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1967-06-01 第55回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月一日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 大竹 太郎君 理事 高橋 英吉君    理事 中垣 國男君 理事 神近 市子君    理事 松前 重義君       大村 襄治君    馬場 元治君       橋口  隆君    古屋  亨君       村上  勇君    山村新治郎君       加藤 勘十君    下平 正一君       中谷 鉄也君    西宮  弘君       三宅 正一君    横山 利秋君       小沢 貞孝君    沖本 泰幸君       松本 善明君    中尾 栄一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         法務省入国管理         局長      中川  進君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  菅野 啓蔵君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 六月一日  委員田中角榮君、中村梅吉君、山下元利君、山  手滿男君及び三宅正一辞任につき、その補欠  として古屋亨君、山村新治郎君、大村襄治君、  橋口隆君及び中谷鉄也君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員大村襄治君、橋口隆君、古屋亨君、山村新  治郎君及び中谷鉄也辞任につき、その補欠と  して山下元利君、山手滿男君、田中角榮君、中  村梅吉君及び三宅正一君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関す  る法律案内閣提出第八八号)  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 本法に関連をいたしまして、先般執行官法案に対する審議の際に、本委員会満場一致附帯決議をいたしました。その附帯決議がどういう結果を来たしておるか、今日の事情について、ただすべき委員会としての責任がございますので、この際、経過の御報告をいただきたいと思うのでありますが、念のために、附帯決議内容を列挙をいたします。つまり、附帯決議は、   我が国の執行吏制度については、今回の改正をもってしては不充分である。よって、政府並びに最高裁判所は、引続き執行事務を直接固定俸給制裁判所職員たる執行官において行う方向について検討を加え、早急にその実現方について鋭意努力すると同時に次の諸点について配慮すべきである。  一、各地方裁判所内に、執行官報務場所を確保することはもとよりその環境施設を明朗ならしめることに努力すること。  二、執行吏代理をはじめ執行事務に従事する職員処遇並びにその地位の安定と雇用条件について格別の配慮を行うこと、なお執行吏代理執行官への登用については、その経験等を参酌してできる限り有利な取扱いを行うこと。  三、手数料制度その他執行事務をめぐる各種の問題について改善を加え執務の公正の確保方について十分な努力をすること。  四、執行官以下執行事務処理に当る職員教育並びに研修について、予算上の手当その他必要な措置を講じること。 以上であります。  この執行官に関する法案の際は、与野党からかなり長期の展望にも立ち、具体的な提案がたくさんございまして、附帯決議につきましても、かなり具体的に指摘をしておる次第でございます。その後、この附帯決議政府並びに最高裁がいかなる措置をなされたか。その経過並びに結果について御報告をいただきたいと思います。
  4. 菅野啓蔵

    菅野最高裁判所長官代理者 附帯決議趣旨は、執行官法改正はなお不十分であるし、今後さらに完全な方向に向かって進める、そうして特に横山委員がお読みになりましたように、次の四点について考慮を払えという御趣旨附帯決議でございました。  その第一は、執行官執務場所を確保し、その環境施設を明朗化ならしめるように努力しろということでこざいました。私どもは この附帯決議の御趣旨に基づきまして、努力を続けてまいったのでございまして、どの程度のことができたかということにつきまして御報告申し上げますと、この執行官法を御審議いただいておりました当時、ちょうど昨年のいまごろであったかと思いますが、全国のいわゆる執行吏役場の数というものが、出張所等を加えますと、約三百あったわけでございますが、そのうち約六十カ所近くの執行吏役場というものが裁判所の外にございました。これを極力裁判所の中に収容いたすように努力いたしまして、ただいままだ収容し切れないでおるのは十五カ所ほどございますが、その間約四十カ所を裁判所の中に取り入れたということに相なろうかと思うのでございます。ただ、裁判所の中に取り入れただけでなく、極力その環境の整備をはかりつつあるのでございますが、その最も努力をいたしましたのは大阪でございまして、大阪は従来地下室執行官事務所がございましたものを、仮設ではございまするけれども、相当明朗化した事務室をつくることができました。なお、大都市といたしまして、名古屋執行官室環境が非常に悪かったのでございますが、これにつきましては、競売場をまず別なところに設けることにいたしまして、これはすでに実施いたしました。ただ執行官室は、名古屋簡易裁判所の新営のこともございますので、これが完成いたしますと、ことしの九月でございますが、ただいまの地下にある執行官室というような姿はなくなってまいって、ただいまよりずっと明朗化された執行官室が生まれることに相なります。  次に、第二点といたしましては、執行吏代理をはじめ、執行事務に従事する職員処遇について、制度が変わった後も十分留意せよという御趣旨決議でございます。この点につきましては、執行吏代理制度が、執行官法施行とともに廃止されるのではあるけれども、そこに働いている執行吏代理諸君について、十分な考慮を払わなければならないということは、この法律制定の過程におきましても、私ども十分に留意しておった点でございますが、その施行後の実施として、どういうふうに実行したかということを申し上げますと、まず執行吏代理のうち、執行官としての適性を有すると認められる者につきまして試験を行ないまして、ただいままでに約二十二名を執行官に格上げいたしました。  なお、執行官に任命いたしますにつきましては、執行官事務修習を行なった者から採用することになっておりますので、そういう意味で、執行吏代理の人で、将来執行官に引き上げることのできる可能性のある人につきまして、数名の者につきまして執行吏事務修習を命じております。これらの人は、試験に合格すれば執行官に昇格することが可能であるわけでございます。  事務員地位というものは、執行官法施行によりまして変わってはおらないのでございまするけれども、したがいまして、執行吏の雇用する事務員という制度は、執行官法のもとにおきましても、残存しておるわけでございますが、将来執行官の姿として、かような個人的な契約関係事務員を雇うという姿を廃止していきたい。そのためには執行官事務員が行なっている事務を、裁判所職員の手に移していく。その一つのあらわれは、今回会計事務職員増員を要求いたしまして、全国で二十名の増員が認められました。これによりまして、多少なりとも執行官事務の負担を国のほうで肩がわりをしていって、そうして事務員の数を減らしていく。そうして、できることならば、その裁判所職員に、その執行吏事務員の方を充てていくということにいたしたいと思っております。これは、まだ増員につきましても、予算が通ったばかりでございますので、これにつきましての実施はまだなされておりません。  第三点は、手数料制度がその後どうなったかということでございます。手数料制度についても考慮をせよという御趣旨決議でございます。  手数料制度につきましては執行官法によりまして……   〔横山委員「雑音がはなはだしく、声も低いので意味がとれません」と呼ぶ〕
  5. 大坪保雄

    大坪委員長 委員長から申し上げます。速記がとりにくいようですから、なるべく高声に願います。
  6. 菅野啓蔵

    菅野最高裁判所長官代理者 手数料に関する裁判所規則制定いたしまして、その内容といたしますところは、約全体として執行官手数料の収入が年間〇・六%ないし七%増加するようにきまりました。なお、しかし、手数料制度につきましては、今後改良を要すべき点がございますので、規則改正という形で将来も検討し、改正いたしてまいりたいと思っております。  第四は、この執行官以下執行事務処理に当たる職員についての教育、特に研修について予算的な努力をせよということでございます。この点につきましては、本年はさしあたり新しく執行官に任命された者につきまして、約十日間書記官研修所におきまして集中的に修習を行なう予算がとれましたので、ここにおいて十分な研修をさせたい、かように思っております。  以上をもちまして、附帯決議にうたわれました事柄につきまして、裁判所として行ないました実施状況を御報告いたします。
  7. 横山利秋

    横山委員 一つお漏らしになったようでありますが、冒頭には「引続き執行事務を直接固定俸給制裁判所職員たる執行官において行う方向について検討を加え、」とありますが、その点はどうですか。
  8. 川島一郎

    川島(一)政府委員 昨年執行官法の成立にあたりまして、お示しのような決議がなされました。私どももこの決議の御趣旨を体して今後制度改善及び運用に努力してまいりたいと考えているわけでございます。  まず冒頭に、固定俸給制裁判所職員たる執行官制度の確立について検討を加えるという点が指摘されてございます。この点につきましては、私どもとしても昨年の執行官法制定によりましてはまだ完成されていないから、今後検討すべき問題であると法案提出の当初から考えておったわけでございます。ただ前回、前々回の御審議におきましても、いろいろその点の御審議をいただきましたように、現在の執行官制度を直ちにこういった俸給制執行官に切りかえることが適当であるかどうかという点につきましては、まだ問題が残っておるわけでございます。執行官法が昨年の十二月三十一日に施行されまして、その実績がまだほとんど半年にも足りないという状況でございますので、われわれといたしましては、その執行官法施行されてから、その実績を十分検討して、それに基づく執行官実態調査ども行ないまして、その上で将来の方向を考えていきたい、かように思っておるわけでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 これは、固定俸給制を行なう方向について検討を加え、とありますが、国会意思というものは固定俸給制に推移しろという意思とあなた方は理解しておるでしょうね。あなた方は、もう自由な立場で検討するんだというお考えでございますか。
  10. 川島一郎

    川島(一)政府委員 現在の手数料制のもとで、いろいろな弊害が従来指摘されておるわけでございますので、それを改善する第一段改善策として、昨年の執行官法制定されたというふうに考えております。それで、この第一段改善策が行なわれた後の実情を見まして、それでなお改善すべき点が残っておりますので、今後さらに改善していくことは当然であると思いますけれども、その結果、固定俸給制まで必ずいかなければならないものかどうかということは、今後の実績を見た上で検討する、ただその検討するにあたりましては、固定俸給制を採用したらどうかということを常に念頭に置いて、そういう解決方法というものを頭に置いた上で検討していくというふうに理解しております。
  11. 横山利秋

