運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-22 第55回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十二日(木曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 松前 重義君 理事 横山 利秋君    理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    中尾 栄一君       加藤 勘十君    中谷 鉄也君       西宮  弘君    沖本 泰幸君       松本 善明君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君         法務省刑事局長 川井 英良君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    日出 菊朗君         警察庁交通局交         通企画課長   片岡  誠君         文部省体育局学         校保健課長   田  健一君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         建設省都市局公         園緑地課長   森  堯夫君         建設省道路局企         画課長     豊田 栄一君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月二十二日  委員下平正一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十一日  司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正  する法律案内閣提出第一一二号)(参議院送  付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第九四  号)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  3. 大竹太郎

    大竹委員 前会に引き続いて質問を続けたいと思いますが、主として自動車事故が問題になっておりますので、自動車事故についてお尋ねしたいのでありますが、自動車事故には私は三つの態様があると思うのであります。まず第一に、一番数が多くて普通の事故は、運転をする人のいわゆる過失、この二百十一条の、問題になっております事故、それからいま一つは、被害者事故でいえば、被害者立場に立って、相手方の自転車乗りでありますとか、あるいは通行人のいわゆる過失とでも申しますか、そのほうに責任のある事故、いま一つ考えられますのは、自動車が完全に整備されていなかったために、たとえばハンドルぐあいが悪かったとか、ブレーキがきかなかったということによる事故、大体この三つに分けられるのじゃないかと思うのでありますが、この三つ事故の最近の統計というようなものがございましたらお知らせをいただきたい。
  4. 片岡誠

    片岡説明員 御承知のように、交通事故当事者の双方に何らかの過失があるという場合に、一般的には多うございます。しかしながら、私ども事故統計をとります場合に、過失程度が高いほうを第一当事者過失程度の低いほうを第二当事者というふうに分類をいたしまして統計をとっております。第一当事者、つまり過失程度の高いほうの交通事故当事者件数で御説明いたしますと、免許を持っている運転者、これはもう原動機付自転車まで含めまして、そういう免許対象になっております運転者原因になりましたのが三十八万六千六百三十二件、これは昨年の統計でございますが、それから自転車に乗っておった人が原因だというのが一万二千九百六十九件、それから歩行者、これが二万四百二十件、その他が三千七百三十六件ございます。合計四十二万三千七百五十七件。これをパーセンテージにいたしますと、免許証を持っておる運転者が九一・二%、それから自転車乗りが三・一%、歩行者が四・八%その他が〇・九%、こういう数字になっております。もっとも第二当事者と申しますか、自動車歩行者がぶつかって、歩行者のほうにも何らかの不注意があったという例をとりますと、第二当事者の場合には二八・九%歩行者原因がある、自転車乗りの場合には一四・一%ある、こういう数字も出ております。  それからもう一つ整備の悪い自動車によりまして、それが主たる原因になりました事故を見ますと、合計数で二千六百八十七件、その中で一番多うございますのがブレーキ関係制動装置関係の不良な運転で、これが二千三件でございます。そのほかハンドルその他の走行装置不良運転が百八十七件、その他が四百九十七件、こういう数字になっているわけでございます。
  5. 大竹太郎

    大竹委員 いまのこの統計昭和四十一年ですか。——それでお尋ねしたいのでありますが、全体の事故のうちで見ますと、車両整備不完全ということで起きた事故は、パーセントは非常に少ないようでありますが、しかし、よく新聞等でも出ておりますように、ブレーキがきかなかったとか、ハンドルぐあいが悪かったということで起きる事故というものは、いわゆる事故としては相当大きな、人命に非常に危険な事故になるわけであります。そういうような面から見まして、自動車が絶えず完全に整備されていなければならない、そしてそれが事故を起こさないためには大事なことであるということからいたしまして、自動車が絶えず完全に整備されているということのために、監督指導の衝に当たられております運輸省は、どういう機構のもとにこの完全を期しておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  6. 堀山健

    堀山説明員 自動車保安につきましては、現在登録自動車については定期検査という制度がございます。それで、簡単に申しますと、自家用乗用車が二年に一回、その他は一年に一回、こういうことを定期的にやっております。ただ車は毎日使っておりますので、一年に一回そういう検査をいたしましても、それが全部保証できるというわけのものではございませんので、それを補完する意味において、定期点検制度というものを設けております。定期点検制度におきましては、これは車によって使用頻度が違いますので、自家用乗用車につきましては、半年に一回、十二カ月に一回、そういう六カ月きざみで、最小限度どういうところを点検しなければいかぬか。事業用になりますと責任度合い使用頻度が高いのでございますので、一カ月に一回、三カ月に一回、十二カ月に一回、それぞれ必要な場所について点検をする、こういうことを義務づけております。それと車両検査定期検査制度とをかみ合わせまして保安を維持する。  それからもう一つ運送事業者の場合につきましては、運行管理者整備管理者という制度がございます。そういうことによって会社内部にも責任を負わせて、そういうものに運行なりあるいは車の維持、管理責任を持たせる、こういう制度を社内にも持たせるという制度があります。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 それで、まずお聞きしたいのですが、定期検査、これはもちろん各県に、私の承知しておるところでは大体一カ所ある陸運事務所が所管します検査場ですか、において二年に一回あるいは一年に一回の検査が行なわれているようでありますが、県一つを単位にいたしましても、非常に最近車両がふえておるということからいたしまして、最近各地に出張検査というようなものをやっておられますが、どうも、本場における検査というものは非常に設備もよく、十分やっていらっしゃるようでありますけれども出張検査というものは出先であり、かつ検査機械その他が十分でないというようなことから、必ずしも円滑に、完全に行なわれているかどうかというようなことを心配しておるわけでありますが、それらの事情について御説明願いたい。
  8. 堀山健

    堀山説明員 ただいまお話がございました点でございますが、私どもでやっております定期検査、これはおおむね県庁所在地にございます事務所に付設して本場検査場というのがございます。そのほか、全国で非常に利用者の多いところ、たとえば東京でありますと三カ所、大阪であれば二カ所、あるいは九州でいいますと北九州市、そういうように非常に車の多いところにつきましては本場のほかに支所というもをつくっております。これが離島を含めまして全国で現在十五カ所ございまして、本場検査場と合わせまして六十七カ所で検査をしておる、こういうことでございます。それで、昨年の全体の統計を見ますと、定期検査をやりました件数が約五百三十万件ございます。そのうちの約五十万件、約一割弱、これが先ほどお話しございました出張検査でやっているということでございます。そこで出張検査場におきます機械設備ですが、本来本場検査場と同じ設備機械を使ってやるというのがたてまえでありますけれども、現在全国に約二百六十カ所ばかり出張検査場というのがございますが、その中で島とか——外界と全然途絶している小さな島、北海道のほんとうのいなか、こういうところは別といたしまして、その他のところにおきましては最小限度機械のあるところに出張したいということでございますが、現状といたしましては本場検査場と同じ完全の設備機械のあるところはおおむね三五%程度、あとは何がしかの品物が欠けておるというのが現状でございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 そこで申し上げたいのですが、もちろん機械その他の面で不十分だということも非常に私は遺憾だと思うのでありますが、同時にまた、現在やむを得ないことかもしれませんけれども、この出張検査をする場所におきましては地元の市町村とかあるいは業者とかに機械の購入、あるいはその他の設備というようなものを相当依存しているのじゃないか。現に、私の知っているところは相当依存しておるという事実もあるのでありまして、そういうようなことから見まして、この検査を受ける人の負担というようなものも、勢い本場で受ける人と出張検査を受ける人の負担というものに相当差異があるということも聞いておるわけでありますが、将来この検査場について運輸省考えていらっしゃる方針というようなものもこの際お聞きしておきたい。
  10. 堀山健

