○吉河
政府委員 ただいま
松本委員の御質問によりますと、私が事実無根のことを根拠にしていろいろと申し述べているというような御指摘がございましたが決してさようなことはございません。
昭和三十九年二月の二十一日、東京の九段会館で開かれた、
日本共産党の国
会議員団の日中国交回復・国会報告演説会、これは公開演説会でございましたが、そこで野坂
議長は次のような発言をされておるわけでございます。「最後に指摘しなければならないのは、われわれの独立、民主の戦いの
一つの決戦の時機が、六年後の一九七〇年にくることです。それは、日米安保条約の期限の切れる年にあたります。この条約によると、その時に、これを取り消さないと、そのまま
継続されることになっています。もちろん、この条約は、六年を待たないで、今
ただちに破棄しなければなりませんが、それができなければ、これから闘争を積みあげ、大衆を鍛練し、力を強大にして、七〇年には、どうしても目的を達しなければなりません。一九七〇年のわれわれのたたかいは、わが祖国
日本が真の独立への道を大きく切りひらくかどうかの決戦となります。いま、われわれのおこなっているもろもろの闘争は、安保条約を破棄する一九七〇年の闘争の準備をやっていることにもなります。」この演説の
内容は、
日本共産党の中央機関紙でございますアカハタの昭和三十九年三月一日付の紙面に、そのまま掲載されておるわけでございます。
さらに、昭和三十九年十一月に開催されました、
日本共産党の第九回大会におきましては、次のような、大会に対する中央
委員会の報告が、全員一致で採択されたということがうたわれておるわけでございます。その
内容を申しますると、
「いわゆる一九七〇年の「安保再改定」問題については、米日支配層が安保条約の「再改定」だけでなく、状況によっては「自動
延長」の方向をも考慮している事態を正確にとらえる必要がある。これに対して、われわれは、積極的に安保条約の破棄をたたかいとるという基本的な
立場から、米日支配層による「安保再改定」の策動を重視しながら、現在も将来も精力的にたたかいをすすめることが重要である。一九六〇年に結ばれた現在の安保条約は、条文上、締結後十
年間をへたのちは双方とも条約終了の通告をすることができ、その場合、この条約は通告後一年で終了することになっているので、この面からみれば一九七〇年が、安保条約の破棄、あるいは
継続という二つの道の対決における、
一つの焦点となってくることは重視しなければならない。同時に、党は、安保闘争を一九七〇年の再改定阻止にだけしぼったり、一九七〇年待ちになったりする受動的な傾向におちいることをとくに警戒しなければならない。」かような
ことばがうたわれているわけでございまして、これは第九回大会特集の、
日本共産党の理論誌でございます「前衛」の三九ページにそのまま記載されておるところでございます。
政治的な
意味と思いますが、
一つの決戦である。決戦という
ことばを非常に常識的に
考えますと、そこで勝負をきめる戦いをやるというように私どもは受け取るわけでございます。
一つの勝負ともなれば、もろもろの勢力を一点に集中するというような趣旨にもうかがわれるわけでございますが、かような
日本共産党の見解が非常に右翼団体を刺激しまして、これを根拠にして来たるべき昭和四十五年の、いわゆる日米安保条約の存続をめぐる時期につきまして、非常に政治的な危機感と申しますか、そういうような
考えを持っておるということは、客観的な資料によってもいわれるのでございます。
例をあげて申しますと、大
日本生産党という右翼団体がございますが、これの昭和四十一年度の中央
委員会決定というものが出ているわけでございます。その中央
委員会決定の中に、同党の昭和四十五年危機に対する運動
経過の
説明といたしまして、「共産党の革命工作」というような題で、昭和三十九年二月、共産党中央
委員会議長野坂参三の「
一つの決戦の時期が六年後の一九七〇年に来る。一九八〇年の闘争の準備をやっていることになる」というような演説の
内容を引用いたしまして、「その他種々の情報により、共産党が四十五年を目標に革命準備をやっていること、そしてその革命が暴力革命方式であること、さらに革命蜂起のために社共両党共闘を推し進めている」というようなことを述べておるのでございまして、彼らが判断している危機の根拠といたしまして、野坂
議長の
ただいま申し上げた演説の
内容を引用しておる。
さらに、
日本青年連盟という右翼団体がございまして、この団体は機関紙として「青年運動」というものを発行しておるわけでございます。この機関紙では、昭和三十九年十月十五日号から「一九七〇年の危機」と題する論説を連載し始めたのでございますが、その論説の
最終の昭和四十年二月一日号では、やはり
ただいま申し上げました野坂
議長の九段会館における演説を引用いたしまして、一九七〇年と申しますか昭和四十五年の政治的危機の根拠にこれをうたっておるというような
事情がございます。
こういうところから見ると、右翼団体は、野坂
議長の演説や、
ただいま申しました第九回党大会の政治報告というようなものを取り上げまして、これをどうも来たるべき昭和四十五年の政治危機の根拠にしているということが認められると
考えているわけでございまして、かような
事情から、先ほど申しましたように、右翼団体を刺激して
一つの危機感を抱かせたと認められると申し上げた次第でございます。