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1967-07-11 第55回国会 衆議院 法務委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十一日(火曜日)    午前十時四分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 加藤 勘十君    理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君       塩谷 一夫君    中村 梅吉君       馬場 元治君    藤波 孝生君      三ツ林弥太郎君    山下 元利君       神近 市子君    西宮  弘君       松前 重義君    三宅 正一君       沖本 泰幸君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         労 働 大 臣 早川  崇君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君         法務省民事局長 新谷 正夫君         労働省労働基準         局長      村上 茂利君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学教         授)      三ケ月 章君         参  考  人         (山陽特殊製鋼         下請企業共同組         合理事長)   福永 常男君         参  考  人         (山陽特殊製鋼         労働組合組合         長)      白矢  勇君         参  考  人         (司法書士会連         合会理事長)  澤口 祐三君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 七月十一日  委員瀬戸山三男君、田中角榮君及び橋口隆君辞  任につき、その補欠として塩谷一夫君、三ツ林  弥太郎君及び山下元利君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員塩谷一夫君及び三ツ林弥太郎君辞任につき、  その補欠として瀬戸山三男君及び田中角榮君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月十日  刑法の一部を改正する法律案等反対に関する請  願(楯兼次郎君紹介)(第二七五八号)  同(東海林稔紹介)(第二七五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  会社更生法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四三号)  会社更生法の一部を改正する法律案田中武夫  君外十二名提出衆法第七号)  司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正  する法律案内閣提出第一一二号)(参議院送  付)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  この際、委員各位の御了承を願っておきます。  すなわち、法務行政に関する件、内河昌富事件につきましては、世界政経調査会会長廣岡謙二君を参考人決定いたしておりますが、本件につきましては、さきの理事会における協議決定のとおり、来たる十四日同参考人の出頭を求め、その意見を聴取することといたしまするので、さよう御了承を願います。      ————◇—————
  3. 大坪保雄

    大坪委員長 内閣提出会社庭生法等の一部を改正する法律案及び田中武夫君外十二名提出にかかる会社更生法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  まず、両案について参考人より意見を聴取することといたします。  本日出席参考人は、東京大学教授三ケ月章君、山陽特殊製鋼下請企業共同組合理事長福永常男君、山陽特殊製鋼労働組合組合長白矢勇君の三名であります。  参考人各位には、御多用中のところ、わざわざ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  何とぞ各位におかれましては、それぞれの立場から、両案について忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いを申し上げます。  なお、議事の都合によりまして、御意見は、最初お一人十分程度にお取りまとめをお願い申し上げます。  それでは、まず三ケ月参考人よりお願いいたします。
  4. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 このたびの会社更生法改正の動きは、山陽特殊鋼倒産を頂点といたしまし更生事件の数の増大並びにその大型化に伴いまして、同法の法律上の規制ないし実際の運用が、社会的に深刻な問題として一般の関心を呼びまして、それに対して改善策を提示するという意味合いを持たざるを得ないわけでございまして、その点では内閣提出法案も、社会党提出法案も、共通の性格を持つように思われるのでございますが、社会党案のほうは、もっぱら、ないし主としてこの問題に集中しているのに対しまして、内閣提出法案のほうは、それと並びまして、立法上または運用上の問題点として、これまで指摘されておりました点に、かなりの範囲にわたって手直しを試みておるように思われるのであります。  こうした二つの改正法案の取り上げている問題の範囲の食い違いはともかくといたしまして、最も両法案対策の違います点に焦点を合わせまして、両者を比較検討し、私の意見を述べさしていただきたいと存じます。  会社更生法乱用といわれる声がやかましかったのが、こういうふうな改正法案を生み出したことは、前述のごとくでありますが、その際、最も大きなポイントとして指摘されておりました点は、親企業が、更生法によりまして更生をはかり得るのに、下請企業が受ける打撃が大きく、アンバランスであるという事情、ないしこれが不当な人員整理手段とされるような疑いがあるというふうな事情、その反面に、また異常にふくれ上がりました社内預金扱いは、これまでどおりの扱いでいいのかというふうな問題が論議されたわけであります。こうした事態を背景といたしまして、両法案とも、これらの点の対策を打ち出しているわけであります。特にポイントとなりますのは、下請債権処理の問題であろうかと存じますが、その方法といたしまして、政府案考え方は、下請代金債権を無担保債権であるという法律上の性格から更生債権ワク内にとどめながらも、その内部におきまして、弁済禁止制約を解き、実質的には共益債権と同じように、手続中の弁済がはかれるようにしておるというのに比べまして、社会党案のほうは、これを一定の限度で共益債権として位置づけ、他の更生債権とは性格が違うのであるというふうなところを押し出しているように思われます。  更生法という法律のみを見ますと、社会党案のほうが、すなわち共益債権という体制をとったほうが、保護が手厚くなるのは明らかであります。政府案の底にあります考え方は、これに対しましらて、どういう立場であったかと思いますと、私の考えによりますと、下請代金保護は、日本社会的現実の中できわめて大きな重要な問題であるということは重々認識しながらも、やはり実体権の格づけに応じて、権利者間の取り扱いを多少違えなければならないのが裁判上の手続というものであるという、こういう本質的な制約がありますので、これをのみ込んだ上で、そのワク内での処理を主としておると言えると思うのでございますが、社会党案のほうは、他の手続との関連を一応抜きにいたしまして、ともかく更生手続ワク内で、先ほど問題となりましたような日本的弊害の除去を取り上げることこそが重要である、こういう立場に立っているかと思うのでございます。かりに下請代金が民法上も、たとえば先取り特権により保護されるというふうな形になっておりますならば、破産でも、強制執行でも、あるいは和議でも、さらには更生を通じまして、一般的なより強力な保護がはかれるのでございますが、残念ながら、下請代金というものにつきまして、これを先取り特権とするというふうな意味での実体法的な裏づけがないというふうなところから、政府案というふうなものの流れ、考え方が出てくるように思うのでございます。  確かに、下請代金債権保護更生手続の中ではかっていくことは重要でございますが、他面におきまして、この手続は、やはりある意味では獅子の分け前のぶんどり合いとでもいうべき性格を持つわけでございまして、必ずいろいろな他の方面のほうに利害が及ぶのが、こういう手続の免れがたい制約のように思うのでございます。かりに、下請代金債権を、必ず現金弁済しなければならない、こういうふうな形になってまいりまして、それがまた事実上弁済がむずかしいというふうな事態、これは過去の統計によりますと、かなり多いように見受けられるのでございますが、そういうふうな事態になりますと、おそらくはかの権利者というものは、これに対しまして自分の分け前というものが減ることを考えまして、自衛の策に出るというふうなことが十分予測されるわけでございます。たとえば、一番表通り対策といたしましては、更生手続を避けて破算手続に持ち込むなり、あるいはまた管財人といたしましても、更生手続の見込みなしとして投げ出すというふうなことにもなりかねないわけでございます。かりに破産になりますと、これは更生手続保護をいたしておりましても、やはり先ほどの実体権によるワクづけというのが働いてまいりまして、一般破産債権になってしまうのは免れないというように思うわけでございます。  かく見てまいりますと、やはり下請代金債権保護というふうなものの保護ということを、更生法ワク内で処理し得る範囲というものにつきましては、一つの限界があるように感じられるのでございます。将来これをほんとう保護していくための表通り方策といたしましては、これはたとえば実体法上の権利として、破産和議、その他の手続強制執行を通じまして保護していくという表通りをとる、ないしそれとあわせまして、こういう連鎖倒産に対する金融政策の面というふうな点で受けとめていく、こういうふうなことが伴いまして初めて更生法上の対策も出てくるように感ずるのでございます。  元来、会社更生法というふうなものの直面する問題は、国によって違うのでございまして、アメリカが会社更生法を生み出した場合の一番大きな問題は、投資家大衆保護という問題であったのに比べまして、日本で特に先鋭に出てまいりますのは、この下請代金債権の問題であるということは重々承知しておるのでございますが、先ほど申しましたような会社更生手続一つの免れがたい制約ということを認めまして、法制審議会におきましては、私は政府原案取り扱いというものが、いろいろなことを考えました結果、妥当なバランスではなかろうかと思って賛成した次第でございます。もっとも、政府案考え方の底には、管財人に握りつぶされるのではなかろうかという危惧が入り得るかと存じますが、この初期の段階と申しますのは、実は下請債権の調整のみならず、あるいは従業員の安定、大口債権者との協議計画の資料の収集等の問題が山積しているわけでございまして、その時期におきまして、下請債権の問題だけに裁判所がエネルギーを注ぐというふうなことよりも、あるいは多少の危惧があるかとは存じますけれども、ともかく管財人ルートを通じて裁判所のほうにその問題の判定を取り継ぐという体制がとらるべきではなかろうかと考えるわけでございます。これを要するに、問題の抜本的な解決は、更生法だけではむずかしいのでございまして、内閣提出法案の中にもこういうふうな苦悶が反映していると私には感じられるのでございます。  時間がありませんので、以下飛ばしまして、更生法乱用禁止対策というふうなものにつきまして両法案を見てまいりますと、同じことをねらいながら、一方は申し立て段階制約をつけ、また乱用防止のために過怠更生罪を設けるという対策を打ち出すのに対しまして、政府案のほうは、保全処分の強化と、特に従来の弁済禁止のみならず、管理人選任等の強力な手段乱用防止策また保全処分申し立て禁止、これをお墨つきとして使うことを封ずるというふうな対策を講じているわけでございます。私も会社更生法、これが旧経営者が抜け抜けと居すわるというふうな形になる、下請商取引先犠牲において、大企業更生をはかるという疑惑を、十分払うことはきわめて必要なことであると存じまして、その点を強調してまいったものでございますが、こういうふうな対策としては、あるいは損害賠償の査定の効果というふうなことも考えられましょう。あるいは社会党案のように、過怠更生罪ということによって制裁を課する方法も考えられるかと存じます。  こういうぐあいに政策的な問題が非常に大きくからむわけでございますが、そのほかにも、この法案ではいろいろ問題を残しております。特に社会党案理由書にございますように、更生法がとかく大企業だけの手続になりがちである。小企業救済策が抜けておるという点につきまして、私も以前から小更生とでもいうべき方策が必要ではないかというふうなことも考えておったのでございますが、今回の中にはそれが盛り込まれていないなどもその一例でございます。したがいまして、こういうふうな改正案、一応のあれが成立いたしましても、経済の実態に即応したこまめな改正がなされることを希望するわけでございます。
  5. 大坪保雄

  6. 福永常男

    福永参考人 私は、山特鋼下請企業共同組合理事長福永常男でございます。  本日、この権威ある衆議院法務委員会参考人として出席し、意見を申し述べることができますことは、私をはじめ組合員一同の深く喜びとするところであります。  私は、法律問題につきましては、全くの門外漢ではございますが、事新しく申し述べるまでもなく、現行会社更正法では、親会社会社更生法認可申請をすれば、保全命令によってその債権は自動的に凍結され、更生計画認可までたな上げされることは御存じのとおりでございます。  前述の実例は、昭和四十年三月六日の山陽特殊製鋼株式会社会社更生法申請事件に見ましても明らかなごとく、この事件により、私たち中小下請企業者が、文字通り連鎖倒産危機に直面し、一時は傘下従業員二千数百名ともども路頭に迷うような大混乱を引き起こしました。  現今の大企業経営方式は、数多くの傘下中小下請企業者を擁して生産を行なっております。ちなみに、山特鋼を例にとりまして考えますと、会社更生法申請時の自社従業員総数は約三千七百名、これに対しまして、私たち下請企業協同組合員傘下従業員総数は約二千五百名でありました。親企業会社更生法認可申請犠牲となり、これら中小下請企業者連鎖倒産をするときは、ゆゆしき大社会問題であるということは明白でございます。  幸いにいたしまして、山特鋼事件の場合は、戦後最大の倒産事件のこととて、政府をはじめ政党各位の緊急かつ適切なる御指導と特別金融措置等により、私たち中小下請企業者はやっと連鎖倒産だけは免れましたが、自来二年有余を経過いたしましたる今日、なお膨大なる借り入れ金金利負担にあえぎつつ呻吟を続けております。  このような暫定的措置は、連鎖倒産危機を一時的に回避したとは言えましょうが、決定的な根本解決策ではなかったことを証明いたしております。  現時点におきまして、私たち中小下請企業者ほんとうに救済する道は、抜本的なる会社更生法改正により、その債権擁護をはかり、連鎖倒産の危険を防止する以外に道はないと確信いたしまして、たび重なる陳情を続けてまいったような次第でございます。  ただいま国会で御審議中の会社更生法改正案につきましては、大体におきましてわれわれが満足すべきものではございますが、特に第百十二条の二の二項のうち、「利害関係人利害」とあるを削除願いたく存じます。その理由は、条文中の「利害関係人利害」とあるは、中小企業者を除く一般債権者利害をさすものと愚考されます。したがって、数多くの一般債権者利害事情を調査検討することとなり、そのために相当の時日を要することは論をまちません。ひいては本条の目的である事業継続に、著しい支障を来たすおそれのある中小企業者早期救済は大いに阻害され、第百十二条の二の精神と相反する結果となると考えられます。  いま一つは、一般債権者利害等裁判所が考慮される場合、「中小企業者との取引の状況、会社資産状態」等から判断して、債権弁済を許可すべき条件を具備した場合といえども、利害関係人の同意を必要とすることとなれば、中小企業者利害相反する者の反対意見によって、債権弁済可能性すら危うくなることも考えられます。これでは、せっかくの同法案改正も画竜点睛を欠くうらみなしとは言えません。以上述べました理由によりまして、ぜひとも「利害関係人利害」とあるを御削除願いたく存じます。  山特鋼管財人グループは、最近ほぼ更生計画案の立案を終わりまして、七月下旬には債権者に対し了解交渉に入ろうといたしております。おそくとも九月の末までには関係人集会を終わり、更生計画認可を得ようといたしておりますことは明白でございます。  以上申し述べましたように、今国会会社更生法改正お願いいたしますことは、非常に焦眉の急に迫っております。何とぞ今国会で同法の御改正を御決定くだされたく、また、その実施時期は、以上述べました山特問題の時期切迫という時点とからみ合わせまして、本年の九月一日に実施となるように特別の御考慮を全国数百万の中小下請企業者とともに伏してお願いを申し上げまして、私の意見にかえます。  終わります。
  7. 大坪保雄

