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1967-07-18 第55回国会 衆議院 法務委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十八日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 加藤 勘十君    理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君       石田 宥全君    神近 市子君       中谷 鉄也君    西宮  弘君       小沢 貞孝君    沖本 泰幸君       松本 善明君  出席政府委員         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         法務政務次官  井原 岸高君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   片岡  誠君         法務省刑事局刑         事課長     石原 一彦君         通商産業省化学         工業局化学第一         課長      天谷 直弘君         専  門  員 高橋 勝好君     ――――――――――――― 七月十七日  委員沖本泰幸辞任につき、その補欠として大  野潔君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員下平正一君、三宅正一君、佐々木良作君及  び大野潔辞任につき、その補欠として中谷鉄  也君、石田宥全君小沢貞孝君及び沖本泰幸君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田宥全君中谷鉄也君及び小沢貞孝君辞  任につき、その補欠として三宅正一君、下平正  一君及び佐々木良作君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 七月十五日  刑法の一部を改正する法律案等反対に関する請  願(細谷治嘉紹介)(第三六四〇号) 同月十七日  刑法の一部を改正する法律案等反対に関する請  願(松本善明紹介)(第四〇二七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十七日  青梅市友田地区刑務所設置反対に関する陳情  書(第四二三号)  未登記事務処理促進に関する陳情書  (第四八二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第九四  号)      ――――◇―――――
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。神近市子君。
  3. 神近市子

    神近委員 私は、しばらくぶりでこの間日本橋通りを歩いてみましたところが、お中元の前後でもありましたせいで、もう車がほとんど動かないんです。それで、ひまだからよく数えていると、大体業務用の車は少なくて、十台のうちに八台くらいがマイカー族の車と見られる、女の人が…。これは私、規制するならばどうしても業務用規制するというわけにいかないから、自分たちの楽しみというか喜びというか、そういうものを満足させるために使っていらっしゃるカー、これを一部規制しなければ、どうにもいまの交通事情には適応しないと私はいつも考えているものなんです。それで、この点でどういうような規制法があるか、考えてごらんになったことがあるでしょうか。
  4. 片岡誠

    片岡説明員 私どもも、いままでマイカー規制について、いろいろ御意見が出ておりますので、承っております。ただ、いろいろ検討いたしました結果、現在考えておりますのは、マイカーを直接規制をするとしますと、だれがふるい分けをするか、どういう基準でふるい分けをするかということが根本問題だろうと思います。そうすると、たとえば大臣の車はいい、国会議員先生方の車はいい、あるいは大会社幹部の車はいい、労働組合幹部の車はいいとか、どこにそういう基準を置くかが非常に問題になってくるだろう、それをかりに府県の公安委員会がふるい分けをするとすれば、いろいろまた問題があろうということで、直接的な規制はむずかしいのじゃないだろうか。どこの国でもそういう直接的な規制は、私寡聞にしてやっているというのを聞いておりません。したがいまして、ただ考えられますのは、間接的な抑制方法があるのではないか、その一つとして考えられますのは、御承知のように自動車保管場所確保等に関する法律というのがありまして、青空駐車青空車庫禁止というふうに俗にいわれておりますが、それによって車庫を持たない人には車を持たせないという規制のしかたが、現に間接規制として行なわれております。あとはまた何らか税制上の措置によって、間接的に抑制していくという方法もあろうかと思います。  それからもう一つは、都心部駐車禁止を相当きびしくしていくことによって、どうしても駐車場に車を置かなくちゃならぬ。そうすると有料駐車として相当金を払わなくちゃ車を置けないというふうな、そういう方法も現在ある程度やっておりますし、そういういろいろな角度から、間接的な規制方法考えていくというのが一番妥当な方法ではないだろうか、このように考えております。
  5. 神近市子

    神近委員 税金のことですけれども、大体会社の名前で届け出する。そうすると安いのだそうですね。個人のものよりも会社使用車という、マイカーの場合、これが非常に多いということ、だから私はそれをはっきりとさせて、ほんとう業務用のものか、それとも個人のものかということをはっきりさせて、相当高額の税金をかけるということが一つ方法、それからこれは実態ですけれども有料駐車場を避けるために、自分会社の一番近いところで、大体七時ごろ出社するのだそうです。そうすると、まだ道路があいていて、一日無料で置ける、そうしてその前の喫茶店で朝めしを食べる、これがいまの出勤の実態だということを聞いたのですけれども、そういうような実態はわかっていらっしゃいますか。税金を上げるということと、無料で駐車しようというあせりが非常に強いということ……。
  6. 片岡誠

    片岡説明員 税のほうは、私主管官庁でございませんので、恐縮でございますけれどもあとで大蔵省その他主管官庁からお答えするようにしたいと思います。  駐車する場所の問題でございますが、確かに仰せのような実態があろうと思うのです。私どもとしましては、道路はやはり公共の用に供するものでございますから、一人が長い間占用するというのは、いわば権利の乱用に近いものではなかろうかということで、駐車することによって他の道路利用者に非常に迷惑をかけているような場合、そういう場所につきましては、できるだけ駐車禁止をかけていく。そしてすべての人が有効に道路を使えるようにしていく、そういう方向で行政をやっております。
  7. 神近市子

    神近委員 前に交通問題審議会で自家用のカー、これは大臣とか国会議員とかいう話が出ましたけれども、たいへん悪いのですけれどもサラリーマンより国会議員の車なんか税金高くても、そんなにお困りではないと思うのですよ。だから私なんかも電車地下鉄を利用しようというようなことを考えているけれども、このごろちょっとからだのぐあいが悪くて国会の車を拝借しているのですけれども、私はなるべくならば電車で来たいというように考えています。これは私が若くてぴんぴんしていれば、必ず毎日電車で通いますよ。だけれど、その点基準をつけることができないのではないかということで、私はその点ではサラリーマンがお嫁さんもらうのに、カーがあれば来手が多いというようなことは、考えると全くあほくさいことだと思うのです。だからこれだけの交通過密を何とか整理しようということになれば、やはり税金を高くして、サラリーマンではちょっと手が届かない——アメリカとかイギリスとかのお話がしょっちゅうあるようですけれどもアメリカなんかは、行ってきた人の話では、このマイカーは全部郊外有料の広い土地に持っていって置いて、そこから市内には地下鉄とか、バスとか、電車とか使う。それだけの良識というか、長い問いろいろ考えた結果であろうと思うのですけれども日本はいまもうブームで、そして珍しいものがよくて、そういうような冷静な考え方なんかする人は、あまりないのじゃないかというようなことが考えられるのです。それで私は、ある程度生産制限ということも考えていいのじゃないか。この過密の問題が出るたびに一いま全体の台数は、大体一千万台ということになっておりますが、生産はどのくらいですか。私は二、三年前にトヨタからもらってきた資料があったのですけれども、いま現在は、年間生産台数はどのくらいありますか。
  8. 大坪保雄

    大坪委員長 委員長から申し上げますが、ただいまの御質問に対しては、運輸省か通産省でないと正確な答弁ができないのではないだろうかと思われます。
  9. 神近市子

    神近委員 はい、わかりました。  私は、いまちょっと帳面が違って、いま持っていませんが、トヨタでいろいろ聞きましたところでは、生産の中のどのくらいのパーセントが輸出に出て、国内でどれだけ消費するかということを聞きましたところが、二〇%が輸出で、あと八〇%が国内使用、それでは何とか規制しない限り、さあ買ってください。——あの郊外に行ってごらんなさい。中古車が五万円か七万円でございますというのが一ぱいある。あれがみんな動き出したならば、東京都内は、ともかくわれわれには住めるところでなくなるのではないかというふうに考えるのですけれども、たとえばこれはトラックやその他は、私、生産日本経済生活に必要だから、これは規制するわけにはいかないだろう。そして歩いているのを見ましても、業務用のそういうものの台数は、やはり十台のうちで二台か、ところによっては三台くらいしか見ないのですよ。だから私はどうしてもマイカーというような、変な青少年の最近の傾向、この人たちは一番事故を起こすんですからね。私はこれを規制するというようなことが必要だと思うのですが、これはどなたに伺ったら……。運輸省が来ておりませんというふうなことでしたら、次官がひとつどういうお考えになっているか伺いたい。
  10. 井原岸高

    井原政府委員 どうもふなれなことでございまして、いまおっしゃるようなことは、先生がお考えになるようなことを、ほとんどわれわれ年輩の者は痛切に悩んでおるかと思うのでございます。したがいまして、東京都だけでございますが、一カ月間に十五万台くらいの申請がある、それくらいどんどんふえておるわけでございまして、いずれこれは近いうちに何か考えませんと、幾ら道路を整備し、交通取り締まりの規則を強化いたしましても、交通自体が麻痺して、そのためにいろんな災害も起きますし、かえってそれがまた経済発展を阻害するというような傾向に進んでいくのではないかということを常々考えておるわけでございます。さりとて、ただいま先生からどうやったらいいかというような御質問を受けましても、ちょうど先生が悩んでいらっしゃると同じようでございまして、私自身もこれという定まった見解を持っておらないわけでございますが、ごもっともでございますので、法務関係その他、それ以外の関係省との連絡等もとらせまして、ただいま警察庁のほうからも答弁がございましたが、関連各省でそういう問題を前向きの姿勢で検討さすようにしてはどうか、かように考える次第でございます。
  11. 神近市子

    神近委員 私は、トヨタの工場を見せてもらったときにつくづく考えたのは、私ども日本経済的な発展を妨害することはできないから、これはトラック生産ということは規制できない。だけれど、トラック事故を起こす、もちろんトラック運転する施設をもう少し何とか考えなければ、下の子供が見えないというような、運転するときに近くに遊んでいる子供が見えないということは一つの欠点だと思うのですけれど、私、それよりも全体論として、こんなに余るほどの車を小さな国土の中にかかえていて、そしていろいろの災害を、年間何十万の、一つ戦争くらいの——このごろびっこをひいたり、足を引きずったりしている人を見たときに、病気と私は考えません。ハハン、事故でやられたな。家を出るときに、いつ自分があの事故にかかるかもしれないというようなことをいつも考えて出るのですよ。あれだけの過密状態を、もっと大陸がたくさんあって、あそこには自動車が三台か五台しか歩いていない。輸出のほうにもう少し何らかの努力をすべきでないか。シベリアだって、中国だって、あるいはインドだって、もう自動車不足で仕事が十分に行なわれないというところはたくさんあるから、もし、日本の今日の政府あり方で、おまえさんのところはもう少し自動車のなにを規制しなさい、減らしなさいというふうな命令ができないならば、何とか輸出の振興に全力をあげて、そして車を規制する。  一方では、この間、お嬢さんを、石油をかけて殺したような青年、ああいうような変な心理になっているあの人たちが一番車をほしがるのですよ。そして実際に運転しているのですよ。いまの青少年は、そういった非常に変な不健全な心理状態にいると思うのです。ですから、その点をどういうようにしたらばいいか、これはたいへん次官にお気の毒ですけれども、これは全体の意見というわけにはいかないでしょうから、ひとつあなた御自身考えでけっこうですから感想を述べていただきたいと思うのです。
  12. 井原岸高

    井原政府委員 私が四、五年前でございましたか、ちょっと欧州のほうへわずかの期間ですが行ったことがございます。ちょうどドイツで、当時住宅等の問題でいろいろ調査したのでございますが、ドイツはあれだけ工業発展して、自動車等についても、世界で優秀な自動車生産しておるわけでございますが、しかし、国民の使用しておる状況を見ますと、いま神近先生のおっしゃったふうの遊びに使うとか、若い者が何かそういう気持ちで使っているというような使い方というものは非常に少ないように見えたのでございます。どういうふうにドイツ青年考えているのだろうというので、いろいろ聞いてみましたところが、まず学校を出て働くと、住宅をつくる保険、金をつくるそうでございます。それから結婚する費用とかいろいろございますが、そういうような住宅をつくり、家庭の基盤をつくって、そうしてその上に余裕ができると初めて自動車を買って使うというように、日本のように、何と申しますかいまのような変形的ないき方でなしに、非常に生活自体組み立て方が健全な合理的なやり方をしておる。それはドイツ等考え方の違いかもしれませんが、比較的年の若い者が無免許で走り回るというようなことによる災害等が少ないわけでございます。ですから、やはり社会全体のこうした様相を組み立てていくべく、これは政府機関はもちろんのこと、われわれ議員にとりましても、そういうことを——政府とともにひとつ外国等美点等も取り入れて青年を教育していく、そういうような方向へ向かうことも一つ方法でないかと思うわけでございます。その他につきましては、いろいろ法律税制上の問題を検討いたすことによって規制をやっていく、そういうような方法をとることが望ましいのではないか、これはまことに私ども、単純な考え方かもしれませんが、そういうことでございます。
  13. 神近市子

