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1967-06-20 第55回国会 衆議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十日(火曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 濱野 清吾君    理事 松前 重義君 理事 横山 利秋君    理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    中村 梅吉君       馬場 元治君    加藤 勘十君       中谷 鉄也君    西宮  弘君       沖本 泰幸君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君         法務省民事局長 新谷 正夫君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省矯正局長 勝尾 鐐三君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         警察庁交通局交         通指導課長   綾田 文義君         警察庁交通局運         転免許課長   阪田 正仁君         最高裁判所事務         総局家庭局長  細江 秀雄君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月二十日  委員下平正一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  会社更生法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四三号)  会社更生法の一部を改正する法律案田中武夫  君外十二名提出衆法第七号)  刑法の一部を改正する法律案内閣提出第九四  号)      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  内閣提出会社更生法等の一部を改正する法律案、及び田中武夫君外十二名提出にかかる会社更生法の一部を改正する法律案の両案を一括議題といたします。
  3. 大坪保雄

    大坪委員長 まず、政府及び提出者より、順次提案理由説明を求めます。田中法務大臣
  4. 田中伊三次

    田中国務大臣 会社更生法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、会社更生法の運用の実績にかんがみ、中小企業者債権の優遇その他各種の権利者利害の調整を行ない、保全処分制度の改善その他の方法方法による更生手続乱用防止対策を講じ、調査委員制度を拡充する等、更生手続円滑化及び合理化をはかるため早急に改正を必要とする事項について、会社更生法等の一部を改正しようとするものであります。  次に、この法律案要点を申し上げます。  第一に、中小企業者債権弁済許可制度を創設いたしました。すなわち、中小企業者更生会社に対する債権については、管財人申し出に基づく裁判所許可により、更生手続中随時に弁済することができるようにして、更生手続開始に伴う関連中小企業者連鎖倒産を防止し得るようにいたしました。  第二に、更生計画認可前に退職する使用人退職手当請求権については、現行法上は共益債権とならないものをも含めて、退職前六カ月間の給料相当額またはその退職手当の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として、共益債権とすることといたしました。  第三に、使用人社内預金については、更生手続開始前六カ月間の給料相当額または社内預金の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として共益債権とし、その他の部分優先的更生債権として、会社更生法上の社内預金の地位を明確にするとともに、破産法においては、右の共益債権と同じ範囲のものを優先的破産債権に格上げして、これを現行法におけるよりも保護することといたしました。  第四に、更生会社を破綻に導いた不適任の役員が、更生手続開始申し立て後も、そのまま会社事業経営に当たる弊害を防止するため、保全処分により、保全管理人による会社事業経営または監督員による取締役の行為の監督を命じ得ることに改めて、更生手続乱用防止対策を講ずることといたしました。なお、保全処分発令後は、更生手続開始申し立ての取り下げを制限することとして、その対策の一助としております。  第五に、利用範囲の狭い現行法調査委員制度を拡充しまして、更生手続開始の前後を問わず、いつでも調査委員を選任することができ、かつ、裁判所の必要と認める一切の事項につき調査を求め得るものとし、これによって、裁判所補助機関を強化することといたしました。  第六に、関係人集会において更生担保権減免等の定めをする更生計画案を可決する際の可決の要件については、更生担保権者全員の同意が必要であるとされている現行規定を改めまして、これを五分の四の多数決によるものとして、更生手続の円滑かつ適正な進行をはかることができるようにいたしました。  以上のほか、電気、ガス等継続的供給契約に関して生ずる債権関係明確化更生手続開始前の事業経営に不可欠な借り入れ金返還請求権等共益債権化租税等請求権取り扱いの緩和、財産評価の基準の確立、更生計画認可後における管財人と新取締役との権限の明確化更生手続の廃止の容易化等をはかることといたしました。  以上がこの法律案要点であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださらんことをお願いいたします。
  5. 大坪保雄

    大坪委員長 次に、田中武夫君。
  6. 田中武夫

    田中(武)議員 社会党提出会社更生法の一部を改正する法律案について、提案者を代表して、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  御承知のように、会社更生法は、株式会社の持つ社会的、経済的価値にかんがみ、会社事業維持更生をはかるため、株主、債権者等利害関係人利害を公平かつ迅速に調整するものであります。ところが同じ株式会社であっても、中小企業下請企業は、管財人の選任、更生計画樹立困難性等理由から、会社更生法適用を受けることが困難であり、会社更生法によって保護されるのは、ある程度以上の企業に、限定されているのが実情であります。この結果、これらの企業は、会社更生法によって再建の方途が講じられ、ときには会社更生法を悪用し、計画倒産をすることも不可能ではありません。現にそういう事例も多いのであります。このような場合、大口債権者である銀行、系列親企業等は、事前に相談を受け、被害を最少限度に食いとめるため、いろいろな手段を講じるのが普通であります。ところが、無担保債権者である中小企業、特に下請企業は、その従属的関係から平素不利益をしいられている上、全く知らないうちに更生手続開始申し立てが行なわれ、はなはだしい場合には、申し立ての日まで納品を余儀なくされ、しかも下請代金は、更生債権として凍結されてしまうのであります。もとより下請企業には、更生手続の終結まで下請代金の回収を待つ余裕があるはずはありません。また金融機関からの約手買い戻し請求に応ずる力もないのであります。結局、関連倒産として自滅するほかはないのであります。  しかるに現行会社更生法は、こうした点について、単に形式的公平を考えるにとどまり、経済実態に即応した実質的公平については、何らの配慮もしていないのであります。つまり、会社更生法は、下請企業犠牲において親企業更生せしめる機能を果たしており、子の犠牲によって親を助ける法律となっているのであります。  このような会社更生法は、経済不況期に最も多く利用される関係上、下請事業者の受ける犠牲はきわめて深刻なものであります。加うるに、最近においては、景気回復が著しいといわれた昨年でも、企業倒産は、六千百八十七件と戦後最高を記録し、更生手続申し立て件数開始決定件数とも相当数にのぼっているのでありまして、いまや会社更生法は、好況期における企業倒産の増大という日本経済の新たな局面を迎え、恒常的にその弊害を露呈しているのであります。  すでにわが党は、山陽特殊製鋼をはじめ相次ぐ倒産事件において、このような会社更生法欠陥が露呈され、大きな社会問題となった当時、直ちに下請事業者保護中心とする改正案国会提出したのであります。  これに対し政府は、四十年末における法制審議会会社更生部会の設置まで、会社更生法適用による弊害をいたずらに放置し、今日ようやく改正案提出したのであります。まことに怠慢というべきであります。しかも、その内容たるや、かなり広範にわたっているとはいうものの、法改正の最も重要な課題である下請事業者保護については、はなはだ形式的な規定になっているのであります。すなわち、第一に、更生債権弁済許可は、「更生会社を主要な取引先とする」場合に限られるため、更生会社に対する依存度の低い中小企業者対象になり得ないことであります。第二は、「事業継続に著しい支障をきたす虞れがあるとき」に限られるため、その判定が困難であり、かつ管財人申し立て要件になっていることであります。第三は、弁済許可については、裁判所が一切の事業を考慮するため、更生支障を来たす場合は弁済が拒否されるおそれがあることであります。これでは、下請事業者利益保護は単なる空文に帰すると言っても過言ではないと思うのであります。  したがって、われわれは、わが党案のように、下請事業者関連倒産を防止し、その利益保護をはかるため、一定範囲下請代金債権は、当然自動的、確定的に共益債権としなければならないと思うのであります。もとより、われわれは、会社更生法経済実態に立脚した合理的な姿で機能せしめるためには、会社更生法あり方全般について、今回の政府案のような中途はんぱな形でなく、より根本的な検討が必要であると考えます。しかし、当面下請企業者について明確な保護措置を講じ、あわせて労働者利益保護等をはかることがまずもって必要であると考え、ここに本改正案提出した次第であります。  次に、改正案内容を御説明申し上げます。  その第一点は、更生手続開始申立書下請事業者意見を添付させるとともに、裁判所に対し、下請事業者意見の陳述を求めることを義務づけることであります。すなわち、会社更生法適用は、下請事業者の存立にかかわる重大な問題でありますので、親企業の一存で決定させることなく、下請事業者意見を十分反映させようとするものであります。  第二点は、裁判所は、更生手続開始申し立てが、会社使用人の不当な人員整理を目的とするものであるときは、これを棄却しなければならないことであります。会社更生法適用は、ともすれば従業員人員整理のための一方法として利用される危険があるので、現行法をさらに明確にし、これを防止しようとするものであります。  第三点は、裁判所保全処分にあたり、会社使用人給料、その預金及び下請事業者に対する下請代金の支払いを禁止してはならないことであり、第四点は、更生手続開始申し立ての日前六カ月間及び当該申し立ての日から更生手続開始までの間に、会社下請事業者から受領した給付にかかる下請代金及び会社使用人給料は、いずれも共益債権とするとともに、会社使用人退職金は、更生手続開始前に退職したときは退職当時の給料の六倍に相当する額まで、また更生手続開始後に退職したときも、共益債権となる退職手当の額が退職当時の給料の六倍に満たない場合は、更生手続開始前の在職期間にかかる退職手当の額をそれぞれ共益債権とすることであります。これらの点は、本改正案中心をなすものであり、保全処分に制約を課することによって、下請事業者連鎖倒産を防止するとともに、下請代金労働者の賃金、退職金について、共益債権とされる範囲現行法により一段と拡大し、下請事業者労働者利益保護しようとするものであります。  第五点は、過怠更生罪の新設であります。御承知のとおり、破産法には過怠破産罪規定がありますが、会社更生法にはこのような規定は設けられておりません。しかし、明らかに経営者過怠により企業を危機におとしいれ、関連下請事業者労働者に多大の犠牲と損失を与えた場合、これを放任することは社会正義に反すると思うのであります。かような見地から当該経営者社会的責任を追及するとともに、会社更生法悪用による経営責任の回避を防止し、あわせて一般経営者倫理感責任感を自覚せしめる意味において、過怠更生罪を設けたのであります。  以上、簡単に提案理由及び改正要旨を御説明申し上げましたが、親会社会社更生法適用の陰に泣く多くの中小下請事業者を救うために、何とぞ十分御審議の上すみやかに政府案にかわる社会党案に御賛同くださるようお願い申し上げ、提案説明を終わります。
  7. 大坪保雄

