運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-03-14 第55回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月十四日(火曜日)     —————————————     開 会 式 午前十時五十八分 参議院議長衆議院参議院の副議長常任委員長議員内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場である参議院議場に入り、所定の位置に着いた。 午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。 衆議院議長は、左の式辞を述べた。     …………………………………   天皇陛下の御臨席をいただき、第五十五回国会開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。   去る一月二十九日衆議院議員の総選挙が行なわれ、二月十五日をもつて特別国会が召集されたのでありますが、この際、われわれは、決意を新たにして、諸般の態勢を整えるとともに、現下内外情勢にかんがみ、ますます諸外国との親交を深め、また、経済充実、貿易の伸長社会福祉増進教育科学技術振興等、各般にわたり、適切な施策を強力に推進して、民生安定向上に努め、もって国運繁栄を図らなければなりません。   ここに、国会は過般の総選挙による新議員を迎え、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。     ………………………………… 次いで、天皇陛下から左のおことばを賜わった。     …………………………………   本日、第五十五回国会開会式に臨み、衆議院議員選挙による新議員を迎え、ここに全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。   現下国際情勢は、まことに重大でありますが、この間に処して、わが国が、各国との友好を深め、世界の平和に貢献していることは、諸君とともに喜びに堪えません。また、全国民が相協力して、経済発展民生の安定のため、努力を続けていることは、深く多とするところであります。   しかしながら、内外の諸情勢に対処して、国運繁栄に導き、世界信頼を高めてゆくためには、なおいっそうの努力を要することと思います。   このときにあたり、国会が、当面する諸問題の審議に努め、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。     ………………………………… 衆議院議長は、おことば書をお受けした。 午前十一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。 次いで、一同は式場を出た。    午前十一時八分式を終わる      ————◇————— 昭和四十二年三月十四日(火曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和四十二年三月十四日    午後一時開議  一 国務大臣演説     ————————————— ○本日の会議に付した案件  佐藤内閣総理大臣施政方針に関する演説  三木外務大臣外交に関する演説  水田大蔵大臣財政に関する演説  宮澤国務大臣経済に関する演説     午後一時五分開議
  2. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説
  3. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説外務大臣から外交に関する演説大蔵大臣から財政に関する演説宮澤国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣佐藤榮作君。   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  4. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) さきの総選挙において、わが自由民主党国民多数の支持を得、私は、国会の指名により、再び内閣首班の重責をになうことになりました。私は、国民各位信頼にこたえ、いよいよ心を新たにして議会民主政治の確立につとめる決意であります。(拍手)総選挙において公約した諸政策実現はもとより、国民の付託に対する責任を誠実に果たしてまいります。  今日わが国は、経済国際化人口構造変化、急激な都市化など、経済社会構造的変化に直面しております。この変化は、急激かつ広範で、国民生活に及ぼす影響ははかり知れないものがあります。社会の主体は人間であり、経済繁栄人間の尊厳と社会福祉に奉仕するものでなければなりません。(拍手)私は、民族の生み出す巨大なエネルギーを生かし、先進諸国に比して遜色のない重厚かつ能率的な社会基盤を確立する考えであります。その基礎の上に、民族のすぐれた伝統を継承し、創造力を豊かに開花せしめ、風格ある日本社会を建設いたしたいと存じます。(拍手)  世界の平和と繁栄の中に、みずからの安全と発展をはかるわが国基本的な立場は、ようやく国際的に理解され、わが国に対する期待も強まりつつあります。変貌する国際情勢に対応し、世界平和の増進アジア繁栄に貢献いたしたいと考えます。  道は険しく、困難に満ちておりますが、私は国民の先頭に立って進むことを誓うものであります。(拍手国民各位においても、それぞれの分野における活動を通じて祖国の真価を高め、国家民族に対する義務を果たすことを期待してやみません。  最近の国際情勢は、協調を通じて繁栄を求める国際融和方向に動きつつあります。去る一月にはわが国をも含めた宇宙天体条約が締結され、核兵器拡散防止条約締結機運も高まっております。また、米ソ関係は和解の度を深め、欧州においてはフランス。ソビエト関係、ドイツと東欧諸国関係等も新たな展開を見せております。  しかるに、アジアの一部においては、ベトナム紛争がいまだに解決を見ず、中ソ両国間の不和も深まり、中共をめぐる情勢は依然として緊張をはらんでおります。  私は、自由を守り平和に徹する外交基本方針を堅持しつつ、わが国の置かれた環境の現実に即して外交を積極的に推進してまいる決意であります。  ベトナム紛争については、従来関係諸国により再三和平への努力が試みられ、わが国関係諸国と接触し、和平実現の端緒を得ることにつとめてまいりました。これらの努力がいまだに成功するに至らないことは、まことに残念であります。私は、この際紛争当事者平和交渉発展信頼を寄せ、勇断をもって、話し合いのテーブルに着くよう強く訴えるとともに、一日も早く南北ベトナム人々が平和な国家建設にいそしむことができるよう心から望むものであります。