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1967-06-27 第55回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十七日(火曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 高橋 英吉君    理事 濱野 清吾君 理事 横山 利秋君    理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    中尾 栄一君       馬場 元治君    加藤 勘十君       中谷 鉄也君    三宅 正一君       沖本 泰幸君    松本 善明君       松野 幸泰君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君         法務省民事局長 新谷 正夫君  委員外出席者         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月二十七日  委員中尾栄一君及び神近市子辞任につき、そ  の補欠として坂村吉正君及び中谷鉄也君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  会社更生法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四三号)  会社更生法の一部を改正する法律案田中武夫  君外十二名提出衆法第七号)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  内閣提出会社更生法等の一部を改正する法律案、及び田中武夫君外十二名提出会社更生法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。安倍晋太郎君。
  3. 安倍晋太郎

    安倍委員 今回提案されました会社更生法の一部改正法案について質問いたします。これは政府提案と社会党の提案がありますが、私は主として政府提案について御質問したいと思うわけであります。  この政府提案は、相当大規模改正でありますが、今日に至るまでには、社会的な改正に対する要望もずいぶんあったと思います。経済情勢あるいは社会情勢変化等がずいぶん勘案されてこの改正案になったと思うわけでございますけれども改正案方向につきましては私たちも賛意を表するものでありますが、しかし、この中にはいろいろの問題点もあるわけでございます。大体問題点につきましては提案理由の説明において明らかになっておりますけれども、一応念のために、この改正案提案されるに至りました背景、あるいはその基本的な方向といったものにつきまして、まず質問をしたいと思います。
  4. 新谷正夫

    新谷政府委員 御承知のように、昭和三十六年ごろからわが国経済界のいろいろの変動が出てまいりました。三十九年ごろが不況の頂点というふうにいわれておるわけでございます。その間におきまして、経済界、ことに会社倒産事件が非常に数がふえてまいりました。これに伴いまして会社更生法適用を申請する会社の数も急角度に上昇いたしてまいりました。国会におきましても各委員会あるいは本会議におきまして、いろいろ御質問が出まして、政府側検討を強く要望されたわけでございます。そのほかにもその当時から実際界のいろいろの方面から、特に商工会議所とか、あるいは地方公共団体、あるいは各業者の団体等から、会社更生法改正についての要望事項というものが相次いで出されたのでございます。こういった背景のもとにおきまして、政府といたしましては、現行会社更生法運用実績等を顧みまして、謙虚にその改むべきところは改めていくべきではあるまいかという考えに立ちまして、検討を進めてまいったのでございます。  昭和四十年の十一月二十七日に、法務大臣から会社更生法改正につきまして法制審議会諮問がございました。自来総会、部会あるいは小委員会準備会というものを、かれこれ三十回にわたりまして約一年少々の間に開催されまして、会社更生法の特に緊急に改正を要する点につきまして検討を重ねたのでございます。いろいろこの会社更生法運用実績にかんがみまして、問題点が数多く提起されたのでございますが、何と申しましてもこの種の法律は、社会情勢あるいは経済情勢に即応して、すみやかな改正が望ましいわけでございます。すべてにわたって改正するというわけには、もちろんまいりませんでしたけれども法制審議会におきましても、この際特に改正を要する点につきまして、約十九項目にわたりまして法務大臣に答申されました。その結果に基づきまして、事務当局といたしましても急速立案作業にかかりまして、ようやくこのたび国会の御審議を仰ぐ段取りになった次第でございます。  ごく大まかにこの改正方向と申しますか、要点を申し上げますと、何と申しましてもこの会社更生法改正要望が出ましたことは、親会社倒産に伴って、下請企業中心とする中小企業者を、どのように保護していくかというところに一番大きな眼目があったように考えられるわけであります。この中小企業者債権をいかように保護していくべきであるか、また、ほかの権利者との権利をどのように調整していくべきであるかということを、第一の改正点として取り上げた次第であります。  第二点といたしましては、国会でもいろいろ御議論がございましたが、この会社更生法という制度乱用するきらいはないか、この制度の陰に隠れて、ただ単に理事者あるいは当該会社の利益のためにのみこれを乱用するという傾きがないことはないか。そういった点について、さらに法制上の配慮を加える必要はないだろうかという点が第二点であります。  次は、裁判所補助機関でございます。こういった特殊な経済事情に応じまして会社更生法手続運用されていくわけでございますが、経済界のいろいろの事情を地方裁判所としても把握いたしまして、その運用に誤りなきを期する必要があるわけでございます。裁判所側もそういった意味での補助機関をさらに検討する必要はないかということが第三点でございます。  そのほかにこの手続をなるべく円滑に、すみやかに進める必要があるのではないかということがございまして、そういった観点から若干のこまかい点でございますけれども、この法律改正検討いたしたわけでございます。  ごく大まかに申し上げますと、以上の四つの点を目安にいたしまして、今回の改正案提出いたしたということであります。
  5. 安倍晋太郎

    安倍委員 大臣がおられますから、ちょっとお聞きしたいのですが、現行法律によりますと、いろいろの乱用がずいぶん行なわれておる。さらにまた、連鎖倒産等弊害等もずいぶん出てきておるということでこの改正になったと思うのですが、この改正案を施行されました暁におきましては、こうした乱用あるいは弊害が完全に防止されるかどうかという点について、大臣の御見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  6. 田中伊三次

    田中国務大臣 まず、行き詰まりました大会社を信頼いたしまして取引をしておる、そういう意味での依存度が高い関係にある中小企業者でありますが、この中小企業者は、この法律ができますことによって、全面的に共益債権になるわけではございませんが、管財人裁判所の許可を得て、その会社の会計の許す限り中小企業者に弁済していく、更生計画認可を待たずして、順次弁済をしていくということができるようになりますので、本件法案改正の一番大きなねらいとなっております大企業依存度の高い中小企業者を救うという意味では、全面的なものではございませんが、たいへんお役に立つものではないかと考えます。  それから第二は、退職金でございます。更生計画認可されるまでに退職をいたします者の退職金というものが、これが改正前の現行法によりますと、たいへん気の毒な結果になりますので、たな上げになってしまうということになりますので、これも全面的ではございませんけれども、月給の六ヵ月分、そうして退職金の三分の一というものと比較をいたしまして、どちらか商い金額限度といたしまして、共益債権同様に支払いができるようにしていこう、これも大助かりになる内容を持っておるものと思います。  それからもう一つ、この退職金よりもう少し意味の違った意味で大事なものは社内預金でございます。この社内預金につきましても同様の本人の俸給の六ヵ月分とその社内預金額の三分の一とを比較いたしまして、いずれか高い金額限度といたしまして、共益債権同様に管財人の手によって支払いができるようにしていくということも非常に助かることになるのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。  それから、いま先生のおことばのございました乱用でございますが、これはこの法案の中にも盛り込んでありますから、お読みいただきましたとおりでございますが、この開始決定が行なわれますまでの間、乱用を防止するために簡単なものについては調査委員制度を設ける、監督員制度を設ける。それからやや複雑な内容を持つ会社であると考えられる場合においては、これは管理人制度を設けまして、この制度によって運用をしていく。開始決定をいたしました後においては、直ちに管財人が出てくるわけでありますから、この管財人の手によって会社の運営、経理が行なわれていく、こういうことになりますので、この乱用防止はよほど避けられるのではなかろうか。  もう一つは、この開始決定申し立てが行なわれて保全処分が行なわれることになりますが、この保全処分が行なわれました後は、かってに取り下げができない。更生手続を踏んだような顔をして、そうしてかってな行為が終わったときには取り下げをしてしまうということがままあったのでありますが、そういう行為はとれない。取り下げは仮処分が行なわれました後においては、これはやれないということに明文を設けるわけでございますから、こういう点につきましても、乱用防止ということは、よほど強く乱用防止が実現するのではなかろうか、こういうふうにねらいを置きまして、改正案立案をいたしました次第でございます。
  7. 安倍晋太郎

    安倍委員 もう一点大臣に御質問いたしまして、あと政府委員にお願いしたいと思いますが、この法制審議会会社更生法案の要綱に対して附帯決議が出ておりますが、この会社更生事件その他の諸事件について、経済界実情の理解に資するために裁判所に一般的な諮問機関として、たとえば商事諮問委員会といったものの設立を希望しておる決議がされておるわけでありますが、同時にまた、関係各界も同様の措置をいろいろな面から要望しているわけですが、こうした諮問委員会といったものを今後裁判所に置かれる考えがあるかどうか。
  8. 田中伊三次

    田中国務大臣 審議会の御意見もいまお見受けのとおりの御意見が出たわけでございますが、だんだんと研究をしてみますと、そういう諮問機関裁判所に置かれるということは、かえって更生手続を進行せしめる上に複雑な手間のかかる結果になるのではなかろうかということに考えられるのであります。  そこで、本案に出しております調査委員制度——裁判所補助機構一つでございますが、調査委員は、人数はそこには書いてございませんが、これは何名でも置ける、数名でも置ける、三名でも置ける、一名でもよろしいということになるわけですが、その会社の業態の状況いかんによりまして、一名ないし数名の調査委員を設けまして、これは専門的な知識を持つ調査委員を設けることでございますから、事実上この調査委員制度活用によりまして、いま先生のおっしゃる簡易な方法手続を進める上に諮問機関同様の機能を果たしてくれるもの——調査委員制度を置きましたねらいもそこに置きましたわけでございます。そのかわりに調査委員制度活用さしていくのだという考え方であります。
  9. 安倍晋太郎

    安倍委員 いまのお話は一応わかるわけですが、経済界が非常に流動して複雑化していくわけでありまして、なかなか裁判所としてもその実態を把握することは困難な点もあるわけであります。そういう点から、諮問委員会にかえて調査委員制度といったものを拡大強化するということですが、そうすると、調査委員というものは裁判所において常に予備的なリストというものを用意しておいて、調査委員のそうした活用を意欲的にはかっていくということなのですか。
  10. 田中伊三次

    田中国務大臣 調査委員を選びます場合の基礎になるリストはございません。ございませんが、状況に応じて専門的な識見をお持ちになった委員を選びまして、その委員制度活用によりまして目的を達していこうという考え方でございます。特に名簿があって、その名簿の中から選ぶという事情ではございません。
  11. 安倍晋太郎

    安倍委員 この法案適用の範囲は、株式会社のみに限定しておるのではないかと思うのですが、合名会社とか、合資会社とか、あるいは学校法人といったあれもありますが、特に学校法人なんかはいわゆる倒産といった件も起こって、社会的な大きな問題を巻き起こしておりますが、株式会社に限ったという理由はどういうことなんでしょうか。
  12. 新谷正夫

    新谷政府委員 現行会社更生法は、その適用対象株式会社のみに限っておることは、ただいまお話のとおりでございます。その理由はどうかということでございますが、わが国法人の中で、株式会社の数が圧倒的に多い。しかも、それが経済界の実際の枢要な活動をやっておるというのが実情でございまして、中規模以上の会社は、大体株式会社の形態をとっておるわけでございます。中核をなすものはこの株式会社であろうということがいえるわけであります。その数も、大体七十万ぐらいの数に現在達しておると思うのでございます。したがいまして、こういった経済活動中心をなしておる法人株式会社にあるとすれば、まず株式会社についてこの更生法適用するという考え方が一応成り立つわけであります。  それから、さらにこの会社更生法制度趣旨でございます。御承知のように、会社破綻に瀕しました場合にとられます措置といたしまして、破産制度、あるいは和議制度、あるいは商法に規定しております会社整理というものがございます。  破産につきましては、これは一般強制執行といってもいいのでございまして、要するに会社財産債権者に公平に分配してしまって、それでできるだけ債権者の満足を得させようということでございます。  和議は、これは債権者が主体になりまして、破綻に瀕した会社に対する債権和議債権といたしまして、どう処理するかということを多数決によってきめまして、それに従ってこの債権処理していくということになるわけでございます。  会社整理は、さらに一段とその債権処理の点については弱いものでございまして、債権者全員同意によりまして整理の案を立てまして、それに従って債権処理していく、そのことによって会社維持更生をはかるというのが整理目的でございます。  破算と和議株式会社には限りませんけれども会社整理は、いま申し上げますように、会社維持更生をはかるということのために債権者全員同意を得て債権関係処理していくというのがその骨子でございます。しかもこれは商法の「株式会社」の中に規定がございまして、株式会社についてだけ適用されるのでございます。ただ、整理につきましては、いま申し上げますように、債権者の完全な同意が得られませんとこれが実現できない仕組みになっておりますので、会社維持更生をはかるという目的ではありますけれども、どうもこれが思うような実効をあげられないといううらみがございます。そこで、いろいろの破産とか和議というふうなもの、さらに強制執行との関係商法との関係、こういった関係を調整しながら、会社更生ということを目的といたしまして、整理よりも一段と強くこれを推進できるようにしてありますのが会社更生法であります。もちろん、株式会社以外の法人につきましても、その必要性がないと申し上げるわけじゃございませんけれども先ほど申し上げましたようなわが国法人実態、さらに現行法のいろいろの制度考えまして、会社維持更生をはかる上において、当面株式会社のみについてこの会社更生法適用をするようにしたいということになっておると思うのであります。  それでは不十分ではないかという御趣旨でございます。この御意見も確かにごもっともでございますが、今回の改正におきましては、非常にその作業を急ぎました関係もありまして、特に緊急を要する点のみについてということでございます。残念ながら御趣旨のような点にまで改正の手を及ぼすことが不可能でございます。しかし、これは今後の問題として、研究に値することではないかというふうに考えておるわけでございます。
  13. 安倍晋太郎

    安倍委員 いまの改正中心が、何といっても株式会社でありますけれども先ほどから申し上げましたように、合名会社とか合資会社あるいは学校法人社団法人——特に学校法人等につきましては、いろいろと問題が将来も起こる可能性は十分あるのじゃないかと思っております。この更生法目的会社更生ということにあるわけでありまして、もちろん中小企業関連企業を保護するということですが、やはり更生法の主眼は、あくまでも会社更生させていくということではないかと思うわけです。そういう意味で、ただ株式会社だけに限るというところに将来として考えなければならぬ問題があると思うのでありますが、この点につきましてはさらに大きな構想を持って、そうしたものまでも含めていく。さらにまた、いまお話がありました商法整理制度、あるいはその他和議法、そういったものも、この更生法でひとつ将来一本化して吸収、合併していく、そういうふうな、乱暴な意見かもしれぬけれども、そういうふうに将来の構想として考える必要があるのではないかと私は思うわけですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  14. 新谷正夫

    新谷政府委員 先ほども申し上げましたように、株式会社以外の法人に、この制度趣旨適用していくかどうかということは、非常に大きな問題でございます。と同時に、破産法和議法、あるいは会社整理、さらにこの会社更生法、こういった制度一つ法律に取りまとめてしまうということはどうかという御趣旨でございますが、それぞれの制度は、それぞれのまた特色を持ったものでございます。これを一つ法律に取り込んでしまうということは、それぞれの現在のたてまえを維持しながら、ただ単に一つ法律の中にそれをおさめるという趣旨でございますれば、それほど実益はないのではないかという感じもいたすわけであります。さりとてこれらのいろいろの制度を融合した一つのものをつくるということも、これは考えられないことはないと思うのでございますけれども、非常にむずかしい問題だろうと思います。それぞれ制度趣旨が違っております。その趣旨に従った制度利用方法というものも十分あり得るわけでありますし、またそれなりにその価値を持っているわけでございます。したがいまして、現在のそういったもろもろの制度は、そのまま今後も維持する必要がございます。したがって、これを一挙に一つ法律の中に融合してしまうということができるかどうかということにつきましては、私どもとしては必ずしも容易な問題ではないというふうに考えておるわけであります。
  15. 安倍晋太郎