    横山委員 重ねて申しますが、この附帯決議は、執行官につきましてずいぶん本委員会が熱心な討議を加えまして、与野党をもってかなり具体的な方向について政府注文をつけておるわけであります。綸言汗のごとしといいますけれども、この附帯決議進捗ぶりが、必ずしも十分でないように考えられますので、本法案の採決にあたっては、特に同僚諸君をも私は代表できると思うのでありますが、せっかくこの附帯決議について、十分誠意を持って実行せられんこと望んで私の質問を終わりたいと思います。
  12. 大坪保雄

    大坪委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  13. 大坪保雄

    大坪委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  旧執達吏規則に基づく恩給年額改定に関する法律案賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  14. 大坪保雄

    大坪委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、おはかりいたします。  ただいま可決せられました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  16. 大坪保雄

    大坪委員長 次に、先ほどの理事会における申し合わせのとおり、これより法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  17. 横山利秋

    横山委員 大臣が出ていらっしゃるまで、人権局長並びに政務次官に伺いたいのですが、沖縄における人権問題は多年のわが国の懸案であり、本土におります私どもが重大な関心を持っておる問題であります。私がこの前一番ショックを受けましたのは、ちょっと古いのでありますが、いまでも沖縄におきまして何かのことがあると、こういうことが事例に出ておるわけであります。それは、学童轢殺事件であります。二九六三年二月二八日午後四時頃、那覇市下泉町の横断歩道上に米海兵隊ジャクソン上等兵の運転するトラックが突込んできて、上山中学校三年生国場秀夫君(一四才)を轢き即死させた。当時現場には停止信号が出ており、他の車輌は停止信号に従って停止をしていた。」裁判状況は、「加害者過失致死罪として米軍事裁判所に起訴されたが、同年四月三〇日、五月一日の二日間で審理を終り即日無罪判決があり、判決理由は公表されていない。この裁判加害者の所属する第三海兵師団司令部で開かれ判事、陪審員、検事、弁護人はすべて加害者と同部隊の軍人である。裁判は公開したと米軍当局は述べているが、法廷が軍事施設内にあるため自由に出入はできず事実上傍聴は困難であった。」その後の状況は「加害者判決言渡直後の五月三日満期除隊になったとして米本国に帰国した。沖縄側は、米軍人戦場気分と、琉球住民蔑視支配者的優越感とが背後にあるものとして多大の疑惑を持っている。」こういう事件があります。  私がその後沖縄へ行ったり、あるいは沖縄から来た人の話を聞きますと、この種の問題について、最も代表的な引例をされるのがこのことでありまして、校長先生は、その後多くの県民諸君及び本土にある私どもに、涙をたたえんばかりに言われることは、学校で、交通事故について、が赤だったらとまるのだよ、青になったら進むのだよ、こういうふうに教えておる。しかるにかかわらず、信号が青になって、子供が出ていって、ほかの車がとまっておるのに、アメリカ軍がこれをひき殺した。そしてひき殺したアメリカ軍人無罪になった。そして満期除隊としてすぐアメリカに行ってしまった。私は、一体交通事故について、どう言ってこれから子供に教えたらいいのだろうか。その裁判の結果について、どう言って私は説明したらいいであろうかということを、校長先生が、あらゆる方面に、涙をたたえて訴えておるという話であります。私は、こういう話を聞きまして、私も答えるすべがない、ただ、言うならば、アメリカ軍はけしからぬ、アメリカ裁判はけしからぬ、こう言うだけでありまして、他の説明のしょうがないのであります。この点について法務大臣はどういう見解をお持ちでございましょうか。
  18. 田中伊三次

    田中国務大臣 この事実を承りまして、まことに驚くべき事態であると言うほかはないのであります。この問題の無罪になりました真相その他につきましては、事務当局よりお聞き取りいただきたいと思います。
  19. 堀内恒雄

    堀内政府委員 ただいま御質問がありました事件につきまして、私ども、はなはだ申しわけありませんが、詳細に具体的な事実を承知しておらないのであります。
  20. 横山利秋

    横山委員 これは、沖縄における著名な事件でございます。私は、法務大臣並びに人権擁護局長が、必ずしも沖縄における人権問題は、所管外であるとばかり言うておれないと思う。なるほど、沖縄における諸問題について、直接的には所管外ではあろうとも、九十六万の沖縄県民諸君人権問題が、どういうことに進んでおるかという点については、常に情勢を把握しておられて、そして適切な、かりに間接的であろうとも、われわれ日本人人権をじゅうりんされておるということであるならば、しかるべき幾つもの方法があると思うのであります。一体、人権擁護局としては、沖縄における人権問題について調査情報入手もなさっていらっしゃらないのでありましょうか。
  21. 堀内恒雄

    堀内政府委員 法務省人権擁護局といたしましては、沖縄に関して、調査情報収集もいたしておりません。たまに沖縄から法務当局人たちが参りますときに、ときおり対談をいたしましてお話を聞く程度でありまして、積極的な調査というものはいたしておりません。
  22. 横山利秋

    横山委員 これは法務大臣、どうでしょうか。厳密な意味の理屈を言えば、局長のおっしゃるとおりかもしれません。しかしながら、各国会沖縄事情についてはつぶさに質疑応答が行なわれ、将来の本土復帰に備えて、いろいろな前提要件調査というものが進んでおります際に、法務省として、所管外であるということは許されないと思うのであります。これからひとつ、沖縄における法務省関係の諸問題につきましては、調査検討をそれぞれの所管に命ぜられることが必要ではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  23. 田中伊三次

    田中国務大臣 国際法的に考えますと、取り扱いは外国であるという形になるわけでございます。しかしながら、いまお説のとおりに、沖縄住民百万近い者の人権が、どのように推移しておるかということの実態は、調べて悪いはずがございません。調査して悪いはずがございませんので、調査のやりよういかんということによりましょうが、とにかく先生示しの本件につきましては、さっそく手をつけて、その真相を調べてみたい。なお、類似事柄が諸所に起こっておるようなことがないとはいえない。類似事柄についても調査をしてみたいと存じます。
  24. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げたいのは、ただこの種の類似の問題でなくして、沖縄における法務省関係のあるすべての諸問題について、常に調査し、そして日本政府として打つべき手があるか、あるいは将来本土復帰に備えて、用意しておくべきことがあるか等を含めて、全般的に調査検討法務省所管内の各局にお命じになることが必要ではないか、こう申し上げておるわけであります。
  25. 田中伊三次

    田中国務大臣 検討をしてみたいと存じます。
  26. 横山利秋

    横山委員 本来ならば、こういうことを法務大臣にいまさらお願いして御了承を願うということは、実は意外に思っておる。そんなことはもうとっくにやっていらっしゃることだと思っておったのでありますが、そうでなくて、これからおやりになるとするならば、申し上げておきたいと思うのでありますが、すでにこれは一九六五年、沖縄佐藤総理大臣がいらっしゃった際に、沖縄人権協会注文をしたことがたくさんあるわけであります。総理は、それに対して十分承知をされて、私の聞くところによりますと、できる限り善処する趣旨のお話しをされておったわけであります。総理がそれを聞いていらっしゃりながら、何の措置行政要務上行なわれていないとするならば、総理としても責任があると私も思っております。念のために人権協会が希望しております十二の項目を申し上げておきたいと思うのでありますが、一つは、自治権拡大意味において、直接行政主席公選制の問題。それから二つ目は、高等弁務官拒否権の撤廃と、立法院の立法権限拡大。それから三つ目は、軍人軍属による犯罪取り扱いについての人権問題、捜査権裁判権民側に移管すること。それから、それに伴って県民にかかわる一切の軍人軍属犯罪についても裁判の結果及び執行状況県民に知らせるようにすること。四つ目は、演習行為によって人命、財産に対する被害が頻発しておるから、対策をすみやかに講ずること。五つ目は、布令一四四号の刑法並びに訴訟手続法典が、多くの点で占領下軍事処罰規定を含んでいて、人権を侵害するおそれがあるので、これを廃止すること。六つ目は、布令一四七号、琉球県民日本旅行管理による沖縄本土間の渡航は、自由をきわめて束縛しておるので、布令を廃止すること。七つ目は、布令一一六号の琉球人被傭者に対する労働基準及び労働関係令軍雇用労働者労働基本権を剥奪しておるから改正しろということ。八つ目は、軍雇用労働者に対する就職申込書について、特に同書における設問十七のCDE及びF項の事項は、明らかに個人の思想を目的としたものであり、基本的人権の侵害であるから廃止しろということ。九つ目は、現行布令に規定されておる参政権制限規定は、参政権の本質にかんがみ、十分に合理的なもあとは言いがたく、これにより、公民権が剥奪されている事実は不当であるから、参政権に関する諸布令の規制をすみやかに撤廃すること。第十、布令一三二号、禁止される集団行進並びに罰則について廃止すること。十一が、海外に移住している沖縄県民が、日本人として在外公館から保護が受けられず、人権問題を惹起したことがあるので、海外移住者生命財産を保障すること。第十二、本土公職選挙法改正して、沖縄県民にも参政権を与えることという各項目について、注文をしておるわけであります。  これらはまともにとられるならば、この中の多くが、日本政府の直接どうしようもないことでもある。しかし、日米協議委員会なり、あるいはたびたびの日米間のトップ会談等において、これらのことは十分アメリカ政府に申し入れ、善処を促し得るようなことが私はあると思うのであります。私は不敏にして、日本政府沖縄県民人権問題について、アメリカ政府異議を申し立て、抗議をし、善処を促したという事例はあまり知らないのであります。もちろん今日の沖縄の問題は、祖国復帰をはじめ、大きな問題がございますけれども、九十六万の国民が日常困っております問題は、耐えがたい精神的な問題は、まさに人権問題が一番日常身辺の問題である、こう考えられるわけであります。したがいまして、いまこれから調査にかかられる前におきましても、これはもう十数年間当然のこととしてわれわれが承知しておることでありますから、法務大臣としてもこの際、沖縄における人権問題について、ひとつすみやかに善処をされるというくふうはないものですか。この学童轢殺事件をはじめといたしまして、先般弁護士会調査をしてまいりましたそのほかのひき逃げ事件から、特権乱用事件から、あらゆる問題は枚挙にいとまがない、これはもう、なるほど日本弁護士会調査したことでありますから、アメリカ側の言い分がついてはおりませんけれども、権威ある日本弁護士会の正式の調査をいたしましたことが、あやふやなことが正式に報告されておるとは私は考えられない。事実、他の資料をもって見ましても、ほとんど事実が符合しておるわけであります。この際、法務大臣として、適切な何かの措置を打たれる必要がないものかどうか、いかかでございましょうか。
  27. 田中伊三次

