運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-23 第55回国会 衆議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十三日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 横山 利秋君    理事 岡沢 完治君       中尾 栄一君    馬場 元治君       加藤 勘十君    中谷 鉄也君       西宮  弘君    沖本 泰幸君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務政務次官  井原 岸高君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君         法務省入国管理         局長      中川  進君         大蔵省関税局長 谷川  宏君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         外務省北米局安         全保障課長   浅尾新一郎君         外務省中南米・         移住局旅券課長 内藤  武君         厚生省公衆衛生         局検疫課長   後藤 伍郎君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月二十三日  委員神近市子辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十二日  刑法の一部を改正する法律案等反対に関する請  願(岡本隆一紹介)(第一四九一号)  同(横山利秋紹介)(第一五一〇号)  同(野間千代三君紹介)(第一五七九号)  同(西風勲紹介)(第一五八八号)  同(大柴滋夫紹介)(第一六〇七号)  同(古川喜一紹介)(第一六〇八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
  3. 松本善明

    松本(善)委員 ちょっと古い話ですけれども昭和三十七年の六月二十日の午後八時二十分ごろ、全自交の労働組合の、三光自動車労働組合委員長であった丸山良夫さんという人が刺殺されました。そしてこの二十日で五周年になる。これは共産党や社会党あるいは総評など、労働組合などが一緒になって、大々的に現地調査もまた毎年やられておるわけですけれども、人の命に関する犯罪という、特にこの事件では右翼のテロだというふうにいわれているわけですけれども、こういう人命に対する犯罪というのは、犯罪の中でも最も悪質なわけであります。こういう、事件について、五年もたってもいまだに犯人をあげられない、この責任ですね、この問題について一体捜査当局検察庁、それから警察は、どういうふうに考えておるか、意見を聞きたいと思います。
  4. 内海倫

    内海政府委員 神奈川県下の川崎臨港警察署管内におきまして、昭和三十七年に発生いたしました殺人事件につきまして、事件以来神奈川県におきましてはあらゆる努力を払って捜査を継続し、その間、昭和三十九年でありますか、遺族の方から告発検察庁に対してあり、一そう、警察といたしましては捜査を真剣に継続しておるところでございますが、まことに遺憾でありますが、今日に至るまで犯人検挙し得ておらないということにつきましては、神奈川警察のみならず、私どももたいへん遺憾に存じておるところであります。決して、捜査の手を抜いたり、あるいはこれを放置するというふうなことはいたしておるわけではございませんが、遺憾ながら、いまだに犯人検挙するに至っておらないということにつきましては、私どもも真に遺憾に存じております。
  5. 川井英良

    川井政府委員 検察庁におきましても、三十七年と三十九年に、二回にわたりまして告訴告発を受けまして、その告訴状に示されておりました特定人物について、検察官みずからいろいろ捜査をいたしましたけれども、ついにその人物について容疑をつかむことができなかったという報告に接しております。なお引き続き、警察と協力いたしまして捜査を続けておるわけでございますが、不幸にして、まだ犯人を確定するに至っておりません。
  6. 松本善明

    松本(善)委員 この事件につきましては、事件後二年目の、昭和三十九年六月二十六日の参議院法務委員会で詳細に質問がされておるわけですが、このときには警察も、法務省も、もう少し捜査状況を見てほしい、警察最後追い込み捜査をしているのだというような答弁をしておるわけです。殺人事件が起こってから五年もたち、それから参議院法務委員会で問題になってから三年たっている。そのときには、もう追い込みなんだ、こういうふうに言っていながら、今日までこういう実情である、捜査見通しもつかない、こういうことについては、単に捜査がどうこうというよりは、捜査態勢について検察庁やあるいは警察責任を感じなければならぬ、どこに問題があったのかを考えなければならないのじゃないかと思いますが、そういう点についてはどうお考えになるか。あの当時、昭和三十九年にはいいかげんな答弁をしたのか、その点を聞きたいと思います。
  7. 内海倫

    内海政府委員 私も、参議院法務委員会における質疑応答につきまして、速記録を詳細に見たわけでありますが、その際に当時の刑事局長から、神奈川県の報告によれば、いま捜査を実行しておるということで、いま仰せのような意味合いのことも言っておるようでありますが、しかしながら、捜査につきましてはやはりいろいろの山谷があるわけでありまして、おそらくその当時におきましては、全力をあげて捜査をしておるところであり、全力をあげて捜査をしておるわけであるから、ひとつその結果を待っていただきたいということであったと私ども考えます。しかし、遺憾ながらその後犯人として検挙するに至らず、またいろいろな人々に対して、いろんな角度からの捜査をいたしました。しかしながら、いずれも犯人であると確定するような事実を突きとめ得ておらない、こういうことで今日に至っておるわけであります。私どもは、捜査においてはほんとうに全力をあげておるということを神奈川県から報告を聞いており、五年という非常に長い間でありますが、この犯人検挙し得ないということについて、いろいろ能力の点においてあるいは批判があるかもしれませんが、神奈川県としてはできるだけの努力をし、五年間ずっと捜査本部を設置したままで継続して今日までやっておるところであります。私どもは、なお今後も一そう神奈川県が懸命の努力を払って、犯人に到達するということを心からこいねがっておるところでございます。
  8. 松本善明

    松本(善)委員 では、検察庁のほうの答弁をちょっと確かめておきますが、昭和三十九年四月に遺族によって告訴されました護国団に属していた井上清という人物容疑が、晴れたと検察庁考えているのですか。その点をお聞きします。
  9. 川井英良

    川井政府委員 地検よりの報告によりますと、鋭意捜査をこの人物について続けたけれども、ついに容疑をつかむことができなかったということになっておりますので、完全にその人物について容疑が晴れたというふうに見ているのかどうか、その辺についてはさらにまた地検のほうへ確かめてみたいと思っております。
  10. 松本善明

    松本(善)委員 井上清という人物は、事件の起こる前の一週間前である昭和三十年六月の十三日に、甲府の刑務所を出所して、護国団をたよって上京しておるわけです。これ以来事件までの行動ですね。そういう行動については、どういうことをしていたのか、ちゃんと把握をしておりますか。
  11. 川井英良

    川井政府委員 捜査中の案件であり、さらにまた完全に容疑が晴れたものならば、容疑がなかったのでありますから、その行動の詳細について捜査の結果を公にするということは適当でないと思いまするし、また、容疑が完全に晴れていないとするなら、さらにこれから鋭意捜査を続けなければならないことになりますので、それをさらにここで公にするということはなお適当でない、かように考えますので、その特定人物についての捜査内容については、ここで申し上げることを差し控えさしていただきたい、こう思います。
  12. 松本善明

    松本(善)委員 これがまだ捜査の当初であるならば、そういう答弁で済むかもしれない。しかし、五年もたちまして、そしてこの問題については警察が指紋もとっていない。それから非常体制にも入らない、そういうようなことで、警察初動捜査から批判がされておる。その後五年もたっても犯人があがらないということで、むしろ捜査当局責任という——一人の人間の命が失われたことについて、捜査当局一体どの程度責任を感じて捜査をしているのかという責任の問題が問題になってきている。単なる、捜査内容がどうなっているかというようなことではないわけです。人の命が——大通りで殺されて、そうして警察検察庁全力をあげていると言っているのに、五年間もそのままになっているというところに問題がある。これはさらに鋭意やってもらいたいと思う。  さらに一つ言っておきたいと思いますが、丸山さんの刺殺されたときのアリバイの問題、これも関係者にもはっきりしていません。その刺殺された日の井上アリバイがはっきりしていない。検察庁容疑が晴れたというならばこれまた別だけれども、この問題もはっきりしない。関係者は非常にふしぎな思いをしたまま、検察庁はまともにやっているのかどうか、こういうふうに考えている。  それで、さらにもうちょっと聞いておきたいと思いますが、井上は、丸山さんが殺される前日か前々日に浅草の「ふくひろ」というところで飲みながら、友人島田光男というものに近いうちに大きいことをやるから、まとまった金が入る、やばい仕事だけれども、おれがやらなければならない、しかし、やれば金になる、一人当たり十万円ぐらいになる、三人ぐらいでやり、最後自分がやらなければならない、前金としてきょう一万円もらってきた、組合の幹部を二、三回おどかしに行ったけれどもきき目がないので、最後の手段をとる、というようなことをしゃべっているわけです。こういうようなことが事実と考えているのかどうか、こういう点については検察庁はどういうふうに見ておりますか。
  13. 川井英良

    川井政府委員 お答えできません。
  14. 松本善明

    松本(善)委員 これは私たちが、参議院法務委員会でもある程度の答えがされております。一回やられたことを、五年たってもう一度やっているという趣旨について、検察庁はかなり本気で考えてもらわなければならない。捜査内容だからということでそれは答えないということであれば、ここの場では済むかもしれません。しかし、そういうものではないだろう。被害者のほうでは、はっきりと事柄をあげて、こういう点でふしぎだからということで聞いておるわけです。それがもし被害者との関係で、納得のいくように警察検察庁が、こうこうこういうことで一生懸命やっている、そしてこういう状況なんだということがわかっておれば、国会で問題になるわけがないのです。国会で聞くようなこともないのです。それがなぜ国会で問題になっているかということについて、真剣に考えてもらわなければならないと思うのです。で、それは答えができないというようなことだけでは済まないと思うのです。検察庁はこういう状態になっているのに、もしこれで捜査方向がつかめないということであれば、警察初動捜査について一体問題があるのかどうか、そういう点についても考えなければならないはずです。できませんでした、一生懸命にやっておりますけれども、できませんでした、容疑はつかめませんでしたということで済むのかどうか、刑事局長考えをもう一度聞きたいと思います。この事件については、そういうことで済むのかどうか。
  15. 川井英良

    川井政府委員 殺人事件は、犯罪の中でも最も重要な犯罪であることは、私もよく承知しておるつもりでございます。したがいまして、いろいろな容疑のあるものが出てまいりました場合に、その容疑について取り調べをするにあたりましても、犯罪が重大であるだけに、その捜査もまた慎重でなければならない、こう思うわけでございます。そこで、この捜査を打ち切ってしまったということでありますならば、そのいままでの捜査経過について国会調査権に基づいての公益上の御質問でありますので、差しつかえない範囲においてこれを公にすることは私どものつとめだ、こう思いまするけれども警察におきましても、検察庁におきましても、まだ鋭意捜査中だ、こうお答えしておるわけでございますので、捜査中の段階におきまして、その内容にわたることについて、この段階でお答えすることは適当でない、こういう趣旨でございます。
  16. 松本善明

    松本(善)委員 刑事局長は、内容を知っていて答えないのか、知らないのか。私は知らないのではないかと思います。知らないなら知らないということを答えてもらいたい。あなた、五年たっているんですよ、五年たっていて、出所をしてから人が殺されるまでの間、一年ちょっとですよ。その間のアリバイがあるのかどうかぐらいわからないで、一体検察庁つとまるのかどうか。強制捜査の権限を持っているのは、検察庁警察だけですよ。ほかには持っていないのです。だから国会で問題になるわけじゃないですか。それは知りません、ここでは答えられません、一生懸命やっております。そういうことで一体検察庁、信頼していいのかどうか。人が殺されているんですよ。もう一度刑事局長考えを聞きたい。
  17. 川井英良

    川井政府委員 検察庁が取り調べた事柄の全部かどうかは知りませんけれども、その内容のある部分について報告を受けておりますので、私は知っております。知っておりますけれども、お答えできません。
  18. 松本善明

    松本(善)委員 じゃ、もう少し言っておきますが、あの島田という人は、小さいときからの友人であります。丸山さんの遺児の丸山雅之さんというのが放送したその放送を聞いて、自分友人だから井上君のことを話さなければならぬということで話をした人ですよ。こういう井上に不利なことを言わなければならない立場に全くない人です。こういう貴重な供述をしてくれた人について、検察庁は最大に尊重して、これを徹底的に追及していかなければいかぬはずです。  さらに申しますと、島田さんは翌々日ぐらいの新聞で、丸山委員長殺しの記事を見て、直感的に彼がやったなと思った。そのやさきに、井上から、この前言ったことはおまえにしか話をしていないことだから、だれにも話さないでくれ、ないことにしてくれという電話がかかってきて、それから三度も口どめの電話がかかってきている、こういうようなことで、先ほど言ったような予想のことを話をしている。犯罪を予想して話をしている。あるいは口どめの電話をかけてきている。こういうことが事実かどうかということを検察庁は言えないということで済むかどうか。被害者はそれで納得しますか。これは井上が否定しているのか、否定していないのか。否定をしているなら彼は何をしておったのか。こういうことは全くうそなのか。島田さんというのはうそを言ったのか。被害者としては当然そういうことを聞かなければならない。これは遺族としては、いてもたってもいられない気持ちですよ。丸山さんのおかあさんは、この問題が決着するまでは死ねないと言っています。刑事局長は、検察庁責任についてどう考えられますか。
  19. 川井英良

    川井政府委員 捜査中でございますので、その捜査の結果を待ちたいと思います。
  20. 松本善明

    松本(善)委員 刑事局長からは、捜査中だから言えないという答弁しか得られません。しかし、これは五年もたっているということをもう一度考えてもらいたい。そうして捜査当局責任が問題になっている。これは、もしいまの検察庁考え方あるいは警察考え方でいけば、過失致死ということであれば七年で時効になるのではないか。これは殺人であるならば時効はさらに延びます。時効との関係では検察庁はどう考えていますか。
  21. 川井英良

    川井政府委員 時効が完成しないうちに犯人逮捕したいものだ、こう考えます。
  22. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますことは、過失致死ということでやっていくのか、殺人ということでやっていくのかということを聞いている。
  23. 川井英良

