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1967-03-17 第55回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月十七日(金曜日)     —————————————  議事日程 第五号   昭和四十二年三月十七日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑                  (前会の続)     ————————————— ○本日の会議に付した案件   国務大臣演説に対する質疑                  (前会の続)    午後一時十八分開議
  2. 園田直

    ○副議長園田直君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑                  (前会の続)
  3. 園田直

    ○副議長園田直君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。川村継義君。   〔川村継義君登壇〕
  4. 川村継義

    川村継義君 私は、佐々木委員長のあとを受け、日本社会党を代表いたしまして、当面、国民の期待しているであろう若干の問題について、政府の所信を伺いたいと存じます。(拍手)  まずお伺いいたしたいのは、景気の見通しと公債政策についてであります。  総理は、施政方針で、「経済がいたずらに拡大し、再び過熱の弊を招いてはならない、安定発展を維持するように運営したい。」と述べられた。当然のことであります。大蔵大臣は、「昨年発足した公債発行を伴う新財政政策は、幸いにして、その効果をあらわし、すでに不況は克服され、経済はすみやかな拡大過程をたどるに至った。昭和四十二年度の財政は、経済に刺激を与えて、景気の行き過ぎがないように運営する。」と述べています。これらの発言には、景気過熱傾向を警告する経済学者の意見等に照らし、過熱促進の要因を予想しているものが感じられる。現に、宮澤企画庁長官は経済界の会合で同様の発言をしているし、さきの閣議でも問題となったと聞いている。政府が昨年公債発行政策に踏み切ったときの弁明は、不況対策として、財政面からの景気刺激にあるということであった。前福田蔵相も答弁しているように、「不況が克服されれば、公債発行は縮小されるか、発行政策を見合わせることもある。」と言っている。その方針が変わらないとするならば、水田蔵相の言明に見られるように、その役割りはすでに終わったと見ていいはずである。しかるに、景気を刺激しない中立予算にするといいながら、長期にわたる公債発行の方向を明らかにし、この結果、昭和四十五年度における公債発行は六兆円に及び、その元利償還だけで七千億円近くになるおそれがある上に、景気の過熱が心配されているとき、昨年度を七百億円も上回る公債を発行しなければならないところに問題がある。公債を組み込まなければ予算編成ができなくなっているところに公債の持つ麻薬的害毒があるといわねばなりません。(拍手)国債依存率を一六・九%から一六%に引き下げたとしているが、これでは全然下がっていない。こんな高い国債依存率の国は、先進国にはないではありませんか。しかも、予算編成過程における復活財源は一千数百億円も用意し、主として公共事業費の復活と圧力団体にばらまき、識者のひんしゅくを買っている。租税の自然増収は七千三百五十億円が見込まれ、さらにこれを大幅に上回る増収が予想されているとき、思い切った公債発行の圧縮を行なうべきである。また、こうした公債発行の累増に対し、減債制度は保障されていない。現在の減債率一・六%では、六十二年六カ月借りっぱなしになる計算になるではないか。長期にわたって財政圧迫の要因となる。しかも、元利支払いが、資産所得に軽く、勤労所得に重いというさか立ちの税構造のもとでは、ますます大衆負担を重くし、税負担の不公平を長期にわたってくぎづけすることになる。  一体、政府は、四十二年度実質九%の成長率を真に期待できるとしているのか、消費者物価を四・五%に押える自信があるのか、景気の回復に伴い、景気過熱の危険があるとき、公債発行を押え、発行の停止もしくは思い切った縮小を行なうべきではないか、景気過熱の危険をどうして排除するか、お聞きしたい第一であります。(拍手)  第二に、累増する公債発行をどう食いとめるか、積極的国債圧縮策の計画があるならば、示してもらいたいと思います。  第三は、国債を組み込んだ財政の固定化を食いとめ、国債を圧縮するには、不要不急経費を削り、資産所得優遇大衆重税租税構造を改めるなど、既定の財政構造を変えていく必要がある思うが、どうなのか、そのような努力をしているのかどうか、以上の諸点について、総理並びに企画庁長官大蔵大臣からお答えを願いたい。(拍手)  いうところの高度経済成長政策は、確かに物の生産を高めた。世界有数の工業国となった。しかし、反面、物価上昇によって国民大衆の生活を脅かし、所得間、産業間、都市と地方との格差、不公平の拡大を来たし、教育、医療、交通、住宅、公害など、人間不在の政治、社会の矛盾を露呈しているではありませんか。これが今日、政治の問題であります。わが党が主張する政策があったならば、決して起こり得なかったであろう政治が今日の姿であります。  総理、私は総理が述べられた美しいことばの方針が具体的に政策として生きてくることを祈るものであります。  次に、税制についてお伺いしたい。  政府が声を大きくしている減税の実態は、昭和四十二年度、税の自然増収七千三百五十三億円に対し、実質八百三億円にすぎない。消費者米価値上げによる負担増千二百億円、税の自然増収のうち、物価値上がりによる税の負担増九百億円、さらに、健康保険掛け金など医療費の値上がりを計算すれば、勤労大衆には実質増税となることは明らかであります。  所得税についても、減税とは法律上のことだけであって、物価値上がりの調整すら十分には行なわれていない。所得税の課税最低限は、五人家族サラリーマンで、四十二年度は七十一万一千八百九十九円と約八万円、独身者では二十六万七千六百二十二円と約四万円引き上がったが、相次ぐ物価値上げの中で生活費にまで食い込んで課税されている実態は、一向に解消されておらない。総理府の勤労者世帯統計によって見ても、人口五万人以上の都市の実生計費は、四十一年は四人家族で七十二万円をこえておる。独身者についても、高校卒初任給が昭和四十年二十六万円という実態から見て、高校を卒業してすぐ所得税を納めねばならないという状況は何ら変わらない。よくなるどころか、悪くなっている。その上、最低税率は八・五%から九%に引き上げられている。これでは大幅減税と口幅ったく言えないではないか。  しかも、その反面、利子配当への特別優遇措置は、銀行や大企業筋の圧力に屈して三年据え置き、郵便貯金利子引き下げは引っ込めたが、そのかわりに少額貯蓄制度適用拡大をはかるなど、倒れてもただでは起きないようなやり方である。勤労大衆には重税を課し、公債発行政策のもとで資産所得を優遇していくということは、税のアンバランスを一そう拡大し、税の公平の原則からいって許されない。利子配当優遇措置については、ここ十数年来その廃止が取り上げられ、税制調査会でも、何ら政策的効果はなく、公平を害するばかりだから廃止すべきだとして、たびたび勧告してきた。これは単に税負担の問題だけでなく、資産所得優遇の税構造までゆがめてしまい、いわば銀行や金融機関を通ずる実質的脱税奨励の体系をつくり上げ、銀行を税法からの治外法権にする制度といわなければならない。(拍手)今回の利子配当優遇措置が、金融証券界の選挙のための政治献金との取引であると公然の秘密として喧伝されていることは、まことに遺憾である。このような租税特別措置の乱用をきっぱり断ち切り、税の公平に返ることこそ、今日緊急の課題であるといわなければならない。  お尋ねしたい第一は、利子配当特別待遇措置を直ちにやめるべきである。政府はいつまでこの措置を続けるつもりなのか。  第二は、勤労大衆の負担はかえって増大をする。まさに格差拡大減税であるが、標準家族年所得百万円までの減税を断行すべきではないか。野党共同の要求には一顧も与えないつもりなのかどうか。  第三は、政府は社会資本の充実の費用のための財源が足りないといわれるが、大企業の要請で引き起こした社会的費用は、企業に税を通じて負担せしめるべきであろう。大蔵大臣の見解を承っておきたい。  次は、物価の問題に対してお伺いいたします。  総理は、施政方針の中で、「政府は、従来から物価の安定を最も重要な課題として取り組んでまいりました。」と述べましたが、実績はほとんど見られなかったのではないか。国民ははたしてその熱意があったかと不信を投げかけている。むしろ物価上昇策を推進したとしか考えていない。物価上昇を歓迎する者、泣く者、それはいずれの国民階層であるか、総理も御承知のはずである。企画庁長官も「物価安定のため、きめこまかい対策を実施する」と強調しておられる。  そこで、私は、総理並びに企画庁長官にお尋ねしておきたい。消費者物価値上がりは、企画庁見通しによると、四十一年度五%であるが、これは野菜の出荷が好調だったこと、消費者物価指数の改定が主食のウエートを減らすという形で行なわれたことなどが要因であるということを無視してはならないのであります。それはそれとして、政府は四十二年度の見通しを四・五%と置いているが、清酒に続いて米価、保険料などの公共料金の値上げが予定される中で、四・五%におさまるとは思われない。特に十月から一四・四%という消費者米価引き上げ派生効果は軽視できないものがある。消費者物価値上がりで打撃を受ける国民階層はだれであるか。政府もとくと承知のはず、低所得層の生活をより大きく圧迫するような政策があって、「経済の繁栄は人間の尊厳と社会の福祉に奉仕する」とか、「人間を大切にする政治」とか演説してみたところで、国民が共感を覚え、納得するはずはないと思う。政府は、われわれの要求に耳を傾け、公共料金の値上げを取りやめるべきではないか。  昨年未発表された都銀九行の経済見通しの中では、四十二年度の物価上昇は平均六%を見込んでいる。最低でも住友、協和の五%、第一に至っては七・五%を予想している。さらに、消費者物価を押し上げる要因として卸売り物価大幅上昇がある。経企庁の四十一年度の経済見通しにおける卸売り物価の上昇率は四%と、消費者物価並みの急上昇となった。これは終戦直後のインフレ時代以降は見られなかったことであり、佐藤内閣において著しい。これにより、消費者物価上昇卸売り物価安定のパターンは完全に両物価とも上昇のパターンに変わったではないか。政府は、四十二年度の卸売り物価は一・二%と予測しているが、公債発行、景気の過熱ぎみの中で一・二%におさまるとは考えられない。  こうしたことは、物価安定のための美辞麗句を並べてみても、政府の物価政策不在を示すものではないか。物価安定推進会議を設けることもよかろう。しかし、要は実効をあげねばならない。昨年、物価問題懇談会が十一回にのぼる答申を行なっているが、どれだけそれを取り入れたか、具体的にそれを示してもらいたい。今回の予算編成にあたっても、物価安定の努力のあとは見られないではないか。きのうの佐々木委員長の質問に対する総理の答弁では満足できませんから、重ねてお尋ねをするのであります。(拍手)  次いで、私は、中小企業対策について、端的に政府の見解をお聞きしておきたい。通産大臣よりお答え願いたい。  御承知のとおり、中小企業の倒産は急増しており、四十一年は六千百八十七件と戦後最高を記録した。特に小口倒産が圧倒的に多い。そのよってきたる原因はいろいろ指摘できようが、根本は政府の切り捨て政策に原因すると考えねばならない。そこで、次の四点について御答弁願いたい。  一、倒産を未然に防ぐため、何らかの対策をとっているか。一口二百万円の無担保、無保証融資を確立する意思はないかどうか。  二、二重構造是正のための近代化をどう進めていくのか、具体案を聞きたい。  三、親企業倒産に伴う関連中小企業倒産防止のため、倒産防止基金制度を設けるべきではないか。  四、中小企業各種社会保険の適用を推進すべきであるが、いかなる対策をとろうとするのか、その見解を承りたいのであります。  次は、農業政策についてお尋ねしたい。  昨年九月、農林省が農業基本法制定後五年間の「農業の動向に関する分析資料」を農政審議会に報告しているが、この報告によれば、農業総生産の伸びは、昭和三十年代前半の年率三・二%から、後半は二・三%に低下し、わが国の食糧自給率は、昭和三十五年の八七%から、四十年には七六%に低下している。そして、農産物輸入は三十五年の水準に比べて、四十年は二・二倍にふえ、年率一七%で急増している。  特に重要なことは、この報告の中で、「世界的な食糧過剰傾向にあった農業基本法制定当時の状況から見ると、最近の世界の食糧事情はかなり違ってきている。今後、特に開発途上諸国における人口の急激な増加などもあって、国際的な食糧需給の引き締まりの傾向が一そう強まることも予想されよう」と述べている点である。  最近の六年間、世界の食糧消費は連続して生産を上回り、今後もこの傾向は続くといわれている。昨年十月、FAOのセン事務局長は、「世界の食糧事情は第二次大戦直後の食糧不足以来最も深刻である。」と述べている、御承知のとおりであります。政府は、今日のこの世界的な食糧不足の現状をどう認識しているか。そして、この世界的な食糧不足の傾向の中で、わが国の食糧生産の停滞をどう考えているか。六年前の農業基本法国会の際、社会党は食糧自給度の向上を農政の柱とせよと主張した。ところが、自民党政府はこれを取り上げなかった。当時の世界的な食糧余剰の傾向の中で、見通しを誤り、食糧の輸入依存を考えた現行農業基本法の誤りを率直に認め、これをやり直す考えはないのかどうか。  政府の農基法農政の最も大きな欠陥は、農業の生産性向上は言うが、農家の所得向上は少しも考えないところにある。政府は、生産者米価が上がるから消費者米価を上げなければならないと言うが、政府の買い入れ米価は、三十五年を一〇〇として、四十年には四二・三%の値上がりであった。この同じ時期の米の生産費の上昇は四六・一%であり、農家の農業所得は少しもふえたことにならない。米以外の価格の不安定な作物や畜産物の場合は一そうそうである。  このように農家の生産費が上昇するのは、第一に、政府は生産性向上だけをやらせようとして、小規模な農家にまで土地改良の重い負担をかけたり、農機具や施設の過剰投資をやらせているためである。第二に、飼料代が値上がりしたり、生産性が高まっても肥料や農機具の値段が少しも安くならないためである。このために多くの農家は兼業や出かせぎをしなければ生活できない状態に追い込まれ、農業基本法のもとで農業生産が停滞し、農家の出かせぎが急増するという状況を招いているではありませんか。  政府は、このような農家の所得向上を無視した生産性向上をこの際根本的に考え直すべきである。このため、第一に、自立経営の育成よりも共同化による経営の高度化を中心とし、共同利用による経費の節減と、小規模農家も生産力の増強がはかれるように農政を転換すべきであります。第二に、土地改良全額国費で国が事業を実施し、生産が上昇してから、その一部を農家が長期無利子で返すような抜本的な改革を行なうべきであります。第三に、肥料の国内価格は、年間一%も下がらない。しかし、韓国向け輸出肥料は、去年より三〇%も安くしておる。国内の農民がはるかに高い肥料を買わされておるのです。国内の麦の作付面積は年々十万ヘクタールずつも減少している。輸入飼料が激増し、その輸入飼料値上がりが続いている、御承知のとおり。政府みずから払い下げ飼料の値段を値上げしようとしていることなどは、今度の予算等の措置において、まことに不合理であります。輸入飼料は、国が管理して安く農民に払い下げ、飼料自給化の促進に当分の間作付奨励金をつけて奨励するなど、思い切った施策によって、農業用資材の値下げをはかるべきであります。  以上のような、農家の経営費を安くし、農家の所得を向上させる政策こそが、農業の生産を増大させ、農民が真に生産性向上の意欲を燃やす道であると考えるが、このような農政に根本的に姿勢を改める考えはないのか。また、農家の経費を下げること、土地改良費や肥料代、農機具代、農薬代などを安くすることをやらず、農産物輸入で価格の抑制をはかろうとしたり、消費者米価引き上げで消費者に負担を転嫁すべきではないと考えるが、政府は、真剣に農業用生産資材費引き下げや、土地改良全額国費によって行なう意思はないのかどうか。要するに、ことばをかえていえば、貿易資本産業資本擁護の農政をやめてもらいたいということである。(拍手)  次に、私は若干地方政治の問題についてお伺いしたい。  自民党政府のもとにおける地方自治は、三割自治といわれ、いや一割自治といわれている。戦後、憲法、地方自治法により保障された地方自治体の自主的な地位と機能はそこなわれてしまっているといっても過言ではないのであります。それは、一言にしていえば、民主政治の基盤といわれる地方自治が、自民党の、「中央に直結する地方政治」といううたい文句に示されているごとく、住民の福祉向上、住民のための政治を忘れた中央集権化にあるといわねばならない。これまた高度成長政策の犠牲であるともいえる。すなわち、地方財政中央政府にそのひもを握られ、補助金政策の乱用によって左右され、教育、保健衛生、道路といった、あらゆる身近な住民行政までが、政府の下請行政になっていることである。官僚の天下り行政は、さらに一そうの拍車をかけている。自民党の独占奉仕の政策は、都市人口の過大集中、交通地獄、住宅難、公害など、都市生活の不安と、他方、農村の荒廃、地域格差の拡大など、さまざまな矛盾をもたらしながら住民生活を破壊している。一面、自治体は無計画な地域開発新産都市建設などと、大企業の利益に奉仕することを余儀なくされ、かえって財政を悪化させているものも少なくないのであります。総理が言う社会開発は念仏にすぎないというのが、地方自治の実態であります。  地方自治体に続発した汚職、買収、贈賄などの政治の乱れも、住民自治に背を向けさせた地方政治の中に生まれたものであり、その責任はあげて自民党政府が負うべきものであります。風格ある日本社会の建設、人間を大切にする社会開発を強調された総理から、この際、地方政治に対するすなおな見解と、地方自治確立の方策をお聞きしたい。  次は、自治大臣にお尋ねしておきたい。地方財政の確立、健全化の問題は、古くして常に新しい問題であります。佐藤内閣の経済、財政、税政策の転換がない限り、地方財政は国からのあてがいぶちを当てにして、財政計画上のつじつまを合わせるだけでは、地方自治の本旨を実現する財政の確立は望めないでありましょうが、昭和三十七年から転落し始めた地方財政の窮迫に対しては、それなりの賢明にして強力なる措置がとられねばなりません。  地方財政運営の指針となる地方財政計画の計画額と決算額とが一致する性質のものとは、もちろん私も考えていない。しかし、あまりにずさんではないか。決算額支出増六千八百三十八億円というのが三十九年度の姿である。四十年度計画額三兆六千百二十一億に対し、推計四兆三千六百億の歳出、実に七千五百億にのぼる増加額が推計されているのであるが、この実態は、国の地方財政政策に欠陥があるのではないか。財政運営指針としての財政計画は価値があるのかどうなのか、これによる地方団体財政的影響は一体何なのか、見解を承りたいのであります。  