運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-26 第55回国会 衆議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十六日(金曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 岡沢 完治君       馬場 元治君    山下 元利君       中谷 鉄也君    横山 利秋君       小沢 貞孝君    沖本 泰幸君       松本 善明君    中尾 栄一君       松野 幸泰君  出席政府委員         法務政務次官  井原 岸高君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         最高裁判所事務         総局家庭局長  細江 秀雄君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 五月二十三日  委員西宮弘辞任につき、その補欠として野口  忠夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として西  宮弘君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員下平正一辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、並びに法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡澤完治君。
  3. 岡沢完治

    岡沢委員 これから質問いたしますけれども最高裁のほらから御出席政府委員の方々大部分が、私の法曹界の先輩でございまして、非常に失礼なことになるかもしれませんが、お許しをいただきますように。  最初に、百日裁判に関連した質問をいたしたいと思います。  去る五月二十日に大阪の地裁で、昭和三十七年の参議院選挙に関連いたしまして、全国区の豊田雅孝氏に関連した出納責任者あるいは総括主宰者を含む事件の第一審の判決がございましたが、この判決がすでに三年十カ月を経過した後に行なわれておるという事実がございますし、また最高裁判所におかれましては、五月の二十二日に刑事裁判官会同を持ちまして、百日裁判中心とした御討議をなさったということを聞いておりますが、最初に、百日裁判中心とした現在の係属事件実態について、もし資料がございましたらお答えいただきたいと思います。
  4. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。  百日裁判を含めまして、選挙違反事件審理状況どらであるかということをまず申し上げます。  昭和四十年について見ますると、特に一人当たり平均審理期間十九・六カ月かかっております。通常刑事訴訟事件平均審理期間が五・一カ月でございまするので、三・八倍というようなことになります。それから、同じく昭和四十年についてでございまするが、被告人一人当たり平均開廷回数どらであるかと申しますると、十一・一回でございます。通常事件平均が三・八回でございますので、二・九倍かかっておる。証人数どらかと申しますと十人、通常事件が一・九人でございまするので、五・三倍くらいの証人数があるということでございます。  なお、第一審におきまして判決のありましたいわゆる百日裁判事件について申しますると、四十一年におきまして、百日以下の期間において処理できましたものは三件にとどまっております。百日をこえておりまするものが二十九件、平均審理日数が四百九・三日、かような状況になっております。  まず、この点を申し上げます。
  5. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまのお答え審理日数は、これは第一審でございますか。
  6. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 はい、第一審でございます。
  7. 岡沢完治

    岡沢委員 いま、百日以内に三件の審理が終わったとおっしゃいましたが、国会議員が関連する百日裁判事件で、百日以内に終わった事件がございますか。
  8. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 申し上げます。  昭和三十三年以降施行の国会議員選挙関係の百日事件について申し上げますと、これは二十三人でありまするが、百日以内で処理できましたものはございません。それに近いものといたしましては、百一日、百二十八日、百四十四日ということでございまして、一審の平均が六百八十七日、こういうことに相なっております。
  9. 岡沢完治

    岡沢委員 一部伝えられるところでは、昭和三十四年の参議院選挙事件が、なお最高裁に係属しておるということを聞いておりますが、そういう事案がございますか。
  10. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおりございます。
  11. 岡沢完治

    岡沢委員 もし差しつかえなければ、具体的な事案被告人の名前とか、最初起訴時日、現在までの経過概要を、事件内容に触れなくてけっこうでございますから、お答えいただきたいと思います。
  12. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 第一審の東京地裁に係属いたしました当選議員鹿島俊雄氏の関係総括主宰者にかかる事件でございます。これは参議院全国区でございます。  起訴年月日を申し上げますると、昭和三十四年六月二十六日から同年の八月二十七日にかけまして——これは追起訴がある関係でかように相なっております。起訴がございまして、最高裁判所には四十一年の八月十五日に事件受理、かようになっております。  それから、同じく第一審が東京地裁でございまして、当選議員鮎川金次郎氏、その総括主宰者にかかる事件でございます。これも三十四年参議院地方区の事件でございます。起訴を申し上げますると、三十四年の九月二十六日から三十四年の十二月二十一日にかけまして起訴があった。この事件上告審記録を受理いたしておりまするのが四十一年の十一月三十日、かようになっております。  私どものほうで調査いたしましたのは、ただいまの御質問関係するものは以上でございます。
  13. 岡沢完治

    岡沢委員 いわゆる百日裁判規定いたしました公職選挙法二百五十三条の二の法意は、どこにあるというふうに裁判所のほうではお考えでありますか。
  14. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 選挙ということに関連しまして、特に、当選された議員の方の任期ということ等もございまするので、特に裁判の機能の上からいいまして、早く裁判所の判断を出さないと意味がなくなるということになろうかと考えておるわけでございます。
  15. 岡沢完治

    岡沢委員 いまのお答え、私なりに解釈いたしますと、この種の選挙違反事件については、裁判がおくれては、裁判意味が主としてなくなってしまうということに解してよろしゅうございますか。
  16. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおり理解しております。
  17. 岡沢完治

    岡沢委員 ここで、いわゆる百日裁判事件について、いまの刑事局長お答えによりますと、実際に百日裁判事件審理の過程においてはその六倍以上の時日を要しておる。また、国会議員の関連する百日裁判事件については、法の規定が生かされたことは一度もない。  ここでもう一度お聞きしたいのですが、二百五十三条の二に関連した事件で、当該当選議員が、国会地方を問わず、この法意が生かされて現実失格をした例があるのかどうか。もちろんこの規定だけでは失格はいたしませんが、この規定が生かされて、当選無効の訴訟が警察官から提起されたというような事案があるかどうかお答えいただきたいと思います。
  18. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 実は、御質問の点について資料を持っておりませんので、後ほど、調査の上御提出申し上げることで御了承を得たいと思います。
  19. 岡沢完治

    岡沢委員 それじゃ国会議員について、結論だけでもけっこうですが、実際にこの選挙違反事件に関連して当選が無効になり、失格とされた例があるのかどうか、刑事局長記憶でもけっこうでございますから、お答えいただきたいと思います。
  20. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 あいまいな記憶で申し上げては、かえって失礼かと思いますので、調査の上返答を申し上げさしていただきたいと思います。
  21. 岡沢完治

    岡沢委員 私が知っておる限りでは、国会議員で、この二百五十三条の二が結果的に効果を発揮したという例は、ないと記憶しているわけでございますが、もしそうだといたしますと、二百五十三条の二は全く無視されて、百日以内という、訓示規定ではありましょうが、六倍以上の日時が現実裁判所で費やされておる。しかも法意は全く生かされない。こういう実態を見ました場合に、結局裁判所権威、法の権威からいたしましても、法を守るべき裁判所が、現実には逆の効果を国民に与えておられるのじゃないか。これは法解釈の問題でございますから、最高裁判所権限外だとは思いますけれども、これについてどういうふうにお考えになるか、事務総長の御見解を承りたいと思います。
  22. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 先ほど来の御議論のとおり、この規定が全然生かされていないということは——しかも裁判所に課せられた一つの訓示規定とは申せ、これは責務でありますので、これが生かされていないということは非常に遺憾なことであり、またわれわれとしても深く反省しなければならぬと思っております。ただ、この種の事件がおくれるにつきましては、それなりの理由があったわけでございますが、これまでもたびたび裁判官会同等で、いかにして選挙違反事件をすみやかに処理したらいいかということについて討議して、そしてお互いに意見を交換して、ある方針を打ち立ててきたわけであります。従来、何回もそれを繰り返してまいりましたが、実効が一向あがらない。そこで、いち早くことしの二月に、東京地方裁判所刑事裁判官たちが、この百日裁判規定を生かさなければいかぬということを自発的に決議しまして、今後そのほうに努力しようという、そういう機運が東京地方裁判所からわいたわけでございます。それと相次いで、つい先日、刑事裁判官会同を開催いたしまして、従来の討議をさらに検討し、再確認すべきものは再確認して、そして今後きびしい世論に耐え得るような審理促進をはかりたいという空気が、いま非常に高まってまいりましたので、こういう死文化した条文はやめたほうがいいというふうに即断しないで、やはりこの規定は残しておいて、今後一そうの裁判所努力を続けていきたいと思います。また、御承知のとおり、これは裁判所だけで片づく問題ではない、関係方面の強い協力を得なければならぬということで、そういうほうの手当ても十分にいたしまして、そしてこのせっかくの条文、つまりおくれますと、この意味がなくなる、そういった弊害を一日も早くなくしていきたい、かように考えております。
  23. 岡沢完治

