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加藤(勘)
委員 それでは木村さんがおられるようだから、私は集約して最後の
質問をいたします。
われわれがこの
スパイ事件を重要に
考えておるということは、言うまでもなく、国際間の問題であって、相手の国にどんな不快な念を与えるか、また、これが全体としての国交の上にどういう影響を与えるか、こういうことを非常に重要視するからです。ことに
スパイ事件というようないまわしい
事件を取り扱うことは、ほんとうを言えば、私はいやなんです。けれ
ども、扱わざるを得ない。
内河という人が八年の刑に処せられたといいますけれ
ども、
日本の少し古い話であるけれ
ども、いわゆるゾルゲ
事件、これに
関連した尾崎君のごときは、ほとんど
国民の知らないうちに死刑にされておる。私たちの知っておる人間でも、尾崎君と交遊があったというだけで数年間監獄に入れられておる。そういう事実を私たちは知っておるのです。したがって、今度の八年の懲役に対して、
日本政府のほうでは、主として
外務省等も、やれ抗議をするとか、やれ
早期釈放を求めるとか、かってなことを言っておる。一体、
判決文が手にも入らないで、真相も明白にならないときに、そういうことを一方的に言い切っていいものかどうか。これは
国民をして非常に誤解を与えるような、何か
ソ連のほうが無理を言っておるような印象を与える宣伝としか
考えられない。これは私は、官房長官は
調査室の総括
責任者として、当然その
調査室の問題から起こった
スパイ事件なんです。できれば私
どもはこういうことのないことを望むのです。また事実は
ソ連側に誤りがあったということを望みたい。けれ
ども、まだ
判決文が手に入っておらぬと言いながら、どういう
事情であるかわからない。勝間田という傍聴者、書記官の
報告だけを得て、すぐ、やれ
早期釈放であるとか、すぐ抗議するとか、一体
ソ連の側でそんなに粗雑に
調査したのでしょうか。御承知のように、
日本の漁師が漁船に乗って漁業に出て、そして
ソ連領にどういう
関係かわからぬが上陸した。これらの場合も、
スパイの嫌疑を受けて取り調べられたけれ
ども、やはり無罪で釈放されておる。今度の場合、ことにいま西宮
委員がきょうの新聞を読み上げましたが、これにはCIAとの
関係さえあるというように思われる記事が出ておる。私はこれは重大な問題だと思うのです。だから、この
内河という人は、
世界政経調査会と
内閣調査室とを混同して、
政府機関と自分が錯覚を起こしてそういう陳述をしたかどうか知りませんけれ
ども、そのいずれにしても、
調査室がその根源であることは間違いない。形式上の
スパイ行為そのものはどういうことであるか知らぬが、もしこれが完全に捕えられないで
日本に帰ってきたならば、その
報告は
調査室に来るわけである。とすると、名目は一
会社のサラリーマンとしての
観光旅行であるというけれ
ども、季節はずれの
モンゴルに十月の末に行ったり、
旅券の交付がわずか三日か四日でなされる。どうしても疑わざるを得ない。われわれが普通に
考えても疑わざるを得ない。だから官房長官に望みたいことは、あなたが主管していらっしゃる
調査室に対して、もう少し厳重に
——何も
スパイなんという卑劣な手段によらなくたって、
日本のようないわゆるあけはなたれた、俗に、軍備がない
——私は軍備がないとは言いませんけれ
ども、そういう軍備がない、何も秘密を持っておらない国であるというならば、そんなに何も
スパイまでやって外国の
情報をとらなくてもいいではないか。公の公館を通じてとればいいではないか、こういうことが当然
考えられる。どういう
根拠で一体
早期釈放であるとか抗議をするとかということが言われますか。
国民に対する
政府のてれ隠しの宣伝であるなら別問題。そうでないならば、もっとやはり慎重に扱わなければいかぬ。ごらんなさい。二十四日にこの問題が起こってから、私の目に入った新聞だけでもどれだけありますか。私は、目に入ったのは全部切り抜いてとっておる。こんなに大きな関心を持たれるに至ったことは、
スパイ行為という卑劣な手段に
日本政府が
関係あるがごとく、あるいはないがごとく、そこにやはり疑惑を残しておるからこうなる。なぜもっと明白に、ないならないということを確信を持って言えないのか。お互いにその場だけを糊塗するような、
委員会の
質疑応答さえのがれて時間がたてばいい、そんな
考えではいかぬと思う。こういう点について今後
調査室の
——先ほど会計検査院の問題も出ましたけれ
ども、今年度の予算は二億円をこえているのです。この
世界政経調査会に対しては、二億九百万円かになっている。一億何千万円じゃない。二億円以上の金を払って
調査を
委託する。その場合に、前払いか、できたものを買うか、そういうことが明白でない。そんなふしだらなことがありますか。また会計検査院にしてもそうだ。そういうようなあいまいな金の支出が概算払いで出されておって、それがどういう精算になっておるか知りませんけれ
ども、それでどうして正確な検査ができるか。内閣官房の
仕事だからあまり精密にできないというなら別問題。ことに諜報
機関の問題なんかについては正確が期ぜられない、外部に発表ができないというなら別問題ですけれ
ども、そうでない限りは、もっと明白にならなければならぬ。これはいずれも
国民の税金なんです。決してかってにつくり出した金ではない。いずれ、先ほど
横山君が
要求しましたように、政経
調査会の
責任者である広岡氏に来てもらって、もっと明白に官房との
関係を知りたいと思いますから、きょうはこれで
質問を打ち切っておきます。