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1967-03-22 第55回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十二日(水曜日)    午前十時十四分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 久野 忠治君 理事 田中 龍夫君    理事 八木 徹雄君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    井出一太郎君       川崎 秀二君    北澤 直吉君       重政 誠之君    周東 英雄君       鈴木 善幸君    登坂重次郎君       根本龍太郎君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       古井 喜實君    保利  茂君       松浦周太郎君    松野 頼三君       渡辺 栄一君    猪俣 浩三君       石橋 政嗣君    大原  亨君       角屋堅次郎君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    高田 富之君       芳賀  貢君    畑   和君       八木  昇君    山中 吾郎君       横路 節雄君    春日 一幸君       竹本 孫一君    広沢 直樹君       矢野 絢也君    谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         防衛庁教育局長 中井 亮一君         防衛庁人事局長 宍戸 基男君         防衛庁経理局長 大村 筆雄君         防衛庁装備局長 國井  眞君         経済企画庁調整         局長      宮沢 鉄蔵君         経済企画庁国民         生活局長    中西 一郎君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁原子         力局長     村田  浩君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         大蔵省理財局長 中尾 博之君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 熊崎 正夫君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省園芸局長 八塚 陽介君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         通商産業省企業         局長      熊谷 典文君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君         建設省計画局長 志村 清一君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月二十二日  委員登坂重次郎君、根本龍太郎君、船田中君、  永江一夫君及び西村榮一君辞任につき、その補  欠として中野四郎君、荒木萬壽夫君、渡辺栄一  君、竹本孫一君及び春日一幸君が議長の指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 私は、日本社会党を代表しまして、さき政府発表いたしました経済社会開発計画と、昭和四十二年度予算案との関連、それについての政府経済財政政策並びに外交、防衛政策についてお尋ねをいたします。  総理は、さき施政演説におきまして、「私は、国民各位信頼にこたえ、いよいよ心を新たにして議会民主政治の確立につとめる決意であります。」と述べておりますが、国民議会政治に対する信頼にこたえるには、総選挙での公約を忠実に履行し、これが実現をはかることであると思いますが、総理はどうお考えになられますか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 議会民主政治のあり方から申しまして、公約を忠実に履行する、これはもちろんでございます。
  5. 横路節雄

    横路委員 次に、総理お尋ねしたい点は、総理は、「いまのような物価の異常な上昇は、国民生活にとって重大な脅威である」と、さる三月七日の物価安定推進会議で述べられており、また、「昨年は五・一%の上昇にとどまったが、五・一%自体が大幅な上昇考えるべきであり、物価上昇基調には根強いものがある」こういうように言われております。この物価上昇基調には根強いものがある、いまの物価の異常な上昇国民生活を脅かしている、こういうように総理がお考えの点についてはお変わりはないと思いますが、この点はどうですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、横路君がお尋ねになるまでもなく、本会議で話したばかりでございます。私、今日、もちろん変わっておりません。ただ、その私のしゃべりましたことについて、要点といたしましては、六%のものが五%以下にとどまった、そういう意味で、やや努力効果が出てきたように思うけれども、しかし五%自身、まだまだたいへん高いんだ、だから、これをさらに下げていかなければならないんだ、だから経済社会開発計画最終年度におきましては、これをさらに三%にするというふうに、その目標を明示しております。そういう意味で、私ども、五%でありますことについて、たいへんまだまだ高いんだ、こういうことで努力を払っておる。  それからもう一つは、やはり何と申しましても、経済成長基調といいますか、そういう方向に向かっておりますので、やはり物価値上げ上昇、そういうものがなかなか強い、そういう際でありますから、一そう政府努力しなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  7. 横路節雄

    横路委員 いまの点は、総理さきの本会議においても述べられておりますし、「昭和四十二年度予算案は、国際収支均衡物価の安定を主眼として編成をした」こういうように言っておられます。なお、物価上昇は、いまお話のございましたように、「かなり根強いものがある、今後の国際収支及び物価動向には細心の注意を払っていく」と、こう述べておられますが、ことしの四十二年度経済見通しの四・五%の物価上昇については、一体押えられる自信があるんですか、どうなんですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 全然自信のないようなことは申しません。
  9. 横路節雄

    横路委員 総理、私がこのことをお尋ねしているのは、一昨年、私は代表質問中期経済計画について総理お尋ねをした。そのときに、中期経済計画では二・五%に抑えます、それから公債発行はしないというのが中期経済計画二つの柱だった。ところが、中期経済計画は間もなく二つの柱を落とした。二・五%の物価上昇は押えることはできない、公債発行はしないといったけれども、あれは結局うそでした、こういうことになった。あれはわずか半年でやめた。ですから、私は重ねて聞いているのですが、その点はどうなんですか。いまの国際収支の問題その他からいって、四・五%でいける自信があるのですか。だんだん聞いていきますが……。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいま計画を樹立したばかりであります。この前の中期経済計画の樹立の際とは違います。ただ、いま問題を提起いたしておりますように、物価上昇機運が非常に根強いということと、それからもう一つ国際収支、これが、ただいまのような経済見通しを立てる上におきまして、まず国際収支のほうで狂ってくるのじゃないかという一つの心配がないでもございません。しかし、ただいま私どもが事前にこれらの点が問題だということがわかっておりますだけに、これに対する対策ももちろん立て得るのでありますし、そういう意味で、流動する経済状態を絶えず見守って、そして随時適切な処置をとっていく、こういうことでございますから、全然原因がわからないで申し上げておるのとは違います。これはまあ経済が実際問題として処理することであります。そういう点を十分注意してまいりますので、ただいま四・五%、こういう目標数字を出しておられますが、私どもはいまの五%、これをさらに下げる、こういう方向で一そうの努力をするつもりでございます。
  11. 横路節雄

    横路委員 総理のいまのお話からいけば、四・五%にはだいぶ自信がない。四十二年度の経済見通しは、御承知のように消費者物価上昇は四・五%だ。いまの総理のお答えは五%を下げるということだ。それだけ、もうすでに変わっているのです。この点は総理自身も、去る二月の二十八日、四十二年度予算を決定したときにこうおっしゃっている。二つ言っている。「この予算景気刺激するとの懸念を抱く向きもあろう、しかしその運用、執行については十分留意する」と言っておられる。だから予算編成したときに、もうすでに景気刺激懸念がある、だから運用については十分留意をする、こう言っておる。それなら初めからそういう予算を組まなければいい。  そこで、私は総理お尋ねしたいのですが、いまのような景気過熱の問題は、すでに経済企画庁も述べておられる。日銀総裁もすでにその警戒をされている。景気過熱の場合に、一体財政の圧縮、公債発行の思い切った削減をなさる用意があるのかどうか、その点について、ひとつ私はお尋ねをしたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのは一般論としてのお尋ねか、あるいは今回の予算編成についてのお尋ねか、その点が明確でございませんが、いわゆる学術論学理論からのお尋ねなら、ただいまのようなお話、もちろんわれわれは気をつけていかなければならない問題でございます。だから、これは経済論として非常にはっきりする問題でありますから、あえてこれはお答えしなくてもいいかと思いますが、ただいまのように考えております。  ただ私、実際問題として、予算編成上で一体どういうことなんだ、こういうことがいま問題だと思います。そこで、私どもが今回予算編成いたしました公債発行の問題、これはやはり限度がある、同時に、市中消化ということができる範囲であること、この二つ考え公債発行をいたしたわけです。私が申すまでもなく、経済現象については、財政の果たす役割り、また金融の果たす役割り、この双方がかみ合って、そして経済成長ができるわけであります。今日財政の問題は一体どうなのか、金融の問題はどうなのか、こう分けて考えてみますと、昨年は財政一般刺激することによって不況を克服する、こういう点に重点を置いてまいりました。ことしは、この財政の面は、ただいまの財政規模五兆円以内にとどめることによりまして、そういうような刺激をねらった予算ではない。公債発行が云々されておりますが、市中消化が可能な範囲、こういうことでございますから、この点も八千億、これは経済に見合った適正な規模かと思います。そこで、ただいま果たすべきもの、経済動向によりまして処置することは、これは金融の面からそういうことを考えなければならないのじゃないかと私は思っておるのであります。ただいまの財政金融との果たす役割り等を勘案いたしまして、適切また適正な処置ができる、かように考えておる次第であります。
  13. 横路節雄

    横路委員 私は、現状についていまあなたにお尋ねをしているのですが、そうすると総理大臣は、さき政府がおきめになった昭和四十二年度の経済見通しについての国際収支設備投資消費者物価上昇卸売り物価上昇については、政府見通しのとおりいけるというのですね。私は具体的な事実に基づいてあなたにお尋ねをしているのです。その点はどうなんですか。国際収支設備投資消費者物価——それは総理でなければ大蔵大臣でけっこうです。(「これは予算編成骨子だから総理に言わせなければいかぬ」と呼ぶ者あり)いやいや、総理にやってもらいましょう。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま不規則発言からも、予算編成骨子だという御意見が述べられておりますが、もちろん予算編成骨子でありますから、その経済見通しに立って、初めてこの予算編成をいたしたのであります。したがいまして、いまあげられました諸点については十分考慮した結果でございます。
  15. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの経済見通しについては間違いがないというのですね。その点だけお尋ねしておきたいのです。これは、これから私は数字を申し上げたいから……。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 経済見通しを基礎にして予算を組んだ、かように申しております。
  17. 横路節雄

    横路委員 それではひとつ、各銀行のそれぞれの経済見通しについてこれから申し上げますから、一体総理見通しがどういうものか、お聞きをいただきたいと思います。  まず、この間発表になった日本勧業銀行では、消費者物価上昇は六・五%、国際収支総合収支で二億五千万ドルの赤字設備投資については、政府のほうは六兆二千億だが、六兆四千億。長期信用銀行では、消費者物価上昇は六%、卸売り物価上昇は、政府は一・二%だが、二%の上昇総合収支では二億ドルの赤字設備投資では六兆四千億。第一銀行発表は、消費者物価は六・五%の上昇卸売り物価は二・八%の上昇総合収支で二億ドルの赤字設備投資は六兆四千億。みんな違うではありませんか。すでにあなたのほうでは国際収支とんとんと言っている。しかし、どこだってみな、最低二億ドルから二億五千万ドルの赤字を見込んでいる。消費者物価上昇は四・五%と言っているが、六%から六・五%に上げている。卸売り物価は一・二%と言っているが、二%に上げている。はなはだしいところは二・八%に上げている。設備投資については六兆二千億としているが、六兆四千億だと言っている。それぞれみな違うではありませんか。それならばこそ経済企画庁では、すでにこういう数字を踏まえて景気過熱についての早期の警戒について閣議で発表されておる。二月の月例分析でやっておる。日銀総裁もやっておる。こういう数字についてはどう思う。こういうことについて、国際収支はもうとんとんではない、卸売り物価消費者物価政府見通しとは違ってはなはだしく上昇している、設備投資は非常な勢いでどんどん伸びておる、こういう点についてはどうなんですか。こういう点について、財政規模金融、国債の発行についてはどうお考えになるのか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま横路君があげられましたように、各銀行等でも見通しを立て、それも、しかもいろいろ技術的なデータでそういう判断を出しておる。その通りそういう見方をしておるところもございます。そこで一番問題になりますのは、私ども国際収支の問題であります。したがいまして、経済企画庁におきましても、また大蔵省におきましても、国際収支見通し——これもただいま黒字を出しておる状況ではございません。しかし、特に赤字二億だとか一億五千万だとか、かような数字も計上はいたしておりません。これが問題なんだということで、すでに政府自身がいろいろ対策を立てつつあるのでございます。したがいまして、ただいま一般的な見方を例にあげられましたが、予算編成上において全然不注意状態で、また頭に置かないような要素なのかというと、そうではないのだということを申し上げておるのでありまして、これはやはりこれから政府がそのときどきに処置する、そのことが効果があがるかあがらないか、これをひとつ見ていただくということ以外にはないように思います。  また、いまの卸売り物価の問題が、一つのわれわれが想定する以上に実はあがるのじゃないのか、こういうこともありますので、この点も特に注意をいたしております。つい最近の鉄鋼値上がりなどは、こういう意味でたいへん要注意の最たるものだ、かように思いましたので、これも値上がりを抑える協力を得るような処置を緊急にとりました。あるいは設備投資の問題、これも計画経済、あるいは統制経済はいたしておりませんけれども、これは先ほど申しました金融と相まちまして、業界の自主規制、そういう方向協力を得るように努力しておる最中であります。したがいまして、将来の数字でございますから、もちろんこれにわれわれ一つ目標を立てて経済の成り行きを見ておるわけでございますが、その目標におさまるようにあらゆる努力をし、くふうをしていかなければなりません。だから、いまからこれはもう失敗じゃないか、かようにおきめにならないで、この危険のあること、その点は横路君の御指摘のとおりでありますから、民間におきましても政府も苦心しているのだ、そういうことで、一そうの協力を願うようにひとつお願いしたいと思います。
  19. 横路節雄

    横路委員 この点は、次に大蔵大臣お尋ねしますが、この点は大蔵大臣のほうがはっきりものを言っていらっしゃいます。施政方針演説で、「国内経済上昇基調には根強いものがある、国際収支先行きには注意を要する、特に国際収支均衡物価の安定に細心の注意を払いつつ、財政金融政策を慎重かつ果断に運営してまいる決意です」こう言っておられるが、この慎重かつ果断、これはどういう意味ですか。すでに私がいま申し上げたように、これだけ、いま総理もすでに国際収支先行きその他については御心配しているとおりだ、設備投資もそのとおりだ、自主規制をいま鉄鋼に要請している、消費者物価卸売り物価上昇政府見通しとは全然違う。総理自身だって四・五%とは言わない、五%以下だろう、こう言っている。だが、あなたは「慎重かつ果断に運営する」こういう決意を述べている。どうなさるのです、これは。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 慎重とは、経済実情を十分に見きわめる、絶えず実情を注視して、そして対策の間違いないようにするというのが慎重でございまして、果断というのは、やはり経済は動くものでございますから、特に、こういう経済がよくなってきているときには、対策は常に早目にしないといけない、早目にするというのは、これは実際にはなかなかむずかしい問題でございますが、こういう点において、必要と思うときには機動的に、やることはやるということが必要でございましょうし、これを果断と言ったわけでございます。要するに経済実情を十分に見て、これに対処するということでございます。
  21. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私はあなたにそういうことば意義を聞いているのではないですよ。ことば意義ならここに書いてある。具体的に何をやるか。あなたはいま、早目対策をどうやると言った。どういう政策があるのです。もしもあなたが心配しているようなことになったら、どういう政策をやるのです。その政策の一、二について述べてごらんなさい。ことばの解釈を聞いているのではないのですよ。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体それでおわかりだと思うのですが、問題は民間の、たとえば資金需要が非常に強くなっているというようなときに、政府資金需要とこれが競合するというようなことになると、いわゆる心配した事態を起こすというようなこともありますので、こういう点を競合させないような措置というようなものは、われわれが絶えず気をつけておって、いろいろな手段でやれることでございますので、そういう実情に応じて、われわれのやれる措置をとるということでございます。
  23. 横路節雄

    横路委員 それではあれですか、そういう場合には公定歩合の引き上げとか、金融の引き締めをやるというわけですか、どういう意味なんです。何をおっしゃろうとしているのです。その点を聞きたい。
  24. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど御質問があったようでございますが、いまの政府経済見通しというのは、政府経済情勢に対していろいろな、そのときどきの適切な措置をとるということを前提として、一年の見通しをこの辺に持っていきたいという目標見通しでございます。したがって、私は大体あの見通しどおりにいくような運営をしたい、そう考えておりますので、それには事態をいろいろ、たとえば過熱なら過熱というところに持ってきてから急ブレーキをかけるというような政策は最もまずい、私どもは過去の経験からそう思いますので、その急ブレーキをかけるような事態、たとえば公定歩合をどうするというような、イギリスがやったようなああいう事態にしないように、これをなだらかに持っていこうというのが、いま私どもが苦心しているところでございまして、必ずそうするというふうに、いまからきめている問題ではございません。
  25. 横路節雄

    横路委員 次に総理お尋ねしたいのですが、これから数字お尋ねします。  昨年十二月二十七日に経済見通し発表されたときには、すでに消費者米価は十月から一四・四%に上げることを決定をして昭和四十二年度の経済見通しをお立てになったのかどうか、その点ひとつお聞きをしておきたい。これは非常に選挙公約との関係がある。これは選挙公約だから総理に伺いたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 十二月の予算編成のときのお尋ねだと思います。私は、選挙中に、消費者米価は当分上げないということを申しました。当分とは一体いつまでなのか、こういうことであります。これが昨年一年間続いておるし、そして、一体いつそれをきめるのか。三月まではもう上げないという、ことしの三月までは上げないでいる。今度は、三月からその先は一体いつだ、これは当分の間、こういう表現をいたしております。いまのように、一年間上げないのなら一年間上げないとはっきり申しますが、当分と、かように私は申したことで、これで公約はおわかりだと思います。  そこで、いまの一四・四%の消費者米価の引き上げを予算の上に計上したということについて、当時の経過をもう少し詳しく説明しろということですが、これは経済企画庁長官からも補足説明をいたさせますが、消費者米価のきめ方、これは予算だけですぐきまるわけのものではございませんから、手続上は所要の手続をとることは当然であります。しかし、予算編成いたしますについて、消費者米価を上げるのか、上げないのか、全然それもきまらない、上げるとすれば一体幾らになるのか、それも計上されないというようなことでは困りますから、ただいま一四・四%値上げ、これを計上して予算を組んだわけであります。しかし、この問題は、私自身公約には反しておらないと思います。しかし、消費者米価を上げるということは重大な問題でありますから、上げること自身、また上げ幅等についても、十分御審議をいただかなければならぬ問題だ、かように私は考えております。ただいまのは、予算編成上、一応計上せざるを得ない状況にあったということを御了承いただきたいと思います。
  27. 横路節雄

    横路委員 いずれあとで企画庁長官から御答弁いただきますが、いま総理は、選挙公約に相反しないと言っているが、国民は、率直なところ、総理からだまされたという感じです。——いやいや、新聞を見ますと、物価安定を旨にして、いや、あなたのいまおっしゃったとおりです。四十二年度中は当分上げないということでしょう。——いやいや、四十二年度中は当分上げないということですよ。それはあなたのおっしゃるとおりだ。しかし、四十二年度中は当分上げないということは、四十二年度中は上げないと国民はとっていますよ。当分ということは、あなたは、四月一日から上げるかもしれないし、七月一日から上げるかもしれない、八月一日から上げるかもしれないというように国民考えていると思っていらっしゃるかもしれませんが、国民はその点はそうではないです。その点は、国民の受け取り方とあなたの考えとは違います。この点は、国民自身は、各新聞の投書欄を見ても、だまされたという感じが非常に強いのです。この点ははっきり申し上げたい。  次に、企画庁長官に。それじゃ、四十二年度の経済見通しのときには何%と見たのです。
  28. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、消費者物価見通しは、一つ一つのものを積み上げて行なうわけではございません。そういう作業は事実上不可能でございます。したがって、何年間かの傾向を見ながら、多少努力目標意味を含めて定めるのが常でございます。今回の四・五%は、先般本会議でも申し上げましたように、四十一年度がほぼ五%でおさまる。しかもその場合に、四十一年には米、国鉄、私鉄、郵便、かなり大きなものが続いてございました。四十二年度に予想されるものは、大きなものとしては米のみでございますから、四十一年度に五%であれば、努力目標意味を含めて四・五%にするということは、私は妥当な目標であろうと考えます。昨年暮れにこれを決定いたしましたときに、四十二年度中に消費者米価が上がることがあり得ると私が考えておったか考えていなかったかということであれば、私はある程度の消費者米価値上がりはおそらくあり得るであろう、そういう予測をいたしておりました。しかし、それが計数的に四・五にどういうふうに含まれておるかということは、積み上げで計算しておりません。本来そういうものでございませんから、お答えいたしますことが不可能であります。
  29. 横路節雄

    横路委員 それが経済企画庁長官の御答弁、おかしいですね。昨年の十二月二十七日の閣議で、経済見通し発表の四・五%のときには、消費者米価の引き上げがどれだけ消費者物価に影響するかということは考えないで四・五%を定めた、努力目標としてやった。今度は改定の四十二年度の経済見通しでは、十月から消費者米価が一四・四%上がれば、それは消費者物価を一・一%押し上げる作用をするんです。そうすれば、去年四・五%と見たものは、消費者米価の引き上げを考えていない。ところが、今度四十二年度の経済見通しの改定で、それが十月から一四・四%と見れば、消費者物価に対する押し上げの作用は一・一%するんです。もしもそうであるならば、それは五・六%になる。だから、あなたはそういう計数はできないと言うが、そんなことはないのです。だから、そういう点で、すでに経済見通しについて、去年の四・五%は消費者米価の引き上げを考えないでいたということは、いまあなたの御答弁ではっきりした。四・五%の中に入ってない。今度の四・五%の中には一四・四%が入っていない。消費者米価消費者物価を一・一%押し上げている。だからこの四十二年度の経済見通し、改定の見通しはこれは間違いだ、消費者物価についてはこれは間違いです。長官、どうですか。これは間違いですよ。こういう間違いをやっちゃだめですよ、あなた、長官ともあろう者が。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の答弁をお聞き取り違えになったのではないかと思います。昨年暮れに経済見通しを立てますときに、消費者物価値上がりがあり得るかどうかということについては、私はあり得ると思っておりましたとお返事をいたしております。したがって、その点は、昨年末と今回の経済見通しについて何ら影響はない、同じことでございます。昨年末から考えておりました。  なお、念のため申し上げますが、かりに十月から消費者米価が一四・四%上がるといたしますと、それが四十二年度の物価指数を一・一押し上げるというようなことは、失礼でございますが、何か計算のお間違いでございます。これは誤解を生むといけませんので申し上げておきます。どのくらいかとおっしゃれば、お答えはいたしますけれども、全然そんなことはない、計数は違っております。
  31. 横路節雄

    横路委員 私が言っているのは、消費者米価が一四・四%上がれば、年間の消費者物価に対する押し上げは一・一%だ。年間のことを言っているのです。年間一・一%。それは間違いありますか。その点ありますか。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それもはなはだ失礼でございますが、米のウエートが大体五百未満、四百何十でございますから、そこでその一四ということは〇・七になるはずでございます。そういたしますと、四十二年度では、かりに十月といたしますと〇・三五のはずであります。
  33. 横路節雄

    横路委員 私は、いま単年度のことを聞いているのですよ。一年間通じての話を言っている。一・一%ですよ。家計費へのはね返りから消費者物価上昇を言っているのですよ。ですから経済見通しは間違っておる。  その次に、私は物価の安定について総理お尋ねをしますが、この点は、総理は、基本的には、物価の安定については、生産性の低い部門の近代化、流通機構の改善、公正な競争条件の整備などの諸政策を充実する云々と、こう述べておられるわけでございますが、そこで私一つお尋ねをしておきたいことは、大蔵大臣、税の自然増収は、この数字は過小見積もりでありませんか。なぜなれば、先ほどの各銀行のいわゆる国民総生産の伸び、鉱工業生産の伸びその他については、それぞれ政府見通しと違っている。その点は、いわゆる税の自然増収については、政府考えているよりは昭和四十二年度についてはある、こういうようにお考えになるのが私は当然だと思うが、その点はどうですか。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府見通しの成長率、大体この四十二年度は一三・四%と、一応これをもとにした見積もりを私どもはしていますので、これが相当狂ってくるということになったら、見積もり違いも出てくるかもしれませんが、非常に慎重にこの見積もりは私どもはやったつもりでございまして、いまのところは過小見積もりとは思っておりません。
  35. 横路節雄

    横路委員 この点については、政府のほうで考えているよりは、少なくとも自然増収については最低八千億円を下らないものであるというようにわれわれは考えているわけであります。  物価の問題ですが、先ほど総理が公正な競争条件の整備のところでお話をされて、さらに選挙公約で、消費者保護行政を強化して、特にこの価格の維持またはつり上げなどを取り締まるため、公正取引委員会の機能を強化すると、こうお話をされているのでありますが、物価には、上昇を防ぐのと現在硬直している価格を下げるのと二通りございます。昭和四十二年度の予算の中で、公取の予算というのはわずか三億五千八百六十七万です。これで公取の機能が強化されたと言えるのでしょうかね。あとで増田長官お尋ねしますが、三次防で、ナイキハーキュリーズの一側大隊の費用は百三十億円です。ミサイル一発は六千万円でございまして、一個中隊のミサイル三十一発が十八億六千万でございます。そういう意味で、ナイキハーキュリーズ一個大隊の費用が百三十億、一個中隊のいわゆるミサイル弾体三十一発だけで十八億六千万円。それをわずか三億五千万足らずの費用を組んで、公取の強化と総理言えましょうか。これは何を考えて言っていらっしゃるのです。公取をどういうように強化されるというのですか。この点ひとつあなたにお尋ねしておきたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公取の、今回も人員増を特に計画した。この計画が少ないとか多いとかいうわけではございませんが、とにかく、こういう際においてすら人員増加をはかった。こういうことは、公取の機能を強化した、この考え方でございます。同時にまた、これは公取だけが消費者物価と真剣に取り組んでいる唯一の機関と私は申すわけではなくして、やはり各省におきましても、公取がやっておるような機能、そういうたてまえでやはり行政を遂行していく、それが物価を安定さす、そういう意味で役立つ、かように心得ております。とかく皆さんから批判を受けて、どうも生産者行政だ、消費者行政はどこにもない、かような言われ方をいたしておりますが、各省とも考え方を変えまして、やはり重点を消費者行政に賢く、そうして公取は公取としての機能を十二分に発揮できるように、この際に機構の整備などもいたしたい、かような考えでございます。
  37. 横路節雄

    横路委員 しかし、三億五千万円の公取の費用で、これで総理が消費者保護の行政のために公正取引委員会の機能を強化するなどと言うことは、一般の消費者にとって、何と一体総理公約というものはみみっちいものだろう、これはそう思いますよ。一個大隊百三十億から見れば、みみっちいものですよ。  そこで、私は次にあなたにお尋ねをしたいのですが、経済社会発展計画の中で、物価の安定と経済の効率化の関係の中でぜひあなたにお尋ねをしておきたいのは、いわゆる産業体制の整備の中で、企業の合併、生産系列の整備、いろいろなことを述べておられます。国際競争力の整備のために寡占化の利益を認めなさいということをあなたは言っているのだが、一体独占禁止法を緩和するというのですか、それとも、これから経済社会発展計画の中で、いわゆる経済の効率化との関係で寡占化というものが強まるのだから、したがって消費者保護のために独禁法による公正取引委員会の運営を強化するというのですか、どちらを言っているのですか。あの経済社会発展計画を見ると、一つもわからない。その点は何をおっしゃろうとしておるのですか。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お許を得て私から申し上げます。  それは二つの面がございますために、確かに御質問のような御疑問があると思います。あすこで言っておりますことは、日本の経済を国際化するためには、なお現在の企業の規模は小さい。したがって、これが国際化の方向に向かって共同投資であるとか、投資調整であるとか、あるいは合併であるとかいうことに向かうことは、それ自体は望ましいことである。この点については、ただ現在の独禁法を法律として緩和する必要があるかないかというのが問題でありまして、すでに公正取引委員会と通産省との間に昨年の十一月に覚え書きの交換ができております。御承知のとおりで、これで当面は十分なのではないか。次に言っておりますことは、かりにそういう体制ができましたあと、寡占の弊害が起こるようであれば、このときこそは公正取引委員会が十分にその機能を発揮する必要がある。それは国内の企業に対しても、あるいは導入されました外国企業に対してもそうである、こういうことを言っておるわけであります。
  39. 横路節雄

    横路委員 宮津さんにもう一ぺん開くけれども、外国の企業に対しては、いわゆる独占禁止法について公取の機能を強化していく、しかし国祭競争力を増すための寡占体制を強化していくためには、独禁法というものはその運用を緩和していくという、相矛盾した面が出るのではないですか。その点はどうなんです。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは二つの異なった段階について言っておると申し上げれば、御理解をいただきやすいと思います。つまり国際化をする、企業の規模を大きくするという面では、まずこれは奨励しなければならない。しかし、その点は独禁法を緩和しなければならぬと言っておりませんので、すでに公取と通産次官との間の覚え書き、あれによれば十分ではないかというふうに目下のところは考えられます。かりに持ち株会社というような問題が将来出てまいりましたら、それはまたそのときに検討することでございましょうが、ただいまはそれでよろしい。そうやって、かりにそういう経済体制ができました後には、国内の企業でもあるいは外国から参ります企業でも、とかく寡占になりやすい、そういう傾向がございましょうから、そのときには、むしろ公正取引委員会は十分に機能を果たすべきである。つまり二つの段階について言っているわけでございます。
  41. 横路節雄

    横路委員 公取の委員長おられますね。——あなたにお尋ねしたい点は、日銀の卸売り物価指数の総品目七百七十品目のうちに、価格で硬直しているものは実に三百三十九ある。これらについて一々あなたたちのほうで調べていかなければならぬ。これは世間で言う管理価格の問題だが、一体この管理価格の問題についてどうするのかということが第一点です。  第二点の問題は、ここで明らかにしてもらいたいのは、化粧品、石けん、洗剤、薬品についてのいわゆる再販価格維持行為についてです。  これは一つの例を申し上げれば、アリナミンですね、薬のアリナミン。アリナミンのFは、もとは各店によって二割、三割と自由に引いていた。それをアリナミンAにして全部再版価格維持行為にした。そうしたら、今度はアリナミンFだけは病院にやった。アリナミンなどは明らかにこれは独占なのです。一体この薬はどこに競争相手があるか。何で一体この化粧品や石けんや洗剤や薬品や、こういうものをやっているのか。これはあなたが委員長だから、私が申し上げるまでもなく、これは独禁法の十九条のいわゆる不公正の取引方法をしてはならないという点になって、二条七項で公取が指定をしている。だから、当然この点については指定を取り消すか、ぜひこの点は単独立法で規制を強化すべきである。この点は、今日多くの消費者は、政府のほうでは消費者米価が上がらぬようにすると言うが、現に上がっておるものを下げる作用をしていない。下げればいい。この点は、ぜひひとつこの予算委員会の審議を通じて、管理価格の問題と、再販価格維持行為については指定を取り消すのか、それとも単独立法で規制を強化するのか、その点を明らかにしてもらいたい。特にこの化粧品、石けん、洗剤、薬品、いまやっている問題ですね。
  42. 北島武雄

    ○北島政府委員 まず、管理価格の問題でございますが、管理価格と一口に申しましてもいろいろ定義があるわけでございます。ただいまお話しのような意味合いで申しますと、生産性の向上が著しいにもかかわらず、どうもそれが価格の上に反映しないものかあるようだ、そういったものについての実態を調査するのが私どものつとめでございまして、これは昭和三十八年度からいたしております。それで昭和四十一年度におきましては、ただいまお話がございましたように、日銀の信用御売り物価指数を分析いたしまして、その七百七十品目の中から比較的動きが鈍い、それから動きの幅が小さい、あるいはまた上昇一方といったものの品目を調べますと、約三百三十九ございまして、これはそのままもちろん全部管理価格というものではございませんので、いろいろ中を分析いたしまして、ただいまそのうちから、昨年の秋から合成洗剤とバターについて実態調査をいたしております。精密な調査をいたしております。いろいろ資料をとりまして、それから業者の方からもヒヤリングをいたしまして内容を分析しておりますが、この調査中におきましても、御承知のとおり、合成洗剤については、すでに私のほうで管理価格の調査をすると申し上げてから通産省のほうでもお取り上げになって、合成洗剤のメーカーに働きかけて、いま自主的な値下げの方途が講ぜられつつあるようでございます。とにかく、何といたしましても、こういった問題、大企業製品の価格がどの程度消費者物価にあるかということは、これはいろいろ問題ではございますけれども、とにかく下がるべきものが下がらないということは、これは物価対策上大きな問題でございますので、今後もこういったいわゆる管理価格の調査につきましては、鋭意いたしてまいりたいと思っております。  次に、再販売価格維持契約に対する問題でございますが、再販売価格維持契約は、昭和二十八年の独禁法の改正で法的に認められまして、一定の条件のもとにおいてこれが行なわれることになっております。ただいま、出版著作物のほかは公正取引委員会が指定する六品目ができるということになっております。これにつきましては、一昨年あるいは昨年あたりから消費者の間にも非常に問題がございまして、お説のように、直ちに名前を変えただけで、あるいは若干内容が変わったかもしらぬけれども、いままで値引きしておった薬がしなくなったというようなことは、やはり物価対策上おかしいじゃないかというのが、一般消費者のごく率直な感じに響いてまいったわけでございまして、この問題につきましては、昨年の物価問題懇談会においても取り上げられまして適切な御意見を伺いまして、私どものほうにおきましても、この再販売価格維持契約につきましては、それなりに理由があることではございますが、現在の物価事情から考えましてこれを規制する必要があると考えまして、ただいま単独立法を考究中でございます。その内容につきましては、いろいろ関係するところが非常に大きいので、目下事務局において鋭意検討いたしておりますが、遠からずこれが委員会の段階にあがりまして、たんねんな検討をいたした上、もし成案を得ましたならば、今国会において御審議をいただきたい、こう思っております。
  43. 横路節雄