    大坪委員長 以上をもちまして、両案に対する提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は、後日に譲ります。      ————◇—————
  8. 大坪保雄

    大坪委員長 次に、刑法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 御承知のように、刑法改正は過去二回の国会におきまして、本委員会におきましてもあらゆる角度からすでに質疑は行なわれたと思うのでありまして、私も委員といたしまして、私なりに、あらゆる角度から質問を過去二回やったつもりでありますので、あまり重複することは避けまして、その後いろいろ新しい事態も出てきておりますので、それらについて若干質問をいたしたいと思うわけであります。  第一番目には、幸い大臣おいででございますので、大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、申し上げるまでもなく、この改正はいわゆる社会的に非常に重大な責任ある事故について、いままで以上に重く処罰をしようというのがこの趣旨だと思うのであります。ところで、交通事故に対しまして行政罰的に、たとえば駐車違反でありますとか、信号を見そこなった違反でありますとか、刑事罰としては相当酷に失する、いわゆる前科者にするには酷に失するというものも私はないとは言えないと思うのであります。そういうような面からいたしまして、これは当委員会の管轄ではございませんが、反則金通告制度も今国会提出されておるようであります。詳細な研究はしておりませんけれども、あの制度はいわゆる取り扱いを簡易にするということが主でございまして、先ほど申し上げましたように、処罰と申しますか、これを本質的に変えるものではないようであります。しかし、法律的なものの考え方からいたしますと、同じ一つ対象のものを、いわゆる反則金を納めた者は簡易な取り扱いにして前科者でなくし、またこれに不服な者はいままでどおりの取り扱いによって、犯罪としてこれを処罰しよう、同じ事実を当人のものの考え方いかんによって、一方に金を納めれば処罰をされない、それに文句を言った者をいわゆる正式な手続によって処罰をするということは、法律的なものの考え方からはたしていかがなものか、これはもちろん現在のように非常に数が多いから、これを何とか簡便に取り扱おうというものの考え方の処理としてはわからぬわけではありませんけれども、やはりすっきりしないものがあるのじゃないか、やはり私といたしましては、これはいままでの犯罪の範疇からはずすことこそすっきりした取り扱いになるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、大臣としてはいかがお考えでありましょうか、この際お伺いいたしたいと思います。
  10. 田中伊三次

    田中国務大臣 最近激増してまいります道交法犯反則金制度の問題は、大竹先生御説のとおり、その点が一つ問題点であろうかと思います。しかしながら、今度のこの反則金適用いたします範囲が、いまおことばの中にもありましたように、きわめて軽いものについて、しかし数は非常に多いのでございますが、数は多いが、犯罪そのものといたしましては非常に軽いものについてのみ局限をいたしまして、この制度をひとつやってみようという政府の方針になったわけでございます。そういうことでございますし、本来と申しますと、本人がいやだと言った場合、本人の意に沿わない場合は、軽い場合といえども刑事訴訟手続によって、略式から、あるいは公判請求から出発をいたしますという筋になるわけでございます。そういう制度は今後も続いてあるわけでございます。過去においては、そういう軽い犯罪は、刑罰として課せられた、この制度ができると、この制度以降においては、本人意思いかんによっては反則金で済むという不合理が実はあるわけであります。この制度を立てます上から、何かこの不合理を除く道はなかろうかと考えるのでございますけれども、過去における軽い部分についてこの犯罪を消すというような方法をかりに考えるといたしますと、一応理屈が合うように見えるのでありますが、本人の意に反する場合は、やはり、これは略式もしくは公判請求措置として事件が従来の手続にのっていくということはあとに残るわけで、どうも過去を消すというだけではその点が公平にはいかない、こういうふうに考えてみますと、幾らか道理に合わぬところはあるわけでございますが、過去はひとつこのままにおきまして、将来の問題として、意に反せざる限り、本人が承諾する限り、この反則金制度というものをとっていって、犯罪をめぐる手続その他の混乱をひとつ救っていきたい、こういう考えから提案をいたした次第でございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 いろいろ反則金の問題については議論があると思いますが、これはやはり警察のほうの関係もございますし、いずれ自治大臣にもお伺いをいたしたいと思いますので、きょうはこの程度にしておきたいと思います。  次に、最近非常に問題になっておりますことで、運転免許申請の際の精神病その他中毒患者でありますか、そういう者でないという診断書をつけなければいけない。もちろん、運転免許申請の際ばかりじゃございません、今度は免許証を、何年に一度ですか、切りかえるときに、精神病でないという診断書をつけなければならないという、道交法施行規則ですかの改正によりまして、本年四月からこうなったというのであります。  それで思い出すのでありますが、たしか四十八国会で私はこの問題について質問をいたしました。それはどういうことかと申しますと、非常に大きな事故を起こす、あとでいろいろ運転者を調べてみたら、精神的な非常な欠陥があるのじゃないかということがわかった。また、たしかあのときに、当時警察からお出しくださった資料を拝見しますと、精神病その他の病院へ入っている人間を調べてみたら、免許証を持っている人間がたくさんいたというような資料も出ております。そういうようなことで、もちろん事故が起きてしまってからでも、二度と事故を起こさぬために精神鑑定することも非常に大事なことでありますが、もう一歩進めて、免許証を取るときに、何とか精神面鑑定と申しますか、診断と申しますか、そういうものをやることを心がける必要があるんじゃないかということを質問いたしました。  それでそのときの政府委員お答えは、運転免許試験の際の受験者に対する精神鑑定については、目下簡単ではあるが、確実な方法を鋭意研究中だというお答えがあったのであります。  その後いろいろないきさつがあったと思いますが、そういうようなことで、この診断書提出するようにという制度をおとりになったのだと思いますけれども、その後わずかしかたっておりませんからあれでありますけれども、新聞その他テレビ等でもこれは非常に大きく取り上げられて、いろいろな問題を提供しておるようでありますし、またこのほうの関係学会であります日本精神神経学会でありますか、これらにおきましても、新聞等において相当批判をしておられる面もあります。もちろん、私はこのほうの専門家でございませんからわかりませんけれども、資料等によりますと、精神病のお医者さまは日本じゅうで三千人しかいらっしゃらぬ。そうして、もちろんこの診察精神病のお医者さまでなくて、医者はだれでもいいらしいのでありますが、免許を新たに取る人、または免許の切りかえをする人、合わせると何か四、五百万人もいる。とてもこれは丁寧な診察とか鑑定なんてできるわけではないのでございまして、実際に行った人の話を聞いても、ただ住所と年齢を聞くだけで、あとは書いてもらうのだというような話を聞いておるわけであります。そういうようなことで、いろいろ新聞その他から見ましても、どうも無責任な——そんなことを言ってはおしかりを受けるかもしれませんけれども、無責任なお医者さまは簡単に書くけれども、責任のあるお医者さまはどうも手が鈍るというようなことも言われておるわけであります。そういうようなことからいたしまして、もちろんこういう制度はないよりはあったほうがいいかとも思うわけでありますが、あまり実効はないのじゃないかということも考えられるわけでありますので、始まってまだ二カ月かそこらしかたっておらぬわけですけれども、これを採用されるに至ったいきさつとでも申しますか、それから実施をした後の実情とでも申しますか、それらをあわせてひとつお答えをいただきたいと思います。
  12. 阪田正仁

