日には、相澤議員について強制令状による家宅捜索を行なって、その後引き続いて慎重に捜査を継続しておる、これが告発せられてから今日までの段階であります。
  11. 春日一幸

    春日委員 大体わかりました。しかし、私はお願いをいたしておきますが、実は私どもの党は割り当ての時間が少ないので、また、質問の内容もこのぐらい山積いたしております。私も、なるたけ問題を簡潔にしぼって質問いたしますので、御答弁も御協力を願います。  そこで伺いますが、三月二十一日付朝刊有力紙の報道するところによりますると、この事件関連をいたしまして、四十八名の国会議員取り調べを受けたと報道されておりまするが、はたしてそのような事実はあるかどうか、その事実関係をつまびらかにいたされたい。
  12. 田中伊三次

    田中国務大臣 相当数事情聴取を行なった事実がございます。その数及びその人名については、捜査の機密に属しますので、この段階においては申し上げかねます。
  13. 春日一幸

    春日委員 私は人名なんか聞いてはいない。私は、四十八名の議員取り調べが行なわれたと有力紙が報道されておるが、三月の二十日までにそのような事実があったかどうか、このことを伺っておるのです。あったならばあった、ないならばない、四十八名でないならば四十八名でない、その点を明確に御答弁を願いたい。
  14. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほど申し上げますように、相当数事情聴取は行ないましたが、四十八名ではございません。
  15. 春日一幸

    春日委員 四十八名でなくんば何名か、御答弁を願いたい。
  16. 田中伊三次

    田中国務大臣 相当数でございます。
  17. 春日一幸

    春日委員 私は、わずか七百三十六名しかない国会議員の中で、本件に関連して検察当局取り調べを受けた者は何名かと伺っておるのである。相当数とは何事か。三十名なら三十名、五十名なら五十名、二十八名なら二十八名、事実に基づいてその数を伺っておるのであるから、なぜ答弁ができないか。氏名を伺っておるわけではない。事件の内容を伺っておるわけではない。事実関係を伺っておるのである。何名が取り調べを受けたのであるか。わずか七百三十六名の国会議員の中で何名が取り調べを受けたのか。このくらいのことが言えないはずはない。言えないとすれば、刑事訴訟法中の第何条に抵触あってそのことが言えないのか。
  18. 田中伊三次

    田中国務大臣 相当数以上のことを申し上げますことは、捜査の機密に触れることになるので申し上げることはできないのであります。
  19. 春日一幸

    春日委員 数が捜査の機密に触れると述べられたが、いかなる意味合いにおいてその捜査の機密に触れるのであるか、これを明らかにいたされたい。
  20. 田中伊三次

    田中国務大臣 数に関する問題は非常に重大な問題でございます。国会議員の数何名を取り調べたということほど、捜査の機密に重要な機密はないのであります。
  21. 春日一幸

    春日委員 そんなとぼけた無責任答弁というものがありますか。私どもは、われわれ国会議員に課せられておる共通使命、お互いに疑惑を晴らそうではないか、できる限り問題をほぐしていこうではないか、国民の前にその真相を明らかにしていこうではないか、正すものは正す、処断をすべきものは処断をする、このためにわれわれは共通責任を持ち、あなたは法務大臣として、所轄大臣としてその責任の当事者であられる。協力をされて、三十名程度であったとか二十名であったとか、そのことを明らかにされてはどうですか。そうして四十八名、それは違っておるなら違っておると——いま違っておると言われたけれども、違っておる以上は何名か、そんなことが言えないはずはないではないか。四十八名でないという意思表示をされた以上は、さらに具体的な数字について、法務大臣としてそのことに言及されることが、何をか捜査に妨げを来たすか。納得のできないような答弁でなくして——あなたも衆議院の副議長までされて、古い代議士として、代議士の心境もよく御承知のはずである。そのような的をはぐらかしたような無責任答弁で不肖春日一幸が退くと思われるか。
  22. 田中伊三次

    田中国務大臣 それでは、春日君の御趣旨もよくわかりましたので、数十名に及んで事情聴取を行なった事実があると、こう御承知おきを願いたい。
  23. 春日一幸

    春日委員 いまその氏名を明らかにいたされたい。新聞紙上にはすでに数名の諸君が明らかにされておる。ただ私がここに総理以下閣僚諸君並びに同僚議員に申し上げたいことは、ここに数十名の議員取り調べを受けたと法務大臣が言明されたからには、内閣総理大臣佐藤榮作君も、不肖春日一幸も、その四十八名の中の一人であるのか、あるいは外のものであるのか、この答弁の限界では、これは当事者並びに検察当局以外知る由もない。かくて、すべて、参議院二百五十名、衆議院四百八十六名、合して七百三十六名の議員が、取り調べを受けたかもしれない人物の一人として、漫然たる一個の疑惑の的にさらされておるのである。私は、国会議員というものがあのような激しい選挙戦を戦ってきて、そうしてここへ出直してきた者の自負として、そのような漫然たる疑惑にさらされっぱなしにされておるということは、よくわれわれの自負の耐うるところではないのである。数十名の調査を受けた議員はだれとだれであるか、この機会に明らかにして、何らそのような調査を受けなかった者の立場国民の前に明らかにする必要があると思う。当然のことであります。それは政治道義と申すべきものである。いかがでありますか。
  24. 田中伊三次

    田中国務大臣 春日君の仰せ、私もよくわかるのであります。よくわかるのでありますが、その姓名をここで申し上げる結果の重大なる影響というものも、発言をする者の責任としては、考えるべきものである。事情聴取をいたしました者の中には——春日君、ここが大事でありますが、事情聴取をいたしました者の中には、単なる参考人として事情を聴取したる者あり、また、汚職の疑惑ある者として、それ自体として召喚をいたしまして聴取したる者あり、事情を聴取したる者数十名ということをここに申し上げたのであります。その結果は、何びとが疑惑によって召喚を受け聴取をしたものか、何びとが参考人として事情を単に聞かれたものにすぎないかということの調査がいまだ完結していない。そこで、強制力を用いましてあるいは家宅捜索を行ない、あるいは逮捕をしたという、その強制力を用いて聴取をしたる者、すなわち、疑惑あるものと認めて聴取したる者については、順次、氏名はそのつど発表しておる。今後といえども発表していくものでございます。現段階におきましては、身辺の家宅捜索をいたしました者一名、逮捕いたしました者一名、政界においては、この両君を除きましてはいまだ強制力を用いる疑惑というもののなにが出てこない。したがって、それらの者について姓名を出すことは誤りであります。
  25. 春日一幸

    春日委員 田中法務大臣は、昔から変にがんこな男で、言い出したらなかなか聞かぬから、私も、時間の制約がありますから、質問を先に進めます。  閣僚の中に調査を受けた者があるか、伺います。
  26. 田中伊三次

    田中国務大臣 閣僚の中に調査を受けた者はございません。
  27. 春日一幸

    春日委員 閣僚の中には調査を受けた者がないということを、いまはからずも御答弁に相なった。さすれば、閣僚諸公だけはここで国民の前に疑惑が晴れたわけである。われわれは晴らされていないのである。機会均等を失するではないか。ここの中におる者はどうじゃ。閣僚について言明し、われわれについて言明でき得ないというはずはない。いかがであるか。
  28. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほど申し上げますように、疑惑ありと認められ、したがって調査をいたしました者は、順次、氏名は直ちに発表する考えでございます。
  29. 春日一幸

    春日委員 それでは進めます。  目下捜査中とあるが、捜査の現段階はどのようなものであるか、これまた簡潔に御報告を願いたい。
  30. 田中伊三次

    田中国務大臣 共和製糖グループが各金融機関より金融を受けたる膨大な金額のうち、帳簿を押収いたしまして調査をいたしました結果、使途不明と申しますか、行くえ不明と申しますか、その金額の使途が明らかでないものが、これは申し上げておかなければ晴れないと思いますから申し上げるのでありますが、三億二千五百万円余りございます。そのうち、二万六千点の証拠書類を押収いたしましたものについて精細なる調査をいたしました結果、また本人逮捕、尋問等をいたしました結果、使途が明らかとなりましたものはほぼ二億でございます。三億二千五百万円中の二億円でございます。残余いまだ明確にならないものが、大ざっぱなことばでありますが、一億二、三千万円あると存じます。その一億二、三千万について、目下全力を尽くしてその使途を究明しておる最中でございます。
  31. 春日一幸

    春日委員 この新聞報道によりますと、さらに国会議員中、本件に関連して数名の国会議員が起訴せられることがあり得ると報道されておるのであります。そのような事実関係が進んでおるのか。また、さらに数名の国会議員の起訴があるとすれば、その時期は一体いつごろなのか。一体、こういうような問題でヘビのなま殺しみたいな状態では、国会議員が迷惑千万である。いつごろけじめをつけるのであるか、つけ得る見込みであるのか、この際明らかにされたい。
  32. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説のとおりと存じまして、先ほども申し上げたとおり、年末、年始、祭日を返上して捜査をやっておるようでございます。大体の見込みを申し上げますと、早ければ今月末、おそくとも来月初句には、疑惑ある者は徹底的な処置を講じ、疑惑なき者については、この旨を発表する、明白にいたしたいと存じます。
  33. 春日一幸

    春日委員 相澤君についてはまことに失礼ではあるが、われわれとしては、何か重苦しく頭に雲がのしかかっておるような感じがするので、解決できるものから解決を進めていってもらいたい。  念のために伺っておきますが、相澤君の逮捕はあり得るか、起訴ありとすれば、その時点はいつか、これも明らかにされたい。
  34. 田中伊三次

    田中国務大臣 逮捕の手続は、御承知のとおり、院の許諾を必要といたします。従来の先例から申しますと、院の許諾を受けることなかなか容易でない情勢でございます。それがために証拠調べが要領を得ないような結果になるおそれも、過去の例に徴してありますので、逮捕許諾要求はやらない方針でございます。そして、いわゆる在宅起訴という形式をとりますが、まことに遺憾でありますけれども、本日起訴をする見込みでございます。
  35. 春日一幸

    春日委員 とにもかくにも、以上申し上げましたように、この問題については、国会議員七百三十六名はひとしく迷惑をいたしておるのである。そしてまた、国民の前に、これは昨年以来の懸案として、また、われらに課せられておる共通の至上の命令として、最もすみやかにこの問題の解決がはかられなければならぬのである。ゆえに捜査は最も迅速に進められたい。そうして、申すまでもないことではあるけれども、公正に問題の処理がなされたい。そうして総理の言われるように、正すべきものは正して、そうして新しい出発にわれわれが総エネルギーを結集できる態勢にぜひともひとつ御精進あらんことを強く要望いたしまして、次の質問に入ります。——よろしいですか、この問題は。総理の御決意もしゃんとしておりましょうね。しっかりやってください。  そこで私は経済質問に入りますが、第一点は、何といっても景気見通しについてでございます。  ことしの経済は、経企庁長官が警告されましたように、何といっても設備投資主導型の大型経済になりつつあります。これは最近における生産、出荷の高水準、設備投資の活況、日銀券の増発、銀行貸し出しの増勢、こういうようなあらゆる情勢から、その徴候は明らかでございます。さらに木材、繊維において卸売り物価もじり高の状況にある。ここでいよいよわが国経済は、これは何といっても景気過熱化の徴候、きざしを示し始めておると見るべきである。要するに、民間の需要を中心に総需要が拡大の一途をたどっておる。このような経済の自律的上昇は、この時点において厳に警戒を要するものと考えるが、大蔵大臣並びに経企庁長官の御見解はいかがでありますか。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三月の初めに、私は、経済が過熱を始めたと申したのではございませんので、相当上昇基調が速いので、お互いに気をつけようではないかという意味のことを申しましたわけでございます。この点については春日委員も誤解はしていただいておらないように思いますが、そういうことであるわけでございます。と申しますのは、従来非常に急激な引き締めをいたしまして各方面に迷惑をかけたという経験を私ども何回も持っておりますので、ことに、ちょうど年度が改まりますころには、各企業が明年度の設備投資の相談を金融機関などといたす時期でもございますしいたしますから、そういうときにも、貸すほうにも借りるほうにも政府がそう考えておるということをわかっておいてほしい、こんな気持ちで申しました。  ただいまの見通しといたしましては、過日来何度もここで質疑応答がございますように、私どもとしては、気をつけて事態を見守る必要がある、こういうふうに考えております。
  37. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私も同じでございまして、昭和四十二年度の経済の動向はきわめて基調が強いというふうに考えております。
  38. 春日一幸

    春日委員 経企庁長官が昨年の十二月二十七日に閣議に報告された「昭和四十二年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、ここの中ではこう述べられておる。昭和四十年を通じ停滞状態を続けたわが国経済は、四十年末ごろから立ち直り過程に入り、四十一年に入ってからも順調な上昇過程をたどっておる。その結果、四十一年度の日本経済は、前年度に比してかなりの拡大が見込まれておると述べられておる。それで、事実、四十一年度の経済成長率は、実質で政府の実績見込みが九・三%でございましたけれども、これを突破する勢いを見せておることは、天下周知の事柄である。水田蔵相が、まだやっと回復段階に入ったところだと言われておる景気の現状判断というものは、これは必ずしも正しい見方ではないと思う。いま宮澤さんは、そんな経済が過熱化しておると言った覚えはないと言われておるけれども、私も宮澤さんがそのとおりの表現でこの経済現状を認識されておるとは申してはいない。しかし、昨年の十二月二十七日に閣議で報告されたところによりますると、前年度に比してかなりの拡大が見込まれておるということは、これはもうすでに景気調整というものが終わって、そういう方向に向かっておると言われておる。いま大蔵大臣も経企庁長官も、符節を合わせて、そうたいしたことはないのだと言っておられるけれども、これは明らかに政府の予算案を弁護せんとする政治的発言である。悪質な政治的発言である。その結果、もしもあのような高度成長時代と同じように景気が過熱をしてきたら、御両所の責任というものは非常に重い。だから、いまここで、お互いに与野党がこの貴重な場所で景気論争をするのは、単なる、あげ足をとったり、ことばのやりとりをするというのではなくして、真にわれわれが三十年来の景気の足取りを振り返りみつつ、かつてのあやまちを将来に繰り返すことのあらざるよう、この時点において万全を尽くさねばならぬとして、この論議をお互いに行なっておるのである。だから、そのような政治的発言ということでなくして、やはり一個の国士として、日本経済はいかにあるべきか、そこに思いをいたされて、やはり正しい判断に基づいて公正なる発言をされなければならぬと思う。  大蔵大臣、全然景気は過熱する心配はいまでもないと、なお確信を持たれておるか、あらためて御答弁を願いたい。
  39. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、やはり財政金融対策の運営がうまくいけば、そう過熱させなくてもやっていけるというふうに、いまでも思っております。
  40. 春日一幸

    春日委員 さすが水田さんは良心的であって、仮定のもとに——というのは、財政金融政策がもしそれうまく取り運ぶことができるならば——そんなことはあたりまえのことじゃないですか。うまくいきそうもないから、心配をしてわれわれが論じておる。しかし、まあ問題を先へ進めましょう。  次は公債発行について伺うが、四十一年度から本格的な公債政策が導入された、これがいわゆるフィスカルポリシー。当時福田蔵相は、財政新時代とこれを呼ばれて、公債政策の意義をはなはだしく強調されたのでございました。四十二年度において設備投資を中心に民間需要は拡大の傾向にあるから、総需要を適正水準に維持するためには、政府需要は極力抑制するのが、景気調整的な財政政策のあり方であると思うのです。このような財政の基本的理念については、これは大蔵大臣も御異論がないと思うが、いかがでありますか。
  41. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、社会資本の立ちおくれとか、そういうものがやはり経済の均衡発展を害する要因になっておりますので、昨年の公債発行を機として公共事業費関係の仕事を政府は相当強化したのでございますが、昭和四十二年度は、経済のそういう点を考えまして、できるだけの圧縮をするという方針で、昨年の伸びよりも四%ぐらい伸びを低くして、切り詰められるだけは私どもは切り詰めて需要を抑制したというつもりでございます。
  42. 春日一幸

    春日委員 私は、総理、経企庁長官、大蔵大臣、通産大臣、特に御銘記を願いたいと思いますことは、申し上げるまでもなく、財政の機能には二つあろう。その一つは、景気調整的な機能であり、同時に、公共事業充足強化の機能と、二つあると思う。昨年、福田大蔵大臣は、そのポイントを前者に置かれた。すなわち、財政の機能は景気調整的機能にこの際重点を置かなければならないとして、あのような七千三百億の公債発行、ああいうところを踏み切られてまいったのであります。ところが、ことしになりますると、そのことばをもうほとんどたな上げ、凍結、塩づけされてしまったのか、とんとそういう問題については軽視されて、ことさらに、公共事業だとか社会保障だとか、そういう社会開発的なことを言われておるけれども、もとよりそのことをわれわれは等閑にしろというわけではない。ただ、現段階においては、依然として景気調整的機能というものを重視しつつ、景気の過熱化を抑えていかなければならぬという、これはもう経済のメカニズム、この際そこに重点を置いて調整をはかっていくというのが、私はフィスカルポリシーというものの真骨頂であると思うのです。  そこで伺いまするが、四十二年度において、設備投資を中心に民間需要はいま申し上げたような状態でございまするから、したがって、本年度においては、税の増収が七千五百億円以上見込まれておる。だとすれば、公債政策の使命というものはおおむね終わったと見て見れないことはないではございませんか。去年は、減収を来たすかもしれないと、もう非常に心配されておった。けれども、昨年のその景気刺激政策が功を奏してだんだんと景気は上向いてきて、税の自然増収七千五百億円、こういう形であらわれてきた。だとすれば、公債政策というものの使命はここに若干終わっておる。全部終わったとは言わない。だから、終わっておるとするならば、少なくとも本年度の公債発行額は、昨年度のそれを下回るようにこれを抑えていかれてしかるべきではないかと思う。しかるに政府は、昨年度を上回って八千億というのでありまするから、これでは、私は、初心忘るべからずということがあるけれども、フィスカルポリシーというものが泣く、死んでしまうと思うのです。この点どうでありますか。
  43. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、経済の均衡発展のためには、資金を均衡的に有効的に配分しなければならぬ、そういう要請からこの資金の配分を考えますと、この金額というものは相当大きいものになる。しかし、いま言ったようなフィスカルポリシーの立場から見ますと、これはできるだけ圧縮させなければならぬ。どの辺まで圧縮するか、この度を越すと、これはやはり経済を急速に抑えていくことになって、その効果はまた別の効果を来たす。一番適切な程度はどれくらいかということについては、私どもはほんとうにいろいろ慎重な作業をいたしました。そこで最後の問題は、減税をどれくらいわれわれはするかということでございます。必要な経費はやはり確保しなければならぬ。しかし、減税はどうしても本年度——昨年は大きい幅の減税はしましたが、やはり企業減税が相当大きくなっておりますので、それからくることしの状態から見ますと、国民の所得はふえておりますから、所得税中心の減税がやはり必要である。今度やったように、平年度千三百億円前後の減税はどうしてもやりたいということを考えますと、これによって国債発行の規模がおのずから出てくるということで、私どもは、もう少し実際のところ公債は減らしたいと思いましたが、減税を犠牲にすることはやはりこの際やるべきじゃない。国民の蓄積を公債という形で活用するほうがいい。税の形でこれを取るほうがこの際はぐあいが悪いというふうな判断からきめた規模でございまして、金額は昨年より多くなっているようでございますが、財政の規模から見ましたら、この八千億というものは、公債依存度としては明らかに去年より下がっておるのでございますから、私どもは依存度を下げるというこの一点が守られれば、公債に節度を示したことになるというので、いろいろな観点から最後に確定したのが八千億という数字で、この数字は、そう節度を失った数字じゃないというふうに私どもは考えております。
  44. 春日一幸

    春日委員 何と申されましても、いま申し上げましたように、昨年度のあなた方の施策がとにもかくにも功を奏して景気が立ち直って、税の自然増収七千五百億の形となってあらわれてきた。そうして景気は民間需要を軸にしてだんだんと上昇しつつある。このようなときに、景気調整的財政政策の真骨頂というものは、やはりこれは押えることである。押えなければならないものを、逆にあなた方がこれを刺激されておる。すなわち、これはブレーキを踏まなければならぬところを、あなたはアクセルを踏んだ。その結果どういうことになるか、これは重大なことでございますよ。  だから、私はここで経企庁長官にひとつ伺いますけれども、いままでは、景気の調整は財政金融が一体となってとはいうものの、現実的には、その主役は金融であった。けれども、このフィスカルポリシーを採用されました以上は、やはり財政上の主役というものは、今後は、金融ではなくして財政そのものでなければならぬと思うが、この考え方はいかがでありますか。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに非常にむずかしい問題を先ほどから御提出になっておられると思います。しかし、簡潔にお答えしなければならないと思いますので、できるだけ簡潔に申し上げます。  結局、おっしゃいますように、財政には、景気調整という機能と、ことにわが国のような場合には、社会資本の充実、公共投資をやっていかなければならないという、二つの機能があると思います。過般の国債というものは、そのうちで、景気回復をねらって出されたものであると思いますが、いまの段階になりますと、これはやはり社会資本の充実ということを主としたねらいとしておると思います。そういう観点から、国債の額は、いわゆる建設投資の額に見合った額で押えるということと、それから市中消化をするという、その二つの制約は、そういう意味で私は意味を持っておると思うのでございます。すでに昨年の暮れに四十一年度の国債発行額をある程度大蔵大臣が減らされたということは、今後そういう必要があれば、またそういうことを政府が考え得るのだという一つの手本をお示しになったのではないかと思って私は拝見をしておりますので、もちろん金融にもいろいろ調整の機能を頼まなければなりませんけれども、財政も同じような任務をやはり背負っておる、こう考えております。
  46. 春日一幸

    春日委員 宮澤さんの答弁は、私、昨日からじっと聞いておりますと、あなたの個性が何か失われてしまったような感じがするんです。私は、あなたのことはよくは知らないけれども、参議院に見えたもので……。しかし、そのあなたが入閣されたコースを見ますと、なかなか風格のある人物のごとくにわれわれ印象づけられてきた。大浪人として、まだあなたが丸腰のときから、総理はあなたを嘱望されておった。何かしさいありげな人物のように思われていた。だから、私は厳然としてあなたのポリシーを貫かれるものと思っておったけれども、何でもかんでも大蔵大臣の言うとおりに口調を合わせておられる。これはあなたらしくないではないか。あなたは若いんだし、この間、エコノミストに書かれたあなたの論文も読んだ。あなたは大胆に民社党の外交政策、すなわち、有事駐留の日米安全保障条約の改定、まことにまことに理想的であると述べられておった。去年のお正月の岩佐さんとの対談。だから私は、非常にあなたはピュアな、大胆な個性ある政治家だと思っておったけれども、しかし、きのうからの答弁を聞いておると、何でも水田さんの言いなりほうだい、水田さんのアシスタントみたいな感じがする。これは、あなたの将来のために惜しいことである。もっと厳然として自分の主張を堅持して、いれられずんばすなわち去る、男子はこれだけの気概がなければならぬと思う。私も社会党の中におったけれども、意見がいれられなかったから、すなわち去った。ほんとですよ。  そこで、私は伺うが、問題はこういうことですね。景気の過熱化を金融政策で急激に引き締めるというような過去の轍は、これは再び繰り返すべきではないということ。これは、佐藤総理が第一次佐藤内閣組閣以来、高度成長を排して安定成長へ、これは佐藤内閣の特質ともいうべきポリシーである。なぜかというと、景気が過熱してから金融でぐっと締めていけば、ショックが国民各階層、わけて中小企業に集約されてくる。ものにたとえて言うならば、発病してから治療にかかるようなものですね。発病してから治療にかかるというようなやり方は、現代医学の常識でいうならば、これは下々の下策である。発病したら治療にかからなければならぬけれども、発病するようなおそれあるときは、そのような事態が予見されるときは、事前措置、予防措置、これがとられなければならぬ。その事前的予防措置というものが財政である。その財政は予算編成の時点において適切なる措置がとられなければならぬのである。だから、いま、それをやれと私は言っておる。やらなければならぬと言っておる。景気が過熱したら、金融引き締めをやっていく、それでもやれましょう。けれども、そのことは前内閣がやってきた。池田内閣がやってきた。そして、その結果として、所得格差の断層、中小企業の破産、倒産、物価高、外貨の逆超、さまざまな経済悪を露呈、露出して、かくてはならじと安定成長へと佐藤さんが大胆にその政策大転換をなされたものとわれわれは理解しておる。そこで佐藤総理に伺いたいのであるが、私がいま申したとおりであるのか、それともそのような方針で、さて仕事にかかってみたけれど、やってみると、やはり池田さんのとおりしかやれないのだということであるのか、この点はひとつ総理から責任ある御答弁を願いたいと思う。——よろしいか、問題の核心は、問題が起きてから治療にかかるというのではなくして、事前的、予防的措置、すなわち、いままでは財政と金融一体になって景気調整に当たってきたけれども、フィスカルポリシーにおいては、今後は財政が金融に優先すべきである。そのためには、予算編成の時点において、あらかじめそのことを予見しつつ対策を事前に講ずべきである、こういうことを申し上げておるのであるが、あえてそのことをなさざる理由は何であるか。国民の前に、われわれが納得できるようにひとつ御説明願いたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、経済は生きものであると思います。だから油断してはいけないということを申し、ことに今日のような情勢のもとにおいては、絶えず情勢の判断を誤らないように十分気をつけろ、こういうことを実は申しております。これがただいま言われる事前あるいは予防措置、これに事を欠かさないつもりであります。そういうたてまえから今回の予算の編成、予算の規模等をごらんになると、私が言っておること、よくそのとおりを実際にやっておるということがおわかりだと思います。  私は、昨年の予算編成における論議をいま思い起こしております。昨年皆さん方は、公債発行に踏み切ったら必ずインフレになる、これはたいへんなことだ、物価は必ず上昇する、こういうことを言われました。そうして政府はそのときに、これはそうなるものではございません、この予算をつくれば調整的機能を発揮いたしまして、経済の不況は必ず克服される、こう言って政府はこれにぶっつかっていきました。そうして明らかに現実にこの不況を克服して、今日のような活気のある経済状態をつくったじゃございませんか。それで、その際に政府が最も注意し、気をつけたことは何かというと、これは申すまでもなく、この公債発行の歯どめでございます。一体公債発行はべらぼうに幾らでもできるのか、そんなものではないのだ、ちゃんと歯どめがございます、こういうことを申した。皆さん方からも、公債を発行して不況を克服しようとするその気持ちはわかる、しかしながら、公債を発行する以上、そこに歯どめがなければいけない、こう言って皆さん方も指摘なさった。政府もそれについて、同じく先ほど申しましたように予算の規模、公債発行の規模は経済情勢に対応すること、同時に市中消化、ここに一つの歯どめがございます、こういうことを申してきたのです。これがいわゆるインフレにならない一つの歯どめで、そうしてこれが守られる限りにおいては、いわゆるインフレにはならないのだ。いま、こうして景気がよくなった。皆さん方は、今度は過熱だ、これを非常に心配しておられる。私も絶えずこういうことに気をつけなければならないことだと思います。もしも過熱さすようなことがあったら、これはもう国民、また産業界に対しても申しわけのないことだと思っております。だから、いま春日君の言われるように、やはり予防的措置、これはとらなければならない。公債発行については、それは予防的措置はとってございます。ただいま申すように、その歯どめ論、これは皆さんの言われるとおりを実施しております。そればかりではない、さらに、大蔵大臣が説明しておりますように、公債発行の予算における依存度は昨年よりも小さくなっておる。これは明らかに歯どめ論に忠実にやっておることでございます。しかもその上、私が申し上げますように、経済は生きものだ、これは油断もすきもならないんだ、絶えず注意するんだ、このことを申しておりますので、ただいまの御心配は、全然私は、ないとは申しません。理論的なものから申せば、ただいまのような御心配も必ず出てくると思います。それを政府は全然無視して、そして予算編成をやり、経済の動向につきましても、皆さん方の御注意を聞かないで、好景気、好景気と、こう言って、実は楽観しておるわけじゃございません。絶えず経済の情勢を勘案し、そうして適応、適切な措置をとる、これがいわゆる大蔵大臣あるいは経済企画庁等におきましてそれぞれその時期を失せず判断をしておるのも、こういうためでございます。だから私は、基本的にはものごとが全然反対ではございません。理論的にはお話しのとおりのこともあるわけです。けれども、いまの事態に対してしからばどうするのか、こういいますと、いまの予算編成は適切であり、また、今日の公債発行限度、これはまたたいへんいいものを出しておる、そうして公共投資が行なわれる、こういうことだ、かように私は考えております。
  48. 春日一幸