    横路委員 次に、減税についてお尋ねをしたいと思っておりますが、政府・自民党は、これまた選挙公約にあたりまして、長期的な構想のもとで大幅な減税を維持すると言っております。大蔵省が十八日発表したところによりますと、国民所得に対する租税負担率は、昭和四十一年度の一八・三%に比べまして、四十二年度は、一八・五%に上昇している。ですから、さっぱり減税にならぬ。だから国民は、減税だ減税だといっても、やはり税金が重いというのは、そこに受け取っているわけです。数字が示している。そこでこの負担率を、変わる前の旧方式に直せば、二〇・五%になるそうです。そこで、これは昭和三十五年十二月九日の税制調査会の答申によりますと、当時二〇・五%だったものを二〇%にするのだということを、三十五年十二月九日に答申をしております。総理大臣どうですか。減税する減税すると言っているが、やはり税金は重いのです。これはいま私が言っているのじゃない、大蔵省が言っている。国民所得に対する租税負担率は、昭和四十一年度の一八・三%に比べて一八・五%に上昇すると言っているのです。税金は重いのです。思い切ってもっと減税されたらどうですか。だから、どんなに政府のほうで言っても、実際にいくと、やはり税金は重いという感じを現実に受けているわけです。どうお考えになりますか、この大蔵省発表は。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの大蔵省発表は、これは所得が同一の場合なら横路君の言われるとおりでございます。これは負担が重くなった。しかし、国民の所得が増加している。増加しているという点から見ますと、この率だけでは実は言えないことになるのでございます。結局税を払った後に自分たちが処分し得る金額というものはふえておりますから、そういう意味では、必ずしもこの数字どおりの負担感は私はないと、かように思っております。
  45. 横路節雄

    横路委員 これは昭和三十九年度の納税人員を昭和四十二年度のいわゆる税額人員で私が推計してみたのですが、総理、所得三十万円以下で納めている納税人員は百十四万人います。五十万円以下で納めている人が六百二十二万人います。百万円以下で納めている人が九百十三万人いるわけです。全体の約七五%というのは百万円以下の人なんです。私が三十九年度の納税人員を四十二年度に推計をしてみたわけです。われわれいわゆる社会党、民社党、公明党の三党が協定をして、いわゆる五人世帯で百万円以下は無税にすべきだというのは、ここに税金が重いからだ。現に数字が示している。この点はどうお思いになりますか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大蔵大臣にお答えいたさせます。
  47. 水田三喜男

    水田国務大臣 ですから、政府・与党、これがすでに選挙公約したとおり、昭和四十年度をめどにして百万円まで無税にするという方針を、もう政策発表しておりますが、私どももこれを目標として四十四年度までにはそこまでいけるようにやりたい、減税したいと思っております。
  48. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、ひとつあなたにお尋ねしておきたいのですが、利子所得の……。
  49. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま間違えました。与党の政策は四十五年度を目標としているということであります。
  50. 横路節雄

    横路委員 政府のほうはどうなんですか。与党はいいですが、政府のほうはどうですか。政府のほうは四十四年ですか。
  51. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう政府も与党も政策は打ち合わせておりますから、私どもも四十五年度を目標に百万円まで無税にしよう、こういう方針でございます。
  52. 横路節雄

    横路委員 いわゆる利子所得の分離課税、それから配当所得の優遇措置について、これは御承知のように三月三十一日で廃止になるのですね。それをまた延期されようとしている。ところが総理、税金というのはいかに不合理であるかということを、ひとつ私は例を申し上げたいのですが、所得の全部が配当所得である者についての一体限度額というのはどうかというと——私が言おうとするところがおわかりですか。五人世帯で勤労者は七十三万ですね、平年度で。配当所得は二百二十六万五千円までは税金がかからないのですよ。一体おやめになったらどうですか、こういうことは。これはおやめになったらどうですか。こういうことが、国民の税に対する公平の原則を、何と政府・自民党というのはむちゃなことをやるのだろう、われわれ勤労者から税金を取ってと、こうなるのです。これは総理、おわかりですか。いや大蔵大臣からでもいい。どうですか、二百二十六万五千五百二十九円、これはやめたらどうですか、こういうことは。大蔵省だってやめたらいいという人がいるじゃありませんか。
  53. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは実際はそういうふうになっていませんで、法人税の性格と関係することでして、配当に対する税金が法人税で先取りされているというような、税制改正のときのそういうことからきたことでございまして、二百三十万の所得は無税というふうな簡単な計算にはならぬと思います。
  54. 横路節雄

    横路委員 何をおっしゃいます。いやいや大蔵大臣、何をおっしゃいます、あなたは。イギリスでは所得の全部が配当所得である者についての所得税がかからない限度額の計算は幾らかというので、私はこれは大蔵省にやってもらったのです。それは、説明はあなたのとおりだ。説明はあなたのとおりだけれども、かからない限度額というのは二百二十六万五千五百二十九円です。そうして説明は、イギリスではこれは廃止になっているのだ。アメリカでもやっていないじゃありませんか。だからやめたらいいでしょう。私が言っているのは、税の不公平からきているのだから……。私はそのことを言っているのですよ。おやめになったらどうですか、こういうのは。国民は聞いて、額に汗を流して働いて、平年度五人世帯で七十三万、株の配当だけで暮らしている者は二百二十六万五千五百二十九円までは税金はかからない、これはやめたらいいと国民は思いますよ。イギリスでは廃止になっておる。アメリカではやっていないのだ。どうして大蔵大臣やめないのです、これは。いや大蔵大臣、やめないのですか。いやいや大蔵大臣、立てないのだ、これは。
  55. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは税制のたてまえがございまして、やはり法人税の検討と一緒に考えなければならなぬものだろうと思っています。
  56. 横路節雄

    横路委員 いやいや大蔵大臣、私は不公平だからやめたらいいでしょうと言うのです。イギリスではこれは廃止しているのですよ。アメリカはやっていないのです。総理はどうですか。こういうのは一体将来はやめるとかなんとかここで言ったらどうですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはいろいろ議論のあることでございます。だから、税制調査会等でも十分審議していただきまして、そうして結論を出すというのが当然でございます。私ども政府に、これはやめたらどうかと簡単に政府をおしかりでございますが、政府は独断専行はいたしておりませんので、税制調査会、各界の意見も十分聞きまして、しかる上でこれは処置する問題でございます。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制調査会でも、いま長期税制のあり方として、この法人税の性格を検討中でございまして、その結論で私どもは処理したいと思っております。
  59. 横路節雄

    横路委員 総理お尋ねしますが、総理は去る三月十六日の衆議院本会議の佐々木委員長の発言に、「この減税は物価上昇にその効果を取られて、全然減税の効果はないと言われますが、国民を迷わす私は暴論ではないかと思いますので、そういうことばは慎んでいただきたいと思います。」こう言っているが、これはお取り消しになったらどうですか。ここに書いてある、これは取り消されたほうがいいです。私も本会議で聞いていて、総理は何ということを言うのだろうと思った。私はこれから数字をあげてあなたに説明しますが、これは取り消されたらいいですよ。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私はただいま取り消す考えはございません。ただいま、いろいろ物価が値上げになっている、こういう意味で、減税の効果がないじゃないか、こういうお話ですが、私は確かに物価が上がっていることは否定はいたしておりません。しかし、私ども物価値上がりと今回の減税の処置等を比較してみますると、全然ないことはございません。物価調整費、こういうものを大体三百億と見ておりますが、その三百億を引いても七百七十九億、これがやはり減税として出ておるわけであります。また、現実に七十四万円——七十三万九千円ですが、その所得までの減税をいたしておりますが、これが独身者だと二一%ですか、やはり減税の引き上げといいますか、その率になっております。また、平均で一八%の今回の減税率になっております。物価値上がりというものは、そんな平均一八%も上がっておりませんから、そういうことを考えると、私の言うことは正しいのであります。私はこれは取り消しません。
  61. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、それじゃ、私申し上げますが、これは総理府の統計ですよ。あなたのほうの勤労者の統計をいわゆる第一分位から第五分位まで分けたもの。第一分位というのは、勤労者の収入は大体四十万円まで、これが四百四十七万世帯で三一・八%、ところがここでは減税になっていませんね。ところが、総理、平年度で米は約五千円値上がりをする。医療費が、今度は、ここにはおそらく中小企業の関係者が多いから、全部六月一日から値上げになる。そこで、医療費の値上げは平年度で二千九百円になる。ですから、初年度で三千円のいわゆる実際にはマイナス、実質的な増税、平年度では八千五百二十七円の増税。第二分位というのは四十万から六十万までの者、これはどうなっているかというと、あなたのほうでおっしゃっているいわゆる初年度の税金は三千四十八円安くなる。平年度で四千六十四円安くなる。ところが、消費者米価上昇といまの医療費の関係で——消費者米価だけ見たって五千五十八円、それだけでも千円マイナスなんだ。だから、第二分位まで、言うなれば日本の勤労者の約六〇%は、いわゆる減税ではなしに、実際には消費者物価上昇並びに医療費の値上げで出すほうが多いのですよ。この点はどうお思いになる。あなたが、税金が安くなる、安くなると言うのはどこかというと、いわゆる百万円以上の所得の者なんだ。百万円以上の所得の者について言っているので、百万円以下の所得の者はみんな持ち出しが多くなるのですよ。おわかりですか。この点をどう思うのです。あなたは平均だけ言ったってだめだ。あなたの言うことは百万円以上のことを言っている。
  62. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま税金を納めない人、これは減税の効果はございません。これはもうはっきりしておる。だから、減税の効果のない人を取り上げて、物価が上がっているから負担が増加しているじゃないか、これが減税でないのだ、こういうことでございますが、これはもう議論の余地のない問題。税金を納めている人について私は議論しておる。そこで、そういうような税金を納めない人、そして、ことに生活が困窮しておる、こういうような人に対しては、社会保障があるわけです。そういうことでひとつ勘案していただきたいと思います。
  63. 横路節雄

    横路委員 いまのこの働いている人が、何が社会保障の点ですか。それから、いまあなたは税金を納めている人のことで言ってくれというから言いますよ。いわゆる第二分位の人は、初年度で三千四十八円税金が安くなるが、実際には中小企業関係の人などは七百二十一円増税になる。平年度で四千六十四円税金が安くなるけれども、実際には五千六百三円増税になる。八十万までの人は、平年度で八千百円税金は安くなるけれども、実際には千七百四十七円税金が高くなるかっこうになる。だから、あなたのおっしゃることは違うんだ。私は、あとで必要があればこの数字を差し上げますよ。全然あなた、違うんだ。総理は百万円以上の人のお話をしている。  次に、私は第三次防衛計画について御質問をいたしたいと思います。  総理お尋ねをしたいのですが、第三次防衛計画は、昨年の十一月二十九日決定のいわゆる「第三次防衛力整備計画の大綱」に基づいて決定されたものですが、それには「日米安全保障体制を基調として、侵略に対する抑止力として有効な防衛力を整備し、」とあります。  そこで、お伺いをいたしたい第一点は、この計画は四十二年から四十六年までの五カ年計画ですが、安保条約の第十条の期限が満了するのは四十五年の六月の二十二日か三日であったと思います。そうすると、この第三次防衛計画で、すでに四十六年までの五年計画の中で、日米の安保条約を基調にするということは、もう安保条約については延長されるということですか、この点を、まずきょうはお聞きをしておきます。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の国防、防衛、いわゆる安全保障、この観点に立ちましては、あらゆる機会にいままで申しておりますように、日米安全保障条約を堅持する、日米安全保障条約の条約体制を堅持する、こういうことを申しておりますから、これで誤解のないように願っておきます。
  65. 横路節雄

    横路委員 いや、私の聞いているのは、これは四十六年までの計画ですからね。ところが安保条約の期限の満了は四十五年六月の二十二日だと思います。これは四十六年までの計画だから、そうすると、そのことは四十六年は先なんですから、第三次防衛計画というものは安保条約を考えているのだ、ということは、四十五年のときには安保条約は期限を延長するということを第三次防衛計画で言っているのですか、こう聞いているのです。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま堅持すると申したのは、これは長期にわたって堅持するということであります。そういう際に、どういう形をとるかということ、これはまだ検討中でございます。
  67. 横路節雄

    横路委員 長期にわたって堅持をするというのは、四十五年以降も堅持をするという意味ですね、その点明らかにしてもらいたいのです。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 四十五年以降も堅持するという考えでございます。
  69. 横路節雄

    横路委員 この問題は、あとで外交、防衛について石橋委員のほうから詳しく御質問があろうと思いますから、私は次に移ります。  そこで第二の問題は、総理、今度の防衛計画は、二兆三千四百億の上下二百五十億といいますから、上の場合は約二兆六千億円になる。第二次防衛計画は一兆三千億ですから、約二倍になる。そこで、第三次防衛計画のこの約二兆六千億円にわたる膨大なもの、こういう軍備を頭に描きながら計画を立てたものは、侵略の抑止力というのですから、一体どこを想定したのですか。これだけ膨大な、国民に一人当たり二万六千円も金をかけてやるというのですから、侵略の抑止力、これだけの防衛力を持っていればどこかの国は侵略してこないんですよという、その相手はどこなんですか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第二次防御計画、これに引き続いて第三次防衛計画、この基本的な考え方は変わりはございません。わが国の国防に関する基本方針、これに基づき、そしてただいま御指摘になりましたが、通常兵器による局地的侵略に対しての抑止力としての防衛力を整備する、こういうことでございます。
  71. 横路節雄

    横路委員 総理、しかし国防会議の議長として、こういう機会にはっきりされたらいいのですが、どこの国、いわゆる侵略に対する抑止力というのだから、どこかの国が侵略してくるおそれがある、こちらで軍備を持っていれば相手はこないというのだから、どこの国の軍備を考えてこれだけのものを打ったのか、こう聞いているのです。それを聞いているのですよ。なければないでいいのです。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げますように、通常兵器による局地的侵略に対して、これを抑止するということであります。どこの国が侵略するか、そういうことは私ども考えておりません。
  73. 横路節雄

    横路委員 総理、しかし私は、総理が国防会議の議長だから申し上げているのであって、陸上自衛隊の配置、装備をごらんになってください。どこの国を相手にしているか明らかですよ。海上自衛隊の配置、装備をごらんなさい。海峡の封鎖その他ではありませんか。明らかじゃありませんか。航空自衛隊の配置、装備を見ても明らかじゃありませんか。こういう機会に、国民に二兆六千億の膨大な金を負担をさせるならば、それだけのことを、国際情勢の見通しなり防衛構想というものについて、ここで明らかにするのが総理の任務ではないでしょうか。いま総理は、通常兵器による局地戦に対処するんだと言うのですが、いわゆる通常兵器による局地戦ということになれば、日本に実際にどこかの国の軍隊が上がってくるのだ、その局地戦に対して対処するのだ、こういうのですが、どこの国の軍隊が上がるということを予想しているのですか。やっぱりはっきりしたほうがいいですよ、こういうときに。そうでなければ、何のために第三次防衛計画をやっているかわからない。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、相手の国がどこか、そういうことは考えておりません。わが国の安全を確保するというたてまえ、その立場に立ちまして、もしも局地的に通常兵器によって侵略されれば、一体これはどうなるのか、こういうことで、私ども安全保障の計画を立てておるわけであります。
  75. 横路節雄

    横路委員 総理、やはり国会で防衛論議をやるときに、避けて通らないほうがいいのではないでしょうか。それをなぜ一体避けて通るのでしょうか。避けて通らないで、具体的に国際情勢なり防衛問題について論議をすべきじゃないでしょうか。(「あげ足を避けている」と呼ぶ者あり)何を失礼なことを言うんだ。だれがあげ足をとったんだ。そんなことを言うのはやめろ。  ですから、私が総理に申し上げたいのは、この根本になる国際情勢の見通しを、ここで総理お話しになり、防衛構想についてお話しになり、だから第三次防衛計画が必要だというならば、それなりに私は一つの説明になると思うが、いまのであるならば、今度おきめになったこの第三次防衛計画は、その大綱でいわれているように、「技術研究開発を推進し、装備の近代化および国内技術水準の向上に寄与するとともに、装備の適切な国産を行ない、防衛基盤の培養に資する」、言うなれば、これは調達計画なんだ、これはいわゆる軍需産業に寄与する以外の何ものでもない、こういうようにいわれても——事実これはそういうようになっているのだ。これは調達計画ですか、兵器の国産化がねらいですか、これは一体何がねらいなんです。いや、国防会議の議長としてもう一ぺんお尋ねしておきたいのです。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの、いろいろお尋ねになりたいことがあるようですが、私は、いままで絶えず申しておりますのは、自由を守り平和に徹する、こういうことを絶えず申しております。また、いずれの国に対しても平和であることを望んでおる。しかしながら、それだけでわが国の安全は確保されている、かように私は考えないのであります。私は総理として、やはり、この国の安全を確保する、これはもう絶えず注意しなければならない。あらゆる面において、平和は、みんな各国とも希望するに違いございません。しかしながら、なかなか現実はそうはいかない。私ども、そういうことを考えますと、通常兵器による局地戦、これに対しては抑止力、これだけはぜひ持たなければならない。しかし、それも長いものが持てるようないまの状況ではございません。戦後の日本の防衛力というものはたいへん低下しております。私はそういう意味で、やはり国民全体が平和を守る、またわが国の安全を確保する、こういうことで、愛国的熱情のもとにこの国を守る体制をひとつとっていただきたいと思いますが、同時に、私自身総理といたしましても、そういう意味から、万全を期する体制でなければ、私の仕事はつとまらないのです。そういうことを考えまして、防衛力も国情、国力に相応するもの、これが限度でございます。私はそういう意味から、国の安全を確保するといって、国情やあるいは国力を無視して防衛力を強化するというような、そんな暴挙はいたしません。それはもう国力、国情に応じて、これだけのことはするわけであります。そういう場合に、やはり国内における産業体制も防衛体制の一環、一翼として考えるのは私はやはり当然だと思います。これは総理の基本的な責任であります。さような意味で御了承いただきます。
  77. 横路節雄

    横路委員 しかし私は、この前提になる国際情勢の見通し、それに伴う防衛、こういう立場でお話しをされるのが国防会議議長としての当然な責務であると思う。それがないのはまことに残念です。しかしこれはあとで、先ほど申し上げましたように、適当な機会に石橋委員からなお詳細に御質問します。  防衛庁の長官お尋ねしておきますが、この二兆三千四百億の上下二百五十億のうちで、兵器調達の分は幾ら、昭和四十六年度の防衛費は大体幾らになりますか。これだけひとつ聞いておきたい。  なお長官に、ここでひとつお断わりをしておきますが、きょうは限られた時間でやっておりますから、局長その他の答弁は差し控えていただきまして、だめだったら、あとで文書で出してもらいます。おわかりにならなければ、文書でけっこうです。——いいですか、——では、あとで文書でしてもらいます。委員長、ではこれは文書で出してもらいます。  しかし、こういうことについて、ここで答弁していただけないというのは、少なくとも防衛庁長官としては残念ですがね。   〔「文書で出すならいつまでに出すということをはっきりさせなければ」と呼ぶ者あり〕
  78. 植木庚子郎

    ○植木委員長 防衛庁長官に承りますが、どれくらいの時間で出せますか。
  79. 横路節雄

    横路委員 いま答えるなら答えていただきたい。
  80. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 およそ二兆三千四百億のうちでは、九千億でございます。それから三千八百九億円という明年度予算のうちでは、約千六百億円でございます。
  81. 横路節雄

    横路委員 昭和四十六年度を聞いておるのです。四十六年度は一体幾らになるか……。
  82. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 昭和四十六年度までは、まだ計算中でございまして、二、三、四というものに、プラス、マイナス二百五十億をいたしまして、その年の予算規模等によって決定するわけでございます。およそのことを言えといえば幾らでも言えますけれども、まだ五年後の、大蔵省とわれわれと国防会議の議長との相談によることまで、予言者ではございませんから、予言はできないのであります。
  83. 横路節雄

    横路委員 では長官、あなたにひとつきちんと聞いておきたい。ナイキハーキュリーズを二個大隊設置するが、その設置の場所はどこですか。これがきまらないで第三次防衛計画を立てているわけはないんだから、この設置の場所はどこですか。
  84. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 現在、ナイキアジャックスの設置場所をもっていたしたいと思っております。それから、もう一個大隊つくるのは検討中でございます。
  85. 横路節雄

    横路委員 違うでしょう、長官。アジャックス二個大隊をナイキハーキュリーズに取りかえて、新たに二個大隊を設置するのですよ。そうしてさらに第四次防にいく一個大隊については調達計画をやるのですよ。長官、違いますよ、あなた。二個大隊ですよ。ナイキアジャックスはナイキハーキュリーズに取りかえて、新たに二個大隊はナイキハーキュリーズを新設するのです。その場所はどこですかと聞いておるのです。
  86. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 現在アジャックスのある場所をハーキュリーズに換装するわけでございます。その他二個大隊のことは検討中でございまするが、大体のことを言えといえばわかりますけれども、まだはっきり言うまでの段階にはございません。
  87. 横路節雄

    横路委員 長官、いまのは何ですか。大体のことを言えば言えるというが、はっきりしていません。だから私がさっきから言っているのです。この一個大隊は百三十億です。私はあなたのほうに行って調べたが百三十億、二個大隊で二百六十億、それをどこに設置するかというのが防衛計画じゃありませんか。それをどこに設置するかという場所を考えないで二百六十億の国費を投ずる、そういうことがありますか。だから、それをここにやるのだ、こういう国際情勢のもとに、こういう防衛構想のもとに、こういう必要があってナイキハーキュリーズはこことここにやるのだ、こうならなければならないじゃないですか。これは子供のおもちゃじゃないのですよ。どうなるのです。大体この計画がなくておやりになるわけがないじゃないですか。だから私が総理に何べんも、この前提になる国際情勢の見通し、防衛構想、これがなくて何で一体やれますか。そういうことをやって、これで通るものですか、どうですか。  それではあなたがお考えになっている大体のことを……。
  88. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 予算の見地からは大体きまった点はございますが、やはり装備関係は幕僚部等において検討中でございまして、いまアジャックスのある場所はハーキュリーズにかえることは明確でございます。あとは中京、北海道等を考えておるわけであります。
  89. 横路節雄

    横路委員 それならそう言っていただいたほうがいいのです。そう言っていただけば、北海道にナイキハーキュリーズを置くということが防衛計画の前提のもとに出てくるのだし、中京に置くということは、何を前提として出てくるかということが出てきます。それをおっしゃればいい。  そこで、私は長官にぜひひとつこれからお話を申し上げて御返事を聞きたいのです。  ナイキハーキュリーズにつきまして、いままでずいぶん国会で論議をしました。ここにいらっしゃる藤枝さんが防衛庁長官のときもずいぶん論議をしまして、いままでこれは核と非核の併用だということで問題になったわけです。今度皆さんの説明によると、これは改修するといいます。そこで、私はこれから簡単に私の考えを述べて長官の答弁を聞きたいのですが、まずナイキハーキュリーズにしてもナイキアジャックスにしても、一番最初はこれは一個大隊ですか、四個中隊、一個中隊が九基ですが、さて、その一個中隊にはたったワンセットしか捕捉レーダー、目標追随レーダー、ミサイル追随レーダーがない。大体百五十キロの向こうでとらえて、百キロメートルくらいのところでかりに目標をとらえて一発撃つ、その間に相手の爆撃機は侵入してくる。そのときはもう相手の爆撃機はミサイルの上空にある。大体マッハ一・八から二くらいになると、二回撃とうとする場合にはもうミサイルの上空にある。ですから、四個中隊で撃てるのは一目標に一発しか撃てない。ナイキハーキュリーズなりの、これはワンセットでこうなっている。その場合に、この間お聞きしたのですが、このナイキハーキュリーズの弾体は百キログラムだという。搭載する弾頭はその七分の一程度です。そうしますと、百キロでとらえて、そのときに撃った場合の誤差というのは百メートルあるいは少なくて五十メートルと、こうなる。そうすると一体爆発力はどうなるのか。いわゆる爆発をして、その近くにいる爆撃機を落とすというのが目標でしょうが、百五十キロメートルからとらえながら百キロメートルから発射をしていく、その場合のいわゆる爆発力の誤差というものは非常に小さい。  そこで私はあなたにお尋ねをしたいのですが、このナイキハーキュリーズのいわゆる爆発力の半径というのはどれだけあるのでしょうか。
  90. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 半径は五十メートルくらいで、有効範囲は百メートルになります。
  91. 横路節雄

    横路委員 いまの点は、大体それは距離との関係がある。距離との三乗の関係があるそうですね。距離が遠ければ遠いほど、いわゆる爆発誤差がだんだん広くなってくるから、近ければ短くなる。そこで、結局このナイキハーキュリーズというのは、せんじ詰めるところ、言うなれば、いわゆる普通火薬弾頭を使う以上は、なるほど高度、それから方位その他は違うだろうが、性能についてはナイキアジャックスとあまり大差はない。だからそういう意味で、結局のところ、これは核弾頭を使用して、複数で侵入してくる相手の飛行機についてその中心で爆発をさせて、猛烈な爆発力で一ぺんに落とすということが核弾頭のねらいなんです。沖縄に持っているナイキハーキュリーズが核弾頭を持っているのは、そういうわけなんです。ですから、いまあなたのほうでやっているナイキハーキュリーズは、ナイキアジャックスとほとんど同じなんです。同じであるということになれば、さしたる意味はない。複数の飛行機の侵入に対して、もしもそれを全部落とすという意図があるならば、それは核弾頭をつける以外にない。しかも、このナイキハーキュリーズは核と非核との区別はひとつもない。いままでの国会の質問で、このナイキアジャックスを飛ばしていたランチャーについては、わずか十ほどの付属品をつければ核弾頭つきのナイキハーキュリーズを飛ばせることは明らかだということは、国会の答弁ではっきりしている。大臣にお尋ねをしますが、このナイキハーキュリーズは、なるほどあなたのほうでは国産化については普通火薬弾頭だと言うが、一体これは核弾頭つきと非核との間にどういう区別があるのか、見たところ区別がつかない。しかも侵入する飛行機については、一目標について一回しか撃てない。ナイキアジャックスと同じなんです。集団に対してやるためには核弾頭しかないというので、それをアメリカが開発をし、今日沖縄に持っている。だからそういう意味では、どういうようにあなたのほうで考えられても、将来これは核弾頭を持つに至る、その道を開くことになる。これは、核弾頭つきのものは絶対使用しないという歯どめは一体どこにあるのです。いいですか、いま言ったようにランチャーについては十数点の付属器をつければ、いわゆる核弾頭つきのナイキハーキュリーズを発射できますということは国会で何べんも答弁したのです。答弁されている。それで、核と非核については全然区別がつかない。それならば、その核と非核について区別がつかないものを、一体、撃ったものが核弾頭なものか、非核なものかはどこで歯どめがつくのです。
  92. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 まず第一に、ハーキュリーズはたった一発しか撃てないということでございますが、これは百五十キロないし百二十キロいくわけでございまして、向こうの相手方の、というのはこれはどこの国かわかりませんが、その侵略に対する抑止力といたしましては、レザーブはあるということをまずもって横路委員に明確に申し上げておきます。レザーブは一発あるわけでございます。  それから、その後のことはどうするか。その後のことは、それぞれ装備を持っておるわけでございまして、われわれが要撃する防衛力としての航空自衛隊もございますし、また陸上自衛関係のホークもあるわけでございます。そうして漏らすところなく要撃的の防衛力は発揮するつもりでございます。  それからハーキュリーズのしかけでございますが、ランチャ一自身にも非核用のハーキュリーズしか発射できないしかけをしてあるわけでございまして、横路委員もただいまおっしゃったとおり十くらいの設備が必要であるというものを、ちょっとやそっとの時間をもってしては装備は変更できないわけでございます。それからミサイル自身、弾頭自身は非核用の弾頭として初めから製造するのでございまして、これもちょっとやそっとの時間をもってしては核用には変更できませんし、政府は核兵器は製造せず、保有せず、持ち込まず、こういう確固たる方針を持っておるわけでございまして、非核用として初めから製造するのでございます。こういうことをはっきりとこの際申し上げておきます。
  93. 横路節雄

    横路委員 長官、私が申し上げているのは、持ち込まれた場合にその区別がつかないでしょうと言っている。持ち込まれた場合に区別がつきますか。その歯どめはどうなる。
  94. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 持ち込まれたという意味がわかりませんが、ミサイル自身、弾頭自身はわれわれが国産をもって製造するのでございまして、持ち込まれたという意味が私ははっきり了解いたしかねるわけでございます。
  95. 横路節雄

    横路委員 それでは、意味がわからなければ、沖縄に核弾頭つきのナイキハーキュリーズがある。しかも、これから私は核拡散の防止条約と沖縄問題をついてやりますから、そこで問題をはっきりしたいと思っています。  次に、私は核拡散の防止条約について総理お尋ねをしますが、総理施政方針演説の中で、核を持たない国の意見が十分に反映される、正当な利益が尊重されるように強く主張すると言っておられますが、その内容は何なんでしょうか。私もずいぶんこれは読んでみたのですが、何を意味しているのか、よくわからないのです。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、核拡散防止条約、これはただいま草案でございますが、この精神には賛成しているということを申しました。また、私どもは潜在的な、核保有をし得る能力を持ちながら実は核開発をしておらない国——これは申すまでもなく核戦争の機会が拡散すれば多くなる、こういう意味から私ども拡散防止、これは賛成だ、趣旨賛成だ、こういうことでございます。しかしながら、核を持っている国がいわゆる持たざる国に対して、これは優位であるというのが普通の考え方ですが、この持たざる国と持っている国との間のものがやはり公平に扱われるようでなければ困るだろう。ことに平和利用というようなことが考えられるような時期になってきたときに、一そうその感を深くするのでありますが、今日私どもが核戦争を非常に心で憎んでおりますから、核を保有しておる国も、核軍縮に積極的な意向をひとつ示してもらいたい。これは私どもの主張でもありますし、そして、その全面軍縮が実現するまでいろいろな方法があるだろうと思いますが、そういう点について非核保有国の意見も十分取り入れて、そして国際の平和に寄与するようにひとつ協力してほしい、これが私どもの主張であります。
  97. 横路節雄

    横路委員 私は総理並びに外務大臣にお尋ねしておきますが、まず総理に、核保有国に対して要求をしなければならない第一点としては、私は地下爆発の核実験の禁止を含む全面的ないわゆる核停条約でなければならぬと思うが、この点は要求されないのですか。いま私は総理お話を聞いていて、本会議でもお話がない、ここでもない。この点はないのですか。この点は総理にも外務大臣にもないのですが、どうなんです。外務大臣でもいいです。
  98. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは私の本会議の演説にも触れておるわけです。核を新しく持つ国の拡散を防止しようと言うと同時に、持っておる国も核軍縮に対しての誠実な意思が表明されなければならぬということを言っておるのですから、核軍備競争あるいは地下爆発、あるいはまた核の全面軍縮ともにらみ合わした核兵器の削減、全廃、これに向かって核軍縮が進められなければならぬということは、当然に日本の主張であるべきでございます。
  99. 横路節雄

    横路委員 いや、問題はだんだん聞いていきますが、いまの三木さんのお話ですと、問題がこんがらかってだめです。私が聞いておるのは、非核保有国として核保有国に要求するまず第一番目に、地下の核実験をやめなさい、全面核停条約を結びなさい、このことを一体佐藤内閣は要求するのかしないのかということを聞いておる。その点をはっきりしてください。総理どうですか。外務大臣にまかせきりですね。
  100. 三木武夫

    ○三木国務大臣 横路君も御承知のように、これはやはり日本の政治的立場で、核停条約のいかんにかかわらず、日本は核兵器、これをなくしたい、これがやはり日本の一つの外交の基礎になっておるのですから、核停条約ができたからそういう要求をするのだということでなくして、常に日本はそういう立場をとっておるわけであります。したがって、核停条約の中にもどういう形で織り込むかは別として、核軍縮に対する核保有国の誠意のある態度、意思が表明されなければならぬというのが日本の基本的な立場でございます。
  101. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、いまのお話を逃げてはだめですよ。私はあなたに、次にあなたのお考えになっている核軍縮に対する具体的な経過措置を聞きますが、一体いまの地下実験、地下の核爆発実験の禁止を含む全面禁止についてどうするのか、その要求をするのかしないのか、その点を聞いているのですよ。その点非常に大事なんです。世界各国で問題になっている。その点はどうなんですか。
  102. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは当然に空中爆発はやはり核停条約によって禁止になったのですから、次は問題は地下爆発なんです。ところが横路君も御承知のように、地下爆発に対する探知の方法ということが非常に問題なんです。いま探知クラブ八カ国で、スウェーデンなんかを中心として、日本も参加をしておるわけです。どうしたならば地下爆発の探知の方法というものがあるかという問題について、米ソ間にも意見が一致をしなかったわけです。その探知の方法というものが、日本なんかは地震国であるし、こういう点では非常に貢献のできる余地が私はあると思う。だから核探知クラブなんかにも積極的に日本は参加して、そういうことを科学的に、何とか探知というものが合理的にできるような方法を見出すことに努力をしたい。ただ、地下爆発をやめろという主張はいたしますよ。これは日本の強い主張ですが、しかし、それをやめるという場合においては、これをやった場合における探知の方法という、そういう具体的な方法も考えなければ、ただ一つの倫理的な主張として言うだけでは、現実の世界政治は動かない。そこで、やはりそういう方法もあわせて検討して、現実の課題として、実現ができるような努力をしたいということでございます。
  103. 横路節雄