    神近委員 よくわかります。私もベルリンの少年の家というようなところを見て歩きましたけれど、この国民生活というか、あるいは戦後のアデナウアーの指導がよかったのか、われわれのようなうきうきしたようなものがなくて、非常に冷静な、落ちついた、まじめな教育が行なわれていた。今日の日本青少年あり方考えますと、どうも私どもは何かはき違えたものがあるのじゃないかというような考えがあるのです。青年をいま比べてごらんになったときに、まず職業につけば家を求める、その次に車を持つというような順序なら、これは私そんな無法な運転なんかしないと思うのです。だけれども、いま日本状態を見ますと、酔っぱらい運転、あるいはスピード違反、これも全部若いマイカーが多いので、運転手なんかそんなことしていませんよ。まあ運転手の中にも、いろいろ伺いますと、やみというのがあるそうでして、そういう人たちに、一部睡眠不足とか、あるいは過労のために、居眠りしながら運転ということはあるようですけれども、これも労働法か何かによって規制しなければならない。だけれども、いま私どもが一番大きく災難を受けているのは、無法運転の若い人たち、これをどうして規制するかということが、いま最大の問題であろうと思うのですけれども、この青少年運転免許——さっき申し上げたようにうんと高い税金をかけるのが一つ方法、それから交通審議会で二、三年前に御答申の中に入っていた、市内主要道路に入るときに税金をとるということ、有料にする、私それも一つ方法じゃないかと思うのです。アメリカが、あれだけ何だかいろいろやり過ぎだの、あるいは青少年の変な非行がはやるように思われるところで、カーだけはちゃんと郊外に持っていって預けておいて、そしてつとめのところには電車で来るというような良識を養ったのは、これはキリスト教であるのか、あるいは政府指導であったのか、どっちか知らないのですけれども、私は、このくらいの良識は、日本青年にも生まれるべきだと思うのです。さしあたり税金を高くして、なかなか買えないようにするか、あるいはカー生産をある程度輸出用に重点を置いて国内制限するか、これは政府には、おそらくおできにならないでしょうね。どうお考えになりますか、この生産制限ということであります。これが一つ。そして三番目には、市内に入るときに有料にする、主要道路過密道路に限ってでもけっこうだと思うのですけれども、これを有料にする、こういうとが私は必要じゃないかと考えます。その点ひとつお考えをお聞かせ願いたい。
  14. 井原岸高

    井原政府委員 ただいまの現時点で生産制限していくということは、これはなかなかむずかしいことでございまして、よほど大問題でございますので、私ごときがここで軽々しく御答弁でき得る立場でございません。ただ、何かの方法都市のこうした状況を整理していくことは、これはぜひやらなければならないことでございます。これはまた、やり得る問題だと思うのでございます。たとえば一例をあげますと、困るのはちょうど旅行していますと、雨が降ったときとか、土曜には、非常にタクシーが少ないとか、いろいろそういうことで、自家用車でもあれば、自由な時間に、予定どおりの行動をとれるというようなことがあるわけでございまして、常々、私自身考えでございますが、そういう問題を解決するには、やはり同じ方向へ行く車には、たとえ他人といえども乗せなければならない、どの方向へ行くのだという一つ標識を必ず掲げて、だれに頼まれても一定の人は乗せなければならないというふうにすれば、むしろ自分で車を持つためにかれこれ多額の金で駐車場に置くよりか、持っていなくても、気軽くだれの車にも同乗できる一まあそれにはある一定料金も要ろうかと思いますが、何かそういうような新しいくふうをしていろいろな方法考えてまいりませんと、おっしゃるように、これはたいへんなことになるわけでございますので、そういうことは、これは私個人考えでございますが、皆さまとともにいろいろ研究しながら、政府もそういう方向へ向けるべくひとつ進めていきたい、かように考えるわけでございます。
  15. 神近市子

    神近委員 ちょっと、その同じ方向に行く人ならだれでも乗せたら、とてもこれは危険ですよ。乗ってどういうことになるか、ほんとうにこういうようないまの東京状態です。この案は私はいただけません。顔見知りの人ならそれでいいだろうと思うのですけれども、そうでない人をうっかり乗せて、ゆすられたり、短刀を突きつけられたりというようなことは、あり得ないことじゃないのですから、とてもそれは……。私やっぱり生産をもう増強させないということ、いまの状態生産が続くならば、何とかしてこれをたくさん輸出するということ、まあ関税を安くするとか、いま日ソの懇談が行なわれていますが、あのシベリアの大きなところを開拓をするためには、無数の自動車があってもいいということ、その方面に力を入れて、そして国内の車の廃車というもの、ひどいものは解体してしまうということでなければ——もうともかく、いまからでもちょっと日本橋通りに行ってごらんなさい。いま時間がちょっとずれているかもしれませんが、午後の四時、五時あたりにおいでになってごらんなさい。もうほんとうにこれはどうなったらよくなるかというような状態です。私どものところも、オリンピック道路ができましたら、夕方、もう自分のうちを前にして、五分かそこらかからなければならないというふうな過密状態になっている。これでは私は、東京都というものはだんだん住みにくくなる。そして、住みにくくなるというだけでなく、ともかく危険が伴うということ、小さな戦争ぐらいの負傷者、死者を年々出しているということをお考えになれば、私は、ほんとう政府が親切にお考えになるならば、生産制限を話し合いをするか、あるいは輸出というものがいままでたった二割しか輸出が行なわれていない、これをもっと大幅に広げるというようなこと、こういうふうなことを考えてくださるか、でなかったら、国会というものをどこか遠くに持っていくというような、遷都というようなこと、あるいは、ロンドンに行なわれているという、この間発表のありました、外縁に都市をどんどんつくっていく、そういうようなことよりほかにないと思うのですけれども、どうもいまお尋ねしましたことで、私どもが一番いま問題だと考えているこのマイカー族の跳梁を、何とか制限する方法はないか。私は、この問題に関連しては、税金と、それから都内に入る場合の、有料、これを主要道路——まあ主要道路に置くと、今度は、主要道路でないところにみんな集まるかもしれませんが、都内に入る場合に有料、そして、もしそれが不服なら、アメリカ的に、国立とか、あるいは三多摩とか、あるいは千葉とか、そういうところに車を置いて、そして、そこから通勤はやる。いま、無料道路に置こうとするためには、大体七時前にうちを出なければならないそうです。そして、七時に来れば大体道路があいている。そこへ一日置いて、その近所の喫茶店でパンとコーヒーを食べる、これがマイカー族の一部の状態だそうでございます。私は、そういうことを考慮に入れられて、ぜひ対策を——税金の面か、あるいは道路の放置をもっと規制するか、それから、都内に入るときに料金を取るというようなこと、そうしていただかないと、これはとても——国会議員の車という話がありましたけれども、これは別に標識をつけるとか、あるいは免状をつくる——大臣が車で歩いていけないとは決して私は申し上げているわけじゃございません。そういう点で、もうちょっと案を——酔っぱらいとか、スピード違反とかで、事故は必らずマイカー族が起こしているということをお考えいただいて、何らかの手を打っていただきたい。トラックその他の職業的運転というものよりは、そのほうを先に、優先的に決定すべきだというのが私の考え方で、お尋ねを申し上げたわけでございます。よろしく御配慮をお願いいたします。
  16. 大坪保雄

  17. 西宮弘

    西宮委員 大臣おいでにならないので、ちょっとがっかりしたのでありますが、別に次官不足という意味じゃございませんけれども……。  私は、いままで交通関係の問題が主に扱われてまいりましたので、むしろきょうは、交通以外の問題についてお尋ねをしたいというつもりで、若干の準備をしてきたのであります。そこで、そういう問題について少しばかりお尋ねをいたしますが、その前に、たとえば予算などの場合によくいわれることでありますが、役人は、予算を獲得するというためには、非常に血眼になって、一生懸命がんばるわけです。しかしその獲得をした予算の執行については、きわめて冷淡だ、あるいは非常に粗雑だというような批判がいつもあるわけでありますが、法律についても、法律をつくるためには非常な努力をする。しかし、でき上がった法律を実行する、法律をそのまま順守をする、そういう面について必ずしも十分ではない、こういうような批判が往々にしてあるわけであります。  そこで、私が大臣お尋ねをしたいと思いましたのは、そういう法律を守る、いわゆる順法運動といいますか、そういう点について、政府は十分な決意を持って、き然たる態度でこの法律を順守をする、こういう運動をやるべきだ、こういうことを常々考えておるのでありますが、まずその点について、政府としてはどういうふうにお考えか、次官からお聞かせを願いたいと思います。
  18. 井原岸高

    井原政府委員 民主主義の根底は、やはり国民が法を守るということ、これが一番基本になるわけでございますが、そういう意味で、政府は、つくりました法律を守るべく、それぞれの機関を通じて、こういう方向でしむけておるわけでございます。私、常々考えているのでございますが、法律自体も、大衆に親しみやすい、早く言えば日常どうしてもなければならない法律でございますけれども、その条文等の書き方等が、非常にむずかしいような感じもいたしますので、やはり政府は、できるだけ国民に親しまれ、国民が納得しやすいような、そして、日常常にこれが心の中に残るような方向へ向けるべきではないか、そういう方法一つでございますが、それはそれといたしまして、できる限り国民には法を守ってもらうようなふうに政府は努力いたす所存でございます。
  19. 西宮弘

    西宮委員 国民に親しまれやすい、あるいは守られやすい、あるいは国民に理解されやすい法律をつくらなければならぬ、これは当然のことだと思うのでありますが、いやしくも、でき上がった法律は、これはあくまでも国民が文字どおり順守をしなければならぬ法律であるわけでございますから、そういう意味において、これをき然として守っていく、そういう態度が当然必要であるし、これはお互いに、われわれを含めて、みんながそのために努力をしなくてはならない。これは政府だけの責任ではない、国民全体の義務だと思いますが、少なくともその先頭に立つのは政府でありますから、それについてあくまでも強い決意を持ってこれに当たってもらいたい。そうでなければ法律をつくる意味がなくなってしまう。こういうことを私は強調したかったわけであります。  そこで、それではお尋ねをいたしますが、先般政府から参考資料として配られました「刑法第二百十一条関係統計資料」というのがありまして、たとえば第六表以下のたくさんの表は、業務上過失致死傷事件の受理件数あるいは受理人員、またこれの累年の比較をする、こういうようなたくさんの各種の表がついております。これは非常にけっこうな表でありまするし、また、これをもってみましても、該当件数が非常にふえている。何年か前に比較いたしますると、ものすごい勢いでこれがふえているということが一見してわかるわけであります。  そこで、お尋ねしたいのは、この二百十一条に該当するこれらの数々の件数は、交通関係を除いたならばどういう状態になるのか。おそらくこれは交通関係を含んでおる、しかもその交通事故がこの中の大半を占めておると思う。ですから、それを除いた状況はどうであるかということをまずお聞かせください。
  20. 川井英良

    ○川井政府委員 最も新しい昭和四十一年度の業務上過失致死傷並びに重過失致死傷の統計を申し上げますと、同年度に第一審で有罪の言い渡しを受けたのが八千四百二十三人でございます。八千四百二十三人のうち、自動車事故によるものが八千三百五十二人でございます。その他が七十一人になっておりますので、自動車は九九二%を占めておるということになっております。
  21. 西宮弘

    西宮委員 それは最近の時点における件数でありまして、自動車を除いたその他が七十一ということでありますが、この、その他の分は、つまり累年の比較をするとどういうことになりますか。
  22. 石原一彦

    ○石原説明員 御説明申し上げます。  御承知のとおり、第六表には、業務上過失致死傷事件等の累年の比較をいたしたのでございますが、事件が相当数ございまして、全部につきまして、自動車とそれ以外の表をつくることはできませんでした。そこで、四十年度と四十一年度につきまして、第一審で判決のあったものにつきまして表をつくりましたので、それについて御説明申し上げます。  四十一年度は、ただいま刑事局長から御説明申し上げましたとおりであまりすが、四十年度は合計いたしまして七千三百十三人が言い渡しを受けております。そのうち自動車によるものが七千二百二十人となり、その他が九十三人、かようになっております。
  23. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、これはわずか四十年と四十一年の二年度だけの比較でありますから、それで全体を類推するということは危険だと思いまするけれども、いまお話しの四十年度と四十一年度を比べただけで言うならば、その他の件数は逆に減っているわけですね。四十年度よりも四十一年度は逆に減っておる、こういう状態にある。したがって、ここで今回刑法二百十一条を改正して、つまり刑を重くするということをねらっておるわけだけれども、少なくともこの表で見る限りにおいては、それはあくまでも自動車交通を対象にしてこの法の改正が行なわれるのだ、こういうふうに断定的な解釈をして差しつかえないのじゃないかというふうに思うのだが、これは次官でも局長でもいいですが、いかがですか。
  24. 川井英良