    川井政府委員 現在の捜査は、過失致死捜査を続けているという報告を受けております。
  24. 松本善明

    松本(善)委員 それではあと二年で時効になるということです。一体二年の間に、そういう体制犯人をあげられるという見通しがあるのかどうか。
  25. 川井英良

    川井政府委員 鋭意努力したいと思います。
  26. 松本善明

    松本(善)委員 この問題について、なぜ私たちが重大な問題に考えているかというと、沖繩教育公務員法反対運動の中で、この阻止闘争の中で、事務局長の福地さんという人がことしの三月に刺されました。その刺され方は全く同じなんです。臀部を刺されている。それで大腿部を刺されている。それから今度の東京都知事選挙の中では、御存じのように赤尾敏が、美濃部さんも浅沼さんの二の舞になるぞということを言っております。それからこの選挙の最中には、運動員狙撃事件も起こっている。テロというのは民主主義の大敵であります。この問題について徹底して排除していく、そういうテロを許さないという姿勢が捜査当局の中に示されなければ、こういう犯罪を絶滅することはできないと私たち考える。こういうものが五年もたってそのままになっているというような状態は、とうてい許すことはできないと思うから強調をしておるわけです。この事件について二回にわたって国会で問題になったわけですが、鋭意捜査努力をすると言っていますが、犯人があがらない場合に一体どういう問題があるのか、どういう責任をとるのか、その点について両方の当事者に、これはどこに問題があったのかということについて考え方があるかどうか、検察庁警察刑事局長両方にお聞きしたいと思います。
  27. 内海倫

    内海政府委員 先ほどからも申しておりますように、神奈川警察としましては、事件発生以来検察庁とも緊密な協力のもとに、せい一ぱいの捜査を現在も継続しておるわけであります。今後もその努力はさらに継続して、犯人検挙努力をするという決意を私どもにも報告してまいっております。全力を尽くして、しかる後なお犯人検挙に至らなかったというようなことがありますれば、またその時点において過去をよく振り返って検討はいたさなければなりませんが、私どもは何よりも現在において全力を尽くさせるように、こちらからも助言、勧告していくということが私どもの使命である、かように思います。
  28. 川井英良

    川井政府委員 テロを憎むことにおいて、私どもも人後に落ちるものではありません。この事件につきましても、御趣旨のあるところをよく理解いたしまして、さらに現地にこの捜査の徹底についてまた指導をしてまいりたい、こう思っております。
  29. 松本善明

    松本(善)委員 それではちょっと聞いておきますが、情報を提供されました島田さんの所在安否は、警察はちゃんとつかんでおりますか。
  30. 内海倫

    内海政府委員 所在もつかんでおりますし、安否についてもよく見ております。現在のところ平穏に生活をされております。
  31. 松本善明

    松本(善)委員 井上所在についてもつかんでおりますか。
  32. 内海倫

    内海政府委員 神奈川警察におきまして所在をつかみまして、ずっと経過も承知しております。
  33. 松本善明

    松本(善)委員 それではこの質問は一応終わりまして、六月の十九日の夕方、国電吉祥寺駅前ビラを配っておりました少年二人が道交法違反逮捕をされ、二千人ぐらいの市民が、この逮捕は間違っているというので抗議に集まって、機動隊まで出動したという事件がありましたけれども、この事件経過処理について報告をしてもらいたいと思います。
  34. 三井脩

    三井説明員 お答え申し上げます。  本件は、六月十九日午後六時二十分ごろ起こった事案であります。場所は武蔵野市吉祥寺本町一の九の十二先路上国電吉祥寺駅北口前道路でございます。現場国電吉祥寺駅北口の通りでありまして、駅前派出所から約五、六十メートル離れた通行人の多い商店街であります。この交通ひんぱんな道路上で、数名の者がビラを配っておりました。警察官が、道交法による許可を受けてビラを配っておるのかと聞きましたが、受けておらないということでありますので、これをさっそく中止するように申し述べましたが、聞き入れなかったわけであります。そのうち一名は逃走しようといたしましたので、現場において逮捕、他の一名は住所、氏名その他を述べないという状況でありますので、やはりこれも逮捕いたしまして、派出所に同行し、さらに警察署引致をいたしました。  これに対しまして、通行人等合わせまして最高時四、五百名が蝟集をいたしまして、交通妨害状況になり、また警察官被疑者逮捕被疑者引致行為を妨害するような状況でありましたので、初めは署員を招集し、次に他の部隊も合わせまして最高警察官百二十一名を現場に派遣いたしまして処理をいたしました。夜の十時過ぎになりまして現場も解散いたしましたが、被疑者につきましては、一名は氏名その他を明瞭にいたしましたのでこれを釈放し、一名は身柄つき検察庁に送致をいたしまして、検察庁のほうでは、二十一日の夕刻六時過ぎに釈放されたというように承っております。
  35. 松本善明

    松本(善)委員 警察のほうでは、ビラまき許可が要るんだ、こういう考え警備をやっておるんですか。
  36. 三井脩

    三井説明員 交通ひんぱんな道路上におきましてビラを交付するという場合には、道路交通法第七十七条一項四号によりまして、またそれを受けました東京公安委員会規剛道路交通規則の第十四条の八号によりまして要許可行為とされております。
  37. 松本善明

    松本(善)委員 昭和四十年一月二十三日の東京地裁判決で、これは有楽町駅のビラまき事件でありますが、無罪の判決が出ております。そうして東京高裁では、これを支持する判決がやはり四十一年の二月二十八日に出ております。そうして検察庁はこの判決に上告をいたしませんでした。検察庁はこの判決に服するという態度をとっているというふうに考えておりますが、それに間違いないかどうか。
  38. 川井英良

    川井政府委員 いま御指摘のような判決があったことは間違いありませんし、高裁判決に対して、検察庁が控訴をしないで、これを確定させたことも間違いございません。検察庁考え方は、この有楽町駅前通りビラ張り事件具体的状況について、このような判決の解釈もやむを得ない、あり得る、こういう考え方のもとに確定させたと報告を受けております。
  39. 松本善明

    松本(善)委員 この判決はこういうことが書いてあるわけです。「被告人らは、前記有楽町中央日比谷口前そごう百貨店との間の道路にほか二名の女性と通行者を間にはさむようにして二列に向い合ってほぼ固定した位置で立並び、手にしたビラを、通行者が来るのを待って、前を通ればそのまま、後を通れば後を向いて、ときには接近して行って手渡す、いらないという人に無理に持って行けということはない、もらう人はちょっと立止まる恰好になるから後から来る人が若干歩調をゆるめる、いらない人は出されたビラにさわらないように身体を左右に向けて通り過ぎる、又道路方向に進む通行人被告人らが立っているところを避けて通ったとか、自動車が一時停車し若しくは左に寄って進行していったものがあるとかいうのであって、これを前述の同所における当時の交通状況に照らして考えると、被告人らの本件印刷物の交付が、一般交通にある程度の影響を及ぼしたことはこれを否定できないにしても、前述の意味での一般交通に著しい影響を及ぼすおそれがあったとは認め難く、」それからさらに原判決、この高裁判決が支持をした一審判決で「一人または少数のものが、人の通行の状況に応じその妨害を避けるためいつでも移動し得る状態において、通行人に印刷物を交付する行為のようなものは、その態様、方法において、社会通念上一般に、一般交通に著しい影響を及ぼす行為類型に該当するものとはいい難い」という趣旨の判示をしております。この判示については検察庁は支持をしているというふうに理解をしていいですか。
  40. 川井英良

    川井政府委員 そういう解釈もあり得ると思います。
  41. 松本善明

    松本(善)委員 これは判決内容を読んだわけであります。検察庁が上告をしなかったので、検察庁はこの解釈に服するという考え方なのかどうか、そういう解釈があり得るというようなことではなくて、検察庁は上告をしなかったのだから、この考え方はどういうことなのか、こういうことです。
  42. 川井英良

    川井政府委員 検察庁の上告の態度についてちょっと御説明申し上げたいと思いますけれども、検察官が考えておった法律の解釈と、相反するような解釈の判決がなされておりましても、すべてそれについて上訴して争うというわけではございませんで、具体的に問題になった具体的事実との関係において、この具体的状況において、こういう判決のもとに消極の判断が下るということはやむを得ないと思えば、その判決に示された法律解釈について、必ずしも納得がいかない場合においても上訴をしないということがむしろ非常に多いわけであります。この判決も、その判決がなされた当時、いろいろ情勢について議論がありましたけれども、いまお読み上げになりましたような具体的状況のもとにおいては、一般交通に著しい影響を与えるとは言えない、こういう判断というものは、このケースに関する限りはやむを得ないのではないかというようなことから上告をしなかった、こういういきさつでございます。
  43. 松本善明

    松本(善)委員 この判決の大事な点は、私はこの判決を全面的に支持をするというわけではありませんけれども、この道路交通法と、それから東京都の道路交通規則そのものに問題があるというふうに考えておりますけれども、この判決の立場の重要な点は、一般交通に著しい影響がある場合のみが対象になるのだ。だから、単に交通のひんぱんな道路ビラをまいているというだけでは足らない。一般交通に著しい影響のある場合、たとえば祭りでありますとか、ロケーションのようなもの、それくらいに帯しい影響を及ぼすような場合に初めて問題になり得るのだ、こういう趣旨であります。いま刑事局長もこの程度では、この有楽町ビラまき事件程度では、一般交通に著しい影響を及ぼすものとは考えられないので、それで上告をしなかったという趣旨を言われた。それはいま私が申しましたような、単に交通ひんぱんな道路ビラをまいているというだけではなくて、一般交通に著しい影響を与えるというような場合でなければ、取り締まりの対象にならないのだ、こういう見解を表明されたものと伺っていいですか。
  44. 川井英良

    川井政府委員 ほぼそういう趣旨だと思います。
  45. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いま警察庁の警備課長が言ったのは、先ほどの吉祥寺の事件では、交通ひんぱんな道路上でビラを交付している場合には許可を要するのだ、こういうふうに言ったわけです。これはいまの刑事局長の見解と、ことばの上での迷いにすぎませんか。それとも見解が違うのかどうか。
  46. 三井脩

    三井説明員 趣旨において違いはないと存じます。
  47. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、一般交通に著しい影響がある祭りや、それからロケーションのように、道路交通法に明示していますね。そういう場合以外には許可を要しないで、ヒラをまくことは当然なんだ、こういう見解でやっておりますか。
  48. 三井脩

    三井説明員 そういう見解ではございません。ただいまお話しの点は、例示であると思います。本件の場合のように、交通ひんぱんな場所においてビラまきをしておるという状態は、許可を要する行為ではないかと考えております。
  49. 松本善明

    松本(善)委員 そこが問題なんですよ。交通のひんぱんな場所でビラまきをする場合には、許可を要するというふうに考えるか。それだけでは足らないのだ。一般交通に帯しい影響を及ぼすような場合でなければならないのだということを、この一審の判決も、それから二審の判決も言っているわけです。高裁判決も言っているわけです。いま刑事局長も一般の交通に著しい影響を与えるという場合を問題にしているのだ。先ほどの私の言った趣旨と大体同じ考えだということを言いました。それは明らかに違うのです。私はわざわざ問題点を指摘をしてあなたに聞いたのだけれども、あなたは交通ひんぱんな道路においてのビラまき行為は許可を要するのだ、こういうふうに答えましたけれども答弁は変わりませんか。あとで問題になりますよ。正確に答弁してください。
  50. 川井英良

    川井政府委員 交通ひんぱんな道路ビラまきをするということだけで、この法律ないしは規則に違反するのかどうかという問題と、それからこの法律に書いてあります一般交通に著しい影響を与えるということにならないというとこの禁止違反にならないじゃないかということで、交通ひんぱんな道路におけるビラまきと、法律上の要件である一般交通に著しい影響を与えるということを理論的に分けていろいろ論ずるということは、私法律解釈としてそうなければならぬと思いますし、またそれが適当だ、こう思いますけれども、私どものこの法律ないし規則についての解釈といたしましては、従来一般交通のひんぱんな道路でありましても、ラッシュのときはひんぱんでありましても、そうでないときは必ずしもひんぱんでないというふうな、いろいろな場合も考えられますので、具体的な状況におきましては、一般的に言って交通が非常に混雑しひんぱんな道路であって、そして現実の問題として一般交通に著しい影響を与えるような状況のとき、そういうふうなときにビラまきをする、あるいはビラ張りをするということが、この法上で禁止している行為である、こういうふうに考えております。
  51. 松本善明

    松本(善)委員 警察庁の見解は。
  52. 三井脩

    三井説明員 同様な解釈でございますし、本件の場合も同様な状態にあったと考えております。
  53. 松本善明

    松本(善)委員 当時雨が降っておりまして、人通りはそう多くなかった。道路の幅員は約七メートルで自動車の通行は禁止をされておる場所です。こういうところでビラをまくことが——四人の人が七メートルの道路の端に並んでビラをまくことが、交通に著しい影響を生じますか、妨害になりますか。
  54. 三井脩

    三井説明員 本件の場所は、私たちの受け取っておる報告によりますと、通路の幅員四・九メートルでございまして、ちょうど時間が六時二十分ということで、買い物等のための婦女子の通行もひんぱんであり、またラッシュ時でありまして、通勤客等の乗降も多いという状態にもあったような状況だったということであります。
  55. 松本善明

    松本(善)委員 どういう著しい交通の妨害があったのかということを聞いているのです。交通がひんぱんであるというだけではなくて、どういう妨害になりましたかと聞いている。
  56. 三井脩

    三井説明員 ただいまのような状態でありましたので、ここは歩道、車道の区別もない道路でありまして、道路の中央付近その他に出てビラをまいておる、配っておるわけでありますから、ただいま申しましたような状態のもとにおける通行に、著しい妨害があった、支障があったというふうに考えております。
  57. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど申し上げました有楽町ビラまき事件では、一警官が、東京は交通がひんぱんなところだから、東京ビラをまくときには全部許可を要するのだ、こういうことを放言をした。この一警官が、交通の妨害が著しいと考えるかどうかによって逮捕ができるかどうかという、一警官の判断いかんによって、場合によっては、東京ビラをまくのは全部許可を得ていなければ逮捕するのだ、こういうふうに考えるのかもしれない。こういうふうになっているということについては、表現の自由の侵害ではないかと思いますが、法務政務次官、どうですか、こういう事態については、どういうふうに考えますか。
  58. 井原岸高