    阪田説明員 診断書採用制度でありますが、先生がおっしゃいましたように、四十八国会においても先生の御質問がございましたように、その点についていろいろと検討いたしました。その問題は、いわゆる生活テストを実施して、そしてなるべく排除したいというような問題であるとか、あるいは集団脳波検診というようなことが含まれておったわけであります。実はすでに御承知のように、精神病者等には運転免許を与えない、こう規定されておりながら、その方法がなかったわけでございまして、現在は警察官自身によって、あるいは事故が発生した場合、あるいは違反の場合、その他の場合を含めまして疑わしいという者を発見して、それを専門鑑定医等に見ていただいて発見したものが、昨年一年間で三百三十四名ございます。しかし、それだけでは法の精神にも沿いませんので、何らかの具体的な方策をもって精神病者に与えないということの実効をあらしめたい、このようにして方策考えたわけでございますが、あらゆる方法考えましてもなかなかいい方法が思いつかなかったのでございます。それでただいまの診断書添付制度というものを実際にお願いして、総理府令でつくったわけでございます。しかしながら、これにつきましては、私たちは決して完全なものであるとは考えておりません。千段の階段のうちの一段だけをのぼった、このような考え方を持っております。そして精神病者等の起こす事故と申しますものは、数は少のうございますが、一たび起こりますと相当大きな事故が起こっておるというのが実態でございますので、さらにその一歩前進したものを二歩、三歩前進させたいということで、将来精神衛生学会等とも話し合いをいたしまして、具体的な方法階段をさらにのぼるために考えていきたい、このように考えている次第でございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 いまもお話がございましたように、事故が起きてから、起こした人間について各都道府県においては臨時適性検査場ですか、こういうものを設けておやりになるということは、この前の国会においても御答弁がございましたし、いまもそういうお話があったのでありますが、最近の新聞その他でもいろいろ書いてございますけれども、これは本人申し出た場合にやるのであって、強制的に検査とでも申しますか、鑑定とでも申しますか、そういうようなことをする制度にはなっていないというふうに聞いているのでありますが、その点はいかがなものでありますか。
  14. 阪田正仁

    阪田説明員 おっしゃるとおりでございまして、たとえば重大な事故が起こりまして、そこに立ち会った警察官が、これは精神病者らしいというように判断いたしましても、強制的に診断を受けろと言うわけにはまいりません。もちろん、これがあるいは裁判となり、鑑定という問題になれば別でございますが、普通、そうでない場合におきましては、強制ということはできないので、任意にその人に専門医にかかってもらう、こういうような制度でやっておるわけでございます。
  15. 大竹太郎

    大竹委員 これはだけれども、私、法律のたてまえとして、強制的に精神鑑定というものはできないようになっているのかどうかわかりませんが、いずれにいたしましても、公安委員会が行政上の処分としては、場合によっては免許の取り消しをすることができるわけでありますから、そういうような資料としても、その人間精神的な鑑定というものが、その前提条件として、本人が承諾しない以上は絶対にできないという制度そのものが私はおかしいと思うのですが、それはどうなんですか。
  16. 阪田正仁

    阪田説明員 なかなかむずかしいことでございまして、道交法では一応義務づけられておりますが、これを強制すべき罰則というものが現在ございませんので、強制を事実上できない、こういうことでございます。
  17. 大竹太郎

    大竹委員 それで、たとえば公安委員会免許証を取り消す場合にも、いわゆる精神状態の不適格だということを条件としての取り消しは、もちろん本人が任意に申し出検査をして、その上で、これは精神欠陥があるということで免許証を取り消す場合は別でありますが、そうでない場合には、本人が承諾をしない場合には、精神欠陥を条件として取り消しはできないということになるのですか。
  18. 阪田正仁

    阪田説明員 事故が起こりました場合において、たとえばてんかんであるとか、精神上の欠陥において、あるいは人を殺し、あるいは人を傷つけたという結果が出てくるわけでございますが、その原因というのが、確かに精神病的なものでありましても、その事故で人を殺したとか、あるいは傷つけたということに関しまして、それはあるいはその結果が居眠り運転であるとか、その中間にいろいろ原因がございますので、その原因と、そしてその事故を起こした結果と合わせまして、あるいは取り消し、あるいは停止というような行政処分を、公安委員会が行なっているというわけでございます。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 次に、別なことをお伺いしたいのですが、現在の免許許可制度のあり方について、この前にも疑問を持って質問したのですが、つい最近、御承知のように千葉県で免許を持たない警察官が、警察の人員輸送の大型車を練習しておった。隣りの助手台には、免許証を持った警察官が乗って、構内で練習をしておったうちに、急に、免許証を持たないですから運転を誤ったのでしょうか、構内から外へ飛び出して、幼稚園に通う園児を傷害したという事実が大きく取り上げられたわけであります。もちろん、いまどきの若い警察官で、運転できないような警察官というものはあってはならないと思いますので、もう警察官になった人は、ほとんど全部の人が運転を習得すべきだと思うのですが、それならば警察官免許をとるためには、一体どういうふうなやり方をして免許をとらしていらっしゃるのか。これはもちろん各県によって違うと思うのでありますが、何か中央のほうで統一的に指導しておられれば、それをお聞かせいただきたいし、また各県によってそれぞれやり方が違っておれば、お聞かせいただきたいと思います。
  20. 阪田正仁