    ○川井政府委員 この改正の契機となりましたのは、まさに申し上げておりますとおり、自動車の車両の運転による悲惨な、悪質な事故の、特に最近における多発ということがこの改正の直接の動機であることは言うまでもないことでございますが、あわせてこの改正をするにあたりましては、自動車運転者だけの注意義務を重く法律上評価いたしまして、その他の業務に従事する者で、かつ人の身体、生命に危険を及ぼす、そういう事務を処理するという人の注意義務を法律上の評価として特に軽く見るということは合理的でないというふうな考え方から、刑法二百十一条の改正でもってこの事態をまかなう、こういうのが私ども考え方の基本でございます。
  25. 西宮弘

    西宮委員 いま局長の言う気持ちは、私どもにも了解できます。了解できるけれども、現実はいまわずかに二年間の比較をしただけでありますから、それでは十分な根拠にはならぬと思いまするけれども、おそらくこの傾向は、全体を通じて五年なり十年なりをとってみても、この傾向にはたいして変わりはないのじゃないか。すなわち、非常にものすごい勢いで激増しておりまするこの違反件数、そのほとんど大部分は自動車交通事故であって、それ以外の件数というものはりょうりょうたるものだと思うのであります。そういうことになりますると、やっぱり二百十一条を改正をして、自動車交通規制する、それがために、いまの局長のことばをかりて言えば、他の業種で、刑の取り扱いについて甲、乙が生まれるということは、いわば公平の原則に反する、こういうような考え方のもとに、それ以外のものがそばづえを食うというと語弊があるかもしれないが、そのおつき合いをさせられる、こういう結果になると思うのです。それは私は、日本の刑事政策として決して適当ではないというふうに考えられる。したがって、私どもはこの自動車交通だけを切り離して、これを科刑の対象にする、こういうことで先般来、理事会その他を通じて私ども考え方を表明してきたわけでありますが、私はそのほうがはるかに現実に即しておるというふうに思うのですが、いかがですか。
  26. 川井英良

    ○川井政府委員 御指摘の点は、確かに政策論としてまことに傾聴に値するお考えだと思います。ただ、非常にかたくななようで恐縮でございますけれども、人の命に関係のあるような業務に従事する者の法律上守らなければならない注意義務が、ある業態のものがたまたま非常に多くなったということをとらえまして、その人の注意義務を法律上特に重く評価する、それから、それ以外のものは、最近公害対策が非常に叫ばれておりますし、あるいはまた、あとで御説明申し上げてもいいと思いますけれども、大ざっぱに分けましても、二百十一条に該当する業務というのは、おそらく十種をこえるのではないかと思うわけでありますが、そういうふうなものが、自動車だけを重く評価し、その他のものについては、たまたま事故が少ないから、そういうようなものについては軽くていいのだ、こういうふうに法律をもってきめてしまうということが、はたして合理的であろうかどうかということに非常な疑いを持つものでございまして、かりに数は少ないといたしましても、やはり人命に影響がある業務ないしは事務というふうなものに従事する者につきましては、同等の反社会性の評価を行なうということが法律としてはたてまえであり、また、それが国民の倫理観と申しますか、道徳観と申しますか、この種の罰則の基本的な考え方というものはそこに置かなければならないものではなかろうかということが、私どもの基本的な考え方でございますので、確かに御指摘のとおり、ほんのわずかの一%にも達しないようなわずかなものでございますけれども、そういうふうな業務に従事する者につきましても、やはり同じような責任を、法律の面では確立をしておくことが必要ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 局長の言う、人の命に関係するものは同じように扱うということはいいと思いますが、今回の改正は、刑を重くして、加重するということになるわけです。その場合に、刑を重くするという根拠は、先般この一部改正の理由として政府が説明したのでありますが、これは要するに、高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出しておる、こういうことですね。したがって、これに対して、より厳正な処分を行なうということが国民の道義的感情に合致する、こういうことが理由になるわけですね。そうすると、先ほど十指に余ると言ったか、十指程度と言ったか、そういう十指で数える程度の、その他の、いわゆる人の命を扱うそういう業務ですね。それが最近の傾向として、高度の社会的非難に値する悪質重大事犯がふえつつある、こういうような認識ですか。
  28. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的にその他の業務について悪質重大なものが顕著に伸びてくる、あるいは伸びてくるという見通しに立っておるのである、ということは申し上げておりません。ただ、そういうふうな人たちにつきましても、悪質重大な事故がある蓋然性なり、可能性なり、あるいは法律上のおそれというものは肯定せざるを得ないと思うわけでございまして、法律をつくります以上は、やはりそういう人たちにも、この機会に法律上の注意義務をさらに深く認識していただいて、人命尊重の感覚を高めていただくということはやはり必要ではなかろうかというようなことが、ただいまお読み上げになりました提案趣旨の部分の考え方でございます。
  29. 西宮弘

    西宮委員 単に蓋然性とか可能性とかいうだけで、刑を加重するというのであれば、これは至るところであらゆる面にあるのではないですか。たとえば学校の先生がそういうことをやらないとも限らないだろうし、あるいはだいぶ前の話だけれども、何か教会の神父さんが人を殺したなんという事件もあったので、だから、そういう単に可能性というようなことだけで刑を重くするということが許されるとすれば、これは可能性だけの問題なら、ありとあらゆるところにあり得ると思うのですね。だから、そういうのを一緒くたにして刑を加重するということは許され得ないのじゃないか。あげておりますのは、この交通事犯については、たとえば酔っぱらいとか、無免許とか、引き逃げとか、そういったような意味の社会的非難に値する悪質重大なる事件が続出をしておる、こういうことの理由で今回刑の加重をするということが、国民の道義的な感情に合致をする。こういうことで初めて刑の加重が許されておるので、それをその他の案件には——可能性というならそれはいま申し上げたように、ありとあらゆる職種について、そういうこともあるのだろうと思うけれども、私はそういう実態がないところにまで——それは可能性としてはありましょう。しかし、いまここで問題として取り上げておるのは、大臣の提案理由の説明にあったように、最近は酔っぱらいとか、まことに社会的非難に値するそういうものが続出をしておるからだということが理由になっておる。それにもかかわらず、それ以外のものにまでこれを拡大をしていくということは、私はまことに危険だといわざるを得ないと思う。  それでは、また同じような返事をいただいても議論が発展をいたしませんので、私は、いわゆる交通事犯以外の問題で、この問題に問われております若干の例を判例から拾って申し上げたいと思うのであります。  たとえば一番問題になりますのは医者ですね。医者の場合に例をとりますると、そういう案件がございます。この場合に二つ理由はあると思うのです。一つは、いわゆる軽率な判断から解熱剤を飲ませるつもりで劇薬を飲ましてしまったというような場合、それからその医者の無知のために、知識水準が低いために、全力を尽くしたのだけれども、結果は失敗してしまったというような場合があると思うのですが、その前段のほうは論外だと思う。前段は明らかに過失に該当すると思うのですが、後段の場合には、どの程度までがこの法律によって追及をされますか。つまり、医者の知識水準というような問題……。
  30. 川井英良

    ○川井政府委員 いろいろな応用問題が考えられますけれども、基本的には、要するに、過失があったかないかということで法律上の処分がきまるわけでございますので、ただいま御説明になったような事例でいきますれば、病気の内容にもよりましょうし、それから自分の医者としての経歴なり確信なりというようなことにもよりましょうけれども、不安があって、この投薬ではあるいは大事を起こすかもしれないというふうな状況にあったとするならば、文献をひもとくなり、あるいはまた別な医者に紹介をするなり、あるいは先輩の医院についてその病状を話して、この投薬が適当であるかどうかというふうなことを、さらに研究をした上で投薬をするというふうな注意義務が出てくると思います。そういうふうな場合に、そういう方法を尽くさずして、間々、この前もこういうような病気でこれでよかったのだから、本件の場合もひょっとすれば、あるいは事故が起きるかもしれないけれども、まあこの辺でというようなことをやったというふうなことになりますと、これはやはり過失を認めなければならないような場合が出てくると思います。ところが、そうではなくて、全く同じような病状について数例の経験を持っておって、それを投薬したところが、格別なあれもなくて治癒しておった。本件の場合においても、一応よく診察を尽くしてやったけれども、全く同じような症状の事案であるので、今回もこの投薬をすればたぶん事故がないだろう、完全治癒するだろうというふうな状況のもとに投薬をしたという結果が、重大な事故を引き起こしたというふうな場合には、やはり過失は全然ないとは言えませんけれども、その過失の程度は非常に軽い過失の程度が認められるのじゃないか。いろいろその状況によって過失の有無の判定が変わってくると思います。
  31. 西宮弘

    西宮委員 私がお尋ねをしたのは、医者の知識水準というものがどういうふうに要求をされるかという点をお尋ねをしたので、これについては静岡の地方裁判所の判例が、少ない判例でありますが、一つあるわけであります。それによりますると、医者の場合には非常な高度な知識、技能が要求をされておる。医師の個人的な知識や技能の差異は考慮すべきでない、こういうことで、日進月歩の医療技術の進歩に対して、絶えずそれを追いかけていかなければならぬということが要求されて、その点では非常に峻厳なわけです。そして、これは民間の開業医でありまするけれども、たとえ研究機関その他に恵まれない市井の一開業医であっても、そういうことは問題にならぬ、こういうことで過失犯として処断をされておるわけです。  私は、時間がありませんから御答弁を求めませんけれども、それは、要するに私が言いたいのは、たとえば医者などは絶えずそういう非常な高度な知識水準を要求される、そういう中でそれに追いついていくというのは容易なことではないと思う。ところが、それに対して、今回さらにその刑を加重する、こういうことが必要であるのか、あるいはまたそれが妥当で適切であるのかということが私の指摘をしたい問題点なのであります。  あるいはもう一つ同じような例を、医者ではなく別な例であげますると、愛知県に鳳来橋という橋があって、その橋が、架橋工事の最中に温度の変化によってゆるみがきたり、あるいは緊張したりする、その十分な計算がなされておらなかったために、橋げたがくずれてしまって、たしか十人ばかり死んでしまった、こういう事故がありました。その際に、鑑定人に鑑定を依頼したところが、一人の人は非常に綿密な、そういう際に施すべき処置としてきわめて厳重な、微に入り細をうがった処置が必要だという報告をした。内務省の技師その他あとの二人の人は、鑑定人さえもそういう技術については知らなかった、こういうことでこの技術屋は控訴をした。鑑定人さえも知らなかったことをわれわれ被告人にわかるはずがない、こういうことで控訴をしたが、それは認められないでこれもまた過失に問われた、こういう案件があります。  そういう際に、私はなぜ今度そういう問題にまでさらに刑を拡大して加重しなければならぬのかということに非常な疑問を感ずるわけです。  時間がないので、私もまことに中途はんぱになってしまうのでありますが、それではこういう例を、別な例をあげて、あとで一括して御意見を聞きたいと思います。  たとえば、これは北海道の芦別高等学校の先生でありますが、生徒を引率をして山登りした。途中で道を踏み迷って大きな岩の前に出た。それでその岩をよじ登るため、いわゆるロッククライミングをした。しかし、何にも準備をしていかなかったので、手ぬぐいやゲートルをつなぎ合わして登った。途中でゲートルが切れて落っこってしまって、二人の生徒が死んでしまった。こういうことで彼は過失犯に問われたわけであります。その際に、この被告人は弁明していわく、いわゆるその際の過失とアルピニズムの冒険心、そういう山登りなんというものは、そもそも初めから冒険が仕事なんだ。それなしに山岳部の活動なんというのはあり得ない。したがって、それは注意義務の違反には該当しない、こういうことで抗弁をいたしましたけれども認められておらない、こういうような事例などもある。私は、そういう際にもこれはおそらくこれからしばしば起こってくる現象ではないかと思う。しかもそれはひとり山岳登はんの問題だけではなしに、あるいはボクシングとか、レスリングとか、あるいはラグビーとか、あるいは柔道、剣道その他にも同じようなことが起こる。そういう際において、冒険主義とか、あるいはスパルタ主義の教育とか、そういうものは、往々にしてそういう事故を起こしやすい蓋然性を持っていると思うのでありますが、そういう際にも、ことに今度は二百十一条の改正によって刑を加重しなければならぬのかどうかという点に問題があると思うのですが、そういう点、いかがですか。
  32. 川井英良

