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西宮委員 一番初めに、
局長がいわゆるそういう可能性を見込んでこの
刑法の改正をするんだ、こういうお話でありますので、私はそれが非常に危険だ、あるいはまた、
大臣の提案理由の説明によれば、
自動車交通の場合は、そういう悪質重大な事犯がふえているのだ、それに対応した処置を講ずるのだ、こういうことで、それはそれとして理解がされると思うのでありますが、いわばそれのそばづえを食ってこういう問題、いま私は時間がありませんから例としてあげませんけれ
ども、たとえば建設工事に伴う過失
事故などというのはずいぶん数多く出ておるわけであります。あるいはさらに労働
災害などということになると、これはまたきわめて多いわけであります。あるいは爆発物、危険物の取り扱い、こういうことにおいても、社会生活が複雑になるにつれて、そういう問題はますます件数が多くなるに違いないと思うのでありますが、そういう際に、それに臨むのに刑の加重をもってするということが必要であるかどうかということについては、私は依然として納得できないわけであります。私はそういう意味において、これは
自動車交通の問題が当面の問題であるならば、それに限局すべきだということを特に言いたいのでありますが、時間がありませんから、もう
一つの問題の重過失の問題について一言申し上げます。
重過失が
刑法二百十一条にうたわれておりますけれ
ども、この重過失が問題になっておりますのは、実は
刑法の二百十一条のほかに百十七条の二項、つまり失火の場合の規定がございます。これも
一つ実例としての判例があるわけでありますが、時間がありませんから省略をいたします。それからもう
一つは政治資金
規制法の二十七条の二項、公職選挙法二百五十条の二項、これが重過失をうたっているわけであります。そこで私は、ちょっといままでの議論とそれるきらいがございますけれ
ども、私がここで昌頭に申し上げた、いわゆるもっと
法律を守らなければならぬという最初の観点に立ちまして、政治資金
規制法の二十七条の二項にいわれておる重過失あるいは公職選挙法二百五十条の二項にいわれております重過失、そういう問題に関連をいたしまして、ちょっと二、三の例をあげたいと思うのであります。
それは、申すまでもなく政治資金
規制法は、届け出をするということによって政治資金を公開する、公表する、こういうことによって政治の公正を期そうということがあの
法律の生命であるわけであります。ところが現実は、ますますこれに逆行しつつあるという事実を指摘しないわけにいかないのであります。たとえば、新聞等にしばしば出ておったことでありますが、自民党の
国民協会は収入の面では、昭和三十八年の場合には五百六十四件の寄付がありました。ところが昭和四十一年では二十五件に減っておる。つまり寄付は表に寄付者の名前等を公表しなければならないわけであります。それがために寄付を極端に減らしてしまいまして、全部それを会費に回してしまった。こういうことで、要するに全部ふたをしてしまって、中を全然見せない、こういう扱いになってしまった。昭和三十八年に五百六十四件あったものが、四十一年にはわずかに寄付は二十五件しかない。
国民協会の二十二億二千七百万という収入の中で、二十一億二千四百万は会費だ。こういうことで外部からは全然のぞき見ができないようにしてしまっているわけです。私はそういうやり方はきわめて不公正ではないか、
法律の精神がじゅうりんをされておると言わざるを得ないのであります。
さらにもう
一つ奇妙な例をあげたいと思うのでありますが、それは俗にいわゆる佐藤派といわれる派閥の団体でありますけれ
ども、最近の
傾向として料理屋や、キャバレー、バーなどに対する経費が多い、こういうことが世間の非難を浴びました。そこでこの佐藤派の育政会という団体では、今度出されました四十一年下期の届け出を見ますと、一件もこれがなくなったわけであります。いわゆる飲食業として報告をされておるのが一件もなくなりました。これはたいへんにけっこうなことだと思ってさらに詳細に調べてみますと、たとえば銀座東七丁目五番地ですか、
石田とし子、銀座西の綿平亀雄、あるいは芝の白金台町の長谷節江、麻布の飯倉の
西宮京子、赤坂平島きよえ、赤坂藤井みす、こういう人は、なるほど届け出には団体役員、
会社役員として報告をされております。ですから
会社役員ということで、一見するといわゆる飲食業ではないように見えるけれ
ども、同じ四十一年の上期に出した報告では、この
人たちは全部飲食業として報告をされておるわけであります。つまりいままでは飲食業として報告をしておったのを、飲み食いは困る
——困るというか、そういうことで世間の非難を浴びたので、今度はこういう人は全部