(拍手政府は、今後とも、和平実現のため最善の努力を尽くし、戦火に悩む現地住民民生安定のために協力を続けてまいります。  中共のいわゆる文化大革命の帰趨は予断を許しません。この中共動向は、アジアはもとより、世界の平和に大きく影響するので、引き続き重大な関心をもって事態の推移を注視してまいります。政府は従来どおり、政経分離の原則のもとに中共に対し慎重に対処いたします。  昨年来わが国において開催された一連の国際会一議などを通じて、アジア諸国相互連帯協力機運が高まっていることは、まことに喜ばしいことであります。すでに、アジア近隣地域においては、目ざましい発展を遂げつつある諸国もありますが、東南アジア等諸国は、なお多くの困難に当面しております。わが国は、アジアの一員として、さらに世界における有数の先進工業国としての責務を自覚し、広く発展途上諸国に対し一そうの協力につとめてまいります。  沖繩百万同胞を含めた全国民が、沖繩祖国復帰を熱望していることはいまさら申し上げるまでもありません。私は、先年沖繩訪問の際「沖繩祖国復帰なくしては戦後は終わらない。」と述べましたが、この国民の念願が一日もすみやかに達成できるように、あらゆる機会をとらえて努力してまいりました。(拍手)この間、沖繩住民民生福祉向上など本土との格差是正のための施策は、大幅に充実し、また、このほど沖繩船舶に日の丸を掲揚する問題についても解決を見ました。(拍手)今後とも沖繩施政権の返還に備えて積極的な施策を進めてまいります。  核兵器拡散の傾向は、わが国安全保障にとって大きな問題を提起しております。わが国は、世界平和を確立するため、国際融和と軍縮の方向へ一そうの努力が必要であるとの観点に立って、核兵器拡散防止条約精神に賛同するものであります。条約の作成にあたっては、核を持たない国の意見が十分に反映され、その正当な利益が尊重されるよう強く主張いたします。(拍手)  わが国の戦後における目ざましい発展も、国民が享受している平和な生活も、国の長期的な安全保障なくして達成し得なかったことは、明らかであります。(拍手政府は、日米安全保障条約のもとにわが国の安全と平和を確保してまいったのでありますが、今後ともこの条約関係を堅持するとともに、国際的環境に慎重に配意し、わが国力と国情に即応して自衛力自主的整備を進め、わが国安全保障に万全を期する決意であります。(拍手)  わが国経済は、本年に入ってから毛予想以上の拡大を続けております。この経済上昇基調はかなり根強いものがあり、今後の国際収支及び物価動向には細心の注意を払ってまいります。  国民生活向上発展のためには、景気の変動を最小限にとどめ、安定した成長を維持することが最も大切であります。政府は、四十二年度予算の編成にあたり国際収支の均衡と物価の安定を主眼とし、一般会計予算の総額を五兆円以下に押え、公債の発行額を八千億円にとどめました。同時に、限られた財源を重点的に配分し、財政に課せられた本来の使命を果たすよう留意いたしました。  経済がいたずらに拡大し、再び過熱の弊害を招くことがあってはなりません。わが国経済が長期にわたり安定した発展成長を維持できるように、政府財政金融政策を弾力的に運営してまいりますが、民間産業界におきましても、設備投資が過度に拡大して景気の行き過ぎをもたらすことのないよう節度ある活動を期待してやみません。  政府は、今般四十二年度を初年度とする五カ年間の経済運営の指針として、経済社会発展計画を決定いたしました。この計画に基づき、昭和三十年代では実現できなかった経済社会の質的な面の改善につとめるとともに、四十年代における内外経済環境変化に対処して、物価の安定、経済効率化社会開発を強力に推進してまいります。  政府は、従来から物価の安定を最も重要な課題として取り組んでまいりました。このためには、個々の価格対策だけではなく、物価上昇の根源にさかのぼってその原因を除去する必要があります。これは経済社会基本問題に直結するだけに決して容易ではありません。今年度の消費者物価は、ほぼ五%の上昇にとどまるものと見込まれますが、五%はまだまだ大幅な上昇であり、国民生活を圧迫するものであります。基本的には経済の安定を保つとともに、引き続き生産性の低い部門の近代化流通機構改善、公正な競争条件整備などの施策を充実してまいります。さらに、賃金と生産性、賃金と物価関係につきましても真剣に考えるべき段階にあり、今後鋭意検討してまいります。(拍手)  土地価格の高騰は、住宅の安定をはじめ国民生活の健全な発展に大きな障害となっております。このため大規模な宅地の開発供給を推進するとともに、土地収用法改正案を今国会に提出するなど、土地問題と積極的に取り組んでまいります。  消費者米価については、現在のような価格関係を長く放置することは、食糧管理の運営上からも、また特別会計の赤字を一般国民税負担において埋めることからも限度があると考えますので、本年十月からその改定を行なうことを予定いたしております。  物価問題は多面的であり、効率をあげるためには、各種の対策相互に有機的な関連をもって実施されなければなりません。政府は、今回新しく物価安定推進会議を設けました。この会議を通じ、広く国民各層意見を聞き、私自身が中心となり、関係大臣一体となって、有効適切な物価対策を強力に推進いたします。  物価を安定させつつ、経済成長をなし遂げるという新時代の要請にこたえ、また資本取引自由化等経済の全面的な国際化に対応してまいらなければなりません。このためには、産業体制整備し、技術を開発し、農業中小企業近代化をはかり、労働力を有効に活用して、効率のよい経済をつくり上げるとともに、一段と輸出の伸長につとめることが必要であります。このためには、産業界が自主的に国際競争力強化のため構造改善を進めなければなりませんが、政府国民経済的観点からその方向を示すとともに、財政面金融面などの施策を拡充してまいります。  総合エネルギー政策の一環として、特別会計を設けて石炭鉱業の長期的な安定をはかり、さらに繊維工業については画期的な構造改善対策を実施することといたします。  農業生産性向上のため、政府は、土地改良等生産基盤整備計画的に進め、主要農産物の需給の動向に配意して生産振興をはかるなどの対策を積極的に進めてまいります。また、農業の零細な経営構造を克服するため、総合的な視野から構造政策を強力に推進いたします。  中小企業は、労働力需給の逼迫による労賃の上昇資本取引自由化等の事態に直面し、また物価対策の見地からも、その生産性向上が強く要請されております。このような情勢に対処し、政府は、中小企業振興事業団を設立し、中小企業の協業化を中心とした構造改善事業に対して、長期低利の融資、啓発指導等積極的な措置を講ずるとともに、政府関係中小企業金融機関に対する財政資金の投入を大幅に増加し、中小企業向け金融円滑化をはかってまいります。