○山田耻目君 私は、
日本社会党、
民主社会党、公明党、三党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和四十二年分の
給与所得等に係る
所得税の
源泉徴収の
臨時特例に関する
法律案、並びに
期限の定めのある国税に関する
法律につき当該
期限を変更するための
法律案につきまして、
反対の
立場を表明する
討論を行ないたいと存じます。(
拍手)
まず初めに、
昭和四十二年分の
給与所得等に係る
所得税の
源泉徴収の
臨時特例に関する
法律案について申し上げます。
この
法律は、本年四月一日から五月三十一日までの間に支払われる給与等及び退職手当等にかかる
源泉徴収について、
減税の効果をすみやかに及ぼすため、
所得税法の特例を定めたものであります。
今回の
課税最低限の
引き上げは、初年度七十一万一千八百九十九円、平年度七十四万円
程度のものでありまして、全く低きに失するという感を深くいたすのであります。
昭和三十五年に三十三万円でありました
課税最低限が、
昭和四十一年の現行
税制で六十三万円となり、年平均五万から七万の
引き上げが行なわれてきたのであります。
昭和四十二年の初年度七十一万一千八百九十九円は従来の傾向をそのまま引き伸ばしたにすぎないのであります。むしろ、相次ぐ
物価の高騰は、
物価調整減税といった形でなされる
減税を一挙に打ち消すものであります。昨年の有史以来の大
減税といわれました三千億余の
減税も、米価、医療費、鉄道料金などの公共料金の
引き上げで吹っ飛んでしまったというのが
現状であります。
昭和四十二年度は、
政府の
景気観測も、不況を乗り越えたと見ており、税の自然増も五千億
程度という予測を立てておるようであります。われわれは、この際、上げ足りぬ
課税最低限を
引き上げるべく、
社会党、
民主社会党、公明党、
野党三派は協力をいたし合いながら、本年度より百万円の
実現を強く要望いたしてきたのであります。(
拍手)しかるに、大蔵大臣は、
関係委員会の
答弁におきまして、可及的すみやかにということで、この中身は
昭和四十五年度を目途にいたしておると言われておるような実態でございます。このような考え方は、従来の傾向をそのまま引き伸ばしたといたしましても、
物価調整、自然増の影響から当然に到達する金額であるといわなければなりません。(
拍手)ここには、勤労
国民を大切にする
政治も
政策も見つけ出すことはできないのであります。
大蔵省が試算いたしました一人一日の
生計費は二百五円でございます。一食六十八円では、どうして生きて働いていけるでございましょうか。われわれは、こうした低きに失する
課税最低限度のあり方に対して、
根本的に
反対の意向を表明いたします。(
拍手)本法施行の際に、この問題はあらためて
検討しなくてはなりません。人権に関する緊急な
政治課題であるからでございます。
四月一日にさかのぼって実施をする期日繰り上げ
措置並びに退職金課税軽課を五百万まで免税するということにつきましては、本来わが党や
野党三党が今日まで強く主張してきた事柄がようやく
実現をいたしたものでございますだけに、不満を申し上げるつもりはございません。
次に、
期限の定めのある国税に関する
法律につき当該
期限を変更するための
法律案につきまして、
反対の
立場を明らにしていきたいと存じます。(
拍手)
この
法律案の
趣旨は、
租税特別措置及び関税
暫定措置のうち、
昭和四十二年三月三十一日で
期限の失うものを五月三十一日まで
延長しようとする
内容のものであります。
そもそも
租税特別措置は時限立法であり、
期限が来ればよほどの効果が
期待されない限り廃止されなければならない性質のものであります。(
拍手)だからこそ、
税制調査会においても、税負担の公平の
原則を阻害し、税本来のあり方である総合累進構造を著しく弱め、納税者のモラルに悪影響を及ぼす結果になるので、すみやかに整理、改廃を行なうよう、幾たびか答申を出しておるのであります。いまにして直ちに改廃に踏み切らなければ、税の公平負担の
原則の破壊はもとより、既得権化の
方向は年ごとに強まっており、政界、
財界の相互の誘引は、日本の
民主政治を毒する黒い霧の温床となる様相すらうかがえるのであります。(
拍手)
これらは逐年増加の一途をたどる減収額の増大の中に立証することができるのであります。
特別措置による減収総額は、
昭和三十七年から
昭和四十一年に至る五年間で、一兆十九億の巨額にのぼっておるのであります。そのうち、税調も指摘をしております。問題の多い
利子配当所得などを中心とする貯蓄の奨励の項は、何と五千六百六十九億円で、全体の五六%を占めているのであります。
国民は