    ○井原政府委員 一警官が、一つの常識を持ってそういうことを言ったのであろうと思います。ここに、専門的な検討をいたしますればおのずと違ったことも出るのじゃないかと思うわけでございますが、どちらにいたしましても、東京都内は、こういう非常に街路も混雑いたしておる中でございますから、ビラを渡しておりますと、ただそこで投げるということでなしに、通行人に個々に渡すわけでございまするから、事実上はやっぱりそういうことになるのではないか、したがって、警察官のとった処置はもっともであろうと思うのでございますが、ただ、東京都内全部この地域であるということは、少し言い過ぎじゃないか、かように考えております。
  59. 松本善明

    松本(善)委員 だから、そういうような一警官の判断によって——場合によってはそういう判断をする警察官もいる。放言をするのもいる。こういうふうなことによって、表現の自由が侵害される態勢にあるということをどう考えるか。特に道路交通法七十七条、東京都交通規則十四条、これはほかの県の条例にもたくさんありますけれども、こういうような不合理な結果に——法務政務次官も、それは行き過ぎだ、東京ビラをまくのは全部許可を要するというふうに考えている警官があるのは行き過ぎだ、こういうふうになっておる状態が出ているわけですけれども、こういうことについて、憲法上の問題はどう考えるかということをお聞きしたわけなんですよ。
  60. 井原岸高

    ○井原政府委員 そういう、おっしゃることが事実であるとすれば、確かに問題であろうと思うわけでございますが、少なくともそういうことのないようなふうにやっておるのじゃないか、私はそう考えるわけでございます。
  61. 松本善明

    松本(善)委員 この吉祥寺で問題になったビラは、「この手を見てくれ、油のしみたこのごつい手が、機械を回し、ナットを作る、俺達の作る小さいナットが、デカイビルの鉄骨を支え、発電機を回し、車を走らせる、世界を支え、倖せをつくる俺達、サア皆な、このこぶしをとりあおう、ナットを作るこのごつい手で、俺達のしあわせをつかみとろう」という詩を書いて、「オペレッタ、俺たちは太陽」という宣伝ビラであります。これは労働者の文化活動であります。労働者の文化活動に対する弾圧としてこれは受け取られる。警察官は労働者に対して敵意を持っている。こういうようなものについてこういう弾圧をしているということは、敵意を持っているのではないかというように思うわけですが、労働者に対する警察の中の教育はどうですか。
  62. 三井脩

    三井説明員 ただいまのビラ張り、宣伝ビラの配付等でございますが、これは事前に許可なく行なわれた行為であるということで取り締まったという点は、先ほど来申し上げておるとおりでありますが、内容がかくかくのものであるから、それによって逮捕をしたというようなことはございません。したがいまして、これは労働者が害いたものであるからこのようにやっているというような種類のものでもありませんし、警察におきましてもそのような教育をやっておらないと思います。
  63. 松本善明

    松本(善)委員 そういうふうに言うけれども、実際には、その経過を見ますと、決してそうではない。警官が、道交法違反だからビラ配りをやめるように言ってきた。まいていた二人は、納得できなかったけれども、一応やめて帰ろうとした。ところが、無理やり交番に連れていこうとして、引っぱり、つねり、うしろ手に手を締め上げ、手錠をかけようとして、ズボンを破り、バンドを切り、ワイシャツを破るというような、言語に絶する暴行を働いている。通行人商店街の人二千名ぐらいが見守っている中で、第八機動隊が出動して、なぐる、ける、首を締める、文句があるならかかってこいというような放言をはきながら、抗議をしている人たちにもけがをさせるという態度、これは警察官は、あなた、そう言うけれども、実際に労働者に対して敵意を持ってやっているというふうにしか考えられない。しかも道交法という、道路の交通の妨害をなくすという法律を使って労働者の弾圧をやっているとしか考えられない。この事実を聞いて、あなた、どう思いますか。
  64. 三井脩

    三井説明員 ただいまの点につきましては、私たち報告を受けておりますのでは、注意したところ、許可証もない。それで、答える必要はないと言って、そのうちの二名はその場を立ち去った。さらに一名は、ビラを路面に投げ捨てて逃げようとしたのでそれを逮捕した。それからもう一名につきましては、氏名を言う必要はないというようなことを言っておりまして、これを一緒に連行するという際に、回りを取り囲んだ数十人の人たちが、本人を警察官が連行するのを妨げようということで、本人の衣服あるいは腕を引っぱった。警察官はこれを両わきから抱きかかえるようにして署まで連行したわけであります。もう一名につきましては、これはおとなしく警察官とともに交番に行った、こういうふうになっておるわけでございます。
  65. 松本善明

    松本(善)委員 いろいろ弁解をしますけれども警察が正当であって、そうして逮捕されている人が悪いんだ、——たとえば強盗の逮捕というようなとき二千名もの人が集まらない。これだけの群集が抗議に来ている。警察のやったことはけしからぬと言ってきているということについて、法律上はこうでした、あのときはこうでしたとか、いろいろ弁解はできるかもしれませんけれども、あなた方警察としては反省をしないのですか、この点について聞きたいと思うのです。
  66. 三井脩

    三井説明員 ただいま申しましたように、公務執行をやっておるわけでございまして、集まった人たちの騒ぎがありますので足をとめたという方もあり、われわれの報告では最高四、五百名という数で、二千名というような数ではなかった。しかし、これは大小の問題ではありませんし、警察官といたしましては公務執行を適確に果たすというのがわれわれの方針でございます。
  67. 松本善明

    松本(善)委員 警察のほうが、何らの反省の態度を示さないということについて、実に遺憾であります。重大な反省を求めます。  きょうは、警察最高責任たちが来てないのでこの程度で終わりますけれども、そういう程度で終わらせることのできない問題であるということを警告をして、私の質問を終わります。
  68. 大坪保雄

    大坪委員長 沖本泰幸君。
  69. 沖本泰幸

    ○沖本委員 六月九日に出入国管理問題でいろいろ御質問いたしましたが、その点についてまだ十分納得のいかない点、また大臣にお伺いするために保留した問題もございますので、大臣のお見えになるまでの間、関連したほかのことについてお伺いしたいと思います。  厚生省はそのおりに、米軍の軍用艦船で来る場合は、検疫法の特例というものがある。こういうものに基づいて入港、あるいは着陸した場合、これは、日米行政協定で米国が使用しておる施設、こういうものに対する管轄は、日本の検疫所長がアメリカの検疫官、大体軍医ですが、これをしてやらしておる。したがって、こちらの検疫済み証を渡して、初めて検疫が終わる、こういう御答弁があったわけなんです。この点から、真偽のほどはまだはっきりわかりませんが、アメリカのベトナムから帰ってきた戦車に肉片がついておったとか、骨片がついておったというような話もございますが、こういうものに関しまして、はたして完全な検疫ができておるのか、できていないのか、こういう点についてもう一度詳しくお伺いいたします。
  70. 後藤伍郎

    ○後藤説明員 先ごろちょっと申し上げました点が、私の説明が非常に不十分であったと思うのでございますが、向こうから来る場合、三つの方法があるわけでございます。一般人と一緒に普通の航空機で入る場合、これは日本の検疫港、あるいは検疫飛行場に入るわけでございますが、これは日本の当該検疫所長がやります。それから、外国軍用艦船等に関する検疫法特例、これでやる場合には、当該検疫所長がやるわけであります。その場合、何か汚染したおそれがあるとか、あるいは検疫伝染病の侵入の危険があるという場合には、この特例に基づきまして検疫所長、それから向こうの飛行機の長、あるいは船長、艦長といいますか、こういう人たちとよく協議をして、検疫伝染病が侵入しないようにするわけでございます。  それから、日米行政協定で向こうが使用しておる場合でございますが、これは御指摘のように、向こうの検疫官が実際やります。それから、こちらの当該管轄いたします検疫所長の検疫済み証を渡すことによって初めて検疫が終わるわけでございますが、いままでこの検疫の門を通して検疫伝染病が入った事例はまだございません。われわれも一生懸命検疫伝染病が入らないように努力しておるわけでございます。
  71. 沖本泰幸

    ○沖本委員 去年から盛んに、作物とか、あるいは植物が、アメリカから来た虫におかされる、こういうことが非常に問題になって、これの殺虫剤をまいておりますね。これを防ぐためにたいへんなことになっておる。全国的な問題になっておるわけですけれども、こういうものが入ってきた経過、あるいは原因、それはまだつかんでおられませんか。
  72. 後藤伍郎

    ○後藤説明員 実は、私たちの所管する検疫でございますけれども、これは人が主体になった検疫でございます。しかも、検疫伝染病というものは、国際衛生規則によりまして、六つの伝染病が規定されております。われわれはそれに準拠して仕事をやっておるわけでございます。  一方いろんな植物につく、あるいは荷物につく虫類などもございます。これについても検疫伝染病に関係ある虫類の駆除、これは検疫所で処置をいたします。ただ、おそらく御質問趣旨は、アメリカシロヒトリとか、ああいうものだろうと思いますが、こういう、人の検疫以外の植物の検疫、あるいは動物の検疫になりますと、これは農林省主管で、植物防疫課、あるいは畜産局の衛生課、こちらのほうでやっておりますので、ちょっと私からはお答えできません。
  73. 沖本泰幸

    ○沖本委員 人について検疫をしていらっしゃるということなんですが、汚染された地域を通ってきたものについては、その汚染地域、あるいは伝染病がはやっておるところを通ってきたものに対しては検疫をしておるというようなこの間の御答弁だったわけです。しかし、米軍の基地を通してこういうものが入ってきた、たとえば肉片がついて腐敗しておったというような点が、いろんなことからうわさになったという点を考えてみますというと、当然そういう地域を通ってきたということが考えられるわけです。  たとえば相模原の基地ですけれども、そこで車を修理している場合にそういうことが起きたという点について言えることですが、当然その車自体は、その中を通ってきておるということになるわけですけれども、そういうものがいいかげんであるために、こういう害虫がはびこっているという一つの例として考えられるのではないでしょうか。伝染病が発生したからどうということではなくて、そういうことが考えられるわけですけれども、その点について協議してやっていらっしゃるというわけですけれども、たとえて言うならば、相模原の基地の防疫に関しては、どういうふうな日米協定があるのでしょうか。
  74. 後藤伍郎

    ○後藤説明員 一度検疫の門を通過いたします場合、検疫伝染病の疑いがないということになりますと、国内に、人間、品物、そういうものが搬入されます。そして患者であれば、相模原の病院に入るということになっております。これにつきましては、日米合同委員会を通じて、厚生省と向こうとの話し合いによりまして主要なる二つの点をきめているわけであります。  それは、一つは、防疫情報を相互に交換する。あるいは検疫伝染病、それから集団発生した場合、そういう場合は直ちに報告いたします。それから、その他の伝染病については定期的に報告いたします。  第二点といたしましては、もし患者が出た場合、しかも広域な防疫活動が必要だと認められる場合、当該病院長と地区保健所長、あるいは都道府県の代表である保健所というものがよく協議をして、それぞれ防疫に必要な措置をとるということになっております。
  75. 沖本泰幸

    ○沖本委員 どうもその点がはっきりしないのですけれどもね。ただ、行政協定とか、あるいは協議をしているとかというお話だけで、実際に立ち入りができるのか。われわれが一番心配している問題は、あなた方が実際に自分の目をもち、あるいはそういうものをもって確かめられるのかどうかという点にあるわけですがね。そういうものがないから、害虫も日本全土に広がった。アメリカから新しい戦略物資とか、そういうものが入ってきた場合には、これは一応心配の度合いもそれほどではないのですけれども、ところが、一たんベトナムへ行ったものが帰ってくるということは、当然想像されるわけです。いま六月の最中ですが、向こうはいま真夏なんです。  それじゃお伺いしますけれども、いま、ベトナムでは、あるいは東南アジアでは、タイの国、あるいはベトナム、あるいはラオス、こういう地域では、いまどういう法定伝染病が流行しているのでしょうか。全然流行していないのでしょうか。
  76. 後藤伍郎

    ○後藤説明員 私、いま、東南アジア全部のことをお答えするほどのデータを持っておりませんけれども、たとえばベトナムでは、ペストとコレラ、これが蔓延しております。特にコレラについては、五月下旬まで調べてありますけれども、これを見ますというと、昨年の同期よりことしは減少しておりますけれども、一方、ペストはむしろ増加している。これはかつて山岳地帯にあったペストが山ろくに移りまして、山ろく地帯にどんどん入ってきたということだろうと思いますが、昨年より増加している傾向にあります。
  77. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あなた、たいへんな御発言をなさるわけですね。ペスト、コレラといったら法定伝染病で最高のものじゃないですか。それがいま日本の国の中で——ベトナムではこういう伝染病が入っているという新聞記事を全然見たことがありませんよ。まだあと質問しますけれども、相模原の基地に破損した戦車なり、機甲車なり、あるいはトラックがそのまま入ってきて、それが日本の国のあなたの防疫のほうで全然手つかずで、ただアメリカの話だけを聞いているということになって、もしここでペストが何らかの形で入ってきたらどうなさるのですか。厳重な防疫体制を相互間が確かめ合って、そうして向こうから入ってくるものは厳重な防疫をしなければならないはずなんです。人が死んだり、あるいは森林が焼けたり、どぶの中に飛び込んだり、ネズミをひき殺したり、最も汚染された地域を通ってくるに違いないのです。それがそのまま放置されているということは重大問題だと思うのです。そういう点についてどういうようなことをおやりになっておるのですか。
  78. 後藤伍郎