地方独立財源の充実は、三割自治の機能を解消する柱であります。具体的にその方策を示してもらいたい。  地方制度調査会は、行政事務の再配分と財政措置の方針について答申しているが、政府はその措置に取り組む熱意があるのか。すみやかに断行すべきではないか。あわせて、過密、交通難、住宅難、公害など、暗い都市行政が当面する都市の財政対策について対策があるのかどうか、具体的な措置を聞きたいのであります。  第三に、地方行財政を健全化するために、私は、国と地方団体間の財政秩序を正しくせよと要求したい。  財政法に違反するがごとき財政負担の乱れは枚挙にいとまがないほどであるが、その一つ、今日地方行財政、ひいては一般住民に大きな財政的圧迫を加えているいわゆる超過負担の解消について、政府の対策を聞きたい。  超過負担とは何か、なぜ超過負担地方自治体に存在するか、あらためて申し述べるまでもない。自治省調査によれば、補助負担事業超過負担は、四十年度一千二百十九億円、四十一年度見込み一千四百四十三億円という。四十二年度予算編成にあたって、名目三百三十一億の解消措置をしたといわれるが、焼石に水である。  この超過負担の現実は、地方行政において、教育、住宅、衛生など、生活基盤整備事業民生行政が圧迫され、地方単独事業の抑制となり、さらに、教育施設に見られるように、住民負担に転嫁されているのであります。自治行政を確立するには、早急に超過負担解消財政施策を講じ、国、地方間の財政秩序を正しくする、これが第一の要件であると思う。大臣は、その決意と方策を国民の前に明らかにすべきであります。(拍手)さきに自民党の発表した地方選挙対策などをここで表明されても国民は納得しないであろうことを念頭に置いて御答弁願いたい。このことは、大蔵大臣からもぜひお答え願いたい。  次に、地域開発について一言お聞きしておきたい。  全国総合開発計画が昭和三十七年に策定されたが、地域開発の現状は、計画の目標に沿うて進んでいるとは考えられない。開発計画地域区分、すなわち、過密地域整備地域開発地域の現段階における問題点がそれを明らかにしていると思う。  開発地域の拠点として生まれた新産都市建設の現状はどうか。昭和三十九年、建設基本計画を承認したが、基本計画に対する社会資本投資状況は、四十五年度まで五三%達成の目標であった。ところが、四十一年度で一四・九%の達成率で、心細い限りであります。工特、新産都市対象公共事業に対する財政特別援助も、四十一年度起債額七十九億、市町村の補助の引き上げ額に至っては、百四十億の対象に対して、わずかに十五億円しかない。しかも、地方自治体は、経済政策の破綻、不況、地価の高騰、企業の進出中止と相まって、財政困窮民生圧迫、色あせたバラ色の夢に終わろうとしているのであります。(拍手)無計画な経済発展が引き起こした産業と人口の集中、偏在は、地域間格差を拡大したばかりではない。過密となった大都市の再開発、他方、荒廃する農山漁村の新しい建設の課題を生み出しております。  各地域に議員立法された地方開発促進法なるものは、空文にひとしいものとなっている。率直にお尋ねしたい。  一、開発手順の選択にあたって、過密大都市の再開発を最優先的に推進するのか、いわゆるベルト地帯に重点を置くのか、地方開発拠点都市の育成に重点を向けるのか。このことは地域開発の方法上、公共投資の手段から見て重要であると考えますから、ぜひお聞きいたします。  その二は、乱立した地方開発法を再検討し、さらに国土総合開発法に検討を加える必要があるのではないか。政府が経済社会発展計画を推進しようとするにあたって、地域開発に対する基本的考えを含め、企画庁長官から御答弁を願いたい。  最後に、この際、私は特にお尋ねしておきたいことは、現在各地の地方団体が、政府の指示のもとに、自衛隊員適格者名簿の作成を進めておりますが、これは地方自治の趣旨からして重大であるばかりではない。第三次防衛計画の決定された背景もあわせ考えるならば、事実上の徴兵制の準備であると断ぜられてもやむを得ないことでありませんか。一体どのような目的でやらせているのか。私は、ここに総理に対し、地方公共団体に憲法違反の業務を押しつけるがごときことを中止されるよう要求し、総理の所信をお尋ねしておく次第であります。  私は、数項目にわたって御質問申し上げました。いま、国民大衆佐藤内閣に何を望んでいるか、十分お考えの上、御答弁願いたい。お願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  5. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  景気見通し公債政策との関係について、ただいま川村君はいろいろ私見をまじえてのお尋ねでございます。この公債発行に踏み切りました昨年の経済状態に思いをいたしていただきたい。昨年は不況を克服するということが私どもに課せられた緊要な課題でありました。公債発行することによりまして、この不況克服ができました。社会党の諸君は、公債発行すれば必ずインフレになる、かように言われましたが、私は、国民の期待されるように、不況の克服ができました、これで公債発行は成功したと思います。  そこで、考えていただきたいのは、公債発行そのものには、いわゆる景気刺激する影響があること、これは御指摘のとおりであります。同時にまた、今日、私ども必要とするものは、公共投資を先行し、これを整備すること、これが世の中の発展に対応するゆえんだと私は思います。そこで、問題になりますのは、この公共投資を先行するにいたしましても、これがいたずらに際限なく発行されれば、必ず御指摘になりますようなインフレの悪影響があるのであります。そこで、この公債発行をする場合のその限度、これは当時の時点における経済状態に見合ってその規模をきめること、同時にまた、市中消化が可能な範囲にとどめることであります。これが公債発行をする場合の、特にわれわれが注意をしなければならないワクだと、かように思います。そこで、しばしば申し上げておるのでありますが、今日、経済不況を克服することができた。そうして向上機運、これはたいへん力強いものがございますから、これが行き過ぎないように絶えず注意をするわけであります。  私は経済はほんとうに生きものだと思います。そういう意味で、この生きものがどういうように動き出すか、それを十分注意いたしまして、そのときどきに応じた流動的な対策を立てていく、これが私は最も肝要なことだと思います。今日の状況のもとにおきまして、わが自由民主党の政策のもとにおいて、経済について御心配は要らないと思いますが、しかし民間の行き過ぎがあれば、これはただいまの、経済が生きものである、こういう観点から、心配なきにしもあらずです。そこで、政府自身の仕事としては、こういう流動するものについて、十分注意をすることであります。そして、そのときどきに応じた適切なる処置をとること、これが必要でございます。そこで、その見通しは、長期経済計画でも、経済社会発展計画におきまして、大体九%を目途とし、そうして消費者物価を下げていくということを考えておるわけであります。これらの詳細については、経済企画庁長官から説明させます。  次に、物価についてのお尋ねでございましたが、物価につきましては、これは私、昨日も詳細に申し上げました。消費者物価を安定さすことが、今日私どもの第二の政治課題だと思っております。これは真剣に取り組んでまいるわけであります。昨日も佐々木君に詳細にお答えをいたしたのでありますが、この物価対策のうちで、川村君も御指示になりましたように、値上がり部分において、その七割を占めるものといえば、農産物、あるいは水産物、畜産物、同時に中小企業の加工品、あるいはサービス業、こういうものが物価をつり上げておるのであります。そこで農産物等については、これは天候いかんにも影響されるのでありますので、これは別といたしましても、中小企業の場合、これは明らかにその出産性の低いところに原因があるのであります。また、サービス業においても、労働力不足というような点に問題があるのであります。そういう意味で生産性を上げることに特別な努力を払いまして、そうして物価を鎮静させていくわけであります。  次は、地方自治の問題についてのお尋ねでございます。補助金政策やあるいは地方財政がいろいろ乱用されていて、そのために腐敗もはなはだしいし、地方財政の基礎がゆらいでおる。そのためにどうも地方自治確立されておらない、こういう御批判であります。私は、新産都市その他のいろいろの計画等が予定いたしました目標が、なかなか思うとおりに実現されておらない、そういう意味で地方自治自身も悩みの多いことだと思います。十分今後とも中央地方、連携を緊密にいたしまして、見方にそごを来たさないようにいたしたいものだと思います。  この際に、特に私指摘したいと思いますことは、最近の地方自治、このあり方がだんだん政党化しつつあることであります。この政党化するということは必ずしも好ましい方向ばかりではございません。ただいまの川村君の御指示にもありましたように、地域住民福祉というものが先行する地方自治体におきましては、必ずしもただいまのように政党化することがいいわけではありません。そういう場合におきましては、やはり地方自治の首長が、できるだけ穏健、中正な人であること、これが望ましいのではないだろうかと思います。私は政党化よりも、その方向で見るべきことだと思います。(拍手)  最後に、自衛隊員の適格者名簿、これをやめろという御意見でございます。これは別に徴兵制度に先行するようなものでは絶対にございません。国民の間に徴兵制度に先行する適格簿であるようにお考えだと、それは全然誤解であります。そういうものではありません。私は皆さん方に申し上げますが、わが国の安全を確保するために必要な自衛隊であります。これは、国民全体がこの自衛隊を十分認識し、理解することが必要でございます。(拍手)私は、そういう意味で今日この適格者名簿が設けられ、そうしてこれが自衛隊の理解に役立つなら、これにこしたことはないのであります。社会党の諸君もその点よく考えていただきたい。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
  6. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 利子課税の特例措置は、お説のように、その政策的な効果については議論の多いところであると考えます。しかし、この特例はすでに十数年来、貯蓄奨励の方法として、もう幅広く国民の貯蓄心に食い入っている面が非常に多いという現状でございますので、これを一挙に廃止することは、私は適当でないと考えます。したがって、税制調査会の答申にもあるように、今度は漸進的な措置をとることにいたしました。税率は五%引き上げるのは少ないように言われましたが、そうではなくて、昭和二十八年来、あるときは非課税、あるときは五%と、概して一〇%を中心に推移して十何年とたってきましたから、その点から見ますと、五%ここで引き上げるということは、五割の税率アップでございますので、そう少ない率であるとは私は考えません。今後どうするかの問題ですが、これを実施してみて、その影響を慎重に見てから、そのあとでこの問題をどうするかは検討したいと思っております。  それから、地方公共団体超過負担の問題でございますが、これはできるだけ解消するように逐年努力しておりますが、特に四十二年度は、公営住宅の単価改正をいたしました。たとえば木造の家屋でいいますと一三%以上単価を上げることにしましたが、ほかのものもこれに準じた基準単価の引き上げをやるということによって、できるだけ地方団体超過負担解消する方向に努力したいと存じます。(拍手)   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  7. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 総理が言い残されました点についてのみ御答弁を申し上げます。  景気考え方につきましては、昨日西村議員に申し上げましたとおりでございまして、たまたま三月になりますと、各企業の明年度の投資計画銀行に提出されますので、早目に私どもの見方を、借りるほうにも貸すほうにも申しておいたほうがいい、こう考えたわけでございます。  国債が現在のように市中消化及び建設国債という制約のもとに発行されております限り、私どもの立場からもこれがインフレ要因になるというふうには考えられません。もちろん、経済の動きに従って財政金融を弾力的に運営するということは、先日来、総理大臣所信表明で言っておられるとおりであります。  消費者物価の四・五%というのは困難ではないかという御指摘でございましたが、実は、昨年の場合には一月に米価の改定がございまして、その後、私鉄、国鉄、郵便と、比重の大きなものがかなり動いておるわけでございます。それで、まあ五%でおさまっておるわけでございますから、この昭和四十二年度は、比重の大きなものはただいまのところ米だけでございます。それも十月からと予定されますので、年度に与えます影響は半分になります。したがって、四・五%というのは、私は無理な努力目標ではない、こう考えております。  卸売り物価でございますが、この点につきましては、幾らか私はお尋ねと違った考えをいたしております。すなわち、卸売り物価の大半は工業製品でございますので、その他のもの、農業製品と違いまして、需給市場に非常に対応しやすいはずであります。木材とか骨材とかいうものは別でございますけれども、概してそういうものでございますから、市況が非常に上がればそれに供給が対応するということがむしろ原則ではないか、いわゆる商品市況に似たようなものと考えておりますから、したがって、消費者物価のようにずっと上がりっぱなしということでないのがむしろ自然である、上がれば反落があると考えるのが私は自然であろう、また、現実にそうであろうというふうに見通しをしておるわけであります。  物価問題懇談会は十余りのいろいろ有益な提案をしてくれました。私ども、緩急程度の差はございますが、大体その線で考えてまいりましたし、これからも考えてまいります。一番むずかしいのはやはり土地の関係でございますが、これにつきましては、その一部所要の法律案を後日御審議を仰ぎたいと思っておるわけでございます。  新産都市につきましては、出荷を見ましても、公共投資を見ましても、これは昭和五十年が目標でございますが、大体目下のところ順調に動いております。五十年が目標でございますから、これは工特とは多少意味合いが違うわけであります。  過密か、地方開発か、どちらに重点を置くかというお尋ねでございましたが、これは私どもとしては両方とも大切に考える、こう申し上げるしかないと思います。  全国総合開発計画を再検討する必要はないか、再検討をする必要があると考えております。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介君登壇〕
  8. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 地方財政計画でございますが、申し上げるまでもなく、標準的な歳入歳出を見ていく地方財政計画と、地方地方の特殊事情を織り込んだ決算額との間に違いのあることはやむを得ないのでございますが、しかし、地方財政計画地方財政対策指針でもあり、また地方団体財政運営の指針でもございますので、この間の開きをなるべく少なくすることが必要だと存じまして、今後その方向で努力をしてまいりたいと存じます。  地方に自主財源確立をすることはこれは当然でざいごまして、四十二年度予算におきましてもたばこ消費税、あるいは非常にわずかではございますが市町村の道路財源等を確保したわけでございますが、御質問にもありました中央地方を通じた行政事務の再配分と、その財政の裏づけにつきまして、目下地方制度調査会の御審議と相まって、強力に実行してまいりたいと存じておる次第でございます。  なお超過負担の問題につきましては、四十一年度において約三百三十億、四十二年度は推計でございますが二百億くらい解消いたしたと思いますが、なお相当なものがございますので、財政当局と十分連絡をとりまして、年度計画をもって全体を解消してまいりたいと存じております。(拍手)   〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
  9. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) 中小企業の問題につきまして具体的に答えよとのお話でありましたので、具体的にお答えしたいと思います。  まず第一に、最近倒産者が非常に多いので、その倒産防止の対策を講じておるかどうかというお尋ねがあったのでありますが、それにつきましては、まず第一に、政府機関の金融公庫の融資力を増大することを昨年末に断行いたしまして、それから本年の一月からその利子引き下げをやったのであります。来年度におきましてもこの三金融公庫の融資力を増大することにいたしております。  次に、無担保保険の限度額を来年度から、二百万から三百万に増額することにしておりますし、それから保険料率の引き下げも断行しようといたしております。  それから次に、この連鎖倒産を防止する策といたしまして、これは法務省のほうでやっておることでありますが、会社更生法を改正いたしまして、中小企業者の債権を優先的に弁償してもらうということについて、目下法務省において研究中であります。それから、下請代金の支払い、これを各府県並びに各地の通産局を通じて、親企業に対して促進するような措置を強化したいというように考えておる次第でございます。第二番目に、二重構造の是正について考えておるかというお話がありましたが、お話のとおり確かに二重構造でありまして、中小企業は大企業に比べて格差があります。これはもう御存じのとおり、技術力、あるいは資金力、あるいは労働力というような点において劣っておるのでありますからして、それらを是正するために、中小企業振興事業団を来年度から設けて、そして中小企業の協業化をはかって二重構造の是正をやりたい、こう考えておるのであります。  三番目に、親企業倒産に対して中小企業が連鎖して倒産しておる、それに対して何か対策を講じておるかという御質問でありましたが、それにつきましては、中小企業の信用保険臨時措置法を昨年定めまして、そうして連鎖倒産を防ぐような方法を講じたのでありますが、この法律はぜひ恒久化したいというので、目下、中小企業の信用保険法の改正案を提出することにいたしております。それからなお、親企業倒産に際しましては、中小企業金融機関を督励いたしまして、機動的に融資をはかってその倒産を防ぎたい、こう考えておる次第であります。  最後に、中小企業についての社会保険のお話がありましたが、この問題は実は厚生省並びに労働省のほうにおいて、いろいろ目下討究中でありますが、私どもで承ったところによりますると、労働者が五人未満の事業所においての労災保険、失業保険の強制適用を、四十三年度を目当てに実施するという計画を持っておられるようであります。  それから、医療保険や年金の問題については、国民皆保険、皆年金の制度がありまして、全国民がそれに均てんすることになっておりますから、その適用を受けることになると思います。  それから、五人未満の事業所の従業員に対しての、いわゆる被用者保険なり年金の問題について、労働省並びに厚生省のほうにおきましては、それを目下研究中であるということを承っております。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