    阪田説明員 最初に、警察官が千葉県で園児をけがさせたということにつきまして、あらためておわびをいたします。  警察官運転免許取得の状況でございますが、警察官は、採用されるときに一年間警察官の一般教養を受けます。その後四カ月間、それぞれの管区において教育を受けるわけですが、この四カ月間の内において、その全部が全部というわけにはまいりませんが、一部の者に運転免許証をとらせるように練習させておることが一つでございます。それでも十分にとれませんし、しかも、警察官としては、現在なるべく多くの者が運転免許証をとらねばならない状況にございますので、その他の者につきましては、警察庁も指導しておりますし、各県も実行しております。各県にそれぞれ自動車指定教習所というものがありまして、そこにできる限り時間をさいて、たとえば夜間などに通わせまして、できるだけ多くの者に運転免許をとらせるような方法をとりましてやっておるのが実情でございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 大体、私の想像していたとおりでありますが、それならばなおのことでありますが、いまのようなちゃんと練習する教習所を心配をして、そこでやるようになっておるならば、構内で、環境が十分そのように整っていないところで練習をするというようなことは、警察として十分注意をしていただかなければならないことでありますが、それにつけてもやはり私はこの前に質問した私の考えが正しいと申しますか、当たっておると申しますか、そういうように考えられてならないのでありますが、やはり運転免許を与える制度が二本建てになっておるということが非常にいまのような事件を起こすもとになっておるのじゃないか。片一方においては、ちゃんと教習所において、一定の、何時間でありますかわかりませんが、ハンドルを正規のところで持たなければ免許証はもらえないということになっているにもかかわらず、一方においては県の試験場において、どういうような経歴で、どれだけの実力を持っているかは別として、いきなりそこへ来て試験を受けられるという制度そのものに非常に欠陥があるのであって、行ってすぐ受けられるからどこででも、どんな方法ででもハンドルをある程度持てば、そこへ行って試験を受けられるということにやはり欠陥があるんで、いまの警察官にしても、おそらく試験場へ行って——いまのお話だと、警察のほうでは、そこへ行って練習をするようにいろいろ御心配になったのかもしれませんけれども、また警察官警察官としていろいろ仕事もあるでありましょうし、そこへ行けないということにでもなれば——片一方において、そこへ行かないでも、ほかの、県の試験場で受けられるということになりますならば、暇なときには練習生となってそこへ行くということになると思うのであります。そういうようなことについて、これはやはりお考えにならなければならぬと思いますが、何か警察庁として考えていらっしゃるか。
  22. 阪田正仁

    阪田説明員 日本の現状におきまして、確かにいまおっしゃいました二つの方法がございますが、その二つの方法の中で、確かに先生のおっしゃいますように、警察における試験場において、どこで練習してきたかわからない人を、急に試験をして通すという方法よりも、やはり千百幾つ現在できております指定自動車教習所に通って、そうして正規の練習をし、実技あるいは学科等をそこで習い、そうして運転免許証をとるというのはやはり私は理想的であろう、近い将来にはそういう方向にやはり持っていくべきだと、私もこのように考えております。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 次に、いまのこの警察官の問題で、同乗で運転免状を持った方が乗っておられたということでありますが、これはいまのような場合ばかりでなく、私は非常に疑問を持ちますことは、路上教習といって、現在でも自動車学校でいいかげん——もちろんある程度、技術が八分も九分も上達したところでやるんでありましょうが、仮免許と称して路上を、隣には資格者が乗っておって、そして片一方にはいわゆる教習所の生徒が乗って運転をさせるようなやり方、これでもし事故が起こった場合には、一体この教習生があれになるんでありますか。それとも隣に乗っておるいわゆる教官が責任を負うんでありますか。これは刑事局長もいられますから、あとであわせて私はお聞きしたいと思うのであります。この点どうですか。
  24. 阪田正仁

    阪田説明員 私ども、四月から路上教習ということを制度化いたしまして、教官が同乗いたしまして町に出てやる、こういうことでございますが、その場合に、なるべく事故のないようにということを前提といたしておりますが、万一事故が起こりました場合におきましては、同乗している指導員、その人に責任を負わせる、こういうことでございます。
  25. 大竹太郎

    大竹委員 これは、そうするとどういうことになりすまか。その人、自動車のハンドル持ってないんですよ。ハンドル持っていなくて、その人が責任を負うんですか。そしてそのハンドルを持っていた、いわゆる学校の生徒ですか、その人には全然責任がないんですか。私はどうも、このいままでの道交法の責任なんかはそういうようには考えられないような気がするんですが、それでよろしいのですか。
  26. 阪田正仁

    阪田説明員 間違いました。一義的にはその本人責任がございますが、しかし、路上教習をいたします自動車には、指導員のすわっているところにもブレーキ等も備えつけてございますので、そういう意味において指導員そのものにも責任がある、かように考えます。
  27. 大坪保雄

    大坪委員長 関連して、沖本君。
  28. 沖本泰幸

    ○沖本委員 では、飛行機の免許をとるまでの操縦法の訓練も同じ方式になるわけですか。同じと考えてもいいわけですか。
  29. 阪田正仁

    阪田説明員 飛行機のことは、私よく存じませんのでわかりませんが、先ほど間違って答え、またあらためて御返事いたしましたように、やはり第一義的には本人ですが、横にブレーキもあるという意味において、そうして運転を教えているということにおいて、その指導員に責任があると考えます。  飛行機のことについては、ちょっと私よくわかりませんですが、申しわけございません。
  30. 大竹太郎

    大竹委員 刑事局長がおられますが、責任の何といいますか分担ということについては、どうお考えになりますか、いまの問題について。
  31. 川井英良

    ○川井政府委員 一がいに申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、たとえば、先ほど例をあげまして御質問の中にありました千葉県の警察官の例でありますが、隣に免許を持った警察官が乗っておりまして、無免許警察官事故を起こした、こういう事案でございますが、この事件も、まだ最終的には処理はきまっておりませんが、助手席に乗っておった者につきましては、無免許の運転を知りながら容認しておったということで、刑法にいう無免許の幇助犯として事件を処理するというふうなことになっておるようでありまして、この場合におきましては、不幸にして起こした過失について、助手席の免許を持っておる警察官がどの程度の責任を負うかということは、これは事実問題と関連いたしまして、たいへんめんどうな問題があると思います。過失でありましても、共同過失ということが法律上あり得ますので、もう少し実態を調べまして、隣に乗っておった警察官につきましても過失の有無を調べて、それも同じように過失の責任を負うべきだというふうな事実関係になっておれば、隣に乗っておった無免許警察官とともに、過失責任を負う場合も出てくるのではなかろうか、かように考えております。  いまの一般的な問題といたしましては、やはり無免許とか、酒酔い運転とかというような、道交法の故意犯の問題と、それから、何といいますか、結果において起こされた過失犯と二つに分けて考えまして、共同に負う場合もありましょうし、あるいは単なる幇助に終わる場合もあるんじゃないかと思いますので、一般的にいえば幇助犯として処理するという場合のほうが、むしろ法律的な処理としては多いんではなかろうかと思います。事実関係が、いま申しましたように共同のハンドルを持っている——ブレーキだけではどうかということが問題になると思いますけれども、共同のハンドルを握って運転しておったという、そういうふうなものがもし飛行機その他に事実上あるといたしますならば、そのような場合においては同じような責任を負う場合も出てくるのではないかというようなことになろうかと思います。
  32. 大竹太郎