    ○川井政府委員 刑を上げるという改正でございますので、確かに運用を誤りますと、国民に非常な不安を与えることは申すまでもないと思います。これを五年に上げたからといって、いままで罰金で済んでおった先生の生徒の引率のときの事故とか、あるいは医師の誤診とかというような事柄が、直ちに非常に重い刑罰を受ける、こういうことにはならないと確信しておるわけでございまして、これはあくまで悪質で、重大で、いまの三年ではほっておけないというような、そういう情状のもとに犯された、事故が起きた場合に、それをまかなうために刑罰の引き上げを考えたということでございます。御承知のことでございますが、故意をもって人を殺した場合におきましても、わが刑法は、死刑、無期もしくは三年以上の懲役に処す、こう書いてございまして、一番軽い三年で情状酌量して一年半の認定を受け、さらに執行猶予がついて、刑務所に行かないで帰ってくるという人も、非常に数多いわけでございます。刑法の体系におきましては、あらゆる観点から、犯罪の類型なり、性格なり、情状なりを調べ上げまして、そこで最も適当な刑罰を盛るというのが裁判なり、行刑なり、検察なりの日常の姿でございますので、かりにこれを上げましても、いままで軽く済んでいたものが、とたんにその運用の面でもって重くなるということにならないという確信に基づいておるものでございます。
  33. 西宮弘

    西宮委員 一番初めに、局長がいわゆるそういう可能性を見込んでこの刑法の改正をするんだ、こういうお話でありますので、私はそれが非常に危険だ、あるいはまた、大臣の提案理由の説明によれば、自動車交通の場合は、そういう悪質重大な事犯がふえているのだ、それに対応した処置を講ずるのだ、こういうことで、それはそれとして理解がされると思うのでありますが、いわばそれのそばづえを食ってこういう問題、いま私は時間がありませんから例としてあげませんけれども、たとえば建設工事に伴う過失事故などというのはずいぶん数多く出ておるわけであります。あるいはさらに労働災害などということになると、これはまたきわめて多いわけであります。あるいは爆発物、危険物の取り扱い、こういうことにおいても、社会生活が複雑になるにつれて、そういう問題はますます件数が多くなるに違いないと思うのでありますが、そういう際に、それに臨むのに刑の加重をもってするということが必要であるかどうかということについては、私は依然として納得できないわけであります。私はそういう意味において、これは自動車交通の問題が当面の問題であるならば、それに限局すべきだということを特に言いたいのでありますが、時間がありませんから、もう一つの問題の重過失の問題について一言申し上げます。  重過失が刑法二百十一条にうたわれておりますけれども、この重過失が問題になっておりますのは、実は刑法の二百十一条のほかに百十七条の二項、つまり失火の場合の規定がございます。これも一つ実例としての判例があるわけでありますが、時間がありませんから省略をいたします。それからもう一つは政治資金規制法の二十七条の二項、公職選挙法二百五十条の二項、これが重過失をうたっているわけであります。そこで私は、ちょっといままでの議論とそれるきらいがございますけれども、私がここで昌頭に申し上げた、いわゆるもっと法律を守らなければならぬという最初の観点に立ちまして、政治資金規制法の二十七条の二項にいわれておる重過失あるいは公職選挙法二百五十条の二項にいわれております重過失、そういう問題に関連をいたしまして、ちょっと二、三の例をあげたいと思うのであります。  それは、申すまでもなく政治資金規制法は、届け出をするということによって政治資金を公開する、公表する、こういうことによって政治の公正を期そうということがあの法律の生命であるわけであります。ところが現実は、ますますこれに逆行しつつあるという事実を指摘しないわけにいかないのであります。たとえば、新聞等にしばしば出ておったことでありますが、自民党の国民協会は収入の面では、昭和三十八年の場合には五百六十四件の寄付がありました。ところが昭和四十一年では二十五件に減っておる。つまり寄付は表に寄付者の名前等を公表しなければならないわけであります。それがために寄付を極端に減らしてしまいまして、全部それを会費に回してしまった。こういうことで、要するに全部ふたをしてしまって、中を全然見せない、こういう扱いになってしまった。昭和三十八年に五百六十四件あったものが、四十一年にはわずかに寄付は二十五件しかない。国民協会の二十二億二千七百万という収入の中で、二十一億二千四百万は会費だ。こういうことで外部からは全然のぞき見ができないようにしてしまっているわけです。私はそういうやり方はきわめて不公正ではないか、法律の精神がじゅうりんをされておると言わざるを得ないのであります。  さらにもう一つ奇妙な例をあげたいと思うのでありますが、それは俗にいわゆる佐藤派といわれる派閥の団体でありますけれども、最近の傾向として料理屋や、キャバレー、バーなどに対する経費が多い、こういうことが世間の非難を浴びました。そこでこの佐藤派の育政会という団体では、今度出されました四十一年下期の届け出を見ますと、一件もこれがなくなったわけであります。いわゆる飲食業として報告をされておるのが一件もなくなりました。これはたいへんにけっこうなことだと思ってさらに詳細に調べてみますと、たとえば銀座東七丁目五番地ですか、石田とし子、銀座西の綿平亀雄、あるいは芝の白金台町の長谷節江、麻布の飯倉の西宮京子、赤坂平島きよえ、赤坂藤井みす、こういう人は、なるほど届け出には団体役員、会社役員として報告をされております。ですから会社役員ということで、一見するといわゆる飲食業ではないように見えるけれども、同じ四十一年の上期に出した報告では、この人たちは全部飲食業として報告をされておるわけであります。つまりいままでは飲食業として報告をしておったのを、飲み食いは困る——困るというか、そういうことで世間の非難を浴びたので、今度はこういう人は全部会社役員ということで報告をしておる。なるほどバーも、キャバレーも、法人経営ならば会社の重役かもしれません。しかし、そういうことでこれを全部隠蔽をしてしまう、こういうやり方で、したがってこの団体は都合四十七件の件数がありまするけれども、全部ことごとくその飲食業あるいは料飲業というような表現をやめてしまっているわけです。私はこういうところにもまことに不明朗なものがあると言わざるを得ないと思うのであります。  それからもう一つ、さっき申し上げた公職選挙法二百五十条の二項にいわれております重過失、これはことさらにその重過失をこれらの法律にうたっておるのでありまして、非常にそういう点を重視をしておる。にもかかわらず、実際はだんだんにそういうものが逆行しておるということを私は言わざるを得ないと思う。先般の選挙の結果、各都道府県の選挙管理委員会に選挙の費用を報告をいたしておりますが、私はいままでに集まったもの、自民党の皆さんの——これは県によって四月一ぱいのもあるし、六月一ぱいのもあります。いままでに集まつたもの二百三十九名だけ見ますると、非常にふしぎなのは、自民党の本部から各候補者に支給されましたいわゆる二百万の公認料と、百万の貸し付け金は、これは全部一人残らず詳細に報告が出ておるわけであります。ところが一方において、出したほうからはそういう報告が出ておるにもかかわらず、受け取った側でそれを報告しておるのは、二百三十九名の中でわずかに二十二名であります。その他の方はほとんどこれが報告をされておらない。すなわち、その中には全然届けもしない人もございます。せっかく出したほうの側では、いつの幾日に出したということを正確に報告をされておるのでありまするが、それに対して、全然そういうものは一文も受け取っておらないという形の報告でありまして、私どもは、そういうやり方にはどうしても納得ができないわけでございます。これは大幹部どころなんですが、大平正芳さんとか、あるいは正力松太郎さんとか、あと二人おられたはずでありますが、四人の方は、そういうものを全然出しておらないという、こういうことにも、私どもはどうしても納得できない。あるいはまた自民党から二百万の公認料が出ておるわけですが、それだけしか——先ほど申し上げたのは、ほかに鴨田さんでありますが、あとは二百万だけしか報告をしない、百万については全く報告をしない、こういう人もありまして、二百万ぽっきりで、それ以外には一文の収入もないという人が八人ほどおるわけでございます。これなどもおよそわれわれの常識としてはあり得ないことだと思うのです。田中法務大臣がおられたら、田中法務大臣お尋ねをしたいと思ったのですが、田中さんは非常に克明に報告しておられます。その点ではむしろ珍しいほうの例でありますが、同じ田中さんでも、田中角榮さんなどは、党の二百万のほかにはわずかに五万八千円しか報告をしておらないわけです。これは、私はいやしくも天下の大幹事長が陣中見舞い五万八千円しかない、何万という有権者から支持を受けて当選する人が、陣中見舞いが五万八千円しかない、こういうことがあり得るだろうかということで、全くそういう点は世間を愚弄している。私は今日選挙の問題ほど全くでたらめな、いいかげんな、ほんとうにそういう世間をごまかしたそういう報告はない。こういうことを私は強くこの際指摘をして——法律では過失は罪にしないのがあたりまえなんでありまして、本来ならば罪を犯す意のない者はこれを罰せずというのが大原則なのでありますが、せっかくこの公職選挙法やあるいは政治資金規正法には特に重過失についての特別な規定をさえ設けておるのであります。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕 にもかかわらず、こういう結果になった。したがって、先ほど申し上げた二百三十九名の方の選挙費用を合計して平均をすると、一人平均百六十三万六千七百八十一円ということになっておるのであります。これなどは、この程度で選挙がやれるなら、だれが苦しんで政治資金の問題で大騒ぎをいたしますか。あまりにもごまかしが大き過ぎるのではないかと思う。  そこで、私は刑事局長お尋ねをしたいのは、事実に合わない報告、ことに一方の出したほうでは出したということを明瞭にしておって、受けたほうでは全然報告をしておらない、こういうような点の追及、あるいはまたそれがやがて選挙違反等を起こす、いわゆる買収、供応等に金が流れる、こういうことの原因になることは明らかなんでありまして、私は先般大蔵大臣から、こういう場合の税の問題について十分答弁をもらっております。したがって、今回は刑事局長お尋ねをしたいのですが、こういうことがそもそもその買収、供応などの金に流れていく、こういう有力な原因になっておると思うのですが、そういう点について着眼をしたことがございませんか。
  34. 川井英良

    ○川井政府委員 政治資金規正法の罰則の運用でございますが、罰則のある法律はもう数え切れないほど今日あるわけでございますが、それを限りある人手をもって適切に運用していくということのためには、おのずから重点的なまた効率的な運用と、それからその罰則の持っております立法の趣旨ないしはそれをまた運用する場合における捜査官憲の側における抑制というような、いろいろな要件があろうかと思います。そこで、いままで、政治資金規正法は二十三年にできましてから約二十年近く運用しておりますが、運用の実績は二百数十件の運用しかないわけでございますが、これはその端緒を調べてみますと、公職選挙法違反の事件を調べていきますというと、買収違反の金の出所というようなことに結びついて追及をした結果、規正法違反の事実が出てきたというふうな場合、それから業務上横領とか背任とかいうふうなことで問題になりまして調べてまいりました結果、同様規正法違反の事実が出てきたというような場合、それから税法違反の事件を同様調べてまいりまして、やはり政治団体だということで規正法違反が出てきた場合、その他は関係官庁からの告発あるいは申告というふうなものが主になって事件の捜査が行なわれて、規正法違反の事件が捜査され、処罰されるというような運用のしかたが一般的でございます。それでいま直ちにこういうふうな運用のしかたを、この法律がまた新しく問題になっておるようでございまするけれども、この際直ちにこれを改めて、運用を別な角度から検討していくということ、たとえば官報などに発表になった場合に、直ちに捜査官憲がそれを取り上げて、いま御指摘になりましたような事実関係のもとに、犯罪の容疑ありとしてこれを強権をもって全般的に捜査を続けていくというようなことになりますと、それはまた別な角度から必ずしも適当でない、いろいろな弊害が予想されるというふうにも考えられますので、一応規正法は公開の原則をその基本としておるというたてまえに着眼いたしまして、出たから直ちに、そのやや常識的に疑わしいものについて、すぐに強権を発動して捜査にかかるというふうなことは、必ずしも適当でないんじゃないかというふうなところを考えておるものでございます。
  35. 西宮弘