  8. 白矢勇

    白矢参考人 山陽特殊製鋼労働組合組合長白矢でございます。  会社更生法の一部改正案の内容に至るまで、一応若干経過意見を申し述べたいと思います。  昭和四十年の三月六日に会社更生法適用申請、続いて同月二十三日更生手続開始決定以来、私たち山陽特殊製鋼従業員はこの二年半の間、更生法下において、会社再建のため苦境に耐えて全力を尽くしてまいったわけであります。  この間、私は労働組合最高責任者として、初めて経験する倒産、そして更生法下労働運動という未知の分野を悩み、また苦しみ、また憤りをもって手探りで進めてまいったわけでございます。私たち組合運動が正しかったかどうかということにつきましては、皆さん方の御批判をまちまして、現在管財人団を中心といたしました会社幹部及び組合員、全従業員の努力によって会社の体質は大きく改善され、会社更生への基盤は固められつつある段階でございます。  本日、会社更生法改正案審議にあたって意見を求められておりますが、何ぶんにも私は現場育ちという労働者立場で、非常に理論立ったことを申し上げることはできませんが、ただ、この二年半の体験から感じましたことを、率直に皆さん方に御披瀝申し上げたいと思います。  その前に、私たち山陽特殊製鋼労働組合が、この二年半、いわゆる会社更生申請以来、基本的にとってきた態度を若干申し述べてみたいと思います。  私たちは、会社倒産に至った事情経営者経営態度等については、いろいろ掘り下げて問題にしなければならないことの多いということについても、よくわかっております。しかしながら、現実倒産したということで、従業員のみならず、多くの債権者苦境に立たされたという現実も直視してまいりました。そこで、従業員及び家族の生活と権利を守るためには、会社再建させていくことが先決であるという一点の柱を立てたわけでございます。そのためには、職場を守り生産、の火を絶やしてはならない。それがまた同時に関連下請企業を救う道でもあるという基本的な第二点の柱を立てました。第三点目といたしまして、会社再建には全面的に協力いたしますけれども、ただし、会社更生の名のもとに、労働者犠牲を転嫁するような再建策については、認められないという組合の基本的な態度をもって、今日まで歩んできたわけでございます。  以上の観点に立ちまして、若干、会社更生法改正審議に際して、私の体験による意見を申し述べたいと思います。  まず第一点に、会社更生法趣旨に沿い、事業継続支障のないよう万全の措置を望みたい。言いかえると、手続開始決定前の事業経営に欠かすことのできない借り入れ金の問題でございます。倒産に至るまでには、経営者金融対策八方手を尽くし、目ぼしい担保価値のあるものは、ほとんど担保に入っているはずでございます。倒産し、会社更生法適用申請すると、手持ちの現金のほかは、銀行預金なども、借り入れ金担保ないしは割引手形担保として押えられてしまっております。したがって、手続開始決定までの間は、資金繰りがつきません。現行法では開始決定までの期間は、融資してくれても、それが更生債権となり、更生計画によって弁済方法がきまるまでは、だれも好き好んで融資してはくれないからでございます。勢い材料、半製品、売り掛け金のみがたよりになりますが、売り掛け金とても簡単には回収できないのが現状でございます。  私たち労働者は、働くことが身上でございます。しかし、運転資金がないと、給料さえ支給されるのかどうか、また現在の生産資材の欠乏から、生産休止を余儀なくされ、働こうにも働けない状態に至るわけでございます。倒産のショックに加えて、こうした事態になると、組合員不安動揺は、つのる一方となります。幸い、山陽の場合ですと、毎日会社幹部組合幹部協議いたしまして、生産計画を立てております。細々ながらも、生産の火を絶やすことなくがんばり続けてまいったわけでございます。このこと自体が、今日の段階では大きな心のささえとなり、再建への力になったと私は強く感じております。  今回の改正案では、申請後、保全処分決定とともに、保全管理人が任命され、裁判所の許可を得て、手続開始前に事業経営に欠かすことのできない借り入れ金、原材料の購入などをしたときは、共益債権となって扱われることになっております。これで資金借り入れの問題につきましては道が開けてまいりました。しかし、私の体験から言わせれば、もう一歩進めて、資金の貸し手を法的にはっきりとさせてもらいたい。裁判所が許可したときは、公的な金融機関更生融資するという制度が必要だと考えるわけでございます。  第二点目といたしましては、労働協約あるいは労使協定事項については、開始決定の前後を問わず、そのまま権利継承し、すべて共益債権として随時弁済をできるよう法定化していただきたいと思います。現行法では第百二条第四項で、労働協約については管財人が継承することになっています。この趣旨を生かして労働協約協定で明文の定めのある事項、たとえば賃金退職金慶弔見舞い金通勤費社内預金などは、すべて権利を尊重し、共益債権としていただきたいと思います。なぜならば、会社再建にとっては、従業員労働組合の協力は、私は欠かすことができないと強く信じているからでございます。それゆえに、労使関係の基本的な問題である協約協定を、尊重することが大切だということです。協定事項をめぐって紛争を生じ、不信を増すというようなことは、大きく再建阻害をする要因になるということが言えると思います。  第三点目といたましては、退職金の問題について。現行法では取り扱いがはっきりいたしておりません。まず一点目の手続開始決定前の未払い退職金は、更生債権としてたな上げされるようです。開始後も共益債権更生債権か、自己退の場合は劣後的更生債権か、これらがはっきりいたしておりません。現に私どもも過去三月二十二日現在で、組合員退職金総額を計算して、債権届け出を準備いたしました経過がございます。しかし、退職金性格からいって、本来差別する理由はないと思います。また、雇用関係に断絶がなく、一般感情からいっても、全員解雇を前提にしたような退職金債権の計算と届け出というようなことは、ぴったりといたさない感覚もございます。幸い改正案ではこの点が配慮されております。しかし、労基法の解釈例規にも示されておりますように、協約定めのある退職金は、賃金として取り扱っていただきたいということでございます。開始決定前の未払い給料との関係で、六カ月間の給料相当額、または退職金の三分の一のいずれか多いほうを限度に、共益債権化されたと思いますが、少なくとも協約協定定め退職金は、全額を退職の時期にかかわらず共益債権としていただきたいことを希望したいものでございます。特に倒産——更生会社という暗い見通しの中で退職する人たちにとっては、それが唯一の生活上欠かすことのできない資金になることは間違いない事実でございますから、この点御配慮願っておきたいと思います。  第四点目の社内預金の問題につきましては、現行どおり共益債権として随時弁済されることが私は望ましいと思います。特に労働省の指導で、社内預金の問題につきましては、制度的にもかなり改善され、労働基準監督署の指導監督も強化されておりますので、共益債権として随時弁済されたいということについても強調しておきたいと思います。幸い山陽におきましては、監督署の指導によりまして、払い出し計画につきましても在籍者は現段階においては全部完了いたしております。  第五点目の下請債権者の問題につきましては、少なくとも従業員の未払い給料について保護されている法の精神を、そのまま下請の加工賃債権、人件費に充当されるべきものにも適用していただきたいと思います。改正案では下請債権弁済制度を設けられておりますけれども、もう一歩進めて、加工賃、賃金退職金債権共益債権化を明文化していただきたいと思います。  第六点目の、会社更生計画への労働組合の参与についての考え方を述べたいと思います。  更生計画の中には人員整理、賃下げ、労働強化等、労働条件の切り下げ、あるいは改悪を盛り込み、一方的に労働者犠牲をしわ寄せすることのないようにしたい。現行法では更生計画案については、裁判所労働組合意見を聞くことを義務づけています。しかし、それはでき上がったものについて意見を聞かなければならないということだけで、意見が必ず取り上げられるというような保証はありません。また、労働組合は、組合員退職金債権を、更生債権として届け出たときでない限り、更生計画決定その他、関係人集会法律上参加する権利がありません。少なくとも更生廃止といった従業員の生活に最も重要な事項については、必ず組合意見を尊重し、報告できる権利を法的にも付与していただく必要があると思います。私ども山陽の場合ですと、労使対等の原則に立って、労働条件に関する事項につきましては、あらかじめ協議することを会社と申し合わせております。少なくとも、労働条件の問題にかかわる事項につきましては、既得権あるいは将来的権利に重要な影響を与え、労使関係を不安定にし、更生計画の遂行にも影響することについては考慮されまして、事前協議制を法的に義務づけていただきたいということにつきまして、強く労働組合意見として申し述べておきたいと思います。  以上でございます。
  9. 大坪保雄

    大坪委員長 ありがとうございました。
  10. 大坪保雄

    大坪委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。横山利秋君。
  11. 横山利秋

    ○横山委員 参考人の皆さんにはどうも御苦労さまでございました。それぞれ今日までいろいろな経過を経ていられて、この法案の作成にもいろいろな意味で御協力をいただいたことを厚くお礼を申し上げたいと思います。  まず三ケ月先生にお伺いをしたいのでありますが、たとえばいま労働組合委員長が言われた中で社内預金の問題、これは現行法より政府案は明らかに後退であります。後退の政府の説明は、給料及び退職金と、社会預金と格差をつけることは、理論上正しくないのではないかというような意見だと私は考えております。しかし、そういう理論的な問題よりも、むしろ何とか改善をしようとみんなが考えた立場から言うならば、そういうところに理屈をつけなくたって、現状より悪くする必要、積極的な理由はないのではないか。しかも労働省は、社内預金についての規制を加えて、社内預金の質的な改善をはかり、大蔵大臣は、社内預金は今後やめたい、やめる方向でいきたい、こう言っておるときに、この政府案というのはいささか過酷に失するのではないかと考えられますが、まずその点からお伺いしたいと思います。
  12. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 ただいまの御指摘でございますが、実は会社更生法が当初できましたときには、社内預金というふうなものがないまま、御承知のように預かり金という形で、身元保証人の預かり金みたいな感じでつくられて、これをひとつ保護しようという形で出てきたように思いますが、それがその後社内預金という制度が非常にふくらみまして、そしてそれがそのままあそこにいうところの預かり金であるというふうな形で処理されてまいったわけでございます。これに対しまして、たとえばいろいろと会社更生法の論議が出てまいります一環におきまして、社内預金というふうなものがすぐ全部払い渡され、しかし一方で下請代金とかなんとかいうふうなものが凍結され、それから——というふうな関係がかなり論議されたように私は思うのでございます。そういたしますと、やはりここいう辺のところに、社内預金制度というふうなものの将来のあり方ということにつきまして、もちろん労働省とか、あるいは大蔵省とかの指導で、不当にこれが広がらないようにと申しますか、異常事態になってくるというふうなことのないように、合理的な範囲で規制していくということは、これは非常に適当なことであり、望ましいことのように思うのでございますが、あわせてそういう問題が現実の課題として出てまいりましたときには、過去と違いましてもう一度バランスをとり直すというのも、やはりこの段階での立法の一つとしてやるべきではないだろうかというふうな角度から、この問題が取り上げられたのではなかろうかと愚考するわけでございます。そういたしますと、社内預金というものは、主として従業員の金銭債権になるわけでありますが、給料と、退職金と、社内預金と、それぞれやはりある程度のバランスというものが、先ほど私の申し上げましたような獅子の分け前のぶんどり合いになるような手続の場合には、筋を通していきますことのほうが、かえって中小企業債権処理等々のバランス、ないしは担保権者をも、多数決によって拘束するという、まことに日本の実定法としては異例な処理等々との関連で合理的なのではなかろうか、政府案の基底にある考え方は、こういうことであろうと思います。社内預金は、おそらくこういたしましても、共益債権、優先債権になるわけでございますから、弁済時期の前後ということはございましても、大体それほど従来の扱いとは違いはないのではないかという憶測もあるように感じられます。私、そういうふうに考えております。
  13. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど過怠更生罪に言及をされましたが、私どももこの現行法の最大の弱点は、当時世間に喧伝されましたように、結局大企業保護法に終わっておるのではないか、下請や労働者がそれの犠牲によって会社再建されるというきらいが実に多いという点で、過怠更生罪の創設を主張したのでございます。先ほど先生はそれに言及されて、何か他のやり方でということをおっしゃったのでございますが、いま少し詳しく先生の御意見を伺いたいと思います。
  14. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 先ほど時間がございませんのではしょって申し上げまして、たいへん失礼いたしました。  実は、こういう会社倒産におちいらしめた責任の追及というふうなものがございませんと、会社更生法に逃げ込むというふうな形になるのは当然でございまして、こういう形で問題点が出てまいりました段階におきまして、当然これに対する筋を通すと申しますか、責任追及の手段というものが備わらなければならないような感じがするわけでございます。その場合の責任の追及のしかたとして、私はいろいろ考え方があるように思うのでございまして 社会党の御案のように やはりそういうふうな事態におちいったものに刑罰的な制裁を科することによって、その責任を問うという行き方もございます。それからもう一つは、最近大きな事件でようやく活用されるようになってまいりました取締役等に対する損害賠償の査定の手続というものを動かしまして、より実効的に損害賠償ということをかけていくということが一つであろうかと思います。それからもう一つ更生計画などを点検いたしておりますと、実際問題として過去の経営者というものが居すわる例があるわけでございます。やはり更生法の精神といたしましては、そういうふうな場合に、理事者の交代というふうな形で筋を通すことが、法律のそれの計画の中の条項として入っておりますように、その辺のところで、やはり実効的に居すわりという印象を除去するように、計画立案段階で指導していく、あるいはそういう形に持っていくいろいろな対策が考えられるかと思うのであります。  ところで、過怠更生罪という制度の当否につきましては、もちろんいろいろと検討がなされたわけでございますが、これが取り入れられなかった背景は、私の考えによりますとこういうことではなかろうか。それは、こういう制裁を置きますと、当然そういうどたんばに追い込まれました理事者、会社経営者は、ますますそれをおそれまして時期を遷延し、泥沼の中に足を突っ込む。そういたしますと、かえってよりすみやかな段階更生手続開始をしたならば、傷口はかくも大きくならないであろう段階において申し立てがなされていくというふうなものに役立つべき効果がありはしないか。これに比べまして、より実効的な方法は、制裁を科していくというよりも、果敢に損害賠償請求権の査定というふうなことを動かしていく、こういうことが考えられるのではなかろうか。政府案の中でも調査委員の制度の改正というふうな形の一環といたしまして、損害賠償責任の査定の問題の必要があるという場合に、調査委員の任務を規定しておるのもこういう含みかと存じます。  こういうふうないろいろな形でもって、理事者の責任追及というものがなされなければならないんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 横山利秋

    ○横山委員 福永さんにお伺いをしたいのでありますが、福永さんの御趣旨は、「利害関係人」の「利害」を削除してもらいたい、それから実施期日を繰り上げしてもらいたい等に力点があったように記憶をいたしておるわけであります。  この山陽特殊鋼倒産以来今日に至りますまでに、下請として、経営者に対してどういうことをお考えでございましょうか。きわめて抽象的な御質問になって恐縮でございますが、先ほど冒頭にちょっとおっしゃっただけで、労働組合と下請との間には、お話を聞いておりますと、若干のニュアンスの違いがあるようでございます。いま白矢さんの御意見を伺いますと、とにかく再建をしたいという気持ちが実に濃厚な御発言でございます。下請の皆さんは、再建もいいけれども権利確保という並行的なお考えのような感じが間々、これは福永さんばかりではなくて、一般的に感じられる点でございます。それらの点を含めまして、非常にお苦しみになりました下請の皆さんの一般的な考えはどういうことでございましょうか。抽象的で、おわかりでございましょうか。
  16. 福永常男