(拍手)  人口構造変化に伴う労働力の不足に備え、政府は、雇用対策に関する基本計画を策定し、積極的に技能労働者の養成と確保をはかり、中高年齢者の雇用を促進してまいります。また、石炭鉱業の新たな合理化の進展に伴い、予測される離職者に対する対策に万全を期してまいりたいと考えます。  減税については、昨年度の大幅減税に引き続き、四十二年度においても、所得税中心に、国税地方税を通じ平年度約二千億円の減税を行なうことにいたしました。特に、中小所得者の負担の軽減をはかるため、所得税課税最低限を、夫婦と子供三人の世帯について、十万円余引き上げて約七十四万円といたします。永年勤続者の労に報い、また家庭における妻の座を高めるため、退職金や妻の相続についても大幅な減税を行なうことといたしました。(拍手)  われわれ日本国民はすでに戦後の目標を達成・し、いまや新たな歴史の創造に取り組む時期にまいりました。国家民族発展基礎は人にあります。私は、人間を大切にする政治を行なうため、社会開発政策基本といたします。  青少年諸君が、次の日本をにない、あすの世界人類福祉に貢献する誇りと責任を自覚し、いかなる困難をも克服する強靱な精神とたくましい身体を養うとともに、豊かな人間性を備え、国を愛する心と公共に奉仕する使命感に燃えた国民として成長することを心から期待いたします。(拍手)  政府は、今後義務教育の充実、後期中等教育拡充整備、私学の振興に力を入れてまいります。また、経済的、地域的に恵まれず、心身の障害に悩む子供たちのため、育英奨学事業の拡充、僻地教育及び特殊教育振興などに一そう努力いたします。  科学技術振興は、社会開発推進の前提であり、今後の経済成長国民生活向上のための基礎であります。政府は、初の原子力船の建造に着手するなど原子力平和利用を推進し、宇宙開発、特に人工衛星開発努力するとともに、公害及び自然災害防止するための科学技術の研究を積極的に進めてまいります。  私は、国民の住まいを安定し、改善することを社会開発中心といたします。四十五年度までに一世帯一住宅実現を目途とする住宅建設五カ年計画を強力に推進しております。計画の第二年度に当たる四十二年度においては、引き続き公的資金による住宅の建設を促進し、民間の住宅建設についても、住宅融資保険制度改善住宅資金の積み立てに対する所得税の軽減を行ないます。  人口及び産業都市への急激な集中に伴って、都市の機能は低下し、生活環境は悪化しつつあります。このような弊害を除去するため、人口及び産業都市集中を抑制し、広域的視野に立って工業立地をはじめその適正な配置を促進するとともに、近代都市建設のため街路、上下水道、公園、緑地、交通機関などの基幹的施設整備いたします。さらに、土地の立体的かつ合理的利用をはかるなど既成市街地の再開発を強力に推進いたします。  交通事故による死傷者は増加の傾向を示し、国民生活に絶えざる不安を与えております。政府は、人命尊重歩行者優先の見地から、広く国民各位協力を得て、一段と交通安全教育を普及し、交通安全と救急医療のための施設を整備するとともに、被害者救済対策の強化をはかります。  大気汚染水質汚濁などの公害問題は、工業都市中心国民生活健全性をむしばむ最大の要因となっております。国民の健康と生活環境を公害から守るため、公害対策基本法案を今国会に提出いたします。さらに、産業災害防止については、近く第三次五カ年計画を策定し、職場の人々が安んじて働くことができるようにしたいと考えます。  医療保険制度については、国民医療の健全な発展のため、抜本的な改善をはかりたいと考えますが、膨大な赤字に悩む政府管掌健康保険等については、保険料率の引き上げ、財政負担の増額など、当面必要な措置を講じます。また、経済繁栄減税の恩恵にあずかることの少ない低所得階層人々に、国民生活水準向上に見合って、よりよい生活を保障し、老齢者心身障害者母子家庭など恵まれない人々に対する施策を一段と充実いたします。  なお、多年の懸案であった在外財産問題については、在外財産問題審議会の答申の趣旨に沿い適正な措置を講ずるため、今国会に所要の法律案を提出し、その解決をはかります。(拍手)  行政制度改善については、臨時行政調査会意見を尊重し、逐次その実現をはかってまいりました。四十二年度においては、新たな行政需要に対応し緊急やむを得ないものに限って部局及び公庫、公団等の新設、再編成を行なうことといたしました。最少の行政費による最高の効率発揮のため、今後とも強力に行政組織簡素化能率化をはかってまいります。  思うに、道義に貫かれた議会民主主義体制の確立こそ、わが国繁栄基礎であります。国民法秩序を守り、自由な投票によって政権を選択し得る議会民主政治は、人類政治的英知歴史的経験の結晶であり、人間社会の恒久的な進歩発展につながるものであります。  しかしながら、民主政治の理想は高く、その完成のためには、国民全体、特に政党及び政治家の不断の努力が要請されるのであります。(拍手)私は、政治に携わる者が、全国民代表者たるにふさわしい道義感のもとに行動することを期待するとともに、議会制度の根幹をなす選挙制度改善し、さらに公党の体質改善を促進してその倫理性を高め、もって国民信頼にこたえる清潔な政治実現につとめる決心であります。(拍手)  さらに、各政党が、民主主義の原則に従って審議を尽くし、正々堂々と事を決する慣行を確立しなければならないと信じます。(拍手)多数党たるわが自由民主党は、謙虚な態度で聞くべきは聞き、とるべきはとって、わが国民主政治の前進のために真摯な努力を傾けようとするものであります。(拍手)  与野党が良識と寛容の精神をもって国会の正常な運営をはかることこそ、主権者たる国民の付託にこたえるゆえんであり、わが国議会民主政治の健全な発展に資するものであることを、諸君とともに、あらためて銘記いたしたいと思います。(拍手)  国民各位の一そうの御協力を切望いたします。(拍手)     —————————————
  5. 石井光次郎