    西宮委員 私は、一つだけ例をあげて申し上げたいんですが、これは、現在議員の方ではないのでありまするから申し上げておきますが、山本何がしという人であります。この人は選挙の直前に派閥からだけで八百万出しているということで届け出があるわけであります。ところが、その本人はそれを百八十八万六千円しか報告をしておらない。八百万と申し上げたのは派閥関係だけでありますから、党その他から来ておるのは、もちろんこれ以外にたくさんある。にもかかわらず、その届けのほうは百八十八万六千円、こういうことになりますると、その差額は当然に買収、供応等に——あるいは無過失的な、原始的な買収、供応ではないかもしれぬが、少なくともその大ボス小ボスに金を握らしたり、そういうことに使われているということは明らかだと思う。私は局長のいま言ったこともわかりますよ。わかりますけれども、こういうふうに、この政治資金について世間の関心が高いし、さらにまた選挙違反というようなことになると、ほんとにこまかいことをつつき回されるんでありますが、そうではなしに、こういうところにこそ実に大きな、ばく大な金が動いておって、それがそういった問題の根源になっておるということは常識だろうと思うのでありまして、直ちに理解できると思う。私はそういう点についてぜひ、いままではとにかくとして、これから先は十分な関心を払って、そういう問題について、こういうことこそが政治を腐敗させる最大の原因になるんでありますから、十分な関心と監視をしてもらいたいということをお願いしたいと思います。  最後にもう一つだけ例をあげて終わりにいたしますが、これは稲葉澄雄という人でありまして、先般、税の問題のときにも申し上げたんでありますが、この人などは、——いわゆる佐藤派でございますが、そこの派閥の会計責任者であります。会計責任者として自治省等に報告をしておる責任者でありますが、この人は、自分が会計責任者であると同時に、この人自身が受け取っておりまする金が、たとえば昭和四十年では五千二百九十万、昭和四十一年では三千五百二十万二千三百七十五円、こういう金をみずから受け取っておるわけであります。そういうことになると、いま刑事局長の言われた公開の原則なんということは、これはもう全くあってもなくても同じ、自分で出して自分が受け取る、その金が何に使われたのか全然わからないというのでは、これは何の意味もないと思うのですね。だから、こういうことが政治資金規正法の扱いとしても許されるのかどうか。しかもこれは実にばく大な金、五千万、四千万というようなばく大な金、そういった例をあげると、まだほかにもあるわけですよ。市村健一という人は、四十年で三千三百六十二万、星野力という人は二千二百三十万、こういう金を自分で受け取っておるわけですが、こういうやり方では、およそ、政治の公正を期するとか、あるいは公開の原則を貫くなんということは全く何の役にも立たないわけであります。私はここにまず第一に、この人が文字どおり自分で受け取っておる金ならば、これは税法上の問題だし、それから、もし自分で受け取ってたくさんの人にこれをばらまいているんだというならば、政治資金規正法の違反であるし、つまり虚偽の申告なりあるいは虚偽の会計帳簿の備えつけだ、あるいは、おそらくは領収書の偽造——領収書を出すことになっておるわけですからね。領収書偽造、文書偽造というようなことが随伴しているだろうと思うし、同時にまた、こういう金の使い方が、どこにだれにやったのかわからぬというような金の使い方が、結局は政治を腐敗させる最大の原因になっているんだ、こういうことを私は強く指摘をいたします。  私の持ち時間がいっぱいになりましたのでこれで終わりにいたしますが、私はここで強く強調をし、そして、きょうは残念ながら大臣がおられませんので、これは委員長にもお願いして、他日大臣がおられるとき、三分でも五分でもけっこうでございますから、こういう問題に対する大臣の所見、つまりせっかくあります法律を完全に守っていく、こういうことについての大臣の所見を別の機会にお伺いをしたいと思うのであります。それは、私は先般大蔵委員会質問をいたしました際に、大蔵大臣がこの点について、まことに了解できない答弁をしているわけであります。それは「名前を出された人は、その人に支出したという形になっておりますが、使途は実際そうじゃなくて、必要な政治活動費が出たものを一括していろいろ責任者に渡したというような形をとっておるのが普通でございます。その人の政治資金の収入というものではないというのが一般でございます」いやしくも大蔵大臣大臣たる人が、それがあたりまえなんだ、要するに何千万という金をもらって、その人が届け出をするけれども、実際はほかの人が使っているんだ、——そういうことが政治資金規正法にまっこうから違反をしておるわけです。そういうことがあたりまえだというふうな——これは大蔵大臣は、自治大臣でもないし、法務大臣でもないから、気やすく答弁されたんだと思いますが、こういうことでは全く何のための法律か、われわれは疑わざるを得ないのであります。私どもはお互いに立法府に属しておるわけでありますから、法律をつくっておるわれわれが、政治資金規正法あるいは公職選挙法などにおいてこれが重大に守られていない、重大な違反を起こしているということは、いやしくも立法府におるわれわれとして最も重大な問題ではないかというふうに私は考えるのであります。他日、ほんとうに三分でも五分でもけっこうですから、大臣の御所見をあとでお伺いをいたしたいと思います。  実は重過失については、刑法上の問題としてお尋ねしたいこともたくさんあったわけでありますが、ちょうど私の時間がいっぱいいっぱいになってしまいましたので、これで省略をいたしますが、せっかくそういうふうに法律の中で、特にいまの政治資金規正法についても、公職選挙法についても特別な条文を設けて、重過失を処分すると、こういう規定さえある。本来は、過失は刑に問わないのがたてまえなのでありますが、にもかかわらず、これらの法律にはそういうものを規定しているということは、そのことの重大さを考えた結果だろうと思う。ところが、現実はそれと全く逆行している。こういうことでは私は何としても納得できないので、それらの点について他日お伺いをいたしたいと思います。
  36. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 石田宥全君
  37. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は六月九日、内閣衆質第五五第四号で、熊本県水俣湾並びに阿賀野川における水銀中毒事件に関する質問に対する答弁書について、詳しくお伺いをしたいと思ったのでありますが、時間の関係で、あまり詳細に御質問を申し上げるわけにはいかないようでありますから、要点だけを御質問申し上げたいと思いますので、答弁をされる方のほうも要点だけを御答弁願いたい。あらかじめ要望をしておきます。  答弁書によりますと、水俣事件では、死亡四十一名、それから入院加療中十九名、五十一名が自宅療養を続けておる、こういうことでございますが、私の見るところでは、さらに相当数の患者が出ておるのではないかと想定いたしておるところであります。阿賀野川の水銀中毒事件は、患者二十六名、うち死亡五名、現在通院中の者十八名、自宅療養者三名である、こう答弁書に書いてあります。しかし、最近さらに一名患者が追加されております。また一部の専門家の調べたところでは、死亡者は五名以上、患者五十名以上、二〇〇PPM以上の保有者九名以上、妊娠規制婦人五名以上、胎児性水俣病の子供一名以上、正常値以上の保有者が一千名以上、こういうふうにいわれておるのであります。  この「以上」という表現でありますが、これは実はだんだんと明らかになってまいっておるのでありますけれども、ここ数年前に阿賀野川沿岸で釣りなどをやって、魚をたくさん食べておった人が、精神異常を来たして井戸へ飛び込んで死んだとかいうような者があり、現在でもかなり重症を訴えながらも、結婚その他に影響を及ぼすという関係がございますので、一部には相当高い水銀保有量があるといわれたために、婚約が破談になったというような事実もございまして、本人はこれをなかなか表に出そうといたしません。一面、昭和電工株式会社では、いろいろ手を回して、その診察を受けさせないような手配をいたしておるわけです。私どもが調査に行きましたときにも、どうも患者らしいという者が六名あって、六名出席する予定でありましたけれども、三名は会社側から行かぬでもらいたいという勧告があって出てこない、こういうような事実もございました。また、県が今度積極的に、ほとんど大部分のそれらしい者についての調査、検診をやろうとしたのでありますが、会社側は社宅の居住者千百六十八名に対して、検診を拒否しておるのでございます。  こういうような状況でありますが、さてこれは業務上の過失といえるかどうか、疑問もないわけではございません。水俣事件では、私は過失ということがいえたのではないか。なぜならば、その原因があまり明瞭でないからであります。しかし、阿賀野川の場合には、水俣事件の経験にかんがみて、すでに水銀中毒というもののおそるべきものであることが明らかになり、また通産省はそれに対してしかるべき方法の達しを出しておるわけでありますから、これは単なる過失といえるかどうか、疑問に思うのでありますが、あとで明らかにいたしたいと思いますけれども、こういう事案というものに対して、これは刑事局長にお伺いをしたいと思いますが、こういうケースのものは、やはり過失であるというふうにお考えになりますかどうですか。
  38. 川井英良

    ○川井政府委員 事実関係がまだ明確になっておりませんので、具体的な案件について、業務上過失致死傷罪の成否についてあれこれ述べることは適当でないと思いますけれども、一般論といたしましては、もし過失によって水銀が川に流出し、何らかの過程を経て死傷の結果が生じた。そしてその何らかの過程が、刑法上の因果関係が存在し、またその存在が証明されるというようなことになりますれば、先ほども御説明いたしましたけれども、二百十一条の業務上の過失致死傷というのは、何も自動車だけに限りませんで、あらゆる一切の人身に影響のあるような業務に従事しておる者について適用がございますので、一般論としてはそういうふうなものについても、この条文の運用が問題になる、こういうふうにお答えできると思います。  なお、御存じのとおり毒物及び劇物取締法もございまして、こちらのほうにたしか水銀が毒物に指定されておったと思いますので、もしそちらのほうの特別法に該当いたしますと、これは懲役三年以下になっております。刑法のほうは禁錮三年以下でこちらの特別法のほうが懲役三年以下になっておりますので、これは二つの犯罪が成立いたしますれば、毒物及び劇物取締法のほうが適用になるのではないかと思います。
  39. 石田宥全

    石田(宥)委員 事実をもう少し明らかにして、あとでまた局長答弁をいただきたいと思うのですが、環境衛生局長に伺いますが、水俣事件の際に、調査班が調査しようといたしましたけれども、数カ月間有刺鉄線を張って、工場側は調査を拒否しておったようであります。昭電の阿賀野川の場合でも、数カ月間立ち入り調査を拒否されて、厚生省の研究班は中へ立ち入り調査をすることができなかったようでありますが、熊本事件の際と、阿賀野川の中毒事件の際に、どれくらいの期間立ち入り調査ができなかったか、これを明らかにしてもらいたい。
  40. 舘林宣夫

    舘林政府委員 私は、その辺の事情必ずしもつまびらかにいたしませんが、両事件ともに、工場内の水銀を触媒といたします装置の中の残留物を採取いたしまして調べるというようなこと、あるいは水銀を含んだ残渣を廃棄いたしたものを、ボタ山というようなところに捨ててございますが、その残渣を相当量採取いたしますというような点におきましては、調査上は支障はなかったというように聞いております。それ以上の、いまお尋ねの工場関係の労務者の身体検査といいますか、健康診断というものに対しての協力が得られなかったという事実は、御指摘のとおりあったようでございますが、立り入り検査をはばんだ、いつからいつまで、というような事実については詳細には承知いたしておりません。
  41. 石田宥全

    石田(宥)委員 ある程度おわかりなんだと思うのですが、きょうは時間がありませんから、私の手元には資料がありますけれども、これ以上ここで時間をとりたくないのでありますが、私の質問書に対する答弁書によりますと、通産省においてはアセトアルデヒド製造工場に対する工場排水の水質調査を行なったと言われておるのでありますが、この水質調査では、工場に一番近い採水点と、それからちょっと離れたところと、二点採水しておるようでありますが、この二点についての水銀含有量と申しますか、どの程度であったかひとつお伺いしたいと思います。
  42. 天谷直弘

    ○天谷説明員 「衆議院科学技術振興特別委員会提出資料」という標題の資料の一〇七ページに数字がこまかく出ておりますが、これをお読みいたしましょうか。
  43. 石田宥全

    石田(宥)委員 要点だけちょっと読んでください。
  44. 天谷直弘

    ○天谷説明員 二地点から採水いたしまして、東京工業試験場で分析いたしたわけでございますが、工場正門と遊水地との間の採水点からとりましたものにつきましては、三十四年十一月二十六日から以後、三十五年の八月三十一日に至るまでの資料が出ております。数値は〇・〇〇八PPM、あるいは〇・〇〇七PPM等々の数字がございまして、かなりばらつきがございます。
  45. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでこっこうです。私の手元にあるのですが、伺ったわけですが、何しろ時間がないわけでありますから……。  そこで、環境衛生局長にお伺いしますが、阿賀野川の場合には、厚生省でも三つの研究班をつくった。これは、わが国ではトップクラスのメンバーであろうと考えられる。水俣事件の際にも参画された方もお入りになった。そういう、国でも一流の権威がある学者が調査をされて、一応報告書が出されたわけです。これを今度食品衛生調査会にいまはかっておられるようでありますが、専門家が調査をし、報告したものを、今度は、しろうとがこれをかきまわすような感じがないわけではない。しかも、その食品衛生調査会の会長が、加害者と目される昭和電工の顧問をやっておる。こういう事態から見ると、この食品衛生調査会の結論がどう出るかわかりませんけれども国民はちょっと納得がいかないのではないか。食品衛生調査会にこれをはからなければならないという性質のものではないと私は考えるのですが、どうでしょうか。
  46. 舘林宣夫