    横路委員 基本的に賛成だというけれども、いろいろな条件があろうと思う。いまのは、主張はする。しかも地下核爆発実験についての査察のことについて、なお一そう検討してやる。しかし、これはスウェーデンやアラブ連合の要求が強い。ですから、この点はひとつ政府としては当然の国民の要求としてしなければならぬ。もしもこの点が落ちるようであってはたいへんだ。  第二番目、先ほどから核軍縮についてお話がございますが、核軍縮の具体的な措置というものはどうなさるのですか。やはり段階があろうと思う。外務大臣としては、核軍縮について具体的な措置はどういう順序を追っていこうというのですか。
  104. 三木武夫

    ○三木国務大臣 第一番には、核軍備の競争を停止しなければならぬ。次々に核による軍備の拡充競争ということは、やはり人類の不安を増進するのですから、核の軍拡競争、これはやはり終止符を打たなければならぬ、これが第一段階。  第二の段階は、これはやはり世界は一つのバランスというか、世界の平和維持に対する均衡ということを考えなければならぬ。したがって、核だけということでも、実際問題としてこれは軍縮の目的は達成できない。だから全面軍縮ともにらみ合わして、核兵器といいますか、まず第一は核軍備をだんだんと少なくしていく削減、次には全廃へいく、こういうのが考えておる段階でございます。
  105. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、そこで削減から全廃に至るその段階というのは、外務大臣としてはどういうようにお考えになっているのですか。一体どういう措置があるのですか。
  106. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これをいつまでというふうな期限を切って考えることはむずかしい。それはなぜかといえば、世界情勢自体が安定をしていく、たとえばいろいろ東西間の対立であるとか、あるいはまた地域的ないろいろな紛争であるとか、とにかく世界の平和の長続きをする基礎というものが確立をして、やはり軍備のバランスのうちに平和が打ち立てられるという事態への国際情勢の改善ということともこれはにらみ合わすわけでありますから、どういう過程で、どういう年限でそういうふうになっていくかということは、なかなか客観情勢の変化もありますから、そういう順序でいかなければならぬと申し上げるだけで、それを期間を切って申し上げることは困難でございます。
  107. 横路節雄

    横路委員 いや外務大臣、私は期限のことを言っているのではないのです。核軍縮が最終的に核兵器の全廃に至るその経過的な措置にはいろいろございましょう。それにはどういうことをお考えになっているのですか、こう聞いているのです。
  108. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私は、これは実現を可能にするためには、全血の軍縮条約、こういうものができて、そして核兵器も含む一般の軍縮などに対しても、これを削減し、全廃する国際的な協定、こういうものができることが、一番これを具体的に進めていく道としてはやはり実現が可能である、そういうふうな方法が、やはりそれを推進していくのに一番好ましい方法だと考えております。
  109. 横路節雄

    横路委員 どうも大臣の御答弁は抽象的でよくわかりませんが、いま世界各国で、いま大臣がお話しの核軍備競争を停止する、そのための具体的な措置として、第一番目に、まず兵器用の核分裂物質の生産を全面的に停止をする。スウェーデン案が、核物質の削減の追加を主張しているのはその一つであります。第二番目に、核兵器の生産を停止してそのストックを漸減する。第三番目は、核運搬手段の現状凍結と漸減をはかる。その次に、いま一番問題になっているのが弾道ミサイル防衛兵器体系、いわゆるABMといわれているものの生産展開、これを阻止する。それから第五番目は、核兵器の使用禁止。こういう具体的なことでなければ核兵器のいわゆる全廃ということにはいかない。各国はみな努力をしている。私は、いま外務大臣のお話を聞いて、その点のどれかにお触れになるかと思ったが、お触れになっていない。この点は、外務省としては十分ひとつ検討してもらいたい。この点はどうですか。
  110. 三木武夫

    ○三木国務大臣 当然に、これは軍縮というものに対しては熱意を持っておる立場に日本はあるわけですから、これは段階的に、いろんないま御指摘のような段階があろうと思う。これは十分に検討いたしたいと考えます。
  111. 横路節雄

    横路委員 次は、ちょっと総理お尋ねしたいのですが、非核保有国にどういう安全保障を日本は求めようとしていますか。非核保有国は一体どういう安全保障があればいいと思うか。これはこの条約における一つの重大な問題です。
  112. 三木武夫

    ○三木国務大臣 一つには、核停条約は集団安全保障条約の機能に対していささかも影響を持つものではない。日米安保条約であるとか、あるいは北大西洋条約であるとか、その他の今日の世界平和維持機構として集団安全保障条約を持っておるわけですが、これに対してはその機能を何ら阻害しないということが大前提であります。その上に、いま問題になっておるのは、非核保有国に対する保有国の安全保障というものに対して、非同盟諸国の立場もありますから、これをどのようにしてこの核停条約の中にそういうふうな規定を設けるかということが問題になっておる点であります。日本に関する限りは、日米安保条約の機能にいささかも、この条約を締結をいたしましても影響を受けない。これはやはり日本の安全保障の点からいえば、これを結ぶことによって何ら影響はないということでございます。
  113. 横路節雄

    横路委員 ここが私は非常に問題だと思うのです。いま外務大臣の説明を聞いていると、この核拡散条約については集団安全保障条約を排除するものではない、だから日本は日米の安保条約でいいのだ、ということは、言うなれば、いわゆる日本はアメリカの核のかさの下にいるのだということなんです。これは重大なんです。いま世界各国が言っている、非核保有国の安全保障とはどういうことかということは、これは外務大臣御存じだと思いますが、第二十一回国連総会の決議二千百五十三号の第四項に何といっているかというと、「十八カ国軍縮委員会に対して、核保有国は、その領土内に核兵器を置かない非核保有国に対しては核兵器を使用しない、または核兵器を使用するというおどかしはかけないという保証を与えるべきであるという提案を緊急に検討するよう要請する。同時に、他の諸提案についても検討するよう要請する。」というのが第二十一回国連総会の決議二千百五十三号の第四項できまっているのです。だから、ここで世界各国がいう非核保有国の安全保障とは、外務大臣が言うように、日本はアメリカの核のかさのもとにいるからだいじょうぶだというのでない。そうではなくて、非核保有国に対しては核保有国は一切核による攻撃はしない、おどしはかけない、そういうことをこの核拡散防止条約に明らかにしてもらいたい。だから二十一回国連総会で、いま私が申し上げたように、十八カ国軍縮委員会にこのことを言っている。そのことを外務大臣が忘れて、日本はアメリカの核のかさの下にあるからいいのだ、こういう論議では、これは世界各国の核拡散防止条約、非核保有国の考え方とは全く違うんですよ。
  114. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは私いまのお答えの中でも申し上げた。一つは、やはり集団安全保障条約の機能を阻害しないとこれは言っているんですね。もう一つは、やはりこの条約を結ぶことによって非核保有国の安全保障の問題について、一つの条約の中に、それをどういう形で盛り込むかは別として、何らかの意思表示がなければならぬ、これは日本も当然であります。日本も当然にそういう考え方のもとで、どういう形でこれを織り込んでいくかということが問題になり、われわれも何らかの形で非核保有国の安全保障を、単に集団安全保障というのでなくして、もっと非核保有国全体の問題としての安全保障の一つの形がこの条約に出ることが好ましいと私も考えておるわけでございます。
  115. 横路節雄

    横路委員 それでは、いま外務大臣は、私の言う核保有国は非核保有国に対しては核兵器を使用しない、またはおどしをかけないということをこの核拡散防止条約に明示することに外務大臣も賛成だというから、次に移ります。——違うのですか。
  116. 三木武夫

    ○三木国務大臣 何らかの形において、どういう形でいたしますかは別として、その形というのは、条約の中そのものに織り込むという形もありましょうし、あるいは共同宣言もあろうし、前文もあろうし、その形式は、条約の中にそんなに織り込むということに固定しては私は考えてない。何らかの形において、この拡散防止条約が締結されるならば、その機会において、非核保有国の安全保障の問題について何らかの保障措置の意思表示がなされなければならぬという考え方は、私もそのように考えておるということを申し上げたのであります。
  117. 横路節雄

    横路委員 いや、外務大臣、何らかのというのは、核保有国は非核保有国に対して核兵器を使用しない、おどしをかけない、そういう意味ですね。このことをはっきりしておかなければならないです。
  118. 三木武夫

    ○三木国務大臣 当然に非核保有国の安全保障には、そういう横路君の言われたような考え方を盛り込んだものでなければ安全保障にはならないから、そのもの、いま御指摘になったそのものかということは、これはやはり世界各国がございますから、あなたの御指摘になったそのものの文句ということではなしに、その精神が、何らかの形においてこの核停条約が締結される場合に意思表示がなされなければならぬという説には、私も同意でございます。
  119. 横路節雄

    横路委員 しかし、さっきも言ったように、国連の第二十一回総会の決議なんですよ。だから、それは日本の意思ではなくて、世界各国の意思なんです。  その次に、外務大臣にもう一つお聞きしておきたいことは、昨年秋の第二十一回国連総会において可決されました核の拡散防止条約促進に関する決議というのは、六五年秋の第二十回国連総会において可決されました核拡散防止に関する二千二十八号の趣旨と、その意義の重要性をいわゆる強調したものですが、その中の第五項に——それは原則をうたったものですが、第五項に、非核武装地帯の広範な地域を設定するという趣旨のものがあるのです、ことばはそのとおり書いてありませんが。そこで、この非核武装地帯の設定については、あなたはどう思いますか。これは六五年の第二十回国連総会の二千二十八号の決議、そうして第二十一回国連総会において再確認されたものの第五項、その要旨に基づく、それはそういう意味のものなんです。非核武装地帯のいわゆる設定については、あなたはどう思いますか。
  120. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本の場合を考えた場合に、核兵器の持ち込みはしないと、こう言っておるわけでありまして、もし横路さんが、非核武装地帯の宣言をせよ、そういう地域の宣言をせよという考えであるならば、総理大臣もしばしばお答えしておるように、そういう考えの意思はない。しかし、核兵器を持ち込まないということはしばしば申し上げておるわけですから、日本が核兵器の開発もする意思はない、持ち込みもしない、こう言っておるのですから、非核武装地帯の直言をするという考え方はない。
  121. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、同じことではないですか。核兵器を持ち込まない、核武装をしないということと、非核武装地帯だということとは何か違うのですか。
  122. 三木武夫

    ○三木国務大臣 だから、いまさら宣言をする必要もないではないかということで、しないということです。
  123. 横路節雄

    横路委員 それでは外務大臣、同じことであれば、世界各国が非核武装地帯の設定について検討した場合には、その検討に応じていいではないですか。どうですか。同じことなら検討に応じてもいいではありませんか。
  124. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それは、検討に応じていいですよ。いいけれども、何も日本政府がこれだけはっきりしているのですから、みずから開発もしなければ、持ち込みも認めないと言っているのですから、いまさら何も宣言をする必要はないではないかというのが私の立場でございます。
  125. 横路節雄

    横路委員 どうも国連中心主義の佐藤内閣の外交としてはおかしいですよ、三木さん。  次に、私は下田発言についてお尋ねをしたい。  下田発言は、日本には原子力の平和利用のための核爆発の権利があると、こう言っているが、下田さんというのは次官ですね。一体、平和利用のための核爆発の権利があるということ、こういうことを一外務次官が、この核拡散防止条約についていままで私が述べた幾つかの重要な問題点の前提を踏まえて、そして平和利用についてやるときに、こういう重大な問題を一外務次官が——これはあなたと相談してやったのですか。しかも、原子力の平和利用のための核爆発の権利はあるのですか。あなたと相談してやったのか。それから、原子力の平和利用のための核爆発の権利はあるのかどうか、その点をお尋ねします。
  126. 三木武夫

    ○三木国務大臣 絶えず次官と私との間に相談をいたしておるわけであります。下田君の発言は、核拡散防止条約に対する問題を提起したわけであります。政策決定が、一外務次官ができるわけではないのでありまして、少し表現が、どういうふうになっておったか、とにかくこういう問題がひそんでおるのだという問題を国民の前に提起することは、外務次官としてしばしばしておることで、有益な面もございますので、これは私は一つの問題提起であって、その問題の中で、それではどのように決定を下すかということは、当然に政府の仕事であって、次官はこれに関与もさせておりませんし、またすべきものでもないと考えております。
  127. 横路節雄

    横路委員 さっきから言いましたように、核拡散防止条約には、まず第一条件として、全面核停の問題、核軍縮の問題、核兵器を使用しないという問題、それから、いわゆる原子力の平和利用の問題がある。外務大臣、一体いま日本に原子の平和利用のための核爆発の権利がありますか。
  128. 三木武夫

    ○三木国務大臣 日本は原子力の基本法でも、軍事的目的で核開発をしないということでありますから、原子力基本法で、平和利用ということでは禁止はされていないと思います。しかしながら、これはいまのように平和利用と軍事利用が区別のつかないときに、平和利用という名のもとに核爆発の装置を開発する権利があると考えることは危険な考えであると私は思っております。
  129. 横路節雄

    横路委員 そうするとあれですか、平和利用の危険であるということと、絶対ないということとは違うのですか。平和利用のための核爆発は禁止されていませんか。そんなものは権利はないのじゃないですか、権利はどこにありますか。部分核停条約のときに、そのことをはっきりと政府は答弁しているじゃありませんか。部分核停条約に賛成した日本は、それについて、軍事目的であれ平和用であれ、それは絶対やってはならぬということになっているじゃありませんか。どこに権利がありますか。そういうことを言ってはだめですよ。それはそうでしょう、三木さん。だから、これはまさにあなたと相談はしていないと私は思う。だから、あなたは今度外務次官をやめさせたんだと思う、ああいう不届きな外務次官は。しかし、これはないのですよ。あなた、これははっきりしておかなければだめです。  それでは、これは確認をしておきますよ。原子力の平和利用のための核爆発の権利なんというのは、いまありますか。ないのですよ。
  130. 三木武夫

    ○三木国務大臣 この問題は、権利それ自体という問題になったら、いろいろ検討を要すると思いますが、とにかく権利があるという考え方、政府政策の問題として、権利があると考えることは危険である、私はそういう解釈をとらないほうがいい。いろいろ法律的に見れば、原子力基本法というものは——軍事利用でありますから、平和的利用というものに対しては、いろいろ法律的には解釈もありましょう。しかし、その解釈をとらないほうが今日の場合よろしいんだということが政府の態度であることは、演説等にも申し上げたのでございます。
  131. 横路節雄

    横路委員 三木さん、全然違うですね。危険であるということと、ないということとは違うのですよ。部分核停条約で、軍事目的であれ平和目的であれ、やらぬということを政府は答弁しているではないですか。それはないのですよ。将来のことを言っているのでしょう。ないですよ。部分核停条約には、大気圏内、大気圏外、水中においての核爆発については、軍事目的であれ平和目的であれ、ないのですよ。政府は答弁しているではないですか。そういうことを言ってはだめですよ。
  132. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これはもうやらぬということ、そういう権利があると考えることはこの際危険であるので政府はとらぬ、こう申し上げておるのですが、法律的には、条約局長からこの法律的な見解をここで述べさすことにいたします。
  133. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 部分核停条約では、大気圏内、水中、大気圏外におきましては、軍事目的のみならず平和目的でも核爆発はできないということは御指摘のとおりでございます。しかし、地下につきましては、核爆発は禁止されておらないということでございます。
  134. 横路節雄

    横路委員 さっきから私が言っているように、部分核停条約では禁止されておることははっきりしておる。いいですか。  そこでいま、われわれがあなたにも再三お尋ねしたのは、全面核停について、当然禁止を要求すべきではないか、こう言っているのだし、政府のほうも、それに対しては大体賛意を表したのだから、そういうものについてこういうことを言うのは、これは越権行為なんだ。外務大臣、越権なんですよ。  次に、今日の日本というのは非常にきびしい規制を受けているわけですね。そこで、この問題について二階堂原子力委員長お尋ねをしたいのです。  これは三月九日に、あなたは閣議か何かあってお休みになったそうですか、原子力委員会が開かれて、有沢広巳さんが委員長代理で、他の委員の方が全部出席されまして、そして、ここでこういうことをおきめになっておる。「核爆発の平和利用は、軍事目的の原子力利用ではないから、原子力基本法の平和原則に触れるものではない、しかし平和利用の核爆装置をつくるための開発研究は、原水爆をつくるための開発装置と変わらない、だから、完成した平和利用の核爆発装置は、いつでも原水爆に転用できる、こういうことを言っていますね。だから、したがってわが国としては核爆発の開発は行なわないほうが、いい、こういうことをおきめになっておる。この点はどうなんですか。あなたは、欠席なされたでしょうが、これだけ大きな、各新聞に核拡散防止条約の原子力委員会の方針として出されていますから、これについての基本的な態度をひとつお述べになっていただきたい。
  135. 二階堂進

    ○二階堂国務大臣 御承知のとおり、わが国の原子力基本法の精神は平和利用に限られております。そして、自主的で、しかもその成果は公開の原則をとっておるわけでございますので、基本法の精神から申しますと、現段階において、わが国におきましては、先ほど仰せられたような考え方が妥当であろうかと考えております。
  136. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、この点について多くの問題点は、将来の問題として、一体原子力の平和利用についてどういうようにすべきかということについてのわが国の基本的な態度、国際的な査察の問題、国際的な査察のためにはどうしたらいいか。アメリカですら、これは一九六五年ですが、国祭協力に関するホワイトハウス会議というので、民間会議ですが、日本にも来られましたギルパトリック元国防次官等十二名からなる軍備規制による軍縮に関する委員会等で、いわゆる広範な核実験禁止条約の締結から、先ほど申し上げました兵器用核分裂物質の一切の生産の停止条約、それから核分裂物質の協定量を国際原子力機関に譲渡する、そして平和利用にやる、それから国際原子力機関ですべてこれを査察する、それからなお、いま御承知のように米、英のすべての原子力工場——いまアメリカとイギリスで五つほどの原子力工場が国際原子力機関の査察を受けているそうですか、すべての原子力工場を公開して、この査察のもとに置く、こういうようないわゆる全面核停から、一連の核の軍縮から、そういう国際の査察機関というものができてこなければ、下田次官の言っているようなことにならない。そういう前段のことを一切やらないで、そうして核爆発に対する権利があるというようなやり方というものは、先ほど言いましたように、いわゆる国民をまどわすものなのだ、こういう点。ですから、下田次官が今度駐米大使に行かれるというが、こういう人が駐米大使になることは、日本の外交に対して、やはり誤った観念を私は植えるのではないかと思う。その点は十分警戒してもらわなければ困る。
  137. 三木武夫

    ○三木国務大臣 下田君についての御発言ですが、下田君は有能な外務次官である。駐米大使の問題は、まだ私は何も言っていないのです。しかしこれは、下田君は最も有能な外務省の官吏でございまして、したがって、この人間に対するいろいろな御批判は私は承服いたしかねる。やはり最も有能な、信頼をしている外務次官であります。これは申し上げておきます。  そこで、核の平和利用の問題でありますが、この核停条約というのは核爆発だけが問題であり、核爆発装置の開発というのが問題で、核爆発に関係しない原子力の平和利用というものに対して、この条約には何らの影響を受けるものではありません。だから、核分裂の研究が進んで高速増殖炉であろうが、あるいは核融合の研究であろうが、この核停条約というものには何ら影響を受けるものではない。何か核停条約というのは、原子力の平和利用に対する研究というものが非常に大きな影響を受けるような印象を世間に与えている節もございますが、そういうものはないので、核爆発という問題だけを開発することをしないということでありますから、それ以外のことで原子力の平和利用がこの条約によっていささかも影響を受けるものではないのだ。いま核爆発をやれば、それは軍事か平和か区別がつかぬから、結局は核の拡散という危険性を持っているからやらぬのだということでございます。この点はわれわれとしても、日本は原子力の科学の点では世界で非常に進んでいる国でありますから、今後こういう条約の進行に伴って、日本も将来核爆発が平和利用にされる場合のその利益というものは、平等に受けられるような保障は十二分にとっておきたいと思うのでございます。しかし、爆発以外のことに対しては制限を受けるものではない、これは御理解願いたいのでございます。
  138. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたは制限を受けないと言うが、日本はきびしい国際原子力機関の査察を受けているんですよ。それは、原子炉の使用済み燃料の処理工場について、いずれの国よりもきびしい査察を受けているのです。あなたはそのことを、少なくとも全世界のあらゆる国に、特に核保有国に対しても同様にしなければならぬ、そういうことをまっ先かけて言わなければならぬと思う。私は、あなたが自分の事務次官を弁護されるのはわかりますが、これから事務次官の問題についても、もう一つあるから申し上げます。  最後に、私は沖縄の問題についてぜひひとつお尋ねをしておきたいのです。  総理は、「沖縄の祖国復帰なくしては戦後は終わらない」と述べられました。「あらゆる機会に達成のために努力してきた」と言っていますが、施政権返還のためにどのような努力をしてきたのか、われわれどうもいまだ寡聞にして知らないわけです。その点をひとつ国会を通じて明らかにしてもらいたい。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 戦後、日本の沖縄問題につきましては、各内閣とも非常に頭を悩ましてきておる問題であります。特に岸内閣以来、岸、池田また私、この沖縄の施政権返還について積極的に取り組んでまいりました。そこで、沖縄について、あるいは直ちに返還は実現しないが、潜在主権を認める、こういうような決定ができたり、あるいは池田内閣のときには、両国の間で日米協議会をやることによって、そうしていま直ちには施政権の返還はできないが、内政全般について具体的に話し合っていこう、こういう処置がとられました。また私がワシントンに参りました際も、特に沖縄の返還問題について正式にジョンソン大統領に頼んだ。これをひとつ返すべきである、これに対しては佐藤・ジョンソンの共同コミュニケでその趣旨が明確になってきておる。そこで返還が実現するまでの間、とにかくいま沖縄住民がたいへんな本土との格差のもとに、また自治権その他におきましても苦しい状態にありますから、これらの問題をできるだけ解決して、そうして本土との一体感を深め、同時に民生の向上発展を期していく、教育、経済、司法、自治、あらゆる面においてそういう努力を続けてまいっておるのであります。返還自身はまだ実現いたしませんけれども、いま財政援助を非常に多額にふやしましたことも、将来の沖縄の復帰に備えて、復帰の際のその状況を非常に円滑にする、こういうような意味で積極的に財政援助もいたしておるような次第でございます。これらのことはすでに国会を通じ、各それぞれの内閣が詳細に説明いたしておりますので、ただいまのように、政府がどんなことをしているか知らないという、これはずいぶん健忘症にかかられたことだと思います。どうかお忘れなく……。積極的に努力をいたしておりますし、また必要な外交折衝もいたしておりますから、どうか誤解のないようにお願いいたします。
  140. 横路節雄

    横路委員 総理、いまのお話ですが、一体予算がどれだけ拡大して、それが施政権返還と何がつながりますか。民生の福祉が向上して何が施政権とつながりますか。自治権が拡大したからといって、何が施政権につながりますか。何一つつながっていないではありませんか。私が聞いているのは、総理が施政権の返還について何を努力したかと聞いているんです。いまあなたがおっしゃったことは私も聞いています。しかし施政権返還については何一つしていないから聞いたんです。いまの予算規模が拡大したとか援助額が拡大したとか、そういうことが施政権の返還につながるという考え方は、それが間違いなんですよ。その点ははっきり申し上げておきます。間違いだ。何一つ施政権の返還につながらない。あなたがおっしゃるように、施政権返還の日に備えてに何も関係ない。アメリカの援助の肩がわりなんだ。何が変わりがありますか。  そこで、その次に第二点をお尋ねします。——だから総理、あなたのほうが何もしないのです。私のほうが健忘症でないのです。私は十分知っていて聞いているのです。総理、一月十九日に総選挙の遊説の旅先で、大津で記者会見をして、沖縄の施政権返還問題は教育権だけの分離返還より施政権返還のほうが望ましい、そういうように言った。それはまあそのとおりなんです。しかし私は、いままでの森前総務長官の経緯をずっと尋ねて追っていきますと、これは沖縄に行かれたそうして当時のワトソン高等弁務官とも話をされている、さらに大事な点は、あなたは森前総務長官が私的諮問機関としてつくられた沖縄問題懇談会——座長は当時の早大の大浜総長ですが、この大浜さんが昨年の十月、プリントの「沖縄教育権の返還は何か」の前文で、「森長官は、佐藤総理は教育権の分離返還は時宜に適した妥当な方針であると言われて激励した」と、こう書いてある。あなたは激励したのです。それが初めは教育権の分離返還が可能だと考えられたからで、一体その根拠は何だったのですか。その根拠は何だったのです。全然考えなかったのですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そうでなくて、まあそれぞれの分野において内地との格差をなくする、こういう努力をいたしております。これがいわゆる教育権の返還と、こういうことになりますと、いわゆる観念論的な問題になりますから、これは私は避ける。実際に処理できる具体的な問題と取り組んで解決していくべきだ、かように実は思っておるのであります。教育の問題につきましても、御承知のように日本の教科書を使っておる、これが無慣配給になるとか、だんだん内地並みの扱い方に移行していく、あるいは教員の待遇その他についてもだんだん内地との格差がなくなる、こういうような事柄をいわゆる俗っぽく教育権の返還とおっしゃるなら、私はそのとおりでけっこうだと思います。しかしながら、これがいわゆる施設権の中を分離して、そして教育権あるいは司法権、これは返還だ、完全に国に返ってきたんだ、こういうことになりますと、これは法律論は横路君よく御承知だから、御存じのとおりいろいろむずかしい問題が起こる。私は、こういう沖縄住民のいま苦しんでいる状況は観念論できめるべきじゃないと思う。したがいまして、ただいま申し上げるような具体的な処理で実は続けておるのであります。また、森君の時分の沖縄問題懇談会、これを今度は内閣に置きまして、積極的に取り上げた。したがって、ただいまの教育権の返還という問題は実はまだ全然取り上げないんだ、こういうことにはなっておらないのです。いまちょうど会長である大浜君がアメリカに行っておりますが、どういう仕組みが一番よろしいのか、そこらをこの懇談会でさらに検討する、こういう話になっております。  先ほど来、返還と今日やっておることは違う、こういうことで声を大にされましたが、私は、現在やっておること、これは施政権返還を目標にして実はやっておることでございますので、これは住民におきましても、また日本国民におきましても、よく事情を知っておると思います。全然日本に関係のないところなら何を好んで財政的援助をいたしますか。それなどをお考えになれば、政府自身が沖縄の施政権返還について、祖国復帰について積極的に取り組んでおる具体的な一つの証左でありますから、どうかその辺も御理解をいただきたいと思います。
  142. 横路節雄

    横路委員 いまの点ですね、初めは観念論だ、こう言われたり、いま大浜氏がアメリカに行っておるので、教育権返還については何とかもう少し具体的になるかもしれないというような希望的な観測があったりするが、この点について世間ではこう言っています。総理はアメリカの圧力に屈したのではないかとね。森前総務長官自身が一月二十四日の毎日新聞で、首相発言はアメリカの圧力と、こう言っておる。ちょっと読んでみますね。——まあまあちょっと読んでみます。読むだけ読んだっていいでしょう。それは森君にしてみればかんかんになって怒っているんだから……。「首相の真意はわからないが、本土への復帰を願う沖縄島民の希望を打ち砕くものだ。この発言の裏には沖縄を重要視する米国の圧力があったとしか考えられない。もし首相がそういうことで米国と妥協したとすれば断固戦う」、こう言っておる。その次に、一月三十一日にアメリカの外交委員会で、アメリカの前の駐日大使のライシャワー氏がこう言っていますね。「もし日本が沖縄が絶対に必要というならば、日本の防衛のために基地分離をして返す可能性があると。」。さらに三木さん、二月一日に下田次官はまた言っていますよ。どういうことを、言っているかというと、「いわゆる極東の情勢が変化ないのに返還させるならば、自由に基地を使用させるという日本の態度をはっきりさせる必要がある」、こういうように言っている。  そこで私は総理お尋ねをしたい。きのうは私のうしろにいらっしゃる根本さんが非常に重要な発言をされている。「沖縄は日米安保条約と不可分の関係にある」、こういうように言っていらっしゃる。そこで私はこの問題についてお尋ねをしたいのですが、いわゆる基地と施政権とを分離して返還するということについて、一体考慮をされているのかどうか。その点についてお尋ねします。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄の施政権返還、祖国復帰等につきましては、あらゆる面から総合的にいろいろ検討いたしております。
  144. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの問題を含めてですか。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あらゆる問題、あらゆる面から総合的にいろいろ検討しております。
  146. 横路節雄

    横路委員 いまの総理の発言はまことに重要だと思います。そうすると、いままで全然この委員会では、基地と施政権というものとを離してということは考えられていなかったものが、総理お話で、そういうことを——もう一ぺん聞いておきますが、そうすると、そういうことを含めてですね。そのことをはっきりしてください。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 誤解があると困りますが、結論が出ておるわけではございません。しかし、あらゆる観点からあらゆる問題を取り上げて、そうして絶えず研究している、こういうことを申し上げているのです。いまお話しのように、何か結論が出ている、施政権と軍事基地分離の方向だとか、そんなことを出しておるわけではございません。誤解のないようにお願いします。
  148. 横路節雄

    横路委員 それでは、施政権の返還というときには、逆にあなたにお尋ねをしますが、いわゆる基地と施政権を分離して返還するというようなことは絶対考えていないという、否定の立場には立たないということですね。その点だけはっきりしてもらいたい。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままではっきり申し上げておりますのは、日本を含む極東の安全確保の問題において、アメリカが沖縄に施政権を持っておることが果たしておる役割りが非常に大きい。それを念頭に置きつつ、施政権の返還をいろいろ交渉している。この答弁でおわかりだと思います。
  150. 横路節雄

    横路委員 わかりませんね。わからないです。  それからもう一つお尋ねしておきますが、これはいずれ石橋君から重ねてまたあなたにお尋ねをすると思いますが、宮澤さんにちょっとお尋ねします。  あなたは去年の「世界」の一月号に、こういうことを書いておりますね。「非軍事的地域のみの返還方式、アメリカが沖縄の基地以外の地域について施政権放棄を宣言し、その地域を日本に復帰せしめる旨の提案をしておる。」こういうことをあなたは「世界」の一月号に書いていますが、この考え方はいつまでも変わりませんか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一人の国民といたしまして、私も横路委員と同じぐらいこの問題には関心を持っております。そういう立場からそういう提案をいたしたことがございます。ただ、閣僚の立場として、ことにただいま私の所管ではございませんから、同じことをここでもう一ぺん申し上げるということは、私は適当でないと思います。ただ個人として、私はそういう提案をいたしたことは確かにございます。
  152. 横路節雄

    横路委員 それから総理、沖縄は日米安保条約と一体不可分の関係にありますか、その点だけお尋ねしておきます。きのう根本さんが言っておられますね。あなたは賛成をしたような顔だったですがね。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体沖縄の問題、これは先ほども申しますように、日米安全保障条約、この日米安全保障条約には、直接沖縄の関係はございません。しかし、私どもの日本の国の安全確保、これはやはり沖縄に施政権があるアメリカが果たしておる役割りは非常に大きい。そればかりではない、先ほど来申しますように、日本を含む極東の、安全確保に果たしておる役割りが非常に大きい。それを絶えず念頭に置きつつ、施政権の返還と取り組むのだ、こういうことを申し上げております。これが直ちに日米安全保障条約と関係を云々する、こういうことではございません。そこらを誤解のないように願っておきます。
  154. 横路節雄

    横路委員 施政権返還についての法的な根拠はあると考えていらっしゃるのか、ないと考えていらっしゃるのか、その点だけです。そこだけ、いろんな説明はいいですから、あると考えて向こうに交渉しておられるのか、ないと考えておられるのですか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカは潜在主権を認めております。アメリカは日本の潜在主権を認めております。これに基づいて私どもは施政権の返還を願っておるのです。
  156. 横路節雄