    堀山説明員 行政サービスの面からいいますと、できるだけ多くのこういう施設が全国にあって、多くの皆さんがなるべく近い場所検査を受けられるということが理想かと思います。実は三十九年から検査登録につきまして特別会計制度をつくりまして、資金運用をよくしたわけでございますが、別の角度から人間をふやすということにつきまして、別途政府方針として制限を受けたわけでございます。そうしますと、いろいろな支所出張所をつくることが行政サービスの向上になるということはよくわかるのでございますが、人をふやすということについての制限があるために、なかなかそういうことができないということでございます。そこでケースバイケースとして出張検査といいましても、先ほど申し上げたように小さな島だとかよほどへんぴなところで年に一回くらい行けばいいようなところもありますし、場所によりましては、一日置きとかあるいは一週間に一回とか、こういうところもございます。そこで非常に出張しても頻度の高いところ、結局おっても同じじゃないか、常駐したほうがむしろ行政サービスにもなるし、私どもの内部的にもそのほうがベターである、こういうところは、先ほど申し上げたように支所とか出張所ということにしておるわけでございます。これは人間抑制関係があるために、実は方針としてそれをやるめどが立ちませんが、ケースバイケースとして非常に業務量の多いところはそういうふうにして行政サービスをやる、こういうことにしております。いまのところ全国的にそういう設備をある目途をもってやるというめどが立たないのが残念なことでございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしておきたいのですが、先ほどもちょっと御答弁の中で触れられておりましたように、二年に一回とかあるいは一年に一回ということでは、これは毎日動いている自動車として非常に心配だから、現在の制度とすれば、それぞれ一定の期間において一定検査をするような制度になっておるというようなこと、また各事業者については検査責任者でありますか、そういうものも設けて、そうして業者にある程度責任を負わせるということも、現在の制度でなっておるそうでありますが、やはり私は最近の事故、しかも大きな事故が起きておるものを多少調べてみますと、自家用ただ車運転は知っておるけれども機械のこまかい点については全然知らない、そういうものはいわゆる販売業者にまかせっきりで、ただ自分ではハンドルを持つというだけの運転者事故が多い。また車のぐあいが悪いのを無理に動かして事故を起こしたというようなものも、ハンドルだけを持つという自家用車に一番多いと思うのでありますが、これらについては何か路上において一々検査するというようなことはむずかしいと思いますけれども、何とか特別の監督指導というものを、これは運輸省としてお考えになる事項かどうか私はわからぬのでありますけれども、これについて何かお考えがあったらひとつお伺いしたい思思います。
  12. 堀山健

    堀山説明員 お話がございましたように、自動車はどんどんふえてまいりますけれども、そのふえてくる対象の車ないしドライバーというものは、いわゆる昔から比べますと、——昔は、昔はというと語弊があるのですが、いわゆる運転手といえどもプロでございます。したがって、車の性能その他もよく知っておるし、少々のことなら自分が修理するということで、あるプライドを持っておったと思うのでありますが、車がだんだんふえてまいりますと、おっしゃるとおりむしろアマチュアの部類が多くなってきたということでございます。そこで、道路整備舗装率に比べて、車自体もかつてに比べてよくなったと思います。現に二年間五万キロ保証するというような、むしろ車を売るほうの側でも自信がある程度出てきたという面があると思います。ただ問題は、そういうドライバー運転のしかたなり、知識というものは、確かに必ずしも十分ではないと思います。そこで、いろいろな方法知識を普及させるということで、それぞれ所管の官庁がございますのであれですが、私のほうとしては、販売会社やあるいはこれは故障その他整備のために工場に入るわけですから、そういう機会ドライバーに対して、あなたはどういうところが運転のしかたがまずいとか、あるいはタイヤの減り方を見て、あなたの運転のしかたはこういう点に欠陥があるというようなことを、できるだけいろんな機会をつかまえて教育する、教育するといったら変ですが、サゼスチョンする、こういうようなことを、先ほど言いました検査とかあるいは管理者制度を除いても、いろんな立場関係業界を通じて啓蒙するといいますか、指導する、こういう機会を持たせるように私ども努力をしております。  それから、私どもも人員の関係でなかなか機会を得ませんけれども、警察の取り締まりその他のときにも、一緒になって故障車の、いわゆる不良故障車といいますか、それの点検をやっております。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 それでは運輸省のほう終わりまして、今度条文そのものについて、法務省に若干お聞きいたしたいと思います。  まず、法務省のほうへお聞きしたいのでありますが、二百十一条のこの提案理由の中に「近時の自動車運転に基因する業務過失致死傷事件及び重過失致死傷事件の実情を見まするに、」云々とこうあるのでありますが、どうもこの提案理由説明だけから見ますと、もちろんこれは自動車運転の非常な事故の増加、悪質な事故の続出ということからこの改正考えられたことは間違いないのでありますけれども、この条文そのものの適用から見ますならば、必ずしも自動車事故だけを対象としたものでないということは申すまでもないことだと思うのでありますが、その点についてのこの説明が完全でないとでも申しますか、どうも不十分なように思うのですが、その点はどうお考でいらっしゃいましょうか。
  14. 川井英良

    川井政府委員 御指摘のように、この法律改正の契機となりましたのは、最近の自動車運転に基因する事故の多発と、その悪質化、こういうことでございます。そこで、私どもといたしましては、でき得る限り、その一部改正でございますので、当面必要な部門に限って法的な措置をするということにいろいろ努力をいたしまして、いろいろな観点からいろいろ検討を遂げたわけでございますけれども、結局、結論といたしましては、以下に申し述べますような主として二つの大きな観点からやはり法体系のたてまえといたしましては、このような刑法の一部改正、二百十一条の改正という形でもってまかなうことが最善であるし、またこれ以外の適当な方法はない、こういうふうな結論に達したわけでございます。  その一つ理由といたしましては、御承知のとおり刑法は明治四十一年に現行刑法が施行されまして、そのときからこの二百十一条は刑法典自然犯として取り上げられてきたわけでございます。自乗約六十年間、日本国民業務上の過失によって人の身体を傷害ないしは死亡せしめたというふうな場合におきましては、これはその他の刑法規定されておりますいろいろな故意犯とともに、自然犯としての性格づけと位置をもって、いまや国民意識の中に定着しているものだ、かように私ども考えているものでございます。そこで、もしこれを道交法というようないわゆる行政取り締まり法規の中へ取り込んでくるというふうなことを考えてみますと、自然犯として意識の中に定着しているものを、この段階において、これをいわゆる行政取り締まり犯の範疇の中に移すという結果になるわけでございまして、私ども刑罰法規を運用いたしております者から申しますと、これは実はたいへんな意味を持つものといわなければならないわけでございます。  そこで、刑法の講釈を申し上げたらたんへん恐縮でございますけれども刑法国民のいわば倫理的な基本的な規範としての意義を持つものだ、こういうふうに理解されておりますので、そのような観点に基づきましても、これを今日狭い視野から、突如としてその一部を行政取り締まり犯のほうへ移すということは、これはなかなか影響が重大だ、こう思うわけでございます。  さらに考えてみますと、自動車酒酔いとか、あるいはいろいろな無謀運転に基づく大きな、悪質な事故に限って、これを刑法から取り去りまして、行政犯のほうへ移すということになりますと、むしろ比較的軽いものが自然犯として刑法に残りまして、悪質な重大な重いものが逆に自然犯を離れて行政取り締まりのほうへ移ってくるという結果になりますので、この点を考えましても、道交法に移すということには、どうしても理論的には、またたてまえの上から、まいらないわけでございまして、ここに道交法をもってまかなっていくという提案に対しましては、賛成ができないものがあるわけでございます。  それからもう一点は、自動車運転手による事故を、その他の交通機関運転手による事故区別いたしまして、特別な取り扱いをする、法体系におきましても、また法定刑におきましても区別をするということは、はたして妥当なものかどうかという問題が第二の問題でございまして、これは自動車運転手という業態、あるいは汽車、電車ないしは航空機の運転手というその業態によって区別、差別をいたしまして、自動車運転手注意義務だけを特に重く処罰するというふうな結果になることは、どういうことなのだろうかということにつきましても慎重な考慮が必要だ、こう考えるわけでございます。この点直ちに、平等の保障の憲法にそのまま違反するというふうには申し上げませんけれども、これは人体に対して危険を持つ業務に従事する者の注意義務が、あるものは軽く、あるものは重くなければならない、こういうことは私どもといたしましては、どうしても理解できないわけでございまして、およそ人命に対して、危険な業務に従事するという業態のものにつきましては、その注意義務は同等でなければならないというのがたてまえだろう、こう私は思うわけでございまして、そういう観点から申しましても、自動車運転者だけに限って特別な規定を設け、それに対して特別な法定刑を盛るということは、いろいろな観点から見まして相当でないということが第二点でございます。  ほかにもございますが、おもな点は以上の二点が、ただいま御指摘がございましたことについての私の答えでございます。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 次にお尋ねしたいと思いますが、今度のこの条文改正、二つあるわけでありまして、一つ過失犯に対して懲役の刑を科することができるようにする。それからいわゆる禁錮三年のものを五年の懲役または禁錮ということに改正する、この二点だと思うのでありますが、第一点、やはり問題になりますのは、過失犯に対して懲役刑を設けたというこれが一番議論のある点じゃないかと思うのでありますが、まずその点をひとつ御説明願いたいと思います。
  16. 川井英良