    安倍委員 先ほど株式会社の数が、大体七十万あるのじゃないかというお話でございますが、その中で更生手続開始申し立て及び開始決定件数、その数字——資料もいただいておりますが、大体三年間の実情というものを御説明願いたいと思うわけであります。特に資本金なんかについてはわかりますでしょうか。
  16. 新谷正夫

    新谷政府委員 会社更生事件申し立てをいたしました会社、あるいはその処理がどういうふうになっているかというふうなことと、それぞれの数字につきましての資本金別の内わけというものを結びつけて御説明するだけの資料はございませんから、若干その辺に不統一の点ができるかもしれませんけれども、概要を御説明申し上げます。  昭和三十九年度におきましては、更生事件の新受件数が百七十二件でございます。それに対しまして既済件数が九十四件となっております。この九十四件というのは、百七十二件のうちの九十四件という意味ではございませんで、以前から裁判所に係属しております事件も、年度を越して処理されることがございますけれども、そういうものを合わせた数字になります。その中で開始決定のございましたのが、四十六件でございます。さらに認可決定のありましたものが二十三件でございます。昭和四十年度におきましては、新受件数は百四十一件でございまして、既済件数が百五件、開始決定のありましたのが五十五件、認可決定のありましたのが四十五件でございます。四十一年度におきましてはかなり件数が減少しておりまして、新受件数が六十六件、既済件数が八十九件、開始決定が三十一件となっております。四十一年度認可決定件数は、まだ把握できておりません。  それから資本金別状況でございますが、これはただいま申し上げました点と必ずしも年度その他において一致いたしませんが、私どものほうで調査いたしましたところによりますと、昭和二十七年度から昭和三十九年度までの会社更生事件三百十三件について調べたものがございます。これによりますと、資本金一千万円未満のものが百九十四件、一千万円以上三千万円未満のものが六十件、三千万円以上五千万円未満のものが十三件、五千万円以上一億円未満のものが二十件、一億円以上五億円未満のものが十七件、五億円以上十億円未満のものが四件、十億円をこえるものが五件という状況でございます。
  17. 安倍晋太郎

    安倍委員 最近、更生法適用を受ける会社で、大会社が徐々にふえております。しかし、何としても中心は、やはり中小規模株式会社が圧倒的に多いのではないかと思われるわけですが、この大会社と同じように、中小規模、その中でも、特に資本金制限がありませんから、非常に小規模資本金を持った会社があるわけですが、そういう会社更生法適用を受けるということになりますと、この更生法のいろいろの手続等は、ずいぶん多くの費用あるいは時間等がかかって、なかなか実効が生まれないということも十分考えられるわけです。そこで、そうした中小規模に対しては、何かもっと簡易な手続といいますか、もっと実効のある方法更生の道を開く必要があるのではないかというふうに、法律案をずっと読んでみましたときにそういうふうな感じを持つわけなんですが、この点についてはどういうお考えを持っておられますか。
  18. 新谷正夫

    新谷政府委員 仰せのように、株式会社と申しましても、大から小に至るまで千差万別でございます。そもそもこれは、株式会社そのもの規模というものを、いかに定めるべきかという問題とも関連してまいろうかと思うのでございまして、現在資本金についての制限がございませんために、極端に小さな会社株式会社ということになるのでございます。そういったものが、会社更生法適用を受けるということになりますと、いたずらに手続と経費とがかかるのではないかという御意見もこれはごもっともでございます。そういう意味で、小会社更生法というふうなものでもつくってはどうかという御意見だろうと思いますが、現在会社更生法適用を受けております株式会社は、それなりに一応この更生法の中身を十分理解いたしまして、会社の組織を新しく改めて、新会社として発足していこうということができるような会社であろうと思うのでございます。一面におきましては、小さな会社については、逆にこの会社更生法適用をはずすべきではないかという意見もあるわけでございますが、また逆の面から申しますれば、小さなものといえども何らかの方法において助けていく必要があるということも言えようかと思うのでございます。この辺、非常にむずかしいところでございます。ただ、この会社更生法適用を受けるにはあまりにも小さ過ぎるというふうなものにつきましては、先ほども申し上げましたような和議とか、あるいは会社整理というふうなやり方もあるわけでございます。そういった制度ともにらみ合わせて、それぞれ更生のための道を選んでいくというのが実情であろうかと考えるわけでありますが、実際問題といたしまして、たとえば小さな会社については、会社整理とか和議とかいうものも、裁判所手続によってやるというふうなことはあまり行なわれていないようでございます。実際は、それは事実上の内整理という形で、適当にその辺を処理されているようにもうかがえるのであります。そうかといって、それはそれでいいというわけのものではもちろんないと思います。将来の問題としては十分検討に値することであろうというふうに考えております。
  19. 安倍晋太郎

    安倍委員 調査委員制度についてちょっとお伺いしたいのですが、今度の改正案では、この調査委員制度を拡大強化するといまも大臣が申されましたが、これが大きな改正のねらいになっておるわけですが、現行法とこの改正法案との間の相違点ですね。この調査委員制度を拡大強化するという目標といったものはどこにあるのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。  それから、先ほどもお尋ねいたしましたが、予備的に調査委員リストを備えていく必要はないのじゃないかというふうなお話でございますが、この委員を選ぶ場合に、どういう業種からこれを選ばれるのか、こういう点もあわせてちょっとお聞きしてみたいと思います。
  20. 新谷正夫

    新谷政府委員 調査委員でございますが、これは現行法の規定によりますと、更生手続の開始をするにあたりまして、開始したらいいかどうかというその当否を診断するのが調査委員に課せられた任務でございます。したがいまして、開始決定がございますれば、調査委員の任務は終了するということになるわけであります。ところが、この改正法によりますと、開始決定がございましても、さらにその後に更生会社の財産の状況を調査したり、あるいは更生計画立案の当否を判断したり、その遂行についての適否を判断したり、裁判所の命じまするすべての事項につきまして、調査委員に調査の権限を与えたのでございます。これは手続の終結決定に至りますまでの間、裁判所の判断に資するという意味調査委員活動の範囲を拡大いたしたのでございまして、この趣旨は、先ほども御質問ございましたが、裁判所の一般的諮問機関という問題もからんでおりまして、いまさしあたりそういった諮問機関を設けるということについて、裁判所におきましてもいろいろ検討を加えておるわけでございます。制度というものは屋上屋を架すということにつきましては、大臣も申されましたように、問題が確かにあるわけでございます。しかし裁判所という機構の性格上、一般的な経済事情に関する知識等にやはり十分でないといううらみもあるとしますれば、それについての何らかの対策を講ずる必要があるわけでございまして、裁判所におきましても、その会社更生法の問題ということに限定しないで、商事事件一般の問題もひっくるめまして、先ほど商事諮問委員会を設けるかどうかということについて積極的に検討されておる段階でございます。それはそれといたしまして、さしあたりいま直ちにそういうものをつくるということもできない事情にありますために、いま申し上げましたように、調査委員制度を拡充いたしまして裁判所の判断に資するようにというのが今回の趣旨でございます。  それから調査委員を選任いたしますにつきまして名簿をつくるかつくらないかということは、大臣の申されましたように、法制上のものとしてそういう名簿をつくらなければならないということにはなっておりません。しかし、この事件が出ますと、裁判所としましてはすぐ調査委員活用するということになりますので、あらかじめその用意をする意味におきまして、事実上は名簿をつくっておくという取り扱いがなされるであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。  それでは、いかなる人がこの調査委員に選任されるかということになりますと、従来の調査委員の選任の実績等から考えまして、弁護士、あるいは公認会計士、さらにまた経済界のそれぞれの学識経験のある人たち、こういった人が調査委員に選任されるであろうというふうに考えております。
  21. 安倍晋太郎

    安倍委員 調査委員は、利害関係のない者の中から選任することとなっておるわけですが、利害関係があるというのはどういうことですか。たとえば、わずかな債権だとか、あるいは株式というものを保有しておる場合、実質的には利害関係はないけれども多少の関係はあるといった場合には、調査委員にはなれないのかどうか、この点はきわめて厳密に、調査委員の選任をやる場合に、限定するのかどうか、その点が第一点。  それから調査委員の身分といったものは、どういうふうになるのでしょうか。公務ということになるのでしょうか。更生会社ということになりますと、いろいろと会社内の紛争も起きてきますし、その中に巻き込まれて、いろいろ妨害を受けるということも十分考えられるわけですが、そういった場合に、たとえば調査委員が責任を果たす上におきまして、妨害を排除するために、公務執行妨害といったものが成立するのかどうか、調査委員の地位、身分といったものはどういうふうになりますか。
  22. 新谷正夫

    新谷政府委員 調査委員が、当該の更生会社に対して、小額の株式を持っておるとか、あるいは小額の債権を持っておる場合に、利害関係人としてこれを排除すべきかどうかということでございますが、確かに株主であり、あるいは債権者であるという点から見ますれば、利害関係はないとはこれは言えないだろうと思うのでございます。しかし、調査委員にそういう疑惑を持つような、仕事の公正を疑われるような、疑惑を持たれるような人を選任するというふうなことは、これは裁判所としても、実際問題としては行なわれないだろうと思いますし、また小額の債権を持っておりましても、公正にその仕事が行なわれる人であるということが、十分うかがえるような場合におきましては、必ずしも利害関係を有する者としてこれを排除する必要もあるまいというふうに考えるわけでございます。  それから調査委員の地位でございますが、これは、裁判所更生手続開始決定をするかどうか、あるいはその他裁判所が、必要と認める事項につきまして、いろいろの調査を命じまして、その調査の結果を報告し、あるいは意見裁判所に具申するわけでございます。これはその調査委員がいろいろ調べましたところのものを、資料として裁判所の判断の資料に供するというのがこのねらいでございます。したがいまして、裁判所から調査委員に委嘱しまして、そういったもろもろの事項を調査してもらうという仕事の性質は、必ずしも公務とは言えないであろう。ことに調査委員の手当ては、国から支出するものではございません。国または地方公共団体の公務に従事するかどうかということから考えますと、これは必ずしも公務というふうに言い切ってしまうのは少し行き過ぎではあるまいかというふうに考えるのでございます。  これに関連いたしまして、会社更生法あるいはその他の法律にもございますが、類似の調査委員あるいは整理委員というふうなものにつきまして収賄罪の規定が特に置かれております。この規定は、一般の刑法上の収賄罪よりは刑が軽いわけでございますが、特にそういった規定が置かれておりますのは、職務の公正を期するために、特殊な場合に収賄罪として規定を設けたと解されるわけでありまして、そのことが半面、そういった人たちの身分が公務員でないということの一つの根拠にもなろうかと思うのであります。この点につきましては、罰則の問題も関連をいたしてまいりますので、刑事局のほうとも相談いたしたわけでございますが、ただいまのところ、解釈といたしましては公務ではないというふうに理解いたしておる次第でございます。
  23. 安倍晋太郎

    安倍委員 改正法第四十四条についてちょっと質問いたしたいのですが、保全処分発令の後に更生手続の開始申し立て取り下げ制限することにしているわけですが、従来、更生手続開始の申し立てをし、かつ保全処分を申請した会社であって、更生手続開始決定前にその申し立て取り下げ会社は、一体どれくらいあるのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。  また、この取り下げを認めたためにいろいろな弊害も出ておるわけで、これが今度の改正一つのねらいになっておるのじゃないかと思うわけですが、そうした弊害等実情をお聞かせ願えるならば、ちょっと簡単に聞かしていただきたいと思います。
  24. 新谷正夫

    新谷政府委員 保全処分を申請して、その会社保全処分段階で事件取り下げた場合でございますが、全国的な資料というものは実はございませんが、最高裁判所におきまして十五ヵ庁について調査した結果がございますので、それを申し上げますと、更生手続の開始の申し立て後、保全処分が発令されました会社九十件の事件のうちで、二十件が取り下げをいたしております。これは、保全処分の発令と取り下げ関係のある会社についての数字でございます。
  25. 安倍晋太郎

    安倍委員 第百十二条の更生債権等の弁済の許可の問題ですが、これが今度の改正案の最も重要な柱になるわけですが、この中で「中小企業者」とありますが、この中小企業者の定義ですね、これはほかの法律との関連もありますが、一応中小企業者の定義について御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  26. 新谷正夫

    新谷政府委員 改正案の第百十二条の二におきましては「中小企業者」ということばを裸で出してございます。したがいましてほかの法律、ことに中小企業基本法第二条に定める「中小企業者」と、どういう関係になるかという疑問が確かにあるわけでございますが、中小企業基本法の定めます「中小企業者」というものにつきましては、商業、サービス業を営む事業につきましては、資本金が一千万円以下であるか、あるいは従業員が五十人以下のものをいい、それ以外の業種につきましては、資本金が五千万円以下、あるいは従業員が三百人以下のものをいうということになっておるわけでございます。もしもこの中小企業基本法の定義どおりに中小企業というものを理解してまいりますと、たとえば一千万円、五千万円というワクがございますが、これを少しでもはみ出した場合には中小企業者としての保護を受けられないということになりますし、またこれは、その従業員の数についても同じことが言えるわけでございます。会社更生法の場合におきまして、そのような限界を画した中小企業というものにこの適用範囲をしぼってしまうということになりますと、非常に不均衡な結果にもなるであろうということが考えられるわけであります。したがいまして、一応は中小企業基本法に定める中小企業者というものが、とりあえずは目安になると思うのでございますが、必ずしもそれのみであるということは考えていないわけでありまして、社会通念上中小企業者であると認められるものでございますれば、資本金が多少中小企業基本法に定めるものよりも多くても、あるいは従業員が多くても、これは中小企業者としてやはり百十二条の二の規定によって保護すべきであろうという考えに立っておるのであります。
  27. 安倍晋太郎

    安倍委員 その点につきましては多少疑義もありますが、先に進めます。  この同条の中に「主要な取引先」ということが書いてありますが、これはどういう意味になるのですか。更生会社への依存度がどれほどあれば主要な取引先ということになるのでしょうか。
  28. 新谷正夫

    新谷政府委員 中小企業者を百十二条の二の規定によって保護しようといたしますのも、やはり更生会社との関係がかなり密なものであるということが一つの要件として考えるべきことであろうと考えるのでありまして、これを依存度ということで把握しようといたしたのでございます。法律上は「主要な取引先とする」というふうに表現されております。この依存度といいますのも、やはりこれはそれぞれの具体的ケースによってきめられるべきことであろうと思います。通常の場合でございますれば、たとえば下請企業につきまして、その取り扱っておる仕事の五〇%以上のものが更生会社の下請になっておるというふうな場合には、これは当然主要な取引先ということができようかと思うのでございます。しかし、そうかといって、五〇%未満であれば主要な取引先と言えないかというと、必ずしもそうも言えないだろうと思います。たとえば更生会社に対しまして二〇%ぐらいの仕事の量をしておる下請業者、その他の八〇%につきましては非常にこまかく下請の形態が分散されておるというふうな場合を考えますと、やはりその更生会社に対する関係では依存度が高い、こういうふうに見ていいのではないかというふうに考えるのでありまして、一律に、半数以上の仕事をその親会社に依存しておるという場合のみに限定する必要はなかろうと考えます。
  29. 安倍晋太郎