    田中国務大臣 ただいまお読み聞けの十数項目にわたる事項の内容検討しますと、そのほとんどの全部が施政権に関するものだと考えられるのであります。施政権を離れては考えられないものばかりであるように承知をいたしております。さようにいたしますと、この理屈をここで言うてはならぬのでありますが、法務省人権擁護局が何か発動したような形において事実の調査をするということは、適当でない。これは、いかにしても適当でない。しかしながら、この事実を調査をする道はあろうかと思います。いま、お話をいただきましたような事柄についても、事実を調査するやり方はある。ことに法務省人権擁護をめぐる諸問題については、調査の必要がある、一番最初に申し上げましたように、調査をして悪いことはない。そういう趣旨から、行政的には調査の権限があるとかないとかということは言えないでありましょうが、これを政治的に扱ってみて、一応の事実の調査をしていいではないか、こういう判断を私がとることになりますならば、事実の調査を現地についていたしまして、その詳細なる報告を求めまして、その求めましたものを、どのような形でこれを施政権を行使しております米軍当局に反映せしむるかということは、またこれ一つの技術があろうと存じます。法務省人権擁護局がこんにちは、というわけにはいくまいと思います。そういう方法をひとつ慎重のうちにも慎重に考えまして、十分効果のあるように、ひとつこの点は善処をしてみたい、こう考えます。
  28. 横山利秋

    横山委員 入国管理局長おいでになりましたようですが、渡航問題についてひとつ伺いたいのでありますが、私の友人をはじめ多くの諸君から、まず第一に日本から沖縄へ参ります際に、何だかわけがわからぬが、自分だけはだめだったという場合が多いのであります。この点につきまして、日本弁護士会調査報告書はきわめて内容を精査して問題を分析しておるわけでありますが、私の承知いたしておりますものとおおむね合致しております。すなわち手続は、写真二葉、住民票一通を準備し、都道府県庁に出頭し、申請書を作成し、その申請書類は内閣総理大臣、具体的には総理府特連局へ行く。それから三番目にさらに米国民政府の出先機関たる、何ですか——日本にあります出先機関へ行く。さらに、大部分は沖縄の米国民政府へ行く。そこで入域せられるかいなか審査され、許可になると書類はルートを逆にたどって総理府へ返り、そこで身分証明書が作成され、都道府県庁を通じて申請者に交付されるとあります、ですから、クッションが日本における米国民政府の出先機関、トラベル・ユニットと言っておるわけでありますが、そこへ行く模様であります。それが第一のクッション。それから第二番目に沖縄の米国民政府へ行くわけであります。そこで向こうから来る場合もそうでありますが、この許可、不許可の場合と、保留の場合と、日時をそらす場合と、時間ぎりぎりになる場合と、一たん交付したものを取り戻しという五つの部面があるのでありますが、何だかちっともわけがわからぬという場合がある。そしてたぶん、われわれの憶測をもっていたしますならば、思想的に問題があるのではないかという憶測があるわけであります。しかし、許可されたものと許可されないものと、私どもが知る限りにおいても、全然区別がつかない。どうしてあいつが許可されて、あいつが許可されたにもかかわらずおれがだめなのか、全然わからぬのであります。その理由は、もちろん公示をされておりませんからよくわかりませんが、こういうような扱いというものは日本国民を少し侮辱しているのではなかろうか。弁護士会が参りますときにもずいぶん問題があったわけであります。このごろは、日本政府沖縄援助の問題で私ども主張をするわけでありますが、沖縄援助百三億ドルが効率的に使用されているかどうかという点について、われわれは関心を持っている。関心を持っているがゆえに、政府の役人が向こうへ行って念査をするということを、われわれも慫慂しておるわけであります。それをまたきらうというような傾向もあるようであります。したがいまして、沖縄入域については、なるほどアメリカ政府の権限に属するかもしれないけれども、少しやり方があまりにも一方的過ぎる。自由裁量が恣意に流れておる。理由がはっきりしないために、何か担当官の恣意に流れて、かってなやり方がされておるというきらいがいたします。その点について改善をさせる必要があるのではないかと私どもは痛感をするわけであります。この点はいかがお考えでありましょうか。
  29. 中川進

    ○中川(進)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、私ども実は沖縄入域をどういう人が申請せられて、どういう人が許可になったとか不許可になったということは、先生御指摘のとおり、これは特連局のほうへ参りませんと、私どもは承知いたしておりません。
  30. 横山利秋

    横山委員 私も沖縄問題特別委員でありますから、特連局長にも言うたわけでありますが、しかし、これはある意味においては日本国民の思想、信条なり何なりというものを、理由があればともかくとして、かって恣意に行なわれておるという点についてふんまんにたえないという点でありまして、ある意味では人権問題でもあろうかと思うのです。特連局というのはちょっとおかしな役所でございまして、こういう大所高所から問題をあまり提起いたしておりませんので、特に法務大臣に、私はこの種の問題についても留意をされ、善処をされるように希望をしておるわけでありますから、どうぞ。
  31. 田中伊三次

    田中国務大臣 ごもっともな御意見と存じます。努力をしてみたいと思います。
  32. 横山利秋

    横山委員 沖縄から本土へ来る場合については、特に問題があるわけであります。この場合におきましては、統計を見ますとずいぶん不許可なりあるいは保留なりというものが出ておりまして、例を見ますとまことに遺憾にたえないと私は思われるわけでありますが、これを見ますとずいぶん設例が出ております。「玉城幸一は一九六三年五月二日、親類訪問の渡航目的で大阪市の妻の父の病気見舞にゆく為渡航申請をしたが二〇日間を経過しても許可されず、沖縄人権協会に訴えでた。同協会は六月三日民政府当局にパスポート交付方を要請し同月十一日交付された。同人は、中央巡回裁判所書記官であり、沖縄官公労裁判所支部書記長である。」  それから第二の例として、「大城勲は一九六三年五月一日アルゼンチンに移民する産業開発青年隊の一員として渡航申請をしたが、他の隊員六名は全員約一週間で許可され出発したにも拘らず同人のみ保留された。」ようやくあとになって「六月三日および一四日人権協会および立法院から民政府当局に陳情し、同月末パスポートの交付を受けた。」  「当間嗣隆は琉球政府労働局の派遣で兵庫県の職業訓練所に入所していたが、義父の死亡で帰省していたところ、一九六三年五月三〇日再渡航のため渡航確認申請の手続をとった。六月一一日に至って保留になっていることが判明し、人権協会を通じて職業訓練所の帰省証明書を提出し善処方を要望し、六月二七日に至って許可されたがこれには次のような許可条件が附してあった。「本証は名義人が一九六五年七月一日以前に琉球列島に帰島する効力を有しない。」これは卒業するまで故郷に帰れないようパスポート中に明記してある最初の例である。」  「比嘉照子は一九六一年七月末留学で許可されたパスポートが一九六三年七月まで有効であったけれども横浜で就職するため一旦帰島した上、一九六三年三月二八日本土渡航の確認申請をしたところ、不許可になった。」  第五例は「本土留学者の渡航、平良康夫は沖縄社会福祉協議会の選考推薦を受け東京の日本社会福祉事業学校に入学するため一九六三年三月二一日渡航申請したが四月一二日不許可となった。同人は一九六二年七月七日にも渡航申請をしたが不許可となっている。二度に亘る渡航不許可のため、進学の途が閉された同人はやむを得ず沖縄で就職している。」  第六例は、「申立人は一九六三年一一月一三日東京で開催される全国青年大会に体育部門のバレーボール選手として参加するため那覇青年協議会から他の十二名と共に一〇月一九日渡航申請をした。一一月二日他のメンバーは全員許可されたが、申立人のみ理由不明のまま保留となった。人権協会から民政府公安部長に対し早急に許可するよう要望したが、同月二日に至っても検討中であるという理由で許可されず、結局本人の大会参加は不可能となった。」  第七例は、「真喜屋ツルは東京の大学を卒業する娘の卒業式に参列すべく、帰省中の娘の確認手続申請と同時に渡航申請をしたところ、娘の確認申請は一週間後に許可されたが、母である同人の分は理由不明のまま保留された。人権協会から民政府公安部長に要請した結果、同月二六日許可された。」  これはもう、こういう例を引きますと枚挙にいとまがございませんが、結論としてこういうことが言われるというのであります。第一に、「申請、者に対して長期間「検討中」とか「理由は本人がよく知っているだろう」などと言って、全く理由を明らかにしないまま保留し、あるいは不許可としている。」第二に、「保留については、異議申立の方法がない。」第三に、「不許可の決定に対して異議申立をしても、事実上再審査は行われていない。」第四、「出入管理の主管は民政府公安部であるが、保留、不許可などの決定をしている部門が秘密にされていて不明であるため、直接折衝の相手がつかめない。」第五、「保留ないし不許可の基準が定められていないため、一部の職員の恣意によって決定されている傾向がある。」これが現在の出入国管理に対する欠陥だと指摘をしているわけであります。つまり九十六万沖縄県民並びに本土から沖縄への出入国に対しては、そう言ってはなんでありますが、ずいぶんいいかげんな恣意的判断が働き過ぎている。私の聞くところによりますと、沖縄からやってきた人に対して日本の警察官が何か尾行をしておったという事実があるそうでありますが、そういうことをも含めまして、本土沖縄間の往来の自由というものが、今日における多少の制限がありましても、かかる恣意的な出入国の許可、不許可、保留のような条件がついておるということはどうしてもがまんならぬことであります。大臣に、ひとつ十分この機会にアメリカ政府なり日米協議委員会に対して申し入れをし、改善をしてもらいたい。これはもう沖縄から来る人々がことごとく言うことでございまして、しかもいまの事例の中にありますように、だれかが何かの機関に頼めば、ある程度そうかと言ってやってくれるという、顔といいますか、そういうことも働いておりますことも、——人権協会ならばいいんでありますが、人権協会調査でありますから、ほかの何かの顔があれば許可され、不許可になるというようなことは、これまたがまんがならない点であります。いかがでしょう。
  33. 田中伊三次