    川井政府委員 御承知のとおり日本刑法は、原則としまして過失犯及び政治犯に対して禁錮刑を科しておるということが言えるわけでございまして、ごく原則的なたてまえ論といたしましては、およそ過失犯については禁錮刑をもって臨むというのがたてまえであることは、御指摘のとおりでございます。ただ、しさいに現行刑法を検討してみますると、この原則は必ずしもすみずみまで行き渡っているわけではございませんし、また最近の近代刑法理論の発展という傾向から見ましても、この原則につきましてはいろいろな例外が設けられていることも、御承知のとおりだと思うわけでございまして、過失犯については、禁錮以外のものでは絶対にいけないんだというふうなことにはならないと思っておるわけでございますが、特にこのたびこのような改正を企てましたのは、主として自動車の場合が多いと思いますけれども、酒に酔って車を運転するとか、あるいは免許がないのに運転するとかいうふうな、非常に常識にはずれた無謀な運転による事故というふうなものが多発してまいりまして、その結果、非常な社会不安までもたらしておるというふうな状況でございまして、私どもの手元で扱いました中にも、事故によりましては、過失犯ではなくて、故意犯だということで、故意を認めることができるような事案につきましては、殺人罪ないしは傷害をもって事件を処理したという例も出てきているというふうな状況でございますので、そういうふうな場合につきましても、故意犯をもって論ずるには証拠の関係で非常に困難だ。しかしながら、故意犯過失犯のまさにいわば紙一重のような状況事案が多くなってきているというような点にかんがみまして、国民道義観点あるいは国民感情の上から申しましても、そのようなきわめて悪質なものにつきましては、この際懲役刑をもって臨むことも、むしろ国民感情に沿うものではなかろうかというふうなところから、理論の面と実際の面、両方を顧慮しまして、この刑につきまして懲役刑考えてみたわけでございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 次に、三年のものを五年、しかも懲役まで加えて重くしたということでありますが、たとえば二百九条の過失傷害、これは二万五千円以下の罰金、それから二百十条の過失致死、五万円以下の罰金等に比較いたしますと、条文の配列から見ましても、しかも懲役の五年というのは、どうも重過ぎるのではないかという感じがいたすのでありますが、その点はどうお考えでありますか。
  18. 川井英良

    川井政府委員 全体改正ではなくて、一部改正でありますので、たいへん御不審、また御不安もあろうと思うわけでございますが、いまの刑法の中で過失犯で最も重い刑罰をきめているのは、禁錮三年の刑でございます。その刑はいまの二百十一条のほかに百十七条ノ二の業務上の失火の刑がございます。これも三年でございます。それから百二十九条の二項の業務過失往来妨害規定がございます。これも三年でございまして、この三つ現行刑法過失犯の中で一番重い刑罰を盛っているものでございます。そこで、この中でいろいろ検討いたしまして、あとの二つはいままで実績を見ましても、六十年間に非常にこの事件が少ないわけでございますし、その中で体刑の禁錮が判決で出たというのも、非常に少ないわけでございまするし、その判決の中でも、一番重いのが大体一年というところがいままでの実績に相なっております。  ところが二百十一条のほうは御承知のとおりの状況でございまして、今日禁錮三年の最高刑を盛られた判決が、続々と出ておるというようなかっこに相なっておりまするし、いまやっております刑法の全面改正の問題でも、いまの三つに比べまして二百十一条はやはり重いのではないかというふうな意見も、多数意見として出ておりますというようなかっこうで、それらと比べ合わせてみまして、現行の体系のままで二百十一条に五年の刑罰を盛っても、体系としてはおかしくない、こういうような確信に基づいて出したものでありまして、法制審議会の意見の中では、懲役のかわりに禁錮にして、刑を七年に上げたらどうだという強い意見も出たくらいでございまして、その辺のところから考えまして、五年という刑罰もまあがまんができる、相当なところではなかろうか、かように考えております。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 次に、法定刑の上限を引き上げたということに関連しまして、多少心配になるのでありますが、先ほどお話がありましたように、いままで三年のいわゆる禁錮に科せられた事件が相当あるということでございまして、これは上限が三年でありますから、情状はそれ以上もっと科したいと思っても、それ以上は科せられないわけでありますから、そういうものは今度四年ないし五年に引き上げられるということは当然でありますけれども、上限が上がったということで、たとえばいままで一年、二年だったのも、上限が五年ということで、その割合で引き上げられるのじゃないかという、なんといいますか一般の不安と申しますか、これはあると私は思うのであります。ことに全体として見ますと、これはなんといいますか社会的な要請からかもしれませんが、二、三年前から見ますと最近の交通事犯に対する処刑というものは全体として、何といいますか、罰金一つにしましても上がってきたというような気がしてならないのであります。そういうような面から見まして、法定刑の上限が上がったのだから一般に重くなるのだぞということで、相当運転手その他が不安になっている面もあるように思うのであります。それらについてひとつ御意見を伺いたい。
  20. 川井英良

    川井政府委員 今度の改正の趣旨は一部改正でありまするし、その趣旨とするところは、先ほど申し上げたような特殊な事情に基づいての当面の措置ということに相なっておりますので、私どもといたしましては、運用の面が五年に上げたからといって全体がスライド的に重くなっていくというようなことは全く考えていないわけでございまして、ごく悪質重大な、先ほど申し上げましたような事案につきまして、国民、何人が見ましてもこれはいけないというふうな事故に限って、法定刑を上げた重いところで処罰をしていくというたてまえに立っておるわけでございまして、こういうふうに背景の法定刑を上げたから、すべてのものが自動的に上がっていくというふうな運用は全く考えていないわけであります。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、四十五条の改正についてでありますが、これは今度、この委員会の所管ではございませんけれども道交法改正によって反則金、通告制度が実現いたしますと、いわゆる四十五条改正理由になっております非常にこの事案が多くて、調査の不備その他から最高裁にいって差し戻しになるというようなこともなくなると思うのでありますが、その点について考え方はいかがですか。
  22. 川井英良

    川井政府委員 道交法改正が通過いたしますと、私ども、警察庁当局と研究いたしました結果では、年間約五百万件の道交法違反が出ているわけでございますが、この制度でまかなえるのが大体七割見当いけるだろうということになりますので、残るのは約三割という見通しでございます。そうしますと、年間依然として百五十万件ずつが残っていくわけでございますし、罰金は五年間消えませんので、過去に積もっております罰金刑は相当な数になっておりますので、その上、年間百五十万ずつはまたさらに加わっていくというふうな事情になっておりますので、いろいろほかにも理由はございますが、事務的な過誤あるいは煩瑣というものをこの際救っていくというふうな理由から申しましても、この数字はまだまだ軽視できない数字ではなかろうか、かように考えております。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 一応、これで私の質問を終わります。
  24. 大坪保雄

    大坪委員長 沖本泰幸君。
  25. 沖本泰幸

    ○沖本委員 お聞きしたいことがたくさんございますが、不手ぎわで、まだ十分整理できておりませんので、質問の内容の整理がうまくいきませんから前後していくかもわかりませんが、その点はお許しいただきたいと思います。  まず、総理府の交通安全室長さん、見えているでしょうか。
  26. 大坪保雄

    大坪委員長 日出参事官が見えております。
  27. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それではお伺いいたしますが、四十一年十一月二十一日に交通対策本部で決定された「交通安全施策の強化に関する当面の方針」こういうふうな方針が打ち出されておりますけれども、これ以外に、その後南海電車の踏切の問題だとか、あるいはダンプの問題がだんだん激しくなっておりますけれども、そういう問題に対する何か新しい対策が出ておりましたらお教えを願いたいと思います。
  28. 日出菊朗