    安倍委員 そうすると依存度が二・三〇%以下であっても、その債権がたな上げされることによってその会社がたとえば倒産に追い込まれるというふうな場合もこれに含まれる。さらにまた、一時的に巨額な、相当大きな債権を背負って、それでまた倒産に追い込まれるといった場合も、そういうものに含まれるというふうなことなんですね。
  30. 新谷正夫

    新谷政府委員 この法律の規定の第二項に裁判所が弁済の許可をいたします際に、会社とその中小企業者との取引の状況、あるいは会社の資産状態、その他一切の事情を考慮して許可するかどうかということを考えることになっておりますので、ただいま仰せのような場合にも、具体的な事案によりましてはこの中に入るという場合もあろうかと思います。
  31. 安倍晋太郎

    安倍委員 「事業の継続に著しい支障」という字句があるわけですが、これは連鎖倒産におちいるおそれのあるような場合だけをさしておるのでしょうか、どうでしょうか。
  32. 新谷正夫

    新谷政府委員 下請業者の、あるいは中小企業者債権がたな上げされることによりまして、連鎖倒産におちいるという場合は、もちろんこの中に入るわけでございます。しかし、いわゆる連鎖倒産ということをどういうふうに定義づけるかという問題もありまして、銀行取引が停止されるということのほかに、非常な窮境におちいってしまう、取引の停止はないまでも、その直前までいっているというふうな場合も入るかどうかということも考えなければなりませんので、必ずしもこれも厳格に連鎖倒産の場合だけだというふうに言い切ることもできないだろうと思うのでございますが、このねらいは、やはりそのように連鎖倒産を防止するというところにあるわけでございますので、その趣旨をくんでこの規定が設けられているものと考えております。
  33. 安倍晋太郎

    安倍委員 中小企業の債務の弁済を容易にするということになりますと、弁済請求というものが殺到してくるおそれが十分あるわけですが、その場合、管財人はそのいずれについて弁済すべきかということを裁判所申し立てをするわけですけれども、これが殺到してくれば、なかなか困難な問題にぶつかりますし、なかなか管財人としても処理しにくい事例がたくさん生まれてくるわけでございます。そうなりますと、管財人の責任といいますか、仕事が非常に多くなってくるのじゃないか、そういうふうに当然考えられるのですが、そうした処置についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  34. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かに、中小企業者債権の弁済を許可するという制度を設けますと、それについての事件が非常に多くなるであろうということは仰せのとおりでございます。しかし、この会社更生法趣旨からいたしまして、親会社倒産を免れて更生されるということのためには、ひとりその親会社のみではなくて、関連の中小企業者の保護ということも必要なわけでございます。その協力なしには親企業というものも成り立っていかないのが大部分でございましょうから、やはり中小企業者を保護するということも政策的に十分考えなければなりません。そのために管財人に負担が非常に多くなるということもありますけれども、これはしかしこの制度趣旨から考えますならば、管財人の負担は多くなっても、やはりそれだけの措置は講じて、中小企業者を保護していくということにすべきであろうと思うのでございます。ただ、管財人も非常に忙しいという場合でございますれば、管財人代理を置くということも可能でございますので、忙しくなることはもちろんでございますけれども現行制度のもとでこれが処理しきれないものではないというふうに確信いたしておる次第でございます。
  35. 安倍晋太郎

    安倍委員 管財人は、やはりその会社更生させるという立場上、裁判所に対して、積極的に中小企業者債権の弁済の申し立てをしないだろうということは、当然予想されるわけですが、そうした場合について、中小企業者は特にこの規定については相当な危惧を持っておるのじゃないか、こういうふうな、管財人申し立てをしなければ裁判所が許可しないということになるところに、大きな問題点がこの法案の中にあるのじゃないかというふうに思うわけですが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  36. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かにいま御質問のございました点が、法制審議会審議の段階においても一つ問題点になったのでございます。管財人を通じて申し立てをするようにすべきであるか、あるいは中小企業債権者が直接裁判所に、その申し立てをするようにすべきであるかという二つの方法があるわけでございますが、中小企業者が直接その申し立てをするということになりますと、そのほうがむしろ裁判所のほうでの手数はかかるであろうと考えられますし、勢いこの手続の遂行自体に円滑性を欠くという結果になるのではあるまいかということを危惧されたわけでございます。さればと言って、中小企業者のその申し立て、あるいは弁済の希望を、全部管財人の手元で整理してしまって、管財人考え方一つによって左右されるということになりますことは、中小企業者の保護に欠ける結果になるわけであります。したがいまして、そこのところをどうするかということをいろいろ考えましたあげく、この百十二条の二の第三項に新しく規定を設けまして、債権者からその弁済許可の申し立てをすべきことを管財人に対して求めましたとき、直ちにそのことを裁判所に報告する、つまり逐一中小企業者からの申し出があったということを管財人から裁判所に報告いたしますと同時に、かりにその中小企業者申し立てを受けて、裁判所に対して弁済許可の申し立てをしないというふうに管財人がきめましたときには、具体的な事情を遅滞なく裁判所に報告させることにいたしまして、その弁済許可の申し立て事情裁判所の監督のもとに適正公平に運営できるように配慮しておるわけでございます。これによりまして、中小企業債権者の保護におきましても欠けるところはあるまいというふうに考えておる次第でございます。
  37. 安倍晋太郎

    安倍委員 先を急ぎますが、先年来大きい会社更生手続の開始の申し立てをした場合、また社内預金あるいは退職手当の支払いをめぐってずいぶん深刻な紛争があったことは御存じのとおりであります。今度の改正案につきまして、特に配慮した点について説明をしていただきたいと思います。
  38. 新谷正夫

    新谷政府委員 退職手当と社内預金の問題は、確かにこれは一つの重要な問題であります。従業員退職手当を、現行会社更生法上どういうふうに処理していくかということにつきましても、いろいろな解釈が成り立ち得ると思うのでございます。ごく一般的に申しますならば、会社の都合によって退職しました場合には、会社更生法二百八条の規定によりまして、共益債権となるのでございますが、そうでない、自己都合で退職いたしました場合には、必ずしもそうは参らない。しかし、これは商法の規定によって一般の先取り特権がございますので、その関係更生法上優先的にできるということになるわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、自己都合による場合は、共益債権というところまで持っていくには若干制度上にも問題があるということでございます。この点をどうしたらいいかということでございますが、給料債権につきましては、現行法の百十九条によって六月間の給料債権につきましては同一債権とされておりまして、給料債権に準じて従業員の保護を考えるといたしますならば、退職手当につきましても同様の保護を加えるべきであるというふうに考えまして、退職事由のいかんを問わず、つまり会社の都合によって退職するものであろうと、あるいは自己都合によって退職するものであろうと、その辺は問わない。すべて給料総額の月額の六ヵ月分に相当する額あるいは退職金総額の三分の一に相当する額、そのどちらか多いほうを選択して、それを共益債権として行使できるというふうに考えておる次第でございます。給料総額の六倍あるいは退職金総額の三分の一というふうにいたしました理由は、長期の在職者にとりましては、六ヵ月間の給料総額ということになりますと、短期間の従業員との不均衡が生じます。そこで、長期の退職者のためにできるだけその辺の均衡をとって優遇する必要があろうという配慮から、この選択制を認めた次第でございます。  それから、社内預金につきましては、これは非常に大きな社内預金そのものの問題があるわけであります。これにつきましては労働省の所管になっておりまして、労働省におきまして、先年社内預金の一定の措置を講じたのでございます。それによりまして、従来の社内預金のあり方というものが、一応軌道に乗るような形になってきたのでございますが、しかし、会社更生法関係におきまして、この社内預金をどう見るかということにつきましては、また別の観点から検討しなければならぬ問題があるかと思います。現在、現行法上従業員の預かり金につきまして、これを全額共益債権ということにされております。この会社更生法昭和二十七年に制定されたのでございますが、その当時におきましては、現在行なわれておりますような社内預金制度というものはなかったようでございます。むしろ一時出張するために、会社で給料を保管していただくというような趣旨で預けたもの、いわば一種の取り戻し権の対象になるような趣旨の預かり金を一般的には考えておったようでございます。それがだんだん拡充されまして、社内預金制度というものが行なわれるようになりまして、非常に、解釈上その預かり金の中に社内預金が入るのではないかという疑義が生じてきたわけでございます。そういう意味で、現在の解釈としましては、この預かり金という中に、社内預金も含むという解釈が多く行なわれておるわけでございます。しかし、何と申しましても給料債権あるいは退職手当の請求権と比べまして、社内預金の返還請求権の度合いというものは、従業員に対する関係におきましてはやはり一段と落ちるものではないか。やはり一種の余剰金でございまして、これを全額共益債権とすることにつきましては、相当社会的な批判もあるわけであります。さればといって、これをどの程度に共益債権にとどめるかということになりますと、その目安もなかなかむずかしいのでございます。従来全額共益債権になっておりました関係も考慮いたしまして、また給料あるいは退職金が六ヵ月間のもの、あるいは六倍に相当するものというふうにいたした関係上、それに一応準じた保護を与えるということにしますれば、それでほかの債権との均衡もはかれるのではないかと考えたのでございます。そういう意味で、社内預金につきましても預金総額の中で給料の総額の六ヵ月間のものに相当するもの、あるいはその預かり金の総額の三分の一の額を一応共益債権とする、大体退職金に準じた扱いをいたしたわけでございます。それと、もう一つは、現在の破産法上は、社内預金の保護の措置は講ぜられておりません。また、ただいま申しましたような六ヵ月間の給料総額あるいは預金総額の三分の一に相当する額をこえる額をどうするかという問題も残ります。これらのものは全部優先的更生債権なりあるいは優先的破産債権といたしまして、その保護にもできるだけ手厚い措置を講ずることにいたした次第でございます。
  39. 安倍晋太郎

    安倍委員 先ほどお話の中に、優先的更生債権ということがありましたが、これは共益債権更生債権との中間なんでしょうか、法律的にはどういうものですか。
  40. 新谷正夫

    新谷政府委員 優先的更生債権は、いまお話しのように、共益債権と一般の更生債権との中間に位するものといって差しつかえないものと思います。これは更生計画の中でその処理がきめられるわけでございますが、大体優先的更生債権につきましては、その切り捨てを行なわないで、弁済の方法について若干共益債権よりは不利益になる、しかし一般の更生債権よりは有利な扱いをされるということになっているのが実情でございます。
  41. 安倍晋太郎

    安倍委員 最後に一問、更生担保権者の権利を相当この改正案で弱くしておりますが、そうすると担保物権制度の根本に相当影響があって、業界の物的担保に対する信頼感というものが、失われてくる可能性が十分出てくるのではないかというふうに思われるわけですが、その点についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  42. 新谷正夫

    新谷政府委員 更生担保権者の組におきます可決の要件といたしまして、現在債権を切り捨てるような場合に、担保権者全員同意がなければ可決すべきでないということになっております。このためごく一部の担保権者が異議を述べ、あるいは関係人集会に欠席するという戦術に出ますと、その組の可決ができなくなってしまう。そのことは結局全体の更生計画を遂行する上においても非常な支障となっておるのでございます。そういった弊害を除きますために多数決の原理を持ち込んだのでございまして、全員同意がなくとも五分の四の賛同があれば可決できるということにすることによって、ただいま申し上げましたようなごく一部の専横な担保権者の横暴を防止するということになったわけでございます。したがって、そのことが担保制度全般に影響を及ぼすかというふうな問題では決してあるまいと思うわけでございまして、一般の担保権者は、この更生手続が早く実施に移され、会社更生することを希望することにおいては、会社と全く同様の立場に立ってこれに協力して、更生計画を確定しようという態度で一般にやっておられるのでございます。したがいまして、こういう制度があるからといって、担保権制度そのものに大きな障害を生ずるというふうな心配は、これは絶対にあるまいというふうに確信いたしている次第でございます。
  43. 大坪保雄

    大坪委員長 横山利秋君。
  44. 横山利秋

    ○横山委員 安倍君の真剣な質問を拝聴しておって、ちょっと次官並びに局長に、痛感したことをまず御意見を伺いたいのですけれども、山陽特殊鋼の問題が発生いたしましたときに、この会社更生法はまさに世論の渦の中にあったわけですね。あれから二年ですか——三年過ぎて、いまあれだけ渦の中で燃え上がった会社更生法が、われわれが審議するについては、ちっとも世間の注目を浴びない。わが法務委員会でも、同僚諸君の出席はきわめて悪いということは、これは全く私遺憾なことだと思うのです。その原因の一つは、かかる法律はあらゆる場合を考えて、ノーマルな状況において、遺憾なき審議をしなければならぬということはわかるけれども、それにしても法務省の腰というものはずいぶん重いものだなということが痛感される。もう少し世間の非常な問題の焦点になりましたときに、電光石火、とは言わないけれども、敏速に社会の要請にこたえて法案提出することがどうしてできないのであろうか。これは、会社更生法のみならず、すべての法務省における執務態度というものがアカデミックなものの考え方、省全体としてのムードというものに影響されて、タイミングをきわめて失うという感じを私は持っておるわけでございます。しかも日本の経済は、いまや政府の言うところによれば、過熱であるか過熱でないかが論争の焦点になっておる。したがって、会社更生法の必要視された時期、タイミングというものは、少し失われておるではないかということが考えられる。ですから、私はいまの真剣な質疑応答を聞いておりまして、きわめて残念なことである、今後法案を出す場合におきましても、いま少し法務省全体が、政治的雰囲気といいますか、タイミングといいますか、それを的確につかまえて、機動的な法案提出や善処をされなければならないのではないかと思いますが、政務次官はどうお考えでございましょうか。
  45. 井原岸高

    ○井原政府委員 お説ごもっともでございまして、ああいう更生法の悪用の問題が原因いたしまして世論がずいぶん騒いだわけでございます。したがって、早期にこれらの問題については提案し、審議を得べきでございますが、私自身の感じから申しますと、何しろ法務省の仕事というものは、条文決定いかんによっては、いろいろな面に決定的な問題が波及してまいりますだけに、審議会等の審議も非常に慎重に慎重を重ねるというような経過もございまして今日に至ったものと、かように存ずるわけでございますが、どちらにいたしましても、ただいままでのような非常に速度のおそいやり方では、いろいろな問題も、せっかくつくってもすでに手おくれのような感もございますので、将来はできるだけこういうような問題について促進のできるように努力いたしたい、かように考えておる次第であります。
  46. 横山利秋

    ○横山委員 委員長にこの際、議事進行について御判断をわずらわしたいことがございます。わが党からも会社更生法の議員提案が過ぐる国会にも出されておるわけでありまして、わが党は、この問題にきわめて敏速果敢に対処をしたつもりでございます。しかも本会における私の質問に答えまして、昨年の春でありましたか石井法務大臣は、社会党の法案はきわめて適切な点が多い、ずいぶん参考になる点が多い、かかる建設的な提案をされたことを心からお礼を申し上げる、というようなおほめのことばまでいただいておるわけであります。しかるところ、この重要な法案が——いまや会期は、きょうは二十七日でありますからあと二日か三日でおしまいなんであります。このおしまいのときに、委員長、ゆう然としていらっしゃるようでありますが、これはどういうことでありましょうか。
  47. 大坪保雄