    田中国務大臣 仰せの事柄は、申すまでもなく特連事務に関する総理府の所管に属することでございます。しかしながら私は内閣の一員として総務長官とはどういう話もできる間柄におります。また、わが法務省事務の上にも全く無関係のものでもございませんので、ただいま仰せのことをよく頭に置きまして善処をしていきたいと思います。
  34. 横山利秋

    横山委員 沖縄における軍人犯罪の問題が常に絶えないのであります。これによりますと、ベトナム戦争の激化に伴って一九六四年から米軍人軍属による犯罪は増加の一途をたどりつつある。琉球政府の統計を見ましても、これは顕著たるものがありますが、しかし、琉球政府の統計というものは、もうある程度判明したものだけのことでありますから、陰に隠れております犯罪というものは、枚挙にいとまがないと沖縄ではいわれておるわけであります。しかもそれらは、事、米軍軍人軍属がいささかでも関与いたしましたものは、すべてアメリカの軍事裁判所ということになりまして、日本人が被害者でありましても、十分な陳述なりあるいは補償というものが行なわれていないという点が沖縄における問題の焦点になっています。「特に昨年一〇月末から基地の町コザ市に続いて起った米軍CID発砲事件、クラブ経営者殺人事件沖縄県民を強い怒りと恐怖の念でとらえこの問題の解決を要望する声は極めて強いものがある。」「この様に多発する米軍人犯罪に対し、これを抑制し、捜査、処罰する機構は極めて不備であり、このことが、又多発と不安の原因となっている。米軍人に対する民警察の捜査権は完全に否定され、現在あるものはわずかに殺人、傷害、暴行、強盗、強姦、夜盗、窃盗、放火、不法侵入、器物毀棄、脱走、自動車事故の際の警察官の要求に対する陳述をせず逃走するという限定された犯罪に対する現行犯逮捕のみであり、それすらも逮捕した場合には「直ちに最寄りの米国陸、海、空軍の憲兵隊又は海岸警備隊に逮捕状況明細報告書と共に犯人を引渡さなければならない」とされている。」これは布令第八七号、琉球民警察官の逮捕権。「したがって詐欺や酔払い運転スピード違反等はいくら警察官が現認しても何らの措置がとれず、実際に被害が起きて始めて対応する措置をとることになっているのである。実際に発生し逮捕した犯人に対する捜査等はしたがって米軍に引きつがれるわけであるが、引継ぎ後の事件処理は一切報告を受けるべき制度がない。従って、官民共に引継がれた段階から知る権利を持たない。被逮捕者の運命、裁判経過、処罰実施の有無については大抵の場合一切不明である。しかも極く稀に新聞記者のみに公開された裁判の結果は国場秀夫君轢殺事件についての無罪判決」こういう総括的に述べてあります点は、もう敗戦以来今日まで何ら変わりない事実であります。私どもはこの事実を聞くにつけ、また知るにつけ、去年沖縄に行って見るにつけ、歯ぎしりするような思いであります。いかに今日の状況が、現実問題としてやむを得ない状況であるとはいえ、しかし、このままでいいということはない。これは放置することが許されない問題である。  繰り返して言うようでありますが、あなたは法務大臣であり、九十六万の沖縄県民がこの種の人権問題やあるいは裁判事件について、日本における直接の期待を持つのは何といいましても法務大臣である。なるほど総理大臣や外務大臣からも御注意を願い、善処を願うのだけれども、実際この問題の調査をし、それに対して事実を知って、こうすればいい、ああすればいいというふうに責任を持って処理をしてもらえるのは、実は一番のしんどころは法務大臣ではないか、こう考えておるのであります。法務大臣、これらの問題について、あなたの政治家としての御配慮というものをこの際ひとつ——この種の軍事的な米軍軍人軍属による犯罪について、何かこの際政府を動かし、沖縄の米軍民政府に対して善処を促されるという気持ちはないのでございましょうか。時、おりしも沖縄立法院の人々が日本にやってまいりまして、もう数日後に参考人かあるいは何らかの資格をもって国会で御説明をされるのであります。その御説明をされる一番要点の幾つかの中の一つは、沖縄における犯罪人権問題等が主要な焦点になっておるわけであります。この際、あなたの決意を披瀝して、九十六万の沖縄県民にこたえてもらいたいと思うのですが、いかがでございますか。
  35. 田中伊三次

    田中国務大臣 いま承りました数々の事柄は、施政権下における沖縄住民の悲劇とも見るべきものであろうかと存じます。ところがここに留意すべきは、あくまでも施政権は、人権の問題にしても、出入国の問題にいたしましても、その他の案件にいたしましても、どれ一つとして施政権に関せざるものはない。そこでその施政権下のアメリカの行なうことでございます。日本の法務大臣が元気を出して、力んで、これに好意を持って話をしてみても、直接に御満足のいくような答えのいたしょうがない現在でございます。ただ私は、こういうことはできるのじゃないか。そういう数々の不合理なことがあるゆえに、施政権というものは日本に返還すべきものではないかという、その施政権返還要求の重要な、具体的な理由になるものではなかろうか、これらの事柄調査いたしますことは。そこで、私の担当しておりまする人権問題を中心といたしましては、ひとつ何らかの手で、日本の法務大臣が何を言っておるのかと言われないように注意しながら、ひとつ極力道を切り開いて、その内容というものを調査してみたい。まず調査をいたしまして、動かざる事実が続々出てくるものと思いますが、そういうものが出てまいりましたときには、これを外務省なり、日本の総理府なりと相談をいたしまして、その事実を活用する道を考えてみたい。事実にものをいわして現地と交渉をする等の方法を考えてみるべきものではなかろうか。いま、私の口でもって、胸の中にありますことをそのままここで申し上げて、非常な決意を述べてみたところが、一体、日本の法務大臣が何を言っておるのかということに現在はなろうかと思う。そういう形式的なことでなしに、できるだけ事実の調査を先にいたしてみまして、そして、その事実をあげて、日本政府が全体として、行政的でなくて、政治的に交渉をする生きた資料をここにひとつまとめるということに私は重要な意味があろうかと存じます。法務省の入管局、外務省の旅券課、そういうふうな政府事務当局では、おことばを、どうせよと仰せになることは無理で、これは手のつけようがない。いまのおことばにもありますように、政治的に、事実を調査をして、その不合理な事実を活用して、そして両国の間に交渉を持つという手は残されておるものと考えますので、そういう方向に向かって苦心し、努力をしてみたい、こう考えております。
  36. 横山利秋

    横山委員 ごもっともなお話だと思います。私は、もうあなたのお気持ちをわかるにやぶさかではないのであります。閣僚の一人として、それではこういうことについてどう考えるのか、あなたの基本的なものの考え方をこの際承っておきたい、これは閣僚の一人として。  沖縄へ行きますと、端的に言われて絶句いたします。私が社会党の代議士ということを離れて、国会議員として絶句をいたしますのは、こういうことであります。つまり、沖縄はいまアメリカの施政権下にあって、そして軍事基地になっておる。われわれは無条件で、とにかく祖国復帰したい。アメリカは占領当時と違って、いまは軍事目的で沖縄を占領している。つまり施政権を持っておる。その施政権を持って沖縄を支配している。性格があれ以来変わってきたのである。第三番目に、今度は、日本政府は、アメリカに軍事基地があることが、この極東並びに日本の安全のために重大な寄与をしておる。こういう三者それぞれのニュアンスがある。そこで沖縄諸君が言っておりますのは、それじゃ何か、九十六万のわれわれの犠牲によって本土におる諸君は安全を確保しておるのか。沖縄が、ベトナム戦争を始め、どんどんどんどん基地化しておる以上、核基地である以上、一たん緩急のときには第一義的に攻撃にさらされる運命にある。論理上当然のことだ。その軍事基地を日本は必要視しておる。だから、一体本土におる諸君はどうなんだ、いざというときには、われわれのからだを犠牲にして安泰をはかろうとしておるのか、こういう痛烈な叫びであります。そこまで聞きますと、私は、社会党の立場ならまた別の説明をいたしますが、国会議員として、全く絶句をする気持ちであります。法務大臣は、こういう叫びに対しましてどういうお考えを持っていらっしゃるのでありましょうか。
  37. 田中伊三次

    田中国務大臣 お話を承って、沖縄現地の県民諸君のお気持ちがそういうことであることも想定できます。これを承ると、何ともものの言いようがない。いま先生が絶句と仰せになるが、そのおことばどおり、絶句以外にことばはないわけであります。こういう問題に関して、ここに重要なことが一つあると思いますのは、たとえばきょう横山先生のそういう御意見が述べられて、御発言があった。これに対して、閣僚の一員である法務大臣が、所管事項であるないにかかわらず、とにかくこれこれの意見を述べたということは、私は非常にむずかしい問題をかもすのではないかという感じがいたします。それで、御質問をいただく先生のお気持ちと、私の受ける感じは全く同一でございます。一つも違いはないと思う。何とも、ものの言いようがないことであります。しかしながら、ここで私が——もう胸の中に一ぱいの言いたいことがあるわけでございますが、言わないほうがいいんじゃないか。新聞の記事に出る。現地を刺激をする。施政権下で行政をやっておるのに、日本の法務大臣が何を言うのかということが起こってきそうだ。いろいろなことにじゃまになる。一刻も早く、いま仰せになったようなことを根本的に取り除くためには、日本がみずから、施政権を返還をしていただいて、政治行政を行なうということが何らかの形で進んでいかなくてはならない。そういう事柄にたいへんじゃまになる発言をすることになるのではなかろうか、思いのままを、このとおり、私はこう思うということを申し上げると。そういうふうに考えますので、きょうのところは、先生の仰せになったおことばを私はしっかり胸に入れまして、これは外務大臣とも、総理大臣ともお話をする機会は幾らもあるわけでございますから、まず先ほどお約束を申し上げました人権侵害問題をめぐる具体的な諸般の事件というものを、できるだけひとつ方法を駆使いたしまして調査をいたします。そういう事例をひとつ法務省の立場でまとめ上げて、これを活用する道を考えてみたい、こういうことで、いま仰せになりました重要な事柄について私の意見を言わしていただくことを、どうぞひとつお許しをいただきたい、こう考えるのでございます。
  38. 横山利秋