    ○日出説明員 昨年の十一月二十一日に「交通安全施策の強化に関する当面の方針」こういう交通対策本部決定をいたしたわけでございます。これは当時、御承知のとおり、非常に交通事故が増加した、こういう現況にかんがみまして、緊急に交通安全施策を強化する、こういう当面の具体的な方針を掲げたわけでございます。それはいわゆる基本的な事項でございまして、その中身といたしましては、交通安全施設等の整備とか、交通安全運転の確保、交通秩序の確立、被害者救済対策の強化、その他という項目におきまして、いろいろと対策を立てたわけでございます。  その後御承知のとおり踏切事故が南海電鉄に起きました。またトンネル事故につきましては、これまた御承知のとおり、鈴鹿におきます自動車の火災事故が発生いたしたわけでございます。さらに非常に大きな事故であります愛知県猿投における学童園児の交通事故、こういう事情にかんがみまして、特にその後の方策といたしましては、「大型貨物自動車による事故防止等に関する特別措置」を一番最初に出しておるわけでございます。これは十二月二十日の交通対策本部決定でございまして、同日直ちに交通関係閣僚協議会の了解を受けた事項でございます。これは申し上げるまでもなく、大型貨物自動車による事故が非常に大きな事故であり、しかも影響するところが大きいわけでございまして、これに関する特別措置をそれぞれ政府として施策を確立いたしたわけでございます。  この中身を簡単に申し上げますと、交通安全施設等整備事業の三カ年計画による事業の実施の促進、あるいは大型貨物自動車に対する取り締まりの徹底、それから法令改正の措置を必要とする事項についてはそれぞれ直ちに改正をする、また改正をするように措置をとる、さらに学童の事故防止の徹底をはかる、こういうことでございます。そしてこのためにダンプ対策につきましては、大型貨物ダンプ対策専門部会及び学童事故防止につきましては学童事故防止専門部会を設置した、こういう形で施策を進めております。  また本年に入りまして、二月十三日におきましては、同じく交通対策本部決定において「学童園児の交通事故防止の徹底に関する当面の具体的対策について」この決定を出しまして、それぞれ関係各省において推進をはかっていただいておるところでございます。  それから、先ほど申しました踏切事故防止につきましても、本年の四月六日に交通対策本部決定をいたしまして、同四月七日には交通関係閣僚協議会の了解を得まして、南海電鉄の踏切事故の実態にかんがみまして、この種の事故再発を防止するということで具体的対策を立てておるわけでございます。  さらに四月十七日には「トンネル等における自動車の火災事故防止に関する具体的対策について」の本部決定をいたしまして、これまたそれぞれ関係各省庁におきまして具体的対策を現在実施いたしておるところでございます。  以上でございます。
  29. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま、いろいろな対策について御発表をいただいたわけでございますが、それでは、そのいろいろな対策をその後打ち出されまして、関係各省に御連絡をなさったわけでございますが、その時点についてどの程度改正がなされてきておるか、また、どういう問題が現在実施されてきておるか、あるいはどの問題が来年度は予算に組まれていくか、廃止されていくか、いつの時点になったらこの問題は解消するだろうか、どの程度おつかみであるかお教え願いたいと思います。
  30. 日出菊朗

    ○日出説明員 ただいま申し上げましたとおり、御指摘の「交通安全施策の強化に関する当面の方針」を打ち出して以来、数個の交通対策本部決定をいたしておるわけでございますが、これらの個個につきましては、関係各省庁において現在実施中でございます。特に大型ダンプの対策の問題につきましては、先ほど申しましたとおり交通対策本部の中に専門部会を設けております。また学童園児の交通事故防止対策につきましても、交通対策本部の中に専門部会を設けてそれぞれの対策をいたしておるところでございます。特に学童園児の通園通学路における事故防止等につきましては、ただいま関係各省におきまして総点検を実施いたしまして、その集計も近く集まるわけでございますので、それぞれその結果に基づいてさらにきめのこまかな対策が練られる、こういうことになっております。
  31. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いま、専門部会を設けられた、あるいは総点検をなさって、きめのこまかい対策を講じていくということなんですが、要は、どれだけ早く安全がはかれるかということにあるわけなんですが、きめのこまかい実施はいつごろできるのでしょうか。
  32. 日出菊朗

    ○日出説明員 交通安全問題というのは、きわめて迅速に措置をする必要がありますので、ただいま政府におきましても通園通学路に関する安全対策につきまして、特に通園通学路における施設の整備、あるいは踏切道の構造改善、こういうものにつきまして具体的な対策を立てまして、それぞれ関係方面等の協力を得て何らかの形において具体化したい、このように考えております。
  33. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは、踏切の問題について関係の方からお答え願いたいと思います。  また学童の安全対策について文部省のほうはどういう対策を講じておられるか、その点についてお答え願いたいと思います。  また、この問題に対して警察関係あるいはその方面の対策はどうなっていらっしゃるか、三つについてお伺いいたします。
  34. 田健一

    ○田説明員 学童園児の交通安全の確保につきましては、文部省といたしましては基本的には二つの大きな対策をとっております。  一つは教育の面、交通安全教育を体系的にしっかりしたものを実施するということで、現時点におきます子供たちの安全を確保する。それからまた将来子供たちがおとなになりました後に、正しい運転者となり正しい歩行者となる、そういう面での教育をしっかりいたしたい、それが一つでございます。  それからもう一つは、いわゆる管理の面でございまして、登校下校の際におきまして交通の安全を守る、そのために文部省といたしましてできますことは、集団登下校の実施の問題、それから通学路の設定の問題でございます。そのほか安全施設あるいは交通規制などにつきましては、それぞれ建設省あるいは警察庁と、先ほどの児童の専門部会の席をかりまして、あるいは直接いろいろお話をいたしまして進めていただいておるという状態でございます。  やや具体的に次に申し上げますと、安全の教育の問題につきましては、この三月にこういう「交通安全指導の手引き」というのをつくりまして、これを全国の小中学校におきまして、参考として、交通安全の指導を強化をしてもらっております。  この手引きの大きい目標は、先ほども申しましたように、一つは現時点において交通事故から子供たちの身を守らせるという意味におきまして、正しい歩行ということを中心にしてこれを習慣づけをはかっていく、安全を確認して正しい行動をするということにつきましての習慣づけをはかっていくということでございます。  それからもう一つは、将来の歩行者あるいは運転者としての基礎的なことを教えまして、それで将来社会の交通安全に積極的に協力できるような国民の育成をはかりたい、こういうことでございます。この手引きは、これを小学校から中学校まで四つの発達段階に分けまして、それぞれの発達段階に応じた指導目標、指導内容というものを定めまして、これによって行なっていくのでございますが、中心はやはり習慣づけでございますので、交通安全訓練というものが中心になります。それに知的な理解に基づきますところの実践意欲というものをプラスしていく。低学年から中学年にかけましては、いわゆる習慣づけのほうに重点を置きまして、それから高学年、中学校に及びまして、いわゆる実践意欲の高揚というほうに相当なウエートをかけてきております。  それから管理の面でございますが、集団登下校は、御承知のように集団登下校の途中に大型車が飛び込みまして、大きな悲惨な事故を起こしたというようなことがございまして、私どもは集団登下校はきわめて有効な安全なやり方であるということで、相当積極的にこれを進めてきたわけでございますが、最近の情勢にかんがみまして、昨年の十二月二十三日に文部事務次官通達を出しまして、集団登下校を行なう際には、その通学路における道路事情あるいは交通事情というものを十分に慎重に検討した上で行なってほしい、それからその際には、警察等にお願いして、途中の危険な個所におきます誘導等について遺漏のないようにはかってもらいたい、それから子供たちにつきましては集団訓練というものを十分にやってもらいたい、こういうことを言ったわけでございます。  それから同じく管理の面で、通学路の設定につきましては、まず四月の初めに、学校の先生が自分で子供たちに安全な通学路というものを点検いたしまして、なるべく危険な個所を避けて、安全なところを通って学校に来るように、個人個人の生徒についてまでそれを調べまして、家庭と十分連絡をとって通学路というものをきめていくということを指導しております。現在は交通事情というものが日々変わってまいりますので、途中適宜に通学路の検討をしてこれの改定をするようにというようなことを指示しておるわけであります。  なお、学校に対しましては、昨年十二月二十三日の通達によりまして、通学路の安全施設等の調査を十分にやって、それぞれ関係方面に十分にお願いするようにということを言っておったわけでありますが、いまお話がございましたように、本年の二月に、市町村に学童園児等交通事故防止対策協議会というものの設置が進められまして、警察庁のお調べによりますと、もう大体九〇%の市町村にできておるようでございますが、これに学校も参加しておりますので、この機会を利用して、十分に通学路の安全施設を進めるようにということを指導している次第でございます。
  35. 豊田栄一