  10. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お答え申し上げます。  御指摘のように、食糧の自給度についてのお話でございましたが、自給度を維持するためには、なお大いに研究を要しなければならぬ問題もございますが、お話にもありましたように、たとえば、長期的に見ますると、食肉などの部分を考えてみますというと、非常に問題のある品目も、わが国の輸入食糧考えますときに、多いわけであります。しかし、私どもは、現状の自給度を落とすことはいけないと思いますので、四十二年度予算にもいろいろ予算的に計上いたしてあります増産対策をやってまいって、食糧の自給度を確保することに力を入れてまいりたいと思っております。  第二には、政府は、農業生産性はいうけれども、農民所得向上考えないではないかというようなお話でございましたけれども、そういうことはないのでありまして、国民食糧の安定的供給の確保と農業従事者の所得向上をはかるということが政府農政の基本的課題でございます。このためには、農業生産性向上をはかることを基本として農業生産の維持、増大をはかって、そしてこれを通じて農業所得の積極的な増大をはかろうというわけでございまして、御指摘のような考えをわれわれは持っておるわけではございません。  第三にお尋ねのことは、輸入飼料については政府負担をしたらいいではないかというお話でございますが、川村さんも御存じのように、なるほど輸入飼料には政府管掌のものもございますけれども、他に御承知のように全購連その他一般商社の取り扱っております流通飼料もあるわけでございますから、かりに政府飼料について御期待のようにいたしたとしても、一般の流通飼料を統制するわけにはまいりませんから、価格が混乱をいたしまして収拾がつかなくなるわけでございます。したがって、私どもとしては、いかにしてこの輸入飼料値段を上げないようにして生産者の利益をはかるかということにむしろ力を入れてまいることがいいのではないかと思っております。  それから、もう一つは、公共関係でやっております土地基盤整備その他の経費は全額国庫負担でやったらどうかというお話でございましたが、川村さんも御承知のように、これは河川や道路でございますと不特定多数の受益者でございますけれども、土地基盤であるとかそういうのは受益者が特定されておる人でございますから、そういうものにだけ政府が全額負担をするということは行政的にはたして可能であるかどうか、たいへんむずかしい問題だと存じております。  最後に、肥料のことについてお話がございました。なるほど、本年は、硫安の輸出について、御指摘なさいましたように問題がございましたけれども、これも川村さん御存じのように、ヨーロッパの肥料カルテルが中共その他の国にダンピングをいたしましたあおりを食って、ああいう輸出価格は、業者がむしろ出血をいたして輸出を継続いたしたような特殊な事情に本年はあるということを、ひとつ御了承願いたいと思います。(拍手)     —————————————
  11. 園田直

    ○副議長園田直君) 田邊誠君。   〔田邊誠君登壇〕
  12. 田邊誠

    ○田邊誠君 私は、日本社会党を代表し、現在国民生活に最も関係の深い諸問題を中心として、佐藤総理以下、関係閣僚の所信をただしたいと存じます。(拍手)  総選挙が施行された直後の今日ほど、国民が国政に対して強い関心を払い、多くの要望を内包しながら注目をしていることはないと存じます。今回の総選挙で初めて国民の洗礼を受けた現政府が最初に取り組んでまいった四十二年度予算案をはじめとする国政全般に対する施策に対し、国民ははたして満足感を持って迎えたでありましょうか。まさにいなといわなければなりません。いや、むしろ再びその期待を裏切られ、国民の望むものとは全く逆行する政治の姿勢と方向にかつてないほどの失望を禁じ得ないものがあると思うのであります。(拍手)  総理は、施政方針演説の草案を作成する過程で、「何かもう一つ足らないものがあるのではないか」と言われたとのことであります。しかし、結局これを充足することはでき得なかったようであります。事実、先日の総理演説を聞いて、その美辞麗句の羅列にもかかわらず、重要な一つのものが欠けていると感じられるのであります。それは何か、私はここで、先ごろ死去された和田博雄社会党前副委員長のことばを引用することをお許しをいただきたいのであります。和田先生の残された句の中に「迫る雪山に向かって歩む何かが欠けている」というのがあります。これは政治家として、みずからをきびしく律した和田先生の自問自答の句であろうと思います。  いま、佐藤政治に欠けているものは、財界からの要請を受け入れることを中心とした受け身の政治であり、勤労国民生活に直接触れ、国民大衆の側に積極的に迫る指導理念がないことであります。(拍手)もし、私の考えに反論がありまするならば、以下数点の課題に対して、率直明快な御答弁をいただきたいのであります。  まず第一にお伺いしたいのは、働く国民生活安定と、権利の回復についてであります。  現在の流動する経済事情と、相次ぐ物価高の中にあって、勤労者の職場は依然として不安定であり、実質賃金切り下げと合理化のあらしの中で苦悩している現状であります。労働者の賃金問題を論ずるにあたって、政府は常に、総理施政方針演説にも見られるごとく、賃金と生産性、賃金と物価の関係について検討するということばの裏に、賃金の上昇物価引き上げを招いているがごとき錯覚を国民に与えているのであります。しかし、全産業の付加価値に占める人件費率は、労働分配率においても、欧米の五〇%以上であるのに比較して、三二%程度であり、この比率は毎年低下している状況にあっては、単純な短期間を区切ってのコストインフレ論などは通用しないことはもちろんであります。(拍手)  政府みずからが値上げを決定してまいった公共料金、特に、明年度値上げを策している医療費消費者米価によって被害を受けるのは、一体だれでしょうか。すべて、まじめに働く勤労国民ではありませんか。三分の一程度の値段で輸出をし、利潤をあげているカラーテレビの価格を、国内では協定して値下げしないでまいった大企業の管理価格、カルテル行為が、物価を上げている原因ではありませんか。(拍手)日本の総生産世界第五位の水準まで達していながら、国民所得世界の二十位程度にとどまっている現実は、いかに日本の労働者の賃金水準が低いかを物語っているのであります。(拍手政府は、この際、労働者の賃金引き上げについて積極的な姿勢を示すべきであると思うが、総理見解を明らかにしていただきたいのであります。  さらに、労働者の春の賃金引き上げの運動に関して、政府がこれを抑制するがごとき態度をとらないことはもちろん、政府みずからは、現行制度による人事院勧告の完全な実施と、失対賃金の大幅引き上げを、この際明言するとともに、公共企業体等労働関係法の適用下にあり、前内閣以来しばしばその方向を示唆してきた三公社五現業の当事者能力については、ドライヤー勧告による国際的信義の上からも、今春の賃金問題解決に対して自主性ある決断を下せるよう、各当局にこの際明確な指示を与えるべきであると判断をするが、政府にその態度ありやいなや、ここに明らかな回答を求めるものであります。(拍手)  また、この機会に、長い懸案である最低賃金制について、法律が制定されて十年近くなんなんとする現在、業種別業者間協定を中心とする変則的な過程を脱して、労働者需給の逼迫する今日、政府は、勇断をもって、全国一律最低賃金制確立のための法律案を、当面保障すべき最低賃金額とともに提案すべき時期が到来しておると思うが、政府の責任ある答弁要求するとともに、すでに昨年の通常国会において約束された家内労働者に対する最低工賃を規制し、標準工賃制度を推進するという考え方について、その具体的な内容を明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)  総理は、施政方針演説の中で、「風格ある日本社会建設したい」と言われた。まさにその言たるや壮といわなければならない。しかし、現実の日本の姿は一体どうか。私は、しかし、ともかくも総理のこの言の上に立って、日本の労働者の国際的地位の向上が、わが国の国際市場における経済的立場を確立するとともに、日本の国際的価値を高めるという見地から、この際ILOの未締結条約の批准を促進することを提案いたしたい。特に、男女の不当な賃金格差をなくし、同一労働、同一賃金を約束した百号条約の批准はもちろん、すでに最高裁判決においてその不当性が明らかになった官公労働者をはじめとするあらゆる労働者に今日までかけられてきた政治的刑事弾圧を排する百五号条約と、あらゆる差別を撤廃する百十一号条約の締結批准について、八十七号条約批准の際に見られるごとき、便乗した国内法の改悪などを行なうことなしに、すでに相当数の諸国が批准を完了している今日、三条約の即時無条件批准をすることを強く要求し、あわせて、昨年十一月、ILO理事会において決定された教師の地位に関する報告を尊重するよう、強く要望するものであるが、国際的視野に立った政府見解を示してもらいたいのであります。(拍手)  労働者の生活と権利の改善が叫ばれておる今日、労働省は失業保険法改定の意図ありと聞くが、もしこの改正案の中に、農村の疲弊の中から生れている季節労働者の失業保険の永久打ち切りが含まれておるとすれば、事はきわめて重大であります。完全雇用政策樹立の一環として、失業の全期間を保障する失業手当制度の創設こそ必要なとき、適用範囲拡大と引きかえにする失業保険法改悪などに手をつけることは断じて許すことはできないが、この企図ありやいなや、その真意を明らかにしてもらいたいのであります。(拍手)  次いでお伺いしたいことは、年間五十万、二百人に一人が死傷するという交通事故の激化は、まさに交通戦争といわれるごとく、新たな社会悪の発生であります。このような交通地獄現状は、総理の言うがごとき、平和と繁栄の中にみずからの安全をはかる立場を根底からゆさぶり、国民生活における最大の不安となっております。この最大の要因は、政府交通安全政策の無策によるものといわなければなりません。今日のような野放しに激増する自動車と、遅々として進まぬ道路整備との極端なアンバランス、あるいは、道路整備は建設省、管理は地方自治体、安全指導と取り締まりは警察、踏切は運輸省、そして自動車生産は通産省という無責任で一貫性を持たない交通行政のもとでは、取り締まり強化のみによって、日々激増する交通被害から国民を守ることはとうていできません。総理は、交通安全教育の普及、救急医療のための施設の整備などを訴えておりますが、まことにその本筋を忘れた論といわざるを得ません。いまこそ、急務である交通機関の安全基準の強化、及び安全施設充実整備と、交通労働者の労働過重をなくすことを軸とした交通行政の一元化と相まって、長期的展望に立つ交通路線の建設をなすべきであると思うが、総理から所管各大臣を総括した御意見をお伺いしたいのであります。  次に、庶民生活において、これまた欠くことのできない住宅事情についてお聞きをいたしたい。  総理自身、住宅問題を佐藤内閣のスローガンである社会開発の中心に据え、一世帯一住宅の実現を約束しているのでありますが、勤労国民住宅難都市農村を通じて一そう深刻になりつつあるというのが現実の姿であります。四十二年度を第二年度とする新住宅建設五カ年計画は、建設総戸数を六百七十万戸とし、現在の住宅不足に、老朽住宅の建てかえ、さらに最も需要度の高い世帯分離による新規住宅建設しようという計画のようであります。しかし、その実、政府が責任を持つ建設住宅は、そのうらわずか四割にすぎないのでありまして、残りの六割は住宅も土地も全部自前でやりくりする民間自立建設にたよっている状況であります。まさに羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいといわなければなりません。  私どもは、五カ年計画建設総戸数を百万戸増加するとともに、政府住宅政策に責任を持つ意味からも、公的資金による建設を現行四割から六割に高めること、特にその中心を公営住宅に置いて、低所得勤労者に大量の住まいを供給すること、地方自治体超過負担解消し国の補助率を三分の二以上に高めること、住宅公団の住宅も、分譲住宅よりも賃貸し住宅重点を置くとともに、家賃の高額化を押えるなどを実施すべきであると考えるが、私どもの政策充実するこの提案に対し、政府所信を承りたいと同時に、高騰する地価抑制のための公共機関による土地の先買権、土地利用を促進するための課税の新設など、緊急措置を講ずる用意ありやいなや承りたいのであります。(拍手)  特にこの際、右の交通住宅問題とも関連を持つ首都圏整備に対する政府長期計画について、明らかにしてもらいたいのであります。現在わが国都市への人口集中はすさまじく、関東臨海、東海、近畿臨海のいわゆる太平洋沿岸ベルト地帯への人口の割合は、昭和三十年三八・三%、三十五年四一%、四十年四四・七%と、増大の一途をたどっているのであります。特に首都東京への人口集中は著しく、このまま推移をすれば昭和六十年には東京の昼間人口は千五百万をこすといわれておるのであります。現状のまま放置すれば首都とその周辺は、人口過密化による住宅難交通地獄、上下水道の不足、各種公害物価の高騰などによって、まさに破局的場面に達することが容易に予測されるのであります。このような現状に目をおおい、政府は首都圏整備に対する勇気ある計画を持つことなく推移してまいっておるのであり、民間大資本による東京湾埋め立てをもってする大コンビナート建設などは、これに拍車をかけるものであると言えましょう。私どもは、人口産業大都市集中の大きな原因である行財政中央集権機構を改革し、産業の適正配置、過密地域への工業制限などを強力な政治力をもって行ない、最近民間研究機関の提言にもあるごとく、レインボーライン、すなわち連檐都市の形成などの計画を推進して、飽和状態にあり、まさに半身不随の老人といわれる東京を救わなければならないと思考するのであります。この際、政府は、東京の水不足を解消することに名をかりた民間一部に構想を持つ、大資本の利益のみを優先する沼田ダム建設などという、当面を糊塗する考え方をはっきり打ち切り、首都東京の将来を救う長期的かつ総合的計画を持つべきであると思うが、その展望ありやいなや、総理並びに建設大臣から明確なお答えをいただきたいのであります。  次に、社会保障に関してお伺いいたします。  佐藤内閣は、ひずみ是正と社会開発を表看板にして発足したのでありますが、国民各層の間の格差は依然として拡大するばかりであります。総理は、施政方針演説の中で、「先進諸国に比して遜色のない重厚かつ能率的な社会基盤確立する」と言われ、また、「人間を大切にする政治を行なうため、社会開発政策の基本とする」とうたっておられます。しかし、ひずみ是正という、最もじみで困難ではあるが、わが国社会の中に体制的に存在する病根を除かれることについては、ついにその看板をおろし、見かけだけはなやかでりっぱな「風格ある社会」という看板に塗り変えたようであります。しかし、総理、あなたのことばがいかに外面を飾るものであっても、国民の底辺にあえぐ人々の生活向上は決してはかれるものではありません。(拍手社会保障制度審議会の答申によって、八年間に三倍の引き上げを約束させられた生活保護家庭をはじめとする低所得階層に対して、四十二年度においても、名目一三・五%の保護基準の引き上げもつかの間、消費者米価一四・四%の値上げをはじめとする諸物価値上げの波の中で、エンゲル係数の高いこれらの層の家計への圧迫を避けるととはできません。孤独化する高年齢者世帯の生活の窮迫が著しくなっている昨今、一昨年六月改定された一万円年金と称する厚生年金や、二十五年後に夫婦一万円が支給される国民年金だけで安心して生活している老人世帯はもちろんなく、まして、月千五百円の老齢福祉年金をもってして、何ほどの暮らしの足しになると考えているか。老人の生活保障、心身障害者、同和地域などへの救済について、今日までの積み立て方式、保険主義から脱して、真に国家の責任のもとにおける社会保障制度の飛躍的樹立こそが、総理の言う重厚な社会基盤確立のまず出発点をなすものと思うが、佐藤総理所信を披瀝されたいのであります。(拍手)  今回、政府は、医療保険に関し、政府管掌健康保険の料率を千分の七引き上げ、初診料、入院費一部負担の倍額引き上げ、薬代の一部徴収をはかることを内容とする改悪案を企図しておりますけれども、これは、健康保険財政の赤字補てん、給付、負担の公平化の美名のもとに給付水準の後退を永久化しようとするものであり、その対象者一千三百万人以上の国民にその赤字の四四・六%を押しつけるものであると同時に、その影響するところは組合管掌、共済組合にも及ぶ全国民的なものであって、わが国のように生活環境の劣悪さからくる罹病率が高く、賃金水準が低い現状で、国民皆保険主義の原則を破壊する改悪は絶対に避けなければならないことは言うまでもありません。診療報酬体系の不合理を解決するためには、急場しのぎの赤字補てんではなくて、根本的な課題として横たわっている薬価の改定、医療機関の適正配置あるいは現在大きな社会問題となっているインターン、無給医局員制度の改革を含む医師、看護婦の充足をはじめ、独立採算制の上に立った保険主義を打開していかなければならない段階に立っていると思うが、政府にその決意と質的転換の計画がありや、お伺いいたしたいのであります。(拍手)  社会保障に関し、第三にお伺いしたいことは、わが国社会保障制度の中で先進国に比し最も立ちおくれている厚生年金、国民年金、遺族年金、各種福祉年金についても、生活するに足る給付水準の引き上げのため、その底上げと所得振りかえの原則を貫くよう改善することを要求するとともに、現在、国民全家庭における児童の養育費が、最近の厚生省の統計をもってしても、手取り賃金二万円未満の世帯では、一人平均の養育費の生計費中に占める割合約二五%、二万円以上の世帯にあっても二三%以上を占めている現状にかんがみ、すでにその創設を明らかにした本格的な児童手当について、その形式的でない具体案を提示すべき時期に到来していると考えるが、その内容をお示しいただきたいのであります。(拍手)  私は、社会保障の最後として、特に総理にお伺いしたい。  総理は、昨日の本会議で、戦後処理で残された問題は、在外資産のみであると答えました。しかし、われわれは、沖繩問題の解決と同時に、懸案の原爆被爆者援護問題を放置して、戦後処理の解決はあり得ないと考えておるのであります。(拍手)  昭和三十九年、衆参両院の本会議において、被爆者対策現状を不満とし、援護強化に関する決議が満場一致可決され、政府も三千数百万円の予算を計上して、被爆者実態調査につとめております。事、人命にかかわる悲惨な戦争犠牲者、わけても、原爆被爆者の救援は、地主報償などのように、圧力団体に屈服して行なった根拠のない物的補償などよりはるかに急務ではありませんか。(拍手総理は、原爆被爆者援護法の制定のために援護審議会を設置してほしいという被爆者の声に対して、いかなる見解方針を持たれておるか、この際、明確にしていただきたいと思うのであります。(拍手)  私は、最後に総理にお伺いしたい。