    大竹委員 だから、これは私は非常に困った問題だと実は思っているのです。教習所のような一つのきまったところでそろそろやっている者が、免許をもらったといって、急に雑踏している町に出てきて自由にハンドルを持つということは、これは私は非常に危険なことだと思います。そうかといって、いま私が申し上げましたように、仮免許、それこそまだほんとうの免許を持たない人間が——幾ら指導者がそばについていたからといって、自分はハンドルを持っていない。ただブレーキを持っているからとめることができたといっても、ハンドルを切るわけにいかぬのですから、そういうものも必要——もちろん一人前になるには、外に出して幾らか練習させる必要があるとは思いますけれども、それをやるということは私は非常に危険なことだと思うのでありますが、それについていままで何か大きな事件というものが起きたことないのですか。私はこれが大きな事件にでもなった場合には、自動車学校なんかとても困ったことになるのじゃないかと思うのですが、そういうことについて警察庁あたりではどういう御指導をしていられるのですか。新たに路上教習というものができた。私はそのできた趣旨はわかると思うのでありますが、その事故なんということを考えた場合に、私はこれは非常におそろしいあれじゃないかと思うのでありますが、それについてどうお考えになりますか。
  33. 阪田正仁

    阪田説明員 たいへんむずかしい問題でございますが、実は教習所という、いわゆる箱庭と申しますか、で練習さして、そして免許を与えるという方法は、外国には非常に少ないわけであります。日本の場合においてそういう制度ができておりますが、たとえば教習所の場内だけで練習をして、その結果免許をとって出た場合に、出たそのときに相当あぶないという問題と、いま仮免許をとって、途中に路上に出してやることのあぶなさとこの二つがてんびんにかかるわけでございまして、いずれをとるべきかという問題が実はございますのですが、いずれも絶対ということは申し上げかねるのでありますけれども、どちらかというと、やはり仮免許をとらして、指導員を同乗さして路上教習を教習課程の中に入れておくほうが、若干いいのではないか、こういう考え方でございまして、いままで路上教習中において大きな事故があったということは、制度ができてからまだ浅うございますが、私は聞いておりません。そういう実情でございます。
  34. 沖本泰幸

    ○沖本委員 関連して。同じようなことなんですけれども、これは相当考えていただいてはっきりしていただかなければならないと思うのです。というのは、結局国鉄あるいは私鉄でも、すべて同じ方式でやっているわけです。一人前の運転手さんになるためには、横に指導員がついて、実際に軌道の上を同じ方式で走るわけですから、同じ可能性というものはすべて条件として整うわけです。航空機の場合も同じことが言えますし、もう一つひどいのは、消防車の場合でも同じことが言えるわけです。ですから、免許を持っていても、消防自動車は十分に運転可能になるまでには、免許を受けている人でもやはりスピードを多く出すわけですから、同じ条件のもとに同じ事故が起きる可能性も十分ありますし、パトカーの場合も同じことが言えると思うのです。そういう点を考えると、やはりこの分だけを相当重要視して考えて、明快にしていただかなければならないのじゃないか。それからまたあわせまして、結局ダンプカーならダンプカーでも、助手と運転手がかわっているというようなことは日常茶飯事にあるわけですし、この前もスポーツカーで、いわゆる無免許で、酔っぱらいで事故を起こすという事件もいろいろありまして、それが非常に大きな事件事故の原因にもなる場合があると思いますが、そういう点についてどういうお考えであるのか、またどうなさろうとなさるのかという点について伺いたいと思います。
  35. 阪田正仁

    阪田説明員 いま、教習途中において仮免許を与えて路上教習するという問題と、それから免許証をとった人が、実際にダンプとかその他の車を運転する場合に、助手がかわって運転するといういろいろの場合がありますが、若干あとの場合と先の場合と意味が違うのでございまして、教習途中において路上教習を行なうというのは、一言で申せばまだ一人前になっていない仮免許の段階において路上に出る、技術の点からして一人前じゃないという段階において出る、こういう問題でございまして、一人前になった人間が町に出て走っているときに助手と交代してというようなこと、さらに酔っぱらいであるとか、無免許であるとか、ついきのうも新聞等にも出ておりましたのでございますが、これははっきりと無免許、酔っぱらいということで、成規の法規に合わせてあるいはそれに対する行政処分等も行なわなければならない問題でございますが、若干路上教習の問題とは違うのじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  36. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのことに関してですけれども、幅の広いことをお伺いしたわけですけれども、いわゆる路上教習という場合でも、自動車の場合は、いま話題になってそういうことになったわけですが、先ほど申し上げましたとおり、私鉄あるいは国鉄においても、やはり同じ条件が言えるわけです。そういうものを届け出をしておるのか、あるいはそのまま放任してそういうふうになっておるのかという点になるわけですけれども、結局事故が起きる原因とか結果とかいうものは、同じ条件のもとにあることになるわけです。ただ、交通事情がふくそうしておって、特にいま自動車の問題についてということで大竹先生からの御質問があったわけですけれども、広げて考えてみなければならないのじゃないか。飛行機もやはり同じ条件の場合に、別の飛行場を使ってやっているということが言えますけれども、最終段階にはやはり普通の国際飛行場なり国内飛行場を使って、最終段階の仕上げをやるわけなのですから、そこのところの条件は同じことになってくると思う。ですから、この分の規定ということはあるけれども、ついでに広げて、きちっとしたものにしていただいたほうがいいのじゃないか。そういうものを含めた問題を論議していただいて、あとからつけ加えなければならぬことのないようにやったほうがいいのじゃないか、こう考えることから申し上げているわけで、そういう点についての、きょう初めて聞くとか、あるいはそれは考慮の中にあるんだとか、あるいはどうするという点について、それぞれ御関連のところからも御説明をいただきたいと思うのです。  またパトカーの場合には、実際にも専門の運転手が運転しておるが、しょっちゅう同じメンバーで乗りますから、自然交代する場合がある。また消防車も同じことが言えるわけです。そういう場合には事故の起きた範囲というのはものすごい大きなものになってくるわけですから、それぞれの関係のほうではその問題についてどういうふうになさっていらっしゃるかという点も御説明をいただきたいと思います。
  37. 阪田正仁

    阪田説明員 消防自動車あるいはパトカーというものは、たとえば消防署の場合で火を消しに行く場合、パトカーは、場合によっては緊急事態が発生して、一一〇番があり、これに向かって出動していく、こういう場合には緊急自動車という指定を受けております。したがって、そういう場合には普通の車が受ける制限を相当ゆるめられた制限のもとに走るわけでありまして、その意味におきましては、場合によっては非常に危険度が高いということが言えるわけであります。ところがパトカーの場合におきましては、二人乗っておりますが、助手と交代すると申しましても、実は助手のほうも、両方とも運転免許を持っているのが実態でございまして、お互い交代し合っていくということでも、それは単なる無免許の助手ということでございませんのでやっているわけでございます。消防の場合については私ちょっとよく存じませんけれども、おそらく助手と交代してやるのじゃなしに、緊急自動車として相当なスピードを出して走る場合においては、正規の運転手が最大の注意をして走っていくのだ、このように考えておるわけであります。  その他の飛行機の場合あるいは汽車の場合というのは、若干私の所管外でございますが、同じような意味合いにおいて、事故防止というような観点からそれらの問題について大きく考えてみなければなりませんし、またそれぞれ所管官庁ともそういう問題についても話をしなければならない問題じゃないかとも考えておるわけでございます。
  38. 大竹太郎

    大竹委員 次に、最近出ました新しい問題でありますが、私は当たり屋の事件についてちょっとお聞きしておきたいと思うのであります。  これは、ことに非常に事件がふえてきた、しかも中には悪質なものが。同じ交通犯罪といってもいろいろな態様があるということから見ますと、ことに刑を重くするというような面からいいましても、その犯罪事実そのものは正確に把握されなければならぬ、こう思うのであります。そういうような面から見ましても、あたり屋の事件というのは非常に私、遺憾だと思うのであります。詳細なことを忘れましたが、たしか四十何件も——いわゆる一ところでやらなかったからかえってつかまらなかったのでありましょうが、全国各県にわたって、たしか私の新潟県なんかまできて、一件か二件やっていったというのであります。しかもその中で、警察のほうに問題になって——もちろんお調べになったでしょうが、その中でやはり運転手が悪いということで、運転手が処罰されたというようなものも中にはあるというのでありまして、そういうような点から見ましても、今後相当そういうものも出る可能性があるんじゃないかというふうにも思われるのであります。つい最近、何か第一審の判決がきまったというような新聞も拝見しておるのでありますが、それらについて、警察庁のほうでありますか、法務省のほうでありますか、簡単でよろしゅうございますから、事態を御説明願いたいと思います。
  39. 綾田文義