物価高と重税に悩み、夫婦、子三人で七十一万一千八百九十九円の
課税最低限しか保障されない多くの勤労
国民に引き比べまして、同じ
標準世帯で二百十五万円まで非課税となる
利子配当所得者に対する
優遇措置は、もはや何としても許される段階ではないのであります。(
拍手)税負担公平の
原則を侵すことを、例外的に認めての
特別措置でありますだけに、その効果が
国民に認められ、納得されるものでなければなりません。その効果も念査の方法も、あるようでないようで、いつも答えられないのが大蔵省当局自身ではありませんか。
少額貯蓄の
減税分は本年度四百億でございますが、一人一口百万円まで無税のこの
措置は、
国民大衆の零細貯蓄の奨励といいながら、調査を進めるに従いまして、高額所得者が二口も三口も架空名義や匿名で脱税をはかるものが、全体の一割の抽出調査の中で一五%を占めている事実は、まさに高額所得者の脱税奨励
措置になり下がっているといっても過言ではないのであります。(
拍手)なぜこのような
国民不在の悪法が
延長され、存続されなければならないのでありましょうか。
聞くところによりますと、本
措置が
延長決定に至るまでの
政府・自民党の
態度は、まことに不明朗そのものでございました。昨年十一月の末に、大蔵省は
税制調査会に対して、
利子、
配当所得の
優遇措置は、段階的に廃止、一年継続で廃止、存続と三案を提示をいたしております。当然、
財界や高額所得者に与えたろうばいぶりは目に見えるものがございます。あるいは予期した大蔵省の計算であったかもしれませんが。十二月十七日、自民党の福田幹事長は経団連の植村副会長と懇談を行ない、
国民協会への
政治献金の倍増を要請いたしております。十二月二十日、経団連は
政治献金倍増を応諾、同日、自民党政調会に証券小委員会を設置しており、福田証券業協会連合会長が自民党に招かれ、党と大蔵省は株式配当収入に対する
優遇措置を据え置く意向であると、新聞に伝えられておるのであります。(
拍手)この伝えられた
優遇措置とは、
租税特別措置法第八条の四に規定されておる、一銘柄五万円以下の
配当所得については、
昭和四十年一月一日から
昭和四十一年十二月三十一日までの期間、確定申告を要せず、また会社の支払い調書を税務署に提出しなくともよい、こういう規定であり、
昭和四十一年度に百六十億の減収が見込まれているものであります。
この規定の
期限は、昨年末で失効しているものでありますから、
昭和四十二年一月一日以降に支払いの確定する
配当所得については、当然
所得税法の規定により、総合課税されなければならないものであります。ところが、国税庁長官は、
昭和四十二年一月十日付で通達を発し、
昭和四十二年一月一日以降に支払いの確定する
配当所得についても、さしあたって何ぶんの指示があるまで従来どおりに取り扱うよう指示を出しておるのであります。まことにけしからぬ通達でございます。(
拍手)租税
法律主義の
原則に反し、法の
趣旨を恣意的に
拡大解釈したものであり、違法といわざるを得ないのであります。これらは明らかに
法律により行政を行なう原理に反し、義務違反に問われるべき性格のものであります。しかるに、これらの行為を隠し、ただいま
議題になっております本
法律案の
成立を予測し、同法附則第二項で、通達を追認する
措置をとろうとしておるのであります。一たん失効し、消滅した
措置を
延長しようとするものであって、適法の
措置とはどうしても認められないものであります。
大蔵委員会は、昨夜おそくまでこの問題についての取り扱いを論じ、次のごとき
態度を大蔵大臣並びに国税庁長官より明らかにいたさせたのであります。
今回の
法律の提案は適切でないので、今後は、
期限に
関係のある
法律については
期限の前に改正の手続をとる。なお、国税庁長官の出した通達については、行政上の行き過ぎである。このことを認め、遺憾の意を表するという
趣旨のものであります。
以上述べてまいりましたように、
利子配当所得など一連の
優遇措置については、
期限の
延長はもちろん、本法存続の意義を見出すことはもはや困難であります。すみやかに廃止することこそが、
国民の納税のモラル低下を防ぐことにもなり、
政府・自民党と
財界との間にと
かくのうわさをかもし出す黒い霧の根源をも打ち消すことになるのでありまして、
国民の
政治信頼を取り戻す転機になろうかとも存じます。
昨年三月三日、本議場におきまして、本問題に関する私の質問に対し、佐藤総理は、謙虚に
検討することを約束されました。私は、郷土の大先輩であり、
政治家としての佐藤総理の良心に心から呼びかけて、すみやかに本
措置が廃止されますように、きびしく要請をいたし、三党を代表する
反対討論を終わりたいと思います。(
拍手)