    岡沢委員 それでは、それに関連して刑事局長さんに、この百日規定があるのにかかからず、現実にはこれだけおくれるという理由がどこにあるかについてお答えいただきたいと思います。
  24. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 いろいろな事情がございますが、おもなものについて従前検討いたしましたことを申し上げますと、まず事件が一定の期間に集中して起訴されるということがございますし、被告人が多数であり、また同一被告人に対する訴因の数が多いというようなこと、たとえば訴因が何百というようなケースがあるわけでございます。また事件が複雑となってきたというような傾向も、裁判官から指摘されております。それから追起訴が多い。これは訴因が多いということと関連するわけでございますが、そういうことでございまして、当初の起訴から、追起訴が出そろうまでに三カ月近くもかかるというようなケースもあるわけでございます。したがいまして、弁護人のほうの記録謄写その他の準備のためにまた時間を要して、なかなか第一回公判期日に入れないということにもなる。争う事件が多くございまするので、証拠書類に対する同意は得られません。したがいまして、証人の数が非常に多い。百九十八人の証人を取り調べたというような例もあるわけでございます。それからこの種の弁護に当たられる弁護人が著名の弁護人に集中いたしまして、その当該弁護人がほかの手持ち事件をたくさん持っておられるというようなこと。あるいは地方におきましては、遠隔数に在住しておられる弁護人がついておられるというようなことのために、公判期日公判期日との間の、いわゆる開廷開隔というものが長くなる。通常事件平均で申しますると一・三カ月くらいの開廷間隔でございまするが、それが選挙違反事件におきましては一・八カ月というような開廷間隔になっている。  以上のような諸原因があげられているわけでございます。
  25. 岡沢完治

    岡沢委員 その原因の御分析の上に立って、新聞等で拝見いたしますと、五月二十二日の会同では、対策といいますか、いろいろ御協議いただいかようでございますが、その概要をここでお示しいただきたいと思います。
  26. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 まず、裁判所側体制ということ、これも大事でございます。これは従前から言われていることでございますが、特に百日裁判事件というものを、まず注意しなければならないことを前提といたします。この種選挙違反事件を担当する裁判官には、できる限りそれに専念してもらうような体制をその庁その庁においてとるということ。これもたくさんほかの事件が係属しておりまするので、それに専念するということが非常にむずかしい裁判所事情でございまするが、全裁判所がそういう点を配慮いたしまして、できる限りそういうふうにする。  それから関連事件との併合分離につきましては審理遅延を来たさないように配慮していくということ。第一回公判を開く前には、訴訟関係人と、期日指定等につきまして十分なる打ち合わせを行なって、事前準備励行方を求める。期日指定は、できる限り事件の終結に至るまでの全期日をまとめて指定して、集中的な審理ができるようにするというようなことでございます。  裁判所のほうにおきましてはさような体制をとるととともに、先ほど総長から御説明いたしましたように当事者訴訟形態をとる限り、何と申しましても当事者協力ということが不可欠でございますので、検察官及び弁護人双方に対する要望といたしましては、期日指定協力していただく、指定された公判期日を厳守するとともに、必ず出頭していただくということ。それから証拠の申請にあたりましては、最良の証拠証拠を厳選して請求していただくというようなこと。これが当事者双方に対する要望でございますが、さらに分かちまして検察官に対する要望といたしましてはこの種事件起訴にあたっては、できるだけほかの被告人と分離して起訴し、また訴因を重要なものに限るというようにして、百日裁判に適する形で起訴していただきたいということ。供述調書作成にあたりましては、公判においてどこが争点になるかという見通しを立てて、作成上も場合によりましては事項を分かったような調書をつくる、あるいは供述調書は複写ができるような形で作成していくというようなこと。捜査担当検察官公判担当検察官とは、緊密なる連絡をとって、記録の提出をすみやかにしてもらう。起訴をすみやかに、証拠書類及び証拠物の整理をしてもらう。弁護人がすみやかにそれを閲覧し謄写できるように、またできれば証拠書類につきましては、その写しを弁護人のほうにあらかじめ交付するというようなことも、事前準備というものをすみやかならしめる上において効果があるのではないかということでございます。  また、弁護人に対する要望といたしましては、主任弁護人または副主任弁護人となられる予定の方は、当該裁判所の所在地またはその近傍に在住する弁護人をもって充て、審理遅延を来たさないように配慮していただくということ。さらには、弁護人が多数ついておられます事件については、できる限り各弁護人ごと担当事項を定めまして、分担事項をきめていただくとか、あるいはまた、一部の弁護人が支障がありました場合には、ほかの弁護人をもってそれをカバーしていくというような配慮をしていただく。証拠書類及び証拠物の閲覧、謄写同意、不同意の見込みの通知等訴訟準備はすみやかにやっていただく。第一回公判期日から実質的な審理が行なわれるように協力していただく。こういうようなことが過日の刑事裁判官会同において、会同員である裁判官全員意見として打ち合わせが行なわれたということでございまして、このような大綱に基づきまして、それぞれの庁におきましてこれに基づくところの具体的、実際的な方策というものを検討し実現していく。それについてはもとよりそれぞれの庁におきまして、検察庁及び弁護士会協力方を求めていくということはもちろんのことでございますが、そのようなことが議せられたわけでございます。
  27. 岡沢完治

    岡沢委員 この五月二十二日の会同のほかに、従来、たとえば選挙関係訴訟促進について会同がなされた例があるか、あるいは申し合わせをなされた例があるか、お答えいただきたいと思います。
  28. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 この点につきましては、もうすでに昭和二十七年ごろから、この種事件審理促進方につきましては、ひんぱんに裁判官会同を開いておりまして、また、先ほど申し上げました打ち合わせ事項に類する打ち合わせも、昭和三十年になされておるということでございまして、今回の打ち合わせはその後の実務の経験に徴しまして、なお具体化したということに相なるわけでございます。
  29. 岡沢完治

    岡沢委員 ただいまの刑事局長お答えによると、昭和二十七年以来同じような会同が持たれ、同じような討議がなされ、もちろん年月の経過によって、少しは新しい対策とか原因等も生じていると思いますけれども現実には、二十七年から会同が重ねられ、三十年にもすでに同じような決議がなされ、しかし、実態はそれ以上はちっとも改善されていない、こういうことになりますと、今度の会同の結果でも、実効性は非常に疑わしいというふうに感ずるわけでございますけれども、今度の申し合わせが実現されることについての見通しと申しますか、御自信のほどを示してもらいたいと思います。
  30. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 御質問ごもっともでございます。私ども従前申し合わせを機械的にただ繰り返しておりまして、それで形を整えておるということでは毛頭ないのでございます。従前、このような打ち合わせも行なわれ、努力が払われたにかかわらず、必ずしも実効があがっていないということは、この極事件審理促進がいかにむずかしいかということを示すものだと思うのでございます。それだけに、なお、私どもとしては具体的な、実際的な案というものを立てまして、それを強力に進めていかなければならない。単に精神論だけではいかないんじゃないか、かように思うわけでございます。それで、今回の会同も、その実際的なる、具体的な案というものを考えるということが、特に重要であると考えておるわけでございます。  それで今後の見通しはいかんという御質問でございまするが、簡単に安受け合いをして、だいじょうぶですというお答えを、正直なところ申し上げることはできないと思います。ただ、いま申し上げましたような心がまえで関係方面とも十分なる連絡をとって、これらの具体的な方策を一歩でも二歩でも進めていくということ、それが肝要なことである、そういうふうに考えているわけでございます。
  31. 岡沢完治

    岡沢委員 あまり御自信のないような御答弁でございます。実際、当事者訴訟形態をとります以上、むずかしいかと思いますが、ただいまの具体的な御提案の中でも、たとえば検察官分離起訴とか、そういうように重点をしぼるとか、検察官自体職務権限にかなり立ち入った内容もあるようでございますが、こういう点について法務省あるいは最高検察庁等の御協力が得られる見通しがありますか。
  32. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 実は会同を開きまする前にも、法務省最高検察庁、日弁連のほうへもお願いにあがりまして、それぞれ参列員をお出し願って会同をお聞きいただいたわけでございます。そこで会同も終わりましたので、私どもといたしましては早急に関係方面連絡をとりまして、この案につきましての協力方をお願いするつもりでございます。  先ほど来お話しのように、公選法の二百五十三条の二の趣旨から申しましても、審理促進ということ、大目的について協力するということにつきましては、その趣旨におきまして、検察庁弁護士会も反対のあろうはずはないと私ども考えておるわけでございまして、細目につきましてさらに協力を求めていく、そしてそれぞれの機関におきまして、なお各検察庁、各弁護士会に、その趣旨をそれぞれ徹底さしていただくというつもりでございまして、私どもといたしましては、十分そういう協力をお願いできるもの、かように考えておるわけでございます。
  33. 岡沢完治