    大坪委員長 お答えいたします。別にゆう然としているわけじゃありませんが、どうぞ皆さん方の御勉強によって、すみやかにいずれか委員会としての結論を出していただきたい、かように考えております。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 伝え聞くところによりますと、会期は三週間ばかり延長されるのではないかといううわさがございます。かりにそうだといたしまして、本委員会は、きょうの委員会が終わりましてからあと、理事会の申し合わせによりますと、火曜日は会社更生法、木曜日は刑法、金曜日は国政調査となりますと、勘定いたしましても、あと会社更生法審議いたしますには三回しかございません。しかるところ、本日の理事会でもお話がございましたように、司法書士の法案について陳情があり、委員長からも促進方の御要望がありました。理事会の申し合わせの順番でいきますと、あと、延長されたとしても、わずか三回しか会社更生法並びに司法書士の法案質疑の時間はないのであります。三日ですね。そうなりますと、私どもはこの重要な法案について審議の時間がないことがきわめて残念である、場合によっては司法書士の法案が流産するかもしれないという不安を持っております。  私はこの機会に、私ども考えを明らかにして委員長に善処をお願いしたいのでありますが、会社更生法につきましては議論を整理いたしますためにも、参考人を呼んでもらいたいと思う。一人は最も問題の発端となりました山陽特殊鋼の実態を、あらゆる意味から承知をしておるであろう山陽特殊鋼関係の組合の委員長、もう一人は大学の、研究をしていらっしゃる学者、それから司法書士のほうは、非常に熱心に陳情をしておられるとおっしゃる司法書士の関係の組織の人においでを願いたいと思うのであります。あと三日しかない段階で、この二組をそれぞれの審議の中に置くということもなかなか困難なことではありますけれども、これはもう審議を促進いたしますためにも、私ども多くの質問者を通告しておるのでありますが、おくり合わせ善処をお願いいたしたいと思いますが、いかがでありましょうか。
  49. 大坪保雄

    大坪委員長 あと三日と申しますが、ひとつ極力勉強をお願いいたしまして、午後から、場合によったら夜にもひとつ御審議を願いたいというように考えております。  なお、参考人の問題は、いずれ理事会で、とくと御相談をしてきめてまいりたいと思います。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 局長にお伺いをいたしますが、先ほど私が申しましたようにタイミングを少し失っている時期でなはいかと思われるのですが、最近における倒産状況は、法案立案過程におきまして御調査を随時なさっておられると思うのでありますが、最近の倒産状況とこの法案とがマッチしておるかどうかという点について念査をなさいましたか。山陽特殊鋼の当時のあらしのような倒産状況における問題点と、最近における問題点とは変わった点はないのかどうか。この法案はあの当時の問題把握から始まっておるのではないか。いかがでしょうか。   〔委員長退席、濱野委員長代理着席〕
  51. 新谷正夫

    新谷政府委員 昭和三十九年ごろを頂点といたしまして会社更生法の問題が国会においてもひんぱんに論議されたのでございます。先ほど申し上げましたように、そういう情勢を受けまして、法務省といたしましてはできるだけ早く改正案をつくりたいという考えに立ちまして、四十年の十一月に法制審議会諮問されたのでございます。時期的に、その時期がおそかったという御批判でございますれば、これはおしかりを受けてもやむを得ないのでございますけれども、私どものほうも、いろいろの準備の関係等もございまして、どうしても早く急いで、その時期にならざるを得なかったということになるわけでございます。この法律が、法制審議会を通さないで立案するということは、これは法務省としてもできませんので、法制審議会のほうをできるだけ急いでいただきたいということを、事務当局といたしましても極力強調いたしまして、その審議の促進をお願いいたしたわけであります。かれこれ一年ちょっとの間でございましたが、その間に先ほど申し上げましたように総会、部会、小委員会、合わせて約三十回開催されております。これは委員の方々の異常な御努力だったと私は考えておるわけであります。それも通常でありますれば、法律案をそのつどやりながら、考えながら要綱をつくるというのが実際の法制審議会運用実情なのでございますけれども、この会社更生法の場合には、いろいろの実態調査もいたさなければなりませんし、資料の収集もしなければなりません。そういう関係法律案の作成と要綱というものが並行して行なわれるような状況にも実はなかったのでございまして、要綱だけをとにかく早くつくり上げるというふうな形で作業を急ぎまして、一年少々の間にこれだけのものをまとめたのでございます。確かに倒産状況が三十九年度と比べまして、現在非常に変わっているじゃないか。経済事情も変わっておる際に、その当時の事情背景に置いてこの法律をつくったのでは時宜を失するうらみがあるという御趣旨だろうと思うのでございます。しかし、これは恒久法として会社更生法というものも考えなければならないことでありますし、現在係属しております事件につきましても、いち早くこの改正法が適用されるような道を講じてございます。できるだけ現在進行中の事件につきましてもこの法律適用になっていくということであれば、とにかく急げるだけ急いで、法律案を御審議いただきたい、かように考えまして、答申を得ました後に、日夜立案作業を急ぎまして、日曜日も実は返上して立案作業をやった次第でございまして、私どもとしましてはできるだけの努力を傾倒したつもりでございます。それでもなおかつおそいという御批判でございます。その点はおわび申し上げるほかはございませんけれども事務当局といたしましては精一ぱいの努力を重ねた次第でございます。その点もぜひ御理解をいただきたい次第であります。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 いま、安倍委員質問一つ一つの焦点になっておったわけでございますが、更生債権の弁済の許可の問題でありますが、「会社を主要な取引先とする中小企業者が、その有する更生債権の弁済を受けなければ、事業の継続に著しい支障をきたす虞れがあるときは、裁判所は、更生計画認可決定をする前でも、管財人の申立てにより、その全部又は一部の弁済をすることを許可することができる。」ここで問題になりそうだと考えられますのは、「事業の継続に著しい支障をきたす虞れ」の、この「きたす虞れ」とは、まず第一に中小企業者がそう考える。その次に管財人がそれを選択する。その次に裁判長が諸般の状況考えてそれを決定するという三段論法になっておるわけですね。そうすると、先ほどの話のように、中小企業者はおれは関連倒産のおそれありというふうに判断する者が多かろう。管財人はおそれなしという立場で、なるべくそれを許可するのを妨げるであろう。申し立てをするのを回避するであろう。裁判長は管財人申し立てしたものだけをいいか悪いかきめるというしかけになるわけですね。したがって、最初は多くても第二段階でこれを削る。第三段階でまた削る、こういうしかけになるわけですね。論理上はそういうわけですね。違いますか。大体そういうことですね。
  53. 新谷正夫

    新谷政府委員 管財人のところでチェックして、さらに裁判所でそれを押えるということかという御質問でございますが、押えるということを考えておるのではございません。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 結果を言っておるのです。
  55. 新谷正夫

    新谷政府委員 おことばを返すようでございますけれども、それは諸般の事情を考慮いたしまして弁済の許可をせよ。ことに中小企業者から弁済の許可の申し出をしました場合には、それを担保する措置も講じたくらいでございますので、できるだけそういう関連の倒産のないように、救えるものは極力救いながらも、更生会社更生をはかっていこうというのがこの趣旨でございます。したがいまして、押えんがためにつくったのでは決してございませんので、むしろ中小企業者をできるだけ助けていこうというのがこの規定の精神でございます。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 わかっておりますよ。たとえば、中小企業者管財人に十の申し立てをする。そうすると十よりふえることはないのですね。管財人申し立ては減ることがあってもふえることはないでしょう。まずそれが第一。それじゃ管財人が裁判長に報告だけは十やりますね。しかし私は五が正しいと思っておるといって五を出しますね。裁判長は五ないし五から減った場合はあっても、五よりふえることはないでしょう。
  57. 新谷正夫

    新谷政府委員 もし中小企業者が十の申し立てをしまして、管財人がそのうちの五だけ裁判所申し立てをした。それ以上ふえることはないのではないかという御趣旨でございますけれども、実はその点を私どもとしては心配をいたしたのでございます。先ほど御説明いたしました第三項の規定は、中小企業債権者からその申し立てをすべきことを管財人に求めましたときには、申し立てをするかしないかをきめる前に、すぐその申し出があったということを裁判所に報告せよということでございます。なお、その申し立てをしないというふうに管財人がきめましたときは、遅滞なくその事情を報告せよ、こういうように規定いたしました。その趣旨は何かと申しますと、裁判所の監督権によりまして、管財人のことさらに押えようとする態度がもしあるとすれば、中小企業者を保護するという観点から、裁判所の監督権の行使によってさらに幅広くそれをやらせようという含みがこの三項にございます。
  58. 横山利秋

    ○横山委員 どこに書いてありますか。
  59. 新谷正夫

    新谷政府委員 表面にはそういうことは出ておりませんが、報告を義務づけております理由は、そういうところにあるのでございます。
  60. 横山利秋

    ○横山委員 それはおかしい。十言って、管財人が五申し立てて、あとの五も報告せよとなっておりますけれども、裁判長がその五と五と分けられたものを、それはあかんぞ、六だ、六救済すべきだ、七救済すべきだという裁判長の権限は、どこに書いてあるのです。
  61. 新谷正夫

    新谷政府委員 裁判所は、管財人に対しまして監督権を持っております。常に会社更生法手続運用につきましては、裁判所が監督者の立場におきまして十分状況をにらんでおりますので、もしも五の中小企業者だけについて弁済許可を申し立てしたところが、その残りの一部につきまして、それとの均衡上、あるいは会社の財産状況等から見て、これは弁済したほうがいいのではないかということが事前の報告によってわかるわけでございますので、その場合に、裁判所が監督権を行使しまして、管財人にこの会社についても弁済許可の申し立てをしたらどうかと言える道を開こうというのがこの第三項の規定の趣旨でございます。仰せのように、それのみで押えてしまうということはなく、むしろそこのところをねらったのがこの規定なのでございます。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 それは、あなたはそうおっしゃるけれども、裁判長が、管財人が言ってきたものに対し、自発的、積極的にこれもやってやるべきだと言うについては何か根拠がなくてはならない、根拠というものは管財人措置に対して不服のある者は裁判長に異議申請書を出せるとか、何かの根拠がなくて、裁判長が横っちょに置かれたものをじろじろ見て、ああこいつをやってやれよというふうに積極的な行動に出ることも容易に私は考えられない。中小企業者の異議申請の道はありますか。
  63. 新谷正夫

    新谷政府委員 特別にそのことについての異議申請の道というものはございませんが、先ほど申し上げましたように、裁判所はこの全体の状況をながめながら、この更生会社更生をさせるためには、こういう中小企業者あるいは下請業者を保護しなければ、会社の立ち直りのためには不都合が生ずるというような判断をいたしますならば、裁判所が監督権の行使によって管財人にそのことをすすめるということは当然でございます。この百十二条の二の規定というものは、これは政策的な立法でございます。中小企業者を保護しようということなのでございますので、裁判所がそこまで配慮してもらいたいという気持ちを三項の規定に出した次第でございまして、決して管財人申し立てしないものについては、一切裁判所は顧慮しないという趣旨ではございません。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 それはあなたが立案者として善意をもって、そういう趣旨だからと言うんだけれども、裁判長が積極的に、管財人のとった措置を——管財人というのは本質的に財産を保全し、更生計画が承認され適用するまでは、財産を管理しておきたいという気持ちに自動的になっているのですから、なるべく削るようにするというのが普通ですよ。裁判長が、削ったやつを自分が積極的につけ加えてやろうというような積極性のある立場にあるものかどうか。まず第一に、こう言っては失礼でありますが、裁判官というものは社会の経済事情にうとい。そうしてこれまた再建計画、更生計画が実行できることを望むという意味から、積極的に、これも救済してやれ、これもおそれがあるではないかというふうなことにして拾い上げるであろうとは私は必ずしも考えない。ほんとうにこの立法の趣旨がそうであるならば、管財人申し立てたことからはずれた中小企業者は、異議申請書を出すべき方途は当然考えられてよい。裁判長は、あなたの御主張どおりであるなら、管財人申し立てた以外においてもこのおそれありと認めた場合においては、これを弁済をさせることができるというような明文を設けるべきである。それをやらずに、裁判長の善意を期待する、それから管財人の善意を期待するということだけでは、この法律は絵にかいたぼたもちのおそれあり。どうですか法務次官、私の意見は全く当然でしょう。
  65. 井原岸高

    ○井原政府委員 いま御質問なり御意見がございましたが、一面から見まするというと、ただいまおっしゃるような面も出てくるかと思うのでありますが、一応ただいまも局長が説明いたしまするように、申請書は全部裁判長のもとへ届けられるわけでございまして、その中で管財人意見を述べて許可をする。その全体を裁判官がにらみながら、これは適当であるかどうか、あるいはこの分についてはどうかという、当然裁判官として許可する場合に、その全体というものを見ながら許可をしなければならないような規定になっておるかのように思うのでございますので、したがって、おっしゃるようなこともございましょうけれども、確かに管財人意見のみをそのまま認めようというのではなくて、裁判官とすれば、一応意見意見として聞いて、最後の決定は自分の判断においてすべきもの、またそうするように仕組まれておるかのように私としては受け取っておるわけでございます。
  66. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 関連質問。いまお答えを聞いておりますと、あなた方は善意の立法者として草案作成に当たられたのです。けれども、一たびそれが法律になりましたときには、これを執行するところの司法官なりあるいは警察行政官なりというものは、法律に書いてある条文に従うのです。立法者の意思がどうあろうとも、法律にないものは適用しないし、法律にある限りのものしか行なわない。しかも、でき得る限り警察行政官にしても、司法官にしても、法律を狭い範囲で解釈するということがたてまえなんですね。そうすると、いまの横山君の質問に対するお答えは、そういう精神ならばそういうことを条文の上に明記すべきではないですか。もしこれが、裁判官の判断によってどうでもなるというような性質のものならば、私は非常に危険が伴うと思うのです。いつでも立法者の意思と、これを執行する担当官の意思とは、違ったものが生まれてくることが往々にしてあるのです。現在でも、一つ法律適用にあたっては、甲の裁判官と乙の裁判官の場合においては、解釈の違うことすらある。これは最高裁において最終決定を見るでしょうけれども、その過程においてはそういうことがあり得る。今度のこの会社更生法の問題においても、そういう点において私は、改正の草案をつくられた当局の考えは善意であると信じます。善意であるということと法律の条文ができ上がったということとは違うのです。でありますから、その善意を法文の上に実現するためには、法文の正確を期しておかなければならない。ある場合においては適用される、ある場合においては適用されないというような、個々の場合において、人の判断によって適、不適が行なわれるということがあっては、私は公平でないと思います。したがって、ほんとうにあなた方の善意が今度は具体的に執行される場合のことを考えますならば、それは正しい条文の上に執行の基準を示しておくことが当然であると思います。この点いかがでしょうか。   〔濱野委員長代理退席、委員長着席〕
  67. 新谷正夫