    横山委員 頭脳明晰、論理をもって鳴る法務大臣が、沖縄県民の痛烈な質問に対してお答えができないといことは、とりもなおさず、総理大臣でもおそらくお答えができないのではないか。つまりそれは今日の佐藤内閣のとっておる一番のアキレス腱であろうと私は思うのであります。しいていうならば、おそらくそれは、いざとなったらアメリカ軍諸君を守ってくれるであろうから、心配してくれるなというお答えにならざるを得ないと思います。そういうことがまた本土におります。一体政府として、同胞として言い得ることであるかどうか、そう言って平然としておられることであろうかどうかということにまた発展をすると私は思うのであります。しかし、大臣が答えがしようがないという答えをなさった以上は、これ以上言ってもお答えにならないと思うのであります。さすればよけいに、今日の、それなるがゆえに日常苦しんでおります人権問題を中心にして、多少無理であろうとも、とにかくやれることはやるという御決意をし、また行動をしていただかなくてはなりません。その意味で私は法務大臣に要請をしたいと思うのでありますが、いまの日米協議委員会というものは、先般の約束、取りきめによりまして、単に経済援助の問題のみならず、引き続き琉球諸島の住民の安寧の向上をはかるんだということが一つ書き加えられておるわけであります。住民の安寧とは一体何か。ずいぶん議論があるのだろうと思いますが、私はやはり人権問題もその中に入ると思う。大臣が、部下に命じて、琉球におけるこの種の問題を御調査をされ、そうして、今日置かれております日米間の窓口であります日米協議委員会に提起をされ、そして、具体的な改善をはかるとかあるいは他の方法をもって、この問題についてわが国に法務大臣が健在である、九十六万の日本人、また、いわゆる日本政府が潜在主権を持つそれに対して、看過のできない問題であるという発言をなさることは、きわめて適当妥当なことだと私は思うのでありますが、日米協議委員会に対する問題の提起並びに他の方法について、大臣がおやりくださるかどうか最後に承っておきたい。
  39. 田中伊三次

    田中国務大臣 材料を集めまして、これを両国協議会に出すのだというそのことをここでしゃべらないほうがよい。これは非常にむずかしく進んでおりますので、しゃべらないほうがいい。それで、お願いを申し上げたいのですが、先ほど申し上げたように、調査それ自体がまことにむずかしいのであります。  まず、私の考えを申しますと、先生お手元にお持ちの資料をとにかく説明を付して、私の部下にさっそくちょうだいをしたい。そうして、どの道を経てそういう人権侵害の事案の真相がわかるかということをよく考究をいたしました上で、とにかく事実の資料、真実の資料というものを収集してみたい。これはひどいではないかという実態がここにあらわれてまいります場合に、おのずから、どういう方法で両国の間に交渉をするかということの答えが出てこようと存じます。あらかじめ資料をもって、その資料をつきつけて、両国の間に交渉してみせるというような発言は、施政権がないのですから、ただ、政治的に何とかしなければならぬという常識と意図があるだけなんで、国際法上の施政権はないのですから、私はそういうことを本日のこの席で私が述べることは、はなはだ行き過ぎのそしりがあるのではないかと思います。行き過ぎというのは、日本側から行き過ぎはないのですが、アメリカさん側から言いますと、行き過ぎたことを法務大臣が言うではないかというそしりがあるのではないか、こう考えますので、とにかくさっそく調査をさしていただこう、誠意を持ってやりますから、どうぞそれだけひとつ……。
  40. 横山利秋

    横山委員 終わります。
  41. 中谷鉄也

    中谷委員 一言だけ関連をいたしまして、大臣にお尋ねという形で要望をいたしたいと思います。  先ほどから横山委員のほうから、いわゆる日弁連報告書を引用せられまして詳細に、沖縄における渡航問題、あるいは司法制度の問題、人権問題、米軍人犯罪、軍用地接収問題、こういう問題についての大臣に対するお尋ねがあったわけであります。渡航問題あるいは軍用地接収問題、すべてこれは広義の人権問題であろうかと私は思うわけです。  そこで、実は先ほど大臣の非常に微妙、かつ慎重な御答弁があったのでありまするけれども日米協議委員会においては、近く行なわれる委員会において、人権問題を取り上げるのだということが大きく政府の方針として報ぜられているようであります。この点については他の委員会における審議から、そういうふうな政府の方針がすでに明確になっているというふうに私承知いたしております。そういたしますると、一つ、私のほうからお願いをいたしたいのは、法務省として御調査を早急にされる、そうして人権問題が初めて今度日米協議委員会で取り上げられる。——初めてだそうです。その初めて取り上げられる日米協議委員会に、政府として法務省人権問題に対する問題の指摘というものがやはり大きなウエートを占める中で、人権問題というものが日米協議委員会の中で論議される、そういうことが私は必要ではないかと思う。したがいまして、早急に問題点を御調査されるという御趣旨は、近く行なわれる日米協議委員会において法務省の御調査が間に合うように、そして法務省の意見が反映するような形でということでひとつ調査のめどをおつけいただきたい。このことをお願いいたしたいと思います。  これは横山委員きわめて詳細に、いろいろな問題について問題をすでに指摘せられたので、私のほうから申し上げるほどのことはないのでありますけれども、たとえば沖縄裁判は、日弁連報告書によりますると、布令第一四四号、刑法並びに訴訟手続法典というので行なわれているそうでございます。ところがその刑法並びに訴訟手続法典のいわゆる付属法規であります米国民政府裁判所刑事訴訟規則という裁判所規則については、全然これが公表されておらない。琉球政府も知らないし、したがいまして訴訟関係人であるところの弁護人も知らない。こういう中で裁判が行なわれているのだそうであります。したがいまして、われわれ少なくともこの法務委員会の中で、法によらないで、法を知らされないで裁判を受けているというようなことについては、これに全く非常識なことだという問題として当然理解できるわけなのです。ただ、この問題について、実は私、沖縄特別委員会におきまして特連局関係の方に若干の質疑を申し上げたのですけれども、私の印象では、そういう裁判所規則が全然公表されておらないということについての重要性と申しますか、そのことが裁判の公正というものにどのような影響を与えるかということについて、特連局あるいは外務省の政府委員の方が、必ずしも深刻な御認識をお持ちになっているようには私には感じられなかった。したがいまして、やはりこういう人権問題ということになってまいりますると、何としてでも法務省の専門的な知識、そうして法務省の現在までのいろいろな資料、日本の憲法のもとにおける、日本国内におけるところの人権擁護実態、それとの比較というものが大きな材料になるだろうと思うのです。したがいまして、重ねてお願いをいたしておきまするけれども調査のめどは近く行なわれる日米協議委員会までにされることをひとつお願いをいたします。  同時に、いま一つは、人権問題について、渡航等を含む広義の人権問題を含めて、なかんずく法務省としても、絶対にこの問題だけは日米協議委員会で問題にさるべきだという、いわゆる人権問題等については、積極的に閣議等において意見の御開陳をいただきたい。このことをひとつお尋ねをいたし、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  42. 田中伊三次

    田中国務大臣 筋の通ったお話でございますので、御意見を慎んで承って善処をいたします。
  43. 大坪保雄

    大坪委員長 沖本泰幸君。
  44. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きょうは大臣が御出席になりましたので、最近、とみに話題になっております政治資金規正法案改正案に対しまして、諸般の御事情なり、あるいは御見解なりを少し承りたいと思います。  先日の委員会政務次官は、ちょうどいま練っておる最中だが、大臣もいらっしゃらないので答えができない、こういうふうにお答えを避けられたわけでございますが、まず初めから、ちょっとお伺いしたいと思いますが、大臣に、政治資金規正法案が立法化された原因、または基本的なものはどのようなところにあったのか、こういう点についてお教えいただきたいと思います。
  45. 田中伊三次