    春日委員 総理は、昨年公債発行がインフレへの道を開くものであるとして野党諸君は反対したと言われておりますが、われわれは、公債の発行というものは、発行のしかたによっては、必ずしもこれは反対するものではない。これはもう昨年もはっきりと論じました。建設的な性格を有するものについては、これはむしろ建設公債によるべきであると、こういう主張をやってまいりました。ただ、総理に御反省を願いたいことは、にもかかわらず、公債を発行したのだが現実にインフレは起きていないではないかと言われておりますけれども、去年のことしなんですね。この間に、とにかく消費物価はあのような状態であるけれども、卸売り物価については、これはむしろハイジャンプしたといってもいいくらいですよ。いままでは一%程度のものが、かれこれ四%近くジャンプしておるのであって、池田さんは、こういう問題について、こういうような理論を述べられておりましたね。消費物価が上がっておることは、これは重大な問題ではあるけれども、しかし、卸売り物価が上がらない限り、国際収支の関係その他についてまあまあ心配はないのだということを述べられておった。ところが、いまや最も注意を要すべき卸売り物価について値上がりの徴候があらわれてきておるということは、重視すべき事柄である。わけて、インフレにはならぬと言われておるけれども、それはたまたま去年のことし、そういうことであって、まだそのことが現実にあらわれていないと見るべきか、あるいはけがの功名で、まだそのことがあらわれていないと見るべきであって、論理というものは、経済の理論というものは、インフレへの道を静かに静かにスローアップの形で進んでおるものと見るべきである。(「ガンと一緒だ」と呼ぶ者あり)ガンとは違うなあ。経済学者は、これはクリーピングインフレーションというんですね。これは、どうしてインフレがこのようなスローテンポで忍び寄っておるかと申しますと、政府にそれに対する適切なる対策がないからである。物価対策がないからである。景気鎮静政策がないからである。政策がないから、あき巣ねらいみたいにインフレが忍び寄ってきておるのである。それを政府は心配ない、心配ないと言っておられるものですから、あき巣ねらいが入っても心配ない、心配ないと言っておれば、そのあき巣ねらいはやがて習いさがとなって、いつ何どき居直り強盗に変化するかもわからないのである。すなわち、それはインフレに暴発するのです。各国におきまするインフレ暴発の歴史を御調査願っておると思うけれども、ほんとうのインフレというものはクリーピングインフレが累積してインフレになるのじゃありません。忍び寄るインフレがずっと忍んでおって、ある段階においてばあっとほんとうのインフレに暴発するのです。そうでしょう。だから、このクリーピングインフレが、物価高はたいしたことがないから心配ないと言っておられることは、これは厳に猛省を要する点である。このことを御指摘申し上げておる。  そこで、いま私はせっかくここまで論じたのでございますから、したがって、私は、公債政策について、インフレの道は絶対開くものではない、歯どめがあるから必配ないと言われておるが、実は大心配の存する理由をここで論理的に明らかにいたしたい。  法制局長官に伺うが、公債発行を日銀引き受けによって発行することを禁止しておる財政法第五条の法意は何か、お伺いをいたしたい。——だめならば、経済企画庁長官宮澤君、御答弁を願います。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は法理のほうは存じませんが、おそらく経済財政政策の観点から、生産力に見合わない資金が放出されるということはよくない、こういう考えであろうと思うのでございます。つまり、直ちに日銀引き受けにいたしますと、それが生産を呼ばないうちに新しい信用の追加になる、こういうことを禁じたものと経済的には考えております。
  50. 春日一幸

    春日委員 日銀は、市中金融を調整するその機能を果たすために、オペレーションを行なっておることは、これはもうきのう来論じられておるとおりである。その際、国債がその対象となるのでありまするが、現在では、発行後一年以内の国債は買いオペの対象としないことにされており、これがいわゆる総理のいま述べられた第五条の歯どめを意味すると思うのだが、ならば、私は大蔵大臣に伺うが、昨年二月以前に発行された国債のほぼ六〇%、これはすでに日銀保有になっておるようであるが、事実関係はいかがであるか。
  51. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四十年度発行の国債は、大体六〇%は日銀に入っておると思います
  52. 春日一幸

    春日委員 換言をいたしますると、国債発行後一定期間経過すると、日銀にその公債の相当部分が掃き寄せられてくるという、このことを意味すると思うが、いかがでありますか。
  53. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日銀のオペの対象に、むろん国債が他のものよりも一番いいのですから、これがオペの対象になることは当然であって、今後もこういうことは始終あり得ることと思っております。
  54. 春日一幸

    春日委員 ならば、一個の設例をしつつ、ひとつ問題を探求してまいりたい。  今後において、かりに政府の新規発行が、ある月において一千億円とする。その際、その同じ月に日銀が既発行分で市中保有分一千億円を買いオペで吸収したといたします。そうして、市中銀行はその金で新規発行分を引き受けたといたします。このような場合には、実質上、新規分は日銀が引き受けたと同様の経済効果になるが、政府はこの点どういうふうに考えておるか。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 すでに発行されて一年たちました国債は、それだけの仕事をいたしております。したがって、物的な生産力と購買力とが見合わないということはない。それが一年たってからという意味だと思っております。
  56. 春日一幸

    春日委員 きのう来ここで成長通貨を発行する云々と言っておられますけれども、日銀から出るときの通貨は、全部成長通貨なんですよ。これがインフレ通貨だといってイヤマークをつけて発行する通貨はないのだが、それが発行された後においてインフレ通貨になっていくのです。だから、いま宮澤君が述べられましたけれども、ここにかりに市中の金融市場で、日銀の買いオペがない限り、市中金融機関に新規発行分を引き受ける資金余裕のないようなとき、日銀と政府との現在の力関係からして、そのような場合でも、日銀が金融市場の要請を拒否して独自の立場でオペレーション政策の方針を貫くことができると思うかどうか。すなわち、日銀はその独自性と中立性をはたして堅持することができると思うかどうか。この点経企庁長官答弁を願いたい。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私にお尋ねがありましたが、ただ理論的な問題としてとおっしゃるのであろうと思いますから、そういう見地から申し上げるわけでございますが、オペレーションというものも、資金の需要がなければ日銀はするはずがないわけでありまして、そういう資金の需要が民間側にあるという場合であろうと思うのでございます。政府が国債を発行いたしますのは、民間の資金をある意味政府が移転をするわけでございます。それで政府としての仕事をする、両方のことは分けて考えないといけないと思うのでございます。
  58. 春日一幸

    春日委員 それがインフレの道なんですね。いま申し上げましたように、市中金融市場に金がない、金がないから日銀に買いオペを求める。一方政府は、市中消化のために公債を発行する、金がなければ引き受けることができない。政府は市中金融機関に向かって一千億なら一千億円、これを引き受けろというのだけれども、市中金融機関は日銀に向かってその資金調弁のために買いオペを求めていく。そのときに、日銀は円価値を守る守り神として、断じて中立性でなければならず、買いオペ政策は独自性をもって判断をしていかなければならぬが、ここに財政資金一千億円の調弁をしなければならぬ、市中銀行に金がない、市中銀行は日銀に向かって買いオペを求める。そのとき日銀が買いオペする方針や関係がないとき、一体これはどうなるか、政府の圧力はおのずから日銀に加わるのである。買いオペをしろということ。すれば金ができる。金ができて政府発行の国債はそこで消化される。すなわち、このことは第五条の歯どめが、この時点において取りはずされてしまうのである。これがインフレへの道でなくて何でありますか。いかがです。大蔵大臣。
  59. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 市中に金のないときに、無理に国債を発行するというようなことは、これはやりませんので、私どもも市中の状況を見て国債の消化をはかるということでございますから、その辺が、そこらをうまくやることが財政金融政策の運営ということであろうと思います。
  60. 春日一幸

    春日委員 私は、とにかく十数年大蔵委員をやっておるのだから、そんなあなた方のような、そういう詭弁で問題がごまかされはいたしませんぞ。いま市中金融機関は、本年度の資金不足をどれだけ言っておるか、一兆一千二百億。現在四十二年度の起債は、国債、政府債、地方債、事業債の公募、非公募債、合計で二兆円、これは銀行が相当の預金増、そうして資金の需要を相当押えたものとしても、なお一兆一千二百億円。この大幅な資金不足を生じておると言っておるのです。よって、政府に向かって、発行額の削減を求めてまいりませんでしたか。事実関係はいかがです。
  61. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 昨年の暮れに、私どもが予算の編成方針を決定するという際には、御承知のように、公債の発行を八千二百億円という予定でございましたが、公債発行懇談会におきましては、けっこうだと、むろんこれはみな言いませんが、大体この程度は市中で消化できるというような暗黙の了解を願ったというようないきさつがございます。
  62. 春日一幸

    春日委員 これは、財政法第五条の歯どめを、論理上この時点において失ってしまうのである。そして、それはインフレへの道を前進する形になるのであって、厳に警戒を要すべき事柄であるが、同時にまた、一つの政策のバイブレーションとしていろいろな変化が生じてくる。たとえばこの場合、政府と民間の資金需要が大幅に競合いたします。そうすれば金融市場が逼迫する、逼迫すれば金利が上がってくる、上がってくればこれは金利引き締めに転ぜざるを得ない。そういう形になってくれば、この時点においてやはり泣いても笑っても目じりに寄るしわみたいに、中小企業に一切のしわが寄ってくるのである。現時点においてすら破産、倒産相次いでおる中小企業の危機を、資本自由化を前にして最もすみやかに健全化をはからねばならぬこの時点において、さらに彼ら中小企業を脅かすの結果に立ち至るおそれなしとはしない。実に警戒を要すべき事柄ではございませんか、この点いかがです。
  63. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 むろんそういう事態は私どもは心配しておりますが、いまのところは、民間の持っておる内部資金というものの水準は非常に高うございますし、そこらがどの辺競合してくるかという見通しでございますが、私は、民間の需要がそう急に大きくなって政府需要と競合するということは、そうもう最初からきまった問題ではなくて、これは私どものやり方で完全に避けられる。そうして、この程度の公債なら順調に消化できるという事態ではないかというふうに大体予想しております。
  64. 春日一幸

    春日委員 いまのところは何とかやっていけるというようなことをあなた方は言っておられますけれども、われわれがいま論じておることは、いまのことを言っておるのではないのですよ。政治というものは一日先見の明あって、国政の進路あやまちなきを期せねばならぬ。来年はどうなる、再来年はどうなる、過去十年の実績に顧みて、われわれは事前の策を講ぜんとして論じておるのである。いまのところ何とかやっていける——現に銀行協会は一兆一千二百億円の資金需要の不足を言っておるのだし、それから設備投資でも、これは開発銀行なんかの統計資料を見ますると、たしか前年度比二七%の増であって、政府見通しの倍である。それは計画だから全部実行されるかどうかは別にいたしましても、民間需要は増大の一途をたどっておるものとこれは断ずべきである。そういう中において、私どもがいまここに景気論争をいたしておりまするのは、あるいは公債政策を論じておりまするのは、現時点において何とかまかないがつくかつかぬかということを言っておるのではないのですね。この点、十分ひとつ御検討あって、万全を尽くしてもらいたいと思う。この前のなべ底不景気、高天原景気から仁徳不景気、とんでもないことで、そのたびに国民の被害は甚大なものでした。そのことを再び繰り返すことのないように、いまわれわれは論じているのです。官房長官、ひとつ十分閣僚を叱咤号令して、よく佐藤内閣の大番頭として、福永官房長官の威力を大いに示してもらいたいと思うのです。どうも私は心配にたえないのです。  次は物価政策。この問題は、きのうからいろいろ論じられてまいりましたけれども、何だか佐藤内閣は物価問題懇談会であるとか、今度はまた協議会なんかつくられておりますけれども、しかし会議を何とかじゃんじゃかじゃんじゃかやって、国民の注意をそのような会議場にそらしていく。ふんまんのはけ口をそこにしつらえて、そうして物価抑制対策というものに真剣に取り組んでおるというその姿がない。現に米の値段を来たる十月から一四・四%引き上げられるというようなことは、これは政府の意思一つで決定できることなんですから、これは心理的効果を考えてぜひやめていただきかったと思うのです。私はこの質問をするにあたって、総理の本会議の施政方針演説、これをずっと何回か読み返してみたのですけれども、その中であなたは、米の値段を上げたことについて、「特別会計の赤字を一般国民の税負担において埋めることからも限度があると考えますので、」云々、こう述べられております。しかし、そんな限度なんかありゃしませんぞ。二千三百億円までならば赤字になってもいい、三千億円はいかぬというような限度はだれがつくったのですか。そのことは佐藤総理の単なる感覚でしかない。何も権威がないのである。そんな限界なんかないのです。国民は四兆何千億という税金を納めておるのでございますから、それを政策の原資として物価を抑制しなければならぬとするのがわれらが当面する政治至上命令であるならば、四兆数千億の財源を駆使して、そうして、食管会計の赤字がふえていくならばそれを補てんしていったらいいじゃないですか。二千三百億の赤字に千億円加えたところで、そんなものは重荷に小づけであって、意に介するに足らざるところである。なぜそんなことをやられたか、この際国民が納得できるように御答弁を願いたい。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この種の問題は、やはり受益者負担、そういうところも加味して解決しなければならないものだと思っております。税金だけでまかなう、こういうものではない、かように考えております
  66. 春日一幸

    春日委員 政治というものは経済とはまた違うのでございますね。ことごとくのものが受益者分担の原理でいけば、こんなものは経済であって政治ではないのである。政治というものは、応能の原理ですか、やはりその者にそれを負担する能力ありやなしやによって負担をかけていくということであろうと思う。そういう意味で、とにかく物価の中枢をなすものは心理的に米だと思う。経済的にはほかにさらに大いなる要素があるかもしれないけれども、米の値段が上がったんだから、お菓子の値段も上げよう、あの値段もこの値段もという形で、とにかく値上げを誘発してくることは、これは過去の事例によって明らかである。だから、この際は、これを上げるべきではなかった。  そこで、私はある一点について、ちょっと不審な点がありまするからお伺いをしたいと思うのでありますが、先週の放送討論会で、貴党の政調会の最高幹部の一人であられまする愛知揆一氏が、ことしの十月に消費者米価を一四・四%上げる——これは、減税の恩恵に浴せざる低額所得者の家庭に、消費者米価を上げるということは、いたずらにその負担をのみ重からしめる結果になる、こういう非難を社会党が指摘された。そのとき、愛知さんが答えておられましたことは、いまこれは確定的ではないけれども、その時点においてあるいは消費者米価を二段階に政策価格を設定して、一般消費者には一四・四%上げることになるかもしれないが、しかし、減税の恩恵を受けざる低額所得者に対しては安い米価で米を供給する、そういうこともあり得ると思う、こういうことを述べられておった。これは、聞いておった国民が、ああそういうこともあり得るのかと、相当の関心を持って聞いておったと思う。私も、なるほどなあというふうにこれを受け取って拝聴いたしておりました。そのような含蓄はあるのでありますか。私は非常にすばらしいことだと思う。上げなければならぬとする、私どもは断じてこれを容認するものではないけれども、しかし減税の恩恵に浴せざる低額所得者に対して、ただでさえ物価高のこのときに、物価高が生活に重圧を加えておるとき、主食を引き上げることによってその圧迫をさらに重くする、これは避けねばならぬとする自民党政府に、その心あるならば、そういうような政策もおのずからそこからわき出てくるかもしれぬと思って聞いておったのですが、そういう含蓄はあるのでありますか。総理、この際御答弁を願いたい。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、ただいま十月から一四・四%引き上げる、こういうことを予算編成の際にそれに計上しておるわけであります。そこで、実際に消費者米価はいかにしてきまるか、これは私が皆さまに申し上げるまでもなく、それぞれの手続がございます。したがって、この予算が通ったから、もうこれでいいのじゃないか、こういうわけのものではございません。この十月に具体的に実施する際には、いま言われましたような点も勘案し、そして最終的な決定をするということ、これはもちろんでございます。
  68. 春日一幸

    春日委員 私の質問は、その点はわかっておるのです。総理の御答弁の限界はすでに私は承知をいたしておる。私の質問は、政治討論会において愛知さんの述べられたあの政策というものは、政策として佐藤内閣はいまなお腹の中にいろいろと考慮されておるものであるのかどうか、この点をお伺いをいたしたい。将来の問題でございまするけれども、しかし公に述べられたことである。根拠のないことは愛知さんほどの人が述べられないと思う。いかがでありますか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 愛知君の意見は、これはもちろん党として責任のあることばでございます。
  70. 春日一幸

    春日委員 それでは私は、これはこれとしてお互いに留意しておきたいと思います。とにもかくにも十月の米価の引き上げについては、すなわち、減税の恩恵に浴せざる低額所得者に対しては、そのような引き上げを適用せざる方針である、こういうぐあいに大体理解して質問を前に進めます。答弁は求めません。(「重大な答弁だぞ」と呼ぶ者あり)  大衆減税の実行と国民の税金の問題についてお伺いいたしますが、税金が重いという国民感情は、今回の減税によっては何ら払拭されてはいないと思うのであります。そこで、野党三党が政策協定を結んで、百万円まで標準世帯の減税をやれ、このことを政府に強硬に申し入れておること、大蔵大臣御承知のとおりであります。先般以来の御答弁を伺っておりますると、これは自由民主党でも、昭和四十五年度までには、できたら四十四年度までにはやっていきたいと考えておるが、財源上まことに困難であると述べられておる。けれども財源というものは、あるものではなくしてつくるものであると、かねがね池田さんも言われておったと思うんだが、全く同感である。現在自然増収七千五百億があるのでございましょう。それから税の制度もいろいろとこれは手直ししてみたらいかがでございましょうか。現在、たとえば所得税の累進度なんかも変ですね。すなわち、中小所得者層においては、所得が二十万、三十万、四十万、五十万、七十万ということで五%アップになっておりますが、高額所得者では、これが四百万、一千万、一千五百万とふえることによって五%アップの税率適用を受けることになっておるのですね。このようにして税率の累進度が中小所得者層において急激であり、そうして大所得者層においては緩慢である。これなんかも是正していく必要があるのではないか。大所得者層についても、低額所得者と同じような急激カーブを描いて、これを累進増徴していけば、私は相当税の増徴がはかり得ると思うし、担税力ある者からこれをとって何も心配はないと思うのです。特に私は、利子配当所得の問題なんかでも、こういうものは、不労所得であって、資産所得である、担税力のある所得でございまするから、昨日来諸君が論ぜられておりますとおり、このような特別措置を廃止していけば、国家の財源を新規に大きく調達できると思うのです。財源というものは、ないものではなくして、つくるものである。つくらんとすれば随所にこれを求めることができるのである。あなたのほうも、趣旨においては四十五年でやろうというのですから、われわれと同じ考えですね。だとすれば、おそかれ早かれやるんだったら、このあたりで無理してやったらどうか。あるいは四十五年なんというようなものを、ことしはもうしようがないとすれば、来年度からやるとか、何とかそこへ取り組んでいただいてはいかがであろうか。御方針のほどを承りたい。
  71. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実は、昨年度自然増収のないときであっても、公債発行によって三千何百億という減税をやったというときでございますから、ほんとうは、本年度は減税は若干控え目にする年であるというふうに私は考えておりましたが、やはり所得税を中心とした減税はもう少しやらなきゃならぬ。ことに、いま言われましたような、百万円までの無税というものについては、私ども賛成でございまして、ことしを初年度として、四十五年度までにはこれを断行したいという計画のもとに、ことしは七十四万円程度まで課税最低限度を引き上げるということをやったわけでございますので、引き続きこれは毎年やって、百万円までなるたけ早い機会に持っていきたいと思っております。これを一度にやったらいいじゃないかということでございますが、大体四千億から五千億円の財源を要することでございますので、なかなかこれは一気にやるというわけにはまいりませんで、私どもは、計画的にやりたいというふうに考えております。
  72. 春日一幸

    春日委員 申し上げておりまするように、ほんとうに生活分に食い込んでおる。生活費に課税すべきでないという立場からすれば、一日もすみやかにその財源難を解決いたしたいものである。財源がないないと言っておれば、いつまでたってもないのである。百年河清を待つに等しいのであるから、すみやかにこの給与所得者、しかも百万円までに課せられておりまするこの問題の早期の解決をはかっていただきたい。  そこで、私はこの際、この減税に関係いたしましてぜひとも総理の判断で解決を願わねばならぬ問題がある。それは地方税、なかんずく事業税の専従者控除ですね。すなわち、個人青色申告者、これに対する専従者控除の問題でございます。今回の改正によりまして、昭和四十三年度から所得税については、その限度の法定を廃止して、給与の実態に即して、これを必要経費に算入することに改められました。これは、われら野党が長年にわたって強く主張してまいった問題であり、ここにこの問題が実現を見たことは非常に歓迎するところでございます。このことは、そもそも専従者控除が必要経費に属すべきものであることを政府が原則的に確認したことを意味するものであって、したがって、所定の帳簿を備えつけて、正確な帳簿の記載に基づいて正確な申告納税を行なっておる青色申告者ですね。これは地方税においても完全給与制を認めなければならぬと思う。もっとも、地方税の課税標準は一年おくれになっておりまして、今回の予算では四十三年度からということになっておりまするから、地方税においては四十四年度から実施されることになろうとも、とにかく、この徴税理論の原則というものは、所得税と事業税との間に乖離あってはいけない。同じ理論によって、同じような徴税がなされていかなければならぬと思う。したがいまして、元来事業税というものは、二重課税であるとか、徴税理論としてこれは怪しい問題ですね。かつてシャウプ勧告によって付加価値税が創設され、その当時事業税は廃止すべきものとなされたのでありますけれども、また問題が一転して事業税が復活されてきた。自来、中小企業者は所得税を納め、事業税も納めて来た。一体何か。一方、農業生産者にも、また勤労者にも、事業税は課せられてはいないから、事業税の問題は、地方財政の財源上の問題ありといえども、徴税理論として何らかの解決を漸次はかっていかなければならぬ。だから、はかり得る場合にこれをはかっていかなければならぬ。現在、所得税法において、青色申告者に対して、その給与を完全給与制に踏み切ったということは、これは重大な意義があると私は思う。この機会に、ひとつ事業税についても、ぜひとも所得税同然の措置をとらるべきであると思うので、この問題は、若干二、三年先の問題となりましょうが、この機会にひとつその方向に向かって検討を加えてもらいたい。足らなくなる財源措置は、国全体の財政規模で何らかの補完措置がとられてしかるべきであると思う。この問題について、藤枝泉介自治大臣、御答弁を願いたいと思います。
  73. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 税の大家である春日さんに対してですから、くどいことは申しません。従来、専従者に対する給与については、必要経費として、経費という面とともに、所得控除的な考え方があったことは事実でございます。今回、所得税におきまして、昭和四十三年度から必要経費として認めるということになりますれば、それについては十分考慮しなければならぬのでございますが、先刻御発言もありましたように、四十四年度からの問題でございまするから、十分研究をしてまいりたいと考えております。
  74. 春日一幸

    春日委員 大蔵大臣、この問題は大蔵省においてずいぶん検討されてこの断をとられたことと思う。かりに藤枝自治大臣がいま述べられたごとく、その方向で検討し、それに踏み切るとすれば、相当な地方財政の財源ギャップを生じてまいる。この場合、国として何らかの措置をとらなければならぬと思うが、そのことをも含めて、政府全体としてその方向で努力する意思があるかどうか、大蔵大臣としてこの際あわせて所見を述べられたい。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 完全給与制に踏み切ったということは、私どもとしては十分英断と言われてもいいくらい決心してやったことでございまして、これから波及してくる問題は、また白色申告のほうの問題もございますし、影響するところは非常に多いと思いますが、そういう意味関連する税制については、今後なお一そう合理的な検討をわれわれはしたいと思っております。
  76. 春日一幸