    福永参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  われわれ中小下請企業者といえども、会社再建につきましては、全面的にすみやかな立ち直りを希望いたしております。しかしながら、何分ともに山特の場合は、長期決済という問題もございまして、われわれがこれによって被害をこうむりました額は、力以上の実に膨大なものでございます。もちろん、親企業更生がすべてを解決する問題ではございますが、時間をかけまして親企業がよし立ち直ったといたしましても、それまでにわれわれが倒産をした場合、先ほど申しましたように、山特の従業員総数三千七百名に対して、われわれとて二千五百名余りの従業員を擁しております。これは親企業とともどもに更生をいたしましたときには非常にけっこうでございますが、われわれの犠牲に立って親企業のみの存続がはかられましても、一向にわれわれのピンチを脱することはできないと思います。もちろん私が申しましたことと、労働組合長さんの御意見とは、若干のニュアンスの違いがあるような感じがございますが、本質的にいたしましても、もとよりわれわれは親企業更生を望んでおります。しかしながら、親企業更生と並行いたしまして、われわれともどもに企業の立ち直りをはかるということが、私たちほんとうの希望でございます。
  17. 横山利秋

    ○横山委員 次に、福永さん、先ほど御希望になりました実施期日の繰り上げという問題でございますが、これが原案どおりでありますと、事実上どういうふぐあいが生ずるか。承れば九月末に関係人集会がおありになるそうでありますが、これが繰り上げを、私どももせっかくの御陳情でございますから考慮いたしておるところでございますが、原案ではどういう実害がございましょうか。
  18. 福永常男

    福永参考人 お答えいたします。  現今の時点で判断いたしますと、山特鋼は九月の三十日までに更生計画案認可を終わりたいという管財人は希望を持っております。もし本改正案が九月三十日以降において可決をされた場合、われわれの債権擁護のせっかくの御改正も何らなすところなく、恩恵にあずかり得られないということでございます。以上述べましたような理由で、私たちはぜひとも今国会に御改正お願いし、しかも九月一日にさかのぼって実施をしていただきたいということでございます。
  19. 横山利秋

    ○横山委員 三ケ月先生にもう一つ伺いますが、共益債権に基づく強制執行または仮差し押えの中止等を定め改正法の規定二百十条の二なんでございますが、裁判長が強制執行の中止または取り消しを命じられるという場合、それをすることは、更生会社更生に著しい支障を及ぼし、かつ、更生会社が他に遊休設備などの換価容易な財産を有する場合となっております。私ども心配しますのは、裁判長が強制執行の中止または取り消しを命ずる、ほかに売れるやつがあるではないかという意味でやる、けれども、売った金が確実に強制執行をした人間のところへ換価されて返ってくるという保証が一体ないではないかという感じがいたすのであります。差し押えなり強制執行なりなんなりをした人は、それをてこにして自分の債権を保全をしておるのですけれども、裁判所に、中止または取り消しをされた場合に、その見返りとして確実にその人に対する金が返ってくるという保証が一体これはどこにあるだろうかと思われるのでありますが、いかがでございましょう。
  20. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 これはなるほど換価可能な財産を有するときの執行停止の規定でございますが、その強制執行の中止または取り消しを命ずることができるわけでございまして、逆に換価可能な財産を有する場合に、そちらのほうの強制執行というふうなものにかかっていくというふうなことのための規定のように私は考えるわけでございます。いわば差し押えがえの規定でございまして、要するに、こちらのAという財産であったならば、どっちみち満足はこちらの共益債権のほうにいくのでございますが、そのかわりに、Aという財産を押えないでBという財産を押えてこれでもってやってほしいという場合に、AからBに乗り移る、その限度においては、「その強制執行又は仮差押えの中止又は取消しを命ずる」というふうな規定で、差し押えがえという精神がここに出ているように私は思うわけでございます。ただし、こういうふうな問題も、あくまでも、元来は強制執行することは自由でございますが、どうしてもその財産がいま運転上必要であるというふうなことであるとか、それからまた、他の換価容易な財産があるときに限るわけでございまして、ないときには、これはできないわけでございますから、強制執行による満足が可能である、こういうふうに考えております。
  21. 横山利秋

    ○横山委員 差し押えがえということではあるけれども、差し押えがえをしてもらう趣旨には違いないけれども、何かそこで一本抜けておる。そういう趣旨はわかる。やるかもしれぬ。けれども、やらぬかもしれぬ。返ってこないかもしれぬという感じがいたすのでありますが、いま福永さん、白矢さん、私の質問をお聞きになっていらっしゃって、何か御意見がございますれば伺いたいと思いますが、ございましょうか。——ございませんか。  それから白矢さんの御意見、いろいろ伺いました。具体的な御提案をいろいろいただきましたことは恐縮をしておるのでありますが、総じてこの政府案についてどうお考えでございますか。私どももある意味の前進があることは事実だとは思うのでございますけれども、しかし一番明白なことは、社内預金は明らかにこれは後退である。このほか、保全管理人という性格がどういう実際の動きをするものであろうかどうか。労働組合として団体交渉をなさいますときに、手続前ですと、保全管理人が指定されますと、社長は団体交渉権の当事者能力を失って、保全管理人がかわる。あなた方がいままで団体交渉をしていらっしゃった経緯から申しまして、責任のある社長は、手続前といえども、保全管理人が指定されますと、当事者能力を失って保全管理人がかわる。新しく参った保全管理人を団体交渉の当事者として労働組合としては選ばなければならぬということも含めまして、本改正案を原則的にどうお考えでございますか。賛成か反対か等も含めて御意見を承りたいと思います。
  22. 白矢勇

    白矢参考人 改正案の内容につきましては、かなり前回よりも前進したということについては、私どもこれを評価しております。ただ、私が前段に申し上げましたように、私の体験上からすると、全般にわたってもう少し具体性がほしいということを申し上げたわけでございます。たとえば、一つ問題点を例示いたして申し上げますと、社内預金の問題、それから組合員の労働条件の問題につきましても、一応保全管理人がきまるまでの間はかなり組合員も動揺しておりますし、保全管理人がきまると同時に直ちに交渉に移行する場合、現行の労働協約の内容なり労働条件、それはもちろん退職金の関係その他すべての慶弔金の関係につきましても、一応法的に保全処分の内容におきまして停止されるわけでございますが、そろいう関係を法的にはっきりさせておけばスムーズにその移行措置が行なわれるだろうという見解をもちまして、若干突っ込んだ内容を申し上げたわけでございますので、その辺のところをよく御了解願いたいと思います。
  23. 横山利秋

    ○横山委員 白矢さんに、いま私が申し上げた一点、もう一度念を押しますが、保全管理人をどうお考えでございましょうか。つまり社長が当事者能力を失って、手続開始前といえども保全管理人が団体交渉の当事者となる制度について、どうお考えでございましょうか。
  24. 白矢勇

    白矢参考人 私は保全管理人が団体交渉員となるということについては、当然だと思います。
  25. 横山利秋

    ○横山委員 こういうおそれはございますまいか。なるほど社長は、だらしのない、こういう事態に陥らしめた責任はあるけれども、その責任というものは、団体交渉をする場合に労働組合として十分追及もし、事情も知悉しておる。そこで新しく保全管理人が来て、事情がわからないままに、権限もありませんから裁判長に一々お伺いをしなければならぬという点につきましては、私どもといたしましては原則として保全管理人指名しないほうがよろしい。保全管理人が指定されるということは、まさに社長というものがたいへんな人間で何するかわからぬという場合に限って指定せられるべきであって、原則としては社長が団体交渉の当事者であるべきであろうと考えるのですが、その点についてどうお考えでございましょうか。
  26. 白矢勇

    白矢参考人 少しわかりにくい点があると思います。いわゆる保全管理人といいますか管財人と社長との関係でございますけれども、管財人といいますと、いわゆる最終的な段階になると自分の立場といいますか、それが責任度合いからして非常にあいまいだ。そういう点からして社長が最高の権限といいますか、責任度合いを強く持つべきであるという私の印象が間違っているかどうかわかりませんが、そういう考え方でございますが、それでよろしゅうございますか。
  27. 横山利秋

    ○横山委員 それではその点について三ケ月先生にお伺いをしたいと思います。おわかりでございますね、私の意見は。どちらにお考えでございましょうか。
  28. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 会社更生法乱用論議の一環といたしまして、とにかく更生手続に逃げ込んで、そうして保全処分を使いながら、それをたてとしてかかるという問題が一つございます。と同時に、もう一つ過去の実績を点検してみますと、やはり管財人の人選で非常に手続が長くなる。勢いその間時間が延びる。その間保全処分一本でつなぐ。しかもそれは、従来の経営者が一応営業のできるたてまえのもとで弁済禁止等々の手段だけでいく、こういう事態があるわけでございまして、特にその責任追及をきびしくやらなければならないような会社の場合の一つの抑えといたしまして、保全管理人制度というふうなものが考えられたわけで、乱用防止の一環と私は考えております。と同時に、これは置くことができる最も重症な場合の対策でございます。それより一歩手前には、今度は監督員という形で、それまで大きく出ていかない保全処分もできますし、それも要らない場合には、今度は従来どおりの保全処分でまかなうという場合、むしろ私の感じでは、これまでの保全処分だけではいささか旧経営者が表に立ち過ぎるという乱用論。こういうものまでやりますことの一つ対策、こういう面があるんじゃなかろうか。実際の運用といたしましても保全管理人が出てまいりますのは、これをずっと徹底して責任追及をしなければならぬ。社会党の御案ですとむしろ過怠更生罪をかけていかなければならぬような、損害賠償請求の何億いくかもしれない事態、こういうふうな場合に出てくるのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  29. 横山利秋

    ○横山委員 時間があまりございませんので、ほかに御質問もしたいと思いますが省略をいたしまして、お三人の方にそれぞれ補足的な御意見がございましたらお伺いをしたいと思うのです。  私どもは今回の政府案改正が不十分だという感じがしてならぬのです。しかもその中で社内預金のような、明らかに後退をしておる点があると感じておるわけであります。  そこで、お三人の方々に、いままで御発言があり、かつ、私から御意見を承った以外に、今後の法律改正ないしは運用問題で、この際お聞かせを願うことがございましたら、簡潔でけっこうでございますが、それぞれの御意見を承りたいと思います。
  30. 福永常男

    福永参考人 この改正政府案につきまして、一言所見を申し述べます。文章が非常に抽象的でございますので、当を得ていないといううらみが大いにございます。現在の改正案によりますと、第四章で更生債権弁済の許可の条文が入っております。この条文がこのまま決定されますと、われわれ中小下請企業者といたしましては、この実行につきまして管財人もしくは裁判所側が、われわれに非常なる好意をもって、そして便宜をはかってくれなければ空文になるおそれが十分にございます。これは文章が非常に抽象的である、どちらにでも判断ができるというような欠点があることを、特に指摘しておきたいと思います。  なお、もう一つ山特鋼の場合を例にとりまして申し上げます。私たち二十四名の下請企業者の全債権は、山特鋼の債務総額のわずか一・二%にすぎないような状態でございます。立ち直りの非常に早かった山特鋼におきまして、現時点におきまして代金を払おうと思えば払えるというように私は確信をいたしております。ですから、今度の改正につきましては、いわゆる先ほど申しましたように、画竜点睛を欠くうらみのないように十分なる御改正お願いしたい。そして血の通った、いわゆる下請に対して代金の支払いがスムーズに行なわれるような条文に御改定願いたい。これを切に念願しておきます。
  31. 三ケ月章

    ○三ケ月参考人 この法案性格につきまして、私、冒頭に述べましたことを、最後に少し述べておきたいのであります。何分短時日の間にやらなければならなかったために、おっしゃるとおりに、しなければならない点がまだいろいろ残っているように感ずるのであります。ちょっと釈明さしていただきますが、私、実は法制審議会委員といたしまして、多少原案の作成にタッチしたものでございますから、そういう立場から申し上げる面が出てくることを御了解いただきたいのでありますが、そこで、実はこのほかにもいろいろな問題が取り上げられまして、そういうふうな問題から見ますと、私個人の考えとしては、この際できればもう一歩こういうふうな点を突っ込んでいくべきであるという点が、先ほど申し上げましたように、たとえば中小企業更生法というもののあり方はどうであるかというような問題について、やはり一応考えておかなければならぬ時期が来ているんではないか。さらに今度は担保現象の中で非常に特異な地位を占めております譲渡担保というようなものの規制についても、一ぺん考えていくべきじゃなかろうか等々の問題があるわけでございますが、これは先ほど申しましたように、今後、生きた経済と直結した法律でございますだけに、あまり法典として祭り上げることなしに、時々刻々の現実の生き方に応じまして、改正を理解していくということを期待するということでございます。  さて、それから先生の御指摘の、中途はんぱな点ということでございますが、確かに今回の改正はいろいろな問題が出てまいりました。それぞれ利害が対立するわけでございます。労働者債権と、下請企業債権と、金融機関債権と、税金の債権と、担保を持つ者と持たない者そういうふうなもののいろいろな権利の調整というふうなものも、実体法秩序のワク内で、これまでは少しばく然としておりましたような点について、あるいは一歩退きあるいは一歩前進するというような形で、バランスを取り直した法律性格があるんじゃなかろうか。それぞれ見ますと、したがいましてたとえば後退している面もあるいは見られるかもしれない。税金をとる立場から見ますと、従来税金で非常に強く保護をされていたのが、今度は税金を待ってくれというような後退もあるわけでございます。そういうふうな面から見ますと、後退か、それともバランスの取り直しかというふうなことは、とる立場に立ってながめてみますといろいろ出入りがある問題でございまして、まさにそれであるからこそ、更生法の立案の場合に、それの調整におそらく非常な苦心があったのじゃなかろうか、こういうふうな感じでございます。
  32. 白矢勇

    白矢参考人 全体的な問題この法律改正とは若干ニュアンスが違うかもわかりませんけれども、私の立場から申しますと、第六点目に申し上げましたが、いわゆる更生計画案樹立の段階では、いまの法律では労働組合意見を聞くということだけであって、この点は事前協議制を義務づけていただきたい、また労働条件の低下の問題、人員整理の問題も、更生計画案の中に盛り込まれるようなことであれば、法的に抗告できるような内容にしてもらいたいということを強く主張したいわけです。その間の経過の内容は、私たちはいまでこそ、景気の見通しの中で、かなりの利潤といいますか、それだけの条件をあげておりますけれども、あの苦しかった時代の内容は、想像に絶するほど、従業員は非常に犠牲をこうむりました。管財人側においても、雇用問題については、下請全体を含めて非常に配慮を払うといいながらも、あの一昨年の十月の段階では、非常に生産トン数も減少された時点では、あえて私たちは涙をのんで、四百人からの希望退職者をのんだわけであります。その間には、長年住みなれた職場を、涙を流しながら振り返って去って行った人もおるのでございます。そういう中で、私たちは、景気の見通し、あるいはその問題を含めまして、あらゆる犠牲内容を生かしながら小の虫を殺さざるを得なかったという苦況に立って、今日まで乗り切ってきたのでございます。それだけに、この更生計画案の樹立の内容を目前に控えて、私たちは、少なくとも労働組合意見は最大限に取り入れてもらいたい。この山陽の問題が直ちに全般的にこの会社更生法適用範囲にあるかどうかということについては、先生方の御意見を待つといたしましても、この点については労働組合としては強く希望しているわけでございます。
  33. 大坪保雄