  6. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) ここに外交に関する私の基本的考え方日本外交重要政策について所信を述べる機会を与えられましたことは、私の光栄とするところであります。  人類はいまや二十世紀最後の三分の一世紀に足を踏み入れました。第一、第二の三分の一世紀ともそれぞれ悲惨なる世界大戦に見舞われましたが、この残された最後の三分の一世紀を、世界大戦、しかも人類破滅核戦争なしに過ごし、輝かしい平和の二十一世紀を迎えることができるかどうかに現代最大課題があると考えます。しかもその重大課題中心は、核をめぐる安全の問題と先進国と低開発国との間のいわゆる南北問題であります。この二つの重要問題はいずれもわが国とは深い関連のある問題であるだけに、私はこの二大問題に戦争と平和の問題がかかっていることを銘記し、わが国としてこれにどう対処すべきかに日夜心を砕いている次第であります。  日本外交指針日本の安全と繁栄確保増進にあることは申すまでもありませんが、それをアジアの安定と繁栄の中に、ひいては広く世界の安定と繁栄の中に求めるのが現実外交政策だと考えております。私は今後の日本外交目標として、アジア繁栄日本安全保障及び世界平和への寄与ということがきわめて重要な課題であると考えております。(拍手)  しかし、アジアといい、世界といい、その情勢は著しく移り変わりつつあります。アジアには一方に協力連帯の喜ぶべき新風が吹き始めましたが、他方ベトナム戦争は依然として継続され、中国問題とともに困難なるアジア情勢をかもしだしております。ヨーロッパにおいては東西融和の新時代が訪れ、また、アフリカ等にはイデオロギーを離れて現実的に経済建設を進めようとする風潮が見受けられます。  こうした激動と複雑化した世界情勢に処して、日本外交は、日本国益擁護に誤りなきを期さなければなりません。幸いにして、国民各位の御理解と御協力のもとに私は全力を傾けてこの重い責任を果たす決意であります。  つきましては、日本外交重要目標たるアジア繁栄日本安全保障及び世界平和への寄与について、いま少し詳しく所信を述べさせていただきたいと存じます。  まず、第一に、アジア繁栄についてでありますが、アジア繁栄達成は、アジア一員としてのわが国の最も希求してやまないところであります。幸いに、最近アジア諸国の間に、政治的立場の相違を越えて、経済建設のための連帯協力必要性が次第に認識されつつあることは、まことに喜ばしいところであります。  昨年はこのアジア連帯協力にとって記念すべき一年でありました。すなわち、東南アジア経済開発閣僚会議東南アジア農業開発会議、また、アスパックと呼ばれるアジア太平洋閣僚会議、さらにはアジア開発銀行の発足等、人をしてアジア新風と言わしめたアジア地域協力への動きが活発でありました。  アジア開発は、アジア人の発意により推進さるべきものであります。その意味においてアジア地域協力への機運を助長し、かつ、具体的成果が生まれるようわが国としては努力を傾けてまいりたいと存じております。さしあたり本年四月マニラで開催される第二回東南アジア経済開発閣僚会議に出席して経済協力の一そうの具体化をはかりたいと考えております。  他方、オーストラリア、ニュージーランドはもとより、米国、カナダの太平洋諸国においても、最近、アジアに対する関心がとみに高まりつつあります。これは当然の動きというべきであります。私は、いまやアジア問題は、アジア太平洋という広さにおいて考えることが今日の時代要請であるとともに、歴史方向でもあると確信するものであります。  私は、アジア太平洋地域動きつつあるこのような歴史的な流れを自覚し、当面、既存の二国間及び多数国間の会議の場はもとより、あらゆる機会を利用して、アジア太平洋地域諸国間の相互理解連帯協力精神を、じみちにつちかってまいりたいと考えております。(拍手)すでにわが民間においても、日豪経済合同委員会太平洋産業会議をはじめとし、この線に沿った話し合いが行なわれるに至っておりますことはまことに歓迎すべきことであり、政府としてもこれらの動きに側面的支援を惜しまない考えであります。  しかし、他方不幸なことは、アジアの一角たるベトナムにおける戦いが、いまだに終息を見ないことであります。アジアの平和と繁栄をこいねがうわが国として、こんな残念なことはありません。私は、この際紛争当事者が勇気をもって平和回復への決断を下すよう要望してやまない次第であります。そして、戦いではなく、アジア本来の課題たる平和的国内建設に取り組む日のすみやかな到来を切望するものであります。政府は従来より関係国との接触を重ね、和平への糸口の探求につとめてまいりました。他の多くの国々の政府やローマ法王、ウ・タント国連事務総長等によっても和平実現のための努力が払われてきましたが、いまだ成果はあがっておりません。しかし、情勢変化は常に起こり得る可能性を持っております。平和への努力はあきらめるべきではありません。わが国としてもかかる目的達成のため、今後とも外交機能をあげてできる限りの努力を重ねてまいりたい決心でございます。(拍手)  他方、いまもって戦火に悩む現地の人々には深い同情の念を禁じ得ません。わが国はこれらの人々のために医療、農業等の面で適切な援助を提供したいと考えております。(拍手)  ひるがえって、目をわが近隣諸国に転じますと、わが国と最も近い隣国の関係にある韓国が政治的安定と経済建設の道を着実に歩んでいることは力強く感じております。  また、中国との関係につきましては、わが国は従来より中華民国と正式の外交関係を維持しており、両国間の友情と理解はますます深まっております。一方、わが国は中国大陸とは隣同士の歴史的に深い関係にありますが、現在中共内部にはいわゆる文化大革命が進められており、中ソ関係の悪化等、中共をめぐる内外情勢は大きく動いております。政府としては、日中接触の道を常に開放しながら、事態の推移を十分に見きわめ、当面は従来の方針を続ける考えであります。  第二に、わが国安全保障問題について申し述べたいと存じます。  わが国の安全を守ることは、国民の一人一人がこれを真剣に考えなければならない根本の問題であると同時に、政府として国民に対して負うべき第一義的責務であると考えております。(拍手)しかし、今日の世界においては、独力で国土を防衛できる国はほとんどありません。戦後わが国もまた米国との間に安全保障条約を締結し、わが国安全保障政策の基調といたしました。波乱に富んだ戦後の国際情勢の中にあって、わが国がよく平和と繁栄を享受し得たことは、その政策の妥当なるゆえんを十分に証明しているものであります。(拍手)私は、今後とも日米安全保障条約をわが安全保障政策の中核として堅持してまいる考えであります。(拍手)  わが国と米国との関係は、単に安全保障の分野のみにとどまらず、広く政治経済、文化等あらゆる面においてきわめて緊密かつ良好であります。両国はまた、世界ことにアジア開発のために互いに協力してまいっております。両国が共通の関心を有する現下の国際問題についても随時率直かつ有益な意見の交換を行なっております。政府としては、今後ともこの友好緊密な日米関係を維持していくことが、わが国の国益に合致するのみならず、世界の平和と繁栄にも役立つものであることを確信するものであります。(拍手)  なお、沖繩問題については、わが国を含む極東の安全保障の問題を考えるとき、沖繩の果たしている重要な役割りを無視することはできませんが、他方、戦後二十数年を経た今日、なおわが国土の一部が他国の施政下に置かれていることは不自然な事実であります。この安全保障要請と不自然な状態の是正とをいかに調節するかが、今日、日米間に横たわっている重大問題であります。  