    田中国務大臣 きょうは、むずかしい御質問ばかりが出てまいります。たいへん私がものが言いにくいことばかりが出てまいります。実は、まだ閣議にまで出てきておりません。そこで閣僚の常識でございますが、他省の所管事項というものは立案が準備できまして、要綱を示し、案文を示して、閣議にあらわれましたときまではあまり容喙をしない。しかし、本件は先生御承知のとおりに、罰則規制をするわけでございます。政治資金の規制違反の場合に罰則がございますが、その罰則に関することは、閣議の席を待たず、私の所管でございます。そういう意味で、罰則中心のお答えを私がここで申し上げることは、だれも文句を言う者はおらぬのでございます。そういうことから申し上げるのでありますが、一口御了解をいただくために申し上げますと、一体、会社なり個人なりが収入を得、所得税なり地方税なり、その他の税金を納めて、残ったものが自分の自由に使える所得となっておる。そういう処分自由の、——個人にしても会社その他の団体にいたしましても、そういう税を納めて、自分の手元に残っております財、所有の財産というものは、非常に極端なものの言い方をして恐縮なんでありますが、川へ捨てようが、気の毒な人にやろうが、好きな政治家に金を与えて、その政治家を育てようが、その人の自由でございます。これはどの上で自由かといえば、憲法の上で自由である。それは所有権だということであります。所有権の内容は、処分の自由が含まれている、こういうことでございます。そういうことでございますから、政治資金の規正法などということで、一体何が規制なんだというふうにいわれてみると、ちょっと胸につまるものがある。ところが、これは申し上げるまでもなく、そうしてほうっておきますと、政界の秩序を撹乱することになる。政界の秩序を国民の期待に沿うように守っていくためには、そういう自由なる処分権を持った財産といえども、憲法上の所有権は自由であろうとも、支出をする側と受け取る側の双方に対して、一定の規制を加えて、なるべく小さい金を大勢からいただくように、大型の、多量の金を一人からちょうだいするようなことのないように、情実のからむ政治行政に移行しないように、そういうふうにしていくことが、広く申しますと社会公共福祉、狭く申しますと政界の秩序維持というものの上から必要ではないかという国民の世論を念頭に置きまして、ここで罰則をつけて、寄付をするほうと寄付を受けるほう、双方に規制を加えようというのが、まさにこの法律のねらいでございます。  そこで、そういう趣旨で、本来処分自由なものを処分するんだからということから考えますと、あまりこれらのめちゃくちゃに多い刑罰はよくない。そういう筋論から言いますと、重い刑罰はおかしい、懲役処分、それはもってのほかだ、まあ、あえていえば、体刑の中でもたいへんやさしいものとされておる禁錮を選ぶ以外になかろう。軽い禁錮か、しっかりした罰金か、どちらかの程度で双方の、寄付をするほうと寄付金を受け取るほうの双方に対して、罰則をつける必要があるのではなかろうか、こういうことが理由でございます。  それからもう一口つけ加えて申しますと、しかしながら、いま世の中でいわれておりますように、それは一般の寄付について——一般の場合を言うのでございますが、そういう一般の寄付の制限に違反をした場合は、その程度でよいかもしれぬけれども、しかしながら、ものによりましては体刑でなければならぬということも考え得る。たとえて申しますと、事もあろうに日本の政治資金を外国人から受け取った、これは禁ずべきものでございます。それから、請負関係にある会社から——補助金を受け取っておる、そういうふうな関係から、それを承知をして寄付を受け取ったなどというような場合においては、出したほうについても、受け取ったほうについても、いわゆる特定会社から金を受け取る特定会社でありながら、寄付金を支出したというような実態一つの例でありますが、こういう場合においては、重い罰金という程度でなしに、これはやや高度の禁錮という体刑で処分をするということでなければ、法の目的を達し得ないのではなかろうか、こういうことがございますから、重いものは刑罰的に申しますと体刑でいく。しかし、必ずしもその場合において、金額のいかんにかかわらず、違反さえあれば体刑というわけにもいきません。おのずからその中に重い軽いがございますので、そういう特殊な重要違反におきましては、重いものは体刑にもなるように、体刑または罰金というように、選択刑でいけるようにしておくことが実情に合うのではなかろうか。一番最初に申しました一般の寄付、一般の受け取る立場の金額違反というような、単純な一般違反というべきものにつきましては、これは罰金刑でよくはなかろうか。体刑ならば体刑で、ごく軽いところでいくべきものであろう。重きに失することは間違いだ、こういうふうに実は私は考えておる。私の部下にもそうでなければならぬぞ、近代刑法の罰則を取り扱う立場では、いたずらに行き過ぎてはいかぬということを言うて聞かしておりますので、その線に従いまして、自治省から意見を聞かれれば、その意見を今日まで述べてきております。罰則に関しましては。罰則以外の事柄は、私が軽々にしゃべらぬほうがよかろう、これは藤枝君一つにまかせておいたほうがものがはっきりしておる、こういうふうに考えております。
  46. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大体、現在の意向をおっしゃったように思うのですけれども、もう一度初めからお伺いしたいわけですが、今回の改正にあたりまして、法務省のほうの役割りは、ただ罰則だけ提示するということでしょうか。意見だけを述べるというのですか。ただ、新聞とかいろいろな面から拝見しますのに、何か、ただ意見だけを軽く述べて、それで終わってしまっておる、こういうふうな形に見えるのですけれども、その点は、現在の改正法案の作成にあたって、どの程度の権限をお持ちで臨んでいらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  47. 田中伊三次

    田中国務大臣 罰則限りでございます。罰則以外の事柄につきましては、論及すると混乱をいたします。罰則だけについて意見を述べております。
  48. 沖本泰幸

    ○沖本委員 罰則を定めるにあたりまして、また意見を求められて、罰則についていろいろな法務省案をお出しになるわけですが、その基本になるような資料は、どういうものを持って当たっていらっしゃるわけでしょうか。
  49. 田中伊三次

    田中国務大臣 仰せのことは、これが重いか軽いか、どうしてこれは懲役にするのか、どうしてこれを禁錮にするのか、どうしてこれは罰金刑にするのか、なぜ選択にするのかという基本でございますね。——その基本は、政治資金規正法と類似した法制がわが国にあるかどうか。あれば、その似たものは罰則はどうなっているかということを調べまして、それとバランスをとるということで、行き過ぎないようにするということが、罰則を設けます上の一つの技術であります。しかるところ、たいへん妙な話をすることになりますが。政治資金規正法、現行規正法というものがございますが、これ以外にどうも、自分の財産を自分が自由に処分をして、取り締まりを受けなければならぬという法制は、わが国にございません。ありといたしますと、やはり先生も御承知のように、公職挙法選の中に、選挙費用をちょうだいをして、ちょうだいした選挙費用については、それぞれ所管の選挙管理委員会報告——届け出と一口にいうておりますが、法律報告になっております。報告せよという条文がございます。選挙のときにもらう寄付金についての報告、これに関する規定、これが現行法の生きておりますものでは今度の法律に一番近いものだ、こう判断をいたします。そこで、その一番近い法律はどうなっておるかということを調べまして、これに一つのある種の基準を置きまして、これと比較をいたしまして、この程度が行き過ぎでなかろう、この程度はよかろうということを考えておるわけでございます。むろん、そういう罰則を設けて取り締まりをいたします上から、一般社会に対する影響というものについては、世論も聞かなければならぬということはございますけれども、一応、公職選挙法のそれぞれの似た項目一つの基準といたしまして、これに右へならえをする、こういう考え方であります。
  50. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、公職選挙法で寄付の規制があるわけですけれども、したがって罰則もあるわけでございますが、いまおっしゃいましたところでは、比較して、この程度のものはこういうふうにしたほうがいい、こうお考えになり、またそれからつくられていくわけですけれども、現在までの段階で、法務省あるいは大臣のお考えでは、会社あるいは個人の寄付金に関しては、どの程度のものがどの程度の罰則になるか、私たちも参考のために、その基準になるような事例についてお教えいただきたいと思います。
  51. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほどもちよりとおしゃべりをいたしましたように、政界秩序を維持する上から、より高い価値を持っておるんだ、こう考えられる項目については体刑がよかろう。しかし、体刑オンリーでやりますというと、いやでも応でも体刑に処していかなければならぬことになりますので、その間の事情というものも、その場合その場合によっていろいろ個性を持っておるわけでございますから、体刑と同時に、罰金にもなるように、選択刑的に、どちらでもとれるようにつけていこう、こういうふうに考えるのでありますが、その政界秩序を維持する上に価値の高いものはどういうものかというと、先ほど申し上げましたように、たとえて申しますと、外国人から寄付金を受けるようなもの、これは現行の政治資金規正法でも、選挙のときだけは禁じておるわけであります。それを選挙のときだけでなくて、選挙以外に寄付金をもらう場合に、日本の政治資金を外国人からもらう、そんなばかなことがあるかという立場に立とう、拡張して、政治資金を一切外国人からもらっちゃいかぬということにしよう。  それから特定会社でございます。特定会社につきましても、特定会社から寄付金をもらうということは、じょうだんじゃないということになりまして、これも現行法では、御承知のとおり、選挙のときだけ禁じてございます。選挙以外は、特定会社から金をもらっても、現行法の上では一向さしっかえございませんが、それも世論にかんがみて、もっと強化すべきものだ。選挙のとき同様に特定会社からは一切いけないのだ、こういうようにこれを規制していったらどんなものだろうか。そういうふうに、二、三の例でございますが、政界の秩序を維持する上に、高い価値を持っておるというふうに考えられるものについては、罰則も重くしてやらなければならない。ただし、罰金と両方選択ができるように選択的に体刑をつけていく、こういうことであります。  それ以外の個人の場合であるならば一千万、その他の団体であります場合においては二千万という、いわゆるる総ワク制限といわれております一般の寄付の問題につきましては、これは体刑は無理であろう。最初にも申しましたように、自分の金を人にやるのが何が悪い。本来選挙というものは、そもそも考えてみると、投票も秘密になっておる。おまえはだれに投票したか、そんなことを人から聞かれて答える義務はない、こういうことになっておる。投票は秘密である。政治家を育てることは自由だ。投票が秘密であるということと、選挙資金を自由に出せるということは、つながっておるわけであります。投票が秘密であるように、おれが税金を納めて、おれの手元に残っておるから人にやることはわしの自由じゃないかという考え方に本来立ちますならば一しかし、政治秩序を維持する上からは、遠慮してもらわなければならぬのだ、こういう法律なんでありますから、これはどうも罰金以上のものは無理じゃなかろうか、行き過ぎておるように思います。世論から申しますと、あるいは体刑をつけてしまえということで、胸がすくような感じがするかもわかりませんが、そういう判断を責任者はすべきものじゃない。これはやはり行き過ぎではないか。したがって、寄付金をもらった場合、出した場合、一般の寄付金に関する双方は、やはり罰金でいいのじゃないか、こういうことでございます。
  52. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、一足飛びに、時間もございませんので、飛んでお伺いしたいと思うのですが、五月三十日の新聞紙上によりますと、法務省は二十九日の自民党選挙調査会で、政治資金規制に関する罰則適用の具体案を提示した、同案は、規制制限額をこえた場合に、禁錮刑と罰金の双方を併用すべきだとしていた従来の主張を引き下げ、特定会社の寄付禁止と、労組献金に関係のあるあっせん方法の規定の二項目に定めた、こういうふうなことが記事に出ておるわけですけれども、また自治省、法務省、両省は、現行法にも禁錮刑があり、法律上のバランスから見て禁錮が必要だとしており、この辺の調整が今後の問題になるだろう、こういう解説をつけておりますけれども、この法律上のバランスというのは、どういう点が法律上のバランスになるのでしょうか。あるいはこういう事実がおありであったのでしょうか。新聞紙上の問題ですからということもありますけれども、できればお教えをいただきたいと思います。
  53. 川井英良