    大坪委員長 加藤勘十君。
  34. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 大体いまの横山委員の質問で、皆さんのお考え方もわかりました。ただ一つ白矢さんに、あなたが実際に山陽製鋼で経験された点と、今度の改正案との間において、こういう点はどういうようにお考えになっておりますか。すなわち、保全管財人定められて、会社の経営、財産の一切が保全管財人に移る。そのときに労働組合労働者の生活を守るという点から、極力、たとえば退職金の問題にしても未払い賃金の問題にしても、全額を要求するということは当然でありますし、そういう点からいろいろ経営者との間に交渉がなされてきた。それが保全管財人の手に移ってしまいますと、もう経営者ではなくして単なる法律の番人である、そして法律の条項に従ってだけ債権者権利保護する、こういう立場にある管財人との折衝の場合に、はたして経営に責任を感じておった会社経営者に対する交渉と、保全管財人に対する交渉の点と、この点は全然同じとごらんになっておるのか、あるいはそういう場合に著しく違う点があるというようにお考えになっておるのか、この点を、ひとつあなたの実際の経験に基づいて御説明を願いたいと思います。
  35. 白矢勇

    白矢参考人 私の体験を率直に申し上げますと、三月六日の時点で、更生法適用申請という事態が起きました。その間には二月の段階でかなり金融不安説の問題から、株価の暴落した時点もございます。その時点から労働組合としては放置できない問題であるということで、旧経営者に団体交渉を申し入れまして、その件についての問題点の集約、いわゆる退職金の問題、それから社内預金の問題、未払い賃金の問題等について交渉を行なった経緯がございます。その間には、すでに更生法の問題が出た前後でございますので、旧経営者の内容については、どうしても私たちの一存ではいかないという問題が提起されまして、労働組合としてもかなり精神的にも、生活条件的にも、困った問題が生じてまいりました。しかし、私たちのとった態度は、いろいろこの間に話し合いをした集約した問題点を一応議事録、協定書に双方捺印して、保全管財人がきまると同時にこの問題を履行してもらう内容の協定書を旧経営者と取りかわしたことでございます。それを直ちに、管財人が着任した時点で、旧経営者管財人と交えまして、こういう問題点についてこういうことで労使の間できまったのだということで、この協定書を履行してもらったわけであります。この協定書一に従いまして、保全管財人はその内容についていろいろ労働組合意見を聞かれまして、いろいろ一問題点がございましたが、その時点、時点で話を進めながら、管財人との間を調整しながら、今日の段階で、退職金についても、社内預金の問題についても、スムーズに事が運んできた、こういう経緯がございますので、その取引の、いわゆる更生手続開始の保全管財人がきまると同時に、前の経営者との協定を履行してもらうということをやった、こういう経過でスムーズにいったということが、この債権の内容については非常に重要なポイントではなかろうかというように考えます。
  36. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 実際に経験をなさいました経験の経過について御説明で、その間の事情はよくわかりましたが、問題は、保全管財人管財人の手に移るまでの裁判所決定を見るまでの過程において、保全管財人段階において、保全管財人、まだ経営者との交渉が未解決のままに、いまあなたのおっしゃるように調印ができて、それを管財人のほうに移すということで、労働組合の主張は相当に重く取り上げられておるようでありますが、そうでなくして保全管財人段階においてどうなるのであろうか、そういう点についての御配慮はございましたでしょうか。
  37. 白矢勇

    白矢参考人 むずかしい問題だと思うのですが、旧経営者に対して、労働組合は、なかなか交渉の内容については、交渉をするかたわらにその問題の責任追及という形をとらざるを得ないのです。また保全管財人の内容については、交渉相手としては当を得ておるかどうかという問題点、二つの問題点がからまってきておると思いますが、その間の内容については、私どもの場合ですと、かなり時間が長い関係もございましたし、スムーズにいったということの内容で、私たちが全力を傾注したのは、むしろ労働組合、いわゆる従業員の動揺を押えるほうに全力を傾注したわけです。そういう関係もございまして、その間の内容については、はたして管財人が単なる法律の番人かといろ問題については、その時点では明確に私たちも勉強しておりませんでしたし、いまの段階で申し上げられますことは、その間の内容についてはかなり明確にしておかなければ、個々の問題点としては出てくるのであろうというように判断しておりますので、以上のことだけお答え申し上げておきます。
  38. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 ただいまの御説明で、労働組合の責任者としての御苦心のあるところよくわかります。ただ問題は、この改正案において、その他の点においてもそうですか、まだたくさん明確を欠いておる点があると思うのです。そういう点は御希望のありますように明確になることをわれわれは望んでおるわけです。しかし、全体としては、現行法に比べれば、少なくとも下請中小企業者立場からいけば一歩前進であるということだけは認められますけれども、だからといって、この改正案が満足なものであるというわけにはわれわれは思っておりません。ただいま御希望のある点もよくわかります。だから、われわれはそういう方向に向かって、この法律を固定化して、そのままにしておくのでなく、やはり時代の動きと一緒に動いていくような方向に向かってその改正がなされなければならぬという意味では、先ほどの三ケ月参考人のおことばのとおりに思うのです。あなたもそういう点については御同様のようでありますが、そうですね。
  39. 大坪保雄

    大坪委員長 これで終わりですね。
  40. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 終わります。
  41. 大坪保雄

    大坪委員長 これにて参考人に関する議事は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をいただき、両案の審査に御協力くださいましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。     —————————————
  42. 大坪保雄

    大坪委員長 質疑を続行いたします。横山利秋君。
  43. 横山利秋

    ○横山委員 時間を節約いたしまして、あとで法務大臣、労働大臣に御出席を願うことになりますが、少し局長に詰めておきたいと思います。  まず最初に、先ほど参考人からずいぶん議論がありました預かり金の問題です。もう簡潔でよろしゅうございますから、いままでの質疑応答を整理して、あとで裁判問題ないしは労使の交渉の場合におきまして、どう考えるべきかという点をお答え願いたいと思います。  改正法による預かり金の規定、百十九条の三が、現行法の規定百十九条後段よりも共益債権範囲を狭めたという点については、どうしても納得ができない。これはずいぶん今後の紛争の問題になると思うのでありますが、いかなる理由であるか、そして後退をした場合における労働者の不利益はどう処遇されるのかという点をお伺いをいたします。
  44. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 今回の会社更生法改正におきましては、預かり金の取り扱いももちろん必要でございますが、そのほかに、中小企業者債権取り扱い、あるいは更生会社従業員退職金を、どう扱うべきかというふうないろいろの権利関係の調整を考えたわけでございます。  申し上げるまでもなく、この会社更生法の精神は、従業員も含めまして会社債権者あるいは株主等の協力を得まして、会社を維持更生させるというところにねらいがあるわけでございます。一般破産和議等と違いまして、会社更生法会社をあくまでも更生させていくということのために、債権者の協力を求めなければならないというふうになっておるのでございます。そこで、各種の債権をどのように扱えば、最もそれぞれの債権者の間の均衡もとれ、また債権者保護も果たし得るか、それによって会社更生の道が開けていくかということを考えなければならないのでございます。先ほど参考人意見にもございましたように、現在の預かり金という制度が会社更生法に取り入れられました当時には、現在のような社内預金というものはございませんで、それが後にだんだんと大きくなってまいりまして、解釈上の問題も出てまいったのでございます。もちろん労働者債権でございますので、できるだけこれは保護する必要がございますが、一般債権あるいは給料、退職金との均衡も考慮して、その上に立って会社更生をはかるという趣旨からいたしまして、ある程度の社内預金についての扱いを改める必要があろうということになったわけでございます。もちろん現在社内預金につきましては、これは文理上は共益債権というふうに解釈されるのでございますけれども、実際の取り扱い上はいろいろになっておるようでございます。その中にありまして、給料の六月分あるいは社内預金総額の三分の一を、ともかく共益債権といたしまして随時いつでも弁済できるようにいたしましたほかに、その残りの部分につきましてはこれを優先的更生債権といたしました。優先的更生債権でございますので、一般更生債権のように減免の措置が講ぜられるということはまずないわけでございます。共益債権は即時弁済されますが、優先的更生債権はただその支払いが更生計画によってきまるということでございますので、若干支払いが延びる、そういう意味において債権者の協力を求めるということになるわけでございます。のみならず、現在会社更生手続に入っております会社につきましては、附則の規定によりまして従前どおりにこれはすることになっておりますほかに、一たん破産になりました場合に、現行法ではこれを一般破産債権として減免の措置を大きく受けるわけでございます。破産の例で申し上げますならば、六〇%、七〇%ぐらいの減額を受けるのも通例でございます。しかし、それもやはりこの際考えなければならないということから、破産の場合におきましても、優先的破産債権ということにいたしまして、できるだけ従業員社内預金のその面での保護をはかろうといたしたわけでございます。会社更生事件は四十一年度におきまして六十数件の申し立てがございましたが、破産のほうは二千件をこえておる状況でございます。そういった面から見ますならば、この破産法上の取り扱いは従来に比べまして非常に有利な扱いになってくるということが言えるわけでありまして、それらをいろいろ総合してお考えいただきますならば、決してそれほど実質的な後退があるというふうには私どもは考えていないのでございます。法律制度としてほかの債権との均衡を考えましてこの程度のことはやむを得ないであろうというふうに考えておる次第でございます。
  45. 横山利秋

