○細江
最高裁判所長官代理者 ただいま
大竹委員から、少年に対する家庭
裁判所の道路交通法
違反事件における処分がどうも甘いんじゃないかという
質問でございましたが、私ども決してそうは
考えておらないのでございます。
処分の
実態を申し上げますと、たとえば昭和四十年度におきましては、少年の既済
事件は道路交通
事件が八十一万六千件ございます。そのうち四十七万件が不
開始、いわゆる五七%が不
開始、それから不処分が十五万七千件、パーセントにいたしますと一九%余りでございます。それから
保護処分が六千四百件、〇・八%、検察官送致が十二万四千件、一五・二%。そういたしますと、合計いたしますと、
保護処分、検察官送致を除きますと、大体七〇%から八〇%近い不
開始処分になっているんじゃないか。正確に申しますと七七%でございますが、これが不
開始あるいは不処分になっておって、野放しになっているというふうな印象を世間で受けておられるようでございます。そういう結果、どうも家庭
裁判所の処分は甘いんじゃないかというふうな御批判を受けておるわけでございます。
ところが、少年の道路交通法
違反の
実態をよくごらんいただきますと、たとえば少年法ができました当初は、交通
事件が今日のような様相を呈するということは予想しておらなかったわけでございます。したがって、少年の道路交通に対する
保護処分の種類というものがほとんどない。むしろ、現在われわれが利用できますものは、
保護観察だけであったといっても過言でないわけでございます。ところが、
保護観察にいたしましても、いわゆる
保護観察所のほうの受け入れ態勢というものが未整備であり、また交通
違反少年は
保護観察に適しないんだというふうな
考え方が初期にあったわけでございます。ところが、昭和四十年の四月十五日に法務省の
保護局長の通達が出されまして、それによりますと、道交法
違反少年に対して
保護観察を効率的に運用せよ、こういうふうな通達が出まして、各
保護観察所におかれましても、道路交通
違反少年に対する
保護観察ということの重要性を御認識いただきまして、
保護司として、
運転免許を持った方あるいは自動車の構造その他について知識、経験を有される方を
保護司に選ばれるということになって、昭和三十六年度が、大体年間二千四百八十三人の
保護観察であったものが、四十年はそれが六千三百というふうにふえ、四十一年は七千四百というふうにだんだんふえてまいりました。しかし、
保護観察というのはその整備がまだできておらないというところから、それほどたくさん利用されておらないというのが現状でございます。
もう
一つ、不
開始処分が多いという
理由の
一つといたしまして、御
承知のとおり少年に対しては罰金以下の刑に当たる
事件については検察官送致ができない、いわゆる罰金を取れない
事件でございます。そういう
事件は
警察から直接
裁判所に送致してまいるわけでございます。これが
法律上いわゆる検察官送致ができない
事件、これが四十年度におきましては大体三六・二%あるわけであります。それからまた十六歳未満の子供が犯したところの交通
違反事件については、これまた検察官送致ができないというわけでございます。これは検察官から送られてくる
事件のうち一〇%余りあるわけでございます。さらに検察官自身が刑事処分が相当でないという
意見を付して
裁判所に送られる
事件が、全検察官送致
事件の五二%になっておるということでございます。そういたしますと、実際
法律上も、また検察官自身も刑事処分相当でないという
事件、それらを合わせますと合計六五・七%という数字になっております。そうしますと、先ほど申しました家庭
裁判所がやっております。七%は、それほど多いものじゃないということが御理解いただけるのじゃないかと思います。さらに家庭
裁判所が不
開始処分をやっておりますけれども、では不
開始処分でそのまま野放しにしておるかと申しますと、そうではなくて、やはり家庭
裁判所は少年の再犯を防止するということと、道路交通の安全を確保するというたてまえから、不
開始処分にする少年に対していわゆる講習をしたり、あるいは学校との連絡を密にして少年を指導する、あるいは
保護者、雇い主に指示、警告を与えるとか、あるいは少年に対して厳重な戒告を加える、あるいは誓約書を徴収するという
方法をとって、少年の再犯防止と、それから道路交通の安全の確保ということについて意を注いでおるわけでございます。