    ○後藤説明員 ただいまの数字は、WHOに加盟している各国が、検疫伝染病が発生した場合二十時間以内に報告する、そういう数字の集計でございます。それは私たちもそのつど検疫所にその数字を教えてあります。それから一方ラジオを通じまして汚染地区の場所、汚染地区になった日時というものを放送しておるわけでございます。しかも一番心配になるのは、ペストとかそういうものでございますが、ペストは特に国際衛生条約で非常に厳重にしております。というのはペストには有効なワクチンがございません。そこで出国の際に相当のチェックをする、たとえばペストの潜伏期間は六日でございまして、もし汚染された危険があるとみなされる人は、その国を離れる場合は六日間の隔離をする、それで健康状態を見て発病がなかった、だいじょうぶであるということで初めて出国する、そういうような国際条約がございます。これに対して米国も加盟しておりまして、先般われわれとの話し合いでもそれは厳重に守っている、私たちとしてはそういうことでまず出国でチェックされる。それからこういう情報を流すことによって、各検疫所に厳重に検疫の際見落としのないように指導しておるわけであります。  それから向こうの施設というものに立ち入ることができないのではないかという御質問でございますが、これについては日米合同委員会などを通じまして、立ち入るという申し込みをいたしますと立ち入らせてくれます。現に二、三度も入っておるわけでありまして、全然立ち入れないんだということではないわけであります。
  79. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ペストとかコレラというお話が出たわけですけれども、現在外務省のほうでは、旅券を出したりする場合に、いわゆる四種混合とかいろいろな注射を済まさなければならない点があるわけですが、現在こちらのほうで、ベトナムあるいは東南アジアに行く人たちに対する伝染病の指定は、どういう点に重点を置いておられるのですか。
  80. 内藤武

    ○内藤説明員 旅券を発給するに際しましては、相手国において必要とされている地域別によって違いますけれども、たとえばアメリカの場合などでございますと、いわゆる種痘だとかその他によりまして、それぞれの際にその地域にあって日本から来る者に対して必要とされるそういう注射に対して、健康診断書というか、サーティフィケートを持ってまいるということを指示しております。
  81. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ベトナム方面に行かれる方々に対しては、いま検疫課長さんがおっしゃったような、現在ペストやコレラが流行しておるという注意を与えておられるわけですか、どうですか。
  82. 内藤武

    ○内藤説明員 ベトナム方面に対しましては、ペスト、コレラ、それから種痘、これの注射をして行くように注意を与えております。
  83. 沖本泰幸

    ○沖本委員 注意を与えるとかいうことでなくて、出国する場合、その方面に行かれる場合に、フィリピンでは、いまこういう病気が問題になっている、タイの国では、いまこういう伝染病がはやっておるというような注意事項はないのですか。
  84. 内藤武

    ○内藤説明員 一般的に、都道府県並びに本省におきまして旅券の事務をやっておりまして、在外公館から、この地域におきましては最近このような病気がはやっているということの連絡を受けますと、そのつど本省において掲示し、あるいは都道府県において旅券事務を行なっているところにその注意を流しております。
  85. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ベトナムにおいてはどうなんですか。いまベトナムに行く方に対して、そういう連絡があったのですか。また、そういう連絡を受けて流しておるのですか。どっちなんですか。つんぼさじきですか。
  86. 内藤武

    ○内藤説明員 従来からもベトナムに行かれる方につきましては、いま申しました三つの種類の予防注射をしていただくということになっておりまして、そういう指導をしております。
  87. 沖本泰幸

    ○沖本委員 四種混合とかペスト、コレラあるいは種痘等と、予防注射をして行けば全然無害である、だいじょうぶであるということは言えないわけです。極度に汚染された地域を通ってくれば罹病する可能性もあるわけです。ですから、こういう地域ではこういう病気がはやっているから、なま水を飲んではいけませんとか、こういう病気があるから、町の中へ入って一般に市販されているものを食べてはいけないとかいう注意を、旅行者に対して与えていないのかどうかということなんです。だから、現在ベトナムに行く方に対して、どういう注意を与えていらっしゃるか。やっていらっしゃるか、いらっしゃらないかを伺いたい。
  88. 内藤武

    ○内藤説明員 現在ベトナム方面に向かわれる方につきましては、注射の点について注意をいたしております。とりあえずやっておるのは、そういうことで、照会があった際におきましては、気がつく範囲において、特にそういったいまおっしゃったような、なま水とかいう点についても御注意をしている、そういうことでございます。
  89. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、いまのあなたのおことばの調子ですと、全然米軍のほうからそういうことに関連する情報は流してもらえないのですか。
  90. 内藤武

    ○内藤説明員 旅券を出すに際しまして、一般的にそのような注意を都道府県に流す際におきましては、在外公館よりの報告が、累次、いろいろ参っておりまして、そのつど都道府県に対する一種のお知らせと申しますか、即刻に通報するという手続をとっております。
  91. 沖本泰幸

    ○沖本委員 在外公館というと、ベトナムの大使館からはそういうあれはないわけですね。
  92. 内藤武

    ○内藤説明員 最近特にそのことにつきまして言ってまいったものはございません。従来からそういうことで必要であるということで注意を与えておりまして、最近特にこういうふうに情報が変わったから注意をするようにという報告は参っておりません。
  93. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどの検疫課長さんのお話しの向きと、あなたのおっしゃっている向きとは全然食い違ってくるわけです。ペストやコレラがはやっている、指定されているということをおっしゃっているわけです。それじゃ、羽田の空港では、その点に関しましてベトナム方面から帰ってこられる方に対しては、そういう点に重点を置いて検疫していらっしゃるわけですか。こういう点、もっと言いたいのですけれども、戦争に巻き込まれて、サイゴンの大使館は遊んでいらっしゃるのじゃないですか。  これは余談になりますが、申し上げますけれども、私三十九年にサイゴンに行きました。大使館にお伺いしたときに、ベトナムについての現在の資料をいただきたい、こういうふうにお願いして資料要求したところが、出された資料はゴ・ジン・ジェム政権の資料であったわけです。そのときはゴ・ジン・ジェムはもうかわっていたわけです。二度目の暴動が起きた直後だったわけです、三十九年二月ですから。それがサイゴンの大使館だったわけです。それとあなたのおっしゃっているのと一致するわけです。そういう点、もう少し戦争に巻き込まれずに、日本の国の在外公館であるという点の活躍をしっかりしていただきたい。そして旅行する日本人、あるいは国民の安全をはかるために、もっとやっていただきたいわけです。  今度は御質問を変えまして、これもこの前お伺いしました拳銃の問題ですけれども、これももう一つはっきりしないものですから再びお伺いするわけです。  きょうの新聞では、藤猛の元トレーナーが、拳銃の密輸をやってつかまっている。これは密輸事件で二番目の大きな問題だというような新聞記事を見たわけです。おそらくいままで密輸された拳銃のおもなものは、アメリカとフィリピンからくるのが主体じゃないかと思うのですが、その点は警察庁の方、いかがでしょうか。
  94. 内海倫

    内海政府委員 拳銃の経路につきましては種々雑多でありまして、一がいに言えないわけですが、本土からフィリピンに入って、フィリピンから日本に入ってくる、こういうふうな経路もとっております。何というのですか、特定はしておらないわけです。
  95. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまお話のあったとおりなんです。とにかくフィリピンとかアメリカは、この前も申し上げましたとおり、拳銃は自由に買えるのです。店頭に売っているわけです。持っているとき登録しさえすればいいということになっているわけですから、わりと入る方法がたやすいわけですね。そういう関係にあるわけですから、たいていの人が持っておるわけです。ですから、当然日本に来るアメリカの軍人も持っておると言えるはずです。ところが、そういう問題について、あなたのほうの先日の御答弁だと、そういうものは持って出るはずがない、こう信じておるというようなお答えだったわけです。そこでその問題に関して今後より注意をするという御答弁があったわけですけれども、この拳銃の取り扱いについて、米軍当局と何らかの形で、こういう点厳重に注意もしていただきたい、こういうことでお話し合いなさったことがあるでしょうか。
  96. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 拳銃は、日本の法律によりまして、輸入禁制品でございます。そのことを米軍当局、すなわち基地を管理しております部隊長に対しまして、すでに数回となく説明をし、輸入禁制品を持ち込むことがないように、軍人、軍属等に対して十分趣旨を徹底してもらうように話し合いをしております。
  97. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いわゆる禁制品ということでなくて、特に拳銃について密輸事件がたくさんあって困るのです。あなた方のほうは、拳銃の所持が自由なんですが、日本の国はこれを禁止しております。非常にほしがるのだ、持って出られたら困るという点ですね。いま申し上げた藤猛のトレーナーは、日本人の連中と話しているうちに、拳銃が非常に高く売れるらしいというところからやり出したわけです。当然、軍人だって同じことにひっかかるはずなんですけれども、その点について特にお話し合いをなさったことがありますか。
  98. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 税関当局の立場からいたしますと、法律によって輸入を禁止されておるもの全体につきまして輸入をしないことが必要でございます。麻薬その他の輸入禁制品と並べて、拳銃につきましても現在の国内におけるいろいろな警察当局の取り締まりの模様を私も十分承知しておりますので、その点を米軍当局に対しまして話をしておる次第であります。
  99. 沖本泰幸

    ○沖本委員 警察庁のほうの推定で、いま密売された拳銃がどれくらいあるのでしょうか。
  100. 内海倫

    内海政府委員 資料を持ちませんので、私、何ともいま答えかねます。
  101. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これは前もって注文しておけばよかったのですが、きょうの新聞を見ましても、相当数のものが入っているということが想像されるというふうになっておるのですけれども、それじゃ、お伺いをいたしますが、このトレーナーは、どのようにして税関を通ったのでしょうか。
  102. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 一般の外国人として、税関におきまして通常の旅具の検査を実施した後に、入国したものと見られます。
  103. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう禁制品について、警察庁とか、そういうところと、しょっちゅう横の連絡はおありなんですか。
  104. 谷川宏

    ○谷川(宏)政府委員 日本に入国する者に対する旅具の検査は、税関の責任においてやっております。ただ、検査を実施する場合におきまして、注意を要する人物等につきましては、警察当局と常時密接な連絡をとりまして、旅客の名簿等について、もしそういう該当の者がある場合においては、特に入念な検査を実施しておる次第であります。
  105. 沖本泰幸

    ○沖本委員 警察庁のほうに伺いますが、きょうの記事を見ましても、相当数の拳銃が密輸されて流れておることが推定されるというような形で載っておったのですが、この拳銃の今後の取り締まりについて、どういう方針でお臨みなるのでしょうか。
  106. 内海倫

    内海政府委員 お断わりしておきますが、実は拳銃を使ってどうこうした事件ということになると、私の所管になりますが、拳銃等銃砲取り締まりは、実は私の局では主管しなくて、保安局で所管しておりますので、私からいま責任ある答弁をいたしかねますが、警察の一員としましてお答えを申し上げますが、拳銃の密輸というものにつきましては、私どもも重大な関心を持っておるわけであります。現にいままでに相当、そういうふうな密輸事件検挙いたしておりますし、さらに密輸された拳銃が、どういうふうなルートを伝って、どういうふうに流れていくかということも、それぞれの事件によって解明をして、できるだけそういうものが末端に流れていく前に拳銃を押収するというふうな努力をいたしております。最近はやや下火になっておりますが、ここ二、三年以前は、特に密輸された拳銃が暴力団のほうに非常に流れていっておりましたので、暴力団取り締まりなどの際にも徹底した拳銃等の捜索をして押収をしております。
  107. 沖本泰幸

    ○沖本委員 われわれが新聞で知り得る範囲内では、こうした人たちの密輸事件、あるいは船その他によってフィリピンあたりから入ってくるというようなのが、暴力団あたりに拳銃が流れていって、それがときどき大きな事件に発生していく、こういうふうに承知しておるのですけれども、もしこれが、先ほど執拗に質問しておりますとおりに、アメリカの軍人から流れるということになると、これは人数が多いわけです。その点を心配してやかましく食い下がって申し上げておるわけでございますから、今後大蔵省においても、さらに国内の治安あるいは人心を休める立場から、ちょっとはみ出たようなお仕事になるかもわかりませんけれども、もっと厳重に米軍と話し合っていただいて、未然にそういう点を防止するところに力を入れていただきたい、こう考えるわけなんです。その点よろしくお願いいたします。  拳銃の話が飛び出しましたので、大臣が来てからお伺いしようと思っていたのですけれども、先日山陽電鉄の爆破事件がありまして、二人もなくなったわけです。きょうは入管を主体にしてお伺いしようと思っていたのですが、質問のついでにお伺いするわけですけれども、この種の事件で死者が二名も出たというのは、現在までなかった大事件であるということなんですけれども、この犯人はまだ逮捕されていないということになりますと、いつどこで同じことがわれわれの周囲で起きるかわからない。またこういう犯人に限って、変質者であるとか、精神異常者であるというようなものに近い人たちではないか、こう推測されるわけです。ですから、一日も早く逮捕していただいて、内容を明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけなんですけれども、現在までの経過をお教えいただきたいと思います。
  108. 内海倫