    春日委員 ぜひとも、ひとつ総理御協力を願いたいと思う。中小企業者の税負担の軽減をはかるためにも、徴税理論に筋を通してまいりまするためにも、このことは、今回地方税制の中で一言も触れられていないということは片手落ちであると思う。すみやかに何らかの措置をとられることを強く要望いたします。  次は、この際、税の苦情に対する租税審判所の設置の問題について、ひとつわが党の考え方を申し述べて御判断を得たいと思います。  現在、国税庁または国税局に協議団がございます。けれども、これは長官または局長の諮問機関でございまして、しかも、協議官は税務職員のみで構成されておるのでございまするから、苦情処理を受けて、そうして国の側に立って公正なる判断をなさなければならないところのその職員の身分、これは税務職員である。だから、言うならば、これは苛斂誅求に当たる御同役、悪く言うならば同じ穴のムジナと言っては失礼だけれども、同じ身分であり、同じ機能であり、同じ使命をになわれておる諸君である。そういうような諸君によって苦情処理をさしておったところで、これは最終的な問題解決にはならない。したがいまして、この際、税務争訟については、これを審判するために厳正なる第三者機関、何かこれは行政委員会のような性格のもとに、たとえば、租税審判所というようなものを設置すべきであろうと思うがどうかという問題。この問題は、アメリカの制度をいろいろと調査をしてみたのでございまするが、さすがにアメリカにおいては、すでにその制度が設けられております。問題は、租税審判所設置について、税務官署と司法裁判所との関係をどう調整するかという問題でありまするが、これは、ただいまお手元に配付いたしましたわが党の参考資料の中に租税審判所設置法案、わが党の案が要綱としてまとめて提示されておりまするから、時間がないままに、後日ひとつ御検討願いたいと思うのであります。これは言うならば、納税者が税務署長の処分に不服があるときは、その上級行政庁である国税局長に審査請求をすることができる、そうして国税局長の裁決になお不服があるときは、そこで初めて租税審判所に持ち込んでいく、租税審判所は司法裁判所の裁判の前審であるという地位、これを有するものとして、そうしてこの租税審判所は内閣直属の行政委員会、そうして国税局の設置場所ごとにこの租税審判所を設置して、準司法的機能をこれに与えていく、そうして租税審判所の裁決にかかる争訟については、裁判所としての第一審の裁判権は東京高等裁判所に専属せしめることにする。これが大体租税審判所設置のわが党の構想でございまするけれども、現実には、現在憲法に保障されておる国民の財産権が、現在の徴税制度のもとにおける苦情処理機関の限界では完全に擁護されてはいないと見るべきである。国家権力をかさに着た徴税当局がどんどんやっていく。そういうようなものに対して、国民としては、力関係で一々自分の財産権を一〇〇%擁護することができない。協議団へ行ったところで、これが救済機関というような構想で設けられておるけれども、これは気休め的であって、少なくとも、徴税当局が決定したものを、これは間違っておるといってくつがえした決定をするということは、まあ統計では相当出ておるようでございまするけれども、実質的には、事前に却下されたりして、実際国民の財産権は完全に擁護されてはいない。民主主義の本山アメリカにおいてなし得ておりますこのことを、日本においても制度として取り入れるべき必要性がなくはないか。この問題は時間がありませんままに、資料としてここに提示をいたしておりまするので、塩崎君も参られておるけれども、真剣に内閣の問題としてどうかひとつ御検討を願いたいと思う。いずれ他の委員会でこれについてはお伺いをいたしたいと思います。  次は、産業政策についてお伺いをいたしたいのでありますが、問題は、資本の自由化を控えて産業体制整備の必要性がいよいよここに高まってまいった。ところで、過般設定された経済社会開発計画では、産業体制の整備とは企業の合併、統合ないしはその過程における投資調整、共同投資、こういうようなことを意味しておるようでございます。これは三十年代におけるわが国産業の発展が、多数の企業のシェア競争によってさまざまな弊害をもたらしたことの反省の上に立ってなされたものと思うのでありまするが、これを産業界の自主的な立場でのみ行なわれようとしている点に私は問題があると思うのでございます。このことは、鉄鋼の設備調整問題一つにしても明らかなとおり、うまくいかないではございませんか。さらにまた、やってみればいろいろな弊害があらわれてくるじゃございませんか。また逆な意味では、巨大企業や寡占体制をいたずらに強化する、こういうことにもなりかねない。したがいまして、真にナショナルインタレストに立脚した産業体制を整備するためには、ここに私どもがお手元に配付いたしました重要産業基本法案、こういうような法律をつくる必要がなくはないか。先般特定産業振興臨時措置法でありましたか、政府提案で出されたけれども、さまざまな抵抗があってこれが廃案になりました。そうして、この特定産業振興臨時措置法というような、わが国の重要産業、基幹産業のあるべき姿を法律的に規制しようとしたような重大政策が、自来、数年間不問に付されて今日に至っておるということは、これは捨ておくべき事柄ではないと思う。したがいまして、この際すみやかに何らかの措置がとられなければならぬ。いまや、ここに資本の自由化を前にして、このような野放し体制ではいかぬ。産業体制に対して何らかの措置をとらなければならぬけれども、どういう施策があり得るか。  これに対する私どもの研究は、この重要産業基本法案の制定である。わが国の産業体制を整備するためには、シェア拡大競争のような自由放任体制、これをため直していかなければならぬ。それから最も肝心なことは、企業の社会的責任体制を確立していかなければならぬと思う。現在、企業が資本主義だ、自由経済だといっておりますけれども、日本の企業の資本構成というものは、企画庁の統計によれば、自己資本が二〇%であり、他人資本が八〇%である。しかも、その借り入れ資本の原資というものは、主として銀行からの調達でございましょうけれども、それは大衆の預金であり、銀行の金の足らざるところは日本銀行から借りた国家的性格の金である。だから社会資本である。だから、日本の資本主義は単なる自由経済のもとにおける資本主義ではなくして、意地悪く言うならば、他人資本主義であり、資本主義そのものの形態から名づけるならば社会資本主義である。こういうときに、企業の体制を自由放任のままに許しておくということは適当なことではないと思う。何らかの規制を、資本自由化に備えて、民族産業擁護の立場からも、そのような社会的性格を持っておる企業の社会的責任を明らかにするためにも、立法措置が必要であると思うが、この点はいかがでありますか。経済企画庁、通産大臣、大蔵大臣、三者から伺いたい。
  77. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 今後の産業体制についてお尋ねがあったのでありますが、ことに資本取引の自由化に対して備えておるかどうかというお尋ねがあったように思います。  資本の取引の自由化の問題につきましては、大蔵省のほうで外資審議会がございますし、通産省のほうで産業構造審議会がありまして、それぞれ資本取引の自由化に対していかに対処すべきかということを目下審議中であります。なお、大きく今後の産業体制ということについて、単なる企業家ばかりにまかしておいてはいかぬじゃないかというお話がありましたが、それはお説のとおりでありまして、もう今日は自由放任の時代ではありません。すべて今後の産業行政というものは官民一体でやるべきだという考え方で今後の産業行政を進めていきたい、こう私は考えております。
  78. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま通産大臣の言われたように私も考えております。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 資本自由化につきましては、五月一ぱい大体審議会に勉強を願っておるところでございますので、その結論を待って、政府としてもプログラムを五月過ぎたらはっきりしたものをつくるという予定で、いま作業を進めておる最中でございます。
  80. 春日一幸

    春日委員 何も勉強していないですね。菅野通産大臣も、官民一体となって何やらかんやらと言って、まるで大東亜戦争時代のようなとぼけたことを申されておる。私がいま申し上げておることは聞かれていなかったのかしれないけれども、今日の経済社会において、企業が企業として存立できるのは、彼らの資本だけでやっておるのじゃないということなんですね。株主や経営者、従業員、取引先、消費者、地域社会、政府、こういうようなものの集団が企業というものを実際動かしておるんですよ。だから、企業の経営にあたっては、これら関係集団の要求に対し企業がいかに調和をはかっていくか、はかっていかなければならないか、はからしめるべきであるか、その手段方法に一つの基準を設けていかねばならぬ。官民一体となってというが、そんなばかなことを企業に対して、自由経済で、政府が企業に関与するなんということは、大体そんなことは行き過ぎですよ。越権ですよ。行政というものは、立憲法治国においては法律においてのみ行政が許される。生産調整だ、行政指導だなんて、あなた方が、失礼だけれども、思いつきの頭でそんなことをやられるということは許されるものじゃない。だから、すべてこれは法律によらなければならぬから、官が企業を指導するとか、業界を指導するということはあってはならぬ。あってはならぬから、あらかじめそのような国家的基準をつくるために、そのために法律の制定が必要であると申し上げておる。この点はいかがですか、経済企画庁長官。官民一体なんというようなクラシカルな御答弁じゃなくして、もう少し今日的企業に即した……。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 理屈はそうでございましょうけれども、そういう法律をつくりますと、実際はいろいろな弊害が出てくる場合が多うございまして、消費者の立場からいって必ずしもいい結果にならない場合が多いように思うのでございます。おっしゃることはよくわかります。
  82. 春日一幸

    春日委員 時間がまいりまして、この浩瀚なる政策内容を論じ合えないことはまことに残念でございますけれども、ただ問題は、このような性格で企業が行なわれておる。この間も某大商社の責任者が語られておったところによりますると、わが社の自己資本、すなわち資本金総額は八百億円である。わが社の借り入れ金の総額は三千四百億円であると言われておりました。三千四百億円というような資金というものは大衆の預金であり、かつ、足らざるところは日銀から借りた国家の金であり、なお足らざるところは国家が保証して外資を導入しておる。そのような社会資本によって企業がなされておる以上は、その企業の運営、経営のあり方というものはいかにあるべきか、これは資本自由化を前にして何らかの基準が示されねばならぬ。それはどういうふうにやるかといえば、経済に計画運営の要素を導入していかなければならぬ。それから経営者代表、労働者代表、金融機関代表、行政機関代表及び学識経験者などから構成されるような第三者的な機構によるところの運営の基本方針を決定する一つのアドバイザー、有権的なアドバイザー、こういうものが必要であろう。それから、それがまた別に産業計画、投資計画並びに投資調整を行なわしめていくという、そういうことがこの重要産業基本法の骨子になっておるわけでございまして、これは、さき政府が提案されました重要産業振興臨時措置法でありまするか、あれにさらに社会性を加味して研究をしたものでございまするから、通産大臣も、単なる通産省の行政指導で企業の統合や合併や、そんなことをやっていくというのではなくして、この点はひとつ十分御検討を願いたいと思う。  公正取引委員長にお伺いをいたしたいと思いまするが、問題は、資本の自由化に対処して、持ち株会社の問題についてでございます。  資本の自由化に関連して、最近ではさまざま持ち株会社の構想が立てられておるようでございます。しかし、この抜けがら方式から株式凍結機関利用方式までいろいろと点検してみますと、いずれも客観的機能が企業支配にあると考えられるので、これは明らかに独禁法に違反をすると思う。概念的にこの問題について公取委員長はどのようにお考えになられておるか、御所見を承りたい。
  83. 北島武雄

    ○北島政府委員 最近持ち株会社論が盛んに行なわれておりますが、ただ資本の自由化に対処するために現在の持ち株会社禁止規定をやめてほしいというのは、これは私は全くどうかと思うのであります。と申しますのは、資本の自由化に対処いたしましては、現在の持ち株会社規定こそ外資の不当な侵入に対する一つの備えをなすものであると私どもは考えております。それからまた、資本の自由化に対処して産業を再編成する必要がある。その産業再編成の手段として持ち株会社はどうかと、こういう議論がまたあるわけでございますが、この点につきましては、ただいまの直接の外資の侵入に対する部門の配慮が私はどうも足りないように思いますし、それからまた、現在の持ち株会社禁止規定、これは必ずしも全部の株を持っておるものを禁止しておるわけじゃないのでありまして、株式を所有することによって国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社、こういうことになっておりまして、きわめて狭いのであります。これは、私どもといたしましても、こういう持ち株会社によって過去において財閥の産業支配が行なわれたのでございますから、このような持ち株会社を認めることは、過去におけるこういった不当な産業支配を招くおそれが多分にあるものと私どもは考えております。
  84. 春日一幸

    春日委員 一たびこの持ち株会社が制度的に容認されてまいるということになりますと、これは有力な会社が他の会社を支配下に置く、その被支配下の会社が、さらに他の会社を支配していくという、こういう形でトラストやコンツェルン、こういうものがだんだんと集中形態を生じて、そうしてここにピラミッド型の独占支配が行なわれていくということは、これはもう資本主義経済のメカニズムの必然の帰趨である。戦前においては三井合名、三菱合資、みんなこういうような財閥の本社が、さらにその下に三井物産を置いた、三菱商事を置いた、そういうような持ち株会社が次々とそのような企業支配をやってきた。したがって、このような、競争原理を否定するとか競争制限を助長するとか、そのような制度は、断じて独禁法の改正または適用除外をしてまでこの段階において容認すべきものではないと考えるが、この際公取委員長の断固たる見解を明らかにしていただきたい。
  85. 北島武雄

    ○北島政府委員 もちろん現在の持ち株会社論の中にも、過去の財閥の復活を意味するのではないというような限定のもとにおっしゃっている議論もだいぶございます。そういった産業再編成の一つの手段すなわち、合併にかわる手段としての持ち株会社は認められないかという御意見が当初出たのであります。これに対しましては、私ども、いままで納得する理由を見出しておりません。こういう問題につきましては、各方面で十分に検討する必要がある。すでに産業界においても相当な反対意見もございますし、あるいは経済学者、エコノミスト等においても相当な反対があるわけでありますから、こういう点は、国内において十分議論を尽くされる必要があろうかと私は考えております。
  86. 春日一幸

    春日委員 さすが公取委員長は健在なりですね。願わくは、ここ四、五年間その地位をひとつ保ってもらいたいと思います。  そこで私は、別の面から公取委員長並びに総理、経済閣僚の御注意を喚起いたしたいと思います。  先般公取委員会の実態調査によれば、東証第一部上場の上位百社が、その系列会社四千二百七十社を合わせて、全会社資本金総額の五三・二%を押えておるということが明らかになっておる。しかも上位百社の系列会社との結合状況を公取が分析してみますと、持ち株率三〇%以上のものが八二・三%、役員兼任関係にあるものが七五・九%、資金融通関係にあるものが三六・七%とある。かくのごとく持ち株、役員兼任あるいは資金の供与、こういうことで、すでに企業結合が縦にも横にも広がろうといたしておる。その中心には、戦前の財閥の遺産とも称すべき銀行が大きな影響力を持って、いまや新しい企業集団の形成が、独禁法の脱法行為としてここに現実に形成されようといたしておるが、公取委員長は、独禁法上このような現状を見のがしておいてよいと思うか、いかがでありますか。
  87. 北島武雄

    ○北島政府委員 独占禁止法は、すべての企業結合を禁止しているものではございません。企業の結合によって、それが独禁法にいわゆる「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」、簡単に申しますと、いわゆる業界支配でございます。こういうような場合に禁止しているのでありまして、単なる企業結合を禁止してはおりません。たとえば株式の保有にいたしましても、あるいは会社の合併にいたしましても、あるいは営業の譲り受けにおきましても、一定の取引分野における競争を実質的に制限することになるものを禁止しておるのであります。現在、私どもは、そう脱法のものが行なわれておるとは存じておりません。
  88. 春日一幸

    春日委員 このような企業系列化の調査はされたと思うが、系列化されたところの系列相互の関係において、独禁法が禁止しておるような経済行為がはたしてなされておるか、なされていないか、現実にその事案を対象として調査されたことがあるか。
  89. 北島武雄

    ○北島政府委員 まだすべての企業結合についての調査はいたしてはおりませんが、独禁法違反は全然ないということは言い切れないかとは思います。ただ、いままでのところ、適法に合併届け出等があって、公取においてこれを認めたものばかりと私は考えております。
  90. 春日一幸

    春日委員 何らかの経済的フェーバーを期待することなくしてこのような企業結合がなされるはずはない。役員の兼任にしても、資金の供与にしても、持ち株にしても、それは、そのところから何らかの経済的なフェーバーを期待してそのような行為が行なわれておるのである。このことが何ら取引制限を助長するようなことにならぬというようなことは、これは断定されてはおりませんけれども、すべからく、調査をする必要のある事案である。調査されたらいかがですか。公取法によりますれば、国民は、何びとといえども、公取委員長に向かってこのことを告発することができる。よって、不肖春日一幸は、この場所において、これらの企業結合が独禁法違反にわたらざるかどうか、ここにおいて告発をいたしますから、明日からひとっこれの御調査にかかっていただきたい。  そこで私は、関連をいたしまして、もう時間がございませんから一問だけ、持ち合い株の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  独禁法において、先年この株式保有の制限が緩和をされまして以来、持ち合い株、すなわち、企業相互間で株式保有をし合うこと、これが常態化してまいりまして、そうして、いまでは資本自由化の防衛策として、安定株主交差の必要性が唱えられてまいりまして以来、この傾向がいまや非常に活発化してまいったように見受けられる。この持ち合い株については商法上疑義はないか、独禁法上はどうであるか、あるいは証券行政上または企業経営上これは看過すべからざる問題がさまざま起きてまいっておると思うのです。  まず私は、商法上の問題としてお伺いをいたしたいけれども、株式の持ち合いがこのように交差するということは、これは実体的には架空の資本がその分だけつくり上げられるという形になる。たとえば十億円の相互の株式会社の中で、ここで一億円買う、向こうはその買ってもらった金でこの会社の株を一億円買うという形で、一億円づつを持ち合うというようなことになれば、それは実体の資本ではなくして架空の資本みたいなものである。このことは、現実の資本充実の要請を妨げないのみならず、一番肝心なことは、このような持ち合い株に対する企業相互間の配当の授受、これは固有株主に帰属すべかりし利益を横取りするような形にならないか。この二点について、法務大臣並びに公取委員長の御答弁を求めます。最初に法務大臣
  91. 田中伊三次

    田中国務大臣 商法の理論の上から一言に申しますと、持ち合いといえども、株式所有の一形態であるという理屈になりますので、合法的でございますが、しかしながら、これがいまお説のごとくに架空のものであって、事実払い込みのないものであるという場合においては、お説のごとき不合理が起こってくるわけでございます。これは御承知のとおり商法によりまして禁止規定があり、これに違反をしたる場合においては罰則もついておる、こういうことでございます。ただ、問題は、ただいまお話しになっておりますような合理的なものでありましても、状況をこのままに放任しておきますときには、いまお説のごとき弊害を生ずるおそれがあろうかと存じます。これを単に独禁法改正のみならず、商法改正の問題としてあわせて真剣に検討をしてみたいと存じます。
  92. 北島武雄

    ○北島政府委員 株式の持ち合いは、企業の経営上あるいは業務提携等の必要のために間々あることでございまして、それ自体独占禁止法において禁止していることはございません。合併さえも、もちろんそれ自体は禁止しているわけではないのでありますから、株を持ち合うことによって役員を相互に兼任し、そうして実質上合併の実をあげる、こういうこともあり得るわけであります。ただ、株の持ち合いによりまして、いわゆる一定の取引分野における競争を自主的に制限することとなる場合が独禁法違反、こういうことになるわけであります。
  93. 春日一幸

    春日委員 むろんその点、その限界は私も承知をいたしております。ただ、問題は、そのような株を持ち合うことによって、私的独占になるようなことはないか。不当な取引制限にわたるようなことはないか。ありとすれば、これは独占禁止法違反であるから、持ち合い株の実態について公取は厳重に調査をなさるべきであるという、このことを申し上げておるのでありまするから、この点よろしくひとつ御検討を願いたいと思います。  大蔵大臣にお伺いをいたしますが、これは証券行政上、そこへ株が固定化する。だから、これはピープルズキャピタリズムに逆行する形にならないか。なおまた、証券行政上は、同じように浮動株が少なくなってくる。こういうことを見のがしていくと、だんだんこれが強化されていく。そうすると証券市場が縮小されてくる。そうして公正な株価形成に障害を来たしてくる。あるいはかつて経験したように、金融引き締めのときにその株をばっと売り出す。そうすると、これが、いわゆる法人売りというような形になって、株価下落に対して衝撃的な影響を与えていく。だから証券行政上も、これはまた重大な弊害をもたらすおそれなしとはしない。この点について大蔵大臣の所見はいかがでありますか。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 極端な持ち合いは、これはいまおっしゃられたような問題があると思いますが、いま行なわれておる程度の持ち合いは、もっぱらお互いが安定株主になるというような意味で持ち合いをしているのが実際は多いのが実情でございますから、こういう程度なら、私は少しも差しつかえないのじゃないかと思っております。
  95. 植木庚子郎

    ○植木委員長 春日君に申し上げます。簡潔に願います。
  96. 春日一幸

    春日委員 わかりました。もう時間がまいりましたから終わります。  大臣には失礼ではありますが、大臣に御就任になって日まだ幾ばくもたってはいない。したがって、このような持ち合い株の問題は、いままで、いずこの場所でも、また学者間においても、問題として取り上げられたことはないのである。いわんや、その実態をつまびらかにしたものはないのである。だから、いまの程度ならばまあまあだというような大臣の御答弁は実態に反する。すべからく、私が指摘するような内容と実態を持つものであかるどうか、これを十分御調査の上、なお弊害ありとするならば、しかるべき対策をとられんことを強く要望いたします。  私の持ち時間が終わりましたので、私の質問はこれにて終り。ありがとうございました。(拍手)
  97. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて春日君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  98. 植木庚子郎

    ○植木委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  明二十四日午後三時、日本銀行総裁を参考人として出席を求めたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。  午後は一時二十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後一時三十一分開議
  100. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算に対する質疑を続行いたします。矢野絢也君
  101. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は公明党を代表いたしまして、与えられたこの機会に、政治姿勢に関する問題と、外交につきましては安保あるいは沖繩問題、核拡散防止条約等につきまして、総理並びに関係大臣の御意見を承りたいと思います。  まず最初に、政治姿勢につきましてお伺いをいたしたいと思います。  総理はこのように申されました。道義に貫かれた議会民主主義の体制の確立こそ、わが国繁栄の基礎である。公党の体質改善促進、さらにまたその倫理を高めて、国民信頼にこたえる清潔な政治の実現につとめてまいりたい、このように本会議において決意を述べられたのであります。非常にけっこうなお話である、かように私は伺ったような次第でございます。しかし、昨年の黒い霧事件をめぐりまして、国民政治に対する疑惑はもはや今日では政治不信と変わっております。昨年、あるいはことし、佐藤内閣の解散、さらにまた総選挙、このような一連の動きを経まして、本特別国会開催の運びになったわけでありますが、私どもはこの総選挙の洗礼を受けたといっても、黒い霧が解決したとは思わない。その実態は依然として根強く残っておる、かように考えるものでありますが、その点についての総理の所信を承りたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま矢野君が御指摘になりましたように、政治そのものはこの道義に貫かれたりっぱな政治、これをやることが民主政治の要諦だと私は思っております。しかし、なかなかこの事柄は道は険しく、前途多難と申しますか、今日自身も問題ですが、前途多難を思わしむるものがあります。私がいままで総選挙、これこそはいわゆる政界浄化のために踏み出した第一歩だ、これからの第二歩、第三歩、これをひとつよく見てください、こういうことを申したのであります。そのとおりでありまして、ただいま矢野君も御指摘になりましたが、黒い霧はこの総選挙が済んだからそれでお払い箱になったとか、もうすべて払拭された、こういうものでないこと、これは私にもよくわかっております。しかし、たいへんむずかしい問題でございますから、今後さらに努力を続けてまいりまして、そして国民政治に対する信頼を高めなければならない、かように私は考えております。
  103. 矢野絢也

    ○矢野委員 そこで重ねて総理にお伺いをいたしたいと思います。  いままでの国民疑惑は、利権に癒着した政治の姿、そのことに対する強い批判があったのであります。その根本は、何と申しましても私は政治に金がかかり過ぎるからである、かように考えます。したがって、金のかからない政治を実現すること、あるいはまた政治活動に使われた金の収入支出については、国民の前にガラス張りにすべきである、このように私は考えるのでありますが、その点についての総理のお考えと、さらにそれについての具体的な今後の方策があれば伺いたいと思います。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この前、私お答えいたしましたように、政治自身が利権につながる、あるいは特殊の団体につながる、こういうところに一つの政治腐敗の原因があるのではないかというお尋ねに対して、民主政治そのものから申して、各界各層の意見を聞くことは、これはもう民主政治の当然のあり方だ、問題は、それがひもつきになる、あるいは特別な利権を提供されることによって政治を曲げることがこれが悪いのだ、こういうことを申しました。ただいま御指摘になりますように、利権と癒着した、こういうような見方をされてはちょっと私は困るのですが、政治そのものがとかくそういう意味の誤解を、またそういうような筋に見られやすい、こういうようなことは今後政治家として厳に戒めていかなければならぬと思います。  第二の問題として政治に少し金がかかっているのではないか、私は、私が今日までの経験から見まして、党の活動にいたしましても、また選挙区等におきましても、もちろん物価等の騰貴はございましょうが、それにしても非常にその使い方が増額されております。私も過去において幹事長もいたしましたが、今日の状態と見るとよほどたいへんな相違でございます。こういうように金のかかる政治、これはいろいろ罪悪の温床にもなりやすいのでありますから、金のかからない政治にすることが望ましいこと、これはもう申すまでもないのであります。  昨年黒い霧の問題が起きていろいろ論議されました際に、とにかくこの現状を見て、われわれが今後直していかなければならない点はどういうところにあるか、とにかく金のかからない政治、金をかけない政治、それをやるべきではないだろうか、かように私自身も考え、また各方面にもそういう意味の呼びかけをいたしてまいりました。そうして具体的にはそれぞれの党におきましても、自分のところの金の使い方について一そう気をつけてまいるでございましょうが、また選挙そのものにおいても、各党が、選挙制度調査会等がこの政治資金規正、これをも含めていろいろ審議をしていただいておるのでありますから、その答申を得ました暁は、金のかからないように、また金をかけないで済むようなそういう政治をするように一そう努力したいものだ、かように思っております。ただいまのところは選挙に関するものが主体のようにも考えられますので、選挙制度調査会の審議をまち、そうして第三者の公平な意見を取り入れてまいりたい、かように決意しております。
  105. 矢野絢也

    ○矢野委員 ガラス張りの政治……。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんそういう意味からはガラス張りであることが望ましい、かように思います。
  107. 矢野絢也

    ○矢野委員 いま総理は、金のかからない政治が望ましい、あるいは政治活動に用いられた金はガラス張りでなくてはならない、そういった意味の御返事をいいだいたわけであります。  そこで、私は、自治大臣にお伺いをいたしたいのであります。  昭和四十年、さらにまた昭和四十一年における自由民主党より届け出のあった収支明細書、この中において、国会対策費という名目で支出された費用についての内訳を御報告を願いたいと思います。
  108. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 四十年から申し上げますが、その内訳というのは全部一項目ずつ申し上げましょうか。
  109. 矢野絢也

    ○矢野委員 月日と金額とその受領をした方の氏名をお願いしたいと思います。
  110. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 四十年でございます。  四十年一月二十三日二十万円佐々木秀世氏、二月三日五十万円同じでございます。それから二月十七日五十万円三木武夫氏、三月十日五百十万円佐々木秀世氏、十八日五十万円三木武夫氏、四月二日二百四十万円三木武夫氏、十六日百二十五万円同じ、五月十一日に百万円三木武夫氏、十二日四百八十万円同じ、二十一日二百五十万円同じ、二十二日十万円佐々木秀世氏、二十九日百五十万円三木武夫氏、六月一日四百四十万円同じく三木武夫氏、六月十日百万円田中角榮氏、七月二十一日七百二十万円中野四郎氏、九月十四日百万円同じ、二十一日三百万円同じ、十月四日五百三十万円同じ、十月六日四百五十万円同じ、十一日二十万円田中角榮氏、十三日二百万円中野四郎氏、十一月一日五百七十万円同、五日三百六十万円同、六日六十万円同、十五日三百万円同、十五日百八十万円田中角榮氏、十二月一日三百万円同じ、同じく一日三百万円中野四郎氏、同じく一日四百五十万円塩見俊二氏、二十日三千万円田中角榮氏、十二月二十一日三千三百万円田中角榮氏、二十八日七百四十万円中野四郎氏、同じく二十八日六十万円同じ。  四十一年は上半期だけでございます。  一月三十一日九百九十万円田中角榮氏、二月十日三百万円同じ、十七日二百二十万円同じ、二十八日二百四十万円同じ、三月十八日三百七十万円中野四郎氏、十八日五十万円同じ、二十四日二十万円同じ、四月五日百万円田中角榮氏、二十七日百五十万円中町四郎氏、二十八日三百九十万円同じ、二十八日百万円同じ、五月十四日一千万円田中角榮氏、十七日百万円同じ、十九日百万円同じ、二十四日六百五十万円同じ、六月三日五十万円同じ、七日五百九十万円同じ、二十五日五千万円同じ、以上でございます。
  111. 矢野絢也

    ○矢野委員 ありがとうございます。  そこで、総理にお尋ねをしたいのでありますが、総理は自民党の総裁でもいらっしゃるわけでありますから、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは総理大臣としてお答えするのではございません。自民党の総裁として申し上げるのであります。さように御了承いただきたいと思います。  大体党の運営につきましては、申すまでもなく、幹事長——私は内閣の首班であります。そういう立場から、幹事長にまかすことが非常に多いのであります。ただいまも国会対策費としてべらぼうな金じゃないか、こういうような——それは一体どういうように使われるかというようなお尋ねでございますが、御承知のように、衆参両院合わしてみますると、私どもの所属議員は四百二十名ばかりになります。そういたしますと、これはいろいろこれらの人たちの活動を便にするために、十万円ずつ出しましてもすぐ大きな金額になるのであります。したがって、案外想像されないような点に金のかかっておること、これがありますことをひとつ御了承いただきたいと思います。私は、詳細について、その金が全部どこからどういうように動かされておるか、そこまでは存じませんけれども、概括的に申しまして、多数の党員がいる。そういうところから、党員に対する慰労そのものにしてもなかなか金のかかるということ、御了承いただきたいと思います。
  113. 矢野絢也

    ○矢野委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━新聞を持ってまいりました。これを読むのは長くなりますから省略いたしますが、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君がいろいろ想像されることは、これは御自由ですが、しかし、私は先ほど申しましたように、幹事長にこの党の金の問題はまかしております。そうしてなおかつ、いま先ほど一例について私申しましたが、なかなか金の要るところというものは複雑でございますから、そう簡単に特別に法案通過その他と結びつけてこれを考える、こういうようなことは、私が幹事長であったとき、さらにまたその後の諸君が幹事長をやっておる際も、そういうようなことは絶対にございません。これだけははっきり申し上げておきます。
  115. 矢野絢也

    ○矢野委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それについて直ちにお調べをいただいて、私の質問が終わるまでに御返事を願いたい、このようにお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一応私の意見を申し述べておきます。  党の事柄でございますから、それを一々この席で報告することは私は適当でない、かように考えております。お断わりいたします。
  117. 矢野絢也