    横路委員 いや、私が聞いておるのは、法的根拠はあるのですか、ないのですかと聞いておるのです。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私も法科を卒業しましたが、ただいまのお尋ねがよく私にはわからないのですが、先ほどお答えいたしましたように、潜在主権を認められておる潜在主権国というものが、これを顕在主権国に持ち上げるという、これはやはり当然のことだろうと思います。それも、法律的な根拠もあるのじゃないか、かように私は思っております。
  158. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、そうすると、あなたは平和条約第三条の解釈、それに基づいて、当然第二十二条によって国際司法裁判所への提訴、その問題は、国連憲章七十八条との関係、七十七条との関係、七十六条との関係。だから法的根拠があるとすれば、当然そうなる。私が聞いているのは、その点非常に大事だから聞いているのです。ただ、それを履行するか、しないかは、これは政府の立場だが、法的根拠はあるんですね、と聞いているのですよ。そこだけ聞いているのです。
  159. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 法的根拠ということでございますので、私、御答弁さしていただきますが、総理の御答弁の中で、法的根拠というのが唐突に出ておりますので、ちょっと私も実は判断しかねたのでありますが、ただいま仰せのように、国連憲章等にもとるというようなことから、何かそういうことがあるんではないかというような御趣旨を含んだ御発言がございましたが、政府当局としては、そういう意味には解しておりません。しかし、いずれにしましても、条約でございますので、一国が他国との間でその条約の中身についていろいろ相談をいたしますのは、これはその権利があるなしにかかわらずできることでございますし、それからまた、その基づく政治的な論拠にもなりましょうが、それは総理の先ほど仰せのとおりのことが根拠といえば根拠であろうと私は思います。
  160. 横路節雄

    横路委員 総理、そうすると、いまの長官の話で、国連憲章七十八条、七十七条、七十六条との関係からいえば、政府の見解はない。しかし、潜在主権という関係からいえば、平和条約第三条との関係であるわけですね。平和条約第三条との関係であれば、二十二条は生きてくるわけですね。その関係は生きてくるわけですね、その点は。——いや、条約の解釈によらない問題が起きたときは二十二条……。
  161. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 平和条約三条と国連憲章の七十八条……。
  162. 横路節雄

    横路委員 平和条約二十二条。
  163. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 平和条約の二十二条、もしも平和条約上の問題につきまして、何か関係国の間で紛争でもございますれば、これはまた話は別でございますが、そういうことの問題ではございませんので、したがって、平和条約上の処理の問題に乗っかるということはないと考えております。
  164. 横路節雄

    横路委員 そうすると、いまの長官の答弁や、総理大臣の答弁からすると、法的根拠はないんですね。いわゆる要求する法律的な、国際法的な根拠、条約的な根拠はないということですね。そうすると、結局、言うなれば、アメリカの恵みにすがるということですね。そういうことになるんでしょう、日本の権利として要求するということが。施政権返還ということは権利として要求するということなんです。そういうことじゃないんですね、佐藤内閣の姿勢としては。いわゆる相手の恵みにすがるということですね。その点、どうなんですか。何の国際法、条約的な根拠でやるのですか。
  165. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 そういう交渉につきまして、何か権利がないとできないという考え方が私は実はおかしいと思っております。いずれにしましても、一国が他国と条約を結びます場合に、あるいはそれを改定する場合に、自主的な改正を含めまして、そういうものを含みます場合に、権利がないからできないという考え方を私どもはとっておりません。要するに、相手方に対して正当な主張として、それを関係国にぶっつけてその改定をするとか、そういうことは普通あることでありまして、すべて外交交渉を権利に基づいてやるというようなことは、これは全然あり得ないということでございます。
  166. 横路節雄

    横路委員 結局、いまの長官の答弁からすれば、あなたの言うのは、外交交渉というのはいわゆる権利に基づいてやるものではない。そうすると、施政権返還の要求というのは日本の権利としてやるのではないということになれば、お願いします、お願いしますということなんです。お願いしますで何で一体この問題が解決できますか。——いや、いいですよ。私はこれ以上あなたにそこでごたごた言ってもらったって、みなに迷惑かけるばかりだから……。  そこで私は、最後にこれだけ申し上げて終わりたいと思うのです。  それは、沖縄問題は、佐藤内閣は教育権の分離返還を望んでみずから是認をしていたが、今度は一括返還が望ましいと言われました。しかし、その対応策ということになると、それはない。結局アメリカの現状肯定、アメリカの軍事行動の是認ということになる。基地の是認ということになる。それは中国大陸攻撃用の核基地となり、ベトナム戦争の軍事基地、兵たん基地となっておる。佐藤総理は、沖縄は民生の問題としか考えていないが、根本的には極東の平和の問題です。だから佐藤総理とアメリカは、沖縄の核基地が平和をもたらすと考えているが、われわれの態度は、沖縄の核基地は平和を阻害している。核兵器は波及している。いわゆる拡散しつつある。そういう問題を私はいま申し上げているのであります。したがって、佐藤総理は、いまこそアメリカに対して、沖縄の核基地に対して意思表示をすべき段階に来ている、こういうように私ども考えております。ですから、そういう意味で、核拡散防止条約でも問題になりましたように、絶対に日本の国土に対しては核兵器は持ち込まない。それから日本の非核武装宣言をする。同時に、きょうの答弁で非常にあいまいであったことは、いわゆる基地と施政権の分離返還ということについて、いままでこの国会では、そういうことはないという点を明らかに否定されておりましたが、きょうは、その点のいわゆる決定的な否定的な御発言はありませんでした。もしも基地と施政権の返還というものが分離をしてやれるということになれば、それはどういうことになるかといえば、日本の国土の中にいわゆる核基地を持つということになるわけでありまして、日本の国内にいわゆる核兵器の持ち込み、核基地を許すということになる重大な問題であります。したがって、いまの佐藤総理の御発言は、そういう意味で、これに対して決定的な否定的な発言のなかったことはまことは遺憾です。  これらの点につきましては、なお引き続きまして、私のあとに外交、防衛につきまして石橋委員から御質問がございますので、以上で私の質問を終わります。(拍手)
  167. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  午後は一時半、定刻から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後一時四十分開議
  168. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算に対する質疑を続行いたします。高田富之君。
  169. 高田富之

    ○高田委員 私は主として物価問題と税金問題の主要な諸点につきまして御質問を申し上げたいと思います。  その前に一点だけ総理にお伺いしたいのでありますが、このたびは「経済社会発展計画−四〇年代への挑戦−」、こういうたいへんいかめしい副題までつけました新しい五カ年計画が提出せられております。内容も読んでみたのでありますが、なかなかりっぱなことがたくさん書かれておるわけでございます。  そこで、この種の計画は、従来所得倍増の計画、さらにこれが中途で非常にそごを来たしましたために、中期計画に改められました。佐藤内閣になりましてから、中期経済計画五カ年計画が新たにつくられました。それも二年たたないうちに、再びまたここに新しい計画が出てまいったわけであります。こういうふうに次々に出されました長期計画が、何年もたたないうちに新たな長期計画に取ってかわられるということは、これはたいへんこの種の計画に対する信憑性を失わせる。私ども、また国民一般も、これは政府一つの願望なんじゃないか、計画というのは少し大げさなんじゃないかという声がだいぶございます。そこで、中身はだいぶ佐藤色が盛り込まれた、社会開発など相当強調されたものでございますが、これは相当力を入れておやりになったと思うのであります。  そこで、あなたにお伺いするのですが、いままでの諸計画が中途で挫折をした主要な原因は何だったのか。これに対する反省なくしては、新たにできました五カ年計画に対する信憑性を持たしめるということは不可能であろうと思うのであります。したがって、今度はだいじょうぶなんだぞ、今度は途中で変更なんかしなくてもいいんだぞということを納得せしめるに足るような、従来の計画がだめになり、実際から大きくそごを来たしました主要なものは何であったかということについての御説明、並びにこれはだいじょうぶなんだということの御説明、これをひとつ最初に伺いたいと思うのであります。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この種の計画、これはいま高田君が御指摘になりましたように、計画じゃなくて願望だろう、こういうように御批判でございますが、まさしくそういうような点もございます。いわゆる計画経済のもとにおける計画、こういうものとこれはおよそ違うのであります。そこで、日本語に適当なことばがないというので「計画」を使っておりますが、しかし単なる願望ではない、いわゆる目標というようなことを申したほうが結局実際に合うのじゃないかと思います。私どもは、自由経済のもとで、めくらめっぽうに全然計画なしというか、目標なしに経済の発展を計画しておるわけじゃございません。ことに三十年代の経済の発展がすばらしかった、その結果非常な不均衡を生じた、これを是正しなければならなくなった、この三十年代を回顧して、四十年代ではそういうような間違いを重ねてやるまい、重ねて引き起こさないようにしよう、こういうところで今回の経済社会開発計画なるものを実は立てたのでありますし、ことにまた、ただいま読んでいただいたということでありますが、たいへんこうかんなものであります。この中にただいま私が申し上げますような、いわゆる縛られた計画でなくて、もっと伸び伸びとした一つ目標、そういう意味政府民間人も一体となってこれを遂行していこう。したがって、経済は生きものである、そういう観点から時々適切なこれについての注意もするし、また適切な措置もとっていこう、こういうのが、この計画、この目標の主たるねらいでございます。そういう意味でこれは読んでいただくとおわかりいくかと思います。
  171. 高田富之

    ○高田委員 必ずしも厳密な意味における計画ではない、目標であるということでございますから、そういうことならば了承するのでありますが、ただ主要な問題は当面物価問題でありまして、またいままでの諸計画のくずれましたのも物価の面からくずれている。最初の所得倍増計画は、なくなられました前池田総理がおつくりになった。これも物価上昇ということを念頭に置かなかったということから重大なるそごを来たした。そこで、これを中期計画におきましてはたしか二・五%というところで物価を安定させていくということに眼目を置いてつくり直しをされたのですが、これまただめになりました。藤山さんが企画庁長官をされておりました当時でございまして、一昨年が七%で、昨年度、昭和四十一年度は五%に、ことしは三%に、そうして最後が二・五%、結局物価を安定させるには四十二年度は三%におさめるのだ、こういうわけであったのです。七五三、こう言ってたいへん名言を吐かれたのでありますが、七五の五まではどうやら、選挙前であった関係かどうか知りませんが、相当無理をしたのだろうと私は思うのであります。ことしはどうも三にはなりっこないというので、初めからおあきらめになっておりまして四・五%。世間では四・五%は低過ぎる、こういうのが通説でございます。佐藤総理のお耳にもお入りであろうと思うのであります。  こういうふうに中期計画物価でくずれている。今度の物価最終年度三%、こうなっておるのですが、これが途中で、まず、ことし一年実績を見る、来年一年実績を見る、最後まで、最終年次五カ年間で三%におさまるところまで四・五から四になり、三・五になり、三になりというぐあいにいくかいかないかが、私はこの死命を制すると思うのであります。ですからこれは単なる願望といいましても、問題はきわめて重夫でありますので、この物価見通しに対しまして、ある程度の確信をお持ちでなければ、これはほんとうに値打ちがなくなってしまうわけなんであります。その点に御確信をお持ちでございますか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘のように、この計画骨子をなすものは物価だ、こういう御指摘、これはまさしくそのとおりだと思います。したがいまして、これは専門家から、この計画を取り上げたほうからまた許しく説明するほうがよろしいかと思いますが、ただいま私ども経済問題と取り組んでおりますと、わが国の経済成長率は非常に高いのですね。したがって今回も安定成長への道だということで八%あるいは九%というような、八%に近いものを一応目標として考えておる。しかし実際は、ただいまも九%をこしているというような実情でございますから、そういうもとにおける物価動向というものは、これは一つの大きな問題があります。したがって経済成長率の低い外国の例をとって、それに匹敵するような物価、こういうわけにはいかないと思います。したがって、わが国の体質改善をし、安定成長の基調に乗せる、そういう最終年度の四十六年、これを一応ねらって三%というものを考えておるわけであります。  しかし、この三%となれば一応経済の成長がとまるのかというと、これはなかなかとまらないと思う。経済の成長が非常にはなはだしい際に物価上昇を来たすゆえんのものは、これは労働力逼迫の点から賃金の平準化、同時に所得の平準化が行なわれる。これは全体の産業についてそういうものが行なわれる。その結果、生産性の向上が伴わないもの、そういうところはどうしてもこれを価格に転嫁しておる。だからいま物価上昇を三%に下げようとするためには、やはり経済の安定成長を期する。同時にそれが全部の調和のとれた、いまのような低生産性部門、あるいはサービス部門などもいわゆる賃金に転嫁しないで、そういう労働力不足、あるいは所得の平準化等に対応し得るような措置がとられないと、なかなか物価というものは安定しないのです。だから、今回の計画で最も力を入れておるのは物価問題であり、同時に、そのためには、経済の成長を安定成長に乗せ、同時にまた、各部門において生産性の向上をはかっていくんだ、こういうことで特に力を入れておる。この点は、全体をお読みになったということですから、御了承はいただけるんじゃないかと思います。  だから、物価の問題というのを、ただ物価が高い高いと言うだけで、個々の物価を押えようとしたって、これはだめなんで、全体として経済構造を十分勘案してはじめて物価問題と真剣に取り組み、効果があがるものだ、かように私は考えております。
  173. 高田富之

    ○高田委員 物価を下げるということにつきまして、いろいろな各部門ごとの生産性の格差というようなことは、いままでも何べんも何べんも繰り返し政府側から御説明をいただいておるわけであります。しかしながら、そういうことを言っておりましても、簡単に生産性格差は、中小企業、農業というものの生産性が大企業に匹敵するようなところまで上がるというようなわけにはまいらない性格のものである。ある程度長期の、相当力を入れた政策がなければできないものでございます。したがいまして、いまこれだけ物価が急上昇しておりますのを下げますためには、もう少し真剣に、何が物価上昇の原因か、これに取り組んで、これを抑え込んでいくというふうな姿勢がございませんと、低生産性部門がどうのこうのというところに逃げた——と言っちゃ語弊があるかもしれませんが、そういうことを言っておったんでは、これはとうていこの五年間に問題解決はできっこない。  そこで、私が、次に御質問申し上げたいことは、せっかくおつくりになりました物価問題懇談会、これがたいへんたくさんのいい答申をなされておるのです。特に、財政経済につきましての「物価政策財政政策及び金融政策について」という答申を四十一年十月十八日、予算編成の前に、たいへん時宜を得たりっぱな答申が出されておるわけであります。したがいまして、物価を押えますためには、やはり財政の問題が非常に重大だ。しかもここではきわめて具体的な提案までやっておるわけであります。すなわち、「財政規模は、長期的には経済の成長率より若干大きな率で増大していくものであろうが、消費者物価動向に改善がみられる迄は、経済成長率と略々同じ増加率を基準とすること。」こういうきわめて具体的な提案がございます。それから、さらに公債発行につきましては、「公債は、民間の投資活動が旺盛な好況期においては、その償還、新期発行の停止或いは発行額の大幅な圧縮がなされること。この観点から、昭和四十二年度における公債発行規模は、四十一年度の発行額を下回るべきものと考える。」こういうきわめて明快な答申があるのですが、この答申を採用されなかったということは、これは間違っているのか、どこがどう間違っているのか、ひとつそこのところの御見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  174. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体この答申の趣旨に沿った予算編成をやっておると思います。たとえば、問題は、物価に対して影響があるのは政府財政支出である。地方財政もくるめた財政支出が本年度の想定される経済の伸びを下回るということが実際問題としては大切だということから、私ども、御承知のように、これが一二・八%ということで、予想される一三・四%というものより下回った政府財政支出をしておるというようなこと。それから、公債も四十一年度より減らせということでこざいましたが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、いま言ったような物価対策、そういうものを考えましたら、やはり農業、中小企業というような低生産性部門への投資ということも、これはここでそう縮小することもできませんし、まず必要な経費ということから考えて、これを縮小するという場合には、一方、減税ということはほとんど不可能になる。どうしてもことしは所得税を中心とした一定の減税が必要だと思いましたので、そこらを勘案してみますと、要するに公債の依存度を年々減らしていくということがこの答申の趣旨に沿っていること、そういうふうに考えまして、依存度を減らすということで、八千億ぐらいの公債発行が適当というふうにきめたので、この答申の趣旨に沿わない査定をやったというふうには私ども考えておりません。
  175. 高田富之

    ○高田委員 そういうふうに弁解はなさいますけれども、ここには非常に明快に出ております。だれが考えましても、この趣旨に沿っていないのです。大き過ぎるのです。第一、公債をたった二百億くらい減らしたからといいましても、前年度の公債よりも七百億もよけいに出ちゃっているんでしょう。これはこの答申の趣旨を尊重したとはとても言えないと思うのであります。  そこで、もう少し正面に気持ちをお聞きしたいのです。と申しますのは、去年、一年前でございますが、この委員会におきまして、前の福田大蔵大臣が、とにかくいまの不景気はたいへんなんだ、いまのデフレギャップはたいへんなんだ、設備過剰はたいへんなものだ、だからこのくらいの公債を出したって、一年や二年でこれはとても回復するものじゃないのだということを力説強調されておるわけなんです。私どもは、非常に心配いたしまして、一挙に公債をばかっと七千三百億も出すなんて思い切ったことをやるもんだ、たいへんなことになりはせぬかと言ったところが、いや、そんなどころではないのだ、これくらいのことを続けていかなければ、いまのデフレギャップは解消できない不景気なんだ、えらいところに落ち込んでいるんだ、こう言っているんですね。その見通しの狂い方がまたひどいじゃないですか。去年は一年間に見通しを四回も書き直しをして、ことしの予算も、組む前と、予算を組んでからまた改定しているでしょう。つまり、政府のお考え、お見通しというものと、現実の経済の実態というものとがこんなに開いちゃっているのです。そういうことは、私が申し上げるまでもなく、大蔵大臣は御承知だ。だから、この原因は、この物価懇談会の答申を正直に実行されなかったというところにある。そのためにすぐ出ちゃったでしょう。景気過熱中立予算なんて、ちっとも中立なんぞじゃありやしません。不景気のどん底だというあの認識のときにやったことと、いまや景気過熱で心配だ、どこまで突っ走るかわからぬというこの騒ぎのときと、そのとき以上の公債を出しているのですから、これは当然景気刺激であります。この答申を尊重しなかったということは間違っていた。どうしても今度の予算の組み方は、物価刺激景気刺激で、こういうことについてあなたはいま多少とも動揺があるのじゃないのですか。いかがですか。ひとつ正直にお聞きしたい。
  176. 水田三喜男

    水田国務大臣 経済見通しについて若干の狂いはあったと思います。私どもも、もう少しデフレギャップは底の深いもので、これが簡単に一年程度のフィスカルポリシーで克服できるというふうには考えていませんでしたが、現実には、四十年の不況はほとんど昨年で克服されたということは事実だと思います。したがって、予想以上の早いテンポの増勢だというふうに思っていますので、私どもは、この予算編成にはほんとうに慎重を期しました。何といっても予算のワクの伸び率が減らなければなりませんし、いま言ったような政府財政支出の増がこの経済成長に寄与する度合いも去年は三割と見ておったのをことしは二割程度にするというふうに、あらゆる面で圧縮をはかることをやってこういう姿になったのでございます。しかし、あとは要するに予算の運営の問題でございまして、経済の進み方によってこれに慎重に対処すればいいということで、当初予算編成としては私は相当締まった、まあこの程度の予算がいまの時点としてはやむを得ぬじゃないか、(「だらだら予算じゃないか、ちっとも締まっていない」と呼ぶ者あり)いや、私はそうは思いません。これは非常に抑制された予算だと私自身は思っております。
  177. 高田富之

    ○高田委員 もしほんとうにこれが抑制された予算だなんて思っておられたとすれば、これはその予算編成当時と、それからわずか三カ月でありますけれども、現に政府経済指標というものをだいぶ改定せざるを得なくなっているのですから、刻々に変わっている。いまになって、これはしまった、こういうことでこれから運用で直す、運用で何とかできるだけ、手直ししなければならぬ、こういうことなんでしょう。  そこでお伺いいたしたいのでありますが、大体いまの景気過熱であります。景気過熱ということにつきましてどの程度の評価をなすっておるのか。政府のほうでは、四十二年度の成長率につきまして実質八%だったのです、予算編成前は。編成後はこれを九%に改めた。八%台を九%台に改めたのであります。ところが、勧銀の調査によりますと、大体一〇%と見ておるようであります。さらにまた、民間設備投資動向でありますが、政府予算当初におきましては一二%と見たわけであります。ところが、最近これを一四・八%に御訂正になっておるのであります。これに対しまして勧銀のほうでは一七・四%と見ておるようであります。それから日本経済新聞の先般の調査によりますと、民間設備投資につきましては二六・二%、それから開銀の調査を見ますと二七・一%でございます。いずれにしても、政府見方が一番小さいのでありまして、現実は政府考えより先にどんどんどんどん進んでいっておる。この状況に対しまして、これで一体いいのか。いいという意見も一部にはあるわけでございます。けっこうなんだ、もっとやれ。——もっとも大蔵大臣は、この間大蔵委員会で、まだ設備投資をじゃんじゃんやってよろしい、鉄鋼なんか二割くらい設備が余っていなくちゃいけないのだが、まだ足らないのだという御説のようでございます。  そこで、いまの状況は、これはまだ設備投資を大いにあおってよろしい段階なのか、心配しなければならない行き過ぎの段階なのかということにつきまして、総理、いかがでございましょう。まず最初に総理からちょっとお聞きしましょう。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 特に私を名指しでお尋ねでございますが、私は、先ほど大蔵大臣がお答えいたしましたように、物価懇談会の勧告、これが大体守られているかどうか、先ほどの答弁でこれははっきりしたと思いますが、まず一番大事なことは、公債発行額が幾らというよりも、予算規模が、経済成長に大体匹敵するようにしろというのが物価懇談会の勧告であったと思います。それを、先ほども大蔵大臣が申しておりますように、成長率の見通しを下回った予算を組んでおる。したがってこれは、物懇のちゃんと指示したとおりのものであります。そうして、この公債発行そのものが、これが非常に刺激的なものかというと、私は刺激的なものではないと思っておる。昨年よりなるほど金額はふえております。ふえておりますが、これは市中消化されておるという観点から見ますると、経済規模が非常に拡大しておりますから、ある程度公債依存度というものは、予算全体の公債依存度が一体どうかというと、昨年よりもことしのほうが小さくなっておる。これはもう物価懇談会の勧告している、指示している、その方向でございます。これは、何と言われようと、まことに忠実な取り扱い方をしている。  また私は、この予算編成に際しましてきめましたのは、この選挙の前、全規模を五兆円以内におさめるということを申しました。したがって、そのとおりを実は編成をいたしたのであります。この五兆円以内の編成をいたしましたそのときから見ましても、これはよほど圧縮した規模予算だ、こういう考え方でスタートしておりましたが、その後さらに、御指摘のように経済はどんどん成長しておる、そういう際でありますから、経済成長に対応する規模としては、これは見方によってやや圧縮し過ぎた、こういうような考え方も実はあるのじゃないだろうかと思います。しかし私は圧縮し過ぎたとは思いません。これこそ健全財政を貫いておる、かように実は思っておるのであります。  問題は、いまいろいろ御議論が出ておりますが、これから物価にどういう影響があるか、あるいは設備投資にどういうような影響があるか、これを十分考えていきたいと思いますが、けさほどの横路君のお尋ねにもお答えいたしましたように、もう予算案を御審議をいただいておる段階でありますし、また私は、今日の経済に対応するのは、やはり金融政策、そのほうが主体になるのじゃないかと実は考えております。財政政策としては、民間金融を圧迫しないような、そこらに十分調和がとられて、そうして財政役割り、そのほうよりも、むしろ金融によるべき筋の段階に来ている、かように実は考えておりますので、これから十分成り行き等を見まして、そうして弾力的な運営をすることによって、ただいまのような期待に沿う効果をあげたい、かように私は考えております。
  179. 高田富之

    ○高田委員 いまの御答弁の中に、何か経済成長率よりも低い予算の伸びだったというような御答弁があったようですが、大蔵大臣もそんな御答弁をなさったのでしたか、どうでした。
  180. 水田三喜男

    水田国務大臣 国民経済計算上の政府財貨サービス購入の政府支出、財政支出、こういうことでございます。中央、地方を全部入れた……。
  181. 高田富之

    ○高田委員 いまの景気過熱の問題についての評価につきまして、菅町通産大臣おいでですね。——経済過熱についてあなたのお考えを聞いているのです。通産大臣、お答えください。
  182. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 現在の経済状態についてのお尋ねらしいのでありますが、過熱というところまでいまいっておりません。が、しかし、何もせずにおいて、このままで放任しておけば、過熱になり得る傾向はあると思うのです。現在では過熱という状態まではいっておらぬ、こう考えております。
  183. 高田富之

    ○高田委員 大蔵大臣、そうすると、先般の、あとまだ設備投資はどんどんやらなければならぬという御説のようでございますが、それはいかがでございますか、そのとおりですか。
  184. 水田三喜男

    水田国務大臣 この間は、舌足らずといいますか、あとから言おうと思って言わなかったのですが、私の言おうとしたことは、いままで私どもがいろいろ財政運営をやったときに、過熱というのはいつも日本は鉄鋼から来ている、鉄鋼に若干の生産余力があるようでなかったら困るのだ、だから昭和四十年とかなんとか、ああいう不況のときに、こういうものがもう少し投資されておればよかったのだ、ここへ来てこういうものが重なっていくことはよくないのだということを言っているので、したがって設備投資も、必要な設備投資を押えるということではいかぬ、必要な設備投資は、これは私どもはやらなければならぬ。こういうことから見ますと、いま先行指標である機械受注の面から見ましても、アンケート調査のいろいろなものを見ましても、民間需要が設備投資を中心として増勢になっているということだけは現在はっきりいたしますので、したがって、私どもは今年度の民間設備投資はどのくらいという予定を持っていますが、その予定の中へ必要な設備投資が入ってくれることがいいので、そうでない設備投資はやはり民間によって自主的にここらは節度を持ってもらいたいということを私どもはいろいろ希望しているのです。そういうことによりますと、いま民間設備投資意欲は確かにあるとしましても、これから出てくる問題でございまして、いまの瞬間まだ過熱しているというわけではございません。これをうまく調整するために今後のわれわれのやり方が非常に大事だ、こういうふうに自覚しているところでございます。
  185. 高田富之

    ○高田委員 全国銀行協会の調査によりますと、資金不足が一兆一千億円ですか、こういうことがすでに明らかになっております。そうすると、政府の需要と民間の需要とがかち合うことも明白でございます。これに対しまして、いま総理は、こういうときは金融のほうでやればいいのだというようなお話でございますが、この事態にどういうふうに運用面で対処しようとしておるのでありますか、大蔵大臣から具体的にひとつ御説明を願いたいと思う。
  186. 水田三喜男

    水田国務大臣 民間資金需要政府需要とが競合するというようなときには、原則としては政府需要のほうが引っ込む、そういう形の調整が必要だ、私はこういうふうに思っています。
  187. 高田富之

    ○高田委員 そうしますと、具体的にはもうそういう事態は想定されておるわけでございます。したがって、遠からざる将来におきまして、ごく近いうちに何か手を打たなければならぬ。運用面で手を打つとあなたはさっきからおっしゃっておる。組んじゃった予算をいますぐ組み直すというわけにもいかぬ。運用面でやる。そうなりますと、公共事業費の実施の繰り延べをやる。あるいは公債発行を減らしていく。民間が需要旺盛だから政府のほうが引っ込むのだ、こういうことになりますと、そういう策を具体的にもう大体構想されておるわけでございますね。
  188. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういう競合の状態が出てきたようなときにはということでございますが、まだそういうところへいっておりませんので、その必要は私はいまのところはないと思っております。
  189. 高田富之

    ○高田委員 現在の瞬間ではないとしましても、それは当然見通されておるわけでございますから。あなたも運用面で調整するということは言っておるのですからね。  そこで、私どもが心配しておりますのは、そうすると、公共事業費の繰り延べをやるか、公債発行を減らす。もし金融側にこれをやってもらうということになれば、公債の買いオペをやってもらう、こうならざるを得ないわけであります。あるいは両方やるかもしれません。それを聞いているのであります。昨年は当委員会におきまして、中澤さん、加藤さんからこの買いオペの問題について、相当インフレの心配があるという見地から、きょうは日銀総裁はお見えでございませんが、質問がありまして、この予算の一年間は絶対やらぬということを確約されておるのです。もう一年たちましたので、日銀の内規からいっても使えるわけでございますから、すでに使い始めておるということであります。そこで、これからこの公債の本格的な買いオペレーションというものが相当程度行なわれざるを得ないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  190. 水田三喜男

    水田国務大臣 経済成長に必要な、いわゆる成長通貨の供給ということは日銀の一つの任務でございますが、これを調達する方法として日銀が買いオペをするということは、これは本筋の金融操作でございまして、これをやることが悪いというようなことは絶対にないと思います。必要に応じて日銀は買いオペをする、この対象に国債をすることは当然でございますので、これを対象とした買いオペは随時やるということが、日銀としての弾力的な運営といいますか、これはもう常時行なわれてけっこうだと私は思っております。
  191. 高田富之

    ○高田委員 ちょっとはっきりさしておきたいのですが、そうしますと、先ほどの公債の繰り延べというようなことは、絶対にそういう方法はとらないのだとか、公債発行を減らすなんということも絶対にしないのだとか、することもあるとか、近くやろうと思っているとか、あるいはいまの買いオペについてはわかりました。そういうふうな意味でやるということなんですね。金融操作というような意味でやるのだ、こういうことですが、前のほうの御答弁をもう一ぺんはっきりさせてください。
  192. 水田三喜男

    水田国務大臣 現に四十一年度におきましても、予定された国債市中消化分の四百億のうちから五十億は市中消化をいたしましたが、三百五十億は国債発行をやめるというような措置も適宜すでに四十一年度においても私どもはとってまいりました。この態度は四十二年度においても同じでございますので、情勢によっては公債をそういう形で削減することもむろんあり得ると思っております。
  193. 高田富之

    ○高田委員 日銀の金融操作で国債を買いオペレーションすることも、これは買ったり売ったりするんだからというようなことなんでしょう。けれども、これはちょっと性質が違うと思うのであります。この公債につきましては、こんなぐあいに毎年公債発行されていくということになりますと、公債は漸次非常に累積されてまいることは必至だと思います。あなたの計算では、大体どのくらいに見通されておりますか。いまの五カ年計画の最終年次あたりまでに、公債残高はどのくらいになるのでしょうか。私はおそらく相当大きくなると思う。ある学者の計算では、四兆ですか五兆ですかには必ずなるだろうという見通しもあるようでございますが、そういうふうなことになるわけでございますね。大蔵大臣いかがですか。
  194. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは当然ある程度累積されますが、額についてはまだどのくらいというめどを持っておりません。
  195. 高田富之

    ○高田委員 そうすると、当然そんなぐあいに進んでいく。これに対する減債の方法——七年間たちましても、今度のお考えの百分の一・六ですか、これでいきますと、六十数年かかるわけですね。六十数年かかって借金を返すというような式でございますので、これはどんどん累積していかざるを得ない。こういうことで、全くお先まっ暗、おそらくこれは七年後には借りかえでしょう。借金返すのに借金で返す、自転車操業式な公債発行をせざるを得ない、こういうことになると思うのでありますが、いまの御答弁でそれを肯定されたと思うのです。そういうふうな中において、日銀が買いオペ、買いオペといってこれを買っては資金を供給していくということになれば、実質的には日銀引き受けによる赤字公債発行と実際問題としてどう違うのですか。それを御説明願いたい。
  196. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府公債発行するときに、日銀引き受けで発行するということと市中消化ということは、これはもう全然性質が違うということは当然でございますが、そのときに日本銀行が同時に公債を対象とした買いオペをするということがあっても、それは日銀引き受けによる公債政府発行したということとはまた違うので、いま言いましたように、日銀がオペをすること——買うだけじゃございませんで売りオペもやりますが、これをやることは、成長通貨の供給の一つのむしろ本筋なしかたであって、これと政府が日銀引き受けの公債発行するということは、全然違う問題だと思っています。
  197. 高田富之

