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横山委員 沖縄から
本土へ来る場合については、特に問題があるわけであります。この場合におきましては、統計を見ますとずいぶん不許可なりあるいは保留なりというものが出ておりまして、例を見ますとまことに遺憾にたえないと私は思われるわけでありますが、これを見ますとずいぶん設例が出ております。「玉城幸一は一九六三年五月二日、親類訪問の渡航目的で
大阪市の妻の父の病気見舞にゆく為渡航申請をしたが二〇日間を
経過しても許可されず、
沖縄人権協会に訴えでた。同協会は六月三日民
政府当局にパスポート交付方を要請し同月十一日交付された。同人は、中央巡回
裁判所書記官であり、
沖縄官公労
裁判所支部書記長である。」
それから第二の例として、「大城勲は一九六三年五月一日アルゼンチンに移民する産業開発青年隊の一員として渡航申請をしたが、他の隊員六名は全員約一週間で許可され出発したにも拘らず同人のみ保留された。」ようやくあとになって「六月三日および一四日
人権協会および立法院から民
政府当局に陳情し、同月末パスポートの交付を受けた。」
「当間嗣隆は琉球
政府労働局の派遣で兵庫県の職業訓練所に入所していたが、義父の死亡で帰省していたところ、一九六三年五月三〇日再渡航のため渡航確認申請の手続をとった。六月一一日に至って保留になっていることが判明し、
人権協会を通じて職業訓練所の帰省証明書を提出し
善処方を要望し、六月二七日に至って許可されたがこれには次のような許可条件が附してあった。「本証は名義人が一九六五年七月一日以前に琉球列島に帰島する効力を有しない。」これは卒業するまで故郷に帰れないようパスポート中に明記してある最初の例である。」
「比嘉照子は一九六一年七月末留学で許可されたパスポートが一九六三年七月まで有効であったけれ
ども横浜で就職するため一旦帰島した上、一九六三年三月二八日
本土渡航の確認申請をしたところ、不許可になった。」
第五例は「
本土留学者の渡航、平良康夫は
沖縄社会福祉協議会の選考推薦を受け東京の日本社会福祉事業学校に入学するため一九六三年三月二一日渡航申請したが四月一二日不許可となった。同人は一九六二年七月七日にも渡航申請をしたが不許可となっている。二度に亘る渡航不許可のため、進学の途が閉された同人はやむを得ず
沖縄で就職している。」
第六例は、「申立人は一九六三年一一月一三日東京で開催される
全国青年大会に体育部門のバレーボール選手として参加するため那覇青年協議会から他の十二名と共に一〇月一九日渡航申請をした。一一月二日他のメンバーは全員許可されたが、申立人のみ理由不明のまま保留となった。
人権協会から民
政府公安部長に対し早急に許可するよう要望したが、同月二日に至っても
検討中であるという理由で許可されず、結局本人の大会参加は不可能となった。」
第七例は、「真喜屋ツルは東京の大学を卒業する娘の卒業式に参列すべく、帰省中の娘の確認手続申請と同時に渡航申請をしたところ、娘の確認申請は一週間後に許可されたが、母である同人の分は理由不明のまま保留された。
人権協会から民
政府公安部長に要請した結果、同月二六日許可された。」
これはもう、こういう例を引きますと枚挙にいとまがございませんが、結論としてこういうことが言われるというのであります。第一に、「申請、者に対して長期間「
検討中」とか「理由は本人がよく知っているだろう」などと言って、全く理由を明らかにしないまま保留し、あるいは不許可としている。」第二に、「保留については、
異議申立の
方法がない。」第三に、「不許可の決定に対して
異議申立をしても、事実上再審査は行われていない。」第四、「出入管理の主管は民
政府公安部であるが、保留、不許可などの決定をしている部門が秘密にされていて不明であるため、直接折衝の相手がつかめない。」第五、「保留ないし不許可の基準が定められていないため、一部の
職員の恣意によって決定されている傾向がある。」これが現在の出入国管理に対する欠陥だと指摘をしているわけであります。つまり九十六万
沖縄県民並びに
本土から
沖縄への出入国に対しては、そう言ってはなんでありますが、ずいぶんいいかげんな恣意的判断が働き過ぎている。私の聞くところによりますと、
沖縄からやってきた人に対して日本の警察官が何か尾行をしておったという事実があるそうでありますが、そういうことをも含めまして、
本土−
沖縄間の往来の自由というものが、今日における多少の制限がありましても、かかる恣意的な出入国の許可、不許可、保留のような条件がついておるということはどうしてもがまんならぬことであります。
大臣に、ひとつ十分この機会に
アメリカ政府なり
日米協議委員会に対して申し入れをし、
改善をしてもらいたい。これはもう
沖縄から来る人々がことごとく言うことでございまして、しかもいまの
事例の中にありますように、だれかが何かの機関に頼めば、ある
程度そうかと言ってやってくれるという、顔といいますか、そういうことも働いておりますことも、——
人権協会ならばいいんでありますが、
人権協会の
調査でありますから、ほかの何かの顔があれば許可され、不許可になるというようなことは、これまたがまんがならない点であります。いかがでしょう。