    ○川井政府委員 その二十九日の会合には私が出席しておりましたので、私から便宜お答えをさしていただきたいと思います。  ただいまお読み上げになりました記事は、必ずしも正確ではございません。あくまで先ほど大臣が申し上げましたように、自治省の法案でございまして、責任当局は自治省でございますので、罰則の原案につきましても、自治省のほうから一応案が示されまして、それについて、私に対して、法務省の立場から何か意見はないか、こういうふうな趣旨会議が運ばれてまいりまして、示された案について私から若干の意見を申したわけであります。これが正しい当時のいきさつでございます。
  54. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、先ほど大臣は、罰則に関することは、法務省所管だ、こういうことになるのですが、その辺、自治省との関係性は、われわれちょっと理解に苦しむわけですが、どういうふうなんでしょうか。法案ができてくるまでの段階ですから、いろいろ練っている最中だと言われればそれまでですけれども、何かこう、ただちょっと意見を言っておくだけである、こういうふうにしかとれないと思うのですが、その点、どうですか。
  55. 田中伊三次

    田中国務大臣 そういう場合は、先生仰せのとおりに、練っておるものですから、いろいろ練り上げておる間に、ああでもない、こうでもない、——これはどんな法律でもあることでああでもない、こうでもなければ罰則はこうでなければならない、ああでもなければ罰則はああでなければならないということは、そのつど弾力的に意見を申しております。私が先ほどから申しましたのは、法務省の大方針は、そういうふうに秩序維持の上に特に必要があると考えられるものについては、体刑でいけるようにする。そうでない一般のものについては、罰金でいけばいいのだ、それ以上行き過ぎないようにするということで指導しておるのでありますから、私の申し上げていることとはあんまり大きな差はないのです。
  56. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうすると、新聞紙上に出ております法体系上のバランスから、軽い体刑を主張する法務と——これは必ずしも事実ではないとこう言うのですが、この法体系上のバランスというのは、どういうことをバランスとするのでしょうか。
  57. 田中伊三次

    田中国務大臣 それは、現行の公職選挙法においても体刑がついておりますが、体刑がついておっても、必ずしも体刑にきまっておるのでもないので、場合によっては罰金にもなっておる。そういうふうに、現行法においても弾力性があるものですから、それから現行の政治資金規正法というものにも同様のバランスのとれた規定があるものですから、そういうものを考えまして、法体系上のバランスということばを使っております。
  58. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この調査会の問題につきまして、この程度でいくと、だんだんと政治資金規正法改正法案がそのまま骨抜きになっていく。一番のよりどころは罰則じゃないかというように、世間一般もわれわれも思っておるわけであります。ところが、われわれの考えますところは、特にこの問題がやかましくされてきたのは、いわゆる黒い霧の問題から、政党の政治資金の使い方、あるいは政治家の政治資金の使い方、こういう問題がクローズアップされてきて、そのために国民一般は非常に政党と政治家の使う金について疑問を持っておる。こういうところから、特にこの問題が問題にされていったということになるわけですから、大臣のおっしゃるとおりに、自由じゃないかという点からのお話もありますけれども、国民の受け取る問題はそうではなくて、もっときびしいものを期待しているのじゃないか、こういうふうに私は考えるわけなんです。大臣とされましては、こういう問題に対して、最近の傾向、いろいろなものをあわせてお考えになっていって、やはりいまおっしゃったような一般論、あるいはそういう内容だけでよろしいのでしょうか。ちょっと御所見を承りたいと思います。
  59. 田中伊三次

    田中国務大臣 先生仰せのように、素朴な国民感情といいますか、黒い霧をめぐる以来の政界に対する国民の持っておる胸に描く印象、素朴な国民感情とか印象、そういうものの上から申しますと、どれもこれも、ずばり体刑処分だということが一番胸に当てはまる。それならよかろうということだろうと思います。それは確かに仰せのとおりだろうと思います。ところが筋論からはどうなるのか。そもそも問題にされておる寄付金という金の性質、筋論からはどうか。処分自由のものではないかという筋論というものも、立法の上では、ことに罰則の量をきめます上では無視するわけにまいりませんので、そこで、筋論から申しますと、あまり強い刑罰ではいかぬ。世論から申しますと、まさか懲役とはいうておらぬでしょうが、まあ体刑に持っていけ、禁錮に持っていけということは、私は世論が満足するのじゃないかと思います。そこで、その素朴なまじめに考えてくれております世論と、ものそのものの筋論というものの両方を総合して、行き過ぎのないように考えますと、いま私の申し上げたような程度のことになるもの、一般のものは罰金でいく、行き過ぎたものは体刑でいけるようにするということが、大体それでよいのではないか、こう考えるわけであります。
  60. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのをお伺いしていると、何か行き過ぎが軽くて、行き過ぎでないものはまるきり問題にならないような印象を受けるわけなんですけれども、いわゆる政治資金をガラス張りの中に置いて、金がかからない政治を目ざしたのが、この第五次選挙制度審議会の内容になるわけですけれども、これとかけ合わせて政治資金規正法の改正法案が出てきているわけですから、じゃ両方の間のバランスを考えていく、——先ほどの罰則のバランスということじゃなくて、両方のバランスを考えていくと、やはりどちらもよく似たようなバランスの上に立った罰則というものが定められなければならない、こういうふうに私は考えるわけなんですが、私のほうの考えとすれば、いまのおっしゃったところの罰則自体が、少し大臣のお話が軽いように感じるわけなんですが、その点、納得のいくような御説明をしていただきたいと思います。
  61. 田中伊三次

    田中国務大臣 政府は、総理大臣をはじめとしまして、答申は全面的に尊重いたしますということを言明して、お誓いをしておるわけでございます。私は、ちょっといやなことを言うのじゃないのですけれども、得心がいきにくいところは、答申に罰則がないですね。罰則はこうすべきものだ、つまり世論に重点を置いて、体刑にしてしまえ。これなら一つの意見です。だれも笑う者はない。やや行き過ぎがあるというふうに思うだけのことです。それから筋論でいけ。これは罰金でいってよろしいということも一つの意見だろう。もう一つの意見は、いやしくも政界の寄付金をめぐる政治資金の規制じゃないか、罰則などとは何ごとか、一切罰則なしで政治家の良心によって運営すべきものだ、これは高度の法律でなければならぬ、こういう判断をいたしますこともわけのわからぬことじゃないです。しかし、政界をりっぱにながめておるところはありますけれどもね。政界をりっぱにながめれば、そういうことも一つの意見として言い得るのではないか、それをどれでもいいから、これでいけということをこの審議会は言うべきものですよ。それで答申の中にうたうべき問題です。うたっておらぬのはけしからぬとまでは私は言わないのです。私い藤枝君とは違うから、そんなことは言わぬのですけれども、うたいそうなものだ、ノータッチとはどういうことかというように考えますときに、結論は、これは合理性のある条理に従って罰則はつけること当然のことであるとの、言わずと知れたこととの意味ではないか、私はこうかってに判断しているのです。委員に聞いたのではございませんけれども、何でつけないのかということは究明しておりません。だれからも聞いておりませんが、そんなことはつけなかったって、今日の政界の現状から、罰則なしなんという上等のことでいけるはずがない、それは合理的な筋の立った罰則はつけるべきものだ、そんなことは言わぬでも当然のことだという当然論から、答申の中に罰則は触れてないのではなかろうか、こう私は思っておる。  そこで、いまの先生の疑念、ごもっともでございますが、私は筋論に重点を置いている。筋論に重点を置いていくということになりますと、重い罰金ということがそろばんですね。それに非常な悪質の場合においては、一般寄付の場合でも悪質の場合においては、それはひとつ体刑にもいけるように、そこに体刑をつけ加えたらどうかということなども一つの考え方でございます。それは非常に間違ったものとは思いません。思いませんが、諸般の類似の、現行の公選法、それから現行の資金規正法というようなものの罰則をつまびらかに調べてみますと、これは無理があってはならない。悪いものについては体刑がいけるようにするが、一般のものについては、罰金で十分だということの結論がそこにきておるわけでございます。
  62. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣は、筋を通そうと盛んに筋論をおっしゃっておるわけですけれども、現行で筋を通すとして、無理でないというような筋合いのもので、公職選挙法の中の戸別訪問についてはどういうふうにお考えでございますか。
  63. 田中伊三次

    田中国務大臣 どうも、私が現行法できめられておる戸別訪問に関して、どうとかこうとかということを言いますことはたいへん言いにくい。非常に言いにくいことなんです。法務大臣がこう言っておるじゃないかということで、言いにくいのです。これはいろいろ説はありまして、戸別訪問のごときは全面的にひとつ撤廃をして、戸別訪問を自由にさすべきものである。訪問してきて、ものの言い方はいろいろありましょうが、候補者のものの言い方の判断は、有権者にまかすべきものである。訪問は自由にしたらよかろうということの意見も、たいへん有力な意見もございます。そういうふうに自分は考えると言えば、そうすると現行法を否定するのか、こうなりますから、そういうことは言えぬわけでございます。言えぬわけでございますが、どうもこの戸別訪問禁止ということは、わけのわからぬ法律のようにも考える。しかし、考えるということを、私がここで考えるからこの公職選挙法改正すべきものだ、そういうことは言えないわけでございます。素朴な意見を聞かれると、それはそういう意見もあり得る。戸別訪問差しつかえないじゃないかという意見も、有力な意見があり得る、こういうふうに私は申し上げます。
  64. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣のお説の筋論からいくと、どうなるでしょうか。
  65. 田中伊三次