政府としては、究極の目標である施政権返還について今後とも不断の努力を続けますとともに、それと並行して、やがては返ってくる沖繩の自治の拡大、民生福祉向上、本土との格差是正等当面の諸問題については、米国との協議を続け、現実解決を行なっていきたいと考えております。(拍手)  第三は、わが国世界平和への寄与についてであります。  わが国としては、引き続き世界の平和維持機構である国連に対する協力につとめながら、西欧諸国との関係を一そう緊密化するとともに、ソ連及び東欧諸国とも友好関係増進につとめ、もって東西融和の促進に寄与したいと考えております。(拍手)  日ソ関係は、両国外相の相互訪問等の人的及び経済交流の増進中心として着実な発展を遂げております。近く領事館の相互設置が実現されることになっており、また、本年四月には、日ソ直通航空路も開通する予定であります。政府といたしましては、今後とも日ソ友好関係の一そうの発展につとめるとともに、領土問題その他両国間の懸案の解決に引き続き効力する考えであります。(拍手)  また、私は、ラテンアメリカ、中近東及びアフリカの諸国が、みずからの国家建設と、よりよい世界実現努力を通じて国際社会でますます重要な地位を占めつつある事実に対し多大の敬意を表するものであります。  一方、世界平和の確立は、世界経済繁栄と表裏をなすものであります。したがって、わが国世界経済繁栄に貢献するための効力をいたすことは当然であります。この効力がわが経済繁栄にも役立つものであることは申すまでもありません。日本は、いまや米国、ソ連に次ぎ、英国、EECと並ぶ先進工業国の地位に立つに至りました。わが国はこの世界経済におけるみずからの地位と責務を自覚しながら、ケネディラウンド等を通ずる貿易の自由化、OECD等の場を通ずる資本の自由化にもできる限り積極的に協力すると同時に、外交を通じて日本経済発展のための国際的基盤の拡充努力したいと存じております。(拍手)  さらに、世界の平和を促進するためには、単に経済面の協力にとどまらず、広く文化的交流を通じて相互理解を深めることが必要であります。この見地から、海外におけるわが国の広報文化活動も一そう強化していきたいと考えております。  次に、私は、軍縮と核兵器拡散防止の問題について所信を明らかにしたいと考えます。  核兵器の拡散は、核戦争の危険を増大し、世界平和の重大な脅威となることは明らかであります。したがって、政府としては、核兵器の拡散を防止しようという核兵器拡散防止条約精神に賛成であります。しかし、この条約がその目的を達成するためには、核兵器を持つものも持たないものも、できるだけ多くの国がこれに参加することが必要であり、そのためにも、核兵器を持たない国の安全保障について十分の考慮が払われなければなりません。  しかも、この条約が、核兵器の拡散による人類の不安を除去しようというのが真のねらいである以上、単に核兵器を持たない国への核拡散を防止するというだけにとどまらず、核兵器を持っている国々が、核軍縮、ひいては一般軍縮に努力するという誠実な意図が明確にされなければならぬと思うものであります。(拍手)もちろん、一挙に軍縮が達成できるものではありませんが、核兵器をなくしてもらいたいという人類の悲願に一歩一歩近づけるための具体的措置が講ぜられなければならぬということであります。(拍手)そうでなければ、この条約はその道義基礎を失うことになると思うのであります。  また、この条約は、原子力平和利用とその研究、開発をいささかも妨げるものであってはならないということであります。(拍手)さらに、この条約は、原子力平和利用について、核兵器を持つ国と持たぬ国との間に区別を設けてはならないということであります。(拍手)将来核爆発エネルギーが平和目的のために実用化される段階になれば、現在の非核保有国も、それを平和目的に差別なく平等に利用し得る機会が保障されなければならぬということであります。(拍手)もとより、今日政府はみずから核爆発装置を開発する意思は持っておりません。ただ、平和利用のための原子科学の進歩への参加の機会を後世のわが国民から奪ってはならぬということであります。(拍手)  政府は、核拡散防止条約の中に、このようなわが方の見解が十分に反映されるよう今後とも努力をいたしまして、公正な条約実現を希望するものであります。  最後に、南北問題についてさらに一言申し上げて国民各位の御理解を得たいと存じます。  私は、世界に紛争の種が尽きない大きな原因の一つは、先進国と低開発国の格差があまりにもあり過ぎるところにあると考えております。結局貧困の問題に帰着いたします。貧困、無智、偏見、疾病、ことごとく平和の敵であります。イデオロギーの争いもこうした情勢がこれを激化しております。アジア不安定の最大原因もまたここにあると考えます。  わが国といたしましては、いまだ国内公共投資、社会開発投資が立ちおくれておりますが、にもかかわらず、アジア唯一の先進工業国としてこの重大な南北問題に真剣に取り組む道義責任があることを痛感いたすものであります。(拍手)特に、アジア諸国に対する経済技術援助の分野では、わが国はできる限りの援助をいたしたい考えであります。そのために、進んでわが国経済協力推進の体制を改善し、その機能を強化し、もって経済協力外交を強く推進する決意であります。  今日の世界歴史の流れは、イデオロギーの観念論から離れて、実際的に具体的にそれぞれの国の安定を求めようとする方向を目ざして動いております。(拍手)  私は、この変貌する国際情勢のもとで平和と繁栄へのあらゆる可能性をとらえて柔軟性ある外交を推進し、もってわが国に寄せられた世界の期待にこたえたい決意であります。国民各位の御理解と御支援を切に希望するものであります。(拍手)     —————————————
  7. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 大蔵大臣水田三喜男君。   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  8. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) ここに、昭和四十二年度予算の御審議をお願いするにあたり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて今後における財政金融政策について、私の所信を申し述べたいと存じます。  財政政策課題の一つは、景気変動を調整して、経済の安定成長実現することであります。  昨年発足した公債発行を伴う新財政政策は、幸いにしてその効果をあらわし、すでに不況は克服され、経済はすみやかな拡大過程をたどるに至りました。昭和四十二年度の財政は、経済に刺激を与えて景気の行き過ぎを招くことのないよう、慎重に運営していくことが必要であります。  このような観点から、昭和四十二年度予算及び財政融資計画においては、財政の規模と公債、政府保証債の発行額をできる限り圧縮することが要請されるのであります。  