    ○矢野委員 ですから、私は、最初に総理としてのお考えを承った。政治に金がかかっては相ならない。金の動きについてはガラス張りでなくてはならないということを一番最初にお伺いをしておるのであります。そのことについて、金の動きは明瞭にすべきである。ガラス張りでなくてはならない、このように申されたのであります。いまの御返事と先ほどの御返事とは全く食い違います。この点について、もう一度御返事を願いたい。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 党の資金の金の使い方と申しますか、その使途、これは政治資金規正法が命じておりますそのとおり届け出がしてございます。したがいまして、先ほど自治大臣が読み上げましたのが、ただいまの矢野君のお持ちの資料ともぴったり一致しておると思います。これより以上のことをこの席で私がさらに掘り下げて云々することは適当でない、私はかように考えております。お断わりいたします。
  119. 矢野絢也

    ○矢野委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━あえて御報告を願いたい。その点総理いかがですか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほどからお答えしたとおりでございます。法律がちゃんと明記しておる。私ども、それより以上のことをする筋はない、かように考えております。
  121. 矢野絢也

    ○矢野委員 委員長に。これはひとつこの問題はきわめて大事な問題であります。ぜひとも委員長のほうから資料の提出を要求していただくようお願いいたします。
  122. 植木庚子郎

    ○植木委員長 矢野委員にお答えいたします。  ただいま委員長に対して御要求の資料の提出方の件につきましては、本日の委員会終了後、理事会におきましてよく協議の上善処いたします。したがって、次の御質問にお移りを願いたいと思います。
  123. 矢野絢也

    ○矢野委員 理事の皆さんに善処していただくことは、私もあえて異論のないところであります。しかし、あえて私の意見を言わしていただくならば先ほどから何べんも申し上げておりますように、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  次に、法務大臣にお伺いをしたいと思いますが、これはあくまでも一般論として、仮定の問題としてお聞きを願いたい。仮定の問題などには答えられないなんと言わないようにしてもらいたい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  124. 田中伊三次

    田中国務大臣 仮定の問題の御質問でありますが、その熱意に応ずる意味において、仮定の答弁をいたします。  いま仰せのごとき議員の職務に関して金銭の授受が行なわれたことが何らかの形において明らかになりましたならば、これは断固たる措置を講じなければならぬと存じます。
  125. 矢野絢也

    ○矢野委員 断固たる処置をおとりいただくのは非常にけっこうでございます。そう願わなくちゃなりませんが、どういうような法律にこれは抵触するのかということを伺ったのであります。
  126. 田中伊三次

    田中国務大臣 刑法に関する職務上の収賄罪が成立をいたします。
  127. 矢野絢也

    ○矢野委員 万が一これが事実であれば、たいへんなことになるということであります。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  128. 田中伊三次

    田中国務大臣 本件のごとき仮定の事情がある場合に、告発が行なわれるか、投書が行なわれるか、何か犯罪捜査の端緒を握ることができなければ、積極的捜査ということは行き過ぎであるものと存じます。何らかの端緒ある場合においては、その端緒に証拠を固めまして、先ほど申し上げましたように、順次強制力を用いて捜査をいたしたい。
  129. 矢野絢也

    ○矢野委員 要するに、自発的にはやらぬということでございますか。もう一度。
  130. 田中伊三次

    田中国務大臣 自発的にはやりようがないわけでございます。
  131. 矢野絢也

    ○矢野委員 よくわかりました。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━それでは、この件につきましては、先ほどのような事情で次に回さしていただきたいと思います。  共和製糖グループ事件につきまして検察当局捜査が行なわれました。この経過について、お差しつかえのない範囲においてお話しを願えればと思います。法務大臣にお願いします。
  132. 田中伊三次

    田中国務大臣 ちょっと申し上げますが、午前中の会議において詳細な答弁を申し上げたのでありますが、重ねて……。
  133. 矢野絢也

    ○矢野委員 伺っております。それ以上のことはございませんか。
  134. 田中伊三次

    田中国務大臣 そのときに御出席をいただいていなかったとすれば、もう一度申し上げますが、御出席があれば、これでお許しをいただきたい。しかし、具体的にこういう点はどうかという点を仰せをいただけば、ありのままに御報告を申し上げます。
  135. 矢野絢也

    ○矢野委員 ありのままに、こちらから聞けばお答えをいただけるそうでありますから、大いに気を強くして質問をさしていただきたいと思います。  この共和製糖グループ事件に関しまして、新友会と称する団体があった、これは周知のことであります。この団体からいわゆる政治資金規正法の精神に基づきまして自治省に届け出がなされております。  差しあたり、まず自治大臣にお伺いをしたいと思いますが、昭和三十七年、このときにおける新友会からの寄付の内訳はどうなっておるか。御参考までに、あとから申し上げることを先に申し上げておきますが、この三十七年の四月に、日本ブドウ糖工業会の政治団体として新友会が設立された。この当時は、砂糖輸入の自由化に備えまして、国内産の糖価安定のため、政府は助成措置をとってもらいたい、このような業界からの要望が強まっておりました。四月の十八日、池田内閣は改造されました。農林大臣は重政氏にかわられたのであります。この三十七年における、先ほど申し上げた寄付の内訳を自治大臣よりお答えを願いたいと思います。
  136. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 委員長にお伺いいたしますが、個人の名前も出てまいりますが、発表してよろしゅうございますか。
  137. 植木庚子郎

    ○植木委員長 矢野委員にお答えしますが、いま自治大臣から御相談のありました、個人の氏名の問題につきましては、資料として提出いたさせることにいたします。
  138. 矢野絢也

    ○矢野委員 私が先ほどお聞きのとおり、法務大臣共和製糖グループについての御質問をしておる、あくまでも質問のためのきわめて重要な要素であります。これをあとでとおっしゃったならば、私はこの次の質問ができません。大した問題じゃございません。先ほど、こちらでおっしゃっておるように、周知のことであります。ひとつ善処願いたいと思います。
  139. 植木庚子郎

    ○植木委員長 矢野君に申し上げますが、質問を御進行願えませんか。
  140. 矢野絢也

    ○矢野委員 先ほど申し上げておりますように、委員長の御再考を願いたいと思います。——時間がたちますから、いま御忠言のありましたとおり、私のほうから、自治省から正式にいただきました資料に基づきまして、これを読み上げたいと思います。  六月十二日一千万第一国政研究会、六月二十一日百二十五万政誠会、七月十二日二百六十万月明会、九月七日二百万政誠会、十月一日五万、これは政誠会、十二月二十一日百万日本社会党本部、十二月二十一日百万山本幸一、十二月二十二日百万越山会、十二月二十四日三百万月明会、十二月二十四日三十万日本農政研究所、十二月二十四日三十万足鹿覺、十二月二十八日二百万政誠会、同じく二百万自民党本部、三十七年度の合計が二千六百五十万であります。  続けて申し上げます。三十八年一月十七日二百五十万第一国政研究会、二月六日三十万有馬輝武、二月十四日百万月明会、同じく十八日三十万石田宥全、三月十二日二百万政誠会、三月二十日五十万月明会、四月一日五十万日本社会党本部、同じく五十万山本幸一、同じく百万政誠会、四月十八日二百万政誠会、四月二十四日五十万谷口慶吉、七月八日三百万月明会、七月十六日二百万自由民主党、七月十七日百万日本社会党本部、同じく百十万日本社会党本部、七月十八日三十万政治経済研究会、七月十八日十万白井勇、同じく二十万稲富稜人、七月十九日三百万政誠会、七月二十三日二十万人物往来社、同じく十万白鯨社、二十五日百万越山会、三十一日三十万新政治経済研究会、八月六日三十万日本農政経済研究会、十月九日五百万政誠会、二十四日五十万日本国会新聞社、同じく二十四日五十万山村新次郎、同じく二十四日三十万寺島隆太郎、同じく三十万八木徹雄、同じく三十万、双化会、同じく三十万倉友会、同じく二十四日三十万有馬農業水産研究所、同じく五十万清和会、二十五日五十万白浜仁吉後援会、二十五日百五十万豊心会、十月二十六日百万日本社会党本部、三十日三十万洗心会、十一月六日五十万民政研究会、同じく五十万竹友会、この三十八年の合計三千六百万。  三十九年一月二十九日百万対山社、三月十六日百万新農政研究会、七月三日百万豊心会、同じく三十万政治経済研究会、七月三日五十万日本農政経済研究会、四日二十万近代産業研究会、五日二十万有馬農水産研究所、六日十万日本農政研究所、八日五十万越山会、八日三十万政治経済研究会、九日三十万倉友会、九日二十万磐梯会、七月十日五十万日本社会党本部、七月三十日百万内海清後援会、九月十五日二十万有馬農水産研究所、十二月四日三百万政誠会、十二月十五日二百万政誠会、三十九年が一千二百三十万。  四十年四月二十二日百万自由民主党宮崎県支部、五月十一日三十万人物往来社、六月二十三日十万新農政研究会、八月十二日二十万松浦定義、十二月十日三百万政誠会、十二月十日二百万政誠会、十二月二十七日三十万人物往来社、こういうわけでありますが、これで間違いございませんか、自治大臣。
  141. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 そのとおりでございます。
  142. 矢野絢也

    ○矢野委員 そこで、私どもでいろいろなことをこの表から考えさせられました。個人にわたることは私は言いたくございません。しかし、先ほども昭和三十七年の政治的背景について概略を申し上げた。三十八年については、名だたる悪法であるといわれる甘味資源特別措置法がこの間において審議されております。あるいは砂糖の価格安定法、これも四十年四月十五日、法案が国会へ提出されておる。一部の業界にきわめて利害を持つこのような法案の審議にあたって、その審議の任に当たるべきであると想像される人が金を、たとえ政治資金規正法による正式の届け出であろうとも、そのような立場におられる方が金を受領しておられる。これは、はたして私たちはどのように考えたらよいのか、この点についての法務大臣の御見解を承りたいと思います。
  143. 田中伊三次

    田中国務大臣 たいへん具体的な例をあげての御意見でございますから、答弁をせざるを得ないことと存じまして、言いにくいが申し上げたい。  政治資金規正法という国の法律の条項に基づいて政治献金を受けたということの事実、政治献金をしたという支出の事実、これを出したほうも、受けたほうも届け出が行なわれておるわけでございます。ただ、受け取りましたほうが、政治資金規正法上届け出の団体でなくて個人である場合、その個人である場合においては届け出義務はないわけでございます。受け取りましたほうが届け出団体であります場合においては、新友会のほうは支出したものとして届け出を行ない、受けた団体は、受けた団体の収入として自治大臣に届け出が行なわれておるのであります。ことばをかえますと、その届け出は、いずれも公表されることを前提としたオープンの届け出の金銭授受でございます。そういう授受は、これを概論をいたしますと、一般論をいたしますというと、届け出をした汚職、届け出をした涜職、届け出をした収賄、贈賄というものは、常識では一応は考えられない。しかしながら、ただいま仰せのごとき重要法案のときの前後があるというような、重要な因縁がありまして、受け取ったという届け出をして、支払ったという届け出をしておる。しかしながら、それはカムフラージュであって、事実は議員の職務に関係のあるものであるとの積極的立証——この立証は非常に技術的に困難なものと思いますが、この立証が行なわれる場合においては、これは偽装の届け出として、やはり収賄が成立をするもの、したがって、官憲はそういうねらいからこれに全力を尽くして捜査をしなければ責任を達することができぬもの、こう判断をいたします。
  144. 矢野絢也

    ○矢野委員 非常にわかりやすい御説明でありました。いずれにいたしましても、甘味資源特別措置法、糖価安定法、これは先ほど言いましたように、一部の業者に大きな利益を与える、さように私たちは考えておる。そこで、その後検察当局におきまして、この共和製糖グループに関して捜査が行なわれました。当然私は、いま申し上げたような個々のケースにつきまして、検察当局が鋭意捜査をされたと信じております。先ほどからほかの方がおっしゃっておりますように、このことは新聞で報ぜられたことであります。そのことによって、先ほどの法務大臣の御説明のような深い理解を持たない方々は、この名前のあがっておる人に対してダイレクトに疑惑を持つのであります。したがって、検察当局のその後の捜査によって、この際、これらの議員の方々が無実である、何らそのような容疑に値しないのである、そのようなことを思うだにも申しわけないことである、そのことを法務大臣の口からひとつお話をいただいて、国民疑惑を晴らしていただければまことにしあわせと思います。そういう意味で、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  145. 田中伊三次

    田中国務大臣 告発以来二万六千点の書類を押収いたしまして調査をしておること、午前御報告を申し上げておるとおりであります。その調査の方向とねらいは、いま私が一般論として申し上げましたこの重要なねらいに基づきまして、目下これを調査をしておるものでございまして、その見通しは、いつまでもわが国政界を不安定なものでおくことはよろしくないと考えますので、早ければ今月の終わり、おそくとも来月、四月初句までには、はたして積極的立証をなし得るものなりやいなやということについて見通しをつけまして、まことに残念なことでありますが、それに抵触する人々につきましては処断の道を講ずる、しからざる人々についてはしからざる理由を説明する、天下に公表して黒い霧を晴らしたい。その晴らす態度は、私就任のときに佐藤総理大臣からもおことばがありましたように、決してこのことは政治的に顧慮を払って、政治的に配慮をするということはいたさない、信頼する検察の捜査の結果を待って、この結果を全面的に信頼をして、私がこれに承知をする、この方針をもって世の疑惑を一掃する決意でございます。
  146. 矢野絢也

    ○矢野委員 まことにけっこうな御決意を承りました。ぜひそうあっていただきたいと心から念願するのは私一人ではございますまい。私がいまお尋ねしたのは、先ほど名前のあがった人がどうなるんだということを申し上げたのであります。いまの御答弁は、共和製糖グループ事件に関する全般的な御答弁であったやに承りました。範囲を限っていま一度お答えを願いたい。  さらに、処分すべき者と、そうでない者との区別を今月末あたりにはっきりするとおっしゃっておられました。そのような処分をされる人がいま言った名前の中におるのかどうか、このこともお差しつかえなければお答え願いたいと思います。
  147. 田中伊三次

    田中国務大臣 事実を聴取いたしました名前を申し上げることはいとやすいのであります。いとやすいことでありますし、それが、いわゆる常識的に申します世の疑惑を一掃することに役立つならば、こんなうれしいことはないという心境で徹しておるわけでございますけれども、呼びまして調べました人の中には、全く純然たる届け出そのものであって、一歩進んで犯罪を構成する、すなわち、収賄のおそれのない人もあれば、幾らかそうではなかろうかと思えるような人々も少数はある。そういう事情がある者を、ここでだれを調べ、だれを調べた——数十名と私が申し上げたその数十名の内容はだれとだれだと、いまあなたのお読み上げになったようなことをここで申し上げますことは、おことばのごとく全体に疑惑を招くことになる。その人のお立場というものを考えることも、民主主義の捜査をいたします上からは当然のことであります。疑惑なき者が、堂々と受け取った金銭の授受を、政府に対して公然届け出を行なって、金銭授受が行なわれておる、そういう事実のものを、何か疑惑があるというような気持ちを持って人々が見ますときに、この席において発表することは人権のじゅうりんではないか、こう考えますので、答弁としてしにくいのでありますが、全体として、疑惑のある者もない者も、あわせてこの席において名前を読み上げるということだけはごめんをこうむりたい、こう私は道義的に考えておるのでありまして、これは正しいことだと考えておるわけでございます。
  148. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は名前を申してくれとは一ぺんもお願いしておりません。いま名前のあがっておるような方に、処分をされるような人がおるのかおらないのかということをお聞きしておるのであります。はなはだ御親切な答弁でありましたが、私の質問に対する答弁ではございませんでした、
  149. 田中伊三次

    田中国務大臣 それを、お尋ねをいただきましたお名前を私が耳にいたしまして、そのお名前のうち、あるとかないとかいうことを申し上げることは、呼びました人の名を発表することと結果は同様でございます。同じことでございます。それで申し上げかねるのでございます。御了承をいただきたい。
  150. 矢野絢也

    ○矢野委員 わかりました。  重ねてお伺いしたいのであります。それでは、この事件は今月の末に、あるいは来月の早々に落着を一応見るように伺いました。それでは、政府において、この事件の落着がつきましたときに、御承知のとおりの国民疑惑を晴らす意味において、あるいは議員の名誉を守る意味において、事件全貌を何らかの形で発表される意思がおありであるかどうか、このことについてお聞きしたいと思います。
  151. 田中伊三次

    田中国務大臣 政府が発表することは適当でごごいません、こう考えます。私も政府の一員でございますが、私自身は検察の取り調べを指揮しておる責任者でございます。また、私は、同時に政治家でございます。私の手によってこの全貌を明らかにすることも適当ではなかろうと存じます。これはあくまでも公正にして妥当な立場の人が発表する必要があると存じますので、私は、私の責任において、私の命によりまして、捜査当局責任者捜査の実情、全貌についてつまびらかに天下に公表する、こういうことを必ずやらすつもりでおります。そのやらします時期が、早ければ今月末、おそくとも来月の初句と御承知を願いたい。
  152. 矢野絢也

    ○矢野委員 よくわかりました。ぜひともそのようにされることを心から希望しておる次第であります。  それでは、政治姿勢の問題につきましての質問は以上で終わらしていただきたいと思います。  最後に、この政治姿勢の問題について、私なりの見解を申し上げさしていただきたい。とにかく、いかなる場合であれ、いかなるときであれ、明朗な公正な態度質問に応じていただきたい。捜査の秘密、捜査の上の支障がある、私は百も承知しております。しかし、あくまでも国民疑惑を晴らすことが民主主義を守っていく要諦である、この考えに立って今後ともおやりを願いたい、このように心からお願いをする次第であります。  それでは外務大臣に、核拡散防止条約と沖繩の問題と、それから安保条約、これにつきましてお伺いをしたいと思います。  昨日、核拡散防止条約の政府が現在お手持ちである資料、この条約の資料でございますが、不幸にして、私たちはその資料を持ち合わせておりません。したがいまして、その資料をいただけるようにお願いをいたしました。いただきました資料は、一九六六年の三月二十一日、その時点における米国案でございます。一九六五年の九月二十四日、国連第二十回総会におけるグロムイコ外相が提出をした、さらに十月十一日在京ソ連大使が椎名外相にお渡しになった、そのようなソ連の案をいただいたわけであります。私は、その案を拝見いたしまして、日付を見ましてびっくりいたしました。なんと一年も一年半も前の草案を資料としていただいたわけでありますが、はたして現在政府でお手持ちのこの条約についての資料はこのようなものしかないのか、あるいはお手持ちではあったけれども何らかの事情でお出しをいただけなかったのか、このことについてのお答えを願したいと思います。
  153. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、米ソの間でいろいろ話し合いをして、それが非核保有国でいろいろな条約の骨子について批判が起こってきて、まだ固まったものはできていないのです。そういうことで、むろん固まったものができれば国会にお出しをして、こういう問題は各政党で共同歩調でもとってもらいたいと私は願っておるわけでありますから、これは何も隠そうとする意図はないのですけれども、現在のところ、まだ非常に流動性を帯びておりますので、お出しをする段階にない。しかし、これができたいきさつは、いま提出しました、国連等に出されたこれがもとでありますので、大体その骨子はそういう精神によっておるので、古いけれども、これは御参考になると思って提出をしたものだと思うのでございます。
  154. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は、いただいた資料に決して不足を申し上げておるのではないのであります。この点は誤解のないようにしていただきたい。いまのお話を承りますと、非常に流動しておるので、まとまった形のものが出し得ない、このようなことでございます。私たちにとりましては、流動しておるなればこそ、検討しなくてはならない。そのためのそれぞれの時点における資料が拝見をしたいわけであります。  さてそこで、総理は、わが党の竹入委員長から核拡散防止条約につきまして、超党派の立場で話し合いをする意向があるか、このことをお尋ねいたしましにところ、その趣旨については歓迎をするという意向を表明されたのであります。あるいは三木さんも箱根におきまして、この条約については超党派による話し合いを進めていきたい、こういう発言をされたのでありますが、これの御真意はいかなるところにあるのか、このことを承りたい。これは総理に伺いたいと思います。——三木さんでけっこうでございます。
  155. 三木武夫

    ○三木国務大臣 外交の問題は、でき得べくんば各政党が共同歩調をとって外交の問題は論じられるようなことになれば、政党政治に対する国民の信用は高まると私は思っておるわけであります。これは非常に民族の将来に関係するわけです。遺憾ながら、それだけの基盤が日本の政党政治にはできていない。しかし、常にその可能性は求めたほうがいいと私は思うのであります。その中で考えてみると、核拡散防止条約は、基本的に各政党ともこの精神には御賛成でありますから、現在の時点において共同歩調がとれる唯一の外交の題目だと思うのであります。これはやってみなければわかりませんよ。そういう点で、こういう問題をできるだけ国民的な合意、これをこういう重大な問題で達成できるならば、それは好ましいことでありますので、この問題は総理にもお話しをして、総理もそういう、衆議院の本会議でいま御指摘のような御答弁もありましたので、時期を見て、この問題はそういう取り扱いをしていただくことが適当であるし、われわれもそうしたいと願っておるものでございます。
  156. 矢野絢也

    ○矢野委員 昨日三木さんは、横路委員よりの質問に対しまして、たしか核拡散防止条約は既存の安保体制に影響しないという意味のことを仰せになったように記憶しておりますが、これはどうでしょうか。
  157. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、この核拡散防止条約を日米安保条約とからませることには、反対であります。これは関係がないのであります。この核拡散防止条約が結ばれることによって、安保条約は何も影響を受けるわけはない。この条約を結んだから安保条約におけるいろいろな、たとえば安保条約による兵力、そういうようなものがふえたり減ったりするわけではない。これは全然別のものであります。これを安保条約とからませないほうがいい、関係がない、そういうことで、安保条約とは関係がないと申し上げたのであります。
  158. 矢野絢也

    ○矢野委員 そうしますと、あるいは二国間あるいは普通の国家におきまして、地域的な防衛条約を結んだ、そしてその条約の中において、核兵器を持ち込むことについて特に妨げがない、さような場合、たとえば安保条約におきましては事前協議等がございまして、持ち込めないことになっておりますが、これとは別の場合であります。そのような地域的防衛条約によって核兵器の持ち込みが妨げられない場合には、この核拡散防止条約とは何の関係もない、このように解釈してよろしゅうございますか。
  159. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この核拡散防止条約は、これだけのことをきめようというのです。核を持っておる国はこれを渡しちゃいかぬ、よそへ教えちゃいかぬ、核を持たない国はそれをもらっちゃいかぬ、つくっちゃいかぬ、教えを受けてはいかぬ、それだけのことを禁止しようというのですから、安保条約との関係は、私は何もないと申し上げたのはそれです。核兵器の持ち込みということは、政府が持ち込みを許さないという方針でありますから、これはもう全然核拡散防止条約とは何も関係がない、持ち込みを許さないのですから。そういうことでございます。
  160. 矢野絢也

    ○矢野委員 であれば、この核拡散防止条約の条文の上におきましては、核兵器の持ち込み、この持ち込みにもいろいろな場合が考えられます。つまり、比喩的な言い方で言いますと、核の引き金を、核を持たない国にゆだねる形においてそれを持ち込む、非核保有国が核の引き金まで持つ、このようなことについては、これはだめである、この核拡散防止条約によったら。しかし、核の引き金を核大国が持ったままで、その核兵器を非核国の中に、その領土内に持ち込むということは何ら禁止をされておらないし、その保障もない、かように理解してよろしゅうございますか。
  161. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま申したように、草案はでき上がっていないのです。しかし、現在までいろいろ受けておる情報では、そういう核兵器というものを渡しちゃいけぬ、引き金を渡しちゃいけぬ、管理権の問題、そういうことで、そういう問題がこの核拡散防止条約とそのままに抵触するようにはならないのではないかと私は思っておるのです。まだ詳細はわかりませんよ。しかし、日本に関する限りは、持ち込まぬのですから、日本に対しては直接そのことからの影響はない。しかし、核拡散防止条約では、そういうふうな場合、管理権を渡さぬというのですから、そういうことで、これが直接にそういう場合を禁止するような条項は入らないのではないかと思うが、これはまだ最終の草案ができてみるまではわからないことでございますので、こうだと言い切る答弁はいたしかねるのでございます。
  162. 矢野絢也

    ○矢野委員 まあ、ある程度のあいまいさを残されてお話しになられましたけれども、要するに、核の引き金を核大国が持ったままの核兵器の持ち込みは禁止されていない、いま、あなたが入手しておられる情報に基づいて考えるならば禁止されていない、このように考えてよろしゅうございますか。いま一度お尋ねをいたしたいと思います。
  163. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま御承知のように、これは何も隠す必要はないので、私が条約をつくっておるのではないのですから、隠す必要はないのですが、まだそこまでこの条約というものは草案ができ上がっていないのですから、その点というものは、まだ今後草案ができ上がってみる段階までたってみないと……(「その点についての政府の見解を言いなさい」と呼ぶ者あり)政府は核兵器を持ち込む……(「やじに答える必要はないよ」と呼ぶ者あり)それは失礼いたしました。  そういうことで、この問題は、いま、まだここまで草案ができ上がる段階になっていないので、言い切ることはできない、これはやはり日本が原案をつくっていないのですから。そういうことでございます。
  164. 矢野絢也

    ○矢野委員 いや、私が申し上げておるのは、まだはっきりわからない、だから言えない、そういうことでは、私は納得できないのです。何もかもでき上がってから、わかったところで、これは手おくれであります。いま交渉中であります。政府に対してもいろいろな情報あるいはいろいろな条文の案等が提起をされておるに違いありません。このいまの時点において、あなたが知っておられる範囲において、私のお聞きしたこの点についてはどうなるのかと聞いておるので、最後までこの件については黙って見て待っておれ、これは私は納得はいかないと思います。いまあなたが御存じの条文の中において、核兵器の持ち込み、引き金を大国が握ったままの持ち込み、これはどうなっておるかということをさっきからお聞きしておるわけでありますから、その点重ねてひとつ御答弁願いたい。
  165. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはやはりいままで得ておる情報では、管理権ですね、引き金を引くということを渡さないということで、たとえばこういう場合がありますね。原子力潜水艦で核弾頭をつけたようなもの、そういうものがちょっと寄港するような場合もあるが、引き金を管理する権利を譲渡しない場合においては、この条約の中でそれを禁止するようなことにはならないのではないか、私はいまはそう思っておる。しかし、最終的にはこの問題はこうだと言い切れるものではない。それは多数国の条約でありますから。  それからまた、これは最後にどうにもならぬようになってというふうには考えてないのです。日本のいろいろな意見などもこの条約の中に反映をしておりますから、ただ最後に、できてしまってノーかイエスかということにはならないと私は考えております。
  166. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは総理に伺いたいと思いますが、いま三木さんからお伺いした話では、いまのところ核兵器の持ち込みについてはその禁止の保障がない、このようなお話でございました。そのような核拡散防止条約であるならば、先ほど三木さんが言い間違いをされましたけれども、これは明らかに核拡散条約である。あるいは核拡散助長条約である、このように思わざるを得ない。なぜかならば、安全保障という名において、あるいはまた極東の情勢の何とかというようないろいろな事情によって、引き金を核大国が持ったままの形での核兵器の持ち込みは、核拡散防止条約によっては禁止されてない。であるならば、ほんとうの意味の核拡散防止条約の精神には合致しない、骨抜きである、私はそのように考えます。その点についての総理のお考えを承りたいとともに、いま一つは、もししからば、そのようなことになっておるのであれば、総理は、核大国に対して、この条約の中で引き金つきの、引き金を核大国が持ったままの核兵器の持ち込みすら禁止すべきである。この条文をこの条約の中に入れることを強く要求される御意思がおありであるかどうか、このことをお伺いしたいと思います。
  167. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私に関連することがあるので……。  一つは矢野君のこの条約の精神が核拡放の条約である、これは矢野君、お考えを願いたい。いま五つの国が核兵器を持っておるわけですね。その五つの国が持っておるだけでも、これは人類に対して相当の脅威になっておるわけです。これを第六の核兵器の保有国をつくらない。中共もフランスもこの条約に入らぬといっておりますから、不完全ではあるけれども、核の保有国を五つだけに抑えておいて、そして第六、第七番目の核保有国をつくらぬという考え方が核拡散になるとは私は思わない。しかも五つだけに押えて、五つの国を核軍縮によってだんだんと核の軍備を減らしていこう、核戦力を減らしていこう、しかたがない、五つができたことは残念だけれども、できたのだ、これを核軍縮でだんだん減らしていきながら、一方には、第六、第七、第八番目の核兵器保有国をつくらぬというこの条約の精神が核拡散であるという矢野君の説には私は承服できない。このねらっておるものは、それは考えてみても、核が世界各国にふえていくのと、核をとにかく五カ国に押えて、そして核の拡散を防ごうということ、核戦争の危険を防止するためにどちらを選択するかということは、政治家としてやはり見識のある判断を下さなければならぬ問題で、この条約を核拡散のための条約であるというふうにとることはお考え直しを願いたいのであります。
  168. 矢野絢也