    田中国務大臣 私がその筋論を言うとまずいので、そういう有力な意見があることを承知しておりますと、こういうことなんです、答えは。
  66. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、この規正法案も、そういう有力な意見があるわけなんです。これは法律で定められておるわけではないわけです。その前の段階にあるわけですから、私のほうからも筋を通さしていただければ、やはり現在の段階として、国民の素朴な意見を取り上げて、これを法律にまとめていくことが、現在の社会情勢、あるいは政党、政治家が金を使う段階においては、一番筋の通った話ではないか、こういうふうに考えるわけです。こういう観点からいくと、素朴な国民の意向というものは、罰則を強化すべきものである。そして政治家、政党から、むしろえりを正してこの問題を考えるべきである。そのえりを正すのは、ただえりだけ正したんではわからないわけですから、何らかの形で、えりが正されておるという点がどこかに出てこなければ、国民は納得しないと思います。一番の問題はここにかかっており、だんだん骨抜きにされてきておる内容なんですから、私は大臣のお立場として、なかなかこういうことはお答えになっていただけないとは思いますけれども、またここで答えをとろうと思ってもなかなかとれないと思いますけれども、むしろ罰則を強化して、いわゆる寄付をするほうも、寄付を受けるほうも、きびしい罰則の規定の中で、まじめに、いただいた浄財を正しい政治に使わしていただく、こういうのが筋の通った話ではないか、かように考えるわけです。そこで、こういう問題に対して法務省自体は、この政治資金規正法案に対して、こういう考えを持って臨んでおるとかなんとかというものは、ないのでしょうか。そういうものは発表できないのでしょうか。たとえば横田長官があちこちで発言なさるように、それは法律で定められていない中の問題として、法務省自体は、こういう問題に対する罰則はこうであるとかという、いま大臣が代表してお話しになったようなんですが、どうも筋を通そう通そうとして、何か筋が細くなったような感じを受けるわけですけれども、もう少し見解をどんどん発表していただいて、むしろ法務省のほうからこういう問題を、えりを正すような方向に向かっていただきたい、こういうふうに考えるわけなんですけれども、私としては、この問題に対して、天下に恥じない法務省としての筋の通った罰則というものをお示しになっていただきたい、いわゆる国民の素朴な意見を取り入れてやっていただきたい、こう考えるわけです。いわゆる法律でもうきちっときまったものを、死刑を改正しなければならない、こういう問題ではないわけですから、これからきめていく問題なんですから、そのこと自体が死刑にするほどの大きな問題でもないわけですし、罰則を少し強化するというような点は何ら差しつかえないのじゃないか、かように考えるわけでございますが、もう一度大臣のお考えを……。
  67. 田中伊三次

    田中国務大臣 法務省の方針は、先ほどからくどく申し上げますようにきまっております。特殊な場合は体刑でいけるようにする、一般の違反の場合には罰金で十分である、こういう考え方はもう徹底しておりますので、特別にそういう声明はしておりませんけれども、徹底しております。ただし、これはいよいよ法案が出まして、慎重審議を受ける際におしゃべりをすることでありますけれども先生の仰せのごとき御意見は、私は一つのりっぱな御意見だと思う。筋論、筋論というが、それは世論に筋を立てた世論的筋論で、私のほうは、この罰則のバランスを類似のものからとってきた場合におけるバランスの筋論でございます。両方筋論でございますが、世論の筋論から申しますと、体刑をつけるべきだということは非常によくわかる。非常によくわかりますが、法務省の見解として自治省に応対をしておりますところは、私がいま申し上げたように、特殊な場合は体刑でいけるようにする、そうでない場合には罰金で十分だ、こういうことがただいまの不動の意見でございます。
  68. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣のおっしゃる特殊な場合というのは、外国人のみをさしていらっしゃるわけでございますか。
  69. 田中伊三次

    田中国務大臣 外国人から寄付をもらった場合ももちろん入っております。  それから、皆さんよく御存じのことから順番に言いますと、匿名寄付、現在は選挙のときは某から金をもらったという届け出は、選挙のときだけは許さぬことになっておりまして、選挙以外の金は、何千万円の金をもらいましても、某からもらったという届け出でよろしいという、こういうわけのわからぬ法律になっております。そこで、そういう点から申しますと、現行法では一般には匿名寄付を受けられることになる。今度の改正になります新法のもとにおいては、匿名寄付は、選挙のときはもちろん従前どおり、それから選挙でないときにもいけないというふうに拡充いたしまして、匿名寄付は一切許さぬ、これは厳罰にする、これは秩序推持の上から、重要な役割りを演ずる匿名寄付でございますから、これはひとつ処罰する、公明選挙というものに違反をすることがはなはだしいですから、これは体刑にしていく。  それからもう一つは、特定会社といわれております問題でございます。政府から直接に融資を受けておるとか、政府から出資をしていただいておるとか、もう一つ政府から補助金をもらっておるとかいうような会社からいやしくも金をもらう、これは選挙のときだけもらってはいかぬことになっておりまして、選挙以外のときはいいことになっております。そういうわけのわからぬことはいけない。厳格に、選挙のときであるといなとにかかわらず、そういう種類の国の援護を受けておるような会社から金を受ける、そういう悪質なことを、規則を無視してやる場合においては、相ならぬということで、こういう種類のものが、特定会社の寄付というものをめぐりまして体刑の処分を受けることになっておるわけでございます。  大体申し上げますとそういう三種類のものでございます。
  70. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、会社、個人の寄付制限額を越えたものに対しては軽い罰金程度だ、こういうお考えでございますね。そうすると特定の政府関係金融機関の範囲、会社、労組の寄付規制の基準、労組の関係はどうなんでしょうか。同じでございますか。一応この線は答申案の内容をそのまま盛り込んで、特定という段階はお扱いになるわけですか。
  71. 田中伊三次

    田中国務大臣 そうでございます。
  72. 沖本泰幸

    ○沖本委員 閣議では大体きまっておる、六日ごろにははっきりする、こういうことらしいのですが、きょうの新聞を読みますと、福田幹事長は六日はなかなかだめだ、九日にもきまりそうもない、こういうふうなことらしいのですが、漏らしていただけるようでございましたら、いつごろになるのでしょうか。
  73. 田中伊三次

    田中国務大臣 これは、ちょっと私では見当がつかぬのです、その罰則だけですから。罰則以外のことをやっておるのは、藤枝君がやって苦心をしていらっしゃる。寄付のあっせんをめぐる条項のごときは、社会党さんはなかなかこれにいろいろ意見があるようでございます。それで六日に間に合わせたい努力はよくわかっておる、はたして間に合いますかどうか、そのところがさだかに申し上げかねるところでございます。
  74. 沖本泰幸

    ○沖本委員 公職選挙法とのバランスをお考えになってくずさないようにというお話も出たわけでございますが、その線で行くと、公選法とのバランスは現行ではくずれないわけですか。
  75. 川井英良

    ○川井政府委員 この改正の罰則に関係のある条文で、公選法の中に現在規定されているものを改正いたしまして、資金規正法のほうへ持ってくるものが若干あるわけでございます。それからもう一種類は、いま申しました二つの法律に規定のない、全く新しい類型の犯罪の型をつくるという改正一つあるわけでございます。そのあとのほうの改正は、政治資金規正法のほうにそれを入れよう、こういうことに相なっているわけでございます。そこで、前のほうのものにつきましては、すでに公選法という現行の法律に罰則がきちんと定められておりますので、それを片方の法律に移す場合に、おのずからそこに刑罰の幅は標準となるべきものがあるわけでございます。ところが、あとのほうの全く新しい類型の犯罪行為につきましては、必ずしも基準となるべき、あるいは比較すべき罰則がないわけでございます。したがいまして、その新しい罰則につきましては、先ほど大臣も申し上げておりますように、本来ある行為について罰則をつけるというふうな場合には、私、刑事局長といたしましていろいろ意見を持っておるわけでございますが、その基本的ないろいろの観点に基づきまして、およそある行為に罰則をつけることが憲法上妥当かどうかということをまず議論いたしまして、妥当だという解釈になりましても、はたしてその場合に、いかなる刑罰を科することが妥当なりやということを議論し、その幅につきましてまたいろいろな技術的な資料、標準によりまして最も妥当とするところ、さらに、その法律が持っております当面の要求なり、あるいは時代の要求なりというふうなものを加味いたしまして、あらゆる観点から妥当と思う意見を主務当局に対して申し述べる、形だけ申し上げますと、このようなことをやっております。  そこで、今度いま申し上げました新しい型の罰則につきましては、当面さがしましても適当なものがないわけでございますので、それについては相談を受けまして、いろいろ私の当局におきましてもどの程度のものが適当かどうか、第一、罰則がかかるのかどうかということから始まりまして、今日なお検討中の段階ということになっておりますが、もしかけるとするならば、先ほど大臣が繰り返し意見を発表しておられますように、あまり重い罰金はこの新しい型のものにかけることは、刑法理論の面から見て適当でなかろうということを今日の段階としては考えておるわけでございます。
  76. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あまり押し問答してもあれなので、結論的に申し上げますけれども、この問題は国民が非常に期待している問題でございます。したがいまして、大臣もその点をよく御勘案くださいまして、真剣にお取り組み願いたい。そうして明らかになったときには、国民が納得のいくような改正法案であっていただきたい、かように考えるわけでございます。わが党のほうとしましては、あくまでも寄付するもの、寄付を受けるものに、きびしい罰則を定めていただきたい、こう主張しておるわけでございます。よろしくお願いいたします。  以上で終わります。
  77. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事は、この程度にとどめます。  次会は、明二日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後零時四十六分散会