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1967-04-21 第55回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十一日(金曜日)    午後一時三十分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君    理事 神近 市子君 理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    橋口  隆君       加藤 勘十君    中谷 鉄也君       西宮  弘君    三宅 正一君       横山 利秋君    沖本 泰幸君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         警察庁刑事局長 内海  倫君         法務大臣官房経         理部長     辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         運輸省船員局長 河毛 一郎君         自治省選挙局長 降矢 敬義君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   吉良 秀通君         外務省北米局安         全保障課長   浅尾新一郎君         大蔵省国有財産         局総務課長   近藤 道夫君         厚生省援護局庶         務課長     江間 時彦君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局経理局長  岩野  徹君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 四月二十日  委員横山利秋辞任につき、その補欠として畑  和君が議長指名委員に選任された。 同日  委員畑和辞任につき、その補欠として横山利  秋君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員下平正一君及び松本善明辞任につき、そ  の補欠として中谷鉄也君及び谷口善太郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也君及び谷口善太郎辞任につき、  その補欠として下平正一君及び松本善明君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 四月十九日  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関す  る法律案内閣提出第八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件  裁判所司法行政に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 大臣に就任されましてから十分に大臣の所見を伺ったことがございませんので、きょうは二、三の問題にわたると思うのでありますが、御承知の上、大臣の腹蔵のない御意見を伺いたいと思うのであります。  一番最初は、きょうの閣議北朝鮮との帰還協定を十一月限りで打ち切るやにきのう並びに本朝の新聞が報道いたしておるわけであります。お互い御存じのように、協定の成立以来、現在までに十二万三千人の帰還希望者のうち、八万六千人が帰国し、その帰国をあきらめた者、未帰還者は四千百余人といわれておりますが、現在もまだ四千人、さらにまだこれはふえるものと私は推定をいたしておるわけであります。こういう時期に、今日まで歴史的に、双方の友誼的な態度をもって帰還協定を続けておったものが、どうして本日の閣議でこの打ち切りをきめられたものやいなや。また、きめたとするならば、今後はさらにたくさんの北朝鮮への帰還希望する人たちにどういう措置を講じようとするのか、まず事態の経緯を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 田中伊三次

    田中国務大臣 御承知のように、三十四年の八月以来、北鮮日本両国赤十字の手によって協定が結ばれまして、それ以来協定延長すること前後六回に及んでおります。昨年は、もう今回限りで延長をしないのだという意味のことを決定いたしまして、これを公表してきたということが大体の経過でございます。そういう経過でございますので、きょうの閣議においては、相談がありまして、昨年、一年前に決定した決定のとおり、もう延長しないでこれで打ち切りにしよう、ただ、十一月十二日まで期限がございますのに、三月も早く、八月十二日で締め切るというのでありますから、それは一体どういうことかという疑念が、お起こりであろうと思いますが、これは従来までの経過も、延ばすたびごとに締め切りは三カ月以前の申請を受けとめまして、そして三カ月以内に配船手順その他をいたしまして帰還実施をいたしました。その意味実施を十一月十二日、こういうふうに三カ月前に取り扱ってまいりました経過がございますので、このたびも最終の場合でありますけれども、三月前にさかのぼって締め切ろう、実際の送還はそれで十一月十二日までに送還実現をしよう、こういうことの経過をたどっておりまして、いろいろ意見はありましたが、やむを得ないものという、延長せずとの一年前の決定を再確認をしたというのが閣議内容でございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 手続の問題をお伺いすると同時に、なぜそれを打ち切りをしなければならぬのか、まだたくさんの人が帰還希望しておるのになぜなのかという理由と、もう一つは、たくさんの人が帰国をしたいといまも思っておるが、新聞に伝えられるところによれば、政府便宜をはかろうといっておるが、どういう方法でそれをしようとするのかという二点です。
  6. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほどの先生お話にありましたように、自来六回延長をいたしまして、八万六千何百名の帰還の実績ができておるわけでございます。そこで、政府の観測でございますが、大体大まかなところ、この程度で帰還希望者については帰還実現ができた。いや、そうじゃない、まだまだ帰還したいという者が数字の上で残っておるではないかというおことばもございましょうが、それはきわめて最近において、その希望者が激増したと見られるふしがないではない、もとより帰りたいという者は、大体において帰還手続はできたもの、そして政府補助のもとに、帰還手順をいたしましたことにも重要な意味があったもの、これで協定の趣旨は大体において目的が達せられたものだという考え方で、もうここで打ち切ろうということになったわけでございます。  それから第二点のお尋ねの、それでは帰れない者は一体どうするのかということでございますが、これは本人の自由意思を尊重いたしまして、帰りたいと思われる者については、いままでと違うところは、自費出国になるわけでありますから自費で出ていくことになるわけでございますが、これはやはり国の発行する出国証明を差し上げまして、これによって一般外国人同様の手順でお帰りを願うが、不自由のないようにできる見通しがある。どんな船で帰るのかという問題がございますが、最近は、先生承知のとおりに貿易船が相当往復しておりまして、北鮮に帰る者がございます。こういう貿易船に便乗していただくことも一つ方法であろう、また、ナホトカ方面往復しております船が、北鮮に回航してナホトカ往復するというようなことも不可能なことではない、こういうように考えますと、証明を出して便宜をはからう手順さえ尽くすならば、今後は一般外国人同様に帰りたい者は自由に帰れる、ただ国補助が出ないという、それが打ち切りになったというだけにとどまるものであるから、これは御希望に沿えないわけのものではない、非常に不当だということにはなるまいということで、そういう最終的決定を、一年前の決定を今日再確認した、こういうことであります。
  7. 横山利秋

    横山委員 きわめて皮相な見方だとぼくは思うのであります。帰る意思があるのかないのかということは、客観的な問題ではなくて、主観的な問題で、現に帰る意思のある人が四千名、これは確認をされておる。今後帰る意思のある人は別扱いだというわけにはまいらぬ。なぜならば、三十四年八月以来、三十四年八月に八万の人が全部希望した同じ人だとは思わない。一年たち、二年たち、それじゃおれも帰ろうかという人もあったかもしれない。したがって、帰る意思があるのかないのかということをあれは言っておるけれども、帰る意思はないだろうとかあるだろうとかいう推量は許されない問題である。しかも国際上からいいましても、自分の祖国へ帰るということをなぜ阻止をしなければならないのか。本来この帰還協定というものは、赤十字同士協定でありますから、赤十字同士協定に先立って政府がそれを打ち切るの打ち切らないのということは、いささか不穏当ではないか。赤十字同士が、まだ継続をする、それに対して政府が、われわれのほうとして援助はどうするか、ああするかということならまだしも、牽制するというのは不当ではないか。厚生省、来ていますか。——こういうようなことでは、いささか政府としては偏見をもって打ち切りをしたと言わざるを得ない。政府が言うところの自費出国自由出国一般外国人と同様ということにして、いま大臣は、貿易船がある、ナホトカ往復便船があるとおっしゃるが、貿易船というのは一体何トンぐらいのもので、何人ぐらい収容できるものだとあなたは実情を御存じでございますか。いかがですか。
  8. 田中伊三次

    田中国務大臣 貿易船が、具体的にはいつごろ入ってきたものがいつごろ出ていく、何日ぐらい停泊していくとか、何トンぐらいのものだというようなことについて、一々私は知識を持ちませんが、貿易船にある程度の人数が便乗して帰るということは可能なものであるという常識を持っております。それで、その貿易船にはたして人数が乗れるかどうかという問題でございますが、そういう具体的な問題につきましては、事務当局からお答えさせていただきます。
  9. 中川進

    中川(進)政府委員 お答えいたします。  ただいま北朝鮮へ向かっております貿易船が、約二百五十隻ございます。年間にそれぐらいの船が行っております。そのうち清津に百二十隻、それから興南に九十隻、それから南浦に四十隻、そうなっております。これを国籍別に申しますと、日本籍は二百九隻、ポーランドが十二隻、イギリスが十隻、ソ連が六隻、こういうふうになっております。それから、ただいま御質問の大きさでございますが、一番大きいのが百トンから千トンぐらいまででございまして、これが大体主力、八十隻くらい、こういうふうになっております。
  10. 横山利秋

    横山委員 今朝の新聞によれば、ソビエトが、ナホトカ往復があるから、それを清津に寄港してもらって、そしてやったらどうだというきわめて便宜的なかってのいい話があるわけであります。この貨物船、私の承知しておるところによりますと、貨物船とは本来営業船なんですから、貨物を運ぶ船なんですから、旅客を収容するような設備はできていないわけでありますね。したがいまして、そういう貨物船に、十人や十五人の収容能力で一々やるということが、実際問題としてまだ数千人の人が帰国を待ちわびておるときに、やるならおまえら自分の金で出ろ。そして適当な船に乗っていけばいいじゃないか。十人か十五人みんな詰め合っていけばいいじゃないか。実にそれは私は非人道的な言い方だと思うのであります。どうしてもこの協定を打ち切らなければならぬ最大の原因というのは何でありますか。この協定延長をされたならば、日本不利益になるとか、たいへんな損をするとか、そういう問題がありましょうか。少なくとも八万六千人といえば、民族大移動に匹敵するような問題であります。そのことは北朝鮮国益にも、日本国益にも共通した問題である。世界もそれをいいことだと認めた問題である。しかも、いま数千人の人がおる。この数千人の人を放したら——いまのお話しのように、どこの国だかわからぬような船に便乗していけばいいじゃないかというようなことは、いささか形式主義的で、何か他に理由があるとしか思われないのであります。いかがでございますか。
  11. 田中伊三次

    田中国務大臣 そうお考えをいただく節もないとは言えません。が、ありのままに、皮をむいて申し上げますと、この帰還協定という問題が、なぜ一体そういう協定政府が認めるようになったかという問題でございます。これは、終戦をいたしまして、講和条約の発効を見たことによって、いままで日本領土日本人としておいでになりました朝鮮人々が、にわかに効力の発生によって外国人となった、日本国籍を失って外国人となったということで、その外国人になった朝鮮人々が、自国に帰りたいと仰せになることはごもっともなことである。これは何かひとつ特別の計らいとして、本来、日本国においてそうしなければならない当然の義務があったわけではないのでありますが、進んで好悪をもってお計らいをすることがよかろうということから、わが日本政府立場らいえば、特別の同情した計らいをすることが終戦直後の事情からよかろうということで、特別な計らいをいたしましたのが、この両国赤十字協定でございます。そういう協定に基づきまして、すでに延長をすること六回に及んでおります。これをいまおことばのごとくにまた延ばすということになると、これはもういつまで延びるものかわからないということも考えられますので——最初から帰りたいという意思表示をしておった人は、大体帰ることを得た。最近においてにわかに帰りたいという人がふえてはおるけれども、本年の八月十二日までにあらためてひとつ申告をしていただいて、そこで締め切って、そして申告をしていただいた方は、いま言ったように、丁重に従来のとおりお送りをしよう。それで十一月十二日で打ち切りにしたいという意味でございますから、いままでいたしておりましたことが、特別の情をもちました計らいでございますので、もうこの辺で打ち切ろうではないかということが真相で、特に何か感情を抱いた特別の事情があってそういうふうに政府がやっておるということではないのでございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 これは意見の違いになるかもしれませんが、あなたの進んで好意をもって、特別の同情をもってということは、私はちょっと見解が異なるのであります。何とならば、この在日朝鮮人の問題は、さかのぼれば、大正の大震災から、そして最近におけるは大東亜戦争に至るまで、朝鮮民族に対する日本民族扱いというもの、戦争中における過酷な虐待というもの、それから同時に、敗戦国日本が独立して国に対する、何といいますか、奉仕というもの、そういうものが根底にあるということを承知しなければ、あなたのように、何かやってやらぬでもいいものを、やってやったと恩着せがましく言える筋合いのものではないのであります。そこを腹に置いてやらなければ、やってやらぬでいいことを、やってやった、ありがとうと言ったっていいじゃないかというような考え方は、法務大臣として、また一個の政治家として、適当な御発言ではない。その立場に立てば、私は少なくとも百歩も千歩も譲っても、現に数千人の人があり、これからもまだこの人たち数字を増加する可能性があるんだから、かりに協定を一部縮小するとか、あるいは日本側希望があるならあるように言うなり何なりして、これは継続をさせたらなぜ日本不利益なのか、なぜそれは重大な支障があるのかということが私にはわからぬのであります。手続上、なるほど六回延長した。六回延長したものが、七回延長して悪いはずがない。いままでもやったんだから、今回これを積極的に打ち切らなければならぬという理由がわからぬというのであります。  で、一部伝うるところによると、新聞の報道でありますが、年間九千万の金がかかる、それがかなわぬという理由も一端あるようであります。そういう金の話ならまことにばかげたことだ。その金によって在日六十万の朝鮮人諸君、あるいは国際的に好評を買っておるこの帰還協定というものを打ち切るべき何とばかげたそろばんであろうかと思われる。いわんや、これは例にはならないかもしれませんけれども、在日朝鮮人諸君が、日本における事業活動その他によって、日本国民と同じように、納税義務、そして納税によるさまざまな問題を、日本国民と平等に権利義務を持っておるわけであります。それからいうならば、九千万というものは、次元は違いますけれども、それにしても朝鮮人諸君の言い分からいうならば、決してこの九千万という金がわれわれにただで、不当に恩着せがましく着せられるというような考え方はけしからぬというのは、人情論として私は当然なことだと思う。繰り返し言いますけれども、六回延長したものが、いまどうしてもこれを打ち切らなければならぬという積極的理由がない。だから伝うるところによれば、佐藤さんが今度韓国へ行く、南北朝鮮の問題を含めて、まあそれがおみやげになるかどうかわからぬけれども、一応外交的姿勢という意味においてしたので  はあるまいかということばさえ出てくるわけであります。あらためてもう一度これは考え直す必要はないものか。私が言いますのは、もしも日本側にこの帰還協定の実行上においてふぐあいな点があるとか、日本側希望があるとかいうことであるならば、そのように提議して、赤十字社同士の話し合いをして、そうして帰りたいという人を帰してやるということは人道上の問題、日本のやっておることのいいことの一つに数えられておる問題ではないか。どうしても私はその点では納得がいかないのであります。
  13. 田中伊三次

    田中国務大臣 私の先ほど申し上げましたことばが、舌足らずの点があろうかと思いますが、恩着せがましい考えでこの帰還協定実施しておるということではないのです。そういうふうに私も考えていない。いま先生仰せのような、過去における朝鮮半島日本国との、ことばをかえて言えばまことに申しわけのない、いろいろな反省すべき関係というものを顧慮に入れますときに、帰還協定実施して、誠実にこれを尽くさなければなるまいというふうに考えるに至って特別な計らいをした、心持ちはそういう心持ちでおるわけであります。しかるところ、何回も延長——ことにこれが突然の取りとめということではございませんので、一年前に、もう一年に限り、あと延長しないんだということを中外に声明をいたしまして、そしてこのたびそれを確認したという事情でございますから、いま特にここで打ち切る事情はというおことばをいただきますと、それに対する答えは、一年前に公に政府の決意として公表したのであるから、もうここで打ち切りたいという、たいへん言いにくいのでありますが、そういうことになるわけであります。それは内容的にはどういうことかと言うと、あまり何度も何度も延ばして今日に及んでおるから、特別の計らいというものはそう何度も何度も延ばすべきものではない、もう延ばさぬのだということで一年延長決定したという手前、ここで打ち切りをしたいというようなことがこの事情でございます。
  14. 横山利秋

    横山委員 厚生省援護局に伺いますが、便宜を計らうということは、私どもの承知をしておることによれば、いま御説明貿易船とか、ナホトカ往復船とか、ソビエトの船とか、そういうことではこれは便宜を計らうということではない、かってに自分の金で帰れということであって、したがって政府は、新聞で伝うるようなことではごまかしであると考えられますが、これは厚生省あるいは法務省関係があるかもしれませんけれども、どういう方法でこの便宜を十分計らってやるのであるか、その点をお伺いしておきたいと思う。
  15. 江間時彦

    江間説明員 協定が打ち切られたあと政府が供与すべき便宜でございます。これにつきましては、政府といたしましては、もし北朝鮮帰りたい人たちが、自分の責任と費用で帰りたくても帰れないというような状態があったならば、必要に応じてその人たち援助をしようというような考え方でございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 どうもよくわからない。帰りたくても帰れぬという事情があったならば援助したい、こうおっしゃるわけですが、どういうことなのかよくわからない。もっと具体例を引いて……。
  17. 江間時彦

    江間説明員 具体例で申し上げますと、貧困であるために、その準備ができないというような場合もそれに入りますでしょうし、その他いろいろ身の振り方について、もし非常に困ったことがあるというようなことがあったならば、その具体的なケースについていろいろ考えさせていただくということであります。
  18. 横山利秋

    横山委員 これは末端ではどこの役所がやるのですか。
  19. 江間時彦

    江間説明員 貧困者の問題などにつきましては、厚生省があっせんすることになります。
  20. 横山利秋

    横山委員 帰りたいということは、具体的に帰らせる方法援助するのですか、帰れない人を生活保護者として援助するのですか、どっちですか。
  21. 江間時彦

    江間説明員 政府といたしましては、協定がなくなりましても、便船その他の方法で帰る方法はある。したがいまして、あと帰れない事情というのは、主として経済的な問題であろう。そういうふうな場合には、政府としてできるだけの援助はしようということでございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 旅費その他については援助してやるということは、これは、北鮮から、もう協定がないから船は迎えに来ないとなると、北朝鮮へ着くまでの船賃、それから新潟の泊まり賃等を含めて援助してやろう、こういうわけですね。
  23. 江間時彦

    江間説明員 一定貧困者については、そういう措置が可能であろうということを申し上げたのでございます。
  24. 横山利秋

    横山委員 はっきり言ってください。便宜を計らうという適当なことを言うておるから、それはごまかしではないかと私は言っているのです。手続的にも、よその外国の船を使えといったところでそんなぐあいのいいようにいきやせぬ。ソビエトの船を清津に寄港させるようにということを新聞でいっているんだけれども、ソビエトがそんなことを承知するかどうかわからぬじゃないか、またそういう一定の航路を北朝鮮がああそうですかと言うかどうかわからぬじゃないか。人のふんどしで相撲をとっているんじゃないか。あなたの話を聞いていると、生活に困っている人については援助をすることが可能であるということを言っているだけで、援助をするとは言っておりやせぬじゃないですか。だから全く政府の言っているのは、協定は打ち切る、あと便宜を計らうといっても、便宜を計らう内容が、何ら意思統一されてないじゃないかということを私言っているんですが、そこは具体的には、閣議決定をしたと伝えられる便宜を計らうとはどういうことなのか、責任ある答弁を伺いたい。法務大臣閣議へ出ておられるのですから、便宜を計らう内容をひとつ詳しく聞かしていただきたい。
  25. 田中伊三次

    田中国務大臣 帰りたいと思う者に対しては、一般外国人同様に出国証明書等を出して、その手続に協力をして帰ってもらう。ただし問題は、いま厚生省からお話をいたしましたように、一番大事な問題は、帰りたい、その手続はしてもらえる、しかしながら、貧乏であるがためにどうしてもお金を出して帰ることができない、しかし、どうしても帰りたい、そういう事情があるというような場合が想定されるのでございますね。そういう場合においては、日本国はいままでの経過にもかんがみて、できるだけこれに対して帰れるような援助をしよう。(横山委員「銭を出す」と呼ぶ)銭を出すということも含まれておるものとお考えをいただいていいと思いますが、こういう場合にはこういう援助を行なうものだということをきょうは閣議で具体的に話をしたわけではないのであります。(横山委員「無責任だ、便宜とは何だかわけがわからぬ」と呼ぶ)しかし、無責任と仰せになるけれども、そういう意味で、お帰りになることができるようなそういう便宜を計らうというのですから、それは金の問題も含まれておるであろう、こういうことなんですね。
  26. 横山利秋

    横山委員 人ごとみたいにあなた言っていらっしゃるけれども、あなた閣僚なんですからね。便宜を計らうなんてうまいこと言って世間の目をごまかそうとしているんじゃないかと私は追及しているのに、あなたは、人が何か相談したことを、自分はこう解釈するというような無責任なことは許されませんよ。ここで便宜を計らうとは何かということを責任を持って日本政府を代表して国会で話をしてもらわなければ、私どもは納得ができませんです。それで、その予算は厚生省、ついておるのですか。この協定で十一月限りで打ち切りなんですから、それまでの人はいままでどおり行なうが、十一月以降に帰りたいという人についての上便宜をはからうという内容は、一体どこが立案したのですか。この閣議決定事項の立案は厚生省ですか。うんと言ってもらえばいいのです。厚生省ですね。
  27. 江間時彦

    江間説明員 三省で共同で検討いたしたものでございます。
  28. 横山利秋

    横山委員 外務省、法務省厚生省、そうですね。そういうことの実際便宜を計らうということの金の問題は、どこの省の担当ですか。
  29. 江間時彦

    江間説明員 お答えいたします。  法務大臣がお答えいたしましたように、帰国の事務そのものにつきましては、協定終了後は法務省便宜を計らうということになると思います。それから貧困者の問題につきましては、厚生省が責任を持つということになると思います。それで、先ほど来御質問の具体的にどういう便宜、どういう金銭面の援助があるかということにつきましては、これはわれわれのほうに生活保護という制度がございまして、そういう制度を準用いたしまして援護を行なうということになろうかと思います。
  30. 横山利秋

