○
加藤(勘)
委員 そこで、そういう
行政権の
発動と、これを受ける民主
対象物とのその利害の相違というものがあって、これを正しく調整をするのが
裁判所の存在なんです。
裁判権は
行政権にも偏せず、また
国民の奔放な自由にも偏しない公正妥当な
決定をするのがそれこそ
裁判所の任務なんです。その
裁判所が、一体今度の問題についてどう見ておるか、当然そういうことに論理的に進んでくるわけですね。
そこで私は、念のために
裁判所の
決定なるものをまず見てみましょう。これはもちろんあなたもごらんになっていらっしゃると思う。
理由は、こまかいことは別にしまするが、
申立人は、昭和四二年六月八日、当
裁判所に対し、昭和四二年(行)ウ第八二号事件として
公安条例に基づく条件付
許可処分取消しの訴えを提起し、あわせて処分の効力を
停止する旨の
裁判を求めたので、当
裁判所は、被申立人の
意見を聞いたうえ、つぎのとおり
決定する。
これが
決定ですね。その
理由としては、
1 本件疎明によれば、申立人が
東京護憲連合の代表
委員として、同連合に加盟している各
団体の所属員を中心として昭和四二年六月一〇日
憲法施行二〇周年を記念して
憲法擁護の趣旨を広く
国民各層に訴えるため、杉並区役所前から日比谷公園まで集団示威運動を行うべく、昭和四二年六月五日
東京都
条例(昭和二五年七月三日
条例第四四号)一条に基づき、被申立人に対し、別紙三記載のとおり、右集団示威運動の
許可を
申請したこと、および被申立人が同月八日付を以て、別紙三記載のとおり、右
許可申請にかかる集団示威運動の行進順路中、赤坂見附より永田町小学校および首相官邸前を経由して特許庁わきに至る間につき順路を一部変更のうえこれを
許可する旨
決定したことが認められる。
以上の事実
関係のもとにおいては、集団示威行進の本質にかんがみ、進路の変更に関する本件申立てについては、回復の困難な損害を避けるため緊急の必要あるものと認めるのが相当である。
2 ところで、昭和二五年
東京都
条例第四四号「集会、集団行進及び集団示威運動に関する
条例」三条一項は、「
公安委員会は、前条の
規定による
申請があったときは、集会、集団行進又は集団示威運動の実施が
公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は、これを
許可しなければならない。」とし、また「
公共の
秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路、
場所又は日時の変更に関する事項」に関し必要な条件をつけることができる旨を
規定しているがこれらの
規定は
憲法が保障し、かつ、民主政治にとつてきわめて重要な集団
行動による表現の自由を制限するものであるからその運用にあたつては、いやしくも
公安委員会がその
権限を濫用し、
公共の安寧の保持を口実にして、平穏で
秩序ある集団
行動まで抑圧することのないよう戒心すべきことはいうまでもない。しかるに被申立人は前示のとおり申立人の本件
許可申請を
許可するにあたり、
進路変更等の条件を付したが、右
進路変更の条件を付するについて前記「
公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」または「
公共の
秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合」であつたことを認めるべき資料はみあたらない。それゆえ、本件
許可につき、
進路変更に関し申立人主張のような条件を付したことは、被申立人において前記
規定の運用を誤まつたもので違法といわざるをえない。
被申立人は、被申立人が本件
許可にあたり
進路変更の条件を付したのは、その進路にあたり
国会等が存在しこれらはいかなる妨害または物理的圧力等をも受けることなく平穏な環境のもとにおいて国政を審議すべき任務を有するから、本件
進路変更の条件を付すことなく
許可を与えた場合には、国政審議権の公正なる行使が阻害されるおそれがあり、
公共の
福祉に重大な
影響をおよぼすおそれがあると主張するが、しかし本件
許可申請がなんらの条件も付されることなく
許可されたのであればともかく、前示のような諸条件が付され、なかんずく危害防止および
秩序維持に関しきびしい条件が付されていること、本件集団示威行進の
主催団体およびその参加予定者数が前示のとおりであること、前記被申立人の変更にかかる当初の進路が
国会の
周辺すべての道路ではなく永田町小学校から
国会裏側を経て特許庁に至る道路であるにすぎないこと等にかんがみれば、本件集団示威行進が被申立人主張のように国政審議会の公正な行使を阻害する等のものとは断ずることができない。
なお被申立人は、本件申立ては被申立人の本件
許可前になされたもので不
適法であると主張する。しかし、かりに本件申立ての後にもせよ、すでに本件
許可がなされた以上右主張は採用しがたい。
最後に結論としてこういっております。
よつて、申立人の本件申立ては
理由があるから、これを正当として認容し(したがつて、行進の進路は本件
許可申請書記載のとおりとなるものと解すべきである。)、申立費用は被申立人に負担させることとして、主文のとおり
決定する。
これが、
裁判所のいわゆるいずれにも偏しない、公正な
判断をした結果得られた
決定なんです。この
決定に対して
法務大臣としてはどうお
考えになりますか。