一方、財政は、国民経済全体の資源を効果的に配分して、充実した福祉社会実現していくという本来の使命をになっております。  わが国の現状においては、特に、住宅生活環境施設拡充をはじめ、道路等社会資本の整備、文教、科学技術振興農業中小企業等の近代化、交通安全対策公害対策等の強化社会保障の充実等を積極的に推進していくことが、ますます強く、要請されているのであります。  昭和四十二年度予算編成にあたって、私は、以上二つの要請にこたえるよう、その調和にできる限りの配慮をいたしました。  現在、国内経済上昇基調には根強いものがあり、また、わが国経済を取り巻く国際環境は、きわめて流動的でありまして、国際収支の先行きには注意を要するものがあります。政府は、これら内外の諸情勢変化を見きわめ、特に、国際収支の均衡と物価の安定に細心の注意を払いつつ、わが国経済長期にわたる安定と均衡ある発展実現するよう、財政金融政策を慎重に運営してまいる決意であります。特に、金融面におきましては、企業の自己金融力が格段に増大している現状にかんがみ、財政政策との一体性を保ちながら、予防的かつ弾力的に政策を展開していく必要があると存じます。  いまや、経済国際化は日々に進み、いわゆる資本自由化の機運が高まる一方、関税の一括引き下げについての交渉も最終段階を迎えるに至っております。このような国際化の潮流の中にあって、企業の体質を強化し、わが国経済効率を高めていくため、政府は、金融制度の改善、資本市場の育成等の施策をさらに一そう推進してまいる所存であります。民間経済界においても、長期観点に立って、このような環境に適応し、産業秩序の確立と経営の合理化につとめられるよう切望いたします。特に、金融界においては、健全金融の確立に一そうの努力を払われることを期待するものであります。  昭和四十二年度予算は、以上申し述べました財政金融政策基本方針にのっとり編成いたしました。  その特色は、次の諸点であります。  第一は、財政規模の膨張を極力抑制したことであります。一般会計予算の規模は、新設の石炭対策特別会計への振りかえ分を含めた実質規模で五兆円のワクを堅持し、前年度予算に対して一五・九%の伸びにとどめております。また、財政融資計画は、前年度に対し一七・八%の伸びでありまして、この五年来最も低い伸び率といたしました。なお、国民経済計算上の政府財貨サービス購入も、前年度の実績見込みに対して一二・八%の伸びとなり、国民総支出の伸びを下回っております。  第二は、公債発行の節度を守ったことであります。すなわち、公債の発行額は、八千億円にとどめました。これより、一般会計予算の実質規模に対する公債収入の割合は、約二八%となり、前年度よりその依存度を低めております。  第三は、財源の重点的配分をはかることにより、重要施策効率的に推進したことであります。すなわち、零細補助金の整理合理化につとめるなど、経費の効率的使用をはかる一方、現在最も緊要な経済社会発展のための諸施策を推進することといたしました。  かくして、一般会計予算の総額は、歳入歳出とも四兆九千五百九億円となり、昭和四十一年度当初予算に対し、六千三百六十六億円の増加となっております。また、財政融資計画の総額は、二兆三千八百八十四億円でありまして、昭和四十一年度当初計画に対し、三千六百十一億円の増加となっております。  以下、政府が特に重点を置いた施策について、その概略を申し述べます。  まず、税制の改正であります。  昭和四十二年度におきましては、国民生活の安定と企業の体質強化を目的として、所得税中心に、国税において平年度一千五百五十億円にのぼる減税を行なうことといたしました。  まず、所得税につきましては、中小所得者負担軽減をはかるため、夫婦と子三人の給与所得者の課税最低限を年収七十四万円程度まで、約十万円引き上げることといたしました。さらに、退職者の老後の生活の安定に資するため、退職金課税最低限を大幅に引き上げることといたしております。また、相続税につきましては、夫婦間の相続に対する税負担の大幅軽減を行なうことといたしました。  次に、企業減税につきましては、個人の青色申告者につき、昭和四十三年からいわゆる完全給与制の実現をはかる等、中小企業の体質強化に配意いたしました。さらに、技術開発の促進、輸出の振興等、当面の企業の実情に即した税制上の措置を講ずることといたしております。  また、私学の振興土地対策住宅対策の推進など、当面の施策に即応する措置にも配慮いたしました。  このほか、印紙税及び登録税につきまして、最近の経済の実態に適合するよう負担の調整をはかり、あわせて、制度の全面的な整備を進めることといたしました。  さらに、利子配当課税や交際費課税などの特別措置について、それぞれ改善合理化をはかることといたしました。  次に、歳出について申し上げます。  第一は、住宅及び生活環境施設整備であります。  住宅建設につきましては、一世帯住宅実現目標とする住宅建設五カ年計画にのっとり、四十二年度も引き続きその促進をはかっております。  建設戸数は、公営、公庫及び公団住宅で三十四万戸と、前年度に対して約三万七千戸を増加し、また不燃化率の引き上げ等、住宅の質の向上につとめることといたしております。なお、持ち家政策を積極的に進め、前年度に引き続き勤労者向け分譲住宅建設を促進するほか、宅地造成についてその推進をはかることといたしております。  また、生活環境施設のうち、特に不水道につきましては、新五カ年計画を策定して、その普及率を高めることといたし、昭和四十二年度には大幅な予算の増額を行ないました。  第二は、社会保障施策充実であります。  まず、低所得者対策といたしましては、生活扶助基準を引き続き大幅に引き上げることにいたし、また、福祉年金の給付月額の引き上げと所得制限の緩和、失業対策事業の事業費単価の引き上げを行なうことといたしました。なお、文教関係予算におきましても、低所得階層の児童生徒の就学援助に関し、給食、学用品等の質的改善をはかる等、きめこまかい施策を講じております。  また、児童保護、老人福祉、身体障害者及び重症心身障害対策等について、施策充実をはかりました。  さらに、政府管掌健康保険等につきましては、財政再建のための緊急対策を講ずることとし、保険料率の引き上げ及び被保険者本人の自己負担の増額をはかり、あわせて、一般会計からの国庫補助を大幅に増額することといたしております。  第三は、文教と科学技術振興であります。  文教につきましては、義務教育における学級編制等の改善のほか、特に父兄負担軽減をはかるため、教材費の大幅増額を行なうことにいたしました。また、学校の施設、設備等教育環境整備を推進することといたしております。さらに、大学入学志願者の急増に対処するため、学生の増募を行ない、特に私学については、従来に引き続きその振興助成を推進し、あわせて、育英奨学制度の拡充を行なうことといたしております。  