    新谷政府委員 法律ができました後に、それを運用する人の考え方いかんによって、当初の立法者の意思に反するような結果も起きるのではないかという御心配でございますが、これも確かにそのような場合が絶無であるとは申し上げませんが、少なくともこの会社更生法改正するような動機等を考えますと、裁判所側も、あるいは一般の実業界も、こういった何らかの措置を講じて中小企業者を保護したいという気持ちは、これはもう否定できないものが一般的にあると思うのでございます。そういう中にあって、どういう方法をとれば一番中小企業者を保護し得るか。しかもこれは下請業者に限りませず、一般運送業者あるいは原材料の納入業者等の、中小企業者一般の均衡も考えなければなりません。こういった幅広い目でこの弁済を許すことによって、中小企業者倒産におちいることを防ごうという気持ちでございます。そのためには、裁判所といたしましては、更生会社中小企業者との取引の実情がどうなっておるかというふうなこと、あるいは会社の資産状態がどうなっておるか、利害関係人の利害にどのように影響するか、その他の一切の事情を考慮して、裁判所が後見的な立場に立ってこの運営をやるわけでございます。許可という裁判所のスクリーンを通しまして弁済を許すという直接の措置が、本来ならばこれは更生債権で弁済はたな上げされておるわけでございますが、裁判所が一応そこをにらんでいろいろの事情を勘案いたしまして弁済を許可するという場合には、これは実質的にはこれは共益債権と同じ扱いにしようということでございます。私どもも、もちろん新法の規定が適正に運営されることを心から念願いたしておるのでございます。また一般の方々も、必ずわれわれの気持ちを御理解いただけるというふうに信じておるのでございます。そうかといって、こういう場合には弁済を許可するように管財人に特に命ずるとか、あるいは裁判所が直接申し立てはないけれども許可するというふうにいたしますのは、現在裁判所手続に載せておる関係もございまして、そういう規定を置くことはいかがだろうか。そうかといってこれをただ管財人申し立てのみにまかせるということは、救済が十分ではあるまいというふうに考えたのでございます。百十二条の二の三項の規定は、本来これはなくてもいい規定であったかとも思うのであります。ただ、管財人申し立てをすれば、それを許可するかしないかということだけ裁判所はしておればよい。これが従来の裁判所のいき方であろうと思うのでございます。しかし、われわれとしても、それでは必ずしも十分でないと思いましたために、こういった報告義務を特別に管財人に課したわけでございます。これによって裁判所が監督権を行使して、管財人にその申し立てを勧告するという道を開くのがせいぜいのところではあるまいか、これでもなおかつ不十分だという御意見も確かにおありだろうと思いますけれども、現在のこの手続規定に載せる上でこれが精一ぱいのところであろうというふうに考えております。本来、こういう規定はなくてもいいという御意見があるいは出るかとも思うくらいなのでございまして、これを置きました理由は、さらに一歩進んで、裁判所にも積極的に監督権を十分に行使させたいという気持ちで設けた次第でございます。この点も十分御理解いただきたいと思います。
  68. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 もう一つお聞きしたいのですが、いまのお答えであなたの気持ちはよくわかります。それからまた、非常に善意であるということもわかります。現在の改正案現行法の欠陥を補うという意味において、現行法よりはよくできておるということもわかります。私も質問をしようと思って相当熱心に六法全書と首っ引きで、条文の個々について検討してみました。政治論よりもむしろ法律論として私は研究してみたのです。いろいろな点において多くの疑義を持っておるから、時間があれば後日質問をしてみたいと思いまするけれども、いまの場合、おっしゃるように現行法でも十分だと思うけれども、それではどうかと思うので新しい条項を加えた、こうおっしゃるわけですが、しかしながら、立法の機会に完全を期して、執行にあたって判断をする人、執行者が判断を間違えないように基準を示しておくということは、立法者の当然の責任ではないでしょうか。立法の場合にいいかげんに法文をつくっておいて、これの適用にあたって執行する者が、もしも自己の自由な判断で行なうということになっては、私は非常に困ると思う。また、それではほんとうの法治国家にはならない。やはり執行にあたっては、法の適正な解釈に基づいて行なわれるように、まず立法の機会にそういうことまで正しておかれなければならない。あってもなくてもよいと思われるというようなことでは、私は無責任だと思う。完全の上にも完全を期するということが立法者の任務でなければならない。従来は、ほんとうを言えば、この国会における法案審議というものは、ややもすれば政治論に流れて、法の実体に触れていない、そういう場合がしばしばあるのです。だから、後になって問題が起こる。そういうことは立法者としての責任においていけないと私は思うのです。これはひとりあなた方ばかり責めるわけではない。われわれ議員自身がそうなんです。  そういうことで、でき得る限り適正を期するという意味で、もう時間がないからどうこうということなしに、ほんとうにいけないものならまたもう一ぺん改めてもいいじゃないですか。やはり完全を期しておくということが立法にあたっては一番望ましいことであると私は思う。こういうことだけを意見をつけ加えておきまして、あなた方の参考にしていただきます。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、こういうことなんですよ。いま言い争っておるのは、関連倒産を防ぐために、中小企業者管財人に対して、おれのところを払ってくれといって言うのが十だとする、管財人は、その中から、削ることがあたりまえですから、ふやすことはない、十のうち、五しか申し立てをしない、そうして五と五と同時に——同時にというか、法案は、両方とも裁判官へ申し立てることになっておるわけです。それで、私の提起しましたのは、裁判長は、五は横に置かれたが、報告はきた、その中から、自発的に、これもかわいそうではないか、これは払ってやれと言うか。それは、そういうしかけになっておるというのだけれども、言うならば言うように、一方的職権を明確にすべきである。同時に、裁判長が、横に捨てられた人間の中から異議申請がされ得るような道を中小企業者に開いておかなければ、絵にかいたぼたもちである、こういうことを私どもは言っておるわけです。そうしたら、局長は、いや、この裁判長は、たいへん法律趣旨を理解するに違いないから、横っちょに捨てられた報告のあったものでも、その中から必要なものはやってやるに違いない、こういうことなんです。これが論争の焦点です。もし、そういうことがほんとうに期待されるならば、なぜ、もっとはっきりしておかないか。報告を受けた中からでも、必要とあれば、裁判長は、この更生債権等の弁済の許可を与えることができるとか、あるいは、しなければならないとか、あるいは中小企業者は、管財人が自分の出したものを申し立てしなかった場合においては、裁判官にあてて異議申請を出すことができるとか、なぜそれをやらぬのか、こういうことです。  それから、それに関連してさらに私が心配をいたしますのは、この方式について時間的制限がない。「継続に著しい支障をきたす虞れ」というものは、実際問題を考えてみますと、時間を争うという場合があるだろうと思う。それが管財人がさあ出してちょうだいといって、ネコもしゃくしも中小企業者が出してくる、全部出そろってから、全部よく調べてから、その中で五拾って、そうして裁判所へ全部持っていく。また、お忙しい裁判長がゆっくり御検討なさって、これとこれはいい、五のうちから二つ三つ拾うと言っておるうちに病人は死んでしまう。その死んでしまうことについて、少なくとも何日以内には許可しなければならぬとか、これは早く急いでやらなければならぬとか、そういうことが何も書いてないではないか、書いてなければ、これまた、絵にかいたぼたもちではなかろうか、一体法務省はアカデミック過ぎて、タイミングを失うのではないかということが第二に指摘したいところなんです。  それから三つ目は、「事業の継続に著しい支障をきたす虞れ」とは一体何であるかということです。これはもう基準があってなきがごとしで、そういう基準があったら一ぺん明白にしておいてもらいたいと思うのです。これはやはりどう考えても抽象的になりやすい。そうすると、管財人の自由裁量、裁判官の自由裁量——もちろん裁判所は取引の状況更生会社の資産状態、利害関係者の利害その他一切の事情を考慮しなければならぬというのだから、それは水で薄めるような言い方ですね。そうすると、私は趣旨としては悪くないけれども、絵にかいたぼたもちに終わるおそれが非常に強いという点に非常に危惧を抱くわけですが、どうですか。
  70. 田中伊三次

    田中国務大臣 横山先生お話を承っておりますと、この改正案の精神を非常にかたく解釈をなさっておるような感じがいたします。(横山委員「やわらか過ぎる」と呼ぶ)いやいや、ひとつこの法案内容をごらんになればわかりますように、中小企業者が、自分の中小企業者としての当該会社に対する債権を、ぜひ支払いをしてもらいたいのだと申請をしたときに、その中から、先生おことばのごとくに、適当と思うものを拾うという、ことばはだんだんかたくなるでしょうけれども、事実は適当でないものと適当であるものと選ぶわけでございましょう。ところが、選ばないものがある。選んだものは裁判所に許可を求めることになるわけです。申し立てを受けた、届け出を受けたが、それを採用しなかった。漏れたものについては、これは漏らしたのだということを裁判所に報告をせねばならぬ、ほったらかしは許さぬのだということになっています。  そこで、裁判所のほうでは、だんだん調べてみまして、また管財人とは別の角度を持って調べるわけでございますから、漏れておるものの中から、とるべきものだということを考えれば、それはとる立場に立ってよろしいものでございます。そういう立場の規定を擁しておるものでありまして、要は、この問題は、理想を申しますと、申し立ててきましたものは一〇〇%に近いものを採用する、そして支払いを始めるということが理想でございましょうが、ありていに申し上げますと、これは会社が持っております財産を、適当に配分しようという考え方に立っておる制度ではないのですね。この制度は、会社更生させることに法律の大眼目がある。あわせて中小企業者倒産も防がなければならぬ。しかし、根本の根本は何かといえば、会社更生をさせるということが根本の問題になります。したがって、これもやろう、あれもやろうということになりまして、あまりそれがいまの問題の管財人の選択がずさんになっていきますときは、会社の会計それ自体が行き詰まらざるを得ないことになってくる。したがって、これは場合、場合によって違うので、ある場合においてはほとんど七、八割、あるいは全部に近いものまでも採用されることがあるであろう。あるところにおいては、それがたいへんかたくしぼられることもあるだろう。それはその更生していこうとする会社の会計事情によるもの、こういうふうに考えるのが常識であろうと思います。  しかしながら、何にいたしましても会社更生させることが目的であるが、同時に非常なウエートを持たして法律考えております点は、中小企業倒産を防いでいこうということに強い眼目を持っておるわけでございますから、そういう考え方で、具体的な更生手続事件そのものに触れまして、そのつど、最大限そういう目的を達するように、両者のかね合いといいますか、調整といいますか、そういう考え方を頭においてこの法律運用をしていこうということでございますから、必ずしも何割かしか選べない、裁判所がまたその何割かのうちの何割を選ぶのだというように、かたく解釈をいただかぬでよろしいのではないか。もう少し真精神をおくみとりいただけば、改正に重要な意義があるもの、依存度の高い中小企業はしっかり助かる、こういうふうに考えるのであります。  お尋ねのことに要らぬことを言うようでありますけれども、最近問題になりました姫路の山陽特殊製鋼、これなどは、もしもこの法案が早く通過いたしまして、準備万端を急ぎまして、施行を予定より早めて施行するという誠意を役所側、政府側が尽くしていきますならば、この特殊製鋼の会社に出入りいたしておりました依存度の高い中小企業者に対しても、審議を急いでいただけば、さっそく間に合う結果になるのではないかということも、たいへん楽しみ——というとおかしいのですか、私は期待を持ってこの審議の促進をお願いしておるわけであります。会社の会計にゆとりのある限り、できるだけ全面に近い支払いをするのだ、こういう考え方をもってこの制度をひとつながめていただきたい、こう考える次第です。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 要らぬことをおっしゃったから、私も要らぬことを言いますけれども、あなたがいらっしゃる前に、——大体山陽特殊鋼があってから、いままでにどれだけたった。いま本格的審議になって、国会はあと二日か三日ですよ。それで急いで審議しようじゃないかと言ったって、それは話がおかしいじゃないか。これはあなたの言うとおり、要らぬことです。私の真意が誤解されているようだけれども、あなたの考えと私の考えとは違わないのですよ。大体、会社更生法適用して財産を保全するのが原則であって、その中で関連倒産するものについては、何か応急措置をしよう、特別措置をしようということについては一致している。ただ、私が言うのは、管財人が選択し、裁判官が選択する中に、選択の間違いがあった場合はどうなんだということになるわけです、簡単に言うと。管財人の選択について異議があるという人間には、異議申請を認めるべきだ。裁判官だって、会社更生させるのが目的ですから、できるならば、これをやらずにおきたいのですよ。裁判長は、管財人と同じように、できればほんとに特例措置にしたい。だから、報告のあったものから、これはどうだ、これもやったれと、積極的に言う場合はまずないと私は見るわけです。しかし、それが許されるのであるならば、中小企業者からの異議申請、管財人の選択についての異議の申請、それから裁判長がそれができるのだという法律の明示、それがあるのがなぜ悪い。あるのが本来の趣旨ではないかということと、いま言ったように、大臣はお答えになりませんでしたけれども、この条文が適用される時間的制約がない。つぶれるおそれがあるということは、時間を争う問題である。それにもかかわらず、管財人が裁判長に出し、裁判長が審理してオーケーを与えるまでにどのくらいの期間を考えているのだろうか。これは絵にかいたぼたもちに等しい。裁判長がええと言ったころには会社がつぶれておるという感じがする。敏速にやらなければならぬという趣旨が出ていないのは遺憾千万である。「事業の継続に著しい支障をきたす虞れがある」というのは時間的な問題ですよ。それを保障する制約がこの中にないのは遺憾である、こう言っている。
  72. 新谷正夫

    新谷政府委員 裁判所が採用しない場合、中小企業者が非常に困るではないか、もしもそういう場合に法律上の手続に従って異議の申し立てをして、さらに上級裁判所の判断も仰げるようにしたほうがいいのじゃないかという御趣旨ですが、しかしこの手続そのものを全体として非常に急ぐことば申すまでもないことでありまして、それがある一定の事由のためにおくれるということになりますと、更生会社にとりましても、またそれを取り巻く一般の債権者にとっても非常に困るわけであります。できるだけ迅速に手続を進めるという要請が片方においてはあるのでございます。  そこで、先ほど御発言のありましたように、この処置に対して何らかの異議の申し立てをする道を開いたらどうかということでございますが、そういう道をかりに設けるといたしますと、その事件のために、この関係の記録が全部異議を審理する裁判所のほうに移ってしまいます。この更生事件は、会社の資産状態その他いろいろのものを調査いたしまして、事件記録としてかなりの膨大なものになるわけなんですが、一つのそういった異議事件があったために、記録がよそに持っていかれるというようなことになりましては、これまた本筋の手続のほうにう支障を生ずるわけでございます。  また先ほど申し上げました百十二条の二の第三項の規定によって、報告を裁判所にいたしますが、ここで報告のあったものだけについて裁判所は監督権を行使して、弁済の許可の申し出を管財人にすすめるというふうな措置のみでなくて、さらにそういった中小企業者からの申し出のないものについても、裁判所はこれはやはり弁済を許してやるべきだということを発見いたしますれば、管財人にその旨を監督権の行使によって伝えて、中小企業者債権の保護の均衡をはかるということまでも考えておるので、したがいまして、いろいろの御意見はおありかとも思いますけれども、そもそもこの三項を入れましたこと自体、そういう趣旨で、積極的に裁判所の後見的な監督権の発動に期待したいという気持ちからこの規定を置いたわけでございますので、決して御心配のような運用はされないだろうというふうに考えるわけであります。  また、これについて基準を設けたらどうかという御意見でございますが、全般的に裁判所更生手続につきまして一般的な監督権を持っておりまして、そのつど時宜に適した指示あるいは指導をやるわけであります。保全処分の段階におきましても、あるいはその他の調査の段階におきましても、また、更生計画立案しさらにそれを遂行する段階におきましても、裁判所は常時これを監督いたしておりまして、管財人に対して適切な指示を与え得るようにいたしたわけであります。しかしそれらの場合に、一々その監督権行使の基準というものを法律上規定するということは、これは事実上困難でございます。  この弁済許可の場合に……(横山委員「事実上——何ですか」と呼ぶ)規定することであります。規定することは、いろいろの場合に手続の初めから終わりまで監督権を行使いたすわけでありまして、個々の事柄についてすべてそういった、こういう場合にはこういうふうな監督権を発動せよというふうな基準を設けることは、これは実際問題として不可能でございます。  そこで、この弁済許可の場合にも、そういった一般の裁判所の監督権の発動に期待するという意味で、特にそういうことを書かないのでございまして、裁判所が、こういう情勢下にある場合、会社更生させるということを目的としてこの手続を遂行いたします以上、必要な関連の中小企業者もやはり保護していくということが会社更生に役立つわけでございます。そういう観点から、裁判所においても十分配慮されるものというふうに私どもは確信いたしておるのでございます。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 「事業の継続に著しい支障をきたす虞れ」ということについて、基準はないとおっしゃるわけですね。何か判例でこの種の解釈について出たものはありませんか。
  74. 新谷正夫