    岡沢委員 刑事局長お答え、御趣旨はわかりますけれども、結論的に申し上げますと、結局百日裁判規定いたします公職選挙法二百五十三条の二を、具体的に、現実的なものとして実現する自信のほどについては、きわめてほど遠いと感ぜざるを得ないのであります。先ほど事務総長のほうから、死文化した条文ではあるけれども、これの改廃については考えていないという御趣旨お答えがございましたが、私はいかに訓示規定とは言え、法を守る裁判所を直接訓示したこの規定が全く無視されておる。百日の六倍以上、六倍のうそが現実裁判所で実現されておるというような事態を見ました場合に、法意はわかりますし、また公職選挙法の立法の趣旨もうなづける点はございますけれども現実、実現不可能なこういう条文をこのままにしておくことがいいかどうか、法を守る裁判所が、現実に法をまげておるという点を考えますと、法の権威裁判所権威からいたしまして、この二百五十三条の二の改正については、最高裁判所は、もちろん所轄庁ではございませんけれども法改正提案権を持っております法務省あたりに、意見をお述べになる御意思があってもいいんじゃないかという感じがいたしますが、これにつきまして、重ねて御回答をお願いいたしたいと思います。
  34. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 問題は、この百日という条文を削って解決できるものかどうかということだと思うのでございます。私の見ますところでは、これが運用限界であるというところまでまいっているかどうかということにつきまして、なお反省を重ね、反省をし、これが運用のぎりぎりであるというところまでまいりました場合に、あらためて仰せのような措置も考えるという場合もあろうかと思うのでございまするが、なお、私の見ますところでは、これが運用限界であるという前にやるべき余地が残されている、かように考えておるわけでございます。
  35. 岡沢完治

    岡沢委員 刑事局長お答え趣旨がわからないわけではございませんけれども、たとえば、憲法二十五条がやはり訓示規定ということで、二十四日に朝日訴訟判決が出まして、傍論で説明がございましたけれども行政官庁に対する訓示規定ならまだわかりますけれども裁判所に対する訓示規定が、現実に全く無視されておると申し上げてもいい姿を示しておるわけであります。こういう場合、守られない法律を、そのまま法治国家として、特に裁判所の立場から、このままでいいという御回答は、いささか不満な感じがいたします。だからといって、この規定を除くことによって、訴訟遅延をことさらに助長するということを求めるものではもちろんございませんが、現実に不可能な規定であれば、現実に即しまして、二百日とか、三百日とか、そのかわりにこれは必ず守るということをたてまえにするような制度、あるいは審理方針のほうが私は正しいというふうに感ずるわけでございますが、重ねて御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたのと同じ繰り返しになろうかと思いまするが、裁判所の内部、裁判所だけの処理方針では事は解決できない、当事者協力なくしては、とうていその実をあげることはできない訴訟構造であるというだけに、むずかしい点があるのでございまするが、繰り返しになりまするが、これが運用限界であるというぎりぎりのところまできて、そういう御質問のようなことを考えるということであろうと思いまして、そういうことを考えるにあたっては、その手前におきまして、やはりやれる限りのことをやっていかなければならないんじゃないか、かように思うわけでございます。
  37. 岡沢完治

    岡沢委員 くどいようですが、やる限りの努力をおそらくなさったその結果でも、現実は百日の六倍以上の日数がかかっておるのが実態であるということを考えました場合に、やはり私が申し上げる趣旨のことも御検討いただければという感じがいたします。  この点に関して最後の御質問でありますが、二十二日の合同で、横田最高裁判所長官は、他の事件を犠牲にしてでも、この種事件審理促進をはかりたいという趣旨のことをお話になっておるようでございますが、申し上げるまでもなしに、憲法三十七条で「公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利」は、すべての刑事被告人にあるわけでございます。ことばじりをとらえるわけではございませんが、この種事案審理促進のために、他の刑事訴訟事件がおくれるということは、私は間違いではないかというふうに考えますが、この点について御見解を示してもらいたいと思います。
  38. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 裁判所に多数の事件が係属しておりますが、公選法の事件以外のものがおくれてもいいんだというふうに、その部分をとらえて仰せになれば、仰せのとおりかもしれませんが、そのくらい他の事件がかりにおくれるようなことに相なっても、この種事件促進をはからなければならないということであるわけでございまして、限られた裁判官におきまして、また多数の事件を処理しなければならないというそれぞれの裁判所についてみますると、百日で審理しなければならないという事件がありまするならば、それは他の事件に優先してでもそれをしなければならない。ちょうどいわゆる身柄事件審理を急ぐというようなのと同じことでございまして、かりにほかの事件が、そのために多少犠牲になるというような結果を来たすようなことがあっても早くしなければならぬ、そのくらいの意気込みでなければ、百日裁判というものの趣旨に合った審理はできないという趣旨であると理解するわけでございます。
  39. 岡沢完治

    岡沢委員 百日裁判に関連する質問はこれで終わります。  去る五月十五日に、横田最高裁判所長官が大阪の高等裁判所におきまして、新聞記者の方々をお集めになって記者会見をなさったときに、いわゆる反則金制度について御発言があったようでございますが、その御発言の内容をお聞かせいただきたいと思います。
  40. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 横田長官が、大阪での記者会見で言われましたことは、朝日新聞その他の新聞にも出ております。しかし、新聞によってそれぞれニュアンスがございまして、長官の考えがどこにあるかということは、あの新聞記事だけでは正確にはつかめないと思います。中には、反則金制度に対しては、まっこうから反対であるというふうにとられるような新聞記事もございます。また、問題点があるんだ、疑問点があるんだという意味の発言だというふうにとられる新聞もあるわけでございます。  で、長官の言われました真意は、反則金制度にまっこうから反対だという趣旨では決してございません。全部で十五分間ぐらいの会見だったそうですか、反則金の点については、わずか一分か二合ぐらいで話が済んだというだけだったそうでございます。新聞によりますと、反則金の性格があいまいだということを申しておられるわけですが、そのときには、あいまいということばは、どうでもいいと思います、同じになると思いますが、性格がはっきりしないということは言われたそうです。その趣旨は、反則金というものは、立案当局である警察庁の説明では、任意に払うんだからという説明だそうでございますが、決して、払ってもいい、払わなくてもいいというものじゃなくて、払わないと刑罰を科せられるという仕組みになっておりますので、その点で反則金というものが、全然刑罰ではないにしても、そういう検察官の公訴提起権というものを背後に控えておるという、そういう点で性格がはっきりしないということを言われたのであります。これは当初から警察庁においてもあの性格をどう説明したらいいかということについては、いろいろお考えのようでありますが、まだはっきりした見解は出ていないようでございます。しかも、その反則金を通告する処分が、行政処分かどうかということについても、現在見解が分かれております。行政処分でないというのが警察庁のお考えのようですが、しかし、その反面、やはりあれは全体として見ると行政処分だという見解もまたあるわけでございます。かりにこれが行政処分であって行政訴訟の対象になる、取り消し訴訟の対象になるということになりますと、これはやはり裁判所に関する問題になりますので、それで裁判所としてもやはり関心を持たざるを得ない問題点なのであります。行政処分だとしますと、取り消し訴訟がそれに対して起こされる、払わないと公訴提起がある。つまり、一つの事実についてそっちの行政訴訟としての取り消し訴訟と、それから払わなかったために公訴提起をされて刑事訴訟というものがやはり起こされる。同じ事実について行政訴訟刑事訴訟とが並んで行なわれるということは、これは手続の混乱を来たすおそれがあるのじゃないか、そういう点をいまのうちから関係機関と十分に協議してはっきりさしておきたい、そういう趣旨でございます。  それから反則金制度は、警察官や一般の自動車運転者に対して、安易な気持ちを起こさせるんじゃないかということが記事に出ておりますが、これは運用の際に、そういう点を十分に注意しなければいけない。正しい運用が行なわれなければならないという運用面についての意見を述べただけで、決して、この反則金制度に対してまっこうから反対、そういう趣旨のものではないのであります。  いずれにしても、この問題は、国会の審議によって決定されるものでありますので、まだ正式にその法案が審議されておりません場合に、あまり裁判所側意見を申すということは差し控えるべきだと思います。審議の際に、もし裁判所はどういう点を問題にしておるかという御質問が正式にありますれば、その際に、裁判所はこういう点と、こういう点について、これが問題点だと考えておる、そういうことは申すわけでありますが、こちらから進んで、まだ審議されておらないときに、法案の内容についてとやかく申すことは、差し控えたいと思います。長官の真意は、新聞には十分に趣旨が出ておりませんが、これはごく短い記事でありますので、しかも新聞によってはまたニュアンスが違うという点もありますので、その点は、ただ軽々しく長官がものをしゃべったというふうにおとりいただかないで、趣旨が徹底しなかったといううらみはありますが、その点は御了解願いたいと思います。
  41. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと関連して。  ちょっと聞いておきたいのですけれども、いまの事務総長のお話だと、立案過程において最高裁判所は御相談にあずからないのですか。立案過程に相談にあずかっていない、公式に言うならば国会へ出てからきちんとものを言うというお話のように承ったのですが。
  42. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 立案過程では、案ができましてから裁判所のほうにも意見を求められまして、そして裁判所としての意見は立案中の当局のほうへ申し出ております。
  43. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、反則金の内容についてここで質問しようというわけじゃございません。ただ、これではっきりいたしましたのは、五月十五日の大阪高等裁判所における記者会見で、最高裁長官が反則金制度に関連して発言をなさったということは、間違いないわけでございますね。  ここで法務省がおられたらお聞きしたいのですが、だれか、課長でもだれでもいいですが、だれもおりませんか。
  44. 大坪保雄