    ○高田委員 あなたはそういうふうにおっしゃいますが、実際問題として政府保証債が発行され、これの買い切りオペが始まりまして以来、通貨の膨張率は相当急速度にふえておる。これで、は国債の買いオペが始まってまいります。今後通貨の膨張率は加速度的にふえるのではないかということをわれわれは心配せざるを得ないのでありまして、たとえば、いままでの例を見ますと、昭和三十六年あたりからの数字を見ますと、日銀券が、これは三十年を一〇〇とした数字でございますが、三十五年で二三〇、三十七年で二七一、三十八年で三六九、それから三十九年で四一七、四十年で四九二、四十一年で五七四、こういうふうに急カーブで日銀券及び預金通貨の流通量が激増いたしております。これに対しまして、国民総生産高の、これは名目金額でなく、実質生産量、実質額でいきます。そうしますと、対比する数字は非常に低いわけでございます。同じ年次で申しましても、三十六年が一八三、三十七年が一九七、三十八年が二一〇、三十九年が二四二、四十年が二五六、四十一年が二七八、四十一年におきましては、国民総生産の実質額、商品の供給量が二七八に対しまして、日銀券及び預金通貨の流通量が五七四、この開きがますます加速度的に大きくなってくる。これが物価上昇させない理由は私はないと思うのです。これが成長通貨だとかなんとかいって、普通の金融操作なんだというようなことをいってのんびりかまえておりますと、これはますます通貨と物との乖離がはなはだしくなって、本格的なインフレにおちいる危険性がある。だから、物価懇談会においてはこの点を戒めている、私はそう思うのであります。だから、公債なんていうものはできるだけ早くこれをやめていかなければならぬ。本年度あたりだって、自然増収なんかもっと相当見積もれるじゃないか。自然増収を相当これは見積もれる。そうすれば、この公債を減らしていくというふうなことに真剣に取り組まなければならない。私は、物価問題はもっと真剣であってほしいと思うのです。この場所における言いのがれじゃなしに、真剣にお考え願いたい。こういう状態というものは憂うべき状態ですよ。宮澤企画庁長官、どうお考えになりますか、あなたのお考えをお聞かせ願いたい。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの現時点におけるものの考え方としては、先ほど総理並びに大蔵大臣の答弁されたとおりだと思います。また、物価問題懇談会の勧告の趣旨に大筋において沿っておるということも、私はそのとおりだと思います。それからいまの段階を離れまして、一般的に経済理論として申しますならば、国内に資源がなお余裕があるときに、成長通貨を出して成長してくるという政策そのものは、私は一向に間違いでないというふうに考えます。
  199. 高田富之

    ○高田委員 物価が上がっております根本の、原因、こういうふうにどんどん上がっております一番大きな原因というものは何かということを、端的に経済企画庁長官にお伺いしたい。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 端的に申し上げます。十年近い経済成長に対して、国内の経済のあらゆる分野がこれに十分に対応ができていないということ、中小企業も、サービスも、大企業も、賃金も、消費構造も、すべてのものが十分にまだ対応できていない、こういうことであります。
  201. 高田富之

    ○高田委員 物価の問題につきまして、これはさっきの総理のお答えとあまり違わないようなお答えなんですが、生産構造の格差というようなことをおっしゃるのですけれども、日本における大企業と中小企業、農業の格差というものは、いまに始まったものじゃないですよ。明治初年、日本資本主義発生のときからの特徴であって、これがあればこそ日本の大資本が発展してきたといってもいいのです、逆にいえば。いままで高度成長ができたというのは何のおかげかといえば、格差のおかげなんです。中小企業あり、農業あり、それから低賃金労働者があって、格差の上に世界第一の一番飛び離れた成長率を示したのじゃないですか。格差のおかげで成長を示したのです。だから、物価も上がったといっても、この格差を直すということが、あなた方は口ではいつもそれをせいにして、これはそのせいだと言っていたら、これは直りっこないということなんです。直すには、財政の構造から、経済運営の方法から社会構造そのものを変えるだけの決意と方法がなければできないのです。いいですか。だから、たとえば中小企業も同じなんですが、農業の生産性が非常に低い。このままで置いたのじゃたいへんだ、これは物価問題に響くというので、池田総理はかつて名演説を本会議でなさった。これからは革命的施薬を施して農村の近代化をはかる、自民党は初めて革命をやるということを言ったのです。革命的施策をやる、ことばとしてはたいへん勇ましいのですが、何もおやりにならないうちに残念ながらおなくなりになってしまった。佐藤さん、ほんとうにもしやろうと思えば、革命的施策でなければできないです。農業構造改善なんていったって、農基法ができてもう五年たつのです。まる五年。構造改善事業十カ年計画、もう五年たってしまったのですよ。どこにどう構造が変わったのです。ちっとも変わっていない。あのときバラ色の夢を見ました、三町歩で三人で、そしてもうかってもうかってしようがないような農家が一万戸もできて、日本農業の主体はそういう近代的な、愉快な、楽しい自立経営の構造に変わるなんていっても、ちっとも変わっていません。八割五分が兼業農家になってしまった。百姓では食えなくなってしまった。こういうふうに格差というものを利用して高度成長は進んでまいりました。格差はますます開く一方であります。これが原因だ、これが原因だと言っておるから、いつまでたっても物価政策が出てこない。私は、物価政策というものは、いま申しましたように、通貨の膨張率というものを相当真剣に考えて、物のふえ方と通貨のふえ方をにらみながら、通貨のふえ方がそれ以上に加速度的に伸びるようなことのないようにしなければならぬと思う。それには、公債ですよ。公債の買い切りオペなんということをやたらにやる、公債をどんどん累積させる、こういう放漫なやり方をやって、経済をやたらに刺激する。これで物価の上がらぬ道理はございません。必ずあなたのお見通し以上に物価は上がります。必ず上がります。  そこでひとつお伺いしたいのですが、本会議におきまして、物価の上がる根本原因は賃金が上がるからだということがあり、何かきのうも根本さんの御質問にあったようでございますが、それに対しまして、総理はこれを肯定されるという立場から何かお考えを述べておる。賃金が上がるのがいけない、賃金が物価を上げておる元凶だというようなことを肯定されたかのごとき御答弁、事は重大でございますから、ひとつその点についてもう少しはっきりと御答弁を願っておきたいと思うのです。
  202. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事はまことに重大であります。よく世間で言うように、賃金と物価の悪循環、こういうことば、これは私は使わないということを申しております。しかし、ただいま各産業別にそれぞれの生産性も違っておるのだ、そこに格差があるのだということは是認なさいました。しかるに、賃金の平準化が行なわれ、所得の平準化が行なわれておる、こういうところに一つの問題があるわけであります。生産性の上がらないそういう産業において賃金の平準化をやる、そういう場合において、生産性を引き上げることができなかったら、そのデフィシット、マイナスは何で一体補っていくのですか。これはやはり物価値上げに転化すること、当然だろうと思います。私は、そこでいわゆる賃金の平準化あるいは所得の平準化、これは望ましいことには違いはありませんが、非常に急激なテンポでこのことを実現しようとすると、そこに無理があるのだということを申し上げたいのであります。私はここらを十分考えていただきたいと思う。それからもう一つは、非常に生産性の上がっておるそういう産業部門において——これは個々の産業でございますが、そういうところで、ただ利潤をふやすとか、あるいは賃金をふやす、こういうことだけをやらないで、やはり最終受益者である消費者に価格の面でこれを還元していく、生産性の向上の利益を還元していく、こういう努力がほしい、かように私は思っておるのであります。いまの個々の産業において、ただいまのように労使双方でやはり絶えず最終の受益者のことを考えるということ、もう一つは、全体としてただ賃金の平準化、所得の平準化、これのみに、非常に短期間の間にその効果をあげようとする、この無理をひとつ是正していくことが必要だ、かように私は思います。
  203. 高田富之

    ○高田委員 中小企業のほうへ大企業の労賃が上がったのがいって、そうして賃金の平準化が起こってくる。それが吸収されないから物品が上がる、こういうわけでございます。もちろん中小企業におきましても、若干の賃金の上がり方は、労働力が不足でございますからあります。特に初任給の場合にあるわけでございます。それにしましても、大企業との格差は依然として大きいわけであります。全体の中高年齢層の賃金を比較いたしますと、格差は相当まだ大きいわけであります。十対六くらいでございます。でありまして、中小企業の場合はかってに値を上げるということはできないわけでございます。賃金が上がったからといって、すぐ売り値にこれをぶっかけてごらんなさい。すぐ売れなくなってつぶれてしまう、こういうことになる。ですから、なかなか上げられません。そういうことで中小企業は非常に苦しいわけでありますけれども、賃金が上がって、そうして製品の価格をそのままつり上げているというのは、必ずしも当たらないのであります。これができるのは大企業だけなんです。独占的な大企業で、一産業を二つか三つの会社が牛耳っているという企業が、日本における大企業では二、三十あるわけであります。ここではお互いにしめし合わしたりして、はっきり独禁法に違反しないような方法でやっても——電話一本かけたって相談できますからね。そうすると、賃金が上がればそれだけのものを上乗せすることは、大資本には可能性はございます。大資本にはこれができるんです。中小企業や農業では、そんなことはできません。そんなことをしたら、買い手がなくなってしまいますよ。農産物が上がっているのは、ある程度需給関係ですから。そこで、賃金が上がるから——これは西村政調会長の本会議質問にあったのです。だから、私は特に取り上げるのですが、賃金がまるで物価を上げている原動力のようなことを言うのは、とんでもない大間違い、まさに逆でありまして、わが国の大企業の賃金なんというものは、生産性の伸びよりもはるかに低いのでございます。全産業で言うからいけないのですよ、大企業を調べなければ……。大企業でいきますと、こういうことになるわけでございます。たとえば、具体的に例をあげましょう。化学工業では、三十八年から四十年下期で従業員一人当たり売り上げ高が一・一五倍、生産高が一・二〇倍。これに対しまして、給与手当が一・一八倍にとどまっておる。労働配分率は三十八年下期の三六・七三から四十年下期に三六・一五と下がっている。石油精製業においては、三十八年から四十年下期で従業員一人当たりの売り上げ高は一・三二倍、それから生産高が一・三二倍、付加価値で一・五一倍。一方、給料手当が、伸びは一・一九倍にすぎない。労働配分率は二五・八八から二〇・三七に低下しておる、こういうわけであります。しかも、いま申しました日本のこれらの大企業は、世界的な一流の産業であります。国際場裏に出して恥ずかしくない、二番、三番、一番というようなところを争うまでに成長しております大産業であります。これを国際的に比較してみますと、鋼材トン当たり価格に占める労務費の割合は、日本の場合は二五%台を上下しておる。イギリス・アメリカ、西ドイツに比してその割合がはるかに低い、こういうことなんでありまして、まだまだ日本におきましては、低賃金というものを土台にして高度成長が行なわれておるのであります。世界まれに見る高度成長は低賃金が可能にしているということは、事実が証明しているのであります。だから、賃金を押えれば物価が下がるというのはとんでもないわけでありまして、問題はこれらの大企業の価格の中身を調べなければいけません。うんともうけて、そしてじゃんじゃんやりたいほうだいのことをしておる。これがつかめないのだか、つかめておって知らない顔をしておるのか知りませんが、おそらく、去年あたりの予算を組む前に、不景気だ、不景気だと、不景気の大騒ぎをやったのですが、実際にやってみたら、不景気でも何でもなかったということが証明されておるようなものなんです。私は、独占価格の内容こそ一番問題だと思います。主要産業では大体二、三社でもって五割以上の生産を支配しておるわけでありますから、こういうところが独占価格を形成しておれば、物価水準というものは上がります。いままで卸売り物価が横ばいで、消費者物価だけが上がっておるから問題ない、問題ないとおっしゃっておったのですが、今度はいよいよ本格的に卸売り物価までが一緒に上がり始めた。本来の正常な——正常といってはおかしいのですが、本来の物価値上げの様相を呈してまいっております。こういうふうに、いままで下げるべくして下げなかった、下げるべきものを下げずにどんどん高くやってしまった。今度はいよいよつり上げに上がってきてしまった、こういう段階に入っておる。これらの点を十分お考えにならないで、そうして賃金が主役のようなことをおっしゃる。いま私が言いましたのは、要するに紙幣の流通量、貨幣の流通量、銀行券流通量、それからいまの独占価格、これに対して真剣に取り組まなければ、物価問題について真剣に取り組んでいるとはいえない、こう私は言いたい。どうですか、総理
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だんだん話が近づいたようです。今の価格形成に非常な、独占価格とは申しませんが、管理価格というものができておる、こういう事実もございます。また同時に、非常に通貨が膨張して、その通貨の面からインフレ的傾向を来たさないようにという御注意、これまた私も賛成でございます。同時にまた、賃金自身物価関係のあることはお認めのようで、賃金が主役をなすのだということには強く反対しておられる。私も、主役をなすとは一ぺんも言ったことはございません。やはり物価と賃金が関係のあることは、これはすべての者が知っておることであります。これが主役をなすように言えば、それは御批判もあろうかと思います。また、ただいまの問題から見まして、いまの金融政策から見て、非常に過賞が膨張しておるという状態であるかどうか。これこそ経済状態に相応した通貨であることが望ましいのでありますし、また、そのときどきによりまして、買ったり、売ったりするオペレーションが行なわれること、これまたそのとおりであります。これを一方的だけに見て、いつもオペレーションが通貨の膨張だけをやっておるような御批判は、当たらないと思います。また、管理価格等については、公取等の機関なり、またそれぞれの行政官庁も目を光らせておりますから、十分注意するところであります。私が最後に、労使双方において生産性を上げたら、その利益を国民に返すのだ、絶えずそれを念頭に置いてくださいということを申しましたが、これが一番大事なことです。先ほどいろいろ価格についてパーセンテージをとって、賃金は非常に安いのだというような言い方をされておりますけれども、私は、賃金は安いという御主張には必ずしも賛成をいたしません。上げ率は小さくても、これは中小企業あたりではとても引き受けられないような賃金であること、これが大企業の実態だと思います。だから、上げ率ではなくて、賃金を幾らとっておるか、このことをやはり考えていただきたいのです。中小企業は、労働力不足だ、賃金を十分払わなければどうしても労働力が確保できない、だからそれをやれば、そしてもしも価格を引き上げれば、だれも買い手がなくなる、こういうことを御指摘でございました。そういうところの中小企業の構造改善ができておらないから、今日非常な困難な状態にあるのではございませんか。私はそういうことを考えますと、すべての産業がやはり調和がとれて、そして平均して成長していく、そういうことを望まなければならない。だから、そのために、一つの例も、パーセンテージだけで御批判なさらないで、賃金は幾ら取っておる、価格関係で幾らの賃金を取っておる、中小企業では幾らだ、こういうことで金額の絶対量を比較してみないと実情にはぴったり合わない、私はかように思います。
  205. 高田富之

    ○高田委員 幾らでも資料はたくさん持っておるのですけれども、一々これを論証しておりますと、時間がかかります。しかし、間違いなく、さっき申し上げましたように、中小企業と大企業の賃金格差はあるわけでございます。それから中小企業が吸収し切れないという部面もあるわけです。私は全面的にそれは否定しない。ただ、大企業のように、賃金が上がったからその値段を売り値にぶっかけるということは、中小企業はできない。そんなことをすれば売れないから、つぶれてしまう。そういうことで、大企業の管理価格のほうが元凶なんだということを強調しておる。  そこで、公正取引委員長にお伺いしたいのでありますが、これは去年も私はこの席で申し上げたのですけれども、かつて公正取引委員会は、管理価格とおぼしきもの、つまりある種の大企業同士の話し合いによって価格を下げない、当然生産性が何倍にも上がっているのですから、何分の一か下がってよさそうな原材料価格、重要物資というものの値段が下がらぬというので、これを調査しようというのでたくさんの品物をおあげになりました。何百種類かあげたのです。そのうち手をつけたのは、ブリキほか十ぐらいなんです。そのうちに不景気になったら今度不景気のほうの、不況カルテルのほうに追い回されて仕事ができなくなっちゃった。大事な仕事ができなくなっちゃった。これはたいへんだ。どうかひとつ公正取引委員会の機構を拡充してくださいということを強くお願いした。さっきもありましたが、ちょっぴり拡充されたようですけれども、とてもとてもあんなものでいまのこの仕事が——とにかく管理価格とおぼしいと目星をつけたものだけで相当数あるはずなんです。現在何百種類のものを手がけようとしておるのか、実際にたとえば具体的に何と何と何をいま手がけておるのか、そういう点につきまして、公正取引委員長お話を承りたい。簡潔に要領よくお願いいたします。
  206. 北島武雄

    ○北島政府委員 お答え申し上げます。  管理価格の調査につきましては、昭和四十年度におきましては、残念ながら不況カルテル等の事務に追われておりましてできませんでしたが、四十一年度におきまして五名の増員を得まして、管理価格の調査に当たらしております。  やり方といたしましては、日銀の卸売り物価指数を構成している七百七十品目の中から、過去六年間におきまして変動の幅の比較的少ないもの、それから回数の少ないものを選びまして、それから特にまた場合によりますと上昇一方のものもございます。そういうものも加えてみますと三百三十九品目あります。もちろんこれにはいろいろな品目が入っておりますので、これをもって直ちに管理価格と申すことはできないのでありますが、それからいろいろな分子を捨象いたしまして、現在とりあえず合成洗剤とバターにつきまして、昨年の秋から管理価格の調査として実行いたしております。これが終わりますれば、次から次へと管理価格の調査を徹底いたしてまいりたいと思っておるわけであります。  昭和四十二年度におきましては、必ずしも十分ではございませんけれども、昨年度程度の増員も得られましたので、これを基本といたしまして、独禁政策運用をしっかりやってまいりたい、こう考えておるわけであります。
  207. 高田富之

    ○高田委員 ただいま係争中のもので家庭電器製品の問題がございます。これは私は非常に注目しておるのです。テレビの価格の問題なのであります。これが争いになりまして、そうして異議の申し立てがありましたために、正式に裁判というのじゃないのでしょうが、審判が開かれておるということでございます。家庭電気器具業界に関する件、東芝、日立、松下らの大手家庭電気器具製造業者が、カラーテレビ受像機の十九型の小売価格を十九万円か、安くも十八万九千円程度とすること、及び輸出最低価格をFOB百八十ドルとする。これは日本円にしますと六万四千八百円、つまり内地に売るのは、国民には十九万円で売ろうじゃないか、輸出のほうは六万四千円でやろうじゃないか、こういう約束をしたのです。そこで、これを公正取引委員会が怪しいとにらんで勧告したところが、異議ありというので争っているというのです、現在。この争いの内容を、一体こういう事実を認めないのですか、右事実を認めながらなおかつこれは違反じゃないと言っておるのですか、どっちなんですか、公正取引委員長
  208. 北島武雄

    ○北島政府委員 目下審判の段階になりますと、その事件の内容についてあまり詳細に申し上げることはできないのでございますが、当方といたしましては価格協定の事実ありと認定いたしまして勧告をし、これを応諾しませんので、審判開始を決定いたして目下審判中でございますが、ただいまの争点は、初めは価格協定、申し合わせも事実ないような御主張であったようでございますが、最近は多少話もその辺微妙になっております。もっぱら法律問題につきましていま論争いたしておるのでございますが、これは公正取引委員会におきまして、最後的に審判を下すつもりであります。
  209. 高田富之

    ○高田委員 これらの東芝だの日立だの松下なんというものは、もうほとんど家庭電気器具の製造においては、完全に独占形態にあるわけなのです。この三社が正式にどういう話し合い——文書でもって交換しなくたって、昼めしを一緒に食ったってそんなことはすぐ相談できるのですから、だからそういう事実も、のがれることはおそらく可能なんだろうと思う。そんなことはない、覚えはないと言えると思うのですよ、実際は。しかし、それだって徹底的に摘発するだけのものでなければ、法の不備ですよ、もしそうなら……。ところが驚いたことには、事実よりも法律を争っているというのです。事実は認めても法律に抵触しないということ、その内容はいまもう雑談などでも出ておるので御存じだと思うのでありますが、非常に重大です。これからまごまごしますと、外資の自由化、資本自由化に伴いまして、独禁法をどうするかという問題、大問題なんですね。ある方面ではもっと強めろという意見、ある方面ではこの場合取っ払ってしまえ、うんと骨抜きにしてしまえ、そうして合同でも持ち株会社でも何でもやれるようにしなければいかぬというような意見がある。いままででも独禁法の改正は相次いでおる、運用面でもだんだんこれは骨抜きにされている、こういう状態にあるのですが、今度の家庭電気器具における異議の申し立て、三社の理論立てがここにあるんですよ。独禁法の第二条の定義でございます。私的独占または不当な取引ということについての定義の争いをやっているんですね。この定義でもってこういうことをいっている。「この法律において不当な取引制限とは、事業者が、契約、協定その他の何らの名義を以てするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」と、こうある。この中で一番争点になっているのが、「公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」、こういうことにあるらしいのであります。公共の利益とは何ぞや、これはいつでも問題になるのですが、抽象的でありますものですから、これは本来の独禁法の精神からいえば、消費者を守るんだ、それから生産者が不当なことをやって消費者の利益を害する、これを取り締まるというのが独禁法の精神であると私どもは確信しておるのでありますが、驚いたことに、反対の弁論に立っておるこの三社の代表の方々は、公共の利益とは国民経済全体の利益をいうのである、したがって、生産者の利益もその中に入るんだ、わが国の産業の高度成長のために、わが国の産業の保護のために、われわれはこの公共の利益のためにやっているんだから、ほかのことが多少ひっかかっても全然この法律に抵触しないという議論をやっている。つまり、この公共の利益というものを広く解したり、曲げて解釈したりすることによって、独禁法というものは完全に骨抜きになってしまう。事は重大であります。これにつきまして、法務大臣、公共の利益は消費者の利益を守るのでありますか、生産者の利益まで守るのでありますか。
  210. 田中伊三次

    田中国務大臣 私的独占禁止違反に関する問題については、妙な言い方でありますが、法律のたてまえをそのまま申し上げますと、公正取引委員会がいけないと認めたときにはこれを告発する、その告発によって捜査の手続を進めなければならないという立場であります。したがって、告発のなき事件について、法務大臣がこうだああだということを表明することは適当でないと考えます。
  211. 高田富之

    ○高田委員 法律の解釈の総本山でありますあなたが、きちっとした解釈をされないから、そういうふうにでたらめな解釈が横行することになる。これは重大ですよ。  じゃ、反対側の立場に立っておる、そうではないんだということを主張しておられる公取委員長、あなたの解釈はいかがですか。
  212. 北島武雄

    ○北島政府委員 現在の審判事件になっていることについての問題としてでなくお聞き願いたいと思います。過去におきまして、公正取引委員会といたしましては、独禁法第一条の目的は、公正かつ自由な競争を促進するにありますので、これを阻害する行為は、すなわち公共の利益に反するものとして取り扱っておりますし、東京高等裁判所もそのように取り扱っております。それからまた、学説も通説はそのようでございます。
  213. 高田富之

    ○高田委員 きわめて明快でございますので、法務大臣もそういういままでの判例というのですか、解釈例、そういうものをよく御研究願いまして、ただいまのような正論を、強くバックアップしていただきたい。そうしなければ、公取は仕事ができませんよ。  それで、いま家庭電器のお話をしたのですが、そういうふうな例はたくさんございますので、一々あげているときりがないわけであります。この前もこの委員会で申し上げましたけれども、時計にいたしましても、内地で売っている価格が四、五千円、輸出の値段が千五百円くらい、テレビは、いま言いましたように実際に行なわれております。五万数千円のものが輸出は一万六千円でございます。しかも原価が大体七千円くらいだ、こういうのであります。こういうことをひとつお調べ願いたいのです。原価は幾らかということ。約束をしていてやった、どうのということも大事でありますが、一体その品物の原価は幾らなんだ、これを追及する役所はどうもないようでありますが、公取あたりでやるのだったら人員をもっとうんとふやして徹底的にやらなければだめだ。つまりもしこれがほんとうだとすれば、原価が七千円で、輸出が一万六千円、国内が五万数千円。電球にしましても、六十五円で売っているものが一個原価が十円くらいだろう、こういうことでございます。そのほか、自動車でありますとか、ウイスキーでございますとか、繊維品でありますとか、あるいは輸入品だって例のバノコンといって、バナナ、ノリ、コンニャクなんというものは、十銭のものが二十円ぐらいになってしまうのですからね。要するに物の原価というものを突きとめていただいて、これが上がってきているということについて、不当な利益をだれが得ているのだ。この不当な、ばかほど利益をもうけているところを摘発して価格を下げれば基礎物資——大企業はほとんど鉄鋼やセメントなどの基礎物資をつくっているのですから、これがずっと値下げに影響するのです。これをやらないで物価なんか下がりっこないのですからね。この点を私は特に強調いたしたいのであります。  それから、時間もだいぶ迫っておりますので、総理は前回の委員会では、何といっても値段の上がるのは魚と野菜が上がるものですからねというような御答弁をなさっておりまして、何でも物価が上がると魚と野菜が悪いみたいな話じゃないかというやじが飛んだのを覚えておりますが、事実消費者物価上昇しております中のいわゆる寄与率というのですか、一〇〇上がったとすると、その中の、物価を上げるのに、六〇%の役割りを果たしたのが生鮮食料品だったというようなわけですね。しかし、この比率からいいますと、何も日本だけが生鮮食料品の物価上昇の寄与率が高いわけではないようでございます。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアその他のあまり物価の上がらない、年二、三%程度しか上がらないところでも、上がったものの中身を調べますと、大体日本と同じようにほぼ生鮮食料品が半分以上、大体少ないところで四割くらい、多いところで六、七割というようなところで大差はないのです。そういうことがある。しかしいずれにしましても寄与率は大きいわけです。  そこで、もう時間がありませんから、野菜の問題とお米の問題を一緒に御質問しますが、農産物の価格の問題ですね。要するに農産物の価格につきましては、私は一番問題だと思いますのは、価格支持をするために、野菜でもいまほんのちょっぴりでございますが、試験的に始められて、ある程度今度は拡充されておるようです。米のごときは食管制度でやっておるわけです。農産物の場合は価格支持制度はむだなんだ。価格支持制度に金なんか使うのは、資本の効率化という点からいってあまりよくない。こいつのほうはやめて、その金で構造改善のほうに持っていって生産性を上げるのがほんとうじゃないかという議論がしばしば聞かれるわけでございます。いまでもそういうお考えを持っているのかどうか、まずそれをひとつ確かめておきたいと思います。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価対策、ことに農産物あるいは水産物等についての対策は、総合的にやらなければならないのだと思っております。したがいまして、一つだけでこれに対策を立てておるようなことはございません。
  215. 高田富之

    ○高田委員 特に私が申し上げたいのは、さっきも申しましたように、中小企業、農業についての格差は私ども認める。認めるどころじゃないのです。それが根本にあるから高度成長だと私は言っている。池田さんがおっしゃったように、革命的施策を施してこの低生産性部門を引き上げるということに私は大賛成なんです。それをやらないからいかぬ。今度の予算を見ても、中小企業関係予算は前年度対比、ふえたのは五十億ですか、一般会計では全部で三百四十八億、五兆円予算のうちのたった〇・六%しか占めないんですよ。去年と同じパーセント。農業のほうも、農林漁業の構造改善対策費というのが二百六十五億円、これが〇・五%、これも去年と同じです。こういうことを何年続けたって革命的施策なんということにはまずほど遠いのです。これはとんでもないことなんです。やはり私はこういう面における抜本的な構造改善対策というものをお考え願い、それをやらなければ、幾ら育っても物価対策のときの逃げ口上に使っているにすぎない、こういうふうに言わざるを得ない。  米の値上げは、ひとつ今度はやめてもらいたい。公共料金は、米に限りませんけれども、保険料にしても、あるいは来年あたり上げるといわれております電信電話料でありますとか、たばこでありますとか、そういう政府が自由に価格の決定できるものについては、ともかくここ二年間くらいはストップをしてもらいたい。その間に、いま私が申し上げましたような金融面、通貨面、独占価格、それから中小企業、農業に対する革命的施策、こういうものに取り組んでいただいて、漸次政府の操作し得る消費者物価の上げ幅が少なくて済むように、最後には上げなくても済むように持っていく。その猶予期間としてとめなければいかぬ。政府がまっ先に値上げしていたのでは、ほかのものがばっと上がるのはあたりまえだ、政府が値上げの先頭を切っているかっこうですから。どうかひとつ、米の値上げをはじめといたします一連の公共料金の値上げは、二年間ストップして、その間に本腰を入れた物価対策の諸政策、特に農林漁業の構造改善対策などについては、ひとつ頭の切りかえをしていただきたい。それこそ革命的施策をやる、こういう腹がまえで取り組んでいただく。独禁制度の問題も同様。そういうことを強く要望いたしたいのでありますが、総理の御回答をひとつ願っておきたいと思います。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまいろいろ御意見を伺いましたので、十分拝聴いたしたのであります。残念ながら御希望どおりに沿うわけにいかない、これが私のお答えでございます。ただそのうちに、やや高田君に理解していただきたいと思うのは、私どもは総合的施策をやっている、こういうことを申しておりますが、ただいま中小企業対策でもわずかなものだ、昨年に比べて、あるいは総予算からですか、非常にパーセンテージが低いのだという御指摘であります。しかし、この積極的な構造改善あるいは近代化、あるいは協業化等についての施策もいたしますが、同時に税制の面でやはり負担を軽くするとか、税制のくふうもしているし、また金融の面においても、資金量をふやしたり金利などもくふうしている。こういうこともいろいろ勘案して、いわゆる総合的施策を行ないまして、初めて効果があがるのであります。中小企業だけではございません。農業についてもそういうような非常にこまかな注意までいたしまして、総合的な施策をやっている、まだまだそれが効果をあげておらないというのであります。  そこで、最後にお話しになりますように、こういうことならいつまで待ったって何年かかるかわからないから、全部ひとつストップしろ、こういうお話でございます。しかし、その中に、聞き漏らしたのか、賃金をも含めてのストップを提案なすったとは聞かなかったのでありますが、こういうような経済の問題を、非常な方策で片づけるということも一つの方法でありましょう。しかし同時に、これを平穏裏に経済を安定成長の方向へ持っていき、物価を鎮静さすこと、これが実は今日のこの段階においては政府のやるべきことではないか、かように思っておるのであります。ただいまのようなお話、これも事態の推移によりましては必要なときがあるかもわかりません。私はなるべくそういう事態が来ないように、いわゆる非常措置をとらないで経済自身を成長さし、すべてを安定さしていく、それには総合的な対策で、そうしてこまかな注意をして、そうしてこれの目的を果たしていきたい、かように思って、各省を督励し、協力しておるような次第でございます。
  217. 高田富之

    ○高田委員 総理はそういうことをおっしゃるが、物価が上がっているから賃金を上げなければ、勤労者はそれこそ実質生活の切り下げであります。実際上の。そんなばかなことを、放言ではございましょうがお慎み願いたい。私が上げるなと言うのは公共料金を言っておるのです。政府が公共料金を引き上げるから、ほかの物価がどんどん上がるわけなんですよ。いままでやったじゃないですか、おととしですか、公共料金一年ストップ。このときは幾らかききめがあったんですよ。ですからこれを一年でなく、今度倍にして二年おやりなさい。二年公共料金のストップをやれば必ずそれだけでも値上げムードというものは相当鎮静するのですよ。そのチャンスをねらってほかの施策に本腰を入れて取り組めというのが私の提案なんです。変なところへすりかえて、切り返したつもりで、とんでもない間違いを放言されるということでは困ると思うのです。言い直しをしてくださいよ、取り消してください、賃金問題取り消し。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に誤解はいたしておりません。お話しになりました高田君のお説は高田君のお説としてよく理解しております。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いま総理の言われました意味は、生産者米価を所得補償方式で決定いたしますときに、その三分の二は実は労働報酬なんでございます。それを言われたんだと思います。
  220. 高田富之

    ○高田委員 つまりそれはいまさっきのお話なんでありまして、米というものは、いま生産が農業基本法で予定したときと全然逆でございまして、余ると思ったら足らなくなってしまった。そこでどうしても生産意欲というものをある程度高めつつ、構造改善をやらなければならぬ。つくり手がいなくなっちゃったら構造改善はないのですからね。そこで食管制度によって米の生産者の最低生活というものを保障していく。これじゃとても保障できない、みんな兼業になっているのですから。それにしてもある程度の労賃というものを保障する、これは生産者米価と消費者米価は別ですよ、全然話が。赤字赤字と言いますけれども、この問題を農業生産性を向上させるまでの間のつなぎの資金としてお考えになれば、これほど私は消費者のためにいい制度はないと思う。日本国民で米を食わない者はないのですからね。米を食べる国民全部が、米の価格が安定しているということは、これは大きなことです。そのために一千億や二千億の金が役に立っているとすれば、これほど効率的な財政資金の使い方は私はないと思うのです。ですから、そういう点をお考えになって、ストップをやったらどうか、そして農業生産の能率をあげるためのほうにその期間内でも全力をあげてごらんなさい、力を入れてごらんなさいということを実は申し上げたわけであります。  そこで、最後にもう一問だけ申し上げたいと思うのです。これは特にさっき申しましたように、物価の上がっている中で、寄与率の一番高い生鮮食料品ですね。野菜につきましての値段の動向でございますが、農林大臣、野菜類の値段の、これはしょっちゅう動いておるわけでありますけれども、過去三年ないし五年の、最近年次におきまする高い年と安い年という波があると思うのでありますが、それをちょっと御説明願いたい。そこだけでよろしいですよ、簡単に。
  221. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 最近一番高いのは、昨年の暮れであります。
  222. 高田富之

    ○高田委員 じゃ、政府委員から、そこだけでよろしいですから。
  223. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 野菜の価格の動向でございますが、これは、たとえば東京都の消費者物価指数につきましては、昭和三十五年に比べますと、昭和四十年は約倍ということで、昭和三十五年を一〇〇といたしますと、一九八・九ぐらいでございます。ただ、そのうちで昭和三十九年の価格はわりに低いのでございます。もう一度別の観点で、現在消費者物価等は昭和四十年を一〇〇といたしておりますので、逆に申しますと、昭和三十五年は五〇・三、三十六年は六一・四、三十七年は七二・〇、三十八年は七九・八、三十九年は七五・七、四十年が一〇〇で、四十一年が、暮れから先ほど農林大臣が申し上げましたように高くなりましたが、四十一年平均は九〇・一ということに相なっております。
  224. 高田富之