それは政府の放送番組の介入問題についてであります。  最近の新聞などの報道によりますと、二月二十一日の閣議において、小林郵政大臣は、最近一部の民間放送局のテレビ番組に偏向的内容があったとして、郵政当局が実情調査を行なった事実と、偏向を指摘された放送局の幹部が遺憾の意を表明されたことを報告し、郵政大臣発言に関連して、他の閣僚から、マスコミ規制の問題が活発に論議されたというのであります。  もとより、言論、出版その他一切の表現の自由と放送の不偏不党、自主自律は憲法及び放送法によって保障されているところでありまして、放送番組は、法律に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、また規制されることはないのは明らかであります。しかるに、政府のこの態度は、明らかに憲法や放送法を無視した不当介入でありまして、社会の公器たる放送をして政府・与党を利するためのマスコミ対策たらしめようとするところにあると考えざるを得ません。このような政府の言動は、かつての出版法、新聞紙法、治安維持法などを思い起こさせるような言論、報道の統制を意図したものであると考えられるのでありまして、きわめて悪質かつ重大な問題として、われわれは絶対にこれを看過することはできません。(拍手)これこそ、まさに佐藤内閣の反動的性格を如実に暴露したものであると言えましょう。今回のこの政府の正面からの介入は、マスコミ界に多大のショックを与えておると考えられるのであり、特に十一月の免許更新を控えておる放送界は、政府から番組の干渉を受ける筋合いはないと反論はしておりますけれども、自主規制の強化の名のもとに、政府に都合のよいような番組編成に傾かざるを得ないやもしれないことが懸念されるのであります。  申すまでもなく、言論、表現の自由は民主主義の基本をなすものでありまして、われわれはかつてこれを失ったばかりに多くの人命を失い、言語に絶する苦労を余儀なくされたことを忘れることは断じてできません。今日、国民政府のこの措置に対して強い批判の目を向けているのであります。佐藤総理は、マスコミ界や国民の疑惑を解消させるためにも、この放送の番組の介入問題に対し、いかなる方針を持って望まれようとするのか、明確にして誠意ある総理答弁要求し、ここに私の質問を終わる次第であります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  13. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  まず、生活の安定と権利の回復ということでいろいろ主張されました。しかし、このお話を聞いておりますと、非常に片寄っていないか。国民全体は働く者ばかり、いわゆる労働者ばかりではございません。そういう点を十分勘案されまして、全体が調和のとれた、そして融和のある方向で世の中を進めていく、これが、私の言う、重厚なる社会をつくるゆえんでございます。(拍手)皆さん方が特に勤労階級の賃金について云々されることは、わからないではございません。しかし、あまり片寄ってまいりますと、非常に聞きづらい話になりますから、こういう点は、調和のとれた方向でやっていただきたいと思います。  物価の問題について、物価と賃金との悪循環というようなことは私は申しません。これは昨日もお答えしたとおりであります。しかしながら、物価と賃金との間に関係のあることは当然であります。そこで、私は、生産に携わられる方は、最終受益者が消費者であるということを絶えず念頭に置かれて、賃金も上げましょうし、利潤もふやしましょうが、同時に、最終受益者である国民に利益を還元するということを絶えず念頭に置いて行動していただきたいのであります。(拍手)  お話のうちに、管理価格物価をつり上げておる、こういう御指摘がありました。私は、こういう点については、政府自身が行政上におきましてもさらにくふうの余地があるのではないかと思います。とにかく、自由競争の条件を整備することによりまして物価の安定はもたらされるのであって、今回の予算編成にあたりましても、そういう意味で、公取の人員などはふやしまして、できるだけ自由競争、そのたてまえで物価が自然に落ちついてくる、そういうことをねらっておるのであります。  ただいまのは、積極的に政府が賃金を上げろということに対する私の考えであります。  その次に、人事院勧告につきまして、これを完全に実施しろ、こういうお話であります。また、当事者能力がないこと、これはけしからぬというのでございますが、御承知のように、ただいまの予算のあり方から見まして、三公社五現業の長に当事者能力がないのでございますが、しかし、われわれは、あらゆるくふうをいたしまして、話し合いのつく方法で労使双方の満足のいくような方法はないだろうかというので、いろいろ苦心しておる際でございます。  また、全国一律の最低賃金制を、業種別によらずこれをきめろということでございますが、これらの点については、家内労働法の制定とともに、ただいま労働省におきましても種々検討しておる最中であります。  次に、ILOの条約批准について、百号についてのお話がございました。私、百号はもっともしごくの問題であるから、できるだけ早くこれは無条件に批准すべきではないか、かように思います。しかし、百五号並びに百十一号、こういう問題になりますと、なお研究を要する点があるようであります。  また、ILO理事会の、教師の地位に関する勧告を尊重するようにひとつ考えろというお話でありますが、これも十分検討してみたいと思います。(「検討ばかりじゃないか」と呼ぶ者あり)こういう事柄は、検討なしに結論を出すわけにまいりません。(拍手)  次に、交通戦争についてお尋ねでございます。私は、交通戦争、交通事故による死傷者の非常に多いことにかんがみまして、どうかこういう交通事故の防止、絶滅を期する方法はないだろうか、かように思いまして、総理になりましてから、国民総ぐるみ運動を展開いたしております。各界各層、ことに勤労階級の諸君もこれに進んで参加して、また、報道関係、マスコミあたりの協力も得まして、そしてただいま国民総ぐるみ運動を展開しておる最中であります。一昨年はこの運動を展開いたしましてたいへん成績があがりましたが、昨年はまことに残念ながら成績があがっておらない、こういうことでございますので、ただいまの御提案等につきましても、これまた、この国民総ぐるみ運動の一環として、十分この考え方に沿うようにくふういたしてまいりたいと思います。  次に、住宅問題についてのお話であります。民間住宅建設と国がつくる住宅比率、これを逆にしたらどうか。それは確かに国がつくるほうが低めにいくのでありますから、そういたしたいのでありますが、しかし、予算的にずいぶん苦しい状況でありますので、そうもまいりません。やはり民間の協力によりましてこういう問題は解決すベきだと思います。特に、その際に、皆さん方から要望されるように、勤労階級に対する低家賃の公営住宅をふやすようにくふうをすべきだと思います。  しかし、私、住宅をつぶさに視察してみますると、どうも低家賃ということから、たいへん狭い施設だと思います。最近の国民生活向上等から見ますると、もっとゆとりのある住居を提供するというのが、これは当然ではないだろうか、かように思いますので、ただいま、低家賃住宅をふやす、こういうことを言われましても、必ずしも実情に合わないのではないだろうか。今日、私どもが団地に参りましていろいろ考えてみますると、ちょうど、五、六年前にフランスから日本に参りまして団地を見た人に私どもが話をしたのは、「ただいま日本では、団地で全部テレビを待つようになった、そこでテレビの配線その他でずいぶん問題も起きておるようです、これががんがんうなりを立てる、そういうようなことで困っておる状態です」というような話をしましたら、フランスの人は、「もうテレビの時代はフランスではずいぶん前に済んだんだ、ただいま非常に困っておるのは、自動車置き場のないことだ」ということを、当時五、六年前に申したのであります。私は団地に参りまして、やはり自動車置き場の必要あるいは共同の会議施設、そういうものを必要としておるように見受けるのであります。やはりこういう点についても、これから住宅をつくります際には注意すべきじゃないだろうか。新しい、もっと整備のできた、設備のいい住宅をつくるべきじゃないか、かように思います。  次に、地価抑制の緊急措置をとるべしということでございます。これもすでに地価問題と真剣に取り組んでおりますので、その効果があがりつつあると思います。  次は、首都の整備の問題であります。この際に、人口集中することによります交通や、また住宅、水の問題などが、これはたいへんな問題になると思います。そこで、ただいま埋め立てによるコンビナートなどは、こういう公共施設の不足をもたらすゆえんだ、これはやめろとはおっしゃらないが、そういう意味のようにも聞けたのであります。ことに沼田ダムの建設などは、これはたいへんなことだから、そういうものをやめろ、こういうようなお話のように聞きましたが、私は、やはり都市集中の形がどんどん進んでまいりますから、都市集中の、これが望ましい形ではございませんけれども、現状そのものとしてはやむを得ないといいますか、そしてそれに対する対策を立てることは、これは当然でございます。しかし、ダム建設等においては、現地住民の納得のいく方法でなければこれができないことも、私も承知いたしておりますから、こういう新しい施設をするということについては、十分理解のいくような、納得のいくような処置をとって、それぞれの対策を進めてまいる考えであります。  次に、社会保障の問題であります。近代国家の使命といたしましては、申すまでもなく、福祉国家の建設、こういうことがねらいであります。そういう意味におきまして、生活保護家庭や低所得層の方々に対しましてこの社会保障を充実し、そうして重厚な社会建設をする考えであります。  また、各種保険制度等について抜本的な対策を立てろ、こういう御要望でございますが、私は、しごくごもっともなことだと思います。ただいま緊急措置をこの各種保険制度に対しましてとりますが、もうすでに抜本的な対策と取り組むべきそのときになっておる、かように思います。  次に、原爆被災者に対しての援護強化の決議もした今日だから、どうか援護法の制定や援護審議会を設けるなど、これを決定しろ、こういうお話であります。ただいまちょうど実態の調査中でございます。実態を十分把握いたしまして、しかる上で、その次に、ただいまのような御要望をやらなければならないかどうか、考えてまいるつもりであります。  最後に、テレビ、言論等について、どうも言論の自由に介入する、これは民主政治を逆行するものだ、こういうお話でありますが、さような事実はございませんから、御安心をいただきます。(拍手)   〔国務大臣早川崇君登壇〕
  14. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 私に対する二点の御質問にお答えいたしたいと思います。  最初は、失対賃金が低過ぎるので値上げをしろ、こういう御質問でございまするが、昭和四十二年度から一三%引き上げまして、一律単価七百十円七十銭、これは失対賃金審議会の答申のとおりでありまして、まず妥当な値上げであると考えます。  第二点の、失業保険法の改正にあたって、季節労務者の失業保険を打ち切るのではないか、こういう御質問でございまするが、目下検討中の失業保険法改正では、そういうことは考えておりません。そうではなくて、五人未満の零細企業に働いておる勤労者に失業保険と労災保険を全面適用する、日の当たらない勤労者に対して社会保障を及ぼしていくというのが主体であります。それに伴いまして、従来、五十八万人の季節労務者、循環失業者が現におるわけであります。このすでに既得権を持っておる五十八万人に対しましては、この改正におきましても、従来どおり保険金を支払っていく、こういう考えでございます。ただ、しかし、そういった予定された循環的な失業に対しましては、御承知のように、掛け金の二十二倍も保険金をもらうわけです。半年働いて九十日もらうのでありますけれども、現在三百億円の保険金を五十八万人の人たちが支払ってもらっておる。納める保険料はわずか十数億円であります。そういう保険が非常にふくらんでまいりますると、失業保険会計というのはとてももたないので、諸外国におきましても、そういう季節失業者に対しましては採用しておらない。カナダが採用しましたが、これが破産をいたしました。日本は、欧米に比べますと、現に既得権を持っておる者には従来どおりやる、今後の季節的あるいは循環的失業に対しましては、二年目までは、従来どおり、保険料の二十二倍の保険金を差し上げますが、三年目からはその二分の一、すなわち、保険料の十一倍程度保険金をもらう、そういうところが大体妥当ではないだろうか、そうでなければ、その赤字は全部ほかの勤労者の保険料にかかっていく、あるいは国庫負担にかかっていく、こういうことになるのは、決して保険制度の公正な姿ではない、こういう考えでおりまするから、御了承を賜わりたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣坊秀男君登壇〕
  15. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 社会保障の問題につきまして、すでに総理から御答弁がありましたが、私からきわめて簡単にふえんをさしていただきます。  社会保障制度の健全な発達をはかれという御意見には、全く同感でございます。その制度の中で、医療保険については抜本的な建て直しをやらなければならないということで、その方向に決意を固めておる次第でございます。御承知のとおり、医療保険の各制度が分立しておりますために、給付や負担の不均衡の是正、診療報酬体系の適正化、保険財政長期的な安定等を実現するという角度から鋭意検討を続けておるような次第でございます。一方、政府管掌の健康保険等の財政現状が、累年にわたりまして赤字を生んで、これがたいへん巨額になって、早晩支払い遅延等の非常に最悪の事態が生ずるおそれがありますので、これらの制度の崩壊ということがあってはいけない、これを食いとめるために、このたび、最小限、ぎりぎりの赤字対策を講じなければならないという状態と相なりまして、政府は、この赤字対策を実施して急場をしのいでいきたいということで、今度赤字対策案を立てたわけでございまして、決してこれを恒久化しようというような意思は持っておりません。これをやりまして、引き続き制度の抜本的な建て直しをやっていこうと決意をいたしておる次第でございます。  なお、周辺の問題といたしまして、医療機関の配置など、あるいは僻地、その他医療機関の国庫補助、低利長期融資等を通じまして適正な配置につとめるほか、いま問題になっておりまするインターン問題につきましては、現行の実地練習制度にかわる合理的な臨床研修体系を織り込んだ制度の改善を検討中であります。また、看護職員等について、看護婦等養成施設の整備などによりまして、その確保対策を推進していく考えでございます。  第二点は、振替所得をだんだんとふやしていって、そして社会保障のほうへ回していくべきじゃないか、こういう御意見でございまして、しごくごもっともなことだと思います。昭和四十年度における振替所得の規模は一兆三千八百億円であって、対国民所得比は五・五%を占めております。このうち、年金保険部分は八百三十億円で、振替所得中の構成比は六%となっております。今後年金制度充実は、社会保障の拡充整備のうち特に重点を置いていかなければならないものと考えられますが、今次策定されました経済社会発展計画におきましても、このような考え方のもとに、所得保障部門の比重を拡大する方向で、四十六年度における振替所得の規模は、対国民所得比で四十年度の五・五%から二%程度上昇することにしております。  それから児童手当のことでございますが、児童手当につきましては、厚生省では、できるだけ早くこの制度を実現させるよう鋭意準備を進めておりますが、制度の具体的構想につきましては、目下検討中の段階でございまして、今後なお各界の御意見を徴した上で成案を固めることが必要であろうかと考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣西村英一君登壇〕
  16. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 大体総理から基本的にはお話がありましたが、私、首都圏整備委員長として、簡単に申し上げたいと存じます。  首都圏の整備につきましては、さき基本計画をつくりまして、それに基づいて整備計画をつくりまして、その整備計画に基づきましてただいままでやったことは、市街地につきましては、工場等の集中することを抑制する、また、首都の周辺における都市開発地域におきましては、これを育成するという方針でまいりました。そのために、今日まで産業の立地等につきましても相当な成績をあげておる次第でございます。   〔副議長退席、議長着席〕 しかしながら、ただいまも田邊さんからお話がありましたように、やはり相変わらず、産業人口集中がありますので、現在のところ、既成市街地の周辺におきましてやはりいろいろ土地問題が起こっておることは、御案内のとおりでございます。したがいまして、われわれといたしましては、もうだいぶ前につくりました整備計画でございまするから、これをこの際再検討して、これを改定したい、かように考えて、いま研究中でございます。  また、東京湾の開発につきましても御注意がございました。その御注意は、この開発のいかんによっては、過度のやはり人口集中を招くのではないかというお話でございましたが、この開発の方向、あるいは道路、あるいは港湾、鉄道の整備等につきましては、人口の過度集中にならないように、十分気をつけて進めたいと思っておる次第でございます。  それから沼田のダムの問題について話がございましたが、ただ、誤解のないように考えてもらいたいのは、利根川は、御案内のとおり、最も重要な水資源の場所でございますので、この水資源を開発するということは、東京都のみの問題ではございません。その沿線における水資源の需要もかねての問題でございまして、詳しい話は省略いたしますが、この問題につきましても、ただいまのところ、具体的にこれを建設するという計画は持っておりませんが、十分調査はいたしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  17. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 西尾末廣君。   〔西尾末廣君登壇〕
  18. 西尾末廣