    大坪委員長 いま呼んでおります。
  45. 岡沢完治

    岡沢委員 呼んでおられますか。それじゃ最高裁でもし知っておられたら聞きたいのですが、たしか五月十五日は、この反則金制度を中心とした道交法の一部改正案が閣議決定の日だと私は理解しているのですが、そういった点は御存じありませんか。
  46. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 十五日に閣議決定があるということは、事務当局のほうではわかっておりましたが、長官は、その前から出張に出られましたので、御存じなかったようです。
  47. 岡沢完治

    岡沢委員 すでに岸事務総長から、裁判所としての御見解の御表明があったようでありますが、私がここで申し上げるまでもなく、三権分立のたてまえからいたしまして、まだ国会提案もされてない事案について、——たとえばここに「ジュリスト」で、最高裁刑事局付の判事補であられます神垣英郎さんが、交通反則金通告制度に対しての見解を述べておられます。こういう程度なら私は大いにけっこうだ、お互いに十分な討議を重ねた上で、りっぱな法律案ができ上がることはけっこうだと思いますけれども、ただ、ときが、その法案について閣議決定がなされる日に、しかも司法部の最高の長であられる最高裁の長官が、新聞記者を前にして見解を発表される。非常に不見識ではないか。三権分立の精神を逸脱される懸念すらあるような感じが私はいたします。また、立法機関でありますわれわれ国会に対して、何か牽制されるような感じがするわけであります。それは、するなとおっしゃっても、現実にこの法案を通した場合に、違憲の問題も、最高裁長官がすでに立案の過程で、あるいは立法審査の過程で発言されるということは、非常に大きな影響があろうかという感じがするわけであります。今後十分に慎んでもらうべきではないかというふうに考えますが、事務総長の御見解を表明していただきたいと思います。
  48. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 十五日に閣議決定があるということを長官が知っておりましたら、おそらくそういう発言は避けたと思います。その点は、たしか六日の日あたりから出張に出られまして、そういうことは長官は知られなかった。それで質問を受けたままに発言されたと思います。御趣旨の点もよく了解できますので、今後はそういう誤解は招かないようにいたしたいと思います。
  49. 岡沢完治

    岡沢委員 これに直接関係はございませんけれども、例の少年法の改正に関連いたしまして、いささか古い話ではございますけれども法務省改正構想を発表なさる前に、最高裁判所が、この法務省の少年法改正の構想についての批判的な見解を表明された事実があると思いますが、事実があったかどうか。もしあったとすれば、どういう趣旨でそういうことをなさったか、御説明いただきたいと思います。
  50. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいまの岡沢委員の御質問は、おそらく昨年の二月、最高裁判所の家庭局から出しました「最近の少年非行とその対策について」という文書についての御質問じゃないかと思いますが、そういう文書を発表したことはございます。
  51. 岡沢完治

    岡沢委員 これについても、ただいまの五月十五日の最高裁長官が反則金制度について御発言になったと同じような意味で、いささか時期等について、あるいはその発表の方法等について問題があるような、特に三権分立のたてまえからして問題があるような感じがするのですが、それについて家庭局長の御見解を承りたいと思います。
  52. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 いま岡沢委員から、三権分立のたてまえから見て疑問があるのじゃないかというお話でございましたが、実は岡沢委員のおっしゃる三権分立ということについて、私、誤解しておるかもしれませんが、この少年法改正問題につきましては、御承知のとおり、すでに数年前から大きな社会的な問題となっており、私ども最高裁判所といたしましても、少年非行を扱っておりますところの現場の家庭裁判所裁判官会同を開きまして、常に少年非行の防止ということについて協議を進めてまいってきておるわけでございます。しかも、そのような議論の過程におきまして、はたして現在の少年法のたてまえで非行防止に万全を期し得るかどうかという問題、いわゆる法改正についての問題についても、いろいろ議論をしてまいったわけでございます。また、法務省におかれましても、数年前から少年法改正問題研究会というようなものを設けられて、少年法の改正ということを意図しておられるように伺っておりました。したがって、私どもといたしましても、いま、現在社会問題となっておるところの少年非行問題を扱っておる裁判所として少年非行の現状はどうなっておるか、またその少年非行を家庭裁判所でどういうふうな処遇をしておるか、また処遇の過程におきまして、将来どういうふうに法改正をしたならば健全な少年の育成ができるか、あるいは少年の再犯が防止できるかということについて、いわゆる世間の方々に知っていただくという必要もあろうかという趣旨から、ああいうふうな対策意見書を出したわけでございます。
  53. 岡沢完治