    ○高田委員 こういうわけでありまして、全体としましては相当上がっておるということは言えます。ところが、その中でもでこぼこがきわめて目立つわけであります。上がり方がどうというんじゃないですよ。上がったり下がったりしているのです。これは月別に見ますともっとはっきりするわけです。山と谷の開きは年々、月々、毎日、これは午前と午後でまた違うというようなわけで、これくらいつかみにくいものは実はないのであります。総じて言えますことは、やはり需要に対して供給が追いつかない。最近の都市の膨張、消費量の増大、これに対しまして農村は、近郊農村の野菜地帯がどんどんつぶれていくというようなことがありまして、農村方面でもどんどんふやしておりますが、なかなか追いつかぬということが根本にあると思います。したがって、これに対する相当強力な施策を講じまして生産量をふやさなければならない。そのためにはやはりさっき申しましたように、構造改善のための金を出してやるということも必要でありますが、一方、ある程度の価格の安定性を保つための制度、いまでも始めておられますが、これをもっと拡充強化いたしまして、価格の安定をはかる必要があると思います。  実はここに、その一番問題の、寄与率の一番高い品物を持ってきましたから、これを見ながらひとつ御検討願いたい。この値段わかりますか、わからないでしょう。これはお聞きするのも何でしょう。わからないと思います。動くのですからわからなくともいいです。非常に動いておりますからね。昨日の東京中央卸売り市場の値段で申しますと、キャベツ、これが一・二五キロでございまして、卸で六十六円、まあ大体小売りでは九十円ぐらいだろうと思います。百円ぐらいするかもしれません。これが六十六円です。それからニンジン、これが百八十グラムありまして、東京中央卸売り市場ではこれ一個で十八円ですから、小売りでは二十二、三円するだろうと思うのです。このネギでございますが、これが百グラム八円ですね。一本八円です。いま申しているのはみな一個の値段です。八円ですから、小売りで十一円ぐらいするだろう。それから、このヤマトイモが五百五十グラムございますから、卸で百二十円ですから、小売りではおそらく百五十円ぐらいするですね。そこで申し上げたいことは、これは大体私のところが生産地なんです。東京都のほとんど大部分をまかなっているのですが、きのうの私のところの産地値段を調べたのです。そうしますと、産地の市場に出しますときに、これが、いま言いましたように、東京中央卸売り市場では百二十円でございます。卸売り価格が百二十円、小売りでは百五十円くらいするのですが、これを農民がきのう——私の住んでいる深谷、これが主産地なんですが、出荷しました価格は百円なんですが、その中から五十円が洗い賃と箱詰めの経費で引かれまして、手取り五十円なんです。農民は五十円なんです。大体ほかのものも、一々申し上げませんけれども、おおむね非常に価格がまちまちでございますが、生産者手取りと農民の手取りと、それから東京の中心部における二十何区ですか、一般小売り屋の店にありますものとでは、一番安いもので二倍でございます。大体二倍と三倍の間でございます。二倍半くらいなんです。そういうふうになっておる。こういうふうなわけでございまして、じゃ、小売り屋さんがもうけているかといえば、零細な個人企業者、あるいは同族法人で、とても苦しい生活をしておられるわけであります。農民もなかなかやっちゃいけないということになっておる。結局一番問題になりますのは、何といいましても、中央卸売り市場の問題であろうと思うのです。あそこへいって、また浦和あたりへ逆転してくるのですから、浦和の小売り屋さんに出ている品物は、東京のまん中と同じなんです。こういうふうなことを考えますと、まず第一に流通機構を簡素化するという問題、これは大問題でございます。それから特に東京卸売り市場の内容を徹底的にお調べ願いたい。この間は大きな問屋さんが、おそらく数軒であれは経営しているんだろうと思うのですが、大問屋が合同をするというのが新聞に出ておりました。合同いたしますと、合同した大問屋が扱い量の七割を独占してしまうらしいですね。こういうふうなことが中央卸売り市場で行なわれております裏に、私は、毎日動き、毎月動いているこの価格操作の中で、相当の利益を卸売り市場が、関係の大問屋数軒が占めていやせぬかという疑いを持たざるを得ないのであります。公取委員長、あなたは最近の東京の青物市場の大問屋の合同問題について調べをしておりますか、情報ぐらいとっておりますか、どうですか。
  225. 北島武雄

    ○北島政府委員 実はその問題、先日の新聞で見たわけでございますが、まだ公正取引委員会に対しましては何のアプローチもございません。手続といたしまして、もしそれが合併ということになりますと、独禁法の規定に従いまして事前届け出ということになります。届け出がありますと、それによって公正取引委員会は、はたしてそれが独禁法に反しないかどうかということを審査するわけでございまして、それまで私のほうでは、まだ何ら手をつけておらないわけであります。
  226. 高田富之

    ○高田委員 こういう問題がありますから、私は市場機構というものを、市場をふやすということも今度おやりになっているようでありますが、それも一つでありますけれども、公的な性格のものにしなければいかぬと思うのです。公的な性格のものにいたしまして、内容が非常によくわかるようにしなければいかぬ。内容がわからない。ですから、少数のものが、いま言いましたように、合同すると七割もの品物を左右する力を持つということになれば、ほんとうの話が何をされるかわからぬ。これは早急に調べなければいけません。そこで、先ほど来申し上げる独占禁止法の関係の問題としましては、範囲が非常に広い。これを扱いますのに、この間実は公取の方にいろいろ聞いてみたのでありますが、そういうことの調査に、実際現場へ飛んでいって調べる、カラーテレビが問題になった、その工場が全国に十もあるところへすっ飛んでいって調べるというようなことをやる人間が幾人いるんだと言ったら、正味のところ、五十人だか四十人だかしかいないというんですね。それで何百種類ものものが怪しいと見ているんですよ。怪しいというのが七百種類もあるというんだ。怪しいというものだけ情報を集めても調べられないというんですよ。だから私は、これには相当の力をさくべきだと思うのです。だから何でもこの間の予算要求が——事業費ですよ、そういう調査事業費、審査官のやる事業費として八千万円要求したのだそうです。ところが実際もらったのは三千六百万円とかしか本年度予算でもらえなかったというのですよ。三千六百万円なんですよ。そのほか、もちろん総務部だとか庶務部だとかいろいろなのがありますから、全部では億台になりますけれども、実際の実務、こういう大事な実務をする経費が三千何百万円では、とてもこれは大資本を相手に価格の調査までやらせるなんということはなおさらできません。だから私は、物価問題のまず第一、一番やりやすいこと、すぐでもやろうと思えばやれることは、公正取引委員会の飛躍的拡充だと思うのですよ。それにはジェット機一台分回しなさいよ。第三次防衛計画で何兆円も、おもちゃの兵隊さんみたいなものに、飛べばすぐ落っこちるような飛行機を持たせて何になるのですか。一台分でけっこうです。五、六億するのでしょう。あの五、六億持っていっただけで日本の物価というものは相当変わる。物価水準は相当下がりますよ。第一、いままで公正取引委員会でブリキを調べるといって調べ始めると、ぱっと値が下がる。カラーテレビを調べたというと、カラーテレビはどうですか、いま、競争で下げっこをしているでしょう。調べたというとぱっと下がるのですから。これだけの効果がある。だからジェット機一台分公正取引委員会へどかっとくれたっていうことになってごらんなさい。日本の物価はすらっと下がる。だから、こういう点については果断でなければならぬ。物価問題はいままで過去十年間悩みの種、この五年間幾ら言ったって実行できっこないのですからね。いまのままだったら、この五カ年計画は来年また改定です。私申し上げる。来年改定しなければならぬ。物価はうんと上がっちゃいます。ですからそれをおやりになるには、ほんとうにもう決断をもってやらなければならぬのです。ジェット機一台減らしなさい。第三次防衛計画のジェット機一台分減らせばいいのです。おやりになりますか。
  227. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見は伺いましたが、一台ジェットを減らしてそちらへ回すというようなことはいたしません。
  228. 高田富之

    ○高田委員 それでは要求だけ、時間がきましたから申し上げますが、中小企業については何しろ口頭禅でいかぬです。山一証券には二百八十二億も、しかも日銀から無担保で、無制限で無利子で貸し出したではありませんか。だから私は少なくとも、いま中小企業は戦後最高の倒産率を示している。毎日ばたばた倒れる。何千件と一年に倒れる。今月はまたレコードを破っている。こういうときにはこの中小企業に対する融資ということについて、山一証券と同じように無制限で全部貸せとは私は申しません、数が多いから。制限はつけてもいいでしょう。たとえば一口三百万円以下の中小企業の近代化資金なり倒産防止のための金ということにつきましては、無利子、無担保で三百万円までは貸す、これくらいなことはやらなければ不公平であります。これくらいなことをやらなければ、中小企業に対して底上げをするんだ、生産性を上げるのだと言うことはできないと私は思う。農民に対しても、基盤整備費ぐらいはただにして上げなさい。構造改善をするのだったら、土地基盤の整備は全部国費でやるべきであります。それぐらいなことをやれないで、そうして生産性の低い部門が悪いから物価が上がるのだ——何を言っているのですか。これをおやりになるかどうか、やる決意があるかどうか、これから検討される意思があるかどうか、それを一つ最後にお尋ねをいたしたい。
  229. 水田三喜男

    水田国務大臣 そういういろんな経費を、必要な経費を適切に配分するのが予算編成の役目でございまして、今度の場合でも、おっしゃられるように、農村の近代化投資、中小企業の近代化投資の費用というものは相当大きい予算でございます。(「〇・五%くらいだ」と呼ぶ者あり)いやいや、とてもそんなどころじゃございませんで、農村に盛った予算約五千億のうち、二千億はおそらく物価関係のある近代化投資と関連したものでございますし、中小企業におきましても、財政投融資計画で三千億円以上、三千五百億円は中小企業に投入するというようなことで、農業と中小企業への予算的配慮、財政的な配慮というものは相当ばく大なもので、ことごとくやはり物価問題とからんでおる、私どもはこういう認識から、今度は特に予算の強化をはかったような次第でございます。
  230. 高田富之

    ○高田委員 時間がまいりましたので、これでやめます。税金問題もできませんでしたが、また分科会等におきましていろいろとさらにこまかく御質問をいたすことにいたしまして、この場合、この場における御質問はこれをもって終わらしていただきます。
  231. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて高田君の質疑は終了いたしました。  次に阪上安太郎君。
  232. 阪上安太郎

    ○阪上委員 高田君に引き続きまして質問いたしたいと思います。私は、きょうは大別いたしまして大体二つ質問をいたします。一つは、地方政治の姿勢について、これはひとつとくと伺っておきたい、このように考えております。いま一つは、政府の重点施策であります住宅、それから交通、公害、これと地方政治の関係につきまして伺いたいと思っております。質問の柱は二点でありますけれども、内容はかなり豊富にわたりますので、できるだけ端的に御答弁をお願いいたします。  そこで、まず最初に、地方政治の姿勢でございます。最近わが国の政治は、中央といわず地方といわず、その姿勢がたいへんくずれておる、われわれかように考えております。ことに地方の政治、これの姿勢の乱れというものが最近目立つわけであります。総理も御案内のとおり、新しい憲法が施行されてから二十年、それから、それと同時に出発いたしました地方自治法、これもやはり出発いたしましてから二十年たっております。当時私どもは、この憲法とこの地方自治法によってわが国民主化の基盤である地方政治がぐんぐんとりっぱに発達するであろう、このように大きな期待を持っておったわけでありますが、二十年たった今日見渡しますと、その期待が大きくはずれまして、先刻申し上げましたように、地方政治の姿勢がたいへんくずれてきたということは、まことに遺憾であります。そこで、私はまずこの地方政治の姿勢のくずれ、この現実がどうなっておるかということについて考えてみたいと思うのでありますが、何よりもまず重大な関心を持っておりますのは、最近の地方自治体の中における汚職、腐敗の実態であります。このことにつきまして、自治省においては本年この問題を取り上げまして、いわゆる黒い霧、地方自治体の中における黒い霧、これの全国調査をいたしたわけであります。その結果を見ますと、非常にいまわしい事件が数多く四十一年度だけでも発生いたしております。私がきょうお聞きいたしたいのは、このように多く発生いたしておりますこれらの地方政治の中における黒い霧について、当然内閣総理大臣並びに自治大臣、各省大臣は、それぞれ法律に基づいて措置すべき点があったであろう、このように考えるわけであります。いま申し上げました自治省の数字は、全体の件数につきましては県関係で三百七十六件、これは一県平均八件となっております。市町村関係で四百一件、こういうような膨大な数にのぼっております。しかも、一つは、議会関係では選挙違反及び贈収賄、これがほとんど大部分を占めておるようであります。しかも、この選挙関係につきましてはいろいろありますが、みずからの所属しておるその選挙ではなくして、上級の選挙の関連から選挙違反を起こしておる、こういう例が非常に多いのであります。それから同時に議長の選挙、こういったものをめぐってやはり発生いたしております。贈収賄関係その他につきましても非常に多くの件数が出ておるのでありまして、これに不正を問われておる自治体の特別職の数は非常に多いのであります。そこでお伺いいたしたいのでありますが、こういった事態に対して、まず内閣総理大臣、あなたはどんな措置をとられたか、それから自治大臣はどういう措置をとったか、こういうことについて伺いたいのであります。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 地方団体あるいは地方公務員に不祥事件が次々に起きておる、私はまことに残念に思います。これらの事柄は、もちろんその責任者というものは非常にはっきりしておる。同時にまた制度、運営上からもそういう間違いを起こしやすい、こういうようなこともあるのではないかと思う。個人の責任、そういう事態を引き起こしました個人の責任、これはもうはっきりいたしますから、個人自身考えてくれなければならないであろう。ただいま申し上げるように、制度そのものの運営上からもおちいりやすい間違いがあるのではないか、そういう点を考えまして、これらについては自治省、自治大臣からいろいろこまかな注意まで通達を発しておるようでございます。いずれにいたしましても、中央と直接関係はございませんけれども、いま御指摘になりました地方選挙の場合、さらにまた議長選挙等の場合において、いろいろいまわしい不祥事件が起こりましたこと、何とも残念に思っておるような次第でございます。
  234. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方のいろいろな問題につきましては、実態調査をいたしました結果、昨年十二月に地方公共団体の行政運営の改善につきまして、公務員秩序の確立、議会運営の改善、議会と理事者との関係、経費の効率的使用等につきまして注意を喚起いたしたわけでございますが、この通牒が確実に守られるように今後とも注意をしてまいりたいと存じます。
  235. 阪上安太郎

    ○阪上委員 端的に総理に伺っておるのでありますけれども、御案内のように、地方自治法の二百四十六条の二、ここにこういった場合に対処する内閣総理大臣措置というものがあるわけなんであります。私は、それをおやりになったかどうかということを聞いておるのです。もしおやりにならないとするならば、なぜおやりにならなかったか、これを伺いたいのです。
  236. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方自治法三百四十六条の二の事項は、個々の具体的な自治体の個々の具体的な問題についての内閣総理大臣の是正措置をきめておるものでございます。現在は、全国的に発生をいたしましたこうした不正の問題につきまして、とりあえず全国的な注意を喚起することが肝要と思いまして、自治省の通牒にいたしたような次第でございます。
  237. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ここにこう書いてあるのですよ。「内閣総理大臣は、普通地方公共団体の事務の処理又はその長の事務の管理及び執行が法令の規定に違反していると認めるとき、又は確保すべき収入」云々「若しくは不当に財産を処分する」、個々といまおっしゃったけれども、こういった個々の事態が発生しているんじゃありませんか。これに対して、なぜ的確にそのときに措置をなさらぬかということを私は聞いているんです。
  238. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 いまお読み上げになりましたようなことでございまして、今回一連の発生をいたしましたものは、主として選挙違反、汚職というようなことが多うございますので、その条項を使わなかったわけでございます。
  239. 阪上安太郎

    ○阪上委員 財産の処分に関して汚職が起こっているという事実はあるわけなんであります。したがって、使わなかったとか全国的に云々とかというものの考え方はおかしいのであります。そのつど的確になぜ措置しないか、そういうことをほっておくからこういう事態がますます広がっていくんだ、こういうことを私は言っておるのであります。今度初めて全国的にそういった調査をなさったということでありますが、それ自体がやはりおそいと思う。しかしこの調査は、その内容については公開しないというような、そういう約束のもとに調査をされておる。したがって、私は、そのやり方がいいか悪いかは論議いたしません。けれども、そういった事態があるということはわかっておるんでありますから、なぜ、そのつど的確に措置されていかないか、こういうことを申し上げておるのであります。幸い、全国的に傾向がわかったでありましょうから、今後ひとつ的確に、そのつどこういった不正の問題につきまして、地方自治体の汚職、腐敗の問題につきましては、十二分に法に基づいて勧告その他の措置をされるように要求いたしておきたいと思います。  そこで次に、汚職、腐敗のこういった原因は一体どこからくるかということなんであります。この原因につきまして、一々政府側の答弁を承っておりますと、総理、なかなか答弁が長いものでありますから、時間がかかりますので、私から指摘いたしまして、そうしてお考えを聞きたい、このように思います。  まず私は、汚職、腐敗の原因は、一つは政党責任の欠除である、政党責任が欠けているからだ、こういうふうに私は考えるわけであります。また、それと同時に、特に自民の地方政治に対する指導理念、一般には中央に直結する政治、このようにいわれておりますが、こういった指導理念がさらにそういったことに拍車をかけておる、こういうふうに私は考えるわけであります。過般、本会議におきまして、わが党の川村君から総理質問がございました。政党が地方政治に介入するということは適当であるかどうか、こういう質問があったのでありますが、その際、総理はたしか、政党の介入は好ましくないという意味の答弁をなさっておるように思うのであります。今日、世界の地方自治体における政党の介入の度合いというものを考えてみましても、また、わが国における政党の地方政治に対する介入、浸透状況を考えてみましても、いい悪いの問題は別といたしまして、もはや避けることのできない状態にあるんじゃなかろうか、このように考えるわけであります。もしいけないということであるならば、それを阻止する方向をとるべきだと思うのです、それが正しければ。しかしながら、いま申し上げましたように、憲法が使っておりますところの地方自治というものの考え方というものは、ただ単に、地方における行財政を取り上げておる表現ではないと私は思っておる。これはあくまでもその原文にあった、ローカル・セルフガバメント、地方政府というものの考え方に立っておるんじゃなかろうか。そうすれば、地方政治という考え方が当然導き出されるわけであります。今日、わが国の、あるいは世界の民主政治というものは、明らかに、議会制民主政治、あるいは地方自治体においては首長制民主政治という形をとっておるわけでありまして、この場合、その運営の方法としては当然政党政治でなければならぬ、こういうふうに思うわけです。したがって、政党政治であるならば、地方公共団体における政治も、それがあながち入っておることを阻止するわけにはいかないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでありまして、したがって、政党がこれに介入するということについてはもはや避けられない。そこで問題になってくるのは政党責任であります。好ましくないとまで考えるそういう地方公共団体の政治、しかも、それが避けられないということになれば、政党が何よりもまず責任を持たなければいけないのではなかろうか。この点について、はたしていままで地方政治の中で政党がほんとうに責任をとってきたかどうか。また、その政党責任のとり方、どういうふうにとっていけばいいのであるか。こういうような点について、ひとつ総理の所見を伺いたい、このように思います。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 地方自治体がいまの現状においては必ず政党化する、こういう考え方のようでございます。好むと好まざるとにかかわらず政党化していく。そこで、政党の責任を果たすという考え方に徹してもらえば、ただいまの地方の各種の不祥事件等はよほど減るであろう、こういうお話であります。私は、本会議でこの前お答えいたしましたのは、地方自治体が政党化すること、これは必ずしも好ましいことではない、必ずしもと、こういうことを申し上げました。地方自治体の主たる目的は、これは何といっても地域住民の福祉だ。これを主眼にして考えるわけだ。したがって、地域住民の福祉ということに限られるだけに、全国的な国家的な視野に立っての政党活動、これが全部をまかなうものでもない、こういう私の基本的な考え方であります。しかし同時に、この地方団体そのものは、地域住民の福祉を確保する上におきましても、みずからでできる事柄と、国としての施策から補ってもらうといいますか、あるいは国の施策によって地域住民の福祉を増進する、こういう二つの問題があると思うのであります。したがって、私は、そのあとのほうの問題からどうも政党化していく、こういうことになりやすいのだ、かように思っております。しかし、今回の地方選挙におきましても、私がはっきり申し上げておりますように、必ずしも自由民主党党員であることが絶対に地方の首長たる資格だ、かようなことは私は申しておりません。中央との直結の問題については、ただいま申し上げるように、地域だけで片づく問題と、中央からの施策によって片づく問題と、両方がございますから、中央とも連携を緊密にしなければならない、かように私は考えておるのであります。その意味におきまして、政党政治家の責任、また、これは政党政治家ばかりではございません。地域住民を代表する者の責任、ことに首長あるいは地方議会の議員の責任、これは私はまことに重大だと思います。そういう意味で、その使命の重大さに徹するならば、今日いろいろの乱れが起きたり、いろいろの姿勢のくずれ等の問題はなくなるのじゃないだろうか。要は、それぞれが使命に徹し、そうして責任をはっきり認識し、それを遂行する、こういうことであってほしい、かように考えております。
  241. 阪上安太郎

    ○阪上委員 総理がそういう表現をされることを私は非常に期待しておったのであります。そういう意味の中央直結であるならば当然だと思います。しかし、そうであるならば、当然のことを何も大騒ぎして選挙のたびごとに中央直結を叫ぶ必要はない、私はこう考えるのであります。あらゆる選挙を通じまして中央直結を叫ばれる自民党政府、それがいま言ったような意味のものであるなら問題はないが、行政能力を発揮するために財源的にいろいろと力が足りないので中央に依存してくるのだ、その関係を称して中央直結と言っておるのだ、こういうことでありまするならば、それはそれでいいわけであります。しかしながら、いまここで考えなくちゃいけないのは、あらゆる選挙ことに中央に直結する政治、しかもそれに解説が加わって、現在自民党が天下を取っておるので、これにつながる地方政治家でなければわれわれは補助金その他のめんどうを見ないぞというような表現がしばしば行なわれている。こういうことが平気で言われるということは、非常に私は残念に思うのでありまして、私も地方政治はしばらく経験をいたしております。政府は、自民党の一部の人が言って回っているように、そういうことによって補助金のつけ足しをやっておるとか、交付税をよけいにそれに回しておるとか、あるいは特別交付税をそういうふうな措置をしておるとかいう事実は私はないと思う。ないと思うにかかわらず、まことしやかにそれがあるようにして、そうして真実利益誘導ではないけれども、いかにも利益誘導をしておるようなことを言って回っておる。こういうことをやっておるから、現在のわが国の地方政治というものの姿勢が乱れてくるのだ。これはもっと政党は責任を持たなければいかぬと私は思うのであります。私ども社会党では、そういう言い方はいたしません。そういうわかり切ったこと、当然中央につながる、中央との協力というような形におけるそういうことはわれわれは言わない。むしろ、住民に直結する政治でなければならぬという地方自治の本旨というものをわれわれは主張して歩いているのでありますけれども、いま言ったようなことを依然として今後も続けられていくということは、いま問題となっているこの地方政治の汚職、腐敗、これに拍車をかけることになるのじゃないかと、われわれはかように心配するわけであります。すべからく、ああいうやり方というものはこの際やめていただかぬと、中央政治に対する国民信頼というものが失われていくということに私はなろうかと思うのでありまして、厳にこれはひとつ注意してもらいたい。  そこで、さらにこの問題と関連したしまして、陳情政治とか補助金政治、こういったものにつきまして、これがいま言ったような大きなえさになっているわけでありますが、この陳情政治、補助金政治というものに対して長い間これが問題になってきて、早く整理をしようということになってきておるのでありますが、これについて総理はどうお考えになっているか、これをひとつ伺っておきたい。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 補助金問題でいろいろの曲った行政をする、こういうことはございません。補助金は補助金、そしてちゃんと皆さん方から審議をいただいて、どういう仕事には補助金をつけろ、こういうような話できまったものでございます。だから、これはもう補助金はそういうことで、問題ございません。むしろ最近は零細な補助金を整理しろ、こういう方向でございますから、補助金については問題ない。  もう一つおあげになりましたいわゆる陳情政治、陳情行政、これがいろいろの問題だと言う。もし言われるように、陳情によって動かされるということがあるならば、お説のとおりだと思います。しかし、今日私ども民主政治をやっております。民主政治は、もちろん各界、各方面の意見を聞くのが、これは当然のことであります。政党自身がみずから調査に乗り出すこともありますし、同時にまた、各界、各方面の意見をつぶさに伺って、そうして適切な政策を樹立するのでありますし、またそれに沿つたことをするのであります。私は過日も申し上げたのですが、社会党の諸君、あるいは場合によったら共産党の諸君の言い分でもこれを取り上げたことがございます。参議院の本会議でさように答弁をいたしたのであります。これなどは交通問題についてでございますが、共産党の言い分もちゃんと取り上げておる。こういうことがやはり民主政治。これがいいことなので、いま頭から陳情政治だ、けしからぬ、かように言われることは、どうも民主的であろうとする政府努力を故意に曲げてごらんになるので、私はその説に賛成いたしません。
  243. 阪上安太郎

    ○阪上委員 補助金につきましては、いま総理から御答弁がございましたが、いま少しく深く考える必要があろう、私はかように考えるわけであります。大体補助金の占める割合というものが地方の財政の中で多過ぎる。これが大きくなってくる理由は、委任事務が多過ぎるからであります。あるいは公共事業の地方団体に対するしわ寄せ、分量、そういったものがやはり非常に大きくなってきておる。そこでどうしても補助金をつけなければならぬというかっこうが出てきている。しかし、本来補助金というものは、はたして地方財政の自主性というものをそこねておらぬかどうか、こうなってまいりますると、補助金制度というものは、いまのようなやり方でもって、ただ単にその中で零細補助金だけを整理すればそれでいいという性質のものではなくして、地方自治の本旨に基づいて、本来補助金というものの幅があまりにも広過ぎる。それをやはり是正していかなければいけない。補助金でありますから、どうしてもこれはひもつき財源であります。そういうことになってまいりますと、これに継ぎ足し財源をぶち込んで、地方公共団体の単独事業というものの率がだんだんと落ちてくる。最終的には国の出先機関的な事務ばかりをやっていく、こういうことになるおそれを持ったのが補助金であろうとわれわれは考えるので、補助金につきましていま少しく高度な見地に立って、この補助金をいま少しく整理し、少なくし、できるだけ地方の一般財源にこれを切りかえていく、そういうような配慮をなさる考え方があるかどうか、これを承っておきたいと思います。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま阪上君の御指摘になりましたように、中央、地方を通じて行政が適正に分配される、同時に、それに見合った財源が分配されるということが望ましいのであります。そういう意味で、地方制度調査会は絶えず全体についての調査を進めておりまして、適時適切なる答申をしている、意見を述べている、かように思っております。政府は、その答申等によりまして、委任事項の整理あるいは零細補助金の整理等々を行なっておるのでございますが、いま御意見を述べられましたとおりの方向で進んでおる、かように私考えております。
  245. 阪上安太郎

    ○阪上委員 次に、汚職、腐敗の原因のいま一つは、やはり私は政府責任の欠除だと思います。巷間一割自治あるいは三割自治ということばがここしばらくの間使われてきております。そこで伺っておきたいのは、この一割自治とか三割自治、これは一般巷間にいわれていることばでありますので、政府みずからがこういうことばを使ったとは私は考えておりませんが、一般に使われている意味は那辺にあるか、どんなところに根拠を求めてそういうことを言っているか、案外このことばは住民の中に非常に知られておることばでありまして、ある程度の理解は高まっていると思いますが、これはどういうふうに解釈すべきものか、自治大臣からひとつお答え願いたい。
  246. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 巷間いわゆる一割自治とか三割自治とか、おそらく自主財源に比較して国庫支出金のほうが非常に多いというようなことを比喩的に言われておるのだろうと思います。したがいまして、これらの点はただいま総理から御答弁のありましたように、地方制度調査会等の答申も待ちまして、事務の配分と、それに裏づけする財源の配分を今後強力に考えてまいりたいと思っております。
  247. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私はこの一割自治、三割自治ということばの中には、いろいろな意味がある、かように思っております。いま言われた自主財源の問題が一つあると思う。そこから割り出したものが一つある。それから租税全体の配分の割合が一つ頭に浮かんでくるわけであります。国は国税として約七割に近いものを一たんは取り上げておる。地方公共団体に対しましては地方税として三割しか与えていない。こういった問題からも、やはり三割自治の概念が出てきておる、こういうように思うのであります。また、一割自治の考え方の中には、先ほど言われた自主財源のほかに、私は委任事務の関係からきている考え方もあろうと思う。今日都道府県のごときに至っては、みずからの固有の事務というものはわずかに一割しかないのだ、あるいはそれより少ないかもしれない。そして国の委任事務を九割以上やっておる、こういうことだと思うのであります。私は、財政的な面も大切でありますけれども、こういった行政面における事務配分の問題はやはりかなり大きな問題点だと思うわけであります。  そこで私は、この際この機関委任事務——都道府県知事、市町村長、こういったものに国がストレートにこれを委任しておる。しかも縦割り行政の弊害がそこから出てきている。そして、各中央の官庁はそれをたてにして、リモートコントロールをやっておる、遠隔操作をやっておる、こういう実におそるべき事態がいま発生しているわけなんであります。こういった点について自治大臣はどうお考えになっておるか。それから、あわせて総理大臣の所見もひとつ伺っておきたいと思う。憲法が保障しておるわが国地方自治というものがこういう形で行なわれているということは、たいへんな問題だと私は思うのであります。この点についてひとつ御答弁を願いたい。
  248. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 国の委任事務、ことに機関委任が相当多い、それからいろいろな弊害も発生しているということは、いなめないことであろうと存じます。臨時行政調査会の答申の点もございますし、また地方制度調査会の答申もございますので、そうした事務の整理並びに国と地方との事務の再配分につきまして、十分前進的な考え方で考慮してまいりたいと思います。
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま自治大臣がお答えしたとおりです。事務を配分すると同時に、地方制度調査会の答申によりまして、財源の確保等についてももちろん考えてまいるつもりであります。
  250. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いつもそういうかっこうで実は逃げられるわけであります。地方制度調査会が何回答申したか。あるいはまた総理大臣みずからが行政事務の再配分についての諮問をいたしておりながら、これを受けた地方制度調査会が最近ではそれをあと回しにいたしまして、そして府県合併を先に取り上げてくる。この事務再配分については、シャウプ勧告以来の問題ではないかと私は思うのであります。一体いつまでこれを引きずっておるのか。私は政府にやる気魂がないからだと思う。やる気がないからだと思う。ほんとうにやる気ならば、こんなものを十年も十二、三年も十五年も引っぱっておくはずがない。一体いつこれをやるつもりでありますか。これほど大騒ぎをしているこの問題を、のんべんだらりといつまでも、いつまでも引きずっている。そういうことをやっているから、だんだんと地方政治の姿勢が乱れてくるのであります。その責任は大きいと思う。政府、特に自治省は、一体これに対してなぜもっと真剣にこの問題と取り組まないか。  そこで伺いたいのですが、答申を待って、答申を待ってというようなことをいつまでも言ってないで、なぜこれを早く断行しないか。いつおやりになりますか。
  251. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 事務の再配分につきましては、さきの地方制度調査会で御答申をいただきましたが、それに基づく財源の配分について、せっかくただいまの第十一次調査会において御検討中でございます。したがいまして、この結論を急いでいただいて、その結論に従ってやってまいりたいと考えております。
  252. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、いつおやりになるかというのです。大体のめどを聞かしてくださいよ、私はかけ引きでものをしゃべっているんじゃないんだから。私は長い聞こういう問題と取り組んできて、実際心配もしている。いつおやりになるのですか。答申を待ってでは、あるいは財源措置を待ってなんていうようなことを言ったってしょうがないじゃないですか。やれるものから先にやったらどうです。
  253. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 いま申しましたように、その財源配分の問題について現在の第十一次の調査会が御検討中でございますので、その調査会の結論をお急ぎいただいて、できるだけ早い機会にやってまいりたいと考えております。
  254. 阪上安太郎