会社役員ということで報告をしておる。なるほどバーも、キャバレーも、法人経営ならば
会社の重役かもしれません。しかし、そういうことでこれを全部隠蔽をしてしまう、こういうやり方で、したがってこの団体は都合四十七件の件数がありまするけれ
ども、全部ことごとくその飲食業あるいは料飲業というような表現をやめてしまっているわけです。私はこういうところにもまことに不明朗なものがあると言わざるを得ないと思うのであります。
それからもう
一つ、さっき申し上げた公職選挙法二百五十条の二項にいわれております重過失、これはことさらにその重過失をこれらの
法律にうたっておるのでありまして、非常にそういう点を重視をしておる。にもかかわらず、実際はだんだんにそういうものが逆行しておるということを私は言わざるを得ないと思う。先般の選挙の結果、各都道府県の選挙管理
委員会に選挙の費用を報告をいたしておりますが、私はいままでに集まったもの、自民党の皆さんの
——これは県によって四月一ぱいのもあるし、六月一ぱいのもあります。いままでに集まつたもの二百三十九名だけ見ますると、非常にふしぎなのは、自民党の本部から各候補者に支給されましたいわゆる二百万の公認料と、百万の貸し付け金は、これは全部一人残らず詳細に報告が出ておるわけであります。ところが一方において、出したほうからはそういう報告が出ておるにもかかわらず、受け取った側でそれを報告しておるのは、二百三十九名の中でわずかに二十二名であります。その他の方はほとんどこれが報告をされておらない。すなわち、その中には全然届けもしない人もございます。せっかく出したほうの側では、いつの幾日に出したということを正確に報告をされておるのでありまするが、それに対して、全然そういうものは一文も受け取っておらないという形の報告でありまして、私
どもは、そういうやり方にはどうしても納得ができないわけでございます。これは大
幹部どころなんですが、大平正芳さんとか、あるいは正力松
太郎さんとか、
あと二人おられたはずでありますが、四人の方は、そういうものを全然出しておらないという、こういうことにも、私
どもはどうしても納得できない。あるいはまた自民党から二百万の公認料が出ておるわけですが、それだけしか
——先ほど申し上げたのは、ほかに鴨田さんでありますが、
あとは二百万だけしか報告をしない、百万については全く報告をしない、こういう人もありまして、二百万ぽっきりで、それ以外には一文の収入もないという人が八人ほどおるわけでございます。これな
どもおよそわれわれの常識としてはあり得ないことだと思うのです。田中法務
大臣がおられたら、田中法務
大臣に
お尋ねをしたいと思ったのですが、田中さんは非常に克明に報告しておられます。その点ではむしろ珍しいほうの例でありますが、同じ田中さんでも、田中角榮さんなどは、党の二百万のほかにはわずかに五万八千円しか報告をしておらないわけです。これは、私はいやしくも天下の大幹事長が陣中見舞い五万八千円しかない、何万という有権者から支持を受けて当選する人が、陣中見舞いが五万八千円しかない、こういうことがあり得るだろうかということで、全くそういう点は世間を愚弄している。私は今日選挙の問題ほど全くでたらめな、いいかげんな、
ほんとうにそういう世間をごまかしたそういう報告はない。こういうことを私は強くこの際指摘をして
——法律では過失は罪にしないのがあたりまえなんでありまして、本来ならば罪を犯す意のない者はこれを罰せずというのが大原則なのでありますが、せっかくこの公職選挙法やあるいは政治資金規正法には特に重過失についての特別な規定をさえ設けておるのであります。
〔
委員長退席、安倍
委員長代理着席〕
にもかかわらず、こういう結果になった。したがって、先ほど申し上げた二百三十九名の方の選挙費用を合計して平均をすると、一人平均百六十三万六千七百八十一円ということになっておるのであります。これなどは、この程度で選挙がやれるなら、だれが苦しんで政治資金の問題で大騒ぎをいたしますか。あまりにもごまかしが大き過ぎるのではないかと思う。
そこで、私は刑事
局長に
お尋ねをしたいのは、事実に合わない報告、ことに一方の出したほうでは出したということを明瞭にしておって、受けたほうでは全然報告をしておらない、こういうような点の追及、あるいはまたそれがやがて選挙違反等を起こす、いわゆる買収、供応等に金が流れる、こういうことの原因になることは明らかなんでありまして、私は先般大蔵
大臣から、こういう場合の税の問題について十分
答弁をもらっております。したがって、今回は刑事
局長に
お尋ねをしたいのですが、こういうことがそもそもその買収、供応などの金に流れていく、こういう有力な原因になっておると思うのですが、そういう点について着眼をしたことがございませんか。