    ○綾田説明員 先生の御質問は、まことにごもっともでございまして、私どももこの事件につきましては、高知県警に特に捜査本部を置きまして事件を処理したわけでございます。その後、件数がふえまして、現在警察庁に報告がまいっておりますものでは、検挙いたしましたのが当たり屋の詐欺が九十三件、それからその他前借詐欺、あるいは恐喝、窃盗という事件もございます。被害が約三百五十万近くでございます。  人権尊重のたてまえからも事件を正確に把握しなければいかぬということはまことにごもっともでございまして、私ども捜査本部終了後、この事件をいろいろ検討いたしましたところが、やはり警察についても、捜査上反省すべき点がいろいろあったわけでございます。その点につきまして、去る昨年の十一月に、指導課長名で、全国警察にこういう事件についての捜査に当たっての注意と申しますか、今後そういうことのないように指示をいたしております。これからますます交通事故が多くなってまいりますし、警察も非常に手薄ではございますけれども、今後このようなことのないようにいたしたいと思っております。  ただ、ちょっと私の感じを申し上げますと、これはいわゆる子供の事件であって、子供の事件の場合は、ともすれば子供を中心考える、子供を悪者に考えないというふうな人情の盲点をつく事件でございます。特に本件がそれで、重傷あるいは死亡事故であればもっとていねいにやるわけでございますが、比較的軽微な事件である。そういう性格上、しかも相手が非常に巧妙に立ち回っておりましたので、たとえば身元の確認なんかも本人は十七ばかりの偽名を使って、示談の印鑑その他も非常にたくさん持ってやっておるわけでございます。あるいは実況検分の際に、子供が車に当たったその車との関係、それを精密に調べれば出る。あるいは子供の負傷なんかも、若干医師も不審を持ったような擬装の負傷でございましたから、そういう点ももう少し突っ込めば、あるいは出たかもわからないのでありますが、そういう点について今後とも十分捜査上注意いたしまして、こういう事件のないようにいたしたいと思っております。  なお、事件処理関係につきましては、法務省でございますので……。
  40. 川井英良

    ○川井政府委員 この事件は、全部で九十一件という詐欺を起訴しておりますが、ほかにまだ数件ございますので、全体としては約百件ございます。その中で運転手の過失だという誤った認定をいたしまして事件にいたしましたのが、報告を受けているものの中で六件ございます。その六件の中の内訳は、三件は検事も見破ることができませんでこれを起訴いたしました。いずれも略式命令で罰金二万円が二人、罰金一万五千円が一人、三人の罰金という有罪がいずれも確定いたしております。それから一件は少年でありまして家庭裁判所に送致いたしました。家裁のほうでは審判不開始ということで何ら処分をしないで済んでおります。残り二件はたまたま捜査中でございました。それはそれ以上捜査を進めないで処分をしなかったということでございまして、たいへん申しわけないわけでございますが百件の中で三件について警察も検察庁もいずれも運転者の過失があるということで起訴いたしました。確定したのは三件、これらにつきましては五月の三十一日に、この事件の、当たり屋の詐欺事件の、有罪の第一審判決がございましたので、直ちに私どものほうから三件についてその当時の具体的な状況の詳細な調査を一応指示いたしまして、その調査の結果を待ちまして、なおまたこの五月三十一日の事件は、被告人は控訴しておりますので、確定を待ちまして、それぞれ再審の請求というような手続をとりまして、この不幸にして有罪の判決を受けた人たちのあと始末に遺憾のないようにいたしたい、かように考えております。
  41. 沖本泰幸

    ○沖本委員 当たり屋ということになりましたので、私のおるところが釜ヶ崎ですけれども、当たり屋では一番問題点があるところなんです。説明を加えながら御質問したいのですけれども、いま大竹先生がお取り上げになった御質問内容は最も特殊な当たり屋の事件で、まあ、あまり例を見ないような内容なんですが、実際現地であるのは、釜ヶ崎の道路を広くしてあるのですけれども、やはり社会に対する反発心か何か、夕方になりますとほとんどが酔っぱらって、歩道なんか歩く人はいないわけです。ほとんど車道を一ぱいになって歩いているわけです。ですから通る車が遠慮して、車のほうが逃げてしまうというような状態なんですけれども、当たるつもりで車が当たるわけではないのですけれども、そういうところにいろいろな事件の要素があって、警察のほうもそれをうんと取り締まればいいと思うのですけれども、取り締まることによってまた騒動を起こす原因にもなっていくわけです。そういうところで、現状としてはさわらぬ神にたたりなしで、結局放任してある。できるだけ騒動に向かないように、そっとして見ておるというのが現地の状況です。ですから、特に当たり屋というのが釜ヶ崎にたくさんいるというわけじゃありませんけれども、やはりそういう事件が起こりやすい。何か当たるともうすぐ引っかかっていく、そういう要素は多分にあります。しかしその問題から、結局道路幅が狭いところに行くと、西成あたりの道路の狭いところでは、そういう不法者であるとか、あるいは日雇い労務者という人に限らず、婦人でもやはり車がうしろに来ておってもよけることがないのです。ですから、しかたがないから車が徐行するというような内容になっております。そこで大事なのは、やはりそういう車のほうを取り締まるばかりでなくて、歩いている歩行者に対する道路交通の道徳とか、そういうものに対するもっと厳重な忠告、あるいは指導、こういうものが十分なされなければならない、私はそう考えるわけです。  ところが、横断歩道をたくさんつくりましたけれども、悲しいことに横断歩道上の子供に対する事故が多いわけです。それで今度は交通知識に対して、やっと学校までいま正科に取り入れつつあるというところなんですけれども、これはもっと早く学校のほうが子供に対して交通の標識とか、あるいは交通道徳とかいうものが、もっとはっきりされたほうがいいんじゃないか。昔は、人は左、車は右というような、あるいは通行上の問題で、左側通行というようなことが徹底しておったわけです。ところが、最近はそういうものがだんだん言われなくなってきました。そこで、横断歩道上の子供の安全を守るために、そういうものに対する厳重な取り締まりはやっておられますけれども、さらにやりながら、子供のほうが、おじさん、おばさんそれは違う、こっちを歩くべきだ、横断歩道を行ってください、そういう運動が相当起こることによって、事故というものがもっと防止できるということになるのではないかと思うのです。外国のほうの例を見ますと、結局子供の間から交通に対する知識というものは十分徹底されておる。また、交通道徳に対する問題は社会上きびしく行き渡っておるわけです。そういう点からも交通事故がないということになるわけです。いま申し上げましたお話に対して、それぞれのお立場のところではどういう対策をとっておられるかという点について、御説明いただきたいと思うのです。
  42. 綾田文義