    舘林政府委員 厚生省の三班の研究班の一つの班は、臨床的分野で阿賀野川事件に取り組んだ班でございまして、いま一つの班は、化学分析の観点から取り組んだ班でございます。いま一つの班は、疫学的考察をもってこれに取り組んだ班でございまして、それらが総合されて、三班共同の答申が出たわけではございませんで、それぞれ独立した立場で答申がなされておるわけでございます。その中の疫学班が疫学的考察によりまして、この中毒事件は昭和電工の鹿瀬工場の排水によるものであるという診断をするという答申を出しておりますが、その場合に、この班は、臨床班の考察並びに化学分析班の考察と、また独自の見解で一つの考察を加えて、疫学的判断を下したわけでございまして、それらの意味合いから、全部を総括した御意見を厚生省としても伺いたいし、また、あわせて、工場の化学分析の分野も加えた総合的判断をお願いいたしたいということで、食品衛生調査会に諮問をいたしたわけでございます。食品衛生調査会の会長は小林東大名誉教授で、私どもが詳細に調査したところによりますと、昭和電工と何らの関係もございません。また、今回の調査に当たっております小委員長は、東大の豊川医学部長でございますが、これも昭和電工とは何らの関係もない方でございまして、現在小委員会で調査中でございますが、それらの先生も、全く独自的な立場に立ちまして、新たにみずから手を下して現地におもむき、分析するということでなくて、疫学班の現地調査、分析調査等を参考にいたしまして、学問的判断を下すという作業をいたしておるわけでございます。したがいまして、何らかの別の配慮がこれに入るということでなくて、科学的な判断をこれによって下すということを努力していただいておるように私ども考えております。
  47. 石田宥全

    石田(宥)委員 環境衛生局長、あなたは、この前、私の質問に対して、臨床班は臨床班独自のもので、分析班は分析班独自のもので、疫学班というものはこれを総合して一つの結論を引き出すものである、だから、それぞれ別個にその結論が出るのが当然だ、こう言っておられました。それから、あなたのほうから出た文書によると、水俣湾の水俣事件の前例に従って食品衛生調査会に諮問するのだという文書が出ている。水俣事件というのは、あとで触れますけれども、あれだけたくさんの死者を出し、たくさんの後遺症患者を出した事件を、答申は出たけれども、あいまいにする役目を果たしている。これはひとつ指摘をしておきます。  そこで、昭和三十四年十月六日に食品衛生調査会が厚生省に提出した答申が不十分であるとして、経済企画庁が中心となって連絡協議会を設けて、一年間に四回会議をお開きになった。私、資料を持っておりますけれども、厚生省の食品衛生調査会が厚生大臣に対して答弁書を出しているのに、経済企画庁が今度は中心になって、自分のところでこれを扱うということにし、しかも、四回会議を開いたが、さっぱり要領の得ないことにして、あいまいにしてしまった。経済企画庁というところは、あいまいにするためにこれを引き受けたような感がいたすのでありますが、経済企画庁がこれを取り上げなければならないという理由は一体どういうところにあったか、これは経済企画庁の係の方から、松本水資源局長から御答弁を願います。
  48. 松本茂

    松本政府委員 三十四年に厚生省の食品衛生調査会におきまして答申が出されたわけでございますが、そのときの答申におきましては、この病因の物質がある種の有機水銀化合物であるという答申でございました。が、しかし、そこまではわかったわけでございますが、その病因物質、またその発生原因、またその生成過程、それから分布状況につきましては、なおわからない点がいろいろございまして、もっとそういった点につきまして、関係各省が協力していろいろな方面から調査をしていく必要があろう、各省協議いたしました結果、そういうふうに考えたわけでございます。  そこで、こういった調査をいろいろやるわけでございますが、そういった調査は互いにいろいろ関連があろう。そういった場合に、調査を行ないます場合に、そういった研究の結果の発表なり、そういったことを、経済企画庁が幹事役となりまして協議会というものをつくりまして、そこでいろいろ発表していただく、そういったことでこの調査の調整をはかっていこう、こういった趣旨から、経済企画庁が取りまとめ役と申しますか、幹事役と申しますか、こういったことをいたしたわけでございます。
  49. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこまでそのようでありますが、ところが今度阿賀野川の水俣病については、経済企画庁はどういう形で関与するか存じませんけれども、今度は科学技術庁が中心になってこれの調査を進める、取りまとめをする、こういうことになったのは一体どういう理由に基づくのか、これは高橋研究調査局長に伺いたいと思うのです。
  50. 高橋正春

    高橋(正)政府委員 先生もお知りおきのとおり、私どもの役所の所掌事務といたしまして、各省庁の試験研究にかかわりますところの事務の総合調整をやる権能を持っておるわけでございます。これを実質的に行ないます場合の一つ方法といたしまして、各省庁が行ないます研究につきまして、これを総合的に行ないます場合に、特別研究促進調整費という予算を持っておりまして、必要によりまして各省庁に配付いたしまして、総合的に研究を行なう。御指摘の、過去におきまして経済企画庁が各省連絡会議をお開きの当時は、私どものほうにそういう制度がなかったと思うのでございますけれども、三十五年度から私どもはそういうような一つの調整の手段といたしましての予算を持っております。今回は、特に緊急の事態でございまして、各省庁が各自の予算でこれを行なうことができませんので、早急に実施いたしますために、特別研究調整費をもってこれに充てるということになったわけでございます。
  51. 石田宥全

    石田(宥)委員 答弁書によりますと、熊本大学の結論は、昭和三十九年から四十年にかけて最終的に取りまとめられたものであり、水俣病事件は三十六年ごろまでに落着を見ておる等の事情もあり、政府の結論とするまでに至らなかった、こう書いてある。死者四十一名、入院患者十九名、自宅療養五十一名と政府答弁書には明らかにしておるのでありますが、多くの患者が病床にあるにかかわらず、落着をしたということは一体どういう意味なのか、これは経済企画庁並びに科学技術庁にお伺いをしたい。——あとで別の機会にこれは明らかにしてもらいます。少なくとも政府答弁書に書いておるから私は聞いておるので、あなた方参画したのでしょう。参画した者がわからないとは一体何事なんです。これは法務省も聞いておいていただきたい。  そこで、やはり答弁書はこう書いてある。「当時の科学技術水準をもつてしては病因物質の発生過程等を確定することはできなかつた。」といっておるのであります。それならば、今日の科学技術水準ではどうなのか。確認できるのではないかと私は考えるが、科学技術庁あるいは経済企画庁、どちらでもけっこうですが、どうなんですか。答弁できないことはないでしょう。
  52. 高橋正春

    高橋(正)政府委員 先ほどの石田先生の御質問とも関連いたしますが、前回の問題につきましては、当時は参画いたしておりませんので、先ほどのお答え及びいまの問題とちょっとずれると思いますけれども、原因物質の発生過程と申しますのは、たとえば工場の反応系の中におきますところの発生過程という意味にとります場合におきましては、これは可能だと思っております。ただ疫学的な問題といたしましてのさらに次元を変えました場合におきましては、なお種々の問題点が残っておると思います。
  53. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、実は政府から資料としていただいたものでありますが、先ほど申し上げましたように熊本大学の「水俣病」という論文集が出ております。この中できわめて重要な部分、たとえば第七章「水俣湾周辺のヒト、動物、魚介類および海底泥土中の水銀量の証明」喜田村正次、これは三三二ページです。それから第八章「有機水銀中毒の実験」これは伊津野、武内、松本の三教授が執筆をいたしております。さらに、第十章「水俣病と公害」という章がございまして、ここでは当時新日本窒素、今日チッソといっておりますが、この工場もその事実を認めておるというふうに書いておりますが、この資料の中のいま指摘した部分について、政府側として反論をする点がありましたならば、反論をし、あるいは否定する事実があったならば、否定をしていただきたい。認めるならば、認めるということを明らかにしていただきたい。——予告してあったんですからわかるでしょう。——これは国際的にも高く評価されておる論文でありますし、水銀中毒事件に対する論説としては、ほとんど決定版とも言うべきものでございますので、その点はきわめて重要です。これを認めるか、認めないか、あるいは反論の余地があるなら、反論を聞きましょう。否定する部分がありましたならば、否定しなさい。新たに参考人なりなんなりを呼んでこれは明らかにしなければならない。この問題が明らかになりませんと、阿賀野川における水俣病の解明がきわめて困難になる、そういう意味で予告をしてあるのです。科学技術庁が担当をして明らかにするというならば、科学技術庁の担当の、特に水資源局長から、来てもらったのでありますから、これはひとつ明らかにしてもらいたい。
  54. 松本茂

    松本政府委員 先ほど申し上げました連絡協議会は、約一年ほどの期間に四回協議会を開きましてやっていったわけでございます。その後、各省の調査が……(石田(宥)委員「そんなこと聞いておりませんよ。この資料に基づいての意見を聞いておるのです。否定する部分があるかないか、があるかないかということを聞いておる」と呼ぶ)それで、その後熊本大学におきましていろいろ研究が行なわれまして、非常に貴重な研究が発表されてまいったわけでございます。その原因物質が、あるいはまたその原因物質の経由の過程につきまして、御説のようないろいろな研究がなされておるわけでございます。しかし、経済企画庁といたしましては、現在阿賀野川の事件に関連いたしまして、原因物質の経由の点等につきまして詳細検討が行なわれております。今回の阿賀野川につきましても、食品衛生調査会の御意見も十分拝聴いたしました上で意見を固めていきたい、こういうふうに思っております。
  55. 石田宥全

    石田(宥)委員 全く答弁になっていない。そんなことを聞いておるのじゃないのです。この資料を政府は出してきておるのだから、この資料の中の全部とは言わないが、七章、八章、十章の中で否定すべきものは否定しなさい、反論をすべきものは反論しなさい、どうですか、と聞いておるのですよ。これを認めるなら認めるで、国際的にこれは高く評価されており、国内ではほとんど定説といわれておるものですから、私は聞いておるんです。そんな無責任な答弁がありますか。そんな無責任な答弁なら、一体こんな法案の審議なんて全く意味がないことになる。どうなんですか。今日の科学技術の水準をもってして、なおかつ、この水俣事件のような問題が解明できないはずはないのですよ。あなた全然読んでいないんでしょう。ちゃんと書いてありますよ。読んでいないんでしょう、これは。こういうものを読みもしないで、そうしてまたあいまいにしようというのが政府の態度です。私は、きょうは大臣がいないから特別に聞かないけれども、いまや一体日本の政治というものは、——刑事局長はよく聞いておって、大臣に伝えてくださいよ。日本の行政というものは、企業に従属しておる。同時に、日本の司法というものは、行政に振り回されておるのではないか。だから、これくらい明々白々なものをも、あいまいもこたるものにしようという策謀が行なわれる。一体、日本のいまの司法体系というものの中においては、実情はそうでしょう。こんな重要な点が何もわからない、答弁できない、そんなことで一体法務省なんというものが、また経済企画庁、科学技術庁、ナンセンスですよ、それは。何回も言うようだけれども、国際的な水準で、これは国際的に高く評価されておって、日本国内の専門学者では、完ぺきなものだと折り紙をつけておるものなんです。読んでいるのかいないのかわからぬけれども、一体どういうことなんですか。これはどうしても答弁ができなければあとに譲るほかはない。どうですか、次官、こういう実情で一体法案の審議なんか進められますか。
  56. 井原岸高

    井原政府委員 いま、先生が御指摘されたとおりでございまして、せっかく質問の要項等についても通達をいただいておりますのに答弁ができないことは、まことに恐縮に存じます。なお一そう、次の機会までに十分、ただいま先生の御質問の内容は専門的な点もあるようでございますが、各政府委員にも勉強さして、御納得がいきますか、どうなりますか、次の機会にでも答弁させたいと思います。
  57. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういう次官答弁では、これは私は納得いかない。私は、きのう予告してある。ちゃんと第何章、何章、どういう事項ということを指摘しておるのです。ちゃんときのう言ってある。一体読んだのですか読まないのですか。専門にやろうという専門の役所じゃないですか。膨大な予算を使って専門の役所が、どうなんですか。一体これは政治的に——膨大な予算を使って、そうして何十人も人が死んでいるのです。何百人もいま後遺症に悩んでおったり、入院加療をしておるというのに、肝心の役所が全く何もわからない。何のために予算を使っておるのです。どう思いますか。
  58. 井原岸高