    新谷政府委員 今回の百十二条の二の規定におきまして、初めて「事業の継続に著しい支障をきたす虞れがあるときは、」という表現が出てまいったのでありまして、従来こういった点についての裁判の実例はございません。  ただ、先ほども御質問がありましたのでお答えいたしたのでございますが、「著しい支障をきたす虞れがある」ということは具体的にはどういうことかという御質問がございましたので、関連倒産におちいるおそれがある場合、これが代表的な例でございます。しかし倒産ということの意味自体は非常にあいまいなものでございます。したがって、銀行取引が停止されるということだけが必ずしも倒産とはいえないだろうと思うわけであります。いろいろのそういう具体的な事情に応じて、事業の継続に困難が生ずるというふうな場合に、それがひいてはまた更生会社のほうにも影響するということであれば、これは必ずしも倒産というかたい意味に解する必要もあるまいというふうに考えておるのでございます。この基準をどう書くかということになりましても、これはなかなか書きにくいのでございまして、「事業の継続に著しい支障をきたす虞れがあるときは、」という表現によって、そこを裁判所が弾力的に運用していかれることを期待しておるのでございます。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 残念でありますけれども、私は、せっかくの御答弁でありますけれども、この点については、裁判長の職の執行について法律上そんなに縛ることができなければ、少なくとも中小企業者から、管財人申し立てから除外された場合において、その中小企業者の異議の申請なりあるいは緊急性が、管財人が認めてくれぬ、これは残念である、裁判長が審査をされる場合においてはぜひとも考えてもらいたいという道を開かなければこれはおかしい。何をもって裁判長はこれを審査するのかということが言いたいのです。その点だけはどうしても私は納得できませんね。法務大臣、どうですか。
  76. 大坪保雄

    大坪委員長 関連して。濱野清吾君。
  77. 濱野清吾

    ○濱野委員 私はなまの経験をしているのですけれども裁判所がお考えになっているように、裁判長の監督権の中にそういうもろもろのむずかしい問題を判断する事務的な時間というものは事実上あり得るものではない。また、かりにあったとしても、たくさんのもろもろの問題からこれを特に拾い出して検討してみよう、そういうチャンスというものは、裁判所の異議申請でも出さなければ、なまの実際の経済問題としてはむずかしいでしょう。裁判所は、ただ一般的な監督権だけということではできませんよ。これは実際の、なまの損失をこうむった中小企業の体験でなければわからないのですよ。ですから、私は与党の立場ですけれども、ほんとうにそこに取引のあった債権者が、同じように申請するようなことをどこかに期待しながら、裁判長に異議申請を受け付けてもらわなければならないし、そして特にそれについては審査をしてやってください。これは裁判所の親切であるし、なまの経済はどうしてもその親切心がなければ問題は解決できないと思う。私はあなたから、裁判所の一般監督権からそういう点まで期待して、善意の立場でということを聞いておりますが、これはけっこうだと思います。しかし、期待していただけでは、その企業者の生命保持をしていくことはできない場合があると存じます。何となれば、一面においては関連倒産というものをたすけていくという趣旨があるのですから、やっぱり異議申し立てをさせて、裁判所は、特にそういうのがありましたらば、注目をしてやる。こういうやり方はやっぱり何らかの形で規定しておくほうが適切じゃないでしょうか。  私は自分の会社を持っておりますが、大きな菓子会社倒産いたしまして、そして私ども会社に対する債権というものは、おおむね労務者の労働対価でありました。この事件については、一方ならず苦労したものです。これは考えによると、更生会社をできるだけかばって差し上げるというような立場に徹していたと承っておるけれども、労働者の労務賃金でさえも遠慮なくカットされてしまう。おおよそこれは管財人の立場、それから更生会社というそれに重点を置いた一つの判断にのみ基づいてそういう債権が切り捨てられたのだろうと思います。しかし、日本のいまの経済事情から考えてみても、ここで新たなる立法をする、改正をするというなら、やはりそういう異議の申請の一項目くらいは、裁判所提出することができるということを規定しなさっても無理ではない。何でもかんでも、裁判長が神様のような立場であっても、実際のこまかいことまでわかるとは考えていないのです。ですから、特に注目する必要がありますよ。倒産する危険があるとかあるいはおそれがあるとかいうような事実問題は、抽象的には書けば書けますけれども、具体的にだれがつかむのだということになれば、やはり裁判所が苦労してつかむよりしかたがないでしょう。そうすれば、取引関係、経済関係ですから、個々の問題になってくる。ですから、そういうなまのもろもろの経済事情というものも考えて、やはり裁判所に特に申請をやらせることが便宜でもあるし、相互に好ましいことでしょう。私は、横山君の議論は、横山君がそういう経験人であるなしは別で、したがってそういう苦労をなさったかどうかはわからぬけれども、そういうことは常識として一項入れても無理はないのじゃないか。どこまでも裁判所の全知全能にまかせるのだということは、問題が倒産会社と関連業者との倒産の危機関係ですから、私は考えなさったほうがいいのじゃないかと思いますが、局長、どうですか。
  78. 新谷正夫

    新谷政府委員 確かにこの手続構造といたしまして、ある一定の処分に対して救済の道を開く、それによって申し立て人を保護していくということは、手続上の問題としては考えられるわけであります。この弁済の許可の制度をこういうふうな形にまとめる段階におきましては、何か中小企業者の立場を十分考慮できる道はあるまいかということに、先ほども申し上げましたようにわれわれは非常に頭を悩ましたわけでございます。そうかと言って、いわゆる手続規定として異議の手続に乗せていくということになりますと、一つ中小企業者のために、この手続全体がストップするような結果にもなりかねないわけであります。要請されるところは、この更生手続がすみやかに、迅速に運用されるということに支障を生ずるようであってはならないと考えたので、そこでどうすれば一番いいかということからこの三項の規定が入ったものでございまして、この規定をごらんになってもわかりますが、そういう申し立てをすべきことを求められましたときは、直ちに裁判所に報告せよ、その判断をする以前に、そういう申し立てがあったということを直ちに管財人裁判所に報告せよ、そうしておいて管財人はその申し立てをするかしないかということを判断し、申し立てをする場合はそれでいいけれども、しない場合には、しないという事情をさらに遅滞なく裁判所に報告せよというふうにいたしまして、中小企業者の希望がいれられない場合のことを二重にこういうふうに措置したわけでございます。これは一般の裁判所手続規定に載せて、時間をとられる、ことに一つ中小企業者のために、全体の中小企業者、あるいは更生会社のこの手続が、進行が阻害されるということになりましては非常に困ることになるわけでありまして、できるだけそういうことを避けたいという気持ちから、この三項を置いたわけでございます。裁判所の一般的な監督権では不十分だという御趣旨かもしれませんけれども、われわれとしては、こういう中小企業者の保護ということが大きな問題になっております情勢下におきまして、裁判所がそれを全く考慮に入れないで、出ないものは出ないでいいのだというふうな立場でものを考えるということは、万々あるまいというふうに考えたわけであります。いろいろ手続上の面とかその他のことを考慮いたしまして、この三項を置いたという趣旨も御理解いただきたいと思う次第でございます。
  79. 濱野清吾

    ○濱野委員 趣旨はよくわかりました。ただ、報告しなければならぬということだけで、裁判所が報告されたものを全部克明に、親切に、裁判長としての権限行使がはたしてできるか、私は、あなたも裁判長をおやりになったのだろうと思いますが、無数にくる報告書を、裁判長が克明に、ほんとうに私は痛さ、つらさを考えて親切にやってやれるものとは考えない。これは裁判所不信のような言動で、はなはだ恐縮でありますが、そういう時間もなかなかなかろう、煩瑣にたえない。これはあなたのお話では、そういう異議申請というようなものを考えると、更生事務それ自体が行き詰まってしまうだろう、それで更生のほうの事務に支障がある、こうおっしゃるけれども、これは世間では、更生会社というようなものに対する概念は、世間のほうが知っております。これはむしろ裁判所よりも知っておるかもしれない。われわれもよく知っておる。われわれは、経験を通じて体験をしているのだ。更生会社と取引を持った会社がどんなに苦しんでいるか、そして関連倒産が、どういうふうにして起きるかということは、なまの経済に関係をしているわれわれのほうがもっとよく知っている。そういう意味で、法を執行するあなた方よりは、私どものほうがつらいのだ。われわれは債権者です。あなたのおっしゃるように、そういう異議の手続を認めれば、更生手続の事務が行き詰まって煩瑣にたえない、そうおっしゃるかもしれないけれども、しかし、そんなことはありませんよ。債権者が全部更生会社にわっしょい、わっしょい押しかけていくようなものではありません。おのずからきまっているでしょう。現行法でやる更生会社でも、これは払ってやらなければいかぬぞというものは、債権の性質によって、裁判所は十分考えておるはずです。また更生会社の実務をやっておる管財人ども、そういうことは常識的に考えておりますよ。それでもなおかつ、この管財人というものは、更生会社の本旨にのっとって、先ほど大臣のおっしゃるように重点的に切り捨てるのですよ。だから、関連倒産が起きてくるのですよ。だからここを何とか調和させようというのが、今度の立法の趣旨だと思うのですが、それならばもう一歩踏み出して、むしろ異議申請の機会を与えよう、そして裁判所は、この申請については管財人の立場を離れて、公正なる判断のもとにそれぞれの監督権を行使する。これは私は局長の考えているように、異議申請を申し立てるのが非常に多くなってきて、更生事務が行き詰まるとは考えておりません。われわれの経験の上においては、それほどの問題ではありません。ただわれわれがうらみに思うのは、労働賃金までカットされる、こういうのがいままでの更生会社管財人のやり方です。こういうのは大臣、少し考えてやらなければいかぬじゃないか。それはひどいものですよ。だからやはりそういう一つ手続は何かの形で——技術上の問題はよくわかりませんけれども、やっても更生会社の事務が行き詰まるようなことはございません。  それから、あなたがおっしゃるように、直ちに報告することになっている。それでは裁判所の事務が非常に混雑しておったらどうするのですか。経済の仕事は、先ほど横山君も言っておったが、なまなんですから、経済行為は時間というものが非常に大事なんです。直ちに報告しろ。——なるほど報告した。しかし、裁判所の事務のふくそうによって、裁判長がそのままにしておいたら一体どうなるのですか。経済行為はそんな簡単なものではないですよ。毎日損得計算で仕事をしているのですから、やはりそういうところは常識的にそういう手続をとっておいても悪くないんじゃないでしょうか。裁判所、裁判長の権威に関するとでもお考えになればこれはまた別でありますが、問題はつぶれた会社を生かそう、それに債権を持っている中小企業、これの関連倒産を防ごうというのですから、もともとむずかしい仕事ですよ。そのうち債権者会社は、どういう性格の債権を持っているのだというようなことも関連して非常にむずかしいです。ですから、これはやはりそういう規定を置いてもいいんじゃないですか。私は横山君にむやみに賛成するわけではありませんが、実際自分たちが三つも四つも更生会社を相手にして、債権を持っておって、それが弊履のごとく捨てられて、そして裁判所はへっちゃらで見ているのですから、この規定ができたって、裁判所だってひまがそうあるわけではありませんから、裁判長だって事件がふくそうしてくると、見てやればいいのですけれども、なかなか見てやれない場合があるでしょう。そういうこともお考えになって、大臣これは一ぺんお考えになっていただきたいと思います。
  80. 田中伊三次

    田中国務大臣 横山、濱野両先生のただいまの御意見でございますが、承って胸に響くところは、何か異議の申し立てといいますか、不服の申し出というか、何かそういう方法が、更生手続を大きに阻害しない範囲内において何かよい方法がほしい、こういう感じですね。これは実情からいいますと、両先生のお説のほうにどうも軍配が上がりそうだ、どうも私はそう思う。そこで、これはこういうことにいたしましょう。政府は御承知のとおりに、この法律案原案を示しまして提出しておるわけであります。政府の側から、閣議決定を経て出しましたものを、いまどうこう言うわけにまいりませんが、これは審議中でございますから、話し合いはどのようにも話し合いができる。そこで、きょうこの委員会が終わりましたら、時間をかけまして、問題の急所は一点でございますから、この急所につきまして、大臣と局長を中心としてよく考えを練ってみまして、異議申し立てを、上級裁判所でなく同じ裁判所に異議の申し立てをする、これはどうも合理的な制度としては考えられぬ。許可にしたものは許可書がいくのだろう、許可しないものは不許可という通告はいかぬのだろう、またそういう裁判所の処分はないのでございましょう、とりあえず、よいと思うものからオーケーを出す、そこで弁済許可のないものについては裁判所へ申達されたままに残っておる、こういう形でございましょうから、何かここに不服の申し立て、本来の異議でなくとも不服の申し立て、何かできそうなように考えられるのですが、これはたいへんよい御意見である。会社更生せしむることに大眼目があるのだから、どこまでその効果があるかは別論といたしまして、何らかの方法がございますと、とにかく中小企業債権者を満足さすことができることだけは間違いない、また幾らかのお役に立つということも間違いない、こう考えますので、次に本委員会が開かれますまでに、よく私と部下と相談をいたしまして、何か名案がなかろうか、運用の面においても何かなかろうか、どういう方法をとればその運用がものをいうのかということを、ひとつ誠意を尽くして相談をしてみることにいたします。お話はよくわかりました。私も賛成でございます。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 まあ御了承願ってけっこうでございますから、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。  次は、使用人の預かり金の返還請求権の問題であります。これは、たしか私の承知しておるところによりますと、現行法は百十九条で、全部共益債権で返すことになっておったですね。
  82. 新谷正夫