    横山委員 そうすると、十一月以降来年の三月三十一日まで、少なくとも年度予算ですから、それに対する特別の予算は計上してあるわけですね。
  31. 江間時彦

    江間説明員 従来の協定に基づく業務につきましては、これは例年の例でございますが、昭和四十二年度の予算におきましては、十一月十二日の分まで計上してございます。それから以降の分につきましては、先ほど来申し上げておる具体的な貧困者に対する帰還の援護問題でございますが、これにつきましては、従来からわれわれのほうに計上されております一般的な生活保護予算のワク内で実施されるものと考えております。
  32. 横山利秋

    横山委員 法務省出国について便宜を計らうということは、便宜ということは通常のベース以外に何かの特別なことをするということの便宜ですよ。どういうことをやってくれるのですか。
  33. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほどからも申し上げておりますように、出国ができるような手続的なことは、もう私のほうがするわけであります。
  34. 横山利秋

    横山委員 当然の仕事ですね。
  35. 田中伊三次

    田中国務大臣 当然の仕事でありますが、一般外国人同様の手順、そういう手順として出国証明を出す。
  36. 横山利秋

    横山委員 便宜じゃありませんな。あたりまえの仕事ですね。
  37. 田中伊三次

    田中国務大臣 あたりまえの仕事というが、それはやはり帰ろうとされる者の意思を尊重して、それに便宜を与えるということは、手続の上においてもできるだけ簡略に便宜を与えるということは、言えるのじゃないでしょうか。
  38. 横山利秋

    横山委員 言えませんね。  外務省はどういう便宜を計らうのですか。
  39. 吉良秀通

    吉良説明員 本件につきましては、特に外務省としてはいまのところ何も具体的には考えておりませんが、将来生起すべき事態に応じて、もしできることがありますれば、外務省としてはできる限りのことをいたしたい、こういうふうに考えております。
  40. 横山利秋

    横山委員 私は冒頭申しましたように、帰還協定を打ち切るべからず、そうしてこれを延長することによって、何ら国に不利益なことはない。むしろ両国関係を悪化させ、世界の中で帰還協定はいいことだとされておったものを打ち切ることによっての不利益しかない、こう考えるものでありますから、便宜さえとってくれたらそれでいいと言っているわけではない。帰還協定にもし多少の問題があるならば再交渉させて、協定を締結させてやらせるべきだと考える。しかし、政府の言い分を聞いていますと、便宜を計らうなどといって適当なことを言うて、法務大臣の言明によれば、ただ簡略になるべくしよう、しかも具体案がいまあるわけではないというお気持ちだけのようであります。厚生省から言うならば、生活保護の規定がいまあるから、それで当然のこととしてやる、別に特別な予算はない。外務省は外務省で、いま何も考えておらない。それじゃペテンじゃありませんか、そんなものは。新聞打ち切りと書かれたら不評判だから、便宜とは絵にかいたぼたもちであろうけれども、便宜と書いておこうじゃないかということじゃありませんか。法務大臣閣議のほうに列席して、便宜ということで自己満足をして、ああ、それでいいとおっしゃったのでありましょうか。私は、きわめて遺憾千万だ。国民を欺くのみならず、在日朝鮮人六十万を欺くような閣議決定ではありませんか。きわめて私は不満足でありますが、この閣議決定事項の便宜を計らうということが、どういう具体的な内容を持つものか、さらに次回の法務委員会で明らかにしてもらいたい。いま外務省も見当違いなお話で、いまわかりませんとおっしゃる。法務大臣も、厚生省も、私ども満足すべきようなことではございませんので、あらためてこれは、閣議決定事項の内容について、次回に御説明を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  41. 田中伊三次

    田中国務大臣 いまお話を承っておりまして、ちょっとお話に誤解があるのじゃないかと思う点がございます。それは、どの外国人が帰る場合でも便宜を計らうという趣旨、いまのそれぞれの答弁がそういうふうに聞こえておるかもしれませんが、そういうことではない。
  42. 横山利秋

  43. 田中伊三次

    田中国務大臣 在日朝鮮人のうちで、特に便宜を計らいたいと考えておりますのは、来たる八月の十二日までに、出航三カ月前の八月十二日までに、あらためて帰りたいという申請をしていただいて、そうして十二日にこれを打ち切る。そうするといまのおことばのように何千名が帰りたいという意思表示をしておるかということは、これはもう数字が何名までと確定するわけでございます。申請をさして受け付けるのでありますから。それ以外の者は、いままでの申請はすべて白紙に戻すということ。あらためてそこで何千何百名の人が八月十二日までに申請したかを押えてみて、それを三カ月の間にできるだけ配船の協力も北鮮にお願いをいたしまして実施をしよう。しかし、それでもまだ残る者がないとは言えぬですね。そういう場合において、これに対してできるだけの便宜の計らいをしようというのですから、そう無限に予算の要ることではないのですね、将来永久にということじゃないのでありますから。申請をしておる人について、申請はしたが、効力を失効する十一月十二日までにはなおかつ帰れなかった、残りがあったという場合の、その残りの人について、特に話をいましておるのですね。そういう趣旨ですから、どんどん予算が要るという、びっくりぎょうてんするようなものではない。  閣議の席において、無責任というおしかりがありましたけれども、閣議の、この種のことをきめるきめ方、議にのぼすのぼせ方でありますが、そういう詳細な具体的な事柄は、閣議できめました基本方針が、便宜を計らおうという基本方針でございますから、その方針にのっとって具体的にやらせるということができれば、閣議は無責任とは言えませんのでね。そういうふうな考え方でございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 いいですか大臣、あなたのおっしゃるとおりでいいと思う。ところが、閣議決定をして便宜を計らわせるときめたにかかわらず、いまの質疑応答の中で、両省の担当者は便宜を計らっていないではないかと言いたいのですよ。帰還協定の中に含まれる便宜扱いもあるわけですね。いまやっておるたとえば家財の持ち出しだとか、持ち込み品だとかいうものがあるのですね。これはだれも、出入国管理局も何も触れておらないのですよ。そういう意味便宜はどうなるかということも、これは次元が違うのだから、何も私のほうから要求すべき問題ではないのだけれども、それにしたって、あなたのほうから帰還協定に含まれるような内容については、少し便宜を計らおうじゃないかということが私は当然あっての便宜だと思っている。だからあなたが、閣議でそんなこまかいことまで念査しないということをおっしゃるならばそれでいい。一たん閣議できまって、便宜を計らうとなったら、内容的に責任を持ってくださいよ。いまの三省の話のような、何も便宜を計らわぬということでは、閣議は絵にかいたぼたもちではないか、ごまかしではないかと言っておる。だから、時間の関係もございますから、便宜を計らう内容について、次回に答弁をきちんと、正確に三省の意見を統一してやってもらいたい、こう思うのですがよろしゅうございますね。
  45. 大坪保雄

    大坪委員長 関連して、松本善明君。
  46. 松本善明

    松本(善)委員 いま法務大臣は、横山委員の質問に対して、この打ち切りは去年きめておることなんだ、だからいま打ち切る理由というのは、結局去年きめておるからだということを答えられたわけでありますけれども、これについては、法務大臣御存じのように、いろいろな反対運動がずっと前からやられておる。これは延ばしてほしい、私は朝鮮帰りたいんだという人がたくさんいるわけです。その人たち意見を退けて、いま打ち切らなければならないということの説明としてはきわめて不十分である。本来ならば、そういう場合は、政府はその人たち意見を十分聞いて、もう一回いま横山委員が言われましたように交渉をして、この問題について友好的に解決をするようにというのが当然の態度ではないかと思うのです。それを、そういうことをしないで、どうしてもいま打ち切らなければならない理由、前にきめたから打ち切るのだ、それはいままでも何べんでもきめておるでしょう。それでは説明にならないと思うのです。いまこれだけ反対があるのに、なぜいま打ち切らなければならないのか。もっと話し合って、そして友好的に、ずっと昔からの関係のある朝鮮民族日本民族関係の深い、最近では私たち日本にとってはたいへん問題があるわけです。太平洋戦争前は。そういう歴史的な経過考えるならば、ほかの国に対するよりももっともっと慎重に、友好的に処理するのが当然ではないか。それをしない理由としてはきわめて不十分だ。それをなぜしないのかということを、もう一度お聞きしたい。
  47. 田中伊三次

    田中国務大臣 横山先生にくどくお話を申し上げましたとおり、すでに御承知のとおりに突然打ち切る、なぜ延長せないかという問題じゃないのです。一年前に予告をして、来年の十一月の十二日がきたら再び延長はいたしませんのでございますということを中外に宣明して、発表して、しかもぶすっと打ち切ろうというんじゃないんです。そういう事情であるから、もう延長はせぬのだ、よって三カ月前の八月十二日までに帰りたい人は届け出をしてくれ、そして帰りたいという人の頭数を確定して、それもできるだけ誠意を尽くして、配船をしていただいて船に乗せて帰そう。これは全部帰れるものと私は思いますが、かりに全部帰れないで、何人か何百人かの人が残ったとしたときに、その人にできるだけの便宜を計らってお帰りを願うようにしよう。その余の者はどうか。八月十二日以降に帰りたいと思った人はどうするか。それは一般外国人同様に、誠意を尽くして、こちらが出国証明を出しましょう、こう言うのですから、けしからぬということにどうもなりにくいのではなかろうか。ただ横山先生お話のように、具体的にどういう場合にどういうふうな好意を示す、便宜の計らい方をするのかということをきめろということ、ごもっともなことだと思うので、次回までに答弁の準備をいたしまして、三省間に連絡をしたい。いま厚生省にしても、外務省にしても、直ちに答えができませんのは、けさ閣議で再確認しましたことをきょうここへ来て答弁をしておるのですから、もたもた言うのは無理はないので、それを今度ははっきりしたお答えができるようにしようというのでありますから、どうかそういうふうに御了解をいただきたい。
  48. 松本善明

    松本(善)委員 私が聞いているのは、その事後の措置ということじゃないのです。いま横山委員の、ちょっと前に質問した打ち切る理由が非常に薄弱じゃないか。法務大臣は、非常に恩着せがましくいろいろ配慮したと言われますけれども、滞日朝鮮人、六十万いるんです。それでこういうふうにやったけれども、それじゃやはりだめだと、大きな反対運動が起こっているわけです。そうしたら、自分の計画は無理じゃないかということを考えるのが当然じゃないか。それがもし法務大臣の言うように、ほんとうに無理のない、だれでもその計画に従って帰れるようなものであれば、そんな反対運動は起こらないでしょう。そういうことを大臣というのは考えなければならないのじゃないか、このことをお聞きしているわけです。
  49. 横山利秋

    横山委員 まあ、その点は押し問答になったが、別にまたあとでこの便宜の問題が出たときにさらに継続したいと思います。  きょうはもう一つ、都知事選の問題に入りたいと思うのですが、その前にちょっと時間をかりて、先ほど申しましたように、三つばかり大臣意見を聞いておきたい。  一つは少年法の問題であります。大臣は少年法についてまだ見解を漏らしておられません。石井法務大臣が少年法構想を発表して、世間の御意見を聞くと出しまして、裁判所並びに弁護士会から反対的な機運が出ました。その後法務省はその状況、国民的な反響を見るといっておりましたが、基本方針どおり石井構想を推進するつもりであるか、それとも各界の反対の中で考えられたことがあるか、これが一つ。  それから第二番目には、石井法務大臣の引き継ぎ事項になっておるわけでありますが、北朝鮮日本との貿易上ネックになっております問題に、技術者の入国問題がある。当時、石井法務大臣が原則的なことを示されて、決して技術者の入国を拒否するものではない、ケース・バイ・ケースによってこれを実行するに何らやぶさかではない、当時問題になったことについてしばらく保留をするだけであって、あれが立ち消えだというふうに考えておるのではないという御答弁をいただいたままになっておるわけです。まあこの二つでよろしゅうございますから、法務大臣のこの二つの問題についての見解を承っておきたい。
  50. 田中伊三次

    田中国務大臣 少年法の問題につきましては、実は一昨日も私の手で御意見を聞いておるところがあるわけでございますが、大体において各方面の御意向はようやく確かめることができたという段階でございます。そこで、ぼつぼつこの構想段階から具体的な立案の段階に移らなければならない段階となっておる。その立案段階に入りますにつきましては、この場合、立案ができますと、具体的な立案の内容を法制審議会にかけて、そして御審議を願う、こういう手順を踏まなければならぬ立場でございます。そこでお答えは、現段階は各方面の意見をようやく聴取が終わりかけておる、もう一カ所のところがございますが、終わりかけておる。これをはたして法制審議会の議にかけることにするかどうかということの決心を私がしなければならぬ、そういう決意をいたします時期も非常に近い、こういうふうに御承知おきをいただきたいと存じます。  それから技術者入国問題につきましては、おことばのとおり、政府閣議をもって技術者の入国は認めるべきものであるということを一たんきめておりまして、その入国の時期についていましばらくということで延びておるのが現状でございます。入国それ自体を一たんきめましたことを、ひっくり返して否定をしたという態度ではないわけです。入国はしてもらうべきものである、しかし時期はしばらく待ってくれということの段階が今日の段階でございます。
  51. 横山利秋

    横山委員 警察庁、来ましたか。
  52. 大坪保雄

    大坪委員長 警察庁は刑事局長と警備局長がおります。
  53. 横山利秋

    横山委員 長官は。自治大臣は。
  54. 大坪保雄

    大坪委員長 自治大臣は分科会のほうに入っているし、警察庁長官はまだちょっと都合がつかぬような返事です。
  55. 横山利秋

    横山委員 自治大臣、警察庁長官、選挙局長、これが来なければどうもぐあいが悪いのでありますけれども、各委員、同様の質問が多うございますから、少なくとも自治省を代表する責任者が一人入ってもらわなければ困るので、もう一ぺんひとつ督促を委員長、お願いをいたしたいと思います。  今度の東京都知事選というものは、一般的に見れば前の東知事選のときのようなきわ立ったものがないといたしましても、潜在的な実に数々の問題が発生をいたしました。これを総合的に見ますと、本会議においてわが党の佐々木委員長が佐藤総理大臣に申しましたように、堂々たる選挙をやろう、やりましょうと言うて答えたものに対しまして、私の手元にいま十九文書があるわけでありますが、これを見まして、全く言語道断ではないかという感じがいたすわけであります。これから提起をいたします問題は、すでに警察庁、それから警視庁を通じて検察庁も御存じのはずでありますし、法務大臣も全然知らぬとは言えない問題もあるだろうと思うのであります。きょう提起をいたします問題は、ひとつ十分に確答を得たいし、またきょう確答が得られなければ、次回までに十分に調査をしてもらいたい。  これは順序不同でありますが、人民の真の代表日本共産党と称して無差別に投函をせられたはがきであります。たとえばこういうことであります。「ブルジョアジー独裁打倒のために全人民は武装蜂起の準備をしよう。私有財産を収奪し貧乏人にただで分配しよう。資本家、政治家、官吏、地主などを人民裁判にかけて強制収容所へ入れよう。自衛隊を廃止してプロレタリアート独裁のための人民解放軍をつくろう。アメリカ文化を一掃してマルクス主義文化を育てよう。人民の真の代表日本共産党」常識的に考えても、まあ他党のことではありますけれども、日本共産党が今日かくのごとき文書を出すとは信じられぬ、また考えられない。こういうものを出せば共産党にとって不利であることはもう間違いのない文章であります。これはどうでありますか、選挙法上どういう立場に立ちますか、解釈をまず伺いたい。
  56. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的な法律の解釈でございますので、私からまずお答え申し上げたいと思います。  具体的にその文書を拝見しておりませんし、どういう時期に、またどういう方面に頒布されたものかわかりませんけれども、一般的に申しまして、やはり法定外の文書ということで公選法の百四十二条の容疑が一応あるのではなかろうかという気がいたします。
  57. 横山利秋

    横山委員 このもらった人は原一郎、消し印は赤坂、四月十一日午後六時、配達は正午前になっておるわけであります。そのほかもらった人が渋谷区の田中という人、そのほかにもありますが、本件につきましては四月十二日荻窪警察の藤島という巡査部長にすでに提起済みであります。こういうように提起をいたしました問題につきましては、それぞれ報告がなされ、そしてそれについての処理がなされると思いますが、いかがでございますか。
  58. 川井英良

    ○川井政府委員 おそらくそういうふうな手続がとられておれば、目下警察の段階で内偵ないしは捜査が行なわれているのではなかろうかと思います。私どものほうでも検察庁を所管しておりますが、検察庁のほうにはまだその報告が参っていないようでございます。
  59. 横山利秋

    横山委員 たくさんの問題でありますから一々念査することはできませんので、簡潔に私の意見、結論を申し上げておきますが、こういうものが巡査部長の藤島なる者に四月十二日午後七時に届けられて、そして巡査部長がそれを、ああそんなものですかといって報告もせずにおくということがあり得ますか。
  60. 内海倫

    ○内海政府委員 当然そういうふうなものが提示いたされますれば、警察におきましては成規の手続をもちまして内偵いたしますなり、あるいは必要な捜査もいたしておるところでございます。当該はがきにつきましては、私どもの聞いておりますところでは、目下いろいろな形で調査をいたしておる段階でございます。
  61. 松本善明

    松本(善)委員 関連して。いまの刑事局長の答弁は、問題を全然理解をされていない。これは百四十二条と言われましたけれども、いま横山さんが問題にしていることは、共産党がまくはずはない。もちろん、私たち全然そんなばかなものをまいてもおりません。それを、美濃部さんを支持をしている共産党、社会党、その他民主的な人たちの陣営を弱めるために、その逆なほうからまいているわけであります。そういう問題として答弁を全然していないのですね。そういうのは百四十二条どころの騒ぎではないんじゃないか、そういう重大なことじゃないか、こういう質問なんです。刑事局長いかがですか。
  62. 川井英良

    ○川井政府委員 文書を示されまして、その内容についてお話があり、これがどういう条文になるんだ、こういうふうにいまここで直ちに御質問がありましても、警察の刑事局長のお答えによればもうすでに調査中だということでございますので、具体的な案件になってくるおそれのあるものにつきまして、法務省の刑事局長としまして、法律解釈を、罰則の解釈を担当しておる者として、明確にそれは公選法の何条と何条と何条になる、こういうことを申し上げることははなはだ軽率でありまするし、また適当でもないように思うわけでございまして、一応いままでお聞きしたような事情のもの、また内容のものでありますれば、当然最初に思い浮かぶのは、法定外文書の違反ではなかろうかというふうに思いましたので、さように申し上げたわけでございますけれども、事情をさらに調べてまいり、その頒布の時期なり、枚数なり、あるいはその背後の関係というものがやがて明らかになってまいりますならば、公選法は御承知のとおりたくさんの条文がございますので、あれにも該当する疑いが出てくる、これにも該当する疑いが出てくるということは、その段階になれば明確に申し上げることができると思います。いま申し上げましたのは、何もわざと隠して申し上げたというわけではございませんで、当面まず法定外文書の違反が考えられるのではなかろうか、これはもう皆さま方選挙をずっとやっておられますので、おそらく常識であろう、こう思うわけでございまして、そういう意味で申し上げたわけでございますので、御了解を得たいと思います。
  63. 松本善明

    松本(善)委員 そういう常識的なことでは考えられない選挙違反がたくさん起こっているので、いまばく大な資料を持って質問がなされているわけです。これは明らかに選挙自由妨害です。そういうようなことが、今度の選挙ではあらゆる形でやられている。その認識をはっきりして選挙違反の取り締まりをやってもらわなければこれは困るということで質問しているので、別に答弁は要りませんけれども、そういう二とでこれからの質問を聞いていただきたいと思います。
  64. 横山利秋

    横山委員 第一の問題は、そういう調査の報告があったのか、これをどういうふうに処理しておるのか、それを次回に御報告を願いたい。  第二番目はこのパンフレットであります。私の手元にありますのは五つのパンフレットでありますが、一つは「毛思想で日本革命、赤い霧につつまれた社会党」、一つは「東京を革命から守ろう、もし左翼知事が実現したら」、もう一つは「二十一世紀の大東京」、「みんなの都政」、「暴力デモはもうゴメン」と、こうなっておるわけであります。これを、私どもの推測をいたしておりますのは、数百万部、無差別に各家庭に配布をしておる。ほかにも配布の方法がありますが、無差別に配布をいたしておる。これは警察庁でも自治省でも、もうすでに入手済みだと思いますが、いかがでございますか。
  65. 内海倫

    ○内海政府委員 警視庁におきましても、そういうふうな文書は手に入れておりますし、またその内容その他につきましても、いろいろ読んで検討はいたしたところでございます。
  66. 横山利秋

    横山委員 そうでしたらお返事が簡単だと思うのでありますが、本来自治省の見解は、今日まで、選挙期間中にかかる文書を無差別に配布をするということは違法行為であるとされておる。この点は間違いありませんね。
  67. 内海倫

    ○内海政府委員 私どもの見解といたしましては、やはりこの種の文書につきましては、内容、あるいは形式、あるいは配布の状態、あるいは配布の時期、そういうふうなものを総合的に、具体的に検討いたしまして、その結果、別段法に触れないものである、あるいは法に触れるおそれがある、いろいろな点の答えが出てくると思います。
  68. 横山利秋

    横山委員 事実行為はもうすでに御存じのはずであります。まずこの内容ですね。「毛思想で日本革命、赤い霧につつまれた社会党」、「中共の核実験に頬かむり」、「疑惑の赤い資金ルート」、「文化大革命と紅衛兵を礼讃」、「毛精神で日本革命を狙う」、「毛語録を首からぶら下げて」、「中共との危険な関係」、これは御存じのように全部社会党の悪口、荒唐無稽の悪口を言っておるわけです。こういう内容がまず第一に不当なことである。それから無差別に家庭に配布されたということが不法行為である。従来このやり方は、もう問答無用に、衆議院選挙でもいかなる選挙においても、こういう内容らいっても無差別配布は違法行為であるとされておったことは天下周知の事実であります。現に自治省が、この選挙の当初においては、これは非合法なりと判断しておった。なぜそれが合法と拡大解釈をされて、途中から解釈が変わったのであろうか。私はそう聞いておるのだが、しかしあなたのほうでそうは自分考えておらぬ、——これはその内容、配布の方法、時期は選挙中にきまっています。あなたのほうは事実行為を御存じであるのだから、違法であるのかなかったのか、これから調査じゃ済みませんが、どうですか。
  69. 内海倫