    内海政府委員 この前発生いたしました山陽電鉄の事件につきましては、私どもも、最近におきまして死者を出したこういう事件というものは、初めてであります。非常に重大視して捜査に当たっておるわけであります。兵庫県警察におきましては、現在捜査本部を垂水警察署に置きまして、捜査員を動員してその捜査に当たっております。  結論から申しまして、まだ犯人特定できるような捜査の中からのいろいろな端緒は出ておりません。何と申しましても、一般国民に与える不安が非常に大きいところでございますから、警察といたしましては、犯人検挙することが一番不安を除く道であると考え努力をいたしておるのであります。  捜査経過につきましては、なおいろいろな点の支障がありますので申し上げかねますが、新聞等において発表いたしおります範囲で申し上げますと、まず私ども捜査は、遺留されました、爆発に使いましたいろいろな諸資料、これらに対する分析、解明を行なっおります。あの中でおもに私どもが見ておりますものは、一つは時限装置として使いましたその装置それから爆薬を仕込みました鉄製の円筒、その鉄製の円筒をふたしております鉄片、さらにそれらを包装しておりました紙片、それから仕込みましたいわゆる火薬、こういうふうなものについていま捜査をいたしておりますが、たとえば火薬について申しますと、これは硫黄と、それから塩素酸カリとを混合してつくったものでございます。塩素酸カリも硫黄も、一般の人が入手をしようと思えば合法的に入手し得るものであります。こういうふうに考えますと、すべてのものが、いろいろな経路を経ておそらく使った犯人に入手されていると思いますので、非常にむずかしい捜査でございます。  なお、そういうふうな鉄のふたを溶接した、あるいはそういうふうな時限装置をつくり得るというふうなことから、全くこういう面に対する知識のない人ではないというふうな推定は十分成り立ちますし、また電車に当時乗っておりました乗客について、何か犯人特定できるような、要するに見かけたような人がいないかということで、徹底した聞き込みをしております。幸い非常に協力を得て、いろいろ当時の記憶を呼び起こして意見を言ってもらっておりますが、そういう点からなお犯人の像を推定するようなものはまだ出ておりません。  以上がきわめて簡単な捜査経過でございますが、今後も兵庫県警察としましては、あらゆる努力をして犯人に到達いたしたい。私どものほうも、この事件のみならず、何らかの形でこの事件捜査に寄与し得るという観点から、きょう緊急に管区の担当部長を招集いたしまして、午後一時から資料を提出させて検討しますほか、私どものほうも次の事件が起こらないようにその方策も検討し、指示したいというふうに考えております。
  109. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは大臣がお見えになりましたので、法務大臣にお伺いいたします。  いま警察庁のほうへお伺いして、いろいろ状況説明をしていただいたわけですけれども、大臣も御承知のとおり山陽電鉄の爆発事件ですけれども、これは重大な事件だと思うわけです。で、犯人逮捕されないということは、再び同じ事件が繰り返される可能性というものは十分考えられる。そして、その事件が起きた場合には、もうたいへんな被害者が出てくるということが想像されるわけでありますけれども、この事件について、大臣はどういう御決心で臨んでいらっしゃるか承りたいわけです。
  110. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 本件は、お説のとおりに、まことに重大な影響がある事件考えております。一般の事件でありますと、警察が第一線の捜査機関として苦心をしてくれるわけでございますが、本件は、重大なる影響を及ぼす事件であると存じましたので、特に検事を派遣をいたしまして、現場を見ていろいろと指揮をしておる、そういうやり方で、全力を尽くしておりますが、本日現在でまだ犯人検挙見通しが立たないということは、まことに申しわけのない点でございますが、今後この方針で、さらに一段と力を尽くしまして犯人検挙をあくまでいたしまして、御期待に沿いたいと考えております。
  111. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この事件は、捜査が長引いて犯人検挙されなければ検挙されないほど、類似事件が起きるであろうという点が十分予測されるわけですから、ひとつあらゆる機能を発揮していただいて、一日も早く人心を安定さしていただきたい。これは、特に心からお願いするわけでございます。  それでは、お話を出入国管理にしぼって大臣にお伺いしたいと思うわけでございますが、せんだってから二回に分けていろいろ御質問したわけですけれども、ちょうどこの前の委員会では、大臣がほかのほうに御出席だったものですから、今度は結論としていろいろな点についてお伺いしたいと思うわけでございます。  この前の御答弁の中に、この出入国管理令というのはポツダム政令として制定されて、二十七年の講和条約発効のときに、出入国管理令が法律の効力を持って施行されたというわけで、アメリカの移民法を相当取り入れておるという御答弁があったわけですが、この移民法の中のどういう内容が管理令の中に取り入れられておるのでしょうか。これは局長さんのほうからでけっこうでございます。
  112. 中川進

    ○中川(進)政府委員 御承知のごとく、あの時分は、まだ日本ではまとまりました出入国管理制度、それの基礎になる法令というものがございませんでしたので、そこで、大部分にわたりましてアメリカのその法令、制度を取り入れたわけでございます。その中でも特に在留管理に関する制度は、アメリカの制度を取り入れております。
  113. 沖本泰幸

    ○沖本委員 在留管理のみでございますか。この前の答弁では、厳重過ぎるとか、過酷過ぎるとかという点はない、こういう御答弁があったわけですが、一般ではそういうふうにとられておるわけです。あわせて今度は、そのとき以来現在にまで至って、現在の情勢に合わないところが多少あるのではないか、こう思われるというような御答弁があったわけですけれども、現在の日本の国情に照らして、合わないのはどういう点が合わないのでしょうか。
  114. 中川進

    ○中川(進)政府委員 私どもといたしましては、こういう点を改善したいと思う点が、実はかなりございますが、その中で、ごく端的に申し上げますと、まず、ただいま申し上げました在留資格制度というもののうらはらをなしまして、十六の在留資格に対応しまして、在留期間というものがあるわけでございます。どの資格で入ってくる者は何日間おれるということが、いま一々こまかくきまっておりますが、これのきめ方が、非常に機械的に過ぎまして、やや実際の施行にあたっては当を欠くというような点がございます。たとえばこういう点を、もう少しエラスティックに、フレキシブルに変えたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  115. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それとあわせて、新しい立法、制度をする場合に、外国の立法を参考にする、そしてやっていきたいという御答弁もあったわけですが、外国の立法は、どういう国のどういう立法をお使いになるのですか。
  116. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これは、外国と申しましてもいろいろの国がございますが、やはりわが国の参考になるような大体中等程度の国と申しますか、もちろんアメリカは大きな国でございますが、アフリカのような小さな国とか、それからソ連というような若干国家体制を異にするというようなものも参考にしないわけではございませんが、やっぱり一番大事なのは、たとえばイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダとか、メキシコとか、大体わが国といろいろな意味で似たような国を参考にしたい、こう考えております。
  117. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それで、この間に至りましてこの問題が論議されてき出したわけですが、ずいぶん長くかかっているわけなんです。参事官を一人お置きして、そこのほうで作業をしているというお答えだったわけですけれども、なぜもっと早くできなかったのでしょうか。
  118. 中川進

    ○中川(進)政府委員 これにはいろいろ従来の経緯がございまして、一言に申し上げることはなかなか困難でございますが、正式に法令改正に取り組むということが、少なくとも予算の面で出てまいりましたのは、昭和三十六年からでございます。これはやはり先生よく御存じの法律百二十六号というのがございまして、これで、在留資格なくして日本におる外国人、ごく平たく申しますと朝鮮半島出身の方と台湾出身の方でございますが、この将来をどうするかという実は大問題がございまして、かたがた、これに密接な関係を有する日韓交渉というものが行なわれておったわけでございまして、これによって協定永住とかなんとか、新しい制度ができてきたわけでございますが、この日韓交渉の成り行きをどう見るかということで、起草自体が若干おくれたということがございます。何よりも、これは昨日参議院で申し上げましたのでございますが、国内的にも非常に関連するところが多うございまして、たとえば関係中央官庁の課の数だけでも四十ぐらいある。それから、都道府県その他、みな関係がある。いろいろな業界その他にも関係がございます。かたがた、そういうところの利害と申しますか、お考えが必ずしも一致しない面がございます。たとえば、宿屋に泊るという場合に、治安維持というような立場から申しますと、欧米諸国、ことに欧州でよくやっていますように、外国人という外国人は全部旅券を出して、その旅券の発給ナンバーから何からみな控えさせて、いつ入国してどういう目的で入ったということを、全部登録させて泊めるのがいいという考え方が一方にございます。また一方、宿屋さんのほうからいいますと、そんなことを一々やられたらお客さんが減ってしまう。なるたけ簡単にしてもらいたいということがございます。そんなわけで、ごく卑近なものを例にとりましてもなかなか考え方がまとまらない。  それから、昨日やはり参議院で申し上げましたが、たとえば近ごろ非常に問題になっている政治亡命というものも、これは一体入れるべきか入れざるべきか、そういうような問題もございます。そういう考慮すべき問題が非常に多い、関係方面が非常に広い。いま世界中、国がたくさんございますので、いろいろな国の立法——先ほど御質問がございましたが、立法例の検討というようなものも、何しろみなことばが違いますので、そういうものの検討ということにも非常に時間がかかり、いろんな要素がございまして、たいへん延びてきたわけでございますが、しかしいつまでも延引するわけにもまいりませんので、私ども田中法務大臣の督励を受けまして、いま大いに準備作業を進めておる次第でございます。
  119. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この点に関しましては、今月の十日に大臣から次の国会に間に合わすように、こういう内示があった。こういうふうに承知しておるわけなんですが、大臣にお聞きしたいのですが、現在まで政令でこれが行なわれた、管理されていったという点について、私はどうしてもしっくりいかないのです。国連の理事国であり、あるいは議長国にもなっているような、それから国際社会でうんと活躍しなければならない、こういう国がただポツダム政令そのままの管理でやってきた。私の考えでは、東京オリンピックにはもうすでにできていなければならない。そうでなければまるでアロハシャツでよその方をお迎えしている、こういうことにもなりますし、またアロハを着て外国に出ていって、そのまま会うような感じを受けるわけなんですけれども、こういう点は国内問題ではなくて、外国のほうから見ましても非常にばかにされるんじゃないか。ただ、この政令ができたときに、対象がほとんどアメリカであったという点から、アメリカとの間だけの問題が解消されればそれでよかった、こういうような安易さでそのままずるずると来たんではないかと思うのですが、やはり現在の段階に至っては、りっぱな、きちっとした服装を整えて、いわゆる外交の畑で諸外国と交際しなければならないわけですから、ぜひともりっぱな入国管理法をつくっていただきたいわけです。つきましては、それに対しての大臣のお考えとともに、最近亡命事故もたくさんあるわけですけれども、この亡命問題なんかも法律の中に含めてやらなければ、ともすれば片ちんばな、そのときになってあわてなければならないような事件がしばしば起きるわけですが、そういう点に対して大臣のお考えを承りたいと思います。
  120. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私も、議院に在職して二十三年にも四年にもなるわけで、その間、法務委員を一貫してつとめておったわけでございますが、委員としてこの法務省を見ておる、入国管理事務を見ておる立場においては、実はそうは感じなかったのであります。法務省に直接の責任者としてつとめるようになりまして、初めていま先生からおしかりをいただきましたような事柄をだんだんと感ずるようになってきた。これは一体何をしておるのかということに気がつきました。そういうことから、局長から申しましたように、去る九日私の指示で入国管理局内に局長を会長とする法律制定の準備会を設けました。局長を会長といたしまして作業をさせておる。  そこで、前回もお話を申し上げましたように、来国会の休会明けと申しますから、ことしじゅう、おそくとも来年の一月の終わりか二月の初めには準備をいたしまして、これを法律の形で出入国管理法と、仮称でございますが称しますものを、国会に提出して御審議を仰ぎたい、こう考えております。問題は、その中にいまおことばのありました政治亡命でないけれども、政治亡命に準じて大切に扱ってやりたいと思うものに、もう一つ政治難民と言われておるものがございます。その政治亡命、政治難民というものをこの法規の中に入れることは、お説のとおり常道でございましょうが、何分にも政治亡命につきましては——特にややこしいのは政治難民で、両件ともに国際的な取り扱いがいまだ原則的なものができ上がっていない。幾らか政治亡命につきましては本人の意思を尊重するという人道的見地で各国とも処理をしなければならぬという原則に近いものができておりますけれども、政治難民に至りましては、各国ともに取り扱いが区々まちまちでございます。そういう事情にありますものを国内法で規定をするのはいかがなものか。かりに規定をいたしましても、原則的なものは規定をするが、具体的な内容に至りましてはこれを規定せずに、政令にゆだねるような形をとる以外にないのではないか。この場合に、ややこしい政治難民、政治亡命というものを、固定した国内法の法律の中に入れていくということは、なかなか技術的にむずかしいものがございますので、これは作業をいたします上で頭の痛いものの一つであろうと考えております。まだこの点は、かようにいたしますということを先生に申し上げる段階に至っておりませんので申しかねますが、たいへん苦心をしておるということをひとつおくみ取りをいただきたいと思います。
  121. 沖本泰幸