    岡沢委員 家庭局長の御説明がわからないわけではございませんが、いまみずからおっしゃいました昭和四十年十二月にお出しになりました「最近の少年非行とその対策について」、傍題として「少年法改正をめぐる諸問題」、内容は、当時法務省のほうで持っておられた少年法の改正構想に対して反対意見といいますか、結論的に言いますと、いろんな資料を出された結果は、反対だということが中心なように見受けられるわけでございます。また、私自身が国会に出る前に、家庭局長みずから大阪の弁護士会へお越しになりまして、これについての御説明を聞いた記憶がございます。その当時の模様等を感じましても、また、この問題の文書を読ましてもらった私の感想といたしましても、また、当時新聞がこの問題について最高裁判所法務省との意見の対立ということを大々的に報じましたいきさつからいたしましても、結局は少年法構想の法務省見解に対するチェックだというふうに解してもいいような感じがいたします。この点は、今度の反則金制度の問題につきまして、最高裁長官が意見発表をなさった、同じような結果を、現実には世論的にも、また実際のこの法律案の取り扱いにつきましても、起こしておるのではないか。少年非行の問題につきましては、御指摘のようにきわめて重大な社会問題でありますから、それだけに、治安維持の責任にあります政府あるいは法務省当局として、真剣にこれと取り組まれるということは当然であり、それがひいては少年法改正手続に結びついてくるというのは、当然という感じがいたします。  ところが、先ほどの文書の発表その他最高裁の御行動が、結果的には少年法改正の手続を非常におくらした。現実にまだ日程にのぼってこないという事実をもたらしている一因をなしているのではないかという感じがいたします。また、反則金制度につきましても、現に五月十五日の最高裁長官の御発言を受けたかのように、この二十三日付の毎日新聞の記事によりますと、交通違反の反則金制度について、裁判所が待ったをかけたという意味の見出しをつけた大きな記事を出しているわけであります。結果的には、少なくとも一般の国民から見ますと、こういう重要な問題について最高裁判所関係当局、法務省あるいは警察庁が、意見の対立で、俗に言うなわ張り争いをしているのじゃないかという印象が、非常に強く与えられているのではないか。そのために必要な法改正がおくれるという現実が、私は姿として露呈してきておるという感じがいたします。  ところが、この交通反則金制度の必要性、あるいは少年法改正についての必要性は、社会的ないろいろな事情から、一日もゆるがせにできるものではないということを感じました場合に、立法過程、あるいはそのまた前段階において、最高裁判所が、私ここで申し上げるまでもなしに、裁判所は、裁判所法第三条によって、具体的な事件について、法律上の争訟を裁判されるのがたてまえでございます。もちろん立法過程で裁判所に関連した意見関係当局にお述べになるのは当然な責務であるし、また必要な権利かと思いますけれども、発表の方法あるいは時期等については、より慎重であってしかるべきではないかというふうに感ずるわけでございます。重ねて御見解を承りたいと思います。
  54. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 実は、少年法改正につきまして、先ほど申しました二月に私ども意見書を発表いたしましたけれども、その際は、まだ法務省改正構想というものはまとまっておらなかった時期でございます。ところが、御承知のとおり、昨年の五月に法務省におきまして少年法改正構想というものを発表されたわけでございます。これは普通の法改正作業から申しますと、全く異例の方法であろうと存ずるわけでございます。と申しますのは、複数の構想を発表されまして、その複数の構想について、各界の良識ある意見あるいは実務家の意見を聞いて、将来りっぱな少年法をつくりたい、こういう御趣旨で構想を発表されたわけでございます。構想発表されました当時、やはり法務省から私どものほうに係官がお見えになりまして、実はこういうふうな構想を考えた、これについて実務に携わっておる裁判所側意見を聞きたい、こういうふうな口頭の申し入れがあったわけでございます。  そこで、最高裁判所といたしましても、事務総局内に少年法改正問題協議会というものを設けまして、高等裁判所裁判官地方裁判所裁判官、家庭裁判所裁判官あるいは調査官研修所の所長などを委員に加えまして、法務省の今回の改正構想について逐一慎重に検討を加えたわけでございます。またその間、全国の高等裁判所長官家庭裁判所所長会同を開きまして、少年法改正に関する現場の御意見というものも十分お聞きいたしました結果、実は昨年の十月、最高裁判所事務総局という名前で少年法改正に関する意見を発表したわけでございます。先ほど岡沢委員から大阪の弁護士会で家庭局長が説明したのを聞いたということをおっしゃられたわけでございますが、その法務省が出されました改正構想につきまして、やはり広く各界の良識ある意見を聞きたいということで、大阪の弁護士会と申しますよりも、近畿弁護士会連合会と申しますか、そこに司法制度調査会というものがあるそうでございまして、その司法制度調査会において少年法改正問題について審議をする、それについて法務省から津田刑事局長に来てもらって話を聞いた。ところが、一方的な話だけを聞いたのでは公正な審議ができないから、最高裁判所側からも来てほしい、こういうふうな御依頼が近畿弁護士会連合会の理事長からございまして、私どもといたしましても、正しい非行の認識あるいは裁判所の正しい処遇のあり方というものを知っていただいた上で、この改正構想について弁護士会から御意見を出していただくということがむしろベターであるというふうに考えて、私、大阪に参りまして、弁護士会の皆さまにお話を申し上げたわけでございます。
  55. 岡沢完治

    岡沢委員 大阪での家庭局長のお話のいきさつはよくわかりました。また、私自体が五月十五日の最高裁長官の発露、少年法についての家庭局長の御発表等をすべて違法と申し上げているわけではもちろんございません。ただ、妥当性について、やはりこの際考え直してもらいたい、より慎重な御行動を今後こういう立法問題については最高裁判所に御自重願いたいという趣旨であります。  ただ、ここで一言付言いたしたいのは、この二つの問題を結びつけまして、最高裁判所法務省あるいは検察庁、あるいは弁護士会も含めまして、法曹が何か相対立しているような印象を国民に与えるというのは、法曹全体の信頼と権威のために非常に悲しいことではないか。立案過程において関係をお持ちになる最高裁判所が、いろいろな御見解をその筋を通して御発表になり、あるいは正しく意見具申なさることは私は当然であり、むしろ責務かと考えますけれども、今後この種の御行動については、発言の時期と場所あるいは人等について、十分な御配慮を願いたいということを考えるのであります。  それから、ただこれと関連して、巷間伝えられますように、反則金制度の問題も、あるいは少年法の改正の問題も、予算その他の関連で、裁判所の予算がそのために減るのではないかという懸念があっての行動であるとすれば、これは大きな間違いでございます。私たちも、この五月十八日の附帯決議におきまして、裁判所の職員の増員あるいは施設についての必要な予算の増額措置については、共産党を除く各党が一致して決議をして、むしろその御協力をしたいという趣旨でございますので、もしそういう懸念があっての御行動であれば、全く必要ないのではないかというふうに感じますので、この点つけ加えておきます。
  56. 岸盛一

    岸最高裁判所長官代理者 ただいま、非常に裁判所のことをお考えいただいた御発言がありまして、感謝いたすわけでありますが、決して予算がどうのこうのということを心配して裁判所考えをきめることはございませんで、どうしたらほんとうの非行少年に対する司法的な対策ができるか、どのようにしたら筋の通った、しかも日増しに激増する交通違反に対する対策ができるか、しかも、それが裁判所関係する限りにおいて、いろいろ御指摘のような行動をとったわけであり、まして、これは裁判所関係のない政策でございますと、これはもちろん裁判所は何ら口出しすべきことでない。やはり裁判を実際に適用するものは、刑罰法規あるいは少年法もそうですか、まず裁判所でございますので、やはり裁判所の多年のこれまでの経験、そういうものが相当ウエートを持ってくるわけです。そういう点について、客観的な資料を世に公表するという点については、これはあながちそうお責めにならなくてもよろしいのではないかと思います。ただ、先ほどお話しになりましたような疑問を国民に抱かせるような行動は厳に慎まなければならない、かように考えます。
  57. 岡沢完治

    岡沢委員 事務総長お答えは、大体私はわかるのでございますが、現実には新聞だねになり毎日新聞のああいう記事になったということ自体、私は非常に大きな影響力を持ったということだけは指摘させてもらいたい。  それから、お答えは、まともに聞きますとそのとおりでございますが、本委員会におきましても、裁判官の増員が、交通事件の激増に関連して裁判所判事の増員等も通過したというようないきさつもあって、かりに反則金制度の採用によって交通事件が減ることによって、裁判官が減るのじゃないかというような御懸念は、私個人としては全くないし、また委員会全体の空気としても、あるいは立法機関たる国会趣旨からいたしましても、また訴訟促進という現実の国民の期待からいたしましても、そういう御懸念は全くないということを、私個人としては申し上げておきたいと思います。  最後に、五月十五日の最高裁長官が、大阪の記者会見でお触れになった点でございますが、四月の裁判官の大異動に関連いたしまして、問題の訴訟促進の逆のような結果をもたらすことはないかという点について人事局長にお答えいただきたいと思います。
  58. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 御質問に対しまして、率直にお答えだけ申し上げれば、訴訟遅延という問題は生じるという結果に相なっております。
  59. 岡沢完治

    岡沢委員 訴訟遅延が生じておるということですね。生じておるということを認めておるとおっしゃるわけですね。
  60. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  61. 岡沢完治

    岡沢委員 正直なお答えでございますが、それならば、それについて人事局としてどういう御配慮をなさっておるかということをお聞かせいただきたいと思います。
  62. 矢崎憲正