    ○内海政府委員 私どもは、目下、警視庁からは、それが違法なものとして地検の捜査が行なわれておるということは聞いておりません。
  70. 横山利秋

    横山委員 聞いておりません——あなたもこれをごらんになって、やり方を御存じのはずでありますけれども、これは全然合法であるならば——いいですか、ここは国会ですから、速記録に残りますよ。私がだめを押しているのは、単に東京都知事選ばかりじゃありませんよ。あなたがこれが合法だというならば、全国津々浦々にわたって始まることを予想に入れて返事してくださいよ。それをあなたは、これから調査をするとかなんとかというのじゃない、あれだけの大騒動があったあとであるから、話はわかっているはずです。違法か適法か、これからのためにはっきりしてください。
  71. 内海倫

    ○内海政府委員 先ほども申しましたように、その文書それ自体の内容、それから形式、さらに配布の時期あるいは配布の方法その他を総合勘案しまして具体的に判定をいたさなければならないと思いますが、その状態におきまして、現在警視庁においてそれが違法な事案として処理されておるということは、私は現在報告を聞いておりません。
  72. 横山利秋

    横山委員 どういうことなんでしょうかね。あなたは客観的なおっしゃり方をなさるけれども、それが違法であるかないかの基準というものは、あなたも責任者としてきょうおいでになった以上は、東京都知事選の結果というものが、運営のやり方について国会で問題になることは御存じの上できょういらっしゃったのでありますから、人ごとでなくして、なぜ、これが違法でなかったかという事情を、後日のために明らかにしてほしい。内容的に、なぜ違法でないか、配布の方法はどういう状況にあったけれども、なぜ、それが違法でないか、配布の時期はああいうときであるけれども、なぜ違法でないか、そのことを後日のために明らかにしてもらいたい。
  73. 内海倫

    ○内海政府委員 私どもは、すべてみずから捜査をし、みずから措置をする機関ではございませんので、それぞれの第一線警察が行なっておりますことを、報告を聞いておるという立場に立つものでございますから、一応その範囲内において申し上げたいと思いますが、その文書の全部を私ども見たわけではございませんけれども、一、二の文書につきましていろいろ検討された結果は、その内容自体はいわゆる百四十二条にいう成規の文書違反、はがき以外のものを頒布してはならないというものでもなく、また百四十六条のいわゆる脱法文書という点から見ましても、もし百四十二条の規定を免れるという趣旨から書かれたものであると見まするならば、その中で候補者の名前あるいはそれに特に投票を得しめるような内容というふうなものも書かれてないと思います。ただそこで政党の名前の書いてある文書がございます。そうなりますと、例の政党の政治活動の問題と関連してこようと思いますが、その面につきましても、すでに当時、田中法務大臣からも御発言がありましたように、政党の政治活動としては合法の範囲内のものと考えられる。こういうことでございますし、結局、最後はその頒布の方法、あるいは百四十二条の規定を免れる目的をもってそういうふうなものが領布されたものかどうか、その辺の判定になってこようと思いますが、それは現在警視庁において取り扱っておる限りにおきまして違法な事犯として捜査をいたしておらないという観点からは、そういう点が該当するものがなかったものと、こういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  74. 大坪保雄

    大坪委員長 横山君にちょっと申し上げますが、自治大臣及び選挙局長は四時ごろには出席ができるだろう、そのころには新井警察庁長官も何とか都合をつけて出席することにいたしますということを言ってきました。そこでこれはずっと続けますか、それを待ちますか。
  75. 横山利秋

    横山委員 続けます。  いまそこへ渡しました文書は、自由民主党の名義で、日本社会党の悪口ですね。これは明白ですね。いま局長が言われる百四十六条の一項、「何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもってするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。」きわめてそれは明白ではありませんか。あなたは警視庁がこれを違法文書としなかったということでもって、あなたの判断を何も言うていないですね。あなたはいまこれを見て、百四十六条と照合して、これが違法行為でないという理由はどういうことですか。あなた自身の意見を聞きたい。
  76. 内海倫

    ○内海政府委員 特に私から解釈をというおことばでございますが、私どもはいわば法に触れる行為に対して、第一線の警察が取り締っておるということについて、先ほどから申し上げるところでございますが、百四十六条におきまして、この文書とあわせて見ますと、自由民主党と表面に記載されておりますので、この点におきましては百四十六条の「政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する」という点で百四十六条の規定に該当しておるものと思いますが、これが違法であるということのためには百四十二条または百四十三条の禁止を免れる行為として、と、こういうことにならなければならないと思いますが、百四十二条の規定におきましては選挙運動のために使用する文書図画は、次のような通常はがきに限る、こういうふうにあるわけでございますが、この場合のこの文書が、いわば百四十二条に規定する選挙運動のために使用する文書であるかどうかということについて十分検討しなければならないと思いますが、選挙運動ということは判例等によりますれば、もちろん先生十分御存じのところでございますが、特定の者の当選を得、または得しめるというふうなことのために行なわれるものと、こういうふうに考えられますし、また判例もそういうふうな点を示しておるわけでありますが、そういう場合において、この文書は、選挙運動のために使用される文書ということのためには、そういうふうな特定の者を当選せしめる目的を持っておるというふうには、この内容からは理解し得ない。そういうふうに考えますと、百四十六条の、この百四十二条または百四十三条の禁止を免れる行為すなわち一応積極的に百四十二条に規定するような選挙運動のためのものが露骨に出ておらないものであっても、そういうものを十分に類推させ、さらにそれが免れる行為として行なわれるという形でありますならば、まさしく百四十六条に該当すると私どもも考えますが、その点につきましてはこの選挙運動のための文書と、こういうふうには考えられない。したがって、さらにそのほかにこれの領布のしかたなり、あるいは頒布の場所なり、あるいは領布をするときにその領布する人たちが、投票を得または得しめることのような言動を伴っておるというふうなものであれば、やはりここに百四十二条の禁止を免れる行為としてということで該当してくると私どもは考えておりますけれども、現在まで警視庁におきまして、この問題につきまして捜査中というふうな報告はまだ聞いておりませんので、警視庁におきましてそういうふうな諸条件に合致しておらない、こういう認定のもとにやっておるもの、かように考えております。
  77. 横山利秋

    横山委員 回りくどい話の途中ですけれども、重ね重ね念を押しておきますけれども、いま都知事選が終了したのだし、民主政治の審判もきまったんだから、事を荒立てないでおこうという気持ちがもしありとするならば、これはたいへんなことだと思う。あなたもくどくど言いますけれども、いまここで審議をして、あなたがそういう立場で、何か防衛をするような立場で答弁をするのあまり——こういうようなことがこれからずっと行なわれる危険性を、あなたははだ身に感じてもらわなければいかぬですよ。その点は将来を戒めるために私も言うておるのですから、その点、何かここはうまいことくぐり抜けるために、少しは問題があるけれどもまあまあにしておこうというようなお気持ちがあったのではこれはだめですよ。いまの御答弁は、法務省も御同様ですか。
  78. 川井英良

    ○川井政府委員 公選法百四十六条の解釈を、内海局長が詳細にお述べになったわけでありますけれども、同条の解釈については、私も大体同じように考えております。
  79. 横山利秋

    横山委員 第三は、これは民中連というものなんでありますが、民中連の問題につきましては、これは二十四号に都知事選の問題を掲記しておりますが、時間の関係上に、次に移ります。  第四番目は自民党の悪質な戸別訪問。これはもう全く無差別に投げ込まれた文書であります。これがやはり「暴力デモはもうゴメン」、「みんなの都政」、このさっきのパンフレットに「だれでもできる選挙運動」というものを付して、全く無差別に各戸に配布された。こういう点はどう思いますか。それからいまのパンフレットに「だれでもできる選挙運動、自由民主党」と書いてあります。これはまあ一般的な選挙運動のやり方が書いてありますね。こういうパンフレットの各戸への無差別配布という問題です。これはどうです。これも報告が来ておるでしょう。
  80. 内海倫

    ○内海政府委員 その点につきましては、私ども報告を聞いておりません。
  81. 横山利秋

    横山委員 この点については御調査を願いたい。  それからその次は、遺族会の都の連合総決起大会でありますが、やはり同様にパンフレットが入っておりまして、遺族会が決議をして「いまや、わが国の運命を決すべき都知事選挙はいよいよ目睫に迫った。いまこそ総力をあげてわれわれの真価を発揮すべき重大時期である。われわれは、ここに総決起大会を開催し、百七十余万遺族の盛り上る熱意を結集して、日本遺族会の推薦する松下正寿氏の必勝を期し、相携えて前進することを誓う。」またどういう関係か知りませんが、都政懇談会代表の大浜信泉氏の「全都民の皆さんへ」という遺族会と何ら関係のない文書、声明がここに配布されておる。それからこれはスポーツ新聞の「スポーツジャーナル」、どうしてこんな「スポーツジャーナル」に  これも松下さんの記事が出ておるのですが、この中に同時に配布されておる。それから「遺族新聞」も同様に、都知事は松下正寿。「遺族新聞」はどういう性格のものでありますか。発行所は都政懇談会となっておる。みんなの都政でありますからこれは遺族会と全然関係のないものであります。これが配布をされておる。それから、これまた大谷藤之助参議院議員でありますが、国会報告が入っておる。「靖国神社の歌」、「だれでもできる選挙運動」、遺族会にこういう都政懇談会や、あるいはスポーツ新聞や大浜信泉氏のこういうようなものを配布をするということについて御報告が来ておると思いますが、遺族会の経緯についてはどうでございますか。
  82. 内海倫

    ○内海政府委員 その点についても、私いま初めてここで承りますが、警視庁からは報告は聞いておりません。
  83. 横山利秋

    横山委員 この「スポーツジャーナル」は第三種をとっていないはずであります。第三種をとっていないものがこういうものを書くということは、これまた選挙運動上違法文書ではないか。選挙期間中に「スポーツ放談」と称してやるということ、そうしてこういう新聞をこの中に折り込んで遺族会にばらまくということは違法だと思うのですが、どうですか。
  84. 内海倫

    ○内海政府委員 もしその新聞が百四十八条の三項ですかに規定する資格を欠く新聞であるとしますならば、選挙中に関するものにつきましては違法の疑いもあろうかと思いますが、それがいま私の手元に何ものもございませんので、もし資料をお持ちであればお借りして、あるいはありました場所をお教えいただけば、それによって調べてみたいと思います。
  85. 横山利秋

    横山委員 その次は、自由民主党の封筒を使いまして、各戸に、いまの宣伝ビラでございますが、全く無差別であります。情報を入手いたしますと、自由民主党が郵送をした宣伝物の量は、十月には二十五万通、十一月には三十万通、十二月には百万通、約百五十五万通が出ておる次第でありまして、推算いたしまして二千三百二十五万円のものであります。これだけのパンフレットが全く無差別に——これは出した人がこういうふうに私どもの手元へみんな出してきておるのでありますから、こういうような百五十五万通にもわたるような膨大な文書が無差別に郵送されるということは、これが合法である、適法であるというなら、どんどんこれからやりますが、どう思いますか。どうですか、こういうことは適法な行為ですか。
  86. 内海倫

    ○内海政府委員 私どもは、先ほども言っておりますように、こういう文書の違法あるいは合法というものは、現実具体的な捜査、あるいは裁定によりまして、法令に違反するというものでありますれば、それがどういう立場であろうと、あるいはどういうものでありましょうと、的確な措置をとらなければならないわけでございますから、具体的なものそのものについて措置をとる、こういうことでございます。したがいまして、そういうふうな、違法と認められる状態がありますならば、警視庁は必ずそういうものに対する措置をとるものと考えます。ただその場合、先ほども繰り返して申しましたように、そういうふうなものが法に触れるものであるかどうかということにつきましては、具体的な事態について内偵し、それの結果に待たなければならない。したがいまして、私の立場としましては、ここでそれ以上のお答えを申し上げることはできないと考えます。
  87. 横山利秋

    横山委員 一つに私はあなたの答弁を含んで考えるのですが、これだけの問題が都知事選に行なわれ、百五十五万通のパンフレットがあるいは無差別に、めちゃくちゃにやられておるのをあなたのほうは事実行為をつかんでいないということは、まさに怠慢ではないか。これだけの膨大なことが警視庁傘下のもと堂々と行なわれておるのを、事情がわからぬとか実情を捕捉していないというのは怠慢ではないかと思うのでありますが、中川岳洋著の「時事抜萃」というものがありまして、やはり都政について吉田茂の文書をも含めまして、「都政が左翼知事に握られたら」を含めて、もう全くべらぼうなことを書いて、これが一つの告発の材料にもなったのだと思うのであります。これが第七の資料であります。  第八は、問題の「全貌」であります。今回「全貌」が各方面にわたり、そして業界を通じ、あらゆるところを通じて配布をされた数というものは、驚くべきものだと私は見ております。これは特集でありまして、その「思想から複雑な家庭の事情まで」、「社会党と共産党と美濃部亮吉氏」とありまして、全く悪意に満ち満ちた文章で、この五号は全文それで満ち満ちておるわけであります。こういうような文章が例月に比較して膨大に印刷をされ、そして膨大にそれがあらゆる機構、あらゆる方法を通じて投げ込まれておる。  ここに例記してありますのは、「理容組合では同業者に配付するために、美濃部誹謗の「全貌」が四月十二日に理容組合の役員に配付されました。役員のA氏は、「東京全体にまでおろされ配付も済んでいるのではないかと思う。これが選挙違反なら私は配付するのはやめましょう」といって、参考のために一部を提供してくれた」。こう書いておるわけでありますが、単に理容組合でなくて、あらゆるところにあらゆる組織を使って、この「全貌」なるものが配布をされた。中身を紹介するのは、あなたも御存じでありましょうから省略をいたしますけれども、全く悪意と捏造に満ち満ちた文章であります。これが第八であります。  第九は、都民だれでも知っておる問題でありますが、アドバルーンであります。「暴力デモ反対、平和な暮しを守ろう、自民党」、「子供と家庭を守る都政」これが東洋信託銀行のビルの上に上がった。あるいは野村証券のビルの上に上がりました。これは知らぬはずはないわけでありますから、このアドバルーンについてはどういう解釈をくだしましたか。
  88. 内海倫

    ○内海政府委員 アドバルーンにつきましてはいろいろ選挙中におきましても、各方面からアドバルーンを上げたいがというふうな問い合わせが警視庁のほうにあったようでございます。警視庁のほうにおきましては、法令に違反するおそれのあるものというものにつきましては、十分に注意をしてもらうようにということで、しばしばその点については注意もし、あるいは上げておるものについては警告もしたということは聞いております。
  89. 横山利秋

    横山委員 警告もしたということは、この野村証券なりあるいは東洋信託銀行なりというところに上がっておったアドバルーンは、違法行為であるということで警告をしたわけですね。
  90. 内海倫

    ○内海政府委員 私、具体的なものについてはいま報告を聞いておりませんので、ただそういうふうなアドバルーンの措置について、概括的な報告を聞いておるわけであります。
  91. 横山利秋

    横山委員 それではこのアドバルーンの経緯について、次回に報告をお願いをいたします。  それからその次は、練馬の怪文書であります。「民主主義者、自由主義者を装う注意人物松下候補、それから赤い都政美濃部、投票は美濃部、暴力団山口組と結ぶ松下候補」、これだけ見れば美濃部側が張ったと思われる文書ですね。お互いに実際に選挙をやっておる人間が、こういうポスターをその辺にぽっと張ると明らかに違法文書ですね。こんな子供でもわかったようなことを自分の選挙部隊がやるはずがないですよ。どう考えても明らかに反対側の作為的なものだと思わざるを得ない。こういうのが町々に掲示をされたものなんであります。これもまた逆のやり方でありまして、ちょっと選挙を知っておる人間だったらこういうばかげたことはやるはずがない。これもずいぶん、警察も知っておりながら真の敵というものを見のがしておる、真のやった人間を見のがしておるという一例であります。  その次は、いわゆる環境衛生諸団体の国際劇場における環境金融公庫の中央会の環境衛生金融公庫の説明会と称して四月十一日と十二日、朝昼二回、合計四回、二千五百人ずっとして約一万人の人を集めた。そこで環衛金融公庫の説明会だけならわかるけれども、一万人を集める、通常にないやり方であります。そこで何をやったかといいますと、映画を見せた、ショーを見せたわけです。ショーを見せて、そこへ中野四郎氏があらわれて「松下を頼む」と言った。そしてまたいわゆる「全貌」が登場するのでありますが、「全貌」が配布された。十二日、練馬、台東区の環境衛生関係の席上、床屋、パーマ、ふろ屋、クリーニング業者など二千五百人を浅草の国際劇場に集めて、環衛金融公庫の説明会を開いた。主催者は全国環衛同業組合中央会。その席上、候補があいさつにやってくるはずであったが、やってこられないので、中野四郎氏がかわりにあいさつした。「自民党は四月十五日に多年の懸案であった環衛金融公庫法案を提出する、この法案ができれば個人貸し付け一千万円まで、従業員にはのれん分け資金を貸し付ける、このために今度の知事選に協力してほしい。」と述べた。そのあと同組合の栃寺氏が「組合として松下さんの推薦をきめたいのでよろしく」と述べ、緊急動議で「松下氏を推すべきだ」と提案されたが拍手はほとんどなかった。このため中野四郎氏が再び立って、「皆さんはうどん屋でうどんを食べたら金を払うのがあたりまえじゃないか、わしらがこんなに一生懸命やっているのに票が集まらない」と暗に拍手を強要したが、それでも拍手が起こらぬ。このためもう一度拍手を求めて、三度目にやっと推薦をきめた。その後映画「宇宙大怪獣ギララ」と「東京踊り」を見せ大会を終了した。参加者全部に「全貌」と自民党のパンフ一式を渡したというわけであります。これは国際劇場の「貸切用入場券」——きょうは国税庁いらっしゃらないのですけれども、今度御報告願うときに、これは入場税は一体どうなっておったのか、調べてもらいたい。少なくとも、私大蔵委員でありますが、ただで入れたにしても、これは入場税の対象だと私は思うのでありますが、脱税ではなかろうかという疑いがある。それから環衛金融公庫の説明ということだけであるならばともかくとして、そこでショーを見せ、「全貌」を配り、そうして推薦を依頼したという三つの点が違法行為ではないかと思うのですが、いかがですか。
  92. 内海倫

    ○内海政府委員 国際劇場の大会につきましては、警視庁のほうでも、そこに参加をした人等に対して、どういうふうな様子であったかというふうなことの事情はいま聴取しております。こういうふうに聞いております。
  93. 横山利秋

    横山委員 承知をしておるその結論はどうなっておるのですか。
  94. 内海倫

    ○内海政府委員 私まだ結論は聞いておりませんが、現在事情を聴取中、こういうふうに聞いております。
  95. 横山利秋

    横山委員 次回御報告いただけますか。
  96. 内海倫

    ○内海政府委員 次回にわかったところまでは御報告申し上げます。ただし、捜査中というふうなことでありますれば、その場合におきましては、捜査段階にあります限り公にいたしかねます。
  97. 横山利秋

    横山委員 国際劇場の問題は、もうすでに天下周知の事実として事前にわかっておった問題で、招待状もいっておって、その中へ警察官も入っておるはずですよ。確認していますよ。そんな、いまごろになってまだ捜査中ということでは、あいまいにするというようなことになると思いますから、この点につきましては、ひとつ次回にはあなたのほうで的確に御報告されることを望みます。  それからその次には、名前は出さないことということの希望でありますから、あて名は出ておりませんけれども、やはりパンフレットその他が入っておる問題であります。中国問題研究所から出ておることになっておる。ところが、この中国問題研究所は、新宿区市ケ谷本村町二十一になっておりますけれども、これはこの場所に中国問題研究所というのはないのであります。住所はどこだというと、市ケ谷自衛隊のところが住所なんであります。市ケ谷自衛隊の住所で、中国問題研究所というのが自衛隊の中にあるかどうか調べてもらいたい。もしそうでないとすれば、こういうようなインチキなことが行なわれて、自衛隊の住所を使い、そこで問題がわからぬようにしてやっておるというのが——これも「全貌」です。「全貌」を配布したところですね。「全貌」が自衛隊の中の住所を使って配布をされておるのが実情であります。  次は十三、この委嘱状であります。佐藤榮作と賀屋興宣の連名で、こういう委嘱状が社会党の区会議員のところまできておる。こういうことはどうでありますか。無差別に、頼みもせぬ、来もせぬにもかかわらず、やはり選挙対策委員に委嘱するという委嘱状を送っておる。社会党の区会議員のところまできておる、これはどう思います。
  98. 内海倫

    ○内海政府委員 先ほどから申し上げておりますように、それがたとえば百四十二条なりあるいは百四十六条なりの「文書図画の頒布」というものに該当するかどうかということによって違法あるいは違法でないという問題がきまるものと思います。
  99. 横山利秋