    ○西尾末廣君 私は、民主社会党を代表して、当面する内外の幾つかの重要問題について、佐藤総理政府所信をお伺いいたしたいと存ずるのであります。(拍手)  質問の第一は、佐藤内閣政治姿勢についてであります。  去る一月、総選挙の結果に対する政治的評価について、自民党並びに政府は、議席数の減少しなかったことをもって勝利感にひたっておられるようでありまするが、これを得票数について見ますると、与党の得票数は、野党全体の総得票数より少ないのであります。このことは、自民党国民過半数の支持を得ていないということを物語っておるのであります。(拍手)この厳粛なる事実を政府並びに自民党は、はっきりと認識する必要があると思うのであります。これは、社会党の停滞にもかかわらず、わが党並びに公明党の進出が著しかったからであります。(拍手)いまや、いわゆる多党化時代を迎えて、政府並びに自民党は、従来のように絶対多数の上にあぐらをかいて、与党独善の政治を行なうことはできなくなったと見るべきであります。(拍手)  ましていわんや、問題の黒い霧は、総選挙の洗礼を受けた今日においても、断じて解消したものではありません。保守政権腐敗の禍根は深くかつ長いのであります。したがって、佐藤内閣が、総選挙の結果に気をよくし、保守太平ムードにみずからおごるならば、再び黒い霧が続発を見ること火を見るよりも明らかであります。(拍手政治の姿勢を正し、厳粛かつ謙虚に施策を推進するためには、この太平楽観ムードこそ最も自戒していただかねばならぬかと思うのであります。この点についてあえて総理の所見を伺っておきたいと思うのであります。  第二に、議会制民主主義の擁護について一言いたします。  総理は、その施政方針演説において、聞くべきは聞くとおっしゃって、寛容の態度を言明せられておるのでありますが、しかし、昨年暮れの臨時会のてんまつを振り返ってみますると、佐藤内閣の権力的姿勢はまことに露骨なものがあったのであります。議会制民主主義の真髄は、申すまでもなく、少数意見の尊重を前提とし、これを重視するものであって、ただ数にものをいわせて多数が無理を押し通すというようなものであってはならないのであります。(拍手)ことに、今時総選挙の結果に基づく多党化の現象は、日本の政界に新しい局面を切り開き、日本の議会制民主主義の運命にとっても、まさに大きな試練を課するものであります。もちろん、われわれ野党各派も、いたずらに党利党略に走ることなく、議会制民主主義のルールの確立と堅持に今後も一段と心がけねばならぬことは、言うまでもないことであります。しかしながら、特に政府並びに与党に対しまして、この点に関する責任感を強く要望し、総理の決意と所信をあらためてお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)  次に、政治姿勢についての第三点として、いたずらに目先のことに拘泥することなく、日本の将来に対する洞察力を深め、政治長期的かつ計画的に推進するよう、佐藤総理に強く訴えておきたいと思うのであります。  時あたかも明治百年、戦後二十年を経過したわが国にとって、過去を振り返り、未来を展望し、現実の政治、外交課題に対処していくことが必要だと存じます。佐藤総理も、施政方針演説において多少この点に言及されましたが、総理見解はあまりに抽象的であり、その内容が不明確な点が多かったのであります。後に私が述べますようにいまや内外の情勢はきわめて重大な時期に直面しておりますこの際、佐藤総理は、国民に対していかなる夢を与えんとするものであるか、さらに、この夢を実現するために、いかなる方法で政治計画性を導入するのであるか、ここで佐藤総理の抱負と決意を明らかにしていただきたいと存ずるのであります。(拍手)  第二の問題は、内政問題、特に国民生活に関する選挙中の公約実行についてであります。  佐藤内閣は、このたびの選挙に際し、国民に幾つかの重要な諸政策の実行を約束されました。物価抑制、大衆減税の実行、住宅難解消公害交通禍の根絶などがそれであります。したがって、今度の特別国会に国民が期待し注目するものは、これらの公約が昭和四十二年度予算をはじめ今後の政府施策の中でいかに具体化され、実行に移されるかという点であります。  この見地から、私はまず物価政策についてお伺いいたします。  佐藤内閣はすでに成立以来この二年間に消費者物価を一二%以上引き上げました。これは年率六%台という異常な物価高であります。しかも、これまで値上がりが見られなかった卸売り物価が昨年来急速に上昇し、すでにこの一年間に約四%の大幅上昇を見るに至っておるのであります。池田内閣、佐藤内閣とこの七年間叫ばれ続けてきた物価抑制ということばは、いまや空虚なスローガンと化し終わってしまっておるのであります。(拍手)この事態は、歴代保守党政府物価対策怠慢の結果でなくて一体何でありましょうか。(拍手)そして政府は、さきの総選挙に際して、公共料金は向こう一カ年間値上げしない旨を公約しながら、このたびの四十二年度予算案においては物価全体に大きな影響を与える消費者米価の十月から一四・四%の値上げをはじめ、健康保険料、酒の値上げなどを容認し、物価抑制どころか、みずから諸物価値上げの突破口を切り開いておるのであります。(拍手)この政府の態度は、政治道義、責任政治をじゅうりんした国民に対する重大な公約違反であるとともに、今後の国民生活に大きな被害をもたらすものといわなければなりません。この措置によって、本年の物価上昇を四・五%にとどめるという政府方針は、早くもくずれ去ることが明らかとなってきたのであります。佐藤総理は、この責任を一体どのようにとられようとするのであるか、それを明らかにされたいのであります。  当面物価政策として政府がとるべき対策は、公共料金値上がり抑制、管理価格引き下げ、生鮮食料品の流通機構の思い切った整備の三点を実行することが、物価対策の基本策であると考えます。しかるに、佐藤内閣は四十二年度予算編成にあたって、まず公共料金値上げを断行し、みずから物価抑制に背を向け、物価を押し上げる予算を編成したのであります。まさに八方破れの物価対策といわざるを得ないのでありますが、この点に関する佐藤総理の御見解をお伺いいたしたいと存ずるのであります。  次の問題は、大衆減税についてであります。  昭和四十二年度予算に盛られた減税額は、物価対策と同様選挙公約に反した期待はずれの減税といわざるを得ません。政府案によれば、今回の減税は初年度一千八十億円でありますが、この額は昨年度の三分の二、予算規模に対する減税比率はわずかに二%程度であって、まさに戦後最低減税であります。われわれが選挙中公約として耳にした、大幅な大衆減税とはおよそほど遠いものといわざるを得ません。しかも、前述の消費者米価、健康保険料などの引き上げによって、国民は本年度新たに二千億円の負担をしいられることを考えるとき、国民減税どころか、実質的に増税をしいられるのが四十二年度予算案であります。しかも、問題は、この一千八十億円減税の半分、約五百億円は低額所得者の減税ではなく、年所得百二十万円以上の人々に対する減税だということであります。すなわち、政府案は大衆減税から離れた高額所得者に有利な不平等減税案というべきものであります。佐藤総理はこの点を一体どのようにお考えであられますか、特に国民が待望している百万円減税は、このような状態ではまさに日暮れて道遠しの感を深くするが、これらの減税に対して政府はいま一度根本的に考え直すべきであると思うが、総理のお考えを伺いたいと思うのであります。(拍手)  以上、私は国民生活に関する政府の公約事項として、物価減税の二点についてお伺いしてまいりましたが、政府の公約不履行は以上の二点だけではなく、住宅政策その他についてもいえるのであります。  住宅政策として五カ年で六百七十万戸の住宅建設するという政府方針は、本来向こう五カ年間の住宅需要を満たす数字ではないのであります。したがって、かりに政府案どおりに住宅が建てられたといたしましても、なお約百万戸の住宅不足が残り、住宅難は五年後においても解消されないのであります。しかるに、今回の四十二年度政府予算案では、年間五十四万戸建てるはずの政府施策住宅が、わずか三十四万戸に減らされているのであります。これは明らかに公約違反であることはもとより、五年後に一世帯一住宅という政府の約束が、いかに空虚であるかを立証するものであります。  以上、私が指摘した三つの問題は、それぞれ今日の国民生活にとって重要な課題ばかりであります。そうしたいわゆる重点政策選挙後は一片のから手形のように取り扱われ、公約が実行されない事態は政治的に見てゆゆしき問題であります。今日の政治不信も決して偶然ではなく、まさしくこのような政府の態度を反映したものといわざるを得ないのであります。(拍手)佐藤総理は、政治に対する国民の信頼を回復するためにも、この際、公約についてはこれを忠実に実行すべきだと思うが、佐藤総理に再検討の意思がおありでありますかいなや、その所信を明らかにされたいのであります。(拍手)  次に、私は、佐藤内閣経済財政政策の基本に関する事項について、政府所信をただしたいと存じます。  私は、結論的に言って、このたびの四十二年度予算編成は、今日の経済実態に照らして、重大な誤りをおかしているといわざるを得ないのであります。昨年度、わが国は戦後最大の不況に直面し、初めて本格的な公債政策を導入し、いわゆるフィスカルポリシー、すなわち財政指導の経済政策を採用したことは、すでに周知のとおりであります。しかし、今日の日本の経済は、昨年度に比べまして大きな変化を見せ、不況からの立ち直りもつかの間、早くも過熱への危険が叫けばれるに至っておるのであります。設備投資の急速な増加傾向生産・出荷の高水準、銀行貸し出し並びに日銀券発行高の膨張、卸売り物価上昇、輸入の増大と国際収支の悪化傾向などがそれであります。したがって、この段階における財政役割りは、景気過熱への暴走にブレーキをかけ、財政をできるだけ圧縮する努力をするべきであると思うのであります。特に、四十二年度においては七千五百億円からの税の自然増収が見込まれる現状の中では、公債発行はできるだけ圧縮し、少なくとも、四十一年度以下に押えることが当然であるにかかわらず、四十二年度予算では、物価問題懇談会の答申をも無視して、これを八千億円に増加しているということは、財政政策の本末を転倒するもはなはだしいといわなければなりません。  以上の見地から、佐藤内閣の四十二年度財政政策は、明らかにブレーキとアクセルを踏み違えており、池田財政高度成長政策の失敗を再現するものと断ぜざるを得ないのであります。この点についての佐藤総理の御所見を明らかにされたいと思うのであります。  次に、外交問題についてお尋ねいたします。  その第一は、わが国外交の基本問題について外あります。  世界の緊張がアジアに集中し、これの長期化が予想される中で、アジアの先進国たるわが国外交のいかんは、今後のアジア情勢に重要な影響を与えることは言うまでもありません。特にアジアには大国共産中国が膨張的国家性格と核武装をもって存在しております。現に民族解放戦争の正当性を主張して、米ソと争い、ベトナムその他の地域で紛争の背景国になっておることは周知のとおりであります。そして米国はこの中国と対決し、中国また米ソを敵視し、ソ連また米国との間に平和共存の面を持ちながら米中と張り合い、互いの政治的指導権の確立を目ざして複雑な抗争を続けているのであります。これが今日のアジアの緊張の実態であります。このような情勢の中で、わが国は、みずからの平和とともにアジアの平和と繁栄に寄与すべき使命をになっておるのであります。このような現状の中で、わが国の進路を今後どのように決すべきか、これがわが国外交に課せられた今日の基本課題であります。  私は、わが国外交の中でいま最も欠けておるものは次の三点だと考えております。その第一は、アジアの一員としての自主的立場の欠如であります。その第二は、外交平和方針に対するナショナル・コンセンサス、すなわち国民的合意の喪失であります。その第三は、行動力の不足であります。われわれが今後具体的に外交案件と取り組むに際して常に留意すべきは、この三点であります。それなくして、日本外交の真価の発揮はおろか、国民の真の利益を確実にすることは、とうていおぼつかないと確信いたしております。  第一の問題は、いうまでもなく、対米追随並びに容共路線、特に中共一辺倒からの脱却であります。第二の点の打開は、この両極に追随する立場を排し、国民の利益を中心として、具体的外交案件について、常に国民の共通の立場を求める努力を傾注することであります。そして第三の点は、アジアの一員であるという使命感に立って、ことばではなく、行動をもってアジアの困難に立ち向かうことであります。(拍手)  この三つの基本的立場は、今後のわが国外交の基本条件であり、わが国が西欧の日本あるいはエコノミック・アニマルという悪評からのがれて、各国の信頼と真の自主外交を確立する重要な前提だと考えるのであります。  佐藤総理は、過去の日本外交をどのように反省し、今後いかなる方向でこの点を打開し、是正されんとするのか、その所信をまず明らかにされたいのであります。  しかして、前述の三つの基本的立場を欠いた最もよい例が、ベトナム和平に対するこれまでのわが国の態度であります。ベトナム問題に対するわが国の象徴的姿は対米追随、国論の対立、そして傍観の三つに尽きるのであります。これはまさにアジアの一員の立場を放棄した態度であります。もとより、この種国際問題に対してわが国が自主性を発揮し、一定の行動をとったからといって、直ちに成果を期待することは早計であります。しかし、成果を期待し得ないからといって行動をちゅうちょすることは、責任の放棄であります。これまでの各国首脳のベトナム和平をめぐるもろもろの行動も、自国の利害を超越した国際的使命感に根ざすものであります。今日の不成功はあすの成功を切り開く貴重な布石というべきでありましょう。  現に交戦国の双方は、武力で相手方に決定的な勝利をおさめることの不可能を知り始め、徐々に停戦と政治的解決の必要を認識し、その方向に動いております。それゆえに、政府は、単なる口先だけの平和提唱ではなく、積極的に行動をもって和平への打診とあっせんを行なうべきだと考えます。佐藤総理には、この際、各国首脳と会談するなど、ベトナム和平について積極的行動をとるべきであると思うが、これに対していかにお考えでありますか、その決意をこの際承っておきたいと思うのであります。(拍手)  外交問題における国論統一の課題として、今日最も重要な問題は、日米安保条約と沖繩問題であります。  佐藤総理は、さき施政方針演説で日米安保について現状維持の方向を明らかにされましたが、この政府の態度自体、わが国の最も基本的な外交問題について、国論の統一をはかる努力を初めから放棄したものといわなければなりません。(拍手)同様に、沖繩問題についても、総理国民の念願がすみやかに達成されるよう努力すると言いながら、政府部内において、返還方式をめぐり、部分返還か全面返還かで意見の不統一を来たし、国民の間に無用の議論をまき散らしていることはきわめて遺憾であります。沖繩の施政権返還問題と援助増大の問題は、本来性格を異にする問題であります。援助の強化によって、施政権返還問題が自然に解決されるかもしれないという考え方は、基本的に大きな誤りであります。  政府は、この際、沖繩問題に対する国民の念願を達成するために、返還方式について部分的返還か全面返還かの立場をこの際国民に明確に示し、その基本方針に立って施政権返還の具体的努力を、今後の日米の交渉の中で明らかにすべきであります。それとともに、安保条約についても、わが党がすでに提唱しておる駐留なき安保への改定を真剣に検討し、もってこれらの外交の基本問題について国民の共通意識を確立すべきだと思うが、この点に関する総理の所見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  最後にお伺いいたしたい点は、核軍縮と核拡散防止についてであります。  私は、第四十八国会の代表質問において、すでにこの問題を取り上げ、わが国は非核武装を貫きつつ、核保有国の軍縮を推進し、あわせて核兵器の拡散防止を実現するため、わが国が潜在的核保有国の音頭をとって、非核クラブを結成すべきことを提唱いたしました。この私の提案は、最近における核拡散防止条約の問題に関する論議の中でその正しさがとみに立証されてきたのであります。(拍手)しかして、最近、核拡散防止条約の論議をめぐって、核拡散防止に対するわが国方針が、ともすれば不統一の観を露呈しております。わが国の安全と将来のわが国の科学水準にとって死活的な重要問題であるこの種の問題について、政府方針が一官僚の言によって左右されたり、不明確であったりすることは、まことに重大であります。(拍手)  そこで私は、核拡散防止について、この際あらためて政府に対し、次のことを提案したいと存じます。  その第一は、核軍縮と核拡散防止は並行して進めるべきであるとの立場に立って、政府は核拡散防止に積極的賛成であることを、この際、内外に明らかにすべきであります。  その第二は、条約の締結にあたっては、第一に、究極的に核兵器の廃絶を目的とし、第二に、非核保有国に対する安全保障を取りつけ、第三に、核保有国側による核兵器漸減の具体的義務を明らかにし、かつ第四に、核の平和的開発については非核保有国に対する差別待遇を認めないこと、すなわち一口に言いますならば、条約内容については、核保有国だけのわがままを許さないかまえを堅持することが必要であります。(拍手)  その第三は、そのための具体的行動として、わが国が中心となって、カナダ、スウェーデン、西独、インド、スイス、イタリア、チェコ、イスラエルなど核開発能力を持つ諸国と緊密に協力して、米ソをはじめ核保有国の独走と専横を許さない体制を確立すべきであります。  私は、以上の三点が核拡散防止に対するわが国の基本的立場でなければならないと確信するものでありますが、この問題に対する政府の正式見解を佐藤総理から明らかにしていただきたいと存ずるのであります。(拍手)  特に条約の作成にあたって、この三点がいれられない場合は、日本政府はどうするのであるか、条約の締結を拒絶する意思があるのであるかどうか。この際、その立場を明確にされたいのであります。(拍手)  私は、この問題の重要性にかんがみ、日本政府は早急に行動を起こすことが必要と思います。場合によっては、佐藤総理自身、前述の関係各国中のおも立った国々を歴訪して、それら諸国の一致した態度をつくり上げるべきであると思うのであります。この私の提案に対して、総理はいかに考えられるのでありますか、その決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わる次第であります。ありがとうございました。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  19. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  さき選挙後のわが党並びに国会のあり方について、御意見をまじえてのお尋ねでございます。私は、御指摘になりましたように、政局を安定さすに十分な議席は獲得できましたが、ただいま自由民主党だけではその得票数は過半数に及んでおりません。しかしながら、保守系無所属を加えますならば、それは、ただいま言われるように、得票数が足らないということではないように思います。この点は、私が太平ムードにおぼれるというような気持ちではございませんが、現実の問題でございますから、国民の過半数の支持を得ておる私どもの陣営だと、かように御了承いただきたいのであります。  しかして、ただいまもお話がありましたが、黒い霧問題、いわゆる政治道義の問題について、選挙が済んだというだけで甘く見てはいかぬぞという御注意がございました。私は、この選挙でまず粛正の第一歩を踏み出したと、かように考えております。今後ともこの粛正の実をあげるように、そうして国民政治に対する信頼を獲得するように、この上ともわれわれは努力しなければならない、かように思っておる次第でございます。