    ○矢崎最高裁判所長官代理者 この裁判官の人事異動につきましては、岡沢委員は十分御承知と存じますけれども、しかし少しく時間をいただきまして御説明させていただきたいと存じます。  戦前におきます裁判官の異動は、どういうようなことであったかと申しますと、これは司法官試補を終えまして予備判事に任命になりますときに、全国にずっとおしなべて平均して転補になるわけでございます。逆に言いますと、東京とか大阪のような大都市には、最初は全然配置されないということになるわけでございます。そうして二年か三年した後に、ぼつぼつと三人、四人、五人あるいは七、八人というように、地方から東京または大阪に転任してまいりまして、そうして東京、大阪に入った者は、そこに定着するというのが戦前における人事異動の大体の大筋でございました。  ところが、戦後におきましては、この異動が変更されたわけでございます。岡沢委員十分御承知と存じますけれども昭和三十年ごろ、現在を基準にいたしますと十数年前から、司法修習生の全部の間から、任地についての希望が出てまいったわけでございます。それは結局のところ判事補の十年間に、大きな都会、それから中くらいの都会、それから小さな都会、そういうところを全部経験するような転任にしてもらいたい、こういうことでございます。それはどういうことからきておるかと申しますと、判事として一人前に大成いたしますためには、大きな都会の裁判所、小さな都会の裁判所、また中くらいの都会の裁判所の実務を十分経験いたしまして、その上で初めて一人前の判事として大成するんだというような考え方が、その一つの理由でございます。  もう一つの理由といたしましては、戦前のように、地方に行った者は地方に行ったきりになってしまうということでは困る、若い方々は、もちろん大都会における日常生活ということについて、非常に関心を持っておるわけでございます。これは無理からぬことでございまして、大都会における日常生活、それからその家庭における教育というようなことを考えますと、そういう希望が出てまいったというのは、まことに無理からないところであろうと存じます。しかしながら、この判事補のときに三回かわる、またそれにつけ加えまして再任のときに転任するということもあるわけでございますけれども、短所と長所があるわけでございます。  短所はどういうことかと申しますと、この異動の当初あたりは、人数も少なかったのでさほど目立っていなかったわけでありますけれども、三年ごとに異動するということになりますと、ただいま御指摘のとおり、どうしてもやりかけの事件を、終結まで関与しないで途中で転任せざるを得なくなる、逆に言いますと、訴訟遅延の問題が出てくるということが短所ということであろうかと存ぜられます。  しかし長所が決してないわけではございません。どういうところが長所かと申しますと、いわゆる正義の平等化、裁判の平等化と申しますか、逆に言いますと、人権保障の平等化というように申し上げることができると思いますけれども、おしなべて全国裁判所、どんないなかに参りましても、非常にりっぱな、そして抱負を持った裁判官がその裁判所で執務しているということでございまして、地方裁判所においでになってごらんになるとわかると思いますけれども、思いがけないようないなかの裁判所に、いわゆる野に遺賢ありというような実態をごらんになることができるかと存じます。これあたりが非常に大きな長所であろうかと思われるわけでございます。  それから、これは長所の消極的な面というように申し上げることができるかと存じますけれども、いま、もしもこの方式をとりませんで、戦前のように全国にばらまいて、そしてその中から五人、七人という特定の者を、東京とか大阪の大都市に入れるという方針をとりますと、これは当面生じる具体的な混乱は別問題といたしまして、裁判官を志向する者が激減することは、目に見えて明らかでございます。いわば、いまの裁判官の実員で、全国裁判所の部の構成というものが、かろうじて維持されているのが実情であるにもかかわりませず、もしそういう方針を変更いたしますと、おそらく裁判官志望者が激減いたしまして、将来、この全国の津々浦々の裁判所裁判官の必要数を維持することができない。逆に申しますと、部の構成すら困難になるという事態が生じることは、これはもう明らかなことだというように考えられるわけでございます。したがいまして、ただいまも申し上げました長所と短所とをはかりにかけて考えますと、どうしてもこれはある程度の訴訟遅延は、何とか別途の方法で、できるだけ訴訟遅延が起こらないように考え対策をとり、そして長所のほうを十分生かして、従来どおりの方法によって人事異動を行なっていくというように考えざるを得ないのではなかろうか、というように考えておる次第でございます。
  63. 岡沢完治

    岡沢委員 終わります。
  64. 大坪保雄

    大坪委員長 次は中谷鉄也君でありますが、この際委員長よりおはかりいたします。  先般の当委員理事会において、横山委員から要望のありました件について、そのときの理事会で決定をいたしました最近一年間における法曹関係諸団体の決議及び法務省並びに裁判所に対する要望調査資料の取りまとめ方の件につきましては、委員長より当法務委員調査室に命じまして、その調査資料の取りまとめをいたさせたのでありますが、その資料が私の手元に提出されております。  本日の理事会における協議のとおり、これを参考のため、本日の会議録に掲載いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  横山利秋君。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、少し取り扱いが独断専行のおそれがありますが、別途、これは理事会で委員長の所信のほどを伺わなければなりませんが、しかし、まあ議事録に掲載をされるということでありますならば、関連をいたしまして、一、二政府並びに最高裁の御意見を伺っておきたいと思います。  政務次官、これは見ているのですか。——見ているのですね。弁護士会をはじめ、最高裁並びに法務省関係の諸団体が決議をし、それを政府並びに最高裁判所に提示をいたしました内容は、きわめて重要な問題並びに適切な問題が多かろう、多いと私は思っておるわけであります。従来この種の取り扱いは、どういうふうになさっていらっしゃるか。決議文を持ってきて、ああそうですか、はい、いただきますということですか。どういうふうに処理をなさっているか、具体的に伺いたいのです。
  67. 井原岸高

    ○井原政府委員 ただいま横山委員の御発言中にもありましたように、法務省といたしましては、法曹関係の諸団体の決議、要望内容というものは、非常に重要でございまするし、また適切な問題がほとんどでございますので、すでにそういう内容については検討をいたしておる分もございまするし、まことに申しわけないのですが、若干おくれておるものもあるわけでございまして、本日のただいまの御発言、十分ひとつ部下にも伝えまして、促進するようにやらせたい、かように考えます。
  68. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 ただいまの横山委員のお話の点でございますが、実はこの調査室でおまとめになりました要望書の資料でございますが、裁判所関係のものは、大体私どものほうから資料は提供いたしたものが大部分のようでございます。中にはそうでないものもあるようでございますが、ただ、こういう一本の印刷物に、法務省のほうと両方まとめてできましたものを拝見いたしましたのは、いまから一時間くらい前にこの席でいただいた次第でありますので、この一つ一つについて、詳細になかなか申し上げられませんが、そしてまた中には、拝見いたしておりますと、弁護士会関係では地方のブロックの連合会の決議等もあるようでございます。そういうものは、必ずしも当然に最高裁判所に参るとは限っておらないわけでございます。参る場合も多うございます。いずれにいたしましても、最高裁判所に参りました限りにおきましては、私どものほう、総務局が窓口になりまして、これを全部関係の部局に連絡いたしまして、そうして事務総長以下の会議で、これについてどういう処置をとるかということを具体的に検討いたしております。中には御返事を求められておるものもございまして、そういうものにつきましては御返事を申し上げておるものもございます。いずれにいたしましても具体的に真剣に検討し、善処いたしておるような次第でございます。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 通読いたしますと、順序不同でございますが、検察当局のあり方について具体的な提案をしておるもの、あるいは裁判所関係並びに検察庁関係の庁舎改善に関するもの、あるいは交通問題に関するもの、あるいは警察関係に関するもの、また予算関係に特に多いもの等、多岐にわたっておるわけでございます。  私はまず概括的にお願いがしたいのでありますが、私ども取り上げた問題もございますが、不敏にして、なるほどこういう重要な問題があったのかと考えた問題も中にはあるわけであります。法務省並びに最高裁判所において、これらの決議並びに要望について、どういうふうに処置をしたか、また今後処置をしようとするのかという点を、あまり膨大でなくてけっこうでありますから、簡潔に整理をされて本委員会に提出をされんことを要望いたしたいのでありますが、いかがでございますか。
  70. 井原岸高

    ○井原政府委員 できるだけ早い時期にひとつ検討——すでに実行しておるものもあります。あわせて今後の対策等について御報告いたすことを、早い機会にいたしたいと思います。
  71. 寺田治郎

    ○寺田最高裁判所長官代理者 最高裁判所といたしましても了承いたしました。
  72. 横山利秋

    ○横山委員 中で特に一つ二つ希望があります。  二ページにございます第三決議「近時、債権取立乃至確保のため、暴力を行使して、幾多国民の権益を、不当に侵犯する事例が増加しつつあることは、まことに遺憾に堪えない。」とありますが、この債権取り立て、ないし確保のための暴力行使刑事事犯になりました事案につきまして、特に資料がいただきたいのであります。これは法務省関係だと思います。  それから、その次は、一六ページにございます日本調停協会連合会から出ております五項目に関連をいたしまして、調停委員の資格並びに任用の方法について資料をいただきたいと思います。同時に、人権擁護委員の資格並びに任命の方法、保護司の同様のもの、それをいただきたいのでございます。  それから、二〇ページにございます法律扶助協会、この法律扶助協会につきましては、別の観点で一回取り上げたいと思うのでありますが、法律扶助協会の運営状況に関する資料をいただきたいと思います。  それから二四ページ、九州弁護士会連合会の第二号決議「保釈保証金についても供託金と同様相当の利息を付し還付されるよう法の改正要望する。」この問題についての意見を別途の形で伺いたいと思います。  それから二五ページにあります第六号決議「所得税について控除すべき必要経費の大幅引上」、弁護士会から出ているわけでありますが、弁護士の所得税は、どういう状況に必要経費が算定をされているかという資料をいただきたいと思います。  そのほかいろいろございますが、一応政府並びに最高裁から、本諸問題についての御意見を伺ってから質問をいたしたいと思います。  以上でございます。
  73. 大坪保雄