    横山委員 結論はあとで申しますが、あなたもうんざりしたような顔になっておるようだけれども、こっちのほうが説明するのにうんざりしておるんです。しかし、これほどのばかばかしいことが行なわれておるのであります。これは理容、床屋さん関係でありますが、やはり環衛金融公庫、四月十二日に配布されたもの、これも床屋へ「全貌」と一緒に無差別に配布をされておるわけであります。中央区の床屋さん百二十九軒全戸に「全貌」が配布されておる。そうして四月五日、中央区の自民党の区会議員花村哲が、パンフ四種類、十五冊ぐらいと、「だれでもできる選挙運動」というチラシを持って訪れ、お客に渡してくれといって置いていった。「美濃部を落として松下をやってもらわなくては困る。美濃部が通れば株価が下がるし、公安条例が廃止されて、デモが激しくなりますよ。またとかく女性関係があるようだから」と話していったというのですね。これは人物もはっきりわかっておるし、日にちもわかっておる。こういうのは一体どういうふうになっておるのか、床屋関係のあなたのほうの調査はどうなっておるのか、次回までに調べていただきたい。  その次は、今度は警察に重大関係のある問題でありまして、赤い自動車事件であります。こういう普通の乗用車の横っ腹に、「赤い教育はもうごめんだ正しい教育を推進する青年協議会」と書いて、そうして驚くなかれこれが選挙期間中に認可をいたしましたのが四百六十五台出ておる。それでこれは麹町警察署が認可をしたといっておる。実際に動いておるのは九百台ぐらいであろう。四百六十五台を認可しておるが、実際動いたのは九百台ぐらいであろうということであります。これが、このやり方が警視庁傘下で許可されるというならば、全国で全部やります。私どもも、そんないいことがあるのか、——全部やります。許可の基準、どうして許可したのか、しまいぎわにはこれを禁止したのはなぜであるか、事態の経緯を明らかにしていただきたい。
  100. 内海倫

    ○内海政府委員 自動車の問題につきましては、もともとそういうふうな、特に投票期日の切迫いたしましたような場合に、たとえそれがどういうふうな団体、要するに、政治団体あるいは政党でないものでありましても、そういうふうなものが動くということにつきましては、やはり法に触れるおそれがありますので、警察側としましては、もともと決して望ましいことではございませんので、そういうふうなことについての質疑がありました場合にも、警視庁としては、そういう法に触れるおそれのある行為ですから、相なるべくんば慎んでいただくようにというふうな見解を表明しておったようでございます。しかしながら、そういうふうな法に触れる行為は一切やらない。どこまでも、これは政党でもなければ政治団体でもない団体が、選挙のためでない活動を宣伝するんだ、どうしても道路交通法上の許可を得たい、こういうふうに警察署のほうに申請があったようであります。そのことになりますと、道路交通法の規定からいきますれば、その道路交通法に定めておる規定に特に抵触しないものであれば、そしてまた、それが選挙運動にわたるような行為は一切やらないという強い決意を表明して申請されれば、警察側としてはそれについては許可せざるを得ない、こういうことから許可をしたと聞いております。  なおまた麹町警察署に申請された自動車台数は九百余台、いま数字を正確に覚えておりませんが、九百余台であったそうでありますが、実際に動いた自動車は、それよりも少なかったというふうに聞いております。  もう一度申しますが、許可というのは道路交通法に規定するところの許可でございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 もう常識を疑うというよりほかはありませんね。あなたの理屈は理屈だ。それを受けた人の理屈は理屈だ。しかし、都知事選のまっ最中に「赤い教育はもうごめんだ」と九百台も申請をされて、道路交通法によう触れなければ、許可をするのもやむを得ないという判断は、これは一体どういうつもりだろうか。そういうことなら、これからどんどん私どもやりますわ。そうしてやっていったら、ここに自動車を押えて、その女の子がしゃべっておった放送文、放送文は画一的でありますけれども、そのそばに、こういうことを言ってくれと言われて、自分で書いて、このとおりに言ったというのでありますが、「都政は自由民主党におまかせ下さい。都政に赤旗を立てないようにがんばりましょう。ご町内の皆様大変おさわがせいたしまして失礼いたします。都知事には松下正寿氏を、区会議員には何々、どうぞよろしくお願いします。」堂々とこういうふうに言わせておったようですね。言わせておって、何ですか、途中で禁止したのですか、禁止しなかったのですか。
  102. 内海倫

    ○内海政府委員 警視庁におきましては、そういうふうな多数の自動車が動くわけでございますから、かなりきびしい警戒はしておったようであります。そういうふうな連呼などがありました場合は、そのつど警告を発して是正していくという体制で臨んだと聞いております。それによって違反として検挙したということは、まだ私聞いておりません。
  103. 横山利秋

    横山委員 ずさんでございますね。それはこの赤い自動車九百台のことを許可した責任がある。それから最終的には、こういうようなものが選挙運動をやったことは間違い得ざる事実であるが、その事実は入手しておるのか。入手したとすればどういう処置をしたか。それを次回に御報告願いたい。  今度は告発関係のものでありますが、「全貌」と、それから都政懇談会の「みんなの都政、容共勢力に都政を渡すな、暴力革命への布石、中共が支援している容共候補」云々として、いわゆる国際電話事件ですか、そのようなものの文書であります。  その次は、十七でありますが、違反文書、やはり同様都政懇談会からでありますが、都政懇談会入会御依頼、都政懇談会規約、推薦依頼状、だれにでもできる選挙運動として、宗教関係の信徒有志懇談会発起人として東京都世田谷区北沢五丁目浅田何がしという人をはじめ、無差別に配布されました宗教団体のすべての人々に対する「同信の友松下正寿氏のために祈る会」というものが配布をされております。この文書の大事なことは、「私どもは松下氏の御当選を祈るものでありますが、同じ気持ちをおもちの兄弟姉妹とともに、教派をこえて松下御夫妻のため心から祈りを捧げたいと念願するものであります。」ということで、明らかにこの有志懇談会発起人が、この祈る会を通じて無差別にこれを配布をしたという疑いがございます。この人から投書がございました。これが十七でございます。  それから十八は、赤い革新都政をつくる会の声明でありますから、これは従来のものからいって、こういうようなことになっておるというようなこちらの問題でありますから、これは省略をいたします。  それから、著者なし五百万部のビラ、こういうビラでございます。「社会主義革命の恐怖、あすを考える国民必読の書、定価五十円、アジア・アフリカ問題研究会刊、東京都港区赤坂青山南町一ノ三十九、日青協ハウス」となっておりますが、この本はないのであります。ない本を宣伝をしまして、このビラが約五百万出ておるわけであります。これは入手をなさっていらっしゃいますか。
  104. 内海倫

    ○内海政府委員 どういうふうな経路で入手したものかは私承知しておりませんが、その現物につきましては、私も警視庁から報告を受けて見ております。
  105. 横山利秋

    横山委員 これは五百万、膨大な数がばらまかれておるのでありますが、その印刷をした人その他について調査は進んでおりますか。
  106. 内海倫

    ○内海政府委員 まだその辺の報告は聞いておりません。
  107. 横山利秋

    横山委員 御調査をして御報告を願います。  それからその次は脅迫状でありますが、長門裕之氏への脅迫状、「人気に調子づき、赤旗をふる大馬鹿野郎、お前の前途は赤信号、俳優から転向して三角帽子をかぶり、赤いチョッキをきたひょうたんピエロにでもなれ。大きな顔して歩かぬ方が身のためだぞ。」云々。奥さんの名前も出して脅迫状が来ておるわけであります。  時間の関係上だいぶ簡略に申したつもりではありますが、それでも以上話しました十九の文書、そのほかに該当いたしますような文書は全く枚挙にいとまがないのであります。私が思いますのに、これだけの膨大な違反の疑いがあり、また明白に違反とおぼしきものが、警視庁の、いまの御報告によりますと、非常に退嬰的な調査の状況であって、事実をつかんでおっても、一回もこの問題を提起をされておる状況がないのを私はきわめて遺憾に考えておるわけであります。このような状況の東京都知事選挙が、前回のああいう形の変わった乱暴ろうぜきの選挙と違ったといたしましても、またこういうことが許されるならば、今後の衆議院選挙から参議院選挙、あらゆる選挙で、きょうあなたがおっしゃったようなことで済むものなら、また東京都におけるかくのごときやり方が全国にびまんすることを私は非常におそれるわけであります。したがいまして、これは理非曲直を明らかにしてもらわなければいかぬ、調査は的確にしてもらわなければいかぬ、違反は違反として、的確に結末をつけていただかなければならぬ、こう考えるわけでありますが、どうですか。
  108. 内海倫

    ○内海政府委員 たびたび申し上げておりますように、警察といたしましては、法令に違反するものにつきましては、それが警察によって現認される、あるいは捜査の中で出てまいる、あるいは告訴、告発等によって承知いたしました場合、いずれを問わず、警察といたしましては法令に触れるものにつきましては厳正に捜査をいたすことは、もう在来から基本方針として行なっておるところであります。同時に、その過程におきまして、常識的に見ますれば非常におかしいと思われるものも、法規にそれが触れない限り、常識的にはおかしいと思われましても、またそれが、法律を執行するものであるがゆえにやり得ない場合もございます。しかし、繰り返して申しますが、法令に違反したものにつきましては的確に、厳正に警察の措置をとる、これは在来から決して変わっておりません。
  109. 横山利秋

    横山委員 法務大臣、長らく黙って聞いておってもらいましたが、かくのごとき状況であります。私どもが警視庁並びに警察庁に対して不満を持っておりますのは、また質疑応答で明らかなとおりであります。しかも、まあ終わったじゃないかという気待ちがどうもうかがえてしかたがない。これは全国に及ぼす影響きわめて重大であると思いますので、法務大臣の御意見を伺っておきたい。
  110. 田中伊三次

    田中国務大臣 ただいま数々の資料をお示しいただいての御意見でございます。私も御同様にこの種の事柄が、取り調べをいたしました結果、法規に触れるかどうかは別論といたしまして、それは調べてみなければわからぬことでございますから、ここで軽々に申し上げるべきことではございませんが、この種の事柄は、一体、いま私は承りながら考えたのでございますが、この種の事柄が許されるとするならば、法規に違反をしないのだとかりにそういうふうにするならば、これは各政党その他の団体の政治活動をしてこういう文書を出したという判断が加えられて、これは罪にはならないということになるのではなかろうかと思う。しかるところ、かりにそういう判断が行なわれます場合でも、いまお説のごとく、こういう膨大な文書というものが、しかも選挙区にこれがばらまかれているというようなことが合法である、それは政治活動である、政治活動は御自由である、金さえあれば何十万でも何百万でもそういう文書が出せるのだ、しかもその結果は、罪にはならないけれども、選挙の公正と選挙の自由というものを侵害する上からはゆゆしい差しさわりがあるもの、とこう考えるような事態、こう思われるようなことが私はあろうかと思います。そういう場合におきましては、選挙に際して、選挙期間中の政治活動——一方において候補者は選挙運動をやっている、候補者が所属するところの政治団体は政治活動をやっているのだ、こういう理論的にはまことにはっきりしておるのでありますが、実際当たって具体的な配付された文書を調べてみると、たいへんこんがらがったものになってくる。こういうふうな、今回の、お示しのような事例を見ますときに、やはり選挙運動を取り締まる上から申しまして、たいへんいやなことばでありますが、こういうことがやまらないということになるならば、やはり政治運動を公正に行なうために、各団体の政治活動というものに対しては、法律の明文をもって規制をする措置が必要でなかろうか、規制しなければならぬということを私は言い切る勇気はございませんが、検討をする必要があろうと思います。そうしなければ、選挙の公正上いかがなものかと考えられるすれすれの文書が、何百万と出ておるという場面ですね、その御心配の場面は。そういう場合には、私は選挙運動期間中だけは——期間がはずれれば別でございますが、その期間中だけは厳として政党その他の団体——いいことではないのでありますけれども、窮屈なことにはなりますが、政治活動は、許すべきやいなやということについて検討をする必要があるのではなかろうかというふうに、ありのままに党派を離れて考えるわけであります。取り締まりの立場から、そういうふうに考えるわけであります。
  111. 横山利秋

    横山委員 自治省が来ていないのが非常に残念でございますが、同僚議員の質問もあるようでありますから、私は一応これで質問を終わりますけれども、ひとついままで提起いたしました問題、中にはお答えを願わなくてもいい問題がありますが、合計十九の問題を提起をいたしました。この提起が単に御調査をいたしますということだけで終わりませんように、お願いをいたしておきましたように、次回までに提起をいたしました問題の調査並びに調査結果、措置、判断等を含めて御報告を願うことにして、私の質問を終わります。
  112. 大坪保雄

  113. 中谷鉄也

    中谷委員 私のほうは都知事選の違反の問題であるとか、それから警備に関する問題、それから和歌山県の知事選違反の問題その他二、三、質問を準備しておりましたけれども、時間の都合がございますので、和歌山知事選挙の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に運輸省、それから外務省の方も特に御出席をお願いしたのですが、次のような非常に、これは私残念な、そしてまたこういうことが私はあっては絶対にいけないと思うんですが、そういう事実があったということを聞きました。  そこで、まず事実の確認を、最初外務省のほうからしていただきたいと思います。その事実は、きょうの十時二十五分に入電があったようでありますけれども、AP、ベトコンの無反動砲、こういう大砲があるそうですか、それでサイゴン側で、LSTの乗り組み員であります日本人が一人死亡した。そうして四人負傷した。そこで、その死亡された日本人の方の名前は、かな読みではありますけれども、フルヤヒサヤさんという五十歳の東京都の杉並区の方、あとほかにトクナガさん、テジマさん、ナカムラさん、エンドウさん、こういう方が負傷したという、こういうことをきょうの十二時ごろに私聞きました。これは法務大臣のほうからも、私は事実確認が終わりましたあとで御答弁をいただきたいと思うのです。もう一度申し上げますが、サイゴン川の付近でLSTに乗り組んでおった日本人が死亡あるいは負傷した、こういうふうな非常に聞いてもいやな、残念なできごとがあったのかどうか、この点をひとつ事実確認としてお答えいただきたいのです。
  114. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 私のほうでただいままでわかっている範囲でお答えいたします。  昨日の夜サイゴン付近のナビ地方南方二マイルの地点においてLSTが襲撃を受けました。なぜ襲撃を受けたかというのは、ただいま入りまして、いま御指摘のように無反動銃が船を攻撃し、船中の船員が死傷したということでございます。  それで、なくなった方は古谷久弥さん五十歳、杉並区阿佐谷南一丁目十三—七、それから負傷された方、徳永誠二さん二十六歳、広島県。手島新男さん三十九歳、福岡県久留米市。中村宏さん三十四歳、横浜市。遠藤政一さん三十七歳。このうち、なくなった方の遺体は目下米軍によって日本に運ぶ手続をとっておるそうでございます。それから負傷された方四名は、サイゴン市内の米軍病院に入院中でございますが、経過は非常に良好というのが、以上が事実関係でございます。
  115. 中谷鉄也

    中谷委員 事実関係についてさらに知りたい点がありますので、御答弁をいただきたいと思いますが、要するにこの舟艇は、サイゴン川を遡航あるいは下ってくるどういうふうな状態のときであったのか。この点と、それからこれは私大体想像がっきますけれども、外務省の方に御答弁いただくことは無理かもしれないけれども、無反動砲ということになれば、これは機関銃だとか自動小銃だとか小銃だとかいうふうなものではないわけですね。文字どおりこれは大砲といわれているようなものだと思いますけれども、要するにこういうふうなもので砲撃を受けたというのですが、攻撃を受けた武器、いわゆる無反動砲というようなものについてのある程度の資料といいますか、事情がおわかりなのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  116. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 ただいま御指摘の第一点、いかなる状況で攻撃を受けたかは、残念ながらただいまのところ私たちのほうに全然情報が入っておりません。したがって、船が川を上っていたとか下っていたとかという点も含めまして入っておりません。  それから第二点の無反動銃でございますが、無反動銃で攻撃を受けたというのは、ただいま私手元に入ったばかりで、無反動銃がどういう銃であるかどうか、ちょっと私いまのところお答えできかねます。
  117. 中谷鉄也

    中谷委員 そこでいわゆるLSTの関係につきましては、これは従来からの国会で論議されていることだと思いますけれども、私従来の経過がよくわかりませんけれども、昭和四十年の四月十四日、外務委員会でLSTの関係については論議されているようです。私そのときの会議録を持ってまいりましたけれども、そこでさらに一応その事実関係をもう少し明らかにしておきたいと思うのです。  この船員のおなくなりになった方、古谷久弥さんを含む五人の方、負傷された方四人となくなられた方一人、この方はいつごろどこの港を出港して、そしてサイゴン川へ結局行き着いた、この点はいかがでしょうか。
  118. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 実はLSTの乗り組み員の詳細につきましては、運輸省の所管になっておりまして、私のほうは承知しておりませんで、この事件の関係の方もいつ乗船されたのかはっきりいたしませんが、一般論といたしましては大体二カ月ないし三カ月の勤務と見ております。
  119. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃひとつ運輸省の関係の方に御出席いただいておりますのでお尋ねしておきたいと思います。  四十年の四月十四日の国会の会議録を拝見してみますと、要するに、このLST自体に大砲の設備があるのだ、装備をしているのだというそういうLSTもある、そういう装備をしていない船もあるのだというようなことがかなり論議の対象になっているわけなんですけれども、運輸省の関係の方の御答弁を私いただきたいが、外務省の方の御答弁のとおりだとすると、大体二カ月ぐらい前にでたとか二カ月ぐらい前に乗り組んだということになるのだけれども、最近のLSTについては、いわゆる武器の装備をしているのかどうか、それを積み込んでいるというだけでなく、LST自身がそういう装備をしたものが出ていっているということなのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  120. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 お答え申し上げます。  私どもが知っております範囲におきましては、LSTは火器等の軍備の装備は行なっていない、こういうふうに私どもは了承いたしております。
  121. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、もう一度外務省の方に御答弁いただきたいのですけれども、要するに先ほど御答弁があった地点、そこで無反動銃の攻撃を受けた。非常にしろうと的な考え方、聞き方をします。国民はそういう受け取り方をするのだと思いますけれども、これは結局無反動銃による狙撃あるいは攻撃を受けたということになれば、ここは文字どおりたまが飛びかっておる、たまが飛んできたりあるいはまた爆発する、手りゅう弾が投げられるというふうな戦場ということになるわけですか。この同胞であり日本国民である古谷久弥さんがなくなったこの地点というのは、そういうところになるわけですか。
  122. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 実はどういう状態で襲撃を受けたかという報告をいま待っておる状況でございまして、その状況を調べてみませんと、平生からそこが非常に危険な地帯であるかどうかという判定が、いまのところちょっと下せないかと思います。
  123. 中谷鉄也

    中谷委員 いずれにしても、自動車がひっくり返ったとか、船が沈んだというふうな話じゃなしに、鉄砲で撃たれた。しかも無反動銃。私は無反動砲と聞きましたけれども、いずれにしても普通の小銃じゃなさそうです。何か相当精度の高い、そういうものでとにかく攻撃を受けている。こういうことなんです。  そこで運輸省、外務省、それぞれに私御答弁をいただきたいと思いますけれども、こういう日本の国民、これは船員としての身分を持った人、職業を持った人、その人がサイゴン川付近の先ほど御答弁のあった地点のところへLSTに乗り組んで行く、そのいわゆる法的な根拠というか手続きというか、これは一体どういうことになっているのでしょうか。これをひとつ、従来論議されておりますけれども、あらためて御答弁をいただきたいと思います。
  124. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 まず最初に、私のほうの地位協定と申しますか、そちらの関係から御説明いたしますと、地位協定の中に、日本人の労務者の充足については日本政府が協力するという点がございます。しかし、このLSTについてはその原則の例外となっておりまして、直接船員と米軍との契約でもって行なわれておると存じております。したがいまして、LSTに乗りたい船員が直接米軍と契約して船に乗っているという状況でございます。
  125. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま外務省からお答えがごさいましたとおりでございます。
  126. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、米軍と船員の職業を持った人が直接契約をする、そこで出港していくその手続というのはどういうことになるわけですか。
  127. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 これは船自身が日本船舶ではございません。それからまたこのような雇用に属しております日本人船員も、船員法による船員ではございません。したがいまして、その意味におきましては、国内の私どもの関係法規とは関係がないわけでございます。
  128. 中谷鉄也

    中谷委員 そうすると御答弁の中に出てきましたけれども、いずれにしてもこの人たちについては船員法の適用を受けていない、まずそうですね。そういうことになってくると、雇用契約を結べば、そしてその船に乗ってしまえば出ていってしまう、こういうことになるわけですか。
  129. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 そういうことになります。
  130. 中谷鉄也

    中谷委員 まあ、同胞が死んだ、けがをしたというその事実が、非常に深刻かつ重大でありまして、手続的な面については、あとまた機会をあらためてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、さっそく私、大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。  国民であるところの船員、それが米軍と雇用契約を結ぶ。そして船員法の適用は受けない。だから、もちろん旅券法の関係の問題も出てこない。そういうことで船に乗って、そしてサイゴン川まで行く。そしてそこで、これはベトナムの紛争の状態というのは、われわれ日ごろ新聞その他でよく承知している。たいへんなことが行なわれておる。そういうところへ行って、とにかくたいへん危険なところだ。そこでそういうことを従来から何べんも論議されておったけれども、まさにこういう不幸なできごとが起こって、死んだというふうなことについて、これはやはり政府として、そういう国民をLSTに乗り込まして、そうして血を流しているような戦場へとにかく行かすというふうなことは許しがたいことだ、そういうことはさすべきじゃないというふうに私は思いますけれども、これは人権の問題でございますけれども、ひとつぜひとも大臣に御答弁いただきたいと思います。
  131. 田中伊三次