    ○横山委員 次は、退職手当でございますが、更生手続開始前と開始後における、また現行法改正法における退職手当の相違点をこの際明白に説明をしておいていただきます。
  46. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 退職手当につきましては、現行法扱いをまず申し上げて、今回の改正とどれがどうなるかということを申し上げます。  現行法の解釈によりますと、更生手続開始一つの限界になるわけであります。手続開始前に会社をやめました人は、これは自己の都合による任意退職でございましても、また会社の都合による勧奨的な退職でございましても、一律にこれは優先的更生債権ということになるのでございます。しかし、今回の改正法によりますと、これは給料の六月分あるいは退職金総額の三分の一に相当するものは、すべて共益債権として保護を厚くいたしたわけでございまして、その残りの部分が優先的更生債権ということになるわけでございますので、開始決定前にやめました人につきましても、事由のいかんを問わず今回の改正案のほうが有利になるわけでございます。  それから開始決定後にやめました場合に、自分の都合で任意に退職いたしました場合には、これはやはり優先的更生債権という扱いになっております。この点も、今回の改正法によりますと六月分あるいは総額の三分の一に相当する金額につきましては共益債権といたしまして、残りの部分は同じく優先的更生債権として優遇の措置をいたしておるわけでございます。  それから開始決定後に労使の交渉あるいは勧奨等によりましてやめました場合につきましては、これはすべて金額につきまして会社更生法の二百八条の規定が適用になりますので、全額共益債権として取り扱われるわけであります。この点は従来必ずしも規定の上で明確でございませんでしたけれども、今回の改正法の百十九条の二の三項の規定にその点を明らかにいたした次第でございます。  なお、退職年金の場合におきましても、改正案によりましては同様の趣旨によりまして共益債権となる部分を明らかにいたしまして、退職手当の取り扱いについての保護の道を厚くいたしたということになっておる次第でございます。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど参考人からも話がありましたが、労使の交渉で、手続開始前に諸般の諸問題を協定をした法律的な効果については、改正法はどういう影響をもたらしますか。
  48. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 開始決定前に労使の話し合いによりまして協定ができました場合に、これはもちろんこの協定を尊重してまいるべきものでございます。会社更生法の条文の上では、そのことを正面からは取り上げておりませんけれども、現在の更生法の百二条の第四項には、労働協約がございます場合には、双務契約による解除の規定等も適用しないという規定が一項入っております。このことが、労働協約はそのまま尊重してやるという趣旨でこの規定が入っておるという解釈に現在なっております。お尋ねのような場合には、管財人もそのまま労働協約の内容を尊重して、自後の更生手続を進めてまいるということになろうかと思います。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 その尊重してという意味が、協定によって共益債権にするときめた場合には、それが拘束をされるのであるかどうかということでございます。
  50. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 共益債権になるかどうかということは、法律の規定によってきまるわけでございます。ただ、共益債権的に有利に扱おうということは労働協約定められるかもしれません。したがいまして、労働協約共益債権とするということを書いてあるからといって、当然にそれが共益債権になるものではございません。共益債権は、あくまでも法律の規定に基づいて共益債権として認められるものの範囲に限られるわけであります。しかし、協定においてそれと同様に優遇的な措置を約束されました場合に、その約束がものをいって、共益債権に準じて取り扱われる、こういうことになる次第でございます。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 次の問題点は、労働基準法との関係であります。労働基準法二十三条第一項は、退職金債権の発生した後請求があれば、労働者の死亡または退職の日から七日以内に支払いを義務づけておる。退職金は基準法上の賃金だから通貨で全額支払わなければならぬと二十四条では定め、積み立て金、保証金、貯蓄金等のいわゆる社内預金も、請求があれば七日以内に全額支払わなければならない、これは二十三条第一項、第二項。これらの義務を怠った場合は百二十条によって犯罪成立ということになっておるわけであります。この基準法の規定と会社更生法との関連を説明を願いたい。
  52. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 労働基準法は、労使関係のそういった賃金についての支払いの場合、通常の場合の基準を示したものでございます。会社の経営が順調に進んでおります場合に、ことさらに賃金の支払いを遅延させるということのないように労働基準法で厳重にその点の規定を定めたものでございます。しかし、会社更生法は、会社の経営が破綻におちいりまして、先ほど申し上げましたように債権者、株主の協力によって会社更生をはかるということがねらいでございます。先ほどの労働組合の代表の参考人の方も述べられましたが、労働組合債権者も一致協力して会社更生させることが何よりも大事であるという御意見でございましたが、まさにそういう精神で会社更生法はできております。したがいまして、労働基準法に対しまして、会社更生法の規定は、その面においては一つの特別法の形をなしておるというのが現在の一般の解釈でございます。したがいまして、開始決定がございますと、労働基準法の規定はそのようになっておりますけれども、更生手続弁済が猶予されるというふうな場合には、これは更生法の規定によって認められるということになるわけでございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 その点は、私どもと少し見解が違うのでありますが、一応前へ進みたいと思います。  改正法三十九条、四十条の保全管理人性格及びそれの影響でありますが、先ほど参考人との質疑応答をしたわけでありますが、少なくとも社長、会社責任者と団体交渉をしてまいりましたのが、権限のない保全管理人を選定することによって労使の関係に不当な影響を及ぼさないかどうか、労使間の交渉を中断させるおそれはないかどうかと考えられるのであります。保全管理人性格、団体交渉の当事者としての能力、保全管理人を置くべき理由、時期等について明らかにされたいのであります。
  54. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 会社理事者が、放漫の経営をやったために会社が破綻におちいるとか、あるいはその理事者としての適格がないというふうなことによって、会社の経営が破綻におちいるわけでございます。そのような場合に、そのまま放置しておきますと、経営のみならず、労使関係についても非常に大きな影響が及ぶわけでございますので、これを防止いたしますために、開始決定までの段階において、とりあえず暫定的に保全管理人を選任して、適正な事業の経営なり労務管理をやってもらうということがこの保全管理人の設けられた趣旨でございます。あくまでもこれは会社が、どうしても理事者にまかせ切れないというふうな非常の事態に対する例外措置でございます。そのような場合に、むしろ保全管理人の選任によって、一般の経営ないし労使関係がうまく維持されていくということが期待されるのでございます。  なお、保全管理人が選任されました後に開始決定がございますと、多くの場合この保全管理人管財人になってあとの事業経営なり財産の管理処分を引き継いでいくことになるかと思うわけでございます。もちろん裁判所におきましても、そういう事態において保全管理人を選任いたしますので、その人選につきましては十分配慮されまして、適正な仕事のできる人を選任されるということを私どもとしては期待いたしておる次第でございます。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 置くことができるという意味は、原則として置かないと解釈してよろしいのですか。つまり、政府の今日までの説明は、現取締役が不正行為をするおそれがある、その取締役が行くえをくらましておる等であって、現取締役をそのままにしておくと、会社事業経営が乱れるおそれがある場合に、公正な管理をするために応急的に選任されるのであるから、通常一般の場合には、最も責任ある、会社責任者の社長が、団体交渉の当事者として責任を感じて事に当たるべきであるという解釈でよろしゅうございますか。
  56. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 お説のとおりでございます。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 次は、共益債権に基づく強制執行または仮差し押えの中止を定めた場合の改正法二百十条の二でありますが、労働者の有する共益債権の行使にとって、不当な障害となるのではないかという感じであります。先ほども三ケ月参考人からもこの点については、ややしりが抜けておるような感じの御答弁をいただいたのでありますが、裁判長が強制執行または仮差し押えを中止したり、取り消したりした場合におけるその保証は、裁判長が善処するということだけに限られておるのであるかどうか。強制執行、仮差し押えを中止させたことによって受ける被害といいますか、それはどう保証なさるおつもりですか。
  58. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 裁判所は、更生手続の遂行を常時見ておりまして、管財人措置等についての監督権を行使いたしております。その段階におきまして、会社事業経営にとりまして、不可欠の財産を差し押えられてしまったというような場合には、そのために事業経営支障を生ずるわけでございますので、これは何とか、会社のために経営ができるように考えなければならないのであります。ただそれだけで、それでは強制執行を取り相したり、あるいは中止したりすることができるかといいますと、それだけの要件ではございません。この改正案によりますと、なお、そのほかに要件がございまして、「会社が他に換価の容易な財産を有するとき」となっております。換価の容易な財産がある場合に限って、そのような措置がとれるということでございます。裏を返して申し上げますと、他の財産に強制執行のやり直しをしていく。それによって債権者は、もちろん債権の保全がはかられるわけでございますが、会社事業経営も影響を受けないということになるわけでございます。債権者側も会社側も、これによって助かるということになるわけでございまして、債権者保護措置が、これだけでは徹底し切れないのではないかという御意見のようでございますが、すでに押えた財産の他の財産、換価の容易な財産があれば、裁判所にもそのことはわかりますので、債権者にその旨を告げまして、そのことを進めることもできましょうし、またその間にほかの財産についての処分を認めて、その代金によって債権者債権弁済をすることもできますし、また債権者としての他の換価の容易な財産をまず押えておいて、それから裁判所が、さきに出された強制執行の中止なり取り消しをするということも可能でございますので、その規定の趣旨によって、十分ただいまの債権者保護ははかり得るものと考えております。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 労働大臣お見えになりましたから、短い時間でけっこうですが、大臣にお伺いします。  四十一年一月十八日、中央労働基準審議会は、社内機会問題についての答申を出し、そうして労働省は施行規則の改正をもって、この趣旨を管下に通達をされた模様であります。私のお伺いしたい点は、桂内預金の規制を、そういうふうに労働者で実行されておる。つまり社内預金の逸脱をしないように、質的に社内預金というものを適正に労働省ではなさったのであります。しかるところも今回会社更生法をもって、社内預金扱いを後退をされたわけであります。いままでは社内預金は、実際上は全額共益債権というような取り扱いをされておったのが、今回は後退をする扱いを受けました。これはいささか私どもとしては意外なことでありまして、この点労働省として看過すべからざることではあるまいかということが第一であります。  第二番目は、労働者と大蔵省と、社内預金についての感覚が違うような気がいたします。私は、大蔵委員もあわせてやっておるのでありますが、大蔵大臣は、従来から、田中さんのときから、社内預金は漸次これをやめるということを明言をされておるわけであります。法務省が今回会社更生法社内預金扱いを後退をさせるとするならば、逆に社内預金はもう全廃をするという政策を実行するならばある程度恕すべき点もあろうかと思うのであります。真中に立って、労働省としては、片や大蔵省に対してちゅうちょされておる。片や規制されて、適正な方向に動こうとしておる。社内預金会社更生法では不遇な扱いをされておるという点については、労働大臣としてどういうお考えであるかというのが第二点であります。  それから、第三点としては、労働基準法では、御存じのように請求があれば、退職の日から七日以内に賃金、積み立て金、保証金、貯蓄金等を払わなければ監獄にぶち込む、こういうことになっておるわけであります。だから、労働大臣としては、この基準法の守り神であるべき人が、会社更生法によって基準法がしり抜けになるということを、どうして御承知をなさったものであろうかという点に私どもとしてもきわめて意外に考えておるわけであります。この際、社内預金に関しまして、これらの各省間の調整、それから労働省の今後の方針を明らかにされたいと思います。
  60. 早川崇

    ○早川国務大臣 今般、会社更生法改正にあたりましては、法制審議会におきまして、労働省といたしましては現行法どおり社内預金の全額を共用益債権とするよう主張をいたしましたことは御承知のとおりでございますが、同時に下請代金あるいはまた給料その他との均衡も考えまして、御承知のように六カ月間の給料または社内預金の三分の一という制限は、バランスの上から、そのように審議会か決定をいたしまして、これまたやむを得ない措置だと労働者は考えておる次第であります。ただし、同時に、残額は、何らかの措置がとられていないわけではないのでありまして、その残額の社内預金は、優先的更生債権とするということにされたものでございますので、こういう点も配慮いたしまして了承いたした次第でございます。  なお、この問題に関連いたしまして、従来破産法におきまして、何らの保護が加えられておらなかった社内預金が、これまた優先的債権ということになりました。そういったようなこともあわせて考慮をいたしまして、審議会の答申どおり了承いたした次第であります。  二番目の社内預金に対する私たち考え方は、やはりこれは強制じゃございませんので、私はむしろ従来から主張いたしておるのは、従業員が自分の会社の株を持て、そして会社と共同体的な利害を持つということはいいことだと思います。社内預金もむろん銀行へ預金したらいいのですけれども、自分のつとめている会社に預金をする、その預金が、さらにその会社の運営に非常に利便を与える、また福利施設あるいは労働者の財産形成というよき面がございますので、私は、審議会におきまして、労働者側からこれは廃止したらどうかという意見もございましたけれども、この社内、預金という制度、これは強制しておるならばわれわれは反対ですけれども、会社というものと、会社につとめている従業員との一体感といいますか、いろいろな利便ということを考えまして、これはいいことである、決して悪いことではない、かように考えておる次第でございます。  なお、労働基準法の法律解釈につきましては、労働基準局長から、これとの関連につきまして、技術的な面はお答えさせたいと思います。
  61. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 横山先生の御指摘の中で、労働基準法の二十三条の規定で、労働者の退職の場合における金品の返還の規定がありますけれども、それが会社更生法との関連におきまして、せっかくの二十三条の規定がありましても、共益債権あるいは優先債権といったような形で、別な角度からいわば押えられるような形になるので、二十三条の規定が働かなくなるのではないかという趣旨の御質問と理解いたしたのでありますが、私どもは、この二十三条の規定、それから二十四条の規定も同様でございますが、実質的には賃金請求権なり、あるいは退職金の請求権がございまして、それを実現するにあたりまして、労働基準法で特別の法的措置をした、つまりその債権を実現するにつきまして、たとえば二十三条で申しますと、金品を返還しない、あるいは支払わないという場合に、支払え、しかも罰則つきでそれを強制する、こういう形で労働者保護をはかったわけでございますが、それとは別に、各種の債権がございました際に、それとの調整関係をどうするかという別な問題が存するわけでございます。こういう問題の場が会社更生法の問題になろうかと思うのであります。賃金横権のみならず、他の債権との調整をどうするかという別な問題があるわけでありまして、いわばこの立法の趣旨、目的が違いますので、会社更生法があるからといって、二十三条の規定は動かなくなるという趣旨のものではないわけでありまして、先生の御懸念の点は、二十三条は二十三条として発動いたしますし、違反があれば罰則の適用をする、こういう線で進むわけでありますから、一応、観念的には先生御指摘のような点も考えられることでありますが、そういった点は、制度の趣旨から見まして、それぞれ発動されるものであるというふうに考えておる次第でございます。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、適法に会社更生法適用を受けて、七日以内に支払わなかったという場合においても、この百二十条によって罰に処せられる、こういうわけですか。
  63. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 二十三条違反は、それ自体として構成されるわけであります。したがいまして、基準法は基準法として定めておる一定の手続がございますから、それによって処理をする。ただ、実際の問題といたしましては、会社更生法適用を受けるといったような事態になりますれば、それを法的にどのように評価するかという問題はあろうかと思いますが、たてまえとしては、労働基準法二十三条の規定はそれなりに動いていくと考えてよろしいと思います。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 労働大臣の先ほどの話、いささか意外に感ずるわけでありますが、時間がございませんから端的に申し上げますけれども、田中大蔵大臣、それから福田さん、大蔵委員会では、大蔵大臣はすべて社内預金は将来やめる、やめる方向に行くと明言をされて、国会で大臣として、議事録に残っておるのです。あなたがいいことだということをずけずけおっしゃるというのは、まことに意外千万なことで、そうなりますと、大蔵大臣にここに来てもらわなければどうもいかなくなるのでありますが、これはどういうふうなお考えか知りませんけれども、いささか大臣としては不適当な御発言だと私は思うのであります。会社と一体になって会社を運営するということを私は非難しておるものではありませんが、しかし、社内預金というものが会社運転資金になる、そして会社がそれを利用をするということが、何といっても社内預金の本質なんであります。そういうことを労働大臣はいいことだといっておすすめになるかのごとき印象——もちろん先般の答申を得ていささか規制措置はおとりになりましたけれども、考え方が大蔵大臣とまるっきり違うということは、ちょっと見のがしがたいことになりますが、よろしゅうございますか。——いや、労働大臣にお伺いしたい。
  65. 早川崇

    ○早川国務大臣 大蔵大臣は、ほかの銀行との均衡上、大蔵行政から言われたのだろうと思うのであります。私は、労働行政の面からいえば、自分の会社に、強制されるのでなくて自由に預金をして、それが運転資金に役立ち、労働者の財産をつくる、住宅の融資にも回る、——いいことじゃありませんか。したがって、前の内閣の大蔵大臣の御発言は存じませんけれども、後ほど局長からお答えをさせますが、私はむしろ、アメリカのように、労働者は自分のつとめておる会社の株を持て、そうしてもうかったら配当も多く獲得する、損をした場合には、会社が損したのだから株が下がってもやむを得ない、そうすることによって、会社というものとそのつとめている人が、真剣に一体的に繁栄させる努力をしていく。私は基本的にはいいことだと思っておるのでありまして、これはそれぞれの担当する行政面からの意見であって、前の内閣のことは存じませんけれども、おそらく大蔵大臣も、金融面からいえば、銀行というのがございますから、銀行について、金利の問題、預金がそれだけ会社にとられるという問題から言われたのだろうと思うのであります。要は、その社内預金というものを、会社更生法やその他のように保護していく、そうしてある程度きちっと行政指導していく。これは審議会の答申もございましたので、労働省といたしましては行政指導をいたしたわけでございますが、私はいいことだと思っておるのであります。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 ますます奇怪な話です。大蔵大臣は、金融を守る立場から社内預金を廃止すると言ったのだろう、私は労働者を守る立場から、社内預金はいいと思っておるのだ、——労働者社内預金には反対しているのですからね、そんな、大臣がかってに国会で、私は大蔵大臣だから、私は労働大臣だからといって、意見が違っていいなんてしゃあしゃあと言われて、ああそうですかというわけにまいりますまいよ。これは大蔵大臣と労働大臣と意見を調整してもらって、社内預金に対する政府の意思を明白にしてもらわなければだめですな。
  67. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 田中元大蔵大臣が御発言になりましたその席には私もおりました。その後のいろいろな事情を私知っておりますので、補足して御答弁申し上げたいと思います。  当時、大蔵大臣が御答弁になりましたころは、まだ労働省と大蔵省との間の事務的な意見調整がついておりませんでした。そこで、どのように調整するかという点について、いろいろな考え方がありましたわけで、大蔵省としては、金融政策なりあるいは金利政策といった観点から、いろいろな考え方がございました。労働省としましては、社内預金というのは俗称であって、本来、労働契約に付随して使用者が貯金を強制したり、そういうことはいけないんだ。労働基準法の十八条の第一項では禁止しているんだ。その禁止を解除する一つの場合としまして、労使が協定を結んで、いわば集団的な意思で合意したならば貯蓄金の管理契約はできるんだ。いわば強制貯蓄に対する例外措置としておりますものが、社会的、経済的な条件の中にそれなりに発展いたしまして、そうしていろいろな効用を発揮するようになったわけでございます。  そこで、この社内預金と俗称されておりますけれども、本来の基準法の趣旨に立ち返りまして規制をしなきゃいけないという観点からいろいろ検討したわけでございます。その結果、問題は中央労働基準審議会に諮問という形で移されまして、そこで労使がそれぞれの意見が非常にきわ立った対立を見せました結果、かなり長期にわたって審議をしたのでありますが、社内預金について一定の規制を加えまして、労働者保護に遺憾なきを期する。しこうして、これを廃止するか存続するかという点については、改正した処置の成り行きを見ましてさらに検討いたしたい、こういうことで結論は保留になっておるわけでございます。しかし、現に労働基準法の十八条第二項の規定には、この制度があるわけでございますから、この制度につきまして大臣が御答弁になりました点は、大臣とされましては御就任以来、勤労者の財産づくり政策という点を掲げられておりまして、昨年末から本年の初めにかけまして、勤労者持ち家政策についてのいろいろな施策を打ち出されたわけでありますが、ただいま御指摘の持ち株制度であるとか、あるいはいろいろな問題があるわけでございますから、そういった政策から、いろいろお考えを述べられたわけでございます。その基準法の十八条第二項の制度としての問題は、労働基準審議会においていろいろ、いわばフォロースルーのような形で検討されておるところでございます。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、いま局長の言ったように、百歩譲っても、この審議会だって意見が対立している問題ですよ。それをあなたが国会に来て、私は社内預金賛成だ、いいじゃないかと言うことは少し逸脱をしていると思いませんか。審議会で結論がつかないのですよ、重要な議論になって。片一方の大蔵大臣は、こういう審議会の前であっても、社内預金廃止ということが単に銀行行政だけ。あれは金融資本の味方だからああ言うのはあたりまえだ。あなたはだれの味方ですか。労働者社内預金に反対しているんですよ。そうすると、あなたは経営者の味方だ。経営者の味方で社内預金に賛成している、そう言わざるを得ぬじゃないですか。少なくとも本日、との私が指摘しているように、会社更生法では理論的に社内預金は後退しているんですよ。あなたは何か先ほどのお話を聞けば労働省としては反対したけれども、この法案の結果について、まあしかし、しょうがない、あきらめたということをおっしゃった。そうだとしたら、少なくとも後退をしたこの扱いについて、労働大臣として社内預金は賛成でありますなんという得意な顔をされたのでは、私どもはちょっと——労働大臣、いつも非常に努力をしてやっていらっしゃるのにかかわらず、今度はチョンボだな、こう考えざるを得ません。私は先ほどの社内預金に関する発言について、もう少し労働大臣として、周囲の事情からいっても、ああいう積極的な社内預金育成論なり考え方を説くことは、もう少し考え直してもらわなければいかぬし、本法案審議に際しても、先ほどちょっとおっしゃったけれども、社内預金扱いの後退については遺憾である、そのくらいのことをおっしゃらぬとかっこうがつきませんぞ。
  69. 早川崇