    ○豊田説明員 建設省といたしましては、昨年七月十五日にできました交通安全施設に関する三カ年計画がございますので、この総額が建設省分としては五百六十億ございますが、これは昨年の七月から発効いたしたわけでありますが、御案内の、先ほど御指摘のございましたようなあれで歩行者の保護施設、特に学童園児に関する安全施設の充実ということで、先ほど御説明ございました交通対策本部決定の趣旨に基づきまして、工事の内容変更、それから繰り上げ、そういうような措置をとりまして、現在第二年度に入っておりますが、予算で申し上げますと昨年度が百四億でございます。今年度は二百四十六億ということで、後年度分を繰り上げまして、いま申し上げました安全施設の特に歩行者関係いたします学童園児関係というものについて、そういうものの繰り上げ施工を現在やっているところでございます。  ちなみに、一つの工事で申し上げますと、大体三カ年計画では、特に典型的な例として横断歩道橋がございますが、あれは三カ年計画全体では約千六百カ所をやる予定でございます。現在まで——昨年、四十一年度はこれが三百四十五カ所でございました。現在四十二年度は約千カ所、正確にいえば九百九十五カ所でございますが、両年度でもって全体の約八六%をやっております。そういう意味での施設だけは充実していきたいということで、現在まで大部分やっておるところでございます。  それから、お尋ねの中の踏切道に関しましては、これは関係の文部省とも協議いたしまして、現在交通対策本部決定の趣旨に基づきます踏切道の、私どものほうは構造改良のほうをやるわけでございますが、こちらのほうの現地の協議会においてそういうものの成果を取りまとめ中でございます。
  36. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは、文部省のほうに伺いますが、いろいろ対策を講じておられるのはわかるのですけれども、問題の点というのは、そういうふうなそうゆるいものではないわけです。  そこで、この交通対策について、そういう教育方針というものを学校の正課の中になぜ組み入れられないのか、いつ組み入れられるのか、どっちですか。
  37. 田健一

    ○田説明員 正科という意味でございますが、実は正規の教育課程と申しますか、こういうものの中には、いままでも組み入れられておるわけでございます。御承知のような小学校、中学校におきます教育は、学習指導要領によって定められておるのでございますが、その中に各教科、道徳、特別教育活動、学校行事という四つの領域があって、その四つの領域をもっていわば正規の教育が編成されておるわけでございます。それで交通安全教育につきましてはかねてから、昭和三十七年ごろからこの四つの領域を通じて全部の教育活動の中で実施するように示していたわけでございます。それで、ただその示し方が体系的ではございませんので、抽象的な示し方だけしかいたしておりませんでした。したがいましてこれを体系的に目標、内容を定めて指導する必要がございますので、先ほどの「交通安全指導の手引き」をつくったわけでございます。いわゆる算術だとか国語だとか、そういう意味の教科ではないのでございますけれども、今度の指導手引きにおきましては、学校行事という領域に特に時間を設けて行なうように指導しているわけでございます。この学校行事等に時間を設けることにいたしましたのは、先ほども申しましたように訓練が中心になりますので、こういう領域に時間を設けるのが適当であろうというように考えたわけでございます。  なお、現行の学習指導要領は昭和三十三年に改定されてできているものでございますが、この中にいま申しました四つの領域があって、そのすべての教育活動を通じて交通安全の指導をするということになっておりますが、当時と今日とでは交通事情等もすっかり変わっておりますので、現在、文部大臣の諮問機関でございます教育課程審議会において、学習指導要領の基本的な体制についての審議が進められております。この中におきまして、交通安全指導の問題は一つの重要事項として取り上げられておりまして、現在審議中でございます。先ほど申しました手引きは、この審議の結果を待ちますと間に合いませんので、とりあえず手引きという形で出したということになっております。
  38. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、訓練が中心ということになるのですが、子供のための交通公園等について、文部省のほうはどういうふうにおやりになっているのですか。地方の教育委員会あたりでは、予算の関係とかいろいろな点で非常に気乗り薄である。あるいはこの問題に関しては、警察とか建設省とかの関係がいろいろあるために、なかなか実現がはかられていないわけです。ですから建設省、警察のほうにもお伺いしますけれども、大阪に一カ所、東京には、数を私忘れましたけれども、何カ所かあるのですが、一体全国でどれくらいの計画を持っていらっしゃるか、あるいは現在どういう事態にあるかという点について、お答え願いたいと思います。簡単でけっこうです。
  39. 田健一

    ○田説明員 交通公園は、実は建設省の予算をもって進められているわけでございます。それで今日までの利用状況を見てみますと、学校などもこれを非常に利用しておりまして、効果をあげておると私ども考えておるわけでございます。ただ私どもはもう少し、あの交通公園のような大規模なものでなくとも、学校の校庭などに簡単につくり得るような方向で将来は考えていきたい。現在学校では、それぞれくふういたしまして、校庭などに模擬の訓練の場所をつくりましてやっているわけでございますが、将来は私どもも何らかそういう方向に、校庭におきますこういったような施設について、積極的に進められるような方策を講じたいというように考えております。
  40. 森堯夫

    ○森説明員 交通公園の数について申し上げますと、現在までにつくられました交通公園は六つの都市、公園は九つでございます。四十二年度は、このほかに四都市の四つの公園ができると思います。  これの管理につきましては、地方公共団体の警察関係あるいは教育委員会というところが主体になってやっております。一例を申し上げますと、西武庫公園、兵庫県でございますが、西武庫の公園は、団体としての交通訓練は三百六団体、人数で申し上げますと、三万五千三百五十三人、そのほかの一般が四十七万三千人でございます。
  41. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大阪の交通公園をごらんになりましたか。
  42. 森堯夫

    ○森説明員 はい。
  43. 沖本泰幸

    ○沖本委員 どういうところにあるんですか。
  44. 森堯夫

    ○森説明員 大阪は、浜寺公園と南地区にございます。
  45. 沖本泰幸

    ○沖本委員 こういう問題は、もっと実現化をはかっていただきたいのです。そして大人も含めて、交通事情というものを自分から体験していくような形にしていただかなければ、進んでいくものではないわけです。ところが、こういうことばかりお伺いしていると時間を食いますので、取りまとめて申し上げますけれども、まず玉井さんの「示談」という本に書いてあるのですけれども、それをひとつ御披露いたしますから、そこから考えを起こしていただきたいのです。「歩行者事故の多い日本、惨めな歩行者事故、「アッ」と思った瞬間、あなたの身体は宙に浮き、路面にたたきつけられて横たわっている。目撃者から見れば、たったこれだけのことである。この場面を“スロー・ビデオ”でもう一度見てみよう。氷結したあなたの眼。急ブレーキを踏む運転者の狼狽ぶり。車はあなたに激突する。あなたの左大腿部はバンパーで強烈な第一撃をくらい、モモは複雑骨折でバラバラ、キズ口がパックリひらき、つぎの瞬間、あなたはボンネットの上にすくい上げられ頭と顔を強打、そのままフロントグラスまで滑走激突。異様な爆発音とともにガラスはこっぱみじんに四散し、あなたの顔はえぐられる。さらに、急停止時の反動であなたの身体は数メートル先までもはねとばされ、路上でしたたか頭を打つ。だが、あなたはまだ生きている。意識はすでに完全に失われてしまっている。これを書く時、わたしの心はしめつけられる。文中の「あなた」は実はわたしの母そのものであったのだ。病院で見たあの時の無残な姿をわたしは終生忘れない。」これは子供になるほどひどいのです。またむざんでもあるわけです。ここが根本ではないかと思うのです。いまこの法務委員会の内容というものは、事故が起きたあとの刑罰についてどうしようこうしようという点で論議されておるわけです。しかし、こういう問題は、刑罰の問題よりも、その先の予防措置というものが大切なんですけれども、簡単なお伺いで十分意を尽しておりませんけれども、ただいまのいろいろな御回答をお伺いしておると、何かこういう事態とそぐわないそらぞらしいものを感ずるわけです。それは大きな国というものを相手として予算面というものをいろいろ持っていかなければならないので、時間的な問題はたくさんあると思いますけれども、その中の内容に、真剣にこういうことであってはならない、こうしなければならないという問題がどっかに出てこなければならない。しかし、そういう問題は、にわかに手引きをつくって渡した——さらにお伺いすればわかることですけれども、学校の先生で交通違反をどれくらいやっていらっしゃるかという点も、いろいろ検討しなければならないのじゃないか。実は手引きをもって教えていらっしゃる先生が、無謀運転当事者であるというような場合もあるわけです。また子供に関しては、非常にお母さんのほうが無認識であるということも言えます。事故が起きて、お母さんがあわてておるというのが実態なんです。こういう点を考えてみますと、この子供に対する予防措置というもの、また刑罰を科せられる事故が起きたあとではなくて、その以前の問題が大事である。人間の命ほど大切なものはないわけですから、あえて私はいまのような、長いことを申し上げたわけです。  そこで、もう一度文部省にお伺いいたしますけれども、高校のある学校では、交通違反を犯した生徒に対して厳罰主義で臨んでおる。停学処分をするという学校も見受けられるわけですが、現在どこどこサーキットとか、こういった非常にむちゃな運転をやって遊んでおる年齢層の中には、高校生が非常に多いわけです。こういう問題に対して、いま申し上げた点が是であるか否であるか、また今後どういう考えで臨まれていくかどういう指導方針で臨まれるかについてお伺いしたいわけです。  それからまた、こういうことに関しまして、いわゆる免許証を下付するほうの側においても、こういう点が考えられるわけなんですが、その点について、どういうお考えでおるのか、両方お伺いしたいと思います。
  46. 田健一