    田中国務大臣 LSTという船がわが国の船舶でない、——なさそうですね。そこで雇用契約でこの船に乗り込んだ、旅券を持たずに日本の領海外に出て航行した、そしてけがをしたという事件ですね。いま承っておるところではそういうふうに思われますね。そういう危険なところへ、日本の国民が雇用契約だけで船に乗って日本国土を自由に離れ得るということが法制的にできるといたしますと、そのこと自体検討しなければならない余地のあることと、こう考えるのでございます。ただ私は、不敏にしてこの関係を非常に詳細に存じないものでございますから、軽々に意見を申し上げかねますが、この点に関しましてはよくひとつ事態の真相を明らかにいたしました上で、ただいまお説の人権をめぐる諸問題についてはひとつ検討をしてみたい。次の機会にお話を申し上げたい。
  132. 中谷鉄也

    中谷委員 運輸省の関係の方にひとつお答えをいただきたいと思います。これは、LSTにつきましては、乗り込むなというふうな運動が起こっておったということも事実です。そういう中で、LSTは外国船だ、だから船員法のいわゆる適用もないのだ、また反面旅券法についての手続も要らないのだというふうなことで、いわゆる船員保護という観点からいきましても、全く野放し状態、しかも戦場へ連れていかれる、戦場へ連れていかれて、たまに当たって死ぬその状況が明白でございませんけれども、おそらくそうだと思います。というふうなことについて、いわゆる所管の運輸省として、そんなことがあっていいものじゃないと私は思う。この点については法的な面の規制と同時に、行政指導の面においても、行政指導というよりも私はむしろ人間的なといいますか、人権尊重というか、そんなものと契約してはいかぬ、戦争に協力してはいかぬとかなんとか、まあ質問のときに私そういうふうな言い方はしませんでしたけれども、そういうものに乗ってはいかぬ、そういうふうな契約をしてはいかぬと言われるのが、むしろ行政指導を上回るところの人間的な立場だというふうに私は考えるのです。これは突然のできごとであり、突然の質問でありまして、大臣のほうから人権尊重の立場からのお答えをいただいたと思いますけれども、そのお答えについては明白なお答えがいただけなかったのですが、運輸省としては何としても所管の役所ですから、これはひとつ船員保護という観点から、人権尊重という観点から御答弁をいただきたいと思います。こういうことが野放しになってはいけないと思います。
  133. 横山利秋

    横山委員 関連してちょっと。  人権保護もさることながら、日本は交戦権を否定しているわけですね。交戦権を持っていない国が一方の側に——この事情で行きます場合、従軍をしたということになると私は思いますが、交戦権を否定している国の国民が、一方の側に従軍をするということは、私は憲法上認められないと思う。それを外務省が旅券を許可するということは、一体どういうことか。逆に北ベトナムに従軍したいと言ったら許可するのかどうか。おれは北ベトナムに従軍する、LSTでおれは仕事で入ると言ったら、これは一体許可するか。旅券法の十三条の五号ですね、日本政府の自由裁量、旅券を発給する場合の自由裁量の条項がありますね。「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」、これは自由裁量ではあるけれども、しかし憲法の規定である交戦権を否定しておる国が、戦争をやっているA、Bという国の一方に加担をして従軍をすることにこの旅券法十三条の五号が使われることが、国として許し得るかどうか。なぜ、そういう人に旅券を渡して海外に行かせるのかという点をあわせて御答弁願いたい。
  134. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま、あとから御質問のございました旅券関係のことにつきましては、外務省のほうからお願いいたしたいと思います。  その前に、このような船員について、運輸省はどういうふうに考えておるのかというお話でございます。私どもといたしましては、根本的に申し上げますと、LSTに日本人船員が乗船するということは、あくまでも乗船する船員の自由意思に基づくものでございまして、私どもがこれを強制的に阻止するという根拠はないというふうに考えております。ただ、御指摘のございましたように、LSTの船員の安全ということにつきましては、私どもは常日ごろ重大な関心を持っております。ただ、これが安全であるかどうかという判断につきましては、これは私どもは現地に出先機関その他を持っておりませんので、外務省の御判断に従ってものごとを考えていく、こういう基本的な態度をとっております。ただ、私どもといたしましても、そのような状態もある程度予想されますので、従来米軍当局に対しましては、再三にわたりまして日本人船員の安全確保という点につきましては、万全の措置を要請いたしておりますし、また米軍当局も、これについてはできる限りの努力をするといったことを私どもに言っておる次第でございます。今回はまことに不幸な事件が起こったということをきょう聞いたわけでございますが、従前はこのような事態の事故はございませんで、個別的にいろいろな事故があったわけでございます。そういうことでございます。
  135. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 私、実は旅券法を所管しておりませんので、的確なことを申し上げられないと思いますけれども、まず第一に、LSTの船員は、現在のところほとんで船員手帳であります。したがって、旅券は出しておりません。ただ、旅券の申請があれば旅券は出せるわけであります。これは一般船員、外国船の船員と同じく申請があれば旅券は出せると思いますが、問題になりますのは、いま御指摘の点のほかに、旅券法の十九条一項四号でございますか、その旅券を持っていかれる方の身体あるいは財産に非常に危険を及ぼすときには、旅券法によってその旅券の発給を停止できます。ただ現在の状態がそれに該当しておるかどうかという認定の問題は別でございますが、一般の規定はそういうふうになっております。
  136. 中谷鉄也

    中谷委員 運輸省にもう一度お尋ねしますけれども、船員職業安定法という法律がございますね。この法律によって、四十年四月十四日の会議録によりますと、要するに求人の申し込みがとにかくあった場合に、適当な求職者を紹介するということが船員職業安定法によるところの仕事なんだ。だから、結局そこでLSTの乗り組み員を紹介するというふうなことが、従来から論議されております。おかしいじゃないか。現在もそういうことは続いておるわけですね。もう一度お尋ねしますけれども、要するに船員職業安定法によってとにかく求職の申し込みがあった者に、LSTに乗り込むのだということがわかっておりながら紹介をする。先ほどおっしゃったように強制はしない、——あたりまえのことですよ。LSTに乗り込めなんて強制したなんという話はたいへんなことですよ。自由意思だ、そういうふうな契約を自由だとかなんとかいう、法律問題ではなしに、そういうところに乗り込むというふうな契約を、そんなことをしないようにせよ、これは行政指導を上回った以上の大事なことだと思います。こういうふうに私はお尋ねをしているわけです。だから、雇用契約が有効か無効かなんという御答弁をいただこうと思っているわけじゃないのです。いずれにいたしましても、船員職業安定法のLSTの関係の実際の動きはどうなっておるか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  137. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいまお話がございましたように、船員の職業紹介につきましては船員職業安定法という法律がございまして、これによって政府が行なっております。この場合に、この法律でいっておる船員と申しますのは、先ほど申し上げました船員法の船員のみならず、船員法による船員でない者であって、日本船舶以外の船舶に乗り組む者を含んでおります。したがって、外国船に乗り組みたい日本人については当然この安定法の適用を受ける、こういうことでございます。これが法律の内容でございますが、その次に、それでは現実に具体的なLSTにつきましてこのような船員職業紹介という事実があるかないかということでございますが、これにつきましては、昭和三十九年までに船員職業安定所を通じまして紹介された者が十名ございます。それ以後は、先ほど申し上げましたように、このようなケースは全然ございません。直接の契約によっておる、そういう状況でございます。
  138. 中谷鉄也

    中谷委員 LSTの船員は横浜、それから佐世保、ここで大体雇用されているのが実情のように承っていますが、そういうことでしょうか。
  139. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 これは調べればすぐわかるわけでございますが、いま私ちょっとその点確かにお答えできません。
  140. 中谷鉄也

    中谷委員 従来の経過はこういうふうな実情らしい。要するにLSTの乗り組み員であるということは明示はしていない。ところが、LSTの乗り組み員であるということが、十分想像がつくという場合に紹介をしている例が往々にあるのではないか。だから、いま御答弁にあったように、LSTの乗り組み員ですよというかっこうの求人申し込みではなしに、しかし、当然それはLSTの乗り組みなんだということがわかっておる、想像がつく、それで紹介をしているというのが——いまおっしゃった人数とか、ないとかいうことではなしに、それがどうも船員職業安定法の実態のようだというふうに聞いている向きもあるけれども、その点はどうでしょう。
  141. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま御質問のございました点につきましては、船員職業安定所によりまして紹介をしたものは、先ほど申し上げたもの以外はございません。ただ直接雇用の場合におきまして、私どもといたしましては、一般的に外国船に乗り組む船員につきまして、雇用条件その他を調べまして船員の保護をするという任務がございます。したがいまして、直接の雇用ではございますが、本人からその申し出があれば、その雇用条件を調べてチェックいたしまして、これならば労働保護に欠くるところがないというものにつきましては、外国船に乗り組む証明書を出しております。おそらくいまおっしゃいましたことは、その点ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  142. 中谷鉄也

    中谷委員 じゃ、大臣にひとつ御答弁をいただきたいと思います。  要するにLSTに日本人が乗り込んでいる限りは、こういうふうなふしあわせな、非常に残酷なできごとというものは、非常に残念だけれども、必ず再発、二度あるということは当然予想されるわけです。それが一つ。いま一つは、−私はきょうは人権問題一本にしぼってお尋ねしたいと思います。何といっても、これは基本問題としては、横山委員から御発言があったように、日本の平和憲法のたてまえから、はたしてというか、断じてLSTに乗り込むことが許されるかどうかという問題、この二つがあると思う。  したがって、ひとつ大臣のほうから私御答弁をいただきたいのは、少なくとも二度とこういうふうなふしあわせなできごとというものを防止しなければならぬ。これがための方法としては、LSTに乗り込んで戦場に行かないということであれば防止できるわけです。この点について、いま申し上げたような二つの観点から、十分にひとつ御検討をいただきたい。御検討をいただくその内容としては、こういうかっこうで、船員法の適用も受けない、旅券法の適用も受けない、ただ契約をしたら野放しの状態で行くというようなことを、私はやはり政府としては法的に規制すべきだと思うのです。この点を中心として、ひとつ人権擁護の観点から御検討をいただくということについて御答弁を願いたい。
  143. 田中伊三次

    田中国務大臣 お説の点を頭に置きまして、十分検討してみたいと思います。ただ本件の場合は、事実関係が一向明白でない。ただ、遺憾な事件が起こったという直後でございます。事実関係を明白にしまして、船員免許状を有する者なりやいなや、いわゆる一般人かどうかというようなことをまずよく調べました上で、再びかような不幸なことが起ることのないように努力をいたしたい。検討いたします。
  144. 大坪保雄

    大坪委員長 関連して、横山君。
  145. 横山利秋

    横山委員 先ほど外務省は、このLST乗り組み員には旅券を出していないとおっしゃいましたね、そうですか。
  146. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 私の聞いておるところでは、原則として船員手帳が出る、しかし本人から申請があれば旅券は出せる、実際に出しておるかどうか、私、承知いたしておりません。
  147. 横山利秋

    横山委員 うかつな話ですが、日本の船員は旅券なしで海外を渡航しているわけですか。
  148. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 いま御質問のございました日本の船員と申しますのは、船員法の適用のある船員というふうに考えましてお答えをいたします。  日本の船員法の適用を受ける船員につきましては、いわゆる旅券法による旅券というものは持っておりませんが、そのかわり、船員法に基づく船員手帳というものがそれにかわるものとして使われておるわけでございます。ただ、このLSTの関係につきましては、現在船員法の船員でございませんので、したがって船員手帳という問題はないわけでございます。
  149. 横山利秋

    横山委員 そうすると旅券を出さなければならぬことになりますね。それはあなたは所管でないから御存じないかもしれぬけれども、ぼくが疑問を感じたのは、当然旅券が出ておると思う、旅券が出ておるとするならば、いかなる条項に基づいて旅券を出したか。それは私が先ほど言ったように、外務大臣の族券を出す手続、十九条の一項四号では「旅券の名儀人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」、少なくともここに該当するから旅券を出してはならぬのではないか。これが第一。かりに旅券を出さなくてもいいしかけになっておるとするならば、いかなる根拠でそれはそう便宜措置をとっておるか。また旅券を出さないでいいしかけになっておったとしても、これは当然交戦国の一方に従軍をしておるという形になる。これは憲法上適当なことであるかどうか。しかりとするならば、北ベトナムに従軍しようとする人間があった場合には、当然旅券の発給をすべきではないか。一方を非とし、一方を是とすることは、いかなる根拠があってそういうことをするのか、あなた、御答弁できますか。
  150. 浅尾新一郎

    ○浅尾説明員 実は最初に申し上げました、船員手帳が出ているというふうに私、承知しておりましたので、そうお答えしたわけでございますけれども、ただいま船員局長からの説明と若干違うようで、その点私のほう、あるいは誤っていたかと思いますので、これは調査いたしまして訂正いたしますけれども……。  それから旅券法の関係は、いま御指摘のありましたように、本人の身体あるいは財産について、非常に危険であると判定した場合には、旅券を出さないということができます。ただ、いかなる程度がはたして危険かということは、その方が行かれる地点の具体的な状況ということによって判断されると思います。
  151. 横山利秋

    横山委員 ことばじりをつかまえるようでありますが、いかなるところへ行くかということで問題を提起するならば、十三条一項の五号では、「前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」、それに続いて二項では、「外務大臣は、前項第五号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。」これは法務大臣、あなた人のことだと思っておったら大間違いで、あなたに重大な責任が出てまいりました。だから、このLSTの問題はちょっと重大な問題だと思うのです。私は別の機会に問題を提起しようとしておったわけでありますが、問題だけ言っておきますが、二月十八日に米軍の立川基地死体安置所で、このベトナムで怪死をした人間の死体の検案が行なわれておる。このことは、いま時間がございませんから別の機会で問題を提起するつもりでございますが、向こうへ行っておった人が、いまのお話のように銃撃を受けて死亡したり、あるいはまた妙な死に方をして、氷詰めのまま米軍の立川基地へ送られてきて、それを警視庁鑑識が検案をしたりということが、最近続出しそうな傾向にあるわけであります。でありますから、ただいまの表面どおりの話ではいかぬので、ここであらためてLST乗り組み員の国際的法的地位、旅券の発行の基本的な姿勢というものを一ぺん確定をする必要があると思う。外務省がこの担当者でいらっしゃらないので、詰めた議論ができませんけれども、やはり今度これを正式に聞く場合に、法学博士田中法務大臣の明白なる措置、法律上の解釈、並びにそれは適当でないとするならば適当な改正をすべき段階にあると思いますが、いかがでございますか。
  152. 田中伊三次

    田中国務大臣 検討をすることにいたします。
  153. 大坪保雄

    大坪委員長 横山君、旅券の問題はその専門課長でないものですから、これ以上回答を得られないと思います。
  154. 横山利秋

    横山委員 わかりました。
  155. 大坪保雄

    大坪委員長 それで、中谷君及び委員諸君におはかりいたしますが、いま予算分科会の都合をつけて自治大臣及び自治省選挙局長が出席をいたしました。長く出席していることが困難だということでございますので、質問の順序を少し変えて、中谷君には選挙関係の問題、それからできれば松本善明君にその問題を質問してもらうということにしたらいかがであろうかと思いますが、いかがでしょう。
  156. 中谷鉄也

    中谷委員 私はけっこうです。
  157. 大坪保雄

    大坪委員長 よろしゅうございますね。——それではそういうようにいたします。
  158. 中谷鉄也

    中谷委員 では、いまのLSTの問題は終わりまして、国家公安委員長にお尋ねをいたしたいと思いますが、これは私、本日は明確なお答えがいただけないと思います。刑事局長にお答えいただいてもけっこうですが……。それでこの問題は先ほど委員長のおいでになるまでに、東京都知事選のいろんな取り締まり状況について横山委員のほうから質問がありまして、問題を次回に持ち越したわけですが、私も問題点だけひとつ指摘しておきたいと思います。  和歌山の知事選挙の問題なんですが、これは公安委員長お聞きいただいておって、刑事局長から御答弁いただきたいと思いますが、和歌山の知事選挙について、県民の多くは、地方公務員、特に、端的に申し上げますけれども、県庁職員の地位利用について目に余るものがあるというておるわけです。ところが、和歌山県警本部において県庁職員の地位利用について検挙しました、取り締まりをいたしましたという報告が現在参っておりますかどうか。五分程度で私の質問は終わります。これをまずお答えいただきたい。
  159. 内海倫

    ○内海政府委員 和歌山県警察本部のほうからは、ただいまの県庁職員の地位利用に関する容疑をもって捜査中の事件が報告されてきております。内容につきましては、捜査中でございますので説明を申し上げませんけれども、捜査中ということの報告を受けております。
  160. 中谷鉄也

    中谷委員 目に余るものがあるというふうにいま私申し上げました。たくさんあります。したがいまして、どういうものが報告の対象になっているか、これは私特に捜査中のことは答えてもらいたいとは言いませんけれども、これはおそらく氷山の一角というか、ごくわずかなものしかこちらに報告がきてないと思うのです。私も、こういう目に余るものについては許すわけにいきませんので、現在すでに証拠等も収集しておりますけれども、せっかくひとつ和歌山県県警本部に、県民がとにかく公務員の地位利用についてはおかしいじゃないかということがあるので、捜査を厳重にするようにということを徹底してもらいたい、これが一つです。これは当然のことだと思います。  次の質問と答弁を一緒にしていただきたいと思いますが、これは公安委員長にぜひひとつ聞いていただきたい。刑事局長、いわゆる和歌山の満月会事件——知事候補と、現在の知事候補と、本部長などが継続的に一ぱい飲んだ、そういう満月会事件、これはもう県会でもずいぶん問題になった。それと同時に、満月会の招待をしておった業者が、資本金六十万円の会社だけれども五億円近くの融資を受けて倒産をしたという絵原組の事件、こういうふうな事件についてはお聞きになっておられますか。この点、御答弁願いたい。
  161. 内海倫

    ○内海政府委員 まだ私のところではさようなことは聞いておりません。
  162. 中谷鉄也

    中谷委員 もうすでに業者については確定判決があった事件です。そこで知事候補と、現に当選をした知事と、県警本部長等が、そういうことがあったということです。  そこで三つ目の私の質問。県警本部長については、任期の長い方については総選挙の前にほとんど異動されましたですね。和歌山の県警本部長というのは、私警察へつとめたことありませんけれども、当然もう転勤の対象になっているはずの人なんです。私、念のために和歌山の歴代の県警本部長の在勤年数を調べてみましたけれども、いわゆる勤評闘争というものがあったときの本部長を除いては、一番任期が長いというように私の調査ではなっております。そういう縦の任期が長いということではなしに、横に、要するに総選挙の前にほとんどの本部長がかわったはずなんです。相当長い人は任期がきている。そして総選挙の選挙の取り締まりに臨んだはずです。和歌山が全国で一番任期が長いんじゃないかというように思いますけれども、この点についてはいかがですか。
  163. 内海倫

    ○内海政府委員 私、人事を担当いたしておりませんけれども、特に総選挙の前は本部長の異動は行なわないようにして、できるだけ実情のわかった本部長で選挙違反の取り締まりに当たり得るようにということで、特に選挙前に異動はいたしておりませんが、ただ警察のほうは、人事の都合で小異動はしばしば行なっておりますので、もとより選挙前にも何ぼかの異動はあったものと考えております。  それから和歌山県の本部長の任期の問題ですけれども、私は、彼がどのくらい任期を持っておるか承知いたしませんが、警察庁の人事の方針としましては、あまりに本部長が転々と短期間でかわることは適当でないということで、少なくとも二年以上、二年以下ではできるだけ異動しないようにという方針をとっております。現に私も愛知県に二年八カ月おったのですが、そういうわけで、和歌山県の本部長の場合も、特別に長くなっておるかどうかということはちょっと承知いたしておりません。
  164. 中谷鉄也

    中谷委員 県警本部長の異動が総選挙前にはあったはずだ、こういうふうに私申し上げたが、総選挙の前ではない、こう言われたけれども、総選挙が一月二十九日に施行せられた。その以前の相当大きな異動というのは一体いつあったのかどうか。私の言っておることが間違っておる感じではいけませんので、それをお答えいただきたいと思います。  同時に、もう一度念のためにお聞きしておきますけれども、和歌山の県議会でずいぶん問題になった、和歌山県民ならだれでも知っておる満月会事件という事件について、県警本部長も県議会の中で答弁を求めさせられておる。そのことについて警察庁には報告がきてないわけですね。
  165. 内海倫

    ○内海政府委員 異動の点につきましては、私いま資料を持っておりませんので、いつごろありましたかちょっと記憶が薄らいでおりますが、先ほども申しますように、異動はときどき行なっておりますので、総選挙の前にも異動は一部あったとは思います。正確に承知いたしておりません。  それから満月会の問題につきましては、私ここで初めて承りました。あるいはほかの局のほうに、たとえば規律問題でありますならばそっちのほう、あるいは県会の問題でありますならば官房のほうにということで報告がきておるかもしれません。私は承知いたしません。
  166. 中谷鉄也

    中谷委員 最後の質問です。刑事局長の御答弁を一つだけ飛ばして質疑を続けていきますので、要するに公務員の地位利用については報告のあるもののみならず、今後ともさらに積極的に捜査されるように指示されるという御答弁がいただけるかどうか、これが一つと、これは警察の方がおられる前で申し上げるのは非常に言いにくいのですけれども、立場の違いはありますが、検察庁をどう見るかといういろいろな見方はありますけれども、検察庁についての県民の信頼というのはなお落ちていないわけです。そういうことで、ひとつ法務大臣のほうから——昨日も私御答弁をいただきましたけれども、また大臣の御訓示にもありますけれども、検察庁については機能、検察官の人員の面において、ある意味では非常に手不足ですけれども、特に、公務員の地位利用について野放しになっておるではないか、県警本部と和歌山県庁の職員と、執務しておる場所は同じ県庁の建物でありながら、全然手がつけられないではないか、ああいうことをしておって県庁の職員、いいのかと言うておるような状態については、検察庁にひとつ事件があれば努力してもらえないかという気持ちは県民は持っているわけです。この点について、屋上屋を重ねるようなことでございますけれども、大臣の御答弁をいただきたい。
  167. 田中伊三次