    ○阪上委員 総理大臣、こういうことなんですよ。これは自治大臣としては各省といろいろ折衝もあるだろうし、事務配分ということになってくれば各省のセクトの問題もいろいろ出てくるだろうし、いろいろとやっかいな問題に遭遇するだろうと私は思う。しかし、もういつまでもこんなものをほっておいてはいけません。これについては、やはり総理は決断をくだすべきときではなかろうかと私は思うのであります。いかがでしょうか。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん私、最高責任者としていろいろこういう問題等も検討しておる最中でございます。したがいまして、最高責任者が責任をとるその段階だと、御指摘のとおり思っております。
  256. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その問題はその程度にいたしまして、次に、なおやはり汚職、腐敗の原因と目されるものがあります。それは、今度は政府関係ではございませんで、地方自治体みずからの責任があろう、こういうふうに考えるわけであります。最近、特にそれらの中でおそるべき傾向として出てまいりましたのが団体自治の傾向で、これが非常に強まってきた、こういうことであります。  申し上げるまでもないと存じますが、憲法が認めております地方自治の組織と運営、そしてその組織として、あるいは運営として、一つは団体自治があり、一つは住民自治があるということなんであります。しかしながら、団体自治につきましては、これは率直に言えば、都道府県知事並びに市町村長とそれぞれ各級の地方議会議員が、ものごとを決定したならば、もうそれが最高の決定だという誤った考え方を持つことであります。これはやはり団体自治の度が過ぎた行き方だ、私はこういうふうに考えております。そういった団体自治主義というものが台頭してきている、こういうことなんであります。しかしながら、憲法は、過去の苦い経験から、それらの団体自治に対するアンチ・テーゼとして、住民自治を強く打ち出していることは御案内のとおりであります。そうして憲法みずからは直ちにこれを具体的に示してはおりませんけれども、地方自治法が明確にこのことを受けてきております。そして、御案内のようなリコール、直接請求という形を認めているわけであります。われわれは内閣総理大臣をリコールするわけにはいかない。国会議員も、たとえばこの前いろいろな不祥事件を起こしたような者がおりますけれども、これは国民が直ちに直接リコールするわけにはなかなかいかない。しかしながら、地方公共団体におきましては、これが法律に基づいてできるようになっておる。これは憲法の趣旨だ。ところが、そういった住民自治というものを非常に高く評価し、そしてそれに対して大きな期待を憲法は持っているにもかかわらず、最近再びこの団体自治というものが非常に大きなウエートを占めてきておるということなんであります。このことは非常におそるべき傾向だと私は日ごろから考えておる。  またいま一つの問題点としては、地方における政治の、いわゆる議会制民主主義といいますか、これが直ちに地方政治にもその原則があるものだという考え方が一般に行なわれておる。そしてプレジデンシャルシステムをとっているということすら忘れてしまって、地方においても議会制民主主義だと考えておる。大きな誤りをおかしていると私は思う。その結果、地方議会が首長の執行に関与するというような事態まで発生してきておるのであります。これらの点について、中央でもって地方政治を指導監督しているという立場にある自治省みずからが、案外そういう考え方について不確かな点があるのじゃなかろうか。したがって指導が徹底しない、こういうふうに私は日ごろからうらみを持っておるわけなんであって、これらの点についてはっきりした指導をしなければ、私はいけないと思う。この面について自治大臣の考え方とこれに対処する措置、こういったものをひとつお聞かせ願いたい。
  257. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方において執行部と議会側との混淆が行なわれているという傾向をわれわれは認めるわけでございますが、これはたいへん間違ったことでございまして、したがいまして、先般、先ほどお答え申し上げました地方行政運営の改善についての通牒の中でもこれらの点を強調をいたしたような次第でございます。今後もそうした理念に立ちまして、何か自治省が少しそういう点について不確かなようなおことばでございましたが、そうしたただいま申しましたような理念に立ちまして、今後とも指導をしてまいりたいと考えております。
  258. 阪上安太郎

    ○阪上委員 何かこう奥歯に物のはさまったような答弁になってしまっておるが、もう少し的確にばちっと言えないかと私は思うのであります。  そこで、地方政治の姿勢を正す対策、こういった考え方をいま少しくただしていきたいと思うのでありますが、これは先ほど総理は、制度を含めて考えなければならぬ問題だ、こう言っておる。そこで、端的にいいまして、住民のコントロール体制というものをもっと強化したらどうか。これは法改正にまたなければいかぬ、こういうふうに思います。くだけて言うならば、住民の地方政治に対する監視体制というものをもっと強化してはどうか。その方法として、一つは、直接請求の可能性というものをもっと高めてみてはどうか。御案内のように、最近あちらこちらで直接請求がひんぱんに行なわれております。それは地方政治の姿勢が乱れれば乱れるほどこの種の問題が出てくるわけなんであります。しかしながら、人口五、六万の都市以外には成立したためしはないといわれておる。これはあまりにもその手続が繁雑だからであります。これについて、これは何といいますか、伝家の宝刀でありますので、軽々にこれを使っていくということは許されないかもしれないが、しかしながら、いまのような状態で幾ら面接請求をやってみたとしたって成立しない、こういうようなことであっては私はいけないと思うわけでありまして、この場合、住民自治の原則に立脚してこの監視制度というものをもっと強化する、こういう着意がなければならぬと思います。やる気があるかどうか。   〔委員長退席、赤澤委員長代理着席〕  それからいま一つは、住民投票というものがいろいろなケースとして認められております。憲法九十五条に直接つながっての住民投票もありますが、そのほかに、重要財産の処分であるとかいろいろな問題につきまして、住民投票というものが行なわれる仕組みになっております。最近いろいろな住民の利害関係等が衝突いたしまして、こういった場合に、むしろ住民投票に訴えたほうがよいであろうというような場合が間々あるわけなのであります。私が先ほど言いましたこの直接請求の可能性をできるだけ高めていくことと、それから住民投票を活用する、あるいはこれを拡大していく。これから出てくる公害対策の問題等につきましても、今度の公害対策基本法の中にはそういったものは含まれていないけれども、しかしながら、住民がやはりその地区の公害対策に取り組むためには相当な犠牲が要る。その場合にはやはり住民投票という形でこれを救済していくという方法が諸外国ではとられておる。そういったものを頭に含めて、あるいは交通対策を実施する場合にもそういう問題が出てくるかもしれない。もっともっと住民投票というものを拡大あるいは活用していくという方向への法改正というものが行なわれてしかるべきであろう、私はこのように考えるわけであります。  なお、これと関連いたしまして、過般制定されましたところの議会の解散の特例法、これに時限立法になっております。これはうらはらの関係にあると思います。これを廃止すべきかどうか、この問題と関連してひとつお答えを願いたい。これは自治大臣からお答えを願います。
  259. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 第一に住民の直接請求制度の問題でございますが、これが住民の意思をできるだけ容易にかつ効果的に反映するようにという配慮については、検討を加えなければならないかと思います。ただ、これがあるいは乱用される等のことによりまして、地方自治の安定性を欠くということでもいけませんので、その辺の調和を十分に考えてまいりたいと考えております。  それから住民投票につきましては、現在は憲法九十五条でございますかのものだけに限っておるわけでございます。ただ御質問の御要旨は、そういう住民投票を何らかの形で活用するのがいいんではないかというような御趣旨と存じます。今後十分検討を続けてまいりたいと思います。  さらに、議会解散の特例法につきましては、一年をたったときに再検討をいたしたいのでございますが、これを使っての解散もその後もございますし、なおしばらくこのまま推移を見たいと考えております。
  260. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この問題につきましては、特別立法によるところの解散が五、六回行なわれていると思います。しかし、あれは決してあの法律をつくったところの直接の趣旨ではないわけなんです。東京都議会の問題とからんで出てきた法律なんでありまして、あれ以外に手はなかった。したがってそういったものをいつまでも温存しておいて、本来の住民コントロールのきめ手であるところの直接請求の可能性の問題とか、それがないためにああいう法律をつくらなければならなかったということをよく認識して、そうして、ああいう特別法はできるだけ早くなくすことができるように、いま一方の法的な措置を講じていく、こういうことでなくちゃいけないと思うのです。いまやっている特例法がなかなか効力を発揮しているから、これはほうっておくのだということではおかしいと思う。そういう点につきましてはもう少し積極的に取り組んでもらいたい、このように思います。  次に、やはり地方政治の姿勢を正す対策一つとして、先ほども触れておりますように、何といってもこれはやはり地方財政の確立ということが先決だと私は思うのであります。いまでも相当地方財政は好転しているじゃないかとおそらく大蔵大臣あたりは言いたそうな顔をしておられますが、私が言うのは、そういうところじゃないのであります。毎年毎年何か歳出見積もり額を出してきて、そうして歳入見積もり額と合わせてみて、不足額が何ぼ出るからといって、そんなものを中心として毎年予算折衝をやっておるというような間抜けたことではいけないと思います。私はそうじゃなくして、この問題についてはやはり自主財源を確保していく、あるいは恒久財源を確保していく、こういう方向で前向きにこれは取り組まなければならぬ問題だと思います。そのためには、先ほど言いましたところの長い間の懸案である行政事務の再配分をやり、それに見合う租税の再配分をやっていく、こういうことがまず先決だと思う。しかしながら、そればかりでなく、先ほど言いましたような臨時財源でもってこれをまかなっておるというような現在の状態は許せない、私はこのように考えるわけであります。何か臨時特例交付金というような形でもって、毎年そこでつかみ金でもってこの問題を処理していくという形であってはいけないと思うのです。特別事業債が廃止されたことについては、私は敬意を表します。しかしながら、それだからといって、それだけで地方財政が確立されるという性質のものではない。この場合、特に地方財政確立の問題として、いま申し上げましたような租税の再配分の問題、これは先ほども、できるだけ早く取り組んでいくというお答えを得ておりますので、今度はやってもらいたいと思うが、それについて、大体およそのめどとして、租税の再配分をどのように持っていくか。パーセンテージでよろしい、この点をひとつお答え願いたい。  それからいま一つは、四十一年度の財政措置の中で、当時の福田大蔵大臣が地方行政委員会で約束されている問題がある。これが昭和四十二年度、来年度において措置されておりますが、四十三年度以降どうするかということについて大蔵大臣からもひとつ御答弁願いたい。
  261. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方財源の再配分につきましては、さきに地方制度調査会におきまして、地方債の半分ぐらいというようなことをも検討されたことがございますが、そのようなことも含めて研究をしてまいりたいと存じております。  それから特別事業債の元利の問題につきましては、御案内のとおり来年度昭和四十二年度は利子分だけでございますので、それにつきましては、国から交付税のほかに特定財源をもちましてこの利子相当分を埋めることにいたしておる次第でございます。
  262. 水田三喜男

    水田国務大臣 いずれにしましても、来年度からは地方財政に特に支障のないような措置を私どもはとるつもりでおります。
  263. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大蔵大臣、これは福田さんのときに、四十一年度でたいへん問題になった点なんです。そうしていろいろな議論が行なわれたのですが、最終的に当時の大蔵大臣から、将来も地方自治体の財政に悪影響を与えないように十二分にこれを見ていくという答弁が行なわれておるのです。四十二年度におきましてある程度のことが見られておるわけでありますが、特別事業債の元利償還と固定資産税の増額に伴う歳入欠陥といいますか、この二つについては、四十三年度以降もめんどうを見るということをひとつここで明言できると思うのでありますが、念のため、ひとつ確言を得ておきたいと思います。やってくださいひとつ。
  264. 水田三喜男

    水田国務大臣 あの昨年きめたような形で将来めんどうを見るかどうかは、まだこれから、今年度においてもいろいろ研究いたしましたが、明年度からのやつは、もう一歩私どもは検討を要すると思っております。
  265. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合におきましても、今年度の措置を下回るようなことは断じてない、こうあるべきだと思うのでありますが、どうでしょうか。
  266. 水田三喜男

    水田国務大臣 交付税においてこれを見る方法もございますし、これはもう少し私どもは検討したいと思っております。いずれにしろ、地方財政に支障を来たさないような措置をとるつもりでおります。
  267. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは次に、やはり財源問題といたしまして超過負担額の解消、これが問題になろうと思います。超過負担額の問題につきましては、これまた長い間の懸案であります。地方制度調査会の答申案の内容を見ますると、昭和四十一年度で三百数十億の超過負担の解消ができた、こう言っております。しかし、私どもの調べたところによりますると、はたして解消されたのかどうか、これははなはだ疑問を持つわけであります。私はあんまりことばじりをつかまえたものの言い方はしたくないのでありますが、それでもやはりこの場合、超過負担額の一部を、あるいは超過負担額をある程度軽減したということばは使ってもいいと思うのでありますが、はたして解消したという事実がどこにあるか、これをひとつ聞きたいのであります。超過負担額がある補助事業についてなくなったということがはっきり言える、そういうケースがあるなら、ひとつお示し願いたい。これは大蔵大臣からひとつ伺いたいと思います。
  268. 水田三喜男

    水田国務大臣 一時千億程度の超過負担があるだろうというようなことはいわれておりましたが、四十一年度と四十二年度の措置で大体六百億円前後の負担軽減というものが私どもはできたと思っております。まだそれによってむろん解消という事態にはならないと思いますが、しかし、単独事業の積み増しとかいろんなことがやはり鋭意行なわれておりますので、この単価がどの辺が適正かというような問題も一ぺんこれは実態調査をする必要があると思っております。大蔵、自治省、それから関係省でこの問題の調査をして、今後この解消に努力したいというような方向でいまいろいろ相談をしているところでございます。
  269. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この超過負担額の解消、これは超過負担額というものをおっかぶせているところに非常に不当なものがある、私はこのように考えております。これは、はっきり申し上げまして、地財法の二条であるとか、あるいは十八条であるとかいうものに違反する措置じゃなかろうか、私はこのように考えるわけであります。大きな声を出すわけじゃありませんが、これは法律違反でしょう。こんなものをいつまでものんべんだらりと放置しておくということは許されないと私は思うのであります。そこで、いま大蔵大臣から御答弁をいただいたのでありますが、ひとつこの際、補助単価あるいは補助対象その他いろんな点で検討する必要がある。いまごろなぜ検討するのですか。なぜやっていないのですか。これはここ一年や二年の問題じゃございませんよ。一体いまごろになってこれを一ぺん調べてみる、自治省は調べたでしょう。同じ政府部内でも、やはり自治省が調べたものは信頼ができない、こう言うのですか。大蔵大臣、どうなんですか、それは。
  270. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは自治省にもほんとうの調査というものはまだできていないと私どもは思っています。
  271. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自治省から私の手元に数字が出ております。自治省は、これはほんとうの調査ではなかったわけですか。ひとつお聞かせ願いたい。
  272. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 調査はいたしたわけでございます。先ほど大蔵大臣お話しになりましたことは、これは財政当局はもちろんのこと、各省の御協力をいただいてやらなければならぬことでございますので、来年度の予算——来年度とは四十三年度の予算編成を目途といたしまして、これらは大蔵省並びに各省と協議をいたしまして、そうして年度計画的な解消の方法を考えてまいりたいと考えておるわけでございます。
  273. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私の手元にありますのは、やはり自治省がいろんな適当な対象を求めて——適当な対象ということは、過大に補助事業をやっているとか、ぜいたくにやっているとかという問題をはずして、かなりこれはしぼった対象の中であなたのほうでは調査をされておる。そして一々こまかく数字が出ております。それから、大蔵省のほうでもこの問題につきましては数字を出しておるのです。したがって、私をして言わしめれば、大蔵省が調査するとか、自治省が調査をするとかという段階ではなくして、大蔵省と自治省の間で話を詰めること以外にないのじゃないか、こう思うのです。もちろん大蔵省だけじゃいきますまい。これは各省を代表しての話でありますから。それをなぜおやりにならないか、こういうことなんです。本年は各省に対してどんな措置をおとりになりましたか、それを伺いたいのです。
  274. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 お話のとおり、財政当局を含めて各省と協力をいたしていかなければならぬわけで、本年につきましても、住宅等の単価の引き上げにつきましては、十分御連絡をいたして、その一部が実現したわけでございます。
  275. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これはあとで聞こうと思っておったのですが、そちらから話が出たのですが、住宅等について、単価の引き上げその他で住宅事業に関する超過負担額が解消された、こういう事実をここでお示しになることはできますか。建設大臣おられますか。ひとつ伺いたいです。
  276. 西村英一

    西村国務大臣 来年度の予算におきまして、公営住宅の建設につきまして地方公共団体に対する超過負担の問題で、われわれはなるべくすみやかに解消したいということでございましたが、四十二年度におきましては、工事費の一五%の引き上げ、用地費の一一%の引き上げくらいによりまして、昨年度に比べまして、超過負担は約半分くらいまでに詰めたように思っておる次第でございます。
  277. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私も数字は持っております。しかしながら、いま言われたことだけを取り上げて考えてみましても、超過負担は解消されていないのですよ。はっきり、みずからそう言っておられるのです。最近、住宅建設、ことに宅地造成、この件につきましては、地方公共団体、ことに府県のごときに至りましては、どんどん逃避しております。昨日から知事選挙に突入いたしまして、そういう関係もあるのか、選挙前には住宅倍増計画であるとかなんとかということを勇ましくしゃべっております。しかし、実際問題としては、この大切な公営住宅というものに対する公共事業、これからどんどん逃避している。独立採算の企業体系に逃げていっておるわけなんであります。こういうことになるのも、特にこの場合、宅地造成あるいは住宅建築というものについて、超過負担があまりにも多過ぎるからそういうことになる。そして、いまや都道府県というものは、あとでも御質問申し上げたいと思っておりますが、たいへんな大きな機能の混乱を来たしておる。何でもかんでも企業会計に持ち込んでいく。そして公共事業からだんだんと逃避する、こういうおそるべき現象が実は出ているわけであります。私は、やはりこの際、超過負担の解消については、政府はいままでのような態度ではなくして、ほんとうに積極的に取り組んでいく。かりに地方制度調査会等が言っておりますように、あるいは先ほど大蔵大臣が言われたように、毎年二、三百億程度のものを解消しているということでありましょう。このことは私も認めましょう。しかし、それは解消ということばに当てはまらない問題であるということなんであります。なお、今日依然として、四十二年度においてはやはり手数百億になんなんとする超過負担があるわけであります。どんなに下回ったとしても、一千億を割ることは断じてありません。これはやはり各省が情熱を持って、熱意を持って処理していかなければいけない。どうでしょうか、総理、ぜひひとつ今明年にかけて超過負担はほんとうに解消する——いま地方自治体が、赤字団体が三百億か四百億かの赤字があるということを言っておりますが、これを解消するだけでも地方団体の赤字なんか吹っ飛んでしまう。しかもその原因が、当然政府措置すべき超過負担である。これをなぜやらないか、こういうことなんでありまして、これまた、ひとつ総理、あなた先ほどから気前よくずばりずばりと御答弁いただくので、この問題につきましても、はっきりと、解消するのだという決意をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  278. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 超過負担の問題は、これを解消すべく努力しております。しかしながら、長い間の問題ですし、また、広範にわたっております。そう一、二年でこれは片づけるというわけにもまいらない実情にございます。いまの御鞭撻をいただきまして、解消の方向に一そう進んでまいります。
  279. 坊秀男

    ○坊国務大臣 超過負担の解消の問題は非常に重大なる問題でございまして、ただいま総理からお答えがあったとおりでございますが、厚生省といたしましては、四十二年度におきまして、国民健康保険の事務費二百五十円を三百円に引き上げております。それから国民年金の二百円を二百四十円に引き上げております。それから保育所の保育単価を一〇%引き上げております。これによってある程度の軽減が行なわれたかと思っております。
  280. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いま厚生大臣からわざわざお出まし願って御答弁いただいたのでありますが、国民健康保険の事務費の問題、最初百五十円だったのが二百五十円になり、今度は三百円に持ってきた。それ自体たいへん大きな誤りをおかしておったということを物語っておる証拠だと私は思う。全額国庫負担でなければならぬもの、これこそほかの問題と迷いまして完全に解消されなければならぬものであります。それが二百五十円になった、そして今度は、ことしは三百円にした、来年は三百五十円。つまり、二百五十円でも百五十円でも足らぬからそこへ持ってきた、そういうことが明白になっておるのでしょう。それに対して措置しないで、ある程度解消いたしました、こう言っておるのであります。これはある程度で済まされない問題です。この問題は全額解消しなさい。(「五百円かかっているじゃないか、三百円にしても二百円足らぬぞ」と呼ぶ者あり)いま、あちらから声が出ておりますように、これこそ全額解消すべきだと思うが、先ほどわざわざお出まし願ったので、もう一度ひとつ御答弁願いたい。
  281. 坊秀男

    ○坊国務大臣 全額解消するようにと、こういうお話でございますが、保険の問題につきましては、先般来私が、この委員会ではございませんが申し上げておりますとおり、抜本的の改正ということを目ざして進んでおりますので、そこで私は慎重に検討をいたしてまいりたい、かように考えております。
  282. 阪上安太郎

    ○阪上委員 厚生大臣、抜本的とおっしゃるなら、そういう抽象的なことではなくして、この種の問題についてはこれは精算払いにする、そこまで持っていく必要があると私は思うのですが、もう一ぺんお答え願いたい。
  283. 坊秀男

    ○坊国務大臣 御承知のとおり、わが国の医療保険の制度というものは、今日非常に脆弱と申しますか、そういったものを露呈いたしておりますので、どうしてもこれを抜本的に改正をしていかなければならない、こういうことに相なっております。そこで厚生省におきましては、この抜本的改正を目ざしまして今日努力を続けておるわけでございますが、でき得べくんば、私は今度の政管健保の措置につきまして国会で御審議を願って、これを実現いたしまして、そうして全力をあげてこの日本の医療保険制度について抜本的の改正をやる、こういうことでありまして、今日その内容についてこれをどうしろ、こうおっしゃられましても、まだその結論が生まれておりませんので、この程度で御了承願います。
  284. 阪上安太郎

    ○阪上委員 抜本の構想を聞きたいところでありますけれども、時間の関係がありまして先に進みます。いずれ一般質問その他でお伺いしたいと思っております。  次に、国、地方を通ずる税外負担の問題であります。これも長い間問題となってきております。いろいろな父兄負担であるとか、国が当然やるべき仕事を地方公共団体に税外負担をさせておる、府県が当然やるべき仕事を市町村に負担をさせておる、市町村は持っていき場がないので住民に負担をさせておる、こういうような形で国、地方を通ずる税外負担というものが依然として解消されない。ここ二年ほど前までは、自治省でも一生懸命この問題を取り上げて、大蔵当局と果敢に決戦をいどんでおったようでありますが、最近どうしたことか、忘れてしまったのか、この問題は一向に取り上げてないようであります。一体、国、地方を通じて、現段階において税外負担は依然として残されておると思うが、この点についての内容をひとつ御説明願うとともに、特に国が当然やるべきことを地方に負担させておる、これらの具体例をひとつ出してもらいたい。あるはずだと思います。なければ私のほうから出してもよろしい。
  285. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 税外負担の解消につきまして何か私どもが不熱心なようなおことばでございますが、そうではないのでございまして、確かに阪上さんのおっしゃるように、軽減でございまして解消にはなっておりませんけれども、今後解消に向かいまして予算措置あるいは事業の実施等について万全を期してまいりたいと考えております。
  286. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まあ、税外負担の中で、当然国のやるべき施設に対して地方公共団体が負担しているものがたくさんあります。また、その中には、負担しかるべしだなんといって、平気でこれを容認している、自治省の認めたものもあります。私は、こんなものを含めて、やはりきれいさっぱり、これは税以前の問題でありますから、これは解消してもらいたいと思います。総理大臣、まことにお気の毒ですが、これを解消してくれますか。いつまでも長い間の問題です、大臣どうです。
  287. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう引き続き努力いたします。
  288. 阪上安太郎

    ○阪上委員 時間がありませんから端的に申し上げますと、次に地方債の問題であります。  変則的に出てまいりました特別事業債、これは今回政府の英断によりましてなくなりまして、先ほども言いましたように非常にけっこうであります。よく直して、これはなくしていただいたと思っております。しかしながら、その反面、地方債というものにつきまして、やはり特別事業債がなくなったからといって、地方債問題が解消するわけのものではない。地方債の元利償還等は年々累増いたしております。それから、やはり一般財源で措置されなければならぬようなものにつきましても、これが地方債の中にけり込まれておる。ことしも、たしか特別事業債のうち、昨年発行された千二百億円、そのうち九百億円程度のものは、これはひとつ解消して、三百億円程度のものは残しておく必要がある、こういうことになっておった。ところが、特別事業債というものの性格がよろしくない。それならば一般財源で措置すればいいのに、その三百億円に対して今度は地方債のほうにけり込まれたという実例がございます。そういうごまかしであっては私はいけないと思う。一体、地方債に対するところの政府考え方、ことに企業債のごときに至りましては、もっと自由を与えて、自由に起債をさす必要があろうと思う。依然として自治法の二百五十条でもって縛っておいて、当分の間といいながら、いつまでたっても地方債の自由というものを認めていこうとしない。一体なぜこれを認めないのか、大蔵大臣、自治大臣の御答弁を願いたい。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕
  289. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 前段の、一般財源でやるべきものを地方債に求めているということにつきましては、できるだけそういうことのないように、今後努力をしてまいりたいと思います。ただ地方制度調査会等でも、こうした地方債が、地域住民の福祉に直結した単独事業には充当さるべきというような御意見もあるわけでございまして、その点はひとつ御了承をいただきたいと思います。  それから、企業債等について自由な起債を認めたらどうかということでございますが、先ほど高田さんからもお話がございましたように、現在におきまして、国の国債あるいは民間の事業に充当される資金等、種々勘案しなければならない時期でございますし、また自由に認めるということによって、必ずしも弱小団体が十分確保できるかどうかというような問題もございますので、当分はやはり許可制度をとるのがしかるべしという結論を持っておるわけでございます。
  290. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま自治大臣が言われましたように、やはり許可制度を通じてでないと、富裕団体というようなところに偏在してしまうというようなことがあって、力のないところに必要な長期資金が公平に配分されないといううらみもございますので、やはり実情から見て、ある程度許可制度でもってこれを調整するよりほかないじゃないかと思っております。
  291. 阪上安太郎

    ○阪上委員 端的にお伺いしますが、それでは地方自治法の二百五十条でありますか、「当分の間」という——いまあなた方がおっしゃったような理由であるならば、「当分の間」ということばは当然はずされておってしかるべきじゃなかろうか、こういうように思うのです。なぜあれが当分の間ということになっているのですか、そこら辺のひとつ解釈をしてください。
  292. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 本来は地方債というようなものを自由に起債できるような方向であるべきだという本来の姿はあろうと思います。ただ、現在のわが国の経済情勢、特に資金情勢等からして、しばらくはこのままのほうがよろしいのではないかという考え方でございます。
  293. 阪上安太郎

    ○阪上委員 資金情勢と、こう言われるけれども、一体地方債の原資として考えられるものは何でしょうか。これはすべて地方でもって地方の住民が集めてきたところの金じゃありませんか。それを地方債に充当する。財源の都合、それは国の都合なんですね。地方自治体の都合じゃないということになるのです。かん夫年金の積み立てにしても何にしても、郵便貯金にしても、みんな地方自治体でもって住民が積み重ねてきたものじゃありませんか。当然地方債として地方に還元する原資とすべきじゃないか、原資論から言うならば。原資論と言うとおかしいが、当然これは地方債の原資としてしかるべきじゃないですか。私は、そういう考え方はおかしいと思う。したがって、依然として当分という考え方は、これはやはり当分であって、本来の姿に戻すべきだということについて努力すべきだと思うのです。いろいろごちゃごちゃ言いたいことはありますけれども、もう地方債としては、ことに企業債の自由などは許していいんじゃないですか。何をびくつくことがあるのですか。
  294. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、やはり現在のわが国の経済情勢、資金情勢というような、確かに本来の姿としては自由であるべきもの、しかしいま申し上げたような形から、やはりこれは当分の間ということでいくべきものだと考えております。
  295. 阪上安太郎

    ○阪上委員 またいずれゆっくりやりたいと思います。  最後に、財政問題としてお伺いしておきたいのは、道路財源、ことに市町村道路財源の問題であります。これにつきましては、もう建設省の道路五カ年計画から見ましても、今年あたりからは当然市町村道に重点が置かれなければならぬ、このように考えます。したがって、そのことのために、特に市町村の道路財源というものを確保してやらなきゃいけない、こういうように思うのであります。この道路財源の確保について、どうも政府考え方は、ことに大蔵省考え方は積極的じゃない、実はこういう印象を受けるわけであります。道路譲与税の配分をさらに市町村に対して大きく持っていくというくらいの措置は、してもよかろうと思うのであります。なぜこれをこの予算に税制改正とともに組まれなかったか、こういうことについて大蔵大臣から伺いたいと思います。
  296. 水田三喜男

    水田国務大臣 道路計画は策定いたしましたが、今後こまかい内容の策定をするときに、市町村道についての財源の配分というようなものも考えよう、関係省内でそういう相談の上で、いまきまってはおりませんが、将来検討する、こういうことになっております。
  297. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大蔵大臣、その場合、何でお考えになりますか。と申しますのも、税でお考えになりますか。ことに、最近地方自治体は自主財源が枯渇しておるのでありますから、したがって、財政のつじつまは合っておりましても、自主財源がない、こういうことなんです。また、こういうことをやりますと、超過負担に悩まされるという結果も出てくると思います。一体何でおやりになりますか。
  298. 水田三喜男

    水田国務大臣 道路計画の資金計画はどうせ立てられますので、その際に、市町村道路についての経費をどういうふうに配分するかということも、全体の道路財源というものをきめるときに一緒にきめよう、こういうことでございます。
  299. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その場合に、税でおやりになるかどうかということを伺っているのです。
  300. 水田三喜男

    水田国務大臣 道路財源は、御承知のように、一般会計からも持ってまいりますし、ガソリン税、特定財源もございますし、そのほかの財源もございますので、これらを配分するときに考えるということでございます。
  301. 阪上安太郎