    ○田説明員 高校生が、今度むしろ加害者の立場に立ちまして、交通ルール違反その他において事故を起こしておることは、まことに遺憾なことだと思います。それで、それぞれの学校の校長の判断によりまして、それに対する処分をきめておるわけでございます。それで私どもといたしましては、先ほど申しました小中学校におきまして、一応基本的なことは全部教えるという方針でおりますので、その基礎の上に立ちまして、知っておることを確実に実施をするということ、それからもう一つは、すでに高等学校の生徒は、ドライバー立場にもおるわけでございますので、歩行者保護という、この二点を高等学校の交通安全指導の最も重点としておるのでございます。それで今後これらはモラルの問題と非常に密接な関連をいたしますので、その他の教育活動を通じまして、こういう点を、この二点に重点を置きつつ徹底していきたいというふうに考えております。
  47. 片岡誠

    片岡説明員 警察の立場から、子供の交通安全について、あるいは学校教育について若干申し上げます。  私ども文部当局に対しまして、あるいは各府県で警察から教育委員会に対しまして御要望申し上げておる点は、子供を輪禍から守るということだけでなくて、その子供が将来、十数年たてば必ずハンドルを握るんだ、そういう将来のドライバーを学校教育の過程で組織的に養成していただきたい、こういう意見を常時申し上げておるわけでございます。現に、新制高校を卒業して就職する子供の場合には、学校を出て就職すれば、次の日からハンドルを握る機会が多いのが社会の実態だろうと思います。したがいまして、特に商業高校あるいは工業高校という、就職が予定されるような子供に対する高等学校教育においては、在学中にむしろ免許をとらすほうがいいのじゃないかということで、現にそういう角度で教育をし始めておられる高等学校が福岡あるいは静岡にございます。その結果見ておりますと、無免許もなくなる、それから自分もけがをしないし、人も傷つけないといういい方向に結果が出ているようでございますので、そういう方向で私ども、文部行政担当者に今後とも話し合いをいたしまして、持っていくべきではないかと考えております。現にアメリカでは、高校生に対してそういう自動車運転の教育を相当徹底いたしておるようであります。
  48. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは、今度は免許証に関してお伺いするわけですが、おとといですか、大竹先生から、運転免許に精神鑑定の診断書が要るという点について御質問があったのですが、この間の新聞で、神戸大学の医学部の精神科のほうは、この免許証の診断書に対しては抗議をする、通り一ぺんの診察では判断なんかできない、一人につき二カ月の通院と費用一万円が必要である、こういうふうにきめたというふうになっております。そのときの談話によりましても、顔色を見て判断せよと言われても、どんな名医でもわかりっこない、医者として診断拒否はできないが、いいかげんな証明書を書くことはそれこそ社会問題です。ところが兵庫県警の交通部長のお話では、医師としての責任感は非常にけっこうなことだが、法の趣旨は決して脳波テストなど完全なものを望んではいない、ただ診断書を添えることで運転者の自粛を促したというのが目的ではないだろうか、こういうふうになっておりますけれども、この点に関してお伺いいたします。
  49. 片岡誠

    片岡説明員 精神病者の問題でございますが、御承知のようにいろいろな法域で、精神病者を欠格条件にしておる法律が、私の記憶ではたしか十九ございます。医師法もその中に入っております。医師になるためには精神病者であるというのが欠格要件になっておりますし、それにつきまして、どの法域におきましても、医師の診断書をもって欠格条項を認定する資料といたしております。したがいまして、道交法による免許のみに限った問題ではないと私は思いますが、私どもなぜその制度をとりましたかと申しますと、従来は欠格条件にはなっておりましたが、だれが結局認定をしているかと申しますと、免許試験場の職員が、精神病者であるかどうかという判断をしているのが従来の現状であります。それよりは専門医でなくても、医師の診断をとるほうが若干でもベターではないかというのが私どもの基本的な考えでございます。したがいまして、そういう正確な診断というものは、お話がございましたように、専門医によって、長期間相当な機材を使って診断をしないとわからない場合もあろうかと私は思います。しかしながら、明白にわかる場合も、やはりそれなりの数があるのではなかろうか。その後、精神、脳神経の専門の医師会の方々とも連絡をよくとりまして、とりあえずいまの制度でやって、むしろ問題は、事故を繰り返して起こしたり、あるいは違反を繰り返して起こす運転者について、専門医によるさらに詳細な精密な診断を必要とするのではなかろうか、そういう点で前向きに今後検討していきたい。いわばちょうど結核の場合の集団検診と精密検診といったような形で、併用していくことがいいのではなかろうか、こういう方向で現在仕事を進めております。
  50. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ですが、現実には免許証を下付する近くで、医師の方が一枚五百円で診断書をどんどん発行しておる。これはもう代書屋が何かただ書類を書くような調子で、診断書がどんどん出されておるわけなのです。これが実態なのです。そうすると、こういうことは一つの形式にしかすぎない。何らかの形で観察しておって答えが出てくるというものであれば別ですけれども免許証を受けるために診断書を出すというのは、ただ出すにしかすぎないわけです。そうすれば全く形式的なことであって、添付書類にすぎないのであれば、こういうむだなことはしないほうがいいのじゃないか。あなたのおっしゃるとおりに、集団検診で何らかの答えが出るというものであるならばこれは別ですけれども、いまのような状態で行なわれておるということは、暗黙にお互いが認めておる、こういうような形になるわけですから、こういうものはむしろないほうがいいのじゃないか。はっきりわかって——今度事故が起きたらどうだということになってしまうわけですから、私はそう考えるわけなのですけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
  51. 片岡誠

    片岡説明員 私ども先ほど申しましたようにいわば集団検診の過程でどうにもおかしいという判断をされる医者があろうと私は思うのであります。皆無ではなくてあろうと思います。そうして自分ではわからないのは専門医のほうに回す、あるいは自分では精神病者でないとは断言できないという診断書もあってしかるべきではないだろうかというのが私ども考えでございます。しかし、御指摘のように、この制度自身完全無欠なものだとは私ども思っておりません。精神、脳神経医学界の先生方と、今後とも前向きで、さらによりいい方法がなかろうかということで、現在定期的に会合を持って詰めを始めておりますので、そういう方向でやっていきたい。
  52. 沖本泰幸