    田中国務大臣 第二次的な役目を持っておる検察でございますので、事件の送致を待ちまして峻厳に取り調べをいたしたいと思います。
  168. 内海倫

    ○内海政府委員 先ほども申しましたように、違反がありますれば厳重に捜査をいたします。なお、そういうふうな事案の報告も来ておりますれば、私のほうでも十分指示はいたしたいと思います。指示といいますか、助言はいたしたいと思います。
  169. 大坪保雄

    大坪委員長 それでは選挙違反関係について松本善明君。
  170. 松本善明

    松本(善)委員 都知事選挙の違反について先ほど横山委員らいろいろ御質問がありましたので、この違反は先ほど法務大臣から政治活動の問題のように言われましたけれども、しかしそうでない。でありませんで、それからあるいは赤尾敏の発言であるとか、いろいろな普通の選挙でないような違反がたくさん出ておる。その問題について法務大臣やあるいは国家公安委員長意見、これからの取り締まりの考え、そういうものをお聞きしたい、こういうふうに思うわけです。  最初に赤尾敏が、美濃部さんが浅沼さんの二の舞いになるという発言をしたということについて、これは捜査がされておりますか。されていましたらその結果を聞かしていただきたい。
  171. 内海倫

    ○内海政府委員 浅沼さんの二の舞いということにつきましての発言は、世田谷のほうにおける三候補を中心とする立ち会い演説会場の発言だと思いますが、警視庁におきましては、当時これを聞いておった人等からできるだけ正確にその発言の内容をとっておりますが、当時警視庁としましては、この発言につきまして、赤尾敏氏に厳重な警告を発しまして、自今そういうふうなことのないようにということで、厳重な警告を発したわけでございます。
  172. 松本善明

    松本(善)委員 その程度でいいのかどうかということについて、公安委員長法務大臣にお聞きしたいのですけれども、選挙の自由妨害罪というのがありますけれども、選挙に立っているという人が、あの事件後すぐに、御存じのように西田町の荻窪団地で空気銃の狙撃事件がありました。ああいうことがそのまま放置されました場合には、選挙に立候補をする者あるいは選挙運動に従事する者、そういう者が命がけになる、そういう結果を招来するんじゃないか。単なる脅迫だとか単なる暴行事件とかいう性質のものでない。政治を変えなければならないということで、そういう活動をする者がみんな狙撃をされるかもしれぬ、刺されるかもしれぬ、こういうことになるということを厳重に取り締まらなければならぬ。これが民主主義の選挙の場合の根本ではないか、そういう心がまえが一体あるのかどうか、いまの刑事局長の答弁ではとうていそういうものとして考えているようには見えない。この点は大臣はどう考えられているか。
  173. 田中伊三次

    田中国務大臣 ちょっと話が前後して恐縮でございますが、赤尾敏の発言問題、これは警察ではございませんが、検察庁に対してその後告発が出ておる。そこで、告発に基づきまして選挙管理委員会委員の皆さん、それから現場におりました警察官等につきまして、約十名か十一名についてすでに厳重な事実聴取を済ませておる。なお、本件につきましては、たいへんむずかしい仕事でございますが、聴衆について、聴衆がどういうことばを聞いてどういう感銘を受けたかという、聴衆について目下調べました上で、初めて本人の発言をいたしました発言が、事実関係として明らかになった、こういうことで、目下その調査を、捜査を進めておる。私のほうに告発があったものですから、告発事件としてそういう考え方を持っております。  それから第二の、先生お話しの空気銃の事件でございます。この空気銃の事件は、申し上げにくいことでございまして、これは捜査をやっておるのでありますから捜査中にいろいろなことが言いにくいのでありますけれども、非常に誤解を招くことがあってもならぬと思いますし、大事な事件でもありますので申し上げておきますと、この事件がはたして選挙運動と言えるのかどうか、都政を明るくする会、都政を守る会というこの会の宣伝活動というものが、具体的な東京都知事の選挙運動だと言えるのかどうか、その選挙最中に、選挙運動をしていらっしゃるお嬢さんが射撃をされたということになるわけでございますが、そういうふうに選挙の妨害を行なったもの、選挙の自由、公正を侵害したものだというふうにこの事件を持ち込んでいくべき筋の事件なりやいなや、そうでなしに、これは銃砲刀剣類の所持違反事件として扱うと同時に、刑法による傷害事件として取り扱うべき筋のものではなかろうか、こういうことについても相当慎重な捜査をしていく余地は十分にある事件である、こういうふうに心得ますので、なかなか急速に短時間にはこの捜査はいくまいと存じますが、選挙の捜査のことでございますから、できるだけ早急にこれを努力をしていきたい、こう考えております。
  174. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 選挙は、常に公明正大に、しかも濶達に行なわれなければならないわけでございます。その意味においていわゆる選挙の自由妨害というような事案、あるいはそれまでにならなくても、それに近いようなおそれのあるもの等につきましては、十分今後も警戒をいたし取り締まってまいりたいと思いますし、その他選挙が濶達にできますようなことにつきまして、警察といたしましてはあらゆる処置を講じてまいる所存でございます。
  175. 松本善明

    松本(善)委員 警察庁の刑事局長の先ほどの答弁で言えば、いまの趣旨とはだいぶ違うように思います。単に警告をしたということだけのようでありますけれども、この民主主義の根本に関係する重要なものとして対処をしているという状況のようにうかがえないわけですけれども、その点についてはどうかという点と、法務大臣いま言われました空気銃事件については、これは選挙中の政治活動でも、車が、選挙運動できるわけですから、これは当然に選挙の自由妨害だというように考える。ただその法律論といいますよりは姿勢の問題であります。その姿勢がほんとうにそういうものを守っていくのだという立場でやっているのかどうかという点で、はなはだ心もとないものがあるのじゃないかと思う。その点で聞いているわけなんです。あらためて御答弁いただきたいと思います。
  176. 田中伊三次

    田中国務大臣 そういう点も含めまして、選挙違反なりやいなやという点も含めまして、いまお説のようなことも含めまして、慎重に捜査をやっていきたい。これも送致を待ってやっていきたいと思います。
  177. 内海倫

    ○内海政府委員 ただいま私、答弁があるいは不十分であったかと思いますが、私どもの、というよりも、警視庁の当時におきます一番大事なことは、何よりもそういうふうな不祥事件というものの起こることを徹底的に防遏しなければならぬ強い決意のもとで当たったものであります。犯罪の捜査につきましては、すでに田中大臣からもお話のありましたように、告発も出ておるわけであります。これは検察庁のほうでおやりになるわけでございますが、警視庁としましては、選挙の自由を妨害し、あるいは候補者または選挙運動員が、そのために威迫を受けるという事態の起こらないようにするということが、何よりも肝心でございます。そういう意味で、あの直後におきましても、赤尾敏氏に対しては、きびしい警告を発するとともに、その事後におきましても、演説会場その他候補者の身辺というふうなものについては、細心の配慮をもってこれに臨んでおるわけでございます。決してそういうふうな、なおざりどころの問題でなく、これほど真剣に対決したことはないと申し上げてよかろうかと思います。
  178. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど横山委員がいろいろ質問された中での答弁の中でも、たいへん不満に思いましたけれども、このデマ宣伝は単なる政活活動ではないわけです。たとえば、もし左翼知事が実現をしたらということで、美濃部さんの漫画を書いた。赤旗を振っている美濃部さんの漫画ですよ。それから、社会党、共産党が美濃部さんの頭の上に無電機で操作をしている、こういうものをやっていいのかどうか。これは刑事局長にしても法務大臣にしても、単なる文書違反というようなことで、あるいは政治活動だというようなことで答弁をされていたけれども、そういうような性質のものではない。偽計を用いている、あるいはデマ宣伝をしている、こういう問題が起こっている。この問題について、こういうような大がかりな選挙違反について、どういうかまえかということで、先ほど来横山さん聞かれたわけです。それについての態度というものはきわめて不十分だと思いますけれども、あらためてこの点を指摘しまして、答弁を両方の大臣から伺いたいと思います。
  179. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほど申しましたのは、そういう文書を拝見をして、いま直ちにそれが選挙法規に触れるものかどうかということの判断はなかなかむずかしい。そもそもその種の問題につきましては、現行法上の立場から観測を申しますと、どの程度までが政党活動なりや、政策論争なりや、どの程度を越えたものが具体的な候補者を誹謗して選挙の公正を害したものなりやいなやということの判断がなかなかむずかしい。なかなかむずかしいという実情にありながら、法律は政党その他の団体に、政治活動を選挙中といえども認めておる、こういうことが現状でございます。そういう現状のもとにおいて、その判断は、当委員会において文書をお示しいただいて、おまえはどう思うかという仰せをいただいて、その場においてこう思うということの歯切れのいい答えができないことが残念でございますが、これは私は御理解のいただけることと思うのです。それで、先ほども申し上げたとおり、いわゆる選挙をやっておる最中に、政党活動、政党の政策活動、政策の浸透をねらう活動というものがたいへん無制限に認められて、そして膨大な文書が飛び散っていくなどというようなことについては、これは検討を要する。そうすると、政党の活動を狭いもの、窮屈なものにするわけではございますけれども、選挙の公正のためには、これは検討を要するという程度のことしかここで申し上げることができぬのであります。そういう意味を申し上げたのでございます。
  180. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 いま法務大臣のお答えになったようなことでございまして、いまそこでお示しになったそのものを、いま拝見いたしましてどう判断するかということはなかなかむずかしゅうございまして、頒布の方法その他もいろいろ勘案しなければ結論は出せないものと考えております。
  181. 松本善明

    松本(善)委員 私のほうで聞いておりますのは、個々の事件についてどうかということではないのです。デマ宣伝が行なわれている、この問題についてどういう態度で臨むのかということを聞いておる。そのたびごと法務大臣は政治活動を規制するのだと言われるけれども、私どもは反対なんで、政治活動をもっと活発にさせるべきである。当然それが民主主義の根本原則である。ところが、その政治活動に名をかりてデマ宣伝をしているということが問題だと思う。その資料が全部出たわけです。それは一ぺんにぱっと見せられただけでは一ぺんにわからぬかもしれぬけれども、そういう問題なんです。政治活動全体を規制すれば解決するという問題では決してない。この「全貌」にしても、これは明らかに美濃部さんを対象にした大編集です。これをばく大にばらまく、これは明らかではないですか、こういうものが選挙違反だということは。ちゃんと名前が入っている。こういうものを大量にばらまくということ、そういう悪質な大量の選挙違反が行なわれたということを指摘をし、その問題に対する態度を聞いておる。これは政治活動を規制するというのでは全く見当違いだと思う。あらためて意見を聞いておきたいと思います。
  182. 田中伊三次

    田中国務大臣 捜査の手続によらなければ、ここでよいか悪いかということを軽々に判断することは御遠慮したいと思います。
  183. 松本善明

    松本(善)委員 それでは都知事選挙関係の選挙違反の問題はこれでやめますけれども、この選挙違反を取り締まるということについて、これは前に参議院の法務委員会でも問題になりましたけれども、法務大臣のいわゆる茶会の延期はがき事件、これはかなり重要だと思っております。それは取り締まりの中心になっている方の問題であるだけに、こういう問題がどういうふうに処理をされるかということはきわめて重要な関心事である。また、これは取り締まりについてのあり方というものを示すことになるだろう、こういうふうに思う。この点を少しお聞きしたいと思うのですけれども、法務大臣はこの問題については、要するにそれは政治活動なんだ、こういう趣旨の御答弁のようですね。選挙のことではないのだ、こういう趣旨のようなことを参議院の法務委員会で言われたと思うのですけれども、そうでしょうか。
  184. 田中伊三次

    田中国務大臣 一口だけ申し上げます。  ことしで二十二年目になります。初めは数万人を御案内した。なるべく親しく、日ごろはごぶさたしているからという意味で、お正月元日から三日間茶会を二十何年やっている。だんだん数がふえまして、このごろは七、八万通に及んでいる。ことしも十二月末に準備をして——十二月末までにはがきを出しますので、表書きを数カ月間かかって用意をしておりましたが、御案内の印刷を出そうとしているところ、はからずも法務省につとめることになりました。そこで、これはとてもお正月はお茶の会はやっておれぬ、宮中にも行かねばならぬ、東京にもいなくちゃならぬということで、御案内状を書こうとして準備しておった数万通のものにお断わり状を書いたという、そういう事情でございます。これは秘書は、私のほうで書きましたといっておるのかもしれませんが、そうではないので、私が、選挙も近いことである、選挙にいつなるかはわかりませんが、選挙は近いことである、こう考えたので、出すのならば、お断わりはなるべく早いがよかろうということで、みずから私の責任で原稿を書きましたので、純粋の、お茶の会をいたしませんという儀礼のつもりで書いたもので、政治活動とも思っていないのでございます。しかし、そういうはがきを丁寧に——一体、年々歳々御案内をしておる、今度はいたしませんということを、丁寧に出すということをいたします結果、私の選挙をいたします場合の何か基盤擁護に影響でもあるんじゃないかといったようなことが、全くそれが絶無のものとも言えませんので、そういう意味では政治活動をしたものと考えられるようなおそれもなくはなかろう、こう言っておるわけでございます。私は、純粋の儀礼として、ことしはやりません、おいでをいただいてもお茶の会をいたしませんということを出しました。しかも、出しましたのは、選挙以前であります。告示以前でなくて、解散以前であります。解散以前にそのはがきが着いておる。この種のことがいけないと仰せになります場合は、政治家の政治活動というものは、非常に窮屈なものになってくる。議会解散寸前に演説会を開いて、そして国会報告と称する演説会をやるといったような事柄一つ考えてみましても、非常に窮屈なものとなってくるのではなかろうか。これをかりに大まけにまけて、政治活動とごらんをいただくといたしましても、選挙がきたら票をいただきたいという意図を示す以外の文章は、憲法によって通信の自由は認められるべきものである。それを制限する法律は、わが国の法制上に規定はない、こういうふうに考えて書いた文章でございます。それで、そういうふうに、おまえは取り締まりの立場におって違反の嫌疑があるではないか。違反の嫌疑などは夢々ないと思っております。警察のほうも、調べました結果は、白の刻印を打って送致しております。送致しておるなら嫌疑があるというおことばになるだろうと思いますが、一般事件は嫌疑があると送致をいたしますが、告訴、告発事件は嫌疑の有無にかかわらず、刑事訴訟法の規定によって事件を送付——送致といわず送付といっておりますが、送付しなければならないという明文がありまして、嫌疑の有無にかかわらず、形式手続として送付をしておる、これがありのままの現状でございますので、どうか、取り締まる立場にある法務大臣が何か嫌疑を受けておるではないかと仰せになること、まことに迷惑しごくでございます。どこに行っても、そのとおりのことを言うて通っておるわけでございます。
  185. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣が、参議院の法務委員会で、御自分でこう答弁をされている。政治活動の一つとして二十何年間続けてきた。それから「これは許された選挙活動ということでありまして、まさに私の心情は、選挙活動としていたしておりますので、数が多いわけでございます。」「政治活動としてお茶の会をやっておるのではないかという仰せをいただきますと、そのとおりでございます。」こういうふうに言われておるわけです。これはどういうことなんでございましょうか。
  186. 田中伊三次

    田中国務大臣 ちょっと、もう一度読んでください。
  187. 松本善明

    松本(善)委員 それじゃ全部申しましょう。「これは、政治活動の一つとして、私が二十何年間続けてきており、それが選挙運動だと仰せになりますと、それは申し上げることがございませんが、これは許された選挙活動ということでありまして、まさに私の心情は、選挙活動としていたしておりますので、数が多いわけでございます。」……
  188. 田中伊三次

    田中国務大臣 それは政治活動ということばの間違いでございます。そんなことを言うはずがございません。
  189. 松本善明

    松本(善)委員 いや、ちゃんと言われておるのです。
  190. 田中伊三次

    田中国務大臣 いいえ、それは速記録の間違いでございます。
  191. 松本善明

    松本(善)委員 そんなはずがないですよ。
  192. 田中伊三次

    田中国務大臣 それじゃ、そういう文言を常識上使うはずがございませんが、御出席していらっしゃった参議院の皆さんにもどうぞお確かめをいただきたい。そこでそういうことばを使うことがロジック自体にも合わぬことでございましょう。突如として選挙運動、選挙活動でございます。そんなことを言うはずはありません。
  193. 松本善明

    松本(善)委員 そういうふうに言っておられるのですね。  これは、私は別にここで法務大臣を取り調べているわけでも何でもありませんので、そういう趣旨で言っているのではないのです。法務大臣の見解、それからこれについてのあり方、これが選挙に影響するだろう。検察庁の中でも警察の中でも、こういう問題を判断する場合に影響するだろうということで聞いておるのです。  それで、このはがきは法務大臣、もうちょっと事実について申しますと、このはがきは共産党の市会議員だとか、自由法曹団の弁護士だとか、法務大臣とはほとんど全く関係のない方にも来ているわけなんです。茶会に呼ばれるわけも全くないという人のところに来ているのですけれども、一体こういうのはどういうことなんでしょうか。
  194. 田中伊三次

    田中国務大臣 その数万通のはがきを毎年出します出し方でございますが、私と因縁のある顧問とか相談役とか、あるいは顧問以上の関係の深い関係にある団体というものについて、その団体からいただく名簿によって出ておるわけでございます。したがって、この数万人の人全部私が面識があるわけでない、そういうことでございます。そこで、弁護士会、弁護士会は私は三十数年間所属をいたしました弁護士会でございます。だれ一人私の顔を知らぬ人はない、私も知っておるという関係で、友好関係はなくとも、その名簿記載の人には全部行っておるわけでございます。また、そういう組合なら組合の名簿によって行っておるものでありますから、昨今組合にお入りになった人には、去年はもらわなかったがことしはもらったという人が起こり得るわけでございます。そういう事情でございまして、団体名簿によっておる、こういうことでございます。
  195. 松本善明

    松本(善)委員 刑事局長に伺いますが、選挙運動であるか政治活動であるということについては、たいへん判定がむずかしいものであろうと思います。選挙のそのときの時期でありますとかあるいはそのときの数量でありますとか等々で判断をしなければならないことがあるのではないか、こういうふうに思うわけです。この時期、それから数量、そういうことから考えて、選挙とは全く無関係というふうに考えられますか。
  196. 川井英良

    ○川井政府委員 告発がありまして、送付を受けて、一つの事件として検察庁で調べ中でありますので、それに関連いたしまして、積極になるとか消極になるとかいう趣旨についてのお答えをすることを遠慮さしていただきたい、こう思います。
  197. 松本善明

    松本(善)委員 それじゃあれしますが、法務大臣自分のその事件について、これは絶体選挙違反ではないのだと、こう言った場合に、検察庁では公正に判断することができますか。
  198. 川井英良

    ○川井政府委員 御承知のとおり、検察庁は一冊的には法務大臣の監督下にありますけれども、検察庁法に基づきまして、具体的事件について法務大臣は検事総長のみを指揮することができるのでありまして、直接にこの事件につきまして、京都地検が問題になっておりますけれども、京都地検を指揮して云々するというふうなことはできないたてまえになっております。このような法律の仕組みから申しましても、また、従来の検察官の仕事をしてまいりました実積から申しましても、法務大臣自分のことに関していろいろお答えがありましたけれども、私は、京都地方検察庁はこの事件につきましても、適正で公正な結論を出すものと期待をいたしております。
  199. 松本善明

    松本(善)委員 法律上のことは、いささか私も存じておるつもりでございます。問題は、実際上どうなのかということであります。これは法務大臣にもお聞きしたいのですけれども、いま政界の腐敗という問題、汚職という問題について大きな問題になっておることは、国家公安委員長法務大臣も十分御存じだと思います。このことの責任の一つは、やはり取り締まりに当たる検察庁あるいは警察、そういうものが特に政府与党について手心を加えていないかどうか、こういう疑いの一つにもなっているわけです。警察にしても、それから法律の仕組みはともかくとして、検察庁にしても、上司に当たるわけです。そういう人たちの事件を扱う場合に、これは実際上のいろいろな疑いもかけられるし、それから事実上の処理について、事実上の指揮権というようなことも盛んに言われておりますけれども、そういうような疑いがあるものだから特に聞いているわけですけれども、法務大臣自身として、あなたの事件を下のほうの検事が、法務大臣はこう言っている、しかしあらゆる事態を総合して、これは選挙運動である、というふうに認定することができると思われますか。法務大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  200. 田中伊三次

    田中国務大臣 それは警察にしても検察にいたしましても、判断はりっぱにできるものと思います。それから取り締まりをする者にさようなことがあってはりっぱな取り締まりができないではないかというおことばでありますが、これはおことばを返すようでありますが、あなたのお考えは嫌疑があるというお立場に立っておる。私はそうは考えていないので、私は解散前のこの種の文書というものは、その文書の中に選挙が来たらよろしくお願いいたしますという意味、すなわち選挙運動としての表現がない限りは、これは憲法によってその自由が保障されておるのだと、疑われること自体がないという私は見解でございます。
  201. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、法律解釈として両方の刑事局長に聞いておきますが、選挙運動としての依頼、投票をよろしく頼むという趣旨の表現がない限りは、これは文書違反にならないのかどうか。そういう立場で警察及び検察庁は取り締まりに当たっているかどうか。文書違反の問題についてどう考えるか、その点お聞きいたします。
  202. 川井英良