    ○沖本委員 その点につきましては、いろいろな海外からの諸問題に対して、十分この入国管理法ですべてのものをまかない得るようなりっぱな法律をつくっていただきたい。そして万国博等で盛んに入ってくるようになるわけですから、外国に比して日本もりっぱなものがある、こういう段階にぜひとも一日も早く持っていっていただきたいわけです。  しかし、それより前に、今度は管理業務の内容についていろいろな点を指摘して申し上げたいわけですが、あまり時間もございませんので早く御質問したいと思いますが、この前の委員会で御質問したときに、入管の職員は全国で千五百三十三名、これだけしかいない、こういうお答えであり、このときの審査官が、私が羽田に行って実際に見せていただいた点では英語しか話せないのです。事情をいろいろ伺いますとフランス語を話すのが一人いらっしゃる。それもむずかしくなってくるとできない、こういうお答えなんです。そのほかの語学になるとさっぱりだという点を聞いたわけですが、その点について委員会で御質問しますと、日米会話学院に派遣しておるということなんですが、現地で伺いますと人数の点に非常に無理があるので一名か二名しかやれない、こういうお話なんです。そのときのお答えの中に「朝鮮語は、港だけでなくて、事務所におけるいわゆる資格審査の段階においても、あるいはまた強制退去の移送還の関係にいたしましても必要でございますので、警察大学のほうにもごやっかいになったり、管区警察局にごやっかいになりまして、できるだけ機会を見ては教育するようにしております。」こういうお答えだったのですが、この詳しいお答えからいたしますと、韓国関係あるいは朝鮮関係だけの入国管理だけに主体が置かれているんじゃないか、こう考えざるを得ないのですが、そのほかのことはちょっとなおざりである。ところが実際に伺いますと、羽田の審査官の方は六年から十年のベテランであるという点なんです。その点についても御質問しますと、いろいろなところを回して、実際に訓練して十分な人をそこに向けておるということをおっしゃっておったわけでございますが、現在の羽田だけを対象にして考えますと、羽田へ入る外国人の方々は、行って伺いますと、ことしの一番ひまなときが東京オリンピックのときの一番多かったときよりもまだ多いという状況下にあるというお答えなんです。そうしますと万国博覧会まであと三年です。千日ということがこの間いわれたわけですけれども、それを待たずに、また成田に飛行場ができ上がるのを待たずにジャンボジェットが入ってくる。そうすると四百人の人が一ぺんにおりてくるというわけです。それで六年から十年の資格を持った人たちがこれに当たっておるわけですけれども、現在でさえ人員が凍結されてなかなか思うにまかせない。そうすると、現地でも言っておりましたけれども、ことし高校生を募集して訓練しても間に合うか間に合わぬかわからないということなんです。これは大問題だと思うのです。この前のもう一つ前の委員会では、来年度の予算においては十分のことを考えてやっていくつもりだという大臣のお答えでございましたのですが、いま申し上げました事態を根本にし、語学の問題、資格の問題、あるいは人員の問題を、どうやって解決なさるのでしょうか。  また、伊丹なんかを聞きますと、いま十七人です。万国博になると羽田へおりてきたり、板付へおりてくるようなことはないわけです。直接向こうへ来るわけです。それももう三年後であるということになりますと、どうやって養成なさって需要をまかなえるかということになってくると、たいへんなことが起きて、日本自体が外国に恥ずかしい思いをしなければならないということになってくると思うのです。  また、もう一つ大臣に聞いていただきたいのは、羽田の所長さんがまだ伊丹を見たことがないとおっしゃっています。それから入管の審査官の方が、まだ外国の飛行機に乗ったことがないと言うのです。実際に飛行機に乗ってみて、香港なら香港、近いところから実際の入管手続を自分自身で体験なさったら——船に乗っていってやった者は一部分いらっしゃるということなんですが、まだ一人か二人しか経験者がない。これはたいへんなことだと思うのですが、大臣どうなさいますか。
  122. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 一応事務の計画を先に申し上げます。
  123. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま先生の非常に御好意に満ちた御指摘をいただきましてありがたく御礼を申し上げますが、実情はおっしゃるとおりでございます。  まず、語学でございますが、これは確かにできればフランス語、ドイツ語、イタリア語、あるいは東南アジアの人々が多うございますから、タイなり、フィリピンなり、インドネシアなりというふうに、どこの国から来た人にも、ここにいらっしゃいと言えるように語学で分ければいいのでございますけれども、いかんせん入管職員の給与ベースでそこまで語学の専門家を集めることは不可能に近いのでございます。  それから、これは私は羽田の職員と違いまして、かなり方々を歩いたことがございますが、大体英語で通じると申しますか、たとえばドイツ、フランスへ参りましても英語でやっておるわけでございまして、日本語のわかる入管の職員に外国で出会ったことは、ハワイとかなんとかいう特別のところは別にいたしまして、まずありません。それはなるほどドイツ語なり、あるいはフランス語なり、ほかの国のことばもできるに越したことはないのでございますけれども、少なくともいま英語が、幸か不幸か世界語みたいになっておりますので、この英語の能力をもう少し強めまして、英語のわかる人をふやす、あるいは現在わかる者の英語を、もっと程度を高めるということにさしあたりのトレーニングの目的を置きたい、かように考えております。  それから人員の点でございますが、これも御指摘のとおりで、私どもといたしましては、予算折衝におきまして必ずしも満足すべき人員がとれなかった、すなわち必要な増員が認められなかったことはいまもって残念に思っているわけでございますが、いかんせんこれもきまりましたことでございますので、来年度の予算におきましては最重点的に現場の人員確保ということに努力したいと思っております。しかも万国博覧会、あるいは成田空港の開設というようなことが、いずれも二、三年先に迫っておるわけでございまして、そういうときに御指摘のとおり高校出の者をすぐ配りましたからといって、この複雑な審査事務ができるわけではございませんので、やはり予備的に訓練をするわけでございます。その訓練のための時間も必要でございますから、来年度の予算におきましては、万博に備えての伊丹の人員の充実と成田空港の開設のための要員というようなものを、最重点的に予算要求いたしまして、そうしてそういう要員をまず充足するのみならず、将来の要員に備えて訓練をするというふうに進めたいと思います。  第三の御指摘の点は、羽田、伊丹もそうでございますが、職員が自分みずから入国審査を外国において受けたことがない、これはまさに非常な弱点でございまして、自分が一ぺん検査を受けますと——これは入国審査に限りません、何でもそうでございますが、与えるほうともらうほうの立場を一ぺん変えてみるとものごとはよくわかるのでございます。それはおっしゃるとおりでございますが、いかんせんこれも予算の制約がございまして、外国に出かけていく予算は入管にはほとんどついておりませんので、残念ながらそういう意味の訓練なり経験なりを、せめて香港なり、京城なり、釜山なり、近くでもいいから外国へ一ぺん出して受けさせればいいのでございますけれども、これも思うにまかせないという実情でございます。  最後に、羽田の所長が伊丹を見たことがない、これはお説のとおり事実でございまして、この人はごく最近まで私ども法務省におった人が、このたび羽田所長に栄転してきたのでございます。関西へ行くことがあっても飛行機で行くことはあまりなかったのじゃないかと思いますが、とにかく伊丹は見ておらないのでございます。
  124. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いま局長から説明をさせましたような事情でございますが、先生の御心配をいただいております万博を目ざす扱いとしましては、それまでに人員の増加ということに重点を置いていきたい。ことしは凍結解除を全面的にいたしまして、三百五十名という大幅な増員をとったわけであります。政府部内でも驚くほどの成績であったわけでございますけれども、これはいま非常にせっぱ詰まっております登記のほうに二百名回さなければならない。登記がどんどん滞ってくるものですから、国民のお役に立ちにくい、御不便をかけておる関係で、思い切って登記のほうに二百名、刑務所関係、これに七、八十名配分をいたしたようなことでありまして、この点、人員がことし入管関係に思うように配分ができなかったということ。しかし、なかなか予算折衝というものは一挙にはまいりませんので、明年、明後年、一定の計画を立てまして、ある種の話もしております。そういうことでございますので、人員の増強ということについては、万博を目ざして、訓練の期間も考慮に入れまして自信を持ってこれをやっていきたい、こう考えております。しかし、大臣の命というものは夏に鳴くセミのように短いものでございます。はたして私が来年までおるかどうかわからないのでありますけれども、そういうことも顧慮に入れてあらかじめ苦心をしておるわけであります。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣、万博のテーマは、人類の進歩と調和、そういうことになっているのですけれども、万博のことにも対処して訓練に自信を持ってやっていく、こういうことなんですが、これはお話はそうなんですけれども、実際問題としまして、ジャンボジェットが入ってきて四百人もおりてくる。先ほど局長さんがお話しになりました訓練の時期の問題、技術的な問題、これはあわせていくとどうやってまかなえるかという矛盾に突き当たっていくのですけれども、これは来年度予算とかなんとかという問題ではないと思うのです。人員の増加という点ですけれども、毎年二〇%から三〇%増加しているわけです。それさえまかない切れないということで、もう羽田の人たちだけでさえもピークにきている、こういう現状なんです。大臣は、この間羽田にお立ち寄りになって、これはひどいとおっしゃったでしょう。これはひどい早く何とかやらなければならぬ、せめて寝るところぐらいは——こういうことで、羽田の連中はすばらしい大臣であると非常に感激しておりましたけれども、これは冗談ではなくして、外国の人たちを迎えるにあたって大問題なんです。大問題と考えざるを得ないのです。間に合いませんでした、しかたがありませんではこれは済まない問題です。どういうふうにして解決なさるか。来年度予算、来来年度予算、こう言っておれないのです、これはどう考えましても。大臣の確たる確信を伺いたいと思います。
  126. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いま申し上げますように、相手は大蔵でございます。そこで、まだ三年も先のことでもある。これはそう訓練に長期を要するものでもございません。来年度以降——来年度以降じゃ鬼が笑いそうなんでありますけれども、これは来年度以降の予算折衝で解決をせねばならぬ。これは無視されるはずがありません。この問題は仰せのごとくに重大な問題なんでありますから、やりそこなえば国辱にもなるわけです。ですから、これは必ず実現するものと私は確信を持っております。また、その計画に乗る予算の裏づけがある場合においては、万博までに十分のゆとりを持って用意ができる。これは御心配をかけないというつもりで内部の考え方はまとめておるわけでございますが、まだ四十二年度の予算でこれを具体化するということは、幾らか時期的に無理であった、こういう事情でございます。したがって、本年の三百五十名の凍結解除による人員の増も、予算の増ではない。凍結解除の増でございますが、これもその方面には原則として使わない。幾らか使ったのでありますけれども、本格的にその方面に人員を使っていくということはことしはやらない。少なくとも来年、再来年以降においての問題としましては、御心配をいただくことのないように実現ができる見通しでございます。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間をいただいて申しわけありませんが、ほっとけない問題ですからしばらくお願いいたします。  これは、これ以上のお答えを大臣からいただけそうもないわけなんですけれども、もう一点申し上げると、非常に悪い言い方になるかわかりませんけれども、入管の局長さんにもお話したんですが、入国管理局にお伺いしますと、法務省のまん中の薄暗いところに局長さんのお部屋があって、まん中に廊下があって、両側に審査官、警備官という目のぎらぎらした人たちが、まるでみな密入国かなにかを見るような顔つきでいらっしゃる。私は行きましてそういうふうに感じました。元来入管事務というのは、そういうような不法入国とかいう問題は端っぽの問題であって、一番大きな問題は、日本の国に出入りする人の取り扱いということになってくるわけです。そうしますと、いわゆる入国管理局ももっと明るいきれいな場所に置いてあげて、十分、服装もきちっとして、そして外国の人たちが何かのことで訪れても十分まかなえるような設備にしてあげてこそ、日本の大事な応接室であるということがいえるわけなんですよ。まあ法務省の中の入国管理局は、ほかに出先機関がちゃんとあって、それは全部そっちのほうでやってるから——こういうことなんですけれども、それではその地方の入国管理事務所というものの建物あるいは内容が、ほんとうに、外人が初めて来て、明るい状態であるかどうかということを考えると、全然その逆なんです。こういう点を考えますと、どうも大臣以下みな法律のほうをお扱いの方ばかりなので、入管というのをお忘れになっているのじゃないか。先ほど大臣も、ずっとおったけれども気がつかなかった、こうおっしゃるような御答弁もあったわけですから、これ以上いろいろなことでやり合っても結論は一緒だと思います。要は、ここで議論するような事態はそういう問題ではないわけでございます。外国人がどんどん入って来だして、支障を来たしたらどうするかという問題です。総理大臣も万国博に関しまして、特にすべての人の協力を求める、国家的な事業だから、こういう発言もしていらっしゃいます。こういう点を考えていただいて、これに即したような、日本の国が外国に恥をかかないようにしていただきたいわけです。  それから入管局長さんに、ちょっと御認識が間違っていらっしゃる点を申し上げておきます。英語だけで通じるということをおっしゃいましたけれども、この間羽田へ行きまして伺いましたら、アフリカの人で、フランス語のブロークンしかできない人が来て、こっちもブロークンでどうにかこうにか間に合ったけれども——こういうお話がありましたので、それだけつけ加えて質問を終わらせていただきます。長時間ありがとうございました。
  128. 大坪保雄