    ○矢野委員 いま仰せのあった限りにおきましては、私も全く同意見であります。しかし私が申し上げておるのは、いまお話しのあった五つの大国がよその国に核基地を設けて、そして国際情勢の緊張をもたらしておる。これがこの核拡散防止条約によって禁止されていない。であるならば、何も核拡散防止条約の効果が大きく期待できないではないか、このような意味で申し上げたのであります。したがいまして、そのような意味において私の質問にお答えを願いたいと思うわけでありますが、いま申し上げたように、核大国に対してこのことを禁止すべきであるということを要求する御意思が総理におありであるかどうか、このことをお伺いしたいと思います。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど三木外務大臣がお答えしたので、もう何も誤解はないかと思っております、政府の意見は統一されておりますから。  そこで、ただいま核拡散防止条約は草案であること、これはもう御承知のとおりであります。また草案であるならば、核非保有国といいますか、日本のような立場の国がこれにどういうような意見を持っておるか、これをひとつ事前に十分話し合っておいて、そして日本の希望が達せられるような条約にしろ、保有国だけでかってにきめるようなことをするな、こういう御注意、これは私どもよくわかっておりますし、皆さま方の御意見もそれぞれの機会に表明するのが当然でございまして、これは外務省が、ただいま国連その他におきまして、またその他の同じような国同士におきましても意見を交換しております。ただいまの米ソ間の草案作成におきましても、これを反映するような態度をとっております。したがいまして、これからどういうような最後になりますか、さらに努力を続けてまいりまして、また最後には、日本がこの条約を批准するかどうかというその場合において、皆さん方からも国会においての御審議をいただかなければならない問題でありますから、ここらにまだまだ幾つも段階のあること、これはもう御承知のことだと思います。  そして、もう一つ大事なことは、日本自身が核物質、核兵器についてはっきりした態度を表明しておりまして、もう製造もしない、自分は持たないし、また持ち込みを許さないと、あらゆる機会に声明してきております。日米安全保障条約がありましても、このことは変わらない状況でございます。したがいまして、米ソ間でいま審議されておる核拡散防止条約、そういうものができ上がるに際しましても、日本がこういう主張をしているのだということは百も承知でございますから、ただいまのような点で御懸念になる必要はないように私は思います。  もう一つ、日本に関する限り、問題のないことをはっきり申し上げておきます。
  170. 三木武夫

    ○三木国務大臣 矢野君の言われることは、こういうことなんです。核拡散防止条約は、いろいろできておる集団安全保障条約があるでしょう、NATOとかいろいろある。この機能というものを何ら阻害しないというのです。だから、NATOなんかには核兵器の持ち込みも行なわれておるわけですから、この条約を結ぶことによって、そういう集団安全保障条約の機能が変わるのでないわけです。私が、この条約の中ではそういうことには触れないことになるだろうと言ったのは、いままである集団安全保障条約全体を変えるのじゃないのです。この条約は、その機能には影響を与えないのです。それは各国の関係なんです。この条約からきて、核兵器を自由に持ち込みができるというのなら、日本は持ち込みを許さないというのですから、集団安全保障をやっておる各国のたてまえによって、いままで持ち込んでおる国もあろうし、持ち込まぬ国もあろうし、それはやはり集団安全保障条約の当事国がきめることで、この条約が何ら影響するものではないということを申し上げたのであります。
  171. 矢野絢也

    ○矢野委員 非常に御懇切なる御説明をいただきましたが、残念ながら、私の質問に対するお答えではございませんでした。私がお伺いしておるのは、確かに総理が仰せになったように、日本に関しては核兵器の持ち込みは安保条約によっていまのところなされることはない。総理もそういう意向はないということでございました。私はよくわかります。しかし、この条約は、日本と核大国との、それだけの間で結ぶ条約ではございません。世界的な観点に立ってこの条約が結ばれ、そしてその影響を受けるのであります。したがいまして、総理が、わが国には核兵器は持ち込まさないという強い御意思があるのであれば、むしろ一歩前進して、この核拡散防止条約の中にその条文を盛る御意思があるかないか。いま三木大臣にお伺いした話では、現在の時点における核拡散防止条約には、核兵器の、つまり引き金を核大国が握ったままの持ち込みについては何ら触れていないとおっしゃったのであります。それは、いわゆる地域的な防衛条約によって規定されておる、こういう御説明でございます。それは私はよくわかっております。したがって、一歩前進して、この核拡散防止条約に対する日本政府の要望として、この条約の中に、核兵器の引き金を核大国が握ったままの持ち込みは禁止すべきであるということを要求される御意思があるかどうかということを先ほどからお聞きしておるのでありますが、そのことについての御答弁はなかったのであります。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の答弁に対して、さらに外務大臣から補足いたしました。その二通りの行き方があります。日本のような行き方とか、あるいは欧州のように集団安全保障条約をやっておる、そこらではもう現に持ち込みを考えている、そういうことでございますから、ただいまの米ソ間の基本的な核拡散防止条約、それに私ども条件をつけることは適当でない、かように考えております。
  173. 矢野絢也

    ○矢野委員 私は総理のお考えには納得できません。この条約は、本来、現在の体制そのものを肯定する立場から出るものじゃございません。将来の拡散を防止しようという発想があるわけであります。したがって、いまのように、現時点においてはヨーロッパにおいてすでに核兵器の持ち込みが行なわれておる、だからそのような要求を、将来に対して大きな期待をかけておるこの核拡放防止条約に対して要望するのはおかしい、これはまさに論理のすりかえであります。NATOにおいてどういうことが行なわれておろうとも、ワルシャワ体制においてどういうことが行なわれておろうとも、あなたのいまの立場においては、そのようなことは考えるべきことではありません。たとえ現在はどうあろうとも、将来においてこのようなことをなくするのが望ましいというのが総理のお考えだったはずです。そういう意味において、これを要求するお考えがあるかどうか、くどいようでありますが、もう一度お伺いしたいと思います。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えしたとおりでございます。私は、核軍縮は、これは全廃になる、こういうことの方向で努力すべき事柄だ、この点には私も賛成でございますが、現状においてそこまで言うこと、申し込むこと、これは私はしない。ことに日本に関する限り、日本政府自身の基本的な態度を守り抜く、これで御了承をいただきたいと思います。
  175. 矢野絢也

    ○矢野委員 これはこれぐらいにしておきましょう。いまのお話から私が理解しましたところでは、要するに、この核拡散防止条約に対しては、引き金を核大国が握ったままの核兵器の持ち込みを禁止する条文を日本政府として正式に要求する御意思はない、私はそのように理解いたしました。そうして日本に関する限りは、安保条約あるいは私自身のそういう方針があるのだから心配はいらぬ、よそのことまでは私は言いたくない——私はそのような消極的な姿勢ではちょっとばかり困ると思います。まあ、これはこの辺にしておきましょう。  それから、沖繩の施政権の返還につきまして努力をしてこられた、今後も努力をする、こういうふうに言っておられます。沖繩における核基地、これはあなたが全面返還とおっしゃておるそのことばの中において、この沖繩の核基地はどうなるべきであるか。要するに撤廃するのか、核基地つきのままで、変な言い方でありますが、こぶつきのままで返還を要求するのであるか。きのうも御質問がございましたが、そのことをあらためてお伺いしたいと思います。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一昨年が、私がアメリカに参りまして、ワシントンでジョンソン大統領と話をした。そしてジョンソン大統領と私との共同コミュニケを発表いたしております。これで非常にはっきりしておると思います。両国は、極東の安全、これが沖繩の返還を許すようになることを心から願っておる、こういう表明でこの事態がおわかりだと思います。私は、ただいま施政権を持っておらない日本、これが、どういうような状況に沖繩が置かれておるか、こういうことについて基本的にとやかく言う権利を持っておらない、まことに残念でございます。しかし、私どもは潜在主権を持っておりますし、ここに住んでおる人たちはみな日本人でございます。そういう意味で、これらの福祉向上、生活が充実することについてあらゆる努力はいたします。しかし、いまの沖繩基地が果たしておる、日本を含んでの極東の安全と平和に貢献しておる、この点を見のがすわけにはいかない、かように私考えております。
  177. 矢野絢也

    ○矢野委員 全面返還のときにおいて、沖繩の核基地を残したままで沖繩を日本のほうに編入される、そういうお考えでございますか。もう一度お伺いいたします。いまの御答弁は私のお伺いしたこととは違うようでございます。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 確かに少し明確を欠いたようです。したがいまして、沖繩返還の場合は、絶えずただいま申し上げたような極東における平和、同時にまた世界の平和に果たしておるそういうことを年頭に置きつつ、返還の実現をはかるべきだ、こういうことを申すつもりでございました。したがいまして、軍基地を分離して返還が可能なのかといいますと、そういうような事態はなかなか考えられないのじゃないか、かように思います。私は、いまの極東の平和、安全に果たしておる役刷りを念頭に置きつつ、祖国復帰を実現すべきじゃないか、かように考えるのでございます。
  179. 矢野絢也

    ○矢野委員 いまの総理お話は、かなり重大な意味を持つのであります。核基地の撤廃が行なわれる可能性があるかどうか、それはきわめて——そういうことはないという意味の御発言がいまありました。そして極東の情勢によって云々ということは、極東の情勢がいつまでも沖繩の核基地を必要とするような状態であれば、これの返還は、その撤廃は考慮できない、このように理解してよろしゅうございますか。それが一点でございます。  それといま一つは、総理が現在沖繩の返還についてお持ちである構想、その構想は、この核基地の撤廃を抜きにしてはお考えになっていない、十分それは考慮しておられる、その点が第二点であります。  第三点は、したがいまして、極東の情勢は、これは私の判断によれば、当分アメリカは沖繩を不必要とするようなことは生じないと思います。必要であろうかと思います。これはライシャワー氏もそういった意味のことを一月三十一日のアメリカ上院外交委員会において申しておられます。重要、かつ貴重なものである、こうおっしゃっておる。であるならば、結論するに、総理の御構想は、核基地つきの返還をお考えである、このように考えてよろしゅうございますか。  この三つについて御返事を願いたいと思います。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、沖繩が安全確保のために果たしておる役割り、たとえば、これは日本ばかりじゃありません、韓国あるいは台湾、フィリピン等、一連の問題として沖繩がそういうところに対する安全確保上大きな役割りをしておる、これはひとつそのとおり私どもは率直に認めるべきだと思います。  しかし、今後、第二の問題といたしまして、ここに軍基地を持つ必要ありやいなや。もっと具体的に申せば、四囲の状況、アジアの状況、国際情勢が変わる。もう一つは、武器の発達がこういうところに軍本地を持つ必要がなくなる、こういう場合もあろうかと思います。この二つが沖繩に基地がなくてもいい、こういうことだと思うのですね。  第三の問題では、アジアの状況において、もう恒久平和は確立されている、そういう状況ではいまない。だから、いま御指摘になりましたように、第三点としては、なかなかアジアの状況そのものは変わらないだろう、こういうことが言われると思う。そういたしますと、今度は防衛体制そのものは沖繩でなければならないのかどうか、こういう問題があると思います。したがいまして、私、いまの沖繩そのものはアメリカの施政権下にある、日本の状態は潜在主権を持っている、そうして、しかもここに住んでいるのは日本人である、そうして一日も早く祖国復帰を願っておる、これはあらゆる機会に、あらゆる努力をすべきである、こういうわけでございます。いま私が申し上げるような、たいへん都合のいい方向に世の中が進んでいけば、これはたいへんしあわせでございますが、なかなかそれが進まないとき、それならば一体どうするのか、昨日もそういうお尋ねがありました。いわゆる基地、それと一般行政権の部分とを分離して祖国復帰が可能なのか、そういうことを努力するかどうかというようなお話がございました。私それにお答えして、あらゆる機会に総合的な観点から、この祖国復帰を早く実現するように努力したい、こういうことを申しました。しかし、いままでの関係から申しまして、軍基地をそのままにして、その他の部分の祖国復帰というのは、なかなかいまの実情ではむずかしい問題じゃないか。しかし、これが全然できないのだとか、これが全然できるのだとか、可能なんだとか、こういう結論はまだ出しておりませんが、こういうことをも含めて祖国復帰の実現の早いことを努力すべきじゃないか、これが私どもの考え方でございます。
  181. 矢野絢也

    ○矢野委員 客観条件、つまり極東における情勢、ただこの面から論じていくならば、アメリカにおける沖繩の核基地の存在は必須のものである、このような御観測をしておられるように私はいま承りました。これは総理のお考え以外に、先ほど申し上げたアメリカのほうの考えもそういう考えであります。戦略上からは沖繩の核基地を放す意思はないようであります。それは、先ほど申し上げたライシャワー氏の発言、その他の高官の発言によって十分想像されます。  そこで、そのような認識のもとに、たとえばきのうも外務省高官筋なる人が——これがどなたかは、これはいいでしょう。その方が総理以上に大胆な発言をしておられるのであります。私は、昨日の委員会における総理の御発言はきわめて慎重な発言であり、またきわめて要領を得ない発言であるやに私なりに承りました。しかし、外交筋のこの高官の御見解たるや、きわめて明快であり、きわめて大胆であります。もうこれは言うまでもないでしょう。御存じだと思います。日本が核基地の存続を認めるならばアメリカは返すかもわからない、こういったことを示唆する発言、これを総理はどのようにお考えになるか、あらためて伺いたいと思います。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の基本的考え方は先ほどからるるお話しいたしております。ただいまのような話が出ましても、私の考え方には変わりございません。
  183. 矢野絢也

    ○矢野委員 総理お話を要約すると、この外務省高官の発言になると理解してよろしゅうございますか。
  184. 三木武夫

    ○三木国務大臣 矢野君のお話は、沖繩の返還問題について政府の考え方が、きのう外務省の高官筋といって新聞に出た、いわゆる沖繩の基地の自由使用を認めるということにおいて返還が促進されるだろうというような記事をさして言われておるんだと思うのです。それは私は一つの考え方だと思うのですよ。しかし、そればかりが考え方ではない。総理がいまここにお答えになっておるのでも、いろいろな核を含む戦力というものに変遷もあるではないか、核基地に対してのいろいろな考え方も違ってくるではないかという答弁をいまここにもされておりましたから、ただ基地としての自由使用を許さなければ沖繩の返還ができないんだというふうに、そんなに思い詰めて考える必要はない。可能性というものはいろいろある。だから、総理がいま言われておることも、結局はあらゆる可能性をやはり探求するのだ、一歩でも半歩でも、施政権の全面返還に近づくことは何でもするのだ、何でもやっていく、旅券のことでも、旗のことでも何でも、施政権の全面返還に近づくものはやっていって、そうして一日も早く全面返還を望みたい、国民の要望に沿いたいというのですから、もう基地の自由使用を認めなければ返らぬのだといって、そんなに問題をそこに限定する必要はないので、いろいろな場合、あるいは帰納的に、いま沖繩の懇談会なんかでも検討されているような問題もありますし、いろいろな問題をいろいろな角度から考えて、そして施政権の全面返還に近づけたいというのが立場であって、もう沖繩の施政権返還は基地の自由使用一本やりでいくのだというようなことではないということでございます。
  185. 矢野絢也

    ○矢野委員 要するに、沖繩における核基地の存続は考え方の一つとして存在するのだと、こういうふうに承りました。考え方としては、あえてそれは否定をしないというふうに私は受け取りました。しかしこれは、あらゆる場合、あらゆる方面からやるといって済ませる問題ではございません。いろんな場合が想定されることはよくわかります。しかし、想定されるいろんな場合のうち、政府が考えてはならない構想というものも、そのいろんな構想の中にはあるわけです。純粋理論的に、ああいう場合、こういう場合ということを考える、その場合ならそれはあり得るでしょう。しかし、責任のある政府が、沖繩の将来に対して、こういうあり方もある、ああいうあり方もあるということをお考えになる場合には、そこにおのずから政治姿勢といいますか、沖繩に対してこうあらねばならないという、そういった基本的なものにささえられて、その構想がおのずから制約されてまいります。非常に回りくどい言い方をしますが、いまお話しになった一つの場合、核基地つきの返還、これは可能性の一つとしても、政府は考えるべきではありません。なぜかならば、わが国には核の持ち込みが禁止されておるのであります。あなた自身がそれを否定しておられる。持ち込まないとおっしゃっておる。私たち国民はそれを強く要望しております。そういうことは百も御承知であります。そのような認識の上に立たれて、しかもなおかつ、あらゆる可能性のうち、この一つの、いま申し上げた問題ですね、核基地つきの返還ということは考慮をしておられるかどうか。そうきめておるとは私は聞いておりません。そういう場合も想定しておられるかどうか。純粋理論の問題としてではなくして、いま申し上げた意味づけにおいて、認識の上において、御返事を願いたいと思います。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考え方は先ほどから十分お話しをしたつもりですし、また矢野君の御意見も十分伺いました。私、いま考えますのに、どう言ったら納得がいくかと思っていろいろくふうしておるのですが、そこから見ますると、近い将来にいま言われるような事柄は考えられない。これは、遠い将来はいざ知らず、近い将来にはそういうことは考えられない、かようないまの感じでございます。もっと具体的に言えば、近い将来において核基地つき返還というようなことがあるか、かように言われれば、近い将来にはそういうことは考えられないのじゃないか、かような結論でございます。
  187. 矢野絢也

    ○矢野委員 このことで議論しておっても時間がたちますけれども、論点がまたずれておるのです。それはよいでしょう。  要するに、総理は、核基地つき返還も十分考慮しておられる。その場合、安保条約との関係はどのようになるか。これは説明するまでもございません。安保条約によって、核兵器の持ち込みは事前協議の対象になっております。この場合、沖繩に存在する核基地はどのように考えたらよいか。そういった場合、核基地つき返還が行なわれた場合には、核基地は安保条約とどのような関係になるか、政府のお考えを承りたい。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま申し上げますように、近い将来にそういう事態は起こりませんから、いまお尋ねがせっかくございましたけれども、私どうもお答えすることはいかがかと思います。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  189. 矢野絢也

    ○矢野委員 それでは、昨日のお話で、安保条約を堅持する、このことは何回も伺っておるわけでありますが、この堅持をするというお考えの中に、核兵器持ち込みについての事前協議交換公文、このことについての考え方も堅持する、このお考えはどうでしょうか。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 安全保障条約体制を堅持します。したがいまして、ただいま、私どもがかねてから申しておるような持ち込みその他についての事前協議の協定、これはそのまま堅持する、こういうことでございます。
  191. 矢野絢也

    ○矢野委員 最後に、超党派外交のことについて重ねてお伺いしたいと思いますが、先ほどもちょっと申し上げまして三木大臣に御返事をいただきました。超党派外交といいましても、正確に申しますといろんな場合が考えられます。少数党に対して責任ある外交政策決定の役割りを割り当てるという場合も考えられます。あるいは意見を求めるということも考えられます。いろんな場合がございますが、最も実現可能な超党派外交——総理がお考えになっておる超党派外交は、そのような政策決定に至るまでの発言権を認めるということじゃなくして、単に協議をしていく、こういうような意味合いだろうと私は想像しておるわけでありますが、その点についてどうでございましょうか。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君が言われるように、私どもは、外交の基本というものは国民外交を展開する、あらゆる機会に国民の理解と支援のもとに外交を進めていく、そこに力があるわけです。国民とは何ぞやといえば、これは申すまでもなく各政党がこれを代表している。そういう意味から申せば、どうしても各政党で話し合って外交を進めていく、これは望ましいことだと思います。ただ、それには世界観を異にするのでは困ります。ここに一つの問題があるわけです。それからもう一つは、外交そのものが政争の具に供される、そうして国の機密が保てない、こういうようなことがあっても困るわけですね。そこで、望ましい形と現実の問題は違う。ことにいまは、私ども政党国民に対して責任を負うている。そういう議会責任政治、そういうもとで政治を行なっております。外交もまたそういう意味責任の所在ははっきりしている、かように思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、ただいまのお話で、あるいは少数党といえども、ときに国の外交を進めていく上においてあるいは調停の労をとるような気持ちがおありじゃなかったかと思いますが、そういうようなことであると、この責任の所在が非常に不明確になる。こういうことは困るだろうと思います。一般について超党派で話し合いをして、いわゆる国民外交の実をあげることは、これは望ましいには違いありません。しかし、それには相当の段階を経ないと、ただいまの状況ですぐにはそこまでいかないのじゃないだろうか。そこで、先ほど三木外務大臣が申しておりますように、核拡散防止条約、これらの問題は、その趣旨においてはそれぞれの政党がみんな御賛成のようでありますから、この趣旨が賛成であり、そうしてあとの問題が細分されて、それらの点であるいは意見の対立がありましても、比較的に政党責任の所在も明確であり、しかもまた話し合いがつき、そうしていわゆる外交が政争の具になるというような危険はないように私思いますので、これなぞはたいへん適当じゃないだろうか、こういうように思ったのであります。それが三木外務大臣の発言でもあったと思います。しかし、これで成功して、全部にこれがそういう形をとる、ここまではちょっと言いかねております。どうかお互いが国益本位に、また国益中心に、共通の土俵の上に立ち、そして外交問題を政争いの具にしないという、世界観を同一にしたような意味でほんとうに国民外交を展開していく、こういう意気込みで話し合えることが一番望ましい、かように思います。
  193. 矢野絢也

    ○矢野委員 少々時間が超過するようでございますが、この問題はいましばらくお時間をいただきたいと思います。  世界観を異にする場合はむづかしいと、このように言われておりました。しかし、一面においては、超党派外交を推し進めたいという御意向でございます。であれば、この世界観の違いを話し合いによって克服される自信があるかどうか、これはいかがでございますか。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 相当自信のある男ですけれども、どうもこれを克服する自信はございません。
  195. 矢野絢也

    ○矢野委員 自信がなければ困りますね。超党派外交をやりたい、しかし自信がない。これでは、総理としての希望的な見解にとどまるではないでしょうか。先ほど超党派外交の利点について総理からお話がございました。私も賛成であります。ぜひそうあるべきだと私も思います。また、そのお気持ちを総理は強くお持ちになるべきだと思います。それが、世界観が違うから私は自信がない、これではせっかくのよいお考えが意味がなくなるように私は思うわけであります。私は、総理がそういう弱いお考えではなくして、世界観が違おうとも、積極的な姿勢で野党に呼びかけて、そして超党派外交を推進する、その責任と努力を政府がお持ちになるべきである、かように思います。その点について、いま一度お考えを承りたいと思います。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 矢野君のお話、大体私もわからないじゃございませんけれども、いまお考えになりますように、各政党のものの考え方、ことにしばしば言われることでありますが、社会主義と私どもとの間の話し合いくらいは、それはつくかわかりません。しかし、共産主義ともなりますと、これはなかなかつきかねる、これは事実でございます。そういうところに問題があるように思いますから、これは私は非常に正直に自信がないということを申し上げたのでございます。さらに、ただいまのような御鞭撻をいただきまして、また各政党とも、事柄が重大であればあるだけに、そういう事柄には真剣に取り組み、そして国民外交の実をあげるように、問題は、重大な転機に立てば、いまのような気持ちでもなく、さらに統一するときもくるのじゃないかと、かように私は思います。
  197. 矢野絢也

    ○矢野委員 核拡散防止条約については推し進めるお考えがおありのようでございます。その場合は、これは具体的な実際問題としてお聞きするわけでありますが、各党と個別にお話し合いをされるのか、あるいは、いまのお話であれば、共産党を除いた全党を集めて御協議なさるのか、それが一つ。さらに、この核拡散防止条約の話し合いにおいて、単に政府の意見あるいは行動というものを野党に通知する程度の協議であるのか、あるいは、この核拡散防止条約について少数党あるいは野党の考えを反映していくのだというお考えがおありなのか、その点についてお伺いしたいと思います。これは実際問題としてお伺いしておるわけであります。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 具体的にどういう方法をとるか、いきなり大きな会議を持ちましても、それは必ずしも目的を達するものではないと思いますし、また個々に話し合いをするにいたしましても、それだけでも十分ではないだろうと思います。やはり会議で、共通の問題、共通の考え方に達するような手順を踏まないといかぬと思います。これはどうしたらいいか、さらに具体的にこれから考えるつもりであります。また、少数党といえども、それはもちろんこういう超党派という以上、ただ単に私のほうの考え方を通告するのなら、それは会議じゃございませんから、そういうことではございません。正しい意見、それぞれはよく十分伺うべきは伺い、また取り入れるべきは取り入れる、こういうことでなければ、せっかく意見を述べられるほうでも張り合いのないことだと思います。問題は、こういう問題が十分成果のあがるような方法——初めての試みといいますか、もとはありましたけれども、今度はこの問題をひとつ取り上げてみようか、こういうふうに政府もせっかく言っておるのでありますから、各政党とも、そういう意味でひとつ成果があがるように御協力願いたいと思います。いま直ちに具体的にどうこうするということを申しておるわけじゃありませんが、これを具体化したそのときには、ひとつ各党とも御協力願うようにお願いしておきます。
  199. 植木庚子郎

    ○植木委員長 矢野委員に申し上げます。お約束の時間がまいりましたから、なるべく早く結論をお急ぎください。
  200. 矢野絢也

    ○矢野委員 最後に申し上げたいのですが、世界観の違いについては、社会党あるいは共産党のことについてお話がありました。公明党といたしましては、何も総理のおっしゃることについて全面的に賛成をして、超党派外交をやれと言っているわけではございません。わが公明党は、現在の外交が、言うなれば秘密、独善外交におちいりがちである。そして国会における論議が、先ほど私も如実に味わさしていただきましたけれども、平行線であります。これでは国民の基礎の上に立った外交というものはできるものじゃない。そういう意味において政府・与党の深い反省を求めたい、こういう意味で申し上げておるのであります。先ほどのお話では、わが公明党に対しては超党派外交はスムーズに進むようなお考えを持っておられた。私は、まず政府のほうでそのようなしっかりしたお考えを持ってやっていただきたい。このことをお願いしたいと思うわけであります。  委員長、どうもありがとうございました。(拍手)
  201. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて矢野絢也君質疑は終了いたしました。  大原亨君。
  202. 大原亨