    ○川井政府委員 具体的な案件は捜査中で、近く結論が出ることになっておりますので、一般抽象的に答えろと申されましても、私の答え方はたいへん影響もあるしデリケートだと思います。しかし、せっかくの御質問でございますので、ごく抽象的にお答えを申し上げたいと思います。  文書による選挙運動には二通りあると思います。その一つは、明らかに特定の候補者に対して投票を得しむる目的をもってその旨の期待が文書自体の内容から推知され得るようなもの、こういうふうなものを配布するということは、これは選挙運動になることは明らかであろうと思います。それが一つであります。その二は、そういうふうな期待がないような文書が選挙に関係して領布された、こういうふうな場合にそれが選挙運動になるかどうか、こういう問題が出てくると思います。この場合には一がいには申せませんで、結局は法律解釈と申しますよりはむしろ事実関係によって、選挙運動になるかどうかということの判断がきめられるのではなかろうか、こう思います。
  203. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣が解散の前だというふうに盛んに言われるのですけれども、私いま事前運動の問題としてお聞きしているわけですが、この手紙が発送されます前に、法務大臣と自治相が悪質な事前運動には無警告で検挙をするということをきめたという報道がされているわけです。この選挙問題に関する報道、事前運動検挙ということについての報道が、各新聞でずっとされております。その一番典型的なのだけを読みますけれども、昭和四十一年十二月十一日付の読売新聞に、「田中法相は十日午後一時四十分、法務省に藤枝自治相(国家公安委員長)を招き、最近、来春の統一地方選挙ならびに総選挙が近いことを予想した選挙事前運動がきわめて活発化していることについて、対策を協議した。その結果選挙前、選挙期間中、選挙後にわたってそれぞれ違反に対する取り締まりを以下のように強化して」云々ということを言っておられるわけです。総選挙の近いことを予想して事前運動についての取り締まりの打ち合わせをしておられる。法務大臣が、七、八万通はがきを出されたのはその後なんです。それでもやはりいままでの法務大臣の見解は変わりませんか。
  204. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、悪質といいます趣旨は、次の選挙が来たならばよろしく頼む、票を得たい意図を表現しておるものを悪質と称するのでございます。本件のごときはがきは、はがきをお手元に差し上げたいのですが、ここにありませんので一お持ちになっておったらそれをお読みくださればわかるが、政治的には何も意味がない。一口もそういうことが書いてない。ただ単にお茶の会を延期いたしますというだけの文書でございます。ただ、その数が多いということが一つの疑いでございましょうが、数の多いのは、案内をする考えで用意しておったものを、断わり状に切りかえたというだけのことで数が多いのであります。それは結果でございます。私が申しております悪質なる事前運動などというものとは、似ても似つかないものだ、こう考えております。
  205. 松本善明

    松本(善)委員 わかりました。  自治大臣、国家公安委員長と警察のほうに伺いたいのですけれども、それでは選挙の直前に、文章上は選挙とは何も関係のない大量の年賀状を出すというのは、いまの法務大臣の見解でいけばどうも選挙違反ではないようでございます。警察の見解はどうですか。
  206. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 その領布の方法あるいはその内容につきましても、よほど具体的な例で判断をしなければならないんじゃないかと思います。
  207. 松本善明

    松本(善)委員 私のいま言った例について、選挙の直前に年賀状を何万通出すというようなことはいいのか、こういうことなんですよ。
  208. 内海倫

    ○内海政府委員 法律にも、もう先生十分御存じのように、選挙運動期間中につきましては年賀状とか寒中見舞いとかいうふうなもの、これは出してはいけない、要するに禁止を免れる行為とみなす、こういうふうに規定されておりますから、選挙運動期間中は問題はまずない。それから事前運動という面でございますけれども、これはいま大臣が答弁いたしましたように、その態様、具体的な事実について判定する以外にないだろう、かように考えております。   〔発言する者あり〕
  209. 大坪保雄

    大坪委員長 静粛に願います。
  210. 松本善明

    松本(善)委員 それではそれはたいへん影響の大きいことだと申し上げておきます。  それから一つ伺いますが、一方でそういう見解で取り締まりがされておりながら、こういうことがある。たとえば今度の地方選挙で、これは警察にお聞きしたいのですが、渋谷であった例ですけれども、区会議員にある先生が立候補した。そうすると、その先生の教え子のうちを警察が全部戸別訪問する。そういうような取り締まりが一方ではされているが、これはもう取り締まりというようなものでは決してなくて、明らかにこれは選挙干渉だと思うのです。こういうようなことについて国家公安委員長はどういうふうに考えられますか。
  211. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 事実を私承知いたしませんので、事実を調査いたしました上で御答弁申し上げます。
  212. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことがあればということでけっこうでございます。
  213. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 やはりそういう、あればという仮定のことでお答えするのはいかがかと思いますので、事実を調べてからお答えしたほうがよろしいかと思います。
  214. 松本善明

    松本(善)委員 選挙関係は終わります。
  215. 大坪保雄

    大坪委員長 沖本泰幸君。
  216. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間もあまりなくなりましたので、この次にたくさん時間をいただくことにしまして、簡単にお伺いしてみたいと思います。問題を二つくらいにしぼってお伺いいたしますから、できるだけ要領よく願います。  入国管理の問題なんですが、最近外国から、あるいは日本人の出入国というものは非常に激増してきまして、空港問題も延長しなければならない。あるいは、大阪も、伊丹も、板付も、国際空港としての役割りを果たさなければならない、こういうふうなかっこうになってきておるのですが、その入国管理についての業務に携わる人たち人数の配置、あるいは業務関係が十分スムーズに行なわれているかいないかという点について、とりあえずお伺いしたいと思います。
  217. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま入管行政はスムーズにいっておるかどうかという御質問でございますが、予算、人員ともに不自由な点はございますが、まずまず大過なくやっておるつもりでございます。
  218. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまのお答えでは、まずまず大過なくやっておる、こういうお話なんですけれども、この間東京オリンピックが終わったところなんですが、一体それはどういうふうにいったのだろうか、こう疑いたくなるのですが、きょういただいた資料によりますと、羽田の入国管理事務所関係では、定員が百十七名で実人員が百十七名、伊丹の空港出張所では定員が十名で実人員が十五名、それから板付の空港では定員が五名に実人員が七名、定員を上回っておる、こういうことなんですが、私が調査しましたところによりますと、たとえば大阪の伊丹ですが、十四人の人たち——今度一人ふえて十五人になりますが、この人たちが休む暇もなくて、昼夜兼行でかん詰め状態である、こういう事実があるわけなんです。おまけに、ほかの設備はどんどん進んでおるけれども、全く入管業務に関しては全然新しい設備らしい設備もない、休むひまもないし、仮眠するところもあり得ないような状態である、こういうことなんですが、いまの、まずまず大過ないというお答えと実態とではだいぶ違うわけなんです。  それで、外国人日本へ入ってきて一番先に印象づけられるのは、入国に対する手続であると思うのです。その手続が、実際上では乗っている時間よりも待っている時間のほうが長い、こういう苦情があるわけなんです。そういうことになると、日本に対する第一印象から違ってくるわけですけれども、まずまずほんとうに大過がないのでしょうか、その点もう一度お答え願いたいと思います。
  219. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま御指摘のごとく、羽田、伊丹等、ことに羽田でございますが、そういう外国と申しますか日本人の出入国もございますが、両港におきます審査官の、入国管理事務所の職員の労働量というものは、御指摘のとおりたいへんなものでございます。そしてまた、これがために出入国をする人々のこうむる不便と申しますか、迷惑と申しますか、これも相当なものであることは承知いたしております。しかしながら、御承知のごとく、予算定員等の制約がございますので、私どもといたしましては、現在の不十分でありますが与えられた人員と予算のもとに、全力を発揮して極力、先生御指摘のごとき、長く待たされるというようなことがないように、円滑に処理したいとつとめておる次第でございます。
  220. 沖本泰幸

    ○沖本委員 円滑に処理をしていきたい、こうおっしゃるのですが、今年度の予算でその処理問題がどの程度こなせるか、あるいは三年後には万博が行なわれるわけですけれども、それに対して外国人が約百万人は来るだろう、こう予想されているわけです。また国際会議もたくさんありますし、各国の飛行機の乗り入れもたくさんあるわけですし、そういう問題に対して実地調査をなさって、どの程度の人が入ってき、またどれくらいの業務がかかるかという点で、詳しく実際にお調べになったのかなさらなかったのかお伺いしたいのです。またその予算は、そういうことに対しての対策上の今年度の当初予算であり、また三年後には人員がこのくらい要って、このくらい仕事量をしていかなければならない、ですから、これに対しての見込みはこうやっていかなければならない、そういうようなものがあるかどうかという点をお伺いしたいのです。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  221. 中川進

    中川(進)政府委員 外国人と申しますか、邦人も含めまして、要するに入国管理事務所の対象となる人の数は、御指摘のごとく非常にふえてまいっております。昨年の、昭和四十一年の例をとりますと、出国、入国とございますが、入国した数が全部で百八十万というたいへんな数でございます。それに入国した人が出てまいりますから、私どもとしては三百六十万という——これは外人だけでございますが、それだけの人を扱っておる。それに加えますのに、日本人の出入りが両方で六十七万六千ございます。合計いたしますと、四百二、三十万という、たいへんな数の人間を扱っておるわけでございまして、確かに御指摘のごとく、現在の職員の数をもってしましては相当困難がございます。しかしながら、とにかく一応こういうことで予算がきまり、定員がきまっております以上は、それ以上の兵力をそこに投入するということは事実上不可能でございますから、職員を督励いたしまして、一方また事務のやり方その他極力合理化をはかりまして、何とか、同じことを繰り返しますが、大過なくやっていきたいと思っておる次第でございます。  ただいま、また御質問がありました明年、ことに三年後ですか、万国博覧会の開催の時期、その他日本で大きな国際的なできごとがありまして、外国からの訪問客が著しく増加するという見込みがあります場合には、またそれに応じました予算要求をしたい、こう考えておる次第でございます。
  222. 沖本泰幸

    ○沖本委員 きわめて抽象的な御返事で納得できかねるのですが、現実にはいわゆる入国手続が長くかかって、外国人は非常に気を悪くしておる。いろいろな国を回ってきている人たちが、日本の国だけが入国手続がおくれるということになりますと、国際信用に関することなんですが、ただ現状は非常に苦しいのですけれども、そこは何とか差し繰ってやっていきますということでは話にならないので、具体的にこの問題をどうして解決していくかという点に対する一つの方策とか対策とかいうものがなければならない、なければおかしいわけなんです。そういう点についてもう一度対策があるのかないのか、具体的な統計をとってそれをおやりになっておるのかおやりになってないのか、統計があればお示しいただきたい、わかりやすい面で。
  223. 中川進

    中川(進)政府委員 具体的に非常に混雑して、外国人が不愉快な感じをかりに抱いたといたしますと、おそらくそれは羽田じゃないかと思いますが、羽田には御趣旨のごとくブースの数が限定されておりまして、これ以上処理を一時的にふやす能力というものは、いまのままでは残念ながらふやし得ない状態でございます。したがいまして、結局各個人一人当たりの処理時間を極力詰めておるというわけでございまして、御指摘のような点につきましての資料をただいま手元に持ってまいっておりませんが、一人の人を一分かからないで数十秒で片づけるようにやっておると承知しておりますが、それでもいかんせん飛行機が出る時間、それから着く時間というのが、御承知のごとく大体特定の時間に集中するわけでございます。羽田はことに大体夜間にそれが集中してまいりまして、夜の七時か八時ごろから十一時過ぎごろまでの間に、出かつ入る飛行機が集中してまいります。そうしますと、どうしてもそこにネックができるわけでございまして、その点はブースの数をふやすとかなんとかいうことで——要するに設備自体を広げる。それからそれとともに、これに見合う職員をふやしていただくということで解決するよりしかたがないのでございますが、しばしば申しますように、現在のところは羽田の定員何名ということにきまっております以上、これを急にふやすということもできかねる状態でございまして、結局職員の能率をあげまして、そして時間を急いで早くやらすという以外に即効薬はやはりないわけであります。
  224. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間を短縮して早くやらすということになってくると、労働過重になってくるんじゃないでしょうか。まして外人を扱う上に応対が大切な問題なんですが、その問題について、まるで最近のお医者さんが病院で患者を見るような、一分内で全部を調べてカルテを書くというような曲芸をやるようであったのでは、何かの事故が起きたときにたいへんなことになるわけですけれども、大臣から、現在、将来について。
  225. 田中伊三次

    田中国務大臣 私もこの間、羽田だけでございますが見てまいりました。たいへん人員は不足を告げております。いま先生仰せのように、相当な時間待たすような結果になることが夜間ラッシュの時間にはあろうかと思います。それで、ほとんどのものを動員しまして、窮屈な宿舎——宿舎といいましても事務所の中でございます。離れておっては役に立たぬということで、事務所の中に宿舎を併設しまして、そこに寝泊まりしてやっておるという実情でございます。いまお話のおことばをよく胸に入れまして、現行人員でもでき得る限り短時間に急速に事務を処理するような努力をいたしますと同時に、将来の問題といたしましては、万博を控えましてお説のようなことが、これは羽田のみならず伊丹空港にも起こってこようと存じますので、これはやはり表面から人員の思い切った増員を行ないまして、ことしの予算折衝の際にそのことはすでにほのめかしてございます。十分折衝いたしまして、ゆとりをとりまして、しかも国際的に恥ずかしい結果にならないように、十分善処をしていきますように事務を督励いたしたいと存じます。
  226. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣のおっしゃるとおりなんですが、もう少し加えますと、私の調べたところでは、伊丹では税関関係の現場に携わっていらっしゃる方約百人です。それに対して入管のほうでは十五名なんです。税関のほうでは抽出検査です。勘でおかしいと思った分だけ調べるわけです。ところが出入国の手続の場合、一人々手続していくわけです。どう考えても無理なんです。これがそのまま通っていくようであれば、必ず大きな問題が起きてくると思うのです。どうしても来年度予算でなければそういう問題は解決できないものでしょうか。現状をはっきりさせて、臨時的な処置を考えていって解決するような方法はないものでしょうか。大臣の所信を伺いたいと思います。
  227. 田中伊三次

    田中国務大臣 四十二年度は、いま御審議をいただいておりますように、予算の要求方針が大体固まっております。明年度以降の予算において、いまの御趣旨を十分にくみまして、大幅の増員をいたしまして御要望に沿いたいと思います。
  228. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ついでに申し上げたいのですが、その場合でも空港の近くに宿舎がない。働く人たちはほとんど遠距離に住んでおるわけです。そのため通勤にさえこと欠いておるし、また何か事あるときにすぐ呼び寄せることもできない、こういう現状にあるわけです。近代的な空港というものとあわせていって、あまりにも貧弱と言わざるを得ないわけです。ですから、やはり玄関であるところの空港の中で、入管業務がすみやかに感じよく、応対も十分襟度を持ってやっていけるように早急に改善していただかなければ、とんでもない日本の国が恥をかいてしまう、こういうようなことになっていくと思うわけです。こういう点は入管業務の方々も、空港自体の中でも軽く見られておる、重きを置いてもらっていない、こういうことを訴えられておりました。こういう点もひとつお耳にとめていただいて、早急に改善していただかなければならない問題だ、こう考えるわけでございます。  そこで今度は、それに関連しまして、宿舎の問題でお伺いしたいと思うのです。これは全般にわたっていくとは思いますけれども、法務省関係あるいは裁判所関係、出張所関係で、いろいろ転勤が行なわれるわけです。そうしますと、たとえば判事さん、検事さんのほうはきちっとした官舎もあり、ゆとりも持っているわけです。ところが下級職員の方々は、入管の人たちも含めてですけれども、転勤していっても住む場所がない。結局アパートに入ったりあるいはまたうまく順序よくいって公営住宅に越します。ところがまた転勤が起きて公営住宅をはずす場合、次の人がかわりにその公営住宅に入れないわけです。そういう点について、現在法務省関係あるいは裁判所、出張所関係の職員の住宅事情はどういうようになっておりますか。
  229. 中川進

    中川(進)政府委員 宿舎の事情につきましては所管の経理部長から回答願うことにいたしまして、前段の御指摘の入管職員が、ことに夜間おそくなったような場合、宿舎に帰るについても不便だ、あるいはそのため時間がかかって能率があがらないということも全く御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましてもこの事態は改善したい、改善されることを望んでおる次第でございまして、とりあえず今度御審議を願っております四十二年度予算におきましては羽田にバス一台買ってもらいまして、先ほど申しましたように、何しろ飛行機の発着の時間がおそうございますので、それが済みましたあとで自宅まで帰るといっても、一般の交通機関がございませんから、そのバスで宿舎まで帰るということを一つ考えております。  それからただいま大臣からも説明がございましたが、オフィスの中でも仮眠ないし休む場所がございます。そういうところを極力小ぎれいにすると申しますか、改善して、職員の健康保持、能率増進ということにつとめたいと思っております。
  230. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ほかのほうの宿舎関係……。
  231. 辻辰三郎

    ○辻(辰)政府委員 法務省の経理部長でございますが、法務省所管の全職員に対します公務員宿舎の充足状況について申し述べます。  昨年の九月一日現在の調べでございますが、昨年の九月一日の法務省所管の全職員の数は、在職者が四万七千二百八十三名でございます。そのうち自宅を持っておる者、またはこれに準ずる理由がございまして住居が安定していると認められる者は、二万七千百二十三名おります。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕 残りの結局二万百六十名が、住居の安定していない者ということになるわけでございますが、この二万百六十名のうちで、国家公務員宿舎にすでに入居いたしております者が、ちょうど一万四千名という数子になっております。したがいまして、今後宿舎を必要とする者の数は、法務省全職員で、九月一日現在では六千百六十名という数になっておるわけでございます。これが九月一日現在の状況でございますが、昭和四十二年度予算案が成立いたしました場合には、若干また四十二年度分といたしまして、宿舎の割り当てがあろうかと存じますので、この状況は好転してまいると考えておる次第でございます。
  232. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ちょうど大蔵省から総務課長がお越しになっていらっしゃるので、各省間全体にわたって上級の職員の住宅と、それ以下の方々の住宅の充足状況はどういうふうになっているか、概略御説明願いたいと思います。
  233. 近藤道夫

    ○近藤説明員 御説明いたします。  ただいま現在におきまして、国家公務員の病舎全体の数をまず申し上げますと、一般会計に所属します一般公務員、これの宿舎は大蔵省が設置することになっております。現在までに設置しました数は約十万七千戸でございます。それから五現業を含みます特別会計政府職員、それから国立病院の看護婦、自衛隊、それらの職員に対する病舎は、各省各庁の長が設置することになっておりますが、その数が大体十二万三千戸になっております。合計しますと、約二十三万戸ございます。それでいまお話しになりました国家公務員全体が一般会計で約四十万、それから各省各庁の長として手当てを要する職員が六十万ございまして、双方ひっくるめまして、あと何ほどつくらなければならないかということを計算しますと、実はたいへんむずかしい問題でございます。と申しますのは、宿舎を必要とする職員の数全体から、ただいま法務省の御答弁の中にありましたように、まず自宅を持っている者、それから自宅を持っておらないでも、民借をいたしまして公務員宿舎に入ることを必要としないという意味で住宅が安定している、その者の数を引きまして、そのあと何ほどを要するかというめどの問題でありますが、このために、実は一昨年、国家公務員宿舎建設五カ年計画というものを樹立しまして、ことしで第二年度になりますが、大体年間一万戸ベースで予算をいただいて手当てしております。概略を御説明いたしました。  それから御質問の第二点でございますが、上級職員に対してどうであるか、下級職員に対してどうであるかというお尋ねでございますが、上級職員、上級公務員というものをどの範囲にするかということでお答えが違ってくるのでございますが、一般会計で申しますと、上級職員をいわゆる二等級以上と考えますと、大体先ほどの十万七千に対応する数字ですけれども、一方三千戸が上級職、以下残りがいわば三等級以下、中下級職ということになります。それから下級職員の分としてどれくらいあるかという数字は、実はなかなかっかみにくいのでございますけれども、一つのめどとして、まず独身者を収容する施設、これを大体当たりますと、一万八千から九千くらい、正確な数字は、後ほど調べて御報告いたします。大体そのような数字になります。  それから実は、国家公務員宿舎は、国が予算で措置します分と、それから連合会から金を借りまして、そして建てる、それを借り上げるというかっこうで建てていくもの、その二つがありますが、連合会から金を借りて建てます宿舎は、おおむね下級職員用ということになっております。現在では大体一万三千戸近く設置されております。
  234. 沖本泰幸

    ○沖本委員 お伺いしたい趣旨は、そういう数ではなく、いわゆる上級職員の入っていらっしゃる昔の高等官宿舎とかそういうような古い宿舎があるわけですが、みな減価償却されてしまって、低い家賃で入っていらっしゃるわけです。ところが転勤になって、たとえて言えば北海道から鹿児島のほうへ行ったとすると、下級職員が住む家がない、宿舎もない、そういうことからアパートに入ったり、民家のほうへとめていただいたり、そういうことで、それはその人たちの俸給の中から出さなければならないということで、その比率が違ってきているのではないかと思うのです。いわば上級職員の方々は、千円以下というような家賃で、平屋の広い植え込みのある住宅に、古いけれども、お住まいになっている。ところが上級職員のほうは、安い給料で、住居もなく、アパートに入って六千円も七千円もの家賃を払っていたのでは全く不合理ですが、そういう関連性がどの程度あるかということをお伺いしたいわけです。  と同時に、裁判所関係あるいは検察庁の関係で、検察官宿舎とかあるいは判事さんの宿舎があるわけですが、大阪で言えば、たとえば法円坂とか市中のどまん中に平屋のままで広い庭を持った宿舎があるのですが、それがとんでもないところにそのままいすわっておられるということになると、現在の状況としては非常にまずいと思いますが、そういうことの住宅改善に対する何かがあるのか、またはその点について詳しくわかりやすく御説明ただきたいと思います。
  235. 近藤道夫