    井原政府委員 いろいろおしかりを受けるわけでございますが、おっしゃるとおりでございまして、まことに不行き届きでございまして、答弁のしようもございません。恐縮でございますが、それぞれ関係機関の連絡もまだついていないような感じがするわけでございますので、非常に、法務省といたしましても、人権擁護の立場、たくさんの被害者を出しておる実情に即しまして、法務省は法務省の立場から、ひとつ各省とも連絡をとって解明するように努力をいたしたいと思います。
  59. 石田宥全

    石田(宥)委員 次官答弁、一応了承いたしました。国会が閉会になりましても、これは早急にひとつ対策を進めていただきたい、解決に向かって進めていただきたい。  そこで、委員長ちょっと、時間がもうわずかになったようですけれども、こういうていたらくですから、これはどうも私の責任とは委員長もおっしゃらないと思うので、もう一、二問だけお許しを願いたいと思います。  経済企画庁、松本さんに伺いますが、この連絡協議会、実は資料をもらっておりますが、このメンバーの中に清浦という教授が入っておった。清浦教授が異説を唱えられたためにこの取りまとめができなかったといわれておるのでありますが、清浦教授は、今日なおアミン説を主張しておられますか、どうですか。
  60. 松本茂

    松本政府委員 最近、私のほうの担当官が、同教授に確かめてみましたところ、あの当時自分が発表した説につきましては必ずしも妥当ではなかった、こういうふうな御意見をお漏らしになっておったと聞いております。
  61. 石田宥全

    石田(宥)委員 けっこうです。そのとおりです。  そこで人権擁護局長と刑事局長に伺って、私の質問を終わりたいと思うのでありますが、この答弁書によりますと、先ほども指摘いたしたのでありますが、水俣事件では会社は漁業の被害は認めておるのです。しかるに、熊本地方法務局が工場排水による公害事件としてこれを立件いたしました。しかし、新日本窒素肥料株式会社水俣工場の排水によるものと確認するまでに至らなかった、こう書いておりますね。そして昭和三十六年七月二十四日、右事件を処置猶予として処理したと答弁書は書いてある。それからさらに「昭和三十四年十二月、工場内に浄化装置を設置したが、その後、患者発生数が漸減し、昭和三十六年にはいつてからは全く発病者をみなくなつたので、」云々と、こう言っておる。  この答弁書からいうと、工場内浄化装置を設置した後は発病者を見なくなったということは、裏返せばそれまでの間に放流、放出された排液の被害であると言えるのではないかと考えるのでありますが、これを処置猶予にしたという理由は納得ができないのです。どうでしょう。
  62. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 熊本の水俣事件につきまして、会社側が被害者に対しまして弁償をしたという事実がありまして、その事実を考慮に入れまして、処置猶予という措置をした、こういう報告を聞いております。
  63. 石田宥全

    石田(宥)委員 このような事件は、単に工場側と被害者の間に話ができたから、この問題が解決したと言える性質のものではなかろうと思うのです。したがって、これはやはり問題は残る。ことに今日、何回も繰り返すようですが、答弁書が書いておるように、まだ十九名も入院加療をしておる人がある。五十一名の自宅療養者がおるという事実を踏まえて、これでも日本の法務省は憲法に定められた生命、身体その他の人権が擁護されたというふうに一体考えておられるかどうか、きわめて重要なので、実は大臣がおられれば、これは大臣にただしたい問題でしたが、このような状態のもとに、なおこれでも憲法に定められたところの人権は擁護されたということであるかどうか、これは人権擁護局長並びに刑事局長答弁をいただきたい。
  64. 堀内恒雄

    ○堀内政府委員 水俣病につきまして、先ほどの先生お読みになりました文句の中にありましたように、私どもの立場で原因関係を明確につかむことができないという点も考慮に入っておりまして、その立場で被害者に対して一応の被害者の救済がなされておるということを認めまして、一応被害が救済されておるものとして処置したものであります。
  65. 石田宥全

    石田(宥)委員 おかしいじゃないですか。被害者と会社側に話がついたからといって、被害を与えておることは事実です。これは業務上のきわめて重大な被害ですね。死者四十一名も出しておるのですから。そういうふうな考え方に問題があるので、私は、これはあらためて大臣に伺わなければならない問題でありますが、だから、私がさっき指摘した日本の行政府は企業に引き回されて、企業の言いなりほうだいになっておる。政務次官、反論があったら反論してください。同時に、司法は行政に引きずり回されておる。刑事局長、文句あったら言ってください。そういう実情じゃないですか。行政府は、熊本の場合もそのとおり、今度の阿賀野川の問題の場合も、これは明らかにしようとしない。極力これを遷延させ、そうしてこの前のようにあいまいもこたるものにしようと意識的にはかっていることはきわめて明瞭です。なぜならば、昨年の春からほぼその結論は明らかであったにもかかわらず、先般四月十八日にようやく三研究班の報告書が提出されたが、六月には食品衛生調査会の結論が出るといっておったが、出ない。七月も出そうもない。八月にも出るかどうかわからない。そして科学技術庁が中心になって取りまとめをすると、これは厚生省から文書で出ておるんですけれども、あるいは科学技術庁もまたそれを別の機関にゆだねるおそれなしとしない。この一連のものを見たならば、日本の今日の政治の実態、司法というものが、三権分立のたてまえというものは守られておらないのではないか。国民の一員として、立法府におる一員として、私は強くそういうふうに考えざるを得ない。実情をごらんになって、実情をいまお聞きになって、これは刑事局長次官からひとつ所見を承って、私の質問を終わりたいと思う。
  66. 川井英良

    ○川井政府委員 事柄は、たいへん高度の科学的知識と推理を必要とする事件でございますので、捜査当局としましては、権威ある政府の結論が出次第、それをあらゆる角度から検討いたしまして、刑事事件として捜査することが適当であるという結論になれば、直ちに捜査を開始するというたてまえのもとに、現在でき得る限りの事前の準備並びに資料の収集というようなことをやっているというのが今日の段階でございます。
  67. 井原岸高

    井原政府委員 私は、先生のお考えのとおりだとは考えていないわけでございますが、しかし、確かに御指摘されたような個々の問題については、ややともするとそういう感じを与える、誤解を与えるような懸念もまたあろうかと存ずるのであります。したがいまして、法務省といたしましては、そういう御指摘を受けるようなことのないように、ひとつ大いに戒めていきたいと存ずる次第でございます。
  68. 石田宥全

    石田(宥)委員 刑事局長答弁、ちょっとひっかかるものがあるのですがね。行政府の結論を待って法務省は捜査に当たる、こういうことなんです。私はやはり三権分立というものがいま日本の憲法のもとにおける原則的なものだと思うのです。ところが行政府で結論を出さないから法務省としては手が出せないということは、私がさっき指摘したことを裏書きするものだ、私はそう思う。ことに、きわめて高度の専門的なものだとおっしゃるから、だから私は政府に資料を要求して、政府の出してきたこの資料に基づいて、どこの点と、どこの点に納得がいかない点があるのか、あるいは否定するような事実があるのかどうかということを、私は確認をしておるのです。答弁できないでしょう。行政府で結論が出なければ、法務省は手出しができないのですね。何十人、何百人死のうとも、法務省としては手出しができない。こういうことをあなたは巧みに答弁していらっしゃると思うのですが、そういうことですね。それをちょっと……。
  69. 川井英良

    ○川井政府委員 そういう趣旨で申し上げているのではございませんで、司法が行政に振り回されているとおっしゃる司法の中に、裁判所も入っているのかどうか、必ずしも明確ではないと思いますけれども、裁判所を含めて、私どもの担当しておる検察庁をも含めて、今日新憲法のもとにおいて、司法なるものが行政に振り回されているという御指摘には、私必ずしも納得ができません。  それはともかくといたしまして、法務省は何でもできるんだ、なぜやらないのだという過大な御期待を法務省にお寄せくださることについては、私感謝にたえません。しかしながら、法務省人権擁護局並びに刑事局、それらのものが、あらゆる一切の事件を直ちに事件として電光石火、乱麻を断つがごとくに処理できるかと申しますると、必ずしもそうではございませんで、水俣の経験に徴しましても明らかなように、この種の事件は非常に高度の科学的な知識を必要とするわけでございまして、どこを探しましても検察官でこの事件を直ちに——まだお示しの書類を私読んでおりませんけれども、その赤表紙の本を検察官に読ませましても、検察官の能力をもってして、そこに書いてあることが直ちに理解できるかどうかということは、私、はなはだ疑問だと思うわけでございます。  そこで、たまたま最高権威を網羅した調査班が、厚生省その他関係省庁の発意によって結成されまして、それがこの事件に本格的に取り組んでおる。しかも、その結論というのは、そう何年も先に出るというのじゃなくて、なるべく近い機会にその結論が出る予定だ、こういうふうな関係省庁の御趣旨でありますので、その結論を待って、刑事事件として捜査できるものかどうかという態度をきめたい。そのために、どういう結論が出ましても、当座あわてないで直ちに準備ができるように、いろいろなでき得る任意捜査としての資料その他を収集してその研究の結果を待っている、こういうことでございますので、今日の状態といたしましては、おしかりを受けるかもしれませんが、私ども検察の体制としてはこの辺のところが精一ぱいであり、またこのような態度が妥当ではなかろうか。法務当局としましてもそういうふうに考えているものでございます。
  70. 石田宥全

    石田(宥)委員 まあ一応わかりました。それは神さまでない限りは、そんな快刀乱麻を断つような処断はできないでしょう。しかし、高度の学問的な問題にいたしましても、すでにこれは国際的に認められておる。こういう文書もあるし、また学者もたくさんおるわけです。そういう者の意見も聞き、あるいはまた、その現地の被害の状況等も聞いて、水俣の場合は、一応熊本法務局ではこれは立件しているわけですね。しかし、阿賀野川の水俣病に対しては、立件をしていないわけです。これは私どもははなはだ不満なんです。立件をして、そうしてわからないところは専門学者の意見を聞く、被害者の意見も聞く、実情も調べるというのが検察当局の役目じゃないでしょうか。そういう点で、私ははなはだ不満なんです。裁判所も含めて実は言いたいこともありますけれども、時間がございませんから、裁判所を含めた司法ということについてここでものを申しませんけれども、どうでしょうか、阿賀野川の問題については、私は立件すべき段階にきておるのではないかと考えるのですが、もう一言答弁を願いたいと思います。
  71. 川井英良

    ○川井政府委員 およそ刑事の事件でも、現場の検察官が立件して、容疑ありとして強制力を発動するかいなかということは、これは事件によりまして相当大きな影響を持つことでありますし、法務行政当局として、現場の検察官に対して、この事件を立件しろ、この事件を立件するなというようなことは、実は過去においてもいたしておりませんし、今後もそういう措置はとりませんで、検察の独立性を認めて、それに信頼をして見守っていくという態度が適当ではなかろうか、私はこう思うわけでございまして、実はこの事件につきまして最初に御説明になりましたように、たしか予算分科会だったと思いますが、御質問を受けまして、その当時から事の重大性をよく承知しておりましたし、それから水俣事件のときについても、私、別な部局におりまして、その事件について非常な強い関心を持っておりました。あの直後に、私の下におります検事の一名を現地に派遣いたしまして、この事件をめぐっての、特に刑事事件として捜査することが適当であるかどうか、いま御指摘の立件することが妥当であるかどうかというようなことを中心にいたしまして、さらにまた、この研究班の発表をめぐっての現場の空気なりいろいろのことについて実態を調査させまして、その調査結果につきましても、私はある程度詳細な報告を受けております。  そこで、法務当局といたしましても、何もしていないわけではございませんで、非常な深い注目をもって新潟事件の出方というものを見守っておる、こういう状態でございますので、本日は、この辺のところでひとつごかんべん願いたいと思います。
  72. 石田宥全

    石田(宥)委員 本問題はここだけで片づく問題ではございませんが、特にきょうは経済企画庁並びに科学技術庁が、きのう予告したにもかかわらず、答弁ができないということに対して、はなはだ不満でありまして、資料もたくさんもらっておりますので、また別の機会で十分討議をしたいと思います。たいへん時間を超過して恐縮でありましたが、以上で私の質問を終わります。
  73. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 小沢貞孝君。  小澤君に申し上げますが、だいぶ時間が超過しておりますので、きわめて簡単にお願いいたします。
  74. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 環境衛生局長お尋ねいたします。  この被害者の方、たいへんお気の毒なわけです。したがって、これを放置しておくことは、これは人道上の問題もあろうと思います。いま伝え聞くところによると、被害者の人は、何か裁判を起こしているというようなことで、その裁判の結果は、一年かかるのか、二年かかるのか、三年かかるのかわかりませんが、そういう間、被害者の人を放置しておくことは、私はこれは人道上からも、また国の厚生行政からもまずいことじゃないか、こういうふうに考えるわけです。したがって、結論はどう出ようと、一時的にこれを救済する措置、県と協力をして、この人たちが十分治療できるように、入院できるように、診察を受けられるように、一時的にこれを援護する措置、こういうものができないものか、こういう点について、まず第一点としてお尋ねをいたしたいと思います。
  75. 舘林宣夫