  129. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣にお尋ねをいたします。私が本日明らかにしておきたいのは、去る六月九日の内閣委員会における大臣の受田委員質疑に対する御答弁、この真意をさらに明確にしておきたいということでございます。  御承知のとおり、死刑の存続、廃止問題につきましては、もうずいぶん長い間論議の分かれているところでございまして、最近あらためて資料をお借りいたしまして、若干の検討をさしていただきましたけれども、第十五、第十六回帝国議会において、初めて死刑廃止論についての論議がなされているのでございます。戦後、衆参両院において死刑存続、廃止についての非常に熱心かつ深刻な論議がされている。このことは、すでに先輩である大臣、十分御承知のところでございますけれども、私は、本日、そういう死刑が廃止さるべきかどうかというふうな問題についてお尋ねしようとしているものではございません。問題が非常に大き過ぎます。ただ、大臣の六月九日の先ほど私が申しました御答弁の中に、次のようなことばがあります。「死刑の執行の方法は、憲法の精神にありますように、残虐でない刑の方法によってこれは執行すべきものである。現在の絞首刑制度がはたしてこれに当たるかどうか、より以上理想の方法としては、電気殺の方法が最善ではなかろうかという考えに及んでおります」以下視察をしてみたいという大臣の御発言が続くわけでございますが、私が本日真意を明確にしていただきたいというのは、この点でございます。要するに、有名な最高裁の昭和二十三年の判決は、次のようになっています。これはもうあらためて引用するまでもございませんけれども、念のために申し上げておきますが、「生命は尊貴である。一人の生命は、全地球よりも重い。死刑は、まさにあらゆる刑罰のうちで最も冷厳な刑罰であり、またまことにやむを得ざるに出する窮極の刑罰である。それは言うまでもなく、尊厳な人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去るものだからである。」こう最高裁判決は判示をいたしまして、さらにまた別の個所におきまして、「刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、」云々、こういうようにございます。  そこで、御質問を申し上げておりましても、問題が死刑という非常に深刻な気の重い問題でございますので、慎重にお尋ねをいたしたいと思いますが、要するに太政官布告六十五号でございますかによって死刑の執行の方法がきめられている。布告については、すでに裁判において非常に争われた問題でございまするけれども、そういうことに相なっている。  そこで、先ほどの大臣の御答弁を拝見いたしますと、電気殺が理想としてはいいと思う、こうある。そうすると、これは、現在行なわれている絞首刑というのは、一体どういうことに相なるか。もちろん御答弁としては、憲法三十六条の残虐な執行方法には当たらないという御答弁がなければ、これはもう問題外だと思うのですけれども、死刑執行命令権者である法務大臣のおことばから、現に死刑の未執行者の既決囚が何人かいる、その中で電気殺のほうがいいと思うのだというこの御答弁、そういうことははたして最高裁判決の「執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から」云々ということと一体どういう関係に相なるか。一言で申し上げますならば、命令権者としての大臣のお立場において、大臣の御良心の中で、お気持ちの中で、電気殺のほうが理想としてはいいのだと思うというお気持ちをお持ちになっておられて、現行の絞首刑という執行の命令を発せられるということは、一体どのように大臣のお気持ちの中では御整理になるか、この点でございます。  質問は非常に錯雑をいたしましたけれども、この点は大事な問題だと思いますので、あらためて真意をお伺いしたい、こういう次第でございます。
  130. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 一口に申しますと、憲法でいう残虐なる刑罰にならないように、刑の執行にならないようにという考え方からいうと、現行の絞首刑というものが憲法違反であるかないかということとは全く別論でございます。より残虐でないものがあるならば、刑法の全面改正の時期でもあり、監獄法の全面改正の時期ともなっておりますので、所管大臣といたしましては、より残虐でない方法いかんということは真剣に検討をし、考えをまとめる義務がある。ことに国会に出て、国会議員の各位から御質問があったときには、その自分の腹中にある信念を隠さずに申し述べなければならぬ国会法上の義務がある、こういうことで私の考えを申し上げたのでありまして、それは最高裁の判決にいう現在の絞首刑が有効か無効かという議論とは別でございます。現在の絞首刑は、死刑の執行方法としては有効である。これを規定しておる刑法も、これを規定しておる監獄法も、刑法並びに監獄法ともに憲法違反ではない、こう考えることが前提となって、さてこれを理想の方向に改正しようとする場合においてはもっとよい方法がなかろうか、もっと残虐でない——命をとるのですから、残虐なのはきまっているのですが、良識的に見てもっと残虐でない方法はなかろうかということを、目下真剣に研究をしておる。みずから行って見ようというくらいでございますから、真剣でございます。そういう真剣な気持ちを率直にそのままに国会法に基づいて御答弁を申し上げた、こういうことでございます。
  131. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、あらためてお尋ねをいたしたいと思うのです。  何べんもあらゆる機会にあらゆる人が引用いたしておる最高裁の判決でございますが、刑罰のうちで最も冷厳な刑罰、また、まことにやむを得ざるにいずる究極の刑罰、それが死刑である、こういうように相なっております。特に大臣の御答弁のように、残虐なんだというふうなことばは、避けて通っているはずです。その点はさておきまして、問題は、私自身も、この問題が大きいわけですから、絞首刑というものが憲法違反だとか憲法違反でないという、これはすでに最高裁の判決も判示をしている、死刑の執行の方法に関する判例もあるわけですから、その点を云々するところまでは論議は踏み込まないわけです。ただ、田中法務大臣のお気持ちの中に、内閣委員会の御答弁を拝見をいたしますと、電気殺がより理想の方法であろうと思われるという御心証がすでにある程度形成されている。といたしますると、はたしてやむを得ざるに出たところの刑罰、冷厳な刑罰——法律的な有効、無効の問題ではなしに、そういうお気持ちがすでに大臣の御心証として半ば形成されている、そういう状態において、現行の絞首という方法の刑の執行について、命令権者として命令を発せられるそのお気持ちですね。これははたしてどういうふうにお気持ちの上で御整理になっておられるのだろうか、この点なんでございます。要するに、ことばを変えて言いますならば、大臣のお気持ちの中にかりに電気殺のほうがより理想なんだというお気持ちがあれば、刑事訴訟法その他のいろいろな規定はございまするけれども、監獄法の改正を急いで、その現在の絞首刑ということによるところの刑の執行というのは一応ストップすべきではないかというふうな感じもいたすわけなんです。この問題について、私非常に微妙な聞き方をさしていただいているつもりでございます。また控え目にお尋ねをしているつもりでございますけれども、御答弁を重ねていただきたいと思います。
  132. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 私はもっと割り切っておるのです。現行の憲法で、現行法の刑法並びに監獄法で死刑を言い渡し、死刑の執行が行なわれる、これは有効である、こういう前提に立っておりますから、そういう有効な前提に立って、私に判をつけという死刑執行について指揮を求めてくる場合においては、すぐつくというわけではないのですよ。まず一件記録を取り寄せて、何か恩赦の方法はなかろうか、これを助けてやる恩赦の方法は何かなかろうか、何か再審の道はなかろうか、救うべき道が何かわが国の法制上あるまいか、本人の健康状態はいかがであろうかということを、克明に、みずから膨大な記録を取り寄せて——私のやり方でございますが、いままでやっておりますのは、それをながめまして、そして本人の健康状態も、直接診断するわけではないが、直接にこれを見ておりますものについてその報告をとりまして、健康状態はいいんだな、つまり死刑の執行をするのに適するのだなということを確かめました上で、私がサインを行なって命令を下しておるという事情でございます。そういうことでありますから、そういうこと以外に、私はこの適不適ということについては、現在は何も考えていない。現行法上有効なものの実施をするのだ、執行するのだという考え方に立って判り切っていく。それとは別個に、憲法の精神にかんがみましてこれ以上何かいい方法はなかろうか。先ほどから電気殺というお話が出ましたが、私は、電気殺のほかにもう一つガス殺というのがございます。ガスで殺す場合ですね。電気殺、ガス殺、このいずれかがよいのではなかろうかということを、まだ確信を持つに至っておりませんが、このことをひとつ確信を持ちたい。法改正——刑法並びに監獄法両方の法律が規定をしておるわけでございますから、両方を改正するまでにひとつこれについて確信を持ちたい。大臣はやめましても、法務委員たる地位は残るわけでございますから、私はそれをひとつ確信を持っておきたいという考え方を持っておるので、現地を見たいということも言っておるわけでございます。
  133. 中谷鉄也

    中谷委員 命令権者としての大臣という立場にある人が、いわゆる命令を発せられる、また、ある大臣については、そういう命令を任期中発せられなかったということも聞いている。私は、それぞれその人の人生観あるいは法に対する考え方、いろいろな立場、信条に基づくそれぞれの良心的な措置であろうと思うわけです。ただ重ねてお尋ねをいたしますけれども、要するに、かりに大臣のお気持ちの中で、電気殺あるいはガス殺というものが、より残虐でないのだ、残虐ということばは私は避けたいと思いますが、より文化的であり、人道的な立場にかなうのだ、冷厳な刑罰の執行としてかなうのだという確信をお持ちになったとき、有効、無効の問題ではないと思うのです。そういうふうな確信をお持ちになったとき、現在の法が絞首刑の執行を規定しておるからといって、その御確信と、現在の法に基づき有効だから執行されるというところの結びつきが、大臣割り切っておられるとおっしゃるけれども、私には、さらにその点については命令権者としてのまさに冷厳なお立場、きわめて深刻なお立場から見まして、一体どういうことに相なるのだろうか、この点なんです。重ねてお尋ねをいたします。
  134. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 非常に神経質になりまして——神経質というとことばは悪いけれども、また取り消し問題が起こったりするおそれがあるけれども、神経質に考えて、その死刑の執行が冷厳だ、冷厳だと、私はわかったようでよくわからぬ。残虐な犯罪で、むごたらしいやり方で人の命を何人か、一人で複数の命を奪ったという場合でなければ死刑の確定をしていないのが現状です。そういう場合に、冷厳もそうろうもないので、法の命ずるところによって何かこれを救済する道がなかろうかを、恩赦法の上からも、再審の刑事訴訟法の手続の上からも、本人の健康の上からも、この三点について十分検討をするだけ誠心誠意してみて、だいじょうぶいけるということならば、死刑執行の時期はいつまでもこれを長らえておかないで、早く執行をすることが正しい。私はもうすっかり割り切った男でございます。それは決して間違いでないと見ておる。一面、被害者の立場を考えてみればわかる。いつまでも政府は何をしているのか、死刑の確定した者をいつまでも一体政府は何をしているのかということが、被害者の側にもあろう。人を殺したから殺すのだという因果応報の原則を適用すべきものだなどというのではありませんけれども被害者の身の上にもなってみる必要がある。残虐な方法で人の命をとった場合でなければ死刑にすべきでない、死刑になし得る場合を、非常に範囲を極限をすべきものだという意見を私が持っておりますのも、そういう理屈からきておるわけでございます。そういうわけでございますから、あまり私は神経質には考えておらぬ。  そこで、いまお尋ねのような私の確信は、将来の問題ですけれども、仮定の話はおかしいのでありますけれども、将来私が、これはやはり電気殺、あるいはガス殺が正しい、このほうがより人道的だと考えたとかりに仮定をいたします。そのとき私が、セミの命というようなことを言うが、引き続き大臣をかりにしておったと仮定する、その場合において執行者たる大臣の私の確信と現行法とは対立をするわけでございます。この場合には法律が一大臣の確信よりは優先する、またそういう態度でなければその大臣は一人前の大臣ではない、こういうことでございます。
  135. 中谷鉄也

    中谷委員 死刑の問題というのは、私はたとえば保守イコール存続、革新イコール廃止というふうな、そういうものではないと思うのです。と同時に、これは私自身刑事の弁護人として、一審で死刑の判決を受けた二つの事件を担当したことがございますが、同時に、そういうふうな事件を担当した私自身の気持ちの中に、それではいま質問している私が死刑廃止論者かということになってまいりますと、廃止論の論理を展開せよといえば幾らでも展開できる。また死刑存続論者か、存続論の論理を展開せよといえば、それは二時間も三時間も論理は展開できると思う。ただしかし廃止論者、存続論者ということについて、そういうことについては私はさらにこれを掘り下げて検討すべき問題だという、そういう立場でお尋ねをいたしておる。だから、死刑が残虐かどうかということではなしに、もう一度お尋ねしますけれども、死刑の執行についての、私がお尋ねしたのは、方法について大臣の確信ということについて先ほど御答弁いただきました。この点については大臣の内閣委員会における御発言というのは、もう一度明確にしておいていただきたいのです。これは非常に大事なことであります。要するに現行の絞首刑というのはもちろん有効なんだ、そうして命令権者としての大臣については法によって拘束される、そのことが良心に基づくのだということを、これは明確にしておいていただかないと、現在すでに刑が確定して死刑の執行を受ける立場にある人、同時にまた多くの国民が、法務大臣が電気殺のほうがより理想的だということをおっしゃっている、どうもそういう御心証をおとりになっているようだ、ところが現行の絞首刑、太政官布告六十五号によるところの執行が行なわれている、これは一体どういうことなんだろうということについての、文化国家をつくろうとする、そういう立場からの疑問が生ずるだろうと思うのです。この点、真意を明らかにいたしたい、この点が私の質問趣旨でございます。先ほど御答弁をいただいたと思いますので、質問を続けます。  さて、そこで二番目の点でございますが、大臣の内閣委員会における二つ目の御答弁は、視察をしたい、こういうことであったように思います。そこで、現在までのいわゆる死刑執行の、近世における刑罰の歴史というようなものをきわめて簡単に見てみましても、江戸時代なら引き回しというようなことをやった。そうして獄門、あるいは鼻首というようなやり方もある。要するに、現在における死刑執行のあり方というのは、少なくとも法に定められたごく少数の人の立ち会いのもとにおいて、ひそかに死刑を執行する、それが私は死刑執行の到達したところの一つのありかただと思う。逆にいうと、さらしものにしないという考え方です。そこで、大臣の視察をされようというお気持ちはわかります。そういたしますと、われわれ国会議員としても、死刑問題というものは、どうしても避けることができない問題、死刑の執行問題というのは、刑法の全面改正、監獄法全面改正の中において、われわれ自身も避けることのできない問題で、もし視察をしなければそのことについての良心的な判断ができないということになってまいりますると、五百人近くの国会議員は、全部視察をせにゃいかぬという問題が生じてくる。これは私は、現在やっと死刑というのはさらしものにしないのだ、ひそかに執行するのだという、そこまで到達したところの死刑執行方法に逆行するんじゃないか、こういう感じがする。大臣、何としても視察したいというようなお気持ちではないと思いますけれども、この点について私はいま一度御一考いただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  136. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いま御意見に出ておりますように、非常に深刻な問題である。その深刻な死刑執行の方法について、いかにすべきかということを確信を持つために参観をしたい。参観制度がないのに参観をしたいというのじゃないのですね。許可があれば参観をしてもよろしい。妙な話でありますが、前例のないことをやろうというのでありますから、前例のない形になるのでありますが、大臣が刑務所長の許可を受けて、そして参観をするという形になるわけでございます。秘密というのは、全世界秘密なんです。秘密なんですけれども、希望ある者、理由ある者は参観を許すことは、日本のみならず全世界その傾向にある。アメリカも、イギリスも、フランスも、西ドイツも、死刑を執行いたします場合には、アメリカのごとき、いわゆるガラス箱の中に入れて、そうして電気殺をいたします場合にも、ガス殺をいたします場合でも、列国ともにそのガラスの容器の周囲にはちゃんといすを設けて、そこに参観者をすわらせて参観をさす。秘密裏に行なうのです、たてまえは。しかし、必要のある者については許可制によって参観を許すということは、列国ともこれをやっておる。日本もその例に漏れぬ。ただ、いままでの大臣がそんなおもしろいことを、おかしいことをした人間がないというだけのことで——おもしろいというと、何がおもしろいかということになりますが、そういうおかしいことを——おかしいというと、またおかしいのですが、そういう類例のない、まれなことをした人がないというだけのことです、問題は。そこに、何にもその間の問題はないのではないか。機密裏に執行するという趣旨に反するではないかというふうに、ちょっとこぜて考えなくてもいいのじゃなかろうか。そういうやりにくいことを、現地を視察までして考えようという考えは、まことに慎重なものだというように考えてやってもいいのじゃないでしょうか。
  137. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣、念のためにお聞きいたしておきますけれども、もちろん大臣は、有名ないわゆる死刑の執行方法に関する判決記録の検証図面あるいは古畑博士の鑑定書等は、もうすでに十分御検討になっておられる、こういうことでございますか。さらに、いわゆる死刑執行の現場にお立ち会いになられることは初めてでしょうが、刑場についての視察はもうすでに何回もおやりになっている、こういう趣旨でございますか、いかがでしょう。
  138. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 刑場図面の詳しいものはくどくながめておって、頭の中に現場を見たほどに入っております。入っておりますが、監獄法に——監獄法の改正の寸前でありますが、監獄法によりますと、たいへん言いにくいのでありますが、こういうことが書いてあるのですね。刑法によりますと、死刑の執行は、監獄内において絞首してこれを行なう。絞首刑でやるのだ。それで監獄法の中には、その精神を受けまして、監獄の中には特に刑場を設ける。死刑執行場でございますね。その監獄の中の死刑執行場において、刑場において絞首をしてこれを行なうのだが、そのやり方は、心臓の鼓動がとまって、すなわち死相を点検してということばでありますが、死相をながめて、ああこれは死んだなということを認定して、五分時を経なければ、五分間の時間を経なければ、絞縄を解くべからず、絞めておる首のなわをはずしちゃいかぬということが出ております。こういう状況は、死相の点検をしなければ、それは残虐かどうかということは、図面や写真を見ただけではわからないのです。変わったことをしようというわけです。そういう必要があるかどうかといわれると、私の信条からはそこが必要と考えておる。それ以外のことは見ぬでもわかっておる、こういうことであります。
  139. 中谷鉄也