    大坪委員長 中谷鉄也君。   〔委員長退席、安倍委員長代理着席〕
  74. 中谷鉄也

    中谷委員 百日裁判の問題につきまして、同僚委員のほうから詳細な質疑がありましたので、私のほうからは一、二点だけ補足をいたしましてお尋ねをいたしたいと思います。  二十二日の刑事裁判官会同における最高裁長官のいわゆる訓示、これは、非常に、選挙裁判促進について、裁判所のお立場、要するに迅速な裁判、特に百日裁判法の要請について、裁判所がおこたえになろうという決意をお示しになったということで、精読をさせていただいたわけでございますが、いわゆるこの百日裁判の適用を受ける、百日裁判の法の規定に該当する事件、今回の衆議院選挙及び統一地方選挙に関して、どの程度現存裁判所に公訴が提起されているか、この点をひとつお答えをいただきたいと思います。
  75. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 申し上げます。  まず、衆議院議員選挙のほうから申し上げます。これは、本年三月末現在の数字を申し上げます。公判、略式とも合わせまして、七千二百三十二件でございます。そのうち、買収事犯が……(中谷委員「百日裁判ですよ。」と呼ぶ。)——百日裁判でございますか、失礼いたしました。百日裁判は、いまのところ、裁判所のほうへは数件受理報告が来ておる状態でございます。
  76. 中谷鉄也

    中谷委員 要するに、長官の御訓示は、選挙裁判促進する、特に、百日裁判事件については、法のまさに規定をしておるところであるのだから、この点については各方面から強く要望されておるのだ、だからこの点については、他の審理をかりに犠牲にすることがあっても促進をしなければならない、こういう御趣旨の御訓示だというふうに私理解をいたしますが、そういうことでよろしいのでしょうか。
  77. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのとおり、かりに他の事件審理がおくれるような結果となっても、ということに私どもは理解をいたしております。
  78. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、刑事局長に、実は、お尋ねをと申しますか、お教えをいただきたいと思うのでありますけれども、長官の御訓示が、百日裁判については、特に第一線刑事裁判官のみならず、裁判官の奮起を促されたのだ、こういうふうな趣旨の新聞の報道になっているのですけれども、百日裁判についての該当する案件、公訴の提起された案件について、明確な、要するに、五月の本日の段階において、明確な件数についての御把握がないということ、これは長官の御訓示と一体どんな関係になるのか。要するに、他の審理を犠牲にしてまで審理促進しよう、こういうふうな長官の御訓示がある。ところが、その点について、報告が必ずしも明確でないような御答弁があったのですが、この点はいかがでございましょうか。
  79. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたのは、今回の選挙に関連いたしまして、百日裁判事件に該当するものがどのくらい提訴されているかという御質問と了解いたしましたので、当方のほうに各庁から報告を受けておりまするもの若干、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  80. 中谷鉄也

    中谷委員 正確には何件でございますか。お教えいただきたいと思います。
  81. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 起訴状の写しを送付してもらっておるのでございまするが、総括主宰者であるかどうかというような記載が必ずしも明確でないものもございまするので、いまの受理報告だけではまだ正確なものがつかめておらないので、はなはだ申しわけないのでございまするが、現段階におきまして正確に何件ということは申し上げられないのでございます。
  82. 中谷鉄也

    中谷委員 百日裁判の推進につきましては、昭和二十七年、三十年、何べんも刑事裁判官会同等において御努力いただいた点についての経過は、私、お教えをいただいて承知をいたしておるわけでございますが、ただ、五月二十二日段階において、長官の御訓示が、他の審理を犠牲にしても選挙裁判促進しよう、促進せよ、こういう御訓示である。ところが、最高裁の長官のほうにおいてそのような御訓示があったけれども、件数について必ずしも明確に御把握できていないという点については、若干、私、率直に申しまして、何といいますか、少し残念な気がいたします。ただその点については裁判所のことでございますので、これ以上お尋ねをすることは差し控えさしていただきますが、次のような点についてはいかがでございましょうか。と申しますのは、裁判所のいわゆる百日裁判実現のための御措置といたしまして、検察側に対して、総括主宰者などは、できるだけ他の被告人と分離して起訴せよ、起訴してもらいたい。さらに、訴因も重要なものに限り百日裁判に適合する形で起訴すること、こういうふうなところの要望検察庁にお出しになっておられます。ところが、こういう要望も、すでにどの時期において検察庁に対して御要望になったのかどうか。要するに、統一地方選挙の終了日、四月の十五日あるいは四月の三十日、あるいは衆議院選挙におきましては一月の二十九日に、すでに選挙を終了いたしておりまして、警察庁の方も法務省の方もおいでになりませんけれども、すでに衆議院の選挙取り締まり対策本部などというものは解散されてまさに久しいわけなんです。すでに起訴が終わってしまっているわけでございますね、衆議院関係につきましては。したがいまして、私、局長さんにお答えいただきたいのは、せっかく裁判所がこのような要望検察庁にお出しになっても、すでに起訴されてしまっておっては、その要望も、要望としての目的を達しないのじゃないかというふうに、私感じたのでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  83. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 衆議院議員選挙につきましては、まさに仰せのとおり、タイミングを失しておるということに相なるわけでございまして、その点、私どものほうがおくれておったということは、まさに御指摘のとおりでございます。なお、地方選挙におきましては、現在のところ検察庁におきまする処理の状況は、検察庁の受理件数の約一割というふうな段階であるというふうに承知いたしておりまするので、その選挙に関する限りは、なおこのような配慮を願う余地はあろうか、かように思っておるわけでございます。
  84. 中谷鉄也

    中谷委員 もとより裁判所が検察側に対する、先ほど私がお尋ねをさしていただきました総括主宰者などは、できるだけ他の被告人と分離して起訴すべきである。訴因も重要なものに限るべきだ、そうして、百日裁判に適合するような形で起訴すべきだ。こういう要望は、今回に限らず、すでに前々からこのような要望があったのではないか、今回初めてでございましょうか。この点は、もし従前からあるとすれば、決して局長さんお答えになるように、手おくれでも何でもないわけで、今回あらためてそういうような要望をされたというふうに私は理解をさしていただきたいのでございます。この点いかがでございましょうか。
  85. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 実は今回初めての具体的なる一つの要望でございます。  確かにタイミングを失したではないかという御指摘は、そのとおりでございまするが、今後なお選挙事件というものは、御存じのように継続することは考えなければならないのでございまするので、今回の選挙に限って考えれば仰せのとおりの点もあろうかと思いまするが、ことしだけのことではございませんので、こういうことは決して意味のないことではない、かように思うのでございます。
  86. 中谷鉄也

    中谷委員 この点については、第一線裁判官会同等においても、従来から、申し入れとしては今回初めてであっても、従前から何べんも論議されている点でございますから、私は、決して局長さん御答弁いただいたように、手おくれだったというふうなことを申し上げるつもりはございません。ただ、この点についての五月二十二日会同のこの申し入れにつきましては、さっそく法務省等についてお申し入れになったと思うのです。実は私、御指導いただきました吉益裁判長、いわゆる豊田さんの関係事件と申し上げて私いいと思いますけれども、ずいぶん長い間の御審理を終わられたあと、この種のいわゆる選挙裁判のあり方についての御見解が述べられました。これに対しまして、同じく岡沢委員同様指導を受けております大阪地検の卜部次席検事のほうから、そういうわけにはいかないというふうな趣旨見解の発表もあったことを私承知いたしております。したがいまして、裁判所としては百日裁判実現のためには、どうしても検察側に対して要請し、検察官側において協力すべきことは最低この二つなんだ。もちろんそのほかに、証拠の閲覧の問題であるとか、その他追起訴等についてはすみやかにすべき問題であるとか、いろいろな検察側の百日裁判遅延について指摘さるべき私は問題はあると思います。その点については、先ほどからお答えがあったというふうに私承知いたしましたが、この点について、こういう私の立場からいたしますると、当然の裁判所の要請、要望に対して、法務省の答え、これに対して訴訟促進のために対する法務省と申しますか、検察側の見解、これは一体いかがなものでございましょうか。
  87. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 会同の前に、まず参列方をそれぞれお願いをいたしました。そうして会同の後に協力方をお願いするために目下連絡いたしておる段階で、来週中に法務省の都合がつくということも聞いておりまするので、連絡をいたしたい、かように思います。  なお、弁護士会につきましても同様でございます。
  88. 中谷鉄也