    ○早川国務大臣 現に社内預金は認められておるわけでございますし、ですから、私としては日ごろ考えておる意見を述べただけでありまして、これが全部認められておらないことに対して非常に論議があると思いますけれども、そういう意味でございます。その観点からいいまして、社内預金ができるだけ保護されるという点は、審議会におきましても、労働省の立場として主張いたしましたことは、先ほどお答え申したとおりでございますが、同時に下請代金、給料、退職金その他、いろいろなバランスの関係上、審議会におきましては、六カ月の給与分、あるいは三分の一という制限がありましたことも、不本意ながら連帯という立場に立ちました場合にやむを得ない。しかし、そのほかにも、破産法その他で非常に優遇措置がとられておるので、この審議会の結論というものに従った、こういう意味でございますので、どうかこの点は、私の眞意を御理解賜わりたいと存じます。
  70. 横山利秋

    ○横山委員 おしかりおきまして、労働大臣御退席くださってけっこうです。  最後に、法務大臣並びに民事局長に、問題とすべき点を列挙して、最終的な締めくくりの質問をいたします。  私どもが心配をいたしております点はこういうことなんです。少なくとも現在の法律のもとで、労働者がしっかりしておるところ、その労働者というものは、先ほども山陽特殊鋼組合長が言ったのですが、われわれ労働者としては、その会社でおまんまを食っておるのだから、つぶれることよりも、むしろ再建したいんだという考え方が非常に強い発言であります。これは会社更生法適用されたときには、一般的に申しまして、ほとんど組合のほうがきわめて再建に熱心で、そういう組合の力のあるところは、この改正法よりも有利な条件において解決をしておるものが多い。再建ということと労働条件の保護ということについて、両立をしておる場合が多いのであります。ところが、この改正法によりますと、裁判所の権限もある程度強まり、保全管理人も置かれるということによって、なるほど底上げはできるけれども、六カ月、三分の一という一線以上にいくのは非常にむずかしくなる。そういう意味においては後退をしておる。こういう考えが強いのであります。  それから、これは裁判所の問題でありますけれども、この法案改正を、裁判長なり、管財人なり、保全管理人が、下請や労働者保護するんだという法案趣旨を十分に理解して運営せぬことには、これは絵にかいたぼたもちに終わる。また逆転する場合もかなりある。したがって、管財人保全管理人、あるいは監督者の、法案に対する周知徹底といいますか、この趣旨というものが、私の申し上げるような意味において徹底しないことには、この法案運用はきわめてむずかしい、こう考えるのが第一であります。  第二番目に、先ほど三人の参考人からいろいろと具体的な意見の開陳がありました。一歩前進とは認めるけれども不十分であるという点が、かなり列挙されておるわけであります。その項目についてはあとで聞いていただきたいと思うのでありますが、不十分の点が多いということです。したがって、この改正以後の運用の状況を見て、また再改正ということが当然俎上にのぼると思うのであります。法務省におきまして、法案審議の際に、満たされざる問題について、また運用状況について満たされざる問題について、今後どうお考えであるか、この二点をお伺いしたい。
  71. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 御心配をいただきましたお説、まことにごもっともであります。そこで、新しい更生会社の機関といたしましては保全管理人管財人、それから裁判所の諮問機関ではございますけれども、調査委員というような制度の運用にあたりましては、いまおことばに出ましたような事柄を極力留意いたしまして善処をさしていきたいと存じます。  それからもう一つは、この会社更生法は、何を申しましても、いろいろ御質問を承って反省をしてみますと、これで十全のものとも考えられぬ節もなくはないと存じます。これを運用してまいりまして、どうもこの点が不徹底であるというようなことになりました場合においては、さらに第二次の改正ということもできるだけ手っとり早く実情に即しまして、将来を考えていかなければならない。ただ、この法案を出しております御審議中に、次に行き届かないところができてくると改正をいたしますなどということを、大臣が発言するということ自体、たいへんどうも困ったことだと思うのでありますけれども、ありのままに申しますと、実情にそぐわざる点が出てまいりましたときは、また、ただいまおあげになりましたような事柄に行き詰まりを生じてくるということになりました場合においては、すみやかなる機会に、やはり第二次改正をいたしまして、御要望に沿うことにいたしていきたい、そういう決意であります。
  72. 大坪保雄

    大坪委員長 この際、おはかりいたします。  すなわち、ただいま議題となっております法律案のうち、内閣提出会社更生法等の一部を改正する法律案につきましては、これにて質疑を終了することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  74. 大坪保雄

    大坪委員長 本案に対し、自由民主党、民主社会党及び公明党の共同提案にかかる修正案が、大竹太郎君より提出されております。  まず、提出者から、その趣旨の説明を求めます。大竹太郎君。
  75. 大竹太郎

    ○大竹委員 私は自由民主党、民主社会党及び公明党を代表いたしまして、会社更生法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、その提案理由の説明を申し上げたいと思います。  まず、案文を朗読いたします。    会社更生法等の一部を改正する法律案に対する修正案   会社庭上法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   第一条のうち、第百十二条の二第一項の改正規定中「申立てにより」の下に「又は職権で」を加える。   附則第一項中「十一月一日」を「九月二十日」に改める。  昭和三十九年、経済界が深刻な不況に襲われましたのを契機といたしまして、更生手続開始申し立て会社が非常に急激に増大いたしまして、その規模も大型化しまして、これに関連する中小企業者やその他の債権者範囲も拡大してまいりました。更生会社に対する債権をたな上げされたために連鎖倒産の危険にさらされる関係中小企業者が続出する傾向にありまして、これを救済するため、適切な施策を講ずることが緊急の要事として各方面から要望されていたことは、御承知のとおりであります。今回更生会社に対する中小企業者債権保護することを一つの大きな柱として内閣より改正法案提出されましたことは、まことに時宜を得た措置と存ずるのでありますが、なお一歩を進め、中小企業者債権保護を厚くすることをはかる必要があると考えるのであります。  すなわち、改正法第百十二条の二の第一項において、裁判所管財人申し立てによって中小企業者債権弁済を許可することができることとしてありますが、各委員の質疑や参考人意見にも見られますように、裁判所管財人申し立てをした債権のみについて弁済の許可を与えることができるのみでありまして、管財人申し立てをしない債権についての救済規定は設けられていないのであります。業界においても、この点について多くの危惧の念を抱いているようであります。したがって、この点について適切な対策を講ずる必要があると考えまして、裁判所はその職権によって会社に対する中小企業者債権弁済を許可することができることとしたのであります。  次に、改正法の施行期日は昭和四十二年十一月一日となっておりますが、現在更生手続の進行中の会社についてできるだけ多くのものに対して改正法を適用し得るようにするため、その施行期日を繰り上げ、昭和四十二年九月二十日に改めたのであります。  以上が、本修正案を提出いたしました理由であります。何とぞ御審議の上御賛同をあらんことをお願いする次第であります。
  76. 大坪保雄

    大坪委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、これを許します。加藤勘十君。
  77. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 私は、社会党の立場から、政府案に対しては反対、修正案に対しては賛成、この趣旨を明らかにして反対の意思を表明したいと思います。  会社更生法は、現行法は大企業倒産を防止する、ことばをかえていえば、大企業保護を主眼として立法された感がありまして、これが実際の運営にあたっては、この更生法適用によって十分な保護をされるものは大企業会社であり、そしてそれに関連する下請、中小企業のごときは、ほとんど保護される余地がなかった。そういう点から政府改正案の提案となったものと思うのでありますが、中小企業者、ことに下請企業で、関連倒産を免れることのできないような危険におちいった小さい業者を保護する、こういう意味改正案が提案されたものでありましょうから、そういう点においては、現行法に比ぶれば一歩前進したものであるということは言われると思います。けれども、現行法においては、欠陥とされておった従業員保護といろ点に対しては、ほとんど顧みられていない。のみならず、ある点においてはむしろ後退をしておる。こういうことは、われわれがこの政府提案の改正案にとうてい賛成することができないゆえんであります。もちろん、会社更生でありますから、破産の場合と違って、更生をするという場合には、労働者が働かなければ更生にはならない。その会社更生の一番眼目である労働者に対して十分な保護が加えられて、労働者がそのことによって不利益な地位におちいらないように法はつとめなければならないはずである。それにもかかわらず、改正案においては現行法と変わりない状態であり、またある点からいくならば後退である。いわゆる社内預金の問題のごとく、たくさん問題を残しております。また、賃金あるいは退職金の問題のごときにおいても上限を制限しておる。こういうことも、本来の立場からいくならば、当然これは無条件で支払うべき性質のものなんです。労働基準法によって労働者の生活が保護されておる。しかも、労働基準法で定めるものは最低の条件、その最低の条件で定められておる労働基準法の規定が、この会社更生法によっては、ある場合にはじゅうりんされる、そういうことがあってはならないはずであります。しかるに、法はそういう点を全然認めていない。もちろん審議の過程において、いろいろ質疑応答の中にあらわれた政府当局の弁明の中には、あるものはなるほどとうなずかしめるものもありますけれども、多くの点においては依然としてうやむやである。結局、私がしばしば言うように、立法者の考えがどうあろうとも、一たび正法となってこれが具体的な場合に適用される場合には、これは裁判所であろうと、あるいは行政官であろうと、法の執行にあたってはどうしても法律の条文にとらわれてしまう。したがって、これらの点についても、刑法の問題とは違いますけれども、民法においても、やはり法文は明確にして、疑義を残さないようにするということでなければならぬ。そういう点からいきますと、いろいろな点が結局うやむやに、運営にあたって自由裁量が許されるような表明がされておるのであります。執行者が自由裁量ができるような法文は不完全である。いま法務大臣も最後のことばとして、この改正案実施されても、もし社会の実情に適しない場合には急速に改正の案を出す考えである、こういうことを言っておられるほどに、われわれから見ますならば、会社更生申請するような状態企業の実態がおちいったときに、この更生法によってはたして労使の間の疑義あるいは会社と下請業者との間の疑義、こういうものが解明されるかどうかということになると、われわれは多くの疑いを持たないわけにはまいりません。そういう点から、社会党としましては、政府改正案と比べて一歩前進した、中小業者、下請業者の立場からと、また経営の実態を握っておったものに対する責任の追及、こういう点を明確にした対策を出したのでありますが、これは顧みられていない。そして政府改正案だけが主として審議の対象となって審議されてきたのでありますが、その審議の過程における質疑にあらわれた点から見るならば、結局うやむやである。こういうやむやに、運営が自由裁量にまかされるような法の条文の数々に対しては、われわれはどうしても賛成するわけにはまいりません。したがって、社会党としては政府改正原案には反対をしないわけにはいかないのであります。  ただ、ただいま出された修正案の中で、第一項の裁判所が職権をもって中小業者を保護するような表現がなされております。これも、ないよりはあったほうがよい。これらの点についてももっと明確なものが出なければならないと思いまするが、ないよりはあったほうがよいという点で賛意を表しておるのです。  また施行期日の問題につきましても、現実に業者が苦しんでおる実情から、これを救済する意味において改正案には賛成をするのですが、しかし、政府改正案そのものは、いま申しますような理由によって、どうしても賛成するわけにはいかない。ここで私どもははっきりと、次のよりよき改正案提出されることを希望しつつ、反対の意思を表明するものであります。
  78. 大坪保雄

    大坪委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず本修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  79. 大坪保雄

    大坪委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  80. 大坪保雄

    大坪委員長 起立多数。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、おはかりいたします。ただいま議決せられました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  82. 大坪保雄

    大坪委員長 午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ————◇—————    午後一時十二分開議
  83. 大坪保雄

    大坪委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、本案について参考人より意見を聴取することといたします。  本日出席参考人は、司法書士会連合会理事長澤口祐三君であります。  参考人には、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ本案について忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いを申し上げます。  なお、議事を進める都合によりまして、御意見は十分程度にお取りまとめ願いたいと思います。  それでは澤口参考人お願いいたします。
  84. 澤口祐三