    ○綾田説明員 車両だけではなくて、歩行者を現場で指導、警告を十分にするということでございますが、私どももそのように考えまして、歩行者については重点主義で指導、警告を行なって、年間の検挙者も非常に少なくて、主として指導、警告をやっております。ただ、釜ヶ崎につきましては、私も大阪で前任地でございますけれども、いろいろ非常にむずかしい事情がございますけれども、今後やはり酔っぱらって歩くというようなものは、問題が起きないようにうまく指導、警告することが必要だと考えます。  それから、子供の安全教育でございますが、欧米のお話がございましたけれども、日本におきましても、子供にはやはり小さいときから交通安全を身につけるということが一番だと思います。特に歩行者だけではなくて、これからの子供は将来のよきドライバーとしての安全を身につけていくということが根本ではないかと思います。文部省も、全国の各小中学校では——京都あたりでは非常に早く始めたところもございますし、まちまちでございますけれども、最近文部省のほうでも、この安全教育というものを重点に取り上げてやる方針を決定いたしたようでございます。大阪などにおきましても非常に熱心な学校と、熱心でない学校がありましたけれども、だんだん歩調がそろってこれが推進されておるようでございます。警察といたしましても、学校教育に対して、側面からできるだけ援助したいというふうに考えております。
  43. 沖本泰幸

    ○沖本委員 子供に対する安全教育についてですけれども、安全教育の公園をつくったりして、実際に信号機をつけて、そこを子供の車で走らして遊ぶ立場から勉強さしていくというようなところが大阪でやっと一つできた。東京でもありますけれども、非常に数少ない。そういう点が、やはり警察側と文部省の側ですね、こういう関係で横の連絡が非常に少ないのではないか。文部省のほうも自然に予算の関係でしぼられますので、結局学校のほうとしても金がかかるから、そういうことはやりたくないというようなことが一つの隘路となります。そういう点から、おとうさん、おかあさんのほうも含めて、やはり同じような教育をしていかなければならない、そういうふうに考えるわけです。そういう点で、何かもうちょっと力が足りないのじゃないか。もっと深く掘り下げて、真剣にやっていただきたい。そこで起こる成果というものを十分考えて行なっていただきたいと考えるわけですが、そういう点についていかがでしょうか。
  44. 綾田文義

    ○綾田説明員 ただいまのお話でございますが、交通公園の問題は、主管は建設省でございまして、全国にぼつぼつできております。御承知のように大阪にも一つできておりますが、これは建設省とも十分連絡をとって、今後さらに推進をいたしたいと思います。  それから警察自身といたしましては、大体各府警本部に巡回用のバスのようなものを置いておりまして、その中に信号機とかいろいろなものを積んで、各学校の運動場やあるいは教室で巡回教育というものを実施いたしております。しかし、何ぶん警察官の出動の問題、人数の問題、それから学校の非常に多いことで、必ずしも全面的には要望を満たしていないところもありますけれども、相当活用されておるわけであります。そういう点につきましても、なお今後推進をいたしたいと思います。
  45. 大竹太郎

    大竹委員 それではさっきに続いて若干お伺いしたいのでありますが、全体で九十一件、そのうち六件を警察がいろいろ調べたという話ですが、この九十一件の中で六件を除いてあとの全部は加害者と被害者の間に示談とでも申しますか、金を渡して片づいてしまって、警察の問題になったのは六件しかなかったということでありますか、その点をお聞きしたい。
  46. 川井英良

    ○川井政府委員 そういうことでございます。
  47. 大竹太郎

    大竹委員 それで私は考えるのでありますが、この運転者というものは、ある意味においては非常に警察裁判所というものを信用していない、率直にそういうことを言ってはおしかりを受けるかもしれませんが、少なくとも人にけがをさせたという事件警察なんかに持ち込めば、とにかく自分が処罰されることはもちろん、免許の停止も当然受けるということを頭から考えて、その事件そのものがどうして起こったのか、これらの事件については自分は悪くなかったという確信を持っておれば、当然進んででも警察に出なければならぬわけでありますが、それを九十何件、しかもこれは全部故意に当たったものだといたしますと、ほとんど事故に対しては、運転者は認識がないといいますか、知識がないといいますか、非常にたよりないものだと思うのでありますが、それらについてどうお考えになっておりますか。
  48. 綾田文義

    ○綾田説明員 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、警察も、子供の事故である、軽微であるということで捜査に反省すべき点があったわけでありますが、被害者のほうも同様に——非常に被疑者が巧妙でありまして、まず警察へ届け出ると運転免許証にきずがつく、あるいは罰金になるというふうなことを相手に対して説明をして、示談を非常に強く主張しております。しかも、主張しながら、自分はいま旅行中で飛行機で帰るのだから、急ぐのだから、きょうじゅうにやってくれと言って、本人自身がつとめ先あるいは自宅あるいは現場で、きょうじゅうに飛行機に乗らないならば私は商売ができないのだというふうなことを言っておる。あるいは現場で、被疑者が自分の内妻をなぐりつけて強くしかって、おまえが悪いのだというようなことを巧妙に言っておりますので、しかも、被疑者は、私もかつて示談金を二十万円払ったことがあるが、これはこうしたほうが有利だという話を持ちかけて非常に巧妙にやっておるというふうな関係で、被害者のほうも、先ほどお話があったように、警察不信と申しますか、それよりはむしろ被疑者の巧妙な作戦にひっかかったのではないかというふうな感じがいたしております。取り調べのうちには、やはり運転者も自分の無過失を主張した者も一、二あったようでございますけれども、やはり何を話しても子供の事故でありまして、どうも強く主張できない。しかも、取り調べる場合は、子供と親は普通別に調べるが、この事件の場合には、現場で子供が説明する、親が途中で助けをちょいちょい入れてやるということで巧妙にやられましたので、運転者も子供を強く追及することはちょっとやれなかったのではないか、そういう点に捜査の問題があるわけでございますけれども、そういう点で結局届け出なかったのではないかというふうに思っております。
  49. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、先ほど沖本氏からも質問されたのですが、これは特殊の事件かもしれませんけれども、そのほかにも当たり屋の事件というものは全国的に見てあるものですか、ないものですか。いままで問題になったもので……。
  50. 綾田文義

    ○綾田説明員 当たり屋は、これは主として暴力団の関係でございますが、こういう例ではなくて、暴力団がほんとうに金を取るために故意に青年がやるという事件は、数年前には相当頻発いたしまして、警察庁のほうでもこれの取り締まりを強く指示をいたしまして、最近ではそう目立ったものはございません。しかし、年間、私も件数はちょっと覚えておりませんが、若干の検挙した報告はあると思います。さらに、あるいはこういう暴力団的な悪質な当たり屋事件で、表面には出ていないような事件もあるのではないかと思っております。そういう点につきましては、さらに今後この当たり屋事件の本格的な捜査というものも十分検討して推進したいというふうに考えております。
  51. 大竹太郎

    大竹委員 それでは次に、今度はこの法律改正されますれば、五年というような長期受刑者も出てくるというわけでありますが、やはりこれは特別な犯罪でもありますので、受刑者についての特別訓練というようなものも必要だと思うのでありますが、現在でも一部の刑務所においては、特別訓練も行なわれているというようなことも聞いておるわけであります。それらについての実情をお聞かせいただきたい。
  52. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 交通犯罪の禁錮の言い渡しを受ける者については、三十八年から一千名を突破するようになりましたので、三十九年から習志野、加古川、佐賀、豊橋、山形、ここに交通犯罪の禁錮の言い渡しを受けた者を集めまして、特別の教育訓練を行なっております。  かいつまんで申し上げますと、そこに集禁された全収容者に対して、先ほど御意見のありました順法精神あるいは安全教育、これを収容期間の全部にわたりまして、毎日二時間ずつ行なっております。さらに収容された全員のうち、いろいろな精神診断をやりまして、その中には必ずしも運転者として適当でないと認められる者があるわけでございます。そこで、そういう者に対しては転職をすすめる、また転職の相談に乗るということで、出所した際にはもうハンドルは握れませんという者が出るわけでございます。そういう者につきましては、一般的な教育のほかに職業訓練、本人の適正等も考えまして、場合によりましては運転じゃなしに整備のほうの職業訓練を行なっている。さらに適正があって出所後も引き続きハンドルを握りたいという者につきましては、今度は運転に関する実地の指導あるいは学課の指導を行なっているというのが現状でございます。
  53. 大竹太郎