    ○大原委員 私は、本論に入ります前に、社会党の今朝の国会対策委員会で決定いたしましたことにつきまして、まず最初に佐藤総理、続いて自治大臣に引き続いて質問をいたしたいと存じます。  と申しますのは、今朝の各新聞にも報道いたしておるところでございますが、東京の都知事選挙にかかわる問題であります。かつて昭和三十八年の都知事選挙におきましても、社会党が推薦をいたしました坂本勝候補に対抗し、これを混乱させるために橋本勝というまぎらわしい泡沫候補が立候補したことがあるのであります。これは、その当時怪文書とか、にせ証紙とか、あるいは某団体による演説会場の撹乱とか、あるいはいろいろな形の買収、こういう問題とともに、非常な都民のひんしゅくを買い、良識ある人々から批判を受けたのであります。佐藤総理は本会議におきまして、今回の都知事選挙はきれいに正々堂々と戦おう、こういう国会答弁を通じて国民に約束をされたのであります。しかし、きょうの新聞が報道いたしておりまするように、候補者の中に突然昨日になりまして野々上武敏という人が立候補いたしまして、そして自分のペンネームと称しまして水戸という名前を届け出をしようといたしたのであります。これは読み方によりますと、水戸ですから、「みのべ」、こういうことになるというふうに、世間では当然のことのように疑惑を持っておるわけでございます。当の野々上候補は、新聞の伝えるところによりますると、前回総選挙におきまして立候補いたしまして三百数十票の票を取ったわけでございますが、この際、ひとつ泡沫候補といわれてはなんであるから、心機一転、名前を変えて、水戸という名前で立候補するのだということを言っておるというのであります。野々上の名前で出にくい理由をあげておると一緒に、立候補した一番の動機は、もちろん革新都政阻止のためである、さらにまた、娘が四月二十九日にホテルオークラで結婚式をあげるが、その仲人は松下氏であるということを言っておるというのであります。こういうことは、善良な都民の立場、良識ある人々から考えますと、——私がここで読み上げにくいことがまだたくさん新聞記事で公然化されておるのでございまするが、そのようなことはどのような背景があり、突然このような泡沫候補がペンネームと称してこういう名前をかたって出たか、そういう問題の背景についてはあえて言いませんけれども、このようなことは、今回の総選挙後の都知事選挙といたしましては、非常に私は問題ではないかと思うのであります。総理大臣は正正堂々と戦うという宣言をされたわけですから、こういう点について、事いやしくも自民党との関係においていかがわしいことがないように、その点につきまして、私はこの予算委員会を通じまして総理大臣の御所見をもう一回明らかにしていただきたいということが第一点であります。  もう一つの点は、昨日選管に対する届け出の際に、供託金の十五万円を持ってきていなかったとか、あるいはいろいろなことがいわれております。先般の泡沫候補がたくさん出てまいりました都知事選挙その他の選挙の前例にこりまして、法律を改正いたしまして、広範に知れわたっておるペンネームでなければこれを登録することはできないというふうに選挙法の施行規則が改正になっておるわけでございまするが、こういう問題につきまして、中央選挙管理委員長は、きわめて意図が明確でございまするし、あるいは法律施行令の精神からいいましても、これはきわめて疑惑の多い問題でありまするから、法律の改正の趣旨からいいましても、このような水戸という名前における届け出を許可すべきではないではないか、こういうように私は思うのであります。総理大臣と自治大臣のほうから、それぞれ私は見解を明らかにしていただきたいと存じます。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、東京都知事選に対する態度といたしまして、本会議の席上におきましてはっきりわが自由民主党態度を申し上げました。これにはもう誤解はないと思っております。  しかし、いまのお尋ねだと、何だか水戸ですか野々上ですか、そういう人の立候補がわが自由民主党関係があるようなお話で、聞き方によっては非常に迷惑をいたします。私は全然そういう者を知りませんし、また党内においてもさような者を知ってはおらないと思います。これはたいへん意外な御発言でございます。こういうことは、せっかく正々堂々と戦おうじゃないか、かように申したその直後でございますだけに、私も非常に意外に思うのですが、どうか自民党とそういう者の関係のないこと、これだけははっきりしておいていただきたいと思います。  また、ただいま松下自身が娘さんの媒酌をする云々、それはどういう意味でそういう記事が書かれておるか、それはまた別といたしまして、私どもの関知するところじゃございません。また立候補の法律的な条件その他については、これは自治大臣からお答えいたさせます。
  204. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 選挙法上の通称とかペンネームとか、ただいま御指摘のとおり、相当広く、また周知されたものであるべきでございます。今回の場合につきましては、なお事実関係を私どもつまびらかにしておりませんので、東京都選管を通じまして調査をいたしまして、法令の基づくところに従っていたしたいと考えます。
  205. 大原亨

    ○大原委員 この野々上武敏候補は、わざわざ水戸という、「みずと」あるいは「みのべ」こういう名前に変えまして、そして立候補しようと、こういうことでありまして、「みずと」のほう、「みのべ」のほうは、昨日の段階では、広く周知徹底しておる名前、ペンネームではない、あるいはいろいろなそれらの意図において問題があるという、そういう観点から、そういうまぎらわしい名前のほうは、受付をされなかったのじゃないか。したがって、野々上武敏君は野々上武敏という名前だけで堂々と戦えるわけであります。先般の総選挙で三百六十票か四十票しかなかったから、心機一転とこう言いましても、これは通らないことであります。ですから、立候補についての権利を制限する趣旨ではないわけですから、公明な選挙のたてまえから、私は選挙管理委員会は明確な態度をおとりになって、——この前の総選挙のときに、いま総理大臣も御不満のようでございましたけれども、にせ証紙とか、あるいは泡沫候補とか選挙の妨害とか、全く都民の有識ある人々のひんしゅくを買った事件があったわけでございますから、私どもは重要なこの選挙にあたりまして、総理大臣が言われるように正々堂々とこれを行なわれる、こういうことが私どもの希望でございますので、その点につきまして、もう一度ひとつ自治大臣の見解をはっきり申し述べていただきたいと思います。
  206. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、通称とかペンネームとかというのは、相当広く使われ、また周知されているものであるべきです。したがいまして、そういうものでなければ、それは届け出を受け付けるべきではないと思いますが、私自身その事実関係をまだつまびらかにしておりませんから、東京都選管を通じまして調査をいたし、明確な態度をとりたいと思っております。
  207. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連して。  自治大臣、これはこの新聞を見ると、選管がいま迷っているのです。彼は、かつて報知新聞の記者をやって、都政浄化刷新連盟、こういう看板を持っているのです。政治新聞というのを出しておる。この政治新聞でのペンネームが水戸鉄平という名前を使っておるのです。この「水戸」というのは、本人は「みのと」だと言っているのです。水の戸ですから「みのと」と登録するのだ。ところが「戸」という字は、御承知のように神戸であるとか八戸であるとか、「べ」と読むのです。どうもそういうところにこの候補者の何か意図があるのです。しかも大きな目的が、革新都政阻止だと本人ははっきり言っているのです。ですから、いま自治大臣の御答弁を聞いておれば、はっきりと、有名なペンネーム以外は登録させないと言われる。有名なペンネーム以外は登録させないということになれば、この候補者は野々上武敏という名前があるのだから、これ以外のものは許可しないということをはっきりしてもらいたいのです。
  208. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 この事実関係を東京都選管を通じまして至急に調べまして、そして確固たる態度をきめたい、こう存じておるわけでございます。
  209. 中澤茂一

    ○中澤委員 それでは至急事実関係を調査しまして、ひとつ文書でけっこうでございますから、わが党委員長あてに回答を要求しておきます。
  210. 大原亨

    ○大原委員 それではこれから本論に入りたいと思いますが、佐藤総理大臣は、施政方針演説あるいは本会議答弁等におきまして、二十年後の国民生活水準に触れられまして、二十年後にはアメリカの生活水準にする、こういう発言をされておるのでありますが、これはどのような構想あるいはどのような考え方を基礎にして、あるいは根拠にいたしまして御発言になったことばか、ひとつ最初に伺わしていただきたいと思います。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のことだと思いますが、国民生活審議会という会がございます。これは政府がいろいろ相談を持ちかけておる会でございますが、その審議会で、昨年の十一月十五日に「将来における望ましい生活の内容とその生活の実現のための基本的政策に関する答申」というのがございます。この答申では、私が申し上げるまでもなく、いまの経済成長を続けてまいりますと、いわば政府の基本的態度でございますが、その態度でまいりますと、二十年後は大体現在のアメリカの国民所得、それになるわけでございます。したがって、そういう際はただ単に所得がふえるだけではなく、生活状態等がアメリカ並みのようになるという、またそれをしよう、こういうのがただいまの私の発言でございます。
  212. 大原亨

    ○大原委員 私の手元にもありますが、いまお話しの「将来における望ましい生活内容とその実現のための基本的政策に関する答申」という国民生活審議会の答申が出ております。これは非常にタイムリーで、昨年の末の、総選挙の前に出たものですから、まあ国民もある程度希望をもって見たわけであります。しかし私は、このことを総理大臣が引用されるのはいいわけですが、この二十年後のいわゆる国民生活のビジョン、これにはプロセス、過程がないわけであります。どういう過程を通ってそこにいくのかということがここにないわけであります。まあ、言うなれば、あるのはやはり序論と結論のようなものであります。  そこで経済企画庁長官にお尋ねするのですが、二十年後にはアメリカ、十年後にはヨーロッパの水準、こういうのがこのビジョンの骨子であって、総理大臣が御答弁になったことだと思うのでありますが、この文章によりますと、基準年次昭和四十年を基礎にいたしまして、四十年の一人当たりの国民所得は二十五万円であるが、この一人当たりの国民所得を、名目でおよそ十年後には五十四万円、つまりヨーロッパの水準に引き上げ、およそ二十年後には九十万円、つまりアメリカの生活水準に引き上げる、こういう具体的な数字で記述をしてあるのであります。しかし、この記述はこれは間違っておるのじやないか、こういうふうに私は思うのであります。これは経済企画庁長官が、まあ当時は違いますか知りませんが、経済企画庁の責任でまとめられたものでありますし、総理大臣に答申になったものですから、私はその点につきましてお答えいただきたいと思います。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 間違っておると大原委員が言われます意味が、どちらのほうに間違っておると言っておられますかでありますが、大体ただいまの四十二年度に想定される一人当たりの国民所得がほぼ九百ドルになりますので、それで二十年後に二千五百ドルに達しますためには、年率で大体五・五%ぐらいでございますと、そうなるわけでございます。そういたしますと、これは見通し得る限りで年率五・五%、これはむろん名目でございますが、そういうことはむずかしくない。したがって、私思いますのに、この答申でこういう数字を掲げましたのは、もう所得そのものがここに達するということは実はあまりむずかしくないことで、むしろその所得に伴う生活環境あるいは社会保障とか、そういうものの内容がそれに伴わなければならぬということをこの答申が主として述べておりますので、この数字の部分は、間違っておるとすれば、多少過小評価であるといいますか、成長そのものは、これはたぶんこれより行くと考えるほうが普通じゃないかと思います。
  214. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのは、名目で五十四万円あるいは二十年後には九十万円というふうな目標を掲げられても、いまのように物価が毎年五%、六%というふうに上昇いたしておりまするし、これは世界の先進国に比べましては異常なことでありますが、これを四%というふうに見て計算をいたしましても、十年後の五十四万円は、実質的には現在の三十六万円くらいにしかならないわけであります。現在の九十万円を目標といたしまして、二十年間やりましても、実質は四十万円くらいの目標しか達成できないわけです。現在の二十五万円を、私が申し上げましたように、三十六万円の実質、あるいは四十万円の実質、こういうところに目標を置いて計画を立てるんだということを言いましても、ことばの上では三十年後にアメリカだというふうなことを言われても、中身というのは、これは全く空虚なものじゃないか。そういう点、私は善意に解釈いたしまして、間違っているのじゃないか、こういうふうに申し上げたのであります。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、確かに国民所得を不変価格で計算いたしまして、その後に、その後の物価上昇で、いわゆるデフレーターでそれを名目に直すというやり方があるわけでございます。今度の長期計画などは、そういうふうにやっておるわけでございますが、大原委員の言われますように、確かに今後物価上昇がある、つまり、デフレーターが出てくるわけでございますけれども、日米の比較では三百六十円・一ドルという為替レートが動かない限りは、その名目価値を三百六十円でドルに換算するしか方法がない。それが唯一の正しい方法だということになるわけでございます。  そこで、おそらく根本的に持っておられます疑問は、日本のほうが消費物価の上がりが速いであろう、アメリカのほうが上がりがおそいであろう、それにもかかわらずと言われるのでございましょうが、それならば三百六十円というレートがほんとうは変わらなければならないのですが、実際はそれが変わらずに済んできておるわけでございますから、やはりこれは名目同士で計算するしか方法がないということになると思うのでございます。
  216. 大原亨

    ○大原委員 それでは、佐藤総理大臣が胸を張って御答弁になり、発言になるわけでございますが、内容的にはきわめて問題のあるものになるのではないか。これは、一つの目標といたしまして、ビジョンといたしましては、私どもといたしましては問題にならない、こういうふうなものではないか、こういうふうに思ったのであります。  そこで、もう一つ私はお尋ねいたしたいのですが、日本の経済成長は、御承知のように鉄鋼や造船などは世界で三番目くらいになっておるわけであります。経済全体の規模は五指を屈するまでに至っておるわけですが、国民生活の水準はやはり依然として十年一日のごとくベネズエラに次ぎまして二十一位であります。私はその原因がどこにあるのかという点を見きわめながら、具体的にこれをどう引き上げていくか、こういうことが私は政治の課題ではないかと思う。所得倍増、高度成長政策というものは必ずしも労働者や農民や中小企業、一般国民の生活の上昇に反映をしていないのではないか。十年一日のごとく二十一位である。これはドル換算その他の問題もございますが、こういう事実は統計のしかたを変更してみましても、やはり同じである。こういう事実から見てみまして、そういう点について、私は、具体的な指導性のある方針を経済企画庁は提示をして、そうして総理大臣が指導性を持って政治の全体を掌握していくべきではないか、こう思うわけでありますが、この点につきまして、どういうお考えを持っておられますか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど総理の言われました国民生活審議会の答申は、まさにそういうところについて言っておるわけでありまして、所得は向上しても、生活環境、社会投資がおくれておるので、国民所得のもう少し多くの部分を今後三十年間にそのほうにさかなければならない、そういう意味での答申でございますから、これをこのたびの経済社会発展計画に移しかえて、それを取り込みまして、あの計画を今度つくったわけでございます。そういう方針、これが経済運営の指針でございますから、そうなってまいるわけであります。  なお、二十何位というのには、実は少し私かねて異存がございまして、と申しますのは、国民総所得を人口で割った場合に二十何位になるというのでございますが、そのことは所得そのものが必ずしも平等に各国民に分布されておるということにはならないと思うのでございます。つまり、石油産出国のように少数の人間が石油の利権を持っておって、国民所得全体としては非常に大きいけれども、その所得というものは実は少数の人間が持っておって、多数の人ははだしで歩いておるような、かりにそういう国の場合でも、算術的には人口で割りますために、一人一人の所得が高いように出てくる。わが国の場合は、世界の中では国民所得の分布が比較的上下の差の少ない平準化した国でございますので、ただ単純に人口で割って、これが一人当たりだというふうにとられますと、必ずしも実情に合わない場合があるように思います。
  218. 大原亨

    ○大原委員 中近東の特殊な一つの例を言われたわけですが、しかし、私はブラジルその他等と比較してみましても、やはり日本の一人一人の国民所得、国民生活水準には問題がある、こういうふうに思うわけであります。  それで、その問題に関係をいたしましてお尋ねをするわけですが、経済企画庁は昨年の末に新しい推計で国民所得を推計する方式でやられました。つまり、電気冷蔵庫やテレビやあるいはその他の近代的な生活様式になっておるのであるから、それらを取り入れるという方式で国民生活水準を考えるのだ、国際的な水準でこの問題を考えていくのだということで推計方法を変えたわけでありますが、しかし、電気冷蔵庫を買いましても、やはりその中に入れるものがなければ、生活水準は上がっていないわけです。したがって、そういうふうな推計方法を変えまして、そうして日本にとりましては有利なような計算方式をとったわけでありますが、しかし、それをもっていたしましても、若干の金額の上昇はありますが、やはり二十一位という位置は変わっていないわけであります。したがって、算術計算で国民所得を人口で割る、こういうふうなことで単純にお答えになりましたけれども、やはり日本の全般的な消費水準には非常に問題があるのではないか、こういう点を私はまず第一に指摘をいたしておきたいのであります。  それと一緒に経済企画庁長官にお尋ねしたいのは、昨年末に出しました二十年後の日本の国民生活像、それと先般出されましたところの新五カ年計画、経済社会発展計画というものは、どういう関係をもっておつくりになったのであるか、総理大臣に答申になっておりますが、どういう関係にあるのか、総理大臣がこれを御承知でありましたらひとつお答えいただきたいのですが、その点についてひとつはっきりしてもらいたいと思います。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず国民所得の新推計、旧推計のことでございますけれども、これはいま大原委員の言われましたような意図ないし何かそういう突然の目的を持っていたしたのではございませんで、国民経済計算審議会というものを三、四年前に設けまして、そこで二年ほど研究をいたしまして、新しい国民所得の推計をつくったわけでございます。それは少しめんどうな話になりますが、国民の経済計算をいたしますときに、社用消費というようなものがたとえばございます。俗に私どもが社用で云々という、あの社用消費というようなものがいままでの推計ではなかなかとらえにくいとか、いろいろ、それから先は私もあまり詳しく申し上げられませんが、学問的に欠点がございまして、それを二年間くらい審議会で新しい推計を考えまして、それを適用したわけであります。したがって、いわゆる生活の近代化、電気冷蔵庫云々といったようなものが新推計に入ってきたとかいうようなことは全然ないわけでございます。  それから昨年の国民生活審議会の答申を経済社会発展計画にどう取り入れたかという点でございますが、国民生活審議会の答申が出ましたので、その段階で私自身が経済審議会にお願いをいたしました。答申の趣旨は、国民所得のもう少し多くのパーセンテージを社会開発あるいは社会福祉にさいていかないと、今後日本の生活環境というものはよくならない、具体的には従来の二、三%からもう二、三%——四、五%くらいをさいていくべきだ、こういうのが答申の限目であったわけでございます。したがって、これを今後五カ年間そういうふうにしてもらうように経済審議会にその段階でお願いをいたしまして、今度出ました五カ年計画ばそれを取り入れておるわけでございます。したがって、そういう国民所得の四ないし五%を社会開発、生活環境施設に充てる、こういう前提に立ってこのたびの五カ年計画は計算も施策もできておるわけであります。
  220. 大原亨

    ○大原委員 私どもが予算委員会や各委員会におきまして議論をいたしてきましたことの中で、日本の社会保障は非常にでこぼこである、アンバランスである、そして水準が低い、こういうことを私どもは議論してきたわけであります。その原因はやはり長期計画がない、あるいは総合性がない、そういうことが一番大きな原因である。したがって、たとえば最低賃金制の問題とか、あるいは社会保障の基準とか、そういうものが国際的な基準から見てみましても非常に欠陥の多いものである。そういう国民生活が不安定な状況において貿易をやる、あるいはダンピングをやるということが、いろいろ国際的な議論になっておるわけであります。  私は、社会保障については、後に医療の問題について逐次移ってまいりますが、今日非常に混迷をいたしておりまするので、長期計画を立てて、社会保障については、国民所得の中でこれだけは社会保障に充てるのだ、こういうはっきりした方針を持って、それに従って厚生大臣、経済企画庁長官、大蔵大臣その他がやはり日本のそれらの水準を上げるために努力するような方向でなければいかぬ。そういう点から見ると、新五カ年計画の中、経済社会発展計画の中には、社会開発を看板に佐藤内閣は打って出られたわけですが、社会保障の長期計画も裏づけとしてない。こういうことは一体だれの責任であるか。佐藤内閣は昭和三十九年に初めて出られましたときに、人間尊重、社会開発、そういうことではなばなしくやられたわけですが、これは羊頭を掲げて狗肉を売るものではないか、こういう感じすら私はこれを見まして持つのであります。社会保障の長期計画について、五カ年計画の中における位置づけ、そういう問題につきましてお答えいただきたい。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五カ年計画との関係では、実はそこのところが一番経済審議会の内部、関係各省で議論になりまして、正直申しまして苦労をいたしたところであります。五カ年計画では、結論として、現在いわゆる振替所得の国民所得における割合が大体五%ないし五・五の間ぐらいでございますが、それを目標年次にはもう二ポイント上げろ、つまり七ないし七・五、国民所得のそれだけの部分を振替所得に充てろ、こういう結論になりました。二%上昇というのは実は国民所得の二%でございますので、非常に大きいので、最後まで難航いたしましたが、そういう結論になったわけでございます。これは非常な進歩だと思います。
  222. 大原亨

    ○大原委員 昭和三十七年に出ました社会保障制度審議会の、ヨーロッパ水準に日本の社会保障の水準を引き上げろという十年計画についての答申があるわけです。これは昭和三十六年から昭和四十五年までの十カ年間を目標にして出しておるわけですが、その社会保障制度審議会の勧告の中には、これは国民所得に対する振替所得の比率を一四%にするというふうにあげてあるのであります。そういうふうに見てみますと、七・五%というのはずいぶん努力をしたと言われますが、これは私どもといたしましては納得できない数字ではないか。特に、十カ年後にはヨーロッパの水準、二十カ年後にはアメリカの水準というふうに佐藤総理大臣は言っておられますが、国の予算の中で占める社会保障の比率、そういう観点から見てみますと、昭和四十二年に七千百九十五億円の社会保障費が全予算として計上されておるわけですが、これは全予算の中で一四・五%であります。スエーデンでは全予算の中で三四%、英国は三一%、カナダは二五%、アメリカでも二七・三%というようになっているのであります。日本の一四・五%の社会保障のそういう全予算に対する比率というものは、ヨーロッパに比較いたしましても非常に低いわけであります。ですから、次から次に新しい計画の中で目標をずらしていって、五カ年計画あるいは十カ年計画をやりますけれども、十カ年で単純にヨーロッパの水準に行くと言いましても、これは私はもう少しこまかな検討をして、そして長期計画を立てる必要があるのではないか。長期計画は裏づけとして経済開発五カ年計画の中にあるのかないのか、こういう点につきまして、私はもう一度明快な答弁をしていただくようにひとつお願いいたします。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五カ年計画では、したがって国民所得に対して不十分と仰せられますけれども、私どもとしてはかなり進歩をしたつもりでおるのでございますが、七%ないし七・五%を振替所得に振り向けるということを一つきめております。それからもう一つ、社会保障全体については、五カ年計画の中では長期計画の必要が非常にあるのである。ただし、いままでどちらかといえば医療保障に重点が置かれておって、所得保障のほうがどちらかといえば不十分である。したがって、両方を総合した長期計画が要るのではないかということを五カ年計画は申しておるのでございますが、その中でも医療保障にまず当面の問題があるのではないか。私、これ以上は所管でございませんので、申し上げるべきじゃないと思いますが、五カ年計画ではそういうことを指摘いたしております。
  224. 大原亨

    ○大原委員 これは御指摘のようにそういう点もあるわけですが、しかし医療保障は混乱をしている。所得保障の水準が低い。そして全体としてばらばらであって、長期計画の具体的なものがない。前の鈴木厚生大臣も、あるいはこれに付随をいたしまして総理大臣も、決意といたしましては社会保障の長期計画を立てるんだ、新五カ年計画の中において位置づけるんだ、こういうことを、会議録を見てみますとしばしば答弁をしておられるわけであります。しかしながら社会保障の長期計画がいまだにできていない。そういうことで、所得保障も前進しなければ、医療保障についても解決の道がない。大蔵省と厚生省がどたんばになってやり合って、それが世間に出てきていろいろな問題を起こすというような根源になっているのではないか。所管大臣の厚生大臣のほうから、社会保障政策の長期計画があるのかないのか、いつつくるのか、こういう問題につきまして御答弁いただきたいと思います。
  225. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御承知のとおり、日本の現在の社会保障は、医療保障に非常に財政上のウェートがかかっております。所得保障のほうは、これは大原さん十分御存じのとおり、まだ発足後日がなお浅く、成熟をしていない。こういうような状態にございまして、わずかに所得保障の国民年金におきましては、例外的の無拠出の福祉年金が実働しておるということでございまして、これはだんだんと成熟をしていかさなければならない。しかもその成熟の過程におきましては、これはさらにこの充実整備をはかっていかなければならないということはわれわれも痛感をいたしておるのでございまして、そういったようなことと見合いまして、社会保障の年次計画といったようなことにつきましては今日まだ考えてはおりませんけれども、とにもかくにも今度の経済社会発展計画といったようなものが、一つの経済開発と社会開発というものを、これをバランスのとれたものとして、そして日本の経済、日本の国の生活というものを充実整備していこうというねらいを持ったものでございますから、社会保障といたしましてもそういった目標に沿いまして、これから充実を期してまいりたい、かように考えております。
  226. 大原亨

    ○大原委員 私が言っているのは、厚生大臣、新長期計画、いわゆる経済社会発展計画に社会保障の長期計画を樹立をして盛り込んでいくんだ、こういうことを前の鈴木厚生大臣あるいは佐藤総理大臣は言明されておるのですが、それができていないのはなぜか、こういうことを言っているのです。いつできるのか、こういうことを申し上げるのが第一です。  たとえば第三次防衛計画というのは、同じような年度で昭和四十二年から四十六年までの計画があるわけです。二兆三千四百億円という計画がまかり通っておるわけです。道路につきましても、いろいろ議論はありましたが、六兆六千億円という五カ年計画があるわけです。しかし一番おくれている社会保障については、こういう五カ年計画も何もないし、十年後にヨーロッパの水準だ、あるいは二十年後にアメリカの水準だ、こういうふうに演説の材料になるだけのものであって、具体的な国民所得の中においての社会保障、あるいは全予算の中において社会保障費というものをどう確保していくかというふうな、そういう政治はないのであります、日本には。そこが医療の問題や所得保障の問題の停滞や混迷を招いておるのではないか、こういうことを私は言っておるわけであります。厚生大臣、もう一回。
  227. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、いまのところ社会保障についての年次計画といったようなものはまだできておりません。
  228. 大原亨

    ○大原委員 いつつくるのですか。
  229. 坊秀男

    ○坊国務大臣 総理大臣あるいは企画庁長官がいま言明されたと大原さんがおっしゃいましたが、よく総理大臣政府部内におきまして相談をいたしまして、そうして実情に即しまして必要であるとすれば、これは計画をつくっていかなければならない、かように考えております。
  230. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣は非常に正直な人ですから、そういう御答弁はいいんですけれども、これじゃ何を審議しておるのかわかりゃせんじゃないですか。佐藤内閣は昭和三十九年に発足いたしまして、児童手当もやります、義務教育は無償にします、いろんな社会保障、社会開発の問題について繰り返して天下に公約されたんですよ。そうして困難な問題の中で、鈴木さんも相当がんばっておられた。私は坊さんを決して悪く言うわけじゃないが、しかし大臣がかわれば前のことが少しも引き継がれていない。全く行き当たりばったりの政策が繰り返されておるというのがいまの医療の問題であり、あるいは所得保障、社会保障が前進しない問題ではないか。前の七月の衆議院の予算委員会におきまして、私は第三次防衛計画と社会開発の計画について、パンか大砲かという観点だけではないが、国民経済の観点と含めて総理大臣質問をいたしまして、第三次防衛計画を独走させない、こういって総理大臣が御答弁になった。国民生活を十分考えて、そうして長期展望の上に国防もやるのだというようなことでありました。議論がそういう議論でありました。私のいまの質疑応答で明らかなように、社会保障についてこれだけ混迷をいたしておるのに、新長期経済計画もできない、そういうようなことで何が人間尊重であり、社会開発であり、風格のある社会であるのか、佐藤総理大臣はどういうイニシアチブを発揮しておられるのか、決して私は坊厚生大臣について悪く言うのではないのですよ。ないのですけれども、こういう重要な問題について、大臣がかわって、次になれてくるまではなかなか全部の行政について徹底して自分が掌握することはできない、そうして停滞の中において混乱を繰り込す、こういうことはあなたのそういう組閣や、その他の経過から見まして重要な責任ではないかと思うのだ、私は。佐藤総理大臣はほんとうに社会開発や国民生活の水準について考えておられるのかどうか、こういう点が私は聞いてみたいのであります。総理大臣、いかがですか。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどおしかりを受けましたが、宮澤君からお答えいたしましたように、経済社会発展計画、五カ年計画を立てましたその際におきまして、社会保障の問題は一つの大きな柱であります。そういう意味で、この各項目についてそれぞれ真剣に取り組んでおるわけであります。申すまでもなく、医療保険、これがその社会保障の中心をなすというか、現在においてのウエートの置かれておるものであります。同時にまた所得保障につきましても、それぞれの部門においてそれぞれのものをそれぞれの年次に相応するような計画で実施しつつ、予算の計上を行なっておるのが現在の実情でございます。さらにただいまのような激励を受けますし、私は福祉国家の建設こそ近代国家の大きな目標だと思います。そういう意味で一そう努力しててまいるつもりであります。
  232. 大原亨