    ○阪上委員 次に、過密、過疎対策について若干伺っておきたいと思います。  一昨年の十月一日の国勢調査、これによりますと、すでに御案内と存じますけれども、わが国の人口は五年の間にたしか四百八十六万ふえております。ちょうど愛知県一県に相当するだけの人口が急増いたしております。そしてこのふえた人口が、過般問題になっておりますいわゆる東海道巨帯地帯、メガロポリスに集中しておる。そうして三十五県におきまして、人口が減少を来たしておる。私は、この国勢調査の実態に基づいて、それから、なおまた国連等の見通しによりましても、いまのようなわが国の人口と産業の集中度合い、動態というものを考えていくと、今世紀の末には、わが国の人口はおそらく一億二、三千万になるだろう、そうしてそのうち約一億が依然として東海道沿線に集中するであろう、こういうような見通しまで実は持たれているわけであります。このままに放置すればそうなる、こういこうことでありましょう。そこで問題は、減ったところを一体どうするか、ふえていくところを一体どうするかという問題にしぼられてくる。これがやはり今後のわが国の政治に力強く反映されて対策が細まれなければならぬだろう、こういうふうに考えるわけであります。この場合、ふえたところには一体どういう対策をぶつけていくのか、いわゆる過密対策をどうするかという問題と、それから減っていく主として農山漁村、こういったところには一体どういう過疎対策をぶつけていくか、こういうことが大きな問題として提起されております。また、これらの問題に新しい課題として地方自治体がどう対処するかということは、大きな問題だと思います。この場合、総理からこの過密、過疎、国勢調査の実態に基づいてあらわれてきたこの現象に対し、どういうふうに政治にこれを反映するか、また、自治大臣から、これに対して地方自治体の立場からどう対処されるか、これらの点について大まかにひとつ御説明願いたいと思います。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過密対策、これは最近の傾向から申しまして、都市集中が急にとまるとも考えられません。今後十年ばかりこういう方向に進むだろう、都市集中の方向にいくだろう、かように思います。人口、産業、すべてのものが都市集中だ。ここで過密対策が、いわゆる都市再開発の問題として議論される。また、政府自身も都市再開発の問題としてこれと真剣に取り組んでおります。一方、この都市再開発とあわせて、過密都市の機能を地方に分散さすという計画をそれぞれ立てておるわけです。これがベッドタウンになったり、あるいは特殊地域として研究都市あるいは産業都市をつくる、こういうような方向で進んでおります。しかし、ベッドタウンをつくること自身またこれが問題でございますし、住宅を中心にしての交通整備、上下水道の整備等々、公共投資、これが先行しなければならない問題等にぶつかっておるわけであります。この過密都市の問題は、しかしながら比較的張り合いのある問題だと思います。これとちょうど対照さるべきものに過疎の問題がある。その方向はどんどん少なくなっておるのであります。政治の面から申せば、国内の調和のとれた開発の状態に置くということが望ましいのでありますから、この過疎地帯に対しまして適時適切な産業を誘致するとか、あるいはその人口の移動について、円滑なる移動方法ができるような職業の再教育等々の問題をやるわけでございます。しかし、特に農山漁村等におきまして、資源もまことに少なく、また人口自身もどんどん減っていく、こういう地帯にほんとうに適切なる産業を起こし、これによって開発するということはなかなかむずかしいと思います。最近は、いわゆる観光事業などが比較的こういう地方において共通して喜ばれるような事業でございますから、そういうものを中心にし、あるいはまた特殊な果樹栽培であるとか、高原野菜の栽培であるとか、あるいは木材等々の開発をするとか、それぞれ適当なものを見つけて、そして調和のとれた発展状況に国内を整備する、こういうことで努力しておる最中でございます。
  303. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 全体の計画としては、ただいま総理が仰せになったようなことでございます。基本的には、地方制度調査会にこの過密、過疎等の新事態に対処する地方財政上の方策を諮問をいたしておるわけでございます。  四十二年度には、特に大都市対策といたしましては、市街地再開発等の単独債の増加、あるいは地下鉄に対する補助、それから直接の問題ではございませんけれども、やはり財政の問題といたしまして、義務教育興の頭切りの是正、あるいは差等補助金の是正等をいたしておるわけでございます。また辺地につきましては、これはなかなかむずかしゅうございますが、しかし、行政水準を下げないようなくふうをいたさなければなりません。四十二年度につきましては、辺地債を認めますとか、あるいは交付税の傾斜配分をいたしますとか、そういうことによりましてできるだけ行政水準の低下を防ぐ処置をとっておる次第でございます。
  304. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いま総理からお話がありました、過密の事態に対しましては再開発でもってやっていくのだ、それから過疎地域については、これは地域開発で対処するのだ、こういうことであります。方向としてはけっこうではなかろうかと私は思いますが、要は、その事業をやっていくために財源の裏づけが問題となろうと思うのであります。新産業都市あるいは低開発地域工業開発促進法等に基づいて在来からも地域開発が行なわれておるわけでありますが、いろいろな問題点に遭遇いたしております。いろいろな難点も出てきておると思うのであります。たとえば立地すべき企業が立地しないというような問題もあります。立地したが、またいろいろな問題を起こしたというようなところもないわけではない。それから親企業がくることによって、企画庁あたりの構想でありました、その周辺の地場産業等が繁栄するのだ、遠心的な繁栄といいますか、そういったものを考えておったようでありますが、実態は、やはり親企業は子供を連れて現地に乗り込んでくるというようなかっこうで、期待はずれの状態も出てきております。また公害の発生も、新産都建設で直接に出てきた面もなきにしもあらずであります。いろいろな問題が出てきております。ところが、いずれにいたしましても、そういった開発を実施すべき場所は、県の財政その他から見ましてもこれは低いところであります。高いところはそういうことは必要ないのであります。低いところであるから、財政が非常に苦しいのであります。苦しいところでそういう事業に取り組んでいくということで、たいへんな苦労を実はいたしておるわけであります。そういったものに対する、あるいは近畿圏その他に対するそういう財政援助の法律もできておりますけれども、これはわずかなものであります。四十億か五十億のものでもってそういったものが達成できるわけでもない。財源問題を一体どうするかということが、非常に大きな問題だと私は思います。それから、そういった地域の開発の問題と関連して、その裏から出てまいりましたところの過密地帯の都市再開発、これはまた開発以上に金のかかる問題であることは、御案内だと思います。いずれにいたしましても、こういったものは、方向はけっこうでありますけれども、それに対して一体どう財源の裏づけをしてやるか、こういうことであります。  それと同時に、時間がありませんので大体言いたいことを言ってみたいと思いますが、最近地域開発の問題は、どうやら政府全体の雰囲気としては軽く扱われておる。そうして都市問題が急激に台頭してまいりましたものですから、目がそちらに奪われておる。せっかくかねや太鼓で大騒ぎをし、また地域の住民に大きな夢を与えたこの地域開発というものが、軽んじられておる、そして都市問題の方向に重点が進みつつあるということは、これは非常におそろしいことだと思うのであります。もしそういうことをいたしておりますと、第二、第三のむつ鉄問題みたいなものが出てくるおそれがある、こういうことだと私は思うのであります。この場合、ひとつほんとうに土性っ骨を入れて財源措置をしてやらなければいかぬと思うのでありますが、これに対する総理決意のほどをひとつ伺ってみたい、こう思うわけであります。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 過密対策、過疎対策、基本的には、阪上君が御指摘になりましたように、どうも過疎に対する地域開発のほうは力が入りにくい、どうも都市問題に集中しつつある、こういうことのようであります。これはごらんになったとおりの感じを私も持ちます。そしてなお困りますのは、これから都市再開発をいたしますが、この都市に集中しておる機関、産業等の分散計画を立てました際に、必ずその地域は比較的開発途上にある、こういう地域であるから、自治体の財政力も非常に弱い。そういうところへ新しく住宅団地をつくる。そうして公共投資を集中しなければならない。そこで、そういう地域は財政力が弱いのですから、特別にめんどうを見ない限り、非常な困難な状態に当面をする、こういうことになると思います。実は私、きのう三多摩地域に参りまして、各市町村長の話を聞いてまいりました。ただいまのように、東京都、これは過密都市だ、こういうところで、東京都の施設を地方に分散しよう、そういうので住宅団地をずいぶんつくっております。そうすると、そこらで一番困るのが、たとえば学校の問題です。学校をつくるのにどうしたらいいか。また最近の新しい団地でありますから、下水は一体どうするか。こういうような公共投資、これの負担に非常に困る。だから、政府が特別なめんどうを見てくれろとか、先ほども起債は自由にひとつできるようにしろというお話がございましたが、これなども起債でまかなうべき筋のように思いますが、こういうところにも、特に新しい計画を進める際に中央政府も十分思いをいたして、地方の計画が円滑に実施できるように努力しなければならぬと思います。また、東京の中心にあった工場、これなどが地方に移ってまいりますと、土地は非常に安いし、空気はいいし、全部の条件は整備されておりますから、東京市内で非常に困っていたものも、今度は非常に広大な地域で工場建設ができて、これは将来発展の期待ができるようになっている、こういうことであります。しかし同時に、従業員の足を確保していかなければならない。住宅の問題と、それからやはり通勤の足、これをひとつ考えなければならない。新しい問題が幾つも次々に起こるわけであります。それらのものが、多くは財源が適当に獲得できればこれをまかなえるようでございますから、いま御指摘ありましたように、新しい計画遂行については、中央政府も地方自治体も、これこそほんとうに一体となりまして、この資金の確保に努力すべきものだと、かように私も思います。
  306. 阪上安太郎

    ○阪上委員 どうかひとつ、何といってもこれこそ財源措置が十分に行なわれませんと、絵にかいたもちになってしまいますので、せひひとつ御努力願いたいと思う。ことに過疎地域に対しまして、これはひとつ見捨てないようにお願いいたしたい、このように思います。  さらに、この点について通産大臣おいでですから伺っておきたいと思いますが、例の慢性不況地域の開発、もともと地域開発の本筋だったと思うのであります。産炭地振興について、何か地域開発方式でこれを進めていくという考え方でどんどんやっておる向きがあるのでありますが、はたしてそれでいいかどうかの問題なんであります。  やはり地域開発に肩を並べてスタートラインを一緒にして出発するためには、それだけに体力がついてないとだめだと思う。出発点でもうすでに並ぶことができない。そういった産炭地振興等については、一応財政の傾斜配分等をやって、ある程度の地域開発競争に参画できる、スタートラインに並ぶことができるような体質までこれをひとつ改めさせて、しかる後地域開発と取り組んでいくという事前の措置が行なわれていなければどうにもならぬじゃないかという感じがするのであります。この点について、前々から私心配いたしておったことなんでありますが、効果があがらないと考えておった問題でありますので、ちょっとお答え願っておきたいと思う。
  307. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 産炭地振興の問題についてお尋ねがありましたが、御存じのとおり産炭地振興事業団というものをつくりまして、それぞれの産炭地の事業の振興のことに努力いたしております。何ぶんにも、交通の関係でそこらへ大規模の工場などを持ってくるということが現在では不可能でありますが、交通機関が発達すれば、いろいろ企業がそこへ集まってくると、こう考えておりますし、また現に産炭地地方で工場を持ってきて成功をしておるところもあるのでありまして、この産炭地域振興事業団によって産炭地の振興をはかりたい、こう存じております。
  308. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この問題については、またいずれお伺いいたしたいと思います。  ただ自治大臣にちょっとこの際申し上げておきますが、いま菅野さんからああいう御答弁いただいたのでありますけれども、やはり私は、何といっても体質を先に整えてやらぬと、とてもじゃないが、一般の地域開発方式でもっていきなりスタートするわけにはいかぬだろうということをやかましく言っておるのであります。その裏は何かというと、たとえば産炭地区等における地方公共団体に対して、もっと財源の傾斜配分をしてやれということです。ことに失対事業費であるとか、特別失対であるとか、あるいはまた生活保護費であるとかいうものについて、その増高に悩まされておるのですから、そういったものをやはり整えてやらぬと、いきなりスタートラインで並んで一般の地域開発に入っていけという考え方は、大きな誤謬をおかしていると私ははっきり申し上げていいと思う。これらの点については、自治省としてももう少し補完の役割りを果たしてやってもらいたいということ、これはもう御答弁要りません。そういうことで進めていただきたいと思います。  次に、やはりこの過密、過疎の問題として、地域開発と関連いたしまして、最近広域団体論がここ二、三年台頭してきております。これは、いつかも総理に私は府県合併法案が提出された国会において御質問を申し上げておる。きょうは、そのこまかい点については申し上げませんが、ただ一つ、最近経団連におきまして、府県を廃止して、そして道州制に持っていくという研究を進めて、八月までに結論を出すのだ、これは新聞に出たのでありますが、真否のほどは私十分に承知しておりません。けれども、われわれが前々から府県合併あるいは新産都の大同合併というようなものについては、その背後にいわゆる大企業等の、あるいは財界のそういう強い希望がある、それだけによって事を処理してはいけないということを前々から主張いたしておるわけなんでありますが、ことに府県を廃止して道州制に持っていくなどということは、これはもう明らかに私はいままでの経過を軽く見過ぎているのじゃないかという感じがいたすわけであります。あの場合の調査会の答申の中にも、地方制ということは問題になったのでありますけれども、同時に付随して、二、三府県の合併論というものも少数意見としてついておった。最近政府部内においても、合併か連合かというようなことでもってかなり論争が行なわれたことも私は知っておる。その背後が、ただ単に財界の一方的なものの考え方によってそういう形に持っていかれるということは、はなはだ危険であるというふうに指摘もいたしておったのでありますが、それがとうとう頭を出してきたように私は思うのでありまして、実はがく然といたしております。あの人たちが考えるようななまやさしい考え方で広域団体論が論じられては困るということなんであります。ことに、その理由といたすところは、最近の地方公共団体の運営がきわめて非効率である、こういうような理由がその中にあったように記憶いたしております。これは先ほどから論じておりますように、地方自治体みずからの責任もなきにしもあらずであるけれども、非効率なのは、その制度が悪いからだということを私どもは何かにつけて主張いたしておるわけなんであります。その制度を直さずして府県が大きくなったって府県じゃないか、中央のリモートコントロール、これをなくすことができるか、大きくなったって委任事務を廃止することができるかというふうな点で、われわれはこの合併問題に対して、広域団体論に対して非常に不満に思っておるわけなんであります。こういうやさきにこういう問題が出てきているわけでございますが、この問題については、総理もお答えしておったのでありますけれども、道州制に持っていくという考え方はないということを明確にされておりました。経団連がこういう動きをいたしましても、はたして総理は、これに対しやはりそういうところへ持っていくのじゃないといまなおお考えになっておるかどうかを明確にしていただきたいと思います。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は考え方が変わっておりません。ただ、いまの広域行政で調査会等の答申は、県と市町村、この二段階の組織、これはやっぱり存続すべきだと、こういうことを言っております。また広域だといっても、つまり仕事によりましてもっと広域で処理すること、たとえば水の場合、道路等の場合に当然考えられるのですが、そういう事柄がありますので、この市町村の合併ばかりじゃなく、府県におきましても合併論が台頭しておる、こういう事柄にはやはり善処すべきものだろう。しかし、もちろんそれは法律が要ることですから、政府だけでこれはきめるわけじゃございません。いずれ、そういうものが出ましたら御審議をいただきたいと思います。
  310. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まだ変わってないと、こういうことであります。けっこうだと思います。なお、広域行政につきましては、われわれは広域行政を否定するものじゃありません。ただ、団体論として問題がある、こういうことを言っておるわけであります。その場合、広域行政を処理していく広域団体として何が考えられるか。共同処理の方式もやはり一つの方式だと、こういうことであろうと思うわけであります。府県合併につきましては、またいずれ御質問申し上げる機会もあろうと思います。  次に、やはり広域行政と関連いたしまして、あるいは過密、過疎と関連して、最近都道府県の機能が混乱しているということであります。先ほどもちょっと触れましたが、政府の機関である公社、公団があるわけなんです。たとえば住宅公団にいたしましても、住宅金融公庫にいたしましても、それと同じような仕事を府県が重ねてやっているというこの問題であります。御案内のように、最近では知事公選の関連もあろうかと思いますけれども、どうも何でもかんでも府県が市町村まで出張ってきて、実はめんどうを見ているようなかっこうでもって府県直轄の仕事をやっていくという悪いくせが出てきておる。府県は、御案内のように三つの機能を持っております。一つは調整機能であり、いま一つは広域機能であり、そして最後の忘れてならないのは市町村の補完の機能だと思います。ことに都制が廃止されてから、ストレートに今度は府県が補完行政をやらなければならぬ。この機能がなくなれば府県の存在価値はないとまでわれわれは考えるわけなんであります。ところが、どうしたことか、補完広域に名をかりまして、実態はどちらかというと逆の方向を歩んでおる。もし現在のように、たとえば大阪における千里山団地というような大規模住宅団地がありますが、これに対して分譲住宅を建ててみたり、あるいは独立採算でもってやっておる。しかしながら、一向に公営住宅と取り組んでいかない。公共事業である府県本来の任務としてやらなければならぬ住宅、これとは取り組もうとしないでもって、そして公益事業、そういったものにきわめて無批判に走っておる、こういう状態であります。もしああいうものをやるならば、なぜ公団にまかさないか、われわれそう言いたいのであります。総理は低家賃の住宅を大いにふやしていくのだ、こういうことであったようでありますけれども、ああいう形でもって府県が今後ともどんどんと企業と取り組んでいく、はたしてこれが府県の機能であるかどうか、こういうことなんであります。基礎的地方公共団体である市町村が、たとえば卸売り市場を開設するとか、あるいはその他の公営企業をやるとかということについては、われわれとしては当然だとは思いますけれども、ああいった中間団体がそういうところまで入っていいのかどうか、それもしかも当然のことのようにやっておる。その気持ちはわからぬでもない。超過負担がどんどんふえていく、そんなことでは、公共事業としてやっておったのでは持ち出し財源がだんだんと重なってきて、単独事業がやれないというような気持ちもその底にあろうと私は思う。しかし、いずれにいたしましても、そういった方向の企業に流れて、結論としては、公社と公団との区別がつかないということと、いま一つは、公共事業から逃避しておるということ、これは重大なことだと思う。これについて自治大臣、総理大臣考え方をひとつ伺っておきたい、こういうふうに思います。
  311. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいまお話のような傾向が見られないではないわけでございます。本来は地方団体の事業として行なうべきが本来でございます。ただ、財政関係その他がありまして、ただいま気持ちはわからないではないという仰せでございますが、まさにそのとおりで、住宅の需要等の非常な膨大なものがある、それに対処するために、単に地方団体の事業として行なっただけでは十分その需要が満たせないというような事情からそういうことが行なわれておるわけでございますが、それが無反省に行なわれるということは確かに好ましくないことでございまして、できるだけ地方公共団体の事業として行なうよう、一般会計でそういうものを行なうような指導をいたしてまいりたいと思います。ただ現状につきましては、十分御認識をいただいておりますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  312. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの藤枝君の答弁で、もう私からお答えしなくてもいいかと思いますが、ただ一、二の点で、府県が補完的な行政をする、こういうことを言われます。ちょうどいまの住宅の問題などは非常に緊急な問題だ、こういうことで、国のやる公社、公団へまかしたのではどうも少しおそいという、そういうような意味で府県も補完的な類似のことをやるのだと思いますが、しかして、これが御指摘になりましたような非常な弊害をかもす、公社のものは一切断わるとか、あるいは公営のものは一切やらないとか、こういうようなことがありましてはこれはたいへんだと思いますので、実情に即して、そこらはうまく調和をとっていきたいと思います。ただ、府県が中間団体か、あるいは市町村が基礎的な自治体か、こういうようなところにはいろいろ議論があるだろうと思いますが、これは今日はその議論は預からしていただきまして、ただいま申し上げるように補完的な機能、とにかく矛盾しないように、全体が調和してりっぱな福祉の向上に努力するようにいたしたいものだと思います。
  313. 阪上安太郎

    ○阪上委員 公社、公団。今度も臨時行政調査会の答申があったにもかかわらず、緊急やむを得ないということで、五つばかりできたようであります。ことに住宅関係等におきましては、御案内のように逆に府県の権限というものを侵すおそれも十二分に出てきている。ここのところもひとつ反面考えておいていただかなければならぬ問題だ、こういうように思うわけであります。府県が公社、公団の新設を拒む理由はもうすでに各位御了承のとおりだと思います。かってにやってきて、そしてあと都市計画その他は自分でやらなければならぬというあと味の悪いことをやるものですから、これはまた拒否していこう、その結果が、本来私はそんな機能を発揮すべきでないと思うそういう公団と同じような性格の建設を、またやっていくというような悪循環をたどっているのではなかろうか、こういうように思うわけであります。これはとくとお考えを願っておきたいと思います。  それからこの問題と関連をいたしまして、万博関係であります。これはもうオリンピック大会と違いまして国の仕事であることは明らかであります。ただこの場合、私はどうも解せないというのは、たとえば今回の万博におきまして、会場用地のごときに至っては全額国庫が持って、そして国のものとして将来にこれは長く残すべきであろう、こういうように考えておったのでありますが、どうもこの点については、地元の自治体等においてもそれは望まないというような気分が出ておる。そして何か補助金三分の二もらって取得して、そしてあとは、あと地利用としては、端的に言えば売り飛ばして何か一もうけして、そして財源を確保していくのだというような考え方がなきにしもあらずだ、私はこういうように思う。二十世紀の文化をあそこに温存しておくということはきわめて大切な事業じゃないかと私は思うのだけれども、これが、もしそのようなことで、もってこれを買い上げるというようなこともなくして進んでいきますと、ばらばらに切り売りされてしまうというおそれも出てこないことじゃない、こういうように思うのであります。ことに財源が枯渇しておって、それだけ三分の一財源を継ぎ足していくと、そういうことになると思うのであります。そういうことは好ましくないと思うので、これは国庫で買い上げるべきだと、いまだに私は主張いたしている。これについて担当大臣通産大臣のひとつお考えを聞きたい。
  314. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 万国博覧会の敷地の問題についてお尋ねがありましたが、さしあたり大阪府が土地を買収しておるのでありまして、あと地をいかに利用するかということによって、このまた土地の処分問題が起こってくると思います。いままだあと地をどういうように利用するかということが決定しておりません。このあと地の利用のいかんによって、土地の問題もまた考えられる、こう考えております。
  315. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いまの万博のあと地利用がきまらぬで、そして事業に、すでにくわ入れ式をやった、こういうことなんであります。しかも、まだ未買収の土地もある、こういうことであります。あまりごちゃごちゃしたことは言いたくありませんが、できるだけわが党といたしましても、万博は推進したいと考えておりますから、よけいなことは言いたくありませんけれども、いま通産大臣がおっしゃったように、そういう未定のままでどんどん進められていくことが、それ自体将来の切り売りも出てくる可能性もあるということなんであります。これは非常に注意をして対処していただかなければならぬ問題だ、このように考えるわけであります。  次に、私、たくさんありますが、もう時間もきておりますので……。ただ、高田君の時間、二十分ほど余っておりますから、それをちょうだいいたしまして、次に、国の重点施策と地方財源の問題でありますが、この住宅事情につきましてはいろいろと問題点があろうかと思います。世帯数とかあるいは住宅数の動態、住宅水準の問題、住居費の問題、あるいは農村におけるところの建てかえ住宅の問題、あるいは都市における、例の文化住宅と称しておりますけれども、これは非文化住宅である、スプロール現象を起こしておるこれらの問題、いろいろあります。時間がありませんのでこれは省略いたしますが、ただ一つ、住宅建設五カ年計画、この中で私が承っておるのでは、当初、四十五年までに一世帯一住宅というところへ持っていくためには七百六十万戸が必要である、こういう計画が出され、それが手直しされて六百七十万戸と、こうなったわけであります。七百六十万から六百七十万に手直しされた理由をひとつ承りたいと思います。建設大臣から伺いたい。
  316. 西村英一

    西村国務大臣 住宅五カ年計画をつくる場合の世帯数と住宅の戸数の問題ですが、それをきめる場合に、大体四つの要因から推定して決定いたしたのでございます。その第一の要因は、昭和四十五年におきまして世帯がどれだけふえるかという問題、それから第二の問題におきまして住宅の不足の戸数はどれだけか、第三は、災害その他で失われる住宅はどれだけであろうか、第四の問題としては、やはり人の移動を円滑にするために多少の、三%ぐらいの余裕を持ちたいというような、四つの要因できめられたわけでございます。そのうちでもって一番大きい要素を占めるのはこの世帯数の問題でございまするが、一世帯の構成を考える場合に、現在の六百七十万戸としたのは一世帯三・八人という計算でやったのでございます。そういうことになっていますが、それを三・七にやるべきではなかろうかということが初めからいろいろ議論になっておりまして、三・七人でやりますというと、いま阪上さんのおっしゃいますように七百六十万戸になり、三・八人でやると六百七十万戸になるのでございまするが、最終的決定は、いま言いましたような要素で六百七十万戸ときめたのでございます。したがいまして、この計画に基づきまして政府がこれを円滑に進めていけば、四十五年におきましては一世帯一住宅の確保ができる、かように思っておる次第でございまして、そのいきさつはさような次第でございます。
  317. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこでさらにお伺いいたします。しからば建設省が現在持たれている住宅五カ年計画、その中の計画の一番基本になる普通世帯数——これは普通世帯ですね。普通世帯数だと思いますが、それはどういう数字をとられたのでありますか。これは時間がかかりますからこちらから言いましょう。たしか全国普通世帯数というのは、住宅統計調査か何かから出してこられたのではなかろうかと思うのであります。それが証拠に、国勢調査は四十年、一昨年でありますから、この普通世帯数はたしか二千三百十二万世帯と、こう出ておる。そうして五カ年間にこれが三百四十四万世帯普通世帯はふえておるわけです。非常に急送な速度で、一七%以上でありましょう。人口は五・一%か何かの増でありますけれども、世帯数はものすごくふえておる。これは細分化の傾向が出てきた。そして昭和四十年におきましては、普通世帯における人員構成は四・〇五人、大体四人世帯、こういうことになっております。そして過去の例からいいましても、これは非常に急速に細分化されていく、こういう結果が出てくると思うわけであります。したがって、一つ聞きたいのは、一体どこにその世帯数の数字の拠点を設けられたかということ、それから国勢調査人口をなぜ採用されなかったかということ、人口世帯数をなぜ採用しなかったかということ、それからそれを基礎として考えていくならば——先ほど、だから長期の見通しも伺っておるわけなんです。何も国連の調査まで出す必要もなかったと思うのですが、どんどん細分化されていく。ところが、聞くと三・八人世帯でもって計算してやった、こういうことで七百六十万戸が六百七十万戸になった、こういうことでありますが、はなはだこれは解せない。四十五年度にそんな状態であるとはわれわれ考えられない。どういうことでそういうことをおやりになるか、どこへそれを合わせていかれるのか、これを伺いたいと思うのです。
  318. 西村英一

    西村国務大臣 大体この計画は三十九年から四十年度ぐらいの間でもっていろいろ数字をやりまして、四十一年度にこの五カ年計画が確定したのであります。したがいまして、いまの一世帯の人数を何人にとるかという問題は、国勢調査といたしましては、三十五年の第九回の国勢調査の結果があるのみであります。そういう三十五年からずっとたどってきまして、そうして引き延ばしたところで、四十五年には三・八人ぐらいになるだろう、こういうことでありまして、最近の国勢調査の数字なんか、そのときにはわかっておりませんので、使えなかったわけであります。
  319. 阪上安太郎

    ○阪上委員 四十一年度から出発する計画が、四十年十月一日に行なわれた国勢調査の人口、これを採用することができなかったということは一体どういう意味なんですか。そんな作業は、あなたすぐ手直しするのだから、大蔵省の都合か財源の都合か何か知らぬけれども、すぐ手直しなさる。そのくらいの手直しはできるでしょう。
  320. 西村英一

    西村国務大臣 第十回の国勢調査は四十年ですから、そのときはまだ世帯の人数なんかわかっておりません。
  321. 阪上安太郎

    ○阪上委員 昭和三十五年の国勢調査で、そのときの世帯構成は四・五四、こういう結果になっております。そうして四十年の結果ではこれが四・〇五であります。普通世帯は四・〇五になる。この細分化の傾向というものは非常にはなはだしいのです。四十年の十月一日のものがわからぬという理屈はないはずですよ。ですから、ばく大な金を使うて全国的に調査をやって、これを直ちに国政に反映させなければならぬということは、私はもう当然のことだと思うんだけれども、それを四十五年一世帯一往宅六百七十万戸と、こういうふうにきめて、それでどんな手段でやるか知らぬけれども、まさか人を殺して世帯数を減らすわけにいくまい。どういう形でこれを持っていくかということはきわめて大切だと思うのですが、見通しはやはりずっと統計に基づいて出していかれたらどうかと思うのです。こんなに明確な傾向が出ているのです。それを取り上げないで、何か依然として古色蒼然たる住宅統計調査など、そういったものにたよっているということはおかしいじゃないですか。そういうことをやっておりますと、国民をだますことになりますよ。もう一ぺん御答弁願いたいです。
  322. 西村英一

    西村国務大臣 四十年の国勢調査の結果が出ましたのは、四十一年の十月ごろに集計して出たのであります。四十年に国勢調査を終えて、すぐ統計が出るものではございません。五カ年計画の決定は四十一年の七月にしたのです。その前にしたのでございまして、そういうことになっておるのでございます。
  323. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それならば、四十二年度になぜ手直しなさらぬかということです。おかしいじゃないですか、それは。どうして手直しなさらないのですか。
  324. 西村英一

    西村国務大臣 この世帯数でやりまして、今度の五カ年計画は第一次五カ年計画でございますから、四十五年に再び、——この住宅の不足とか、あるいはまた世帯数がふえますから、第二次五カ年計画を引き続いてつくるのでございまして、途中においてこの計画を修正することは好ましくないと思います。もし不足数が生じましたら、第二次の五カ年計画というものを四十六年からやはりつくるわけでございまして、途中で変更することは私は好ましくないと思います。
  325. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういう理屈もあるいは出てくるかもしれない。しかし、常に政府は何々五カ年計画と出す場合に、新何々五カ年計画というやつを年度の途中でもやるじゃありませんか。いままでやっておるでしょう。何回かやっておるじゃないですか。そのほうがやはり国民を納得させることができるし、忠実じゃありませんか。おかしいじゃないですか、それは。
  326. 西村英一

    西村国務大臣 ほかの五カ年計画というようなものは途中でやはり改定することはあるが、この五カ年計画は法律でも五カ年の間はそのようにしておいて、やはり今度はそのときになって世帯数の増加その他に応ずるために引き続いて次の五カ年をまたきめるということに法律のたてまえはなっておるのでありまして、途中でもって改定することは好ましくないと思っております。
  327. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そういうところに、やはり国民に対する愛情が欠けておるのですよ。それはやはり全部が一年度に満たされるわけじゃないでしょう、住宅というものは。みんなのどから手が出るほどほしいのじゃありませんか。一日も早くほしいのじゃありませんか。そういうことを考えたときに、そういういまのような御答弁では私は納得しません。そうでしょう。住宅だけは五カ年ごとにやらなければいけないのだ、ほかの計画は、新環境衛生五カ年計画であるとか何であるとかいうふうにして、途中で手直ししてもいいけれども、住宅はやらないのだという理屈にはならないだろうと私は思う。おかしいじゃないですか、あり余った住宅じゃないじゃありませんか、どうなんですか。
  328. 西村英一

    西村国務大臣 私がさいぜんから申し上げたとおりに、第二次の五カ年計画を四十六年でまたこれからつくるのですから、もちろん住宅を進めなければならぬことはあたりまえでございまするけれども、それじゃ、一年の間に全部急速につくれといっても、それは財政その他いろいろな制約がありますから、そういうふうにはいかないと思うのでございまして、引き続いて四十六年から第二次五カ年計画をつくって応ずるのでございまして、途中ではどうかと私は思っておる次第でございます。
  329. 阪上安太郎

    ○阪上委員 どうでしょうか、この問題について、五年先でまた計画の練り直しだ、こういうことを言っておられますが、やはりできるだけ、たとえ五千戸でも一万戸でもよけいに実態に即して充足してやるという考え方のほうが私は正しいと思うのですが、総理大臣、どうでしょうか。
  330. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 住宅問題は、大蔵当局の財源が許す限りにおいて、たくさん早目につくるようにこの上ともいたすつもりでございます。
  331. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あと、土地問題その他触れたいのでありますが、時間がありません。あまりがんばるのもどうかと思います。  最後に、一つだけ伺っておきたいと思いますが、宅地の造成、取得、それから公営住宅建設であります。政府計画によりますと、六百七十万戸を四分六でもって、四割が政府施策住宅で、六割が民間実施住宅である。民間実施住宅という問題については非常に大きな問題があるとわれわれ考えております。やはりできるだけ公営住宅主義でこれは進めてもらいたい。そうしませんと、いま人口と産業の過度に集中しておるところの大都市と大都市周辺のスプロール現象というものは、私はなくすわけにはいかないと思う。これはやはり民間実施住宅に大きなウエートを持たせておりますと、ああいう住宅が次から次に建っていく、こういうことになろうかと思います。この点についてひとつ手直しして、民間実施住宅を四割程度、それから政府施策住宅を六割ぐらいまで持っていって、その中で特に公営住宅に重点を置いてやっていくというふうに手直しをする必要があろうとわれわれ考えるわけであります。そのことによって都市周辺のスプロール現象というものが解消されていくであろう、こういうふうに考えるわけであります。水道もくれてやらない、何もくれてやらないというような、そういう制裁だけでは、とてもあのスプロール現象は是正できないだろうと思います。それもこれも公営住宅主義が不徹底だからそういうことになるのだろう、そういうふうに考えるわけです。  それから、宅地の造成も民間に多くまかせ、公団にまかせておりますけれども、しかし、これらの点につきましても、やはり地方公共団体がどんどんと先行投資をやって宅地造成をやれるような状態に持っていってやることが非常に大切であります。この場合、そういった土地先買いのためのいろいろな予算要求がなされておったのでありますが、これは全部削られたようでありますね、大蔵大臣。これではとてもやり切れません。もっと公営住宅主義に徹していく必要があろうと思う。そうすれば、先ほど言った府県のああいった問題も解決するのではないかと思うし、いま言ったような問題も解決すると思いますが、これに対する総理のお考えを最後に承っておくことにいたしたいと思います。やりかえる必要はないかということなんです。
  332. 水田三喜男

    水田国務大臣 第二種住宅が公営住宅の中で占める比率六割、これは別に縮めたこともございませんし、今度の予算もそのとおりにやっております。これはそういうふうになっております。
  333. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が聞いているのは、公営住宅の中でも、第一種、第二種の問題についても、大蔵大臣あなた御存じないかもしれないけれども大蔵省の否定では、一種住宅のほうは別に建設省が希望していなくてもよけいふやして、二種住宅をもっとふやしてくれという要求に対して——建設省では何か第二種住宅建設三カ年計画か何か持っていたのです。ところが、おそらくそれは補助金の持ち出しが大きいので、一種住宅なら二分の一、二種住宅なら三分の二持たなければならぬので、そこで財政上の見地から、低所得者に対して最も必要である二種住宅のほうをあまり伸ばさぬで、伸ばしてくれなくてもいいといっている一種住宅のほうを伸ばしたり何かしているのですよ。  そこで、その問題はきょうは論じませんけれども、ぜひひとつ、いま申し上げました土地の先行取得のための財源措置とかいうものについては、この際ほんとうにやらなければだめですよ。何をやるにしたって公共事業は土地じゃないですか。それに対して、地方公共団体等が土地を取得するために必要な資金というものを考えてやらぬということであっては、これはもうほんとうに公共事業なんというのは、いつまでたったって消化し切れないと思うのですよ。ことに住宅の場合には、そんなことをやっておったら消化し切れません。なぜそれをおやりにならぬのですか。
  334. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地方公共団体が先行取得をする場合、本年度から特に六十億の起債ワクを設けまして、これの実施状況を一年間調査をいたしまして、さらに施策を加える必要があれば、それは今後の問題として解決したいというようにいたしております。
  335. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自治省等から要求された取得の資金の要求というものはもっと大きなものであった。その程度では、これは私はだめだと思う。まあ、いずれにしても土地取得のためには資金量は不足であります。  きょうは、大体これで終わりたいと思います。あと交通問題、公害問題が残っておりますけれども、いずれまたあとの機会に御質問いたすことにいたしまして、きょうは終わります。(拍手)
  336. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  次会は明二十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会