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新谷政府委員 退職手当と
社内預金の問題は、確かにこれは
一つの重要な問題であります。従業員
退職手当を、
現行の
会社更生法上どういうふうに
処理していくかということにつきましても、いろいろな解釈が成り立ち得ると思うのでございます。ごく一般的に申しますならば、
会社の都合によって
退職しました場合には、
会社更生法二百八条の規定によりまして、
共益債権となるのでございますが、そうでない、自己都合で
退職いたしました場合には、必ずしもそうは参らない。しかし、これは
商法の規定によって一般の先取り特権がございますので、その
関係で
更生法上優先的にできるということになるわけでございます。しかし、
先ほど申し上げましたように、自己都合による場合は、
共益債権というところまで持っていくには若干
制度上にも問題があるということでございます。この点をどうしたらいいかということでございますが、給料
債権につきましては、
現行法の百十九条によって六月間の給料
債権につきましては同一
債権とされておりまして、給料
債権に準じて従業員の保護を
考えるといたしますならば、
退職手当につきましても同様の保護を加えるべきであるというふうに
考えまして、
退職事由のいかんを問わず、つまり
会社の都合によって
退職するものであろうと、あるいは自己都合によって
退職するものであろうと、その辺は問わない。すべて給料総額の月額の六ヵ月分に相当する額あるいは
退職金総額の三分の一に相当する額、そのどちらか多いほうを選択して、それを
共益債権として行使できるというふうに
考えておる次第でございます。給料総額の六倍あるいは
退職金総額の三分の一というふうにいたしました
理由は、長期の在職者にとりましては、六ヵ月間の給料総額ということになりますと、短期間の従業員との不均衡が生じます。そこで、長期の
退職者のためにできるだけその辺の均衡をとって優遇する必要があろうという配慮から、この選択制を認めた次第でございます。
それから、
社内預金につきましては、これは非常に大きな
社内預金そのものの問題があるわけであります。これにつきましては労働省の所管になっておりまして、労働省におきまして、先年
社内預金の一定の
措置を講じたのでございます。それによりまして、従来の
社内預金のあり方というものが、一応軌道に乗るような形になってきたのでございますが、しかし、
会社更生法の
関係におきまして、この
社内預金をどう見るかということにつきましては、また別の観点から
検討しなければならぬ問題があるかと思います。現在、
現行法上従業員の預かり金につきまして、これを全額
共益債権ということにされております。この
会社更生法は
昭和二十七年に制定されたのでございますが、その当時におきましては、現在行なわれておりますような
社内預金制度というものはなかったようでございます。むしろ一時出張するために、
会社で給料を保管していただくというような
趣旨で預けたもの、いわば一種の取り戻し権の対象になるような
趣旨の預かり金を一般的には
考えておったようでございます。それがだんだん拡充されまして、
社内預金制度というものが行なわれるようになりまして、非常に、解釈上その預かり金の中に
社内預金が入るのではないかという疑義が生じてきたわけでございます。そういう
意味で、現在の解釈としましては、この預かり金という中に、
社内預金も含むという解釈が多く行なわれておるわけでございます。しかし、何と申しましても給料
債権あるいは
退職手当の請求権と比べまして、
社内預金の返還請求権の度合いというものは、従業員に対する
関係におきましてはやはり一段と落ちるものではないか。やはり一種の余剰金でございまして、これを全額
共益債権とすることにつきましては、相当社会的な批判もあるわけであります。さればといって、これをどの程度に
共益債権にとどめるかということになりますと、その目安もなかなかむずかしいのでございます。従来全額
共益債権になっておりました
関係も考慮いたしまして、また給料あるいは
退職金が六ヵ月間のもの、あるいは六倍に相当するものというふうにいたした
関係上、それに一応準じた保護を与えるということにしますれば、それでほかの
債権との均衡もはかれるのではないかと
考えたのでございます。そういう
意味で、
社内預金につきましても預金総額の中で給料の総額の六ヵ月間のものに相当するもの、あるいはその預かり金の総額の三分の一の額を一応
共益債権とする、大体
退職金に準じた扱いをいたしたわけでございます。それと、もう
一つは、現在の
破産法上は、
社内預金の保護の
措置は講ぜられておりません。また、ただいま申しましたような六ヵ月間の給料総額あるいは預金総額の三分の一に相当する額をこえる額をどうするかという問題も残ります。これらのものは全部優先的
更生債権なりあるいは優先的
破産債権といたしまして、その保護にもできるだけ手厚い
措置を講ずることにいたした次第でございます。