    ○大原委員 それじゃ総理大臣、私はお聞きいたしますが、あなたは三十九年に総理になられたときもそうでしたし、その後もずっと主張されておりますが、世界の六十二カ国で実施されている児童手当です。ILOの百二号条約において世界の社会保障の最低基準をきめているわけですが、日本に適合してみますと、児童手当がないということが一番大きな欠陥なのです。その児童手当の問題はまっ先にやるのだということを言われました。そうして前鈴木厚生大臣も昭和四十三年にはやるのだということを言われました。昭和四十三年に児童手当の制度ができますか。国民は非常に期待をしておるわけであります。その点につきまして、私は総理大臣がいつも自分の口から言っておられるのですし、児童手当の、そういう日本の社会保障の水準から考えて問題のある点についてどう取り扱うのかということは大きな関心ですから、御答弁いただきたい。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま前鈴木厚生大臣のお話を引き合いに出されました。確かに四十三年にはこれを実現するようにしようというのでいろいろ各方面でただいま検討している最中でございます。
  234. 大原亨

    ○大原委員 これはやや具体的な答弁です。四十三年には児童手当を実現しよう、こういうことで各方面で鋭意検討いたしておる、昭和四十三年に児童手当を実現できる、こういう点につきましては、私は、この御答弁というものは総理大臣の御答弁でありまするし、いままで議論した上での答弁でありますから、相当大きな仕事であると思うわけであります。  その児童手当の構想につきまして、厚生大臣、厚生省の大まかな意見はまとまっておりますか。
  235. 坊秀男

    ○坊国務大臣 児童手当につきましては、ただいま厚生省におきましてあらゆる再度から検討をいたしております。できるだけすみやかにこれの創設をいたしたい、こういうことで検討をいたしておりますが、具体的にこれをどういうふうに決定していこうか、総合的な案といったようなものはまだございませんが、これの創設をはかるべく鋭意検討を重ねておる段階にございます。
  236. 大原亨

    ○大原委員 児童手当の問題に触れましたのを機会に、社会保障制度は御承知のように所得保障と医療保障があるわけですが、この所得保障の中で、失業保険の問題がいま大きな問題になっております。この問題は、あとで同僚の委員からもこまかい追求をし、質問されるはずですが、いまの段階で私がこの席上指摘をしたい点は、あの失業保険の改正で、五人以下の零細事業場の被用者に対しまして適用するということは、これは大きな進歩である。しかし循環労働者、季節労働者といわれておる人々に対しまして、この適用のしかたを分けていくというふうなこと、差別をするということは、私はいろいろな観点から研究いたしてみましたが、これは憲法に違反をしないか、失業保険の改正要綱は憲法に違反をしないか、私はそう思うのですが、いかがですか。
  237. 早川崇

    ○早川国務大臣 お答えいたします。  五人未満の事業所に労災保険、失業保険を全面適用する法案を検討中でございまするが、御質問の季節労務者につきましては、現在五十八万人失業保険を受けておるのがおるわけであります。この既得権の方には、失業保険は従来どおり適用をして打ち切らないつもりでございます。ただしこの循環的季節労務者の場合には、大体掛け金の労使合わせて二十二倍の保険金をもらっておるわけであります。ですから、労務者だけをとりますと五十倍近い保険金、それが毎年繰り返されるわけでありまして、三%の季節労務者が保険金の支払いの三〇%を占めておる、こういう実情でございまするので、保険という点からは非常に成り立たないわけであります。諸外国におきましては、そういうことで季節労務者の失業保険がないのであります。カナダにおきましてもこれがうまくいかなくなったわけでありますから、新規の季節労務者に対しましては、三年間はいま言たような非常なアンバランスの給付をやりますけれども、二年たちましたあとは二分の一の保険金という制度程度に改めることは、これは保険経済全体から申しましても、また理論的に申しましてもやむを得ないのではないだろうか、かように思っております。
  238. 大原亨

    ○大原委員 私は政策上の問題で、きょうはこまかな議論をいたしませんが、申し上げている点はこういうことであります。出かせぎ農民、循環労働者あるいは山林労働者、こういうふうな人々は、自分が農村の実情から出かせぎに行かざるを得ない。食べていけない。あるいは出ていった職場というものは建設業の職場が多くて、非常に封建的である。そういう中において季節労働者といたしましてやっておるわけですが、しかし、これは本人の意思というよりも、そういう状況に置かれておる背景が問題であることが一つと、そうして、いままでのものはよろしいけれども、同じような条件の中で、今日以後のものにはその権利を制限したり、あるいはその制度の適用を受けさせないような、そういうしかたというものは、憲法十四条に規定している法のもとにおける平等性、こういう憲法上の疑義を残す問題を持っておるのではないかということが一つ。それから失業保険法は、生活保護と同じように憲法二十五条の最低保障——最低生活を保障する国の権利義務、そういう関係においてできておる。そういう失業保険法についてそういう差別扱いをすることは、これは憲法上疑義があるのではないか。こういう二つの点について、私は憲法上、法律上の疑義を持っておるわけであります。この点、私は指摘をいたしておきますが、明快なひとつお答えをいただきたい。
  239. 早川崇

    ○早川国務大臣 法制当局とも検討いたしましたが、憲法上の疑義はございません。  なお、季節労務の今後の問題につきましては、これは保険制度だけで解決できない問題でありますから、季節労務者が職場で雇用条件に非常に困っておるとか、そういうものに対しましては出かぜぎ相談所の設置とか、あるいは賃金不払いのような建設業者に対しましては、県その他の入札においてはこれを理由に入札させないとか、いろいろな措置を講じまして、季節労務者の労働条件の向上を労働省では別途考えておるわけであります。
  240. 大原亨

    ○大原委員 いまの答弁では満足できないです。それは法のもとにおける平等という精神からいいましても、同じような条件の国民に対しまして差別をするというふうな、そういう一つの法律による結果が出てくるわけであります。これは明らかに憲法十四条に違反をするのではないか、あるいは二十五条の精神に抵触をしないか、こういう点を私は重要な問題といたしまして指摘をする。六カ月働きましたならば、自分の責任でないようなそういう条件の中においてやめていかなければならぬ。こういう事実に対しまして、法律を不公平に適用することはいけない、こういうふうに私は思うのでありまして、これは重要な問題であります。特に早川労働大臣は、総選挙のときも、聞きますと、山林労働者の失業保険は私がつくったんだ、こう言うてやられたそうであります。これは事実かどうかわかりませんが、やはり北海道とかあるいは青森とか秋田とか、あるいは山林労働者や季節労働者の多い地域では、非常に大きな関心を持っておるわけであります。総合対策がなしに、全く国の社会保障の恩典も打ち切ってしまう。こういうふうなことは私は絶対に了承できないのではないか。個々の事情については、わかることはありますが、しかし、そういう総合政策がないところに政治の貧困があるのではないか。総理大臣、いかがですか、そういう点について明快な御答弁をいただきたい。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治、これは一番この際に頭を使わなければならないのは総合性をどうして発揮さすか、それが最も大事なことでございます。ただいま御指摘のとおりであります。
  242. 大原亨

    ○大原委員 大臣答弁というのはああいうものです。  この所得保障の問題に関係をいたしまして、私は、簡潔に国民年金の質問をいたしたいと思います。国民年金が非常に貧弱な条件である。国民年金の問題に入ります前に、私どもは、従来から農民のためのほんとうの年金がほしい、こういうことを希望いたしておりますが、佐藤総理大臣はほうぼうに行きまして、今度は農民年金をつくるんだということを演説をして回られたわけであります。佐藤総理大臣はどういう構想で農民年金をおやりになるのか、お答え願いたいと思います。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは申すまでもなく、いま国民年金制でございます。したがいまして、国民年金ですべてのものをまかなえばよさそうに考えられます。しかしながら、農業のいま置かれている地位から、ことにまた継続的な農業、専業農家等を育成強化するためには、私は農業の特殊性、そこにかんがみての一つのくふうがあってしかるべきだ、かように思って、ただいま農林、厚生両省におきまして、いろいろ具体的な問題について掘り下げて検討さしておる最中でございます。
  244. 大原亨

    ○大原委員 農民年金をおつくりになるんですね。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたような農民の特殊性にかんがみての特殊な年金を考えるべきだということで、検討さしておるわけであります。
  246. 大原亨

    ○大原委員 佐藤総理大臣の演説や自民党の声明、こういうのを見てみましたり、政府の文書を見てみますと、大体二通りあるわけであります。経済社会発展の五カ年計画の中には、農民の所得保障といたしまして国民年金を改善するんだ、こういうことが記述をしてございます。それからもう一つは農民年金をつくるんだ、こういう主張であります。これは農林大臣も先般長野へ帰って発表されておりましたが、ひとつ農民年金の構想について、私はこの際お漏らしをいただきたいと思うのです。あなた、なかなかそういう点はベテランですから、ひとつよくわかるようにごまかさぬように言っていただきたい。
  247. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農業構造の改善をはかりますためには、土地対策または資本装備の充実方策、いろいろしなければなりません。先ほど地域の格差のことでいろいろお話がありましたけれども、そういうことで農業経営の担当者に私どもは着目をいたして、その老後の生活の安定、または経営の委譲促進、そういうことを通じて、構造の改善に資する措置について検討をいたしていかなければならない。総理大臣からお答えいたしましたように、ただいまの農業が、先ほど来お話のございましたような将来の見通し、日本経済の将来の発展を期待する意味においても高度経済成長、その他のいろいろなファクターがありまして、立ちおくれておる面もあるわけでございますから、したがって、この国民の食糧を自給することに努力いたしておる農民の諸君に、安心して農業を守り抜いていってもらうためには、どのようにしたらいいかということの考え方から農民年金という構想が出てまいったわけでありますが、大原君御承知のように、年金制は厚生省で国民年金として扱っておりますので、ただいま諸外国の例等も参酌いたしまして、どういう方向で総理大臣が言われましたような趣旨を貫くことができるかということにつきまして、政府部内で鋭意検討をいたしておる最中でございます。
  248. 大原亨

    ○大原委員 あまり中身のないことを総選挙のときにふれ回る、そういう政治姿勢というものは、そういう思いつきで国民の歓心を買ったり、そういうことをしてはいかぬと私はやはり思うんですよ。いま意見を聞いておりますと、中身がさっぱりわからぬわけですよ。私どもは、農民のための年金ということは、国民年金ができる当時から、国民年金の中身というものがインチキであるから、やはり農民のための年金が必要であるということを主張いたしたのですよ。あなたも長い間大臣でいろいろなことをやられたわけですから、もう少し中身のある話かと思いましたところが、さっぱり中身のない話だ、ヤマブキみたいな話であります。  そこで、厚生大臣にお尋ねするのですが、厚生省では農民年金については事実上問題があって難色を示しておられる、こういうことで詳細に理由をあげまして言っておられるわけであります。これは閣内不統一というふうなことまでは言いませんが、専門家といたしまして厚生省はどう考えているのか、こういう点をずばりひとつ御答弁いただきたい。
  249. 坊秀男

    ○坊国務大臣 日本の国の農民の老後が生活的に安定をするということのためには、それからまた、長い間農業をやっておった人たちに対する何らかの措置ということは、これは私は非常に必要なことであろうと思います。さような意味におきまして、農民の老後ということに対する措置として、私は国民年金というものを——これは大原さん御指摘のとおり、非常にこれが今日なおかつ内容が貧弱である、そういったような国民年金を改善、充実していくということによりまして、この農民に対する措置というものをその中に取り入れていくということが、これが適当な措置でなかろうかと思います。大原さんくろうとでございますから十分御存じのことと思いますけれども、年金制度というものは保険方式をとっておりますから、保険方式というものについては全国民的な一つの広がりといったようなことで、広がりがあればあるほど年金制度というものの内容は充実し、内容が財政的にもしっかりしたものになる。ところが何か一つ一つのグループでやっていくということになりますと、これは内容が非常に、だんだん、だんだんと貧弱なものになっていく、こういうようなことでありまして、私は国民年金というものを充実、改善していくことによりまして、その農民の老後措置をしてまいりたい、かように思っております。
  250. 大原亨

    ○大原委員 厚生大臣は、厚生事務当局の専門的な意見をやや率直にお話しになったわけです。そういたしますと、倉石農林大臣やあるいは佐藤総理大臣お話しになったこととは、少し違うわけであります。たとえば国民年金の掛け金をかけているのは、その四割、八百万人は農民ですね。その国民年金の掛け金をかけながら農民年金の掛け金をかけるのか、あるいは無拠出にするのか、あるいは離農者を対象にするのか、後継者を対象にするのか、たくさん問題があるわけであります。たくさん問題があるといいましても、二、三で大体わかるわけでありますけれども総理大臣は、いまの答弁でわかるのですが、二つの意見に対しましてどういうふうにお考えになりますか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでのところ、両省の間で幾ぶんか意見が食い違っておる、これは確かにこの構想は最近出したばかりでございますから、ただいまのような点がございます。しかし私はただいま内閣といたしまして、これは国民年金審議会等にもちろんかかる問題でございますし、そういう際に十分農民の特殊性を取り入れてもらうということを念願しております。また農林省自身は農林省で特殊なものをどういうように織り込ますべきか、これは独自の研究を続けております。したがいまして、ただいまのこの段階において双方で意見が食い違っておるではないかと御指摘になりますこともそのとおりであります。これからやはり一つの政策、施策をきめてかかる、こういう場合は、一番最初からある程度の違いのありますことは当然であります。こういうものをろ過して、そうしてはじめてそういうものが成案になるのであります。どうかひとつ御了承をいただきます。
  252. 大原亨

    ○大原委員 選挙では、やはり総理大臣が先頭に立って農民年金の公約をされたのですよ、これは方々で。そして、各自民党の議員の諸君も、いままで農民年金のことを言ったことのない人も、みんな言ってしまったわけですよ。これは選挙における公約ですから、しかも総理大臣が言っているのですから、ある程度の構想、中身があるのだろうと思っていた。私どもは、従来からずっと被用労働者だけでなしに、農民年金もつくるべきだということを言っておったのですが、国民年金というものができたわけです。そうしますと、中小企業年金もおつくりになるのですか。どんどん倒産いたしておりますが、中小企業年金もおつくりになりますか、総理大臣
  253. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま中小企業年金というものは考えておりません。いまは農民年金については私自身政策を決定いたしておりますから、これは必ず公約を実現いたします。
  254. 大原亨

    ○大原委員 それで非常にはっきりした総理大臣答弁であります。農民年金は必ずつくる、こういうことであります。これは非常に大きな問題でございますから、全国の農民の方々も非常に大きな希望を持たれると思うのであります。これは国会を通じまして国民に約束されたことですから、必ず私は実現をされるだろうと思います。しかし、主管省はどこかということの問題はありますが、これは念のために聞いておきましょう。主管省はどこですか、厚生省ですか、農林省ですか。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、国民年金審議会、これはもちろん厚生省が主管でございます。農民年金と申しましても、もちろん国民年金審議会にかかるのでございますから、この点は、私は混淆さすつもりはございません。乱すつもりはございません。(「乱さないというと、厚生省か」と呼ぶ者あり)厚生省でございます。
  256. 大原亨

    ○大原委員 それでたとえば、これはあとでそれぞれ農業政策の専門家が質問いたしますので、私のほうは大体そこまでにとどめておきますが、しかし、国民年金をよりよく改善することは当面の急務である、低いということを言っているのだから。物価は上昇いたしまして、そうして中身が減っておりまするから、二十五年先に五千円やると、こういうのですね、いまの国民年金の拠出制は、二十五年先の話ですよ。これはかすみたいになっておるわけです。それで、百円のものが二百円に年金の掛け金が上がるわけです。百五十円が二百五十円に去年になったのです。ことしの一月一日から実施されておるのです。そういう掛け金だけいまの貨幣価値で取られていって、どんどん高くなっていって、そうして二十年、二十五年先にもらうときには、こんなに物価が騰貴しておると、かすみたいになってしまう。そして大蔵大臣の水田さんのほうが財政投融資の金をしこたま吸い上げていって、そして国民にはなかなか回してこない、こういうことは政治姿勢の問題にかかわる問題であります。私は、何よりも、農民も中小企業者もその他も、農民年金の期待をいたすと一緒に、当面いまやっておる国民年金の無拠出年金、福祉年金を上げてもらいたい、こういう希望だと思うのです。国民は、老後の保障や、母子家庭の保障や、身体障害者の保障、失業の保障、そういう所得保障、社会保障についてうんと力を入れてもらいたいし、福祉年金をよくしてもらいたい、こういうことであります。ことしの改正案、予算案を見てみますると、七十歳以後でもらいまする老後の保障の福祉年金というものが、千五百円が月に千六百円になっただけであります。これはいままでの例から見てみまして非常に低いわけであります。年寄りがだんだん多くなってきたものですから、予算額がかさばるから、たくさんになるから、ここで値切られたのだろうと私は思うわけですが、日本の児童手当にいたしましても、国民年金、所得保障はおくれているということを言っているのですから、長期計画を立てると一緒に、こういう方面にうんと予算をつけるべきではなかったか、そういう点で、羊頭を掲げて狗肉を売る、こういうふうなそしりを免れないではないか、私はこう思うのです。その点につきまして、厚生大臣のひとつはっきりした見解を伺いたい。
  257. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおり、この福祉年金の三つのものは、非常にこれは金額が少ないということは、私どもも決して否定するものではございませんけれども国民年金は掛け金をしていって、そうして受給される、こういうようなたてまえになっておりまして、この福祉三年金というものは、まさにもう例外的と申しまするか、そういったようなものとしてつくられたものでございますので、なるほど金額的に見ますれば非常に少のうございますけれども、これは全く国民年金の例外的の措置ということでひとつごかんべんを願いたいと思います。
  258. 大原亨

    ○大原委員 国民年金が非常に劣っているからよろしくする、こういうふうなことを言われながら、その口の下から、国民年金の改善についてはっきりした方針がないというふうなことは、これはおかしいじゃないですか。それは国民所得の中でどれだけの振替所得あるいは社会保障の予算を取っていくのだ、その予算の中で国民年金はどういうふうに改善する、児童手当はどう措置する、医療保障についてはどうやっていくのだ、こういうふうな方針をはっきり立ててやらなければ、社会保障はよくならぬのであります。そういうことは、経済社会発展計画の中身あるいは二十年後のビジョンからいいましても、全く私どもといたしましては失望する内容であります。こういう国民年金の改善について佐藤総理大臣はどういうお考えを持っておられるか、ひとつお聞きをいたします。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど、近代国家の目標としては福祉国家建設にあるということを申しました。これはもちろん現在の歳入歳出等から見まして、社会保障費というものはずいぶん予算的には膨大なものでございます。そうして次々に、これも足らない、これも足らないという、そういう面で要求がどんどん出ておる、これが実情でございます。それはもちろん、冒頭に申しましたように、福祉国家をつくろうという、そのために必要な金でございますから、それが非常な膨大なものになることは当然であります。それをいまの予算でこなして、そうして順次御期待に沿うような、その方向へ進めていくわけであります。ただいま言われますように、医療費、医療保険そのものについても、ただいまはこれの再建について非常に苦心している最中でございます。しかして、これができると、今度は所得保障の問題になるとか、あるいは年金の問題だとか、次々に問題が起きておりますから、ただいまの状態でいいとは私申しませんが、これはなかなか金のかかることだし、不断の努力を必要とすることだ、この点を御了承いただきたいと思います。
  260. 大原亨

    ○大原委員 所得保障の中でもう一つ残っている問題は、生活保護、公的扶助の問題ですが、厚生大臣、生活扶助が今回二三・五%アップになりましたが、一日の一人当たりの食費は幾らですか。
  261. 坊秀男

    ○坊国務大臣 一級地におきまして、一日一人当たりの飲食物費百二十二円九十四銭でございます。二級地百十一円八十八銭でございます。三級地百円八十二銭でございます。四級地八十九円七十六銭でございます。
  262. 大原亨

    ○大原委員 一日一人当たりの食費が、一級地、一番いいところで百二十二円九十四銭と、こう言われましたが、総理大臣、いかがですか、百二十二円九十四銭で一人の生活、食費のまかないができますか。  それからきのうは水田大蔵大臣でありましたか、ことしの十月から一四・四%消費者米価が上がった際には低所得対策を考える、こういうことでございましたが、いまの私の第一の質問と一緒に、十月以降においてはこの生活保護費の基準は引き上げますか、いかがですか。
  263. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体予算編成のときには、十月から私どもは一四・四%の消費者米価を上げるということを考えていましたので、やはりこういうものを織り込んだアップ率ということに御了解願いたいと思います。
  264. 大原亨

    ○大原委員 これは新説ですよ、あなた。大蔵大臣、あなたはしばらくの間大蔵大臣を休んでおられたからお忘れになったのかと思うのですけれども、米価が上がったときには、たとえば一級地で一人一日百二十二円のようにぎりぎりの生活をする。これは人間の生活じゃありません。ですから米が上がった場合にはスライドするのだ、これを加味して改定するのだということは、いままでもしばしば前例のある常識なんですよ。きのうは、低所得階層は十月以降について消費者米価が上がれば考えるというようなことを抽象的に言いながら、実際にはそういうことをしない、これはおかしいですよ。いかがですか。
  265. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一三・五に十月からは加わって、一六・六に計算してあるそうでございます。
  266. 大原亨

    ○大原委員 上げるのですね。  それでは医療保険の問題に移ってまいりますが、政府管掌の健康保険は赤字が幾らありますか。それから赤字の原因は何ですか。その点につきまして厚生大臣からひとつお答えいただきたい。
  267. 坊秀男

    ○坊国務大臣 四十二年度の見積もり赤字でございますか。
  268. 大原亨

    ○大原委員 累積です。
  269. 坊秀男

    ○坊国務大臣 累積は、四十二年度末に二千億に近づくだろうと思います。四十二年度単年度におきまして七百四十五億、政管健保でございます。  医療費が累増してまいりますのは、医療というものが質、量ともに非常にふえてきている。質もよくなり、量も非常にふえてきております。それからまた、いろいろ支払いの体系の問題だとか、制度そのものにもたくさんの原因がありまして、こういったような原因が重なり合って、そうして赤字が累積してきた、こういうことだろうと思います。
  270. 大原亨

    ○大原委員 この問題はあとで議論するといたしまして、こまかな議論は別にいたしまして、政府管掌健保は、御承知のように保険料を千分の六十五から七十二に上げる、それで初診料と入院料と薬代の一部負担をやる、こういうことで、合計いたしまして四百九十五億円の負担増になるわけでありますが、これはきのうも議論がございました。  そこで、この健康保険法の改正が一般の組合管掌の健康保険や各種の共済組合の財政に対しましてどういう影響を及ぼしますか。健康保険法改正に伴うて、四百九十五億円以外にどれだけの負担増が出てまいりますか。
  271. 坊秀男

    ○坊国務大臣 今度の政管健保の赤字対策によりまして、ほかの健康保険に対しては、直接それに準ずるものは船員健保がございます。これは御承知のとおりだと思います。その他の国民健康保険あるいは日雇いあるいは組合健保、そういったようなものに対しましても、患者本人が初診時の一時負担、それから入院時の負担、それから薬代の一部負担というようなことが、これが影響するだろうと思います。
  272. 大原亨

    ○大原委員 つまり、私が言ったのは、その最後に言われた健康保険法改正に伴うて、共済組合や一般組合健保のそういう組合員、患者の負担がどのくらい増大しますかということで、これはいままで議論されてない問題ですから、私はその数字を聞いているのです。健康保険の改正によってどういう影響がありますか、こういうことを言っているのです。
  273. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 こまかい数字にわたりますので、私から御答弁申し上げます。  今回の一部負担金の法律改正によります患者負担の増加見込み額につきましては、組合健保につきましては平年度で七十七億程度の増になります。それから船員保険は三億四千万、それから共済組合は五十二億六千万、こういうことでございまして、これは、初診時、入院時の一部負担を増額する影響と、それから被保険者本人につきまして外来投薬時の薬剤一部負担、これにつきましての影響、合わせた金額でございます。
  274. 大原亨

    ○大原委員 つまり、七百四十五億円の赤字対策をやるために、四百九十五億円の政府管掌、中小企業、零細企業、そういう従業員や事業主を対象といたしました健康保険の負担がふえて、さらにその法改正によりまして、私の計算では、百三十二億円の負担がふえるわけであります。こういう国民生活に非常な影響の大きい改革案を、選挙のときにははっきり国民の前に出さないでおいて、選挙が済んだら、予算査定のどさくさにおきまして突然出してくる、昨年も保険料を上げておいて、そしてさらに今度は大幅で、千分の六十五から七十二まで上げる、こういうふうなことでは、国民は納得できぬだろうと私は思う、そういう点は。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕 私は、それをやらざるを得ないそういう理由について、この機会にひとつはっきりしてもらいたい。
  275. 坊秀男

    ○坊国務大臣 現行の医療保険には非常に欠点のあるということは、大原委員の御存じのとおりでございます。だから、これについて根本的な立て直しをやらなければならないという段階に来て、差し迫っておることも、私もよくわかっております。だから、そういったような抜本的の改正をやろう、こういうつもりでおったのでございますけれども、これは弁解になるかならぬかわかりませんけれども、昨年末から非常に政界の流動等もありまして、なかなかその抜本改正ということができなかった。そこで、予算の編成がだんだんと近づいてまいります。予算編成に際しましては、いずれにいたしましても政管健保には先ほど申し上げました巨額の赤字がある。この赤字の処理を予算編成に対してやっていかなければ、これは政管健保が、悪くいくと支払い遅延におちいるおそれがあるということが考えられましたので、そこで、せっかくの健保がこの際崩壊してしまったのでは、日本の医療について非常な支障を来たす、そういうようなことで、非常にこれを考えまして、まず第一に政府がうんと腰を入れるということをひとつ政府決意をしてもらう、こういうことで、従来四十一年度におきましては百五十億というものを政府が負担をいたしておりましたが、これを五割増しまして、そして二百二十五億というものを政府の補助をしてもらう、こういうことにしまして、政府だけではこれはやっぱり保険——とにかく制度は保険でございますので、そこでその料率というものも、いまおっしゃられましたとおり千分の七だけ引き上げる。それからまた一部負担も、現実に治療を受ける患者の方にもひとつがまんをしていただく、こういうようなことで、初診時の一時の支払い、それから入院時のもの、それから薬といったようなものを患者に負担をしていただく、こういうようなことで、保険に関係のある当事者と申しますか、関係者全部がひとつ赤字を埋めるために腰を入れていただくというような構想でこれをつくったのでございまして、何としてでもこの四十二年度の危機をしのいでまいらなければならない、こういったような羽目におちいりまして、そして今度の御審議を願う改正案をつくったような次第でございます。
  276. 大原亨

    ○大原委員 これは新しく厚生大臣になられたから十分わからないのですが、一昨年来の社会保険審議会からの審議経過から見ましてもそうですが、抜本対策は、国会におきましても、総理大臣も厚生大臣も、昭和四十二年から実施します、こういうことを約束していたんです。国民の前に約束しておったのです。それをどういう理由でできなかったか、こういう疑惑の解明なしに、また突然暫定措置として、昨年国会におきまして千分の六十三を六十五にするのにあれほど大きな問題になったのに、今度は千分の六十五をいっぺんに千分の七十二にぽんと飛び上げた。一部負担にいたしましても、すべてを患者のほうに負担させてやるということにつきましても、これは私は納得できない。少々の国庫負担がふえましても、納得できない。そうでしょう。昭和四十二年から抜本対策をやる。あなたがイニシアチブをとって、内閣の政治力をあげてやるんだ、こういうことを鈴木厚生大臣と一緒に御答弁になったはずであります。いかがですか、その点。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりを申しました。しかし、昨年は総選挙その他まことに準備が進まなくて、その点でたいへん申しわけなく思っております。これがもし順調にまいっておれば、ただいま言われるような抜本的な対策を立てるべきだ、かように思っております。
  278. 大原亨