    ○沖本委員 別の面では、医師の診断書の発行という問題について、法律上いろいろな問題が起きてきて、ただ単に診断書を出したために犯罪者が逃亡したというような事件が起きて、医師の診断書というものは十分に取り締まられるという片一方のものがあるわけですけれども、片一方では、まあはっきり認めているわけではないでしょうけれども、こういうふうに免許証を受ける場合に、診断書を添付しなければならないというので、公然診断書が添付されて出てくる。ここに二つの食い違った問題が出てくるわけです。これはどう考えてもおかしいですね。お医者さんの頭もおかしいし、もうけ主義に徹しておるとしか言えないわけですけれども、この点についていかがですか。
  53. 片岡誠

    片岡説明員 このおかしさは私は十九の法域についてすべてにあるのじゃなかろうか。したがって、専門医の先生方もいろいろいま悩んでおられます。どういうふうにしていくべきだろうか、事故が起こったらそれから排除していっていいというものでも本質的にはないのではなかろうか。できるだけやはり未然にチェックできれば一番いい。しかし、それは多くの人間を扱う場合に、最も合理的なチェックの方法はどういうふうにしていったらいいだろうかということで、現在、先ほども繰り返して申しますが、専門医の先生方とよりよき方法を現在検討しておるというのが現状でございます。
  54. 沖本泰幸

    ○沖本委員 どうもふに落ちないのですけれどもね、両方の点を並べて考えると。片一方では違法性があって取り締まられて、医師の免許を取り上げられて、刑罰を科せられるわけです。片一方では公然として通過していくわけなのですね。そういう点、私はどうしても納得いかないわけです。これは水かけ論になっていきますから、どうしなさい、こう言ったって、ほかに救済方法を別に私がお示しなければ解決しないと思いますから、このことについてはさほど申し上げはしません。  そこで、今度は道交法の違反についてお伺いいたしますけれども、悪質犯については、実刑で、厳罰主義で臨んでいらっしゃるわけです。ところが、玉井さんのこれによって読んでみますと、引き逃げ、酔っぱらい、無免許一つでもからんでくると、死亡事故で一〇〇%、傷害でも九一%は実刑になる、横断歩道で人をはねたらまず実刑は免れられないだろう、居眠り運転でも単なる過失ではない、信号無視に対してもきびしい態度で臨んでおる、こういうことになるのですけれども、この点に関して、実際に自動車運転業務とする運転手、タクシーの運転手さんとか、トラックの運転手さん、あるいはその業務に携わる事業主、こういう方々は、こういう違反があると、まず罰金幾らである、これはどれくらいの体刑がくるであろう、行政処分はどうであろうか、こういうふうな計算をちゃんとしていらっしゃるわけです。そういうものに対して、ある程度の認識があるかないかという点で——良識という点では、これは全然別ですけれども……。ところが、今度違反に問われておるマイカー族であるとか、白ナンバーの車、こういう方々は、同じ種類の違反を犯しても、全然罪に対する認識——あなたはこういう刑罰を科せられますよということを言ってあげると、ぎょっとしているというようなことが多いわけなんですね。そうすると、免許証を携帯する人については、いわゆる交通法規は試験で出てきますけれども、こういう事故を起こしたときの罪に対する認識というものがゼロなんですけれども、こういう点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  55. 片岡誠

    片岡説明員 私はただいまの、よくわからないのですけれども、恐縮でございますが……。オーナーの人が……
  56. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう一度申し上げます。  私はもとは地方議会におったものですから、その点よくわかるのですけれども、違反を犯して相談にお越しになるわけです。そうすると、タクシーの運転手さんとか、トラックの運転手さんは、これでほぼ幾らくるだろうということを、会社でも言われているし、自分もちゃんと記憶して来ているわけですね。ですから、あなたそれはたいへんじゃないか、もう二度目、三度目だから体刑は免れないぞ、あるいは免許証の停止を食いますよ、こういうようなお話をしても、そうかもしれませんが、そこを何とか、というような話があるわけです。ところが今度は、自分だけで運転していらっしゃる方は、無免許運転、あるいは一番ひどい酔っぱらい運転、あるいは信号無視、こういうふうなことでお越しになっても、地方議員の顔があれば何とかなるのじゃないだろうか、こういうふうな軽い考え——これはとてもそんなものじゃありません、あなたはこの罪からのがれられませんよということを言うと、初めて驚いていらっしゃる。そういう点を考えてみますと、ハンドルを持つ人が、自分が犯した事故に対して全然罪の意識がない、事故を起こした場合、どういうことになるかということが全然ない、これはもう手落ちじゃないか、こう考えるわけなんです。ですから、私の考えでは、いわゆる免許証を交付するための試験をおやりになるときに、すでもこういう問題を試験の中に入れていただいて、ドライバー自体が、自分運転に関する道路交通法違反とか、あるいは人身事故を起こした場合にどういう罪に問われるかということを、試験の制度の中に入れてもはっきり認識させられるのではないか。こういう点が、実際に即して私自身が体験した内容なんですけれども、それについてどうお考えになるか。
  57. 片岡誠

    片岡説明員 現在指定教習所で教育しておる場合には、事故を起こせば単に刑事罰を受けるばかりではなくて、行政処分という問題もあるし、それから民事の損害賠償の問題もある、いわば結果的には三つの処分になるようなことがあるというようなことは私やっておると思いますが、試験問題には現在そういうものを出しておりません。私どものあるいは認識が甘かったかもしれませんので、今後そういうお説の方向で検討をいたしたいと思います。
  58. 沖本泰幸

    ○沖本委員 なぜ、こういうことを盛んに申し上げるかといいますと、大体交通麻痺という点については、日曜日なんかの点が全然除外されておるわけです。ところが日曜日には、営業ナンバーの車は減ってきますけれども、がぜん白ナンバーがふえるわけです。どなたもこなたも、家族を連れて郊外にドライブする。むしろ平日よりもかえって交通が錯綜していって、麻痺が多い。またそういうときに、いわゆる信号無視、あるいは右回り、左回り、こういうような点については全然交通法規は守られていない。こういう点が盛んに見受けられるわけです。そういうことでいま申し上げたわけです。  ではもう一つ、その点について今後どういうようになさいますか。
  59. 片岡誠

    片岡説明員 いままでは、主としてプロの運転者が問題だったと思います。神風タクシーといい、殺人ダンプといい、いわばプロの運転者であります。しかし、モータリゼーションが相当普及してまいりますので、今後、おそらくここ二、三年——現在そのきざしが見えておりますけれども、これからはオーナーと申しますか、ほんとうの自家用車の運転者が、交通政策上の大きな対象といいますか、重点になる時代に現に入りつつあるというのが私どもの認識でございます。したがいまして、自家用車に対する基本的な教育という問題について、今後そちらに焦点を合わせた対策をとっていくということに相なろうかと思います。
  60. 沖本泰幸

    ○沖本委員 質問が一方的に片寄っておるのですが、もう少し同じ問題について質問させていただきたいと思います。  今度はスポーツカーとか、オートバイとか、こういう点について公害の問題が起こるわけですけれども、ものすごい音のするマフラーをスポーツカーは二本つけたり、あるいはわざわざラッパのように口先を広げたオートバイが市中を横行するわけです。たとえば普通のスポーツカーにトラックが使う警笛をつけて、信号待ちをしておる人たちの横でブワッと鳴らして、飛び上がっておるのを見て喜んでおる。こういうのがだんだん盛んになってきておるのですが、こういう点はどうですか。
  61. 片岡誠

    片岡説明員 仰せのような例はございます。発見次第整備不良車両として取り締まりを現在やっております。
  62. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ついでにお伺いしておきます。  交通規制についてでありますが、これは私が見たのですが、名古屋ではテレビで一つの車の速度、進行、あるいはふくそうの状態を見て、交通信号の信号灯のところに何キロで走れという指示を与えて、それがいわゆる指示速度によって走っていくと、非常にスムーズに信号にかからずに車の停滞がない、こういうような方式を名古屋では一部分とっておりますけれども、非常にいい方式ではないかと思うのです。こういう点について御存じだと思うのですが、どういう対策を持っていらっしゃいますか、お伺いいたしたいと思います。
  63. 片岡誠