    中谷委員 おそれ入ります。局長さんの御答弁、この点についてのそうすると、法務省のいわゆる裁判所の御要請にはこたえましょうというふうな点についての答えというものは、現在のところないわけなんですか、それとも見通しとしてそのような点について正式に回答は受け取っていないけれども裁判所の要請について協力しようというふうな回答が予想されるのかどうか、この点いかがでございましょうか。
  89. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 審理促進方ということについては、前々から法務省におかれましても、できるだけ協力するという態度でおられるということはいえるわけでございます。ただ、ただいま御指摘の訴因を重要なものにしぼるというような具体的な事柄につきまして、それで承知しましたというような御返事がいただけるかどうかということにつきましては、いまのところ私からは何とも申し上げることができないわけでございます。まだこの申し合わせ事項につきまして、具体的に法務省のほうに連絡いたしておりません段階でございますので、全般的な協力ということは、抽象的には期待できるということは申し上げることができるわけでございますが、特定の事項につきましては、現段階においては私のほうからは何ともまだ申し上げかねるような状況でございます。
  90. 中谷鉄也

    中谷委員 刑事被告人になりました百日裁判規定に該当する者には、いわゆる非常に端的に申しまして、一つ起訴されるよりも三つくらい起訴されたほうがかえっていいんだ、それのほうが結局裁判が延びるんだというような、いやしい心情というものがあるように私思うのです。だから、このような点について、新聞等においても論評されておりましたように、適正な科刑ということと同時に、いわゆる議員失格というふうな問題にかかわってくるような場合には、すみやかな判決の言い渡しということのほうが、むしろ社会的制裁は大きいのだというふうなことで、木を見て森を見ないのではなしに、森を見ていただきたいというふうな趣旨で、裁判所としては力を込めていただいてひとつ法務省を御説得いただきたい。これは実は法務大臣に特にお聞きするつもりできようは出てまいりましたけれども、法務大臣の御出席がありませんので、裁判所にこういうことばかりお聞きすることは非常に恐縮でございますけれども、この点を特にお願いいたしたいと思います。
  91. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 いろいろ御鞭撻いただきまして、まことにありがとうございます。裁判所といたしましても、裁判所自体において努力すべき点はやはりやらなければいけないし、みずからのところを充実させた上、検察官のみならず、弁護人協力も得なければならない。やはり自分のほうで努力しなければ、他に対してもお願いばかりはできない筋合いでございます。それで、裁判所としても、みずから努力し、また検察庁及び弁護士会協力を切にお願いするという覚悟でおるわけでございます。
  92. 中谷鉄也

    中谷委員 局長さんからお教えいただいて、非常に驚いたわけでありますけれども、自粛選挙、粛正選挙ということが叫ばれておりながら七千件を三月末において上回る違反があって、立件、起訴された者があったということでございます。この点について、長官の御訓示の中においては、百日裁判の件数が必ずしも明確ではございません。担当の裁判官は、専念して選挙裁判促進のために努力されるのだということの御訓示があったようでございますが、特に選挙違反事件の集中いたしております裁判所については、裁判官の専念というふうな問題との間に、若干の混乱が生じてくることが考えられます。したがいまして、まず前提といたしまして、特に選挙違反の集中いたしております裁判所はどこでございましょうか、お教えいただきたいと思います。
  93. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 従前の姿を見ますと、大都市には例外なしに相当数の事件が係属しておるわけでございます。
  94. 中谷鉄也

    中谷委員 率でお教えいただけませんでしょうか。集中というのは、一人しかいないところに五件もくるようなところは、集中でございましょうから……。
  95. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 御質問のような資料は、まだつくっておりませんので、この場でお答えを申し上げることはできないのでございますが、もし御要望でございますれば、後刻作成いたしましてお答え申し上げたいと思います。
  96. 中谷鉄也

    中谷委員 私がお教えをいただきたいのは、たとえば裁判官が一人しかおられないような乙号支部へ、選挙違反事件が十件も係属してきたということになってまいりますと、これはずいぶん集中したということになるのだろうと思うのです。そういうふうな場合を私はお教えいただきたかったわけです。別にその資料に特段に私自身が関心を持つものではございませんが、一般的にそういう場合はいまあり得ると思うのです。  そうすると、他の審理を犠牲にしても選挙違反裁判促進という長官の御訓示の趣旨というのは、私は百日裁判のあり方としては、まことにそのような御訓示あってしかるべきだと思うのですが、しかし、ある裁判所、ある支部においては、他の審理を犠牲にしてもというのが、単に心がまえではなしに、現実に他の審理が犠牲になるおそれも出てまいると思います。そのような場合には、裁判の迅速と公正——どの事件についても迅速と公正であらねばならないと思いますが、具体的には——もしそういうことがお答えいただけない、あるいは答えるべきでないということであればけっこうですが、どのような事件にどのような形で審理の犠牲、これは非常に強いおことばだと思うのですけれども、そういうものが生じてくる可能性があるのでしょうか。たとえば、暴力団の事件なんというものは、公職選挙法のこういう事件の御審理と同様、いつまでも世間に暴力団の被告人を放置しておいてもらっては困ると思うのです。さらにまた、迅速に御審理いただかなければならぬ事件というのは、法の規定がなくてもあると思います。世の中に、おそくてもいいという事件はないと私は思うのです。しかし、現実の問題として、どういうふうな影響がどのような事件にあらわれてきてもやむを得ないんだ、——私は原則的にこの長官の御訓示はりっぱだと思うのです。そこまでお考えになった上で、他の審理を犠牲にしてもという御訓示があったと思います。したがいまして、私はむしろ裁判所のそういう強い御決意が、ただ単に心がまえの問題でなしに、現実に他の事件について影響が出てきても、その影響はこのような事件にこんなかっこうで出てくる可能性が十分ある、しかし、あくまで百日裁判実現の趣旨を強行するんだ、それが法の要請なんだという意味で、先ほど岡沢委員のお尋ねに対して言われたそれは、心がまえの問題だというふうなことではなしに、もっと具体的にお答えいただくことがむしろ長官の訓示をして精彩あらしめるものだと私は思いますので、お答えいただきたいと思います。
  97. 佐藤千速

    佐藤最高裁判所長官代理者 仰せごもっともでございます。公選法の二百五十三条の二の第二項は「特別の事情がある場合の外は、他の訴訟の順序にかかわらず」裁判しなければならないというふうにいっておるわけでございます。そういうことから申しましても、やはり他の訴訟に優先して処理を考えなければならないということが原則的な心がまえだと思いますが、しからば、他の訴訟はほうっておいていいか、どういう事件もほうっておいていいか、こういう具体的なことになりますると、やはり社会的な影響の大きい事件とそうじゃない事件とおのずからあると思うのでございます。ですから、そこは、この種選挙違反事件と、これに準ずるような価値のあるもの、そういうものはやはりそういつまでも選挙事件があるからといって、放置しておくわけにはいかないと思うのでございます。そこはおのずから事件についての価値評価ということが、裁判所といたしましては従前の経験から申しましてもできるわけだ、かように思っております。
  98. 中谷鉄也

    中谷委員 百日裁判の実現につきまして、これは委員長に対する要望なんですけれども裁判所の長官の御訓示というものは非常に画期的なものであるし、私自身も法曹の一員として、こういうような問題について、また法務委員としてこういう趣旨の実現には努力したいと思うのです。ただ、この問題について、本日裁判所関係の方の御出席ありましたけれども、法務大臣御出席がない、法務政務次官はいつの間にか御退席になったということでは、これは私の質疑、このままで終わるわけにはまいりませんので、委員長に、次会にはぜひとも法務大臣、百日裁判の問題を中心にお尋ねいたしますので、出席方をお手配をいただきたい、この点を要望しておきまして、私の質問を終わりたいと思います。  同時に、裁判所のいろいろなオブザーバーとして日弁連の関係者並びに検察庁関係者、五月二十二日の会同には出席をいたしておるわけでございますけれども、さらに、裁判所のほうから、検察あるいは弁護士会両者に対しまして、さらにきめのこまかい百日裁判実現のための要望等があるので、それらの諸点につきまして、次会にあらためて御答弁をいただきたいと思いますので、それらの点についてひとつ御答弁の準備をお願いをいたしたいと思います。  なお、次会には、さらに若干こまかい問題についてもお尋ねいたしますので、資料等も御準備いただきたい、以上でございます。  終わります。
  99. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 中谷委員の御発言は善処いたします。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会