    中谷委員 一点だけもう一度確かめておきます。  刑場の御視察は、すでに何回も御視察になっておられるのかどうか、この点です。
  140. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 一度も見ておりません。図面で研究ができておるだけでございます。私は不幸にして一度もまだ拝見をしておりません。
  141. 中谷鉄也

    中谷委員 私は次のように考えます。この問題について、もし私が命令権者であるならば、かりに現在の死刑執行方法が残虐だ、より文化的な、人道的な方法があるという確信に達した場合には、先ほど大臣から、大臣の御心境としては明確な御答弁をいただきましたが、私は、みずからの良心が法は拘束しないのだという、私がかりに命令権者であれば、そういう立場に立つと思うのです。これはその人それぞれの信条の問題ですから、この点については大臣のそういう御確信と申しますか、信条を私はお伺いしたつもりです。  ただ、いま一度私は御一考をいただきたいと思いますが、刑場の御視察あって、あるいは屋上絞架式であるとか——太政官布告とその点が現在違うとかなんとかいう論議はあります。その点はさておきまして、そういう刑場の御視察——執行の御視察じゃない、刑場の御視察があるだけでも、私は現在の監獄法改正についての御心証をかなりおとりいただけるのではないかと思うのです。したがいまして、まず刑場の御視察を最初に大臣としてはされるべきではなかろうか。実は私、非常に意外でございました。私のような、法律家としては大臣よりもうんと後輩である者さえも、すでに刑場についての視察、見学というのはやっているわけなんです。その上で、そういうことを踏んまえた上で、この問題について論議をしているわけなので、だから、この点については、大臣がどうしても視察をされるということについて私おとめするわけにはまいりませんけれども、まず刑場の視察から始めらるべきではなかろうか。この点について、私も本日は大臣のお立場、お考えに反論をする、あるいは追及するというような立場では全然お尋ねしているわけではないのです。まさに深刻な問題として、対話をしているような気持ちでお聞きしているわけなので、この点についてはいかがでございましょうか。
  142. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 いろいろ御親切にお話をいただきましてありがとうございます。慎重にひとつ考えてみたいと思います。
  143. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、監獄法の改正でございますが、前回、代用監獄の問題に関連をいたしまして、大臣御出席にならない場所で私はお尋ねいたしましたが、いずれにいたしましても、刑法の全面改正と並行をしてというよりも、さらに一歩進めて、監獄法の改正作業が進められてしかるべきだ、こういうふうな考え方に私自身も立つわけです。監獄法全面改正についての見通し、そうしていつごろ国会に上程の運びまでお考えになっているかということについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  144. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 お説のように一説がございまして、刑法の全面改正をやった後に、それを受けて監獄法の改正を行なうのが順当ではなかろうかという一説はございます。一説はございますが、私は先生のお考えと一致しております。それはそうじゃない、監獄法などというて、一体、監獄などという、今日からいうとわけのわからぬ文字でありますが、そういう六十年も前の文字をそのままに使っておるような、そんな古い法律が日本じゅうのどこにあるか、これはすみやかに改正すべきものだ、こういう考え方に立ちまして——刑法の全面改正は時間がかかるという。時間のかからぬものなら待っているのですが、時間のかかるものは待っておれぬから、監獄法の改正を急げということを、私の時代になりまして指示を与えまして、いま矯正局長が会長となりまして、そしてその準備会——監獄法改正準備会と名づけておりますが、これを省内の機構としてつくらせまして、目下具体的な作業を急がせておるという事情にございます。ただ、いつ出すかということでございますと、これはまだ来国会に出すということを無責任に申し上げるわけにいかない段階であります。何ぶん複雑でございます。六十年のものをここで改めようというのでございますので、時間がかかるわけでございますが、刑法は三年、五年かかるようなことがいわれておるわけでございますが、そんなにかけないで、少なくとも来々年度、来年度は昭和四十三年度になりますが、昭和四十四年度の国会には、少なくとも提出ができるように準備をさせたい、こういうふうに大体の目標で、さだかなことは申し上げかねますが、大体の目標は来々年度の休会明けには出せるように準備をさせたい。この話も私が大臣でおっての話でございますが、そこで私が考えましたのは、私がいなくなりましても、その方針で作業が進め得るように省内機構を設けておく必要があるという考え方から、この機構を先を見越してつくりました。こういう事情でございます。
  145. 中谷鉄也

    中谷委員 政府委員の方にお尋ねをいたします。  現在未執行の既決囚というのは何人いるのか、この点が一つ。  いま一つは、監獄法改正作業の中で、大臣の御答弁の中にあったような電気殺、さらに本日はガス殺というふうなことばまで出てまいったわけですけれども、そういう問題についての検討は具体的に進んでいるのか。万が一にもそういうことが単なる着想、思いつき、アイデアというものとして出てきた場合には、これはたいへんだ。この点についてお答えをいただきたい。特に、いわゆる電気殺というものに対する日本人の、欧米の人と違う民族感情の受け取り方、生活、習慣の違いからくる受け取り方、たとえばヨーロッパの人は絞殺ということが、地獄へ落ちるのだということで一番いやがる。ところが、日本人は絞殺ということについては、あるいは総死するというようなことについては、それほど嫌悪感がないというような問題というふうな、われわれの生活、文化、習慣というふうなところまでさかのぼって具体的に作業が進んでおるのかどうか。そういう作業とかかわりなしに御答弁が出たということであると、私はこれはかなり問題であろうと思う。この点をお答えをいただきたい。  いま一つ、大臣は視察というおことばをお使いになったけれども、いわゆる正確な意味でないところの立ち会いというふうなことについて、補佐の任に当たられている局長としてはいかがなものであろうか。この点について、ひとつ、もしよろしければ御答弁をいただきたい。同時に、いわゆる視察というふうなことで、どの程度の人、どんな範囲の人が現在視察をしている事実があるのかどうか。この点についてもひとつお答えをいただきたい。  以上でございます。
  146. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 第一番目の死刑確定者の数でございます。本年六月一日現在で八十五名でございます。  それから第二点の死刑の執行方法でございますが、死刑の執行方法につきましては、刑法でまずその種類が書かれることになると存じます。その具体的な方法につきましては、これは法律事項であると私考えますので、監獄法の中に、少なくとも基本的な執行方法の内容を書かなければならない、このように考えております。したがいまして、私のほうでは先般大臣のほうの御指示に基づきまして監獄法改正準備会を六月一日に発足いたしまして、現在過去の資料の整理、さらに新しい資料の整理をほぼ三カ月ぐらいでとりまとめたいという意気込みで作業をいたしておりますが、その資料の中の一つとして、世界各国の死刑の執行方法の細部につきまして、その利害得失も当然資料の収集の対象になっております。その資料が整いましたところで、あらためて大臣の御指示を得たい、このように考えております。  第三点の視察の問題でございますが、私、率直に申し上げまして、まず刑場の御視察を願いまして、その上であらためてまた大臣の御指示を得たい、このように考えております。
  147. 中谷鉄也

    中谷委員 最後に一点だけ、法務大臣に要望といいますか、私自身のこの問題についての考えの上に立ってのお尋ねをしておきます。この点なんです。死刑の判決を受けた人、確定をした人と、私面接した経験はございませんけれども、あの広い拘置所の表門からだれかが入ってきても気がつくというぐらいに神経がとぎ澄まされているというふうなことを、私聞いております。大臣がどうしても特別視察をおやりになるんだということであると、刑務所長が許可をされたということになれば、これは法務委員である私が、そのことについておとめをするわけにはまいりません。ただ、死刑の執行を受ける人間が、大臣が特別視察をしに来ているのだというふうなことが、万が一にもわからない、そういうことがわからない方法がとり得るかどうか、その点です。大臣というお立場上、ただ一人ひそかに拘置所へおもむく、刑場へおもむくというわけに、私いかないというふうにも考えられます。そうされるのだと言われればそれまでですけれども、この点が一つ。いま一つ、すでに法によって死刑の執行を受けるそういう既決囚に、そのような権利があるかないのかは別として、かりに既決囚の本人が、大臣の視察はいやだ、お断わりするということであった場合に、これはもう当然そのような視察はされないと思いますけれども、これは私はやはりひそかに、ようやくにして反省悔悟をして、悩み多い、ほんとうにいろいろな罪を犯した人間が死刑の執行を受けるときだけでも一応心が澄んだかっこうで死んでいく、心の中にさざ波を立ててやりたくないという私の心情なんです。そういう点から、はたして大臣の特別視察というものが、死刑の執行を受ける人にさざ波以上のものを立てることにならないかどうか。回りの、端的に申しまして、下級公務員の方々、下級刑務官の方々は、大臣が来られるとかなり緊張もし、いつもと雰囲気が変わってくると思うのです。もちろん、それ以上に死刑の執行という厳粛な雰囲気が流れていると思いますけれども、この点も大臣お考えになっておられると思いますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。  すでに時間もないようでございますので、大臣の御答弁をいただくと同時に、政府委員の方に現在そういう特別視察をしておられる、あるいは参観をしておられる方というのは相当あるのかどうか、あるいはそういうことが特別ごく少数あるのか、あるいは最近ではあまりないのかということについても、大臣に対するお尋ねと同時にお尋ねして非常に恐縮でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  148. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 それは誤解でございます。執行自体は、本人にはもちろん、外部にも秘密でございます。その御心配は全くございません。ただし、本人が私の、私はそんな有名人じゃないから、死刑因は私の顔を知らぬでしょうが、知っておったらどうするかという問題もあろうが、これは目隠しをしておりますから、私の顔つきはわからない。全くただいまの御心配は御無用でございます。
  149. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ、政府委員答弁の前に一点だけ。これは御答弁要りません。ただ、こういうことだけ申し上げておきます。  要するに、あの広い拘置所の中で、表からだれかが入ってきたら、一審拘置所の奥まったところにある既決囚の監房におる既決囚が、それを感ずるというほど、物理的には考えられないような、そういう神経のとぎ澄まされた状態にある。そんな中で、もちろん大臣、きょうは視察である、おまえの死刑執行について視察しに来ているのだよというふうなだいそれたことは、私はあり得ることじゃないと思うのです。秘密に視察をされるということはあたりまえのことなんです。それはとにかく常識以上の常識だと思うのです。ただ、何となしにざわざわしている、おかしい、ふしぎだ、何かきょうはあるの、だろうかというふうな、すでに長い間つき合った、すでにもうそこにいわゆる刑務官とそうして既決囚という、立場は違うけれども、心の通った人間によって刑場へ連れていかれる、それでこそ落ちついて死刑の執行というものができると思う。何かそこに別の人が来る。もちろん展上絞架式でございますから、一番下のところで視察をされるのだろうと思いますけれども、そういうざわざわした雰囲気を感じた場合に、そういうかっこうで死刑の執行がされたということになると、私はこれはいかがなものであろうかと思うわけです。また同時に、そのようなことについて絶対にそのようなことはあり得ないのだという保証が、大臣視察という、そういう状況の中で担保できるのかどうか、この点について大臣御自身は非常に形式ばらない方ですけれども、この点について特段の私は配慮あった上での視察ということでなければ、私は少なくともこの視察ということについては賛成ができないということだけは申し上げておきたいと思うのです。
  150. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 現在刑場に入りますのは、検察官、刑務所長、並びに執行の補助をする刑務官、それ以外は被執行者の生前の教戒に当たりました宗教教戒師が、刑場の礼拝所まで同道することがあるだけでございます。
  151. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると、政府委員の御答弁の中では、参観等についてのことが合法だとか、許されるということは別として、そのような参観、視察というようなことは現在は行なわれていないということでございますね。
  152. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 さようでございます。
  153. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  154. 大坪保雄

    大坪委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十九分散会