    ○澤口参考人 ただいま御指名にあずかりました不肖、日本司法書士会連合会理事長澤口祐三でございます。今般、司法書士法の一部を改正する法律案の御審議がなされるにあたりまして、はからずも立法府にお招きを受け、ここに意見を述ぶる機会を得ましたことを、心から光栄に存ずる次第でございます。  まず、結論的に申しますならば、政府提案として本国会提出されております同法案につきましては、原案どおり可決成立せられますよう心から切望する次第でございます。  以下、司法書士制度の変遷過程について若干その歴史的事実を申し上げまするとともに、本法案に対する意見を申し上げ、御参考に供したいと存ずる次第でございます。  司法書士制度は、一世紀の古き昔にさかのぼりまするが、明治五年に布達されました司法職務定制、明治六年の訴答文例によって、いわばその社会的孤々の声をあげたわけでございまするが、自来今日までわが国法務行政の一翼をになってまいったのでありまして、その間、大正八年司法代書人法の制定、昭和十年司法書士法改正、戦後昭和二十五年、昭和二十六年、昭和二十七年、昭和三十一年の数次にわたる法改正を経まして、現在におきましては連合会一個、司法書士会四十九個が、全国の司法書士を一つに結びつける拠点として、一万二千名の会員を擁する強制会としての強固な基礎を確立するに至ったのでございます。  特に、戦後の経済の民主化、高度経済成長は、司法書士業務にも深い関係があるのでございまして、ちなみに、法務省統計年報によりましても、昭和二十六年の登記甲号事件数五百万件が、同三十九年には早くも一千万件と二倍を突破するに至り、登記乙号事件は同年対比で約十二倍という上昇ぶりを示しておるのでございます。  これらの状況は、司法書士が国民の権利義務に重要な役割りを果たすものとして、一段と会員の品位保持、業務の改善、進歩をはからなければならないことを示しているのでございます。  昭和三十一年、法改正により、強制会に移行し、自主的統制の実をあげ、充実発展を進めてまいったのでございますが、組織の法的性格はいわゆる任意団体の域を出ず、諸般の不都合を惹起しているのでございます。  会の法人格保有の必要性は、単に財産の保有管理の問題にとどまるものではないのでございまして、福利厚生制度を確立することによって、強制会としての体質の一そうの強化発展をなし遂げ、ひいては国民と最も接触を密にするところの司法書士制度の近代化を達成し、国民の期待と信頼にこたえねばならぬと念願しているのでございます。  私ども司法書士は、いわゆる自由業者として自己の精神的、肉体的労務により出計を維持しているものでありまして、不慮の事故等によって所得活動が断絶したような場合は、経済的生活の瓦解するに至る危険性を常に内包しているのでございます。このような不安と危険性を取り除くためには、会員相互扶助による共済制度、年金制度、健康保険制度等を確立することが急務となっているのでございます。このような組織体制を備えることによりましてこそ、会員の綱紀の維持、品位の保持、資質の向上が十分になし遂げられるものと存ずるとともに、これらの体制のかなめをなすものこそ法人格保有という組織体の法的明確性にあると確信する次第でございます。  法人化とあわせ、法第一条の業務規定につきまして「司法書士は、他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁又は法務局若しくは地方法務局に提出する書数を作成し、及び登記又は供託に関する手続を代ってすることを業とする。」として、法案は登記又は供託の申請代理を明確化するものでございますが、これは、現行司法書士法の解釈、運用の実態に即応したものと考えるものでございまして、当然のことであると思量するものでございます。  業界積年にわたり、その実現を願望し続けてまいった懸案でございますので、諸先生におかれましては、深い御理解をもって御審議賜わりますことを切に切にお願い申し上げる次第でございます。     —————————————
  85. 大坪保雄

    大坪委員長 これより参考人及び政府当局に対する質疑に入ります。大竹太郎君。
  86. 大竹太郎

    ○大竹委員 こういう機会でございますので、この改正に直接関係のない事項もあるかと思いますが、二、三これらをお尋ねをいたしたいと思います。  第一に、司法書士法を拝見いたしましてもよくわからないのでありますが、いわゆる司法書士や土地家屋調査士の資格の獲得とでも申しますか、資格試験とでも申しますか、これについては、この法律を見ただけではわからぬのでありますが、これについてまず御説明をお伺いしたいと思います。
  87. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 司法書士と土地家屋調査士につきましては、その資格の取得の方式が異なっておるわけでございます。司法書士法、あるいは土地家屋調査士法にそれぞれ規定がございますが、司法書士のほうは、一定の要件を備えた者が司法書士となりまして、事務所を設けようとするところの法務局長、あるいは地方法局長の選考によりまして、認可を受けることになっております。これによりまして司法書士となるわけでございます。  土地家屋調査士のほうは、選考ではございませんで、同じく法務局、あるいは地方法務局におきまして、試験を実施いたします。その試験に合格した者が登録をして土地家屋調査士になる、こいうことになっております。
  88. 大竹太郎

    ○大竹委員 それでは、司法書士についてお伺いしますが、もちろん、事務所を設けて仕事をするのには、法務局長、または地方法局長の選考による認可条項がありますが、これは、資格のある者がいわゆる申請をした場合に認可するのだと思いますが、それならば、司法書士の資格はどうして獲得するのでありますか。
  89. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 司法書士法によりますると、第二条に規定がございまして、裁判所事務官、裁判所書記官、あるいは法務事務官、検察事務官の職にありまして、その年数を通算して五年以上に達する者、またはこれらと同等の教養、学力を有する者、これが資格でございます。その中から選考されるわけでございます。
  90. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に、今度この会が法人となるわけでありますが、いままでも会はあったわけでありますが、その会と仕事を実際にやることと、何か関係がいままでもあったのでありますか、ないのでありますか。  御承知のように、弁護士は資格を獲響いたしましても、開業するのには、たしかそれぞれの地区の弁護士会に加入をして、それで初めて仕事をやるようになっておると思うのでありますけれども、司法書士は、その点はどういうことになっておるのでございますか。
  91. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 法務局長認可を受けまして司法書士になりましても、各事務所の所在地にございます法務局におきまして、法務局の管内にあります司法書士会に入会をしなければなりません。これは、入会する、しないは自由でございますけれども、入会していない人は、司法書士としての業務を取り扱うことができない。これは司法書士法の第十九条に規定がございます。
  92. 大竹太郎

    ○大竹委員 この点は、それなら土地家屋調査士も同じことでありますか。
  93. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 調査士も同様でございます。
  94. 大竹太郎

    ○大竹委員 次に、お聞きしたいのでありますが、これは主としてやはり法務局関係の仕事をされるのが仕事の一番大きな部分でありますが、全国どこの法務局でも、司法書士あるいは土地家屋調査士がそこにいられるというのが現状でありますか。そこにそれがいない法務局は相当ありますか。現況はどうなっておりますか。
  95. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 現在、司法書士の数が全国で一万二千名おります。土地家屋調査士は約一万六千人ぐらいといわれております。これが全国に分散いたしておりますが、やはり登記とか供託というような仕事の多いところにそういった方が集中をされておりますことは、当然のことであろうと思うのであります。いずれの法務局管内にも、司法書士あるいは土地家屋調査士がいないというところはございません。しかし、その管轄区域内で、各市町村にそれぞれまんべんなく分散されて国民の依頼を受け得るような体制になっているかどかということにつきましては、これは若干問題がございます。やはり末端のほうへ参りますと、司法書士の数が少ない、あるいはいないところもあるというのが現状でございます。
  96. 大竹太郎

    ○大竹委員 時間がございませんので、簡単に最後にお聞きしておきたいのでありますが、最近、市役所とか、そういう行政官庁におきましては、書類の取り扱い、たとえば出産届け、あるいは婚姻届け、その他印鑑証明をもらうとか、こういう問題につきましては、非常にたくさん書類を刷っておきまして、だれが行っても簡単にもらえるというように、だんだん便利になってきておりますが、法務局関係の書類というものは、どんな簡単なものでも——どうもここに理事長さんがいらっしゃってたいへん恐縮なんでございますけれども、こういうことなんです。どんな簡単な書類でも手数をわずらわさなければいけないといようなことで、むだな費用がかかるし、時間もよけいかかるというようなことで、おっくうになる。裁判所は不親切だ、法務局は不親切だというような声が強いわけでありますが、これらもそうたいして金がかからない問題でございますので、登記所その他で一から十まで書類を備えておくということはもちろんなかなかできないことでありますけれども、簡単なものにつきましては、簡単に記入できるようにしたらどうか。たとえば市役所なんかの様式を見ますと、マルをつけるとかなんとかいうようなことで、便利な取り扱いができるようになっているが、こういうようにもう少し考えたらいいのじゃないかというふうに思うのでありますが、それらについて何かお考えになっておりますか。
  97. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 登記所の窓口ができるだけ能率的になり、また、申請者の皆さん方にとりましても便利になりますようにということは、これは最も大切なことでございまして、私どもも、年来そういったことについてはいろいろと努力してまいっておるわけでございます。ただ、たとえば登記をとりましても、事件が非常に多種多様にわたっておりまして、すべてにわたりまして完全にそういった書類を備えつけておくということも、なかなか容易なことではございません。しかし、きわめて簡単で、しかも事件の非常に多い謄本、抄本の請求とか、あるいは閲覧の請求などにつきましては、これはどなたでも書けることでございますので、書類を役所のほうで印刷いたしまして、窓口に備えつけて、これを利用していただくということをやっておるわけでございます。本件である甲号事件につきまして、すべてそれを実施していくということは、なかなか困難なことでございますけれども、これもやはり様式を統一いたしまして、できるだけそういった趣旨で国民にもサービスできるようにということを考えておる次第でございます。  なお、申請書そのものの内容が非常にむずかしい場合もございます。そういった申請書の書類だけではなくて、どういうことを書いたらいいかという書式のようなものも取りまとめまして、これは現に実行しつつあるわけでございます。できるだけ窓口を便利なものにしようという努力を今後ともいたしたいと考えております。
  98. 大竹太郎

    ○大竹委員 最後に、もう一点だけ伺っておきたいと思いますが、先般東京都内の登記所等をこの委員会で視察をいたしたわけでありますが、これはもちろん建物が非常に狭い、それから事務職員その他の手不足ということもございますけれども、実際のこまかい仕事は、司法書士や、あるいは調査士の事務職員がお手伝いをしている。そして最後に署名なり何なりを登記所のお役人さんがやるというのが実情であるわけでありますが、現在としては、ああいうことよりしようがないのかもしれませんが、ああいうことをしておりますと、いろいろ間違いを起こしますし、ああいうことは私は好ましくないことだろうと思うわけでありますが、きょうちょうど理事長さんも見えておりますので、それらについて理事長さんの御意見、またお役所の御意見等も、あわせて最後にひとつ伺っておきたいと思います。
  99. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 登記所の事件が激増いたしておりまして、法務局の職員だけで十分処理し切れないというのは、ただいま御指摘のとおりでございます。残念ながら各方面の方々の御協力をいただいておるということは、否定できない事実でございます。事務を処理するのは、もちろん法務局側におきまして責任を持って処理いたしておりますけれども、何と申しましても、こういった仕事を外部の方の応援にまつということは好ましいことではございませんので、増員あるいは事務の能率化等の措置を講じまして、極力これを縮小していく方向に努力いたしておる次第でございます。
  100. 澤口祐三

    ○澤口参考人 いま新谷民事局長によって言い尽くされておると思いますが、登記所は中央省庁の出先機関の中では最も繁忙な職場であることは、世人の認めておるところでございまして、司法書士が国民と登記所の中間に存するところの専門家としての役割りを果たしている以上、いわゆる乙号事件、すなわち謄本とか抄本等につきましては、司法書士あるいは補助者が潤滑油的な役割りを果たしていることは、事実でございます。もちろん登記官と司法書士の分限につきましては、厳格にその立場を明確にしていることは、確信を持って申し述べることができるのでございますが、この点につきまして、登記所の抜本的な予算措置が緊要であるかと存ずる次第でございます。
  101. 大竹太郎

    ○大竹委員 質問を終わります。
  102. 大坪保雄

    大坪委員長 横山利秋君。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 澤口さんにお伺いします。大体私が考えるのに、仕事をやるには強制加入方式ということになっておる。だから、司法書士はみんな司法書士会に入らなければならない、こういう組織になっているのが、まだもって法人格を得ていなかったということが、実は私はおかしなことに考えておるわけであります。これは民事局長も、当時私は承知をいたしておりませんけれども、強制加入をさせるといいながら法人格を持たせない、どういう議論がそのときにあったのだろうか、不審に思うのであります。しかし、いずれにしてもここに法人格を取得する、そうして強制加入方式の連合会ができ上がるということで、澤口さんにお考えを願いたいのは、これからの司法書士会がどういう運営をなさるかということであります。少なくとも法人として、強制加入の司法書士会として、社会的な地位というものが向上され、そうして運営もきわめて——いままでも一生懸命おやりになったであろうけれども、いままでと違ったあり方が少なくてはならぬ。いわんや、先般起こりましたような、法務局の職員とそれから司法書士の補助職員とが結託をいたしまして、不正事実があるようなことがあったのでは、これは何ともならない責任が今後生じてくるわけであります。あなたが先ほど自主的な運営をしたい、あるいは統制をしたい、あるいは相互扶助をしたい、こういう趣旨のことをおっしゃいましたが、法人格を取得した以後のその連合会の運営について、どういう変化、どういう構想をお持ちなのか、この機会に承っておきたいと思うのであります。
  104. 澤口祐三

    ○澤口参考人 ただいまの御質問は会に法人格を付与することの必要性と今後のあり方というふうにお聞きいたしますが、法律定められておりますように、司法書士会は、司法書士の品位の保持、あるいは業務の改善、進歩をはかるために、会員の指導、連絡を行なうことを目的といたしております。  冒頭にも申し上げましたように、現在の司法書士会におきましては、全国約一万二千の会員があり、会としての活動も年とともに充実、活発化してまいっております。  法人化の問題につきましては、昭和三十一年強制会に移行したとき、すでに実現されていてしかるべきであったとさえ考えられるのでございますが、現在におきましては、会の強化に伴い、会員の規律を厳守し、その相互扶助の制度を確立しなければなりません。  また一方、会は、会自体のいろいろの財産を保有するに至り、この財産保有の状況は、今後ますます増加することと思われまするので、福利厚生制度を確立することにいたしましても、財産保有にいたしましても、現在のようにいわゆる人格のない社団のワク内にありましては、十分なる機能を発揮することができません。このようなことからいたしましても、会の法人化は、私どもにとりましては必須の問題となるわけでございます。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 今日まできわめて僅少の問題といえどもまずいことがありましたようなことが、ぜひ今後ないように、会員相互の研修機能、あるいは共済機能、あるいは自主的運営の機能を十分にひとつ高めて、司法書士会の社会的責任を果たしていただきたいと希望いたします。  次に、伺いたいのは、これは民事局長にあとでお伺いすることではありまするけれども、責任者としてのあなたの御意見を伺いたいのですが、補助者というものですね。税理士だって、公認会計士だって、補助者を使っている。弁護士だって、その意味においては事務職員を使っておる。けれども、一々国税局長ないしは税務署長に、補助者を使いますが、何のたれがしですが、いいでしょうかなんて承認を受けることはありません。司法書士が補助者を使いたいといって、法務局長や地方法局長に、何で承認をもらわなければならぬのか。何か人数が制限されておるそうでありますが、こういうことはおかしいとはお思いにならぬでしょうか。何でそういうことをせんならぬとお考えでございましょうか。
  106. 澤口祐三