したがいまして、ただいまのお話は、私どもが太平ムードや楽観ムードにおぼれるというようなことは絶対にございませんし、謙虚な気持ちで国政に当たる考えでございます。  次に、選挙の結果、多党化時代がきたというお話でございますが、私はやや所見を異にしておりまして、いわゆる多党化というのは、少数党——過半数、安定勢力を持ち得ないような場合に使われることばであって、この場合は、野党の多党化とでもいうような状態ではないだろうかと思うのであります。(拍手)しかし、御指摘になりましたように、数のふえたことは事実でありますから、これから国会の運営にあたりまして、在来よりもやや複雑になってきた、そういう意味で一そうこの運営については気をつけていかなければならぬと思います。  そういう際に、御指摘にもありましたように、少数意見を尊重すること、もちろんであります。多数党は寛容でなければならない、これも御指摘のとおりであります。私どもは、多数党たるの責任をもちまして、筋の通らないような運営をしたり、あるいはゴリ押しをするようなことは絶対にいたさないつもりであります。どこまでも話し合いの場として、国民の期待するようなりっぱな議会制民主政治をつくり上げたいと、かように思っております。  そこで、ぜひとも御理解、御了承を得たいと思いますことは、尽くすべき論議を尽くして、最後は多数決に従うというデモクラシーの原理、これはぜひとも確立してほしいものだと思います。(拍手)  次に、わが国の将来についての展望でありますが、この際に国民にビジョンを与えろという、これはお説のとおりだと思います。私は、施政演説で、戦後の事態は変わり、新しい歴史創造と取り組む時期になったということを申しました。確かに、今日は、人口構造の変化や、あるいは経済の国際化や、また宇宙開発の時代とまでいわれております。過去とは非常な大変化を来たしつつあるのであります。この後の世界あるいは世の中の変わりというものについては、ほんとうにただいまが画期的な時期で、そういう際であるだけに、われわれが心を新たにして、いわゆる風格のある社会建設、それと取り組むべきそのときだと思うのであります。私は、この点につきまして——との風格ある社会ということばではなかなかわかりにくいというお話がございます。これは、物心両面におきまして十分充実し、その両者の調和の上に民族の真価が発揮され、すぐれた個性と高い品位を持ち、国際的にも尊敬され、畏敬されるような国柄をつくるということでございます。(拍手)私は最近の経済発展等を考えますると、明治時代において、「追いつき追い越せ」というような表現で国運を進めてまいりましたが、今日わが自由民主党の基本的経済政策を今後引き続いて遂行するならば、必ず二十年後には今日のアメリカの経済状態、国民生活の状態にこの国を引き上げることを私はお約束いたしておるのであります。(拍手)また、科学技術の発展におきましても、さらに進んだ宇宙開発に私どもも参加することを約束いたしております。ぜひともこれにふさわしいような、わが民族のこの高い民族的な誇り、これをこの物質文明と並行して充実さしていきたいものだと思うのであります。どうか御声援をお願いいたします。  次に、物価問題や減税、同時にまた、住宅の問題について、たいへん手きびしい御批判をいただきました。これは大体公約違反だということでございますが、減税その他について私が選挙中その他でお約束したこと、また、党におきまして公約いたしました事項は、実は忠実に実行されておるのでありますので、手きびしい御批判ではございますが、公約違反ではないということをひとつ御了承いただきたいと思います。  ただいま、減税につきまして、ぜひとも所得百万円までを無税にしろという、これは野党の諸君の全部の御希望のようでございますが、私どもは、四十五年を目標にして百万円までを無税にする、その際には、最近の経済成長等から考えまして、四十五年を待たずしてこれが実現できるならばたいへんしあわせだ、そういう方向で努力するということを申しております。ただいま野党諸君のいわれる百万円、これはなるほど、七十五万円までできたら今度は八十万円、さらに百万円と、こうねらわれることは当然だと思いますけれども、いましばらく国民にもごしんぼうをいただきたいと思います。また、ただいまのような考え方でございますから、いわゆる再検討をしたらどうかというお話でありますが、再検討はいたしません。もうその必要はないように思っております。  また、物価抑制につきまして全然効果がないじゃないかというおしかりでございますが、私は、昨年までのいわゆる六%以上の物価値上がりを五%に押えることができた、こういうことは、国民政府のこの努力をやはり理解し、買っていただきたいと思います。私は、五%自身でいいというのじゃございません。もちろん、国民生活を圧迫するものでありますから、さらにさらに私ども努力をいたしまして、物価についての国民の要望にこたえたいと、かように思っておる次第でございます。(拍手)  経済の問題についてのお話でありますが、財政役割りは、確かにこういう際にはブレーキの役もしなければならない、過熱に対してブレーキの役をしろという御注意でございます。私は、財政の運営にあたりましては、今後弾力的にこれを運営してまいりまして御期待に沿うようにいたしたいと思います。  次に、外交の問題についてのお尋ねであります。わが国の基本的な態度は、世界の平和と繁栄の中にみずからの安全と発展をはかるという立場におきまして、いわゆる自由を守り、平和に徹する、こういう考え方で自主的な外交を進めてまいりました。しかし、この事柄は、なかなか国際的な理解を得るのに時日を要しましたが、最近に吹きまして、わが国のこの行き方に対し、アジアの諸国におきましても十分これを理解され、わが国に対する期待もたいへん高く大きいものになってきておるのであります。これからが、先進工業国としてのわが国世界において果たすべき責任か果たす、その時期になっておると思います。  いろいろ御批判がありまして、外交についての最も足らない点は、行動力の不足だ、かように御指摘がありました。私は、政治家たる者が、行動力不足、こういうような批判を受けることをたいへん残念に思いますが、確かにそのとおりのものもあるだろうと思います。こういう点で十分注意して、今後は、御期待に沿うように、活発な行動力の実現によりまして効果をあげていくようにいたしたいと思います。  ベトナム問題について、さっそく、その行動力の不足から、ベトナム問題を傍観しておるのではないか、こういう意味のおしかりを受けましたが、私どもも傍観しておるわけではありません。平和を招来するためには、関係諸国の連中がその気持ちにならない限り、また、そういう機運をつくるのがわれわれの仕事でもありますから、そういう意味で、積極的な行動力の不足を補うように努力してまいるつもりであります。  そこで、今度は沖繩並びに日米安全保障条約についての考え方をただされましたが、日米安全保障条約のもとにおいてわが国の安全は確保されておりますので、わが国は今後ともこの基本的態度を堅持するつもりであります。それをどういう形でするかは、いましばらく十分検討してみたい。時期がまだしばらくありますので、そういう意味で検討するつもりであります。  沖繩の返還問題については、いわゆる全面返還の態度をとっておるのでありまして、これは他の機会にもこの衆参両院の議会におきまして説明いたしておりますから、もう誤解はないだろうと思います。  次に、核の問題についてのお尋ねでありますが、核軍縮と核拡散防止を並行して進めるべきだ、お説のとおりであります。また私は、究極には核兵器というものをなくすること、また、核保有国の義務を明示していくということ、これにも賛成であります。  核軍縮についてのお話、並びに平和利用についての考え方や、また、潜在的な能力のある非核保有国が、それぞれ非核クラブをつくるべきだ、こういうようなお話にも、私は賛成であります。  こういう事柄について、私自身に、それぞれの諸国へ出向いて話をつけろ、こういう行動力不足を指摘されたようでありますが、しかし、この点では、すでに外交機関を通じましてそれぞれ連絡をとりつつある次第でございますので、私自身が出かける必要はないようでございます。(拍手)     —————————————
  20. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 竹入義勝君。   〔竹入義勝君登壇〕
  21. 竹入義勝

    ○竹入義勝君 私は、公明党を代表して、さきの総理並びに政府演説に対し、質問をしたいと思います。  近代社会の原則は、言うまでもなく、政治国民の意思に基づいて、国民の利益のために行なわれることにあります。戦後すでに二十余年、わが国の政界がはたしてこのことに忠実であったと言えるでありましょうか。国民の期待にこたえたと言い切れるでありましょうか。激しい権力争いと買収選挙の繰り返しは、全く総理の言う積年の病弊そのものであり、大衆不在の政治を暴露したというほかはないのであります。  今日、国民は、政治及び政治家に対し、根強い不信感を抱いているのであります。それは政治への消極的無関心あるいは積極的な嫌悪とさえなっていることを総理はどのように理解されているか、承りたいのであります。  今回の出直し国会を国民はきびしく注視しているのであります。このことは、国民が新しい時代を自覚し、またそれにふさわしい思想と希望と安定を求めていると言えるのであります。  あらためて総理に、私はお伺いをしたい。今後は絶対に国会の中から汚職や、あるいは黒い霧を追放することを国民の前に誓われるかどうか。(拍手)さらにまた、真に民主的な国会運営と清潔な政治道義の確立をもって国民の期待にこたえられるかどうか、所信を承りたいのであります。  次に、昭和四十二年度予算についてお尋ねをいたします。  本予算は総花的公約と票田維持予算であります。まじめな納税者に対する欺瞞予算であるといわざるを得ないのであります。総理は、今回の予算編成に際し、均衡のとれた経済成長をはかり、一方で物価対策に力を入れ、公共料金の抑制につとめると言いながら、予算規模を五兆円に膨張させ、なお、景気過熱防止予算であると自画自賛しておりますけれども、事実は景気刺激予算であります。景気過熱警戒に必要以上に気を使っていること自体、この大型予算のインフレ性をすでに認めていると思うのであります。(拍手)したがって、国民生活を圧迫し、国民から遊離した予算といわざるを得ないのであります。好況下に八千億円にのぼる公債発行は、景気過熱以外の何ものでもありません。当然公債発行を漸減するなり、償還を早めるなりすべきではないかと思いますが、総理見解を承りたいのであります。  本来、財政は均衡健全財政でなければならない。本年こそ公債発行に制約を加えて、均衡財政に戻す努力がなければ、健全財政に戻る機会はやってこないと思うのであります。今回の予算は、その意味からも公債発行を永久化するものであると思うが、総理公債亡国を防ぐ財政長期展望をお持ちと思うが、この点しかと伺いたい。  第二に、今回の一般会計予算の伸び率は一五・九%で、過去十年間のうち第四番目の高率を示しております。さらにこの伸び率は、四十二年度国民生産の伸び一三・四%を大きく上回っております。これは完全なインフレ予算であるといえると思うのでありますが、総理はどう考えているか。  さらに、民間に対し、設備投資の節度ある活動を期待するといっておりますけれども、みずからの放漫、膨張財政にあえて目をそらし、民間にだけ節度を要求することは、あまりにも矛盾に満ちており、自民党政府の日ごろ高唱する自由経済下において、それを求めることは不可能ではないかと思うのであります。政府の期待を裏切った設備拡張競争が行なわれた場合、総理はいかなる処置をとられるか、明確に伺っておきたいと思うのであります。この場合、中小企業へのしわ寄せは、断じて許すわけにはまいりません。  さらに、経済社会発展計画によると、政府経済計画は、厳格にこれを実施するという性格のものではないといっております。このような無責任な計画をもって、民間の経済活動の指針とすることははなはだ危険であり、責任の持てぬ計画ならむしろないほうがましであります。総理は、一体このような無責任きわまる経済に対する姿勢や計画で、風格ある社会などとは単なることばの遊戯ではありませんか。私は、このような計画や姿勢からは、貧困と窮迫した社会しか生まれてこないと思うのでありますが、総理見解を承りたい。(拍手)  次に、中小企業対策でありますが、四十一年度において、中小企業倒産は実に六千百八十七件と史上最高を記録しております。景気好転を伝えられる本年二月においてもなお七百三十四件の倒産を見たことは、政府中小企業対策がはなはだ冷淡であり、無責任きわまる結果であります。  このたび、中小企業高度化資金特別会計を廃止し、新たに設立した中小企業振興事業団の隠されたねらいは、中小企業近代化、協業化による中小企業再編成の陰に零細企業を見殺しにする政府自民党の冷酷な政策の端的なあらわれであると思うのであります。(拍手)名のみあって実のない政府中小企業対策を抜本的に改め、大企業との分野調整のために、より強力な新規立法をする考えはないか。また、個人形態の企業を保護するために融資の拡大は当然のこと、個人事業所得に対する課税方式を、課税所得事業主と配偶者とに二分し、それぞれ税額を算定する二分二乗方式に改める考えはないかどうか、伺いたいのであります。  総選挙に臨んだ総理は、消費者米価及び公共料金は極力抑制すると、国民にかたく公約したのであります。しかるに、消費者米価の十月改定を決定し、しかも値上げ幅は一四・四%であります。これは直ちに消費者物価指数の〇・七%の上昇となってはね返り、他の物価上昇を誘発助長することは自明の理であります。しかも、大型インフレ予算による景気過熱が必至という現在、総理のいう今年度物価上昇率を五%にとどめ、四十二年度は四・五%にとどめるなどはおそらく不可能としか思えないのであります。総理はいかなる措置をもって四・五%にとどめると断定されるのか。また、見通しを誤った場合、いかなる決意をもって対処しようとするのか、総理の所信を承っておきたいのであります。(拍手)  さらに政府管掌健康保険等の保険料〇・七%の引き上げをはじめ、一連の被保険者負担の増加々強行することは、公党として国民に対する公約の明らかな背信行為であると断じて差しつかえないのであります。この際、かねてわが党の主張すろように、医療保険の総合一本化をはじめ、医療制度の抜本的改革を断行し、その均衡をはかるべきであると思うのでありますが、総理見解を承りたいのであります。  総理は、物価対策の一環として、物価安定推進会議の設置をあげております。総理自身御承知のように、さきの物価問題懇談会は、多面にわたる物価安定策について、比較的前向きの答申をいたしたのでありますが、政府はこの答申を結果的には握りつぶしてしまったのであります。「会して議せず、議して決せず、決して行なわず」とは、古人のことばであります。答申を御都合主義に利用し、尊重も実行もしないで、またしても政府物価安定推進会議をつくり、これら会議をつくることによって物価問題を糊塗しようとする、その隠れみの的な存在には、国民は不信感を強める一方でありますが、総理の決意を伺いたいのであります。(拍手)  わが党は、公共料金及び物価上昇を招く物資品目を向こう一カ年間凍結すべきと思うが、この提案を果断に受け入れる用意があるかどうか、総理の御所見を伺いたいのであります。  総理のいう公正な競争条件の整備一つを取り上げても、独占価格、管理価格等の規制に対して強烈な抵抗があって成功しなかった事実もあります。これらに対し、政府消費者物価安定の前提として、これらの大企業の独善に対しメスを入れるべきでありますが、総理の確信ある答弁を聞きたいのであります。  次に、税制についてでありますが、わが党は生活費に課税しないという原則により、一世帯五人の標準世帯の所得税については課税最低限を百万円とし、地方税の住民税は年収百万円を目途として八十万円までの減税を強く主張いたしておりますが、私の試算では、四十二年度予算において百万円減税を実現するには一千八百億円から一千九百億円の財源を要するにすぎません。その財源補てんとしては、租税特別措置のうち生命保険料控除や中小企業のための償却の繰り上げなどはそのままとして、高額所得者を守っている利子所得の分離課税や配当所得に対する特別な減税を廃止することによる約六百三十四億円と、交際費の適正課税によって浮く一千四百二十五億円の計二千五十九億円で十二分に間に合うのであります。真に大衆の生活を考えるのであれば、総理は勇断をふるって直ちにこの措置をするべきと思うが、総理の考え方を聞きたい。(拍手)  次に、住宅建設について質問をいたします。  住宅建設五カ年計画による六百七十万戸のうち、政府施策住宅は二百七十万戸となっておりますが、民間自力建設に四百万戸をまかせた無責任な一世帯一住宅建設には全く不満であります。すなわち、本年度を見ましても、政府施策住宅四十万四千戸のうち、現在着工分は三十五万二千三百七十戸にすぎないのであります。このことから見ましても、はたして今後三年間に百九十万戸に及ぶ政府施策の住宅建設ができるかどうか、はなはだ危ぶまれるものでありますが、これの完遂見込みについて総理の決意のほどお伺いをしたいのであります。同時に、国民が最も熱望している低家賃の公営住宅建設戸数をふやし、現在の計画では政府対民間の建設戸数が四対六となっているのを、六対四に改めるよう要求するものでありますが、総理見解を示していただきたい。  住宅建設の最大の隘路は用地にあることは周知のとおりであります。用地取得と土地価格の問題が解決されない限り、民間自力四百万戸建設計画は全くナンセンスであります。単なるペーパープランにすぎないのであります。わが党は、かねてより、国有地、地方公共団体有地など公共用地の大量開放によって公営住宅用地の確保をはかるよう提唱しておりますが、総理のお考えを伺いたいと思うのであります。  住宅建設五カ年計画が、全体計画の最終目標のみ示して、各年次ごとの建設戸数が定められていないのであります。当然、すべての計画というものは、全体計画に対して毎年次の目標計画が設定され、それに向かって努力がなされて、初めて完遂できるものであろうと思うし、むしろ最終年度を繰り上げて早期に完遂する努力こそ必要であります。他の公共事業にも同じくいえることでありますが、政府が、常に弾力性という美名に隠れて年次ごとの計画を定めないのは、その完遂に自信を全く持っていないとしか考えられないのであります。(拍手)すなわち、最終の目標が達成されないと見るや、最終年度前に新規計画を立てて、それにすりかえる例を見ても明らかであります。住宅五カ年計画経済社会発展計画における住宅政策において、すでにその顕著な例があらわれております。この点、公共事業の年次計画国民の前に明らかにするべきと思いますが、この点、総理はどう考えておられるか、この際明確にしていただきたいと思います。  また、このような重要な課題を十分処理し、住宅政策の推進を強力にするため、住宅基本法を策定するとともに、住宅省の設置を提案するものでありますが、見解を示されたい。(拍手)  次に、早急に解決を迫られておる大都市の過密化は、全く政府が何一つしなかったからでありますが、政府は、常に問題のあと始末ばかりに追われて、すべてが後手後手となっておることは、住宅をはじめ、物価公害、災害、交通事故、医療制度等はもちろんのこと、この都市問題に対処する態度を見ても明らかであります。