科学技術振興につきましては、宇宙開発、大型プロジェクトの研究開発、動力炉開発等を推進するほか、基礎科学の面においても、素粒子研究等の充実強化をはかることといたしております。  第四は、交通の安全、公害防止人命尊重のための諸施策に重点を置いたことであります。  道路交通の安全につきましては、歩行者保護のための交通安全施設の急速な整備、被害者の救急医療対策交通事故相談等の充実をはかることといたしております。  また、航空の安全につきましては、新たに長期計画を策定して空港施設整備をはかるほか、航空気象業務、乗務員養成等を強化することにいたしております。  次に、公害問題につきましては、基本法の制定により責任の所在を明確にし、国及び地方公共団体の施策基本方向確立することといたしておりますが、予算においても、従来に引き続き、公害の調査及び規制、防止技術開発公害防止事業に対する融資等を促進することといたしました。  第五は、社会資本の整備であります。  政府は、ここ十年来、社会資本の充実向上には格段の配慮を払ってまいりました。国民総支出の中に占める公共投資の比重は、諸外国にも例を見ないほど高い水準に達しております。昭和四十二年度におきましては、経済情勢を勘案して、公共投資の伸びは前年度以下に押えることといたしましたが、その内容については、長期的展望をもって施策充実をはかり、既定または新規の長期計画のもとに、事業を着実に推進することといたしております。  道路整備につきましては、四十二年度を初年度として、総事業費六兆六千億円の五カ年計画を策定し、事業の推進をはかることといたしております。  また、港湾につきましては、港湾荷役の合理化、新しいコンテナー輸送体制の整備等の見地から、京浜及び阪神外貿埠頭公団を新設し、埠頭の整備をはかることといたしました。  このほか、日本国有鉄道及び日本電信電話公社につきましても、施設整備を促進することといたしております。  さらに、国土保全の面では、災害復旧事業の促進と治山治水対策計画的実施をはかることといたしております。  第六は、中小企業及び農林漁業等の近代化であります。  中小企業につきましては、従来の中小企業高度化資金特別会計中小企業指導センターを統合して、中小企業振興事業団を新設し、中小企業の協業化等のための融資事業と啓蒙指導事業を総合的に実施することといたしました。このほか、中小企業関係金融機関の資金量の増大、中小企業信用保険公庫の信用補完事業の充実、小規模事業の経営指導の強化等をはかることといたしております。  農林漁業につきましては、農業基盤の整備、農林水産業構造改善対策拡充、畜産、園芸の振興等施策を推進することといたしております。また、金融面におきましても、農業近代化資金、後継者育成資金等の融資ワクの拡大及び農林漁業金融公庫の融資条件の改善をはかることといたしております。  さらに、農畜水産物の生産、供給体制の充実流通機構整備、産地及び消費地向け流通情報の提供等各般の施策を積極的に推進することといたしました。  これらの施策は、物価の安定に貢献するところ大であると考えます。  次は、石炭及び繊維産業に対する抜本的な対策を講じたことであります。  すなわち、エネルギー構造の急速な変化に対応して、石炭産業近代化合理化を行なうため、石炭対策特別会計を新設して、施策の画期的な拡充をはかることといたしました。また、紡績業及び織布業について、転廃業、過剰設備の廃棄、設備近代化等の構造改善対策を実施することにいたし、業界の自主的な努力を前提として、必要な助成及び融資措置を講ずることといたしております。  次は、貿易の振興と対外協力の推進であります。  輸出の振興につきましては、日本輸出入銀行の貸し付け規模の大幅な拡大をはかるほか、日本貿易振興会等の事業を拡充することにいたしました。また、貿易外収支の改善をはかるため、外航船舶建造量の拡充、国際観光事業の振興、国際航空事業の育成等をはかることといたしております。  さらに、対外経済協力の推進につきましては、海外経済協力基金等に対する財政資金の増額、技術協力費の充実等をはかっております。  なお、昭和四十五年に開かれる万国博覧会につきましては、会場建設事業を推進することといたして、開催準備に遺漏なきを期しております。  最後に、地方財政について申し述べます。  昭和四十二年度の地方財政は、地方税及び地方交付税等の大幅な増収が見込まれるのでありますが、これに加えて、たばこ消費税率の引き上げ、臨時地方財政交付金の交付等の措置によって、地方財政の一そうの健全化をはかることといたしております。  以上、昭和四十二年度予算の大綱について御説明いたしました。  政府は、この予算及び財政融資計画の適切な執行により、金融政策の弾力的な運営と相まって、わが国経済が均衡ある発展を遂げるものと確信いたします。  経済界におきましても、現在の景気上昇長期にわたる息の長い繁栄に結びつけるよう、特に設備投資について節度ある態度を堅持されることを要望いたします。  国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)     —————————————
  9. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 国務大臣宮澤喜一君。   〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  10. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今後の経済運営についての所信を明らかにし、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。  最近におけるわが国経済動向を見ますと、個人消費の堅調や在庫投資の回復に加えて、民間設備投資も増勢に転じ、これを反映して、生産、出荷は大幅な増加を示しております。  このような経済上昇基調は、昭和四十二年度にも引き継がれ、経済はさらに拡大の方向をたどるものと考えます。反面、卸売り物価は強含みに推移しており、消費者物価の騰勢に毛依然根強いものがございます。また、国際収支につきましては、ここ数年、為替銀行の対外資産、負債の状況は相当改善されてはおりますけれども、わが国が次第に資本輸出国に転じつつあることを考えますと、貿易収支では相当の黒字を確保しておかなければなりません。この点、輸出の伸びの鈍化、輸入の増加という最近の動きには注意を要します。  したがって、今後の経済運営にあたっては、これらの動向に細心の配慮をいたし、今後、経済情勢の推移に応じて、財政金融政策の機動的、弾力的運用を行なうことにより、景気の行き過ぎを未然に防止する考えでございますが、民間経済界におかれましても、慎重な投資態度をとられるように強く期待をいたすものでございます。  