    新谷政府委員 使用人の預かり金につきましては、共益債権として処理しておる例が多いのでございます。しかし、完全に一〇〇%そうかということになりますと、必ずしもそうでないようでございまして、裁判所の許可によって弁済しておるのもございますし、また放棄しておる、あるいは分割弁済の方法をとっておるという、特殊な支払い方法についての約束ができてやっておるのもございます。ただ、解釈上の問題といたしまして、百十九条が預かり金というふうに表現いたしております。これが先ほど申し上げましたようないきさつがございますが、現在行なわれておる社内預金が預かり金の中に入るか入らないかという議論になりますと、これは入るといわざるを得ないのであります。したがいまして、解釈上は共益債権である、こういわざるを得ないだろうと考えております。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 そこで、預かり金である社内預金、従業員の立場からいうならば、会社がそれを運転資金に回しておろうが何であろうが、自分で働いた給料のうちから貯金していることについては、何らこれは解釈の争いはないと私は思うのですね。だから自分で働いて得た月給の一部を会社に貯金しておる。会社は、それを預かって、運用方法が多少けしかるか、けしからぬか、あるいは利息が高いか、安いかについては、これは全然別問題だと私は思う。私どもは、社内預金の禁止をしろと言うておるわけですが、従業員の立場はきわめて明白で、自分の金を会社に預けておる。銀行に預けておるか会社に預けておるかの違いである。今度この百十九条の預かり金が共益債権であるという性格から、今度の法律案は、「更生手続開始前六月間の給料の総額に相当する額又はその預り金の額の三分の一に相当する額のうちいずれか多い額を限度として、共益債権とする。」この限りにおいては、これは後退したですね。私はそう見ざるを得ない。実際問題として局長のおっしゃるように、そうばかりもやっていないところもあるかもしれぬけれども法律解釈としては、私は後退したと見るわけです。  それでは一体なぜ後退をしなければならぬのか。もしも預かり金が、また社内預金が、この現行法立法の当時から考えると性格が変わっておるとするならば、したがって後退をするよりしかたがないとするならば、政府としては、社内預金それ自身を問題にしなければならぬのであって、法務省は会社更生法の問題です、社内預金の性格、運営その他については労働省の関係ですと言っておってはいかぬのではないか。閣議でこの法案がきまりますときに、預かり金の返還請求権については現行法よりも後退させるとするならば、むしろ社内預金の禁止を明白に打ち出す政策と相まってしなければ、意味がないのではないかと思いますが、法務大臣はどうですか。
  84. 田中伊三次

    田中国務大臣 一応民事局長から答えさせます。
  85. 新谷正夫

    新谷政府委員 御説のように、社内預金制度そのものをどうするかという基本の問題がございます。これを踏まえた上で会社更生法の手当てをすべきであるということになろうかと思うのでございます。  これは、まず私ども会社更生法関係から申し上げますなら、従来預かり金というものの中に、現在行なわれてまいりましたような社内預金というものは、立法当初には考えられていなかったということは事実のようでございます。取り戻し権の対象になるような、いわば特定物の寄託のような場合に、これを預かり金というふうに表現したもののようでございます。それが、だんだんと社内預金が広がってまいりまして、この社内預金会社更生法の百十九条の解釈上どうなるかということに及んできた結果、先ほど申し上げましたように、これは規定の文言上は、後にできた社内預金も入ると言わざるを得ないということになったわけでございます。しかしながら、これが共益債権ということになり、今回の改正によりましてその範囲を規定するということになりますと、若干従来よりは会社更生法上の扱いとしては、不利益になるということは、否定できません。しかし、従業員の給料が六月間のものが共益債権として保証され、さらにまた退職金についてもそれに準じて保護しようということを今回考えたわけでございます。それらとの権衡を考えました場合に、社内預金をどの程度共益債権として保護したらいいかということになるわけでございます。給料と社内預金、どちらが大事かということになりますと、これは当然給料のほうが従業員にとっては大事であるということが常識であろうと考えるのでございまして、むしろ社内預金のほうは、給料以下であっていいんじゃないかという議論が、一方ではあるわけであります。これは、先ほど意見のように、社内預金制度そのものをやめるべきではないかという考え方とつながってくることであろうと思うのでございますけれども、とにかく給料と同等に保護することがいいかどうかという問題が実はあるわけであります。しかし、そうかといって、これを二ヵ月分とか三ヵ月分というふうにすることにつきましても、合理的な理由というものがはなはだ見出しがたいのでありまして、何らかの目安を置くとすれば、給料債権の六月間のものということになっておりますので、せいぜいその程度まで共益債権とするなら、この債権の性格上、社内預金の保護に欠けることはないだろう、こういう考え方に立って、今回の提案をしたわけでございます。  社内預金制度そのものの問題は、もうすでに御承知のように労働省におきまして、今後の問題を厳重に規制していこうという方針で、先年省令の改正あるいは通達等によりまして社内預金というものを厳正に間違いなく通用できるような措置をとられております。その総額、ワクと申しますか、ワクをどういうふうに定めるか、あるいは利率をどう定めるか、社内預金の返還請求権の保証制度をどうするかというこまかいことについて、労働省のほうでそれぞれ措置がとられておるのであります。これは、社内預金というものを、従来のように野放しの形にするよりはむしろ適正な形で、その履行の確保も得られるような形にして、労働者を保護するという方向で規制を加えていくという方針でやっておるわけでございます。これは一応労働省の問題になるわけでございますけれども、私どもとしましては、会社更生法の取り扱い上の問題として、ほかの債権とのバランスを考えながら、社内預金についてはこの程度保護すればいいのであるまいかというふうに考えたわけでございます。  なお、先ほど申し上げましたが、給料の六月間の額に相当するもの、あるいは預かり金の三分の一に相当する額を限度として共益債権とみなすわけでありますが、その残りの部分につきましては、やはり優先的更生債権といたしまして、相当程度の優遇措置は講ずるわけでございます。これが一般の更生債権と同じような扱いに落ちてしまうという趣旨ではございません。また逆に、破産法上は、従来は一般の破産債権、すべて破産債権であったのでありますが、今回の改正によりまして、そちらとの均衡も考えまして優先的破産債権ということにいたしまして、逆に破産法では保護する措置をとった次第でございます。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 給料と預かり金との比較権衡論、それは理屈はある程度ないではないけれども、給料の場合は遅欠配ですよね。遅欠配ないしはまだ期日が到来しないから、もらっていないものの問題だと思うのです。社内預金というものは、一たん本人がもらってそれから会社に預けた、所有権が完全に移って、それから預託をしたという性格のものだと思うのです。私が遺憾に思うのは、少なくとも従業員だとか中小企業のために会社更生法改正をするに際して、今日までの法律に定められておる水準を、それらの人の権益を下げるという法はないではないか。ものも言いよう、解釈もしようで、給料やその他との均衡論もないではないけれども、どうしても既得権を剥奪をしなければならぬ積極的な理由はないと私は思う。ないのですよ。どうですかね。理屈は幾らでも立ちますよ。社内預金というものは、性格が立法当時から変わったといったって、本人のものであることには間違いないのです。何で妙な均衡論にふけって既得権を剥奪しなければならぬ積極的な理由があったのか、私は解釈に苦しむのですよ。何か少しいいことをしてやるからかんべんしてくれ、——ほかの何かのイデオロギー的な法律ならともかくとして、この種の法律にこんなことをしなければならぬ積極的な理由は私はないと思うのです。どうしてもしなければならぬという理屈は、あなたは別な角度からおっしゃったけれども、私の見るのに、社内預金は完全に所有権が移ってからもう一ぺん預託したのだ、給料は、まだ実際問題として本人の手に渡っていないのだからしかたがないという理屈をとれば、優に現行法の百十九条の預かり金の中に社内預金も含ましたって何ら差しつかえない。改正の場合においてもこういう六ヵ月とか三分の一とかいう制限を置く必要はごうもないと私には思われる。しかしどうしてもこれは権衡論でやるというのであるならば、一方においてなるほど、私どもが主張して、社内預金に関しての制限は牛の歩みのようなやり方ではあるけれども制限されているのだが、社内預金に対する後退した法律案を出すこの機会に、社内預金に対して禁止をばさっとやるということが両立しなければ労働者に対する説得力がないではないかというわけです。これはまた意見の対立ですが、この点で法務大臣がそれはごもっともだとおっしゃればまた……。どうでしょう。
  87. 新谷正夫

    新谷政府委員 社内預金は、一度従業員の手に入ってさらに預けたものである、それから給料債権はまだ手に入っていない純然たる債権である、こういう御趣旨であります。しかし、社内預金のほうは、一度手に入ったものを会社に預けてしまえば法律的にはこれは返還請求権ということになる。その意味で給料の請求権と債権という趣旨においては変わりはないのでございます。一般の債権の場合に、これは給料債権であろうと社内預金であろうと、本来更生債権であるべき筋合いのものであります。政策的に給料債権なり退職金手当というものを、共益債権として優遇しようという措置でございます。また社内預金と給料あるいは退職手当との政策的な均衡を考えましたならば、やはりその間のバランスをとっていくということが大切であろうと思うのでございます。そういう意味で従来解釈がだんだんと広がってきたと申しますか、預かり金の中身が変わってきたことに伴って、社内預金がこの中に入り込んでしまったという実情はわかるのでございますけれども、ともかく政策的に給料なり退職手当というものを保護したその精神を、この社内預金についても同じように考えて、相互の債権間の均衡を考えていきたいということでございます。いままで全額共益債権であったものを、この際六ヵ月とか三分の一に制限する理由に乏しい、こうおっしゃるのでございますが、むしろこの三つを並べてみました場合に、労働者にとって最も保護する必要があるものは給料債権。それとの均衡を考えますれば、こういうふうな横のバランスを考えて、社内預金についての措置を講ずることも決して不合理なことではないというふうに考えております。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 そもそも今度の改正案は、わが党から提出した中の重要な柱である企業者に対する責任の追及が不十分だと思うのです。私どもは過怠更生罪というものを特に提起をしておるのでありますけれども、この預かり金にしたところで、なるほど立法当時と違って社内預金のウエートが非常にふえたということなのだから、新しい事態において社内預金の格を下げるというお気持ちらしいけれども、しかしながら、社内預金は本来なさるべきものではない。会社が利息を高利でつって、そうして従業員から金を集めて、それを会社の運転資金に使用しておるということ自身がけしからぬというのが天の声なんですね。しかし、従業員にしてみれば、社内預金方式は一つには利益、一つには会社の経営者が、わあわあ言うものだからやるということなんですが、ここのところを考えずして、従業員の既得権だけを後退させるということは、片手落ちもはなはだしいと私は思っておるわけです。だから、こういうことをするのがやむを得なければ、明白に社内預金の追及の措置を同時にとらなければ、法務省としては全く片手落ちのやり方をしておると私は断ぜざるを得ないのです。一体基準といいますか、六ヵ月だとか預かり金の三分の一というのが随所に見られるわけでありますが、退職手当にしましても預かり金にしましても、何を基準として三分の一、六ヵ月というものをおとりになるわけですか。おそらくや預かり金の場合には、大体社内預金がどのくらいあって、いままでの実績共益債権として返されたことがどのくらいだから、このくらいならば従業員の権利が保障されるというようなやり方でおきめになったんではなくて、退職手当に均衡をとったということだけだと思うのですね。それでは実情に適合をしてないということになると私は思うのであります。これは一ぺん次会に労働大臣にお出ましを願いまして、法務大臣と労働大臣の間に、——法務省はこの措置をする、せざるを得ない。だからこの法の均衡論からいっても、労働省が社内預金に対して明白な措置をするという一札をお出しにならなければ、私どもは説得力がないと思うのであります。  あらためてもう一度だけ聞きますけれども現行法を後退をさせるということの積極的な理由は何かという点。いままで聞いた分では、他の均衡からせざるを得ないということだけなんですが、それだけでありますか。その他の均衡のために、後退をしなければならないほどの均衡というものがあるのか。論理上の問題だけではないか。私はどうしてもその点、納得できないのであります。
  89. 新谷正夫

    新谷政府委員 労働省の社内預金全般の問題につきましては、私から申し上げることは差し控えますが、実情を申し上げますと、昭和四十一年の三月末現在におきまする社内預金の総額は、大体八千五百億円と労働省の調査によればいわれております。これを社内預金をいたしております労働者一人当たりの平均にいたしてみますと、一人当たりの平均が約十五万円ということになっておるわけでございます。一方労働者の平均賃金は幾らかということになりますと、一ヵ月大体三万九千円、約四万円というふうに考えられるわけでございまして、現在の一人当たりの社内預金の額十五万円ということは、大体労働者の四ヵ月分の平均給料に相当するものであるということになるわけであります。したがいまして六ヵ月分を保証するということであれば、一応平均的な保護ははかり得るであろう。さらに残りの部分は優先的更生債権でございますので、一般の更生債権のようにこれを切り捨ててしまうということはまずないわけでございまして、したがって後退するといっても、それほど大きな後退であるとは考えられませんし、また平均的な数個から考えますならば、決して労働者の保護に実際問題として欠けるというものでもないというふうに考えておるわけでございます。  先ほど給料あるいは退職手当との均衡上、六ヵ月分ということも申し上げましたが、これは一つの目安として、やはりとり得る現行法上の基準であろうと思います。そこまで確保できるならば、実際問題としましても、平均の社内預金額よりもはるかに多いわけでありますので、特段に預金者にとって不利になるということでもあるまいということを考えたわけであります。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 いまの最初の計算のしかたをよく聞いておりませんでしたけれども、一人当たり十五万円というものは全労働者で割った数ですか。
  91. 新谷正夫

    新谷政府委員 社内預金をいたしております労働者の数で、社内預金総額を割った数字であります。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 御存じだと思いますけれども社内預金がわりあいに普及しておりますのは、大企業ないしは優良企業ですね。ですから私は相当格差があると思うのです。平均で十五万円でなくて、格差のある水準でこの総額を割ったことになるのではないか。だから統計をとりますときに、その山がどの辺にあるかによって、平均という意味が価値のないことになるのではなかろうかという感じがいたします。しかし、これは統計論をやっておりますと時間がありませんので省略をいたしますけれども、もう少しその理論を詰めるならば、統計的な論争をしなければ説得力がないというように感ずるわけであります。  この預かり金の問題につきましては、法務大臣、あなたは何ともこの問題については黙して答えぬほうがいいだろうという顔をしていらっしゃいますので、委員長、次会に私の申し上げるように、この法案が法務省としてやむを得ないという立場にお立ちになるならば、ぜひ労働大臣においでを願いまして、そして社内預金に対する規制についてもっと厳重に、立場を明白にされるという前提条件のもとに審議をいたしたいと思いますから、委員長におかれては善処をお願いいたしたいと思います。  それから次の問題は、保全管理人という制度の問題であります。「裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、更生手続開始前の保全処分として、更生会社につき保全管理人による管理又は監督員による監督を命ずることができるものとすること。」となっております。この保全管理人及び監督員というものはどうなんでありましょうか。この種の人たちについては、裁判所リストを通常準備をいたしておきまして行なわれるものであるか、また、これらが次の段階で、管財人になるべき性格の人を選定をするものであるかどうか。あるいはまた3に、「監督員による監督の命令があったときは、」云々とあるのでありますが、この保全管理人及び監督員の権限というものはどういうものであるか。つまりこの命令に会社、従業員が従わないという場合には、一体どういう事態になるものであるか。まずその辺から御説明をいただきたい。
  93. 新谷正夫