総理大都市開発に対するビジョンを明らかにし、土地問題をはじめとする都市開発の具体策についての構想がありやいなや、ありとすれば、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。  次に、外交問題についてお伺いをしたいのであります。  人類はいまや科学の進歩によって、新しい時代に直面をしております。中でも核開発のために、全世界は一つの運命共同体になったのであり、好むと好まざるとを問わず、対立する民族意識を、世界民族主義の段階にまで高揚しなければならないときを迎えたのであります。いわんや世界平和の実現のためには、唯心・唯物主義、または資本・社会主義の対立を激化することは許されぬ段階を迎えたのであります。外交の基本方針は、この両者の対立を融和せしめ、新時代にふさわしい人間生命尊重の理念による外交方針を樹立すべきであると思うのでありますが、これについて、総理の外交の基本方針に関する所信を明らかにしていただきたいと思うのであります。その立場から、政府は、ベトナム平和に対していかなる具体策を持ち、それをいかに実行されようとするか、お伺いしたいのであります。  わが公明党は、ベトナム和平に関し、即時停戦、東京において、関係各国による平和維持会議を開いて解決し、非武装地帯には強力な国連監視団を置いて、二度と紛争を起こさぬようすべきであるとかねてから主張いたしております。私は、ベトナム即時停戦のために、総理は率先して両当事国と話し合ってはどうかと提案するものであります。そして東京において、当事国並びに関係国の代表を集めて平和会議を開くべきであると思いますが、それを実行する意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。(拍手)  次に、対米外交の姿勢についてでありますが、沖繩返還、小笠原返還または三次防の骨格の決定にいたしましても、日米間の漁業条約にいたしましても、貿易制限にしても、日米間において取り除かなければならぬ懸案は山積いたしております。これらの問題に対して主張すべきことも主張しないような態度こそ、せっかく築いてきた日米関係にかえって不信と軽べつのひびを入れるものとなるでありましょう。政府はかかる外交方針について根本的に反省する必要があるのではないか。この点についての総理の意見を伺いたいのであります。  次に、沖繩問題に対しては、本特別国会において沖繩問題等特別委員会が発足したことは、まことに喜ぶべきことであります。沖繩九十万同胞の祖国復帰の熱願に対し、総理は、「祖国復帰なくしては戦後は終わらない。」と大みえを切られたのでありますけれども、昨日の佐々木さんの答弁において、あなたは、極東の防衛に関連するゆえに云々との発言がありました。このことは、返還を全く不可能と考えての答弁ではないかと思うのであります。そうでないとすれば、いかなるスケジュールによって、また、法律的政治見通しに立って返還を達成されるのか、しかと承りたいのであります。(拍手)また、分離返還については総理はまっこうから反対の意向を表明しておられるのでありますが、いかなる理由によって反対をなさるのか、この点についても総理の御返答を承りたいのであります。  次に、対中共外交について申し上げたい。政府は政経分離の名のもとに、間接的、警戒的な接触を続けており、中共の国連加盟については終始これを妨害する側に立って活躍をしてこられたのであります。今日七億の人口を擁した中共は、国連外において核兵器を開発し、独走を続けております。このようなとき、中共に対する警戒的な政策をやめて、むしろ国連に加盟させ、国際世論の中においてそのエネルギーを善導することこそ、隣国としての責務ではないかと信ずるのであります。(拍手)もはやイデオロギーを越えて、東洋に孤立する中共に対して、長き百年の大計から外交方針を考え直すときがきているものと思うのでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。  対ソ外交においても、いまだに日ソ平和条約も締結されず、歯舞、色丹も返らぬことは、まことに悲しむべきことであります。しかも、漁業交渉は、ソ連側の強圧によって年々に後退を余儀なくされている現状を、総理はいかに考えておられるか。私は、この問題もまた沖繩問題と同じく、政府が、戦後はいまだ終わらないとの認識を持って正面から取り組んでいただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。  アジア・アフリカ外交について総括して申し上げますが、政府はアジア外交についていかなる考えを持っているか。アジア・アフリカは経済協力を熱望しております。しかしそれ以上に平和外交としての技術援助と有能な若人を求めております。政府はアジアの頭脳センターのごときものをつくって、海外へ多数の日本青年を送り出すべきであると信じますが、いかがお考えでありましょうか。民間大使として彼らは遠く歴史の未来にわたって世界平和と日本の安泰のために活躍することは間違いないと信ずるものであります。  さらに、世界の注目を集めている核兵器拡散防止条約についてお伺いをしたい。  唯一の原爆被爆国として、私どもはその名のとおりの条約であれば、まことに喜ぶべきものであります。しかし、巷間報ぜられているこの条約については、数々の重大なる不信があります。  第一に、同条約についてはいまだ草案段階であると伺っておりますが、外務省当局の内部に異論のある段階で、早くも安易な賛成意見を対外的にも表明されるのはいかなる意味でありましょうか。外交以前の姿勢ではないかと思うのであります。  第二に、核保有国は非核保有国内における核保有について制限がないと報ぜられております。ほんとうでありましょうか。それでは核拡散を固定する条約ではありませんか。  第三に、核保有国の核軍縮については何ら約束がないと聞いておりますが、これでは核保有国の独善であり、世界平和に対して重大なる欠陥なりと思考しますが、いかがでありましょうか。  第四に、中共とフランスの二大核保有国が参加していない点をどう考えられるか、特に中共の不参加表明については政府はどう考え、どう対策を持っておられるか。  第五に、条約に有効期限がないということについてはどう考えられておるか。特に核の平和利用については、本条約はほとんど全面的禁止事項が用意されておるといいますけれども、いかがでありましょうか。もし事実ならば、第三の火、核エネルギーの開発から遠ざかった日本は、新時代の後進国としての道を歩むことになるでありましょう。  これら重大な国家方針について、総理は誠意ある話し合いを野党はじめ各界ともなすべきであると思いますが、総理の考え方をお伺いしたいと思うのであります。(拍手)  次に、日本の安全保障のために日米安保条約を堅持すると総理は申されましたが、はたしていかなる意味なのか、長期固定化を意味するものなのか、明確なる答弁を願いたいのであります。  また、日本の安全保障のために、核時代の自衛政策について、国防会議議長である総理は、その基本構想を明らかにしなければならないと信ずるのでありますが、総理の所信を伺いたい。特に、三次防については、二次防に比べて約二倍にわたる費用を投ずるのであり、物価上昇景気過熱の心配されているときに、まことに巨額の費用であり、国民生活の圧迫等も考えられます。この点に関し総理の所見を伺うものであります。  むしろこの際、外務省に軍縮庁を設けて、世界的軍縮時代に即応し、外交、経済、防衛等一丸となって安全保障政策の樹立をはかるのが至当と思いますが、総理の考えを伺いたいのであります。(拍手)  総理の今回の演説の締めくくりは、政治道義の確立でありました。われわれは、さだめて総理が積年の病弊の最高責任者として、自省とざんきの念から、決意を披瀝されるものと期待をしておりました。しかるに、総理の述べられたことは、一億総ざんげ論であり、また、道義に貫かれた議会民主主義の確立とか、清潔な政治の実現とか、まことに修身の教科書のような美辞麗句の羅列にとどまったにすぎません。もしここに総理自身の徹底的な反省と具体的な施策が伴わなければ、まことに「巧言令色すくなし仁」という古人のことばを思い出さざるを得ないのであります。  私は、政治悪の根源といわれる政治資金についても、具体的に政治資金規正法を改正し、わが公明党の主張するように、政治献金は個人に限り、いかなる会社、法人、団体からの政治献金も禁止する等の改正案を樹立することこそ大切なことではないかと確信するのでありますが、総理の基本的な姿勢を明確に伺いたいと思うのであります。(拍手)  また、総理は、「わが自民党は、謙虚な態度で聞くべきは聞く」、あるいは「良識と寛容の精神によって国会の正常な運営をはかる」等といわれらのでありますけれども、今後絶対に議会民主政治を破壊する強行採決、単独審議等のなきことをここではっきりとお約束を願いたいと思うのであります。(拍手)  最後に申し上げたいことは、総理のいわれた政治道義の確立は、実にわが公明党の今日まで実践し切ってきたところでありました。わが公明党は、議会民主主義を守り、清潔な道義を確立し、全国民の幸福と繁栄を第一に守っていくことをかたく誓うものでありますが、自民党総裁としての総理国民にいかに誓われるか、あらためてお伺いをいたしまして、私の代表質問を終わらせていただきます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  22. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 竹入君にお答いたします。  先ほども西尾委員長にお答えもいたしたのですが、わが党の政治姿勢についてまた重ねてのお尋ねでございます。ことにその中で、黒い霧問題云々がさらに明確にお尋ねがございました。私は、全力を傾けて政治道義を確立し、国会から汚職や黒い霧を追放することはもちろんでありますが、同時に、これは私自身、国会における責務というよりも、国会そのものが決すべき事柄のようにも思いますけれども、御趣旨のほどはよくわかりますので、そういう意味で、この上とも御協力をお願いすることにいたしたいと思います。  また、国会の運営が民主的でなければならないことは言をまちません。そうして、清潔な政治道義を確立すること、これまたお説のとおりだと思います。われわれは、その方向において一そう努力すべきだと思います。  次に、経済問題について、四十二年度予算を、  これはインフレ予算だと、こういっておしかりを受けました。たしかに大型の予算でございますが、しかし、私どもは、今日の経済情勢に対応して五兆円にとどめたこと、そこにはインフレを防止するという考え方が動いたこと、さらにまた、公債発行も八千億にこれをとどめたこと、これなどはむしろ理解していただきたい、政府努力の点を買っていただきたいものだと思います。  公債の問題はお説のように、不況下のもとなら公債発行はわかるんだと、かようにいわれますけれども、今日の社会情勢から申しまして、公共投資を先行さす必要のある際、そういう際には、公債発行の規模、金額が一つの問題でありますし、また、市中消化という点が十分可能であるならば、ただいまの公債発行の限度がおのずからきまるように思うのでありまして、問題はインフレ、これを非常に私どももおそれておりますから、悪性インフレにならないように、この上とも十分注意してまいるつもりであります。  民間の設備拡張競争が行なわれた場合はどうするかというお話でざごいますが、この点については、これは民間の協力を得まして、かような事態が起こらないように十分行政的に指導してまいるつもりであります。  また、中小企業振興事業団、これは確かに中小企業がいま当面しております幾多のむずかしい問題に役立つものだと思います。ことに、竹入君から御指摘になりました零細企業、これは中小企業振興事業団では救われないのだ、こういうような御指摘だと思いますが、この零細企業につきましては、税制の面でいわゆる完全給与体制に切りかえましたことと、同時にまた協業化を進めてまいりますので、この零細企業、いわゆる中小企業全般として、十分の効果をあげるものだと思います。  また、大企業中小企業との分野調整のために、新規立法をする考えはないかというお話でありますが、ただいまその考えはございません。  また、保護するために積極的に融資をしろ、さらにまた、税制等においてくふうしろというお話でありますが、これは税制調査会等におきましても、この上ともくふうしてまいるつもりでありますし、また、政府関係三金融機関等におきましても、この融資等について、特にくふうするつもりであります。最近、環境衛生の関係で特別な公庫をつくりましたのも、御期待に沿うような意味でございます。御了承をいただきたいと思います。  次に、物価の問題についてのお話がございます。公共料金等を凍結したらどうか、凍結しろ、こういうような御意見でありますが、私は非常措置はできるだけとらないほうがいいのじゃないか、そうして経済を正常なうちに安定成長へ持っていく、こういうことが望ましいのだ、かように考えておりますので、非常措置はとらないつもりであります。  また、物価上昇率を四・五%とするといっているが、見通しを誤ったらどうするのだ、こういうお話でございますが、ただいませっかく全力をあげての努力中でありますから、しばらく時間をかしていただきたいと思います。  また、医療保険の一本化をはじめ、これについての抜本的な改革を断行すべきではないか、確かにこれは抜本的な改正を行なうべきその時期にきておると思います。ただいま、残念ながら暫定緊急措置ということで〇・七%の引き上げをとるようにいたしておりますが、ぜひとも抜本的な改革と取り組まなければならないと思います。  また、物懇、あるいはこれをやめて物価安定推進会議にいたしましたこの理由は、今度は私自身が中心になりまして、各省大臣を督励いたしまして、総合的にこの物価問題に効果をあげるようにいたしたいと思いまして、実は改組いたしたわけであります。また、物懇の時代にいろいろの答申が出ておりますが、これらはただいま前向きにこれと取り組んでおる状態でありますので、いましばらく時間をかしていただきたいと思います。  その次は、減税について御意見がございました。租税特別措置をやめて、そうして減税に回せば、十分の減税財源はあるのだ、こういう御指摘でございますが、しかし、やはり減税をいたします際には、財政全般を十分見まして、しかる上でこれを決定しなければならないのであります。私どもも、早く免税点を百万円にしたい、かように思いますが、財政の全般を考えますと、今日直ちに上げることは、これは無理があるのでございますので、長期計画として、この百万円までを免税にするように計画的な予定を立ててただいま実施しておる最中でございます。  また次に、住宅の問題につきまして、五カ年計画あるいはその他民間と政府との負担割合等について、これをくふうしろというお話でありますが、これらの点は、また他の機会に十分説明をいたすことにいたしまして、きょうはお話を伺っておくことにいたします。(発言する者あり)  また、国有地、公有地を公営住宅用地に充てる考えはないか。これは私は賛成でございます。また、これは物懇の勧告でもありますので、そのほうで十分適当な場所があれば、そういう方向に使いたいと思います。  また、ただいま住宅問題について、私が他の機会と申しましたので御不満のようですが、先ほど来説明もいたしましたから、さような意味で預からしていただくのであります。  また、住宅省を設置しろ、こういうお話でございます。私は、住宅関係だけについて住宅省をつくることがいいかどうか、これは一つの問題だと思いますが、しかし、最近のごとく、都市開発が非常にやかましい際であります。これはケネディ政策をまねるわけでもありませんが、過日も、西村君のお尋ねに対しまして、ちょっと、こういう機関が必要ではないだろうか、そういうことが予想されるような発言をいたしたのであります。したがいまして、竹入君のこの住宅省設置の御提案につきましては、今後積極的にこれを検討してまいることにいたします。  次に、外交方針についてのお話であります。先ほど西尾君に申し上げましたように、世界の平和と繁栄の中にありまして、みずからの安全と発展をはかっていく、これがわが国の基本的態度である、そうして自由を守り、平和に徹する、これが私の基本的考えであります。同時にまた、国連を中心としての、国連を足場にしての外交を展開する、これが私の考えでございます。人間生命に立脚した外交方針、おそらくこれと同じような考え方ではないかと私自身で理解したような次第であります。  東京に平和維持会議を招集しろ、こういうお話でございます。これは、一つの構想として敬意を表しておきますが、私は国際的に、ただいま国連中心ということを申しましたので、そちらがその会場としては適当な方法ではないかと思います。(拍手)ただいま私、別に出かけませんけれども、ベトナム問題の平和につきましては非常に積極的な意欲を持っておることだけを申し上げておきます。  次は、沖繩問題でありますが、沖繩、これは先ほどもお答えいたしましたように、全面返還を基本的態度といたしております。私は、観念論でこういう問題を解決するのは適当でないと思う。具体的にあらゆる問題と取り組んでまいりまして、全面返還の時期が早く到来するように、この上とも努力してまいるつもりであります。  次の問題といたしまして、日中外交についての御意見を聞かせてもらました。私は、これもたびたび申し上げますように、政経分離のもとにおいて、今日中共に慎重に対処しておるということを申しました。特にただいまが流動中でございますので、なおさら政経分離の在来からの態度を堅持することが望ましいことだと、かように思っております。今日中共を国連に加盟さす、こういうような時期とは、私は考えておらないのであります。  また、北方領土の問題について、日ソ平和条約の見通しをお尋ねになりました。私どもまことに残念に思って、北方領土が古来日本本来の固有の領土でありますだけに、ぜひとも早く本土に復帰すること、これを念願しておりますが、ただいままでソ連と真正面からいろいろ取り組んでおりますが、なかなか話は片づかない、まことに効果をまだあげておりません。あるいは、外交交渉の問題でありますので、あらゆる努力をこの上ともすべきではないかと思います。  アジア・アフリカ外交についての基本的な態度についてお尋ねがございます。申すまでもなく、経済協力、その中に技術援助も必要でございます。ただいま海外青年協力隊というものを毎年派遣しております。そうしてこの日本の海外青年協力隊は、たいへん各国において歓迎されておるのであります。こういう平和部隊を、この上とも私どもも強化していくということで、アジア・アフリカ諸国に積極的に連携をとりたいと、かように思っております。  次に、核拡散防止の問題についてのお話であります。これは、先ほど西尾君にお答えしたばかりでありますので、省略させていただきますが、その中に、ただいま竹入君のお話しになりますように、この問題について野党と話し合う考えはないかという御提案であります。私は、核拡散防止条約、その趣旨、精神には、各党とも賛成だろうと思いますが、そういう意味で、こういうような話し合いができるといたしますならば、これは新しい国会審議の形態、行き方だ、かように私思いまして、たいへん御提案を歓迎しておるような次第であります。(「草案じゃないか」と呼ぶ者あり)この核拡散防止条約は、御説のとおり草案でございます。