    ○澤口参考人 補助者の承認権限が法務局長、地方法局長に属しておりましても、補助者の指導、監督を会則に明足し、厳正に実施する必要があると存じます。  なお、補助者の使用につきましては、現時点におきましては、一定の基準を設け、その基準内におきまして会長の承認を受けること、その基準外については、法務局長または地方法局長と当該会長と協議の上、法務局長、地方法局長の承認を要することとするのも、一案かと存ずる次第でございます。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 民事局長にお伺いしたいのですけれども、補助者が悪いことをした場合に、だれの責任ですか。
  108. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 補助者自身の責任の場合もございますし、司法書士の責任になる場合もあるかと存じます。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 補助者自身の責任というのは、どういう場合ですか。
  110. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 司法書士の業務と関係がなく、補助者個人で不正事件を働いたというふうな場合には、これは補助者の問題でございます。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは、いま法律がそうなっておるので、その立場で議論なさるかもしれませんが、私は、きわめて自由な立場で、自分が給料を出して雇っている補助者を、何で法務局長の承認を得んならぬ。先ほど言った税理士と比較してみまして、何も司法書士だけ、補助者を、あなた方が、よしおまえ使え、おれが許してやるといわれなければならぬ積極的な理由は、どこにありますか。
  112. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 司法書士制度の向上発展、あるいは司法書士自体の品位の向上、能率の向上というようなことは、これは会のほうで自主的にやっておられるわけでございまして、だんだんその成果も上がってきておるように考えられるのであります。ただしかし、残念なことに、先年非常に問題になりましたが、申請事件の書類が非常に不備なものが多いのでございます。最近はだんだんそれも減少の方向には向いておりますけれども、そのために、登記所の窓口が非常に混乱して、事務が渋滞するという結果が起きたわけでございます。これの原因をたぐってみますと、ほとんど大部分の場合、補助者の人たちがその書類をつくって、十分司法書士の人が監督が行き届いていなかったということが出てまいったわけでございます。そのほかに、横領事件とか、あるいは印紙の不正使用事件とか、そういった問題が補助者を中心にして行なわれておるという事実もかなりあるわけでございます。もちろん方向といたしましては、補助者の使用ということは、司法書士あるいは司法書士会のほうで自主的にきめられることが望ましいのでございますけれども、現段階におきましては、まだそういった事例があとを断ちませんので、現行の補助着の承認制度は維持していきたいというのが、私どもの考え方でございます。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 理屈に合わないですよ。政府が補助者に給料を払うとか、補助者の法律的な独立の権限があればともかく、補助者がやったことで悪かったことは、全部司法書士の責任じゃないですか。そうでしょう。補助者がかってに悪いことをやったといっても、監督責任は司法書士であり、責任を追及されるのは、司法書士の判こを持ってやったことであるから、あくまで司法書士の責任である。司法書士を厳重に処罰すればいい。その司法書士の事務員なり補助者に対して、政府が横やりを入れて、おまえはいかぬとか、いいとか、おまえは任命してやる、おまえは任命してやらぬという政府にどこにその権限がございましょうか。つまりあなたの言い分は、税理士会と——例を税理士会に引くのですが、税理士会と司法書士会と比べると段違いだ、また司法書士はなっておらぬ、こういう理論からそれは発しておるわけですか。まさかそういうつもりはないでしょう。もしそういうことをやるなら、あなたの監督責任だ、あなたは何をやっておったかということになるでしょう。だから、法律体系としても、補助者に対してこの任命権を政府が持っておるというのは、だれが考えた制度か知らぬが、いかぬですよ。改正すべきだ。どうですか。
  114. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 事故が起きました後に、法務局側におきまして懲戒制度その他の制度を運用いたしまして、その処理をつけるということは、これは当然でございます。ただしかし、事故の発生するのを待つわけにもまいりません。先ほど申し上げましたように、やはり補助者は補助者なりに、十分その仕事のできるような人をお願いしたい、それによって登記所の事務の渋滞も避けられますし、また依頼者側の不都合もなくなるわけでございますので、あらかじめそういう承認制度によりまして、有能な補助者を使っていただくということで、一応チェックしてまいりたい、こういうことでございます。司法書士そのものが認可制度になっております。それと一心同体となりまして、書類の作成等の仕事をします補助者につきましても、それに準じて考えて、ちっともおかしくないのではないかという考え方でございます。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 それはちょっと説得力がないですね。大臣、私の言っておることはわかるでしょう。聞いていらっしゃいましたか。
  116. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 前の半分が……。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、こういうことなんですよ、私の言うのは。税理士会だってどこの会だって、税務署や役所が補助者の任命権を持っておるところはないのです。司法書士だけが、補助者を使うがどうですか、横山利秋という補助者ですが、どうですかといって、局長におそれながらと認可申請する。そして、よし横山なら使え、澤口ならいかぬ、こういうしかたというのは、おかしい。政府が給料を出すわけじゃあるまいし、補助者が悪いことをやったら、司法書士の責任じゃないですか。これは明白なんです。そういうことはおかしいからやめたらどうだ、こういうわけです。
  118. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 これは横山先生御承知のとおりに、司法書士自体については、地方法局長認可をしておるという制度でございます。そこで、補助者についても、同時にこの認可制度……(横山委員(なぜ、そんなことをせんならぬですか」と呼ぶ)それはそういうことになっておるわけでございます。なっておるわけですが、結論を申し上げますが、いまにわかに私が責任があることは申し上げられませんが、御説はまことにごもっともの点があると考えますので、将来の問題としましては、この補助者に対する取り扱いは、慎重に検討してまいります。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 まことに大臣はわかりがよくて、たいへんけっこうであります。私もいま直ちにとは言いません。やはり不利になる場合といままでの分とのあれがあるから……。ある時期を経て、これはどう考えても理屈に合わぬから検討をしていただきたい。  その次は、澤口さんに率直にお伺いしたいのですけれども、どうも町へ行くと、司法書士は高いね、こう言うのです。これにはあなたのほうの言い分もあるそうだが、この際、町でちょっとやっただけであんなに取るという俗説——率直に俗説と言っておきましょうか。そういう話について、どういうお答えをいただけるか、一ぺん聞かしてもらいたいと思います。
  120. 澤口祐三

    ○澤口参考人 報酬の規定に関しましては、大臣の認可に基づくものでございまして、これに違反した報酬を取ることは懲戒処分の対象とされておるのでございます。司法書士の報酬が高いというわを聞くことは、私どもにも耳に入ることはあるのではございますが、現実は決して高いとは言えない場合が多いのでございます。  一つ一つの仕事の内容について細かく御説明申し上げるいとまもございませんが、たとえば取引価格が数百万円あるいは数千万円という不動産の売買を原因とする所有権移転の登記の嘱託を受けた場合にいたしましても、私どもの報酬は、わずか千数百円ぐらいしか受け取ることはできないのでございます。あとはほとんど登録税でございまして、報酬が高いと言う嘱託人は、往々にしてこの登録税を含めた金額を、司法書士の報酬のごとく誤解されておる向きもあるように思われるのでございます。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 その登録税が今度高うなったのです。これは大臣、町へ行きますと、登録税と印紙税が高うなったことは圧倒的に評判が悪いのです。しかも、私も大蔵委員会で反対をしたのですが、登録税は、いまやっておる人には現行どおりなんですね。これからやろうとする人に登録税をかげる。だから、反対する人はおらぬ。おれが司法書士をやる、おれは何やるという人はまだきまっていないのだから。  そこで、私は大蔵委員会で、早稲田の学生デモの騒動を引用した。早稲田の大学生——私もあのときに一年生の子供を持っておったのですが、いま入学しておる人間は授業料は高うせぬ、これから入ってくる学生に授業料を高うする、おまえらは高うなるのじゃないのだから、何もストライキせぬでもいいじゃないかと言ったときには、早稲田の大学生いわく、後輩のためにがんばらずして先輩の価値があるか、こう言って早稲田は大騒動になったのですよ。けれども、これから登録税を出す人はだれだかわからぬのだから、入学したい、さむらいになりたいという気持ちの人が集結されていないものだからいかぬ。そこへいくと、法務大臣は最も登録税や印紙税の責任者ではなかったか。あなたは、あの税法の改正のときに、さぞかし閣議で反対をしてくださったと思いますが、どうでございますか。
  122. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 まことに申しわけありません。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 何だか申しわけないと言われると、どっちの話かわけがわからない。  そこでもう一つ、法務大臣にやはりぜひ考えてもらわなければいかぬということを伺います。  この間、民事局長にはほかの委員会でたいへんなおしかりをしたわけでありますが、不動産登記法十七条、十八条にこういうことが書いてある。「登記所二地図及ビ建物所在図ヲ備フ」、これは十七条。十八条の一項が「地図ハ一筆又ハ数筆ノ土地毎ニ之ヲ作製スルモノトシ各筆ノ土地ノ区画及ビ地番ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」、第二項、「建物所在図ハ一箇又ハ数箇ノ建物毎ニ之ヲ作製スルモノトシ各箇ノ建物ノ位置及ビ家屋番号ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」、こう書いてある。ちっともそれを登記所はやっておらぬ。できておらぬ。全然皆無と言っていいほどできておらぬ。これは、民事局長ちょっとむずかしい顔してござるけれども、実際問題としてできておらぬ。大体何ができるかというと、まあ私とおたくさんと争って話がついた、こういうふうにいたしました、争いのないものは改正する、あるいは建設省やどこかよその省が区画整理をやった、市町村がやった、それでこうなりましたからというやつは、ここにいう建物所在図を作製する。ところが、そんなものは法務省は何もやっていない。この法律的責任は法務省なんですよ。何もやっておらぬ。予算もついておらぬようですね。この法律ができたときから、もう何年になっておると思いますか。これは法務大臣のたいへんな責任であります。この件はまだ御存じないであろうとすら私は思うのでありますが、御意見を伺います。
  124. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 最近、参議院で田中一さんの御質問がございました。私は、不都合なことでありますが、初めてなるほどと理解したわけでございます。これはなかなか短日月にできるものでございませんが、これも将来の問題といたしましては、法の規定するところに従いまして、極力これを充実さすように予算的にも措置を講じ、努力をしてまいりたいと存じます。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 私どもは、同僚諸君と相談して、きょう附帯決議をつくろうとしておるのですが、いまや問題となっておるのは登記簿と土地台帳の一元化作業ですね。これが一体いつごろ終わるのかわからぬ。この間局長の話を聞きますと、とにかくこれをやって、それから不動産登記法に定める地図及び建物所在図の整備についてやるのだ、——百年河清を待つようなもんだ。だから、私は少なくともモデル地域をきめて、山梨だとかどこか一つのモデル地域をきめて、集中的にこの不動産登記法にきまっておる仕事をやってみなさい。それをやることによって、少なくとも全国くまなくこれが実行の段階に移すには、どういうような人員、どういうような予算、どういうようなやり方が必要かということがわかってくる。私だって、全国一斉にあしたからやれと言ったってできぬことは承知しておる。何か、とにかく緒についてもらわなければ——法律にはきまっておるけれども、年々歳々ちっともやっておらぬということは、法務省の怠慢、きわまるではないか。これほど国民に重大な権利義務関係に影響のある、法律に明定されておることを、いささかもしてない、言うとおこられるかもしらぬけれども、ほんとうに緒についてないのですよ。これはぜひ来年の予算要求にして、具体的に実行に移してもらいたいと思いますが、いかがでございますか。
  126. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 一元化問題等に相応じて、ひとつ法律の規定の精神に従いまして、具体的に着手をする計画を立ててみたいと思います。
  127. 横山利秋

    ○横山委員 澤口さんにもう一つ伺いますが、この法律では、司法書士の制度というのは認可ということになっておって、試験ということではないのですね。ところが法務局は、かってに全国画一的な試験をやっておる。法律では試験をやれとはいっておりはせぬ。認可制度になっておるのに、かってに試験をやっておるということは、これまたおかしなことだと私は思っておる。あなたとしては、将来、法律にきまっておるように認可式でやれというふうにおっしゃるか、あるいはいまの全国一斉の統一的な選考試験を、法律的に裏づけをしていきたいという立場をとられるか、どちらでございましょう。
  128. 澤口祐三

    ○澤口参考人 昭和三十一年、法改正により強制会に移行し、非司法書士の取り締まりと会の自治的統制の充実がはかられるとともに、選考も相当に高度な全国統一の選考試験が、法務省において指導実施されておりますので、有能な司法書士が漸次増加する傾向にあります。概して満足をすべきものであると考えているのでございますが、司法書士の選考につきましては、より一そう厳正な試験が行なわれまするよう希望するのでございます。  なお、近い将来におきましては、特別の資格を有する者の選考、認可のほか、国家試験制度を併用すべきものでなかろうかと存ずる次第でございます。
  129. 横山利秋

    ○横山委員 時間がなくなりましたので、まだ二、三点御質問をいたしたい点がございまするけれども、また別の機会に譲りまして、きょうはこれで終わります。
  130. 大坪保雄

    大坪委員長 澤口参考人には御多用のところ御出席をいただき、貴重な御意見を承り、本案の審査に御協力くださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。どうぞ御退席ください。  これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  131. 大坪保雄

    大坪委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  内閣提出司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  132. 大坪保雄

    大坪委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  133. 大坪保雄

    大坪委員長 本案に対し、自由民主党、日本社会党、民主社会党及び公明党の四党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が横山利秋君かう提出されております。  この際、本動議について提出者からその趣旨の説明を求めます。横山利秋君。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 朗読をもって説明にかえたいと思います。    司法書士法及び土地家屋調律士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、登記事務が国民の権利義務に関する重要な職務であること並びに司法書士。土地家屋調査士が登記に関する業務を取扱うものであることに鑑み、次の諸点の早急な実現について配慮すべきである。  一、登記簿と台帳の一元化を急ぐと共に、不動産登記法に定める地図及び建物所在図の整備について最善の努力を払うこと。  二、司法書士会及び土地家屋調査士会が、健全に発展し、会員の研修を自主的に行うことができるようにするとともに、懲戒制度についても、自主的措置がなし得るよう、育成指導すること。  三、司法書士の試験制度も、土地家屋調査士のそれと同様に、国家試験を採用するよう努力を致すこと。  四、登記所の人員増加、設備の充実等について格段の努力を払い、速やかに自主的に登記事務の適切且つ敏速な処理を行うことができるようにすること。  右決議する。  以上であります。
  135. 大坪保雄

    大坪委員長 本動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  136. 大坪保雄

    大坪委員長 起立総員。よって、本動議は可決されました。  この際、本附帯決議に関し、政府より所信を求めます。田中法務大臣。
  137. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 ただいま御議決いただきました決議案の趣旨の実現に対して、最善を尽くして御期待に沿いたいと考えております。     —————————————
  138. 大坪保雄

    大坪委員長 次に、おはかりいたします。  ただいま可決されました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  140. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事は、この程度にとどめます。  次会は、来たる十三日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三分散会