    ○大原委員 しかも一昨年末の社会保険審議会が混乱の中でいろいろと答申をいたしまして、みんなが相談いたしましてやりました。それが昨年の改正になってきたわけですが、その答申案によりますると、薬の負担の問題、当時薬代の半額負担の問題でありましたが、その半額負担の問題はやはり抜本対策にかかわる問題であるから、暫定措置で、未熟な議論の中でやるべきではない、こういう答申を出しまして、政府も厚生大臣も総理大臣も、国会におきまして、そうです、社会保険審議会の答申を尊重します、こう言って、約束をしておるわけであります。その中身がまた出てまいりまして、赤字対策というふうに出てまいりました。これでは国民不在の保険行政ではないか。医療行政ではないか。私は、総理大臣が先刻も言いましたけれども、この重要な時期に厚生大臣を——坊さんは適任者ではありますけれども、慣れておらない、それに更迭した。そういうことを含めまして、総理大臣責任があると思うんです。そういう筋道の通らないことをやりますと、ものごとというものは建設的に行くはずはないと思うのであります。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 総理大臣いかがですか。抜本対策につきまして、社会保健審議会は、薬の問題についてはもう少し総合的に抜本的に検討すると、こういう前提で答申を出しておったのでございます。いかがですか。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん各種審議会は、その答申はすべて政府が尊重するということで、ひとり社会保険審議会ばかりではございません、あらゆる場合にそういう態度をとっております。この場合もその一般原則、その態度であること、これは御了承いただきたいと思います。
  280. 大原亨

    ○大原委員 つまり、総選挙その他のことを言われましたけれども、これは厚生省は牛丸委員会、牛丸次官を中心につくりました抜本案を検討いたしておりました。総理大臣がそれだけの決意があれば、それを天下に公表いたしまして、十分意を尽くしながらそれを集約していくということが必要ではなかったか。それを抜本対策につきましてはほとんど何ら政治的にも手を打つことなしに、しかもまた、予算折衝のどたんばの段階におきましては、赤字対策と称するそういう案をここへ持ち出してくるということで、また混乱が起きようといたしておるわけであります。また、たとえば貧しい政府管掌保険の人々は大体所得税を納めていない人がほとんどであります。課税最低限に達しない人がほとんどであります。七、八〇%はそうであります。そういう人々に対しまして、たとえば保険料が上がっただけでなしに、かぜを引いたら初診料が二百円、そうして五日分か一週間分の薬をもらうと、合計いたしまして三百円以上の現金が取られる。一カ月入院いたしましたら、二千円以上の負担がふえるわけです。そういう改正案、改革案というものを、暫定措置と称して突然出してくるというようなことは、一方では減税減税と言いながら、減税の恩典に浴さない人々に対しましては、減税分以上のいわゆる保険料、保険税というものが——これは税金であります。国民保険なんか差し押えられる。そういうものを上げながら、そうして医療費の負担を国民に転嫁するというようなことはいけないではないか。これは政治的に総理大臣が判断すべきではないか、こう思うのですが、もう一度所見を聞かしていただきたい。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君のただいまの御意見、十分参考にいたして私は考えたいと思います。
  282. 大原亨

    ○大原委員 それは、いまの私が指摘いたしましたことを考えるということは、この暫定措置、赤字対策については社会保険審議会からいろいろ議論があるわけですが、しかし、国民の意見、国会の議論を十分聞いて、去年と同じように強行突破しないで慎重にこれはやる、こういうことと考えてよろしゅうございますか。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 強行するとかしないとかいうことではございません。先ほど来厚生大臣から実情をよくお話を申し上げました。それをなかなか納得がいかない、こういうことを大原君は御意見を述べておられるのであります。私どもは、ただいままでのところ、厚生大臣の意見と同様に私も総理として考えております。しかし、ただそういう考え方でございますというだけでは納得なされないものですから、御意見を十分伺いまして、なお参考にしたい、かように申しておるわけであります。たいへん正直に申しております。
  284. 坊秀男

    ○坊国務大臣 患者の一部負担につきまして大原さんからたいへんな御批判をいただいておりますが、これは大原さんすでに御承知のとおり、初診時百円の一部負担というものは昭和三十二年にきまったものでございまして、その後、三十二年から今日までに至りますと、物価は、私は詳しくはわかりませんが、二倍か三倍くらいになっておるだろうと思います。それから薬の一部負担でございますが、これは、もしもこの薬の一部負担が新しいことだからというようなことでまいりますと、もしこれをやらなくて、そうして初診時の一部負担というものでまいりますと、この百円を今度二百円にいたしましたのが、おそらく四百円くらいになるのじゃないか。こういうようなことから考えてまいりますと、私は、どうせお医者さんに見てもらえば必ず薬をもらう。薬をもらうということが、これは診療を受ける人が薬をもらうんだということで、もしもまたそういったようなものを料率のほうへかけてしまいますと、これは被保険者の中にはお医者さんにかからずに済んでしまう人もたくさんおありになる。そういったような人が、患者の薬のそういった部分あるいは初診時のそういった部分についてこれを均てんして負担をしなければならない。これはどうもそこいらあたりは、みずから給付を受けるというような方々に負担をしていただこう、こういうようなことでこれをきめたような次第でございまして、何ぶん御理解のほどを願いたいと思います。
  285. 大原亨

    ○大原委員 あなは、昭和四十二年度から抜本対策をやります、こういう約束だったんですよ。ですから、いままでの累積いたしました赤字についてはたな上げをして、利子を払うということで昨年も結着がついているわけですから、抜本対策に全力を注がないと、暫定対策、赤字対策を積み重ねてまいりますと、ますます医療保険のひずみや矛盾が拡大するんですよ。ですから、抜本対策という観点で、ほんとうに国民のだれもが納得できるようなそういう政策を政府責任を持って出すべきである、こういうことがいままでの順序であったわけです。それを開き直って、赤字を負担するのは当然ではないか、こういうふうなことを言われるということは、これは納得できないわけです。政府はやるべきことをやってないじゃないか。やっていないでいて、保険料を上げ、一部負担を増加して、患者や国民に負担を転嫁することは、対象が低所得階層であるという、零細企業や中小企業であるという観点から見ましても、これは許せないではないか。あるいは、政府がやるべきことといたしましては、たとえば薬価基準を実勢価格と一致させるという問題にいたしましても、私はいままで何回も議論いたしました。そういう問題で、その上に立って診療体系も考えて医者の技術や薬剤師の技術を尊重するというそういうたてまえや、あるいは大きな方向でいえば医薬分業の問題等々も十分展望しながら、そして一つ一つの手を打っていくことが必要ではないのか、こういうことを言っている。一切政府はやるべきことをやらないでおいて、国民責任を転嫁する。これは、滝川という元官房次長が最近世界各国を回っていろいろ視察しておられますが、これは国民不在の赤字対策だと、こういうふうに言っておられます。非常に冷静な方であると思うのですが、項目をあげて言っておられるのです。私はそういうことで、患者や国民に犠牲を強要しながら、赤字対策をやりながら、その日暮らしをやるというようなことは、これは絶対にいけない、許すことはできない、こう思うのです。総理大臣は、内閣全体の責任者といたしまして、十分責任のある答弁をひとつこの際してもらいたい。いかがですか。
  286. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますように、本来抜本的な対策を立てるときであった、かように思いますが、しかし選挙その他でそういう時間がなかった。しかし赤字に対する暫定的な処置をこの際とりまして、そうして長期にわたる抜本的なものは別途やろうというのがただいま政府の考え方でございます。その政府の考え方に対して、そのつど暫定的措置、応急的措置というようなことでやれば非常に格差が大きくなるだろう、とんでもないことだ、こういうただいまおしかりであり、同時に大原君の御意見ですが、これは将来において十分私が御意見を参考にすべき問題だ、かようにお答えをいたしておるのであります。この際取り返しのつかない時期の経過、これはいかんともしかたがないように私は思います。したがいまして、暫定措置をこの際はぜひとも御承認いただきたい、かように申しておるのであります。
  287. 大原亨

    ○大原委員 私が指摘いたしました中で、厚生大臣にお答えいただきたいことがあるのですが、時間の関係もありますから話を進めてまいるのですが、今回の暫定対策は、牛丸委員会その他で検討いたしました抜本対策とはどういう関係にありますか。
  288. 坊秀男

    ○坊国務大臣 従来厚生省で研究を続けてまいりました抜本対策と、今度の暫定対策の間には、ここで申し上げるほどの関係はないと御理解を願いたいと思います。ありません。
  289. 大原亨

    ○大原委員 最近は方々で議論されているから、社会保険審議会なんかで議論されているからだいぶ頭に入っておると思うのですが、しかし、今回の一部負担の増加によりまして九二%、約九割給付になるのですよ。本人十割給付というのが九割給付になるのです。それから、薬代の一部負担ということで、この問題については各方面からいろいろな議論があるわけですけれども、そういうこと等は非常に大きないままでの医療制度を改革することになるのです。医療保障をだんだんよくしていく、人間尊重、社会開発をたてまえとしているそういう佐藤内閣が医療保障の後退を招く、そういうふうなことなどはいかがなものであろうか。これは後退ではないか。やはり制度の基本に触れる問題ではないか。それでは関係がないというのであるならば、私は牛丸委員会におきまして議論されている抜本対策を大臣のほうから発表してもらいたい。どういう点において関係がないか、政府は、厚生省は、少なくともこういう考え方で将来いこうとしているんだ、暫定対策はこういうふうにするんだ、こういうことを明確にするために抜本対策をどういう点について考えているかという点をひとつ発表してもらいたい。
  290. 坊秀男

    ○坊国務大臣 抜本対策につきましては、牛丸委員会で検討を続けてまいりましたが、これはまだいろいろの問題点を課題として出したようなものでございまして、私も去年の十二月に厚生省へ就任してまいりまして一応その報告は受けておりますけれども、まだ未定稿のものでございまして、はっきりと、こういう結論だといったような姿をしたものではございません。そこで、これにはあらゆる角度から問題点を集めておりまして、ここで、牛丸委員会の案はこうだということを申し上げるわけにはいきませんけれども、抜本対策の大体の方針といたしましては、今日の日本の医療保険の中における給付水準がたいへんな格差がある、この格差をどうしても是正していかなければならないということと、もう一つは費用負担でございます。費用負担にアンバランスがありますから、これを均衡化していかなければならないということ、それから、財政上これは非常に脆弱でございまして、その財政を長期に安定していかなければならないということ、それから、先ほどから御指摘のこの問題については、診療の報酬体系といったようなものが非常に重大なる問題として残っておりまして、制度の問題と診療報酬体系の問題というものが、まさにこれから抜本対策を考えていく上における車の両輪のようなものであろうと私は理解をいたしておりますが、こまかいそれらのことにつきましては、ここで私は全部覚えてはおりませんので、大体の方針はそういうところにあるということを御理解願いたいと思います。
  291. 大原亨

    ○大原委員 給付のバランスをとる、負担のバランスをとって財政を安定させるというのですが、給付を下げる、負担を上げる、そうして財政の安定をはかるというふうな今回の改正というのは、これは一番芸のないやり方ですよ。給付の水準を下げていくんだ、負担は上げていくんだ、そんなことでバランスをとったんではこれは何にもならぬじゃないですか。だから、それだけを言ったのてはだめなんですよ。もう少し具体的な検討をされている問題があるはずです。牛丸委員会というのはもう解放したのですか。もう一応の問題点の検討終わったのですか、いかがですか。
  292. 坊秀男

    ○坊国務大臣 牛丸委員会は目下休止の状態にあります。
  293. 大原亨

    ○大原委員 いま死んだような状態、仮死状態。全く私は、厚生省は責任を持って医療行政や社会保障の問題を取り上げているかどうか、ということは、非常に大きな疑問があると思うんです。これは問題だと思うんです。私の手元にはいろいろあるですよ。牛丸委員会において検討されている問題点といわれるのがありますよ。これは、一々私はこういう席上で議論しながら、暫定対策が当を得たものかどうかということを明らかにすることが、国民の力をもってこの問題を解決するゆえんであると思うんです。ですけれども、私はそういう点で、問題点だけでも、厚生大臣はこの際ひとつ、一段落がついて休止状態だと言うんだから、内容の問題点について私は大胆に天下にこれを明らかにいたしたい。そうしてみんなの議論を得てやる、こういう態勢がなしに、去年やった組合保険料の値上げをまたやる、去年引っ込めた薬代の一部負担をまた出してくる、こういうふうなことで世間を騒がしたのでは、これは全くでたらめじゃないですか、いかがです。
  294. 坊秀男

    ○坊国務大臣 牛丸委員会で検討を続けてまいりました諸般の問題につきましては、担当の局長から御披露を申します。
  295. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 通称牛丸委員会といわれております医療基本問題の委員会ということで、一昨年の十一月から昨年の秋までにかけて検討いたしたわけでございますが、説明いたしますと長くなりますので、項目につきまして申し上げてみたいと思います。  医療保険の抜本的改正を検討する場合には、医療保険だけじゃなしに、他の医療保障制度との関係を考えていかなければなりません。たとえば、結核あるいは精神等につきましては、公的医療ということで、国が多額の負担を出しておるわけでございますが、それと医療保険、現在の保険との関係をどういうふうに調整をしていくかということが基本的な問題であるわけでございます。そういった点につきましての検討、これがまず第一でございます。  それから、先ほど大臣が言われました給付水準につきましては、給付率をどの程度持っていくか、現実に、御承知のように、国民健康保険のほうでは、ことしじゅうに、家族まで含めまして七制というのが達成されるようになっておりますが、被用者保険においては、家族については五割ということになっておりまして、形式的には、本人は十割でございます。それを総体としての給付率をどの程度に引くべきか、これは、各審議会では、これを九割というふうな話も出ておりますが、それにつきまして、外来と、あるいは入院と、それから本人と家族をどのような給付率にしていくかというのが基本的な問題でございます。しかし、これを全部オール十割ということはどこの審議会も申しておりませんので、やはり一部負担が必要だ。その一部負担の中身といたしましても、これを定額で負担するのが適当か、あるいは九割とか八割とかいうふうに定率でやるのが適当かどうか、また定率と定額を折衷するのがいいかどうかということも検討事項の中に入ったわけでございます。また、一部負担がありました場合には、当然減免ということを考えなければなりません。この減免について特別の給付を考えるかどうかという問題がございます。  それから、先ほど大原先生の言われました薬の対策につきましても、現在は全部現物で払っておりますが、療養費払いにするのがいいかどうか、また、いわゆる大衆保健薬を給付外にするのが適当かどうか。また、薬について差額徴収を一部認めるかどうかという問題がございます。  それから、次は支払い方法でございますが、支払い方法につきましては、現在は御承知のように現物出来高払いということになっておりますが、これがはたしていいかどうかということも抜本問題であることは御承知かと思います。それにつきまして、療養費払いが適当か、あるいは差額徴収がいいかどうかという問題がございます。また、それ以外に、特定の診療行為について給付外にするという考え方があるわけでございまして、これはたとえば入院中の食事代、大体百四、五十円といったものを保険の給付からはずしたらどうだというような関係団体の御意見も出ております。あるいはダブりますけれども、大衆保健薬は給付外にするというふうな考え方がありますし、あるいは応診等をこれからはずすかどうかという考え方があるわけでございます。  それから、費用負担につきましては、これは現在国民健康保険は定率四割、財政調整を入れますと四割五分ということになっておりますが、やはり政府管掌その他につきましても、定率の国庫負担をやらなければならぬかどうかという問題は、すでに社会党のほうからも御意見として私ども承っておりますし、その点につきましての問題点があるわけでございます。  それから、保険料の賦課方法につきましても、御承知のように総報酬制がいいか、現在の標準報酬制度がいいか、あるいは総所得という考え方を入れるかどうかという問題がありますし、また、現在保険料負担につきましては、労使の折半の原則を採用いたしておりますが、諸外国においては、折半原則でないところもありますし、折半原則をくずすかどうかという問題点があるわけでございます。  なお、診療報酬の問題につきましては、これは直接的には、中央社会保険医療協議会の審議事項になるわけでございますが、御承知のように、甲表、乙表の一本化、あるいは医師、歯科医師、薬剤師の技術をどの程度尊重していくか。また、薬の点数等について、現在の点数が妥当かどうかという問題点を検討いたすわけでございます。  最後に、制度的な体系をどうするかというのがやはり保険制度としては一番問題でございまして、これは現在のように共済組合でやり、あるいは健康保険組合でやる、ばらばらでございますけれども、これを一本に統一することが適当かどうか、その場合にも被用者と、それからいわゆる農民等の自営業者等、二本立てにするのがいいかどうかという問題があるわけでございます。なお、その場合に、一本にするのが適当でないとすれば、これをプール制をしいて財政調整をやるというふうな考え方もございます。また、考え方を全然別にいたしまして、たとえば入院の場合の保険、あるいは老齢者の場合の保険等を別個に考えたらどうだというふうな意見も出たわけでございます。  なお、これに関連いたしまして、抜本対策を論ずる場合には現在の医療制度のもろもろの関連を分析し、これを検討していかなければならぬわけでございまして、現在の開業医並びに病院のあり方等につきましても議論が及んでくるわけでございまして、その中には医薬分業の問題も当然入ってくるわけでございます。  以上、いろいろと検討いたしましたけれども、これを一挙に解決することはもちろん不可能でございますし、至難事でございますので、それを年次計画でもってどのように、何年度までに逐次どれから着手していくかというふうな問題があるわけでございまして、問題はきわめて広範多岐にわたっておりますし、また関係団体の抜本対策につきましてのいろいろな意見も出ておりますので、そういう点を全部総合調整をいたしまして、私どもとしては何とか早く抜本対策のめどをつけたいという考え方に立っておるわけでございます。
  296. 大原亨

    ○大原委員 時間もだいぶ来ましたので、だんだんとしぼっていきたいと思うのですが、いまの給付を九割給付にするということを一つとってみましても、これはもうすでにやっておるわけだ。これは計算いたしますと、もう結果といたしましては九二%、九割二分の給付になっておるわけです。そういうふうなことや薬の問題、その他抜本対策に関係ないと大臣が言ったって、これは全部抜本対策に入っておることじゃないですか。そういうことを予算査定のどさくさでやるよりも、少少の赤字は覚悟いたしましても、私どもが言うのは、これはたなに上げておいて、ついでだから、千億円以上あるのですから、抜本対策を急いでやらなければ、この問題についてまたごたごたごたごたして、時間もないのに抜本対策が来年できないということで、またどたんばでごたごたする。七月の内閣の改造があれば、あなたがどこかへ栄転されるかもしらぬ。こういうこと等で、これはむちゃくちゃになってしまうわけですよ。ですから、そういうふうなことは非常にまずいやり方だ。一年間のうちに二回も大改革——これは内閣をあげてやらなければ、これはへたをすると政治生命がかかる問題だ、国民の生命や生活がかかる問題であるだけでなしに。いま言われたことは、生命や健康にかかわる日本の大問題ですよ。そういう問題について、予算査定の段階で、大衆保健薬について、これをのけといって大蔵大臣は出す、あるいは一部負担でがまんしようとかいうふうなことで、やりとりだけでやったのでは、これは私は政府責任を果たしたことにはならぬと思うのだ。私は、このことについては、考えを改めてもらうように強く要求いたします。総理大臣、いかがですか。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私申し上げたように、今回は暫定処置でぜひ御協力願いたいと思いますが、ただいま大原君の御意見、詳細にわたってお聞きすることができました。基本的な問題に幾つもむずかしい問題のあること、あらためて私も認識いたしました。この上最終的な、本格的な抜本対策を立てる際に、ただいまのような点も十分考えてまいるつもりでございます。
  298. 大原亨

    ○大原委員 これは問題が非常に多いから、あとの機会に、一般質問その他でずっと議論を続ける、こういうことにいたしまして、最後に私申し上げたい点は、在外資産の問題です。これは、植木さんがここにすわっておられますが、植木さんは在外資産の議員懇談会の会長です。ほとんどの自民党の議員の諸君もそれに参加されて、六千億円というやつを選挙のときに出されたわけだ。六千億円を実行するということをやられたわけです。それで選挙戦に臨まれまして票集めをやられたわけだ。しかしながら、その後の情勢を見ておりますと、いろいろ紆余曲折があるのですが、これは、私は財政法上も非常に問題だと思うけれども、この問題は、いまどういう段階にあるのか、どういうふうに処置するのか、こういうことにつきまして、ひとつ主管大臣のほうから御答弁いただきましょう。
  299. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 在外資産の問題につきましては、昨年十一月末、審議会の答申も出ておりまするし、また総理の施政方針演説でも、この国会で法的措置をもってこの問題を片づけるということをはっきり申し上げておりまするので、この国会にこの法案を提出いたすべくいま準備をいたしております。金額その他の点におきましては、いま検討中でありまするが、やはり今日の国家の財政状況とにらみ合わせまして、国民の内得のいく、世論の納得のいく形でこの問題の解決をはかりたい、かように考えております。
  300. 大原亨

    ○大原委員 できないことをできると言ったり、あるいはいろいろなことで私は国民を惑わしちゃいかぬと思うのです。この問題はある程度各方面では議論が煮詰まって、筋もあるわけです。それについては、私は国民が納得できるような措置を政府、与党においてはとるべきである、こういうことを思います。総理大臣、いかがですか。これは大蔵大臣にも聞きたいわけですが、財政法上問題じゃないですか。国の負担行為に伴う交付公債であっても何でもそうですが、伴う問題について、いまだにその要綱もきまらないし、負担額もきまらぬ。これは補正予算か何か組むのですか、いかがですか。
  301. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、予算とは一応関係なくやれる問題だと思っております。
  302. 大原亨

    ○大原委員 予算と関係がないのですか。あなた、小さい蚊の泣くような声で言われたが、予算と関係ないですか。そんなことがありますか。いま予算を審議しているのですよ。総括質問をやっているのですよ。そういう問題について、六千億とか、二千億とか、三千億とか議論されておる。主管大臣は、国会中にやります、そう言っている。しかし、あなたは予算とは関係がないということを言っている。いかがですか。
  303. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今年度の当初予算とは私は関係ないと思っております。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど塚原君がお答えをいたしました、そういう段階でございます。ただいま関係各省で十分審議し、その案をまとめつつある際でございます。金額がもうすでに出たというお話でございますが、金額が出たことはございません。また金額はまだ決定しておりません。その点を私からも重ねてお答えしておきます。
  305. 大原亨

    ○大原委員 総理大臣、私はこういうことを言ったんですよ。主管大臣はこの国会中に片づけます、こう言っている。これは結論を出します、必ず在外資産の補償金を出します、そういうことなんです。しかし、大蔵大臣は、本年度の予算とは関係ありません、こういうことを言っているのですよ。その理由を明らかにしなさいよ。これだったら、引き揚げ者の皆さんでも、あるいは国民でも納得できぬですよ、そういうでたらめなことは。
  306. 塚原俊郎

    ○塚原国務大臣 四十二年度の予算措置といたしましては、調査費の三億何がしでございまして、特別の交付金の支給は四十三年度からでございまするから、大蔵大臣はそのようにおっしゃったと私は考えております。
  307. 大原亨

    ○大原委員 いまそういうことを言われたわけですが、この問題は、相当中身について言われたわけで、この国会については、その金額は計上されるのだ、こういうことをはっきり言われたわけです。私は上村さんにも聞きたいけれども、たいへんな問題だと思うのです。あなたらが選挙のときに言われたことと比較いたしてみますと、これはたいへんなことですよ。選挙のときにどういうことを皆さん方は言われたのですか。これは昭和四十二年の予算のことを言っておられたのですよ。その点については将来問題がある、私はこういうことにつきまして指摘をいたしておきます。  いよいよ最後になるわけですが、戦後の処理はもう終わったと言われておったわけで、原爆被爆者の問題については、社会保障のワクで処理をすると言われたのですが、それは昭和三十九年に衆参両院で議決をいたしまして、被爆者に対する援護強化の決議を全党一致で超党派的にやろうということを決議いたした。そういう本会議の趣旨や、あるいは昨年、社会労働委員会やその他におきまして、昭和四十二年を目途にいたしまして、この問題について取り上げよう、こういうような決議に違返をしないか、あるいは社会保障の範囲を広く解釈されているのかどうか、こういう問題につきまして、最後になりましたのでひとつ質問をいたします。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの在外資産の問題、これは誤解がないように願いますが、ことしこの国会でこの問題と取り組む、そのために立法措置をし、そうして国会の審議を願う、こういうことを申したのであります。そして、これはもちろんただいまの交付公債にしろ、金額の問題があるわけでありますが、しかし、現段階においては、まだ金額の問題が決定しておらないということをつけ加えて申し上げておきます。  それから、これの問題が大体戦後処理の最終的なものだろう、こういうことも申しました。それからその他の事柄で、生活扶助を必要とするような問題があれば、これは戦争によってそういう状態が引き起こされようが、また戦争でなかろうが、すべて社会保障の問題としてこれに対処していこう、こういうことを申しております。  そこで、ただいま大原君のお尋ねの原爆の被爆者の処遇の問題であります。この医療の処置はもうすでにきまっております。また決議の問題でいろいろの項目が取り上げられておりますが、この中には、ただいま、生活援護、そういう積極的な問題ではなくて、その他被爆者としての処遇の問題、幾項目かございます。いま私全部覚えておるわけではございません。そういうような問題につきましては、これは別に予算的措置もあまり必要としないようでありますから、こういう事柄については処置のできるものもあるのではないかと思います。私は、ただいま申し上げるようなことで、被爆者に対しましては心から御同情申し上げ、ほんとうにお気の毒な状態である、かように思いますから、この医療援護、これを徹底いたしまして、そうしてひとつ再起に元気を出していただくように、この上とも協力するつもりでございます。  その他の問題等についても、さらに衆参両院で決議した事柄でもありますから、その内容等について、さらに具体的に決議の趣旨をトレースしてまいる、こういうことをお約束しておきます。
  309. 大原亨

    ○大原委員 政治というものは、私は思うのですが、圧力をかけたからできるとか、非常に弱い立場の者であって非常に切実な要求については放任されるとか、そういうことがあってはならぬと思うのです。そういう点、私は総理大臣は十分了解されておると思うのです。  私は厚生大臣に最後にお尋ねするのですが、四月に原爆の被爆者調査三千数百万円を出した。その調査が七月にできるといったり、十一月にできるといったり、ずいぶん調査が延びて、この対策というものがその上に立ってできないという事情にあるけれども、これを早くやる方法はないのですか。厚生大臣いかがですか。総理大臣はやや積極的な御答弁ですけれども、あなたが、主管大臣が何をやっておられるのかわからぬ。それは忙しいのもわかるけれども、もう少し熱意を持ってやってもらわなければいかぬ。
  310. 坊秀男

    ○坊国務大臣 お答えは、ただいま総理大臣からおっしゃられたとおりでございますけれども、実態調査について、厚生省におきまして鋭意進捗を努力をいたしております。大体ことしの秋ぐらいをめどといたしましてやっております。そういうことであります。
  311. 大原亨

    ○大原委員 これで最後ですが、いままで質問をいたしてまいってみますと、社会開発を看板にされた佐藤内閣の社会保障やその他というものは、長期計画もつくると言ったと思えばないし、医療保険の問題について抜本対策を内閣をあげてやると言ったかと思うとないし、まことに私はさびしいと思うのであります。そうしてそういう紛争のうちに、一歩一歩と医療保障や社会保障がむしろ物価値上げその他にあおられて後退をしているのじゃないか。こういうことはきわめてじみちな問題ではありますが、しかし、政治の中におきましては、国民生活と密接な関係のある問題です。こういう問題についてもう少し指導性を発揮されて、そうして総理大臣以下が国民に約束されましたことについて、ひとつ十分責任を持って実行されるように強く私は要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  312. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次会は、明二十四日午前十時から開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十一分散会