したがいまして、その中身がずいぶんいろいろに解釈されるものがある。そういうことで、拡散防止の趣旨、精神は、みんな賛成だろう、だから、その後の具体的な処置について野党と話し合うということ、これはたいへんけっこうなことだ、かように私は申すのであります。御了承をいただきます。  安全保障条約につきまして、安保体制の堅持といっているが、これは長期固定化するつもりかどうかというお話であります。これは、ただいまの安全保障条約の中身をぜひとも堅持してまいりたい、かように考えております。ただいまこれを長期にわたって固定化するかどうか、そういう点については今後の研究問題だと、かように思っております。  三次防の計画についてのお尋ねであります。申すまでもなく、日本の防衛力、これは通常兵器による局地的な直接間接の侵略に対してこれを抑制するというのでございますから、核に対しては、ただいま、毎度私が声明いたしますように、核兵器は持ちません。また持ち込みも許しません。また開発もいたしません。これだけをはっきり申し上げておきます。核時代には一体どうするのか、核攻撃に対してはどうするのだ、かようにお尋ねがあれば、日米安全保障条約のもとにおいてわが国の安全を確保する、かように申し上げる以外には現状においてはないのであります。御了承をいただきます。  その次に、防衛計画は三次防で終わるのかということであります。三次防で終わればたいへんけっこうでありますが、申すまでもなく、国の安全確保ということは、その国がある限りにおきまして、私どもがみずからの力でこれを守っていくというのが本来の筋であります。同時に防衛計画においてこれをゆるがせにしてはいけない。しかし、日本の場合においては、国力、国情に即応した防衛計画を立てる、こういう基本線がすでにでき上がっておりますから、この点で誤解のないようお願いしておきます。  三次防は国民生活を圧迫しないかということでありますが、この程度の三次防では国民生活を圧迫するようなことはありません。  また、外務省に軍縮庁をつくれというお話でありますが、これはたいへん画期的な考え方でありますが、私はただいま軍縮庁をつくる考えを持っておりません。  最後に、いろいろ御批判がございました。私の説は一億総ざんげ論だ、かようにいわれますが、私はみずからがまず反省をし皆さん方に範を示す、その意味においては、反省そのものにおいても国民の先頭に立ってするつもりでございますので、いわゆる総ざんげをしているつもりは毛頭ございません。  また、政界浄化のために政治資金、これを規正すべしという御議論、これには、私も心から打たれるのであります。この政治資金、これが自由でありましては、もちろん政界の浄化はできるものではございません。この政治資金規正をも含めて、ただいま選挙制度審議会において、せっかく審議中でございます。必ずりっぱな答申を得ることだと、かように私は期待いたしております。その上で、十分この答申に沿って処理するつもりであります。  強行採決、単独審議をしないと約束をしろ、こういうお話であります。私は、口を開けば議会民主政治を守るんだということを申して、今日もきております。先ほども申しましたように、多数党が多数横暴あるいは無理押しをする、あるいは理屈に反した行動をする、こういうことはいたさないつもりでありますし、もちろん、少数の意見も、とるべきはとる、これも尊重するのにやぶさかでありません。しかし、どこまでも審議を尽くして、そうして最後は多数決に従うという、この民主主義の、デモクラシーの原理は貫きたいのであります。この点で、物理的抵抗などは一切しないようにお願いをしておきます。議会民主政治、その意味におきまして私は国民も理解してくださると思いますし、各党の皆さんとともども、議会制民主主義、民主政治を守ることに一そう努力いたしたいものだと思います。(拍手
  23. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 川上貫一君。   〔川上貫一君登壇〕
  24. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は、日本共産党を代表して、佐藤総理並びに関係閣僚に対して二、三の質問をいたします。  自民党佐藤内閣は、去る総選挙において国民の過半数の支持を失っていることが明らかになっております。しかるに、政府は何一つとして反省の色がありません。反対に、国民多数の支持を得たなど、傲慢に居直っております。議席の多数を頼んで選挙中の公約さえ踏みにじり、人民収奪と生活破壊の政策をさらに一段と推し進めようとしておる。これは言うまでもありません。しかし、本日は、一々その事実を指摘する時間がありません。そこで私は、まずその一端として消費者米価値上げ、この問題について二、三の質問をいたします。  言うまでもなく、消費者米価値上げは直接的に人民の日々の生活を脅かすものであります。同時に、物価騰貴をもたらす重大な要因であるということは十分御存じでありましょう。しかるに、政府は、食管特別会計の赤字を云々して、その値上げがいかにもやむを得ない措置であるかのごとく言いふらしております。一体、政府は、食管特別会計を営利会社の経理同様に考えておるのでありましょうか。そもそも食管特別会計は、農民には生産費を償う米価を補償する、消費者に対しては生活の安定を保障すべき、こういう会計であって、その差額を一般会計から支出することはあたりまえのことであります。もしそうでないというのであれば、この特別会計は頭から無用なものであります。  さらに、国の予算というものは、何よりもまず人民生活の安定を保障するものだ。ほんの一握りの独占資本に奉仕するためのものではありません。しかるに、政府は、五兆円にのぼる膨大な予算を組み、大資本のためには、ばく大ないわゆる赤字公債まで発行しております。その上、第三次防衛力整備計画と称して、自衛隊には二兆三千億をこえる人民の血税をつぎ込もうとしております。それだけではありません。政府は、独占資本に対しては一兆数千億にのぼる減免税の措置をとっております。さらに財政投融資と称して、人民の厚生年金の掛け金、郵便貯金などまで、まるでわしづかみ同様のやり口で、年々二兆円以上にのぼるばく大な資金の大部分を彼らに流し込んでおります。そういうことをしておいて、人民の日々の生活を守るわずかばかりの赤字が、どうして処理できないのでありますか。できないはずはありません。それは処理できないのではない、政府にその意思がないからであります。これはひとり消費者米価の問題だけではありません。世の中には、「一事が万事」ということばがあります。まさにそのとおり、自民党とその政府は、まじめに人民の生活を守る意思もなければ、またその能力もないということを証明する以外の何ものでもありません。(拍手)  さらに、人民の生活どころか、人命を守る意思も能力もないことを、私はあらためて指摘しなければならぬと思う。現に、交通災害の犠牲者、これだけでもどのぐらいあると思いますか。年間五十万人以上にのぼっております。また、労働災害は、一日平均二千人以上に達しております。さらに水の汚染、空気の汚染、騒音、地盤沈下、これらの公害に至っては、その被害はまことにはかり知れないものがあります。一体政府は、これまでこれに対して何ほどのことをしてきましたか。これというほどの何にもしておりません。佐藤総理は、このたびの施政方針演説で、「人間を大切にする政治」、いかにも美しい文句を並べました。政治は文句ではできません。同時に、口先ばかりの対策を云々しました。しかし、世界にほとんど類例を見ない、このおそるべき災害や公害は、まさに歴代自民党政府の対米従属、独占本位の悪政の結果であって、十分な裏づけもない美辞麗句が、人民欺瞞のから念仏であるということは、証明するまでもありません。必要もない。  さらに、人命どころではありません。あなた方は民族の運命さえ犠牲にする政策を着々と推し進めておるということを、私はここにあらためて指摘したいと思う。現に、佐藤総理は、日米軍事同盟であり、アメリカのアジア侵略のかなめとなっておる日米安保条約を礼賛しました。そうして、これを永久に堅持することを公言しました。さらに、三木外務大臣に至っては、ベトナム侵略の最大の拠点である沖繩の米軍基地が、極東の安全のために重要な役割りを果たしておるとほめたたえました。これは一体どういうことでありますか。ベトナムに対するアメリカの無法、狂暴な侵略と戦争の最大の基地が、アジアの安全のために重要な役割りを果たしておる、こういうことをおくめんもなく公言することこそ、佐藤内閣がアジアの平和も安全も眼中にない証拠であります。(拍手)また、民族の運命さえ顧みない自民党政府の根性をむき出しにしたものであるといって過言ではありません。  沖繩だけではありません。政府は、日本全土を基地とする戦争計画を進めておる。自衛隊の海外派兵、徴兵令の計画までたくらんでおる事実を、私はここにはっきりと指摘しなければならぬ。いいかげんなことを言うておるのではありません。現に佐藤内閣、あなた方が持っておる作戦計画、すなわち、オペレーション・ナンバー6、全文二千ページに及ぶブルラン作戦計画なるものは、あれは一体何でありますか。この計画は、朝鮮で侵略戦争を行ない、日本全土をその侵略基地とする日米共同作戦計画ではありませんか。これは私の独断じゃありません。すなわち、その計画は、日韓条約締結に伴って、三矢作戦、フライング・ドラゴン作戦を一そう具体的に発展させた戦争計画であって、その中にははっきりとこういうことまで想定しております。  第一に、自衛隊に、米軍と共同して、朝鮮、台湾などへの軍隊、武器、弾薬の輸送に当たらせる。第二に、必要に応じて朝鮮、中国などへの攻撃に参加させる。第三に、占領地域の確保のためには、国連警察軍の名によって自衛隊を参加させる。  これほど重大な計画を、政府は、国民にはもちろん、国会に対しても隠しております。これを隠しておいてよいと政府は思いますか。絶対に許されることじゃありません。私は、ここに日本共産党の名において、三矢作戦、フライング・ドラゴン作戦とあわせて、ブルラン作戦計画の全文を即時この国会に提出することを要求します。(拍手)そうして日米共同作戦計画の全貌を国民の前に明らかにすることを厳重に要求するものであります。  これと関連して、私は、この際、滋賀県、秋田県、長野県など、各地の地方自治体につくらせている自衛隊適格者名簿についての答弁を求めます。総理は、先ほど野党の質問に対して、この壇上から、この名簿の作成は国民に安全保障の理解を深めるためのものであると言われました。地方自治体にこっそりこのようなものをつくらせていることが、どうして国の安全についての理解を深めることになるのですか。これは何という答弁ですか。一体総理大臣ともあろう者が、こんな白々しいことは言わないほうがよろしい。こういうわけのわからぬ答弁をしなければならぬことこそ、あなた方が内心徴兵令を予定し、全青年を戦争にかり立てようとする意図に基づくものであるという、これを証明する以外の何ものでもないと、私は断言してはばかりません。(拍手)一体政府は、きょうまでに、どういう手続で、どこどこの市町村にこれを実行させましたか。また、現在までに登録された青年の数は何人でありますか。さらに、今後もそれを実行し続けるつもりでありますか。これは国民にとって重大な問題でありますから、数字をあげて具体的に詳細な答弁を求めます。  第三に、私は、きわめて重大な問題として、今日政府がたくらんでいる日本核武装の問題について、二、三の質問をいたします。  すでにたび重なる寄港を続けておるアメリカの原子力潜水艦、第七艦隊所属の航空母艦、それに近く入港しようとしておるエンタープライズなどが、核兵器を搭載しておることは、軍事専門家はもちろん、今日では世界周知の事実であります。それにもかかわらず、佐藤内閣は、核武装に対する広範なる人民の反対をおそれ、その事実をひた隠しに隠しておる。このとき日本政府は、アメリカが持ち出した核拡散防止条約なるものに賛成の意向を表明しました。一体政府は、この条約をどんなものだと考えておりますか。この条約は、第一に、核を持たない国の核開発を禁止しますけれども、アメリカなどが核兵器を外国に持ち込むことを禁止するものではありません。したがって、この条約は、アメリカが外国に核兵器を持ち込むことを合法化し、核戦争政策を有利に展開する道具となる条約であります。それゆえ、この条約を認めることは、非核保有国の安全保障の口実のもとに、これから先、日本へのアメリカの核兵器の持ち込みを公然と認めようとするものであるといって決して過言ではありません。この点については、政府の真剣な答弁要求します。  だからこそ、アメリカはどんなことをしておりますか。現在、日本を含む核ミサイル防衛網の計画を着々と進めておるではありませんか。さらに、これに対応して、日本政府は、横須賀などで、日本人に原子力潜水艦の修理を行なわせておる事実がある。そういうことをしておいて、沖繩の施政権の返還を要求するならば、沖繩の核基地を認めなければならぬとか、平和利用のための核開発の権利を主張するとか、あらゆる手練手管を弄して核兵器に対する国民の反対をなしくずしに解消しようとしております。これが政府考えであります。  それどころではありません。政府は、明らかに核弾頭使用を目的とするナイキハーキュリーズの国産を決定したではありませんか。これをつくるというじゃありませんか。これは一体何に使うのです。さらにそれだけではありません。アメリカをごらんなさい。立川を中心とする原子爆弾の輸送演習を行なっておる。また、核取り扱い監督担当などの士官を次から次へと日本に送っておる。政府はこれにまことに協力をしております。これらのすべてが日本核武装の準備ではない、こんなことが平気で言えますか。事態は明瞭であります。ここにこそ、政府が核拡散防止条約に賛成するほんとうのねらいがあるといって間違いありません。これが政府のねらいであります。自民党内閣が、人命の無視だけではなく、民族の運命をも売り渡し、祖国を破滅に導く内閣であるということは、このことであります。  もしあなた方が、真に核武装をしない、核兵器の持ち込みを許さないとまじめに言っておるのであれば、第一に、核拡散防止条約などによって国民を欺くことをおやめなさい。第二に、直ちにナイキハーキュリーズの生産をおやめなさい。同時に、政府みずから進んで核兵器の全面禁止、とりわけ、まず核兵器使用禁止の国際協定のために具体的、積極的な努力を払うべきであります。今日、どんな努力をしておりますか。こんなことをほっておいて、口先でアジアの平和とか日本の安全とかを云々する、こんな資格は絶対にありません。わが党は、政府に対してこのことを強く要求します。  同時にこの際、自衛隊の核武装はもちろん、いかなる外国に対しても核兵器の日本への持ち込みを許さない、このための核武装及び核兵器持ち込み禁止法、これを制定することを提案します。(拍手)これに対しては政府答弁を求める。  以上の諸点について、明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
  25. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  私は、どういうことを尋ねられているか、いろいろ聞き漏らさないで伺っていたのであります。しかし、一点だけ最後にこの点に答えを要求された。その他の点では、どうも川上君の意見を聞かされ、同時に要求をされた、かように考えますので、その点で私は詳細な答弁はいたさないつもりであります。  ただ、お話の中にありましたブルラン作戦計画なるものにつきましては、私は全く関知いたしておりません。これは誤解のないように願います。  次は、自衛隊適格者名簿の問題であります。これは先ほどお答えしたとおりでありますが、自衛隊についての理解、これを深めるという意味におきまして、応募に便するためにただいま適格者名簿をつくっておるわけであります。これをやめる考えはございません。もちろんこれは徴兵制度に先行するものではございません。  次に、誤解を招くから私は申し上げておきますが、核武装の問題につきまして、政府はもちろん武装するような考え方は持っておりません。また、先ほども申し上げましたように、国内への持ち込みもこれを禁止しておりますし、核爆発もする意思毛頭ございません。ただ、私、川上君はソ連と同じような考え方ではないかと実は思っていたのでありますが、いま米ソの間で非常に熱心に、核拡散防止協定をしよう、条約を締結しようとして、いろいろ話し合いを進めておるのでありますが、川上君がこれに反対だったことは、私は意外でございました。ただいま申し上げましたとおり、くれぐれも申しますが、私どもは核の持ち込みを許しませんし、核の製造をいたしませんし、また核の爆発実験もいたしません。これをこの機会に申し上げておきます。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇〕
  26. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 沖繩が日本の安全保障の上に非常に重大な役割りを果たしておるということについて、川上君からそういうことはないというおしかりを受けましたが、沖繩の持っておる日本の安全のための役割りというものは、非常に重要な役割りがあるとわれわれは信じ、国民もまたこれを信じておるわけであります。川上君の意見は、これは本人の御意見としては承りますが、全然われわれと所信を異にするものでございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
  27. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) 食管制度は、国民に主食を円滑に供給する制度でございまして、それ自身決していわゆる社会保障の機構ではございません。したがって、川上さんのおっしゃられるように、税金をもって全部社会主義的な補助行為をしろということでしたら、ただいまの食管制度を温存して、これによらなければならぬという理由は全然ないものと私は考えております。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
  28. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいま大蔵大臣がお答えいたしたとおりであります。(拍手)   〔国務大臣増田甲子七君登壇〕
  29. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) 総理がただいまおっしゃったとおりでありまして、ブルラン計画というものは全然関知いたしておりません。  また、適格者名簿というものは、一部の市町村で作成しておりまするが、これは自衛隊法に基づいて権限委任を地方公共団体にいたしております。その募集事務の参考資料としてつくっておるわけでございます。(拍手
  30. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  31. 石井光次郎

    議長(石井光次郎君) 本日は、これにて散会いたします。    午後五時九分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君      ————◇—————