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岸最高裁判所長官代理者 横田長官が、大阪での記者会見で言われましたことは、朝日新聞その他の新聞にも出ております。しかし、新聞によってそれぞれニュアンスがございまして、長官の
考えがどこにあるかということは、あの新聞記事だけでは正確にはつかめないと思います。中には、反則金制度に対しては、まっこうから反対であるというふうにとられるような新聞記事もございます。また、問題点があるんだ、疑問点があるんだという
意味の発言だというふうにとられる新聞もあるわけでございます。
で、長官の言われました真意は、反則金制度にまっこうから反対だという
趣旨では決してございません。全部で十五分間ぐらいの会見だったそうですか、反則金の点については、わずか一分か二合ぐらいで話が済んだというだけだったそうでございます。新聞によりますと、反則金の性格があいまいだということを申しておられるわけですが、そのときには、あいまいということばは、どうでもいいと思います、同じになると思いますが、性格がはっきりしないということは言われたそうです。その
趣旨は、反則金というものは、立案当局である警察庁の説明では、任意に払うんだからという説明だそうでございますが、決して、払ってもいい、払わなくてもいいというものじゃなくて、払わないと刑罰を科せられるという仕組みになっておりますので、その点で反則金というものが、全然刑罰ではないにしても、そういう
検察官の公訴提起権というものを背後に控えておるという、そういう点で性格がはっきりしないということを言われたのであります。これは当初から警察庁においてもあの性格をどう説明したらいいかということについては、いろいろお
考えのようでありますが、まだはっきりした
見解は出ていないようでございます。しかも、その反則金を通告する処分が、行政処分かどうかということについても、現在
見解が分かれております。行政処分でないというのが警察庁のお
考えのようですが、しかし、その反面、やはりあれは全体として見ると行政処分だという
見解もまたあるわけでございます。かりにこれが行政処分であって行政
訴訟の対象になる、取り消し
訴訟の対象になるということになりますと、これはやはり
裁判所に関する問題になりますので、それで
裁判所としてもやはり関心を持たざるを得ない問題点なのであります。行政処分だとしますと、取り消し
訴訟がそれに対して起こされる、払わないと公訴提起がある。つまり、一つの事実についてそっちの行政
訴訟としての取り消し
訴訟と、それから払わなかったために公訴提起をされて
刑事訴訟というものがやはり起こされる。同じ事実について行政
訴訟と
刑事訴訟とが並んで行なわれるということは、これは手続の混乱を来たすおそれがあるのじゃないか、そういう点をいまのうちから
関係機関と十分に協議してはっきりさしておきたい、そういう
趣旨でございます。
それから反則金制度は、警察官や一般の自動車運転者に対して、安易な気持ちを起こさせるんじゃないかということが記事に出ておりますが、これは
運用の際に、そういう点を十分に注意しなければいけない。正しい
運用が行なわれなければならないという
運用面についての
意見を述べただけで、決して、この反則金制度に対してまっこうから反対、そういう
趣旨のものではないのであります。
いずれにしても、この問題は、
国会の審議によって決定されるものでありますので、まだ正式にその法案が審議されておりません場合に、あまり
裁判所側の
意見を申すということは差し控えるべきだと思います。審議の際に、もし
裁判所はどういう点を問題にしておるかという御
質問が正式にありますれば、その際に、
裁判所はこういう点と、こういう点について、これが問題点だと
考えておる、そういうことは申すわけでありますが、こちらから進んで、まだ審議されておらないときに、法案の
内容についてとやかく申すことは、差し控えたいと思います。長官の真意は、新聞には十分に
趣旨が出ておりませんが、これはごく短い記事でありますので、しかも新聞によってはまたニュアンスが違うという点もありますので、その点は、ただ軽々しく長官がものをしゃべったというふうにおとりいただかないで、
趣旨が徹底しなかったといううらみはありますが、その点は御了解願いたいと思います。