    新谷政府委員 保全管理人あるいは監督員の問題でございますが、更生手続の開始の申し立てがございますと、会社財産の散逸を防ぎ、あるいはへんぱな弁済とすることのないように、開始段階においてこれを未然に防止する必要があるわけでございます。開始決定があれば、事後更生債権の弁済は許されないことになるわけでござまいすが、申し立て段階においてそういう弊害を防止する必要があろうかと思います。ところが、更生会社を一たん破綻に導きました不適任な会社理事者が、債務者に対する強力な武器として、従来の保全処分を利用してまいったのであります。その方法といたしましては、財産の処分の禁止、あるいは債務の弁済の禁止、強制執行の中止というふうな処分を求めまして、会社更生法上の保全処分として、会社理事者がこの力をかりて、財産の散逸あるいは債務の弁済を一応押えてもらうという措置に出たわけであります。しかし、その保全処分をしたままで更生手続の開始に至りますまで、そういった理事者会社の事業を経営していくということになりますと、更生手続を進めていきます上におきましても非常に不都合が生じますし、また、保全処分そのものを、そういった理事者が隠れみのに使うというふうな弊害も出てまいるわけであります。こういったことをなくしまして、保全処分乱用防止をはかるという意味合いから、利害関係人からの申し立てがあれば、あるいは裁判所が必要と認められるような場合には、職権によりまして保全管理人を命じて、事業の経営あるいは会社の財産の管理、処分権限を、保全管理人に一応移してしまうという措置をとり得るようにいたしたのであります。  さらに、保全管理人を任命しないまでも、会社の取締役の行動を監視するだけで足りるような場合もあり得るわけでございます。さような場合に、監督員を命じまして、裁判所の命ずる行為については監督員同意を得なければならぬというふうなことにいたしまして、会社理事者の専横を防止しようといたしたわけでございます。  それから、この保全管理人とか監督員裁判所が命じます場合に——これは新しい制度でございますので、これから裁判所のほうで考えられることであろうと思いますけれども、あらかじめ名簿を用意しておくかどうかということであります。こういう保全処分としてやる措置でございますので非常に急を要する場合が多かろうと思うのでございます。いざ保全処分によって保全管理人を命ずる場合に、急遽いろいろ八方手を尽くしてさがすというのでは間に合いません。おそらく裁判所においては、実際問題としては、あらかじめどういう人が適当であろうかということをチェックしておいて、その中から保全管理人なり監督員を命ずることになろうかと思います。  なお、この保全管理人が任命されました場合に、その管理人の命令に従わない、あるいは監督員の命令にも従わないということになる場合には、どういう措置がとられるかということでございますが、会社の事業経営権が保全管理人に移ってしまいます。したがいまして、その会社として保全管理人の命令に反するということは許されなくなります。命令違反の場合には、一般の会社の内部規定によって処理される、——一般の理事者の指示を受けるべきもの、会社の内部の関係でございます。それと同じ関係になろうかと思うわけでございます。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 私どもが心配いたしますのは、この会社の経営者ないしは役員が、この会社更生法の運営にあたって犯すかもしれない行為、それが山陽特殊鋼なんかのときには非常にあらわれてきた。だから、会社更生法というものは、親企業なり大企業のための利益のみにあるおそれがある。したがって、政府側も今回の改正につきましては、経営者責任というものを考えに入れて立案をなさったと思うのでありますが、それがどうも改正案の中に十分に浮かび上がってこないと私ども考えておるわけであります。私どもはさきに立案をして、提案をしておるのでありますが、その中の重要なことが、先ほど申しましたように、過怠更生罪の問題であります。破産法には過怠破産罪の規定があるが、会社更生法にはこのような規定が設けられていない。しかし、明らかに経営者の過怠により企業を危機におとしいれ、関連下請事業者や、労働者に、多大の犠牲と損失を与えた場合、これを放任することは社会正義に反するので、この意味から当該経営者の社会的責任を追及するとともに、会社更生法悪用による経営責任の回避を防止し、あわせて一般経営者の倫理感と責任感を自覚せしめる意味において、過怠更生罪を設けた。そしてその要点となっておるものは、三つであります。「更生手続開始を遅延させる目的をもつて、著しく不利益な条件で会社に債務を負担させ、又は信用取引により会社に商品を買い入れ、著しく不利益な条件でこれを処分すること。」「更生手続開始の申立てをすることができる事実があることを知っているにかかわらず、特定の債権者に特別の利益を与える目的をもつて、会社の財産を担保に供与し、又は会社の債務を消滅させる行為会社の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が会社の義務に属しないもの。」「法律の規定により作るべき商業帳簿を作らず、これに財産の現況を知るに足りる記載をせず、若しくは不正の記載をし、又はこれを隠匿し、若しくはき棄すること。」この三つを過怠更生罪として、五年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処する旨を規定しておるのであります。もちろんこれらの規定は刑法に正条がある場合には適用しないことにしておるのでありますが、いずれにしてもこの立法は、山陽特殊鋼の問題が発火点となりまして、会社更生法改正する動機になりました重大な焦点となりましたのが経営者責任という問題であります。その経営者責任について、今度の改正案はまっこうから四つに組んでいないのではないかといううらみがあるわけでありますが、その点は、どうお考えですか。
  95. 新谷正夫

    新谷政府委員 経営者の責任を、十分追及し得る道をなお一そう検討すべきであるということは、私どもももちろん同じ考えを持っております。現行法のもとにおきましても、取締役その他の理事者の責任を追及する規定はいろいろあるわけであります。これは民事的な責任追及の面であります。刑事的には、会社更生法の罰則規定があるわけでありまして、社会党から御提案になりました過怠更生罪の項目を設けよという御趣旨も十分拝聴いたしておるわけであります。  これにつきましては、現行法上なぜこの過怠更生罪の規定が入らなかったのかという点でございますが、会社の事業を継続しながら、その会社更生をはかろうという会社更生手続申し立てというものは、罰則の強化によって、逆に当事者によってちゅうちょされる心配はないだろうかということ、さらに、詐欺更生罪その他の罰則との関係で、過怠の場合の罰則を更生法の中に取り入れることについて、若干問題があるのではあるまいかというふうに考えられて、過怠更生罪の規定が入っていない結果になっているのであろうというふうに考えられるのでございます。これは過怠破産罪の規定と非常に類似のものでございますが、過怠破産の場合におきましては、破産宣告というのが一つの要件になっております。過怠更生罪の場合には、更生手続の開始の決定ということが要件になっております。これが若干破産の場合と更生手続開始の場合とで違うようにも考えられます。また黒字倒産の場合は、会社申し立てによって手続を開始するというふうな場合は、これに過怠更生罪というものを設けることがはたして妥当であろうかどうかというふうな配慮もなされているように考えるのであります。法務省といたしましてもこの過怠更生罪を設けるかどうかということにつきましては、罰則でございますので、刑事局長とも十分協議いたしまして検討いたした次第でございます。ただ、現行破産法その他の罰則との均衡の問題もあるようでございます。いまこれを会社更生法だけの手直しで済むかどうか、いろいろほかの法律にも関係がございますので、いましばらくこの罰則の改正については検討する必要があるということで、今回の改正には間に合いませんでした。しかし、刑事局におきましても、この罰則の点につきましてはなお一そう破産法その他の関連法律との均衡を考え、さらに更生要件についても、もう少し検討いたしたいということでございます。そこまでやっておりますとこの法律の取りまとめもなかなかむずかしいだろうということを考えまして、まことに残念なことでありましたけれども、罰則の点につきましては、今回の改正に間に合わなかったというふうになった次第であります。そういう点もひとつ御了解いただきたいと思います。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 私どもは、あの当時世論の焦点になりましたことが企業責任でありましただけに、私どもの言う過怠更生罪の創設だけが唯一無二のものだとは思いませんけれども、少なくともこの改正の動機となりました点からいいますと、それが正面に出てこなければおかしいではないかということを申し上げたいのであります。  その次に、本来経営責任と相関連をいたしまして、会社がそのようになる以前の問題として商法改正なりあるいは経営の内部監査制度の充実をあわせてしなければならぬという考えをわれわれは持っておるわけであります。  問題は、私がお伺いしたいのは二つあるのでありますが、会社のいわゆる監査役の問題が第一であります。監査役というものは実際問題としていま有名無実である。したがって会社の監査役について新しい目を向けて、部外の人でなくてはならぬとか、あるいは利益に何にも関係がない人でなくてはならぬとか、職業会計人を使ったほうがよろしいとかいう点が重要な検討一つでなくてはならぬと考えるのでありますが、これはどうかという点と、もう一つは、直接株式会社には関係がございませんけれども、最近私ども国会で議論をいたしておりますのが、一例を申しますと私学のようなところであります。アメリカ軍の寄付行為について、ずいぶん話題になりましたが、学校にしろ、あるいは宗教法人にしろ、あるいは医療法人にしろ、株式会社以外のもので——株式会社もまあそうでありますが、政府が国民の税金をもって補助金を出し、あるいは寄付について税金をまけ、あるいは国民の郵便貯金その他で金融をつけておるそれらの会社なり、あるいは社団、財団で、経理状況がきわめて不十分なところが多い。さればとて、政府の監督責任を強めるというのも、私学についてはいかがなものであろうかという考えがある。だから、よけいにこれらのものについては、内部監査制度というものを充実させるべき必要があると思われる。たとえばその一例として、それらのものについては外部の職業公認会計士のような人の監査と証明を必須の要件にしなければ、税金なり金融の特典を受けることはいけないというような措置にすべきではないかと私どもはかねがね主張して、すでに大蔵委員会においても附帯決議になっておるところでありますが、これは、今回の法律ができ上がってしまったあとの問題であるが、でき上がる前、この種の事件が起こります前の問題として、株式会社を含めて、財団法人、社団法人、あるいは各種学校を含めて、監査役を中心にいたします内部牽制制度、それについてどういう検討をなされたか、伺いたいのであります。
  97. 新谷正夫

    新谷政府委員 株式会社その他の会社のみならず、私立学校なり、宗教法人等の各種の法人の経理状況が、必ずしも適正でない、これに対して十分な監査制度検討すべきであろうということは、私どもも全く同感でございます。私立学校とか宗教法人関係につきましては、これは法務省の所管外になりますが、差しあたり会社法の問題といたしまして現在監査制度改正についての検討を始めております。この会社更生法立案作業が終わりまして、すぐそちらのほうにまた並行してかかったわけでございまして、法制審議会にもはかりまして、いまようやくその緒につこうとするところであります。問題といたしましては、現行の監査役制度、特に株式会社の場合につきまして、監査役制度をどう持っていったらいいかということにまず問題の焦点を当てまして、そこから株式会社法の改正の問題に取り組み始めたわけでございます。現在の監査役は、御承知のように会計監査を中心にいたしております。はたしてそれだけでいいのかどうか、業務監査までやらせるべきであるかどうかということ。さらに監査役制度というものを存置する必要があるかどうか、監査役制度にかわるほかの会計監査の方法はないものか、言いかえれば公認会計士制度をこれにある程度導入することはできないだろうか。ただ公認会計士の数が、聞くところによりますとまだ全国で二、三千人という状況でございまして、数十万の株式会社に一律に公認会計士の監査を求めるということは、実際問題として不可能な面もございますが、それにしても相当規模会社につきましては、公認会計士の監査によるということにしたらどうであろうか、またその場合におきましても、監査役制度を業務監査の面で残す必要があるのではないかとか、いろいろの考え方があるわけでございます。そういった問題点をいま事務当局におきまして検討を始めたわけでございます。これに基づきまして、いずれ法制審議会でも本格的な審議が始まろうという状況下にあるわけでございます。  株式会社法の一番最近の問題点といたしまして、御指摘のように監査制度そのものが緊急の問題であろうかと考えます。その点の改正に着手したわけであります。ほかの法人の内部監査制度につきましても、もとよりいろいろの問題があるようでございますが、これは法務省だけでやれることではございませんで、とりあえず法務省のほうとしては株式会社法の改正を手がけていこうという態度でおるわけでございます。  ただ、この会社更生法改正と関連して、直ちにそこまでいくということは、これは非常に大きな問題でございます。ことに株式会社の、大会社、小会社一律に同じ立て方で監査制度が実施できるかどうかという問題もある関係もありまして、会社更生法改正の中に、その関連問題として監査制度をどうするかというところまでは、ちょっと手が及ばなかったわけであります。しかし、今後の商法改正問題といたしまして、最も重要な監査制度について、とりあえずこの検討に着手したということであります。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 御忠言を少ししておきたいのでありますが、法務省としては、繰り返し言うように、非常にアカデミックに、慎重な御検討をされることはけっこうでありますが、タイミングというものをひとつ十分にとらえてもらいたいことと、もう一つは、法務省のアカデミックな議論と実態というものが、先ほども同僚委員が申しましたように、とかく遊離しがちなきらいを私は痛感せざるを得ないのであります。  先般、だいぶ前でありましたが、本委員会で一言言うたことがあるのでありますが、いまあなたが、公認会計士が二、三千人で、株式会社が数十万あるとかおっしゃいましたが、公認会計士の中で公認会計士の職務を専業でやっている人はほんのわずかでございまして、あとは全部税理士の商売をやってめしを食っておるわけであります。  それから株式会社が数十万といったところで、うどん屋株式会社、八百屋株式会社があって、専務が裏でおむつを洗たくしておるということも枚挙にいとまがないのであります。そういうおむつを洗たくする専務の場合でも、法律によって株主総会が行なわれ、そしてその議決によってこういうことになったのだということに届け出がされておることは、御存じのとおりであります。それは一体、株式会社が実際に株主総会をやったのかといいますと、ほとんどやってないことは言うまでもありません。適当に税理士さんなりだれかが、それを作成してやっておるというのが実態なのでありますから、私の申し上げているのも、十ぱ一からげに株式会社について云々と言っておるわけではないのでありますから、もう少し実態に合わせた現実的必要なベースから始めるべきではないかと思うのであります。時期、それから実態というものをお忘れにならないように、ひとつ事務を促進していただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、最後に、法務大臣に次回御質問をいたしたいと思っておるわけでありますが、一言事前に申し上げておきたいと思うのであります。  こういう管財人なり保全管理人は、ほとんどといっていいほど、弁護士さんがやる場合が非常に多いのでありますが、弁護士さんが、最近新聞で伝うるところによりますと、またアメリカから銭をもらって、研究費に充てておったということが出てまいりました。ああいうことは文部省だけだ、大学だけだと思っていたところが、思いがけないところで寄付金をもらっておる。こういうことだと、どうもみんなあるのじゃないかという気を国民は持っておるわけであります。法務省所管のあらゆる関係のところも一ぺん正式に御調査をなさる必要がある。法曹界というものは、特に峻厳でなければならず、また独立性というものが要求されておるときに、これは内容についてよく調べてみれば、文部省の学術研究とは違うような気がせぬでもないけれども、どうも法曹界の権威からいっても、巻き添えを食ったといいますか、これはまた別な角度で非常に国民の信頼感をなくするのじゃないか。だから、この機会に、最高裁、法務省、あらゆる関係団体等で、この種の事案はないかどうか、一ぺん至急に念査をして、次回に会報告をされることを望みたいのであります。
  99. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事は、この程度にとどめます。  次会は、来たる二十九日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会