    片岡説明員 大都市におきます交通の混雑を緩和する、特に交差点がボトルネックになっておるというために交通渋滞が起こっておるということに対する対策として、いま御指摘がございましたようなシステム、つまり自動感応系統式と申しておりますが、交通量従って主要幹線の道路の流れをよくするために、小さな電子計算機を使って信号処理をするというシステムを、三年ぐらい前から始めております。これは東京にもございますし、大阪にもございます。名古屋にもございます。この方式を、さらに私ども、大都市中心に徹底をしていきたい。さらに線のみならず、現在銀座地区で試験実施をいたしておりますが、面として地域全体をとらえて、信号機の処理をしていくという方式を進めてまいりたい、そのように考えております。
  64. 沖本泰幸

    ○沖本委員 今度は違反関係になりますけれども道交法の違反では、一応スピード違反とか信号無視とかいうようなことに関しては、交通切符を発行いたします。そこで軽い違反であって、初めてのような場合には、訓戒処分にするとかいうことで、署長に権限がゆだねられているという一つの面がありますけれども、同じことで今度は交通事故になって、接触事故のようなほんの軽い事故であっても、届け出があった場合には、警察のほうが行って現場検証をやって、それを調書にして、あらためて検察庁のほうに送っておる、こういう方式をとられておるわけなんですが、片方では署長の権限でそのまま済んでいく、あるいは行政処分のつく者が罰金で済まされている。こういう言い方をすると行政処分と罰金とどっちが重たいのかということになるわけなんですけれども、一般の運転者は、行政処分より罰金のほうがありがたいわけです。ですから、何とか行政処分をはずして、罰金にしていただきたい、罰金なら幾らでもいいというのが現在の違反者の心理なんですが、それもある程度のことが署長さんにゆだねられたりしておって済んでいくわけです。しかし今度は、人身事故なんかは全然なくて、単なる小さい事故であっても、全部調書になって、それが検察庁へ行って、検事さんから呼び出されて、一応事情を聞かれて、今度は罰金と行政処分とついてくるわけです。ここに私は刑の重たい軽いという点について、どうしても不合理を感じるわけなんです。罰金というのは刑罰であり、運転免許の停止、運転停止という処分は行政処分なんですけれども、一般の人たちが考えているのは、行政処分のほうが重く感じているわけです。こういう点について、それぞれのところからお答えをいただきたいと思います。
  65. 片岡誠

    片岡説明員 まず初めに、行政処分は御承知のように刑罰じゃございませんし、将来の危険性に着目して、取り消しあるいは停止をいたしている制度でございます。それから人身事故を伴わないいわゆる物損事故と申しますか、物の損壊のみの場合には、それ自体は犯罪じゃございません。御承知のように、過失器物損壊罪というのはございませんから、物損事故そのものは犯罪じゃない。それじゃ何かと申しますと、物損事故を起こす過程において道路交通法違反があった場合、たとえば無免許であったとか、酒酔いであったという場合には、おのおの無免許運転、あるいは酒酔い運転として送致しているわけでございます。したがいまして、物損事故の場合には道交法違反として必ずしもすべてを送致はいたしておりません。これは御承知のとおりだと思います。  それからどちらが重いかという問題でございますけれども、私ども一般に聞いておりますのは、オーナーの場合には罰金が重く感じている方も相当あろうと思います。しかし、プロの運転手さんの場合には、罰金は払ったらいいのだ、行政処分がこわいというのが通常の感覚じゃないかと思います。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 刑事局長さんの御意見はいかがですか。
  67. 川井英良

    川井政府委員 刑罰としての罰金と、行政処分としての免許の取り消しないしは停止ということの問題で、どちらが重いかということになりますと、これはそれぞれの処分の目的が異っておりますので、処分をする側から、どちらが重いとか軽いとかいうことは簡単には言えないのじゃないかと思います。ただ、受けるほうの側からの感じとして、どちらが重く感ずるかということは、いま片岡課長が説明されたような、これもまた人によって受ける感じが違ってくるのじゃなかろうかというようなところがあります。
  68. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いわゆる刑罰の問題がこれからきびしく論じられていくことになるわけですけれども、その前の段階としまして、聞くところによりますと、違反した場合に、行政処分のほうを忌みきらって、いわゆる刑罰のほうは好んで受けていこうとする風潮がびまんしているわけです。ですから、そうであればむしろこういう制度のほうを強くすればいい。そうすれば、実態に即しておるということになるわけですが、行政処分が一番痛手だというのですから、行政処分のほうをどんどんしていけば、罰金より本人たちは痛いから改まっていくということになるのじゃないかと思うのです。罰というものは、改めさせるための罰ではないか、こう考えるわけですし、処分というものは、おのずから文字が示すごとく処分であるということになっていくと思うのですが、その関係についてどうお考えですか。
  69. 川井英良

    川井政府委員 刑罰にもいろいろございますので、その刑罰のおそらく感銘力ということを考える必要があろうかと思います。そこで刑罰は、まず過去の事実に対する法律的な、あるいは社会的な評価として加えられるものでありまして、非常に重い刑罰もありますが、また罪種によりましては、罰金とか拘留とかいうような非常に軽い刑罰もございますので、刑種によりまして感銘力もおのずから段階があるような気がいたすわけであります。そこで、私ども刑罰法令を運用する者といたしましては、刑罰の感銘力を推持していく、そうすることが法の秩序を維持する一番基本だと思いますので、何といたしましてもいま御指摘のような罰金なら幾らでも納める、運転免許証を取り上げられるのはこわいんだというふうな風潮にならないように、あくまで罰金刑罰でありますので、刑罰としての罰金の感銘力を維持し、高めていくということに万全の配慮を配ってまいりたい、かように考えております。
  70. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それではもう一点承って、あとは次の委員会でお伺いすることにして保留させていただきたいのですが、自動車運転により、重大な人身事故が起きていることが大きな問題なんですけれども、それの具体的な事例についてお示しいただきたいと思うのです。——それじゃこれも次に聞きます。  いまの質問に関しまして、結論的なことじゃないのですが、せっかくお見えいただいたので希望なり何なりを申し上げておきたいのです。それともう一点ありますけれども、いろいろと先ほど申し上げましたとおりに、何といいましても人の命ほど大切なものはないわけです。ですから命を守ることのほうが刑罰をかけるという問題よりも重大である、こういうことになるわけなんですけれども、どうも総理府の交通安全対策も、非常にりっぱな対策を順々と打ち出されておるわけですけれども、それに関しまして、いわゆる交通安全施設等の整備、これももちろん大切です。安全運転の確保、これも大切です。しかし、何といいましても被害者の救済対策の強化というものが何よりも先行しなければならない、こういうふうになってまいります。ですから、まだ関係の方も来ていただいておりませんので、一方的にお願いすることになるわけですけれども、いわゆる脳神経外科の救急病院を急増していく、あるいは学校のほうではもっと真剣な対策をもって子供を守っていく。ただ集団登下校だけではなくて、先生もあわせ、PTAの方々もあわせて交通道徳についての考えを高めさせていくことによって、子供のほうからおとなのほうに、いろいろな注意を喚起していく問題が起きてくると思います。真剣にやっているところでは、おじさん、おばさんに注意があるわけです。そこを通ったらあぶないぞとか、そこは車が通るところだとか、子供がやかましく言うわけなのです。その運動が起きてくるまでやらないと、ほんとうの完全な交通道徳というものは起きてこないということになります。そういう点から考えてみますと、文部省のほうも何かと対策の項目だけを設けているのじゃないか。現在の大きな問題点、反則金制度であるとか、あるいはここで刑法の一部を改正して、禁錮刑懲役刑に、あるいは罰金を上げなければ交通法を守ってもらえないというような事情にあるわけです。で、いま日本の国で一番問題になっているのは、道路というものは人の道路なのであろうか車の道路なのであろうかというのが、日本の大きな問題でございます。こういう点は、歩道橋もつくったという点もあって、早急な対策を講じておるとはおっしゃっておりますけれども、先ほど申し上げたとおり、生命ほど大切なものはないわけですから、そういう点はこの法務委員会でやかましく罪を問うていくという問題を論じており、また反則金の問題も、話題になっていっておるわけですから、それに合わせたような対策というもの、また、その対策をお立てになっても、それに従った効果をきっちりキャッチされて、どんどん進められていくというふうな、お互いに連携をとったような対策を講じていただきたいと思います。  では、あとは次の質問に譲らせていただきます。
  71. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事は、この程度にとどめます。  次会は、明二十三日午後一時より理事会、理事会散会後に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十四分散会