    ○近藤説明員 御質問の第一点について御説明しますと、なるほどまだ宿舎が十分ではございませんので、特に下級職員、それから転勤の多い官署の下級職員が御質問の内容でございますが、それらの職員が転勤しました場合に、全部が全部公務員宿舎に入れて、いま御質問のように高い家賃を払って非常な負担をしているという事態が、全部解消されているということの現状ではまだ残念ながらございません。われわれのほうは、年々宿舎の建設予算を獲得しまして、なるべく多数の職員のための宿舎を建設しまして、そのような事態を一日も早く解決したいと努力しております。  それから御指摘の第二の点でございますが、なるほど国家公務員宿舎の中で、実は戦前から非常に大きな官舎があって、その官舎が公務員宿舎に切りかえられまして、広い宿舎になっているのがあるわけでございます。それからあるいは昔つくりました宿舎でありますため、大都会のまん中に平屋建てで、大きな土地を占拠していたり、非常にもったいないというところがございます。最近のように土地事情が非常に逼迫しますと、宿舎を建設する上においてまず土地の手当てをすることが一番大切でございます。そこでわれわれのほうも意識的に計画を立てまして、そのような都会地のまん中の土地を非効率的に使っているような宿舎を取りこわしまして、年々立体集約化しまして、戸数を多くするように、結局は効率的な形に直すように例年努力しております。
  236. 沖本泰幸

    ○沖本委員 抽象的な話ではなく、現実に家賃はこの程度のものであるという点について御説明ただきたいのですが、一番安い家賃はどの程度であるか。
  237. 近藤道夫

    ○近藤説明員 先生のお尋ねは、国家公務員宿舎の家賃そのものでございますか。
  238. 沖本泰幸

    ○沖本委員 はい。
  239. 近藤道夫

    ○近藤説明員 これは実は法律の規定によりまして、広さによってきまっておりまして、やはり広ければ広いなりの家賃をいただいています。ただし、その場合の計算としまして、ある種の宿舎につきましては、たとえば公用に供するものという面積につきましては家賃を取っておりません。したがって、小さい宿舎は家賃が低く、大きい宿舎は家賃が高いという、常識的にそういうかっこうになっておりますが、大きい面積の広さの家賃のほうが小さい家より高いといったような仕組みには相なっておりません。
  240. 沖本泰幸

    ○沖本委員 一般では公営住宅は高給取りの方は出ていただく、入居基準があって。いま基準単価は変えつつありますけれども、できるだけ低所得者に入っていただくというのが公営住宅法の根本精神なんですよ。ところが官庁関係においては、いわゆる高給取りの方が安い家賃の家に入っておる。これは一般と比べてずいぶん不合理なんですよ。ですから、お入りになっている家賃が最低どれくらいですかということなんです。——裁判所関係のほうはどうなんでしょうか。
  241. 岩野徹

    ○岩野最高裁判所長官代理者 裁判所のことでございますが、裁判所の場合は、御承知のとおり昔各県庁所在地で三つの官舎と申しますか、官公舎と申しますか、県知事と裁判所長と検事正の官舎、これはまあ当時から大きなものとして存在しておりました。裁判所関係では、それを引き継いでおりますので、所長の官舎はきわめて大きい敷地に大きな建物で建てられているのが通常でございます。しかし、その後新しく改築いたしましたものは、やはりそれぞれの時代における国の経済力というものと照応していると申しますか、必ずしも昔の所長官舎に匹敵するものはとうてい建てられなかったわけでございます。  それともう一つ、家賃の計算に加えられております要素は、敷地の広さということが家賃に織り込まれております。その関係で特に裁判所関係では、大きな敷地におります所長は高い家賃を、狭い敷地の場合はそれほどでないというようなことになっている現況で、必ずしも全部が同じように歩調はとれておりません。ごく最近の例でございますが、広島の高裁長官の宿舎が、いま正確な数字は覚えておりませんが、一万五千円程度でしたか、その前後するような金額でございまして、広島の長官としては、従前のを少し新築いたしたわけでございますが、敷地の関係、建物を新しくした関係でそういうものが非常に高くなっております。まあ安い昔からの建物で敷地が狭いところでございますと、三十坪前後でございますと三、四千円というくらいのところだろうかと思います。敷地の関係が織り込まれますので、これは正確なところはただいまちょっと申し上げられませんが、概略だけでございます。
  242. 沖本泰幸

    ○沖本委員 質問が長くなりますからこれで打ち切りたいと思いますけれども、もう一度大蔵省のほうも再検討していただいて、特に法務省のほうですけれども、どまん中に非常に高い土地の住宅が現実にあるわけです。それを土地を売ってほかに住宅を求めれば、それで十分住宅が建つような地価のところもたくさんあるわけです。そういう点を考えていただいて、もっと住宅問題を解決してもらわなければならない。働く人たちの意欲にも関係すると思うのです。ですからたくさん俸給をお取りの方が、てんで家賃にならないような家賃のところに入って、安い俸給でがまんしていらっしゃる方が高いところでがまんしなければならないというようなことは不合理だと思います。実際的な数字は、いま持ち合わせておりませんから、突っ込んだ御質問はできませんけれども、一応そういう計画をお立てになって、再配分あるいは新しい計画のもとにやりかえていただきたい、かように考えるわけでございます。  これで質問を終わります。
  243. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。  松本君、理事会でお約束の時間がだいぶ超過しておりますから、簡潔に願います。
  244. 松本善明

    松本(善)委員 法務大臣に伺いたいのですが、四月二十日の衆議院予算委員会の第一分科会で吉河公安調査庁長官が、共産党が右翼を刺激して、右翼に危機感を抱かせているという発言をされた。共産党が右翼を刺激をして、そうして右翼に危機感を抱かせている、こういう趣旨の発言を公安調査庁長官がされた。それに関係をしてお聞きしたいのですけれども、共産党ではなくて、自民党の安全保障調査会の昨年六月二十二日の報告では、全文は読みませんが、「国際共産党の影響下にある国内の革命勢力は」、云々、「昭和四十五年、一九七〇年を目ざして、日米安保条約の廃棄運動を展開し、日米離間を策するとともに、できればこれを暴力革命にまで発展させようとしている。」これは自民党の安全保障調査会のわが国の安全保障に関する中間報告ですが、こういうものがあるのです。こういうふうに書いている。こういうことは右翼を扇動しているということにならぬだろうか、法務大臣の見解をお聞きしたいのです。
  245. 田中伊三次

    田中国務大臣 その発言はちょっと私の耳に残っておりませんで、公安調査庁長官が幸いおりますので、長官からお答えいたします。
  246. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 予算分科会で社会党の猪俣委員から、最近における右翼運動の一般的な動向ということについてお尋ねがございました。その節、私ども右翼団体の調査の過程において入手した資料に基づきましてのわれわれの判断をごく簡単に申し上げた次第でございます。ただいまの自民党の安全保障調査会でございますか……
  247. 松本善明

    松本(善)委員 見解は法務大臣に聞いているんだから、自分の言われたことを……。
  248. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 それだけでございます。
  249. 松本善明

    松本(善)委員 それではこちらのほうから、見解としては法務大臣に聞きたいので、その内容をちょっと申しましょう。  要するに、昭和四十五年という時期に関係をして共産党が右翼を刺激していて、そしてそのために右翼に危機感を抱かせて活動しているという趣旨の発言があったのです。そういうことはあとから申しますが、共産党はそういうことを言ってないんですよ。  自民党の資料に関係をして法務大臣に聞きたいことは、先ほど申し上げましたように、安全保障に関して昭和四十五年に日米安保条約の廃棄運動を展開して、これを暴力革命にまで発展させようとしているというようなことを安全保障調査会で言っておる。こういうことは右翼を刺激をする、扇動するということにならないだろうか、こういう発言、言動は、そういうことをお聞きしているのです。
  250. 田中伊三次

    田中国務大臣 そういう党の何か文書があるのですか。
  251. 松本善明

    松本(善)委員 自民党の安全保障調査会の報告です。
  252. 田中伊三次

    田中国務大臣 それだけではにわかに扇動することになりましょうと申し上げる材料がないんですね、それだけでは。もう少し御意見を承りまして……。
  253. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、この発言だけでは右翼を扇動するというふうには直ちには言えない、こういうことですね。——一昨年の参議院選挙、それから東京都議会選挙等においても、やはり一九七〇年暴力革命説というビラが大量にまかれたわけであります。自民党のビラでございますが、たとえば「昭和四十五年を目ざして左翼陣営は安保条約を廃棄し、海外共産勢力の応援で日本に革命を起こそうと考えています。そのとき日本の中心東京が左翼に握られていたら、革命は一夜で達成され、同胞と同胞がいがみ合い、血なまぐさいことが起こりかねません。」こういうことはやはり右翼を刺激しないでしょうか、扇動しないでしょうか。
  254. 田中伊三次

    田中国務大臣 それも、それ自体直ちに、直接的に右翼を刺激するものとは、ただいま断定をしかねます。
  255. 松本善明

    松本(善)委員 それから「もし左翼知事が実現したら」、先ほどリーフ、パンフレットをお見せしましたように、今度の都知事選挙でも「東京を革命から守ろう」とか「暴力デモはもうゴメン」とか、あるいは「毛思想で日本革命」、ああいうものは右翼の行動を合理化し、そして扇動し、激励することにはならないでしょうか。
  256. 田中伊三次

    田中国務大臣 これも同様に考えます。
  257. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、公安調査庁長官はこういうふうに言っているのです。法務大臣よくおわかりにならぬようですから申しますと、「最近右翼は四十五年の安保存続問題をめぐって左翼勢力と対決しなければならないという非常な危機感を持っている。それは、遺憾ながら日本共産党の野坂議長が数年前に、四十五年は安保条約の存続問題をめぐる政治的決戦の時期であるというような演説をした。その後日共本部において政治方針として政治闘争の大きな焦点の一つだというようなことを言われた。それが右翼を刺激し、左翼と対決するという非常な危機感を抱かせているように見受けられる。右翼陣営はその事前の措置として、昭和四十三年の明治百年に当たる時期を選んで国家維新を断行すべきであるという主張がぼつぼつ見られる。」こういうことを公安調査庁の長官は言われたわけです。私たちの党では、そういうことではなくて、ちょっと御参考までに申しておきますと、東京12チャンネルで「各党に聞く」ということで、私たちの党の宮本書記長が出席してこの問題について発言をしております。ちょっと申しますが、「一九七〇年の武装蜂起説、これは全くばかげたものです。日米安保条約は破棄すべきであるし、そのためにわが党は運動していく。しかしそれをほんとうに破棄できるかどうかは、国民の自覚によるわけですから、われわれの主張が国民に広範に支持され、そして七〇年までにそういう意見が多くなることは望ましいことですが、七〇年には何が何でも安保条約を破棄させるんだというようなことを言っても、それはただ自分たちがそう考えるというだけのことになります。何が何でも七〇年が勝負だ、そのときがすべてだという、そういうばくちみたいなことは共産党は考えていません。共産党としてはこういう考えなんです。」私たちはこういうふうに党の見解ははっきりしているのです。長官が、どこかで野坂議長が言ったとか、日共本部が政治方針として出しているとかいうような、全く事実無根の暴言を吐いて、そしてこれが共産党が右翼を刺激している、こういうふうに発言をした。  いまいろいろ御説明いたしましたけれども、法務大臣としてはどう考えられますか。公安調査庁長官の発言が正当なものであると考えられるかどうか。共産党が右翼を刺激していると考えられるかどうか。
  258. 田中伊三次

    田中国務大臣 何度もこれその他資料を読み返してみまして、その上でないと、この重要なことに責任がある答弁ができかねると思います。私はその問答はいま初めて伺うこと、どういう資料によって長官がそういう発言をしておるのか、速記録的なものを読まれて、これでおまえどう思うかということでは、直ちには判断をいたしかねるところがございます。
  259. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど来法務大臣が、自民党のビラや安全保障調査会の報告、そういうものについては、これは直ちにそういう右翼を刺激するというようなことにならぬのじゃないかということを答えられた。その内容も、いま読んだとおりなんです。それ以上のことは何にもないわけです。何ならば公安調査庁長官に答えてもらってもいいと思うのですけれども、申しましたように、野坂議長が、安保条約の存続問題をめぐる政治的決戦の時期であるということを言った、あるいは共産党が政治方針としてこの時期が政治闘争の一つの焦点であるということを言った、こういうことが右翼を刺激しているのだ、こういう発言をしているわけです。別にそうむずかしいことではないのです。こういうことが正当であるかどうかということなんです。すぐ答えられると思います。
  260. 田中伊三次

    田中国務大臣 本人の長官がここにおりますから、長官からひとつ答えてもらいます。
  261. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま松本委員の御質問によりますと、私が事実無根のことを根拠にしていろいろと申し述べているというような御指摘がございましたが決してさようなことはございません。  昭和三十九年二月の二十一日、東京の九段会館で開かれた、日本共産党の国会議員団の日中国交回復・国会報告演説会、これは公開演説会でございましたが、そこで野坂議長は次のような発言をされておるわけでございます。「最後に指摘しなければならないのは、われわれの独立、民主の戦いの一つの決戦の時機が、六年後の一九七〇年にくることです。それは、日米安保条約の期限の切れる年にあたります。この条約によると、その時に、これを取り消さないと、そのまま継続されることになっています。もちろん、この条約は、六年を待たないで、今ただちに破棄しなければなりませんが、それができなければ、これから闘争を積みあげ、大衆を鍛練し、力を強大にして、七〇年には、どうしても目的を達しなければなりません。一九七〇年のわれわれのたたかいは、わが祖国日本が真の独立への道を大きく切りひらくかどうかの決戦となります。いま、われわれのおこなっているもろもろの闘争は、安保条約を破棄する一九七〇年の闘争の準備をやっていることにもなります。」この演説の内容は、日本共産党の中央機関紙でございますアカハタの昭和三十九年三月一日付の紙面に、そのまま掲載されておるわけでございます。  さらに、昭和三十九年十一月に開催されました、日本共産党の第九回大会におきましては、次のような、大会に対する中央委員会の報告が、全員一致で採択されたということがうたわれておるわけでございます。その内容を申しますると、  「いわゆる一九七〇年の「安保再改定」問題については、米日支配層が安保条約の「再改定」だけでなく、状況によっては「自動延長」の方向をも考慮している事態を正確にとらえる必要がある。これに対して、われわれは、積極的に安保条約の破棄をたたかいとるという基本的な立場から、米日支配層による「安保再改定」の策動を重視しながら、現在も将来も精力的にたたかいをすすめることが重要である。一九六〇年に結ばれた現在の安保条約は、条文上、締結後十年間をへたのちは双方とも条約終了の通告をすることができ、その場合、この条約は通告後一年で終了することになっているので、この面からみれば一九七〇年が、安保条約の破棄、あるいは継続という二つの道の対決における、一つの焦点となってくることは重視しなければならない。同時に、党は、安保闘争を一九七〇年の再改定阻止にだけしぼったり、一九七〇年待ちになったりする受動的な傾向におちいることをとくに警戒しなければならない。」かようなことばがうたわれているわけでございまして、これは第九回大会特集の、日本共産党の理論誌でございます「前衛」の三九ページにそのまま記載されておるところでございます。  政治的な意味と思いますが、一つの決戦である。決戦ということばを非常に常識的に考えますと、そこで勝負をきめる戦いをやるというように私どもは受け取るわけでございます。一つの勝負ともなれば、もろもろの勢力を一点に集中するというような趣旨にもうかがわれるわけでございますが、かような日本共産党の見解が非常に右翼団体を刺激しまして、これを根拠にして来たるべき昭和四十五年の、いわゆる日米安保条約の存続をめぐる時期につきまして、非常に政治的な危機感と申しますか、そういうような考えを持っておるということは、客観的な資料によってもいわれるのでございます。  例をあげて申しますと、大日本生産党という右翼団体がございますが、これの昭和四十一年度の中央委員会決定というものが出ているわけでございます。その中央委員会決定の中に、同党の昭和四十五年危機に対する運動経過説明といたしまして、「共産党の革命工作」というような題で、昭和三十九年二月、共産党中央委員会議長野坂参三の「一つの決戦の時期が六年後の一九七〇年に来る。一九八〇年の闘争の準備をやっていることになる」というような演説の内容を引用いたしまして、「その他種々の情報により、共産党が四十五年を目標に革命準備をやっていること、そしてその革命が暴力革命方式であること、さらに革命蜂起のために社共両党共闘を推し進めている」というようなことを述べておるのでございまして、彼らが判断している危機の根拠といたしまして、野坂議長ただいま申し上げた演説の内容を引用しておる。  さらに、日本青年連盟という右翼団体がございまして、この団体は機関紙として「青年運動」というものを発行しておるわけでございます。この機関紙では、昭和三十九年十月十五日号から「一九七〇年の危機」と題する論説を連載し始めたのでございますが、その論説の最終の昭和四十年二月一日号では、やはりただいま申し上げました野坂議長の九段会館における演説を引用いたしまして、一九七〇年と申しますか昭和四十五年の政治的危機の根拠にこれをうたっておるというような事情がございます。  こういうところから見ると、右翼団体は、野坂議長の演説や、ただいま申しました第九回党大会の政治報告というようなものを取り上げまして、これをどうも来たるべき昭和四十五年の政治危機の根拠にしているということが認められると考えているわけでございまして、かような事情から、先ほど申しましたように、右翼団体を刺激して一つの危機感を抱かせたと認められると申し上げた次第でございます。
  262. 松本善明

    松本(善)委員 右翼がそういう引用をするということと、それが刺激をしているということとは違うのです。右翼の機関紙や何かがどういう引用をしようと、それはかってですよ。公安調査庁長官が、これが刺激をしていると言うのは一つの判断です。それではあなたは、先ほど来言っている自民党の出しているビラや正式の文書、そういうものが右翼を刺激していると考えますか。
  263. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 遺憾ながら、ただいま御質問の自民党のビラやその他のものをまだ見ておりませんので、詳しい具体的な内容は存じておりません。ただ、右翼がそれを根拠にして、昭和四十五年における政治危機を取り上げているということは、ただいま申し上げた資料によっても明らかなところであると考えております。
  264. 松本善明

    松本(善)委員 だから、右翼が根拠として取り上げているということと、公の立場にある公安調査庁の長官が、共産党が右翼を刺激しているという発言をするのとは違うのですよ。法務大臣もはっきり、いまの自民党の、私が読みましたビラや報告だけでは右翼を刺激するとは言えないと言っているではないですか。あなたはすぐ判断できないということはないでしょう。
  265. 田中伊三次

    田中国務大臣 先ほど私は、いま先生お読みかけのような内容を拝聴しまして、これはどうもそれだけの文章では根拠が明らかにならぬ、何か根拠となるべき調査を公安調査庁としてやって、そういう生きた資料に基づいて、影響を及ぼしておるものである、刺激をしておるものであるという表現をしたものであろう、こう推測をいたしましたので、長官本人にその事情説明させたという事情でございます。私の判断でございます。やはりここでいまお読みかけ申し上げたような内容の資料がございますと、その資料を公安調査庁の長官として、これは刺激をしたものであろうと判断をすることは、どうもやむを得ないのではなかろうか。それで、調査と判断と別個であるという仰せでございますが、やはり公安調査庁の仕事柄、調査をいたしましたことは、調査の材料に基づいて一定の判断を立てる、一定の判断を立てまして調査活動に資するということになりませんと、単なる事実の調査だけで、おのれの判断をすることは間違いだというふうにはならぬのではなかろうか。事実の調査をいたしますと同時に、それに基づく判断こそ、公安調査庁長官としての重要な任務である、私はいまあらためてこの読み上げたものを聞きまして、こういう判断をする次第でございます。どっちかわからぬという私の判断は、いま申し上げたようにひとつ修正をしておきたいと思います。
  266. 大坪保雄

    大坪委員長 松本君、まだだいぶありますか。
  267. 松本善明

    松本(善)委員 もう十分か十五分……。
  268. 大坪保雄

    大坪委員長 もう一時間経過しているので、それ一問にしてくださいませんか。また次の機会もあるから、それ一問でお願いします。
  269. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、もう一問にしましょう。  私どものほうの党では、一九六四年の第九回大会で公式に、いわゆる一九七〇年決戦説というのは、反動勢力が行なっている謀略宣伝であるということを指摘をしております。そうして政治的な意味で一九七〇年が一つの重要な時期なんだ、焦点なんだ、これはもうどの党であろうと当然のことです。そういうことを根拠として公安調査庁長官という人が、国会の審議の場を通じてそういう発言をするということ、あるいは法務大臣にしてもそうですか、そういうことが右翼を激励するということです。右翼の考えていること、やり方が正当であるということになるんですよ。そういうことを許すべきではないのじゃないだろうか、こういうことです。国会の審議の場で、右翼がそういうふうに言っているということは正当なんだということを公安調査庁の長官あるいは場合によっては法務大臣が言うというようなこと、そういうことが右翼を激励するということになるんですよ。そういうことが公安調査庁の役目か、これは私の考えです。そうしてこういうことをやって、明治百年祭を期して、先ほど申しましたように、右翼が決起をするというようなことを片方では放置をしておいて、激励をしておる。こういうやり方は徹底的に改めなくちゃいかぬ。むしろ法務大臣は調べて、公安調査庁長官の発言を取り消さすべきだというふうに考えますが……。
  270. 大坪保雄

    大坪委員長 次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三分散会