    舘林政府委員 この問題は、一つの事例でありますが、公害問題が起こりました場合、その被害者の救済をどうするかということを今日、国の制度として確立することが大きな問題で、最近特に国の早急な施策を要望せられておるところでございます。公害問題でございますれば、当然原因があるわけでございまして、結論的に、単純にこれを割り切れば、原因者が補償をすべき筋合いでございます。しかしながら、しばしば公害は、その原因の因果関係をはっきりすることが容易でない。かりに長時間かけて判明するにいたしましても、それまでの間、被害者は非常に困るという事態が起こるわけでございまして、そのようにしても明確になればけっこうなほうでございますが、必ずしも明確にならない。ことに大気汚染のような場合に、多数の、汚染された大気によって疾病が引き起こされるというようなことによって起こった被害者の救済ということは、非常にむずかしいものでございまして、これを今後国が一つの制度として、どういう措置をとっていくかということを確立することが必要であるわけであります。とりあえず、水俣病に関しましては、生活保護あるいは各種社会保険によりまして、医療費が分担されるものは当然に被害者にかからないわけでございますが、それによりましても被害者の自己負担分が生ずるわけでございまして、これに対しましては地元の県市町などが負担をいたしております。国も本年度から、その特別の患者の治療費の一部を負担いたしたいということで、予算措置を講じております。それから治療費だけではなくて、だんだん生活に困ってまいるわけでございまして、今度の被害者の相当部分が生活に困窮して困っておるという状態でございますので、国としましても、一部は生活保護の適用をいたしまして救済いたしておりますが、そのほかの方々は、地元の県及び市が共同で生業資金あるいは見舞い金という形で、一部補給金を出しておるわけであります。もちろん、これは制度として確立したものではございませんけれども、今後このような被害者に対する救済の制度の一つのサンプルとして私どもとしても考えてまいりたい、かように思っております。
  76. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 治療費の自己負担分は地元の市や県、一部国、これはたいへんありがたいことで、そういうようにぜひ続けていただきたいと思います。さらに生活費については、一部は生活保護、ただ地元の県や市でめんどうを見ておるというが、これに対しても国でひとつ積極的にめんどうを見ていただくようなことをしていただきたい、こういうことを希望しておきます。  そこで私は、引き続きお尋ねをしたいが、この昭和電工のほうからは、農薬一次濃厚汚染説ですが、農薬が犯人である、こういうぐあいに反論を実は出しておるわけです。これについて疫学班なりなんなりは、一体万全の捜査、調査をしたかどうか、こういうことです。それについて十分な捜査をされておらない。私は長野県ですので、農薬やなんかの水銀中毒に深い関心を持っておる。長野県の佐久病院の若月さんが、早々と農薬の被害を信濃毎日新聞に発表してありました、おととしだか去年だか。それが最近信濃毎日新聞からパンフレットになって出ております。それからまた、最近科学朝日かなんかにも、農薬の被害というものについてだいぶ出してあります。あるいは若月さんは「農薬の被害」という本も出しております。最近朝日新聞等に出ておるとおり、貴重なコウノトリが農薬のついたタニシを食べて、水銀のためにみんな死んでしまったというようなことが出ております。一般に農薬の被害というものが、水俣病と全く同じ現象であるということは、もう私たちの常識になっているわけです。しかるに、倉庫の中は大量の農薬があった、それが新潟地震の結果、だいぶ下流付近に散乱した。こういうことは——新潟県の地震の結果は報告、公的な記録によってもう明らかになっております。しかも、それに対して新潟県の衛生部長は、農薬が河口付近に散乱をしたので注意をしなさいと、二回も三回も公式文書で通達を出しておるわけです。今度の事件を見ると、水俣病と全然違うのは、操業のしかたが違います。これは全然違う。それからまた水俣病の場合には、工場排水の地元ほどそういう汚染度がひどかったというわけですが、今度の場合には下流七十キロの河口のところへ行って集団的に出ておるわけです。したがって、地震の結果農薬によってあたりに散乱をして、その結果、地元の人に言わせると魚が最近盛んに浮いてきてそれを舌鼓を打って食べましたとみんな言っているわけです。だから地震の結果農薬が散乱した。これについては県衛生部長が注意をしなさいと、二回も三回も付近の町村等に通達を出している。そういう結果から見るならば、私は農薬一次濃厚汚染説、こういうもののほうがどうも事実ではないか、こういうように感ずるわけです。しかるにもかかわらず、そういうものを捜査すべき疫学班の班員の中に県衛生部長を含めておく、こういうことは重大な手抜かりだと私は思うのです。私が客観的に見ているならば、県衛生部長の処置がどうもぐあいが悪かったぞ、こういうことで、まあこういうことばを使っていいかどうか知りませんが、被疑者の立場にあるわけです。あなたは手抜かりじゃなかったかといって、県衛生部長を調べなければいけない。疫学班の人も臨床班の人も、あるいは化学分析班の人も行って、県衛生部長の問題というか、付近に散乱したものの取り締まりが手抜かりであったじゃないか、こう言って衛生部長は容疑をかけられる立場にある人にもかかわらず、疫学班の中に入って行っておる。しかも昭和電工のほうは操業が違う。それからもし学問的に考えてみて、これによって長期汚染したと言うならば、いまの何百倍、何千倍かの大きな操業をしなければとてもこれだけの被害は出ないということを科学的に反論を出しているわけです。しかるにもかかわらず、県衛生部長を疫学班の中の班員にした、こういうことは国の重大な手抜かりではないか、私はこう考えます。  そこで具体的にお尋ねいたします。先ほど昭和電工が何か検診を最近拒否した、こういうことで、それは事実のようでありますという答弁がありましたので、私はそこが頭へかちんときたわけです。先ほどの石田さんのお話を聞いていると、四月十八日に疫学班も何とか班も結論を出しているわけです。その後において、また昭和電工という特定な会社の社宅か何かに持っていって、これは県衛生部長としての立場か、疫学班長としての立場か、その立場を明確にしていただかなければなりませんが、またもう一回診断をしようと言ってきたわけです。そうすると、最初に疫学班で出した結論は、まだ十分に検査もしていないようなあいまいな状態の中で出したのか、検診を拒否したというのはつい最近のことです。今月かなにか最近のことだと思います。まだ調査が不十分で、疫学班として調べようとしているのか、県衛生部長が、一般的、普遍的に調べようとしているのか。被疑者のような立場にあるものだから、いまごろになって県衛生部長がこういうことをやっているわけです。四月十八日に結論を出した後にそういうことをやっているわけです。だからもし疫学班員としてやるならば、疫学班として結論を出したことはきわめてあいまいな中で結論を出したのだ、こういうように断ぜざるを得ません。あらかじめ特定なところに犯人をかぶせようとして結論を疫学班で出したに違いない、こういうように考えます。もし県衛生部長という立場でやるならば——川と全然関係のない婦人の毛髪の中から、何PPMの水銀の痕跡が出ているということを具体的に出したにもかかわらず、ちっともそういうことを調査をしておりません。たとえばこの川とは、工場の操業とは全然無関係な遠いところの人を、何十人と調べて、毛髪の中から何PPMのものが出ている。たくさん調べて出ているわけです。現に私が農薬の中毒のあらゆる文献を見ていると、そういう被害が山のごとくあるわけです。だから拒否したというのは、拒否せざるを得ないようなことをしてある。一つは何かといえば、農薬のことについて、具体的に地震ではんらんをしたにもかかわらず調べてくれないが、そういうことは疫学班の人は、それは全然農薬ではありません、どこかの閘門が締まっておったから被害がありません、——具体的にその閘門があいていたんじゃないかと言ったら、またその後ちょっとやってこういうことを全然調べようともしていないわけです。ところがどうも拒否したとか、拒否されたということが重大な問題みたいに言われるのですけれども、衛生部長という人が疫学班の結論を出された後に、いまごろになって一部のところをつかまえて調べたいと言ってきているのは、どういう立場で言っているのか、その点について私はお尋ねしたいと思うわけです。
  77. 舘林宣夫

    舘林政府委員 最近新潟県が、阿賀野川の下流の水銀の含有量の非常に多い患者、並びに従来の患者、その他希望者をつのって検査をいたしたわけでございます。その結果、従来要注意者として水銀の含有量の非常に多かった者の中から、新たに一名患者として取り扱うことが適当であるというような者も出ましたし、また胎児性水俣病かもしれないということで観察中の脳性麻痺の胎児——生まれた子供でございますから幼児でございますが、これを準患者として取り扱うということが適当であるということになったわけでありますが、それと同時に鹿瀬工場で働いておった人々が水銀を扱うということで、健康診断をすることが適当と考えて健康診断の申し入れをしたところが、会社側から断わられた、こういう事実があるということを申し上げたわけであります。
  78. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 これはまた私は別な機会に大いにやりたいと思いますが、しかし、いまから調査をしてこれから裏づけをしようというのか、これは衛生部長が農薬においては川と全然関係のないところでもたくさん被害が出ているから、そっちも調べましょう、それからここもまた調べましょうという、一般普遍的な立場でやるなら私はこれはまだわかります。上流の会津の婦人の中からは、こういうようにたくさん出ていますとこう言っているんだから、それも調べる、こういうようにやるならば、それはまた衛生部長の立場としてわかります。疫学班員の一員としてやるのであるならば、これはもうその前の疫学班の結論というものは、あいまいもこの中で出したのだから、私のいままで出したことは誤っておった、こういうことを前提にしておいてまたやっていただかなければなりません。ひとつこれはいずれまた別な機会に私はやりたいと思います。  それからいま一つは、この疫学班なりあるいは何班で使ったその水銀の分析機器というものは、いかなる機器を使ったか、正しいものであるか、こういうことです。エチルであるかメチルであるか、両方の痕跡が出るような分析機器を使っておりはしないか。これは専門的なことになりますが、科学技術庁かどこかでわかりますか。
  79. 高橋正春

    高橋(正)政府委員 疫学班の判断は、厚生省の分担のことでございますので、厚生省からお答えを……。
  80. 舘林宣夫

    舘林政府委員 非常に重要な調査でございますので、現在得られる最高の精密な手段を用いておると思います。通常ガスクロという方式で大体見当をつけて、さらに精密には薄層の方法で確定をはかるわけでございますが、品物によりましては、ごく少量で薄層ができないという場合もございます。おそらくはでき得る限りの努力をそれぞれの班がやったものと思います。
  81. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 専門的なことなので私はこれ以上あれしませんが、ガスクロは現在はだめだ、これはもう学界の常識になっているんじゃありませんか。四月十八日の結論を出したときには、ガスクロというエチルだかメチルだか何だかわからないような結果の出る分析機器でやっておったんじゃないでしょうか。そういうことで政治的に疫学班が判断を下すもんだから、地元の人があれはどうも昭和電工じゃないかといって、一生懸命追及するようなことをやり始めたもとをつくっているんじゃないでしょうか。四月十八日に結論を出したと石田委員質問したけれども、その当時の分析はガスクロでやっているんでしょう。これはメチルだかエチルだかわからない、どっちが出るかわからないような分析機器でやっているはずです。  そこで、そういうことを追及していると時間がかかっていけませんが、一般農薬の被害というものは全国的に大きくなっております。婦人の毛髪の中からちゃんと出ているというのは、全国至るところに出ているわけです。あるいはまたいまの分析機器があいまいなような状態の中で、四月十八日に疫学班がどうも昭和電工らしいというような結論をつけて、それを何か政治的に追及しよう、こういうような意図もなきにしもあらずだと思います。しかし、そういうことではなくて、もっと反論を出されているなら出されていることについても、新潟地震の結果一次濃厚汚染であれだけの農薬が散乱したというなら、それもまた徹底的に追及してみる、こういうようなことを科学的に十分に審査をしてこの問題に取り組んでいただく、こういうことを科学技術庁にも、厚生省にも、各省に私はお願いをして、関連質問で時間が長くなってたいへん失礼でございますが、質問を終わりたいと思います。この問題については私も一応の研究をしておりますので、いずれまたそれぞれの委員会で御質問をいたしたいと思います。ありがとうございました。
  82. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、来たる二十日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十七分散会