このように経済運営されますならば、昭和四十二年度においても、国際収支の均衡をはかりながら、実質九%程度の安定した成長を期待することができるものと考えます。  物価の安定は、当面する最も重要な問題であります。  政府は、今日まで、諸般の物価対策を実施してまいりました。本年度の消費者物価上昇は、ほぼ五%にとどまる見込みであり、来年度におきましては、四・五%の範囲内におさめたいと考えております。  消費者物価上昇は、構造的、制度的要因による面が大きく、その早急な解決は容易ではございません。じみちではあっても、農業中小企業、流通部門などにおける近代化のための構造政策の推進、公正な価格形成のための競争条件整備労働力の有効活用など、物価安定のための対策を着実に実施していくことが重要であります。政府は、昭和四十二年度予算において、これらの施策の推進に必要な措置を講ずることといたしております。特に、国民の日常生活に欠くことのできない生鮮食料品については、野菜の集団産地の育成、肉牛対策拡充、中央卸売市場及び公設小売市場の整備など、きめこまかい対策を実施することといたしております。  米価の問題につきましては、国民生活及び国民経済に影響するところが大きいので、基本的には稲作経営の生産性向上、米流通の合理化などを強力に進めることによって対処いたしますとともに、あわせて、適正な需給の見通しによる安定的な輸入を行なうことについても十分な配慮をいたす必要がございます。しかし、当面の問題として、生産者米価と消費者米価の逆ざやの現状を放置しておきますことは、財政負担の累積的増大を招き、食糧管理制度の円滑な運用を阻害するおそれが大きいので、家計への影響を考慮しつつ、消費者米価の最小限の改定はやむを得ないものと考えます。  近年における地価の高騰は、国民住宅建設を困難にし、公共事業の進展を妨げているのみならず、一般的な物価上昇に及ぼす影響も無視できません。地価を安定させるためには、新規宅地の開発を推進し、生活環境施設の整った宅地を大量に供給することが肝要でございます。また、同時に、国土の公共性、社会性を十分認識して、土地合理的利用開発利益の帰属などの問題について、従来の考え方に検討を加えるとともに、土地取得制度の改善をすみやかに実現しなければならないと考えます。  騰勢を続けてきた卸売り物価につきましては、供給力の増大等により、今後は比較的安定した推移をたどるものと考えます。しかしながら、卸売り物価動向は、わが国経済の国際競争力に直接影響を与えますので、今後とも十分注意してまいる所存であります。次に、経済成長の過程において、賃金、所得が増加し、生活水準向上していくことは、それ自体好ましいことと存じます。しかし、労働力需給の逼迫に伴い、それが生産性の低い部門の価格、料金の引き上げに転嫁され、消費者物価上昇の大きな原因となっていることも否定できません。このような現状にかんがみ、国民経済全体の立場から、名目賃金よりも実質賃金を重視して考えるべき時期にきているものと考えるのであります。  なお、政府は、今般、産業関係、労働関係、消費者関係等各界の学識経験者からなる物価安定推進会議を設けまして、決意を新たにして、物価対策の推進に当たることにいたしました。  昭和三十年代における経済発展により、国民の所得水準は大幅に上昇し、重化学工業国への飛躍を遂げ、国際社会におけるわが国の地位も著しく高まりました。  しかしながら、反面、その過程において、各種の不均衡が表面化してまいりました。先ほど申し上げました消費者物価の大幅な上昇もその一つであります。また、住宅生活環境施設整備の立ちおくれ、農業中小企業、流通部門の近代化のおくれ、企業体質の悪化などが、今日の問題となっております。  さらに、昭和四十年代においては、資本自由化などによる本格的な開放体制への移行、質量両面の労働力不足の本格化、都市への人口集中に伴う地域社会の変貌など、内外にわたる経済社会の条件変化が予想されます。  このような事態に対処するために、政府は、経済審議会の答申に基づき、今後長期にわたる経済運営指針として、今般経済社会発展計画を策定いたしました。政府は、この計画に基づき、昭和四十二年度からの五カ年間に、特に次の三つを重点政策課題として取り上げ、その積極的推進をはかる決意でございます。  まず第一は、物価の安定であります。  安定した経済成長を維持しながら、消費者物価上昇率を徐々に引き下げ、計画期間の終わりには、年三%程度にまで低下させることを目標とし、このため、各般の物価対策を今後一そう強力に推進する考えであります。  第二は、わが国経済効率のよい経済に再編することであります。  資本の自由化や関税一括引き下げという当面の問題、さらに、今後本格化する労働力不足に対処するためには、資本と労働を最も有効に活用するよう、わが国経済のあらゆる面にわたって効率化をはからなければなりません。このため、技術開発力の強化産業体制整備を進めるとともに、近代化のおくれている部門への投資を増大し、経済各部門の均衡のとれた発展をはかる所存であります。  第三は、社会開発を一そう推進することであります。  計画期間中におおむね二十七兆五千億円にのぼる社会資本を投じ、道路、住宅生活環境施設などの整備を積極的に進めますとともに、社会保障の充実公害の防除につとめるなどによって、国民に快適な生活の場を確保いたしたいと存じます。  さらに、大都市への人口の過度の集中防止し、都市、農村を通じて、地域の特性に応じた住みよい国土の建設を促進するため、地域開発施策の一そうの充実をはかってまいる所存であります。  政府は、以上申し述べた重点政策課題達成し、さらに、国際収支の均衡をはかりつつ、今後五カ年間、年平均八%程度の安定した経済成長を維持する所存であります。  以上、わが国経済の当面する諸問題と今後の経済運営について、所信を申し述べました。  国民各位の御理解と御協力を切望いたします。(拍手)      ————◇—————
  11. 亀岡高夫

    ○亀岡高夫君 国務大臣演説に対する質疑は延期し、来たる十六日午後一時より本会議を開きこれを行なうこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  12. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 亀岡高夫君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時三十二分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階 堂進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君      ————◇—————