○安田
説明員 確かに最近の少年による犯罪の
状況を見てみますと、先ほどから先生も御
指摘になっておられますようにいわゆる従前と異なりまして、物質的な貧困というものが
原因になっておるというよりも、むしろ精神的な貧困に基づく非行が多いように、一口に申しますと、そのような
感じを受けるわけでございます。ただいま問題になっております勤労少年あるいは集団就職などをした少年によります犯罪の
状況を見ましても、たとえば今回の房総西線の爆破
事件を起こした少年についてもいえることでございますけれ
ども、日給な
どもかなりの金額を受け取っておるわけでございまして、経済的な貧困ということではないわけでございます。そういう勤労少年が、なぜ都会に流入してまいって非行化、いわゆる転落していくのかというようなことを見てみますと、その
原因としては大きく分けて、私
ども三つほど理由があるんじゃないかと思われるわけでございます。
その
一つは、まず都市というもの、都会というものが、農村に比較して一般的に犯罪や非行を犯しやすい、発生しやすい地域であるということは、これは一般的にまずいえるんじゃないかと思います。すなわち都会におきましては、人口の移動な
ども激しゅうございますし、それからまた人間的な
関係や結びつきというものも希薄でございますし、片方、その環境はきわめて不健全な娯楽機関その他がございまして、そういう道徳的な混乱とかあるいは逸脱行為を誘発しやすいような、いわゆる環境面の問題があるわけでございます。これについては多くを申し上げる必要はないと思います。
第二の理由としましては、やはり農村から、あるいは地方から出てまいった少年は、都会に来ることによりまして生活環境が急激に変化いたします。それに十分に適応していけない、あるいはそういう条件にあるにかかわらず、これらの少年に対するいわゆる雇用者その他周囲の、先ほど先生の御
指摘になりましたような、いわゆるおとながこれらの少年に対しての日常生活の監督保護というものにおいて欠ける点がありはしないかという点が、第二の問題として
指摘されます。
それから第三の理由としては、これは少年の側にも問題があるのではないか。すなわち、都会へ出てまいります際に、少年が都会生活の甘い夢というようなものを追いかけておりまして、いわゆる職場における勤労のきびしさというようなものについての心がまえが、十分できていないというようなことも問題ではなかろうかと思います。すなわち、言いかえますならば、これらの心がまえを養成しておかなければならないという
事前の社会教育あるいは学校、家庭における教育の問題が、やはり大きな理由として考えられるのではないかと思うわけでございます。
これらの少年は、いずれも転落していきます過程は、そのいきさつは、先生も先ほど御
指摘になりましたように、いわゆる転職、離職をしていく過程において、没落あるいは非行化していくわけでございまして、なぜ転職あるいは離職をするのかということを考えますと、結局、大会社などでは福利厚生施設は十分でございますけれ
ども、きわめて仕事が単調であるとか、あるいは人間
関係が希薄であるというようなことで、いわゆる少年はいろいろな不満を持ちやすい。それからまた中小企業などでは、年少労働力が最近御承知のように不足しておりますので、雇用主のほうが少年を甘やかすと申し博すか、十分な監督、保護ということをあまり行なわないで差し控えるというような
傾向がある反面、また福利施設とかその他雇用条件において少年の不満を買う面があるということ、こういうようなことで、いろいろ少年が不満を持って転職、離職していくわけでございます。この転職、離職する際には、必ず零細企業のほうへ落ちていくわけでございまして、たとえばサービス業とか、あるいは風俗営業
関係、あるいは飲食店
関係というようなところへ落ちていくわけでございます。そういうところではおのずから、いわゆる不良少年やその他との接触も多くなってまいりまして、そして結局非行化していくというようなのが、いわゆるおきまりのコースになっておるわけでございまして、こういうような転離職を食いとめるためにどうすればいいか、職場に安定し、定着させるためにはどうしたらいいかということがその対策として考えられなくちゃならぬのではないかと思います。
そのためには、まず第一に就職前に十分その少年の職業の適性というものを調べて、そしていわゆるその性質やあるいは能力に応じた職場を選んでやるという配慮が必要であるということ、それからまた、先生御
指摘のように、
事前に十分労働条件その他について
調査し、少年が出てきてから条件が違うというようなことで、
期待が裏切られることのないようにしなくちゃならないというようなこと、それからまた、より大事なことは、どんな職場にでもやはり不満があるわけでございますから、そういう不満が出た場合に、この少年に対して十分相談に応じてやるような、そういう機関が整備されることが必要じゃないか。そしてその素質に応じて職場に安定させる、またあるいは転職、離職するにあたっても、適当な職場をあっせんするというようなことが行なわれるならば、これらの非行化が阻止できるのではないかと思います。
それやこれや、いろいろございますけれ
ども、やはりこういう施策というものは、いずれも相対的なものでございまして、やはり最も重要なことと申しますと、先ほど申しましたように、最近の非行の現況にかんがみまして、やはり社会教育あるいは道徳教育というような面での、精神的な面でのいわゆるしつけというようなものがより強く、教育面がより強く望まれるのではないかということ、それからそれに対応しまして、また雇用主その他のおとなの世界におけるこの少年たちに対する保健監督の重要性ということが考えさせられるのではないかと思っております。