    大竹委員 次に、最高裁の家庭局長が見えておりますので、お伺いしておきたいと思うのでありますが、少年のいわゆる交通違反者に対しては、何といいますか、非常に寛大過ぎるんじゃないか、放置され過ぎているんじゃないかという一般の意見が強いのでありますが、少年の道交法違反その他についての現在の処分の実情をお聞きしておきたいと思います。
  54. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいま大竹委員から、少年に対する家庭裁判所の道路交通法違反事件における処分がどうも甘いんじゃないかという質問でございましたが、私ども決してそうは考えておらないのでございます。  処分の実態を申し上げますと、たとえば昭和四十年度におきましては、少年の既済事件は道路交通事件が八十一万六千件ございます。そのうち四十七万件が不開始、いわゆる五七%が不開始、それから不処分が十五万七千件、パーセントにいたしますと一九%余りでございます。それから保護処分が六千四百件、〇・八%、検察官送致が十二万四千件、一五・二%。そういたしますと、合計いたしますと、保護処分、検察官送致を除きますと、大体七〇%から八〇%近い不開始処分になっているんじゃないか。正確に申しますと七七%でございますが、これが不開始あるいは不処分になっておって、野放しになっているというふうな印象を世間で受けておられるようでございます。そういう結果、どうも家庭裁判所の処分は甘いんじゃないかというふうな御批判を受けておるわけでございます。  ところが、少年の道路交通法違反実態をよくごらんいただきますと、たとえば少年法ができました当初は、交通事件が今日のような様相を呈するということは予想しておらなかったわけでございます。したがって、少年の道路交通に対する保護処分の種類というものがほとんどない。むしろ、現在われわれが利用できますものは、保護観察だけであったといっても過言でないわけでございます。ところが、保護観察にいたしましても、いわゆる保護観察所のほうの受け入れ態勢というものが未整備であり、また交通違反少年は保護観察に適しないんだというふうな考え方が初期にあったわけでございます。ところが、昭和四十年の四月十五日に法務省の保護局長の通達が出されまして、それによりますと、道交法違反少年に対して保護観察を効率的に運用せよ、こういうふうな通達が出まして、各保護観察所におかれましても、道路交通違反少年に対する保護観察ということの重要性を御認識いただきまして、保護司として、運転免許を持った方あるいは自動車の構造その他について知識、経験を有される方を保護司に選ばれるということになって、昭和三十六年度が、大体年間二千四百八十三人の保護観察であったものが、四十年はそれが六千三百というふうにふえ、四十一年は七千四百というふうにだんだんふえてまいりました。しかし、保護観察というのはその整備がまだできておらないというところから、それほどたくさん利用されておらないというのが現状でございます。  もう一つ、不開始処分が多いという理由一つといたしまして、御承知のとおり少年に対しては罰金以下の刑に当たる事件については検察官送致ができない、いわゆる罰金を取れない事件でございます。そういう事件警察から直接裁判所に送致してまいるわけでございます。これが法律上いわゆる検察官送致ができない事件、これが四十年度におきましては大体三六・二%あるわけであります。それからまた十六歳未満の子供が犯したところの交通違反事件については、これまた検察官送致ができないというわけでございます。これは検察官から送られてくる事件のうち一〇%余りあるわけでございます。さらに検察官自身が刑事処分が相当でないという意見を付して裁判所に送られる事件が、全検察官送致事件の五二%になっておるということでございます。そういたしますと、実際法律上も、また検察官自身も刑事処分相当でないという事件、それらを合わせますと合計六五・七%という数字になっております。そうしますと、先ほど申しました家庭裁判所がやっております。七%は、それほど多いものじゃないということが御理解いただけるのじゃないかと思います。さらに家庭裁判所が不開始処分をやっておりますけれども、では不開始処分でそのまま野放しにしておるかと申しますと、そうではなくて、やはり家庭裁判所は少年の再犯を防止するということと、道路交通の安全を確保するというたてまえから、不開始処分にする少年に対していわゆる講習をしたり、あるいは学校との連絡を密にして少年を指導する、あるいは保護者、雇い主に指示、警告を与えるとか、あるいは少年に対して厳重な戒告を加える、あるいは誓約書を徴収するという方法をとって、少年の再犯防止と、それから道路交通の安全の確保ということについて意を注いでおるわけでございます。
  55. 大竹太郎

    大竹委員 いま講習会を開いてというお話がちょっとございましたが、その実情について御説明願いたい。
  56. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 現在講習会をやっておりますのは、大体相当多数の各地方でやっておりますが、代表的な東京家裁の実情を御説明申し上げますと、東京家裁におきましては、自庁講習としまして第一種講習と第二種講習というものがございます。  第一種と申しますのは、これは毎週水曜日の午前、午後二回にわたりまして、毎回五十名ずつ集めて講習いたしております。これはどういうことを講習しておるかと申しますと、交通事故の原因とその現状という問題、それから交通の法規についての話、それから第三番目には順法精神を喚起するということ、第四番目に免許取得に関するところの指導とかあるいは助言、こういうことをやっております。  そのほか第二種講習といたしましては、この第二種講習はいわゆる再犯者とか、あるいは業務上過失致死傷事件を起こしたような、相当成績不良な者に対してやっておるわけでございますが、これはやはり毎週木曜日、一回五十名ずつ集めてやっております。これは交通事故の原因の解明あるいは安全運転態度の涵養とか、あるいは自動車運転者のいわゆる運転道徳の確立とか、あるいは交通法規の解説とか、法令、自動車の構造についてのテストをする、そういう方法をやっております。これが裁判所内でやっておるところの講習でございます。  このほかに委託講習というものをやっております。これは東京安全協会に委託いたしまして講習をするわけでございますが、相当危険度の高い違反者に対して行なっております。これは毎週一回やるわけでございますが、一回大体二百五十名ぐらいを対象として、講習の目的は、社会生活と交通道徳に関する講座を開いたり、あるいは交通法規に関する話をしたり、あるいは法令の試験をしたり、スライドによるところの交通事故の現状とその原因というものの解明をするというふうな方法で、事故防止の教育を施しております。  そのほか、自動車の教習所がございますが、その自動車の教習所に委託して講習をやっております。現在、東京都の三つの教習所に委託しておりますが、これは再犯者とか、あるいは業務上過失致死傷事件を犯した少年であって、しかも運転技術の未熟な少年を対象としてやっております。これは毎月一回で、一回に大体八十名程度を三教習所でやっておりますので、月に二百四十人ばかりやっております。これも交通事情と運転者の使命という点の理解をさす、あるいは事故の原因とその防止対策についての話をする、あるいは運転の知識を授ける、あるいは自動車の構造、性能を教える、こういうふうな方法をやっております。  そのほかに、まだ、少年交通訓練所に宿泊して訓練する場合がございます。これは現在埼玉県の青少年補導協会に委託いたしまして、事故を犯した少年あるいは危険度の高い少年、こういうものを二泊三日間、先ほど申しました青少年補導協会に委託いたしまして、そこで交通法規の学習、あるいは自動車の構造、あるいは整備とか、点検の学習、あるいは運転道徳というものを教える、あるいはグループカウンセリングによりますところの安全運転態度の確立というもの、そういうことを訓練して少年の再非行防止ということに努力してまいっておるわけでございます。
  57. 大竹太郎

    大竹委員 約束の時間でもございますから、この程度でとどめます。まだ条文そのものについて聞きたい点もございますし、また、きょうは来ていただいておりませんが、運輸省のほうから自動車関係の方にもこの次、多少でございますが聞きたい点がありますので、これらを次会に保留してきょうはやめます。
  58. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は、来たる二十二日午前十時より理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十七分散会